○国務大臣(嶋崎均君) 指紋問題も含めて在留の外国人の地位ないし待遇の問題につきましてどういうぐあいに取り扱うかということは、
国内的な事情ばっかりじゃなしに、国際的な事情というものもよく判断に入れて検討しなければならぬということ自体我々何も否定するわけではないんです。ただ、御承知のように、五十七年に法改正をしているわけです。その際にある程度、何というんでしょうか、制度の改正は従来のものよりも改善をしているというんですか、十四歳を十六歳に引き上げるとか、あるいは三年ごとの切りかえを五年にするとか等々幾つかの改正をやったわけでございます。非常に残念なことなんですが、その改正をやった直後から実はこの問題というのがやかましくなってきているというのは、私も非常に奇異なことの
一つだと思うんです。いろんな経緯が私はあると思うのでございます。しかし、こういう問題を考えていく場合に、そういう改正を行ったという現実もあり、また、しかし、その後そういう議論が出てき、そして、それを受けて昨年の九月に日韓の共同声明がありまして、その中で、在日韓国人の地位なり待遇なりについて引き続いて検討いたしましょうという言葉も入りました。そういうような事情というものを十分踏まえて、何らかそういう誠意というものを入った以上は努力をしなきゃならぬ、私はそう思っておるんです。そういう意味で制度的な面あるいは運用上の面についていろんな意味で検討をして今日までまいったわけです。しかし、今御
指摘のように、長年韓国なりあるいは台湾
関係の在留の外国人の方々、戦後のいろんな経緯があったということは私
たちも十二分に承知をしているわけでございます。いますが、諸外国の事例等をずっと調べてみますと、長期に滞留をされるような方々については、こういう指紋制度というのはより厳格に行っているというのが実は外国の例でもあるわけでございます。日本人の場合には、
戸籍の制度もありますし、あるいは日本の国民、本当に同一民族であるというような契機もありまして、そういうことは非常に秩序立って動いておるわけでございます。我々もしょっちゅう
戸籍抄本を出したりいろんな意味で現住所を明らかにするというようなことは、これはもう皆さん方も再々あると思うんです。私だって随分再々使っておることでございます。そういうことで安定をした状態になっておるんですが、外国人の皆さん方の場合には、まあ日本人と同じように生活をし、同じように努力をし、日本人に溶け込むような工夫をやっておいでになる、確かにそうだろうと思います。思いますけれども、最後ぎりぎりのところ、まあ政治的な面でもこれは日本の国籍をお持ちになっておらないわけでございます。それから、外国人の場合には相当移動も激しゅうございます。やっぱり何というか身分
関係なりあるいは居住
関係というものはある程度明らかにしておくということはどうしてもその全体的な管理等の上から必要である。しかも、戦後御承知のように、二十七年に改正をし、そして三十年に具体的な実施をする、そのときには非常にたくさんの、何というのですか、問題のあるケースというのは出たわけでございます、その点は先ほど御
説明したと。その後もいろいろやっぱり問題があって今日に来ておるというのが実情であるわけでございます。そういう歴史的な経緯もありますし、それから、何というのですか、身分なり、あるいは居住
関係というのがなかなか明確にならない。そうすると、最後ぎりぎりの話は、やっぱり外国人登録法によるところの登録という問題が出てくる。それを最後に担保するものは何かといったらやっぱり指紋制度である。現に、そういうことであるから、非常に警察力の強いところで、余り指紋なんかやかましく言ってないところは警察の方で非常に整理をされて、これはあるいは言い過ぎなところもあるのかもしれませんが、そういう国々もある。しかし、そういうところは除外視して、自由圏の中でいろいろ調べてみますと、相当のところは指紋制度をとっている。とってないところについても、それを廃止したことによっていろんな議論が現にある。それからまた、かわりの手段としてサインその他、日本人が余りなじまない制度というものが現実の問題として動いておるというそういう
実態があるわけでございます。そういう事態というものを十分踏まえながら、また調べてみますと、やっぱり指紋制度をやっておるというのが相当多い。しかも、先ほど来申しましたように、長期におられる人についてはそういう点が厳格に行われている現実がある。そういう
