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参考人(
浜野義光君) 御指名をいただきました
京セラ株式会社の
浜野でございます。
私のいただきましたテーマは、
企業における新
材料開発の現況ということでございました。ファイン
セラミック材料の
開発の現況につきまして、大変乏しい経験ではございますが、当社での経験を例に引きながら御説明を申し上げたいと思います。製品についての説明が非常に多うございますので、特に御許可をいただきまして、スライドの写真を使わしてただくということで、それを主にしてお話をしたいと思っております。
まず、簡単なテキストを用意しましたのですが、まずファイン
セラミックスでございますけれども、これは先ほどの
齋藤先生のお話にもしょっちゅう出てまいりましたのですが、非常に古い
セラミック材料の中から、特に戦後大変付加価値の高い、
性能のすぐれた一群の
材料が出てまいりました。それが、今ファイン
セラミックというふうに考えられておる一群の製品でございます。戦争中に出てきました航空機エンジンの点火栓に使われました高品位のアルミナ、これが一番
最初の例ではないかと思うのですけれども、それ以後に、フェライトですとか、あるいはチタン酸バリウムですとか、あるいは絶縁
材料としてのアルミナ、そういったものが大変たくさん生産されるようになりました。現在、アルミナは、トランジスタベースあるいはICのパッケージ、あるいはいろんな配線基板のベースとしまして、今大変大量に使われておりまして、ファイン
セラミックスの製品の中でも一番生産量の多いものでございます。
一九七〇年ごろになりまして、
酸化物以外のファイン
セラミックスが大変脚光を浴びてまいりました。その大きな誘因となりましたのは、
アメリカの政府が進めました
セラミックエンジンの
研究開発プロジェクトでございます。
アメリカ政府は、将来の燃料事情ということに非常に敏感でございまして、特に輸送用の
エネルギーを節約するためには、熱効率の高いエンジンが必要であると、そういったエンジンは
セラミックを使うことにおいて
開発できるということで、一九七一年ごろから、概算約一千億円ぐらいの
研究投資をいたしております。それが大きな契機になりまして、窒化珪素あるいは炭化珪素、そういった
酸化物でない一群の
セラミックスが出てまいりました。
二ページでございますけれども、従来の
セラミックスと申しますのは、これは天燃の鉱物を原料といたしまして、粘土と水をまぜた、そういった系が可塑性を持っております。粘土細工ができるような性質を持っておるわけですけれども、そういったことを利用して成形して、それを焼いてつくるといったものが古い
セラミックスでございます。
ところが、ファイン
セラミックスは、大変高純度の原料を使う、あるいは特に合成しました新しい鉱物を原料にするということでありまして、そういった原料を使い、その原料の粉末を調製するという段階、それから成形、焼成、
加工というふうに作業が進むわけでありますけれども、そのいずれの
工程にも大変進んだ新しい
技術を使用しておるというのが特徴かと思います。
次に、三ページに入らせていただきますけれども、ファイン
セラミックスというのは非常に広い範囲の
材料を含みますので、その特性を簡単に言いあらわすことは大変困難でございますけれども、代表的な性質としましては、まず第一に強い化学結合によりもたらされた
構造的な安定性ということが挙げられると思います。
金属あるいは
高分子材料と違いまして、
セラミックスの場合は原子と原子が非常に大きな力でもって結合いたしております。そのために、例えば結合
強度が
高温まで強いとか、あるいは
高温までかたいとか、あるいは融点が高いとか、そういうふうないろいろな特性が出てまいります。
セラミックエンジンは、そういった性質を利用して今
開発が行われておる格好な例でございます。
それから、電気的な性質あるいは熱的な性質は非常に多様でございます。絶縁
材料というのは
常識的でございますけれども、半導性のもの、あるいは
電気伝導性のものと、いろいろございます。それからフェライトのように強磁性のもの、あるいはチタン酸バリウムのように
強誘電性のもの、あるいはチタン酸、ジルコン酸鉛、そういう圧電性のものもありますけれども、非常に多様な電気的な性質あるいは熱的な性質を持ったものが生まれておるわけでございます。
セラミックスの場合非常に特徴的なのは、その性質は化学的な組成と同時に、結晶学的な
