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1985-06-11 第102回国会 参議院 運輸委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月十一日(火曜日)    午前十時二十五分開会     ─────────────    委員の異動  六月四日     辞任         補欠選任      吉村 真事君     中山 太郎君  六月五日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     吉村 真事君     目黒朝次郎君     糸久八重子君  六月六日     辞任         補欠選任      藤田  栄君     上田  稔君  六月七日     辞任         補欠選任      上田  稔君     藤田  栄君     糸久八重子君     目黒朝次郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         鶴岡  洋君     理 事                 梶原  清君                 瀬谷 英行君                 矢原 秀男君     委 員                 高平 公友君                 藤田  栄君                 森田 重郎君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 吉村 直事君                 小柳  勇君                目黒朝次郎君                 小笠原貞子君                 伊藤 郁男君                 山田耕三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        多田  稔君    参考人        産業経済新聞論        説委員      山本雄二郎君        埼玉大学経済学        部教授      鎌倉 孝夫君        京都大学経済学        部教授      伊東 光晴君        明治大学商学部        教授       山口  孝君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○運輸事情等に関する調査  (国鉄問題に関する件)     ─────────────
  2. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  運輸事情等に関する調査のうち、国鉄問題に関する件について、本日、産業経済新聞論説委員山本雄二郎君、埼玉大学経済学部教授鎌倉孝夫君、京都大学経済学部教授伊東光晴君及び明治大学商学部教授山口孝君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) それでは、運輸事情等に関する調査のうち、国鉄問題に関する件を議題といたします。  この際、参考人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。各参考人におかれましては、国鉄問題に関する件につきまして、それぞれ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうかよろしくお願いいたします。  次に、本日の議事の進め方について申し上げます。  まず、午前は山本参考人鎌倉参考人伊東参考人山口参考人の順で、お一人二十分以内で御意見をお述べいただき、そこで一たん休憩し、午後は委員からの質疑にお答えいただくということで進めてまいりたいと存じます。  それでは、山本参考人からお願いいたします。山本参考人
  5. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) 山本でございます。  国鉄改革具体案づくりが大詰めを迎えようとする中で、国権の最高機関である国会におきまして、特に専門的な見識をお持ちの方の多い参議院の運輸委員会におきまして国鉄改革問題についての集中審議が行われますことは、これからの国鉄改革に新しい展望を開く上で大変意義の深いことであると考えまして、敬意を表したいと思います。  現在の予定では、この七月末に国鉄再建監理委員会から答申が出されまして、国鉄改革具体化へ向けて第一歩を踏み出すことになっておりますが、私はここであえて国鉄改革原点は何かということを確認しておきたいと思います。と申しますのは、国鉄改革原則論段階ではなくて方法論段階だという御意見もありますけれども、そういう方法論をこれから検討するに当たりまして、やはり最終的には原則に照らして評価することが必要になってくると考えるからであります。  言うまでもなく、国鉄改革は、国鉄の窮状を打破いたしまして、納税者である国民に不当な負担を強いないようにすること、鉄道事業として確かな輸送サービスを提供できるようにすること、効率的な経営形態を確立して明確に経営責任がとれるようにすること、現在の国鉄職員雇用を安定し、働きがいのある職場をつくること、こういったことを目指すものでありまして、単に従来の延長線で対処するのではなく、国鉄事業を根本的に洗い直して、新たな発想と手法で鉄道事業活性化するシステムを再構築するものでなくてはならないと考えます。  さらに別の角度から考えますと、国鉄改革には次の三つの点が重要なポイントになると考えます。第一は過去の清算でありまして、例えば長期債務あるいは年金問題の処理といったことであります。第二は現状の打破でありまして、毎年膨大な赤字が出ておりますその赤字の抑制あるいは減量経営、さらに職場規律の確立といったようなことであります。そして第三は将来の展望でありまして、これは経営形態の問題などがそれに該当いたします。この点につきましては、私は臨調発足以前からこういったことがポイントであるということを訴えてきたつもりでありますが、一応臨調答申を拝見いたしますと、そういった角度で問題を把握されているのではないかと思います。しかし、いずれにいたしましても、今申し上げたような措置が一体となって初めて国鉄改革というのは実現するものでありまして、どれか一つが欠けても国鉄改革の前進は期しがたいと思います。  そして、当面の関心事は国鉄経営形態の問題だと思いますが、国鉄再建監理委員会といたしましては、従来の経緯、特に臨調答申尊重、あるいは昨年八月に出されました第二次緊急提言基本認識、こういうところから見まして、分割民営化方向答申をまとめられるものと予想されます。現在の公社制度のもとでは国鉄改革実現限界があるという点ではほぼ衆目の一致するところであろうと考えますが、そうなりますと、国鉄分割民営にしていくというのは私はリーズナブルであると考えます。特に、経営責任を明確化して効率的な経営形態のもとで鉄道事業活性化を目指すというためには、分割民営化というのは有力な手段であると言えると思います。ただ、この点につきましてはかなり議論の分かれるところでありまして、分割民営化というのはあるいはベストではないのかもしれませんが、ベターであることは間違いないわけでありまして、現在の時点では、多くの選択肢がある中でほかに選択すべきものが今のところ見当たらないように思われます。  問題は、具体的にどういう形の民営にするか、あるいはどのような分割を行うかということでありまして、この点につきましては現在国鉄再建監理委員会が鋭意作業中でありますので、その結果を待ちたいと思います。ただ、非常にさまざまな考え方、組み合わせがありまして、その中から最善の方式を導き出すというのは至難のわざであろうと思います。また、新聞報道などでその一端が伝えられておりますけれども、最終的にそれをまとめ上げるのもこれは大変なことだと察せられます。  そこで一つ言えますことは、どのような形の民営あるいは分割になるにいたしましても、分割民営ということになりますとこれまでと違ったシステムを構築するということになりますので、当然のことながらさまざまな問題に当面することになろうかと思います。その場合に肝心なことは、先ほど申し上げましたように、国鉄改革原点ということに照らし合わせてみることでありまして、分割民営化メリットデメリットよりも大きく、そしてそれらの問題点が決して乗り越えられない壁ではないということになりますと、分割民営化を採択するということになるのは一つの論理の帰結かと思います。  さらに、国鉄改革にとって重要なことは、当事者国鉄がどこまでこの問題にコミットするかということであります。  国鉄といたしましても、去る一月「経営改革のための基本方策」を策定いたしまして、その中で、民営化を志向したこと、地方交通線の分離など一種の分割を目指したこと、また要員を六十五年度で十八万八千人にするといったような点は評価すべきことだと思います。しかしその反面、この基本方策では民営化の内容がやや不鮮明でありますし、また、かつての国鉄再建計画と同じような方式をとっているというような点に問題がありまして、残念ながら、現在国鉄再建監理委員会が行っているのと同じようなスタンスで国鉄改革の問題と取り組んでいるようには言えないような感じがいたします。やはりこの問題では当事者である国鉄が積極的に参画することが不可欠でありまして、国鉄再建監理委員会あるいは運輸省、こういった関係機関がいわば三位一体のような格好で対応していくことを期待したいと思います。  それは、国鉄国鉄再建監理委員会答申づくりに協力するということだけではありませんで、今後予定される日程を考えましても、例えば法案化する段階、あるいは法案を国会で御審議いただく段階、そういう段階でもやはり国鉄がコミットすることが不可欠であると考えます。そういう国鉄の参画なしにはこの国鉄改革というものは実りあるものになりにくいと考えますだけに、国会におかれましても、今申し上げた三位一体化実現するよう格段の御配慮をお願いできると大変ありがたいと思います。  なお、最後に、数多い課題の中で特に余剰人員の問題につきましては早急に対策が確立されるよう、この点でも国会としての御配慮をお願いしたいと思います。これは雇用の問題でありまして、だれしも不安を募らせることでありまして、むしろ、この問題を国鉄改革の突破口とするぐらいのつもりで対応されることを期待したいのであります。  現在国鉄では既に二万四千五百人の余剰人員があると伝えられております。基本方策によりますと、昭和六十五年度には六万七千人に達すると言われておりますし、また見方によっては十万人を超すかもしれない、このようにも言われております。これは大変なことでありまして、例えば同じ交通関係を見てみましても、航空業界で最大の規模であります日本航空の場合総人員は二万人強でありまして、既にそれを上回る余剰人員国鉄の中に出ているということは、これはもはや社会問題に属すると言っても過言ではないと思います。場合によりましては特別立法を必要とするような事態であるとも考えられます。それだけに、立法府におかれまして主導的な役割を果たされ、この余剰人員問題を解決されることを期待いたしたいと思います。  以上、簡単でありますが、あえて国鉄改革にかかわる基本的な考え方に絞って意見を申し上げ、参考人としての口述を終わります。
  6. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ありがとうございました。  次に、鎌倉参考人にお願いいたします。
  7. 鎌倉孝夫

