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1985-03-08 第102回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月八日(金曜日)     午前九時開議 出席分科員   主 査 大村 襄治君       奥野 誠亮君    田名部匡省君       田並 胤明君    富塚 三夫君       矢山 有作君    和田 貞夫君       武田 一夫君    春田 重昭君       宮地 正介君    小平  忠君       菅原喜重郎君    西田 八郎君    兼務 武部  文君 兼務 中西 績介君    兼務 松浦 利尚君 兼務 吉原 米治君    兼務 渡部 行雄君 兼務 渡辺 嘉藏君    兼務 宮崎 角治君 兼務 吉井 光照君    兼務 小沢 貞孝君 兼務 木下敬之助君    兼務 滝沢 幸助君 兼務 横手 文雄君    兼務 浦井  洋君 兼務 田中美智子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      有馬 龍夫君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         農林水産省食品         流通局長    塚田  実君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君  分科員外出席者         防衛庁装備局武         器需品課長   草津 辰夫君         大蔵省主計局主         計官      竹内 克伸君         文部省体育局学         校給食課長   小西  亘君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 難波  江君         農林水産大臣官         房技術総括審議         官       芦澤 利彰君         通商産業省生活         産業局通商課長 新関 勝郎君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      渡辺 光夫君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      神谷 拓雄君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   福渡  靖君         参  考  人         (蚕糸砂糖類価         格安定事業団理         事長)     二瓶  博君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 分科員の異動 三月八日  辞任         補欠選任   矢山 有作君     田並 胤明君   武田 一夫君     春田 重昭君   小平  忠君     小渕 正義君 同日  辞任         補欠選任   田並 胤明君     富塚 三夫君   春田 重昭君     宮地 正介君   小渕 正義君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   富塚 三夫君     和田 貞夫君   宮地 正介君     武田 一夫君   西田 八郎君     菅原喜重郎君 同日  辞任         補欠選任   和田 貞夫君     矢山 有作君   菅原喜重郎君     小平  忠君 同日  第一分科員宮崎角治君、小沢貞孝君、滝沢幸助  君、第二分科員田中美智子君、第三分科員渡辺  嘉藏君、吉井光照君、第四分科員中西績介君、  横手文雄君、浦井洋君、第六分科員吉原米治君  、渡部行雄君、第七分科員武部文君、松浦利尚  君及び第八分科員木下敬之助君が本分科兼務と  なった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算  (農林水産省所管)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算及び昭和六十年度政府関係機関予算農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  3. 矢山有作

    矢山分科員 最初に、農林大臣にちょっとお願いを申し上げておきたいと思うのですが、御案内のように同和対策審議会の答申が出てちょうど二十年になるわけです。その間いろいろな事業も行われまして一定程度の前進を見ておると思うのですが、しかし、今日でもなお深刻な事態が残されておりますし、特に被差別部落農業漁業状態というのは、特に農業なんかは非常に零細ですし、相当問題が多いと思います。  そういう点で、もしできますならぜひ被差別部落実態調査を一度、実態調査といいますか実態を見に農林大臣にお出かけをいただいたら非常にありがたいと思っておるのですが、どうでございましょうか。
  4. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 矢山先生にお答えいたします。  我が省としては、これまで国の地域改善対策の一環としまして、地域改善対策特別措置法に基づきまして、対象地域におきまする農林漁業経営の安定と生活水準向上等を図るため、土地基盤整備事業経営近代化を図るための園芸施設畜産施設等導入等各般にわたる施策推進に努めてまいりました。御指摘のように、これらの施策推進するに当たっては実態の把握が重要でありますので、必要に応じて担当官現地に派遣しているところでございます。  私につきましては、おっしゃる意味はよくわかりますが、国会等対外折衝公的行事等のため、現段階でお約束できるかどうかは御賢察いただきたいと思います。
  5. 矢山有作

    矢山分科員 今の段階ですぐ出ていただくというのは無理でしょうが、適当なときを選んでぜひお出かけいただくように一応お願いしておきたいと思いますので、御検討いただきたいと思います。  それでは本題の質疑に入らせていただきますが、時間が三十分しかございませんので、私の方も簡単に聞きますが、要点をそらさないように答弁してください。お役人の方というのは、なるべく要点をそらしてうまく時間をつりながら答弁するのが優秀なんだそうですが、それをやられるとたまりませんので。  まずお伺いしたいのは、民間林業労働者振動病関係健康診断なんですが、これは私は実はこの間ある地区に行っていろいろ調べてみたのですが、事業主が積極的に自分が使っておる従業員に対して健康診断を受けるようにやらないところの騒ぎでなしに、逆に事業主の方で怪しい者は健康診断に行かせないようにする、そういうようなことが行われている事例がありますので、これはまた時間を持って具体的には申し上げますが、これでは私は振動病対策は進まぬと思うのです。  そこで、少なくとも事業主が積極的に自分の使っておる者には健康診断を受けさせる、特に振動病関係の健診は受けさせるというように強力な指導をやらなければいかぬのじゃないかと思うのですが、これは法的な問題もありますので、それを含めてひとつ御見解を承りたいのです。
  6. 福渡靖

    福渡説明員 お答えをいたします。  確かに、御指摘のように振動に関する健康診断受診状況というのは、私ども報告を受けている限りにおいても大体五〇%から六〇%くらいの受診率であるというような状況でございます。ただ、一般健康診断受診義務もございますので、これにつきましては受診率そのものは正確に把握できませんが、かなりの労働者の方が健康診断を受けておられるというように報告を受けているところでございます。  御指摘は、受診率をいかに高めるかということがポイントであろうかと思いますが、これにつきましては、私どもの方で、本来事業者責任で実施される健康診断ではございますが、その受診率を高めるために補助金を出して実施させるという制度を設けております。これを通じまして事業者理解を深めるということを一つやっておりますが、そのほかにも、振動障害総合対策推進ということで、この中でも、健康管理充実という目的のために健康診断徹底を図るということをしておりますし、また、林業振動障害防止対策会議を必要な地域に設けまして、この会議を通じて労使双方理解を深めるという手段を講じております。このようなことで、基本的には関係事業者団体を通じまして健康診断に対する事業者理解を深めて健康診断受診率向上を図っているところでございますが、今後もこういうような施策を一層強化してまいりたい、このように考えております。
  7. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 振動障害防止のためには、まさに早期発見早期治療が大切でございますので、このための健康診断を促進することは極めて重要でございます。  労働省お話のございました雇用者対象にしたことでございますが、林野庁におきましても、一人親方を対象にいたしまして特殊健康診断を実施しているところでございます。特にこのことにつきましては事業主理解が重要でございますので、それぞれ現地検討会を開催する、この中で振動障害にかかわる啓蒙普及徹底するということ、さらには、安全管理診断指導員を設置いたしましてこれの指導徹底するというふうなことで、安全管理体制を整備しておるところでございます。
  8. 矢山有作

    矢山分科員 もう一つ、例のチェーンソーなんかできるだけ振動のないものに買いかえるということが、振動病予防一つ措置として考えられて行われているわけですね。今たしか融資限度額が十八万円ぐらいだと思うのですが、どうも最近調べてみると買いかえが進まないのですね。経済的な理由が大きいのだろうと思うのです。特に民間林業労働の賃金その他の状態からして。  そこで、ひとつ融資限度枠を広げる、つまり購入価格に対しての融資を考えてみるとか、あるいは買いかえに対して補助制度を考えてみるとか、財政が厳しいことはわかっておりますが、そういう点についてどうお考えになりますか。
  9. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 チェーンソーの低振動化が大変進んでまいりまして、そのために多少単価も高くなってくるというような傾向もございます。したがいまして、お話のございました上限をもう少し実勢に合わせるように現在財政当局とも折衝をしておるところでございます。
  10. 矢山有作

    矢山分科員 私がなぜこういうことを申し上げるかというと、予防対策が十分にいきませんと、一たん振動病にかかってしまいますと、労働者自体も大変ですし、それに対する治療あるいは補償に伴う財政的な負担も、これは考えてみると大変なんですね。だから何といっても一番重要なのは、予防対策を確実にするということが一番だと思うのです。  そのためにはやはり振動病に対する健康診断をきちっとやる、そういうふうに事業主指導する、そのことが非常に必要だし、それからまた、振動病にかからないためには低振動機械を使わせるように積極的な施策を講ずるということが必要だと思うのでそのことを申し上げたわけですから、融資枠の拡大については御検討いただいておるようですけれども、さらに進んで補助制度の問題を考えられぬかということもあわせて御検討いただきながら、実現に向かって御努力を願いたいと思います。大臣どうでしょう、今の点で御所見を伺いたいのですが。
  11. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今の振動障害予防対策でございますが、振動の少ない機械開発普及、これは昭和五十年ごろに比べて振動値が今では四分の一くらいになっておる、また無振動のリモコンのチェーンソーもできておるということで、そんなことの開発普及とか、あるいは振動機械使用時間の規制、一日約二時間で十分間やれば十分間休むとか、そんなことを含め指導徹底、それから先ほど長官が言いました事業主に対する啓発等を講じてまいりましたということで、こういう予防対策とあわせて特殊健康診断の実施とかあるいは軽快者就業基盤開発等対策を講じております。また、昭和六十年度から新たに振動機械使用者に対する振動障害防止のための講習を行うこととしており、今後ともこういう対策を的確に進めたい、このように考えております。
  12. 矢山有作

    矢山分科員 時間の関係もありますから、今申し上げた点もあわせて御検討ください。  それから、次に質問を移してまいりますが、国内林業の不振ということはもう御承知のとおりであります。今日山村地域で問題なのは、林業関連企業経営の不振、倒産が続出する、さらに、そういう状況ですから林業労働者雇用不安が増大をしておる、こういう実態ですが、これに対して林業政策の面からどういうふうなことを考えておられるか。これは時間がかかりますから、ごく簡単にかいつまんでお話しください。
  13. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 特に国有林地帯などにおきましては、国有林の重要な使命といたしまして、もちろん一般林政施策充実強化も必要でございますが、国有林事業請負事業体に発注するということも地域社会振興につながる使命一つとして行ってきたところでございますが、国有林におきましても、いろいろ資源的制約あるいは現在の大変厳しい財務事情等がございまして、発注事業量も減少せざるを得ないような傾向にございます。また、一般林業活動経営活動が極めて停滞しておるというようなことがございます。  国有林野事業地域大変責任も大きいわけでございますが、それに対応いたしまして、事業体の方におきましても仕事やり方多角化していただく、素材生産のみをやっておりましたところについても造林もあわせてやってもらうとか、また造林の方が生産をやるとが、あるいは特用林産物生産等にも取り組む、また国有林野事業以外の業務についても、その地域でいろいろな事業にあっせんをいたしまして従事する、そういう各般の手だてを講じまして、事業多角化と申しますか、そういうことによりまして請負事業体事業量雇用量が確保されるように、国有林といたしましても、あるいは地域林政施策といたしましても、努力を傾注してまいりたいと考えております。
  14. 矢山有作

    矢山分科員 ごもっともで、そういうふうな努力をぜひお願いしたいのですが、ただ、私が心配しておりますのは、どうも明年度林野庁予算を見まして、非常に厳しい状況があるのじゃないか。調べてみると、生産事業を休止しなければならぬというようなことも考えられておるようだし、造林林道等請負事業の大幅な縮減というものもやらざるを得ないのじゃないかというふうにどうも推察できますし、これらのことは、私どもが言っておるだけではなしに、現地の方へも割合早く響きまして、これはどうも事業縮小があって大変なのじゃないかというのが地方自治体あたりでも非常に問題になっておるようですね。一体どういうふうになるのですか、かなり大幅な縮減になるように思われてしようがないのですが。
  15. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 現在、六十年度の業務運営をどういうふうに持っていくかということを営林局署といろいろ照復を重ねておるところでございますけれども、なかなか一年いっぱいを見通した収入支出を今の時点で確定できるという情勢には実はございません、収入の大宗を占める木材市況というものが一つ不透明なところがございますので。  したがいまして、やはりスタート時点におきましては相当かた目な見通しのもとにスタートいたしまして、その後いろいろ企業努力を払った上での収入が確保されてまいりますると、それに応じてまたいろいろ業務拡大はしていけると思っておりますが、まずは最も厳しい事態をも想定した考え方で営林局署事業を見直しておるところでございますので、最悪の増合にはそういう厳しい状態が続くということも考えられるわけではありますけれども、ひとつ実行の過程におきましてあらゆる努力を傾注して、業務拡大できるように、特に諸般の販売活動推進いたしまして、予定事業量が完遂できるように、局署挙げて努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  16. 矢山有作

    矢山分科員 これはこの前林野庁予算説明を聞いたときも私は思ったのですが、収入見込みも今の木材市況からいったら少し高過ぎるのじゃなかろうかという感じを受けたわけです。それからまた、予算の歳出の面をずっと検討してみまして、これはかなり縮減を要するのじゃないかなというふうに感じておりまして、その後いろいろ調べてみると、先ほど言いましたようなかなり大幅な造林事業あるいは林道事業縮減をやらざるを得ないようだし、それからまた生産事業も休止しなければならぬというようなことも考えられておるようなので、これがこのままいくと山村地域は大変だと私は思うのです。だから、予算上告しいからといって、そういうような地方の、特に林業地帯に大きなしわ寄せがいくというのは私は問題ではないかと思う。特に、国有林野事業一つの大きな目標というのが農山村地域振興を図るということにあるわけですからね。  そういうことで、一般林政の面ではそうした面でいろいろな施策が考えられておるわけでしょう。ところが一方、国有林野事業の方では事業を大幅に縮減しなければならぬ。私は、これは施策一貫性がないのじゃないかというふうな感じがするわけです。特に、国有林野事業というものを歴史的に考えてみると、この国有林野事業経営ということについては、地元労務提供というものをかなり義務的にやらしてきたという経過もあるわけですね。そういう経過を踏まえながら、今度は国の財政の都合で事業をやれないのだから一方的に有無を言わせず事業縮減せざるを得ないというのでは、これは幾ら財政難だとはいいながら、余りにもやり方が一方的過ぎはせぬか。もっと根本的に言うなら、先ほど言いましたように農山村地域振興どころの騒ぎじゃない、余計農山村地域の破壊につながっていくのじゃないかと思うので、この点はやはり農林大臣として十分な対応を考えていただかなければならぬ。今予算審議中でありますけれども、私はそのことを特に申し上げて、御見解を承っておきたいと思うのです。
  17. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 矢山先生にお答えします。  林野事業の大変厳しい状況は御存じのとおりでございます。一番問題は木材価格が安くなったこと、それから需要拡大が少なくなった。五十五年に比べますと大体需要で三割減、価格で三割減、こんな状況、これが今日の姿をなしておる。したがって、実は私も、今先生の御指摘のように、来年の木材価格、果たしてそんなに売れるものかどうかという問題がございます。  ただ、そういう形の中に、実は今の縮減という中に二つあると思います。やはり林野事業の中身が、木材がこういうことになると当然予算が厳しくなる。その場合に、事業を減らすことと、それからもう一つは同じ事業の中に単価を削る、この二つがあると思うのですが、私は、正直に申しますと、若干事業縮減はやむを得ませんけれども、逆に単価縮減はどうかと。やはり物は普通が一番いいわけでございます。そうでなくてはいい仕事はできません。その辺はひとつ、御指摘の点は十分踏まえて、一遍林野庁をよく指導してみたい、こう思っております。
  18. 矢山有作

    矢山分科員 ぜひこれは御検討いただきたいと思います。特に、こういった国有林野事業縮減というものはその地元に対しては雇用上非常に大きな問題を引き起こしますので、これはぜひ御検討いただくよう重ねて申し上げておきます。  次の質疑に入りたいと思うのですが、これは昨年の四月に私は、農林水産委員会ですか、出さしていただきましていろいろ御質問申し上げた点で、その当時御検討いただくことになって未解決になっておった問題がありますので、未解決になっておるのをそのままほっぽらかしでというわけにもいきませんので承っておきたいのです。  一つは、立木販売予定価格評定因子である収益率の点を問題にしたと思うのです。それについてはぜひ検討さしてくれ、検討した上でどうするか、適切な対応をしたいということを長官もおっしゃったはずですし、前の農林水産大臣もおっしゃっておりますので、そういった点、今どういうふうな検討段階にあるのか、御説明をいただいておきたいと思います。
  19. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 昨年四月、百一国会で御議論をいただきましたそういう経緯を踏まえまして、実態調査を行ったところでございます。素材生産を営んでおります百三十五の事業体につきましていろいろ資料をとりまして調査を行いまして、現在最終的な検討と申しますか、収益率の適否についての検討を行っているところでございます。  中間段階でございますけれども、現在までの調査結果によりますと、これは四十九年から五十八年までの十年間を調査したわけでございますが、木材市況に連動いたしまして動いてはおりますが、収益率にいたしまして、現在一・六%を使っておりますが、この十年の平均を使いますと、今までの計算では一・五%というふうなほとんど差のない数字が出たところでございます。これによりまして今後実際の評定方式をどういたすかにつきましては、もう少し詰めまして決定いたしたいと考えております。
  20. 矢山有作

    矢山分科員 この収益率の問題というのはいろいろな意味で重要な問題になってくると思いますので、ぜひ御検討いただいて、適正な収益率をもとにして計算ができるようにしていただきたいと思います。  それからもう一つは、六十年度の事業を見ておりますと、先ほども言いましたように、事業運営費縮減になるというようなことに関連をいたしまして、どうもまた立木販売の方に比重が移っていくんじゃなかろうかというような懸念を私は持っておるんですけれども、やはり国有林野事業収益を確保するためには、立木販売よりも付加価値を高めた素材販売の方がいいんだということは昨年もさんざん議論をしたところなんで、そういう点からいうと、できるだけ立木販売を避ける、素材販売の方に重点を置くということが行われなければならぬのじゃないかと思っておるのですが、この点どうなんでしょうね。臨調の方が何か立木販売を志向しておるというのは、私も言っておることを承知しておりますし、それを踏まえて昨年の議論をやったところで、昨年は臨調の方は立木販売を志向しておるが素材生産の方も持続してやっていくんだということをおっしゃっておったようですけれども、しかし、明年度を見るとどうも立木販売の比率の方が一層ふえていくような感じがしますが、その点どうなんでしょうね。
  21. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 素材生産そのものをどのように拡大するかあるいは縮小するかという判断の中には、素材生産事業そのもの原価内容あるいは販売価格等を分析いたしまして、内容に問題のあるものについてはこれを縮小し、良好な生産事業はこれを拡大するという方向をとらなければならないと思っております。  ただ、立木販売との比較におきましては、国有林管理経営組織が、素材生産事業販売事業を持っておるがために、営林局作業課でありますとか営林署に事業課あるいは貯木場その他生産販売関連人員組織を持っておる、それを当然の要件として考えている向きがあるんではないかというふうな根本に立った御批判がありまして、本当の国有林野事業のなすべき業務を厳しく考えた場合、どこまでにとどめておくべきかというふうな御議論の中から、常に、立木販売方式でやった場合の国有林組織を考えること、あるいは素材生産事業につきましてもその原価内容等を厳しく見るべきであるということであろうと思っております。  現実の対応といたしましては、私どもいろいろ関連する向きへの激変を緩和することは考えなければならぬことでもございますし、素材販売への依存をする国産材業界の体質ということも考えなければならぬ。しかし、そうは言いつつも、従来の惰性に堕することなく内容の改善は図ってまいりたい。したがいまして、素材生産事業内容を改善しつつ、極めて付加価値生産等に問題があるものにつきましてはこれを厳しく問い直さなければならない、そういう考え方で各営林署の事業に至るまで洗い直して見直していきたいということで考えております。その結果、多少生産事業が落ちまして、その分、立木販売に回る傾向が現在掌握されておるところでございます。
  22. 矢山有作

    矢山分科員 私も立木販売の持っておる問題というのはもう少し十分調べてみたいとは思っておるのですが、全体的にいいまして、最近の傾向としては、国有林地元なんかの傾向を見ましても、立木販売よりもむしろ地元は素材でもらった方がいいというような傾向もふえておるようですから、私は、きょうのところは、できるだけ素材販売の方に力点を置くように御努力をいただきたいという程度にしておきます。  それから、もう一つその当時問題にしましたのは、販売に当たって一般競争契約の方が随意契約によるよりも有利である、この点も当時数字を引いてさんざっぱら議論をしたところです。そこで、一般競争契約を増加させて有利な販売をすべきであるという私の主張に対しまして、その当時の御答弁は、「随意契約と一般公売入札というふうに分けると、別の角度から販売の新しい方法も今いろいろと考えておりますので、そういうことを含めて検討させていただきたい」、こういうふうな答弁があったのですが、これについてはどうでございますか。
  23. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 一般競争入札におきましては、競争原理が働き、競争心理ということで非常に値開きが出る場合がいろいろあるわけでございますけれども、また、現在の国産材の市場確保、国産材市場の育成ということを考えますと、安定的な生産、販売関係を維持するということもまた大切なこととなっているわけでございます。極端な例ではございますけれども、最近青森のヒバ等の需要が非常に不振である、しかもその営林局にとりましては主力の樹種、日本におきましても名声のあった樹種でございますが、これなどが一般公売にいたしますと六〇%以上も不落になるというような、収入に大変大きな欠陥が生ずるというようなこともございまして、いろいろ外材との競争力において欠ける国産材でございますので、しっかりした市場との顧客関係を結ぶことも大事であるということから、新しい随意契約の一つであります、販売戦略と私ども申しておりますが、長期的に、これは三年くらいを考えておりますけれども、安定供給契約を結びまして、価格につきましても、普通のものですと毎月市場を調査いたしますが、この安定契約をする場合におきましては四半期動かさない、そういうふうな安定関係のもとに需要開発、市場を開拓してもらうというような一つの新しい随意契約もだんだんと広げておりまして、それによりましてしっかりした市場を確保してまいりたい。こういうふうなことも、一般競争と併用いたしまして随意契約の新しい活用ということで考えておるところでございます。
  24. 矢山有作

