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1985-03-27 第102回国会 参議院 環境特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十七日(水曜日)    午後一時三十二分開会     ─────────────    委員異動  三月九日     辞任         補欠選任      久保  亘君     寺田 熊雄君      佐藤 三吾君     丸谷 金保君  三月二十六日     辞任         補欠選任      中村 鋭一君     抜山 映子君  三月二十七日     辞任         補欠選任      高桑 栄松君     高木健太郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         粕谷 照美君     理 事                 山東 昭子君                 原 文兵衛君                 丸谷 金保君                 飯田 忠雄君     委 員                 藤田  栄君                 星  長治君                 森下  泰君                 矢野俊比古君                 柳川 覺治君                 吉川  博君                 片山 甚市君                 寺田 熊雄君                 高木健太郎君                 近藤 忠孝君                 抜山 映子君                 木本平八郎君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石本  茂君    政府委員        環境政務次官   中馬 弘毅君        環境庁長官官房        長        岡崎  洋君        環境庁企画調整        局長       山崎  圭君        環境庁企画調整        局環境保健部長  長谷川慧重君        環境庁大気保全局        長        林部  弘君        環境庁水質保全        局長       佐竹 五六君    説明員        水産庁研究部漁        場保全課長    小野登喜雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○公害健康被害補償法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る九日、佐藤三吾君並びに久保亘君が、昨二十六日、中村鋭一君が委員辞任され、その補欠として丸谷金保君、寺田熊雄君、抜山映子君がそれぞれ選任されました。  また、本日、高桑栄松君が委員辞任され、その補欠として高木健太郎君が選任されました。     ─────────────
  3. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事丸谷金保君を指名いたします。     ─────────────
  5. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。石本環境庁長官
  6. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいま議題となりました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  公害健康被害補償法は、相当範囲にわたる著しい大気汚染または水質の汚濁の影響により健康が損なわれた人々に対して、その迅速かつ公正な保護を図るため、各種補償給付の支給などを実施することとしております。これらの実施に必要な費用のうち慢性気管支炎等非特異的疾患に係るものにつきましては、大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設などを設置する事業者から徴収する汚染負荷量賦課金を充てるほか、自動車に係る分として、昭和四十九年度から昭和五十九年度までの間におきましては、自動車重量税収入見込み額の一部に相当する金額を充てることとされてまいりましたが、今回、昭和六十年度から昭和六十二年度までの間の措置を定めるため、この法律案提案した次第であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  今回の法律案は、昭和六十年度から昭和六十二年度までの間において、政府は、引き続き、大気汚染の原因である物質を排出する自動車に係る費用負担分として自動車重量税収入見込み額の一部に相当する金額公害健康被害補償協会に対して交付することとするものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  7. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 片山甚市

    片山甚市君 まず、長官にお伺いいたします。  公健法――公害健康被害補償法についてでありますが、その対象地域についての諮問に関する態度についてお聞きします。  環境庁は、去る五十八年十一月、公建法の第一種地域あり方について中央公害対策審議会諮問されましたが、これはかねてから経団連が主張してきましたところの公健制度見直し要求に沿うものであって、地域指定解除患者切り捨てにつながるものとして公害病患者から強い反発を受けております。  そこで、経団連見直し要求と、環境庁が今回諮問に踏み切った理由というものについて説明をまず賜りたいと思います。
  9. 石本茂

    国務大臣石本茂君) お答えいたします。  公害健康被害補償制度につきましては、我が国大気汚染態様変化を踏まえまして、大気汚染健康被害との関係評価を行い、今後における第一種地域あり方検討することが基本的に重要と考えたことから中央公害対策審議会諮問したものであります。
  10. 片山甚市

    片山甚市君 経団連はどういうような要求環境庁にしていますか。質問に答えてください。
  11. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  経団連は、五十八年二月の時点公健法に関しますパンフレットを公表しておるわけでございます。その中で重立ったところを申し上げますと、大気汚染改善後に指定地域に出生あるいは転入した者は認定しないこと、また著しい大気汚染がなくなれば地域指定解除すること、喫煙者補償対象としないことなどを述べているところでございます。
  12. 片山甚市

    片山甚市君 経団連常務理事内田公三さんは、「産業環境」という雑誌の一九八五年の四月号において、「大気汚染改善されてきたにもかかわらず、公害病認定患者がいまだに増加する一方で、その補償費産業界負担しつづけなければならないという現状を私どもとしては何としても納得することができません。やはり汚染改善された地域については指定解除し、また暴露要件を見直すべきではないか」、こういうふうにおっしゃっておるのです。  そこで、経団連要求がある中で諮問を行われたとなれば、患者からすれば切り捨てを非常におそれるのは当然ではないだろうかと思います。しかも、諮問文は極めて抽象的、包括的であり、どの範囲のことを求めているのかはっきりしないのも疑惑を深める要因だと思いますが、諮問は具体的に何を求めておるのか、もう一度お答え願いたいと思います。
  13. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先ほど大臣が、諮問した趣旨なり経緯なりを御説明申し上げたわけでございますが、その中身で具体的にどのような事項について諮問したのかというお尋ねでございますが、中公審におきましては、我が国におきます大気汚染態様変化を踏まえまして、今後における第一種地域あり方に関して御審議いただくこととしておるわけでございますが、具体的な審議内容といたしましては、現在の我が国大気中に存します汚染物質健康被害との関係評価、それからこの評価を踏まえた第一種地域指定及び解除要件あり方などでございます。
  14. 片山甚市

    片山甚市君 この文書によると非常に簡単に、「我が国大気汚染態様変化を踏まえ、今後における公害健康被害補償法第二条第一項に係る対象地域あり方に関して、公害対策基本法第二十七条第二項第二号の規定に基づき貴会の意見を求める。」ということで諮問趣旨を四項目掲げておるのでありますが、その中で十分に意味が通じておると、長谷川さんはそうお答え願ったと考えてよろしゅうございますか。このことだけですか。
  15. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 御指摘のとおりでございます。
  16. 片山甚市

    片山甚市君 それならば、中公審答申後の問題ですが、環境庁はこのような地域指定見直し諮問を行う前に当然やらなければならない問題があったと思うのですが、やっておらないのではないでしょうか。  去る昭和四十九年十一月に公健制度実施に当たり中公審が行った指摘、すなわちSOxのみならず、NOxSPM浮遊粒子状物質ども大気汚染指標に加え総合的に評価する必要があるという答申内容をまず実行することであります。にもかかわらず、いきなり地域指定見直し諮問するなどということは支離滅裂であり、中公審そのものを軽視、言葉は悪いが侮べつした極めてふまじめな態度と思いますが、そう思いませんか。中公審指摘されたことについて実施されていない、これについてはどう思いますか。
  17. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 四十九年の中公審答申におきまして、ただいま先生からお話ございましたようなことがいわゆる宿題事項になっておったわけでございます。その後、環境庁といたしましてはいろんな文献調査あるいは環境庁みずからいろんな調査等をやりまして、その調査の結果をようやく取りまとめまして、それを中公審に報告いたしまして、それに基づいて先生からお話ございましたようなNOx等健康被害関係についても十分御議論していただきますよう、第一種地域あり方についての御審議を御諮問した次第でございます。
  18. 片山甚市

    片山甚市君 ぬけぬけと言えるものですね。当時の国会答弁では「ここ一、二年のうちにはNOx制度にのせるということができるのではないかというように考えておる次第でございます。」、これは橋本道夫環境庁長官官房審議官となっています。にもかかわらず、今日まで指標化されていないのは行政上の怠慢でないかということを先ほど聞いたのですが、できなかったのは当然である。国会昭和四十八年に、NOxを一、二年のうちには制度にのせますと言ったけれども、それはそのときの答弁であって、単なる思いつきであって、真実そういう思いはなかったと、こういうふうに言いますか。
  19. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 環境庁といたしましては、制度の発足当初から、先生からお話ございましたように、NOx等地域指定要件等においていかに評価すべきかという問題につきましては、NOx等健康被害に関しますいろんな文献あるいはみずからの調査実施というようなことをやってまいったわけでございます。そういうことで五十八年の十一月にこれらの調査研究データを取りまとめましたものでございますから、これを中公審に提出いたしまして、我が国大気汚染態様変化を踏まえて今後における第一種地域あり方について諮問した次第でございます。
  20. 片山甚市

    片山甚市君 昭和四十八年に橋本説明員はこういうふうに答えています。「NOxのほうはまだ早いのではないかということでございますが、この点につきましては中央公害対策審議会医療分科会あるいはこの審議会費用負担部会において非常に熱心に御検討になったところであります。その検討の結果を申し上げますと、確かにデータSOxより少ないが、NOx影響というものは、これは現段階においては無視できないところでございまして、そういうことでNOxも取り入れていくべきである、こういうことでございました。」、そうして先ほど申しましたように、「しかしながら、幸いNO2につきましての環境基準がすでに設定されております。これに伴いまして、つい先ごろ、大気局のほうも規制方針を出しておられますので、ここ一、二年のうちにはNOx制度にのせるということができるのではないかというように考えておる次第でございます。」と答えておるのですが、それは思いつきであって、何もそれについて進んでおりませんが、橋本さんが勝手に言ったということで理解をしてよろしゅうございますか。  環境庁は、そんなことを言うつもりはなかったけれども、たまたま審議官が勝手にそう思っただけだ、こういうふうに言い突っ張っておるというふうに思いますが、どうでしょうか。昭和四十八年から今までですから十二年たっています。短いですね、十二年ぐらいは。人の命ですから。あなたたちはその間遊んできたということになる。のせられると言ったじゃないか。のせられなかったということについての説明ぐらいしましたか。私は環境特別委員会に来て間もないから言いませんけれども、今まで十二年間こういう約束をしたけれどもできておりませんが、ひとつ御協力賜りたいとおっしゃってくれましたか。答えてください。
  21. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 四十八年当時におきまして、当時の橋本審議官の方でそのような考え方を国会の場において述べましたことは確かでございます。そういうことで当時の橋本審議官にしましても、NOx健康影響については速やかにいろいろな資料を集めて検討しなければならないということを踏まえまして御発言になられたものというぐあいに理解いたしております。  私どもはこの後を受け継ぎまして、いろいろ文献調査なりあるいはみずからの調査というものを逐次いろいろ実施してまいったところでございまして、そういう面では環境庁といたしましても過去かなり時間かかってございますけれども、そのNOx等大気汚染健康被害との関係を明らかにするための資料をいろいろ集めまして、現在それに基づきまして中公審で御審議していただいているところでございます。
  22. 片山甚市

    片山甚市君 中公審にかかっている問題でありますから、私、素人でありますからこれ以上言いませんけれども国会で言ったことは実行していくためにきちんとしてもらいたいということだけまず言っておきたい。その場限りで済ませるものではない。あなたはどうせやめるんですからいいです。国民はやめないんです。役人はやめても国民国民をやめるわけにいかぬのですから、ここで言ったことは国民に語った、議員に語っておるんじゃなくて、国民に呼びかけたというように理解をしてもらって御答弁賜りたい。私の態度も余り立派なものでありませんから、言うまいと思って答えないかもわかりませんが、国民が聞いておるんだと思って答えてもらいたい。  まず総合評価を行った上で、それを踏まえて対象地域を見直す必要があるなら見直せばよいというのが私の考えです。この諮問昭和四十九年十一月の中公審答申を故意に黙殺しようとする不当なものだと言われても仕方がないのではないか。諮問を撤回して、まず総合評価をやるということで、環境庁は心を改めてもらって、改心をしてみたらどうかと思うのですが、長官あるいは関係者、答えてください。
  23. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 大気汚染汚染物質といたしましては、四十九年の中公審答申におきましても、硫黄酸化物SOx窒素酸化物NOx、それから浮遊粒子状物質SPMという三つの物質がある、それが健康被害影響を及ぼしている物質であるというようなことをお話しになっているわけでございます。当時の時点におきましてはSOxが著しい汚染状況がございましたというようなことから、SOxに対しまして地域指定要件を定めておるわけでございます。それに基づきまして私ども地域指定等を行ってまいっているわけでございますが、現時点におきましてはSOxの著しい改善があったために、従来ペンディングといいますか宿題事項になっておりましたNOx等汚染物質健康被害との関係が一番問題になっておるという状況にあるわけでございます。  このようなことで私ども現在審議会にお願いしていろいろ御議論いただいているところでございますが、先生からお話ございましたように、総合指標あるいは個々の汚染物質ごと指標というような問題につきましては、ただいま中公審の中で専門委員会がつくられておりまして、その専門委員会の中でそれぞれの物質健康被害との関係評価をいろいろ行っておられるわけでございますから、その中において当然御議論をせられまして一つの結論がお導き出されるというぐあいに理解いたしております。
  24. 片山甚市

    片山甚市君 公害問題は、複合汚染という言葉で言われるように、SOxだけだとか、NOxだけだとか、NO2だけだとかいうような言い方にはならないものでありますから、総合評価は必要だという私の立場は曲げません。あなたの方は役人ですから格好をつけるので、国民には余りよくなってもらっては困る、できるだけ円満にいきたい、財界や政府の言うこと、政府というか権力におもねておると思いますからそれ以上言いません。環境庁というのは少なくとも私たちにとっては裁きの中でも一番公正な官庁として見ておりますが、今の話を聞いてみても私たちの疑問は解けないのですが、それ以上責めてみても、局長のような方々が国の方針を全部曲げるわけにいかぬでしょうから、私の方は諮問を撤回されて総合評価をするような態度に出た方が早道だと思うということだけ言いました。答えについてはいただきませんけれども、次に移ります。  諮問本文参考の文言上の相違がありますが、諮問本文には「対象地域あり方」とあるのに、これに付随した参考の「諮問趣旨」について、四項ですが、「第一種地域指定及び解除要件あり方等」とありますが、なぜ「等」をつけたのか、またつけなかったのか。書き方について書き分けしておるのは、表題の方は「あり方について」ということになっていますが、最後の結びの四項目には「あり方等」というふうに書いてあります。その意味説明してください。
  25. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 第一種地域あり方につきましていろいろ御議論がなされるわけでございますが、その御議論の過程におきまして、これに関連して検討すべき問題も出てくることもあり得るんじゃなかろうかというような意味がございまして、そういう意味でこの「等」をつけておるわけでございます。そういう面では、これからの審議会におきます御議論の話の中におきまして「あり方」と関連した問題が出てきた場合にもあわせて御審議していただきたいという意味で「等」をつけておるわけでございますので、御理解いただきたいと思います。
  26. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、これには大した意味がない、いろんなことを検討してもらうために「等」をつけてあるということですからその程度にしておきます。  そうすると、問題は公建制度の基本的な性格ですが、長官公健制度基本的性格をどのように認識されておるのか、お答えを賜りたいと思います。
  27. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 本制度は、公害による健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図ることを目的とした制度でございまして、基本的には民事責任を踏まえた損害補償制度理解しております。
  28. 片山甚市

    片山甚市君 そこで、長官の気持ちはよくわかったんですが、長官は、去る二月の二十六日、衆議院環境委員会質問に答えて、「健康保険法と同じじゃございませんか、生涯病気をしなくても、ちゃんと自分の払うべきものは払って、そして病める人々がそれによって救われていく、それと同じ意味だと私は思っております」と、こう答弁しておりますが、今、長官お答えになった公健制度健康保険制度は、モラルにおいては同じであっても制度上違うんじゃないか。基本的に刑事罰民事罰を受ける者たちが、お互いにそういうややこしいことをせずに、直接被害者に対して弁済するというか救済するという責任をとろうではないかというようなことになっておるんじゃないか。もとの意味では、石本長官社会保障について詳しいからつい自分の出を誤って言ったんじゃないかと私は思うので、健康保険法と同じだと言われると非常に趣意が違うので、これは長官の御趣旨がどうであるのか、御披露願いたいのです。
  29. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 公健法は基本的には民事責任を踏まえた損害補償制度でございますし、一方、健康保険法社会保障制度でありまして、両者は基本的な性格を全く異にしているものでございます。
  30. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、社会保障制度である健康保険と、公害加害者被害者に対する損害賠償保障制度である公健法を同一視されているということはないと、今後の運用について重大な過ちは犯さないということで今、長官からお言葉があったというふうに理解してよろしゅうございますか。
  31. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 今申しましたように、これは基本的には法的な性格も違います。ただ、私がこの例をとりましたのは、被害患者が一人も出ていない地域においてなぜ賦課金をかけてくるのかというようなことでございましたので、例えばということで、一生涯病気をしなくても健康保険料をかけているというのと同じようなことじゃないでしょうかと、本当に誤った答弁をしたと思っておりますが、以上でございます。違っております。
  32. 片山甚市

    片山甚市君 衆議院原田議員のお言葉などを聞いておると、大変厳しい立場で今おっしゃったような負担の問題について言及されているように見受けられましたし、長官あるいは総理のお答えの中でも若干首をかしげたものでありますが、きょうお話を聞いてとりあえず氷解しておきます。  公健法制度についてですが、本制度は本来なら不法行為として民事責任を問われることはもとより、ケースによっては刑事責任をも追及されかねない公害汚染者被害者に対する損害賠償を制 度的に保障したものであり、加害者は金さえ出せば済むという性質のものではないということが明白になったと思います。この際、諮問についても本制度の本旨に基づき、監督官庁である環境庁みずからが本質を変質させるようなことを考えておるものではないことを、諮問した理由はその損害賠償制度についての法律を曲げることはないということなのかどうか、もう一度長官から確かめたいと思います。
  33. 石本茂

    国務大臣石本茂君) この制度の中で適正な運営を図っていくというふうに心得ております。
  34. 片山甚市

    片山甚市君 長官は、去る二月二十二日、河本特命大臣に対して、規制緩和に関して経団連が行った要求の中で、公健制度等に関する部分は規制緩和になじまないので配慮するよう申し入れたと伝えられていますが、そのいきさつについてお答え願いたいと思います。
  35. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいま先生申されましたように、河本長官から民活の問題が出ました。私はその後、閣議が終わりました後でございますが、河本大臣に対しまして、私としましては民間活力活用のための規制緩和を図ることは重要ではありますけれども環境保全に関する規制国民の健康と生活環境を守る観点から行われるべきものでありまして、民間活力活用のために規制緩和するということは絶対なじまないものであると思っておりますというふうに申し伝えておきました。
  36. 片山甚市

    片山甚市君 非常に心強い長官態度でありまして、お話を聞いて感激するのでありますが、こういうような重要な問題でありますから、担当大臣個人に申し入れるのではなくて、本来ならば閣議とか公の場所でもう少し明確に御主張されたならば、環境庁の地位といいますか、ウエートといいますか、責任を内外に示すことができたんじゃないだろうか。年々後退を余儀なくされている環境行政に活を入れたということになると思うので、そういう場合には公の席上、閣議とかそういうところで、環境行政は民活になじまないことについて御理解を願うように、閣僚としての、国務大臣としての態度をもう一度きっちり示してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  37. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先生の御提言、本当にありがとうございました。  今回のお話は、各大臣に対して検討を依頼されたことに触れて申し上げたものでございますが、今後とも状況を判断しながら、閣議の場をかりまして発言するように努力をしてまいります。ありがとうございます。
  38. 片山甚市

    片山甚市君 私はくどい人間で、わかりにくい男ですから、もう一度健康被害損害賠償保障制度についての中公審の答申の内容について聞いておきます。  「本制度の対象とする被害の発生が原因者の汚染原因物質の排出による環境汚染によるものであり、本来的にはその原因者と被害者との間の損害賠償として処理されるものにつき制度的解決を図ろうとするものである以上、本制度は基本的には民事責任をふまえた損害賠償保障制度として構成すべきであると考える。」という「制度性格」について中公審がおっしゃったことについて先ほどから三回ぐらい確認したのですが、そのとおりでよろしゅうございますか。
  39. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先ほども大臣からお答えいたしましたように、先生のおっしゃるとおりでございます。
  40. 片山甚市

