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1985-05-21 第102回国会 参議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十一日(火曜日)    午後一時十三分開会     ─────────────    委員異動  五月二十一日     辞任         補欠選任      下条進一郎君     鳩山威一郎君      嶋崎  均君     浦田  勝君      園田 清充君     志村 哲良君      中西 一郎君     藤野 賢二君      夏目 忠雄君     吉川  博君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平井 卓志君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 久保田真苗君                 抜山 映子君     委 員                 浦田  勝君                 大鷹 淑子君                 後藤 正夫君                 志村 哲良君                 中山 太郎君                 原 文兵衛君                 藤野 賢二君                 吉川  博君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房審        議官       斉藤 邦彦君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    三宅 和助君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        警察庁警備局公        安第三課長    鏡山 昭典君        法務省刑事局公        安課長      原田 明夫君        法務省入国管理        局登録課長    黒木 忠正君        文部省教育助成        局地方課長    逸見 博昌君        厚生省社会局保        護課長      清水 康之君        厚生省保険局国        民健康保険課長  近藤純五郎君        厚生省年金局年        金基金指導室長  横田 吉男君        社会保険庁年金        保険部国民年金        課長       植西 常郎君        水産庁海洋漁業        部国際課長    草野 英治君        自治省行政局公        務員部公務員第        一課長      紀内 隆宏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○千九百七十九年の海上における捜索及び救助に関する国際条約締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○大西洋まぐろ類保存のための国際条約締約国全権委員会議(千九百八十四年七月九日から十日までパリ)の最終文書に附属する議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百八十四年の議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (テルアビブ空港乱射事件犯人の釈放に関する件)  (さけ・ます漁獲交渉に関する件)  (在日外国人指紋押捺と地位に関する件)  (朝鮮問題に関する件)  (カンボジア問題に関する件)  (アジアにおける軍縮・軍備管理に関する件)  (日ソ関係に関する件)     ─────────────
  2. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、下条進一郎君、嶋崎均君、園田清充君、中西一郎君及び夏目忠雄君が委員を辞任され、その補欠として鳩山威一郎君、浦田勝君、志村哲良君、藤野賢二君及び吉川博君が選任されました。     ─────────────
  3. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事鳩山威一郎君を指名いたします。     ─────────────
  5. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 千九百七十九年の海上における捜索及び救助に関する国際条約締結について承認を求めるの件、大西洋まぐろ類保存のための国際条約締約国全権委員会議(千九百八十四年七月九日から十日までパリ)の最終文書に附属する議定書締結について承認を求めるの件、北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百八十四年の議定書締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  三件の質疑は去る十六日終局しておりますので、これより三件を一括して討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより順次採決に入ります。  まず、千九百七十九年の海上における捜索及び救助に関する国際条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  6. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、大西洋まぐろ類保存のための国際条約締約国全権委員会議(千九百八十四年七月九日から十日までパリ)の最終文書に附属する議 定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  7. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、北太平洋のおつとせいの保存に関する暫定条約を改正する千九百八十四年の議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  8. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  10. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 次に、国際情勢等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務大臣テルアビブ空港乱射事件岡本公三が突然釈放されたということですけれども、できるだけ詳しく背景を含めまして事実関係を教えていただきたいんですが。
  12. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 五月十五日に、我が方はイスラエル当局PFLPGCとの間で、PFLPGCが拘束しているイスラエル兵士三名とイスラエル側が拘束している千名以上のPLOメンバーと交換する交渉を行っており、イスラエル側が釈放する者の中には岡本公三が含まれておる旨の非公式な情報に接したわけであります。  よって、我が方は直ちにイスラエル外交当局に対しまして、右事実の確認を求めるとともに、もし右情報が事実であるならば、これは新たにテロリストを野に放つ結果になること、日本赤軍等国際テロリストを鼓舞する結果になること、一般国際法上疑義があること等の理由により強く再考を求めたわけでありますが、これが入れられなかった次第であります。  五月二十一日未明、岡本ジュネーブにおいて国際赤十字仲介のもとにPFLPGCに引き渡され、二十一日午前七時五十五分ジュネーブを離れたのでありますが、とりあえずの行き先リビアトリポリと思われるものと存じておりますが、しかし、確認はされておらない次第であります。  なお、政府としましては、警察庁等関係機関とも連絡を密にして、同人の所在等に関する情報収集に努め、事態推移に応じて引き渡し請求を行うなどの措置をとる旨、検討を行うことになると思われます。  大体以上です。
  13. 久保田真苗

    久保田真苗君 今御説明ございましたところによりますと、非公式な情報でお知りになったのであって、別にどこかの国から連絡があったわけでもないわけですね。
  14. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) イスラエルからでございます。
  15. 久保田真苗

    久保田真苗君 イスラエル当局から、いつあったわけですか。
  16. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 非公式情報は、イスラエルの中からの非公式情報でございます。
  17. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、その機会がなかったかと思われるんですが、岡本についての意思確認政府としてはできてないわけですね。
  18. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 意思確認の点につきましては、これはイスラエル側とそれから相手方PFLPGCとの合意の一環といたしまして、この仲介役をいたしております国際赤十字確認をいたすという取り決めになりまして、国際赤十字イスラエルにおります代表をもってし、これは岡本も含めた今回の捕虜交換の対象となる者全員について意思確認を行ったということを確認いたしております。
  19. 久保田真苗

    久保田真苗君 その意思確認の内容は何でございましたか。
  20. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) イスラエルからの出国に同意するかという意思確認でございます。
  21. 久保田真苗

    久保田真苗君 例えば行き先とか、日本に帰国の有無とか、そういった意思確認はないわけでしょうか。ただいま大臣からリビアトリポリと思われるというふうに御発言がありましたが、その根拠は何でしょう。
  22. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 大臣が申されましたのは、岡本が現在搭乗しております飛行機がリビアトリポリに向けて立ったということの情報に基づいて申し上げただけでございます。
  23. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで大臣日本政府としての対応なんですが、現在いろいろ情報収集とか、引き渡し要求についても御検討中だというふうに承りました。それで、例えばリビアトリポリへ行く、リビア受け入れ国になるのかどうかわかりませんが、受け入れ国への身柄引き渡し要求とか、あるいは国際刑事警察機構を通じて刑事犯罪人としての国際手配をする、この二つについての見通しはどのようにごらんになりますでしょうか。
  24. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず、岡本公三を釈放しましたイスラエルに対しましては、こうして釈放してそれを第三国に引き渡した、こういうことでいわば場合によってはトラを野に放つ可能性も出てくるということでありますし、あるいはまた国際法的に見て問題が残るということでイスラエル側に対しては、きょうイスラエルにおける我が方の大使からイスラエル政府に対してイスラエルのとった処置は遺憾であると遺憾の旨を表明いたすことになっております。  それから一方、岡本公三につきましてはこれは司法当局におきまして岡本公三の所在確認され次第逮捕状が出される、こういうふうに承っておるわけでございますが、この岡本公三が最終的にどこに行くかということについては我々まだ何も情報を得ていない、トリポリにとどまるのか、あるいはまたPFLPGCの本拠に行くのか、あるいはその他の国に行くのか、その辺のところははっきりしておりません。ですから、その辺のところをはっきり見きわめた上で犯人引き渡し等も含めた日本側措置を決めなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  25. 久保田真苗

    久保田真苗君 報道によりますと、受け入れ国に対する身柄引き渡し要求というのはかなり難しいようだという外務省の御見解が出ておりますんですけれども、これはやはりそのように大変難しいことなんでしょうか。
  26. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) これは所在確認ということについてかなり難しい状況になるんではないかというのがまず第一点でございます。これは行き先、とりあえずはトリポリといたしましても、それから先トリポリにとどまるのか、あるいはその他の地域に赴くのかということについて公式的な発表みたいなものは恐らく行われないでありましょうし、どこかに潜行するという形になることだと思われます。したがいまして、まず我が方といたしましては、その所在を尋ね当てるというところがなければ、その次にあります引き渡し請求というものが難しいということになろうかと思います。それから、仮に所在確認されたといたしましても、またそこにおける所在の態様という問題もあろうかと思います。これは仮にそこの所在、当該諸外国政府の側で、まずそういった存在を否定するということもありましょうし、あるいは実際問題としてどこの国の政府も、実効的な支配が及んでいないような地域に入り込むというようなことも考えられます。これはさまざまでございましょうけれども、そういったような問題が幾つか、かなりあるだろうというところから難しいということを申し上げた次第でございます。
  27. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務省邦人保護観点から年一回くらいの割合で、また釈放される何日か前、 割合に直前に岡本大使館員の方がお会いになって差し入れなどもしていたということなんですが、これは事実でございますか。
  28. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) ただいま御指摘のように、岡本が牢屋に拘禁されている間大体一年に一遍ぐらいの頻度でこれまで館員による面接、面会というのが行われてきております。それで、これはあくまで邦人保護に係る領事事務一環として行っているものでございまして、当人の状況を視察するとか、あるいは差し入れ等がございます、あるいは岡本の方からこういうのを家族の方に届けてくれという委託を受けたこともございますので、そういう取り次ぎをいたしておるということでございます。
  29. 久保田真苗

    久保田真苗君 海外日本人の犯罪人というのはどのくらいいるんでしょうか。また、このような他の犯罪人に対しても皆こういう大使館の方からの面会差し入れ等をしていらっしゃるんですか。
  30. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 海外犯罪を起こして有罪判決が確定して現在拘置されている邦人は約十五名おります。ただ、これのほかに未決のままで勾留されているという邦人が、これは確かには把握できませんが二十名前後いるというふうに把握しております。そして、これら邦人に対しましては本人または家族よりの要請に基づく場合やその他必要に応じて邦人保護観点から在外公館館員が随時面会を行っており、面会頻度について一定の基準というものは特段ございません。
  31. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで、大使館の方が面会あるいは差し入れなさったときに、特に最後面会において岡本が非常に精神的に不安定な状況にあると伝えられておりますけれども、事実ですか。
  32. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 最後面会いたしました館員からの報告によれば、長時間面会したわけではございませんけれども、岡本状況は印象として精神的に不安定な状況にあったということは申してきております。
  33. 久保田真苗

    久保田真苗君 それで、大使館としてはイスラエル当局に対して医者の診断を受けたかどうか、あるいはそのことをお願いしたというようなことはあったんでしょうか。
  34. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) この十三年間の長い間にそういう事実があったかという御質問ですと、ちょっと記録上よく調べてみないとわかりませんけれども、最近におきましてそういったことはやっておりません。
  35. 久保田真苗

    久保田真苗君 と申しますのは、大臣も今テロリストを野に放すようなものだとイスラエルに対して抗議をするというお考えのようですけれども、それに加えて精神不安定ということになりますと、また病気のせいで非常に乱射とか、こういった常識外れのことをするおそれもあるというふうに思われるのではないかと思ったものですから御質問いたしました。  こういう点に対しては、さらにどういう手をお打ちになるつもりでしょうか。
  36. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 岡本身柄を我々としては引き渡しを受けるというところが最終的な目標でございまして、そのための所在確認情報収集というところから始めて、事態推移に応じて実効的な措置を図るというふうに努力してまいりたいと考えております。
  37. 久保田真苗

    久保田真苗君 こういうテロリストである上に、やはり精神不安定を相当傍らから確認しておいでになるわけですから、この行き先の国に対しても十分そのことは警戒していただかなければならないと思います。そうでないと、また大変な事件が起こって、ますます日本としても困ることになりますので、こういうところにも、ひとつとりあえず留意していただいて御尽力をお願いしたいと思う次第です。  次に、サケマス漁業の関連について、ほんの少し御質問したいと思います。  日ソ漁業協力協定につきましては、今月十二日の本署名後に、衆参両院で直ちに、十三日一日でもって外務委員会を開き、討論採決、本会議採決という緊急措置をとったわけであります。しかし、日本代表団は十三日の午後から交渉に入ったと伺っておるんですが、本日に至るまで実態交渉妥結していないようでございます。この妥結ができないというその問題点ですね、争点あるいはなぜこういうふうに時間がかかっているのか、これについて外務省水産庁から御説明いただきたいと思います。
  38. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) ただいま御指摘がございましたように、日ソ漁業協力協定は今月の十三日に極めて迅速に御承認をいただいたわけでございます。そこで、私どもも直ちにその日からモスコーで交渉に入ったわけでございますけれども、残念ながら現在に至るまでなかなかはかばかしい進捗を見ておりません。  その問題点を申し上げますと、十三日から十八日、すなわち先週の土曜日までの間、これは主として昨年のサケマス漁獲について、その漁獲の量とそれに対応する、いわゆるコンペンセーションの支払いの問題がございまして、その問題について双方意見が対立したまま前に進まなかったわけでございます。ソ連側の方は、この話で双方意見が一致しない以上、本年の漁獲条件とか量とか、そういうところに話を進めることには反対であると、そういう立場をとったまま先週は推移してしまったわけでございます。  しかしながら、幸いにこの点につきましては、一応ペンディングにいたしまして、今週からはいよいよ本年の我が国によるサケマス漁獲についての協議が行われることになった次第でございます。二十日の会議においては、我が方から本年のサケマス漁獲について総漁獲量四万二千五百トン及び我が国関係業界の強い関心事でございますところの漁場転換等を提案いたしました。これに対しまして、ソ連側は、日本漁獲量の提案は、これは聞いてはおくけれども、現在の資源状態から見て非現実的であると言わざるを得ないという厳しい態度を示しております。この委員会では、今後本年の我が国によるサケマス漁獲についての協議及び我が国関係業界の強い関心事でありますところの、ただいま申し上げましたような漁場転換等の重要な問題が、今後続けられるわけでございますけれども、まず現在までに先方が示した態度から判断いたしますと、この交渉見通しは予断を託さないと率直に申し上げざるを得ない状況でございます。しかし、いずれにいたしましても、政府といたしましては、交渉早期妥結に向けて今後とも全力を尽くす所存でおります。
  39. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは実態交渉が終わって、交渉団がお帰りになってから詳しく伺いたいと思いますけれども、その争点一つになりました五十九年の漁獲量について、日本側が三万五千四百六十四トンと言っているのに対して、ソ連側は四万トン以上と主張している。これは報道なんですが、その両方についてどれだけの根拠があるわけなんでしょうか。
  40. 草野英治

    説明員草野英治君) 主として食い違っております争点は、いわゆる太平洋中型サケマス流し網漁船クォータ消化状況でございます。  日本側の主張といたしましては、中型漁船の魚獲状況というものは、去年出漁が五月十日ということでおくれたことが一つと、それから六月下旬以降の海況によりまして、いわゆる潮目というものの形成状況が非常に散漫であったということから、七月五日には漁場を切り上げております。そういう状況でございまして、中型漁船につきましては、特にクォータ消化率が悪かったということが原因でございます。  このやり方につきましては、いろいろとございますが、日本やり方は、指定した漁港に必ず水揚げさせておりまして、そこで監督官立ち会いのもとに全量検量いたしまして、それを魚獲実績として集計をしておるわけでございますが、ソ連側やり方は、いわゆる臨検でございます。臨検に基づきまして、一部の漁船、これからのデータをもとにいたしまして、それに操業日数あるいは操業隻数というものを推計いたしまして出しているというところに食い違いがございます。  以上でございます。
  41. 久保田真苗

    久保田真苗君 漁獲量は、結局、漁業協力金算定基礎になっているそうなんですけれども、この漁業協力金をどちらの実績に基づいて出すかが問題になって妥結しないということですけれども、これはことしの交渉が先に入りましたからそれは結構なんですけれども、これは漁業協力金クォータについて支払うんですか、それとも実際の漁獲量に比例して支払うのか、どういうふうになってますんでしょうか。
  42. 草野英治

    説明員草野英治君) この協力費の払い方につきましては、大日本水産会会長ソ連漁業相との間に取り決めがございまして、クォータ消化している場合には一〇〇%払いますが、クォータ消化が未消化の場合はそれに比例的に減額するということになっておりまして、その規定に基づきまして日本側としてはコンペンセーションにつきましては減額をしたという経緯がございます。
  43. 久保田真苗

    久保田真苗君 それは文書で交換していらっしゃるわけですね。
  44. 草野英治

    説明員草野英治君) そのとおりでございます。
  45. 久保田真苗

    久保田真苗君 どういう名前文書ですか。
  46. 草野英治

    説明員草野英治君) 題名はちょっと持ち合わせておりませんが、これは昨年の場合は五月七日に交わしておりまして、大水会長ソ連漁業省のたしかクドリャフ・ツェフ第一次官との間だと思いますが、毎年同じような形式で、去年の場合は、一九八四年におきます機械及び資機材についての提供に関する覚書とか、あるいは文書とか、そういった名前であったのではなかろうかと思います。
  47. 久保田真苗

    久保田真苗君 いただいた資料があるんですが、それによりますと、クォータが四万二千五百トンになってから、これが三年ばかり続いているんですが、日本は一度もこのクォータ以上にとったことになってないんですね。例えば八三年について言いますと四万二千九十八トンというふうに資料の数字が挙がっているんですけれども、この場合協力金は幾ら支払っていらっしゃるんですか。
  48. 草野英治

    説明員草野英治君) 確かに九九%台のケースの場合も、一九八三年につきましては四十二億五千万払っております。それから一九八二年の場合四十億払っております。以上でございます。
  49. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうすると、覚書にもかかわらず実態はそれよりも多く支払っているということですね。それには特に、本来の金額はこれこれだけれどもわずかな差だから全額支払うというような、そういう申し合わせといいますか、そういう念押しをしてお払いになっているわけですか。
  50. 草野英治

    説明員草野英治君) 先ほど申し上げました取り決めによりますとクォータ未達成の場合には比例的に減額されるというふうになっておりますが、これまでも慣例的に、ほぼ一〇〇%に近い場合は全額払うということで、これまでの慣例として暗黙の了解になっているところでございます。
  51. 久保田真苗

    久保田真苗君 漁区の交換については、カーメンツェフ漁業相の話として検討の余地もあるようなそういう情報がありますけれども、この点についてはどうなんでしょうか。
  52. 草野英治

    説明員草野英治君) カーメンツェフ漁業大臣と鳩山団長を初めといたします訪ソ団との会談におきましてはこの漁区転換問題も議題になっておりまして、その中でカーメンツェフ大臣は、漁場転換につきましては資源の保護、保存という観点から検討をさせますということだけを答えておるのが事実でございます。
  53. 久保田真苗

    久保田真苗君 今もうどんどんサケが北上をしているわけですけれども、漁民にとっては大変大事な時期なので、一日も早く漁区への出漁ができることを願っているわけですが、ひとつ御尽力をお願いして、また実態交渉ができましてからさらに問題点をお尋ねしたいと思います。どうもありがとうございました。  それから次に、私も指紋押捺の問題についてきょう少しお伺いいたします。  まず外務大臣、法務省が五月十三日指紋押捺問題について若干の改善措置を行ったと言われる後、大臣は、しかし問題はこれで完全に解決するわけではないから引き続き改善について研究していくという御発言があったやに伺いますけれども、大臣のその真意をお聞かせいただければありがたいと思います。
  54. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 指紋押捺問題につきましては、外国人登録法は昭和五十七年に改正されたばかりであるとの事情がありますが、他方韓国を含む我が国内外において指紋押捺制度の撤廃ないし緩和を求める意見があることも念頭に置きながら、関係省庁間で鋭意検討を重ねてきたところであります。今回早急に実施可能な運用上の問題について政令改正等の措置がとられた次第であり、この点は評価、理解が得られるべきだと考えています。  いずれにせよ、現行法令は守ってもらう必要があると考えますが、より長期的には、諸般の情勢を踏まえて我が国の自主的な立場から研究、検討が続けられるべきものと考えております。  こうした考え方を踏まえた上で、韓国側との間では日韓双方の相互理解を深めるため機会あるごとに韓国側の考え方を聞くとともに、日本側の基本的な考え方等を説明していく所存であります。  以上が基本的な我が政府の考えでございます。
  55. 久保田真苗

