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井上計君 大臣から御見解を承って意を強ういたしました。しかし、私はこれらの質問等につきましては既に過去何回か当院で行っております。最初は昨年の三月、
予算委員会で代表質問で行ったわけでありますけれ
ども、当時瀬戸山文部大臣、それから当
決算委員会におきましても、前の森文部大臣にもこれらの点について要望し、あるいは提起をしたことがあるわけであります。ところが、一向に率直に言って改善されていない、こういうふうに考えざるを得ないわけであります。
私の質問だけではありませんで、衆議院におきましても我が党の議員が再三にわたってこういう質問をしております。また、御
承知かと思いますけれ
ども、教科書正常化国民
会議というのがございます。これは各
大学の教授、
先生方が非常に献身的に国の将来を憂えてこれらの問題等についての研究をしておられる機関でありますけれ
ども、その正常化国民
会議も既に今まで数回にわたって
文部省に申し入れがなされておる、このように伺っておるわけであります。
特に、我が党の衆議院の滝沢幸助議員が去る八月七日、教科書検定問題に関する質問主意書を政府に提出をいたしました。これに対しまして、八月二十一日付をもって政府から衆議院議長に対しましての
答弁書が送付をされておるわけであります。私はこれらの点をいま一度復習という意味で具体的にひとつお伺いをしたい、こう考えておるわけでありますけれ
ども、率直に言ってこの政府から出されました滝沢議員に対する
答弁書、まことに抽象的であいまいである、このように実は強く感じられるわけでありまして、ましてもう大切な点はことさらに避けておられるんではなかろうか、こんなふうにさえ思える点があるわけであります。恐らくこれは
答弁書をおつくりになった
文部省の本音ではなくて、どうも建前でこういう
答弁書ができているんではなかろうかというふうにも失礼ですが考えられます。どこか何かに、あるいはどこかの方面にどうも遠慮してできた
答弁書というようなふうにも、これはあるいは違っておるかしれませんが、私は実はこの
答弁書を見てそういう印象を受けておるわけであります。
そこで具体的な問題に入ります。北方四島の問題であります。北方四島の問題に対しまして滝沢議員は、私も従来同じようなことを質問をいたしておりますが、この滝沢質問で北方領土問題についてはかなり具体的に、現在ある教科書の記述が事実と違うということをずっと列記をされておるわけでありまして、終戦後におけるソ連の
日本に対する侵略によって北方領土が奪われたという事実が明記されていない、あるいは我が国の関与しない、したがって
責任が全くないヤルタ秘密協定によるソ連の参戦と北方領土の占有が、あたかも合法的であるかのような記述をされておるという点がある、さらには、ソ連はサンフランシスコ平和条約をボイコットしたのであるから、同条約によって北方領土に関し何らの梅利、権限を有しないということが明らかでありますけれ
ども、これらの点が明記をされていないということもあります。また、サンフランシスコ条約は
アメリカが
日本に一方的に押しつけたものであるというこういう記述もあるわけであります。
以下、時間がありません。例を挙げると切りがありませんけれ
ども、特にまた沖縄において、あるいは原子爆弾を投下した
アメリカの暴挙、大変大々的に記述がされておりますが、反面北方領土におけるソ連の暴挙については全く記述がされてないんですね。このようなこと、あるいは終戦当時
日本の領土――南樺太は植民地ではありません。行政上の本土でありましたから領土でありましたが、これが植民地というふうに記載をされている。このように事実と違う誤りの記述が
たくさんあると思うんですね。
これに対して、
答弁書を見ますと、まことに簡単であります。「教科書検定
制度は、教科書の著作を民間にゆだねることにより、著作者の創意工夫を期待するとともに、検定を行うことにより、適切な教科書を確保することを
趣旨とするものである。したがつて、北方領土等について、教科書にどの程度、どのような表現で記述するかは、教科用図書検定基準に違反しない限り、教科書の著作者の判断にゆだねられているところである。」、こういう
答弁書が出ております。とすると、私は、検定基準に違反をしていないから適切な教科書だ、こういうふうな考え方であるのか。事実と違ってもそれは検定基準に違反していない、この
答弁書から見るとこういうふうな理解しかできないわけでありますが、どうでありますか、ひとつお伺いをいたします。