組織、それに大変敏感でございまして、そのために非常に多様な性質を生み出しやすいという特徴がありますけれども、反面また、なかなか性質をコントロールするのが困難である、そういうまた一面もございます。
それから、ファイン
セラミックスの特徴としてもう
一つ申し上げておきたいのは、精密
加工性ということでございます。従来の
セラミックス、例えば先ほどありました
茶道のお茶わんなんかは、焼いている途中に形が少し変形するとか、あるいは窯の中で焼いているうちに色が変わるとか、そういったことがたっとばれるような非常に特殊な
材料でございますけれども、ファイン
セラミックスとして使われます工業
材料ですと、非常に寸法精度が正確なことが要求されます。そのためにいろいろ工夫をいたしまして、精密な形状に
加工をいたしております。それからまた、
セラミックスだけの
加工でなくて、
金属と非常に細かな結合をさせる、非常に細かな
組織をつくり出しまして、それによって初めて機能する、そういったものもございます。
四ページ目に入らせていただきますけれども、ファイン
セラミックス製品の現状でございますけれども、現在の年産額は
日本国内で約六千億円であるというふうに見られております。
多い順番に書きましたのですけれども、一番生産量の多いのがICパッケージあるいは多層基板としてのアルミナでございます。それから高容量のコンデンサ、キャパシタとしてのチタン酸バリウム、それからICの一種に厚膜ICというのが
ございますけれども、それの基板あるいはICとしても非常に生産額が多うございます。それから、あとフェライト、それからPZT、そういうふうに生産が続いておりますけれども、これらはすべて先ほどの
齋藤先生のお話の中の
機能材料に属するものでございます。
機能材料の以外に、
構造材料あるいは
生体材料というのがございますわけですけれども、その分野についてはまだ生産量はわずかでございます。
それでは、スライドによって、あと説明をさせていただきます。(スライド映写)
これがICパッケージでございます。これはアルミナを主としてこういった金具、あるいはアルミナの中にこういう配線を印刷しました。そういったことで構成されております。
これがICパッケージの
構造でございますけれども、一番単純なものといいますか、一番典型的なものは三層の
セラミックから構成されております。これが一番上の層、それからここにありますのが二番目の層、それから一番下の三番目の層はこれだけ上に出ておるわけでありますけれども、この一番下の層が第三層、こういう三層から構成されております。
ICはここに乗りますんですが、ICがここに搭載されまして、こういうところに結線をいたします。それでこの結線が外部端子でありますところのこの
金属につながるわけでありますけれども、その接続が、こういうふうに
セラミックの上に印刷した、これは
タングステンを印刷するわけですけれども、
セラミックの上に印刷したこういう
金属の導体、これがここの結線、結合に集まっておるわけであります。最終的にふたをしまして、それでICを密閉して雰囲気からの腐食を防ぐといった、そういう機能を持っておる製品でございます。
実物はこれでございますが、これはいろいろの寸法のものがありますけれども、典型的には長さが約二十五ミリぐらいございます。ここにICが乗っかって、そのICの端子からパッケージの内側の端子に向けて金線でもってボンディングしている、そういう
状態がごらんいただけるかと思います。
それで、今申し上げましたように内部にこういったように結線がございまして、こういうところからさらにここにつながっておるというわけであります。
それから、これがまだ途中の段階でありまして、最後にふたをして完成いたします。
このパッケージを生産する
工程でありますけれども、三層の
セラミックからできておりますので、まず薄い
セラミックのシート、あるいはテープといいますけれども、そういったものをつくります。これはアルミナに適当なのりをまぜまして、実はこれは紙でありますけれども、このずっと上の方、約二十メートルほど先のところに、紙の上にそういったアルミナを一様の厚みに塗りつけるというそういう
工程がございます。そしてその後紙がどんどん運ばれていきまして、途中で塗りつけられたアルミナが乾燥いたします。ここまで来ますと完全に乾いておりまして、ここで実はずっと運ばれてきた紙とそれから
セラミックのシートとが分離しております。紙は下へ行っておるわけですけれども、
セラミックのテープはここから後は一人立ちして、ここでくるっと巻き取られておるということであります。