    久保田真苗君 それではまた、長期的あるいは引き続き検討しておいでになるその方向とか条件とかについて後からできればお伺いしたいと思うんですが、まず二、三の点について法務省にお尋ねしたいと思うんです。  先日同僚議員が地方自治体の対応についていろいろと実態をお聞きになって、実情はある程度わかりました。それによりますと、現在地方公共団体でこの登録事務に関して、指紋不押捺の外国人を告発するという仕事を告発をしないとしている自治体が七十二、そしてこれについての改善を意見書として出しているのが七百以上の自治体に及んでいるということでございます。  ところで、現在外国人登録事務についてはこれを機関委任事務として市町村に委託されているわけですけれども、指紋押捺につきましては、拒否者があらわれた場合法務省は市町村に対して告発を求めてはいるけれども、この告発そのものは機関委任事務ではありませんね。
  56. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 外国人登録事務は国の事務でございますが、その事務を国が実際処理するのは大変いろいろ問題がございますので、事務そのものは機関委任事務として市町村において処理していただいているわけです。  ただ、今お尋ねの告発という事務につきましては、これは刑事訴訟法の規定に基づきまして公務員一般に課せられた義務でございまして、私どもが市町村に対してお願いしている登録事務に関連して発生する法違反について告発をするという行為そのものは、私どもが委任している範囲の外、すなわち、もともと地方公共団体の職員にある義務であると、このように考えております。
  57. 久保田真苗

    久保田真苗君 確認いたしますが、地方自治法に基づく機関委任事務ではなく、他の法的根拠をもってやっていらっしゃるということですね。その法的根拠についてお聞かせください。
  58. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 先生ただいま御指摘のとおり、法律に違反したということで刑罰法規定に触れるというものにつきまして、官吏または公吏が発見したと認めた場合に告発するように定めておりますのは刑事訴訟法でございまして、その意味では機関委任事務の一環として委任されたというものではないと考えられます。
  59. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで、刑事訴訟法二百三十九条二項に基づいて公務員の告発義務があるということになっておるんですが、この二項というのは「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」とこうなっておりますね。つまり、指紋不押捺は犯罪であるから、不押捺があったときには犯罪があると認めて告発をするという、その義務を持つ人はだれですか。
  60. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) そのような職務を行うことによりまして、犯罪があると認めたといいます か、そのように判断した官吏、公務員ということになると考えられます。
  61. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、まず一義的には登録の窓口にいる地方公務員、市の職員と、こういうことになりますね。つまり、私どもも割合と市役所などの窓口で見聞きしている、これは中高年婦人などがその告発の義務者になるわけですね。そうですね。
  62. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) その点につきましては、具体的な事案によりましてなかなか判断が難しい場合もあると存じますが、刑事訴訟法の基本的な物の考え方は、公務員すべてに告発義務があるとしているんではございませんで、当該公務員が職務を行うことにより犯罪があるときというふうに規定しているわけでございます。そこで、告発という行為は、この場合は単に個人的に行うというものではないと考えられますし、すなわち行政事務の遂行上その必要があるということで行われるものでございますから、告発義務を負うのは、第一義的には当該行政事務の責任者であるというふうに考えられるだろうと思うわけです。ですから、まず第一義的には一番何と申しますか、窓口で直接当たられる方が第一義的に責任を負うというよりも、むしろこの趣旨を考えていきますと、当該行政事務を円滑に遂行していくということについて直接責任を負う方というふうに考えるのが自然であろうと思われるわけです。
  63. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、もちろん告発をしていない自治体においてその窓口にいる職員が告発の手続をとらなかったとしても、それは責任を追及はされないわけですね。
  64. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 一般的に申し上げるのは非常に難しい問題だろうと思うわけでございますが、仮にある窓口の公務員が行政事務遂行上法律違反があるというような事態、またそのまま推移をしたのでは犯罪を構成するという事態を認知した場合に、当該公務員、いわば末端の窓口の職員が即みずからの判断ですべてを処理してしまうということは恐らく考えられないだろうと思うわけです。あくまでいずれの役所におかれましても、窓口で直接国民の皆様方と接する場合に、一定の事態が発生して、このままでは行政事務が円滑に遂行できないということになりましたら、当然その職場を担当する責任ある方に御相談なさって、その上で適切な処理が行われるというふうに考えられるわけでございますので、そうした場合にやはり最終的にその事態を収拾すると申しますか、事態を確定させる、ある一定の違反行為があったということを確定されるに至った責任者の判断というものがそこでは尊重されるわけでございますので、窓口へ来まして、そこで違反が行われたという場合に、即その対応した窓口の公務員の方が告発する義務が直ちに生ずる、そしてそれをやらなかった場合に、その時点で直ちに告発義務違反が起こるというふうには考えられない事態が多いのではないだろうかと、そういうふうに考えられます。
  65. 久保田真苗

    久保田真苗君 窓口の問題ではなくて責任者の問題だというふうに伺いました。  ところで、その責任者ですが、この刑訴法二百三十九条はこれを行わなかったときにどういう制裁があるわけですか。
  66. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 一般的に、この刑事訴訟法二百三十九条二項の義務に違反した者に対して、刑事訴訟法上は特段の制裁措置を科する規定はございません。
  67. 久保田真苗

    久保田真苗君 つまりいわゆる学説で言われるところのこれは訓示規定でございますよね。
  68. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 訓示規定という講学上の言葉あるいは義務規定という言葉、これは先生御承知のとおり、いろいろな意味に使われておりますので、これが直ちに訓示規定であるというふうには申し上げにくいわけでございます。いわば直接的な制裁規定のない規定であるということは事実でございます。しかしながら、この種の公務員に課せられた義務について、単に一般的な訓示であるというふうには私ども考えにくいのではないだろうかというふうに考えております。
  69. 久保田真苗

    久保田真苗君 私きのう最高裁にお願いしまして、けさその資料をいただいたんですけれども、ですから私もこれを全部読んだわけではなくて、しかしこの刑訴法二百三十九条の告発の義務については少なくとも判例が二つあるんですね、今私が持っておりますこの資料で。それは一つは、物価統制令並びに法人税法違反被告事件というわけで、名古屋高等裁判所の判決です、昭和二十六年なんですけれども。これによりますと、刑事訴訟法第二百三十九条第二項の規定は訓示的規定と解せられ、原本修正管理または税金の逋脱を伴う犯罪以外ほとんどこれを行っていないと、そういうくだりがあるんです。もう一つは、法人税法違反被告事件というので、これは東京高等裁判所の判決なんですが、やはり昭和二十六年なんですが、ここにも刑事訴訟法第二百三十九条第二項はもとより訓示規定であって、とあるわけです。公務員が国民を告発するには慎重たるを要することは当然であるからと、こういうくだりがあるんですね。したがって高裁の判決によってこの二百三十九条が訓示規定であるということは判例があるんですけれども、法務省としてはどんなふうにこれをおとりになりますか。
  70. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 先生御指摘のとおり、そのような文言を使った裁判例があることは事実でございます。ただ、その場合に、訓示規定だからどういう法律効果があるかというところまでいろいろ考えてみますと、必ずしも明確な法的効果ということを考えて使われたというふうに言うことも若干問題があるんじゃないかと思うわけです。と申しますのは、犯罪の捜査ないし公訴権の行使等に関します、刑事に関します行政作用につきましても、このことが適正に行われていくためには国はもとより地方公共団体におきましても各種の行政機関が相互に協力いたしまして、一致して行政機能を推進していかなければならないということが重要だということは何人も否定できないところであろうと思いますし、そうした場合に国のあるいは地方公共団体のそうした、いわば国と一体としての法令を遵守していこうという立場を率先して守るべき公務員に対する、いわばしなければならないという規定でございますから、これを単なる訓示であるというふうに解しまして、いわば従わなくてもいいんだ、ある場合には従わなくてもいいんだというような形で御理解いただけるような趣旨でこれを訓示規定というふうにはなかなか言えないだろうと思いますし、そういう趣旨ではこれはあくまで法令上の義務であるというふうに言うべきではないだろうかというのが現在の私どもの考え方でございます。
  71. 久保田真苗

    久保田真苗君 その点について今からちょっとお尋ねしますけれども、その前に一つお伺いしておきたいのは、これが告発が行われなかったとき、何かきのう私が伺ったところでは、昭和五十五年の三月十九日に衆議院の決算委員会でこれに関して政府委員が御答弁なさっているそうなんで、その趣旨をちょっとお話しいただけますか。
  72. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 五十五年三月十九日の衆議院決算委員会におきまして、これは別の事柄に関する議論であったと存じますが、先生お尋ねの二百三十九条二項の告発義務に関して議論がございまして、そのときにも政府委員の答弁は、「性格的には義務規定でございます」という答弁がなされまして、またあわせまして、この場合は国家公務員法との関係が議論されたようでございますが、懲戒の問題には、「一般的に、懲戒権者が、非違行為があった場合には、その非違行為の性質、内容その他の事情を考慮しまして、案件ごとに具体的に判断、発動をすべきものでございまして、」しかしながら「一般的に申しますと、正当な理由がなくてことさらに刑事訴訟法第二百三十九条第二項の規定に違反した場合には懲戒処分の対象になり得るものと考えております。」という形で、一般的には懲戒処分の対象になり得るという考え方が述べられております。
  73. 久保田真苗

    久保田真苗君 その場合は国家公務員法と地方公務員法とあると思うんですが、今回の場合は地方公務員法がかかわっていると思うんですが、地 方公務員法による懲戒に関する規定の解釈とそれについての懲戒の理由があるかないかというような判断、あるいはそれをどう扱うかというようなそういうことは自治省にお伺いしますけれども、どこでお決めになるわけですか。
  74. 紀内隆宏

    説明員(紀内隆宏君) 具体的な案件の場合に何が懲戒の事由に該当し、いかなる処分を行うかということは最終的には任命権者が判断いたします。
  75. 久保田真苗

    久保田真苗君 任命権者といいますと、例えば……
  76. 紀内隆宏

    説明員(紀内隆宏君) 市町村長でございます。
  77. 久保田真苗

    久保田真苗君 市町村長ですか。市町村長にそういった判断、裁量の責任がある、こういうことなんですね。  それで、先ほど原田さんがおっしゃった、衆議院の決算委員会で義務規定であるというふうに答弁しておられるのは、この高等裁判所の判例からいいますとどうも違っているんじゃないかと思うんですね。それで今かなり長くおっしゃいましたから、そちらのお考えはそうなんでしょうけれども、私はやはりこういったものは判例を尊重していかなければならないものだと思いますし、また常識的に考えても、もしこの二百三十九条の二項が厳格に適用されるとすれば、私はこれは大変なことになると思うんですよ。役所の中からは犯罪人がいっぱい出てくることになると思うんです。と申しますのは、もちろんこれは罰則を伴っておりませんけれども、この義務違反というのがたくさん出ると思うんです。おっしゃったように例えば公務員であるから公務員が知ったことはみんな告発しなければいけないというのでなくて、職務上知り得たとあります。しかし職務上知り得たことであっても、例えば会計に関連していかにたくさんのことが会計検査院から指摘されているか、そしてそれに関連してその関係者、つまり職務上知り得る地位にあった人からの内部告発はいかにないか、このことを考えていただけば、それはもう義務違反だと言っていたら枚挙にいとまないほどの数が出るんじゃないかと私は思うんです。そういう実態から考え合わせますと、この場合にのみ非常に二百三十九条の解釈を厳格にとって、何が何でもこうしなければいけないというような、そのような刑訴法の趣旨ではないんじゃないかと私は思うんですね。ですからこれは間接的に公務員法による懲戒の対象になるかならないかということはその任命権者が考える、こういうことになるわけなんです。  ところで、ですから私はもっとこれが、仮におっしゃるように一体的に考えていく中でうまくやっていけるような、そういうことが必要であったと解釈を仮に私が百歩も千歩も譲ってそうだと考えたとしましても、当該官庁あるいは窓口にある公務員自身、そして当該官庁の責任者の裁量の幅というものが内容的にも時間的にも当然あるべきだと、そう思うんですが、どうでしょうか。
  78. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 一般的に告発するかどうかについて当該公務員の裁量に属する事柄であるというふうには必ずしも言えないだろうと思うんでございますが、もとより具体的な事案によりましてある事象を認知したからといって直ちに告発しなければ義務に違反するということにはおのずからならないだろうと思うわけです。やはり各種の行政規定を罰則をもって担保いたしますといいますか、間接的に強制していくという考え方は、あくまで根本は当該の行政事務、国及び地方公共団体が大切だと考えておりますそういう行政規定が円滑に、そして国民に受け入れられる形で進んでいくということが必要なわけでございまして、そのことを担保するということがいわば罰則の役目でございます。罰則の働きというものはそういう意味では従的なものになるだろうと思うわけです。ですからある法律違反あるいは犯罪が発生したという場合にも当該者につきまして直ちに告発するということじゃなくて、それ以外の方法でその本来の目的が全うされるというような事態が仮に考えられるといたしますれば、そのための必要な措置を講ずる間はもとより告発しなくてもいいような場合、それが相当と考えられるような場合というものが当然あるだろう、またそうすることがだれからも理解されるという場合もあるだろうと思うんです。
  79. 久保田真苗

    久保田真苗君 指紋の押捺につきましては、私はどうも司法御当局の場合は指紋押捺という事柄にかなりなれていらして、あんまりこれに違和感をお感じにならない状態になっているんじゃないかなと、そういう危惧があるんですね。しかし、指紋押捺ということは本来非常に重大なことじゃないかと思うんです。それは例えば同じ刑訴法の二百十八条に身体検査令状というのがございますね。これはその二項に、身体の拘束を受けている被疑者についての指紋のことがあるんですね。そこには身体の拘束を受けている被疑者の指紋をとるときは身体検査令状によることを要しないというような趣旨がございますね。ということはこれを逆に解釈しますと、被疑者であっても身体の拘束を受けていない場合は指紋をとるときに令状を要するというふうにこれは解釈ができるわけですか。
  80. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 一般的にはそのように解されると思います。
  81. 久保田真苗

    久保田真苗君 ですから、外国人の方たちが、被疑者でさえも令状をもってするほどのひとつの人身保護的な意味合いがある指紋採取ということに対して、これが何度も何度もこういうことを要求されるということに非常な苦痛を感ずるのは、私はまことに同情すべきことだと思うんです。確かにそう言っては失礼でございますけれども、悪法も法なりで、現行法がある以上はということをおっしゃるんですけれども、しかしこういう被疑者に対する人身保護についてすら一々令状を必要とするというだけの事柄であるということは御認識いただけますね。
  82. 原田明夫

    説明員(原田明夫君) 私の御説明があるいは先生の意に沿わないかもしれませんけれども、この犯罪の捜査として行われる指紋採取というものは、現在問題になっております外国人登録法上の指紋採取と基本的に異なっておりまして、先生もそこらあたりは当然御承知のことで恐縮でございますが、手でございますと、十本の指につきまして完全にいわば百八十度全部とるわけでございます。そういうものと、いわば左手の一指につきまして指紋をとると、これはあくまでも本人の同一性の確認のために他に方法がないのでそうやらざるを得ないということから定められているものだと思いますが、そういう形で行われておるものとの間にはこれは意識の面でも、私どもが申し上げるのは適当でないかもしれませんけれども、やはり特段の差があるんじゃないだろうかと思うわけです。その点につきましても、私ども直接の所管じゃございませんですけれども、しかしながら、さはいうものの左手の一指にしても指紋をとることの、とられる方の立場という点についてはなるほど御理解しなければならない感情というものがあるだろうということが当然あったのだろうと思いますが、そこらあたりも考慮されまして、このたび法務省当局といたしましては、指紋のとり方につきまして、左手の一指につきまして、従来は百八十度回転さしておりましたものを正面指紋だけ、いわば通常の場合拇印を押すとよく言われておりますけれども、一般の市民生活の中でも行われているような拇印を押す形態の指紋採取に変更するということで意思統一をいたしましたというふうに聞いておりますし、またべったりと黒い墨がつかないように特殊な化学変化を起こす透明な薬品でできるだけ先生御指摘のような精神的な負担と申しますか、そういうものに対する理解を示したいということでの措置がとられたんだろうというふうに理解しております。
  83. 久保田真苗

    久保田真苗君 今回そこのところを改善なすったのはそういう気持ちがおありになったからだろうということはわかります。けれども、また別の観点から見ますと、どうも他の国も指紋押捺をしている国はもちろんあるわけでございますけれども、その回数が初回について一回だけというところが一般的であって、我が国のように五年ごとに 五年来るたびに何回でもそれをとるというのは珍しいそうですね。その辺の事情は把握していらっしゃいますか。
  84. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 私どもが外国人登録制度の上で指紋をとっている国がほかにあるかということを調査いたしました際に、世界じゅうすべての国を調査するわけではなくて、アジア周辺諸国、それから南北アメリカ、ヨーロッパ、こういったような我が国と比較的近い国ないしは法制度の似通った国を中心に実は調べたわけでございます。その結果外国人登録、外国人から指紋を押させている国というのが二十四カ国ございました。それから一部、部分的に指紋をとるという国が九カ国ございまして、その他は指紋制度を採用してない、こういうことであるわけですが、今お尋ねの我が国と同じように一定の年数、三年とか五年ごとに登録証明書の切りかえを行って指紋を押させている国というのが法律制度の上ではっきり書かれているのはたしかポルトガルだけであったと思うんです。ただその他の国について見ましても登録証明書の切りかえ制度というのがございまして、その登録証明書を見ますと、指紋が押されているということでありますので、法律に明示はされていないけれども、切りかえの都度に指紋を押させているという国はかなりあるというふうに思われます。  ただ、大変理屈っぽいことを申し上げますけれども、出入国管理制度とか外国人登録制度と申しますのは、その国の置かれた国際的な環境とか地理的条件また国内の政治、経済、労働、いろんな要素を勘案してそれぞれの制度を決めておるわけでございまして、例えばヨーロッパの出入国管理制度なんというのは一時は大変緩やかであったわけですけれども、最近は大変厳しいふうになっていると聞きますし、これはやはりそれぞれの置かれた国の状況によって違うであろうと思うわけでございますが、我が国の場合、先ほど申し上げた諸外国の例から見て少し厳し過ぎるという印象をお持ちかと思いますけれども、我が国の場合この外国人登録制度が発足しました最初は、実は写真だけで人物を特定するという方式をとっておったわけでございます。ところが、この結果大変な不正登録が行われ、なおかつその不正に二重三重に登録された登録証明書が第三者に、不法入国した密入国した第三者に譲り渡されて本人にすりかわっていくといいますか、こういうような事件が多発したために、昭和二十七年の現行法を制定いたします際に指紋制度が導入されて、それで指紋によって人物をまず特定する。それから当時は三年でございますけれども、三年ごとの切りかえに当たって改めて指紋を押してもらって、最初に押した人とその三年後に来た人、現在は五年ごとでございますけれども、五年目にあらわれた人が同じ人物であるかどうかということを指紋によって確認して、この制度を採用したためだけではございませんけれども、現在の外国人登録が大変に整然としたものになっているという事情がございます。そういった点をぜひ御理解をいただきたいと思うわけです。
  85. 久保田真苗

