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1985-04-19 第102回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査特別委員会技術革新に伴う産業・雇用構造検討小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十九日(金曜日)    午後一時三分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     小委員長        梶木 又三君     小委員                 関口 恵造君                 山内 一郎君                 山田  譲君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 藤井 恒男君    参考人        大阪市立大学経        済研究所助教授  増田 祐司君        株式会社野村総        合研究所顧問   石坂 誠一君        総合研究開発機        構理事長     下河辺 淳君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○技術革新に伴う産業雇用構造等に関する件  (技術革新情報化経済社会について)     ─────────────
  2. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) ただいまから国民生活経済に関する調査特別委員会技術革新に伴う産業雇用構造検討小委員会を開会いたします。  技術革新に伴う産業雇用構造に関する件を議題とし、技術革新情報化経済社会について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、三名の方々に順次御出席いただいております。  まず、大阪市立大学経済研究所助教授増田祐司君から意見を聴取いたします。  この際、増田参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  本日は、技術革新日本経済につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず三十分程度意見をお述べいただき、その後三十分程度委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、増田参考人にお願いいたしたいと存じます。増田参考人
  3. 増田祐司

    参考人増田祐司君) 御紹介いただきました増田です。  それでは、これから技術革新情報化経済社会についてということで意見を述べさせていただきたいというふうに思います。  この技術革新情報化経済社会について考える場合にいろいろなアプローチの仕方があると思いますけれども、私は、まず現在の技術革新状況とそれから日本経済発展段階について考えてみたいというふうに思います。現在日本経済発展段階はどの辺にあるのかということでありますけれども、それは、歴史的な過程を振り返ってみるとほぼ想定することができるというふうに思います。  つまり、日本経済はかつて高度成長期に大変な速いスピードで発展をしたわけでありますけれども、その後いわゆる石油危機というふうな状況に直面しまして、それにいかに対処するかということが問われたわけであります。そのときに日本経済のとった、あるいは産業政策方向では、それは石油から離れた産業構造石油に依存した産業構造中心経済から、それに必ずしも依存しない産業中心移行するということが中心であったわけであります。  具体的に申しますと、いわゆるマイクロエレクトロニクス産業用ロボットであるとかNC工作機械とかいうような自動化機械中心とする産業、それはとりもなおさずマイクロエレクトロニクスベースにした技術体系を新たに構築して、そこに産業中心を移していくというようなことであったかというふうに思います。この過程日本経済短期間のうちに達成したわけであります。当時、省資源省エネルギーということが言われたわけでありますけれども、単に省資源省エネルギーということを図るわけではなく、つまり石油に依存した、あるいは資源に依存する経済の中でエネルギー節約あるいは資源節約を行うだけではなくて、産業構造の重心を移行させたということが大きな日本経済の新しい発展をもたらしたということであります。これがいわゆるマイクロエレクトロニクス技術中心とした現在の産業構造をつくり上げたということになるわけであります。いわゆる重厚長大型、つまり石油化学鉄綱等々の産業中心とした経済構造から、いわゆる軽薄短小型経済への移行ということがこの十年の間に起こったわけであります。いわゆる石油危機後の技術パラダイムというものが大きく短時間のうちに変わったということになります。  これを諸外国と考えてみますと、アメリカヨーロッパは、特にヨーロッパの場合には、従来の産業構造中心を必ずしも短期間のうちに移行することができずに、現在いろんな問題を抱えているのは御承知のとおりであります。それに対しまして日本の場合には、今申し上げましたように短期間のうちに、それも、もちろんいろいろな問題を抱えながらも移行をしたというようなことであります。それに伴って、新しく日本経済性格づけるようなキーワードと申しますのは、情報化あるいはサービス化ソフト化というものが登場してくるということになります。  情報化というのは、御承知のように、これまでの資源に依存した経済というものから、さらに情報に依存するというか、情報に大きく関係づけられた経済体制をつくっていくというのが情報化経済性格であろうかと思います。同時に、情報化サービス化というのはある意味で相補い合っているものでありまして、全く別々のものではないということが言えると思います。情報処理なり情報サービスというのはある意味サービス労働性格を持っておるわけでありますが、逆にまたサービスというものが情報労働というような性格を持っているわけであります。  またさらに、ソフト化ということもよく言われるわけでありますけれども、このソフト化も、従来のハードの生産というものからソフト生産ということが非常に経済社会の中で大きな役割を果たすようになったと言われるわけでありますけれども、これもソフト化労働あるいはソフト生産というのは、実は情報化という問題に大きく結びついているということになろうかと思います。  このような現在の産業社会に起こった情報化サービス化あるいはソフト化というのはこの十年間、七〇年代から八〇年代にかけて急速に展開された現象でありますし、これが現在の産業社会というものを大きく規定しているということが言えると思います。  現在の産業社会というものが、そういうわけでこれまでの経済構造から大きく変わってきた、それによっていわゆる高度情報化社会が生まれつつあるということになります。現代日本社会と いうものは、そういう意味高度情報化社会への入り口にあるということが言えるかと思います。九〇年代から二十一世紀にかけてはその成長期展開期になっていくというふうに考えることができると思います。  それでは、このような産業社会の転換というものの中で技術革新の果たす役割、そしてその技術革新中心をなしております情報通信マイクロエレクトロニクスというものを考えてみたいというふうに思います。  今申し上げましたように、日本経済というのが発展してきたのは、マイクロエレクトロニクスあるいは情報通信というものをベースにしているわけでありますけれども、技術革新展開が現在非常に急速になされているわけであります。  ここで、マイクロエレクトロニクス情報通信関係について考えてみたいというふうに思います。  マイクロエレクトロニクスというのは、御承知のように、これは要素レベルでの技術でありまして、特に半導体等中心とする要素技術がさまざまな機器に使われて、これまで機械というものが知能を持ってなかったわけでありますけれども、一応の知能を持てるようになってきたというような段階であります。知能と申しましても、非常に低い初期的な段階での知能でありますけれども、これが産業社会なり産業技術というものを大きく変えてきているということであろうかと思います。御承知のように、メカトロニクスというのは機械技術メカニクス電子技術エレクトロニクスとが結合されたものでありまして、現在の新しい技術革新典型であろうかというふうに思います。さらに、エレクトロニクス光技術でありますオプトが結合されましてオプトエレクトロニクス、さらにまた、オプト技術とそれからメカニクス機械技術が結合しましてオプトメカニクスというような技術もあらわれているわけでありまして、本来、現在の技術革新というのはそれぞれの固有の領域内における技術の進化ということもありますと同時に、もう一つは、それぞれの境界領域技術革新の芽があるというようなことであろうかというふうに思います。このようなメカニクス、それからエレクトロニクス、それからオプトというような技術に支えられてマイクロエレクトロニクスが存在しているわけであります。このマイクロエレクトロニクスはこういうわけで現代技術革新の基礎をなしているというようなことが言えるかと思います。御承知のように、マイクロエレクトロニクスあるいはメカトロニクスというものがさまざまに産業社会インパクトを与えているというわけであります。例えば、メカトロニクス雇用にどのような影響を与えるかということは非常に現在の社会にとって大きな問題でもありますし、将来の社会を考える上でまた大きな問題になっているわけであります。これまでの熟練労働というものがマイクロエレクトロニクス技術の導入によって否定されてくるというような状況も御承知のように多々見られるところであります。さらに産業構造産業組織を大きく変えていくというような要因にもこのマイクロエレクトロニクス技術がなっているわけであります。  しかしながら、今申し上げましたマイクロエレクトロニクス技術というのはあくまでも要素技術レベルでとらえられた技術でありまして、さらにその上にこれらの要素技術が統合されて、さらにネットワーク化された技術というものが情報通信技術であろうかというふうに思います。  情報通信というのは、御承知のように、情報処理通信処理との結合された技術体系でありまして、これまで情報処理典型でありますコンピューター技術と、それから通信処理典型であります通信交換系技術というものは別々に存在していたわけでありますけれども、現代技術革新はその両者を統合する方向に動いているというわけであります。この結果さまざまな問題を社会に投げかけているというわけであります。  昨年いろいろ問題になりましたいわゆるVANというものは一体何であるかということに関しまして、これは情報通信技術中心的な技術になるわけでありますけれども、実は通信処理のサイドからのアプローチを別にしまして、情報処理からのアプローチとしますとVANに対する見方も違ってくるわけでありますし、同時にその政策体系のあり方、政策体系をどう構築するかということも変わってこざるを得ない面を持っているわけであります。  さらに、このようなネットワーク化によって産業組織がどんどん変わってくる、あるいは地域的な産業立地も変わってこざるを得ないというようなわけでありまして、情報通信技術体系というのは、産業組織あるいは地域構造というものに大きく影響を与えるということになるわけであります。マイクロエレクトロニクス技術がある意味でいいますと個別の生産現場におけるインパクトを大きくもたらしたのに対しまして、マイクロエレクトロニクス技術を統合しました情報通信技術体系というものは、その局所的な影響にとどまらずに、広く社会的に、日本経済全体に、さらには世界経済全体に大きなインパクトをもたらすものと考えることができます。これが今我々高度情報化社会の中で直面する問題になってこようかというふうに思うわけであります。いわゆるニューメディア技術というものも、これは言ってみれば従来のメディア機器というものをネットワークによって統合して構築されるものでありますので、マイクロエレクトロニクス技術に大きく依存しているわけでありますが、同時にそれは情報通信技術であろうかというふうに思われます。  このようなことを今申し上げたわけでありますけれども、さらに現在の技術革新がどういうふうな形で産業構造なり、さらに国際関係に大きく影響を与えるかということを考えることがまた非常に重要であろうかというふうに思います。  まず一つは、国内的な問題としまして国内産業構造高度化、これは情報通信技術、さらにマイクロエレクトロニクス技術によってもたらされているわけでありますけれども、特に大きな問題として浮上してまいりますのはやはり地域経済へのインパクトであろうかと思います。マイクロエレクトロニクス技術というものは確かに、今申し上げましたように、地域に局所的な影響を与えるわけでありますけれども、情報通信はさらにそれを超えてネットワーク化されておりますので、ナショナルレベルでの影響を与えるということになるわけであります。情報通信インパクトを考える場合に、やはりそういう意味で広い立場から考えてみる必要があるわけでありますけれども、特にここの場合によく言われますように、例えばINSというものが実現すると、どこでも情報端末機から入手できるということが言われるわけでありますが、確かにそのようなことで、情報地域間格差はあるいは縮小するように見えるわけでありますけれども、しかしながらこれは表面的な問題ではなかろうかと思います。深層に流れているのは逆に情報通信技術が一般化することによりまして地域間格差が拡大する可能性があるというふうに私は考えるわけであります。  ただ、この地域間格差をどのように考えるかということでまた問題が出てくるわけでありますけれども、少なくとも高度情報技術によってある意味地域間格差が拡大される方向に動いているというふうな現象が散見されるわけであります。例えば情報通信あるいはINS、全国的なネットワーク技術によって確かに至るところで必要とされる情報は入手できるかもしれませんけれども、それは要するに限られた情報であります。ある特定の範囲あるいはそのデータベースに乗っかっている情報というようなわけでありますけれども、今高度情報化社会で大きな問題となっておりますのは、単なる一時的ないわゆるデータとしての情報ではありませんで、むしろそれをつくり出す情報活動というものが非常に我々の社会にとって大きな課題になってくるわけであります。  このような、いわゆる情報労働というよりは知識労働というものがどこで行われるかと申しますと、それは実はかなりある特定地域あるいは高 度先端的な都市に集中する傾向があるというわけであります。その他の例えばマニュアルな、あるいはルーチンの労働というものは確かに分散する方向にありますけれども、より高度な知識労働というものが集中する傾向にある。これが高度情報化社会一つ問題点であろうかというわけであります。ですから、確かに高度情報化社会地域経済というものを情報技術によってかなり活性化させるし、ある意味でいうと、地域分散というものを促進する傾向にあるわけでありますけれども、別の面で見ますと、知識労働を集中させる傾向にあるということをここで指摘しておきたいというふうに思います。  とは申しましても、現在の技術革新というものを支えている情報通信技術マイクロエレクトロニクス技術というものは、我々の社会にとってのいわゆる適正技術であるというふうに考えることができると思います。つまり、これらの先端技術というものは適正技術としての性格を持っているということが言えると思います。今、全国至るところでさまざまな技術開発試みがなされておりますし、さまざまな地域開発試みがなされております。テクノポリスの問題であるとか、あるいは今いろんな形で地域開発のためのプロジェクトがつくられつつあるわけであります。そこの中には先端技術ベースとした構想があるわけでありまして、それが構想中心になっているということが言えると思います。そういうわけで、現在の技術革新適正技術としての先端技術ベースにして展開されているということが言えると思います。  ただ、ここで申し上げたいのは、これは国内的な問題でありましたけれども、国際的な問題として考えますと、現在先端技術というものがまた大きな問題を抱えてきているということが言えると思います。と申しますのは、先端技術は、日本ではある意味産業用民生用技術としてイメージされているし、意識されているというわけであります。しかしながら、例えばアメリカでは先端技術ハイテクノロジーというものは決して民生用産業用技術ではありません。むしろ、いわゆる国家安全保障技術としての性格を持っているわけであります。現実には、現在の先端技術国家安全保障、つまり軍事技術としてアメリカ開発されてきたものが多いわけであります。具体的には半導体技術がそうでありますし、そのほかのいろいろロケット技術でも皆そういうふうな性格を持っているわけでありますので、現在でもアメリカはそのハイテクノロジー国家安全保障と関連づけて考えているわけであります。つまり、アメリカハイテクノロジーは三つの性格があります。  第一は、ナショナルセキュリティーとしてのハイテクノロジーであります。国家安全保障を確保するためにハイテクノロジー開発しているし、現在でも将来でもこれを続けたいというふうな意向を持っているわけであります。  それから第二番目としまして、アメリカハイテクノロジーグローバリティー世界性を持っているわけであります。初めから世界をコントロールする技術としてハイテクノロジー開発されてきたわけであります。  それから第三番目としまして、アメリカハイテクノロジーシステム性を持っている。特に兵器システム開発のためにハイテクノロジーは使われてきたわけでありますけれども、システムという性格を非常にアメリカハイテクノロジーが持っているということは注目すべきことだろうと思います。  それに対しまして日本ハイテクノロジーというのは、先ほど申しましたように、民生用産業用技術であります。  それからもう一つは、グローバリティーに対しましてローカルティーと申しましょうか、ある地域性あるいは日本国内のというような性格を持っておりまして、それを生産して輸出するというような性格であります。これがある意味でいうと現在の貿易摩擦技術摩擦というような問題を起こしているわけであります。  さらに、アメリカシステム性に対しまして、日本の場合にはサブシステムないしコンポーネント技術としての先端技術が位置づけられているわけであります。  このようなことで、国際関係が変容している中で、先端技術開発をどういうふうにしていくかということが日本で今問われているというのが現状であろうかというふうに思います。  最後に、これら現在の技術革新性格、それから情報化経済社会の中でこれからどのような政策展開を図っていったらよろしいかという問題が出てこようかと思います。もちろん、この問題は非常に大きな問題でありますので、私の能力を超えるわけでありますけれども、今申し上げましたような内容から、つまりポリシーインプリケーションというものを考えてみますと、三点ほど指摘できるというふうに思います。  第一の問題は、つまり高度情報化社会における社会発展の制約が何であるか、それをどのような形で突破していくのかということが大きな課題になってこようかと思います。と申しますのは、先ほど申しましたように、高度情報化社会入り口に入ったばかりであるということを申し上げましたけれども、しかしながら、そこの社会の抱えている課題をやはり早期に発見し、それに対する対応策をとるということが非常に重要であろうかというふうに思うわけであります。そのために、やはり社会発展を制約するものは何であるかということを考えてみる必要があろうかというふうに思います。それは二つほどあろうかと思います。  まず一つは、高度情報化社会においては、むしろ物的な生産よりも知的な労働あるいは情報労働ということが重要な役割を果たすということになるわけでありますけれども、それに対する人々の適応力、あるいは人間がそれに対して適応できるか、そして新たに創造的な活動ができるかというふうな問題が出てくるわけであります。これまでは物をつくる生産労働ということが非常に重要だったわけでありますけれども、しかしながら、これからは生産労働の中でも知的労働ということが非常に重要になってくるわけであります。そのために、やはりそれに対応したいわゆる教育体系を再構築していく必要があるかというふうに思います。現在の技術革新のもとでは、現在の学校教育が必ずしもその体系に沿ってるというふうなことは言えないのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。さらに、現在の学校教育がそれに適応できるような人材を供給しているかということを考えてみますと、大変疑問であろうかというふうに思いますので、その辺の教育の問題が大きく浮上してくるというわけであります。  それから、その第二番目の問題でありますけれども、やはり高度情報化社会というのはある意味情報の行き渡る社会でありますけれども、同時に、先ほど申しましたように、ある情報レベルは集中する傾向にあるというわけでありますが、これらの地域間格差をどのようにして是正していくのかということが大きな課題になってくるわけであります。同時に、この情報というものをベースにした地域開発のプログラムをどう構築していくかということも非常に大きな問題になってくるわけであります。  それからまた、ここで申し上げたいのは、やはり産業組織がどういうふうに変わってくるか。これまでの物的な生産というものに対応した産業経済体制では高度情報化社会には必ずしも対応できなくなってきているわけでありますので、これは例えば下請中小企業の問題にどう対応するかということが非常にまた大きな問題になってくるわけであります。現実VANというものを使って、いわゆる下請に対していろんな生産の指示をするというものが出てきたわけでありまして、そのようなVANを使えないような中小企業は切り捨てられると、下請企業は切り捨てになるというようなことであります。こういうふうな問題が浮上してきておるわけでありますので、これに対してどう対応するかということが非常に大きな問題にな るわけであります。  それから、ここで申し上げたいことは、先ほどの先端技術性格に関することでありますけれども、日本先端技術というのは非軍事技術として成長発展してきたわけでありますが、さらにこれからどのような形で発展すべきかということになると、これはいろいろ議論があろうかと思いますけれども、日本の持っている技術力を十分に活用していくためには、ナショナルセキュリティーとしての技術ということでは必ずしも効率的な対応ができないのではないかというふうに思うわけであります。  これに対してやはり別のルート、これまでの産業民生技術としての新しい展開で考えていく方向が必要であろうかというふうに思います。さらにこれらを通じて国際協力をしていき、世界経済の中で日本経済が重要な役割を果たすことが求められているわけであります。これこそが現在変容しつつある国際関係の中で日本のアイデンティティーを確立する道であるし、世界経済の中で十分豊かな経済協力あるいは日本経済発展を遂げていく基盤になるものであろうかというふうに思います。  時間が参りましたので、これで一応の私の陳述を終わりにさしていただきたいと思います。
  4. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で増田参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言願います。
  5. 吉川春子