セラミックパッケージの場合は厚みが約〇・八ミリぐらいのこういったシート状の
セラミックをたくさんつくっております。
それに配線の必要なところにこういうふうな印刷をいたします。これは一個のパッケージは、これだけが一個分であります。
タングステンを使いましてそういうふうな印刷をしました。これが先ほどの三層の
構造の第二層目、真ん中の層でございます。
この写真では、二層目はここにわずかに露出しているだけでありますけれども、一番上の層、それから一番下の層、そういうふうに見えておりますけれども、これは三層を積み重ねた
状態でございます。
それを切り離しまして焼きまして、それから金具をこれは銀ろうづけをするわけですけれども、ろうづけをして、それからさらにこういった
タングステンの配線の露出した部分に金メッキをしまして、これで私どもの
工程の最後ということであります。
この後ユーザーのところで、ここにICが乗っかりまして、ICの端子からこういうところに結線がされる、それで密閉されるということであります。
こういったICパッケージは最近小型化するという大きな傾向があります。と同時に非常に複雑化いたしております。
例えばこれは標準型のICでございますけれども、これをこういう形にすることができます。この場合はここにあります外部端子のかわりにこの裏側に
金属の突起をつけまして、それを端子に使うということをいたします。その突起をこの上に乗せるわけです。ここに
金属の突起がありますけれども、この裏側の突起とこの突起とがハンダづけされて、これがここに結合するわけです。こういうふうにしますと、これと同じ機能を持った、これはチップキャリアと言いますけれども、それが二個乗っかる、そういったことになります。そうしますと同じ形でもってICが二倍たくさん入る。実装密度が二倍になったというふうに言いますけれども、そういうふうに限られた容積の中にICをたくさん詰め込もうという、そういう大きな傾向がございます。
そうしますと、その二個のICがそれぞれ機能することが必要なものですから、単に端子をその数だけつけるということではありませんで、両方のICがお互いに機能するような内部配線が必要になってまいります。
これはこれだけが一個分の配線でありますけれども、こういった配線を何層か積み重ねまして、ある内部配線を持ったそういうパッケージを生産いたします。
これはやはり同じく内部配線の別の層の例です。こういったものが数層積み重ねられます。
これは
二つのICが乗っかるパッケージ、それからあるいはこれは六個のICが乗っかる、これはもうパッケージでなくてマザーボードと言うのですけれども、そういう製品でございます。
こういうふうに限られた容積の中にできるだけたくさんのICを入れよう、こういう
方向と、同時に、ICはそれ自体非常に高
性能化していますのでそれに必要なこういう端子を十分つくっていこうという、そういう大きな流れがございます。
これはそういったものの
一つの例でありますけれども、十六個の大型のICが搭載されるマザーボードでございます。これは実際の寸法は一辺の長さが約十センチぐらいのものでございます。
これは十六個のICを乗せて、それをお互いに機能させるために必要な内部配線をやっているのを一部見えるような
構造でスライスしてございますけれども、配線は、一番上の層がここに出ておりますけれども、これが一層としますと、二、三、四、五、六、七、八、九というふうに見えております。それぞれ違った配線がこういうふうに複雑に絡み合って内部配線をこしらえておる。それが最近のかなり進んだパッケージの形でございます。
さらにより複雑なIC基板をつくろうという流れとしまして、今申し上げたテープ積層法以外に、厚膜を使った多層法あるいは薄膜を使った多層法、そういった
技術が
開発されております。
今申し上げましたのは、これはアルミナのテープを使いましてそれに
タングステンを印刷する。それで配線ピッチでありますけれども、これは百七十ミクロンですから、一番たくさん線を引きまして一ミリに線を六本引くという、そういうのがこの場合の標準的なデザインでございます。
それに対しましてICそれ
自身をつくるような薄膜の
技術を使いますとそれをさらに細かくすることが可能でございます。この百七十ミクロンのピッチが例えば薄膜を使えば八十ミクロンピッチ
ぐらいには簡単になります。ICそれ自体のプロセスから言いますともっとはるかに小さくなるんですけれども、パッケージの場合はなかなかそうもいきませんで、現在手がけておりますのは、これがちょうど二分の一ぐらいのピッチを持った、そういったものを