    久保田真苗君 法務御当局の立場からしますと、あるいは警察の立場からしますと、指紋押捺は多々ますます弁ずで、毎年でもとって、すべての人からとってやっていく、地方自治体にどれだけの負担がかかろうとそれをやっていく、犯罪防止にはそれが一番だ、あるいは不正登録の防止にはそれが一番だ、そういうお立場は私もあると思いますよ。だけれども、それが日本国の国の利益から見て、また地方自治体のいろいろにとり行われなければならない事務の優先順位から見て、すべてをこの指紋押捺によって犯罪防止なり何なりが一〇〇%完璧に行われるためには、いかなる手数も人の感情もお金もかかっても構わないということにはならないと思うんですね。だから、私は何で五年に一遍の指紋押捺がそんなに必要なのか。よその国でやっていないことがなぜ日本にとって必要なのか、それをお教えいただきたいと思います。なぜ、よその国との関係において日本だけがこんなものが必要なのか、それを御説明いただければありがたいと思います。
  86. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 先生に誤解があるのではないかと思われる点が一点ございます。外国人登録、これは氏名とか生年月日、住所その他登録されているわけでございますけれども、この登録記録と申しますのは、例えば学校に入る場合とか、社会福祉を受ける場合、年金をもらう場合、それから税務当局が税金を課す場合、場合によっては捜査機関が身元確認のためにこの登録記録を使うというのは、これはもう当然のことと思うわけです。ただ、私どもが外国人から押してもらっております指紋と申しますのは、決してそういう犯罪捜査のために使おうというためにとっているものではございませんで、先ほど申し上げましたように、外国人登録上の人物の同一人性を確認する、人物を確認するというためにとっておる指紋でございまして、私どもこの指紋を、例えばどこかで殺人事件があったとか、強盗事件があった、そこに残されていた指紋と私どもが保管しております指紋を照合さしてくれと仮に警察が言ってきましても、私どもは外国人登録の指紋はそういう犯罪捜査のために利用するものではないという原則がございますので、これは私どもとしては警察へは協力しないという基本方針で臨んでおりまして、その点、犯罪捜査、治安上指紋を必要とするということではないわけです。私どもが指紋を外国人から押してもらっておりますのは、先ほど申しましたように人物の同一人性を確認するため、これは写真だけでは大変不確実な点がございますし、古い話をさっきいたしましたけれども、昭和二十年代というのは、指紋制度が採用されていないころ、外国人登録のうちの一〇%ぐらいが不正登録であったのではないかと推定されるようなデータも実はございます。  そういったことで、私どもが指紋を押してもらっておりますのは、登録制度を正確に維持するためということだけでございまして、最初とっておけばいいじゃないかということも御議論としてはあるわけですけれども、私どもとしては、やはり途中で人物が入れかわってしまうという危険もございますので、切りかえの都度やはり指紋を押していただいて、人物が入れかわってないかどうかということを確認している、こういう次第でございます。
  87. 久保田真苗

    久保田真苗君 今の御答弁ですと、私はどうもよその国が初回一回だけなのに、日本が五年置きにずっと継続してやらなきゃならないという御答弁にはなってないと思います。しかし、私は次のことを質問しなきゃなりませんから、これはまたこの次継続してお伺いします。  次に、相互主義の問題なんですね。時にこの問題が、外務委員会がこの問題にかかわらなければならないのは、やはり日韓の在日韓国人の法的地位協定の問題と、もう一つはこの相互主義の問題じゃないかと思うんです。それで、日韓協定の問題につきましては、前回抜山委員が詳しくお聞きになっていらっしゃいまして、その冒頭に相互主義のことをちょっとおっしゃっているんですが、私はこの相互主義というのは、一つまず事柄を始める第一歩の考え方としては考えられることじゃないかと思うんですね。つまり、世界の国では相互主義をとっている国がたくさんある。そしてしかも、特にヨーロッパ系の国では指紋を押さないことを原則として、例外的な場合だけ指紋を求めることがある。しかし、原則は日本人が行って何年か住んだとしても指紋押捺を求められないんですね。そういう国に対してこの指紋押捺をやめるというポイントが一つあると思うんですね。その点どう法務省はお考えになりますか。
  88. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 私どもこの外国人登録の指紋に関してのみ申し上げますと、相互主義はなじまないのではないかというふうに思っております。その理由は、先ほど来申し上げておりますように、人物を確認する、こういうことでございますので、仮に相互主義を採用いたしました場合、ある国で日本人から指紋をとっていないからその国の人は日本で指紋をとらなくてもいいと、仮にこういうような相互主義の考えを導入いたしまし た際に、その人物の確認というのはやはり不確実になるわけでございます。そういった意味から申し上げて、指紋制度に関して申し上げれば、相互主義を持ち込むということはいささか無理があるのではないかという感じがいたしております。
  89. 久保田真苗

    久保田真苗君 しかし、この外務委員会の立場からしますと、仮に韓国の方なりが指紋を拒否される。それだけでなく、アメリカ人もそれに同調して拒否する方がある。だけれども、仮にヨーロッパの方が日本人に対して指紋登録を要求していない。そういう国の方がこれに同調された場合ですね、それでもこれを告発し、これに対して不利益な取り扱いをしていくということになりますとね、これはただ法務省が同一人性を求めるのに一〇〇%確実な方法は指紋しかないんだというようなそれだけの論理で片づけられる問題じゃないと思うんですね。ですから、私はやっぱり先ほど言った各国の取り扱い、やっている場合でも初回だけが一般的だと。それについてまだ世界じゅうの調査はしていらっしゃらないようですけれども、世界の国は百六十七かそのくらいしかないんですから、全部お調べになることだって何でもないことだと思うんです。  それで、ひとつ私は外務省と法務省が協力をしていただいて、まず初回やっていて大変困ることがあるのかどうか。それから、相手が日本人の押捺を求めていないのに、いないところに対してこれをまずやめていくということを考えられないのか。それから、もちろんさっきのポイントで日韓協定によりまして韓国の方たちには特別の法的地位があるわけですから、それを外交交渉で運んでいくことはできないのか。そういう点について私は御協力になって早いところこれを調べていただきたい、こう思うんですけれども、外務省、法務省のお考えをこの際伺っておきたいと思います。
  90. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) ただいま先生からいろいろと法務省に対しまして御質問がございました。御指摘もございました。そういう問題点が幾つかそれぞれの立場に立ちますとあるということは私どもも十分承知しております。今、先生の御指摘のございましたような点につきまして法務省ともよく相談いたしまして、諸外国の例につきましてさらに多くの国について調査する等につきましてはまた法務省ともよく相談して検討したいと思います。
  91. 久保田真苗

    久保田真苗君 法務省、その点はどうですか。
  92. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 先ほどちょっと申し上げましたように、国の制度、それからその国の置かれた国際状況とか環境とか国内事情、それぞれに大変違いがございます。したがって、世界各国全部調べるということが果たして適当であるかどうか別といたしまして、私どもといたしましてもよその国がこうだから日本もこうするという立場ではなくて、外国の事例なども参考としながら今後の施策を考えていくという意味では調査することはやぶさかではございませんし、より多くのデータを集めてみたいというふうに思っております。
  93. 久保田真苗

    久保田真苗君 それで、先ほどからのところをちょっとまとめてみますと、告発について言えば機関委任事務ではない、そしてそれは刑訴法に基づいているものだ、その刑訴法について言えば訓示規定だという判例もあるということでございます。そして、この今回お出しになった五月十四日付の都道府県知事あての法務省入国管理局長の通達なんですけれども、これを拝見しますと地方自治体の事務は大変ですね。三カ月の説得、そして三カ月の間に三回も出頭を命じて、そしてそれに対する今度出てくる日にちを指定して、もしそれでも出てこなかった場合には入国管理局長にその都度直ちに報告をして、そして最後に同一人と確認するために調査をする、そういうことを全部蒸し返してするようにとおっしゃっているんですね。私はこの内容についての事柄はこの次にいたしますけれども、一体この通達に基づいて行う事務に関連して地方公共団体はどのくらいの人数と時間とお金が必要なんですか。それをお答えいただきたいと思います。
  94. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 現在でも指紋押捺拒否者というのは二百三十名余り出ておるわけでございますが、この人たちに対しまして市町村ではやはり外国人に指紋を押してもらうということが法律の目的になっておりますので、私どもこの通達が発出する以前におきましても、これは全部調べたわけではなくてサンプリング調査でございますけれども、いたしました結果、半年ぐらいの間に二十回ぐらい本人に対して説得をしたり、場合によっては役場の責任者といいますか、課長さんあたりが本人の自宅まで行って指紋を押すようにというような説得が現実に行われているわけでございます。ただ、この通達を出す前は不押捺者がおれば直ちに告発をしなさい、こういう指導になっていたものをある意味では今度若干和らげたことになるわけでございますけれども、すぐ告発をしないで三カ月間ぐらいはまず説得を続けなさい、それで三カ月の説得に応じない場合は告発をしなさい、こういうような指導に切りかえたのも、一つは先ほど申し上げたように現実の市町村の窓口において本人に対する説得、大変に一生懸命な説得が行われているということを踏まえて、多少こういうふうにやり方を変えてみたというのが一つあるわけです。  したがいまして、お尋ねのどのくらいの手間暇といいますか、計数的にはちょっと出しにくいと思うんでございますけれども、ただ申し上げられますことは、現在二百三十名余りの拒否者が出ておりますけれども、例えば四月だけの一カ月をとってみましても、推計でございますけれども約一万人ぐらいいるだろうと私ども見ておるわけでございます、指紋を押すべき人がですね。その中で拒否した人は二、三十名であって、残りの九千九百七、八十名の外国人は法令に従って指紋を押していただいているわけでございまして、その間には特段トラブルはないわけでございます。御懸念のトラブルと申しますのは、指紋押捺を拒否した人が出た場合に市町村役場では大変御苦労もおかけしているということなのですが、お尋ねの計数的にどのくらいと言われるとちょっとはかる物差しがございませんので。
  95. 久保田真苗

    久保田真苗君 今のことは特にあらかじめ質問に出していませんでしたから、この次はひとつ計数的に、この夏三十七万人ということがありますので、これにかかわってくる地方公共団体の所要の人手とかそれから最後までこの通達を半年の間やり抜いていくことにかかわる一体どれだけの人間と時間数とそれからお金がかかるのか、ひとつぜひお聞かせください。よろしくお願いします。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 イスラエルPFLPGCとの捕虜の交換について。  外務大臣、この捕虜交換というのは前例があるにもせよ、一つはやはり中東和平の動きのあるいは一歩と、こんなような感触で受けとめていますでしょうか。
  97. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはイスラエルとしてはこれまで捕虜交換はよくこういう立場でやっていまして、やはり人口の少ないイスラエル国として特にイスラエルの士気を高めていかなきゃならぬということで、捕虜を大事にする、自分の国の捕虜になった人たちを引き取るためには自分たちが捕虜にした人たちを多く釈放するという形でこれまでやってきたことですから、これによって新しい局面が展開されるというふうには私は思いません。思いませんが、ペレス政権の今日の状況の中にあってイスラエルはいろいろと国内的に困難な状況にあるわけです。インフレが非常に高いとか国内的経済の困難あるいはまた国内的な統一の問題、そういうこともありまして今回国内的なひとつ引き締めといいますか、いろいろとそういう政治的な面は私はあると思いますけれども、中東和平にこれが大きく何か一つの前進とか新しい局面の展開だとか、そういうふうには私は考えていないわけです。
  98. 黒柳明

    ○黒柳明君 当の岡本公三の身柄引き渡し要求が大きく問題に日本としてはなるわけでありますが、そのためには受け入れ先がどこであるか、これが問題であります。先ほどもあらゆる情報収集してと、こういうことでありますが、当事国が 公表をする性質のものでもありませんし、潜行することも間違いありませんし、当然どこへ行ったかということを探知することは非常に難しいと思うのですが、この点いかがでしょう、外務省当局として。    〔委員長退席、理事宮澤弘君着席〕
  99. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) お尋ねのとおり、所在確認、また所在確認されても、それが一時的なものかかなり長期にわたるものであるかというような問題もございますし、それからそういう問題があったにしても、今御指摘のようにそこの政府がまたそれを認めるかどうかというような問題もございます。ただ、我々としてはそういった問題を覚悟しながらも、最大限の努力を警察当局と協力しながらいたしまして、その確認がされ請求ができるということでありますれば、これをやっていきたいというふうに考えております。
  100. 黒柳明

    ○黒柳明君 アラブ諸国というのは相互的に非常に複雑でありますし、日本も各国との関係というのは非常に考慮、配慮しながら行動しなければならないし、これからもそういう関係がある国だと思うんですけれども、非常に難しいながらも、ある程度の裏づけがあってそして間違いなくいると、こういう判断をした場合には、そういうアラブ諸国との対日関係というものを配慮せずして岡本公三の身柄引き渡し引き渡しとして強硬に要求をする、こういう姿勢は今おありでしょうか。
  101. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 我々はこの岡本の問題に関する限りはこれをきちんと決着をつけたいというふうに考えておるわけでございまして、警察からの逮捕状発給がございまして、これに基づいて国際的な手配も行うという手続がとられていると承知しておりますけれども、そういった状況になりました場合には、あとは国際的な努力ということで、外務省として全力を挙げてこの身柄引き渡しを受けるということに持っていきたいというふうに考えております。
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、私も在日のアラブ関係あるいは当然イスラエルも含めて公館との接触をしておりますし、現地にも数回行ったこともありますし、レバノンも行ったこともありますし、PFLPの当事者とも接触したことがありますが、非常に難しい中ですが、今部長が、ともかく岡本公三について断固としてと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、当然また日本としての国際関係、対アラブ、イスラエル関係というのもこれは無視もできないわけであります。まあどういう事情にこれから発展するかわかりませんけれども、警察当局も身柄引き渡しについて当然外務省にそういう依頼もしたかと思いますけれども、大臣としても、今部長がおっしゃったように、アラブ関係あるいは対日配慮というものを超えて、この岡本公三の身柄引き渡し問題については断固とした要求、態度をとっていく、これについては間違いないと思いますが、ひとつ確認をさしていただきたいと思います。
  103. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今事務当局が答弁をしましたように、これはあれだけの大事件を起こした犯人ですし、イスラエルに拘置されている間はイスラエルの国内法によって処理されておるわけですから、これに対してはとやかく言う筋じゃないわけですけれども、第三国に引き渡されるということになればこれは日本としてもそのまま放置はできない、    〔理事宮澤弘君退席、委員長着席〕 逮捕令状も出るわけでありますから、それに基づいた外交的な措置はやはりとっていかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 国際赤十字岡本公三本人に意思の確認イスラエル出国という意思確認行き先も当然確認していると思いますが、どうなんでしょうか、こういう場合においてはやっぱり国際赤十字にその行き先について確認するというわけにはいかないんでしょうか。
  105. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) この意思の確認捕虜交換の実施の手続の一環として当然に踏まれるべき手続であると了解しておりますけれども、その確認の具体的な内容と申しますか、そういったものは赤十字という公正な機関が双方、つまりイスラエルPFLPGCからの委託を受けたといいますか、仲介者としての立場からこれを公正に行ったというふうに我々は理解しておりますが、我々が赤十字から聞いたところでは、出国の意思についてこれはきちんと確認を得たということを承知いたしております。
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、行き先についてやっぱり確認できない。
  107. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) そこの点につきましては、はっきりとは申しておりませんでしたけれども、まあやっていないのではないかと思います。
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然、先ほど大臣おっしゃったように、リビアトリポリへ向かったらしいと、リビア機がそのために来たんですから。その可能性があるんじゃないでしょうか。トリポリにある程度はいる、あるいはそこに永住する可能性もあるのか、そういう感触についていかがでしょうか。
  109. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 現在我々が知り得ている情報を総合いたしますと、岡本が乗っている飛行機がリビアに向かっている、トリポリへ向けてこれは立った飛行機であるというふうに了解いたしておりますので、この飛行機が現実にトリポリに着けば、当然岡本はとりあえずそこに所在するということになると思われます。ただ、問題はその後でございまして、これがどのような形においてどのぐらいの期間そこに滞在するかということについては、現在全く判断いたす情報を持ち合わしておりません。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 とりあえずという、とりあえずというのがどれだけのトランジェントかわかりませんけれども、その間においてのやっぱり引き渡しということはだめなんですか。
  111. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) その点につきましてはもう少しその点を確認する必要があるかと思います。まあ相当長期間にわたってこれが滞在、所在するというようなことがありました場合にはもちろん引き渡し請求ということも検討しなければならないかと思いますけれども、現在のところは必ずしもそういうことはなく、我々のこれは想定でございますけれども、恐らくリビアを出てほかの地域に行く公算の方がむしろ大ではないかというふうに我々としては考えておるわけでございます。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 国際法上、身柄引き渡し、これは残念ながらアメリカだけですか、警察のあれでは。しかし、イスラエルでは犯罪人ですが、アラブでは英雄というようなことも言われておりますし、そういう関係で、リビアとの関係別に日本は悪いわけでもありませんし、リビアも対日関係というものも当然配慮もしているでしょうし、一応どれだけの期間、永住するか、あるいは今の感触でいくとそこからまたどこかへ出る可能性もあると、こういうこともおっしゃって、さらに情報収集していかなきゃならない。ただし、最終的にそこに落ち着かなければそこの国に対して身柄引き渡し要求できないということでもないと、こういうふうに私は判断するんですが、その点いかがでしょうか。
  113. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 御指摘のとおり、身柄引き渡しというのは、物理的にその人間が存在している地域、そこについて管轄権をもっている国がその気になればできるというのは、理論的にはそのとおりでございます。ただ実際問題といたしましては、今御指摘になりましたようないろいろな政治的あるいは法律的な問題点がございますので、たまたま一時的にそこにいたというような段階で身柄引き渡しの要求をするということは技術的にいろいろ困難があるだろうということは予想されると思います。
  114. 黒柳明