    ○吉川春子君 増田参考人に何点かお伺いしたいんですけれども、「日本経済先端技術開発」という参考人のお書きになった論文を読ましていただきまして、この中に、コンピューター産業では日本は大変な黒字なんだと、こういうような御指摘もあって、非常にこの分野で輸出超過にこれからもなっていくんではないかと書かれているわけですけれども、例えばコンピューターの問題でいえばかなり日本アイ・ビー・エムの製品などが多くて、ちょっと通産省の資料なんかも見てみますと四分の一以上、そしてその他の多国籍企業を合わせると三分の一ぐらいはこういうところがつくっているという数字が出ているわけですね。だから、確かに日本でつくって日本から海外へ出しているという点では間違いないんだけれども、しかし例えばアイ・ビー・エムでいえばその利益はアメリカは行くんじゃないか。こういうようなことを考えたときに、一概にコンピューターの貿易収支は黒字の拡大一途というふうには言えないような気もするんですけれども、その辺も含めて、今後の貿易摩擦等もありますけれども、こういう問題についてお考えを第一点としてお伺いしたいと思います。  それから、先端技術開発が非常に貿易摩擦の原因につながるおそれがあるということはいろいろ指摘されているわけですけれども、なぜ日本が国際的な競争に勝ったのかという原因を考えてみますと、先端技術開発が非常に進んでいる、そういう面も部門によってはあるかもしれませんけれども、私はさらに、例えばQCという名の実質的な労務管理だとか、あるいは国会でも大分問題になっておりますけれども、日本労働者の長時間労働ですね、大体ドイツの労働者よりは二、三カ月一年間多く働くとか、そういうような問題が基礎にあって貿易摩擦につながるおそれがあるのではないか、単純に非常にこの分野での技術が国際的に進んでいるだけとは思えないような要素もあるのではなかろうかというふうに思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。  それから、今の御発言の中で教育の問題について触れられましたけれども、情報労働に対する適応力をもっと国民につけなきゃいけないと、そういう点で教育を大変重視していらっしゃるわけですけれども、この点についてもう少し具体的に触れていただきたいのと、それからそれとの関連で、若手研究者が大分不足しているという問題をこちらの論文でも御指摘になっておられるわけですけれども、そういう点でいいますと、今大学院におけるオーバードクターの問題ですとか、私は文教委員もしているんですけれども、文部省の人員削減をずっとやっておりまして、国立大学その他においても非常に研究者の枠が狭くなってきている、予算もなかなかつかない、そういうような問題もあると思うんですけれども、非常に大量のやはりこういう基礎研究などに携わる人々が今後必要になってくるということも考えられますが、教育における問題、それからこういう若手技術者をどうやって補充していくかという点にも触れていただけたらと思うんですけれども。
  6. 増田祐司

    参考人増田祐司君) 今の御質問に対して私の考えを述べさせていただきたいと思います。  まず第一点の先端産業の貿易の問題であります。  今御質問で指摘がありましたように、実は日本の輸出がふえているのはアメリカ系多国籍企業の日本における活動の結果として、そしてそれをアメリカに輸出するという結果として生じている面がかなり大きいというふうに思います。それは御指摘のとおりだと思います。ただ、ここで考えておかなければならないのは、日米間の貿易の問題は、特に国家間関係で考えてみると、それはいわゆるナショナルアカウント、国民経済勘定の中では、私が書きましたように、日本からのアメリカへの輸出はどんどんふえているし、これからもその傾向は持続するであろうと思われますし、同時にその結果として貿易摩擦はずっと持続する可能性は大きいと思います。ただし、これを企業レベルで考えてみますと、日本企業の活動ばかりじゃなく、むしろアメリカ系あるいはヨーロッパ系の多国籍企業も日本に入ってきておりますけれども、そのような外国の多国籍企業の活動の結果、日本の先端製品の輸出が拡大するというわけであります。これをやはり特に日米関係でははっきり指摘しておく必要があるだろうというふうに思います。ここの問題が実は非常に混同されている面があろうかというふうに思うわけであります。  先端産業の貿易に関しまして私は三点ほど指摘したいと思うわけでありますけれども、第一点は今御質問ありましたとおりでありますし、つまり多国籍企業の活動の結果として日本の貿易、先端製品の輸出がふえるというわけでありますが、ナショナルアカウントの面では確かに日本からの輸出が拡大するように見えるわけであります。これを混同しないということが非常に重要であろうかと思います。  それから二番目としまして、日本の先端製品の輸出というものはハードウエアに依存しているというわけであります。つまり、先端製品であります半導体であるとか、あるいは光ファイバーであるとか、あるいは航空・宇宙部品であるとか等々の先端製品がどんどんふえている。そして、その結果として日本の先端産業の貿易黒字は拡大する傾向にあるわけでありますが、それはハードウエア製品であります。しかし、今これから重要になってくるもの、特に高度情報化社会において重要と考えられるのはソフトウエアの問題であります。この場合、ソフトウエアというのは非常に広い意味を持っておりまして、コンピューターのプログラムからさらにさまざまなサービスのためのソフトというようなこと、サービス労働も含めたものでありますけれども、あるいは情報通信に関連するデータベースの問題とか、そういうものを含めて考えてみますと、日本は現在のところも入超であります。輸出よりも輸入が大きいわけであります。これをどのように解決するかということが非常に大きな問題でありますので、むしろハードウエアの輸出というものはこれからは拡大する傾向にあるわけでありますけれども、問題はソフトウエアをどうしていくかということが対策として考えられなければならないというわけであります。  それから第三番目の問題として、今、先端製品の輸出というのはどんどん拡大しているわけでありますけれども、それは実は成熟期にある製品群 というものを中心とした輸出であります。むしろこれから新しい製品の開発、もちろんこれはソフト、ハードを含めましてそうでありますけれども、新しい製品の開発ということが非常に大きな問題になる。そのためにやはり日本みずから研究開発を行い、さらにその前の基礎研究を行うということが非常に大きな課題になっているということであろうかというふうに思います。  第二点の問題としまして、なぜ日本は国際競争に勝ったのかというような問題があるわけでありますけれども、言いかえますと、なぜ日本は先端産業において国際比較優位を確保できたかという問題になろうかと思いますけれども、それは実は今御指摘ありましたように、労働条件というものが他国と違う、具体的には労働時間の問題、あるいは労働の管理の問題というものが非常に大きく日本の国際比較優位の確立に寄与しているというわけであります。この問題、確かに大きな問題を抱えているわけであります。本当に日本人が生産労働の場においても豊かな生活をしているかということになると、多分に疑問の点があるわけであります。非常に厳しい労働条件のもとで働いているということもあろうかというふうに思うわけであります。特にこれから大きな問題になってこようかと思うのは、大企業の問題も一つあるわけであります。それは労務管理というのが非常に厳しい、あるいは長時間労働という性格を持っておるわけでありますけれども、特にベンチャービジネスの問題も出てこようかと思います。ベンチャービジネスというのは、産業社会というものに活力を与える非常に小さな企業であるというふうに定義されるわけであります。そこで、ベンチャービジネスの持っている性質というのは、先端技術開発に努力している、あるいは先端産業の中で重要な役割を果たすものとして考えられているわけであります。そして急成長をしている企業があるわけでありますけれども、それは経営者、あるいはベンチャービジネスをマネージする人にとっては大変有意義であろうかと思います。あるいは日本社会にとってもプラスの役割を果たしているかもしれませんけれども、そこに働く人々の労働条件というものが大きな問題を提起しているのではないか。つまり長時間労働もそこにはあるわけでありますし、同時に別の面でいいますと、これは中小企業でありますから、中小企業の持っている問題点も多分に含んでいるというわけであります。ベンチャービジネスが今もてはやされておりますけれども、中小規模企業としての問題点をやはりここで考えていく必要があるのではなかろうかというふうに思うわけであります。  それから第三番目の問題であります。つまり教育の問題であります。  この問題は私専門ではありませんので、直接お答えはちょっと難しいわけでありますけれども、私なりの考えを申し上げますと、今まであるいは現在行われている教育というものは、工業社会における教育というものを前提にしているというふうに思うわけであります。つまり、知識をいかに詰め込むか、それも短期間のうちに詰め込むかということが現在の教育の大前提になっているように思うわけでありますけれども、しかし高度情報化社会になりますと、そのようないわゆる記憶というものはある意味機械がかわってくれる可能性もあるわけであります。全く機械にかわってもらってしまっては困るわけでありますけれども、半導体の記憶素子がどんどん出てくるわけであります。そういう意味で、機械が人間の記憶にかわるということができるわけであります。暗記というものは余り必要なくなってくる。しかし問題は、知識をいかにつくり出しいかに活用するかという能力を問われることになるわけであります。ところが、現在の教育体系ではそのようなシステムは必ずしも完備していないように思われるわけでありますので、この辺のところが非常に大きな問題になってこようかというふうに思います。  現在、行政改革の名のもとで文教予算というものがそれほどふえていない、むしろ削られる傾向にあるということは非常に大きな問題であろうかと思います。日本高度情報化社会あるいは高度産業社会というものの豊かな構築のためには、やはり研究者、つまり研究のための人材をいかにそろえるかということが重要でありますし、日本発展していくためには、この基礎的な人材を養成し、それを活用するということが問われているわけでありますけれども、現状を見るとそういうふうな状況には必ずしもなっていないのではなかろうかというふうに考えるわけであります。  第三番目の問題については、必ずしも的確な私の考えがありませんので、申しわけありませんけれども、以上であります。
  7. 山田譲