    片山甚市君 中公審の答申に書いてある文章を読まないと解釈がおかしくなるので、何回も聞いた上でもう一度制度改正のときの答申文書を今読んだわけです。それは長官を疑っておるのじゃなくて、我々はそういうつもりでこれからこの問題に取り組んでいきたいと思います。  そこで、具体的なことですが、二酸化窒素NO2についてちょっと聞きます。  NO2の環境基準達成不可能ということについてせんだって言われたのですが、昭和五十三年に環境庁NO2の環境基準を三倍に緩めた上で、七年後の昭和六十年までに達成する方針を打ち出しました。去る三月一日の記者会見で長官は、達成期間内では基準達成は無理と表明されております。三倍に緩めた上に七年間経てなお達成できないということに問題があると思います。国としての責任を感じておられるかどうか。どう見ても期間内の達成は無理だというのは明らかであるが、達成のための具体的な方策を示してほしいんです。長官の方から基本的なことをおっしゃって、担当の方から将来のあり方について説明してくれれば非常に幸いです。
  41. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先般私が記者会見の場でNO2の三特別地域におきます条件については無理かもしれないというような発言をいたしましたのは、過去のデータなどを見ておりまして非常に心配していたところでございます。環境基準の達成に向けましては引き続き努力をいたしますとともに、六十年度に入ってからの推移を見守りながら何らかの対策を早目に打ち出しますために、そのための手順を担当局長検討してほしい、手順を早く決めてほしいということを申しているところでございます。
  42. 林部弘

    政府委員(林部弘君) ただいま大臣からお答えがございましたように、先生指摘の問題は、特に総量規制の対象になっております大都市地区で、総量削減計画に基づきまして固定発生源対策あるいは移動発生源対策が進められてきているわけでございますが、現在の段階で判断をいたしますと、総量削減計画の達成が非常に厳しい状況になってきておりますので、今、大臣お答えいたしましたように、この四月以降できるだけ早い機会に関係自治体あるいは専門家のお知恵も拝借したりして、その総量削減計画の中に盛られております自治体が今まで取り組んできておりますいろいろな施策についてさらに効率的に進めるための問題についていろいろと検討し、進むべき方向について方向づけもしてまいりたいというように現在準備をいたしておるところでございます。
  43. 片山甚市

    片山甚市君 お答えが概括的だったのですが、新聞で見ますと、「環境庁は今後、削減計画の見直しや小型ボイラーの規制自動車排ガスの規制強化などを検討する。」と言っておるんですが、今の移動体の問題、発生源の問題ありますけれども、具体的に取りかかっていくのはどういうことですか。
  44. 林部弘

    政府委員(林部弘君) ただいまの時点で具体的に何と何をやりますということはまだ申し上げられませんが、先ほど申しましたように、三自治体が総量削減計画の中で取り上げております諸施策のうちで、進行状況が必ずしも十分でないのではないかと予想されておりますような、これは交通関連の問題がその中に多く含まれておりますが、そういうものを一つずつ検討いたしまして、そのうちで具体化の道の近いものから取り上げてまいることになろうかと思いますが、現在の時点ではまだどれとどれをやりますということはお答えできる段階に至っていないわけでございます。
  45. 片山甚市

    片山甚市君 昭和五十三年に基準を三倍引き上げた、そうして達成を六十年にしたいと言いながら、これから達成できる見込みはまだ立たないので検討する、悠長なことであります。赤字財政なら六十五年に達成するとか何年先に達成するとか、国民負担だからよくぬけぬけと言うけれども、財界負担とか資本家負担になったら途端に首をすくめて、きょろきょろきょろきょろと腐りかかったカメのように穴からのぞいておるような態度では私はできないと思う。  私は、非常に残念に思いますけれども、どう見てもNO2の基準の達成ができないようであれば公害関係の補償額はふえてくる、負担がお互いにふえてくるということで残念でありますが、ふやすようにするのか、減らすようにするのかといえばやはり公害を少なくするための全体の力でなければならぬ。環境庁だけでできませんと。産業界もそうですが、国民全体もこういうことは自分たちの命を縮めることであって、お金のことではないんだ、こういうふうにとらないといかぬ。お金さえ払ったら済むと思う人と、お金は出すんだから大変損だと思うのと、こんな金、金、金、金の根 性では日本列島はつぶれても当たり前だと思うんです。アメリカからどなられて、ECからどなられて、物をつくってうれしそうにやって、貿易摩擦だといって総理大臣以下がうろうろうろうろしておる。こんなさまはないと思います。  私は、今、環境庁が胸を張って言えない悲しい姿は国民が打ちのめされた姿だと思います。もう少し産業界に対していい意味で物が言える、財界に対して物が言える、政府の中でもきちんと言えるように長官を立てて幕僚の諸君は頑張ってもらいたいと思う。長官社会保障について非常に熱心にやってきたことを知っていますから、せめて大臣長官であられる間に何かしら温かい灯がともるように頑張ってもらいたいと私は思う。  そこで、次の問題です。大問題、交通公害対策ですが、昭和五十八年に開かれた中公審では、物流の改善自動車の走行量削減などを含む総合的な交通対策が必要であると答申されております。この答申の具体化のためにどのような対策がなされてきたのか、これからするつもりか、これについてお答えを願いたいと思います。
  46. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 五十八年の答申におきましては非常に多岐にわたる問題についての御提言がございます。そのことに関連いたしまして、関係する省庁多うございますが、低公害なバイパスの整備の問題については既に進められておりますし、またトラック事業者に対しますバイパス等の利用の促進のための指導等も行われておりますし、有料バイパスの夜間料金割引のような問題についても試行が既に行われております。また、沿道法の沿道整備道路の指定あるいは沿道整備計画の策定といったような措置がいずれも少しずつではありますが進められてきているという状況でございます。私ども環境庁といたしましても、こういった諸施策を推進するために、関係の深い省庁もたくさんございますが、そういった省庁あるいは地方公共団体と積極的に働きかけ合って、より前進する方向に持っていきたいということで努力を続けているところでございます。
  47. 片山甚市

    片山甚市君 そこで、昭和五十八年に答申を受けた文書によると、「むすび」として、「このため、昭和五四年に中央公害対策審議会が答申を行って以来いまだに実現を見ていない環境影響評価制度の法制化について、その早期実現を強く希望する。」と、こう書いてあるんですが、御承知のように閣議決定により云々とありますけれども、これは中公審の御指示にかなった態度であるのかどうか、私たちは非常に遺憾だと思う。中公審のいいところだけとっておっしゃっているけれども、一番「むすび」で、いろいろやるのはいいけれども、アセスメント法をつくることが何といってもこういうものの解決ですよと、こういうようにお話ししておるんですが、それについてはどう答えていただけますか。
  48. 山崎圭

    政府委員(山崎圭君) 先生も御存じのように、アセスメント法案をつくるべく前国会におきましてもいろいろ努力を重ねてまいりましたが、いろいろな事情の中でついに提出ができませんで、それにかわる代替の策といたしまして、昨年の八月に閣議決定をもちまして「環境影響評価実施要綱」というものをつくったわけでございます。関係各省庁足並みをそろえまして、統一的な制度関係各省の責任において、またその中核的な役割を私ども環境庁が果たす、こういうようなことをもちまして、行政指導ベースではございますが、法案とほぼ同じ内容を持った要綱をつくらせていただきました。そういうことでこの要綱の実施に向けまして現在各省庁努力中でございます。そういうことでございますので、その経過、事情を御理解賜りたいと思います。
  49. 片山甚市

    片山甚市君 理解はしませんが聞いておきます。アセスメント法ができない理由がはっきりしておるのでありますから、その一番根源になるもの、人間の命よりは経済活動の方が優先する、電源開発の立地条件についてはアセスメント言えない、アセスメント法をつくるのでもそう言って自分たちとしては一番困難なものを逃げておる。ですからこれ以上追及しませんが、閣議決定のものをどういうように実施するのか、しておるのかということを聞いて、できなかったら大変であります。立法してもしなくても行政指導でやれるという思い上がった言い方ですから、できるんならやってごらんなさい。内閣はしょっちゅうかわるんですから、環境庁がずうっと続いてありましても、内閣がかわったら解釈が変わるのが今の政府です。いろいろと聞きましたけれども、私たちはそれほど信用できないんです。立法措置をとっておってもなかなか解釈しても難しいのに、閣議決定ということになれば実行できるかどうか怪しいという意見だけ述べておきます。御答弁は必要でありません。  自動車の排気ガスのことですが、建設省の沿道整備法では若干の騒音対策にはなっても排ガスには効果がないと思うのですが、どうでしょうか。今後自動車の排ガスをどのように減らしていくのか、環境行政の視点でどういうようにとらえられておるか、答えていただきたいと思います。
  50. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 自動車排ガスの問題に対処するためには自動車そのものの単体規制の強化を図るということが基本にございまして、私ども段階的に規制の強化を進めてきておりますけれども、交通量が非常に大きくなってまいりますと単体の規制だけではなかなか十分な効果が上げられない場合も出てまいります。そういう場合には物流の問題あるいは土地利用の適正化というようなものも含めて総合的な対策を推進することが必要であるというように指摘をされているわけでございまして、その推進のためには具体的なプログラムがたくさん掲げられているのが現状でございます。そういうものについては、先ほども答弁申し上げましたが、現場を預かっております地方自治体におきましては、それぞれの地域の実情に応じていろいろな取り組みがなされておるところでございます。  また、今、先生指摘の沿道整備法につきましては、主として道路騒音の問題というものを頭に描いて定められているものと承知をいたしているところでございます。
  51. 片山甚市

    片山甚市君 今、問題がありますのは、騒音もさることながら排ガスの問題が非常に大きな課題でありますから、せっかく努力をして目的を達成するように、やはり総量規制といいますか物流の問題についてメスを入れなければできないことでありますから、お力をつけて発言をしてもらいたいと思います。  そこで、法案が成立するときの附帯決議に対する措置ですが、本法案に対して第七十二回国会以降四回にわたりまして附帯決議が行われておりますが、政府の対応が十分であると私は思いません。前回は第九十八国会、五十八年の三月三十日とあわせ過去三回取り上げてまいりました附帯決議の中で、交通公害対策の推進及び公害保健福祉事業の充実強化についてまずお聞きしたい。  一つは交通公害対策の推進でありますが、幹線道路周辺における環境改善を図るため自動車の騒音規制、加速走行については、昭和五十一年六月の中公審答申の「自動車騒音許容限度の長期的設定方策」に基づいて全車種とも五十四年規制実施されておりますが、効果を知りたいのであります。  その次に環境基準をクリアした測定点と要請限度を超えた測定点については何カ所あり、そのシェア、いわゆる範囲はどうなっているのかについて、具体的にお聞きしたいと思います。
  52. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 前回の附帯決議をいただきました五十八年三月以降の分についてでございますが、先ほどもちょっとお答えいたしましたけれども、段階的な規制自動車の単体について行われておりまして、特に騒音の問題につきましては、五十九年、六十年、六十一年に大型車の全部について規制を強化いたしておりますし、中型のトラックにつきましては五十八年、小型のトラックにつきましては五十九年に規制を行っているところでございます。  それから、お尋ねの騒音の現状についてのお答えでございますが、地方公共団体が、当該地域の 騒音を代表すると思われます地点、または、騒音につきまして問題を生じやすい地点と考えられるような三千九百二十八地点において測定いたしました昭和五十八年の結果について申し上げます。  朝、昼、夕、夜間と時間帯が四つに分けられておりまして、そのすべてが環境基準を達成している地点というのは五百七十九地点、割合で申しますと一四・七%でございます。一方、悪い方の四時間帯のいずれもが要請限度を超過した地点は九百六十六地点、二四・六%でございます。また、このうち五十四年から継続して同一地点で測定している三百五十五地点につきまして経緯を眺めてみますと、五十八年は六十九地点、一九・四%が環境基準を達成しておりますが、悪い方では九十地点、二五・四%が要請限度を超過しているわけでございまして、ここ数年環境基準達成の状況あるいは要請限度の超過の状況というものを年次的に推移を見ますと、いずれも横ばいの状況ということになろうかと思います。  それから、五十一年の答申に基づきます第一段階規制がどういう状況かということを申しますと、全車種五十四年規制として実施されておりますものが五十八年末におきましては規制適合車約五〇%と推定をされております。それから、五十四年から五十八年までの間に自動車の保有台数が約二〇%、走行キロ数、燃料消費量がそれぞれ七%増加しているという状況でございますので、こういった状況を考慮いたしますと、規制の効果が反映されているというようには言えるのじゃないかと思っております。  なお、先ほどもお答えいたしましたが、第二段階の目標値につきましても五十七年以降毎年規制実施しておるわけでございまして、今後規制の適合車の普及等によりまして少しずつ効果が出てくるのではないかというように期待をいたしているところでございます。
  53. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、第二段階としての車種別の、また規制年次及び許容限度、規制を担保する措置等については今ちょっと言われたんですが、もう一度答えてほしい。そして、第二段階の措置から除外されている大型車のうちトラクター等の規制の進め方についてどうなっていますか。
  54. 林部弘

    政府委員(林部弘君) ただいまお尋ねがございました第二段階規制の問題についてお答えいたします。  第二段階規制の目標値は長期的な目標値として当時技術的に可能な限り厳しく設定されたものでございまして、車種ごとにそれぞれ五十四年規制値から三ホン程度低減する。エネルギーで申しますと半分減らす、こういうことに相当するのでございますが、規制の時期にきましては、当初予測がなかなか困難であったというようなことで自動車公害防止技術評価検討会という専門家から構成されます検討会を設置いたしまして、排ガスの問題と騒音の問題について、技術開発の促進を図りながら逐次低減技術の開発状況評価しながら進めてきておりまして、ほとんどの車種については規制の強化を図ったところでございます。  ちなみに申し上げますと、五十七年規制では乗用車、五十八年には中型車、五十九年には大型のバスと小型のトラック、それから六十年に大型のトラック、六十一年に大型のトラクターを規制いたしまして、現在は小型の二輪が残っているというような状況でございます。
  55. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、トラック、バス等から排出されるNOx規制については中公審答申に基づいて全車種で五十四年規制実施されているが、その排出量の低減効果の推移はどういう推移をされてきましたか。
  56. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 低減効果の推移でございますが、トラック、バスにつきましては軽量車、中量車、重量車、軽貨物、ディーゼル、ディーゼルがまた副室式と直噴式といろいろございまして数値が少しずつ違うわけでございますが、全体について申しますと、トラック、バスの一台当たりのNOxの排出量について申し上げますと、第二段階規制によりまして、車種によって異なるわけでございますが、全く規制をしておりませんでした当時の排出量に比べますと一九%から五二%までということで大変幅がございますが、そういうような低減率になっております。
  57. 片山甚市

    片山甚市君 トラック、バス以外はわかりませんか。
  58. 林部弘

    政府委員(林部弘君) トラック、バス以外につきましては乗用車でございますが、乗用車はいわゆるガソリン、LPG車について申しますと、四十八年当時の未規制の状態と、いわゆる五十三年規制という非常に世界的にも厳しい規制をやっておるわけでございますが、その削減率は八%の段階までになっていると、非常に小さくなっております。  それからディーゼル車につきましては、六十一年に対象にいたしましたディーゼル乗用車のうちの手動変速機付のタイプのものにつきまして削減率は四十九年以前の未規制のものと比べまして三七%、つまり等価慣性重量一・二五トンを超えるものにつきましては三七%、一・二五トン以下のものにつきましては二九%と、乗用車につきましてはそういう低減効果が算定されております。
  59. 片山甚市

    片山甚市君 ありがとうございました。  そこで、第三段階としての車種別目標値及び適用時期等の規制内容についてはどういうことになりましょうか。
  60. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 第三段階と先生今おっしゃったわけでございますが、お答えいたします。  いろいろな車種がございましてごちゃごちゃいたしまして申しわけございません。先生の御理解でおっしゃる第三段階というのは、実はディーゼルの場合には直噴式と副室式について第二段階規制が達成をされました後に、先ほどお答えをいたしましたディーゼル乗用車につきましてはさらに技術的に見通しの立ったものから規制を行っていくということでもう一段階厳しい値が定められておりまして、その値を達成するために先ほどお答えをいたしました手動変速機付のディーゼル乗用車に対する規制が六十一年規制ということで昨年規制が行われることになったと、こういう経過でございます。
  61. 片山甚市

    片山甚市君 そこで、今お話があったディーゼル車についてお聞きするんですが、ディーゼル車のうちバス、トラック等についてNOx規制は、特に大都市圏では排ガスの主役と言われており、緊急に解決すべき課題であると思うんですが、どうでしょうか。ディーゼル車の実態はどうなっているか、若干説明してほしい。保有台数、生産台数、保有車両の増加の理由ですね。そして、ガソリンエンジンと比較してのメリットとデメリット、性能とか生産のコストなど、NOxの排出量等についてわかっている範囲内で説明してください。
  62. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 初めにディーゼル車の実態でございますが、五十八年度末のディーゼル車の保有台数は約五百二十七万台でございまして、全自動車が四千四百五十六万台程度でございますから、割合で申しますと約一二%相当ぐらいになっております。それからトラック、バスの中でのディーゼル車の割合を申し上げますと、これは年々増加をいたしております。このトラックというのは軽貨物を除いたトラックということでございますが、年々増加傾向にございまして、五十八年度末で四一%になっております。それからディーゼル乗用車、これは近年非常に増加いたしておりますが、五十八年度末の保有台数は八十七万台でございまして、全乗用車の中での構成比では三・六%ということでございます。  それから、もう一つお尋ねがございましたディーゼル車とガソリン車を比較した場合のメリット、デメリットとおっしゃったかと思いますが……
  63. 片山甚市

    片山甚市君 性能。
  64. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 性能、生産量、NOx排出量等について申し上げますと、メリットといたしましては、ディーゼル車は燃料経済性が非常によいということ、つまり軽油が比較的価格が安うございますし、一リットル当たりの走行距離が非常に大きくなる、また出力が大きい、そういうようなメリットがございます。デメリットといたしま しては、揺れて乗り心地は余りよくないとか、始動性が悪いとか、あるいはエンジンが非常に大きくなる、こういったような点はデメリットということになるわけでございますが、こういうことから言うと、タイプとしてはどちらかというと中型車あるいは大型車ということになるわけでございます。ガソリン車の方は何といっても加速性能がよいということ、それから乗りぐあいがいいといいますか、居住性がいいと申しますか、そういうようなこと、それからエンジンの小型化が可能である。そういうことで乗用車は小型車が多いわけでございますが、デメリットとしてはガソリンの価格が高いとか、一リットル当たりの走行距離が余り大きくならないといったような燃料経済性が悪いということになろうかと思います。  それから、先ほど先生が国内向けの生産台数もお尋ねになっていたように思いましたので、それをちょっと追加させていただきますと、ガソリン乗用車、これは軽を除いた数字でございますが、五十八年の生産ベースが二百八十八万五千台、それからディーゼル乗用車が二十三万六千台、それからトラック、バスでございますが、これはトラックのうち軽トラックを除いておりますが、ガソリンの方が三十七万七千台、それからディーゼルトラック、バスの方は五十一万六千台ということになっております。  それから排出量についてでございますが、車種によって異なっておりまして、厳密にはなかなか比較は難しゅうございます。と申しますのは、一般的にはディーゼル車というのは、今メリット、デメリットのところでも申しましたように、ディーゼル車はどうも大きなものが多くなりますので比較が難しゅうございますが、仮に乗用車で比べますと、ガソリン車の場合には一キロ当たり平均〇・二五グラム、ディーゼル乗用車の方は〇・七から〇・九グラム・パー・キロメーター、それからトラックの方は二・五トンクラスで比較をいたしますと、ガソリン車の方が〇・九グラム・パーキロメーターに対してディーゼルの方は一・七グラム・パー・キロメーターということで、乗用車でディーゼルはガソリン車の三倍、それから二・五トンクラスのトラックだと二倍ぐらいというふうに申し上げることができるかと思います。
  65. 片山甚市

    片山甚市君 少し面倒くさいけれども、もう一度別のことを聞きますが、これに関連して直接噴射式と副室式エンジンの性能の比較、特に直噴式エンジンの改良は技術的に進展が見込めないのかどうか。今後の技術評価の進め方について聞きたいと思います。
  66. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 直噴式と副室式の違いでございますけれども、直噴式というのは、空気をピストンによって圧縮いたしまして、その中に直接燃料を噴射して燃焼させるというタイプでございます。副室式の方は、副燃焼室に燃料を噴射いたしまして、ここで部分的に燃焼させて主室の方にその燃焼ガスを噴き出しまして、そして主室内の空気と混合させながら燃焼させる、こういう仕組みになっておるわけでございます。こういうような燃焼方式の差異のために差がございまして、直噴式は副室式に比べましてどうしてもNOxの排出量が高くなる傾向がございます。  また、これを低減するための技術としましては、噴射時間を少し延ばすというようなことを行いますと今度は黒煙がふえてくるといったような問題がございまして、直噴式は副室式に比べるとNOxの低減対策技術がなかなか難しいということがあって、御案内のように規制値も直噴式の方が高い数値になっておりますが、いずれにいたしましても、技術開発の進展を待ってよりよい状態に持っていかなければならないのではないかというように考えております。
  67. 片山甚市

