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1985-04-02 第102回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月二日(火曜日)    午後一時三十分開会     ─────────────    委員異動  十二月十三日     辞任         補欠選任      菅野 久光君     八百板 正君      小笠原貞子君     立木  洋君  二月二十五日     辞任         補欠選任      関  嘉彦君     小西 博行君  二月二十六日     辞任         補欠選任      小西 博行君     関  嘉彦君  三月二十七日     辞任         補欠選任      嶋崎  均君     上田  稔君  三月二十八日     辞任         補欠選任      後藤 正夫君     福岡日出麿君  三月二十九日     辞任         補欠選任      福岡日出麿君     後藤 正夫君      上田  稔君     嶋崎  均君  四月一日     辞任         補欠選任      八百板 正君     中村  哲君      抜山 映子君     藤井 恒男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         平井 卓志君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 久保田真苗君     委 員                 大鷹 淑子君                 後藤 正夫君                 秦野  章君                 原 文兵衛君                 中村  哲君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 関  嘉彦君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房長  北村  汎君        外務大臣官房会        計課長      林  貞行君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省経済局長  国広 道彦君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報調査        局長       渡辺 幸治君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省経済協力        局審議官     木幡 昭七君        通商産業省機械        情報産業局総務        課長       内藤 正久君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について(外務省所管)     ─────────────
  2. 平井卓志

    委員長平井卓志君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨一日、八百板正君及び抜山映子君が委員辞任され、その補欠として中村哲君及び藤井恒男君が選任されました。     ─────────────
  3. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 去る三月二十九日、予算委員会から、四月二日の午後一時から四月三日の午後三時までの間、昭和六十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  安倍外務大臣から説明を求めます。安倍外務大臣
  4. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 昭和六十年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、四千十億七千百五万円であり、これを昭和五十九年度予算と比較いたしますと、二百二十四億七百二十三万一千円の増加であり、五・九%の伸びとなっております。  我が国を取り巻く国際情勢は一段と厳しく、外交役割はいよいよ重大であります。近年国際社会における地位が著しく向上した我が国世界の中の日本として各国からの期待にこたえてその地位にふさわしい国際的役割を果たし、積極的な外交を展開していくためには、外交実施体制を一層整備・強化する必要があります。  この観点から、昭和六十年度においては定員機構拡充強化在外公館勤務環境整備情報機能強化等格別配慮を加えました。特に外交強化のための人員充実は、外務省にとっての最重要事項一つでありますが、昭和六十年度においては、定員八十八名の純増を得て、合計三千八百八十六名に増強されることになります。  また、機構面では、本省においては中近東アフリカ局担当官房審議官を設置し、在外においては中国の瀋陽に総領事館を開設することが予定されております。  次に経済協力関係予算について申し上げます。  経済協力は、平和国家であり、自由世界第二位の経済力を有する我が国世界の平和と安定に寄与するための主要な手段一つであります。中でも、政府開発援助の果たす役割はますます重要となっており、政府中期目標のもとに、その計画的拡充に努めてきております。そのような努力の一環として、昭和六十年度ODA一般会計予算については、厳しい財政事情にもかかわらず、政府全体で対前年度比一〇%増とする特段の配慮を払いました。  このうち外務省予算においては、無償資金協力予算を前年度比八十五億円増の一千百五十億円としたほか、技術協力予算拡充に努め、なかんずく国際協力事業団事業費を前年度比七・五%増の八百八十六億円とする等格別配慮を払った次第であります。  また、各国との相互理解の一層の増進を図るための文化・人的交流予算についても、一層の手段を講じております。  このほか、海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校二校の増設を図る等の配慮もしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  5. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 以上で外務大臣説明は終わりました。  この際、お諮りいたします。  外務省所管昭和六十年度予算大要説明は、これを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 宮澤弘

    宮澤弘君 先ほど大臣予算の御説明がありました。  定員の問題ですが、この行政改革の時代に八十八人純増を確保された御努力、敬意を表したいと思いますが、それにいたしましても、かねて外務省考えておられる五千人計画ですか、配置されるのとは、はなはだ遠いということで、今後、この目標達成にどういうふうな努力をし、どういうふうに計画的に実施をしていかれますか。
  8. 北村汎

    政府委員北村汎君) 今から六年前の昭和五十四年度に当時外務省定員は三千四百人でございましたのを、これを何とか五千人体制にもっていきたいということで、六カ年で五千人を目指す計画を立てたわけでございますが、何といいましても、現実の定員事情というものは極めて厳しゅうございまして、その計画は達成できておりません。ただいまの外務省定員が三千七百九十五人で、今度の六十年度予算政府原案におきまして八十八名の純増を得まして三千八百八十三人になるわけでございます。しかし、徐々ではございますけれども、毎年度の予算要求において、ほかの省が前年度よりも削減されているような状況において、外務省純増を認められてきたわけでございます。  皆様方の御理解を非常にありがたいと思っておりますが、私どもといたしましては、なおやはりこの五千人体制というものの目標を掲げて努力を続けていきたいと思っております。同時にまた、人員のこともさることながら、その定員の質を向上するために私どもといたしましてはいろいろな研修をいたしております。今後とも御理解を得て定員を増強してまいりたいと思います。
  9. 宮澤弘

    宮澤弘君 私どももこれはお手伝いをさしていただきますので、ひとつ今後も大いに努力をお願いいたしたいと思います。  そこで、定員とも多少関連をいたしますが、昨年でしたか、かねて懸案の旅費法改正になりまして、日当宿泊料ですか、四〇%ぐらいアップになったわけですね。ただ、今度は総額がふえませんと単価だけが上がったのではかえって窮屈になる、こういうことだと思いますが、その辺ことしの予算ではどういう措置がされておりますか。
  10. 北村汎

    政府委員北村汎君) 委員御指摘のように、昨年の旅費法改正によりまして、日当宿泊料が約四〇%引き上げられました。この改正に伴う所要の予算経費につきましては、五十九年度に引き続きまして六十年度予算政府原案でも計上されております。今回の予算政府原案におきましては、旅費全体で一億一千六百万円強の増加が認められております。この旅費は、本省から出張する旅費在外職員が使う旅費、それからみんなが赴任したり、帰朝したりする場合の、往復の族費、そういうものを全部含めまして前年度に比べてただいま申し上げた増加が見られております。
  11. 宮澤弘

    宮澤弘君 そういたしますと、私ども在外公館へ行っていろいろお話を承ると、大使管内旅行を一度されると半年ぐらいはもう館員は出られない、こういう話を一カ所ならずよく聞くのですけれども、今後はそういうことはありませんか。
  12. 北村汎

    政府委員北村汎君) まあ、増額はされておりますけれども、やはり旅費総額から申しまして決して十分な旅費ではございません。在外におります職員がいろいろ出張いたします場合にもやはり窮屈な事情はございます。ただ、私どもといたしましては、旅費配付と申しますか、まあ配分を、最初に半分ぐらい各地に配付をいたしまして、その使用状況を見てそしてまた本当に必要な出張が出てまいりますと、それに対して臨時に増額をしていく、こういうことで相当苦しいやりくりはしておりますけれども、もちろん今後ともこの面の増額を図っていただかなければならないと思います。しかし、できるだけ限られた旅費を効率的に使うということで努力をいたしております。
  13. 宮澤弘

    宮澤弘君 任地の事情を知らないで外交なんというものはできるわけないですね。ですから、人員、定数ということ、なかなかこれはふえないでしょうから、今の人間がフルに動くためにはやはり機動性といいますか、活動が十分できなきゃいけませんので、ひとつ旅費充実ということは今後もよくお考えになっていただきたい、こう思います。  それからその次に、ODAとの関連ですけれどもアフリカ食糧援助の問題ですね。これにつきましては、短期的な緊急な食糧援助と、それから中長期的な、自給率を高めるというのでしょうか、現地における農業技術協力をしていく、こういう点があると思うんですが、短期、中長期あわせて六十年度の予算では大体どういう措置がとられることになっておりますか、伺いたいと思います。
  14. 木幡昭七

    説明員木幡昭七君) 六十年度におきましては、緊急性の高い食糧援助食糧の貯蔵、輸送手段に対する援助等に加えまして、アフリカ農業開発あるいは食糧増産体制確立に資するという目的を持ちまして、無償資金協力技術協力合計した二国間贈与という項目で総額六百億円をアフリカに振り向けるという一応のめどを立ててございます。また、円借款につきましては、やはり弾力的に一億ドルをめどとして貸与をする、こういう考えでいるところでございます。さらにまた、国連のアフリカ援助関係の諸機関に対しても協力拡充していく、こういうことで今努力をしておるところでございます。
  15. 宮澤弘

    宮澤弘君 その中長期農業関係技術協力ですね、これが今後長い目で見ると非常に重要なわけですけれども、それは無論アフリカにたくさん国がありますから一度に全部というわけにいかないのですが、現在は調査段階ですか。もうかなり具体的に関係各省関係者と相談してチームを派遣し得るような状況になっているんでしょうか。個別的に言えばいろいろあると思いますけれども、ごく大ざっぱに言ってどういう段階ですか。
  16. 木幡昭七

    説明員木幡昭七君) 一部既に新聞等で報じられているとおりでございますが、今後のアフリカに対する中長期的観点に立っての農業関係援助について指針を得るということを目的といたしまして、四月の上旬から中野元農水省事務次官を団長とする政府調査団アフリカに派遣するということで準備を鋭意進めているところでございます。これは、今後の我が国中長期的観点に立ったアフリカ農業支援についていろいろ現地でハイレベルのコンタクトもお願いし、実際にいろいろ調査もお願いするということを目的としております。  そのほかにも、今、別途事務レベルでは外務省農水省等関係者随時アフリカに参りまして、個別の調査等は既に緒についているという段階でございます。
  17. 宮澤弘

    宮澤弘君 こういう問題はとかく縦割りといいますか、なりやすいのですけれども、結局農業問題であれば農水省中心に、しかし外務省がやはり海外技術協力というような立場からも全部見ておられなきゃいけないということで、なるべく早く総合的な調査をして、それから実施に移さなきゃいけないと思うんですが、来年度の予算ぐらいではもう実施態勢に入れますか、それよりもっと早く入れますか。
  18. 木幡昭七

    説明員木幡昭七君) 総合的な形でやる場合には、やはりこの中野調査団報告等、いろいろ御提言もいただけるかと思いますので、お帰りになった上でよく御相談をさしていただきたいと思っておりますが、予算の実行の面からは農水省等あるいはJICA等協議いたしまして、例えば西アフリカでは、セネガル等中心として半乾燥地域農業について日本としてなし得ることはどういうものがあるか、あるいは東アフリカにつきましては、例えばケニア等について既に一部技術協力の端緒についているものがございますので、そういう普及活動の見地を含めましていろいろ今やっておるということでございます。  結論的に申し上げますと、六十年度予算でできるだけのことはやろうという態勢が整いつつある段階でございます。
  19. 宮澤弘

    宮澤弘君 もう一度伺いますが、六十年度予算で実際の指導にまでも着手できるということですか。
  20. 木幡昭七

    説明員木幡昭七君) はい、一部着手できるわけでございます。
  21. 宮澤弘

    宮澤弘君 わかりました。  次に、御婦人外交官のことでちょっと伺いたいんですが、まず官房長に伺いますが、今外交官の中佐御婦人がどのぐちい、数と率をちょっと教えていただけませんか。
  22. 北村汎

    政府委員北村汎君) ことしの四月一日現在で申しますと、外務省には十三人の女性上級職員と七十一人の女性専門職員がおります。さらに初級クラス女性職員が四百六人おります。合計四百九十人が女性職員でございます。
  23. 宮澤弘

    宮澤弘君 外務大臣に伺いますが、去年ですか、私やはりこの席で婦人大使の問題で大臣に御質問をいたしました。そのとき、ちょうどあのデンマーク大使高橋さんがおやめになった後だったと思います。伺いましたところが、大臣は、近い将来は婦人大使をつくるように努力を重ねていきたい、こういう御答弁がありました。大体一年たちますが、いつどろ何人ぐらい婦人大使を誕生させようというお気持ち乙ざいますか
  24. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 一年たって女性大使高橋さんの後を継いでまだ決まらないのは非常に残念に思っておりますが、実は二、三候補者を選びまして、具体的に何とか大使になっていただきたいということを折衝したわけです。しかし、御本人がやはりなかなか気が進まないといいますか、いろいろの事情で決意されませんで、結局今日に至るまで女性大使を得られないということですが、しかし幸いにして外務省の中で育った婦人外交官がもう大使ができる立場になっておりますので、ごく近いうちにその人には大使になって活動してもらおう、こういうことで今進んでおります。  しかし、私はそれ以外にも実は外務省以外から適材な人があれば、これはやはり喜んで外務省に迎えて大使に起用したい、こういうふうに思っておるわけでありますが、今のところは我々が求めておりました方が辞退をされましたのでちょっと選考難ということですが、これは基本的にそういう考えを持っておりますから、これからもそういう方向努力はしてまいりたい、こういうふうに思います。
  25. 宮澤弘

    宮澤弘君 おっしゃいますように、一人じゃさびしい、余りたくさん任命なさると、そこにおいでになる男性の方のポストが少し減るということになるかもしれません。まあひとつ、一人でなくて、積極的に御任用になっていただきたいと思います。  次に、日米貿易摩擦のことで幾つか伺いたいと思います。  まず、きょうの一部の新聞に、電気通信の問題で今週大臣アメリカへ行かれる、それをホワイトハウス報道官か何かが発表したという記事が出ておりましたが、大臣いらっしゃるんでしょうか。
  26. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、これは全く間違いで、時々アメリカはああいうふうな間違いを起こすのですけれども報道官が発表しまして私もびっくりしたわけで、私が参りますのは国会のお許しを得た十三日の土曜日に行って、土曜日半日おりまして、シュルツさんとの間で会談を持つ、これは前々からそういう方向で決めておりましたけれども、今週に行くとかそういうあれではありませんで、これは後でまた国務省といいますかホワイトハウスの方で否定をしたということだそうであります。
  27. 宮澤弘

    宮澤弘君 そうすると全くの誤り、煙も何もないということ。
  28. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くの誤りで煙も出ません。
  29. 宮澤弘

    宮澤弘君 アメリカ大統領特使シグール氏ですか、来たようでございますけれども外務大臣、お会いになってどういうお話し合いが行われたのか御報告をいただきたいと思います。
  30. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは私がもちろん会います前に、大統領特使として見えまして中曽根総理との間で具体的に通信機器市場開放問題につきまして話をされまして、それはそれなりに成果があったように承っておるわけでございまして、そうした問題を中心にいたしまして当面の、シグールさんからはアメリカ議会の大変な厳しい情勢と、九十二対ゼロでああした上院で日本に対する非難決議が採択される、そしてこれが法案化される可能性もあると。実はきょう公聴会で、シグールさんと一緒に来ましたオルマーという商務省の次官が証言台に立つことになっておりますが、これが相当やはりアメリカ議会が納得するかどうかの決め手になるんじゃないかということも言っております。しかし、これでもって切り抜けられるかどうかということはなかなか難しいということも言っておりました。いずれにいたしましても、ほうはいとしたアメリカ議会のただならぬ空気を訴えたわけでございますし、その他、私からは四分野についての日米間で今進めておる状況、そしてそれに対する日本の今後についての考え方、さらにまた、今度シュルツさんと会いますので、シュルツさんとの間でいろいろな問題について協議をしていきたいということを話をいたしたわけでございますが、別に結論を得たというわけじゃないし、いずれにしても両方とも今の日米間の摩擦問題は極めて深刻である、これを何とか解決する方向努力をして、日米間のこうした基本というものを崩してはならない、努力をしなきゃならぬということを確認し合ったということであります。
  31. 宮澤弘

    宮澤弘君 日米貿易問題について、最近のアメリカの態度というのが少し高飛車ではないか、こういう印象国民一般は私はどうも持っているような感じかいたします。無論日本市場開放努力は不十分な点もあります。しかし、例えば前に通信機器の問題で、通信機器についての日本の政令や省令ですね、政省令を制定する前にはアメリカ協議をしろとか、そういう話があったと思いますが、そのときちょうどある閣僚は、どうもこれは内政干渉のようなもので、占領軍、GHQがいたときのようなものだというような発言をしたということも新聞で見ましたけれども、そういうことで、どうも少し、高飛車と言うと言い方が悪いかもしれませんが、そういう印象国民が持っているんだろうと思います。マスコミでは、一月に総理大臣が訪米をされたときに、中曽根レーガン会談総理大臣が少しアメリカ期待を与え過ぎるような話をされたんじゃないか、こういうことを言う向きもありますけれども、無論私は総理大臣日本の国益を考えられて、そんな甘いことを言っておられるわけはないと思います。思いますけれども、どうもやはり今申しましたように、アメリカは随分強引じゃないか、こういう感じ一般国民に与えているんじゃないかと思うんですね。もしそういう感じ国民が持つということがおかしいということであれば、そういう印象をそのままにしている政府のまたPRの問題でもあるというふうに私は考えるわけです。  そこで、今申しましたように強引とも言えるような最近のアメリカの姿勢と申しますか、これについて大臣のひとつ率直な印象を承りたい。
  32. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに日本の国内においてはアメリカの最近の行き方が非常に強引過ぎるんじゃないかという声があることも事実であります。また半面、アメリカにおいては、アメリカ議会では、日本はやるやると言って何もやらないじゃないかもうそんな日本は制裁をしなきゃならぬと、こういう空気が圧倒的になってきておるんで、大変なその辺で感情的には行き違いがあるように思うんですが、ですからやはりこれは日米関係というものを全体的に冷静に見て、この問題は処理していくということが私は基本的に大事じゃないかと思うわけで、まだまだその点についてはアメリカ政府はいろいろと日本に対しても強く開放を求めておりますけれども、しかし何とかやはりアメリカ議会の高まっておる保護主義を抑えて自由貿易体制を守っていかなきゃならぬ、そういう気持ちを非常に強く持っておるわけでありますし、また政府自身も、やはり大きな黒字の原因というのがただ日本だけの、市場開放を怠っておるという問題じゃないんで、相当の部分がやはりアメリカの要するにドル高と、その背景としてはアメリカ財政赤字、高金利、そういうものにあるんだということも、政府自身も我々には言っておるわけであります。  ただ、だからといって日本が今のままではこれは議会を抑え切れない。日本もまだまだこの四分野を初めとして十分な市場開放期待にこたえていない。ですから、とにかく市場開放期待にこたえてほしいと、そして我々はこのアメリカ議会を説得して、保護主義の台頭を何としても防ぎたい、こういう政府気持ちを持っておるわけであります。そういう立場で我々も交渉しておるわけですが、アメリカではそうした議会政府以外にマスコミの力は非常に強いんですが、マスコミの今のいろいろな報道等見ますと、これは私は全体的には比較的冷静じゃないかと思いますね。ワシントン・ポストとか、あるいはニューヨーク・タイムズとか、いろいろの新聞等を見ておりますと、やはりアメリカの赤字問題で日本だけを責めるのはおかしい、やはりアメリカ自体に大きな原因があるんじゃないかということをまず指摘しております。  しかし、同時に日本に対しても、日本ももっと市場開放努力してほしいということを言っておりますし、そういう意味ではまだマスコミ等は比較的冷静であると思っておりまして、ですからこの際やはり日米関係で十分これを話し合いをして、日本日本なりにやるべきことはやる、同時にまたアメリカに対しても求めるところは求めるということで、両方がお互いに、エキセントリックにならないで、冷静に問題を処理していくという努力をこれから大いにやらないといけない。そうしないと、やはり議会の方がますます火がついてしまって、そして保護主義的な立法がどんどん通るというようなことになりますと大変なことになる。そういう点で私は非常に危惧はいたしておりますが、とにかく非常に難しい時期で、私も長い間この貿易摩擦の問題に取り組んでおりますけれども、今までにない危機感を持っておりますので、我々としてもひとつ全力を尽くしてこの自由貿易体制を乗り切っていくための努力を払っていかなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
  33. 宮澤弘

