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1985-06-18 第102回国会 参議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月十八日(火曜日)    午前十時十四分開会     ─────────────    委員異動  六月七日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     中西 一郎君      水谷  力君     嶋崎  均君      吉川  博君     後藤 正夫君  六月十一日     辞任         補欠選任      小西 博行君     関  嘉彦君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平井 卓志君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 久保田真苗君                 抜山 映子君     委 員                 大鷹 淑子君                 後藤 正夫君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 秋山 長造君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 関  嘉彦君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        内閣総理大臣官        房参事官     松本 康子君        外務大臣官房審        議官       斉藤 邦彦君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        労働省婦人局長  赤松 良子君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        法務省民事局参        事官       大内 俊身君        法務省刑事局青        少年課長     松浦  恂君        労働省婦人局婦        人労働課長    藤井紀代子君        労働省婦人局婦        人福祉課長    川橋 幸子君     ─────────────   本日の会議に付した案件女子に対するあらゆる形態差別撤廃に関する条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七日、倉田寛之君、水谷力君及び吉川博君が委員辞任され、その補欠として中西一郎君、嶋崎均君及び後藤正夫君が選任されました。  また去る十一日、小西博行君が委員辞任され、その補欠として関嘉彦君が選任されました。     ─────────────
  3. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 前回に引き続き、女子に対するあらゆる形態差別撤廃に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 久保田真苗

    久保田真苗君 私きょうは、法務省にお出ましいただいていると思いますけれども、まず法例の問題を取り上げたいと思います。  法例の問題は余り審議もなく、残された問題でございますけれども、これにつきましては既に昭和三十年代から法制審議会が問題を取り上げ、検討を続けておられるところでございます。昭和三十六年、四十七年にそれぞれ婚姻親子関係についての改正要綱もできていると伺っております。ところで現行法例は明治三十一年にできておりまして、旧憲法下に生きていたものがそのままになっておりまして、理論上からも便宜上からも早急に改められるべきものだと思います。特に身分法に関しましては十三条以下に法のもとの平等を定める憲法にそぐわない点がある。例えば特に「婚姻の効力」とか、十五条の「夫婦財産制」とか、それから「十六条離婚」とか、こういった点につきまして夫の本国法によって、これを準拠法にして決めることになっているわけでございます。そして、現在法制審議会では三十年代、四十年代に引き続き今も行わるべき改正内容について問題点を洗い、審議をお続けになっていると伺いますので、その審議に出ております問題点、あるいは問題意識についてお伺いしたいと思います。
  5. 大内俊身

    説明員大内俊身君) 先ほどのように法例改正作業自体昭和三十年代から始まっておりますが、その後世界各国、ここ十五、六年特にヨーロッパ諸国におきます改正動きが非常に激しくなってまいりまして、これを見きわめた上で我が国もあるべき国際私法規定を作成しよう、こういう作業を進めております。具体的には昨年の五月から実質的な審議を再開しております。  特に問題となりますのは、身分関係におきまして先生指摘のとおり「夫の本国法」といった規定が何カ条かあります。こういった点を改正するというのがさしあたり最大の目的でございますが、夫の本国法にかわるべき準拠法が何かということは非常に難しい問題でございまして、さしあたり現在の問題意識としましてはできるだけ夫婦共通要素というものに連結しよう、具体的には夫婦共通本国法というものを適用する、しかしながら夫婦共通国籍がない場合に今度どうするか。考えられます案としましては、夫婦共通住所地法、あるいは共通常居所地法、こういったものに連結していくわけでございますが、こういった連結の階段をどこまでつくっていくか、最終的にはどういった法律に連結するか、こういった点について今鋭意検討中でございます。
  6. 久保田真苗

    久保田真苗君 準拠法につきましていろいろな国の足並みがばらばらだとしますと交通整理が大変難しいことになると思うんですが、各国のとっております準拠法についての状況を御説明お願いします。
  7. 大内俊身

    説明員大内俊身君) 特にヨーロッパ諸国で最近十年間の改正動きというのは非常に激しいんでございますが、スイスとか西ドイツ、これはまだ草案段階でございまして改正が成就しておりません。しかし大勢としましては、先ほど申し上げましたようにできる限り夫婦共通要素というものをすくい上げましてそこに連結していこう、こういった大きな流れはあるようにうかがいます。
  8. 久保田真苗

    久保田真苗君 法務省からちょうだいしましたこのパンフレットをちょっとぱらぱらっと拝見したんですが、ここには婚姻の要件及び夫婦財産制等離婚についての準拠法の状態が何カ国か調べてあるわけでございます。これをぱらぱらっと拝見してみますと、やはり夫の本国法によるというのは極めて例外的なケースにしかなくて、ほぼ先進国においては大体そろってきているのじゃないかという感じがいたしますけれども、これにつきまして、それをいわば足並みをそろえるための国際条約などがあればその内容を御紹介いただきたいのですが。
  9. 大内俊身

    説明員大内俊身君) こういった準拠法につきましては、御承知のハーグ国際会議で幾つかの条約を作成しております。現在までのところ、一九七八年に婚姻挙行及び婚姻有効性承認に関する条約というものが作成されております。それから一九七六年、ちょっと時代を新しいものから申し上げておりますが、夫婦財産制準拠法に関する条約が成立しております。それから一九七〇年に離婚及び別居の承認に関する条約というものが成立しております。婚姻関係では大体この三つぐらいが現在条約として成立しております。ただし、先ほどの婚姻挙行条約、それから夫婦財産制準拠法に関する条約はまだ発効しておりません。
  10. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、この準拠法が夫の本国法なのか、夫婦共通本国法なのか、あるいは常住所における法律なのか、そういった問題が、どれが準拠になるということ自体、仮に夫の本国法となっていてもその中身が直ちに男女のどちらに有利になるかということは直結はしていないと思うんですね。夫の場合も妻の本国法を使った方がいいと考える人もあるかもしれないと思います。しかし結婚をすれば必ず夫の本国法によって身分法関係が支配されるということ自体は、つまり他国籍を持つ外国人と結婚する女性にとっては非常に、相手の本国法をよく知らなければならないというようなこと、それからそこから受けるカルチャーショックというようなものもあるということ、特に夫婦財産制などについてはそうだと思います。また逆に言えば男性からはカルチャーショックを受ける機会を奪っているかもしれないということ、そしていずれにしましてもこれは法のもとの平等に定める男女平等の基盤であるとは言いがたいと思いますし、ここから実際問題として、夫、妻にかかわらず、準拠法を選択できるというその機会をも奪っていると思うんです。特に日本に居住する女性でその方が外国籍を持つ配偶者と結婚している場合、その配偶者がしかも二代目、三代目になっていて、そして日本の言葉、日本の国や風俗、そういうものにすっかりなれ親しんでいる人である場合、その夫婦にとってなぜ夫の本国法を選ぶということがより有利であるかというそういう問題もございます。  ですから私はやっぱり、このハーグで決められました条約はまだ発効していないかもしれないけれども、その条約に書かれてあるような基準に大体沿った形で各国準拠法がそのような方向にだんだんまとまっているという趨勢から見ますと、日本でもいろいろもう民法関係改正を実施していただいたところですけれども、さらにこの準拠法の問題をもう一つここで取り上げていただきまして早期改正していただきたい。既に方向についてはお述べいただきましたので、早期改正していただきたいと望むものでございます。  そこで、現在検討中のこの改正はいつごろ提案なされるめどか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  11. 大内俊身

    説明員大内俊身君) 実質的な審議を昨年の五月に再開いたしまして今鋭意審議中でございますが、一応今後二、三年先をめどにして作業を進めたい、こういうふうに考えております。
  12. 久保田真苗

    久保田真苗君 どうぞよろしくお願いいたします。法務省結構でございます。  次に労働省案件になりますが、けさの新聞で見ましたけれども、総理府の婦人問題企画推進会議がこの際いろいろな事項を広く検討しまして、完全な男女の平等を実現するそういう社会のために必要なこととして育児休業制度普及保育所の充実ということを真っ先に挙げておるようでございます。そこで、均等法審議段階では私育児休業のことはすっかりもう時間を逸してしまったので、この際育児休業制度及び再雇用特別措置について若干質問をしておきたいと思います。  まず育児休業制度実態なんですが、例えばこの制度は一体何人ぐらいの人によって利用されているのか、それは婦人労働者のどのくらいの比率を占めるのか、あるいは普及上どういう問題に遭遇していらっしゃるか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 川橋幸子

    説明員川橋幸子君) まず育児休業制度普及状況実態でございますが、労働省女子保護実施状況調査の結果で申し上げますと、育児休業制度を実施しております事業所割合規模三十人以上で一四・三%となっております。  また育児休業制度利用状況ということでございますけれども、同じ女子保護実施状況調査によりますと、生児を出産いたしました女性で、育児休業制度適用対象者で、産後休業後引き続き育児休業を利用した人の割合といいますのが四六・九%となっております。先生お尋ねの実際に何人ぐらいという数の調査でございますが、女子保護実施状況調査の場合は事業所抽出調査になっておりまして、適用労働者数ないしは利用者数実数は集計しておらないのでございます。利用率で見ますと四六・九%という数字になっております。
  14. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は実数を把握すべきだと思うんですね。実数を把握しないことには何も施策の対象にならないと思うんです。これは私の方からおよそ何万人ぐらいなのかということをぜひ伺いたいんですがね。例えば労働省が長年やっていらした女子保護実施状況調査によりますと、婦人労働者のうち出産した人というのが大体二・四%ですか。そうしますと、これをおよそ女子労働者の数に掛けてみますと大体三十六万人という数になるんですが、これは正しいですか。大体そんなものだということになりますか。
  15. 川橋幸子

    説明員川橋幸子君) 出産者割合を掛けますと出産者数が出てまいりますので、先生のおっしゃるとおりかと存じますが。
  16. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうすると、このうち三十人以上の人について四六・九%と言われたんですが、三十人以上の人というのはこのうちどのくらいになりますか。規模三十人以上の事業所に働く女子労働者はこのうちどのくらいの比率になりますか。
  17. 川橋幸子

    説明員川橋幸子君) 規模三十人以上の民間女子雇用者数労働力調査でとらえますと、約七百六十万人ぐらいということになっております。
  18. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、大体規模三十人以上に働く人が女子労働者の半分を占めるということになりますね。そういたしますと、この規模三十人以上の場合にはその利用する人が四六・九%になるわけですから、先ほどの非常に単純な計算ですけれども、三十六万人いて、その半分が規模三十人以上の人だということになりますと、これの、十八万人の約四、五割ということになりますんですね。そういうことになりますか。
  19. 川橋幸子

    説明員川橋幸子君) 利用者数を出します前にもう一つですね、出産した女子労働者の中で出産後も継続して勤務する割合という、そういう数字が要るかと思いますけれども、私が先ほど先生に、これは女子保護実施状況調査は、事業所ベース調査集計しておりまして、実数がなかなか出ないと申し上げましたのは、むしろ出産者割合ですとか、継続勤務率ですとか、育児休業利用率、そういう数字よりも、むしろ育児休業適用率労働者適用率というものが今は事業所ベースでしかとっておりませんのでそこがはっきり出ないと、そういう趣旨でございます。
  20. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、非常にこれは正確とは言えない数だけれども、三十六万人に対して、これを大体規模三十人以上だけで見た場合にこの半数であって、十八万人程度であって、さらにこれを導入事業所比率で一応掛けてみますと、二万ぐらいの数ということになるんでしょうかね。そしてさらにそれから利用率四六・九%、約半数を掛けると約一万と。規模三十人以上で見た場合に約一万程度該当者がいるらしいということなんですけれども、私はやっぱり対象になっている働く婦人の数をぜひ調べていただきたいと思うんですけれども、これはできますか。
  21. 川橋幸子

    説明員川橋幸子君) 女子保護実施状況調査を今度実施します際には、労働者ベース調査ができるように工夫してまいりたいと思います。
  22. 久保田真苗

    久保田真苗君 よろしくお願いします。  そこで、大体三十人以上で見ると、間違っているかもしれないけれど、およその規模として一万程度の数が出てくる。これを三十人以下に及ぼした場合に約この二倍程度の、二万程度の数に、どうもそのあたりの規模になるらしいということは大体わかると思うんです。  なお、実際にお調べいただくということでございますがね、現行育児休業普及方法ですね、これは今回金額が大幅に増額されまして、中小企業の一応導入に際して百万円、そして総額が約十億と、金額が増額されたことは大変望ましいことなんですけれども、さてこの普及実行方法につきまして、私はなかなか一回限りの奨励金という形で実効があるのかどうか、そこのところを疑問に思っている者なんですが、これについてその実効性をどうお考えになっているかお聞かせいただけますか。
  23. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 先生指摘のように、六十年度予算で大幅に増額して、五十九年度までは一回だけで支給をいたしておりましたが、六十年度は額を増額したばかりではなくて、二年に分けてこれを支給するという制度にしたわけでございます。したがいまして、二年目は実績をよくフォローいたしまして、婦人少年室がその点についても細かい配慮をしながら、二年目の支給は適当でなければやめるということもあり得るわけでございますし、実際に育児休業制度が確かに導入され、それが実行されているということを見きわめた上で二年目の支給をする、このようにしたことによりまして、従来よりははるかにフォローもできる仕組みになった、こういうふうに考えております。
  24. 久保田真苗

    久保田真苗君 確かに一歩前進ということは言えるんでしょうけれども、ひとつ諸外国でとっている育児休業制度についてこれを比較検討したことがおありですか、そしてその中から何か参考になることがおありでしたらお聞かせください。
  25. 川橋幸子

    説明員川橋幸子君) 諸外国育児休業制度状況につきましては、私どもできる限り把握に努めておりますけれども、西側の先進国が私ども当面としては参考になるかと存じますが、西ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデン、オーストリアなどで育児休業制度法律でもって制定されておるということでございます。  その内容につきましては、国によりましてそれぞれ異なっている点がございますけれども、大きく特徴があるものとして指摘されますのが、まず適用対象者が、母親だけではなくて、父親にも育児休業請求権を認めている国があるということと、それともう一点が育児休業中の手当でございますけれども、それぞれの国の社会保険制度の中の一環としてそれを保障している国があるという点が大きいかと思います。私どもとしましてはこういう状況をよく考えまして、将来我が国育児休業制度のあり方をどのように持っていくかということを検討する際には参考となる点が多いと考えますけれども、当面はやはり昨年ちょうだいいたしました婦人少年問題審議会の建議にありますように、行政指導の強化によってまず普及率を高めるということが必要かと存じまして、着実に普及に努めてまいりたいと考えております。
  26. 久保田真苗

    久保田真苗君 普及実績、ことしの予算でどれだけの効果が上がるかということを見るのはまだこれからでございますけれども、一方、我が国におきましても教員看護婦保母、この三職種につきましては国公立の場合に育児休業制度が法制化されておりまして、これについて、給料の一部と申しますか、要するに社会保険料該当分助成を行っているわけでございますね。そういたしますと、今後婦人局がこの育児休業制度民間にも実施していくという場合に、やはりこのことは一つのポイントになるだろうと思うんです。諸外国の例から見ましても、社会保障制度一環として見る場合には、単なる奨励助成する、奨励金を出す、一回限り、まあ二回に分けてですけれども、出すというだけでなく、やはりそれに該当する婦人の数に応じた一つ頭割り助成金考えられないかと私は常々思っているんですね。  そこで、まことに難しい質問を出して恐縮なんですけれども、仮に、教員看護婦並み社会保険料該当分頭割り助成考えた場合、一体総額としてこの育児休業制度におよそどのくらいのお金が必要なのか、これをおっしゃっていただきたいんですが。
  27. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 先生指摘のように、確かに現在、教員看護婦保母の三職種については法律でこれは請求権が保障され、そして、それに対する育児休業給というものは教育公務員についてなされておるわけでございます。その他のものにつきましてはそういう制度はございませんが、労働省としては、民間医療施設に働く方、つまり看護婦さんに対しまして特定職種育児休業利用助成給付金支給しているわけでございますが、これは社会保険金の三分の一程度に当たるというふうになっているわけでございます。しかし、この制度趣旨は、育児休業法が三職種に特別な性格、つまり、特定職種におきましては、職務の特殊性があること、公共性があること、労働力が不足していること、この状況は多少現在では変化をしているかもしれませんが、制定当初は極度にその部分の労働力が不足していたというような現況にかんがみまして、その職種に従事する者の継続的な勤務を促進することによってこれらの方々の業務の円滑な運営を確保するという目的でこのような制度導入したわけでございます。  そこで、その性質上これを直ちに全職種に適用拡大するということは、これらは特殊性があるがゆえに制度を設けたということから余り適当ではないというような考えを今日までは持っているわけでございまして、したがって、それを全職種に適用するというような前提での計算というようなものは私どもとしてはいたしたことはございません。
  28. 久保田真苗

    久保田真苗君 国が助成する場合にいろいろな理由があると思うんですね。しかし、諸外国においても社会保障一環として行われているというようなことを考えますと、特定職種以外にこのような社会保障的なものがあり、働く婦人出産をし、最低限度満一歳に達するまでの、そこのせきを乗り越えて働くことを援助していくということは、まさに婦人局の使命とするところじゃないんでしょうか。  そういう角度で私はちょっと雇用保険特別会計の大まかな枠を見てみたんですけれども、いただいた資料によりますと、雇用勘定お金は、六十年度で約二兆あるわけですね。四つの事業が行われておりますけれども、そのうち、特に雇用につくことが困難な方たち、つまり、五十五歳以上の高年者ですとか身体障害者ですとか、それから寡婦でございますとか、そういう特殊な事情を持って雇用につくことがなかなか難しい方たちのためには、既に、数として約十万、金額にして二千七百万程度予算雇用特会から支出されているように承っております。細かい点で間違いがあったら恐縮でございますけれども、およそそのような措置が既にとられているわけでございます。私は、育児休業の問題が、雇用につくことが非常に困難な方と同じ理由ではないと思いますが、しかし、勤労者の家庭が子供を産み育てていくというそのことは、雇用につくことが困難な人に支援を与えると同じように、日本の国にとっても産業にとっても、また労働者福祉にとっても極めて重要なことだと、こう思うわけでございます。  そして私は、非常に大ざっぱな計算をしてみたわけでございますけれども、まずその前に伺いますが、例えば、教員に対する助成金額月額平均どのくらいになっていますか。
  29. 川橋幸子

    説明員川橋幸子君) 社会保険料負担金額労使折半になっておりますが、労使それぞれのサイドで一人当たりどの程度金額負担されることになるかということは、私ども民間常用雇用労働者女子雇用労働者で、育児休業制度でございますので、ちょうど出産適齢期と申しましょうか、二十代後半の方の賃金を使って単純に平均値だけは出すことができるわけでございますけれども労使それぞれの側で約一万五千円ぐらいという費用に保険料負担がなるかと存じます。
  30. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、その一万五千円のうち、助成対象をどの程度考えるかということにもよってくるわけですけれども、仮に一万五千円丸々としても、これに今考えられる対象者約一万を掛けてもこれは十五億なんですよね。仮に二分の一、三分の一にした場合には七億五千万あるいは五億といったような、非常に大ざっぱですけれども、大体、見当は十億とか十五億とか二十億とか、そういった感じ規模お金だと思うんですね。  そういたしますと、今皆様が奨励のためにお使いになっているお金が、予定されている予算が十億を割り当てられているわけです。そうすると、決してこれは法外な金額になるものではないと私は思うんですね。私はやはり一回限りの奨励金でやっていくという方式は、これは婦人少年室にとってもなかなか難しい方法だと思うんですね。むしろ今後のこととして、女子も当然雇用保険に加入しているわけでございますから、これをどのような形で女子への還元を図るかということを考えますと、やはり女子にとっては、例えば今現在では結婚あるいは出産、妊娠で自己退職をする人もかなりおりまして、いわゆる失業保険の給付を受けるという比率は決して男子より多くないと思うんですね。そういう意味からしましても、私はこの育児休業にこの雇用保険のお金から女子に、あるいは女子というよりは勤労者家庭の子供の養育を一年間保障するためにこれをぜひ手がけていただきたい、こう思うわけでございます。そして、例えばスウェーデン型なんかになりますと、父母のどちらかが六カ月間は給料の九割を受けることができる、その後も減額された形ですけれども受けることができる、あるいは子供が満八歳になるまでそれを蓄積しておいて、随時子供の養育のために使うことができる、いろいろな方策が進んでおりまして、我が国婦人労働者の主流が既婚婦人七割、こうなっている時代でございますから、それに対応するひとつ育児休業のための措置をここで抜本的に考えていただくわけにいかないか、こう思っているわけなんですが、局長いかがですか。
  31. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 先ほどのお話でございますが、金額の面は先生おっしゃったように十億とか十五億とかという金額は今度私どもが六十年度に奨励金として算定をいたしております額とほぼ同じ程度、むしろ奨励金の方は初年度、六十年度が初年度でございますから平均いたしますともう少し多い額になるわけで、額の問題では必ずしもないのではないかというふうに思っております。むしろ社会保険料の中のほとんどは健康保険あるいは厚生年金保険の額でございまして、雇用保険については十分の一にも満たないというような程度の額でございます。それを助けるために雇用保険の掛金を積み立てたものから出すという考え自体が問題だという説もございまして、額が少ないので雇用保険の会計からいえばわずかな金額ではないかということは必ずしもそのまま通るというふうには考えられないわけでございます。  スウェーデン等大変社会保障が進んだ国もございますが、そういうものは、先ほど課長の方からも申し上げましたように研究は十分いたしたいというふうに思っておりますが、我が国のいろいろな実態から申しまして、そのような研究は進めるといたしましても、直ちに実現するかということになりますとほかとのバランスなども考慮に入れなければならないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  32. 久保田真苗

    久保田真苗君 社会保険のうち、あるものは労働省あるものは厚生省というふうになっておりますからそういうお考えも出るのかもわからないのですけれども、私はあえて今現在やっていることが社会保険料に相当するようなそういうことをやっているから申し上げたのであって、もっと欲をかけば、賃金の三分の一を補助したらどうか、つまりこの期間は無給が原則になっているわけですから、賃金の三分の一なりあるいはスウェーデンのように九割までそれから出したらどうか、そういうふうに言いたいわけですよ。そういうふうに考えれば、何もたった一年、それも、一年と言いますけれども産後休暇の後満一歳に達するまでの実際問題として十カ月でございますよ。そこの間を何とかもう少し、実際に育児休業をやっている事業所、そして育児休業をとっている対象の方たち、そういう方たちに直接響くような形でやっていただくことが結局この育児休業制度普及するゆえんだと思いますし、同じような方法、そのような方法は雇用保険から他の種の労働者に対してとられているところなのですね。ですから私は、やはり今回の条約を批准する趣旨からいいましても、あるいは均等法の中に育児休業制度というものが前から設けられていて、そしてこれがなかなかそう普及はしないという実態から見ましても、ひとつここのところで相当額の予算をつけられたのですから、これで本当に普及ができるかやってみて、いろいろ問題があったときにはひとつぜひこういう方向考えていただきたい、そういうことを今強くお願いしておく次第です。やはり先に広がるような、先に社会保障につながっていくようなそのような角度からこの問題をぜひもう一度取り上げていただきたいと思う次第です。  次に、再雇用制度の問題ですけれども、今回均等法の中に新たに設けられた再雇用特別措置、こういう制度は諸外国においてもとられている制度なのでしょうか、それとも終身雇用制を特色とする日本に特殊な制度なのでしょうか、その点いかがですか。
  33. 川橋幸子

