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1985-02-27 第102回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査特別委員会技術革新に伴う産業・雇用構造検討小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十七日(水曜日)    午後一時二分開会     ───────────── 昭和五十九年十二月一日国民生活経済に関する 調査特別委員長において本小委員を左のとおり指 名した。                 梶木 又三君                 関口 恵造君                 平井 卓志君                 真鍋 賢二君                 山内 一郎君                 稲村 稔夫君                 桑名 義治君                 吉川 春子君                 藤井 恒男君 同日国民生活経済に関する調査特別委員長は左 の者を小委員長に指名した。                 梶木 又三君     ─────────────    小委員の異動 十二月四日     辞任          稲村 稔夫君 十二月五日     補欠選任        山田  譲君 十二月十四日     辞任          真鍋 賢二君 十二月十七日     補欠選任        長谷川 信君 十二月二十一日     辞任          桑名 義治君 一月二十三日     補欠選任        矢原 秀男君 二月二十日     辞任         補欠選任      矢原 秀男君     高木健太郎君 二月二十五日     辞任         補欠選任      高木健太郎君     矢原 秀男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     小委員長        梶木 又三君     小委員                 関口 恵造君                 長谷川 信君                 山内 一郎君                 山田  譲君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 藤井 恒男君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    参考人        全日本電機機器        労働組合連合会        政策企画局長   阿島 征夫君        雇用促進事業団        雇用職業総合研        究所雇用開発研        究部第二研究室        室長       亀山 直幸君        横浜国立大学経        済学部教授    神代 和俊君        経済同友会労使        関係プロジェク        ト委員長        電力中央研究所        理事長      成田  浩君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○技術革新に伴う産業雇用構造等に関する件  (技術革新雇用労働及び中小企業問題について)     ─────────────
  2. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) ただいまから国民生活経済に関する調査特別委員会技術革新に伴う産業雇用構造検討小委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  技術革新に伴う産業雇用構造等に関する件の調査のため、必要に応じ参考人から意見を聴取してまいりたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等は、これを小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  5. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 技術革新に伴う産業雇用構造等に関する件を議題とし、技術革新雇用労働及び中小企業問題について参考人から意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、四名の方々に御出席いただいております。  まず、全日本電機機器労働組合連合会政策企画局長阿島征夫君から意見を聴取いたします。  この際、阿島参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、技術革新雇用労働及び中小企業問題につきまして、忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず三十分程度意見をお述べいただき、その後三十分程度委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、阿島参考人お願いいたします。阿島参考人
  6. 阿島征夫

    参考人阿島征夫君) それでは、私の方から、委員長の言われた趣旨に沿いまして、最初三十分間だけ私の意見を述べさせていただきたいと思います。  お手元資料に基づきまして述べたいと思いますので、「電機労連マイクロエレクトロニクス影響調査より」というパンフレットをちょっとおあけ願いながらお聞きいただきたいと思います。  電機労連は、こういった技術革新影響につきまして極めて昔から関心を持っておりまして、特に我々の雇用に対して、また労働の質に対してどういう影響があるか、こういうことに関してまず調査実施しようということで、五十七年の十月、もう既にかなりたっておりますけれども、こういう調査をいたしました。  まず、第一表が「マイクロエレクトロニクス機器導入状況」でございますが、電機労連傘下サンプル調査で、二百七十七事業所工場が主体でございますが、そういうところで調査をいたしましたところ、そこの表に書いてありますように、平均保有台数で見ますと、一番多い自動検査測定器で、これは一種のロボットでございますが、二十二台に上っているわけでございまして、かなり導入状況がこの表でおわかりのとおりだと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、これは五十七年十月でございますので、現段階ではさらに多くのロボットなりマイクロエレクトロニクス機器電機産業職場には入っているのではな いだろうか、こういうふうに考えているわけであります。  我々が最も関心の強かった「雇用への影響」につきまして、下の図第二表のとおりになっておりますが、我々の調査したところによりますと、このME機器によって直接雇用影響するということは、電機産業に働く電機労連組合員に限ってみますと一件もなかったわけでございます。これはまことに幸いであったと、こういうふうに我々考えております。  ただ、そこのマイクロエレクトロニクス機器導入された工程、そこにおける技能作業者数動向調査いたしますと、そこの帯グラフに書いてありますように、全体で五六・五%の工程作業者が減っておる。こういう結果が出ておりまして、特に著しいのは、業種別重電家電通信電子部品と分けておりますが、重電家電に対する影響が非常に大きい。こういうことがこの表から言えると思います。  次に、第二表の二番目の表でございますが、最初ページの一番右上の表でございますが、我々はこの家電職場を見ておりまして、特に女子比率減少ということが目立つわけでございまして、それに関しての調査もあわせて行ったわけであります。マイクロエレクトロニクス機器、いわゆる自動機器導入、拡充した場合、職場女子比率はどうなるのだろうか、こういうような調査をしましたところ、そこに表がございますように、女子比率が低くなったという職場が全体で二八・三%、家電電子部品が特に高いわけでございまして、電子部品に至っては約六割近くの工程女子社員比率低下をしている、こういうことがわかったわけでございます。  電機労連加盟大手の十三社で、さらに違う調査女子比率を調べてみましたところ、一九七〇年には十三万四千人おりました女子が、一九八二年には六万二千人に減少をしております。これは組合員ベースで、比率で見ますと、一九七〇年が女子比率三〇%でしたけれども、一九八二年には一六%へと、こういうぐあいに女子比率低下しているわけでございます。  ただ、定量的にはここではわかりませんが、女子比率が減ったといいましても、これは組合員ベースでございまして、その間パートタイマー等ラインへの導入というものが入っているということは事実でございまして、組合員ベース女子比率は少なくなっていると。それに対してどのぐらいパートタイマーがふえているかということについては、まだ今のところ調査をしている段階でございます。  次に、我々仮説を立てましたもう一つの問題は、こういった技術革新、特にME化マイクロエレクトロニクス化ライン中高年の男子がどのぐらい対応できるだろうか、こういう影響度調査をいたしました。これが三番目の表でございますが、マイクロエレクトロニクス関連機器ラインには、年代別で調べましたところ、四十歳以上の組合員はわずか二・五%しか従事していない、こういう結果が出たわけでございます。  二ページ目に移りまして、「配転実施状況」でございますが、現在のところほとんどのライン作業者が減った場合には配転実施されていると、こういう表でございます。これは、先ほど申し上げました中高年比率が少ないのはどういう意味であろうかと、こういうことから二つのことが我々考えられまして、一つは、中高年が余りいないライン作業工程ME機器導入された。もう一つは、中高年配転をされたんではないだろうか、いわゆるME機器に適応ができないだろうからという予断でもって配転実施されたんではないだろうか、こういうような考え方からこの配転実施状況調査も行ったわけでございます。  この4―1の表で見ていただきますと、ME機器導入拡充に伴う配置転換実施状況は、「非常に多かった」と「かなりあった」と「少しあった」、合わせまして五六・五%、全体で約六割弱の人員ME機器導入すると配転というような状況に直面をしている、こういうことがおわかりになろうかと思います。  4―2表は、該当する形態の配置転換があった事業所比率の問題でございますが、配転内容なんですが、事業所内職種間の配転が八〇%、他事業所から転入が四七・七%。これはマルチアンサーでございまして、トータルが一〇〇にはなりませんけれども、非常に頻度が多いのが事業所内の同職種間の配転でございますが、その次に事業所内の異職種間の配転ということが挙げられるわけであります。こういうような点から、我々後ほどお願いをしたい、いろいろな提言を申し上げたいと思います。  次に、「仕事変化」の状況でございますが、じゃマイクロエレクトロニクス機器導入されてどう作業者仕事変化したかと、こういうことでございますが、5―1表の方で、まずプログラム作成を行うロボットマイクロエレクトロニクス機器というのは、すべてコンピューターが内蔵されているものでありますから、コンピューターを動かすプログラムをつくらなければならないわけでございます。したがって、プログラム作成を行うというのが、「ほとんど行なう」、こういうのが三三・六%ということになっております。  それから、一番下の5―3の表は保守業務メンテナンスという業務でございます。いわゆるロボットのお守り、マイクロエレクトロニクス保守、こういうことも、「一部同じ人が行なっている」のと「ほとんど同じ人が行なっている」、両方合わせて五二・七%の人がメンテナンスを行わなきゃいけない、こういう状況であるわけであります。今まで十五年、十六年という技能を積み重ねて仕事をやってきた現場作業者が、こういったマイクロエレクトロニクス機器が入ることによって、そういった経験だけでは仕事ができなくなってきている、こういうことがこの「仕事変化」でおわかりではないかと思います。  最後ページに移りまして、「教育訓練実施状況」でございますが、こういうような変化に対して、じゃ教育訓練方法とまた研修方法とはどういうことでやっているのかということでございますが、まず6―1表では、大部分がOJTでございます。これはオン・ザ・ジョブ・トレーニングでございまして、仕事をしながら訓練を受ける。その次に多いのが事業所研修でございます。ただ、これも問題がございます。その次が機器メーカー研修。これはロボット機器ME機器をつくっているメーカーに直接社員を派遣して教育をしてもらう、こういうような教育でございます。  その事業所研修内容はどういうことをやっているかといいますと、かなりお粗末な状況でございまして、「必要に応じてその都度やっている」というのが七七・六%と圧倒的な頻度でございます。つまり我々としては、仕事変化が非常に大きい、配置転換が非常に多い、こういう現状ながらも教育訓練が非常にお粗末ではないだろうかと、こういう感じをこの調査から得たわけであります。  したがいまして、ここから先はこの資料には載っておりませんけれども、我々が今後運動を進めていく上に当たってやっていく政策部分内容でございますが、一つは、作業者数が六割も配転をするということは、裏返して言うと、マイクロエレクトロニクス機器を入れたことによる生産性上昇というものはすさまじいものがあるわけでございます。電機産業生産性付加価値生産性の占める労働分配率を見てみますと、この五年間毎年低下をしております。春に賃上げ、冬に一時金闘争等人件費を上げているわけでございますが、それにもかかわらず電機産業全体の労働分配率低下をしている。つまり、かなりME機器による生産性上昇ということがわかるわけでございまして、この成果配分として我々としては、一つ完全週休日制ということを要求してまいりました。で、昨年の春、大手について言えば完全週休日制という長年の念願を実現したわけでございますが、しかしながら時間短縮というものが西欧等に比べますとおくれております。西ドイツ に比べますと、年間にしまして約四百時間ほど長く電機産業は働いているわけでありまして、西欧の中では比較的労働時間の長い英国に比べましても二百時間ほど労働時間が、これは実労働時間でございますが、長いわけでございます。  それには、まず何に差があるかということを我々考えますと、一つ有給休暇の取得が一〇〇%ではないということです。西欧労働者は一〇〇%有給休暇を取得している。したがいまして、これは夏休みの大型長期化によりまして有給休暇をきっちりとろうと。それから、ことしは労働界全体として要求しておりますが、ゴールデンウイークの連休化、それから正月三日の連休化と、こういうようなことも電機労連ももちろん要求しておるわけでございますが、いわゆる成果配分として時間短縮ということをまず考えなきゃならないわけです。  それから二番目に、これは国全体にお願いをすることでございますが、政労使で具体的に対策を考える場というものをぜひつくっていただきたい。つまり、新技術をチェックをする。これは労働組合の大きな一つ仕事ではございますが、労働組合だけではなかなか解決できない次のような問題もございますので、ぜひ政労使で具体的に対策を考える場を、新技術についてはぜひつくっていただきたいと思っております。  その次に、教育訓練の問題でございますが、我々、企業に対しては、最後ページ参考資料としてA社電子学校内容が出ております。大変字が小さくて、読みづらくて申しわけございませんけれども、こういう要求をしておりまして、一部では既に実施をしている内容でございます。つまり、これまでの企業内訓練では、こうしたマイクロエレクトロニクス機器を使用するような労働者の変身ということは難しいだろうと。ほっておきますと労働者自身がスクラップ化されるおそれが十分あるわけでありまして、我々としては、これまで日本では社内教育が非常に盛んでしたけれども、そういったレベルじゃなくて、もっと根本的な全日制社内教育能力開発でないといけないのではないだろうか。  こういう観点からこの参考に載せておりますA社電子学校のようなものを要求いたしまして、A社では既に実施をして数年たっているわけでございますが、これは全日制学校でございます。いわゆる職場から労働者を離しまして、専門的に電子技能を身につける、いわゆるエレクトロニクスを身につける労働者をつくるのが技能コースでございまして、下の技術コースは、技術革新の激しい今日、大卒から電機会社へ入ってまいりましてもほとんどの技術者エレクトロニクス知識がないわけでございまして、最近の、昭和四十年代の後半に入った技術屋からはエレクトロニクス技術というものはあるわけなんですが、それ以前の技術屋さんは、大卒といえどもそういった知識がない、そういうことからこの技術コースというものは設けられているわけであります。  それからもう一つは、ソフトウエア技術者不足の問題でございまして、これについても現場労働者、また技術屋さん、こういった者をソフトウエアができる技術屋転換をしようという、これは転換教育内容でございます。これは大企業でございまして、何とか対応ができているわけでありますが、既に西ヨーロッパ等政府が主導になりましてこういった転換教育に乗り出しております。イギリスでは労働組合でさえもが転換教育学校をみずから経営して、労働組合嫌いといわれるサッチャー首相のもとに、補助をもらいながら経営をしているという実態がございます。日本も、やはりそういった観点から、今後、大企業では企業内でこういうことできますけれども、中小企業中心としたたくさんの転換教育能力開発を必要とする労働者教育に対して、積極的な政府の指導が必要じゃないだろうかな、こういうふうに考えております。  現在、労働省で準備がされていると聞いております職業能力開発促進法、これにつきましては、最低限この法律はぜひ超党派的に成立をさせて、一日も早く中小企業への対策というものが進められるようにお願いをしたいと思っております。  現在、民間教育はどの程度されているかということを労働省が調べましたところ、三カ月を超える訓練というのはわずか五・六%の事業所しか実施しておりません。つまり、それだけの余裕がないわけでありまして、またノーハウがないわけであります。ですから、中小企業にはそういった面で余裕をまず与える。具体的に言えば、教育期間中の賃金の大部分補助をするとか、また先生については、民間の大企業の方から委託をして持っていくとか、コンサルタントを各県レベルで置くとか、こういう細かい配慮がそれぞれの地方で必要ではないだろうかというふうに考えております。  その次に安全対策でございますが、非常に大きな問題として、こういった新しい技術革新には必ず安全の問題がつきまとうわけでございまして、我々は労使十分協議をして導入をしておりますが、根本的な問題がかなり解決できないわけであります。  それは一つは、例えばVDTというものがございます。ビデオ・ディスプレー・ターミナル、いわゆるパソコンなんかのモニターでございますが、これから出てくるマイクロ波影響というものが人体にどう及ぶかということは日本のどこの研究所でも研究していないわけでありまして、わからないわけであります。ですから、我々としては対策のしようがないわけでありまして、予防対策的なことから電磁波を避けられるようなエプロンをかけるとか、またモニターの画面に電磁波を遮へいするものをつけるとか、こういうようなことをやっているわけでありまして、十分科学的な研究というものがされていないわけでありまして、メーカーももちろんそういうことはやっておりません。したがいまして、こういった基本的な問題についてはぜひ国の研究所の方でやっていただきたい。  以上、提言も含めまして、現在我々が調べたMEの、いわゆるマイクロエレクトロニクス機器による影響というものを中心にお話し申し上げました。  ただ、現在電機労連が抱えておりますのは、こういった工場レベルの問題は何とか解決の道があるんではないだろうか、こういうふうに我々考えておりますし、それを中心に今申し上げたんですが、今後の技術革新動向を見てみますと、非常に大きな問題としてネットワーク社会ということが言われると思います。  それはマイクロエレクトロニクス機器が、今度はコミュニケーションへの発展ということになりまして、コンピューターコンピューターがつながるいわゆるネットワーク社会というものが刻々と近づいているわけでございまして、電機の現在の電算機開発、また通信関係開発を見ますと、非常に早くこれが訪れるのではないだろうか。電電公社では、これはINSということで実施をするんだということを言っておりますが、これの影響というものが我々大変危惧をしているわけであります。  いわゆる雇用と我々の労働の質に対してネットワーク社会がどう影響するかということが非常に大きなテーマでございまして、例えば現在行われておりますネットワークの一端を申し上げますと、銀行では現在第三次オンラインが進められております。ファーム・バンキング・システムというものが、もうネットワーク化のほんの一部の序の口でございますが、これは入金通知業務でございます。いわゆるコンピューター音声応答によりまして、オンライン化された中で預金者企業入金通知をするだけの業務でございますが、これが顧客と銀行との間でコンピューターコンピューターが結びついたわけでございますが、これだけで月約二百六十六・七万円ぐらいの経費が浮くであろうと。これによる人件費省減としては、一日一人三百件を人間がやっていたわけですが、これが省減された、一人三百件をやっていた業務がこのコンピューター導入によりまして入 金通知業務省減される、こういうようなことから、増員抑制効果は約六百人ぐらいになるだろう、こういう結果が出ているわけであります。  また、ある会社、やはり違う銀行でございますが、五年間で第二次オンライン化をやりましたところ、業務取扱額要員数を見てみますと、五年前を一〇〇といたしますと、業務取扱額は一五〇にふえております。しかしながら、それに要する人員は九〇になっております。これは指数化でございまして、じゃ何人抑制効果が出たのかといいますと、約千人の抑制効果がこの五年間で出ているわけであります。これに要した開発費は八十五億円、こういうような結果でございまして、非常にオンライン化といいますのは人員を抑制する効果がある。  また逆に、今度はもっと先のことを考えまして、現在銀行業務がこういうことになっておりますが、今後ネットワーク化社会になりますと、それぞれの企業がそれぞれの得意先、それぞれの仕入れ先と、また銀行と直接コンピューター同士オンライン化されるわけでございます。その場合に、今までやっていた業務というものがかなり省力化されるわけでありまして、非常に多くの人員がどうなるんだろうか、こういう心配が一つ大きな問題として出てきておりまして、電機労連としては今後の運動方針の中でこの影響調査研究をしていこう、こういうように考えるところであります。  以上、最初の御意見を終わらせていただきます。
  7. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で阿島参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  8. 山田譲

    山田譲君 幾つかあるんですけれども、まず最初にこの表についてでありますが、一番最初の「減少した」というのがありますね。これはどういう意味でしょうか。つまり今まで千人なら千人の工場について言えば、減少したということになると、それだけ減ったということに考えてよろしいんですか。
  9. 阿島征夫

    参考人阿島征夫君) これは、ここのME導入工程において作業者減少したという意味でございます。いわゆる一つ工場の中でマイクロエレクトロニクス機器導入したラインで人間が減ったということでありまして、その減った人間はどこへ行ったかというのは、二ページ目の調査でございまして、二ページ目の真ん中の表でございますね。つまり、事業所内の同職種配転される。それからその次に事業所内の全く違った仕事配転される、こういうことでございまして、さらに他事業所への転勤ということもあるわけですね。そういう意味でございます、この「減少した」というのは。
  10. 山田譲

    山田譲君 そこで、ちょっとわからないのは、その事業所なり企業にとっては、減って、配転されて、配転先があるだけのいわば余力があったのかどうかという問題です。
  11. 阿島征夫

    参考人阿島征夫君) 具体的に申し上げた方がおわかりやすいと思いますので、電機労連の場合はほとんどこれ事前協議です。労使で事前協議をやりまして、配転先等または転出先等がはっきりしない限りこれは実施しない、こういうような労使の約束になっているわけです、協定化はまだしていないわけですが。例えば、ある工場でエレべーターが既に成熟産業になった。売り上げが伸びない。しかも非常に競争が激しい。半値―八掛けくらいの値段で売っているわけですね。そういうような、非常に合理化をしなければならない。  そういう場合にはエレベーターの例えば板金ラインを自動化装置を入れて徹底的な合理化をするわけですね。その場合に、何人か、例えば十五人なら十五人浮きますと、今度はそこの工場ではエレベーターではもう食べていけないので、この次の商品は何だろうかということで、これも労使の協議の中で決めたんですが、ロボット機器を生産しよう、こういうことになりまして、今度はロボット機器を生産するために、エレベーターで余った人たちをそっちへ転換をさせようとしている、こういうようなことをやっているわけであります。ですから、電機業界は絶えず新しい物を生産しなきゃならない、またそれを合理化して安く生産しなきゃならないという非常に競争が激しい業界でございますので、配転する先というものは物すごくあるわけですね。いろいろなものがございます。
  12. 山田譲