    宮澤弘君 今の問題に関連して、アメリカに対する乗用車の輸出問題、これはことしの四月以降も自主規制を続行することに結局なりました。これは集中豪雨的な輸出を避ける、またさっきもおっしゃったように、アメリカ議会の大変強硬な態度、これで保護主義が台頭してというおそれもあるというような、そんな事情は私もわかるんですけれども、どうも今度の措置自身は自由貿易主義の原則に反すると思うんですね。より高い見地から自由貿易を守るために今度の措置を行ったんだという説明をされる向きもありますけれども、これはまあ巧妙なレトリックというか論理のすりかえだと私は思うんです。昨年、鉄鋼も自主規制を余儀なくされて、今回、また自動車、しかも相手国の要請もなくして今回の措置が行われたということでありますので、私はアメリカの自動車市場も自由にすべきだし、今我が国の問題になっている四つの分野市場開放もこれは十分行う、これが筋だと思うんです。そこで、もう時間もありませんが、大臣に、今回の自動車の自主規制の続行ですね、これは自由貿易体制に基本的に反するというふうに思いますけれども、これについてどうお考えになるかということが一点です。  それからもう一点は、さっき大臣も言われましたけれども日米貿易の最大の不均衡の要因は、最近いろんな議論がありますけれども、やはりドル高、円安の為替相場だと思います。結局、アメリカ側の財政赤字と高金利を是正してもらうことが、それだけが全部とは言いませんけれども、主要な課題だと思います。今大臣も言われましたけれどもアメリカのロサンゼルス・タイムズあたりも、最近の新聞では、貿易赤字の主要な原因ドル高にあるということを、やはり冷静にとさっきおっしゃいましたけれども、指摘をしておりますね。ところが、日本政府と申しますか、こちら側から向こうに対するそういう要求というんですか、高金利の是正の要求というものはどうも最近声が少し低いんじゃないだろうか、こういう気がいたしますけれどもね。したがいまして、やはり日本政府としては機会あることに強くアメリカ政府にその点を指摘して要求をすべきだと思います。近くまた大臣シュルツ氏とお会いになるということでもありますので、そういう機会でも強くひとつその点を私は声高に主張されるべきだと思います。その二点を伺いまして私の質問を終わります。
  34. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 自動車問題につきましては、村田通産大臣ともいろいろと話をしたわけですけれども、これは大統領がこの自主規制を求めないという決定を下しました。本来自由化されるのが自由貿易の原則で、大変いいことなんですが、しかし、やはり通産大臣としても心配をされましたのは、ここでそれじゃ自由にやりましょうということになりますと、今の情勢でいくと、大体二百七十万とか二百八十万という自動車が一挙にアメリカに輸出されるということになると、これまた今度はアメリカでは集中豪雨的な輸出というようなことで、それでなくても黒字の増大に対して大変日本に対して厳しい姿勢をとっておりますから、これでまた自動車が大体十万台で七億ドルと合われておりますから、それが百万台もふえるということになると、大変なことになる。ですから、こうしたことを考えるとやはり日本としても輸出については一つの節度を持っていかないとこれは今の状況から大変なことになってしまうということで、一方においては日本の業界等も自由化をこの際やるべきだという強い主張もあったようでありますし、それは確かに日本国内においても、この際大統領が言う以上は自由主義の原則に従ってやるべきだという声もあったと思いますが、やはり全体的な日米関係というものを考えて、非常に苦心、苦慮されて結局二百三十万台というところで抑えられたと思いますが、これは私は今の自動車の貿易関係を見て日本として自由貿易というものをこれからさらに進めていくためにはこの際やはりその辺のところでおさめざるを得ない、これを野放しにしてしまうと、かえって大変なことになってしまう、こういう大変な苦労の末の決定ということになったので、私はこれは日本としては今の日米貿易というものを考えて、そしてアメリカの消費者の立場、あるいはまたアメリカの業界の立場、さらに日本の業界だとか、そういうものを考えた末の苦心の上の苦心の決定じゃないかと思っております。  それから、今のドル高の問題については、これは事あるどとに我々もアメリカに対しては強く主張しておるわけで乙ざいます。アメリカ自身もこれを認めておりますし、私なんかが話す際にまずアメリカに言うのは、確かにこの問題がありますよということを前提にして言っているようなことですから、アメリカ政府としては相当十分な認識を持っていると思いますけれども、しかし、これはもっとやはりアメリカの人にわかってもらうように、日本だけが何か今の貿易摩擦でもってスケープゴートになるといいますかね、日本としてもこれだけ努力しているんですから、それはどうも納得できないわけですから、その辺についてはこれからも日本として言うべきことは筋を通して言わなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
  35. 宮澤弘

    宮澤弘君 どうぞひとつ今後も今の高金利の是正については機会あるごとに声を大にしておっしゃっていただきたいと思います。  終わります。
  36. 久保田真苗

    久保田真苗君 私十分程度でやらしていただきますので、よろしくお願いいたします。  まず、宮澤委員には女性外交官の問題をお取り上げいただいてありがとうございました。私もぜひ女性大使を今まで単数いらしたんで今度はぜひ複数にしていただきたい、ワンステップあるいはツーステップアップぐらいのところでどうぞよろしくお願いいたします。  予算につきましては、大臣もたびたび御答弁の中でまあまあだったという御感触を漏らしておられます。特にODAにつきましては非常に伸びがよかったということ、そしてこれにつきましては質をよくするということと、もう一つは戦略援助の問題について予算委員会では多く論議がなされたと思います。しかし、大臣はこの両方につきましても、質を上げる、戦略援助は絶対にしないとたびたび御答弁になっておられますので、重ねてその点をお願いいたしまして、私はもう一つ予算の集中審議で問題になりましたSDIにつきまして小さい質問をさしていただきます。  これは各議員で取り上げられたところでございますけれども、それぞれのお立場から慎重対処が強く要請されておったと思います。この点は十分お受けとめいただけたと思っております。ところで、外務省アメリカからSDIの専門家を招いていろいろお聞きになるということでございますけれども、どういうことを考えておいでになりますのか。また、こうして一歩一歩踏み込んでいくということがSDIに参加するための理由づくりになっていってはならない、やはりこれはそういう立場で事をお始めにならなくてはならないと私は思うのですが、この点いかがでございましょうか。
  37. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今の女性大使の方は先ほども答弁しました。これからも積極的に、一人は生まれるわけですけれども、さらにひとつ人材を求めて努力していきたいと思っております。  それから、SDIにつきましては、これは日本立場は御承知のように今理解を示しておるわけでございますが、しかし、これからどういうことになるというのは、我々自体も全貌がわかっていないということでありますので、この点についてはアメリカがせっかく専門家を派遣する、あるいはまた十分専門家同士で協議をしましょうという話でございますから、我々ロサンゼルスの首脳会談でも情報の提供は受けたいということを日本も言っておるわけですから、そういう立場で専門家を通じて十分ひとつ内容等について承って、そういう中でこれからそういうことが一回でそれじゃどうなるということでもないでしょうが、やはりこれから長い長期的な構想ですから、このお話を聞きまして、それでその上で日本としては日本のやはり自主的な立場で対応は決めていかなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
  38. 久保田真苗

    久保田真苗君 それで、もしそういうことになった場合に、SDIのことがわかるようなそういう方が話を聞かれるのかどうかということです。  もう一つは、審議会や私的懇談会などの人選について大変予算委員会で問題が多く指摘されまして、例えば総理などのお考えを一方的に支持しておられる方、あるいは産業界の利益を代弁するような方、そういう方が入っておられるということが問題だということが指摘されておるわけでございまして、やはり特にこういう問題については、そういう点ぜひ御慎重に願わないといけないと思いますが、いかがでしょうか。
  39. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) アメリカ側から専門家に来てもらいまして話を聞くというのは、これは政府間の話でございますので、政府の中におきまして関係省庁とも十分相談を外務省としてはいたしまして、そういう関係省庁の知識、経験というものの協力も得つつアメリカの話を聞くというふうにしてまいりたいというふうに思っております。  また、いろいろ外務省といたしましても、勉強を今後していく過程で民間の専門の方々の御意見も聞かしていただくということも十分あり得ると思います。先ほど委員が御質問になられましたような何か私的な諮問機関を設けて云々というようなことは、現段階では政府としては特に考えておりません。
  40. 久保田真苗

    久保田真苗君 私的懇談会のことを申し上げたわけじゃないんで、ただSDIという事柄の性質上、こういうことのわかる、科学技術のわかる方がいらっしゃらないのでは、ただ何か先方の言ったことを受けとめるだけということになるんじゃないかという、その危惧を申し上げたわけでございます。  それから、これは大臣に対してはまことに釈迦に税法のようなことで恐縮でございますけれども、今の貿易摩擦の問題が各分野において起こっておるのでございます。そしてアメリカでもそれぞれの分野でもって、もうこの問題は政治家ばかりではなく、分野分野の経営者、労働者を巻き込んだような大問題になっておるわけでございまして、大変なことなんでございますね。まことに御苦労に存じますけれども、この問題は私は外交がいろいろに持っていらっしゃるアイテム、例えばSDIの問題あるいは国連外交の問題、こういうものをぜひまぜこぜにしないで、一つ一つについて筋目をはっきりと立てていただかなければならないのじゃないかと思うんです。と申しますのは、この貿易摩擦の問題というのは他のもので結局は代替できるようなことではなくて、アブハチ取らずになってしまうということを恐れるわけでございます。こんな危惧をする必要はないとは思いますけれども、そこのところをひとつしっかり見ていただくのは外務省しかないと思いますので、ぜひ一つ一つの筋目を立てて、これをとるためにこれを護るというようなことはなさらないで、外交がゆがまないようにお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  41. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くおっしゃるとおりだと思います。やはり私も日米関係の基本というものを、これはそれなりに我々は維持していきたい、こういうふうに思っております。したがって、この貿易問題は貿易問題として、経済摩擦は経済摩擦としてこれに対処し、解決をお互いの努力によって求めていくということでなければならぬ。これが安全保障の問題とか、そういういろいろなものと絡み合ってくる。それは見方によってはそういう見方も出てくるかもしれぬけれども、しかし、問題の処理はやはりこれはそれなりに別々に解決をしていくということにしないと、この問題一つでもって日米関係が大変な、全体が危機的な状況になるということだけは避けなければならない、とういうふうに思っております。
  42. 久保田真苗

    久保田真苗君 よろしくお願いします。  最後に、次々と重要な外交日程がおありになるようで、OECDもいらっしゃるし、訪問外交もなさるし、また、ボン・サミットというふうになっておるのでございますけれども、私ぜひ御記憶いただきたいことがあるんです。それはこれまでの首脳外交というようなもので非常に安易なコミットメントをしたということが現在の百三十三兆の赤字財政につながっているということをどうしても一言申し上げたいと思うわけでございます。  例えば既に安定成長に入っているのに高い成長率を約束したとか、あるいはシーレーン防衛が軍事費の突出というものにコミットして、そういう首脳外交があるたんびにいい顔をなさって、そして国民にツケが回ってくるという繰り返しはもう絶対にここで打ち切っていただきたい、こう思うわけでございます。それでなくても子孫にもツケが回りそうですし、私どもの心配している高齢化社会の対応というものもここでやはり大きく挫折したと見ざるを得ない。この轍をひとつ絶対にお踏みにならないように目配りをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  43. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はこれまでの首脳外交でそのツケが日本に回ってきた、そして今日本が非常に苦労している、そういうふうにも思いません。首脳外交によってそれだけ日本立場というものがむしろ強化されまして、そのことによって日本世界の中で重い存在になってきているんじゃないか。日本は一面においてはやはり日本自身の立場というものを守っていき、貫いていかなければなりません。半面、また例えば自由世界の連帯という意味ではそれなりに日本は責任を果たしていかなきゃならぬ、こういうことでございますからその辺のところをやはり調和しながらこれまで日本もやってきたし、今後も日本はやっていかなければならない、こういうふうに私は思います。
  44. 久保田真苗

    久保田真苗君 どうぞよろしくお願いします。
  45. 中村哲

    中村哲君 私は本来文教委員会に属しているんですけれども、文教委員会の管掌事項としても非常に大きなユネスコの問題についてここで外相その他の外務省側の見解をお聞きしたいのと、私の意見も言いたい、こう思ってそれで今回は外務委員会に出席させていただいたわけですが、本論に入る前に私自身広い意味で国会の通営とか、国会の将来とか、こういうことは戦前からの専門の分野でありますために、戦前も貴族院当時の本会議を何回か傍聴に参っております。殊に私がまだ学者の見習いのときに先生であった美濃部達吉先生が天皇機関説について当時の議会で問題になりまして、その何といいますか説明の演説をされまして、当時美濃部先生は勅選議員でありましたが、その当時は議会というものが本会議中心で、しかも読会制度になっておったもんですから、あれほどの大きなことになりますと議員がみんな一斉に本会議に出ていて、重要な問題というのは議員がわざわざこういう委員会に出てこなくても総観できたわけですが、今日の戦後の国会に出てみますと、委員会というものは非常に発達しているが、一方において、これまた私は参議院ができてから間もなくある雑誌で傍聴に参ったことがありまして、その当時ともまた違って、本日の委員会がそうであるように、何か官庁の各省の区分けと国会の委員会の区分けが一列になってしまいまして、本日文部省から外務省に出てきたような感じになっておりますが、そういうことにかかわらず国政一般について多少脱線してお話を聞きたいと思っております。  本来ユネスコの問題は、戦後の国際化した日本として、国連などと並びまして非常に大きな、世界における発言の場でありまして、終戦から憲法ができましたころには、国内問題としては国会、それから国際問題としては結局米ソを中心としてすべての国家の代表が出てくる国連、こういうところですべてが決まっていく、これが戦後の新しい歴史の方向である、こういうふうに考えていたし、また多くの人はそう言っておりましたけれども、その中のユネスコが今やや危機に瀕している感じを受けるので、それについてお聞きしたいと思うんです。  一月の末から二月にかけましてストラスブールで欧州評議会が開かれ、そしてその席上に国会議員の一人として、日本側のオブザーバーの一団に加わって出ておりまして、その機会にかねてから問題になっておるユネスコ問題を目で確かめておきたい、こう思ってパリのユネスコの本部にも訪れましたし、ムボウさんとも会ってみたりいたしました。そして幾つかの国を歴訪しましてから日本に着く直前の香港の新聞を目にしましたときに、香港の新聞日本では知られている加川大使が突如として東京から派遣されて、そしてかなり重要な発言をした、こういうふうな記事がありまして、そのとき私も非常に意外に思ったのです。というのは、パリで多少関係の方々にも会ったりしておりまして、そういう空気がなかったのにアジアの日本の近郊の近い国の一つである香港で非常なショックを受けたような記事がありましたので、それで、この問題は、実際に外務省あるいは政府それから出先の加川大使等がどういうつもりで行動され、発言したかという問題もありますけれども世界各国の受け取り方が非常に異常だったということだけは事実だったと思う。国際問題というのは、こういうつもりでやったと言っても、その客観的な作用といいますか、反響というものが、これがまた日本に返ってくるんですから、その意味で本日この加川大使発言その他について最初にお聞きしたいんです。  この加川大使のユネスコにおける発言及び行動というものは西欧諸国にも非常に大きな驚きであったようでありまして、例えば、ここにはスイスの二月十六日の記事がありますけども、それには日本アメリカの脱退についてユネスコに対して秋まで、ヘルプストと書いてある、つまり最終的にはこの秋までということなんですね。これは加川大使がそういうふうに言ったというんじゃなくても、この秋までと具体的な改革を要求した。で、これは島国であるということは、非常に離れた、西欧とはまた違う予想のつかない不思議な国という意味でもありましょう。インゼルライヒの、島国からのそういう使者がやってきて発言したんだと言って書いているんですが、これはアジアの諸国に与えた影響と同じように非常に世界の注目する問題になっているわけです。それで、この加川大使発言の内容を一応日本文とそれから英文で言われたことも見せていただいて拝見したのですけれども、この当時は場合によっては脱退するということを含めた意味で加川大使相当な決意で臨むということでパリのユネスコの執行委員会に出かけられたものなんですか。これはユネスコの本部の関係の、あそこには代表部、日本からも常駐している人がありますけども、それとは違って東京ということを特にどこの新聞でも書いてある。東京からの特使、東京からの特使というと、現地の人が考えたというのではなくて、やはり普通に考え政府あるいは外務省と、こういうことになりますんですが、そこではどういうことを加川さんに委嘱されたんですか。
  46. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 加川大使は、これは突然行かれたような、突然飛び込んで行ったようなお話でございますが、ユネスコの執行委員の一人でもありますし、それから常駐の大使でもありますから、加川大使がユネスコの総会でそういう発言をされることは、これは極めて当然のことじゃないかと思います。  それから、この加川大使発言の真意は、米国の脱退あるいはまた英国やあるいはまた今度シンガポール、そういう国々の脱退通告によりましてユネスコが大変深刻な危機に直面をしておりまして、本年じゅうにユネスコの抜本的な改革が実施されるべきであるとの立場から、事業の精選、予算の抑制、事務局運営合理化を強く訴えたわけでございます。これは、アメリカがユネスコ脱退の原因として、例えばユネスコの過度の政治化あるいはまた自由社会の原則に対する挑戦的な傾向、あるいはまた予算の膨張等の放漫な事務局の運営等を指摘しております。また、英国は、事業計画の改善であるとかあるいは予算の抑制、さらには分権化ですね。これはいろいろと世間で批判されておりますが、パリの本部から地域事務所への権限の委譲等の推進等について一層の改革の必要がある、こういうことで脱退をしようというわけで、またアメリカは脱退をしたわけですね。これは日本もずっとユネスコの中におりまして今の両国の主張はそれなりに理屈はあるんだと、こういうふうに考えております。  そういう立場に立って、我が国も加川大使から今のままではいけない。事業の精選をしあるいは予算の抑制をし事務局運営合理化を図っていかなきゃならぬということを強く訴えまして、我が国としてはこの改革の実現のために積極的な役割を果たすことを表明をしたわけです。  同時に、かかる考え方に立ちまして、我が国が主張する具体的改革が今秋のユネスコ総会で実現されなかった場合には我が国とユネスコとの関係を再検討せざるを得ない、こういう決意を表明したものであります。したがって、我が国が引き続き志を同じくする加盟国とともに、実質的な改革の実現のために努力をするとの従来の基本的態度には何ら変わりはないわけでありまして、我が国アメリカと違ってユネスコの中にとどまって何とか改革を実行していきたい。ILOにもそういうことがありまして、アメリカは脱退しましたが我が国は残りましてILOの改革に努めた、その結果アメリカはまた帰ってきた、こういう先例等もありますので、私はやはりとどまって改革をやるべきだ。それから先その改革を受け入れられないとか受け入れられるとかいう問題は、これはそういう結果を見なければなりませんし、その段階考えればいいわけで、我々としてはあくまでも何とか今の段階では残って改革を進めよう、こういう立場で加川大使の今の発言になった、こういうことでございますし、ユネスコの現状からすれば、日本の打ち出したこの方針というものは、私はユネスコの将来にとって極めて貴重なものであるというふうに確信をいたしておるわけです。
  47. 中村哲

    中村哲君 昨日でありましたか、予算委員会での質問に対して、安倍外相が改革に努力するということを強く言われたという、これは事実でございますね。それは期限を切って改革するんだというような言い方をされたんですか、国会議員に対する回答。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは加川大使も言っておりますように、やはり今秋のユネスコ総会までに日本が出しております改革案というものが実行される、それは全部が全部というわけにはいかないとしても大筋において実行される、ユネスコがやはり変わる、こういうことでなければならぬ、そういうふうに思っております。ですから、期限つきというわけじゃありません。期限つきということになりますと、何か脱退の方向にえらく重点を置いているということになるんで、私はそういうことじゃなくてとどまって、しかし、改革というものは、これは絶対に必要なことだということで、まず改革を進める。それもやはり何も見通しがないということになりますと、これはなかなか改革が進まないですから、今秋のユネスコ総会までには何とかその方向を出したい、こういう日本の主張であります。
  49. 中村哲