    説明員川橋幸子君) 各国におきます企業の雇用管理制度実態といいますのは、やはりそれぞれの国におきます労働市場の構造によって大変異なるものかと存じます。今回雇用機会均等法の中に規定されました再雇用特別措置に相当するような女子雇用制度というそういう制度を持っている国は、私どもの現在把握している限りでは見当たらない。やはり我が国雇用慣行にひとつやはり着目した制度であるというふうに考えられます。
  34. 久保田真苗

    久保田真苗君 終身雇用制が普及しております日本では、確かに一度やめてそしてまた再就職するということが、少なくともいい条件で再就職するということがなかなか難しいという点からこういう点に目をおつけになった、その着眼点は評価するのですが、実際問題として再雇用特別措置の今後の運用につきましてどういう考え方を持っていらっしゃるのか、それを御説明いただきたいと思います。
  35. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 再雇用制度につきましては、今回成立いたしました法律の中で初めて書かれた制度でございます。したがいまして、その内容についてまだ検討中という状態が続いているわけでございまして、労働省といたしましては、研究会を六十年度には設置いたしておりまして検討いたしておりますが、この中で現在既にこの制度を取り入れておられる企業の方々においでをいただいてこの研究会でヒアリングを行い、いわばモデルというようなものを探って、これについては既に報告書を発表しようとしているわけでございます。  また、その後の日程といたしましては、そのヒアリングの中から望ましいあり方などをよく研究会のメンバーの先生たちにお願いをいたしまして研究を続け、それを踏まえて望ましいあり方を示すことができればこの制度普及にとって大変プラスなのではないかというようなことを考えている状態でございます。
  36. 久保田真苗

    久保田真苗君 これからも研究を続けるということですけれども、今までにこの制度の運用について何らかの示唆というようなものがあるわけですか。もしあればそれを御説明ください。
  37. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 先ほど申し上げましたように、いろいろな企業の実際にとられている再雇用制度、どういう条件をつけて再雇用を認めるかというようなことにつきましてよい事例というようなものを集めているわけでございますので、私ども考えがそれによってまとまるのは今年度、もう少したってからというふうに御理解いただきたいと思います。
  38. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、一つ問題を提起したいんですが、この育児休業制度と再雇用特別措置との関係についてどういう方針を持っておられるか。その点、つまり私としましては、多分、育児休業を実施している会社と再雇用をやっている会社が、両方やっている場合もあるかと思いますけれども、そうでない場合も多いと思うんです。その場合、例えば育児休業はいろんな意味で面倒だから、再雇用の場合には一たん会社から離れてしまうことは事実なんで、一たん雇用関係を打ち切るというそういうことになる。その方が面倒がないということで、育児休業のかわりにこの再雇用措置が代替されていくのじゃないか。それはやっぱり好ましくないことだと思うんです。なぜなら、育児休業の場合には復職が完全に保証されています。けれども雇用の場合、仮にある程度義務づけるとしましても五年、十年先の再雇用を義務づけ、あるいは労働条件を含んでこれを義務づけるということはなかなか困難なことではないかと思うんですね。これについての両者の関係についての方針とか手段とか、そういうことについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  39. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 先生も御存じのように、働く婦人の絶対数というものは、もう大変ふえてまいっております。その中の既婚者の割合、これまた大変ふえております。そこで、女子雇用者の働く就業のパターンというものは、従来のように若い間、結婚前に働いて、そして子供ができればやめて、再び労働市場にはあらわれないという方はもはや非常に少数になりまして、ずっと続けて働くという方が非常にふえている。また、一度やめて子育てが終わった段階でまた労働市場に再参入するという方も非常にふえているわけでございます。前者の方々に、つまり継続して働きたいという方にとっては育児休業制度というのは非常に有効ないい制度だと思いますし、育児期間はある程度もう少し長い期間になるかと思いますが、その間家庭にとどまってもう一度働きたいという、いわば再就職型の方にとっては再雇用制度というのが非常に有効な制度であろうと思うわけで、絶対数はそういうふうにふえて、そういうパターンがいろいろ多様化する中での政策として、育児休業制度もまた再雇用制度もともに有効であろうというふうに考えているわけでございまして、労働省として、再雇用制度というのを新たに考えたからといって育児休業の方を否定するというような考えは全くないわけでございます。  法律の中にも、再雇用制度が書かれました同じ法律の中で、育児休業については国の援助という点をより明確に出したわけでございまして、この両者は別のニーズに応じた制度として両方が進んでいくというのが望ましいあり方であろうというふうに私ども考えております。
  40. 久保田真苗

    久保田真苗君 両方が進むということは、それは当然そうなさるべきことだとは思いますが、私が申し上げたのは、再雇用という方がルーズなものだから育児休業に代替されやしないかと、そこのところをお答えいただきたいんですね。つまり再雇用というのは現職あるいはその他の再雇用を義務づけるというようなそういうことになかなかなりにくいと思うんです。これに対して育児休業というものは一定の育児の期間が終わった後現職復帰がほぼ保証されるということですね。ですから、再雇用特別措置をうちはやっているんだから、育児休業なんてものを要求するよりは再雇用で一たんやめたらいいじゃないかと、そういう会社がふえやしないかと私は心配しているんですが、そういう心配はないとおっしゃれるわけです
  41. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 再雇用制度というのはまだ普及率も非常に低いわけでございまして、育児休業制度の方が早く出発した制度でございます。しかし再雇用制度の方は、ルーズと申しますか、結構長い期間子育てに専念ができるというメリットがあるわけでございますから、それを企業が採用するということは私どもとしては望ましいことだというふうに考えます。中に再雇用制度を取り入れるために育児休業の方は後回しにするという企業が、多少それは全く否定するわけにはまいらないかと思いますが、先ほど申し上げましたように、この制度は相反する制度ではなくて、両方が進められていい制度だというふうに考えております。
  42. 久保田真苗

    久保田真苗君 それで私提案なんですが、今後再雇用についてどういう手だてを講じて特別措置を進められるのか、まだそれについては伺うことができないわけですが、仮にその段階に達しましたときに、いずれにしましてもこの再雇用を進めるに当たって、その企業にとって育児休業制度を同時に取り入れるということが恐らく望ましいと思うので、それについて、再雇用特別措置を入れるときに育児休業制度の併置を進めるというそういうことはお考えになりませんか。そういうことを勧奨していく、そこのところに重点を置かれるということはいかがですか。
  43. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 先ほど来申し上げておりますように、育児休業と、このたび新しく出発することになります再雇用制度については、両方を普及するように行政としては進めてまいりたいというふうに思っております。
  44. 久保田真苗

    久保田真苗君 まあともかくお願いしておきますけれども育児休業というものがあって、なかなかその普及が進まないということも事実なんですからね。そのために、これを再雇用特別措置に置きかえるということでなく、これを進めていらっしゃる上に育児休業をぜひ取り入れるように、その機会をつかまえてそのことをぜひ実施していただくように、まあ老婆心で、今さら申し上げることはないのだけれども、重ねてそのことを要望しておきます。  それから、再雇用にも関連があると思うのですが、私、職業訓練の資料を少しいただきまして、拝見しているんですがね。これで際立った特色というのは、女子が参加している比率が三割程度と最も高いのが能力再開発訓練というもので、そして、これは期間が短く、仕事をかわるという、そういうことをねらった訓練だと思うんですが、人数も比率もこれが最も際立って高くて、あと例えば職業訓練大学校とか職業訓練短期大学校とか、あるいは高卒一年ぐらいの期間のいわゆる職業の養成訓練、こういったものの比率はこれに比べたらがた落ちに低いんですね。その理由をどういうふうにごらんになりますか。
  45. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 公共職業訓練等の受講状況は、ただいま御指摘のとおりだというふうに思いますが、これは制度の方は両方に全くオープンにしているわけでございまして、女性を受け入れないというようなことは一切ないというふうに理解をいたしております。  そこで、女子自身が選択をするときに、いわゆる女性向きの職業というようなふうに考える、あるいは職業の訓練のためにそう長い時間を費やすということに余り積極的でないというようなこともあるのではないかというふうに考えております。  そのような女性自身の職業意識が形成されてきたということは、社会一般と申しますか固定的な役割分担意識とかあるいは伝統的な職業分野にどちらかというと行きやすい、進みやすいというようなことがやはり背景と申しますか、背景というよりはむしろもっと直接的な原因になっているのではないか。これは、ただいま御審議中の条約指摘しているような伝統的な役割分担意識だとか社会全体の慣習、物の考え方というようなものが女性の地位に非常に大きな影響を持っているという基本的な考え方とつながるものではないかというふうに考えている次第でございます。
  46. 久保田真苗

    久保田真苗君 今回のこの条約を批准するに当たって、ぜひこちらの面の婦人の参加、参加機会の開発に御尽力をいただきたいと思うんですけれども、そもそも能力開発訓練というのは、仕事をかわるあるいは転職する、途中から急に何かの仕事につくというようなときに短期間行うということなんですが、もちろん、今のようなOA革命等で女子の失業率も過去に比べれば高まってきておるし、今後も女子の入っている分野が変わっていくためにこういう訓練は必要だと思うんです。しかし、職業訓練そのものが非常に高い就職率を確保しているという実績から見まして、私は、今後例えば新しく卒業してくる方たちももちろんそうなんですけれども、再雇用を目指す、希望する、そういう場合に、必ずしも昔の職場に復帰するということだけを望むよりは、こういう訓練大学校なり短期大学校なりである程度の技術、技能を身につけ、新しい需要の多い分野にも女子が進出していく。そのことを助けるために、婦人局が中心になって、もちろん訓練局とも協力をしていただいて、何かこの面について特別の手を打っていただけないか。つまり、均等法も出だしが肝心ですからね、ここのところでひとつ訓練の面で大きい手を打っていただけないか、こう思うわけなんです。もちろん広報とか奨励とか、それから再雇用についたりする、あるいは職場転換をしたりするときの密接な相談ですとか、そういうことになろうかと思いますけれども、ともかく職業訓練の利用者を広い分野にわたってふやしてていく。このことについて手を打っていただきたいんですが、どうお考えになりますか。
  47. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 婦人の再就職ということにつきましては、今度の法律で二十四条で「再就職の援助」というふうに明文で規定が新たにされたところでございます。これは、その二十五条に「再雇用特別措置」というのが書かれておりますが、いわば再雇用も含めたもっと広い意味での再就職を国が奨励し援助をしたいという考えに基づいて規定されたものでございますので、先生の今の御趣旨はまさにこの規定が受けているというふうに考えられ、これによっていろいろ具体的な措置は今後十分に考えていけるようになるというふうに考えております。
  48. 久保田真苗

    久保田真苗君 抜かりはないと思うんですけれど、私が言いたいのは出だしが肝心ということなんです。均等法も成立して、そこにそういう条文があるから、ただ手を打たないでいると死文になってしまいますからね、これはぜひ、出だしが肝心で、ひとつ大きい政策を立てていただきたい。このことをお願いしておきます。  次に、国連婦人の十年も最終年になっているわけでございます。そこで、主として外務大臣と総理府にお伺いしてまいりたいと思うんですが、国連婦人の十年の成果につきまして、これから世界会議での報告も行われるわけですが、まず大臣の御評価はいかがでございますか。
  49. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 国連婦人の十年は、婦人の地位向上のための各国における、及び国際レベルでの諸活動を促進するための大きな弾みとなり、この十年間に世界行動計画の作成、あるいは女子差別撤廃条約の採択を初めとして国際レベルでのさまざまな分野における婦人の地位向上のための諸施策の推進に大きく寄与したものと考えております。  我が国も、国連婦人の十年の諸目標を踏まえまして、国内において積極的に婦人の地位向上に関する施策を推進するとともに、国際面では世界婦人会議、国連における婦人関係の審議等への積極的参加、国連婦人の十年基金への拠出、開発途上国への婦人専門家の派遣、婦人研修員の受け入れの拡充、国際機関への婦人職員の送り込み等によりまして国際協力の推進に努め、相当な成果をおさめたものと考えております。
  50. 久保田真苗

    久保田真苗君 確かに外務大臣としての御答弁であったと思います。  私は、率直に申しまして国連婦人の十年が国内に及ぼした影響というものもまた相当なものがあったと思うわけでございます。確かに、国連婦人の十年でなければこの十年ぐらいの間にできなかった、もっともっと長い年数がかかったであろうことが、ともかく拙速ではあるけれどもある程度のことができたというふうに私も思っているわけでございます。しかし、現在審議しております女子に対するあらゆる形態差別撤廃条約を批准するに当たっていろいろ宿題もまた残ったことは事実なんです。私はこの際残っている宿題というものを一応問題整理しておきたいと思いますけれども、外務省のお立場からしてそれはどういうことだというふうに思っておられるでしょうか。
  51. 山田中正

    政府委員(山田中正君) ただいま御審議いただいております条約の批准の態勢は一応整ったと思いますが、先生も御指摘のように、この条約が目指しております女子の平等という内容を高めていく上でまだまだなすべきことがたくさんあると思います。  一つは教育の分野でございますが、先生も御承知のとおり、この条約を批准いたします時点においては、中学校、高等学校の学習指導要領における家庭科が男女異なる扱いとなっております。もっともこの点につきましては、これを同一化する方針が既に立っておるわけでございますが、これが合理的な期間内に実現するよう今後とも努力する必要がございます。  また、この条約が非常に大きな分野として取り上げております雇用の面につきましては、既に雇用機会均等法が成立いたしておるわけでございますが、今後政省令の設定を含めましてその均等法条約の要請に沿って運用されていく必要があるわけでございます。  さらに、この条約の特に第五条が指摘しておる点でございますが、やはり男女平等を達成するためには国民の意識の問題があると思います。従来からも種々の政府の広報・啓発活動が行われておりますが、この条約に入りました暁には、やはりこの条約の目指しているところにつきまして、国民の皆様方の御理解を深めていただくよう啓発・広報活動に努めたいと思っております。
  52. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございました。  おっしゃるとおりなんでございますが、さらに先ほどの教育課程の問題をお取り上げになったんですが、これは家庭科のみでなく技術系の科目も同様だというふうにお考えになっていると理解してよろしいですね。
  53. 山田中正

    政府委員(山田中正君) はい、そのとおりでございますが、家庭科の扱いが先生指摘の技術でございますとか体育などにはね返っておりますので、すべての教育課程についての同一化を図るということでございます。
  54. 久保田真苗

    久保田真苗君 それから一般的な政省令で雇用男女平等を条約の中身に合致するようにしていただくというのがこれからの作業をお願いするところなんですけれども、その中で私が前々から取り上げてまいりました職業安定所の窓口取り扱いの問題ですね、これは画然と男女の労働市場を分離して扱っている。もちろんその中ではいろいろな取り扱い上しんしゃくはしているというお話でしたけれども、少なくとも形の上で男女別の取り扱いをしているということは、婦人の労働市場、雇用機会を著しく制限しているものであるというふうに思うわけです。つまり、国の機関がこういうことを率先垂範して改めていただかなければならぬと思うんですが、それにつきましてもやはり婦人局からの働きかけが非常に重要ですし、これが実現されるような政省令の決め方をやっていただくということになりますので、ひとつこの点十分実現を図るような方向でいろいろな作業、折衝をお進めいただきたいと思いますが、赤松局長、御決意を伺いたいのです。
  55. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 機会均等法上努力義務になっている点については、指針を定めるということになっておりますし、また、強行規定になっている点につきましては、省令で細かいことを定めるということになっております。  そこで、ただいま御指摘の安定所の窓口での取り扱いということになりますと、恐らく指針策定のときの具体的な検討の課題になるというふうに考えているわけでございまして、職業安定局とも従来からも連絡を密にしているところでございますので、指針策定の場合は一層そのようにいたしたいと思っております。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
  56. 久保田真苗

    久保田真苗君 この今の安定所の件につきましては、外務大臣からも再三同じになるように承知しているという御答弁をいただいているんですが、実際問題として私は、最後にこれを実現させるまでにはいろんな曲折があるような、どうもそういう気がするんですね。どうぞ頑張ってください。  それからそのほかにもいろいろと私ども挙げてまいりました。今おっしゃったことは主なことでして、やはりさっきちょっと伺いました最後の段階になって私どもが取り上げました法例の件ですとか、それから民法における氏の問題、それから待婚期間の問題についても御検討をいただくということになっておりますし、それから離婚に伴う父の子供の扶養義務ですね、こういうものを実施していただく上からにもひとつ制度を見直し、改善することが必要であろうと思いますし、また、前回取り上げました政策決定への婦人の参加、著しい低率なんですね。これは国の審議会の場合一〇%目標、十年間でということでやってまいりましたけれども、実際には今五%ちょっとの線でことしを終わろうとしているわけです。  そこで、私はぜひお願いしたいのは、この婦人問題企画推進本部でもって全省庁が足並みをそろえてやっている婦人の政策決定への参加を促進する特別活動、これは今後も継続していただきたいということなんですが、総理府いかがでしょう。
  57. 松本康子

    政府委員(松本康子君) 婦人の政策決定への参加を促進する特別活動は、公職を初め、さまざまな分野の政策、方針の決定への婦人の参加を促進することを目的としておりまして、婦人問題企画推進本部では積極的に推進してまいりましたけれども先生指摘のとおりまだその成果は十分とは言えないので、当面この活動推進のため鋭意努力していることでございまして、今後も粘り強く各省庁と連絡をとってまいりたいと存じます。
  58. 久保田真苗

    久保田真苗君 次に、今後の推進体制について伺います。  婦人問題企画推進本部というのがあって、総理が本部長で頑張っていらっしゃる。これについては、既に総理が中曽根内閣としてはこの本部体制を今後も続けていくつもりだということを国会で答えていらっしゃるんですが、今後条約の推進体制はどこが責任を持って対外的にもまた国内の条件整備の調整役もしていらっしゃるのか、まずそれを外務省にお伺いしたいと思います。
  59. 山田中正

    政府委員(山田中正君) この条約対象といたしております分野は、先生御承知のように非常に幅広く関係各省庁がそれぞれ実施していただくわけでございますが、そのように関係各省庁にまたがっておりますので、今後の条約を誠実に遵守するという実施体制につきましては、条約担当の外務省といたしましてその調整に当たり万遺漏なきように期したいと思います。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕  ただ、その過程におきまして先生も今御指摘ございました内閣の婦人問題企画推進本部、これとは外務省は常に密接に協議させていただきたいと考えております。
  60. 久保田真苗

    久保田真苗君 私はやっぱり総理の言われるように、今後もこの推進本部体制を維持し、そして有識者がいろいろな角度から提言をしておられる婦人問題企画推進会議をその一つの知恵袋として、条約の推進をこういうものをてこにしてやっていっていただきたいということを強く希望するものでございますけれども、外務大臣もこういう体制を必要とお考えと思いますが、いかがでしょうか。
  61. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) やはり条約を誠実に実行していくというためには、そうした体制も必要じゃないかと思います。
  62. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで、条約が批准されますと、まず一年以内に、そして自後四年ごとに国連への報告を出していかれるわけでございます。これをこの国会にも報告していただくという、そういうふうにおっしゃっておりますが、この点確認したいと思います。よろしいですね、条約履行の推進状況について国会に報告する、このことはよろしゅうございますね。
  63. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 本条約の実施状況につきましては、国連に提出する報告は国会の方にも報告する考えであります。
  64. 久保田真苗

    久保田真苗君 総理府の方にお願いなんですけれども、総理府はいわゆる婦人白書、年次報告をお出しになっております。私はこの中に、条約の宿題になって残っていることをその推進状況を経過報告としてこの中へ打ち込んで、この年次報告が出る都度どうなっているかということが国民にわかるようにしていただきたい、こう思いますけれども、総理府、いかがですか。
  65. 松本康子

    政府委員(松本康子君) いわゆる婦人白書、婦人の現状と施策というのがこれまで国内行動計画に関する報告書ということで国内行動計画に関連する施策の実施状況とか婦人状況を明らかにしてきたものでございまして、国内行動計画の後期重点目標におきまして女子差別撤廃条約批准のための条件整備を国内行動計画、国連婦人の十年後半期の重点課題としたものでございますから、最近ではその批准のための条件整備状況をその中に含めてきたところでございますが、今後のことにつきまして、女子差別撤廃条約関連の進捗状況というのは、婦人に関する施策の推進に当たりまして重要な事項であると考えるわけでございますけれども、国連婦人の十年終了後の婦人白書がどのようになるかということにつきましては、今後なお事務的に推進体制の面で各省と詰めていかなければいけない問題もございますので、そのような検討を待ってさらに検討していくことであると考えております。
  66. 久保田真苗

    久保田真苗君 検討を待つだけでなく、ひとつ婦人問題担当室長のお立場で、そういうことに積極的にフォーカスを当てたそういう年次報告をぜひ国民のためにやっていただきたい、このことをお願いしておきます。  次に、ナイロビの世界会議が間もなくございます。それで、そこでは今後紀元二〇〇〇年に向けての新しい戦略がつくられると聞いております。日本としましてもその草案等についていろいろと提言がおできになると思うのですが、どういう提言がなされるのか、建設的な提言をぜひお願いしたいと思うのですけれども、どういうことを考えていらっしゃるか、お聞かせいただけますか。
  67. 山田中正

    政府委員(山田中正君) ナイロビで行われます二〇〇〇年に向けての将来戦略、これにつきましてはその準備会合、これを婦人の地位委員会が行ってまいりました。まだその最終的な結論が出たわけではございませんが、その準備会合におきましては、我が国といたしましては次のような提案を行っております。  第一点といたしましては、婦人問題にかかわる国内機構の強化。第二点といたしましては、男女平等を達成するための法制の整備。第三点といたしまして、婦人の政策決定参加促進のための施策の充実。第四点といたしまして、家庭内の責任分担による婦人の二重負担の軽減と社会サービスの充実。それから第五点といたしまして、固定化した男女の役割分担、意識排除のための教育とメディアの有効利用。第六点といたしまして、婦人に関する情報交換システムの設立。第七点といたしまして、国連全加盟国の参加による将来戦略の実施状況の定期的見直し。以上の点を準備会議段階で我が方が主張してまいりました。  なおナイロビにおきましてはこれらの主張と、さらに昨年の三月に東京でESCAPの地域政府間会議を開催いたしました、そこで採択されました勧告等をもこの二〇〇〇年に向けての将来戦略に反映されるように努力するという方向で臨みたいと考えております。
  68. 久保田真苗

