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参考人(亀山直幸君) 亀山でございます。こういう席上で
研究成果の一部を御披露できる機会を与えられましたことを大変光栄に存じます。
マイクロエレクトロニクス技術革新が
雇用・
労働にどのような
影響を与えているか、とりわけ
中小企業分野においてどのようなことが起こっており、それに対して我々がどのように考えていったらいいかという点につきまして、大変舌足らずだと存じておりますが、私の考えているところ、
調査の結果等を申し上げさしていただきたいと思います。
一つだけ、多分
阿島参考人もその点について触れられたと思いますけれども、お断り申し上げておかなければならないことがございます。
私はこれから、大変時間が短うございますので、結論的なことだけを申し上げます。しかしながら、実は、例えば高齢者においてどういうことが起こっている、
中小企業においてどういうことが起こっているといった場合に、必ず反対のことが起こっております。正確に言うならば、さまざまなことが起こっているというふうに申し上げるのが正しいわけでありますけれども、それでは議論が進みません。わざとある
意味ではバランスを崩して、特徴ある注目すべき傾向についてだけ申し上げます。それは全部がそれのように行き渡っている、すべてがそのようになっているというのではなく、私がとりわけ注目したい傾向についてだけ申し上げているんです。そういう
意味ではバランスが崩れているという点について、ぜひ御配慮いただきたいというふうに思います。
まず第一番目に、きょうの私に与えられておりますテーマは、
マイクロエレクトロニクス技術革新と
雇用・
労働及び
中小企業と、こうなっておりますけれども、別個にいたしませんで、
中小企業における
雇用・
労働、こういうふうに重ねさして議論さしていただきたいというふうに思います。
なぜ、この
マイクロエレクトロニクス技術革新に際して
中小企業を特別取り上げる必要があるのかということについて、まず明らかにしておきたいと思います。
御存じのように、一九六〇年代、七〇年代の高度
経済成長の中で展開されました
技術革新は、基本的に大
企業、重化学工業分野を主たる舞台としてまいりました。これは一九六〇年代、七〇年代の高度
経済成長が、基本的には大規模生産システムの展開を基本的な性格としていたためであります。つまり規模の
経済性、大規模な生産を行うことによって単価を安くすることができるという規模の
経済性を追求すること、これが高度
経済成長時代の基本的な
技術革新の特徴でありました。したがいまして、そこでは大規模な生産を行うこと、大規模な
業務量を持っているところが主な舞台となったということでございます。
ところが、今度の
マイクロエレクトロニクス技術革新の場合に、それの展開は
中小企業でも大変活発でございます。その理由は、簡単に申せば
マイクロエレクトロニクス技術革新というのは、結局のところ何であるのかといえば、
コンピューターの働きを持ったものが小さく安くなったということに尽きると私は思っております。いろいろ難しいことはあるでしょうけれども、
労働問題を考える
程度の場合にはその
程度で結構だと思うのです。
コンピューターの働きが小さく安くなったために、どこでもかしこでも簡単に使えるようになった、これが
マイクロエレクトロニクス技術革新の基本的特性だというふうにお考えいただいて結構だと思います。
したがいまして、
マイクロエレクトロニクス技術革新といいますのは、その
コンピューターの機能がいろいろな姿をとって登場いたします。そういう
意味で大変多様でございます。
マイクロエレクトロニクス技術を応用した機械、機器のうちの、
一つの大変特徴的と申しましょうか、代表的な機器でございます数値制御機器、NCマシンをとってみますと、NCマシンと申しますのは、皆様御存じと存じますけれども、やらせようという動作を数値に直しまして、それをテープに入れてやる。そうしてそのテープを機械に入れますと自動的に作業を行うという数値制御の機械、ニューメリカル・コントロール・マシンでございますけれども、この数値制御の機械が、今
企業規模別に見た場合にどの
程度入っているかという数でございます。もちろん言うまでもなく、大
企業は規模が大きいわけですから、入っている台数が多いに決まっております。
そこで、私は
労働者千人当たりで見て、数値制御の機械が何台入っているか頭数で計算してみました。通産省の
調査でございます。それを用いますと、百人以下の
企業、五十人から九十九人の
企業では数値制御の機械が十一・四台、百人から二百九十九人の
企業で十・六台、三百人から四百九十九人の
企業で八・六台、五百人以上の