    中村哲君 昨日でしたか、共産党の議員の質問に対して、今後努力するということですね、脱退をしないということを言われたように新聞は書いておりましたが、今のような発言をされたんですか。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私、今のところそういう脱退なんて考えていないと、やはり改革というものに主眼を置いて取り組んでいく、こういうことですね。
  51. 中村哲

    中村哲君 しかし、私は非常に問題というのか、そこのところを考え直していただきたいと思うのと、そこのところをちょっと明らかにする必要があると思うのは、ある期限をということが、本当に努力するのに期限はないと思うんですね。ですから、また安倍外相の言葉の中にも多少そこはもう少しはっきり言っていただければいいわけでしょうけれども、加川大使の誤解に対する、世間の、殊に国際的な反響というのは、秋までという、例えばことに香港の新聞、これはUPIじゃなかったかと思う。つまり、通信社が出すんですからね。だから、アジアの各国がかなり共通してそういうふうに受けとめるその一例と思うですが加川大使はそれほど深く考えていないのかもしれないけれども、秋までということは、これは既に脱退したアメリカと、それから、これから条件を出して脱退の方向に既に進んでいる、正式に英国も脱退の届け出しておりますから、それとあたかも同じようなやり方と海外で見るのは、これは当然だと思う。なぜなら、アメリカがちゃんとムボウさんに脱退の趣旨を明らかにして、脱退の届けをして、そうして一年たって効力が発生したというのは、これはユネスコの憲章の二条六項だったかによったものでありまして、アメリカの出している期限というのはユネスコの規約の上からきた期限で、それで結局脱退したわけですが、今度イギリスが出してきた期限、その期限つきで要求していることが、これはもう既にイギリスは脱退の届けを正式にムボウさんに出しているわけです。これはハウ外相が脱退の手続をとって、そうした上での一年の余裕の間にもし事情が変わるんならばリコンシダレーションすることがあると、つまり考え直すこともあると言っている。ところが、加川大使日本の、東京の意向を代表してこの秋までやってくれと、この秋までやらないんならどうなるか、そのときにはリコンシダレーションだと、こう言うと、英国が言っているのと同じように見えて、脱退届を出している者が言っていることと、脱退届出していない者が言っているのとほとんど同じことを言っている。ここに世界各国が誤解をする理由があるんで、これについては安倍外相がそういう意味の期限をつけているんじゃないんだということをはっきりされることが日本の今後のためにも非常に必要じゃないか、そう思うんです。
  52. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは我々はユネスコの現状には満足してないんです。改革されるべきだという強い主張を持っているんです。しかし、アメリカはもう脱退しているわけです。イギリスは今、脱退を通告しているわけですね。これとは全然違うわけですよ。日本は脱退ということは言ってないんですから、ただ改革を強く主張しているわけですから、私はあくまでも残って、何とかこの改革をしたいという日本立場を言っておるわけで、脱退とかそういうことを今考えているわけじゃなくて、むしろそのような改革というところに最重点を置いているというところが随分違うと思いますね。しかし、日本としても改革案はこれはやってもらわなきゃ困るんで、それはやはり秋ころまでには一つめどをつけてもらいたい。それも受け入れられないということになればそのときはそのときでまた考え、検討せざるを得ないということはこれは日本の主張としてはまことに筋が通ったことではないか。ですから、日本と英米と違うのは、日本は脱退ということを言ってない。これはやはり相当本質的な違いがあるんじゃないかと私は思っていますがね。
  53. 中村哲

    中村哲君 法的な行為でありますから、脱退するとか脱退しないとか、既に英国もアメリカも法的行為としての通告をしているわけですが、日本の場合、そういう脱退の通告をした上で条件を出しているのではないのですけれども、やはり条件と見られることを出している。このことはある法律行為として国際法関係もそうだと思うし、司法関係あるいは行政行為の場合でもそうですが、期限あるいは条件というものをつけた法的行為というものがあるんで、何かそういうものとは違って、脱退や期限をつけているんじゃないんだと、安倍外相の今後の日本の国際路線としては、何よりもユネスコが何かの形で反省はするところは必要だと思うんですけれども、ユネスコの立ち直りということについて自分はやるんだと、こういうことをむしろ強くここで国民の疑惑を多少ぬぐうというか、多少疑惑を待たれるようなことに対してははっきりと言っていただいた方が我々としてもこういう問題を今後考えるのに非常に明るい気持ちになるんですが、そこいらをひとつどういうふうに考えられるのか。
  54. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今法的ないろいろの問題がありますから、その点については政府委員から答弁させます。今までのいきさつですね、アメリカそれからイギリスですね。今私の言っていることはあくまでも中にとどまって、そして改革したいということを明らかにした。しかし、これももう無条件で明らかにしているわけではありませんで、やはり秋までに何とか改革のめどをつけてもらいたいという日本政府考え方を加川大使が演説した、こういうことであります。
  55. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 大臣の御答弁を少し補足させていただきますと、特にこの秋という時点でございますが、先生御承知だと思いますが、ユネスコは二年ごとに総会を開くことになっております。そしてことしの秋がその総会でございまして、この総会で今後二年間の予算、事業計画等をつくる、こういうことになっておりまして、この改革問題を頭に置きます上で秋というのが一つの節目でございまして、この機会を逃しますとまた二年間全政府が参加して総会の決定を得るという形での場がなくなるわけでございます。  それからまた、先ほど大臣からも申し上げましたように、英国が、先生も御指摘になりましたように、昨年末に脱退通告をいたしておりますので、先生御指摘のように憲章二条六項によりまして、このまま事態が推移いたしますと本年末に英国の脱退が発効するわけでございまして、英国がその最終決定をするに際しましては、ことしの秋の総会の結果というものが非常に大きな要素を持つものと思われます。したがいまして、加川代表の演説で各国にはっきりさせました点も、日本としては、この一年というのがユネスコにとっては非常に重要な時期である、この一年の間にやはり各国がユネスコの改革問題に積極的に取り組んでもらわないと困る、そのかたい決意を表明したものでございまして、先生おっしゃいましたように、それから大臣からも答弁いたしましたように、我が国は法的な脱退通告ということは現在いたしておりません。あくまでもこの一年間の貴重な時期に改革のために全努力を傾注し、積極的役割を果たしたいという趣旨でございます。
  56. 中村哲

    中村哲君 先ほども申したように、英国は総会の決定のいかんによって再考慮する、リコンシダレーションする、こう言っている。それと同じような言葉をこちらの加川代表もやはり秋にリコンシダレーションするというと、何か同じことのように思われるけれども、英国の場合は条件が満たされれば脱退しないというそのことを考慮するのだと思うんです。それから加川大使の場合は今脱退してないのだからそれをリコンシダレーションするということは、場合によっては脱退するという言葉が入っているような、何か言葉だけは同じように使っているだけにその効果が非常に問題になるような感じがするのですが、このことはそれ以上申しません。それからこの外務委員会では私はムボウさんが事務局長として適しているかとか、今まで指導者として総括の能力があったかとか、こういうようなことについては一切これはここで議論する必要はないと思っておりますが、ただ、さっきの加川大使発言の中で、英文の演説内容を見ますと、アジアのグループのことを言っていますが、そのアジアのグループがどういう意向をこのユネスコ問題なんかについて持っているか、これは検討したことがあるのですか。
  57. 山田中正

    政府委員(山田中正君) ユネスコの場におきましては、日本はアジアグループに属しております。したがいまして、常にアジアの代表との間の意思疎通は行っております。加川代表の演説後私どもアジアの諸国を含め、中南米、アフリカの諸国も含めまして我が方の真意を説明いたしまして改革の努力協力を要請しておるわけでございますが、幾つかの国を申しますと、例えばインドでございますが、日本立場は歓迎する、ユネスコの現状には満足していない、改革賛成であると言っております。インドネシアもユネスコの現状に不満である、改革の必要あり、それから日本の内部改革の立場を歓迎する。タイも日本立場説明に勇気づけられておって、ユネスコ改革の必要性があると言っております。中国もユネスコの現状に決して満足しておらない。マレーシアも改革が必要との点は同感である。フィリピンも同様でごいます。  開発途上国の場合、グループ77というグループに属しておる立場、グループ77の連帯の立場ということもございまして、我が国とニュアンスが違う点はあると思いますが、改革を進めるという点については我が方に対してすべて理解を示す態度を示してくれております。
  58. 中村哲

    中村哲君 今局長が言われたことはそうであろうと思うんですが、そうであるだけにアジアにおいて大きな影響力を持っている日本としては、改革の努力を安倍外相が先頭に立ってやっていただきたいと思います。今のお話は脱退することとは関係ないんですね。ところが、加川大使の論調の中には、脱退という言葉は使わないけれども、何か英国やアメリカがやったことに追従するというのも変ですが、そういう感じを与えたからアジアの諸国は非常にショックを受けたということを、これは今の局長報告とは違いまして、今のお話はそれは大いに改革してくれという、これは今のユネスコの改革というのは必要ですから。だけれど、脱退するということとは関係ない。  ところが、とれは英国のタイムズのエデュケーショナル・サップリメント、教育版というのが月に何回か独立して出ております。その中に、英国自身の脱退のことに関して、アジアの諸国が非常にショックを受けている。シンガポールは脱退ということに進んだわけだが、このシンガポールというのはユネスコからそう利益を受けていない。あれは都市国家ですからね。ところが、ユネスコから農業開発その他農業の改良の指導などを受けているアジアの諸国というのは非常にショックを受けている、イギリスの脱退でですよ。したがって、アジアの中の日本が、万一秋の結果によってどうだというようなことがあればこれは大変なショックを受けると思うんですが、今はまだその話じゃないからいいんですけれども、このタイムズの教育版はこういうふうに書いてある。シンガポールの脱退のことが書いてあった上で、マニラにおいては非常にショックだと、コンプリートショックだとこう書いてあるし、マレーシアン・ガバメント・オフィシャルズがクアラルンプールでやはりそういうこと、それから、バンコクがユネスコのその問題について同じようにショックを受けている。それから、インドネシアの事情もこう書いてある。シンガポールはこれは都市国家ですから、そして大体華僑中心の政権になっておりまして、ちょっとほかのところとは違うのでシンガポールは例にならない。ほかのところはイギリス自身の脱退すらもこんなにショックを感じている。これはことしの一月二日のタイムズの教育版ですが、そういうのが客観的なアジアの今の状況だと思います。  そこにもってきて日本が、言葉はあいまいにして、秋までに再考慮するかもしれないなどと言って場合によってはどうするかわからないような、こういうあいまいな表現をしたままですと、これはASEAN諸国に対する非常な期待に反するんじゃないかと、私はそういうふうに思うんです。それはその程度にします。  それで、加川発言ばかりやるわけじゃないけれども、加川発言で一番問題なのは、英文の中を見ますと、このユネスコの改革について世論、パブリックオピニオンが高まっているということを日本について言っておられますけれども日本の中では改革についてのパブリックオピニオンというものが非常に高まっている、こういうふうに言っておられますけれども、それほど日本では改革問題について国民には知られていないんじゃないですか。それで、場合によっては中曽根首相が重大決意をするというような意味の表現をされているような事情が一体何かということは国民は余り知らないで、そして国内のユネスコ委員会等は非常に熱心に脱退しないようにと、こう言っているのではないかと思うんですが、その辺について、日本の世論ということを言われるけれども、世論をそんなに検討されたんでしょうか。
  59. 山田中正

    政府委員(山田中正君) ユネスコの改革問題につきましては政府はずっと以前から取り組んでおったわけでございますが、それについての世論が当初からあったということではないと思います。先生御指摘のとおりだと思います。ただ、アメリカの脱退というものが現実のものとなり、またユネスコのあり方について種々の報道が行われるようになり、日本のユネスコ国内委員会におきましても改革を推し進めるようにという建議を政府に対して提出もされておりますし、またこのユネスコのあり方についての御論議が国会でも行われております。そういう状況をとらえまして、ユネスコの現状に対する懸念と改革を求める世論、こういうものが高まりつつあるという表現をしたわけでございます。
  60. 中村哲

    中村哲君 加川さんの発言はそれ以上お聞きしたいと思いませんけれども、先般バンコクで、これは太平洋地域教育大臣、経済企画担当大臣会議というものがあって、そこで鳩山政務次官が代表してあいさつをされているのですが、これは外務省は御承知なんですか。
  61. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 外務省協議を受けております。
  62. 中村哲

    中村哲君 ことでも、特に重大な決意というような、先ほどからの誤解を招くようなことは言っておりませんので、これはユネスコの改革に重点を置いていて、それは誤解は少ないと思いますけれども、こういうこともやはり期限は秋までとか、期限というものを頭に置いてそして改革をするというような考え方というものは、本当の強い改革ではなくなるんではないかと思うのです。ですから今後とも、今まで多少誤解されるところがあったとしたならばあらゆる努力を傾けて、そして日本中心になって、イギリスが去りアメリカが去った後ではアフリカ等の発言の強くなってきているこのユネスコに、安倍外相はアフリカの問題、かなりいろいろ努力されているようなので、今後とも大いにやっていただきたいというふうに思うのです。
  63. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどからしばしば申し上げましたように、今の私の基本的な考え方としてはあくまでもユネスコの改革を求めていくということで、現在脱退というようなことは考えておりませんし、先ほどから申し述べましたユネスコの改革のために、ひとつこれからも全力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  64. 中村哲

    中村哲君 このアフリカの問題というのは、安倍外相が中近東のイラン、イラク等の紛争の中に立っていろいろ仲介の労をとっておられるような意味で、アフリカにもいろいろな問題はある。あるけれども、そういうアフリカ自身は非常に将来性のある、殊に地下資源の上では第二のペルシャ湾と言われているのが南のアフリカの実情でありまして、あそこから南極まで、日本には非常に少ない、そして各国には非常に少ない地下資源があって、これは今後の工業化には欠くことのできないものである。そういうものの埋蔵されている南アフリカとは、日本の産業としてもこれから深いかかわりを持っていかなきゃならない。そのときにアフリカ諸国の期待を担って安倍外相にぜひやっていただきたい、こう思うので、私は先ほどのように誤解を招くような表現じゃなくて、大いにやるということをひとつ言っていただきたいと、こういうふうに思っております。
  65. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) このアフリカの諸国が国際場裏で大きな発言力を持っておる、また経済的にも将来発展の可能性を秘めておる、そういう意味でその重要性というものは認識をしております。そのために政府としましては、近年経済協力の強化であるとか人的交流の活発化等、対アフリカ外交を強化しておりまして、特に最近の深刻な食糧情勢食糧危機に対しては、私も昨年の十一月にアフリカを訪問いたしまして内外に支援強化を訴えたのを初めといたしまして、我が国におきましては政府、民間挙げてこのアフリカ支援活動の盛り上がりを見せておるところでありまして、アフリカ問題は非常にそういう意味では注目を集めておるわけですが、政府としましては、アフリカの諸問題に対する国民の関心の高まりというものを踏まえながら、今後ともこれら諸国の経済的な困難克服のための協力を含めたアフリカ諸国との全般的な関係の増進に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  66. 中村哲

    中村哲君 西欧の諸国、それからアメリカもちょっと違った意味でそうですけれども、多かれ少なかれアフリカというのは西欧の先進国の植民地であった国なんです。今国が小さくてそれが一国として表決を持って多数で押してくるように言うけれども、そういうふうに国がたくさんに分かれているというのは、あれは植民地の分割の綿果そうなっているわけでありまして、それが第二次大戦後に解放されたりまたみずからの力で独立していったりしているわけでありますが、西欧諸国はやはりかつての植民地だったということが、いい意味でも悪い意味でもイメージの中に残っている。ところが、日本アフリカとは何のそういう負い目はない。ちょうど中近東の諸国に対して安倍外相が果たしているような役割は、安倍さんには私はできると思うんです。だからこそ、ここでアフリカ諸国等がかなり発言しているようなユネスコ、それと西欧諸国との間に立って、そして問題を打開していくということこそが、日本の今後の――これこそ二十一世紀はそういう国々が発展していくわけですから、そういうことを大いにやられるといいと思って発言しているわけなんです。
  67. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるとおりでありまして、先ほどから申し上げましたように、私もアフリカの重要性というものは強く認識をしておりますし、これからやはり日本が国際的にも大きな役割を果たしていくためには、アフリカ諸国との間の関係というものを深めていくということは大事じゃないかというふうに痛感をいたしております。
  68. 中村哲

    中村哲君 先ほどから触れている英国の脱退等なんかのイギリスの議会の議事録の応答を見ておりますと、エチオピアの問題なんかに非常に関心を持っている。それから、ついでに申しますが、ハウ外相は、ユネスコは脱退するけれどどうするんだということに対しては、国連とかそれから先ほど私が申した欧州評議会とか、ああいうふうなところに期待するというふうに言っているんですね。その点が同じく脱退したアメリカと必ずしも同じじゃない。アメリカの場合は脱退してはいるんだけどオブザーバーで出ていて、そしてこれは考えようによっては安倍さんにやってもらおうと私が言っているような、日本に大いに改革の責任を負わしてどんどんやらして、自分はオブザーバーとして見ている。そうして、場合によっては、ILOのときにあるとき脱退して今度は戻っているんです。だから、アメリカの場合は一遍脱退したらそれを貫くというんじゃなくて、都合がよければまたユネスコへ帰ってくるというような要素が、ILOの経験から言うと感ぜられる。それだけに、中にいて頑張れる、そして改革をやれるのは日本その他だと思うんで、そういう意味でもあくまで改革をやられるということが私は必要だと思うんです。
  69. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはおっしゃるとおりでありますし、日本としてもやはりユネスコというのは日本にとりましても国連に加盟する前に入った国連の機関ですから、これは非常に大事にしていかなけりゃならぬと思っておりますし、日本国民にとりましてもユネスコという言葉は大変なじみが深くなっている。まあ愛着も出ておるわけですから。しかし、今の現状では我々としても満足できないということでありますし、何とかこの機関は大事にして、そしてまたアメリカが帰ってこれるような、アメリカもよくなってくればこれは帰ってくると思いますから、アメリカも帰ってこれるような体制をつくっていきたいものだと、こういうふうに思っております。
  70. 中村哲

    中村哲君 ことにフランスはパリにユネスコの本部があるし、それからアフリカ諸国とフランスとの関係は従来から深い、そしてそういう国々とやはりある連帯を持っております。ちょうど英国が植民地等の、独立されたにもかかわらずコモンウェルスという観念を残していて、イギリスのそういう前から密接な関係があったところとの協力はしている。そういうことの中で、全く日本は独自にこだわりなくアフリカ諸国と今後とも友好からさらに科学技術、産業、それからことに重要なのは医療ですね、医療というのもシュバイツァーの場合はあれは難病の治療に限られておられたけれども、今後アフリカで必要なのは衛生学というかマラリアであるとかあるいは住血病とか、ああいう一般の人々全部が被害を受けているようなそういう医学関係の専門家を送り知恵を送るということ、そういうことは日本の今日の文化水準でもやれるわけで、ただ飢餓に対してそれに対処するというだけじゃなくて、日本の今の文化、科学等の余力というものはアフリカ相当傾注していいんじゃないかというような感じがするわけです。それはどうですか。これは文部省ですか。
  71. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 突然の御質問でございましたので準備がございませんが、アフリカに対する医療関係の協力という場合には、御承知のとおりガーナに野口英世記念病院というものをつくりましたり、我が国の医療協力におきましてはアフリカに対しては極めて大きな重点地域ということで進めております。また、緊急的な医療活動としましては、先般、安倍外務大臣アフリカを御訪問になりました後、その御指示によりまして緊急医療チームというのを四班にわたりまして、過去四カ月間にわたりましてエチオピアの一番飢饉の甚だしい地域に一回につきまして約八名から九名ぐらいのお医者様、看護婦さん等を派遣して救済や難民の方々の医療に従事しますとともに、エチオピアの現地のお医者様の訓練ということに従事していただいておりますのが現状でございます。
  72. 中村哲

