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1985-05-28 第102回国会 参議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十八日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二十四日     辞任         補欠選任      吉川 芳男君     嶋崎  均君  五月二十八日     辞任         補欠選任      嶋崎  均君     岡部 三郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平井 卓志君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 久保田真苗君                 抜山 映子君     委 員                 大鷹 淑子君                 岡部 三郎君                 後藤 正夫君                 中西 一郎君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 秋山 長造君                 八百板 正君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 関  嘉彦君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房長  北村  汎君        外務大臣官房審        議官       斉藤 邦彦君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省中南米局        長        堂ノ脇光朗君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局長  国広 道彦君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報調査        局長       渡辺 幸治君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        警察庁刑事局国        際刑事課長    笠井 聡夫君        警察庁警備局公        安第三課長    鏡山 昭典君        外務省中近東ア        フリカ局外務参        事官       久米 邦貞君        外務省経済協力        局審議官     木幡 昭七君        大蔵省国際金融        局国際機構課長  加藤 隆俊君        水産庁海洋漁業        部国際課長    草野 英治君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○米州投資公社を設立する協定締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、吉川芳男君が委員辞任され、その補欠として嶋崎均君が選任されました。     ─────────────
  3. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 米州投資公社を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 八百板正

    八百板正君 どうも皆さん御苦労さまです。  外務大臣に伺いますが、一九五二年から五四年の日米関係外交文書アメリカ側から発表されておりますが、これは政府として外務省としてこの資料を正式に入手されましたか、いかがでしょうか。
  5. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 入手いたしまして、ただいま検討中のところでございます。
  6. 八百板正

    八百板正君 これについて検討中というお話でございますが、我が国政治の上に、外交の上に新たな考慮を払うべきものを感じられましたかどうか。内容はごらんになっておられる事柄と思うんですが、ちょっと私の方から指摘いたしますと、例えば共同軍事行動に対する指揮権アメリカ軍にあるとの方針が明示されておることについて、それから有事の判断米側にあるとの方針日本承認事項となっておるというような事柄日本自衛隊もシビリアンコントロール、日本憲法に規定された、文民というような言葉もあるわけでございますが、こういうふうな点が当然に触れてくるわけですが、憲法改正も含めて、日本政府外国に責任ある立場外務大臣約束をしておるという資料、こんなふうな点について外務大臣見解をこの際述べていただきたいと思います。
  7. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日米行政協定関連文書につきましては、前回公開の段階では審査作業が終了していなかったので公開記録の中に含まれなかったものであるわけでございますが、これらの関連文書については、公開制度基本原則に従って検討中でありまして、いずれにしましても、今回の米側文書公開の実態をも十分見きわめた上で我が方の記録公開のための検討作業を急ぐことといたしたい、これが外務省としての基本的な考え方でございます。  なお、今いろいろとお話がありましたような点については、検討もしておるわけでありますが、例えば統合司令部なんかの問題についても出ておるわけですが、これは、日米行政協定の第二十四条におきまして、「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」と規定されているにとどまるものでありまして、御指摘されたような合意日米間に存在していたという事実はありません。いずれにしましても、昭和五十三年に作成された日米防衛協力のための指針においては、「自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下に、それぞれの指揮系統に従って行動する。」こういうことが明記をされておるわけでございまして、この点において明快であろう、こういうふうに思っております。
  8. 八百板正

    八百板正君 ただいま外務大臣のお言葉にもあらわれましたように、共同措置をとり協議する、こういうふうな順序で発言されましたが、共同措置米軍指揮下に行われて、その後で何らかの協議という、こういう順序になったのでは実質的に日本の自主権というものは吹っ飛んでしまうことになるのではないかと思うわけであります。  いずれにいたしましても、この問題は北方四島の問題も含まれておる事項でございまして、外務大臣見解だけで日本政府方針とすぐさま言い切れないものもあるだろうと思うのでありまするが、これらのアメリカ側発表資料に基づく過去の事実が、日本政治外交の上にどういうふうに影響を与えるか、あるいはまた、外交上新たな考慮を払うべきものを感じたかどうか、こういうふうな問題を含めましてひとつの、政府は統一したこれに対する見解を表明すべきではないか、こういうふうに思うのでありまするが、こういうふうな点について一定の時間を置いてもよろしい、政府の統一した見解というようなものを出すべきだと思うが、そういうふうな点について外務大臣はどうお考えになっておられますか。伺っていきます。
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは何分四十年近い前の文書の公表でございますが、その後日米間で正式に具体的に、例えば指揮権等の問題についても先ほど申し上げましたように、五十一年に日米防衛協力のための指針も決っておるわけでございますし、その他の諸問題についてもその後の日米間の交渉とか合意の中で日本政府としての基本方針は明らかになっておるわけでございまして、これらの問題について今さら統一した形で日本考え発表する必要は私はないんじゃないか。これまでの日米間の安保条約そのものもその後大きく改定をされたわけでありますし、その他についても日米間の文書その他で日本姿勢というものは明快に出ておりますからそういう必要は今さら認めないわけでございますが、一応私の見解を申し上げておきます。
  10. 八百板正

    八百板正君 日本憲法基本に触れる明確な外国資料でございますから、ただ単に、既に織り込まれた事実だというふうに言うには余りに事は重大だろうと、こう思うんでありまして、そういう点について、今のお話政府意見としてさらに検討されることを希望いたします。これについてはいかがですか。
  11. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 御要請があれば、それに対して政府としての今日の正式な見解はいつでもお示しをいたしたいと思います。
  12. 八百板正

    八百板正君 そういう理解の上にこちらとしても一つ行動を起こすように考えますので、心におとめおきをいただきたいと思います。  それから、何かすべてが決まらないままでなし崩しにされていくというふうな日本外交なり政治姿勢に、一体陰で何をやっているんだかわからぬと、こういうふうなことになっては日本政治の不信も当然に起こってくるわけでありまして、知らない間に重大な約束が既に行われておったというふうなことでは許されないわけであります。  きょうの新聞報道を見まするというと、外務省SDIに対して参加の方向を決めてあると。しかし、発表は当分保留する、こういうふうな報道がございまして、こういうふうな点を考え合わせまするというと、態度は表明しないままに技術協力の面で日本の高度の技術面を提供して、補完して、アメリカとの共同研究の上でこのSDIの実現に向かって力を添えるという、こういうふうな方向をとって、ヨーロッパの出方を待ちながら対応していく、こんなふうにも見られるわけでありまするが、この点についてはどの程度の外務省見解が統一されておるのか、外務大臣からお答えをいただきたいと思います。
  13. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) SDIにつきましては、これは私が本委員会においてもしばしばお答えをいたしましたように、今の日本政府基本的な考え方は、SDI研究に対しては理解を示すということでありまして、これ以上どうするか、こうするかということについては目下検討中である、アメリカ専門家意見も聞いておりますが、目下検討中であるということでございまして、それ以上何も今は日本政府としては決めておりません。この点については、きょうも総合安保閣僚会議がございまして、その席で私からこの方針を明らかにしたところであります。
  14. 八百板正

    八百板正君 新聞報道をこのまま見ますると、態度を明確にするには時間がかかるが、「その間、日本政治的には留保の態度を示さざるを得ない。その枠内で米国の技術協力要請に慎重に対応することになろう」というふうなことを外務省幹部が述べたという報道がございますが、事実としては民間SDIに伴うハイテクの面、エレクトロニクスの面、いろんな面で日本民間に、アメリカ技術よりある部分すぐれており補完すべきものを持っておるというふうに一般に見られておるのでありますが、そういう面では民間的立場では協力していくという形が続けられていくということになるのを了承しながらやっていく、こういうふうなことになるのですか。そうすると、何といいますか、ただ理解を示すというだけではなくて、具体的行動の中で協力していくということに結果としてなるわけですが、その辺のところはどんなふうにお考えですか。
  15. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) ただいまの御質問のポイントを必ずしもよく理解できませんでしたのですが、基本的には我が国SDIに対する協力あり方については先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、政府方針については目下慎重に検討中と、こういうことでございます。  民間の問題につきましては、制度の問題としては従来から御答弁申し上げておりますが、民間のいわゆる汎用技術対外移転については、現在の制度のもとにおいては原則的に規制がない、規制をしないというのが政府方針であるということは、これは現行制度の問題としては従来から御説明申し上げておるところでございます。
  16. 八百板正

    八百板正君 この問題は今後また続けて質疑を重ねる問題と思っておりますが、短い時間で二、三の点、また伺っていきたいと思うんでありますが、指紋押捺については、日本政府は、法務省は何といいますか、技術的な対応で事済むというふうに考えておるようでありますが、これはやっぱり国際問題でありますから、法務省的見解だけではらちの明く問題ではなかろうと思うんです。  変なことをお尋ねしますけれども、外務大臣指紋押捺された経験がありますか。
  17. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、まだ私はございません。
  18. 八百板正

    八百板正君 問題は、差別とか屈辱等というような問題は、そういう扱いを受ける人の立場に立って判断しなくてはいけない問題であって、問題はそこにあるんじゃないかと思うんであります。でありますから、そういう扱いを受けておる外国人が現実に差別感じ屈辱と感じる、こういう事実がある限りにはやはりこれを強制すべきものではない、こういうふうに私は思うんでありまして、こういう点については法務省見解対応よりも、やはり人間の平等という立場で、日本に居住する全人民に平等に与えられる平等の権利だ、扱いだ、こういうふうな意味行政職という立場あるいは政治家という立場もさることながら、やっぱり人間としてこの問題に対する一つ見解がきちんとあってしかるべきだと私は思うんであります。そういう意味で、国際人的感覚法務省に対して外務大臣はこの問題の処理に当たって影響力を行使し得る、すべき立場だろうと思うんでありますが、今までもたびたび出ている話でございますが、外務大臣はこの点どういうふうにお考えでございましょうか。
  19. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 指紋押捺問題につきましては、外国人登録法昭和五十七年に改正されたばかりであるとの事情がありますが、内外の諸般情勢を踏まえて関係省庁間で鋭意検討を重ねてきた結果、先般早急に実施可能な運用上の問題につきまして政令改正等措置がとられた次第であります。この点については先週の日韓間の意見交換におきましても日本側より説明したところであります。いずれにしましても、日本法治国家でございますから、現行法令は守ってもらう必要があると考えるわけでございますが、しかし、在日韓国人待遇問題一般についてはより長期的に諸般情勢を踏まえながら我が国の自主的な立場から研究検討が続けられるべきものである、こういうふうに考えております。韓国側との間では、以上の考え方を踏まえて、今後とも機会あるごとに日本側のこうした基本的な考え方等説明していく考えでございます。
  20. 八百板正

    八百板正君 私が希望するのは、行政的な立場で、差別を受けたと感じる人々に対して説明をして納得を得るように努力をするという、そういう行政職的な立場ではなくて、もっと基本的な人間として、国際人としての外務大臣見解を私は聞きたいのでありまして、そういう意味でこの指紋押捺制度をやめるという方向外務大臣日本の必要な処置をとるように積極的にその立場と地位を利用して影響力を行使することを希望するという意味で私はお尋ねをしておるのでありまして、そういう意味で事務的に、くるくると指を回したのを今度はちょんと押せばいいんだ、黒インキを色のないインキに変えたんだというような、そういういわゆるまさに小手先の問題ではなくて、もっと基本の問題として考える必要がある、そういうことを外務大臣に私は希望する、こういう意味であります。おわかりでしょうか。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 指紋押捺制度につきましては、これは日本で採用されておるだけじゃなくて、外国にも多くのその例はあるわけでありまして、日本外国人がおりますが、その外国人取り扱いについて日本主権国家としての指紋押捺制度というものを維持していくということについては、これは人権問題とか平等の観念とか、そういうものとは別の立場日本独自のあり方としてこれもまた必要であるという点については私もそういうふうに思っております。  ただ、日本の場合においては外国人の中で朝鮮の人が大半を占めておる、そしてこうした朝鮮の人と日本とのこれまでの歴史的ないろんな関係から見て、同時にまた日韓間の交渉の経緯から見まして、やはりこうした人たちに対しては法的にも日本人と同じような取り扱いをするという方向でできるだけの措置を講じなきゃならぬという立場日本はこれまで努力し、そうした措置も講じてきておるわけでございまして、そういう立場からしてこの指紋制度というよりは指紋制度改善とか改革とか、そういう面については今後の長期的な課題として取り上げるということは、これは必要な面も私はあるのではないか、こういうふうに率直に思っております。ただ、今日の改善措置は今の制度のもとにおいては日本としてもあらゆる立場から、状況から最善の措置としてやったわけで、この措置については在日しておられるところの外国人もひとつ日本のそうした努力というものを理解して協力していただきたいと思っておりますが、これは法律として、法治国家として当然のことであろうと思うわけでございます。同時に、基本的にはこれですべて終わりだというふうには必ずしも思っておりません。というのは、日韓間においても依然として指紋押捺制度についての話し合いがあるわけでありますし、待遇改善についての日本韓国との間にはこれを進めるという合意もあるわけでございますから、将来的な問題としてこの問題について改善をする、あるいは改革をする余地があるならば、これは改革をしていかなきゃならない。それが日本としての将来へ向かっての日韓の問題、あるいはまた日本における韓国人あるいは朝鮮の人に対する日本政府あり方として当然これを十分念頭に置いていかなきゃならない課題であろう、こういうふうに思っておるわけであります。
  22. 八百板正

    八百板正君 問題は固定的に考えてはいけない、こういう問題でありまして、とりわけ外務大臣はそういう面で、日本の規則がこうだから外国人理解してもらう。一応のそれは努力行政職という立場からいえばうなずける事柄でありまするが、やっぱり一つ方向性を持って行動をとるべきものだ、こういうことを考えまして、そういう意味希望を強く述べておきます。撤廃する方向で進むべきものだという希望を強く述べておきます。  それから、サミットに関連する事項で、六月の二十一日ですか、十カ国の蔵相会議が予定されておると伺いますが、この会議ではどういうテーマが用意されておりますか。これは大蔵省の方がお見えになっておられますか。
  23. 加藤隆俊

    説明員加藤隆俊君) 御指摘のように六月二十一日、東京で十カ国蔵相会議を開催する予定でございます。そのときの議題といたしましては、国際通貨制度の機能の改善ということについて意見交換が行われるということが予定されております。
  24. 八百板正

    八百板正君 この前のサミットでは日本貿易黒字の問題を中心としてある意味では孤立無援の袋だたきに遭うのじゃないかというような一部予想などもございましたが、結果は、それぞれの国の痛しかゆしの諸事情等もあるのでしょうか、それほどその点だけについていえば心配したような結果は出なかったようでございまするが、やはり問題はいずれの問題を取り上げましても、国際通貨の問題に対して一つ方向を打ち出さなければならない時期だろうと思うんであります。  そこで大蔵省大蔵大臣中心とする六月の通貨制度の、国際通貨の問題はどちらかというと非常に細かな技術的な問題で、現状を是認した上に立ってのお話し合いのように感じるのでありまするが、先進国の間の世界資本供与立場からもそうだし、また債務国立場に立ってもそうだと思うんでありまするが、一体国際間の債権、債務というようなものがどんなふうにして生じたかという、さかのぼっていきますると問題は非常に多いのでありまするが、いずれにいたしましてもアメリカドル中心とする通貨制度そのものにやはり根本的な検討を加えるという時期に来ていると私は思うんであります。ブレトンウッズ体制以来、スミソニアン体制と申しましょうか、漸次今日を迎えておるわけでございまするが、率直に素朴に見てアメリカ通貨国際経済価値判断の基軸になっておる。そのアメリカが事実上その形で国際貿易の中で債務国になりつつある、こういう現状であります。通貨発行国アメリカがその通貨による事実上の債務国になっていくという、こういう関係の中で、依然としてドルは強くて円は割安で、そして世界一高い金利アメリカドルが逆にそういう関係の中でアメリカに集まっていく、こういうふうな関係にあるわけでありまして、これを日本現状からつかまえていきますというと、日本はせっせと働いてそしていろんなものをつくりあげて、最高の技術を行使して、主としてエレクトロニクス関係黒字をつくっておるという状況でございまするが、いずれにいたしましても日本が、日本人民のいわば命とも言うべき生命の時間をつぎ込んでどんどん物をつくって、そして外国との取引の中で黒字をつくって、そして黒字をためていく、それがアメリカドルである。しかもそれが不換紙幣である。そしてドル発行国であるアメリカ現状はこのような状態であるというふうなことを考えまするときに、この国際通貨の問題についてもっと根本的に取り組んでいくという姿勢先進国と言われるサミットの中でもそうだし、あるいはまた債務国途上国という立場からいってもそうだし、そういう問題として世界的にこの問題は取り上げていい問題じゃないか、私はそういうふうに思うんであります。  そういう意味で、この蔵相会議は単なる小手先通貨問題の現状を是認した形の中でいろんな論議がされるように感じられまするけれども、もっと突っ込んでこの問題を掘り下げて、そして東京サミットがもし予定どおり開かれるということになりまするならば、その中の重要なテーマとしてこの国際通貨の問題は今までのマンネリ的な立場からではなくて取り上げていくという、非常に重要な世紀の課題ではないか、こういうふうに私は思うんでありまするが、この辺についての認識なりお考え外務大臣、どんなふうにお考えでしょうか。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 現在、確かにおっしゃるようにアメリカのいわゆる高金利あるいはドル高というものが国際経済の中で大きな問題となっておることは事実でありますし、我が国もしばしばこれは指摘もしております。債務累積国の間でもやはり金利が高いということが債務累積問題を解決する上において一つの困難な問題でもあろうと思うわけでございますが、そういう中でフランスなんかが確かに根本的な通貨制度改革を主張して今日に至っていることもまたそのとおりでございますが、今回サミットにおきましてもそうした通貨問題についてのいろいろな議論が行われたわけでありますし、基本的にはやはりアメリカ高金利の是正ということが各国から要請、要望されました。アメリカ自体アメリカのこの高金利ドル高基本というものが、背景というものがアメリカ財政赤字にあるということで、財政赤字の克服ということについてアメリカの責任を果たしていく努力をするということをサミット経済宣言の中でも明記をされてきておるわけであります。そういうことで通貨問題というのは確かに今世界の大きな問題であります。  そこで、この通貨問題についてはどこがそういった問題を行うか、取り扱いをし改革改善を行っていくかということにつきましてはサミットにおいても合意されたわけでございますが、先ほど大蔵省からも答弁があったように、世界通貨制度の機能をさらに一層安定的かつ効果的にする必要性ということについては、そのための検討を十カ国蔵相会議にゆだねるということにサミットでもなりまして、十カ国蔵相会議東京でも行われ、その次にはソウルでも行われるということで、我々としてもその検討の結果というものを待ちたいと思っております。相当今の通貨制度あり方、あるいはまた機能改革といったものについて根本的な議論も行われるものであろう、そういうふうに思っておりますし、我々は十カ国蔵相会議検討にまちたいと思うわけでございますが、それじゃこの次の東京サミットでどういうふうな形になるかということになれば、そうした検討の結果というものも出てくるでしょうし、今後のやはりアメリカ経済の動き、アメリカ高金利の動き等も出てくるでありましょうし、そうした情勢を踏まえながら、まだサミット議題が何も決まっておるわけじゃありませんけれども、私はやはり東京サミットにおいてもそうした通貨の問題については、これはこれまでのサミットでもしばしば議論をしたわけてありますから、議論の対象となり得るということはこれは予想されるところでございます。
  26. 八百板正

    八百板正君 サミットというものをアメリカとソビエトの対立という構図の中で考えて、そして西側先進国共同して、言ってみればソ連を何らかの形で封じ込めていくんだ、こういうふうな発想に立っていくという段階はもう卒業すべきではないかと私は思うのであります。そういう意味で、サミットも始めましてからいろんな問題を取り上げてやってきましたが、私は余り詳しく調べておりませんけれども、各国の代表がそれぞれ出てきて、そしてときには自分の国の中で自分の地位が保たれるためにどんな問題をどんなふうに扱ったらいいかという、いわゆる指導者の保身の立場から利用されたという面も若干あったように思うんでありまするが、いずれにいたしましても、基本的には西側の先進国が一緒になっていろんな問題を討議してソ連に対して一つ立場をつくっていく、こういうふうな共通した発想がずっとあるわけでございまして、そういうふうな立場に立ったサミットというものをもう十年を越した今日ではそのものを見直すという必要があるのではないか。惰性で、マンネリで十年もただ続けていくというだけでは芸がないわけでありまして、そういう意味東京にとっては二度目のサミットでありまするから、ここで思い切った発想の転換を打ち出すという、そういう東京サミットにするのでなかったならば私は意味がないと思うんです。むしろ東京サミットを機会にやめますというぐらいのことを打ち出してもいいんじゃないかと思うのでありますが、そういう意味でこれを続けていくためには、やはりマンネリ的な発想から飛び越えて一つの新機軸を打ち出す、こういう身構えが私は必要だろうと思うんです。これはちょっと外務大臣に求めても無理かもしれませんけれども、やっぱり常にそういう、サミットだって、前のサミットではこんなことを決めた、しかしそれがどういうふうに実行されて、そこにどういう問題があってこれからどうするかというふうな立場ではあんまり論議されておらないような感じがするんでありまして、ただ集まって耳寄りな話を言い合ったり、若干話し合うというような程度の繰り返しでありまして、しかもそれが西側の立場に立ってというふうなのでは非常に意味が薄らいできているんじゃないか、私はそういうふうに思うんでありまして、そういう意味で、東京サミットの中では今までとは違った一つの発想を打ち出すような、そういう気構えが私はあっていいんじゃないかと思うんです。外務大臣は、指導者という言葉は余り私は好みませんけれども、いずれにしても日本のかじ取りをもって任ずる立場でしょうから、そういう意味国際社会の中で日本の立っている立場をひとつ考えて、そしてサミットに対して新たな発想で立ち向かっていくという、こういう立場で打ち出していく必要があると私は思うんですが、この辺のところは、まあ今度東京の番だからというふうに軽くお考えになっておられるんでしょうか。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) サミットは御承知のように経済サミットと言われておりますように、当初は石油ショックで世界経済、特に先進国経済が混乱に陥った中で、これに対して経済において力を持った国がどういうふうに協力して対応していくかということについて話し合う、そういうところから出発をいたしまして、主として経済問題を中心にしてサミットが進められたわけでありますが、最近は御承知のように、世界の経済だけじゃなく政治にもいろいろの変化が出てまいりまして、サミットはそうした変化とともにこれにも対応していくということから、東西問題あるいはまた平和と軍縮の問題等につきましてもサミットで七カ国の首脳が集まった場合の議論も行われるようになったことは事実でありまして、やっぱり経済の問題、政治の問題をあわせてサミットで協議をされ、また場合によっては合意も行われたわけであります。  今回も戦後四十周年ということで政治宣言も出されたわけでございますが、経済宣言において特に今回の大きな成果は、保護主義というものを抑えて自由貿易体制をやはり進めていかなきゃならぬ、そのためにはニューラウンドを早期に開始をしていこうということで新しい合意がなされたということは、これはそれなりに大きな私は意味を持つものじゃないか。あるいはまた、南北間の問題についてもこれまでもそれなりの成果を上げてまいりました。今回の会議でも南北問題についてはさらに積極的に対応していこうという合意がなされたことも、今アフリカを中心とした南側の非常に困難な事態というものを考えるときにそれなりの実りがあったと、こういうふうに思っておるわけでございますが、ただサミットあり方につきまして、今回のボン・サミットにおきまして例えばミッテラン大統領なんかから、少し今までのサミットというのはだんだんと年をふるにつれて官僚化してくる、そこでもっと首脳の率直な意見交換が行われるような場にしなきゃならない、そしてまた、いろいろと決定を行うということになっているけれど、その決定はやはり国際会議等がそれぞれ決定の役割を持っておるんで、サミット参加国だけで世界の問題を決定するということについては問題もあると、そういうふうな疑問も出されたわけでございまして、確かにそういう意味では、サミットが十一回になりますけれど、サミットの運営というのが硬直化するというのは私もよくないと思っております。  そういう意味でミッテラン大統領のそうした意見等も踏まえて、来年の東京サミットにおきましてはもっとこれまでとはやはり違った一つの斬新な形での会議の運営、日本の主導によるところの会議の運営というものが行われる必要が私は出てきた、それがまたサミットというものの役割というものをますます重からしめるものじゃないか。来年のことですから、これから日本としても議長国としてどういう運営をするかというのは、日本の責任ですから、いろいろの面から具体的な検討を進めるわけでございますが、今お話しのような点も私も大事な点を含んでおると思っております。  来年の東京サミットを成功させるためにも、やはりただ今までのあり方ということだけにとらわれるということはよくない、やっぱり日本の二度目の主宰でございますから、それなりの斬新性を持った運営にしていかなければならないんじゃないかと、こういうふうに思っております。
  28. 八百板正