企業で八・六台、つまり頭数で割りますと
中小企業の方が多く入っています。
産業ロボットないしは高度に発達した
産業ロボットなどの場合には、大
企業での
導入が多くなっておりますが、このようにNCマシンなどを見ますと、
中小企業で活発に
導入されている、これが今度の
技術革新の非常に大きな特徴でございます。そのことが我々が今回の
技術革新に際して
中小企業をとりわけ注視しなければいけない理由の一番大きな問題であります。
では、
中小企業にそのような新しい
マイクロエレクトロニクス技術を応用した機器類が
導入された場合にどういうことが起こるかであります。
まず第一番目には、
雇用労働にどういうことが起こるかという場合に、一番重要なのは、そしてひとしく注目するところは、
雇用の量にどのような
影響を与えるかということだろうと思います。この
ME問題が諸外国で取り上げられ始めました一九七九年ぐらいから、問題の取り上げられ方は、
ロボットは失業を生むかという問題の提起がされております。まさしく
MEと失業という問題でございます。言うまでもなく、
マイクロエレクトロニクス技術革新といいますのは、
コンピューターを使って判断――ちょっと余談になりますが、人間の
労働といいますのは、どんな
労働も
最後まで極限まで推し進めていくと三つの
部分に分解できます。何か
変化を確認する、そしてその
変化を確認した上で、それに対してどう対応すべきかということを判断し、そしてその判断した結果を行うという、この三つの
部分に分解できます。自動車を運転しているところでしたらば、子供が飛び出てきたという
変化を確認し、次にブレーキを踏むべきか、ハンドルを切るべきかという判断を行い、次にそのアクションを行う。これは生産の
労働であれ事務
労働であれ、すべてそうであります。
実は、
産業革命以来行われてきました機械化の過程というのは、その三番目のアクションの自動化でございました。現在起こっておりますことは、その情報が与えられると、どうすべきかという判断の自動化でございます。先ほど申しました三つの分類から言えば真ん中のところでございます。情報を受け取り、そしてどうすべきかということを判断するという情報処理の分野というのは、機能というのはどんな
労働にも含まれております。そういう
意味で、その
部分に
コンピューターが入るということは、どのような
労働にもそれが入ってくるわけであります。そうしますと、当然にもそこの
部分の
労働が機械化される、自動化されるということを通しまして人間の
労働が削減される。そういう
意味では省力化機能を持っているということは言うまでもないことであります。
では、実際に
ME機械が入ったところで、とりわけ
中小企業で、省力化し、人々が余剰になっているかと申しますと、現在の
段階では大変特徴的な事実があらわれてまいりました。
お
手元に、私どもの
研究所で行いました
調査をごらんいただいているかと存じます。この
調査は、全国一万の
中小企業を対象といたしまして、回収されましたのは三千百五十ほどでございますけれ
ども、
中小企業に関する
MEの
調査としてはまず最大規模の
調査だろうというふうに思っておりますが、五十八年に
実施いたしました。この
調査を見ますと、時間が少のうございますので丁寧に御説明申し上げられませんが、極端な言い方をしますと、
ME機械を
導入したところで人がふえております。
例えば二十二
ページをごらんいただきたいと存じます。小さい行で申しわけございませんが、二十二
ページの一番上の段、
産業だとか規模を外して、トータルで考えた表をごらんいただきたいと思います。
導入した
企業では、従業員数は一五・七%ふえております。
導入しない
企業ではそのふえ方は三・四%にとどまっております。木材・家具のような比較的不況の分野、伸びない分野で、
導入した
企業では
減少率が二・七%にとどまっているのに対して、未
導入企業では五・〇%の
低下を示しております。このように現在のところでは
MEを
導入した
企業で人がふえるという傾向があらわれております。
これをどのように理解するかであります。
MEを入れると人がふえる、こう言っていいかどうかであります。私はそうは考えておりません。実は現在
日本の
中小企業の中で大変大きな再編成が起こっております。
日本の
中小企業経営者の中で大変活発な経営行動を行い、新しい経営革新を行い、そのことによって経営体質を変えていこうとするそのような動きがございます。よく言われるアントルプルヌール、
企業家、新しいそういう積極的な経営活動を行う
企業家グループというのが登場しております。かつても、これまでも
中小企業の
研究者がこういうようなベンチャー
企業とか、積極的な経営活動を行う経営についていろいろ
