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1985-04-25 第102回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月二十五日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  四月十六日     辞任         補欠選任      伏見 康治君     和田 教美君      抜山 映子君     藤井 恒男君  四月十七日     辞任         補欠選任      佐藤栄佐久君     嶋崎  均君  四月十八日     辞任         補欠選任      久保田真苗君     和田 静夫君      藤井 恒男君     抜山 映子君  四月十九日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     久保田真苗君  四月二十四日     辞任         補欠選任      抜山 映子君     藤井 恒男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平井 卓志君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 久保田真苗君     委 員                 大鷹 淑子君                 後藤 正夫君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 秋山 長造君                 八百板 正君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 関  嘉彦君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房審        議官       斉藤 邦彦君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        経済企画庁調整        局国際経済第一        課長       吉川  淳君        科学技術庁原子        力局政策企画官  結城 章夫君        科学技術庁原子        力安全局防災環        境対策室長    千々谷眞人君        外務大臣官房審        議官       松田 慶文君        外務省経済局外        務参事官     木村 崇之君        水産庁振興部沖        合課長      中村 晃次君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国際原子力機関憲章第六条の改正受諾について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十七日、佐藤栄佐久君が委員辞任され、その補欠として嶋崎均君が選任されました。  また、去る十八日、久保田真苗君が委員辞任され、その補欠として和田静夫君が選任されました。  また、去る十九日、和田静夫君が委員辞任され、その補欠として久保田真苗君が選任されました。  また、昨日、抜山映子君が委員辞任され、その補欠として藤井恒男君が選任されました。     ─────────────
  3. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  久保田真苗君の委員異動に伴い理事が欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事久保田真苗君を指名いたします。     ─────────────
  5. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 国際原子力機関憲章第六条の改正受諾について承認を求めるの件を議題とし、まず政府から趣旨説明を聴取いたします。安倍外務大臣
  6. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいま議題となりました国際原子力機関憲章第六条の改正受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この改正は、昭和五十九年九月二十七日にウィーンで開催された国際原子力機関の総会において採択されたものであり、中華人民共和国の国際原子力機関への加盟に伴い、同機関理事会において、原子力に関する技術の最も進んだ加盟国として理事国に指定される国の数を九カ国から十カ国に増加するものであります。  我が国がこの改正受諾することは、国際原子力機関理事会において、原子力に関する技術の進んだ加盟国に対しそれに応じた地位を付与することにより同機関の円滑な運営を確保する見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  7. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 秋山長造

    秋山長造君 ただいまの議題に入ります前に、ちょっと一般的なことで御質問を簡単に申し上げたいと思います。  きのう、中国彭真委員長国会演説があったことは皆さん御承知のとおりですが、外務大臣も最前列で熱心に聞いておられたのを私拝見したわけですが、あの彭真さんの演説を聞かれて外務大臣はどういう御感想を持たれましたか。
  9. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり中国日本を非常にパートナーとして大事な国だと、こういう認識、そしてこれからも、長い歴史の中でいろいろなことはあったけれど、しかし今後ともこの緊密な、今が一番安定しているこの緊密な安定した関係をさらに持続し発展させたいという非常な中国側の熱意というものが彭真委員長の口を通じまして強く打ち出されたことを非常に印象的に思いますし、同時に、中国がこの経済開放体制、そういう中で経済建設に非常な力を注いでおる、そういう面での特に日本との経済協力というものに大きな重点を置き、そして中国日本が相補いながらお互い発展をしていく、中国日本お互いに繁栄、発展をしていく。それには競争もあるかもしれないけれども、むしろそういうことがアジアの平和と国際的な平和のために非常に大きな意味を持つものである、こういう趣旨の御演説であったようでありまして、やはり長い闘争歴史の中で、彭真委員長がまさに今日の段階において日本とそして中国との間の関係というものに大変な大きな期待をかけ、これを進めていこうという非常な情熱を持っておられるということに対しましては、私も一種の感動を覚えたような次第であります。
  10. 秋山長造

    秋山長造君 きのうの演説の中で「現在、中日両国関係はこの百年近くの間において、最も良い状態にあります。」こういう言葉がありましたが、私は非常に印象深く聞いたんですが、同じような言葉は実は一月の再開国会劈頭外務大臣外交演説の中にも日中両国関係は最も安定した状態にある、非常に喜ばしいというお言葉があったと思うんです。まあ期せずして日中両国最高責任者が同じような文言を演説の中で使われたということは、これは非常に印象深いことだと私は思ったんです。  それは結構なんですが、国際関係ですからただ情緒的なことだけでは長続きはしないと思いますので、やはり政治経済、まあ政治経済は申すまでもありませんけれども、国益だとか打算だとか、そういうことが大分入ってくるわけですけれども、そういうものを支えるものとしての学術文化面での一層深い交流というようなことの裏づけがぜひ必要ではないか。それらの点についても、今さら言うまでもないことですけれども、これはもう政府におかれましても十分配慮しておられるものと思うのです。まあその点を今後一層配慮してやっていただきたいということを、これは老婆心ですけれども特に申し上げておきたいと思います。  例えば、全く例えばの話ですけれども、留学生受け入れなんかの件をちょっと調べてみましても、案外日本中国留学生受け入れは数が少ないですね。アメリカあたりの十分の一程度じゃないでしょうか。まあ西欧諸国なんかに比べても、これだけ日中が最も良好な安定した国交関係を結んでおるということにしては、しかも同文同種というようなことを言いながら非常に留学生の数が少ないと思うんです。今日ただいまは、それでもいろんな関係日本を知っている指導者が相当現存しておられるからいいんですが、今外国へ留学している若い人たちが本国へ帰って、そしてそれぞれのポストについて、具体的な活動をやり出したときに一体どうなるんだろうかというようなことを考えますと、ちょっと多少不安なような気がするんですけれども、留学生受け入れなんかという面でもっと大規模な努力をされてしかるべきじゃないかという感じがするんですが、いかがですか。
  11. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにおっしゃるように、日本留学生受け入れ数は他の先進国と比べますと随分差があるように思います。例えばアメリカなんかおっしゃるように全体的に三十一万一千八百八十二名、日本は一万四百二十八名、国費留学生、私費留学生合わしてですが、そういう状況でありますし、フランスなんかでも十一万九千三百三十六人ということで、全体的に見ても低いわけで、そういう中で、もちろん中国留学生の中では多い方だとしても他国と比較すると圧倒的に少ないわけですから、これはこれからの日中関係を見れば、お互いに若い人たちお互いの国を知り合うということは大事ですから、力を入れていかなきゃいかぬということはよく国会の議論でも出ておりますし、私もそれは痛感をしております。  ただ、日本の場合は留学生は少ないんですけれども、研修生、特に民間研修生といいますか、民間企業等受け入れている研修生は相当多数に上っておるように思いますから、全体的に見ればやはり隣の国同士の、日本の中では隣の国としての中国のウエートが非常に重いんじゃないかと思っていますが、しかし他国と比較するとまだまだ貧弱である。これはこれからやはり積極的に重点を置いて進めていかなきゃならない政策一つであろう、こういうふうに私も同じような認識を持っておりますし、またこれからも努力を私自身もさしていただきたい、こういうふうに思います。
  12. 秋山長造

    秋山長造君 もう一々数字を挙げての細かい御質問はしませんが、かつて戦前、中国日本留学生の大多数といってもいいんじゃないかと思うんですけれども、中国へ帰って大体反日的な活動指導者になった人が非常に多い。それから東南アジア方面でも最近は多少改善をされているようですけれども、やはり日本に留学しただけのことがあるというほどの活動はなさっておらぬような話を聞くんですが、そういうことは日本へ留学したから何でもかんでも日本びいき活動してくれというのもこれは虫のいい話だけれども、やはり日本留学生受け入れ方あるいは留学生の扱い、こういうものを何か改善さるべき点があるんじゃないかという気がしますので、そういうことはもう私が言うまでもないことですけれども、わかり切ったことが割合実際には実行されませんので、十分そこらを配慮して、名実ともに今日の安定した状態、最善の状態と言われる状態言葉どおり子々孫々まで、そのためには余りこれに安住してはいかぬと思うんです。安心してしまって、もう日中関係は今さら何もせぬでも今のままでいいんだということでは、好事魔多しということもありますから、またどういう情勢変化でどうならぬとも限らぬ。  例えばこの間私、外務省から「最近の国際情勢」という地方自治体の広報責任者外務省へ集めて外務省の各局長さんがそれぞれの分担について講演をされた報告書をいただいたんですが、中国問題は全然ないんですね。よきアメリカ外交とかソ連外交とか東南アジアとか太平洋とか、何かはいろんな項目にあるけれども、アジア外交という中でも中国に触れたところは一ページ、ほんのもう序の口のようなことをまあどうでもいいようなことがちょっと書いてある程度で、ほとんどほかの地域のことを書いてある。ということは、つまりことほどさように日中関係はもう今さら特に取り上げる問題はないんだ、もう今のままでこれで最高なんだ、これでテンホーなんだということだと思いますんで、別に他意があって省かれたわけではないと思うんです、もうわかり切ったことだから今さらそんなことをるるくどくどしゃべる必要はないということで省かれたと思うんですけれども、それにしても一体不離といわれておるアメリカ外交なんかについては十ページ費やして書いてありますからね、だからそれほど日中関係に何にも問題がないということはないと思うんです。やはりああいう大きな、しかも複雑な多面的な大国ですからね、だから随分いろんな問題、複雑な問題をはらんでおる。中国外交というのはただ対日外交だけじゃありませんから、ソ連の問題もあろうし、あるいはベトナムの問題もあろうし、アメリカの問題もあろうし、ヨーロッパの問題、世界じゅうを相手にしている多面的な外交をやっている国ですからね、だからやはりこれは問題がないどころじゃないんで、安定しておるとはいいながらも一歩掘り下げると随分問題がある、あるいはあり得ると思いますので、そういう点については万々外交面でぬかりのない対処をやっていただかなきゃいかぬのじゃないか。  その一つとして最近の中ソ関係ですね、中ソ関係についてお伺いしたいんですが、ちょっと新聞が小さく報道したところによりますと、今月の初めからつい二十二日まででしたかね、モスコーで第六回の中ソ次官級協議ですか、何か行われておったようですがね、二十二日に打ち上げになって、今度は次は北京で七回目を秋やるんですか、何かそういうことがちょっと出ていましたがね、昨年の十二月末でしたか、アルヒポフですか、第一副首相久しぶり北京へやってきまして、それで経済技術協定ですか、何かを結んで帰ったことを記憶しておるんですが、そこらをきっかけにしまして最近の中ソ関係というのはかなり進んでおるんじゃないかというような情報も聞くんですけれども、それらの点について何か今おわかりの点があればちょっとお答えいただきたいと思います。
  13. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに日中関係につきましては、やはり関係がいいからといって安住しておってはいかぬと思うんですね。また、日中関係というものについてはやはり常に国民にも理解を求めていかなきゃならぬし、体制も違った中でのこうした関係ですから、いろんな面で注意深くこれを育て上げていかなきゃならぬと私も思っております。しかし、私自身中国との関係が一番いいんだということを常々申しておりますが、中国彭真議長がみずからこれを認められたということはまさに両国のそうした日中関係に対する認識が一致しておるということで、これは大変すばらしいことだと思っております。これはおっしゃるような努力を、いいからといって安住しないで努力は重ねていきたい。外交努力はいろんな面において、やはり問題は何もないわけではもちろんありませんし、いろいろと情報交換とかそれからやはりお互い外交面の接触というものはもっと緊密にしていかなきゃならぬ、こういうふうに私も思っております。  それから中ソ関係につきましては、確かに変化兆しが私はあるんじゃないかと思います。次官級会談もずっと続いておりますし、アルヒポフ首相もやってきた、あるいはまた中ソ外相会談も昨年は久しぶりに国連で開かれたということでありますし、今度のチェルネンコソ連書記長の葬儀の際も李鵬首相ゴルバチョフ書記長会談をしておりますし、さらにソ連に対する中国最高首脳発言にも微妙な変化も出ているように思います。これまでは三条件といいますか三障害が一挙に解決しないと中ソの国家間の改善というものは、本当の意味での友好関係というのはあり得ないということを何度も言ってきておりましたけれども、一つずつだっていいじゃないかと、こういう趣旨発言も出ておるようでありますし、そんな状況。あるいはまたベトナムソ連のプレゼンスもこれを認めてもいいんだというふうな趣旨発言もありましたし、そんなところを見ますと私は中ソ関係にも変化兆しが出ておるんじゃないか、これはどういう方向になっていくかちょっと我々、推測は非常にしにくいわけですけれども、しかしとにかく相当動きがあるな、動きが出そうだなという感じは持っておりまして、大変注目をしておるわけであります。  しかし、これから進んでいくでしょうが、一挙に昔のようないわば同盟関係といいますか、そういうところに返っていくということは、今の中国自主路線といいますかそういう点から見まして、そういうことにはなり得ないんじゃないか、しかし今よりはもっともっと経済の面だけじゃなくて政治の面でも変化も出てくるし、いろいろな動きが出てくるように私は感じ取っておるわけです。率直な私の印象でございます。
  14. 秋山長造

    秋山長造君 例えば日本なんかのような島国で全然かけ離れておる国同士関係だと、首脳会談だとか巨頭会談だとかというような非常に派手な場面で国交が悪くなったとかよくなったとかいうようなことがはっきりわかるわけですね。ところが、中ソなんかになるとあの長大な国境を接して、場所によってはどっちの領土やらわからぬようなところがいまだにあるようですがね。ですから、もうしょっちゅう隣の村へ行き来するような状態で、国境を越えていろんな交渉があるわけでしょう、日常。だから、そういう国際的には自立たない、マスコミなんかの面には全然浮かび上がってこないようなごく日常的な面でいろんな積み重ねというものがあるわけだろうと思うんです。ですから、ただ国際的な非常に目に立つ派手な出来事だけを追っておりますと、中ソ関係なんかいうようなものは非常に大きなミスをやる場合があると私は思うんですね。  例えばひところダマンスキー島事件ですか、何か黒竜江――アムール川の川の中の島の領有権をめぐって激しくやり合ったりしたことがありましたね。ああいう直接中国が痛みを感ずるような事件というものは近年全然ないわけですね。むしろどちらかといえば、そういう国境紛争なんかはなくなってしまって、割合平和的にそれぞれの地域で行き来をしておる状態のようですね。  それから、例えばモンゴルと中国との関係はひところ非常に国交断絶したままの関係だったようですが、最近はまた非常にこれは改善されつつあるような話を聞くんですけれども、そういうこと。それから、さっき大臣のおっしゃったようにベトナムなんかとの関係もひところの険しい関係とは少し和らいてきた、いろんな融和的な傾向が出てきているように思えます。そういうことから考えますと、それからもう一つは、中国のこれは余り名前を挙げて立ち入って申し上げるのもちょっとどうかと思うんですけれども、例えば今の中国外交関係なんかを担当しておられる呉学謙外相を初めとして大体過去の経歴からいいまして、親ソとは言いませんけれども知ソですね、ソ連を知るという、知ソ派と称したらいいのかどうか、どっちかといえばいろんな過去の経歴からいってソ連の事情に非常に詳しい方がずっと今のソ連モスコーへ行っておられる、次官会議へ臨んでおられる何とかいう次官がおられましたね、銭其シンさんですか、何かああいう人も大体そういうモスコー育ち、モスコー大学かどこかで勉強したような人なんですね。それから鄧小平さんにしても、きのう演説されたホウ真さんにしてもいわゆる劉少奇路線と言われた人でしてね。それから千九百六十何年でしたかモスコーへ乗り込まれて理論闘争の口火を切られた当事者でもあるわけですけれども、しかしまたその反面、理論面では論争されましたけれども、毛沢東主席のようにもう金輪際ソ連は許すべからざるかたきだ敵だということじゃなかったと私は思うんです、やはりイデオロギー論争はやったけれども、しかし基本的には話し合いが十分できるという関係はずっと持ってこられたような立場の人たちだと思うんです。  だからそういうようなことをずっとつなげて考えてみますと、これは全くの想像ですから、こういう微妙な国際問題なんかについてむやみなことは言うべきじゃありませんが、ただ転ばぬ先のつえでね、余りこっちがもうへソテンでね、ああもう日中関係はこれでいいんだ、いいんだというような調子で安住し切っておりますと、ある日突然びっくりするようなことが出てこぬ保証はないと思うんです、国際関係については。ですから、別に中ソが手を握ることが困るといっておるんじゃないですよ。それはどこの国だってけんかするよりは仲よくしてもらった方がいいに決まっておりますけれども、しかしまた反面から言いますと、日本のグローバルな外交戦略といいますか何といいますか、そういう面から考えると、いわく言いがたいいろんな影響というものは出てきますからね、ですからそれ以上は申しませんけれども、やはりいろんな民間団体がそれぞれの出先中国の各地へ置いているわけですから、マスコミ関係を初めとしていろんな筋を通じて情報は入ると思いますけれども、一番基本的なしかも権威を持った、責任を持った情報というのはやはり外務省出先でしょうからね、その点はひとつ万々抜かりのないようにあらゆる方面の細かい情報というものに注意していただいて、外務大臣がある日びっくりするようなことの起こらぬようにひとつ今からお願いしておきたい。  と申しますのは、私は今も覚えているんですが、イラン革命が起こったときに、あのパーレビ王朝が倒れたとき、名前は申しませんけれども、あのときの大使なんかは随分私は大きな失態があったんじゃないかと思うんですね。あのイラン革命パーレビ皇帝が追放される直前にNHKの政治討論会かなんかへ当時の大使が出られて、そしてイランの問題について評論家学者先生かが、イランは危ないんじゃないかというようなことをしきりに問いかけられたときに、いやそんなことはないです。それはもうイランの王政がひっくり返るなんていうことはとんでもないですというようなことを言うて、頭からそれを否定されたのを私はいまだに覚えているんです。その舌の根も乾かぬうちにあんなことが起きて、転覆してしまって、これはどういうことかな、日本外務省というものはどういう情報を集めておるんだろうかと思って、私は非常にびっくりした記憶があるんですよ。たしかそういうことがありましたよ。そのときのことを今蒸し返すわけでも何でもありませんけれども、やはり外務省出先機関情報収集ということがいかに大事かということを私は本当にそのとき痛感した。  それで、当時、園田さんだったか外務大臣をしておられたと思うんですが、そのとき私は個人的に大臣へ、きちっと中近東東南アジアあたり情報網というか、外務省出先機関というものをもう少し充実されたらどうかと。ヨーロッパとかアメリカの方のことはいろんなルートを通じて情報が入りますけれども、中近東東南アジア、まあアジア関係情報というのは、これはなかなかいろんなルートから入るというわけにいきませんので、やはり私は外務省出先機関というものをしっかり充実して、そしていやしくもそういうあけてびっくりというようなことの万々ないように特に注意していただかなきゃいかぬのじゃないかという気がするんです。  これはまあ外務省の人事の問題にも関連してくるんですけれども、やはり表街道と裏街道が、これはあるべからざることだし、あってはならぬことだけれども、事実上ないということは言えぬので、だから日本の身近なところ、アジアだ、アジアだ言うて、自由国家の一員であるとともにアジアの一員だということを総理大臣外務大臣も事ごとに強調しておられるぐらいですから、そういう情報収集といいますかね、いかなる場合も細かい情報まで正確に外務省が握っておる、大臣が知っておられるということが、本当にこれからますます重要になるんじゃないか。いかがでしょうか。
  15. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは全く私もそう思います。今、国際的に世界が非常にある意味においては小さくなった。そういう中で、情報というのがまさに大きな外交を動かす要素でありますし、情報の受けとめ方、あるいは情報によっては国益を損なったり、あるいはまた国として大きな損といいますか、マイナスに直面したりすることがあるわけですから、情報というのはまあ外交では非常に大きな要因、要素だと思います、外交を進める上において。そういうことはこれまでも苦い経験に照らして、外務省としましてもそうした情報収集能力というものを、あるいは情報収集体制というものをいろいろと整備しております。  十分ではないわけですが、昔と比べますと随分このごろ情報収集能力も出てきましたし、その体制も進んだと思います。いろいろと予算措置等で我々、なかなか今財政再建との絡みで難しい点もありますけれども、随分進んでいるように思います。対外的の情報も、そして外交、在外関係情報も、随分膨大な量になっていますが、最近では相当アメリカやあるいはまたその他の先進国にないような情報日本にも集まってくるようになって、これは日本の幅広い外交の成果でもあろうと思いますが、時には諸外国を驚かしておるような日本情報能力というのも出ておるわけで、外務省情報調査局を新設しまして、今情報がいかに外交にとって大事かということを含めた外交というものを進めておるわけでありまして、これはおっしゃるようなまさに情報化時代に入ったと、情報外交といいますか、そういうものが非常に重大であるということは痛感をしております。
  16. 秋山長造

    秋山長造君 それからもう一つは、アジアの問題をお尋ねしたいんですが、きのう、きょうバンドン会議の三十周年記念式典が行われていますね。八十二カ国の代表、八十二カ国といいますから世界の大方過半数になるんでしょう。その代表が集まって盛大な式典をやっているわけですが、日本からは伊東さんが特派大使で行っておられます。その集まった八十二カ国のうちの、特にアジア、アフリカのほとんど半数近い国が外務大臣あるいは現職の大臣が代表団長で乗り込んで、なかなか活発な式典外交を展開しておられるようです。  私はどういう事情か御都合か知らぬけれども、感じとしては、安倍外務大臣に行っていただきたかったと思うんですよ。前外務大臣が行かれてそれはそれでも結構なんですけれども、やはり現職の外務大臣が代表団長で乗り込まれるということはまた別な意味が含まれる。特に大臣は、今までイラン・イラク紛争なんかについても非常に活発な指導的な外交をやられて非常に国際的に評価されておられるわけですし、またアフリカにも昨年行かれたりして救援外交といいますか、アフリカの飢えに苦しんでおる国々に救援の手を差し伸べるという人道的な外交を展開されて非常に評価されておる、感謝もされておられるようなんで、そういういきさつがあればなおさらのこと、バンドン会議外務大臣がみずから代表団を率いて参加されて、そしてその機会にさらにアジア・アフリカの親善友好関係を深めるとか、あるいは国際的ないろいろ紛争の多い地域でもありますから、その紛争の解決のためにできる限りの努力をされるという場として非常に、二日でもありますし、バンドンですから行って帰るにはきょう行けばあさっては帰れるぐらいな距離ですし、ぜひ行ってほしかったと思うんですが、本当にいいチャンスを逃されたんじゃないかという気がするんですが、いかがですか、これは。
  17. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もぜひとも行きたいと思っていましたけれどもとうとう行けませんで、伊東さんにかわりに行ってもらいました。しかし、伊東代表も向こうで各国の外務大臣に会っていろいろと貴重な意見交換をしておられますし、呉学謙外相もインドネシアに行っていますし、インドネシアの外相とも会談をしている。中国とインドネシアが国交断絶という中でこうした両国の外相が会うということも、今度は確かにやはりアジアの中で非常に大きなまた動きが出てくる可能性を秘めておると思いますし、またベトナムあるいはカンボジア問題、そういうものに関連したいろいろな動きもバンドン会議の中で出てくるのではないかと思っておりますし、中東等も相当現職の外務大臣等も来ておりますから、そういう意味ではいい機会でもあったと思いますけれども、なかなか日本外務大臣は非常な、日程的にいろいろな面で制約されておりまして、思うような活動ができないこともあって残念に思います。しかし、伊東さんに大いに活躍してもらっておりますので、それなりの成果は上げることができる、このように思っております。
  18. 秋山長造