    山田譲君 まだいいですか。
  13. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) いいです。それではもう一問だけ。
  14. 山田譲

    山田譲君 それじゃもう一つ。  これは女子労働者の問題ですけれども、これが減っていて、それでかわりにパートがむしろふえているというふうなことがこの本にも書いてありますけれども、それはどういう意味ですか。
  15. 阿島征夫

    参考人阿島征夫君) これは労働市場の非常な変化ということも一つ背景にあるわけです。いわゆる女子労働者が、直接高校を出た女子労働者は、こういった製造部門に配置されるということに対して非常に抵抗を示すようになってきた。ですから、先生方も半導体の工場を御見学になったと思うのですが、あそこは昔は女子職場でございました。二千人ぐらいの昔の半導体工場が、現在は二百人ぐらいになっておりますね。そのぐらい女子が減っているわけです。しかし減っているというのは、逆に言うと、女子が雇えなくなったというのが背景にあるわけですね。そういうことも背景にありましてこれは減っていると思うのですね。  ですから、電機産業というのは、マイクロエレクトロニクス機器をどんどん導入して生産性を上げると同時に、労働市場としては女子がどんどん減ってきている。ところが今度はパートタイマーが働きに出る、こういう傾向が最近非常に多くなってきております。このパートタイマーも、子育てが終わった三十代の後半ぐらいからもう一度働きにいきたい、こういうような状況が同時に起こってきたためにパートタイマーがふえてきて、正規の社員は減ってきた、こういう現象が起きたというふうに我々は分析しているわけです。
  16. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 山田君、もうこれで終わりにしてください。
  17. 山田譲

    山田譲君 そうしますと、それは仕事そのものが女性に向いてないという意味ではないんですか。
  18. 阿島征夫

    参考人阿島征夫君) これはいろいろなケースによりますけれども、仕事そのものが、マイクロエレクトロニクス機器が入りましてプログラムをするような非常に高度な仕事がふえるのと、もう一つは、単純な仕事がふえてきているわけですね。ですから、最近ではパートタイマーでも簡単に動かせるNCマシンもあるわけなんですね。そういうぐあいに、パートタイマーの方でも十分こなせる。これは限度がありますが、一ラインに九十人とか、そういうふうに限度はございますが、パートタイマーがこなせるような仕事もふえてきた、そういうことも言えると思います。
  19. 矢原秀男

    矢原秀男君 時間の関係で二点だけほど御質問いたしますけれども、よろしくお願いします。  まず一つは、電機労連の方では今後の対応として「ME化対応三原則」というものを基調にされていらっしゃいますけれども、歴史的にはまだ今からですけれども、その成果と、また懸念のところがあれば、それが一点。  最後の一点は、今お話がございまして、安全対策で完璧な研究もされておられないことに、非常に御心配をされていらっしゃいますが、我々から見ましても、今後これは非常に人体に大きな影響ございますので、もう少し、国に対する研究の御要望と、現場の御意見として具体的なものがございましたら、二、三ちょっと挙げて、こういう面で国が早急に、順位としては早く研究対策の力を入れるべきであると、もしそういうことがございましたら述べていただきたいと思います。
  20. 阿島征夫

    参考人阿島征夫君) 「ME化対応三原則」の中で、我々が非常に難しいなと思っておりますのは、やっぱり労使の事前協議の問題。事前協議は、 労使でやろうということはこれは経営側も十分納得するわけですが、組合がノーと言った場合、じゃ経営者の方でこれを強引にやるかやらないかという問題になってくるわけでございまして、現在の労使関係からいきますと、組合がノーと言った場合には導入しないというのが現在の労使関係でございます。  しかし、これは何らその裏づけの協定とかそういうものはございませんので、やはりこういうことをはっきりとしたいなというのが我々の現在考えておる協定化への運動なんですね。しかし、これは非常に難しいわけです。一つの経営権になるわけですね、この設備投資という面が入りますので。ですから、現在の労使関係が続く限りは安心というか、経営側の方も組合がノーと言うのには導入しないだろうといいますけれども、これは将来ともそれが保障をされたものではない。その辺が非常に我々危惧をしているところであります。  それからもう一つ、安全面につきまして、先ほどはいわゆるビデオ・ディスプレー・ターミナルのことをお話ししましたが、もう一つ非常に大きな問題として電機労連でも取り上げましたのは、いわゆるメンタルヘルスの問題でございます。これも一万二千人を対象に、職場ごとに調査をいたしました。これはどういう調査をしたかといいますと、これは労働科学研究所とタイアップいたしまして、八十二項目にわたるアンケート調査を一万二千人に実施しまして、その中から八つに分類いたしまして、蓄積疲労度というものがこのアンケートからわかるようにいたしました。そうしましたところ、かなり職場でこの蓄積疲労度というものが高い点数を出しておりまして、これが高い点数を出しているというところは、職場自体がメンタル・イン・ヘルスであります。いわゆる心の不健康という状況に陥っているわけでございまして、そういう調査もやりまして、この四月から電機労連の平均パターンというものをつくりましたので、この平均パターンとそれぞれの職場調査をしたパターンとが違いがあるかないかと、違いがあった場合には不健康じゃないだろうかと、こういうようなチェックを進めていくつもりでございます。  しかし、この面に関しても、東大の石井先生等の専門家に言わせても、こういった大がかりの一万二千人ものメンタルヘルスの調査というものは全く日本で初めてだと、こういうことでありまして、なかなかメンタルヘルスの問題も重要な問題でありまして、この辺にもぜひメスを入れていただきたいな。  なぜこういった調査ができないかといいますと、経営者がまず反対いたします。うちはみんな健康だと、そんな心配要らないと、こういう回答が必ず返ってくるわけでありまして、電機労連はその辺を経営者とうまく話し合いながらやった調査でございまして、これはやはり国がやればかなり企業が回答してくれるのじゃないだろうか。これは企業にやるのじゃなくて企業の従業員にやるわけですから、やはり国がそういう面でタッチをしていただけばもう少し広いサンプルが出てくるだろう。我々の調査の中でもやはり情報化部門で働いている職場、超LSIの職場、こういったところは非常にメンタル的に危険な職場だなと、こういうことがはっきりとその調査であらわれましたので、そういう職場については個別に労使対策を現在打っている最中でございます。そういうものが事前にわかるということだけでも非常に重要ではないかと、こういうふうに考えております。
  21. 矢原秀男

    矢原秀男君 ありがとうございました。
  22. 吉川春子

    吉川春子君 私、三点にわたってお伺いしたいと思います。非常にいろんな事例を具体的につかんでいらっしゃるという印象をこれを読みまして受けました。  まず第一点は、この三ページのところに出ておりますけれども、電機労連調査によっても「ME化の進展は企業生産性の急上昇と利益をもたらしているが、労働の二極分解、交替制や時間外労働の拡大など多くの問題を発生させていることが明らかになった。」、「野放しにマイクロエレクトロニクス化の進展を許せば、雇用労働へのマイナスの影響が必須であるとの認識に立って、」これを設定したというふうに書かれていて、その下に「マイクロエレクトロニクス技術革新を社会的にコントロールするためには、」ということで、「①社会的制御、②産業レベル、③企業レベル、④工場職場など各レベルで取り組まれる必要があるが、本ガイドラインは、このうち②~④を包含するものである。」というふうに書かれています。  私はなぜ①を抜かされたのかなという点について伺いたいわけですけれども、今非常に社会的制御ということがまさに問題になっているんじゃなかろうかと思うんです。特に中高齢者、婦人の雇用の不安定化や犠牲が強まっている。そういう点で社会的な対策規制、職域の拡大ということが求められているんじゃないか、あるいは派遣労働者が非常にふえている、この件についてもやはり社会的な規制の問題ではないかと思うわけです。それが一点です。  二点目は、ME化労働者の健康の問題についてですが、「マイクロエレクトロニクス技術システムは労働の態様を一変させると同時に、新たな労働災害や職業病を生みだす危険性をもっている。」というふうに指摘されています。「産業ロボットの暴走による死亡事故や労働災害、VDT従事者の眼精疲労や母性への影響」、こういうものを電機労連でお挙げになっているわけですが、そしてまたVDT作業に関する衛生対策基準もこの末尾に示されています。特に精神病的な疾患が激増しているということが言われていますが、精神心理面での健康管理対策ということについてどうあるべきだとお考えになっておられるのか。  これは外電なんですけれども、アメリカでは去年の秋にVDT作業に従事する婦人が非常に流産、異常出産が多いということで、婦人たちをこのVDT作業から今外していますね。厚生省のガイドラインでも、一時間やったら十五分休むということなんですけれども、それにこれも沿っているわけですが、そういう程度で健康が守られるのかという問題とか、あと総合的な衛生管理体制の必要を指摘されていますけれども、その具体的な内容。  それから第三点目は、労働組合の機能について伺いますが、派遣労働者が急激にふえて関連会社の多様な結合の中で、労働条件の形成権、交渉権、これがどのように変化し、組織されているのか。  それから、電機労連が発表されたこのガイドラインというのは、職場討議に付される必要があるのじゃないか。  そして最後ですが、導入労使協議でということをうたっておられて、非常にこれは民主的な問題として必要なことだと思うのですが、実情としては導入、運営に対する労働者労働組合の参加協議、事前の情報公開ということは大きく後退しているわけです。そして短期間での効率化、向上のためのTQCなど広範に採用されています。こういう傾向と労働組合としてはどういうふうに闘われるのか。  以上です。
  23. 阿島征夫

    参考人阿島征夫君) まず、社会的制御をなぜ抜かしたかということですが、実は電機労連は単産という立場でございまして、いわゆる電機産業という一つの小さな単位ということで、社会的制御までこの中に含めるというのは電機産業を組織する組合としてはやや大きな仕事ではないだろうか。社会的制御となると、やはりこれはナショナルレベル、総評なり同盟なり、我々で言うと、今のところは全民労協、こういったナショナルセンターでのレベルでこういうことを決めたらどうだろうか。こういうことで、必要がないということじゃなくて、この後、電機労連としては、加盟しております全民労協、それから金属労協、こういったところにこの社会的制御の問題について提起をして、現在全民労協としては、先ほど私が最後に申し上げました政労使での具体的な対策を考える場というものをつくってほしい、こういう政策要求をぶつけているところでありまして、先ほど言 いましたものが我々の社会的制御の具体化の一つと、こういうふうにお考えになっていただいたらいいと思います。  それからME化と健康の問題につきましては、先ほど来申し上げているように、新たな災害というものが、最後に言われましたVDT作業の問題。それからロボットといいますのは三次元に動きます。これまでの機械というのは二次元にしか動かなかったのですが、ロボットというのは三次元に動く関係上、その辺のことを我々が未経験でございましたので、十分な安全対策を事前に実施しながら導入をしていかなきゃならないぞと、こういうことから、新たな災害が予想されるのじゃないだろうか、こういうふうに書いたわけでございます。  それから精神面の問題につきましては、先ほど来申し上げましたように、メンタルヘルスのああいう調査もその後行ったわけでございまして、電機の平均パターンというものをつくったというふうに先ほど申し上げましたが、これに基づいてそれぞれの職場で管理なりチェックをしていただく。ただ、従業員のメンタルヘルス状況について把握するというのは、やはりこれは経営者の一つの大きな責務ではないかと、こういうふうに考えておりますので、労働組合からはそういった点で問題提起をして、その後経営者に十分実施をさせる、こういうことを現在考えております。  それからVDTの異常災害につきましては、これもきちっとした科学的な根拠がないわけでございまして、先般もヨーロッパでVDT作業についての国際会議を労働組合間で行いました。ここで非常に問題になったのが、VDT作業をどのぐらいさせるかという、何時間させたらいいんだろうか、こういう問題がございました。意見が、アメリカ、ヨーロッパ、日本それぞれ二つに分かれたわけでありまして、四時間させたらあとは何もさせないという御意見と、じゃ四時間だけでいいのか、ほかの作業者との間で賃金の差をつけないのか、こういう問題もございまして、四時間作業をしたらあとの四時間はほかの作業をしてもらったらどうだろうか、こういうような考え方と二つに割れまして、結局国際会議での結論が出なかったわけであります。  しかし、このVDTの問題につきましては、先生のおっしゃるような報道もございますので、私が冒頭にぜひ国の方できちっとした科学的な研究を進めていただきたいというのはその趣旨でございます。  それから労働組合の問題でございますが、我々労働者派遣法案というものを長い間ぜひ成立をさせてほしいということでやってまいりました。ただ、労働組合間の中で、労働者派遣法案につきましては反対する労働組合もございます。そういうことで、なかなかまとまらなかったわけでございますが、ようやくこの国会で提案される、こういうふうに聞いておりますが、いわゆるああいう派遣事業というものが非常にこれからますますふえて、派遣労働者というものは非常に多くなると思います。したがいまして、そういう労働者をきちっと守る法律というものがぜひ必要ではないだろうか。こういうことから、このパンフレットの中でも、派遣労働者について、団体交渉権をどうするんだと、また労働条件をどういうふうに守っていくんだと、こういうことをはっきりさせる必要があるだろう、こういうことから、このパンフの中でもそういうことに触れておるわけでございます。  それから職場討議の問題は、これは既に七月の大会に出しまして、その後九月にシンポジウム等を開催いたしまして、その後各職場へおろして討議をしております。電機労連は、この秋に労働協約の中でME協定を要求をしよう、こういうことから昨年の九月から順次このガイドラインにつきまして職場討議をしておる最中でございます。  以上であります。
  24. 藤井恒男

    藤井恒男君 時間が参りましたので簡単にお聞きしたいんですが、この表の3「ME化中高年男子比率」、ここで四十歳以上が非常に少ない。言うまでもないことですが、高齢化社会を迎えて、高齢者の就労ということを真剣に考えなきゃいけない。ある意味では積極的にワークシェアリングという観点に立っていかなきゃ労働組合もこれから困るだろうと思うのだけれども、あなたが率直に見て、現実の数字が三十歳代に偏っておるわけだけど、四十歳以降が、例えば業種がいろいろあるけれども、電機産業で行っているME機器導入、それを扱う作業者として四十歳ないし五十歳前半の人たちは本当に不適なのかどうか。あるいはその機器が極めて高性能で単純化、繰り返し作業になっているがゆえに、あえてパート雇用という方が企業にとっては収益増につながる。だから、そういう意味でこれは意識的にやっているのか。この辺、率直にどういうふうに見ておられますか。
  25. 阿島征夫

    参考人阿島征夫君) 四十歳以上の問題について、きょうは余り触れなかったんですが、我々としては非常に重要視をしている問題の一つでございます。重電機職場は、特に平均年齢が四十歳でございます。したがいまして、四十歳というのが主力部隊でありまして、この人たちがだめになったらこれはその企業はだめになる、また電気産業がだめになる、こういう考え方から中高年対策というのは十分やらなきゃいけない、こういうふうに考えておりますが、これ四十と五十ではまた違うと思うんですが、私は四十歳代の人でもきちっとした教育訓練をすれば対応できると、こういうふうに考えております。  その一つは、普通の若者、いわゆる三十歳代と同じようなカリキュラムを同じ日程でやるということではなくて、個別指導になろうかと思うんです。ME化転換教育というのは、我々の経験から考えてみても大変な時間を要しますし、まして中高年になりますと能力の差というものが出てまいります。これはその仕事に対する能力の差で、ほかの面の能力の差ということじゃないんですが、そういったことから、中高年については、個別な対応と十分なカリキュラムの消化というものを考えながら転換教育をやれば対応できるというふうに我々としては考えています。  ただ、だんだん広範になりますと、非常に人により年齢が高くなりますと機能差というものが出てまいります。いわゆる機能年齢というものが、例えば五十歳の方でも機能年齢は四十歳、こういう方もおられますし、もう六十歳だという方も出てきますし、そういう機能年齢に応じた職種というものを考えなければいかぬだろう。ですから、マイクロエレクトロニクス機器は全部だめなんだという断定は我々としてはしていないわけであります。そういった機能年齢を十分配慮しながら教育訓練を積み重ねていけば対応できるだろう、ただ、どうしても対応できない人については、職務再設計という立場から、やはりその人に向いた違う仕事を、仕事に人間を合わせるんじゃなくてその人に仕事を合わせるという考え方から違う仕事を合わせていくと、こういう対策中高年では必要ではないだろうか、こういうふうに考えております。
  26. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 以上で阿島参考人に対する質疑は終わりました。  阿島参考人にはお忙しい中を本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。     ─────────────
  27. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 次に、雇用促進事業団雇用職業総合研究所雇用開発研究部第二研究室室長亀山直幸君から意見を聴取いたします。  この際、亀山参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、技術革新雇用労働及び中小企業問題につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず三 十分程度意見をお述べいただき、その後三十分程度委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  それでは、亀山参考人お願いいたしたいと存じます。亀山参考人
  28. 亀山直幸