    八百板正君 時間もございませんから、提案的に若干の意見を申し上げて結びにしたいと思うのでありますが、斬新的な東京サミットであるようにという言葉がございましたが、具体的に日本立場だけからと言ってはなんでありまするが、日本立場でこの種の国際行動をするということになるんならば、私は思い切って日本、中国、朝鮮韓国、ソ連あるいはその他の国も呼びかけまして、極東のサミットという言葉を使っていいかどうかわかりませんが、そういう会議を少し準備して提唱していいのではないかと思うんであります。これは一つの私の提言であります。  それから、公社の問題に触れて申し上げなくちゃいけませんが、非常に古い歴史の経過から見まするというと、ローマ帝国が征服異民族を含めて帝国内の平和をもくろんだパックス・ロマーナという考え方がありますが、それがイギリスの支配になりましてパックス・ブリタニカ、それからアメリカ世界リードの立場に立ってパックス・アメリカーナというふうなことにずっと進んできておりまするが、さらにパックス・ルッソ・アメリカーナというふうなソ連とアメリカのもとに世界の平和を維持するというふうな考え方一つの形としてあらわれております。そういう中でサミットの形でアメリカ中心の、枠組みをしてそしてソ連に向こうを張っていくという、こういう一つの構図に現在なっておるんでありまするが、ある意味ではそれはこの米ソの世界支配に進んでいく一つの中間と申しましょうか、一つの過程でもあるというふうな考え方もできないわけではありません。  現に歴史的に考えてみましてもいろんな対立を米ソの間には起こしておりまするけれども、代理戦争みたいのを至るところでやっておりまするけれども、直接に戦火を交えて血を流したという両国関係の歴史はないわけです。それから、例えばかつてアメリカは、最近でありますが、ソ連に対する穀物を制裁的に輸出を禁止して、しかしいつの間にかこれもずるずるとなってしまっているという経過であります。  また最近は今までに例のない数字の二千七百万トンの穀物をソ連に対して供与といいますか売り渡す、こういうふうな話を決めております。こんなことになると、かつて問題になった日本に対して一千万トンの穀物を買いなさいと、これを日本はアフリカの援助に回すべきだというふうなことが出ましたが、これは大臣も直接間接に大変かかわっておられる事柄でございますが、そんな話もこのアメリカがソ連に対して二千七百万トンもの穀物を出すというふうなことによってまたひとつ形が変わってまいりまして、別の形で貿易摩擦のしりが別の方面の農産物の輸入をアメリカ日本に求めてくるというふうな形に動いていくのではないかというふうなことも考えられるわけでありますが、いずれにいたしましてもそういうふうな枠組みの世界の構図の中から抜け出して日本は取り組んでいくという姿勢が必要なんじゃないかと思います。と同時に、日本が何でもかんでもまっしぐらに突っ走ってトップランナーだというふうな考え方から、ここでひとつそういう意味で自己をコントロールするというふうな立場も必要だろうと思うんであります。  私は、そういう意味ではサミット宣言かあるいは次の機会あたりに国際的には日本は決してそういう大国にはならないんだと、やっぱり自分の地勢的条件の中で考えられる一つのコントロールのきいた文化国家として、あるいは化学技術の進んだ国として一つの柄に合ったような日本の国をつくっていくんだという小国宣言という言葉がどうか知りませんけれども、とにかく地球人口の四〇分の一の日本が経済的には世界の一割を占める経済大国だと、これがまたどんどん突っ走ってアメリカをも追い越すんだというふうなそういう思い上がった発想の中で経済の方は野方図に突っ走っていく、それから財政の方は小さく小さくと引き締めていくというふうな今のいろんな諸状況判断しまするというと、ちょっと日本は異常なんじゃないかと私は思うんであります。  そういうふうな立場考えながら、アメリカのある意味ではかつてのマーシャル・プランを思わせるような中南米に対する対応、対策、その中の一つのこの公社の日本の片棒担ぎ、こんなふうに考えてまいりまするというと、当面する問題としてはそれぞれに対処していかなくちゃいかぬけれども、もっと大きく日本のあるべき立場現状から抜け出して考えるというそういう次元の日本の発想なり対応が今日本の指導者には求められておるんではないかと私はそういうふうに思うんでありまして、またこういうふうな点も機会を見て私なりの見解を申し上げたいと思いますが、中南米に対する米州公社についてちょっと時間が超過しましたが、一言だけ伺っておきますが、これはつまり意図に反するような方向に進んだ場合には脱退するというようなことがあり得るのでしょうか、この辺ちょっと伺っておきます。
  29. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) 脱退の規定がございます。
  30. 八百板正

    八百板正君 そうしますると日本が現在考えておる立場あるいは懸念する立場について思わざる方向に進んだ場合には脱退することもあり得るというふうに考えてよろしいですか。
  31. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) これはいかなる問題が生ずるか、どういう問題が起こるかということを予見できないわけでございますので、あらかじめそういうものが生ずるということは申し上げかねると存じます。
  32. 八百板正

    八百板正君 私は、アメリカの中南米政策の片棒をこんな形で担ぐというよりは、もっと効果的な形で二国間の協力のもとにきめの細かい中南米に対する対応をした方がいいんじゃないかと思うんであります。おつき合い程度にこの公社に片棒を担ぐということはそれなりに評価し得る問題もあろうかと思うんでありまするが、本当に中南米の後進性、中進性に対して協力して、そして日本も中南米も対等の立場で、同権的立場でつき合っていけるような経済的な地位に中南米を高めていくということがあらゆる面で望まれるわけでありまするから、そういう立場からいえば二国間の協力という形できめの細かい中小企業に対する資金的な投資、協力あるいはそれを育て上げていくための技術協力というふうな面まで含めてやっていくべきが効果が上がるんじゃないかと私は思うんでありますが、これはまた次の機会に関連する事項として伺いたいと思いますが、以上述べました点について、最後に何か外務大臣の意向があれば伺って終わりにします。
  33. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどから八百板さんの非常に雄大な立場に立ったお話につきましては傾聴いたしましたが、日本は平和国家としてこれからますます国際的な相互依存関係が強まっている中で、世界に対する貢献というものをしていかなきゃならない。同時に世界からの信頼を得ていかなければ今後の日本の将来というものはあり得ないと私は信じております。  そういう中でこの日本国際貢献の一つとして、二国間の援助あるいはまた多国間の援助というものがあるわけでございますが、この多国間援助、協力の一環としての今の米州公社に対する投資でありまして、これはアメリカの片棒を担ぐというお話でありました。片棒を担ぐのではなくて、むしろ中南米諸国の盛り上がりのもとに中南米各国が参加して、もちろんアメリカも参加して構成される投資公社であります。そしてその投資公社は、米州開銀ができない民間の中小企業に対してきめの細かい協力をしていこうという立場でこれは設立されたわけでございますし、私はこの公社の意義というものはそういう面で今中南米の中小企業が直面している困難な事態を解決する一つの大きな有力な手がかりになるのであろう、こういうふうに思っております。ですから、そういう立場でこの公社に積極的に参加をして、そして公社の運営についてはあくまでもこれは、公社の規定にもありますが、政治的なそういう目的というものを追求することでなくて、あくまでも中南米の経済開発と中小企業の育成と救済というものを中心にこの公社が運営されることを期待もし、日本はそのための努力を続けていきたい、こういうふうに思っております。  二国間の援助につきましては、もちろんこうした多国間の援助あるいは多国間の協力と同時並行的に、これは日本としてもこれまでも行ってきておりますし、これからも積極的に進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  34. 久保田真苗

    久保田真苗君 米州投資公社協定について伺います。  まず、この公社の金利の問題、この前伺いました国際金融公社が一三%でそんな見当だろうというお話ですけれども、    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕 私漏れ聞くところによりますと一六%ぐらいになるかもしれないというお話があるんですが、一六%ぐらいになるような可能性もあるのかどうか伺います。
  35. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) この公社の行います投資につきましては、そもそも金利問題は投資については生じないわけでございますが、融資の金利につきまして今一三%を超える一五、六%ぐらいになるのではないかという御指摘でございますが、これは具体的には公社が設立されましてから理事会によって決定するということになるわけでございます。その金利が高くなるのかどうか、その辺は市場金利等いろいろな要素を勘案してその時点において公社の理事会において決定されるわけでございますので、今の時点でどのような金利になるかということは確たることは申し上げかねるわけでございます。
  36. 久保田真苗

    久保田真苗君 大臣、今のようなお話で一三%でも十分高い金利であるところへもってきて、それ以上高くなるかもしれないというお話なんですね。この点どうお考えになりますか。この金利が、さっきもいろいろ御指摘になりましたとおり、サミットでも問題になり、アメリカ自身もこれを認めて、赤字財政を克服努力するというようなのがサミットの宣言文に書いてあるわけです。我が国としても大いにこの問題をお取り上げいただいたことだと思うのです。累積債務のある国はましてさらにこれに困っているわけですね。大臣、この金利の問題どういうふうにお考えになりますか。
  37. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは公社、投資じゃなくて融資の場合だと思いますけれども、今おっしゃるように、やはり市場金利に並行して行うわけですから、今の中南米の金利体系から見ると、その程度のことにはならざるを得ないんじゃないかと私も推測しているわけでございますが、全体的に高金利の問題は、これは中南米の経済を圧迫している非常に大きな情勢であることは間違いないわけで、その根源というものにはやはりアメリカ高金利というものがあるわけですから、サミットにおきましてもそうしたアメリカ高金利の是正というものが求められておりますし、あるいはまた、これが累積債務等に及ぼす悪い影響等についても指摘があるわけでございますので、高金利問題というものについては、全体的にやはりアメリカを初めとする先進国世界金利をもっと下げるように努力していかなければならない課題だろう、こういうふうに思うわけでありますが、公社そのものも融資の場合の金利については、これは市場金利にやはり並行するという形で行われるわけでございますし、そうであっても、公社の投資は別ですが、融資についても中小企業に対する協力についてはそれなりのメリットというものは出てくるんじゃないだろうか、私はこういうふうに思います。
  38. 久保田真苗

    久保田真苗君 総額ただいま二億ドルでございますね。これで民間融資にリンクさせて融資していくという御趣旨なんです。そういたしますと、民間融資とセットした場合に総額としてどのくらいの金額で回るというふうに予測されますか。
  39. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) 公社がどの程度の資金を動員できるかは、まだ公社が設立を終えていないわけでございまして、したがって、業務を開始していない段階で確たることは申し上げられないわけでございますが、民間金融機関等との協調融資を積極的に行うというようなことのほかに、債券の売却等を行い資金効率を高める政策をとることが予定されておりますので、かなりの資金の動員が可能であるというふうに考えられます。  ちなみに、公社と同様の活動を行っております国際金融公社の活動実績を御参考までに申し上げますと、八四年六月末で累積投融資承諾額が五十二億ドル、うち協調融資分が二十億ドルでございますが、このように五十二億ドルというふうに資本金が六・五億ドルでございますのに対して、大きく上回る投融資承諾額になっているわけでございます。公社につきましても、この実績が一つの参考になろうかと存じます。
  40. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、何倍かになるわけでございますよ。そうすると、これにみんなこの一三%ないしそれ以上の金利がついて回るわけですね。大臣、本当にこれはこの前も御存じのとおり、十一カ国の南米の国々がサミット前に文書をよこしているわけです。高金利が続く限り、今後十五年間で八千億ドルの累積赤字になるという訴えをしているわけです。つまり現在の倍以上になるわけですね。ですから、今世紀の終わりまでにそういう累積赤字が積み重なる。そういうことに対して高金利が下がるというような明るい見通しは何一つないわけですね。そういたしますと、この公社をつくることによって、民間資金をこれによって呼び水にしてますますこの累積債務を中小企業にまで広げていくと。こんなことをしなければ日本は南米の援助ができないんでしょうか。日本の円借款はもっと低利だと思いますけれども、大臣、この点どうお考えになりますか。
  41. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) ちょっと補足さしていただきます。  現在の中南米諸国の累積債務は総額三千六百億ドルということで、その元本の返済ということを考えますと、確かに高金利の問題というのはゆゆしい問題でございまして、それを下げる努力、あるいは返済条件を緩和する努力というものがいろいろな場で行われておるわけでございます。  他方、この米州投資公社を設立することによって行われます融資、投資といったものは、現在そのような融資、投資を必要としている中南米諸国の中小企業が必要としているものでございまして、現在の高い市中金利でも流れてこない資金というものをこのような公社を通じて流れやすくするということによって、さらにまた民間の投融資も奨励するといいますか、刺激するという効果があるということでございます。  したがいまして、もちろんこの米州投資公社金利が高いということは中南米全体に対する負担をふやすことにはなりますけれども、しかし、多少高い市中金利であっても借りたいとしている中小企業がある中で、それらの中南米諸国に対する信頼感が失われて、資金が流れていかないという状態を是正するための効用があるということではないかと思っております。
  42. 久保田真苗

    久保田真苗君 十一カ国のお返事を今書いていらっしゃるところだと伺ったんですが、一体この高金利問題についてどういうお返事を書かれるつもりですか。
  43. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) いわゆるカルタヘナ諸国十一カ国の首脳がその代表でございますウルグアイの大統領を通じまして、サミット諸国の首脳に対しまして、サミットに際しての累積債務問題の討議に際してのこれらの諸国の要望というものを出したわけでございます。それに対しましてはボン・サミットにおきますこの問題の討議、そしてまたボン・サミット経済宣言といったものを踏まえて、このような議論が行われた、こういうことであったということを通報することが適当であろうということで、まだ起案中でございます。
  44. 久保田真苗

    久保田真苗君 ともかく南米諸国の訴えというのは高金利と累積債務にあるわけでして、これに関連して国際金融システムが批判されているわけです。我が国として、もしこれに適切な対応をするとすれば、累積赤字をふやすような政策に加担するのでなく、日本の行える円借款、これはもっとずっと低利なんですね。こういうものを優先すべきだと思いますが、大臣、どうお思いになりますでしょうか。
  45. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 高金利ですが、これは別に固定されているわけじゃないし、各国、アメリカの今の状況を見ましてもむしろ金利は少し下がる方向へ進んでおるわけですから、決して暗い面だけが残っているわけでは私はない、金利についても下がる傾向も必ずしもないわけではないと、そういうふうに思っております。  そういう中で、債務累積問題については、これはやはり先進国もこの債務累積問題の解決には努力していかなきゃならないんですが、基本的には、まず、債務国がやはり自助努力といいますか、そういうものをやっていく。それに対応して、やはりIMFを中心とした国際的な協力とか、あるいはまた、各国の努力というものが要請をされるわけで、それはそれなりに私は機能しておるんじゃないだろうかと、こういうふうに思っておりまして、ケース・バイ・ケースということになりますけれども、メキシコ等においてはある程度の成果は上がっておるんじゃないかと、こういうふうに見ておるわけですが、しかし、大きな問題ですから、今後ともお互いに努力をしていくということであろうと思います。  そういう中で日本のODAを中心にいたしました経済援助の問題があります。これはもちろん最も効果的であると思います。特に無償援助は、二国間の援助としては非常に相手国の経済を助けるといいますか、そういう面においては最も効果的であろうと思いますが、円借等につきましても非常に金利は低いわけですが、これは円借については相手国の民間ということじゃなくて、政府に対してこれを行っておるわけでございますから、民間ということになると、日本政府がこれを直接行うというわけにはいかないわけですから、政府に対して行っておるというところに円借は限界ももちろんあるわけであります。  そういう中で、この公社がやる仕事は民間相手てありまして、それも融資だけじゃなくて投資も一つの役割をなしているわけでございますから、いろいろと工夫をしてこの投融資が行われれば、金利については市場金利という状況はありますけれども、中南米で困っておる、どこからも借金もできないというふうな状況もある中で、公社が行うこの投融資というものは中小企業を助けていく上には大きな私は役割をなす可能性も出てくるのじゃないか、こういうふうに思っております。
  46. 久保田真苗

    久保田真苗君 円借款だったら中小企業が潤わないと、そういうことはないと思うんですね。そのような国の政策を援助奨励すればよろしいわけでして、それに関連して私はここにもう一つこの協定に疑問があるんですね。  それは確かに、この公社が直接民間の中小企業、民間企業に投融資をするわけです。ところがこれは当事国の政府がこれの決定にどれだけの権限があるかといいますと、その政府は反対することはできる。反対することができるという、そういうことなんです。だけれども執行委員会の四カ国で四人の人が決めた、その内定されたものに対して政府が反対するということは必ずしも容易じゃないと思うんですね。そういうことが政府が国全体の経済に対する責任を持っていく上において、この公社が、公社という国際協定ではあるけれども、実質的にはたった四人の人がやるわけで、しかもそのうちの最大出資国がアメリカだと、こういう状態にあるわけですね。そういたしますと、これは対象国に対する内政干渉的なそういうものになる危険性がないとは言えない、そういうふうに私は思いますけれども、大臣はこの点に関してどうお考えでしょうか。
  47. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、アメリカは確かに二五%ですか、その大きいシェアを持っていますから、それなりの発言権というのは私はあると思いますけれども、しかし、発言権はあったとしても何も、この規定にきちっとしておるように、アメリカ政治目標に従って強引に公社を運営するということは、これはもう規定上できないわけでありますし、中南米の多くの国が参加もしておるわけでございますし、この資金というものはあくまでも規定の線に沿って中南米の中小企業に対して効率的に運用されていくということであろうと思いますから、そうしたアメリカが何か一方的にアメリカの政策目標でもって融資とか投資を行っていこうという道具にされるというようなことは、これは私はあり得ないことだと思っておるわけでありますし、また運営の総務四人というようなことも私はやはりこうした中小企業を、米州開銀のいわば姉妹的な役割の機関ですから、それで中小企業を中心にやるわけで、言ってみれば日本の中小企業金融公庫的な役割もするんだろうと思いまして、そういう運営については二億ドルというのはそんな大きな規模のものじゃありません。そういうものを扱う場合にわずかな人間で扱うということは、これはそうした公社の機動的な運営という面から私はむしろ妥当なことではないだろうか、こういうふうに思っておるわけでございまして、アメリカが今おっしゃるようなそうした政治的意図を持ってこの公社を運営するなどということは、これは当初の目的からして、公社の目的あるいは規則からしてあり得ないことだ、こういうふうに思っております。
  48. 久保田真苗

    久保田真苗君 それが、規則からしますと大いにあり得るんですね。外務省、時間が制約されていますので、ごく簡単でいいですから、アメリカ一カ国の反対でできないことですね、四分の三ないし五分の四の重要事項の決定、それはどういう項目があるのか、項目だけ簡単におっしゃっていただけますか。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕
  49. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) 総務会の表決手続は非常に多うございますので、とりあえずむしろ簡単な方の理事会の方について申し上げますと、総票数の過半数による議決によらない場合を二つ挙げておきたいと思います。一つは、公社の社長の任命でございます。これは、「総票数の五分の四以上の多数による決定」でございます。第四条第七項(b)でございます。それから、同じく理事会の関連で、第二点が公社の社長の退任の決定でございます。縦票数の五分の三以上の多数による決定、これは協定の第四条第七項(b)でございます。  そのほか、総務会の表決手続が十一項ほどございますが、そのうちで特に四分の三以上の総票数を要する場合を申し上げますと、増資の場合でございますが、新規加盟国の加入のための増資以外の増資の場合でございます。それから、請求払い資本にかかる増資、四分の三。いずれも四分の三以上でございます。それから、株式の譲渡承認、五分の四以上を要します。それから資格停止、四分の三以上でございます。それから、資格停止の解除も四分の三以上でございます。業務の終了の決定、四分の三以上でございます。それから、資産の分配の決定、四分の三以上。協定の改正、五分の四以上。それから最後に、全会一致を要するものが、脱退権、優先応募権及び責任の限度の規定の改正でございます。
  50. 久保田真苗

    久保田真苗君 ともかく、株式の問題とか社長の任命、それから加盟国の資格停止とか協定の改定とかいろいろございます。そして、そのほかに三分の二事項につきましてもアメリカと、あと他の八%程度の出資国一カ国でもって総務会も開けない、理事会も開けない、こういうことになるわけですね。その上にアメリカは当然のこととして理事国としての席、執行委員会の四人のうちの一つの席をとる、そういうことになるわけです。もちろん、アメリカは域内の米州の国でありますから、事実上そういうふうになることはよろしいとしましても、このように非常にアメリカの特権が協定上動かざるものとして規定されているということは、私は国際協定として非常に疑問を感ずるものです。  関連してお伺いしたいのですが、この場合、北米の国はこの協定に言う域内国ですか、城外国ですか。
  51. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) 域内でございます。
  52. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、カナダの立場というのは一体どうなるんですか。これは、カナダは今度お入りになっていない、しかし米州開銀のメンバーでありますから、域内ということであると当然協力してもよさそうなんですね。しかし、これが域内国であるとすると、この外務省がお出しになった説明書によりますと、カナダの立場というのは実に何といいますか、困った立場だと思うんですね。それは結局理事も、理事につきましてはこの説明書によると十人の域内加盟国、そのうち九人が域内途上国で一人が米国だと、こういうことになるわけですよ。そして、他の域外国から二人だけれども、追加する場合三人までいい、こういうことになっているんですね。そうすると、カナダの立場というのは初めから理事国としての被選挙権を放棄させられた格好になっているわけです。この点どうなんですか。
  53. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) カナダがまだ加盟しておりませんのは御指摘のとおりでございまして、その点は前回の当委員会でも御説明したと記憶しておりますが、ただいま久保田委員指摘の理事の構成の規定はこの協定本文第二十五ページに書いてございます第四条四項(c)、これを御引用になったものと考えます。ここに書いてございますとおり、「一人の理事は、公社における最大の株式数を有する加盟国が任命する。」と書いてございます。これが米国でございます。それから、「九人の理事は、域内開発途上加盟国の総務が選出する。」、域内開発途上加盟国総務という規定になっております。それから、「二人の理事は、その他の加盟国の総務が選出する。」、それからもう一人の理事、こういう規定になっておるわけでございまして、仮定の問題といたしまして、カナダがこの米州投資公社に加盟した場合、理事になるかならないかはもちろんこの公社自身が決めることでございますけれども、規定の上からは「二人の理事は、その他の加盟国の総務が選出する。」、それからもう一人の追加の理事、これのどちらかに該当するという形で理事になる可能性は規定の上では排除されていない次第でございます。
  54. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうすると、執行委員会についても同様なんですね。執行委員についてもその他の加盟国から一人ということになる。しかし、実質的にはカナダというのはほとんど理事にも執行委員会にも入る可能性というのはないですよね、この人数の割り振りじゃ。どうお思いになりますか。
  55. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) 執行委員会の場合には四名でございまして、最大の株式保有国から一名、域内の開発途上国から二名、それ以外のところから一名、いわゆる域外の加盟国から一名ということになりますので、カナダの場合には執行委員会についてはメンバーになる可能性は極めて難しい、乏しいというふうに考えます。
  56. 久保田真苗