    秋山長造君 今回のことは言ってみても仕方のないことですけれども、やはり太平洋・アジア外交というのは大臣も、総理大臣も施政方針演説でも外交演説でも随分強調しておられました。それはまあそのとおりだと思うんですが、それは実行に移す場合の最大の一つの大きいチャンスだったと私は思うのです。だから今後ひとつそういうチャンスをできるだけ逃さないように生かして使われるようにお願いしておきたいと思います。どうしても明治以来の福沢諭吉の言った脱亜入欧というんですか、アジアを脱してヨーロッパに入る、脱亜入欧というような感じがやはりそれはいかぬといいながらもいまだにいろんな面で言わず語らず出ていることは否定できないので、だから行かなかったんじゃないかというわけじゃ決してないんですよ、それはないんだけれども、どうしても日本外交の面でも皆さん善意でやっておられることはよくわかるんだけれども、やはり過去からの惰性というか慣習というか、慣例というか、伝統というか、そういうものでどうしてもまずアジアやアフリカの問題よりは欧米の問題、そういうことでどうしても何か重点が行きがちなんで、それは重点が行っても構わぬのですけれども、決してだからといってアジア、アフリカを軽く見るとか忘れるとかということになってはこれは大変なので今後ひとつそういう面についても十分一層考慮していただくことが、また安倍外務大臣としての創造外交というんですか、おっしゃっておるような趣旨を生かしていくことにも私はなると思うのです。だからこれは世論も支持すると思います。日本の世論はそれはそういう外交を支持すると思いますよ。どうぞぜひ今後十分御考慮願います。  それから、この機会にボン・サミットのこともちょっと聞きたかったんですけれども、もう私の与えられた時間がはるかに超過しましたのでほかの方に譲りますが、どうぞひとつ十分所期の目的を達せられますように元気で出かけられるようにお祈り申し上げます。ありがとうございました。
  19. 久保田真苗

    久保田真苗君 初めに、きようの議題でございます中国を先進グループの理事国に指定するために国際原子力機関憲章第六条の改正を行う、そして九カ国から十カ国に改めるということにつきましては何ら問題はないと思いますし、また外務省としてもIAEAの円滑な運営を確保するため有意義である、こう言っておられるわけですが、念のために中国がこういう処遇を受けて理事国を務めますとどのような有意義な役割を期待されることになりますでしょうか。
  20. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) お答え申し上げます。  中国が昨年の一月にIAEAに加盟いたしましたが、中国をこの組織に加盟させる、あるいは迎えるということ、それ自身は非常に大きな意義のあることでございまして、中国加盟した結果意義ある原子力活動を行っている国はすべてこれにて原子力委員会のメンバーとなったわけでございます。かつ、中国が従来より一貫して原子力活動に国内的に従事してきて、技術発展段階が極めて卓越していることも国際的な常識でございまして、このような国を先進国として指定理事国とすることは、原子力機関の普遍性の向上のために極めて意義があるというのが一般の認識でありまして、すべての国から支持を得て、このような理事国の指定となったわけでございまして、原子力機関の評価、さらにはこの機関を通じての平和的利用の向上のために貢献するものと信じております。
  21. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、後で時間がありましたらIAEAの当面の懸案事項とか、それから原子力の問題についていささか御質問したいと思いますが、その前にちょうどこれからボン・サミットへおいでになりますので、これにつきましてちょっと御質問しておきたいと思います。  サミットの議題が決まったようなんですが、今回はどんなことが主要なテーマになりますでしょうか。
  22. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 議題については大体整理もされてきておりますが、サミットは本来経済サミットと言われるものでありまして経済が中心ですけれども、しかし最近では政治問題もだんだんと論議の場が、論議の分量がふえてきているようにも思います。  そういう中で、経済についてはこれまでサミットで一貫してとってまいりましたインフレなき持続的な経済発展お互いに相協力して進めていこう、自由貿易体制を推進していこう、こういうことが一つの大きな基本路線としてさらに再確認をされるということになっていくと思いますが、そういう中で例えば具体的な論議となるのは、今日本に存在しているところの大幅黒字の問題、市場アクセスの改善の問題、さらにアメリカのドル高、高金利の問題あるいはまたヨーロッパを覆っておるところの経済調整の問題、構造調整の問題、そういう点がいろいろと議論にもなってくるんじゃないかと思います。  あるいはまたニューラウンドについて日、米、カナダとECとの間には多少意見のずれがありまして、この辺のところがどういうふうに調整されるか、日本アメリカもカナダも来年早々に交渉を開始したいということを提案しておりますし、ECは交渉には別に反対をしているわけじゃありませんが、できるだけ早くということを言っておりまして、その辺の調整問題もあると思います。特に、ニューラウンドの交渉を開始するということは結局保護主義をいかにして抑えるか、そのための、いわゆる歯どめとしての大きな意味を持つわけで、これは相当議論されるのじゃないかと思います。保護主義との関連で。  さらにまた南北問題、これもずっとサミットは取り上げられてきておりまして、各国の南北問題に対する基本姿勢あるいはまた経済協力、開発意欲に対する経済協力についての対応、あり方、そういった面が議論にもなってくるだろう、そういうふうに思います。  また、南の債務累積問題もいろいろと議論されることになるでしょうし、特にそうした累積債務問題の論議をするときには、やはり金利の問題、先進国からの貸し付けておる金利の問題、そういう点を含めた通貨のあり方とか、そういうことも何か議論になる可能性もあるんじゃないか、こういうふうに思いますし、いろいろと経済問題では今問題が山積しているだけに議論は尽きないと思っておりますが、非常に短期間でありますから、今申し上げたようなところで大体焦点が決まってくるだろうと思います。  政治の問題では、ちょうど戦争が終わって四十周年を迎えまして、ドイツのボンで四十周年目に今のサミットが行われるということで政治宣言を出そうということが決まっておりまして、これはドイツが議長国ですからドイツの主導のもとに行われるわけでございますが、この政治宣言については、やはり戦争が終わって四十年たって、そういう中で戦勝国も戦敗国もかつての戦争の惨禍といいますか、そういうものに思いをいたしながら同時に、今日自由主義だとか民主主義というものの価値観を共有しているという立場に立って、これからも相協力して世界の平和と安定を図っていこう、こうした基本的なラインで政治宣言がまとめられると思っておりますし、あるいはまた今大きな政治問題としては米ソの核軍縮交渉が始まっております。あるいは、米ソの首脳会議も行われるという予測もあります。  こうした米ソの関係、さらにまた東西関係、そういう点もやはり政治の議論の課題だろうと思いますし、この米ソの核軍縮に絡んだSDIの問題もこれは議論になると私は思いますし、あるいはまたアジア情勢としては朝鮮半島の情勢、あるいは先ほどお話しいたしました中ソ関係、さらにカンボジア問題、中東ではイラン、イラク、さらにまたレバノンの問題、そうした問題等が恐らく議論になるんじゃないかと、こういうふうに思っております。  アフリカの問題も、非常にアフリカが苦難に直面をしているだけに当然サミットで取り上げられる課題であろうと、こういうふうに思っております。
  23. 久保田真苗

    久保田真苗君 今ちょっとSDIのことをおっしゃいましたが、SDIにつきましては取り上げについていろいろと報ぜられておるんですが、これは議題あるいは処理の位置づけというんですか、それについてのお見通しはいかがでございますか。
  24. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) SDIは非常に世界的な議論を呼んでおります。アメリカはレーガン大統領を中心にしてこれを推進したい、そうしてぜひともサミット参加国の支持を取りつけたいという気持ちが非常に強いんじゃないかと思いますけれども、まだしかしこれについては、ヨーロッパサイドもSDIに対する態度を明らかにしておりませんし、日本日本で今研究に理解は示しておりますけれども、SDIのこれからの問題についてはいろいろと専門家の意見を聞いておる、こういう段階でありますし、なかなか議論としては恐らくアメリカ側から出てくると思いますけれども、何かまとまったものになるかどうかということについては私は、これは見通しとしては、私個人の見通しを申し上げれば非常に難しいんじゃないか、こういうふうに思います。
  25. 久保田真苗

    久保田真苗君 政府がかねて要請しておいでになったSDIのアメリカの専門家のチームが来日いたしましたですね。国防総省SDI局というんですか、ヨーナス次長代理以下五名と報ぜられているんですが、この来日のメンバーと、どういう御専門なのか、あるいは責任を持っていらっしゃるのか、そんなことについてちょっとあらましをお聞かせいただきたいと思います。
  26. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 今般来日いたしました一行は、委員御指摘のヨーナスという国防省のSDIオフィスの次長代行、これは技術の方の専門家のようでありますが、この人を団長といたしまして国防省からほかに三人、それから国務省の政治軍事局というのがございますが、そこのやはり次長代行のゴードンという人が参りまして、一行全体で五名でございました。国防省から参りましたほかの三名のうち一人は情報関係の担当官でございまして、これは主としてソ連が弾道ミサイル防衛との関連でどういうことをやっているかというアメリカとして把握している情報の説明を行うために来日したものであります。それから、国防省から参りましたもう一人ファーニスというのは、国際安全保障政策局というのが国防省の中にございますが、そこの局に属しておる担当官で、これと国務省から参りましたゴードンという人が専らSDIの政治戦略面についての説明を行う、こういう構成で参った次第でございます。
  27. 久保田真苗

    久保田真苗君 二日間にわたって外務、通産、防衛、科学技術、各省庁の担当者がお会いになっているそうですけれども、アメリカ側の説明とそれから質疑応答等についてひとつ詳しくお聞かせいただきたいんですが。
  28. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) おとといから始まりまして昨日まで説明、意見交換がございまして、私自身もまだ説明の内容を詳細につきまして十分に分析しておりませんのでその点御理解いただきたいと思いますが、先方が行いました説明のポイントを申し上げますと、一つアメリカが考えておりますSDIの研究の内容につきまして主として技術面からかなり詳細な説明があったということでございます。  それから第二点といたしましては、その研究を行っていく上でのアメリカの国内の国防省の中の体制、それから予算の関係がどういうふうになっているかということ、予算の関係につきましては従来既に公表されておりますので、その点の確認の域を出なかったというふうに承知しておりますが、そういう体制、予算面の説明。  それから、先ほど申し上げましたようにソ連がどういうことをやっているかということをアメリカなりに把握している情報、それから従来から種々の機会にアメリカが説明をしているわけでありますが、そういう戦略面でのアメリカのSDIについての考え方というものを体系的に説明をした、こういうことでございます。
  29. 久保田真苗

    久保田真苗君 項目はお挙げいただいたんですが、それじゃ新聞情報から伺いますけれども、このSDIの技術面については、エックス線レーザー兵器のエネルギー源に核エネルギーを、核爆発を応用する、そういう方法を研究しているということを向こうが説明されたわけですね。その事実はどうですか。
  30. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは私も技術の専門家ではありませんので余りうまく御説明ができるかどうかわかりませんが、向こうがいろいろ研究をしておる技術の分類といたしましておおむね四つぐらいの分野を挙げて説明したというふうに承知しております。一つは探知、いわゆるミサイルを探知し捕捉して識別することに関連する技術、それから二番目は照準追随等に要する技術、ミサイルを追っかける追随でございますね、追っかけるのに要する技術、それから標的を破壊するために必要な技術、それから全体のシステムを運用する、いわゆる戦闘管理技術と称しておりますが、そういうカテゴリーの技術、そういうものに分類をして説明を受けたということでございますが、その中の標的の破壊との関連で今次国会におきましてもいろいろ御質問がありましたこともありまして、私どもも関心を持っておりますので、そのいわゆるエックス線レーザー兵器というものについてはどういうことを行っておるのかという質問をいたしました。  それに対しまして、先方はあくまでも、これは従来レーガン大統領から総理にも御説明があったことでありますが、アメリカの考え方としては、非核の防御的手段というものによるSDIというものの研究を行っていく、これがあくまでもアメリカの基本的な考え方である。しかしながら、エックス線レーザー兵器、要するに核エネルギーというものを使用するエックス線レーザー兵器というものにつきましては、ソ連がいろいろ研究を行っておるということをアメリカとしては情報として得ているので、アメリカとしても一応そういう種類の兵器については研究を行っておく必要があると考えて若干の研究を行っておる。しかしこれは、今アメリカが考えているSDIの研究の中に占める位置というのは非常に小さいものである。あくまでもソ連が行っておる研究というものに対応してアメリカもそれなりの知識を持っていなければならないという考えから行っておる研究であって、全体の研究としてはあくまでも従来から言っておるように非核の手段による防御システムの研究というものが基本である、こういう説明であったというふうに承知しております。
  31. 久保田真苗

    久保田真苗君 理解を示されたときに総理も、要するに日本の平和憲法、非核三原則というようなものは持ち出されて、そういうものとの関連を重視しておられることは間違いないと思うんですけれども、大臣、どうなんでしょうか、こういう兵器であることは間違いない、しかも核爆発をエネルギー源として使っていく兵器になっていきそうな、そういう方向にだんだん進んでいくおそれがあるということはやはりお認めになるわけですね。
  32. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 従来からも言われておることでありますが、そういう種類の兵器システムというものをミサイルを破壊する手段として理論的に考えられる、こういうことでアメリカも研究を行っておるということが文献に出ておるわけでございますが、これはただいままさに委員御指摘のような観点から、私どももアメリカのその非核と言っておりますSDIのシステムの中でどういうふうに位置づけられるかということについては当然のことながら関心を持っておるわけでございまして、そういう観点からアメリカ側に説明を求めたということでございます。  それに対するアメリカ側の返事と申しますか現状の説明は、先ほど申し上げたようなことで、アメリカとしては基本的にはあくまでも非核の手段による防御システムというものを考えておるということで、レーガン大統領から総理にありました御説明の基本のラインというものは、今回来ました専門家のチームによっても改めて確認をされた、こういうふうに理解をしてよろしいんではないかというふうに思っております。
  33. 久保田真苗

    久保田真苗君 もう一つ関心を呼んでいるのは、このかかる経費の問題なんですが、今回必要な予算を説明したとありますけれども、これは幾らとおっしゃっているわけですか。
  34. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 基本的には、これは従来からアメリカ政府が公表しておる数字でございまして、今年度八五会計年度では、議会で承認されました予算十四億ドル、それから来年度につきましては、八六会計年度につきましては、議会に対して現在三十七億ドルというものを要求しておるということでございまして、全体として今後五年間で二百六十億ドル、この数字も従来出ておる数字でございますが、二百六十億ドルというのを五年間で研究につぎ込んでいきたいと、こういう考え方のようであります。
  35. 久保田真苗

    久保田真苗君 五年間で二百六十億ドルでございますか。ただ、この国防省の国防次官などがSDIの例えば大型コンピューターシステムだけでも三千億ドルかかるといったような発言をしておられるという報道がございますけれども、これでございますとコンピューターシステムだけで日本円で七十五兆円もかかるような計算になりますね。こういう点につきましてはこちらから質問なさったんでしょうか。
  36. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私は今委員のお挙げになった数字を必ずしも承知しておりませんが、従来から非常に膨大な金がかかると言われておりますのは、むしろその開発、配備段階に入った場合にどれだけの金がかかるかということで種々の推測的な数字が挙げられて、その中には相当天文学的な数字もある、こういうことだろうと思いますが、私が今申し上げましたのは、現在アメリカが研究段階においてどれだけの予算をアメリカの行政府として、主として中心は国防省でありますが、国防省が投入したいと考えている数字として五年間で二百六十億ドル、こういうふうに御理解いただければよろしいんじゃないかと思います。
  37. 久保田真苗

    久保田真苗君 その予算も恐ろしいけれども、この先はなおさら恐ろしいという感じがするんですが、大臣にお伺いしたいんですが、この二十二日に野党党首との会談でこのSDIの問題が出ました。総理は、SDIについては慎重に対処するとはおっしゃっているんですが、このサミットに向けての問題として、技術的研究よりも戦略的、政治的バーゲニングパワーを重視するというふうにおっしゃっていると伝えられているんですね。それで、この点は外務大臣の御認識はどうなんでございましょうか。
  38. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) SDIについては、これは総理も私もロサンゼルスの首脳会談において、いわゆるSDIというのが弾道ミサイルを無力化するんだと、これはあくまでも防御的な兵器であるし、非核兵器であるし、最終的には核の廃絶につながるものであると、こういうことで、日本としてこのSDIの研究に理解を示したわけでございますし、日本も御承知のようなやはり核廃絶というのが日本の理想ですから、そうした防御兵器が発達して核兵器というのが無力化して核がなくなってしまうということは、非常に世界の平和というためにも、また日本が主張している、理想としているところの核廃絶というためにも好ましいことである。そういうことで、レーガン大統領のそうした発言に対して理解を示したわけです。しかし、非常に長期的なこれは構想ですから、果たしてこれからどうなっていくかということはよくわからない。ですから、その間におけるいろいろな技術の面についての情報も得たいし、また場合によっては協議もしなきゃならぬということを言っております。実は、SDIそのものに対して最終判断はいたしておらない、いわば留保をつけた理解ということを示しておるわけですけれども、今第一回目のアメリカ技術者の話を聞いた段階においてもまだまだ、これからいろいろと研究が進んでいく中でもっともっと我々としては聞かしてもらわなきゃならぬことがあると思います。そこで、今の段階で日本が理解以上に進むというふうなことは私はなかなか困難ではないかと思いますし、さらにヨーロッパのサイドも御承知のように、まだSDIに対しては結論が出ていないということでございますし、いずれにしても非常に長期的な構想ですから、これはやはり十分研究をして慎重に、そして最終的には、いろいろの日本の国としての原則も踏まえながら、政策も踏まえながら自主的に決定をすべき事柄であろう、こういうふうに思っております。  ですから、私の見通しとしては、私個人の見通しになるわけですけれども、今回は確かにレーガン大統領は非常な熱意を持ってお述べになるかもしれませんし、その可能性もあるかもしれませんが、しかしまだまだSDIそのものが熟した状況にないわけですから、サミットで何らかの結論を、サミット参加国がこれに対してはっきりした結論を出すということはなかなか難しいんじゃないだろうかという見通しを持っております。
  39. 久保田真苗

    久保田真苗君 今回のアメリカの専門家からヒアリングをされたことによって全般的な判断材料がおできになったわけでもないと思います。ですから、大臣も言われるように、これからまたいろいろと御検討なさるんだと思いますけれども、しかしアメリカの方が非常に熱心であり、かつ西側の国としても客観的にいろいろと比較考量、考えて、これが宇宙軍拡にどういう影響を及ぼしていくのか、またそれぞれの国の国益に照らしてどうなのかということを判断する前に、実際にはいろいろなこの研究開発についての受注競争が始まって、今やもう冷静を欠いた、非常に正気のさたでないような、そういう経済界の動きアメリカに起こっているとも聞きます。そういたしますと、私どもとしては、ここでどうしてもこういうものに巻き込まれていって軽率な踏み切りをするというようなことだけはしていただきたくないと思うんです。特にアメリカは財政赤字のことを言っておりますけれども、日本も負けず劣らず財政赤字でございまして、特に国民生活に重要ないろいろな、年金の問題でございますとか、すべて給付水準など切り下げているような状況でございますから、私はやはり国の台所の米びつが空になり、かつ借り米までしているという、このことを考えていただかないわけにいかないと思うんです。先のどれだけかかるかもわからない天文学的数字を挙げる説もたくさんある。そういう中で、そのことだけを考えたって、これは容易ならざる事態だと、そんなふうに思います。  ですから、いろいろな国の予算をねらえといったような動きが産業界に、現にアメリカでは起こっている。日本でも、そういうことから国民がいろいろな情報に基づいて正確な判断がまだまだできるような状態でないときに事実上引き込まれていくというような、こういうことはぜひお避けいただきたいし、日本の財政事情も十分にお考えの上でサミットに臨んでいただきたいと思いますが、再度大臣の御見解を伺いたいと思います。
  40. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今私が申し上げたとおりでありまして、日本としましては、少なくともレーガン大統領の考え方を聞く限りにおいては、これが非核兵器であるし、防御兵器である、核の廃絶につながるものであると、こういうことですからこれに対して理解をしておるわけですが、これからまだまだいろいろと問題が残っておりますから、こうした問題等もいろいろともっと研究しないと、最終的な日本の態度といいますか、そういうものは表明できない、こういうふうな私は気持ちを持っておるわけでして、恐らくサミットでは論議されるでしょうが、サミットも、先ほどから申し上げましたように、ヨーロッパも非常に慎重ですから、そういう、今ここで結論が出るような状況じゃないように思います。
  41. 久保田真苗

    久保田真苗君 大臣は総理と御一緒にいらっしゃらなければならないわけです。党首会談などでもこのことは、いろんなそういうことよりも戦略的、政治的な取り引き力に意義があって重視する、そういう考え方もあるかもしれませんけれども、しかし、そういうことで踏み込んでいくことによって、結局はこの問題にコミットしていく。そのためには余りにもこれは重大な問題だと思いますんで、ひとつよろしく慎重にお願いしたいと思います。  次に、サミットの中で、先ほど大臣が挙げられました議題の中で、やはり秋山議員も御指摘申し上げましたようなアジアの問題ですね、これにつきましては、日本が持ち出してアジア情勢議題に加えたと、こういうふうに報ぜられておりますが、事実でございますか。
  42. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、アジア問題というのは毎回議題になっておりますから、日本側からこの点についてはいつも説明するということであります。
  43. 久保田真苗

    久保田真苗君 特に最近、南北朝鮮の動き、これが近寄っていくという動きも活発になってきておりますし、我が国としましても、北に対する制裁措置などをやめたところでもございますし、こういった問題は今回はどのように取り上げられるのか、また何か具体的な提案などをなさるおつもりか、その点はいかがでございますか。
  44. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本側から見たアジア情勢、その中における朝鮮半島の状況情勢、対話の推進の情勢等について率直に話をして、諸外国といいますか、その他の参加国のまた情報もあるでしょうし、見解もあるでしょうから、そういうものを聞きながら論議をする、こういうことです。
  45. 久保田真苗

    久保田真苗君 経済摩擦の問題が当然ここでも取り上げられると思いますけれども、十九日に政府・与党対外経済対策推進本部の会合での外務大臣の御発言が報ぜられているんです。それは決まったことをただ外国に伝えるだけでは外務大臣責任は果たせない、政策決定過程に入って自信と責任を持って対処したいと、こうおっしゃったと出ておりますんですが、そうなんでございますか。
  46. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 実は日米間においても首脳会談で私とシュルツ国務長官で日米の対外経済貿易問題については総攬する、こういうことになっておるわけで、我々二人が最終的に問題の決着をつけなきゃならぬわけですから、ただそういう意味ではシュルツ長官もアメリカの最も重要な閣僚としてアメリカ最高政策決定の中心的な立場にありますし、それに対する私も、日本がこれから決めようとする対策、それに対してやはり自分も参加して、そして本当に日本ができるものはできる、できないものはできない、そういう中で自信を持って、説得力を持って臨んでいかなければ、ただ外務大臣日本政策をそのまま向こうに口移しに伝える、メッセンジャーボーイではそういう役割は到底勤まりません。ですから、そういう際においては、政策決定の中で十分意見も聞き自分の意見も言ってこれに参加しなければこれは自信が持てない、こういうことを言っておるわけです。
  47. 久保田真苗