    参考人(亀山直幸君) 亀山でございます。こういう席上で研究成果の一部を御披露できる機会を与えられましたことを大変光栄に存じます。  マイクロエレクトロニクス技術革新雇用労働にどのような影響を与えているか、とりわけ中小企業分野においてどのようなことが起こっており、それに対して我々がどのように考えていったらいいかという点につきまして、大変舌足らずだと存じておりますが、私の考えているところ、調査の結果等を申し上げさしていただきたいと思います。  一つだけ、多分阿島参考人もその点について触れられたと思いますけれども、お断り申し上げておかなければならないことがございます。  私はこれから、大変時間が短うございますので、結論的なことだけを申し上げます。しかしながら、実は、例えば高齢者においてどういうことが起こっている、中小企業においてどういうことが起こっているといった場合に、必ず反対のことが起こっております。正確に言うならば、さまざまなことが起こっているというふうに申し上げるのが正しいわけでありますけれども、それでは議論が進みません。わざとある意味ではバランスを崩して、特徴ある注目すべき傾向についてだけ申し上げます。それは全部がそれのように行き渡っている、すべてがそのようになっているというのではなく、私がとりわけ注目したい傾向についてだけ申し上げているんです。そういう意味ではバランスが崩れているという点について、ぜひ御配慮いただきたいというふうに思います。  まず第一番目に、きょうの私に与えられておりますテーマは、マイクロエレクトロニクス技術革新雇用労働及び中小企業と、こうなっておりますけれども、別個にいたしませんで、中小企業における雇用労働、こういうふうに重ねさして議論さしていただきたいというふうに思います。  なぜ、このマイクロエレクトロニクス技術革新に際して中小企業を特別取り上げる必要があるのかということについて、まず明らかにしておきたいと思います。  御存じのように、一九六〇年代、七〇年代の高度経済成長の中で展開されました技術革新は、基本的に大企業、重化学工業分野を主たる舞台としてまいりました。これは一九六〇年代、七〇年代の高度経済成長が、基本的には大規模生産システムの展開を基本的な性格としていたためであります。つまり規模の経済性、大規模な生産を行うことによって単価を安くすることができるという規模の経済性を追求すること、これが高度経済成長時代の基本的な技術革新の特徴でありました。したがいまして、そこでは大規模な生産を行うこと、大規模な業務量を持っているところが主な舞台となったということでございます。  ところが、今度のマイクロエレクトロニクス技術革新の場合に、それの展開は中小企業でも大変活発でございます。その理由は、簡単に申せばマイクロエレクトロニクス技術革新というのは、結局のところ何であるのかといえば、コンピューターの働きを持ったものが小さく安くなったということに尽きると私は思っております。いろいろ難しいことはあるでしょうけれども、労働問題を考える程度の場合にはその程度で結構だと思うのです。コンピューターの働きが小さく安くなったために、どこでもかしこでも簡単に使えるようになった、これがマイクロエレクトロニクス技術革新の基本的特性だというふうにお考えいただいて結構だと思います。  したがいまして、マイクロエレクトロニクス技術革新といいますのは、そのコンピューターの機能がいろいろな姿をとって登場いたします。そういう意味で大変多様でございます。マイクロエレクトロニクス技術を応用した機械、機器のうちの、一つの大変特徴的と申しましょうか、代表的な機器でございます数値制御機器、NCマシンをとってみますと、NCマシンと申しますのは、皆様御存じと存じますけれども、やらせようという動作を数値に直しまして、それをテープに入れてやる。そうしてそのテープを機械に入れますと自動的に作業を行うという数値制御の機械、ニューメリカル・コントロール・マシンでございますけれども、この数値制御の機械が、今企業規模別に見た場合にどの程度入っているかという数でございます。もちろん言うまでもなく、大企業は規模が大きいわけですから、入っている台数が多いに決まっております。  そこで、私は労働者千人当たりで見て、数値制御の機械が何台入っているか頭数で計算してみました。通産省の調査でございます。それを用いますと、百人以下の企業、五十人から九十九人の企業では数値制御の機械が十一・四台、百人から二百九十九人の企業で十・六台、三百人から四百九十九人の企業で八・六台、五百人以上の企業で八・六台、つまり頭数で割りますと中小企業の方が多く入っています。産業ロボットないしは高度に発達した産業ロボットなどの場合には、大企業での導入が多くなっておりますが、このようにNCマシンなどを見ますと、中小企業で活発に導入されている、これが今度の技術革新の非常に大きな特徴でございます。そのことが我々が今回の技術革新に際して中小企業をとりわけ注視しなければいけない理由の一番大きな問題であります。  では、中小企業にそのような新しいマイクロエレクトロニクス技術を応用した機器類が導入された場合にどういうことが起こるかであります。  まず第一番目には、雇用労働にどういうことが起こるかという場合に、一番重要なのは、そしてひとしく注目するところは、雇用の量にどのような影響を与えるかということだろうと思います。このME問題が諸外国で取り上げられ始めました一九七九年ぐらいから、問題の取り上げられ方は、ロボットは失業を生むかという問題の提起がされております。まさしくMEと失業という問題でございます。言うまでもなく、マイクロエレクトロニクス技術革新といいますのは、コンピューターを使って判断――ちょっと余談になりますが、人間の労働といいますのは、どんな労働最後まで極限まで推し進めていくと三つの部分に分解できます。何か変化を確認する、そしてその変化を確認した上で、それに対してどう対応すべきかということを判断し、そしてその判断した結果を行うという、この三つの部分に分解できます。自動車を運転しているところでしたらば、子供が飛び出てきたという変化を確認し、次にブレーキを踏むべきか、ハンドルを切るべきかという判断を行い、次にそのアクションを行う。これは生産の労働であれ事務労働であれ、すべてそうであります。  実は、産業革命以来行われてきました機械化の過程というのは、その三番目のアクションの自動化でございました。現在起こっておりますことは、その情報が与えられると、どうすべきかという判断の自動化でございます。先ほど申しました三つの分類から言えば真ん中のところでございます。情報を受け取り、そしてどうすべきかということを判断するという情報処理の分野というのは、機能というのはどんな労働にも含まれております。そういう意味で、その部分コンピューターが入るということは、どのような労働にもそれが入ってくるわけであります。そうしますと、当然にもそこの部分労働が機械化される、自動化されるということを通しまして人間の労働が削減される。そういう意味では省力化機能を持っているということは言うまでもないことであります。  では、実際にME機械が入ったところで、とりわけ中小企業で、省力化し、人々が余剰になっているかと申しますと、現在の段階では大変特徴的な事実があらわれてまいりました。  お手元に、私どもの研究所で行いました調査をごらんいただいているかと存じます。この調査は、全国一万の中小企業を対象といたしまして、回収されましたのは三千百五十ほどでございますけれ ども、中小企業に関するME調査としてはまず最大規模の調査だろうというふうに思っておりますが、五十八年に実施いたしました。この調査を見ますと、時間が少のうございますので丁寧に御説明申し上げられませんが、極端な言い方をしますと、ME機械を導入したところで人がふえております。  例えば二十二ページをごらんいただきたいと存じます。小さい行で申しわけございませんが、二十二ページの一番上の段、産業だとか規模を外して、トータルで考えた表をごらんいただきたいと思います。導入した企業では、従業員数は一五・七%ふえております。導入しない企業ではそのふえ方は三・四%にとどまっております。木材・家具のような比較的不況の分野、伸びない分野で、導入した企業では減少率が二・七%にとどまっているのに対して、未導入企業では五・〇%の低下を示しております。このように現在のところではME導入した企業で人がふえるという傾向があらわれております。  これをどのように理解するかであります。MEを入れると人がふえる、こう言っていいかどうかであります。私はそうは考えておりません。実は現在日本中小企業の中で大変大きな再編成が起こっております。日本中小企業経営者の中で大変活発な経営行動を行い、新しい経営革新を行い、そのことによって経営体質を変えていこうとするそのような動きがございます。よく言われるアントルプルヌール、企業家、新しいそういう積極的な経営活動を行う企業家グループというのが登場しております。かつても、これまでも中小企業研究者がこういうようなベンチャー企業とか、積極的な経営活動を行う経営についていろいろ調査してまいりました。そのようなものの紹介がございました。しかし、それは今までの場合には非常に突出した企業のエピソード的紹介であったというふうに言っていいかもしれません。私どもの調査では、それが一定の層をなしておる量の塊として登場し始めておるということを確認いたしました。  そこで、どういうところで人がふえているか、従業員数がふえているかでございます。従業員数の増減と企業のいろいろな指標とを結び合わせてみました。何が一番説明力があるか。極めて簡単でございます。売上高の伸びでございます。ほかの要素はほとんど意味を持ちません。売上高の伸びそのもので従業員数はほとんど決まってしまいます。  そこで、売上高の伸びというのは何によって規定されているかということを調べてみました。普通調査をやりますときに、企業規模ですとか産業分類ですとか、例えば経営者の学歴ですとか、そういうものをいろいろ調べます。そういうものと比べてみて、大卒経営者がいるところではどうだとか、どの産業ではどうとか、どういう企業規模のところではどうだ、こういうような分析をいたします。そういう分析をしても余り――余りと言っておきますが、余り有意な、意味のあるような関係を見つけることはできません。私どもは、非常に単純なことですけれども、こういうことをやってみました。この五年間、昭和五十三年から昭和五十八年の間にどういうような経営行動、経営者がどういうことをやりましたかということを――ごらんいただきたいのは四ページの表1でございますが、そのアからクまで八つの項目を掲げて、こういうようなことをやりましたかやりませんかと問うてみました。  そして、これまた実に単純で恐縮なんでございますが、幾つ丸をつけたかということをそれぞれの企業についてやってみました。そしてそれを五ページにございますように「企業行動スコア」、照れくさいんでございます、アンケートに幾つ丸をつけたかという程度の単純なことを企業行動スコアなどというもったいぶった言い方をするのは大変照れくさいんでございますけれども、やってみました。一つもつけなかったところが零点、二つつけていれば二点、これだけのことでございます。ところが、驚いたことに、この企業行動スコア、小学校の算数、算術みたいな企業行動スコアと売上高の伸びというのは物の見事に対応いたします。  六ページをごらんいただきたいと存じます。企業行動スコアが零点から四点ぐらい、つまり一つも丸をつけないか四つぐらいしか丸をつけなかった企業では、出荷額が「非常に減った」「少し減った」というのを合わせて二五・八%、四分の一に達しております。それに対して、五点から八点、五つから八つ丸をつけた企業では、それが約一割強程度にとどまっております。逆に出荷額がふえたというところを見ますと、五から八をつけたところでは、八二・四%、約八割強の企業がふえております。  つまり重要なことは、今伸びている企業、伸びていない中小企業というのを見る場合に、従来我々はどちらかといいますと、その企業が置かれた条件とか、その企業が所属している産業とか、そういうもの、ある意味では企業が競争する前の前提となっているような条件、ストックと言っておきましょうか、ストックのような条件によって分析するというのが今までの分析手法の普通のやり方でありました。ところが、そういうものは余り効かない。そうではなくして、むしろ経営者がどのように行動したかというフローと申しましょうか、むしろ企業にとっては主体的な要因、これによって非常に大きな違いが出てきているということを我々は見ることができます。そして、そういたしますと、ME化を進めたらば人がふえたんではなくて、それは間違いではないんでありますけれども、経営者が極めて積極的な経営行動を行う、そのような積極的な経営行動の一環としてME化がある。積極的な経営行動の一環としてME化を進めた場合には、そのME化は売上高の増加に結びつき、そして従業員の増加に結びついている。もちろんそうでない場合もございます。  この委員会の担当でございます調査室が、私にここに出席するようにというふうに選ばれた一つの理由は、私が「世界」という雑誌に書いた論文にあるというふうに聞きました。私がその「世界」の論文の中で書きましたことは、中小企業ME技術を入れる場合に相当いかがわしいことが起こっている、入れる理由もない、合理的な根拠もないのに入れているということを書きました。そして、今度は、きょうは少し違うことを申し上げるので、意見が違うのかと申されますけれども、そうではございません。  確かにそういう側面もある。世の中、ME化ME化と言う。ME化ME化と言うために、自分の企業の中では本当にME化を進めなければいけない合理的根拠がないにもかかわらずME化ME機械を入れる。入れたけれどもそれは使っていないというようなケースはよくございます。そういう意味では、ME化を進めれば何でも人がふえる、万々歳だというのではなく、そういう新しい、最近進んでいます中小企業の積極的な経営行動の一環としてME化が進んだ場合は、中小企業を活性化し、売上高を伸ばし、従業員数をふやすということも起こっている、これは極めて注目すべきことでございます。  御存じのように、ヨーロッパでは、最近中小企業の活性化をてことしたところの経済成長路線ということが非常に強く主張され、注目されるようになっています。私もこの調査を見ますと、ME技術をてことしながら、それを踏み台としながら中小企業が積極的な経営行動を行い、その中で活性化し、そして業績を高め、そして従業員数をふやしていくという可能性が生じている点について、やはり我々は注目しておく必要があると思います。  ただ、この場合にぜひとも注目しておかなければなりませんのは、そのようなある中小企業の活性化は激しい中小企業間の競争の中で起こっております。したがいまして、そういう積極的な経営行動を行い、業績を伸ばす企業の傍ら、そういう新しい環境に適応できずに業績を悪化させ、場合によってはつぶれていく中小企業が存在します。現在、日本中小企業は極めて年々売上高を伸ばし、成長しております。工業統計表による売上高 の増加というのを見ますと伸びております。反面、中小企業では史上空前の倒産が起こっております。この二つのことが同時に起こっている。片方では、極めて積極的な経営行動を行い、業績を伸ばしている活性化している中小企業グループと、そのような競争に耐え切れずにつぶれていく中小企業というのがある。では個々の中小企業では、全体として雇用にどうなるか、これは予測、予断の許さない状況でございます。今ちょうどそのせめぎ合いの段階にあるというふうに私は考えております。  したがいまして、対策ということを考えるとするならば二つでございます。そのようなME技術をてことしながら活性化していく中小企業に対しては、その活性化を可能にするような援助の手を伸べる必要があると思います。とりわけこれは技術的な援助という問題があります。もう一つ、その中で負けていく中小企業に対しましては、当然社会政策的配慮からそれに対するところのケアというものがなされなければなりません。このことは非常に重要な問題だろうと思います。  時間がございませんので、もう一点、雇用労働の、今申しましたのは量の問題でございますが、質の問題について若干触れたいと存じます。  ME技術革新が進む中で、労働者の担う労働、行う労働というのはどう変わるかということでございます。このME問題に関する議論が始まりました当初、大変支配的でありました議論は二極分解論と言われました。人間の労働はこれから熟練だとか、技能というようなものを要らないものにしてしまう。熟練だとか、経験的な知識というのは全部コンピューターの中に入ってしまい、コンピューターが自動的に処理してしまう。これから必要になるのはコンピューターに関する技術を持った知識労働者と、それから機械を動かせる状態にしてしまえば、あとはボタンを押すだけの単純労働者、こういう高度の技術者と単純労働者である。具体的な言い方をすれば、大学の工学部を出てきた労働者パートタイマー、こういうので企業は構成されるようになるだろうという議論が強うございました。ヨーロッパではまだその議論がかなり強い影響を持っております。我々はそれは間違いだというふうに思っております。  マイクロエレクトロニクス技術というのは、結局のところ、これは阿島参考人も多分展開なさったと思いますけれども、熟練技能というもの、経験というものを背景にしてのみ有効に作動するものであるというふうに考えております。  大変卑近な話で申しわけございませんけれども、例えば筑波万博で、ロボットが「寿」という字を書くというようなことをやります。簡単でございます。プレイングロボットというロボットの手に筆を持たせまして、習字の先生がその手を持って「寿」という字を書けば、その手の動きをロボットは記憶いたしまして、次からその字を書きます。そのときに、私がロボットの手を持って書けば私の字しか書きません。習字の先生が手を持って書けば習字の先生の字を書きます。つまり、このロボット仕事を教えることをティーチングと申しますけれども、ティーチングを通してその人の技能が移転されるわけであります。これはロボット、プレイバック式ロボットの場合には一番顕著でございますが、NC工作機械の場合も全く同じであります。  ある金属をNC旋盤で削ろうとするという場合に、まず労働者は何をやろうかとすると、今までの旋盤でも同じであります。どういうふうな手順で、それからどういうような道具をそろえて仕事をやるかということをまず考えます。そして、そのような準備をいたします。これを、私は工場における最も美しい言葉だと思いますが、段取りと申します。きょうの午前中までOECDのセミナーがありました。外国から来た人には、私はこの段取りという言葉はそのまま英和辞典に載せるべきだというふうに主張しておりましたが、どういう手順で仕事をやったらば一番いいかということをまず計画し、そしてそのような準備を行うこと、これを工場では段取りと申しますが、ここのところなんでございます。  つまり、熟練工が、おれだったらばこの仕事はどういう手順でやる、例えばこういうものを削る場合に、(資料を示す)中を先に削るか、外側を削ってから中を後から削るかという、ただそれだけのことで、でき上がった製品の精度は違うものでございます。そういうことはどういう手順でやったらば一番美しく、一番効率的に仕事ができるかということは、長い経験を経た労働者がよく知っているところであります。したがいまして、NC工作機械を使う場合にも、まず最初にやる場合には、どうしたら一番合理的で正確な仕事ができるかということをまずプランニングし、それを機械にわかる言葉、プログラム用の言葉で翻訳してやるということであります。  ぜひとも御理解いただきたいのは、この過程をプログラミングと申しますが、プログラミングといいますと、何かプログラムの言葉で書く部分、これをプログラミングというふうに考える傾向がございます。間違いでございます。実はその前に原文を書く作業がなければいけません。原文を書く作業があって、それを翻訳する作業がある。この二つの作業の段階を通してプログラミングと言われます。原文を書く作業というのは、この作業はどういうふうにやったらば一番美しく、効果的に、正確にできるかということをプランニングするということであります。これはまさしく長い経験に支えられてのみよくできることであります。  そういう意味では、ME技術革新のもとで登場する機械もまた人間の熟練とか経験、技能というようなものを無用にするものではない、むしろそういうものをプログラミング、ティーチングというようなことを通して機械の中に移しかえていくことによって機械は有効な作業をする。はすっぱな言葉の使い方で申しわけございませんが、半ちくな労働者が使えば半ちくな機械になる。熟練した労働者が使えば、熟練した労働者技能が機械に乗り移る。これが私はME機械だと思っております。  これは何もNCマシンだとか、それだけではございませんで、オフィスオートメーションで登場する機械もまた同じでございます。とするならば、長い経験の中で積んだ技能とか知識というものが、このME化の中で利用できるようにすることが必要であります。そのためには、先ほど申しました翻訳の技術というのを経験した労働者が身につけること。阿島参考人の御意見との関係で言えば、とりわけそこの場合には中高年齢者が多いでしょうから、中高年齢者がそういう技能をどのようにして身につけるか、これが重要になってまいります。  この点については、先ほど後ろで聞かしておいていただきましたけれども、阿島参考人詳しくお話しになったので、私は多く触れませんけれども、従来ややもすると中高年齢者はプログラミング教育についていけないという俗説がございます。全くの俗説でございます。プログラミング教育のカリキュラムというものを中高年齢者向けにつくろうという努力をせずに、一方的につくっておいて、与えて、中高年齢者がついてこれないから、だから中高年齢者は不適である、こういう物の考え方は私はどこかが狂っているというふうに思います。数学の嫌いな子供、数学のできない子供に数学を教えて初めて教育であります。自分の方で用意したカリキュラムに従って教えたらば、この子供が数学ができない、この子はだめな子だ、こういう物の考え方は間違っている。にもかかわらず、現在はそういうことが強くなっております。  そういう意味では、私は、中高年齢者がこのME技術に適応できるような条件というものを、もう一回ME中高年齢者の適応に合わせて考える、それが重要と思っております。それは決して中高年齢者を救済したり援助をするというためでございません。そうではなくして、ME技術という新しい技術と、それから従来の長い職業経験の中で身につける知識技能という、古いと申しましょうか伝統的要素、これをどのように一体化し、ME技術をより有効なものにしていくかという方 途だろうと考えております。  もっといろいろ御説明申し上げたいことがございますが、ちょうど時間でございますので、また御質問にお答えする形で果たしたいと思います。ありがとうございました。
  29. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で亀山参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  30. 長谷川信

    長谷川信君 亀山さんにいろいろお話を承って非常に感銘を受けたのでありますが、さっきもいろいろお話があったのでありますが、電気機械のここ十年の変化というものはまさにこれ予側できない変化がある。さっきもお話があったんでありますが、二千人使っておったのが今二百人でできる。私どもこの間、盛岡、宮城を見てきたのでありますが、この部屋の倍くらいのところで三人か四人で何をやっているかといったら、温度調節とごみだけで、あとは全部自動でやっていますね。現在でもこういう形に変化したのでありますから、これから十年たったら恐らくこれはもう私ども素人には予測できないような形になるのではないかと思うんです。まあ亀山さん御専門家でいらっしゃいますのである程度予測ができると思いますが、そうなった場合、私は田舎に住んでいるのでありますが、今先端技術工場というものは各県各都市がもう大変な競争で誘致をやっていますね。なぜそんなに一生懸命誘致をやるかというと建物をつくって固定資産税が入るとか、そういう面もあるかもわからない。各地方の都市で一番熱心に望んでいるのは雇用の関係です。もうそれ雇用の関係の一語に尽きると思うんです。やっぱり地元の人が、東京まで来なくても、大阪まで出なくても、ここで働いてここで生活ができるようにするには、先端技術工場でもひとつ若干犠牲を払っても持ってきて、それでやろうということになっているのでありますが、もう五年、七年、十年たった場合どういうふうに変わるのか。それから雇用の関係が、七、八年前に二千人のが二百人になったから、もう十年たったらこれは私ども想像できないような変化が起きると私は思うんですよ。そうなった場合、各地方、地方の自治体が熱心に誘致をしたものが裏目に出るというとちょっと言い過ぎかもわかりませんが、いささか問題があるのではないかというような感じがいたしますね。  それから、中小企業との関係をるる御説明ございましたが、確かにMEを入れたところは売り上げが上がるということは私も理解ができますね。今中小企業工場は、日本全体のうちの大企業を含めた九八%が中小企業ですね。全部が全部入れているわけではない、現段階では。だから、入れているところは伸びているけれども、入れていないところは伸びていないというように私どもは理解をしていますね。だんだんこれから時間とともにこれがずっとある程度行き渡った場合、これは全部が使えばということになりますので、そうなった場合、むしろ競争がもう非常に激化するような、今まで中小企業というのは若干少しぼけているようなところがあったんでありますが、それはもう一分、一秒もゆるがせにできないような、まさに大企業並みの激化した商売乱世になる可能性も含められるんじゃないか。そうなった場合、今申し上げましたように、大企業に従事している労働者は七百五十万人ですね。零細中小企業は全部で四千五百万人、私どもの推定では。先生とちょっとまた違うかもわかりませんが、私どもはそういうふうに理解をしておるんです。その関係が、バランスがこれからどういうふうな変化をするか。まあ私は必ずしもいい方向で変化するというふうな感じは持っておりません。おりませんが、御専門の立場でひとつ御教授賜りたいということであります。
  31. 亀山直幸

