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参考人(
前川忠夫君)
香川県知事の
前川でございます。
本日、
参議院運輸委員会の
運輸事情等に関する
調査に関連いたしまして、
国鉄問題について
地方の
意見を申し述べる
機会を与えられましたことにつきまして、厚く
お礼を申し上げたいと存じます。
また、この
機会をおかりいたしまして、
本州四国連絡橋の
建設、
空港の
整備、
高速自動車道の
建設等、
四国の
基幹交通体系の
整備促進につきまして、諸
先生方から日ごろ格別の御高配を賜っておりますことに対しましても、厚く
お礼を申し上げたいと存じます。
さて、
国鉄問題につきまして
意見を述べさせていただくわけでありますが、ただいま
秋田県知事から、全国的問題としていろいろ御
意見がございました。その中にも、特に
大都市圏関係の
国鉄線に比べて
地方路線の
整備の立ちおくれ、その軽視が指摘されましたが、その
地方路線のうちでも特におくれております
四国地方の
国鉄線の現況をまず御説明申し上げ、御理解をいただきたいと存じます。
四国地方の
国鉄線は、一口に申しますと、
本州地域など他の
地域に比べまして
経営規模が小さく、困難な
運営を強いられておりまして、それに加えて、
建設投資が相対的に少なく、
施設、
設備の
整備、
近代化が大幅におくれております。
現在、
国鉄四国総局管内には、御
承知のように、予讃本線、土讃本線、高徳本線の三つの
幹線系線区のほかに、
地方交通路線を合わせまして九つの
線区がございます。そして、その
鉄道の
営業距離は八百五十八キロメートルとなっておりますが、すべての
線区が
赤字路線であります。全
路線のうちで複線化されているところはわずかに二十七・二キロメートルでございます。これを
営業距離に比べますとわずか三・二%を占めるにすぎません。しかも、
昭和六十三年春、三年後でございますが、
本州四国連絡橋の開通によりまして接続することとなります、最も重要な
四国国鉄線のかなめとも言うべき坂出―丸亀間の六・八キロメートルの区間がまだ単線のままとなっております。加えて、
四国管内の
鉄道はすべてディーゼル車の運行であり、電化区間は全くありません。一メートルも一ミリもございません。また、
地方交通線についても、阿佐線、宿毛線の工事の再開、内山線の早期
開業、中村線、予土線の
存続等多くの課題を抱えております。
このように、
四国地方の
国鉄線は非常に苦しい
経営状況にあり、その
施設の
近代化は他の
地域に比較して著しく立ちおくれている現状にあることをまずもって御認識いただきたいと存じます。
このような状況を踏まえながら、
国鉄問題について特に
四国の立場から若干の
意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
まず、
国鉄の
分割民営化の問題についてであります。
去る五十七年七月に出されました
臨時行政調査会の
答申におきましては、
国鉄の
経営形態について次のように述べております。地元の
責任と意欲を喚起して、全国画一的な
運営に陥らないよう
国鉄を七ブロック程度に
分割し、これを
民営化するという
方向を打ち出しているのであります。これを受けまして、
昭和五十八年六月、二年前に発足いたしました
国鉄再建監理委員会において、
国鉄の
分割民営化について御検討を重ねられ、本年七月末の最終
答申に向けてさらに御検討がなされていると聞いており、その中では、遺憾ながら、
四国の分離
経営も含めて種々の案が俎上に上っているようであります。
この
国鉄の
分割民営化についての私の
意見でありますが、およそ、
地方に新たな
財政負担を強いたり、また
四国国鉄線の
近代化が阻害されるおそれのあるような
分割民営化につきましては大きな問題がありますので、
基本的には反対せざるを得ないと考えております。こうした趣旨については、昨年高松市において開催されました一日行革審におきましても私から申し上げましたところであり、また先般の
四国知事会議におきましても緊急の課題として協議いたしました結果、
四国知事会からも、同様の意向で、全国的問題として全国知事会でも取り上げられるよう働きかけることにいたしております。
現在、
分割民営化についての最終的な
方向がいまだ示されておりませんが、今後さらに検討がなされるものでありましょうが、その際は、私としては、関係者の皆様方には、まずもって
四国及び
四国の
国鉄の置かれている特殊な諸事情をあらかじめ十分御理解いただくことが必要かと存じております。
また、今
四国は島民長年の悲願でありました
本州四国連絡橋が
昭和六十三年、三年後の春に完成することになっておりまして、本州と
鉄道、
道路で一体化されるわけであります。まさにそうしたやさきに、
分割民営化の名のもとに
鉄道が切り離されてしまうことは、一体化を願ってきました
四国島民にとってその
期待が裏切られるものであります。これまで
四国は、離島性という自然的不利な条件下にあり、本州との連結も弱く不安定でありました。しかしながら、
本州四国連絡橋の完成によって本州の
交通体系と総合的に
結びつき、一体とした
運営をすることによって
四国の
国鉄の
輸送機能が最も有効に発揮されるものと確信しており、これを分離
運営することは時代の流れに逆行するものであると言わざるを得ません。
さらに、
四国の
国鉄につきましては、現況のところで若干申し上げましたように、全国的に見ても最も
近代化がおくれた
地域であります。電化区間が一メートルもなく、また複線化もわずかで、
車両も他の
地域で使い古された非改良のままにとどまっております。国が
責任を持って本州並みに