    中村哲君 一般的にアフリカの諸国が今後どういう方向にいくかということについては全く不確定な要素がありまして、今の段階でかなり軍事的な面でソ連等の協力を得ている国でも内政までに及んでいるわけではない。これは私は、北アフリカは大学の交流のことがありましたものですから、大学の交流、文化交流のことがあったものだからアルジェリアを中心として行ったことがあります。そこで例えば図書館を見ているとアルジェの図書館なんていうものはフランスの大学の中でも代表的なものの一つで非常に整っている。これはフランス、当時の支配の象徴のようにして残したんだと思うんですが、それで、それからどういうことが行われているかというと、今までフランス語で書かれていたものをアラビア語の本を出そう、これはちょうどフランスが英語でなくてフランス語を守ろうとするような、そういうことと共通しているのかもしれませんが、それで今から四、五年前になりますけれども、当時タイムズだったかと思うんですけれども、アルジェリアはソ連の軍事教官が指導しているようなことが書いてあったけれども、私の見た限りでは、私の触れた限りではアルジェリアというものはやはりナショナリズムであってそんな簡単によその国の影響を受けるというようなものじゃないと思う。だからチャドリですか波は最近アメリカに非常に傾斜していっているわけだ。それからエチオピアの場合は逆にこれはエチオピアの王室というか王室の内紛に絡んでああいう革命のようなことが行われ外国が介入するようになりましたけれども、これだってそう簡単に決めつけられないと思う。これは東西の対立のうちのどれだというふうには言えないと思う。  第一、ILOの脱退なんかに絡んでPLOのことがありましたけれども、PLOでさえも、最近私が見たのではクリスチャン・サイエンス・モニター、こういう明治の時代から議会政治の政治家たちがよく引用する伝統的な知的な新聞ですが、これは国会にあるものだから珍しくて私は読むんですが、そういうものを見ると、PLOなんかも大体エジプトなんかの線で穏健な路線に変わろうとしている、こういうことがありまして、ある時代の、アメリカの何という大統領がいるその時代のアメリカとか、それからアフリカのだれが今政治家として出ているというんじゃなくて、アフリカというものの将来を考えたときに、これはやはり独自のナショナリズムをとる国なり、そしてそれとの国際関係というものが将来どういうふうに発展していくかということでありまして、これを決めつけてしまうことは間違いだと思う。  とかく今のアメリカは一方で孤立主義のようなことを言うかと思うと東西問題に対して決めつけたような言い方をするけれども、これはやはりガルブレイスじゃないけれども不確定の時代だと、こういうふうに思いますので、どうかアフリカに対しては安倍さんの今後中近東にやったような役割をさらに大いにやっていただきたい、こういうふうに期待するわけです。  以上です。
  73. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) やはり長期的には一般に自主独立の方向で持っていきたいと考えておりますし、やはり真正非同盟の政策の方向に向かっておる、こういうふうに見ております。東西を南北の関係に持ち込まないで、これはやはり相当そういう面があるわけですが、アフリカの発展途上国が国づくりあるいは貧困から脱却していく、こうした面につきまして努力協力をしていくことが重要であるし、それがとりもなおさず世界の平和と安定に寄与することになる、こういうふうに考えておりまして、日本としてもこうしたアフリカの自主独立の姿勢を助けて、日本なりの協力をしてまいりたい。今飢餓の問題でも、当面の食糧援助という問題と、中長期の、これからアフリカ食糧問題をどうするかという中長期問題もございますし、日本もそうした中長期の問題等にもやはり大きな力を尽くしていくべきじゃないかというふうに思っております。
  74. 和田教美

    ○和田教美君 六十年度の外務省予算についての質問に先立ちまして、二、三当面の外交問題についてお伺いします。  まずSDIについて、SDIの研究について日本に参加を求めてきているワインバーガー書簡、この問題についてお尋ねしたいんですけれども、あの書簡の内容を見ますと、六十日以内にひとつ返事をくれというふうな、やや高飛車な感じのする内容がありますけれども、そのことはともかくといたしまして、政府もおっしゃっているように、とにかくSDIそのものが非常にわからない点が多いということも事実でございますから、アメリカ側から専門家に来てもらって説明を受けるということは、これはまあ必要なことじゃないかというふうに思うんです。政府もそういう考え方になられたようですけれども、既にもう専門家の派遣を求められたのか、あるいはまた専門家に来てもらってどういうことをいろいろ聞こうとしておられるのか、その辺をまずお答えいただきたいと思います。
  75. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 三月二十八日にSDIに関するところの、二十七日付のワインバーガー米国防長官発私あての書簡を受領したわけでございまして、同書簡におきましては、米国は、既存の国際的義務に反することなく、SDI研究計画に貢献し得るような技術分野で同盟国と共同研究を進めたいとの希望を表明し、またさらに我が国に対しましては、SDI研究計画への参加についての関心と有望な研究分野についての示唆を六十日以内に得たいと、こういう旨の希望を表明しておるわけです。  我が国の対応ぶりにつきましては、本書簡の趣旨及び我が国の基本的な立場を踏まえまして政府部内で十分検討していく考えでありまして、米国の専門家から説明を受けるということにつきましても、そういう方向で今検討を進めておる、こういうことであります。
  76. 和田教美

    ○和田教美君 その六十日以内に返事をくれということなんですけれども、さっきテレビのニュースを見ておりましたち、ワインバーガー長官が、西ドイツの国防大臣会談した後の記者会見で、この問題については別に余りこだわらないで、もう時期はいつでもいいから同盟国の参加を喜んで受けるというふうなことを言ったという報道がございましたけれども政府としては、やはり一応六十日ということをめどに参加か否かの結論を出そうと、そういうお考えなのかどうか。
  77. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、私も六十日以内、これは非常に長期的な構想ですから、六十日以内ということはどういう意味で言われたのかわかりませんが、    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕 ヨーロッパ側も技術協力というものに非常に興味を持っておる国もありますし、それならひとつ六十日をめどに参加の希望があればお話をくださいという程度のものであって、何も日本としても受け取ったときから六十日がぎりぎりだというようなとらえ方はしておりません。そこで返事は、書簡をいただいたんですから出さなきゃならぬと思いますし、いつに出すかは政府部内で検討もしたいと思います。あるいはまた、それとともに専門家の話も聞きたいということも表明している、これもアメリカに伝えたいと思っておりますが、いずれにしても、別に六十日というものを、我々もそんなもので縛られるといういわれはないわけですから、別にそれにこだわってどうだこうだという考えは持っておりません。
  78. 和田教美

    ○和田教美君 今お話にございましたけれども、西ヨーロッパの各国でも、NATOの国々でもこの問題については参加ということになると非常に慎重な態度をとっているところが多いようですね。私はとにかくこれに参加するということは、この前予算委員会でも申し上げたようにいろいろな疑問があるから反対で、だんだんそういうものに引っ張られていくということは反対でございますけれども、いずれにしても参加か否かという結論をつける前に、私は単に政府部内で意見をいろいろと交換するということだけではなくて、広くやはり科学者、さっきも社会党の方から御発言ございましたけれども、専門の科学者の意見を聞く必要がある。しかも、それは初めからもうSDI賛成ということがわかっているような人だけではなくて、広く聞く必要がある。さらに、一応の政府の態度が大体固まるというふうな状況の前に国会に報告をして国会の意思を聞く必要があると思うんですけれども、そういうお考えをとる考えございませんか。
  79. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) このSDIに関する今回の米国の呼びかけに対する対応につきましては、今後米国から提供される情報等も踏まえて、技術的側面をも含めまして総合的な観点から検討を十分に行っていきたいと考えております。もちろん国会等でいろいろと議論もあったことは、それなりに我々としても留意しておかなきゃなりませんし、またこの構想というのは非常に長期的な構想ですから、この点については慎重を期して我が方の対応というものを決めたいと思っております。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 いずれにしましても、我が国の基本的な立場というものをしっかり踏まえた上で、自主的に判断をする考えです。
  80. 和田教美

    ○和田教美君 それじゃ、次に日ソ関係の改善という問題についてお聞きしたいんですけれども、この間の予算委員会外務大臣は、日ソの対話の積み重ねという問題について一連のスケジュール、日ソ次官級協議初めいろんな問題を積み重ねていくというお話をされた。これは非常に結構なことだと私は思うんです。また、中曽根総理は、この前、ゴルバチョフと会談をされたときに、ハイレベルの当事者による包括協議をやろうじゃないかというような提案をされておるわけなんですが、そこで基本的に聞きたいのは、そういういろいろな懸案の協議をするに当たって、領土問題というのが一つあるわけなんですが、これは一朝一夕に解決する問題ではないということで、それは一応それとして、経済関係だとか文化交流だとかいうような問題については、どんどん進めていくという態度をとられるのか、それとも自民党の中にやはり依然として根強い、あくまで領土問題の解決が大前提だという考え方を前面に出しながらやっていかれるのか、その辺の基本的な構え方というのはどういうことでございましょうか。
  81. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国の日ソ外交における基本的な立場は、これはあくまでも領土問題を解決して、そして平和条約を締結する、こういう基本路線はこれは確立しておりますし、この基本路線にしたがってこれからも日ソ間の関係というものを進めたいと思うわけでございます。  こうした基本問題は基本問題として、我々としてはこれを風化さしてはならない、こういう厳とした気持ちを持っておるわけですが、しかし同時に、日ソ間は隣国の関係にあるわけで、体制は違いますけれども、我々はやはり世界の平和とか、あるいはアジアの安定というものを考えるときに、いろんなやはり日ソ間にその他の問題もあるわけですから、こういう点についての対話は進めていく。対話を進めていくことが、また領土問題の解決にもつながっていく、こういう考えであります。
  82. 和田教美

    ○和田教美君 外務省は、グロムイコ外務大臣の来日が一応ことしの秋ぐらいということを期待しているようなんですけれども、最近一部の報道によると、ソ連側は要するに年内の訪日は無理だ、実現は難しいということを言っておるというような報道がございました。その辺はどういうふうに見ておられるかということと、それからどうもグロムイコ、グロムイコということばかり政府はおっしゃるんで、今度はグロムイコが来てもらう番だということなのかもしれませんけれども、レーガン大統領はゴルバチョフの訪米を歓迎するようなことを言っておるし、ヨーロッパでは、例えば西ドイツとかフランスなどは既にゴルバチョフの訪問が決まっているわけですね。ですから、日本政府もいつか、ある段階でゴルバチョフ書記長に来てくれというふうなことを呼びかけるという考え方ですね、そういうものが全く今の段階ではないのか、そういうことはいかにも唐突だというふうに考えるのか、その辺はいかがですか。
  83. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) グロムイコ外相の訪日の見通しにつきましていろいろと言われておりますが、これは先般のチェルネンコ前書記長葬儀の際の日ソ首脳会談におきまして、ゴルバチョフ書記長は、グ外相訪日問題について肯定的に対応していきたい、いつどういうふうに実現するかは今後相談していきたい、こういうふうに述べております。ソ連側は訪日の具体的時期を明らかにしておりませんが、この実現のためには努力していきたいということで、今ソ連側との間でこの訪日問題につきまして外交チャンネルを通じまして、協議を始めるように私も事務当局に指示しておるわけです。  それから、ゴルバチョフ書記長を招聘する考えはないかという御質問ですが、政府はやはりグロムイコ外相の訪日が日ソ間の最高指導部レベルでの交流、対話における当面の焦眉の問題だというふうに考えております。その実現の後に、グロムイコ訪日が実現した後にソ連側にゴ書記長訪日の意向があれば、それは歓迎をする用意がある、こういう姿勢でございます。
  84. 和田教美

    ○和田教美君 次に、深刻化しております日米貿易摩擦日米通商摩擦の問題についてお尋ねしたいんですけれどもアメリカの上院本会議が全会一致でとにかく対日報復措置の発動をアメリカ大統領に求める決議を可決したというふうなこと。それから対日制裁法案がアメリカ議会にどんどん出てきているというふうな状況。これを見ますと、やはりアメリカ議会空気はやはり爆発寸前というふうな状態になっているというふうに見ても私はいいんではないかというふうに思うんです。なぜこういう状態にまでアメリカ議会空気が悪くなったのかということですけれども、基本的にはもちろんアメリカの対日貿易赤字が三百七十億ドル近くにもなったというふうなこと、これは大変だということがあると思うんですけれども、それからまた、いろいろな日米間のいわゆるコミュニケーションギャップというふうなものももちろんあると思うんですけれども、私は、その一つ中曽根総理がこの一月、安倍外務大臣と一緒にアメリカに行って、レーガン大統領と会った、そのときにかなり総理は胸をたたいて公約をしたというふうなことが過剰な期待をやはり抱かせたんじゃないかというふうに思うんです。総理はあのときにたしかみずから市場開放の進展を点検して、そして三月までに対応策をとるというふうなことをおっしゃった。アメリカが恐らくアメリカ流に、トップがリーダーシップをとってどんどん進めていくというふうに受け取ってこれを評価したんじゃないかと思うんですよ。ところが、実際にその後の日本の対応を見ていると、依然として積み上げ方式で、下の、要するに各関係官庁のいろんな対応があって、それが積み上がっていって、そして対策が出てくるというふうな形で、特に総理がリーダーシップをとったという気配は感じられないというふうなことから、いらいらが一層強まったというふうなことがあるんじゃないか。これは日本アメリカとの政治の進め方の一つの違いかもしれませんけれども、その辺はどう外務大臣としてお考えですか。
  85. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 基本的には、最近の米議会の動きというのは、やはり記録的な対日貿易赤字を背景としながら、我が国市場開放措置が実際の対日輸出増というものにつながらない、こういういら立ち、さらには我が国経済力に見合った国際的責任を果たしていない、こういう不満とに基づいておるわけで、我が国に対するいら立ちを端的に表現したものというふうに受けとめておるわけでありまして、これは大統領選挙中はむしろ議会は控え目にしておったといいますか、そういう状況があったと思いますが、やはり大統領選挙が終わった後に議会も構成をされまして、そういう中で今までの相当日本に対する、今申し上げましたような基本的な不満ですね、さらに加えて、日本が今までやってきたことが、何にも成果として上がっていないというような感じ、感覚、そういうものが一斉に噴き出してきておるんじゃないか、そういうふうに思います。もちろん、この中曽根総理とレーガン大統領との会談では、中曽根総理も、自分としてみずから先頭に立ってできるものはやりますということを言っておるわけですが、しかしその中で、難しいものもありますよということも指摘しておるわけですし、そしてまた、同時に、この日米の経済摩擦の大きな問題はやはりあなたの方のドル高にも原因があるんですよということも率直に言っておるわけですから、それはもちろんアメリカ側も中曽根総理期待をしていると思いますし、また中曽根総理もそれなりの期待にこたえて、最近は大車輪で各省の事務次官なんかを呼んでやっておるわけです。その結果として、テレコム等につきましては大体アメリカの満足するような形で決着を見たと言えるんじゃないかと思うわけですね。ただ、四分野でなかなか困難なのは、木材製品ですか、これはもうアメリカ側にも我々は十分説明しておりますし、そういう点についてはアメリカ理解してもらわなければ困る、こう思っておるわけで、やはり米国の議会の議論の中には、日本がこれまで六回にわたってやってきましたこの市場開放というものを無視して、何も成果が上がらぬじゃないか、やれやれといってやったけれども、何も成果が上がってないということを盛んに言う向きがありますが、私はこれなんかも恐らくああいうドル高等にならなければ、それなりの成果が出たんじゃないか、こういうふうにも思っておるわけでありますが、またこの今の四分野についても全く進展がない、さらにまたドル高というアメリカ自身の責任を無視して、我が国市場の閉鎖性のみに対日貿易赤字の原因を帰するといった、やはり冷静さといいますか、理解不足に基づくものもありまして、この点については我が国としては今後先ほどから話が出ておりますが、アメリカに対して言うべきことは言わなければならぬし、それから理解のそうした不足、あるいは誤解、そういうものを解く努力はひとつ進めていかなければならぬ。非常に危機的な状況にありますから、これを突破するための最大の努力をする。幸いにして四分野で、我々は、難しいといった分野についてはなかなか今も困難性がありますけれども、その他の分野については、テレコム等、最大のアメリカが重点を置いたこの懸案は、ほとんど解決したということで、さらにエレクトロニクスの分野相当なところまでいきましたし、薬品や医療器具の分野も進展を続けておりますから、私は双方の努力といいますか、特に日本側の努力相当やはりロスの会談以後進んでいるということを率直に申し上げたいわけです。
  86. 和田教美

    ○和田教美君 最近日本に来ました大統領特使シグール大統領補佐官、さっきも話が出ておりましたけれども、総理と会ったときに、主として電気通信分野に焦点を絞って話し合われたというふうに報道されている。今のお話ですと、どうも電気通信分野については大体中曽根総理が自分でやるということをアメリカ側も評価したというふうなことも伝えられているんですが、それによって一応解決といいますか、山は越えたというふうに見ていいんですか、その辺はどうでしょうか。
  87. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) シグール特別補佐官は、現下の米国内の情勢を述べるとともに、電気通信をめぐり今後さらに検討を続けていくことになっております技術基準及び透明性確保の面で、日本側は格段の努力をするとの積極的姿勢を示してほしい、こういう要請を行ったわけであります。これに対して我が方より、米側が特に重視している技術基準の問題につきましては、直ちに米側等も交えて技術的研究を開始し、予定されている二カ月間という期間を早めてもできるだけ早急に双方満足のいく結論を出すべき努力する旨を述べたわけで、これを米側は高く評価をいたしまして、大統領に右報告するとともに、米国内関係者に十分説明していきたい、こういうことでありました。  こうして特使日本訪問は満足すべき結果であったという姿勢でアメリカに帰りましたし、今報道等によれば、レーガン大統領も今回の特使派遣、その結果について満足した、こういう姿勢を示した、こういうふうに私は聞いておるわけであります。
  88. 和田教美

    ○和田教美君 電気通信の問題ということになると、VAN事業への参入問題とか、あるいはこれは民間の問題かもしれないが、通信衛星の購入問題とかいろんな問題があるわけですが、そういうものも含めて大体解決したと言えるのか、これからの議会の対応次第でまた変わってくるのか、その辺はいかがですか。
  89. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 米国側が四月一日という時期を非常に関心を持ちまして電気通信問題についてフォローしてきましたのは、四月一日から電気通信事業法が施行され、それに伴って各種の政令が実施される、その実施されるに当たっては米国側の希望するような形で日本の市場が自由になるように、こういうことでございましたので、とりあえずはこの電気通信、特に電気通信事業法に関連する問題についてシグール特使がおいでになって話されたということで、その他の問題についてはさらに問題が両国の間で話されていくということになっているのではないかと思います。
  90. 和田教美

    ○和田教美君 四分野で一番国内的に厄介な問題を抱えているというのはやはり木材製品の、合板の関税引き下げ問題じゃないかと私は思うんです。総理はこの前に、三年程度をめどに林業だとかあるいは製材業界など、これは不況業界ですけれども、まず国際競争力をつける手当てをして、そして木材関税を引き下げるというふうな指示をされたというふうに言われているんですけれども、この内容はもうひとつよくわからないんだけれども、要するに三年間を限ってまず国内産業に力をつけさせることをやった上で関税の引き下げに応ずるということなのか、それをやりながら並行的に関税を引き下げていくということなのか、その辺はどうなんですか。
  91. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) この問題につきましては、ただいま林野庁の方を中心といたしましていろいろな検討が行われている段階だと思います。私どもはまだその具体的な方向は承知しておりませんが、総理の御発言は、木材関係の問題について市場が開放されるようになった場合に、日本の産業にもし打撃があった場合はいろいろな考慮をしなければならないという問題を想定いたしましてお話があったのではないか。このお話をベースに林野庁の方でいろいろ御検討になっているというふうに私ども承知しております。
  92. 和田教美