    参考人(亀山直幸君) 御質問のとおりのことでございまして、例えば地方で先端的な企業導入した場合に、その新たな雇用創出効果というのは、従来の例えば繊維工場導入したというようなときに比べて、決して大きいものでございません。にもかかわらず、そういう先端的な企業導入する以外、何といいましようか、地域発展の方途を見つけにくいというようなことでそういうことが行われているんだと思いますが、私はここでぜひとも御注目いただきたいと思っていますのはこういうことでございます。  今まであった工場で同じような製品をつくっていて、そこで機械化が進んだ場合、この場合の雇用削減効果は、今御指摘がありましたように大変大きいものがございます。むしろそういうことを目的にして行われるわけでございますから、非常に大きいものがございます。ですから、私は今せめぎ合いの段階にあると申し上げたんでありますが、もう一つの傾向はこのME技術を使って二つのことが起こっております。新しい製品が生み出される。もう一つは、加工技術なり精度が上がることによってより仕事の分野を広げるというようなことが起こる。その場合にはその企業においては従業員数がふえるということがございます。  技術革新というのは、常にそうでございますけれども、技術革新が起こる前には、技術革新が起こる前の状態を前提にしてそこに技術が入ってくると、今までの人間の労働のうちのどの部分技術が食ってしまうかという問題の立て方がされます。そうしますと常に悲観的な見解が強くなります。  ところが、過去の技術革新は、今度の場合にはどうであるかまだ予測つかないことでございますけれども、過去の技術革新は、その技術が登場したことによって新しい製品、新しい市場を生み出してまいります。経済拡大を遂げてまいります。その経済拡大の中で新たな労働力の分野を生み出すということが起こってきます。現在の技術革新がどういう新しい製品を生み出すか、どういう新しい市場を生み出すかというところは今予断を許さないところでございます。  ただ、私が先ほどちょっと申し上げました「世界」の論文との関係で言いますと、現在例えばINSシステムとかさまざまな情報機器、ニューメディアというのが登場しておりますけれども、そのようなものが何と申しましょうか、社会の必要と申しましょうか、企業がそれをどうしても必要であって生まれてきているかというと、どうもそうでないものがこのごろ多くなってきている。しゃれた言葉でニーズ、必要が生み出しているんではなくて、シーズ、種をまくことによって生み出されているんだということが言われますけれども、必要は発明の母、こう言いますけれども、だれも余り必要は感じていないけれども、だけれども、何かが生み出されることによって実はそれが社会に普及していってしまうというような傾向がこのごろ多くなっております。こうなりますと、どのようなものが飛び出してくるかちょっと予想がつきません。これは私、専門の工学者と議論いたしましても、これから五年先、十年先はいわんや、五年先、どういう技術、どういう新製品が登場するか、全く予想ができないと言います。  これはどうしてかと申しますと、何か必要があってそれを解決する形で新製品が登場いたしますんですと、今どういう必要があるかという調査を行えば、それを解決する製品がいつ登場するかということで我々予測できるんでありますけれども、そうではない、何かそういうものを先につくり出してしまいまして、デモンストレーションエフェクトと申しますけれども、生み出されてしまったことが逆に需要を生み出してしまうということになりますと、何が登場してくるかわからない、今そういう意味ではどのような新製品が、ないしはこのME技術がどういうような使われ方をするかということがわかっておりませんで、そのことによりましてこれがどういうふうに市場の拡大に結びついていくかということが明確に見えません。そのために予測が非常に困難で、御質問にありましたように、あるいはこれはただ単に、新しい製品も市場も生み出さないままに人間の労働 を機械に自動化していくという結果、大きな失業問題につながらないとも限りませんし、ないしは新しい製品を生み出し、市場を拡大し、そのことによって過去の技術革新と同じように多くの労働需要を生み出す、可能かもしれない、まさしくこの点についてはほとんど今どの学者に聞きましても予測がつかないという段階だろうというふうに思っております。
  32. 山田譲

    山田譲君 大変勉強になったわけでありますが、二つほど。  一つは、先ほど中高年労働の問題が出ておりました。これさっきから、私は前の阿島先生にお聞きしようと思って時間で聞けなかったんですが、マイクロエレクトロニクスを使用している年齢階層別の表があるわけです。これ見ますと、五十以上というのはみんなゼロでして、四十から四十九というのも少ない、三十から三十九が圧倒的に多いわけですが、業種別にいろいろありますけれども、全体として見た場合に。私はこれを見て、今までずっとやってきて現在四十なり五十になった人はもう使いものにならぬという意味か、それとも現在三十から三十九で一生懸命やっておる人たちは四十―四十九、五十以上になっても、さっきの話じゃないけれども、熟練を積んでME仕事をずっと続けていかれるというふうにとるのか、この表はちょっと読み方わからないものですから、そこを教えていただきたいということ。  それと、先ほどせめぎ合いという言葉がありましたけれども、現在の失業者数、失業率見ても、まさしく何かそういう感じがして、どうなっていくのかちょっと予測ができないような状態でございます。ただ、倒産件数の話もありましたけれども、これはやっぱり倒産については建設業みたいなのが非常に多いわけです。そういうところはMEに余りなじまないんじゃないか。そういうところから出てくる倒産というものは、必ずしもMEとは関係ない問題じゃないかというふうに思うんです。もう一つ中小企業で大きな問題は、やっぱり下請企業が非常に中小企業の中に多い。そういうのはもうMEどころか、上からぎゅうぎゅう言われて、仕事はいっぱいあるけれどもちっとも単価が上がらないから、仕事があるほど苦労がふえるだけでちっとももうからない、こういう話がよく聞かれるんですけれども、そこら辺をどういうふうに考えればいいのか、それについてお伺いしたいと思うんです。
  33. 梶木又三

    委員長梶木又三君) ちょっと亀山参考人に申し上げますが、恐れ入りますが、まだ質問者ありますので、時間ないので要点でひとつ御答弁願いたいと思います。
  34. 亀山直幸

    参考人(亀山直幸君) 二点について御説明申し上げます。  まず第一点については、このことをぜひ御理解いただきたいと思います。論理的に起こることと実態とは食い違っているということでございます。先ほど申し上げましたように、ME機械というのは中高年齢者の技能を無用にしないと申し上げましたのは、ME機械の特徴から引き出されました論理的結論でございます。実態はどうかと申しますと、今御質問のありましたように、中高年齢者がついていないということが起こっております。これはME機械の特徴を理解し、ME化の中で中高年齢者の持っている技能を有効に使おうとするのでなしに、割と浅い理解のもとに、新しい機械には新しい労働者を、古い機械には古い労働者をという安易な理解が横行しているからだというふうに思います。そういう意味では、私は古い労働者は使いものにならないという理解が間違っているというふうに思っております。  では、今三十代の労働者はこれから先よくなるのかといいますと、実は私はむしろそのことに危機感を感じております。と申しますのは、新しい労働者最初からNC工作機械に入ってしまいます。そうしますと、先ほど申しましたように熟練を積むチャンスがございません。今は熟練工がおりますので、彼がプログラムをするときに教えてもらえます。じっくり経験がある労働者だったらどうするんだということをチェックしてもらえます。ですけれども、経験を積むチャンスがなくなったときに、プログラムをかくという能力はあるけれども、経験を積むチャンスがなくなったときに、その人間のかくプログラムは経験した労働者がやるような作業でなくなるおそれがある、そういう意味では、逆に若い労働者に古い機械を使って経験を積ませるというようなことがむしろ必要になってくるんではないかというふうに思います。ですから、若い労働者はこれから先も使いものになるのかという意味では、ちょっと別の意味を持っているというふうに思っております。  もう一点だけございます。下請のことに関してでございますけれども、この点についてはぜひとも御留意いただきたいのは、我々が漠然と考えている下請中小企業のイメージと現在大きく変わってきております。  私が下請中小企業に対して、おたくの企業が成立している、成り立っている、生き延びている理由は何かというアンケートを三千百五十社に対して行いました。その中で、安い賃金の労働力を使い、工賃が安い、そのことがうちのメリットだと答えた企業は一割にすぎません。全体で八割程度企業は、他社にはない技術を持っており、他社ではできない製品をつくっているということを答えております。このように、中小企業の存立基盤そのものが変わってきております。そういう意味では、我々は中小企業に対するイメージというものを変えていく必要があるんではないかというふうに思っております。
  35. 矢原秀男

    矢原秀男君 二点だけお願いいたします。  先生の理論の中で、中小企業ME化を促進させる非常に大きな理由の一つに、多品種少量生産という論理がございますけれども、少しこれを簡単に教えていただきたいこと。  もう一点は、先ほどもお話がございましたが、ME化時代の中小企業の特性の発揮というのは、今もちょっと、八〇%が他社にない製品で勝負をしている、こういうお話もございましたけれども、これも一言添えていただきたいと思います。
  36. 亀山直幸

    参考人(亀山直幸君) お答え申し上げます。  ME機械というのは多品種少量生産に合っているというふうに言われますのは、従来の高度経済成長の時代のいわゆる単能専用機と言われるもの、同じ仕事を繰り返し繰り返し行う単能専用機というものが同じ仕事を大量にこなす場合に大変有効でございます。ところが、ME機械というのは、プログラムさえ入れかえてやれば、ティーチングさえかえてやればいろんな仕事をできる、仕事を切りかえることができる。そういう意味で多品種な仕事を行うことができる、こういう意味でございます。  しかし、これはややもすれば誤解して理解されております。どうしてかと申しますと、では多品種少量だと、五つの試作品部品を削っているというのに合うかというと、これは合いません。少なくともNC工作機械を動かす場合にはプログラミングテープをつくらなければなりません。このためにかなりの労力が要ります。そして、それを使って五個のものを削っていたのでは合いません。私は、多品種少量というのは、これは大企業ベースの多品種少量であって、中小企業でいえば多品種中量と言われるべきだというふうに思っています。かなりのロットサイズがまとまらなければならないのであって、中小零細企業でいう少量のロットの場合には従来の汎用機械の方がむしろ適合的であるというふうに考えた方がいいんではないかと思います。そういう中で中小企業の生きていく道と申しましょうか、存立基盤というのは、大規模な生産ではなしに、そういうような少量のロットサイズのものに特化していく。そういう中で、ある程度の量がまとまればME化も進むし、ME技術を使うこともできるし、またもっと小さい場合には汎用機械を使って熟練した労働者がそれを一つ一つ処理する、高度の技能をもって処理するというようなところに、やはり中小企業の基本的な存立基盤というのはあるというふうに私は思っております。
  37. 吉川春子

    吉川春子君 私も二点お伺いいたします。  第一点は、内製化に伴い中小企業あるいは零細企業仕事そのものが奪われるという状態は、これから先かなりもっと激化していくんでしょうか、あるいは何らかの活路が見出し得る余地があるんでしょうか。先ほど参考人が、倒れていく中小企業には社会的なケアをというふうに言われましたけれども、具体的にはどんなことを考えていらっしゃるのか。ME化に伴って中小企業のまたその下にいる零細企業ですか町工場、そういう人々の運命は一体どうなっていくのか。ここを第一点として伺います。  それから二点目は、今テクノポリスということが全国的に計画されておりまして、テクノポリスの指定を受けていないところでいろいろこういう先端産業企業誘致ということが盛んに行われているわけですけれども、こういうことが第一の質問との関係でてすけれども、中小零細企業仕事確保にプラスになる要因があるのかどうか。まあそういうことを期待して各県はもちろんテクノポリス構想を立てているんですけれども、いろいろ先生の書かれたものなんか読んだりいたしますと、非常に絶望的な感じもいたしますが、その点お聞かせいただきたいのと、それから地場産業との関係でいいますと、例えばファインセラミックスなんかが陶磁器産業の盛んな地域で新たな受け入れられ方をしているということもあるんですけれども、ME化と地場産業の振興、何かそういう点で活用できるものがあるのかどうか、以上お願いいたします。
  38. 亀山直幸

    参考人(亀山直幸君) 時間がございませんので、ちょっと簡単に、そして少し早口になることをお許しください。  まず内製化の問題でございますけれども、かつての傾向では、大企業は自分の製造部門を外へ外へと切り離していく傾向が非常に強うございました。それがME化の過程の中で、一定程度でございますけれども、これは大企業の中で余剰人員が発生し、その大企業の中に発生した余剰人員仕事を与えるという必要もあってでございますけれども、内製化、つまり外へ出した仕事企業の中に取り戻すという傾向が強まってまいりました。ただ、それがどこまでいくかということでございますけれども、私は、これから先それがどんどんもっと進むというふうな見通しはないんではないかというふうに思っております。このME化の中で相当ME技術を使って足腰を強くした中小企業については、そういうような仕事を大企業がむしろ一括して任せるという一括集中の下請発注というようなことが行われておりまして、そういう技術中小企業が持ち得てきているということがございます。ただ、今申しましたように、それはそういう足腰を強くした中小企業でございまして、その中で先ほどから話題になっておりますように、大変激しい競争の中でその闘いに耐え切れない中小企業も出てきております。  この席でそういうことを言うのは少し差しさわりがあるかもしれませんが、従来どちらかといいますと、中小企業の物の考え方は、すべての中小企業をつぶさないように全部保護していくというのがあったと思いますけれども、私はこのME化の過程の中で、つまり限界的な中小企業も全部下へ倣えということでそろえていく、守っていくというのがケアする道であるというふうには必ずしも思いません。それは不可能ではないかというふうに思っております。それほど大きな技術上の変化が現在進行しております。私は、むしろ中小企業の中でつぶれていく中小企業、そこを離れる労働者に対して新しい就職口につけるような職業訓練なり職業指導というようなものを強め、そして新しい仕事の分野に労働者が移っていけるような、フリクションを小さくしていくというようなケアが有効でないかというように思います。  もう一点、中小企業がこのME化を進める上で一番何がネックかといいますと、実は従来の中小企業論からいいますと、資金的余裕がなく、新しい機械を導入できないというのが大きなネックでありましたが、今度の場合にはそれは大変小そうございます。私が持ってまいりました皆さんのお手元にある資料でも、後でごらんいただきたいと存じますけれども、資金調達が困難で導入してないという理由は大変小そうございます。  現在大きくなっておりますのは、むしろそういう機器を使いこなすだけの人材、技術者中小企業に不足しているということが起こっております。技術者不足技術者に対する争奪戦が起こっております。私は、すべての中小企業ME技術を駆使する技術者をそれぞれ別個に確保するということは大変困難ではないかと思います。私は、ある一定の地域で技術者を確保し、そこで社会的にその中小企業技術者を共同して利用していく、経験をお互いに共同して利用していくというような技術者の社会的利用と申しましょうか、そういうような道がこれから中小企業分野では必要になってくるのではないか。そういうような地域的な活動の一環としてテクノポリス構想なども位置づけられれば、利用できれば、それはあるいはいい芽が出るのではないかというふうに思っております。  地場産業に関しては二つございまして、一つは、旧来型の地場産業ME機械が導入されたために価格が下がる、そのことによって需要も増すという可能性、私は先ほど申し上げましたように一つの可能性しか申しておりません。ほかの可能性がいっぱいあるということを一番最初に申し上げましたけれども、一つの可能性だけ申しておりますけれども、そういう可能性はございます。  それからもう一つ、今ファインセラミックスの例のように、ME機械を使うことによってそこの地場産業のその製品が従来とは違った用途に使われるという可能性もございます。それは明らかに地場産業にある活性化の要素を与える、もちろんそうでない逆の要素があることを繰り返し申し上げるところでございます。
  39. 藤井恒男

    藤井恒男君 今までMEの問題について、この委員会でも現地視察をしたりいろんな方のお話を聞いてきたわけなんだけど、少なくともこれまでの間、我が国の産業、とりわけ労働者労働組合と言ってもいいでしょう、その中にME化が極めてスムーズに進んでいる。表現を変えれば熟練労働者もあるいは新規労働者もこのME機器等、NCも含めてですが、上手に同居している。ヨーロッパの場合はそうじゃない。のっけから雇用との関係においてこれが受け入れがたい、こういった概論的なお話がありまして、それどこに原因があるのか、私は私なりに、日本の場合にはハウスユニオンである、外国、とりわけヨーロッパではクラフトユニオンだ、だから雇用の契約形態、あるいは終身雇用の中における昇進、考課、これが全く違う。したがって、彼らにしてはジョブ意識が非常に強くて、MEに取ってかわられればすなわちそれは失業につながると、短絡してしまう。雇用契約もそうなっているというふうに私は解釈しているわけなんだけど、そういった点を考えれば、これからシーズをつくっていく時代なんだから、我が国にあっては旺盛な労使ともどもの極めて高い労働意識、企業意識、こういうものの中で私はどんどんME化というものは進んでいくだろう。それに比してヨーロッパはなかなかそれは進まないだろう、いい悪いは別として。そういう見方をして、その中から静かに雇用問題、安全衛生問題というものをやはり模索していかなきゃいかぬというふうに考えているんだけど、そういった見方どうでしょうかね。
  40. 亀山直幸

    参考人(亀山直幸君) 御指摘の点よくわかりますけれども、ヨーロッパに対する理解は多分少し私は違います。ヨーロッパの労働者も今ME化に関しては、公式の表現は別として抵抗しないという方針が基本路線でございまして、これは確かにME化の起こった初期にはME技術革新によって大変失業問題が起きるのではないかという、つまりMEに、ロボットに職業をとられてしまうんじゃないかという議論が多うございましたけれども、フランスなどに顕著でございますけれども、むしろそういうような意見のためにME化を押しとどめてしまう、技術革新を押しとどめてしまう、その結果日本経済に国際競争の場で負けてしまう その結果フランス経済総体が低迷してしまう、そこで発生する失業の方が大きい。技術革新によって直接発生する失業よりは、技術革新におくれることによって経済が停滞して発生する失業の方が大きいという理解が労働組合レベルでもかなり強くなってきておりまして、むしろこの技術を使って経済を活性化し、そのことによって全体としての失業問題に対応していく必要があるんではないかという理解が強くなっておりまして、先ほど申しましたように、きょう午前中までに二日半、OECDの会でME問題を議論してまいりましたけれども、ヨーロッパ諸国も、日本に追いつくか追いつかないかはわかりませんけれども、大変積極的でございまして、日本はどんどん進むけれどもヨーロッパ諸国はどんどんおくれるという構図には私はならないだろうというふうに思っております。
  41. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 以上で亀山参考人に対する質疑は終わりました。  亀山参考人には、お忙しい中を本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。     ─────────────
  42. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 次に、横浜国立大学経済学部教授神代和俊君から意見を聴取いたします。  この際、神代参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、技術革新雇用労働及び中小企業問題につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず三十分程度意見をお述べいただき、その後三十分程度委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いをいたします。  それでは、神代参考人お願いいたしたいと存じます。神代参考人
  43. 神代和俊