    ○黒柳明君 オーストリアのクライスキーさんがPFLPイスラエルの間を取り持って交渉していたらしいと。らしいどころじゃなくて、やっぱりそうみたいですね、いろんな情報を見ますと。この交渉している段階においてはこういう捕虜交換が行われるということについては全く日本外務省としては情報は探知、キャッチしていなかったんですか、わからなかったですか。
  115. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 捕虜交換交渉が行われているということは、若干の情報はございましたけれども、その中に岡本が含まれているということについては全く情報は持ち合わしておりませんでした。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 あれですか、年一回現地の日本大使館館員岡本公三に接触していた。二、三日前ですか、接触したのは。そのときは全くそういう感触はなかった。二、三日前ですからまだその報告もないんですか、そのときの。あるいは何らかしらの感触はあったんですか。その点いかがでしょうか。
  117. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) その時点におきまして、先ほども御説明したと思いますが、この面会は例の邦人保護の見地からの状況観察ということ、それから今回は特に家族の方からの委託されたものを手渡すという目的で面会したわけでございまして、その際会ったときの状況報告は受けておりますけれども、そのときの館員の感触としては、肉体的に、かなり精神状態について不安定度が見られたということの報告はございましたけれども、本件引き渡しといいますか、こういった関連での話というのは全く出ておりませんし、またそのような状況も把握されなかったということでございます。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 クライスキーさんが情報によりますと何か岡本公三のリストがあったので怒ったとか、こんなようなあれが出ていましたですね。先ほどの、イスラエル側からこの情報は流れてきた、捕虜交換岡本公三が入っていると。それで外務省としても岡本公三をイスラエルの国内にひとつとどめておいてもらいたい、こういうリクエストもしたと、こんなことも報道されておりますけれども、こちらがその岡本公三についてイスラエル国内にとどめておいてもらいたいと言ったときのイスラエルの反応あるいは具体的な拒否したときの言いわけというのはどんなものだったんでしょうか。
  119. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 先方とこの交渉といいますか、話し合いをいたしました我が大使館の、これは大使がいたしましたが、報告によりますと、我が方からの申し入れに対しまして、先方が言った理由といたしましては、一つイスラエルとしては、やはりこの捕虜交換が達成されるということを最大の目標にしている。そしてかつ今回の交換交渉自体は非常に長い間かかった非常に困難なものであって、ようやくパッケージとして成立した協定であって、しかもその中で岡本というのは非常に重要なパッケージの中の存在になっておるので、日本側の御要請はわかるけれども、これを外すと全体が崩れてしまうということになる。そうしますと、せっかくこれまで営々とやってきた交渉全体がまた無に帰するという事態になるということで、イスラエル側としてはこの際どうしてもこのパッケージ合意というものを成立させたいということを了解願いたい、こういう先方の反応でございました。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 交渉は現地の大使館がやってその情報を受けたんだと、こう思うんですけれども、今の話ですと何か矛盾が感じられるんですが、営々とやってきた交渉、その中で岡本というのはもう欠かすことができないものであると、こういう岡本公三を含んで営々とクライスキーさんを中心にしてPFLPイスラエル捕虜交換の話し合いをやってきた。そのある意味においては一つの柱が岡本公三の釈放である、こういうふうなイスラエル側の話があったそういう捕虜交換についての情報を聞きながら岡本公三が含まれているということは探知してなかったと。  こうなると、やっぱりこれは私も現地の外務省の公館でないわけでありまして、そういうときの難しさというのを私知りません、現実には。しかしながら、今部長がおっしゃった話だけ聞きますと、イスラエル我が国との関係はもう言うに及ばず、アメリカそして日本はもう非常に頼られている国柄でありますし、アラブ諸国だって我が国はもう安倍外交の中心がイラン、イラク何とかということでもうさんざん人的交流を行っているわけでありますから、イラン、イラクの戦争の当事国ではないにしても、すぐ隣の紛争国でありますし、PLOの代表のアラファトさんだって当時知っていますし、接触もあるわけですから、そういう中で部長さんがおっしゃったのは話し言葉ですから、今おっしゃったことが果たしてそのままであるかどうか疑問にしても、岡本公三というものの釈放が非常にやっぱり目玉であると。こういう捕虜交換が長い間行われてきて、にもかかわらずその情報イスラエルからも流れてこない。オーストリア、まあこれは仲介者ですから流す立場にないと思うんですけれども、情報をキャッチできない。しかも、十三年も岡本公三は抑留されているわけですから、そこらあたりを踏まえても、もうあるいは岡本公三あたり動きがあるのかなと、こういう感触の中においてそういう捕虜交換が、情報をキャッチする場合に岡本公三もというような、こういう感触もなかったですか。
  121. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 岡本公三に係る直接の情報というのは実は何ら把握しておりませんでございまして、先ほど申しました捕虜交換の動きがこれは前回にもあったわけでございますし、今回にもあったということはありましたが、恐らくこの岡本という問題を考えますときにこれをめぐって交渉しておりました両方の当事者、イスラエルといたしましても、またPFLPGCの側にいたしましても、それぞれ恐らくこの岡本をめぐる日本態度、立場というようなものはこれはもう当然考えて、この情報が漏れるということによって日本政府の起こし得る反応というものは彼らなりに、またそれなりに予測したことだろうかと思われます。そうなりますと、彼らとしても恐らくこういう問題は絶対の極秘と申しますか、恐らく最大限の秘匿のうちに事を進めたというふうにも考えられる次第であるわけです。  一般的にこの情報収集活動その他については外務省としてもいろいろと努力していることでございますけれども、本件に関しましてはやはりそういった背景からいって非常に難しかった、実際上何ら情報は得られなかったということは率直に申し上げた次第でございますけれども、こういった事情にあったということを御理解願いたいと思います。
  122. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、遺憾の意をイスラエルに対して示すと。その中に結局この岡本公三がどうして引き渡さなきゃならなくなったのか。もうこれはイスラエル当局としてもやむを得ない事情があったと、これは当然だと思うんですけれども、一回ここらあたりの事情もやっぱり聞けるだけ聞いて、私たちにひとつ教えていただけるものは教えていただきたい。私たちというよりも、日本国民も非常に友好国でありながらやぶから棒にそういう発表をぱっとして、それで日本の国民感情、ある意味では関係者には逆なでするような行為を示しているわけでありまして、まあやむを得ない事情があったということはこれはもう当然ですけれども、その結果を踏まえて逆算しましてどういうことだったのか、この事情についても当然お聞きいただければと、こう思うんですがいかがでしょうか。
  123. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それはごもっともなことだと思います。日本政府としては遺憾の意を表明したわけでありますが、引き続いてこの岡本公三の釈放に至る経緯等についてできるだけひとつ今後イスラエル政府からもその他からも情報収集に努めて、またそれは明らかにしなければならぬと、こういうふうに思います。
  124. 黒柳明

    ○黒柳明君 きょう警察は来ていますか。——何かこれも報道で恐縮なんですけれども、重信が岡本を迎えるのじゃなかろうかとかなんとか報道されておりますが、私たちもレバノンに行ってそういう観点からPLOにいろいろ話もした経験があるんですけれども、日本赤軍はこの方面にはどのぐらい今、数的にはいるわけですか、つかんでおりますですか。
  125. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 私どもとしましては、日本赤軍といいますのは重信房子が責任者でございますが、大体二十数名というふうに見ておりま す。一部には四十名だとか三十名だとかいうような情報もございますが、私どもとしては二十数名ではないかと、こういうふうにつかんでおります。
  126. 黒柳明

    ○黒柳明君 その二十数名というのはどこら辺という場所も大体わかっているんですか、いわゆるどこら辺に何名というように。
  127. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 私どものつかんでいるところではレバノンのべカ高原のあたりではないかと、こういうふうな見方をしております。
  128. 黒柳明

    ○黒柳明君 私たちもべカ高原を通ってベイルートへ入ったんですけれども、大体その二十数名というのは重信を中心にしてべカ高原あたりに大体集中しているということでいいわけですか。
  129. 鏡山昭典

    説明員(鏡山昭典君) 今御指摘のとおりだというふうに私どもは見ております。
  130. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、これは先ほどの質問ともあれしますが、もう過激派が野に放されるという、日本人でございますから、あくまでもこれはもう国際的に何かあるとまた日本という、赤軍だけじゃなくて日本日本赤軍と。日本のやっぱり恥辱になるわけでありまして、これはまあ今、答弁の短い時間でありますから意を尽くせない面もありますが、きょうのきょうの話でありますんで、まだこれは連続していろんな報道があるいは国会での質疑が行われると思いますが、ぜひともこれは、ただ単にどこへ行ったか情報集めてなんていうようなことじゃありませんで、ひとつ積極的に身柄引き渡しあるいは情報収集、何か私は今回の、先ほど申しましたように捕虜交換についての、難しいといいながら岡本に接触している。でありながら、まあそういう目的じゃないんだと。家族から頼まれたものを渡すんだとはいえやっぱり二日前ではもう意思確認というものは行われている、あるいは打診があっている時点かと、こんなふうにも、まあ予測ですからわかりませんね。ですから、あくまでもこれは外交当局の責任の立場である外務省がひとつ徹底的積極姿勢で対処をしなきゃならないんじゃなかろうか、こう思いますんで、要望を含めまして、また情報あり次第この問題についてはお伺いするということになるかと思いますから、ひとつ外務大臣の善処というよりも強い姿勢を望みたいと、こう思います。結構です。
  131. 和田教美

    ○和田教美君 私はアジアにおける緊張緩和、軍縮軍備管理という問題について若干御質問したいと思います。  まず北東アジアの緊張緩和という問題を考える場合に当面非常に注目されますのは、南北対話、朝鮮半島における南北対話の再開というものがどう進展していくかという問題ではないかと思います。  半年ぶりに南北の経済会談が開かれましたけれども、これは、十七日の会談は南北の主張がすれ違いというふうな形で余り実質的な実のある合意はできませんでした。しかし、会談は継続するということで、六月の二十日に第三回会談をやるということに決まったわけでございます。それから、二十八日からはソウルで十二年ぶりに南北の赤十字本会談が開かれますし、それからまた、北側提案の南北国会会談というのも韓国側からの回答待ちということになっておりますけれども、どうも情報によると、韓国側もこれについて前向きの姿勢を示しておるということのようでございまして、こういう一連の対話再開というのは、やはり緊張緩和にとっては非常に重要なことだと思うんですけれども、外務大臣はこういう動きをどういうふうに展望し、また評価されておるか、まずその辺のところをお聞きしたいと思います。
  132. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先般、南北経済会談が約半年ぶりに再開されましたことについては、政府としては歓迎の意を表したいと思います。まだ具体的な経済交流につきましては合意に至っていないわけでありますが、今お話しのように、第三回経済会談が来月二十日に開催されることになっておりますので、近くこれは五月二十八日、ソウルで開かれる予定の赤十字会談、北朝鮮側より提案のあった国会会談を含め今後の南北対話の帰趨に注目をいたしておる次第です。  いずれにしましても、こうした南北間の対話が確実に進展をし、双方の信頼を醸成し、朝鮮半島の緊張緩和に寄与することを期待しております。南北対話の環境づくりにつきましては、政府としましては引き続き韓国の対話努力を支援しながら、米国や中国等と緊密に協議をし、できる限り努力していく方針であります。先般のボン・サミットにおける政治宣言で朝鮮半島に言及したのも、こうした努力の一環でございます。
  133. 和田教美

    ○和田教美君 北朝鮮の今度の対話に臨む姿勢でございますけれども、公式には北朝鮮は三者会談を今まで主張してきたわけで、南北対話というものには余り積極的でなかった、むしろ消極的であったというふうに思われるわけなんですが、それが最近はかなり姿勢が変わってきたということのほかに、最近の一連の発言などを見ておりますと、中国にしましてもソ連にしましても、建前は別として、実質的にはこの南北直接対話というものを積極的に支持するような姿勢に変わってきているという動きも見られるわけでございますが、その辺のところを一体どういうふうに判断をしたらいいのか。  これが今までの例えば米軍の撤退ということを先決条件とするというふうな北側の姿勢ですね、そういうものとも微妙な変化があるのかどうか。その辺の判断はどう見ておられますか。
  134. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中国も北朝鮮も、南北対話というのを初めから否定しておったわけじゃないと思います。ただ、北朝鮮は三者会談をやるということが朝鮮半島の問題を解決するには一番適当である、アメリカを加えなければ根本的な問題の解決に至らないということで強く三者会談を主張してきておったわけで、南北対話そのものを否定しておったのじゃないと思いますが、最近の状況から見ましてこの対話がいろいろな形で進められておるということは、これは大変結構なことであろうし、また北朝鮮もそれに力を注いでおるという節も見られないわけではございませんが、だからといって三者会談の一つの目標を捨てたわけでは私はないと、こういうふうに思っております。
  135. 和田教美

    ○和田教美君 先ほど外務大臣は、日本は南北直接対話というのを強く支持しているわけですけれども、そのための環境づくりということを前々から強調されておるわけですが、具体的にはどういうことをやろうということなのか、それをもう少し具体的にひとつ聞かせていただきたい。
  136. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはまたなかなか具体的にと申しましても、いわば一つの雰囲気づくりが大事なものですから、例えばボン・サミットにおける朝鮮半島問題なんかを日本が強く主張してこれに取り入れるといったことも、そうした南北統一あるいは南北の緊張緩和に一つの焦点を置いた日本の努力というものをはっきり出したいというところに力点があったわけでありますし、あるいはまた中国と韓国との間の対話について日本が側面的にいろいろと協力しておるということ等も、その日本の努力の一つのあらわれであると御理解をいただきたいと思います。  その他、日本としては事あるごとに、あるいはアメリカ、あるいは中国ともいろいろと連絡をとりながらそうした南北対話あるいはまた南北の緊張緩和が促進される、そういう空気を醸成するための日本なりの努力というものを続けておるわけであります。
  137. 和田教美

    ○和田教美君 この間日本に参りましたシグール・アメリカ大統領特別補佐官が、この南北直接交渉に実質的な進展が見られない限りは、韓国、北朝鮮にアメリカなどを加えた拡大協議、つまり三者会談的なものに応ずることは全く考えていないというふうなことを言っておられます。  しかし、いろいろな情報によると、中国が北京で米朝会談をやりたいというふうな意向があるとか、そういう橋渡しをやろうというふうな動きも見られるわけで、これはよく言われることですけれども、日本にはキッシンジャー症候群、中国症候群というのがあるわけで、この前の米中関係正 常化の際にキッシンジャーが秘密外交をやって、日本の頭越しにやっちゃった。そういうことが朝鮮問題で再びワシントンとピョンヤンの間で同じことが起こっちゃ大変だというふうなものが政界にもあるわけなんですけれども、どうですかね、まさか日本の関知しないところで頭越しに米中朝の関係が非常に前進するというふうな可能性というのはありませんか。
  138. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今の日米関係ですね、これは中曽根総理とレーガンさんとの関係、あるいはまた私とシュルツ国務長官との関係、さらにまたそうした関係を踏まえての朝鮮半島問題、情勢についての話し合い、そういうところから判断いたしましても、そうしたアメリカが日本の頭越しに北との間で交渉をするとか、何らかの動きを示すとか、そういうことはこれはもうあり得ないことだと。アメリカも日本と同じようにやはりあくまでも南北対話というものを主眼に置いておりますし、それは日本もアメリカもお互いに両国で十分話し合っておるわけですから、そういうことはあり得ないというふうに私は確信しておりますし、そういうことはまたないと思います。
  139. 和田教美

    ○和田教美君 そういう御判断のようですけれども、まあしかし南北対話がどういうふうな進展を見せるかということはまだ非常にわからない点が多いわけですけれども、しかしとにかく対話が進んでおる、進みつつあるということは事実なので、日本も北朝鮮との関係、この関係の正常化ということについて、いきなり承認というところにいくのはなかなか難しい条件があるにしても、もう少し関係を深めていくというふうなことについて真剣に取り組んでいく時期に来ているんではないかという感じがするんです。その辺のところをどう考えるかということと、それから四月の下旬にインドネシアのバンドンでバンドン会議三十周年記念式典、政府代表として伊東正義さんが出席されましたけれども、元外務大臣の伊東正義さんが北朝鮮の要人、赤十字社会長だというふうに聞いておりますけれども、会談されましたね。これはそういう一種の水かき外交というふうな系列の受けとり方をしていいものですか。そうではなくて全く偶然的なものでしょうか。
  140. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) バンドン会議で伊東元外相が北朝鮮の孫成弼氏とたまたまあいさつの機会があり、その際若干の会話を交わされたというふうに承知をいたしております。これはまあ多数国が式典の場で同席されたということですから、そういうことも可能になったものであろうと、こういうふうに考えておりまして、これでもって我が国の朝鮮半島政策を変更する一つの兆しであるとか、そういうことではないわけであります。  なお、伊東元外相は、孫氏が北朝鮮の赤十字委員長であることもあり、我が国と北朝鮮の間にある人道問題、日本人妻とか墓参、残留孤児などにつき善処方を要望され、これに対して先方は関係者に伝える旨述べたものと、こういうふうに聞いております。  なお、日朝間については、これは外交面においてはもちろん関係を持っておりませんけれども、民間の経済、文化、人的交流、そういう面については戦後相当幅広く行ってきておりますし、そういう中で今日南北対話も始まっておるという状況ですから、こうした民間の交流というのは、それは私はそれなりに結構なことだ、こういうふうに思っております。
  141. 和田教美

    ○和田教美君 アジアの非共産圏諸国ですね、北朝鮮を承認していない国は、日本承認してないわけですけれども、ほかにどういうところがございますか。
  142. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 今、世界で韓国と北朝鮮をそれぞれ承認している国というところから御説明させていただきますと、私の頭にあります数字はことし一月十五日現在でございますけれども、韓国を承認している国はたしか百二十二あると思います。それから北朝鮮を承認している国が百二ありまして、その両方を承認している国が六十七あります。したがって今の百二とか百二十二というのはダブっておるわけでございますが、アジアの中で北朝鮮を承認していない国というのは、日本のほかにはフィリピンがそうでございます。それとビルマ、それからブルネイ、このあたりだと思います。
  143. 和田教美

    ○和田教美君 それから、これは条約局長ですか、ちょっと念のためにお聞きしたいんだけれども、日本が韓国とだけ外交関係を樹立して北を承認していない。これの条約上の根拠というのは、日韓基本条約の第三条でございますね。
  144. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 御指摘のとおりでございます。
  145. 和田教美

    ○和田教美君 その第三条に、「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」ということが書いてあるわけで、これは国連総会決議百九十五号ということを根拠にしておるわけなんですけれども、そこで念のために確認したいのは、この限定がついているわけで、この総会の決議などを見ますと、大韓民国が支配している地理的範囲は明らかに南に限っておって、北については政府態度は全く白紙であるというふうな態度で臨んでいるのではないかというふうに思うわけなんですね。  したがって、仮に将来北朝鮮の承認という問題が起こってきた場合に、この基本条約などと全然矛盾せずに新しく北と条約を結ぶことによって国交の正常化、承認ということができるのかどうか。その辺は韓国との間にも全く見解の食い違いがないのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  146. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 今、和田委員が御指摘になりましたように、基本関係条約第三条は、国連総会決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府である、こういう認識を日韓両国政府の認識としてここで確認しているわけでございます。  国連総会決議第百九十五号というのは、内容的には、要するに国連の朝鮮臨時委員会が観察し協議をすることができたところの、その朝鮮の部分に対して有効な支配及び管轄権を及ぼしている合法的な政府が樹立されたということを認めているわけでございまして、したがいましてここで言っております大韓民国政府は、そういう性格のものとして朝鮮における唯一の合法的な政府である、こういうことになるわけでございます。したがいまして、この第三条は、我が国と北朝鮮との関係につきましては何ら触れているものではございません。  それから我が国が北朝鮮を承認していないのは、この第三条の結果として承認ができないというような法的な関係ではなくて、要するに我が国の政策としてそういう立場をとっておるということでございますから、そのことと我が国が、そのことと申しますのは、この第三条の規定とそれから我が国が北朝鮮を承認するかしないかという問題は全く別の問題であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  147. 和田教美

    ○和田教美君 その点は韓国との間にも全く見解の対立というのはもうないわけですか。
  148. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 日韓国交正常化の過程におきまして、我が国と韓国との関係につきましては種々議論がございました。いろいろな議論の経過を踏まえまして、最終的にこの基本関係条約第三条、この規定について合意を見たわけでございます。したがいまして、この第三条に規定されているところが日韓両国の共通の合意である、こういうふうに御理解いただきたいわけでございます。第三条につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、「国際連合総会決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府である」ということを両国政府の了解として確認しているわけでございますので、我が国としては先ほど申し上げたような考え方が客観的にもこの条約の解釈として妥当なものであるというふうに考えているわけでございます。
  149. 和田教美