    ○山田譲君 余り緻密な話じゃなくて恐縮なんですが、先端産業が非常に発達をした、それがかなり輸出にも影響していることは確かでありますけれども、日本産業を全体として見た場合に先端産業しかないわけじゃないんで、ほかのいろいろな産業があるわけですけれども、そういう産業の中には不況産業と言われているようなやつもいっぱいある、あるいはそう先端産業みたいに派手な格好に動いていないような産業もいっぱいあるわけであります。そうしますと、雇用の問題一つとってみまして、実際に失業者の数というふうなものも大体百五十万から六十万前後、二・五、六%というふうな調子でもって推移していまして、輸出が非常に盛んになった割にはちっとも具体的に労働者の方には影響が来てないんじゃないかということが心配されるわけであります。ですから、こういう先端産業はそれは花形産業でいいでしょうけれども、日本産業全般としてやはり発展するような方向に行かないというと、具体的な失業者はいつまでたっても減っていかない。ごく特殊な先端産業の分野だけがいびつな形で発展を遂げていくと。それが雇用にも影響しないということになってはやはり問題があるんじゃないか、こういう感じかするんですけれども、その辺先生のお考え方はどんなものでしょうか。
  8. 増田祐司

    参考人増田祐司君) 今の御質問に対して私の考え方を述べさせていただきたいと思いますが、先ほど参考意見として申し上げましたのは、実は先端産業中心とした話でありましたけれども、しかし日本経済の中には先端産業だけがあるわけではありません。むしろ先端産業というのは、現在全体のシェアで見ますとそれほど大きくないわけであります。推計の仕方によりますけれども、総生産額のうちで大体一〇%とか二〇%程度のものでありまして、その他はやはり従来の産業であります。問題は、先端産業が持っている雇用吸収力の問題であります。  今御質問にありますような雇用吸収力があるのかどうかという問題でありますが、それは必ずしもないのではないかというふうに考えることができます。なぜかと申しますと、先端産業というのは人間労働にかわる面を持っているわけです。知的な労働というか、その前にプログラム化された機械がありますので、それを人間にかわってその機械が仕事をするというようなことでありますので、これはある意味で確実に人間労働に代替するわけであります。これが先端産業の持っている性格でありますので、ある意味でいいますと雇用を排除する傾向がある。しかしながらまた別に、先端産業の持っているのは新しく仕事をつくり出す、例えばソフトウエア労働、そういうものをつくり出すことによって全体としては若干はふえているというわけでありますけれども、とはいいましても、それほど先端産業発展することによって雇用が吸収されるというわけではないというふうに思うわけであります。  そうしますと、日本経済全体として産業構造をどのように構築していくかということが問われるわけでありますが、その場合にやはり伝統的な産業、特に重化学工業の問題、それから軽工業の問題をどう考えるか、どう発展させるかということが重要であろうかと思います。  その場合に二つの論点があろうかと思いますが、一つは、軽工業というものを現代社会的な状況に合わせて発展させていくことが必要であろうかと思います。軽工業と申しますと大変に古い イメージがあるわけであります。例えば繊維であるとか陶器であるとか、あるいは地場産業でありますからその他木材、木工業とか、そういうものがあるわけでありますけれども、しかしこれらの産業というのは我々の生活にとって非常に重要でありますし、日本でなければできないものであります。日本人のセンスの問題があります。これは現代流に言いますと例えばファッション産業になるわけでありまして、これはいかにデサインを時代にマッチしたものにしていくかとか、いろんな日本人の生活というものに合わせた生産をするということになりますと大変多くの雇用が生み出されることになるわけでありますので、この辺のところをやはり従来型いわゆる産業政策ではなくて、新たな視点からの産業政策が必要であろうかというふうに思います。  それから二番目としましては、先端産業は先端産業内部で循環しているわけでありませんで、むしろ伝統的な産業、あるいは重化学工業というものにも大きくインパクトを与え、さらにそれらの産業が先端産業というものにまたインパクトを与えるというような性格を持っているわけであります。具体的に申しますと、先端産業分野で確立されました技術というものがそれらの産業分野に適用されるいわゆるデフュージョン、拡散していくことによりまして日本経済全体として産業構造高度化を図ることができるというわけであります。先端産業と他の産業との有機的な関係をつくり上げることが今問われているということであろうかというふうに思うわけでありますし、その辺のところが小口高度情報化社会にとってもまた大きな問題になってきているというわけであります。  以上であります。
  9. 山田譲

    ○山田譲君 ありがとうございました。
  10. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この小委員会で先だってお招きした参考人の方からのお話で、私も完全に記憶しておるわけじゃないんだけれども、こういう話がありましてね、先端産業というものは労働構造を変える、知的労働をふやしていく、したがって熟練労働といいますか、今までの労働形態と変わるのでそういった人たちの就労の機会をなくしていくというふうに俗に言われるけれども、しかしME機器といえどもこれはプログラマーが必要なんで、このプログラムをつくるということに関してはむしろ熟練労働者の方が必要なんだと、熟練労働者の段取りのうまさといいますか、こういった人たちによるプログラムの作成ということが実際の工場を動かす上には大変必要なんだというような逆な意味の発言をなさった先生がいらっしゃるんです。  それから、中小企業、零細企業に圧倒的に我が国の場合には就労人口が多いわけですね。こういったところをよく見ると、例えば下請の零細企業、ME機器がほこりをかぶっていると。どうしてだと言えば、現在の多品種少量生産、常にロットが変わるわけですね。そうすると、むしろ今までの手作業的な形での旋盤であるとかその他の作業が必要になるので、むしろ高い金を出してリースした機械は余り意味を持ってないんだと、これも逆な意味でそういった発言をなさっておられたんです。したがって私どもも、そういったむしろ先端技術がどんどん進んでいってハイテクノロジーで、そして今先生がまさにおっしゃったような話ばっかり聞いておったときにそういう話が出まして意外に思ったんですが、そういった点、先生はどういうふうにお考えでしょうか。
  11. 増田祐司

    参考人増田祐司君) 私の考えを述べさせていただきたいと思いますが、今の御質問のお話はそのとおりだというふうに私は思います。つまりME機器あるいはME技術労働構造を変えるということでありますが、確かに変えるわけです。その変える内容がどうかという問題になるわけですが、それは単に知識労働者だけがふえてそれが重要な役割を果たすわけではありません。むしろ熟練というものが新たに見直される時代であろうかと思います。ですから、熟練が否定されるわけではなくて、あるいは従来のような生産現場で直接に生産に携わせるわけではなくて、プログラムをつくるという形での労働に変わってくるということでありまして、それはまさにまたある意味でいうと知的な労働に変わってくるわけであります。そういうふうに労働の内容が変わるわけであります。労働の対象が変わってくるということであります。高度情報化社会においてはそういうふうな労働がどんどんふえてくる可能性がありますし、ますますそれは重要になってくるというふうに思います。  現在進められております人工知能開発においてもそれが重要になるわけでありますけれども、現在のプログラムというのは非常にこれはソフトだと言われておりますけれども、実はハードなんですね。というのは、現在のプログラムそのものは自分でプログラムを変えることはできないわけであります。それは人間がつくって人間がまた新しく手直しをすることが必要になってくるわけであります。このために多くの労働力が必要になってくるわけでありますが、さらに今考えられている人工知能というものは人間労働にかわることになるわけでありますが、しかしながら、そういうものに知能を与えるものは人間であります。人間のいろいろ生産工程なり作業工程あるいはそのほかのいろんなことについて詳しく知っている人々がそういうふうな人工知能知能を与えることができるわけでありまして、それはこれまでの熟練を持っている人が最も適任ということになるわけでありますけれども、例えばこれから人工知能つきの工作機械が出てくると思います。今のは一度教え込んだらそれを変えるのは大変であります。しかしながら、ある程度これからの人工知能を持った工作機械というのは、自分で学習しながら仕事をするようになると思いますけれども、その場合でも手直ししたりコントロールしていくのは本当に作業に熟練した労働者であるわけでありますので、全く労働者が必要でなくなってしまうわけでもないし、熟練が必要でなくなってくるわけではなくて、むしろ逆であろうかと。今御質問のとおり、非常に多くの熟練労働者が必要になってくる。ただし、その場合に熟練の意味が変わってくるということは申し上げたいというふうに思います。  以上であります。
  12. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 以上で増田参考人に対する質疑は終わりました。  増田参考人には、お忙しい中を本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。     ─────────────
  13. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 次に、株式会社野村総合研究所顧問石坂誠一君から意見を聴取いたします。  この際、石坂参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、技術開発産業につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず三十分程度意見をお述べいただき、その後三十分程度委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、石坂参考人にお願いいたしたいと存じます。石坂参考人
  14. 石坂誠一