    参考人(神代和俊君) 神代でございます。  今ちょっとお手元資料をお配りさしていただいておりますので、それをごらんいただきながらお聞きいただきたいと思います。  私十五分ほど早目に来たんですが、資料がございまして、ちょっと手違いでおくれておりますが、まもなく資料が参りますので、参りましたらそれをごらんいただきながらお聞きいただきたいと存じます。  初めに技術革新の問題、特に雇用労働中小企業等に与える影響につきまして、具体的な例をちょっと二、三御紹介申し上げて話の糸口にさしていただきたいんですが、ここに妙なパンチカードのようなものがございますが、何かおわかりになるでしょうか。  これは、西陣の帯のジャカードという明治の初め以来使っている織機がございますね。あの織機に使いますパンチカードなんです。縦糸の操作をやる必要がありまして、あれは御承知のように横糸と縦糸で組み合わせていきますが、横糸が先染めで赤とか黄色とかいろいろ染まっているわけですね。その染まった糸をどこに通していくか。順に縦糸を上げまして、上がったところへフライシャトルでぴゅっと糸を通していくわけですね、こういうふうに。ですから、正確に早く縦糸の操作をしませんと織れないわけですが、これは紋彫り職人さんというのが彫ったパンチカードなんです。  実は、西陣に最近急速にエレクトロニクス技術が入ってきております。私が直接参りましたのは、その中のとみやというかなり大きなビルディングをつくっている企業でございますが、西陣は御承知のように大変零細な企業の集まりでございますが、その中で、そういうエレクトロニクス技術導入した企業は、まさにコンピューターグラフィックで、日本の絵かきさんがおかきになった日本絵、これを生絵と申しますが、生絵を設計図に書き直すわけですね。三枚ぐらいに分解をしまして、そして方眼紙にそれを書き直すわけですね。その書き直したものに基づいてこれに穴をあけていくわけなんです。複雑なものになりますと、二万枚ぐらい一本の帯でこれが要るわけです。ミシンという非常に古い機械で、大体もう老人ですけれども、パンチをしているわけです。一日に七百枚ぐらいが限度だそうでございます。したがって、複雑な帯になりますと、一本の帯をつくるのに必要なボードをつくるのに、約一カ月近くかかってしまうというのが今までの技術でございます。  それが今エレクトロニクス化してきておりまして、お手元に今お配りしましたこの資料をちょっとごらんいただきたいのですが、「西陣織のできるまで」という資料工程図が書いてございます。その右の上の方に、ちょっと黒く囲ってございます部分エレクトロニクス化されてきております。  それで次の二枚目の図を見ていただきますと、従来の工程コンピューターを使った工程とが対照してございますが、このジャカードにかける紋紙というものをつくるプロセスが、今ワンパンチ紋彫りというようなものが入ってまいりますと、一日七百枚だったのが一時間に三千枚ぐらいになります。さらに最近のごく新しいものですと、この紙、これをフロッピーディスクに入れてしまいまして、全然これが要らなくなってしまうんです。  西陣の織り場へ行きますと、天井にこれが二万枚ぐらい順繰りに編んで、大きな束になってつるしてあるわけなんですが、そういうものが全然見当たらないダイレクト・ジャカードという機械に今変わってきております。これが入りますと、物すごくそれは工程がスピードアップされる。この紋紙をつくっております約七百人おりますパンチャーの大部分が老人ですけれども、何よりもその方々が失業することになります。現在はまだとみやさんとか二、三の協同組合ができまして、そういうところでしか入っておりませんが、本格的にこれが入りますと、恐らく何年かのうちには紋彫り職人さんというのは一掃されてしまうんじゃないか、これはME技術の暗い面の代表的なわかりやすい例だと思います。  ただ、西陣の同業組織というのは非常に巧妙にできておりまして、とみやさんのようにコンピューター化した企業がそのために自分で紋彫りさんの首を切る必要が全然ないわけです。同業組合が全く織元と別の同業組合になっておりますので、織元はただ注文を出さなくすればいいだけの話でありまして、したがって、注文が来なくなった紋彫り職人はタクシーの運転手に転業するとか、既に起こっておりますが、自分で何か生活の方法を考えなきゃいかぬ、こういうような状況でございます。規模が少ないためにラダイツのようなことには起こらないと思いますが、性質としては昔のイギリスの産業革命の時期に起こったようなことに近いことが現に起こっているわけです。これが強いて申しますと、暗い方の代表的な事例でございます。  しかし明るい面の材料の方が、探してみますと非常に多いわけでございますが、お手元にお配りしましたメモ書きをちょっと見ていただきますと、そこに今申し上げたのは「ミクロの明暗」というところで、レジュメの最初のオビトロニクスという、これは帯をつくるエレクトロニクスだもんですから、私がつくった造語でございます。オビトロニクスと呼んでおりますが、オビトロニクスはそういう暗い方の代表ですが、次のオリイというのは、これは神奈川県の伊勢原にある中小企業の名前なんですけれども、プレスロボットの専業メーカーでございます。プレスロボットで、要するにプレス加工する材料の搬送を自動的にやるロボットでございます。それをつくって非常に成功している会社でございますが、ここには労働組合がございません。中小企業はほとんどそうなんですけれども、ここにもございませんで、従業員二百七十人の中小企業だと思いますが、非常に収益 が上がっております。  そして従業員に持ち株制をとっておりまして、最近NHKのテレビで、グラフテックの話が出ておりましたが、ああいう感じでございまして、今現在まだ上場しておりませんけれども、従業員の中には既に三百万円ぐらいの株を持っている人が何人もいるわけでございます。そういう方々が四、五年のうちに株を公開いたしますので、そうしますと一挙に億万長者になってしまうというような実態でございます。しかし、そういう優良な企業でも、実際に現場のブルーカラーの労働者を集めようと思いますと、チラシを入れて募集してもなかなか来てくれない、人が集まらないというのが実態であります。  それから三番目のOA革命の方でございますが、これはそこの霞ケ関にプレスセンタービルがございまして、あの中に元本社がございまして、今、裏の方の大きな国際ビルの中に本社が移っておりますが、そこに女性のワープロのオペレーターとかタイピストとか秘書とか、そういう人たちを集めたテンポラリーセンターというのがございます。非常に有名になっておりまして、これはいわゆる人材派遣業の中の最大手企業でございます。学生のときにこのビジネスを始めて、十年で年商既に百億を超している大企業にのし上がってしまったわけですが、これは、ここにサンパティックという銀座にそのブランチがありますが、英語のシンパシーのことですが、わざわざフランス語でサンパティックという発音をさしているようでございますけれども、要するに私設職安なんです。  銀座の英國屋さんの上にオフィスがございまして、そこに行きますと、毎日、某商社とか銀行とか大手メーカーとか、そういうところからパートタイマーの求人が参りまして、その求人表が張ってあります。今、一万六千人以上登録のメンバ―を持っておりますが、登録するには実務経験三年以上で面接試験に受からないといけないんですけれども、登録した人がコンピューターに入っておりまして、それで求人が参りますと、それを組み合わせて紹介をする、そして手数料を取る、こういうシステムでございます。これなんかも、まさにそのワープロオペレーターを中心にした新しい労働市場の需要に即応した、急速に成長している一つの代表的な事例でございます。  それで問題は、そういうミクロ的に見た全体の明暗がマクロでどうなるかという話なんでございます。これは、経済学的にいろいろ分析をしませんと正確な答えは非常に出しにくいんでございますけれども、まずそのマクロの話に行く前に、ちょっとお手元資料を何枚かめくっていただいて、五ページというところがございます。そこにトヨタ自動車のデータがちょっと載っけてございますが、そのグラフの方を見ていただきますと、この数年生産が物すごく伸びております、御承知のように。生産が物すごく伸びたために従業員数もじりじり上昇しております。しかし、生産の伸びの方がはるかに大きいので、労働生産性が非常に上昇している。もし全体がこういうことであれば、生産は猛烈に伸びるけれども、労働生産性の伸びが非常に大きいので雇用の伸びは割合に少ない、こういうことになるわけでございます。しかし、果たしてすべての産業が自動車のような状況に行っているのかどうか、そこら辺が難しいわけでございます。  自動車ではよくロボットのことが問題になりますが、六ページ、次のページをごらんいただきますと、図がございますが、これはある大手の自動車メーカーの実際のデータでございますけれども、右側に人員がとってあって、縦軸にロボットの台数がとってありますので、もしロボット導入して人が減っているということが起こっているとすれば、左上に矢印が出なければいけないわけですね。ところが、ごらんになると、みんな右上か縦になっておりまして、要するにこれは、自動車は生産台数が激増し、かつ次のページ、七ページを見ていただきますと、自動車の設計構造が変わりまして、自動車一台当たりの打点ですね、溶接打点数が五割増しになっているわけです。  したがって、生産の伸びプラス打点の五割増しとあわせますと、やらなければならない仕事が激増しておりますので、人をふやさないでそれをやる方向には行っているわけでありますが、人を減らすようには行ってないというのが自動車の今までの実態でございます。これはしかし、生産台数の伸びが貿易摩擦等で激減するようなことがあれば、あるいは国内経済の不振で総生産台数が激減すればそうはいかない、人が現実に減り出す。しかし、今までのところは、さっきごらんいただいたように、生産が激増しているために雇用にはプラスの効果が少し出てきている、こういう感じであります。  それから、次の八ページには時計の例が出ております。ちょっと最近一、二年、時計はさま変わりなんですが、その前までの状況で恐縮でございますが、ここにあります図は、やはり輸出を中心にして、ウオッチの場合もクロックの場合も生産が物すごくふえた、生産が物すごくふえたために雇用も少しふえぎみだ。自動車と似たような状況がごらんいただけると思います。  九ページをごらんいただきますと、特にクォーツ化ですね。八ページで、斜線で、シャドーで消している部分がクォーツ時計の部分でありますが、クォーツ化が非常に進みました。クォーツ化が進みますと、九ページの図にありますように、時計一個当たりの部品点数が激減しているわけであります。特に、ねじなんというのはほとんどなくなってしまっております。そのために全工数で見ますと、昔のぜんまい式の時計の工数を一〇〇とした場合に、現在のクォーツ時計は部品がプラスチック化していることもありまして、全体で四分の一ぐらいに仕事量が減っているわけであります。したがって、もし生産台数が、さっきごらんいただいたように激増してないとすれば、時計の雇用量は四分の一になっているはずなんですね。しかし、生産が激増しているために、輸出がふえているために総雇用量は少しプラスになっているということが観察されます。  ごく代表的な事例ではそういうことがわかりますので、問題はそういうものをさらにいろんな産業全部をあわせてどうなるかということなんでございますが、ちょっと時間がありませんので多少はしょらせていただきますけれども、ミクロ経済学的な分析とマクロ経済学的な分析ではかなりこれは分析のやり方が違います。ミクロはやっぱり価格の変化中心になりますので、御承知のようにICなどコンピューターも値段がぐんぐん、ぐんぐん安くなっております。値段が安くなりますと、当然需要はふえるわけであります、まあ性能にもよりますけれども。その値段の下がり方と需要のふえ方の関係ですね。その辺の細かい分析をするとミクロ的な分析になりますが、これは時間もありませんし、経済学の講義ではありませんのではしょらせていただきますが、マクロはそういうミクロの現象を全部集計して、では今どうなっているか、こういう話でございます。  恐らく先生方の御興味の対象もその辺にあろうかと存じますが、これにつきましては、既に事前にお手元に配付されたと思いますが、ごく最近労働省の外郭団体の特殊法人の日本労働協会というところから「技術革新労働問題」という調査報告が出ておりまして、私が「全体展望」という序論を書いておりますので、その中に多少そういう経済学的な詳しい分析がしてございます。これは政推会議ですか、全民労協ですか、何かああいう労働組合の団体から促されて労働省が委託をしてきた研究でございます。  ごく考え方だけちょっと、このエッセンスを申し上げますと、お手元資料の後ろの方なんでございますけれども、一番最後の十八ページに簡単な図がございます。それをちょっとごらんいただきますと、ここにマクロで考える場合の因果関係が略記してございます。  よくジャーナリズムなんかで話題にされます場合は、技術革新が起こると、ロボットやワープロが出てくると、OAが進んでくると雇用が減る、 こういう直結した見方が多いわけですね。現実に、例えば富士通の山中湖の湖畔にございますファナックの工場なんかへ行きますと、まさにロボットによるロボットの生産をしておりますので、確かに非常な省力化がその工場限りでは進んでいるわけでございますけれども、しかし御承知のようにああいう無人工場に近いものをつくるには、あれを無人で動かすためのソフトウエアをつくるために、膨大な人が見えないところで雇用されている、こういうこともありますし、それから、あそこでつくっているロボットそのものに対する需要が世界から殺到しているわけでございますので、生産が順調にふえ、輸出がふえていれば全体としての雇用は、あそこの工場の中にいるよりははるかに何倍かの雇用日本全体としてはふえている、こういうようなことがこの図で簡単に示されているわけであります。  また、注意していただきたいのは、技術革新が確かに雇用にそういうふうに影響を与えるんですが、現実に影響が出ます場合には、間に最終需要のブロック、つまり消費とか投資とか政府支出とか輸出とか、そういう最終需要のブロックを経由して雇用量に変化が結びつきます。ということは、別の見方をしますと、技術革新は確かに雇用量に最終需要を経由して大きな影響を与えるんでございますけれども、最終需要と雇用影響を与える要因は、技術革新のほかにもたくさんあるということでございます。  そこには代表的な、mというのはこれは通貨政策でございます。日銀の貨幣政策。それからfは大蔵省の財政政策、いわゆる財政金融政策でございます。財政金融政策の運用いかんによっては最終需要の大きさはうんと変わってしまうわけであります。それからもう一つ貿易摩擦。これは輸出なんかはまさに貿易摩擦。ここにIRと書いてありますのは国際関係の略でございますが、国際関係次第でこれも自動車の輸出制限、鉄鋼の対米輸出規制、そういうものに代表されますように非常に最終要需に大きな影響を与えます。  したがって、現実は確かに、今の関心技術革新に焦点が当てられていて当然なんでございますが、その影響を生きている現実の社会の中ではかろうといたしますと、他の同時に作用しているこういう財政金融政策でございますとか国際関係とか、そういうものの影響によって発生したもの、例えば自動車や時計の輸出が貿易摩擦で激減して雇用が減った、こういう効果と、ロボットで、クォーツ化で人が減ったというものと、なかなか分離抽出が難しいわけでございます。それで、我々はできるだけそれを分離抽出しようと思って産業連関表を使ったり生産関数の計測をしたりして、多少数量的な作業をしておりますが、今までのところは特にME化ロボット化、コンピューター化がどれだけ雇用に直接に影響を与えたかというところまで正確に計測することは不可能でございます。これはまだ鋭意研究、継続はしておりますので、だんだん接近はできるかと思いますが、現状の産業連関分析ではこれはできませんです。  技術革新全体をあわせた効果は、これは出せます。現実に既に職研等で試算をしておりますけれども、しかし技術革新の中にはME化、OA化のほかの技術革新も全部入っているわけでございますので、分離抽出が非常に難しい。しかし全体的な考え方としては、この図でありますように、今申し上げたやはり最終需要に影響を与える他の要因との関係で見ていただきませんと、技術革新だけでこれが起こったというふうに即断をされるのは非常に危ないです。やっぱりその辺ははっきり区別をして考えていただく必要があるということでございます。  それで、労働の質とか中小企業に対する影響のこともお話すべきで、多少資料があるわけでございますが、三十分に時間が限られておりますので、多少政策的な提言みたいなことを言えというお話でございますので、簡単に私の提言を二、三申し上げてみたいと思いますが、これはやはり雇用の量に関する問題と労働の質に関する問題と、それから労使関係に関する問題と、三つの分野にまたがるかと思います。  雇用の量に関することでは、やはり何といっても完全雇用を維持しなければいかぬ、なるべく完全雇用に近い状態を維持するように経済政策や産業政策を運営してもらいたい、こういうことに尽きるわけでございますが、ただいまの御説明からおわかりいただけますように、やはり基本はマクロの経済政策、財政金融政策あるいは為替政策あるいは国際関係、貿易摩擦の管理とか、そういうことを含めまして、マクロの経済運営が順調に達成されるような配慮が何といっても一番基本になるわけでございまして、その中で、特に技術革新に関して申せば民間技術革新投資ですね、民間の設備投資、研究開発投資、そういうものを積極的に推進し、刺激するような補助的な産業政策がぜひ望ましいと思います。やはり民間の設備投資が衰えますと、国全体としての国際競争力も減退いたしますし、経済活動そのものが活性化されないわけでございますので、投資減税その他いろいろな具体策は考えられると思いますが、ハイテク企業中心とした既に幾つかの試案も関係省から出ているようでございますが、そうした施策がぜひ望ましいと思います。  それから雇用の量に関してもう一つ御配慮いただきたいのは、やはりこういう技術革新が急速に進むときには、労働の需給のミスマッチというのが非常に拡大をいたします。ほうっておきますと完全雇用の事態でも存在する失業率、最近自然失業率というような言い方をしておりますが、自然失業率がだんだんに上昇する傾向が発生いたします。例えばアメリカは昔は失業率四%で完全雇用と考えていたわけでございますが、最近は六%台で完全雇用というふうに考えています。日本も昔は一%台で完全雇用だったんですが、我々の最近の計算ですと、どうも二%、二・一とか二・三とかその辺の数字じゃなかろうかというようなふうに、だんだんやはり上昇傾向にあるわけでございまして、特にこれは労働の供給サイドで、女性とか高齢者の労働供給がふえてまいりますと必然的にそういう現象が発生いたしますし、あるいはコンピューターソフトウエア等を中心として企業が欲しがっている労働が不足しているのに、古くなってしまった技能を持っている人が余ってしまう、こういう需給のミスマッチが、ほうっておきますと非常に拡大をいたしますので、これは再訓練、再教育、これは今臨教審でやっている問題につながりますが、そういう施策を今まで以上に努力をして拡充をしていただきませんと失業率が上昇する危険があると思います。  特に中小企業が何といっても雇用の大部分を受け持っておりますので、中小企業雇用吸収力を刺激するような施策をぜひお考えをいただきたいと思います。  それから、労働の質でございますけれども、質に関しましては、一つはやはりコンピューター、これ実際にやってみますとわかりますけれども、最近はワープロのディスプレイで目が疲れるとかいろんなあれがありますが、やはりコンピューターそのものの技術をマスターしなければいかぬ、言語を覚えなければいかぬ、プログラムをつくらなければいかぬ、こういうことで神経性の疲労が非常に高まります。それからストレス、特に中高年になってコンピューターを勉強しなければいかぬような羽目に陥りますと、確実にストレスが高まりまして、ノイローゼが非常にふえております。これは特定の企業の名前は差し控えますが、有力な電気通信メーカー等をお調べになれば、絶対数ではまだそう大したことはありませんが、率としてはノイローゼの発生率が急激に上昇していることがわかると思います。  それからもう一つは、やはり労働の質の面で、女性、高齢者がふえることもございますけれども、労働のフレックス化、フレックスタイムという労働時間を自由にする制度でありますが、そういう労働のフレックス化のようなことをもう少し大幅に取り入れていかないと、これは現実にパートタイマーでそういうふうになってきているわけでありますが、正規の男子従業員につきましても、フ レックスタイム等を含めた労働の弾力化と申しますか、そういうことが必要になると思います。  三番目に、労使関係の分野でございますが、これはよく労働組合は合理化、設備投資、技術革新についての事前協議が必要だと。そのとおりなんでございます。現実に、今まで結ばれた技術革新協定はそういうものを非常に強調しておりますけれども、ぜひお考えいただきたいのは、実は日本では、組織労働者は全体の三割以下でございます。雇用労働者の三割以下でございます。民間だけとりますと、実は四分の一しか労働組合には属しておりません。四分の三は未組織労働者でございます。したがって、労働組合があるところでいかに事前協議を強調いたしましても、労働者の大群、四分の三の民間労働者というのは全くそういう機会に恵まれないわけでございまして、先ほど御紹介したようなオリイのように、利潤分配制度、従業員持ち株制度などを取り入れて、従業員との意思疎通をうまく図って成功している企業ももちろんあるわけでございますが、しかし何といっても数が多いためになかなかそういうふうに労働者の福祉につながらないところも多いかと思います。  特にその四分の三の未組織労働者に関して、ぜひ私は必要だと思いますのは、やはり労働時間をもう少し短くする方向で考えていただけないだろうか、これは法改正ということを含めてでございます。先生方御承知のように、我が国はまだILOの、国際労働機関の一九一九年にできました第一号条約というのを批准しておりません。これは実は批准できない事情が若干ございまして批准をしてないわけでありますが、その一つの理由は、労働基準法の三十六条に、残業についての三六協定の定めがございますが、基準法三十六条には残業の最高限の定めがございません。ところがILOの一号条約には残業の最高限を定めなければいけないことになっておりますので、これが抵触する一つの問題となって、まあその他の問題もございますが、いまだに批准ができないわけでございます。  ベンチャービジネス等に行ってみますと、実際非常に労働時間が長い例にぶつかります。これは大企業でも間々あるわけでございますが、現状はとにかく法的に三六協定さえ結べば成人男子については残業が青天井にできるシステムでございますので、そのために年間の労働時間が二千百時間を超すというような事態になっておりまして、これも広い意味では貿易摩擦の一因というふうにも考えられております。それをなくせば貿易摩擦がなくなるというほど簡単ではもちろんないわけでありますが、しかしぜひこの技術革新の成果の一部を、賃金とかボーナスに回すだけでなしに、労働時間の短縮の方にも回すように、これは直接の労使当事者だけでは手の及ばない四分の三の労働者には、立法的な改革もいずれ必要になる時期が来るのではないかというふうに考えております。  ちょっとはしょりましたが、時間をオーバーいたしました。質疑で補わしていただきます。
  44. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で神代参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  45. 長谷川信