    ○和田教美君 それでは次に、アジアにおける地 域的な軍縮軍備管理の話し合いの場をつくるという問題。これは僕は去年の予算委員会あたりから、ヨーロッパではいろんな形での軍縮軍備管理の場というものができておるんだけれども、アジアに全くないというのはやっぱり少しおかしいじゃないかということを指摘してきておったわけでございますけれども、たまたまアメリカのジョージワシントン大学の中ソ研究所とそれから読売新聞が共催で最近開かれました五カ国代表によるところのシンポジウムの中で、青山学院大学の伊藤憲一教授がアジア版の中距離核戦力削減交渉を米ソに提案するというふうな提起をされております。これは要するに、できればアジア関係する米、ソ、中、韓、日、朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の、つまり六カ国による集団安全保障協力会議の開催が望ましいんだけれども、それはなかなか難しいから、第二の措置としてこういうアジア版、北東アジアにおけるINF削減交渉の開始を呼びかけるという提案でございますけれども、まあ伊藤教授自身がこの席で指摘されておりますように、アジア版のINF交渉ということを考える場合にもいろんなとにかく困難な条件があることはもちろんでございます。対象としてはSS20対トマホークという関係で、何かそういう軍備管理交渉の場をつくったらどうか、それにまた日本は努力すべきでないかというようなお考えだろうと思うんですが、私もそれは一つの非常に興味のある案だと思うんですけれども、政府はこういう問題についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  150. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これまで一貫して行われてきた極東におけるSS20の配備強化は、これはこの地域の平和と安全を一層脅かされるものであって、我が国としては今後とも極東を含むソ連全土からの同ミサイルの撤廃をソ連に強く要請していく考えですが、米国は従来のINF交渉及び新たなジュネーブ交渉において、全世界的な観点に立ちながら、中距離核の問題について我が国を含むアジアの安全保障が損なわれないような形で解決が図られるようあらゆる努力を行ってきている、こういうふうに承知しております。我が国は、かかる米国の態度を評価するとともに、今後ともソ連がINFの可能な限り低いグローバルな均衡の達成に向けて真剣な努力を行うよう強く訴えてまいりたいと思います。アジアにおけるINF交渉については、かかる考えは我が国を含む西側全体の安全保障を確保するという立場から、前述のごとく一貫して、中距離核の問題のグローバルな解決を主張している米国の立場を弱めるものであるのみならず、この地域における国際政治状況等にかんがみまして、現段階においてはこうした交渉を実効性あるものとするには大きな困難がある、こういうふうに考えております。  政府は、一般的にはこの地域における軍備管理、軍縮を進めることは長期的には適切な目標と考えるものでありますけれども、現段階ではまずアジアにおける緊張緩和の努力を行うことが必要と考えており、この地域におけるINF交渉に関して米ソに働きかけをしていくという考えは持っておりません。
  151. 和田教美

    ○和田教美君 長期的にはそういう地域的な軍縮の機構というものは必要だけれども、INFの問題についてやる気はないというお答えなんですが、政府は、前々からこの問題はグローバルということでジュネーブ交渉にゆだねるという態度をとってこられたわけですけれども、しかし今、包括的な軍縮交渉ジュネーブで行われておりますが、かなり先になると思うけれども、仮にINFについて何らかの合意ができるとした場合に、ヨーロッパ向けのINFはこれだけ、それからアジア向けのINFはこれだけというふうな形の決め方をするとは僕はちょっと考えられないですね。そのこと自体もグローバルに決めるということになるだろうと思うんですね。そうすると、SS20などは移動可能ですから、ヨーロッパで減らしたけれどもアジアへ持ってくるという危険性は依然としてあるわけなんですね。  そういう意味から見ても、アジアで何らかのそういう形のものを並行的にやっていくのは、別にアメリカの交渉を縛るということにはならないと思うんですが、重ねてお伺いしたいと思います。
  152. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生御指摘ございましたように、現在ジュネーブで行われております米ソ間の交渉というのは、INFにつきましてヨーロッパの交渉を行っておるんではなくて、グローバルな交渉を行っておる。ただ一方、ソ連はヨーロッパの部分だけを切り離した取り決めをしたいという意向があることは前回の交渉の過程ではっきりいたしておりますが、大臣からも先ほど申しました、そのような形になりますと、結局アジアの方が野放しになって困る。したがいまして、この問題はやはりあくまでも米ソの間でグローバルに取り決めてもらうべきものであり、グローバルな観点からできるだけ低いレベルで取り決められていくべきものであると考えております。
  153. 和田教美

    ○和田教美君 時間もございませんので、最後一つだけお聞きしたいんですけれども、今ストックホルムで欧州軍縮会議というのが開かれております。これは全欧安保参加三十五カ国による会議でございますが、ここの主題は、既に報道されておりますように、いわゆる軍事演習、軍事活動の事前通告だとか、軍事演習へのオブザーバーの交換とか、軍事情報の交換などのいわゆる信頼醸成措置、CBMの問題について九月からの新しい会期で何とか報告文書をまとめるというための準備の討議が進んでおるということですが、どうも話が進みそうで、何らかの合意ができそうだというふうな観測が多いようでございます。  信頼醸成措置の問題については、さっき私取り上げました南北の朝鮮半島の問題についても、韓国側あたりで韓国側の考える信頼醸成措置なんという考え方が出ておるようでございますけれども、そういうふうにあっちこっちで信頼醸成措置の問題が取り上げられておるのに、外務省は伝統的に信頼醸成措置は少なくとも日本を取り巻く北東アジアには不向きだと、日本とソ連との関係などを見ても信頼醸成措置は問題にならぬというふうな態度をとってこられたわけでございますけれども、今でもそういう考え方にお変わりはないんですか。
  154. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 先生が御指摘になりましたストックホルムでの軍縮会議、これはまさしく一九七五年八月に成立いたしました全欧安全保障協力会議最終議定書のフォローアップとして今日行われているわけでございます。  ところで、そのもともとのいわゆるCSCEと約されておりますその会議の性格を見ますと、これは西と東の双方の当時における要求を妥協させて成立したそういう性質のものだろうと思います。つまり東の側は、ソ連が欧州の国境線の固定化、つまり第二次世界大戦後の国境線の固定化、国境の不可侵、武力不行使、こういうことを定着させて、第二次世界大戦後欧州で形成されたソ連に有利な情勢を揺るぎないものにする、いわばそれが目的だ。他方西側の方は、人と情報の交流あるいは人権の尊重、そういうことをうたうことによって、実行することによって東西間の相互不信を解消しよう、緊張緩和に向かっていこう、こういうのが基本的な動機であったと思うわけでございます。したがいまして、ストックホルムで開催されている軍縮会議と申しますのも、その前提には今申し上げたような二本の柱があるわけでございまして、極東の場合にしからばそういう条件が現在存在しているかといいますと、それが存在していないと、したがって、そういう状況下のもとでは、現在西欧で行われているような信頼醸成措置ということをめぐっての会議をあるいは交渉を行う前提条件が、極東ではないということを我々従来から申し上げているわけでございます。換言すれば、中ソ間につきましても、また日ソ間につきましてもソ連との間で領土問題があって、それを棚上げにしたまま領土保全とか国境線の交渉とか、そういうことはまだ言えないわけでございます。
  155. 和田教美

    ○和田教美君 最後にもう一つお許し願いたいんですけれども、やっぱりアジアのもう一つの紛争 地点といえばカンボジア問題だろうと思うんですが、外務大臣は近く浅尾外務審議官をベトナムにできるだけ早く派遣をしたいということを旅先でおっしゃったことがございますけれども、大体いつごろ出かけられるのか、それから恐らくベトナムに送りたいと言ったんですけれども、カンボジア問題だろうと思うんですね、私の感じでは。そこでベトナムの真意をつかむということじゃないかと思うんですけれども、その問題とカンボジア問題についての日本政府態度ですね。つまり、まずベトナム軍の基本的撤退とそれからカンボジア人の民族自決による包括的な政治解決という、こういう立場ですね。見方によって非常に強い主張のようにも思うんですけれども、そういう考え方には変わりはないのかどうかお尋ねをしたいと思います。
  156. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) カンボジア問題につきまして、我が国としてはこれが解決のためにはベトナム軍の撤退とカンボジア人の民族自決を柱とする包括的な政治解決が不可欠と考えております。したがって、立場を同じくするASEAN諸国のかかわる解決へ向けての外交努力を支持するとともに、関係諸国との対話を維持して問題解決のために環境づくりに努めていきたいと思っております。  なお、浅尾外審の訪越についてでございますが、これは昨年十月ベトナムのタク外相が訪日をいたしました。その機会に日越間でいろいろな問題を話し合ったわけでございますが、この日越の対話というものを維持して、カンボジア問題解決のための糸口を探る努力を日本としても行ってきております。浅尾外審の訪越もこうした観点より検討している次第でありまして、訪越の具体的時期等の詳細についてはまだベトナムとの間で調整中でありまして、決まっておらないというのが現状であります。
  157. 和田教美

    ○和田教美君 もう一つ、カンボジア問題ですけれども、マレーシアのマハディール首相がこの間タイでプレム首相と会談をして、カンボジア問題打開のため対立しているカンボジアの二つの政権の対話の実現のための新しい仲介をやろうという構想について意見が一致したと、これをASEANの会議にかけるというふうな動きがあるという報道がございましたけれども、この問題については外務省はどういう情報をとっておって、どういうふうにお考えでございましょうか。
  158. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) ただいま御指摘のとおり、マレーシアのマハディール首相あるいはリタウディン外務大臣がこの問題につきまして何かいい方法はないかということの解決の糸口を探る一つの手段として今先生の御指摘のように、いわゆる対立するカンボジアの二つの政権の対話実現のために何か仲介の労がとれないだろうかという点が話し合われていることは事実でございます。  ただ、現在この件につきましては、具体的にはASEAN諸国と民主カンボジア連合政府において検討中であるということで、きょうあたりの報道ではこのアイデアについては民主カンボジア側は必ずしも積極的ではないとかいうような報道はございます。しかし、このような検討中という段階にございまして、私どもは詳細は明らかでございませんので、もう少し直接関係当事国であるただいま申し上げましたような国の検討状況を見守っていきたいと、こう考えております。
  159. 和田教美

    ○和田教美君 終わります。
  160. 抜山映子

    ○抜山映子君 本日は、在日外国人の地位の問題についてお伺いしたいと思います。  日本が今国際化という大きな流れに向かっていることは紛れもない事実でございますが、まず外務大臣在日外国人の地位あるいは処遇についてどのようにするのが穏当であるとお考えか、基本的姿勢についてお伺いしたいと思います。
  161. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それぞれの国は外国人を皆内に抱えております。それに対する法規をそれぞれの主権的な立場から持っておるわけであります。日本の場合も在日外国人八十数万人おるわけでございますが、やはりもちろん基本的には日本人と外国人との区別というものは厳として存在をするわけでございます。しかし同時に、やはりそうした外国人の諸君が今日本においての人権が保護されるとか、あるいはまた日本における住みやすいそういう状況日本として確保してあげるということが大事なことじゃないだろうか、そういう基本的な姿勢のもとに今外国人に対する法律というものも存在しているわけであると、こういうふうに認識しております。
  162. 抜山映子

    ○抜山映子君 そこでお伺いしたいんですが、厚生省の方にお伺いしたいと思います。  在日外国人の年金権が不十分であるという批判がなされておるわけですね。これは外国人も年金加入権ができたわけなんですけれども、その適用に当たって経過的救済措置が実質的に伴っていないから不十分である、こういう批判を受けておると思うわけです。例えば老齢年金でございますけれども、この年金の給付を受ける条件として加入時に三十五歳未満であるということが要件として言われておるわけです。この理由は、三十五歳以上ならば六十歳到達日までに二十五年以上の資格年数が不足してしまうから受給権がないんだと、こういう考え方のようなんですけれども、日本人の場合は過去何回か受給権のない人、今まで国民年金に加入していなかった人を過去の分を一括納付して救済できる措置をとったことが何回かございました。外国人についてもこういう過去の分を一括納付して救済するということをお考えになる気持ちはありませんか。
  163. 植西常郎

    説明員植西常郎君) お答えいたします。  五十六年の改正によりまして、難民条約の加入に伴いまして同条約の定める内国人待遇を実現するために外国人につきましても適用の範囲を拡大したわけでありますが、このときには外国人のみを対象といたしますところの特別措置は講じておりません。実はこれは日本人とのバランスの関係がございまして、日本人の方々につきましても所定の納付期間を満たした方に対して老齢年金を支給することになっておりますので、それとのバランスで外国人についてのみ特例の措置を設けることはできないという考え方に基づきましてこのときの改正を行ったわけでございます。ただ、今回国会で御審議いただきまして先般お認めいただきました国民年金法の改正法案におきましては、在日外国人につきましては永住許可を受けている一定の要件を満たしている者につきましては昭和三十六年の四月以降でかつ二十歳以降の期間でしかも五十六年の十二月、つまり先般外国人の適用の範囲を拡大したまでの期間の資格期間につきましてはこれを資格期間に算入いたしまして老齢基礎年金を支給するような特別の措置を設けました。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
  164. 抜山映子

    ○抜山映子君 障害福祉年金の方も実は要件がございまして、昭和五十七年一月一日現在において二十歳を超えている在日外国人であって国籍要件撤廃前に障害が固定した日がある人については受給権が発生しない、こういうようになっておるわけです。それで、私もよく在日の外国人から聞かれるんですけれども、ほんの一年足らずの期間の過不足でこの障害福祉年金を自分の子供が受けられない状態になって非常に将来とも子供のことが心配であると。しかし、日本人は昭和三十六年に二十歳を超えている日本人でそれ以前に障害が固定した人でもやはり受給権を認めているじゃないか、もう少し考えてもらえないだろうかというようなことをよく聞かれるんです。この点について厚生省の御見解いかがでしょうか。
  165. 植西常郎

    説明員植西常郎君) この点につきましても、先般の改正で外国人につきまして特別の措置はとらなかったわけでございます。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 この考え方につきましては、制度がなかったところに新しい制度を設ける場合と制度が一定年限経過した段階で新しい制度を設ける場合ではなかなか考え方に相違が出てくるわけでございまして、今おっしゃったような点を実現するにはなかなか難しい問題がございます。五十七年にこの改正をやったわけでございますけれども、日本人の障害者でありましても、例えば外国の居住期間中に陣 害になった方々、それから障害になった後に帰化された方々、それから障害になる前に保険料を納め忘れた方々、こういった方々につきましては拠出制の障害年金も福祉年金も支給されないということになっているわけでございまして、こういった日本人とのバランスの上から見ましてもどうしてもとり得なかったということでございます。
  166. 抜山映子

    ○抜山映子君 いろいろと財政上の問題もあり難しい点もあることはわかりますけれども、ひとつ今後とも課題としてお考えいただきたいと思います。  ところで、多国間の年金の通算協定を厚生省の方で検討なさっていらっしゃるというように承っておるんですけれども、その内容はどういうことでございましょうか。
  167. 横田吉男

    説明員(横田吉男君) 御説明申し上げます。  年金保険に関します二国間の通算協定問題につきましては現在事務レベルで協議を進めているところでございます。対象の国といたしましてはアメリカ、西ドイツを対象に行っております。アメリカにつきましては五十四年七月の日米厚生大臣の会談を受けまして両国の実務担当者間の文書による意見交換を行っている段階でございます。中身といたしましては二重適用問題の排除の方法でございますとか、業務処理体制をどうするかといったような問題について協議を進めているところでございます。  西ドイツにつきましては五十九年九月に日独の厚生大臣会談、これを受けまして今後協議を進めるに当たりましての基本的な考え方等につきまして担当者間のレベルで意見交換を行っている段階でございます。今回公的年金制度の改正が成立いたしましたので、厚生省といたしましても外務省等と御相談しつつできるだけ早い時期にこの問題についての検討を進めてまいりたいと考えております。
  168. 抜山映子

    ○抜山映子君 ヨーロッパではもうこれが既に実施されているんだということを聞いていますが、諸外国状況はどうなっておるんでしょうか。
  169. 横田吉男

    説明員(横田吉男君) 御説明申し上げます。  諸外国の年金通算協定の例につきましては、私の方で現在承知しておりますのはアメリカと西ドイツの場合でございますけれども、アメリカについて申し上げますと、現在イタリア、西ドイツ、スイス、カナダ等七カ国相手に協定が結ばれておりまして、その他日本を含めて六カ国と協議中であるというふうに把握しております。西ドイツにつきましては二国間の協定といたしまして、アメリカを初めとする国々と協定が結ばれているということでございます。
  170. 抜山映子

    ○抜山映子君 今伺ってみますと、そういう外国との比較におきましても日本は若干、というよりも相当おくれておるわけでございまして、国際化の進む中においてこのような年金の通算制度を確立するようにひとつ御努力いただきたい、このように要望しておきたいと思います。  次に、国民健康保険に加入を認められている外国人、このことについて伺いたいんですが、協定永住者である韓国人についてはこれは認められている。それから難民条約の適用対象のボートピープルについても認められている。しかし、その他の外国人については各市町村が条例に規定してやっているんだと、こういうことなんですけれども、全国の市町村で外国人に開放しているところあるいは特定の国籍だけにしか開放していないところ、それから全然認めていないところと、いろいろあると思うんですが、どのような比率になっておるでしょうか。
  171. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 国民健康保険の外国人適用の関係でございますが、すべての外国人に適用しております市町村の数は、昨年の一月一日現在でございますが、千百八十市町村でございまして三六・一%でございます。それから特定の国につきまして適用しております市町村の数でございますが、これが千六百七十五市町村でございまして五一・二%、残りの四百十七市町村、一二・七%でございますが、この市町村につきましては全く外国人に適用していない。この市町村につきましては恐らく外国人がほとんどいないという市町村だろうというふうに思っております。
  172. 抜山映子

    ○抜山映子君 そうしますと、六大都市はどういうことになっておりますか。
  173. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 六大都市でございますが、これは全外国人につきまして適用しております。
  174. 抜山映子

    ○抜山映子君 最近はかなり地方に行きましても外国人がよく見受けられるような時代になってきました。地方レベルにおきましても外国人とのジョイントベンチャーとかそういうようなものも土地が安いことから出現するに至っておりますので、地方都市であるからその必要がないという時代ではもうなくなってきておるわけです。したがいまして、先ほど伺いました一二・七%、全く条例もなくて国民健康保険に加入できないようになっておる市町村については、ひとつ条例をつくるように促進方をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  175. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 国民健康保険は御承知のとおり地域保険でございまして、市町村が基本的に保険者になるという形をとってございまして、そこにいらっしゃる外国人の居住の態様でございますとか、あるいは人数とか国籍、こういったものがさまざまでございますので、一律に外国人の取り扱いを強制適用するというふうな形はとらないで、市町村に判断をお願いするという形をとっているわけでございます。先生御指摘のように、最近やはり国際化が進んでまいりまして、どの市町村におきましても外国人がいらっしゃるケースが非常に多いということでございますので、地域の実情に即しまして適用の拡大というものにつきまして市町村を指導してまいりたいというふうに考えております。
  176. 抜山映子

    ○抜山映子君 先ほど特定の国籍の外国人にしか認めておらないというのが五一・二%あると言われてましたけれども、この特定の国籍はどこの国でしょうか。
  177. 近藤純五郎

    説明員近藤純五郎君) 具体的にまだ個別に計数を挙げておりませんけれども、私どもの感じでは一番多いのが朝鮮、それから中国、それからアメリカ、こういったところがほとんどでございます。
  178. 抜山映子

    ○抜山映子君 それから次いで、生活保護法の外国人への適用の問題について伺いたいのですけれども、外国人については生活保護法自体が適用されるんじゃなくて、「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」というこの厚生省の社会局長通知で準用されている、こういう理解でよろしいわけですね。
  179. 清水康之

    説明員(清水康之君) 御指摘のとおりでございます。
  180. 抜山映子

    ○抜山映子君 準用でございますから、権利としてではなくて恩恵としてであると。したがって、生活保護法六十四条以下に規定する不服申し立ては外国人はできない、こういう解釈でよろしいでしょうか。
  181. 清水康之

    説明員(清水康之君) お話しのとおり、生活保護法上の権利として認められているものではありませんけれども、戦後の生活保護制度創設以来、生活に困窮する外国人に対しましては、これを放置することはいろんな意味で適当でないということから、社会局長通知による行政措置として日本国民と同内容の保護を実施してきているわけでございます。現実に、五十八年度一カ月の平均で約三万八千五百人ほど、五十九年十二月で見ますと三万八千九百人ほどの方の保護を実施しておりまして、私どもは、確かに法律上立法措置によるものではありませんけれども、このような行政措置による取り扱いそのものは先般の難民条約の批准に当たっても特に障害事由にはならない、こういうことに判断されておりますので、現在の取り扱いで特に支障があることはないんではないか、こう考えております。
  182. 抜山映子

