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1985-05-24 第102回国会 参議院 科学技術特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月二十四日(金曜日)    午後一時十三分開会     ─────────────    委員異動  四月十九日     辞任         補欠選任      菅野 久光君     八百板 正君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         馬場  富君     理 事                 古賀雷四郎君                 林  寛子君                 稲村 稔夫君                 塩出 啓典君     委 員                 岡部 三郎君                 長田 裕二君                 後藤 正夫君                 志村 哲良君                 成相 善十君                 福田 宏一君                 藤井 孝男君                 八百板 正君                 伏見 康治君                 佐藤 昭夫君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      宇賀 道郎君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    参考人        長岡技術科学大        学長       齋藤 進六君        京セラ株式会社        常務取締役・総        合研究所長    浜野 義光君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (新素材研究開発に関する件)     ─────────────
  2. 馬場富

    委員長馬場富君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月十九日、菅野久光君が委員を辞任され、その補欠として八百板正君が選任されました。     ─────────────
  3. 馬場富

    委員長馬場富君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のため、本日の委員会に、長岡技術科学大学長齋藤進六君及び京セラ株式会社常務取締役総合研究所長浜野義光君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 馬場富

    委員長馬場富君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 馬場富

    委員長馬場富君) 科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、新素材研究開発に関する件を議題といたします。  本日は、本件について参考人方々から御意見を承ることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々、御苦労さまでございます。齋藤参考人浜野参考人には、御多忙のところ、貴重な時間をお割きくださいまして、当委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  当委員会は、科学技術振興対策樹立に関する調査を進めているところでございますが、本日は新素材研究開発に関する件について忌憚のない御意見を賜りまして、本調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  ありがとうございました。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  お一人四十分程度御意見をお述べいただいた後で、速記を中止いたしまして懇談に入りたいと存じます。懇談に入りましたならば、参考人がお述べになりましたことを中心委員皆さんは自由に質疑をしていただき、それに対しまして参考人からお答えをいただくというようなふうに取り運びたいと存じます。なお、その際、便宜質問されます方は、委員長から指名させていただきますので、挙手をお願いいたします。  これより参考人の方から御意見を賜りたいと思います。  まず、齋藤参考人お願いをいたします。
  6. 齋藤進六

    参考人齋藤進六君) 御指名にあずかりました齋藤でございます。  私の役目は、新素材全般にわたった現状及び展望をということなので、最初のところに新素材という概念が構成されるまでの材料の役割をちょっと挙げておきました。  ここに書いてありますように、産業革命を引っ張りましたのは鉄でございまして、非常に不思議なことでございますが、産業革命熱汽缶があらわれるまでは金属材料高温で使えるということをだれも考えておりませんで、今では高温金属材料が使われることは何か常識になっておりますが、そのときに初めて金属高温材料として生まれ変わったわけです。そして、それが産業革命牽引力になった、それの主要は鉄でございます。  それと対比的に我々が考えておりますのは、ちょうどこの第四項に書いてありますが、最近、もろいものの材料の代表のように考えられていたセラミック材料が高強度材料、非常に強い材料として全く概念を一新したということがございます。これは約二百年以上の時間がありますが、材料概念が革命的に変わった二つのエポックメーキングな現象として考えております。  その間に、二及び三、四、五項を申し上げますと、高分子というのは我々原始時代からおつき合いしている材料ですが、分析化学元素分析までで終わっておりましたために中間の状況をとらえることができなかったために、今世紀になって初めて高分子という概念が構成されて、それが今のような高分子材料の大きな発展を遂げております。  それからやはり今世紀の初めの出来事では半導体研究磁性材料強誘電体材料という物性論がその機能性材料として大きく導入され、材料がそれ自身の持っている特性を単に強度材料とかなんかではなくて使われるという道が開けたわけです。  この中で注目していただきたいことは、磁性材料の中の特に酸化物磁性材料日本の創意になるものでございます。これは加藤与五郎先生及び武井武先生のコンビでつくられて、第二次大戦の終わりごろにほとんど基礎研究は終わりましたが、用途がなくて困っていた。それが今ではテープやなんかに使われて、非常な大きな産業にのし上がってきた。企業名前を申し上げるのは大変いけないのかもしれませんが、TDKなんというのは代表的な企業でございます。  それから強誘電体材料日本が非常に強かったんでございますが、実は日本研究体制の中 で、あるところでつくった試料をいろいろな人が寄ってたかってその性能測定するという組織がありませんので、チタン酸ストロンチウムというものは日本が一番最初手をつけたんでございますが、そういう体制がなかったために強誘電性を見逃してアメリカに特許を取られたという苦い経験がございます。それはごく最近ポリアセチレン研究がございまして、これも日本最初手がけたんですが、これの電気伝導性を見逃したという問題がございます。したがって、我々は今科学技術会議、たまたま私科学技術会議政策委員を仰せつかっていますが、十一号答申で見られるように、科学技術会議では材料を諸科学技術基礎に置きまして、特に基礎研究が重要だということを強調しておるのはそういうような経緯もあるわけでございます。  それから、ごく最近になって皆さんのお耳に非常に頻繁に入ってくるのは生体材料でございまして、これはDNAというものの構造が四つのたんぱくからできている。しかも生体全体が二十のたんぱくから出てきているということがわかりました途端に、今まで学問の壁があった水産業農林業、それから生物化学の垣根が取り払われて、共通の言葉でしゃべることができるようになったために急速に進歩した例でございます。  さて、次に、ナンバー一の表、ここにありますこれは、金属学会会報に出ていたものでございますが、各時代の一八二〇年から現代に至るまでのいろいろな技術開発状況を一目でわかるようにしているので参考に持ってまいりました。材料技術というのは、ちょっと見にくいんですが上の方にはみ出して出てございます。そしてファインセラミックス、半導体プラスチック、こういうふうになって、いずれも今後大きな産業に成長するというような上がりカーブになっているのに御注目願いたいと思います。中ごろのところに高分子開発時代というのがあって、セロハンからナイロン等が出ております。