    長谷川信君 いろいろ教えていただいたのでありますが、今先生お話しの中で、なかなか将来の技術革新の予測が――さっきの参考人のときも私お聞きしたのでありますが、ここ十年の間の変化というのはまさに革命的な変化だと思うんですね。だから、これから十年待たなくても五年先あるいは七年先、これは今から予測できないような事態にも当然行くと思うのですが、今私ども国会で一番大事なのは、やはりこれからどういう形に変化をしていくのか、一番私ども知りたいのはそこなんですよ。  例えば中小企業問題で今先生からお話しございましたが、確かに今御指摘のとおり、中小企業に従事している人が四千五百万人いる。四千五百万人の人がこれからどういう方向に行くかということによって、政治的にも非常に私は重大な問題を含んでいると思うんですね。  今、西陣のお話もございましたが、何かいろいろ研究して何とかかんとか抜けているところもありますし、もう真正面から壁にぶつかって、とてもというようなのもかなり出るかもわからぬですね。そういうことで、私ども一番知りたいのは、これから五年、七年たったら、今の技術革新というものがどこまで変わるのか、これはお聞きする方があるいは無理かもわかりませんが、若干先生の推測も含めて、どんな形になるものですか、私にもわかる程度に教えていただきたいと思います。
  46. 神代和俊

    参考人(神代和俊君) お手元に若干資料が用意してございますので、まず十七ページをちょっとごらんいただけますでしょうか。  そこに「技術進歩と労働問題」の関連図のようなことが出ておりますが、技術進歩が発生するといろいろな変化が起こるわけでありますが、まず新製品が出てきて新製品をつくるための雇用が生み出される。あるいは生産性が向上して値段が下がります。値段が下がると需要がふえる。しかしこのふえ方は価格弾力性の大きさで一概には言えない。それから時計や自動車はまさに代表のように技術革新によって品質が非常によくなります。そうするとやはり需要がふえまして、それに伴って雇用がふえる。こういうプラスの効果と、それから生産性が上がって省力化が行われるというマイナスの効果、その両方合わしたものがネットの効果で、それが先行きどうなるか、こういう御質問だと存じます。  それで、やはり一番大きいのは、私は新製品を中心とした需要がどれくらい出てくるかということが相当決め手になると思うのですが、十ページをちょっとごらんいただきますと、下段の方に「新技術製品分野の市場規模予測」という、これは東大の石井威望さんの書物から借用したものでございますが、そこに数字が書き込んであると思いますが、ちょっと字がかすれておりまして――たしか十何兆という規模だったと思います、寄せていただければいいのですが、ちょっと今手元に数字がありませんが、非常な規模で新製品の市場が広がるということがわかります。  それから次の十一ページをごらんいただきますと、これは別の本からとってきたもので、よく市販されている本ですけれども、そこに今後先端技術の市場が十倍になるもの、百倍になるもの、千倍になるものというふうに、具体的にどんなものがふえるかということが書き込んでございますが、ごらんいただきますと、相当最近の通信技術や何かも含めまして、新規の製品によって、新しい今まで考えられなかったような需要が生まれてくる、こういう予測だと思います。  もちろんこういう予測自身がどの程度の正確性を持っているかも問題でございますけれども、やはり現在のコンピューター通信革命を中心としたいわゆる情報革命でございますが、情報革命の私は潜在的な力というのは非常に大きいと思います。これは昔から、過去に発生した技術革新をその時代の人が予測した記録が本にたくさんございますけれども、そういうのを見ますと、もう全然これは当たってないんですね。過去の何回かの技術革新でもみんな過小評価しています。例えば一番いい例は飛行機で飛んだライト兄弟でございます。ライト兄弟のお兄さんのウイルバー・ライトという人が一九〇九年か何かに書いた文章の中に、飛行機から爆弾を落とすようなことは将来ともあり得ないだろうと言っているんですね。それは、飛行機から爆弾を落として自分がその破片をこうむらないためには千フィートの高さで飛ばなきゃいけないけれども、千フィートの高さになったら爆弾が命中しないから実用されないと言っていたのが、四、五年後に第一次大戦で実用化されると、こういうようなことで、まさに自分が飛行機で最初に飛んだ人がそういう過小評価をするようなのが典型的な事例でございまして、今の技術革新についても我々は多分非常に過小評価しているのじゃないか。  ただ、こういう潜在的な物すごい膨張力を持った需要が、実際に現実に経済の中で発生してくるかどうかということになりますと、私は技術だけではこれは解決できない問題だと思います。最低二つの足がありませんと成り立たない。一つの足は、やっぱりこれはエネルギーの問題だと思います。過去の産業革命を振り返ってもわかりますように、第一次産業革命は工作機械や蒸気機関が出てまいりましたけれども、あれはやっぱり石炭のエネルギーがなければできなかった。第二次産業革命は電力とか石油がなければできなかった。やっぱり第三次産業革命はポスト石油の水素とかクリーンエネルギーですね、燃しても公害が出ない、かつ安価に大量に供給されるような、そういうエネルギーが本格的に開発される見通しがどうしても一つ必要だと思います。  それからもう一つは、物すごい技術とエネルギーを結合して生み出した製品がさばけないことにはだめなんですね。第一次産業革命のときは、御承知のように、つくったものがイギリスを中心とした自由貿易体制の中でみんな売れたんです。ところが、第二次産業革命のときは、御承知のように世界市場で摩擦が起こりまして、二つの世界大戦が起こり、社会主義が生まれ、そういう大きな激動を経て、第二次大戦後ようやくIMF体制とか、ガット体制とか、ああいうものができまして、ついこの間まで比較的安定した自由貿易の秩序ができたと思います。ところが、今それが崩れて変動相場制になりまして、保護貿易的な動きがたくさん出てきておりますので、これがもう一度世界市場に安定的な秩序というものが回復されるという見通しが立ちませんと、せっかく技術の持っている可能なこういうものが、実際にどれくらいの市場規模になって世界的に広がるかということは、これはだれにもわからないというのが筋じゃないかと思います。
  47. 長谷川信

    長谷川信君 ちょっと先生もう一つお願いしたいんです。
  48. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 簡単にお願いいたします。
  49. 長谷川信

    長谷川信君 はい。  今の御説明とダブると思いますが、日本は今この先端技術は世界でかなり高度の状態にありますね。いろんな角度から見て今の日本の優位性というものがどの程度これから持続性があるのか。いろんな説が、そう長くもたぬだろうという話もありますし、相当もつだろうという話もありますし、もう私どもやっぱりいろんなものの判断で非常に大事なポイントだと思うので、端的にひとつ御説明願います。
  50. 神代和俊

    参考人(神代和俊君) これはもう非常にたくさんあります商品の個々について、正確な国際競争力を比較するというのは至難のわざでございますけれども、一番わかりやすい、例えば自動車の例なんかでは、アメリカの運輸省が出した報告書等がございますけれども、大体日米間に今自動車一台当たりで最低千五百、多分千七百ドルから二千ドルぐらいのコスト差があると言われておりますが、これを縮めるためには非常に非現実的な仮定をいろいろ組み合わせませんと縮まらないと思います。まず九年先とか十四年先になりまして、日本の賃金が毎年七%ぐらい上がって、生産性が全然上がらないで、為替が五%ずつ高くなっていく、こういうような非現実的な仮定を置き、逆にアメリカが生産性が五%上がって賃金が三%ぐらいに抑えられる、こういうようなまたあり得ない仮定を組み合わせても、九年とか十四年とかかからないと縮まらないぐらいの格差に今なっております。したがって、自動車、電気のような加工工業に関しては、自動車に象徴されるぐらいの今現在持っている競争力の差というものが、私は、他の石油とか貿易関係とかそういう環境条件が変わらなければでありますけれども、まあ十年ぐらいの間は十分もつと思います。しかし、そこから先のことは、まさにもうさっき申し上げたような新エネルギーを含めまして、技術革新を自分でどれだけ創造していく力を持つかということにも依存すると思いますし、それから何よりもやっぱりつくったものが世界市場で自由に売れるような国際政治の管理が外交を通じてうまくできるかどうか、そこの辺に大幅に依存しているのではないかと思います。
  51. 山田譲

    山田譲君 二つほどお伺いしたいんですが、一つは、MEから見ただけでやっぱり雇用の問題は議論できないんじゃないかという感じがするんですね。ですから、産業構造の、第一次産業、第二次産業、第三次産業の構造の変化というふうなものをやはり考えざるを得ないんじゃないか。とりわけ第三次産業というものが非常に物すごい勢いで伸びているというふうなことを考えますと、ただMEだけでもって雇用量が云々ということは言えないんじゃないかという感じがいたします。    〔小委員長退席、長谷川信君着席〕  それと同時に、こういう潜在的な能力を、MEについてだけ見ればあるんだけれども、やはり今おっしゃったように国内的にもそれを買うだけの賃上げというか、そういうものがないとやっぱり雇用が伸びていかないんじゃないかという感じもいたします。  それからもう一つ労働時間の問題でしたけれども、労働時間もう少し少なくするということは当然だと思うんですが、考えてみますと、法律を改正したり基準法を改正して、八時間労働を例えば七時間労働にしたところで、現状を見ますと、やっぱり残業手当がふえるだけのことでして、所定労働時間は減るけれども、実労働時間はちっとも減らないというふうな状況が現に今でもあるわけですけれども、そういう状態になってしまうんじゃないかと思う。だから、そこのところを、実労働時間を減らすようなことを考えていきませんというと、それは三六協定、三十六条を改正して最高を抑えるというふうなことも一つは必要かもしれませんけれども、労働者自体がなかなかそのとおりにはいってないという現状を考えるときに、これは労働時間の問題は、私は非常に難しいというか、単純でないなという、日本においては特にですね、そういう感じがするんですけれども、その辺についての先生の御意見を伺いたいと思うんです。
  52. 神代和俊

    参考人(神代和俊君) 大体先生のおっしゃるとおりだと存じます。  特に労働時間につきましては、短時間なのでごく簡単な乱暴なことを申しましたけれども、実際に短縮する手だてをつくるということは非常に難しい問題でございまして、現在労働省労働基準法研究会第二部会の方で具体的な検討を進めて、先ごろ中間報告が出まして大分話題になっておりますけれども、あの程度でもなかなか実際はできない、四十五時間にするだけでも容易でございません。仄聞するところでは、残業の最高限規制のことも議論にはなったようでありますが、あの中間報告には盛り込まれておりません。  つまり先生御指摘のように、やっぱりいざとなると非常に実現困難な、特に中小企業中心にしてやっぱり残業でこなさなきゃ注文がとれない、労働者はもう残業手当が欲しいと、こういう問題もありまして、なかなかやはり社会構造、生活のパターン、商取引の慣行、そういうものを含めて社会的な改革が進みませんと、そう簡単に法令一つ改正というわけにはいかないんだろうと思います。
  53. 山田譲

    山田譲君 それからもう一つ産業構造の問題はどうでしょうか。
  54. 神代和俊

    参考人(神代和俊君) これも先生御指摘のとおりだと思います。  現実には、今まで割合に技術革新の中で雇用がふえておりますが、ふえている大部分はサービス業、商業部門でございまして、第三次産業中心に伸びておりまして、製造業は一時激減した後じりじり戻ってきている程度で、今全体の四分の一をちょっと割っている状況でございます。したがって、実際にふえますのは、ソフトウエアなんかは、分類の仕方によっては三次産業に入っているものもかなりあると思うんですけれども、やはり非製造業部門での増大というものが非常に大きいだろうと思います。サービス経済化、ME化と いうのは表裏一体の関係にあるんじゃないかと思います。
  55. 山田譲

    山田譲君 ありがとうございました。
  56. 矢原秀男

    矢原秀男君 一問だけ教えていただきたいと思います。  私も、西陣織物の絹の生地をつくっております丹後ちりめんというのが兵庫県の日本海の方にございますけれども、この十年来御相談を受けたり、はっきり言いましていろんな諸条件の中で非常にもう景気が悪くなっておりまして、そういう中でいつも頭を痛めておるんですけれども、きょうはたまたま先生から西陣織物のお話がございまして、非常にもうどきっとしておるんでございますけれども、これ丹後ちりめんという下地の生産の中から、今、この西陣織物の省力化されたME面の非常にすばらしいところを見せていただいたんですけれども、省力化というものが、この図案の工程から上だけでなしに、その前の生産地においても大きな影響が、これ暗い面が出てくるんではないかなと今心配しておるんですけれども、もう少し広げた面での分析をちょっと御指導をお願いしたいと思いますけれども。
  57. 神代和俊

    参考人(神代和俊君) 織物に関してでございますか。――これは、西陣はもう京都大学とか同志社大学とか、京都にたくさん専門の研究者がおりまして、私たち後から入っていく余地がないくらいなんですけれども、ちょっとこれはこういうオフィシャルな場所で申し上げるにはふさわしくない例かもしれませんが、多分私は織物に関してME技術コンピューター技術導入している度合いというのは、日本が一番早いんじゃないかという気がするんですね、織布の工程。  全くこれは想像ですけれども、御承知のようにジャカードはフランスから明治の初年に導入した技術でございますが、それを百年間使ってきているわけです。多分フランスではあのままの、今の古いジャカードでゴブラン織とかああいうものをやっているんじゃないだろうか。日本ME化が先に行きますと、そのうちにフランスにゴブラン織を日本から輸出し出すんじゃないかなというちょっと想像がありまして、国内市場だけやっていたら、確かにもう着物は先細りでございますし、女性もだんだん帯を締めなくなっておりますから、市場そのものが縮小しておりますので、もうそこに高性能の生産性の高いのが入ってくれば、もうこれは雇用が減るに決まっているわけでございます。そういう輸出可能性のようなことが出てくれば、多少事態が変わるんじゃなかろうかなと、これは全くの想像でございます。  しかし、もしそういうような可能性がない場合には、先ほどの紋彫り職人さんの例のように、かつての石炭がそうだったわけでございますけれども、やはりなるべく摩擦を起こさないように転業をさしていく。技能の再訓練とか就職のあっせんとか、そういう特定不況地域とか不況業種で立法がございましたけれども、ああいうような形で外的な対策というものはやっぱり考えていかないと、産業そのものの構造変化というものは、もういかんともしがたい力で及んでくるんじゃなかろうかという感じでございます。  お答えになったかどうか。
  58. 矢原秀男

    矢原秀男君 ありがとうございました。
  59. 吉川春子

    吉川春子君 三点伺わせていただきますが、先生の「技術革新労働問題」というこの論文読ませていただきましたが、その中で技術革新による新市場の拡大というのは、はるかに雇用誘発の効果が大きいというふうにお書きになっていらっしゃいますが、今、西陣の話、トヨタ、時計工業の話を伺いました限りでは、私はこれは雇用減少する例ではないかという印象を受けたんですね。物すごい激しい需要があって初めて少し雇用が拡大するというお話でしたし、そういう点では従来の産業というのは、ME革命の中で雇用は減るという方向があるんじゃないか、そういう気がしました。  新製品や新素材の成長によって、今までの中で減った雇用をじゃ吸収できるのかという問題については、これもいろいろ不確定な要素があるというお話でしたので、結局先生のお話から私が得た結論としては、ME化によって雇用の拡大というのはなかなか厳しいんじゃないかというふうにちょっと印象を受けたんですけれども、未確定要素を取り除いて、今わかっていることだけで判断しますと、非常に厳しいのではないか、そういう結論になるのではないかと思いましたが、いかがでしょうか。  第二点は、労働組合との事前の合意に基づいて新技術革新導入ということをイギリスの例などで触れておられますが、これはめったに実現されていないというふうにここで先生が書いておられます。しかし、同時に、機械工業とか印刷業では事前の合意なしには大きな技術革新はできないというふうな立場に立てば、じゃこういうことをどういうふうに打開していくべきなのか。そして特に未組織労働者労働組合のないようなところが民間で四分の三というお話でしたので、そういうところでは一層一方的に導入するという事態になっていて、深刻な状態ではないかと思うんですが、こういうことに対する社会的な規制、民主的な規制といいますか、こういう方法をどういうふうにしてとったらいいのか、それが第二点です。  それから第三点目は、派遣労働者について、特にOLの問題について最初例を紹介されましたけれども、今派遣労働者の数が非常にふえておりますが、これが労働条件の悪化につながるんじゃないかという懸念が大分持たれているんですが、この派遣労働者を保護するためには、今政府も法案を準備しているようですけれども、どういった点が必要なのか。その三点についてお伺いいたします。
  60. 神代和俊