    ○抜山映子君 日本の社会は非常に住みにくい、外国人を差別する、こういうように言われないためには、たかが不服申し立ての問題だけですので、ひとつ法律の規定の上でも改正して平等に扱 うという方が好ましいのではないかと思いますが、その点は御検討をいただけますでしょうか。
  183. 清水康之

    説明員(清水康之君) 国籍要件を撤廃しまして、一般的に外国人に生活保護法上の権利として保護を認めるかどうかということについては、いろいろ慎重な検討を要する点がいろいろあるというふうに考えておりますが、せっかくの御趣旨でございますのでよく検討してみたいと思います。
  184. 抜山映子

    ○抜山映子君 それから、在日外国人の公務員の採用の問題についてお伺いいたしたいと思うんでございます。  国家公務員法や地方公務員法では外国人を排除はしておらないわけなんですけれども、特に明文で排除している規定としては外務公務員のみであると、こういうことだと思うんですけれども、実際には国家公務員の採用試験は人事院規則の方で、「日本の国籍を有しない者は、採用試験を受けることができない。」と、こういうことで一般的に外国人を排除しているわけですね。地方公務員の方になりますと、公権力の行使または国家意思の形成に参画しているかどうかと、そういうことを考慮に実際には入れているところもあるようですし、また、そういうことを緩やかに解して地方公共団体で具体的に採用している例もあると、こういうように了解しておるんですけれども、実際に地方公務員に外国人を採用している例は何人ぐらいあるんでしょうか。
  185. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 今の御質問の趣旨に私が答える立場にはございませんので黙っておりましたが、教員についてということでございましたら。
  186. 抜山映子

    ○抜山映子君 教員についてでも結構です。
  187. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 教員につきましては、現在正式の教員としては三十一名ございます。
  188. 抜山映子

    ○抜山映子君 そうしますと、先般長野県でしたか、問題になりました例がありましたけれども、長野県の梁弘子さんですか、臨時講師としての立場に置かれているというように書かれておりますが、この方の扱いは現在今なお臨時講師として不安定な立場におられるわけでしょうか。
  189. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) この四月一日現在で長野県の教育委員会は正式の講師として採用いたしておると聞いております。
  190. 抜山映子

    ○抜山映子君 それは外国人に身分保障を与えたというようなことで大変に朗報だと思います。  国公立大学につきましては一九八二年九月以降教授、助教授任用について外国人を認めている。しかし、高校以下の教諭については設めていないところもあるわけですね。この区別していらっしゃる理由は何でしょうか。
  191. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 国公立の大学の教授等の任用につきましても、昭和五十七年の外国人教員任用法制定以前におきましては公務員に関する当然の法理というものに抵触するということで、これは教授等の職に外国人が就くことは認められなかったところでございます。しかしながら大学におきます教育研究、先生も御案内のとおり真理の探求を旨といたしまして、世界に通ずる普遍的なものでございまして、国際的に本来的に開かれたものであるべきこと、こういったことが期待されるものでございます。また欧米先進諸国におきます状況、これを把握いたしましても外国人に対して正規の教授等に任用するという道を開いているところが圧倒的な多数を占めております。こういった状況でございましたので、大学等につきましては、国公立大学ではできるだけ有能な外国人を教授等として積極的に任用できる道を開きたい、こういうことで昭和五十七年度に外国人教員任用法というものを制定したわけでございます。  ところが、これまた先生御案内のとおり、これに対しまして小中高等学校におきます教育でございますが、これは大学におきます教育研究と異なりまして、次代の国民を育成する、こういったことを基本目的として行われるものでございます。そういったことで大学とは基本的な性格を異にしておるというものでございます。したがいまして、私ども現段階におきましては外国人を教諭として任用する特段の必要はないと考えております。
  192. 抜山映子

    ○抜山映子君 しかし現に三十一名の外国人の教員がおられるわけです。特に語学については外国人の教諭がいる方がむしろいいんじゃないか、こういうことも考慮されるんですが、いかがでしょうか。
  193. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 私の先ほどの説明で二点ばかり補足しておきたいことがございます。  まず第一点でございますが、こういった外国人に対しまして大学の教授等について門戸を開放しながら、小中高等学校につきましては先生を採用できない、こういった方法をとっておりますのは日本の文部省だけではございませんで、世界の先進諸国の大勢でございます。この点が一つでございます。  それから今先生御指摘のとおり外国人に小中高等学校などでそれぞれの外国語を教えてもらうということ、これは例えば発音の問題それから会話の問題というふうなことを考えますと大変有益である、そのとおりでございます。そこで先ほどから私が申し上げておりますのは、学校に教諭としてお入れすることは現行法上できないということですけれども、多くの県におきましてはそういった外国人の教師が必要だという場合に、非常勤の講師というふうな形で現にたくさんいらっしゃいます。しかも文部省といたしましても米国人や英国人の人材をお招きして、そして文部省の助成を伴いましたものとして各県に何百名という単位で昭和五十二年ごろからそういった施策を実行しておるところでございます。すべての学校教育において外国人に対して門戸を閉ざしておるということでは決してないということを御理解賜りたいと思います。
  194. 抜山映子

    ○抜山映子君 その非常勤の講師というのは身分保障はどうなっておるんですか。
  195. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 講師というものにつきましてはこれは学校教育法施行規則というものに基づきまして非常勤の者を置くことができる、こうなっておりまして、常勤に服しない非常勤の講師を、それぞれ持っていらっしゃる特技といいますか特別の能力、そういったものに着目をいたしまして置いておる例は全国にたくさんございます。
  196. 抜山映子

    ○抜山映子君 ちょっと回答が不十分だと思うんですが、もろもろの身分保障、社会保障の関係がどうなっておるかということを聞きたかったんです。
  197. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 正式の採用でございませんと、私ども一般の公務員が受けますもろもろの条件は十全ではございません。
  198. 抜山映子

    ○抜山映子君 そういう観点からひとつ外国語ぐらいについては、別に外国人が教育に携わったから国民の教育に支障が生じるというようなこともないように思いますので、ひとつ前向きに検討していただきたいわけです。  ところで、外国の例ですが、イギリスあたりは認めておるんじゃないですか。
  199. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 私どもの把握しておりますところでは、いわゆる先進諸国の中ではイギリス、オーストラリアの二国、これも全世界すべてを把握し切っておるものじゃございませんが、多数のものを一応私どもは把握しておるつもりでございますが、その中ではイギリスとオーストラリアが門戸を開いておる、こういった状況でございます。
  200. 抜山映子

    ○抜山映子君 国際結婚もふえておりますし、先ほど外務大臣外国人にとって住みやすい国をつくりたい、こういう御意見もございましたので、ひとつ規制も緩和する方向で御検討いただくようにお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。
  201. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 先ほどから申し上げておりますとおり、外国人の公務員への就任能力、これにつきましては法令上明文の規定はないわけでございますが、公務員に関する当然の法理、これは文部省がそういったものがあると言っておるわけではございませんで、歴代の政府においてこういった法理があるんだということで、文部省においてもこれを適用されたい、こういった指示を受けてやっておるところでございます。  したがいまして、日本政府としてこれを改めるかどうかという、こういった大きな問題でございまして、一文部省でこれを改めるかどうか問われましても、これはにわかにはお答えできない大きな問題であると考えております。
  202. 抜山映子

    ○抜山映子君 教員の採用の問題なんですが、私が在学中にも、いわゆる日本に永住している協定永住者に該当するような方、あるいはその子孫に該当する方がたくさん教育学部にも入学しておりました。私はその当時無知で、当然教員になられるものだろうと思っておりましたが、その方たちがなれないで恐らく非常に失望しておられるだろうなと、そういうことに思いをいたすときに大変に胸の痛む思いがするわけです。したがいまして、協定永住者については教員の採用についても資格を緩和してもいいんじゃないか、日本人と同じように税金も納め、日本人と同じように生活し、しかも今さら韓国に帰って仕事をしようにも日本語しか話せない、そういう特殊な事情にいらっしゃる方ですから、そういう方たちについて配慮するお気持ちはありませんか。
  203. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 在日韓国人の方々の歴史的な社会的な地位、これは特殊なものがあるということは十分存じ上げておるところでございます。  そういった観点から私どもも在日韓国人の方々については何か特例を認められないかということで、政府部内で検討いたしたところでございますが、それにつきましても韓国人といえども、この公務員の就任能力ということについての法理の適用除外をするわけにはいかない、こういった大変厳しい姿勢でございまして、私どもはその指示に従って仕事を進めておる、こういった状況でございます。
  204. 抜山映子

    ○抜山映子君 過去はそうであったかもしれませんけれども、指紋の押捺の問題も含めまして、ひとつそういう特殊な歴史的な被害者の立場にある方については人道的な立場から配慮していただきたいと思うんです。  再び指紋押捺の問題に戻るんですけれども、先般大臣でしたか、今後の課題としてこれからの状況も踏まえて検討すべき問題である、あるいは歴史的に配慮しなければならないし、今後ともできるだけのことをやらなければいけないというような御発言があったと思うんですけれども、今後の方向として協定永住者及びその二世、三世について指紋の押捺はさせないという方向で検討していただけないかどうか、再度質問をいたします。
  205. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 指紋押捺問題についてはしばしば私もお答えをしておりますが、これは今改善措置はとったわけです。これでもって在日の外国人の皆さんにも日本の改善措置をひとつ理解をしていただいて協力していただきたいと思いますし、あるいはまた非常に関心を持っている韓国政府に対しても、日本の努力してきたことに対しての評価を求めておるわけでございますが、しかし残念ながら十分な満足は得られないということであります。しかし、基本的には何としても日本の法律ですから、日本の法律はやっぱりきちっと守っていただきたいと思っておりますが、同時にこの在日韓国人の待遇改善の問題はこれは日韓間で今後とも改善を進めていくという基本的な合意がありまして、その合意に従って今後ともできるだけの努力はこれは日本政府としてもやっていかなきゃならぬ。私は、在日韓国人はこれまで歴史的な背景もありますし、やっぱり日本人と同じ扱いにするという基本的な方向で努力をしていくべきだと思っております。  そういうことで、法律は法律としてきちっと守っていただき、また実施をするということは当然のことでありますけれども、今後の長期的な課題としてはやはりこの問題につきましても将来に向かって改善の余地があればこれに取り組んでいくという姿勢でもってこれから対応していきたいと思います。
  206. 抜山映子

    ○抜山映子君 前回の当委員会におきまして、七百十七にも及ぶ数の地方議会でこの指紋押捺問題については改善を求めるという決議をしている、こういう実態はかなり重く見なくちゃいけないと思うんです。特に協定永住者は実際に窓口において、いつも来ているどこそこ町の何々さんだというようなことで非常にもう顔見知りでもあり、日本人と同じように税金も払い、しかも社会的な負担も負っている。そういう人たちが日本人と差別されて、居住の実態を無視して、指紋押捺させるのは余りにもかわいそうじゃないか、おかしいじゃないか、やはり実態を見て処理するのが穏当じゃないかということで地方議会の改善の要望というものが出てきておると思うんですね。そういう意味でひとつ前向きに検討していただきたいと思うんです。  ところで、先ほど同僚議員が聞きました告発しないと決めた地方自治体、これは機関委任事務の誠実な処理とは私は言えないと思うんですね。地方議会で決定すること自体はこれは結構だと思うんです。どんどん改善要望を出すのはいいと思うんですけれども、告発しないというのはやはり法秩序というものを無視して、たまたまこれがほかにも蔓延し、こういうことが事実上どんどん蔓延しますと国としても大変困るんじゃないかと思うんですが、この機関委任事務を誠実に処理しないということについてどのように対処なさるお考えでしょうか。
  207. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 先ほどもお答えしたんですが、外国人登録事務と申しますのは国の事務でございます。これを市町村に機関委任事務とする、こういう構成になっておりますけれども、告発につきましてはこれは公務員個人に課せられた義務であって、必ずしも機関委任事務ではないというふうに私どもは理解しております。しかし、そうだからといって機関委任事務を遂行する過程においては法違反があったということは、逆に申しますと、機関委任事務の遂行に反するような事態が生じたわけでございますので、私どもといたしましてはこれは都道府県知事を通じて各市町村長に対しまして公務員には告発の義務があるんですと、そのことを履行せよと命令はできませんけれども、その義務を履行されるべきであると、何と申しますか、注意を喚起すると申しますか、そういう指導は従来も行ってきておりますし、つい最近もそのような指導といいますか、御注意を申し上げた、こういう状況でございます。
  208. 抜山映子

    ○抜山映子君 ちょっと整理しなくちゃいけないと思うんです。今おっしゃったのは窓口の職員のことを言われたと思うんですね。「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」、これは刑事訴訟法の規定で窓口の職員に適用される義務だと思うんですけれども、首長が当地方自治団体では告発しないんだと言うことは私は機関委任事務の誠実な履行とは言えないんじゃないか。こういうことは無視することはやっぱり法秩序の上から好ましくないんじゃないか。地方議会自体が改善を要望するというのはこれは私は尊重しなくちゃいけないし、法にのっとった行為でありますから、それは結構ですけれども、地方自治体が告発しない、国の機関委任事務を誠実に処理しない、こういうことを明言することはやはり法秩序の建前からこれは危険なことではないか、民主主義ルールの違反じゃないか、こういうように思うんですが、いかがですかと申し上げたわけです。
  209. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 先生おっしゃるとおりでございます。私ども全く同意見でございます。ただ、せんだって神奈川県のある市で告発をしないということをおっしゃった市長さんがいるわけですが、これにつきましては私ども事実関係を照会いたしまして、それに対してそのような決定をしたことは極めて遺憾である、今後告発を励行するようにという指示をしたということもございます。  ただ、一部といいますか、報道されております中に、どこの市、あそこの市でも告発をしないという報道がなされているようでございますけれども、私どもこれの実態について必ずしも全部調査したわけじゃございませんけれども、その多くの市長さんは告発をしないと言っているわけではな くて、押捺をしないという人がいればまず説得をしたいというようなこと、お気持ちのところもあるようでして、必ずしも告発をしないと明言しているわけではないようでございます。
  210. 抜山映子

    ○抜山映子君 その点は新聞の報道にも責任があるのかもしれません。しかし、いずれにしても法律というのはみんなで決めたことですから、法秩序というものが民主主義の基本だということはやはり忘れてはいけないんじゃないか、こういうように思うわけでございます。  それから先ほど同僚議員も聞きましたけれども、指紋の押捺を登録時だけにとどめたらいかがかということが言われました。実際に各市町村の窓口において指紋の照会ですね、原簿と照会する事務をやっておらないという実態があるわけですね。そうだとすれば、当初押捺させればそれでいいんじゃないかということが逆に言えるわけでございまして、その点はいかがでしょう。
  211. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 私ども外国人登録事務の手続の中で押してもらっております指紋と申しますのは、本人の人物を特定し、二回目以降出てきた人物が最初に登録された人物と同じであるかどうかという人物の同一性を確認するということが目的でございます。したがいまして最初にだけ指紋を押してもらうということは、一面では人物を特定するという面での効果はございますけれども、今申しましたようにその後人物が入れかわっていないかどうかということを確認するわけにはまいりませんので、私どもとしてはやはり登録証明書を切りかえる五年ごとに指紋を押していただく必要があると、このように考えておるわけでございます。
  212. 抜山映子

    ○抜山映子君 しかし実際には市町村の窓口で指紋照合をやっていないという実情があるわけでしょう。その点はいかがですか。
  213. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 指紋押捺拒否者の裁判の中で、現実に市町村の窓口で外国人登録事務を担当している職員を証人として呼びまして尋問が行われたことがあるわけでございますが、そういった証人の中で私は指紋を見ておりませんというようなことを言う証人がといいますか、市町村の職員がおりまして、これは私ども大変驚いたわけでございます。私どもはかねて各都道府県、市町村に対しましては、今申しましたように人物の同一人性を確認するためには指紋が必要であるということをかねてから申し、そのように指導をしてきておったわけでございますが、現実にそういうふうに指紋を見ていないという市町村職員がいるということは、どうも考えてみますと、指紋というのは最初から見てもわからないものだというふうに、何と申しますか最初からあきらめていらっしゃる人もいるんではないかということで、私どもこの三、四年来研修その他におきまして、その指紋の照合というのは写真を見比べるよりも、写真による同一人性の確認よりももっと確実な方法であり、しかも特別の訓練を受けておりませんでも、いわばずぶの素人でも指紋を見比べることによってその違いというものを見分けることができるんだということで指導を徹底しておりますので、恐らく現時点で申し上げれば、どの窓口においても指紋の照合ということは励行されているものと私どもは思っております。
  214. 抜山映子

    ○抜山映子君 この昭和六十年五月十三日に出されました通達でございますが、その二に「市区町村窓口における指紋照合の励行」と、わざわざ通達をお出しになっているということは、逆に言えば、この指紋照合が今まで実際には行われていなかったということのあかしであろうと、こういうように思われるわけで、実際に行われていなかったんであればそういうものをわざわざ五年の更新ごとにする必要はないじゃないかと、こういう理屈が出てくると思うのです。ひとつ前向きに検討してください。  終わります。
  215. 立木洋

    ○立木洋君 最初にカンボジアの問題についてお尋ねしようかと思います。  この数カ月間の動きを見ていますと、ASEAN諸国やあるいはインドシナ三国、またそれと関連する諸国の間でこの問題をめぐるいろいろな活発な動きが出ているという状況にあります。またこれから秋にかけて、またカンボジア問題というのは一つの国際的な政治の舞台の焦点を浴びるといいますか、問題として対応しなければならない、そういう問題になるだろうと思うんですね。先ほども質問が出ておりましたように、ハノイに浅尾外務審議官を派遣する、まだ時期についてはベトナム側との交渉が煮詰まっていないので決まっていないというお話でしたけれども、しかし少なくとも七月に行われるA SEANの拡大外相会議以前には送って、いろいろ事情を聞いてきてもらわないとならないということだろうと思うんですけれども、時期的にはそういうことをやっぱり外務省筋としては考えていらっしゃるんでしょう。
  216. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはそのとおりです。やはりASEANの拡大外相会議、これに私も出席しまして、カンボジア問題の解決のために日本も積極的な発言もしたいし、役割を果たす努力もしたいと、それにはやはりベトナムとの間の対話といいますか、ベトナムとの間の情報の交換、いろいろ会談等をしておくことが必要だと、そういうことで浅尾審議官をASAN拡大外相会議の前に送りたいと、こういうことでございます。
  217. 立木洋

    ○立木洋君 去年の七月も大臣おいでになって、外相会議に、三項目の提案をして、それから後十月でしたか、タク外相が来たときに話し合いをされて、今後両方の意見交換をよくしながら問題解決のためにという方向になってきたと思うんですが、あのとき提起した問題をそのまま継続するという形には私はやっぱりならないだろうと、その後の状況を見るならば。今の時期に例えば日本政府としてはベトナム側にどういうことを要望したいのか、あるいは日本側としてはどういうことを考えているのか。今の時期に去年の提起した三項目の提案をそのまま提起するのでないとしたらどういう考え方、構想を持っておいでになるのか、あらかじめお聞かせいただけたら述べていただきたいと思います。
  218. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本の基本的な姿勢というのはあくまでもやはりベトナム軍がカンボジアから撤退をしてカンボジアに真の自主的な政権が、民族自決の政権が生まれるということでありますし、そのために我々はASEANの外交政策を支援しているし、日本もそういうことが正しいと思いまして日本なりの提案もしてきておるわけでして、この提案はもちろん引っ込めたわけじゃありませんし、基本的には今の日本の立場は去年と変わっていないということで、ただベトナムとの間では去年以来の変化というのはやはりタク外相も日本に来ましたし、ベトナムとの間で意見の交換をするルートは相当拡大をされたと思っておりますし、これはやはりこれからのカンボジアの平和解決を進める上においては日本の果たす役割というものがそれなりにウエートを増してくる、こういうふうに思っております。
  219. 立木洋