そういう開発時代高分子の場合は終わって、その一番の上のところへちょっとはみ出ている、プラスチックの方に出ております。これについては後で概観いたしたいと思います。こういう状況が今の状態でございまして、今の字句で見ると、技術全体は宇宙科学、原子力、生物学エレクトロニクス材料というのが牽引力になっているという状況がおわかりになると思います。  それから、材料産業関係を、私たち材料開発する者は産業構造の動向を見定めませんと、材料マーケットニーズというものがわかりませんので、このような解釈を一つしております。これは参考に申し上げておきます。  材料の中には構造用、いわゆる機械の材料に使うとか、建築の材料に使うとか、あるいは海底、海洋構造に使う材料とか、宇宙材料に使うような構造用材料とか、それからエレクトロニクスに使うような機能性材料と、それから最近の新顔であるバイオ材料が出てまいります。バイオ材料は、これも構造用機能性、そのほかの科学のいろいろな製造工程用というようなふうに分けられるのでございますが、非常に特徴あるものなものですから一つ外に並べておきました。  さて、産業構造でございますが、先ほど申し上げました産業革命のときに二次産業が非常に興隆いたしまして、一次、二次産業人口の八十何%を占めているために、クラーク分類では第三次産業というのは、あらゆる職種の中から一次産業、二次産業を差し引いた余りという概念で今までまいったわけでございます。アメリカの例では、いわゆるクラーク分類の第三次産業人口の七〇%を超えてまいります。そのために従来の第三次産業の中に構造をもう少し考え、余りではとても経済的に議論できないので、構造を考えなきゃならないということをシュンペーターが提唱しましたのは、ここにあるように従来の第三次産業を、さらに四次、五次と分けたわけでございます。  第三次産業というのは、昔から言われているような商業、金融等中心とした流通経済でございます。第四次というのは情報を主にしたものでございまして、教育、研究、医療、サービス等でございます。ここで非常に皆さん異様に思われると思いますが、研究産業構造の中に入ってきております。ということは、既にアメリカの中の国家支出から見ますと、研究が五、六%の国家支出になっておりますと、これは明らかに産業構造として占めております。ですから、研究自身アメリカの考え方ではマネーフロー一つの流れの中として研究を考えているのでございまして、単なる消費としては考えておりません。  それから、第五次産業はファッション、レジャー等、いわゆる情緒産業でございます。最近こっちの方にどんどんまた移動しているということは皆さん御理解のほどでございます。こういうものに対応して、どういう材料が対応するかというのがそこに線引きしてあるわけでございまして、特に注目に値するのは機能材料があらゆる分野に入っております。例えば農林水産等というようなものに対しても、温度測定する、湿度を測定する、それからごく微量な試料状況を、いわゆる廃水を測定するというような意味機能材料が入り込んでおります。  さて、次のナンバー三は、このようにして新素材はどんな立場から発展させるべきかというと、皆さん御存じのように軽薄短小というような形でミクロ化しております。しかし、ミクロ化しただけでは、これは社会組織インダストリアル組織の中には入っていきませんので、ミクロ化するということは同時にマクロシステム化することでございます。ミクロ化することは、同時に多様化を促しましてこれもシステムにつながります。そこで、ミクロ化という方向をたどる材料と、多様化システム化をたどるシステム技術というのが両輪になってまいります。しかし、地球上の資源制限、特にローカルな資源制限日本なんかは厳しゅうございます。  そういうところで、代替材料開発というのが注目されております。代替材料の中で一番最近着目されるべきは、金属にするのに適当なクロムの資源というものがアメリカはほとんどありません。それから、自由世界がどういうものだかほとんどありません。そのために、千度を超え千三百度までの用途に耐えるような金属材料というのはタングステン、タンタル、ニオブ、モリブデンというような重金属を用いなければいけない。しかもこれは量的に非常に少ない。しかも酸化防止方法を講じなきゃならぬというようないろいろなやかましい問題もございますので、これに急激に戦後着目したのがアメリカでございまして、いわゆる今の強度用のしかも高温で使える高強度用セラミックス材料というものは代替資源という発想から始まったものでございまして、アメリカが目指しているものは、戦車用の高速度のタービン、それから航空機に載せる重機関銃目方を軽量化するための材料が主でございまして、シリコンカーバイドシリコンナイトライドというものが主役になっております。  そのほかこういうもの、シリコンナイトライド酸化物の入りましたサイアロン系というのが急激に開発されてますが、サイアロンの基本的な考えは英国から発生しております。  それから、代替エネルギー開発に向かうようないろいろな材料というのがございまして、皆さん御存じのような太陽熱発電なんというようなああいう材料でございます。そういうものが、例えばアモルファスシリコンだとかなにかがどんどん今出てきておる。あるいはガリウムアーセナイド系統のものが出てきてます。  ついこの間、フランスのソフィア・アンテポリスのCNRSの物性研究所に行きましたら、そこのベリエという研究主任の方は、光エネルギー変換率が、今までの九%、一〇%のオーダーから非常に飛躍して、三〇%の高率を今確保したと。四二%までやってみせると豪語をしておりました。  それから極限志向ということは、超高圧とか超高温とか、あるいは無重力状をつくろうというこ とで、こういうところで勉強したものを普通の状況に持ってきて使おうというような方向がぼちぼち見えます。  例えば無重力状の中で鉄の製錬の実験をやって何の益があるかといいますと、鉄の製錬の実験をやりますとガスがぼんぼん出ます。そのガスは空気中だと製錬している途中でどんどん逃げてしまいます。ところが、無重力状ですと、目方の差がありませんからガス反応した直後その場所にとどまっております。そういうことでいろんな反応のプロセスを幾つもの小さな実験でやって、分けていきますと、製鋼反応のところのガスがどういう状況だということがわかりますので、最も地上で多量に生産している鉄鋼材料みたいなものでもさらに性能を上げ、さらに反応の実態を実験的に突き詰めるためには、無重力状実験が必要だというようなことがこの極限志向、その結果を現実の場に持ち来すための水平思考でございます。  それから、量子効果と非共役効果と申しますのは、これはいわゆる今まで考えられなかったようなドリフト効果とかいろんな問題ございますが、例えばナンバー九ページのところにいろいろな機能材料になるための材料の電場及び磁場に対して電流がどう流れるか、あるいは磁場を与えますとポーラリゼーションと言いまして分極いたします。いわゆるプラスマイナス電子位置が正常の位置よりずれてまいります。そういうずれの状態がこんなふうな状況になるものは大体機能材料としての資格があるというわけでございますが、その一番下に光双安定素子というのがございます。これは横側の軸が入力でございまして、縦が出力でございます。入力の光をどんどん入れていきますと、ある時期で急激に出力がぐんと飛躍的に増します。それをまた下げてきますとあるところで――例えば上げてくるときはCという点で急激に増してDに行きますが、Dから今度は下げてくるとFのところで急に下がります。いわゆるスイッチング効果及びメモリー効果等がありまして、こういうものはいわゆる光コンピューターだとかいろいろな用途が出てくるのでございます。それと同じような膨らみを持ったものがその上に強誘電体とか磁性体とかにやっぱりこのような、ヒステリシスと申しますが、行く道と帰る道が違っているというようなものを使いますと、これがいろいろな信号になります。そういうような性格を持ったものが量子効果を最近は非常に多く取り入れているわけです。それから例えば、今、次世代産業基盤技術等で取り上げているところの超格子などというものも、普通の格子刻みよりももうちょっと長周期の刻みをつくって発振を楽にしよう、電子発振ブロフォ発振と言いますが、それを容易にしようということで量子効果でございます。  共役効果というのはどういうことかというと、力をかけると物が変形するというのは、これは共役量と言いまして、変形した分とかけた力を掛けますとエネルギーが出る。与えたある動作とそれに応じた変化を掛け合わせるとエネルギーの単位になるというのが共役量でございます。ところが、それでなくて、力を与えると変形するけれども、変形したこと自身格子の中の電気的な位置を変えることによってその材料の電気的なバランスが崩れるために表面に電荷が出ますというのを、例えば強誘電体というのがございます。ですから、例えば電子ライターぱちゃんとやるとぱあんと火花が出るのは、ひずんだ途端に中の電子位置がずれて、ずれたやつが表面に出て放電してなるわけでございます。