    参考人鎌倉孝夫君) 埼玉大学鎌倉であります。  それでは国鉄問題について参考までに意見を申し上げたいと思います。  私は直接交通問題の専門ではありませんが、広く経済学現状経済動向考える、そういう分析をやっております。国鉄問題を考える場合においてもそういう視点がやはり必要ではないかと思うんです。一つは、交通体系全体の中で国鉄をどう位置づけるのかという総合交通政策考え、それの実現を図っていく、その立場が必要だろうと思います。と同時に、さらに前提的には、今日の国民経済全体の動向及び政策動向の中で再建監理委員会分割民営化方向がどのような意味で打ち出されているのか、その辺をやはり明確に考えなければならないというふうに思っております。そこで、今言いました第二番目の問題の方から話をしていきたいというふうに考えます。  私は、国鉄分割民営化考え方基調といいますか、それは、今日資本主義の多くの世界で行われております政策基調基本的に一致しているいわゆる新自由主義あるいは新保守主義流れに即したものであるというふうに考えます。したがって、事は、国鉄問題、国鉄分割民営化するというだけにとどまらず、今全分野にこの基調が貫徹されようとしている、そういう問題としてとらえなければならないと思うんです。いわゆる新自由主義あるいは新保守主義流れ基調というものは、御承知のように、政府規制の緩和、それによって民間活力の強化を図り、市場原理を復活あるいは貫徹させて問題を解決していこうという方向だと言っていいと思います。しかし、その中で最も重大な問題は、直接市場原理では維持できない生活社会的条件にかかわる分野、その分野の中においてさえいわゆる市場原理を導入し、あるいは貫徹しよう、そういう問題があるということであります。  典型的には、教育問題あるいは医療問題においても市場原理を貫徹させるということになりますと、当然その市場原理基軸にして展開していくものは私企業ということになるわけであります。私企業でありますから当然利潤原理がその基準に置かれることになるわけであります。したがって、利潤原理基準にした私企業によって教育あるいは医療等々が賄われたときに一体どういう問題が出てくるだろうか。教育医療は直接は利潤採算原理にはなじまない、それで解決できる問題ではありません。したがって、どうしても社会的な共同事業として行われなければならないし、社会的な享受関係基本に置かれなければならないというふうに思うわけです。  私は、国鉄分割民営化方向考えたときに、その流れが、今日の臨教審の第一部会を中心に議論されております教育自由化論教育民営化論、その流れ基本的に合致しているように思う。しかし、それを推進していくことになりますと、それこそ直接の社会的な共同事業として営まなければならない、そうでなければ生活維持向上し得ない分野商品交換原理市場原理へゆだねられて、結局個々的にそれを自己負担によって維持されなければならないことになり、社会的に多くの人たちがそのような条件から排除される、その危険性を強く感じざるを得ません。  交通問題についても、今日各交通機関競争関係が非常に激化しておりますけれども、しかし、その中で交通社会的生活条件として位置づけなければならない、そういう分野であるというふうに思います。私事では済まない、コスト自己負担とその自己享受という関係では解消し得ない分野として交通問題をとらえなければなりません。したがって、いわゆる交通弱者と言われる者にとっても移動権が社会的に保障されなければならないわけでありますし、それは当然のことながら生きる権利の一部だ、重要な部分であるというふうに考えるわけであります。したがって、基本的に交通は公共的に維持されなければならないし、人々の移動する権利というのは一律平等に保障されなければならないというふうに思うわけであります。  私の基本的な立場は、人間が社会的に人間としてどのように生きるか、生きる場合にどういう条件が必要であり、それをどのように保障したらいいのか、そういう観点に立って交通問題を考え国鉄問題を考えなければならないということであります。したがって、やや積極的にその視点から国鉄公共事業としての意義、それを考えていきたいと思います。その点に当たって四点ほど提起しておきたいというふうに思います。  まず、いわゆる私企業に対する公企業意義というのは一体どこにあるかということであります。それは社会的生産活動や社会的な生活維持にとって不可欠であり、しかし直接に私企業的な利潤採算原理に合わない分野利潤採算原理に合わないけれども、しかし、社会的生活維持にとって不可欠であるという分野公的助成による公的事業によって維持する、そこにいわゆる公企業としての基本的な意義があるというふうに思います。もちろん私鉄も公共事業としての性格を持ちます。地域交通維持にとっては、とりわけ路線バス等中心にその維持にとっては公的助成現実になされておりますし、それは不可欠であるというふうに考えます。  公共企業体としての国鉄メリットは、全国的ネット維持し、さらにそのことによって地域間の交通格差をなくしていくこと、移動権均一的確保が図れること、そこにまず基本的に置かれていると言っていいと思います。この点からいいますと、後でお話ししますけれども、仮に経営形態変更が必要だという考えに立つ場合でも、公共性をいかに維持するか、公的助成をいかに確保し得るかが明確に確定されなければならないというふうに思いますし、分割については全国ネットとしての国鉄メリットをみずから放棄してしまうことになるわけでありまして、これはほとんど問題になり得ないことではなかろうかというふうに思います。  公共事業としての意義の第二として、地域ニーズに即した交通システム形成実現というのが、今日の国鉄のいわゆる官僚主義的な経営体質でできないということが言われるわけでありますが、しかし本当に地域住民ニーズに即した交通システム形成実現する点についても、利潤原理基準にした私企業ではなく、公企業としての交通において初めて実現できるものだというふうに思います。それはなぜかといえば、直接利潤採算に合わない分野においてもこれを維持、運用できるという点から言えるわけであります。この点については、地域住民参加を含めた利用者委員会等の設置が私は必要であると思うし、地域交通体系をいわば民主的に策定していく方向づけが必要であろうというふうに思います。  第三点は、特に人の輸送に関しては、交通の安全、保安確保ということが最も決定的に重要な問題であります。この点についても、私企業によって直接利潤追求が目的とされている場合よりも、公企業によって初めて交通安全、保安確保が賄い得るわけであります。人命尊重はどんなにコストをかけたにしてもそれにかえがたい、そういう性格のものだというふうに思われます。今日、駅の職員を含めて、あるいは車両の点検等を含めまして次々に人員が削減されておりますが、運転についてもそうでありますが、それによって交通の安全、保安にとって大変ゆゆしい問題が生じかねない、そういう状況だと言っていいと思います。さらに、下請化を進めていくことになるところから、例えば保線関係においても十分対応できない、それによって多くの事故発生が起こる、それは既に生じておりますし今後もその危険性は大変大きい。したがって、直接利潤原理に縛られ得ないでそういう人命尊重のための安全輸送を確立していくためには、基本的には公企業によって初めて実現できることであります。これが第三点であります。  さらに第四点として、各交通機関のいわゆる競争問題についてどう考えるかということを若干提起しておきます。  御承知のように、各種の交通機関が激しく競合しておりますし、国鉄役割、地位は相対的に確かに低下しております。その基本産業構造変化による輸送構造変化、それに国鉄が十分対応し得ていないという点が基本にあるというふうに思いますけれども、今日このような激しい交通機関競争をさらに促進する必要があるのか、あるいはむしろ逆にそれを規制しなければならないのか、これが決定的な問題だと思います。私は、むしろ無政府的な競争がいわゆる社会的、国民経済的な立場に立ったときにさまざまなデメリットをもたらしているという現実を明確にとらえなければならないというふうに思います。したがって、今日の問題は、交通機関の無政府的競争をどう規制するか、とりわけ、縦割り行政、それを解消しながらどう交通機関の調整を行い得る機構をつくっていくかということにあると思われます。それぞれの交通機関の特性を生かし、特に公共事業としての交通基軸に置きながら総合交通政策形成し、実現することによってしか交通問題は解決し得ないということを強調しておきたいと思います。  特に、その点に関しては、鉄道の低公害性エネルギー消費効率性、そういうメリット、それに対して、道路拡張を通した自動車デメリット、この点を何よりも明確にしなければならないと思います。現在既に道路拡張による自動車輸送飽和点限界点に達しつつあるのではないかと私は見ております。自動車輸送公害の激発などの外部経済を巻き起こし、エネルギー消費問題についても、あるいは用地問題についても大変効率性が悪いわけであります。そういう意味からいいましても自動車輸送限界がある。したがって、鉄道による大量輸送、これをむしろ充実していくことが二十一世紀に向かう交通問題の軸にされなければならないというふうに思うわけであります。  以上のような立場に立って、再建監理委員会国鉄分割民営化に対する考えを若干批判しておきたいと思います。  まず、公社形態民営化する、公社形態ではだめだということが強調されているわけでありますが、その理由として言われていることは、公社形態であるがために国会政府あるいは地域住民など外部干渉が避けられない点、経営責任の不明確と官僚主義的経営体質が温存されている点、労使関係の混乱、職場規律の乱れによって生産性が低いということ、関連事業拡大が制約されている等々のことが言われているわけでありますが、とりわけ重要な問題は、外部介入という問題、外部干渉及び経営官僚的体質ということだと思います。私は、外部介入経営の官僚主義的な体質は決定的に改められなければならないというふうに思いますが、しかし、それが公社形態自体に基づく問題であるのかどうか、それについて再建監理委員会は最初からどうも十分検討しないまま断定的に提起しているようにしか思われません。もし、外部介入を行うことを排除する、あるいは経営官僚的体質を排除することを現行のままでも徹底的に推進した上で、なおかつ公社であるがゆえの制約があるということが明確になったときには、これを解消していくことが必要であろうと思われますが、しかし、経営自主権を付与したりあるいは地方分権を確立したりしながら官僚主義的体質を排除し、そして地域住民ニーズ国民経済的な交通権確保、そういう総合交通政策を提起し、推進していく、そういう努力をしないまま経営形態変更によって何でも解決し得るというふうに考えたとするならば、ここで再建監理委員会が強調しているような従来の弊害は何にも解決されない、むしろかえって温存されることになるだろうというふうに思うわけであります。これが第一点です。  さらに第二点は、こういう外部介入を行った責任はどこにあるのか、あるいは官僚的体質を温存させた責任はどこにあるのか、そのことを明確にしないで解決の方向はとり得ないというふうに私は考えます。国鉄赤字基本的な原因をここでとやかく言うまでもありませんが、設備投資拡大、それをほとんど借金によって行ってきた。もし利子を国が負担したりあるいは借金による投資が行われないとするならば、ほとんど今問題になっているような重大な問題は発生しなかったと思いますし、ヨーロッパの諸国で行っているように、赤字の単年度処理が行われていくならば、債務累積という問題も起きないで済んできたということは明確であります。したがって、赤字債務処理基本問題は、国鉄に対して外部介入を行い、さらに設備投資借金で強要してきた政府あるいは大企業の責任として考えなければならないわけであって、したがって、赤字累積債務の処理問題についても、その責任において処理されるのが当然であります。  さらに何点か言っておきたい点がありますが、特に分割問題につきましては、これは管理限界を超えているとか、あるいは分割によって効率性が図られるとか言われておりますけれども、もう現実に既にさまざまな人たち専門家の分析も出ておりますように、分割に伴ってさまざまなデメリットが生じることは言うまでもありません。例えば重複投資をどう処理するか、あるいは分割会社にまたがる列車の運行をどうスムーズに実現していくか、そういう問題を含めて、分割によるメリットよりも、分割によってデメリットが生ずるということが非常に多い。ほとんど分割によるメリットは、再建監理委員会が強調しているような形では、ないと思われます。もし、分割によって地域関係競争をあおり、それによっていわば採算に合うところだけを維持していくということになったとするならば、これは地域交通、公共交通の全く破壊につながる以外の何物でもない。採算に合わない路線、それを放棄していくということにしかならないというふうに思います。  私はどうもいろいろ考えてみて、分割問題は管理限界というところから言われておりますように、管理限界も、例えば大企業が規模が大きいから管理の限界を超えるというのは余りにも単純な考えでありまして、分権を明確にするというようなことを実現していくならば、規模巨大による管理限界を超えたとか、あるいは非効率がふえるとかいう問題も解消し得る問題だと思うわけです。したがって、どうも分割問題は、労働者に対する管理、労働組合対策だけを目的としているように私は考えざるを得ないわけでありますが、労働者の管理や、あるいは組合組織の分断といいますか、分割ということだけを目的として、そして国民経済的な交通全体の問題を見失うということであっては、これは大きな禍根を残すものと考えざるを得ません。  最後に、監理委員会を初めとする、分割民営化が必要であるという考え方、それは私企業としての効率性、それを基本に据えて考えているだけでありまして、決定的な問題は、総合交通政策をどう樹立し、形成し、実現していくかという観点が全く欠如しているのではないかというふうに思われるわけであります。  以上で私の参考意見を終わります。失礼しました。
  8. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ありがとうございました。  次に、伊東参考人にお願いいたします。
  9. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 京都大学の経済学部の伊東光晴であります。  きょう私に当委員会が求められましたのは、四月十六日の当委員会における亀井国鉄再建監理委員長の答弁についての意見ということであります。  公社のあるべき姿、それが日本においてどのように実現されなかったかとか、あるいは一般に国鉄の求めるべき理念等々の抽象理論は私は今日申し上げないことにいたします。それらにつきましては、臨調発足に当たりまして、エコノミストの一九八二年の二月二十三日号及び三月二日号に、三公社五現業がいかにあるべきかというような一般論を書いてありますし、大都市の国鉄問題につきましては、昨年五月八日号のエコノミストに書いてあります。また、四月十六日の亀井委員長意見及びそれを補足するものとして、十九日のサンケイに出ましたところの本州四分割案につきましては、エコノミストの六月十一日号に意見を述べております。その一部のうち具体的な問題について申し上げざるを得ません。  さて、亀井委員長の本委員会における答弁及びサンケイ及び朝日その他の記事を見る限り、共通しているところがございます。それは地方線と大都市交通線を同一の会社が運営するということであります。  今ここに一つの本を持っております。それは「首都圏交通情報」と言われている本でありまして、まだ、ことしの運賃値上げ、それに基づく最新版が出ておりませんけれども、これはかなり東京都の人たちあるいは首都圏の人たちにおいて使われているものであります。これを見ますと、例えば横浜から東京に行くのにどう行ったならば一番早く行けるか、どう行ったならば安く行けるかということが明記されております。前の方に乗ってどこで乗りかえるということまで書いてあります。そうすると、早いコースは、横浜—東京間、大手町でもいいんですが、三十分で四百十円で国鉄であります。三十一分が横浜線利用。前の方は東海道線四百十円。だが安いコースは、五十一分かかりますけれども、二百八十円で東横線及び地下鉄でもって大手町まで来る。こうしたものが次々に書かれているのです。横浜—池袋間は国鉄利用五十一分で五百三十円。東横、山手利用の三百円等々というのが書かれている。国鉄値上げでその後もっとこれが大きくなっているのです。  さらに定期について申し上げますと、小田原から新宿まで小田急線を利用した一カ月の定期は八二・五キロで八千百円であります。だが国鉄で小田原から品川まで来ますと、七七・一キロにすぎないのに三万一千八百三十円です、この間の値上げで。したがって、小田急を利用して新宿まで来て、新宿—品川間の十・六キロ、六千円の国鉄の定期を買いましても一万四千百円でありまして、二分の一以下なのです。こうしたことが大阪圏、東京圏で生じている。余りにも私鉄と国鉄は大都市圏において料金格差が出ているということに御注意願いたいと思います。そして、このことは地方中小私鉄の場合は全く逆でありまして、私鉄の方が国鉄よりも二倍高い料金なのです。御注意願いたいのは、大都市圏におけるこのような私鉄と国鉄の料金格差は昔からあったわけではないのです。この間までは私鉄の方が高かったのです。それに対してある種の政策を打つことによりまして、私鉄の方が安くなるという政策をとったのです。運輸省は、通産が電力事業について行っているように、単純なる総括原価主義を認めなかったのです、大手私鉄については。そして、これを効率性を入れるというところの政策を世界で初めて導入することによりまして、大手私鉄の料金の安定化に役立たしたのです。  単なる分割によって経営効率が向上するものではないということは、我が国の電力事業が供給している電力の料金を先進国と国際比較をしてみれば明快なのです。アルミ産業と今言われている問題の産業に提供している我が国の電力は、キロ十四円であります。アメリカ二円、カナダが一円ないし二円、条件がかなり我が国に似ていると思われる西ドイツにおいて七円なのです。分割しても総括原価主義を続けているのは、効率という点において必ずしも向上するかどうかわからない。別の政策が必要なのです。私の学問である産業組織論で洗った限り、市場パフォーマンスは日本の電力会社は必ずしもよくない。したがって、分割しただけでは市場パフォーマンスは向上しないということを我々は注意しなければならないと思います。  そして、もしこの国鉄に対して問題を考えるならば、地方の過疎地域と大都市との経営環境の著しい違い、それに合わせる政策を打たなければならないんです。そうしなければ、大都市が今非常な混雑をきわめ、巨額な設備投資を必要とするとき、それについてもまたおくれをとってしまうのです。大都市だけではありません。名古屋—京都間について私たちの教えている学生は国鉄を利用せずに高速バスを利用するというのが一般化になっておりまして、このようなことを放置するならば、大都市間輸送においても国鉄はやがて追い込まれるのではないかと思います。  さて、この場合、地方交通線と言われている輸送密度八千人以下四千人まで、これを抱え込むという点において、亀井委員長考え方は、かつての国鉄考え、これを補助によって運営するという考え方と軌を一にいたします。だが、このような輸送密度は私鉄に関する限り成り立っております。なぜ私鉄において成り立ち、国鉄において成り立たないのか。それは経営分析をやりますと一番効くのは料金の格差であります。私鉄は大都市と地方私鉄とにおいては三倍の料金の格差があるのでございまして、賃金とか、目の色を変えて働くかとか、そういうようなものが大きく効いていないのです。過去債務そのほかというものはもちろん問題を外にはじきまして、一番環境に合った料金を決めるということが非常に重要だと思います。  国鉄再建監理委員会緊急提言、五十八年八月二日は、このような考えに立ちまして地方交通線を分離するということを決定したのです。伝えられるところ、今回の国鉄旅客鉄道事業再建基本方向案、それも一般論のところにおいては、「採算線区から非採算線区への内部補助は、機能又は旅客流動上密接な関連性を有するものに限ることを基本とすべきである。」というぐあいに書きながら、その内容については、地方交通線を幹線において補助するという形になっております。このような矛盾したものを私は理解することができない。今日国鉄問題を考える場合において、地方交通線は分離し、そしてそこにおけるところの経営環境に合い、それに合った路線ダイヤをとり、地方の足として経営的に成り立つような再建をしなければならないと思います。  私は、労使が努力しながら輸送密度二千人でこれを維持しているという大井川鉄道の労働組合の行動というのを見てきております。こうしたものを例として挙げておりますけれども、こうした分野については、分離し、その経営に合うことによってこれを維持し続けなければなりません。極端な場合を考えますと、輸送密度百八十人、わずか百八十人のところには、レールバスを動かして、地方公共団体との協力で最後の鉄軌道になっている南部縦貫鉄道も存在するのです。ここに南部縦貫鉄道経営分析そのほかを私は持っておりますけれども、そういうような極端なことを私は国鉄に求めているのではないのです。この四千人から八千人という点について依然としてこれを他に依存する、それでいいのであろうかどうかについて疑問を提出せざるを得ないのです。  問題は地方交通線だけではありません。幹線についても大きな赤字が出ていることは御存じのとおりです。それは新幹線が敷けるならば、新幹線それ自身は黒字でありますけれども、在来線が大きく落ち込むことによりまして新幹線の投資効率は赤字であるということは、昭和四十五年ごろ私は指摘いたしました。新幹線網の拡充は国鉄財政を危機に瀕せしめる、そしてそのとおりになってきているのです。この在来線の再建のためにどうしたらいいかというようなことも過去に書きましたけれども、こうしたものを含めて、我々は分権的な経営、それを追求していかなければならないのです。しかし、監理委員会分割案、それを見て重要だと思われることは、第二の点でありまして、雇用問題及び人件費の問題であります。  私企業であるならば、人員縮小によりまして再建することは可能かもしれません。しかし国鉄の場合においてはそれは不可能であります。なぜならば、既に民営化が行われましたところの電電公社、たばこ専売、この二つの場合も、民間企業とはいいながら、民間企業が負担しないところの負担を人件費の点において負うていることであります。つまり、かつて恩給の権利を得た人たち、それがやめておりますけれども、昭和三十一年以前にやめた人については、恩給負担金を電電は本年度三十六億円国庫に出しております。それだけではなしに、四百五十億円の、共済、恩給両方の権利を持っている人の恩給分及び旧共済分が人件費の中に隠れております。日本のたばこは、こうしたものを負担しながら外国たばこと競争するという、電電は、民間企業として参入する企業に実は軍人恩給分までも給与費の中に入れ込んで競争せざるを得ないという逆差別がここに存在しているのです。  これを国鉄について調査いたしますと、それは恩給負担金は五十七年、私は外から見なければならないので過去の統計しか手にすることができませんが、百三十四億円であります。そして恩給及び共済両方の権利を持っている人間の恩給分十四万人、九百五十五億円、旧共済分二千八十九億円、軍人恩給十七万人分、二百四十六億円、満鉄そのほか一万人分、二十二億円等々、これらを負担しているのです。そして、これが民間企業になりましても電電、専売の場合はこれを引き継ぐという形になっております。このような金額は、五十八年度計算いたしますと五千四百億円、これが人件費の中に入っているのです。五十九年度約六千億円でありまして、もしこれが民間企業であったならば厚生年金になりまして、その負担分は幾らになるかというと六百四十億円にすぎないのです。こうした負担を民間形態に移行しても依然として日本たばこ産業株式会社やNTTのように負担させ続けるならば、国鉄人員整理によってこうした人件費が増大することになって、決して人件費を削減することにはならないでしょう。  もし、伝えられるように、十八万八千人の体制にいたしたといたしますと、働いている人間が三倍のOBの共済そのほかを負担しなければならないことになるのであります。こうした負担について、利益を上げているところのNTTそのほかとは違いまして、国鉄であるならば、特別立法なしにどのような企業形態をとろうとも再建することは不可能であろうというぐあいに思います。  もちろん負担はそのようなものだけではありません。民間企業に移行するといたしますと、法人税、市町村民税、事業税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、特別土地保有税、事業所税、水利地益税、共同施設税、これらが負担させられます。納付金は固定資産税にかわるものでありまして、五年間二分の一というのが電電でありましょうけれども、しかし利潤のない国鉄にこうした負担が続き得るか、これもまた専売そのほかと違いまして特別立法を必要とするかと思います。引当金、これが新たにつきます。これも電電の場合についてかなりの額になっております。労災の費用が新たに加わります。今まで七億程度に当たるものが八十億の労災の費用を払わなければなりません。企業会計原則への公社会計原則からの転換は、費用項目をまた増します。  こうしたことを電電について私は追っておりますと、国鉄の民間形態移行については特別立法なしに到底不可能だ。それを再建委員会はどこまで詰めておられるか。少なくとも専売公社そのほかについては詰めることなしに移行したのではないかと思います。  雇用問題については、既に参考人の方から話がありました。エネルギー転換対策による石炭問題については、原重油関税を原資とするところの対策が打たれました。そうしたことがまた打たれない限り国鉄雇用問題は解決しないというぐあいに思います。  さて、本州における分割問題であります。この分割問題について、首都圏における分割、近畿圏における分割が一部伝えられました。これはサンケイ新聞に載ったものであります。朝日新聞そのほかに載りましたものは、ここの分割はされていないことになっております。  この分割で、料金精算は事実上不可能であると私には思えます。現に国鉄と私鉄との相互乗り入れ、地下鉄との相互乗り入れは目の子算で行われているのでありまして、これが精算が正確に行われているのではありません。それは不可能なことなんです。そして、伝えられるところによれば、それは国鉄が事実上不利な条件であるがゆえにほかがのんでいるという形でありまして、非常に流動性の多いところ、それはとても分割して精算事務ということは行えないのです。したがって、もしも分割をするとするなら、九九%が域内循環であるところの北海道とか、あるいは九七%であるところの四国であるとか、それよりやや落ちますけれども、九州というのは分離することが可能であるにしても、幹線におけるところの分割ということが技術的に可能であるかどうかということは問題なのです。コンピューター利用によってそれは可能であるということが言われますけれども、銀行の送金事務一つをとりましても、これがどんなにひどいコスト上昇をもたらしているかという計算を私はしておりますけれども、コンピューター費用が非常に高くなったということが言われますけれども、一つのサービスごとにどれだけの費用がかかっているかということの計算なしに原価計算は意味がありません。  こうしたことを勘案いたしますと、旅客流動性の大きい幹線におけるところの分割というものは難しい。ただし、ペーパーカンパニーだけで料金格差をつけるという点であったならば可能かもしれません。  さらに、再建監理委員会は、五万人が管理限界であると言われております。しかし、戦後のアメリカ経営学の到達したところのものは、それは二十万人、三十万人の巨大企業を組織によって動かすという形でありまして、IBMがその一例であります。決して巨大であるがゆえに運営できないというものではないのです。問題はその経営の中身であろうかと思います。  私は、この監理委員会考えというのを見まして、どうしても国鉄を再建するためには、環境に合った料金体系というものをつくるために、地方交通線分離、それによる経営の再生化、それを一方において行うと同時に、幹線部門については一貫した運営を行うと同時に、その内部を分権的な組織によって活性化しなければならないと思います。例えば、郡山を中心に磐越東線、磐越西線、東北線、これを十キロないし十五キロに切りまして、そこに地方の住宅政策とドッキングさせながら、三・五キロ置きの駅間間隔の間に新駅をつくり、そしてここをミニ首都圏化のような通勤体系に変えていくというようなことが必要だと思います。運政審は、前回の委員会の報告におきまして、地域旅客の問題について、ミニ首都圏化が地方中堅都市において必要だ、そしてこれを首都圏のような通勤対策路線として再建することによって幹線の活性化を図ることなしには再建できない、そのために分権的経営を行わねばならないということを提起したはずであります。  こうしたことを含めて、この国鉄再建は容易ではありませんけれども、具体的、技術的問題について多くの問題があり、決して理念やイデオロギーによって処置することができるだけの問題ではないということを申し上げて、意見を終わります。
  10. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ありがとうございました。  次に、山口参考人にお願いいたします。
  11. 山口孝