    久保田真苗君 大変いい御提言をしていただいておると思います。私はこのナショナルマシーナリー、婦人に関する機構の強化ですね。これにつきましては国際婦人年の前から国連が決議によって各国へ呼びかけ、この国連婦人の十年の期間を通じて非常に多くの地域あるいは国、そしてさらにローカルなものが次々にできてきたものでございますから、これの一層の継続的活動を強化していくということにつきまして、もちろん各国がこれをそろって支持することは間違いないと思いますけれども日本でもちょうどこの十年かかって各地域にまで行き渡る、こういう単位がやっとできてきたところでございますから、ぜひ積極的に御発言いただきたいと思います。  また、最後に言われました全加盟国が入って定期的に進歩の状況検討分析し、その戦略に対する評価を加えるというそのことなんでございますけれども、今回国連婦人の十年が終わるにつきましては、私は特にこのリポーティングシステムと戦略に対する分析評価のシステムと、それから全加盟国が参加できる検討会議、これを定期的にするということを強く希望しておきたいのです。なぜかといいますと、たとえある程度の期間を置いた見直し検討であってもこれに全加盟国が参加できるということは、平生機能委員会などが、どちらかというと割合熱心な、あるいはそこへ委員も派遣できるほどの財政を持っているようなそういう国に偏らずにやっていくということが非常に大事だと思いますので、この点もひとつ、全加盟国が参加できる検討分析の会を定期的に持つ、このことをぜひ強く発言していただきたいと思うわけでございます。  次に、私振り返りまして、国連婦人の十年の男女の平等、それから婦人の開発への参加、そして平和への貢献のうち、常に一番何といいますか論争点が多く、そして結果的には実りが少なかったものとして平和の問題を考えざるを得ないんです。これにはいろいろな受けとめ方があると思うんですね。例えば軍縮の問題は婦人の世界会議の受け持ちではなくて他の機関の受け持ちだ、そういう受けとめ方があるわけでございます。私は確かに婦人会議がそれはストレートに軍縮の問題を取り上げる会だとは思いません。しかし、軍縮そのものの交渉の場である以上に、この会が国際友好と平和を増進していく上での婦人の役割を論ずるそういう場所であると思うし、その場所はここ一つしかないと、こう思うわけです。それからまた、地域紛争の問題そのものを是か非かと扱うよりは、そこにいる婦人、子供、家庭、それから生活へのはかり知れない影響、こういうものを訴えて全世界の婦人の平和への貢献を促していく、そういう意味でこの会議はその唯一の機会だと、このように思うわけです。  ですから私は、このテーマが出るたびに前列の女性の代表をひっ込めて、男性の外交官が前列に並んで、まるで安全保障理事会で発言なさるようなそういう非常につっけんどんな消極的な否定的な発言をされるということにかねがね不満を持っているわけでございます。私はこれが軍縮そのものを交渉する場ではないということをはっきり認識すると同時に、そこに対する婦人は、世界の悩んでいる、被害を受けている、そういう方たちのために何をやっていくことができるのか、それはこの場しかないのですからそのことを取り上げていただきたいと思いますし、日本が平和への寄与をしていく上においても、今度の会議でひとつ婦人の十年の締めくくりとして何らかのいい結論を出すように積極的にやっていただきたいと、こう思うわけです。そして来年は国際平和年になっておりますからますますこれについての提言などもあると思いますので、ひとつこの一番最後の平和の問題について、来年の国際平和年も踏まえまして、大臣から対処の姿勢をお聞かせいただきたいと思います。
  69. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 国連婦人の十年のテーマであります平等・発展・平和、これはそれぞれ婦人の地位向上のための施策をとっていく上ではひとしく重要性を持っています。  我が国はこれらの三つのテーマの相互の関連性に留意しながら、このような観点から過去二回の婦人会議にも取り組んだところでございます。来るべきナイロビ会議におきましても、審議される予定の二〇〇〇年へ向けての将来戦略のテーマの一つに平和問題が取り上げられることになっております。我が国としては以上の基本的立場から、平和を実現する上での婦人の役割の増進等の諸問題に取り組んでまいりたいと考えます。  なお、平和の確保は国際社会にとりまして最も重要な課題であることは申すまでもありません。国際平和年の機会に世界の国々が改めて平和の確保に向けて真剣な検討を行っていくことは意義深いことであると考えます。我が国は平和国家として国際協力を国是としておるものでありまして、常に平和の確保に向けて努力を行う考えでありますが、平和年の機会にどのような寄与を行うかにつきましては現在検討中でもありますし、今後真剣になって取り組んでいかなきゃならぬ課題であろうと考えております。
  70. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。  ところで、来年国際平和年ということで国連軍縮特別総会の第三回目についての提案があると思いますが、今の国連総会での審議はどのようになっておりますでしょうか。
  71. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 第三回軍縮特別総会につきましては現在のところ一九八七年までに開催するということになっておりまして、ことしの総会で具体的にいつ開くということを決める予定になっております。
  72. 久保田真苗

    久保田真苗君 私はこれにつきましてぜひ外務省にお願いしておきたいことがあるんです。それは、過去二回の軍縮特別総会には日本からNGOが非常にたくさん大きな関心を持って渡米し参加したわけでございます。ところがここでまずNGOの立場から問題になりましたことは、確かに国連憲章の上でNGOの立場は経済社会理事会の中で諮問の地位を持つ団体が六、七百もあるというふうな状態になっております。つまり経済社会理事会の部位にNGOの地位が位置づけられているわけですけれども、軍縮特別総会を含んで総会についてはNGOの立場が必ずしも国連憲章の中に規定として打ち込まれてはいないわけですね。しかしこのことは、経済社会理事会の上に総会があるわけですから総会へのNGOの発言を決して否定するものではないというふうに思いますし、また事実国連は総会へのNGOの参加を実質的に門戸をどんどん開放していっているというふうに思います。  そこで私は、世界会議も含んで国連の総会等にNGOの役割の位置づけということについて、今後もその都度政府間の協議があると思いますけれども、そのときに日本としては日本のNGOの熱意を酌んでこれに前向きに対処していただきたいとこう思うのですが、外務省はどうお考えになりますか。
  73. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生指摘になりましたように、国連憲章でNGOの地位が規定されておりますのは経済社会理事会との関係だけでございまして、総会につきましては憲章にも規定がございませんし手続規則にも規定がございません。  ただ先生指摘になりましたように、例えば総会の第四委員会にも請願人の発言が認められるような慣行ができておりますし、また軍縮特別総会につきましては、第二回の総会の際に例えばNGOの方々の発言の場を設定するとか、NGOの方々の資料を会議場に展示するとか、一般傍聴席の一部をNGOのために確保するというふうな措置がとられました。第三回軍縮特別総会の細目の取り決めに際しましてはNGOの御意向というものをよく踏まえて、少なくとも第二回の軍縮特別総会で行われましたような形のものが実現するよう努力いたしたいと思います。
  74. 久保田真苗

    久保田真苗君 ぜひ積極的にNGOの位置づけに発言をしていっていただきたいんです。第二回の総会のときでも時間、空間的にどうしても非常に制約があるもので、NGOのたまりにたまったエネルギーが案外総会の中で反映されることにならず成果が上がらなかったということもございますので、ひとつ今後いろいろな場面でNGOの役割についての前向きの評価、そしてそれに伴う発言をお願いしてまいりたいと思います。  最後に、今ILO総会の開催中でございますけれども、重ねて婦人に関するILOの未批准の条約、これが幾つもございまして、一日も早く批准したいのでございますが、外務省としてこのうち批准したいもの、しかしそこに障害があるもの、これがいかなる障害であるのか、そういうことを分析してちょっと御発言いただき、今後の批准促進について御決意を承りたいと思います。
  75. 山田中正

    政府委員(山田中正君) ILOの婦人関係の条約が十四件ございますが、我が国が批准いたしておりますのは三件でございまして、あと十一件が未批准になっております。  十一件を大きく三つに分けますと、今回の御審議いただいております条約を批准いたしますと積極的に抵触して批准が困難であるという条約が一件ございます。これは最大重量に関する条約、百二十七号でございます。  それから女子保護に関します条約、第十三号条約の白鉛条約、それから第八十九号条約の夜業に関する条約、それから百四十九号条約の看護職員条約、これらは同じ待遇を男子にも与えれば、この御検討いただいておる条約と積極的に抵触することはないわけでございますが、男女共通にこのような待遇を与えることについては、白鉛条約日本では使用されておりませんのでこれは別でございますが、ほかのものにつきましてはちょっと実態的に困難であろうと考えております。  第三の分類に残りますのが七つございます。第百三号条約、母性保護条約、これは我が国の基準がまだ条約の基準に達しておりません。出産休暇については今回の法律改正で要件を満たしたのですが、その他の点でまだ達しておりません。それから雇用政策条約、第百二十二号条約でございますが、これは余り大きな、基本的な点では問題がないのであろうと思いますが、なお細部を詰める必要がございます。それから差別待遇禁止条約、第百十一号条約でございますが、これも非常に広範な人種、皮膚の色等に関する差別も禁止しておりますので、我が国の場合まだ法制の整備ができておりません。それから第百二十八号条約、障害、老齢及び遺族給付の条約でございますが、これにつきましては実は既に批准いたしました百二号条約の障害遺族給付の部分をまだ受諾いたしておりませんが、最近の一連の国内法の改正でこれを受諾できる状況になったのではないかというふうに外務省として考えておりますので、厚生省と詰めさしていただきたいと思います。百二号条約のこの第九部、第十部の受諾との関連で百二十八号条約考えさしていただきたいと思います。それから百三十六号条約、ベンゼンの条約でございますが、これも国内法が条約の基準に達しておりません。それから百四十二号条約、人的資源開発条約でございますが、これは基本的にはおおむね我が国で実施されていると思いますが、なおまだ詰める必要があるものでございます。最後に第七番目の第百五十六号条約、家族的責任を負う条約でございますが、この条約は今御審議いただいております条約内容を充実するという観点からつくられた女子差別撤廃条約と非常に密接に関連する条約でございます。外務省といたしましては何とかこの条約締結することができないかと考えておりまして、この点につきましては早期に関係各省と協議させていただきたいと考えております。  ILO条約につきましては以上でございます。
  76. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございました。  未批准の婦人関係条約をぜひ全面的に推し進めていただくことをお願いしますととも、百五十六号条約につきましては私どもも今回批准する条約のまさに延長線上にあり、これを実現するための最も大事な手だてだと思っておりますので、ひとつ何とかこれを早く批准するように国内体制の整備に持っていっていただきたい、このことをお願いしまして、ひとつ外務大臣から代表して御決意をいただきたいと思います。
  77. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 今の御趣旨につきましては十分承知をいたしておりまして、鋭意検討してまいりたいと思います。
  78. 久保田真苗

    久保田真苗君 検討だけでなくて、大臣は既に次の国会にも報告のできるような進捗を図りたい、こうおっしゃっていますんで、その点もお願いしたい、ぜひ次の国会で相当の進捗を見ているようにお願いしたい、こう思うわけです。各省と御協議の上、ぜひそれをお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  79. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 鋭意検討しながら次の国会に出すべく各省庁とも連絡をとりながら努力を重ねてまいりたいと思います。
  80. 黒柳明

    ○黒柳明君 まず当面の外交案件について一、二お伺いします。  大臣、けさの報道で行革審の分科会が内閣官房の組織の再編をということで報道されておりました。大臣、あの構想にどのような御意見をお持ちですか。
  81. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは私もまだ十分私自身で検討しておりませんので全体的にこの判断はできませんけれども、基本的には、私は外務大臣をやっておりまして、確かに外交関係は非常に多様化、多面化しておりますから、特に各省関係にまたがっておるものも多いし、そうした面での調整といいますか、これはやっぱり内閣総理大臣のもとで調整する必要もある面もあると思います。例えば、対外経済摩擦なんかそういうことがはっきり言えるわけですが、しかし外交はやはり一元化でなければこれは対外的な日本の立場をはっきりさせることができません。信用にも関しまするし、これは日本の行政の基本の一つですから、こういう問題、こういういろんな構想があるとしても、あくまでも外交一元化というものを前提にしたものでなければならぬ、こういうふうに基本的には思っております。
  82. 黒柳明

    ○黒柳明君 なかんずく、今大臣おっしゃいましたように、外政調整室、この問題がトップに出ていて、内容も書いてありましたですけれども、ただ新聞報道ではやっぱり二元化の可能性、こういうような活字が出ておりまして、アメリカみたいに大統領制ならばともかく、日本のような議院内閣制ですから、今おっしゃいましたように、確かに最終的には総理の判断ですけれども、総理の官房の中に果たしてそういう調整して外交に対して適切な判断をするスタッフがいるのか、あるいは改めてそういうスタッフを置かなければ、そういう外交問題についての調整を図る意味もないし、やっぱり知識、経験、キャリアが伴う調整室の室員、スタッフじゃないと調整なんかできるわけがありません。おのずからそうなりますと、今おっしゃったように、一元化ならばいいけれどもという前提がやっぱり私は崩れるのじゃなかろうか。来月の二十二日ですか、行革審から答申をされる、こういうことですけれども、一応内閣としても尊重するという建前であることはこれは変わりないんですけれども、非常にやっぱり思い切った提言と同時に、あくまでもこれはアメリカの物まねではなかろうか、こういう批判、あるいは物まねである、こういう断定的な私は見方もしたいわけであります。  ですから、今言ったように一元化という前提ならばと、こうおっしゃいましたけれども、きのう関係者に一応聞きました。そうしたら、もう答申を出しましたんで、あれ以上の構想はないというわけですよ。あれを具体的にどうするかは、今度は行革審全体としての問題であり、それをどう政府が受けとめるか、こういう問題ですと、こういうことであって、私どもとしては、分科会としてはああいう方向で答申をさせていただいた、考えをまとめさせていただいた、こういうことなんですが、明らかにこれは一元外交じゃなくて二元化する可能性、アメリカを見るまでもなく、アメリカははっきりそうなっているわけですから。国務省と安全保障会議とのいつも意見の調節がうまくいかない、こういう問題が絶えず惹起するわけですから。これを日本にわざわざ持ち込む必要はないんじゃなかろうか、私たち素人でも、門外者でもそういう常識前の考え方が出てくるんですが、一元化という前提という今大臣おっしゃいましたけれども、その前提が完全に崩れる、こういうふうに思うんですが、いかがでしょう。
  83. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは行革審で十分議論されまして答申されると思います。もちろん行革審のメンバーの方も、日本の外交、これは世界の外交に通ずるわけですが、外交の一元化というものが、何としても国にとりましてのやっぱりステータスを維持していく上において最も基本的な原理原則でございますから、これは十分御承知だと思います。これが崩れるようなことがあってはならないと思うし、この辺は十分承知されておると思いますが、私は内閣の一員として、この答申が出された段階で判断をしてまいりたい、あくまでもやはり日本の外交の一元化という筋が通っておらなければならぬと思いますし、筋が通らない限りは了承することはできません。
  84. 黒柳明

    ○黒柳明君 はっきり大臣の結論がついたんですけれども、今分科会の段階ですから、親委員会の答申がどう出るか。ただし今までの傾向を見ていますと、まず大体そういう各分科会で答申されたものはそのまま出ている、こういう傾向を見ますと、やっぱりこれもその一つではなかろうか。第一こういうことは日本の内閣政治になじまないんじゃないかという感じがするんですが、そういう感触はどうですか、こういう組織自体が。
  85. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはいろいろと議論されたし、確かに今まで対外的な問題で情報がお互いになかなか各省間でうまく交流されないとか、あるいはまた経済摩擦等を処理する場合における各省の足並みの不ぞろいとかそういう点等もいろいろあって、やはり総理を強力に補佐するといいますか、そういう機関として必要だ、こういうふうなことだろうと思うわけです。それはそれなりに意味はあると思いますけれども、しかし、こうした組織としてできると、これが往々にしてただ総理を補佐するということからひとり歩きして、例えば外交の分野にまで介入してくるというふうなことになって、日本の外交の一体性といいますか、一元化というのが崩れるというようなことになればこれは大変なことですから、その辺のところは十分これは答申をいただいた段階検討しなきゃならぬと思っております。
  86. 黒柳明

    ○黒柳明君 一昨日ですか、総理はアメリカの議会の課徴金法案がレーバーデー前後に通過する可能性があると。外務省はこの情報をどの程度お持ちでしょうか。
  87. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 現在特に具体的に議会の動きにつきまして、注意深く外務省といたしましてフォローしておりますが、九月に入りましてレーバーデー直後に云々ということは現在のところ具体的な動きとしてはございません。ただ、一般的には八月はアメリカの議会は休みでございまして、九月から秋の会期が再開されますので、そういう状況になれば当然日米貿易問題というものに対する議会の関心というものがまた一段と深くなるであろう、そういう状況のもとにおいての議会の動きというのはなかなか予断を許さない、こういうふうに私どもは一般的に見ておるのが現状でございます。
  88. 黒柳明

    ○黒柳明君 レーバーデーなんて九月の第一月曜ですか、そうすると九月の二日。総理がばかに具体的におっしゃいましたんで、私もちょっと句こうの方面にいろいろ打診しまして、今局長がおっしゃったように特別に夏休み明けということに、議会再開ということに意味はあるけれども、レーバーデーということにそんなに意味がないんじゃなかろうかというようなことを私も感じているんですが、外務大臣も今局長がおっしゃいましたように当然その情報だと思うんですが、総理が何か特定な日にちを限定し、ということは課徴金が法案として通過したらこれはもう大変なことでありまして、しかもその間というのは日本も完全に夏休みですから、これは内閣は行政はこのまま滞りはないと思いますけれども、これはもう日本だけじゃなくして、日米間だけじゃなくして、ヨーロッパにも、東南アジアにもこの問題は広がりますし、内需拡大だなんという矢先に、日本の景気にもろにこれは当然影響がありますので、何か総理の発言というものが、私も各方面から、アメリカ等も若干の知り合いがありますんで、そういう情報あるんですかと、こう聞かれて、私もコンタクトしたんですが、今おっしゃったような範囲なんですけれども、外務大臣も特別なレーバーデーというふうな情報はないということでよろしゅうございますか。
  89. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 私も特別にそういうふうな日にちを限ってどうだというような話は聞いておりませんが、確かにアメリカの議会にそういう動きがあることは事実であろうと思いますが、しかし、やはり保護主義を何とか避けたいというアメリカの政府は確固たる方針を持っておりますし、ニューラウンドをそのために一緒になって推進している立場ですし、また日本日本の立場でやはり保護主義の台頭を防ぐためのアクションプログラム等も進めておる段階でありますし、アメリカの議会もそういうことは十分念頭に置いて審議はされるものであると、こういうふうに思います。
  90. 黒柳明

    ○黒柳明君 今日、岡本公三が釈放されてから一カ月半以上たつんですけれども、何か狂人は装っていたんだとか、あるいはいろんな情報がマスコミでは流されておりますけれども、どうなんでしょうか、二、三日前には、やがて戦線復帰なんていうような記事も出ていましてね、マスコミの記事ではどんどんいろいろな情報が出ておりますけれども、外務省はこの情報はどの程度おつかみでしょうか。
  91. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) 岡本が釈放された後の動向につきましては、現在まだリビアに滞在しているということはほぼ確認できるわけでございますけれども、ただそれがどういう状況、波自身の精神的、肉体的な状況にあるかということにつきましては、これは直接に面会して確かめるというような手段がございませんので、結局いろいろな側面的な情報を総合して判断するということにとどまっているわけでございます。御指摘のようにいろいろと新聞報道等では種々の説が流れておりますけれども、私どもといたしましては岡本はこの十三年にわたる刑務所の生活においてかなり疲労しておるし、精神的にも肉体的にもかなり衰弱しているということであろうかというふうに判断しております。
  92. 黒柳明

    ○黒柳明君 一時は戦線復帰不可能かと、釈放直後は活字が出ていましたが、最近はそうじゃなくて、今申しましたようにあれは狂言であるとか戦線復帰とか、こんなような情報がどんどん活字になって、ニュースになって流れているわけですけれども、直接はやっぱり接触できないまでも、あるいはマスコミではもうインタビューをして記事を流しているところもありますし、今の、アメリカを中心に情報の流れておりますTWAのハイジャックには直接関係ないにせよ、やっぱりそこらあたり日本が責任があるわけでありますから、これは警察当局を含めてですけれども、外務省当局の情報の入手というものがちょっとどうなんですかね、一般のマスコミとは、今の御答弁の範囲ですと何かこう漠然としていて頼りないというふうな感じがするんですけれども、その辺はそれ以上の情報というのはつかむべくもない状況にあるわけですか。
  93. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) 御指摘のマスコミ等のいろんな情報につきましても必ずしも直接に岡本に会ったという情報ではないわけでございまして、非常に間接的な話としていろいろ伝えられているというところでございます。それで実際には、今岡本はスイスから釈放されましてリビアに渡って、リビアのトリポリの郊外にある軍事キャンプの中に滞在して療養しているというところがほぼ確実であろうと思いますけれども、何分にもそのキャンプ内において岡本に会ったという直接の情報につきましてはないわけでございます。それで御指摘のように、我々としても岡本の動向につきましては最大限の関心を払って在外公館その他使いましてできるだけの情報を収集しているということでございますけれども、今御指摘の彼の精神状況いかんにつきましては必ずしも確たる決め手と申しますか、そういった直接の情報は入手するに至っていないということでございます。
  94. 黒柳明

    ○黒柳明君 先週の火曜日でしたか、アメリカの核専門の民間のメンバーが十年間かかって世界の核についての問題をまとめて発表した、あの資料は外務省は入手してお読みになったでしょうか。
  95. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 一応入手しております。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 民間の施設、ただアメリカでは相当ラロックさんのところと同じように調査能力あるいはいろんな面において信憑性が高い、こう言われているところだということで、私直接は知りません。その中で特に三沢ですか、核爆雷の搭載施設があって、岩国、嘉手納のP3Cが有事のときには核爆雷を搭載できる、そういう施設があるとか、こんなことがありましたが、ああいう点についてはどの程度情報を持っているんでしょうか、全く持ち合わせないんでしょうか。
  97. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私どもとして米軍がそういう施設を持っているかどうかということについて情報を持っているかという御質問……
  98. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうです、知っているか知らないかということですね。
  99. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私どもといたしましては米軍の個々の施設の具体的内容については特に承知をいたしておりません。ただ今回の新聞に報道されました著作物について三沢との関連で申し上げれば、前にも国会で黒柳委員御自身が御質問になりましたAUWショップというものが三沢に存在するという記述はございます。それでAUWショップなるものの存在につきましては、昨年黒柳委員等から御質問がありまして、私どもといたしまして米軍に照会をいたしましてそういう名前のついている整備所と申しますか、そういう施設が三沢に存在をしているということにつきましては国会に御報告を申し上げた経緯がございます。
  100. 黒柳明