調査してまいりました。そのようなものの紹介がございました。しかし、それは今までの場合には非常に突出した
企業のエピソード的紹介であったというふうに言っていいかもしれません。私どもの
調査では、それが一定の層をなしておる量の塊として登場し始めておるということを確認いたしました。
そこで、どういうところで人がふえているか、従業員数がふえているかでございます。従業員数の増減と
企業のいろいろな指標とを結び合わせてみました。何が一番説明力があるか。極めて簡単でございます。売上高の伸びでございます。ほかの要素はほとんど
意味を持ちません。売上高の伸びそのもので従業員数はほとんど決まってしまいます。
そこで、売上高の伸びというのは何によって規定されているかということを調べてみました。普通
調査をやりますときに、
企業規模ですとか
産業分類ですとか、例えば経営者の学歴ですとか、そういうものをいろいろ調べます。そういうものと比べてみて、
大卒経営者がいるところではどうだとか、どの
産業ではどうとか、どういう
企業規模のところではどうだ、こういうような分析をいたします。そういう分析をしても余り――余りと言っておきますが、余り有意な、
意味のあるような関係を見つけることはできません。私どもは、非常に単純なことですけれども、こういうことをやってみました。この五年間、
昭和五十三年から
昭和五十八年の間にどういうような経営行動、経営者がどういうことをやりましたかということを――ごらんいただきたいのは四
ページの表1でございますが、そのアからクまで八つの項目を掲げて、こういうようなことをやりましたかやりませんかと問うてみました。
そして、これまた実に単純で恐縮なんでございますが、幾つ丸をつけたかということをそれぞれの
企業についてやってみました。そしてそれを五
ページにございますように「
企業行動スコア」、照れくさいんでございます、アンケートに幾つ丸をつけたかという
程度の単純なことを
企業行動スコアなどというもったいぶった言い方をするのは大変照れくさいんでございますけれども、やってみました。
一つもつけなかったところが零点、二つつけていれば二点、これだけのことでございます。ところが、驚いたことに、この
企業行動スコア、小
学校の算数、算術みたいな
企業行動スコアと売上高の伸びというのは物の見事に対応いたします。
六
ページをごらんいただきたいと存じます。
企業行動スコアが零点から四点ぐらい、つまり
一つも丸をつけないか四つぐらいしか丸をつけなかった
企業では、出荷額が「非常に減った」「少し減った」というのを合わせて二五・八%、四分の一に達しております。それに対して、五点から八点、五つから八つ丸をつけた
企業では、それが約一割強
程度にとどまっております。逆に出荷額がふえたというところを見ますと、五から八をつけたところでは、八二・四%、約八割強の
企業がふえております。
つまり重要なことは、今伸びている
企業、伸びていない
中小企業というのを見る場合に、従来我々はどちらかといいますと、その
企業が置かれた条件とか、その
企業が所属している
産業とか、そういうもの、ある
意味では
企業が競争する前の前提となっているような条件、ストックと言っておきましょうか、ストックのような条件によって分析するというのが今までの分析手法の普通のやり方でありました。ところが、そういうものは余り効かない。そうではなくして、むしろ経営者がどのように行動したかというフローと申しましょうか、むしろ
企業にとっては主体的な要因、これによって非常に大きな違いが出てきているということを我々は見ることができます。そして、そういたしますと、
ME化を進めたらば人がふえたんではなくて、それは間違いではないんでありますけれども、経営者が極めて積極的な経営行動を行う、そのような積極的な経営行動の一環として
ME化がある。積極的な経営行動の一環として
ME化を進めた場合には、その
ME化は売上高の増加に結びつき、そして従業員の増加に結びついている。もちろんそうでない場合もございます。
この
委員会の担当でございます
調査室が、私にここに出席するようにというふうに選ばれた
一つの理由は、私が「世界」という雑誌に書いた論文にあるというふうに聞きました。私がその「世界」の論文の中で書きましたことは、
中小企業が
ME技術を入れる場合に相当いかがわしいことが起こっている、入れる理由もない、合理的な根拠もないのに入れているということを書きました。そして、今度は、きょうは少し違うことを申し上げるので、
意見が違うのかと申されますけれども、そうではございません。
確かにそういう側面もある。世の中、
ME化ME化と言う。
ME化ME化と言うために、自分の
企業の中では本当に
ME化を進めなければいけない合理的根拠がないにもかかわらず
ME化、