    矢山分科員 私ができるだけ随意契約を避けて一般競争契約によるべきだと言うのは、最近もどこかの営林署で問題が起こっておったようですが、どうしても随意契約でやるということになると、そうあっては困ることだけれども、業者と当局側の癒着という問題も間々起こるので、私は、できるだけそういったことを避けるためにも一般競争契約というものを重視すべきだ。しかし、そればかり全部やっていくというぐあいにはいかないという事情も出てくる場合があるということは、それはわかります。わかりますが、その方向に重点を置くべきだというふうに思いますので、そういうふうな御努力をいただきたいと思います。  これは後で農林大臣からの御答弁をいただきたいと思いますが、もう時間が参りましたので、もう一つ申し上げておきます。  これも前の国会指摘したのですが、御案内のように、財投資金から七・一%の金利で林野庁は金を借りているわけですね。それから、延納を認めておりますが、この延納に対する利率は五・六四%でやっておるわけです。これはおかしいじゃないか、こんなばかな話はないぞということを私は盛んに言ったわけですけれども、従来の慣行でもあるし、今の実態からしてこれはどうしても避けられぬのだということだったのですが、これはどうなんですか。私はやはりおかしいと思うんですよ。七・一%で自分が金を借りておいて、延納を認める場合には延納金利は五・六四%でいくんだ。これでは話にならぬと思うのですが、どうでしょうね。
  25. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 お話のございました件は、国有林の買い受け人が定期預金等を担保にできない、そのために、保証手形とか木信協の保証等を行います場合には保証料を払わなければならない立場にあるわけでございます。したがいまして、そういう負担を考慮いたしまして今の軽減措置をとったわけでございます。  先生そういうことを是正すべきであるというふうな御意見だと思いますけれども、国産材と申しますか、国有林材を扱っておる業界は保証にしか頼ることができない零細な業界が非常に多うございまして、その場合に金利負担が過重になるのではないかと考えられますことと、国有林材の販売がそのために円滑にいかなくなるおそれもあるのではないかというふうに考えられておりまして、これは販売政策の一つとして、国産材の市場確保ということも考慮に入れまして、この制度につきましての御理解をいただきたいと思うわけでございます。  また、財投資金の方につきましては、国の金融政策から決まってくるところでございますし、これらの延納関係の金利処理は、私どもの販売政策と市場確保、顧客対策としての性格からいろいろ判断される点もありますので、直ちに結びつけることはどうかと思います。
  26. 矢山有作

    矢山分科員 これは時間が来たから今言っておきますけれども、私は、そういうことはこの前説明を受けたからわかったのです。ところが、自分のところが金がなくてぴいぴい言っているのが、高い金利で金を借りて安い金利で延納を認めるというのはおかしい。どうしてもそれをやらなければならぬのなら、一般会計から対策を講じる、それをやらなければだめだと言っているのです。自分のところがぴいぴい言っているのでしょう。そこのところを私は言っているわけです。  それで大臣、販売方式、いわゆる随意契約でなしに一般競争契約にすべきだということと、今の延納問題、これはぜひお考えいただきたいのですが、御意見を。
  27. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 延納問題を聞いて、おかしいと私は思いますね。一遍これは検討させてみたいと思います。  それから、もう一つは販売方法ですが、これは長官が答えたとおりです。実は、御存じのように林野は非常に厳しい状況で、一円でも高く売りたい、景気のいいときと悪いときとでは非常に違うと思います。そんなことで、とにかく安定的にどう高く売るかということは、状況に応じて、ある場合は競争入札、ある場合には随意契約という方法をとっておると思います。そして今先生指摘の癒着、そんなことは絶対ないように、ないと思っておりますが、またそのように指導したい、こう思っておりますので、よろしく御理解をお願いしたいと思っております。
  28. 矢山有作

    矢山分科員 では終わります。
  29. 大村襄治

    大村主査 これにて矢山有作君の質疑は終了いたしました。  次にへ田並胤明君
  30. 田並胤明

    田並分科員 それでは、引き続いて質問をさせてもらいます。  第一点は、米国の農業不況と八五年農業調整法案の行方が我が国農業にどういう影響を与えるのだろうか、またどういう対策を農水省はお立てになっているのかということをお聞きをしたいと思うのです。農水の対応いかんによっては、我が国の農業のこれまでの方針を大きく転換するというところまで発展をせざるを得ないのじゃないだろうか、こういう危惧を持つものですから、これについてまずお聞きをしたいと思うのです。  御案内のように、日米の貿易収支が八四年で約三百六十億ドル、八五年になると約四百億ドルというふうに、日本の方が特にアメリカに対して輸出超過という現状があるわけでありますし、さらに加えてアメリカの農業が、御案内のように七〇年代における規模拡大、増産、そして八〇年代になってから途端に供給過剰、市況が大変不安定になる。こういうようなことと加えて、今度はレーガン大統領が、アメリカ農業の今日までの支持価格制度というものを取っ払ってしまって市場価格制度にしよう、要するに保護農業から自立の農業、強いアメリカ農業というものを目指しての新農業調整法案というものが今準備をされ、議会の方に提案をされようとしているわけでございます。  恐らくこれが通って具体的にアメリカの農業の方針が決まってまいりますと、先ほど言った貿易摩擦と絡んで、相当日本の農業に対しての市場開放の要求が強まってくるのではないだろうか。これは当然、農産物が余っているのですし、しかもアメリカの輸入超過は相当なものですから、どうしてもそのしわ寄せが農産物の残存輸入品目の十六品目に対して、あるいは木材に対して、場合によると、米がもうカリフォルニア米というのは日本の価格の三分の一だというぐらいに言われているわけですから、しかも大増産をしているので、これら日本の主要食糧にまでアメリカからの輸入の圧力がかかってくるのではないだろうか、このように思うのです。  私が申し上げたいのは、これをまともに受けたら日本農業は大変な打撃を受けますし、まして日本農業そのものがやっていけなくなってしまうのじゃないだろうか。農業政策というのは、多くの国がほとんど保護政策をとっているのでありますし、食糧安保という観点から見ても、日本農業を守るという観点から、アメリカの農業不況なりあるいは農業調整法に基づく農産物の市場開放の対日圧力に対してどのように対応しようとするのか、これについてまず大臣の決意なりあるいは考え方をお聞かせ願いたいと思うのです。
  31. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 先生の御質問の中にございましたように、二月二十二日にアメリカの行政府が、新しい農政の方向を八五年農業法案の考え方ということで打ち出したわけでございます。この考え方につきましては、新聞等でも若干報道されてございますように、アメリカの議会及び農業団体に非常に強い反対の声がございまして、これから秋にかけましての議会審議の中でその行く末がどうなるかということについては、予断を許さない状況にございます。  しかし、御指摘ございましたように、いずれにいたしましてもアメリカの農業が七〇年代の黄金時代から、八一、二年ごろを境にいたしまして非常な不況の状態に陥っている。これは端的に申しますと、一つは農産物の国際需給の需給基調の変化ということ、それからもう一つは、七〇年代には農産物の国際貿易が全体的に拡大する方向にございました。ところが八〇年代に入りますと、例えば中国とかインドといったような国の自給努力が成功してまいります。他方、その他の開発途上国では累積債務で、買おうにもお金がないというようなことから、貿易そのものが伸びなくなるのに加えまして、何といいましてもアメリカの最近のドル高というものが非常に大きな影響をしてきている。この大きな二つの要因から、アメリカは大変大きな不況に今陥っているわけでございます。  そういう意味では農業法案の行く末ということが一つございますけれども、いずれにいたしましても、アメリカがこれまで以上に、この数年来失ってまいりました世界市場におきますアメリカ農産物のシェアの回復ということで、穀物なり大豆を中心に輸出志向を強めてくることは、私どもも十分これから頭に置いて対応していかなければいけない問題だというふうに思っております。ただ、何分にも需給緩和とドル高ということでございますので、アメリカの農政がかなり変わってまいりましても、アメリカが農産物の輸出を拡大していくということは必ずしも容易なことではないのではないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、農産物につきまして既に、過去三年を平均しまして百七十一億ドルというふうな大変大きな輸入国となっております。アメリカからも年々約七十億ドルぐらいのものを買い入れているわけでございまして、今後いろいろアメリカからもお話があるかもしれませんけれども、このような事情及びこれまで我が国が行ってまいりました市場開放措置等を十分説明いたしまして、我が国農業の健全な発展と調和がとれた形でこういった問題に対処していかなければいけないというふうに考えております。また、アメリカが今輸出で一番関心を持っておりますのは小麦とか大豆、トウモロコシでございますが、こういったものにつきましては現在アメリカと日本との間にそれほど大きな問題を生じていないというふうに私どもは考えております。
  32. 田並胤明

    田並分科員 確かに調べてみると、日本の場合はもうはっきり申し上げて農産物の輸入大国なんですね。アメリカが言うように、工業製品と引きかえに日本へ農産物の輸入を求めてくるということ自体もうちょっと、農水の方でも今局長が言われたようにアメリカの方に十分説明をして、余り無理な要求をするなということでひとつ強い決意で臨んでもらいたいと思うのです。  もう一つは、先ほど質問した中で、小麦の方は今回答があったのですが、米の輸入の問題についてアメリカの方から何かあるような話も聞いたのですが、これについてのアメリカの方の動き。  さらにもう一つは、今市場開放の問題で四分野、エレクトロニクスだとか通信機器とか医薬品であるとか木材であるとか、市場開放をめぐって日米間でかなり大変な論議が交わされております。これは、中曽根総理が正月に行ってレーガンさんと会って、この四分野については何とか市場開放に応じようというような感触をレーガン大統領に与えてきたのが一つの大きな原因だろうと思うのです。  木材関係の市場開放について、先ほどの矢山先生の質問の中にもありましたように、日本の林業というのは今非常に厳しい状況に置かれていることはもう先刻御承知でありますが、そういう立場を踏まえて、木材の市場開放の問題について農水の方としてはどうお考えになっておるのか。特に最近経団連の方まで、市場の開放ということで、木材については関税の引き下げをするべきだ、こういうふうな提案が行われて、アメリカの方からあるいは国内から、両方から市場開放の声が強まってきておるわけです。農水としては孤軍奮闘せざるを得ないと思うのですが、日本の林業を守る意味でも、これまた断固たる決意でもって、日本の実情をよく話をして、ぜひひとつ無理な市場開放の要求には屈しないようにやっていただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  33. 石川弘

    ○石川政府委員 米につきましては、かつて例えば過剰米を輸出いたしておりましたようなときに、そういう普通の商業的な市場に対して影響があるというような意味で懸念を示したというようなことはございましたけれども、少なくとも、日本に対して米を出してくるというような意味で表向いた問題になったことは過去においてもございません。  御承知のように、日本農業における米の地位ということにつきましてはアメリカにおいても熟知をいたしておりまして、特に昨年来の国会における御決議等も十分向こうも承知をいたしております。私どもも、米につきましては御承知のように食糧管理法によりまして輸出入を一元的に管理いたしておりますので、そのような国家貿易の体系というのはガットでも認められておることでございますので、日本農業の特色としての米というものにつきましては今後とも国内で供給するという決意をいたしておりますし、諸外国においても十分それを理解してくれているものと考えております。
  34. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 木材関係につきましては、これが単なる林産業にとどまることなく、林産業の市場が狭められることが林業にまで影響する、林業への影響はさらにまた国土の保安にまで響く問題であるというふうな観点をよく関係方面に理解させるべく努力をしているところでございまして、そういうような見地から、林産関係製品につきましては、関税の問題につきましても極めて困難であるという態度を現在貫いておるところでございます。
  35. 田並胤明

    田並分科員 時間の関係でこれ以上申し上げませんが、今の一連の答弁を私どもは期待して、とにかく日本農業を基本的に守るという観点で、一層の御努力をお願いしたいと思うのです。  そこで、今後の我が国農政の方向についてお聞きをしたいわけであります。  ある新聞によりますと、二十一世紀になると、世界的な食糧需給状況というのは穀物で五千三百万トン不足するというように、おおよその数字でありますが、伝えられております。また、現時点における我が国だけの食糧の需給状況を見ても、総体としては自給率が七一%程度だそうですが、穀物については三二%ですか、しかもこれは五十八年の数字で、その前年よりも自給率が一%落ち込んでいる。年々穀物の自給率が落ちているという現状があるようであります。  軍事力により我が国を守るという防衛も結構でしょうが、我が国は四面を海に囲まれておって、一たん事があって食糧が入ってこなかったら、もうそれでもってお手上げであります。食糧安保という観点から見ても、現在農水省がとっておる減反政策であるとか農業を取り巻く厳しい環境を強いるような農政というものは転換を図るべきではないか、こういう気がするわけであります。自給率向上のために、昨年の国会の中でも韓国米を輸入したときに満場一致で食糧の自給率の向上を図れという決議がされているわけでありますから、これに関連して、ぜひともそういう方向に一層努力をするべきだと思います。  もう一つは、先ほど来申し上げておりますように、アメリカの農業不況と新農業調整法、これとの関連で、かなり強い決意でアメリカの大統領の方は農業の政策転換を図るようであります。日本の場合も、決して自立の農業が行われているというふうには思いません。これは食糧の問題でありますから、どうしても国が相当の保護をしないと、日本なんかの場合には余計成り立っていかないという事情があるわけでありますが、これをアメリカのまねをして、保護農政から今度は自立農政——いい意味の自立農政ならいいのです。自立を助けるということは当然でありますが、何か突き放すような、そういう保護農政からの転換というのは今後ともやるべきではない。自立をする農政というのは当然必要でありますが、そういう方向での農政のあり方ということについて、ひとつお考えを聞かしてもらいたいと思います。
  36. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田並先生にお答えいたします。  先生指摘のとおり、国政の基本というのは食糧の安定供給と安全保障を確保する、こう思っております。そんなことで、総合的な自給力をどうするかということですが、基本的には、国内で生産可能なものは極力国内生産で賄う、どうしても足りないものについては安定的輸入を図る、また、例えば輸入等にいろいろな阻害を生じた場合には備蓄をするというようなことを基本にして、食糧政策を進めたい、このように考えております。  それからもう一つ、アメリカとの問題でございますが、実は林野庁長官、経済局長が答えたとおりでございます。  また、稲山さんも東南アジアを回られて、意見も聞きましたが、実は日本は基本的には食糧の大輸入国なんですね。五十六、五十七、五十八の三カ年平均で、世界から大体百七十一億ドルぐらい、アメリカだけでいいますと大体九十三億ドル輸入しております。輸出は四億ドル、したがって八十九億ドルの農林水産物を輸入しておる。そんな現状を説明しながら、これに理解を求めたい、このように考えております。
  37. 田並胤明

    田並分科員 それでは次に、林野庁の方にお聞きしたいのですが、国有林野事業の改善について昨年、「国有林野事業の改革推進について」ということで林政審の答申が実は出されたわけであります。  この中で、改善の方向として主なものを言えば、職員の削減が一つだ。五万五千体制から四万体制へと、要するに一万五千人のカットということですね。さらに組織機構の統廃合なり廃止、これによって私が住む埼玉県でも鳩山の集職所と中津川の事業所が昨年の三月三十一日付で廃止になったのは御案内のとおりです。さらに三千億円の土地の売り払い。大体この辺を中心にして昭和七十二年度末までに収支の均衡を図るんだ、こういうような内容が実はこの林政審答申の中に出ているわけであります。  先ほどの矢山先生の質問を聞いておったわけでありますが、国有林野事業の目的というのは、一つ農山村の振興であり、さらに国土の緑化、保全あるいは治水と、大変重要な役割を果たす事業でございます。したがって、ある新聞では林野事業の赤字が一千五百億を超えたので第二の国鉄になるのではないかという危惧の念を示した新聞記事がございましたが、林野事業というのは、確かに全然もうけなくてもいいということにはなりませんけれども、少なくも、林野事業で上げた収益でもって支出をとんとんにする、こういう形でいいのだろうかどうだろうか。戦後の住宅事情の非常に悪かったときには、林野事業というのは大変大きな力を発揮をして木材需要に十二分に応じた役割を果たしてきたわけであります。そのときの乱伐とか何かがたたったり、あるいは今日の市場の低迷等々が大きな原因で今の林野事業の赤字をつくっているわけでありますから、過去のそういう実績といいましょうか、こういうものを抜きにして、現時点でこうなっているからこういう方向で林野事業の収支とんとんを図っていくんだというやり方は、もうちょっと考えを改めた方がいいんじゃないかと思うのです。この林野事業の重要性にかんがみて、もうちょっと国が、農政じゃございませんが、手厚く保護をしながら、国土の保全を図っていくという役割を林野事業に求めるべきじゃないだろうか、このように思うのです。  実は私は、四年前と昨年の夏に、私の地元であります奥秩父の中津の国有林を見せてもらいました。そのときにつくづく感じたのは、林野庁に、営林署に若い労働者がいないということですね。大分お年を召した方がたくさんで、余り人をふやさない関係で若い方がいない。仕事というのは、これは山仕事ですから、もちろん慣れていますから年をとっていても十二分に一生懸命働いてはいましたけれども、とにかく若い人がいないものですからどんどん職員の高齢化が進んでくる。それと同時に、昨年の夏に中津へ入ったときに驚いたのは、一昨年は大変台風がありました。昨年はおかげさまで災害が余りなかったのでありますが、その災害の傷跡がまだまだ私たちが見てそのまま残っているのですね。これは大変なことだ。こんなに山が荒れたんじゃ、例えば水源涵養であるとかあるいは国土の保全上の観点からの緑化というものがどうなってしまうのだろうか。これはもちろん営林署の人だけじゃなくて現実に私たち十人ぐらいで山を見せてもらったのでありますが、大変な事態になっているんだなということを痛切に感じたのです。  ですから、確かに予算関係はあるでしょうけれども、秩父だけじゃないと思うのですね、こういう事情というのは。ぜひひとつ、国土の保全の観点からもうちょっと手厚い林野行政というものを農水省の方ではやっていただきたい。これは、林野庁長官が一生懸命やろうとしても、予算的な制約でなかなかできなくなると困りますので、ぜひ農水省の方も本腰を入れて山を守る対応をしていただきたい、このようにお願いをしておきたいと思うのです。  後ほど一緒に考え方を聞かせていただきたいと思うのですが、時間の関係関連をしてちょっと次の問題に入ります。  鳩山の集職所の跡地の問題です。これはいい山ですから、私どもとしては余り売ってもらいたくないわけです。ぜひひとつ残してもらって、先ほど言ったように、その地区の緑化あるいは水源涵養等々に十二分に活用してもらいたいわけであります。今月、三月三十一日までにこの土地を約四十ヘクタール売却をするという方針で、埼玉県なり地元の鳩山町の方に公共用地として使用する意思があるかないかということを照会をしておるようであります。地元の鳩山町の方では、工業団地をそこへつくって、工業の振興、町の振興に努めたいということで町民の方に諮ったところ、町民の方は、新しくそこに鳩山ニュータウンができたものですから、今まできれいな緑が前にあったものが工場になったのではかなわない。鳩山ニュータウンには物すごい人数がお住まいになっておりますが、我々は、こういうすばらしい山村の風景もあるし、空気もいいし環境もいい、したがってこちらに移り住んできたんだという人がいるわけですね。地元の人は何とか緑を残しておいてくれ、森林公園にするとかあるいはそのままでいいから残しておいてくれ、こういう強い要望で、跡地利用の方向が今決まらないわけです。昨年の十一月に埼玉県の州知事名義で林野庁に、何とか売却をする時期を延期してほしい。もし公共団体が買わない場合にはいわゆる競争入札で民間に払い下げをする、その期限が何か今月いっぱいだという話になっておるようでありますが、これはぜひひとつ、地元の土地利用の方向がきちっと決まるまで林野庁としても売却については延期をすべきじゃないか、このように思うのであります。どういうふうに考えているかということが一つ。  それともう一つは、これは鳩山の関係だけではなくして、林野庁が国有地、林野を公共団体に払い下げをする場合、公共団体に対して払い下げ価格についての特典、特別措置があるのかないのかということが一つ。  それともう一つは、公共団体が使用する目的がないので要らないと言った場合に、民間に払い下げをする場合でありますが、民間に払い下げをする場合に、方法としては幾つかあると思うのです。完全な競争入札、それと今差し押さえなんかした場合に大蔵省がとっている、まず価格を提示をしてその価格を最低限度にして入札をさせるという方式、さらに、価格はこれだけで売ります、したがってこれでよい方は希望を出してくれというので、欲しい人に届け出をさして、その中から公開抽せんで払い下げをする、こういう幾つかの方法があると思うのですが、今の林野庁の方針でいくと、あくまでも最低限の価格はきちっと頭の中に入れておきながら一般競争入札をさせる。  確かに林野庁にすれば高く売れた方がいいのでしょう。国鉄の品川駅の跡地じゃありませんが、仮に際限なくばか高く売られた場合には、周辺の土地の価格まで引き上げてしまう。民間が売買するときには、一定面積以上は国土法の届け出をして、国土法に照らしてみて利用目的がいいとかあるいは価格が適切であるとかいうことになると、勧告をしないで、不勧告でもって許可をするわけですね。ところが国有地を売り払うときには、今林野庁がやろうとしているのは際限ないわけですね。そんなにいいところがなければ値段は高くなりませんけれども、いずれにしてもそういう矛盾があるような気がします。  したがって、これは検討課題で結構ですから、国有地の売り払いの場合の林野庁の方針、これは若干修正しないといけないのじゃないか。隣の土地の値段まで上げるようなことを国有地の払い下げで行われたのではとても困ったものですから、そういうものもひとつ検討していただくということで、もう時間が来たようでございますから、先ほど申し上げた国有林野事業のあり方と、さらに鳩山集職所の跡地の売却の問題について、これを延期すべきである、このように考えるのですが、これについてのお答えをいただきたいと思います。
  38. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 最初に、鳩山集職所の関連につきましてお答えを申し上げたいと思います。  御承知のこととは思いますけれども、ここは緑化木の生産を目的としておりましたが、緑化木関係は非常に市況が悪くなりまして経営を継続することができない、なおまた利便の地でもございますので、いろいろ他方面への活用も考えられるということから廃止をしたわけでございます。先生の最初のお話にございました三千億円の収入を上げる一環にも私ども考えておりまして、順序といたしまして、やはり公用、公共用の用途につきまして地元の公共団体に照会をしたわけでございますが、なかなか使い道について調整がつかないというような事情がございますので、私どもも当初五十九年度の収入に考えましたが、これは一応延期をいたしまして、しばらくそういう調整の行方を見守ってまいりたいと思っております。ただ、いろいろ財務事情もございますので、六十年度におきましてはひとつ円満な処分ができるように取り進めたいというふうに考えてございます。  なお、価格、売り払い方法につきましては、価格は、近傍類地の取引事例を調査いたしまして、それを基礎といたしますので、いわば相場と申しますか、付近の地価と申せるかと思います。売り払い方法につきましては、まず公共用、公用が随契対象となりまして、それがありません場合に一般競争入札というのが順序となっておるわけでございます。一般競争入札につきましては、いろいろお話ございました問題……
  39. 田並胤明