    ○黒柳明君 世界に五万発の核があって、常時発射できるのが一万五千発だとか、それからアメリカは西側の八カ国に核を置いてあって、ソ連は四カ国に置いてあるとか、ああいう点については情報としてはどうなんですか。
  101. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私どもといたしましては、一般的に新聞等で伝えられております情報以上に具体的にアメリカがどこに核兵器を置いておるかというようなことにつきましては発表もいたしておりませんし、私どもといたしましては承知をいたしておりません。
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 局長、それをお読みになって参考になりましたか、余り参考にならなかった。
  103. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私が読みました部分は日本関係の部分でございますが、日本関係の部分に関します限り、特に私は従来いろんなもので見ておる以上のことが書いてあるという印象は持ちませんでした。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 その他の部分はどうですか。その他の部分も局長の知識の範囲ですか。
  105. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) そういう範囲内のものもございますし、私自身必ずしも知らないものも書いてございます。
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 例えばどんなところですか、知らなかったところ。
  107. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 細かい点につきましては私もまだ本当に一読したのみでございますので、一々申し上げるのは必ずしも適当じゃないんじゃないかと思います。
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 来月は総理がフランスに行くので、フランスのヘリコプター購入なんという話が出ていますけれども、大臣これは古い話でまた新しいんですけれども、政府専用機、特に外務大臣が前からテヘランの邦人救出なんかについてもこれは持つべきだと、ついせんだってもそんなような活字になっていましたけれども、ただ、それはどこが管理してどこがアフターケアしていくのかいろんな問題があると、こうあれですけれども、外務大臣としては黒字減らしの一環としてもという前提も当然あるかと思いますけれども、政府の専用機というものについてどのようなお考えを持っていますですか。
  109. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは古い問題でもあるし、また新しい問題でもありますが、世界の先進国だけではなくて、ほかの国々のいろいろの実情等を調べてみましても、大体の国が専用機を持っておりますし、あるいはまた危機管理のための特別な救援機というようなものも持っております。これは、特に先進国ではほとんど整備しておるといっても過言ではないわけで、私も各国を旅行する中でそういうことを痛切に感じております。日本もこれだけのいわば経済大国になりましたし、世界的にも役割を果たしていかなきゃならぬ、そういう時代になったわけでございますし、また日本の首脳等もやはり手軽に出ていかなきゃならぬような時代にもなったし、あるいはまた世界の情勢は、今回のハイジャックの事件にも見られるように、いつ何が起こるかわからぬ、そういう中で邦人の救出といったことも絶えずやはり考えなきゃならぬ。テヘランの問題等もありまして、外務省もそういう対策に、今も実は対策を進めておるわけでございますが、やっぱりそういう点に引っかかるのは、なかなか機敏に対応できないということで、いろいろとそういう点から見ましても、これだけの世界の中の日本ということになれば、私はそろそろやはり専用機は必要じゃないかということを痛感しております。ただ、財政の状況がなかなかこれを許さぬということですけれども、しかしこれは反面また黒字の問題もあります。しかし黒字とか財政とか、そういうものを超えて、やっぱり世界の中の日本の役割というものを果たしていく上にも、また日本自身のこれからの対外的な対応というものを考える場合においても、これは必要じゃないかということを痛感いたします。  これはしばしば公式の場でも発言をしております。先般は総合安全保障閣僚会議においても私から発言を求めて、官房長官のもとで現在いろいろとこの問題について検討を進めておる、こういう段階でございますが、まだこれが運営とか、保管とか、所管とか、そういう面でいろいろと面倒なことがあるようですが、何とかそういう点をクリアして早く持つべきじゃないか、こういうことを痛切に感ずるわけであります。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 確かに財政の問題はあるにせよ、各省庁で外車を購入するというような方向にもありますし、大臣がいらっしゃるうちにこれは何とか結論を出しませんと、熱意さが欠けてきてまた見送ると。また、時期が来ると持ってりゃよかったと、こんなことの繰り返しがこの十年だったわけですから、いろんな問題があると私も官房あたりから聞いておりますけれども、ぜひ積極的に大臣が推進する。大臣いらっしゃる間に推進して結論を出さないと、これはやっぱり機を逸しちゃう。持っていいのかどうかというのは、賛否両論いつの場合でもあるかと思いますけれども、大局観に立って物を考えた場合にはやっぱりあるべきだろう、こういうふうな考えを持っておりますので、私の考えを付して、これはもう別にべきであるとかべきじゃないというものではないと思います。  委員長、以上で結構です。
  111. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ─────・─────    午後一時三十二分開会
  112. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、女子に対するあらゆる形態差別撤廃に関する条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  113. 和田教美

    ○和田教美君 女子差別撤廃条約に先立ちまして、当面の問題について二、三お尋ねしたいと思います。  午前中黒柳委員も取り上げた問題ですけれども、内閣官房に対外政策の調整を担当する外政調整室を設けるというこの臨時行革審の分科会の報告の問題ですけれども、外務大臣の答弁はこれが二元外交になったら大変だというふうなお話でございましたけれども、私は、この機構が非常に強力なものであれば二元外交になる危険性が極めて強い、といって、全く外務省の出先——今の国防会議が防衛庁の出先であるごとく、であれば屋上屋を重ねて意味がないと、こういうふうに思うわけなんですが、しかし同時に、こういう意見が出てくるという背景には、直接のきっかけは私は貿易摩擦、市場開放問題について各省庁が国益よりも省益を優先してさっぱり外務省の総合調整機能がこの問題について発揮されていないという現実もあるんだろうと思うんです。ですからそういう意味で、私はこの問題については外務大臣の考え方に大体同感ですけれども、そのためには外務省自身がやはり対案を持たなければならないし、今言ったような問題についてやっぱり真剣に考えていかなきゃならないと思うんですが、重ねて外務大臣の見解をお尋ねしたいと思います。
  114. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 先ほどから申し上げましたように、私もまだこの外政調整室、どういう議論の中でこういう構想が出てきたのかよく知りませんし、それからこれはまだ行革審に本格的にかかってそれからの答申になると思うんですが、おっしゃるようにやはり非常に対外関係が幅広くなってきた、そういう中でなかなか各省間の調整もうまくいかない面もある、特に貿易摩擦なんかは省益が優先してなかなかこの調整が十分功を奏しないと、こんなこともありますし、これからさらに日本外交というのが幅広くなっていくに従ってますますそうした面での調整的な必要があるということは理解できるわけですし、私も官房長官をしておりまして、やはり総理大臣の強力な指導力でもって調整しなきゃならぬ場合も随分あるときに、そのときのスタッフが対外的に大変不足している。そういう面は私も感ずるわけなんで、総理大臣を補佐するという立場の、そういう面での機能強化ということはいいんですけれども、しかし何か一つの組織化されてこれがひとり歩きをして、そしてそうした必要な事態、必要なときにこれが作用するというのならいいんですが、いろいろの外交問題なんかで介入するとかそういうことになりますと、せっかく外交の一元化ということでいっているわけですし、またいかなきゃならぬわけですから、この外交一元化というものが崩れてしまったらこれは大変だと、これはもう行政の基本ですから。  そこで私は、総理大臣と外務大臣がしっかり話し合っていけばこれはもう十分外交の一体化、一元化というのは保たれるわけですから、ほかには何も必要ないと思っていますので、それを補佐するというんならわかるわけですけれど、その機能がやっぱり一人歩きして、いろいろとそれから声が出るとか、外交面でいろいろと問題が出てくるとかいうことになると、これは外交の一体化、一元化というものが損われる可能性がある。それは外国にもそういう例がありますから。  ですから、そういう外交の一元化という立場から十分これは判断しなきゃならぬと思うんで、答申を見まして、答申を尊重するという政府の立場になるとしても、やはり行政の、外交の一体化ということになると、これはもう断固として譲るわけにいきませんから、その辺のところは十分私も踏まえて検討してみたいと、こう思います。まあこれからの問題だと思いますがね。
  115. 和田教美

    ○和田教美君 外務大臣は去る七日からポーランド、東ドイツその他四カ国を訪問されて帰ってこられたんですけれども、特に今度の注目されておりました東欧二カ国の訪問については、一般のマスコミの評価は、日本外交の幅を広げ、また対ソ関係改善の一つの布石として位置づけられるというふうな評価が多いようでございますけれども、今度の東欧二カ国訪問を通じて外務大臣自身はどういう成果があったというふうにお考えなのか。また、東西関係の展望を東欧二カ国首脳との会談を通じてどういうふうに持たれたか。さらにまた、今申しました対ソ関係の改善ですね、そういう問題について何か新しいアイデアでも出たのか。その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  116. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 今度、東欧ではポーランド、東独を訪問したわけですが、ポーランドにつきましては日本の外務大臣としてはたしか十八年ぶりであったと思います。東独は初めてであります。  この両国と日本との関係は決して悪くない状態でありますし、東独もまたポーランドも日本に対する非常に期待感が強い。特に政治対話を、今まで欠けておった政治対話を持ちたいという空気が非常に強かったわけで、あえて伺ったわけでございますが、ポーランドにおきましてはヤルゼルスキ首相、オルショフスキ外相、さらに東独におきましてはホーネッカー議長、フィッシャー外相等両国首脳とも会談をいたしました。  まあもちろん体制が違うわけですから、立場の違いから意見の異なった点もありましたが、しかし平和と軍縮の必要性ということについては全く意見が一致、認識が一致したわけで、特に今の東西関係を融和さしていく、あるいは米ソの交渉をぜひ成功させなきゃならぬという点については完全に意見が一致したわけでございますし、また日本の世界の平和への貢献といいますか、日本の努力というものについても両国ともそれなりの認識、理解があったように私は思っております。  二国間の関係の促進につきましても非常に有意義な意見交換がありました。二国間の経済関係、貿易関係を進めていこうということだけじゃなくて、二国間のやはり政治対話が必要だ、体制は違っても政治対話というのが非常に必要だ、特に世界の平和、軍縮というようなことを考えるときにそういう政治対話が必要だということについては意見が一致しまして、この点についてはいろいろと枠組みを設けてこれからやろうということになったわけでございます。  また、スウェーデンにおきましても、パルメ首相及びボドストレム外相と会談をいたしましたが、特にパルメ首相の場合は非常に軍縮問題に熱心でありまして、日本が提示しておりますいわゆる段階的な核実験禁止の提案についてはパルメ首相あるいはボドストレム外相とも非常に関心を持っておりまして、両国とも技術的な面でもいろいろと交流をしたり、情報交換をして、こうした日本段階的な核実験禁止の提案を進めるようにしていきたい、こういうふうなことでこれは大変成果があったんじゃないか、こういうふうに思っております。  また、パルメ首相はイラン・イラク戦争にも大変今まで関与してきました。もう自分はちょっとあきらめぎみだというようなことを言っておりましたけれども、しかし日本の努力は十分知っておりまして、やはりここであきらめてはならない、お互いに努力しながら進めていかなければならない、そういうことで、イラン・イラク戦争についても両国の意見交換、あるいはお互いに平和解決に向かって努力をしようじゃないかということで合意を見たわけでございます。  そんなことで、今回の旅行は、これまで日本の外務大臣として行けなかった地域、それも日本にとっても大事な、またこれから日本が世界的にいろいろと役割を果たしていく上においても大事なコネクションというものをつけることができたんではないか、その意味においてはいわゆる日本の外交の幅を広げたと思っておりますし、またこうした東欧圏と積極的に接触するということはこれから日ソ関係というものを改善していく上においても何らかの一つのメリットが出てくるんじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  117. 和田教美

    ○和田教美君 ストックホルムで開かれましたガット十八カ国協議グループの閣僚会議、これは二十二カ国の代表が出たそうですけれども、これではいわゆる新ラウンド、多角的貿易交渉の問題について最初は準備会議を開くことについて消極的だった途上国が大分妥協をして、大体ことしの九月ごろまでに新ラウンドの準備会議を開くということについて合意の方向だというふうな報道がございますけれども、もうはっきりそれは九月ごろまでには開かれるという見通しが立ったのか、まだ多少つまり問題が残っているのか、その辺はいかがですか。
  118. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) ストックホルムの閣僚会議はこの夏前に主要先進国及び主要途上国双方が閣僚レベルで一堂に会するという最後の機会でありまして、そういう意味では非常に重要な会議であったと思います。そこで私が出かけていったわけですが、特にニューラウンドについては非常に批判的な、そうしてまた途上国を代表するとも言うべきインド、それからブラジルの閣僚が出席をしておりまして、したがって強硬派である両国の閣僚と直接会いまして、ニューラウンドの必要性というものを説いたわけで、これは先進国じゃなくてやっぱり途上国の発展のためにも必要だということを力説をしてそれなりに理解を得ることができたと思っております。  会議では、なかなか初めはちょっと準備会議を開くことすら難しいんじゃないかという空気もありましたけれども、しかし私も努力しましたし、全体の空気がだんだんと、やはり七月から九月までの間には高級事務レベルの準備会合を開いて、そこで十分議論をして、そしてそこで必要だということならニューラウンドを来年から交渉を始めたらいいじゃないか、大体最終的にはそういうところにほぼ一つの流れができたように思うわけで、ですから、その前に実はガットの正式な会議があるときはなかなか困難な空気があったわけですが、今回は閣僚レベルだけの会合でして、そういう点ではやっぱり政治家としての判断というものがそこで加わって、その結果、秋までにいわゆる準備会合を開くという一つの流れは出たように思います。しかし問題はなかなか各国とも抱えておりまして、例えばインドなんかはサービスをガットに入れるということには反対だということでありましたし、ブラジルもそういう点で非常に懸念を持っておったわけですが、しかし、これからの貿易は、財貨とサービスというもの、サービスを無視した貿易というのはなかなかこれから考えられませんし、これはこれで十分論議をしてそして納得すればニューラウンドで始めたらいいじゃないかというふうなことで、まあまあ一つの空気が出たように思います。  そこで、七月にガットの正式な十八カ国の事務レベルの大使会合があります。そこで何とか九月の見通しがはっきりついてくるんじゃないか、そういうふうに思っております。今回はいわば閣僚レベルの非公式会合でしたけれども、今回は一つの山場で流れが出てきたと、こういうふうに思っておりますし、そういう中でやはり日本の存在といいますか、日本の役割というものは非常に大きかったと、まあ自画自賛するわけじゃありませんけれども、そうした一つの流れをつくる意味においてそれなりの大きな成果を上げることができたんじゃないか、こういうふうに思っております。
  119. 和田教美

    ○和田教美君 この四日の衆議院の内閣委員会で中曽根総理がSDIへの研究参加問題につきまして、仮定の話だということを断りながらも、国会の審議を正式に求めるものとは性格が違うと考えているというふうな答弁をされております。これは仮にSDI研究に日本が正式に参加するという場合でも新たに国会の承認を求める考えがないということを明らかにしたものだと私は思うわけです。これはSDIの研究に参加する場合に新たに条約や協定を締結するけれども国会承認案件とする必要はないということなのか。また、協定は締結しなくても現行の協定その他で行政の範囲内で処理するという考え方なのか。いずれの場合にも、国会の承認を必要としないという条約上、協定上の根拠は何なのか。恐らく外務省の入れ知恵でそういう答弁をしただろうと思いますから、北米局長の御答弁をお願いしたいと思います。
  120. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私どもとしましては、質問された方の御質問趣旨から判断いたしますと、総理の御答弁は、一般的にSDI参加問題についてのいわば政府のそういう政策判断についてあらかじめ国会の御承認を得るというような問題は今のところないんではないか。そういう意味において、行政府の責任においてそういう政策的な判断はすべきものであるというふうに一般的なことを総理は言われたのだろうと私ども理解しております。  もちろん委員今御指摘のような条約とか協定とかいう問題に仮に万一発展いたします場合には、その条約なり協定の内容に照らしまして当然国会の御承認を得なければならないような事項が法律問題、財政事項というようなものがそこに入ってきますればそれは当然国会の御承認を得なければならない、こういうことだろうと思いますが、現段階では全くそういう問題については白紙でございますので、そういうところまで総理があらかじめ判断をしておっしゃったということでは当然これはなかろうというふうに理解をいたしております。
  121. 和田教美

    ○和田教美君 SDIについてはアメリカの国務省が今月の初めに発表いたしました文書の中でも、現在は非核技術研究を重点的に行っているけれども、しかし核エネルギーを利用するSDI兵器の可能性も探求し続けているというふうに核爆発エネルギーを利用するというSDIそのものを否定していないわけです。今国会でもこの種のエックス線レーザービーム兵器の研究についていろいろ論議がありまして、我々はこれは第三世代の核兵器だというふうな見解をとっておりますが、外務省もこの種の兵器についてはこれが核兵器に当たるのか当たらないのか、従来の基準ではちょっと判断が難しいというような答弁もされたように記憶しておるわけです。  もし我々の言うように核兵器であるということになると、非核三原則のつくらずを厳密に解釈してこれに抵触するとさえも私は考えるわけなんですが、そういう重大な内容、非核三原則のなし崩しの変更というふうなものにつながるような重大な内容を含む日米間の新たな取り決めを全く国会の審議にかけないというのは、これは明らかに国会の条約審議権を無視したものだと、外交権の不当拡大だというふうに私は思うんですけれども、今の答弁を聞いておりますと、とにかく事態はまだわからないからそこまで踏み込んだ考え方をとっていないんだということでございますか、重ねて。
  122. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 条約審議権との関係で御質問がございますので一言。御説明しておきたいと思いますが、先ほど北米局長がお答えいたしましたように、これはSDIの研究に日本がどういう態度をとるかということについての政府としての政策的判断、そういう問題について、これは最終的には行政府がその責任において行うべきものであろう、こういうことを局長が答弁されたものであるというふうに私ども理解しておりまして、今、和田委員の御質問の中でそういうものがアメリカとの間の取り決めのようなものになった場合に云々という御発言がございましたけれども、これがどういう形でアメリカとの間でどういう具体的な形をとっていくのかということについては、そういう形式的な面につきましては私どもまだ何も判断をしていないわけでございます。  ですから、仮に何らかの形での取り決めが国際約束という形で行われるというようなことになりますれば、それはそれ自体として条約についての国会の承認という問題とどういう関係になるのかということを相互取り決めの内容に即して判断をするということになろうと思いますが、さっきも申し上げましたように、基本的には、今申し上げておりますことは、そういう取り決めになるとかならないとかという以前の問題として、政府がこの問題についてアメリカとの関係においてどういうふうに対処していくかということについての政府の政策的判断に関しては、これは国会におけるこれまでの御審議の間で表明されたいろいろな議論というものを十分参考にいたしますけれども、最終的には政府の責任において決めるべき問題ではなかろうか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  123. 和田教美

    ○和田教美君 次に、アメリカの上院本会議が六月十一日でございましたか、抜き打ち的に日本に大幅な防衛力の増強を要求する対日決議を圧倒的多数の賛成で可決したわけです。  この内容についてはいずれ防衛庁にただす必要があると私は思っているんですけれども内容は、相当対日衝撃効果をねらったというだけあって、具体的に防衛計画の大綱の見直しだとか、シーレーン防衛の八〇年代達成だとか、中期業務見積もり作成に当たって毎年二〇%ずつ予算をふやせとかという、我々の見方からすればかなり露骨な内政干渉的な感じがするわけなんですが、そういうことはともかくとして、この背景には私はやっぱり貿易摩擦、市場開放問題についてのアメリカの議会のいらいらというものが背景にあって、そこからいわゆる防衛費の対日肩がわりというふうな問題が出てきているという感じを持つわけでございます。  そこで、結局こういうアメリカの議会の空気などから、やはり貿易摩擦の問題についての風当たりを多少でも和らげるために防衛費について相当アメリカの空気というものを酌んでいかなきゃいかぬというふうに判断をするのか、いや、そうじゃなくて防衛費と貿易の問題はあくまで峻別してやっていくという考え方をとるのか、その辺の基本的な考え方について外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  124. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) このアメリカの上院本会議の決議ですが、これは六月十一日、上院の国務省予算権限法案審議に際して、議会として我が国が一層の防衛努力を払うべきであるとの認識を有している旨の条項を同法案に追加することを決議、議決したわけです。  米国の議会は、従来より種々の形で我が国の防衛努力について関心ないしは期待を明らかにしているところでありまして、今次修正案も加藤防衛庁長官訪米の機をとらえて改めてその期待を表明したものと、こういうふうに考えております。また、安保条約我が国を防衛する立場にある米国としてかかる期待を擁することは自然なことと考えておりますが、いずれにしても政府としては防衛の問題はあくまでも日本自体が決めるべきことですから、自主的な立場で防衛努力を行っていかなきゃならぬと思っております。  貿易摩擦との関連ですが、これは今回加藤防衛庁長官がワインバーガー長官と会ったときも、あるいはその他米国の要人と会ったときも、防衛問題は防衛問題だと、あるいは貿易摩擦の問題は貿易摩擦だと、こういうふうにはっきり区別して物を言っておるわけで、アメリカ側もそういう立場で受け取っておりますけれども、しかしこれは受け取ってはおりますけれども、アメリカにとりましては防衛も経済も日本という面で同じことですから、それは気持ちの中ではそういう空気、やはり防衛と経済摩擦というものを絡めて考えるという空気もそれは全然否定はできないと私は思います。そういうことを考えている議員もそれは多数あるんじゃないか、こういうふうに思います。ただ、アメリカの政府は、これはこれ、防衛は防衛、経済摩擦は経済摩擦、そういうふうなとらえ方をしております。
  125. 和田教美

    ○和田教美君 ぜひ政府もその点をはっきり区別してやってもらいたいということを要望しておきます。  さて、時間もなくなってきましたから女子差別撤廃条約の問題について二、三お尋ねしたいと思います。  実は、私はこの前の委員会で条約そのものについてはかなり詳しく質問をいたしましたので、きょうは男女雇用機会均等法について二、三、それを中心にお尋ねしたいと思うのですけれども、まず参議院の社労委員会で自民党修正によって見直し規定が追加されましたけれども、いつ見直すかということがはっきりいたしておりません。我々大体常識的には三年後ぐらいかなという感じがするんですけれども、それは一体どういうふうなお考えなのか。それからまた、一部の新聞報道ですけれども、政府側も現時点で既に将来改正の必要が生じることを予測しているものが何点かある。それで具体的には、事業主が同意しない限り機会均等調停委員会の調停が回避できないというふうな規定だとか、女子保護規定の緩和規定、こういうものを挙げているというふうな記事がございましたけれども労働省に既にそういうお考えがあるのかどうか、その辺もお尋ねしたいと思います。
  126. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) お答え申し上げます。  見直し規定が参議院の社会労働委員会で入りましたことは御指摘のとおりでございますが、これは、実はそれに先立ちましての審議会の答申の段階でも、必要に応じた見直しをするようにという御答申をいただいていたところでございます。その趣旨は同様のことであろうかというふうに思いますが、いずれにいたしましても、必要に応じあるいは必要な場合にはということは、この法律の策定過程におきまして、これはあるべき方向は見通しつつもやはり現状から余りにかけ離れたものであっては機能しないであろうということから、現状に足をつけたものにするべきだという判断でいたしたわけでございますので、現状が非常に大きく変わって、もっとあるべき姿に近づけた方がいいという状態が起こればそれは見直しをすべきだというふうに考えますので、いつがその時点かということは今ここで予測することは困難ではないか。先生の御指摘のような、三年あるいは五年というようなことはあるかもしれませんが、そういうときが来ましても、現状が今と余り変わっていないということであれば、そのような法の改正を含めた見直しということはまだ適当ではないかもしれないと思うわけでございます。  また、新聞報道で先生今御指摘のあったような、具体的に労働省がどの点について、将来比較的早い時点だと思いますが、見直すべきだというふうなことを考えているということにつきましては、私どもとしては、今は少なくともこのままの形で出発してその効果を上げていくべきだというふうに考えているわけでございまして、具体的にどこを早急に見直すべきだというような内容考えているというような事実はございません。
  127. 和田教美