    久保田真苗君 全くそのとおりだと思います。今回、外務省の事務次官が、外務省が対外経済対策に対して行動計画をつくっていくその策定委員会を持たれたときに、外務省外交官の方たちを激励して、今後憶せず積極的に外務省発言していく、また国内問題についても十分勉強して各省庁に対して発言のできるようにしろとおっしゃったとありますが、私は全く従来外務省はこれは非常に幅の広い問題なので、とかくそういう点についてやはり対応が十分でないんじゃなかったかと思っておるんですが、今回こういう姿勢をとっていただきまして、外務省が積極的に間に入ってやっていただくということについては大変評価しているものでございます。  それで、たびたび大臣にはもう経済摩擦については見解をいろいろなところでお伺いしているんでございますけれども、今回サミットに行かれるに当たりましてより一層の御尽力をお願いしたいと思いますし、また特にこの点はこういう決意だとお考えになるところがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 世界の今経済情勢、貿易情勢、特に日本をめぐる貿易摩擦は大変深刻だと思います。これはこれまでと違った非常に重大な段階を迎えて、日本が対応を間違えると一挙にして奈落の底へ転落するおそれすら私はあるんじゃないか、こういう危機感を持っております。これは私自身もOECDの閣僚会議に出ましてそういう感を非常に深くいたしました。OECDの閣僚理事会で、例えば日本の黒字が国際貿易の緊張の要因であるというふうな草案にコミュニケがなっておりまして、この一項を削るために随分苦労したんですが、その中でOECD諸国が日本に対していかに厳しい感じを持っておるか、これまでと違った大変厳しい感じを持っておるということを全く痛感をいたしました。  よく言っておるのですが、ちょうど松岡洋右外相が国際連盟で孤立したと同じような、そういうような感じすら私は心境として持ったわけでありますし、また日米外相会談をやりましてもそういう感じを持っておりました。アメリカの様子も、政府との間ではサミットの問題もありますし、一応のけじめはついたということですが、けじめがついたと言っても今後を見守るという立場でけじめがついたわけですが、しかし議会は決してこれはなかなかそう簡単にはいかない。ブッシュ副大統領も言っておりましたけれども、九十二対ゼロという上院のああした議決の状態が示しておるのは、これは今までと全く日本に対してアメリカの議会が違った印象を持ってきている、こういうことだろうと思います。ですから、これは本当にただならない状況であると思います。  したがって、そういう中でやはり外務大臣外務省も泥をかぶって、国際的な問題を、こういう困難を処理していかなきゃならぬ、そういうふうに思いまして、我々も正面に出てその対応の中に入っていって、国内的な問題の中にも入っていって、場合によっては憎まれてもやはり発言をするところは発言をしていかなきゃならぬという決意を固めておるのですが、それはそれだけに世界情勢、特に世界経済貿易情勢というのが大変厳しくなったという認識でございまして、恐らくサミットでは、そういう認識を持って我々は臨みますけれども、全体的な今の先進国のサミット参加国の協力体制というのが崩れるということは、亀裂が入るということはこれは避けなきゃならぬというそうしたばねも働きますから、いろいろと議論はあると思いますが、しかし日本だけが突出して批判されるということにはならないし、またそういうことがあってはならないと思います。  まあそういうことにはならないと思いますけれども、むしろ経済貿易問題で非常に憂慮しなければならないのはサミット以後の状況じゃないか、こういうふうに私は思っております。ですからサミットできっちりした対応を出して、さらに日本が七月にちゃんとしたものを打ち出す、そういうことによってこれからの事態を切り抜けていきたい、こういうふうに思うわけです。
  49. 久保田真苗

    久保田真苗君 泥をかぶってひとつ頑張っていただきたいと思いますし、SDIなどの問題につきましても、国民の懸念というものを背景にしてひとつ頑張っていただきたいと思います。  残りました時間で原子力の問題に返りたいと思います。  まず、外務省にお伺いしたいのは、IAEAの当面の懸案事項ですね。それで前にお伺いしましたところでは、核不拡散条約のレビューについての会議がことしありますそうで、その状況などちょっとお聞かせいただけますでしょうか。
  50. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) まず、御質問の第一点のIAEAの当面の課題という点でございますが、御案内のとおり国際原子力機関は世界の平和と繁栄、保健に対する原子力の貢献を促進する、そして原子力の軍事目的を助長するようなことをしない、こういう二大目的を持ちまして設立以来運用がなされてきたわけでございますが、当面のお尋ねの課題といたしましては、この原子力機関がすぐれて技術的な機関であって原子力の平和利用を促進するという点から、第一にこの場において政治的な議論を可能な限り排除していくということ。第二点といたしましては、原子力の平和利用とそれから核不拡散のための保障措置、この二つの目的のバランスをとった活動を推進していくということ、これが当面の大きな課題でございます。  今、第二点で不拡散を申し上げましたが、御指摘の拡防条約の第三回の再検討会議は、本年九月ジュネーブにおいて四週間の会期で開かれることとなっております。この会議は、いわゆる拡防条約すなわちNPT体制が世界の平和維持のために極めて重要であるという認識に立って、この体制の強化、そしてそのために未加盟国加盟促進、あるいは条約が求めております核兵器国の軍縮の促進、さらには原子力の平和利用の推進といった幾つかの重要項目について討議するわけでございますが、私どももこの会議には全力をもって臨む覚悟でございますし、私どものジュネーブ代表の今井大使は、準備会合の議長を務めるなど枢要な役割を現に果たしております。九月はもう間もなくでございますが、私ども、この核軍縮の促進と平和利用の促進という二つの目的のために最大の努力を払いたいと思っております。
  51. 久保田真苗

    久保田真苗君 科学技術庁にお願いしておりますけれども、やはり、この原子力の問題に関しまして一番懸念されますのは、我が国の廃棄物の問題で、この一月に南太平洋へ総理が行かれましたときに、廃棄物の海洋投棄をめぐっていろいろな国から注文がつきまして、こちらからも、現地の懸念を無視して海洋投棄するような意図はないという意思を表明しているわけでございますが、この際お伺いしたいのは、科学技術庁の方で低レベル廃棄物の海洋投棄を計画して四地点を調査されたことがございますね。その四地点は、経度、緯度からいいますとどういう地点になりますんでしょうか。また、どういう広さに及ぶ範囲なんでしょうか。
  52. 千々谷眞人

    説明員千々谷眞人君) 科学技術庁では、低レベル放射性廃棄物の試験的海洋処分を行うに当たりまして、昭和四十四年に検討委員会を設けました。安全性、資源の保全等の観点からいろいろな条件を勘案いたしまして、四つの地点を候補地点として選びました。その地点は、通称ABCDということで言っておりますが、まずA地点は、北緯二十六度、東経百五十度、東京から南東約千四百五十キロメートルの地点でございます。第二地点、B地点は、北緯三十度、東経百四十七度、東京から南東約九百キロメートルの地点でございます。C地点、これは北緯三十度、東経百六十度、東京から同じく東南東約二千キロメートルの地点でございます。D海域、これは北緯三十六度、東経百五十八度、東京から東の方向約千七百キロメートルでございまして、処分候補海域といたしましては、この地点を中心といたしまして百キロメートル四方を予定してございます。
  53. 久保田真苗

    久保田真苗君 低レベル廃棄物を海洋投棄するのにはどういう条件が適しているというふうに考えられてお選びになったんですか。
  54. 千々谷眞人

    説明員千々谷眞人君) 低レベル放射性廃棄物の海洋投棄につきましてはロンドン条約というもので国際的に規制されておりますが、この中で、高レベル放射性廃棄物につきましては海洋投棄は禁止、それから低レベル放射性廃棄物については特別許可に基づいて行うということになっております。この高レベル放射性廃棄物及び低レベル放射性廃棄物の区分につきましては、ロンドン条約によりましてIAEA、国際原子力機関がこれを定めるということになっております。  この国際原子力機関の定めました定義と勧告というものがございます。この中に、まず低レベル放射性廃棄物として海洋投棄できる放射能濃度及びその種類、そういったものが定められておりますし、さらに投棄海域の選定にかかる条件といたしましては、まず、トローリング等によって廃棄物が再回収されるおそれがないこと、それから北緯五十度と南緯五十度の間で水深四千メートル以上であること、それから、大陸棚から十分離れており、火山活動がないこと、それから既設海底ケーブルがないこと、さらに、潜在的に海底資源の開発可能性がある海域でないこと、投棄場所の数を厳しく制限すること、作業中他船との衝突の危険性が少ないこと等が挙げられておりまして、先ほどの四地点はこのような条件を勘案いたしまして選定したものでございます。
  55. 久保田真苗

    久保田真苗君 現在、低レベル廃棄物の処理を陸地でやっていらっしゃるわけで、いろいろな、環境保護、自然破壊、海の汚染というようなことを考えますと、海洋投棄は少なくとも近い将来は不可能だと考えられますけれど、さて今度、陸の方なんですが、現在、低レベル廃棄物をドラム缶五十五万本抱えている。五年後の一九九〇年には九十五万本ですか、十五年後の二〇〇〇年には百五十五万本というようなことが、これは原子力委員会の中間報告に予測されているんですけれども、これは一体どういうふうに処理をなさる御計画なのか伺いたいんですが。
  56. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 低レベル放射性廃棄物の処分につきましては、原子力委員会の原子力開発利用長期計画におきましてその基本的な考え方が定まっておるわけでございます。すなわち、従来より、海洋処分と陸地処分、この両方をあわせ行うということが我が国の基本的な考え方でございます。このうちの海洋処分につきましては、関係国の懸念を無視して強行はしないという方針のもとに、ロンドン条約締約国協議会において進められている科学的検討の結果等を踏まえて慎重に対処してまいることにしてございます。もう一方の、先生ただいま御指摘の陸地処分に関しましては、現在、電気事業者が中心になりまして、青森県下北半島六ケ所村におきまして最終貯蔵の計画を進めておるところでございます。そういうことで、両方あわせ行うということで今計画が進んでおる次第でございます。
  57. 久保田真苗

    久保田真苗君 同じ原子力委員会の中間報告の中で、高レベルの廃棄物について、海洋底を掘ってそこへ処分するというような、そういう意見が出ておるんでございますけれども、これはロンドン条約との関係についてはどうなるのか、この点についてお伺いしたいんですが。
  58. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) ロンドン条約におきましては、高レベル放射性廃棄物の海洋投棄はすべて禁止されております。ただし、この海洋投棄という定義は明確にされておりませんで、今委員御指摘の、海底に穴をあけて埋めるという、いわゆる海底処分というものがこの海洋投棄に入るかどうかについては論議のあるところでございます。現在、ロンドン条約締約国間におきまして、この問題を技術面及び法制面から検討を加えておりますが、かかる検討が終了するまでは一切の海底処分は行わないということを関係国は意見の一致を見ておるところでございます。
  59. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、安全性などについての科学的結論が出るまでは一切の投棄をさせない、そういう結論でございますね。この技術的、科学的検討というのが何かことし行われるということですが、これは予定はどうなっておりますか。
  60. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) ただいま御質問は、低レベル放射性廃棄物の投棄かと理解いたしますが、そちらの方は、御指摘のとおり、ロンドンにおいて現在科学的検討が進められておりまして、予定といたしましては本年九月に一応の結論を出すこととなっております。先ほど来、科学技術庁からも御答弁がございましたとおり、この海洋投棄問題は、安全性の問題と関係国の理解の問題という二つの柱がございますので、私どもといたしましては、科学的安全性について確認された段階においてもやはり外交的配慮、関係国の理解というものを求めていくという努力は当然に続けるべきものと考えております。
  61. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、高レベルの廃棄物について、海洋底を使用して処分するということについては、その点は必ずしもはっきりしていないということですが、この点についての検討は行われるのですか、それとも行われないのですか。
  62. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 従来から考えられておりましたのは、海面から投下いたしまして、沈着して海底に定着してその状態を放置するという形での海洋投棄が想定されていたわけでございます。その後の技術発展によって、何らかの方法で海底を掘削してそこに埋没させるという手段が思いつかれるに至りまして、ただいままでに定まっている海洋投棄はいろいろな点でこのような新しい手法を考えておりませんでしたから、それが技術的、法制的に可能か、望ましいかという検討を今行っている次第でございまして、どのような結論に到達するかは現状では全く見通しが立っておりません。そのような状況にございます。
  63. 久保田真苗

    久保田真苗君 そういたしますと、原子力委員会の方で、案の一つとして専門家のリポートに書いてあるこの海洋底の問題というのは、もちろんこれは動き出すというようなものではないわけでございますね。
  64. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) お答え申し上げます。  先生御指摘の高レベル廃棄物の海洋底下の処分でございますが、我が国も世界各国も今考えております高レベル廃棄物の処分は、陸上の地下に深く、例えば千メートルぐらい埋め込んでしまうといういわゆる地層処分でございます。  今御指摘の海洋底下処分といいますのは、現在世界が考えておりますこの陸地処分の将来技術といたしまして、その可能性について全く基礎的な調査研究をやっている段階のものでございます。したがいまして、これがすぐに実用化されるというものではございませんし、今のところは国際協力その他で情報交換、非常に基礎的な勉強が行われているという段階のものでございます。
  65. 久保田真苗

    久保田真苗君 陸も人間に近いから困るわけですが、海もやり直しがきかないということがございます。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕 また、日本人は魚を食べる民族でございますから、海洋汚染ということは直ちに国民の食糧に響いてまいりますので、ひとついろいろな科学的な御検討があると思いますが、自信過剰にならないで、将来子孫への末長いツケ回しがこういう格好で起こらないようにお願いしたいと思いますし、また、ことし九月のIAEAでの廃棄物の海洋投棄の問題につきましては、そういう角度からひとつ日本の立場を主張していただきたいと、こういうふうに希望いたしまして私の質問を終わります。
  66. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほどのSDIの説明の中で、四項目目の核エネルギーが云々のところで、私理解できないところがあったんですが、もう一回そこだけちょっと説明いただけますか。
  67. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 大変恐縮でございますが、ちょっと今御質問を私聞き取れませんでしたものですから。
  68. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほどのSDIのアメリカ側の説明の中の四項目あった、一番最後の四項目目の核エネルギーが云々なんということがありましたですね。それはどういうことだったか、私ちょっと理解できなかったんでもう一回説明していただけますか。
  69. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) アメリカの専門家チームからSDIの抜術的側面についていろいろ話を聞きましたときに、アメリカ側がSDIとの関連でいろいろ研究を進めていこうとしている技術を大きく分類いたしますと、探知関連の技術、それから……
  70. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはいいですよ。四つ目。時間が限られているから。
  71. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 四つ目は、全体のシステムを運用していくための、彼らは戦闘管理技術と言っておりますが、バトルマネージメントとその技術、これはいわゆるC3システムみたいな、全体のシステムをコントロールするシステムのことのようでございますが、そういうふうに四つに分けておるということで説明を受けたということを申し上げたわけでございます。  その中で、目標を破壊する技術、これはまさに武器そのものでありますけれども、その目標を破壊する技術の中で、いろいろ文献等に出ておりますエックス線レーザー兵器、これは核を使う、こういう話なので、これはどういうふうにアメリカが考えているかということを質問して、それに対してアメリカ側は、先ほど私が御答弁申し上げましたように、実はソ連がその種の技術をいろいろ研究をしているようなんで、アメリカとしても一応そういうものを知っておかなければならないという観点から確かに研究は行っておる。しかし、SDIシステムそのものとしては基本的にはあくまでも非核の防御的手段というものを念頭に置いて研究をしておるんで、したがって今エックス線レーザー兵器のようなものは研究の中では非常に小さな位置しか占めていないんだ、こういう説明であったということです。
  72. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、ソ連の現在の衛星攻撃用兵器の中に核エネルギーを使っているということじゃないわけですね。
  73. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) そういうことではなかったようでございます。
  74. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、ソ連も核エネルギーを使って宇宙兵器、攻撃用兵器、あるいは防御になるか、それを研究しているらしい、だからアメリカも研究するんだ、しようと、こういうことなんですね。
  75. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ソ連が各種のやはりレーザー兵器の研究を行っておる、その中に核エネルギーを使ったエックス線レーザー兵器の研究も行っておる、したがってということで、先ほど私が御答弁申し上げたようなことでございます。
  76. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、研究段階、しかも初歩の段階ですけれども、そういう核エネルギーが推進する宇宙兵器になる可能性もあるという説明が行われた、こういう認識でいいわけですか。
  77. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御質問のポイントを必ずしもちょっと理解しなかったわけですが、一つのミサイルを要撃してこれを破壊する手段としてそういう兵器の研究は行っておる、こういうことだろうと思います。
  78. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、そういう研究の中に核エネルギーを使うそういうものもある。だから、その研究の段階、あるいはこれから入る段階かもわかりませんな、ですけれども、それが実際に研究から、研究というのはやはり実戦に、これから四年間で二百七十億ドル使おうというわけですから、その予算も予算化されているわけですから、九〇年代の初期には実験段階に持ち込もう、こういう発表もしているわけですから、だから今ソ連に対応して研究している。ソ連の研究も含めてこちらもそれに対抗して研究するというものが、実際にやはり実験あるいは実際配備段階において、それが核のエネルギーによって衛星あるいは核を攻撃する兵器になり得る、こういう可能性もあるという説明を聞いたと、こういう理解でいいですか。
  79. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 一応そういうことだろうと思います。ただ、アメリカが繰り返し、アメリカとしてはそのSDIシステムというものはやはり核を使わない非核のシステムというものを基本的には念頭に置いてそういうものを研究していきたいということを考えているんだということ、これは非常に強調しておった由でございます。
  80. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。非核であるということは、これはレーガン・中曽根総理とのやっぱり約束みたいな認識ですからね、日本側の。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 それが今、専門家、技術者が核もあり得る、ただしあり得るという中において非核にしたいという努力を、目標というんですかな、そこらあたりを吐露していったと、こういうふうに認識したいと思うんです。  それで、二日間説明を聞きまして、その説明というのはどうなんですかね、SDIに対するアメリカ側の現段階においての基礎的なものは日本としては説明を聴取し切れたと、こういう判断をしているんでしょうか。
  81. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは先ほど久保田委員の御質問がありました際に、冒頭私からお断りしたわけでございますが、一昨日昨日と説明を受けましただけという状況でございまして、説明の内容につきましてまだ十分に分析をしておりません。それから、一緒に説明に参加をしていただきました他省庁の評価につきましても、これをまだ外務省として聞くという段階に至っておりません。  したがいまして、政府としての評価を今の段階で申し上げることはいたしかねるわけでございますが、いずれにいたしましても、今回の説明によりましてすべていわば疑問点が氷解をして全部わかった、日本側として判断をするに必要な材料がすべてはっきりしたと、こういうことは申し上げられないんではないかというのが私の率直な印象でございます。
  82. 黒柳明

    ○黒柳明君 もうおっしゃるとおりでしょうね。そうすると、科技庁と防衛庁と外務省とですか、専門官が集まって、それできのう聞いた、それをさらに分析する。そうすると、持ち合わせの、SDIについての知識というのはないわけですからね。そのほかの知識を持ち合わせてそれを分析検討して、わからないところについては聞きながら、それで外務大臣がおっしゃったように、参加するとかしないとかということを決められないまでも、こちらとしてはやはり聞いたからには分析し、さらには向こうに反応を与えていくためのアクションを起こさなければならないという過程が、今度はこちら側にボールが投げられたと、こういうことになるかと思うんですが、今おっしゃった日本側の専門家がこれから分析する、それから何らかの参加するしないについて、まだ中期的に時間があるかと思いますけれども、アクションを起こしていく、ここらあたりのプロセスをどのように頭に描いているんですか。
  83. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) まだ現在の段階で今後のプロセスがどういうふうになるかということは、私自身も頭の中ではっきり予想できかねますので、余り具体的にこの次はこう、そしてこういう段階でこういうふうになるということはちょっと申し上げかねるだろうと思います。いずれにいたしましても、アメリカ側も引き続き必要があれば幾らでも日本に説明をするということを言っておりますし、まだこの情報交換と申しますか意見交換のプロセスというものは続いていくということになるだろうというふうに一般的には思います。
  84. 黒柳明

    ○黒柳明君 何かSDIの局長がまたおいでになるなんというようなことですが、きのうまでの次長代理ですか、含めての技術者と、それからこの次、局長が来るというこの関連を外務省はどういうふうに受けとめているんでしょうか。向こうが勝手に出すというような感じなんてしょうか。
  85. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) アメリカ側は今回のチームの派遣に際しましても、当初はと申しますか、お互いの都合がつけばSDIオフィスの局長をやっておりますエーブラハムソン中将というのを派遣する用意があるということは非公式に言っていた次第でございます。ただ、時期的にいろいろ先方、我が方の都合がつきませんでしたものですから、今回はエーブラハムソン中将は来なかったということでございまして、今後、今回の検討、意見交換の結果も踏まえて、さらにアメリカ側の説明を聞くという場合にエーブラハムソンに来てもらうということもそれはあり得るかと思いますが、今の段階で特に具体的にいつ来てもらうとかそういうような話はございません。また、向こうが別に一方的にやってくるということでもございませんので、可能性は排除されないと思いますが、今具体的な日程が検討されているという状況ではございません。
  86. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、また同じようなことになるかと思いますが、あくまでも非核であるということが年頭からの日本側の研究開発に理解を示す一つの前提であったわけですが、専門家の説明で爆発エネルギーとして核のエネルギーを使う可能性もあるんだ、この研究もソ連もやっているからこちらもやるんだと、こういう発言があったわけてありますが、これはもう当然のことながらこの研究が実際に非核であるということを大前提にしたわけですから、これがその研究開発段階でさらに濃厚になり、九〇年代の配備、ここまでには当然四年ありますから、日本も参加するかしないか、態度を決めなきゃならない。これはもう当然ですけれども、この核を爆発手段に使う、こういうことが濃厚になれば、当然これは理解を示すことも間違いであったし、開発に参加することも、当然これはできない、これはもうそのとおりになるわけですね。
  87. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはいろいろと研究してみなきゃわからぬのですが、今やはりアメリカが言っているのは非核がもう主力であるということを言っているわけですね。ソ連が動力源としての核エネルギーを使うんだ、そうしたシステムを検討しているからアメリカもこれの研究をするんだ、それはアメリカのSDIの研究の中では非常に小さい部分だ、こういうことを言っているわけだし、この今の非核兵器ということの意味をどういうふうに受けとめるかということも一つの大きな解釈の問題だと思います。これは直接ミサイルを攻撃するための手段として核を使うということでなくて、いわゆるエックス線エネルギー等レーザーを発射するためのエネルギーとして核を使う、こういうことでしょうから、その点についてはいろいろとまた解明してみなきゃわからぬと思いますけれども、今のアメリカの考えは、基本的にはやはり大統領が言っておりましたような非核兵器であるということの大きな流れからは逸脱してないんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、しかしこれはこれから研究も進んでいくでしょうし、もっと、私もまだ何も聞いていませんから、もう少し聞かしてもらわないと全体的な大統領の構想とどういう整合性があるのか、その点についてはちょっとここではなかなか申し上げにくい状況ですが、いずれにしても問題点はまだまだ残っていますから、そう急いでやることもないし、日本としても大事な問題ですから、これからもいろいろな意見を聞きながら最終的には日本の独自の判断で決めていかなきゃならぬと、こういうふうに思っております。
  88. 黒柳明