    久保田真苗君 何となく、結局アメリカと南米の途上国とのつばぜり合いの中でいろんなことが決せられて、ほかの国の立場というものはもう消し飛んだという、そういう感じを私受けるんですね。出資額についても同様だと思うんです。日本は三%何がしの出資になるわけですけれども、これはその他の国の総計でもって一九・五%という枠は、どうなんでございますか、日本が仮に五ないし一〇%出してもいい、出したいと思った場合、これは一体どういうことになりますか。この中でたくさん出したくても出せないんでしょう、実際には。そういうことは許されないんだろうと思うんです。それから、逆に他の国がこれから脱退するということになった場合、域外国の枠内から、日本は何が何でもこれを埋めてくれというような、そういう話になってくるんじゃないか。この一九・五%というのはどういうふうにお考えになるんですか。これは恒久的に事実上続いていくというふうに私は考えざるを得ないんですが、どうでしょうか、その辺。
  57. 木幡昭七

    説明員(木幡昭七君) 増資の問題でございますが、増資が行われます場合には、当該増資に対しまして加盟各国はこれまで持っております自国のシェアと同じ割合の株式に優先的に応募できる権利を有するというふうに第二条第五項で書いてございます。したがいまして、いずれかの国がこの権利を放棄しない限り特定国のシェアがふえるという仕組みにはなっていないわけでございます。そこで、いずれかの加盟国がこの優先応募権を行使しない場合、理事会の決定によりまして他の加盟国による当該株式への応募は認められることになるわけでございます。しかしながら、この場合の理事会の決定は過半数、そういうことで第二条第三項(d)という規定が該当するわけでございます。この株式出資シェアというものは、この公社設立の大前提として域内国、途上国五五、それ以外四五というふうに決めまして、その大前提に立ちまして先進国等のシェアを決めたわけでございますので、これは当面設立後、維持されるべきものだと思いますし、我が国を含む比較的経済力のある五カ国が有しております三・一%のシェア、これはこの間、西独、仏、伊、スペイン、我が国でございますが、適切なシェアであるという認定でこの協定をつくっておりますので、維持されるべきものと考えられます。
  58. 久保田真苗

    久保田真苗君 要するに三%が適切かどうかじゃなくて、五五%と二五・五%と、そこから決まってきた割合なんですよね。ですから私は、ともかく出資額の変更についてほとんどその可能性がないということを一つ疑問を呈しておきます。  それからこの協定は、この前大臣から御説明がありましたように、武器製造が本地域で盛んに行われているんですけれども、この武器製造にかかわる企業への投融資を排除する特段の定めがないんですね。それで、メモランダムは伺いました。だから向こうもそういうことはしないというつもりだということはわかりました。しかし私が今申し上げたいのは、協定にもないということであれば、ぜひ今理事会がつくっていく規則の中でその定めを、武器製造に関する投融資、技術援助は行わないという、そういう一項を日本の平和主義の立場から入れるように政府として協力していただきたいと思うのです。大臣、いかがでしょうか。
  59. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 公社が武器産業に投融資を行わないことは、メモランダムにあるとおりこれは明確であります。既存の国際開発金融機関においてもそのような投融資を行わないことは、経済開発等の目的にかんがみまして当然のこととして特に規則的には明記をされなくても実態上確保されており、本件公社についても同様であると考えるものであります。したがって、こうした申し入れを行う必要は今申し上げたような観点からない、この必要はない、こういうふうに思っております。
  60. 久保田真苗

    久保田真苗君 大臣、必要はないということじゃないと思うんです。執行委員にしろ理事国にしろメモランダムなんか見ることはありません。それが武器産業のために投融資されないということを確保するためには、できれば協定、そしてもしそれが遅いのであれば規則の中に、せめて規則の中にそれをうたうことが必要なんですね。そういう例もあるわけですから、それは理事会でどういうふうに決まるかということは別として、日本としてはそういう申し入れを私はぜひしていただきたい。そうでないと私どもは特にこの地域に関してはそれが担保されたという感じを持つことがどうしてもできないんですね。副総裁とそれからこちらの藤川代表との間で交わされたメモランダムなんてものは、ほかの国が見ることはない。日本が発言をできない場所では、他国の人がその基準によらなければならないんですから、そういう基準をどうして規則の中でうたうように努力していただけないんですか。そういうことをお願いするのは私、日本の平和主義の立場から当然だと思うんです。そういういかがわしいところへたとえ十五億程度のわずかなお金でも出資するなんということはできないはずだと思います。大臣、重ねてどうぞ。
  61. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、これは私はいかがわしい公社じゃないと思いますね。いろいろな面できっちりしておる。特に中小企業に対する救援という意味から非常に役回りの高い公社だと私は思っております。そして武器製造等の産業に投融資しないというのは、これはこれまでの国際金融機関等においての立場からも明確でありますし、特に今回の場合は国会側の議論等もありまして、メモランダムという公式的な形での本問題に対しての公社の立場を明確にしてもらったわけで、いわばそういう意味ではこのメモランダムは協定の解釈として明確になった、そういう明確さを示すものである、そういうものと承知もいたしておるわけでございますから、ですから公社が武器産業等に投融資することはあり得ないということは、全くこれは明白そのものでありますし、そしてメモランダムにおいてこれははっきりと明らかにされておるわけですから、規則にまでこれを盛り込む必要はない。しかし、日本が理事あるいはまた総務、そういう立場に立つ、あるいは日本が出資国として日本の平和国家としての理念をこうした投融資の際に生かしていく、そういう面について日本がきちっとこれを見守っていくということは、これはもう当然のことであろう、こういうふうに思います。もちろんこのメモランダムについては、これは各国に配付してもいいと私は思っております。
  62. 久保田真苗

    久保田真苗君 メモランダムがあるからにはそうだと、こういうことでございます。それならば向こうだって規則へ書くことは何も困らないはずなんですね。どうしてそうなさらないんでしょうね。それで私は、結果的にどういうふうに決まるかということでなく、日本の藤川代表ないしはこの公社の理事会において規則を決定するときに日本が提案するぐらいは何でもないと思うんですよ。こういうメモランダムを欲しいとおっしゃったんだから、それを規則に書いたらどうかと発言なさることに何のためらいがあるんでしょうか。私ぜひそれはやっていただきたいと思うんですよ。それでその結果どうなったかということはまた別ですね。ですからこの地域で私が特に懸念せざるを得ないのは、やはり政治的中立をこの協定はうたっているんです。ところがいろいろな特権を持つ最大出資国がラ米諸国の政治体制については必ずしも中立じゃないんですね。中立でないどころか、一方に加担して軍事や経済援助を盛んに行っているわけですから、やはり私は日本も独立国であるならばそういうことをちゃんと見張って、そういう協定が本当に政治的中立を達成するようになっていく義務があると思うんです。そういう義務はもちろんありますね、大臣
  63. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろんこれは政治的な、例えば内政干渉等はしないというのが公社の規定の中にもはっきりしておるわけですから、日本としてもその中に入っていく以上はこの公社の役割というものをきちっと協定、公社の規則に従ってやっていくかどうかということは見守っていく責任は私はそれはもちろんあると思います。ただ規則については、これはメモランダムに明確でございますから、今さらこれを規則にする必要はない、それを規則にするまでもない、そういうのが我々の解釈です。
  64. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は多国間協定というものはできるだけはっきりした方がいいと思いますので、重ねてその規則に入れることを主張しておきます。  また、時間がないので、私最後に一つだけ、アメリカ外交文書公開についてですね、八百板議員が聞かれましたけれども、大変おもしろいことがたくさんわかりました。それで私は、このことをアメリカ文書から知らなければならなかったということをまことに遺憾に思うんですね。去る三月公開された文書の中に当然これからの日韓会談が含まれていてよろしかったわけなんです。含まれているべきだったんですね。それで私が今申し上げたいのは、外務大臣八百板議員の質問に対しまして、これが目下公開原則に従って検討中である、検討作業を急ぐと言っておられるんですね。この公開原則というのは新聞に出ている多分あの原則だろうと思います。  私は特にこの際申し上げたいのは、大臣がしっかりしてくださらないと、本当に日本の非常に極めて有能な、しかし極めて秘密的な秘密主義の、極めて権限にこだわる官僚政治の中において、閣僚も与党も大変困るお立場になると思うんですよ。事実この外交文書公開は第一回目から比べますと、その分量においてもその間隔においても非常に崩壊しつつあるという印象を受けざるを得ないんですね。私は絶対にそういうことがないようにしていただきたいし、また公開の原則をやってらっしゃるのが大体OBの方がやってらっしゃると伺うんですが、私、現職のときのつもりでこういうものを審査していただくととんでもないと思うんですね。国民の立場に立って、国民の知る立場に立って、また学者の方たちの立場にも立って、日本のもうこれは歴史的文書なんですから、三十年も前の。何も岡崎外相がおっしゃったことで安倍大臣がお困りになる何物もないと思うんですね。ですからそういうものをぜひ市場開放体制と同じようにデレギュレーションの原則に立って原則自由と、この線で早く公表していただきたいんです、どうでしょう大臣約束いただけますか。
  65. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろんこの公開文書については原則自由ということでやっているわけであります。ただ、国の安全にかかわる問題等については、あるいはまた個人のプライバシー等については、これは出さない場合も例外としてあり得る、例外制限ということであります。そういう方向で今検討しておりまして、最終的に検討作業が終わっておりません。しかし、私はこうした外交文書等については二十五年もたてば、これはできるだけ明らかにすることがこれから日本外交というものを進めていく上において国民の理解を求める上からも必要だ、こういう考えで、実は事務当局にも、大変人数等で作業の制限等もあって作業はおくれておりますが、督促をしておるわけであります。
  66. 久保田真苗

    久保田真苗君 ぜひよろしくお願いしたいんですが、この際一つだけ指摘申し上げておきますけれども、前回、三月の公開におきましては確かに多国間のものはある程度公開されました。しかし日本と二国間のものは日本インド間外交案件、外交関係雑件というそれだけしか公開されてないんですね、二国間のものは、三十年もたってですよ。ですけれども、私はもう愚民政策というのは通用しないと思いますんで、ひとつ大臣、原則自由、例外はあるとおっしゃったけれども、事実上これは公表されたものは雑件だけなんです。原則例外、雑件だけが、ほんのわずかなものだけが自由になるその立場をがらっとお変えになって、原則公開、当初の御英断のとおりこれを守り抜いていただきたいんですね。私ども大変期待しておりますんで、どうぞぜひよろしくお願いします。
  67. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは原則自由といいますか、原則公開という立場に立ってできるだけ公開するように努力を重ねたいと思います。
  68. 黒柳明

    ○黒柳明君 当面の外交問題、二、三お伺いしたいと思うんですが、報道によりますと、スパイ防止法が自民党の政審で法案化されて、きょうの総務会を経て何か国会に提出されると、こういうふうな報道がされておりました。これは前からこういう報道はあるんですけれども、外務大臣どうですか、こういうスパイ防止法、確かに一、二過去におきましてはそれに触れるような問題があったからこそこういう検討をということになったと思うんですが、我が国としてスパイ防止法、こういうものがなじむかどうか、外務大臣そのあたりの御見解いかがでしょうか。
  69. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) このスパイ防止法というのはかねてから自民党において論議をされておったわけでありまして、これは自民党の立場から見ましても、日本国がスパイ天国だと言われるようにいろいろと国の機密、防衛機密に至るまでこれがどんどん暴露されておる、外に出ておるということは、今まで何回か事件がありまして、これは御承知のとおりであります。そうした事態から見ましてやっぱり日本防衛についての機密事項もありますし、あるいはまた外交についてもそういう面もあるわけで、したがって与党として、これについて各国ともそうしたスパイ防止法、スパイ天国と言われているそうした日本の場合は、特に日本防衛機密あるいはまた外交機密というものを守るために今の制度では不十分だ、やっぱり特殊な立法をする必要があるという声が高まっておりまして、それは私も承知しておるわけでございます。  今回その議論が相当煮詰まって、きょうの自民党総務会で了承されたというふうに今聞いたわけでございますが、この法案まだ国会に提出という段階に至っておりませんし、現段階で今詳細な内容についてまだ私も十分承っておりませんし、これに対する外務省としての考え方を申し上げる段階でないと思いますが、一般的には私も与党の議員としてこのスパイ防止法の審議等については関心を持っておりまして、現状日本状況から見て与党の立場からそういう方向を打ち出すこともそれなりに現在の状況からは理解できる、こういうふうに思っているわけですが、政府としてこれにどういうふうに対応するかは今後の問題として取り組んでいきたいと思います。
  70. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然従来もこういう自民党内の意見が出るに伴って、国民の知る権利との接点、あるいはこれがどう拡大解釈される可能性があるかと、こんなこともありますし、あるいは基本的には報道の自由に問題があるのかと、いろんな幾多の疑念というのか心配がいつもこれに裏腹にくっついてきたわけでありますが、当然これは今国会でこれが間に合うのかあるいは来国会になるのか、いずれにせよ総務会の了承を得られれば国会提出と、こういうこの次の段取りにはなるわけでありますが、国会提出になりますと、外務大臣はまずその審議の当事者の一人として非常にやっぱり私は苦慮する立場にも立たされるのかなと、こういう感じもするんですが、今言いましたまだまだこの細部につきましては当然私たちもわかりません、新聞報道で知る範囲ですが、国会へ提出されたわけでもありません。しかしながら、また常識的な線はこれはもうどういうものであるかということは常識的にわかるわけでありまして、そういう報道の自由とかあるいは国民の知る権利の問題とか拡大解釈の問題とか、従来言われていたようなこういう非常に難問がある、クリアしなきゃならない難しい問題がある。こういう問題との接点というものについてはどのようなお感じを持っていますか。
  71. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだ自民党で出そうとする法案の内容について詳細に私も勉強しておりませんが、おっしゃるように確かに外交あるいは防衛の機密というものを守っていかなきゃならない、こういう立場と、それを防止するための措置と、同時にまた、今お話しのような言論の自由との関係をどういうふうにクリアしていくかということについては確かに問題があることはそれは承知しております。そういう点等も法案がいよいよ国会に出されるという段階になれば我々としても十分検討しなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  72. 黒柳明

    ○黒柳明君 これはまだきょう決定ということですから、また後日の問題に相当尾を引くかと思いますけれども。  きのうですか、二十七日再開したわけですか、日ソ租税交渉は。それから先般言われていました文化協定、できるだけ速やかに日本で案をつくってと。これはどうなんでしょうか、いつごろできるんでしょうか。
  73. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) まず第一点の日ソの租税条約の締結交渉でございますけれども、これは御指摘のとおり昨日から始まりました。大体四日程度でもって見通しを得たいと考えております。この中身につきましては、現在交渉中でございますので詳細については触れることを控えさしていただきたいと存じますけれども、やはり基本的に両国の体制が異なるものでございますから、それとうまく調和させつつ両方が満足できるようなものにするというところに一番問題がございます。いずれにしましても二重課税をできるだけ回避して排除する、他方、経済の国際化に即応していろいろな交流、これを円滑に進めるための素地をつくりたい、そういうつもりで現在交渉に臨んでいる次第でございます。  それからもう一つ、文化協定の件でございます。これにつきましては我々、鋭意現在検討中で、間もなく先方に出せると思います。もっと早い段階に実は出したいと思っていたのでございますけれども、御承知のように日ソの関係では漁業の問題でもって非常に事務的にもやることが多かったために、甚だ残念ながら文化協定については若干のおくれを見た次第でございますけれども、しかしこれもできる限り早い段階で先方に提案したいというふうに考えております。
  74. 黒柳明

    ○黒柳明君 租税交渉が再開されて三、四日でと、文化協定も間もなくと、何か貿易の支払いの協定、ここらあたり三つを地ならしにしてグロムイコの訪日の前提にしたい、こういうような意図もあるとか、こういうことですけれども、外務大臣、この辺はいかがでしょうか。局長でも結構です。
  75. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) そういう努力を積み重ねまして従来から、なかんずく昨年の二月以来、安倍大臣が訪ソされて以来設定いたしました対話の路線、これをさらに積極的に進めていって日ソ間の関係改善を図りたい、そういう趣旨で一貫してまいっているわけでございます。
  76. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、文化協定も間もなく出て向こうとの交渉が始まる。それから貿易支払いの協定あたりについてはどうなんですか、もう実質的に何回もこれについてはいろいろ話し合いはしていると思うんですが、これだけがすべてじゃないと思うんですけれども、こういう三つのメインの協定というものを締結すれば相当やっぱりグロムイコの訪日というものについて日本側としての対応はでき、ソ連側としてもいろいろ首脳がグロムイコ訪日、示唆をしておりますが、こういうことについては大臣いかがですか。
  77. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今いろいろとその態勢を整えて、文化協定、租税協定、支払い協定、これから交渉に入っていくわけですが、そうしたことが一つの対話を促進するということに大きくつながって、これはグロムイコ外相の訪日にもつながっていく可能性は十分ある、こういうふうに思っております。私は、日ソ間には領土問題がありますが、やはり今の外交関係改善を図っていくためにはまずグロムイコ外相が訪日することが非常に大きな前提になる、こういう認識を持っております。
  78. 黒柳明

    ○黒柳明君 局長、そうすると大体この三つの協定締結のめどはそんなに難しくない、こういうふうな考え方が成り立つわけですか。
  79. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 租税条約それから貿易支払い取り決め、この両者につきましては進展が比較的見込まれる、容易に見込まれるというふうに考えております。  ただ文化協定に関しましては、これは我が方案を提示はできるわけでございますけれども、ここにこそ実は日ソ両国の体制の違いというものがはっきりと出てくる分野でございますので、これにつきましてはいろいろと意見交換、さらに交渉をしなければならないのではないかというふうに考えております。
  80. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほどから論議されました外交文書ですけれども、局長、これ入手されたものを読まれて、実質的な合意、こう言えるものと私たちは判断したいんですが、その点はいかがでしょうか。
  81. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) どういう点について御質問か必ずしも定かでございませんが、いずれにいたしましても先ほど御答弁申し上げましたように、アメリカ側資料は今入手いたしまして検討しておる段階でございますので、新聞等に報じられました事実関係につきまして今の段階で具体的にどうこうというふうに申し上げられる段階ではないと思います。
  82. 黒柳明

    ○黒柳明君 今検討されている範囲では特別に新聞と食い違っているとか、報道と食い違っている問題とか、あるいは特別にそのほかこういう問題なんていう点についてはもうないわけですね。報道されたものと違った面が入っているとか、あるいは報道されたものについて一部こういう点が間違っていたとか、そういう面での検討というわけではないわけですね。大体報道のことは事実であると。
  83. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 何分にも膨大な資料でございますので、まだ十分に検討を了しておりませんので、具体的に申し上げられる段階ではございませんが、新聞に報道されましたような趣旨の資料が入っておるということはそのとおりだろうと思います。
  84. 黒柳明

    ○黒柳明君 防衛庁の筋ではあのときは日米対等に物を言える時代じゃないんだと、だから必ずしもああいうことがあったってということで首脳が発言している報道がありましたけれども、その限りにおいては検討をされてきたと、それで七八年のガイドラインに結びつく、こういう経過はあるにせよ、ああいうアメリカ側の発言、日本もいろいろ抵抗はしたと、こうは言われておりますけれども、抵抗はしつつ日米関係から見ると、ああいうアメリカ側の指揮の問題でも、統合本部の設置につきましても、これは実質的に日米間で合意をされたというようなものではなかろうか、こう判断するんですが、今検討最中ということですけれども、局長どういうふうに判断されますか。
  85. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 委員の御質問が有事の際の日米指揮権の問題を御念頭に置いての御質問だというふうに理解いたしますが、その点につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、行政協定交渉の過程においてアメリカ側から報じられているような要求というものがあったということはこれは事実でございますし、例えばその間の経緯につきましては吉田当時総理の回想録にも出ておるところだろうと思います。最終的にはあの協定交渉妥結の段階でアメリカ側が当初の要求を引き下げまして、御案内のような当時の行政協定二十四条の規定で交渉が妥結したという経緯でございますので、私どもといたしましてはいわゆる密約というようなものが日米間にあったというふうには全く考えておりません。その点については先ほど大臣から御答弁申し上げたようなことでございますし、指揮権の問題についてはその後五十三年のガイドラインで非常に明確になっておるというふうに私どもは考えております。
  86. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカ側の提案について日本もいろいろ難色を示して話し合いして、今おっしゃったように、五十三年、のガイドラインに結びついていると。そうするとやっぱりそのガイドラインの原点というのは、あのときの有事のときの指揮権の問題等がガイドラインに結びついたと、この点についてはもう全く否定する余地はないと、こういうことでありますか。
  87. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) 私が理解をしておりますのは、まさに旧安保ないし行政協定交渉のときにおきまして、指揮権統合の問題というのは、我が方、日本政府日本側の反対によりましてそういう事態には至らなかったということでございまして、その後新安保のもとにおきまして防衛協力の話が防衛協力委員会のもとで行われて、御案内のような指揮権の問題を含めましてガイドラインというものが策定をされてそこで改めて明確になった。有事の際の日米指揮権というものは、相互に調整をしながら行うけれども、指揮権そのものはそれぞれ独立して行使される、こういうことで非常に明確になったというふうに御理解いただければよろしいんじゃないかと思います。
  88. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは局長理解せいと言うなら私いやだとは言いませんけれども、ただ、その反面、あの日米共同訓練、いろんな中で吉田メモと同じにウエートがあるかどうかわかりませんけれども、日本側の現場の指揮者あたりもアメリカが長で日本側は副であったとかそういう報道も出ているわけであります。ですから、中間に六〇年の安保の改定もありましたけれども、新行政協定締結されましたけれども、どうもああいう外交文書アメリカから出てくるというところにも何か私たちは、ガイドラインに基づいて、ガイドラインそのものについては指揮権についてそういう問題があるということじゃなくて、その原点から出ている今の日米関係、現場の共同訓練なんかも何かやっぱり日本の指揮官が言っているように、指揮権についてはアメリカ側が統括すると、こういうようなことになっているのかなと、やっぱりそれを裏づけるものが五二年の向こう側の外交文書の公示じゃないかなと、こんなふうに思えてならないわけであります。大臣、今申しましたように、確かに五二年のアメリカ側外交文書発表がガイドラインに結びついていると、一九七八年の、これは間違いないわけであります。その発想の原点というものは、指揮権はもうアメリカが統括すると、その他いろいろ書いてあります、問題は。アメリカ側が長になって日本が副になる。しかも今日においても日米共同訓練の中で日本側の現場の指揮官が、これはいろんな雑誌やなんか通じてですけれども、現実においてアメリカ側の指揮のもとに日本自衛隊は動いたと、こういう報道がなされているわけであります。そうすると、その発想の原点というものがやっぱり今まで続いていると、話し合いをしたけれども、やっぱり日本は完全に拒否していないと、拒否できない問題である。  これはもう一つは、きょうは時間がありませんけれども、もっと具体的には、在日米軍基地、二4(a)、二4(b)、要するに自衛隊との共同基地、ここにおいて、これは外務省の専権事項じゃありません、施設庁のことですけれども。非常にそれに似たようなものがありまして、また後日私は防衛庁を含めての外務当局にいろいろな話を質問したいと思うんですけれども、今の自衛隊米軍との共同基地においてもそういうような実態的に問題がある。こういうことを含めましてさかのぼると、やはりあのアメリカ側の提案、実質的合意と私はこう言いたいのは、今現在、形においてそういうアメリカが指揮をとって日本自衛隊がその指揮のもとに入っている。こういうものが見えるのではなかろうか。私はきょうはこれは何も資料を持って皆さん方にあれしているわけじゃありませんものですから説得力がないように感じますけれども、またこの次は、ひとつ今の自衛隊米軍共同使用の基地においてどういう対応がなされているか、本当にガイドラインに、今局長がおっしゃったように、別々の指揮のもとに有事のときに、現に日米共同訓練のときやっているか、そこらあたり非常に問題である。こういうふうに私は感ずるわけでありますが、外務大臣、その点ひとつ五二年から始まってこれを話し合いしている、日本は完全にそれについて合意しなかった、こう言える現状であるかということについて非常に私は疑問である、こういうふうに感ずるわけでありまして、ひとつアメリカ外交文書から出た問題、やがてまたこれもいろいろなところで審議される問題だと思いますけれども、先ほども政府の統一見解、もし必要なら、とこうおっしゃいましたけれども、それよりも私は実態的にどうあるか、これの方がやはり必要だ。これまた外務省の専権問題の中に入っているあれでありませんけれども、ひとつ実態的にもう一回調べていただいて、この外交文書が、今局長がおっしゃったように、そうじゃないんだ、別々になっているんだと、こういうことであれば私はもう別に文句あるいは云々する必要はないんですが、その方が私は非常に気にかかる点である。こう思いますので、外務大臣、よしなにひとつ調べて報告もしていただきたいとこう思いますが。
  89. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外交文書につきまして今局長も答弁いたしておりますように、これは詳細に検討しなければならぬと思っておりますが、これに関連して吉田元首相の「回想十年」というので第二十章の「難産だった行政協定」という見出しの中で「第二十四條の由來」ということで、いろいろ当時のいきさつが書いてありまして、アメリカがやはりNATO並みに統合的な指揮権を持ちたい、これに対して日本が抵抗して最終的に二十四条ができ上がったという過程が詳しく出ておりまして、これは非常に私にとりましても興味のある回想録であります。その後この二十四条が適用されてきておるわけですが、新安保そして新しい地位協定、そういう中での今度の昭和五十三年のガイドライン、ここで今局長が申し上げましたように、指揮権は独自に日米両国にある、有事の際はお互いに協力していこう、指揮権は両国にあるんだということが明確になったわけであります。  私は、実態については、これは防衛庁の問題でございますが、そのガイドラインに基づいて当然行われておる、こういうふうに理解もいたしておりますし、これまでの経緯については、これは興味のある課題でございまして、私も今の吉田さんの「回想十年」を見て、当時の日本政府の苦悩というものが非常に表へ出ておりまして、これは大変おもしろいと思っております。
  90. 黒柳明