    田並分科員 それは長官検討事項ですから答弁はいいです。
  40. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 ただ、公用、公共用につきましては、保健所とか学校、公民館につきましては割引の規定が実はございますけれども国有林野事業は大変財務事情が厳しいものでありますので、原則として割引は当面適用しない、ひとつ市価で買っていただきたいということで対応せざるを得ないような財政事情にございます。  それから、国有林の全体のいろいろ財務事情についてでございますが、お話ございましたように、五十年ころまでは基本的に収支が償ってまいったわけでございます。五十年過ぎて構造的な赤字となったわけでありますが、五十三年から本格的な経営の改善に取り組みまして、その際に、経営が苦しいからといって大切な保安林の造林などがおろそかになってはいけないということから、保安林の造林とか重要な林道につきましては一般会計が初めて入るようになったわけでございます。それがだんだんと拡充をしてまいりまして、現在では、例えば退職者が非常に急増するわけでありますが、急増する退職金を自前では賄えないということから財投からお借りしておる。これは生産に直結しない金でありますので、そういうものの利子についても一般会計から面倒を見るということが昨年決まったわけでございます。−  そのように、個別の事情に応じましていろいろ一般会計の手当てをしていただいておるわけでございますけれども、それと私どもの方の自主的な努力、あるいはまた林業全体を支える一般林政充実、そういうものと三つ相まちまして、経営の健全性確立に努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  41. 田並胤明

    田並分科員 それでは、最後に、大臣に要望しておきたいのですが、ここ五年ほど公共事業の抑制、マイナスあるいはゼロということで、農水関係の特に土地改良事業の公共事業がかなりおくれを出しているのではないかと思うのですね。もちろん国の財政事情等もあってそのような状態になったのでしょうけれども、先ほどの御決意のほどを聞かせてもらって、農水の一層の重要性にかんがみて、特に土地改良等を含む農水関係の公共事業の進展のために、ひとつ来年度あたりは頑張ってもらって、多くの予算をとってもらってぜひ推進をしていただきたい。このことを最後に申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  42. 大村襄治

    大村主査 これにて田並胤明君質疑は終了いたしました。  次に、武部文君。
  43. 武部文

    武部分科員 私は、山陰地方——大臣は十分御承知であろうと思いますが、山陰地方というのは余り問題のないところでございましたが、これから申し上げます宍道湖・中海干拓淡水化問題というのは今非常に大きな社会問題、政治問題化しておる。こういう点について農水省、大臣見解を承りたいのであります。  去年の八月に農水省から、この中海干拓淡水化に関する中間報告が、膨大なものでございますが提出をされました。我々のところにも届いておるわけでありますが、それ以来、この地元の住民団体あるいは両県の自治体、さらには全国的に、こうした問題に非常に関心の深い水質関係の皆さん、環境の関係の皆さん、そういう皆さんから、非常に大きな反響が出まして疑問点が続出した。私も先日質問主意書を提出いたしまして、回答をいただきましたが、このように非常に多くの疑問点が続出をしておるわけであります。マスコミも非常に取り上げておりますが、我々の感ずるところによると、農水省側ではこれを単なるイデオロギーの反対だとか、マスコミが時流に便乗してやっておるのだ、こういうふうに考えておるのではないだろうかというふうにも理解できるわけであります。それは私は間違いである、このように思うので、これから具体的に申し上げたいのであります。  確かに、宍道湖あるいは中海という地域は、水深の非常に浅いところでありまして、干拓をする場合にはほかよりもやりやすいだろう、これはだれの目にも明らかであります。この事業が計画されたのは二十数年前のことでありまして、今日まで長い年月を経過してきたわけでありますが、計画も八百六十五億円、約九百億近い予算が見積もられて、既に七〇%近く完成をしておる、こういう状況になっておることは事実であります。  しかし、日本の農業状況は当時とは比較にならぬほど全く変わっておるし、今日の食糧事情あるいは減反政策、そういうものから見ても大きく見直す時期に来ておる、これはだれの目にも明らかだと思うのであります。したがって、私はこの問題について、先ほど申し上げたように、それがただ単にイデオロギーだとかマスコミの時流に乗ったものとかいうような、そういう狭い視野に立ったのではなくして、根本的に、この干拓あるいは淡水化事業というものを一体このまま続けていいものかどうか、この点について英断を下す時期が来ておるのではないだろうか、このように思うのであります。時間の関係で質問事項はそうたくさんできませんから、私は問題点をある程度羅列して、その中から農林省が決断をぜひしてほしい、そういう要請をこの機会に行いたいのであります。  二千五百ヘクタールの土地を干拓をする。現在宍道湖と中海の水量は七億五千万トンだと言われておるのでありますが、一体七億五千万トンの水を全部淡水化しなければならぬのか、これも私は非常に疑問に思うのであります。それならば、二千五百ヘクタールの干拓地をつくってここで何をつくるのか。二十数年前にこの計画がされたときは、確かに食糧増産のときでありますから、八郎潟の大潟村のような状況をだれもが想定をいたしました。私も国会から大潟村へ派遣をされて現地を当時見ましたから、今日、きょうも新聞に出ておりましたが、あのような事態が起こるとは夢にも思わなかった者の一人であります。今日青田刈りがされて、夜逃げをしたり、あるいは田んぼをひそかに売るとか、そういう事情が大潟村に出ております。これはきょうのことは別に余り関係ありませんが、そういう状況がありますね。今日、中海干拓淡水化というものがその轍を踏まないとは言えないのであります。私どもが一体何をつくるのかと言ったら、今のところはよくわからぬ、こういう話であります。確かに地域が分散をしておりますから、それに合ったような作物を考えておられるに違いない。水田でなければ、今度は酪農だとか野菜だとか園芸だとかいろいろなことが言われておるようですが、これとて反当の金額のいかんによっては全然お話にならぬわけであります。  弓ケ浜半島が米子から境港のところまで二十キロありますね。幅二キロ、二十キロの長さの砂浜であります。その右側の美保湾に今膨大な埋立地が造成されまして間もなく完成いたします。我々は、これは大変な事業だから考えるべきだということを再三言ったけれども、莫大な金を投じて工業団地ができた。何も来るものはないのですよ、一つも。まさに荒れ地であります。そこに進出する企業なんというのは我々は何一つ承知しておりません。そういうモデルがこの半島の北側、日本海側に現実に今起きておるのであります。今度あなた方がやっておられるのは、その内側の二つの湖に対しておやりになる、こういうことであります。今日までやられたことはそれなりの成果はそれぞれあったと思います。立派な水門ができまして、皆さんがおっしゃるようにゲートを閉めればあとは淡水化の試行、ここまで来ておることは認めます。しかし、現実に今言ったように農業状況が一変をしておるし、住民の中からは疑問の声が非常にたくさん出ておるし、一体七億五千万トンの水を全部淡水化する必要がどこにあるだろうか。斐伊川の下流には確かに水が要るという点は賛成派もおられるわけでありますから、これは私も承知しております。しかし、その他の地域について一体どれだけの水が要るだろうか。水が要るならば、一体何のために水が要るだろうか、その水は何をつくるための水だろうか、量は一体幾らだろうか、こういう点についても私どもは全然知らされていない、わからない。したがって、そういう点についての質問を出しているわけですが、農水省からの明確な答弁はいまだに示されていない、こういう状況であります。  したがって、私どもは、もしどうしても現実に干拓をしておる地域に水が要るとするならば、一体その水の量はどの程度あなた方は見ておられるか。それに対して、全部ではなくて湖中湖案というものが学者の皆さんから提案されておりますね。湖中湖、部分淡水湖ですよ。現実に、今堤防だけつくられて埋め立てをされておらない膨大な地域が一カ所あります。それを湖中湖にしたらどうだという学者の意見が出されました。我々は専門家じゃありませんが、なるほどこれも一つの案だな、それをパイプで分散されておる干拓地に運ぶことは不可能とは言えないじゃないか。ましてや真ん中にゲートがある、この上を通れば両側にある、鳥取県側の両方の干拓地に水は行くじゃないだろうか、こういうことを考えました。ことしもまた四十数億円の金が予算で計上されておりますし、あと残りは二百四十三億円予定上から見るとまだつぎ込むような格好になっておるようでありますが、この計画について、今私が言った点について農水省はどういう見解を持っておられるだろうか、最初にそれを聞いてからにします。
  44. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 中海の干拓事業が計画されまして二十数年が過ぎているわけでございます。その間に農業事情等も変わってまいったわけでございまして、干拓事業につきましても、そういうことから、当初の水田を造成していくという計画から、全部畑に変えまして造成するという中身に変わってきたわけでございます。先生御案内のとおり、この干拓事業は、鳥取、島根両県関係市町村の非常に強い要望を受けまして発足してきた事業でございます。現在につきましても私どもそのように考えているわけでございまして、特に両県の関係市町村につきましては、農業経営規模も非常に小そうございまして、こういう干拓によりまして造成される農地を利用して生産性の高い農業をやっていきたい、こういう希望も強いように聞いております。そういうことで、私ども当初の水田を造成する計画から畑に変えましたけれども、畑につきましての営農計画を十分詰めまして、今申し上げましたような生産性の高い農業が営まれる、そういうようなことを計画しているわけでございまして、現在具体的な営農計画については検討中でございます。いずれ関係県とも御相談いたしまして発表していくことになろうかと思います。  私どもといたしましては、そういうことで計画の中身は変わってまいりましたけれども、依然としてこの中海の干拓事業の必要性はあるものと考えているわけでございます。なお、淡水湖にはするわけでございますけれども、やはり水を使います場合は、なるべく経済的に安いといいますか、受益者の負担の軽いことを考える必要がございまして、我々としてもいろいろ検討したわけでございますが、全面淡水化ということが最もよろしい、こういう判断に相なったわけでございます。
  45. 武部文

    武部分科員 あなたがおっしゃったように、当時地元の強い要望によってこの干拓事業というものが開始されたということは、私も否定いたしません。しかし、事情は二十年たって一変をした。このことを考えると、かたくなに今までのような方針を農水省が守っておることは誤りだ、私は、後で大臣に申し上げますが、そういうように思うのです。  そういう点と同時に、この淡水化事業の試行によってこういうことが起きるじゃないか、こんなことが起きるじゃないかという疑問が出てきた。その疑問に農水省は答えなければならぬ。ところがその疑問に答えない。ここが問題なんです。そういう点から私は二つの面から再考する必要がある、こういう観点から質問をしているわけですが、もう時間がありませんから次に進みます。  この宍道湖、中海というのは確かに二つの湖でありますが、正式には建設省の斐伊川、一級河川でありますね。境の水道を通って日本海に出るまでは川になっているのです。したがって、管理者である建設省が農水省に対して二回、合計百二十四項目の質問を出しましたね。この百二十四項目の質問に対して、農水省は回答をいたしましたが、三十一、約四分の一の項目について回答がない。このことについては協議中あるいは事務折衝中、意見交換中、こういうことのようであります。私は、この話のつかない三十一項目こそが重要な問題だ、これこそ中海干拓淡水化の根本に触れる問題点だと思うのです。したがって、この三十一項目の建設省と農水省と現在話がつかないで協議中のものについて、一体どのような折衝を今後続けて、いつごろまでに具体的なお答えを出そうとしているのか、最初にひとつこれを簡単でいいですから言ってください。
  46. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 御案内のとおりの状況でございまして、現在建設省と三十一項目につきまして話し合いをしているわけでございます。この項目はいずれも非常に技術的、専門的なことでございますので、私どもといたしましては、内部的に十分検討し、それから水質等についての委員会もございますので、そういう研究会の委員の先生方の御意見も伺いまして、その上で建設省の方とさらに話し合いをしてこの問題を詰めていきたい、このように考えております。
  47. 武部文

    武部分科員 最初に質問だけ二、三点しておきます。  鳥取県側から見れば、流れてきた水が鳥取県のところを通って最後に日本海へ出るわけです。したがって、中浦水門というこの膨大な施設、これが実は鳥取県には非常に大きな影響をもたらすわけであります。  そこで、これからお尋ねするわけですが、先ほどから申し上げるように、米子から境港の半島というのは砂浜の地帯であって山がない。強いてあると言えばたった一つ小山がありますが、山のない砂浜、二十キロの長さ、幅大体二キロ、こういう地帯でゼロ地域であります。大体そういうふうに言われておるところでありまして、洪水のときになりますとエビやカニがおかへ上がって泳ぐ、そういう地域なんです。したがって、洪水時を非常に心配をしておるのです。境港と米子市がこの淡水化事業、水門締め切りによって一番心配したものは災害のことなんです。ここを締め切った場合、上流で洪水が起きて水量がふえた、そのときに、あなたの方はこの水門をあけてそれを日本海側に出すということをおっしゃっておるが、この水門の管理規程、一体この水門の開扉をだれがするのか、どういうやり方をするのか、いつどんな方法でというようなことが全く示されていない。したがって、もし水門を全開をしたら、洪水によってたまった水が一挙に流れ出る。流れ出ていく際、この境水道というのは非常に幅の狭い海峡でありまして、そこが一挙に詰まってしまったら、この半島は水浸しになってしまう。むしろあの半島は、今でも心配だから真ん中に運河をつくって二つに切ったらどうだというような意見さえある地帯であります。そこへ住宅が密集しておる。この地域は災害のことについて非常に関心を高めておる。一体この水門の管理規程、こういうものについてはどういうようになっておりますか。
  48. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 中浦水門の付近の市町村が洪水時のことにについて心配されるのはごもっともなことだと思います。  中浦水門の管理につきまして、ただいま御指摘ありますように二つの問題がございます。一つは、だれが管理をするのかという問題と、どのような管理をしていくのか、この二つでございます。前者につきましては、関係省あるいは関係県と十分協議をいたしまして管理主体というのを決めてまいりたいと思います。一番重要でありますのはどういうような操作をするのかということでございます。これは、平常時でありますとか洪水時等それぞれの状態に応じた操作が必要でございますが、これにつきましては、私ども内々案をつくりまして、ただいま建設省と協議中でございます。一応建設省との間で大綱が決まりましたら、地元の市町村の方にも説明をいたしまして、了解を得た上で正式に管理規程をつくっていく、このように考えておりまして、そのようなつもりで今建設省の方と大綱について話をしている、こういうことでございます。
  49. 武部文

    武部分科員 地元の意見を取り入れたり、地元に示してその了承を得てやりたい。わかりました。本来は、水門の管理規程なりそういうことが先で、こういう状況だから淡水化をしたい、洪水のときはこうなりますよということが示されなければ、これは本末転倒なので、この点を急いで示して、そういう疑問なり不安を除く努力が私は先だと思うのです。ぜひそれは急いでやっていただきたいと思います。  もう一つは、この中間報告をまとめたのは、農水省からの委託を受けた京都大学の南先生が委員長の南委員会ですね。そこでまとめられたわけです。ところが、皆さんももう既に御承知だと思いますが、この委員会に参加をされた学者の皆さんがたくさんおられますが、その皆さんが実は疑問をいろいろと発表されておるのです。これはもうお聞きになったとおりです。肝心かなめな中間報告をまとめられた委員会の中からいろいろ疑問が出てきた。これを住民が見たときに、やはりこの中間報告はおかしいなという気持ちを持つのは、私は至極当たり前のことだと思うのです。そういう点から見るならば、今出されておる多くの疑問、例えばアオコの発生の問題にしてもそうでありまして、霞ケ浦の問題や児島湾の問題を先例として地元の人たちもよく知っておるわけです。そういう人たちから見ると、中間報告そのものに対してつくった人から疑問が出ておるのだから、これはおかしいなというふうに思うのは当たり前のことである。私もそう思います。したがって、地元の皆さんのそういう疑問に対して、南委員会は率先してその疑問を解明する努力をやはりやっていかなければならぬ、そう思うのです。これは至極当然の責任だと思うのです、それによって問題が起きておるわけですから。ところが、一向にこれに対してそのような態度をおとりにならぬ。私は、この機会にぜひ農水省が指示をし、そして南委員会が、言うならば現地へ出向いて、自分たちのつくった中間報告についてきちんと地元の自治体あるいは住民団体に対して説明をされるのが至当ではないか、こう思うのですが、この点についてはどうお考えでしょうか。
  50. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 中間報告の作成には、日本を代表する水質関係あるいは植物プランクトンでありますとか底生動物の学者の先生方にお願いをしているわけでございます。この中間報告の発表後に、その委員の一人でございます先生から御意見があったということで、私どもそれを新聞で読みましたけれども、そのことにつきましてその先生に出先の事務所が真意を確かめましたところ、アオコの発生の程度について補足をしたものであって、中間報告内容を修正するものではないというような回答を得ているというふうに聞いております。また、この中間報告発表後に、この研究会の中に部会がございまして、今申し上げましたように、水質でありますとかプランクトンでありますとか底生動物等々についての部会がございます。その小委員長会議などをやっておりますけれども、そこにはその先生も出席をいただいておりますが、この問題につきましては特に御意見が出ていないというふうに聞いております。しかし、いずれにいたしましても、我々としてはさらにこの問題について十分検討をしていく必要があるというふうに感じておるわけであります。
  51. 武部文