    ○黒柳明君 その小さい部分だと思います、今現在は非核ということがやはり前提ですからね。ですけれども、その小さい部分がこれから研究開発、しかも予算化されて急ピッチに進む可能性があるわけですから、それが今度は実際の研究段階におきまして小ちゃい部分がますます大きくなる段階においてこちらがそういう情報を入手した場合には、これは当然やはり理解を示すことはうまくない、当然参加することもできないと、こういう判断になるかと思うんですが、それはいかがでしょうか。
  89. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今の動力源として核を使うといったことの問題についてのやはり認識が基本的にあるんじゃないかと思うんですね。ですから、この点をどういうふうに解釈するかというのはこれからの日本としても考えてみる課題じゃないかと思います。
  90. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。  そうすると、私たちも非常に短絡的にこのSDI面等の理解あるいは国会においていろいろこう情報が出るたんびに追っかけながら質問をしてきたんですけれども、非核という中には動力源として核が使われるというのは今初めて日本政府としても知ったんだと思うんですね、外務大臣としても。そういう問題が果たして日本政府が今まで言ってきたSDIというのは非核なんだという、それから核全廃に通ずる、あるいは防御兵器と、こういう三原則の中に入るか入らないかも含めてこれから日本側としても研究しなきゃならないし、アメリカ側の研究の推移を見てこちらが対応しなきゃならないという今の大臣発言と理解してよろしいわけですか。
  91. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるとおりであります。  これからまだまだ、そして今アメリカからの主張からすれば、説明からすれば非常に小さい分野で、ソ連がやっておるからアメリカもこれに対応してやるんだけれど、しかしアメリカ自身が開発研究を進めておるのはやはり非核ということに主力を置いているということですから、今のような御質問趣旨に私も受け取っております。
  92. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると局長あれですね、今大臣のお言葉でそれですべてだと思うんですけれども、いわゆる私こそ専門家じゃないんでどういうものかわかりませんけれども、潜水艦にしても核による推進力と核兵器を積んでいる潜水艦とはこれはもう当然おのずから違うんですけれども、違うといっても核推進の潜水艦というのは通常型潜水艦ともこれははっきり区別されているわけです。そうすると、やはりSDIが要するに爆発兵器そのものと、今度は推進、動力源というのはどう分けられるかわかりませんですけれども、その動力源としての推進力として核を使うものについては、まあ非核の中に入るか入らないかも検討しなきゃならないと、こういうことだと思うんですけれども、すべてそれではSDIというものは爆発手段あるいは推進エネルギー含めて核を使っちゃいけないという非核でも必ずしもないと、こういうことでしょうか。
  93. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私も技術の専門家でありませんので確たることは申し上げられませんので、従来からもこの種の兵器が核兵器に該当するかどうかということについては今後その技術の実際の兵器としてのシステムの具体的内容を見なければ何とも申し上げられないんではないかということを御答弁申し上げているわけで、まあ今後果たしてそういう兵器が実戦用として配備可能な程度にまでその技術が進んでいくかどうか、その段階で考えなければいけない問題だろうと思います。いずれにしても、今まで存在しなかったタイプの兵器であるということはこれはまあ間違いないことでございますので、そういう点につきましてはアメリカも今後いろいろ考えなければいけない点があるんだろうと思いますし、いずれにしても配備という段階になれば宇宙条約の規制等があるわけで、そういう点についてはアメリカ自身も十分念頭に置いてやられるということであろうというふうに当然のことながら予想されるわけでございます。今後の推移も見て判断をするということだろうと思います。
  94. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、ワインバーガーの六十日でちょっと惑わされたわけですけれども、そうするとあれですかね、説明官が来て二日ですから、どれだけのものが説明されたかあるいは聞けたかこれはわかりません。当然、日本側の検討も必要なんですけれども、これから予算化されて本格的に研究開発がどんどん進められる、その一方やはり西欧同盟国に対しての協力、研究協力を申し入れているし、さらに向こうのアプローチは続けられる。そうすると、こちらとしてはアメリカのその研究を見ながらといいますか、聞きながらといいますか、さらにこちらの分析を含めながら、一年、二年なんという、そういう具体的な数字は挙げられるかどうかわかりませんけれども、外務大臣はこれは確かに何回も同じような発言をしていたんですけれども、中期的、長期的というとこれはもう五年、十年となりますけれども、やはり半年や一年じゃわからない問題であり、向こうの研究というものだってどう進むかわからないから、研究を徐々に見ながら、聞きながら、分析しながらこちらが研究に参加するかどうかも決めるんであって、相当、何カ月なんて、まして六十日なんというのはこれはもう外務大臣は当初から否定したんですけれども、何言っているかわからない。もう何カ月なんという問題じゃなくて、相当の、一年、二年なんという、そういうものを経なければしっかりした判断はできないという感触を私は相当強く今しているんですが、どうでしょうか外務大臣
  95. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 少なくとも六十日と期限を切られてもこれはもうどうにもならないということで、私の考えもアメリカ側には伝っていると思います。アメリカも、ワインバーガーさんはその後六十日にはこだわらないんだと、こういうことも言い出しておりまして、その点は手紙には書いてありましたけれども、一応削除ということになったと思います。  あとどれだけかかるかそれはちょっと我々も見当はつきませんけれども、アメリカも早々に調査団といいますか専門家をよこすというふうに、相当な意気込みのようでありますから、これはいつと時間を切っていうわけにはいきませんけれども、しかしいつまでもというわけにもいかないだろうし、日本としても、一回だけの今聴取ですから、またさらにこれからもアメリカ側と相談して、こちら側で各省庁、外務省だけじゃないですから、各省庁でやはり分析結果を、あるいは評価の結果を踏まえて、相談してそういう機会も設けなきゃならぬのじゃないか、こういうふうに思いますが、それはどれだけかかるかということ、どれだけだ、どこまでが期限だということはちょっと今見通す段階にないように私は思います。しかし、少なくとも六十日と切られてもこれはもうどうにもならない、六十日前後と言われてもそれはどうにもならない、こういうふうに思います。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣が受けられたわけですから、これは大臣の任期中には当然結論を出さなければというふうに思うんですが、秋に選挙か来年の四月に同時選挙か、そうするとそこらあたりが一つのやはりタイムリミットになるんでしょうか。
  97. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、これは私の任期とは関係なしに、日本の国にとっても大事な問題ですから、やはり政府として全体的にひとつ慎重に判断をして結論を出さなきゃならぬ課題だと思います。
  98. 黒柳明

    ○黒柳明君 きょう一部の報道に朝鮮問題で日本が中心になってクロス承認云々、あれはどういうことでしょうか。
  99. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 確かにきのうあるいはきょうの新聞あたりにいろいろと出ております。これは米国の国務省のブリーフィングによる記者の質問に対して国務省の者が答えたということでございます。私どもも非常にあの記事を関心を持ちまして、どのように国務省の担当の者が話したか一応電報で聞いてみました。  これによりますと、朝鮮半島における緊張緩和のかぎは南北が直接話し合いで相違点を解決することが大事である、それで将来の米国の北朝鮮との接触は南北直接接触による進展を基礎とする、それから今のお尋ねの件でございますけれども、また中ソと韓国との接触及び日本と北朝鮮との接触というより大きなコンテクストで米国の北朝鮮の問題は考えにゃいかぬ、こういう答えをしているようでございます。  それから、先生御案内のように、クロス承認の問題というのは例えば一九七五年、七六年にキッシンジャーが国連総会で言っておられます。そのようにクロス承認というのは新しい問題じゃございません。従来よりそういうクロス承認という考え方はあったわけでございまして、私どもとしては、それが南北の朝鮮半島の緊張緩和あるいは民族和合、平和統一に資するという観点であればそういうクロス承認も検討に値するだろう、そういうことで従来より私ども韓国と日本、それから米国と日本との話し合いにおいてこの種の問題が話題になってきたということはあります。ただし、それがあたかも今何か非常に新しい緊急の問題として云々されている、そういうことではございません。
  100. 黒柳明

    ○黒柳明君 韓国の大統領がアメリカに行っている時期に合わせて向こうが一方的に発言したということで、日本は従来言っていたことで、今現在それをとりたててやることではない、ただ米韓で何かしらのアクションがあって、それがまた日本に相談なり持ちかけられてくる可能性はまたなきにしもあらずという感触を、今ちょうど時期が時期なものですから感ずるわけでありまして、古いテーマでありまた絶えず新しいテーマになっているし、しなきゃならない問題なんですが、その米韓の両首悩の会談と符節を合わせてそういうあれがあった、コメントが向こうから出たということについてはどういう感じをお持ちでしょうか。
  101. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 中断しておりました南北の会談も、五月にいわゆる経済会談、それから赤十字会談が再開されることになって、私ども大変それを喜ばしく思っておるわけでございます。したがいまして、よく私ども、大臣もいろいろな国会の場で御答弁いたしておりますように、南北の緊張緩和に向けてそのような南北の対話というものが再開するということ、そしてその対話が進展するということは大変我々として一番望ましいことであるし、それが基本であろうかと思います。  その観点で、たまたま大統領が行かれるとかということもあって非常に新聞の関心を呼んでおるわけでございますが、今先生も御指摘のように、私ども朝鮮半島の緊張緩和ということ、それに対する我が国の環境醸成にできるだけの努力をするという観点で、今の問題がさらに今後とも具体的に考えられるようになるためには、何よりもまず南北対話というものが進展してほしいということを終始考えておるわけでございます。
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 この協定について二つお尋ねしますけれども、イスラエルですけれども、これは原子力先進国地域先進国、まあ地域先進国には入らない。これはイスラエルはどういう今地位にいますかね、こういう原子力のレベルでは。それから、中国の平和あるいは軍事面における原子力のレベルというのはどの程度の情報をつかんでいるんでしょうか、日本側としては。
  103. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) イスラエルにつきましては、御案内のとおり国際原子力機関加盟国ではありますが、核防条約には加盟しておりません。このような状態で現在IAEAの原子力機関の通常のメンバーとして活躍しております。御案内のとおり、数年前、原子炉爆撃に関連いたしまして資格停止という問題がございましたけれども、これはその後一応の解決を見ておりまして、現状においては特段の問題はございません。  中国につきましては、核兵器国でございまして、核防条約には入っておりません。去年の一月にIAEAに入りまして、今後平和利用、発電の分野で活躍が期待されている次第でございます。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 軍事面においては特段の情報はないんですか、中国の核兵器に対しての。
  105. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 持ち合わせておりません。
  106. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時再開することにし、休憩いたします。    午後零時十五分休憩      ─────・─────    午後一時六分開会
  107. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際原子力機関憲章第六条の改正受諾について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  108. 和田教美

    和田教美君 議題となっております国際原子力機関憲章改正につきましては、中国が既存の理事国の地位に影響を及ぼさない形で、原子力先進国として理事会に名を連ねるということでございますから、適当な措置でございまして、全く異存はございません。  そこで、このIAEA関係質問は後で二、三いたしたいと思うんですけれども、まず、目前に迫りましたボン・サミットの問題についてお尋ねをしたいと思います。  今午前中、外務大臣からボン・サミットの主な議題、予想される討議内容というふうなものの詳しい説明がございましたけれども、我々経済問題については、何といっても欧米にかなり潜在的に出てきております保護貿易主義の台頭という動きに対して、これを巻き返して、どうすれば自由貿易体制を維持することができるかという問題だろうと思うんですが、これに関連して、日本の立場が非常に困難な状況にあることは、御承知のとおり対米貿易黒字だけで三百三十一億ドルというふうなこういう巨額の日本の貿易黒字という問題を抱えているからだと思います。それだけに、日本は多角的貿易交渉の新ラウンドについて、さっきもお話ございましたけれども、来春早々から開始をしたいということで、日米の連携プレーをやっていこうということですけれども、しかし、こういう巨大な貿易黒字という問題があるということになると、なかなか説得力も持ちにくいという面もあるかと思いますけれども、そういう問題も含めて、まず経済問題について、どういう決意でともすれば日本が孤立化するような状況を切り抜けていかれようとするのか、改めて外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  109. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今度のボン・サミットは経済政治ともいろいろと問題の多い年だと思います。  経済につきましては、今保護主義をいかにして巻き返していくか、あるいはまたニューラウンドをどういうふうにまとめていくかということ等は大きな議論になると思いますが、そうした保護主義の台頭の中にあって、やはり議論として出てくる問題は、一つ日本の黒字問題、市場アクセスの問題で、アメリカに対して日本の統計では三百三十億ドルになっていますけれども、アメリカに言わせれば三百七十億ドルということでありますし、これは今後ともふえるという傾向にあるわけでありますし、市場アクセスについても四分野を中心にして日米間でいろいろと努力は重ねていますが、まだアメリカにおいては不信感が取れていない。そういう中で、日本自身もこれからいわゆるアクセスの改善を行っていかなきゃならない問題点は相当抱えておるわけでございます。  そこで、この黒字という問題、これはアメリカだけじゃなくてヨーロッパも非常に注目しておりまして、私はOECDの閣僚会議に出まして非常に痛感をしたわけでございますが、なかなか日本に対して厳しい議論が投げかけられると思います。しかし日本も、ただサミットで日本だけが批判のやり玉に上がったということでは、日本の立場というものもなくなってくるわけでありますし、同時にまた、黒字だけで日本責任を持たなきゃならぬといういわれもないわけですから、日本としてもそれに対しては日本なりの反論をしていく、同時に、アメリカにもやはりこの日本の黒字の大きな原因となるところの財政赤字とか高金利とかドル高という問題がありますから、日本問題とともにアメリカ問題も議論されるべきであろうと思います。同時に、ヨーロッパでは依然として失業率も高いわけでありますし、産業も活力を呼び戻していないということで、産業調整の問題等がヨーロッパでは深刻な課題になっておりますから、ヨーロッパ自体もそういう面ではいろいろと世界経済に貢献していくためにやらなきゃならない課題を抱えておるのであります。  また、保護主義という点については、あるいは市場アクセスという点については、日本だけが責められるということも我々納得できませんので、EC諸国の市場アクセス等にも大変大きな問題があるように私たちは思っております。お互いにそういう点は指摘し合わなきゃなりませんし、そしてまた、改善のために努力をしていかなきゃならぬと思いますが、全体的には、どこの国を責めるということでなくて、お互いの国々の問題点を指摘すると同時に、お互い努力をしてその問題点を解決していく。同時に、やはりこれには国際的な協力が必要である、ボン・サミットに参加している国々の協力関係が必要であるということが最終的には一つの大きな路線として出てくると私は思っておりますし、それがまたコミュニケにも盛られてくるだろう、いわゆるインフレなき持続的安定成長というこれまでのサミットの路線を続けていくということであろうと思っておるわけであります。  同時に、先進国経済発展させるということだけで世界の経済が安定するわけではございませんで、やはり南北問題というのが相当大きな議論にもなると思います。南は、アフリカは極めて深刻でありますし、また南米等には依然として累積債務問題があるわけでありますし、一次産品等がなかなか貿易が伸びないという悩みも開発途上国にあるわけですから、こうしただんだんと難しい状況が重なってきているこの南の国々、その南の国々と北の国々との間の調整とか、あるいは北の南に対する協力をどういう形でやるか、これまたサミット参加国ではやはり南への協力のあり方について議論の分かれている点もありますから、そうした調整がつくかどうかということも今度の議論の中で出てくる問題じゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  110. 和田教美

    和田教美君 政府が去る九日に発表しました第七次の対外経済対策、これ以来アメリカの議会の貿易摩擦の問題についての動きが、対日制裁措置といいますか、そういう動きがやや鎮静化したような感じがするわけなんですけれども、政府はこれについてどういう判断をされておるのか、とりあえずボン・サミットまでは待とうということなのか、もう少し長期的に、秋ごろまで実績がどうなるかを見ようという考え方なのか、その辺はどういう判断をされておりますか。
  111. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、アメリカに行った感じでは、ボン・サミットというものを控えて、政府間では一応のけじめといいますか、そういうものをつけていこうということであったと思います。そのとおりになったわけですが、しかし、アメリカ政府としても解決できたとはもちろん思ってないわけですし、日本もそうです。いずれにしても日本の七月の結論を見守りたい、こういうのがアメリカ政府の立場だろうと思いますし、それまでにまたいろいろと交渉によって解決しなきゃならぬ問題もあるわけでありますが、議会の方は、こうしたアメリカ政府動きというものももちろん微妙に影響していると思います。ですから、議会も、サミット前に議会で保護主義的法案を通すというようなことはサミットにおけるアメリカの立場を悪くしますし、また、他の国との協力関係にもひびが入るということで、議会も与党の首脳部はサミットまではというふうに抑えに回っておる節があります。  これはそのとおりだと思いますが、しかし議会の空気がよくなったかといえば、決してよくなってないと思いますから、一時そうした与党の幹部の努力等で抑えはきいたとしても、これはサミットが終わったらまた吹き出してくる可能性は私はあるんじゃないかと。もう法案は既に、例えば九十二対ゼロで可決した上院の決議の内容を盛った法案が委員会にも出ておりますし、ボン・サミットが終わったらこうした問題がまた吹き出てくるんじゃないか、決して油断ができないような状況だと私は思います。
  112. 和田教美

    和田教美君 この貿易摩擦の問題、特にアメリカとの関係で、政府は今要するにもっと輸入をふやせ、国民にもっと輸入品を買え、外国製品を買えということを盛んにPRされておるんだけれども、個別の市場開放措置ということだけでこの三百何十億ドルという巨大な赤字が急激に減るということはちょっと考えられないと思うんです。やはりより根本的に内需拡大への経済政策の転換ということが必要ではないかというふうに私は思う。  きのう、実は外交及び総合安全保障に関する調査特別委員会で大來佐武郎さんをお呼びして意見を聞いたんですけれども、大來さんも、内需拡大の問題については、財政に余り負担をかけないような形の何か方法があるんじゃないか、例えば賃金をもっと上げるとか、そうすれば所得税もふえるじゃないかとか、あるいは住宅ローンについて税制上の優遇措置をとったらどうかとか、それから公共事業の一部に民間の資金を動員する、民間は資金がだぶついているわけですから、それを動員するというふうないろいろな手があるじゃないかということをおっしゃっておりました。  僕は、やはり減税というものがこの内需振興のために非常に必要ではないかというふうに思うんですけれども、政府・自民党の中でもこの問題については議論がいろいろ対立をしているわけだけれども、安倍外務大臣はどういうお考えでしょうか。
  113. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、確かにおっしゃるように政府の中でも自民党の中でも、内需拡大ということについてはそう反対する人たちもいないわけですが、そのあり方をめぐっていろいろと議論が分かれておるわけであります。私も、今日の段階において黒字の解消といったところで、そう簡単に、四分野を完全に解決したところでできるものじゃありませんし、今のこの輸入品購買運動といっても、どれだけの成果が上がるか疑問の点もありますし、いろいろと努力はしますけれども、三百数十億の赤字を、そしてこれからもまたふえる予想のあるそうした赤字をぐっと急激に下げていくということは、これはなかなか難しいと思いますですね。やはり基本的には一つアメリカのドル高ですね。ドル高、高金利というものが是正をされなきゃならぬと思います。同時にまた、日本もただ輸入努力だけでなくて、あるいは市場アクセスの改善努力だけではなくて、やはり内需の振興を図って、そうした努力によって輸入ニーズをふやしていくということにつながらないと本格的なものじゃないように思います。  ただ、内需振興については、今の財政で百三十兆も赤字を持って、この赤字をさらにまた拡大をするような形で内需の振興を図るということは私は反対に入りまして、財政主導型じゃなくて、今おっしゃるようないろいろのやり方があると思いますね。民間活力を推進するとか、デレギュレーションを推進するとか、あるいは週休二日制、時短の問題とか、さらに減税といいましても政府の立場ですから、これはまた財政にもつながっていきますし、そう今ここで申し上げられる立場ではありませんけれども、いろいろとそういうことを含めた検討をしなければならぬと思います。その検討を大体七月ごろまでにやろうというふうに政府としては決めまして、今そろそろその準備に入っておるわけでありまして、実はOECDもアメリカもこの日本の内需拡大についての要請は、これから相当強くなってくると私は思います。  しかし、OECDもアメリカもやはりそれぞれ財政赤字を抱えておりますから、財政によって日本の内需振興を図れということは言っていないわけですね。シュルツ国務長官も、プリンストン大学の演説がありますが、それは非常にシュルツさんが勉強をされて、相当これまでの財政経済学者としての心魂を込めた演説じゃないかと思いますが、それは私もその素案をいただきまして読ましていただいておるわけですが、また概要もちょっと聞いたんですが、その中で日本に触れた部分で指摘されておるのは、日本の貯蓄率が非常に高い、しかし消費は非常に低い、同時にまた日本における投資は貯蓄と比べると非常にアンバランスだ、そういうところに日本の問題があるということを指摘されておられまして、結局やはり貯蓄率というものを投資、あるいは消費を高める、そういう方向にもっと活用できるんじゃないか、そういう経済政策の転換というのはあり得るんじゃないかということを意見として述べておられるように思います。もっと詳細なものですけれども。私は、やっぱりその考え方は非常に傾聴に値するのではないかと思っております。私も、基本的にはそういうことでこの難関というものを切り抜けていく必要があると、こういうふうに思っておるわけです。
  114. 和田教美

    和田教美君 ボン・サミットの政治的な問題というのは、やはり最大の問題は平和と軍縮、中曽根総理もおっしゃる平和と軍縮という問題をいかに前進させていくかということにあると私は思うんですけれども、そのための米ソ首脳会談の問題とか、ジュネーブの軍縮会議の問題とか、いろいろ問題はあると思うんですが、一つの問題はやはりSDIの問題だと思うんですね。SDIの問題については先ほどからいろいろ議論が出ておりますけれども、先ほどからの外務大臣の答弁を聞いておりますと、アメリカは何とかSDIの研究について、ボン・サミットの参加国の足並みを一致させて、政治声明か何かに織り込みたいという考え方のようですけれども、今の外務大臣のお話を聞いているとそれは無理だ、そういうことはない、そう足並みをそろえる必要はないというふうに受け取っていいんでございますか。
  115. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) SDIはボン・サミットの政治議題にはもちろんなっていないんですけれども、しかし東西問題が論ぜられる中で、あるいは米ソの軍縮問題が論ぜられる中で、アメリカのレーガン大統領が非常な熱意を持っていますから必ずこれは出てくるだろう。事前の個人代表のいろいろの議論の中でも、アメリカのそうした動きというものは察知されたわけでありまして、必ず私は出てくるだろう、こういうふうに判断しております。そのとき参加国がどういうふうに対応するかということについては、それぞれの国が今検討していると私は思います。  まだしかし、問題は、それじゃ何か進むような状況にあるかと言えば、ヨーロッパヨーロッパ全体で協議しても結論が出ない、NATO諸国も結論が出ないということでありますし、またヨーロッパの国々によっては随分SDIについては考え方が違っておりますし、それから日本も専門家の意見は聞きましたけれども、今ここで理解からさらに進んで最終的な判断を下すという状況にはない、私はそういうふうに思っております。ですから、そう事態が大きく変わっていく、ボン・サミットで何かSDIについて一つの結論が出るというような状況では私はないように思っております。  ただ、首脳を中心とした議論ですから、その流れがどういうことになっていきますか、それは予側できない面もありますけれども、しかし今の客観的な情勢から見て、SDIがボン・サミット参加国の合意を見るような形で前進するということはちょっと考えられないんですけれども。
  116. 和田教美