    参考人(石坂誠一君) 石坂でございます。本日、この小委員会にお招きいただきまして意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして本当にありがとうございます。  それにもかかわらず、私、実はちょっと誤解をしておりまして、こういうフォーマルな会合と思っておらなかったものですから、お手元に差し上げた資料、大変体裁の悪い、また読み直しますと 若干ミスプリントもあるようなものをお渡ししまして恐縮に存じておるわけでございます。  きょうは三十分ほどということでございますので、要点だけ申し上げてみたいと思いますが、きょうお話ししたい要点というのは、日本技術は大変進歩してきたと、国際的なレベルを超えるものも出てきたと、しかしその結果としていろいろなことが起こってきている、例えば貿易黒字の問題なんかはその一つの例ではないだろうか、そして少しでも問題を解決するために技術として何か考える方法がないだろうかということで、技術者としての友好関係の維持とか、あるいは内需拡大と技術問題点というようなことをお話し申し上げ、よく考えてみると、日本技術はどうも根のない、非常にきれいな切り花のような感じがするということをちょっと表や図を使って御説明し、最後に官庁の役割というようなものをひとつ考えてみたい。なお、アメリカは大変科学技術に対して努力しているというようなことをまとめてお話をしたいと思います。  さて、日本技術進歩が非常に速いということを申し上げましたのですが、人により立場によりまして皆さんいろいろなことをおっしゃるわけでございます。したがいまして、専門でない方の一部では、一体日本技術というのは本当のところどうなんだろうかというような、そういう御質問がよく出てまいるのでございます。それを私なりに整理してみたいと思うのです。  考えてみますと、製造業の方にその会社でつくっている技術レベルはどうなのかと、こういうように聞きますと、当然うちの製品はそれは世界で最もいいんだと、こういう答えが返ってくることに決まっていると思うんですね。それからマスコミの方はどういう対応をしているかといいますと、どっちかというと、やはり読者がどう読むかというそういう感じを非常に強く前提条件として持っておりますから、やはり書いたものがアピールするような書き方がなされるのじゃないか。したがって、私ども若干心配しているのは、少しその記事がゆがめられている点はないだろうか、全部が全部じゃありませんが、一部非常に過大に書かれているところがないだろうかというようなことをちょっと心配しているわけでございます。そういう意味でもう少し客観的に見るために、例えばアメリカ日本技術をオフィシャルにどう見ているかというようなことは大変参考になると思うのでございます。  実はお手元にお配りしたかと思いますが、「日本先端技術の国際的位置」という表題で講演をいたしましたのが東京談話室からプリントになって出ております。実はその二ページあたりのところをちょっとごらんになりますと、具体的な比較論としましてアメリカの商務省が一九八三年二月に出版しております報告書の引用が出ております。表題は「米国のハイテクノロジー産業における競争力についてのアセスメント」ということになっております。四段目にございますように幾つかの例が挙がっておるわけですが、飛行機はどうか。これは実は日本はもう名前も出てこない程度でございまして、多少ヨーロッパの飛行機、例えばエアバス等を対抗意識として挙げているという程度でございます。  それからスペース、これにつきましては、フランスがアリアンロケットを国際協力開発しておるわけでございますが、アメリカ側から見れば、これはもう二十年も前の技術をやっているなという印象のようでございまして、日本もぼつぼつ研究しておるからいずれはという感じで報告書に載っておるのでございます。  そこで、きょう申し上げたいコンピューターでございますが、コンピューターにつきましては、ハードウェアもソフトウェアも、つまり電算機本体も、それから電算機をどう使うかというような問題も含めましてアメリカは優位に立っているという見方をしております。ただそのギャップは縮まっておるということでございまして、特に日本とのギャップが縮まっておるというように書いてございます。特に大型の計算機本体につきましては日本の製品はよくなっておりますし、新しいディスク、円盤のような形をした記憶装置が使われるようになっておりますけれども、そういったものの勉強をよくしておるということが書いてございます。  それから半導体でございますが、これは計算機の一番心臓部に当たる大事なものでございますが、ある一部の製品については日本は非常に強くなっておると、しかし依然としてアメリカはその他の部門、大部分の分野においてまだ力を持っているように書いてあるわけでございます。  それから光ファイバーが出ておりますが、光ファイバーというのは、これを通信に使ったり、あるいは計測制御なんかに使ったり、これからの期待が非常に大きい分でございますが、これにつきましては光を出す部分、それから伝える部分、それから受ける部分と、こう三つに分けて議論しておるのですが、光を出す部分については、その周辺機器を含めて日本の力が非常に強いんだということが述べてございます。  それから、今マスコミをにぎわしておりますバイオテクノロジーでございますが、これについては、バイオテクノロジーの基本的な問題でございます遺伝子をある一部分切り取って、そこへ別の遺伝子を組み入れるというような、そういう組みかえDNAの技術というものについてはアメリカは大変リードをしておるし、細胞培養技術等もアメリカは進んでおると、こういうように言っております。ただ、アメリカが心配しておりますのは、日本が持っておる発酵の技術でございまして、これはみそ、しょうゆの類から日本の発酵技術というものは非常に進んできているわけでございます。そういう技術を背景にして新しいバイオテクノロジーがこの分野に溶け込んだような形で日本が強くなるんじゃないだろうかということを心配しておるわけでございます。  あと医薬品は飛ばしまして、四ページあたりにはロボッティクス、つまりロボット技術が書いてございます。これにつきましては、とにかく工業用のロボットは日本が圧倒的に強いんだというように言っておりますが、ただ、この報告におきましては比較的日本の優位を高く評価しておりますけれども、実際に最近アメリカに行った方の話などを伺いますと、ロボット自体は日本のロボットを買っても、それをどう使うかということについてはアメリカは非常に熱心だし、これについては相当の力があるというように私は話を聞いておるわけでございます。  ちょっとくどく若干御説明を申し上げましたけれども、そんなようなわけで、アメリカ日本に対して一部の分野については若干警戒的である、しかし、まだまだアメリカが強い部分がたくさんあるんだという見方をしているわけです。  一まとめにいたしまして、私が日本技術をどう評価しているかということをつけ加えさしていただきますと、日本技術は大量生産技術において世界に誇るものがあると、これは一種の大きな技術革新をもたらした根源であるというように考えております。そしてそれを支えておるものは高度の品質管理であり、そして工程管理を極度に合理化することによって生産性を向上しておるというように見られるかと思います。したがいまして、大量生産をされるものについては日本技術は非常に強いんだけれども、比較的少量の生産しかできない、つまり、余り売れないようなものについてはどうも日本はそんなに強い力を持っているとは思われないのでございます。  さて、こういったことを背景にしまして日本の大量生産されたものが世界各地で非常に売れるようになったわけでございます。これは一つは、日本の消費者の目というものが非常に厳しいということがこういう結果を生んだのではなかろうか。つまり、メーカー側から見れば、消費者の目が厳しければ消費者の要求にこたえてより高度の技術でよりいい物をつくっていかなきゃならない、こういうことになろうかと思います。それから、一つのこれは日本的なものとして、非常に発注をする人が強いということでございます。例えば、中 間原料をある会社に納めようとした場合に、買う会社の方は非常に厳しい仕様を言いまして納入する会社の競争を促す、そういうことが極めて厳しく日本では行われておるというような背景があろうかと思います。そういうような背景の中で日本のいわゆる民需産業というものが育っておりますから、これはいろんな開放をいたしましても、日本に物を売り込む側から見ると大変厳しい状態ではないだろうかというように思うのでございます。  特にアメリカ技術は、総体的に見ますと、全部を一まとめにして見ますと、非常に強大な技術力を持っておるわけでございますが、その強大な技術力の相当の部分が国防省だとかNASAの技術発展させるために費やされているというように私は見ております。例えば、ことし審議されております一九八六年のアメリカの予算等を見ますと、十兆円に近い金が国防省とNASAに回っておるわけでございまして、これは日本の民間が使っているお金の倍でございます。ということは、それを消化するために大変なマンパワーが要るということでございまして、大勢の技術者がそちらに引きつけられる、特にそういうところの仕事は、何か非常に高性能のものをお金に構わずつくらしてもらえるということもございますので、そちらに引きずられる。したがって、ごく地味な高いものをつくったら売れないよというような民需産業に若干技術的な問題が起こっているのではないだろうかというように私は推察をしておるわけでございます。したがいまして、大きな日本の貿易の黒字というものはそう容易に解決できないんじゃないだろうかというように技術的には見られると私は思うのでございます。  さて、しかしそんなことでは済まないわけでございますから、技術者もそういう国際的ないろいろな摩擦を緩和するために努力をしていかなきゃならない。そのために二つをちょっと考えておるわけです。  一つは、やはり友好関係を維持するために国際交流というものができるだけスムーズにいくように仕組みも考え、若干お金も出していくということでございます。これはMITから日本電子技術総合研究所に留学しておりましたある女性の研究員が私に申しましたんですが、MITでは九十人の日本人スタッフが働いている、そのうち九名は教授のような非常にハイレベルの方である、電総研に来たアメリカ人が果たして一人としてハイレベルにいるだろうか、これはアンバランスじゃないだろうかと。その後で彼女が言うには、非常にいい二人の友達がいた場合に、ある日Aという人がBという人に何か贈り物をする、今度はそのBという人がその後で、普通だったら同じような額の物をお返しするのが当然じゃないのと、もしそれをしなかったら、Aという人とBという人の間には、そこに何かやはりわだかまりができるんじゃないのというような意味のことを言っておりました。これは大変正直な意見ではないだろうかと。そういうことを考えますと、技術屋としても個別的なつき合いを含めて何らか考えることが多いんではないだろうかと思うわけでございます。特に、人材交流というようなことにつきましては国としても大いに考えていただかなければならないと思うのでございます。  もう一つの問題は、外に輸出するだけでなくて、何か内需拡大ということをやっていかなきゃならないと思うんですが、技術屋仲間でこういった問題もしばしば議論をしております。その結果を、大変格好よく言っておりますが、例えばフローからストックの時代が来ているんじゃないか、あるいはハードからソフトに頭を転換しなきゃいけないというようなことを言っております。かみ砕いて申しますと、どうも消費財ばかりやっているようなことではぐあいが悪いので、長い世代にわたって財産として残るようなもの、そうでなくてもかなり長くもつようなものに頭を切りかえたらどうなんだろうかと。そうすると、そういうものを建設するためにいろいろな技術を育てていかなければいけないということになります。  具体的な例で申しますと、今NTTがINS構想というものを出しております。これは非常に新しい通信の仕組みを全国的につくろうという非常に意欲的なプランだと思うんですけれども、こういうものが完成して、もし単位当たりの通信料の値段が安くなるとすれば、それを使っていろいろな仕事ができますし、個人も大いにそういうものを使うようになるでしょう。ということは、それを中心に非常にいろいろな回転が起こるわけですね。経済展開が非常に速く行われる可能性がある。単に光ファイバーをつくる技術だけがその恩恵を受けるというわけではないと思うんです。  ただ問題は、こういうINSという新しい通信網をいかに安くつくるか、つまり、通信をする費用を安くするためにINSという情報網をどうやってつくるか、あるいはNTTの競争会社がいかに安くそれに対抗して仕組みをつくり上げるかというようなところに問題があろうかと思います。つまり、技術にゆだねられる部分が非常に多いと、こういうように考えるのでございます。  同時に、今私どもが議論しているものの中にメンテナンス技術ということがございます。例えば、橋をつくっても絶えず塗っていかなきゃならない、ペンキを塗るための値段というものは大変なものでございます。高速の鉄道を敷きましても、バラストを機械でレールの下に押し込めるというようなそういう労働集約的な仕事がまだ残っておりますが、そういうものがなくても済むような鉄道の敷き方はないだろうかと、そういうようなのが一つの例でございます。事実そういう研究は今行われているわけですし、一部実用化されているわけですが、そういうものに代表されるようにメンテナンスを少なくする、あるいはメンテナンスを安くするというそういう技術を今後大いに開発していかなければいけないだろうと思います。もちろん、電算機のようなハードのものをつくるということだけじゃなくて、それをどう使うかという問題、あるいは電算機をつくるにしても頭脳的な作業が非常にたくさん含まれますから、そういうところを積み上げた財産として将来に残していかなきゃならない、これがハードからソフト志向と、そういう表現になるわけですが、御案内のとおり、日本ソフトウェアが非常に弱いわけでございます。そういうことを考えますと、これからソフト発展のために国民的な努力が必要であろうかと思うのでございます。  こういう状況に今来ておるわけでございますが、もう一つ非常にメンタルなことがあるかと思うのです。私ども、また時に応じましてアメリカ人だとかあるいはヨーロッパの人と会うことがございますが、時々びっくりするような発言を聞くのでございます。例えばヨーロッパへ行きますと、非常に有名な会社の社長が、日本はかつて自分のところのカメラをまねしてとうとう市場を乗っ取ったというようなこと言ったり、あるいは日本のロボットは、今少なくとも工業用のロボットというのは非常に進歩しておりますが、その発明者などは、日本アメリカ開発されたロボットを模倣したというようなことを、我々の方から見ますとびっくりするような表現でおっしゃるわけでございます。そういうようなことを考えますと、やはり日本技術にまだ反省すべき点が多々あるわけでございまして、特にその一つは、先ほども申しましたように、切り花のような非常に見事に咲いているけれども根がないというような技術では困るわけでございます。やはり種をまいて、それが育ってくるというような技術にしなければ本物ではない。外から見ますと、おれたちに倣ってうまくやりやがったなあというような感じになってしまう。よく借り物技術というようなことも言われたり、あるいは生むのは下手だけれども育てるのはばかに上手だなあとか皮肉を言われるわけでございます。  その辺、資料の番号もよく打たずに大変申しわけなかったんですけれども、お手元に何枚か行っておりますでしょうか。例えばノーベル賞の数なんかを見ますと、日本は大変少ないわけでございます。フィールズ賞という数学の賞なんかも大変 少ない、情けない状態でございます。  それから、表の2というのをごらんになりますと、研究論文の収録数としてSCIというものに載りました数なんかを見ますと、米国だけではなくイギリス、ソ連、西独に劣っている。化学の分野だけで議論いたしますと、CASという、これはコンピューターにも入っている非常な蓄積ですが、それに記載されたものだけ見ますと三位になっておりますが、いずれにしてもどうももう少し日本は基礎分野において世界的な貢献があっていいんじゃなかろうか、その辺が弱い。  それから、表の3あたりをごらんになりますと、表の3には技術貿易の収支が載っております。例えば五十八年、一番左側の欄の一番下、五十八年度の新規の技術輸出は七百四十九億円という数字になっておりますが、これは輸入額に比べてかなり大きいわけで、一・七七という数字になっている。これだけ見ますと、日本は新しい技術輸出をする、あるいは新しく技術輸入をするという分だけで議論しますと、かなり日本技術を輸出する国になってきたわけでございます。しかし、従来までのものを加算いたしますと、従来大変たくさんの技術を買っておりますので、その右にありますようにその比が〇・八六というような数字が上がっております。一になりますと貿易の収支がちょうど同じだということでございまして、これが一より小さいということはまだ輸入が多いということです。しかし、これだけ見ますと大体一に近いので問題はないように思われますが、その右をごらんになりますと、これは対米、アメリカを対象にして技術収支をとってみますと、今、比で言いました新しいものをとっても〇・三四、古いものを合わせますと〇・二八にしかすぎないのでございます。ヨーロッパをとりましてもこの値は非常に小さい値になるわけです。ということは、日本技術は大変派手に見えるけれども技術輸入に依存しているものがいまだにあると。では、おかしいじゃないか、なぜ新規のものは輸出が多くなっているのという御疑念も出るかと思いますが、これはその分ヨーロッパアメリカを除いた国に技術が輸出されているということでございます。先進国から技術を輸入して発展途上国にその技術を出しておるというのが日本の姿であろうというように言えるかと思います。  もう一つ、ちょっと次のページに四つほど表だとか図が載っておるのをごらんいただきますと、図の1、一番左の上のところにちょっと見にくいかもしれませんが、「我が国の技術水準」というのが載っております。これは企業の方に日本技術水準をどう思うかという質問をした答えでございます。基礎研究についてどう思うかと、こう問いますと、何と驚いたことに八六・八%の人はほかの国に劣っていると、〇・八%の人だけがほかの国より優位にあるというように答えられたのでございます。一方、開発という点で同じような質問をいたしますと、六三・五%の人が優位に立っておると答え、そして同等というものを含めまして九九・二%、つまり先ほど言いました〇・八%の人が劣っていると答えたのでございます。これは大変対象的なおもしろい結果だと思うんでございますが、とにかく開発には大変自信を持っている。にもかかわらず基礎研究にはてんで自信がないというのが日本技術者の見方でございます。  そういう状況でございますので、これから政府もその責任を担って少しでもこの状況を改善する必要があるんじゃないかというように思うわけでございます。特に、新製品として出すまでに開発作業をやるわけですが、その開発作業自体は大部分の場合民間で行われます。民間で勉強する部分、民間がやらなければならない部分についてはその責めを民間は果たしているわけです。しかし、基礎研究というようなものはどっちかといいますと民間企業ではなかなかやりにくい分野でございます。何となれば、基礎研究をやり上げましても、その成果というものは利潤に直接つながる機会が少ないわけでございまして、それどころか、基礎研究の場合は一般に邦文の形で公開されますから、Aという社が幾らお金をかけて基礎研究いたしましても、その効果というものはB社、C社にも同じように使われると、極端に言いますとそういうことになるわけです。ですから利潤につながらない。そういう意味で当然この基礎研究は官庁に責任のある分野であろうというように感ずるわけでございます。  そういうように見ますと実は大変情けない状態になっているわけでございまして、今八六年度の米国議会が審議している予算で申し上げますと実に七七・一億ドル、約二兆円、もうちょっと正確に言いますと一・九兆円に近いものが基礎研究のために計上されております。日本は御案内のとおり、科学技術予算全部合わしても一・五兆円とか一・六兆円、そのオーダーでございますから、それ以上の金を基礎研究につぎ込んでおる。これは大変な違いでございます。ちなみに日本の基礎研究はどのくらい政府によって支持されているかということを計算しますと、これはちょっと難しいのでございますが、まあアメリカの四分の一あるいは場合によっては五分の一程度でございます。ちょっと同じように計算するのは難しいのではっきりは申し上げられませんけれども、大体四分の一ないし五分の一しか日本の政府は基礎研究に投下していないと私は思うのでございます。  それから、時間が過ぎましたので少し急いで申し上げますが、例えば基礎研究の結果いろいろなデータが出ますけれども、これを集約して、そしてこれを使う人にいかに使いやすい形で情報として流すかということが今非常に問題になっておるわけですが、そういった仕組みが外国に比べて日本は大変劣っておる。あるいは材料試験センターというようなものも日本は十分ございません。そういう研究のインフラストラクチャーとも言うべき部分が日本は非常に不足しているというように思います。  それから、こういった部分でもう少し具体的な問題といたしまして、都道府県だとか国はいろんな研究所を持っておるわけですから、こういったものをもう少し有効に使えないかというお話がよく出てまいります。これにつきまして実は問題が多々あるんでございまして、一言申し上げますと、どうも例えば国の研究所の役割論というものが十分公開の席上でやられていない。これは行革審等でも議論が今行われているようでございますが、もう少し公開された形で十分討論をする必要がある。と申しますのは、国の研究所はどちらかといいますと、行政目的を遂行するだけのためにつくられておるわけです。例えば通産省に属する研究所で申しますと、じゃ行政目的とは何ぞやというようなふうに考えますと、標準の維持だとかあるいは地質調査だとかというようなものを実施する、これはもう当然でございます。それから外国といろいろおつき合いしなきゃいけない、発展途上国を援助しなきゃいけない、技術的にいろいろ援助しなきゃいけない、あるいは先進国とも研究協力をしてお互いにいろんなメリットを享受していかなきゃならない、そういうような目的でこの研究所は貢献をしていただかなければなりません。それからまた、国としてはこういう問題に非常にお金がかかるし、リスクが多くて民間に任せておいてはできないような分野については、ぜひ民間にお金を回しても大きな計画を立てていかなければなりませんが、そういったものの面倒を見るのはだれがやるかと申しますと、国の研究機関がいわば幹事になって世話をしていかなきゃならない、そういうようなこともございます。あるいは中小企業がいろいろ新しい技術展開におくれをとるというようなことを心配しておりまして、それなりに努力はされておるわけですが、そのままほうっておきますと技術発展に立ちおくれてしまう。そういった場合に国の研究所を活用して、技術指導というふうな形でもよろしいし、共同研究というようなものでもぜひ国の研究所に貢献をしてもらわなければならないということになろうかと思います。  ただ、そういうようないろいろな国の研究の行政目的にかなう仕事のほかに、今外から期待されているものは基礎研究をしっかりやってくれと、 こういうことでございます。実は従来までの国の研究所、私どもが若いころあるいは第一線で活躍していたころの仕事を思い起こしてみますと、アメリカなりヨーロッパからいち早く情報をとって、そしてそれをベースとしてある程度の仕事を仕上げますと、そうすると民間の方は喜んでその情報をとって使っていただけたわけです。しかし、今やそういうことはできないわけですね、民間の企業の研究開発力が非常に強くなりましたから、あるいは情報量がむしろ国の研究所よりもたくさんございます。ですからそういう次元では国の研究所はもう機能できないわけです。したがって、国の研究所の責任というものはもっと基礎的な仕事をしっかりやってくれと、こういうことでございます。  これは大学も同じでございます。もう少し別の言葉でいいますと、日本の大学は国立の研究所のケースが非常に多いわけでございます。有名校というのは国立の研究所の場合が多い。そうしますと、国の研究所と同じようないろいろな社会的な制約とか、あるいは法制的な制約とかいうようなものがございます。これを若干でも緩めるために努力が積まれてはおるんでございますが、もう一段と努力が必要ではなかろうかと、こういうように感ずるわけでございます。  時間がなくなりましたのでこれでやめますけれども、実は日本もうかうかしておられません。アメリカは物すごい勢いで今研究開発の努力を始めました。先ほども申しましたが、審議中の予算に盛ってあります研究開発費は、二百五十円のレートで換算しますと大体十四兆近い金が研究開発費として計上されておる。そうすると日本の九倍でございます。そういう状態で、異常とも思われるほどにこの研究開発に力を入れているアメリカに置いてきぼりを食わないようにするためには、日本はこれからまた格段の努力が必要ではないか。せっかくいいところまで来たんですけれども、これからまた追い抜かれて引き離されてしまわないように努力が必要ではないかと、こういうように思うわけでございます。  どうも時間を超過いたしましたけれども、一応このくらいでやめておきます。
  15. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で石坂参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  16. 山田譲