    ○和田教美君 外務大臣シグール補佐官に、木材の関税の引き下げは無理だよということを言って、それは向こうも了承したんですか。
  93. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、何も返事しなかったです。
  94. 和田教美

    ○和田教美君 安倍外務大臣は十三日に、ワシントンでシュルツ国務長官と会談する予定だというふうに承っておりますけれども、まずそれに間に合うように九日には摩擦解消に向けての政府の当面の対策というものを決めるということなんだそうですけれども、どうも私の理解しているところでは、最初はこのシュルツ長官との会談で大体一件落着ということに持っていきたいという希望があったんじゃないかと思うんだな。ところが、最近の報道によると、どうも二段構えで、今度の九日の対策だけでは終わらない、やはりサミットの前に、四月の末ぐらいをめどにもう一度具体的な対策を考えるんだというふうな報道がございますが、こういうふうな二段階の構えに変わってきたのかどうか、もし変わってきているとすればそれはやはり国内の圧力というものが相当激しくてなかなか思うように進まないということなのか、その辺はどうでしょうか。
  95. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ロサンゼルスの首脳会談で、対外的にはアメリカシュルツ長官、日本は私が総攬をして話し合う、こういうことに決まったものですから、やはりボンサミットを受けて、まあその前に一回ぐらい会って、日本努力アメリカの対応、そうしたものについて中間的にお互いに話し合う必要がある、これは意思疎通をしておかなきゃならぬ。そういうことで、それまでに決めるとか決めておかなきゃならぬかという、そういうスケジュールを持って今度の会談を設定したわけじゃありませんし、また今度の会談というのは、ただ単に日米の経済問題だけじゃなくて、米ソの軍縮交渉とか、あるいはまたアジアの情勢の変化とか、やはり外務大臣としてはそうした経済問題だけじゃなくて、世界情勢、二国間の問題、全体をアメリカとの間で意見交換をしてみたい、こういうことでありまして、ですから、今度の会談日米経済問題に限ってやるわけではありませんし、それ以外の大事な部分についても話し合う、こういうことでありまして、これは私は日米の現在の基本的な関係から見て大事なことじゃないか、こういうふうに思っております。
  96. 和田教美

    ○和田教美君 とにかくアメリカ議会あるいはまた一部のマスコミというのは相当議論が硬化しているということは事実ですし、このまま放置すると大変なことになるということもこれは争えないことだと思うんで、何らかの解決をしなきゃいかぬと思うんですけれども、しかし、やはり日本としても言うべきことは言うという態度が絶対に必要だと思うんで、何でもアメリカの言っていることが正しい、のんでしまえというようなわけにはいかないと思うんですね。特に、私ちょっと感じるのは、アメリカ議会の議論が非常に感情的で、ドル高が対日赤字の原因ではないというふうな議論が盛んに横行しているわけですね。さっきの外務大臣の話によると、アメリカ政府筋はそんなことは言っておらぬということのようですけれども、こういう暴論に対してはやはりぱしっととにかく抑えておくということも必要じゃないか、全体に議論を余り感情的にしないようにこれから配慮していくということが必要じゃないかと思うんですが、最後にこの問題についての御見解をお聞きしたいと思います。
  97. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この問題は日本もそうですが、特に今のアメリカ議会等は相当感情的になっておりますから、やはりこれは冷静に両国が受けとめて処理をしていく、できることとできないこともありますし、日本はベストを尽くしているわけですし、アメリカにはアメリカの責任もあるわけですから、そういう点をお互いに十分理解し合ってやる必要があると思うんですね。政府間ではそういう理解は通じておりますが、なかなか今、議会ということになりますと手が届かぬ面があるので、これはアメリカ政府アメリカ議会のそういう保護主義的に突っ走っていくのを抑えるために懸命の努力をしておるわけですが、私は、政府努力しますが、議会議会同士といいますか、日本議会アメリカ議会人との間でやはり率直に話し合っていくということも、こういう状況になってくれば大事なことじゃないか、こういうふうに考えております。
  98. 和田教美

    ○和田教美君 それは全く私も賛成です。  それと、これは通産省の方が来ておられると思うんですけれども、どうもよく理解できないのは自動車ですね、乗用車。今度もやはり対米自主規制を続けるという決定をされたわけですけれども、しかしアメリカの自動車業界は空前の好況であり、レーガン大統領自身が自主規制を続けてくれと言っていない、日本の業界も別にそれを希望していないというふうな状況の中で、なぜそういうことに踏み切ったかという説明は、一応、要するにこのままほうっておくと集中豪雨のように輸出がふえるからというふうなことのようですけれども、しかし輸出がふえればアメリカの消費者は値段が下がって助かるということもあるので、どうもその理由がもうひとつ薄弱のように思うんですが、なぜあえて自主規制継続に踏み切ったのか、その辺の考え方はどういう考え方によるんでしょうか。
  99. 内藤正久

    説明員(内藤正久君) 先生御指摘のとおり、米国の自動車産業の業況が著しい改善を示しておることを背景といたしまして、米国政府が自由貿易の堅持ということを基本にして、日本に自主規制を求めないという決定をしたことについては非常に歓迎をいたしております。ただ、その上で通産省といたしましても、より本当に自由な貿易を段階的に実現していくということが必要であると思っておりまして、御指摘のとおり、有効な競争の増大あるいは消費者利益の増進ということの重要性を十分に認識はいたしておりますが、他方、自主規制終了直後に輸出が非常に急増する。数字で申しますと、昨年度の百八十五万台から、業界の希望数字を集めますと二百七十二万台という五割の急増、これはまさに洪水的な輸出でございますので、それが現実になりますと、米自動車産業をめぐって混乱がいろいろ生ずる。それでその結果、両国自動車産業あるいは日米関係の長期的な発展が阻害されるというふうなことも、その輸出の計画から見ますと懸念されましたので、それを回避するためのソフトランディングの措置考える必要があるという判断でございます。そのために、日本側の自主的な判断で、先方の要請は御指摘のとおりございませんが、自主的な判断で自由な貿易を混乱なく今後実現していくための過渡的な措置ということで、とりあえず一年間措置を講ずるということにしたものでございます。したがって、将来の本当に自由な貿易の実現ということを目指すための過渡的な措置であるということで、米国政府方向にも沿っておるものと考えております。
  100. 和田教美

    ○和田教美君 そうすると、今回は全く過渡的な措置であって、来年はこういうことはやらないというふうに言えますか。
  101. 内藤正久

    説明員(内藤正久君) 現状の形で推移いたしますれば、一年限りということで現在考えております。
  102. 和田教美

    ○和田教美君 時間も大分たってまいりましたので、六十年度外務省予算案について若干お聞きしたいと思うんですが、予算の内容を見てみますと、ODAの関係予算が非ODAを上回っておるわけで、ODA中心ということになっておるわけなんで、そういうことで、まずODA予算のことからお聞きしたいと思います。  ODA一般会計予算、これは五千八百十億円ですか、対前年度比一〇%増ということになっておりますが、たまたま五十六年から始まった五年間でODAを倍増以上にするという五年中期倍増計画、これが六十年度が最終年度ですね。この間、外務省説明を聞いたんですけれども予算額で見ると、五十六年から六十年度の予算額の合計額二兆四千三百七億なんですね。これは目標額の二兆四千八百八十八億円に比べて達成率九八%と、大体完全達成だというふうにおっしゃっているんですが、しかしODA予算を円の予算額だけで見るというのは、これは対外の関係があって必ずしも十分ではないと私は思う。そうなると、やはり支出実績ですね、しかもドル建ての支出実績というようなことを見ていかなければいかぬと思うのですが、これはまだ外務省の統計でも五十六年から五十八年までしか出ていないようですが、この実績を見ると、六十年までの暦年の目標額が二百十三億ドルに対して、実績は五十八年までの三年間で九十九・五億ドルですね。あと二年間足しても、とても完全達成というのは到底難しいんじゃないかと思うのですが、その辺はどう考えておられるんですか。
  103. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 確かに、ただいま委員御指摘のとおり、中期目標自体は本来、暦年ベースでのドル実績の合計額ということになっておりますので、一九八一年から八五年、本暦年でございますが、本暦年までの合計額が二百十三・六億ドルにならなければならない。そうしますと、あと昨年とそれから本年の合計額が百十四億ドル余りになりませんと倍増は達成できないというのは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、これが一体どうなるかというお尋ねでございますが、ただいままさに御指摘になりましたように、昨年の暦年の実績も現在集計中でございまして、まだ出ていない状況でございます。それから本年は、これから本年の十二月の三十一日までこの実施に努めるということでございますので、これから一生懸命努力をしていくということでございますが、この実績に影響を与えますのは支出の実績及び円ドルレート、当然のことながらドルとのレートの問題というものも非常に大きく関係してまいりますので、現在のところ、委員御指摘のとおり、非常に容易だということは申せませんが、とにかく一生懸命努力をするということに尽きるかと思われます。  ただ、この実績を倍増いたしますために、手段といたしまして、この中期目標としましては、目的達成のために八〇年代前半五カ年間においてODA関連する国の援助を倍以上にすることを目指す、こう述べておりまして、これがまさに、ただいま御審議願っております六十年度予算が最終年度になりますものですから、そういう手段の点、その裏づけになります予算の点では九八%の達成を見た。これを用いて本年末まで一生懸命努力をするというのが現在の態度でございます。
  104. 和田教美

    ○和田教美君 ここ数年、とにかくODA予算が非常に伸びてきているということは事実で、これはOECD、DACなんかも非常に評価していると私も思うんです。それを認めるわけなんですけれども、最近の、今もお話が出ました経済摩擦ですね、これがアメリカだけじゃなくて、ECその他も非常に激化しているというふうな状況の中では、今後もこの援助の増大ということは非常に重要だと思うんですね。  そこで、六十年度がその計画の最終年度ということになると、当然、あとはどうするんだということになってまいりますが、外務大臣はかねがねあともやはり何らかのめどを立てた計画を、ふやすという計画をはっきりしたいということのようですが、どうも財政当局が渋っているというふうな報道もあるんですが、近く大蔵大臣と話し合われるということのようですけれども、その辺はどうお考えなんでしょうか。
  105. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 三年倍増、五年倍増を予算面においてはやってまいりましたし、諸外国も非常に日本ODAについては期待を持っております。また、日本も国際的責任を果たすという立場からもODA充実していかなきゃならぬ、こういうふうに考えておりますが、何としても難関は日本の財政でありまして、今回も実はOECDの閣僚会議で、私と金子経企庁長官が出席するわけでありますが、その際やはりODAに対する日本の基本的方針を明らかにしなきゃならぬという日本の責任があるわけでございますが、この点についてなかなか関係各省庁で話し合いが煮詰まらぬということもあって、きょう金子大臣とともに竹下大蔵大臣にこうしたOECD閣僚会議に出るので、なかなか財政としても厳しい面があるけれども、これはやはり国際責任を果たすと。とにかく貿易黒字もこんなにふえているわけですから、その中でODAは頑張ったということを示すためにも積極的な発言を我々はしなきゃならぬ、ついてはひとつ事務当局で話を積極的に詰めさしてもらって、四日にはさらにひとつ三人でこの問題について協議をしたい。こういうことを申し入れまして、大体そういう方向で話し合おうということに決まったわけです。
  106. 和田教美

    ○和田教美君 倍増というようなことはなかなかあるいは難しいかもしれないけれども、少なくとも将来に向かってふやしていくんだというふうなぐらいのところの線は出るんでしょうか。
  107. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) なかなか財政当局は土俵に上がってこないんで、ようやく土俵に上げてこれから勝負をするということで、何とかそういう方向に向かってひとつ持っていきたいということで、閣僚間の折衝に我々も最後の期待をかけて頑張りたいと思っています。
  108. 和田教美

    ○和田教美君 八三年のDAC十七カ国のODA比較をちょっと見たんですけれども日本総額では第三位ですね、実質は第二位だというふうに言っていいと思うんですが、これはだから量の点においてはまあ一人前と言っていいんだろうと思うんですが、問題は質ですね。特に贈与の占める比率、これはDAC十七カ国の中の十六位ですね。それからグラントェレメントが十六位、もうほとんどびりということなんで、これからの問題はやはり質の改善ということだろうと思うんですが、外務省のお話ですと、質の改善ということになるとすぐ贈与をふやす以外にないというふうなことをおっしゃるわけで、しかし、今のお話のように、財政難という問題があって、すぐ予算の支出を伴うような贈与ということを急激にこれからふやしていくということもなかなか難しいんじゃないかと思う。そうなってくると、半分ぐらいを占める借款ですね、要するに借款の内容を少しよくしていく。例えば利子の利率をよくしていくとか、そういうふうなことで改善を図っていく余地はないのかどうか。その辺のところはいかがですか。
  109. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 確かに、委員御指摘のとおり、ODAの質的な改善をしますためには、一つは贈与部分の拡充、それからもう一つ円借款の条件の緩和ということが考えられると思いますけれども円借款実施機関でございます海外経済協力基金が今赤字問題を抱えているという状況から見まして、金利の引き下げが困難な状況にあるということと、それから、借款だけをとりました場合には、日本の金利、借款の金利が三%ちょっとということでございまして、DACの平均の二・九%よりちょっと上程度である。むしろ問題は贈与部分が先ほど御指摘のとおり少ない。借款が多いということがグラントェレメントを非常に落としている原因かと考えますので、やはり質の改善のためには、二国間の無償資金協力でございますとか、技術協力ないしは国際機関への出資、拠出等、贈与部分の拡充努力してまいりたいと申しますのが現在の立場でございます。
  110. 和田教美

    ○和田教美君 技術協力については国際協力事業団、JICAが大体七割程度担当しているわけですね。これからもやはり技術協力というのは私は非常に重要だと思うんで、今度の予算を見てもJICAの予算は大体七・五%ぐらいふえている。結構だと思うんですけれども、その中で特に重点項目の中に入っておりますけれども、草の根のレベルの技術協力という意味で青年海外協力隊の増強というふうな項目がございますが、これも非常に重要だと私は思う。今までは年間に六百五十人ぐらい派遣していたのを今度は年内八百人ぐらいにふやすというような計画のようですけれども、そこで問題は、前々からの問題ですけれども、青年海外協力隊員の身分保障ですね。現職のまま出かける人もおるけれども、あるいはまた休職になって出かける人もおるけれども、一たん職を離れて出かけて二年間やって、帰ってきたらなかなか適職がないというふうなケースもあるわけで、この辺はまだ十分ではないと思うのですが、この辺はどうお考えでしょうか。
  111. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 確かに先生御指摘のとおり、六十年度予算では年間八百名の増員を認めていただいておりますが、この身分の点について見ますと、非常に概括的な数字で申しますと、現職参加をしておられる方が二割、それから退職して参加される方が五割、それから無職の方三割こういう状況でございます。したがいまして、身分の安定を図るということが今後の青年協力隊の量のみでなく質を高めていくというバックアップ態勢を固めるという点から非常に大事かと思われます。  そのためにまずとっております措置といたしましては、一つは国内就職情報の提供でございますとか就職希望の調査、またはその調査結果に基づきます進路指導、これは進路指導カウンセラーというのが六十年度予算で初めて認めていただいております。それがこのようなまだ働いておられる間に帰られた後の就職のお世話をするバックアップ態勢をできるだけ早めにとるということが一つの方法でございます。  それから第二は、現職参加をできるだけ促進するということで、御承知のとおり国家公務員の場合には国際機関等への派遣法というまあ法律で休職措置がとられます。都道府県につきましては現在四十七都道府県のうち三十三都道府県が休職条例を制定していただいております。そのほか職務専念義務免除という措置によって参加を可能にしておられる県もございますが、このような措置の促進、それから民間におきましても現職のまま休職といいますか、休職扱いのまま参加できるような態勢を企業の方でとっていただくように働きかける、というような方法で身分の安定化ということに今後とも努力を続けていきたいと思っております。
  112. 和田教美

    ○和田教美君 時間が過ぎたようですから最後にもう一つお許し願いたいのですが、シルバーボランティアの派遣ですね、新規予算で二十人分と書いてあるんですが、二十人分の旅費を持つということなんだそうですが、これは非常に中国なんかで喜ばれているわけです。ボランティアで出かける人たちも第二の人生ということで非常に張り切って生きがいを感じてやっておられる人が多い。高齢者対策にもなるわけなんで、これには二十人分ぐらいの旅費をちょっとめんどうを見るという程度じゃなくて、もっと大々的にこれを側面援助する、あるいはむしろ外務省計画の中に主導的に取り入れるぐらいの考え方があっていいんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  113. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま御指摘のとおり、シルバーボランティアの団体が現在派遣しておられる方が約五十名海外に出ておられます。このシルバーボランティアの基本的なシステムは、シルバーボランティア協会では保険料を御負担になるということで海外の行き先までの渡航費は御自分で出されて行かれまして、受け入れ先がその後のお金を見る、こういうのが基本的な対応になっておりますが、今般六十年度予算で中国に対しますシルバーボランティア二十名分の旅費をお認めいただきました。現在、シルバーボランティアズに登録しておられる方が三百八十五名おられますが、まさに御指摘のとおり、今後高齢化社会を迎えるということでこのような企画、システムというのは今後ともやはり重視していかなければいけないプログラムかと存じます。ただ、高齢者の方が中心でございまして、平均年齢今五十九歳ということでございますが、そういう点からも中国ですとそれほど瘴癘の地でもないということで、健康管理の面でもそれほど心配をしないでもいいかと思いますが、やはり派遣先等についてはかなりきめ細かい配慮が必要なのではないかと考えております。
  114. 和田教美