    和田教美君 その首脳の話ですけれども、中曽根総理は野党の党首との会談で、さっきも久保田委員がちょっとお触れになりましたけれども、SDIには慎重に対処するけれども、技術的研究よりも戦略的、政治的バーゲニングパワーを重視する、そういう考え方を検討すべきだということをおっしゃっているんだけれども、それは聞き方によってはいろいろ立場の違いもあって足並みもいろいろと一致しない面があるけれども、軍縮交渉を推進するために、アメリカの力をつけるためにとにかく何らかの一致点を見出すというふうに努力するという考え方のようにも受け取れるんですけれども、そういうことは可能ですか、また適当でしょうか。
  117. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私の率直な意見をこの場で申し上げられるような段階でないんですけれども、私はあのSDIについては先ほど申し上げましたように各国の足並みがそろっていないし、またSDIそのものについて日本自身もそれほど理解が進んでいるわけじゃないですから、そう簡単に結論が出せる筋ではないように私自身としては思っております。
  118. 和田教美

    和田教美君 SDIについては、きのう、おとといと外務省で先ほどから話がありましたようにアメリカの戦略防衛局の専門家のいろいろの話を聞いたわけで、その内容についてはさっき北米局長から説明がございましたけれども、その中でどうも政府の今の説明を聞いておりますと、エックス線レーザー兵器、これは一番国会の論議でも焦点になっているわけですけれども、これに要するに核爆発エネルギーを使って、それをエックス線レーザーに転換をして、そして相手のICBMを破壊するという兵器にやはり核爆発エネルギーを利用することを検討しているということが明らかになったわけなんですけれども、ただ、先ほどの栗山さんの話によると、これはSDI研究の一つの非常にごく小部分であって、根幹はやはりSDI全体は非核兵器である。こういう説明が強調されたということでございましたけれども、そういう説明を聞いて外務省としては、一部分にはそういう確かに核を使った研究はあるにしても、全体の流れとしてはやはり非核兵器だ、つまり将来研究参加という問題を考える場合に、それほどの障害にはならないというふうな判断をされておるのかどうか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  119. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) けさほども御答弁申し上げましたように、今回のアメリカの説明をどういうふうに評価するかということにつきましては、まだ十分な分析を行っておりませんので、そういう意味での判断というのは現段階では率直に言って申し上げられないと思います。  ただ、けさほども御答弁申し上げたことでありますが、アメリカ側の今回の説明に関します限りにおきまして、一月の日米首脳会談でレーガン大統領から総理に対して説明がありましたSDIというものは基本的にと申しますか、SDIというものは非核であるということ、そういう基本的な構想というもの自体については変わっていないと申しますか、レーガン大統領の説明どおりであるというのが、先方が強調をしたということでございます。  どういうふうに評価するかということについては、先ほど申し上げましたが、現段階ではまだ、例えば大臣にも十分御説明しておりませんし、私ども各省を含めまして十分な分析を行っておりませんので。
  120. 和田教美

    和田教美君 このアメリカ側の説明による核爆発エネルギーをエックス線レーザーに変換をしてICBMを破壊するという、こういう考え方、これは先ほどから栗山局長もしばしば言われておるように、必ずしも核兵器と断定はできない、核兵器でないかもしれぬというお話もございましたけれども、その点の考え方も依然として変わらないわけですか。それとも説明を聞いて、ますますこれは核兵器に当たらないというふうにお考えなんでしょうか。
  121. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) その点、説明を聞きましても依然として明確なことは申し上げられないと思います。  いずれにしても、要するに従来から存在する兵器とは基本的に異なる兵器でございますので、そういうものを今度は国際的あるいは一般的に使われております定義に当てはめてどういうことになるかということにつきましては、これは今回アメリカ側が参ります前から私御答弁申し上げていることでありますけれども、今後の研究の推移を見て判断しなければいけないことであろう、その点については私の認識は変わりません。
  122. 和田教美

    和田教美君 先ほどからの外務大臣の御発言を聞いておりますと、かなり慎重にこの問題に対処するということのようでございますから、第一回のこの説明を聞いただけで軽々にとにかく結論を急ぐというようなことは絶対にあるべきでないし、何回も聞くということが必要だし、また国内のいろんな専門家、科学者の意見をもっと広く聞いてもらいたいというふうに思うわけで、政府の部内の専門家が必ずしも本当の専門家かどうかわからないわけで、もっと広い科学者の立場というものがあると思うんですが、その辺についてはどういうお考えでございましょうか。
  123. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) その点につきましては、以前にも御答弁申し上げたと思いますが、もちろん国内のいろんな専門家の方の知識、外務省自身としては十分な科学知識を持ち合わせておりませんので、政府の内外、いろんな方の専門的な知識というものは十分勉強さしていただいて、我々の判断に資したいというふうに考えております。
  124. 和田教美

    和田教美君 ゴルバチョフ書記長がことしの秋の国連総会に出席をするということがはっきりしたわけでございますが、その機会に米ソの首脳会談が開かれる可能性がかなり強くなってきたと私は判断するんですけれども、その点について外務省としてはどういう判断をされておるのか。また、その際中曽根総理も国連総会に出席をしてゴルバチョフ書記長とさらにもう一度会うとか、日本の立場を明快にするとか、そういう考えがあるのかどうか、その辺をお伺いいたします。
  125. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 秋にゴルバチョフソ連書記長が出るかどうかということですが、プラウダなんかの報道では出そうだということでしょうし、これは相当信憑性もないわけでもないだろうと思います、プラウダの報道ですから。政府関係なしに報道はちょっとあり得ないわけでしょうし、それからいろいろな米ソのやりとり等を見ても、レーガン大統領も会いたいという、ゴルバチョフ書記長も会いたいという空気が出ておりますから、可能性としてはあるんじゃないだろうかと見ております。ただ、中曽根総理がこの国連総会に出るか出ないかという点についてはまだ何も決定しておりません。
  126. 和田教美

    和田教美君 それではIAEA関係質問を二、三いたしたいと思います。  IAEAの運営については今のところ財政的にも非常に基盤はかたいし、問題はないと思うんですけれども、ただ一つお聞きしたいのは、八二年の九月だったと思いますけれども、イスラエルの信任状の問題ですね。イスラエルの信任状をイラクが否決する動議を出して、それが通ちゃったというふうなことから、イスラエルを支持するアメリカが、IAEAは余り政治的に動いちゃいかぬというふうなことを理由にIAEAのあり方の再検討というふうなことを要求して退場したというふうなこともございまして、この問題は一応その後解決をしたわけですけれども、その後はそういう問題をめぐって例えばアメリカとアラブ諸国との間の対立だとか、あるいはまた非同盟あるいは非核保有国との対立だとか、そういうふうな問題が出ていないのかどうか、その辺を念のためにお聞きしたいと思います。
  127. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 御指摘のとおり、一九八一年のイスラエルのイラクの原子炉の攻撃につきましては、信任状否認という形でIAEAでイスラエルへの対処ぶりが問題となりましたが、これはお話の米国の退場騒ぎもございまして、いろいろと協議の結果、原子炉攻撃を禁止する決議は採択されておりますが、その後イスラエルの扱いそれ自身は現状においては御指摘のとおり解決された形で現状に来ております。この問題を含めましてIAEAが政治的に特別の行動をとるべきでない。なぜならばこれは技術的な平和利用を促進するための機関であって、そのような行為はむしろ軍縮委員会等で十分議論してほしいという普遍的な考え方がございまして、自来特段の政治問題はないままに推移しております。
  128. 和田教美

    和田教美君 それでは、IAEAに非常に関係のありますNPT、核不拡散条約の関係についてお尋ねしたいと思います。  先ほども話が出ておりましたけれども、ことしの九月にNPTの第三回再検討会議があるわけでございますけれども、第二回会議でも出た問題ですけれども、非核保有国の間からは当然六条関係の核保有国の、特に米ソでございますが、核軍縮義務の問題ですね、これがさっぱり核軍縮をやっていないんじゃないかというふうな非難なり攻撃というものもまた出てくるだろうというふうに思うわけでございますが、前回の第二回の国際検討会議から五年たつわけだけれども、その間に依然として中国それからフランスはこのNPTに入っていませんし、それからインド、パキスタン、イスラエルその他いわゆる潜在的核保有国と言われる国々もNPTの外にあるというふうなこととともに今の問題ですね、核保有国の核軍縮という問題、核軍縮義務というような問題が事実上さっぱり進んていない。確かに今ジュネーブで新しい包括的軍縮交渉は始まっておりますけれども、しかし今までのところは全く事態の進展はないというふうなことで、これは日本としては、さっきもお話がございましたけれども、今井大使が準備会議の議長をやっているというふうなこともあって、当然核軍縮推進という問題についてもう少しはっきりしたイニシアチブをとっていくべきではないかというふうに思うんですが、この問題についての基本的な政府の考え方はどういうことでございますか。
  129. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生御指摘ございましたように、核不拡散条約に非核兵器国が入りまして非核兵器、核を持たないという選択をいたしました大前提には、核兵器国が核軍縮をする、こういうことがあることでございます。  ただ、その核軍縮が進んでおらないではないかというお話でございますが、先生も御指摘ございましたように米ソの軍縮、新しい交渉が始まりました。三月十二日から始まりました第一回のラウンドではお互いの立場を表明し合った、こういうことでいまだ実質的な進展はなかったと思いますが、第二ラウンドが五月三十日から開始される予定でございます。私どもといたしましては、大臣も常に御答弁をされておりますが、この米ソの軍縮交渉、特に核軍縮交渉が進展することを強く望んでおります。  それからまたこの核不拡散体制、これはやはりそれなりの意味があると思います。そこで、先生御指摘ございましたような二つの核兵器国、それから潜在的核保有能力を有する国がいまだ入っておらないわけでございますが、これらの国に対してはたびたび核不拡散体制強化の見地から条約に入るようにと、こういう働きかけを行っております。ことしも日本を初め主要国がこれらの諸国に働きかけを行っております。まだ具体的な成果は出ておりませんが、この努力は引き続き行いたいと思います。  また核軍縮交渉について、やはりこれも大臣からたびたび御答弁されておりますように、具体的な効果的な軍縮措置ということを推し進める必要がある。その見地から、例えば核実験につきましては昨年のステップ・バイ・ステップ方式を提案するとか、我が国として我が国なりの努力を行っております。今後ともその努力を続けていきたいと思っております。
  130. 和田教美

    和田教美君 終わります。
  131. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 議題になっております国際原子力憲章の改定の問題については異議がございませんけれども、それに関連しまして一、二質問したいと思います。  まず最初に、非常にプリミティブな質問で恐縮なんですけれども、国際原子力機関というのはインターナショナル・アトミック・エナジー・エージェンシーですか。日本では一般に原子力というのと核というのと、何か原子力というと平和利用の印象を与えるし、核というと何かおっかない感じを与えるんですけれども、アトミックエナジーを原子力というふうに訳するのは、これは政府としてそういうふうな訳語をお決めになったわけですか。つまり、アトミックエナジーとニュークリアプラントなんという言葉も使うと思うんですけれども、それを日本語に訳するときに区別して訳しておられるんですか。
  132. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 翻訳の問題といたしましては、アトミックエナジーという言葉は常に原子力と訳しておりますし、ニュークリアという言葉が使われておりますときは核と訳しております。
  133. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 例えばニュークリアプラントなんという言葉もありますわね、原子力発電所。その場合は核発電所ですか。
  134. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 原子力というものそれ自身が戦後の新しいものでございましたので、この分野の開発に従ってかなり翻訳に苦労したということは私ども承知しております。例えばニュークリアリアクターというのは現在原子炉と訳しておりますが、ニュークリアという場合でも一部例外的に原子力と訳している例がございます。また、英語とフランス語では少しニュアンスが違いまして、フランス語では原子力のことをアトミックエナジーとは言いませんで、エナジーヌクレールと言っているようでございますし、ちょっとニュアンスが違いますが、いずれにしても原子と核とは実体は同じであっても言葉、ニュアンスが違って、核及び原子力と使い分けております。ただし核兵器も、ニュークリアウェポンというときは核兵器でありますが、同様にアトミックウェポン、原子兵器という言葉もございまして、この辺は必ずしも実体をはっきり定義して使い分けているわけではないと理解しております。
  135. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そういう質問をしましたのは、言葉の持っている情緒的な意味政治なんかについて案外大きな影響力を持っていることがありますから、その点を考えて質問したわけです。  それで本題に入りまして、中国が今まで国際原子力機関に入らなかったのが、昨年ですか入ることに決めたわけですね。今まで入らなかった理由、そして今度入ることに考え方を変えた理由はどのようなものであるというふうに受け取っておられますか。
  136. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) まず中国は、核防条約、NPTにつきましては、これは核兵器国と非核兵器国を国際法上差別するものであってその原理原則に賛成しがたいという立場から、従来ともこれに入っておりません。同じような考え方で、国際原子力機関につきましても必ずしも自国にとってその組織へ加盟することの必然性に乏しいという理由を持っていたようでございます。それは、その時点までは中国原子力利用は主として軍事面に限られておりまして、平和利用すなわち発電の分野はございませんでした。しかしながら近代化に伴うエネルギー開発の必要上、近年原子力発電の必要性を生じまして、これを各国との協力の上でやるには、まずそういう目的のためにつくられたこの原子力機関加盟し、かつその枠組みの中で各国と原子力協定を結んで機材の輸入等を受ける、技術の提供を受けるという必然性が経済開発の過程で出てまいりまして、これが昨年一月にIAEAへ加盟する直接の動機となったものと理解しております。
  137. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 物の本によりますと、今まで中国国際原子力機関に入らなかったのは、米ソ両超大国による核の独占体制をカムフラージュするものである、そういうふうな理由で入らなかったんだということを物の本で読んだことがあるんですけれども、それは本当ですか。
  138. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 御指摘のような議論が中国によってなされたことは御指摘のとおりでございます。
  139. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、その考え方、つまり国際原子力機関が米ソの核独占体制のカモフラージュであるという考え方をしていたとすれば、同じ理由によって核拡散防止条約に今中国は入ってないんですけれども、今度は核拡散防止条約にも入るというふうな空気が出てくるんじゃないかと推定されるんですけれども、その点はいかがですか。
  140. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生御指摘のように、核不拡散条約につきましては、中国の基本的立場は、これは米ソの核独占という不平等な条約であるというのが基本的立場でございますが、最近、そういう立場であるので条約には加盟するという兆候はございませんが、一方核の水平拡散、これに対しては中国としても反対であるという立場から、中国自身としては、非核兵器国が核を保有するような一切の援助も行わないという立場を表明いたしております。したがいまして、先生御質問の核不拡散条約に中国が入るという兆候はないわけでございますが、核不拡散条約が目的としております核不拡散体制そのものには中国も協力していくというのが現在の姿勢であるかと思います。
  141. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは他国のことですけれども、やはり核拡散防止条約に未加入国であるフランスとか中国なんかが入ることが、私はやはりその条約を実効あるものにするために必要であることだと思いますので、やはりそういった空気をつくっていかれることを希望して、その質問はそれで終わります。  ただ、国際原子力機関に対する日本の出資額と、それからそこで働いている日本人職員の比率はどうですか。
  142. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) まず予算についてお答えいたしますと、全体の予算が約九千数百万ドルの中で私どもの分担率は一〇・七%でございます。ただいまの分担金は九百四十八万ドルでございまして、これが一〇・七%でございます。  他方、人員でございますが、国際原子力機関の人員全体では千七百名近くございますが、そのうちいわゆる事務を除く専門職員は六百十九名、このうち日本人職員が二十六名で四・二%となっております。
  143. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは万国郵便連合のときにも同じ質問をしたんですけれども、やはりこういう国際機関日本人がもっともっと進出していくことが日本の国際化にも私は非常に役に立つんではないかと思うんですけれども、職員の数が出資額に比して非常に低いわけですね。これは、希望者がないんですか、それとも向こうの方で余り歓迎しないんですか。
  144. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 実は原子力機関の側におきましては有資格の邦人職員の増加を非常に強く希望しております。現に私どもも部長クラスを含めまして高級幹部以下二十六人を出しておりますけれども、絶対量が比率的に足りませんのは、やはり専門職員は原子力工学の専門家である、あるいは査察要員たり得べき訓練、知識を持っていること、かつ外国語に堪能であって、国際業務を推進するに足る能力を十分にお持ちであるということ等々を兼ね合わせますと、実際問題としてこちらから送り込む供給の余地はそう大きくはないという実態がございます。にもかかわらずその中で科学技術庁を中心に最大の努力を払って、一名の方が任期が満了すると必ず次を送るという形でそのレベルをできるだけ高く維持したく努力しております。
  145. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今後もその努力をやっていただきたいと思います。  それから、日中原子力協定、これは交渉中だと思うんですけれども、そのことについてお伺いいたします。何か新聞の報道では、今年早々にでも正式調印の運びになるんじゃないかというふうな報道があったと思いますけれども、その後この交渉の進展状況、それから、これは交渉中ですから差しさわりがない限りでお答え願って結構ですけれども、どういう内容のものであるか、その内容というのは中国がほかの国と、例えば西ドイツなんかと結んでいる同種の協力協定と違った点があるのかどうか、そういった点をお答えいただきたいと思います。
  146. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 中国との原子力の平和利用に関する協定につきましては、一昨年一九八三年の第三回日中閣僚会議でこれを協議開始する旨決定されまして以来、五回にわたりまして正式協議を行ってまいりました。一番最後は昨年の十二月東京で行った協議でありますが、この段階でおおむね大筋において協議の枠組みができまして、日本側から条文案を提示いたしました。逆に申しますと、それまではいろいろと原則についての協議をしてきたわけでございます。  中国側は、この日本提案を持ち帰りまして、かなり時間をかけて政府部内で慎重に討議を行ってまいりましたが、ごく最近これに対する態度を表明してまいりました。いわば日本案に対する対案を提示してまいりました。これを受けて我が方は部内検討を開始したばかりでございますが、この検討を終えた段階で次の正式協議を行いたいと思っておりますが、その時期は現状ではまだ確定するに至っておりません。場所は北京ということに了解が整っております。  御質問の第二段の、交渉ないしは協定の論点とされております内容でございますけれども、御理解賜りましたように、交渉中の案件でございますので、子細には触れ得ませんが、大筋で申し上げまして私どもが輸出する機器、機材、燃料等、あるいは将来受けるべきかもしれない物品等につきまして、それをどのように平和利用に限定することを確保するかというシステム、メカニズムについて討議しております。  中国日本からのものも含めて、外国から受け取る設備すべては必ず平和利用に限定するということを大原則としております。その原則はそれで大変結構なんでございますけれども、政府間の取り決めといたしましては、こういう場合はどうする、この場合はどうだという細目の取り決めが必要でございまして、目下その枠組みを協議中でございます。  それから、御質問の第三点の各国との関係でございますが、中国は現在までに四カ国と原子力協定を整えておりますが、そのうちの例えば西独、ベルギーとの協定につきましては、これは平和利用に限定するという枠組みが明確に定められております。それからブラジル、アルゼンチンと締結した協定におきましては、受け取った機材等はIAEAの査察の対象とするというふうになっております。したがいまして、国によりまして、ケースによりまして若干の類別はございますが、平和利用に限定するということはいずれの場合も中国が確立しているところでございます。
  147. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その点はそれでわかりました。  次に、ユネスコの改革の問題、これは先般も私取り上げましたけれども、その後ムボウ事務局長が来日いたしまして、安倍外務大臣とお会いになったはずでございます。外務大臣、そのときに先般外務省で挙げられたような問題点について改革を要望されたと思うのですけれども、四月十七日に日本人記者クラブでのムボウ事務局長との質疑応答を見ますと、新聞報道ですからどこまで正確かわかりませんけれども、必ずしもユネスコの現状に改革すべき点はあるというふうにはムボウ事務局長は認めていないような答えをしておりましたけれども、まず安倍外務大臣がお会いになったときの向こうの答えはいかがでしたでしょうか。
  148. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 十六日にムボウ事務局長会談をした際に自分から、我が国の改革提案に対しては西側先進国のみならず開発途上国からも多くの支持を得ておる、ムボウ事務局長は強大な権限を有しておるわけであるから、人事、管理運営、予算執行面でぜひとも改革を実行してもらいたい、これまでの改革は、行われておるけれどもこれは不十分だ、我が国として評価できる改革が必要であります、そのためには今週の総会及び五月の執行委員会が極めて重要であるので、ムボウ事務局長としても大局的見地から改革に努力することを期待する旨を強く申し入れたわけです。これに対して事務局長は、日本は西側先進国及び開発途上国双方と良好な関係にあり、ユネスコ改革に関して果たすべき役割は大きい、ユネスコ改革のため自分としてできる限りのことを行うつもりであり、今後とも日本と一層緊密に協力していきたい旨を述べました。この事務局長発言は従来に比しまして一応前向きではありますが、今お話しのように十七日の記者クラブでの会見では、改革の必要性や日本との協力に言及しながらも、予算抑制、人事管理、事業計画の削減問題等についての質問には従来どおりみずからに責任はないという姿勢をとった由でありますが、事務局長の改革への姿勢については今後執行委員会におきまして具体的にいかなる態度をとるか注意深く見守ってまいりたいと思いますが、会談におきましてユネスコの改革に対する我が国の強い決意を伝達いたしまして、事務局長も改革に真剣に取り組むよう申し入れたことは意義があった、こういうふうに考えております。
  149. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 日本記者クラブでの会見の報道を見る限り、なかなか改革に真剣に取り組むというふうには受け取れないんですけれども、やはり日本政府としても相当の決意を持って改革に迫るのでないと、今までと同じことを繰り返し、結局は脱退する国がだんだんふえていってユネスコそのものが崩壊する危険があるんじゃないかということを心配しているんですけれども、日本政府としても相当腹を決めて強硬にその改革を主張していただきたいというふうに思います。それはそれで希望を述べておきます。  次に、けさからしばしば取り上げられてきております貿易摩擦の問題、通商摩擦の問題、これは私も前回も取り上げました。しかし、いずれも時間が少なくて十分徹底して質問する時間がなかったんですけれども、きょうは少し時間がたっぷりあるようですから、今まで断片的に質問したことと多少ダブる点があるかもしれませんけれども、あわせて質問したいと思います。また、先週私欠席しましたので、ほかの委員質問と多少ダブる点があるかもしれませんけれども、その点、御了承願いたいと思います。  まず最初に通商問題について、アメリカ、特にアメリカの議会の空気が悪化してきたのはこの一月ぐらいからだと、この二、三カ月の問題であるということを昨日も聞いたんですけれども、アメリカの議会が急速に対日態度を硬化さしてきた理由はどこにあるというふうにお考えですか。
  150. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私もアメリカへ参りましていろいろ聞いてみたんですが、いろいろとやはり原因はあると思いますね。それは一つは、もちろん日本の黒字がどんどんふえる、アメリカに言わせると三百七十億ドルぐらいにもなる、今後もふえそうだと。さらに、日本は市場アクセスの改善をやると言いながら、また六回もやったと言いながら、その効果がちっとも見えていない、アメリカの輸出が日本に対してふえていない。だから、どうも日本は言うこととやることと違うんじゃないかという、何か不信感ですね。あるいは、どうもやはり貿易の黒字がこんなにふえているというところには、やるやると言って、やらないだけじゃなくて、相当日本との間に不公正な、アンフェアな貿易が多くなっているんだ、日本が行っているんだ、アメリカ人というのはフェアかアンフェアかというのに対して非常にはっきりしたものの判断をする国民ですから、アンフェアというものに対して非常な憤りを持っておるわけですね。ですからアンフェアだと言う。それからやはりハイテク分野なんかでも、どうも日本に追い抜かれそうだと。自動車もレーガン大統領が自由化すると言いながら日本が自主規制をした。それも、アメリカから見ると一五%もふやしたじゃないか、全くアメリカの求めておるところとは違った行き方を勝手に日本がやっている。あるいはまた、アメリカ自身が、アメリカの議員が来年選挙を控えて、レーガンさんにばかりついていっても自分たちの選挙もなかなか大変だと、選挙の問題もあるようですし、いろいろとそういう問題がみんな絡んで一挙に噴出したんじゃないか。もちろん、一月にレーガンさんと中曽根さんと会った、首脳会談をやって四分野についていろいろと日米間でやっているけれども、どうもその点も日本との間でうまくいってないという認識も持っておったようであります。また一面、アメリカ政府の一部が議会に対して、どうも日本はうまくやらないということを盛んに議会側にも言ってきた、そういうことも相当エスカレートした原因になっている。そういうことで、いろいろなものが重なって一挙に出てきたんじゃないだろうかと思っております。  決定的な問題はありませんけれども、決定的といえば、とにかく知日派までが反日に回ったという非常にショッキングな、九十二対ゼロという、そういう議決ですから、大変なそういう意味ではショッキングなアメリカの空気の変わり方だ、こういうふうに思っております。
  151. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私も多くのファクターが一緒になってああいうふうに急に噴き出したのではないかと思いますけれども、今大臣も言われました、その中の一つの要素である自動車の自主規制、これを一五%ふやして二百三十万台ですかにしたことが、日本としてはむしろ集中豪雨的な輸出を抑えるつもりで善意でやったことが、向こうでは逆の意味で受けとられて、市場開放をサボるんじゃないかというふうな逆の受け取り方をされて、それがアメリカの対日世論を悪化さした一つの要因だということを言われましたけれども、私もそれが一つじゃないかと思いますし、また中曽根首相も参議院で、これは一つのミステークであった、判断の間違いであったというふうなことを言われたんですけれども、そのように判断の間違いであったというふうに受け取っておられますかどうか。
  152. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、日本側としては苦悩の末の決断だったと思います。通産大臣が最終的にもちろん総理大臣にも相談して決めたということですから、それまでの間には随分情報もとったでしょうし、そして日本がどうあるべきかということで検討を加えて、業界とも随分話し合ったと思います。その最後に、日本としてアメリカとの関係を考える場合においてこういう決定を下さざるを得ないというのは、まあ大体村田通産大臣なんかから聞いてみますと、やはり二百七、八十万でほっとけばこれはもう自由化すれば自動車の輸出が伸びることは間違いない、そういう状況であったことは事実だと思いますね。そうすると、四月からばあっと集中的に輸出がふえてくる、これでは日米関係にも大変なひびが入ってしまうということもあるし、日本としてもしかし、アメリカのレーガン大統領が言った、そうした背景にある消費者のニーズというものも考えなきゃならぬ。大変な日本の車がプレミアム等もついておるわけですし、そうしたことも考えなきゃならぬし、それから、日本からいわゆるキャプティブといいますか、日本でつくって向こうのブランドで売る車ですね、そういうキャプティブの問題もあって、それはGMとかクライスラーとか、そういう会社が非常に強く求めておる、それの要請にもある程度こたえていかなきゃならぬ。いろいろそういうことで相当考えに考えて、結局アメリカの立場を踏まえて考えた結果の苦悩の決断であったと私は思います。
  153. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 起こったことを余りくどくど言うつもりはないんですけれども、もしああいう判断が誤った情報あるいは一方的な情報に基づいてなされたのであるとするならば、同じような誤ちを二度も繰り返さないために、やはりどういうところに原因があったかということを分析しておく必要があるんじゃないかと思うんです。その自動車の問題について、主としてどういうところからどういう方法で情報をおとりになったか。
  154. 木村崇之