    ○山田譲君 一つ現実的な素朴な質問で申しわけないんですけれども、この技術輸出というのは内容がどういうことなのか、ちょっとお伺いしたいと思うのです。  もう一つは、先生おっしゃったように、基礎的な研究が非常におくれているということでありますけれども、それと同時に私は、小学校から大学までの、今教育臨調でもいろいろやっているようではありますけれども、日本教育制度そのものにやっぱり問題がありはしないか、そういうことを考えるんですが、何かそれについての先生のお考えはいかがでしょうか。その二つだけでございます。
  17. 石坂誠一

    参考人(石坂誠一君) 技術輸出について申し上げますと、最も大きいものはプラントを輸出するときにそれに技術がついていくということでございます。いろいろなノーハウがプラント等と一緒についていく。ですから、鉄鋼だとかあるいはセメントのプラントですね、そういうものによって海外に輸出されている額が非常に多いということでございます。  ただ、最近は日本の民間会社と外国の民間会社との交流が非常に盛んになっておりますから、こちらの技術を一部向こうが採用し、あるいは向こうの技術をこちらも入れるというようなそういう交流の仕方もございます。そういうものは非常に千差万別でございまして、一口にはちょっと言えないわけですが、かなり高度のものまで、例えば昔でいいますと自動車のノークラッチというのがございますね、そういう機構なんというのは向こうから入っておりますし、最近は、具体的には私ここで例としていい例を申し上げられないのですが、自動車をつくる技術の一部分もアメリカに出ているというように聞いております。  それから第二点でございますが、教育制度の問題は、この基礎研究の向上のために密接な関連があるというように理解をしております。と申しますのは、基礎研究を本当に濶達に実績を上げていくに適した年齢というのがある程度あるんではないかという議論がございまして、そういった意味で考えてみますと、例えば数学者で非常な貢献をした例えばフランス人あたりですと、もう二十代でいい仕事をしておりますですね。そういった意味で考えますと、世の中の動きが非常に早いということもございまして、本当に若い人の力というものに非常に期待がかかっておる。そういう意味からいいますと、ちょうど大学院からドクターを取ってしばらくの間というところに非常に大きく期待したいということを今度はまた別の面から言いますと、小学校からそういうスペシャリストの教育というものの何か理想の形態があるかなというような感じがございます。ただ、それだけではございませんので、もう一つの問題は日本人の評価の仕方、つまり、こういうことはすばらしいことだと考える考え方に若干日本的なものがあるんじゃないだろうかというような気がするわけです。例えばヨーロッパ等へ参りますと、人が何も手をつけないようなことを自分が言い出して、そして周りがなるほどというように感じた場合に、初めて言い出した人についての評価は非常に高いわけでございますね。それが何も製品につながったりお金につながったりしなくても、人よりも早く新しいアイデアを発表したということに価値があるように見ております。日本はどうも残念ながら、例えばノーベル賞をもらった方については非常に尊敬の念が与えられますが、これはノーベル賞を取られた方の仕事についてではなくて、ノーベル賞をもらったというそういう非常に具体的なことに対して評価がされているように思うんでございます。そこがどうも向こう側、つまりアメリカとかヨーロッパから見ますと日本人が非常に奇異に見られている節があるわけでして、この辺も一つ教育の一環としてもあるいは社会の勉強の一環としても考えてみる必要があろうかというように考えるわけでございます。
  18. 山内一郎

    ○山内一郎君 基礎研究が非常におくれているわけでございますけれども、まず第一に挙げられたのは予算が少ないということですね。しかし予算をふやしても、何か日本とほかの外国との研究体制といいますか、さかのぼると学校の教育から始まると思うんですが、フランス等は非常に自由開発的な教育をするというふうに聞いておりますけれども、そういうような点とか、それから国立大学、そこでもっと研究させたらどうかというお考えですけれども、そういうことだけで追っつくのかどうかというような点が心配されるわけなんです。例えば電電公社は、いわゆる最後の図面の産官ですか、産官の非常な共同研究の成果があったというふうに今までの成果は考えられますけれども、いろいろな点からいって、予算以外にどういう要素があるかということをもう一回最後にひとつかいつまんで御説明をいただきたいと思うわけでございます。
  19. 石坂誠一

    参考人(石坂誠一君) 御指摘のとおり、予算が幾らございましても、その金を有効に使わなければ何にもならないわけでございます。有効に使えないんじゃないかという意見も一部ございます。しかし私は必ずしもそう思っておりません。先ほど申しましたように、日本が基礎研究について欧米に立ちおくれた、これは社会の評価にも一因があるというようなことを申し上げましたが、もう一つ過去に立ち返って考えてみますと、日本の西欧化というのは、一言で言いますと明治以来でございます。ですから、たかだか百年ちょっとしかたっておりません。アメリカは建国二百年祭というのをもう大分前にやりましたですね。アメリカが非常に参考になりますが、アメリカは第二次世 界大戦の終戦後非常に反省をいたしまして、第二次世界大戦で原子爆弾を使ったわけですが、あれの基本的な原理にしても、それからいろいろレーダーなんというものの基本的な原理にしても、どっちかというと皆ヨーロッパから来たものであると。そういうように考えますと、アメリカは将来大いに基礎研究をしっかりやらないと本物にならないということに気がつきまして、一九五〇年代の初めにNSF、ナショナル・サイエンス・ファンデーションと言っておりますが、国家科学財団というものをつくって基礎研究の援助を盛んにやり出したわけですね。それからアメリカの基礎研究というのは私は目に見えるように強くなったと思います。もちろんそれ以外に、いろんな難民がアメリカに流れ込みまして、その中にすばらしい科学者がいたというようなことも一因であろうと思います。そういった歴史的な事実を見ますと、日本もまだ若いんですからこれからだと思うんですね。日本はもう少し目を海外に開いて外国の若い優秀な研究者がどんどん入ってこれるように門戸を開きますと、アメリカと同じように、基礎から開発までバランスのとれた研究開発ができるようになるに違いない、まだそこまで日本は年をとっていないのだと、非常にまだ子供なんだというように私は考えております。  ただ、非常に抽象的に申し上げましたのですが、もう少し具体的に申しますと、先ほど申しましたように、例えば電総研が外国の人をちっとも入れてくれないじゃないかと言われないように具体的な仕組みを変えていただくとか、あるいはそのために必要な予算、これは必ずしも国の予算ということを私は申し上げているわけではございません。国のお金をそこに回すことができないか、国というのは政府という意味ではございません、国全体のお金をそこに回すことができないかというのが一つのポイントでございます。  それから、だんだん専門的な話になってしまいますけれども、日本でなぜいい研究が実っていかないかということの一つに、いいテーマが与えられないということがあるかと思うんです。研究者自体は私はかなり能力を持っていると思うんです。というのは、日本人は海外に行って非常にいい仕事をしてくるんですね。それが日本に帰るといろんな制約のもとに仕事ができなくなっちゃう。これはいかにもおかしいわけでございますが、どうもテーマをうまく与えていないんじゃないだろうか。私もそういう任にあったので大変反省しているわけですけれども、その辺に目を向けて、若い人といわば管理の職にある人が十分話し合うと糸口があるんではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
  20. 山内一郎

    ○山内一郎君 今、優秀な人はいるけれどもテーマをうまく与えないんじゃないかというお話だったのですが、これはだれが与えるようにするのですか。やっぱり与えるという人が重要な場所にいないといけないとか、せっかくいい人を育つことができないという、そっちの方の教育も必要なんですね。その点はどうなんですか。
  21. 石坂誠一

    参考人(石坂誠一君) 端的に申しますと、基礎研究というのは、これは資料を持ってきたのですが、時間がなくてきょうは御説明できませんでしたが、大学がやはり一番大きなソースになるわけでございます。大学で命題を与えるのは教授ですね。ですから教授自体が、能力を持った方もたくさんおられるのでしょうけれども、みんなが納得するような方向でいいテーマを与えられ、それぞれが競争をしていただくということになろうかと思います。
  22. 吉川春子

    ○吉川春子君 私、一点だけお伺いいたします。  基礎的な研究が非常に不足しているということで抜本的な強化をしなければならない、私どももそのように強く思うんですが、その際に軍事技術開発と研究、そしてその利用というような問題があると思うんですけれども、世界の研究機関の現状は今四分の一が軍事研究開発、そして研究者の四分の一も大体そういうところで研究しているというのが私どもの調査の結果ですが、軍事技術として利用するということ、そして軍備の増強、戦争と技術の進歩、こういうような問題について参考人はどうお考えになるでしょうか。  「産業時評」に書かれました「研究開発への投資」という文章を読ませていただきましたら、そこにやはり製造業は日本が生存する糧を得る重要な手段であるということと、その技術もかなり向上している、そこで海外ともさまざまな面で友好関係をより深めるとともに、国内の需要を高める努力が必要であるとお書きになっていて、非常に重要だと思うんです。そういう点で平和という問題が、どうしても各国との友好関係ということであれば各国との平和ということは欠かせない前提と思いますが、現実としてはかなり軍事技術開発研究という点が実際に行われている、それに伴って戦争というようなこととの絡みも出てくると思うんですけれども、その辺の参考人のお考えを伺いたいと思うんです。
  23. 石坂誠一