開発をしております。
このテープ積層法とそれから薄膜多層法と組み合わせることによってさらに高い機能を持った
セラミック多層基板と申します、そういったものを
開発するということを今大変一生懸命でやっております。
これが
一つの例でございますけれども、先ほど申し上げましたテープ積層法の基板ですとこういう形を持っておりますのですが、これをこの同じパターンを薄膜
技術でやりますというと例えばこういうものができます。
これは電気を導く導体としましてはクロムと銅、それから
誘電体といいますか絶縁膜としましてはポリアミドを使いますわけですけれども、そういった新しい
材料を使って薄膜法を使うことによって、テープ法に比べると半分の長さの製品ができ上がるということでございます。
こういうふうにICを一定の容積の中にたくさん入れるということは、これは単に装置が小型化するということだけではありませんで、こういうふうに装置が小型化するということは、その装置の中に含まれておる電気配線の長さが短くなるということです。で、大型の
コンピューターですとか、あるいは通信機ですとか大変高
性能のものになりますというと、どうしてもその内部を流れる電気信号がどれぐらいおくれるかという、そういった遅延時間が問題になりますんですけれども、こういうふうに小型化することによって、必然的に遅延時間が短くなる。それからさらに、ここで使います
材料を吟味しますというと、
材料に固有な電気信号のおくれといいますか、そういったものをまた少なくすることができまして、また小さいだけでなくて非常に
性能のすぐれた高速の
コンピューターができるという、そういうことになります。
少し細かくてお目に見にくいかと思いますけれども、これは実は京セラが昭和三十四年に設立しましたわけですけれども、それから現在に至るまでの製品の
開発の
状況を示しております。一番
最初に会社をつくりましたときに生産しましたのは、非常に簡単な碍子でございました。それをベースにしまして、いろいろな
技術をつけ加えて、ただいま申し上げたようなICパッケージ、それから多層プリント基板、それから薄膜
技術も使いましたような高密度の
セラミックモジュールと呼んでおりますけれども、そういったものの
開発、そういったふうにまず会社のメーンの流れがございます。で、そのほかに、これはアルミナが成分、特殊成分でございますけれども、そのアルミナを使いながら、もう少し複雑な形のものをつくり上げる。それでいろいろな機械の部品でございますね。まず、例えば
電子計算機に使われるいろいろな
セラミックのガイドですとか、あるいは化学ポンプのバルブ、あるいはポンプ取りつけ部品ですとか、そういったふうに次第に製品の範囲を広げてまいりました。それからあるいは、この辺に行きまして、圧電
材料あるいは誘電
材料を取り入れまして、そういったコンデンサーですとか、あるいは電波のフィルターですとか、そういったものを生産を始めました。それからあるいは、もっと最近ですと、これは人工宝石でございますけれども、エメラルドですとか、あるいはルビーですとか、そういったものの一連の人工宝石も手がける。そういったことで、次第に
材料の種類をふやし、あるいはいろんな
加工技術の種類をふやしまして、かなり広い製品分野をつくり上げているというのが現状でございます。
現在の製品の例につきましては、お手元に見ていただいておりますけれども、会社案内に概要が載っております。
これは一番
最初にやりました碍子でございますけれども、
最初はこういったものを正確な寸法につくり上げるというのが、二十七年前になりますけれども、その時分の努力の
中心でございます。
セラミックスというのは、従来から非常に、先ほども申し上げたように、形がふぞろいであるというのが
一つの大きな特徴でありましたんですけれども、こういったかなり複雑な形のものなんですけれども、注意深くつくることによって、その寸法精度がよくなる。それで、工業
材料としての適性がだんだんつけ加えられていったわけであります。
それから、これは
電子計算機に使われております
セラミックの例でありますけれども、これは磁気メモリーに使われている部分、あるいはこれはテープ類のガイドをつくる、そういったふうに次第に複雑な形のものもできるようになりました。
それから、これはケミカルポンプのバルブでありますけれども、アルミナのポールを使ったボールバルブです。
それから、これは紙をつくる製紙機械に使われております
