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説明員(永井紀昭君) ただいま
委員の方から御
指摘がありました
意見はかねてから見られたところでございまして、
法制審議会の方でも過去に二回これが
検討されたことがあるわけでございます。要するに夫婦別姓というものが現在の社会的な
活動の場が広がってきた場合には必要なのではないかという、そういう認識のもとにいろいろ議論がされたわけでございます。しかし、結果的には二回とも支持はされなかったわけでございます。幾つかその理由の
考えられるところを申し述べてみますと、三点ぐらいあるんでございますが、まず第一は、
我が国におきましては夫婦同姓の原則というのが戸籍制度と相まちまして非常に社会的に定着している。それで、夫婦別姓の制度を緊急に取り入れるべきかどうかということにつきましては、どうも社会的要請は婚氏続称制度の要請が非常に小さい、こういうふうに見られていたわけでございます。五十一年度に民法の
改正によりまして七百六十七条に二項が新設されまして、婚氏すなわち婚姻中の氏をそのまま継続して使用することが認められたわけでございますが、むしろそちらの方の
要望の方が非常に強かったということが大きな原因だと思われます。
それから第二点は、夫婦別姓を取り入れますことは、これによって社会生活上の不都合とか混乱が意外に予想されるのではないかということでございます。それで、
国民感情にも必ずしも合致していないという、こういう見方があったわけでございます。と申しますのは、実は親子で氏が異なってくる、あるいは兄弟間で氏が異なってくるという現象が出てくるわけでございます。それで、婚氏続称を認めた理由の中に、実は親子間で氏が異なるようなことがあってはかわいそうではないかということから、むしろ婚氏続称ということが認められたわけでございます。
それで、これに関連しまして、例えば子供さんが生まれた場合に、夫婦別姓を認めておりますとどちらの姓にするのかということが、例えばこれは多分夫婦の
協議で決めるということになろうかと思います。ところがこの
協議が調わなかった場合はどのように決めるのか。
委員も想像されるところであれば、大体実務家としては多分
家庭裁判所で決めることになるんではないか、こういう発想が浮かぶかと思うんですが、実は
家庭裁判所でもこれは決めようがないわけでございます。この決めることについて、夫婦間で、あるいは親子間でいたずらな確執が起きるようなことがあっては必ずしも望ましくないという、そういうような
考え方があったわけでございます。
それから第三番目には、夫婦別姓といたしますと戸籍制度の根幹を全面的に変えていかなければならないということが起きるわけでございます。これは
現行戸籍制度は、御承知のとおり夫婦とそれから氏を同じくする子供を
一つの
単位として編製しております。この編製
方法は非常にメリットがあるとされているわけでございます。一覧性といいますか、非常に調査がしやすい、相続人の範囲なんかを調査する場合に非常にメリットがあるとされておりまして、これは現に外国の法律実務家が
日本の戸籍制度については非常にうらやましいという、こういうようなことを我々も聞いているわけでございます。その上さらに、夫婦別姓にいたしますと完全に個人登録という問題になってくるんではないかと思います。個人登録になってきますと、やはりいろんな相続人の範囲なんかを確認する場合に非常に複雑な手だてをとらなきゃならない。さらに、実はこれはちょっと言いにくいことではございますが、完全にこの個人登録を突き詰めていきますと、
国民総背番号制の導入への道になるんじゃないかということも一時言われていたわけでございまして、こういった観点から見ますと、どうも夫婦別姓を一部的にせよ取り入れることについては問題があるのではないかという、こういったような議論が大体出てきていたように思われるわけでございます。