    ○和田教美君 終わります。
  115. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 質問に入る前に外務省に敬意を表しておきたいことがあります。それは、五十九年度の外交青書以来、今まで西側であるとか西側の一員というふうな言葉を使ってこられましたけれども、五十九年度の白書では自由世界ないし自由民主諸国の一員という言葉を使ってこられるようになりました。私は時々国際会議なんかに行ってやはり西側、東側というような言葉を使われるのに対して一種の違和感を持って、私は東の東洋の国から来たんだから、西側東側というような言葉を使わないでくれ、自由世界あるいは共産世界という言葉を使ってくれということをプロテストするんですけれども、なかなかヨーロッパの人たちはそれを聞いてくれないんですけれども、やはり現在の世界の対立というのは西、東という地理的な対立じゃなしに社会体制の違いから来ていると私は思いますので、自由民主主義諸国の一員として日本をはっきり位置づけるこの姿勢が大事だと思う。今後もこの態度を貫いていただきたい、これは希望でございます。  第一の質問は、アジア・太平洋地域との協力の問題を取り上げます。  日本は大平首相のとき以来環太平洋諸国との協力を提唱してまいりましたけれども、最近アメリカの方からもそれに呼応する声が上がってきたわけであります。去る一月、中曽根首相が欧州を訪問された折、環太平洋地域の協力を進めるに当たって排他的なものとしないということ、それから経済文化協力中心にしてやるということ、それから民間主導のもとに行う、あるいはASEAN諸国を表面に立てて行う、幾つかの原則を公表されました。私は大体において結構なことじゃないかというふうに思います。民社党も昨年十一月太平洋、オセアニア地域の諸国及びヨーロッパの若干の国を招きまして十数カ国で国際会議を開いたのですけれどもやはりその席なんかでも非常に問題になるのは、一つは文化的な多様性、それからもう一つは経済の発展段階が非常に違う。オセアニア諸国の要望なんか聞いておりましても、一方においては電気通信のかなり高度の技術のことを学びたいという要求があるかと思うと、他方ではもっとミクロ的な、今までカヌーで島と島を往復していたんだけれども、十トン足らずのモーターボート、そういうものの修理技術なんかをもっと手伝ってもらいたい、そういういわば十九世紀と二十一世紀が一緒に同居しているようなところで問題が複雑で、簡単に協力関係をつくるというのは非常に難しいということ。あるいはその参加国をどういうふうに区切るかというふうなことも、これも非常に難しい問題がある。そういうことを考えますので、余りリジッドな具体的な構想を規定しないで、現実にはASEANを中心にして現に行われているような民間の経済協力をバックアップしていく、そういう方式が現在のところでは私は一番無難な方法だろうと思っております。しかし、そのことは政府は何もしなくてもよろしい、民間に任せておけばそれでいいという問題ではないだろうと思う。政府はどのようにして今後この構想を具体化していく方針であるか、それをまず最初にお伺いしたいと思います。
  116. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 太平洋協力は太平洋地域の豊かな発展の可能性を引き出して、この地域の発展と、ひいては世界の平和と繁栄に寄与すべく経済、文化、技術等の分野での自由で開放的な協力を目指すものでありまして、我が国がこのために努力をしていく考えであります。その際に、今お話しのASEANのイニシアチブを尊重するということは大事なことである。これは日米間でもそういう話をしまして、日本とカナダとの間でもその話をしましたが、日本が余り表へ出て、あるいはアメリカが余り表へ出ていくというのは、これはやはりアジア等に警戒心を起こさせるということで、ASEANのイニシアチブを尊重するということが基本的に大事だと思います。当面は昨年のASEAN拡大外相会議で太平洋協力の問題について各国の意見を域内国六カ国、域外国六カ国、それぞれ述べ合ったわけでございまして、こうしたASEAN拡大外相会議の場みたいなところがこの問題を論議するには非常にいいんじゃないかという姿勢でありまして、これからも日本はこのASEAN拡大外相会議の場を活用して日本立場を述べたいと思っております。  それから、去年は拡大外相会議で人づくりについては太平洋協力の一環として人づくりをやろうじゃないかということについては全会一致で合意をされたわけで、そのための今関係各国協議、人づくり問題についての事務レベルでの協議を続けております。これにさらに積極的に取り組んでいくということでありますし、同時に、今お話しの民間活動、いろいろとアジア・太平洋の協力を推進するための民間活動が組織されておりますから、こうした民間活動を支援していくという形をとっていきたい、こういうふうに考えております。
  117. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私も大臣が言われましたとおり政府のなすべきこととして一番大事なことは、やはり人づくり計画、これを具体化していくことじゃないかというふうに思いますが、先般沖縄の国際センターをちょっと見てまいりましたけれども、あすこは四月から開くんですけれども、その前に既に所長さん以下熱心にやっておられました。そのときにちょっと聞いた話ですけれども、何かこの四月に関係各国の人を集めて、どういう方法で人づくりをやっていくか、そのプロジェクトをつくりたいということを言っておられましたけれども、そのプロジェクトはどういうふうに進行しておりますでしょうか。
  118. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 沖縄国際センターはただいま御指摘のとおり、今完成いたしまして、四月の十七日に開所式を行う予定で諸般の準備を進めております。  この沖縄国際センターは、先生御承知のとおり昭和五十六年の鈴木総理がASEANを御訪問の際に打ち出されました人づくり、ASEAN人づくりの呼びかけということで始まったものでございまして、各国の人づくりプロジェクトがそれぞれ進められておりまして、シンガポールはちょっとおくれておりますが、建物自体もほぼ各国とも完成を見、ないし完成に近づいているという状況でございます。この機会をとらえまして、ただいま大臣が言及いたしました昨年のジャカルタでの拡大ASEAN外相会議におきまして、この沖縄国際センター開所の機会にASEAN各国及び南太平洋の方々に集まっていただいて人づくりのシンポジウムを開こうということで、そのシンポジウムを四月の二十四、二十五の両日、東京で開催することを考えております。  このシンポジウム自体は、ASEAN及び南太平洋諸国の開発のための人づくり協力という基本テーマでございまして、三つに一応内部が分かれております。一つは中間管理職の人づくり協力、特に開発計画、貿易振興等が第一でございます。第二は情報通信産業のための人づくり協力、第三が国際的な大学のネットワークによる人づくり協力、この三つの一応サプテーマをつくりまして、それでシンポジウムを開こう、こういう構想で今考えております。
  119. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 沖縄で私、非常に感心したんですけれども、あそこの所長さん、できるだけ日本人との交流の機会をふやすようにしていきたいということを言っておられました。私は、コンピューターの技術を教えるとか、そういった単に技術を教えるだけではなしに、やはり十分日本を知ってもらう、そういう機会をつくっていく。これはやはりその運営をする人の心がけに非常にかかっていると思うんですけれども、その点十分配慮して今後もやっていただきたいということを希望しておきます。  次に、アジア、太平洋問題に関連しまして質問したいのですけれども、現在オセアニア地方というのは欧亜局の一部になっているわけですね。ユーロピアン・オセアニアン・ピューローというのですか、しかしこれはかつてオセアニア地方がヨーロッパの植民地時代であった、その時代においては確かにヨーロッパの一部として取り級わなきゃならなかったかと思うのですけれども、現在ではそういう名称で呼ぶということは、恐らく外務省の人が名刺を出される場合にそういった名刺を出されるのだろうと思うのだけれども、どうもアジア・太平洋地域の人たちに対して違和感を与えるのじゃないか、私はやはりオセアニア地方はアジア局の中に入れるのが至当ではないかというふうに考えるのですけれども大臣の御所見いかがでございますか。
  120. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もこういう質問が出そうだということで、あらかじめいろいろと事情をお聞きしておりましたから。というのは私自身もそろそろオーストラリアとかニュージーランドは、かつてはヨーロッパに非常に近い関係にあったわけですけれども、今ではアジアということを言っておりますし、そしてまた、アジア・太平洋協力というふうなこれから時代がずっと進んでいくわけですから、どうもそういう時代に対応するに当たって外務省として今のような機構の形でやっていいものかどうかという点については多少疑問を持っておりましたので、こういう質問が出そうだということでいろいろと各局の意見も聞いたわけですが、なかなかさまざまでありまして、例えばアジア局ということになるわけですね、オーストラリア、ニュージーランド、アジアですからこれは一番すっきりするかもしれませんけれども、しかし、今のアジア局というものが膨大な地域を担当しているということでありますし、そうすると二つに分けるといっても行政改革の問題がありますし、例えば北東アジア、南西アジアというふうなことで分けるとこれはやはり行革にひっかかってくるわけでありますし、なかなか難しい問題がありまして、欧亜局長なんかは今の欧亜局で十分やっていける、こういう考えでございまして、しかし、全体的に見てやはり外務省機構改革というのは時代に合っていかなければならぬと思いますから、そうでなければ本当の外交もできないわけですから、貴重な御意見といたしましてひとつ十分部内でもこれから将来の問題として検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
  121. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 欧亜局長さんは反対をされるのは当然だろうと思うのだけれども。確かにアジア局は今でも膨大な地域を抱えていて一人の局長では手が回りかねる、その事情はよくわかりますけれども、現在の行政改革のもとで非常にやりにくいんですけれども一つの局の中に審議官を二人置くとかいうふうなことでカバーすることは必ずしもできないことでもないんじゃないかというふうに思います。  なお、これは行政改革の問題に絡むんですけれども、どうも今までの行政改革を見ていますと、一律に各省一割削減であるとか、省どとに削減というふうなことをやっているんですけれども、私はやはり内閣全体として一割削減なら削減するのだ、その中でこれだけ対外関係が非常に重要になってきた時代においては対外関係の省は人員を一割ふやす、ほかのところは二削減らす、そのくらいのリーダーシップをとって政治家が行政改革に臨むのでなければ本当に時代に即応した改革はできないと思うんです。安倍外務大臣はニューリーダーとしていずれそのうちに総理大臣になられるだろうと思うのですけれども、そのときは政治家としてのリーダーシップをとって一律削減とかなんとかそういったなまぬるい方法じゃなしに、根本的に日本の行政機構を見直す、そういう方法でやっていただきたいと思います。これは返事は要りません。総理大臣になられたときに改めて質問いたします。  次は、先ほど来多くの同僚諸君が質問されました対米関係、経済摩擦の問題であります。  現在の日米の間の関係がガストン・シガー氏が大統領特使として来たことが象徴していますように、非常に重要な局面にかかっていることは私が繰り返すまでもないと思います。一九三〇年代の経験がある者としてあの時代、現代とはいろいろ客観情勢が違っておりましたけれども、やはり一種の経済摩擦、ダンピング問題とかなんとか、そういう経済摩擦、それが高じて経済ナショナリズム、それがさらにイデオロギー的なショービニズムと結びついてああいった悲劇をもたらしたわけですけれども、私はこのままにしておくとやはり日本が再び孤立化していく危険があるのではないかということを心配しております。  アメリカの要求を聞いていますと、日本事情に対する無理解から起こってきているところの無理な要求も確かにあります。しかし、もちろん日本の方にも理屈はあるわけですけれども、理屈を言い合っていけばこれはますますエスカレートしていくんじゃないかと思う。民社党の春日一幸顧問が、理屈は後から貨車に乗ってついてくるという名言を吐いたことがあるんですけれども、理屈はどのようにでも私はつくと思うんです。しかし、理屈を言っていたんではこの経済摩擦の問題は私は解決しないと思う。保護主義、保護貿易の時代になった場合に一番損をするのはどこの国か。それは私は日本だと思う。そういう理屈の問題じゃなしに損得の問題としてこの問題は考える必要があると思うんですけれども大臣のお考えいかがでございますか。
  122. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今おっしゃられたことに私も全く賛成です。確かに理屈は大いにあるわけで、我々としても、アメリカの最近の主張というものになかなか納得できがたいものがあります。特に議会のああした動きというものは全く感情的としか言えないように思うわけで、対日赤字の原因がすべて日本の市場の閉鎖性にあるというふうな極端な言い万でして、やはりもっとアメリカ自身もアメリカの国会議員もアメリカの今の経済の実態というものをもう少しまともに見てもらいたいものだと、実は思わぬわけでもありませんし、そういう点はむしろマスコミ等は非常に冷静な見方をしているように思うわけでありますが、しかし、現実問題として、これだけの対日赤字が、史上最高の対日赤字になっておるわけですから、それなりにまた気持ちとしてはわからぬわけではないわけで、ですから議会の動きは日本は幾ら言ったってだめだ、もう制裁措置をとる以外にないんだ、保護主義立法で抑える以外にないんだという動きにむしろなっておる。政府の方はまだ日本市場開放を求めて、そしてそれをてこにしてアメリカ議会を説得して自由貿易体制を何とか維持して日米関係を進めていきたいということですが、理屈は日本も大いにありますし、またアメリカもありますけれども、確かにお話のように、なかなかこれは理屈で言い合って解決するかというと解決ができないわけですから、日本としては現在の今問題になっておる四分野について、できるだけ日本としての努力はこれは傾注せざるを得ないと思うわけでありまして、結局、アメリカでこの保護立法が成立をする、これはすれすれで成立するというようなことならアメリカ大統領も拒否権ということになるでしょうけれども、今の九十二対ゼロというような形で成立するような事態にでもなりましたら、これはもう満場一致で可決された法律に対して、法律というよりも、私はアメリカ大統領の拒否権というのはそれなりに憲法上与えられたものであろうと思いますが、なかなか政治としてできにくい点もあるわけでしょうし、ですから、仮に拒否権を出したとしても三分の二の議決でひっくり返されますし、そんなことにでもなってしまうと、そして、仮に保護立法が一つ出れば次から次へ出ていくということになりますと、アメリカがそういうふうに市場を閉ざしてしまえば、これは恐らくECにもすぐ伝播するでしょうし、あるいはまた、日本としても黙っておれないということにもなりかねませんし、やはり開発途上国、その他の国々にも影響が出てくるでしょうし、そうなれば世界がブロック経済といいますか、保護主義的な経済にずうんと進んでいく。もうニューラウンドも何もないということになると、これは貿易でもって日本の繁栄というものを保っておる、そういう立場からすれば壊滅的なといいますか、それに近い打撃を受けるのは世界の中で一番日本が大きいと私も思います。  そうなれば、これはただ経済だけの問題ではなくて、非常に社会的な、政治的な不安にまでつながっていくのは御承知のように世界の歴史が証明しているわけですから、そんなことになったら私は大変だと思っておりますし、まさにそうした損得というふうな立場といいますか、自由貿易を守る、守らぬということとともに、日本自体の将来というものを考えるときに、これがまさに致命的な問題になり得るんじゃないか、こういうふうにも思いますので、なかなか国内的にも難しい情勢は控えてはおりますけれども日本という国は御承知のようにどうしてもコンセンサス主義で、大統領制度のような行き方でいけないわけですから、これはもう国民理解も求めながら自由貿易体制を守っていくにはそれだけのやはり何といいますか、犠牲を払わなきゃならないんだろうと思います。それはやはり国民理解も求め、また犠牲だけで置いておくわけにもいきません。  何か国内措置等も考えながらやはりこの問題を危機と認識して、自由貿易体制の危機だ、あるいはまた世界の経済とか、あるいは世界政治の、あるいはまた自由社会の一つの危機だというふうな認識でもってこれに対処する必要が出てくるんじゃないか、今はまだまだアメリカ議会ということで、法案が通っていないわけですけれども、そういう認識が必要だと思います。  今回、幸いにしてシグール特別補佐官が来まして中曽根総理その他の関係者と会いまして、一応の、アメリカが一番注目といいますか、一番関心を持っておりましたテレコムの分野につきましては、とにかく日本努力しました結果アメリカも満足すべき結果になったということで大統領もこれを評価しておりますから、これがどう出るか、議会で、きょうも恐らくオルマー商務次官が証言台に立っているようですけれども、それでもって議会空気がどういう状況になるか、これは我々としても注目して見ておるわけであります。
  123. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 電気通信機器の問題やなんかもだんだん解決に近づきつつあるということは大変喜ぶべきことでありますけれども、残念でならないのはアメリカの上院のああいう決議であるとか、あるいはシガー特使がわざわざ来て首相と面談するとか、いかにも圧力に屈して日本が譲歩をしたというふうな印象を与えることが私は大変残念であります。こういう印象を与えると外国の方では、日本は圧力を加えればすぐへっ込む国だというふうに考えますし、日本国民日本国民で何か圧力を加えられて譲歩せざるを得なかったというふうな屈辱感を感ずるんじゃないかと思う。私は、やはりこういう問題は先手、先手と解決していく必要があると思うんですけれども、そのために必要なことは官吏、政治家、国民の意識革命が必要じゃないかと私は思う。  衆議院の集中審議で、アメリカの二、三の新聞に載りました日本の官僚の発言のことはここでは繰り返しませんけれどもアメリカあたりでは日本のビューロクラテックレトリック、これが非関税障壁の最大のものだというふうなことを書いていたものもありました。私、そうたびたび外国に行くわけじゃないですけれども、一九五〇年代、六〇年代外国に行きますと、大使館なんかにいるほかの省庁から来ているアタッシェの人たち、その時代は何とかして外国の進んだ技術を日本に輸入する、そういうふうな考え方でおられたように思う。最近は日本は非常に進んでまいりましたのでそう積極的に進んだものを学ぶというんじゃないんですけれども、今度は逆に日本の持っている権益を、既得権をいかにして外国に対して守るか、そういう発想が私は強いように思う。私は日本がこれだけ経済大国になった現在においては、日本の一部の業界の利益を守るんではなしに、日本人が世界の平和と繁栄のために何が積極的に寄与できるか、そういった考え方に意識を変革する必要があると思う。これはお役人だけじゃない。お役人だけを責めても私は無理だと思う。国民自身の考え方がそういうふうに変わらなければこういった経済摩擦はいつまでも続くんじゃないかと思う。そのためには、これは外務省の力だけでは無理な仕事だということはわかりますけれども、やはり国内広報なんかを通じて国民の意識革命のために大いに努力していただきたいと思うんですけれども、いかがですか。
  124. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、日本としてもいろいろな面でやはり思い切った今日の国際社会における日本立場から改革といいますか、意識革命等も行わなきゃならぬ。これはひとり政治家でできる仕事じゃありませんが、今のような状況の中で国民の中にもそういう意識もおのずから出てきつつあるんじゃないか、こういうふうに思っておりますし、我々としても現在の事態はやはり場合によっては勇断をもってこれを乗り切っていくということが必要であろう、こういうふうに認識しております。
  125. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まだその問題いろいろあるんですけれども、時間がございませんので次の項目に移ります。  ソ連との外交関係ですけれども、先ほど来和田議員からも指摘がございましたグロムイコの訪日の問題に関連していろいろと質問がございました。ジュネーブの軍縮交渉の再開以来、冷えついていた世界の緊張に若干曙光が見えてきたように見えるのは非常に喜ぶべきことであると思います。また、ゴルバチョフが新しく書記長になったことによって、その人柄のことについて日本でも非常に手放しで褒めている人たちもいるようですけれども、私はあえてそれに水を差すわけではないのですけれども、一言言っておきたいことは、ソ連という国はああいった組織の国であって、しかも一定のイデオロギーに基づいた組織の国でありますので、書記長の人柄いかんによって国の外交政策が簡単に変わるような国では私はないと思う。余り楽観ムードに流されないで、やはり自由世界が団結していることが軍縮交渉を成功に導く最善の道であるというふうに私は考えております。  その基本認識の上に立って、一連の日ソ関係の問題に入りたいんですけれども、グロムイコ外相の訪日に関連があるかどうかわかりませんけれども外務省では日ソ間の文化協定を検討しておられるというふうな新聞報道を見ましたですけれども、それは事実でありますか。もしも事実であるとすれば、どういう点に重点を置いて文化協定を結ばれることを検討しておられるか、そのことをお伺いしたいと思います。
  126. 西山健彦

    政府委員(西山健彦君) 文化協定を検討しているのは事実でございます。  まあ私どもの基本的な考え方といたしましては、先生がよく御承知のとおり、日ソ間の相互理解というものが非常に偏っているあるいは不足している。一番今重要なことはできるだけソ連のさまざまな分野の人に日本のあるがままの姿を自分の目で見てもらいたい、そういう意味で交流をふやしてまいりたいという基本的な考えがございます。それがひいては日ソ間のよりよき関係に結果するのであろう、そういうふうに考えているわけでございます。したがいまして、それを促進するために、従来から取り決めベースでは文化交流ということが行われていたわけでございますけれども、それの幅をより広げたものを考えてまいりたい、かように考えているわけでございます。  しかしながら、この文化協定につきましては、その考え方自身は前から出ておりまして、何回かやりとりがあったわけでございますが、両方の国の体制が非常に違っておりますために決して容易ではない問題が残っております。したがって、目下鋭意検討中というのが現状でございます。
  127. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ただいま御指摘されたことを私も念頭に置いて質問したわけですけれども、つまり、ソ連のほうが日本に対して宣伝するのは非常に自由にできるわけです。  先般、筑波博の万博のソ連館を見てまいりましたけれども日本語のうまいソ連の人が、いかにソ連というのが平和国家であるかということを盛んに宣伝しておりました。私は日本の人がモスコーに行って同じようなことがやれるようになればこれは大したものだと、本当の文化交流ができると思うんですけれども、今までのところはとてもそういうことは望み得べくもないんじゃないかと思いますし、殊に印刷されたものをソ連の中で自由に頒布することは絶対に不可能じゃないかと思う。まあああいう国でありますから、いきなりオープンドアにしろと言っても、それは無理な話ですけれども、できるだけやはりソ連の一般民衆とまでいかなくても知識人の人たちに日本という国をあるがままに見てもらいたい。そのためには、やはり日本で出しているいろんな広報関係の書類なんかをある程度自由に配らしてもらいたい、そういうことを協定の中に織り込むかどうかは別にしまして、そういうことを念頭に置いて文化交流あるいは文化協定の問題に取り組んでいただきたいというふうに希望しておきます。  次に、先ほど中村議員からも質問がありましたけれども、ユネスコの問題、国際連合機関との協力、特にユネスコの問題、これについて質問いたします。  アメリカのユネスコ脱退理由というのは大体新聞に報じられているのでわかるんですが、それからイギリスの脱退理由もただいまお伺いいたしました。シンガポールの脱退の理由は一体どういうところにあるんですか。
  128. 山田中正