セラミックの板でありますけれども、これは長さが約六十センチぐらいのまだそんなに大きなものでもありませんけれども、私どもの生産しているかなり複雑なものの例であります。
そういうようにして、次第に複雑な形のものをつくるようになって、さらにまた先ほどの
アメリカの
研究成果もありまして、窒化珪素ですとか炭化珪素ですとか、そういったふうな新しい
材料がいろいろ社内でもできるようになりまして、それでつくってみましたのがこの
セラミックエンジンでございます。この
セラミックエンジンは、三年前のお正月にNHKのテレビで放映になりましたので、
先生方あるいはごらんになっていらっしゃるかとも思いますけれども、これは、これがピストンでありますけれども、ピストン、それからシリンダーはここに出ておりますが、そういった主要部分をこれはすべて
セラミックでつくっております。それで車に搭載しまして、すべて
セラミックでつくって、全く冷却してないエンジンといったことで、
最初に走らせたのがこのモデルでございます。
これは実際のエンジンの概略でございますけれども、三気筒のエンジンでありました。三気筒が独立した、こういった非常に単純な形をしております。この中にピストンが入りますわけですけれども、これがそのピストンであります。これは、このピストンは、もともとのこの三気筒エンジンは
金属製のモデルがありますわけですけれども、そのモデルと全く同じピストンをつくりまして、それを使ったということであります。
それからそれ以来約三年たちますわけですけれども、その間に私どもとしましては、もっと
性能の高い
セラミックエンジンをつくろうといったことでいろいろ努力をしまして、かなり小型化することに成功いたしております。先ほどのは寸法を申し上げるのを忘れておりますけれども、先ほどのは三気筒で二・八リットルのエンジンです。ですから一気筒当たり約九百㏄ということでありますけれども、最近つくりましたものはこれ四気筒で一・二リットル、ですから一気筒当たり三百㏄のエンジンであります。これが最近のエンジンのピストンの絵でございます。これがシリンダーです。シリンダーも非常に単純な形にしまして、将来生産する場合にコストが
余り高くならないようにということをいろいろ配慮すると同時に、こういう単純化された形のものはやはり耐久性も高うございますので、こういった形で比較的低いコストで耐久性の高いものをつくっていこうといったことで、今こういったエンジンの
開発を進めておる次第でございます。
これは四気筒エンジンの概略の
構造なんですけれども、ピストンがここと、それからここに見えております。これはちょうど航空機エンジン、昔のプロペラのエンジンは、例えば十個とか十二個とかというエンジンがちょうど花びらを並べたようにシリンダーが配置されておる、そういったエンジンでございました。真ん中にクランクシャフトがありまして、それを多くのたくさんのシリンダーでもって回転させるということでありますけれども、この私ども試作しましたのは、こういっ
た二気筒を向かい合わせにしまして、それを二列並べで水平に四気筒並べたというそういったエンジンであります。
これがその外観でありますけれども、シリンダーが一、二、それからここに三、四というふうに見えております。こういうふうに水平に四つ向かい合わせに並べたそういったエンジンでございます。これが千二百㏄、一気筒当たり三百㏄でありますけれども、これで約四十五馬力出る。そういった非常に小型の直噴式のディーゼルエンジンでございます。そういったことで、
実験的なエンジンの製作あるいは運転あるいは耐久性試験、そういったことを重ねておりますと同時に、こういったエンジンに
セラミックが使われるという、そういった新しいニュースといいますか、そういう新しい特性を利用しまして製品を
開発しようといったことでいろいろやっておりますのがこの例であります。
ここにありますのは小型のディーゼルエンジンでありますけれども、小型のディーゼルエンジンの主燃焼室の上にあります副室ですね、その副室を構成しますスペースチャンバー、渦流室というのがございますけれども、その渦流室を
セラミックでつくりました。それから小型のディーゼルエンジンにはグロープラグというものが使われております。これはちょうどガソリンエンジンの点火線と同じような機能でありまして、
最初にこのグロープラグに電流が流されまして、このグロープラグの先端が真っ赤に発熱いたします。そこにここから燃料を吹きつけて、ここで燃焼を始める。ここに燃焼が始まりまして、その燃焼
ガスがこちらへ行きまして、さらにまたここにあります空気と燃えてこのピストンを押し下げるといったことで小型のディーゼルエンジンが動き出しますわけですけれども、ここに、このグロープラグに