    ○和田教美君 今の御答弁の、あるべき姿に見直していくという問題に関連をしてですけれども、時間外、休日労働、深夜業などの女子保護規定が今度一部緩和されているわけなんですが、これは時間短縮という国際的な潮流に逆行するものではないかというふうに私は思うわけで、日本労働者の平均年間総実労働時間は労働省の資料によると二千百時間ぐらい、西ドイツが千六百時間ぐらい、フランスが千七百時間ぐらい、イギリスが千八百時間ぐらい、アメリカは千八百五十時間というふうになっておりますね。だから、日本人は働き過ぎだというふうな国際的ないろいろ批判も受けるわけで、これが貿易摩擦の一因にもなっているというふうな状況なんで、この労働時間に関する女子の保護規定を緩和して、それが結果的に長時間労働を温存するというようなことになっては非常にまずいと思うので、むしろ考え方の基本としては、男子の労働時間がまだ長過ぎるんだからそれを漸次短くしていく、そして女子並みに条件を引き上げていくというかな、そういうふうな考え方を基本的にとるべきではないかと思うんですが、その辺は労働省のお考えはどういうことでございますか。
  128. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 日本の労働時間、男女含めて平均いたしますと欧米諸国に比べて長いということは、統計などが示していることでございますので、私どもも深刻に受けとめているわけでございます。これは労働時間の短縮という方向でぜひ努力をいたしたいというふうに思っておりまして、先生も御承知のように、現在労働省挙げて労働時間短縮という方向で取り組んでいる次第でございます。  そこで、女子の労働時間の緩和という点につきましては、条約の目指すところが男女同じ基準ということでございますので、その方向に向けるという必要があるわけでございますが、ただいま申し上げたような、労働時間が全般的に見て長いというようなこともございまして、その女子の労働時間の規制の緩和は、現在の時点で非常に必要と思われる点にとどめ、全く男女同じにするというふうにはいたさなかったわけでございます。
  129. 和田教美

    ○和田教美君 女性が圧倒的な数を占めておりますパート労働者、これの賃金は正社員に比べてかなり低いわけです。また、ほとんどが女性であると思われます家内労働者、内職ですね、これの工賃もさらに低いと思います。  そこで、女性のパートの賃金、内職の工賃の低さの改善のためにこの男女雇用機会均等法は果たして機能すると見てよいのか、もし機能するとすれば根拠条文をひとつ挙げていただきたいと思います。
  130. 赤松良子

    政府委員赤松良子君) 御指摘のように、パートタイムの賃金はそれ以外の一般労働者の賃金に比べて大体四分の三程度というふうに把握をいたしております。しかしこれは、パートタイム労働者の職務内容、技能程度、責任の度合い、勤続年数、年齢の差など、もろもろのファクターが影響しているわけでございまして、それについて機会均等法で直接の手当てをするというようなことはいたしておりません。賃金については、ただいま、労働基準法の四条で、女子であることを理由に賃金上の差別をするということについては禁止規定がございますが、それ以外、先ほど申し上げましたようないろんな要素が勘案されて需給関係の中で労使が決定するという点につきまして機会均等法が何らかの条文を設けたというようなことはございませんので、直接関係はないと思うわけでございます。  また、家内労働者についても、これは最低工賃が決められている以外はやはり自主的に決定されるものでございますので、これまた機会均等法とは直接は関係がないというふうには思っているわけでございますが、全般的な労働条件の向上ということは、これは均等法が目指している女子に対する雇用管理の改善というものを通じて全体的には向上をするという点で、直接の規定から出てくるものではございませんが、しかし、機会均等法がつくられることによって女子労働者の労働条件が全体として向上するということは大いに目指したいというふうに考えている次第でございます。
  131. 和田教美

    ○和田教美君 現在、我が国は、国際婦人の十年の基金への拠出、先ほども御答弁がございましたけれども、その基金への拠出だとかあるいは国際協力事業団による婦人関係行政等の研修員の受け入れなどの婦人関係での国際協力を実施してきたわけですけれども、今後、この分野での国際協力を、婦人の十年が終わったから終わるというふうなことではいけないと思うので、息長く拡充していくべきだと思うんですけれども、その点が一つ。  それから、条約第十四条に農村の婦人に対する差別撤廃規定されておりますけれども、この背景には、開発途上国の農村の女子の負っている経済的社会的な面での過大な負担というものがあるというふうに聞いております。今後我が国が援助政策を展開していくに際して、農村に限らず開発途上国の女子の経済的社会的な地位の向上ということに配慮した援助なり技術協力というふうなものを展開していく必要がないかどうか。余りにこれを露骨にやると内政干渉ということになりますけれども、これはこれからの非常に大きな課題だと思うんですけれども、外務省の見解はいかがでございますか。
  132. 山田中正

    政府委員(山田中正君) まず第一点の国連婦人の十年基金への拠出等の今後の問題でございますが、これは先生今御指摘ございましたように、まさに我が国といたしましては第一回の婦人の十年終了後もこういうものを続けていく必要がある。特に国連婦人の十年基金の存続の必要を主張いたしております。したがいまして、先生指摘のように、今後ともこのような面での国際協力は継続していくべきものと考えております。  それから、第二点の条約十四条との関連、これも先生まさに御指摘のように、開発途上国の立場を念頭に置いてつくられた規定でございますが、開発途上国の経済社会開発において婦人の果たす役割の重要性、これを十分認識いたしまして、我が国の今後の技術協力等におきましても婦人関係の行政セミナー等、女性対象とする研修コースを設けておりますが、こういうものを中心としたものを引き続き積極的に推進していくべきものと考えております。
  133. 和田教美

    ○和田教美君 最後に一つ外務大臣にお尋ねしたいんですけれども、例の七月に決めるという市場開放のためのアクションプログラムの問題でございますけれども、外務大臣は去る四日でしたか、閣議の席上で、事務当局から聞いてみると各省の作業はさっぱり進んでいない、やきもきしているということを発言されたということが新聞に出ておりました。やきもきしているのは外務大臣だけじゃなくて総理大臣も同じでございまして、行動計画づくりが難航しているということについて、官僚が自民党に働きかけて党から圧力をかけるような習慣は断固廃さなきゃいかぬというふうなことでハッパをかけたり、関税引き下げは相互主義では意味がない、日本が率先してやらなければならない、情勢に応じては輸出の自主規制を段階的に追って考える必要があるなどという指示も出しておられるようでございますけれども、まあ四日から大分時間もたっているんですが、その後アクションプログラムづくりについて各省の態度は大分変わってきたのか。外務大臣としてもやきもきしていないのかどうか。それから、総理の特に言う、情勢によっては輸出の自主規制を段階的に行うということについては、これは相当業界なんかの抵抗も強いようでございますけれども、その辺はどういうふうに考えるか。あわせてお聞きしたいと思います。
  134. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) きょうも実は中曽根総理とこの点について話し合いましたが、総理も相当やきもきしている。私もやきもきしております。というのは、まだアクションプログラムの方がなかなか難航しているといいますか、スムーズに進んでいない。これは相当思い切ったことをやらなきやなりませんが、それなりに障壁とかそういう立場があって各省の調整もついていない。また党の存在もありますし、無理のない点もありますけれども、しかし、日本はこのアクションプログラムで相当関税の引き下げあるいは基準・認証制度の改善等、相当のことをやらないと国際的にも、これはちゃんとやります、だからニューラウンドもひとつやりましょうということを言っておりますし、アメリカも、議会に対してアメリカの政府は、日本は今度は相当の決意のもとに市場を開くということを言っているからしばらく事態を待ってほしいと、こういうことで議会にも働きかけておるわけですから、これは日本のそうしたアクションプログラムがどういう形で策定されるかということは世界じゅうが見ておりますから、これで世界の評価が得られないということになりますと、日本はこれだけの黒字を抱えておりますし、また日本は言うだけで、何もしなかったということで、今度はやはりなかなか普通じゃ済まないような感じがしますですね。アメリカでも新しい保護主義がまた台頭してぐっと出てくるでしょうし、各国も批判してくる。そしてまたそれがいろいろの日本に対する規制の動きになってくると思いますから、これは私は今度のアクションプログラムは非常に重大だと思っております。  そういう点で、まだ進んでおりませんけれども、多少まだ時間がありますから、全力を尽くして何とか世界の理解を得られるような日本のアクションプログラムをつくりたい、こういうふうに思っております。
  135. 和田教美

    ○和田教美君 輸出自主規制の問題はどうですか。
  136. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 自主規制の方は、私から言っているわけじゃありませんが、これは鉄鋼とか自動車なんかはある意味においてはやっているわけですから、そう事新しいことを言っているわけじゃないと思いますが、要するに貿易、輸出入についての一つの秩序といいますかね、そういうものが必要だということであろうと思います。今ここですぐ輸出規制を新しくやらなきゃならぬということじゃなくて、これはアクションプログラム次第だと思いますね。
  137. 関嘉彦

    関嘉彦君 本日の議案になっております女子に対する差別撤廃に関する条約、これが本日の議案でございますが、今まで女子に対して差別を加えてきたのは男性でございまして、私もほかならぬ男性の一員でございますので、この議案に関する限りは謹慎の意を表する意味で被告席に座ったつもりで黙って聞いていようと思ったんですけれども、余り黙っていると、おまえ内心この条約に反対じゃないかと思われるのも私の真意ではございませんので、私の立場を明らかにしながら若干質問したいと思います。  私の思想に非常に大きな影響を与えたイギリスのジョン・スチュアート・ミルが「婦人の隷属」という本の中で、人類の半数を占める女性が男性と同じようにその可能性を、潜在的な能力を十分に発揮する機会を与えられれば、人類の福祉にいかばかり寄与することができるかはかり知れないものがあるということを述べております。それから百二、三十年たちましてこの条約が成立、発効しているわけでございますけれども、その間、各国において多くの先駆者が婦人の解放のために努力してこられた。その努力に対して敬意を表したいと思います。  その意味で、私は基本的にこの条約の批准には賛成でございます。国内法の点なんかで不十分な点がまだ残っておるようでございますけれども、やはりこの国会において承認いたしまして、一日も早く条約が批准されることを願っている一人でございます。  しかし、この種の問題というのはともすると建前の議論が横行いたしまして、何か一種の空気ができ上がってくる。山本七平さんの言葉によるといわゆる空気の支配というんですけれども、少数意見がなかなか述べにくいような雰囲気がいつの間にかでき上がってしまう。そういう空気に影響されて、ともすると法律あるいは条約の条文が拡大解釈されてくる。そういう危険も間々あるわけでございます。過ぎたるは及ばざるがごとしという言葉もあるんですけれども、私は、余りに過激に行き過ぎると結果においてはかえって男女の真の平等に害があるというふうに考えておりますので、私の本音を、意見を述べながら質問したいと思います。あるいは御婦人の方には気にさわるようなことを言うかもしれませんけれども、あらかじめ御了承願いたい。  まず第一に、本条約に署名はしているけれどもまだ批准していない国として、アメリカ、イギリスが残っているようでございます。アメリカは何か連邦法と州法の関係なんかいろいろごたごたしたことがあるので、それを整理するのに時間がかかっているというふうな答弁がどこかであったように思っておりますけれども、イギリスは一体どういう事情でおくれているのか、この条約を批准することによって女子の力が強くなって、ただでさえタカ派のサッチャーさんがますますタカ派になってもらっては困るというので、それで批准をおくらしているのでもないと思うんですけれども、一体どういう事情があって批准をしていないのか、そのことが第一点。  それから、批准している国の中にはバングラデシュであるとかインドネシアであるとかイスラムの宗教を信じている国が若干あるわけでございます。イスラム法に詳しいわけじゃございませんけれども、イスラム法の中にはかなり男女差別をしているような法文があるように理解しているんですけれども、そういう国は何ら留保なしにこの条約を批准しているのかどうか、まずそのことを最初にお伺いしたいと思います。
  138. 山田中正

    政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。  第一点の本条約に署名したがいまだ批准していない国、これは六月三日現在で三十六カ国ございます。その中に先生指摘ございました米国があるわけでございますが、米国の批准に至っておらない理由については先生が御指摘になったとおりでございます。イギリスにつきましては、私ども承知いたしております限りでは、英国政府は本条約につきまして近い将来に批准したいと、こういう方向検討をしておるというふうに聞いております。残っております問題といたしましては、国内法等の調整が必要なためまだその検討を重ねておるということ、特に具体的な問題といたしましては、まずイギリスの場合には海外領土への適用の問題がございます。例えば香港などの法律とこの条約の整合性、これに問題があるということでございます。さらにイギリスの国内におきましてもイングランドとスコットランドの法律の差異が問題になっておるというふうに承知いたしておりますが、いずれにいたしましても英国政府としては本条約に入りたい、こういうことで検討を進めておる由にございます。  第二点のイスラム諸国の関連でございますが、先生指摘のように回教国の場合にはコーラン及びモハメッドの言行録に基づきますシャリーア法、イスラム宗教法でございますが、それとこの条約規定との抵触の問題がございます。先生指摘ございましたバングラデシュにつきましては、この条約の総則の第二条、締約国の措置を定めておるところでございますが、その第二条、それから第十三条の(a)、これは家族給付でございますが、その項目、及び第十六条の一項の(c)、これは婚姻中及び離婚の際の男女の権利と責任の問題でございます。それから(f)項、これは子供の後見及び扶養の関係でございますが、これに留保をいたしております。インドネシアもこの条約に留保いたしておりますが、インドネシアが留保いたしておりますのは第二十九条の紛争解決の条項でございまして、シャリーア法に基づく留保ではございません。なお、回教国といたしましてはエジプトがやはりこのシャリーア法の関連からと存じますが、子の国籍についての九条二項でございますが、父系主義のところ、それから二点といたしまして、夫婦間の公正なバランスを確保するため、女子に対しその配偶者の権利と同等の権利を付与している、シャリーア法の規定の適用が妨げられないようにという理由を付して第十六条に留保いたしておりまして、これはシャリーア法の観念からいきますと、一般的に申しますと女性は家に、男は社会にという観点からの留保でございます。
  139. 関嘉彦

    関嘉彦君 この条約の第二十八条第二項に「この条約趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。」とあるんですけれども、今言われましたシャリーア法の夫婦の関係なんかについての留保というのはこの条約趣旨及び目的と両立しないような気がいたしますけれども、一体こういう両立するか両立しないかというふうな判断は、裁定はだれがするのか、これは単なる精神規定にすぎないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  140. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) この第二十八条二項の規定によりまして認められない留保というものがどういうものであるか、逆にどういう留保なら認められるかという判定は、これはそれぞれの締約国がこれから行おうとしている留保、それと条約趣旨及び目的との関係から具体的に判断をするということになるわけでございまして、御質問に直接の答えといたしましては、判断するのはそれぞれの締約国であるということになります。
  141. 関嘉彦

    関嘉彦君 そうすると、それぞれの締約国が判断するとしますとかなり解釈の違いが出てくるわけですけれども、この条約全体が一種の精神規定と見なすべきものと解釈してよろしゅうございますか。
  142. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) そういうことではございませんで、この条約は一種の政策方針のみを、指針を与えている条約ではございませんで、締約国に具体的な義務を課している次第でございます。それであるからこそ、我が国もこの条約の批准に際しまして、批准に先立ちまして国内法の整備を行った次第でございます。したがいまして、この条約の条文というのは具体的な義務を締約国に課しているわけでございますけれども、この留保を行うに際しまして、この二十八条に書いてありますとおり、条約趣旨及び目的と両立しない留保、これが認められないということでございますので、その一部の規定につきましてそれが具体的な義務を課している規定でありましても、その条項を適用しないということがこの条約全体の趣旨及び目的に両立をしないということにはならないという判断を締約国が下せば、この二十八条には反しないという形での留保ができるという形になっております。
  143. 関嘉彦

    関嘉彦君 私は、各締約国が判断するというのであるならば、場合によっては非常な婦人差別をしているような国でも自分の判断でこれは矛盾しないのだと判断してこの条約に加盟することができるような気がするんですけれども、その点はまあ一番大事な問題は日本の問題ですし、これは外国のことですからこれ以上は追求いたしません。  その次は前文、条約の前書きですね。四ページ半ばぐらいのところに「国の完全な発展、世界の福祉及び理想とする平和は、あらゆる分野において女子が男子と平等の条件で最大限に参加することを必要としている」ということが書いてあります。この「理想とする平和」というのは、ザ・コーズ・オブ・ピースの翻訳だと思いますけれども、これは平和の大義とでも訳した方がよく意味が通ると思いますが、訳文のことですから余り細かくは追及いたしませんけれども男女が平等の条件であらゆる分野に参加することが平和の確保の上において必要であるということが書かれているわけですけれども、この趣旨は二つの意味に解釈することができると思うんであります。  一つは、これはギリシアの劇作家アリストファネスの「女の議会」、「女の平和」というコメディーがあるんですけれども、それを思い出したんですけれども、そのどちらかの方に、男性というのは好戦的であるけれども、女は平和的であって、男性に任していると戦争ばかりやるから女がストライキかなんかやって平和をもたらしたというコメディーがあるんですけれども、その趣旨は、つまり男子は好戦的だから、それで女子に任せなさいということだろうと思うんですが、そういう意味で書かれているのか。あるいは男女の不平等を承認しているような国というのは人権に十分注意してない、したがってそういう国というのはややもすると人種差別にもなりかねないし、人種差別は戦争のもとになるから、そういう意味で男女の平等な参加が必要であるというふうにも解釈される。この条約の成立の過程においていろんな討議がなされたんだろうと思うんですけれども、外務省としてはどういうふうにここの条文を解釈しておられますか、それをお伺いします。
  144. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま関委員、この前文のパラグラフ十二につきまして二つの考え方があり得るとおっしゃいましたけれども、これは当然後者の考え方でございまして、この条約が男子が本来好戦的であって女子が本来平和的であるというふうな考えに基づいてできているわけではございません。御指摘がありましたように、男女の平等の水準が低いような国は人権感覚も薄く、いろいろ問題が起こりやすい、この意味でこの条約の中にこの平和云々という言葉が入ったというふうに考えております。  それから、恐縮でございますが、翻訳の問題がございましたのでこの機会に御説明をさせていただきたいと思いますが、ザ・コーズ・オブ・ピースというのは平和の大義とでも訳すべきじゃないかという御指摘がございました。我々もこの翻訳をどうすべきかというのは慎重に考えたのでございます。ここで言っておりますザ・コーズ・オブ・ピースというのは、達成されるべき目標としての平和というふうな概念だというふうに考えておりますので、ここで大義という言葉を使いますと、大義というのは例えば人倫の筋道とかそういう感じがどうしてもいたしますので、ここでは自然に訳せば平和の大義ということになるかと存じますけれども、この文脈におきましてはむしろその普通の訳では不適当で、理想とする平和というふうな訳の方がこの趣旨をよりわかりやすくあらわすのではないかと思ってこの翻訳を採用した次第でございます。
  145. 関嘉彦

    関嘉彦君 翻訳の問題になってきますと、例えばそれでは世界の福祉というのも、これも理想であって、理想とする世界の福祉というふうに言うべきではないかと私は思いますけれども、まあ翻訳の問題ですから細かなことはこれ以上は申しません。平和の大義の方が意味が通ずるように思っておりますが、先ほどの外務省のその解釈に私も賛成です。というのは、これは終わりの方にもまた関連するところが出てきますのでちょっとあらかじめ確認しておいた次第です。  それから第四条、「締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置」云々というふうな言葉があるんです。この第四条の一の中には、事実上の平等、機会の平等、待遇の平等というふうな平等に関する言葉が出てくるんですけれども、この事実上の平等とは何を意味するのかということをまずお伺いしたいと思います。というのは、普通事実上の平等というのは、ディファクトイクォリティーというのは、ディジューレーイクォリティーといいますか、法律上の平等として対蹠して使われる言葉だと思うんですけれども、これは結果として単に機会の均等、平等だけじゃなしに結果として平等の事実が実現されていなければならないという意味ですか、その点をお伺いしたいと思います。
  146. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ここで使っております事実上の平等という表現は、法律などで男女異なる取り扱いが行われていなくても、実際上女子が男子より不利な立場に立たされることがあり得る、これまでもあったわけでございますし、あり得るということを念頭に置いて法律の上のみならず実際上も男女平等であるべきという趣旨規定されたものでございます。しかしながらこの実際上の平等というのが、ただいま御質問にございました結果としての平等までも意味するのかということになりますと、例えば企業の採用におきまして常に男女同数でなければならないとか、そういう意味での結果としての平等までを意味しているものというふうには我々は考えておりません。
  147. 関嘉彦

    関嘉彦君 そうすると、これはあくまで単に法制上例えば機会の平等が保障されていても、事実においてそれこそその社会の空気の支配とかなんとか、空気の支配の結果、例えば女子の進学の場合ですけれども法律上は男女が同様に大学の入学試験を受けて合格できる、東大なら東大の試験を受けて合格できるのに実際上は受ける人が非常に少ないという場合に、もしそれが経済的な理由に基づくものであれば、経済的な奨学金を出すとか、女子だけ特別な奨学金を出すとか、そういうことによって女子の入学を促進する、そういうのがそこに書いてある特別措置というふうに理解していいわけですね。  もしそうじゃないとすれば、例えば結果の平等を意味するのであるならば、男子の入学者と合格者の比率に応じて女子の方もそれと同じ比率だけの入学者のポストを保留しておけ、そういうふうな勧告をするということが特別措置になるわけですけれども、暫定的な特別措置との関係において今一度その点をはっきりさせていただきたいと思います。
  148. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 御指摘のとおりでございまして、この条約男女の平等ということを目的としておりますので、その女子に対する優遇措置、特別措置というのもこれは本来認められないわけでございます。しかしながらこの第四条の一項において書かれておりますことは、仮に法律男女が平等に扱われたとしても、従来の姿を見れば女子が不利をこうむっているということがしばしばあり得るわけでございますので、そのような場合にはあくまで暫定的な措置といたしまして特別な女子に対する優遇措置をとることによって、法制上のみならず実際上も男女の平等の実現に近づき得るようにという趣旨から、いわばこの条約全体の原則に対する暫定的な例外措置としてこのような特別措置を認めたというのがこの第四条一項の趣旨でございます。
  149. 関嘉彦

    関嘉彦君 わかりました。ともかく結果としての平等じゃないということがはっきりすれば、私は満足いたします。  それから第五条、男女の役割分担と慣習の問題あるいは社会的、文化的行動様式の修正の問題についてお尋ねいたします。  「両性いずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割」ステロタイプドロールというふうになっていますが、「定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」という条文がございます。これは拡大解釈するととんでもないことになるんじゃないかと思うんでお伺いいたしますけれども、この「定型化された役割に基づく偏見及び慣習」というのは、例えば男子は外で働く、女子は家庭で家を守るべきものである、そういったふうな従来の伝統的な観念あるいは合理的な根拠のない観念を意味しているのであって、そういうふうに解釈すべきではないかと思いますけれども、それでよろしいかどうか。つまり、必ずしも偏見ではない男女の役割についての考え方もあり得るんじゃないか。これはあとの問題に関係しますのでお尋ねするんですけれども、まず最初に、この定型化された役割に基づく偏見、慣習あるいは慣行というのが何を意味するのか、外務省の解釈をお聞かせ願いたいと思います。
  150. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま御指摘の文言は、例えば女子は家庭を守って男子は外に出て働くべきであって、したがって女子が外に出て社会参加をすべきではないというような考えのもとにおきまして、その男女の生き方にあらかじめ枠をはめてしまうような考え方、これを意味しているというふうに考えております。
  151. 関嘉彦