    説明員(木村崇之君) お答えいたします。  自動車問題については、大統領の決定があって以降、外務省それから通産省とも大統領府、それから議会、それから国務省、USTR、商務省、それからまた別にアメリカの自動車業界等々と接触をいたしたわけでございます。  私どもの一番難しかった点は、表向きの発言と本音の発言とがどれだけ差があるか、ないのかというところの判断の問題だったというふうには考えております。
  155. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、ああいう決定をなされたのは、表向きの答えをそのまま受け取ってああいう結論に到達したというふうな御趣旨でございますか。
  156. 木村崇之

    説明員(木村崇之君) 先ほど大臣から申し上げましたとおり、この判断は非常に苦しい判断であったというふうに考えております。通産省が直接は担当したわけでございますが、通産省としては表向きに言っていることと、それからそれをもとに状況を見て、アメリカが思っているであろうことを判断すると、このことからどちらにしても非常に難しい結果になるであろうということは理解しつつも、その決定に至った、こういうふうに聞いております。
  157. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もこれはもし逆の決定をしていたら、あるいはまたアメリカはそれを口実にして硬化する一つの材料にしていたかもしれないと思うので、必ずしも判断が間違っていたとは申しませんけれども、しかしこういう問題というのは、確かに今言われたようにディプロマティックコンプリメントリーで言うことと実際の腹の中と違う場合はしばしばあるわけで、こういうのは外交交渉を専門にしておられる皆さんたちはよく御存じのことだと思うんですけれども、そういう情報のミスを再び繰り返さないように各省十分連絡して、またその得た情報を各省で十分総合的に判断して今後やっていただきたい、そのことを希望しておきます。  それから、今度、四月九日に政府は対外経済対策推進本部をつくられたわけですけれども、政治家がお役人だけに任せないで、みずからのリーダーシップで解決するためにこういう体制をつくられたのは、私は結構だと思うんですけれども、余りに構成メンバーが網羅的であるのと、それから今まであった例えば河本特命相の担当しておられる対外経済問題関係閣僚会議ですか、何か屋上屋を重ねるような組織で、かえってうまく機能しないんではないか、そのことを心配しているんですけれども、外務大臣いかがでしょうか。
  158. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは中曽根総理を初めとして、政府全体として大変今の状況、危機感を持っていますから、何とか政府全体が結束して、与党とも相協力してこの事態を切り抜けなきゃならぬと、非常な決意を今の実施本部という形に集約したわけで、それには閣僚が全部参加する。党の幹部も参加する。同時にまた、役所を代表する事務次官が参加するという形をとったわけでして、同時にまた、その中で部門を設けてやっていくわけですから、やはり政府の決意というものを内外に示すためには、あの形がそれなりに意味があると思いますけれども、問題はいかに実行するかということでして、それがこれからの勝負だろう、こういうふうに思っております。まあ相当次官会議とか関係次官が集まっていろいろと努力しているようですし、政府の方もこれから閣僚も集まってやるようにいたしますが、最終的には七月にその結論が出てくるわけでございます。いろいろと批判はあると思いますけれども、政府としてはベストを尽くした体制だと。もちろん対外経済問題関係閣僚会議というのも別にこれが廃止したわけてはありませんですし、これは残っておりますし、ただそれよりはさらに広範な形の、もっと集中的な形のものにしたと、こういうことであります。
  159. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、そのことを言いましたのは、今までの河本特命相を座長とするところの対外経済問題関係閣僚会議と別なものをつくるのであるならば、私はこういう問題は外務省が一番関係すべき問題じゃないかと思いますので、やはり外務大臣が副本部長になるべきじゃないかということを考えたからそういう質問をしたんで、副本部長にはなられなかったですけれども、やはりその会議の中で外務大臣は強力に発言して、どうしてもほかの省庁というのは自分の国内的な利益を優先して考えがちですから、その中で市場アクセスの問題なんかについて十分強力な発言をしていただきたい、そのことを念願しておきます。  それから、今大臣も言われましたけれども、今度アクションプログラムをつくったわけですけれども、プログラムをつくるだけじゃなしに、これをいかに実行するかということで、この実行の監視はやはり消費者が一番よくどの程度実行されたかどうかというのはわかると思うんですが、今まで、昭和五十七年に経済対策関係閣僚会議というのができまして、やはり同じような貿易摩擦、非関税障壁の問題が起こったときに、それで苦情処理推進本部ですか、というのができまして、実際の事務は企画庁の調整局でしたかでやっておられたと思うんですけれども、今後の参考の意味でお伺いしておきたいんですけれども、今までどういった種類の苦情が持ち込まれて、いかにしてそれが処理されていったか。大体のことで結構でございます。
  160. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) お答え申し上げます。  先生もおっしゃいましたように、この市場開放問題苦情処理推進本部、私どもこの英語の頭文字をとりましてOTOと呼んでおりますが、これが五十七年に設置されまして、三年ちょっと経過したところでございます。  この間、最近までに受け付けました苦情の件数は百九十八件に上っております。私ども原則といたしましては、苦情処理を受け付けますと十日以内に苦情のあった方に処理についての方針を申し上げる、しかし、十日以内に片づかない場合には一カ月ごとにその推進状況をお伝えするというやり方でずっとやってきておりますが、目下のところその大半につきましては苦情処理をいわゆる処理済みということでございます。  細かい分類と申しましてもなかなかこれは分類の仕方が難しゅうございますけれども、所管官庁別に集計いたしますと、これは百九十八件の合計ではなくて、その以前に最近の一番近い時点で具体的な集計をとった百六十四件の中からの集計でございますが、厚生省の六十三件を筆頭に、大蔵省三十八件、通産省三十二件等々とございます。最近もこの一カ月ばかりの間にかなりの苦情処理がございまして、目下その一部はなお処理中でございます。
  161. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 消費者の苦情処理のいろいろ申し込みを受けた場合に、やはり彼らが苦情を持つのは当然であると思ったものを引き受けられたんだろうと思うのですけれども、それは大体苦情を申し立てた人の希望どおりに解決していますか。
  162. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) 私どもの方の統計で幾つかの分類がございまして、苦情処理を受け付けた結果、何らかの改善措置を講じたもの、それから、日本の市場開放が毎年対策をやることによって少しずつ進んできておりますので、その間の情報の伝達のおくれ等の関係で苦情側に誤解があって、それを解いたもの、それから、苦情はあったけれども現行の制度なり手続は変えないという三つぐらいに分類して申しますと、これも百九十八件、現在の件数じゃなくて、その少し前の百六十一件の件数、この二月末の累計の百六十一件からの分類でございますが、そのうち何らかの改善措置を講じたものは四十三件でございます。それから、先ほど申しましたように、苦情を持ってきた側で、日本の一番最近時点での制度の改善ぶり等について情報が足りなかったために誤解があって、それを私どもの側の説明等によりまして誤解を解いたものが七十八件でございます。それから、苦情はございましたが、日本の現行の制度上この現行どおりでやりたいということで御理解願ったものが四十件、そういう分類になっております。
  163. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 苦情の理由はあるけれども、急激に変えられないので現行のまま処理したというのが四分の一ほどあるわけですけれども、それは、つまり現行の法令とか現行の慣行なんかを前提にして変えられない、そういう結論に到達されたわけですか。それとも要求そのものが無理だというのは、誤解に基づいたというのが七十八件だと思うんですけれども、法令を変えれば、あるいは慣行を変えれば要求どおりに改善できるようなものがこの中に含まれているんですか。
  164. 吉川淳

    説明員(吉川淳君) 当然、もし現行制度の改善あるいは変更を前提とすれば可能というものもございます。
  165. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これを質問したのは、背高コンテナの問題、今度このアクションプログラムの中に入っているんですけれども、これなんか随分前から問題になっていたように思うんですけれども、これはやはり今の道路交通法とか何とかということを前提にするからできなかったと思うけれども、少し発想を変えて特定の場合にはそれを認めるということにすればとっくの昔に解決していたんじゃないかというふうに思うんで、それで今の質問をしたわけですけれども、そういうふうに発想を変えることによって摩擦の原因を取り除いていくことができるものがかなりあるんじゃないかと思うんです。そういう問題をひとつ外務大臣大いに中で頑張ってやっていただきたいということを希望します。その問題はそれで終わります。  長期的な対策の問題に入りますけれども、さっき和田委員の方からもお触れになったんですけれども、この対外経済問題で大来さんの諮問委員会、きのうこれは大来さんにも質問したんですけれども、諮問委員会の報告書の「内需中心の持続的成長」という項目がありますですね。この中で、住宅、生活環境整備のための土地利用、建築規制の排除であるとか、それから貯蓄税制の見直しの問題であるとか、そういうふうなことが取り上げられております。  先ほど安倍外務大臣も言われたけれども、シュルツ長官が日本の非常に高い貯蓄率のことを問題にされた。私も日本人の貯蓄率が対GNPにいたしましても可処分所得等の比率にしましても諸外国に比べてかなり高い、特にアメリカと比べて非常に高い。これはいろいろの原因があって、やむを得ない理由も随分あると思うんですけれども、また貯蓄率の高いことが必ずしもすべて悪いとは私は言いませんけれども、殊に今後高齢化社会に向かっていくようになってくれば貯蓄人口は当然減ってくるわけですから、これを無理に人為的に下げる必要なんか私は少しもないと思うんですけれども、ただ今の日本の場合はアメリカと逆に、アメリカは消費に対して減税をやっているわけですね。日本の場合は貯蓄に対して減税をやっているわけですね。マル優の優遇税制なんかがあるんですけれども、人為的に貯蓄をデスカレートする必要は少しもないと思うんですけれども、人為的に貯蓄を促進する必要があるかどうか、むしろそういう税制はアメリカに勧めてアメリカ政府にやってもらった方がいいんじゃないか。日本は逆に住宅なんかのやつをスペンディングにもっと減税した方がいいんじゃないかと思うんですけれども、安倍外務大臣国務大臣としての御所見はいかがですか。
  166. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは一つの有力な御意見として承っておきますが、貯蓄率が高いということはこれはやはり今日まで日本発展の大きな原動力でもあったと思うわけですね。そしてまた、これからの国民生活というものを考えていくときに、これは日本人にとっては一つの美徳でもあろうと、ですから貯蓄性向というのを逆の方向へ持っていく、デスカレートするというふうなことはこれはとるべきじゃないと思うんですが、しかしやはり貯蓄というのがまた逆に、国内投資というものとのアンバランスが非常に大きくなっていますから、そういうものにもっと回っていくということを経済政策として、あるいは金融政策として考えていかなきゃならぬ時代に入ってきているんじゃないか、私はシュルツさんに、貯蓄率が高くて非常に日本の投資と国内投資とインバランスだということを言われたときに、それは、日本の貯蓄はアメリカの高金利を慕って結局そちらの方に皆回っているんですよ、こういう話をしたんですけれども、それも確かに一つの私は側面だと思いますけれども、一面においてはやはり誘導策は、その高い貯蓄を国内投資に回していくという誘導政策というものはもっと考えられるんじゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけですね。  ですから、これはこれからの知恵の出しどころの重要なポイントじゃないだろうかと私は思っております。
  167. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 やはり国内需要喚起政策一つとして、今の政府は中曽根内閣としては公共事業、財政政策による財政投資による需要喚起、これはやらない、これはいろいろ問題のあるところですけれども、それは一応それでよろしいとしまして、例えが先ほどもちょっと言われたんですけれども、民間資金なんかを大きなプロジェクトに利用する場合に、今の利子率ではとても民間の資金を動員するということは非常に難しいんじゃないかと思うんですけれども、利子補給をするというふうな考え方があるんですけれども、これはどういうふうに考えられますか。
  168. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これも公共事業促進の場合の一つの有力な考え方として確かに浮かんできていますですね。ただ、公共事業を今までのやり方で実施していくということでなくて、もっと請負制度というか、債務負担行為といいますか、そうしたことによって促進できるんじゃないか、ですから民間活力というものの推進の一つの大きな分野にもつながっていくであろうし、またこれでもって公共事業というものもそれなりに推進されていくであろうということで、これは自民党内においても有力な議論としてあるわけですが、しかしいろいろと制度とか法律の仕組み等があるものですから、なかなかそう簡単にはいかないという点もありますけれども、そういうとにかく内需を振興するために相当思い切ったことをこれからやっていかなきゃなりませんから、七月までにはいろいろな知恵を、国会のこうした議論において出たお考え等も、アイデア等も積極的に取り入れて、これはいいものという結論が出ればこれを直ちに推進していくという決断をする時代にやはり入ったんじゃないか、そういうふうに思っておりますし、これから推進本部がいろいろのことをやりますから、私もその中に入っていろいろと私自身も考えておることもありますし、進めてまいりたいと、こういうふうに思います。
  169. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 経済の方の問題はそれで打ち切りまして、これも先ほど来しばしば問題になりましたSDIの問題、これも私は前に質問したことがあるんですけれども、改めて質問したいと思いますが、SDIがレーガン大統領によるとこれは非核兵器だということになっているんですけれども、私技術的なことはよくわからないんですが、あるいは間違っているかもしれませんけれども、核爆発のエネルギーを光に変えて、そしてその光を集めて爆発力として利用するというのが大体の構想じゃないかと思うのですけれども、アメリカ側で核兵器及び非核兵器、どういうディフィニションをしているのか、つまり核を直接核によって爆破させる、人あるいは物を殺傷するために爆発させるのを核兵器と言っているのか、アトミックウェポンと言っているのか、一番最初に国際原子力のところでアトミックとニュークリアの区別を質問したのも一つその問題が頭にあったから質問したんですけれども、アメリカ政府の核兵器の定義は一体どうなっていますですか、及び日本政府はどういうふうにそれを定義しておられるか。
  170. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 法律上の定義としては、アメリカの国内法で使われている定義という点で申し上げますと、アメリカの、委員御承知のように原子力法というのがございまして、そこの原子力法上では、核兵器とはこれは委員の御質問にそのままぴんと直截にお答えすることになるかどうかちょっとわかりませんが、一応法律上の定義として申し上げますと、核兵器とは、原子力を利用する装置であって、その主たる目的が兵器の原型、これはプロトタイプでございますが、兵器の原型または兵器の試験装置としての使用またはそれらの開発のためのものを言う、これが一応アメリカの国内法としての原子力法のディフィニションでございます。
  171. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その定義からいいますと、SDIというのは核兵器の中に入るんじゃないですか。
  172. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ただいまの関委員の御質問は、いわゆるエックス線レーザー兵器、SDIの中でいろいろ考えられている兵器の中でのエックス線レーザー兵器についての御質問かと思いますが、その点につきましては、今回のアメリカのチームが来日しましたときに、私どもの方からも質問をいたしまして聞きましたが、そこら辺のところについてはいずれにしてもまだ研究の段階であって、そういういわゆる一般的に使われております核兵器の定義との関連でこのエックス線レーザー兵器をどういうふうに観念し、位置づけるかということについてはアメリカ自身も必ずしも十分に詰めて考えているというふうには受け取れなかったというふうに承知しております。
  173. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 日本政府の定義はどうなんですか。
  174. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは従来から政府が答弁書等でお答え申し上げていることでございますが、いわゆる非核三原則との関連で、核兵器というのは、「原子核の分裂又は核融合反応より生ずる放射エネルギーを破壊力又は殺傷力として使用する兵器」、これを政府としては核兵器という、ということで御説明申し上げております。
  175. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、SDIというのは何かグレーゾーンにあるような気がするんですけれども、核兵器と断定できますか。
  176. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは委員御承知のように、従来から方々の委員会で御質問がございまして、私から御答弁申し上げておる次第でございますけれども、非常に全く新しいタイプの兵器でございまして、先ほど私が申し上げました核兵器の定義との関連で核兵器と言えるか、あるいは核兵器と言えないというふうな判断が、最終的にはできないということを御答弁申し上げておる次第でございます。
  177. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 わかりました。  アメリカからのSDIの説明に来て、二十四日、きのう、おとつい会われたという話を聞きましたから、その質問は省略しますけれども、恐らくきのう、おとついの話では、いわばイントロダクションに当たるもので、具体的な内容はまだ以後になると思いますけれども、アメリカ日本技術、SDIに使用できる技術、どういう面にアメリカは関心を持っているというふうにお考えですか。
  178. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 今回の向こう側の説明からは、積極的に日本のこういう分野についてアメリカとしては関心があるというたぐいの話はございませんでした。  今回の説明は、先ほども御答弁申し上げましたように、SDIの関連でアメリカがいろいろ研究を進めようとしておるものはこういうタイプの技術であるということについては、かなり詳細に説明がありまして、そしてそれとの関連でアメリカ側が申しておりましたことは、アメリカとして日本のみならず、ほかの国に対しても同様であろうと思いますが、こういう技術について協力してほしいとか、あるいはこういう技術をやってほしいというふうに注文をつけるというつもりはないんだと。  ただ、およそこのSDIの研究との関連でアメリカが研究を進めようとしてきている技術はこういうものであるから、そういう説明を聞いた上で、日本なら日本の方で、これなら協力できるということで関心があるものがあれば、そういうものは自主的に日本の判断で言ってきてほしい、こういうことでございまして、アメリカ側から積極的にこういう分野で協力してほしいとか、こういう分野の技術が欲しいと、そういうインディケーションは一切ございませんでした。
  179. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 SDIというのは、私も詳しいことは知りませんけれども、いろんな技術の一種のシステムだというふうに承っているんですけれども、その中のいわばコンポーネントになっているところの個々の技術、特に日本が進んでいるところの技術というのは、恐らく大部分が民間で使われている、いわば汎用技術じゃないかと思うんですが、そういう技術アメリカの国防省が直接あるいは民間を通じて協力してもらいたいということを言ってきたときに、政府はそれに対してとめることができますか。
  180. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは従来から申し上げておりますように、輸出あるいは技術供与との関連で武器輸出三原則というものがございまして、委員御案内のように武器の定義がございます。そういうものに該当しないものは汎用ということで、汎用につきましては原則として規制をしない、こういうことでございますので、その限りにおきましては政府としては直接の規制は行っておらないし、また現在の制度のもとでは行うことはないということだろうと思います。
  181. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 SDIの問題につきましては、私は予算委員会で慎重に検討してもらいたい、中曽根総理大臣も慎重に検討すると言われたが、慎重に検討してもらいたい。そのときに考慮の中に入れてもらいたいこととして、日本の自主性を失わないこと、それから自由陣営の連帯を乱さないようにしてもらいたいというこの二つを申し上げました。その自主性を失わないという点に関して今の質問をしたんですけれども、つまり民間同士の協力なんかで、何か日本政府の関与しない間にずるずる引きずり込まれていくんじゃないかということを私は心配したから、その質問を申し上げたわけです。  それからもう時間がありませんので、これから先は意見になりますけれども、私、先週実はブラッセルで開かれました社会主義インターナショナルの、サミット会議じゃないんですけれども、ボン・サミットをにらんで開かれた会議には違いないんですが、サミットじゃなしに中腹ぐらいの会議なんですけれども、そこでやはりこのSDIの問題が大きなトピックとして取り上げられました。その会議はラテンアメリカなんかも来ておりましたけれども、主として西ヨーロッパの社会主義政党の党首ないし国際局長クラスの人たちが来ておりましたけれども、必ずしも意見が統一されていない。概して言うと、大体三つに分かれていたように思うんですけれども、一つは野党である、特にイギリス労働党、社会主義政党が野党であるそういう国の社会主義政党の意見、イギリス労働党の中に代表されていましたけれども、これはむしろイデオロギー的な反対というか、レーガンは研究だけだと言っているけれども、研究すれば必ずデベロプメントになるし、デベロプメントになれば必ずデプロイメントになるんだから、最後はスターウオーズだ、だから反対だというふうな、これはイデオロギー的な反対をしておりましたけれども、政権をとっている、連立ないし単独で政権の座にある社会主義政党は二、三を除いてそのSDIに関する討論の間ずっと沈黙を守っておりました。賛成も反対も意見を言わなかった。それが私は非常に印象的でした。それからあとはフランス、政権をとっているフランスの社会党ですけれども、アメリカのSDIに反対しておりましたけれども、その反対の理由は、イギリス労働党なんかのイデオロギー的な反対ではなしに、我々はヨーロッパの利益をはっきり定めて、リファインして、そしてこの問題に取り組まなくちゃいけない。つまりアメリカがどんどん宇宙兵器の開発なんかをやっていけば、ヨーロッパは宇宙技術、宇宙開発技術についてだんだん取り残されていくだろう。しかし、とてもフランスだけでそれはやっていく力はないんで、ヨーロッパの力を結集してやっていく必要があるんじゃないか。無条件に今のアメリカのSDIに協力することは、技術上の、宇宙の技術の上でアメリカの植民地になるんだ。そういうふうな考え方からの反対で、決してイデオロギー的な反対じゃないんです。  日本としてもやはり将来の宇宙開発技術についておくれをとらないようにしていくことが必要ではないか。二十一世紀の産業を考える場合にこの宇宙開発技術というのは非常に私は大きな比重を持つのではないかと思いますが、前に申しました自主性、自由世界の団結ということのほかに産業技術の開発という点についてもあわせて検討され、決断される場合の考慮の中に入れていただきたい、そのことを申し上げまして時間が参りましたので、これは希望だけ述べておきます。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
  182. 立木洋

