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説明員(今井忠君) お答えいたします。
昭和五十七年の第三十四回の国際捕鯨
委員会におきまして、三年間の猶予期間を置きました商業捕鯨の全面禁止の決定がなされました。もし仮にこの決定に従うといたしますと、南氷洋の捕鯨は、先日、四月に帰ってきた船団で終わりということになりまして、ことしの秋から出られない。それから、
日本の沿岸でニタリ鯨、ミンク鯨をとっておりますが、これにつきましては、来年四月から商業捕鯨ができなくなる、こういう事態でございました。
国といたしましては、同じ年の昭和五十七年十一月に商業捕鯨全面禁止の決定はいかにもおかしいということで、
異議を申し立ていたしました。
理由は三つございます。
一つは、
先生御
指摘のとおり、捕獲の頭数または資源というふうなものにつきまして検討してまいりますと、科学的根拠がないじゃないかということでございます。二つ目は、国際捕鯨取締
条約の
条約の精神と違うような決定である。なお、参考まででございますが、
条約の精神というのは二つございまして、鯨資源の
保存を図るということと、捕鯨に
関係する従事者の安定を図ると、この二つなんでございます。ですから、片方の点だけ見ているんじゃないか、こういうのが二つ目の
理由でございます。三つ目の
理由は、捕鯨の点につきましては、
日本に、それぞれ各地に伝統的な捕鯨基地というのがございまして、多数の
関係者がそれで生業を立てている。この影響を考えますと、商業捕鯨の全面禁止というのはいかにも不合理だということで、
異議を申し立ていたしました。
なお、
異議を申し立ていたしましたことによりまして、
条約上の
規定によりますと、その商業捕鯨全面禁止の決定に
日本は拘束されないということになります。しかしながら一方、アメリカは、
日本が商業捕鯨の禁止後も捕鯨を行いますと、アメリカの二百海里水域の中で
日本漁船が
活動しているその漁船
活動に対して漁獲割り当てをしているわけでございますが、それを直ちに半分にする、一年たってもやめなければ残りの半分もとってしまうという
国内法がございまして、それを発動するという強硬な姿勢をとってまいりました。
その二点を考えまして、アメリカ
国内法に
関係いたします日米
漁業問題の対立を避けるため、その他いろいろ日米
関係がございますが、今般四月五日の閣議におきまして、商業捕鯨全面禁止決定の発効をした後、さらに二年間効力が凍結されまして、その後、三年目以降に発効いたしますよという条件づきでこの
異議申し立ての撤回をしようという方針を決めていただいたわけでございます。IWCにつきまして商業捕鯨全面禁止の決定の見直しが行われない限り、南氷洋捕鯨につきましては、先ほど申し上げましたとおり、六十二年十月から、沿岸捕鯨につきましては六十三年四月以降、商業捕鯨は行い得ないということになります。
さらに、
先生から御
指摘ありました資源状態はどうなっているんでしょうかという問題でございますが、南氷洋のミンク鯨につきましては、現在の推測では二十六万頭以上いるだろうという推測になっております。捕獲枠の
勧告が、いろいろ検討の結果、本
会議で決定されました枠が四千二百二十四頭だということになりました。そのほかマッコウ鯨、それから
日本近海でとれますニタリ、
日本近海でとっておりますミンク鯨につきましても、科学者の間で資源の評価の一致を見まして、その資源の評価に基づいて捕獲割り当てが決定されております
関係上、私
どもといたしましては、現在程度の捕獲量が続けられたとしても、資源に重大な影響を与えることはまあないというふうに思っております。
以上でございます。