    ○黒柳明君 局長日本側外交文書公開は、あれですか、年度ごとにやるわけですから、先般のときには年度別にここは当然検討の中に入っていた文書、あるとすればですね、官房長ですか、そういうことだったんですか。あるいはあったけれども、原則的に国家の機密とか個人のプライバシーということで公開をするか、しないかをペンディングにした、こういうことなんでしょうか。
  91. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 三月二十五日に行いました第八回の外交文書公開の際には、この今先生御指摘になったような文書は、その公開対象の文書ではございましたけれども、まだそれの審査の作業が完了しておりませんでしたもので、第八回の文書公開には含まれなかったわけでございます。  ただいまそういうものの検討を進めて急いでおりますので、検討が終わり次第公開をいたすということにしております。
  92. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、常識的には、向こうから出たんだからこちらのカウンターパートとしても出すことはまず前提としては間違いないと。ただ、前回公開の中に、年度次では入ってたけれども、審査が間に合わなかったからと、ただそれだけの問題。審査が間に合わなかっただけの問題。そうすると、しかるべく時期が来ればこれはもう間違いなく公開されると、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
  93. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 外交文書公開は、これは大臣からも御説明をいたしておりますように、あくまでも日本政府が自主的にその判断をいたしまして、原則は自由であって、国の重大な利益を害する場合とか、プライバシーを侵害するような場合を除いては公開をするということでございます。ですから、アメリカ側アメリカ側判断公開をいたしたわけで、私どもはやはり私どもの自主的な判断公開をするかしないかを決定していくということでございます。
  94. 黒柳明

    ○黒柳明君 吉田回想録というのは過去のもので、それを見た範囲では、こんなことあったのかなということであれしたんですけれども。ただ、それが国防の文書で、アメリカ文書の裏づけとしますと、今度はあくまでも当然そのときの日本は、ただ単なる一つの雑誌じゃなくて、政府公開文書としてその裏づけがどうなのかなということで、それがやっぱり知りたいし、これは当然公開されなきゃならないというふうに私たちは思うんですが、ここまでくるとこれが当然個人ということにもうならないし、国の秘密を害するということにもならないと私は思うんですけれども、それは政府の方で判断される問題ですから、今の段階におくと、常識的にはその原則公開の自由、例外的に非公開もあり得るというところには入らないと見ていいんじゃないかと、こう思うんですが、その点はいかがなんでしょうか、これから審査しなきゃわかんないということを前提としてですけれどもね。
  95. 北村汎

    政府委員(北村汎君) ただいま米側公開しました文書を取り寄せまして、いろいろこれから審査をしてまいるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、我々はあくまでも自主的に判断をして決めるわけでございますが、その点まだ今米側公開したものをすべて私どもが公開することになるとこの場で申し上げることはできません。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 大体その審査のめどはいつごろになったら。
  97. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 大臣も御答弁されましたように、私ども急いで作業を進めるようにいたしております。  ただ、非常に膨大な量でございますし、審査の人数も限られておりますんで、いつということを今ここで確約申すことは差し控えたいと思います。
  98. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ─────・─────    午後一時十八分開会
  99. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、米州投資公社を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  100. 和田教美

    ○和田教美君 今の議題になっております米州投資公社の問題については、私この前の委員会で詳しく質問いたしましたので、きょうは一般的な問題について少しお尋ねしたいと思います。  アメリカの商務省が最近発表したところによりますと、ことしの第一・四半期のアメリカのGNPが、成長率が年率にして〇・七%ぐらいにダウンするというふうなことで、景気の減速という傾向が出ておるわけでございます。まあ過去二年間非常に順調に拡大をしてきたんだけれども、ここで転換点に立っているということは明らかだと思うんで、そのために公定歩合も少し下げるというふうな動きもあるわけでございます。これはやっぱり日本のこれからの経済運営にとって非常に影響が大きいだろうと思うので、例えばドル高、円安、高金利というふうな問題が果たしてどうなっていくのかというふうなこと、そういうようなことについてもいろいろ影響が出てくるだろうと思うんですが、このアメリカの景気の新しい転換というふうな問題について外務省としてどういう判断をされておるか、その点からまずお聞きしたいと思います。
  101. 国広道彦

    政府委員(国広道彦君) 米国の第一・四半期の経済成長が現在米国政府の統計によりまして〇・七%ということは今、先生御発言のとおりでございます。これには政府の年金の支払いがおくれているとか、軍需関係の発注が若干おくれたとか、若干の季節的要素もあるとは聞いておりますけれども、しかしながら、御指摘のとおり経済成長が鈍化しているということも事実であろうと思います。昨年経済成長が実質六・八%でございます。恐らくことしの成長の予測につきましては種々の見解がございまして、私どもとしましてもどれが正しいと言い得る立場にはございませんが、恐らく去年の半分ぐらいには、ないしは若干それを下回ることもあり得るんではないかというふうに考えております。
  102. 和田教美

    ○和田教美君 安倍外務大臣は、この間だったと思うんですが、地方の遊説先かなんかで、こういうふうにアメリカの景気が減速、鈍化してきているというふうな状況の中で、我が国の内需拡大というような問題も当然何というか、かなりさらに重大になってくるというふうな見地から、内需拡大、国内景気を引き上げる、そのために少し民間活力などを導入したそういう内需拡大のてこ入れをやる必要があるんじゃないかというような話をされたように報道されております。これはかねがね外務大臣の私論ですけれども、とりあえずこの内需拡大方策はいわゆる民間活力の活用ということから始めるということの域を出ないのか、それがさらに進んで、場合によっては財政の出動ということも少し必要になるというふうに考えられているのか。その米国景気の新しい動向ということと絡んで改めて外務大臣見解をお尋ねしたいと思います。
  103. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) はっきりした方向というものを打ち出しているわけじゃありませんが、私の漠然とした一つ考え方を言ったまでですけれど、それは今日本の経済成長は経済企画庁なんかも四・六%という見通しをつくっておりますが、その中で四・一%が内需で〇・五が外需依存だということになっておりますが、実際の日本の動向を見ますとむしろ外需の方に引っ張られておるということで、これはいつも見通しというのは逆転しているというのが今日の姿で、こうなってくるとやはり日本の確かに経済成長率は諸外国に比べて安定してむしろ高いということが言えるかもしれませんが、それはほとんど外需、そうなるとますますこれは対外的な摩擦を引き出す要因になりますし、そういう中で、今アメリカの景気というのが第一・四半期は〇・七%というふうな、我々が想像以下の、予想以下の成長率にとどまったわけで、しかしその内容は個人消費等は比較的安定しているようですが、むしろその内容としてはアメリカの輸入増というのがマイナス要因に働いたと言えるわけですから、これでもってこれからはアメリカの景気下降がずっと続いていくとは即断はできないと思いますが、しかしどうも状況を見ていると必ずしも楽観を許さない。これから第二・四半期等でまたずっとこれがダウンし続けるということになると、そうなりますとアメリカにとりましても景気が悪くなってくれば、またさらに貿易摩擦に対する感情というのが激してくる。そういう中で日本の輸出がさらにふえ続けていくことになれば、これは我々が恐れておった対日制限というのが一挙にまた浮上するおそれがある。アクションプログラム等つくって今懸命にやっていますけど、そういう大きな流れが出ると大変危険な状況になってくるんじゃないか。  そういうときに日本としては何をしたらいいか。アクションプログラムで市場アクセスの方はやれることはやってしまったということになってくると、これは日本でやはり今までの外需中心の成長政策から内需中心の経済成長政策に大きく切りかえていかないと、そして製品輸入を拡大するとか黒字幅を縮小するとか、そういう方向に持っていかないと、これはもう全く世界の保護主義という中で日本の経済が大変な打撃を受けてくることになるんじゃないか。そういうおそれがあるわけで、これは必ずしもおそれだけで済まない、可能性としてもあるんじゃないか。  ですから、そういうものを考えるときに、今はとにかく内需振興、これについてはサミットでも、財政再建という状況の中で財政が出動した内需振興というのはサミットの場でも議論されてないです、これは各国とも皆財政赤字を抱えておりますから。ですから、そういう中で日本の内需振興も、規制緩和とかあるいはまたいわゆる民間活力の推進とか、そういうことでいいんじゃないか。特に日本財政赤字の場合はそういうこと以外にないんじゃないかという考えを持っていますけれどそうしたもっと世界経済が窮迫するということになってくればそんなことでいいのかなと。それは日本の財政再建にも直接大きくつながってくるわけですけれど、しかし何とか国が何らかの措置を講じてでも内需にてこ入れしなきゃならぬときが来ないとも言えない。  ですから、その辺のところはもう少し状況を見て判断をすればいいのであるけれど、しかし自分としてはそういう非常に厳しい見通しの中でこれから日本の政策というものを考えていかなきゃならぬような事態になることを考えざるを得ないと思っておると、こういうことを言っておるわけで、現在の立場においてはとにかくアクションプログラムを早く策定をする、同時に内需についても議論があるわけですから、七月までに内需については規制緩和をどんどん進める、あるいは民間活力の推進を具体的に進めていくと、こういうことで方向としては出していけばいいと思うんですが、それから以後のアメリカの第二・四半期等の状況が出てきたときは、よければいいんですけど、悪い状況が出てきたときはなかなかこれ問題だなと思っております。
  104. 和田教美

    ○和田教美君 今おっしゃったことに私も大体同感でございまして、外務大臣もこの問題についてはかなり考え方を変えつつあるというふうに理解するわけなんですが、もう一つアメリカの経済に絡んだ動きとしては、レーガンの軍拡路線というものにブレーキがかかった。まあ、上院もそうですけれども、下院はこの間国防費の伸び率を実質的にもゼロにするという予算案を可決して、これはまだ上院との調整ということが残っておるわけでございますけれども、これで考えられますことは、レーガンも今までのようなとにかく軍拡路線を進めることはなかなか難しくなると思うわけですが、望むらくはソ連がそれに対応してソ連も軍拡のトーンダウンをするというふうなことになって、緊張緩和というものが、話し合いというふうなものがさらに進むということになれば一番いいわけなんですが、それを望むわけですが、その辺のところをどう見ているかということと、もう一つ、ワインバーガー国防長官などはこのMX予算の削減という問題について非常に不満で、こんなことだと同盟国に対して要するに防衛力を増強してくれというふうなことを注文することができなくなるなんという反論をしているようですが、アメリカ防衛問題についての要求というのは、そんな何といいますか、遠慮深いものではなくて、アメリカがこういう状態だから、かえって同盟国、特に日本などに対して防衛費をふやせというふうな圧力がかえってかかってくるんでは、強くなってくるんではないかという感じもするわけなんですが、そういう問題も含めて外務省判断を聞かせてください。
  105. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) アメリカの国防予算については、ただいま和田委員が御指摘のようないろいろ議会の動きがございまして、これまだ最終的にどうなるかということにつきましては、上院と下院の間の種々のやりとり、それからまた、行政府と議会との、立法府とのいろいろ駆け引きもあろうと思いますので、現段階で最終的にどういう形で落ち着くかということはこれまあなかなか見通しが正直申し上げてつかないところだろうと思います。  もちろん一般的に申し上げまして、今までのようなペースで国防費を伸ばしていくということについては非常に困難が生じてきておって、なかなかそういうわけにはいかないであろうという一般的な状況が出てきておるということはおっしゃるとおりだろうと思います。にもかかわらず、歳出ベースで見るか権限ベースで見るかという違いはあろうかと思いますし、いわゆる後年度負担の歳出化に伴う歳出ベースという面で見れば、ただいま御指摘のような議会の動きにかかわりませず、依然として相当な伸びが今後とも国防費の面では予想されるという状況であろうと思います。  それから、そういう動きとの関連で我が国等に対しますいわゆる防衛費の、国防費の増の要請、NATO、我が国等に対する要請が今後どうなるかという御質問でございますが、この点につきましては、そういう議会の動き等にかかわりませず、従来からアメリカとしてはやはり同盟国がそれなりの努力、それぞれの国の自主的判断に基づく防衛努力の一層の強化を期待するというのがこれまでの姿勢でございますので、今回の予算の動き等にかかわりませずそういうアメリカの同盟国に対する期待と申しますか、そういう姿勢というのは今後とも基本的には変わらないであろうと、そういうふうに見ております。
  106. 和田教美

    ○和田教美君 先ほど外務大臣が貿易摩擦の問題について触れられましたけれども、まあ客観的に見てボン・サミット以後、アメリカの議会における保護主義の動きというのが少しトーンダウンをしているように見受けられるわけなんですね。ところが、松永駐米大使がこの間ブッシュ副大統領に会われた記事が出ておりましたけれども、楽観を許さない、いつまた噴き出すかわからないというふうなことをブッシュさんは言っておったという記事が出ておりました。  そこで、この間実はアメリカのある民間研究機関がこの対日関係なんかについての意識調査をやったという発表がございましたけれども、それを見ると案外、これだけ貿易摩擦が騒がれておるのにアメリカの国民の対日意識というものは非常に何といいますか、冷静であるということが報ぜられておったわけで、まあ言ってみれば、一時ありましたアメリカの議会のヒステリックな対日批判というものとかなりのギャップがあるような感じがするわけなんです。ということは逆に言えば、どうも外務省の対米外交というのを見ていると、政府ベースでは非常にうまくいっているけれども議会に対する働きかけというものが非常に不十分である、もっとやっぱりロビー活動をやるとかいろいろな民間のルートあるいは議員のルートを通じて日常的に働きかけるというふうなことも不足していたんではないかというふうな感じもするわけで、議会の動きというのが非常にこれからやっぱり重要になると思うんですけれども、そういうアメリカの国民の対日意識というものと議会の突出した動きとのギャップというふうな問題も絡めてこれからの展望はどういうふうにお考えでございましょうか。
  107. 国広道彦

    政府委員(国広道彦君) 御指摘のようなギャップがあるという点は私どもも注目しております。しかしながら、一つには、アメリカの対日批判、対日不満の空気は決してこれで後退したとかおさまったとかいうことではなくて、これからの経済情勢の動き及び日本のこれからとる措置いかんによってまた急激に悪化するということも予想していなければいけないと考えております。  そこで、アメリカの議会対策でございますが、現にほとんど毎日我が大使館員は、米国の議員ないし議員の補佐をしている人たちを訪問して話をしております。恐らく平均十人ぐらいの人にはお会いしていると確信しております。私は、昨年秋まで在米大使館にいましたときもよく周囲の人から、日本の大使館の議会に対する接触は他の大使館と比べて非常に活発であるということを現に言われたこともございます。しかしながら、やはり議員の数は大変多いですし、それからその議員を補佐している人、関係者の数も非常に多いので、決して我々としてこれで十分というようなことを考えているわけではございませんで、ますます努力をしなければいけないと思っております。  ただ、ギャップの一つの原因は、対日不満の声を激しく上げられる議員のところに、日本との商売上の競争で困難を感じた人、そういう困難を予想される人が盛んに最近苦情を訴えておるそうでございまして、そういう話もまた議会の方から我々はよく耳にいたします。やはり今日のようなドル高では非常に商売をしにくいとか、それから日本に市場進出を試みて余りうまくいかないとか、いろんな困難が現実にあることも事実でございましょうし、そういうふうな面の我々の改善努力というものも必要であろうと思います。それと同時に、我々の今現在行っている努力、それから日本制度及び政策に関する誤解を解く努力と、そういうこともあわせてますます強力にやっていきたいと思っております。
  108. 和田教美

    ○和田教美君 まあこれからも大いに御努力を願いたいと思います。  さて、先ほどからもう既にいろいろと話題になっておりますこのアメリカの最近の外交文書の公表の問題ですけれども、この間出たのは、報道などを読んでみますと、結局ポイントは、日米行政協定締結交渉に当たって日米間に密約があったということ、それから、いざという場合の統合指揮権というものをアメリカが持つということについて吉田総理が了解をしておったということ、それからもう一つは、そのための交渉戦術として、吉田さんが、場合によっては日本の憲法の改正も考えるというふうな趣旨を岡崎国務大臣を通じてアメリカ側に伝えておったというふうなポイントだろうと思うんです。  そこで、先ほど来の答弁を聞いておりますと、栗山北米局長の答弁ですとそういう密約はなかったと。そしてまた、既にこの問題は行政協定そのものが新しい地位協定に変わっておって、それに基づいて最近の日米間の取り決めでは、明らかに指揮権は両方が持っているということが明確になっているじゃないかというふうなことでございますが、今申しましたアメリカ指揮権を持つということについての密約がなかったということについての根拠は、これまでの説明を聞きますと、専ら吉田元総理の「回想十年」を引用されておるわけですが、「回想十年」そのものも全部が吉田さんが書いたというものでもなくて、これにはいろんな人が参画をしておって、そこにいろいろな配慮も加わっておると思うわけですが、今外務省がまだ未公表のこの行政協定に関する交渉経過、いろんな文書があると思うんですが、その中にもそういうものを否定する文書が入っておるのかどうか、その辺はどうでございますか。
  109. 栗山尚一

    政府委員栗山尚一君) お答え申し上げます。  行政協定交渉の過程におきましてどのようなやりとりが現実に日米間において行われたかということにつきましては、今般アメリカ側資料が明らかになったわけでございますが、私どもの記録については、これはまだ今後検討する必要がある、調査をしてみる必要がございますので、どのようなやりとりを当時日本側が行ったかということについてはここで申し上げられる段階ではないというふうに考えております。  しかしながら、結論としまして、行政協定交渉の最終的な段階におきまして、日本側が当初から一貫をして反対をしておりましたその先ほど御指摘のような問題につきましては、最終的にアメリカが譲歩をして、行政協定の正式には二十四条になりました規定でもって日米間が妥結をした、その間において日米間において言われているような密約と称するようなものは存在をしないということが私どもの承知をしておるところでございます。
  110. 和田教美

    ○和田教美君 次にお尋ねしたいのは、今度のアメリカ側発表、これは三カ月前に日本発表した同じ時期の発表の中には日米行政協定関係は全く欠落をしておるわけなんですけれども、そういうことも当然向こうは承知しておるだろうと思うので、事前に何らかの形で日本側のこういう問題を発表するぞということについて了解がなかったのかどうか。全く了解がないとすると、いかにもちょっと腑に落ちないような感じもするわけなんですが、あるいは事務的にやっている、あるいはまた情報公開制度の違いというふうなものもあってそういうことはないんだということなのか、その辺はどうでございますか。
  111. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 通常、米国政府外交文書公開いたします場合、これは情報公開の法律に基づいて、大統領令にも基づいて実質的に判断をして決めていくわけでございます。そして、場合によって、外国政府にその公開について照会をしてくる場合もございます。今回の場合も一部について、相当前でございますが、照会を受けたことがございますが、それは行政協定というようなものでということではなくて、一般に、今度公開されたものの中で一部について照会を受けたことでございます。ただ、どの文書について照会を受けたか、どういう内容であったかということは、これは事柄の性質上ここで明らかにすることはできないと思います。
  112. 和田教美

    ○和田教美君 行政協定の問題については少なくともなかったわけですか。
  113. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 照会をしてまいりましたものの中でどういうものについてあったかということは、通常これは申し上げないことになっておりますので、その点は御了承いただきたいと思います。
  114. 和田教美

    ○和田教美君 それから、先ほどの答弁で、今後も三十年たった外交文書については原則公開という方針でいくことには変わりがないんだということを外務大臣以下おっしゃっておったわけですが、少なくともこの前の第八回公表といいますか、二、三カ月前の発表の中には、例えば我々が非常に関心を持っております日米行政協定の問題はもちろんのこと、日華平和条約の交渉過程とか日韓予備会談、そういったいわばその時代の核心部分になっているところがほとんど欠落をしておるわけなんですね。そして、国連加盟というふうなものはもちろん入っておりますけれども、本当に我々が知りたいという部分は欠落をしている。それで果たして原則自由という方針が貫かれておるのかどうかということについて私は疑念を持つわけで、今後も、結局、外交上の機密だということでそういう形になる危険性がないかどうか、その辺の点についてもう一度念を押しておきたいと思います。
  115. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 三十年を経過した外交文書について原則これを公開していくというこの基本方針は、これは外務省としても堅持してまいるつもりでございます。今回、前回の八回目の公開で御指摘のような文書公開されておりませんけれども、これは、先ほども御説明いたしましたように、非常に膨大な文書を今検討しておりまして、その審査をしておりますので、この間の公開の時点においてその審査が終了しておらなかったためでございまして、これを非公開とするという決定をその時点でしたわけではございません。
  116. 和田教美