    参考人(石坂誠一君) 私さっきも申しましたとおり、とにかく十兆円近い金が軍事研究という名目において国から出されようとしている、今審議中ですから正確に言えば出されようとしているということは、人類にとって非常に大きな問題ではないだろうかと思います。確かに軍事技術でいろいろ技術開発されまして、その後民間に使われるようなものもたくさん出てまいります。早い話が旅客機のようなものは軍事技術から発展して育ってきたものだというように私は考えておりますが、そういうものもございます。しかし、非常に時間もかかりますね。それが民事技術になるためにはコストを下げなければいけませんし、おのずと性能につきましても目的が違いますと変えなければいけないということで、そこにやはりまた新たな投資をして、そして民事技術に直さなければいけない。そういうように考えますと、軍事技術というものに非常に力を入れるという体制というのは私は合点がいかない。これは世界全体の問題だと思うんです。必ずしも一国だけの責任に負わせてしまっては悪いのかもしれません。しかし、世界の人類全体がもう少し話し合って、特に技術屋も話し合っていくべきではないだろうかというように私は個人的に考えております。
  24. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 もう時間が余りないので一つだけお聞きしたいんですが、我が国の研究が、とりわけベーシックな研究が非常に立ちおくれているというお話、ごもっともだと思うんだけれども、外国と比べた場合に、その原因にまず我が国の大学が極めて閉鎖的である。ともすれば、産と学で共同研究やろうとすればマスコミあたりもそれは癒着だと、産学癒着というふうなことでとらえられがちである。それからまた、我が国の企業の倫理に関することかもわからないんだけれども、お互いに秘密研究、したがって重複研究が非常に多い。それが非常にまたロスしている。同時に、研究を産業スパイというような形で盗む、そういった弊害がずっと続いている。したがって、お互いの企業同士の共同研究を阻むことになっている。それからまた、一つのシーズをもって開発研究をやってもその先行した利益が極めて薄い。もう何年かたつと後発組が寄ってたかってつぶしてしまう。したがって、リスクを伴う基礎研究から応用研究、開発研究へつないでいく魅力に欠ける。こういったのが日本産業構造というか、産業の一般化じゃないだろうか。だから私は、NASAみたいにナショナルプロジェクトというものをもっと組んで、そこは国が金を入れて、組み立てなら組み立て、プラスチックならプラスチック、化学なら化学という得意分野を持つ企業がそこに共同して出てくる、それによって研究を深めてまた自分のところへ持って返る、こういったナショナルプロジェクトというものをもっと組むべきじゃないか。やっと通産省と科学技術庁に基盤整備のための組合をつくって少しの金を投下しておりますけれども、もっと具体的なプロジェクトというものを組めば案外軌を一にして企業が得意分野に人を放出して、そこから共同研究の芽が出るんじゃないかなというような気がしておるんだけれども、どんなものでしょう。
  25. 石坂誠一

    参考人(石坂誠一君) いろんなことをおっしゃ ったんですが、基礎研究と開発研究との間には大変な差があると思うんですね。基礎研究という立場をとった場合は、これは正確に定義上からいいますと、基礎研究というのは、目的を持たずに研究しようじゃないか、その研究成果というのは知識を深めると、人類全体の知識を深めるために勉強しようじゃないか、これが基礎研究という定義になっております。そういう定義からいいますと、これはもう全人類のための研究なんですね。ですから、これは民間でやるということは非常にやりにくい。一部の会社はそういうことをやらせることによって情報のアンテナをつくるという意味でやらすという、そういう考え方がございますが、それは非常に余裕のある会社でございまして、一般には大変難しい。ですから、基礎研究というものを純粋に考えますと、これはやはり大学と行政的な研究機関の一部がこれを助けて実施すべきものではないだろうかというように私は考えます。  ただそのときに、研究者の方はもちろんあるテーマについて夢中になってそこは深めていくんだと思いますけれども、しかし一応世の中のことは十分知ってもらいたいというように思います。つまり、世の中のことを知っているということは、外国に行って外国の研究者と討論すること、あるいは民間の会社の工場を訪問して会社で新しくどういう問題が起こっているかということを理解してもらうこと。だから基礎研究をやっている人もそのぐらいのことはやってもらわなきゃ困る。実はそういう点において大変今、何といいますか仕組みがうまくいっておりませんので、外国へ行って学会発表をしようと思いましても旅費がないというのが本当の実態でございまして、大学の方は何か理屈をつけて行ける方もございますが、その数はやっぱり限られておる。もう国立の研究所の職員なんというのはなかなかチャンスがない。自分の費用で外国に行くときは、そのとき休暇をとっていかないと建前上おかしいことになりますですね。あるいは国の研究費を使ってやった成果を休んで行って発表させるというのはおかしいじゃないかという議論さえ出てきまして、いろいろその対応に苦慮して、実態はそういういろんな難しいことをできるだけ有利に解釈するようにして弊害がないように努めてはおりますけれども、本質的な問題が残っておるということでございます。  それから、応用研究とかあるいはさっき言いました開発に関しましては、これはやはり産学官ということを非常に強く認識してやっていったらいいんではないだろうか。これは、例えば産業界である目的を決めまして、こういう研究をしないと困るという場合に、自分の中でやれることと、あるいは国の研究所でやれることと、大学の研究所にお願いできることと、一つの問題をとらえましても必ずできるわけですね。ですから、そういった意味での産学官協力というものはあり得るんじゃないだろうかというように考えております。その場合に、お互いに信用することが大切でございまして、さっき御指摘のように、どうも大学の先生に問題を与えると、A社が与えるとB社に漏れていってしまうということを非常に心配される。あるいは国に問題をお願いしようとしますと、国の研究者から別の会社に情報が流れてしまうというようなことを心配される方もありまして、若干ぎくしゃくしているのがございますけれども、しかし、本質的にはよく話し合ってやれば効果は上がるし、外国では日本はその辺は非常にうまくいっているというようにさえ見ておるんじゃないかと思います。  さて、最後のナショナルプロジェクト、大きなプロジェクトということを一つのてこにしたらどうだという御意見は二、三の方から出ております。ただ問題は、それではどういうプロジェクトがいいかということがございます。アメリカがやりましたように、宇宙開発というような非常に大きなテーマでございますと、そこに含まれるものは巨大なボリュームを持っておりますから、いろんな関連の方がそこに関与することができる。しかし、中途半端な計画でございますと、ごく一部の企業とある一部の先生方だけにしかそれに関与できないということもございます。そういうふうになりますと、現在やっております通産省の大型プロジェクトのようなものと余り大差ない。ですから、その辺はよく討論しながら問題を詰めていく必要があろうかと思っております。
  26. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 以上で石坂参考人に対する質疑は終わりました。  石坂参考人には、お忙しい中を本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。     ─────────────
  27. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 次に、総合研究開発機構理事長下河辺淳君から意見を聴取いたします。  この際、下河辺参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。本日は、技術革新情報化社会対応につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず三十分程度意見をお述べいただき、その後三十分程度委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  それでは、下河辺参考人にお願いいたしたいと存じます。下河辺参考人
  28. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 御紹介いただきました下河辺でございます。  委員長より御丁重なごあいさつをいただいて恐縮でございます。  私、きょういただきました技術革新情報化経済社会についてということで御説明申し上げることになりましたが、私どもの総合研究開発機構におきましてもこのテーマについて若干研究をしておりますので、今までの研究の過程などを通じまして、まだ十分結論を得ておりませんけれども、私の個人的な意見として申し上げさせていただきたいと思います。  まず最初に、情報化ということを特に中心にしてというお話をいただきましたが、情報化という日本語が今日では非常に使われ方が多種多様でありまして、情報化という言葉を通じて非常にたくさんないろんなことを言うようなことになっておりますので、私ども最近では、特に厳密にお話を申し上げるときは、情報化という言葉を極力使わないことにしております。例えば事務所の情報化とか家庭の情報化というようなことを言いますときに、その情報化とは何を意味しているのかということは必ずしも明快ではありません。そして経済を議論するときでも、情報化というのは往々にしてコンピューターが入ってくる、つまりコンピュータリゼーションのことをおっしゃっている方もいっぱいいます。しかし、インフォメーションソサエティーという意味情報化ということを言う方もいらっしゃるわけでありまして、意味が非常に違うと思っております。  したがって、きょうはまず最初に申し上げたいと思いますのは、情報化に関連するお話ではあるのですけれども、厳密に言えばマイクロエレクトロニクス発展することに伴う影響というようなことが今日非常に大きな問題であるということを申し上げたいと思うわけであります。  明らかに一九五〇年以降、マイクロエレクトロニクスに関しますいろいろな技術展開してまいりまして、今日、恐らく世界的な規模でマイクロエレクトロニクス発展影響が出てきていることは御承知のとおりであります。そして、このことを私たちは少し大きく評価しようと思い始めています。それは、十八世紀から十九世紀にかけてイギリスを中心として始まった産業革命というものが、二十世紀の世界というものを特色づけているということは御承知のとおりであります。そし てその産業革命は、蒸気機関車というようなものが発展してきたことに伴いながら、社会全体あるいは経済にまでその革命的な影響が出てきたのが二十世紀でありまして、社会的には資本主義の国、社会主義の国というようなこと、あるいは労使というような関係、あるいはブルーカラーとホワイトカラーというような関係、かなりいろいろなそれまでにはなかった構図を生み出したことは御承知のとおりであります。しかし、今回ここでマイクロエレクトロニクスが出てきたことによって、あるいはそれが発展することによって、次の新しい産業革命と申しますか、社会改革というものに結びつくような影響力を持っているのではなかろうかということがまず第一の私たちの関心事であります。  結論を出すのには十分なまだ検討の時間がありませんが、達観的に言えば、明らかにどうもマイクロエレクトロニクス革命と言ってもいいことに展開するのではなかろうかというのが私どもの考え方になりつつあります。これは先進国、途上国に関係なく、あるいは資本主義、社会主義の国々に関係なく、相互に意見交換を始めておりまして、想像以上にこの影響が大きいのではないかということに着目しているということがあると思います。  これは一体どういうことになるのかということになりますが、いろいろと検討している間、技術的に見ますと、コンピューターが想像以上に発展しそうであるということと、電気通信の技術が極めて進歩しそうであるということから、どうも情報というものが地球的な規模でかなり容易に交流が可能になってくるということは今まで人類にはあり得なかったことでありまして、これが世界に与える影響は極めて甚大であるということは明らかだと思います。  御承知のとおりでありますので説明するまでもありませんが、人間はかなり地球上、民族とか地域ということを基本にして、その中で生き抜いていくための技術をつくり上げてきたということが歴史でありますが、船の技術が進歩すること、あるいは鉄道、自動車の進歩によってその地域が拡大していったことは明らかでありますし、十六世紀あたりを中心としていろいろ大陸が発見されてきたという歴史もあるわけでありますが、そして今日飛行機が地球を回るようになってまいりましたが、人工衛星ができるというようなことで、しかもそういうことをさらに超えて、マイクロエレクトロニクスに伴います情報ネットワークが地球的な規模になるということはもう明らかなことではないかということで、よい面でも悪い面でも影響は極めて世界的なものになるという見方をしておりまして、これはどのような展開を示すかということは、私たちにとって極めて重要視しなければならない点ではないかと思います。  そして、そのプラスの点で考えてみますと、今先進工業国が総人口、世界の人口の中で十二億人と思っておりますが、途上国の人口が約三十五億人というバランスになっておりまして、科学技術の進歩を享受しているのは十二億人の工業国と言えないことはありませんで、三十五億人の国々は、低開発国、途上国というようなことで言われておりますように、極めて技術の恩恵に浴しがたい地域を形成しています。しかし、マイクロエレクトロニクス発展いたしますに従って事情は非常に変化するのではないかと思っております。実は、二〇〇〇年の推計をしてみますと、先進国の十二億はせいぜい十三億人ぐらいにまでしかふえませんが、現在途上国と言われている三十五億の人口は明らかに五十億に達するというような状況でありますので、人類としては、この五十億の途上国の方々が一体いかなる動機でいかなる条件のもとにいかなる豊かな生活を実現し得るのであろうかということが今や非常に大きな問題になっておりますが、それに対して今度のマイクロエレクトロニクス革命がどのように貢献し得るであろうかということがとても大きなテーマで、世界各国の研究所と提携してそういった検討をし始めているということが言えると思います。  特に、隣の中国との関係におきましても、中国の中でもさらに辺地であります中国の西の地域、皆さんで御承知のようなシルクロード地域であるとかあるいはチベットの地域であるというような地域についても、その経済発展あるいは生活の豊かさのために今までとは違ったマイクロエレクトロニクスの貢献というものへの期待が非常に高まっておるわけでありまして、何か我々としてもそういった面で貢献できないか。これまでの産業革命のシステムの中では到底考えられなかったことが実はマイクロエレクトロニクス革命のおかげで何か明るさを持ち得るのではないかというところまで来ているということでありまして、こういった動きに注目しているということをまず最初に申し上げたかったわけであります。  そういったような人類と技術というようなことにまで問題が発展してきておりまして、御承知のように、現在茨城県の筑波で科学技術博覧会を開いて関係国四十五カ国までが参加してきて、先進国あるいは途上国に関係なく、あるいは資本主義と社会主義との関係なくみんなが集まって筑波でシンポジウムを開き、こういった科学技術展開がどのように人類に貢献するかという論争を始めたということは非常に意味のあることではないかと考えておる次第であります。  ところで、この問題を日本という国について限定して考えてみますといろいろな問題があると思います。  これは少し問題が広がっていってしまいますけれども、日本高度成長期を経てかなり低い成長率で安定することを期待するというような考え方のもとでいろいろなことが考えられているということを前提にしてお話申し上げたいと思うわけでありますが、やはり科学技術の進歩に伴いまして生産の上でも生活の上でも非常に大きな変化があるに違いありません。生産の方でいえば、明らかにコンピュータリゼーションあるいはオートメーションということを通じて生産の合理化が進むということになります。これは人間である労働力とどう対比するかということはヨーロッパから非常に大きな議論として投げかけられているところでありますが、日本の場合にはもちろん問題ではあるけれども、先進諸国の中で比較いたしますと、オートメーション化、ロボット化に対して、労働力との関係は比較的緩やかな関係にあるということを言って余り間違いではないのではないかと思います。つまりオートメーション化、ロボット化が急速な失業へとつながっていないということではないかと思いますので、ヨーロッパの国々の深刻さに比べれば緩やかであります。しかもその緩やかさというものが日本経済にとっての強さになっていて、人間ではできない細かい精密な仕事をロボットにしてもらうことができる。しかもそれは人間がやるよりもかなり正確さがあり、生産コストとしても安いというようなことがいろいろ出てきておりますので、日本がつくったマイクロエレクトロニクスのいろいろな製品は世界に対しても競争力がかなり強いということが言えるのではないかと思っております。  そして家庭におきましても、世界の先進国の中でも、家庭の情報化というものは私はかなり早く展開するのではないかというふうに思っておりますが、ただ、この場合に家庭の情報化というものの中身は、私は、現在言われているものに多少否定的でありまして、もう少し違った角度で家庭の情報化が進むのではないかと思っています。一例だけ挙げれば、ホームバンキングなんて言われましても、預金が何十万円しかない家庭がどうしてホームバンキングが要るかなんというととんでもないことになりますし、どうも余り解せない提案も見受けられますので、言葉として少し慎重でないといけないと思いますが、しかし、日本はロボット化、コンピュータリゼーションというものが進むという条件が比較的ほかの国に比べて高いというふうに思っています。  そのことは、なぜそういうことが可能であるかということが議論になりますが、日本がとらわれることなくどこの国からでもすぐれた技術を導入 するということについては極めて懸命であるということが一つ進歩に対して大きな条件だと思います。ただ、得られた技術を国際的に貢献するということについては、世界の側から見れば日本は極めて消極的であるという烙印を押されているようでありますけれども、しかし、吸収することについては非常に積極性があるということが進歩へつながっていると思います。  しかし、ここで申し上げてみたいと思うことは、やはり失業との関係で余り大きな問題にならないでこの技術革新が家庭や産業に入り込める余地ができている背景それ自体が私は極めて注目すべきことではないかというふうに思っているわけであります。  一つは、過去二十年と今後の二十年というようなことで比較いたしますと、新規の労働力の供給量が過去二十年ですと千三百万人といいますか、千数百万人あったわけでありますから、高度成長でもなければこの労働力を吸収することは不可能であったと私は思いますが、しかし幸いなことにこれからの二十年というのは、新規労働力の参入が八百万人ぐらいの増加であろうというようなことから、それだけ過去よりも新規の労働力供給が小さくなるということは、その技術進歩を入れるのにプラスの条件であります。  それからもう一つ重要なことは、よいか悪いかという判断は別といたしまして、過去二十年間というものは第一次産業から一千万人に近い労働力が二次、三次産業に移転することを余儀なくされております。そしてそれも高度成長が二次、三次産業に吸収することになりましたので、余り大きな失業量にならなくて済んだということがありますが、これからの二十年を考えますと、もう既に五、六百万人になった第一次産業でありますので、私などはもうこれ以上減らす必要はないと思ったりしておりますが、もし仮に自然趨勢的に減るとしてもせいぜい百万、二百万人ということでありますから、これまでの二十年間に一千万人も減少したということではないというようなこともやはり労働力供給の減少を意味しておりますので、そういうコンピュータリゼーション、オートメーション化を入れるのに、過去二十年に比べればはるかに有利な条件にあるということがあると思います。  そして、さらにそれにつけ加えて、恐らく労働の価値観というものの変化があり、しかも制度的な変更があって、どれほどになるかわかりませんが、労働時間が短縮してくるということは趨勢であると思うわけでありまして、年間千八百時間になるのか、あるいはもっと思い切って千六百時間になるのかは論争点だと思いますけれども、しかし今までのように二千数百時間働いていたというときとは違うという意味で、そういった労働の供給の方がこれまでよりもかなり軽減するということは、技術を入れていく生産体制にとってはほかの国よりもやりやすい条件を持っているということが言えると思います。  しかし、やや困難なことになるかと思っておりますのは財政の問題でありまして、財政の需要が税制その他あるいは公債の問題等から考えて、これまでのような急増を考えることは不可能に近いということがありますので、需要としての市場が財政の面ではこれまでのような伸びはないということはむしろ問題かと思うわけであります。  それにもう一つやや特殊な問題としては、過去二十年間を見ますと、日本は進学率が非常に伸びた二十年であります。三十五年を見ておりますと、義務教育はもちろんほとんどの方が行っておられますが、高等学校進学率はまだ三、四〇%ということでありましたのが、昭和五十五年になりますと、もう高等学校進学が九五%になりまして、その上の高等教育が進学率として三〇%から四〇%というような高水準になっているということは御承知のとおりであります。この進学率が高くなったことによって、本来ならば労働力になるべきはずの人たちが四、五百万の規模で学生化したということが過去二十年であります。そのために、非常に大きな高度成長の中で、進学率が実は労働力化人口を下げているのは教育展開によるということが明らかであります。しかし、これからの二十年間は私は進学率が横ばいかあるいは少し下がるかもしれないというふうに思っておりますので、進学率の上昇に伴う影響というものはこれからなくなってしまうということが言えるのではないかというふうに思っております。そういったような背景が実は科学技術の進歩を社会が受け入れるということに当たって極めて重要な判断でありまして、こういったようなものが一体今後どういうふうになるのかということだと思います。  そこで、非常に日本がバイタリティーを感じます点が出てくる必要があるわけでありますが、社会的にいいますと、今申し上げた高度成長期教育水準を上げたということがこれからのメリットになるだろうと。つまり日本アメリカにもまさって高学歴、高知識化の国民レベルを迎えることができるということでありまして、恐らく情報化社会あるいはハイテク時代にあって、日本ぐらい一般大衆の高学歴、高知識化ということが有益であるということはほかの国に例を見ないというふうに思っておりまして、ソフトサービスということが経済の主流になって、知識というものがこれからの社会の基本になるというときに、この高学歴、高知識ということがどれほど日本資源であるかわからないというふうに私は思います。ただ、高学歴社会という言葉は、今までは非常に少数のいい大学を出た人が社会的特権として考えるときに高学歴社会と言っておりましたが、今ここではすべての人が高学歴を持った社会であるということを考えるというところに特色が出てきていて、これまでの高学歴社会という言葉と同じでは実は誤解が出るかもしれないとさえ思っておるわけであります。  その資源日本社会にどう考えられてくるかでありますが、二つ目は婦人の活力の問題でありまして、平均寿命八十歳になったということもあり、婦人の意識も変化してくるということもあり、日本におきまして婦人層がどのような活力を見せるかということが実はこの技術革新との関係では極めて重大でありまして、特にマイクロエレクトロニクスと婦人との関係というところはいろんな報告書に述べられているところでありますが、まさに注目すべきポイントであり、それに対する期待が私たちにはかなり大きいということがございます。  それからもう一つの点は、高齢者の活性化の問題でありまして、高齢化社会ということが言われてもう久しいのでありますが、どうも高齢者が非常に老化するために、老化のための補助政策というものが必要であり、そのための政策がどうも十分うまくいかないのではないかという危惧感が議論されることが非常に多うございます。そのことは私は幾ら議論されても尽きるとは思いませんし、もっともっと手厚いことが必要だと思いますが、しかしもっと基本なのは、高齢者の活性化というものをどう達成するかではないかと思うわけで、老化と高齢化とを混同しない方がよいというふうに思っておりまして、老化が非常に少ない高齢者が社会的にどれほど参加するかというところが、いずれにしても年齢の高い方がふえる社会であることは間違いありませんから、高齢者の活性化が議論であります。そしてこの高齢者が活性化するために科学技術の進歩がどう貢献し得るかということでありますが、私どもは、いろいろな技術が高齢者の人間機能の多少の鈍化を救済するということについてはいろいろな展開があり得るというふうに考えておりますので、高齢化社会において高齢者が活性化するということを考えるわけでありまして、高学歴な社会であり、婦人の活力に期待し、高齢者の活性化に期待するというそのところがもし明るいビジョンが持てるとすれば、科学技術の進歩が日本にとって極めて有益なものになるだろうというふうに思うわけであります。もし科学技術の進歩がそういったことを妨げるような条件に展開するということであれば、科学技術の進展というものが社会的には全く評価されることはできないということがあると思っておりま す。  さらに、もう一つだけ話を国際的な問題に展開さしていただきたいと思いますが、日本は御承知のように先進国入りをしたわけでありますが、人口一億二千万人で世界経済の一〇%を支配する経済大国になりましたので、その経済大国であることとの関係で少し考えなければならないことはもう言うまでもないことであります。  きょうのテーマと関連して申し上げたいと思いますのは、やはりここまできますと日本技術というものは海外に移転するということの責任があり、専門的な技術を持った労働力が海外で勤務するということがむしろ国際社会の一員として当然必要になるということでありまして、日本で得られた科学技術の進歩というものがどれだけ海外に移転し得るであろうかということを真剣に論じなければならないということが一つあると思います。  それからもう一つの問題は、逆に外国人労働力が果たして日本国内へどれだけ入り込んでくるか、あるいは日本が受け入れることがよいか悪いか、可能か不可能かということが出てくると思うわけでありまして、日本が一人当たり一万ドルのときにアジアの国々は一人当たり二、三百ドルというような地域格差がある限り、私は労働力がハイ所得の地域に移動しようと努力することは避けられないことではないかと思いますが、しかし先進諸国を見ておりますと、外国人労働力というものがなかなか難しい社会問題でもあり経済問題でもあることは十分学ぶことができるわけで、これから日本はこの問題に取り組まなければならないということであるわけであります。  そしてさらに最後に申し上げたいと思うのは、日本が先ほど申し上げたような非常に有利な環境の中で科学技術の進歩を享受して、そのために安くてよいものができて、世界の市場をますます拡大する能力ができるというビジョンが一つあり得ますけれども、しかしそのことが相手国の失業者を増大させるというようなことにつながるということがヨーロッパあるいはアメリカからも意見として出されておりますし、あるいは韓国なりASEAN諸国からも多少の心配として意見が出されていることは注目すべきでありまして、科学技術の進歩というものが日本において成功することが実は世界のいろいろな地域で失業者を増加させるとすれば、一体我々はどういうふうにそれを理解したらいいのであろうか、あるいはどのように対策を講じたらよいのであろうかということも決して今までのように無視してといいますか、余り考慮せずに市場を拡大していくということだけでは済まされない条件になってきましたので、技術の進歩というものがそういうこととの関係があることさえも議論の一つの対象ではないかというふうに思っております。  それで結論としては、私どもとしては科学技術の進歩は恐らく確実に展開して、我々が今想像することができないような状況になるであろうということを見通しながら、そのことが国内的にも国際的にも、あるいは社会に対しても個人や家庭に対してもいろんな影響を与えるということに注目した研究をぜひ進めなければいけない。しかもそれは世界各国と共同の研究をしなければいけないということで徐々に始めておりますが、まだ十分成果も得られておりませんで、説明といたしましては極めて不十分でありますけれども、与えられた時間が参りましたので、ここで報告を終わらしていただきますが、御清聴ありがとうございました。
  29. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で下河辺参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  30. 山田譲