    関嘉彦君 そのことは、例えば外に出て働かない主婦、いわゆる専業主婦という言葉があるんですけれども、家庭で家事の仕事ばかりしている専業主婦というのは女性としての価値が低いんだ、そういうふうな風潮を助長することをこの条文というのはむしろ奨励するのか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  152. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) この条文は同じ能力を有する男女間におきまして、女子女子であるという理由でのみ差別するような考え方、これを禁じているわけでございまして、例えば女性にもっと社会に進出すべきであるというような家庭や社会における男女のあり方、それ自体についてまで規定しているものではございません。したがいまして、夫婦間でどのような役割分担を行うかということは、これは全く個々の夫婦間の問題でございまして、夫婦間で話し合った結果、男が外へ出て女が家庭に残るという家庭が多いという事態が続いたといたしましても、全くこの条約上問題はないというふうに考えております。
  153. 関嘉彦

    関嘉彦君 そういうふうにぜひ解釈してもらいたい。つまり、女子が、ある人は専ら結婚もせずに社会的に活動する人もあるでしょうし、ある人は専業主婦にとどまる人もあるでしょうし、ある人は社会的な活動と主婦の仕事を両立させようとして、確かに悪戦苦闘だと思いますけれども、非常に努力をしておられる人もいる。私も二人娘がおりまして、長女の方は専業主婦で、次女の方は二人の母として同時に職業を持って働いているんですけれども、その両者を見まして必ずしもどちらが偉い、どちらが偉くないということは決して言えないわけであって、どういう道をたどるか、どういう道をもたどることができるように機会を平等に与えるということがこの法案の趣旨であって、決して専業主婦にとどまっている人は何か意識がおくれている、あるいは人間としての価値の自覚のない人である、そういうふうな解釈がこの条文の背後にあるのではないということを確認できれば幸いでございます。そのとおりで差し支えございませんですね。
  154. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) そのように考えております。
  155. 関嘉彦

    関嘉彦君 それからそれに関連しまして、「男女社会的及び文化的な行動様式を修正すること。」、これは前の方との関係で出てくる文言なんですけれども社会的偏見を助長するような社会的、文化的な行動様式を修正することは、これは当然でありますけれども、今さっき私が言いましたようなことがこの条文の趣旨であるならば、必ずしも女子が男子と同じような言葉を使うあるいは女子が男子と同じような服装をする、そういうふうな文化的な行動様式の修正を意味するものではない、そのこともあわせて確認しておきたいと思いますけれども、いかがですか。
  156. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 御指摘のとおりというふうに考えております。
  157. 関嘉彦

    関嘉彦君 その同じ条文の「(b)家庭についての教育」云々というところがございます。これは英語で見ますとファミリーエデュケーションになっているんですけれども、これは家庭内の教育というふうにも理解できるし、あるいはこの訳文のように「家庭についての教育」というふうに解釈することもできるわけですが、外務省は後者の方に解釈されたわけですけれども、この条約の成立の過程においていろんな論議があっただろうと思うんですけれども、前のように解釈する人たちはいなかったのかどうかですね、つまり、家庭内の教育と家庭についての教育、これは随分違うと思うんです。そのことを質問したいと思います。
  158. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) そのファミリーエデュケーションという言葉につきましては、この条約審議過程におきまして社会的機能としての母性の理解とか子の養育における男女共同の責任についての認識を深めるための教育の重要性とか、こういうことが強調されました結果、この表現が入った次第でございまして、このような経緯に照らしましてここで言っておりますファミリーエデュケーションという言葉は家庭内の教育ではなくて、家庭についての、家庭のあり方に関する教育というふうに解釈されます。そのような考え方のもとに日本語テキストにおきましては「家庭についての教育」というふうに訳した次第でございます。
  159. 関嘉彦

    関嘉彦君 条約の成立過程においてそういうふうな解釈が多かったんであれば問題ございません。私が心配するのは「締約国は、次の目的のためのすべての適当な措置をとる。」、適当な措置ですから、随分幅の広い措置だと思うんですけれども、家庭内の教育に国家がむやみに足を踏み込むということは、これは私は全体主義の始まりだと思うんです。もちろん、家庭内の教育において著しく人権を侵害するような行動があれば、それはもちろん国家権力はそれに介入しなければいけない。また、この条文に反するような世論があれば、それを啓発する。その啓発活動をするのは国家の任務だと思うんですけれども、家庭の内部に国家が入り込んできて、おまえの子供はこういうふうに教育しろというふうになってくることは、大変危険だ。仮にその方向が正しいにしても、結果としては非常によくない結果が生まれてくる。そのことを心配したので質問したわけであります。これはあくまで家庭についての教育であり、テキストの解釈は日本語の訳文のとおりに解釈するものとして了解いたします。つまり、家庭についての学校教育であるとか社会教育という意味で解釈するわけであります。  それから、それに引き続きまして「子の養育及び発育における男女の共同責任についての認識を含めることを確保すること。」とあるんですけれども、「男女の共同責任についての認識」、共同責任ということは一体どういうことを意味するのか。これもいろんな解釈ができると思うんであります。例えば夫が家庭のことを全然顧みない、そういう御主人がいるとして、それはやはり子供の養育は男性にも責任があるんだ、その責任を自覚させるそういう趣旨であるならば少しも問題ないわけであります。しかしもしこれが、共同責任ということが同じことをすることであるというふうな結論を生む言葉であるならば私は反対であります。例えば夫が子供の養育のために金を稼がなくちゃいけない、そのために金を一生懸命外で稼いでいるので、子供の養育を小さいことまではできないんで、基本方針だけはよく相談して決めるけれども、あとの実施は全部奥さんに任せている。そういうことは少しもこの条文の精神に反するものではないというふうに私は理解しております。つまり、男が家庭内にとどまって、女がやっていると同じような仕事を交代でやれ。例えばお母さんが五時間子供を抱いたらおやじも五時間子供を抱けとか、あるいは一週間は奥さんがおしめの取りかえをするけれども、後の一週間はだんなさんがおしめの取りかえをしろとか、そういう考えではない。つまり同じ仕事をしろ、同じ機能を果たせという意味ではないんだ、そのことを確認しておきたいと思いますけれども、いかがですか。
  160. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま御質問にありました文言につきましては、家庭内におきまして子の教育、発育におきまして女子のみが責任を有するとか、あるいは女子が一義的に責任を有するということではなくて、男女がともに責任を有するものであるということを規定している次第でございまして、具体的に夫と妻とが同一の機能を交代で果たすべきだというようなことを規定しているわけではございません。先ほども御答弁申し上げましたとおり、家庭をどのように運営していくかということは、どのように夫婦間で役割分担を行うかということは、これはあくまで夫婦間の問題でございまして、この条約が云々しているところではございません。
  161. 関嘉彦

    関嘉彦君 それではその次の第十条の問題に入ります。  第十条は、教育に関してでありますけれども差別の教育を撤廃するするために同一の条件、「農村及び都市のあらゆる種類の教育施設における職業指導、修学の機会及び資格証書の取得のための同一の条件。このような平等は、就学前教育、普通教育、技術教育、専門教育及び高等技術教育並びにあらゆる種類の職業訓練において確保されなければならない。」そこは問題ないと思います。  その次の(b)に「同一の教育課程、同一の試験、同一の水準の資格を有する教育職員並びに同一の質の学校施設及び設備を享受する機会」、つまり「同一の質」というところがちょっと疑問があるんですけれども、けさから問題になっておりましたように、例えば学校において家庭科、これを女子だけを必須にして男子は全然やらないというふうなことは撤廃すべきであり、男女いずれとも希望するならば家庭科の授業を受けられるようにすべきである、その考え方は私は賛成であります。しかし、例えば私立の学校で女子だけの学校をつくる、小学校、中学校、高等学校、大学、あるいは男子だけの学校をつくる。そのつくる理由はいろいろあると思いますけれども、例えば私立の女子中学校に女の子をやっている家庭の話を聞きますと、どうも最近男女共学の学校では女の言葉遣いが非常に悪くなっている。女子学生がてめえとかなんとかというふうな言葉を使って話している。てめえなんていう言葉は、これは男子だって使うべき言葉じゃないと思うんですけれども、しかし女子が例えば君とか僕とかという言葉を使う、あるいは男子がああそうですわなんていう言葉をもし使う、そういう例は余り聞いたことございませんけれども、もしそういうふうなことを助長することは決していいことだとは私は思わない。そういう女子言葉、男子言葉というのは、私は日本の文化的な伝統だと思うんですけれども、そういう文化的な伝統を修正する必要も少しもないと思う。したがって、女子のみの学校をつくること、国立の場合は税金の関係がありますのでちょっと問題かと思いますけれども、私立の学校でそういう女子のみの学校をつくる、男子のみの学校をつくるというふうなことは、私は一向あって差し支えない。最近、臨教審でも教育の多様化というふうなことが主張されている。自由化というふうな言葉はこれは誤解を招く言葉ですから、私はそういう教育の自由化という言葉を使うのは反対ですけれども、選択の幅を広げるためにいろんな特色のある私立の学校をつくっていく、そういうことはむしろ大いに奨励すべきことじゃないかというふうに思うんですが、「同一の質の学校」というのはそういった別々の学校をつくることを禁止する、あるいはそれをむしろディスカレージすべきである、そういう趣旨と解釈すべきであるかどうか。そのことをお尋ねいたします。
  162. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) この第十条(b)に書いてございます「同一の質の学校施設及び設備を享受する機会」という規定は、これは例えば女子校は校舎の設備その他が劣っていてもいいとか、あるいは女子校の先生の資格が低いところで定められていいとか、そういう一般論といたしまして、女子に対する教育施設が劣っているというような事態は、これは改めなければいけないという趣旨でございます。  御質問にございました男女共学との関連におきましては、これはこの条約審議過程におきまして男女別学は否定されるべきではないという意見が入れられまして、その結果、この十条の(c)項でございますけれども男女共学を奨励しという規定ぶりになった次第でございます。このことにかんがみれば、男女別学が存在していてもこの条約上問題はないというふうに考えられます。しかしながら、たとえ私立ではありましてももう全く大多数の学校が男だけであって、実際上女子が教育を受けたいという希望を有する場合にその機会が閉ざされているとか、あるいは逆に女子校ばかりで男子校の数が少なくて男子がその均等な機会を共有できないというような事態であれば、これはたとえ私立ではあってもこの条約上問題となり得ると存じますけれども我が国の現状のように大多数が男女共学の学校であって一部の学校が男女別学という姿になっているような状況のもとにおきましては、この男女別学の学校がそれぞれ存在するということはこの条約上問題にされるべきでないというふうに考えております。
  163. 関嘉彦

    関嘉彦君 そのことを質問しましたのは、けさほどの新聞で首相の私的懇談会である婦人問題企画推進会議の答申の中に、家事を女性だけがやるという現状は改革されるべきである、これは私も賛成でございます。育児についても男女両性の共同責任と自覚されなければならないとしている。さらに、しつけの問題について男女で異なるしつけをする伝統的な育て方は変革されるべきであると強調してあるそうであります。この男女で異なるしつけというのが何を意味するのか、随分広い概念だと思うんですけれども、例えば先ほどの言葉の問題にも関係するんですけれども女性には女性の言葉をしつける、男性には男性の言葉をしつける、そういう伝統というのは変革さるべきものとお考えでしょうか。あるいは、私の家庭でいいますと、私は残念ながら男の子はいないんです。男の孫はいますけれども、男の子にはけんかもできないようじゃしようがないじゃないか、殴られたら殴り返してこいと言いますけれども、女には私は絶対にそういうことは言いません。そういった異なったしつけをすることがよくないことであるというふうに、つまりこの答申で書かれているようなことを実行しないとこの条約の違反になるのかどうか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  164. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) そこでしつけという言葉がどういう意味で用いられているか必ずしもはっきりいたしませんけれども、この条約におきましては第五条に「両性いずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃」という言葉がございます。したがいまして、男女間の優越性あるいは劣等性、あるいは男女の定型化された役割に基づく偏見、こういうものに基づいて当然しつけが男女間ですべて異なるべきだというふうな考えであったといたしますと、この条約の第五条にかんがみまして問題があるかというふうに考えられます。しかしながら、しつけというのが普通の意味で男は男らしく、あるいは女は女らしくというような意味で使われているのであるとすれば、そういうところまでこの条約が変えようとしているというふうには我々は考えていない次第でございます。
  165. 関嘉彦

    関嘉彦君 私もそういう解釈であれば賛成いたします。  私今まで本音の議論をしてまいりましたけれども、今からかれこれ十二、三年前になるんですけれども、作家の石川達三さん、あの方が週刊朝日に「婦人参政権亡国論」という非常にチャレンジングなエッセーを書かれたことがあります。婦人団体からたくさんの攻撃の手紙が来たそうであります。石川さんがその中で言っているのは、最近主婦が何か家庭の仕事をするのは価値がないんだというふうな考え方で家事労働はほったらかして、手づくりで料理をつくって子供を喜ばせるというふうなことはやめちゃって、インスタントラーメンか何か買ってきてそれを食わしといて、自分はドライブであるとかボウリングであるとか、そういうことに熱中している。そういうふうになったのはこれは婦人参政権に関係があるんだ、したがってこのまま婦人参政権を続けていけば日本の国家は滅びてしまうんだという趣旨なんです。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕 私はその論文に対して反駁を書きまして、それは婦人参政権とは一切関係がない問題である、婦人参政権ができたからそうなったんではないんだということを書いて反駁したんです。ただ、石川さんが心配しておられることでただ一つ私が賛成していることがあるんですけれども、それは主婦が手づくりの料理をつくって子供たちを喜ばせる、そういった家事労働というのは、女性社会に出て働いて、ドレッサーとしていろんな洋服をつくるとか、あるいは政治家になって国政の舞台で活躍する、そういう仕事との間に価値的な差はないんだと、それを何か誤解して家事労働というのは、家庭内の労働というのは価値が低いことであるというふうな考え方が広がってきて、それが手づくりの料理をつくるのはやめてインスタントラーメンを食わせて遊び回っているというふうに結びつくんであるならば、そういうふうな考え方は間違っている、そう私は論文を書いたことがあるんですが、私の考え方というのはこの条約趣旨に反するものかどうか、これは大臣のお考えをお伺いしたいと思うんですけれども、いかがでございますか。
  166. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは決して反していないんじゃないかと思います。自然といいますか、基本的にはやはり母親が母親らしくその愛情を子供に注ぐ、そういう意味においては別に条約と相反するものではないと思いますがね。
  167. 関嘉彦

    関嘉彦君 大臣からその言葉をいただきましたので安心をしまして質問を終わります。どうも抜山さんの時間を大分食い込みまして申しわけございません。これは決して女性べっ視ではございませんので御了承願いたいと思います。
  168. 抜山映子

    ○抜山映子君 条約の第六条でございますが、「締約国は、あらゆる形態女子の売買及び女子の売春からの搾取を禁止するためのすべての適当な措置をとる。」と、こういうように規定しておるわけでございます。しかし、日本では売春防止法というものが確かにございますけれども、これは売春それ自体を処罰するものではございませんで、売春のあっせんとか、売春を行う場所の提供とか、そういうように周辺の行為をとらえて処罰しておるわけです。このような法的な枠組みでは有効な、条約に言う「売春からの搾取を禁止するためのすべての適当な措置」がとれておるとは言いがたいんじゃないかと思うんですが、法務省の御見解いかがでしょう。
  169. 松浦恂

    説明員(松浦恂君) 御指摘のとおり現行売春防止法は第三条におきまして何人も売春をしてはならない、これを禁止いたしております。しかしながら、これにつきましては単に売春をした者もまたその相手方となった者も処罰規定を設けておりません。ただいまの御質問の御趣旨は相手方処罰の必要があるのではなかろうか、こういう御趣旨かと考えるのでございますけれども、実はこの問題につきましては、昭和二十八年十二月に内閣に設置されました売春問題対策協議会、それから昭和三十一年三月に総理府に設けられました売春対策審議会におきましても、また現行売春防止法の法案が国会御審議の過程におきましても最も議論の対象となった問題であります。  しかしながら、結局もともと性の問題はそれが純然たる私生活の内部にとどまっている限りこれを処罰の対象とする必要はない、もし単純売春を処罰の対象とした場合にはこの種の事犯がすぐれて隠密裏に行われるものであるため、その立証が極めて困難で、かつ捜査を徹底しようといたしますれば人権侵害の結果を招くおそれがあり、むしろ単純売春行為及び売春の相手方となる行為は処罰の対象から除外するのが立法政策上賢明であるとされたこと。また二つ目に、売春を行った女子については、これを処罰の対象とするよりもむしろ被害者的な立場にある者として保護救済の対象とすべきであるとされたこと。三つ目に、我が国の売春事情に照らした場合、売春の勧誘、周旋等、いわゆる売春を助長する行為を処罰すれば十分に売春防止の効果を上げ得ると考えられたことから、結局単純売春行為及びその相手方となる行為についてはこれを処罰の対象としないとされたものでございます。  これらの考え方につきましては、現在でも妥当するものであると考えておりますし、現行売春防止法の諸規定やあるいは刑法等の関係諸法令を活用いたしますれば現在でも十分売春防止の目的を達し得られると考えられます上に、もし単純売春行為を不可罰としたままその相手方となった行為のみを処罰するということになりますと、これは権衡を失することともなりますので、売春の相手方処罰規定を設けるべきであるとの御主張にはただいまは直ちには賛同いたしかねるところでございます。
  170. 抜山映子

    ○抜山映子君 ただいま売春を助長するような行為を周辺から取り締まることによって有効に売春防止をすることができる、このように言われたわけですけれども、実際には個室つき浴場というんでしょうか、一時はトルコぶろと言われ、最近ではいろいろ名前が変わってソープランドとかなんとかいろいろ言われておるようでございますが、このような場所において売春が行われていることは、もう今や周知の事実でございまして、決して有効な取り締まりになっておるとは言えないように思うんですがいかがでございましょう。
  171. 松浦恂

    説明員(松浦恂君) 御指摘のとおり、現在確かにまだ数多くの売春が存在しておることは事実でございます。私どもといたしましては、あらゆる法規を活用してこの取り締まりを図っておるところでございますが、売春防止法違反事件によりまして検挙された人員の推移を見てみますと、特に五十八年と五十九年の間ではかなり多くの増加が見られますし、その内容を見ますとほとんどが助長事犯でございまして、これらのことから見ましても、今後とも現在の取り締まり体制をさらに強化していくことによって相当程度売春を防圧できるものと考えております。
  172. 抜山映子

    ○抜山映子君 それでは個室つき浴場が管理売春の温床であって、差別撤廃条約の精神には違反する、このこと自体はお認めになりますね。
  173. 松浦恂

    説明員(松浦恂君) 個室つき浴場が売春の温床であるということにつきましては、私ども十分その実態を把握しておりませんので、直ちに御賛同いたしかねるのでございます。
  174. 抜山映子

    ○抜山映子君 ちょっと今のは無理な回答のような感じがするわけでございまして、実際には広告あるいは海外からも女性がそういうものに従事するために来日しているというような事情もあるぐらいで、やはり管理売春の温床であることはもう論ずるまでもないと思うんです。これらが全面廃止できるための何らかの法的改正を行うべきだと思うんですけれども、この点はいかがでしょう
  175. 松浦恂

    説明員(松浦恂君) 個室つき特殊浴場につきましては、先般の風俗営業法の改正によりましてこれが風俗関連営業として取り締まりの対象になったところでございまして、今後この法律の活用が図られていきますならば相当程度改善されるものではないかと私ども期待しておるところでございます。
  176. 抜山映子

    ○抜山映子君 それでは余りしつこくお尋ねするのはやめにして、先ほど売春防止法の補導処分のことについてちょっとお触れになったようでございます。売春防止法の十七条においては女子だけ補導処分があるわけでございますけれども条約の二条の(g)でございますけれども、「女子に対する差別となる自国のすべての刑罰規定を廃止する」刑罰規定の原文を見ますとペナルプロビジョンと、こういうようになっておるわけですね。やはりこの補導処分もペナルプロビジョンに該当する、男子についてはない、一方的に女子のみこの規定があるというのはやはりこの条約規定に反すると思うのですが、御見解はいかがでございましょう。
  177. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生指摘のございました補導処分でございますが、これは売春に陥りがちな女子が自力更生の力に乏しいという現状を踏まえまして、生活指導、職業指導を施しまして社会復帰を促進させるものでございます。  一方、男子にはその必要性が乏しいというのが現状でございますので、このように女子のみを対象とした制度でございましても女子差別するという趣旨のものではございませんので、本条約上問題はないものと考えております。
  178. 抜山映子

    ○抜山映子君 私の疑問は、その売春自体一つの悪いことであるというようにとらえるのであれば、女子も補導していい方向に導くというのであれば、同じように男子も補導していただいて一向に差し支えがないと思うのですが、いかがでございましょう。
  179. 松浦恂

    説明員(松浦恂君) これは我が国の売春防止法の歴史というものをお考えいただけたらわかると思うのでございますけれども、戦後特にこの売春防止法ができます当時におきましては、女性が売春による搾取をされる状況下に置かれて、非常に全国的に過酷な状態があったわけでございますが、その中におきましてそういう状態に置かれている女性を何とか立ち直らせなければならないという必要性が極めて強い状況下にあったわけでございます。そういうときにつくられたものでございますので、特に女性についてこの必要性がある、男性についてはここまではやる必要がないという考え方によったものと思われます。
  180. 抜山映子

    ○抜山映子君 歴史的にそういう由来があるのかもしれませんけれども、現在売春の態様はいろいろ変わっておりまして、必ずしも女性が被害者であるというようなことではなくて、エンジョイしながらやっておる、お小遣い稼ぎにやっておる、こういうような現状になってまいりますと、そのような行為自体が、モラルか、あるいは倫理か、あるいは法律か知りませんけれども、悪いことであるというようにして把握するのであれば、やはり同じように平等に扱うべきではないか、こういうように思料するわけです。  それはさておきまして、最近は東南アジアからの入国者に非常に女性が多い。男子よりも女性が多い。アジアの諸国から女性が非常に、時には結婚という体裁をとって入国し、そして日本で売春を行っている。こういう事実があるわけでございまして、日本が、いわゆるセックス産業において非常に、変な言葉ですけれども、はんらんしているといいますか、そういう事態があると思うので、この条約の精神から見まして、やはりそういう事実は世界の各国から見ても大変日本の恥辱になると思うのでございます。したがいまして、今後、この条約規定なり精神なりにのっとって、ひとつ売春という事態を根絶するようにお努めいただきたい、このように思いますが、大臣の御見解を最後にお願いいたします。
  181. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはもちろん、御承知のように、売春禁止法もありますし、これでもって禁止されておりますし、また、やはり条約ができただけで、なかなかこれは全面的に守られるということではないでしょうし、国民の意識といいますか教育といいますか、国民のそうした道徳水準といいますか、そういうものがやはり上昇していかなければならぬと思います。条約を結んだ以上は、この条約に従って、趣旨を国民に広く理解をしていただくように、これからもひとつ努力をしてまいりたい、こういうように思います。
  182. 抜山映子