    片山甚市君 枝術的なことをいろいろ聞いたのは、交通公害の中で排ガスをなくしていくといいますか、被害をなくしていくのにはどういう道をたどるべきかということについて私たちも勉強したかったんでお聞きしました。  そこで、中公審が五十八年四月に答申した「今後の交通公害対策のあり方について」及び附帯決議での指摘とあわせて、答申の趣旨に沿った行財政上の措置を充実強化すべきだと思いますが、その見通しは大体うまくいっているのでしょうか。
  68. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 見通しを申し上げるというのはなかなか難しいわけでございますが、私どもとしては関係省庁ともども今まで以上に一層努力を重ねてまいりたいというように考えております。
  69. 片山甚市

    片山甚市君 行政上の措置を充実強化すべきだとは思っておるけれども、その見通しはまだわからぬと。そういう努力をするつもりですか。
  70. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 先ほど来るる申し上げておりますが、単体規制の面につきましては技術の開発を踏まえて進めていくということになろうかと思いますし、総合的な立場からの交通対策としましては、先ほど申し上げましたように、総量削減計画などの中に取り上げておりますような自治体の現場で取り組まれているいろいろな施策について、さらに関係者がそれぞれ努力をいたしまして少しでも前進させてまいりたい、こういうことで現在準備をしておるということを先ほども申し上げたわけでございます。
  71. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先生からいろいろ御提言をいただいておりますが、関係する省庁が多いものですから、昨年の十一月、閣議でこの問題につきまして私は協力を求めたわけでございますが、今、局長申しておりますように、その後の各省庁の動き方などを現在我々は眺めておるところでございますけれども、今後また重ねまして、そして閣議を通しまして省庁にこの問題の推進方をしっかりお願いしていくつもりでございます。
  72. 片山甚市

    片山甚市君 公害をなくすための行財政上の協議でありますから、それをやればそれだけ国の富が豊かになる、健康が回復されるということになる、侵害されないということになりますから、より必要なお金だと思うので努力を賜りたい。  そこで、お話を聞いてみたら、我が国自動車保有構造の特色はトラック等の比率が高く、しかもディーゼル化が進んでいるということに聞きました。技術改良とあわせ、公害をまき散らす交通量そのものの抑制を図るための具体的な手段を講ずべきであると思うんですが、長官としてこれからどのようにされるか、早急に検討すべきではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  73. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 今お話がございましたように、技術的に困難な問題があるようでございますので、今後ともこの開発の推進をめぐりまして、これは図ってもらうように私といたしましても全力を挙げて努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  74. 片山甚市

    片山甚市君 その次に、附帯決議の中の補償給付の改善公害保健福祉事業のことについてお聞きしますが、聞くところによれば福祉事業は被害者救済に余り活用されていないということであります。理由は、現行法の規定上、国及び自治体の責任が不明確であり、事業を計画的に推進するための仕組みを欠いているため、地域事情に適応した地域ぐるみの事業の実施が不可能であるということです。したがって、原状回復の原則に基づいて地域的に継続的な救済を可能とするような制度化が必要であると言われておりますが、どうでしょうか。前回の改正以降の補償給付改善の推移等、改定率、改定の根拠、改定の総額等についてもあわせて説明してもらいたい。  私は、計画的な救済を可能とするような制度化が必要じゃないか、今のようにばらばらであれば救済するにもしようがないと思っておるんですが、それについてお答え願いたいと思います。
  75. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 公害保健福祉事業から御説明さしていただきます。  公害保健福祉事業につきましては、先生お話もございましたように、被認定者の健康の回復、保持、増進を図ることを目的といたしまして、各県市区におきまして地域の実情を踏まえながら事業計画を立てまして、いろいろ創意工夫しながらその事業内容の充実等が図られてまいってきているところでございます。今後とも事業の質的充実及び運用方法の改善等を図ることによりましてこ の公害保健福祉事業の一層の推進を図ってまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。  環境庁といたしましても、自治体がそれぞれ地域の実情を踏まえながらいろいろ事業計画を立ててやっておるわけでございますが、この自治体の事業の効果的実施のために、事業に直接かかわります保健婦さんなりあるいは水泳指導員の資質の向上を図るための研修会の実施、あるいはリハビリテーションの手法、禁煙等についての長期計画の作成配布、それから禁煙指導に関します調査研究成果の普及などを行っているところでございます。いずれにいたしましても、今後とも関係の県市区の御意見を十分聞きながら一緒になって事業の推進に努めてまいりたいというぐあいに考えております。  それから次に、補償給付の改定状況等に関するお尋ねでございましたが、補償給付のうちの障害補償費、遺族補償費につきましては、労働者の平均賃金の動向を踏まえて改定を行っているところでございます。もう少し詳しく申し上げますれば、制度発足当時の中公審答申にあるわけでございますが、労働省の賃金構造基本統計調査報告、いわゆる賃構と言われておりますけれども、これと春闘によります賃金引き上げ状況調査報告があるわけでございますが、これらによりまして労働者の性、年齢、階層別平均賃金を推計いたしまして、これを毎年度中公審にお諮りした上でこの障害補償費、遺族補償費等については改定を行っておるところでございます。それ以外の他の補償給付につきましてはいろいろの他制度がございますので、他制度におきます同種の給付の改定状況を勘案しつつ改定を行っておるところでございます。  なお、前回別法改正以降の主たる改定率なり予算額でございますが、主なものを申し上げますと、例えば障害補償費の改定状況でございますが、加重平均で五十八年度には三・七%、五十九年度には一・八%、六十年度予算におきましては四・一%というぐあいに考えておるところでございまして、これに要します費用といたしましては、予算ベースで五十八年度において二百八十一億、五十九年度二百八十七億、六十年度三百五億というぐあいに考えております。  もう一つ遺族補償費について申し上げますと、これは障害補償費と同様の考え方に立って改定を行っておるところでございますが、加重平均で申し上げますと、五十八年度で二・七%、五十九年度で一・二%、六十年度予定では五・七%の改定を行うことといたしておりまして、所要経費といたしましては五十八年度において二十五億円、五十九年度において二十八億円、六十年度三十二億円という形になっております。  それ以外に、遺族補償一時金あるいはその他もろもろあるわけでございますが、例えば児童補償手当について申し上げますと、他制度の改定状況を勘案しつつ五十八年度において一・九%、五十九年度一・五%、六十年度で三・四%の改定を行う予定でございまして、所要経費といたしましては五十八年度三十六億円、五十九年度三十五億円、六十年度三十五億円というようなことを考えておるわけでございます。それ以外に療養手当あるいは葬祭料等につきましても、他制度の改定状況を見ながらそれぞれ毎年引き上げを行っておるところでございます。
  76. 片山甚市

    片山甚市君 前回改正以降の福祉事業の実績ですが、種類、事業費等その効果と今後の進め方についてどういうように考えておられますか。
  77. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 公害保健福祉事業はいろいろ細かな事業項目があるわけでございますが、大まかに申し上げますと、リハビリテーション事業、転地療養事業、療養用具支給事業、家庭療養指導事業というぐあいに四区分に分けられるわけでございます。これらにつきまして、先生お話がございました五十七年度の事業実績と五十九年度の見込みでございますが、事業実績を端的に比べて述べさせていただきたいと思います。  まず、リハビリテーション事業につきましては、五十七年度の事業量は三万九百九十九人の方々に御参加していただいたということでございますし、五十九年度見込みでは四万五千六十四人というぐあいに約一万五千人ほど多くの方々がこのリハビリテーション事業に参加していただいておるところでございます。転地療養事業につきましては五十七年度二万七千九十六人、五十九年度において二万八千百五人というぐあいに、若干でございますがふえておるところでございます。それから療養用具の支給事業について申し上げますと、五十七年度千百六十一台を支給しておったわけでございますが、五十九年度におきましては千二百九台という形になっております。それから家庭療養指導事業につきましては、五十七年度五万三千百三十七人の方の療養指導を行ったわけでございますが、五十九年度におきましては六万一千八百七十一人というぐあいに、保健婦さん等によります家庭に伺ってのいろんな療養指導もさらに内容がふえておるということでございます。
  78. 片山甚市

    片山甚市君 御説明をいただいたんですが、冒頭に言いましたように、公害保健福祉事業については利用が十分でないという私たちの認識であります。  そこで、抜本的にこれを拡充するために公害防止計画に対応した福祉事業計画を制度化する。内容的に言いますと、都道府県等が立案し環境庁長官が承認し予算化すること、及び国レベルの事業は国が全国計画を立案することによって、市町村ごとに小間切れになっておって利用ができない不便を大体なくしていくことができると思うので、それについての私の意見について大臣から御答弁を賜りたいと思います。
  79. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生からお話ございましたように、公害保健福祉事業といいますものは、公害によります健康被害者の健康回復等を目的とした非常に大切な事業であるというぐあいに考えておるところでございまして、環境庁といたしましても、従前から関係県市区に対しまして利用される方々の御意見を十分踏まえるといいますか、御意見を吸い上げて、実施できるものは実施してまいりたいというようなことで、この面につきましてはかなり県市区ともいろいろ相談を行っているところでございます。県市区におかれましても、それぞれの地域におきます患者さんのニードといいますか要望といいますものを十分踏まえながら事業計画をそれぞれ立てまして、それに基づきまして実施いたしておるわけでございます。  実際問題といたしましては、県市区の能力といいますか、必ずしも全部が全部行き届かない点もあろうかと思うわけでございますが、患者さんの健康回復という観点から県市区におきましても、この福祉事業の必要性を十分認識しておられまして、計画を立てまして実施いたしておるところでございます。環境庁といたしましても、国のレベルでやる必要のある事業につきましては、先ほども申し上げましたように、関係しておられる方々の教育研修なりあるいはPRなりという点については県市区と連携をとりながらやっておるところでございます。  そのようなことで、県市区あるいは国ということでそれぞれの役割分担を相互に連携をとりながら実施いたしておるところでございますので、今後ともさらにそういう面の協力あるいは内容充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
  80. 片山甚市

    片山甚市君 福祉事業は患者の救済に余り活用されておらないという認識でありますから、国レベルは国レベルで都道府県段階における一つの計画を持つように、大ぐくりにする方がやりやすいと私ども提案したんですが、それには答えてくれておりませんが、活用されておるという証明を今度はしてください。私の方は福祉事業の活用が至って不十分だ、患者の救済については不十分だと、そう思っています。私たちとしては、公害患者についての救済措置をとるために国全体の公害防止計画と対応するようなことをしてもらいたいということを言っておきます。局長の方はお答えいただきましたが、大臣はどうですか。
  81. 石本茂

    国務大臣石本茂君) いろいろよい御提言をい ただいておりますが、この事業の性格からいたしましても画一的ではございませんので、地域の実情を十分に踏まえました形で今後この対策を練っていくわけでございますが、そういう状況のもとに従いまして自治体と十分に意見を交換しながら一層の充実に努めてまいりたいと思っておりますので、よろしく御指導のほどをお願いいたします。
  82. 片山甚市

    片山甚市君 それでは話題を変えまして、今度は環境庁に少し厳しく聞くんですが、川崎市におけるNOx測定器の故障についてどのような監視体制をとられたのかについて聞きます。  川崎市におけるNOx測定器の故障でありますが、大臣の所信表明に公害発生に対する監視体制の強化が述べられておりましたが、その重要性はだれも否定し得ないところでありますが、現実には監視体制の基本であるNOx測定器が長期間故障したまま放置されていた事実が川崎で発生しております。どのような故障が発生していたのか、並びに測定器の構造はどのようなものであったのかについてまず説明を賜りたい。
  83. 林部弘

    政府委員(林部弘君) お答えいたします。  昭和五十八年度の一般環境大気測定局の結果報告につきまして集計いたしておりました段階で川崎市当局から報告がございました。五十九年の七月の中旬ごろであったかと存じます。全般的にNO2濃度が上昇しているということでございまして、その原因の解析を川崎市当局にお願いしたというのが五十九年の八月の下旬であったかと思います。その結果、川崎市からNO2濃度の上昇の原因の一つとして、一部の測定局でございますけれども昭和五十八年の六月から八月にかけて実施いたしました流量計の校正に何か影響があるのではないかということを報告を受けたわけでございますが、その報告を受けましたのは五十九年の十二月の二十日でございます。  今、申しました流量計というのは、自動測定器ではNOxの濃度を一時間ごとに測定するわけでございます、NO2あるいはNOという形で測定いたします。その時間内に測定器の中に吸引されます空気が一定の量に保たれなければいけないということで、この目的のため流入する空気の量を測定するという部分が流量計ということでございます。もちろん川崎市は公害行政に関しましては長い伝統と非常に高いレベルを持っているところでございますから、こういうことが起こるということはまことに不思議な感じもいたすわけでございますが、この流量計というのは見かけの目盛りが三百CCなら三百CCという形にセットされて、そこが保たれているように見えても、現実に精密なテストをいたしませんと、あるいはその三百の予定の流量が実際には二百数十しか出ていなかったというようなことが相当精緻な確認をいたさないとわからない場合があるというような事例でございまして、チェックはしていたのだけれども流量計の目盛りどおりに空気が流れていなかったということがわかったというのが現状でございます。
  84. 片山甚市

    片山甚市君 その測定器の故障は昭和五十三年から五十七年までの五年間ということで聞いておるんですが、そのとおりですか。
  85. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 五年間というふうにおっしゃる意味は五十三年から五十七年ということかと思うのですが、これがわかりましたのは五十八年の六月以降のことでございまして、そういう状態がいつの時点から続いていたかということは、先ほども申しましたように、流量計は見たところでは正しく作動しているように見えているわけでございますから、どの時点からそういうことが続いていたということを明らかにすることは大変困難であるというように伺っております。
  86. 片山甚市

    片山甚市君 それほどでたらめな、いいかげんな、投げやりなお役所仕事といいますか、公害について関心のないやり方だったということでわかりました。念を入れて言ってくれたからね。とにかく、測定器の一部である流量計については、環境庁が定めた環境大気常時監視マニュアルによると、年に一回点検することになっておりますが、それが今言う五年か六年か七年かわからぬが一度も点検していなかった。点検したけれどもわからなかったということは点検しなかったということになる。そういうことでありますから、点検したのかしなかったのかについてもう一度聞きます。事実関係はどうですか。
  87. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 点検はしていたようでございますが、このフローメーターの点検についてはどうも不十分だったのではないかというように考えられます。
  88. 片山甚市

    片山甚市君 多分じゃなくて、測定器の故障による数値の修正については現在どのようにされましたか。それがわかったのは市民の人たちがおかしいではないかと言って通告したんですよ。役所が、環境庁の方が調べたんじゃないんです。市民がどうも市の提出しておる資料はおかしいんじゃないかということです。答えてください。
  89. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 川崎市におきます過去の測定データの扱いにつきましては、五十八年六月以前のデータの取り扱いにつきましては専門家から意見を伺うということで現在検討中というふうに報告を受けております。  それから、今、先生指摘の、市民団体が指摘した事実があったのではないか、市がそれを正当に受けとめなかったのではないかというような御発言かと思いますが、その点につきましては、私ども市の方から伺いましたところでは、市民団体の方から同一測定点でありながら測定法の違いによって濃度の逆転現象が生じているというような意味指摘があった、これは五十五年の九月にそういう指摘があったというふうに伺っております。そのことに対しまして市当局の方は、五十五年の十一月に次のように回答をしたそうでございます。その御指摘のあった市民団体の測定の方法というのは比較的簡易な測定方法であるというようなことで、川崎市がやっております測定は自動測定装置による自動測定でございますし、測定の方法そのものが違うということで、比較することは困難ではないか、こういうように当時お答えをしているというように伺っております。
  90. 片山甚市

    片山甚市君 だから、あなたは一つも恐縮する気持ちはないし、当然だと言う。川崎市の松本秀雄環境保全局長は、「こちらの手落ちで申しわけない」と言っておる。五年ほどほったらかしになった。そこで、市民団体が言ったときには今言ったように突っぱねたことは事実です、新聞に載っていますから。しかし、自主的に実施していた簡易測定器の測定の結果、どうもおかしいじゃないかと言ったときに突っぱねたときから間違っておった、直したんじゃなくて。機械が正常に作動しておるかどうかわからなかったという局長お話ですが、こんなことで長官いいんでしょうか。  先ほどの話をすれば、濃度を三倍にして七年たってもできないという話がある。NO2についてはクリアできないという。今聞けば五年も測定器が故障になっていたのがわからなかった。こういうことは私は環境行政としては非常に恥ずかしいことだと思うんですが、大臣どうでしょうか。まず大臣答えてください。
  91. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいまお言葉がございましたように、大気汚染の測定体制の強化、これは当然のことでございますが、といいますのは、大気保全行政の根幹をなすものであるというふうに考えるわけでございます。そうした意味におきまして、財源面におきましても六十年度の予算の作成におきましては特段の努力を払っているところでございます。その充実強化には努めてまいりたいというふうに考えております。
  92. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 先生から御指摘のありました今後の対応措置につきましてお答えをさせていただきます。  自動測定器の保守管理につきましては、先ほど御指摘ございました昭和五十五年の二月に作成をいたしました環境大気常時監視マニュアルというものがございまして、それを踏まえまして地方公共団体の段階でも管理に手落ちのないようにやっていただくように私ども期待をいたしていたところでございます。このような事例が生じましたために、この問題を契機といたしまして本年一月に マニュアルに基づきます保守管理の実施、特に測定機器の校正の徹底につきまして都道府県に御通知申し上げ注意を喚起したところでございます。  また、本年度の新予算におきましても昨年の予算の最終段階に若干調整させていただきまして、測定機器の保守管理を一部民間に委託する場合にはその委託する場合の指針をさらに整備するということで、そういう受託業者を対象とします講習会の開催等も含めまして監視測定機器維持管理適正化事業ということで一千万円余の予算を計上させていただいておるところでございます。
  93. 片山甚市

    片山甚市君 大臣、このお話を聞いてわかるとおり、草の根の諸君、市民団体の諸君は、利益を求めておるんじゃなくて、健康を求めて日夜心配してこういうような簡易の検査機器をつくってでもやっておるんです。そういう人々が参加するときには環境庁は他の人よりもむしろよく聞いてあげる、その意見を取り上げるという姿勢をとってもらいたい。私たちは、役所同士と話はするけれども市民と話をしないような、報告書を見たらそれでいいというような考え方は環境庁には改めてもらって、風が吹いてくる、花が咲いてくる、音が聞こえてくるたびに人の暮らしの向きについて環境がどうなっておるかという心配をするような環境庁全体の雰囲気であってほしいと思いますから、念を押して申し上げておきます。  最後のことになりますが、環境改善のための監視体制ですが、大気汚染の監視体制についてその大綱を説明してもらうと同時に、今回の川崎の例をとってみても、ミスということでなくて、どうもサボっておるということになれば監視体制を監視しなければならぬようになるので、これについてどのような措置をとられるのか。今お話がありましたけれども長官の方から監視体制に対して監視をしなければならないようなことをしなくても済むような方法で、どういう対策をとられるのか説明をしてもらいたいのです。
  94. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいま局長の方からいろいろ御答弁を申し上げたところでございますが、健康を守る、健康を保護する、口では簡単でございますが、並み大抵のことではないということも痛いほど承知をさせていただいております。私どもといたしましては、自治体も含めてでございますが、心を引き締めまして今後の対策に全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。どうもありがとうございました。
  95. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、正確に監視体制をするため、制度的にはどういうようなことでされるか、もう一度説明をしてください。
  96. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 先ほどお答えをさせていただきましたけれども、本年の一月に、五十五年の二月に作成しましたマニュアルに基づきます保守管理の実施をさらに徹底するということで指導をしてまいりたいということでございますし、予算の面におきましても民間に委託する場合の受託業者について講習会を行う、こういうようなことで管理の適正化をさらに進めてまいりたいということで、今、大臣からお答えがありましたように、今後、国も自治体の担当者も心を引き締めて対応してまいりたいということでございます。
  97. 片山甚市