こういうのを非共役効果と言います。  それから、あとは従来型の材料活性化するということでございまして、これは一番終わりあたりアルミニウム――ナンバー二十八をごらんになっていただきますと、アルミニウムというのは、今御存じのように大変電力を食うもので、日本産業としては全部リタイアして、ブラジル、アマゾンあたりに持っていって今工場建設したり何かしておりますが、エネルギーを食わないでもう少し合理的につくる方法というので、ちょうど鉄屋さんのシャフトキルンみたいな形でもってこういう溶融しながらやろうという、こういうアルミニウムの製錬技術というのは、これは材料そのものは新しい材料でございませんが、経済性を持った再開発ということで、従来型材料活性化ということで考えられております。  それから、複合材料ハイブリッド化というのは、例えば金属の中にセラミックファイバーを押し込みまして、そして金属強度を上げるとか、プラスチックの中にガラスの繊維カーボン繊維を入れて強度を上げる、あるいはしなやかさを増すというようなものでございまして、皆さん御存じのようなカーボンファイバーゴルフシャフトなんというのはカーボンファイバープラスチックをマトリックスでつくったものでございます。  さて、そういうような視点で材料開発発展さしていきますが、これを創成するためにはどういうような心構えが必要かというと、まず常識に挑戦しなければなりません。それの二つの例を先ほど挙げましたように、産業革命のときには鉄、金属材料は決して高温材料じゃなかったのに高温材料に使ってみましょうという常識に挑戦した。それから最近は、セラミックというのは落とせば割れるというものでございまして、もし今セラミックが丈夫だと日本茶道も大分違ってきたかもしれませんが、あれが楽なんていうのはすぐ割れやすいために茶道なんかが非常に優雅に発達したわけでございまして、もし楽がけ飛ばしても割れないとなると茶道が大分違ってきたと思いますが、そういうわけでもろいやつももろくないと常識を破ったというこれが重要な挑戦でございます。  それから測定加工相互関係というのは、加工したものを測定し、測定したものをさらに寸法が足りないからといって加工するという従来の方法ではございませんで、測定しながら加工するということが出てまいります。  それは実はナンバー六のところに、材料設計の思想のところで(2)のところにケーススタディーとしてイン・シッツ・プロセッシングと書いてあります。これはその場加工といいまして、例えばガリウムアーセナイドならガリウムアーセナイドの薄膜をつくるというときには、これをCVD、ケミカル・ベーパー・デポジションとかフィジカル・ベーパー・デポジションという方法ガスにしましてある基板の上に吹きつけます。吹きつけましても必ずしも厚さが一様につきませんので、それをコンピューターでコントロールしたり、余り厚くし過ぎたときは今度は、今までは測定器であったオージェが製造用にも転用され、アルゴンのイオンなんかをぶつけまして厚くなったところを薄くします。そんなことで測定しながらつくっていく、その場で測定し、その場でつくるという方法が新しい材料先端技術でございます。  それから、極限技術工業化というのは、先ほど申し上げましたように、無重力下発想というものがございますし、それから、ダイヤモンドというのは、これは大体五、六万気圧、千二、三百度の温度で鉄だとかコバルトとかニッケルというような遷移金属というものの中に溶かしまして、それを再析出させるような方法でつくりますが、最近は基礎圧力をかけないでカーボンを含んだガスの中からつくります。しかし、そのときに非常に重要なのは活性化された水素が役にたつものですから、今はタングステンフィラメントを加熱してごくわずかの水素の雰囲気の中で一度タングステンフィラメントの中に吸着された水素が非常に活性化されて出てくるということを利用したダイヤモンド被膜ができております。  それから技術科学ということでございますが、これは難しい、やかましいエントロピー的な存在なんて書いてありますが、エントロピーというのは、ここに伏見先生みたいな御専門の物理の先生がおられるので、いささか私申し上げるのも恥ずかしいんですが、要するに熱力学の第二法則から規約されたことでございまして、すべてのものが自己の形態をだんだん拡散していきますよと、科学の自然の工程では拡散の方向にあります よと。ところが、技術というのは拡散してしまえば困るので、いろいろな材料を集めて物が拡散しないでまとまるような方向につくっていきますよと、方向技術科学というのは、科学技術と一口に言いやすいんだけれども、思想的な根拠は、それからそれ自身のビヘービアは反対ですよということをちょっと言いたいわけです。なぜなれば、日本の場合は科学技術が手を結んだ後で国を開いて明治の開国が始まりました。ところが、ヨーロッパ世界がいわゆる産業革命を遂行したときには科学らしき科学はなくて物をつくるという一種のドンキホーテ的な意気込みだけがあって、それがしゃにむに突っ込んでいろいろな矛盾と衝突しながら、ついに科学というようなものがあるんだなという認識に達して技術から科学を生み出すきっかけができた、そういう意味ヨーロッパ世界では科学技術というのは概念として分離しながら必要なところを手を結んでおります。例えばフランシス・ベーコンが科学は従いながら使うという大変うまい言葉で言っております。そのよに科学技術性格の差を知った上で手を握るということが必要だということで、こういうことをやかましく、少しペダンチックに書いてあるわけでございます。  それから、材質設計材料設計とは違います。材質設計というのは将来何かに役に立つような材料の性質を調べるような形で設計するものでございまして、材料設計というのは目的がある場合でございます。科学技術庁無機材質研究所というのがございますが、この材質という名前をつけましたのは、将来材料として利用していただけるようなもののあらゆる基礎をやりましょうということでございます。  そこで、シーズとニーズというものが対立し、文献情報やデータ情報が必要だ。それから半経験的なアプローチというのは、そこにありますように、チタン酸バリウムというのは強誘電体でございます。先ほど言ったような電子ライターに使われるような材料でございますが、このバリウムの位置をいろいろ変えたり何かして、ともかく原子価がチタンになったりバリウムになったりするように、リシウムだとかタングステンだとかマンガンとかニオブを入れながら、そういう制御もできますよというようなことを言っております。例えばこれダイヤモンドのかわりにボロンナイトライドというのがございます。これはボロンとナイトライドの両方の、硼素と窒素の両方の原子価を混合原子価で一対一にしますとダイヤモンド、いわゆるカーボンの四価になるということで、これも半経験的にアプローチしたものでございます。  それから理論的アプローチというのは、超格子モデルというのは、先ほどちょっと申し上げましたように、この例は先の方へ繰っていただきますと、次世代産業基盤技術一つの項の中に――入ってないようですね。多分これは材料だけに着目して抜いたものですから、材料じゃなくて機能性を重視するために、ここでは生の材料ということがあったためにこれは抜いてしまったんですが、次世代産業基盤技術の中で超格子というものの研究がされております。これは材料の分野じゃなくてエレクトロニクスの分野なものですから、この表では抜いてしまいましたが入っております。  これは普通のアルミニウム・アーセナイド、アルミニウムと砒素の化合物というようなそういうものの組み合わせをつくりますと、そうしますとそれぞれの電子のバンドというのがございまして、その間を隔てて電子が飛躍しないと動けないという半導体の特徴があります。それが大きな波を打つようになりまして、それでいわゆる非常に高い振動が発振しやすくなるわけです。そういうようなものがつくられております。  それから超電導のリトルのモデルというのは、これはまだ理論だけが成立して物ができないんでございますが、超電導の枝のところ、主鎖のところに電子が走るときに、両側に電子に対して向きを非常に早く変えることのできるような副鎖をつけておきますと、次の電子が来るときに、その副鎖が前の電子に引かれてひょっと向きを変えている、その影響が出て二つ電子が並んでいくときのクーロン状というのが破れまして超電導になるという理論ですが、これはまだ物ができません。  それから異分野からの類推というのは、無機なら無機、有機なら有機、それから高分子なら高分子というものだけをやっているんじゃなくて、皆さんがそれをごたまぜにしてやりながらお互いに勉強しなきゃいけませんよということでございまして、これは私自身のことを申し上げるのは大変恐縮でございますが、分子研の長倉三郎先生と私で異材料フォーラムというのをやって、百社ばかり集まって、材料の種類の違う人たちが集まってざっくばらんな討論を開始いたしました。  