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政府委員(中村守孝君) お答えいたします。
先生御
指摘のとおり、六月五日に
米国エネルギー省が将来の
ウラン濃縮技術としてレーザー法を選定し、今後は
遠心分離法の
開発をやめるということを発表されました。と同時に、現在の
ウラン濃縮事業につきまして現在あります三つの拡散工場、それからポーツマスに建設中の遠心分離工場と、こういうものがあるわけでございますが、これのうち拡散工場の一つを運転休止、それからポーツマスの遠心分離工場の建設
計画は中止と、こういう決定をされたわけでございます。
問題はこの背景でございますが、いろいろ推測される
意見もあるわけでございますが、
米国が公式に発表している範囲で申し上げますれば、まず
米国の
世界の
ウラン濃縮市場における位置でございますが、一九七四年ごろは一〇〇%
市場を独占しておったのが、最近ではヨーロッパ勢の進出によりましてこれが侵食されまして五〇%以下に低下しておるという実情があるわけでございます。このため現在
アメリカが持っております三つのガス拡散工場の
能力が
需要をオーバーしており、二〇〇〇年までの間はこの拡散工場で十分対応できると、三つのうち一つを休止させても対応できるというような
状況になっておるわけでございまして、そういたしますと、トータル的に考えますと、遠心分離工場を追加的に施設して、遠心分離工場の方が拡散工場よりも経済性はよろしいわけでございますが、追加的な支出をするよりも、むしろ現在ある拡散工場を効率的に運転させる、一つの工場を休止して二つの工場で集中的に効率的に運転するということの方が経済的であるということで当面の遠心分離工場の建設
計画を取りやめたものでございます。
それからレーザー法と
遠心分離法の比較につきましては、
先生御
指摘のように、一年余にわたりまして専門家の方々が検討いたしました結果の報告をもとにヘリントン長官が決断をされたわけでございます。この評価
委員会での決定の報告の中では、
遠心分離法につきまして
アメリカの
開発状況というものが文章上からだけ言いますと十分なものでなくて、まだ将来の経済性のいい遠心分離器というものについては、
研究開発用の遠心分離器でさえまだ設計バロメーターが決まっていない
段階だというような表現もございます。
しかし、一方レーザー法につきましても、完全にこれが
技術として成立するという見通しを立てているわけじゃございませんで、これがうまく実用まで持っていけるかどうかについては、さらに相当な規模で実証
研究をしていかなければいけないという趣旨の報告もございます。
ヘリントン長官の談話の中にもございますように、レーザー法は二十一世紀の
技術であるということで、
米国としては当面実用化の近い
遠心分離法につきましては、ガス拡散工場で十分今世紀中は賄えるということもあるし、それよりもむしろ長期的に
展望をして将来の
アメリカのウラン
市場における優位性を確保していくためには、レーザー法の方に若干の危険性はあるけれ
ども取り組んでいった方がよいと、こういう判断をされたわけでございます。
それから
アメリカにつきましては、このレーザー法は既に十年以上の
研究成果がございまして、かなり規模の大きい施設での
研究成果も出ておりまして、そういったデータをもとに評価されておるわけでございます。
ただ、このレーザー法の
技術というものは
遠心分離法以上に非常に機微な情報をたくさん持っておるわけでございますので、私
どものそういったデータについては
アクセスできない
状況にあるわけでございますが、
日本の現状を申し上げますと、レーザー法につきましては、原子力
研究所でようやくいわゆる原理実証が終わりまして工学的な規模での
実験をするということで、昨年度から原研で原子法の
研究を始めたと、これを五年ぐらいで一応のデータが得られるだろうということで、これを着実に進めるということでやっておるわけでございます。
それともう一つレーザー法では分子法というのがございますが、これについては原理実証の
実験をすべく本年から理研が始めたという
状況にございます。
そういう
意味で、私
どもが客観的に現
段階でレーザー法と
遠心分離法の比較をするということについての十分な資料は持ち合わせておりません。したがいまして、当面
米国の判断というものを具体的なデータに基づいて批判するといいますか、評価するということができないわけでございます。しかし、いずれにいたしましてもヘリントン長官が言っておられますように、レーザー法というのは今もうすぐ実用に供せられるという
技術ではもちろんございませんで、これを実用工場の
技術として採用するということを
米国として決定したわけではないと、二十一世紀の
技術としてこのレーザー法に
研究開発の努力を集中していくんだと、こういう決定をしたんだということでございます。
我が国では
先ほど申しましたようなレーザー法の
研究開発の
状況にあり、かつ
遠心分離法の
開発につきましては、
先生御承知のように、現在人形峠で実証プラントを建設中でございまして、次に続く商業プラントの建設に必要な実証的なデータがもう取得できる
段階になり、これをもって次の商業プラントができるわけでございますが、レーザー法というのはかなり先の方にこれから
研究開発をして実現まで持っていくには極めて長期間を要すると思います。国内に濃縮工場を持たない
我が国としては、この二十年来の
研究の
成果である
遠心分離法、これによる工場を現在下北に進めております核燃料サイクル基地に建設するということでございます。
ただ、
米国同様長期的な
展望といたしましては、レーザー法についての取り組みというものは必要かと思いますので、原子力
研究所での
研究な
ども促進してまいり、できるだけ早い機会に確実
なデータを、評価できるだけのデータを集めて長期的な
展望をしてまいりたいと、さように考えておる次第でございます。