    片山甚市君 今、局長説明で、地方公共団体では常時監視を民間に委託しているところが多いということでありますが、どのような部門について委託しているのか、その実態について説明してください。
  98. 林部弘

    政府委員(林部弘君) お答えいたします。  地方公共団体では、一般的には測定機器の稼働状況の確認でございますとか、消耗品の交換、補給といったような日常の保守点検、これを一般に通常点検と申しておりますが、これが大体一週間ないし十日おきに行われております。それから、先ほどの流路部の検査あるいは検出部の検査といったようなものが定期点検ということで行われておりまして、これはおおむね一年程度に一回ということになっております。これが委託の対象になっている場合があるわけでございますが、吸収液の作成はそれぞれの都道府県みずから行っておりますし、実際に空気を流したり、あるいは液を操作したりして校正を行う動的校正といったような測定器の精度に影響を及ぼすような項目につきましては地方公共団体の職員が直接行う、こういうような形で行っているところでございます。そして、この辺につきましてはマニュアルにおいて指導いたしておる、こういうことでございます。
  99. 片山甚市

    片山甚市君 終わります。
  100. 丸谷金保

    丸谷金保君 今、質疑を聞いておりまして非常に感じることなんですけれども、いろいろやっておられるという説明を受けたんですが、このようによくなったという結果の説明は余りないんです。しかし、ただ一つ、要するに排気量の制限をするようになって非常に効果が上がって低減率が一六から五八ぐらいまでずっとよくなった、片山委員に対する質疑の中ではこれだけがよくなったというようなお答えがあった。あとは、一生懸命努力します、なかなか思うようにいかない、先の見通しについてはちょっと立たない、こういうようなのが多い中で。ただ、大変よくなったと言うんですが、実際には大気汚染がちっとも減らない。しかも、その大きな原因が車の排気ガスによるということはこれは巷間周知のことなんですよ。こんなによくなったと言っているのにどうして実際の車公害による大気汚染というものは減らないんでしょうかね。何なんでしょう。
  101. 林部弘

    政府委員(林部弘君) お答えいたします。  正確には、総量削減計画に関しましてのできるだけ直近のデータが用いられまして、シュミレーションの結果がはじかれるということによって出てくるわけでございまして、総量規制対象三自治体におきましてもまだその辺は計算中でございまして、最終的な姿はまだ出てきていないわけでございます。ただ、計画策定の当初、基準年次というものを設けまして、それにいろいろな要素を踏まえて実際の削減計画というものを計算いたしておるわけでございます。  その場合に、今、丸谷先生指摘のように、移動発生源の中で自動車が一番大きいわけでございますけれども、御指摘のようにそれぞれの自動車単体の規制というものが確かに一番効果があるはずでございますし、私ども見込みを立てる場合にも、やはり少しでも多く早く規制の対象になっております低公害車への移りかわり、代替というものを期待するわけでございますが、その点につきまして代替率と申しましょうか、それが必ずしも十分にいってない問題というのが一つはあるように思います。つまり、当初想像されていた以上に車が長い間使われているというようなことで規制車の方に代替がはかばかしく進んでいない部分が一つあるのではないか。もちろんいろんな車種がございますから精密な計算をしなければなりませんが、非常に大ざっぱな申し方をすればそれが一つあるであろう。  それからもう一つは、やはり車そのものがふえてきている、そしてそれがまた非常に過密な構造を持っている大都市圏の、しかも道路について申しますと主要幹線の交差点近傍といったようなところの測定局の結果の上に改善がはかばかしく進まない結果をもたらしているというのが現状でございまして、実際に排出されますガスそのものの性質から申しますと、自動車について申しますと、自動車の排ガスとしてはNOの形で出るものが周辺のオゾン等によって変化をいたしまして、安定したNO2に変わるということがわかっておるわけでございますが、沿道周辺で計測をいたしております窒素酸化物、一酸化窒素あるいは二酸化窒素の動向というものを見ていると、確かにNOx全体としては下がってきている傾向がある、しかしながら環境基準の対象になっているNO2がなかなかはかばかしく下がってこない、こういう状況でございますので、やはり単体規制の効果そのものは上がっていないということでは決してないのだけれども、その他の問題がやはりいろいろと集積いたしまして、都市の幹線道路の交差点近傍を中心としたあたりの測定局の数値がはかばかしくないというのが特徴的な状況かと思います。
  102. 丸谷金保

    丸谷金保君 今回の法案は、長官提案理由説明を伺っておりますと、大気汚染水質の汚 染というふうなものであらわれる被害に対しては迅速かつ公正な援護を図る、こういうふうにおっしゃっているんですが、そのための法だと思うんです。だから、この法律そのものに私たち反対するものじゃないんです。それで、これは時限立法でもないけれども、中身についての、負担金などというのはもう二年に一遍ぐらいずつ自動延長的にやっていますね。これはいつまでやるつもりですか。本来はこういう法律がなくなることが望ましいんです。しかし、今のような状態でなくされたら大変なので、だからそういう状態をなくしていくこと、今、十三万と言われている人たちに対する援護を十分にしていくと同時に、これから起きないようにしていくという努力、そういう方向、これがどうもちっとも今の答弁を聞いていても見受けられないんです。免罪符になってはいけないんですよ、この法案は。やむなくこういう形をとっているんだということでなければならないのだね。どうですか、こういう法案がなくてもいいような世の中をつくるための環境庁だと思うんですよ。いつまでもなかなか、援護を迅速にやっていくという構えから出ませんか。長官、いかがでしょうか。
  103. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先生のお言葉をいただいて私も胸の中がいっぱいの気持ちでございますが、自動車にかかわります費用負担あり方につきましては、制度発足当初から種々の議論がなされてきたところでございます。今回の延長につきましても、昨年の十二月、中公審においてさらに御検討願った結果、延長が適当との結論をいただいたわけでございます。自動車にかかわる費用負担あり方につきましては、汚染負担の原則を踏まえまして、引き続き今後しっかり検討していかなければならない問題だというふうに私は考えております。
  104. 丸谷金保

    丸谷金保君 調査室の資料を見ましても、四十九年はこの制度の始まったときですからあれですが、例えば五十年度と五十八年度を比べてみましても八倍近い予算になっております、予算だけで見ましても。それだけずっとふえてきているのです。こういうふえる原因に根本的にメスを入れないと私はいけないのじゃないかと思うんですが、ただそれには、今の御答弁聞いておりまして、現状認識が随分違うなと。例えば排ガス規制なんかも世界的に非常に日本は厳しい、こういうことをおっしゃっていますね。これは財界なんかも言っています。しかし、先ほどのシュミレーションをやる場合の何といいますか、数値をインプットするそのもとから私は考え方が違うんだと思うのです。  例えば今、日本の車の総量あるいは総排気量でもいいです、アメリカと比べてみる。そうしますと、アメリカの方が量は多いですね。いいですか。アメリカと比べてみましょう。しかし、日本は車の走れるような平地というのは国土の一七%なんです。いいですか。三十七万七千平方キロメートルか、日本はね。それで、アメリカは三十倍です。しかし、そのうちの国土の車の走れるような平らなところというのは日本が一七%でアメリカは国土の六〇%なんです。そうしますと、車の密度で言いますと、三十倍のアメリカの国土の六〇%と一七%を比べてみますと、日本の一台はアメリカの百台の車の出す排ガスと匹敵するんです、そうでしょう。そういう計算になりますわね。そういう計算をしたことがありますか、あなたたち、どうなんです。
  105. 林部弘

    政府委員(林部弘君) お答えいたします。  総量削減計画を立てる時点で用いられておりますシュミレーションモデルというのは、それぞれの地域で開発されてきております歴史を踏まえまして採用されておりますものでございますから、それぞれの地域での地域を一キロメッシュに切りまして、その中の固定発生源あるいは移動発生源からの発生するガスを、平たく申せばそれが大気中でどういうふうに拡散されて薄められていくかということによって数字がはじかれるわけでございますから、アメリカと比較してというようなことではございませんで、そういうような中で最終的に一定のレベルの環境濃度を達成する、あるいは維持するとすればどういうふうに固定発生源はあらねばならぬか、あるいは移動発生源はどうあらねばならぬかと、こういう計算でございますので、アメリカと比較してというようなことは直接行ってはおらないと思います。
  106. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこにやっぱり一つの問題点と、それからある意味の思い上がりがあると思うんです。あなたは先ほど世界的にも非常に厳しくしていると、こんなこと何の理由にもならないんです、そうでしょう。地域をメッシュにしてその地域の排気ガスをはかるとしても、アメリカに比べて百倍厳しくしてちょうど同じくらいになるでしょう。それをいかにも日本は厳しくしているから余り強いことこれ以上言うなというような今の企業の論理の中へあなたたちまで大気汚染に毒されるように企業の論理に毒されているんですよ。環境ということから考えたらそんなことじゃないでしょう。これでもまだアメリカの何十倍も何百倍も大気汚染されているんですよ。日本の国土全体として見て。そうじゃないですか、そう思いませんか。大臣どうです。それを一台の車の排気ガスの規制量の厳しさだけで得々とした答弁をきょうもしているんですよ。私は聞いていて非常に腹を立てる以上に残念でした。優秀なお役人の皆様までもそんなふうに企業の論理の中に汚染されているのかと。これは恐らく別に意識してじゃないと思うんです。無意識に出てきた答弁だと思うのですが、とんでもない話なんですよ、大気汚染の問題を取り上げる場合に。いかがですか大臣、どう思いますか。
  107. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先生のお言葉、本当に心して私は聞かしていただきました。  ただ、こういう基準がつくってございまして、その基準に当てはめるように現在ただいま庁を挙げて努力している最中でございますものですから、先生の申されましたような条件を考えの中に入れまして、今後対策等を練ります時点参考にさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
  108. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣、これは経済的な車の走行キロのメリット、デメリット問題以前にやっぱり日本人として考えなければならない。そういうことに我々が真剣に取り組んでいく、環境庁も取り組んでくださる、それが今公害病で悩んでいる人たちに対するせめてもの我々の贖罪なんですよ。そこに根をおろさないと、もう公害は少しよくなったからと。しかし実際には、今もおっしゃっていたけれど、窒素酸化物だとか粉じん公害というふうなものは依然としてふえ続けている。その中で企業の人たち、財界の人たちの言うように、本来、もう逆に見直してもいいじゃないかなんという話が出てくる仕掛けの数値でないはずなんです。数値のインプットの仕方をもう少しそういう点でシビアにきちっとやっていけば、日本の空はもっともっとそういう点では厳しくしなければならない、狭い面積なんですから。いいですか、このことを忘れてしまって、もう何か少しよくなってきたというような、先ほど片山委員からも心配して出ておりましたけれども、万に一つそういうことのないように、もっと公害に対する補償というものは強化していかなければならないような日本は狭い国土の中でみんなして生きているんだから。ということで、少しよくなったなんというふうなことを企業の側の連中に言わせないように、大臣ひとつ頑張っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  109. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 御高見、本当におっしゃることの意味はよくわかりますが、現実を踏まえまして現段階では歩いてまいりましたし、このたび法律の延長方につきましてお願いするということで、本日、先生方の御高説を承っているところでございますが、非常に先生の御高見といいますか御意見は心しまして、今すぐというわけにはまいりませんけれども、今後の対策の中でしっかり心してまいりたいというふうに私思っております。
  110. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、具体的な問題を一つ挙げ ましょう。これは東京とそれから全国公害患者の人たちが心配しまして、ちっともよくなっていないじゃないかということを調べて持ってきたものですが、その中では東京の大気汚染が一番進んでいる。しかもその中で我々が住んでいる千代田区が二酸化窒素の測定量が〇・〇七ppm、東京がひどい中でも一番多いんです。その例にこれを見て私、慄然としたんです。こういうところに我々自身が住んでいるんですよ。もうこれは車の汚染以外に考えられないんです。このあたりに工場はないんですから。これが正月の車がほとんど走っていないときと、暮れの走っているときの同じ場所から撮った写真です。私もこれをもらったときに肌寒い思いがしました。やっぱり我々もこういうところでそういう空気を吸っているんですね。ですから、この問題についてもっと、なかなか総合的な汚染規制ができないといっても、少なくとも窒素酸化物やそれから粉じんの問題、それに北海道でスパイクタイヤの問題なんかもあるんです。そういうことについてひとつしっかり頑張っていただきたいということをお願いいたしておきます。  そして、ひとつ具体的な問題に入らしてもらいます。北海道の問題なんですけれども、十勝沖で赤潮が毎年発生するんです。私が非常にけしからぬと思うのは、瀬戸内等で発生すると新聞もじゃんじゃん書きますし、大騒ぎするんですよ。しかし、北海道でこういう問題が起きていてもさっぱり騒がないんです。地元では非常に心配して、再三にわたって水産庁なんかに来ても今までのところ余り積極的な調査もしてくれない。道を通して持ってこい、こういうことになっているんです。今度は北海道庁を通しまして水産庁の方へも上げたし、環境庁の方も来ておりますか、北海道の十勝沖の赤潮。来ておりますね。これはちょうどサケの季節に出るものですから、しばらくとれないんです。だから相当水産被害も出ているし、十勝川の河口から海へ出たところから始まるので川の汚染に決まっているじゃないかと、こういう原因追求についても、「十勝さかな会議」とかいろんなところも非常に心配しておりますので、道からも幸い今度は要請が出ているはずですから、これらに対する対応の考え方、それぞれ、まず水産庁の方からひとつお願いしたいんですけれども
  111. 小野登喜雄

    説明員小野登喜雄君) お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘ありましたサケ漁業が赤潮によって影響を受けている、それに対していろいろ調査研究をしなさいという御指摘かと思いますが、これにつきましては既に北海道庁から六十年度から新たに調査研究をしてくれという要望が出ておりまして、私どもとしましても積極的にこれに取り組んでまいりたい、かように考えております。
  112. 丸谷金保

    丸谷金保君 積極的に取り組むといっても、おたくの方は海の方だけでしょう。海の方の調査はやるということですね、六十年度から。その起こる原因の方は環境庁の方ですわね。どうなんでしょう。
  113. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 私どもも、五十年代の初めから十勝沖で赤潮が発生しているという情報については、かねてから十分承知しておるところでございます。この点につきましては、具体的な十勝沖の問題に限っていえば、これは水産庁の方で原因究明まで含めていろいろ御研究いただいているというふうに考えております。私どもは国公研を中心にやや基礎的な赤潮の発生機構の研究をいたしているところでございまして、この十勝沖の赤潮の種類はギムノディニウムという藻類であるというふうに承知しておるわけでございますが、そのような藻類についても私どもも他の海域でいろいろ研究を進めておるわけでございますので、水産庁、北海道とも十分連絡協議しながらさらに知見を深めていくということでお役に立ててまいりたい、かように考えております。
  114. 丸谷金保

    丸谷金保君 赤潮の原因になっている浮遊物質、それらについてはある程度こういうものだということが出てきていますわね。問題は、そういうことが何ぼわかっても発生源が何だということがわからなければ対応の仕方ができないんですよ。やっぱり発生源が何かということを調査していただく、そういうことに重点を置いていただかなければならないと思うんですが、いかがでしょう。
  115. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) おっしゃられるとおりでございまして、一般的にはいわゆる海域の富栄養化ということが藻類の異常増殖に非常に強い影響を持っているということはわかっているわけでございますが、現在の研究の段階ではっきりしておりますのは、その種類ごとにその条件が異なる。特に赤潮が非常に異常に増殖する条件になるには、単なる富栄養化一般ではなく、他の微量なビタミン類とかあるいは鉄類というような要素が働く。それからまた、それが赤潮という形で一定の海域を独占的にその生物が占めるわけでございますけれども、そのためには海洋物理学と申しますか、海流の影響とか、先ほど先生お話にありました雨による塩分濃度の変化というようなこともいろいろ影響してまいるわけでございます。  四十年代の初めから既に研究が始まっておりまして二十年近く経過しているわけでございますけれども、この一つ一つの赤潮の種類についてそれをコントロールするまでにはまだ至っていない段階でございまして、したがいまして、これは水産庁でも進めていただいているわけでございますが、当面どういう条件になれば出やすいか、そういう発生を予察するとか、あるいは被害をどうやって軽減するかと、そういう面も並行して研究を進めていただいているところでございます。私どもといたしましても、国公研を中心に一日も早く先生の今の御指摘にこたえられるように今後研究を進めてまいりたいというように考えております。
  116. 丸谷金保

