○
国務大臣(
安倍晋太郎君) その点は全くそのとおりだと思います。ですから、きょう
政府が
経済対策を確定しまして、これはこれから一挙にできない問題もありますし、各国の指摘しておる
点等も踏まえた
諮問委員会の答申も出ておりますから、とにかく
貿易についてはもう原則自由だ、それから
例外制限だ、こういうことで
国民の皆さんに率直に
総理大臣の
声明で訴えるわけでありまして、これは私は今お話を聞いておりまして、
日米間には確かに
議会の中では一言で言えば
不信感ですね、
知日派の
人たちまでが結局
日本に対して
不信感を持つようになったというところに、やはり我々としてもまだ
十分日本の
説明が足らなかったんじゃないか、こういう
感じを率直に持っております。
日本だけが
標的にされるというのは、到底我々も
納得ができないわけでありまして、今度、あしたから私
OECDの
閣僚会議と
日米外相会談に出席するわけですが、火の粉の中に入っていくような気持ちでありまして、私の
説明がどの程度
理解されるかどうか、何としても我々の真意、我々の立場というものを
説明して、
お互いに対立して激論して帰ってくるということは簡単ですけれども、そんなことで
日本の将来というのはあるわけじゃございませんから、やはり
日本の
説明を
理解をさせなければなりませんし、また問題の所在をはっきりさして議論しなきゃならぬ。
例えば
日本の
黒字だけが、
OECDでも相当
標的にされるというふうな、今
空気も出ておりますが、私は
日本の
黒字を言われれば、確かに
日本にも一部
市場アクセスの問題があることは、我々も率直に認めて、そのための
市場開放努力をしているわけですけれども、今日の
日本の
黒字というものは、結局そうしたものだけで果たしてできたかどうかというのは、客観的にそれぞれの有識者が集まるのですからわかるはずですから、やはりこれは今日の為替の問題に大きな
原因もありましょうし、
日本だけじゃなくて、
アメリカとか、あるいは
ECの
輸出努力というものにも問題はあるんじゃないか、こういうふうにも思いますし、そういう
点等を率直に指摘をしまして、そして全体でこの問題を考えて、とにかく全体的に
自由貿易体制というのがここで崩壊してしまえば、これは元も子もなくなってくるわけですから、
日本だけ攻撃してそれで済むんならそれは結構な話ですけれども、
日本を攻撃して、それに対してまた制限措置等がずっと生まれてくれば、そこでもって
自由貿易体制というのは崩壊していくわけですから、私はそういう意味では今の
日本の
努力、そして今日の厳しい
状況の中で
自由貿易体制というのをいかに堅持していくことが大事であるかということ。さらにまた、こうした
世界の
経済の
状況の背景には、やはり通貨の問題とか、あるいはまた為替の問題とか、そういうところに大きな要因というものがあるんじゃないか、そういう点をマクロ的に皆で考える必要があるんじゃないかということ等もあえて私は述べたい、こういうふうにも思っておるわけであります。
日米会談におきましても、
日本のこれまでの、
アメリカが具体的に指摘しておる四分野については大体きょう結論を出すわけですが、この四分野については、例えば通信機器の分野については、これはほとんど
アメリカの要請を受け入れたといっても過言じゃない。
EC等の通信機器分野について、ほとんど
ECは開放してない。
日本はもうほとんど
アメリカ並みになったわけですから、ですから
アメリカにとっては恐らくこれはもうこれ以上
日本に求めてもできないというぐらいに
日本はやったと思いますし、あるいはまた四分野のうちのエレクトロニクスの分野においても、あるいはまた薬品、医療機器の分野におきましても、これは
委員会で非常に順調に審議が進んでおりまして、
日本の提案というものが相当前向きであるということは
アメリカも
承知しております。
ただ、問題の木材製品については、これはなかなかそう簡単に今ここで思い切ってドラスチックな措置をとれと言われても、これはやはり
日本の農業の問題があって、そう簡単にいけるものじゃない。いけるんなら今までやってきているわけですし、できるだけのことはやってきているわけですから、ここで一挙にやれといってもそう簡単にできないので、これは
日本の林業対策等もこれからやりながら同時並行的にやっていく以外に道はないんじゃないか。農産物全体については、やはり