    武部分科員 今のアオコの説明は、どうも私の聞いておるのと違います。南委員会の委員の先生はそのような説明をしておられないのであります。その辺が大きく違うのです。その先生現地先生ですよ、地元の大学の。こういう食い違いが新聞紙上にずっと出て、おかしいなという気持ちを住民は持っているのです。私の町のある中学校で、三十年も前からこの中海の水質をずっと調査をしてきた非常に優秀な学校があるのです。三十年の長い実験結果をまとめて発表してました。その先生にも会いました。そういう経過を考えると、私は、やはり率直に生まれておる疑問に対して農水省は答えなければならぬ。その努力を払っていかなければならぬ。その努力が欠けておるのじゃないだろうか、このように思います。  時間が来ましたので、もう一つ質問しておきますが、洪水のとき、例えば宍道湖の付近に大雨が降った。松江にも大雨が降った。それがどっと流れてこれから日本海へ流れていくわけですが、水門のところに来た。このときに、私どもの聞いておるのでは、建設省は毎秒千六百トンの水が流れると言う。農水省は四百トンだと言う。四倍違うのですね。これじゃお話にならぬです。片一方河川管理の建設省は毎秒千六百トンぐらいな水が洪水時には流れると言う。あなたの方は四百トンだと言う。これじゃ全然、これを聞いた住民は一体どっちが本当だろうか、こうなる。河川管理者の建設省の言っていることが本当じゃないだろうかと思いますね、この際は。洪水のことを心配しているのですから。そのときに水門を一気にあけたらどうなるだろうか、この点はいかがでしょうか。この今言った毎秒トン数についてちょっと知らせてください。
  52. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 今の中海の干拓計画を作成いたしますときには、その当時の建設省の治水計画を前提にいたしまして計画をしたものでございます。今先生四百トンと言っておられたわけでございますが、その当時、私どもとしては千三百トンを計画したわけでございます。この点については当時の建設省の治水計画と一致したわけでございまして、その後建設省が治水計画を変更いたしまして、現在、大橋川の流量を千六百トンにしているわけでございます。つまり大橋川の流量が多くなるわけでございますが、これが中海の水位にどのような影響を与えるかということでございますが、あの地域の降雨の状況を見ますと、宍道湖の水位が高くなる時期と中海の水位が高くなる時期にタイムラグがございまして、宍道湖の方から中海の方に水が大量に流れます場合には、既に中海の水位はそのピークを過ぎて低くなってきておる、そういうような状況でございます。そういうことで、この点につきましても建設省の方と協議済みでございますけれども、治水計画上全く問題がない、そのように考えております。
  53. 武部文

    武部分科員 このことはまた改めてやりましょう。宍道湖の方ばかり雨が降るわけじゃないのですからね。境水道の方だって大雨が降ることがある。集中豪雨があるんです。そのときはこちらが水位が高くなりますよ。満潮はこっちから来ますよ。そういうことを考えると、こっちが高くてこっちが低い、こっちが低くてこっちが高い、そんなことを簡単に机上で考えるのはちょっと変だな。私どもは生まれて育って六十年も住んでおるんだから、その地域の実情はわかっておるのですよ。だから、あなたの今の答弁にも少し疑問がある。  もう一つ言いますが、試行と言うんですよ、このゲートを閉鎖をして、これから三年間かかって試行すると言うのでしょう。試行と言うけれども、試行だったら、もし間違いがあったらやめますと、実験ですからこうなるのだが、ところが三年間ゲートをおろしちゃってここを淡水化しちゃって、ああいけなかった、それならもとへ戻しますということができますか。これは素人が考えたってできない。これをやって三年間たったら、この湖の中にさっき言ったようなアオコが発生をするわ、魚類は死滅するわ、異臭は放つわ、大変なことになって、はいそれじゃやめました、もう一遍ゲートをあけてもとへ戻します。もとへ戻るわけないんですよ。これは素人でもわかっておることなんです。そういう点があるから、慎重な上にも慎重に、だれもが納得できるようなデータなり資料なりを出してもらわなければ困るんだということを我々は言っておるのであります。大臣は、あなたの選挙区の裏側ですから、近いところだから、一遍行って見てほしいと思っておるのですよ。  それで、きのうあなたにお言づけして見ていただきましたが、「中止求め大臣に“直訴状”」、こういう新聞が現地で大きく出ておるんですよ。恐らくあなたのところに届いてないように書いてあるから——届いていましょうか。直訴状は届いてないと思うのです。農林水産省の附属研究所職員八十人もこの淡水化に反対の署名をしておるということがここに書いてある。そういうふうに極めて多くの分野の人たちが、この淡水化事業に対して疑問を感じ、心配をして全国で署名運動をしたりいろんなことをしておられる。これに対して私は農水省は答えなければならぬと思うのです、疑問には率直に。この点がどうもこの新聞記事を見ても、なるべく大臣に会わせぬようにするとか、直訴なんというのはまかりならぬとか、そんなことでは話にならぬ。こういうことをやっておるから疑問がどんどん起きるし、不信が高まっていくのでありまして、ぜひひとつ、中海淡水化事業というのは山陰地方にとっては重大な問題、政治問題なんです。県議会が今両方開かれておりますが、ここでも論戦が今闘わされております。御承知のとおりです。  ですから、ひとつ大臣に最後に申し上げておきますが、霞ケ浦とか児島湾とか先進地がどんな事態になったかということは調べていただければわかることです。過去の行きがかりやメンツにこだわって、これだけの金を投じたのだし、もったいない、こういうような気持ちで、処置を誤って悔いを千載に残すようなことであってはならぬと思うのです。佐藤大臣の任期中にそんなことがあっては私は大変だと思うのです。だから、慎重の上にも慎重にこの問題に対処してもらわなければ困る。またいずれ改めて具体的な問題はいたします。きょうは本当に時間がございませんので、二、三の点しか質問できませんでした。大臣見解をお聞かせください。
  54. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 私どもといたしましては、もう先生十分御存じのことでございますけれども関係者の方に十分話をしまして、疑問等がございましたら誠意を持って答えていく、そういうことでございます。現在、関係省庁なり関係県の方から質問が出ておりまして、漸次それに答えるべく準備をしている状況でございます。  それから、仮に試行の方に移るということになりましても、私ども、急激に今の状況を変更させていく、そういうような試行をしないわけでございまして、徐々に塩分濃度を下げていくわけでございます。その間に状況の変化を十分調査をいたしまして、異常事態等がございましたら、その点で関係者とまた協議をして、その時点時点で適切な対応をしていきたい、このように考えておるわけでございまして、そういう意味では慎重に私どもとしても取り運ぶ、そういうつもりでございます。
  55. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 武部先生にお答えいたします。  先ほどから議論をずっと拝聴いたしたわけですが、水質汚濁を進めたくないという住民の意向や、先生から御指摘のありました淡水魚保護協会の木村さんですか、私は実はぜひ早い機会に時間のでき次第お目にかかりたいと思っております。お目にかかって御意見を十分聞きたいと思います。この署名運動等についても承知しております。したがって、局長が再々答弁しておったようなことですが、淡水化の試行に当たっては、このような住民等の意向を十分考慮し、また関係機関の意見を聞いて慎重に対応したいと考えております。
  56. 武部文

    武部分科員 私も、またこの次もう一遍やります。
  57. 大村襄治

    大村主査 これにて武部文君の質疑は終了いたしました。  次に、春田重昭君。
  58. 春田重昭

    春田分科員 私は、牛乳問題につきましてお伺いしたいと思います。  まず初めに、生乳の生産動向並びに乳製品の需給状況価格の動向について簡単に御説明いただきたいと思います。
  59. 野明宏至

    ○野明政府委員 最近の牛乳・乳製品の需給あるいは価格の動向でございますが、五十年代の初め、五十一年から五十三年ごろでございますが、大変生産が急速に伸びまして、いわば需要も伸びておるわけでございますが、それを上回る伸びがございまして、過剰に直面したわけでございます。その後、五十四年から生産者団体による生乳の計画的生産が始められまして、そういった効果もございまして、五十七年度以降その需給なり価格なりは漸次改善してまいりまして、乳製品の過剰な民間在庫も解消しておるわけでございます。五十九年度に入りまして、それまで例えば飲用乳なんかは十カ月くらい続いて前年対比マイナスという状態が続いたわけでありますが、夏の猛暑によりまして、生産は減る、消費はふえるというふうなことで、脱脂粉乳の需給なり価格というものが堅調に推移いたしたわけでございます。ただ、一方、バターは価格も軟化ぎみでございまして、需給は緩和しておるというふうな状態でございます。  そういう中で、生乳の生産でございますが、昨年の夏六月から八月にかけては前年に比べてマイナスという状態になったわけでございますが、秋以降回復してまいりまして、昨年の四月からことしの一月までの状況では、前年に比べまして一・三%程度伸びるということで、ほぼ前年並みまで回復してまいっておるわけでございます。  そういう中で、飲用牛乳の価格でございますが、五十七年ごろ大変乱れたわけでございます。当時百八十円以下といったような非常に安い値段の牛乳が五割近くを占めておったわけでございますが、昨年の十月の時点で比べてみますと、一五%ぐらいに減りまして、極端な安売りは減ってまいっておるというふうな状況でございます。
  60. 春田重昭

    春田分科員 乳製品の中でも脱脂粉乳これにつきましては、今御説明があったように、過剰在庫であったものがいわゆる需給状況によって放出された、それによって昨年から不足になってきた、逼迫してきたということで、ことし輸入されておりますね。これは、五十一年から五十三年までの過剰生産から、五十四、五年を境にして計画生産になってきた、その影響でこういう形になってきたのではないかという声もあるわけでありまして、この計画生産のいわゆる見直しといいますか、一部手直しといいますか、それも必要ではなかろうかと言われているわけでありますが、どうお考えになっておりますか。
  61. 野明宏至

    ○野明政府委員 昨年の秋の脱脂粉乳の輸入を含めまして八千トンの脱脂粉乳がことしの二月に到着いたしております。これは、先ほど申し上げましたように、昨年の夏大変な猛暑でございまして、牛の夏ばて等によりまして生乳生産がマイナスになる、他方飲用向けの消費も夏場大変伸びました。したがいまして、加工向けの処理量はマイナスになったわけでございます。他方、今度は脱粉自体につきましても、そういう加工向けの処理量がマイナスになる中で、消費量は、アイスクリームその他消費がやはり大変ふえまして、需給がタイトになってまいったわけでございます。安定指標価格に比べましても、昨年の九月には六%上回るというふうな状況になったわけでございますので、事業団が手持ちしておりました在庫、これは全量放出したわけでございますが、さらに、在庫ゼロの状態ということにしておきますと、やはり事業団による適正な需給安定操作というものができませんし、それから、そのまま放置いたしておきますと、需要の減退とか、ほかのもので代替しようとかというふうなことも出てまいりますので、牛乳・乳製品全体の需要の維持増大ということも引き続き必要でございますので、そういった直接的には猛暑に起因するギャップを埋めるために入れたわけでございます。  ただ、ややもすれば、生乳の生産というのは我が国の場合過剰に陥りやすい構造を持っておりまして、したがいまして、需要は全体として二、三%伸びるわけでございますが、やはりそういった需要に見合って計画的な安定的な生産がなければいけないということでございますので、これからも生産団体による計画的な生産が続けられるということは必要であろうというふうに考えております。
  62. 春田重昭

    春田分科員 もし昨年並みの猛暑になったとすれば、この二月八千トン輸入したわけでございますけれども、それで十分足りるのかどうか。また海外に頼らざるを得なくなるのではなかろうか。どうなんですか、その辺の見通しは。
  63. 野明宏至

    ○野明政府委員 脱脂粉乳の需要というものの中には、例えばヨーグルトとかアイスクリームとか、本来生乳が使われる分野にも脱脂粉乳が使われているという側面もございます。したがいまして、できるだけ生乳を使っていただくというふうな指導をいたしておるわけでございますが、これからもそういった指導をやってまいりまして、そういった工夫もかみ合わせてやっていけば需給はバランスがとれるのではなかろうか。在庫八千トンというものも持っておりますので、そういうものも活用しながら適切に対処していきたい、今後の需給動向についても十分見ながら対処していきたいと考えております。
  64. 春田重昭

    春田分科員 次に、話題になっておりますDゼロ牛乳についてお伺いしたいと思うのです。  Dゼロ牛乳というのは、より新鮮な牛乳を求める消費動向にメーカーが着目いたしまして、非常に販売増加等に利用されておるわけでございます。そして、メーカー各社の競争がエスカレートする一方で、さまざまな問題が提起されてきているわけですね。御案内のとおりだと思うのです。したがって、私は、消費者保護のためにも行政の迅速な対応が今日において要求されている、こう思います。  そこで、Dゼロ牛乳の製法について、まず簡単に御説明いただきたいと思うのです。
  65. 野明宏至

    ○野明政府委員 Dゼロ牛乳のつくり方それ自体は、いわゆるそれ以外の牛乳と変わってないわけでございますが、ただ、先生がつくり方とおっしゃいます点についてちょっと簡単に触れさせていただきますと、当日付の牛乳を小売店の店頭に並べますために、メーカーは、甚だしい場合はその日の午前零時を期して真夜中から操業を始める、そういった無理な操業を行う場合も見られるわけでございます。こういった操業を行いますことは、食品の安全チェック上の問題もありますほか、やはり大変労務コストがかさんでまいる、それから従業員も、夜働くということで集めるのがなかなか大変である、さらには、短い時間に大変多くの量をこなしていくということで、勢い処理施設が過大になってくる、また稼働率も低下してまいってコストもかさむ、真夜中からつくり出すということに伴ってそういったような問題が出てまいっているのじゃないかというふうに思っております。
  66. 春田重昭

    春田分科員 いみじくも局長からDゼロ牛乳の問題点が今指摘されたわけでありますが、そこで、検査体制でございますけれども、どのようになっているのか。これは厚生省の方からお答えいただきたいと思います。
  67. 難波江

    ○難波説明員 お答えを申し上げます。  Dゼロ牛乳を初め牛乳一般の検査等、食品衛生法に基づく食品の検査全般につきましては、都道府県知事あるいは保健所を設置する市長に任されているわけでございます。具体的には、保健所等に勤務しております約六千八百人の食品衛生監視員が、必要により収去等を行い、検査を実施するというような体制になっております。また、営業者側におきましても、日ごろから自主検査の必要性について指導をしておりますし、自主検査体制の整備が進められ、それぞれ検査がされているという状況にございます。
  68. 春田重昭

    春田分科員 公的機関は要するに保健所を通してやっている、あとはいわゆるメーカー等の自主検査が行われている、こういうことでございますが、いわゆる営業者の自主検査において、大腸菌群が陰性か陽性か、これを判定するのは時間的に大体どれぐらいかかってしまうのですか。
  69. 難波江

    ○難波説明員 食品衛生法に基づきます乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で規定するいわゆる公定法と言われているものですと、最低四十八時間を要するわけでございますが、自主検査等に用いられております簡易な検査法でやりました場合は、ほぼ二十時間前後で大腸菌陰性を確認することができます。
  70. 春田重昭

    春田分科員 簡易な方法でやったとしても大体二十時間かかるということですね。それがDゼロ牛乳につきましては、今局長がおっしゃったように、深夜零時を期して製品化されていく。十二時からされるかどうかわかりませんけれども、いずれにしても当日付の牛乳を出そうと思ったら、十二時からやって、少なくとも午前中にはもう店頭に並んでおる。こうなれば、検査結果が判明しない前にもう既に店頭に並んでいる、こういう形になるわけですね。こういうふうに、測定の判定が十分なされないままに出ていくというこのDゼロ牛乳につきましては、いろいろな問題点があろうかと私は思うのです。さらに、今局長がおっしゃったように、衛生的な面、安全的な面が確保されるかどうかという問題、また、深夜労働ということで労務対策上の問題もあろうし、コスト的にも非常に高くなっていくのではなかろうか、こういう面も指摘されておるわけです。  したがって、Dゼロ牛乳につきましては、消費者は当日付ですから喜ぶとしても、万が一事故があった場合これは大変な問題になっていく。こういうことで食品衛生法においては第十四条で抜き取り検査という形になっておるわけです。そういう点で、あくまでも自主検査となっておりますけれども、やはりある程度判定が出た段階で出していくのが本当の牛乳ではなかろうかと思うのです。  そういった点で非常に問題を含んだDゼロ牛乳だと思うのです。そういった点で、厚生省なり農水省におきましてはいろいろな通達等を出しておられるみたいでございますが、どんな通達が出されて、これによってメーカー等がどういう対応をしているのか、この辺をお聞きしたいと思うのです。
  71. 難波江

    ○難波説明員 お答えいたします。  先生指摘のように、過当競争といいますか、エスカレートいたしまして、午前零時を期して充てん機が回り出すというような事態もございまして、品質の確保はもとより衛生上の危害発生も憂慮されるという状況になってまいりましたので、今年の一月十四日に各都道府県の衛生部局長に対しまして、関係業界を指導するように、それから私どもの直接認可団体でございます全国牛乳協会に対しまして、処理体制の正常化、自主管理体制の強化ということで適正な処理が行われるよう指導通知を出してございます。
  72. 野明宏至

    ○野明政府委員 牛乳につきましては、消費者は新しいものを好むという傾向があるわけでございます。しかし、最近の牛乳は一週間程度は別にどうという問題はないということでございますので、これはやはり販売店なりさらには消費者の理解も得ながら、過当な競争にならないようにしていかなくちゃいかぬだろうと思っているわけでございます。また、その場合に、狭い地域だけでそれを自粛してもらおうと思っても、その周りでそれをやっていたら何にもならないということで、その輪を広げていかなくちゃいけないというふうなことで、そういった観点から、各県あるいはブロック、ことに現在協議会が設けられておりますが、そういった協議会の場等を活用しまして、関係者の理解を得ながら、自粛の申し合わせがなされるように指導してまいっているところであります。
  73. 春田重昭

    春田分科員 厚生省としては、生活衛生局の乳肉衛生課長名で各都道府県に通達を出されたのがことしの一月十四日ですね。それ以前からも既に都道府県の一部では自主的に業界に対しまして指導されているわけでありますが、地方団体の中でもまだ全部が出しているという状況ではないわけなんです。私が知っている限りでは、東京、熊本、香川、京都、愛知、宮城、こういった各県が既にこの通達を出しているわけでありますが、それ以外はまだつかんでいないわけです。これは一月十四日に厚生省が出しましたから、それ以後に都道府県が出していると思いますが、その辺をつかんでおりますか。
  74. 難波江

    ○難波説明員 その後特に報告は求めてございませんが、電話等で照会しましたところによりますと、各県それぞれ努力をしているようでございます。しかしながら、乳処理業は全国で千五十一ございます。しかも、その処理の規模であるとか流通の体系というのは地域によって非常に異なっているということで、非常に小規模で地元だけで販売している業者もいるというようなことで、全国一律にというようなことはなかなか難しい状況にございます。したがいまして、今後各地においてこれらの通知の趣旨が徹底されるよう、それぞれ関係自治体並びに関係業者について指導を今後ともさらに強化をしてまいりたい、そう考えております。
  75. 春田重昭

    春田分科員 いずれにいたしましても、国としても積極的に取り組み、一日も早く混乱なきよう収束させていただきたいと思います。  大臣、この問題につきまして何か御見解をいただきたいと思います。
  76. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 春田先生にお答えしますが、先生のおっしゃったような趣旨で指導してまいりたい、こう思っております。
  77. 春田重昭

    春田分科員 今後の推移を見てまいりたいと思います。  さらに、LL牛乳につきまして最後にお尋ねしたいと思います。  LL牛乳につきましては、昨日のテレビ報道でも、要冷蔵撤廃反対というかなり盛り上がった集会が行われているみたいでございますが、その是非をめぐり非常に大きな論議がされているわけです。生産者の中でも違いますし、消費者の中でも違いますし、メーカーの中でもそうした違いがあるわけでありまして、五十八年の春、厚生省がLL牛乳の安全宣言なるものを出しておるわけですが、その後もう約二年たっているわけです。今どんな形で来ているのか、この辺の経緯につきまして、簡単に御説明いただきたいと思います。
  78. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいまお話のございましたように、五十八年の三月に、厚生省におかれては食品衛生上問題がないといういわば安全宣言を出されておるわけであります。その際、常温流通になった場合のいわゆる流通上の問題につきまして、農林省に検討を依頼されまして、私ども、これは生・処・販それぞれに関連する問題でございますし、また、常温流通になった場合のいわば流通の混乱というものがないようにしていかなくちゃいかぬというふうな観点に立ちまして、そういった関係者の意見を聞きながら、従来のいわゆるLL三原則にかわる新しい原則のもとで円滑な流通が行われるように現在意見を集約しておるという段階でございます。
  79. 春田重昭

    春田分科員 この要冷蔵を撤廃した場合、既に海外では数十カ国がLL牛乳を採用しているわけでございまして、特に欧州等が非常に出回っているわけですね。この辺の海外からの輸入、これは考えられないのですか。
  80. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 春田先生にお答えします。  先生御存じのとおり、LL牛乳は輸入制度上非自由化品目、IQということになっており、また輸入割り当ては行っておりません。そんなことで私は、我が国の酪農を守るという見地からこれを堅持してまいりたいと考えております。
  81. 春田重昭

    春田分科員 LL三原則があるわけでございますが、この中の生産量が五万キロリットル、これがもう既に八万キロぐらいになって原則そのものが崩されていっているわけでありますけれども局長から新しい原則のもとでという話がございました。いずれにいたしましても、この問題につきましては先ほど言ったように同じ団体の中でも意見が違うわけですから非常に難しい問題だと思うのです。正直言って大臣個人の見解としてどうなんですか、要冷蔵の撤廃。維持するのかもう撤廃するのか、どのように思いますか。
  82. 野明宏至

    ○野明政府委員 要冷蔵ということは一つは衛生上の問題でございます。したがいまして食品衛生上問題ないという安全宣言が出されております以上、これは撤廃されるのが妥当な性質のものである。同時にLL牛乳というのは消費拡大という面からも非常にメリットがあるものでございます。したがいまして関係者の意見を集約した上で厚生省にまた御連絡をするようにしたいと思っております。
  83. 春田重昭

