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青木薪次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
住宅金融公庫法及び北海道防寒
住宅等
建設促進法の一部を
改正する
法律案につきまして、
政府原案に対し反対の討論を行うものであります。
政府原案は、その
内容を詳細に
検討すれば、
国民の生存権、国の社会保障義務をはっきりと定めた憲法第二十五条、及び、それに基づき居住面での
国民の最低水準を保障し、全体としての
国民の
居住水準を引き上げることを目的とする
住宅金融公庫法の
基本精神に違背することは明らかであり、我々には決して容認できるものではありません。
住宅金融公庫法第一条には、
国民大衆が健康で文化的な生活を営むに足る
住宅の
建設及び購入に必要な資金で、銀行その他の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とすると明確に書かれております。
また、
昭和二十四年二月十九日、当時の
建設大臣の諮問機関、
住宅対策
懇談会がその
答申書に添えて
提出し、後の
住宅金融公庫法制定の原案となった
住宅金融公社要綱の中でも、勤労庶民のための
住宅建設資金で、他の金融機関から
供給を受けることを困難とするものを
供給する法人であることがはっきりとうたわれているのであります。
したがって、
住宅金融公庫法が、
住宅建設を希望しながらも資金不足のためそれができないで悩んでいる
国民に資金を融通することを目的とするのであり、営利を追求する民間企業のためのものでないことは明らかであります。
ところが、
政府原案は、宅地造成貸し付けの対象者の拡大と称し、この財政難の折に、営利追求の民間デベロッパーへの
住宅金融公庫の直接融資の道を安易に拡大するものであり、これが反対の第一の理由であります。
第二に、四万円程度と言われる貸付手数料の新設も、
公庫法第一条及び憲法第二十五条と矛盾するものであります。
国民は、憲法に保障された生存権、居住権の裏づけとして
住宅金融公庫による融資を受けるのであって、手数をかけたからといってわざわざ新たに手数料を支払うたぐいのものとは思えないのであります。
しかも、この手数料の
内容が政令で定められることも重要であります。つまり、新たな立法措置を経ることなく、
政府の判断で手数料の金額を引き上げることも可能なのでありますから、一説のように、来年度七万円に引き上げられる可能性はもちろんのこと、将来、十万円、二十万円と上昇する可能性も否定できないのであります。また、今回の手数料導入は、貸付金利それ自体の引き上げのための布石である疑いも濃いのであります。
第三に、
前回の
公庫法
改正時に、一般会計からの利子補給金の不足分を特別損失として三年間繰り延べたのに引き続き、今回も、新たに、
昭和五十九年度末までに
政府から借り入れた借入金の利息で
昭和六十年度から
昭和六十五年度までの各年度において支払うべきものの金額の範囲内で、当該各年度につき、それぞれ
昭和六十六年度以降
昭和七十五年度までの各年度に損失として繰り越すことが適当と認められる政令で定める金額を、それぞれ
昭和六十年度以降の各年度の特別損失として整理することになる点が問題であります。
前回の法
改正に際しての
附帯決議の第七項には、「
住宅金融公庫の財政の健全確保と
公庫金利の長期的安定を図るため、利子補給等の財政援助について特に配慮すること。」が要請されています。これは、利子補給金不足分の繰り延べが恒常化すれば、会計原則を崩壊させ、
公庫金利の引き上げにもつなかりかねないことを憂慮してのものであることは明らかであります。
ところが、この間、
政府は、GNP一%にまさに届かんとする大軍拡を行う一方で、本
委員会の決議を無視し、利子補給等の財政援助についての配慮を怠り、今日の危機を招いたのであります。このような
政府の怠慢は、本
委員会の権威からしても、絶対に許してはならないのであります。
以上、主要な三つの問題点を指摘し、また、
国民の生存権、居住権を保障する措置として、良質で低廉な公共賃貸
住宅の量的拡大をあわせて要求し、私の反対討論を終わります。