それから材料設計というものの基礎はどこにあるかというと、これはキャラクタリゼーションという厄介な言葉でございますが、これは原子の並び方、原子の種類、それからそのいろいろな組み合わされ方、例えばセラミックで言いますと、粒子と粒子との間の細かい性質というのがこれがマイクロキャラクター、CUであらわされたものでございます。CAとあらわされたものがアトミックキャラクター、それからいろいろな最後の仕上げのときの切り欠けがあるかないかというのがマクロキャラクター、こんなものが合わさって例えば強度というものが決定されるということで、こういうような考え方で基本的な考え方は物の組成が全く同じ、それから原子の配列が全く同じ、それからマイクロな構造状態が全く同じ、それから大きくしたときの形が全く同じならば、同じ特性になるということを予測してやっているのはこういう考え方でございます。  それからケーススタディとしてプロセッシングフロウをこれは検討しなければいけませんよということで、その例として先ほどイン・シチュ・プロセッシングを述べましたから、例えばセラミックというものとファインセラミックとどう違うかというと、このケーススタディの一でございますが、従来のものは普通の粘土を使っていたのが、ファインセラミックはみんな合成材料になって純度を非常に上げた、粒子を非常にそろえたということでございます。  それから新しいプロセスというのは、従来セラミックを溶接するなんということは考えられなかった、セラミックを鍛造することも考えられなかったけれども、ある条件を付すとこれが可能でございます。そういうようなところを挑戦しているわけでございます。  それから極限は先ほど述べましたが、超急冷というのは溶融したものが結晶になるよりも早い速度で急冷してしまいますと、非結晶になります。それが今言われているアモルファス材料でございまして、その例はナンバー十六の下側の図四、表一というところにある。大変恐縮でございますが、この図のナンバーや表のナンバーがめちゃくちゃでございますのは、私が書いたり人の書いたりした文献から取ってきたものですから、このナンバーはめちゃくちゃになって大変恐縮でございます。  ここに液体があって、過冷液体があって、それが急速に冷やすと非晶質になったり、結晶質になったりするというのでございますが、この一つの例を挙げますと珪素鋼板というのがございます。これは普通の冷却の方法でございますと、珪素が四%ぐらいしか入らないためにまだ渦電流損失というのが非常にあります。例えばモーターが熱くなるとか変圧器がうなるとかいうのがございますが、六・二%まで入りますとほとんどそういう現象がありません。そういうものをつくるのはアモルファスでつくるのが一番よいものですから、そういうプロセスでございます。  さてその次に、甚だ恐縮でございますが、ナンバー七に細かいものがざっと並んでおります。これは私と私の教室の後継ぎである東京工業大学の澤岡教授が一応編集の責任をとりまして、新素材百科というものを、これはポピュラーに読みやすい本でございますが、それを書いたのの目次を何か参考になればという軽い気持ちでただ挙げておりまして、私きょう全部をしゃべるわけにも時間 的にいきませんので、こんなふうな広い範囲で材料というものはやっていますよということをちょいと御興味があるときに目を通していただけばという程度に書いておいたものでございます。  それからナンバー八は、これは次世代産業基盤技術の中ではファインセラミックス及び高機能性高分子材料、高結晶性金属材料複合材料が取り上げられております。  そのほか科学技術会議がお預かりしております調整費というのがございます。これは七、八十億ぐらいのお金でございますが、これは二つの省以上にまたがるテーマであって立ち上がりのところの三、四年間を援助して、立ち上がっていったらどこかの主務官庁がそれをあと続けるという予測のもとに出されている費用でございまして、これにはハイブリッド材料、超電導、無重力環境、表面・界面制御、レーザーとかいろいろなもの、それから超高圧発生システム等がございます。それから科学技術庁の航空・電子技術審議会の中に材料部会がございまして、これは材料設計に対する問題の答申を既に終わりましたが、今は計測技術極限技術環境の制御という問題に取り組んでおります。  それから、同じ新技術開発事業団の中に創造科学技術の推進というのがありますが、この中で超微粒子、それから特殊構造材料及びファインポリマーというのが取り上げられております。超微粒子というのは、非常に細かい微粒子になりますと全くそのビヘービアが違います。それを取り上げたものでございますが、その例はこのナンバー十二のところに超微粒子の利用概況というところで挙げてございます。微粒子というのはどのくらいかというとそこに書いてあるように、数百ミクロンのところから〇・〇〇一ミクロン、いわゆる十オングストロームぐらいまでのオーダーになっております。超微粒子というのは〇・一ミクロン以下でございますが、こういう微粒子は一度粒子の形をして粒子として使う場合もございますが、実は粒子という形をとらないでいきなり基板の上に吹きつけまして膜にしてしまうという方が多うございまして、超薄膜の技術というようなものがここでございまして、先ほどの超格子なんというのがこういう技術でございます。そうしますと、従来のセラミックとか半導体とかという材料の中で今までは微粒子というのが一つの基本材料だったんでございますが、そのプロセスを飛び越えてガスとか流体が基本材料だという概念が生まれてまいったわけでございます。そんなものを我々は今推進しております。それから特殊構造材料というのはアモルファスというような材料を申します。  それから、材料に関する研究所日本ではどんなのがあるかというと、科学技術庁の中では無機材質研究所金属材料技術研究所、そのほかに最近理研が大変活発でございます。それから通産の中には、繊維高分子材料研究所とか電子技術総合研究所とか、名工試、大工試、それから化学技術研究所等がこの問題に従事しております。  それから次に、ちょっと各論的に急いで入りますが、これはまた場合によれば後で御質問のときにお答えするための資料とした方がいいのかもしれませんので、もうほとんど時間だと思いますので、さっと目を通すだけでやめさせていただきますが、ナンバー十三は、ステンレスなんというのが最近はクロームが主になって三〇%もクロームが入ってきて、ニッケルが非常に少なくなったという特徴がございます。それはバキュームでオキシダイズするとか、アルゴンの分子でオキシダイズするという新しい技術が出たからでございます。  それから次は、高アルミニウム合金それからチタン合金というものが、これも皆さんよく御存じでございますが、これが新素材かというとやはり大きな新素材でございまして、こういうものをうっかりすると見落としがちなものですから、あえてその高強力アルミニウム、高強力チタンというのが次の新しい時代材料をつくっていくよ、特に航空機というものが日本はどういうふうに位置づけられるかしれませんが、航空機というものがもう少しきちっとした産業規模になりますとここらは大きな材料になってまいります。  それから、ナンバー十五に超微粒子の塑性材料というのがありますが、非常に超微粒子にいたしますと、ステンレスのような材料でも粒子と粒子との間の滑りが大きな材料と違いますために非常に大きな伸びを示します。その伸びを示すために、その下の材料にあるように少し温めましてラムの中に入れてその材料を押し出しますと、非常に正確に型の寸法どおりのものをつくります。こういうものが今後金属材料の二五%に行くんじゃないかという予測がありますので述べておきます。  それから次は、アモルファスは述べましたが、皆さん御存じのいわゆる記憶性合金というものの性質がここに書いてあります。  それから、次は高分子材料でございますが、御注目いただきたいことは、高分子というととかく電気伝導性がないように思いますが、最近はここにありますような材料がどんどんと出てまいりまして、ここにありますのはテトラシアノキノメタンとか、そういうものを挙げておきましたが、このほかにトリチアフルバレンというようなものを一緒にまぜますと、これがもっといい電気伝導性になります。高分子材料半導体材料等に使われるということをちょっと心にとめていただきたいと思っております。  それから、その次は液晶材料でございまして、これは液晶がこのようにネマティック、コレステリック、スメクティックというような並びをしております。このように電位をかけたりなんかすると、この並びが変わるために字があらわれたり消えたりするというのは皆さん御承知のとおりだろうと思います。  それから、ナンバー十九には特別な高分子を挙げておりますが、ここで御注目願いたいのは高分子の中に酵素を取り込んだ固定化酵素技術というのがございます。これはことし日本でもって最初の国際賞を出しましたときに、イスラエルの元大統領であるカチャルスキーさんがバイオ材料の方の賞を受けましたが、カチャルスキーさんの仕事はこの固定化酵素でございます。