○吉原政府委員 まず、一般的に在外邦人の年金
制度への加入が
制度的にどうなっているかということをお答えいたしますと、在外邦人の方につきましては、その居住するそれぞれの国の年金
制度がまず原則として適用されることになるわけでございまして、我が国の年金
制度の適用はそこには及ばないということになるわけでございます。ただし、
日本国内で厚生年金が適用される会社あるいは事業所に使用されている人が海外の事業所等へ派遣されている場合どうなるかといいますと、
日本国内にある会社なり事業所との間になお一定の雇用関係が継続している場合には引き続き厚生年金が適用される、こういうことになるわけでございます。したがいまして、これらの厚生年金保険が引き続き適用される方については、現地におけるその国の年金
制度と厚生年金保険というものが二重に適用されることになるわけでございます。
在外邦人の年金
制度の二重加入について、具体的にどういう
状況かという御質問でございますが、すべての国について
状況を的確に
把握しているわけではございませんが、西ドイツについて申し上げますと、西ドイツにおきましては労働者年金と職員年金に分かれておりまして、被用者というのはこういった労働者年金、職員年金に強制加入されるという建前になっておりますが、一九七七年の年金法の改正によりまして、外国から派遣された方につきましては、まず第一に本社との間に雇用関係が存在をしていること、それから西ドイツでの勤務期間が一時的なものである、一時的な派遣であるということが事前に明らかであるという場合には適用除外されることになったわけでございます。従来は、
日本から西ドイツに行きました場合には必ず二重適用ということになっていたわけでございますけれ
ども、これによりまして、本社との雇用関係が継続し、かついずれ
日本に戻る、西ドイツへの滞在は一時的なものであるという場合には西ドイツの年金法が適用されない、したがって二重適用にはならないということになったわけでございます。
それから、アメリカがどうなっているかといいますと、アメリカにはOASDI、老齢・遺族・障害保険という
制度がございまして、アメリカに行った
日本人はそこに強制加入ということになるわけでございます。西ドイツで申し上げましたような一時派遣者は適用除外をするというような
制度、措置がございませんので、我が国の会社あるいは事業所と一定の雇用関係を持ったままアメリカに行った場合には、我が国の厚生年金とアメリカの〇ASDIと二重に適用される、こういうことになるわけでございます。
そして、年金に結びつかないケースがあるのじゃないかということでございますが、現在の我が国の厚生年金、国民年金
制度におきましては、海外の現地法人等に勤務している者を適用対象にしておりませんために、場合によっては、二重に適用されながらいずれの資格期間も満たし得ない、したがって年金が受けられないというようなケースが現行の
制度では十分考えられるわけでございます。そういったことを考えまして、最初に申し上げましたように今回の年金法の改正案におきましては、そういったことができるだけなくなるようにという考え方から、次のような特例措置を講じているわけでございます。
まず第一に、在外邦人は国民年金に任意加入できる道を開く。仮に任意加入しなかった場合でも資格期間には算入をする。俗に空期間と言っておりますけれ
ども、資格期間には算入をして年金の受給資格に結びつくようにするという措置をとることにしております。それから第二に、新
制度の施行日前の海外在住期間、つまり過去の期間については、国民年金が
発足をいたしました
昭和三十六年四月以降の期間で二十歳から六十歳、つまり、本来国民年金の適用を受けるべき期間を資格期間に算入するということにしているわけでございます。
それからもう
一つは、在外邦人に対するこういった年金の二重適用の問題あるいは年金が受けられなくなるというような問題を根本的に解決するために、我が国と外国との間で年金の通算協定というものを締結して、外国における年金
制度の加入期間と我が国の年金
制度の加入期間を通算する。二重加入による保険料の二重払いの問題、二重適用の問題も同時に解決して年金の受給権に結びつくようにするということで、現在アメリカあるいは西ドイツと交渉しているところでございます。