    ○立木洋君 去年の暮れ以来の動きを見てみますと、いろいろあそこの周辺をめぐる動きというのは変化を示してきている。だからそれを正しく判断して対応することが必要になってきているんじゃないか。一つの動きは、御承知のようにタイ国境における大変な戦闘があって、そういう状態の中で中国側の対応を見てみますと、これはやっぱり非難はしているけれども、対応それ自体は慎重な対応だったということがいろいろ報道されていますね。それから、一月の十八日にインドシナ三国で外相会議が開かれてそれに対する態度が述べられている。これも何か局面打開したいような交渉ということに望みをかけた意欲が感じられる。  それから、アメリカに対して呼びかけた形で新聞記者に対するコメントをしているのでは、例えばアメリカとの間で相互に連絡事務所を置いてはどうかというふうな問題提起が出されたとか、あるいは五項目の提案を行ったとかいうふうな動きはあります。  それからさらには御承知のように、いわゆる民 主カンボジアとあそこのへン・サムリンの政権との間での接触、これを図る。これも今まで何回か繰り返されてきたわけですけれども、御承知のようにそれが政権の代表であるならば会わない、個人とならば結構だとかというふうないろいろなトラブルがあったにもかかわらず、依然としてこの問題でさらに具体的な措置を詰めたい、検討したいというふうな動きまで出てきている。これらの一連の動きを見てみますと、やっぱり去年あるいはその前から見るならば変化してきているという事態があると思うんですけれども、こういう状況の変化というのを大臣はどのように御判断されているのか、いかがでしょうか。
  220. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに去年からことしにかけて変化はあると思いますね。いわゆる三派の拠点がやはりベトナム軍によって陥落した。しかし同時に、また逆にゲリラ活動もこれから雨季に入れば活発になると思いますが、これはそれなりの変化だと思います。それに対して中国が、おっしゃるようにベトナムに対する軍事攻勢というものも我々が想像していたよりは穏やかといいますか、控えられたものであったと、こういうふうな感じも持たないではありませんし、インドネシアの外務大臣もベトナムを訪問しておりますし、マハディールさんの提案というのもありますし、シアヌークさんの動きというのもありますし、いろいろな面でやはり動きが出ておるといいますか、変化が出ておるということは事実だろうと思いますが、やはり日本の去年の提案というのは、それだけにまたある一面においては重みを増してきたとも言えないことは私はないと思っているわけであります。  したがって、日本もそういうときにアジアの国としての日本の平和への貢献というものは、この際こそやはりできるだけのことはしなきゃならぬと、私はそういうふうに思っておりますし、いわばその前哨戦としての浅尾審議官の訪越でありますし、私も積極的にひとつ今度の拡大外相会議でASEANの外相の皆さんとも話をして、何らか解決の道を見出すための日本もともにひとつ汗をかきたい、こういうふうに思います。
  221. 立木洋

    ○立木洋君 ウィーンで大臣が記者の皆さんに話されたときに、カンボジア問題が解決するならばベトナムとの関係正常化の方向に努力していきたいと。カンボジア問題が解決するならばと言われているのは、そういう方向にある意味では動いているというふうに情勢をごらんになっているのか。それとも、厳しくなったというふうにごらんになっているのか。前向きに多少なりとも動いているというふうにごらんになっているのか。そこらあたりのニュアンスといいますかね、そういうカンボジア問題が解決されるならばという意味合いですね、これはそういうふうに判断してもいいでしょうか。
  222. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 特別な意味を持たして言っているわけじゃないんですけれど、いろいろと今申し上げましたように変化というのがありまして、それなりにまた日本の役割というものも出てきたんじゃないか、こういうふうに感じておるわけです。ですから、これはこれからまたASEA N拡大外相会議に向かっての動きがさらにあると思いますが、そういう情勢を十分踏まえながら、やはり全体的には包括的な平和という方向へ向かって努力をしていきたいと。日本の提案は、去年出したからもうことし引っ込めるということじゃなくて、それなりの私は重みを増してきておるという点もあるのじゃないだろうか、こういうふうな率直な感じを持っております。
  223. 立木洋

    ○立木洋君 以前もこの問題に関して中曽根総理が若干の条件はつけておいでになりましたけれども、ベトナム軍が行っている部分撤退というのは、これがずっと続いていくならばこれは歓迎されるだろうというふうな趣旨のことを述べましたですね。そして、後藤さんだったか、前の局長さんだったか、ちょっと記憶が正確ではありませんけれども、しかし必ずしも完全撤退してしまうということにならなくても、ベトナム軍が完全撤退するという、そういう見通しが、方向が示されるならば一定の解決の方向をさらに歩み出すことができるだろうという趣旨のことを、どうも後藤さん首を横に振っているから後藤さんじゃないようですが、前の局長がそういうふうに述べておられたと思うんですね。  それで、一九八三年以降ベトナム軍の部分撤退というのは三回続いていて、ことしの一月の報道によってもことしも部分撤退をする、そして、八七年には現勢力の二分の一か、あるいは三分の一ぐらいにしたいということまでタク外相は表明したということなんですが、この部分撤退のこれまでの動きを大臣としてはどのように評価なさるのか。いかがでしょうか。
  224. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 評価と言いましても、あそこの三派の拠点を総攻撃で壊滅さしておるわけですから、どの程度撤退というものに意味があるのか。タク外相も日本に来たときは完全撤退も将来においては行うということをにおわせておったわけでありますけれども、ベトナムにおいてはそういう意思がないわけでは私はないと思いますね。  そういう中でやはりASEAN諸国との駆け引きの問題もあるでしょうし、またシアヌーク大統領のいろいろと外交的な動きというのも出ておるわけで、シアヌークさんはむしろ今のカンボジアにおけるへン・サムリン政権と話し合わなきゃというふうな、あるいはベトナムと話し合わなきゃというふうな感じも持っておるわけでありますし、そういう中でこれから非常に複雑ですけれども微妙な変化というのはやっぱりあるわけですから、その変化をとらえて何か問題を前進させる。それはやはり何といいますか、包括的な平和というものに向かっての前進でなければならぬのじゃないか、こういうふうに思います。
  225. 立木洋

    ○立木洋君 去年私もベトナム、カンボジアへ行ってきましてね、ちょっと外相ともお話したことがあるんですけれども、やはりカンボジア問題を解決する一つの焦点といいますか、これはポル・ポト一派だろうというふうに思うわけです。これはここで言うまでもなく大変な事態がポル・ポト一派の政権のもとで引き起こされた。ですからカンボジアで話している人々の話を聞きますと、何としてもポル・ポトが再び帰ってくるというふうなことは絶対に避けたいというのが政治にかかわっていない人々でもそういうことを述べている。それから、帰るときもいろいろ話してきましたし、日本に帰ってきたら、シンガポールの大使とお話しようということで話しましたところが、ASEAN諸国の中でも、つまりポル・ポト一派だけの復活は望んでいないんだ、望んでいるのはほとんどいないんだという話もしていました。だから私はさっき言ったシアヌークかつての殿下が、彼自身が書いている本の中でも、ポル・ポト一派のために自分の子供や孫まで殺されたというふうなことまで書いて、これは大変なことだということで、ポル・ポト一派に対する批判的なことを述べているという書物まで出されている。だから、やっぱりポル・ポト一派の問題というのは、そういうカンボジアの人々の考え方などをよく考えに入れるならば、この問題はやっぱり避けて通ることはできないだろうというふうに思っているのですけれども、これはかつて政府自身もポル・ポト一派が行ったかつてのああいう行為ですね、残虐な行為について何もこれを肯定したりしているわけではないし、それに対する厳しい批判的な目を持っているということも述べていられたんですけれども、現在の状況のもとでこのポル・ポト一派ということ、これがカンボジア問題解決の上で避けることができない一つの焦点ではないかという点についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  226. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやはり三派でもって今政権ができているわけでありますし、カンボジア問題は民主カンボジア政権の中で処理されるべき問題だと思います。しかし、もちろんポル・ポトかつての政権がやった行為というものに対しては、日本としてもこれに対して厳しい批判をしておることはこれはもう事実でありますが、 問題解決のためにはやっぱり三派という形で、民主カンボジア共和国という形でこれを処理していかなきゃならぬのじゃないか。それはおのずから民主カンボジア政権の中で処理されるべき問題じゃないだろうか、そういうふうに思います。
  227. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つは、今行っているベトナムに対する援助の凍結問題ですね、これについては凍結解除するだとか何らかの検討を行っているのかどうなのか。この問題に対しての今の政府態度というのはどういうものでしょうか。
  228. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは去年の私の三項目の提案の中にも示しておりますが、やはり基本的にはベトナム軍がカンボジアを去るということが極めて大事な事件ではあると、こういうふうに思います。もちろんしかし、人道的な援助については、日本がかつて南北に分かれていたときの時代から援助しておりましたチョーライ病院等に対する援助は、これは今後とも引き続いてやっていかなきゃならぬと思います。
  229. 立木洋

    ○立木洋君 この問題の最後に私の考えをちょっと述べておきたいんで、今後の展望を考える上で大臣としてもよくお考えいただきたいと思うんですが、一つの問題は、やっぱりポル・ポト一派の復活、復権につながるような政治解決ということでは本当の意味では私はカンボジアの国民の主権を尊重する解決にはならないだろう。大多数のカンボジア国民自身がこれは望んでいないわけですから。だから、これはやはり日本政府としても当然念頭に置かなければならない問題ではないかというふうに思います。  それからもう一点は、今国連の舞台でもいろいろと批判が出されておりますベトナム軍の駐留ですね。これは駐留した動機その他等については、我々は政府と違う見解を持っていますけれども、しかし長期に駐留するということはやっぱり好ましいことではない。これはいろいろな意味でカンボジアの主権に影響が及ぶわけですから、我々自身もベトナムに早期に撤退すべき、そういう条件をつくり出して、早急に撤退する必要があるんではないかということも私たちははっきり主張しているわけですから、こういう長期に駐留するということが好ましくない観点から、速やかに撤退できる条件をどうつくり出していくかということをも当然念頭に入れなければならないだろうというふうに思うんですね。  それからもう一つの点としては、ベトナム、カンボジアは御承知のように大変な長期にわたる戦争が続いて、あそこの国民はいろいろな意味で疲弊して大変な状態にあるわけですね。ですから、私はそういう問題をも十分に念頭に置きながら、ただ単に難民に対する援助ということだけではなくて、やはりベトナムに対する援助の凍結、これも速やかに解除できるような事態に私は進めてほしいし、あるいはカンボジアのことで言うならば、カンボジア全体に住んでおる人々自身が今大変な状態にあるわけですから、いろいろと努力はして、前進をかち取ろうとする、そういう意欲も私たちは去年行って見てきましたけれども、しかしそういう問題があったにもかかわらず依然としてやっぱり大変な状態にあるということは変わりないので、そうした援助を全体的に広めていくようなことをも当然考えていただきたい。それから、もちろん問題の解決というのは、これは力による解決ではなくて、ASEAN諸国とインドシナ三国が平和的に共存できる、こういう状況にならなければならないわけですから、そういう点で、これはかつて言っていましたけれども、福田さんが行かれて福田ドクトリンを述べたことについて、ああいう見地からやってほしいなんというふうな報道もハノイの方では出ているようでありますけれども、いわゆるいろんな意味でASEAN諸国とインドシナ半島三国が平和的に共存できるという状況は、やはりアジアの一国である日本としてもそういう方面に努力するということが当然私は必要ではないだろうかというふうなことを考えるわけです。そういう私の考えに対して何か御所見があればお述べいただきたいと思います。
  230. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはカンボジア自身の民族自決の体制が生まれる、そしてベトナムがカンボジアから兵を引く、ラオスはこれは日本も今いろいろと人道的援助を進めておるわけですが、それぞれの国がそれぞれの主権のもとにお互いに相連携し合っていくということについては我々は異議がありませんし、そういう事態が生まれることを心から念願しておりますし、そういう際には日本は積極的にインドシナ三国との間で協力関係を進めて、日本としてのできるだけの支援というものも行っていかなきゃならぬ、こういうふうに思っています。
  231. 立木洋

    ○立木洋君 まだ浅尾さんが行かれる前から申しているのは、浅尾さんが行かれたときの対応だとか、それからASEANの拡大外相会議に出席される、あるいは国連に行かれたら当然またタク外相と会うというふうなこともあるでしょうし、そういう点で私の主張したことも十分に念頭に置いてやっていただきたいということを重ねて述べておきたいと思うんです。  それから次に、対ソ外交の問題なのですけれども、これは日本政府の対ソ外交の基本姿勢というのを今さら改めてお伺いするという意味ではありません。基本姿勢ということではなくて、当面どこに重点を置いた対ソ政策を考えに入れているのか、今の局面を打開する上でどこに力を入れるというふうに考えているのか、対ソ関係の上で、その点ちょっとお尋ねしたいのです。
  232. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この点については私が何度も答弁をいたしておりますが、あくまでも領土問題を解決して平和条約を結ぶという日本の基本路線は儼乎として変わらないわけですが、しかしそういう中にあってそういう情勢をつくるためには対話を続けていかなきゃならぬということで、我が国のイニシアチブによりまして日ソ間に種々のレベルでの対話、交流が行われてきておるわけでありますが、今後ともその対話の強化拡大を通じまして相互理解を増進してまいりたい、こういうふうに考えております。最近の人的交流、あるいはまた種々の対話の推進、あるいは文化協定を初めとして租税協定あるいはまた支払い協定等についても一つの前進が見られ、兆候が出てまいりましたことは今の日ソ間の関係改善には歓迎すべき事態である、こういうふうに見ております。そして私は何とかことしじゅうにもグロムイコ外相の訪日を求めたい、こういうふうに思います。
  233. 立木洋

    ○立木洋君 以前アフガニスタンの問題が起こったときに、それから大韓航空機の撃墜事件が生じたときにいろいろな措置をとられたわけですけれども、この措置は今どういうふうになっているのでしょうか。
  234. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) 第一にいわゆるKAL事件に伴ってとられました諸措置は、あれは初めから時限的なものでございましたのですべてそれは解除されております。また、アフガン及びポーランドの問題に関連いたしましていろいろな措置がとられたわけでございますが、この問題につきましてはやはり西欧各国はそのときの東西関係推移に従いましていろいろとその対応ぶりにも波がございます。我が方も、それを注意深く見ながら、基本的な枠組みといたしましてはアフガンにしましてもポーランドにいたしましても変わっておりませんので、これを大きく根本的に変えるということではございませんが、既に最初から措置に言われておりますように、慎重に、例えば人的交流につきましてもそれから信用供与につきましても、これをケース・バイ・ケースに慎重に検討の上対処するということで来ておりますので、この姿勢は今後も続けていきたい、そういうふうに考えております。
  235. 立木洋

    ○立木洋君 アフガン、ポーランドのときに、四項目でしたか出したですね。今最初に言われた人的交流の問題、それから二番目のオリンピックの問題はこれはもう時期が過ぎてしまっているわけですが、では現実に残っているといったら項目としてどういうふうに考えたらいいのでしょうか。
  236. 西山健彦

    政府委員西山健彦君) アフガン措置につきましては四項目でございます。それからポーランド につきましてとりましたのも大きく分けますと四項目になりますが、ポーランドの方はその後ポーランドの情勢がアフガンに比べまして実質的にも相当改善されておりますので、ほかの国の対応等も見守りつつ、次第にそのときの措置実態的に緩和させてきたわけでございます。したがいまして、ポーランド措置については事実上現在のところ大きな制約的なものは一つ、二つを除いてございません。他方、アフガンの方の問題は、四項目のうち、モスクワのオリンピックは今御指摘のとおり既に過去の問題になっておりますが、残りの三点につきましてはこれは相変わらずそのまま残っているわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、信用供与につきましても公的な人物交流についても、これはケース・バイ・ケースで慎重に検討の上対処ということは初めから言っておりますわけでございまして、そのポスチャーと申しますか、姿勢は基本的には変わっていない、こういうことでございます。  最後にココムにおける高度技術の対ソ輸出規制につき西側諸国と協力というのがございますが、これも従来どおりということでございます。
  237. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど大臣が述べられた点で言えば、三月の予算委員会のときに示した日ソ関係の段階的なプログラムといいますか、問題とほぼ同じ内容なのですが、例えば文化協定の問題にしても租税条約の問題にしてもあるいは貿易支払い協定ですか、これらの問題についていわゆる現在のところさらにそれにつけ加えるものがあるのかないのか、それからこれらの問題の進展というのが順調に予定どおり進展しているというふうに御判断になっているのかどうなのか。それからとりわけグロムイコ外相が来日すれば成果は必ず上げることができるだろうというふうな見通しまでお述べになっているが、この見通しについても全く変化がないのか、そういうちょっと将来的な展望の問題も含めて最後にお尋ねしておきたいのです。
  238. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日ソ関係はいろいろと曲折がありますから、一方的にうまくいっていると言える状況にはないと思いますけれども、しかし対話についてはやはり前進していることはこれは事実だと思いますし、またそうした諸協定のそろそろ協議に入っておるということについては、日ソ双方ともその基本的な姿勢に変化はない、こういうふうに考えておりますし、こうした状況を確実に前進させていくということが必要だと思います。  それからグロムイコ外相の場合は、これは向こうが来る番ですけれども、ソ連側のいろいろの情報等も承ると可能性もないわけではないと思いますし、これはグロムイコ外相が日本を訪問するということそのものが非常に大きな意義があると思います。定期協議で、この次は日本外務大臣がソ連を訪問するということが生まれるわけでありますし、できるわけでありますし、さらにそれに内容的にはいろいろと進んでいる協議の実をどれだけ結ばせるかということもまた外相の訪日によっては十分可能性は出てくるんじゃないか、こういうふうに思っています。
  239. 秦豊

    ○秦豊君 本論はアジア問題に絞りますけれども、SDIはしたがってきょうは休みたいと思います。  本論に入る前に、領事部長、さっき同僚議員に、岡本公三に絡んで、リビア以外の可能性がむしろ大きいと思うという答弁をされましたね。あの根拠は、警察庁が述べた日本赤軍の分布状況等をも勘案したお答えですか。
  240. 谷田正躬

    政府委員谷田正躬君) 岡本の今後の行き先についてでございますけれども、我々の考えでは、そもそも岡本がロッド空港襲撃事件を起こしたときに、これはその活動の母体となりましたのが、PFLPとそれからもう当時既にレバノンにおりました重信房子と赤軍一派のグループであったというふうに認識いたしております。そしてこのロッド空港事件をきっかけといたしまして、この赤軍派と称するグループが一連のハイジャックあるいは公館襲撃という事件を数年にわたって起こしたわけでございます。そして現在におきましてもこの重信をリーダーといたしますグループがレバノンのべカ高原付近にいるという先ほど警察当局の方からお話ございましたけれども、我々としてはこういった過去における経緯というものを踏まえて、それからかつ岡本が今後単独で行動するという可能性は比較的少ないんではないか。となれば、恐らくこの日本赤軍派に合流する可能性というものが大きいというふうに考えておりますので、これがその申し上げた根拠でございます。
  241. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。  外務大臣にちょっと一つだけ伺いたいんですが、さっき同僚議員が言われたカンボジアの撤退問題ですね。あれはある日の委員会で、たしか木内アジア局長時代に私が、秦豊氏が聞いたときに、おやっと思う答弁としてあの部分撤退云々の感触がこぼれたので、僕は非常に印象に残って、奇異だなと思って覚えているんですが、それは別として、今マレーシアあたり、まあマレーシアではないかと思いますがね、そこで、それにしても円借款凍結解除の条件というのは完全撤退以外にないのではないか。これは日本外交の対ベトナム原則の最大の一つではないかと私は思いますし、バンコクあたりの軍事筋の観測では、部分撤退、部分撤退といって一部のマスメディアが流しておりますけれども、これは後退にすぎないと。これは北京の軍事筋もそれを裏づけております。したがって私は、円借款凍結の解除条件は何ら日本外交として、安倍外交として変わっていないというふうに理解したいし、重ねて、この秋の国連総会でカンボジア問題がまた新たに問題になった場合には、安倍外交としては昨年と同じ、在来の方針と変わらないのかどうか、この辺だけを伺っておきたいと思います。
  242. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私がしばしば言ってもおりますが、カンボジア政策については日本の姿勢は基本的に変わっておらないということでありますし、日本がベトナムに援助を始めるということになれば、それはやはりベトナム軍の撤退というのが最も大きな要素であるということもそのとおりであります。
  243. 秦豊