    参考人山口孝君) 山口です。  今まで三人の参考人から、私も大変貴重な意見として伺っておりまして、最後になりましたので、私は大学の方で会計学と経営分析論という講義を担当しておりまして、そういうようなものを研究しておりますから、ここでは国鉄の会計制度及びそのいわば仕組みの中にこれまで盛られておりました金額、数字、これを分析をいたしまして、赤字の原因がどういう制度のもとでつくられたか、それは金額の中でどういう形であらわれているか、これを明らかにしてみたいと思います。そのことはまた今後国鉄を再建していく上で大事な問題だ、こういうような考えで申し上げたい、そう思っているわけであります。  これはもう御承知のとおりでありますけれども、国鉄赤字は、一番直近の一九八三年度において一般会計だけで一兆六千六百四億円であります。これに、御承知の特定債務整理特別勘定に棚上げした債務の利子三千四百五十七億円を合計すると二兆円を超すということであります。こういう赤字が年々出ておりますから、赤字の累積額でありますが、これは繰越欠損額という形で表示されておりますが、これが一般会計では十一兆八千七億円、それから、これまで処理されました六兆四千四百七十一億円を含みますと、赤字の累積額は十八兆円になる。こういう赤字が出ました原因は、御承知のとおり、多額の設備投資を実施したわけでありますが、これがほとんど借入金で行われました。この結果、一般会計で十四兆六千六百十一億円、棚上げ分の五兆三千二百二十一億円を含めば二十兆円になるということでありまして、この二十兆円をどう処理するか、大変な問題になっているわけであります。  私は、このいわば毎年の巨額な赤字、累積欠損及び長期債務、この原因は三つの面から見ることができると考えております。その一つは、言うまでもなく、経済環境とそれから政府の財政政策、こういうようなものがあるわけでありますが、この問題についてはあえて私はここで触れないでおきたいと思います。むしろ私の専門であります財務会計制度、これが一つの原因になっているということ、及びそのいわば財務会計制度の枠内でどういう形で赤字が発生したか、この面に触れていきたいと考えております。  戦後の日本の財務会計制度を大きく変えたのは、言うまでもなく、公共企業体へ日本の国有鉄道が変わったわけでありますが、その際にいわゆる企業会計の制度を導入したということであります。ところが、御承知のとおり、国鉄は、国鉄法では「公共の福祉を増進することを目的」とするというふうに言っているわけでありますが、この公共企業体である国鉄に対して、民間企業の営利原則でありますところの——国鉄の場合には公共企業の原則でなければいけないのに、民間企業の営利原則によるところの財務会計制度を導入したということであります。公共企業体であるという場合には、当然そこでよるべき原則がある。これは例えば輸送需要の充足の原則ですね、いわゆる国民の要望する輸送需要をどう充足するか、こういうことが非常に大事な原則でありますし、あるいは観点を変えれば、公共福祉実現原則、こう言われるべきものを追求する。もちろんその場合には能率的な運営によらなければいけませんが、これが公共企業体である国鉄原則でなければならなかったわけであります。ところが、先ほど申し上げましたように、一九四九年、昭和二十四年から公共企業体として国鉄が独立いたしまして、受益者負担制と独立採算制、こういうアメリカの公共企業体経営原則を基礎にして、特に企業会計の原則を受け入れてしまったわけであります。  ところで、このいわば民間企業の企業会計の原則、これはどういう原理から成っているかというと、これはもう諸先生御承知のとおりでありますが、これはいわゆる投下資本の回収計算であります。つまり、株主から時価発行増資とかいろいろな形で巨額の資本が集中しますから、これにつきまして資本を維持し及びそれを回収する、これが企業会計の大原則であります。と同時に、また株主に対してどれだけ配当ができるか、これは配当可能利益でありますが、この配当可能利益を算定する、こういう大目標に基づきましてこの企業会計原則ができ上がっているわけでありますが、この企業会計原則国鉄が採用してしまった。先ほど伊東参考人がおっしゃったいわゆる退職給与引当金というような制度は受け入れることができませんでしたけれども、発生主義会計ということで、御承知のとおり、いわゆる減価償却ということもやれということで、巨額の設備投資に対する減価償却を年々処理しなければいけない、こういうことにもなるわけであります。  先ほど申し上げましたように、企業会計の原則は、いわゆる企業の努力、これを普通、コストといいますが、それと、それから上がった収益を対応しまして、その差額としていわゆる利益を計算する、こういう仕組みになっていることは御承知のとおりであります。そしてその純利益のうち社外流出分を、例えば配当とか役員報酬を除いたものを次期繰り越しとして留保していく、もちろん欠損が出た場合にはそれを次期以後に何とか回復する努力をする、こういう仕組みになっております。しかし、この計算は企業の社会的責任というような観点はやや希薄であります。これは今申し上げた株主に対する配当可能利益の算定と、それから強いて言えば債権者の保護、こういうことからでき上がっているわけです。したがって、このような企業会計原則で算出されました赤字、黒字はすべてにおいて公共性の指標とはなり得ないというふうに私は考えております。  したがって、まだ開発されておりませんけれども、公共企業体の会計は、公共的な努力というものと公共的な成果、これは例えば公共の福祉と言ってもいいと思いますが、これを測定する、いわゆる公共的な努力と公共的な成果、ベネフィットといってもいいと思いますが、これを測定する体系が望ましい、こう考えておりまして、今のところこれに当たるのは、強いて言えば我が国の予決算制度、それから例えば西ドイツなりで行われておりますところの公共経済的領域と企業的領域及び国家的領域、こういうふうに西ドイツの国鉄では三つの種類の違った領域を分けまして、そしていわばコストとその収益を測定をする。そして、今、企業的領域においては民間の私鉄と競争をして利益が出るか出ないか、ここで成果を問う。しかし、いわば地方交通線のような公共的領域については、そこでは公共的な便益がどれだけ達成できたかで評価をする。同時に、基礎的施設、いわゆるインフラストラクチャー部分については国の出資ということで、その結果についての利益は当然出ないわけでありますが、そういう三つの体系で区分会計制度をとっておるわけでありまして、そして、そのいわば公共的部門と国家的領域部門については一兆円を超す補助金を出す、こういうふうな仕組みで国民の支持を得ている、こういうことであります。  ところが、我が国鉄の場合にはそういう制度になっていないわけであります。例えばその一つの例といたしまして、御承知の欠損金とか利益についての繰り延べ制度がとられているわけであります。御承知のとおり、国鉄では、期間純損益が出ますと、この損益は利益積立金または繰り延べ欠損金として繰り越される、こういう形になっているわけでありまして、これは先ほど参考人からも出ましたけれども、この欠損につきましては、西ドイツ、フランス、イギリスなどのヨーロッパの国有鉄道ではこれを次年度で消す、こういうことになりますから、欠損は前年度分しか残らない、こういう制度であります。日本でも、地方公営企業では今でも、公共的な見地から、欠損が合理的なものであれば単年度もしくは次年度で消す、こういう制度をとっているところがかなりあるわけでありますけれども、国鉄はこの欠損を繰り延べる、こういう制度を持ったわけであります。  もちろん、国鉄は、しばらくではありましたけれども、御承知の、「国有鉄道に損失を生じた場合において特別の必要があると認めるときは、その損失の額を限度として交付金を交付することができる」、こういう規定を持っていたわけでありますけれども、この規定を改定しまして、企業における損益の処理法、繰越損益、こういう処理法を導入してしまったわけであります。その際にも、国会の答弁の議事録を見ますと、いや赤字が出たときにはそれはしかるべく処理をする、こういうような政府答弁もあったわけでありますが、結局それを処理しない。まとめてその後二回ほど棚上げをするという手続が確かにございましたけれども、次年度に処理をする、こういうような処理方法はとらなかったわけであります。ここが大きな問題点である、こういうふうに私は考えているわけであります。  それからもう一つ、これはもう御承知のとおりでありますけれども、公共負担国鉄はかなり大きいわけであります。しかし、それに対してヨーロッパの国有鉄道に比べますと案外助成額が少ない、出資額はほとんどない、こういう点にもかなり問題があると考えざるを得ないわけであります。御承知のとおり、国鉄公共企業体としてもうからない路線をかなり敷設し、維持しております。また多くの運賃の割引制度を持っております。東海道新幹線のようなもうかる部分の利益をもうからない部分に回す内部補助もやっておりますが、これではとても十分ではありません、限界があります。したがって、この公共的な部分については補償や助成、出資が合理的になされなければいけないわけであります。  これは国鉄の労働組合その他が出したもので、私が検討しまして、一体どのくらいの公共負担国鉄がしているかというのを見ますと、ほぼ二兆円を超している、こういうふうに言われております。この公共負担額が二兆円でありますが、これに対して補助金は、先ほどの特別勘定を含めて七千十八億円であります。そういうことでありますから、これはもう極めて助成金が少ないわけでありまして、八三年度におきまして営業収入の二兆九千六百六億円の二三・七%であります。これに対して、御承知のとおり、イギリスは四千百五十四億円、金額は少ないんですけれども、補助率は五〇・六%であります。それからドイツでは一兆二千七百六十六億円で七四・五%、フランスは一兆二百二十六億円で七五・二%になっているわけであります。だから、これからも、日本の国鉄がいかに少ない国の補償や助成で公共的な負担を負っているか、これが明らかであります。その辺の問題を慎重に考えなければいけないだろう、こう考えるわけであります。  それから、先ほど申し上げましたように、日本の国鉄は巨大な設備投資借金でやってきた、これはもう十分御承知のとおりであります。したがって、このいわば長期債務の累積及び借金による設備投資というのは、個別企業でも同じでありますが、二つの重要な要素を生むわけであります。それは、設備投資をやりますと減価償却費が非常にふえるという問題があります。それからもう一つは、巨額の支払い利子を生む。両方とも、減価償却費も支払い利息も固定費でありまして、これはいわば営業収入が減っても絶対に減らないという、そういう費用要素であります。これが赤字のほとんどの原因になっている。このことは十分御承知のとおりだと思います。  例えば数字で申し上げますと、国鉄長期債務は先ほど申し上げたように二十兆円にも達しているわけです。そしてこの年々の利子は、八三年度だけ、単年度利子で九千七百八十五億円という巨額なものになっているわけであります。これは御承知のとおり、一般会計における純損失一兆六千六百四億円の五八・九三%にもなるわけであります。それは、別に特定債務整理勘定の利子三千四百五十七億円を含めれば一兆三千二百四十二億円にもなる、こういうことであります。この長期債務のほとんどは設備投資借金とそれから利子で占められております。これも試算がありますが、御承知のとおり、長期債務二十兆円のうち十三兆五千億円は設備投資のための借入金であり、同時に支払い利息が六兆七千億、これを合計しますと二十兆円ぐらいになる。ですから、長期債務のほとんどは設備投資とその利子から生み出されたものだと言わざるを得ない、こういうことであります。  こういうような膨大な設備投資はなぜ行われたか。これは御承知のとおり、日本のいわば高度成長政策のもとでいわゆる設備をどんどんとふやした、新幹線を引く、列島改造計画に従うところの大きな規模の設備投資が行われた等々であります。こんなようなことからこの赤字の原因が生じたわけであります。同時に、先ほど申し上げました減価償却、これも八三年度には五千八百七十五億円という巨額のものになってしまったわけであります。  それから、先ほど伊東参考人地方交通線を分離しろというふうにおっしゃっているわけであります。この地方交通線赤字が問題になるわけでありますが、実際にはいわゆる幹線系区の方の赤字の方が大きくて、年々その増加率が多いわけでありますから、幹線系区の赤字を克服しなければ国鉄全体の赤字はどうにもならない、むしろ地方交通線では赤字を出すにも出せないところまで私は合理化が進んでいる、こう考えるわけであります。しかし、私の専門のいわゆる会計計算、こういう点からいいますと、どうも地方交通線のあの赤字の額というのは実態に合っているだろうか、こういう疑問が生ずるわけであります。これはなぜかといいますと、この地方交通線の線区別損益計算というのは三つないし四つで、どうも赤字がふえるような仕組みになっている、こう考えるわけであります。  その一つは、いわば運賃収入の算定におきましても、これも皆さん御承知だと思いますが、現行の制度を採用する前は、全体の地方交通線の収入の一〇%を発駅収入という形で発駅に帰属させる、それから六%をいわば着駅収入、こういうふうにしております。したがってその差額の八四%を距離に比例して分けるという方法をやっておりましたが、現行ではそれをもうすべて距離でやるということでありますから、培養線の役割をしております地方交通線で一生懸命駅員が団体旅行を募集しましても、その収入の多くは幹線系区に流れてしまって地方交通線の収入がふえない、こういう仕組みになっておりまして、このことが非常に困るわけであります。  それから例えば金利ですが、先ほどの膨大な金利の割り振り計算などにおきましても、赤字が多いところは借金が多いんだ、それは利子を負担するのは当然だという形で、借金が、赤字が多いのに比例して利子負担を大きくする、こういういわば配分方法をとっております。あるいは発電設備、送電設備のような共同の設備の費用の配分ですね、減価償却費の配分、このことにつきましても、正常の操業度に基づいてあらかじめ分ける、こうなりますと、地方交通線は正常操業度までいかないということになりますから、過大な負担になり、正常操業度以上の幹線系区では相対的に負担が小さくなる、こんなようなことがあります。  それから、関東では木原線というのが赤字であると言われております。そしてその隣に民営鉄道で小湊線がある、これが黒字だ。なぜか、このことをある新聞社が調べられたわけでありますけれども、その際に、やはり人件費が多いということが問題になりまして、これをよく調べると、やはり人件費に対しても、先ほど少し出ました恩給とかあるいは退職金を含むところの、特定人件費を含むものが配分されていくということなものですから当然高くなる。したがって、分割をして人件費が下がるということは、そのことはいわば特定人件費部分を既存の国鉄におぶせてしまうということにならざるを得ない、こういう問題をどう考えたらいいかということが残るわけであります。  時間が来ましたのであとは結論を申し上げておきますと、要するにこの財務会計制度を変えなければどうにもならないだろうと私は考えております。そのためには、今申し上げましたことを含めて総括的に申し上げれば、第一に、長期債務と繰越欠損についての処理の制度を確立しないといけないということです。  それから二番目に、基礎施設の国による建設、維持原則を立てる。基礎施設はもう本当に必要だから道路と同じように国がつくるということ。それから、そういう形でつくられたインフラストラクチャーについての減価償却についてはこれをやらないでいい、これの免除。それから、他の上物の部分についてもややこれは耐用年数が短過ぎる。国鉄のような大世帯の場合には、使っている機関車は、そこで使えなくなっても次々と地方へ持っていきまして、意外なところで古いのにお目にかかるわけです。ですから、耐用年数が長いわけでありますから、現行の税法の耐用年数を基準とした減価償却制度を改定した方がいいだろう、こういうことであります。  それから第三番目に、公共負担分についてのきちんとした補償や助成制度を確立することが非常に大事だ、こう考えております。  それから最後に、予決算制度の再評価です。国会で予算を立てて、そしてそれが正しいものとして行われている限りにおいてそれを認めていく。赤字、黒字論よりも予決算制度を再評価するということ、及び西ドイツなどでやられているような区分会計制度を採用して、やはり公共的負担部分というのはこれだけで、これはやむを得ない部分である、それから基礎施設については政府が出資する、こういうような制度を採用する等々であります。  時間がございませんで、金額の中身についてはちょっと申し上げられませんで、これはまた御質問のときに答えたいと思います。  時間が超過して申しわけございませんでした。
  12. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。  午後零時五十分再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十四分休憩      ────・─────    午後零時五十一分開会
  13. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、運輸事情等に関する調査のうち国鉄問題に関する件を議題といたします。  これより参考人に対する質疑を行います。  なお、念のため参考人に申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 小柳勇

    ○小柳勇君 どうも貴重な御意見を拝聴いたしましてありがとうございます。私は鎌倉先生と伊東先生に質問いたします。時間が十分しかございませんので、両先生に対する質問を一括して申し上げて先生の御意見をお聞きをいたします。  まず鎌倉先生に対しましては、一つは、総合交通体系の確立が急務である、そういうお話がありました。私どもも同感であります。幸い、昨年の七月一日から運輸省が機構を変更いたしまして政策官庁として発足している。したがって、もうあれから一年になりますから、総合交通体系なるもののアウトラインでも国民に示しながら、国鉄の使命、国鉄の位置づけは総合交通体系の中でどういうところにあるべきだ、そしてそういう計画の中でこのように国鉄再建をすべきである、そういう論議をこの際にこそしなければならぬと思います。百有余年の日本の経済の動脈として果たしてまいりました鉄道の重要な役割を分析し評価して、これから二十一世紀に向けて日本の経済の動脈として鉄道がかくあるべきだ、したがって現在の欠陥はここだからこういうふうに国鉄を再建すべきである、そういうふうに総合交通体系の中で国鉄を位置づけして、そして日本の経済の動脈として再建する、そういう方向を出すのが私は監理委員会の任務だと考える。にもかかわりませず、初めに分割民営ありき、このような発想自体が私は監理委員会に対して非常に不満であります。  したがって、総合交通体系の中で国鉄の位置づけをどうするのか。特に、最近運輸省が臨調行革に名をかりまして規制緩和など自由競争、弱肉強食の行政指導をやり始めている。したがって運送業界で非常な秩序の破壊がなされる。そういうものを含みまして、さっき総合交通政策の確立を先生おっしゃいましたので、いま一歩踏み込んだお話を承りたい、これが第一点であります。  第二は、貨物輸送鉄道でやることのメリットデメリットであります。今の車社会、もう道路にいっぱいであります。朝晩車の渋滞であります。五キロ、十キロの渋滞はもう当たり前になっている。昨年以来私は小さいパンフレットを出しまして、現在の鉄道輸送はトンキロで七%に落ちています。それをずっとほうっておきますと四%ぐらいに落ちる危険性があります。一方、車の生産は年間千百万台、半分は外国に出しますけれども、四百万台ないし五百万台が現在上に増車されてくる。また道路の拡幅などほとんどもうおぼつかない。国道、県道にいたしましても、精いっぱい道路予算をつけましても六千キロぐらいしかならないのです。したがって、これから五年、十年このままいきますならばトラック輸送では長距離貨物は非常に困難ではないかと思う。したがって、まだ東海道線など鉄道の貨物輸送の余裕がありますから、トンキロ一〇%ぐらいまで鉄道貨物輸送を上げるべきだと、そういう見解であります。先生の論文の中にも、拠点間直行貨物輸送によって資本も利益を得ると書いてございます。鉄道貨物輸送に対する御見解を承りたいのであります。  それから伊東光晴先生には、地方交通線整備確立の問題をお伺いいたします。私ども党の方針、第一次草案で、地方交通線は、廃止はもう第一次線は大体終わりましたが、第二次以降一切凍結をして五カ年間の期間をかしてもらい、時限立法によりまして、地方自治体を中心にする整備委員会をつくってそして地方ローカル線を全部見直す。現在のローカル線廃止、特定交通線の廃止の方法は、国鉄が主体となりまして、もちろん地方協議会は地方運輸局長が座長ではありますけれども、国鉄が発動して、国鉄がこの線はもう廃止するという前提に立って協議会を開きますから、地方自治体は参加したくない、参加できないのです。地方住民はローカル線が欲しい。さっきのお話でも、八百人でもやっていけるではないかとおっしゃっている。したがって協議会に地方自治体も住民も参加しない。そこで国鉄は二カ年たったら廃止しますよとおどしている。こういうような公共輸送機関である地方ローカル線、言うなら大きな意味の社会福祉事業です。それを一方的に廃止するということは許せない。しかし、いろいろ時代の変遷によりまして、地方によってはあるいはもうこの線はほかの方法がいいなというところもあるかもしれぬ。だから我々としては、地方自治体を中心にする地方交通線整備委員会をつくりまして、五カ年間の期間をかりて整備し、あるいはどうしても必要でないものは廃止する、そういう方途をとりたいという案を出しているところであります。  この地方交通線に対しまして、先生の論文も拝読いたしております。したがいまして、私どもの考えております地方交通線整備の方法について御意見をお聞きしたいのでありますが、特に、先生の論文の中にもありますように、今県に参りますと交通課というのがありますけれども、鉄道のこと、国鉄のことはほとんど関知していないのです。これだけ地域の住民が地方ローカル線を利用しておるにかかわりませず、県あるいは市のそういう鉄道対策課などはない。こういういびつな、時代的に考えまして全く地方行政が行き届いていない点を痛感いたしておりますから、地方ローカル線に対する私どもの考えを今述べましたが、先生のお考えをさらにお聞きしておきたいのであります。  以上三問であります。
  15. 鎌倉孝夫