    春田分科員 いずれにいたしましても二年たったわけでございますからそろそろ結論を出す時期じゃなかろうかと思うのです。安全面は大丈夫だといっても流通面のいろいろな複雑なそうした対立があるわけでございますから、その辺の問題を解決しない限り簡単に要冷蔵撤廃をしないように強く望んでおきます。  それからLLやDゼロというのは高温の殺菌牛乳なんですが、最近低温の殺菌牛乳が非常にシェアが伸びてきたという話がありますけれども、この低温の殺菌牛乳につきましては、若干コスト的には高いけれども栄養分は非常に高いということが言われておるわけでありまして、この辺、農水省としてはどんな考えを持っていますか。
  84. 野明宏至

    ○野明政府委員 牛乳の生産なり流通なりあるいは消費という問題を考えます場合には、やはり多様な消費者のニーズというものにこたえて安定的に供給していくということが大切だろうと思っております。そういうふうな観点から考えますと、いわゆる低温殺菌牛乳、これは大変自然に近い風味があると言われております。他方、今お話ございましたように製造に時間がかかるということで、大量生産ができないということでコストも高くなる、あるいは殺菌温度が低いわけでございますので腐敗が速いといった問題があるわけであります。しかしいずれにいたしましても、私どもとしては多様な消費者のニーズにこたえていくような供給、そういうものの一つであるというふうに考えておるわけでございます。
  85. 春田重昭

    春田分科員 ある新聞の報道では何か否定的な見解が国として出ているような報道が出ておりましたけれども、この牛乳のメーカーというのは地方の中小企業が多いのですね。大手はほとんどやっておりません。しかし、現実において二、三%のシェアから今では一割くらいのシェアがあるということでかなり伸びてきておるわけでございますから、これは無視できない、こういった面で国としてひとつ対応をしていただきたい、こう思っておるわけでございます。  最後に、時間ございませんけれども、牛乳専売店というのは現実の中で厳しい経営を強いられております。毎年既存業者が相当減少してきているという実態があるわけであります。そういった面で、牛乳専売店というのは我が国酪農行政にとって大いに貢献を今日までしてきたわけでありますので、農水省としてももっときめ細かな配慮があってしかるべきである、私はこう思っております。この牛乳専売店、小売店への国の何らかの配慮を私は期待するわけでございまして、この問題の答弁を聞きまして、私の質問を終わりたいと思います。
  86. 野明宏至

    ○野明政府委員 牛乳の販売店、いわゆる専売店でございますが、量がひところに比べて大分減ってまいっておるわけでございます。しかしながら大変安定的な販売の一つのルートだろうと思います。さらに最近は、牛乳の専売店が菓子屋さんとかあるいはパン屋さんとか外食とか、家庭配達だけではなくて、そういったものへも卸すというふうな新しい機能も果たしてまいっております。  したがいまして、これからも牛乳の専売店の経営向上という観点に立って指導してまいりたいと思っておるのでございますが、その場合、例えば経営多角化ということが必要でございまして、牛乳の販売店は冷蔵庫を持っているわけでございますので、いわゆる冷凍食品みたいなものもあわせ取り扱って経営多角化をしていく。それから配達のコストがなかなか高いわけでございますので、配達の領域を隔日配達というふうなことで広げて、コストの低減、それから販路の拡大、さらには立地条件によりましてはコンビニエンス化していく、また自動販売機みたいなのを備えつけて消費者の利便を図っていく、いろいろな工夫の仕方があろうかと思います。  農林水産省におきましても、額は少ないわけでございますが、予算をいろいろとりまして、例えば地域ぐるみで牛乳販売店が相談しまして牛乳販売店の将来像あるいはその地域におけるこれからの販売をどういうふうにしていくかというふうなビジョンをつくっていく、またそういったものに基づいて指導していくというふうなことを今やっておるわけであります。これからもそういう考えで指導してまいりたいと思っております。
  87. 春田重昭

    春田分科員 終わります。
  88. 大村襄治

    大村主査 これにて春田重昭君の質疑は終了いたしました。  次に、中西績介君。
  89. 中西績介

    中西(績)分科員 私は、先般の予算委員会一般質問でカネミ油症問題について触れたわけでありますけれども、不十分でありましたので、きょうそれに加えましてさらにお聞きしたいと思います。  御存じのように、このカネミ油症問題は、昨年の一月第一陣控訴審、この際に和解の勧告もあったし、さらに控訴審では国の法的責任を問うということで判決も出ましたし、そして再び二月十三日には第三陣の福団地裁における判決が同じ中身で出たわけであります。こうしたことを考えてまいりますと、裁判で一回だけでなしに二回もこうした控訴審あるいは地裁における判決が出たということもあるのに、なぜこれを去る二月二十二日上告したのだろうか、どうしても私はうなずけないわけであります。と申しますのは、このことによって患者あるいは被害者が筆舌に尽くしがたい問題を残したまま裁判で決着をつけるということになるわけでありますから、人道上私は許せないし、甚だ遺憾に思うわけであります。  そこで、なぜ裁判で決着をつけようとするのか、むしろ政治的な対応の中で解決を図っていこうとしないのか、この点について大臣、お聞かせください。
  90. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中西先生にお答えいたします。  カネミ油症事件の被害者の方々の長年の御労苦に対しまして心から御同情申し上げ、またお見舞い申し上げたいと思います。  先生から今お話あったわけですが、このたびの第三陣の一審判決につきましては、関係各省と慎重に協議し、特に私がお願いしまして、事の重大性から法務、厚生の三大臣会合を開いて検討しました結果、国の法的責任を認めた判断に事実認定及び法令解釈適用上承服しがたいものがあるので、さらに上級審の判断を求めるべく控訴したのでございます。このように関係各省で慎重に検討した結果控訴したものでございまして、控訴審の御判断をいただきたい、こう思っております。
  91. 中西績介

    中西(績)分科員 検討を三省でやったというわけでありますけれども、私は、この判決を得て、その後に「カネミ油症事件三陣第一審判決について」ということで、承服しがたい主要なものは何であるかということを示した文書をいただいたわけでありますけれども、これを見て検討すればするほど本当に腹立たしくなってくるわけです。と申しますのは、この中身をずっと詳細に検討させてもらいますと、例えば事実認定が、これによりますと承服しがたいという点が五点ばかり私のところに届けられています。それに基づいて法令解釈適用上承服しがたいとしておるわけであります。  全部をここで今論議する時間もないし、そしてまた専門家でもありませんから、私は一、二の点だけを指摘しますと、例えば「公権力の行使に当る公務員」云々ということで家畜衛生試験場の小華氏を例として挙げておるわけでありますけれども、権力として限定できないその理由というのは、彼はアイソトープ研究室長で農薬専門家なんだ、ですから、放射線が入っているかどうかを調べるのには極めて詳しいのだけれども、こういう農薬専門家なんだから職務の範囲には入らないんだというふうな言い方から、このように権力としての限定ができぬという言い方になっているわけですよ。あるいは問題になりました肥飼料検査所の福島所長あるいは矢幅課長の場合についても、肥飼料が本来の任務であって、食用油は権限外だから「職務を行うについて」云々ということになる。こういうふうに挙げていきますと、一つずつあげつらっていきますと、ではどこがそうした問題について詳しく科学的にしかも総合的に判断をしていくかということになるわけですよ。だからむしろ一項目のこれを言うなら、こういう多岐多様にわたる公害、食品公害というのは、これから高度化すればするほど出てくるわけですから、そうしたときにこのような形で、枠はこれだけです、しかもそれは少人数しかいないということになれば、では該当しないようなものが出てきたときにはどのようにし、だれがそれを処置していくかということになってくるわけですね。こういう点についてはどう考えるのですか。
  92. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいま家畜衛生試験場の職員と肥飼料検査所の職員についてのお話があったわけでありますが、肥飼料検査所の職員につきましても、当時のいわば知見の範囲からすれば、その肥飼料検査所において危険を感じなかったというのは無理のない点ではなかろうかと思っておるわけであります。それで、その後農林水産省におきましては、御案内のように飼料安全法という形で、いわば家畜の面からの法律の整備というのはいたしておりまして、そういう観点からの指導なり何なりは現在はやる体制をとっておるわけでございます。
  93. 中西績介

    中西(績)分科員 最後の方、もう一遍言ってください。
  94. 野明宏至

    ○野明政府委員 これは飼料の品質改善に関する法律というのが当時はございました。それで、その後五十年に飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律というものにこれを改めまして、当時ダーク油なんかは飼料というふうになっておらなかったのです。五十年の改正で、家畜等の栄養に供するものを広く飼料として法律の対象にする、それから、例えば有害物質を含む飼料等の販売禁止ができるようにする等々の法制上の整備をいたしておるわけでございます。
  95. 中西績介

    中西(績)分科員 それで私は、その当時の、例えば今氏名を挙げましたけれども、その人たちを責めるということでなくして、国家行政組織法上からいたしましても、各省庁間における緊密な連絡調整、こうしたものがされなければならぬということは明らかなんですから、国民の生活、そして食品上の安全をどうチェックし、どう規制していくかというこうした問題を考えるときに、今言うように法律がこうあるからということでやっていけば、次々にそうした多くの問題が出てきたときには対応できぬという状況が出てくるわけですね。  ですから、私が今指摘しておるのは、これを長期にわたる最高裁まで持っていって争うということでなくて、既にもう二例出たわけですから、今度は来年三月にもう一つ出るわけですね。そうすると、第一陣、第三陣が出ているから今度は第二陣が出ることになるわけですよ。そうなると、今訴訟を起こしている全部がそういう判断が出なければこういうことはだめなんだ——ところが、実際に今お答えいただきましたように、このようにして法律的には欠けておるものもありますということを既に認めているわけですよ。であればあるほど、私はまだこれでは足りないと思います。食品衛生法の改正だとかいろいろなものを多岐多様にわたって検討していかなければならぬと思うのです。ですから、こうして欠けておる部分は補おうとするあれがあるんだったら、私は、それはただ単に裁判だけに頼って最後までそれを引き延ばしていくというこのことが、では政治的に、行政的にどうなのかということを考えたときに、大変問題があるのではないか、こう指摘をしておるのですが、そうした立場に立てなかったかどうか。  先ほどのお答えでは、法務省なりが主張するこうした五項目の事実認定の問題から、まだほかにもあると言っておりましたけれども、それに基づく法令解釈適用が承服しがたいということでこういうふうにしておるわけです。ですから、裁判だけでこれを争い抜いていくという代物ではないのではないか。なぜなら、そこで苦しんでおる多くの人たちがおるということ。それを一つの教訓としてどう踏まえていくかということになれば、法的にはこのようにして改めていきましょう、そして、今こういう人たちについては救済をどう遂げていくのか、不安をどうなくしていくかということを考えなければならぬと思うわけです。私は、最高裁までという裁判のみによって決着をつけようとするこの姿勢、これは何としても改めなければならぬと思いますが、もう一度その点お考えになりませんか。
  96. 野明宏至

    ○野明政府委員 カネミ油症事件につきましては裁判で国の法的責任が争われておるわけでございます。私どもは、国の法的責任といった問題につきましては、ただいま先生お話ございましたように、一つは事実認定ということで、被害発生の予見可能性というものが当時なかったわけでございます。それからまた、被害との関係で相当因果関係という点についても、事実認定という意味で承服しがたい点があるわけでございます。それから、若干主なものだけ申し上げますと、法令の適用上あるいは解釈上の問題といたしましても、国家行政組織法あるいは国家賠償法、さらには国家公務員の職務の範囲、そういった点からも承服しがたい点があるわけでございます。したがいまして、私どもは法的責任はないということを申し上げておるわけでございまして、そういう点で上級審の判断を仰いでいきたいと考えておるわけでございます。
  97. 中西績介

    中西(績)分科員 それで私が今言うように、それを挙げていきますともう後の方に出ているいろいろな問題、例えば過失の問題だとか違法性の問題だとか、いろいろな問題がありますよ。これを読めば読むほど、極めて法的にということで、一方的に判断をしていけば、予見可能性は全くないのだとか、被害の過失がないのだとかいうようなことを次々に挙げていますよ。しかし、挙げていけばこれは最高裁で争う以外はない。それでもって判断する以外にはやり方はないのですか。例えばスモンの場合最高裁まで行ったのですか。行ってないでしょう。水俣だって行ってはいないんですよね。あるいはその他の公害問題だって、最高裁まで行って判断を求めたということはないでしょう。みんな途中で和解したり何かして、そういう措置をとっているわけです。ですから、もう二例が出て、今度恐らくまた出るだろう。控訴審の場合に私が指摘したのは、もうこれは定着したんだよ。しかし、まだ一つだけだから判断しにくいからと言ったんですよ。二つならできるかと思った。二つ出たところがまた同じことを繰り返しやっておるということになると、最高裁まで行きますということ以外にはないのか、こう言っているわけです。私は、最高裁まで行かなければならないのですかということを聞いているわけですから。皆さんが今言っているこのことは、実に私はあれしたら——一つずつする時間がありませんから、今反論したり、法的にどうだこうだということはやりませんけれども、これを見れば見るほどそうした面で腹立たしくなる。前例がなければいいけれども、今言うように、一般の公害だって次々に、薬害だって判断が出れば和解をしたり、いろいろな措置をしているわけですからね。今度は主に農水省が指摘をされておるのですけれども、どうしてできないだろうかと私は思って聞いているわけですから、その点を明快にしてください。
  98. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中西先生にお答えします。  局長からも答弁したとおりでございますが、実は先生のおっしゃる気持ちはある程度理解できると思います。特に被害者の方は、無関係の方が被害者で大変御苦労されているということで理解できるわけですが、ただ、私は事の重大性を考えまして実は法務大臣、厚生大臣と協議した。私は専門家でございませんが、今局長が言ったようなことで五つの事実誤認がある、それから法令上の解釈が二点ある、そんなことでこの判決は納得できないというようなことで控訴審の判断を仰ぐようにしたということでございます。そんなことで、先生御存じのとおりでございますが、裁判を抜きにしまして被害者をどうしたらいいかというようなことで、厚生省と我が省ともにできることは私は最善の努力をしている、またそれ以外に行政上何かできることはないかということで努力している、こういうことでございます。
  99. 中西績介

    中西(績)分科員 それではもう一回聞きますけれども、同じようなこうした事件が発生したら今度どうするのですか。高度に発達し複雑化しているこの食品産業におきまして、例えば一つの例を挙げますと、熊本で出ましたからしレンコンです。普通の常識で言えば、真空状態に置いておけば菌の繁殖などということは恐らくないだろう。ところが逆に菌が物すごく繁殖をした、こうしたものが次々にわかるわけです。それはその当時のあれではわからなかったことだってこうしてわかってくるわけですから、そのようにしてたくさんの例がこれから出る可能性だってある。ですから、このときにそこまで求めずとも、今ある段階でそうした経験をしている、教訓を持っているわけですから。  しかも患者の皆さんは十七年間経過しているわけでしょう。あなた御存じかどうか知りませんけれども、長崎でこの前二百名ばかり受けまして、ことし四名患者認定された方がいらっしゃいますよ。その中の一人、十一歳の女の子は六年後に生まれた人ですよ。四十三年から六年後、四十九年に生まれた人が今十一歳です。その人が今度認定されているのですよ。だから、そうしたことを考えていけばいくほど、三代にわたって苦しみ、就学の問題からさらに今度は就職の問題から、結婚の問題から、挙げていけば数限りないそうした苦難の生活を続けておるという実態があるわけですよ。しかも医療関係では、この治療方法がまだ固定してないわけですね。そして年齢に応じて、あるいは季節に応じて、あるいはそれぞれの個体と申しますか人の違いによって出てくる違い、摂取量によっても全部違うわけですから、こうしたことを考えてまいりますと、そうした人たちも年配の人は大変年齢を重ねておるわけですから不安でしょうがないわけですね。それをやはり安心さしていくためにはそうしたことが今一番大事ではないかと思っているだけに、私は何としても早急にこれを解決すべきだということを、また裁判すれば長い間金が要るわけですから、そして年齢はどんどん進行していくわけですから。年齢がとまっていればいいですよ。そうじゃありませんから。ぜひこの点を勘案していただければと思っています。どうです。
  100. 野明宏至

    ○野明政府委員 昭和四十三年の二月から三月にかけまして、福岡県を中心としましてダーク油事故が起こった際、肥飼料検査所におきましては直ちに出荷停止等の措置をとって被害の拡大を防ぐ措置をとってまいったわけでございます。そういった肥飼料検査所としてとり得る措置は、当時十分とったわけでございますが、残念ながら裁判においては国の責任を認める判決が出たわけでございます。これについては、先ほど申し上げましたような事実認定あるいは法令の適用解釈といったような問題がございまして、上級審の判断を仰いでまいりたいと考えておるわけでございますが、先ほど大臣からお話ございましたように、行政上とり得る措置はできるだけとるべきであるというふうな大臣からのお話で、カネミ倉庫の事業が継続されていくようという観点から、私どものとり得る範囲の問題といたしまして、米油の原料であります米ぬかの調達とか倉庫の活用とか、そういった面での配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  101. 中西績介

    中西(績)分科員 前段の部分は、私は、判決が出ていなければこのことは言いません。二回にわたって出たということは非常に重要です。ですから、そういう勧告があって、判決があって、判決があったわけですから。こうした機会でなければ皆さん方がお互いに話し合いをし、そしてそこで何らかの措置をとるというようなことはできないわけですよ。この機会を逃しますと、また今度控訴する、あるいは上告するという格好になってしまって、これはいつまでも係属していって終わらぬわけですから、その点をいち早くやれというのは、判断が出たというこの過程があっての話です。この点はもう一回再考していただきたいと思うのです。  それから後半の部分ですけれども、時間がなくなりましたから申し上げますけれども、カネミ倉庫の問題ですけれども、ちょっと三点ばかり聞きますから、お答えいただけますか。  一つは、カネミ倉庫というのは系列会社に収益を分散していると言われていますよ。私は経営上に大変な問題があると思うのです。そうして経営が苦しいから治療費が云々というようなことが出てくる。ですから、今いろいろ出てきておるのに治療費の支払いがカネミ倉庫は不十分ではないかという意見があるのです。なぜかというと、被害者の話では、停滞することがあるということを言っておるわけですよ。滞ることがある。ですから、そうした不安があるということとあわせて、こうした収益を分散して、本当にそうなっておるかどうか、経営は安定しておるのかどうか、これが一つ。  二つ目には、先ほど農水省の方から「カネミ倉庫の事業活動に関する対応について」というものを示されたと思うのですね。このことは、不安定ゆえにこれをやっておるのかどうなのか、このことをお答えいただきたいということが一つ。  そしてもう一つ最後に、治療費の問題が今出ましたから。治療費負担は、企業に対する対応策が、これをやったとして、底が抜けてはいかぬわけですよ、一点目に私が申し上げたように。収益を子会社だとかそういうところにどんどん分散してしまうような格好になったのでは、ただ単に農水省の側から、国側からこの企業に対してぬれ手にアワ式の金を注ぎ込むという結果にしかならぬわけです。こうした点徹底した指導をされていこうとしておるのか、そして実際にこれを実現しようとしておるのか、その点どうでしょう。
  102. 野明宏至

    ○野明政府委員 第一の点でございますが、カネミ倉庫は累積赤字がずっとたまっておる。それで先般の決算の際には単年度では若干の黒が出た。しかし過去の累積赤字は残っておるというふうに聞いておりますが、現在なおカネミ倉庫の経営につきましてさらに調査をいたしておるところでございます。  それから第二点のお話でございますが、やはり行政の立場からとり得る措置を講ずるということで、一企業に特定して何か措置をとるということはできにくいわけでございますが、やはり米油業界が当面している原料問題というものをできるだけ円滑に調達できるような条件づくりをする、その中でカネミ倉庫の事業活動も円滑に進むということを期待いたしておるわけでございます。そういうことで、行政上とり得る措置については、調査を進めつつ、できるだけのことはやってまいりたいと思っております。
  103. 中西績介

    中西(績)分科員 ですから、私は最後に、このカネミ倉庫の問題は、そうした収益を分散するような形態の中で、本人には全然痛みがないなどということにならぬようにしておかないと、これはもう大変なことですね。このように大変多くの皆さんに迷惑をかけていることですから。ですから、あくまでも治療費負担については滞りがないようにまず第一指導してほしいということ、そしてこの対応策についても底が抜けぬように、それは必ずそうした対策費の方に回るように手だてを施してほしいということ、こうした点についてのこれから後の指導と監視を強めていただくということとあわせまして、私は、今なすべきは、先ほどから申し上げているように、こうした同じ被害に苦しんでおる中でも、一陣と三陣の人は仮執行で仮払いがされています。ところが今度は二陣の人と未訴訟の人、約半数近くになるわけですけれども、この人たちはそのまま依然として放置されていくわけですね。格差が生じます。こういうこともあるわけですから、私は後でもう一度何かの機会に時間をつくってお聞きをしますけれども検討していただいて、和解なり何なりの措置をいち早くとっていただくようにお願いをしておきたいと思います。大臣、一言で結構ですから。
  104. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 最初の治療費、カネミ倉庫に対する対策でございますが、先生指摘のように、そういうことのないように、厳しい指導監督をいたします。  それから、患者につきましては、先ほども申しているとおりでございまして、本当に私は、被害者の方たち、しかも関係のない方たちの御苦労、本当にお気の毒だと思いますが、先ほど申し上げたとおりでございますので、よろしく御賢察をお願いしたいと思います。
  105. 大村襄治