    丸谷金保君 水産庁の方では海の方の調査とそれから漁業被害とかそういうことを中心にした調査をするわけですわね。ですから、発生の原因、富栄養化といっても複合的な富栄養化だと思うんですが、そういうことは水産庁の方でやっていないんですから、水産庁の方でもやっているけれどもなんて言わないで、私の方でそれはやりますと言ってくださいよ。大臣どうですか。
  117. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 環境庁といたしましては、従来から赤潮の発生機構の解明のために調査研究などを進めてきているところでございます。今、先生申しておられます十勝沖の赤潮問題につきましては、北海道やまた水産庁などの関係行政機関もございますので、そういうところと緊密な連携を保ちながら対処してまいりたいというふうに考えております。目下研究を重ねている最中でございます。
  118. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それではお尋ねを申しますが、これは最近、町で私が入手したビラですが、それによりますと、「公害指定地域解除に反対する」ということが書いてあるんですがね。こういう公害指定地域解除する御計画が現在政府の方であるのでしょうか。    〔委員長退席、理事丸谷金保君着席〕 ないのにこういうビラがまかれたのか、あるいはそういう空気が見られるのでこういうビラが出たのか、お伺いいたしたいと思います。
  119. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  環境庁といたしましては、この公害健康被害補償法を適正に運営していくためには、絶えずいろんな知見等を集めながら適正に運営していくための検討を続けていかなければならないというようなことで、従前からいろんな検討といいますか、資料を集めて対処してまいったわけでございます。法制定以降におきまして、先ほどもお話がございましたが、法制定の時点におきます中公審の答申におきましてもSOxが著しく汚染しておったと、しかもNOx、SPMにつきましては当時知見が不十分であったというような状況にかんがみまして、速やかに公害によります健康被害者の方々を救済する必要があるというようなことから、SOx指定要件という形で地域指定を行ってまいったわけでございます。その時点におきましても、NOx等につきましては引き続き検討す るようにというような中公審の答申もあるわけでございますが、それ以降におきまして、大気汚染態様が変わってきたというようなことから、四十九年のときに検討事項となっておりました問題も含めまして、現在の大気汚染によります健康被害との関係を適正に評価した上で公健法を適正に運営していく必要があるというようなことから、第一種地域あり方について五十八年十一月に諮問いたしたわけでございます。  その第一種地域あり方といいますものをもう少し具体的に申し上げますと、大気汚染物質健康被害との関係評価を踏まえまして、地域指定指定要件解除要件の明確化ということでございますので、そういう面では解除要件の明確化というのも当然一つの目的といいますか、諮問趣旨でもございますので、関係の方々がそういう面で非常にいろいろ御心配なされておられるというぐあいに理解いたしております。
  120. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私お尋ねしたのは、政府の方で指定地域解除するというつもりでいろいろ政策を研究しておられるのかということをお聞きしたんですよ。そうでないならないで別にいいんです。ただ、いろいろのことをおやりになっているのを聞いて、聞いた人の邪推で、思い間違えて心配したというのならそれはそれでいいんですよ。思い間違いでなくて実際に公害指定地域解除する。例えば硫黄酸化物については従来やっていたから大分きれいになったので硫黄酸化物はやめて今度は別の窒素酸化物で規制すると、そういうことを考えておられるのかどうか。あるいは浮遊粒子ですね、空中に砂煙とか、ちりが散るでしょう。そういう浮遊粒子状の物質、これはSPと普通言っております。硫黄酸化物はSOx、それから窒素酸化物はNOxと、そういう言葉で言われておるのでありますが、そういうことを考えておられるのかということです。つまり、従来の指定基準をやめて新しい指定基準でやる、こういう意味ですか。
  121. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生お話の中にもあったわけでございますが、硫黄酸化物SO2に関しまして地域指定要件といいますものは非常に明らかに示されているわけでございます。  その理由と申しますのは、四十九年あるいはそれ以前におきまして、いわゆるSOx汚染が非常に著しい。しかも、それに伴いまして患者の多発が非常にあったというのが明らかであったということ及び窒素酸化物NOx浮遊粒子状物質SPMにつきましては当時知見がまだ十分なかったというようなことからそのような状況にあったわけでございますが、大気汚染によりまして疾病が非常に多発しておるという状態があったものでございますから、早く患者さんを救済する必要があるという観点におきまして、SOxに関してのみ地域指定要件といいますのが明らかに示されまして、それに基づきまして法律が組み立てられ、地域指定を行ってまいっているわけでございます。  その時点におきましては大気汚染の中の物質、当時SOxNOx、SPMが健康被害影響があるということはわかっておったわけでございますけれどもSOxだけが明らかであってその他の物質については明らかでなかったというような点で最初のスタートが始まったわけでございますが、それ以降におきまして、先生お話にございましたようにSOxが著しく改善されてまいりました。NOx、SPMが大体横ばいの傾向に推移しておるというような状況におきまして、大気汚染それぞれの三物質健康被害との関係をきちっと評価するといいますか、それをどのように考えるかということをもう一回整理をいたしまして、それによって公健法を適正に運営していく必要があるだろうというような考え方から、第一種地域あり方SOxについては指定要件等が明示されているわけでございますけれどもNOxについては指定要件が明示されていないというようなことからNOx等に関します指定要件を明らかにしていただきたい、大気汚染改善されますれば当然解除という話もあるわけでございますので、解除要件もあわせて明確化してほしいというようなことで諮問いたしているわけでございます。  端的に申し上げますと、第一種地域あり方につきまして大気汚染濃度、大気汚染物質健康被害との関係が不分明なところもあるわけでございますから、それらを明らかにした上で、地域指定要件解除要件を明らかにした上でこの公健法を適正に運営していくための基本的な重要な事項ということで、現在御審議をお願いいたしておるところでございます。
  122. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ただいま窒素酸化物は減ったと、こうおっしゃったけれども、そういうことを実際に調査されたのでしょうか。つまり、硫黄酸化物の方がきれいになって、そのほかのものはそうでないということがわかったとおっしゃったけれど、それはどういう方法で調査してそのデータを出されたのか、データございますか。
  123. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 私の守備範囲じゃございませんけれども、関連で説明させていただきます。  大気汚染の程度をそれぞれにおきまして測定する定点がありまして、そちらでSOxなりNOxなりの観測をいたしているわけでございます。確かに先生お話しの中では、かなり昔の時点においてはなかったのじゃなかろうかというお尋ねかなというぐあいに思うわけでございますけれども、とにかく法をつくりまして指定した以降におきましては、それぞれの指定地域におきまして一般大気測定局というのがございまして、そちらでSOxNOx等については数値が把握されておりまして、これは大気局の方で取りまとめておるわけでございますが、そういう数値が出ておるわけでございます。
  124. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは法を制定した当時のことをお聞きしているんじゃないんですよ。    〔理事丸谷金保君退席、委員長着席〕 現在の段階でもう指定地域は要らぬ、解除してもいいというふうにお考えになっているのなら、そういうことの理由となる、いわゆる空気がきれいになったという証拠、それは具体的な調査に基づいて、具体的な資料に基づいて言っていただかないと困りますよと。ただ感じで、外に行ったら空気がちょっときれいになったからと感じでやられたのじゃ困るんです。それは日によって自動車が走らないときと走るときじゃ大分違うんですよ。そうすると、今問題にすべきは、きれいになったその日一日だけ調査してやるべきじゃないので、むしろひどいときを基準にしてやるのが正しいのではないか。そういうふうに考えますと、どうも調査がうまくできていないように思いますが、どうでしょうか、できていますか。厚生省かどこかで調査された資料がございますか、もう何人をも納得させるような。ないならないでいいですよ、それはないならないでこれから調査すればいいんですから。
  125. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 現在の大気汚染物質の測定状況のことでございますので、現状について簡単に申し上げますと、今、先生の御指摘ございます二酸化硫黄あるいは二酸化窒素につきましては、二酸化硫黄は一般環境大気測定局というのが逐年整備をされてきておりまして、五十八年の時点で申しますと約千六百カ所全国に測定局がございます。それから二酸化窒素につきましては一般環境大気測定局が約千三百ございます。二酸化窒素の方は、先ほどから先生方からいろいろと御発言ございますように、自動車の沿道での状況を把握する心要があるということで、自動車排出ガス測定局というものが現在三百弱、二百七十数カ所に設置されておりまして、いずれも自動測定装置を持ちまして一時間、一時間の数値を記録する、こういう形で行われております。  それから浮遊粒子状物質などにつきましてはまだ現在五百弱でございますが、これも一般環境大気測定局ということで設置されておりまして、常時監視測定体制ということで数値がそれぞれの測定局で出てくる形になっておりまして、それは自動的に記録もされる、こういう形になっておりまして、そのデータに基づいて一年間、一年間の数値について十分に吟味をいたしまして、確定しました段階で通年の環境基準との適合状況というも のを報告しておるわけでございますが、毎年四月から三月までの分を一年おくれということになりましょうか、昨年の十二月に私どもが発表いたしました数字は前年の三月以前のもの、前の年の四月から昨年の三月までのものを昨年の十二月に報告をいたしておる、こういうことで毎年一般環境測定局それから自動車排ガス局についてそういう状況の報告をしている、こういうことでございます。
  126. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この汚染地域指定をなさるときにはやはり根拠があってなさったんでしょう。そして指定したときの原因と現在の原因とちょっと違ってくる場合もありますね。例えば、指定した当時は硫黄酸化物が基準となったんだと、ところが今は浮遊粒子状の物質とかあるいは窒素酸化物というようなものを基準にすべきだといったようなことになっているとしましょうね。そうしますと、こういうようなものについては常に調査をなさって、資料としてつくっておかれて、そしてそれを環境庁に持ってこられて、環境庁の方でまた検討なさるということをやりませんと、ただ感じでもって、感覚でもって物事をやられたのでは困るわけですよ。  それから、報告をなさるときに文章で報告なさるんでは困るんで、やはり数字でもっていろいろな表なり数字なりのものをつくりまして、そしてそれを大臣のところへ出していただいて検討してもらうということが私は必要だと思いますので、そういうことをやっておいでかということをお尋ねしたんです。いかがですか。
  127. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 地域指定に当たりましてSOx等の汚染物質との関係をいろいろ調査しているかというお尋ねでございますが、地域指定に当たりましては、四十九年中公審答申におきましてSOxで、硫黄酸化物におきまして数値を示してございます。〇・〇五ppm以上の場合には、それに患者の多発状況をかみ合わせながら地域指定をするというぐあいに四十九年中公審答申に示されてございまして、それに基づきまして指定を行っているわけでございます。でございますから、地域指定要件として現在明らかなのはSOx硫黄酸化物だけという形になっているわけでございます。したがいまして、先生からお話しございましたように、その法制定以降におきまして窒素酸化物、浮遊粒子状物質に関します健康被害につきましていろいろ国内外の文献等を環境庁としては集めておったわけでございます。また、あわせましていろんな地域におきます有症率、症状をどのくらい持っておられるかということにつきましてもいろいろ調査をやってまいりまして、そういうもののデータを取りそろえましたので五十八年十一月にそれを報告いたしまして、諮問をし、今後におきます第一種地域あり方指定要件なり解除要件の明確化をお願いいたしているところでございます。
  128. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 まあ大体そういうことだろうと思いますがね。大気汚染の発生原因別対策が必要だということをいろいろの人が申しておるわけです。例えば「公害健康被害補償制度の改革に関する提言」というのを、一九八四年十二月二日に第五回日本環境会議というのが川崎で行われまして、そこで発表しているんですよ。その第一番目に指定地域では浮遊粒子状物質指標化を図れと、指標化ですね。そして自動車沿道も指定地域の中に含めるべきだと、こういう提言しているのです。これについて環境庁はどのようにお考えになりますか。
  129. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生お話にございました日本環境会議からの提言は私どもも承知いたしているわけでございます。その中にございます今、先生お話にございました窒素酸化物あるいは浮遊粒子状物質、あるいは自動車沿道というような話もあるわけでございますが、この窒素酸化物あるいは浮遊粒子状物質につきましては、それに基づきます健康被害との関係をどう把握するかという問題が一応基本にあるわけでございます。そういう問題につきましては、先ほど申し上げましたように、現在、中公審の中で専門委員会という専門の方々のお集まりの会が開かれてございまして、そちらでそういう汚染物質健康被害との関係をいろんな文献等をもとにいたしまして現在検討を進めていただいているところでございます。  なお、沿道の問題でございますが、沿道も窒素酸化物の影響ということになるわけでございますので、それらも含めまして、現在、中公審の中でいろいろ御議論をされておるという状況にございます。
  130. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 その御議論なさっておる中公審では、自動車沿道の実態をどのように調査して資料となさっておるのでしょうか。そういう点について環境庁ご存じでしょうか。
  131. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 現在、委員会で審議していただいておりますときに、環境庁の方で用意いたしました資料が大きく分けまして三つあるわけでございますが、その中の一つとしては、国内外の大気汚染健康被害との関係文献調査というのがあるわけでございます。この中におきまして先生お話しございましたように沿道といいますか、NOx影響につきましての文献もあるわけでございますし、それ以外に全国の各地域におきます学童を対象といたしましたATS調査というのがあるわけでございますが、その調査に当たりましてはその沿道の影響を相当に受けている地域というようなところも含めて対象にして私ども調査を行っているわけでございますし、その結果等も中公審に提出いたしているわけでございますから、先生のお尋ねになりましたそういう沿道の関係資料中公審に御提出させていただきまして現在検討していただいておるというぐあいに考えております。
  132. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは次に進みますが、現在いろいろ環境庁で御努力なさっているということですが、患者の数ですね。患者の数はこれは減ったんでしょうか、ふえたんでしょうか。それから、もし減らないのならどういう理由で減らないとお考えでしょうか。
  133. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) まず患者の数でございますが、法の制定されました時点におきましては対象の認定の患者さん、四十九年八月末の数字では一万四千三百五十五名でございましたが、その後年々ふえてまいりまして、五十九年の三月末では八万九千五十三名ということになってございます。特にその中におきましては、五十三年ぐらいまでは地域指定の数もふえてまいった関係もあるわけでございますが、患者さんの伸びは二けたの伸びございましたが、それ以降におきましては一けたでおさまりまして、現在のところこの二、三年は三から四%の伸びという形に推移いたしているわけでございます。  それで、この患者さんの数のふえておるあるいは減らないという理由、原因はどう考えておるかというお尋ねでございますが、現在、指定いたしております地域を見ますと、疾病といたしましては気管支ぜんそく、慢性気管支炎、それからぜんそく性気管支炎、肺気腫というような非特異的な疾患でございます。非特異的疾患と申しますと、いろんな原因、大気汚染もあるわけでございますが、その他の要因によっても発生する病気という特性があるわけでございますが、この非特異的疾患である指定疾病の発生と現在の大気汚染との関係評価といいますのは非常に難しゅうございまして、私どもとしてはそれを疫学的に分析把握することはなかなか困難なものであるわけでございます。そういうようなこともありまして、現在環境庁におきましては、中公審に御諮問いたしておる中におきましてそこら辺の御議論もしていただけるというぐあいに思っておるところでございます。
  134. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 地域指定をなさる場合に「著しい大気汚染」あるいは「疾病が多発」、こういう法律に書いてある言葉の標準でなさっておるということでございますが、「著しい大気汚染」ということを決める基準というものはございますか。また、「疾病が多発」といいましても、病気がたくさんできると言っているのはどういう基準、たくさ んという意味を決めるのはどこにあるのかということですが、こういう問題について具体的な基準はございますか。
  135. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お尋ねの点でございますが、四十九年中公審答申におきましては、それ以前におきますいろんな地域におきます大気汚染と疾病の多発状態というものに関しますいろんなデータ等があったわけでございますが、それらを踏まえまして四十九年中公審答申におきまして具体的に大気汚染要件については一度から四度までのグレードをつくっておるわけでございます。その中におきまして大気汚染の程度を三度以上、〇・〇五ppm以上を法律で言っております著しい大気汚染のある地域というぐあいにみなすといいますか、当てはめてもよかろうと。それから疾病の多発の関係でございますが、固有症状の率に着目いたしまして、大気汚染の軽度な地域の二、三倍以上を一応疾病の多発と解釈するといいますか、そういうようなことが中公審答申に具体的に示されておるところでございまして、第一義的にはこういうような二つの要件を組み合わせて地域指定を行うということに答申がなされておるわけでございますので、それに基づきましていろいろ調査をした上で地域指定を行っているところでございます。
  136. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ちょっとこういうことをお尋ねしてはどうかと思いますが、「ジュリスト」に「公害健康被害補償法の問題点」ということにつきまして、加藤一郎先生橋本道夫先生、森島昭夫先生、吉田克己先生、これは皆大学の先生ばかりですが、こういう先生がいろいろ議論をなさっておるのですが、こういう先生中公審のメンバーに入っておられますか、入っていませんか。
  137. 山崎圭