このようにしますと、酵素を非常にうまく利用して触媒反応に似たような反応でいろいろなものをつくることができるわけでございます。  それから、下の方には固定化酵素をするためにはどういう方法があるかという、シアゾ化の方法とか、それからカルボジイミドを用いる方法とかいうのが書いてございます。  それから、ここで御注意願いたいのはナンバー十九の下から三行のところにポリ―P―フェニレンテレフタラミドというのが書いてあります。これは一口に我々はアラミドと言っておりますが、これは液晶紡糸という特殊な方法繊維を並べましてそして非常に高強度な、ピアノ線よりも強いものができるというのが特徴でございます。ナンバー二十は、その参考高分子材料もこのような伝導性を示しますよということを書いてございます。  それから半導体ナンバー二十一にございますが、だんだん電子のモビリティーを早くするということでシリコンがあるところで限界に来ておりますので、今はガリウムアーセナイドというのが上から二番目にありますが、これが脚光を浴びております。その次のインジウム系統のものはまだこれからの開発状況でございます。  それから、ナンバー二十二は超電導でございまして、これは本当は伏見先生が御説明した方が私よりも間違いないと思いますが、だんだん温度の高いところで超電導を使えるようになりたいということでございます。これは一つは、我々は必死の気持ちを持っておりますのは、ヘリウムが実は有限で、いずれ枯渇するものです。そのヘリウムが枯渇する前にヘリウム温度より高いところで超電導のものがなくなってしまいますと、核融合その他がかなり絶望になってまいりますので、ヘリウムの枯渇に間に合わせるように何とかしたいということでございます。  それから次は、材料の代表として、複合材料を挙げましたが、これはごらんのとおりでございます。  それから、三番目のところは、これは三次元回路でございますが、三次元回路は非常に目の網膜構造によく似たものができるというようなことをちょっと説明をしておきます。  それから、二十五枚目のところは骨でございます。皆さん骨というのは燐酸カルシウムでできているんだろうと思いますが、実はその中にコラーゲンという物質がありまして、骨に重力がかかりますと表面に電位が出てまいります。表面に電位が出てくるために、例えば歯がかみ合って、かみ合ったままそれ以上に伸びないとか、それから、皆さんが暗いところで頭をぶつけると目から火が出るというのは、頭の中のコラーゲンが強誘電性でございますから、電子を出しまして、それが網膜を刺激した結果でございます。  それから、二十六のヘム分子というのは、ヘモグロビンをつくっている分子でございますが、これが伝導性が非常にいいので、今、ますますLSIが小さくなったときに、その電子回路の回路材料としてこんなふうに並べれば、五十オングストロームぐらいの細い電線ができますよという例でございます。  それから、二十七は、宇宙材料でございますが、これは、後でもし御質問があればお受けしたいと思います。たまたま私は、スペースシャトル利用委員会委員長をやっておりますので、こんなものを付しておきました。  大変雑駁な説明でございますが、一応新素材の動向を御説明したわけでございます。非常に雑駁な急いだ説明なので、御理解しにくいところがあったと思いますが、また後で、御質問のときでもお願いしたいと思います。どうも失礼いたしました。(拍手)
  7. 馬場富

    委員長馬場富君) どうもありがとうございました。  次に、浜野参考人お願いいたします。
  8. 浜野義光

    参考人浜野義光君) 御指名をいただきました京セラ株式会社浜野でございます。  私のいただきましたテーマは、企業における新材料開発の現況ということでございました。ファインセラミック材料開発の現況につきまして、大変乏しい経験ではございますが、当社での経験を例に引きながら御説明を申し上げたいと思います。製品についての説明が非常に多うございますので、特に御許可をいただきまして、スライドの写真を使わしてただくということで、それを主にしてお話をしたいと思っております。  まず、簡単なテキストを用意しましたのですが、まずファインセラミックスでございますけれども、これは先ほどの齋藤先生のお話にもしょっちゅう出てまいりましたのですが、非常に古いセラミック材料の中から、特に戦後大変付加価値の高い、性能のすぐれた一群の材料が出てまいりました。それが、今ファインセラミックというふうに考えられておる一群の製品でございます。戦争中に出てきました航空機エンジンの点火栓に使われました高品位のアルミナ、これが一番最初の例ではないかと思うのですけれども、それ以後に、フェライトですとか、あるいはチタン酸バリウムですとか、あるいは絶縁材料としてのアルミナ、そういったものが大変たくさん生産されるようになりました。現在、アルミナは、トランジスタベースあるいはICのパッケージ、あるいはいろんな配線基板のベースとしまして、今大変大量に使われておりまして、ファインセラミックスの製品の中でも一番生産量の多いものでございます。  一九七〇年ごろになりまして、酸化物以外のファインセラミックスが大変脚光を浴びてまいりました。その大きな誘因となりましたのは、アメリカの政府が進めましたセラミックエンジンの研究開発プロジェクトでございます。アメリカ政府は、将来の燃料事情ということに非常に敏感でございまして、特に輸送用のエネルギーを節約するためには、熱効率の高いエンジンが必要であると、そういったエンジンはセラミックを使うことにおいて開発できるということで、一九七一年ごろから、概算約一千億円ぐらいの研究投資をいたしております。それが大きな契機になりまして、窒化珪素あるいは炭化珪素、そういった酸化物でない一群のセラミックスが出てまいりました。  二ページでございますけれども、従来のセラミックスと申しますのは、これは天燃の鉱物を原料といたしまして、粘土と水をまぜた、そういった系が可塑性を持っております。粘土細工ができるような性質を持っておるわけですけれども、そういったことを利用して成形して、それを焼いてつくるといったものが古いセラミックスでございます。  ところが、ファインセラミックスは、大変高純度の原料を使う、あるいは特に合成しました新しい鉱物を原料にするということでありまして、そういった原料を使い、その原料の粉末を調製するという段階、それから成形、焼成、加工というふうに作業が進むわけでありますけれども、そのいずれの工程にも大変進んだ新しい技術を使用しておるというのが特徴かと思います。  次に、三ページに入らせていただきますけれども、ファインセラミックスというのは非常に広い範囲の材料を含みますので、その特性を簡単に言いあらわすことは大変困難でございますけれども、代表的な性質としましては、まず第一に強い化学結合によりもたらされた構造的な安定性ということが挙げられると思います。金属あるいは高分子材料と違いまして、セラミックスの場合は原子と原子が非常に大きな力でもって結合いたしております。そのために、例えば結合強度高温まで強いとか、あるいは高温までかたいとか、あるいは融点が高いとか、そういうふうないろいろな特性が出てまいります。セラミックエンジンは、そういった性質を利用して今開発が行われておる格好な例でございます。  それから、電気的な性質あるいは熱的な性質は非常に多様でございます。絶縁材料というのは常識的でございますけれども、半導性のもの、あるいは電気伝導性のものと、いろいろございます。それからフェライトのように強磁性のもの、あるいはチタン酸バリウムのように強誘電性のもの、あるいはチタン酸、ジルコン酸鉛、そういう圧電性のものもありますけれども、非常に多様な電気的な性質あるいは熱的な性質を持ったものが生まれておるわけでございます。  セラミックスの場合非常に特徴的なのは、その性質は化学的な組成と同時に、結晶学的な組織、それに大変敏感でございまして、そのために非常に多様な性質を生み出しやすいという特徴がありますけれども、反面また、なかなか性質をコントロールするのが困難である、そういうまた一面もございます。  それから、ファインセラミックスの特徴としてもう一つ申し上げておきたいのは、精密加工性ということでございます。従来のセラミックス、例えば先ほどありました茶道のお茶わんなんかは、焼いている途中に形が少し変形するとか、あるいは窯の中で焼いているうちに色が変わるとか、そういったことがたっとばれるような非常に特殊な材料でございますけれども、ファインセラミックスとして使われます工業材料ですと、非常に寸法精度が正確なことが要求されます。そのためにいろいろ工夫をいたしまして、精密な形状に加工をいたしております。それからまた、セラミックスだけの加工でなくて、金属と非常に細かな結合をさせる、非常に細かな組織をつくり出しまして、それによって初めて機能する、そういったものもございます。  