    大村主査 これにて中西績介君の質疑は終了いたしました。  次に、小沢貞孝君。     〔主査退席、田名部主査代理着席〕
  106. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 今お手元に資料を差し上げてありますけれども、米消費拡大・純米酒推進議員連盟、この奇妙きてれつな名前の議員連盟を我々はつくっているわけです。今まで座長でやっておった大村さんがこの前の選挙の後、おまえのやっておるあの純米酒推進議員連盟しっかりやれと、兵庫県かどこかからわざわざ私に電話をかけてきたことも印象に残っておるわけですが、そういう立場から二、三の質問をさしていただきたい、こう思います。  私たちの役員は、今夜励ます会がある自民党の長谷川峻先生、副会長は、会長代理ですが社会党の角屋先生、加藤六月、小渕恵三、羽田孜、公明党二見さん、共産党林さん以下約二百六十名、超党派の農水議員で構成をしておるわけです。きょうはそういう立場から、昨年の暮れの予算増額運動に当たっては大臣長官から格段の御厄介になりました。この席をかりて改めてお礼を申し上げておきます。  ことしに入ってからそんな報告をかねて役員会をやった結果、その冊子の一ページの下のところに、予算委員会やその他の委員会でぜひことしは次の三項目を重点に発言をして世論を喚起し、あるいはまた外郭団体とも相談をしながらこの実現を図っていこう、こういうのがその下に書いてある三項目であります。我々小使役で取りまとめ役ですから、どうも農林省や食糧庁が一番おっかながっているのは大蔵大臣、大蔵省。第一次、第二次超過米で懲り懲りしちゃって、金のかかることについてはどうも発言権が弱そうでありますので、きのうは大蔵大臣相手にこればかりでさんざんに要請をしておきました。  第一は、米飯学校給食についてさらに強力に進めるとともに、日本型食生活に幼児期よりなじむためには幼稚園、保育園における給食についても実現をしていけ、これは新規でありますので、なかなかこういう予算の少ないときは困難だと思いますが、きのう大蔵分科会に厚生省から、あるいは幼稚園の方は文部省からそれぞれ担当者に来ていただきまして、特に学校給食の——長谷川会長はこういう表現を使っていました。何しろ餓鬼の時分からどうしても御飯を食べさせるようにしなければいかぬぞ、印象に残っている長谷川会長の言葉でありましたし、今厚生政務次官をやっている北海道の高橋辰夫君が、どうしてもやれ、おれも厚生省で頑張るぞ、こういうような勢いでありまして、きのうの答弁においては前向き検討さしていただく、こういうようなことのようであり、私は食糧庁に率直に申し上げますが、ことしはおかげさまで学校給食約二百五十億の予算だったと思います。新しいことをやっていくわけですから予算を増額してやれ、こういうことはなかなか主張しにくいことかと思いますが、この枠の中で、どうせ幼稚園や保育園から始めるといっても、さあやりましょうというところはわずかなところですから、それには施設費もかかれば給食のこともやらなければなりませんし、いろいろの対応が必要でありますので、来年はわずかなところでいいから、しかも学校給食の二百五十億前後の枠の中で一部からでも始めてもらう、こういうようなぐあいに、これはぜひ前向きに受けとめて研究をしていただきたい。これは要望にとどめておきます。  二番は、酒米の使用数量が激減している。昭和五十二年には六十二万トン、昭和五十九年には四十五万六千トン、この八年間に約十七万トンの酒屋さんの方で使うお米が減ってしまったわけであります。これは大変な量であります。何年かかかって食糧庁さんに御厄介になって、学校給食二百五十億を使って、ことしの予定が十四万何千トンだと私記憶しておりますが、営々として努力をして学校給食に十四万トンをようやく消化できるようになったにもかかわらず、お酒の方についてはこの八年間ばかりの間に十七万トン消費量が減ってしまう、これは考えてみれば大変なことであります。これにぜひ重点を入れていただきたいと思いますが、これは時間の関係で、みんな資料に入っておりますが、はしょってちょっと見ていただきたいと思います。  この冊子の十五ページであります。「酒米の計画数量及び実績係数量の推移」、昭和五十二年の実績の一番下を見ていただくと、六十一万九千トン、それから下の段の右の端の五十九年の実績の見込みの一番下を見ていただくと、四十五万六千トン、こういうように現実に減ってしまっておるわけであります。これの原因はもう明確であります。酒の税金が高い。お米が高い。私は、率直に言って原因は二つだと思いますから、この両方から解決をしていかなければならない問題であります。お酒の税金のことについてはきょうはここでは発言をいたしません。しょうちゅうばかりどんどん出てしまって、その中にもデータが入っておりますが、きょうは読み上げませんけれども、お酒の方はさっぱり売れないというのは、去年だかおととしにお酒の税金が上がり過ぎた、こういうことが原因だと思います。これまた大蔵省に要求をしてこれから消費を伸ばしていかなければならないお酒の、清酒の税金については、相対的にしょうちゅうやビールやウイスキーより安くできるような形をぜひとってもらいたい。  これを大蔵省に皆さん方からもぜひお願いをしてほしいと思いますが、主として農林省の方へお願いをしたいことは、お米が高過ぎる、私は、率直に言ってそうだと思います。酒造中央会からは輸出のお酒のためには他用途米、工業用米と同じように払い下げてくれ、これはもう正式な陳情であります。その前にはこういうのが出てきました。どうぞ、保税工場で我々はお酒をつくって輸出に回すから、その原料米はカリフォルニア米を輸入させてくれ、これは大変なことだと思って、こんなもの持ってきたってだめだ、こういうように我々は言ったわけなんだけれども、お酒屋さんは大変苦しくなってそういう運動を起こさざるを得ないような事態になっておるわけであります。  そこで私は、端的に一例としてこれは参考のために申し上げますが、ことしは御厄介になりまして二万六千ヘクタールだけ減反緩和をしていただきました。その上もし来年総数量を、多少一方でも二万でも減反緩和、このことで、そしてそのお米をお酒屋さんの方へ回す、もし仮にそういうようなことを想定するならば、十アール約五万円の減反奨励金がかかるわけですからそれが節約できるわけです。二十アールでお米が一トンできるわけです。だから二十アール、お米一トン分の十万円というものは大蔵省、政府が出すところの減反奨励金は理論的には少なくて済むわけです。だからそれをそういうような形でもし酒屋に特別に回すことができるならば、トン三十万円のお米を二十万円で回すことができるんではなかろうか。これは数字の上だけの計算ですが、大蔵省も、食糧庁も、農民の手取りも減らない。酒屋さんは約三割安い米が入手できる、計算上は一応はそうなる。もしそれがいけなければ、半分の量にして他用途米と同じように十万円で払い下げてやれば、量としては半分それらに回すことができる。こういうことで、工夫によって、増反をいたします、その分はお酒屋さんに回します、その分は減反奨励金が少なくて済むわけだから、三者どこも財政上腹の痛むことはなくてみんなに喜ばれる、こういうことができるのではないか、こう私は思います。  唐突に私ここで申し上げて、これまたすぐ御返事はできないと思いますけれども、お米の消費がお酒のことについてできない根本原因は税金とお米が高い、この二つにありますので、食糧庁、農林大臣、政治的な大きな問題だと思いますので、御研究をいただいて取り組んでいただくように、これまた要望を申し上げます。こういうことがだんだんと全中や農業会議、あるいはその他の農業団体もわかってまいりまして、ことしあたりの運動としてはこういう項目も入って運動が出てくるかと思いますので、それについてもひとつ格段の御配慮をいただきたい。みんな要望ばかりで、私の時間の都合で大変申しわけございません。  三番目は、そこに書いてありますように、「米麦価の価格差が広がる一方である。米消費拡大をはかるためにも格差の是正に取り組むこと。」私のところでわかりやすく一覧表をつくりました。今差し上げた資料の中にあります。左の方に「消費者米・麦価の推移」こういうのが入っております。一番上の欄は、昭和二十七年のときにはお米はキログラム五十四円で政府は売り渡しをいたしました。その右の欄は、麦はその当時キログラム三十五円で売り渡しをいたしました。米麦価比は約六五%、六四・八%であり、昭和六十年は、最近消費者米価を上げましたから三百五円パーキログラム、麦の方は六十九円パーキログラム、それで格差は二二・六になりました。このことを格差の比だけで見るならば、昭和二十七年には約六五%の格差、現在は二二%の格差、米麦価比は約三分一になっておる、こういうことであります。右の方の欄は「対米価比の推移」、これは総務庁「家計調査報告」からとったものでありますが、一番上の昭和三十年のときには米が八十五円パーキログラム、麦の方は七十二円パーキログラム、対米価比は八四・七、それが昭和五十八年の一番下の段に至っては、お米はキログラム四百四十八円、麦は百九十三円、開きは四三・一%、これも半分になっておるわけであります。  これはどういうことを物語るかと言えば、外国の麦が安くなった等いろいろな原因がある、消費者に高い麦をやってはいかぬという理由もあると思います。米の消費者価格が高過ぎるという面もいろいろな面から分析できますけれども、私たちトータルで考えてみると、外国の麦を食べることを奨励をして、日本の米を食べることを価格上は抑えているように映るわけであります。外国の農民のものは安く国内で売っている、日本の農民のものは高く売っている、これでは価格の上から米の消費が進まない。きのう大蔵省にさんざんやったら、大蔵大臣はメモをしっかり書いてきて難しい答弁をしておりました。何を言っているのか最後はよくわからぬような答弁でありましたが、大蔵大臣もその方向はなるほどと肯定したような答弁でありました。これは消費者が控えておりますのでなかなか難しい問題でありますが、基本的にはこの問題にメスを入れていただかなければ米消費の拡大はできないのではなかろうか、このように考えます。  以上三点、要望だけ申し上げましたが、長官からでも大臣からでも、一言御答弁をいただければと思います。
  107. 石川弘

    ○石川政府委員 三点御質問がございまして、いずれもかねがね先生から承っていることではございますが、まず、学校給食で幼稚園児あるいは託児所等の者に対してもという御要望でございます。もう先生十分御承知のことでございまして、片方の学校給食は学校給食法という法律に基づきまして義務教育者を対象にしてやっているわけでございますが、幼稚園、保育所につきましては御承知のような事情でございますので、そこが一つのひっかかりでございます。  先生指摘のように、幼児から米食になれさせるということは私ども大変大切だと思っておりまして、例の日本型食生活の推進というような考え方で、主婦に対してそういうことをやっておるわけでございますが、今度の予算の中でお母さん方がPTAの会合等で出ていらっしゃるときに一緒に学校給食も食べていただけるようにということをやりましたのも、今先生指摘のような、お母さん方がそういう米食習慣を身につけていただくことに役立つであろうということでやっているわけでございます。割引のような手法をこういう義務教育以外のところに使えるかどうかということについては、その難しさについてはかねがね申し上げているところでございますが、幼児から米を食べるような習慣をつけるという方向での努力は今後も私どももいろいろと考えてみたいと思っております。  それから日本酒の原料価格の問題でございますが、これも先生よく御承知のことでございまして、清酒の世界というのは、新米で主食と同じもの、あるいはそれの一番いいものというのが歴史的な使い方でございまして、政府の管理の中に入りました際も、最初はコスト主義、要するに逆ざやを持たないでやってきたわけでございますが、その後いろいろな経過の中で自主流通を使い、自主流通の場合も必要な援助をしてきたわけでございます。しかし、やはり原料価格になかなか問題があるというようなこともございまして、最近は政策価格米というようなことで、特定米穀のほかに政府が管理をしております政府米の世界でも、援助を若干ではございますが量的にふやしてきているという経過がございます。基本的には日本酒についても原料価格が安定しなければいかぬということでございますので、これはそもそも価格自身の水準がなるべく増高しないようにということで努力しますし、それから政策価格米の考え方につきましても、これは国税当局ともよく相談しながら、必要なものは供給していきたいと思っております。  それからもう一つの米麦格差でございますが、これも私ども米麦の比較といいますときには、先生お示しの後ろの方の表、要するに小麦粉とウルチとの関係で、四〇数%ということで、最近はほぼその水準でございます。最近は御承知のように、米で申しますと大体七十五、六キロ水準、麦がほぼ三十一キロ水準というところで、水準としては大体そういうところに近づいてきておりまして、米の消費問題のときには、米麦の対比もさることながら副食との関係ということも言われているわけでございます。しかし、私どもも現在のように米麦との関係からいいまして、どちらかというと麦の動きが少なくて米の方が動きが大きいということ自身はやはり問題があろうかと思います。極力米の水準というものも安定をさせなければいかぬと思っておりますし、その場合に麦の価格についても常に必要な見直しをする必要があろうかと思っております。
  108. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 時間がないので、我が長野県、養蚕見る影もなくなって、絹の着物を着ろや着ろやという話になったり、私の着ているのも絹ですよ。たばこをつくっている者は、今度は民営になってだんだん耕作面積を減らされてしまう。また、果樹栽培が進んで、この間天皇杯をうちのリンゴがもらった。これも作付整理。我が長野県気が早いもので、野菜といえばみんな野菜をつくって、これは暴落。この間、三日ばかり前には養鶏者の大会があったら、これまた生産制限ということで、要するに何をやったらいいだや、こういうことです。そのときに一番つくりやすい、これは高くていけないのだけれども、いかに安くつくるかということが至上命令だと思うけれども、米をたくさんつくらせてもらいたい、これはやはり日本の農民の一番大きな願いだと思いますので、そういうことをさんざ考えてこの三項目を重要なことであろうと集約したので、来年度予算編成に向かってはぜひまた前向きに御検討いただくようにお願いだけしておきます。  次に、これはまことにうまい案を農林省はつくっていただきましたが、二月二十五日に「食の博覧会 農水省構想」と出ております。時間がないので読み上げませんけれども、現時点で大体どういうことを考えておられるか。
  109. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 実は私は、昨年十一月一日に農林水産大臣になりましてから、率直に言いますと守りの農政だと感じたので、攻めの農政に転じたいというようなことで、三つの点を基本に考えました。  一つは、我が農林水産省は一億二千万の国民に食糧を安定的に供給するという大きな役目を持っておりますし、それ以外に非常に公益的機能がございます。それで、生産の苦労というのを最近の若い人は知らないわけです。そんなことで、そういうことを教えることを一遍やったらどうだろうか。実は我が省といいますととかく生産だけの味方で消費の味方ではないという見方があるわけですが、御存じのように、つい最近消費者の部屋等をつくりまして、消費についても実によく努力をしているのですが、その姿が知られていない。それからもう一つ、私、農林水産省とのつき合いはごくわずかしかありませんでしたけれども、入ってみますと、役人は極めて優秀で能力があります。ところが守りで、能力を発揮していないのです。そんなことで、一遍何か大きな行事をやって能力を発揮させて、活性化をさせて、ひとつ攻めに転じたらどうかということで私が言い出して、役所の人は戸惑っておったが、どうやらつい最近はやったらいいかなというのが現状だと思います。  そんなことで、私が考えておりますのは「食資源の今日から未来」ということでございまして、国家的な基本テーマ、そういう形の中で、生活と技術と産業、それから横軸が情報、これを結ぶ。簡単に言いますと、「生活」という軸の中には、例えば地球上の食文化は平和共存しなければならないとか、食文化は伝統と環境によって開花するとか、グルメ志向とか、世界の日本食ブームはなぜ今起こっておるかとか、地球は本当に飽食の時代なのか、あるいは飢餓は絶滅できるのか、こんなことを「生活」で考えてみたい。「技術」では、食品の加工技術はどこまで可能になるのかということ、それからまた食糧の備蓄と保存、あるいは南極大陸を地球の食糧の備蓄庫にできないか、そういう形の中で、バイオテクノロジーは地球と人類をどう変えるだろうか、本当に農林水産業の明るい未来を楽しみにできるかどうか、あるいはスペースコロニー、宇宙植民地、こんなことを検討している。また「産業」という軸からは、農・林・牧・水、これを中心に、例えば鯨を捕獲から飼育へ転換できないのだろうか、あるいは、そういうことでロボットの果たす役割だとか、総合的な生産時代、希望をどこに見出せるか、こんなスケールの大きいものを考えてみてやったらどうだろうか、食の今日と未来ということを含めてやったらどうかということで話して、塚田局長を中心にやっておるのですが、どうやら最近はやった方がいいのじゃないかという気がしておるのですが、どうでしょうか。
  110. 塚田実

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  ただいまも大臣から詳細に御説明申し上げましたので、私からつけ足すところはほとんどございませんけれども、私ども、省内にプロジェクトチームを組みまして検討を開始しております。  その検討の主眼は、ただいま大臣からもお話がありましたように、広く国民の理解に支えられた農林水産行政の推進を図るという観点から、消費者、農林水産業、食品企業の共通の接点であります食をめぐる問題について、いわゆる博覧会という感じで、そうした考える場を設けていこう。ただ、私どもは、基本となるべきものは、やはり民間なり自治体なりの意向の把握に努めながらそうしたところの活力を最大限にくみ上げていく、国の押しつけではなくて、そういうことを基本としてテーマなり開催方式のあり方などにつきまして検討しているところでございます。
  111. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 これは大臣主導型で恐らくこうなったんじゃないか、そのハッスルの仕方から見て我々はそう受けとめておるんで、ぜひひとつ頑張って立派なものをやっていただきたい、こう思うわけです。  実は、これは偶然の一致か、だれかスパイでも来て我々の構想を盗んだのかなと思っておるのですが、「一九八八年をめどに」とあるわけです。我が長野県のど真ん中で一九八八年の春先に中央道があくものだから、そのときに何を大きくやるかなと相談をしていたら、大勢の人から農業博みたいなことをやれ、こういう話が出てきて、田舎の新聞では大きな見出しで大騒ぎです。同じ年だから、我々長野県で考えていたものを農水省は盗んでいったかな、こう思っていたわけです。  その話を県内でやっておったところ、森林県でもあり農業県でもある長野県でありますから、この専門屋さんは、そのときには林業も仲間に入れてやってもらわなければいかぬぞということで、私のところに山のごとく積極的に資料を持ってくるわけです。例えば上松、福島あたりは日本の三大美林の中心で、そこに皇太子が二回行った、二回目には妃殿下まで連れていってお泊まりになったから始まって、大臣が何人ということまで。いわゆる森林浴だとか学術研究だとか保健衛生上みたいなことで、非常に関心を持つわけです。林についてこの場は一番いい教育の機会ではないか、こういうように考えるわけです。何しろ二百年も三百年もたたなければこういう林にならぬということを子供たちに教える絶好の機会でもあるし、これはいいことだなと、そんなことから始まって、どうしても林業も一緒にやらしてもらいたい、場所は東京と長野県と離れていてもいい、どうしても一緒にやらしてもらえ、こういう熱烈な要望があるわけです。  今林業が置かれた現状から考えて、材がどんどん輸入される、地球は砂漠化していく、こういうような地球規模から考えても適切な提言ではないか、そういうことで事務当局にも寄り寄りお願いをしてありますけれども、今後の研究課題でありましょうが、緑、林業をぜひその仲間に入れていただくように、これは要望でございますが、いかがでしょうか。
  112. 塚田実

    ○塚田政府委員 緑につきましては、今御指摘のように、近年森林等緑資源に対する国民のニーズの高まりなどに見られますように、国民的な関心が非常に高くなっております。そういう意味で、消費者との共通の接点と先ほど申し上げましたが、緑はそういう接点にある問題であるというふうに私どもは思っておりまして、今後の検討に当たりましては、緑の問題も含めて幅広くじっくり検討していきたい、このように考えております。
  113. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 大臣、ひとつよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  114. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて小沢貞孝君の質疑は終了いたしました。  次に、宮地正介君。
  115. 宮地正介