    ○立木洋君 最初に幾つかの問題をちょっとお尋ねしておきたいと思うんですが、ことしの二月に日ソ漁業交渉で妥結して、あれは大変難航して、その結果漁獲量が大幅に削減されたという大変な状況があったわけですが、これはとりわけ日本海の沖合底びきの漁獲割り当て量というのがこれはもう三分の一から四分の一という大変な削減になっておるわけで、昨年の十二月に北転船四十五隻の中で十六隻が減船したという状況に続いて、今度は沖合底びきも百六十一隻のうち四十五隻の減船をどうするかという事態が進んでいて、こういうまた新たな状況の中で十二隻の減船を検討しているということで政府にその対応策を求めてきておると思うんですね。これらの問題については、政府としても当然日本海の水域の沖合底びき網漁業についてはやはり十分に救済措置を検討すべきであるというふうに考えているわけですが、どういうふうになっているのか、その点と、検討を進めてほしいという要望についての水産庁のお考えを最初に聞いておきます。
  183. 中村晃次

    説明員(中村晃次君) 先生御指摘のとおり、ことしの日ソ交渉によりまして、日本海のソ連水域で操業しておりました沖底の漁場が従来の沿海洲沖から東サハリンに移されたというようなこと、それからクォータがかなり大幅に削減されたというようなことがございまして、従来日本海で沖底を操業しておりました業界団体から十二隻ほどの減船をせざるを得ないという陳情、同時に国としてもそれに対してしかるべき援助をしてほしいというような陳情を私ども受けております。水産庁といたしましても従来どおりの操業というのはなかなか現状では難しいという感じも持っておりまして、現在道庁、それから関係の業界というようなところから意見を聞きながらこれに対しての対応ぶりについて検討しているというところでございます。
  184. 立木洋

    ○立木洋君 もちろんそれは救済措置についても前向きに検討するという方向で取り組んでいるのでしょうね。
  185. 中村晃次

    説明員(中村晃次君) 救済措置も含めましてどういうことができるのかということで検討しているということでございます。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 これは実体、根本的にどうするか、北洋漁業も含めて、こういう漁業のあり方の問題、これは別の機会に十分お聞きしたいと思うんですけれども、当面としてはやはり大変な状況になっているわけで、この問題については十分に措置ができるようにしていただきたいと思うんです。  大臣の方も外交交渉でこういうふうになったわけですから、ひとつ目を配ってこういう事態についても十分な対応ができるように努力をしていただきたいと思います。いいですか。
  187. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今全力を挙げております。
  188. 立木洋

    ○立木洋君 次に、先日、アメリカの軍艦が中国を訪問し寄港するという問題について、中国の朱外務次官が非核武装通常軍艦とするということで、核の軍艦は入港を認めないということでアメリカ中国の間では既に合意したという発表がありましたけれども、この事実関係については外務省の方としてはどういうふうに把握しておられるのか。
  189. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) この問題につきましては、アメリカ側は従来からアメリカが維持している核兵器の存在については否定も肯定もしないという政策には変わりはない、中国との関係を含めて変わりはないということを申しております。  それから他方、中国自身につきましては、その後四月の十五日に胡耀邦総書記が豪州を訪問されるということで、それとの関連で豪州にあります中国大使館が声明を出しまして、アメリカとの間に通常推進のアメリカの軍艦が非公式かつ儀礼的な訪問を中国に対して行うことが考えられている、これは米中間の問題であり双方の間には解決すべき問題がまだ残っていると、こういう声明を発表いたしまして、さらにその後豪州を訪問中の胡耀邦総書記が記者会見の席上質問を受けて、その豪州にあります中国大使館の声明につけ加えるべきことは何もないというお答えをされた、そういうのが私どもが把握しておる事実関係でございます。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 それから先般ニュージーランドでは、御承知のように核積載可能艦については寄港を一切認めないという態度をニュージーランドの場合とっておりますし、それから今度アイスランドの政府が先日発表して、いわゆる核を積載している軍艦については寄港はもちろんのこと、領海内への立ち寄りも禁止するという態度を発表しているわけですね。これはアイスランドの場合にはNATOで、とりわけアメリカにとっても重要な役割を担う、戦略的に見てもというふうに考えられるわけですが、こういう事態についてこれがよいことだというふうに判断されるのかどうなのか、外務省としてはどういうふうに判断されているのか、大臣いかがですか。
  191. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) アイスランドの問題につきましては、私ども新聞報道でアイスランドの外務大臣が今委員御指摘のようなことを言ったということを承知しておりますが、それ以上具体的に正確に事実関係を把握しておりませんので、ちょっと外務省としてどうこうということを申し上げる立場にないと思います。
  192. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカの側としては新聞報道等によれば不快感を表明しているというふうな話も出ておりますし、ニュージーランド等についても内部に圧力を加えて干渉的な態度をとるというふうなことは避けるけれども、しかしこれが好ましいというふうにアメリカ側としては判断していないということは、いろいろな新聞の報道からする限りでは見ることができると思うんですね。こうしたいわゆる核を積載している船の寄港を認めないということがアメリカの戦略上どういう影響を与えているのか、そういう点についてはどういうふうに判断されますか、どういうふうにお考えになるのか。つまりアメリカの戦略上こういうふうに核を積載した船の入港を認めないというふうな態度をとることが、戦略上どういうふうな影響をもたらしていると思われるか、アメリカの戦略上ですよ。
  193. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) アメリカといたしましては、従来からアメリカの海軍の機動力というものをグローバルに確保するということが、アメリカの国防政策上非常に重要な要素であるというふうな認識を持っておりまして、特定の艦船に核兵器を搭載しているかどうかということについては否定も肯定もしないというそのアメリカ政策というものも、そういう今私が申し上げましたような認識から出てきているものであるということだろうと思います。  したがいまして、そういうアメリカ側の基本認識から申し上げれば、そういう核を搭載している艦船の寄港は認めないという国がふえるということは、一般的には先ほど申し上げましたような意味アメリカの海軍のグローバルな機動力というものに対して悪影響があるというふうに、これは認識しておるだろうと思います。
  194. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、そこで大臣にお考えをお聞きしたいんですけれども、日本の立場としてこういうふうに外国の核を積んでいる軍艦の寄港を拒否するという国がふえていく傾向を、日本外務大臣とされては好ましいものというふうにお考えになるのか、これは大変好ましくないものというふうにお考えになるのか。あるいはどういうふうなお考えなのか。
  195. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 核政策というのは、それぞれの国のやはり独自な政策があってしかるべきだと思いますし、そういう意味においてニュージーランドが、あるいはまたアイスランドがそうした自分の国に基づいた非核政策をとるということは、それはその国の問題だと、こういうふうに思っております。
  196. 立木洋

    ○立木洋君 日本の場合もこれは非核三原則を国是としてやっているわけですし、そういう立場と同じような意味ですよね。つまり非核三原則というか、外国の核を積んでいる船は入港を認めない。だから、これは日本政府としては好意的に見ることができるんではないでしょうか。それはもちろんそれぞれの国が自主的にとるということではありますけれども、日本政府としては当然日本政府の立場と同じような方向での政策というふうに見ることができるとすれば、これは好意的に受けとめるということができるんではないでしょうか。
  197. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、好意的とか好意的でないとかそういうことではなくて、やはりそれはそれなりに冷厳な事実として認める、認めざるを得ないと思いますね。それは、日本の場合はまた日米安保条約というものに基づいた安全保障というものもあるし、そういう中での非核三原則というのがあるわけで、それぞれの国の安全保障についてはそれなりの考え方があってしかるべきであることはもう申すまでもないわけです。
  198. 立木洋

    ○立木洋君 どうもそこらあたりがすっきりしないんですよね。どうも非核三原則の立場をとるならば、当然そういう非核政策をとる外国の政府の立場というのも理解できるし、それはいい方向だというふうにお認めになるのが私は当然の結論ではないかというふうに考えるんだけれども、なかなかそこの部分についてはお触れにならないというのは何か別に含みがあるんですか。
  199. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 他国政策を何だかんだ言うということは失礼な話だと思うんですね。やはり自分の国には自分の国の政策というのがありますから。
  200. 立木洋

    ○立木洋君 そしたら、今度ちょっと別の話ですがね、この間この参院の外交・総合安全保障特別委員会の小委員会で参考人をお呼びしていろいろ聞いたわけですけれども、そのときに前田さんといわれる前の海幕長ですね、この方が、日米安保体制の信頼性を崩す問題の一つとして、    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 つまりアメリカの軍艦が自由に入港できない、これは核を積んでいる船も含めてですね、自由に入港できないということは日米安保条約上の信頼性を問われる問題だという趣旨発言をされているんですけれども、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  201. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、日米安保条約はそもそもできたとき、それから今度の新安保になったときから、核の問題については日米間で取り決めをしておるわけですから、そういうものに基づいた信頼性というものが、日米ともその基本というものについては認識し合った上での信頼性というものが、日米安保条約を通じて存在しているわけですから、核問題というのは別に新安保条約ができてからの問題ではないと思います。それでもって信頼性が崩れるとか、そういうことじゃないように思います。
  202. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃ、ちょっと言葉をかえて質問いたしますけれども、信頼性云々の問題とは別にして、日本には非核三原則があるわけですね、この日本に存在する非核三原則、これはアメリカの核を積載している軍艦については一切寄港を認めない、寄港するといって事前協議にかけた場合にはこれをお断りすると、この立場ですね。これはアメリカの核戦略上何らかの影響を与えているんでしょうか。影響あるのかないのか、その点はいかがですか。
  203. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカはもう御承知のように、核の存在の有無については明らかにしない、こういう基本的な立場をとっておりますし、その限りにおいて日米安保条約というものは日米間の問題でございますから、アメリカの核戦力に影響を与えておるとか、アメリカはそういう点は十分踏まえた上の戦略を立てておるであろう、そういうふうに思います。ですから、アメリカにそういう何か基本的な影響があるとかないとかということも、これはもう日米安保条約ができるときからアメリカというのは既に日米間において話し合い済みの話ですから、この日米安保条約あるいは事前協議条項というのは。ですからそれがアメリカの戦略に影響を与えておるとか与えていないとかいう問題ではないように思います。
  204. 立木洋

    ○立木洋君 どうもお話があれなんですがね。  大臣、メモをごらんになるのも結構ですけれども、こちらも向いていてください、どうも顔向けておいて話し合わぬと話し合っておる気にならないから。  さっき栗山さんが言われたように、結局一般的に言うならば、いわゆる核を積載しておる軍艦の寄港を拒否するということはやはりそれなりの影響があるというふうに言われたんですよ。それで、同時にアメリカ自身も、それはニュージーランドやアイスランド等との問題についてこれを好ましいとは受けとめていないわけですよね、やはりそれなりに不快感を示すということがあるわけですから。そうすると、アジアにおいてこういう重要な地理的にも役割を占めている、またいろいろな意味での関係を重視している日本が、いわゆる一切の核の寄港や領海の通過を認めないという政策アメリカにとって影響が全くないというふうには言えないんじゃないでしょうか。今一般的に言えばそういう影響があり得るというふうに既に答弁があるんですけれども、どうですか。
  205. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、やはり安保条約でアメリカ日本に対する立場というものは織り込み済みですから、新しく起こったニュージーランドの事態とかあるいはまたアイスランドの事態とはちょっと違うと思います。
  206. 立木洋

    ○立木洋君 結局、織り込み済みというのは、事実上アメリカ政策で主張しているように核の存否は一切有無を明らかにしないという立場で、だから日本に核を持ってくる場合も何も言わない、黙って実際には核が持ち込まれているということで、アメリカの核戦略上何ら問題はないということに結局なるんじゃないですか。
  207. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは大変な誤解でしてね。織り込み済みというのは、日米安保条約を結んだときに既に日本は非核国家であるということは承知しておりますし、あるいはまた事前協議ということで、核の持ち込みについては交換公文その他でアメリカが申し入れをしなければならぬ、同時にまたその場合において日本がこれを拒否するということはアメリカは十分知っているわけですから、承知しているわけですから、そういうことが既に織り込み済みだと。ですから、むしろアメリカが核を持ち込むということになりますとアメリカの戦略に変化があるかもしれませんけれども、今の状況では変化がないと……。
  208. 立木洋

    ○立木洋君 これは、これ以上言ってもやはり堂々めぐりでしょうから、絶対にそれは大臣として認めるというふうな発言ができる立場にはないわけですから。しかしいずれにしろ、核戦略上アメリカが影響があるとするならば、事実上影響を受けない状態アメリカとしてはつくり出しているというふうなことは私は言えるだろうと思うんです。だから、そのことを現実に、私の誤解だということでなくて、やはり世界の大勢がそういう方向に進みつつあるわけですから、そういう非核政策をとる政府として、そういう点を十分に考えておいてほしいということだけ強く指摘しておきたいと思うんです。  それから、先ほど国連局長がちょっと同僚議員に答弁された、これは局長でなくて結構なんですが、ジュネーブでの米ソ交渉ですね。これについて、第一ラウンドですか、それぞれが主張を述べ合ったということで、特に進展がなかったという御説明でしたけれども、このジュネーブの米ソ交渉について何らかの通報的なものがあったのでしょうか。もしかあったとしたら、どういうふうな内容が伝えられているのか、その点ちょっとお知らせいただきたい。
  209. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 委員の御質問が、今回の第一ラウンドの終了に当たってアメリカ側としてどうかという意味での情報提供があったかという御質問であれば、私の承知している限り、まだアメリカ側からそういう第一ラウンドの評価についての情報というのは得ておりません。
  210. 立木洋

    ○立木洋君 会談が始まる前だとか、会談の経過の中での通報はございましたか、何らかの意味での。
  211. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 会談の前、それから会談の進行中におきましては、随時アメリカ側から情報の提供を受けております。
  212. 立木洋

    ○立木洋君 何か内容的に述べていい点があればちょっと述べていただきたいんですが。
  213. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) まあアメリカの基本的な姿勢等については従来からも明らかにされているところでありますし、それから交渉内容については、御承知のように、米ソとも、これは一切外に交渉内容については言わないという、非常に厳しい申し合わせがなされておりますので、そういう意味で、アメリカから受けておる情報の内容についてこの場でちょっと申し上げるわけにはまいらないと思います。
  214. 立木洋

    ○立木洋君 今度ボン・サミットに行かれる点で、SDIの問題について先ほど来同僚議員からいろいろお尋ねがあったので、私はその問題について一つ一つお尋ねすることはいたしませんけれども、ただ確認しておきたいんですけれども、先ほど、それは首脳の間でいろいろやりとりがある、だからどうなるかわからない側面があるというふうなお話もありましたけれども、外務大臣とされて、このSDIについて支持だとか、協力するだとかいう態度を表明することは一切ないというふうに確認してよろしいでしょうか。
  215. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどからまあしばしば言っておるんですが、今の客観情勢ですね、例えばヨーロッパにおいて合意が何もできてないということ、それから、日本においても、専門家から意見は聞きましたけれども、まだこれについて分析、評価等もしておらない、そういう情勢の中にあって、理解という立場からさらに進むという段階ではない、私はそういうふうに思っております。
  216. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ大臣とされては、理解するというところまではいったけれども、今の段階では、支持だとか協力だとかいう態度を打ち出すということは考えていないということを確認させていただいてよろしいですね。
  217. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今私が申し上げたとおりです。これはそういう段階、そういう状況ではないと……。
  218. 立木洋

    ○立木洋君 ジュネーブ交渉の途中経過についての内容は報告されない、これは内部的なことだということであれですけれども、今回のボンのサミットで、やはり米ソ交渉が三つの分野に分かれて交渉が進められており、そして今回の交渉の最終目標としては、いわゆる核兵器、あらゆる分野での核兵器の完全廃絶ということを交渉の課題に掲げたわけですね。これは数十年来、米ソ間の交渉の課題としてこういう完全廃絶の問題を掲げるということはなかったことで、これは非常に重要な意味合いがあるだろうというふうに考えておりますし、そういう点では、世界の多くの人々が大変歓迎して見ていると思うんですね。ですから、先ほど来外務省の方の御答弁にもありましたように、やはりこの交渉が進むということを我々も望んでいるということだと思うんです。ですから、今度のボンのサミットの席上で、ぜひとも、レーガン大統領に対しまして、日本国会に来てでも核兵器がない方がいいということまで言われたわけですから、ひとつそういう方向で、核兵器が完全に廃絶されるようにこの交渉の過程で努力してほしいということを、レーガン大統領にもぜひ伝えていただきたいと思うんですが、大臣いかがですか。
  219. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもう、いずれの国にとっても念願でありますから、この核兵器の交渉が進むことを期待もしますし、率直なそれについての意見交換があることはもう当然だと思います。
  220. 立木洋

    ○立木洋君 これはもちろん、レーガン米大統領にだけ要望してほしいということではありませんけれども、先ほど来問題になっている、これが実現するかどうかは別ですけれども、例えば今度ソ連ゴルバチョフ書記長等とも会う機会があれば、非核国日本の立場としては当然そのことをもソ連にも強く、この交渉でそういう方向に行くように努力してほしいということをやはり申し入れてほしいと思います。だからそういう立場で、米ソ両方というのがもうほとんど九十何%という世界じゅうの核を持っているわけですから、これは人類を殺りくしてなおあり余る大変な量ですから、そういうことになれば中国も、米ソが率先してやれば我々もそういう方向に進むことを望むということをも、前回外相が国連でも発言しているところですから、そうすれば局面というのがより進むことになるだろうと思うんです。だから、そういう意味も含めて、ぜひ、今度のボンのサミットではアメリカの大統領に会われるわけですから、ひとつぜひよろしくお願いしたいと思うんですけれども、よろしいですね。
  221. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まさに当然この米ソ核軍縮交渉というのは今度のボン・サミットの大きな議題でありましょうし、いずれの国も、今申し上げましたように、米ソの核軍縮が進むことをこれは心から望んでおりますから、そういう方向で議論が進んでいくだろう、こういうふうに思います。
  222. 立木洋

    ○立木洋君 総理にはお会いすることができないので、ぜひともそういう方向に行くように大臣からもお伝えしておいてください。  それではIAEAの件についてちょっとお尋ねしますけれども、IAEAに加盟して、事実上、平和利用の問題で、これは査察を受けるということに、IAEAの場合には、加盟すると、原子力の平和利用についていわゆる検証というか、査察というか、そういうのを受ける体制になっているわけですね。この状況というのは、具体的には問題なく進行しているのかどうなのか、簡単で結構ですが。
  223. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 御案内のおとり、IAEAの最も重要な仕事がこの平和利用、原子力分野での軍事転用の抑止のための査察でございますので、その予算の三分の一を投入し、人員も十分に投入しての仕事をしております。現状におきましては、各国の評価といたしまして、この目的は十分に達成されつつあると理解しております。
  224. 立木洋

    ○立木洋君 本当にそういうことを完全に実施されるには、それはもう言わなくてもおわかりのように、軍事的な核兵器そのものがなくなればこれはまさに完全になるんでしょうけれども、なかなかそうなっていない実態があるので、これは問題としてやはり残されている点だろうと思います。  それから、理事国の問題ですが、これには先進理事国あるいは地域先進理事国あるいは総会選出の理事国というふうないろいろなあれがあるんですけれども、これについてはどういう違いがあるのか、あるいは何か役割に区別があるのか、あるいはまた何といいますかね、役割ということだけではなくしてより優先的な地位をどちらかが占めるというふうなことがあるのかどうなのか、そこらあたりの関係はどうなっているのでしょうか。
  225. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) IAEAの理事会の構成は、御指摘のとおり二種類、さらに分けると三種類になりますが、いわば安保理の常任理事国的な恒常的な理事と、総会によって二年ごとに交代していく理事と大別されるのが一つの違いでございます。常任理事的な立場を有する国は、これまた二種類に分かれておりまして、世界を八つの地域に分け、どの地域からも最低一つはそういった常任理事的な国が出るようにしむけてあります。つまり、地域の公平を図っております。と同時に、原子力分野ではかなり先進国、これから開発する国との格差が大きいものですから、非常に進んだ国は地域にとらわれることなく常任的な立場にしようという考慮も当初にございました。したがいまして、非常に原子力分野で進んでいるがゆえに恒常的な理事とする国が従来は九、これを今度十にいたします。それから、そのような先進国が出ていない地域はそこから最低一つは入れようということがございます。さらに、これらの次に各国持ち回りで一定の数の、二十二でございますけれども、国を二年交代で理事にお願いしようという仕組みになっております。  しかしながら、以上申し上げましたのは選出方法でありまして、権能、権限、役割については全く同一でございます。
  226. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、この常任的なというのは先進理事国がいわゆる常任的なという意味ですね。
  227. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 御指摘のとおり、常任という言葉は使っておりませんが、二年ごとの選挙を経ないで恒常的な席を保有しているという意味で御指摘のとおりでございます。
  228. 立木洋

    ○立木洋君 このIAEAの中でつくられるいろいろな専門的な委員会だとか何かが設置される場合、その役員にはやはり先進理事国が優先的に選ばれるとかというふうなことはなくて、そういう場合でもすべて対等、平等にやられているんでしょうか。
  229. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 御指摘のとおりでございます。
  230. 秦豊

    ○秦豊君 本論に入る前に、北米局長もう一回確認をさしてください。  関委員がお聞きになった例の核兵器の定義ですね、先ほどの。これは非常に基本的な部分に触れている問題でして、単にSDIという膨大な兵器体系をどう解釈するかという問題にかかわるのみならず、今後非常に尾を引く問題だと思いますので、この核兵器についての定義は、先ほどのような在来のやや干からびた、パターン化された答弁ではなくて、現実を反映してより精密に再検討をする、練り直す、さらに日本の解釈をアメリカ側の解釈とすり合わせる、こういうふうなお考えはお持ちになっていませんか。
  231. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 現状では特にそういう考えは持っておりません。
  232. 秦豊