    ○和田教美君 次に、イギリスの関係のことなんですけれども、トルコの第二次ボスポラス橋の建設工事の受注競争の問題について先日サッチャー・イギリス首相から文句が来たというふうなことが大分話題になっておりますけれども、イギリス側の理解も、日本の経済援助をてことして強引に日本側が落札したというふうな理解だった点については、これは明らかに事実関係は違うというふうなことのようでございますけれども、しかしそういうふうな抗議が来るという背景には、やっぱりアメリカと同じような貿易摩擦、日本の慢性的な輸出超過という問題が介在をしていることは明らかだというふうに思うわけでございまして、この問題についてイギリス側に対して何か対応をしなきゃいかぬわけですが、外務省としてもお考えになっていると思いますけれども、大体どういう方向の要するに処理をやられるか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  117. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) サッチャー首相から書簡が来ていることは事実でございますけれども、今まさしく御指摘になりましたようにその背景としてはいろいろなことがございますので、どういう形でもって我が方がこれに対応するのが最もよいか、現在それを鋭意検討中の段階でございます。
  118. 和田教美

    ○和田教美君 とにかく貿易摩擦をこれ以上かき立てるような処理の仕方はやっぱりまずいと思うので、その辺のところはよく考えていただきたいというふうに思います。  それで、先ほど外務大臣、この間のボン・サミットでも南北問題について大いに関心を示して、そして聞くところによりますと、アフリカの問題について日本と西ドイツでアフリカ対策についてのフォローアップをやる、それを任されたというふうなことがあるわけなんでございますけれども、今の南北問題で一番目立つのは、一つは、今議題になっております中南米の累積債務の問題と、もう一つは、やはり何といってもアフリカの飢餓の問題、アフリカの異常な飢餓の状態というふうなことだろうと思うんですけれども、フォローアップについては東京サミットが来年開かれる前に、ことしの秋の国連総会のときにいろいろ相談をするというふうなことのようですが、日本としてどういう対応をしようとしているのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  119. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはサミットで今アフリカの危機に対して、これを先進国側がいかに協力していくかということについてぜひともこれはやらなきやならぬ。ついては、大体東京サミットは一年後であるけれども、その前に一つの見通し、どういう形でやれるかということについてのサミット参加国としての協力一つ方向というものを取りまとめをすべきじゃないか。そこで、この問題については日本、それから西ドイツ中心でやってもらいたいというようなことになりまして、結局ことしの九月の国連総会の際の外務大臣会議がありますから、そのときまでにサミット参加国が専門家会議、担当者会議等もやって、そこでひとつ話し合いを十分詰めて、大体九月の外相会議にはそれを報告する、そういうところまで持っていこうと、こういうことで一応の方向が出たわけであります。さらにここでもって終わりとするわけではありませんし、その取りまとめ方次第ではさらにこれからのフォローアップをどうするかということにもかかってくるでしょうし、あるいはまた東京サミットにも関連ももちろん出てくる可能性も十分ある、こういうふうに思います。
  120. 和田教美

    ○和田教美君 五十四年度のODAでも、外務大臣が直接アフリカに行かれたりして、二回にわたって食糧緊急援助のようなことをおやりになりましたね。非常にアフリカから喜ばれたというふうなことを聞いておるわけですが、今予定されているようなODA援助以外の新しいそういう緊急対策というものをさらにつけ加えるというふうなことになるわけでございますか。
  121. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま委員指摘のとおり、昨年まずOECD閣僚理事会の場で外務大臣からサハラ以南アフリカに対しまして一億一千五百万ドル、一億ドル以上ということでございましたけれども、結果的には一億一千五百万ドルの農業関係援助の供与、意図表明が行われました。それから、十一月のアフリカ御訪問の際に、追加的に五千万ドルの農業関係援助の意図表明がございまして、今年度、昭和六十年度でございますけれども、昭和六十年度につきましては、政府原案が昨年末できました際に、二国間の贈与及び技術協力で合計六百億円程度をサハラ以南に向けるということと、それから円借款につきまして一億ドル程度をサハラ以南アフリカに向けるという意向の表明を外務大臣がなさいました。  その後、世界銀行の主宰によりまして、農業緊急援助と申しますか、農業関係の協調融資及び特別基金の会議というのがことしの初めから行われておりまして、それに我が国も参加をするということになっておりますが、これは無償につきましても、有償につきましても、今の外務大臣の意図表明の枠内で世銀の行っているプロジェクトに参加していく、こういう形をとることを考えております。
  122. 和田教美

    ○和田教美君 アフリカのODAを見てみますと、やっぱり食糧援助及び食糧関係の援助というものが非常に目立つわけなんですけれども、私は、いわゆる緊急の食糧援助というものは、もちろん今の状態ですから非常に必要だと思いますけれども、それだけではやっぱりこの食糧危機というのはなかなかとにかくおさまらないというふうに思うわけで、もっと基本的な構造の問題に、要するに、チェックをして、メスを入れていくということが必要ではないか、農業のインフラストラクチャーの問題だとか、輸送の問題とか、道路の問題だとか、そういうことが非常に重要だと思うんで、そういうことに本格的な援助をしていくということになると、相当金もつぎ込まなきゃいかぬというふうなことになるわけですけれども、その辺のところは外務省として基本的にどうお考えなんですか。
  123. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) まさに委員指摘のとおり、緊急に必要としております食糧ないし医療品を送るということだけでは問題の解決に資しませんので、昨年の十一月外務大臣のアフリカ御訪問の際にも非常に強調されました点は、我が国としましては、食糧の緊急援助に加えまして、食糧の貯蔵、それから輸送手段に対する援助、これは収穫後援助と称しております。収穫の前の援助ではなくて、収穫された食糧が腐っていくとかなんとか、そういうものを防御しよう、除こうということです。及び中長期の見地に立った農業インフラの整備ということに主力を注ぎたいということで日本立場を宣明されまして、その一環といたしまして、本年四月、中長期的な立場に立った我が国の対アフリカ農業援助の指針を探るという見地から、元農林次官をしておられました中野和仁氏を団長にいたしまして、農業関係専門家から成りますハイレベルの調査団をアフリカ諸国に派遣いたしまして、いろいろ提言をいただいているというのが今の状況でございます。それから、先ほどちょっと外務大臣からも御紹介ございましたように、サミットの場で各国がいろいろ出しました農業関係につきましての研究ネットワークの整備ですとか、早期警戒網の整備ですとか、そういうことにつきまして我が国が調整役という形になっておりますので、ドイツ等とも連絡をとりながら、各国の専門家レベルでの意見の交換というものを深めていきたいと思っております。
  124. 和田教美

    ○和田教美君 時間が来ましたので、最後の質問ですけれども、このアフリカ援助については政府だけで全部賄うということがなかなか難しい。ODAの援助ということになるとなかなかやっぱり小回りがきかないというか、手が届かないというふうなところが出てくるんじゃないかと思うんで、それだけにいわゆる民間の援助活動というものが非常に重要になってくるというふうに思う。去年の秋から民間の援助、いろんなキャンペーンが非常に盛んになって、非常に私たちもこれを感謝しているわけなんですけれども、今大体、民間のアフリカ支援活動、NGOの、どのくらいの金額になっているのか。それから、政府との間に十分な連絡が行われているのか。さらにまた、政府のODAにくっついて民間が出ていくというふうな形が非常に具体的に動いているのか。その辺の民間の問題について最後にお尋ねしたいと思います。
  125. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) 政府援助のみならず、民間の援助が重要であるという点につきましての認識は我々も同様でございまして、こういう認識に立ちまして、政府といたしましても、昨年以来アフリカ月間を開催したり、あるいは官民の連絡会議を設けたりという形で、民間の対アフリカ援助活動というのをエンカレッジしてきたわけでございますけれども、金額についての御質問でございますけれども、もとよりこの民間の援助というのは全く自発的に行われているものでございまして、我々としても金額を全体として正確に把握しているかどうかは必ずしも自信のないところでございますけれども、我々が昨年来この官民連絡会議等を結成いたしまして、連絡をとった結果として判明しているところでは、今の金額は大体百二十億円ぐらいの民間の援助が行われているというふうに承知しております。ただ、この百二十億円の中には、昨年来毛布を集める運動がございまして、その結果百七十万枚の毛布が集まったわけでございますけれども、こういう現物の支援活動につきましても、適宜この評価を、毛布の場合一枚三千円という計算でやったわけでございますけれども、そういう形で医薬品あるいは毛布のような現物については適当な見積もりに基づいて推定をした数字でございます。それを合わせました数字が約百二十億というのがこれまでの我々が承知している限りの数字でございます。
  126. 和田教美

    ○和田教美君 終わります。
  127. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 米州投資公社に関しては既に今まで出された質問以外につけ加えることはございませんので、当面の外交課題について質問申し上げたいと思います。  経済摩擦の問題については既に私この委員会でもたびたび取り上げましたけれども、きょうもまたその問題を取り上げたいと思っております。と申しますのは、私はこの経済摩擦の問題は現代の日本の最大の外交課題、あるいはむしろ日本政治の直面している最大の課題ではないかというふうに考えております。  これも繰り返しになりますけれども、一九三〇年代を想起しますと、経済不況のために各国で失業者がたくさん出て、その失業者の圧力のもとに各国がいわゆる保護貿易主義になった。各国の経済的な対立が深まってくる、あるいは日本もその余波を受けまして経済的にだんだん孤立していって、結局戦争というふうな悲劇にまで陥ったのですけれども、こういう保護主義の波というのは一度広がり出すと急速に世界じゅうに広がっていく極めて危険なものである。これはやはり早期にその芽を摘み取っておく必要があると思うのであります。その意味でそういった保護主義になることを防ぐために、日本が率先して自由貿易の推進をしていく必要があると思うのですけれども、その観点からまず最初にヨーロッパ、特にイギリスとの経済摩擦の問題を取り上げたいと思います。  先ほど和田委員からも質問がございましたけれども、ボスポラス海峡の第二の橋の問題で、かなりイギリスの議会あたりがエキサイトしているような報道もございますけれども、まず最初に事実関係を明らかにしていただきたいと思いますが、入札の経緯、どのくらいのグループが入札したのか、日本の商社が関係しているグループは幾つぐらい、また、どのように入札したのか。それで、イギリスの商社が加盟しているグループとの差がどの程度であったのか、そういった事実関係を明らかにしていただきたいと思います。
  128. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 第二ボスポラス橋のプロジェクトでございますが、入札の側面だけに限って時系列的に申し上げますと、入札に際しましての事前審査と申しますか、PQと称しておりますが、これが二月の初めに行われました。入札の締め切りが四月の中旬でございましたけれども、最終的に残りましたのは四つのグループが残っております。当初は九つぐらいのグループが関心を示しておりましたけれども、最終的に入札に参加しましたのは四つのグループです。四つのグループのうちの第一のグループが日本のよく知られております石川島播磨、伊藤忠等々から成りますグループで、これが一番札を取りました。二つ目のグループがイギリスのクリーブランドと申します橋をつくります専門の会社、それからアメリカ、トルコというようなコンソーシアムでございます。ちょっと申しおくれましたが、第一のグループも日本それからイタリア、トルコのコンソーシアムでございます。それから、あと残りの二つ、それぞれ日本商社ないしメーカーが入っております。この名前ももし必要でございましたら申し上げますけれども、結局最初に申し上げました伊藤忠及び石川島播磨のグループが一番札ということで、私どもの承知しておりますところでは、第二番目のイギリスのクリーブランドという橋のメーカーのグループとの間の値段の差が一五%ぐらいだったというふうに承知いたしております。
  129. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 絶対額で新聞の報道によりますと、第一入札が五億五千万ドル、イギリスのクリーブランドの入っている方が六億七千万ドルというふうに聞いていますけれども、それに間違いございませんですね。
  130. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 私どもの承知しておりますのも大体そういう数字でございます。
  131. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 イギリスの議会に山崎大使が呼ばれていろいろつるし上げに近いような状態でイギリスの議会としてはまことに恥ずかしいようなシーンじゃないかと私思うのですけれども、その席で日本は、トルコ政府に対する政府借款をてこにして入札を日本に有利に工作したのだというふうなことが言われているそうですけれども、そういう事実はあったのでございますか。
  132. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいまの御質問がもしそのような発言がイギリスの側でなされていたのかという御質問でしたらそのような発言はなされております。五月の一日ぐらいからかと思いましたが、英国の議会で本件がいろいろ取り上げられまして、イギリスのマスコミ等にも報ぜられておりますけれども、いろんな論点が出ておりますが、一番大きく言われておりますのは全体の入札価格だけではなくて、橋の部分というのが実は第二工区という橋及びちょっとした取りつけ口三十七キロぐらいの道を加えた部分なんですけれども、それに対しまして我が国政府は第二工区の外貨分に対しまして我が方は円借款の供与の申し出を行っております。それからもちろんほかのグループもそれぞれいろんな公的な金融を持ってきているわけですが、イギリス側の非難の第一の点は、イギリスのクリーブランドのグループは値段の点ではそれほど遜色がない、ないしはイギリスは日本に勝っていたんだけれども、日本政府のソフトな借款ないし信用供与のおかげで負けたのであるという批判が行われております。しかしながら、このこと自体は実は誤解に基づくものであるということで我が方から説明もいたしておりますし、その後イギリスの政府の答弁中でもイギリス政府日本に負けないだけの信用供与は行っているという弁明をしておりますので、この点の先方の議員ないしマスコミの発言というものは誤解に基づくものだということははっきりしておるかと思われます。
  133. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 こういう入札の際に直接それに絡めるかどうかということは別にして、各国のやはり政府の借款なんかが行われてそれが間接的な影響を及ぼすということは一般的にあることではないかと思うのですけれども、今度の場合でもイギリスの政府もやはりトルコに対して幾らかの借款を申し入れたというふうな話を聞いているんですけれども、それは事実に間違いございませんですか。
  134. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 私どもは実は直接的な情報というものは持ち合わせておりませんけれども、間接的に承知しておりますところでは、英国側は贈与及び輸出信用という両方の組み合わせで英国側のサイドを支援していたというふうに承知しております。
  135. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今度の問題に関する限りイギリスの議会なんかの態度は、必ずしも事実に基づかないで日本に対する非難をやっている。まことにイギリスの議会にふさわしくないような気がするんですけれども。私は、別にそれによってイギリスを非難するつもりでこの問題を取り上げたんではなしに、こういう問題が起こってくるのはやはりかなり深い根があるんではないかと思うんですけれども、そのバックグラウンドをどういうふうに分析しておられますか。
  136. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) まず申し上げられますことは、現在のイギリスの経済情勢が必ずしもよくないということがございます。特に失業がさっぱり解決されないということがございまして、それの現状及び先行きに対するいら立たしさといいますか、そういうものがまず大きな前提としてあるかと思います。そういう状況に加えて我が国との貿易収支は、イギリスだけをとりましても非常に日本側の出超ということになっておりまして、イギリスがそれに対して、日本に対しては門戸を開いてどんどん輸入しているつもりである、日本はそれで稼いだお金を実はそういう形で援助に使って、それで英国がとろうとしていた商談を壊すようなことをするではないかと。どうもそういう心理的なといいますか、感情があるように思われます。さらに、その場合にイタリーとの比較がありまして、イタリーは御承知のように日本に対して非常に厳しい輸入制限、特に自動車の場合などやっております。そういうイタリーと日本はむしろ手を組んで、それで自由に開かれているマーケットを用意しているイギリスにそういうひどいことをしたと、向こう側は感情的にそう受け取っているわけですが、そういうふうな気持ちもあるようでございまして、いろいろなそういう要素が混合してこのようなことになったものと思われます。  したがいまして、論理的にいろいろこうである、ああであるというふうに説明を我々としては努力してまいりましたんですけれども、問題の所在は、そういう論理的な説明にある程度の限度がございまして、あとはそういうふうな感情的いら立ち、さまざまなファクターに基づくところの先方の不満、これにどういうふうに対応するのが一番賢明であるかということだと存じます。
  137. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 イギリスの議会のことは報道されました。それからまた、大衆紙が日本を口汚くののしっているというふうなことも聞いたんですけれども、イギリスのクォリティーペーパーの意見はどうですか。と申しますのは、アメリカの場合と比較しますと、アメリカでワシントンのコングレスはかなり興奮しているときでも、アメリカのクォリティーペーパーの方はかなり冷静な論説を掲げていたように思うんですけれども。イギリスの場合、ウエストミンスター以外の一般の空気はどうなんですか。
  138. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 私どもも見ておりまして、ただいま申し上げましたような感情的な空気とは違いまして、いわゆるクォリティーペーパーと言われるような新聞では、こういう問題でもってイギリスが日本を攻撃するというのは若干筋違いではないかという、そういう論調が見受けられないわけではございません。しかしながら、先ほども申しましたような感情的な要素が非常に強いものですから、どちらかというとその声はかき消されがちという印象を持っております。
  139. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まあこれについてサッチャー首相から親書が来たと先ほど和田さんも取り上げられましたけれども、親書ですから内容については触れられないかもしれませんけれども、イギリスの政府として日本に対して何か具体的なこうしてもらいたいというふうな要求が来ておりますですか。
  140. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま委員指摘のとおり、先方の首相から我が方の総理あての親書でもございますので、内容に触れることは差し控えさしていただきたいと思いますが、一般的に本件を、迅速に我が方が説明をしたということを多とするとともに、一般的な形で輸出信用の問題等については今後とも議論を続けていこう、輸出促進的な援助のあり方についてはですね、というようなことが触れられていたように承知しております。
  141. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 イギリス以外のEC全体、まあイギリスを含めましてのEC全体と日本との間もかなり片貿易、百億ドルぐらいの黒字じゃないかと思いますけれども、EC全体として日本に対して貿易上の要求、どういうふうな要求が来ておりますでしょうか。
  142. 国広道彦

    政府委員(国広道彦君) ECは既に何年か前から日本との関係における大変大きな貿易赤字に不満を持っておりまして、これは日本の貿易制度、貿易法制、関税、商慣習すべての結果であるとしまして、ガットの二十三条に基づく協議を要請してきたのであります。その協議を何度か繰り返した後、その協議そのものは一応今凍結された、棚上げされた状態になっておりまして、もう少し各論をやろうということでございまして、実は今週も第二回目が行われるんでございますけれども、安倍大臣がECを訪問されたときの提案に基づきまして、もっと専門家のレベルで対日輸出を拡大する具体的方策について検討しようという作業が行われております。  その中には、もちろん相当大幅な品目にわたる関税の引き下げ要求もございます。それから、日本の輸入制度、植物検疫とか、そういうものに対する要求もございます。それから、日本の商標の扱いから来る問題、すなわち日本で使用されているラベルがヨーロッパ製品と見間違えるとか、それから偽造の商品が売られているとか、そういう不正行為に及ぶ面の問題も提起されております。まあその他基準認証の問題も取り上げられております。まあ種々その他含めましてあらゆる面から貿易の障害になっているということを取り上げたいということでございまして、我々もこれに対しましては誠意をもって協議に応じているところでございます。
  143. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 新聞なんかの報道によりますと、酒であるとかチョコレートであるとかチーズであるとか、関税引き下げであるとかあるいは先ほど言われた認証制度改善とか、そういう要求があるようですけれども、そういったものを仮に改善しても、とっても百億ドルの収支黒字を解消するようなことはできないんじゃないかと思うんです。何か政府としてそれに対して打つ手というふうなものは考えておられるでしょうか。
  144. 国広道彦

    政府委員(国広道彦君) 確かにそういう懸念はございます。したがいまして、EC関係国の中からはこの際ぜひとも政府が自分で買えるものを象徴的な意味合いをもって買ってくれないか。例えばEC、ヨーロッパの製品の武器を買うとか、民間航空機を新しく発注するときに、従来アメリカ製品が多いですが、ヨーロッパ製品にならないかとか、そういう要求があります。しかしながら、それはいずれも確かにそういう魅力はあると同時に問題があることはお察しいただけると思います。したがいまして、正道はやはり貿易障害となっているものを少しでも片づけ、なおかつ我が国の国内の需要をふやすことによって、少しでも輸入をふやしていくということでございます。幸いにしまして、ECの諸国も共産圏諸国とは違いまして、法律的に制限をして、それによって日本を縛ってというふうなことを主張しているわけではございませんので、つまり輸入枠による制限をしようとしているわけじゃございませんので、その点はいましばらく我々の努力を続けていけるものと思っております。
  145. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ECの問題だけを伺っていますと時間が足りませんので、ECの問題はその程度にいたしまして、次にASEANの問題に移りたいと思いますけれども、先般自民党の政調会長の藤尾さんがミッションとして行かれたわけですけれども、あれはどういう資格で行かれたわけでございますか。政府の代表ですか。
  146. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 藤尾政調会長が、過般ASEAN諸国を訪問されましたけれども、資格としては総理の特使という形で参られております。  目的もついでに申し上げますと、日本とASEANの諸問題の解決の方途を探るとともに、日本・ASEAN間の協力関係を将来に向けてどういうように強固にし得るだろうかという点で、各国政府首脳と二国間関係全般について、忌憚のない意見の交換を行うということが主たる目的であったと、かように理解しております。
  147. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは新聞の報道ですけれども、藤尾さんは、出発の前は大所高所から議論してくるんだというふうな意気込みで行かれたらしいんですけれども、実際に向こうから出た要求は、ザッハリッヒといいますか、非常に具体的な、貿易の問題なんかが多かったように思うんですけれども、今度のミッションとして、大体成功したというふうにお考えでございますか。これは大臣にお伺いしたいと思います。
  148. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回、藤尾ミッションの訪問は、ASEANとの間の基本的な協力関係というものを再確認して、さらにこれを発展するために、お互いが何を努力するかといった非常に大局的な立場もありますし、同時にまた、ASEANが今日本に求めておる具体的な問題等について、日本考え方説明する、今後の考えも申し上げる、こういうことであったわけですが、そうした限りにおいて、大所高所においてのASEAN四カ国との間の協力関係というものも改めて再確認されまして、これは大変いいことだったと思いますし、さらに具体的な、いろいろなASEAN諸国が抱えておる諸問題についての日本に対する要望についても、藤尾ミッションは懇切丁寧にこれに対する日本考え方あるいはまたその決意を伝えまして、日本の真剣な誠意に満ちた姿勢というものはASEAN側も評価をしたと思いますが、しかし問題は、このミッションの後のフォローアップをどうするかということでありまして、結局約束してもこれは実行しなきゃ意味がないわけでございますし、ASEANも藤尾ミッションのそうした回答がこれからどういうふうに実行されるかということに非常に注目しております。  その一つの大きな、日本とASEANとの関係の問題解決する一つの何といいますか、課題というのが六月の終わりに行われる日本・ASEAN経済閣僚会議での論議であります。少なくともASEAN諸国としてはこの日本・ASEAN経済閣僚会議というものに藤尾ミッションの具体的な回答というものがどういう形であらわれるかということを非常に注目していると思います。この日本・ASEAN経済閣僚会議は、日本・ASEANの全体的な経済の協力関係等を論議するわけですが、しかしそうした具体的な問題も今度非常に注目されておりますし、我々もそういうことを踏まえて、いわば藤尾ミッションのASEAN訪問のいわゆる最終的な決着としての、回答版としての経済閣僚会議というものに持っていかなきゃならぬのじゃないか、そういうふうに思います。  そうすることが日本・ASEAN関係をさらに発展させることにつながっていくことになるんだ、こういう考え方でこれに対応したいと思っております。
  149. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これも新聞の報道ですけれども、藤尾ミッションに対して各国それぞれ、個別品目についての要求があった。例えばインドネシアから合板の問題であるとか、タイから骨なし鶏肉の問題であるとか、マレーシアのパーム油の問題であるとか、フィリピンのバナナとか、これは従来、外交ルートを通じて日本に言ってきたことだと思うんですけれども、何か新しく今度藤尾ミッションに対して、従来の外交ルートを通じて言ってきたこと以外に何か新しい要望というふうなものがございましたでしょうか。
  150. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 本当に新しいという、私どもにとって初めてというのは特になかったと記憶しております。いわゆる各国が持っております我が国に対するいろいろな要請とか期待を集成したような形で、今先生御指摘のような具体的な品目の関税引き下げあるいは市場拡大あるいは市場アクセスの改善ということのほかに、従来から言ってきておりますけれども、自分たちの工業製品の輸出促進とか、あるいはこれから自分たちも工業化を進めていきたい、そういうものについて、日本として投資その他を通じて、あるいは技術協力等を通じて協力してほしい、そういう要請がございまして、こういう要請は今までいろいろな場において私どもは承知してきたものであろうというように理解しております。
  151. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これも新聞の報道によりますと、藤尾さんが国連の常任理事国に日本がなることについて各国政府を打診されたそうですけれども、これは政府と打ち合わせをして行かれたことでございますか。
  152. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは別に打ち合わせてした結果ではありませんで、藤尾さんの年来の考え方を向こうに伝えたんだろうと思います。しかし、こうした常任理事国になりたいといいますか、国連における今日の日本の役割から見れば、情勢が許せばそういう立場日本が活躍するということは当然あってもいいんじゃないかと私も考えておりますけれども、今の国連の常任理事国の構成の状況から、あるいはまた総会の情勢、全体のやはり、国連憲章、そういうものも見まして、なかなかこれは憲章改定にもつながっていきますし、そう簡単にはいかない。かつてはアメリカもこれを支持したということもありますけれども、なかなか言うはやすくして行うはかたいということであろうと思います。
  153. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 時間が迫ってきましたので総論的に、これも先ほど和田委員が触れられたことの繰り返しになりますけれども、質問したいと思います。  アメリカとの関係、ECとの関係、アジアとの関係日本は各国からいろいろ注文をつけられているわけですけれども、結局デレギュレーションによって輸入の認証制度改善するとか関税を多少下げるとか、そういったことだけではとても私はこの巨大な貿易黒字を解消するということは不可能ではないかと思います。それで中曽根総理大臣はデレギュレーションによって民間の経済力を活用することによって輸入を拡大していくんだというふうなことを言っておられますけれども、私はやはりそれだけではとてもこの貿易黒字を解消することは不可能であって、政府がリーダーシップをとって財政的な措置、財政政策による景気の刺激というふうなことをやっぱり真剣に考えるときにきているんじゃないかと思います。確かに、財政改革、六十五年度において赤字国債をなくするということは至上命令ですけれども、しかしそれだけが唯一の国家目標ではないのではないかと思うんです。やはり民間の資本を導入するためにもその呼び水として財政資金であるとかあるいは財政上の、公共事業に対する利子補給であるとか、そういったふうな手を打つべき点はまだ残されているんじゃないかと思いますし、その時期がきているんではないかと。こういうのは後からやったんでは、本当にせっかくの効果あるものが時期を逸したために役に立たなくなってしまうということがあるわけで、これは保護主義に火がついてからそういうことを始めても私はとても間に合わないと思いますので、先ほど安倍外務大臣は和田委員の質問に対して、まだその時期ではないけれどもその時期を見ているんだというふうなお話でしたけれども、本当に真剣にその問題を検討するときにきているんではないかということを私感じております。  改めて大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  154. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり一番恐いのは保護主義が世界を覆うということだろうと思います。そのときは幾ら日本がばたばたしても日本自身の経済の崩壊につながっていくわけですから、日本にとりましても世界にとってもやっぱり保護主義から世界の経済を守る、自由貿易体制を進めていくということがもう絶対不可欠であろう、こういうふうに思いますが、今の状況を見ておりますと、保護主義がさらに火を噴く可能性が非常に強い。特にアメリカが景気が悪くなればこれは一挙にそういうことになってくるんじゃないか。そのときはもう大変な事態になるわけでございますから、アメリカの景気というのはそういう面では非常に我々として注目して見なきゃならぬと思いますし、そのときはそういう事態が予想されるということになれば、それに先手を打った形で日本としてのこれから生きていくための何らかの手段を講じていかなきゃならぬ。それはやはり日本が自分の力で内需を振興していくということじゃないだろうか、こういうふうに思っております。  アメリカの景気はどれほどこれから深刻な事態になるということまで今予測できませんけれども、しかし一—三月の第一・四半期の情勢を見ると必ずしも楽観は許されないということでございます。もう少し事態を見て、そして場合によっては、今おっしゃるような財政そのものの基本計画を変えるというところまではいかないにしても今の利子補給だとかあるいはまた呼び水的な財政措置であるとか、そういうものをやっぱり機動的にやらなきゃならぬことになり得る感じであろうと思いますし、まあ研究はしておかなきゃならぬ課題だと、こういうふうに思っています。
  155. 抜山映子