    ○山田譲君 二つほどお伺いしたいと思うんですが、ちょっと先生のお言葉、私間違ってとったらお許しをいただきたいんですが、女性の労働者がかなり職場に進出するようになるであろう、そのことが期待されるということをおっしゃいましたけれども、どういう意味で期待されるかどうか、そこのところをひとつお伺いしたいと思うんです。  もう一つは、先ほどちょっとホームバンキングというふうな例が出てまいりましたけれども、何かほかにこれからの技術革新に伴って家庭生活が変わるということになればどの辺のところが変わるであろうか、つまり予想もできないということもおっしゃいましたけれども、ある程度予想できるところについてもしお差し支えなければお伺いしたいと、かように考えます。  以上です。
  31. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 最初期待すると申したのは、余り特に意味はありませんで、私が男性なので女性御自身がお考えいただきたいという意味で申したんですけれども、もしあえて発言さしていただくとすれば、育児後婦人が社会参加することについて日本社会は相当不自由ではないかということがありまして、私としては育児後婦人の社会参加への期待をどう持ったらよいかということが非常に大きなテーマではないかと思ったものですから、期待するというのが女性にも期待しますが、社会制度の改革にも期待したいということで申し上げたつもりでおります。  それから、ホームバンキングについては多少恐縮ですが、冷やかしぎみに申し上げたわけでありますが、今は技術が先行して開発されまして、その技術が家庭にどうやってアプライできるかということで、極端に言えば商品開発の時代でありますので、消費者の側がどうしても欲しいということにまでまとまってこない限り市場にはならないと私は思っておりますが、今私、拝見していて急速に展開しなければならないというものは、電話に絡むものは少しございますけれども、そのほかはそんなに急速には来ないんじゃないかと思っております。ただ教育に関するものだけは実はかなり需要が急ピッチに出るんじゃないかという気がいたしておりまして、特に私の関心事では、高等学校ももちろんですが、義務教育まで十分できない過疎地域が生まれてくることも事実でありまして、学校教育だけで知識社会をつくろうとしますと相当苦労が要ると思いまして、学校教育を改善しなくちゃいけないことは確かですが、学校教育ではバックアップできないものをやはり家庭の情報化として少し考えないと、どうも教育の機会均等が得られないのではないかという心配をしておりますし、それから放送大学も政府としては始められましたが、私は放送大学の方々に期待しているのは、育児中の家庭婦人を対象にするということがかなり重要になってきたと思っておりまして、農家の主婦からも時々私の方への問い合わせもあったりしまして、そういうことへ教育がやはり機能していくということは知識化社会として欠かせないことでありまして、そういうものがかえって家庭に情報化の道具として入っていく可能性があると思っておりますが、もっと基本的には、何の目的もない遊びのためにマイコンが子供の手に届いていくということは、社会的には先行していくんじゃないかと思ったりしております。
  32. 山田譲