    参考人鎌倉孝夫君) 第一点目の総合交通体系の確立という点でありますが、既に一九七〇年の運輸省の諮問で、陸海空の各種交通手段を合理的な分担によって組み合わせて、高度にシステム化された交通体系を確立するための総合交通体系のあり方、それに対する運輸政策審議会答申というものが行われ、それ以降徐々に具体化されてきているわけでありますが、ところが総合交通体系が一向に進んでいかない。一向に進んでいかない原因は何かということを私たちはまず明確にしなければならないと思うのです。一つは、各交通機関それぞれに属しているいわゆる行政の縦割り的な機構、これを変えていきながら総合交通体系を策定し得るような行政機構をつくらなきゃならないのが第一点。それからもう一つは、国民経済全体のあるべき交通体系形成していく際に、それぞれの地域と、それから地域間を結ぶ交通、それから全国にわたる交通、そういう大きく言って三領域が必要ですけれども、基本的には、それぞれの住民のニーズに即した地域交通体系をどう形成していくのかということが基本に据えられなければならないと思うんです。  そういう意味で、私は、いわば行政の上からの交通政策形成というだけではなくて、下からの、例えば地域交通利用者委員会等をつくりながら、そこから、その地域における鉄道それからバスあるいはトラックなり、そういうものの調整を行っていき、その上で地域交通のあるべき姿を策定していかなきゃならないし、同時に、地域間の交通についても基本的には地域の利用者委員会などを通しながら具体案を調整し、形成していく、それを踏まえてやはり全国的な規模の交通政策形成していくことが重要ではないかというふうに思います。そしてその際に、少なくとも地域間の交通、それから全国にわたる交通については、基本的には、国鉄が現在持っております全国にわたるネットワークを使った鉄道輸送というのが基軸に置かれる必要がある。それは国民経済全体からいいましても、自動車あるいは航空等の輸送と比べまして鉄道輸送というのは種々の面で、例えば低公害であるとか、あるいは空間の利用の問題なりエネルギー効率の問題なり、種々の問題で鉄道輸送が最大のメリットを持っているというふうに思いますので、鉄道輸送基軸に据えながら全国的な総合交通体系を策定していく必要があるのではないかというふうに思われます。  いずれにしても、総合交通体系形成していく、何といいますか、制約になっている関係が何であるかということをまず明確にし、その解消を図るということが必要ではないだろうかと考えております。  それから第二点目の貨物輸送でありますが、貨物輸送につきましては、特にトラックの輸送の激増という問題、それから貨物の質の変化、量も含めていいと思いますけれども、その激変によって国鉄に対する貨物需要が大幅に減ったという側面はやはりこれは明確だと思うんです。しかしその中でも、赤字が出たということで今やられておりますのは、特に小口の、そして地域的な、農民やあるいは零細企業やあるいは地域住民が必要とする貨物輸送をどんどん切って、そのかわりに民間のトラック輸送あるいは宅配、そういう方向に転換しておりますけれども、これでいいのかという問題が私はあると思います。公共性を明確に実現していくためには、貨物輸送についても、特に地域輸送なりあるいは小口、家庭の必要とする輸送なり、そういうものをこそ確保していかなければならないわけです。それに当たって幾つかやっぱり解決しなければならない問題があろうと思います。  一つは、例えば民間宅配便に国鉄が大きく競争に破れつつあるという状況がありますけれども、その際に、民間の、例えばヤマト運輸などの労働者の労働条件がどうであるか。非常に長時間労働、そして厳しい労働条件、低賃金、そういう状況の中で輸送をせざるを得ないという状況があるわけです。したがって、そういう民間の宅配労働者の労働条件、そういう低い労働条件競争する形で国鉄貨物輸送が供用されていくならば、労働条件なり賃金なりがどこまで切り下げられるか、その危険性は非常に大きいというふうに思いますし、行く行くは貨物輸送自身の疎外ということにもなりかねないというふうに思います。したがって、少なくとも国鉄貨物輸送については、労働時間の問題なり労働条件の問題なりを明確に確定しなければならないし、むしろ民間輸送業者の労働時間や労働条件をそこに引き上げていくということこそが必要ではないかというふうに思います。  二つ目は、もちろんそういう民間宅配業者に地域地域間の輸送が奪われるということの中には、国鉄がやはり非常に官僚的な体質を持っていて、住民のニーズやサービスの質あるいは量、そういうものに対応した貨物輸送を十分行ってこなかったという側面があると思うんです。さまざまに工夫するならば、十分そういう小口あるいは住民の貨物輸送についても充実できるような体制はとり得るし、むしろ公共事業だからこそとり得るし、とらなきゃならない、そういうふうに考えております。  以上です。
  16. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 御存じのように、地方交通線と特定地方交通線とは違います。現在廃止が進行しておるのは特定地方交通線であります。当面輸送密度二千人以下の四十線を切る。その赤字は御存じのように百五十億。しかし、これはバスに転換いたしまして、バスの赤字を含めますとネットはせいぜい八十億程度プラスになるにすぎません。それに対しまして、輸送密度八千人から四千人の間の地方交通線は、計算にもよりますけれども、年度によりますけれども、三千億ぐらいの赤字を出しておりまして、巨額であります。そして、これは経営いかんによっては黒字になるのだ、それを放置して野たれ死にさせてはならない。そこで私は、輸送密度二千人程度の大井川鉄道、ここの経営責任者は元国鉄ないし運輸省にいた人でありますが、その人たちが組合と協力してどういうことをやっているのかということを紹介したわけです。そして、この分野というものをどんなことがあっても維持できるようにし、そしてそれが黒字であるということが国鉄の全体の運営にとっていかにプラスであるか、そのために分離ということを提案したわけです。  ただ、その分離の形態をどのような形態にするかというのは問題でありまして、第三セクターの現に行われているものは私はよくないと考えます。なぜならば、あすこにいる職員の人は国鉄OBの人や何かで、先ほど申し上げましたところの共済の支払い、それらは全部国鉄に置いてきているわけです。だから、あすこが人件費が安くてといっていても、実はマイナス分というのは国鉄本体の中にある。だから、ああいうものを使って人件費が安くて云々といっても、そんなことは、合理的国家全体の計算からいうと決して安くはないんだということなわけです。国鉄全体を考えるならば、共済や何かをしょっていけるような職場をどんどん拡大することなしにそれはできないんです。  電電について、私は真藤さんと、電電をどうするかというときに話しました。そのとき真藤さんは、公企業体というのは、職場をどんどん拡大していくことなしには、共済問題が一つのその例であるけれども、再建できないんだ、こんなことは経営者としては当然である、首を切れば費用が少なくなるというのは私企業感覚であって、こんなものをなくさなければだめなのだと。ところが第三セクターは人件費の問題についてもその配慮がない。いわんや、固定的設備を無償で貸しているわけです。そしてまた、災害があった場合には、その所有者であるところの国鉄がそれを全部直して渡すという形になる。合理的計算をしてみるならば、第三セクターは経営的に成り立っていない。そして、ああいうものをつくれば国鉄本体が赤字になるということをはっきりさせるということが私は重要であろうというぐあいに思うんです。  そういうことのために、私は、この地方交通線というようなものの形態をどういうぐあいにするにしても、それは共済そのほかをしょっていくことのできるような形態の中において経営を再建していかなければならないのだということを申し上げざるを得ないのです。そうして、その場合は、自分たちの足を担ってくれるんだという、地方がその鉄道に対する愛着そのほかというものを感じてくれなければ困るんです。私鉄では上田電鉄が撤去した最後に地域住民がどういう行動をしてこれを支えようとしたかということ、そうした事例を引くまでもなく、大都市の場合においては自分たちの市民の足にかなりの努力と金とをつぎ込んでいるのです。地方もそういうようなことをやらねばならないし、そういう時代になった、そういうぐあいに地方行政を変える必要があるということは小柳さんのおっしゃるとおりだというぐあいに思います。  なお、申し上げますと、国鉄が撤去いたしましてバスにかえるというときにどのくらいのお金をここに出しているかというのは、日本全体から見るならばかなり巨額であります。日本全体の過疎バス地域にどれだけのお金が投入されているかということは、小柳さんも御存じのように、二種、三種、市町村バスを合わせまして百億に満たないのです。この金額に比べて、国鉄を転換した後のバスにどれだけの金がつぎ込まれているか、これは公平に反する。しかし、別な言葉で言えば、日本全体の交通違反の反則金が五百八十億に達している。その二割も投入できない過疎バス対策の方が私は問題である。そういうような意味では、バスを含めて最後の庶民の足をどういうぐあいに確保するかということに国鉄経営者も、経営形態の転換をする人も、また労働者も真剣に取り組まなければならない。真剣に取り組んでその成果が上がるべき余地が地方交通線の中にはあるのだということを私は強調して、その職場を縮小してはならないというのが事実です。
  17. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最初に山本参考人にお伺いをいたしたいと思います。  山本参考人からは、分割民営国鉄の再建のために必要であるという総論的なお話がございましたし、「月刊交通ジャーナル」の中でお書きになった論文を拝見をいたしますと、三塚代議士も分割民営を提唱しているということを挙げておられまして、経営形態を論ずることはタブー視されてきたが、もはやタブー視する時期ではない、こういうふうなことを書かれております。  そこで私は端的にお伺いいたしますが、それならば分割民営をすれば国鉄の再建ができるのかどうかという問題でありますが、長期債務というのは、今までの参考人の方からもこもごもお話がありましたように二十二兆を超えていて、さらにこれはもっとふえるという見込みである。この長期債務というものが分割をすることによって消えてなくなるわけではないと思います。これは負担をしていかなければならない、返済をしなければならない性格のものだろうと思います。  そうすると、分割をする場合に、本州と九州と四国と北海道をまず分割をして、さらに本州も幾つかに分割をすればよろしい、こういう意見があるわけですが、三塚さんのその著書の中にどういうことを書いてあるかというと、本州の分割についてはまだ結論を得ていない、こういうことが書かれてあるんです。  そこで、まず三塚さんの言っておる本州の分割について結論を得ていないということでありますが、山本参考人としては、本州をどのように分割をすれば能率的に経営ができるというふうにお考えになっているのかということが一つ。  それからもう一つは、北海道、四国等は、これは地続きではございませんから地理的には分割しやすいのですけれども、それじゃ財政的に北海道なり四国というのは自前でやっていけるということが言えるのかどうか。これだけの債務を分担をして、なおかつその地域でもって十分に独立採算制を堅持をして株式会社としてやっていけるということが言えるとすれば、どういう根拠によって言えるのか、その点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  18. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) ただいまの瀬谷先生の御指摘は大変重要な点を触れておられると思いますが、私が先ほど午前中の意見陳述で、国鉄分割民営化ということが必要だというニュアンスで申し上げたことは事実であります。  問題は、臨調答申が出されまして、それに基づいて国鉄再建監理委員会が発足し、今そこで具体的な案が最終的に煮詰められようとしているという状況が確かにあるわけでありまして、これにどう対応していくかということはこれは避けて通れない問題だと思います。  経営形態の問題についてタブー視すべきではないというのは、既に昨年あたりからの問題というべきだと思いますが、例えば今御指摘の自民党三塚代議士の御発言あるいは著書などを拝見いたしましても、昨年の夏あたりからそういうことを明確に問題として提起されております。私は、今申し上げたような臨調答申国鉄再建監理委員会の存在、それによる一つ方向づけとしての分割民営化というのは当然予測される事態でありますし、また確かにそれが国鉄を再建するための一つの有力な方法であることは間違いないと思います。  今瀬谷先生は長期債務のことを御指摘になりましたけれども、その点は、先ほど申し上げましたように、私は国鉄再建には三つのポイントがあるということを申し上げました。過去の清算、現状の打破、将来の展望という中で、この長期債務の問題は過去の清算の部類に入ると思います。そして、御承知のように、これだけ巨額の長期債務が累積しております今日、これは経営形態変更しようがしまいが何らかの形で処理しなければならない問題でありまして、その長期債務処理分割民営化ということをどういうふうにつなげていくかということが今まさに問われている点で、監理委員会も鋭意御検討中だと思います。私自身も今ここで、こういうふうにすれば問題が一遍に解決するということを申し上げるだけの知恵がありませんけれども、繰り返しますけれども、経営形態変更とはかかわりなくこの長期債務の問題は何らかの形で解決しなければなりませんし、最終的にはやはり国民の側も何らかの負担をせざるを得ない、こういう状況になってくるだろうと思います。  それからもう一つ、北海道、四国の分割後の問題でありますが、これは常識的に考えまして、まあ今の長期債務の問題その他いろいろな附帯的な条件がどういうふうになるかということもありますけれども、それをさておきましても、現在のような交通需要のもとでは、このままでは自立採算というのは到底不可能に近いと思います。したがいまして、もし仮に、第一段階といいますか、島別分割ということで北海道、四国というところを分離独立させるというようなことになりました場合には、当然その前提として北海道鉄道株式会社といいますか、新しくできる経営形態が独立採算できるような条件づくりをしなければならないと思います。そういう手がかりなしに、現状のままで四国、北海道の独立採算というのは、なかなかというか、ほとんど困難だろうと私も思います。
  19. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 自立採算は不可能である、こういうふうにおっしゃっておられるんですが、さらに北海道の場合は青函トンネルという問題がありますね。それから四国の場合は、この間の新聞にも出ておりましたが、本四架橋という問題があります。この本四架橋というのは、谷川の小さな橋と違いまして、歩いて渡れる橋じゃございません。当然自動車か列車を必要とする橋であります。そうなると、もしここに鉄道をかけるとなると相当の負担がまた必要になってくる。青函トンネルにしても本四架橋にしても、北海道なり四国にその負担を及ぼさなければならないということにならざるを得ないと思うのでありますが、それらの負担を含めるとなおさら自立はできないということになると思いますが、それらの点についてはどのようにすべきだとお考えになりますか。
  20. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) ただいまの点につきましては御指摘のとおりでありまして、青函トンネルあるいは本四架橋の資本費負担を、仮に分割された後の北海道あるいは四国の新しい経営形態負担させるとすれば、ますますその自立採算への道は遠のくことは御指摘のとおりであります。既に過去に終わった分でありますけれども、国鉄にかかわる巨大な投資、こういった問題に一体どういうふうに対応するかということは別途考えなければいけない問題だと思います。  今御指摘の青函トンネル、本四架橋は既にでき上がった分でありますが、同時に、これからつくるかもしれない、あるいは一部の方の中にはぜひつくれという声の強い整備新幹線、こういった巨額な投資を伴う問題についてはどういうふうに対応するか、これは今御指摘のとおりに、単に分割するから機械的にそれを分けてくっつけるというようなやり方で対応できる性質のものではないと考えます。
  21. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今おっしゃる整備新幹線は、分割民営にしたらもはや絶望的であるというふうに考えざるを得ないと思うのであります。その今お説の、分割民営しなければならぬという御意見でありますが、先般読売新聞でもって世論調査を行いました。その世論調査によりますと、約四割の人が分割民営賛成というふうに答えたといっているんです。しかし、分割民営の中身が具体的にどうなるかということが監理委員会でもまだ全然はっきりしていないですね。それから、今私も具体的にお伺いいたしましたけれども、お答えがなかった、どういうふうに分けたらいいのかという質問に対してはお答えがなかった。  このように分割の具体案というものは全くできていないんですよ。全くできていないのに、いいか悪いかという世論調査をするというのもおかしな話だと思うんですね、内容がわからないんですから。ということは、美人コンクールをやるのに、顔を隠しちゃって美人コンクールをやるのと同じだと思うんですよね。顔は見えないけれども、美人だろうと推定でもって賛成しているようなものですね。大体こういうふうなやり方でもって、観念的に賛成だというのは、ちょっと私には解せないわけです。今お話によると、ともかく具体的なことはまだおわかりにならない。整備新幹線等についても、分割民営にした場合にはもう建設のめどが立たないということも私は受け取られるんです。  そこで今度は伊東先生にお伺いしたいと思うんですが、赤字の問題です。国鉄の累積債務の問題なんですけれども、亀井委員長がどういうことを言っておられるかというと、これはお手元に差し上げた運輸委員長の質疑、亀井監理委員長の答弁というものの中にもございますけれども、累積債務を、「基本的には、国鉄が他の交通機関との競争関係の激化等の環境の変化に弾力的に対応し得ず、」「効率化、生産性の向上が十分図られなかった」ということを基本的に理由としている。さらに、「このほか、大規模な設備投資等による資本費負担国鉄職員の年齢構成のひずみに起因する退職手当や年金負担の増加等も原因の一つ」と言っておられる。つまり亀井委員長は、設備投資やらあるいは職員の年齢構成のひずみによる年金負担というものは原因の一つである、基本的にはそうじゃないんだ、他の交通機関との競争関係の激化等に対応できなかったんだという抽象的な言い方をされている。  ところが、山口参考人の先ほどのお話によると、国鉄の累積債務の大部分は借金による設備投資だ、こういう御指摘があったわけですね。その山口参考人の御指摘とこの亀井委員長の答弁とは天と地ほど違っておるわけです。この国鉄の累積債務の内容、性格といったようなことについての認識が違っておれば、自後の問題の考え方も全部これは違ってくるわけなんですが、この累積債務の根本は一体伊東先生はどのようにお考えになっておられるか、これらの処理は一体どのようにすべきであるとお考えになっておられるのか、その点を伊東先生にお伺いしたいと思います。
  22. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 既に書いたことでありますけれども、昭和四十年に大都市圏の交通対策のために国鉄は膨大な投資を予定いたしました。それはラッシュを緩和させるためのどうしてもしなければならない投資なのです。しかし、それ以前に、首都圏についていいますと、二百七十万人のサラリーマンを運ぶために通勤者一人当たりどのくらいの資本投下が行われていたかというと、五万円であります。ところが、第四次だと記憶をしておりますけれども、この投資のために新たに百八十万人の人間を運ぶために一人当たり三十七万ほどの金を投入するというのが四十年時点の時価における投資であります。これを四十年時点において計算をいたしますと、その通勤者が定期を買い、その料金が国鉄に入った場合、その料金では利子費用にも満たないのです。つまり、こうした通勤対策のために膨大な投資を必要とする段階になりますと、もう大都市対策を打てば打つほどここで赤字が生じ、地方を支えることができなくなるというようなことが明らかになりました。この点について、補助金なり出資金なりを出すことなしにこのような対策を打つということは経営的に無謀であるということを私は書きました。  次いで、新幹線が関西に移るときに、先ほど申し上げましたように、新たなるその投資を行った新幹線投資は、在来線の赤字を勘案して全体を考えるならば投資効率はマイナスである。そしてこのことは昭和四十七年に岡山まで移ったときに明確になりました。山陽在来線はそれ以前においては黒字でありましたけれども、大きく赤字になり、そのときの新幹線の投資効率はマイナスであります。これを前にいたしまして、当時の大蔵主計官、運輸担当の丸山英人氏と私は、新幹線充実は国鉄財政を赤字に陥れるであろうという警告を発しました。しかしそれは受け入れられるところとはならなかったのです。そうして、起こってくるところの赤字というものを借金によって累積させていったということであります。  昭和四十年代に私は、この利子圧迫説というのは、今起こってはいないけれども必ず起こるということを申し上げました。過疎線圧迫説、利子圧迫説、賃金圧迫説等々四つを述べまして、それが俗説である、そして俗説の背後にはかなりの真実があるということを述べましたけれども、そして国鉄の累積債務の中には、こうした新しい時代に即応しようとする投資累積と、それから経常勘定の赤字、この二つの部分があるわけです。二十一世紀に対処する国鉄というようなものがもし新幹線が必要であるとするならば、補助金をあるいは出資金をここに出すべきだということを四十年代に申しました。それだけではありません。貨物を赤字から救うために貨物近代化の投資が行われました。残念ながらこの投資もその投資効率から見るとマイナスであったんです。こうしたことを含めて投資、それが大きな累積債務の一因であったということは紛れもない事実であります。
  23. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 新幹線を初めとする設備投資借金で賄う、こういうことをすれば累積債務がふえるというのは当然だと思うんです。これは、社会事業をサラ金から金を借りてやっていれば首が回らなくなるのと同じわけなんです。  そこで伊東先生に、そのエコノミストに書かれた中で土地の問題についても触れておられます。国鉄がどうしたら累積債務を処理できるかということの中で、土地を売却するというようなことが考えられている。しかし、その土地の売却というのは下手をすると利権の対象になって、チャンスをねらっている連中に食いちぎられてしまう、こういうおそれが多分にあると思うんでありますけれども、監理委員会考えておるような土地の処分の方法が適切であるというふうにお考えになるかどうかということ。  それからもう一つ、監理委員会考えておるような分割が成り立ち得るかどうか。例えばこれは東京周辺について言いますと、もし本州を三つに分割をするというプランを、あるいは四つでもいいんですが、プランを持つとすると、黒字の一番のもとは山手線です。これは営業係数が四五で一番の稼ぎ頭です。そうすると、東京周辺を取り込まないと地方はやっていけないということになる。もし東北と東京を一緒にすると、はみ出た上越がやっていけるか、中央線がやっていけるかということになる、あるいは東海道線はどうなるかということになる。仕方がないから、東京を東北方面とそれから上越方面と東海道方面と三つでもって分割をするというようなことになりますと、山手線は三つの違った会社を渡り歩くということになってしまうわけですね。そうすると、初乗り運賃が今度三つの会社でもって三倍になってしまう、今まで百二十円の運賃が極端な話が四、五百円になってしまう、こういう形にならざるを得ないと思うのであります。  そのような形態を我々はどうしても考えざるを得ないんでありますが、そのような形でもって東京あるいは大阪周辺を分割会社にまたがらせるという方法があり得るのかどうか。そういう方法なしに、東京と地方を分離して今度は地方が財政的に成り立ち得るのかどうか。どちらの方に可能性があるのか。どちらも可能性がないとすると両方ともこれは落第だということになるのでありますが、その辺、今ちらほらと出ております本州の分割案に照らし合わせて、伊東先生の見解を承りたいと思います。
  24. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 分割案についてお答えいたします。  電電の場合においても私は申し上げましたけれども、技術的可能性というのをまず基礎に考えていかなければならないと思います。もし国鉄地域的に分割した場合はどうなるでしょうか。恐らく監理委員会は次のような考えをとったのだろうというぐあいに思います。それは、北海道、その場合においては域内流動性が九九%であって、わずか一%が外へ出るだけであるからこれは分割可能である。そして同じような考え方から本州を三分割ないし四分割にする。その場合において、その域内流動性は九〇何%であるからそれは可能だというぐあいに考えたのではないかと思います。この考え方は、パーセンテージと絶対量というものを誤ってとらえたということなのです。北海道はなるほど域内流動性は九九%でありますけれども、域外にどのくらいの人間が出ているかというと、全体として九十万人に達していないのであります。最も出ている東北において四十八万人でありまして、そのほかを全部合計いたしましても九十万人に全体として達していない。  ところが、もし関西地区から東北に、あるいは上越に、別会社であったとした場合に、パーセンテージはわずかであっても、どのくらいの人間が出ているかということを計算してみる必要があると思います。そういたしますと、関西地区から東北地区に行っている旅客流動性は年間それだけで四百万人を超えているのです。そして上越地区に三百七十万人を超えているのです。さらに、中部地区を別会社とする三分割案をとったにいたしましても、ここには実に年間二千三百数十万人の人間が出ているのです。なるほど域内流動性が多いとパーセンテージの上に示しましても、その絶対量としては実に域外に九州を含めまして四千万人の人間がこの西本社から外へ出るという計算になるんです。これを旅客精算事務においてどうして可能なのかということ、パーセンテージと絶対量とを混同しているのではないかというぐあいに私は考えざるを得ないんです。  こうした域内間の流動性というようなものを積み上げていくということが技術的な問題を考え人間において最も重要でありまして、そうしたものをやっていくと、首都圏分割などはこれは問題にならない。一体何でそれを精算してくれるのかというぐあいに、そうしたことを事務方としてやろうとするならば、私はそう言わざるを得ない。そしてそれは大ざっぱにやるという、まあアバウトということが大変はやっているそうでありますから、そうなるのかもしれない。それでいいのであろうか。しかし、自分の命をかけるような大きな収入がそこによって分けられるというようなことは、こうしたことではできないであろうというぐあいに考えるために、まず技術的に幹線分割案に対しては非常に難しい。しかし、逆にもし北海道だけを分離するというのであったならば、技術的にできないことではないだろう。なぜならば九九%が域内流動であり、そして外へ出るというようなのが八十七万人程度である、これはできないわけではないだろうというぐあいに、やれというふうにおっしゃるならば、できるかもしれないというぐあいに思います。  次に、経営的でありますけれども、もし、ここに累積債務問題が処理できている、そして共済年金問題が処理できているというぐあいに考えたならば、五十九年度北海道の収入約千二百億円だろうというぐあいに思いますけれども、それを地域にふさわしい私鉄並みの料金にした場合において、地方交通線を分離したということを前提にして、この場合における赤字は五、六百億出るだろうと私は思います。四国及び九州については、二倍の料金を取るならば何とかやっていけるという形であります。  しかし、私は決して収入だけによって維持せよ、補助がいけないというようなことを言っているのではないんです。むしろヨーロッパそのほかの事例ならば、先ほど山口参考人がお話しになりましたように、補助は行われている。そういうことをやった上で考えなければならないというぐあいに思います。その補助はフランスにおける事例のように多種多様でありまして、日本におけるようなものとは違う形であります。にもかかわらず、フランスにおける補助の金額を考えましても、私は、日本においては地方交通線は分離してなるたけ独立するような形にした方が雇用問題にしてもいいという考えで、一部枝線分離、幹線一貫運営、それが合理的であろうというぐあいに考えざるを得ないのであります。
  25. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 幹線を一貫して運営しなければならぬということは、新幹線などは、先般当委員会でも視察いたしましたけれども、東京駅の近くにあります指令所では、あの一カ所で東海道、山陽新幹線並びに上越・東北新幹線全部を集中管理いたしております。もし、あの新幹線を幾つかの会社に分断するということになったら一体どうしてやるんだろう、こういう疑問を我々は持たざるを得ません。今もお話がございましたように、技術的にも極めて困難、経営的にも極めて困難ということになると、幹線の分離というものはどこにメリットがあるんだろうというふうに首をかしげさるを得ない。国鉄の再建というよりも分割をまず先行させるということのねらいは一体何だろうかというふうに考えざるを得ません。  財界がこの分割民営ということを先行させるということの背景には、国有財産の合法的なつまみ食いがその根底にあるんじゃないだろうかというふうに疑わざるを得ないという気持ちにもなるのでありますが、その財界のねらい、背景というものはどういうことが考えられるのかということを鎌倉参考人に端的にひとつお伺いをしたいと思います。
  26. 鎌倉孝夫