    宮地分科員 私は、限られた時間でございますので、蚕糸の問題につきまして少し御質問をしたいと思っております。  特に、昭和五十九年一月から今日に至るまでの生糸の価格動向と需給状況、これについてまず御説明いただきたいと思います。
  116. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 生糸の需給状況あるいは価格状況、特に五十九年ということでございますが、これは全体的な流れとしましては、先生よく御承知のとおり、五十三年来、需要全体としましては四十六万俵をピークに五十八年二十九万俵ということで、五年間で四割近い減少を見てきております。そういう関係もございますので、五十九年度につきましては、生産面ではいわば計画生産ということを指導いたしまして、目標としましては繭生産で四万七千五百トン、こういう目標にいたしまして生産指導したところでございます。その結果、五十九年につきましては繭生産は約五万トン、生糸の量で申しまして五十九年の四−十二月では十三万七千俵、こういう状況でございます。この間、内需が全体でやはり二十万俵に近いところまで減ってきておりまして、そういうことになりましたものですから、輸入についてはかなり抑制的な指導をいたし運用をしてまいってきております。  大体需給関係はそういうことで、この数年来続いております需要の減退がこの五十九年にかけましてさらに強まりました関係で、生産調整を中心に需給の改善を図ってまいったわけでございます。  この間、価格でございますが、五十九生糸年度、六月から始まります生糸年度につきましては、年度当初、前年同様一万四千円に基準糸価を据え置いたわけでございますが、その後、大体現物価格がこの一万四千円の基準糸価をだんだん割り込んでまいりまして、特に八月以降むしろ安定下位価格の一万三千二百円に近づく、一方先物の方は大変低くなりまして、九月以降大体一万一千円前後のところで推移をしたような次第でございます。  そういう関係でございまして、昨年十一月に基準糸価の期中改定を行いまして基準糸価を一万二千円に下げました後は、現物、先物とも大体一万二千円を少し超えるところで推移をしてまいりまして、ごく最近の時点では価格が少し強くなってまいりまして、この二、三日のところでは現物、先物とも一万二千七百円がらみぐらいのところまで価格が上がっておる、こういう状況でございます。
  117. 宮地正介

    宮地分科員 昨年の三月三十一日に農林大臣が基準糸価を一万四千円に告示をいたしました。それによりまして五十九年度、六月からことしの五月までの間が一万四千円。しかし今御説明のとおり、特に先物については八月は一万二千六百円台、九月、十月は一万一千円台、十一月十七日の二千円の引き下げ発表、これによって一万二千円台、こういう段階になったわけですが、特に昨年の夏、八月に、三月に告示して決めた基準糸価の一万四千円が、今後十二月からことしの五月まで六カ月間糸価が据え置きになるであろう、こういうことでマスコミでも報道されましたし、現実問題としてこのときこの据え置き問題について審議会が開かれているのですね。この事実についてはどうですか。
  118. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ただいまの昨年秋にかけての経過の問題でございますが、これは生糸年度当初から、現物、先物とも実際上は安定下位価格に近い状態で推移してきたわけでございます。その間、八月下旬に至りましてある新聞に出ました価格安定制度の将来不安というような記事を契機にしまして、現物も多少下がりましたけれども、特に先物が今先生のお尋ねになりましたような水準に下がっていったわけでございます。その間異常な、業界で申します先安というか逆ざや、先物の方が大変安い、その間、開きが一キロ二千円がらみぐらい開いていく、こういうような状況で大変取引が停滞をするということで、どうしようかという検討を私どもしてまいったわけでございます。  その前の年、年としましては五十八年でございますが、五十八年から私どもの局に設けておりました繭糸価格安定制度の研究会、ここにおきます長期的な制度方向の結論もございますので、これを早急に出していただくということで十月末にこれを出していただき、さらに十一月に至りましていよいよこれは期中改定やむを得ないということで、審議会につきましては十一月十六日に開催をして期中改定の案を諮問をして……(宮地分科員「八月の十九、二十日前後に審議会を開かれたでしょう。そこを聞いているのです」と呼ぶ)八月の十九、二十日ごろは審議会は開いておりません。(宮地分科員「八月には開いておりませんか」と呼ぶ)開いておりません。
  119. 宮地正介

    宮地分科員 この十一月十七日の二千円引き下げ発表、これは私は農林水産省の行政が後手だと思っているのです。この辺の認識をまずはっきりしてもらいたいと思うのです。昨年の八月既に朝日新聞でも報道されて、あなたたちは、マスコミの報道によって以後いろいろ混乱したかのように言われておりますが、既にこの八月の時点において、農林水産省内においても今後五十九年度中は据え置きという情報があちこちに流れておる。これは事実なんですね。そのために、特に絹織物業界において大混乱が起きたことは皆さん御承知のとおりです。特に先物が、先ほど申し上げましたように九月、十月は一万一千円台に落ち込んだ。このために絹織物業界なんかは取引ができない状態になってしまった。また、今申し上げたように市場は、横浜、神戸においても大変な混乱を招いてきた。そういう中で実勢が一人歩きといいますか、一万四千円の基準糸価にしておいても、実勢は既に一万二千六百円台、一万一千円台、十月は一万一千二百九十九円まで先物なんか落ち込んできてしまった。どうにもならなくなって、十一月十七日にやっと腰を上げて二千円の引き下げをした、これが現実じゃないのですか。
  120. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 これは八月二十一日でございますが、新聞の記事以降、先物の価格が大変下がった原因につきましては、一口に言いますと制度不安ということになろうかと思うわけでございます。結局、事業団生糸の在庫が大変ふえておりますので、そういう供給過剰の状態が取引の面で大変重く見られて、特に先物について一万一千円がらみまで下がっていった、こういうような状況でございます。私どもその原因自体については、結局それまでやってまいりました需給改善のいろいろな措置、それだけではなかなか生糸の需給の崩れというものが防止し得なかった、こういう結果だと見ておるわけでございます。  その後の措置につきましては、十一月十七日にようやく決定した、こういうふうなお話でございますが、この八月の低落以後、私どもとしては、早急にこの事態解決しなければいけない、これについては関係措置も必要である、御承知のように予備費計上も必要であるということで内々折衝を重ねまして、準備期間を経た結果として十一月十七日に決定に至った、こういうようなことでございまして、お尋ねの中にございましたような大変な取引の停滞を一日も早く解決したい、こういうような意図で期中改定という大変非常な手段をとらざるを得なくなった、こういうことでございます。
  121. 宮地正介

    宮地分科員 特にこの八月、九月、十月、十一月のこうした実勢が基準糸価を下回る大変な市場の相場の混乱、それによりまして絹織物業界などは二〇%以上が実際に操業が低下されておる。あるいは、結局絹織物業界が織物がはけない、はくとなると、当時は一万四千円の基準糸価ですから、キロ当たり一千五百円くらい赤字で実際に売らなければならない、さばかなければならない。ところが既に、先物も一時は一万円の先物が出るくらいの、そういう大混乱になっていたのですね。そういう状態にありながら、それでは農林水産省として、そのとき、この大変な混乱した四カ月間にどういう手を打たれたのか、救済策を打たれたのか、この点について伺いたいと思います。
  122. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 八月二十一日低落後の問題でございますが、結局、期中改定を実施いたしましたのは十一月の十七日でございます。  その間の措置については、具体的な措置としましては、私ども先ほど申し上げました前年から設けておりました研究会の結論を早急に出していただいて、そこで制度の将来方向を考えながら当面の緊急対策をも考えていくということで、制度の将来方向を早く出そうではないかということをやっていただいたわけであります。  それと一方、これはもちろんいわゆる相場に大変影響いたしますので外部的に発表しながら実施をしたわけでございませんけれども、期中改定をする、その場合の幅はどのくらいにするか、その幅に伴う関係業者、特に養蚕関係、製糸関係の影響、それに対応する措置財政的にはどのくらいのものが考えられるか、またやらねばならぬか、こういうような準備期間としてこの間検討を重ねてまいっておったわけでございまして、そして最終的に十一月の十五日にそういう方針を決定し、十六日審議会、十七日実施、こういうようなテンポで実施に至ったわけでございます。
  123. 宮地正介

    宮地分科員 農林水産大臣に、ぜひ今後については、このいわゆる基準糸価の告示に当たっては、もっと消費者あるいは絹織物業界などのそうした情報、意見、こういうものにスピーディーに対応して、やはり的確に、そして業界の、もちろん蚕糸業界、生産者から消費者までありますけれども、どちらかというと今までは生産者の方に非常に目を向けられた立場での情報の対応が強かった。これはある程度生産農家の立場というものは私も理解しております。しかし、やはり織物の業界あるいは消費者、この国民のニーズ、底辺、こういうところの情報というものも的確に受けとめて、ケース・バイ・ケースで、勇断をもってやるときはスピーディーにこの問題をやる。混乱をして実勢が下がってしまってからやむを得ず一万二千円に糸価を告示する、こんな農林水産省の後手後手は業界にどれだけ大変な影響を与えるか、後ほどお話ししますが、まずタイミングのいい的確な告示をしていただいて、二度とこういう過ちというかこうした行政上の手落ちは絶対にやらないでもらいたい。この辺の今後に対する御決意と反省をお伺いしたいと思います。
  124. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 宮地先生にお答えいたします。  今局長が言ったようなことで、実は絹について、問題は、需要拡大が厳しい、価格が高い、この二点だと思います。私は、日本に一着のオール絹の洋服、これは試験場でつくったわけでして、欠点を非常にカバーいたしまして、今毎日着て歩いているわけであります。そんなことで、恐らく局長も何とか売りたいと努力しておったと私は思います。  そういうことですが、今先生の御指摘の点はもっともだと思います。今後そういうことのないように十分注意して価格決定に配慮したいと思います。
  125. 宮地正介

    宮地分科員 特に、わずか四カ月間に、絹織物業界は大変な、これは皆さん中小零細企業です。私の埼玉県の飯能とか小川町にも地場がありますけれども、大変な苦しみをしているわけです。  それに対応して通産省に伺いたいのですが、このとき中小企業体質強化資金、これは四十億円通産省として用意いたしましたね。この実際の運用、効果、その辺について御説明いただきたいと思います。
  126. 渡辺光夫

    渡辺説明員 ただいま先生お話のございました昨年の秋口から暮れにかけての国内の価格の動揺に伴います織物業界への影響、そういうものが相当大きく出るということで、期中引き下げという措置がとられますと同時に、私どもの方でも織物業に対する緊急措置というものを講じたわけでございます。融資規模といたしまして四十億円を用意いたしまして、貸付金利が五%という、通常の中小企業対策費の中でも特に配慮した金利水準を設定したわけでございます。  この枠につきまして、産地のそれぞれの規模に応じておよその融資枠を配分いたしまして、今現在私どもが承知しておりますのでは、申し込みがほぼ満額に近い額になっております。一部融資実行が終わっていないところもあるようでございますが、この三月中には融資実行もほぼ完了する、そういう状況にございます、
  127. 宮地正介

    宮地分科員 四十億円通産省で用意いたしましたけれども、救済対象は恐らく八十億から百億近いだろう、こう言われているのです。  問題は、せっかくこの四十億の資金を通産省が用意いたしましても、まだ三月までまとめなければならぬのが少し残っておる。各県の受け入れ態勢はできていたのですか。特に、埼玉県についてどうですか。
  128. 渡辺光夫

    渡辺説明員 昨年実施いたしました措置は、中小企業の体質強化資金という制度融資を基礎にして、その拡充を図るという形で緊急措置として実施いたしたわけでございます。したがいまして、織物業産地がある地域の一部について、そういう制度的な準備ができていなかったという地域がございますので、そこのところについては、この制度そのものを使った融資は実行されなかった地域もございます。
  129. 宮地正介

    宮地分科員 今お認めのように、せっかく四十億の金を用意した。ところが埼玉県のように、こういう体質強化資金の受け入れ制度が県にできていないのですよ。お金はできて上から流しても、流れる道がない、ルートがない。この場合、今度は業界はどうなりますか。五%の低金利でもってお金を用意いたしました、大変な混乱でもって商売もできませんでした、緊急措置としてやりました、ところが県に制度がない、結局下で使いたくても使えない、こんなずさんな対応はありますか。私は反省してもらいたいし、早急にこの解決のために努力してもらいたいと思いますが、どうですか。
  130. 渡辺光夫

    渡辺説明員 昨年の措置につきましては、期中引き下げという全く緊急的な事態対応する措置として行ったわけでございますが、絹業の産地はいろいろな問題を抱えておりますので、そういったものに対する対応につきましては、この制度融資にこだわらず、いろいろな施策を活用しながら対応を考えていく、こういう考え方でございます。
  131. 宮地正介

    宮地分科員 私、具体的に申し上げますが、例えば埼玉県の飯能市中心に飯能の織物協同組合というのがあるのです。使いたくてもこの資金が使えない、そのためにどういう苦労をしたか。まず、市中の民間の金融機関に共同借り入れをしたり、自分たちの持っているものを担保をつけて、それで皆さん対応しているのですよ。そういうものについてやはりフォローアップしてあげなければいかぬと思うのです。せっかく資金をつくったけれども制度的な問題がなくて、実際に機織り業者あるいは織物業界の皆さんが大変に使いたくても使えない、やむを得ず自分たちの財産を共同に担保にして高い市中の銀行借り入れをしなければならない、こういう実態なんです。利子補給ぐらいのことは考えますか。
  132. 渡辺光夫

    渡辺説明員 昨年度の措置につきましては、先ほど申し上げましたように緊急事態ということで、現在ございます中小企業制度金融を活用するという形で実施いたしたために、一部の地域について受け皿が用意されてなかった、あるいは用意する時間的な余裕がなかったということでそういうことになってしまったわけでございます。  絹業全体につきまして今非常に難しい問題がございますので、そういうものの振興をどうするかということにつきましては、今各産地の、産地ビジョンと言っておりますが、そういうものを御検討いただくと同時に、残念ながら需要が減退する中で、大きな構造変革の中で設備の過剰問題をどう処理するかというような問題とか、あるいはもう少し前向きの構造改善にどう取り組むか、そういったような課題を抱えておりますので、こういった課題に対してそれぞれの産地が対応できるような、そういう新しいビジョンに基づく方向について、私どもも政策的にできるだけの支援をしてまいりたいと考えております。  具体的には、設備買い上げ事業につきましても、現在関係業界の方で計画を検討中というふうに承知いたしておりますので、それができましたときには絹業の特別な事情を考慮した措置を含めて実施してまいる、こういうつもりでおります。
  133. 宮地正介

    宮地分科員 では具体的に、埼玉県の場合、この三月までにこの運用はできますか、その点について。
  134. 渡辺光夫

    渡辺説明員 昨年末の緊急措置につきましては、先ほど申しましたように制度融資の中でやるということで制度をつくりましたもので、年度内にそういう制度を新たにするということはちょっと無理かと思います。  それから、設備買い上げ事業、構造改善等につきましては、それぞれの産地の計画というものを踏まえながら今後御相談していくということになりますので、年度内の事業というよりはちょっとおくれてくるかと思います。
  135. 宮地正介

    宮地分科員 農林大臣、今お伺いして大体わかったと思いますが、せっかく四十億円国が用意した中小企業体質強化資金というものは、現実に使われているところと使われてないところがあるということです。制度的な問題によって下までお金が流れてない。こんな政府としてのずさんな行政はないと私は思うのです。そのために、使うことのできない業界がどれだけ苦しみ、自分たちで、自己手段によって対応しているか。今のお話しのように、埼玉県の場合は全部絹織物業界はこの四十億の金が使えないで困っているのです。農林大臣、ぜひ通産大臣とこの調整のために御努力いただきたいと思うのです。
  136. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今お話を聞いておりまして、私は資金の性格が運転資金じゃないかとお聞きしておったわけですが、そんなことで、それが振りかえができぬものだろうか、例えば、共同に借りておるその金をある時期に振りかえしてもらうということはできぬだろうかということで、一遍これは渡辺さんとも相談をして、通産省とも話してみたいと思います。
  137. 宮地正介

    宮地分科員 農林大臣のその誠意ある御答弁に期待して、ぜひ通産大臣と御調整いただいて、せっかく五%の低金利でもって四十億用意したのですから、ましてや埼玉県の絹織物業界は、御存じのように大島つむぎの奄美と同じ絵物なんです。大変立派なものをつくっているのですから、ぜひ御努力をお願いしたい、私は強く要請しておきたいと思います。  時間も限られておりますので、次に、やはり事業団の在庫が非常にたまっておる、また今言った市場が大変に厳しい状況にある、だんだん一万三千円近くまでまたなってきておる、そういう状況ですから——輸入問題というのは国際的な問題もあって大変難しいのは私も十分理解しております。しかしやはりこうした時節柄でございますので、私はある程度安定するまでは輸入問題についても凍結するぐらいの配慮があっていいんじゃないか、こういう感じがしているわけでございます。この点について、まず通産省の考え、また大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  138. 新関勝郎

    ○新関説明員 お答えいたします。  絹製品の輸入につきましては、我が国の置かれました国際的立場を踏まえまして、今とり得る最善の方法といたしまして、従来から主要供給国ないし地域である中国、韓国及び台湾との間で、話し合いのもとに、日本の窮状をよく説明をしておりまして、そして毎年数量協定というのを結びまして、極力その数量の削減に努めてきたところでございます。また、こうした二国間の協定等を補完する観点から、その他の国、地域からの輸入に対しましても、協定の脱法行為となり得る第三国での加工、第三国を経由して入ってくる輸入等を防止いたしますために、輸入貿易管理令上のきめ細かい措置をとっているところでございます。その結果といたしまして、例えば絹織物の輸入数量協定開始前の昭和五十年度と比較いたしまして、現在約半分の水準にまで落としております。これは、この間の絹織物の減産率等を大幅に上回った削減であるということでございます。  今後につきましても、蚕糸絹業、先生お話もありましたように厳しい現状でもございますので、主要供給国との話し合いを軸にいたしまして、絹製品の輸入数量の抑制に最善の努力をしてまいる所存でございます。ただし、相手国におきましても毎年削減しておりまして、削減の余地は次第に狭まりつつあると認識はしておりますけれども、しかしながら引き続き努力をしてまいりたい、かように思います。
  139. 宮地正介

    宮地分科員 本会議も来ておりますので最後に。この輸入の問題も、なかなか全面的に凍結というのは難しいと思いますが、いろいろ二国間協定などで御努力しているのは敬意を表します。しかし、実情をよく見て国内の業界への配慮というものもしていただきたい。  それから、先ほどちょっと最初にお話ししましたが、絹織物業界を初め、基準糸価の告示問題というのは各業界の生命線でございますから、特に私、大臣にお願いしたいのは、きょうは蚕糸の事業団の方も見えておりますが、時間がありませんので大臣にお願いしておきたいと思いますが、余り規則規則ということで価格を硬直化させてしまうと、やはり先ほどお話ししたような、ああした行政の対応がなかなか難しくなる場合もあるわけですから、私は、やはり基準糸価の問題については、ある程度弾力的な運用、対応ができるような仕掛けというものを今後検討しておくべきじゃないか。そうしませんと、事業団としてはどうしても規則がきちっとしていますから、この規則に違反して決めるということはできませんので、私は、やはりどこかにそういう仕掛けをつくっておいて、状況の変化に対応して、敏感にそうした実勢に合わせた弾力的運用ができるような対応を今後検討すべきじゃないか、こう思っておりますが、大臣にこの点だけ伺って、質問を終わりたいと思います。
  140. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 宮地先生にお答えします。  御趣旨はよくわかりますが、やはり基本的には、今後の蚕糸価格につきましては、需給状況を十分見きわめて、生糸の需要の増進と養蚕関係の安定の両面を考慮しながら適切に配慮したい、こう考えております。
  141. 宮地正介

    宮地分科員 終わります。
  142. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて宮地正介君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  143. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  主査が所用でおくれますので、その間、指名により、私が主査の職務を行います。  質疑を続行いたします。富塚三夫君。
  144. 富塚三夫

    富塚分科員 まず最初に、果樹農業振興特別措置法の一部改正が三月五日に閣議決定をされまして、国会に今提起されております。この改正点の法律の目標として、果実の需要動向に即応し、その生産の計画的かつ安定的な拡大を図るということで、需給調整対策を実施する、また指定法人は果汁等の保管や加工原料用果実の出荷者に対して生産者補給金の交付あるいは果実、加工品の需給増進等の事業の実施というふうになっているのですが、大体この法律はどのような考え方に基づいて所管の農林省としては提起をされているのかということについての考え方を、まず大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  145. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 富塚先生にお答えいたします。  我が国の果樹農業については、品質やコストにおいて消費者の嗜好に即応し、また外国産に負けない産地づくりを目指していくことが果樹農業振興の基本だ、こう考えております。そんなことで、最近における果樹農業をめぐる諸情勢の変化にかんがみまして、果実生産拡大を旨とした果樹農業振興特別措置法を全面的に見直し、そして果実の需要の動向に即した生産の誘導の強化、生産出荷の安定等を図るための措置の創設等を内容とする本法の改正案を現在参議院に提出しておるわけでございます。  そんなことで、六十年度におきましては、実は従来の生産流通対策に加えまして、消費の多様化に対応して各地域の有望な特産果樹を育成する特産果樹産地の育成事業、それから二番目には、日米かんきつ交渉合意に基づくオレンジ、果汁の枠拡大等による不測の事態への対応需要拡大を図る等の果樹農業全体の体質強化に必要な果樹緊急特別対策基金の積み増し、これは大体六十年度で十億円で、総額四十五億円にする予定でございます。それからもう一つは、需要の動向に即応し、健全な果樹農業を展開するために、農業改良資金制度の改善による無利子の果樹栽培合理化資金の創設等の対策を講じております。
  146. 富塚三夫