    ○抜山映子君 先回、米州投資公社を設立する協定に関してはほぼ質問を済ましたので、本日は岡本公三の釈放の件に関連してお伺いしたいと思います。  十三年前、空港ロビーにいた乗客二十六名を殺害し、同じくロビーの七十六人にけがをさせた無差別なテロ行為は世界の耳目を集め、また我々日本人としても大変恥ずかしい思いをしたというのはまだ記憶に新しいところでございます。新聞によりますと、従来この釈放は、武闘派のパレスチナ解放人民戦線総司令部派が、すなわちPFLP・GCというんですか、それが単独でやったんだろう、はねあがってやったんだろうと、こういうような解説がなされておったわけですけれども、つい先日のこれもまた新聞記事によりますと、中東を拠点とする日本赤軍が、わざわざ二十三日の夜に、「5・30十三周年に寄せて」という声明文を発して、今回の争奪作戦は日本赤軍も含めたパレスチナ解放機構の急進派の統一行動であったと、こういうように声明を発表しておるわけでございます。  そこで、警察庁の方見えていらしたらお伺いしたいんですが、この岡本公三の釈放については事前に何らかの情報をキャッチしておられたかどうか、その点をお伺いいたします。
  156. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 警察といたしましては、外務省の方から非公式情報があったというようなことを連絡いただきまして、そこで初めて岡本公三の釈放の動きがあるということを承知したわけでございます。
  157. 抜山映子

    ○抜山映子君 そのキャッチしたのはいつですか、日にちとしてはいつですか。
  158. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 外務省が五月中旬に情報を入手されまして、そのことですぐ私の方に御連絡をいただいております。
  159. 抜山映子

    ○抜山映子君 五月中旬と申しましてもかなり範囲が広うございますが、これは釈放時点のどれぐらい前になるんですか、後になるんですか。
  160. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 私どもが通報いただきましたのは五月十六日でございます。
  161. 抜山映子

    ○抜山映子君 五月十六日というと、私の質問にちゃんと答えていらっしゃらないと思いますが、これは釈放の前後で言うとどういうことになるわけですか。
  162. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 岡本公三の釈放を私ども確認いたしましたのは二十一日だったと思いますが、その以前でございます。非公式情報として、本人がいわゆるPFLP・GCとイスラエルの間の捕虜交換の中で、イスラエル側が岡本公三を釈放するんじゃないかというような非公式情報を私どもも受けたわけでございます。
  163. 抜山映子

    ○抜山映子君 二十日が釈放の交換開始ですからその四日前ということになりますね。これについては外務省の方は何か対処されたわけですか。
  164. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) 外務省といたしまして、ただいま警察の方から御答弁申し上げたような情報、非公式情報を最初に入手いたしましたのは現地の五月十五日でございます。それで、その情報を電報で本省が受けましたのが十六日の早朝ということで、直ちに警察の方にも連絡を申し上げていろいろと対策を協議を始めたということでございます。     ─────────────
  165. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 委員異動について御報告いたします。  本日、嶋崎均君が委員辞任され、その補欠として岡部三郎君が選任されました。     ─────────────
  166. 抜山映子

    ○抜山映子君 このようなテロ行為を犯した岡本公三を釈放するということは、日本にとっても大変重大なことであり、また世界全体の治安にとっても非常に望ましくないことですから、すぐイスラエル政府に対してそういうことが万が一にもあり得ないよう折衝なさったと思いますが、どういうことをしていただけましたでしょうか。
  167. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) イスラエル側に対しまして二度申し入れを行っております。  最初に、ただいま申し上げましたように、十六日に我々といたしましてこういう情報を入手いたしまして、直ちにこの対策を協議いたしまして、我が出先の大使館に対しましてはこの非公式情報をまず確認を求めるということと、それがもし事実であるとすれば、これは日本にとってはやはり重大な懸念を持つものである、つまり新たにテロリストを野に放つことになる、それから現にあの地域に存在しております国際テロの集団、これの動きを今後とも鼓舞することになるということ、それからまた、一般国際法上もこの引き渡し、釈放については疑義があるという以上の理由を挙げまして、イスラエルに対しましてこの釈放の措置を再考するように強く求めたわけでございます。    〔委員長退席、理事宮澤弘君着席〕  しかしながら、イスラエルといたしましては、やはりこれはイスラエル側の捕虜を取り返すという至上命令であって、かつこれはこの捕虜交換協定の中のパッケージとして岡本の身柄が指定されているということで、岡本についての釈放措置を再考することはできないという返事でございました。そして、実際上、二十一日に至りましてジュネーブにおいてこの捕虜の交換が成立して岡本は事実上釈放されたということになったわけでございますが、この事実を確認いたしました後、再度政府といたしましてはさらに在イスラエルの我が大使に訓令をいたしまして、イスラエル側が今回、我が方がさきに申し入れた国際テロを鼓舞するおそれのある措置を、しかも国際法上疑義のあることを承知の上であえて行ったということに対して強く遺憾の意を表明するように訓令をいたしまして、大使はこれを実行いたしたわけでございます。
  168. 抜山映子

    ○抜山映子君 このたび、日本赤軍派の声明文のタイトルは、十三年前のテルアビブ事件を記念しようというものであって、一つは、同志解放の闘いを継続したPLOの戦士たちに感謝する、二つ目は、十三年間の肉体的精神的拷問に抜え抜いた岡本同志を非常に称賛する、三番目に、解放された同志が再び解放闘争の戦線に加わるということを明らかにしている、こういうことで岡本公三を宣伝作戦にフルに利用するとともに、再び同志に加えて活動するということを非常に挑戦的にうたっておるわけなんですね。  これに対して、恐らく新聞にも出ておりますが、警察で国際手配をしてくださったということでございますけれども、どのように対処していただいたか、現在の時点で明らかにしてください。    〔理事宮澤弘君退席、委員長着席〕
  169. 笠井聡夫

    説明員(笠井聡夫君) 岡本公三につきましては、国際刑事警察機構の手配業務の一つでございます青手配、通称青手配と言っておりますけれども、その所在調査を含め関連情報の収集につきまして事務総局を通しまして加盟各国に依頼を行っております。
  170. 抜山映子

    ○抜山映子君 この国際刑事警察機構、ICPOですけれども、この活動状況はどうなっておりますんでしょうか。
  171. 笠井聡夫

    説明員(笠井聡夫君) 国際刑事警察機構は各国の刑事警察官の唯一の国際協力機関でございます。したがって、刑事事件につきまして各種の情報及び資料の交換手配業務を行っているわけでございますが、御案内のとおり、刑事事件につきましては敏速性が特に求められておるという観点で独自の無線網を国際刑事警察機構は持っております。この無線利用は年間五十八万件に及んでおります。  それから逃亡犯罪人の所在調査、それから盗難美術品の調査等のような加盟各国すべてを対象とした各種の調査依頼、照会依頼、こういったものにつきましては事務総局を通じまして国際手配をいたすわけでございますが、この国際手配制度につきましては年間約一千件に上る新規の国際手配書が発行されております。  それから我が国におきましてもこの刑事事件の捜査並びに関連の情報資料の交換等を随時行っておるわけでありますけれども、ほとんどその大半はこの国際刑事警察機構との間で行われておりまして、その年間の情報交換数、ラフな数字で申し上げますと約六千件を超えるに至っておる、こういう実情でございまして、国際犯罪捜査に当たりましての国際刑事警察機構は極めて重要な役割を果たしておるということが言えようかと思います。
  172. 抜山映子

    ○抜山映子君 この国際手配は手配書の色によって赤、青、緑、黒、白、紫と六種類に分かれている、こういうことなんですが、この六種の分類、ちょっと教えていただけませんか。
  173. 笠井聡夫

    説明員(笠井聡夫君) この国際手配書につきましては、その内容あるいは手配の目的、内容等によりまして、お尋ねのとおり六種類に定形化されて発行されておるわけでございますが、例えば青手配と今申し上げましたけれども、これは国際情報照会手配書というのが正規の呼び方でございますが、それぞれこの手配書の態様に応じまして手配書の隅に色でもってすぐ見分けがつくようにされております。それで簡易に便宜青手配、赤手配、白手配と、こういうふうに呼んでおるわけでございますけれども、所在確認等を要請する国際情報照会手配書が青、それから国際防犯手配書と呼ばれるものが緑、それから国際贓品手配書、贓品手配でありますけれども、これが白、そのほか国際逮捕手配、これは赤、それから国際身元不明手配、これは黒、さらに特殊な犯罪手口につきまして加盟各国に通報するという内容のものがありますが、これは紫と、以上六種類に分かれております。
  174. 抜山映子

    ○抜山映子君 今回の岡本公三の場合は青色手配なんだそうですけれども、これは逮捕状を日本の裁判所から受領して逮捕状が出ている旨の通知をこの国際刑事警察機構を通じてリビアですか、ノーティスしたと、こういうふうに理解していいわけですか。
  175. 笠井聡夫

    説明員(笠井聡夫君) 青手配の発行について事務総局の方へ依頼をしたということでございます。
  176. 抜山映子

    ○抜山映子君 そうするとリビアの方ではもうそれを受領しておるんでしょうか。
  177. 笠井聡夫

    説明員(笠井聡夫君) 当方から事務総局の方に対しまして発行の依頼の手続をとったというのがただいまの現状でございまして、我が方の依頼に対して新規に、新たに手配書をつくり、これを加盟各国に配付するのは事務総局が行うわけてありますけれども、若干の事務的な時日の経過は必要というふうに考えております。
  178. 抜山映子

    ○抜山映子君 私の理解している範囲では、日本から赤手配を出した例はないんだと、なぜかというと、令状主義をとっている日本では外国から逮捕の要請が出てもそれに応じられないから相互主義の観点から赤の手配は出せないんだと、こういうように聞いておるんですが、その了解で正しゅうございますか。
  179. 笠井聡夫

    説明員(笠井聡夫君) お尋ねのとおりで結構と考えております。
  180. 抜山映子

    ○抜山映子君 ところで、国際化の進展とともに国際犯罪の方も進展しておる。昭和五十八年に我が国に入国した外国人は百九十万を超えており、外国に出国した日本人は四百二十三万を超えていると、こういうことになりますと、日本人が海外で犯罪を犯したり、また国内で犯行後に海外に逃亡したり、こういうケースが非常にふえてくると思うのでございます。そうしますと、まあ現在の国際刑事警察機構ですか、これももっと充足していかなければならないと存じますが、警察庁の方でどのようにお考えでございましょうか。
  181. 笠井聡夫

    説明員(笠井聡夫君) 先ほど申し上げましたとおり、国際犯罪捜査に当たりまして国際刑事警察機構の現在果たしております役割というのは非常に大きなものがございます。国際犯罪が一般化していくただいまの現状にございましては、したがいまして、国際警察機構の機能並びに国際刑事警察機構を通した加盟各国との捜査協力ないしは共助というものはますます力を入れていかなければならないというふうに考えております。
  182. 抜山映子

    ○抜山映子君 外務省にお尋ねしますが、犯罪人引き渡しに関する条約は日本国とアメリカ合衆国との間で締結されておりますけれども、内容的に見て極めて穏当なものだと思いますけれども、このような条約を少なくとも先進国との間ではこれから結んでいくのは至当であると思われますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。
  183. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) 外務省といたしましても、現時点におきましては、特定の国との犯罪人引き渡し条約締結交渉に入る具体的な計画は有しておりません。しかしながら、今後ともいろいろな国との犯罪人引き渡しの具体的な実態的な必要性とか、あるいは相手国の法制、文化、政治的ないろいろな状況等を勘考いたしまして、できるだけ条約締結国の拡大を図りたいと存じております。
  184. 抜山映子

    ○抜山映子君 少なくとも先進国では、刑法の犯罪の処罰の種類とか数なんかは大体似たり寄ったりであるということが言えると思うのです。そういうわけで、ぜひこういう犯罪人引き渡しに関する条約についても各国と折衝の準備をしていただきたいと思います。  質問が突然なんで、ここで明らかにしていただかなくとも結構ですけれども、アメリカを初め、先進国が他の国と犯罪人引き渡しに関する条約をどれぐらい結んでいるのか。これは後日で結構でございますが、今おわかりでしたら、もちろんお答えいただいて結構なんですけれども、教えていただけたらと思います。
  185. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) あいにくただいま資料を持ち合わしておりませんが、調査の上後刻お答え申し上げます。
  186. 抜山映子

    ○抜山映子君 今回日本赤軍が、岡本公三を奪還したことに非常に士気高揚して、今後穏健派とのつばぜり合いの中でまた過激なテロ行為をするのではないかと非常に心配されるわけでございます。しかも、今回の奪還に当たりましては、日本赤軍派も関与して引き渡しを受けることに成功したと、こういうことでありますので、より一層今後のテロ行為が心配されるわけでございます。  そこで、外務大臣、先日衆議院の外務委員会の方で、シリア、リビアと率直に話し合う必要があると、このように言われましたけれども、具体的にはいつごろどういう形で接触なさろうとお考えでしょうか。
  187. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私も非常に重要視しておるわけでございますが、今はリビア、トリポリ、あるいはその周辺におるということのようですが、これから岡本公三がどこへ行くのか、シリアあるいはベカ高原というふうなことも言われておりますが、その辺のところもいろいろと我々としても確認をしていかなければならぬと思っておるわけでありますし、先ほどお話しのように、これが契機となって、日本赤軍派がさらに過激な行動を起こすことを防いでいくための外交的な努力というものはやはりしていきたいと、こういうふうに思っております。それにはやはり、赤軍派がおるところの国に対してもそういう配慮を呼びかけなければならぬ。いつどこでと、こう言われましても、今すぐここでお答えをする立場にまだないわけでございますが、少なくともリビアの政府に対しましては、岡本の所在確認を求めるよう我が方の大使館に訓令をもう既に発出をいたしておるわけでございます。
  188. 抜山映子

    ○抜山映子君 今回、捕虜の交換の数が、わずか三人と、一方は一千百五十人と。従来の交換の数というと、せいぜい二けたぐらいの違いだったと思うんですが、三けたも違う。こういうように大幅に違って、しかも従来テロ行為に対しては非常に厳しかったイスラエルが岡本公三も含めて釈放してしまった。こういうことをあえてイスラエルが行ったことについての原因をどのように外務省として考えておられますか。
  189. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) 今回の補虜交換協定の経緯につきましてはいろいろと言われておりますけれども、交換の交渉自体は実は三年ぐらい前からいろいろと行われてきておりまして、実際にこれまでにも二回でございますか、交換が行われているわけでございます。それで、今回は最後に残った三人、イスラエル軍兵士三人が後に残ってしまいまして、これに対してイスラエル政府といたしましても、どうしてもこれを引き取らなければいけないという大変強い国内的な圧力があったということが一つあるかと思います。これに対しまして、イスラエル側の方で今度釈放をする数につきましては、これはいろいろと経緯があって我々としてもなかなかその詳細、なぜ千人を超すような数になったかということについては原因がわかりませんけれども、これだけ数が違ったということはやはりイスラエル側にとってはどうしても最後に残された捕虜を引き取りたい、これによっていわばレバノン事件の後遺症というのですか、そういうものをなくしたいという大変強い意思が働いてこういう結果になったというふうに了解しております。
  190. 抜山映子

    ○抜山映子君 中東和平の終結を図るために最後の留置されている人間をどうしても引き取りたい、こういう要請があったというイスラエルの感触はわかるんですけれども、先ほど申しました日本赤軍の声明文を伝えたPFLP幹部の一人が、奪還作戦の五日前にPFLPと日本赤軍リーダーとの間で作戦についての最終的詰めが行われたということを明らかにしておるわけなんですね。極めて挑戦的と申しますか、人を小ばかにしたと申しますか、本当に我々としては言うすべを知らないぐらいの怒りというものを感じるわけでございます。  そこで、釈放後、外務省が遺憾の意を表明したと言われましたけれども、お差し支えなければその文書を明らかにしていただけませんか。
  191. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) この申し入れにつきましては文書で行っておりませんで、我が出先大使は口頭で行っておりますので、文書はございません。
  192. 抜山映子

    ○抜山映子君 こういうものは、この次、万が一にもテロ行為が行われた場合に、日本立場を少しでも苦しくないようにするために文書で強力に申し入れておいて一つの証拠としておく、こういう国際的な配慮が必要だと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
  193. 谷田正躬

    政府委員(谷田正躬君) 申し入れをする場合、どういうものを文書にするか、あるいは口頭で行うかということはそれぞれのケースによって判断されるわけでございますけれども、今回の場合は問題点が比較的明らかになっております。前のときに既に申し入れをいたして、また再考を促し、それにかかわらず措置をとったということで再度遺憾の意の表明ということになったわけでございまして、いわば日本政府の申し入れの論点というものは極めて明らかになっておる、あえて文書にする必要はなかったということが一つ。それから先方側も日本側からの申し入れについてははっきりと確認いたしておりまして、これに対してイスラエル側からの回答文といいますか、それも含めましてイスラエル外務省としては外務省のスポークスマンの声明ということで日本側からこういう遺憾の申し入れがあり、これに対してイスラエル側としても今度とった措置に対して遺憾の意を表したという意味のプレスステートメントをはっきりと出しておりますので、ただいま御指摘のような御懸念は少ないかと存じます。
  194. 抜山映子

    ○抜山映子君 外交文書というものは各国において永久的に保存されて歴史的に批判にたえ得るものとして残していくものでございます。そういうわけで私は口頭でやったから、あるいは向こうでプレスステートメントを出したからということでこれでいいのだということでは少し外交的に甘いと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
  195. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは今部長が答弁しましたように、遺憾の意の表明というのは私も国内におきまして外務大臣見解としてはっきり日本立場を内外に宣明したわけでありまして、その私の訓令に基づいて口頭で申し入れたわけでありまして、日本政府のイスラエル政府に対する今回の岡本公三をめぐっての立場というものは、内外に対して明白にはっきりと打ち出しておりますから、私はそれで十分じゃないか、こういうふうに思います。ただ、手続を口頭でやる、あるいはまた文書でやる、そういう手続等はあったわけですけれども、しかし、その以前にはっきり外務大臣としての立場を明らかにしておりますから、それでいいんじゃないか、こういうふうに思います。
  196. 抜山映子