アメリカは
日本に農産物の自由化を強く求めております。これは
アメリカからいえば、
アメリカは自動車その他で
日本が一番強いものに対して
市場を開いているじゃないか、だから
アメリカの強い製品に対しても
市場を開くのが当然だというのが
アメリカの考えですけれども、しかし事農産物についてはガットでもなかなか難航しておりますし、それぞれの国がやはり
保護主義というものをとっている、これは
アメリカだってとっておるわけですし、
ECはもっとひどい
市場閉鎖対策をとっておるわけですから、この問題でもってただ
日本が一方的に不公平だということを言われるのは、どうも私は
納得できない
感じがいたします。
しかし、それでも
日本はやはり
自由貿易体制を守るためにやらなきゃならぬということで、大変今
政府あるいは与党あるいは
関係業界
努力しまして、できるだけのことはやろうということで、きょうアクションプログラムの中で一項目入れる予定にしておるわけですが、そういう
点等も私は率直に
アメリカと話しをしなきゃならぬ。そうして、やはりただその一点だけで何か非常に象徴的に攻撃されるというようなことは、これは
アメリカの良識においても避けてもらわなきゃならない、こういうふうに考えておるわけです。
今の
議会の
空気は、もう
日本には何を言っても無駄だ、制裁措置をとる以外にないという、何か私、
アメリカ議会というのはやはり超大国として
世界全体を考え、それから
世界の
自由貿易体制というものを考えて、全体的に行動してくれるのが
アメリカの
議会の超大国としてのあり方じゃないかと思うんですけれども、今
アメリカの
議会も、むしろ私から言わせると中間選挙というのを控えて、もう
大統領選挙は終わった、来年に迫っている中間選挙でいかに
自分たちの立場を有利にするかということだけが中心になって走っているような、ですから選挙区といいますか、どこの国会
議員も選挙区のことを考えない国会
議員はいませんけれども、その利害の方が全く優先して、
世界全体のことを考えるというよりはそちらの方で感情が先に走るというようなことで、これは我々が考えてみましても余り何か筋道の通った話でなくて、どうも感情だけが先に立っている。
ですから、そうした感情を
経済対策でどれだけいやすかわかりませんけれども、しかし
日本の
努力というものが彼らにとっても
一つの感情を和らげることになっていけば、そしてまた冷静に物を見る目というのが、ちょうどイースターで休暇になって
議員はほとんどワシントンを離れております。イースターで休暇になって、いろいろと全体的に物を判断するという
空気がまたよみがえってくれば、私は十五日以後の
アメリカの
議会も今までとは変わった
空気になっていくんじゃないか。
レーガン大統領初め
政府も、もう
日本には何を言ってもだめだ、だからやる以外にないという考えじゃありませんで、
アメリカの
政府もやはり
日本に対しては言うべきことは言うし、やらせることはやらせなきゃならぬけれども、しかし
日米関係は非常に大事であるし、それから
自由貿易体制はもっと大事であるということを非常に
政府全体としては
理解した
動きをしておられるように思います。
また、マスコミの方もこの
状況の中で
議会のいきり立っている姿を背景にしておりますが、今日のこういう
事態というのはやはり
日本だけにすべての
責任を負わせるのはおかしいじゃないか。
アメリカのとっておる
経済政策、特に高金利、
ドル高政策に大きな問題があるんじゃないかということを
アメリカの
マスコミ等も率直に指摘をしておるわけでありまして、
アメリカ全体が何か一挙に反日的な
空気に変わったように言われておりますけれども、ワシントンではそういう
空気が大変盛り上がっておりますが、
アメリカ全体としては必ずしもそういう
状況にはないように思うわけでございますから、最終的にどのように収束していくかまた予断を許さないところでありますが、とにかく
日本としては
日本の
努力を行うとともに、冷静に問題を見詰めて問題の所在を明らかにして、
お互いに
協力し合ってこの困難を乗り切っていこう。こういう
努力を重ねまして、
説明を行って、何とか冷静にこの問題を解決していくような道筋をつけていきたい。私は、そういうふうに念願をしてこれから頑張っていきたい、こういうふうに思っておるわけです。