四ページ目に入らせていただきますけれども、ファインセラミックス製品の現状でございますけれども、現在の年産額は日本国内で約六千億円であるというふうに見られております。  多い順番に書きましたのですけれども、一番生産量の多いのがICパッケージあるいは多層基板としてのアルミナでございます。それから高容量のコンデンサ、キャパシタとしてのチタン酸バリウム、それからICの一種に厚膜ICというのが ございますけれども、それの基板あるいはICとしても非常に生産額が多うございます。それから、あとフェライト、それからPZT、そういうふうに生産が続いておりますけれども、これらはすべて先ほどの齋藤先生のお話の中の機能材料に属するものでございます。機能材料の以外に、構造材料あるいは生体材料というのがございますわけですけれども、その分野についてはまだ生産量はわずかでございます。  それでは、スライドによって、あと説明をさせていただきます。(スライド映写)  これがICパッケージでございます。これはアルミナを主としてこういった金具、あるいはアルミナの中にこういう配線を印刷しました。そういったことで構成されております。  これがICパッケージの構造でございますけれども、一番単純なものといいますか、一番典型的なものは三層のセラミックから構成されております。これが一番上の層、それからここにありますのが二番目の層、それから一番下の三番目の層はこれだけ上に出ておるわけでありますけれども、この一番下の層が第三層、こういう三層から構成されております。  ICはここに乗りますんですが、ICがここに搭載されまして、こういうところに結線をいたします。それでこの結線が外部端子でありますところのこの金属につながるわけでありますけれども、その接続が、こういうふうにセラミックの上に印刷した、これはタングステンを印刷するわけですけれども、セラミックの上に印刷したこういう金属の導体、これがここの結線、結合に集まっておるわけであります。最終的にふたをしまして、それでICを密閉して雰囲気からの腐食を防ぐといった、そういう機能を持っておる製品でございます。  実物はこれでございますが、これはいろいろの寸法のものがありますけれども、典型的には長さが約二十五ミリぐらいございます。ここにICが乗っかって、そのICの端子からパッケージの内側の端子に向けて金線でもってボンディングしている、そういう状態がごらんいただけるかと思います。  それで、今申し上げましたように内部にこういったように結線がございまして、こういうところからさらにここにつながっておるというわけであります。  それから、これがまだ途中の段階でありまして、最後にふたをして完成いたします。  このパッケージを生産する工程でありますけれども、三層のセラミックからできておりますので、まず薄いセラミックのシート、あるいはテープといいますけれども、そういったものをつくります。これはアルミナに適当なのりをまぜまして、実はこれは紙でありますけれども、このずっと上の方、約二十メートルほど先のところに、紙の上にそういったアルミナを一様の厚みに塗りつけるというそういう工程がございます。そしてその後紙がどんどん運ばれていきまして、途中で塗りつけられたアルミナが乾燥いたします。ここまで来ますと完全に乾いておりまして、ここで実はずっと運ばれてきた紙とそれからセラミックのシートとが分離しております。紙は下へ行っておるわけですけれども、セラミックのテープはここから後は一人立ちして、ここでくるっと巻き取られておるということであります。セラミックパッケージの場合は厚みが約〇・八ミリぐらいのこういったシート状のセラミックをたくさんつくっております。  それに配線の必要なところにこういうふうな印刷をいたします。これは一個のパッケージは、これだけが一個分であります。タングステンを使いましてそういうふうな印刷をしました。これが先ほどの三層の構造の第二層目、真ん中の層でございます。  この写真では、二層目はここにわずかに露出しているだけでありますけれども、一番上の層、それから一番下の層、そういうふうに見えておりますけれども、これは三層を積み重ねた状態でございます。  それを切り離しまして焼きまして、それから金具をこれは銀ろうづけをするわけですけれども、ろうづけをして、それからさらにこういったタングステンの配線の露出した部分に金メッキをしまして、これで私どもの工程の最後ということであります。  この後ユーザーのところで、ここにICが乗っかりまして、ICの端子からこういうところに結線がされる、それで密閉されるということであります。  こういったICパッケージは最近小型化するという大きな傾向があります。と同時に非常に複雑化いたしております。  例えばこれは標準型のICでございますけれども、これをこういう形にすることができます。この場合はここにあります外部端子のかわりにこの裏側に金属の突起をつけまして、それを端子に使うということをいたします。その突起をこの上に乗せるわけです。ここに金属の突起がありますけれども、この裏側の突起とこの突起とがハンダづけされて、これがここに結合するわけです。こういうふうにしますと、これと同じ機能を持った、これはチップキャリアと言いますけれども、それが二個乗っかる、そういったことになります。そうしますと同じ形でもってICが二倍たくさん入る。実装密度が二倍になったというふうに言いますけれども、そういうふうに限られた容積の中にICをたくさん詰め込もうという、そういう大きな傾向がございます。  そうしますと、その二個のICがそれぞれ機能することが必要なものですから、単に端子をその数だけつけるということではありませんで、両方のICがお互いに機能するような内部配線が必要になってまいります。  これはこれだけが一個分の配線でありますけれども、こういった配線を何層か積み重ねまして、ある内部配線を持ったそういうパッケージを生産いたします。  これはやはり同じく内部配線の別の層の例です。こういったものが数層積み重ねられます。  これは二つのICが乗っかるパッケージ、それからあるいはこれは六個のICが乗っかる、これはもうパッケージでなくてマザーボードと言うのですけれども、そういう製品でございます。  こういうふうに限られた容積の中にできるだけたくさんのICを入れよう、こういう方向と、同時に、ICはそれ自体非常に高性能化していますのでそれに必要なこういう端子を十分つくっていこうという、そういう大きな流れがございます。  これはそういったものの一つの例でありますけれども、十六個の大型のICが搭載されるマザーボードでございます。これは実際の寸法は一辺の長さが約十センチぐらいのものでございます。  これは十六個のICを乗せて、それをお互いに機能させるために必要な内部配線をやっているのを一部見えるような構造でスライスしてございますけれども、配線は、一番上の層がここに出ておりますけれども、これが一層としますと、二、三、四、五、六、七、八、九というふうに見えております。それぞれ違った配線がこういうふうに複雑に絡み合って内部配線をこしらえておる。それが最近のかなり進んだパッケージの形でございます。  さらにより複雑なIC基板をつくろうという流れとしまして、今申し上げたテープ積層法以外に、厚膜を使った多層法あるいは薄膜を使った多層法、そういった技術開発されております。  今申し上げましたのは、これはアルミナのテープを使いましてそれにタングステンを印刷する。それで配線ピッチでありますけれども、これは百七十ミクロンですから、一番たくさん線を引きまして一ミリに線を六本引くという、そういうのがこの場合の標準的なデザインでございます。  それに対しましてICそれ自身をつくるような薄膜の技術を使いますとそれをさらに細かくすることが可能でございます。この百七十ミクロンのピッチが例えば薄膜を使えば八十ミクロンピッチ ぐらいには簡単になります。ICそれ自体のプロセスから言いますともっとはるかに小さくなるんですけれども、パッケージの場合はなかなかそうもいきませんで、現在手がけておりますのは、これがちょうど二分の一ぐらいのピッチを持った、そういったものを開発をしております。  このテープ積層法とそれから薄膜多層法と組み合わせることによってさらに高い機能を持ったセラミック多層基板と申します、そういったものを開発するということを今大変一生懸命でやっております。  これが一つの例でございますけれども、先ほど申し上げましたテープ積層法の基板ですとこういう形を持っておりますのですが、これをこの同じパターンを薄膜技術でやりますというと例えばこういうものができます。  これは電気を導く導体としましてはクロムと銅、それから誘電体といいますか絶縁膜としましてはポリアミドを使いますわけですけれども、そういった新しい材料を使って薄膜法を使うことによって、テープ法に比べると半分の長さの製品ができ上がるということでございます。  