    ○抜山映子君 あえて申し上げるまでもないと思いますが、口頭で言うのと文書で言うのでは重みが違うことは言うまでもないと思います。今回タイミングの問題もあり、今さらということもございましょうから、この点は蒸し返しませんけれども、外交というものは重要案件については必ず文書で行うように要望したいと思います。  質問を終わります。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 協定に関するお尋ねをする前に二、三大臣にお伺いしておきたいと思うんですが、実は近ごろ五月三十日から米ソのジュネーブにおける第二回目の交渉が開始されるわけですが、これは一月の段階に行われた米ソの外相会談の共同声明の趣旨に基づく第二回目の会談で、第一回目の交渉では双方がそれぞれの立場を述べ合ったというお話でしたが、第二次交渉が始まるに当たって大臣がこの交渉あり方や今後の見通し等々に関してこの交渉をどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  198. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私はなかなか第二回交渉も非常に厳しいものになってくると思いますね。米ソ間のやはり三分野をめぐっての考え方には相当大きな開きがある。これはシュルツ長官とグロムイコ外相との会談等を見ておりましても、あるいはその後のソ連側のジュネーブ会談に対する考え方等がいろいろと報ぜられておりますが、そういう状況を踏まえてみても基本的な差というものはなかなかこれは第二回で解けてくるかどうか。というのは、SDI等をめぐりましても、アメリカSDI研究というのはABM条約に違反しているのだというようなことを言い始めておりまして、そういう基本的な問題がやはり解決しないと前へ進まないというようなこともちらほら出ておりますし、どうも三分野は一括してと、あるいはまたそれぞれ分けてという考え方にもまだ依然として開きもあるようですし、これは私交渉は始まりましたけれども、なかなか容易じゃない。二回でもってそれじゃ前途が開けてくるかというと、必ずしも見通しとしては明るくないと思っておりますが、しかし、交渉は何とか決裂しないで、開きがあったとしても、やはり第三回、第四回へとつなげていただかなきゃならぬと、こういうふうに思います。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つは、大臣、今月アメリカの上院、下院で行われました中で、八六年度の予算に関してですね、まあ国防予算がこれまで、レーガン大統領が登場してから例年のように国防予算というのが増額されてきた。今回上院の場合にはいわゆる伸び率が実質ゼロですね。それから下院の場合には実質削減というふうな方向が出て、さっきこれは栗山さんが言われたように、今後協議してどうなるかということはまだわかりませんけれども、こうした事態、上院、下院でこのような国防予算の実質ゼロあるいは実質削減という方向で今後協議がなされていくわけですが、こういう事態をどのようにお考えになるのか、大臣のコメントをいただいておきたいと思います。
  200. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 米国の議会が国防予算の伸び率を抑制するということはもちろん承知しておりますし、議会の空気というのは確かにそうだろうと思いますが、しかし国防予算が今後審議を経てこれから最終的にどういうふうになるかというのはまあ明らかでないわけですから、これに対して今、途中経過の中で日本政府として、特に外務大臣としての見解を述べるということはちょっと差し控えた方がいいんじゃないかと、こういうふうに思います。しかし米国の議会の空気が、やはりそうした財政再建という立場も踏まえながらアメリカ政府の、レーガン政権の方向に対して一つの抑制的な空気を打ち出している、こういうことはこれは間違いない事実だと思いますね。
  201. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、それはちょっとおかしいんじゃないですか。日本のいろいろ防衛予算については、アメリカ側はその事前であろうと事後であろうと大変コメントをしますよね。こうしたらどうだろうかとか、実質的にやっぱりふやしてほしいだとか。アメリカ側からコメントされているんですから、今の状況の中でもこういう事態を外務大臣としては私はこう考えるというコメントをされるというのは、私は何ら差し支えないんじゃないかと思うんですがね。アメリカ側でコメントされているのに、こちら側からコメントできないというんでは、やっぱりいかがなものでしょうか。大臣としては何らかのお考えは、自分としてはこう思うぐらい述べてもいささかも不当性はないんじゃないですか。
  202. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ですから、アメリカの議会としてはそういう抑制的な立場を持っておる、あるいは空気がアメリカ議会を支配しておると、こういうことを私は申し上げておるわけで、それがコメントです。
  203. 立木洋

    ○立木洋君 まあこれ以上言いませんけれど、例えばこの間の経済摩擦の問題をめぐっても、いわゆるアメリカ財政赤字というのがやっぱり大きな問題になっていると。だから、この点については我々自身も黒字減らしの努力をするけれども、あなた方も財政赤字の問題についてちゃんとしてもらいたいということは、面と向かって言われているわけでしょう。その財政赤字の最大の原因がやっぱり国防費なんですよね。だから、それとの関連でだって大臣が一言もコメントできないというふうなことは私はないだろうと。だからそういうふうな、国防費が削減されて、財政赤字の削減がそういう形でやられるならばこれはいいだとか、あるいは米ソ交渉とのかかわりから見て、この問題についてはこれが軍備の削減につながっていって和平交渉にプラスになるならばいいだとか、何らかのやっぱりコメントがあっても私はしかるべきだと思うんだけれども、どうしてもお答えになれませんか。
  204. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは最終的に状況を見ないとまだ、また巻き返しが起こって、議会のことですから最終的な数字がどうなるかというのはわからぬわけであります。私はいずれにしても、まあそういう抑制的なあれですけれど、先ほど北米局長も答弁いたしましたけれど、これでもって基本的なアメリカのいわゆる国防予算の方向というものがもう基本的に変わっていくということではないと思いますね。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 もちろん実質的な費用というのは大幅なものですからね。まあこれ以上あれしないで、また改めて別の機会にお伺いすることにしますが、もう一つの問題は日本のいわゆる防衛費の一%枠の問題ですが、GNP一%枠の問題ですが、この問題については今五九中業などが事実上最終段階に入ってきているということもこれあり、まあ人件費との関連もあって、この一%枠が突破されるんじゃないかどうかというような問題が現実の問題としてあるわけですが、この問題についての見通しと国務大臣としてのお考えをこれもお尋ねしておきたいんですが、いかがでしょうか。
  206. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これも今五九中業は作業が進んでおりますし、それから日本のGNPがどういう状況になるのか、あるいはまた人勧の勧告も出ておりませんし、まあそういうことを全体的に見ないとどうだこうだと言える立場ではないんですが、まあ政府としての基本的な考え方、これは私も含めての考え方というのは、何とか一%内に抑えたいと、こういうことであります。これはもうしばしば総理も国会で言明したとおりであります。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 前、去年だったですかおととしだったですか、大臣がこの問題についてはいわゆる日本が軍事大国にならないあかしであると、一%枠におさめるというのは。そしてこれは東南アジアに対する場合でもあれですが、これは平和外交の推進力であると、この一%枠にとどめるということは。だからその点については厳守したいという強い意志をお述べになっておられたのに比べれば、若干トーンがダウンしたような感じを受けるんですが、やはり平和外交を推進していくという立場から言うならば、もっとこの問題については厳格な立場をとられてもいいんじゃないかと思うんですよね。もちろん我々は日本防衛予算というのがいわゆる一%の枠内であれば結構だという立場では我が党はありませんけれども、しかし、今の段階で重ねてその点もう一遍。
  208. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ私がかつて答弁しましたことは、やっぱり我が国がみずから防衛費をGNP一%といった低い水準に抑えるべくぎりぎりの努力を重ねるという姿勢をとっておること自体が、これが軍事大国にならないとの我が国の決意を示す一つの例として、アジア諸国民に受けとめられているということを述べたものであると、こういうことでございますし、そうした立場から防衛費に関する三木内閣の閣議決定は守っていきたい。しかし、防衛費を実際にGNPの一%という数字に抑えるか否かが直ちに軍事大国になるとかならないとかいう議論に結びつくものではないと思うわけですが、いずれにしましても専守防衛に徹しまして、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本方針を堅持しながら、必要最小限の防衛力を整備するとの我が国考え方についてはアジア諸国の理解を得られているものと、こういうふうに考えております。  我が国としても、こうしたアジアの諸国の一層の理解を深めていくように努力をしてまいらなきゃならぬということで、やはり軍事費というのはぎりぎりに抑えていくという姿勢をアジア諸国民に理解させるということが、我が国の平和国家としてまたアジアとの連帯、友好関係を推進する意味においても重要であろう、こういうふうに思っております。
  209. 立木洋

    ○立木洋君 まあ以上ちょっと三点お尋ねしたのは、御承知のように、国連軍縮特別総会の第三回の総会があれは八八年ですか開催される、その日程が国連によって決められるということにもなっていますし、だからそういうことを踏まえて、やはり平和外交とりわけ軍縮の問題に私は今後とも力を尽くして、第一次軍縮特別総会に比べて第二次の場合にはなかなか成果が上がらなかったというふうな問題もあるわけですから、第三次を控えてやはり日本の平和外交、そういう軍縮をしっかり取り組むという点も十分に踏まえてやっていただきたいという意味で、以上三点について最近の出来事と絡めてお尋ねしたわけです。そのことを強く要望しておきたいと思うんです。  では、協定の問題ですが、先般米州投資公社について、具体的な運営の問題から見るならばアメリカの意向や意図に大きく左右されるというふうな問題点について私の方で指摘をしたわけですが、このことと関連して、アメリカの中南米とりわけ中米、カリブ海の経済政策の問題について若干お尋ねしておきたいと思うんです。  例えばアメリカの中米、カリブ海等々の若干の国を取り上げてみますと、例えばジャマイカなんかの場合には、一九八〇年のときに比べて、四年後約七倍近くアメリカの援助はふえておりますね。エルサルバドルについては、同じ八〇年から四年後には五倍にふえている。それに比べてニカラグアの場合には八〇年に比較して二十分の一以下に減っているというふうな状況があるんですが、これはどのような理由によるものでしょうか。
  210. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま委員が御指摘のとおりの、アメリカの中米及びカリブ地域に対する援助額というのは、大体そのような推移を示しているように思われます。アメリカのこのような援助額の変遷というのは、どのような政策を背景にしているのかというお尋ねかと思いますけれども、米国の対中米、カリブ援助の理念と由しますか、政策につきましては、例えば本年二月、シュルツ長官が八六会計年度の予算要求に際しまして、中米、カリブにつきましてはアメリカの援助政策を述べておりますが、ラ米、特にカリブ地域ほど対外援助と米国との国益が密接に結びついている地域はないということと、第二番目に、民主主義支持勢力に政治的、経済的、軍事的援助を与えるとの米国の政策は効を奏しつつあり、特にエルサルバドルを初めとする中米諸国における共産主義の浸透を回避するのに役立っている。第三点としまして、大規模な経済援助と政策変更の組み合わせにより、中米諸国の貧困と政治的不安の根本原因を排除するとの観点から、同地域に対する多年にわたる資金供与の約束が必要である、こういうような説明をされておられますので、恐らくこれがアメリカの政策の背後にあるものかと思います。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 そういう経過に引き続いて先般もお尋ねしたんですけれども、結局ニカラグアに対しては、いわゆるニカラグア現政権に反対している反政府ゲリラに対して、一千四百万ドルですか、援助するというふうなことを議会に上程したけれども、それが否決された、拒否されたというふうな経過があって、そして今回のいわゆる貿易の停止だとか、あるいはアメリカ国内におけるニカラグアの資産の凍結だとか、そういう経済措置がとられたわけですね。そして危険なことには、キッシンジャーが中心になって行っている委員会などでも、軍事的な攻撃は排除しないということまで言われているという危険な状態にあるわけですが、このような経済制裁、ここまで大変な事態にまで追い詰めていくアメリカのこうした政策のやり方について、大臣、どのようにお考えになりますか。
  212. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、アメリカのそうした行動に対する批判も行われておりますが、アメリカとしても、ニカラグアにおけるキューバの軍隊の駐在、あるいはまたソ連の影響、そういうものに対してはアメリカ自身も相当な危機感を持っているんじゃないか、こういうところにアメリカ自身が一方的に非難される理由はないというアメリカ説明もあるわけであります。今度、政治制裁措置をとったことについては、そうしたニカラグアにおける外国の支配的な空気というものに対するアメリカの不満といいますか、ふんまんというものがあの措置に結びついたんだろうと私は思うわけでございますが、日本としましてはこれはもうコンタドーラ・グループを支持しているわけですし、それのイニシアチブによって平和解決が行われるということを日本は期待をしておるわけで、日本姿勢としてはあくまでもそうでございますが、アメリカとニカラグアで今後どういう状態が起こるか、何とかニカラグアの、コンタドーラ・グループの活動が活発化して、平和処理の方向へ向かって進むことを期待しておるわけです。今コンタドーラ・グループもその点では事態を憂慮しながら相当能動的に活動しておると、こういうふうに見ております。
  213. 立木洋

    ○立木洋君 今言われたようなこと、結局アメリカにしてみれば、先ほど藤田さんも言われたけれども、安全という問題とのかかわりでというふうなことも述べられたわけですけれども、これは前回も言いましたけれども、三百万の人口で、アメリカがあれだけの膨大な、それから資材も持ち、軍隊も持っている、しかもGNPでいうならばこの間も言いましたように千二百分の一でしょう、ニカラグアは。そんな状態でアメリカが脅威を感じるなんというはずがないんですよ。それは、キューバなんかの問題についてもこの間一部援助してくれた人々を返すというようなことも公表をしましたし、どうもアメリカはそれでは人数が少な過ぎるみたいなことがあるようですけれども、実際状態からいえば、そういう社会主義の国から受けている援助というのは資本主義の国から受けている援助の額から比べても少ないと言われているわけで、大体考えるならば、これは外務大臣も否定されないでしょうけれども、それぞれの国がどういう道を選ぶかというのはその国自身の決定する権利があるわけですから、自決的な権利が。ですから、どこの国から援助を受けようとも、その問題によってとやかくされるはずはないということだと思うんですね。だから、こういう自分が思う方向に行かない国に対してあらゆる形で圧力を加えるというふうなこと自身が私はやはり問題だ。同時にそういうことが前回私が述べました米州関銀なんかにおいて、ニカラグアが農業開発の援助を受けようとしてもそれに対して妨害する措置をとる。そうすると、今度のこの米州投資公社の場合でも、アメリカがこれほど大きな意思によって左右される状態が保証されているこういう公社ができた場合に、アメリカが自分のそういう意図に反する態度を公社の中で果たして行うかどうかということになると、これは重大な疑念を持たざるを得ないということになるわけですね。  そこでお尋ねしておきたいんですが、この経済制裁の問題に関しては、アメリカ側がどういう意図で行おうとしているかということはお述べいただいたわけですが、これがいわゆるコンタドーラ・グループなどが行っている、つまり和平工作ですね、これにプラスになるというふうにお考えになるのか、これに対してマイナスだというふうにお考えになるのか、その辺の判断は、大臣どのように判断をされておりますか。
  214. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この公社への……
  215. 立木洋

    ○立木洋君 いや公社ではなくて、先ほど言いましたアメリカが行ったニカラグアに対する経済制裁措置がこの和平工作に対してプラスになるのかマイナスになるのか、どのように御判断されるかということです。
  216. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはその後の動き、今後の動きを見ないと言えないと思いますが、しかしアメリカとしてもやりたくない措置なんだろうと思いますし、それをあえてやらなければならなかったということは、これは今日本でいろいろと議論もされておりますけれども、しかし隣国同士としてのアメリカ自身の一つの危機感というのも私はあったんじゃないか、これはニカラグアは三百万で小さい国だからと、こういうふうなもちろん見方もありますが、やはり何千人というキューバの顧問団が入っている、その後ろにはソ連もある、こういうことになるとアメリカ考え方もまた別なんでしょうね。ですから、そういう中で経済措置が行われたわけでしょうが、私はこの経済制裁に対して、やはりコンタドーラ・グループというのは相当刺激を受けた。このコンタドーラ・グループは、これはやはりこういうことがこのまま続いていくとニカラグア自身にも重大な問題が生じてくる、これを早くコンタドーラ・グループのイニシアチブを進めて平和処理を行っていかなきゃならぬ、こういうことで動きが相当活発になってきておりますから、今その状況を我々見ておりますけれども、これでもってむしろ決定的な状況へ進んでいく、もちろんアメリカが経済措置をやったからこれでまた兵を進めるという考え方はないということは我々にもはっきり言っておりますけれども、そういう状況にはならぬと思いますけれども、しかし、事態がやっぱり悪化することを避けなきゃなりませんし、そういう面ではやはり今のコンタドーラ・グループの動きというものは活発になっておるという点で、可能性としては事態の解決に向かって進む可能性も出てきたんじゃないか、こういうふうに思っていますがね。
  217. 立木洋

    ○立木洋君 ニカラグアの問題を東西対決の時点でとらえるという見方をアメリカはしているわけですが、コンタドーラ・グループというのはそれに対して賛成してないわけですね、異なった見方をしているわけですね。いわゆるソモサの政権時代からの経過もこれあり、もうここでは詳しく私は言いませんけれども。ですから、そういう形ではなくて、やはりニカラグアはニカラグア人民自身がみずからのいわゆる方向を決定する権利を持っているわけですから、念のために伺っておきますけれども、もちろんニカラグアの民族自決権の尊重という立場日本政府としては変わりないわけですね。
  218. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろんニカラグアにおける紛争が処理されてニカラグア人によるところの自由な政府が、自由な活動が保障されるということが大事なことじゃないかと、こういうふうに思いますし、民族自決権というのは、これは民族自決というのは当然のことだろうと思います。日本政府も今ニカラグアの政府承認して正式な外交関係を持っているわけですから、そういう立場で早く平和的に処理されることを期待しているわけです。
  219. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっとひっかかる点もありますけれども、まあこれはまた次にします。  そこで、一九八四年度の統計が出ておったら教えていただきたいんですが、日本の対外援助でジャマイカに対する援助、それからホンジュラス、ニカラグア、この三つに対して八四年度の援助額がどういうふうになっているのか、経済協力の実績ですね。
  220. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 八四年度は有償資金協力及び無償資金協力につきましては集計を終えましたが、技術協力についてはまだ未集計でございますのでその前提で申し上げます。  ホンジュラスでございますけれども、ホンジュラスは八四年度、無償資金協力として十五・七四億円が支出されまして有償資金協力がゼロでございます。前年が十三・五〇でございます。有償資金協力はゼロということでございます。それからニカラグアでございますが、ニカラグアは御承知のとおりここ数年来技術協力を主として供与いたしております。八三年度も技術協力のみで一千二百万円という数字になっております。先ほど申し上げましたように、八四年度もほぼ同規模の技術協力を研修員の受け入れなどやっておりますけれども、金額としてはまだ集計ができておりません。それからジャマイカでございますが、ジャマイカは八四年度は有償資金協力、無償資金協力ともにゼロでございます。それから、技術協力は行っておりますが、先ほど申し上げましたように、金額未集計ということになっております。
  221. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、ホンジュラスの場合ですね、これはここ数年来見てみますとずっと増額してきているわけですけれども、これは前回お聞きした場合にはいろいろな何というんですか、農業関係のあれだとかいうようなことを申されていましたけれども、ホンジュラスの場合には米軍との合同演習などが極めて頻繁に行われている状況があって、これはニカラグアに対する武力的な威圧を加える、そういう状況にあるわけですが、ここに対する援助が一方では急速にふえて、先ほどニカラグアに対してはこれは数年前に比べますと大幅にやっぱりダウンしてきているわけですね。こういうのはアメリカのそういう政策とはもちろん関係ないと言われるでしょうけれども、これはどういう理由でしょうか。
  222. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くアメリカの政策と関係があるわけじゃありませんで、日本の中米諸国に行っている援助も微々たるものですね、日本の全体の援助からいけば。しかし、私はやはり中米諸国の経済的な安定、政治的な安定ということを考えるときに、こうした援助というのはできるだけ増額したい、こういうふうに思っております。これはやはり日本外交の幅を広げる上にも大事なことじゃないだろうかと思っております。  それから、ニカラグアに対する援助は、これは残念ながら紛争当事国になってしまったものですから、人道援助に限って行うということで大変今縮小している形ですが、しかし、人道援助についてはこれは考えておりますし、紛争が平和的に処理されればまた改めてニカラグアに対する援助は進めたい、こういう考えを持っております。
  223. 立木洋

    ○立木洋君 去る三月の二十三日に浅尾外務審議官が、アメリカのアマコスト国務次官と日米の対外援助問題に関して話し合いをしたということなんですが、この内容についてちょっと説明していただきたいんですが、ここの中でもやはり中米、カリブ海等々の問題が問題になったのか、どういう形でその点が問題になったのか。
  224. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 今御質問の三月の浅尾外務審議官とアマコスト国務次官との会談でございますが、援助のことだけを議論されたわけではないんですが、今御質問が援助ということでございますので、便宜その点だけに限りまして私からお答えさしていただきます。  援助問題につきましては、日米双方から援助の基本方針ですとか、我が国の場合にはODAの倍増計画の現状等々の説明をいたしまして、アメリカ側はそういう日本努力を非常に高く評価するという、量的な拡大のみならず地理的広がりも評価するということで、それから地域別につきましては、アジア、中南米、アフリカ等についていろいろ意見の交換を行いました。中南米につきましては、主としてアメリカが行っております援助の重点国等についての説明ということでございました。それから、アジアについては主として日本努力説明、アフリカについては両方からいろいろ議論したというのが実態でございます。
  225. 立木洋

    ○立木洋君 日米諮問委員会の報告の中では、日米間で援助計画を策定する上でいろいろと両者で緊密な協議をするということの重要性が強調されていますね。そして、ただ単にこれは事後どうだったかということを報告し合う、確認し合うだけでなくて、事前にいろいろ話し合いをして、やっぱりよりよく協議を進めていくことが必要だというふうなことも強調されているわけですね。そして、これは一月でしたか、大臣がシュルツ国務長官と会ったときに、向こう側がとりわけ戦略的なという表現は使わなかったにしても、アメリカ側が重視している箇所に対する援助を協力要請したいという趣旨の話し合いもあったというふうに聞いていますし、レーガンが登場して以来の御承知のようにアメリカの援助政策というのは友好国と非友好国とを区分けして、友好国に援助を集中し、それも開発よりも安全保障を重点的に行う。さらに、それに対しては西欧やあるいは日本側の肩がわりという言葉を使っていませんが、やっぱり協力を得る、そういう方向で援助政策というのは進めているわけですね。つまり、それがいわゆる、この間アメリカ側の言っている戦略的な援助という表現を藤田さん使いましたけれども、そういうねらいだと思うんですよ。そういう形で密接な協議、協力をやっていくということは事実上アメリカの戦略的な援助を補完するということに私はならざるを得ない。  これはいつでしたかね、大臣が講演されたときに、いわゆる援助の問題に関しては相互補完の関係にある、アメリカとの。ということになれば、アメリカの戦略的な援助をやっぱり我々の日本の側としては補完しているという立場になる。これは、私は極めて危険なことだと思うんですね。そういう相互補完の関係にあるということをお述べになったのは、大臣、お忘れではないと思うんですけれども、そういう戦略的な援助を補完するというふうなことを日本政府として公に認めるか認めないかは別としても、事実上そうなるというふうな点については大臣、どのようにお考えですか。
  226. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大分考え違いされているんじゃないかと思いますがね。私は、シュルツさんに何回も、やはり日本の経済援助政策は、これは日本独自のものだと、お互いの相互依存あるいは人道的、そういう日本基本的な立場に立って、そうしてその国の、相手国の経済の安定、福祉の向上のために努力しておるんで、これは日本基本精神とアメリカ基本的な考え方とは差異があるかもしれない、一緒にしてやろうと思っても、それは無理ですよ、お互いに協力しなきゃならぬ点はあるけれども、あくまでも日本日本立場に基づいてやっているんだからということは何回となく強調しているわけでありまして、これは恐らく三十年たったら文書としてもはっきり表に出るわけでしょうけれども、日本態度を崩すことはできないわけです。  それから、日米で補完的なところがあるというのは、確かにアジアなんかについては、アメリカアメリカでやはりもっと戦略的な立場もあるでしょうから、いろいろと、二国間を中心にしまして相当なアメリカ自身の立場からの援助をやっておるわけですから、なかなかアジアなんかには手が届かなくなってきている。そういうものはやっぱり日本がアジアの一国としてやっていかなきゃなりませんし、そういう意味での相互補完ということは言えると思います。  それから、プロジェクトによっては日米共同してやった方が大変効率的なプロジェクトもありますから、そういう点についてはやっぱり協議してやった方が、援助というものは非常に効果的、効率的にさせるということでいろいろと協議を進めているわけでありまして、何か初めから協議することが戦略的、アメリカの戦略に巻き込まれるという考え方は、ちょっとこれは全く思い過ごしでありまして、ECとも我々やっていまして、援助については。ですから、あくまでも日本立場に基づいてやっておるわけで、同じようなレベルでアメリカともやっておるわけですから、それはちょっとアメリカの戦略援助に巻き込まれるというお考えは、これはもう誤解であります。
  227. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がないから、一言だけ。大変私は異論がありますけれども、その点については次の機会にいたします。
  228. 秦豊

