○下村泰君 早い話がやっていないということだ。企業別に発表できないということは、企業の中に全然
雇用していない会社が多いということ、だから発表できない、こういうことでしょう。本来
行政指導しなければならないんですものね。じゃ、この問題は後で、いずれゆっくりやりましょう。
さて、今も
議題になっているこの
法案なんですが、私は
労働者としての経験は余りございません。勤労者となった期間はあることはあるんです。しかしそれは戦前の話でございまして、今日のようなこんな複雑怪奇な世の中になっての
労働の経験はありません。したがって、こちらの方の問題に関してはほとんど無知です、正直申し上げて。ところが、今度の
法案を読んで、この無知なる、実に単細胞なる私の頭でもってしても、何でこんなに手抜かり
法案なのかなと思うんです。私が読んでわかる。私が読んでそう感じるんだから、こういうことを専門にやっていらっしゃる
委員の方から見れば、これ、下手すれば噴飯物に近いでしょう、
内容的に。ですから、この
法案の
審議が始まってから、
労働省のお役人の
皆さん方が、いろいろな
立場の専門家の
立場でお答えはしているんでしょうけれ
ども、明快なる答えというのがあったためしがない。八幡のやぶ知らずを説明しているようなものだ、いつでも。
私は私なりに問題点をちょっと出してみました。まずそれを読んでいきます。それからまた後のお楽しみにしておいてください。
まず、
労働者は具体的就労場所である
派遣先を選択する自由がなく、転々と動かされる
事態が予想される。
派遣地域、
派遣の職種、
派遣期間など重要な
内容について雇い入れどきの条件としては何ら
規定していない。
二番目。
派遣元は、
派遣の対価からみずからの
派遣事業費を取得するため、
派遣労働者の賃金からの中間搾取は避けがたい。
派遣元による中間搾取に対する規制が不十分である。衆議院の修正で
派遣料金を事業計画書等に記載するとしたが、これが果たしてピンはねの規制になるだろうか。
三番目。
派遣先は
派遣労働者を
現実に使用、指揮
命令しながら、
労働雇用契約関係は成立していないとされているため、
使用者としての
責任を免れ、
派遣労働者の犠牲においてさまざまな経済的メリットを得ることができる。
労働派遣法案は、
労働力需給調整システムとして
派遣事業を位置づけることに急で、
労働者保護の視点に欠けている。
派遣労働者の身分が不安定である。
派遣先の都合による一方的な
派遣打ち切りに対して何らの制限がなく、また、
派遣契約を解除された
派遣労働者に対する具体的救済措置を定めていない。
法案では、時間外
労働、休日
労働の協定――三六協定ですね、届け出は
派遣元の
使用者が行うことになっているが、実際に働くのは他の会社であり、
派遣先は各自異なっており、同一の協定を結ぶのは
現実的ではなく、結局
労働者は長時間
労働を強いられる。これが五つ目。
今度は六つ目ですよ。
派遣労働者と
派遣先企業の間の
団体交渉の
規定がないこと。
派遣労働者が組合を結成すれば、
派遣先が
派遣受け入れを打ち切ることで事実上労組づくりの足を引っ張るのではないか。
これが私が今度の
法案から書き出してみた疑問点です。これはもうずっとやられてきているわけです。それに対して明快な答えは一つもありません。
そこで、これは新聞の名前もはっきり言っておきましょうかな。三月二十六日の火曜日の東京タイムズ、これ、新聞社としては余り力のある会社じゃありません。しかし、この会社の拾ってきた――拾ってきたと言っちゃ失礼ですな、
調査した記事、これはなかなかすぐれております。今私の申し上げた六点というものを頭の中に置いて、この記事を読みますから聞いていてほしいと思います。先ほどコピーして差し上げたと思いますけれ
どもね。
「頭脳
労働でカッコいいと思われがちだが、その
実態は長時間肉体
労働ですよ」と話すのは林淳さん
お年は三十三歳、仮名ということになっております。
中堅のソフト
派遣会社に
雇用されて、大手コンピューター会社に
派遣され、ニューメディア
関係のシステム開発を担当している技術者だ。
「九年前に電算機の専門学校を出て入社。いきなり商社の電算機室に行けと言われ驚いた。
派遣のことを知らされていなかったんです。そこに四カ月いました」
その後の
派遣先は、スーパーに六カ月、電子メーカーに七カ月、広告会社に三カ月、別のソフト
派遣会社の下請けの形で大手電機会社へ一年。次は、その電機会社の人間として同社の系列会社へ八カ月……。林さんは六年半の間に九つの職場を渡り歩いた。
「通勤ができないので三回も引っ越したけれど、独身だったからできた。いまはとても……。二重、三重の
派遣で”一体オレはどこの社員なんだろう”と思うこともありました」
現在の仕事は大きなシステム開発だから二年半の長期
派遣が続いている。システムを分割して、そのいくつかを担当しているが、それぞれに納期が決められている。一つでも遅れると全体の
作業に響くから、納期を守ることは絶対だ。
コンピューターは夜間しか空いていないから納期直前は徹夜の連続。休日出勤もしょっちゅう。「密度が濃く体力が勝負だから、年配者は無理ですね」。林さんの平均残業時間は月七十時間、月収は約三十万円。納期前だと残業が二百時間近くにもなる。
担当部門には、
派遣会社二社から送り込まれた五人の技術者がおり、その上にメーカーの技術者一人がついて仕事の総括をしている。「
作業の指揮・
命令は直接彼がやる。徹夜の残業には付き合わないくせに、たまに早く帰ろうとすると”予定通りいくのか”と嫌味もいわれる」という。
急激な技術革新の時代。勉強しないと、知識がすぐ時代遅れになる。「でも金と時間がなくて」と林さんは嘆く。
派遣先のメーカーの主任技術者に会った。「
派遣の人は勉強不足だね。でも急成長で人手不足だから仕方なく使っている。そりゃ若い人の方がいい、無理がきくから」
これがこの東京タイムズの記者の方が林さんという方にいろいろ質問をしてまとめ上げた記事なんです。
そして、同じ記事の下に「
派遣労働者問題に積極的に取り組む東京
法律事務所の井上幸夫弁護士の話」が斬っております。
労働者を直接
雇用すると、税金や保険料などで月々払う賃金の二倍は費用がかかると言われている。そのため各電算機メーカーでは安上がりですむ
派遣労働者を使っているわけだ。それに辞めさせたい場合は契約解除でいつでも簡単に辞めさせられる利点もある。
こういうふうにはっきり言っておるんだ。
しかも、この記事の中に、日本でも優秀な大きな会社があります。その会社がコンピューターを開発してプログラムを組む場合に、第一、第二、第三までの下請を頼むんだそうです。ところが、この会社は大変
雇用関係をうまくやっているそうです。名前はあえて言いません。
こういうふうに、今私が問題点として取り上げた、その問題点が全部この今の文章の中に入っておるわけですよ、この今の林さんという方の
労働条件を見た場合に。これに関して何かありますか、
労働省側は。それはこれこれこういうふうにやられております、その心配はございません、その頃に関してはこういう手だてがありますと。これ、言えないでしょう、一つも、満足に。例えばここにあるでしょう。私が申し上げた、
派遣地域、
派遣の職種、
派遣期間ということがありますね。その
派遣地域。この人は、独身だから転々としてあっちゃこっちゃ行って勤められたというんだ。一つ一つ、全部これ解決されていません。それでなおこの
法案で事足りるとお考えですかね。