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参考人(
富永祐民君) まず、第一の
課題の
政府部内に
喫煙対策本部のようなものを設けるということでございますが、これは既にWHO——世界保健機構が各国の
政府に勧告していることでございます。したがいまして、
我が国でも何らかの形でこのような
組織をつくる必要があろうかと思います。
政府の中でいろいろな省庁が
たばこに
関係しておりますが、まず健康に
関係している省庁から申し上げますと、中心的役割を演ずるのはやはり
厚生省であろうかと思います。
厚生省では特に
がんあるいは循環器疾患などの成人病の予防あるいは健康づくりのための
禁煙あるいは特に母子、妊婦の
喫煙に対する指導などがございます。
それから、文部省におきましては、初中教育などを通じまして、単に非行の立場で
未成年者の
喫煙を取り締まるのではなくて健康問題として
喫煙をとらえる必要があろうかと思います。
それからさらに、労働省におきましては、労働者の健康、これに
喫煙が大変
関係しております。もちろんアスベストあるいは砒素、クロムのような
有害物質を取り扱う職場での
喫煙は非常に危険でございますので、それらは法律で
規制されておりますが、私が痛感しておりますのは、一般の職場でもかなり
たばこを吸っている人が多いものですから、
たばこを吸わない労働者が
受動喫煙の
影響を受ける
可能性が非常に大きいことが挙げられます。それから、労働者
自身の健康づくりとしても
禁煙は重要なことであろうと考えます。
それから、本日のこの
委員会に
関係することでございますが、
環境庁におきましても、私が冒頭で申し上げましたように、特に
大気汚染系の大人の指定疾病にかかった患者さんの中で
たばこを吸っている患者さんがおりましたら、これはやはり一般的医学常識からいいまして、
健康回復のために
禁煙を勧める必要があろうかと考えます。
これらの省庁は特に健康サイドで
関係している省庁、
政府機関でございますが、ほかにもいろいろな
政府機関が
喫煙問題に
関係しております。それを挙げますと、例えば大蔵省におきましては、
たばこからの税金、これが国家歳入の中で大変重要な役割を演じておりますので、そういう
意味から、大蔵省も非常に
関係しております。
それから、農林水産省の方では、葉
たばこ生産農家が
関係いたしております。
それから、通商産業省では、葉
たばこあるいは
たばこ製品の輸出入、あるいは
たばこの
自動販売機の設置にも
関係していようかと思います。
警視庁あるいは警察庁などでは、
未成年者喫煙禁止法の
関係で、非行少年の取り締まり、青少年の取り締まりなどに
関係しておりましょう。
それから、運輸省の方でございますが、これは
公共輸送機関、特に国鉄あるいは飛行機、そのほかいろいろな乗り物がございますので、このような乗り物の中での
禁煙席をたくさん設けることなどでやはり
関係いたしております。
郵政省の方は、テレビ、ラジオなどを通じての
たばこ販売のための
広告、これの
規制に
関係いたしております。
それからまた、消防庁などは、火災に
関係しております。
したがいまして、
たばこは、健康問題だけではなくて、経済面、そのほかいろいろな面で非常に根が深いものですから、それだけに
関係している省庁も多くなっております。しかし、このようにいろいろな省庁が
関係しておりますけれども、ほかの国の動きを見ておりますと、健康を守るサイドの省庁と、それから税金を介して歳入を多くしようとする省庁の間でやはりそれぞれ利害が相反しておりますので、その
政府部内でも必ずしもしっくりいっていないようでございます。少なくともいろいろな省庁の中で、健康問題に取り組んでいる省庁は、最低限情報を交換するなり、持ち場をきちんと分担するなりしまして、
政府部内でそのような連絡機関、
協議会のようなものを設置する必要があろうかと考えられます。
それから、
政府部内にこのような機関を置くことも大事でございますが、やはりそれを実行するのはいろいろな実施機関でございますので、特に
関係のある
民間団体、例えば一例を挙げますと、
日本対ガン協会などは
がんの予防、それから結核予防会なども
肺がんあるいは閉塞性肺疾患の予防、
日本心臓財団は
心臓病の予防、それから健康・体力づくり事業財団などは、健康づくりとして
喫煙問題を取り上げる必要があろうかと思います。したがいまして、このような
民間団体が一致団結してやれるように
政府が一応調整の役割を演じ、指導する必要がございます。また、民間機関は
財政的に非常に弱いものですから、
財政的な援助もある程度必要であろうかと考えます。そのほか、
日本医師会、あるいはいろいろな教育機関、
研究機関などとも連携を保ちながら
我が国の
喫煙対策を進める必要があろうかと思います。