    参考人鎌倉孝夫君) メリットのないことが明らかな分割を押し出しながら、強引に分割民営化を進めようとしているその背景として、私は何点かあると思うんですが、まず基本は、私先ほど申しましたが、いわゆる民間活力強化ということで、今までの公的分野あるいは政府の規制が行われていた分野、そういう分野政府の規制をできるだけ緩和して、いわゆる民営化にゆだねる、こういう方向がはっきり世界的潮流として、そして日本においても国鉄分割民営化を進める基本的な考え方としてあると思うんです。  それはどういうことなのかというと、経済全体の動きにこれはかかわってきますけれども、いわゆる製造業を中心とした従来型の設備投資、これが過剰になり、非常に激烈な国際競争戦が巻き起こる。そういう中で、巨大な企業を中心として膨大ないわゆる過剰蓄積、資金の蓄積が生じております。その資金の蓄積をどういう方向に回していくか、こういう点が企業としては大きな問題になっているというふうに考えられるわけであります。その一部が、アメリカの金利高に引きつけられてアメリカに回っておりますけれども、しかし、アメリカの経済情勢いかんによってはどういう状況になるかわかりません。そこで、民間大企業としては、過剰な資金のいわば有利な投資先というものを、従来十分参入できなかった領域に、政府規制があって、あるいは公共事業で参入できなかった領域に積極的に参入していこう、こういう方向ではないかというふうに思われるわけであります。    〔委員長退席、理事矢原秀男君着席〕  でありますから、例えば経営形態を変えて特殊会社化、いわゆる株式会社化を行ったときに、直接には監理委員会としても政府一〇〇%出資とは言っておりますけれども、やがてある線区において、あるいは分割会社において相当な収益が上がるという見通しがあるならば、これはその株式を放出する可能性というものも十分ありますし、民間が直接に株の保有あるいは売買ということを通して有利な投資先とするということも考えられると思います。  その可能性が一つありますし、もう一つは、国有財産であります国鉄の保有資産、これをいわば七兆ないし八兆円分売る、こういうような提案がなされているようでありますけれども、これについても私は、瀬谷さんがおっしゃいましたように、資金を豊富に持っている大企業がそれをつまみ食い的に取るという可能性が非常に大きい。私は、せっかく公的な所有としてあるところでありますから、それぞれの地域の実情に応じて十分その利用を考えていかなければいけない、そういうものとして保有しておくべきであって、国有財産をいわば借金整理という形で、野方図にというわけではないと思うけれども、分割するということは、いわば大きな企業の投資先あるいはつまみ食い的なことにならざるを得ないし、全体にわたって大変むしろ国民経済全体からいいましても悪い影響が当然出てくるのではなかろうかというふうに考えております。
  27. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 山本参考人にまず冒頭にお伺いしますが、山本参考人は、国鉄再建の原点は何か、原則をよくわきまえてその方法に誤りないように、こういう切り出しでお話がありました。  私は、国会に来たのは四十九年であります。四十九年に国会に来て、国鉄再建論争をこの運輸委員会で、国鉄赤字の原因は何かということを当時の田村運輸大臣にただしました。田村運輸大臣は、第一点はやっぱり借金による過剰な設備投資、第二点は総合交通政策がなかった、第三点は国民ニーズに、需要に十分に国鉄が追いつけなかった、第四点が労使関係、こういう四点を当時の田村運輸大大臣が表明しまして、予算委員会などで当時の三木総理大臣も、田村大臣の言うとおりだと、こういうようなことがありまして、以来今日まで長谷川運輸大臣、小坂運輸大臣、福永運輸大臣、内閣では大平総理大臣、鈴木善幸総理大臣、こういうふうに大体四点を確認をしてきたわけであります。この中で、労使関係については一〇%弱だろう、大部分は一番の設備投資借金財政、先ほど伊東先生が言った、私も言いました。山陽新幹線を建設しても、従来の在来線とセットにすると赤字じゃないか、こういうことについては一体新幹線万能も問題ではないかという点も、いみじくも私は当時指摘いたしました。  ところが、だんだん世の中が変わってきたのかどうか知りませんが、急遽、中曽根総理大臣になって運輸大臣がかわってくると、一番、二番、三番はだんだん消えて、四番の労使関係がぼかっと出てきて、国鉄悪玉論、総裁も組合もけしからぬというところに、だあっと焦点が変わって、問題の借金による設備投資、これがどんどん後退してきている、こういう背景なのであります。    〔理事矢原秀男君退席、委員長着席〕  それで、私は、亀井委員長がこの運輸委員会に来たときにしょっぱなに、一体国鉄赤字の原因は何なのか、そこにメスを入れないままの再建論争は机上の空論ではないか、そういうことを指摘したわけでありますが、依然としてその問題には、どの議事録を見ても亀井委員長は一切そこは避けて通っていらっしゃる。そして結果論の民営分割とかなんとか、そこばかり強調される、こういうふうに思うのであります。この四十九年から十何年間の私の議会生活考えると、やっぱり依然として亀井委員会は、山本参考人の言う原点を忘れている、国鉄赤字原点を忘れている、私はこういう認識を持っておるわけでありますが、先ほど鎌倉先生、伊東先生、山口先生、ずっと聞いておりますと、大体この四つのやつの原点にさわっていると思うんであります。  山本参考人は、この莫大な設備投資借金の積み重ねが今日の国鉄の最も再建を阻害しているんだ、こういう認識についていかようにお考えか。時代の流れと同時にどうも焦点が変わってきているという認識を私は持っておるわけでありますが、マスコミ界を通じてずっとやっていらっしゃる論説委員でありますから、論説委員の目から見た際に、この赤字の最も端的なのは過剰な設備投資借金だ、ここのところにあるんじゃなかろうかという認識について、いかがでございましょうか、まずお伺いします。
  28. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) 目黒先生は四十九年から国会にお出になっているそうですが、その前国鉄に長く御在籍になって、恐らくもう一生国鉄とともに過ごされてきた方だろうと思います。それに比べますと、私はもうひよこのようなものでありまして、私が国鉄をずっと見るようになりましたのは、四十年代の中ごろからであったと思います。  今御指摘の、一体赤字の原因は何であるかという点でありますが、国会にお出になって以来ずっと歴代の首相あるいは運輸大臣がお答えになった四点、これは私もそのとおりだと思います。最近、今目黒先生の御指摘ですと、少しその焦点が変わったというふうにおっしゃっておられますが、私はそこのところをつまびらかに理解しておりませんが、少なくとも、もし労使関係がおかしいということが第一位だというようなことを言っているとしたら、私は必ずしも現状を正しく認識していないというふうに言わざるを得ないと思います。ただ、第一点で巨額の設備投資借金でやったことが今日の赤字の原因であるというのは、私もそのとおりだと思いますが、強いて言えば、その中にそれでは国鉄の側の経営責任はなかったのかという問題はないことはないと思います。  例えば、ある非常に巨額のプロジェクトをやるというときに、国鉄経営から見まして到底これは維持していけないというような問題があったときに、当時の責任者が責任を持って物事を言ったかというような問題はあったと思います。もちろん、これも私が申し上げるまでもないことですが、現在の公社制度のもとではなかなかそういうことが仮に思っても言いにくい、あるいは言えない状況があることは理解いたしておりますけれども、しかし、そういう制度の問題と経営責任の問題というものは、私は一〇〇%重なるものではなくて、ある種の経営責任をそこで貫く余地はあったのではないかと思います。したがいまして、先生のおっしゃる第一点の巨額の設備投資借金という中で、これは組合ということじゃありませんで、経営側に責任がなかったということは私は言えないように思います。  以上が私のこの国鉄赤字についての考え方です。
  29. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ありがとうございます。  私も、設備投資の問題について当時の国鉄総裁なりあるいは常務理事がノーならノーということをなぜ言わなかったかということについては、この前角本先生を呼んだときもそういう話が出ました。しかし、私も国鉄四十何年生活する中でそんな環境にあったかなと思うと、言うはやすく、実際上はそんな環境じゃなかった。しかし、国鉄経営者の責任も私はやっぱり三割程度はあるというような認識は持っていました。その点は山本参考人と大体、国鉄経営責任もあります。  それから二番目の問題は、余剰人員に触れられましたからちょっと質問いたします。  これも、亀井委員長というのはなかなかずるい人でありまして、衆参両院の予算委員会、決算委員会運輸委員会に出てきても一言も中身を言いません、いまだかつて。中曽根さんは、それはいいことだとこの前本会議で褒めたんですが、私は悪いことだと思います。しかし、マスコミには、日本テレビであるとか朝日新聞、毎日新聞含めていろんな新聞には、ローカル新聞も含めていろんな案が出ているんですね。それを私なりに整理しますと、余剰人員の立法は三つに分類されます。  まず一つは、全員解雇、国鉄は倒産だから全員解雇、そして新しい民間会社に必要人員を採用する、十八万なら十八万採用する、こういうことを、国鉄総裁ができないから立法でやる。国鉄は解散、新しい新会社に必要人員採用、これが第一案。第二案は、これもちょくちょく出てくる話でありますが、いわゆる炭鉱離職者方式国鉄には失業保険がないから失業保険を予算に計上する、それから職業の転換教育をやる、職業紹介する、いわゆる炭鉱離職者方式、これが第二案。それから第三案は、いわゆる国鉄職員の身分を保有しながら、地方自治体あるいは関西新空港のような国のプロジェクト、あるいは、私は一つ追加するんですが、例えば亀井委員長の会社はやっぱり国鉄の大手ですね、国鉄の事業発注で相当亀井委員長の会社はぼろもうけしていますが、そういう国鉄と直接かかわりのある企業並びに銀行ですね、赤字国鉄は泣いているけれども、銀行は笑いがとまらないというのが国鉄と銀行の関係ですから、そういう金融機関、こういうところに国が、第三番目はちょっと無理もありますが、いろいろ創意工夫するとして、いわゆる新しい職域を拡大する、そういう形で立法措置でこれを支えていく。こう三つの方法が、大体亀井委員会がアドバルーンを上げておるやつを私なりに整理するとこの三つに大体大別されます。  それで山本参考人にお伺いしますが、この問題は判断を誤れば社会問題に発展しかねない。日本航空は二万人だけれども、六万人とかというのは大変なものだということを引用されましたが、特別方法を考えるとすれば、私が整理したこの三つの立法のうち、社会問題を回避しながら本来のものに結びついていくという意味の立法措置を、この三つのうち山本参考人はどれが一番望ましいというふうにお考えでいらっしゃるか、御見解をお伺いいたします。
  30. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) 大変難しい問題でありまして、私が明確にお答えできるかどうかわかりませんが、今目黒先生が整理されました三つの案、第一点の全員解雇、改めて再雇用というのはかなりドラスチックな方法でありまして、これは私の感じでありますが、日本のような風土の中で果たしてこれが可能かどうかという点は問題としてかなり残ろうかと思います。それから第二番目の炭鉱離職者方式の対応の仕方、これは一つの方法として私は考えられると思います。それから三番目の、国鉄職員としての身分を保有しながら、地方自治体その他関連企業を含めて雇用するというやり方というのも、これも一つの方法だと思いますが、国鉄職員としての身分を保有してということと、それから新たな地方自治体その他で雇用されるということとの関連というのがちょっと今先生のお話だけでは私にはうまく理解できなかったわけですが、そこら辺の問題が整理できれば有力な方法たり得ると思います。  ただ、蛇足を申し上げますと、そういったような特別立法が何らかの形で私も必要だと思いますので、国会を初め皆様方の英知を集めてぜひ御検討いただきたいわけですが、蛇足的に言えば、今やっております国鉄の事業、もちろん国鉄法その他の制約がありまして現在では手かせ足かせという状態でできませんけれども、もっと鉄道事業として、それに附帯する事業としての事業の拡大、そういうことによる新しい職場の開拓ということも一方で行われる必要があるだろうと思います。その辺がいろんな組み合わせによると思いますけれども、最初申し上げましたように、とにかく現状を放置しておきますことは、先生もおっしゃっておられましたとおり、確かに私は社会問題になる可能性のある性質の問題だと思いますので、この辺につきましては特に立法府におかれて格段の御配慮をお願いしたい、こう思います。
  31. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 どうもありがとうございました。  それで伊東先生にちょっとお伺いしますが、立法措置の関係で、年金問題、それから今電電が経験している、民営化したことによっていろんな税負担がありますね。こういう問題については、先生のエコノミストのこれを読んでみても具体的に数字を挙げていらっしゃるんで、例えば国鉄の共済組合の年金は現在でも大変なんですね。私も名目上は年金生活者の一人ですが、もらっておりません、もう年金をもらっても全部税金で持っていかれるから。ここ三年ばかり同僚は全部据え置きです。据え置きにしながら、ほかの電電とか公務員の皆さんに若干お世話になっている。それが十八万八千体制などということになりますと、現在でも年金の成熟度が一〇〇を超えている、それが六十二年あるいは六十五年で十八万八千になってしまうといわゆる成熟度だけで三倍、四倍になって大変だ。  こういうことを頭に置くとすれば、現在でも大変だけれども、これを分割民営するなんということにした場合に、これを支える民間企業が一体あるんだろうか。私は率直に言ってないと思います、現在の日経連なり財界の動向から見れば。そうしますと、いやが応でもこの年金問題も余剰人員と同じように特別立法か何かの方法で変えなければ国鉄職員の年金問題は解決できない、こう私なんかは見ているんですが、これは現行においてもしかりでありますから、さらに民営分割なんという無責任体制になってしまうと大変だ。この辺についてやっぱり特別立法が必要と考えていらっしゃるか、あるいは別途方法で解消するかということについて、伊東先生が具体的に提言されましたので、この年金の解消策についてどんなお考えがあるかお教えを願いたい、こう思います。
  32. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 年金問題を考えますと、もう実に憂うつなくらい解決が難しい。そして今考えられているのは、御存じのように、国及び地方の公務員を含めて全体で国鉄の共済を救うというような形になっていく、そういう方向に持ち込むという以外にないのではないかというぐあいに考えます。もちろん、それは国鉄を支えるだけではありませんで、老齢化社会とともにさらにこれは強まってくる。こうしたとき、我々が払うところのものは、税金だけではなしに比例税に当たるような年金が非常に大きなウエートを占めてくる。我々は、所得税累進課税という単純には考えられない比例税がそこに入っているなということを考える必要があるということですね。この点は、こうしたものをほかのものでもつて負担するときどうするべきかということを考えるべきだと私は思います。例えて言えば、ヨーロッパ型付加価値税は比例税であります。累進課税を比例税に移すのではなしに、比例税を比例税に移すという形であるならば、問題は考えなければならないものである。そういうものを含めて、共済年金負担について別途措置を大きな視点考えるということは私はあり得るというぐあいに思います。  ただ、その前になすべきこととして、国鉄及び国鉄職員が共済をしょいながら生き得るような職場というのを拡大していくということが実は必要なんです。その努力をやる必要があるというぐあいに思います。御存じのように、電電は技術革新のもとにおいて三十三万人の人間が二十二万人で済むという形になるでしょう。そして、その十万人ほどというものの新たな職場を見つけるということが民営化の非常な大きな問題だと思います。  我が国の民営化は、アメリカの民営化やイギリスの公益事業民営化とはその出発点が違っていたのです。我が国の場合においては、まず出発点としては、労使の間における労使関係が公労法で縛られていた。それをいかにして公労法から離れるか、経営的には給与総額制度というものの縛りを外す、こうした問題で実は民営化が出てきたのでありますけれども、もう一つ重要なことは、電電について言えば、この余剰になるであろうところの人たちに新しい職場を見出すために技術革新が予想される分野に進んでいかなきゃならない。このとき、投資をすらいけないという在来の法律、これを脱却して新しい分野投資を行い、そして職場拡大していくという強い要請がこうした民営化というものを引き起こしたのだということを我々は考えていかなければならないと思います。  そのように考えてみると、国鉄の場合においては成長産業を付近に持っていない非常な難点があるんです。そこで、雇用問題としては、私は先ほど炭鉱離職者に関係した原重油関税のようなことを申し上げましたけれども、同じようなことも考えらるべきであると思います。それ以外に、国鉄及び新しい経営体、それがたとえ分離されても兼営できる職場というようなものを次々につくっていかなければならないんです。ところが、伝えられるところの、これは本委員会において表明されてはおりませんけれども、新聞紙上その他において伝えられているところの委員会案におきますと、トラック関係においてもバス関係におきましても、兼営を禁ずるということを新会社について監理委員会考えている。それでは何のための民営化なのかというぐあいに考えるんです。  この民営化一つは、今までの公社形態ではできないような外部経済の利益の内部化ということを行うような形、それがなければ、税金そのほかにおいてかなりのマイナスをしょうであろうところのもの、それを改善することはできないんです。もし土地問題につきましても外部経済の内部化が可能であるならば、それは運営いかんによって多くの余地が存在するというぐあいに思うんです。それを閉ざしておいてただ切るというのは、本来我が国における民営化の出発点、それにも反するのではないかというぐあいに考えます。
  33. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 亀井委員会というのはなかなか不思議な委員会で、新聞には発表するけれども国会に出てきてはだんまりのおっさんで、全部抽象論ばかり言って並べているという特殊事情の委員会なんですね。教育臨調さえあれだけマスコミを通じて、だんだん教育の自由化論、現場の先生も文部省の初中局長も、自由化論については随分論戦をやっていますね。国鉄では、一月十日に国鉄総裁が案を出したら、亀井委員長は煮えくり返るような顔をして、とどのつまりは総裁は首だと、こんな越権行為まで言ってくるという極めて不見識なにおいがあるんです。  それで、今度はローカル線で私聞きたいんですが、亀井委員会というのは第一次、第二次答申で、いわゆるローカル線はぶった切れと言っていましたね。ところが、一月十日、国鉄が地方線の問題について、九十線区のうち七十線区は国鉄が出資をして地域に合うようにやるんだと言ったら、いつの間にかだだっと変わっちゃって、今度は亀井委員会は、ローカル線は新しい会社がやるんだ、こういうふうに二転三転しているんですがね。どうも明確な運輸政策とか国鉄の実態、地域住民ニーズということを十分に把握しないまま、テーブルプランだけでぽこぽこやっていらっしゃるというふうに私は考えるんです。  それで第一点は、四人の先生にお伺いしますが、亀井委員長はここへ来て、機会あれば交通学者、専門学者の皆さんの意見を聞いていますと、こう言っているんですが、四人の先生方は、亀井委員会から直接国鉄問題について御意見を正式にお伺いされたかどうか、イエスかノーで結構ですから、もしもされた方については、大体何時間ぐらい、どういう問題でというふうに、四人の先生方は随分この道の専門家だということで我々はお呼びしているわけでありますから、亀井委員長あるいは委員会から聞かれたかどうかという問題です。  二つ目には、伊東先生に、ずっとローカル線問題をやっていますから、この亀井委員会のローカル線に対する変貌、何といいますか、変わり身、この背景は何かというふうに受け取られておるかどうか、それをひとつお伺いします。  第一点は四人の先生、第二点は伊東先生にお願いします。
  34. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) 今お尋ねの第一点ですが、これは私だけじゃありませんで、交通の問題、特に国鉄にかかわりのある各新聞社の論説委員、解説委員が亀井委員長とお会いしてこの問題についてお話しした機会はこれまで、正確に回数は覚えておりませんが、何回かあります。
  35. 鎌倉孝夫