セラミックを使いまして、非常に着火性の速い、つまり先端の
温度が非常に遠く上がりやすい、そういったグロープラグを
開発いたしました。これは現在三社の自動車メーカーの小型のディーゼル乗用車に使用されております。
これが
セラミックでつくりましたグロープラグでございます。この部分が
セラミックです。この中に
タングステン線が埋め込まれておりまして、それに大きな電流を流して、この先端を早く加熱するといった、そういった
構造のものでございます。
これが渦流室です。
それからその次の
研究対象としまして今熱心に進めておりますのは、これはターボ過給機のローターでございます。ターボ過給機は最近よく乗用車に使われるようになりましたのですけれども、これは自動車の排気
ガスを利用しましてこのタービンを回します。そのタービンを回しまして、その力でもって空気を吸い込んで、その空気をエンジン室に押し込むことによってエンジンの
出力を非常に短い時間に高めてやると、そういった機能を持つものでありますけれども、ここにその
セラミックでつくりました羽根を使いますというと、この
セラミックは耐熱合金に比べて非常に比重が軽うございます。耐熱合金の約四〇%の比重といいますのが今一般的でありますけれども、したがいまして、排気
ガスの量が
余り多くない間から
セラミックのローターは回転を始めます。そうしますと、コンプレッサーも同時に動きまして空気を吸い込むと。空気を吸い込むことによってエンジンの
出力が上がって、さらにこれがどんどん回るといったことで、従来の
金属を使ったターボ過給機に比べますというと、約二分の一ぐらいの時間でどんどん回り出すようになる。そういったことで非常に応答性のいいといいますか、ききのいいターボ過給機が
セラミックを使うことによってできます。これも現在我が国を初め
アメリカあるいは
ヨーロッパのメーカーとの
開発競争でございますけれども、近いうちにこれが商品化されましてアナウンスされることになるかと思っております。
これがターボ過給機に使われます
セラミックのローター、羽根でございます。
それからそういったことで
セラミックのエンジンというのは非常に現在おもしろい対象でありまして、大変大勢の人がかかわっておる
研究対象でありますけれども、
セラミックエンジンの中でも特に
ガスタービンエンジンについての
アメリカ政府の
研究投資が非常に多うございます。これは一九八一年から
一つの大きなプロジェクトが動き出しまして、初めてすべて
セラミックでつくりました
ガスタービンが従来の
金属を使いましたエンジンに比べて約三百度Cぐらい高い
温度で動くと、そういったことが実証された
最初のモデルがこれでございます。これは
アメリカの軍の費用でもってフォード自動車が
開発したオール
セラミックの
ガスタービンでありますけれども、これが燃焼室です。燃焼室で
高温の
ガスをつくりまして、これをこちらへ導いてまいります。ここに動翼、羽根がありますけれども、
ガスの流れでもってこの羽根を回転させます。それから動翼は実は二段ございまして、この二段が回りましてこの軸を回すと。この軸が回りますというと、ここにコンプレッサーがありますが、このコンプレッサーが回りまして空気を吸い込みます。で、吸い込まれた空気はここの熱交換器がありますのですが、この熱交換器でもってここから出ていった排
ガスの
温度をここでもらいまして温められまして、ここの燃焼室へ入っていくと、こういうことです。大きな眼目は、ここの燃焼室の
温度を千三百七十度Cにするということであります。で、従来のこういったもの、
金属性の
ガスタービンですと、この
温度はたかだか千度Cあるいは相当工夫しまして
金属部分を冷却しまして千百度Cぐらいになるというようなのが平均的なレベルでありますけれども、それをこの
セラミックを使うことによって約三百度C高めることができたわけです。その結果、これはエンジンの熱効率が約三〇%高くなっておるはずであるというふうに言われておりますけれども、この辺の
セラミックの部品をつくるのに大変な苦労をいたしまして、とにかくこういったモデルをつくり上げて、
余り長い時間は置かなかったんですけれども、とにかくある期間動かして、そういった形の
セラミックエンジンが成り立つものであるといったことを、まずそのフォード自動車が実証したわけであります。
これがそのときに使われました
セラミックのローターであります。
その結果そのプロジェクトがうまくいきましたものですから、今度は