こういうふうにICを一定の容積の中にたくさん入れるということは、これは単に装置が小型化するということだけではありませんで、こういうふうに装置が小型化するということは、その装置の中に含まれておる電気配線の長さが短くなるということです。で、大型のコンピューターですとか、あるいは通信機ですとか大変高性能のものになりますというと、どうしてもその内部を流れる電気信号がどれぐらいおくれるかという、そういった遅延時間が問題になりますんですけれども、こういうふうに小型化することによって、必然的に遅延時間が短くなる。それからさらに、ここで使います材料を吟味しますというと、材料に固有な電気信号のおくれといいますか、そういったものをまた少なくすることができまして、また小さいだけでなくて非常に性能のすぐれた高速のコンピューターができるという、そういうことになります。  少し細かくてお目に見にくいかと思いますけれども、これは実は京セラが昭和三十四年に設立しましたわけですけれども、それから現在に至るまでの製品の開発状況を示しております。一番最初に会社をつくりましたときに生産しましたのは、非常に簡単な碍子でございました。それをベースにしまして、いろいろな技術をつけ加えて、ただいま申し上げたようなICパッケージ、それから多層プリント基板、それから薄膜技術も使いましたような高密度のセラミックモジュールと呼んでおりますけれども、そういったものの開発、そういったふうにまず会社のメーンの流れがございます。で、そのほかに、これはアルミナが成分、特殊成分でございますけれども、そのアルミナを使いながら、もう少し複雑な形のものをつくり上げる。それでいろいろな機械の部品でございますね。まず、例えば電子計算機に使われるいろいろなセラミックのガイドですとか、あるいは化学ポンプのバルブ、あるいはポンプ取りつけ部品ですとか、そういったふうに次第に製品の範囲を広げてまいりました。それからあるいは、この辺に行きまして、圧電材料あるいは誘電材料を取り入れまして、そういったコンデンサーですとか、あるいは電波のフィルターですとか、そういったものを生産を始めました。それからあるいは、もっと最近ですと、これは人工宝石でございますけれども、エメラルドですとか、あるいはルビーですとか、そういったものの一連の人工宝石も手がける。そういったことで、次第に材料の種類をふやし、あるいはいろんな加工技術の種類をふやしまして、かなり広い製品分野をつくり上げているというのが現状でございます。  現在の製品の例につきましては、お手元に見ていただいておりますけれども、会社案内に概要が載っております。  これは一番最初にやりました碍子でございますけれども、最初はこういったものを正確な寸法につくり上げるというのが、二十七年前になりますけれども、その時分の努力の中心でございます。セラミックスというのは、従来から非常に、先ほども申し上げたように、形がふぞろいであるというのが一つの大きな特徴でありましたんですけれども、こういったかなり複雑な形のものなんですけれども、注意深くつくることによって、その寸法精度がよくなる。それで、工業材料としての適性がだんだんつけ加えられていったわけであります。  それから、これは電子計算機に使われておりますセラミックの例でありますけれども、これは磁気メモリーに使われている部分、あるいはこれはテープ類のガイドをつくる、そういったふうに次第に複雑な形のものもできるようになりました。  それから、これはケミカルポンプのバルブでありますけれども、アルミナのポールを使ったボールバルブです。  それから、これは紙をつくる製紙機械に使われておりますセラミックの板でありますけれども、これは長さが約六十センチぐらいのまだそんなに大きなものでもありませんけれども、私どもの生産しているかなり複雑なものの例であります。  そういうようにして、次第に複雑な形のものをつくるようになって、さらにまた先ほどのアメリカ研究成果もありまして、窒化珪素ですとか炭化珪素ですとか、そういったふうな新しい材料がいろいろ社内でもできるようになりまして、それでつくってみましたのがこのセラミックエンジンでございます。このセラミックエンジンは、三年前のお正月にNHKのテレビで放映になりましたので、先生方あるいはごらんになっていらっしゃるかとも思いますけれども、これは、これがピストンでありますけれども、ピストン、それからシリンダーはここに出ておりますが、そういった主要部分をこれはすべてセラミックでつくっております。それで車に搭載しまして、すべてセラミックでつくって、全く冷却してないエンジンといったことで、最初に走らせたのがこのモデルでございます。  これは実際のエンジンの概略でございますけれども、三気筒のエンジンでありました。三気筒が独立した、こういった非常に単純な形をしております。この中にピストンが入りますわけですけれども、これがそのピストンであります。これは、このピストンは、もともとのこの三気筒エンジンは金属製のモデルがありますわけですけれども、そのモデルと全く同じピストンをつくりまして、それを使ったということであります。  それからそれ以来約三年たちますわけですけれども、その間に私どもとしましては、もっと性能の高いセラミックエンジンをつくろうといったことでいろいろ努力をしまして、かなり小型化することに成功いたしております。先ほどのは寸法を申し上げるのを忘れておりますけれども、先ほどのは三気筒で二・八リットルのエンジンです。ですから一気筒当たり約九百㏄ということでありますけれども、最近つくりましたものはこれ四気筒で一・二リットル、ですから一気筒当たり三百㏄のエンジンであります。これが最近のエンジンのピストンの絵でございます。これがシリンダーです。シリンダーも非常に単純な形にしまして、将来生産する場合にコストが余り高くならないようにということをいろいろ配慮すると同時に、こういう単純化された形のものはやはり耐久性も高うございますので、こういった形で比較的低いコストで耐久性の高いものをつくっていこうといったことで、今こういったエンジンの開発を進めておる次第でございます。  これは四気筒エンジンの概略の構造なんですけれども、ピストンがここと、それからここに見えております。これはちょうど航空機エンジン、昔のプロペラのエンジンは、例えば十個とか十二個とかというエンジンがちょうど花びらを並べたようにシリンダーが配置されておる、そういったエンジンでございました。真ん中にクランクシャフトがありまして、それを多くのたくさんのシリンダーでもって回転させるということでありますけれども、この私ども試作しましたのは、こういっ た二気筒を向かい合わせにしまして、それを二列並べで水平に四気筒並べたというそういったエンジンであります。  これがその外観でありますけれども、シリンダーが一、二、それからここに三、四というふうに見えております。こういうふうに水平に四つ向かい合わせに並べたそういったエンジンでございます。これが千二百㏄、一気筒当たり三百㏄でありますけれども、これで約四十五馬力出る。そういった非常に小型の直噴式のディーゼルエンジンでございます。そういったことで、実験的なエンジンの製作あるいは運転あるいは耐久性試験、そういったことを重ねておりますと同時に、こういったエンジンにセラミックが使われるという、そういった新しいニュースといいますか、そういう新しい特性を利用しまして製品を開発しようといったことでいろいろやっておりますのがこの例であります。  ここにありますのは小型のディーゼルエンジンでありますけれども、小型のディーゼルエンジンの主燃焼室の上にあります副室ですね、その副室を構成しますスペースチャンバー、渦流室というのがございますけれども、その渦流室をセラミックでつくりました。それから小型のディーゼルエンジンにはグロープラグというものが使われております。これはちょうどガソリンエンジンの点火線と同じような機能でありまして、最初にこのグロープラグに電流が流されまして、このグロープラグの先端が真っ赤に発熱いたします。そこにここから燃料を吹きつけて、ここで燃焼を始める。ここに燃焼が始まりまして、その燃焼ガスがこちらへ行きまして、さらにまたここにあります空気と燃えてこのピストンを押し下げるといったことで小型のディーゼルエンジンが動き出しますわけですけれども、ここに、このグロープラグにセラミックを使いまして、非常に着火性の速い、つまり先端の温度が非常に遠く上がりやすい、そういったグロープラグを開発いたしました。これは現在三社の自動車メーカーの小型のディーゼル乗用車に使用されております。  これがセラミックでつくりましたグロープラグでございます。この部分がセラミックです。この中にタングステン線が埋め込まれておりまして、それに大きな電流を流して、この先端を早く加熱するといった、そういった構造のものでございます。  これが渦流室です。  それからその次の研究対象としまして今熱心に進めておりますのは、これはターボ過給機のローターでございます。ターボ過給機は最近よく乗用車に使われるようになりましたのですけれども、これは自動車の排気ガスを利用しましてこのタービンを回します。