    参考人鎌倉孝夫君) 呼ばれておりません。
  36. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 呼ばれまして、かなり長く話しました。
  37. 山口孝

    参考人山口孝君) 呼ばれておりませんが、資料だけは届けました。
  38. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 私は、亀井さんがここではっきり言われないということを含めまして、この転換の理由は、内部が意見一つにまとまっていないためだと思います。監理委員会はかなり流動的であり、そして一つ一つの問題について意見の対立があるというぐあいに私は聞いております。それゆえに、私も本委員会に呼ばれましたとき、さらにそれがよい方向に向けばというので具体的なものを持ちまして本委員会に臨んだのです。さらにこれが改善され変わることを私は期待してやみません。
  39. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 四氏の参考人の方々には、非常に貴重な御意見を伺いまして非常に参考になった次第でございます。先ほどまで同僚委員からいろいろの質問がございましたので、御答弁もいただいておりますけれども、極力重複を避けながら質問を申し上げたいと思います。  まず山本参考人にお伺いをしたいわけでございますけれども、先ほどもお話がございましたが、委員会におきまして亀井委員長も、非常に国として重大なことであるから、まず中間報告を関係委員会にして、そうしてまたいろんな論議を受けたい、それと同時にああして各階層の御意見も伺いたい、こういうふうにお話を委員会でされておりましたけれども、先ほど伊東先生からもお話がございましたように、周辺のいろんな厳しい状況等があったのかと思いますけれども、中間答申はしない、そうして一挙に七月末には中曽根総理のもとに答申を出す、こういう方向に変わったわけでございます。  そういう中で、山本参考人に伺いたいわけでございますけれども、新聞紙上で報道されておりますように、本州三分割あるいは四分割、そうして北海道、九州、四国、こういう六分割か七分割というものが想定をされていることは論をまたないところでございます。山本参考人としては、今までのお話を伺っておりますと、論文等を見ておりましても、分割民営化という方向の論者の方と伺っておるわけでございますけれども、これは何分割が妥当であるのか、そういう点をまず伺いたいと思います。
  40. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) ただいまのお尋ねの点でありますが、監理委員会が確かに今矢原先生のおっしゃるように中間報告的なものを出すことなく最終答申にいくということは、今御指摘のとおりの経過をたどっていると私も理解いたしております。  それで、何分割が適当かという御質問でありますが、率直に申し上げて、私は何分割がいいということをここで自信を持ってお答えできません。先ほど、たしか瀬谷先生だと思いますが、顔を隠して美人コンクールをやっているというようなお話がありましたけれども、確かにそういう面がありますが、ただ、私はここで何とか一番の美人を見出したいという気持ちは関係者の間で共通していることだと思います。それが一体どういう、例えば六分割であるのか七分割であるのかという点については、恐らくいろんなメリットデメリット、あるいは複雑な組み合わせがありまして簡単に結論が出せていないのが今日の状況だと思いますが、ましてもって私自身がここで幾つがいいということは申し上げかねます。  ただ、今の六ないし七というのは、ごく常識的に言いまして、今お話があった北海道、四国、九州という島が一応独立あるいは分割の対象になるといたしますと、残りが本州であるわけです。先ほど伊東参考人は、幹線について分割することには非常に技術的な難しさがあるという御意見がありましたけれども、確かにその点は私もあるだろうと思います。しかし一方で、現在これまで国鉄公社制度のもとで全国一元的な運営でやってきたことによるいろんなデメリット、それを克服するために本州も含めて六ないし七の分割をした方がいいというのであれば、あくまでこの分割民営化というのは鉄道事業をよみがえらせるための手段でありますから、その手段の一つとして位置づけられることはできると思います。ただ、大変恐縮ですが、数字として幾つがよいというのを今ここで申し上げるわけにはまいりませんのでお許しをいただきたいと思います。
  41. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 山本参考人が述べられた中で、そのほかに、分割民営化方向の一過程として、監理委員会そして国鉄、運輸省の三位一体化が必要であると非常に強調をされておられたわけでございますけれども、こういう問題が山本参考人の中から出てきました、気づかれた点というのは那辺にあったのか伺いたいと思います。
  42. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) これは一言で申し上げまして、これは今に始まったことではありませんが、臨調の審議がむしろ始まる前からと言ってよろしいかと思いますが、基本的にその経営形態変更することの是非をめぐって対立があったように私には思えます。臨調の審議が始まり、答申が出され、そして監理委員会が発足して今日に至った過程の中で、一言で言いますと、私は国鉄国鉄再建監理委員会の間で本当に密接な協力関係がなかったのではないかというふうに言わざるを得ないと思います。当然そうなりますと、もう一つ関係機関であるところの運輸省としてもその立場が非常に難しいわけでありまして、その三者関係がスムーズに行っていないことが今日この最終案が非常におくれているとか、あるいは中間報告が出せないとかということとも関連があるのではないかと思います。  したがいまして、もし予定どおり七月末までに監理委員会といたしまして答申を出すということになりますと、もう残された時間はほとんどないに等しいわけでありますが、それでも私はなおかつ、今ここでその直接の当事者であるところの国鉄、それから具体案をつくる責任を持つ国鉄再建監理委員会、さらにまたその報告を受けてそれを法案にしていく立場にある運輸省、この三者が密接な協力のもとに最終答申をつくる努力をされることが必要だと思います。さらに言えば、これは先ほども申し上げましたけれども、その後の日程、具体的な展開を考えましても、やはり当事者である国鉄の協力なしにはこういった国鉄改革というのは実りあるものになりにくいわけですから、そのことを申し上げたわけです。
  43. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 もう一点は、参考人が申されましたのは、余剰人員について、これは国鉄改革の突破口として非常に重大な問題であると、この再雇用ですね、いろんな各方面に対して。もし経営形態というものを監理委員会答申されると、内閣を挙げてその案の大半を実施する、協力をする、そういう意味では非常に強い姿勢というものが見受けられるわけでございますけれども、そういう形態になってまいりますと、確かに、あなたも言われておりますように、これはすべてが心配をしているわけでございますけれども、余剰人員が最近の二万四千人、それが七万人、十万人となってくる。今例を引かれました日航の二万人強という一つの組織形態、こういうふうなことの比例から見ましても大変なことである、特別立法というものが基本的に必要ではないかということを述べられたくだりがあるわけでございますけれども、もし分割民営化されました後、この余剰人員のそういう対策というものがどういう形で具体的にいけばいいのか、そういう点の問題を伺いたいと思います。
  44. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) 余剰人員対策につきましては、先ほど目黒先生からの御質問もありましたときにお答えいたしましたけれども、やはり何らかの形で特別立法的な措置が必要であることは改めて申し上げるまでもないと思います。たしか再建監理委員会も昨年の第二次緊急提言の中で、これは国民的課題だ、つまり政府、地方自治体あるいは民間を含めて対応しなければならない問題だということを言っておられたと記憶いたしておりますが、私も問題の性質としてはそういうことだと思います。  今御指摘のこれから先の問題でありますが、仮に分割民営化ということが実現いたしますとなりますと、やはり分割された新しい各経営体は、先ほどもちょっと触れましたように、新しい事業を開拓するなどして新規雇用を生み出す努力というものも私は必要になると思います。しかし、それですべての余剰人員を吸収できるということには到底なり得ませんし、またかなり地域差というようなものもあるのではないかと思われます。したがいまして、二本立てとでも言いましょうか、そういった新しい経営形態そのものの努力、それからそれをサポートするところの特別な措置、こういう形で推移していくのが筋ではないかと考えます。
  45. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私もさきの目黒先生の質問、四氏の参考人の方々の御意見を求められたかどうか、こういうあれも伺おうと思っておりましたが、ちょっと重複するので避けておりましたのですけれども、経営形態の問題で伊東先生と山口先生にお願いしたいわけでございます。  今監理委員会考えている——委員会にもなかなか御出席をされないので定かでないわけでございますけれども、報道等によりまして、監理委員会考えている経営形態というものと、伊東先生、山口先生のお考えになっていらっしゃる、いろんな御意見を求められたというふうにおっしゃっていらっしゃいますれども、大きく考え方が違うと思うわけでございますが、七月末答申がなされた後、またこの答申案を見られて、伊東先生、山口先生は、経営形態が非常に自分たちの考えとは違うという場合に改めて意見の具申をされる御用意があるのかどうか、その点お伺いしたいと思います。
  46. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 経営形態については、単純に民間企業になってもその効果がどうであるかということを議論しなければならないんです。私は電電について既に一部書きましたけれども、民営化が本来の目的を達していない分野がある。なるほど公労法の適用を除外された、投資も可能になった、あるいは給与総額制度というものも脱却した、こうした点はよいのでありますけれども、市場競争を引き起こす、電電の分野について、新規企業の参入を第一種通信分野について。しかし、ここにおける市場競争は、電電の新会社を含め参入する企業について規制はどうやら従来よりも強まる方向に向かいつつある。これが本来の目的ではない等々について私は意見をかなり既に申し上げております。  国鉄の場合についても、変わる、そしてそれがよいならばそれで結構ですが、悪ければもちろん私は意見を言わなければならない。なぜならば、既に書きましたけれども、公社というものがイギリスにおいてできましたときには、国有、国営の企業における所有と経営の分離であって、そこに基づくところの合理性を追求するためにつくったわけです。だが、本来の公社という、巨大民間企業においてもありますところの所有と経営の分離が国有、国営の企業において実現されないというのが日本の現状であり、その経営に対する多くの介入があり過ぎたのです。後にイギリス労働党の党首となりましたアトリーは、郵政大臣を経験いたしまして、国有、国営の形態は事業においては適さないということを明言し、そこでここにおける所有、経営の分離というような新しい制度を推進したのであります。  このような本来の公社というようなもの、その理念が日本において実現されないがゆえに、これを日本的風土のもとにおいていかにして実現できるか。特に公労法の問題というのがありまして、ここに特殊会社案というようなものを提起するということを臨調発足の前に私は行っているわけです。そしてそのような形態というようなものは、電電と国鉄とたばこ、これは全く対象によって違う市場を構成するというぐあいに私には思えます。アメリカがATTをなぜ分割したかといえば、技術革新によりまして、太平洋岸と大西洋岸を結んでいた今までの大陸横断のケーブルにかえて、その何分の一かの費用でもって宇宙衛星によって簡単に結ぶことができ、ここに新規企業参入の技術可能性が起こった。そこで市場競争をここにゆだねるという形を行い、そのようなことを行うと、地域電話の独占形態と競争形態である長距離とを同一企業が行っていたならば、独占による利益によって競争を内部相互補助するという問題が起こるというので分離をした。その分離可能だったのは技術体系が日本と違うためなのであります。  そして、こうしたものは実は決してレーガンによって生じたものではありませんで、航空の自由化を含めてカーターの時代から進行しているのであり、問題は、同じ自由化でもカーターとレーガンはどう違うかということが経済学者にとっては問題なのであります。こういうことを含めて、対象と市場パフォーマンス、それはそれぞれの国の状況によって全部違うんです。それを一律に議論するというのは私は経済学者としてはできない。  そして日本の国鉄の場合には一体どうしたらいいのか。電電の場合においては、長距離を新規企業が入るのですから分割してもそれは競争が内部に生ずるはずです。市場競争にゆだねることができるんです。しかしそれも分割しなかった。それは技術的な理由なんです。国鉄の場合には分割しても地域的にお互いが競争するというのではないのです。市場は変わらないのです。もしそこに分割することによって何らかの政策をやるならば、先ほど私が申し上げまして、詳しくは申し上げませんでしたけれども、大手私鉄、東京についてどのような政策を運輸省が打ったかということをお調べになることがよろしいと思います。それは、三つの分野に分けまして、そしてそれぞれ費用を分け、最もそこで能率を上げたところと能率を上げないところ、それらを並べまして、最高五%実際に生じた費用を切るという形を行うことによって企業間の努力というものを行わしめるという政策を打つことによって、国鉄より私鉄が高い料金というものを国鉄以下の今日の状況に変えたのです。  こういうような世界的に総括原価方式に行っている現在、総括原価方式を超える新しい政策というのを打ち出したのが運輸省の行政なのです。それがなぜ国鉄にはできなかったのかというようなことが最大の問題なんです。そしてそれは本州を三つに分割しようと四つに分割しようと何ら変わりはない。問題はもっと別のところにある。そして、もし分割するならば、経営環境の違うところの地方交通線で十分成り立つものを分離すべきであり、そして、もし分割するならば、旅客流動性可能な北海道であるとか九州であるとか四国というのを分割すべきなんです。それは何よりも料金の全国一律料金体系というものを是正し、経営地域住民のための草の根民主的なものに変えるというようなことが行われた、それと結合した上において行わなければならないんです。単に分割して、料金も大都市が地方を支えるというようなことで何ら変わりがないところでどうして経営が成り立ちますか。  そして、先ほど諸先生の中からお話がありましたけれども、確かに山手線は黒字なんです。この二十数年間、年間、六十億から八十億の利益があります。だが、そういうような利益があったって上越新幹線、東北新幹線の年間三千億の赤字をどうしてこれを支えることができるんですか。こういうものを簡単につくり、おっつけて、大都市圏がこれを支えるなどということをどうして計算の上に出てくるのかというぐあいに私は思うんです。もし分割するならば、先ほど目黒先生がおっしゃいましたように、運営は確かに一カ所において新幹線は行われています。だが、料金を変えるためにはペーパーカンパニーを東北及び上越新幹線はつくるべきなのです。そしてそれに基づく料金格差をつけるということは、なるほどほかから補助をするということを考えることは何ら悪いことではありませんけれども、すべてを同一にするということは経済環境の違いを反映しないという形であって、市場パフォーマンスを悪するというぐあいに私は考えるのです。  国鉄貨物につきましても、その計算は、アボイダブルコストと言われているものによって、最小限どれだけかかるかということの計算の上で、なおこれを今日最もマイナスが少ない形において運営するのにはどうしたらいいか、そのために分離すべきかどうかというようなことが議論さるべきでありまして、そういうことなしに、ある一つのイデオロギーや思想や信念によって運営するということに私は反対しているのであって、それは十分内部において議論さるべきものだというぐあいに考えるにすぎないのです。
  47. 山口孝