    ○秦豊君 国連総会含めてですね。
  244. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ええ、国連総会を含めてもそういう基本姿勢は変わりません。
  245. 秦豊

    ○秦豊君 これは、去る四月二日の当委員会におきまして私が少し指摘をいたしました米朝間のチャネルに関連して、吉林省図們を舞台にした米朝間のある意味の情報交換、ある意味の接触あるいはオブザベーションという問題について述べて、安倍外務大臣はたしか「おもしろい分析」云々という答弁をちらっとされましたけれども、それがその二、三週間後にアメリカ国務省での記者会見におきまして国務省高官がいわゆる図們説を裏づけております。  同じく四月二日、安倍外務大臣は私に対する答弁として、例の同僚議員が申された三者会談、四者会談等に関連してですが、むしろ南北対話というもの、南北会談というものの方が現在の状況下では進む可能性があるということを申され、それにしても、さらに四月二十五日には、全斗煥訪米を挟んで、南北朝鮮、「朝鮮半島の状況というものは、相当進んでいく可能性は含んでいるんじゃないだろうか、」、こう答弁されております。まさに大臣おっしゃったとおりなんですよ、その後の展開は。  そこで、最近の動きから総括的に言えますことは、南も北も対話の形式について隔たりがあり過ぎましたが、距離がぐっと縮まりつつある、まああくまでつつですが。例えば中国側がにおわしておりますような南北朝鮮プラスアメリカの三者会談を北京を舞台にして開く、いわゆる僕は三・五者会談と申しておりますけれども、こういうふうな提案もなされるぐらいになっていると。外務省としてはこの米朝間の、もちろん公式があるはずがないんですから、すべて水面下にいたしましても、米朝間のさまざまな接触が行われている兆候というものは感じ取っていらっしゃいますか。
  246. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) ただいま秦先生が御指摘のように、この委員会において秦先生からいろ いろと米朝間をめぐる動きについての御質問がございまして、私も興味深く拝聴したわけでございますけれども、きょうも御指摘ございましたけれども、当時図們を中心に米朝間で何か接触があるのではないだろうかという御指摘がございましたけれども。
  247. 秦豊

    ○秦豊君 図們はワン・オブ・ゼムです。小ちゃな起点です。
  248. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) はい。ワン・オブ・ゼム、小っちゃなあれでございますが、そのときに現在の国務省の定例記者ブリーフィングで、図們に関連しますけれども図們のところはとりまして、米政府は北朝鮮と中国及び他のどの場所でも現在接触していないということで否定しております。私どもとしましては、もちろん瀋陽総領事館というのは単にそこにおります米国の在留米人を保護するとかいうにとどまらずいろいろな情報活動をするわけでございますから、そういう点で図們に行くということもあろうかと思いますけれども、全体としまして、先生の今御質問の点でございますが、私どもとしては現在、米国と北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国において何か接触を、もちろん個人的な接触とかいうのはあるかもしれませんけれども、いわゆる政府のレベルで接触が行われているという情報とか話は米国から一切聞いておりません。
  249. 秦豊

    ○秦豊君 アジア局長、そうおっしゃるならば具体的に聞きたいことが一つだけありますが、もちろんアメリカの国務省は声高に言う時期じゃないんです。ならば、それを一つ一つつぶしていきますとあなたの答弁が少し真実から離れるのではないかということのために例証を一つだけ挙げますが、例えば四月中旬の段階、日にちは私はもちろん外務省の公館じゃありませんので、そういう公電を見る立場にない一野党議員ですから。しかし、四月十五日から四月十七日にかけて北京の日本大使館から米朝接触に絡んだ一種の公電は入っておりませんか。
  250. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 今先生御指摘のように公電ということでございますが、公電は、大変僣越な言い方で失礼かもしれませんけれども、かなりいろいろと毎日入っておりますので、あるいは先生の御念頭にあります公電なるものが率直に申し上げまして何であろうかというのを私直ちに頭に浮かんでこないんでございますけれども、そういう御質問、四月の中旬くらいに在北京日本大使館から何らか米朝関係について報告があったろうかという点につきまして、短い時間でございますけれども調べましたけれども、確かに朝鮮半島をめぐる情勢が非常に今動いておりますので、在北京日本大使館からいろいろな情報が常に入っていることは事実でございます。ただ、先生の御念頭にあります問題との関連で、さて何かといいますと、私も頭に出てきませんのでちょっと御返答をいたしかねます。お許しいただきたいと思います。
  251. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。では、アジア局長の記憶を鮮明にしていただきましょうか。つまり、北朝鮮労働党中央委員労働新聞主筆金己男氏とアメリカ国務省東アジア担当次官補ウォルフォビッツ、正確にはウォルフォウィッツですかね、北京で接触をした可能性について触れた内容の公電がたしか数ある公電の中で入っているわけなんですよね。この場合、私は一議員として質問する前提は、このことが日本の安全保障や日本の国家機密には全く関係がない、明らかにしたところで日米間の信頼関係をも損ねない、ただ我々絶えず外交ウオッチャーの一人としては、また立法府の一人としては米朝間のいろんな動きを見過ごしたくないという観点で伺っているので、仮にそういう公電がありましたよとお答えになったところで何ら僕は信義にも友情にももとらないと思いますが、今の焦点に関連してはいかがですか、そういう公電がなかったですか。
  252. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 金己男氏はたしか四月の十八日に社会党の招待により日本に入国をいたしております。したがいまして、今先生の御指摘のとおり、大体金己男氏が日本に入ってまいりますときには中国を普通経由してくるのが当然でございますし、ビザは我が北京大使館で発給いたします。したがいまして、金己男氏が中国を通ったということは、十六、七日ころというのは十分当然だと思います。
  253. 秦豊

    ○秦豊君 十五日からですね。
  254. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 十五日からでございますね。  ウォルフォビッツと金己男氏が会ったという点につきましては、私率直に申し上げまして、今私の記憶に定かにありません。ただはっきり申し上げますが、金己男氏がその当時中国を通ったであろうということは申し上げられると思います。
  255. 秦豊

    ○秦豊君 お立場ですからね、直接話法はとれない、間接情報があなたの宿命かもしれないが、これはアメリカの国務省にも入っているんですよ、この報告が。報告したのは北京駐在アメリカ大使です。あなたは間接的に認められたが、ウォルフォビッツ氏と金己男氏は北京で会っているんですね。しかも十五日から十七日の間なんですよ。公電が入っているはずなんで、そういうことぐらいは僕は率直に実は、たまたま見過ごした中にあったかもしれませんとか、メー・ビー・ソーとか、まあアイ・ホープ・ソーじゃないにしても、何かそういうことが余り厳格でなくてもよろしいんじゃないですか、国会論議なんだから。違いますか。
  256. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 誤解を避けさしていただきたい。私、隠しているわけじゃございません、私の記憶が定かでございませんので、ちょっとそういう事実を調べさしていただきたいということでございます。
  257. 秦豊

    ○秦豊君 では調べて回答していただきますが、待望しますけれども、そんなものをたくさんある公電の、百本来ませんから、北京—東京は。あなたはちゃんと覚えていらっしゃるはずで、余り否定されなくともよろしいんじゃありませんか。確実に調べて、じゃそういう可能性については、たまたまタイミングも合うし否定はできないでしょう。
  258. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 調べるということはお約束さしていただきたいと思います。私、隠しているわけじゃ毛頭ございません。いささか私の記憶が大変悪いということだけでございますので、その点は。
  259. 秦豊

    ○秦豊君 不思議ですね。
  260. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) いやいや、本当に不思議じゃございません。御了承いただきたいと思います。
  261. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ちょっといいですか。たしかウォルフォビッツは私が四月十三日か、ワシントンにシュルツさんに会いに行ったとき、飛行場へ出迎えておりまして会談にもずっと参加して、それからその会談が終わって晩、夕方も一緒に参加をしまして、まさに朝鮮情勢について話し合っております。十三日、四日です。
  262. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。  わざわざ補っていただいて恐縮だったんですが、私はこれを米朝、日朝、米韓、それから中朝、こういう四つの位相が非常にこの五月に、安倍外務大臣が言われたように、南北会談の進展を焦点にしてかなり大きく四月から五月にかけて動意があったという一つの証左として私なりの観測を申し上げているわけなんです。  そこで、さっき同僚委員がお触れになりましたが、バンドンの会議のときに伊東正義元外相が北朝鮮側と接触をされた際に、私は東京の北朝鮮筋と中国筋とにこれは確かめた結果質問しますが、伊東正義氏に対して北朝鮮側は公式な意思を伝達していますね、今年八月十五日の解放四十周年のかなり大々的な記念式典に当たって御参列をいただけないかと、記念式典に。こういうインビテーションが、その場合は口頭か書面かは私知りません、しかし、それを伝達したということを、かなり私にとっては確度の高い、北朝鮮筋と中国筋が私に述べております。外務省は承知されていますか。
  263. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) バンドン会議での伊東元外相特使の、北朝鮮代表と会われたというのは 先ほど外務大臣から御答弁がありまして、主として北朝鮮と我が国との間の人道問題についての善処方要望ということをされたということは伺っております。それ以上のことは詳細、四十周年に云々という点は私定かには伺っておりません。したがいまして、伊東元大臣からもし仮にそういうあれがありまして、具体的にそういう前向きの御意向があるということになりますれば、当然そういう問題も御相談あろうかと思いますけれども、現時点においてそういうお話は伺っておりません。
  264. 秦豊

    ○秦豊君 これ安倍外務大臣に伺いたいんですが、私も日朝議連のメンバーですし、いろんな方がかかわっていらっしゃいます。今社会党はたしか田邊さんですか、団長で行っていらっしゃるんでしょう。  そこで、今ピョンヤン側といたしましては、日朝議連とか一部野党ではなくて、それはもちろん尊重いたしますけれども、より政権中枢に影響力を行使し得るハイレベルの人物の訪朝、正式訪朝を待望しております。これは在京の最も高いランクにある朝鮮筋の私に対する会話の中で出てきた話ですから、そんなことをフィクションで言う必要は毛頭ない立場です、その方は。  それで、政権中枢に影響力のある人物、どなたであってもいいわけですけれども、たまたまバンドンで接触をされた、意思を伝達した、じや伊東元外務大臣が、八月十五日であれその前であれそれを狭んでピョンヤンを訪問されるということは、今後の安倍外交、つまり日朝外交の積み上げの上で安倍外務大臣としても好ましくないとお考えですか、それともあらまほしいと、あってもよろしいし、むしろ歓迎すべきだと。どういうふうなお受けとめ方でしょうか、もし伊東訪朝が実現をするという場合には。
  265. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは伊東さんも、かつて訪朝された経験がありますし、そういう意味では向こうの人ともいろいろと接触もあると思いますけれども、まあ行かれるか行かれないかは御本人の問題であって、政府としましてこれに対してどうだこうだと言うのは差し控えた方がいいんじゃないか。まあやはり御本人の問題だと思いますね。
  266. 秦豊

    ○秦豊君 いろんな正常化の場合に、ちょうど僕は日中国交回復を一言論人としてやった場合と議員になってからといろいろありましたけれども、やっぱり無数の積み重ねが必要なんですよね。それからタイミングよく一番適当な方が訪問をし、それに一国の外交当局がシグナルを託する、意思を託するということはよくあるケースですから、もし仮に伊東訪朝がこの時期に実現をしたら活用をしていただきたいというのは一人の委員の希望です、これは。  ちょっと観点を変えますけれども、先ほど話題になりました金己男労働新聞主筆と社会党の石橋委員長が会談をされました。それでそこの霞が関でレセプションがありました。特に四月十九日に霞が関ビルで行われたレセプションの当夜、石橋委員長と金氏が別室で会談をしましたわけですけれども、そのときに、通訳が普通入る会談が通訳抜きで一対一で接触をされています。これは私の親しい友人の社会党の高いランクの人ですから、これも信憑性が高い。そのときに、その友人の話では、そこで中曽根総理も北朝鮮問題、日ソのみならず北朝鮮問題には大変意欲を昨今抱いていらっしゃると、石橋委員長を経由してそういう熱心な意欲の片りんが金氏に伝えられたということを私の友人は裏づけております。私は総理がそういう関心をお持ちなのは大変称揚さるべきであって、何もサミットや日米だけじゃないんですから。中曽根政治の展開の中で十分に、それはもしそうであれば評価に値すると思います。いわんや創造的外交を実践していらっしゃる安倍外交の中におきましてはやはり僕は対北朝鮮との打開、積み重ねについても具体的なアプローチを現実化されるお立場ではないかと思います。  私が今申し上げたようなことを含めて、安倍外交の中における北朝鮮へのアプローチというものは非常に長い道程の中で今後どのような積み重ねを考えて構想していらっしゃるのか、伺っておきたい。
  267. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、今私どもは日本外交として正面から取り組んでおります。基本的には朝鮮半島の緊張緩和、まあ最終的には南北統一に向かっての環境をつくっていく。それには、一番大事なことは南北の対話を促進していく。そのためのいろいろな、やっぱり要件を日本としてもできるだけつくるように努力する。こういうことでやっておりますし、そして、それに関してはアメリカあるいは中国との間でも緊密な連絡をとって行っておる。まあ正面からのそうした基本的な路線を着実に進めていきたい。これが極めて大事じゃないかと思うわけです。  幸いにいたしまして、南北の対話も徐々に進みつつあるわけでありますし、さらにまた、日本と北朝鮮との関係も人的その他の面で、経済、文化の面でぼつぼつこれまでやってきましたから、そういう方向で進んでおると、こういうことでありまして、全体的に一挙にこれは解決するといってもなかなか困難でしょうけれども、その大前提は何といっても南北対話、これが推進されることが極めて大事じゃないかと、こういう基本姿勢です。
  268. 秦豊

    ○秦豊君 今度田邊訪朝団もテーブルに出すんですけれどもね、実は。特派員の相互交換、対等原則、これははっきり出します。一人一人の団員が一つのオプションでやりますから、同時多発にやりますね。だから短い時間でもかなり煮詰まる。僕は、もうそろそろジャーナリストの交換あたりから始めて、貿易事務所という名前にこだわらないで、そういうものをピョンヤンー東京、それ的なものを、初期の日中貿易であったように、麹町にあったように、ああいうものをそろそろ具体的に展開の手順として考え始めてはどうか。この点については外務大臣、いかがですか。
  269. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日朝議連なんかでいろいろと今までも出た話なんですがね——。これから、どういう形で出てくるか見守っておきたいと、こういうふうに思いますが、しかし、同時にこれは民間レベルの交流ならそれはそれで結構だと思いますが、政府がこれに関与するということになれば、またその部面もあると思いますがね。そういうことになれば、これは政府なりに判断していかなきゃならぬ課題だろうと、こういうふうに思っています。今ここで軽々にそれに対する判断を述べる立場じゃありませんし、日本と北朝鮮というのは基本的に外交関係はないわけですから、今政府がこれに介入するという立場ではないわけですね。
  270. 秦豊

    ○秦豊君 もちろん初めは野党外交、民間外交、総合としての政府間交流、打開、こうなるわけですから、言葉を選ばれる時期であるとは思いますけれども、しかし、官邸だ霞が関だでなくて、安倍外交ですから、私は、はっきり正面から見据えて日朝の打開というものにかける意欲はやはり大臣も相当強く持っていらっしゃる。しかも、それを考えるにしては、構想するにしては、具体化するにしては、そう悪い周辺環境ではないというふうな考えはお持ちですか。
  271. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まあ状況は日々変わっていくでしょうし、全体の状況の変化を見詰めながら、ケース・バイ・ケースで判断をしていきたいと思います。
  272. 秦豊

    ○秦豊君 それから、これ違ったポイントですが、朝鮮問題ですね。  全斗煥大統領が先日訪米をしたときに、アメリカ側としてはくどいぐらい民主的政権交代というタイトルで、八八年にあなたはおやめになるということをブッシュさんあたりはレセプションで、夜までコンファームしていますね。  これは非常に重要な意味があるので、つまり僕はソウルオリンピックのことを大臣に伺いたいんですが、八八年のソウルオリンピックに南北両朝鮮が統一チームを組むとか、国旗の問題なんかは片々たる問題ですから、統一チームを組む。あるいは、IOCのサマランチ会長が七月にモスクワ を訪問するわけですが、これも南北の共同開催と。だから三十八度線の北側でもオリンピックのあるイベント、南側でももちろんイベント、それを全体としてオリンピック八八年という交渉でモスクワに行くようであります。つまり、南北分散開催の実現が交渉のテーマのようです。  そこで、八八年に全斗煥氏が退任をするということは、つまりピョンヤンとしてもあるいはモスクワや北京としても、北朝鮮をソウルオリンピックに参加させるときにピョンヤンの面目を失墜させないで参加させやすくなる大きな私はレールが敷かれることにほかならないと、こう思うわけです。  そこで、大臣に対する御質問としては、やっぱり我々日本としては、特に日本外交としては、ソウルオリンピックの成功のために努力をされると思いますが、成功の最大条件は南北の統一チームなんですね、目に見えますから。あるいは南北の分散開催ではないかと思いますが、安倍外務大臣としては、この八八年ソウルオリンピック成功のためには積極的にどういうアプローチをされるのか。北側への間接的アプローチを含めて、方針を、お考えを伺っておきたいと思います。
  273. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ソウルオリンピックについては、ぜひともこれは成功させたいと思います。日本としてもできるだけの協力を惜しまないものでありまして、今ソ連を初めとして一部の東側の国では参加できないというふうな、そういう情報も流れてきておるわけでありますけれど、日本は、ソ連を含めた東側の国とも友好関係を持っておるわけですし、今南北も対話が進んでおるという状況です。中国とはまた日本との関係も特別に深いわけでありますから、日本のそうした幅の広い外交努力をこれからも展開をして、何とかソウルでのオリンピックが全世界的な規模で開催できるように努力をこれからもひとつ積極的に続けてまいる、こういう決意であります。
  274. 秦豊

    ○秦豊君 最後一つだけ。  それは、焦点は南北分散同時開催あるいは統一チームの結成というふうなことを具体的なポイントにした協力ということと理解してよろしゅうございますか。
  275. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはIOCその他いろいろの関係があるわけでしょうし、南北ではやっぱり、あるいは話し合いがあるかもしれません。そういう状況を見ながら、日本としてこれが、どういう形がいいとか悪いとかということではなくて、とにかくソウルでオリンピックが行われるということがまさに全世界的な規模で実行できるように、どういう形にしろ、これは我々としても今予測できないわけですから、いずれにしてもとにかくソウルで行われるということを中心にして協力を進めたい、こういうふうに思っております。
  276. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二分散会