ME機械を入れる。入れたけれどもそれは使っていないというようなケースはよくございます。そういう
意味では、
ME化を進めれば何でも人がふえる、万々歳だというのではなく、そういう新しい、最近進んでいます
中小企業の積極的な経営行動の一環として
ME化が進んだ場合は、
中小企業を活性化し、売上高を伸ばし、従業員数をふやすということも起こっている、これは極めて注目すべきことでございます。
御存じのように、ヨーロッパでは、最近
中小企業の活性化をてことしたところの
経済成長路線ということが非常に強く主張され、注目されるようになっています。私もこの
調査を見ますと、
ME技術をてことしながら、それを踏み台としながら
中小企業が積極的な経営行動を行い、その中で活性化し、そして業績を高め、そして従業員数をふやしていくという可能性が生じている点について、やはり我々は注目しておく必要があると思います。
ただ、この場合にぜひとも注目しておかなければなりませんのは、そのようなある
中小企業の活性化は激しい
中小企業間の競争の中で起こっております。したがいまして、そういう積極的な経営行動を行い、業績を伸ばす
企業の傍ら、そういう新しい環境に適応できずに業績を悪化させ、場合によってはつぶれていく
中小企業が存在します。現在、
日本の
中小企業は極めて年々売上高を伸ばし、成長しております。工業統計表による売上高
の増加というのを見ますと伸びております。反面、
中小企業では史上空前の倒産が起こっております。この二つのことが同時に起こっている。片方では、極めて積極的な経営行動を行い、業績を伸ばしている活性化している
中小企業グループと、そのような競争に耐え切れずにつぶれていく
中小企業というのがある。では個々の
中小企業では、全体として
雇用にどうなるか、これは予測、予断の許さない
状況でございます。今ちょうどそのせめぎ合いの
段階にあるというふうに私は考えております。
したがいまして、
対策ということを考えるとするならば二つでございます。そのような
ME技術をてことしながら活性化していく
中小企業に対しては、その活性化を可能にするような援助の手を伸べる必要があると思います。とりわけこれは
技術的な援助という問題があります。もう
一つ、その中で負けていく
中小企業に対しましては、当然社会政策的配慮からそれに対するところのケアというものがなされなければなりません。このことは非常に重要な問題だろうと思います。
時間がございませんので、もう一点、
雇用労働の、今申しましたのは量の問題でございますが、質の問題について若干触れたいと存じます。
ME技術革新が進む中で、
労働者の担う
労働、行う
労働というのはどう変わるかということでございます。この
ME問題に関する議論が始まりました当初、大変支配的でありました議論は二極分解論と言われました。人間の
労働はこれから熟練だとか、
技能というようなものを要らないものにしてしまう。熟練だとか、経験的な
知識というのは全部
コンピューターの中に入ってしまい、
コンピューターが自動的に処理してしまう。これから必要になるのは
コンピューターに関する
技術を持った
知識労働者と、それから機械を動かせる状態にしてしまえば、あとはボタンを押すだけの単純
労働者、こういう高度の
技術者と単純
労働者である。具体的な言い方をすれば、大学の工学部を出てきた
労働者と
パートタイマー、こういうので
企業は構成されるようになるだろうという議論が強うございました。ヨーロッパではまだその議論が
かなり強い
影響を持っております。我々はそれは間違いだというふうに思っております。
マイクロエレクトロニクス技術というのは、結局のところ、これは
阿島参考人も多分展開なさったと思いますけれども、熟練
技能というもの、経験というものを背景にしてのみ有効に作動するものであるというふうに考えております。
大変卑近な話で申しわけございませんけれども、例えば筑波万博で、
ロボットが「寿」という字を書くというようなことをやります。簡単でございます。プレイング
ロボットという
ロボットの手に筆を持たせまして、習字の先生がその手を持って「寿」という字を書けば、その手の動きを
ロボットは記憶いたしまして、次からその字を書きます。そのときに、私が
ロボットの手を持って書けば私の字しか書きません。習字の先生が手を持って書けば習字の先生の字を書きます。つまり、この
ロボットへ
仕事を教えることをティーチングと申しますけれども、ティーチングを通してその人の
技能が移転されるわけであります。これは
ロボット、プレイバック式
ロボットの場合には一番顕著でございますが、NC工作機械の場合も全く同じであります。
ある金属をNC旋盤で削ろうとするという場合に、まず