整備、
近代化をしないままで
分割民営化がなされるということはまさに論外であります。
また、
四国島内の
交通体系を見ますと、都市間交通は
国鉄と主要
道路で結ばれておりますが、高速
道路はわずか十一キロメートルが開通したばかりでありまして、何と申しましてもその機能はまことに不十分であります。したがって、都市間交通はその多くを
国鉄に依存しているのであります。また、特に
四国の場合、地形が急峻で、しかも脆弱な地盤のところが多く、災害や事故が発生した場合の緊急輸送の
確保という上からも、
国鉄は交通の手段として極めて大きい
役割を有しているのであります。
以上のように、
四国国鉄の将来性とその果たすべき
役割を考えますと、現在検討されている
国鉄の
分割民営化の
考え方は、
経営の
企業性、効率性を
優先したものと言わざるを得ません。これが画一的に実施されれば、
交通体系的に後進
地域である
四国の
産業経済及び文化の
発展は阻害され、住民
生活の上に多大の不便を強いられることとなり、その影響が憂慮されるところであります。加えて、
四国の
国鉄は現在でも毎年大幅な
赤字であり、あえてこれを
分割して、例えば基金の運用によってその
赤字を補てんするといっても、やがては料金や
財政負担など、
地域住民及び自治体にも大きい
負担がかかってくることは必至と考えられます。関係者の努力によってもおよそ
鉄道を維持できないような方針には賛成しかねるのであります。したがいまして、
国鉄が果たしている基幹的公共輸送機関としての
役割と各
地域の実情を十分認識されまして、慎重の上にも慎重を期していただきたいと存じます。
この
分割民営化の問題に関連して特に申し述べたいのでありますが、他の
地域では既に解決済みの課題が
四国の
鉄道には依然として残されており、これに対応すべく
地域を挙げて努力していることを御理解願いたいのであります。
御
承知のとおり、現在
建設中の
本州四国連絡橋は、世界に冠たる壮大な
鉄道、
道路の併用橋として、
昭和六十三年春の完成を目指して、おかげさまで順調に
建設工事が進められております。
四国地方の一層の
発展を図るためには、
本州四国連絡橋の完成とともに、これと関連して
四国島内の
国鉄在来線の
整備、
近代化が不可欠であります。一兆一千億円を超える国家的大事業であるこの
本州四国連絡橋の
投資効果を高め、後発
地域である
四国地方の活性化を図るためには、
地域の
鉄道の輸送容量の拡大、高速化が絶対に必要な条件と考えます。特に、
国鉄在来線のスピードアップや、利用者が使いやすい
ダイヤ改正を行い、
経営基盤を強化するためには、電化、複線化の計画的な推進が不可欠の条件であります。
本州四国連絡橋の完成による電化が実現すれば、いつでも決まった時間に輸送が可能となり、
鉄道による所要時間を比較してみましても、高松―岡山間の現在の所要時間一時間四十二分が架橋後はわずか五十分となり、二分の一に短縮されることになります。また、濃霧、強風などによる欠航もなくなります。
均衡ある
地域の
発展を図るためには、広く全国総合
交通体系の
整備という国家的見地からのお取り組みが必要であると存じます。
こうしたことから、
本州四国連絡橋を通過する本四備讃線は、現に関係者の御尽力によって複線、電化の計画で工事が進められております。したがって、これと連絡する
四国島内の在来線の複線、電化がなされなければ本州線との円滑な接続が図れず、
四国島民はもとより、我が
国民全体の大きな資産である
本州四国連絡橋が十二分に生かされないことになります。
四国瀬戸大橋完成時においては、電車によって高松市から岡山市、さらには京阪神へ直行できるとか、あるいは本州から
四国島内の主要都市まで直行できるとか、そこまで踏み込んでしかるべきではないかと考えます。効果的な
投資によって、大きく立ちおくれている
四国国鉄の格差解消こそ、
四国の
国鉄再建のためにも、ひいては
四国の活性化のためにも不可欠の手段であると存じます。
また、この際、
四国への新幹線
鉄道の乗り入れ問題について一言申し述べさせていただきたいと存じます。
現在
建設中の
本州四国連絡橋、児島―坂出ルートは、新幹線
鉄道も通過可能な構造となっており、
四国地域の
発展を図るためには新幹線の導入が大きな夢であります。全国的に見ても、新幹線の
整備計画が決まっていない白地
地域は
四国だけであります。現在の
四国島内の新幹線
基本計画線を
整備計画線に格上げしていただき、
四国地方への新幹線
鉄道の乗り入れが実現されることを
四国四県においては強く要望しておるところでありまして、
長期的な重要課題となっておることも申し上げておきたいと思います。
以上、いろいろ御要望とあわせて、
地方路線の典型的なおくれを持っている
四国国鉄の実情を訴えまして、我々といたしましても、単にお願いだけではなく、要望だけではなく、それだけに終わってはならないと思います。
地方自治体として、
鉄道、バスなど公共輸送機関の利用促進について努力いたしたいと考えております。もちろん、
国鉄自身におきましても、積極的な営業施策を展開し、
経営の悪化を食いとめるための最大限の努力をする必要があることはもとよりでありますが、我々
地域の者としても、住民の貴重な財産である
国鉄初め公共輸送機関の利用促進運動を、住民各位の積極的な御協力を得ながら、県として市町ともども引き続き推進してまいりたいと考えております。
以上、御出席の諸
先生方におかれましては、どうか
国鉄に
期待している私どもの意のあるところをお酌み取りいただきまして、今後とも格別の御理解、御支援、御協力をくださいますようお願い申し上げまして、私の陳述を終わります。
どうもありがとうございました。