    政府委員(山崎圭君) 加藤一郎先生橋本道夫先生、吉田克己先生、森島先生、そのうち前三者、森島先生を除いては現在中公審委員でいらっしゃいます。
  138. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この議論の中でいろいろなことが論ぜられております。現在の経団連の御意見も書いてありますが、同時に指定地域解除についてどう考えるかという問題が論ぜられております。これは純理論の問題ですから、地域指定解除ということももし空気がきれいになってしまえばあり得るということで御議論なさっているんだろうと思いますけれども、そういうことだと考えて悪意にとらないで御答弁願いたいんですが、もし地域指定解除をするというのであればどういう条件で解除するのか、どういう条件がそろったときに解除することになりますか。それは現在の条件と合うか違うかの問題で確かめたいのでお尋ねいたしますが、どうですか、どういうことになったら解除なさいますか。
  139. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) ただいま先生からお話しございました点が非常に難しいといいますか、非常に大切なことであるというように思うわけでございます。その難しいあるいは大切なことにつきましてどう考えていったらよろしいのか、どう理解していったらよろしいのかという点がはっきりしませんと公健法の適正な運用ができなくなるという観点に立ちまして、環境庁は従前からいろいろな資料を集めて努力してまいったわけでございます。その資料を取りそろえまして、先生からお話しございました点も含めまして中公審の中で御議論していただきたいということで現在諮問いたしておるところでございます。
  140. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それじゃ私の方からお尋ねいたしますが、現在、指定地域に住んでおりまして、その人は当然もう既に認定患者となり得るだけの資格を持っているんだけれども、たまたま指定解除されてしまった、まだ認定を受ける前に。普通なら、解除にならなければ認定を受けるんですよ。ところが、暴露期間は十分満たしておるのに認定を受けられなかった。こういうような人はたとえ指定解除しても認定を受けることができるのかどうか。この点について環境庁はどのようにお考えですか。
  141. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  先生の御質問は非常に難しい御質問でございますが、現段階におきましては解除要件の明確化ということも含めまして、現在、中公審諮問いたしているところでございます。  解除要件がどういう形で決められるかという点、まだ中公審で御審議いただいている現段階におきまして、そういう非常に難しい議論に対する考え方といいますものは、私どもちょっとまだ考えておらないところでございますし、そこら辺の点も中公審の中で御議論が当然なされるものと、あってほしいというぐあいに思っているところでございます。
  142. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、指定中に認定を受けたんですよ。指定中に認定を受けたんだけれども、そこがもう指定地域から外されてしまった。認定を受けた人は指定地域でなくなっても治療を受けることができるかという問題がございますね。こういう点についてはどのようにお考えですか。
  143. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 現在、指定地域におきまして認定された患者さんが、仮に地域指定解除された後にどうなるかというお尋ねでございますが、認定された患者さんは、その病気が治るまでの間は公害によってそういう病気になられたという認定が行われているわけでございますので、その方々が地域の問題と絡んでどうこうするという話にはならないのではなかろうかなというぐあいに思います。いずれにしましても、その問題は中公審の中の御意見も伺いながら対処してまいりたいというように思っております。
  144. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私、これをお尋ねしたのは、中公審のメンバーの人が集まって、いろいろこの問題を議論なさっておるから、それでお伺いしたんですよ。全然根拠がなくて言っておるわけじゃないんです。  そこで、現在、地域指定解除をすべきような要件が整っておるかどうかということについて、やはり環境庁でも御研究にならないと、中公審でもうこれは解除してもいいという答申があったから解除するということではちょっと見識がなさ過ぎると思うんですよ。それでお尋ねしているわけなんです。ひとつぜひ、地域解除をして軽々しくやらないように、いろいろな問題がございますので御検討していただきたいと思います。  次の問題に入ります。補償給付をなさるわけなんですが、補償給付の水準の根拠、これをお尋ねいたしたいわけです。  この問題も実はこの「ジュリスト」の中で議論されているんですよ。だからお尋ねするわけですが、まず補償給付というものと民事上の損害賠償というものをどういうふうに考えるかという問題なんです。公害病によって補償を受けるでしょう、それはそれでいいんですよ。ところが、そのほかに民事上の損害賠償要求できる場合もありますね、重複して認めるかということなんです。民事上の損害賠償が取れたら補償はもうやめるとか、そういうことを考えておられるのか、それとも両方とも取っていいよと、こう考えておられるのか、いかがですか。
  145. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 公健法に基づきます救済を受けた方々が民事上の請求といいますか、訴訟を起こすということについて、何ら妨げるものではございません。
  146. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 補償給付ですね。この補償給付というものの内容ですが、療養費というものがまずございますね。病気になったんだから医者代、病院代というものがございましよう。その範囲というものは、例えば病院までタクシーを飛ばす、そういうタクシー代も入るかどうか、これも問題ですね。それから入院費はどの程度一体出るのか。薬代だけではなくて、診療費だけではなくて入院費も出るかという問題です、療養費の中で。  そういう問題がありますのと、もう一つは仕事を休んじゃうでしょう。収入がありませんね。健康ならば働いてお金がもうかるのに病院へ入っていたためにできない、だから得べかりし利益の喪失ですね、つまり収入の減少です。こういうものについての補償もあるのかということですが、いかがですか、こういう問題については。
  147. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 公健法に基づきます 補償給付の種類といたしましては、先生お話にございました療養の給付、いわゆる医療費に見合うものでございます。それから車代というお話もございましたけれども、病院に通う経費に充てるというような意味で療養の手当というものがございます。それから先生お話にございました逸失利益というような観点からの障害補償費というものもございます。さらに、非常に不幸な話であるかもしれませんけれども患者さんが亡くなられた場合におきましては、遺族補償費あるいは遺族補償一時金あるいは葬祭料、それから子供さんに対しては児童補償手当というような区分がございまして、それぞれがいろんな基準といいますか、要件というものは定められておるわけでございますが、そのような項目にそれぞれ認定患者さんの方々が該当される場合におきましてはそれぞれ給付されるという仕組みになっております。
  148. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ただいま遺族給付の問題が出ましたのでお尋ねをいたしますが、これは例えばぜんそくで死ねば金は出ますね、ぜんそくで死んだんだから、指定病だからね。ところが、ぜんそくが非常に重くて、当然ぜんそくで死ぬべき人がたまたまがんを病んでおるわけですよ。死んだときに医者はこれはがんで死んだ、こう診断をいたしますともう一文ももらえない、そういうことになりますね、がんで死んだのだから。実際は、がんさえなかったらお金をもらえるんですよ、ひどいぜんそくで。本当はぜんそくで死んだ方がよかったんだが、がんなど出てこなければいいのに出てきたために一文なしだ、こういうことになりますね。これは実際に起こり得る問題だと思いますよ。  それから、ぜんそく持ちで、ぜんそくでひゅうひゅういっておる人がちょっと外へ出た、病院の門から外へ出たらそこへ自動車が来まして、ひかれて死んじゃった、自動車事故で。そうしますと、これまた一文ももらえないということになるでしょうね。それとももらえるのかどうか、お尋ねするわけですよ。つまり、病気の程度と自動車の事故とで半分半分に分けてくれるのか、それともぜんそくだったのだから遺族に全部くれるのか、それとも自動車事故で死んだからもう一文もやらぬというのか、その辺のところはどのようにお考えでしょうか。
  149. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 遺族補償費に関するお尋ねでございますが、遺族補償費といいますものは、指定疾病に起因して死亡した場合に支給されるものでございます。その指定疾病に起因して死亡した場合というところを先生いろんな例をとられてどう考えるのかというお話でございますが、認定審査会におきまして、その方々については医学的な見地からこの起因性があるのかないのかというのを十分議論、吟味していただきまして、起因性ありと判断された場合には遺族補償費を出すという形になっておるわけでございます。実際の支給に当たりましては、その起因性の程度に応じまして遺族補償費の五〇%分あるいは七五%相当あるいは一〇〇%相当というぐあいに、その起因性によりまして少しランクは分けてございますけれども、いずれにしましても非常に医学的な問題でございますし、それぞれの認定審査会においてこの起因性の問題については議論していただいて決めていただくというぐあいに考えております。
  150. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 審査会で議論して決めるということになりますと、地域ごとに違った結論が出る可能性がありますね。それで、実はこの問題は法律に書いてあるでしょうが、今おっしゃったようなことで考えて、審査会の審査にかけて出す場合があるとおっしゃったんだが、そういう根拠は法律にありますか、現在の法律に。
  151. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 二十九条に「遺族補償費の支給」というのがございまして、「都道府県知事は、その認定に係る被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡したときは、」という形になってございます。ですから、その起因性の解釈といいますか運用に当たりましては、その起因性の程度をそれぞれの審査会において十分議論していただく。その審査会にはお医者さんも入っておりますし、それから弁護士さん等も入っていらっしゃるわけでございますが、そういうところで十分審査していただきまして、その起因性の程度に応じて五割、七割五分、一〇〇%というぐあいに起因性の程度を判断していただきたいということで通達で示しておるところでございます。
  152. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 法律に書いてあることに外れるような通達はこれはだめなんですよ、実際に。それで、この規定を見ますと、明らかに「指定疾病に起因して死亡した」とありますので、例えばぜんそくで死んだのならいいけれども、がんで死んだ場合はだめだということですよ、これは。つまり、どんなにひどいぜんそくで、あす死ぬかもしれぬようなぜんそくでも、たまたまがんが一緒にあるという場合に、どっちが早いかですよ。早く死んだ方が勝ち、がんで死ねばだめ、ぜんそくで死ねばもらえる、こうなっちゃうでしょう。それではいかにもこれは味気ない規定だと思いますよ、この規定は。それでこの規定をもう少し、それこそ中公審諮問されて、もっと味のある規定にしてくれと、こういうことを実行されたらどうでしょうか。  なぜ私がそういうことを言うかといいますと、この「ジュリスト」の中で委員の人は言っているんですよ。分割支給を考えるべきだと言っておる。しかし、今法律にはそういうことがないのでだめだと、こう言うんですがね。ところが、分割支給ということは、程度の度合いによってやれというわけです。ぜんそくがうんと重くて、がんは軽かったんだけれども、偶然がんで死んでしまったという場合は、ずっと重いぜんそくの程度に応じて、全部は支給できぬけれども幾分か支給せい、こういうことなんだね。責任分割なんですよ。そういうことをこの中で言っておられる。しかし私は、そういう分割もいいけれども、本当に認定した患者が、ほうっておいてもぜんそくで死んでしまうものなら、たまたまどういう事故で亡くなろうと遺族に対する支給をすべきではないか、そういう趣旨法律に変えるべきではないか、こういうように思うのですが、これひとつ御研究願えませんか、どうですか。
  153. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) ぜんそくとがんが両方合併しておる場合、あるいは交通事故という話もあるわけでございますけれども、個々のケースで非常に難しいといいますか、それぞれの病気の進行状況というものも絡みますし、それとの相対的な関係というのもあるわけでございますので、なかなか一概にどうこうということは言いづらい話であろうかと思います。そういう面ではオール・オア・ナッシングという形のものもまずいだろうというような点もあるわけでございまして、現在のところ、その起因性につきましては審査会の中で十分それぞれ議論をしていただきまして、二つの病気があった場合に、それぞれがどの程度死亡に起因性があるのかというのを議論していただきながら、先ほど申し上げました三区分において遺族補償費を支給するという仕組みをとっているわけでございます。これはやっぱり四十九年中公答申にこういう考え方でということになっておるわけでございますので、先生の御意見をただいま承ったわけでございますが、私どもといたしましては今後そういう面では勉強さしていただきたいというふうに思っております。
  154. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 では次の問題に入りますが、現在、補償に使う費用は、企業に対する汚染賦課金というのを決めて出させておりますね。企業に対して金を出せ、おまえのところの煙で汚れたんだからと、こういうわけでしょう。それで、そういうものだけに財源を求めなければならぬのか、そのほかにもっと財源を求めるものはありませんかという質問なんですがね。何かに書いてあったんですが、例えば揮発油税とか、製造業者とか道路管理者とか、それから道路を使う人、使う人は自動車なんかで使う人もあるでしょうが、とにかく道路を使ってほこりを出すような人ですね、車じゃなくてもね。こういうような者からでももっと取ったらどうだと、そして財源を豊富にして補償給付を豊かにしたらどうだと、こういう議論があるんで すが、どうお考えになりますか。
  155. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 費用負担に関しますお尋ねでございますので、少し費用負担制度、仕組みについて御説明さしていただきたいと思っております。  この第一種地域に係ります費用負担につきましては、先生お話しございましたが、汚染負担の原則を基本といたしまして、大気汚染の原因者と被害発生との個々の結びつきが明らかでないところから、全国の汚染原因物質を排出している方々を原因者集団という形でとらえまして、その拠出によります一種のプール方式により費用を調達する仕組みとなっているわけでございます。具体的には、全国の大気汚染物質を排出する固定発生源の関係と、ただいま先生お話しございました移動発生源からその総排出量の割合の八対二をもって費用徴収することとなっているわけでございます。  このうち固定発生源に関します費用徴収方式につきましては、制度創設の際に中公審において検討されたわけでございますが、本制度損害賠償の補償という性格にかんがみまして、当事者の公害防除努力も評価するというような観点からも、汚染原因者たるばい煙発生施設設置者から汚染物質の排出量に応じて賦課金を徴収する現行の方式が採用されているわけでございます。これ以外の徴収方式といたしましては汚染原因物質である原燃料に着目して賦課金を課する方式等もあるわけでございますが、脱硫等の公害防除努力を反映しないというようなこともございまして問題もあるわけでございます。  それから、先生お話しございました移動発生源に係る費用徴収方式でございますが、制度創設の際にもいろいろ御意見ございまして、私どもにおきましてもいろいろ検討いたしたわけでございますが、移動発生源の大部分を占める自動車から負担を求めることというぐあいにいたしたわけでございまして、自動車の走行がもたらしますいろんな社会的費用に充てるために設けられた自動車重量税趣旨、目的等から、当時において最も合理的で現実的な方式として暫定的に自動車重量税収を引き当てる方式がとられているところでございます。この自動車に係る費用負担方式につきましては、その後も中公審の御意見をいただきながら現在までこの方式が延長されてまいったところでございますし、六十年度以降においても現時点におきましては同じような考え方からこの方式を続けるということで三年の延長を図ることといたしまして、現在、審議をお願いいたしているところでございます。  この自動車重量税収引き当て方式以外の方式について、今、先生お話しございましたように、本制度独自に賦課徴収をする方式あるいは自動車重量税以外の各種の自動車関係税からの引き当て方式というものが考えられるわけでございますが、徴収コストが高い、あるいは全使用者に負担をかけられないというような問題等がいろいろあるわけでございまして、現在の重量税引き当て方式が最も合理的かつ現実的であって、しかも汚染原因者負担の原則に反しないというようなこともあるわけでございますので、これが一番現実的で合理的な方式であるというぐあいに考えているところでございます。
  156. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 その点はよくわかりました。  それでは別の問題をお尋ねいたしますが、現在、指定地域における大気汚染による疾病ですね、それについては四つ掲げておりましょう。ところが、指定地域以外でその四つの病気にかかった者については何の救済もないんですが、例えば交通量の激しい道路ですね、道路は何も指定地域だけの問題じゃないわけでしょう。そういうところの周辺の人がそういう病気になった、それに対して何らの救済策もないということは、これはいわゆる差別禁止の原則に反するのではないかという議論をする人もおりますが、どのようにお考えになりますか。
  157. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 公害健康被害補償制度は、先ほど大臣からもお答えございましたように、民事責任を踏まえまして大気汚染影響により健康被害を受けた方々の迅速かつ公正な保護を目的とするものでございます。このような法律のもとにおきまして第一種地域に係る指定疾病といいますものは気管支ぜんそく等四つあるわけでございますが、その原因は大気汚染以外の原因でも発症し得るような非特異的な疾患であるわけでございますので、個々の患者さんにつきましてその原因を明らかにすることは非常に困難といいますか、実際上不可能であるわけでございます。したがって、大気汚染影響によりこの指定疾病にかかった者に対しまして、民事責任を踏まえ、迅速かつ公正な保護を行うためには指定地域暴露要件指定疾病の三つの要件を満たした患者さんに対しまして、大気汚染との間に因果関係ありとみなしまして制度の対象とするというぐあいに割り切りをした上でこの制度はつくられているところでございます。  この指定地域につきましては、先ほど来の御議論もあるわけでございますが、著しい大気汚染と疾病の多発という二つの要件につきましてそれぞれ疫学的な知見に基づきまして一定の基準を設け、これにより地域指定線引きを行っているところでございまして、この基準を満たさない地域におきまして居住する者等につきましては、この制度の仕組みが先ほど御説明申し上げましたような形でつくられているものでございますから、この地域に居住する者以外の方々についてはその対象とすることはできないというぐあいに考えているところでございます。
  158. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは次に、それに関連するわけですけれども、日本弁護士連合会がっくりました意見書がございますが、昭和五十五年の公害健康被害補償法についての意見書、こういうのを見ますと、今までの四つの疾病のほか、目とか鼻とかのどに対するいろいろの障害が発生するのだが、そういうものも疾病として指定しろと、こういう主張をいたしておるわけですよ。これは弁護士会がやっていますがね。こういう主張について環境庁としてはどのようにお考えになるのか。とてもここまではだめなのか、とても金がないからだめだとか、あるいはそんなものはほかの病気と同じだ、一緒にできぬとかいろいろ御意見があるでしょう。どういう御意見でございましょうか。
  159. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 大気汚染によります目とか鼻とかのど等の健康影響の問題でございますが、これらの影響といいますのはほとんとが急性、一過性であるわけでございますので、現時点でこれらを現在の指定疾病に加えるということは困難であるというぐあいに考えております。  なお、この目、鼻、咽頭等の健康被害につきましては今後とも資料の収集に努め、検討を進めてまいりたいというぐあいに考えております。
  160. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 のどにつきましては、たんがとてもよく出る、たんがとまらないという現象を生じますね、近ごろ空気が汚れておるために。これなどはお医者さんに言わすと慢性気管支炎だと、こう言う人もおるんですよ。あるいは慢性気管支炎じゃないかもしれませんよ。区別がつかぬように見えるんですが、こういう問題についてはどうお考えになるのか。  それから、目なんかでも空気が非常に汚れますと痛くて涙が出る状態がありますね。そういうのはなるほど一過性かもしれませんけれども、毎日毎日そういう目に遭うわけ。道を歩くたびにそういう目に遭えば、たとえ一過性であっても継続性があるのと同じ現象ではないかという議論なんです、弁護士会の議論は。これはもう結局大気汚染を何とかなくしろという主張から出てきておる議論だと思いますよ。こういう点についての環境庁の御見解はどうですか。  それから、たばこですね。たばこの嫌いな人がたくさんおりますが、たばこが肺がんの原因となるということを最近言われていますね。これは吸う人だけじゃなくて、吸わない人も近所におる人も肺がんになる可能性は同じだと、こういう議論がございますね。そうするとこれは大変なことなんですが、こういう問題について環境庁はどのよ うにお考えになりますか。
  161. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 現在の指定疾病ということで気管支ぜんそく、ぜんそく性気管支炎、肺気腫、慢性気管支炎という四つの疾病があるわけでございます。そのそれぞれの疾病が診断されまして県市におきます審査会において認定されます場合におきましてはいろんな補償給付等が受けられる仕組みになっているわけでございます。この目、鼻、咽頭等への健康影響につきましては、先生お話もあるわけでございますが、現時点では非常に困難であると考えておりまして、なお今後とも健康被害に対します資料の収集に努め、検討してまいりたいというぐあいに思っておるわけでございます。  それから、たばこの影響の話でございますが、私ども立場から申しますと、認定患者の方々が一日も早く病状が治りまして健康な体に戻ることが非常に大切であるというような観点から、従前から禁煙指導といいますものを実施してまいっているわけでございまして、さらに一般的な話、保健婦さん等の話よりも、さらに主治医によりますそういう禁煙指導を充実強化する必要があるというような観点から、先般、部長通知をもって主治医の先生方と連携をとりながら禁煙指導をさらに徹底してほしいというような要望を出しているところでございまして、そういう点で、このたばこの問題につきましてはさらに禁煙指導を充実してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  162. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ここに肺気腫も入っていますね。これは例えば肺がんだとか肺結核といったようなものも含むんですか。
  163. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 肺気腫という、そういう疾病であるということで主治医の先生が診断されたものにつきまして、認定審査会で議論されまして肺気腫という病名が認められますればその方々は公害病であるという形で各種の給付を受ける仕組みになっておるわけでございます。その場合におきまして、肺気種とは別にがんを持っておった、あるいは肺結核を持っておったという場合におきましては、それは肺気腫という病気があれば一応認定疾病ということでこの制度の対象になるということで御理解いただきたいと思います。
  164. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 最後に、念のためにもう一つお尋ねいたしますが、大気汚染によって一体肺がんとか何かは生じないのかという問題です。つまりたばこで生じるのなら大気汚染でだって生ずるのではないかという疑いが生じますのでお尋ねしますが、もしこの肺がんだとか肺結核というものが生ずるのであれば、そういうものも当然公害病に加えるべきではないかという趣旨なのでありますが、いかがでございますか。
  165. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) たばこと肺がんとの関係はかなり明白に認められてまいっておるわけでございますが、それ以外の大気汚染と肺がんとの関係になりますとそれほど明らかでないというぐあいに受けとめておるところでございます。特にこの大気汚染と肺がんとの関係につきましては病理組織学的にも十分解明されておるわけではございませんし、疫学的にも大気汚染と肺がんとの関係を否定している報告も見られるところでございまして、現時点におきまして大気汚染と肺がんとの関係は明白でないというぐあいに考えておるところでございます。
  166. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 わかりました。  それでは最後に、実はきょういろいろやりとりをいたしたのでございますが、環境庁長官、こういう問題についていろいろお感じになったと思いますが、その御感想を承りたいのと、それから前に新聞で、これは本当かどうかは知りませんよ。新聞記事というのは本当とは言いがたい場合もたびたびあるから本当だとは言いませんが、その中で、自動車公害の現状などから目標としていたことし三月までに二酸化窒素の環境基準は達成しがたいと思うと、こう記者会見でお話しになったということを新聞記者が書いているわけですね。これは本当かどうか知りませんが、そういうことがあります。私は本当の話だと思うんですよ。本当の話だから構わぬと思いますが、こういうことについての御感想、それから、きょうのいろいろの議論についての御感想を最後に承って私の質問を終わります。
  167. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先生のいろいろな御提言、今後の対策の資料にさせていただきます。  それからなお、今申されました三月一日の記者会見の席上で私が、これは三つの特定地域でございますが、とてもNOxの達成は無理かもしれないということは申しました。これは過去のいろんなデータなどを見ておりまして非常に私なりに心配といいますか、気にしておりましたので、それは私が申しました。しかし、環境基準の達成問題につきましては非常に厳しい状況にありますということは、先ほど来局長等の言葉の中にもあるわけでございまして、私といたしましては今後ともこの環境基準の達成、六十年度一年間あるわけでございますので、全力を挙げて努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。恐れいりました。
  168. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 終わります。
  169. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この法案は、今回五回目の暫定措置の延長の提案ということでありますが、これは衆参両環境委員会での何度ものこういうやり方でないようにせよという附帯決議を無視したものであります。大変遺憾でありますし、一体、国会の決議をどう考えているのかということを指摘せざるを得ないんです。また、この暫定措置は結局自動車排ガスによる大気汚染の真の原因者である自動車製造企業の責任を免罪するものだ、こういう点も強く指摘せざるを得ません。ただ、この点は今まで何度も何度も延長のたびに議論してきたことでありますので、きょうは時間もあと三十分という限られた時間でありますので省略したいと思います。  今大切なことは、解除要件あり方検討などというものじゃなくて、やっぱりNOxの、地域指定指標にするなど実態に合った措置をとること、あるいは救済内容を充実することだと思います。そういうことが財界からの不当な言いがかりをむしろ排除していくことにつながっていくんだと思うのです。そのことに即して具体的な問題をこれから質問しますが、しばらくかなり技術的、専門的な問題になりまして大臣答弁の機会がしばらくないので、最初に総論的にお伺いしたいと思います。  今回の問題というのは、要するに大気汚染改善されておる、しかし公害病の認定患者はふえ続けておる、おかしいじゃないかというところから端を発しておるんですね。こういうことが指摘された場合に、大臣としてあるいは政治家として、いろんなことを感ずるのですが、私、主に三つの感じ方があると思うんです。第一は、大体大気汚染改善なんということがおかしいんじゃないか、それを疑うこと。それから第二番目には、大気汚染患者発生の因果関係を疑う。第三番目には、きょうは見えておりませんけれども、よく会うんですが、患者認定自身がおかしいと、こう言って疑う人もおるんですね。私はもとより公害裁判などを担当してきまして、まず被害があるけれども原因がわからない、ようやく究明して原因が判明した、しかもそれを企業が争うということなんですね。しかし、この問題はもう既に四日市判決を初め科学的にも十分因果関係が証明されておるんですね。となれば、まずこういう事態を見れば、大気汚染を私は疑う、大気汚染改善を疑ってしかるべきだと思うんですが、まず総論的に、大臣としてはこの三つ、あるいはほかにあるかもしれませんが、どういう態度をおとりになりますか。
  170. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 今、先生申されましたように、専門委員会にかけておりますのは、ただ単に硫黄酸化物が少なくなったからというんじゃなく、大気汚染の全体を含めまして、そして今後の対策をお願いしているところでございます。
  171. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そのことはわかっておるんですが、ただいろいろな考え方のうちどこを重視して考えるかということが問題だと思うんですが、ま たこれ、全部議論しました後、最後にその事実をもとにして大臣に御答弁をいただきたいと思います。  最初に、これは自動車沿道の問題であります。これは新田裕史教授らの日本公衆衛生学会誌に一九八三年に発表された文献でありますが、「東京都内幹線道路沿道住民の呼吸器症状に関する疫学的研究」というのがあります。これによりますと、道路から二十メートル以内、これはA地区です、それから二十一メートルから百五十メートルがB地区、その間に呼吸器症状有症率に有意差があることが明らかにされたと。その有意差の中身は、例えば持続性せき、持続性たん、せき、たんの増悪、ぜん鳴等々かなり明確なものがありますが、これは環境庁御存じでしょうか。
  172. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) ただいま先生からお話しございました新田論文といいますか、一九八三年の日本公衆衛生学会誌にそういう報告が載っているということは私どもも承知いたしております。
  173. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 特にこれは環七地帯ともう一カ所、八王子ですが、環七沿線の二酸化窒素の濃度はA地区が〇・〇四八ppm、B地区が〇・〇三二ppmでありますが、大幅緩和された環境基準の〇・〇四から〇・〇六ppmのゾーンの中でも呼吸器症状に有意の差が認められたという点で注目されると思うんですね。先ほど来この沿道について調査をしたかとかというようなことがあったけれども、私はこういう点を本当に重視すべきだ、そしてそういう立場からこういう文献参考にして沿道の疫学調査を行うべきだと思うんですが、その点どうですか。
  174. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 沿道と申しますのは、お話にございましたようにNOx影響が主たるものというぐあいに考えるわけでございますが、環境庁といたしましては、この一九八三年の公衆衛生学会誌につきましては環境庁が取りまとめた論文集の中には入っていないわけでございますが、その後に発刊されたものでございますので、これも含めて専門委員会検討する必要があるだろうというぐあいに思っておるわけでございます。環境庁といたしましては、それ以前の国内外の文献NOx影響に関するいろんな文献等も集めまして、それからまた学童におきます有症率調査、これにつきましては、そういう面で沿道の影響を相当に受けている地域というものも対象地域、対象校という形でとらえておるわけでございますので、そういうようなデータもあるわけでございますから、先生からお話しございました論文もあわせまして、沿道といいますか、窒素酸化物NOx健康被害健康影響についてこれから十分審議会議論していただけるものというぐあいに思っておるところでございます。
  175. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 データというのはいろんなデータがあって、そういう影響がないというデータもあるし、あるというデータもあるんですがね。よくカドミ、通じて当時いたけれどもイタイイタイ病にならないと。そんなのは当たり前なんですよね。だって、被害地域に、その土地に住みながら発病しない人もいるんですからね。大事なのはそういう結果が出たということを重視すべきだと思うんです。  次に、環境基準に対する達成についての評価の問題であります。先ほどNO2の総量規制達成できずという、これは素人的な御発言でしたけれども、私はむしろそういう点では素人の方が端的に正直なことを言うと思うんですね。そういう点で、その後環境庁の方から職員が来て、いろいろと年度内の評価の問題でまだまだですと言っておったけれども、むしろこれは達成できないことは間違いないと思うんです。  そこで、ただその評価の仕方でいろいろあると思うんですが、長期的評価とそれから短期的評価、これによって相当違うと思うんですよ。そこでこれはむしろ私の方で数字を言ってしまいますが、東京二十三区で長期的評価によると七五%環境基準達成、短期的評価だとわずか五%、二十の局のうち一カ所しか達成していないんですね。横浜市の場合には長期だと五三%、短期だと二〇%達成。川崎市ですと長期は八九%、短期はわずか一一%、こういうことだと思いますが、これは間違いないですか。
  176. 林部弘