    ○山田譲君 ありがとうございました。
  33. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 二点ほどお願いいたします。  今先生がおっしゃいました、今から日本の高齢化社会のデータを見ておりますと、高齢者の活性化というのか、高齢者の方々の仕事の分野ですね、やはりこれは国としても基盤づくりをしていかなくちゃいけない問題が、今も年金問題でやってきたんですけれども、それだけでは追っつかない問題が、これを技術の進化の中で最適なものは何か、活性化という問題、これ一つお願いしたいことと、それから、先生は外国人の労働力、非常に難しい分析をされていらっしゃいますけれども、もし日本で今後可能となればどういうふうなものから外国人の労働力というものが入り込んでくるのか、この二点お願いしたいと思います。
  34. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 高齢者については、世界各国比較をいたしました際に、日本の高齢者は世 界にまれに見るほど活性化しているということを感じます。これはちょっと発言を気をつけなきゃいけないかもしれませんが、国会でも高齢者がいっぱい活躍していらっしゃいますし、それから第一次産業でも高齢者の活躍が目立っておりまして、若い後継者をどうつくるかは問題にしても、現状としては高齢者農業と言っても過言ではないということでありまして、非常に特殊な分野だけがむしろ高齢者を拒否しているんじゃないかとさえ思うわけでありまして、そのために今までの延長線上にもかなり日本社会だけは高齢者に期待し得る面がある。特に高齢者対策が政府として先進国と比べるとおくれているだけに、高齢者の自活力というものがあると私は見ておりまして、ヨーロッパの老人保護政策が行き届いた地域の老人との比較なんかもし始めておりますけれども、なかなか日本の老人というのは元気だという前提がありまして、それに自信を得て高齢者というものがどういう分野で活躍すべきかということが一つ我々にとっても話題ですが、いろいろな点であると思います。私たちが地方の小中学校を見ながら思うことは、学校を出立ての若い優秀な先生も重要な役割を果たしますけれども、もっと高齢者が違ったゼネレーションとの間でコミュニケーションをやるという教育が実はかなり重要じゃないかと思っておりまして、社会を定年で終わった方が義務教育に何らかの形で参画するなんということさえもかなり社会的に重要ですし、高齢者の方のお仕事として決して悪くはないというような、そういったようなことを徐々に提案し続けていきたいとは思っておりますが、なかなかこういう問題ですから、御質問いただいたように、これで晴れ晴れと高齢者は大丈夫だと言えるようにはすぐにはならないと思いますけれども、努力しなきゃならぬし、これが全部老化して社会的にサービスをしなければいけないという社会であれば、長寿であることを疑問に思うことを考えなければいけないとさえ思います。  それから二番目の外国人労働力についても、これは例えば関西地域であるとか北九州地域は既にかなり国際化が進んでいるというふうに見て実態の調査も少し考えてみておりますが、先進諸国と非常に違いますのは、先進国の場合には、例外はいっぱいありますが、一般的にはダーティーワークといいますか、嫌がること、低賃金のところへ外国人労働者が入ってきておりますが、日本の場合には大学の教授から経営者の役員から、それからデザイナーから商人からダーティーワークまで、非常に奥行きのある市場に外人労働力といいますか、が入ってくるというふうに思っています。特にマイクロエレクトロニクスソフトの分野で外国人がかなり入ってくるということも考えられると思いますので、今までのいわゆる外国人労働者がダーティーワークの労働者として入ってきたという先進国の形とは大分違うのではないかと思っております。しかし、私も日本人なので同じ同業者が、優秀なのが入ってくるとどうも余り気持ちよくないということもありまして、なかなかそんなにしっくりと縦のラインで外国の方が日本で活躍なさるということがそうスムーズにいくかどうかという点は私も返答し切れませんけれども、私はそういう形でかなり入っていらっしゃるんじゃないかと思っております。
  35. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 どうもありがとうございました。
  36. 吉川春子

    ○吉川春子君 二点お伺いします。  科学技術の恩恵が及ばなかったところにもME化の恩恵は及ぼせられるんじゃないかという指摘は非常にすばらしいなというふうに思いました。  ロボットに人間のできないことをやらせられるというメリットがもちろんあるわけですけれども、参考人の座談会の「科学技術開発と新しい社会」というところの話を読ませていただきましたら、その中にロボットの事故防止ですね、例えば「ロボットの安全性というものが、一〇〇パーセント確保されるということは技術としてはありえない。歩いているロボットが突然、故障や事故を通じて狂気化したときに、人間がそれを抑えることができるか。」という問題提起をされているんですけれども、ロボットの殺人事件というようなことも日本で発生しておりまして、近藤真彦とか松田聖子とか、こういうアイドル歌手の名前を付したようなロボットが盛んに活躍していますけれども、それが一転して労働者を殺害する、そういう事故が発生した例があって、ロボット裁判が名古屋地裁でも行われているわけですが、こういう場合の、まず技術的に事故を防止しなければならないわけですけれども、起きたときの対応とか、それからその犠牲となった労働者の救済の制度とか、もしそういうようなことについて参考人の対案があれば聞かせていただきたいと思います。それが第一点です。  それから第二点は、脱税階級というようなこともこの対談の中で話し合われておりますけれども、労働者の数がふえると。それを今の御説明では、労働時間を千八百とか千六百時間に短縮してみんなで雇用を分け合うというんですか、そういう形で乗り切っていけるんだというようなお話がありましたけれども、この中でちょっと私も非常に深刻に受けとめましたのは、「失業とも半失業とも、働く意思があるのかないのかもわからないような市場のところへ、かなりたくさんの青年層が集まってくるような社会ではないか。」と、「みずから何やら職業らしきものを創造していってしまうことによって、マクロが集積されるという状態になるのではないか」、こういう指摘を参考人がなさっているわけですが、今、国会で派遣事業法が盛んに審議されているわけですが、もう終身雇用制というのは崩れて、それで派遣労働者に切りかわっていくと、そして失業ではないけれども、もう半失業のような状態で、確かに雇用は分け合うんだけれども、個々の労働者の立場として見た場合には非常に不安定な生活条件になるのではないかと、そういうようなことが雇用を分け合うという意味であるとすれば、ME化の恩恵が労働者にあるというふうには言えないのではないかと思うんですが、その辺非常に難しいと思うんですけれども、この問題についてもうちょっと具体的に御説明いただきたいと思います。
  37. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) 今の二つの御質問は、私たちの研究の中で最も基本的で、かつ答えの得られないテーマです。  実は、医学の世界でも工作機械世界でも、人間労働力のエラーと機械のエラーとどちらが許せるかというようなことがありまして、誤診というものをお医者さんがしたときに、ロボットの医者が誤診をしたときと人間の医者が誤診をしたときとどうとるかというようなことも論争点ですけれども、ちょっと結論が得られないんですね。ある人は、ロボットですと、機械のことだから仕方がないと言ってくださる方もありますけれども、機械をつくった人の責任ではないかとなってきますと複雑になってきます。それから人間の医者の誤診というものも、あんないいお医者さんが間違ったんだからやむを得ないと理解する方もいますが、人間のミスだからこそ憎しみであるということも現実社会としてあるわけですね。したがって、人間ができないセンサーをロボットがやる場合はちょっと別なんですけれども、診断というようなことになってくるとなかなか関係は複雑だと思うんです。  それから、特にロボットの故障は情緒的に言えば今おっしゃったように人間で言う狂気の問題になりますので、機械が狂気の状況にならないということは少し言い過ぎでありますから、何らかの条件と環境のもとで狂気化することは避けられないということで、その狂気をだれがどのように罰するかということになりますと、またそこでそれをオペレートしている人間というところに責任を移さないと法制的にはなかなか難しい問題にならないかということで、率直に言えば少し空回りしていると思います。そしてこういうものが行政の法律になじむのには実は、多少無責任に聞こえますけれども、現実の問題として、現実のケースが経験としてたくさん出てこないとなかなかできないというところが技術の進歩と人間との関係の複雑なところであって、そのためにまず最初に人間 の宗教心から科学技術に反対するということは世界の歴史がいつでも同じことを繰り返していると私は思うんですね。日本の場合にそういうことがなかなかありませんから、果たして技術の進歩とその辺の事故との関係をどういうふうに考えていくかということは、行政の側でもかなり深刻に受けとめなければならない問題だと思います。きょうそのくらいにしかお答えできないんですけれども、確かにロボットの狂気化の問題は私たちにとって大きな問題であります。  それから、失業、半失業ということで、派遣労働力の話なんですが、二つの側面を持っていると思うんです。つまり、そのことがすばらしいという側面とそれは困ったことだという側面を持っていると思うんです。  私はどちらかというとすばらしい側面を重要視したいと思っているわけです。それは、もしすばらしい面がなかったらこういう労働環境をやめて改善した方がよいというふうに答えは簡単になると思うんです、どうやって直すかは別といたしまして。目標としてそれはおかしいという答えが出ると思うんですけれども、こういう状況がプラスではないかと思うためにやや問題が複雑になると思うんです。  なぜプラスに私が思うかといいますと、人生五十歳のときと人生八十歳のときとの根本的な違いがあるというふうに思っているわけです。それは、人生五十歳のときは、定年制もつくり、そして安定した雇用ということが目標であり、終身雇用制が一番理想であったということは、私はそのとおりだと思うんです。ですから、学校を出たら直ちにいかなる縁故を手伝ってさえも安定した職につかなければ社会的にはどうも困ったことだというふうに烙印印を押された社会であったと思うんです。その社会のことですと今おっしゃられたことのとおりだと思うんです。しかし、人生八十歳になるときに私はちょっと考え直さなきゃならないと思っているわけです。それは、二十で成人式ということさえも私は少し疑問に思っておりまして、肉体的にはもっと早く成人化していますし、精神的にはとても二十では成人化してないんじゃないかと、まあ若手に対して失礼な言い方かもしれませんが、思っておりまして、むしろ成人式三十歳というのはどうかと思っているわけです。三十歳からでも平均寿命が八十歳というと五十年ありますので、結婚生活から職業生活からもうそれで十分ではないかと思っておりまして、そのかわり二十から三十歳の間というのは自分が何であるかを確かめるというような意味でいろんな経験をした方がよくないか。つまり、職業もいろいろやってみる、日本にも住むけれども外国にも住むというようなことをして、そして安定した自分の人生をつくるというようなことは意味があるかないか。  特に科学技術の進歩にとって二十代が非常に重要な役割を果たすんですけれども、この果たし方は従業員として定まった契約の労働力として期待することではなくて、極めて自由な環境の中で偶然その能力を発揮できる環境をつくらないと科学技術の進歩への期待が薄くなるということもありまして、ドイツでもそうですが、ヨーロッパでよく議論になるのは、若手は失業を選ぶということが出てきておりまして、若手が失業を選んで何もしないかというと決してそんなことはなくて、自分のやりたいことをすることを試みる、社会的には失業だけれども、個人としては有意義なことをするというような風潮というものも私はちょっとやはり人生八十歳の中で考えることが重要ではなかろうかと思っています。  しかもアルバイト的な、パートタイム的な労働力の賃金は決して低くはないと私は思うんです、ただ、十分な時間が確保できないかもしれませんけれども。そして学生アルバイトからの延長線上で、ある低い生活を維持することぐらいは何とかなるという青年が東京でもかなりふえてきていると思うんですね。しかし、生活の意欲はかなりぜいたくなものを持っている、物的には最低かもしれませんけれども。そういう価値観がバイタリティーにつながるとすればかなり意味があるというふうに思っている面がちょっとあるために、半失業状態が雇用から見て不健康で困ると一方的に決めつけられないでいる点だろうと思っているわけです。特に高学歴の若手の間にそういう考え方が比較的強くないかということであります。  それから、脱税階級のことを申したのはそのこととは大分別の問題でありまして、先進国がいずれもどうもアングラ経済が拡大しているというのは認めざるを得ない状況ではないかということを何かの折にちょっと申し上げたことがあるかもしれません。
  38. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) ちょっと私から一つだけ。  先ほど人口の問題にちょっと触れられたわけですが、先進国はいいですが、途上国の三十五億が五十億になる話。だから、科学技術の恩恵を受けるとか受けないとかいう問題以前に、食糧問題というのは大きな問題になってくると思うんですよ。参考人は幅広く勉強されておるからお伺いするんですが、物理的に今の耕地面積というのは、これは逆に減ってくると思うんですね、砂漠化や何かで。だから、二十一世紀の初頭までに今までの常識的な食糧生産では私はもう絶対これは無理だと思うんだね。社会的な制約は一応別にしまして、この方々が全部食べられるような数量だけの食糧を得るために、バイオ関係の科学技術の進展で二十一世紀の初頭までに飛躍的な増産ができるのか、あるいは今までの食糧とは違うものがこしらえられるか、これを参考人はいろいろ勉強されておるから、どういう感じでおられるか一言だけお答え願いたいと思います。
  39. 下河辺淳

    参考人(下河辺淳君) これは委員長の方が御専門なんで、私がお話しするのはちょっとあれですけれども、私たち思いますのは、特にアジア地域の人口増加に注日しておりまして、アジア地域の農業ということでありますが、アメリカ型の大型農業で大量生産方式をとることは、ほとんど二〇〇〇年まで不可能であるという見方をしております。特に隣の中国は四億人の農民で一億ヘクタールの農地しか持っておりません。日本は五百万人の農民で五百万ヘクタール持っておりますから、農民一人当たり一ヘクタールですけれども、中国は四億人で一億ヘクタールですから、日本の四分の一しか持ってない農民たちですから、極めて農地的には極小零細農業型のものを展開しなければならないというのが中国の農民政策の基本だろうと思うわけです。そのときに、おっしゃるように、農地志向型の農業形態からいかに脱皮するかということが最大のテーマではないかと思っておりまして、中国側からも実は、そういった農地型ではない農業とは一体どういうものであるか、日本においてもいろいろ検討してほしいという要請も聞いております。これは私たちとしては非常に大きなテーマでありまして、国際的な競争市場ではアメリカ型の大型農業にかないませんけれども、基本的なアジア型の農業の経営基盤の確立について科学技術が何らか貢献しなければならないということについては、アジアの学者の間でかなり共通したコンセンサスになったと思うんです。  ですから、私たちとしては、バイオテクノロジーという言葉はまた非常に混乱があって、私ども余り使いたくない言葉の一つですけれども、零細農業と農業生産技術との関係のところはもう少し勉強をしたいと思っておりますが、種子の話であるとかあるいはいろいろな点での新しい技術の提案は、委員長も御承知でありますが、出始めておりますので、それをいかに社会化するかということになっていこうかと思っております。
  40. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) ありがとうございました。  以上で下河辺参考人に対する質疑は終わりました。  下河辺参考人には、お忙しい中を本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表して厚くお礼を申し 上げます。ありがとうございました。  なお、本日参考人の方々から御提出いただきました参考資料等につきましては、その取り扱いを小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時四分散会