    ○抜山映子君 終わります。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 最初に、二、三の問題について大臣にお伺いしたいと思うんですが、最近の状況で、特に日米軍事同盟体制が強化されるという事態が顕著になってきていると思うんですが、世界の緊張緩和の方向で努力されなければならないということが求められている状況のもとで、これは極めて逆行的な現象であって好ましくないというふうに言わざるを得ないと思うんです。  その点でお尋ねしたいんですが、例えば、日本とアメリカの共同軍事演習が行われた状態を振り返ってみますと、一九七六年、今から九年前は、一年間に八日間日米の共同演習が行われた。ところが、一九八一年、今から四年前ですが、日米間で行われた共同軍事演習というのは百六日間にふえました。そして、二年前の一九八三年には、百二十一日間に共同演習がふえた。ことしの半年間を見てみますと、日米間で行われる共同演習というのが、主なものだけで百日間になっているんですね。これは、ハワイに行って潜水艦の共同訓練をやっているという四十八日間を除いて百日間の共同演習がやられている。こうして見てみますと、つまり、ことしの状態で一年間を推移すれば、まさに一年のうち半分以上が日米共同演習がやられているという状態になるんです。  しかも、これに対して費やされる費用というのは莫大なもので、この共同軍事演習がふえるたびに予算というのがどんどん膨張している。これは共同演習に使われる費用というのがふえているということはおわかりのとおり。今、国際的に緊張緩和が求められなければならない状況の中で、こうした急激に日米間の共同演習がふえるという事態について、外務大臣はどのようにお考えになっておるのか、まずその点をお尋ねしたいと思います。
  184. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはやはり緊張緩和は緊張緩和として大いに歓迎するわけですし、その方向日本としても努力していかなきゃならぬ、平和がすべてであろうと、私は思います。  しかし、同時にまた、日本日本の国の平和と安全を守るために、さらにまた安保条約の効果的な運用というものを図っていくためにも、やはり常に努力を重ねていく。戦術あるいはまた技量、そういう面は日進月歩しておるわけですから、努力を重ねていく。それぞれの努力を共同演習という形でやっていくことは、これは当然のことじゃないかと思います。何かこれでもって緊張を激化させる、こういうことではなくて、あくまでも日本の平和と安全という限定された目的のための共同訓練ですから、    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 これはやはり、私は今の日本の自衛隊の立場からすれば、そうした米軍との間の意思疎通、技術向上、それを図るためにも行うことはちっとも不思議ではない、これが緊張緩和とかそういうものと関係するものじゃないと私は思います。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 それは緊張緩和ということを常日ごろ口にされている大臣のお言葉とはどうも思われないんですが、今から九年前にわずか八日間ですよ、一年間にやられた共同演習が。今の状態で見れば、半年間、この六月までの状況で百日間共同演習がやられている。年じゅう共同演習をやっている事態。これに費やされる税金の金額というのは莫大なものに膨れ上がっていくわけですからね。  それじゃ端的にお伺いするんですが、南北朝鮮の対話が進むということについては、これは歓迎するということも大臣言われたですね。それで、例えばチームスピリット85なんというのは、朝鮮民主主義人民共和国に対する大変な刺激になる、だから朝鮮側はそういうふうなことはやめるべきだ、これはやっぱり緊張が緩和していく状態から見るならば、逆行である、大変な緊張を緩和していく方向に逆行するものとして受けとめられる。そういう事態が現実にあるわけですね。  だから、少なくともそういう緊張緩和する意味での南北の対話を歓迎すると言われるならば、そういう相手を刺激するような形での軍事演習を増強するような事態については、やっぱり抑えるべきじゃないか。平和外交を推進していくという今日のアジアの状態から見れば、ただ単にこれはアメリカのアジアにおける戦略を補完するだけの意味ですから、そういう点はもっと積極的に平和外交を推進するならば、そういう主張をすべきじゃないかと思うんですが、どうですか。
  186. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) やはり自衛隊は、常にこれは有事の際に備えて腕を磨いておくということが自衛隊の責任だろうと思うんですね。そのために膨大な税金で自衛隊というものを我々は確保しておるわけですから、何もしないで緊張緩和だからといってぼやっとしていたんじゃ、これは何のための存在かわからなくなるわけですし、ソ連も現に盛んに軍事演習をやっておるわけだし、北も恐らくそういうことだろうと思いますから、そういう中で日本日本で平和と安全を守っていくというためには、やはり日米安保条約、そのための日米共同訓練、これはやっぱり抑止力として非常に大事なことじゃないかと思うわけでございます。これはこれとしてやはり努力するのは必要だろうと思います。  また平和への努力、これはまたこれなりに当然我々として尽くさなければならぬわけで、何もそういう演習をやっているからこれは戦争しなきゃならぬということじゃなくて、戦争をしないための努力をするということであります。ですからそういう意味で、ただ演習をしたからといってそれが緊張に結びつくというものではない、こういうように私は思います。これは、緊張は何としても緩和するように努力していかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  187. 立木洋

    ○立木洋君 そういう答弁というのは防衛庁長官に任しておいた方がいいんじゃないですか。外務大臣というのは、平和外交を推進するならもっと違う角度からアプローチがあるべきだと私は思いますよ。  そこで、最近新聞紙上でも問題にされていますけれども、在韓米軍と自衛隊が共同演習するということを了承されるように日本政府に申し入れをしたというふうなことが新聞で報道されていますが、そういう申し入れがあったというのは事実なんでしょうか。
  188. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 最近の新聞報道を御念頭に置いての御質問かと思いますが、私どもの承知しておりますところでは、アメリカの方から具体的に新聞で報道されているような演習について防衛庁の方に申し入れがあったというようなことは承知いたしておりません。外務省の方にも特にそういう話はございません。
  189. 立木洋

    ○立木洋君 当然、そういう申し入れがあったら明確に外務省としてはおこたえする方向で努力をされると思うんですが、どうですか。
  190. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 米軍と自衛隊との共同演習につきましては、これは防衛庁の所管事項でございますので、私どもの方から具体的にどうこうということを現段階で申し上げる立場にございませんが、ごく一般論として申し上げれば、米軍との共同演習の一つの対応として、その演習を一緒にやる相手が常時我が国に配備されておる米軍であるという必要は必ずしもないのでありまして、アメリカの本土なりあるいは韓国にいる米軍の飛行機なら飛行機が我が国に来て自衛隊と演習を行う、訓練を行うということは、これは一般論として申し上げればあり得ることであって、必ずしもそれが不適当であるとか行ってはならないとか、そういう性質のものであるというふうには私ども考えておりません。
  191. 立木洋

    ○立木洋君 だけれども栗山さん、日本に駐留している米軍と韓国に駐留している米軍とは、それは目的が違うんですよね。在韓、韓国に駐留している米軍の駐留目的は一体何ですか。
  192. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは一義的には、当然のことながら、米韓相互防衛条約に基づいて韓国に駐留しておるわけでございますから、韓国におる限りにおいてその目的、任務というものは、第一義的には、それは条約に基づく韓国の防衛に当たるというのが在韓米軍の任務であろうと思います。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、韓国に駐留している米軍の第一義的な目的は、韓国の防衛に当たるというのが第一義的な目的だ。そういうことを目的としている米軍と日本の自衛隊が共同演習するということは一体何を意味するのか。つまり、日本の自衛隊が、朝鮮民主主義人民共和国から、つまりいわゆる北の脅威ですね、これに対処するために存続している在韓米軍と共同演習するということは、つまり朝鮮半島の緊張、それに対する対応というものに自衛隊が事実上参加するというおそれが生じるんじゃないですか、自衛隊が参加するということは。
  194. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 共同演習の相手が平生、平生と申しますか、ふだん韓国に配備されておる飛行機であるということから、直ちに今委員のおっしゃるようなことになるということでは必ずしもないんではないかというふうに私ども考えるわけでございます。例えば新聞に報道されているような例で申し上げれば、韓国に配備されておるF16が日本に来て航空自衛隊と演習をするという想定だろうと思いますが、航空自衛隊の戦技向上のために、今後三沢にF16が配備されるということになればこれはまた別の状況でございましょうが、今現在F16というのはいないわけでございますから、そういうF16との間で戦技向上のための訓練をするということは、これは別に我が航空自衛隊が韓国の防衛のために米軍と一緒に行動をするということを前提とした演習では毛頭ございませんでしょうから、あくまでも我が国の防衛のために我が国の航空自衛隊の能力向上を図ると、そういう意味でアメリカ軍の適当な機種と一緒に共同演習を行う、こういう前提でございましょうから、その限りにおきましては特に問題はないのではなかろうかというふうに一般論としては考えております。
  195. 立木洋

    ○立木洋君 だけれども局長、ただ単なるその機種の問題じゃないんですよ。つまりそれならば韓国にいる米軍がなぜわざわざ日本の自衛隊と共同演習するのか。日本の防衛のために在韓の米軍がわざわざ来て共同訓練をやるというふうな、そんな考え方をアメリカが果たして持つだろうか、そうじゃないんですよ。アメリカはアメリカなりの独自のやっぱり戦略があり、戦術があり、その体系の上でどのようにして日本の自衛隊と協力、共同ができるかということを探求しているわけですから。だから、先ほどあなたが言われたように、第一義的に韓国に駐留する米軍というのは韓国の防衛ということ、いわゆる北からの脅威に対処するということ、そういう意味ではアメリカの極東戦略があって初めてあそこに駐留しているわけですから。今まで在韓米軍と共同演習したということはないんですよ。ましてや今度はF16でしょう。これが共同演習するということは、私は先ほど一番前提として言ったのは、つまり米軍との共同演習というのはどんどんふえてきている、これ自体が問題なんだ。しかも今度は韓国を防衛する、北の脅威に対処するという形で駐留している在韓米軍との共同演習まで入っていく。そういう機種の問題での論理で言うならば、それなら中東に駐留している米軍と共同演習するかと、機種が問題だからと、そういうことにはならないんですよ。そこに駐留している米軍の第一義的な目的はそれに対応する形で任務を持っているわけですから。だから、それは日本の自衛隊はそういう考えはございませんと仮に言ったとしても、いわゆるアメリカの戦略に組み込まれるという点で言うならば、これはアメリカ自身の考えがあるわけですから、自衛隊の考え方で米軍が動くわけでないわけですから。だから、この点を私は危険な動きとして、日本がアメリカのアジアの戦略に一層加担するような危険な動向はやっぱり避けるべきで、そういうことは外務省としてはやるべきではないということを、そういう事態が起こった場合には明確に対応すべきだ。そうしてそういう先ほど外務大臣が言われたように、いわゆる軍事演習をどんどんやっても結構ですみたいなことではなくて、少なくとも外務省としてとるべき対応の仕方が別にあるという点からも考えてほしいというふうに思いますが、大臣どうですか。
  196. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 政府といたしましては、自衛隊の演習に際しまして当然憲法の建前というものを厳守して臨むということでなければならない、こういうことだろうと思います。米軍との演習についても当然そういうことが大前提でございますので、米側と話し合う場合におきましても常にその前提のもとで、政府としては防衛庁におきましてもそうでございますし、外務省といたしましてもそういう考えのもとで米側といろいろ打ち合わせをするということは、これは当然のことだろうと考えております。  一言補足させていただきますと、委員の御指摘ではございますが、アメリカは格別韓国の防衛について我が国さらには自衛隊の参加、協力を得たいというようなことを考えているとは私どもは毛頭思っておりませんし、そういうような状況、戦略というようなものについて御懸念のような必要はないんではないかというふうに考えております。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 これで質問終わりますから、最後にこの点でちょっと大臣にお聞きしておきたいんだけれども、それはいろいろ今問題がありますけれども、南北朝鮮の対話が生じておるというこの状況が促進できるような努力、あるいはソ連との関係でもいろいろ大臣努力されてきているわけでしょう、どういうふうにして事態を打開していくか。いろいろ問題が残されています、領土問題その他がありますけれども、しかし、今の緊張緩和をどういう方向で促進できるような努力をするか。ところがこの事態というのはそれに対する逆行なんです。だから少なくとも外務省としては、今述べたような韓国に駐留している米軍との共同演習等々はさらにこれを一歩進めるものですから、そういう危険な事態については平和外交ということを外務大臣主張されるならば、防衛庁とは変わったアプローチでその任務を果たしていただくように努力していただきたいということですが、いかがですか。
  198. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) いや先ほどは防衛庁長官に対するような御質問だったですからそういうお答えをしたのですけれども、外務大臣としてはこれはもう防衛庁長官と違うわけですから、外務大臣としてはあくまでも世界の平和、アジアの平和のために全力を尽くしていく、そういう演習等はあってもそれは演習ですから、それは防衛庁に任しておけばいいわけで、外務省としてはあくまでも平和外交を貫くという形で日ソ交渉あるいはまた南北の対話の促進には全力を傾けてまいる、これはもう当然の我々の責務だろうと思います。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 そういう方向で緊張緩和を崩すような事態にはきちっとブレーキをかけるぐらいないわゆるイニシアチブを発揮してもらうように重ねて要望して次に移ります。  国連婦人年になって十年間、この間に日本男女の賃金の格差というのはどういうふうに推移したでしょうか。
  200. 藤井紀代子

    説明員藤井紀代子君) 賃金の男女比較につきましてはいろいろな方法がございますけれども、御承知のごとく男女の賃金格差が生じる要因としてはいろいろなものが考えられるわけでございますが、女子につきましては結婚、出産等を契機に退職し、長期間職業を中断する者が多いことから平均年齢が低いとか勤続年数が短いということがございます。また男子に比べまして高学歴者の比率が低い、それから男子に比べまして小規模分野の就業比率が高い、それから所定内給与につきましては各種手当が含まれているわけでございますが、このうち家族手当とか住居手当などは世帯主のみに支給されることが多いこと等がございまして、また日本の年功賃金制度等がございまして、男女の平均賃金を比較するということはなかなか難しいと考えるわけです。私ども男女の賃金を比較する場合は同一条件の男女の賃金を比較するということが適当かと考えるわけでございます。この観点に立ちますと年齢、勤続の要素が同一のもの、これは高卒の標準的労働者ということで私ども比べますが、これは学卒後同一企業に継続勤務していると考えられる者の賃金につきまして男女の賃金格差を見ますと、二十歳代では約八割と小さいわけなんですが、年齢とともに格差は大きくなっておるわけですが、最も格差の大きい四十歳代でございましても約七割、平均で見た格差よりかなり小さいということになっております。これを過去にさかのぼって十年間の男女賃金格差を見てみますとほぼ横ばいであるということでございまして、格差が拡大しているとは言えないという状況でございます。
  201. 立木洋

    ○立木洋君 課長さん、あなたは今婦人のいろいろ悪い条件を大分述べられましたけど、だから格差があるのが仕方がないみたいな、あなた御自身御婦人でしょう、私は課長さんからそういう答弁を聞くとは思わなかったですよ。これは労働省からもらった資料なんですけれども男女の賃金の格差というのは一九七五年、今から十年前ですよ、男子一〇〇に対して女子は五五・八%、一九八一年は男子一〇〇に対して五三・三%、そして一九八三年が五二・二%、一九八四年が五一・八%、年々低下しているんですね。これは労働省の統計です。なかなか難しいと言って、こういうふうに男子一〇〇に対する女性の賃金の比率が低下しているということを率直にお述べになるのがどうも嫌なようでありますけれども、これは労働省が発表している統計ですから間違いない。いわゆる婦人の十年間ということでこの男女賃金の格差を是正するという努力が当然進められなければならなかった。そして、そういう本部まで政府としてはつくってやる。この男女の同一報酬という点については昭和四十二年ですか、既に日本は批准しているわけです。この十年間に前進するどころか、逆に後退したというのは、これは私は大変にいただけないんですけれども、外務大臣、これは外務大臣としての御見解はどうですか——もう一遍言いましょうか、この十年間に男女賃金の差というのがどんどん広がった。一九七五年の場合には男子一〇〇に対して五五・八%だった。ところが去年になりますと五一・八%なんです。年々下がってきているんです。これはやっぱり十年間努力すると言いながら、逆行するというのはまずいんじゃないか、だからそういう点で外務大臣がこれをどうお考えになるのか、お考えを聞きたい。
  202. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これはおっしゃる統計がそのまま真実かどうか私もよく理解できないんですけれども、私は専門家じゃありませんけれど、日本の労働条件は男性にしても女性にしても相当改善をされてきている、それは日本経済の発展とともに労働条件そのものが非常に改善されておる。ですから世界の水準には決しておくれをとっていない、私はそういうふうに思っております。
  203. 立木洋

    ○立木洋君 この五一・八%というのは労働省が出しておる毎月勤労統計調査によるものなんです。この五一・八%、去年の場合です、一人平均月間賃金の男女の格差について。これはパートタイマーは含んでいないんです。パートを含めますとこれはもっと水準というのが悪くなるという状態になるだろうと思うんです。  私は、この点で国際的にもそういう劣っていないみたいなことを言われましたけれども、いわゆる外国の人々から日本女性の賃金は奴隷的な状態ではないかと思われる状況だというふうなことを言って日本で大分反駁がされましたけれども、私たちは本当に反駁するならば、男女の賃金の格差を是正する努力にこそもっと力を注ぐべきだと思うんです。  それで、パートの問題でちょっとお尋ねしますけれども、現在パートの労働者はどれぐらいいるのか、それからこのパートが時間外労働をやった場合に残業手当というのはどういうふうになっているのか、その点はいかがでしょうか。
  204. 藤井紀代子

    説明員藤井紀代子君) その前に、先ほど先生がおっしゃったことにつきまして一言申し述べさしていただきたいと思うんですが、先生が先ほどおっしゃいました男女賃金格差のは毎月勤労統計調査からおとりになられたものと思いますが、それには臨時のパートが入ってございませんけれども、常用のパート労働者というのは入っておる額でございます。御承知のごとく、パートタイム労働者は労働時間が短いということもございますし、パートタイム労働者の数はふえてきておりますので、そういうパート労働者の増加というものが男女賃金格差に影響を与えているというふうに考えられるわけでございます。  それから、ただいまの先生の御質問の件でございますが、パートタイム労働者なんですが、男子は五十九年現在で四百六十四万人、女子が三百二十八万人でございまして、割合といたしましては女子が七に対しまして男子が三という割合になっておるわけでございます。——済みません、ちょっと間違えました。四百六十四万は男女計の数字でございます。失礼しました。男女計が四百六十四万人、女子が三百二十八万人でございます。失礼いたしました。  それから、御指摘の時間のことでございますが、パートタイム労働者の所定外労働時間につきまして労働省の第三次産業雇用実態調査、これは昭和五十四年に行ったものでございますが、これによりますと、女子パートタイム労働者の一日の平均所定労働時間は五・六時間となっておりまして、所定の労働時間以上に働く者が二〇・五%ということになっておりまして、これらの者の週平均所定外労働時間は四・九一時間となっております。  先生の御指摘のパートの方の残業手当の支払いのことでございますが、労働基準法第三十七条は法定の一日八時間を超える労働時間について時間外の割り増し賃金の支払いを義務づけておるわけでございます。ですからパートタイム労働者につきましても、一日八時間を超える労働時間について時間外の割り増し賃金が支払われていなければ本条違反となるわけでございます。労働省といたしましては、今後ともこのことにつきましては鋭意監督指導に努めて、履行確保を図ってまいりたいと思っております。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 統計の、あなたが先ほどおっしゃったパートタイムのあれは含んでいないと言うけれども、ここに「(参考)」として、「パートタイム労働者を除く一般労働者男女の格差」というふうにちゃんと書いてあるんですよ。あなたがおっしゃったのが正確ならば、調査の月報にもそのように注を加えておいていただけるといいと思うんですね。  それで問題なのは、あなたは八時間というふうに言われたけれども、八時間働かないからパートなんですよ。そして契約をして、五時間なら五時間というふうに契約しているわけでしょう。そしてこれは労働省が出しているこの間のあれの中でも明確にされているのは、結局パートタイマーといわゆる一般の労働者、これは身分的に何ら差別をしないということさえ労働省としてははっきり指摘しているわけです。それから労働基準局の監督課の中でも、ここで出されているのは、「法定労働時間を超えない所定労働時間外の労働が、所定労働時間内の労働と同一内容のものならば、その労働の対償たる賃金も同一基準で支払われるのが原則です。もちろん、割増にして支払っても差支えありませんし、むしろ望ましいことです。」、これは基準局の監督課が述べている見解なんですよ。  あなたは八時間以上働かないと残業にならないというのは、そういう差別をしないという見地から言っても、この監督課の見解から言っても私は適切ではない。現に、ある婦人団体が調べてみますと、一日の労働時間で決められた以上、これは仮に七時間というふうに推定しますと、それ以上に残業している人が三五・二%あるというのです。そして、その中で残業手当をもらっていないのが一八・七%だというのですよ。これは普通のあれじゃなくて、例えば損保なんかの場合でもそうですよ。もう時間がないから詳しくは言えませんけれども、だからそういう見地から見るならば、いわゆる所定の労働時間外の労働に対してはやっぱり差別をするのではなく、契約がパートとしての労働なんですから、だから少なくとも残業手当はいわゆる基準に基づいて支払うという方向で私は努力をすべきだ、そういうふうにしないから、いつまでたっても女性の賃金の水準というのが低くて、あなたが一番最初説明しなければならないように、こんな条件がありますから低いんです、こんな条件があるから男女の格差は仕方がないんですみたいな答弁になってしまう。それでは本当の意味での同一報酬ということにはならないわけですから、そういう点の努力を私はぜひしていただきたい。課長さんですから、帰ってよく検討していただいて、そういう努力をするように局の方でも労働省全体として努力するようにしてほしいというふうに要望しておきたいと思うんです。  そういう面で、大臣、これは女子に対する差別のあらゆる形態撤廃のこの条約が批准されたからといって、もう外務省は終わりだということではなくて、やはり今後残されている問題が午前中来いろいろ議論されておりますから、そういう点にも十分目を配っていただいて、本当の意味で国際的な水準に到達するように私は賃金の面でも努力をしていただきたい。前回は時間の問題、労働時間の問題、休日の問題等々言いましたけれども、賃金の問題でも努力をしていただきたいということを要望いたしたいんですが、最後に大臣の御所見を賜って質問を終わります。
  206. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 先ほど男女の賃金格差の問題については労働省の課長の明確な説明でよく御理解になったと思いますが、私もそんなに格差が大きなものとは思っておりません。外務省なんかでも随分女性の職員が働いておりますけれども、そんなおっしゃるような差別というのはほとんどないと思います。しかし、いずれにしても労働条件はやっぱり日本経済の発展とともに改善されていかなきゃならぬし、これは労使がこれからも努力していかなきゃならぬし、そういう中でもし男女差別というものがあれば、これは条約を批准したという段階で政府も条約を守る責任が出てくるわけですから、いろいろな面で是正をしていく努力は重ねていかなきゃならぬと思います。また、条約は批准したからといって私はこれで終わりだとは思っておりません。まだまだ漸進性という形で批准はしているわけですけれども、残された問題がありますから、こういう問題に対しましても鋭意取り組んでいかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  207. 秦豊