    政府委員(林部弘君) お答えいたします。  窒素酸化物の環境基準につきましては、五十三年の改定以来長期的な評価を中心に行っておりまして、長期的評価としての数値が満足されれば短期的な数値も満足されるということが統計的に観察されているということで長期的評価ということ一本で判断をする、こういう形になっております。
  177. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこにひとつ大きな問題があるんですが、それはまた後で論じますけれども、この長期的評価というのは日平均値の年間九八%、要するに三百六十五日の測定データのうち、高い方から順に並べて、二%分だから七日分を除外して高い方から数えた八番目の測定値が基準をクリアしていればいい、要するにそれ以上高い方は七日分は幾らひどくてもいいという、こういう意味なんですね。それに対して、短期的評価は九九・九%値、要するに環境基準のオーバーは三年間に一日だけは我慢してやろう、あとはだめだという点では大変厳格になるんです。そこで、これは私の方で環境庁の厚い資料を全部これをやって比べてみましたら先ほど言ったような数字なのであります。ですから、長期的評価で達成したと、東京で七五%と言うから。しかし、それでも大変難しい、長期でも難しいんです。本当に患者のことを考え、国民のことを考えれば厳格な九九%値であるべきなんですね。それで九九%値でいったら、これは今も申し上げたとおりもう言葉に出ませんよね。絶望なんというものではない。長官は絶望と言ったけれども、絶望よりもっと高い言葉になるんで、これはどうしようもない状況なんですね。  問題は、なぜ短期的評価によらないで長期的評価によるのか、やっぱり事実を直視すべきじゃないか、こう思うのですがどうですか。
  178. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 先ほど御答弁をしたことの繰り返しのようになりますが、現在の環境基準評価は、先ほど申しましたように、長期的な評価を達成できれば短期的な数値も達成できるということが統計的に関連があるということで現在のような評価で見る、こういうことになっているということでございます。
  179. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は具体的に、これは大変な手間だったけれども、全部やったけれども、そうじゃないんですよね。長期を達成すれば短期も達成できるなんというものじゃない。それは論理的にもそうでしょう。九八%達成できたって九九%、九九・九%達成できるとは限りません。限らないどころか、それは達成できないのが当り前なんですよ。これは単純計算ですね。問題はなぜ長期から短期評価になったのか。というのは、大気保全局長、あなたのずっと前の前任者、昭和四十八年六月十二日付の環境庁大気保全局長通達では、「環境基準による大気汚染評価について」「短期的評価」「長期的評価」、両方挙げているんです。そこの中で、「大気汚染の状態を環境基準にてらして短期的に評価する場合は、」これこれしかじかということで、まず短期的評価をすることを規定しているんです。この通達の趣旨は私は今も生きていると思うんですが、いつ死んじゃったんですか。
  180. 林部弘

    政府委員(林部弘君) お答えいたします。  今、先生の読み上げられました通達はたしか昭和四十八年六月十二日のつまり旧基準のときのものを読み上げられたと思うのですが、御案内のように、現行基準に改定をされました時点で、五十三年七月十七日に大気保全局長からの通達が同じく都道府県知事、政令市長あてに出ておるわけでございまして、現行の二酸化窒素の評価につきましては、私が先ほど申し上げたようなことで評価するというふうに書かれているわけでございますので、環境基準そのものが改定され、それに伴いまして五十三年の七月十七日付の通達が出ている以上、私はその通達によって評価するということになろうかと存じておるわけでございます。
  181. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 旧基準を、これは九九・九%値で 評価するのが元来だったんですね。それが、環境基準そのものが緩められてしまって、しかもその評価する仕方も九八%、要するに年間七日分は悪い、七日分はよろしいと。なればこれはますます評価が甘くなるんですね。しかもなぜそんな九八%値が出てきたかといいますと、通達を出す段階では、最初の原案には九九・九%値でいこう。それが通産省といろいろ内部討議している間に財界などからのいわば抵抗といいますか、そんなもので九八%の方が出てきてしまった。いわば妥協の産物でもあると思うんです。だからそういう点では、まず基準が緩まり、評価の仕方が緩まっていく、それでその緩まった評価の中でも、長官が言われたとおり達成できない。本当に国民立場患者立場を考えれば、本当にもっともっとひどい状況、達成はもうまさに絶望の何乗の絶望である、こういうことになるのが現状だと私は思うんです。  それからもう一つ指摘しておきたいのは、環境庁のもとの幹部であった橋本さん、今は筑波大教授ですが、最近、ある裁判の証人に出まして、この環境基準緩和についてやはり通産省から圧力を受けたと、こういう証言もあるわけです。だから、まさに科学的な根拠がなくて、そういう中から出てきたこれが基準なんですね。  そこで、大臣、今までのところのやりとり、基準の緩和評価値の緩和、二重三重にこうなっている、そういう事態でしかもなお達成できない、こういう事態をどう深刻にお受けとめになるか。いかがですか。
  182. 石本茂

    国務大臣石本茂君) いろいろ先生の御提言をお伺いして私なりにいろんなことを考えるわけでございますが、環境基準の達成に向けましては引き続き努力をするとともに、六十年度に入ってからの推移を見守りながら何らかの対策を早目に打ち出しますべく、そのための手順を目下当局とともに検討している最中でございます。申しわけございません。
  183. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、なぜNOx汚染改善されないのかという問題に入りますが、これは先ほど片山委員指摘されたディーゼル車の問題ですね。そこで、数字も具体的に出ましたが、もうその数字は大変な激増の状況でありますが、問題は、なぜこういうディーゼル車の保有台数が激増しているのかというその原因は、結局、燃費の点ではむしろガソリンの方が有利性があるんですがね。問題はNOxの排ガス規制値が緩いというのが一番の原因なんです。  そこで、これも数字を挙げた上で御答弁お願いしたいと思いますが、例えば同じ乗用車でも、ガソリンですと五十三年規制で平均値が〇・二五グラム・パー・キロメーター、上限値が〇・四八グラム・パー・キロメーター、これをクリアしなければいけませんが、ディーゼル乗用車ですと、これは六十一年以降のことですが、小型車ですと平均値は〇・七グラム、上限値が〇・九八グラム、それから大型車ですと平均値〇・九、上限値一・二八というようなことになって、結局その規制が緩いのでどんどんふえてきたんではないか。その点に対する御答弁が一つ。  それから、結局ディーゼル車ですとガソリン車の三台分、四台分のNOxをまき散らしている。こういう規制値がまかり通っておっていいんだろうか。そうすると、これは技術的にはディーゼルの場合なかなか難しいんですという答弁が返ってくるに決まっているんですが、しかし本当に環境をよくしようとするのであるならば、ディーゼルエンジンを搭載した乗用車がもし〇・二五をクリアできないというならばガソリン用のものを搭載させる。まさにそこにこそ環境庁の存在意義があると思うのですが、この二点についてお答えいただきたいと思うのです。
  184. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 先ほど来の御議論の中でも、NOx環境基準達成のために移動発生源としての自動車の問題が非常に重要な要因であるということは否定するものではございませんが、その自動車問題の原因のすべてをディーゼルのみに帰するということは、私は現実の問題としてなかなか難しいのではないかと思うわけでございます。それはやはり技術的な問題もございますし、先ほど片山先生とのやりとりの中でもディーゼル車とガソリン車のメリット、デメリットについては申し上げたとおりだと私どもは思っているわけでございまして、やはり燃費効率、したがって燃費効率がいいということは、長距離大量輸送といったようなことにもディーゼル車が非常に有利であるということもございますから、ディーゼル車そのものの効用という点から申しますと、特にトラックなどの問題は確かに排ガスそのものに問題なしとせずということは御指摘のとおりであります。  私ども段階的に規制を強化してきているということでございまして、その中でも技術の進歩に応じて規制も強化しておるわけでございますから、現在の時点ではまだ低公害の状態になっている規制車の普及が必ずしも十分でないという問題がございます。  それから、現実に遠くから大量の物資を都市の住民の生活を支えるために運んでくる手段としても非常に重要な位置づけでもあるというようなこともございますから、そのすべてをディーゼルのせいということで、ただ単体規制だけで云々ということにはやはり直にはつながらないのじゃないか。やはり交通公害の問題は、そういった単体規制とあわせて、物流でございますとか、その他の関連施策を少しでも充実させていくということがまた必要なわけでございますので、私どもといたしましては、地方公共団体のレベルで既に着手いたしておりますような施策がたくさんございます。それはそれぞれの地域によって内容も違います。そういうようなものの中から、できるだけ効果的に推進のできるようなものをお互いに協力もし、また関係省庁とも十分に連携を強めて自治体の施策を支援してまいるということが現在一番必要なことではないかというふうに考えておるわけでございまして、ディーゼルの、ただ単体の規制だけをすれば事足れりということにはなかなかまいらないのではないかというように考えております。
  185. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 すべてをディーゼルに責任を負わせたり、またはディーゼルを排ガス規制すればすべてがもうよくなるというようなことを私は言うつもりはないんです、それは複雑な世の中ですからね。ただ問題は、先ほど数字を挙げたような、あんなに違った規制値の差を認めておっていいのかどうかですよ。認めているからそこにディーゼル車がずっとふえちゃうんですから。そして今、少しでもより本当に細かなところまでも含めて減らしていこうというときに、そういうふえる要因を環境庁みずから規制値の差を、まあ努力していると言うけれども、しかしそれだってそんなに差があるんですから、そのことが大事だと思うんです。その議論をやっているともう持ち時間が来てしまいますから次の問題に入りますが、これはこれからも議論していかなければいかぬ問題だと思うんです。  今のこのディーゼルエンジンの排ガスの中には、多環芳香族炭化水素やニトロ化された強い発がん性物質が含まれている。そのうちの一つであるジニトロピレンを使った国立がんセンター研究所の動物実験がありますが、それでも、皮下注射したすべてのラットに発がんが認められております。国立がんセンターの米山武志さんの研究でありますが、「高純度の各種ジニトロピレンを使用し、ラット、マウス、ハムスターの皮下、気管支内注入法による発がん実験では、いづれの実験系においても高率な腫瘍の発生が確認された」、その表によりますと、まさにもう十八分の十八、ずらっと並んでおります。そして「発生腫瘍は気管支内投与実験では腺がん、または腺腫であり、皮下投与の場合は悪性線維性組織球腫が多発しており、同系種への累代移植が可能であった。」ということで、このディーゼルエンジンの排ガスの中には極めて危険なものが含まれておること、これはもう国立がんセンターの研究で明らかなんですね。しかもこれは、ほかの研究調査でも、こういう 物質と特に気管性疾患との間の相関性も認められているという報告もたくさんあります。  さらに、これは埼玉医科大学の竹本和夫教授のディーゼル排ガスを吸わせた実験でも、マウスの肺に肺がん発生が高率に認められている、こういう状況であります。このようにディーゼル排ガスの黒煙は毒性が極めて強く、発がん防止などのためにもこれは早急に対策が必要だと思うんです。まず、環境庁はこのディーゼル排ガスの発がん性について早急に調査し、ディーゼル排ガス規制の抜本的強化を直ちに実施すべきだと思いますが、どうか。これが第一点。  そしてもう一つは、特に最も規制が緩い直噴式については、五十八年規制で打ち切ることなく、できるだけ早期に強力な規制値を設定する方向で自動車工業会にも技術開発などを指導すべきだ、こう思いますが、これらの点について御答弁いただきたいと思います。
  186. 林部弘

    政府委員(林部弘君) お答えいたします。  ディーゼル排ガス中に多環芳香族炭化水素系のニトロアレン系の化合物がいろいろ入っているということはもう先生指摘のとおりでございます。ただ、私どももこの関係いろいろな調査研究いたしておりますが、空気中からどのぐらいのレベルで計測できるかというところまではまだいっておりません。その辺はいろいろと採取、捕集条件等についての検討をいたしておるということでございます。それから動物実験はもう既に着手いたしておりますが、まだ最終段階までは少し間がございます。そういうことで調査研究には十分取り組んでおるつもりでございます。  それから先ほどの、抜本的な対策をとおっしゃいましたが、ずばり申し上げまして、ディーゼル黒煙の規制を急ぐべきではないかということについては私どももそのような考えでおるわけでございまして、できるだけ近い将来にディーゼル黒煙問題については現状を打開する必要があると考えておりますが、もう御案内のように、黒煙を減らす技術とNOxを減らす技術というのは技術的にお互いに反する要素があるということもわかっておりますので、私どもといたしましては、五十八年規制ということを既に行ったわけでございますので、NOxにつきましては五十八年規制規制車が少しでもふえてくるのを一方で待ちながら、その間にディーゼル黒煙の対策につきましては技術開発がめどのつき次第着手する必要があるのではないか。つまり、先ほど先生、五十八年規制によって直噴を緩めることなくさらに追いかけてと、こういうお話でございましたが、私どもの今の考えを率直に申し上げれば、五十八年規制を行って新しい方へ移行することを期待しておるわけでございますが、もう一つ、黒煙問題もこの辺で取り組まなければいかぬということで、次の段階としては、やはりパティキュレートを早く減らすような規制が必要ではないかというように考えておるところでございます。
  187. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最後に、まとめですが、大気汚染は減ったけれども患者が発生しているのはおかしいじゃないかという議論につきましては、今の議論の中である程度解答があると思うんですね。一つは、大気汚染改善されていないというのが第一点です。それからあとは、具体的な現場の問題を見てみますと、呼吸器疾患は一たん発生すると治りづらいという問題があります。それから、汚染空気を吸入してから発病するまでに時間がかかる、さらに潜在患者が多数存在しておるということで、NOxの減少と発病の間にああいう条件が出てくるというのはそういうことだと思うんですね。今私が申し上げたのが、大気汚染は減っているけれども患者は発生しているということに対する立派な解答だと思うんですが、最後に大臣答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。
  188. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先刻も申し上げましたように、大気汚染と一口に言っていますけれど、中身の問題、態様が変わってきております。それなのに患者がふえつつあるというこの現実を踏まえまして、今、諮問委員会にかけている最中でございますので、こうしたすべてを背景にいたしましての諮問をさしていただいておりますので、私どもはその結論を待っているところでございます。ありがとうございました。
  189. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、今もうずっといろいろ皆さんの議論を聞いていまして、言い尽くされるだけ言い尽くされたということなんです。実は私、この環境委員になって初めてなものですから、いろいろ質問も準備していたんですけれども、この話を聞きまして、これはもう大変なことになっているんだなという感じがしたものですから、この法案については私は賛成なものですから、それでちょっとやめて、フリートーキング的にいろいろ私の意見も交えて意見を交換したいと思うんです。  まず第一に、先ほど丸谷理事もおっしゃいましたように、この法案、これは今、近藤さんもおっしゃったけれども三年間ですね。これは三年で果たしてもう要らなくなるんだろうかという疑問があるんですよね。多分、またそのときになって考えるとおっしゃるんだろうと思いますけれども、念のためにちょっとまずお聞きしたいんです。
  190. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  現在、先生方に御審議をお願いいたしておりますのは、この公害健康被害補償法に基づきます各種の給付に要しますお金のうち、自動車にかかわる分につきまして自動車重量税から引き当てるという、その枠組みの審議をお願いいたしておるところでございます。この問題につきましては、法律制定以降いろんな形での、自動車にかかわる負担方式についてはいろいろな御意見があったわけでございますが、中公審におきましてもいろいろな御議論の結果、現在のような形での重量税収引き当て方式が一番合理的かつ現実的であるということでやっているわけでございますので、これにつきましての御審議をお願いしておるわけでございます。  なお、期間の三年につきましては、従来から、租税特別措置法の自動車重量税の延長期間に合わせまして三年ということでいたしておるわけでございますので、そういう面では従前と同じような考え方で三年間の延長をお願いいたしておるわけでございます。私ども、三年間の延長ということで現行法律が認められました以降におきましては、今後とも自動車にかかわります費用負担あり方につきましては、いろいろ勉強するといいますか、検討を続けてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  191. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、そういうお答えはいいんです。もう結構なんです。私が申し上げるのは、先ほど丸谷理事がおっしゃったように、こういう法律というのはない方がいいんですね。なくさなけれがいけないわけですね。そこが問題なわけです。こういう状況が続く限り、こういう法律どころか、もっともっと強い法律をつくっていかざるを得なくなると思うんですね。それの方が問題なんです。  それで、私は今、先ほどからの話、答弁を聞いていまして、どうもこの法律は二十一世紀になっても廃案にできないのじゃないかという気がするんです。その辺は率直なところどういうふうにお考えになっているか、これまた聞いてもだめかもしれぬけれども、一応念のために御意見を伺いたいんです。
  192. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生お話にございましたように、公害による健康被害が起きないような形になるのが非常に望ましいことでございます。確かにこれはおっしゃるとおりであろうと思います。私ども、不幸にして公害による健康被害が起きた場合におきまして、その方々の迅速かつ公正な保護を図るということで法律がつくられまして、この法律を所管して適正な運用を心がけているところでございます。  いつまでこの法律が動くかというお話でございますが、非常に難しい話でございまして、私どもといたしましても、できるだけ公害患者さんが出ないような形になるのが望ましいというぐあいに思っておるところでございます。
  193. 木本平八郎

    木本平八郎君 それでSOxですね。いわゆる固定発生源の方は一応もうほとんどうまく解決で きたと思うわけです。それからガソリンエンジン、これも非常にNOxが減ってきている。この二つだけならまあまあいけるのじゃないかと思うんです、まあほかに発生源がありますけれども。一番問題は、先ほど近藤委員からもありましたし、片山さんからも話がありましたけれども、やっぱりディーゼルだと思うんです。  このディーゼルは技術的に難しいんだ、不可能なんだということが専ら言われておるわけです。私も少なくともそういうふうに理解しているんですけれども、また二十一世紀と言ったらなになんですけれども、これはどこまで本当に研究して、今のガソリンエンジンのところまでNOxあるいは浮遊粒子ですね、ああいうようなもの、黒煙がなくなるところまで、技術開発できるのかどうか。これは見通しですけれども、その辺はいかがなんでしょう。
  194. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 率直に申し上げまして、今のお尋ねに御満足いただけるようなお答えというのは私ども持っていないわけでございます。  先ほど申しましたように、現在かなりディーゼルエンジンもいいところへ来ている部分もあるのですが、先ほど申しましたように、NOxを軽減するということと黒煙を減らすということが、技術的にある段階にまで来るとお互いに足を引っ張り合うことになってくる。つまり、温度が高く燃焼効率がよければそれはNOxが出てくるということにつながるわけでございますし、NOxが出ないような技術を使うと、温度が下がってくると黒煙が出てくる、そんな単純なものじゃございませんが、わかりやすく言うとそういうことになります。  それで、私どもが今目指しているものは、ともかく現在走っている、特に大型トラックでございますね。そういうものをできるだけよくするということで五十八年規制というものにこぎつけた。しかし、五十八年規制はまだ規制に入ったばかりでございますから、規制を受けている車がこれから普及していくのにはかなり時間がかかるということがございます。したがって、すぐに追っかけてまた規制をするといっても、先ほど申しましたような難しさの中でやっておりますから、すぐに追っかけるということよりも、そのレベルを維持しつつ今度は黒煙の減少という方に技術をむしろ高めて、これはこれでかなりのところへ来ておるわけでございます。  それで、私が先ほど申し上げたのは、今の段階としては、次にはやはり黒煙と申しましょうか、パティキュレートと申しましょうか、それを減らすようにする。大きなトラック自体が町の中をどこでも構わず走るということをどう考えるのか、もし大きなトラックが問題だというのであれば、物流と申しましょうか、土地利用と申しましょうか、そういったいわゆる単体規制以外の部分で減らすということでございますね、走行量を減らすということ。それから、できるだけ住宅の密集しているようなところについてどういうふうに総量として落としていくのか。あるいは幹線道路でいえば、交差点周辺のようなところはどうしても高い数値が出てまいりますから、そういうところをどう考えていくのかというようなことでございまして、単体規制ということだけでは自動車問題はなかなか解決できませんので、そこらをどう考えるかということになろうかと思います。
  195. 木本平八郎

