○下村泰君 大分皆さんもお疲れのようですから、この五月二十五日に出ております東京の中央紙の記事なんですけれ
ども、
派遣事業で派遣されている人たちがこんなに酷使されているのかなという記事が載っています。これ読みますから、その間頭を休めてください。これは、コンピューター
関係の派遣会社に勤める
システムエンジニアのAさん、三十三歳の方の例ですが、
コンピューターを動かす命令
システム全体を設計するのが、彼の
仕事。時代の最先端を行く職業だが、会社からの指示で、コンピューターを
持つあちこちの
企業を転々とし、
自分の会社にはほとんど戻らない。派遣先では、納期を迫られて、徹夜がザラ。派遣先の近くに会社が借りあげたアパートに、数カ月泊まり込むこともあった。その間、妻とは別居状態。派遣先の若い
技術者に、あごで指図されることもあり、「こんな渡り鳥生活で、この先どうなるんだろう」。最新の機械に囲まれて、不安に包まれることの多いAさんだ。
Aさんが五十一年に入社して以来、約十年間の派遣先は十カ所。短くて三カ月、長いところでは二年以上。この間、
自分の会社で
仕事をしたのは数カ月だけ。機械メーカーの在庫管理、クレジット会社のオンラインづくりなど、
仕事の
内容はさまざまだ。電機メーカーが売り込んだコンピューターの
システム設計をするため、そのメーカーの社員と身分を偽って派遣されたこともある。
一口に
システム設計といっても、例えばいま、Aさんが仲間としている
仕事は、コンピューターに対する命令が十五万個もある。命令書を床から積み上げると天井まで届く。納期が迫れば、残業、徹夜は避けられない。昼間は、コンピューターを派遣先が通常
業務に使うので、ミスの点検や手直しはどうしても夜になる。Aさんの先月の残業は百七十時間にもなった。派遣元では、
労働組合との間に「月八十時間まで」の残業協定が結ばれているが、「もちろん、派遣先では、それは通用しません。」数年前には、残業が年間千二百時間にものぼった。
ほとんど座りっきりの作業。しかも、コンピューター室は冷房がきいており、痛めた腰に響く。
システムによっては、命令をプリントするのに二、三時間もかかるので、コンピューターの前で寝袋にくるまって眠る。「プリンターのカタカタという音が、子守歌。不思議と、音がやむと目がさめるんですよ」
Aさんの給料は、
基本給が月額約十九万円。残業手当は月によってムラがあるが、平均で五万円。しかし彼は、
自分がいくらで派遣されているか知らない。いっしょに働いている二十代の派遣先社員の給料が、
自分より高いこともしばしば。
コンピューター
システムの水準は日々進んでいく。「
派遣労働者は勉強する機会が少ないから、どんどんとり残されてしまう」とAさん。ムチャな残業が続き、健康への不安が強い。三十五歳までもてばいい方と、しみじみ思うことが多い。Aさんの会社には千二百人の社員がおり、その八割がいつも派遣されているが、毎年二割が退職している。
これが記事なんです。この中に、今出されている
法案でいろいろ問題にされていることが、このAさんの語りの中に全部入ってますわね。
私、不思議に思うのは、こんなことが今まで野放しにされていたんだろうか。しかも、この
法案の中では、常に
職安法の四十四条というものが問題になっているんですね。そういう規定がありながら、何でこういうお
仕事が二十年代の後半から今日まで野放しにされていたのか。そこのところが非常に私は不思議なんですがね。どうして今まで野放しにされていたんですかね。