状況でこの制度というのは今日に及んでおるというのが
実態であるわけでございます。
私
たちも、そういう中でいろいろ言われまして、何というか、人道的な理由であるとか、あるいはいろんなこの制度についての改正がどうであるとかというようなことが批判の理由になっておるわけでございますけれども、私のところは、ともかく今までは回転指紋でした、今度はそれを改めまして平面の指紋にいたしましょう、そういう改正を行いました。ここに色をつけてやるのも非常に心理的な感触が悪いとおっしゃるから、それを何とか解決する工夫はないかと。本当にこの五月の十四日の直前まで実は我々はいろんな議論をしましたし、またいろんなデータを集めまして、世界じゅうどこでもやってないああいう制度に切りかえている。ずっと制度を見ますと、やっぱりそういう外国人に対して指紋制度というものはやっていかなければならぬ。実は特例の居住者、長らくおられる方についてはいろんな意味で手当てをしておるということは皆さん方もよく御承知のとおりでございます。しかし、それ以外のことはやっぱりよその外国人と同じように扱うんだというのが通例の取り決めになっておる。そして、この部分で、長らくおられる人だけ別扱いだというんで、外国人の中でそこのところに線を引いてここだけ特別扱いをしろというのは、これはより難しい話だろうと私は思うのでございます。やっぱり外国人であるか日本人であるかというところで整理をして、もし別に扱うとすると、それはまた最恵国的な扱いをどうするのかというような問題にも及んでくるような話があると思うんです。よその人には一体どういうことなんだ、そのバランスはどういうことなんだ、長くおられる別の国の人はどうなんだ、そうなってきますと、やっぱり我々も、そういうさっきのように引き続き努力をするという事態も受けておるわけでございまして、精いっぱい努力して私はこの改正をやったつもりでございます。
ところが、どうも先ほどいただいた、民社党からもこんなふうに、そうですけれども、あるいはよその党からいただいたのにも、これはともかく指紋制度をやめろとか、携帯するのを全部やめちまえとか、これじゃもう距離があり過ぎて、御満足いただけない。御満足いただけないのがこの騒動になっている。諸外国で指紋制度というのが問題になっている国があるのかと調べたら、どこにもない。そういう経緯の中で、やっぱりこの七月一日からの大量切りかえということを目前にして、私
たちはぎりぎりこの判断をし、そして閣議の中でも一応その
説明をしてこの案でいくよりしようがないということで、各省のあるいは内閣としての決定をいただいて、対処をしているというのが現実なわけでございます。今後もいろいろな議論があると思いますけれども、けさほど申し上げたように、どうも改正をしているというようなことだから指紋を押さないんだというような理屈が立ったり、それからことしはこれ平面指紋に直しておる。これはもう犯罪捜査とは違うんですね、犯罪捜査というのは十指使ってそのうちのどれかが残るかもしれない。しかも、真っ正面で押したものだから非常に簡単だというようなことで、そこまで割り切っておるんですから、そういうところもそんな大きな問題に私はなると思わない。制度の改正というようなこともそんなぐらぐらしたことじゃどうにもならない。したがって、私はこの制度はもう変える気持ちはなくして、この山場は乗り切っていくんですと。どうかそういう意味で在留の外国人の方にもぜひこの指紋問題というものについて御協力をいただきたいし、またその運用をやっていただく市区
町村の皆さん方にもどうか御尽力を賜りたいということを申しておるわけでございます。幸いにして今まで多くの方々には御賛同を得まして、指紋を押さない人がふえておりますけれども、しかし幸いにして現在のところ千人中の九百九十六人の方々、非常に大ざっぱにいえばそこまでは御協力をしていただいておるような
状況であるわけでございます。こういう制度改正をやった趣旨ということを十分御理解願って、ぜひともこの制度がうまく運用できますように、
委員の皆さん方はもちろんのことでございますけれども、在留の外国人の方あるいは自治体の皆さん方の御助言、御協力を賜りたいと思っておるというのが実情でございます。