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山田耕三郎君 私は天気予報に関連をした問題でございます。
天気予報が完全に当たるものであれば、それを利用する場合に特に問題はございません。しかし、天気予報の当たる精度が非常に向上したとは申し上げましても、時々外れることもまた事実でありまして、完全に当たるものとして利用することはかえって損害を大きくするとともに、不満もまた募らせることになります。今日、天気予報の的中率は八〇%を超えるまでに向上をしたと言われております。気象庁での気象衛星「ひまわり」を中心とする気象観測施設は確かに格段に進歩をいたしており、あの極彩色によります温度や雨量のディスプレー表示は私たち素人に対してさえ変化の
状況、雨雲の移動やその方向等もよく理解できる上に、人間の目を楽しませてくれますし、それだけに予報に対する信頼性も高めておりますことは事実です。
しかし、これらの整備はおおむね管区気象台
段階まででありまして、地方気象台は、その昔測候所と呼称された時代と余り変化はないように思われますし、建物を見てみましても総体的に古色蒼然としたものであって、ニューメディア時代への対応とはほど遠いものがあるように感じますのは決して私だけでない、このように思っております。しかし、その中にあっても、予報精度の向上は予報担当者の使命と心得て不断の努力を重ねられておられますことについては深い敬意を表しますものです。
先日も、気象に関する学術的な機関誌といいますか、「気象」という本を読んでおりますと、「天気予報の精度と利用価値」という論文がありました。多くの点で啓発をされました。わけても、予報利用による
対策によって軽減できる損害額と
対策に要した経費との
関係のくだりには大変興味を持ちましたものでございます。そういったことから、国が気象事業に投資する経費と
国民が受ける
利益とにも思いをめぐらす機会を得ましたが、今はこれらについて申し述べる時間は持ちません。
ただ、その論文の中に次の意見がありました。「急速な進歩は
期待できず、」これは多分施設整備の急速な進歩を言っておられると思いますが、「当分は、ときどき外れる予報をどう利用すれば最大限の効果が挙るかを工夫することも必要となる。」との
言葉ですけれ
ども、私は、急速な進歩が
期待できないという立場ではなく、急速な進歩を図り、毎年毎年集中豪雨のために
国民の皆様方の生命財産が無残に失われていくようなことのないよう努めることが気象にかかわられる方々の責務であり、その手だての
一つは、地方気象台の若干の施設の整備で実現可能と
考えるものですけれ
ども、その立場から
質問を二、三いたしたいと思います。
去る四月二十日の未明から午前八時ごろにかけまして近畿地帯に雷雨の来襲がございました。兵庫県西宮市及び大阪市北部地域一帯が特にひどかったようでおりますが、各紙の報道を総合いたしますと、十件近くの落雷があり、その多くはテレビ被害でありまして、雷が電線を伝って内部に入って、テレビの内部が焼損をするという被害でございます。地元のNHKにお尋ねをいたしましたら、テレビアンテナには絶対落雷はないとのことです。電柱に落ちた雷が電線を伝ってテレビ内部に流入するのであって、ソケットさえ抜いていただければ大丈夫との説明でもありました。前日の天気予報を見てみますと、「所により雷雨」ということでありました。その場合に、特に激しい雷雨が予想される地域が特定をされておれば被害の軽減が可能であったのではないだろうかという素人的な
考え方が脳裏をかすめました。
先日また、「今週の日本」という
新聞を偶然に拝見する機会を得ました。「天気予報をキメ細かく」という見出しで、気象庁の天気予報に対する新年度の取り組みがPRされておりました。梅雨の時期に入り、洗濯、外出時の雨具の用意等、毎日の天気が気になりますころです。ましてや、大雨による地域災害は特に心配です。その記事の中に次のように書かれておりました。「日本は、
世界でも天気予報の難しい所」であり、それは「海に囲まれていて、山が多く、地形も複雑なため、天気が変わりやすいからです。同じ県内でも、東部は晴れているのに西部は雨ということが、珍しくありません。隣の町とでも、天気が違うことがあります。こうしたことが天気予報の”はずれ”の原因のようです。」特に天気予報が一般に注目されるのは、近年は集中豪雨による土砂崩れや、河川の決壊及び都市の中小河川の洪水など、限られた地域での大雨による災害が大きくなったからだと指摘されております。その上さらに、「雨は局地性が大きく、変化が激しいので、短時間予報のためにはキメの細かな気象監視システムが必要」だとも強調しておられます。私もこのことは全く同感であります。
特に豪雨については、常に局地性と変化の激しいことを忘れてはならないと思います。だとすれば、平素からこれらの局地性に対する、さらには局地の変化の激しさに対する対応が観測施設上できておらなければならないと思います。
そういうことから、気象庁はその
対策として、気象レーダーとアメダスの観測組織を重視をして次のように言っておられます。
一つは、「気象レーダーには、雨雲の広がりや変化をキメ細かく探知する能力があります。」
二つには、「アメダス(地域気象観測システム)は、全国千三百余カ所の観測所から、雨量などのデータを一時間ごとに受信できます。」以上の
二つの観測システムの有効性を強調しておられ、これらによりきめ細かな短時間予報を行うとのことですが、なるほどアメダスの観測所一千三百カ所は多いような感じを与えますことも事実です。けれ
ども、算術計算では十七キロメートルメッシュに一カ所ということになりますが、ごらんのように設置の場所に各種の制約を受けざるを得ない日本の地形を
考えるときに、現実には空白箇所が目立つのもまた自然かと思います。
しかも、その観測所のすべてが四要素、気象庁では、雨量、風向・風速、日照、気温を四要素としておられますようですけれ
ども、この四要素を具備しておるところ全部ではなしに、雨だけの観測所もあるとのことであります。さらに現在、ペリー・ファイン・メッシュ、すなわち微格子モデルということのようでございますけれ
ども、これでも格子間隔六十キロメートル程度で、雷雨や集中豪雨は表現できないとも言われております。
したがって、私の
考えますのは、だからといって観測所を増設することについては、財政問題やその他の制約要因もありますので、多々ますます弁ずだけでは済まされない問題だと思いますけれ
ども、基本的には、空白点があったり、表現できないメッシュの欠陥を補うためにも観測点の増設もあわせて行わなければきめ細かい観測ということがかけ声倒れに終わってしまうと思います。そういった点から、そのような観測点をふやすという措置についてはどのようにお
考えになっておられますか、その辺のお答えを願います。