    参考人(神代和俊君) 大変難しい質問なんですけれども、第一のMEの結果雇用が減っているんじゃないかという御指摘でございますが、これは先ほど富士通ファナックの例をちょっと引きましたが、MEあるいはコンピューター技術が入り、ロボットが入り、そういう技術が入ったところを中心にして観察をしますと、御指摘のように非常にこれは雇用が減るわけでございますね。雇用を減らすために、省力化するために新技術を入れているわけでございますから、その範囲では激減いたします。しかし同時に、そういう自動工程をつくるためのコンピューターをつくるメーカーでは、コンピューター雇用がふえておりますし、ソフトウエア労働もふえる、こういうことなので、その減る効果とふえる効果で、ネットでどっちが多いか、こういう計算になるわけでございますね。  しかもふえる方は単に技術革新だけじゃなくて、先ほど御説明申し上げましたように、最終需要の伸び方に非常に大幅に依存してふえたり減ったりいたしますので、今までのところは、幸い日本は割合に新しい技術を進んで取り入れ、それが世界市場で評判がよくてたくさん売れる、売れ過ぎる、あるいは経済運営も一時を除くと大体うまくいっていて、ほかの国のように失業がふえない、こういうような状況で来ておりますので、今までのところは、最終需要の伸びがいろんな政策の効果が相まって、技術革新にもかかわらずと申しましょうか、あるいは技術革新効果も加えて、全体としてはプラスの効果の方が多く出ているというふうに申し上げているわけでございまして、直接影響が出た部署だけとれば、これは確かに御指摘のように非常に減ると思います。  それから事前協議の問題でございますけど、これは実は日本労働組合は余り経営者のやる設備投資、合理化というものに抵抗しないというのが定説のようになっておりまして、ある面ではそのとおりなところがあるんですけれども、ただこの私の書きました最後部分の方に、日本の全港湾とか海員組合とか日本航空とか、いろんなところでやっております具体的な事例を挙げておりますように、かなり厳しい規制をして労使間で紛争を起こしながら処理している例もあるわけでございます。どっちかというと運輸関係に比較的そういう摩擦が起こって処理している例が多いと思います。  これはなぜかというのは必ずしもよくわからない点もありますが、多分、我々専門語でワークルールというふうに呼んでおりますが、仕事のやり方ですね、だれがどの仕事をどういう手順でやるかとか、人と人との仕事の割り振りとか、そういう国鉄でよく問題になりましたような、ああいうことが大なり小なり製造業でもいろんな分野でもあるわけでありますが、製造業とかサービス業の場合、日本は割合に労働者が一人でたくさんの仕事を分担いたしまして、かつ教育水準が高くて非常に器用なものですから、割合に周辺の仕事を同時にこなしてしまうわけですね。ヨーロッパやアメリカではそれをマルチスキルフルなんといってわざわざそういうふうに教育をしなければできないわけですが、日本は自然にOJTで、職場技能を形成しておりますと、だんだんそういうことができるようになってしまうわけですね。  ところが運輸関係は、例えば海員の乗り組み定員というのは、船員の方は、職員の方は法律で決まっております。それから部員の方も協約で決めております。それから飛行機のスチュワーデスやパーサーもこれは乗り組み定員は法律や協約で決めておりまして、製造業に比べるとそういう要員に関する取り決めが厳しいと思うんですね、細かく決めております。例えば飛行機でワンフライトで何時間以上乗っちゃいけないとか。そうすると、東京―ニューヨークの直行便が出てくるとその規制に触れてしまう、それで紛争が起こる。そういうふうに、製造業では余りやらないような国際的に共通の規制の仕方があるものですから、もとになっているものによってどうも紛争が起こりやすいというふうな傾向があると思うんです。  しかし製造業では割合に摩擦はないんですけれども、摩擦がないのはやっぱり摩擦を起こさないように相当労働組合が一生懸命事前協議をやって、古いところでは、全電通とか全専売とかそういう組合は、三十年代に既にそういう協定を結んでいるわけですが、割合に早くから合理化に事前協議の慣習を取り入れまして、これはもう自動車なんかは非常に職場の末端に至るまで日常的に労使協議をやっております。これは普通に考えられているよりははるかに、労働組合のあるところでは、少なくともほかの国に比べると労使間の意思疎通が密に行われているんじゃないかという気がいたします。    〔小委員長代理長谷川信君退席、小委員長着席〕  それから最後の問題でございますけれども、これは私は余り専門にやっておりませんで、労働省でこれも特別の委員会ができて今検討しておりますけれども、実際はやっぱり派遣業は需要と供給両方の要素が出てきて生まれてきていると思うんです。これはやっぱり女性を中心としてパートで働きたい人が現実にふえてきている。しかし自分では仕事が探せない、そういう職を欲しておる人に対して、ここでパートの仕事がありますよということを、需要と供給を結びつけるような職業あっせんとか情報のあっせんでありますが、それを中心にして、さらに附帯的にさっきのテンポラリーセンターなんかは技能訓練もやっております。ワープロの訓練所やなんかは自分でつくって、渋谷でやっておりますけれども、そういうことなので、かなりこれは社会のニード、需要と供給両面のニードに即した新しい労働市場のサービスとして生まれてきているという面が七、八割じゃないか。  ただ残りの二、三割のところで、これは何でもそうですけれども、便乗組が発生する危険性があるわけです。テンポラリーセンターなんかは私の調べた限りでは非常に良心的に仕事をやっておりますけれども、何かの規制を考えないと、中には不心得な業者が出てくる危険性は、これは人の問題でございますので常に伴う。その辺のふるい分けが非常に難しいんじゃなかろうかという気がいたします。
  61. 吉川春子

    吉川春子君 どうもありがとうございました。
  62. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 以上で神代参考人に対する質疑は終わりました。  神代参考人にはお忙しい中を本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。     ─────────────
  63. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 次に、経済同友会労使関係プロジェクト委員長電力中央研究所理事長成田浩君から意見を聴取いたします。  この際、成田参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ、本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、技術革新雇用労働及び中小企業問題につきまして忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  また、議事の進め方といたしましては、まず三十分程度意見をお述べいただき、その後三十分程度委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。  それでは、成田参考人お願いいたしたいと存じます。成田参考人
  64. 成田浩

    参考人(成田浩君) ただいま御紹介を賜りました経済同友会労使関係プロジェクトの委員長を務めております電力中央研究所の成田でございます。本日はこういう場でお話をする機会を賜りまして大変ありがたく存じます。  既にお手元資料をお配りしてあると思うのでありますが、何分にも相当の分量でございますので、その中からごく要点をかいつまんでお話をさせていただきたいと存じます。  最初の一ページですが、将来の労使関係はいかにあるべきか、こういうようなことでプロジェクトチームができたのでありますが、現在我が国経済社会というのは、マクロ的には大変順調に低成長に移行しておりますが、しかし、その中では産業企業の国際化とか、あるいは人口の高齢化、あるいは技術革新の進展、産業構造の高度化等、従来の枠を超えた大きな波が経済社会のさまざまな主体、さまざまな局面を動かしておる、こういうわけでございまして、その中でも最も大きな軸となっているもの、それはまさに新技術ではないだろうか、そしてまた、その新技術の中で最も中核をなしているもの、それがマイクロエレクトロニクス、つまりME技術ではないか。そして、このME技術の浸透に伴いまして、恐らく労使関係に対しましてもこの影響は決して少なくないであろう。しかも、我々はこの問題を後向きではなくて、前向きにとらえまして、一つにはME化経済社会の活性化に資する中心的な手段として位置づける。したがって、積極的にこれは推進していくべきものであるということが一つであります。  それからもう一つは、その際、ME化に対応いたしまして、新しい発展を担う活力のある協調的な労使関係をいかにしてつくっていくか、こういうことが大きな問題ではないか、そういうような観点から我々はこの問題に取り組んだわけでございます。  そこで、二ページの方の下十行くらいのところでございますが、ここに書いてありますことは、我々が問題を解く場合の根本的な態度、考え方を書いたものでありまして、ME化雇用に重大な影響を与えるんではないか、最近の動きを見ますとそういう心配がございます。  すなわち、我が国ではME機器の利用度が諸外国に比べますと極めて高いにもかかわらず、これまでのところ余り雇用問題には大きな問題を生じてきておらないように思います。しかし、今後マクロ的な低成長の中で、このME化に並行いたしまして、先ほど申しましたような高齢化とか高学歴化、あるいは女子職場進出の増大、こういったようなことが進んでいくということを考えますというと、ME化はこれまでと違って雇用に大きな影響をもたらす可能性は十分にある。特に産業社会、中でも産業構造がもし硬直化して、いわゆるダイナミズムを失うようなことがあれば、近い 将来は大きな失業問題というようなものも生ずる心配がある、こういう認識であります。  それでは、この産業構造のダイナミズムと申しましたが、一体これは何か、三ページの上から二行目でございます。  八〇年代に入りまして、広範な産業に多様なインパクトを与えておるこのME化の中にありまして、ME化の省力効果によって一方には余剰人員が発生してくることが懸念せられます。他方では、ME機器自体を生産する新しい産業の発展、新技術を駆使したところのニュービジネスの出現などが新しい成長分野、雇用機会を形成していく、そして多様な発展の可能性を切り開いているということもございます。この点が先ほど申しました産業のダイナミズムと私どもが言うところでありまして、これは日本経済が備えている大きな特質でありまして、ヨーロッパあたりのそれと決定的に違っている点ではないだろうか。したがって、こういう前向きで積極的な産業のダイナミズムは、今後もこれを大いに進めていかなければならないと思うのであります。  ところで、このダイナミズムが発揮されておるその源泉は何か。これは日本企業のいわゆる現場中心主義と企業における人々の共同体意識ということにあるわけであろう。さらにこの共同体意識が具体的に機能しておりますものは、いわゆる終身雇用企業労働組合、こういうものを基盤とした労使関係ではないだろうか。  そこで、次は四ページでございますが、「ME化のインパクト」とこう書いてありますが、これは要するに、これからME化が進んでいくとどういう問題が労使の問題として起こってくるであろうかということを考えたものでございまして、これは三つの点から述べております。  第一は、下から約十行くらいのところに、「インパクトの同時発生」というのがございます。  まず強調いたしたいと思いますことは、第一の特質、インパクトがある時期に同時的に発生してくる可能性が大きいということであります。これは従来の技術革新と根本的に異なりまして、生産、流通、あるいは通信、それから事務、サービス等、いろいろな部門で非常に広範にこのME技術が応用されてきております。同時にまた素材産業あるいは加工組み立て、運輸、金融、商業等、あらゆる産業で現在これが進展をしております。また、最近の中小企業におけるME化関連投資の動意から考えまして、ME化というのは企業規模に関係なくいろんなところで進んでいるということであります。  このように広範な形でのME化の進展というのは、将来あらゆる分野でその影響が同時に発生してくる、そういう可能性があることを十分に示唆しているものと考えます。それで、一方には余剰人員を生ずるかもしれない、その反面、他方ではこのME化を進めるために新しい人材需要が起こる、それがほぼ同時にあらゆる産業で発生してくる、そういう心配があるんではないか。  次は六ページに飛びまして、今申し上げたのが一つの特徴と思うんですが、もう一つはデメリット、ME化が進展するデメリットが集中的に発生する心配がある。  我々が注目している第二の特徴は、「デメリットの集中的発生」という点であります。さきに見ましたように、ME化はその職務内容と余剰人員、新しい人材需要と、こういう面で従来にない多様な影響を与えるものでございますが、中でも余剰人員の発生は、そのスムーズな企業内の配置転換とか企業間での吸収がもし困難になった場合、経済社会的に深刻なデメリットを生ずるわけでありますが、しかもこの余剰人員は、例えば手作業に基づく加工工程、あるいは事務部門における極めて定型的な業務といったような特殊の職種、あるいはまた中高年齢者といったような特定の年齢層に偏って発生する傾向が強いように思うのであります。  この問題は、ME化導入によりまして生ずる余剰人員の面だけではなくて、他方においてはMEに関する特定の技能知識を持った新しい人材が必要だというそういう需要も、もしこの影響が同時発生するなら、その分野に集中的な人材不足をもたらすかもしれない。そうなりますと、これも大きな社会問題に発展する可能性がございます。こういうようなことを考えますと、ここにいうデメリットの集中的発生、これと先ほど申しました影響が同時に発生する、それは言ってみれば同じメダルの裏と表である、そういうように考えます。  次は、七ページの初めの方でありますが、「構造変化の促進」。これは三つ目の特質は、この産業構造の変化、これをMEが非常に促進するということでありまして、中でも我々が注目いたしますのは、ME化によるところの需要構造の変化、それに伴う新しい事業機会あるいは雇用機会の出現及び既存産業の業態変化であります。先ほど申しましたこれが日本産業構造のダイナミズムというものに関する問題でありますが、我々はME化がもたらすこうした構造変化は抑制すべきものではなくて、むしろ積極的に促進していかなければならないと思うのであります。そういう意味で、この三つ目の構造変化の促進というインパクトは、前の二つとは意味が違う特質でございます。  そこで八ページでございますが、ここで挙げました三つの特質のうち、「インパクトの同時発生」ということと、それから二番目の「デメリットの集中的発生」というのは、同じメダルの両面の関係であって、いずれも今から何かの対応策を講じておかないと、将来こういう事態が大きく発生してからでは間に合わない、こういう問題がございます。  一方、第三の「構造変化の促進」、これは産業構造のダイナミズムの基盤となるものだけに、何度も申しますように、積極的に推進していかなければいけないと思うのでありますが、それにはやはりそれだけの相当の条件整備をしておかなければならないであろう。我々はそうした前の一、二に対する対応策と三番目の条件整備、これはともに同じやはりメダルの裏と表である。換言いたしますと、インパクトの同時発生とデメリットの集中化をもし事前に予防することのできるメカニズムを考えれば、これは同時にダイナミックな構造変化産業転換ということにも適応していける、そういう条件整備としても機能するはずである、こう考えるわけであります。  そこで、この今の条件整備あるいはまた対応策としてどういうようなことを考えるか。「新しい調整メカニズムとしての中間労働市場の提案」というのを九ページに書いております。ここで私どもが考えますところでは、当面の課題はこの対応策と条件整備の両面に機能する新しい調整メカニズムを工夫することではございますが、ここに「中間労働市場の必要性」ということを言っております。  現在日本における労働移動というもののメカニズムはどうなっておるかというと、大きく分けまして二つございます。一つは、外部労働市場、非常に難しいわかりにくい言葉を使いましたが、要するに学校の卒業生を新規に採用するとか、あるいは職安を通じて企業の外から人を採用する、こういうような外部労働市場を利用していろいろな産業あるいは職業に移っていく方法、もう一つは、企業内の配置転換あるいは同じような、何と申しますか、企業グループの中でもって出向とか、派遣とか、こういうようなことによってやる内部処理、こういう内部処理と外部の労働市場に依存するやり方と二つがあるわけでございます。  しかし、先ほど申しましたような、将来余剰人員が一方に出る、他方に必要な人材の充足が非常に難しくなる、こういうようなことが同時的に出てくるような場合には、こういう二つだけの労働市場でやっていけるであろうか、こういうことであります。どうしてもここには二つのほかに別のものをつくらなければいけない。これが次の十ページにございます。  十ページの下の四、五行目でありますが、我々は外部の労働市場でもないし、それからまた内部で完全に処理をするというわけでもない、両方の 中間と申しますか、両方を兼ねるというような、そういう中間的なクッションがどうしても必要である。恐らくそれがME化のインパクトが同時発生してみたり、あるいはデメリットが集中する中で労働移動をスムーズに展開させる対応策であると同時に、産業のダイナミズムを維持し、構造変化を促進する条件整備にもなるんではないだろうか、こう考えるわけであります。  それではそういう中間的なクッションというのは一体どういうものであろうかというのが十一ページでございます。  この中間的なクッション、我々は一応ここでは「中間労働市場」という言葉で呼んでおりますが、要するに、例えばAという会社で余剰人員が出た、たまたまそういう人たちをBという会社で欲しがっている、こういう場合に、Cという会社がそういう事情をよく調べまして、Aの会社からBの会社にそういう人を仲介あっせんする。当時我々がこれを発表いたしましたときに、ある新聞が民間の職安化というようなことを新聞記事に書いておりましたが、大ざっぱに申しますと、そういったような感じで受け取っていただいたらいいんじゃないだろうかと思いますが、そういうふうに雇用関係、これは従来からのA会社にずっと継続するんですが、働く場所、それはB会社に行って働くんだ、職場は変わるけれども雇用関係は変わらない、こういうようなことを我々は実現できないだろうかということを考えたんです。  このことは、従来違った会社でも、同じ企業グループの中でありますと出向とか派遣とかいう制度によりまして、こういうことを相当幅広くやっております。しかし出向、派遣ができるのは、そういうお互いにいろいろな事情がわかるグループの中の会社でなければだめだ。今度はそれをもっと幅広く、第三の会社をつくることによって幅広く実現できないだろうか、こういうことであります。中間労働市場と申しますのは、我々が大学の先生にいろいろ指導をお願いをいたしまして、そういったところからそういう難しい言葉を使ったわけでありますが、一つの新しい会社、いろんな人材を仲介する、そういう会社というふうに受け取っていただけたら結構だと思います。  ところで、こういうような組織を考えると申しましても、そういうのが一体可能なんだろうかということであります。これは十一ページのちょうど中ほどから下のところ、十二行目くらいのところにありますが、労働力を需要する側、つまり企業側の変化といたしましてはいろいろありますが、次の点が指摘できると思うのであります。  それはME技術を駆使できる専門的知識技能、経験を有する者、そういう者が非常に必要になってきているということが一つ。そういうものを従来からの職員、企業内の社員教育をして、あるいは訓練をして使おうとしても必ずしもそれはいつでもできるとは限らない。技術進歩の速さとか適応能力から見ましていろいろと問題がある。さらにこういうような特定の人たちは、ME機器導入したばかりのとき、あるいはこのシステムが立ち上がる場合に、特に短期に必要だというような要請がございます。そこで、そういうようなことにこたえるのには、やはり今のような組織を考えることが便利ではないか。  それからまた一方、労働側の変化といたしましては、最近は特に専門的な知識や経験を生かしたところのスペシャリストとして活動したい、そういうような希望をする者が非常にふえておる。あるいはまたもっと自分の都合のよい時間に、都合のいい場所で働くことを希望する、こういう者が非常にふえております。さらにもう一つ事業所の人間関係に煩わされることなく自由に働きたい、こういうような変化が最近は特に目立つように思うのであります。  そういうようなことを考えますと、こういうような組織も成り立つんではないかというよりも現にこういった変化を見抜きまして、いわゆる人材派遣業という新しい事業を興して急成長している企業がたくさんにございます。  そこで次に、この中間労働市場が担うべき役割について申し上げますと、単に人を紹介、派遣するというばかりでなくて、余剰になった人たち、それを再教育をし、再訓練をする、そして新しい多様な業務をこなし得るそういう人材に育成していく、そういう人的資源開発面の役割をこの新しい組織に持たせたらいいんではないか。同時に、ここで最も本質的なことは、このような組織を通じて、先ほど申しましたように、複数の企業にわたって継続する雇用を働く者に確保してやるということが一番中心的なものではないかと思うのであります。  それでは次に、十三ページでありますが、こういうものにはどんなタイプが考えられるか。いろいろ考えられると思いますが、我々は三つのタイプが一応考えられる。  一つは十三ページの中ほどにございますが、エレクトロニクス系あるいはソフトウエア系の人材を集中的にたくさん抱えまして、必要に応じてそれを供給していく組織、こういうものがあるだろう。それから二つ目には、現場中心技能工のような者を中心に抱えておりまして、そして短期雇用比率をふやしたい企業労働力を供給する事業、こういうものが考えられるだろう。  この二つは、いずれもただいま申しました人材派遣業として今日実質的には相当あるらしい情勢であります。新聞等を見ますというと、八十社ないし百五十社くらいが現実にあるというんでありますが、これは御案内のとおり現行法では必ずしも認められていない事業でありまして、現在労働省の方でこれは新しい立法が検討されているというように承知いたしております。  それから第三のタイプでありますが、第三のタイプは、この下から二行目でありますが、「ME化に限らず構造不況や景気変動によって余剰になった人々を、当該企業に所属させたまま一時的に預かり他の企業に供給するいわゆる応援体制の「人材仲介組織」である。」、これが我々が提案しております中間労働市場のうち最も重要だと思う組織てありまして、こうした組織はお互いに関連のある企業間あるいは企業グループ内でまず発生していく、そして逐次すそが広がっていくであろう、こう考えられますが、現在アメリカにはこういう企業がやはり百近くあるそうであります。アウトフレースメントという看板をかけて百ぐらいある。日本でも現実には既に一つ、二つできているように伝えられております。  そこで今度は、十五ページから後のところは、こういう組織を育成していく上で一体どういう労使問題があるかということを書いておるのでありますが、ここに書いてありますことを集約いたしまして、そして結論的に申したのが十九ページの五つの提言でございます。そこで、十九ページ提言について結論的に申し上げたいと思います。  まず、提言の一でありますが、「労使は新産業革命ともいわれるME化を中核とする技術革新を積極的に取り入れ、経済社会、企業の活性化に資するべきであるが、ME化の一層の推進は、わが国の産業構造、就業構造、雇用面等に極めて大きな影響を与えることが十分に考えられる。こうした情勢に鑑み、今後の労使関係のあり方について、労使は十分に論議し合い、早急に共通の認識と理解とを固めて、新しい時代に対応すべきである。」。  これは、現実にこういうものが必要だといいましても、これを本当に具体化していくためには、どうしても、何よりも一番先に労使がよく話し合って共通の認識を持つことが大前提である、こういうことで、これは産業界にそれぞれまず労使の間で話し合いをすべきであるということを提言したものであります。  それから次の、提言の二でありますが、「企業は、将来予想される余剰人員に対し雇用機会を提供し、求められる新しい人材需要に対し円滑な充足を図るため、中間労働市場の形成に資するべきである。とくに、「人材仲介組織」の積極的な育成が望まれる。これに伴い労使は、終身雇用企業労働組合等についても、情勢によっては従来の枠を越えた発展的かつ柔軟な意識と姿勢で臨むべきである。」。  ここに申しましたことは、例えば終身雇用というものを、一つ会社に終身雇用される、あるいはする、そういうふうにかたく考えますというとこれはなかなか動きがとれない。やはり、雇用関係は一つ会社であっても、働く職場は違った会社に行って働く、そういう複数の会社を渡り歩いて、まあ渡り歩くという言葉は悪いですが、二つ以上の会社職場を変えていく。そういうことがあっても、しかし雇用というのは最初会社でやっていく、必要があればそういうことまで考えなければいけないんじゃないか。そういうのが労使双方が「発展的かつ柔軟な意識と姿勢で臨むべきである。」というような意味であります。  これ、簡単に申しますと、従来、関連する企業間で出向、派遣をやっていた、あれをそのまま違った企業間でも使ったらいいではないかと。そういうふうにするためには、しかしやはりいろいろの慣例がございますので、まずその前に、そういうことが必要だということを労使双方がよく納得しなければだめだ、共通の意識を持つことが必要だというのが提言の一と二であります。  それから三つ目でありますが、「企業は、余剰人員対策において労働側に不当な犠牲を強いることのないよう企業内での対応には最大限の努力を払うべきであり、安易に「人材仲介組織」に頼ってはならない。すなわち、「人材仲介組織」は、余剰人員に対して企業が本来的な企業内処理に最大限の努力を払った後の次の手段として活用されるべきものである。」。  これは、産業界でそういうような人を仲介・派遣する新しい企業ができたからといって、ちょっと人が余ったらすぐにそこへ頼むというのは、これはやはり企業としては責任がない。やはり自分の会社の職員に対しては自分が最後まで責任を持つという態度が必要である。ですから、安易にその機関に頼るんではなくて、最大限企業内で処理をする努力をした後でなければやってはいかぬ、こういうことを言っているわけであります。  第四は、「中間労働市場が公正に機能し発展するよう制度面の整備を行うべきである。とくに、職業安定法等の関連法規」、特にこれは三十二条、四十四条でありますが、「法制定当時と今日の情勢変化等」、今日というよりも将来も含めて、「情勢変化等を勘案して実情に即した改訂または運用が望まれる。」。  これは、職業紹介とかあるいは労働者の派遣ということを禁止している条文でありますが、こういうところも、やはりできれば、まず新しい現実の情勢を考えて、改定ができないまでも、少なくも運用上できるだけうまく運用できるようなことを研究すべきではないだろうかという、これが提言の四であります。  提言の五は、これは四と違いまして、四は、今ある制度がいろいろ問題になる。五は、制度が何にもないから困るということであります。「中間労働市場の健全な発展、被派遣者の保護等を主眼として制度面での新しい対応を検討すべきである。すなわち、適正な事業者が自由な創意工夫を十分発揮できるような制度的枠組みを新たにつくるとともに、派遣労働力の質的保証や被派遣者の保護についても、仲介・派遣と受け入れの各側の法的責任の明確化を図る等必要な条件整備を行わねばならない。」。  これは、全然今よるべき基準のようなものがございません。したがって、一体そういう会社をつくるとして、だれでもつくっていいのかとか、まあ表現は悪いのでありますが、前科何犯というような人がそういうものをつくって何をするかわからないという心配を与えるのも、これも困る。そこで、やはりいろんなそういう基準になるような制限とか何かがあるだろう、そういうものもやはり検討しなければならないと言っているわけでありますが、以上が五つの提言でございます。  以上、大変簡単にやりましたのでおわかりにくいところが多々あったと思うのでありますが、今後のME化中心とする産業構造の変化雇用構造の変化を考えますというと、どうしてもこのような組織をあらかじめつくって準備する、そして、産業構造の変化、そういうものをスムーズに進めるということが必要なのではないかと思うんであります。しかし、そういっても、一番基本になることは、何といってもやはり社会の中で広い合意の形成ということが先決であろう、そう考えまして、実はまだいろいろと突っ込みの足らないところが少なくないのでありますが、先般、経済同友会といたしましてまず発表させていただこうということで、以上のようなことを発表させていただいた次第でございます。  大変早口で申しましておわかりにくかったと思いますが、一応終わりにいたします。
  65. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で成田参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は、小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  66. 長谷川信