アメリカ政府はまた新しく大きなプロジェクトを起こしまして、これはゼネラル・モーターズが担当しておるプロジェクトでありますけれども、これはもう少し全体の
構造が実は簡単になっております。実際に近いうちに量産できるような、そういったことをまず前提としましてデザインをし、その
研究開発を進めておるのがこのモデルであります。これはここ二、三年のうちにプロジェクトが終わりまして完成するわけなんですけれども、この後にありますフォード自動車のプロジェクトとあわせまして年間五十万台ぐらいの
ガスタービンをつくりまして、これを乗用車に搭載して全米を走り回らそうという、そういう計画であります。当初の計画ですと、一九九〇年ごろにそういう五十万台の生産をするということを言っておったわけでありますけれども、予算の削減とかありまして少しおくれておるようでありますけれども、多分しかしこれから十年間ぐらいの間にはこういったものの量産が成立するのではないかと、そういうふうな見通しであります。
これは同じプロジェクトでフォードが担当しております別のモデルであります。これも実際に量産をするといったことが前提で
開発されておるものであります。これはこの前のゼネラル・モーターズのプロジェクトと競争といったことで進んでおるプロジェクトであります。
これは私どもがつくっておりますけれども、今の
セラミックガスタービンに使われております
セラミック製のローターであります。
それから、これは今のローターがちょうどここに入りますわけですけれども、これはシュラウド
と呼んでおりますけれども、これはやはり同じプロジェクトで使われておる
セラミックのシュラウドであります。
以上でスライドを終わります。
わずかの例でございますけれども、最近のファイン
セラミックスの
開発状況と申しますか、いろいろ努力しております対象について簡単に御説明申し上げましたわけですけれども、五ページに入らしていただきます。
現在のところファイン
セラミックスのマーケットは
機能材料、特に
電子機能の分野に非常に限定されております。しかし、例えば
電子計算機あるいは通信機、そういったものにおきましては、
セラミックの部品というのはもう欠くことのできない非常に重要な部品となっております。この傾向はさらに続きまして、これから十年後には
日本の生産が約二兆円になるだろうというふうなことがここに書かれております。
それともう
一つ並びます大きな製品群はやはり
セラミックの
構造材料でありまして、今申し上げましたようなオール
セラミックの
ガスタービン、そういったものができますというと、これは
アメリカの政府機関の計算でありますけれども、
アメリカがもしこの
セラミックガスタービンの生産に成功すると、その場合と、あるいはもう
一つは、
アメリカが失敗をしまして例えば
日本からこういった
セラミックガスタービンを輸入すると、そういった場合と比較しますというと、
アメリカのGNPは三十九ミリオンドル、ですから、
日本円に換算しまして約十兆円になりますけれども、それぐらいのGNPの差が出てくるのであると。そういったことで、
アメリカの
開発投資が一千億円というのは多少推測が入っておりますのですけれども、そういったことでいろいろ
開発テーマを並べまして、
アメリカの政府は非常に熱心にこの
セラミックエンジンの
開発を推進いたしております。
我が国のことを考えますというと、我が国の
エネルギー事情は当然
アメリカよりか厳しいわけですから、これは乗用車に限らず、もっと発電用のエンジンなんかもそういったことが当然考慮の対象になるのではないかというふうに考えます。
そのほか、
セラミックの将来の展望としましては、例えば原子力
関係に使われるであろうという
用途がいろいろ指摘されておりますけれども、現在のところそういった分野での
研究開発は必ずしも順調には動いていないのではないかと、そういうふうな懸念がございます。特に原子力
関係ですと、
セラミックの特徴が生かせる分野がいろいろありますんですけれども、その
開発の非常な重要性ということに比べますと、どうも
研究の進行
状態がもうひとつ芳しくないんではないか、そういうふうな気がいたします。
あれやこれやいろいろありますんですけれども、将来
セラミックの
構造材料というものは
機能材料と並んで非常に大きな生産を占めるものであろう、そういうことを私ども大いに期待しておるんでありますけれども、そのためには、かなり未知の
技術もたくさんありまして、そのための
組織的な
研究開発が必要である、そういうふうに考えます。
以上で終わります。(拍手)