    政府委員(山田中正君) シンガポールは脱退通告をいたしました際に一切理由を述べておりません。したがいまして、公式に引用する書類がないわけでございますが、私どもシンガポールに事情を聞きまして承知いたしておりますところでは、シンガポールの不満と申しますのは主としてその分担金にある。過去十年の間にシンガポールの分担金が約五倍増額している。そしてシンガポールとしては財政的に優先度を置くとすれば、ユネスコというのはシンガポールから見て置く機関ではない、それで脱退通告をしたというふうに承知いたしております。
  129. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 アメリカあるいはイギリスそれぞれ脱退理由を述べている。ユネスコにいろいろ問題があるということを指摘しているんですけれども日本政府としてはユネスコのどこに問題点があるというふうにお考えですか。
  130. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 大きく分けますと、やはりアメリカが申しておりますこと、英国が申しておりますことなどと共通する点があるわけでございますが、第一点は、ユネスコが本来憲章に規定されております権限分野、これは非常に有益な国際機関でございますが、それをはみ出した活動が見られる。その例といたしましては権限をはみ出した政治的な問題、それから国連の他の機関と重複するような事業を行っておること、それから効果が期待できないような非常に抽象的な事業があるということ、これらの点についての事業の精選というのが第一点でございます。  それから第二点といたしましては、私どもが信奉いたしております民主主義の原則に対する挑戦のような動向が見られる。例えば報道の自由に対する制限でございますとか、人権の問題などで非常に国家主義的な取り扱いの議論、こういう議論が行われておるわけでございますが、こういう点についてはいかように議論をしても合意ができない部分であるという点でございます。  第三点といたしましては、ユネスコの予算の合理化、事務局運営の合理化、それから予算、人事等の運用の透明性を保つこと、この点でございます。
  131. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは新聞報道で見たのでどの程度リライアブルなものかわかりませんけれども新聞の報道によりますと、ユネスコの職員三千三百八十人のうちに、実際の現場で活動する専門家は四百三十四人にしかすぎない、一三%にしかすぎない、残りは本部勤務である。特に発展途上国なんかで実際に働いている人は非常に少ない。あるいはまた予算にしましても、現地で使われている事業費というのは二〇%ぐらいで、残りは本部の運営費に使われている。人件費が非常に多い。あるいは事務局長のムボウ氏の人事管理が無謀である、そういうふうなことを報じている新聞もあるんですけれども予算の過半数が人件費に使われるようになったら、これはどんな事業でも私はもうだめだと思うんです。そういう問題について外務省、どういうふうに把握しておられますか。もし数字があれば、この新聞報道が事実かどうか確認していただきたいと思います。
  132. 山田中正

    政府委員(山田中正君) まず最初に、職員の配置状況でございますが、全体の姿を御理解いただくのに一番よろしいのは、数字が整っております八三年末の姿かと思いますが、八三年末の現状でユネスコの通常予算で賄われております職員数は二千五百三十一名でございまして、そのうち二千百二十九名、八四%に当たりますが、それがパリの本部に勤務いたしております。七十二ございます地域事務所に配置されております職員が四百二名で一六%、事業の現場に配属されておる職員はゼロでございます。通常予算外の財源で賄われる職員、これはユネスコの事業に対しましてユネスコが執行母体となり国連の例えばUNDPでございますとか、それから各国政府、民間からの拠出金がございますが、こういうのを実施するための職員数をも入れた全体で申し上げますと、全体が三千三百十六名、そのうち本部職員が二千四百四十六名、七四%に該当いたします。地域事務所が四百七十九名、一四%に該当いたします。それから事業が行われております現場、フィールドが三百九十一名、一二%でございます。  それからユネスコの予算の内訳でございますが、現在の予算は一九八四年、八五年の二カ年予算になっておりますが、それで広い意味での人件費、それから事務局経費、それから事業費、この三つに分けて申し上げますと、先生おっしゃいましたように人件費が約七〇%、運営費が約一〇%、事業費が約二〇%でございます。ただ、この事業費で先ほど申し上げましたように通常予算以外の、ユネスコが主体になって行われる事業費がございます。通常予算での事業費は位間約四千万ドルでございますが、国連各国政府、民間からの拠出金によります事業費関係が約一億ドルに達します。  それから、御質問のございました人事関係の問題点でございますが、これは先生御指摘ございましたように、本部への職員の集中の問題があると思います。それから採用決定までに非常に遅滞があるということ。それから多数の空席がございまして、その空席を埋める形で非常勤職員が多用されております。それから国別の地理的配分が必ずしも公正に行われておらない、このような問題点がございます。
  133. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その非常勤の職員というのは、必ずしも国際公務員としての資格を持っているのではない人が使われているというふうに理解していいわけですか。
  134. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 予算で設けられておりますポストに正式の職員として勤務するのではなく、契約ベースで勤務する職員ということでございまして、ただ、その非常勤の職員が事務の遂行に当たっては一般的には専門家等の身分で国際公務員の待遇を与えられております。
  135. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ユネスコの文化とか教育の事業は他の経済協力何かの事業と同じようには考えられないかもしれないと思いますけれども、やはり今お伺いしたところでは人件費、しかも本部にたくさんの職員が集中している、これはぜひ改革しなくちゃならないと私は思います。現在の段階においては慌てて脱退するというふうなことは考えるべきじゃないと思いますけれども、この改革のためにはかなり腹を決めてやらないと、単に申し入れするだけでは私はなかなか片づかないと思います。どうしても片づかない場合には私は脱退するのもやむを得ないというふうに考えております。  なお、執行委員会なんかの意思決定の方法についても、すべてどの国でも一票を持っていて、それが過半数で決めるというふうなやり方が果たして現実に即したものかどうか、こういった問題もありますけれども、これはきょうは時間がございませんのでその問題はいずれ取り上げることにしまして、今後外務省は改革のために大いに努力していただきたい、そのことを希望して私の質問を終わります。
  136. 立木洋

    立木洋君 最近のアメリカの高官の発言で、日本外交上見逃せない問題点がちょっとありますので、この際改めて大臣考えをただしておきたいと思います。  その前に、日本政府は非核三原則を厳守するということを再々述べられておりますが、この目的日本政府としてはどういうふうに考えておられるのか、まず最初にもう一度確認のためにお答えいただきたいと思います。
  137. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、非核三原則は日本にとりましては国是とも合うべき国の基本的な方針であると思います。
  138. 立木洋

    立木洋君 事前協議というのはどういう目的のためにあるんでしょうか。
  139. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 委員御承知のように、日米安保条約のもとで日本に駐留する米軍は、我が国における施設区域の使用を認められているわけでございますけれども、米軍の一定の行動に関しましては、それが我が国の意思に反して行われることがないようにということを確保する、こういう見地から事前協議の制度にかからしめているわけでございます。つまり、この安保条約第六条の実施に関する交換公文の中に挙げられております三つのケースにつきましては、我が国の意思と米側の意思とが合致して初めて米側がそこに規定されているような事柄について行動をすることができる、そういうことを確保するという趣旨から、我が国と事前に協議をすることを義務づけているというのが趣旨であります。
  140. 立木洋

    立木洋君 大臣、そこで最近、アメリカのケリー国防次官補代理が発言しておりますけれどもアメリカのすべての戦闘用艦船には核を積載することが可能である、すべてのね。そういうふうに述べて、そして個々の艦船について核兵器が存在しているかどうか、積載されているかどうかということは明らかにしない、これは一切明らかにしないんだ、これはアメリカの政策である。そして、アメリカの艦船や飛行機がいわゆる他国に訪れる際に、同盟国にこの立場を認めてもらうというように我々は考えているんだ、こういうことが言われているわけですが、日本政府としては、アメリカ政府のこの立場を認めているのか認めていないのか、その点はどうでしょうか。
  141. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカのそうした核の存否については明らかにしない、これはアメリカのやはり核抑止力というものを効果的に行うためにはそういう方針をとっているということはそれなりに理解できるわけです。  それから、アメリカの艦船に核を積んでおる、これは核積載可能艦船というのは私はあると思います。その点についても、これはアメリカは核を抑止力に使っているわけですから、これまた当然のことだと思います。
  142. 立木洋

    立木洋君 アメリカのその立場を認めるということですね。
  143. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) はい。アメリカ考え方は理解しておると。
  144. 立木洋

    立木洋君 理解しておるというふうな表現のされ方をしましたけれども、私はそこが非常に重要だと思うんですね。つまり、アメリカの航空機あるいは船舶、個々の航空機や艦船について、核の存否を一切明らかにしないということを理解するということは、それに反する、つまりアメリカのそういう立場に反する態度を日本政府はとらないということなのか、場合によっては反する立場をとることもあるということなのか。いかがでしょうか。
  145. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) どういうことをおっしゃっているのかわかりませんが、これはとにかく日本との関係におきましては、アメリカが核の有無を世界に明らかにしないと言っても、日本との関係においては安保条約、事前協議というのがありますから、それでもって日本立場ははっきりできる、貫かれる、こういうふうに思っています。
  146. 立木洋

    立木洋君 そうすると、アメリカのこういう国防次官補代理が述べたり、あるいはさらにはウォルフォビッツ、これはアメリカの国務次官補ですが、日本でいえば局長クラスですね、この人も同盟国の首脳であろうとも非公開であろうとも一切核の公開、存在は明らかにしないというふうに述べているわけですね。これは事前協議の制度とどんな関係になるんでしょうか。
  147. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 立木委員の御指摘のウォルフォビッツ国務次官補の議会での発言というのは、三日十八日の下院で行われた発言を御念頭に置いてのことだろうと思いますが、これは正確にどういう発言をしたかということはまだ議会の議事録が出てきませんので私どもも把握するに至っておりません。ただ確かに、関係者の話によりますと、質問に対して報道されていたような趣旨の発言をウォルフォビッツ次官補がした。すなわち、アメリカの核の存在を肯定も否定もしないという政策を説明する文脈の中で、質問者が、それは内々にも知らせられないということかという質問を行ったのに対して、それは公の形でも内々の形でもできないんだという趣旨の答弁をウォルフォビッツ次官補がしたというふうに承知をいたしております。  ただ、これはあくまでもさっき大臣からも御答弁がありましたが、核の存在、特定の艦船、航空機について核の存在を否定も肯定もしないという、そういうアメリカの一般的な基本政策はどういうものかという説明の一環として行われたものであって、それが我が国の安保条約との関連での事前協議制度そのものをも念頭に置いてそういう発言をしたという趣旨では私どもは当然ないであろうというふうに理解をいたしております。
  148. 立木洋

    立木洋君 それは、栗山さんが言われるのは、念頭に置いたことでは当然ないだろうというのはあなたの判断ですよね。  そこで大臣、つまり、事前協議の制度というのは、この艦船に核がありますかありませんかということを、存否を明確にしないと事前協議の制度というのは成り立たないんじゃないですか。どうですか。
  149. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカが核を持って入ってくるというときには、これはもう事前協議の対象になるわけですから、日本アメリカとの厳然たる取り決めによって決まっておるわけですから、そのときはアメリカとして日本に事前協議をかけてこなきゃならぬ、これはもう条約上の義務があると思うんです。
  150. 立木洋

    立木洋君 つまり、存否を明らかにしなければ事前協議の制度は成り立たぬわけですね。どうですか。
  151. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もし持って入ってくるとすれば事前協議にかけなければ入ってこれないということです。
  152. 立木洋

    立木洋君 ちょっと大臣、ごまかさないでください。
  153. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、ごまかさないんだ。
  154. 立木洋

    立木洋君 明確にしておかぬといかぬから。  つまり、核の存否を明らかにしないと事前協議の制度というのは成り立たないんです。持ってきているのに、核があるかないかわからないけれども、さあ事前協議しましょうなんというようなことはあり得ないわけですから。つまり、この船には核は積んでいますよと、これから入りますけれども、どうです、事前協議しましょうということになるわけだから、事前協議する場合には核の存否を明らかにしないと事前協議の制度は成り立たない。間違いないですね。
  155. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 明らかにするというのはどういう意味かわかりませんが、核を持って入るときはとにかく日本政府に対してはこれはもう事前協議にかけなきゃならぬ、こういうことですよ。これは条約上の義務ですから。
  156. 立木洋

    立木洋君 どうもやはりごまかしている部分があるんですよね。  結局今までアメリカは一回も日本に対して事前協議の制度をかけてきたことはないですね。どうですか。
  157. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これはございません。
  158. 立木洋

    立木洋君 それで、再々日本政府が言われるのは事前協議がないから核が持ち込まれていないという根拠にされているわけですね。だけど、それ以前にアメリカとしては原則として核の存否を個々の艦船、航空機においては明らかにしないという政策がある。こういう政策があるからこそ、核の存否を明らかにして事前協議にかけるということをしないんじゃないですか。どうです、大臣
  159. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 一般的にアメリカはそういう原則を持っているわけですね。それはこれまでしばしば言っておる、アメリカの基本的な考え方だと、原則だと言っておるわけです。ただ、日米間におけるこの安保条約というものは、日米間で厳粛に結ばれた条約ですから、これは守らなきゃならぬわけです。その条約の中の事前協議というものは、アメリカの艦船が核を持って入ってくるときは事前協議にかけなきゃならぬと、これはまた日米間の条約上の義務として規定されておるわけですから、ここら辺は何ら矛盾していないと私は思います。
  160. 立木洋

    立木洋君 さっき栗山さんが言われたように、これは日本の事前協議の制度を念頭に置いて述べたものではないというあの国務次官補の発言をそういうふうに述べられた。だけど実際によく考えてみますと、同盟国の首相であろうとも首脳であろうとも、非公開であろうとも、いかなる意味でも核の存否は個々の場合に明らかにしないということは、これは栗山さんが言われたように、そういうことを念頭に置いていないというのはあなたの御判断であって、アメリカ政府がそういうふうに考えているとすると、これは日本の非核三原則にかかわる、つまり事前協議の制度にかかわる私は重大なやはり問題だろうと思うんです。言うならばこれは、日本の事前協議などということは問題外だと、核の存在を明らかにしないんだから。そんなことは問題外だというふうにもとれる、私は若干落として言いますけれども、そうとれる内容のものでもある。そうすると、私はこの際、アメリカに抗議をせよなどというようなことは言いませんけれども、その真意を確かめて、これは日本の場合には非核三原則があるということをきちっと考え、しかも日米安保条約に基づく事前協議の制度がある、これを犯すものではない、存否は必ず明らかにして事前協議制度にかけるという、そういう約束は必ず守る、そういうことを否定した発言ではないという真意を確かめることぐらいは少なくともする必要はあるんじゃないでしょうか。
  161. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) この問題は、委員十分御承知のとおりに、過去におきましても沖縄返還のとき、それからラロック発言の問題、それからライシャワー元駐日大使発言、そういうような問題が起きましたたびことに同じような問題提起が国会においても行われまして、そういうことも踏まえて政府としては非核三原則の立場というものを米国政府に伝え、そしてそれに対するアメリカ側の回答という形で、アメリカは安保条約及び関連取り決めの義務はこれまでも遵守をしてきたし今後も遵守をしていくつもりであるということを再三にわたって日本政府に対して確約をしてきておるという次第でございます。  安倍外務大臣になられましてからも、御記憶のように一昨年でございますか、エンタープライズの日本寄港問題、それからF16の三沢配備との関連で同じような問題提起がございまして、そういうことも踏まえて安倍大臣よりマンスフィールド大使に対して同じような日本政府立場というものをはっきり伝えられて、それに対してこれまでと同じようなアメリカ側の回答というものがマンスフィールド大使よりあった、こういうことでございますので、今さらと申しますか、このウォルフォビッツの議会でのそういう証言というものをとらえて改めてその真意を確認するというようなことは特に必要がないんではないかというふうに考えておる次第でございます。
  162. 立木洋

    立木洋君 栗山さんね、そのただしたと言いますけどもね、ただし方が違うんですよ。この船に核を積んでいないですか、積んでいますかということをただしたことがありますか、一回でも日本政府が。あるかないかだけで結構です。
  163. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) これは、従来から政府考え方は何度も申し上げておりますが、アメリカは当然事前協議制度のもとでのアメリカの義務として、そういう場合には日本に言ってくるということが建前でございますから、あたかもそれに違反をしてアメリカが黙って日本に核を持ち込んでくるというような前提に立って、アメリカにこの船は核を積んでますかというような意味での確認をする必要はないということ、これは従来から政府が申し上げておるところでございます。
  164. 立木洋

    立木洋君 まあ行き着くところは信頼関係ですよね。だけれど、藤山・マッカーサーの口頭了解として外務省が国会に提出した文書というのは、これは日本政府はこういうふうに行われるものと了解しているという性質の文書ですよね。今栗山さんが言われましたように、結局さっきの国務次官補が述べた発言というのも、これは日本のことを念頭に置いたものではないというふうに判断される、そういうふうに考えられるというのは日本側の了解するもの、判断するものであって、アメリカにきちっとただしてみないとやはりわからないんじゃないですか。これまでも、ライシャワーのときにしろラロックのときにしろこういう問題が起こったときには、これは日本のそういう非核三原則にかかわる重大な問題であり、事前協議制度にかかわる非常に大切な問題だから、いわゆる公人ではなく私人としての発言ではあるけれどもということで、アメリカ政府に対してただす、聞いてみるということすらあったわけですから、この問題というのはいわゆる同盟国であろうとも首脳であろうとも、一切核の存否を非公開でも明らかにしないと言ったら、これは事前協議は成り立たないことになるわけですから、確かめることぐらい、私は、せめて非核三原則を厳守するということを堂々と述べられるならば、それぐらいのことはすべきじゃないかと重ねて言いたいんですが、大臣、いかがですか。
  165. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもうやはり条約というお互いの信頼関係に基づいた確固たる約束がございますから、その条約をお互いに守っておる。守らなければこの条約というものの存在価値というものはなくなるわけですから、特に安保条約という国の安全保障の基本に関する条約については、両国がこれを厳として守るということが大前提でございますから、それをあらかじめ否定するようなそういう立場での日米間での話し合いは、する必要はないというふうに思います。
  166. 立木洋

    立木洋君 さっき日米経済摩擦の問題も出ましたけれども、私はまあ政府日米関係を重視するならば、そういう疑いを国民の間でもやはり一切残さない、そして堂々とこちらの考えていることは述べることは述べ、向こうの述べることをよくまた耳を傾けて、そして話し合いをして、なるほどそうかという形でやっていくことが必要だと、先ほど大臣言われたばっかりだと思うんです、経済摩擦の問題については。そうしたら、この問題についてニュージーランドでの問題に関連してこういうふうな国務次官補の発言があるんだから、少なくともその真意はどうなのか、このことでまさか我々こういったことはないと思うけれども、一体どうなのだということぐらいを聞けないといったら、こういう問題に国民が疑問を持ったときに、そういうことすら全然聞こうとしない、全く拒否的な態度をとるというのが日本外務省の姿勢かということになりかねないんですが、どうです。聞くぐらいは聞いてもいいんじゃないですか。
  167. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは一般的な形では国民の間にいろいろと疑問が起こる、国会でも大変問題になるというふうな場合は、一般的な形では今北米局長が言っているように日米間でお互いに確認し合うということは言っているわけですが、やってきたわけですが、これはしかし大前提として条約ですからね。日米の経済摩擦じゃないですよ、全然質が違いますから。条約というのは、お互いが条約を守らなきゃお互いの信頼関係というのは根底から崩れてくるわけですから、ですからそうした条約に基づく約束ごとですからね。
  168. 立木洋