    木本平八郎君 ディーゼルの問題はちょっとおきまして、私けさほどからいろいろ議論を聞いていまして、長官に非常に悪いんですけれども、どうもこの問題はもう環境庁の手だけには負えないんじゃないかという気がするわけです。これは政府ベースで本気になって取り組まなければいかぬ問題じゃないかと。環境庁の方でいろいろいじくって、皆さん一生懸命苦し紛れにいろいろな答弁なさっていますけれども、やっぱりそれではもう解決しないんではないか。もっといけば、私は結論的に申し上げますと、この問題は日本列島全体の問題として、国民が本当に自分の家の中、部屋の中をきれいにするとか庭をきれいにするという気持ちで取り組まなければいかぬ状況になっているんじゃないかという気がするわけですね。その辺まず大臣の御感想をお伺いしたいんです。
  196. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 先生のおっしゃるとおりでございます。関係省庁がたくさんございますので、その辺にもお呼びかけをしておるところでございますが、現状でございますので、御意見どおりでございます。
  197. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、ここから私の意見なんですけれども、今までの環境問題、公害問題というのは、金銭的な補償給付というんですか、そういう関係が主だったわけですね。それで、どうも被害者加害者の間の問題にとどまってきたという感じがするわけです。ところが、この問題はほっておきますと今の被害者だけじゃなくて、ここにおる人、日本国民全部が被害者になっちゃう。これは例えは余りよくないかもしれませんけれども、アウシュビッツのガス室みたいなもので、だんだんだんだんガスの濃度が濃くなってくると、一番ガスの近くの人あるいは弱い人がやられていく。しかし、いずれは全体、健康な人間も全部一遍にいかれてしまうというふうに感じるわけですね。そこで、もうこういう状況になってきたら、だれが悪いとかだれがやるべきだとか言っていられないんで、もうみんなが力を合わしてこの問題に取り組まなければいかぬというふうにまず考えるわけです。  そこで、先ほど政府全体の問題、日本国民全体の問題だと申し上げたのは、まず我々の発想を転換しなければいかぬ。例えばディーゼルの問題を考えても、とにかく我々は今までは経済性を追求してきたわけですね。経済効率を追求してきた。したがって、先ほどの答弁にもありましたように、ディーゼルトラックの方が大量を運ぶのにいいんだとか燃費がいいんだとか、いろいろな利点があって経済効率が中心できたわけですね。それで、あるところまで進んでしまってから、進んでしまったというので環境公害で一生懸命追っかけているわけだけれども、向こうの方が逃げ足が速いという状況なんですね。  そこで、例えば産業の方、インダストリーの方を考えた場合に、日本が経済的にここまで豊かになったら、日本列島の中で何でもかんでもつくるということはもうやめた方がいいんじゃないか。これは例を挙げるとなにですけれども、鉄なら鉄がありますね。鉄鉱石を持ってきてこんな狭い日本列島の中でつくるよりも、どんどん輸入した方がいいんじゃないか。例えば燃料なんかも、原油を持ってきてここで精製して公害をまき散らすよりも、むしろ本当に必要なガソリンならガソリン、まあディーゼルでもいいんですけれども、それを持ってきた方がいいんじゃないか。今、貿易摩擦があるし、日本はどんどんドルもたまっているわけですね。そんなところに無理して、こういう公害が発生してこれだけの犠牲を払ってまでやることはないんじゃないか。  したがって、これは先ほども近藤さんがちょっとそこまで、入り口まで言われたけれども、私、ちょっと発想を転換して、ディーゼルエンジンというのはもう日本でやめたらどうだということなんですね。ということは、アメリカのようなああいう広いところなら、もうもうたる煙を出してだあっとトラックが走っていますが、あれはいいんですよ、テキサスなんかの大平原なら。しかし、日本のこんな狭いところではディーゼルエンジンは向かないんじゃないか。むしろ、少し効率が悪くて値段が高くなるけれども、経済性は悪くなるけれども、ガソリンエンジンで何とか賄った方がいいんじゃないかという気がするんですけれども、この辺御答弁を求めるのは非常に無理かもしれませんけれども、感想で結構なんですけれどもお聞かせいただきたいと思います。
  198. 岡崎洋

    政府委員(岡崎洋君) お答えになるとも思われませんので大変恐縮でございますけれども、今、先生がおっしゃいました経済の効率と環境の問題というのは、私ども長い目で見ればこれは片方が成り立てば片方が成り立たないというものとしてとらえておりません。むしろ持続的な産業活動を行っていくためには、あるいは健全な消費生活を 行っていくためには環境というものを大切にしていかなければ永続性はないと、こういうふうに考えておりまして、生産活動におきましてもあるいは消費生活におきましても国民のみんながそういう考え方で行動していただきたい、こういうふうに思っておりますし、私どももそういうふうに努めなければいけない、こう思っております。  やや具体的なお話として、公害をかつて出すようなあるいは出しそうな工場というのは外で活動したらどうじゃというお話につきましては、私ども国内で苦い経験を持っておるわけでございますから、これはどこで生産活動をいたしましても、公害の問題に対しましては十分な防止対策をとりながら企業活動をしていただくというのが筋だろうと思いますので、よそに行けばいいやというふうにだけは思っておりません。国際的、地球的な問題として公害環境問題は考えていきたい、かように思っております。
  199. 木本平八郎

    木本平八郎君 その問題につきましては、確かに私も昭和四十五年ぐらいに論文を書きまして、これは英字、外国語でいろいろやったのですけれども、結果的には公害の輸出じゃないかと言われたわけですね。ところが、先ほど丸谷理事がおっしゃったようにアメリカは百倍なんですね。そういうところならもっと効率を追求してもいい、経済性を追求してもいい。ところが、日本みたいにこんな狭くて、こんな狭い部屋の中でぼんぼん公害を出すようなことをやると自殺行為になるということなんですね。しかも、これ私、外国に行っていて現実に何回も聞いていますけれども、少々公害が出るかもしれぬけれども自分のところはこれだけ広いんだからここでつくるからその製品を日本で買ってくれと、サウジなんかもそれを言っているわけですね。したがって、地球全体でいけばまだまだ余裕があるところがあるんじゃないか。どうしてもどこからも鉄も売ってくれない、石油も売ってくれないのならこれはもうしようがないから我々中でつくらなければいかぬですね。そういう国際水平分業というふうな考え方もやっぱり導入せざるを得ないんじゃないか。  先ほど政府レベルあるいは国民全体で考えよと言ったのは、国の中で考えれば自給自足というか、近くでつくった方がいいということは当然言えるわけですけれども、全世界的に考えた場合にはそういう考え方もあるんじゃないか。それで私が申し上げたいのは、やっぱり命あっての物種で、健康があっての繁栄ですから、幾ら車がありテレビがあり、幾ら豪華になっても健康を害して寝た切りになっちゃったらどうしようもない。したがって、経済至上主義ということから少し健康至上主義みたいなものに変えて、経済的なものは少し犠牲にしてもこっちの方を中心にした方がいいんじゃないかというふうに考えるわけです。その辺ちょっと御意見をお伺いします。
  200. 岡崎洋

    政府委員(岡崎洋君) 日本の国内ができるだけ快適な環境状態になっていくべきである、そのためには経済発展の速度を落としてもそういうことを考えるべきである、これは一つの卓見だろうと思いますし、長い目での経済成長のそれは一つの基盤だと思います。ただ一つだけ、お言葉を返すようでございますけれども、アメリカであれヨーロッパであれ、広いところではございましても、現状のような公害規制の状態なり状況で満足すべき状態かどうかということは必ずしもそうは言えないのじゃないか。今、世界的に酸性雨の問題がいろいろ問題になっておりますけれども、これはアメリカあるいはヨーロッパの企業活動におきまして、あるいは自動車の排ガス等におきまして、出たガスによりまして湖沼あるいは森林が傷むというような形にもなっておりますから、そういうことも含めて考え合わせていかなければいけない。あるいは開発途上国における工場の活動につきましても、そういう国々が環境対策ということにつきまして必ずしも私どもほどの経験もあるいはノーハウも持っておりませんから、そういうことも含めて私どもも考えていかなければいけない、こんなふうに思っております。
  201. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、自動車の問題で具体的に一つ提案したいのですけれども、これは数量的には大したことにならないかもしれないけれども、例えば新聞配達とか牛乳配達とか、朝夕ある一定の時間しか使わないような車には電気自動車をもっともっと奨励したらいいのじゃないかという気がするんですね。今、重量税かなんかで自動車から税金を取ることばかり考えていますけれども、そうじゃなくて少し補助金を出してでも電気にするとか、自動車、乗用車といえどもやっぱり多少はNOxが出るわけですね。その点LPGだともうほとんど出ないということなんで、なるべくそのLPGにかえさせるとか、そういうふうにNOxなんかの出ない燃料を使うようにぜひ積極的に奨励する。これは環境庁だけじゃ困るというのはそこなんで、政府が一緒になって、国民も一緒になってやる。  例えば、長距離トラックで食糧を運んだりいろいろな物を運ぶのにディーゼル車がいいということは確かですね。しかし、多少効率が悪くなっても今国鉄があんなに困っているわけだから少し鉄道の貨車で運ぶようにする、そうするとほとんど電化されていますから、汽車が走る分には電気ですからこれは全然公害は発生しないというふうなことで、これはやっぱり政府ベースで考えて、民間、これは中曽根首相が民間の活力を利用するとおっしゃるのは私も大賛成なんです、私も民間におりましたから。しかし、経済効率を追求することは一方では必要ですけれども、一方では経済効率をむしろ落としてでもということが、例えば今の話で、鉄道の、貨物輸送をやった方が僕はもういいんじゃないかと思うんですね、多少経済的に悪くても。その辺いかがですか。
  202. 林部弘

    政府委員(林部弘君) 先生大分いろいろな問題点に言及されましたので、すべてにわたってとてもお答えし切れないと思いますが、御指摘の一点の電気自動車の問題、これは既に開発されて一部利用されております。そういうこともございますから、低公害の車であるという意味では私どもも普及促進のために引き続き啓発活動等を行ってまいりたいと考えておりますし、ことしの一月に大臣に環七を御視察いただいたときにも、大臣と私ども電気自動車にも乗って実際に現地を走ってみたというようなこともございます。また、エネルギー関連では最近メタノール車の問題なども出てきておりますから、これも十分に技術が開発されて見通しが立ってくれば、低公害車という意味ではやはりメリットがあるだろうと思いますから、それはそれでやはり私どもとしては基本的には有効なものは全部何とか少しでも伸びるようにしたらいいのではないかと思っています。  それから、電車の利用の問題等につきましては、これは地域的な問題になりますが、公共の大量輸送機関と申しましょうか、通勤交通体系と申しましょうか、そういうものが十分に整備されているようなところでは、先生、ガソリン車はいいとおっしゃいましたけれども、やはり都市の大気汚染は量の問題がございますから、ガソリン乗用車なら幾らふえてもいいということにもなりませんので、そういう意味からすればマイカー等の利用についても、そういう交通機関をできるだけ利用するということで、先生のおっしゃるような都市を少しでも快適な状況にしていくためには国民にも御協力をいただかなければいかぬと、こういうようなことがあるのではないかというように思っております。  それから、電気自動車は、先ほどちょっと言い落としましたが、税制上の優遇措置が講じられておるわけでございますので、関係省庁それぞれいろいろな形で取り組んでおりますし、またみんなで十分協力もしながら、今申し上げましたような問題については少しでも前の方にいくように今後も努めてまいりたいというふうに感じておるところでございます。
  203. 木本平八郎

    木本平八郎君 今のように通勤にできるだけ電車を使うとか、そういうふうにこれはやっぱり奨励していただいて、ぜひ啓蒙していただきたいと思うのです。これは環境庁だけじゃなくて、文部省から政府全体になるでしょうけれども。  私、最後に一つ申し上げたいのは、これは私の独断と偏見ですけれども、今、杉の花粉の鼻炎、アレルギーというのが非常に蔓延していますね。物すごい勢いで広がっているというか、昔に比べたらうんと多くなっているということなんです。それで私は、これはもう独断と偏見なんですけれども、ただ、杉の花粉が来るというだけじゃなくて、土台にやはりこういう大気汚染のようなものがあって気管支が弱っているとか、やられているとか、そういうことでそういうものが来るんじゃないかというふうな感じもするわけです。  そういうふうな意味で、例えば浮遊じんの問題にしても、それはたばこを吸っている方がうんと多いわけです。多いんだけれども、たばこというのはずっと歴史的に、しかも植物性ですから、それは多少紙巻きたばこには発がん性があるとかなんとか言いますけれども、私はこれだけを吸っているならまだいいと思うんです。太平洋の真ん中かアリゾナの空気のいいところでたばこだけ吸っているのなら大したことない。ところが、大気汚染のあるところでたばこを吸うとやはりがんになりやすいんじゃないかという気がするわけです。しかもこの点は私はよく知らないんですけれども、家の中で石油ストーブをたきますね、灯油で。あれが中で相当汚染しているのじゃないかと思うんです。中で汚染されておいて、そして外へ出たら排ガスでまたやられる、スモッグでやられる。それでまた、たばこでも吸うということになると二重三重に影響してきて健康を悪くするんじゃないか。  それじゃ、家の中の石油ストーブをやめろとか、たばこをやめたらいいじゃないかというのがあるんですけれども、やはり社会全体としては大気汚染とか公害とかというものも抑えていくということをやらないと、今、日本人の寿命が一番長くなっていますけれども、これがピークであとどんどん皆やられていくんじゃないかという気がするわけですね。そういうことも御勘案いただいて、環境庁としてもぜひそういう面からも御検討いただきたいし、ぜひ大臣にこれは閣議にでも持ち出していただいて、ぜひ政府ベースの全体の問題として国民運動的なものを展開していただきたいと思うわけですが、大臣の御所見をお伺いして私の質問を終わります。
  204. 石本茂

    国務大臣石本茂君) 大変、どう言いますか、考えなければならない御提言をたくさんいただきました。今、最後におっしゃってくださいましたように、閣議でこの問題はもう出ているわけでございますが、さらにもっともっと強くこの問題を要望し、要請し、実現していく方向に向かって頑張っていきますから、よろしくお願いいたします。
  205. 木本平八郎

    木本平八郎君 終わります。
  206. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 御異議ないと認めます。  本案の修正について近藤君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。近藤君。
  208. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表して、政府原案に対する修正の動議を提出いたします。  その内容はお手元に配付されております案文のとおりでございますが、その趣旨について説明いたします。  政府原案は、恒久的措置を確立するまでの暫定措置とされてきた自動車重量税収の一部引き当て方式を、昭和五十八年に引き続き五たび延長し補償費のうち移動発生源に係る費用負担分に充当しようとするものであります。  私たちは、第一回目から、この暫定措置は、自動車排ガスによる大気汚染の真の原因者である自動車製造企業の責任を免罪し、その負担をユーザーに転嫁するという、まさに民事責任を踏まえた公害健康被害補償を一般国費によって肩がわりするものにほかならないとして反対してまいりました。しかるに、政府が本委員会でのたび重なる附帯決議を無視し、今回第五回目の暫定措置の延長を提案したことはまことに遺憾であります。  この暫定措置による公害健康被害補償協会交付金が第二臨調の補助金の整理合理化の対象にされ、公害患者切り捨て地域指定解除への口実として利用される重大な事態を招いていることは周知のとおりであります。  時あたかも、衆議院予算委員会において、総理及び環境庁長官が、硫黄酸化物の汚染改善されたから指定地域解除をしなければならぬはずてあり、抜本的な制度の改正をやるべきであるとの自民党議員質問に答え、「お説ごもっとも」、「そうしたことを踏まえて……頑張っております」とか、「必要なものはどんどんやるが、そういう意味がなくなったものはどんどん解除していく」などと答弁したことはまことに重大であります。こうした被害者救済に対する一連の不当な干渉や後退を断じて許さないためにも、今こそこの暫定措置を改め、真の汚染原因者負担の原則に立った恒久制度を確立すべきであります。  以上の理由により、我が党は原案に反対するとともに、移動発生源に係る費用負担分自動車製造企業かち正当に賦課金を徴収する制度に改め、あわせて窒素酸化物を地域指定要件に追加し、公害保健福祉事業等にある公費負担の解消を図る修正案を提出するものであります。  次に、修正案の概要を御説明いたします。  第一に、補償費等の一部に充てるため、輸入業者を含む自動車メーカーから賦課金を徴収することとし、その賦課金の額は、自動車の種別、総排気量、汚染物質の排出量等を勘案し、政令で定める金額に出荷台数を乗じて算定することとしております。  第二に、ばい煙発生施設等設置者から徴収する汚染負荷量賦課金の賦課対象物質に硫黄酸化物とともに窒素酸化物を法定することにより、窒素酸化物が公害健康被害発生の原因物質であることを明確にし、これを地域指定要件に追加することとしております。  第三に、公害保健福祉事業費、自治体の補償給付事務費及び公害健康被害補償協会事務費にある公費負担を全廃し、これを企業負担にすることとしております。  委員各位の御賛同をお願いいたしまして、我が党の修正案の提案理由説明を終わります。
  209. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) それでは、ただいまの修正案に対し、質疑のある方は順次御発言を願います。――別に御発言もないようですから、直ちに討論に入ります。討論は原案及び修正案を一括して行います。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、討論はないものと認めます。  それでは、これより公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、近藤君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  210. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 少数と認めます。よって、近藤君提案の修正案は否決されました。  それでは次に、原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  211. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 多数と認めまます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  丸谷君から発言を求められておりますので、これを許します。丸谷君。
  212. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は、ただいま可決されました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について適切な措置を講ず べきである。  一、昭和六十三年度以降における費用徴収方法については、汚染の原因者負担の原則にのっとるとともに、発生源の公害防除の努力が十分反映されることを重点においた方策の確立に努めること。  二、幹線道路周辺における環境改善を図るため、自動車に係る騒音、排出ガス等の規制を強化するとともに、物流及び土地利用の適正化を含めた総合的な交通公害対策を推進すること。  三、最近における都市型複合汚染に対処するため、窒素酸化物等についても健康被害との因果関係を究明し、その結果に基づいて地域指定見直しを行うこと。  四、補償給付の改善を行うとともに、公害保健福祉事業の実施については、関係地域住民並びに患者の意見を尊重してその充実、強化を図ること。  五、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る環境基準の達成状況にかんがみ、前者については総量削減の実効性の確保のため地域の実情に応じた関連諸施策を推進し、後者については、多岐にわたる発生源の把握とその対策の確立に努めること。  六、大気汚染改善が進んでいない指定地域等における工場・事業場の新増設に際しては、特に汚染防止に十分配慮し、健康被害の防止に努めること。  七、将来の健康被害の発生を防止するため、新規の健康被害物質に対する監視と継続的調査を行うこと。  八、本制度の対象となっていない騒音、振動等による健康被害及び財産被害についても、その実態の把握に努め、被害者の補償措置を早急に確立するよう検討すること。   右決議する。  以上でございます。
  213. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) ただいま丸谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  214. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 全会一致と認めます。よって、丸谷君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、石本環境庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。石本環境庁長官
  215. 石本茂

    国務大臣石本茂君) ただいまの決議に対しましては、その趣旨を体して最大限の努力をいたします。どうもありがとうございました。
  216. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 粕谷照美

    委員長粕谷照美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十二分散会