労働者は何をやろうかとすると、今までの旋盤でも同じであります。どういうふうな手順で、それからどういうような道具をそろえて
仕事をやるかということをまず考えます。そして、そのような準備をいたします。これを、私は
工場における最も美しい言葉だと思いますが、段取りと申します。きょうの午前中までOECDのセミナーがありました。外国から来た人には、私はこの段取りという言葉はそのまま英和辞典に載せるべきだというふうに主張しておりましたが、どういう手順で
仕事をやったらば一番いいかということをまず計画し、そしてそのような準備を行うこと、これを
工場では段取りと申しますが、ここのところなんでございます。
つまり、熟練工が、おれだったらばこの
仕事はどういう手順でやる、例えばこういうものを削る場合に、(
資料を示す)中を先に削るか、外側を削ってから中を後から削るかという、ただそれだけのことで、でき上がった製品の精度は違うものでございます。そういうことはどういう手順でやったらば一番美しく、一番効率的に
仕事ができるかということは、長い経験を経た
労働者がよく知っているところであります。したがいまして、NC工作機械を使う場合にも、まず
最初にやる場合には、どうしたら一番合理的で正確な
仕事ができるかということをまずプランニングし、それを機械にわかる言葉、
プログラム用の言葉で翻訳してやるということであります。
ぜひとも御理解いただきたいのは、この過程をプログラミングと申しますが、プログラミングといいますと、何か
プログラムの言葉で書く
部分、これをプログラミングというふうに考える傾向がございます。間違いでございます。実はその前に原文を書く作業がなければいけません。原文を書く作業があって、それを翻訳する作業がある。この二つの作業の
段階を通してプログラミングと言われます。原文を書く作業というのは、この作業はどういうふうにやったらば一番美しく、
効果的に、正確にできるかということをプランニングするということであります。これはまさしく長い経験に支えられてのみよくできることであります。
そういう
意味では、
ME技術革新のもとで登場する機械もまた人間の熟練とか経験、
技能というようなものを無用にするものではない、むしろそういうものをプログラミング、ティーチングというようなことを通して機械の中に移しかえていくことによって機械は有効な作業をする。はすっぱな言葉の使い方で申しわけございませんが、半ちくな
労働者が使えば半ちくな機械になる。熟練した
労働者が使えば、熟練した
労働者の
技能が機械に乗り移る。これが私は
ME機械だと思っております。
これは何もNCマシンだとか、それだけではございませんで、オフィスオートメーションで登場する機械もまた同じでございます。とするならば、長い経験の中で積んだ
技能とか
知識というものが、この
ME化の中で利用できるようにすることが必要であります。そのためには、先ほど申しました翻訳の
技術というのを経験した
労働者が身につけること。
阿島参考人の御
意見との関係で言えば、とりわけそこの場合には
中高年齢者が多いでしょうから、
中高年齢者がそういう
技能をどのようにして身につけるか、これが重要になってまいります。
この点については、先ほど後ろで聞かしておいていただきましたけれども、
阿島参考人詳しくお話しになったので、私は多く触れませんけれども、従来ややもすると
中高年齢者はプログラミング
教育についていけないという俗説がございます。全くの俗説でございます。プログラミング
教育のカリキュラムというものを
中高年齢者向けにつくろうという努力をせずに、一方的につくっておいて、与えて、
中高年齢者がついてこれないから、だから
中高年齢者は不適である、こういう物の考え方は私はどこかが狂っているというふうに思います。数学の嫌いな子供、数学のできない子供に数学を教えて初めて
教育であります。自分の方で用意したカリキュラムに従って教えたらば、この子供が数学ができない、この子はだめな子だ、こういう物の考え方は間違っている。にもかかわらず、現在はそういうことが強くなっております。
そういう
意味では、私は、
中高年齢者がこの
ME技術に適応できるような条件というものを、もう一回
MEを
中高年齢者の適応に合わせて考える、それが重要と思っております。それは決して
中高年齢者を救済したり援助をするというためでございません。そうではなくして、
ME技術という新しい
技術と、それから従来の長い職業経験の中で身につける
知識、
技能という、古いと申しましょうか伝統的要素、これをどのように一体化し、
ME技術をより有効なものにしていくかという方
途だろうと考えております。
もっといろいろ御説明申し上げたいことがございますが、ちょうど時間でございますので、また御質問にお答えする形で果たしたいと思います。ありがとうございました。