    立木洋君 その条約というのは日米安保条約なんですよ。口頭了解事項というのは日本政府がそういうふうに了解するという一方的なものですよ。アメリカと確認した公文をちゃんと見せてくれと言っても今まで出したことないじゃないですか。だから、問題点はそういうところにあるんだからこそ、私はこの問題を問題にしているんです。  それで、この問題についてはもうこれまでの長い議論があるからここでやっていったらもうあと私は三分か四分しかないのでこれ以上議論ができませんから、一つだけ、もう一言だけ聞いておきたいのは、近くサミットがありますよね。それで、ニュージーランドで米積載艦つまり核を積載している可能艦船の寄港を拒否する、そういう態度をとっているわけですね。これはある意味で言えばアメリカの戦略にとって非常に大きな問題になっているというふうに今いろいろ新聞でも報道されている。それから、それだけではなくて、例えばギリシャなんかの場合どういうことになるかというと、あの地域における非核構想が進まないならばアメリカの核兵器を撤去してもらわなければならないというふうな問題が問題になっている。ベルギーの態度やあるいはオランダ政府の態度等々、御承知のとおりです。あるいはその他の問題についても、最近では西ドイツの自由民主党、与党ですね、これが国内に存在する核兵器の存否を明らかにせい、公表せいということまで自民党の大会で決議をしていますよね。いろいろこういう問題があるわけだ。  そういう問題の中で、私は今度のボン・サミットではこうした非核的な態度をとる個々の政府のあり方に対して圧力をかけたり、あるいはまたそれに対して内政干渉に及ぶような態度は、少なくとも日本政府はとるべきではない、日本としては非核三原則があるわけですから。こういう点は厳格に守っていただきたいということが第一点です。  それからもう一つは、これはあす続けて聞きますけれども、ちょっと先ほどのあれで尋ねておきたいのは、SDIの問題で専門家が来るという件についてですが、これは先ほど大臣が述べられたのは話を聞くんだというふうに言われた。アメリカ側の例えばジョージ・キーワースなんかの発言等、要請等見ますと、先ほどのまたワインバーガーの書簡等々の内容としては、日本との協力あるいは共同作業の分野でのいろいろな協議等々の問題が述べられている。だから、そういう具体的な協力や共同作業の分野に至る協議は全くない、今回の専門家が来るのは話を聞くにとどめるということなのか、そこらあたりの点をもうちょっとはっきり、この二点だけ大臣にお答えしておいていただきたいんです。
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) サミットの議題はまだ整理されておりませんで、特に政治議題についてはこれから中旬以降になると思います。したがって、その政治議題が決まってそれらの問題について論議も行われると思いますが、首脳の会談ですからその他いろいろの問題が出るわけで、しかしサミットの合意ということになりますとこれはサミットに参加した国々の完全なやはり意見の一致がなきゃならぬわけでございますし、そういう点では全くこの予測はできない。どういうことが今度のサミットで合意されるか、議題は議題として、それは予測はできない、そういうふうに思っております。  それからSDIについては、これは情報の提供を我々求めてアメリカもそれをオーケーしたわけだし、それから今回のワインバーガーさんの書簡について我々としても今検討を進めておるわけですが、とにかく日本としてもSDIというのはこれは長い構想でどういうものかやはり技術的にもしっかり知らなければ日本自身の態度も決められないわけですから、しっかりひとつこれは聞こう、こういうことです。
  170. 立木洋

    立木洋君 私は日本政府としてそれはどういうことが議題でサミットになるかわからないけれども、少なくともそういうふうな態度をとらないということだけは私は明確にしておきたいということを重ねて要望しておきたいと思います。  SDIの問題はあした質問します。
  171. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、四月十三日の話は伺いました。そこでボン・サミットに当たりましてアメリカ側はSDIについてのいわゆる支持表明といいますかね、これは政治声明と言いかえてもいいと思いますが、これをどうも待望しているようであります。もちろん各国間の反応に凹凸があっても、あるからこそまとめ上げたいという希望があるのではないかと言われてもいます。そこで外務大臣シュルツさんのお話の四月十三日のときにはアメリカサイドからむしろそれに関連した議題が、話が出るのではないでしょうか、いかがですか。
  172. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) SDIの問題が果たしてサミットの場で取り上げるかどうかということも、これを公式な議題とは別にしても、あるわけですが、これもそのときになってみないとわからないですね。今ここで取り上げられるだろうとか取り上げられないだろうとかいうことはそのときになってみないとわかりませんし、アメリカがそれに対してその中でどういう方向でこの問題に対処するか、これも見当がつきませんが、しかしSDIについてはなかなか今自由諸国間でもいろいろ問題の提起が行われておりますし、その辺のところは、そうした実態、実情というものをアメリカも十分承知の上で参加されるんじゃないか、こういうふうに思いますかね。
  173. 秦豊

    ○秦豊君 とにかくジュネーブを絶えずにらんでいるわけですね、アメリカは。やはり凹凸がある、反応にばらつきがあるからこそ何らかの最大公約数的なものを取りまとめたい、時期的にはアメリカのねらい目だと思うんですよ。もしそういうふうなことが提起された場合には外務大臣としてはどういうふうな対応を考えられますか。
  174. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全くのこれは仮定の問題ですしね、日本としましてはSDIについては今の首脳会談理解をしたということを述べておるわけですし、これ以上のことについてはSDIというもののもっと実態というものを現実的に具体的に日本も間かなけりゃこれについての態度の最終的な表明というのはできない、そういうふうに思いますね。
  175. 秦豊

    ○秦豊君 ならば仮に政治声明と言おうが何と言おうがタイトルは別として、アメリカがこれよりもっと積極的な、現状より積極的な各国間合意の最大公約数を仮に目指すとしても日本としては踏み込まないと理解してよろしいですか。
  176. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは今ここで全くサミットに対する予測ですから何とも言えないわけですし、アメリカがどういう姿勢でこれに乗り込まれるかそれもわかりません。しかしサミットの議題については大体整理していくわけですから、それはそれなりに議題整理の中で日本考え方も述べますけれど、いずれにしても私は、SDIというのは非常に長期的な構想であって、今ここで日本としてこれに対して理解以上のものを示すというにはほど遠い状況であろう、まだまだ十分聞かなきゃそういうことはできないと思いますね。
  177. 秦豊

    ○秦豊君 この項については大臣、最後ですがね、アメリカにはアメリカの願望が当然ある時期です。しかし議題のすり合わせの中でSDI問題が浮上しても大臣は在来の慎重な基調は崩されないと、これでいいですね。
  178. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは首脳会議ですから、首脳の判断というものですがね、私ももちろん外相会談等にも出席しますし、首脳会談にも参加するわけですが、首脳だけでやる場合ももちろんありますし、ただ日本としてこれは全体の問題ですから、政府全体の問題でもありますから、そういう中で理解というのが一応日本政府として打ち出した基本方針ですし、それを変えようとか、そういうふうな今ここに判断とか動きというのはないわけです。
  179. 秦豊

    ○秦豊君 そうしますと、ボン・サミットを控えた日米間の広範な協議一つ、議題の調整、すり合わせ。それから、全斗煥大統領がやがて訪米しますね。三十六日からではないかと思われますが、その全斗煥大統領の訪米をも織り込み、最近の米朝関係のさまざまなアプローチを含めた朝鮮問題は当然出ますか。
  180. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはサミットですか。
  181. 秦豊

    ○秦豊君 いえ、シュルツさんとの件です。
  182. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、いつも私はシュルツさんと話す場合は、シュルツさんの方からアジアの情勢等について意見を求められます。やはり朝鮮半島の問題については米国も非常に重要視しておりますし、日本からも日本の持っておる情報等を説明しておる、こういうことです。
  183. 秦豊

    ○秦豊君 今度、当委員会において法案がもし上がりますと、東北の瀋陽に総領事館が開設される。私は大変結構だと思う。ところが、我が国が手を打つ前に、アメリカは吉林省のちょっと南方の方の朝鮮との国境に近い、図們に既に領事館を開設して、そこをかなり活用しているようです。平壌へのパイプの一つとして。  そこで、北京には中江さんもいらっしゃいますし、我が国が瀋陽に総領事館を開設するというのは、今後の安倍外交の対平壌への展開という点ではかなり有機的に使い得る総領事館になるのではないかと私は思っていますが、どうですか。
  184. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは大変おもしろい分析だと思いますけれども、しかし、私は瀋陽に総領事館を開設するということは、これはもう前々からの外務省一つの念願でありましたし、長崎、それから福岡に総領事館が開設されるわけですから、やはり東北地区というのは今までの歴史的な関係もあったし、あるいは日本の孤児の問題もありますし、やはり総領事館を開設する、総領事館の活動というものが非常に日中両国の関係の中でも期待されると私は思います。
  185. 秦豊

    ○秦豊君 四月たしか十二日でしたかな、北朝鮮から労働新聞の代表団が来日予定になっています。それから、近く平壌を訪問される音楽家の團さんですね、たしか大臣が激励されたか接遇されたか。私はむしろ結構なことだと思っていますが、團さんが向こうのかなりなトップレベルにお会いになる予定も実はあるんです。そこで、外相はどんな意思を團さんを通じて平壌側に託されましたか。
  186. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 團さんが音楽家として平壌を訪問される、それで文化的な日本と北朝鮮との間の関係を進めていきたいということですから、それは大変結構なことです。民間関係で文化あるいは経済、人的交流、そういうものが進むことは、今やはり我々も南北の緊張緩和を期待しているし、また対話も始まったことであるし、大変それはいいことじゃないですか、御活躍を祈りますと、こういうことを申し上げたわけです。
  187. 秦豊

    ○秦豊君 全斗煥氏が訪米をいたしますと、ちょうど朝鮮半島を軸にした三者会談構想ですね、浮いたり沈んだりしていますけれども、一応緩やかに前の方に進みつつあると私は思いますね。そういう三者会談等についても何らかの米韓間の協議が行われるのではないか、時期的にこう思いますが、大臣の感触はいかがですか。
  188. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、むしろ南北対話というもの、南北会談というものの方が現在の状況の中では進む可能性はあるんじゃないかと見ておりますし、どうも今三者会談というものが動いているという感触は持っておりません。
  189. 秦豊

    ○秦豊君 総じての言い方ですけれども、やはり安倍外交、創造的外交を独自なキャッチフレーズとされて努力していらっしゃる。その努力の跡は私も一外務委員としてよくわかっています。しかし、これからのいわゆる安倍外交の中における対北朝鮮政策ですね、どういうふうに積み上げていらっしゃるのか。在来のところを円運動でくるくる回るんじゃなくて、少なくとも方向として縦軸に、前方に進むというふうな意味合いではどんな積み重ねを考えていらっしゃるんですか。
  190. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日本としての非常な期待ですが、やはり朝鮮半島の緊張が緩和をするということが大事ですし、そのためには、基本的にはやはり南北の対話というのが進む、そのための努力を、協力日本としてはしていかなきゃならぬ、そういう環境づくりですね、そういうものを日本がしなきゃならぬと思いますし、それから朝鮮半島の情勢、問題を考えるときに、やはり日本と中国の非常に安定した親密な関係というのが、これは私はある意味においては非常に有効に働く可能性があるんじゃないか。ですから、この辺は我々としても朝鮮半島の情勢考えるときに、やはり中国との話し合いとか関係、協力というものを密にしてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  191. 秦豊

    ○秦豊君 テーマが全く違いますけれども、今度大変安倍外務大臣苦労をされました例のイラン・イラク戦争、例の四項目の停戦案ですね。私は横から見ていまして、今までの安倍外交の積み重ねの中で、いわばこの段階ではスペードのエース的なカードを、一番ランクの高いカードを振ったわけでしょう。そうしますと、その反応がかたいとなりますと、今後イラン・イラク戦争の停戦に向けた日本外交の貢献というか、そういう観点で見てなおかつ何をなし得るか、あるいは目指すべきか、こういう点を含めてどう考えていらっしゃいますか。
  192. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) なかなか我々の努力のように情勢が移っていないことはこれはもう事実でありますし、大変残念に思っております。やはりイラン・イラク戦争がとにかく拡大じゃなくて縮小、そうして和平へと進むことを期待し、日本としてもそれに対してそれなりの役割努力をしてきました。しかし今の段階では、確かに日本の提案というものに対してイラクもかたい姿勢を持っております。去年私が国連総会でイラクの外務大臣に会ったときと多少違うように思いますが、それはまあ戦況というものもあるだろうと思います。時代の一年間の変化ですね、そういうものもあると思いますが、しかし私は、イランの特使が来ましたし、イラクの外務大臣が今度来ましたし、また日本とイランの関係、日本とイラクの関係はそういう中でますます密接なつながりを持ってきておりまして、実はイランもイラクも具体的にはなかなか今前進していないという面はありますが、日本に特に最近は大きく期待をかけておるということは事実であろうと思いますし、去年よりはさらにことしにかけての、こういう状況になればなるほどかけてきておるということでありまして、その辺のところを我々も踏まえながら、今ここですぐ具体的に成果が上がらないということでもってシュリンクすることなく、粘り強く腰を据えてこの問題はひとつ取り組んでいかなきゃならぬと、そういうふうに思いますし、イラクの外相も言っておりましたが、四年半、五年ですね、両国とも戦い、そして相当もう戦いの限界には近づいておるんじゃないかと。まあ時期というものがありますわね。そういう中で、日本のこれまで築いた努力といいますか、パイプというものは必ず私は生きてくる時期があるんじゃないか、こういうふうに思っております。
  193. 秦豊

    ○秦豊君 それから大臣、唐突のようでしょうけれども、今度の日航と在外邦人の救出状況などJALの対応を見ていまして、やはり財政難とかいうことはわかり切った話だが、そろそろ政府特別機というふうな構想は、私は唐突な構想じゃなくてむしろ地味な構想の一つとしてアフリカに物資を送るときでも医療チームを大災害地に送る場合でもすぐに役立つわけですから、管理運営の難点とか財政難ということに籍口しないで具体的にこういう構想と取り組まれたらいかがでしょうかね。
  194. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全く私もそう思いますね。ああいう緊急のときは政府が決定すればぱっと飛び立つような飛行機がないとやはりこうした国際的に非常に変動しているときは本当に有効な外交活動ができないと思いますね。ですからこれは何としても財政という壁が大きく立ちはだかっていますが、ひとつ努力をしてまいりたいと私は思っております。
  195. 秦豊

    ○秦豊君 こういうことは野党も反対しませんよ、具体的に推進していただきたい。  それから最後に日ソ問題ですけれども外務大臣にずばり申し上げれば、ああいうタイプの極めて能動的な総理と御一緒ではなかなかやはり安倍外交の展開、創造性の展開は難しいという面もあり、モスクワに行く前にはお二人の間に官邸と霞ケ関の間には何事もなかったと私は思いますけれども、しかしその中曽根さんによりますとまるで手放しなんですね。ゴルバチョフ氏と会った後、近代的で上品で活力に満ちていて、おまけに重量感と威厳があってと、これ以上の褒め言葉はないんじゃありませんか。それだけに私は褒めちぎっているという感じがかえって浮薄に感じられる。およそ多くの場合に一国のリーダーの風采とか雰囲気とかイメージとか表象的なものは何らその国の対外政策にはかかわっていかない。私は大体最近の日本の論壇にもゴルバチョフ幻想というのがあり過ぎると思う。第一足元が固まっていない一国のリーダーにどういう変化が期待できますか。また、そうした意味で十二年ぶりの中曽根・ゴルバチョフ会談といったって結局スペインのゴンザレス氏の後に追いやられて二時間も待った。新聞各社は二回も降版時間を変えねばならないくらい大使館の地下室でいろいろ協議されたようだが、こういうゴルバチョフ会談にかかわらず、ソ連の対日方針の基調には何らの変化も起こっていないと見るのが大臣むしろリアルじゃありませんか。どうでしょう。
  196. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ソ連のようなああいう超大国を相手に外交をやる場合はこれは日本政府の中にひずみがあったのではできませんから、やはり官邸と外務省が一体でやっていかなければならぬ、その点についてはちっとも御心配なことはありません。それから、ゴルバチョフ新体制については私もゴルバチョフさんは、確かに一つの明るさというものを与えたと思う。今までのアンドロポフ、チェルネンコ時代と違いまして、やはり相当米ソの交渉等に示した動きというものは非常に現実的な面もあると思いますが、おっしゃるように、果たして政権ができたばかりで固まっているかどうか、ソ連の場合は新しい政権ができたときは非常に保守的になっておるという歴史的な傾向もありますし、そしてソ連の体質自体が組織的で官僚的といいますか、そういう面が非常にあるわけですから、それを今ここで大きな変化を期待するというのは無理だし、それからまた対日関係も何か個人外交でもってこれを変えていくということも到底私はできないと思いますね。やはり少しずつ一歩一歩積み重ねていかなければならぬ。しかし今度の首脳会談で少なくともゴルバチョフ書記長がグロムイコさんの訪日について非常に肯定的な対応を示した、これは相談しましょうということを言ったということは最高首脳の発言だけに我々としてはそれなりの成果であったと思いますね。
  197. 秦豊

    ○秦豊君 先ほど和田さんもちょっと触れていらっしゃいましたけれども、毎日のモスクワ支局が打ってきた五段ぐらいの記事があるのですが、これはかなり長い取材をしているのですね。これを見ると、日ソ間については絶えず通訳の誤りとか、ブレジネフ時代からいろいろ問題があるけれども、これは幾つかのニュースソースに当たっているわけで、やはり相当日ソ間の見解、考え方には大きなへだたりがあり過ぎる。したがって、日本側の期待は勝手に期待してくだすって結構だが、アプローチも結構だが、年内訪日などはほとんどあり得ないという、かなり有力筋のコメントを伝えているわけで、私は官邸サイドがアナウンスしているように、グロムイコ外相の訪日は既定の事実だ、あとは時期の問題だ、だから文化協定を急げというふうなそんな空気じゃないと思いますが、大臣どうです。
  198. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 別に官邸の指示があってやっているわけじゃありません。ゴルバチョフさんのあれだけの発言でしたから、私は早速指示をしまして、それじゃグロムイコさんがいつ来るか相談しようということですから、相談をせっかく始めるということでありますが、これは確かに日ソの関係が基本的に変わっているわけじゃありません。しかし、グロムイコ氏も今度は来る番だということを私にも言っておるわけですし、それから対話というものはずっと積み重ねてきているわけですから、そしてゴルバチョフ書記長があれだけの発言をしたのですから、まあ私は相当可能性としてはある。ただ秋になるかどうかということについてはこれから詰めてみないと、お互いの外交日程もありますし、詰めてみないとわからぬところですね。
  199. 秦豊

    ○秦豊君 私は中ソ問題をちょっと最後に伺っておきたいんですが、三月下旬、たまたま北京に滞在しておりまして、さまざまなところかち得た感触では、中国政府は秋の国連総会の前に呉学謙外相を更迭する、よりソ連通というか、そういう人材を起用して、同時に日本、ユーゴスラビア、モスクワ駐在大使異動を行って、かなりこれから中長期でとらえた対ソ改善シフトというふうな動きを次第に顕在化しつつあるという感触も得たんですが、一方でローマからのタンユグ通信が伝えるところでは胡耀邦氏がウニタに対しまして中ソの首脳会談はもはや可能な時期である、こういうかなり大胆なコメントも出しているわけですが、最後に中ソ関係がいわゆるアフガンとか中ソ、中蒙国境とかカンボジアへの援助問題とか、三大障害ですね、これを一応三大障害は障害と認識しながら、なおかつ新たなハイレベルの改善を目指す機運にあると私は認識していますけれども大臣の認識はどんなところでしょうか。
  200. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も中ソ間の問題については非常に日本としても注目しておりますし、今回二階堂副総裁が中国に行かれて鄧小平主任を初め要人と会われるということで、私からも中ソ問題について中国の大きな認識の変化があったのか、ゴルバチョフ書記長も李鵬副首相にも会っていますし、いろいろ中ソ間ではアルヒポフ副首相も中国を訪問していますし、なかなか活発に動いている面もあるようですから、何か大きな変化とか認識に動きがあったのかというふうなことについて関心を持っているということでお話ししまして、二階堂副総裁もその点は随分話をされてきたようですが、それだけじゃありませんけれども、全体的に見ますと改善は確かに進んでいるというふうに思います。しかし、やはり中ソ間に横たわっている障害があるわけですから、それが取り除かれておるわけではありませんし、それを越えて大きな大転換を示すというふうな状況では私はまだない、こういうふうに認識しておりますし、情勢判断しております。
  201. 平井卓志

    委員長平井卓志君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時四十九分散会