    ○秦豊君 きょうはかなりゆっくり時間がありますから、最初にまず一般的な問題に触れた後、あとうべくんば時間を残して本条約に直結した質問をしたいと思います。  安倍外務大臣、本当に毎回の委員会で言わねばならぬように大変お疲れで、本当に言葉どおりそう思います。それで成果については同僚議員からの質問に対するお答えで納得をしているところです。  実は先ほどから同僚議員が再三問題にしている問題を私も私見を交えながら安倍外務大臣にあえて伺いたいことがまずありますのは、例の外政調整室構想、行革審答申なるものですけれども、大体日本語の語感で外政、内政に対置する概念として外の政、外政というのは極めて特殊、中曽根的なボキャブラリーなんですよ。あの人は青年将校と言われた初当選からほどないころから、方々で外政を担うとか、外政を展開するというのは非常に好きな言葉の一つで、平常心の次ぐらいに好きなんですが、それはそれとして、したがってこの部分で私が言いたいことは、大臣、中曽根氏が好んで使う言葉をまるで答申の枢要な項目にはめ込んだ今回の答申というのは私は中曽根氏が答申を求めたんじゃなくて、総理に気に入るようにどう書くかという作文技術の問題で非常に悪癖であると思うんだけれども、それと、恐らく中曽根構想の中には私は大統領のような総理大臣になりたいと、これも隠してはいらっしゃらない。ところが現在日本国の総理宰相が権力的に弱体かというともうまるきり裏腹であって、これ以上強力無比なプライムミニスターはいないというぐらいの権限を与えられている上にさらに大統領のようなと、一体何をねらっているのかと、これ以上強い総理大臣が我が国に誕生すると、まさに中曽根路線の戦後の総決算なんていうのは短時日で達成される、危険この上ないと私は思いますけれども、私はホワイトハウスと国家安全保障会議、NSCが下敷きになっていると考えられる今回のいわゆる答申なるもの、実は初めに結論ありきなんだが、これは私は非常に問題を含んでいる、同僚議員の御指摘に一〇〇%共感するゆえんは、これはあの制度をつくりますと、特別補佐官のようなものを置かないと今の参事官なんという職位だと全うできないんですよ。これまでの行革路線の中で補佐官制度は浮かんでは消え、浮かんでは消え、今消えっ放しだが、これを本当に中曽根氏がやろうとするんであったら、名前はどうでもいいが補佐官的な権能を持たした強力なコーディネーターを置かないと、こんなものは外政調整はおろか外政混乱室になっちゃうんですよ、今から目に見えている。したがって、そういうものを今の日本の内閣制度の上に足しますと木に竹を接ぐがごとし、極めて異質なもの、溶け合わざるものが権力を持って押しつけられる、これ極めて重大な問題点を含んでいると私は言わなければならないと思うんです。  それで、強い総理の次には危機管理体制いわゆるクライシスマネジメントの強化ということもKAL事件以後何か急に、ミグ25で中途半端になってKAL事件で目が覚めたみたいに走り出して、中西特命大臣なんて任命してやってそれも中途半端、それからまだ第一の答申は第二次答申にやがて非公式に出るらしいんだけれども、私はこの二つがずっと構想としてあった上に答申が出てきた、だからこれは見逃せない問題点をたくさん含んでいるんですよ。幸いずっと午前中から伺っておりますと、安倍外務大臣は日本外交のかなめを握るお立場として、しかも長年にわたってそれをこなしてこられたお立場としてぴしっと一線を画した認識をお持ちのようですから、今私はこの段階では安心をいたしておりますけれども、今後ともやはりいろんな公的な場において強く中曽根総理に進言し、反論をし、そして過ちなきを期していただきたいと思いますが、少し長くなりましたけれども質問というよりは私の意見論調の部分ですけれども、それを含めて安倍外務大臣いかがお考えですか。
  208. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 意見は確かに承りましたが、しかし、今中身を私も十分検討しておりませんし、まだ答申という形で出てないですね。中間的な小委員会のいわば結論というふうなことで出ておるわけなんですが、ただ私がその中で確かに総理大臣の権限というのは憲法上非常に強大だと思います。政党政治という枠組みの中でこれは非常にうまく機能していると思いますが、その総理大臣の仕事をやはり補佐するという意味で外交面でいろいろと調整的な面が必要です。これは今の外交というのは非常に幅広く多面多岐にわたっておりますし、内政と直結しておりますから、そういう面では確かに総理大臣を助ける、補佐するスタッフというのはもっと必要だということは、私も官房長官をやって、いわばコーディネーター的な役割もやってまいりましてそういうことも感じておるわけですが、しかしこうした補佐的な役割の機関がこれがひとり歩きするようなことでなってしまって、そして日本のせっかく築き上げられました外交の一体性とか外交の一元化というものを崩すようなことになってはこれは困ると思っております。  したがって、もう少し勉強しまして、これから行革審で論議をされるわけでしょうし、そういう中でまた意見をいろいろと述べる機会もあるんじゃないかと思いますので、十分外交の一元化、あるいはまた外交の一体性というものを踏まえて意見を述べなきゃならないと思っております。いずれにしてもそうした外交の一元化を崩すようなそういうことになることに対しては私は反対であります。
  209. 秦豊

    ○秦豊君 大臣、そのとおりだと思いますよ。くどいようなんですけれども、こういう構想路線に対して前提つきで賛成しますと、例えば外交の一元化が保持されるならばまあいいだろうと、こんなことをしていると混乱を招きますよ。それは必ずそうなる、これはこういうものをつくったら途端にまさにひとり歩きという大臣のお言葉をかりれば、ここに妙な権限と使命を与えるとこれは独走が使命になるんだからこれは必ず混乱します。今でも例えば官邸外交なんという、外務大臣は外務省に外交ありと、官邸になしと、官邸外交なんというのはマスコミ用語だと、野党用語だとおっしゃりたいかもしれぬが、今でさえ官邸外交と、霞が関外交というふうにともすれば言われがちな現実の中にあって、こんな機構はそれこそ禍根を残すと思うから申し上げているわけであります。その部分については答弁は要りません。  そこで、北米局長条約局長に久々に伺いたいんだけれども、このSDIですね、これは和田委員もお触れになっていらした問題点を私は違った角度からやってみたいと思いますが、つまり六月四日に発表された国務省のいわゆるSDI報告書なる公式文書の中には、例えばアメリカの基本的なSDIに対する態度は、開発はABM条約の枠内でやる、いざ実験まで終わって配備する直前に、直前とは書いていないんだが、配備以前と書いてある。配備以前になると米ソ間協議を行い、将来はSDIシステムの共同管理をも考えないわけではないというふうな意味の表現がある。つまり米ソ間協議ですね。このことを私は読みまして、これは私がずっと以前からの、ずっと古くからの当外務委員会でABM条約違反の疑いがある。これは必ず同意条項を含めてABM条約の改定を米ソ間で合意しなかったらにっちもさっちもいかなくなるのではないかという指摘は、私、当委員会で再三繰り返してまいりました。やっぱり米ソ間協議の中には条約局長、素直に読めばABM条約の改定ということも含まれるんじゃないんでしょうかね。
  210. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 前から何度かお答え申し上げたと思いますが、SDIが実際に開発をされまして、それが展開配備をされるという状況になりますと、ABM条約との関係ということが法律的な意味で問題になってくるだろうと思います。アメリカもそのことはかねて言っているわけでございまして、研究すること自体はABMによって何ら禁止されていない、こういうことを言っているわけです。  そこで、前にも委員が御指摘になりました協議条項との関連で申しますれば、協議というのはいろんな内容の協議があり得るわけで、非常に広いものでございますけれども、その協議の結果としてこの条約の改定をするというような問題ということは理論的に言えば当然あり得るであろう、こういうふうに思っております。
  211. 秦豊

    ○秦豊君 それから同じくこれは条約局長の範囲になりましょうかね。これは読売新聞のワシントン特派員とエイブラハムソンSDI局長とが単独会見をしておりまして、これは私の今回の東欧旅行中ですけれども、その中に、前提はSDIの研究参加問題で日本との間では新たな協定や覚書ではなく、例えば既存の防衛技術協力協定の枠内で行い得るのではないかと、こういうことを答えた部分があります。つまり午後から議論されておりますように、同僚議員も指摘されましたような覚書、協定は既にして必要でなく、現在日米間にあるこの防衛技術協力協定の枠内ですべて処理が可能であると答えているんですけれども、私はこれはずばりそうじゃないかと思いますが、どうでしょうね。
  212. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 私がお答えするのが適当であるかどうかわかりませんが、御指名でございますので御説明いたしますと、次のようなことになろうかと思います。  これは従来から総理大臣、外務大臣がこの委員会あるいは他の委員会でもお答えしていることでございますけれども日本がSDIの研究に参加するという事態を考えましたときに、仮にそういう事態になりましたときに、我が国から何らかの形での技術の提供が行われるということになりますと、その技術が武器技術というカテゴリーに入るものでございますれば、それは日米間でさきに締結されました武器技術供与の取り決めの規定に従って判断をされ、状況によって提供が行われる、こういうことになるんだろうと思います。  それから、武器技術に当たらないような技術について申しますと、つまりいわゆる汎用と呼ばれている技術について申しますと、現在の我が国制度としてはそういうものについて何らの法的な規制が原則としては存在していない、こういう状況にございますので、それは民間の当事者の間の話し合いによって行われることになるであろう、こういうことだと思います。
  213. 秦豊

    ○秦豊君 ですから、同僚議員も指摘されたけれども、総理が衆議院で某議員に答えられたような、SDIへの研究参加が我が国として仮にあるとしても、それは国会のレベルじゃなくて行政のレベルだという答弁をしたのは、まさにそのことを指すのではないかと思いますが、それについてはどうです。
  214. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 総理大臣がどういう御趣旨で答弁をされたのかということは、私も実はその場におりませんでしたので記録で拝見しただけでございますけれども、総理答弁の趣旨というのは、私が理解いたしましたのは、そういう技術的な枠組みの話というよりは、SDIの参加問題に関しまして日本政府として政策的な決定をする場合、SDIに対して日本政府としてどういう形でつき合っていくかということについての政策的な決定をする場合に、その政策的な決定というものは行政府として最終的な責任において決めるべき事柄であって、そのこと自体について国会の承認をいただくというような性格のものではないのではないか、こういう判断をおっしゃったのではないかというふうに私は理解いたしました。したがって、今秦委員が御指摘になったような、仕組みとの関連において国会と行政府の関係がどうなるのか。あるいは、その仕組みが例えば国際約束というような取り決めになったときに、それが例えば憲法七十三条との関係においてどういうことになるのかというような技術的な枠組みのことについての御答弁ではなかったのではないかというふうに私は理解いたしましたが、ただ最初にお断りいたしましたように、私は議事録で拝見しただけでございますので正確に総理が何を言われたのかということについて確言することはちょっと差し控えたいと思います。  ただ、繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、政府としてSDIの研究の問題について日本が米国とどういうふうにつき合うべきかという政策決定の問題に関しては、国会での議論を踏まえて慎重に検討するけれども、最終的な責任は行政府の責任において行う問題である、こういうふうに私どもとしても理解しているわけでございます。
  215. 秦豊

    ○秦豊君 これは後で大臣にも伺いますが、私は非常に不思議なことがこのSDI問題については一つある。つまり、エイブラハムソンは既にそう言っている、既存の協定でやりましょうねと。それから、アメリカの企業群はどう言っているか、企業対企業という水平レベルがあると。それは汎用と概括されている。つまり、妨げるものは何もなしという段階なんですよね。政府はじっくり研究中であるから、それ以上は答えられないというふうな答弁が非常にお得意のパターンになっている。  そこで、北米局長あれですか、アメリカからまた説明グループがやってくるのは本当に来るんですか、近く。予定は全くなくて、ただ漫然と研究中、研究中なんですか。
  216. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) たしか前回もお答えしたと思いますが、アメリカから四月の下旬にチームがやって参りまして、いろいろブリーフィングを受けたわけでございます。その結果につきまして、実は私といたしましても、関係省庁の参加を得て説明を聞きましたことでもありますので、当然関係省庁の参加を得て、そのアメリカ側の説明につき十分これを分析評価をした上で、当然第一ラウンドということを従来から申し上げておりますが、これで十分話を聞いたということにはなりませんので、さらに第二ラウンド、場合によっては第三ラウンドというふうに、アメリカの話を聞いていく必要があるというふうに基本的には考えております。ただ今後、今月以降具体的なその日取り、段取りにつきまして、まだ十分関係省庁との間で協議を行っておりませんので、現段階においていつ向こうから人が来るとか、あるいはこちらから人が行くとかいうことについて、私自身まだ例えば大臣とお諮りするというほど煮詰まっておりませんので、この場でちょっと申し上げられないというのが正直な現状でございます。
  217. 秦豊

    ○秦豊君 私は誤解なきように改めて言いますがね、この種の問題には極めて慎重たれというのが私の大前提ですからね。あなた方がじっくり構えている自護体風な体さばきというのは、僕はむしろいいと思っているんですよ。いいと思っているが、一応疑問が存するから聞いているんであって、今度加藤防衛庁長官がワインバーガー氏やシュルツ氏に会ったときに、やはり別れ際に必ずSDIへの日本としての研究参加はなるべく早期に願わしいという意味のことを繰り返しています。  それで、安倍外務大臣、私の大前提はもうお聞き取りのとおりですけれども、しかしやはりいうまでも回答をしないということは、これは両国間関係ですからね、多国間じゃないんだから、それも余り常識であり得ないと思いますが、大臣の腹中ではほぼいつごろ回答を要すると、あるいは可能というふうに今この段階で改めてこなしていらっしゃいますか。
  218. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 今北米局長も言っておりますように、こちらの方がまだ整理していない段階ですから、今時限を切っていつと言うことは、これはちょっと無理だと思います。NATOなんか見ましても、今回もそうでしたが、結論も出てないようですし、もっとじっくり構えて、もっと勉強してやったらいいんじゃないかと、こういうふうに考えております。
  219. 秦豊

    ○秦豊君 問題を変えます。  貿易摩擦に連関しましてずうっと今まで議論があったんですけれども、大臣、輸出課徴金構想が与党首脳部の一部から出た。今はそう出ていない。今度は輸出の段階的制限と。それから、宮澤総務会長構想としては、関税の例えば二五%引き下げ、しかも、日本が言い出すという問題、実行すると、あとは認証制度改善と、いろいろありますよね。ありますけれども、これをどう取り上げるかとなると、一つ一つが全部難しいですね。しかし、何かやらなきゃいけない。だから、政府・与党連絡会議みたいにとにかくやろう、感情論を抑制し、ちゅうちょ、遅疑逡巡も排してやろう、これがアクションプログラムだと、こう言っているんですが、まさにアクションせよと言っておるんだけれども、実際に煮詰めてみると難しいことだらけ。しかもなおかつ、突き破らねばならぬ。今安倍外務大臣としましては、アクションプログラムに盛り込むべき最大限目は何だとお考えですか。
  220. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) これは各国から日本に対していろいろと要請が出ております。例えば関税引き下げ等についても品目ごとの、ASEANはASEAN、アメリカあるいはECその他から出ておりますし、あるいはまた基準・認証制度等についても要請が出ておりますから、やはりまずアクションプログラムでやらなきゃならぬのは、こうした関税の引き下げ措置ですね、これをどういう形でやるかということが一つの大きな眼目だろうと思います。それからもう一つは、やはり基準・認証制度を思い切って改善していく、これがなかなか厄介な問題を含んでいますが、各国からそうした市場アクセスに非常に問題がある、日本が閉鎖的である、こう言われるところのゆえんは、一つはそういう基準・認証制度というものにあるわけですから、この点は今回のアクションプログラムの中で取り上げていかなければならない課題であろうと思っております。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 実はこれは私の私見なんですが、大臣の言われたことはそのとおりだと思いますよ。それを盛り込みますね。一応できますね。ところが、アクションプログラムを実行してみたら意外に効果がなかった。例えば、宮澤総務会長の言葉をおかりしますと、公式な場での講演の中で、確かにやることはよい、しかしやっても効果がない事態をも考えねばならないよということを与党の三役のお一人が既に言っておられるわけで、では結局一時的なびほう策的な効果しかないとすると、私は恒久的な日米間の摩擦解消というものを本当にやろうとすれば通貨制度、それから両国の税制、これにともに手をつけなければ恒久的な、抜本も難しいが恒久的な解決はあり得ないと思っていますが、大臣どうお考えですか。
  222. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) この金融の自由化は相当進んでおりますが、しかし通貨制度については確かに改善の余地が私はあると思っております。そのためにボン・サミットにおきましても議題になりまして、今度の金曜日から東京で始まる十カ国蔵相会議におきましても、通貨制度の機能を一層効果的にしよう、改善をしていこうということで議論が行われることになっておりまして、そうしてこれはさらにソウルの十カ国会議に進んでいくのではないか、こういうふうに思っておりまして、やはりこれは相当大きな問題だと思っております。  ただしかし、これもなかなか時間がかかりまして問題だと思うのですが、これは日本日本でアクションプログラムを組みますが、やはり相手の国もそれに応じてやってくれないと、例えばアメリカの今のドル高なんというのが日本との貿易の黒字を累増している大きな原因になっていることは間違いないわけですから、日本は輸出に対してこれで非常に力がつきますし、アメリカは日本に対する輸出で大変ハンディを持った輸出ということになるわけですから、そういう点ではアメリカ側の、あるいはまた諸外国の輸出努力ということもこれに対応して必要になってくるのじゃないか、こういうふうに思うわけなんですが、いずれにしてもまず日本がアクションプログラムをちゃんと立派なものをつくって、そうして理解を求めて、そうしてこれがニューラウンドに向かって推進していく一つのばねになっていけば、その間に保護主義というものが抑えられながらニューラウンドに向かって世界の足並みがそろっていく、こういうことになっていくだろうと思います。なかなか困難な仕事でありますが、全力を尽くしたいと思っております。
  223. 秦豊

    ○秦豊君 今大臣言われた点は、実はかなり収れんされていまして、例えばアメリカのボルカー氏、連邦準備理事会議長は、変動相場制のもとでの為替レートの不安定というものが国際協調によってもどうも抑えがきかないというふうなときには思い切って通貨制度を改革しろ、こう公式に提言しています。それから、ベーカーアメリカ財務長官も、国際通貨制度改革のための会議、これを早急に開くべきだと。この二つの提案がねらっているところは例のフランス提案に収れんされるんじゃないかと思うんですよ。つまりターゲットゾーン構想ですね。だから、フランスが提唱してヨーロッパの国々ではたしかベルギーとイタリアが何か能動的で、あとはちょっとよくわからない、イギリスの態度は。わからないが、少なくとも三カ国は前を向いていますね。このターゲットゾーン構想が、今大臣のお答えにあった六月二十一日からの先進十カ国蔵相会議で報告書になって出てくる。ターゲットゾーンという形でダイレクトに出るか、そういうものを含んだリボートになるのか、それはわかりません、やってみなければわかりません。けれども、この蔵相会議にはもちろん外務大臣お出になるわけじゃなく、竹下さんが取り仕切るわけでしょうから、しかし少なくともこういう国際通貨に関係した問題ですから、外務大臣とか通産大臣とか経企庁長官とかいろいろな方々の行政の関心の最大限目の一つだと思いますが、私はやはりそろそろドルの高値不安定からソフトランディングする、安定化させる、それから両国間の貿易構造それから途上国の債務の問題を含めてそろそろこの辺にメスを入れないと、もう国際的な協調は期しがたい。だから通貨改革が当面の焦点であり、アクションプログラム結構だ。結構だけれども、それだけでは大きな荷物が残りっ放しで、その荷物を削り落とすため、シェープアップするためにはターゲットゾーン構想を含めた通貨改革というふうにだんだん収れんされつつあるのではないかというのが私見ですが、大臣どうですか。
  224. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 私はターゲットゾーンというところまでなかなか収れんできないと思いますけれども、しかし通貨改革については、フランスのミッテランさんの立場は、今の枠組みでなくて、枠組みを広げた、途上国も含めたもっと広範な通貨制度の改革というものを提唱しておられるように私は思うわけでありますが、この構想と今の十カ国蔵相会議が進めておる考え方とちょっと差があるように思いますけれども、しかしこの通貨にも問題があるということはアメリカ自身も、ベーカーさんなんかも言い出したわけですから、この蔵相会議でまずそうした通貨に対する改善措置というものが進んでいく、そうして今おっしゃるようなソフトランディングというような形で収れんしていけば、大変一つの大きな意味を、国際貿易上の改善にも資するのじゃないか、こういうふうに思っております。
  225. 秦豊

    ○秦豊君 それから、これは実は総合安全保障関係閣僚会議と国防会議の枢要なメンバーのお一人でいらっしゃる外務大臣に伺うわけですが、加藤防衛庁長官の今度の訪米防衛首脳会談の後、ワシントンから一斉に返ってきているあの反応というのは、日本は今や決然として戦略的戦力の保持に向かって転換した。今までは戦術的戦力の保持、今度は戦略的戦力。言うまでもなく対ソ世界戦略の一環としての抑止力という認識が根底にあります。それを担うものが五九中業である。もし我が国が専守防衛とかこういうさまざまな防衛政策の骨格を乗り越えて戦略的戦力の整備を真に目指すならばそれは合意を突き崩すと私は考えていますが、外務大臣どうお考えですか。
  226. 安倍晋太郎

    ○国務大臣(安倍晋太郎君) 日本の防衛の場合は、あくまでも日米安保条約に基づいた中での日本自身の自主的な防衛ということですから、やはりそうしたアメリカはアメリカなりの考えはそれはそれなりに私はあると思いますけれども日本日本なりの防衛の考え方というものは基本は変わらない。その基本線に従ってやっていく、今の防衛大綱を実現していくための五九中業の推進だ、こういうふうな判断を私はしております。これは、私専門家じゃございませんけれども、全体的にはそういうふうなことじゃないか、枠組みは私は変わらない、こういうように思います。
  227. 秦豊

    ○秦豊君 少し残っておりますから、最後に国連局長、この条約に直結して、例えば女子差別撤廃条約関連条約の一覧という外務省資料によると、例えば婚姻の同意を含む、教育差別の防止条約、これはユネスコ関係ですが、少なくとも四つありますよね、まだこれから手をつけるべき問題。これについて、確かにおっしゃるようにILO関係の十四条約については本条約によってかなり吸収される部門があることは納得します。納得しますが、私が申し上げた女子差別に関連した八つのうちの四つ、これについてはどういう優先順位で対応して処理されようとしているのか、それだけを伺っておきたいと思います。
  228. 山田中正

    政府委員(山田中正君) お答え申し上げます。  今先生指摘になりましたのはILOではなくて国連の場で作成されたもので、主として婦人関係の条約であろうかと思いますが、今先生一つお話ございましたユネスコの教育における差別防止条約、これはやはり基本的には非常に重要な条約でございまして、何とか実現する方向でいたしたいと思っております。  それから婦人関係では、既婚婦人国籍に関する条約、これは実は妻の帰化要件を容易にするということがございますが、これは今回の御審議いただいております条約との関係では積極的に抵触するものでございます。したがいまして、これはやるつもりはございません。  それからまた婚姻の同意に関する条約でございますが、これは婚姻の届け出を本人、当事者がやらなきゃいけないという規定がございますが、我が国の場合は現実の問題といたしましてほとんどが書類の届け出になっております。そういう社会情勢から見まして、これもちょっとできないというふうに考えております。  婦人に直接関連するのはこれでございますが、なお国連で採択いたしました非常に一般的な基本的な条約で人種差別撤廃がございます。これにつきましては鋭意努力したいと考えております。
  229. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十一分散会