    参考人山口孝君) 今伊東参考人がお話しになりましたことで尽きている面もありますので、重複しないところで申し上げたいと思います。  私は、今回の臨調第四部会、それから監理委員会の経過、これを何度も読み、考えました。そして結局この考えていることは分割だと思いますね。分割民営化分割がどうも至上命令ですね。どうしても分割したい。これは今の地方線の分割ではありません、いわゆる本州を分割したいわけです、輪切りにしたい、これは一体何だろうかと、ここのところを真剣に考えてみたわけであります。それで結局到達したのは、分けるということがこれは決して民間活力を利用するとかそういう問題ではないわけですね。このことが結局は地方及び中央の財界にとって大変都合がいいんだろう、こういうふうに考えざるを得なかったわけであります。  これはそのことを申し上げますと、第一に、参考人からも出ましたように、今日本の場合にいわば貿易摩擦があり、国内需要を喚起しなければいけない、こういう中で不動産、土地の問題が非常に大事な問題になってきまして、ところが本土のいい土地がほとんどなくなってきている、どうしても土地を吐き出させなければいけない。その吐き出す方法は一体何かといいますと、これはやはり本土を分割する以外にないということですね。分割すれば、そして分割する中で、長期債務を何とか弁済をするという名目で五兆円から十兆円、あるいはもう少しなるかもしれませんが、土地を売る、このことは非常に財界にとって大事な問題になってくるだろう、こう考えているわけであります。  現にいろんな新聞でそういうことが出ております。例えば住友不動産の安藤太郎社長、個人的には大変犬の好きな優しい方のようでありますけれども、国鉄新宿駅をまたいで五十階の高層ビルを建てたらと言っている。あるいは日本プロジェクト産業協議会、これは会長が斎藤英四郎、つい最近まで新日鉄の社長でありましたが、これは鉄道軌道上空上の有効利用に関する研究をしている。さらに、不動産業界のリーダーで三井不動産の江戸さんという方は有名でありますが、この方もしばしば財界活動、政界活動をして、国鉄用地活用のための政府へのいろいろ答申をしている。それからさらに重要なのは、経団連では全国八カ所の経済連合会で研究機関を設けて、それぞれが地域分割した場合にそれをどう運営するかということを話し合っている、こういうことが出ております。  ですから、はしなくも電電公社の場合に出ましたけれども、恐らく、分割しましたら次に分割した新しい国鉄の役員の人事が当然問題になります。その場合にどういう人がなるかといえば、これはやはり中央の財界、地方財界あるいは不動産、私鉄、こういう人たちが入るに違いないわけです。そこで恐らく醜い争いが起こると思いますが、そういう財界、地方財界を含めた財界のいわば地位、これを確保する、それから土地を確保する、こういう点が多いんじゃないかと私は考えています。  これは私がいろんな分析をしましてふと思ったことは、民間報送がありますね、これは第一次の民間報送、それから第二としてUHF局のいわばチャンネルがあるわけで、いろんな地方に大体二つぐらい民放があります。ここの役員を見ますと、これをぜひお調べいただくといいと思いますが、大体その地方の金融機関あるいは不動産あるいは新聞社、こういう、きょう新聞社の方がおられますけれども、そういうところの現役または古手の方が全部役員になっています。新潟では経営分析的にいえば最も収益の高い新潟UHF局の新潟何とか放送網、これを見ましたら、ここの筆頭株主が田中角栄氏であった。びっくりしたわけであります。ここは一番もうかっているわけであります。  そういうようなことでありますから、私はやっぱり本土を割るというやり方はそういう側面から見てもぜひ避けるように考えていただきたい、そう思うのであります。そういうことを含めまして、もし分割案が出たらぜひ反対しなければいけない、こう考えております。
  48. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 伊東先生にもう一点お伺いしたいわけでございますが、先生が運賃問題の格差に論及されまして、世界的な電力料金の対比を述べられて、カナダ、アメリカ、ドイツのキロ当たりの金額に対して非常に日本が高額になっている。全国を私も回りまして、方々で電力問題が日本においても格差がある。そういう中で、これは先生のお話を伺いながら、料金体系の中でこの根本的なエネルギー問題というものがもう少しいけるのではないか、こういうように感ずるわけでございますが、伊東先生の方で何かいいお考えがございましたら伺いたいと思います。
  49. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) ちょっと御質問の意味がよくわからないのですが、今電力料金をどう決めるかというのは、歴史的に三段階を経て発展してきたのですけれども、今総括原価方式で、かかっただけの費用を認めるというのでは、運営は私企業形態であろうと何であろうとうまくいかないということがアメリカにおいても有力意見になってきているんです。そこで我が国においてもここにある種の方策を入れなければならぬと思います。ここは電力関係でありませんから具体的に申し上げかねるわけですけれども、例えば石油ショック以後において発電機の値段は六割から七割上がりましたけれども、備えつけると三・五倍になっちゃうのです。一体そこはなぜであるかというようなことを含めて、そしてかかった費用が料金に認められる、こうしたことは電力会社自身にとっても大きな問題なんです。そうしたことを抑えるということが国民に対して公益事業のなすべきところである、私企業においてもなすべきことである、そういうことで真剣に悩んでいる私企業経営者もおられるということを申し上げたいというぐあいに思うんです。  確かに電力において地域格差が存在いたします。それは発電原価の違いということであります。発電原価の違いというようなことの背後に問題があるということを今申し上げたのでありますけれども、しかし事実はますます一貫運営の方向に向かいつつあるんです。それはもうコンピューター操作になっておりまして、どこの発電所のコストが安いか、安い順序に従って需要態様に合わせて発電をし、お互いに利用するという状況に移りつつあります。北海道と本州とを結んでいるところのケーブルをごらんになると、その電力が右へ流れたり左へ流れたりという形になっております。そういうぐあいに、合理性を求めて発電原価をなるべく同じようにしていこうという動きが存在いたしまして、その地域格差についての努力が行われているということを申し添えたいと思います。  だが、この地方交通線と大都市の交通との間には決定的な経営条件の差があるんです。御存じのように、今常磐線というものは非常に混雑しておりまして、そしてどうしてももう一線つくらねばならないという状況にあります。こうした新しく投資をしなければならない分野というのは首都圏においてかなりな分野であります。それを一体どこから資金を持ってきてやっていくのか。そしてそれはもちろん雇用の機会というのをつくり出すのです。  これを放置するならばどうなるかというと、委員の皆さんはぜひとも朝の八時から八時半の間に北千住の駅に行ってみていただきたいと思います。それは北千住は東武線の準急が入ってくるところです。準急が入ってきて、準急をおりて反対側の日比谷線へと相互乗り入れをしているところに入ろうとするのです。もちろん一部の人は国鉄常磐線に、一部の人は千代田線に移ろうといたします。しかし、かなりの人が準急で来まして、そして普通に乗りかえて相互乗り入れしている日比谷線で中央に入ろうとします。ところがホームにいっぱいになりまして、おりようとしてもおりられないんです。結局二台相互直通しているのが過ぎて、三台目の北千住発のに乗っていく。その間準急は一時プラットホーム側にずっととまり続けるという現状があるんです。私は、机上ではなしに、こうしたことを含めて東京、首都圏のほとんどのラッシュのところを自分で見てまいっているんです。地方も見てまいっております。  そうすると、このようなところの改善のためにどんなに資金が必要であるか、そして新しい線をどうしても二〇〇〇年に向かって投資しなければならない、そういうことも考えざるを得ないのです。もしこういう対策を打つとするならば、年間三千億円程度の資金をここに調達し続けなければ二十一世紀の首都圏の対策はできないわけです。先ほどから、国鉄はどんどん小さくなるというようなことばかりが出ておりますけれども、実は大都市においてはまさに大量交通機関、そして人と物と資金を要する分野があるのです。そこになぜ金が行かないのか。そういうことを改善するためにどうしても、過去債務に対する手を打ち、共済に対する手を打ち、そして自立できるところの地方、それは自立してもらいまして、そして首都圏に対する新しい対策というものを打たざるを得ない。それは同時に人員対策でもあるというぐあいに考えるのです。国鉄というものが赤字で衰退し、だんだんしぼんでいくという産業ではなく、どうか、大量交通機関として世界において最も適している部分にこれは位置しているのだということをもお考え願いたいというぐあいに思います。
  50. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 鎌倉先生に最後の二点だけ質問したいと思います。  一つは、同僚の小柳先生と重複するわけでございますが、総合交通体系の確立、そしてその中で国鉄の占める位置、そういうようなことを含めて、端的でございますけれども重ねてお伺いしたいことが一点です。  最後のもう一点は、民営分割になるときに一番我々も心配しておりますのは、今国鉄が全国で交通保安、そういう形で災害防止の予備的な行為として、ここにはこれだけの金額を手当てしなければならないという膨大な箇所と金額が出ております、今ちょっと手元にございませんけれども。そういう問題が、民営分割になったときに非常に私は人命安全の立場から心配をするわけでございます。これは企業としての営利を求める場合、そうして公共的な問題という絡みの中でこの問題は必ず生じてくる問題でございます。  この二点、簡単で結構でございますけれども、伺いまして質問を終わりたいと思います。
  51. 鎌倉孝夫

    参考人鎌倉孝夫君) 総合交通体系の話でありますが、その中での国鉄の占める位置をどうするかということでありますが、基本的には、国鉄鉄道輸送の問題を踏まえて、今伊東参考人がおっしゃいましたけれども、やはり大都市圏の交通を充実していくためには、これは今までのマイカーあるいはタクシー等々では大都市圏の混雑は一層増すばかりでありますし、あるいはトラックについても、首都圏に入るところのターミナルがかなりできておりますけれども、例えば首都高速そのものも実際上パンク状態であります。したがって、都市内においては、今私鉄あるいは民間がやっている業務を調整しながら国鉄輸送中心に置くべきだというふうに考えます。  それから都市間輸送につきましても、距離の長いところについては航空で賄われるという側面が当然ありますけれども、しかし、比較的、例えば五百キロ程度のものについては、東北新幹線ができれば大体盛岡ぐらいは新幹線が圧倒的に有利な路線でありますし、したがって航空については、東京を中心にして言えば北海道なりあるいは九州、四国なり離島なり、そういうところを中心に置く。道路につきましては、日本は国土面積そのものがそんなに広くありませんし、あるいは道路拡張によってそれぞれの地域公害問題、あるいは緑そのものが破壊されてしまう危険性が非常に大きいので、私は、これ以上道路を拡張し、それに基づいて自動車輸送、トラック輸送拡大すべきだというふうには思わないわけです。そういう点におきましても鉄道輸送をさらに充実させる必要があるのであって、その点におきましても当然国鉄中心的な役割を担わなければならないというふうに思います。  それから二番目の分割民営に伴う災害保安の問題でありますが、私は大変この問題を重視しなければならないというふうに思います。午前の意見陳述のときにも申し上げましたけれども、現実に既に労働条件悪化、本当は災害を起こさないための人員が必要なところが人員がカットされていく、そればかりか、労働時間、労働条件が悪化して大変きつい労働になっております。運転士の方などにも聞きますと、とても厳しい労働で本当にいつ災害が起こるかわからないというような状況も伝えられているわけです。そしてまた、下請化が進んでおりますから、その面からいいましても安全保安の問題は大変由々しい問題だと思います。全国の例えば橋梁とかあるいはトンネルとか、そういうものについても私は十分やはり点検をし、危険なところは絶対にこれは改修をしていくべきだというふうに考えております。特に人命の問題は本当に何にかけても最も重要な問題でありますので、それについては人員をふやす、あるいは労働条件を改善するということで処置すべき問題であるということを強調しておきたいというふうに思います。
  52. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 さまざまな角度からいろいろと御意見をいただきましてありがとうございました。  国鉄の再建問題というのは本当に大変な問題でございますし、そのためには私たちもできるだけの力も出したいしお勉強もさせていただきたいと思って、ずっとこの問題にこの委員会でも取り組んできたわけでございますけれども、まず私が第一にいつでも申し上げますことは、国鉄の再建という場合に、何よりもまず国鉄経営破綻、赤字というこの騒がれている問題が、一体何によって、いつ、何のために起こされたかというそこのところの分析をはっきりいたしませんと、これをどうするかという改革も対策も立たない。そのところが素通りになりまして次々といろいろな御意見が出たりいたします。そこで、私が今申しましたような基本的な問題がはっきりされてこなければ理論づけにはならないのではないか。そういうことで、監理委員会分割民営化と盛んにおっしゃるけれども、まず分割民営化があり、そのための理論が後からくっついてくるというような逆のような不安がつきまとうわけでございます。  国鉄の亀井さんも国会でいろいろおっしゃっているんだけれども、その御発言もそれをあらわしていると思うんです。例えばこうおっしゃっています。他の交通機関が急速に発達し、国鉄中心輸送構造に大きな変化が生じた、こういう環境の変化に即応した効率化、生産性向上の経営が的確にできなかった、これが現行の経営形態の破綻をもたらした最大のものだ、こういうふうにおっしゃっています。また、それでは的確に対応できなかったのは何かというと、これは公社制度のもとで全国一元的構造にあると。だから、今の国鉄経営破綻、赤字の原因がすべて公社制度と全国一元的運営にあるという、そこに非常に大きなウエートを置かれていらっしゃるわけでございます。  そこで、まず四人の参考人の皆さんに、国鉄経営破綻の、私は最初に申しましたが、最大の原因は、監理委員会が言っているこんなものなんだろうか、どこに問題があるというふうに認識なさっているか。先ほどの御発言の中でそのことについてお触れになった方は、それにつけ加えたい問題とかいろいろおっしゃってお答えをいただきたいと思います。
  53. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) ただいまの御質問でありますけれども、国鉄が現在のような経営状況になったことにつきましては非常に複雑な原因が私はふくそうしていると思いますので、一つだけ取り上げてこれが最大の原因だというふうに申し上げることは非常に難しいかと思います。ただ、亀井委員長がおっしゃっておられたそうですが、輸送構造変化に対して国鉄が適切な対応ができなかったということも経営悪化の原因の大きな要因であることは間違いないと思います。そのほかに、これはほかの参考人の方もおっしゃっておられましたけども、例えば国鉄投資、そういったものの仕組みがこれまで妥当であったかどうか、これはだれの責任かとか、どこに問題があったかということになるとまた大変厄介な問題になりますが、そういったような仕組みの問題も私はかなりあっただろうと思います。それからまた、国民の側にも一種の甘えのようなものがあって、国鉄の場合には、いろんなことを持ち込みあるいは頼んでもいいんだというような面もあったかと思います。  そのほかまだあると思いますが、いろいろな問題がふくそうして今日のこういった経営破綻が起きてきている、こういうふうに言わざるを得ないと思います。
  54. 鎌倉孝夫

    参考人鎌倉孝夫君) 国鉄経営破綻の基本的な原因ということで私の考えを述べます。  まず、先ほど言いましたが、一つ設備投資に対する膨大な借金、これが基本であります。したがって、投資を強要しながら十分な資金を充当しなかった、そこの責任がまず基本的に問われなければならないというふうに思います。  二つ目は、国鉄投資自体が、例えば不況に際しての不況対策的な役割を担わされてきているという側面が非常に強くあったというふうに思います。この側面においても、国鉄投資が全体としての経済不況の手段とされているということを重視しなければならないと思います。  そういう第一、第二の点を許してしまった問題としては、やはり経営の自主性のなさ、外部の介入によって動かされるという経営体質、官僚的な体質、それも大変重大な原因ではないかと思います。  最後に第四点目としては、無政府的な交通機関のいわば競争をそのまま放任してきた、これが大変大きいというふうに考えるわけであります。各種の交通機関が特に民営でどんどん拡大していく、とりわけ道路につきましては政府負担あるいは公団の負担を通してどんどん拡張していく。その基盤には私は自動車産業の拡大というものがあったと思いますけれども、したがって、先ほどからお話ししておりますけれども、総合交通体系システムをつくりそれを実現していくということを何度か提起しながらもうほとんど現実化されない。されないばかりか、無政府的競争がさらにあおられる、こういう状況が大変重大な問題ではないかというふうに考えています。
  55. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 既に一部申し上げましたけれども、まず、競争に敗れたということが非常に大きいことだというぐあいに思います。日本的事情もあります。貨物の場合において、諸外国、先進国においては貨物は黒字、人は赤字というのが続いたわけでありますけれども、我が国は早くから逆に来たわけです。それは内航海運という国鉄貨物の物すごい競争者、大量に安く運ぶという競争者が日本にはあるということ、及びエネルギー転換によりまして、西ドイツやイギリスのように運ぶべき物が、石炭でありますけれども、なくなるというような事情をも無視することはできないわけであります。  そのほか、長距離における飛行機あるいは短距離におけるマイカーとかいうものの関係において、我々は、両者の関係においてイコールフッティングを確立するという総合交通体系においてこの問題を処理することができると四十年代の初めは考えたわけです。しかしその段階はすぐ去りまして、最適交通体系によって総合交通体系維持するということをやったにもかかわらず実現できず、かつドア・ツー・ドアの魅力である自動車の前に国鉄は敗れてくる。そして、成長産業を内部に持っているにもかかわらずそこへの投資はうまくいかない。建設費が大都市大量交通のためには膨大にかかるというようなマイナスが出てくる。こうした外的環境によりまして競争に敗れたということは何としても指摘しなければならないと思います。  第二に、新しい時代に適応するように二十一世紀の交通網の新完成、大都市交通の混乱対策、こうした良心的な、当然やらねばならないという政策、このことがその投資に見合う利益を上げ得ないという形で国鉄の基盤を崩していき、投資の累積、それが赤字という問題を引き起こしたということも指摘せざるを得ません。  そして第三に、政策的には、公共割引そのほか当然他の行政によって行われるべき補助というものは日本においては行われ得なかった。こうした公共割引という政策は当然政策当局者はやらねばならない。国会もそうしたことを支持する、それは当然でありましょう。しかし、みずからが決定するときにみずからを律するためにも、そのような政策を打つ場合であったならば、必ずその予算措置をとることによって公社の合理的経営を侵さないというのが近代政治のあるべき姿なのです。そうした所有と経営の分離はアトリーが強調したところでありますけれども、我が国においてはそれが実現されなかった。それにかわるべき、大蔵省を初めとする各省の行政もこうした補助をしなかったという意味において、政策当局のマイナス面も私はあったというぐあいに思います。  それだけではありません。行政的には、貨物について言うならば、貨物の最大の競争相手でありますトラック直行便業者に通運業を兼営させているという、先進国中まれに見る市場構造を保持したのが日本であります。この問題が四十年代前後の国鉄貨物の問題の中には入ってきているんです。次に、労使関係において山猫ストが生じまして、国鉄貨物というものはパンクチュアリーに届かなくなって、この首がとられていくという形になるという点においても、私は制度上そのほかの問題というものはかなりあるというぐあいに思わざるを得ません。  そしてさらに、私鉄であったならば外部経済の内部化というようなこと、東急をごらんになればおわかりになりますように、鉄道を敷くことによって地価の値上がりというものの利益を実現し、それによって支えるという形をしております。だが、新幹線が新大阪の駅をつくりまして、あそこの駅の前に戦前において土地を所有したところの企業は労せずして三十数億の利益というようなものを実現したのです。しかし、この利益は国鉄に入ることはなしに、その利益というのはその企業の中に入るというのが原則でありまして、このようなことを国鉄が内部化することは許されないという制度があったわけです。この企業は実は日本を代表する新聞社でありますけれども、そういうことは新聞には絶対に載らないわけです。  こういうことを含めて、本来国鉄私企業並みにできるかなりの余地があるというようなことを考える人がいるのは当然なんです。そういうことが我が国の現行公社法のもとにおいてはできない。そして、本来であるならば公的企業における所有と経営の分離で自由に行い得る、そういうようなこと、そして、それは社会的な公共目的に律しながら経営合理性を追求するという本来の公社というものが日本ではできないであろうというぐあいに私は考えるに至ったのです。ストライキ権の問題を含めてこの問題には長く関係していて、私は絶望いたしまして、これは私企業形態に移さざるを得ないという結論を臨調発足の前にセカンドベストとして出したのであります。  そういうことのためにはどういうことができるかという問題が重要なのでありまして、公社制度の持っている全国一元的経営というようなものはよいようであるのですけれども、例えば、先ほどから申し上げている、料金一つ地域格差ができないんです。なるほど地方は安い方がいいに決まっているんです。だが、地方の人たちが、私鉄、それでも十分成り立つのに、それを自分が出すよりもはるかに多いものを大都市の人が払わざるを得ないというような全国均一料金制というものを維持していくというのは、どうしても合理的ではない。全国一元的運営というようなもののマイナス面というものはどうしても考えざるを得ないという形で、まずこうしたものに対する分離を行うことによって、もし私鉄経営であったならば入るべき料金というのがありますよということを含めて、この国鉄赤字というようなものについて多元的、複眼の目を持って迫る必要があるというぐあいに思いまして、そういうことを議論するならば、経営形態がどうあるべきかということはあるいは二次的であるかもしれないというぐあいに考えております。
  56. 山口孝