    ○秦豊君 それでは、中国の原発問題はこの質問の最後に回したいと思います。  まず、外務省側に聞いておきたいのは、SDI研究について日本政府として決断をする、つまり方針を決めるためには、この後どんなことを知ればよいのか。つまり、どんな疑問点や問題点をクリアすれば日本政府としての方針を決定し得るのか。この点についてはいかがでしょうか。
  233. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほども御答弁申し上げましたとおり、今回のアメリカ側の説明につきましては、まだ十分な分析、評価を行っておりませんし、大臣にも十分御報告するだけの時間的余裕もありませんので、したがいまして今回説明を聞いたということにとどまる段階で、今後あとどういうことを聞けば政府としてそれなりの結論が出るかというようなことにつきまして、時期的あるいは今後の具体的な段取り等につきましてもちょっと申し上げられる段階ではないと思います。
  234. 秦豊

    ○秦豊君 確かに安倍外務大臣にも精密なものが行っていないようです。しかし、いつまでも放置はできない。いやしくも二国間問題。そうすると、今まで報告を受けた範囲で、例えば非常に技術に偏していたアメリカ側の説明では膨らみがない、もっと知りたい分野が必ずあるはずだと思うんだけれども、その点はいかがですか。  あなたは担当局長なんだから、十全のデータをそろえ、資料をそろえて大臣に報告をし、閣議マター、こういう段階になるんだけれども、とても今までの二日間のあの短時間では私も十分ではなかろうと推測をしているわけだ。しかし、どんなことを埋めれば判断の資料たり得るか、この辺を知りたい。
  235. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) そういう点も含めまして先ほど御答弁申し上げたつもりでございます。
  236. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、それもさもあらばあれ、ボン・サミットが終わって、そして延長国会がいつまでかは別として、ニューヨークの国連総会というふうな時期までこの決定を緩やかに遷延させても一向に差し支えないとお考えでしょうか。
  237. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやはり日本にとりましては重要な意味を持ちますので、慎重に考えなきゃならぬし、また判断を下す場合は自主的にいろいろな角度から総合判断をして下さなきゃならぬと思いますから、そしてまたこのSDIそのものが非常に長期的な構想ですから、そう何も急いで決断をしなきゃならぬという理由もないように思います。
  238. 秦豊

    ○秦豊君 今度はシュルツ国務長官とはいつごろお会いになる御予定ですか。
  239. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今度のボン・サミットで個別会談をいたします。
  240. 秦豊

    ○秦豊君 その後はどういうふうな御予定ですか。
  241. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 後はまたASEANの拡大外相会議でこれも個別会談をするようになると思いますし、またもちろん国連でもお目にかかる、こういうことになると思います。
  242. 秦豊

    ○秦豊君 そうすると、安倍外務大臣とシュルツ氏とはかなり友情の通い合うお二人だと思います。そうした意味では秋の国連総会の前に日米外相・国務長官会談は当然あり得ると思いますが、そのあたりはSDI回答の一応の到達点、回答の一応のタームというふうな考え方はできませんか。
  243. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今からその辺のところを考えて、あるいは到達点とおっしゃいますが、そういうふうなところを予想してこちらで作業をするといいますか、判断を整理していくということは何も考えておりません。
  244. 秦豊

    ○秦豊君 ワシントンから二十三日伝えられたところによると、ワシントンの日本外交当局筋というクレジットなんですけれども、これは朝日の特派員が報道している。「SDI研究で見解」というんだけれども、その本文を見ますと、もしも日本政府が参加をしないと、つまり不参加を回答するということは、企業側の参加を、法的にはともかく、政治的には難しくしかねない、したがって政府としてはそうした点も踏まえて検討していることをうかがわせているという報道なんですよ。  私は伺いたいのは、さっき関委員も聞かれた、宇宙開発技術、新技術、ノーハウの摂取というふうなものも視野に入れて取り組めと。確かにそういう部門もあると思います。不参加というふうな答弁はあり得ますか。
  245. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いろいろな対応はあると思いますが、別に今参加とも不参加ともどちらも考えておるわけじゃありませんし、やはりSDIそのものをしっかり日本が理解しなきゃなりません。これは、本当にといいますか、防御兵器であり、非核兵器であり、核廃絶につながるかどうかという判断も非常に重要だと思いますね。あるいはまた、技術的な問題も非常に問題としてあるわけですし、あるいはまた国際情勢がどういうふうになっていくか、そういう中でヨーロッパ諸国がどういう判断を下していくか、それからやはり西側のそうした自由世界全体としての連帯感といいますか、そういう問題も一つの前提として考えていかなきゃなりませんし、いろいろな総合的な面から決めていかなきゃならぬ。しかし、最後はやはり日本の自主的な、あくまで自主的な判断だと思います。
  246. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、実は政府としては残念ながら理解の域を踏み越えることはできない。つまり共同研究にはどんな分野にも参加できないという回答はまさに自主性の枠内だと思いますが、どうですか。
  247. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 自主性という立場では日本は自由な発言ができるんではないか、自由な回答ができるんではないかと思いますね。
  248. 秦豊

    ○秦豊君 不参加を含めて。
  249. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それはいろいろな対応があると思いますから。
  250. 秦豊

    ○秦豊君 つまり外務大臣、私が言いたいのはまさにこの前からずっと政府側に聞いているように、政府は手を触れない汎用の領域をアメリカ民間にも受け皿をつくって、ペンタゴンが委託をすればいいんだから、日本民間のいろんな十数社がシンジケートをつくって、スーパーコンピューターの開発のように、民と民が行うことについて政府はかかわらない、こういうことも私はあり得る選択肢の一つだというから申し上げているんです。いかがですか。
  251. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは先ほど北米局長が申しましたように、汎用技術という面では自由な交流というのが大前提ですから、その限りにおいては政府が介入する立場にはないと思いますね。これまでもやってきておりますし、これからも同じことだと思います。
  252. 秦豊

    ○秦豊君 私が申し上げた後段の部分ですね。民と民のネットワークが形成される、政府はこれ以上踏み込まないというのは私は一つの見識だと思いますが、現実的な選択だと思いますが、重ねていかがですか。
  253. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 民と民というのはよくわからぬのですが、それはアメリカの民でしょう。アメリカの民、日本の民じゃなくて。
  254. 秦豊

    ○秦豊君 国防総省が委託するんです。
  255. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) その汎用技術という分野においては、これは日本の民の協力とかあるいは技術の提供とか製品の提供とかいうものは、これまでもやっておるしこれからだってあり得る、こういうふうに思います。
  256. 秦豊

    ○秦豊君 北米局長、あなたのお手持ちの資料で四分野、私は六分野というふうに調べたんだけれども、四分野を専門用語の略語をつけてここで明らかにしてもらいたい。SDI研究の四分野。ずっと以前からお持ちですな、その資料は。
  257. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いわゆる委員のおっしゃる四分野というのは、アメリカの公表しておりますSDI関係の予算の区分上の四分野ということだろうと思いますが、第一分野というのがいわゆる監視関係のシステムの予算だろうと思います。それから二番目は……
  258. 秦豊

    ○秦豊君 略語は何ですか。
  259. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 略語は特に私存じません。
  260. 秦豊

    ○秦豊君 SATKAと書いてあるでしょう。
  261. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) それはサベーランス、アクウィジション、トラッキング、それからキル・アセスメント、それの頭文字をとったものでございます。
  262. 秦豊

    ○秦豊君 SATKAですね。
  263. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) はい。それから二番目はDEWということで、これは指向性エネルギー兵器、それから三番目がKEWと言われていますが、これが運動性エネルギー兵器、カイネティック・エナジー・ウェポンズということで、運動性エネルギー兵器ということでございます。それから四番目が先ほども私答弁で申し上げましたが、これが戦闘管理用ということでシステムズ・コンセプツ、バトル・マネジメンツと書いてございますが、これはまさに全体のシステムの運用関係のカテゴリー、こういうふうに理解しております。
  264. 秦豊

    ○秦豊君 「BM/C3」ですね。
  265. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私の手元にある資料にはそういう略語はないものですから、ちょっと申しわけございませんが、委員の御理解と同じだろうと思います。
  266. 秦豊

    ○秦豊君 それに敵の攻撃からシステム全体を守る防御支援技術SIST、それからSDIマネジメント司令部SDIMH、以上の六つで六部門と言っていたんだが、なぜかアメリカから来日した説明員たちは四部門に集約して説明したようだが、そこで大臣よくお聞きをいただきたいんですが、午前中からの皆さんの答弁はかなりゆがみがあります。これは小さな部分だとおっしゃっているんです。今北米局長が正直に読まれた資料、仮に四分野としておきましょう。その中でDEWと言われた大出カレーザー等の指向性エネルギー兵器、これが、予算を読んでいると時間がかかりますが、北米局長も恐らく肯定されると思うが、一番金を使っている分野なんです。このDEWがさらに五部門に分かれていて、その一つが自由電子レーザー、化学赤外線高エネルギーレーザー、エキシマ短波長レーザー、そして中性粒子ビーム、そして問題の核兵器をエネルギー発生源とする核励起エックス線レーザー、こういう部門に分かれて研究が非常に具体的に、しかも急ピッチで進んでいるんです。しかも、これは予算書を北米局長にお確かめいただきたいんだけれども、このDEWに使われている予算が最も膨大なんです。それを細分化して五部門ある私が申し上げたその中で、特に核励起エックス線レーザーに使う予算が断然突出をしていることは、お手元の資料でよもや否定はされないと思う。  したがって、午前中から同僚議員に対する外務省側の説明で、これは核、核と言っているけれども、SDIシステム全体の中ではほんの小さな部分だとおっしゃっていることはまことに事実に反する答弁だと私は指摘をしたい。北米局長そうはお思いになりませんか。数字が非常にリアルに物語っているんだが、いかがです。
  267. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) どういう資料で今御指摘のようなことを言っておられるのか、私必ずしもつまびらかにしないんですが、まず全体の大分類で申し上げますと、指向性エネルギー兵器関係の予算が一番多いということはない、これは明らかにないと思います。
  268. 秦豊

    ○秦豊君 明らかでない。
  269. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 明らかにそうではないと思います。
  270. 秦豊

    ○秦豊君 どうしてかな。
  271. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 例えば現在の八五会計年度で国防省が得ております総額十四億ドルの予算の中で項目的に一番多いのは、まさに第一カテゴリーのサベーランスの関係の予算が一番多いわけです。それから、来年度要求しております三百七十万ドルの予算の中でも、これはまさにサベーランス関係の予算が群を抜いて大きい……
  272. 秦豊

    ○秦豊君 三百七十万ドルじゃないでしょう。単位が違っていますね。
  273. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 失礼しました。三十七億。三十七億ドルのうちサベーランス関係の予算が十四億ドル近くでございまして一番多いわけです。それから、指向性エネルギー兵器とそれから運動性エネルギー兵器の予算は大体ほぼ見合っているという状況だろうと思います。  それから、指向性エネルギー兵器の中で今委員御指摘のエックス線レーザー兵器関係についてどれだけの予算がついているかということは、今ちょっと私手元に資料を持ち合わせておりませんので正確に御答弁はできませんが、いずれにしてもアメリカ側は今回の説明におきましては、先ほど私が御答弁を申し上げましたようなことで、これに非常に力を入れているということは全くないということを再三言っておったというふうに承知をしております。指向性エネルギー兵器はまさに私よりも委員の方があるいはよく御存じだろうと思いますが、ほかのいろいろさっきおっしゃいましたような各種の指向性エネルギー兵器がありまして、今回私どもの受けた説明に関する限りでは、アメリカはむしろそっちの方に力を入れておるというように理解をしております。
  274. 秦豊

    ○秦豊君 今年度の重点が第一分野のSATKA、これに三億七千万ドルでピッチを早めるということは事実です。しかし五年間を通ずれば核励起エネルギー、X線レーザーにかわる強力なエネルギーの発生源が実はないんですよ、大臣。だからどうしてもここに返っていく。だからこの研究を最初から重視しているんです。決して小さな部分ではあり得ないという認識はシビアにお持ちになる必要があるのではないか。だからこそSDI兵器体系全体に対する我が国日本政府の判断も、したがって慎重にならなきゃならないというのが私の意見です。これについては大臣どうですか。
  275. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 核爆発を原動力としてやっていく、この分野について、これは研究の中で小さい分野だと言っているのは、アメリカが言っているわけですね。別に日本政府が言っているわけじゃありませんで、説明を聞いた中では、これはソ連がもう既に研究を始めたのでアメリカも研究を始める、全体的の根幹というのはあくまでも非核という筋で貫かれておるというのがアメリカの説明であるというふうに局長が答弁したように思いますが、したがって、これはもうアメリカ発言であるし、日本はそれに対してどういう評価をするか、どういう分析をするかというのはこれからの日本の問題だと思います。
  276. 秦豊

    ○秦豊君 それから、北米局長、さっきの資料にちょっと返ってもらいたいが、外務省は、あなた自身がコンファームされた四部門への仮に日本の研究参加があり得るとすれば、第一部門のSATKA、追尾、追跡、探知、この分野ならば、仮に近い将来に日本企業が汎用技術をひっ提げて研究に参加することには何らの妨げもないというふうにお考えですか。
  277. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 今の御質問に直截にお答えできるかどうかわかりませんが、何らの妨げもないと申しますか、技術の供与ということで、もし汎用技術であればそれに対する規制は原則として現行制度上存在しない、それだけは申し上げられると思いますが、それ以上のことについては何とも申し上げられないと思います。
  278. 秦豊

    ○秦豊君 大出力指向性エネルギー兵器、DEWの部門であるとか、あるいはレールガン、運動性エネルギー兵器などのKEWですね、こういうよりきな臭い部門への研究参加は考えられなくても、ミサイルを監視し、探知し、さらに捕捉し、追尾し、照準撃破を確認する感知システムというとたまたま日本がミリ波レーダーとかあるいは光通信、ガリウム・砒素素子、HEMT素子等々、日本の先端産業が既に持っている技術で優に対応できるわけです。したがって、外務省の考えでは四部門のうち最初のSATKAの研究に参加することについてはあり得る、こう見ていいわけですね。さらに確認してよろしいですね。
  279. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私ちょっと専門的な知識はございませんので、今の委員の御質問に対してできるとかできないとかいうことを断定的に申し上げることはできないと思います。
  280. 秦豊

    ○秦豊君 衆議院で社会党議員に対してSDI本体の共同研究はしないと、これは十九日の衆議院決算委員会、井上氏に対するあなたの答弁になっていますがね、そうすると本体という解釈は一体どういうものなんですか、あなたによれば本体とは何ですか。
  281. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御指摘の井上議員に対します私の答弁は、簡単に申し上げますと現在のABM条約上の仕組みというものを御説明いたしまして、そして米ソとも第三国に対しては、一定のその技術的なデータでありますとかブループリントでありますとか、そういうものを渡すことはできないということに条約上なっているということを御説明いたしまして、そして、しかしどういうものがそこで条約上禁止されているものに該当するかどうかということは必ずしも日本は第三国であるのでわからない、そこの点についてはアメリカ側から十分条約上の義務として何が第三国に渡せないで何が渡せるかということについては聞いてみる必要があると、こういう趣旨のことを御答弁申し上げたわけであります。
  282. 秦豊

    ○秦豊君 それだけですか、答弁は。
  283. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) それで本体云々という御質問がありましたので、そういう意味で私の念頭にありましたのは、その条約で第三国にそういう技術的なデータを渡すことを禁止されているようなもの、そういうものが本体というふうに私の念頭にあってお答え申し上げたわけでありますが、その際にも私は申し上げましたが、何がそこで言う本体であるか本体でないかということはあくまでもわからないんで、これはアメリカ側から聞かないと具体的に申し上げることはできない、こういうことを井上議員に申し上げた次第でございます。
  284. 秦豊

    ○秦豊君 あなたの念頭にあったはずの本体部分はよく伺ってみると極めてぼやけていますね、クリアじゃありませんね。それでそういう答弁を大胆にされているものだなと思うんだけれども、いずれにしてもしかし、ミサイルの探知や追尾、つまりハード、ソフトに分けるのは、私SDIシステムの場合非常に無理があると思うんですよ、全体のネットワークだから、これは。境界線を引きがたいんだけれども、あえてあなたの念頭にこだわれば、DEWのようなICBMを直撃するような兵器部分、体系部分じゃなくて、追尾、監視等のものについてはこれは共同研究があり得るというお考えがおありですか。
  285. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 共同研究というものがあり得るのかどうかということについて私は何ら予断しておりません。まことに申しわけないんですが、何が本体であり何が本体でないかよくわからないということを井上議員にも申し上げたわけでありますが、今、委員御指摘のような仮の分類に立って、こっちの方で共同研究があり得てこっちの方ではあり得ないというようなことをちょっと今の段階で一般論としても申し上げるだけの十分な評価、知識というものは私は持ち合わせておりません。
  286. 秦豊

    ○秦豊君 条約局長ね、その前に北米局長、おわかりになっていないのなら今のところ分明ではありませんとか承知いたしておりませんという答弁をいやしくも国会では繰り返していただきたい。わかっていないことについて誤解を与えるような答弁は慎んでいただきたいと申し上げておきます。――いやいや、答弁は要さない。  条約局長に確認をしておきますがね、ABM条約、米ソ間条約、一九七二年五月二十六日モスクワで調印、これに言うABM体系とは何か、またその構成部分とは何でしょうか。
  287. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 今、委員の御質問になりましたことに答えます前に、ちょっと恐縮ですが、北米局長が井上委員にお答えしたことを若干補足してもう一度念のために申し上げておきたいと思いますが、委員が御承知のように、ABM条約第九条は、「この条約によって制限された対弾道ミサイルシステム又はその構成部分」、そういうものを他の諸国に移譲しないと、こういうことが書いてありまして、それに関する合意声明の中で、それはそれを製造するための技術だとか青写真だとかいうようなものが入るんだ、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、今、委員がお尋ねになりました、それじゃここで言っている対弾道ミサイルシステム、あるいはその構成部分というのは何であるか、こういうことになるわけでございますが、その点につきましては、一応御承知のとおりこの条約の第二条に、ここで言っている、条約が対象にしているところの対弾道ミサイルシステムあるいはその構成部分ということとしてどんなことが考えられているかということについての規定は一応置かれているわけでございます。  ただ、これは北米局長もお答えしたことでございますけれども、何分この条約は、米国とソ連との間で締結された二国間の条約でございまして、私どもこのことについて有権的に解釈できないだけではなくて、これは交渉の経緯その他、いろいろございますので、当事者である国々に、どういうことを考えているのかということを聞きませんと、私の一存で、これはこう書いてあるからこういう意味であるということをお答えすることは適当ではないと思いますので、差し控えたいと思います。
  288. 秦豊

    ○秦豊君 第二条の解釈を厳密にすれば、ABMの発射台、ランチャーですね、それからミサイル本体、それからミサイルを的中させるためのABM用のかなり多数のレーダー群、これが全部構成要素になっているんですよ。したがって、今後日本政府がとるべき態度というのは、本体はおろか部分と言われているソフトの部分、仮に、この言葉もあいまいですよ、あいまいだが、追尾システム等、ミリ波レーダー等を使った、こういうことについての共同研究に参加する場合も、幾ら米ソ二国間条約とはいえ、このABM条約の第二条が厳として立ちはだかっているという認識を、これから逃がれることはできないということを申し上げておきたい。  だからソフトもハードもABM体系をなぞったようなSDIシステムの共同研究には、第三国たる日本は、たとえ二国間でも共同研究には参加できないというのが私のABM条約の解釈なんです。どう思いますか。
  289. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 今委員が御指摘になりましたABM条約の規定、なかんずく第二条の規定というものは、私どもも十分念頭に置いております。  ただ、先ほども申し上げましたように、確かに第二条には対弾道ミサイルシステムというものとしてどういうものがあるかということで、対弾道ミサイル迎撃ミサイルであるとか、対弾道ミサイル発射基であるとか、対弾道ミサイルレーダーであるとかいうようなものが書いてございまして、さらにその構成部分として、運用中のもの、建造中のもの云々というような規定がございまして、これが一体どういう関係になるのかということにつきましては、私どもとしては明確に有権的な解釈というものを必ずしも承知していないわけでございます。  他方米国は、今のSDIシステムを説明するに当たりまして、委員御承知のようにワインバーガーの書簡の中にもございますけれども、アメリカとしてはABM条約に違反しないという形での研究ということを考えるんだと、そういう形で、ちょっと私、今正確なテキストをあれいたしませんが、「米国は、ABM条約を含む既存の国際的な義務に反することなく、SDI研究計画に貢献し得るような技術の分野において同盟国と共同研究を進めたい」、こういうことを言っているわけでございますので、もし私どもが、仮に日本が米国との間でこういう協力あるいは技術の提供というようなことを検討するにいたしましても、あくまでも米国としてはそういうABM条約を含む既存の国際的な義務に反しないと、こういうことでやっておるんだということが前提になるんであろうと思います。
  290. 秦豊

    ○秦豊君 これは媒体を引用して恐縮な部分もありますが、余りでかいから引用したいんだが、四月十九日の東京、恐らく朝刊だと思うがこういう記事がありまして、「外務省筋が見解」、「第三国移送できぬ 対日要請は追尾部分」「本体の研究参加」は違反と、こういうでかい初号活字が躍っておるんだが、これは外務省の真意を正確に伝えたものですか、こんな要請が一体あったんですか。
  291. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど委員御指摘の井上委員の御質問というのは、まさに新聞記事をもとにして御質問がありましたので、私がさっき申し上げたような答弁をいたした経緯がございまして、具体的に、今委員がおっしゃったような要請はないわけでございます。
  292. 秦豊

    ○秦豊君 最後に外務大臣、全然違った問題ですけれども、同僚議員が午前中からずうっと朝鮮問題を質問されていました。確かにアジア局長の答弁にもありましたように、クロス承認問題というのは古くて新しいというか、確かに古典的な、やや風化されつつある命題なんですね。しかし、やはり私は日本アメリカが北朝鮮を、逆に中国とソビエトが韓国を相互承認という、このいわゆるクロス方式というのは、幾ら冷静に考えてみても、いろんな条件を煮詰めて考えてみても、結局大きな方向としては朝鮮問題解決のための選択肢としてどうもこれ以外の方法――南北対話が前提、これはわかっていますよ、そうじゃなくて、仕上げる場合にこのクロス承認という大方向しか残されていないと思えて仕方ないんだし、安倍外務大臣のいわゆる創造的外交の展開の中では、そろそろ具体的に相当のウエートをこの北朝鮮問題に置かれ、かつ優先順位もレベルアップして、より踏み込んだ外交展開を今後対平壌に期待したいと思うんですけれども、前段と後段を含めて御答弁をお願いいたします。
  293. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにこのクロス承認というのは古くて新しい問題ですし、またクロス承認のやり方も今の、アメリカ日本が北と、それから中ソが南という枠組みもあるでしょうし、これは前の韓国の外務大臣と私でいろいろと進めてまいりまして、日本が北、中国が南、こういう形から進むというやり方もあると思います。それはいろいろとあると思いますし、ただクロス承認だけが大きな問題解決のかぎでもないようにも思いますが、これはしかし問題としては依然としてあると思います。  同時に、ちょうど全斗煥大統領が今米国に行っていまして、まさにこの南北対話の問題をどう進めるかといったことについては、米国と韓国との間で相当突っ込んだ話し合いが出ると思いますが、そういうことも含めたこれからの南北両鮮、朝鮮半島の状況というものは、相当進んでいく可能性は含んでいるんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  294. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時五十八分散会