    ○秦豊君 私は、国際問題一般を先に、法案絡みは後ほどにいたしたいと思います。  最初に外務大臣、米ソ首脳会談開催の見通しについて伺っておきたいんですが。と申しますのは、一部のマスメディアを通じて、ゴルバチョフ氏が秋の国連総会にはもう出席をしないんだという観測が流れたり、あるいは    〔委員長退席、理事宮澤弘君着席〕 西ドイツのブラント氏との会談の中で、ジュネーブの進展、先ほども出ましたけれども、ジュネーブ交渉の進展などに幻想も期待も持っていないと述べたり、それからSDI研究自体に対する強硬な反論をモスクワ放送を先頭に展開する。だからジュネーブである程度進展がないと、いきなり頂上会談というふうにはなりかねると思うわけですね。一方では、レーガン政権自体がやや行き詰まりというか陰りというか、そういう一種の停滞期にあることも、これは否めない現実だと思います。  そこで、外務大臣は、さまざまなチャネルから大臣のところに総合した情報が集まっているわけですが、安倍外務大臣としては米ソ首脳会談の開催の可能性について、曲折はあってもやはり開かれますと、こういう基調は変わらないんだとごらんなのか、やはりやや否定的な御見解に傾いていらっしゃるのか、この辺いかがでしょう。
  229. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 結論的に言いますと、曲折はあったとしても米ソ首脳会談というのは行われるんじゃないか、こういうふうに思います。ただ、国連の場ということになるとそうした見通しは遠のいたと、そういう感じであります。
  230. 秦豊

    ○秦豊君 ずばりとよくわかりました。  それから、同僚、先輩議員の方がしばしばお触れになったようでありますが、例のサッチャー書簡問題ですね。これは端的に言えば橋の問題、架橋の問題ですけれども、橋以前にある問題は日英貿易構造問題、その点は日英の構造と構造がぶつかるという意味では規模を小さくした構造問題だと私は見ているわけですが、そうすると、去年、昨年度は二十四億ドルの当方が黒字、あちらは赤字と、こうなりますが、山崎駐英大使に対する議会筋の一部、これも三十人を超えれば一部と言っても比率は大きい。あれは日本の議会に例えばイギリスの大使を呼んで我々が激しく追及するというふうな場面などは異例中の異例で、この間もマンスフィールド氏を安保特別委員会の小委員会がお招きしましたけれども、ちゃんと礼を尽くしてやるわけで、ややジョンブル的外交慣例とか紳士道を離れたような言葉も随分飛び交ったようでありますけれども、あれもやはり一種のフラストレーションの反映だと。  そこで、安倍外務大臣に伺いたいんですけれども、やはり、これはもう時期が来ているんだから安倍外務大臣として正式な書簡をサッチャー首相に返す、もちろん中曽根総理に来た親書なんだからレベル、ランクを同じに、これは常識かもしれませんが、外務大臣はその場合には助言もされるという意味で、そろそろもうすぱっと日本政府として正式な文書、書簡による回答をされる時期ではないかと私は考えますけれども、いかがですか。
  231. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ボスポラス架橋の問題については、日本政府から外交ルートを通じまして米国政府に対しては日本立場というものを明確に説明しておりますし、私は、それなりに英国政府理解が進んでおる、こういうふうに思っております。もちろんサッチャー首相もその辺で理解しておられる、こういうふうに思います。  親善のことですから親書の内容については申し上げられませんが、しかし親書に対しては、せっかくの手紙が来たわけですから中曽根首相もこれにこたえるということもこれは礼儀だろうと思います。その点については今いろいろと検討が進められているというふうに見ておるわけでございますが、    〔理事宮澤弘君退席、委員長着席〕 これは単なるボスポラス架橋の問題じゃなくて、やはりその背景というのがあるということを見逃してはならぬ。やはり今の山崎大使がイギリスの国会議員にいろいろと注文をつけられたり、あるいはイギリスの新聞が一斉に日本を非難したり、サッチャー首相の発言になったりということの背景には大幅な貿易の赤字、それからやっぱりイギリス経済の相当悪化といいますか、そういう状況が背景にあるんじゃないか。あるいはまたトルコというのはイギリスにとっては自分の経済圏だ、第一架橋は自分がやったんだ、当然落ちるものが落ちなかった、あるいはイタリーと組んだ、そういうふうなこと等も相当そういう点ではイギリスとして論理的には話はわかっても感情面で話がわからないということの方が、結局いろいろの形で対日批判になって出ているんじゃないか。その背景は今申し上げたようなことがずっとあったんじゃないか。ですから、これは単なるボスポラス問題で理解ができたからそれで終わりだということではなかなか進まないように思います。
  232. 秦豊

    ○秦豊君 なるほど。  これは、総理と外務大臣この問題についてもう協議されましたか、あるいはされるおつもりございますか。
  233. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この問題については、サミットの終わったところでサッチャー首相と中曽根総理との話し合いの結果を聞いておりますし、また私自身もハウ外相とこの問題でやはり合っておりますからよく承知しております。その点については中曽根総理との間でボスポラス架橋そのものについての考え方は一致しておるわけです。
  234. 秦豊

    ○秦豊君 私が外務大臣の御答弁を欲しかったのは、まあ親書に対する親書という形式をめぐってそろそろ協議をされ、助言もされる時期ではないかなという意味を込めて言ったんですが、なさいますか。
  235. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、外務省にもいろいろと意見を聞かれていると思いますし、外務省としても、もちろん私の意見も含めて申し上げておりますから、それを踏まえてこれから最終的に総理みずからが決断をされると思います、判断されると思います。
  236. 秦豊

    ○秦豊君 そんなにじゃ遠くない時期なんてしょうね、やっぱり、常識的に。
  237. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それはいつまでもほったらかすというわけにいかぬでしょう。
  238. 秦豊

    ○秦豊君 日本と北朝鮮の問題に少し触れておきたいわけですが、もちろんこういう時期で凍りついていますから、例えば、こういう問題が日朝間に既にあるわけですね。例えば人道上の問題と一般的に言われている中には、北朝鮮在住日本人妻のいわゆる里帰り問題、それから日本人の北朝鮮への墓参り、墓参行動、こういう問題、それから北朝鮮に在住している日本人孤児の肉親捜しの問題、今度はあちらから来る問題ですね。簡単にあれしてみても以上三つの分野が人道問題にわだかまっている、あると思うんですよね。こういう問題については、外務大臣、安倍外交の中では、これからどういうふうなチャネルで、どういうルートで、あるいはいつまでもほっておいていい問題でもないと考えられますので、どういう時期に解決を目指されるのか、この辺をちょっと伺っておきたいと思うんですが。
  239. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 残念ながら、日朝間には国交がないわけですから、とり得る手段にはおのずと限界がありますが、日本人妻や在留邦人の問題は、人道的な観点から政府としても日赤等を通じまして従来より努力をしているところでありますし、今後ともそういうストレートな形じゃなくて、日赤その他の団体等を通じまして、できる限りの努力を傾けていきたい、こういうふうに思っております。やはり今、重要なことは、これら北朝鮮におられる方々の安否ないしは実態の把握であろうと思いますね。そこで、こうした面でのいろんな努力を行っておるわけで、議員外交を通じての議員の皆様の御報告を承ったり、その他日赤、その他のルートでいろいろと実態把握に努めておるところです。
  240. 秦豊

    ○秦豊君 アジア局長いらっしゃいますね。  今、大臣が言われたような実態の面で、こういう数字はございませんか。私の方では、北朝鮮のテリトリーの中に現在日本人妻が推定一千八百人前後、それから関連して、関連してというか、在留孤児という言い方がちょっと妥当かどうか別として、二千人強というふうに私どもは見ていますが、アジア局長いかがですか。
  241. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) ただいまのお尋ねの人数でございますけれども、まず日本人妻につきまして今先生御指摘のように、私どもの、法務省の調べによりますと千八百三十一名という数字がございます。それからもう一つの御指摘の、いわゆる言葉はいろいろありますけれども、日本人孤児といいましょうか、この数字がなかなかつかみにくい、率直に言ってつかみにくい数字でございまして、昭和二十九年、非常に古くさかのぼりますけれども、そのころ厚生省が実施しました調査によりますと、北朝鮮の未帰還者は三千人を超すというような数字が出ておりますけれども、さらにそのころ日本赤十字を通じまして北朝鮮の赤十字に照会いたしましたところでは、北朝鮮には少数の日本人が残留しているというようなことで、数字ははっきりそのときには教えてくれません。そこで、さらにまた厚生省を中心にいたしましてこちらの方で北朝鮮に最終消息のあります未帰還者の名簿を作成しまして、日赤を通じて三十五年ごろ渡しました数字は千人余でございます。なかなかこの数字がつかめないわけでございまして、五十三年には国会議員の代表団が北朝鮮を訪問されました際には、約千三百人くらいの名簿を託して北朝鮮側に消息調査を依頼したわけでございますけれども、厚生省の資料によりますところの最新の数字、五九年の十一月の数字でございますけれども、日本におられます家族からの届け出による確認された北朝鮮地域の未帰還者というのは八十三名ということでございまして、いかんせんなかなか何人向こうにおられるかというのは確認できない現状でございます。
  242. 秦豊

    ○秦豊君 再び大臣の方に質問いたしたいと思うんですが、私ども日朝議連のメンバーも会議を開くたびに、人道上の問題、それから記者交換問題、三番目が貿易連絡事務所の相互開設、こういうので大体重点的に考えているんですが、人道上のお話はさっき伺いましたけれども、こういう今の私ども挙げた分野について安倍外務大臣としてはどういう関心を、あるいは意欲をお持ちでしょう。
  243. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 民間でやられることは、これは私は結構だと思います。それは、これまでも日朝間で、民間の貿易だとか人的交流等あったわけですから、また、あるわけですから、そういう中でのあれはいいと思いますが、政府がその中に介入していくということになりますと、それは今の日朝間の政府関係がないということから見て、これはやはり慎重にといいますか、なかなか難しい問題だと、こういうふうに思いますが、こうした日朝間の関係がこれからも進んでいくということになると、それは南北間の対話が進むということがやっぱり大前提じゃないだろうかと、こういうふうに思っております。
  244. 秦豊

    ○秦豊君 実は、来月の五日に、キム・ウジョンという発音でいいと思いますけれども、朝日友好促進親善協会会長が来日いたします。その方がどういうふうに動くかは別ですけれども、いろんなことを友好運動を展開されるわけですね。特定しませんけれども、例えば非常に高いランクの日本の有力な政治家が仮にピョンヤンを訪問されるというふうな時期が来れば、田邊さんたちは行って帰りますけれども、そういう有力な政治家が訪朝をするというような場合には、やはり外務大臣としても何らかの意思を託するというか、チャネルを、シグナルを託するというか、言葉はどうでもいいと思いますけれども、そういうふうな機会は今後とも最大限度に活用することにはやぶさかではないというふうにお考えでしょうか。それとも、そういうことを含めて今は慎重たるべしというお考えでしょうか。
  245. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういうことになるかどうか、具体的になってみなきゃわからぬわけですが、議員の有力者が行かれる、個人の意思に基づいて行かれるということまでは、これは妨げるという立場にはないわけでありますし、そうした交流の中で、人道的な問題が解決をされるという道が開かれてくることについては、我々もそれは大変結構なことではないかと、こういうふうに思います。
  246. 秦豊

    ○秦豊君 私、実は伊東元外相にきのうお会いいたしましたけれども、そのことは、生な言葉とか、ダイレクトな表現ではこの場には上せません。ただ、今の外務大臣の感触で十分だと思います。  それから、アジアに絡んだ問題をもう一つ、二つ伺っておきたいと思いますが、浅尾さんが間もなく出発されますね。それで、一部ちらついていますけれども、病院関係、これこそ人道問題ですね。これに対する援助というか、供与というか、ある金額を、これは外務省方針としてもう確定したんでしょうか。
  247. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 今のお話は、ハノイに関連する御質問かと思いますが、これは、この会議で再三大臣からも御答弁いたしておりますように、ベトナムに対するいわゆる経済援助というものは現在実施する状況にはないという方針は、何ら変わっておりません。ただ、同時に大臣は、人道的な面での一つの援助と協力というものは従来からもやってきたし、今後もあり得るだろう、こういう御答弁をされております。具体的にはチョーライ病院というのは非常にいい例でございます。従来から三、四回にわたりましてこれの無償援助の、増改築に対する病院の援助、その後は医薬品の援助等を行っております。今回浅尾外審が行かれますときに本件についてどうかという御質問でございますけれども、ベトナム側よりこのような人道的な、例えばチョーライ病院に対する医薬品のまた追加的な援助という具体的な要請がありますれば、よくその点について、ただいま私が申し上げましたようなラインを踏まえまして私どもの考え方説明し、考えてみたい、こう考えております。
  248. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、そのチョーライ病院ですね、仮に浅尾さんに対しても正式なランクで、例えば向こうの外務大臣要請してきて球が返ってきた場合、これは認めてもよろしいというふうな御判断をお持ちですか。
  249. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは純粋な人道的な問題ですし、チョーライ病院については日本もいろいろな面でこれまでかかわり合っておりますし、協力もしておりますから、向こうからそういうことがあれば、これはあくまで人道的な援助として十分考えていい案件だと思います。
  250. 秦豊

    ○秦豊君 ベトナムはもう一つだけにいたしますけれども、浅尾審議官が行って帰ってみえた場合、大臣にどんどん報告がありますね、まとめて。浅尾審議官のベトナム報告がどのような内容であれ、秋の国連総会においてカンボジア代表権問題が再び上程される場合の日本外交方針は何ら影響を受けない、これは分野が違うというふうに受け取って過ちではありませんでしょうか。
  251. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日本基本方針は変える考えはありません。国連代表権の問題にしても、今のカンボジアの民主政権を支持していくという日本姿勢は変える考えはありません。  ただ、浅尾外審のベトナム訪問について、私自身としてはそうした基本方針を変えるということじゃなくて、これからASEANの拡大外相会議に臨むわけで、その場合に今ASEANでは各国が相当ベトナムとの間にもカンボジア問題をめぐっての積極的な外交を展開しております。例えば、先般参りましたマレーシアの外相なんかも間接話法ですね、間接対話を提唱したりしておりますし、そういう点でいろいろと日本も浅尾外審とベトナム政府とのしっかりした話し合いを私自身が知っておくことが拡大外相会議に臨んだ場合においての非常に日本にとっても大事なことてある、こういうふうに思っております。
  252. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。  水産庁の方、見えていらっしゃいますね。まだモスクワが終わっておりませんので、確定ということではなくて、一般的な行政上の問題として伺っておきたいんですけれども、例えば、よく言われますことは、ある日の農水省における記者会見で、農水大臣に対して記者クラブの方から違反操業問題がたしか出たことがございまして、そのときの農水大臣の答弁というのはかなり一瞬微妙で、後は平静に返ったというふうなことらしいんですね。ということは違反操業、つまり禁漁区への越境操業によって実際の水揚げというのは協定で決まった数量の一・数倍から二倍に近づくのではないかというふうなことが一般的に言われているのであって、水産庁がこれを公式に認めるはずはないにしても、水産庁としては違反操業の実態というのはどういうふうにつかんでいるわけでしょうか。
  253. 草野英治

    説明員(草野英治君) サケ・マスの違反の問題かと思いますが、これは従来からソ連側も指摘しておりますし、日本の監督船も出ておりまして、一番多かったのはやはり越境問題といいますか、禁止区域への越境問題というのが多かったわけでございまして、一昨年のケースはソ連からも大量の指摘がございましたし、日本からも摘発したということが確かにございました。ただし、去年一番大きく違反いたしました中型漁船につきましては越境は一隻もなかったということでございますが、ただ、小型の小さな漁船につきましてはやはり問題があったということでございます。一般的に違反問題につきましては我々事あるたびに違反そのものはやはり将来の日ソ関係の全体に影響するのだということで違反が絶対ないようにするという指導は十分いたしているつもりでございますけれども、現状は少なくなりつつありますけれども、まだ若干残っているという状況でございます。
  254. 秦豊

    ○秦豊君 簡単な資料によっても例えば母船式、それから太平洋側の中小流し網の船、それから日本海側の同じ流し網、それから日本海のはえ縄、全部合算すると千三百五十二隻。千三百五十二隻という数は余りにも現実と対比した場合に過剰ではないかという認識は水産庁にはないわけですか。
  255. 草野英治

    説明員(草野英治君) この隻数につきましては従来日ソサケ・マス、特に五十二年のときに大幅減船がございまして、さらに五十三年にも第二次サケ・マス減船がございました。そのときのトン数が四万二千五百トンでございまして、そのときに定着いたしました数字が今先生の御指摘になりました数字でございます。最近の資源状況あるいは経営実態というものを考えた場合に果たしてそれでいいかどうかという問題は業界の中ではいろいろと議論はされているように聞いております。
  256. 秦豊

    ○秦豊君 私がこう申し上げておりますのは、これはある時期には一種の予算委員会マターになると思うのですけれども、やはり関連業界含めれば北洋関係というのはおよそ二十万人だと言われているし、いずれにせよ転機が来たとか、転換点だということは、これはもう僕たちのジャーナリスト時代から既に言われているわけで、非常に恒久的なテーマですよね。しかし、これからの日本の行政サイドとしてやはりいやでも応でも取り組まなければならないのは日ソ漁業という問題、北洋漁業という問題を日本の水産業の中において一体どういうウエートでどういうふうな対応で位置づけるべきかという問題とはいや応なく直面しなければならないわけであって、私はそういうふうな時期は既に到来をしているという考え方を持っているのです。だから行政全体の中で考えなければいけない問題で、相当しかも慎重に練らなければいけない。多くの人の暮らしの問題にも直結する、即決はできない、一、二年の検討では間に合わないという重要なテーマだとは思うのですが、やはり北洋漁業からの転換というような大方向についてはそろそろ水産庁の方としては、あるいは農水省といってもいいけれども、検討課題一つであるという認識、これはお持ちなんですか。
  257. 草野英治

    説明員(草野英治君) 御指摘のように、ソ連だけではございません。アメリカ側からもいろいろとサケ・マスに限らず、その他の底魚資源につきましても非常に厳しいことを言われておりまして、これまでもそれなりの対応はしておるわけでございますけれども、正直に申し上げまして、特に北洋関係アメリカとかあるいはソ連、カナダ、こういった国とのどうしても漁業政策に大きく影響されるということ、そういう側面を持っておりまして、なかなかおっしゃったような中長期といいますか、対策は正直に申し上げましてとりにくい漁業であるわけでございます。ただ御指摘のように、先生のような意見もございまして、何とか考えなきゃいかぬのではないだろうかという機運は我々の中にもございますが、今申し上げましたようなそういう大きな、一国だけじゃございません、いろいろな国との関係の問題もございますので、やはりこれは先生おっしゃったように、慎重に対応していかなきゃならぬ問題ではなかろうかという意識は持っております。
  258. 秦豊

    ○秦豊君 堂ノ脇局長に伺っておきたいのですけれども、今度のIIC関係の法案に、これはバックグラウンドに出てくる問題だと思いますけれども、ひところカントリーリスクとか、累積債務問題で中南米問題を議論するという視点が絶えずありましたね。しかし、少なくとも私の気がつく範囲ではそういう観点での、そういう切り口での中南米問題というのはちょっとトーンが下がっているんじゃないかという感じもいたします。しかし私見では、やはりブラジルであろうがアルゼンチンであろうが、ベネズエラ、メキシコであろうが、総じてラテンアメリカ、中南米についてはこのカントリーリスクという観点からは相変わらずそのときどきの時期の経済動向から目を離すわけにはいかないのじゃないかという認識を持っていますけれども、局長は中南米経済、カントリーリスク、こういう範囲の問題をどう考えていらっしゃいますか。
  259. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) 先生御指摘のとおり、中南米諸国につきましては、カントリーリスク問題が非常に議論をされましたのは二、三年前でございまして、ちょうど八二年のメキシコの累積債務の危機から始まっているわけでございますが、その後のそれぞれの国の自助努力と申しますか、財政の切り詰めとかインフレの抑制とか、いろいろな努力がございましたし、また債権国側の協力もございましたし、またIMF、世銀などの国際機関を通じての努力、そういったものを通じまして、とりあえず大口債務国、先ほど委員の御指摘になったメキシコ、ブラジル、アルゼンチン、ベネズエラといった国につきましては、当面の危機は遠のいてきたということは言えます。これは、一つには債務の繰り延べ、また特に多年度繰り延べということがメキシコ、ベネズエラについて行われましたし、ブラジル、アルゼンチンについてもそれは予見されると。そういうことから、当面の危機は遠のきつつあるということから、カントリーリスクの問題の議論が減ってきていると思います。しかし、これはあくまでも返済の義務を先に延ばしているだけでございまして、基本的にはやはりまだ問題としては大きな問題であるし、またそれぞれの国の脆弱性も残っているというふうに考えております。
  260. 秦豊

    ○秦豊君 それから、藤田局長の分野でしょうか、昨年度とそれから八五年度に限定して中南米のODA、この総額は一体幾らになっておりますか。それから、その中で特定してブラジルとアルゼンチンとメキシコ、三国への内訳だけを伺っておきたいんですけれども。
  261. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 昨年度は御承知のように年度として終わりましたので実績がございますけれども、今年度はまだ始まったばかりでございまして、全く数字はございません。もし昨年度だけでということでございましたら、昨年度は中南米の技術協力は先ほどちょっと御説明いたしましたが、まだ集計中で数字が出ておりませんけれども、円借款が三百一億円、それから無償援助が九十七・七二億円でございます。そのうち、御照会のございましたアルゼンチン、これは円借款は出ておりません。無償が、これは災害がございましたものですから、五千万円の災害援助が出ているだけでございます。それから第二の、ブラジルとおっしゃいましたが、ブラジルは円借款も無償もゼロでございます。それから、メキシコは円借款ゼロ、無償援助が三千九百万円、これもたしか災害関係だったかと思います。  以上でございます。
  262. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。  あと二分少々しかないので、ちょっとはみ出すおそれがあって恐縮なんですけれども、堂ノ脇局長アメリカのボイス・オブ・アメリカの対キューバ向け放送の変化というのがちょっとありまして、アメリカ・キューバ関係というのは基本的にはやや好転の兆しがあるのか、あるいは傾向なのか、やっぱりポストレーガンの課題なのか。それはもちろん相対的な問題にしても、堂ノ脇局長としてはアメリカ・キューバ関係、どう展望していらっしゃいます。
  263. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) 確かに、米キューバ関係は昨年の十二月に移民協定が結ばれるなどしまして、若干の好転が見られたのでございます。特にキューバとしましてはアメリカの中米政策に対してかなり心理的な圧迫を受けているということから、アメリカとの関係改善努力している節がございますけれども、しかし、一番最近の情勢を申しますと、先ほど先生御指摘のようなボイス・オブ・アメリカの放送開始ということが決まりました。これはあくまでも米キューバ間の関係ではございますけれども、なかなか米キューバ関係が全般的に改善する兆候というものは見られないんじゃなかろうかと、ポストレーガンとおっしゃいましたが、あるいはそれぐらいのタイミングで考えなきゃならない問題かなというふうに感じております。
  264. 秦豊

    ○秦豊君 終わります。
  265. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  266. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 御異議ないと認めます。  本件に対する討論及び採決は、これを後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十五分散会