    長谷川信君 御説明を承りまして、私ども素人で、いろいろなるほどなと思ったのでありますが、今の余剰労働力、まあ今御説明のような形に、私どもが考えてもなると思うんですね。現在、余剰労働力というのは中小企業で大体賄っている面も若干あるかと思いますが、今の現状からして、今のMEがどんどん進んだ場合、あるいはもう三年たった、五年たった、十年たった場合、どのくらいの比率で余剰労働力の幅が広くなるんですか。
  67. 成田浩

    参考人(成田浩君) 大変難しいお話で的確にお答えができないかと思うんでありますが、実は約一年半この問題、各産業から人事担当、労務担当、そういった人たちに集まってもらいまして検討いたしました。そしていろいろ検討いたしまして、皆さんの一致する見方は、全体から見たらまだこのME化というのはその緒についたところである。これから五年、十年後にはどうなるか見当もつかない。しかし人の面で考えますと、多くの会社の申しますことは、今まで余剰人員はとにかく企業内部かあるいは関係のある会社同士で、今の出向、派遣ですね、こういうことで何とかやってこられた。しかしもうこの辺が自分の会社は限度ですというのが昨年十月ころの多くの会社の人の言うことでした。  それから新しくME化を採用しようという場合に、それに必要な人材が得られない。これは昨年の四月の新規採用のあのころでも、もうME化に必要な人は相当採用するのに苦労したというんで、このままいったら将来どうなるだろうかというのが多くの会社の人の意見でした。ですから、これは的確に今の先生のお話に答えるというのは難しい、数字的に申し上げるのは厳しいと思いますが、そんなふうなことから考えますと、もう早くやはり何か対策を必要とするんではないか、そんなふうなことを考えます。
  68. 長谷川信

    長谷川信君 ちょっと簡単にもう一つ。今、日本の失業率は世界でも最低というか、最低であるかどうかわかりませんが、まあまあなところにいっているわけですね、アメリカ、ヨーロッパよりむしろ低いわけでありますが。このMEをどんどん進めることによって失業率が、余剰労働力が、そのはけ口が適正な措置がなされない場合、あるいはアメリカ、ヨーロッパ並みあるいはそれ以上に失業率が上がる危険性がないとは言えないと思うんでありますが。
  69. 成田浩

    参考人(成田浩君) 適当な措置かない場合には、一方においてそういうような失業というようなことが心配される反面、片っ方では欲しい人が得られないということが起こるんじゃないか。全体で見ればこれは一体余るのか、うまくいくのか、その辺は見当がつかないわけです。しかし個々に見ますと、余っている人をたくさん抱えて困っている企業と、それから欲しい人が得られない企業と出てくる。こういうことはどうも避けがたいんではないだろうか、こういう感じでございます。
  70. 山田譲

    山田譲君 一つ、二つお伺いしたいんですが、御説明があったかと思うんですが、よくわからないのは、MEになれば当然に余剰人員が出てきますという、そこが果たしてそうかどうかというの は、この前のお三人の方々からもいろいろ問題があって、必ずしもそうでないんだというふうなお話もあったわけです。それはあるんだけれども、それと同時に、企業別に余剰人員を抱えていると困るから、どこか必要なところがあるからそっちへ派遣するなり出向させるなりすればいいじゃないかというけれども、今の余剰人員とおっしゃるのは、恐らく優秀なME技術者じゃないと思うんですね。だから、こっちが欲しがっているのはやっぱり優秀な技術者を欲しがっているのであってね、それをそう簡単に派遣したりなんかできるものかどうかという問題が一つあるんじゃないかと思います。  それからもう一つ、いわゆる第三の会社をつくるというふうなことを言っておられたんですけれども、そういうものをつくって、そこがいわば有料職業紹介みたいなことをやるのか、あるいはそこに余剰人員を全部集めて、そしてそこからいわば一種の労務供給みたいな格好で必要とするところへ派遣してやって、そこで必要でなくなったらまたもとへ戻すというふうな、そういう会社をつくったらどうかという御提言かどうか、そこら辺よくわからないものですからお伺いしたいと思うんです。
  71. 成田浩

    参考人(成田浩君) 最初のお話の、片っ方で余った人があるとしても、それがそのままこちらの方で必要な人であるかどうか、これはわからない、まさにそうだろうと思います。  それで我々が提言している組織、それの中心的なものはやはり新しい人材、必要な人材に教育とか訓練とかそういうことも必要とあればやらなきゃならない。これはいろんな場面が考えられると思うんですが、そういうふうに幅広く、幅広くというよりも、教育訓練というものをやって、そして必要とされる人材に育成していく、人間の能力開発と申しますか、人間を生かして使うという、そういうことを中心に置いて考えております。  それから二番目のお話は――二番目は何でございましたですかな。
  72. 山田譲

    山田譲君 いやむしろ今の方が二番目でして、一番目は、必ず余剰人員が出るか出ないか、MEによってですね、そういう問題です。  それからもう少し言えば、必ずしも企業に対する忠誠心みたいなものが従来よりは大分薄れてきているんじゃないかという感じがするんです。特に優秀な技術者ほど、おれはどこへ行っても十分使えるんだ、むしろ月給が高い方へおれはつくんだというような、どっちかというとアメリカ式な雇用関係の感じになりつつあるんじゃないか。ですからそういう人たちと、あるいはまた昔みたいに終身雇用でもって、その会社に対してずっといわば定年までそこでお世話になるんだというのが、両方今あるような感じがするんです。ですから、そこら辺をどういうふうにお考えになっていらっしゃるかですね。
  73. 成田浩

    参考人(成田浩君) その辺いろいろ議論になりましていろんな考え方をする人がございます。しかし、ただ盲目的に企業に対して忠誠心というんではなくて、どっちかというと仕事に対する忠誠心といいましょうか、そういうものはやはり今後も続くであろう。そして自分がこういう仕事をある企業で分担しているが、その仕事というものを通してやはり社会のためになっているという、そういうことによって喜びを感ずるというのがやっぱり人間ではないのか。  しかしその仕事というのも、今のように技術革新が進んできますと微妙に変わってくる。そこでやっぱり必要とあれば教育訓練というものを絶えずやっていかなきゃいけないんじゃないか、その辺はもういろいろと場合によって、人によっても違うんだろう。ですから、そういうものはケース・バイ・ケースでうまく処理できるように、労使の間でまず基本的によく合意を得なきゃいかぬ、そういうようなことでございまして、細かいところを我々最後まで結論出すまで突っ込んでないわけでございます。
  74. 山田譲

    山田譲君 ありがとうございました。
  75. 矢原秀男

    矢原秀男君 じゃ二点だけお尋ねいたします。  一つは、今の余剰人員の問題もお話伺っておりまして、またいろいろ読ましていただきましても、非常に将来大きな対策だなという感じがするわけですけれども、そんなことを絡めながら、これは労働時間の問題とか、休日であるとか、ME化技術革新によって労働者の就業形態というものは変わってまいりますので、労働法の法律のやはり整備が必要だなという感じも受けますし、先生の方も述べていらっしゃいますが、具体的に二、三どういうふうなところを変えなくちゃいけないかということがございましたら教えていただきたいなと。  それからもう一つ企業の面でございますけれども、こういう技術革新のテンポの速い分野ですから設備投資というものが、これはやはり償却の年数見直しを当然しなくちゃいけないと思います。それと同時に、巷間言われております投資減税というものについてどうするのか、この二点ですね、お伺いしたいと思います。
  76. 成田浩

    参考人(成田浩君) ただいまのちょっとよく聞き取れなかったんですが、非常に技術革新が速い。それで……
  77. 矢原秀男

    矢原秀男君 一つ労働時間とかいろいろの変化ございますので、法規を、労働法の整備をしなくちゃいけないなと思うわけですね。または余剰人員というものがお話のようにうまくいけばいいけれども、できないことになればまたそういう面では補完という意味での法制も必要ではないかと思いますし、そういうようなことが一つ。  そして技術革新の機械設備のいわゆる償却年数というものがやはりこれは非常に、この前も東北大学へ参りまして西沢教授にいろんな施設、先端機器を見せていただきましたけれども、あれも四年か五年ぐらいで何億のそういう研究設備をもうかえなくちゃいけない、こういうことも言われておりましたけれども、それらと、また、そういう設備がどんどん国際競争に勝たなくちゃいけないということになれば、一面では投資減税という側面の応援もやはり要るんではないかというふうなことをちょっと感じているわけなんですが、具体的に御意見がございましたらお教え願いたいと思います。
  78. 成田浩

    参考人(成田浩君) どうお答え申し上げていいのかわかりませんけれども、労働時間を初めといたしまして、いろんな面でやっぱり時代とともに変化していくということは当然だろうと思うんですね。そうして、ことに法規の面でもそういう点を考えて、将来うまくやれるように、相当余裕を持って早くから、ことにこういう労働関係のものは何かやっていっていただきたいんだなという気がいたします。  それから、そのほか今の償却の問題とか、そういう問題もみんな、要するに、ちょっと抽象的な言い方になりますが、将来すべてがうまくいくようなことを幅広く考えて、そしていろんな償却といいますか、税法の問題にしても、それから労働の問題にいたしましても、みんなそういう方向に合わせて相当余裕を持ってやっていただきたいんだなと思うんですが、具体的になかなかこれはちょっと……。
  79. 矢原秀男

    矢原秀男君 まあ突然でございますので、申しわけございません。
  80. 吉川春子

    吉川春子君 三点お伺いいたします。  まず最初、こちらの方なんですけれども、「ME化の新段階をめざして」という方ですね。その中で、身障者の雇用拡大という点について触れられておりますが、現在でも大きな企業ほど障害者の法定雇用率を下回っているという状況があるんですけれども、ME化によって身障者の雇用拡大がどういうふうに進んでいくのか、あるいは法定雇用率自体を引き上げるということが、ME化の促進によって可能なのかどうかということ、それが第一点です。  それから二点目と三点目は、「中間労働市場の提案」についてですが、第一、第二、第三のタイプというふうに分けておっしゃっていますが、第一、第二のタイプというのは人材確保の方にウエートがあり、第三のタイプの方は余剰人員処理の方に ウエートがあるように私は受け取ったんですけれども、そういう受け取り方でいいんでしょうか。  それから、非常に率直に申し上げて恐縮ですが、「中間労働市場をめぐる労使関係」の中で、中間労働市場という、企業にとっては実に都合のいい構想だと思うんですけれども、それに協力する労働組合づくりという印象を受けました。そして「労使の意識革新」の中で、「多様な質を有する人材が比率としてはわずかでも」入り込むと従来の状況変化すると言っているんですが、今までも「多様な質を有する人材」を抱えてきたのが企業なんじゃないかなという感じがするんですが、その中で特に、共同体組織維持のために労働雇用慣行を乗り越えた意識革新と、これが具体的に何を指すのかちょっと御説明いただきたいと思います。  それから三番目は、今国会の中で派遣事業法案を政府は提案しておりますけれども、そのことについてのちょっと御意見を伺いたいと思うんです。  例えば、第三のタイプなどは、今政府が出している人材派遣法案のさらにその枠の外にはみ出るような中身じゃないかと思うんです。政府が考えているその派遣事業法案というものでも、第三のタイプはフォローできないような内容じゃないかというふうにも思うんですけれども、いかがでしょうか。  そして、その提言の三の中で、「労働側に不当な犠牲を強いることのないよう」にというふうに言っておられるんですが、人材仲介組織が労働側に与える犠牲というのは具体的にどんなものがあるとお考えなのか。  それから同時に、最大限の努力を払わせるための法的あるいは社会的な規制、つまり、企業の中で最大限の努力を払った後にそういう手段として活用しなさいと提言されているんですけれども、その最大限の努力を払わせるための法的あるいは社会的な規制について具体的にお示しいただきたいと思います。  以上です。
  81. 成田浩

    参考人(成田浩君) 最初の、ME化というのが身障者の仕事にどういうふうな関係を持つかと。これは我々全然まだそこまで具体的なことを検討しておりません。したがって、余り無責任なことも言えないと思いますが、しかし、これ個人の意見でよろしゅうございますか。――このME化というのは、簡単に言えば、自動化というか、そういう方向に行くわけですね。一つ一つを人の手でやらないで、何か機械的にやるというような方向のものですから、これは身障者に対してもマイナスではなくてプラスの方向なんだろうと思いますが、しかし、これは具体的に検討しておりません。したがって、今のは私個人の話であります。  それから二番目の、三つのタイプのうち一と二のタイプは、どちらかというと人の確保であって、それから第三のタイプ、これは仲介ですか、何か……
  82. 吉川春子

    吉川春子君 余剰人員の処理。
  83. 成田浩

    参考人(成田浩君) 余剰人員の処理、それはそういうことでございます、大体。しかし、余剰人員の処理ではありますけれども、ここで特に問題になりますことは、今の職安法ではこういう職業紹介というのはやっちゃいけないことになっております、有料の職業紹介は。したがって、この辺が厳として存在する限りは、これはなかなか実現できないんですね。ですから、まず、世の中全体にこういうものが将来ないと困るという、そういう認識を持ってもらえるような、そういうことが先決ではないかということであります。ですから、そういうことがありますので、この問題に関して非常に突っ込んだ細かいことはまだ検討はしないで、早くそういう認識をみんなに持ってもらおう、そういうところで今とまっておるわけです。  それから三番目が、多様な人材ですか……
  84. 吉川春子

    吉川春子君 労使関係のところいかがでしょうか、労使の意識の革新ということ。
  85. 成田浩

    参考人(成田浩君) それは一般論といたしまして、例えば、終身雇用と申しますのは、Aの会社に入ってずうっと定年までAにいる。一生Aという会社にいるんだと。Aの会社にいるというのは、Aの会社の中で仕事をすると、こう普通は思うんではないだろうか。しかしそれを、特殊の場合に余りこだわられますと、ほかの企業に人を紹介するというようなことができなくなる。そこで、いろんな場合がありましょうけれども、雇用というのはAの会社だ、Aの会社社員だと。しかし、Bの会社で働くということがあってもいいだろう。今の人を紹介するというのはそうなんですね。職場はBの会社にするが雇用関係はAの会社だ。ちょうど先ほど来申しますような、グループ内の企業でありますと、Aの会社からBの会社へ出向させますね。しかし、依然としてAの社員である。Aの方の終身雇用という観念になっているわけです。それが親類のような会社であればそういう観念がある。けれども、ここで今言っていますのは、将来は全く他人のような会社にそういうふうなことをやらなきゃいけないかもしれない。そういう場合に、これは終身雇用ではないというようなことでいろいろ考えられると困る。そこで、必要によってはその辺もう少し弾力的に、発展的に考えられないだろうか、そういうことが必要になりますということを言ったつもりであります。大体そんなふうな……。
  86. 吉川春子

    吉川春子君 それから提言の三のところで、労働側に与える犠牲というのを、具体的にどういうふうにお考えなのかということと、社会的な規制ですね。
  87. 成田浩

    参考人(成田浩君) 「最大限の努力を払う」というのはどういうことかと……。
  88. 吉川春子

    吉川春子君 ええ。
  89. 成田浩

    参考人(成田浩君) これはやっぱりそこも具体的に詰めるんでなくて、まず初めてこれを言っています、産業界に対しても。そこで、企業の経営者に対しても精神的なものを重視しているわけですね。こういうことが、みんなの認識が高まって具体的なものをつくっていくとなれば、逐次これは具体化していかなきゃいけない問題だろうと思います。そこまでやるにしては基本がまだそろってないという感じであります。
  90. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 以上で成田参考人に対する質疑は終わりました。  成田参考人にはお忙しい中を本小委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見等につきましては、今後の調査参考にいたしたいと存じます。小委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。  なお、本日参考人の方々から御提出いただきました参考資料等につきましては、その取り扱いを小委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 梶木又三

    ○小委員長梶木又三君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時三分散会