そのタービンを回しまして、その力でもって空気を吸い込んで、その空気をエンジン室に押し込むことによってエンジンの出力を非常に短い時間に高めてやると、そういった機能を持つものでありますけれども、ここにそのセラミックでつくりました羽根を使いますというと、このセラミックは耐熱合金に比べて非常に比重が軽うございます。耐熱合金の約四〇%の比重といいますのが今一般的でありますけれども、したがいまして、排気ガスの量が余り多くない間からセラミックのローターは回転を始めます。そうしますと、コンプレッサーも同時に動きまして空気を吸い込むと。空気を吸い込むことによってエンジンの出力が上がって、さらにこれがどんどん回るといったことで、従来の金属を使ったターボ過給機に比べますというと、約二分の一ぐらいの時間でどんどん回り出すようになる。そういったことで非常に応答性のいいといいますか、ききのいいターボ過給機がセラミックを使うことによってできます。これも現在我が国を初めアメリカあるいはヨーロッパのメーカーとの開発競争でございますけれども、近いうちにこれが商品化されましてアナウンスされることになるかと思っております。  これがターボ過給機に使われますセラミックのローター、羽根でございます。  それからそういったことでセラミックのエンジンというのは非常に現在おもしろい対象でありまして、大変大勢の人がかかわっておる研究対象でありますけれども、セラミックエンジンの中でも特にガスタービンエンジンについてのアメリカ政府の研究投資が非常に多うございます。これは一九八一年から一つの大きなプロジェクトが動き出しまして、初めてすべてセラミックでつくりましたガスタービンが従来の金属を使いましたエンジンに比べて約三百度Cぐらい高い温度で動くと、そういったことが実証された最初のモデルがこれでございます。これはアメリカの軍の費用でもってフォード自動車が開発したオールセラミックガスタービンでありますけれども、これが燃焼室です。燃焼室で高温ガスをつくりまして、これをこちらへ導いてまいります。ここに動翼、羽根がありますけれども、ガスの流れでもってこの羽根を回転させます。それから動翼は実は二段ございまして、この二段が回りましてこの軸を回すと。この軸が回りますというと、ここにコンプレッサーがありますが、このコンプレッサーが回りまして空気を吸い込みます。で、吸い込まれた空気はここの熱交換器がありますのですが、この熱交換器でもってここから出ていった排ガス温度をここでもらいまして温められまして、ここの燃焼室へ入っていくと、こういうことです。大きな眼目は、ここの燃焼室の温度を千三百七十度Cにするということであります。で、従来のこういったもの、金属性のガスタービンですと、この温度はたかだか千度Cあるいは相当工夫しまして金属部分を冷却しまして千百度Cぐらいになるというようなのが平均的なレベルでありますけれども、それをこのセラミックを使うことによって約三百度C高めることができたわけです。その結果、これはエンジンの熱効率が約三〇%高くなっておるはずであるというふうに言われておりますけれども、この辺のセラミックの部品をつくるのに大変な苦労をいたしまして、とにかくこういったモデルをつくり上げて、余り長い時間は置かなかったんですけれども、とにかくある期間動かして、そういった形のセラミックエンジンが成り立つものであるといったことを、まずそのフォード自動車が実証したわけであります。  これがそのときに使われましたセラミックのローターであります。  その結果そのプロジェクトがうまくいきましたものですから、今度はアメリカ政府はまた新しく大きなプロジェクトを起こしまして、これはゼネラル・モーターズが担当しておるプロジェクトでありますけれども、これはもう少し全体の構造が実は簡単になっております。実際に近いうちに量産できるような、そういったことをまず前提としましてデザインをし、その研究開発を進めておるのがこのモデルであります。これはここ二、三年のうちにプロジェクトが終わりまして完成するわけなんですけれども、この後にありますフォード自動車のプロジェクトとあわせまして年間五十万台ぐらいのガスタービンをつくりまして、これを乗用車に搭載して全米を走り回らそうという、そういう計画であります。当初の計画ですと、一九九〇年ごろにそういう五十万台の生産をするということを言っておったわけでありますけれども、予算の削減とかありまして少しおくれておるようでありますけれども、多分しかしこれから十年間ぐらいの間にはこういったものの量産が成立するのではないかと、そういうふうな見通しであります。  これは同じプロジェクトでフォードが担当しております別のモデルであります。これも実際に量産をするといったことが前提で開発されておるものであります。これはこの前のゼネラル・モーターズのプロジェクトと競争といったことで進んでおるプロジェクトであります。  これは私どもがつくっておりますけれども、今のセラミックガスタービンに使われておりますセラミック製のローターであります。  それから、これは今のローターがちょうどここに入りますわけですけれども、これはシュラウド と呼んでおりますけれども、これはやはり同じプロジェクトで使われておるセラミックのシュラウドであります。  以上でスライドを終わります。  わずかの例でございますけれども、最近のファインセラミックスの開発状況と申しますか、いろいろ努力しております対象について簡単に御説明申し上げましたわけですけれども、五ページに入らしていただきます。  現在のところファインセラミックスのマーケットは機能材料、特に電子機能の分野に非常に限定されております。しかし、例えば電子計算機あるいは通信機、そういったものにおきましては、セラミックの部品というのはもう欠くことのできない非常に重要な部品となっております。この傾向はさらに続きまして、これから十年後には日本の生産が約二兆円になるだろうというふうなことがここに書かれております。  それともう一つ並びます大きな製品群はやはりセラミック構造材料でありまして、今申し上げましたようなオールセラミックガスタービン、そういったものができますというと、これはアメリカの政府機関の計算でありますけれども、アメリカがもしこのセラミックガスタービンの生産に成功すると、その場合と、あるいはもう一つは、アメリカが失敗をしまして例えば日本からこういったセラミックガスタービンを輸入すると、そういった場合と比較しますというと、アメリカのGNPは三十九ミリオンドル、ですから、日本円に換算しまして約十兆円になりますけれども、それぐらいのGNPの差が出てくるのであると。そういったことで、アメリカ開発投資が一千億円というのは多少推測が入っておりますのですけれども、そういったことでいろいろ開発テーマを並べまして、アメリカの政府は非常に熱心にこのセラミックエンジンの開発を推進いたしております。  我が国のことを考えますというと、我が国のエネルギー事情は当然アメリカよりか厳しいわけですから、これは乗用車に限らず、もっと発電用のエンジンなんかもそういったことが当然考慮の対象になるのではないかというふうに考えます。  そのほか、セラミックの将来の展望としましては、例えば原子力関係に使われるであろうという用途がいろいろ指摘されておりますけれども、現在のところそういった分野での研究開発は必ずしも順調には動いていないのではないかと、そういうふうな懸念がございます。特に原子力関係ですと、セラミックの特徴が生かせる分野がいろいろありますんですけれども、その開発の非常な重要性ということに比べますと、どうも研究の進行状態がもうひとつ芳しくないんではないか、そういうふうな気がいたします。  あれやこれやいろいろありますんですけれども、将来セラミック構造材料というものは機能材料と並んで非常に大きな生産を占めるものであろう、そういうことを私ども大いに期待しておるんでありますけれども、そのためには、かなり未知の技術もたくさんありまして、そのための組織的な研究開発が必要である、そういうふうに考えます。  以上で終わります。(拍手)
  9. 馬場富

    委員長馬場富君) どうもありがとうございました。  それでは、これより懇談に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。  速記をとめてください。    〔午後二時四十分速記中止〕    〔午後三時三十五分速記開始〕
  10. 馬場富

    委員長馬場富君) 速記をお願いします。  他に発言もないようでございますので、懇談をこれで終わることにしたいと存じます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  両参考人には、長時間にわたり当委員会のために貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十七分散会