    参考人山口孝君) 補足的に五つほど原因を申し上げます。  私はやはり最大の原因は過大な設備投資だと考えております。これの利子、減価償却費だと思います。しかし、外的環境の問題でいえば、何といってもやはり昭和三十年代以後のいわゆる高度成長による過疎過密の増大であります。過疎地が出てくる、これに対する政府の措置が必ずしも十分でなかった、そんなふうに考えております。  第二番目は、これまでほかの参考人がお話しになりましたように、モータリゼーション化の進行であります。これは避けられなかったか、こういう問題があるわけでありますが、特にモータリゼーション化は二つの面から促進されたことは御承知のとおりであります。  一つはいわゆる道路政策であります。高速道路網をどんどんつくっていった。このことによっていわばイコールフッティング論が破壊するわけであります。その道路を使って運べば安くなる、これを政府が保証をしたわけであります。もう一方では、いわゆるトヨタを中心とする自動車産業の育成であります。これにつきましては、私の専門でありますからよく見ておりますが、今日のいわば日本の自動車王国ができるまでに至る、通産省を中心にする自動車産業の育成策というのは、実に過保護と言われるぐらいのやり方をしてきたわけであります。こういう中で日本の自動車産業はどんどんと安いものをつくることができるようになりまして、それが国内に充満し、同時に海外摩擦を起こす、こういうことになってしまったわけであります。  そういう中で、御承知のとおり、貨物に対してはトラック輸送の問題が出てくるわけでありまして、これは先生方は実態をよく御存じだと思いますが、非常にトラック輸送というのが厳しい労働条件でなされているわけでありまして、私もトラック会社の二、三の経営分析をやってみまして驚いたことは、本体のトラック会社が、自分のところでトラックのほとんどを持たないという会社があります。それは全部自分のところが差配をしまして、子会社とか関連会社とか下請から全部トラックを配車して運ぶ、こういう形式でやりますと一番もうかるわけであります。つまり、管理するだけで、後はいわば自分のところの料金の枠内で、おまえのところはこれだけで運べ、こういう形で押しつけられるわけです。そういう場合における過酷な労働条件は大変なものでありまして、こういう過酷な労働条件のもとで運ばれるところのその料金と国鉄の貨物が対抗するというのはほとんど不可能でありまして、このことはやはり人道的な問題でもあり、何らかの形で規制をしていく必要がある、こんなふうに考えるわけであります。  次に、内的な問題としまして、やはり過大な設備投資の問題があります。それで、私はこんな表をつくってみましたのでちょっと御紹介しますと、今から約二十年前の一九六三年、これは昭和三十八年でありますが、この年が国鉄の黒字の最後の年であります。ちょうど二十年たって八三年の決算報告書が出ております。この二十年間に営業収益は五・八倍になっております。五千六百八十七億から三兆二千九百八十九億であります。  ところで費用の方ですが、私どもの会計学の方で費用を二つに分けます。一つは経常費とか経営費です、ランニングコストであります。つまり燃料費とか人件費とか、あるいは修繕費、こういうようなものはこの二十年間に経常費合計が八・七五倍であります。これに対してもう一つ資本費がかかっております。これは御承知の利子あるいは減価償却費、こういうような資本にかかる費用であります。これが千六十二億から一兆五千億になっております。この資本費合計は十四・七四倍であります。つまり、二倍にはなりませんが、経常費が八・七五に対して資本費は十四・七四、なかんずく支払い利息は二百五十二億から九千七百八十五億で、これは実に三十八・八三倍であります。こういう数字を挙げてみても、歴然と、いわゆる国鉄経営を圧迫しているのは資本費である、とりわけ利子であり減価償却費である、こういうことであります。  ついでに申し上げれば、一体人件費が高い高いと言っているけれどもどうだろうか。人件費の伸びは、特定人件費を入れましても九・二二倍であります。特定人件費を除いた一般人件費は六・三三倍ということでありますから、それほどでありませんし、それから一人当たりの人件費を見てみましても、これは特定人件費を除きますと私鉄の人件費よりも低いわけであります。これは国鉄の方であれば実感としてわかるわけであります。そういうことでありまして、いわば人件費が経営を圧迫しているというのは客観的に見れば間違いであって、何といっても資本費だというふうに言わざるを得ないわけであります。  そういうことと、それからもう一つは、先ほど伊東参考人もおっしゃいました、私も繰り返しませんが、重い公共負担に対して、海外に比べても少ない補助、こういう中で今日の赤字が累積してしまった、こんなふうに考えております。
  57. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 山本先生に最初にお伺いをしたいんですが、先生は先ほど、監理委員会からどのような答申が出ようとも、それを実行するには大変な力が要るんだ、特に、監理委員会それから運輸省と国鉄三位一体でやらなきゃならぬということを強調をされました。確かに私もそのとおりだと思うんです。大変これは大きな改革でございますから、力を合わせてやらなければならぬのは当然のことだと思うんです。そこで、先生がその点を強調された背景は何だろうか、もしその辺のことにつきましてもう少し付言されることがございましたらお話をいただきたい、こういうことでございます。  これは事実かどうかわかりませんが、伝えられるところによりますと、なお監理委員会国鉄との間にはぎくしゃくしたものがあるように伝えられておりますし、つい最近でも総裁の辞任がまことしやかに大きく伝えられたということを見ましてもそのことが証明をされているようにも思うわけでございます。国鉄自身が監理委員会意見を提出したのは実は一月の十日でございまして、もう昨年の八月時点でも、国鉄の監査委員会自身が、早く国鉄自身の意見を出すべきではないか、こういうことも監査委員長が指摘しまして、それから数カ月たっている。我々も、できるだけ国鉄自身の意見を早急につくるべきだということをこの委員会を通じまして主張もしてきたんですが、それがずっとおくれて今年の一月十日になってしまった。こういうことも考えますと、やはり先生が指摘された問題の背景にはかなり重要なものが私はあるように思いますので、その点なお付言されることがございましたら御意見をお伺いしておきます。
  58. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) ただいまの伊藤先生の御質問ですけれども、これは先ほど申し上げましたが、今先生が御指摘のとおり、この国鉄改革をやり遂げるには相当な政治的あるいは行政的なエネルギーを必要とすると思います。  それで、今までの例を見ますと、例えば国鉄関係のある法案その他、そういったものがつくられ、あるいは国会で御審議をいただくという過程で、国鉄が大変大きな役割を果たしてきたことはこれは事実であろうと思います。したがいまして、今度のこの国鉄改革に当たって、今度だけが例外であるというのは一体どういうことなのかと私もいささか疑問に思うわけであります。  それで、今お話がありました、ことしの一月十日に「経営改革のための基本方策」が国鉄から出されまして、それなりに私は評価すべき点はあったと思いますけれども、非常に残念なことは、今これも伊藤先生が御指摘のとおり、いかにもタイミングが遅過ぎたと言わざるを得ないと思います。これがもし仮に一年前であったならば、当事者国鉄がこういうことを言っているのだから耳を傾ける必要があるのではないかという反応がかなり私は出たのではないかと思いますけれども、これも今お話があったように、昨年の夏、国鉄再建監理委員会の第二次緊急提言あるいは国鉄の監理委員会の監査報告の中でそういう指摘があって、しかもそれから半年も経過して出てきたところに非常に問題があったように思います。以後、ぎくしゃくとおっしゃいましたけれども、そういうような関係が続いて今日に至っているというのは、これは国鉄にとりましても私は大変不幸なことだと思います。そういう意味で、こういった関係を一日も早く修復して、当事者も参画した形での国鉄改革に向かっていくことを私としては期待したい、こう考えます。
  59. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 次に、これは山本先生と伊東先生にお伺をするわけですが、今までのお話の中でも、国鉄が大きな借金を抱えてきた原因につきましていろいろお話がございました。一々私もごもっともと聞いておったわけですが、原因はともかくといたしまして、共済年金の何というんですか、債務も含めまして三十四兆円の累積赤字が生じている、これを何とかしなきゃならぬということが最大の課題であろうと思います。  そこで、分割民営にするに当たりまして、監理委員会としては、そのうちの三分の一程度を新しい会社に負担をさせる、三分の一程度を土地を中心とする資産の売却によって生み出す、そして残りを国民負担をしていただこうというような大体方向のようではありますけれども、一体この三十四兆円の累積赤字をどうしたらいいのか、御意見をお伺いをしたい。特にその中において、先ほど土地の問題が大分お話がありましたけれども、国鉄が持っている土地を中心とする資産の売却、こういうものが果たしていいものなのかどうか、監理委員会考えておられるように三分の一程度のものがそこから生み出されるものなのかどうなのか。大変いろいろな問題点を含んでおると思うんですが、土地を含めた資産の売却、そのことについて特に御意見がありましたらお伺いをしておきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  60. 山本雄二郎

    参考人山本雄二郎君) ただいまの長期債務処理の問題ですが、今伝えられておりますところによると、累計で三十四兆円とも三十五兆円とも言われております。それで、今これも伊藤先生が御指摘のように、仮に分割民営が行われるといたしますと、その新しくできるそれぞれの経営形態がある程度負担する、それからまた土地を初めとする資産売却によって対応する、さらに国民負担を待つ、こういう形になることはほぼそのとおりであろうと思います。  今問題の御指摘の土地でありますけれども、これにつきましては、現在の段階で私が理解しております範囲では、当事者である国鉄が言っております資産売却の可能な額と、それから監理委員会の方で考える売却可能な額との間にはかなりの開きがあるというふうに聞いております。これは見方の相違その他があると思いますが、先ほども国鉄と監理委員会あるいは運輸省の関係で申し上げましたように、そういう点こそ十分に関係者が詰めるべき問題であって、そこで開きができるということが私はそもそも問題だろうと思います。  それから、と同時に、それを売却するかどうかという点になりますと、例えばかなり長期的な視点から見て交通空間として確保しておく必要があるかどうかという点になりますと、かなり長期展望の仕方、物の考え方、よって立つ視点、そういったものが違ってくる可能性がありますので、そういう点も含めて、同じことの繰り返しになりますが、関係者間の調整こそが私は必要だと思います。もちろん、先ほど何人かの参考人の方がおっしゃったように、いろいろ土地の売却ということになりますと、それにまつわる問題が出てくる可能性がないとも言えないだけに、この問題に対しては今から十分な詰めと慎重な対応が必要だと考えます。
  61. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) 三十五兆円の債務というもののうち、五兆円強は御存じのように棚上げが大蔵省との間でできておるというものであります。残り三十兆という形になります。ちょうど十兆が、国鉄に言わせますと自分たちが投資した資産に見合う、こう言っているわけです、それは引き継ぐであろう、十兆を国家が別途補てんする、残り十兆というのを土地を売ってというのが伝えられるところの臨調の案かと聞いております。また、最近私が聞きましたところにおいては、国鉄は三兆と言っておりますけれども、両者の間において歩み寄りがかなり行われまして、売却によるところのものはもう少し低いというぐあいのことだということも聞いております。しかし、その金額にしても国鉄は出てこないということであります。  かつて私は、四十年代でありましたけれども、都留重人教授と一緒に、国鉄の東京都内にありますところの土地を調べたことがあります。これについては、石川という国鉄の経理の中心にいた人が国鉄の資産を計算したというものがあったんです。それをもとにいたしまして、この土地を、国鉄の事業経営関係のないものを住宅公団に渡すことによりまして東京の住宅対策に資することがどれだけできるであろうかというようなことを、一時都留重人教授と私は計算したことがあります。しかし、もちろんこれは東京という一局限した地域でありまして、国鉄全体が持っている土地について行ったものではありません。  もし民間企業の再建というのを考えるならば、それは当然債権債務の状態というのははっきりまずつかみ、資産がどのような形になっているかということをつかみ、次いで過去債務の棚上げ、そして経営上のバランスをとるという形に入るというのが常道であります。その場合、不動産というものを売らざるを得ないというようなこともまたやむを得ないのでありますけれども、その場合に社会的に政治的に問題が起こらないように、住宅公団が利用できるようなものをここに移す等々の措置というものは私はあり得ると思います。  なお、会社更生法によります場合には、その場合の不動産は、関連の同じ業種の評価水準で評価して資産として計上するというのが普通でありまして、時価評価をするということは行わないというのが一般多数決でありまして、少数意見のみが時価評価という形になっているということを申し添えたいと思うんです。  いずれにいたしましても、不動産売却というようなことはなかなか難しい問題です。もし行われるならば、NHKが売りましたように、旧社屋を、あれは非常に高過ぎるというぐあいに批判を受けましたけれども、あれは高く売ることによって国民を利したのだと私は思いまして、そういうような措置がとられるべきだというぐあいに思います。  地方公共団体でありますけれども、神戸市は、自分の造成した土地というものをきっちり時価評価いたしまして、それによって売るという形によって、この土地売却に伴うところの社会問題というものを事前防止すると同時に、それによる利益によりまして公共的な利用にこれを供するという形を行ったのです。そのようなことは、今日近代国家である日本においては当然行わるべきだというぐあいに思います。
  62. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 私は、国鉄の再建が、主権者であります国民の負託にこたえるという立場から、情熱を持って論議をされておりますことを期待をいたしております一員であります。しかし、きょうの参考人の先主方を煩わしての御意見を承ります短い中においてでも、既に、ある種の目的のために民営分割が強行されようとしているのではないかとさえ思うようなことも出てきております。  そういう中ではありましたけれども、先生方の御熱心なる御意見の御開陳を拝聴をさせていただきまして、大変たくさん得るところがございました。なぜこれらの御意見が再建の報告に盛り込まれていかないのだろうかとさえ思っております。再建監理委員会に呼ばれなかったという先生もおいでになります。亀井委員長に長時間意見を申し述べたとおっしゃっておられますけれども、果たしてそれらの御意見が取り入れられるのかどうか危惧の念を持っておいでになります御意見もございました。さらにまた、これは頼まれなかったかもしれませんのですが、資料は提供をしたとおっしゃいます先生もおいでになりました。願わくは、これらが近く出されるであろうところの答申にぜひ盛り込まれてあることを期待をいたしておりますものでございます。  そういったことで、次のことをお尋ねをいたしますが、時間の関係でお尋ねを申し上げますことだけ先に申し上げさせていただきますので、終わりました後に先生方のお答えをいただければ大変ありがたいと存じます。  まず鎌倉先生でございます。  自動車輸送には限界があると申されました。私も同感でございます。地方の小さな自治体の仕事に携わっておりました。道路をつけるといいますと、それが国の道であろうが県の道であろうが、みんな苦労をしますのは地方自治体の職員であります。わけても、住民合意を得ますということと用地の買収を果たすということは大変なことでございます。けれども、この苦労をする職員諸君が、駐車場がありませんのに依然としてマイカー通勤をいたします。これはどなたにでも適用することのできる車への利便性というものがそうさすのだろうと私は思っておりますのでございますけれども、もし御所見をいただけますならば、いずれは鉄道に移行をするとはおっしゃいましても、それらの速度はどの辺に置いていったらよろしいのか、御意見をいただきたいと思います。  それから伊東先生にお願いをいたします。  ヨーロッパの諸国は、たくまずして民営分割と同じ形になっておりますのがそれぞれの所有する国鉄の実態だろうと思います。それぞれの国に国鉄があり、これらが相互利用をいたしております。やっぱりメリットもあればデメリットもありますと思いますけれども、最も大きなデメリットは何なのか。それは利便性や、さらにはまた経営上から見たデメリットをお教えをいただければと思います。  三番目には山口先生にお尋ねをいたします。  これは公営企業の会計制度の問題でございます。おっしゃっておられますように、公共的努力や公共的成果というものがその会計制度によって測定をすることができたら、理事者はよほど楽になるのだろうと思います。しかし、それがないばかりに、例えば上水道事業を見てみましても、あるいはガス事業を見てみましても、特に上水道の場合には、夏場の最も水を必要とするピーク時にはどこかで水不足が出てくるぐらいの設備をしておきませんと、そんなときにでもどこからも不足が出ないほどの設備をしておくことは、それは過剰投資に通ずるのだ、こんなことを苦労の中で見つけてまいりましたようなものでございますけれども、そういったことのままに置いておきますと、もし需要のピークと火災とが重なったときには、経営者の責任をさえ問われなければならぬことになります。  国鉄経営におきましても、幾つかの面からこの会計制度の矛盾を指摘をしていただきまして、全くそのとおりだと思いますけれども、これらに適合できるような新しい会計制度への移行の手順はどのように先生考えておいでになりますか、その辺のところをお尋ねいたします。  以上です。
  63. 鎌倉孝夫

    参考人鎌倉孝夫君) 自動車輸送限界に関して、特にマイカーで通勤する人たちが労働者の中にも勤労者の中にも大変多いわけでありますけれども、その問題を踏まえてどういうふうに考えたらいいかということなんですが、私も首都圏の中で生活しておりますけれども、国鉄の川越線のところなんですが、大変不便でありまして、その不便さが逆にマイカーに頼るという傾向がかなり私はあるように思うんです。地方へ行きますと、公共交通輸送機関がないところではもちろん個人的なマイカーというものが必要不可欠なところは大変多いですけれども、そこでも私は基本的に、現在ある公共輸送機関、特にバスなどを使った形で、できるだけ個人的なマイカーという形での移動をやはり規制というか、抑えていく必要があろうかというふうに思います。ただ、やっぱりマイカーに一度乗りますと、なかなか小回りがききますから、そういう個々の嗜好というのがあります。したがって、きょうずっとお話ししてきましたが、総合交通体系あるいは道路輸送からむしろ公共交通としての鉄道なりその他の公共交通機関に重点を移すということは、なかなか一気にはいかないと思います。  それに関して、私は幾つか順序を追っていくべきではないかというふうに考えているんですが、一つは、特に大都市圏の問題なんか考えますときは、マイカーで大都市内、例えば東京にしても京都にしても大阪にしてもそうですけれども、マイカーで入ってくるというのはもう完全な限界だと思いますので、これは首都圏の周りの主要なところにターミナルを置く。首都圏については必要不可欠な営業用を中心とした自動車は置くにしても、マイカーについては乗り入れしないというような処置がとられるかどうか、とられる必要があるのではないかというふうに思います。  二つ目は、地域自治体の問題でありまして、地域交通をどうするかということに関しては、やはり地域住民ニーズ、それの調整が必要であります。したがって、これも午前中お話ししましたが、交通委員会などを、地域住民あるいは交通機関を担っている人、あるいは労働組合あるいは地方自治体、そういう構成の上で、あるべき交通政策を検討していくような地域委員会が必要ではないか。その上で、地域輸送体系をどういうふうに持っていくか、これを明確に確立しながら進めていく必要があるように思います。  最後は、全国的な問題でありまして、道路輸送鉄道あるいは航空あるいは海運等々の全体的な調整を、これは地域ニーズ地域輸送、どの程度の必要性があるかということを十分検討しながら全体的にやはり考慮し、その実現を図っていくということでなければならないのではなかろうかというふうに思っています。
  64. 伊東光晴

    参考人伊東光晴君) ヨーロッパは、各国が国家主権によりまして別々に鉄道を運営している、この総合調整はどうなっているかということでありますけれども、ヨーロッパに渡りましてこの実態を調査いたしました神奈川大学の交通論の先生が一カ月ほど前のエコノミストにそのことを書いております。彼の報告を私は聞きまして、大学院時代私が教えた学生でありますが、その報告によりますと、国境を越えるところの列車の数が圧倒的に少ない、そこで料金調整というものは日本の幹線分割と比べて問題にならないというのが彼の報告であったと私は記憶しております。こういうことで、ヨーロッパの事態と日本の幹線分割とを相互簡単に比較することは難しいのだろうと思います。  御存じのように、各国ごとに大衆交通機関を援助するシステムというものは違っております。フランスの場合においては、都市交通税というのが設置されておりまして、パリ地区の場合においては給与の二%を拠出してこれで補助をする、そして十万人以上の都市については給与の一%を雇用主がこれを拠出する、そして三万人から十万人については〇・五%を拠出する、こういうようなものが公共交通機関の管理運営、公共割引の援助、投資経営補助等に使われているというぐあいに、各国ごとによってこうした性格が違いますので、これを統一するということはできない。また、イギリスの場合の国有企業の民営化ということは、その目的は、売却することによって国家財政赤字を補うということが主であり、次いで従来の赤字から国家がフリーになるというので、かなりイギリスはアメリカとはその民営化の様相が違っております。日本はどういう道を歩むか、これはまた別の問題かと思います。
  65. 山口孝

    参考人山口孝君) 山田委員から大変重要な、しかも今後の課題とも私考えられる御質問をいただきましてありがとうございました。  この問題につきましては、私考えておりますけれども、まだ課題であります。現在は、先ほども申し上げましたように、一つは、国会の予決算会計というのがございまして、予算というのは国会で衆知を尽くしてつくったものでありまして、これを忠実に実行する、こういうところで問題を考えていくのも一つの方法であります。つまり、赤字、黒字ではなくて予決算の持つ意義尊重する、こういうことであります。しかしこれでも十分ではありません。  それからもう一つは、先ほど申し上げました西ドイツにおける区分会計ということで、公共的領域、企業的領域、それから国家的領域と分けて、そこでどのくらいの収益と費用が発生しているか、これを区分してみる、こういう方法がございます。しかし、山田委員がおっしゃったようなそういうことではなくして、もっとやはり、赤字であってもこれだけの金に換算できないベネフィットですね、便益があるとか、ここを評価できないかという問題です。  この問題につきましては、一つは、コストベネフィット分析という、分析という形でやる方法がございます。そういうような場合には、例えばその線が教育に及ぼした影響はどのくらいであるとか、地域文化に及ぼした影響、商業、それから公害防止、それから福祉というような問題、これを挙げまして、そして一つの方法は、文章であらわす、金ではないけれども、これにこういう寄与をしたということを書く、いわば損益計算表の欄外注記事項、こういう方法がございます。しかし、この場合には、やったということだけで、金に換算できないということがございまして、これについて非常に苦労して、このくらいの寄与があったという金銭換算という努力がいろんなところでなされておりますけれども、私どもが見てそれで完璧だというところまではいっておりません。例えば国鉄労働組合でもそういう努力をしまして、地方交通線のいわばベネフィットがこのくらいあるんだ、損失だというけれども、こちらではこれだけ利益が出ているという計算をしておりますが、まだこれは全体の合意を得るような社会的信頼の指標にはなっていないという状況でございまして、今後それを深めていかなきゃならないと考えております。
  66. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 ありがとうございました。  質問を終わります。
  67. 鶴岡洋

    委員長鶴岡洋君) 以上をもちまして、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆様に一言御礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、お忙しいところ本委員会調査のため貴重な時間をお割きいただきまして、まことにありがとうございました。各参考人にお述べいただきました御意見等につきましては、今後の本委員会調査に十分に活用させていただく所存でございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  本件に対する本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十二分散会