    富塚分科員 私の選挙区でも足柄地区のミカンの問題が実は大変大きな問題になっているわけですが、御案内のように、ミカンそのものの種類にもよるのでしょうけれども、毎年転作を余儀なくされる、過剰生産に陥っているという状況に実はなっておりまして、今ニュージーランドなどからキウイというのですか、新しいそういう果実などの栽培を導入いたしまして、九十ヘクタールくらい今準備していますが、五十ヘクタールくらいはもう既に実績を上げているように思われます。  果汁などの問題について、やはり積極的に取り組んでいただかなければならないということになるのですが、生産者への補給金といいますか、そういう転換に向けての一つ対応ということなども考えていただきたいし、同時に、果汁などの問題について、今、山北などにあります缶詰工場では、発展途上国のアフリカなどに実はミカンのジュースをつくって大量に輸出をしているという問題などもありまして、そういった問題などを含めて、やはりきめの細かい振興施策をとってもらうということについてお願いをいたしたいというふうに思うのです。  そういう点で、まだ十分に法案の成案を見た段階ではありませんが、具体的に果汁の問題などについて積極的にひとつ対策を、そして援助を考えていただきたい。その中で、中国との提携の問題なども具体的に果汁の輸出問題などでうまくいかないかどうか、我々もいろいろ検討いたしておりますが、この法律ができると同時に、補助金の問題などを含めてどうかひとつ前向き検討していただきたいということについてお願いをしておきたいと思います。
  147. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 特にかんきつを中心にお尋ねがあったわけでございますが、第一は、先生の御質問の中にございましたように、それぞれの地域の条件に応じた対策が必要でございますので、今回の法律改正の中でも、従来の果樹農業振興基本方針あるいは県知事の決めます計画の中では、いわゆる新植だけではなくて、栽培面積の目標を決めていく。それから、最近の傾向として非常に消費面で見られます消費の高度化あるいは品質の多様化というようなことにも対応していかなければいけない。特に、神奈川県等の、こういう都市近郊であると同時に、割合ミカン地帯としては北限でございますので、品種の選定なども、従来よりさらに、例えば青島温州とか、最近は青島温州の枝変わりで寿太郎という新しいものが出ておりますが、そういうような割合遅い方にできます貯蔵に適しましたミカンへの転換、こんなことも必要であろうかと思います。  それから、お尋ねの中にちょっとございましたキウイフルーツ等については、今大臣がお答え申し上げました来年度の特産果樹対策事業の中で補助事業として新しく取り上げていくつもりでございますが、同時に、果振法自体におきましても、現在、政令で十二の果樹を指定しておりますが、今度はいわば十三番目の新しいものとしてキウイフルーツを指定して、本法に載せてこれも対象にしていく、こんなことも考えております。  それから特に重点を置いてお尋ねのございました果汁でございますが、これはまさにお尋ねございましたように、生産者団体の努力で最近サウジアラビアのような中東方面にかなりミカン果汁が出ております。こういうような実績等を見ますと、輸出振興という面ではやはり我々のなすべきことが相当あるんじゃないか。先ほどの法律改正において指定いたします指定法人の業務の中にも、需要増進、具体的には、従来のいわゆる宣伝的なことだけじゃなくて、もっと市場開拓のための、例えば試験的に輸出をするとか、そういう具体的な行動も含めた輸出振興対策を取り上げていきたい、その場合には果汁も含めまして対象にしていこう、こういうようなことでございますので、全体としては、果振法改正に基づきます指定法人を中心とした事業の中で、例えば果汁加工場の強化とか、あるいは時に需給調整のための保管事業に対して助成を行うとか、それに輸出振興、こういう形で取り組んでいきたいということであります。  そういう意味で、今回の法律改正は、これからの新しい需給状態に即応した果樹対策を強力に展開していきたいということで考えておる次第でございます。
  148. 富塚三夫

    富塚分科員 神奈川県も県議会が取り上げまして、知事が特にミカン問題では特別の補助金検討したいという答弁もされています。この法律ができることと相まって、今申されましたことも含めてぜひ前向き検討していただきたいというふうにお願いしておきます。  それから、二つ目の問題は畜産物の輸入問題です。  ASEANの諸国より骨なし鶏肉の関税引き下げの要求が出ているということを聞いています。どうも日本の大きな商社がタイなど東南アジアに進出して、地元企業と提携をして安い原料とか労働者賃金でやっているということです。やはり日本の畜産を守るという立場との兼ね合いから、関税の引き下げはしない、そういう問題が非常に大事になってくるんじゃないかと思うのですが、その点についての御見解をお願いいたします。
  149. 野明宏至

    ○野明政府委員 我が国の鶏肉の需給につきましては、近年大変過剰傾向で推移しておりまして、鶏肉の価格につきましても長期にわたって低迷しておるという状況でございます。したがいまして、国内生産需要に見合ったものにするように抑制していくということで、生産者の段階で計画的な生産をやっておるという状況でございます。それから、輸入の状況でございますが、タイからの輸入が大変ふえておりまして、この七、八年の間で十倍以上になっておるという状況でございます。それから、東京ラウンドで骨つきもも肉のステージングが開始された以降の状況を見ましても、量もふえておりますし、またタイのシェアも大きくなっています。  そういったような状況でございますので、骨なし鶏肉の関税引き下げ問題については大変困難な状況にあるというふうに考えておるわけでございます。
  150. 富塚三夫

    富塚分科員 多面的な角度からいろいろ検討する政府の態度も必要だと思いますけれども、日本の畜産を守るという立場をひとつ大事にしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  三つ目に、有機農業の問題についての政府の考え方についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  有機農業運動というのは、昭和四十六年ぐらいでしょうか、日本有機農業研究会の結成以後、安全食品を求める消費者運動に支えられながら、各地でかなり進んできておる、私の地元の小田原などでも、若い農民の方々が積極的にこの問題を検討しております。  その中で、一つは、遺産相続の中で、農地として生前に贈与をされて登記をし、受け継いだ場合、地目の変更が非常に難しい。つまり、一般の畑から果樹園にしたりあるいは反対の場合もほとんど不可能になっているといった問題などがありますので、作物転換に弾力性を持たせることはできないのか。  それから、二種兼業農家の遊休地を法的に整備すれば、農業生産物の自給率を高めることになるのじゃないかと思うのです。そこらの問題も検討されてしかるべきじゃないか。  また、流通機構の整備と改革の問題ですが、御案内のように生産者と消費者が直結するといった運動が各地に起きておりますし、あるいは大分県の一村一品運動に見られるように、消費者と生産者が新たに直結する問題もありますが、とりわけ都市近郊の農業の中では有機農業というものを積極的に推進をしていく必要があるのではないか。  そういう点で今それぞれ努力をしているわけですけれども、基本的に有機農業についてどういうお考えを持っておられるのかについてお尋ねをいたしたいと思います。
  151. 芦澤利彰

    芦澤説明員 先生指摘のいわゆる有機農業につきましては、人によりまして、また場所によりましてさまざまな使われ方をしておりまして、なかなか明確な定義づけがなされにくい面がございますけれども、ただ、一般的には、原則として農薬や化学肥料を用いないで、堆肥だとかいうふうな有機物によって土壌を肥沃化する、それによって農業生産を営んでいこうというもの、そんなふうに理解されておるわけでございます。  確かに健康だとか安全だとかという視点から見ますと、先生指摘のように農薬を使わないことの有利さというのはございます。ただ、日本の農業を考えてみますと、気象条件が、夏期に高温であるし、また非常に多湿であるものですから、これはどうしても病気が出やすいし、虫も出やすいというのも事実でございます。さらに、乾燥地に比べると雑草も非常に発生しやすいという側面がございます。また、耕地が非常に狭いものでございますので、できるだけ単位収量を上げていきながら生産効率を高めていくということをしないと、なかなか産業としての農業が成り立たないという側面のあるのも事実でございます。また、労働力が減少したり、兼業化、高齢化したりしていって、なかなか適期に管理しにくいというような面もあるわけでございますので、有機農法をそのまま全国的にどこでもかしこでも広めていくということについては、いろいろ問題があろうかと思っております。  私ども農業を進めていく中で、国民の主要食糧の多種多様な農産物の生産を安定的に確保していくためには、やはり単収の増大だとか農作業の省力化等で生産効率を上げていく必要がありますので、先生指摘の有機物の施用とあわせまして、化学肥料や農薬を適切に使っていく指導が何より大切かと思うわけでございます。  それからまた、都市近郊の遊休の農地、あるいは利用が十分でない農地等につきましては、農用地利用増進法とか生産組織の育成とか、そういう手法を利用しながら、中核的な農家がそういう農用地を有効に利用して農業生産を上げていくということも必要だろうと考えております。  農業は本来、自然の生態系を有効に活用しながら営む、いわゆる自然リサイクルシステムを最大限に利用することが基本的に重要でありますので、これからは化学肥料と農薬を適正に使用し、また有機物を増大させていくというふうな指導を、今までも行ってきましたし、昨年五月に制定されました地力増進法等の制度を活用して、こういうふうな都市近郊も含めてバランスのとれた安定的、効率的な生産が行えるように、これからもさらに指導してまいりたいと考えております。
  152. 富塚三夫

    富塚分科員 基本的には、農業政策の中にどう位置づけるかという大きなこれからの課題になると思うのですね。兼業農家のあるべき姿とか、あるいは生産者と消費者が直結する新鮮な野菜あるいは食糧の供給という観点からも、こういう問題が非常に大事な問題になってまいりますので、今申し上げましたことを含めて農林省としても十分検討していただきたいと思います。  次の問題は、相模湾の水産振興の問題についてお尋ねしたいのですが、その前に、きょう水産庁長官もおられますが、二月二十六日に小田原の真鶴沖の定置網に実は大きな鯨がかかった。生きているのでこれをどうするかいろいろ市場の皆さんが議論をした。十五人の若者たちが千円ずつ出して買い取るような形で海に放した。その鯨は小田原の魚市場の港内を二回りして、私は見たわけじゃないのですけれども、御礼を述べるかのようにして海の中に去った。こういった報道について、全国からその新聞社に、すばらしいことだという反響が続々と実は寄せられているわけです。暗いニュースが多い中でこういう明るいニュースというのは、全く感謝の気持ちでいっぱいだということが寄せられている。これが紹介されているわけです。水産業についても暗いイメージばかり与えるような感じがややもすると多いわけですけれども、このことについて水産庁長官は感謝状ぐらい出してくれるぐらいな気持ちになってもらっていいんじゃないか、そういうふうに私は個人的にもお願いをしておきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  153. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 先生指摘の新聞報道、私も拝見をいたしました。最近、先生も御存じのように世界的に反捕鯨団体の動きが非常にしょうけつをきわめておりまして、日本人というのはとかく鯨に対して残虐な態度をとっている民族であるかのごとき誤解と偏見が広がっている時期でございますので、こういう鯨に対して非常に温かい態度で皆さん方が接しておられるということが広く世間に報道されましたのは、私としても大変時宜にかなった結構なお話であるというふうに思っております。  表彰云々の問題につきましては、今大臣とちょっとそばで私語をいたしておりましたが、水産庁の職務権限としてはちょっと首をひねるところでございますが、大臣の意向もよく相談をしてみたいと思っております。(富塚分科員「どうですか大臣」と呼ぶ)
  154. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 富塚先生にお答えいたします。  実は私は今長官と話しておりまして、そうしたらどんどん出したらどうだろうか、大臣表彰ならいつでも出すが、こういう話をしたわけです。そういうことですから、私は水産庁長官がよければ出すにやぶさかではございません。こういうことでございます。
  155. 富塚三夫

    富塚分科員 皆さんお笑いになるけれども、こういうことが国民に与えるイメージというのは水産業政策の上で非常にいいことだと思うのですね。そういう点で、ひとつ前向きにぜひよろしくお願いをいたします。  さて、時間の関係がありますから最後の問題ですが、相模湾の漁業水産振興対策、そういう極めて善良な人たちが携わっている漁業であるだけに、前向きにぜひ検討していただきたいと思うのです。  相模湾の沿岸は、古くから数十カ統の定置網が設けられて、自然を利用したすぐれた定置網漁場として知られているわけですが、近年、高度成長と相まって沿岸地域の都市化が進み、相模川、酒匂川の水の利用あるいは流域下水道処理の建設、湾岸道路の建設など、湾岸地域の開発が進むにつれて非常に変化が出てきている、あるいは遊漁船、レクリエーションなどによる人間の海域利用活動が急速に増大をしているということの中で、相模湾沿岸の新たな水産漁業振興をどういうふうに進めていくか。相模湾の水産振興事業団もいろいろな影響調査をしています。  私も去年質問をいたしたのでありますけれども、今、神奈川県では、この栽培漁業推進のため栽培漁業民営化推進協議会を発足させて、二カ年くらいを目途にして、ことしの六、七月ごろに大体の規模を考えて、マダイとかクルマエビとかアワビとかこういうものの栽培漁業推進をしたい、こういうことで大がかりに、従来の振興事業団の放流事業などから飛躍をして、新しい組織にして対処したいということなんです。この点について、国からの補助、援助という問題も恐らく県の方からも上がってくると思いますが、積極的に対応していただきたいということが一つです。  それから二つ目には、二宮町の漁業協同組合の委託によって五ツ浦漁業が同じようにマダイなどの養殖事業を実施しておりますが、非常に好評で成果を上げておりまして、早川沖にもぜひ拠点を持ちたいという現地の強い要請があります。神奈川県では、現地がそういうことならぜひ積極的に取り上げて検討したいと言っておるのですが、問題が具体的になって上がってきた段階でぜひ積極的に政府としても考えていただきたい。これが二つ目です。  それから、海岸の侵食の問題です。これは建設省の所管だというふうにお聞きしておりますけれども、かなり海岸自身が侵食をされているということで、そういう調査の問題や対応について建設省にも要請をいたしますが、ぜひ水産庁としても考えていただきたい。  この三つの問題について、時間がありませんので、それぞれ一括して御答弁をしていただければ幸いです。
  156. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  相模湾の定置網漁業の衰退に伴いまして、それの対策について地元の皆さん方がいろいろ研究、工夫をなさっていらっしゃる実情は私どももよくお話は伺っております。  まず最初に、栽培漁業の民間の組織づくりの話でございます。これは私どもも、従来の国及び都道府県が中心になって推進をしてまいりました栽培漁業を今後計画的、効率的にさらに推進をしていくために、沿岸漁場整備開発法の一部改正によりまして栽培漁業推進母体となる指定法人という制度を設けたところでございまして、地元の方の御意向も、この指定法人という制度を利用してくださるという方向で進んでいるやに伺っておるところでございます。この指定法人化ということができますれば、これに基づきまして税制上の優遇措置を講ずることはもちろんでございますし、それから、補助事業といたしましては栽培漁業を念頭に置いておられるようでございますから、地域栽培漁業推進パイロット事業で、受け皿として補助事業対象にすることが十分可能であるというふうに存じておりますので、構想が具体化した段階での御相談と思っております。  それから、二宮のマダイの話も私どもお話は伺っております。それで、確かに従来の定置網の技術を活用して、かつ、えさとして適した魚類を有効に活用して養殖をやっていくというのは一つの有効なアイデアであろうというふうに私どもも思っております。それで、お話が具体化いたしますれば、例えば新沿構の補助事業対象にしていくことができるものと思っております。  それから、最後にお話のございました海岸事業関係でございますが、相模湾の水産振興事業団が定置網の不振の原因調査の一環として海岸の侵食問題について関心をお持ちになっていろいろ調査検討をなさっておられるということは、これも伺っております。それで、水産庁といたしましても水産庁なりの守備範囲で海岸事業をやっておりまして、腰越地区につきましては六十年度で事業を完了する予定にいたしておりますが、今後とも地元の御意向を十分伺いながら事業推進してまいる所存でございます。
  157. 富塚三夫

    富塚分科員 終わりますけれども、栽培漁業について民間の、つまり漁業関係者の人たちの意欲も取り入れて、そして新たな振興を図ろう、こういう意欲的な問題の提起でありますから、どうかひとつ、ぜひその問題に積極的に政府も対応していただきたいということを要請をいたしまして、終わります。ありがとうございました。
  158. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて富塚三夫君の質疑は終了いたしました。  次に、横手文雄君。
  159. 横手文雄

    横手分科員 我が国農業は現在非常に重要な問題を抱えておりますし、その問題は多岐にわたっております。これら我が国農業の発展のために、活性化のために御努力をいただいております農林大臣初め関係者に対しまして、心から敬意を表する次第であります。  私は、きょうはこの多くの問題の中で、特に米消費拡大につきまして、大臣以下関係者に御質問を申し上げたいと思う次第であります。特に私ども福井県におきましては、多くの農家の皆さん方がおられるわけでございますし、米が余ったから他に転換をするということも、風土的にいってもあるいは地理的にいっても大変困難な問題でありまして、農家の皆さん方にしてみれば、米をつくらせてくれというのはまさに大きな要望であります。しかし、これが余ってしまっておる、こういうときにこれを拡大するというのは、また過剰米の問題も出てくるという別な問題も出てまいります。  そこで、やはり国民の皆さん方に、もっと米の消費を拡大をしていく、こういうことで、私たちの遠い祖先がつくり上げてまいりました非常に栄養価の高い米をもっともっと多く消費していただくということが、また我が国農業の発展にもつながる道だ、こう思っており、大変重要な問題だと思っておるところであります。  国会議員の中にも米消費拡大議員連盟がつくられておりまして、私もそのメンバーでございますし、政府としてもまたそれぞれ取り組んでおられるところでございますけれども、ただ、残念ながら、この資料を見ますと、そういった皆さんの努力にもかかわらず米の消費はどんどん減少をしているという事実があるわけであります。政府として今後どのような形でこれを拡大していかれるのか、あるいは米消費の減少の原因はどこにあるのだろうか、こういうことについてお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  160. 石川弘

    ○石川政府委員 お尋ねの米の消費量の減少問題でございますが、基本的には、やはり高度成長等の中で食生活が大変多様化してまいりまして、いわば畜産物とか油脂類とか、そういうものの消費がだんだん伸びてまいりまして、相対として、約二千五百キロカロリーの中でいわば副食の伸びが大きくなってまいりました。それが主食としての米の消費を減退させた一番大きな原因であろうと思います。  もう一つ考えられますのは、最近のいろいろな食生活の調査を見ましても、例えば、米を主食として非常に重宝に使っていらっしゃる御意見が多い中でも、朝食等の場合の米の使用の比率が下がる等を見ますと、これはいわば食生活の簡易化と申しますか、米の場合どうしても炊飯等のことを伴うものでございますから、そういう意味で問題があるのではなかろうかと思っております。  ただ、最近の傾向を申しますと、御承知のように、日本的な食生活と申しますか、米を中心に置いたいろいろと取り合わせのいい食生活が日本人の健康のもとであるということに対する理解が大変高まってまいりまして、最近の経済の伸びということも若干伸びが停滞するということもあったかと思いますが、一人当たりの消費の伸び、いわば減少が少しおさまってきているというような状態もございます。したがいまして、私ども、基本的に申しますと、こういう日本的食生活のよさというものを国民全体の方に十分わかっていただくためのことをやる。具体的に申しますれば、そういうことのいろいろなPRもやりますし、特に青少年期からそういう食生活の習慣をつけていただくという意味では学校給食が一番効果的と考えておりまして、そういうものについてはかなりの財政負担をしながら、そういう若い時分からの食生活が定着するようにということをやってまいっております。今後も粘り強くこういうことをやっていきたいと思っております。
  161. 横手文雄

    横手分科員 多くのことを具体的に施策の中で生かしていきながらということであろうと思いますが、当面そういったいろいろな努力をされてきたにもかかわらず、この数字を見ますと減ってきておるという事実、大変残念なことだと思うのですが、大臣、このままではどうしようもない、米の拡大に積極的に打って出なければならないというのが大臣の基本方針であろうと思いますが、その点について確認をしたいと思います。  さらに、今減少傾向があるということに対して、とりあえず歯どめをかける、このグラフを横ばいにしていくということなのか、しばしお待ちください、このグラフは天をつくような勢いで伸びてまいります、どういう形で米消費拡大の問題について基本的にどう取り組んでおられるのかをお聞きをいたしたいと思います。
  162. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 横手先生にお答えいたします。  私が小さいころは米一人一石でございました。したがって、徳川時代からこれは人口とのバランスがあったということですが、つい最近は、先ほど長官がお答えしたように、食生活の変化によりまして副食が非常にふえた。例えば、私のせがれがおりますが、一日茶わん一ぜん食べませんね。この傾向が強くなっているということです。これは、先ほど学校給食の問題がございましたが、小さいときから御飯を食べるという習慣をどうつけるか。今学校給食について生徒たちに聞きますと、御飯は非常にうまいと言うのです。御飯をもっとふやしてもらいたい、パンはまずい。そんなことで学校給食をもっと強化していきたい。そういうことで、実はお米につきまして少しPRが不足だと思います。  例えば、アメリカがヨーロッパへ米を輸出しますが、ライスメニューというのがあります。それを見てみますと、日本ではお米を食べると肥えるというのですね。ところが、ヨーロッパのライスメニューを見ると、お米を食べるとやせるというのです。こういうライスメニュー。そんなことで、お米について単なる主食じゃなくしていろいろな食べ方があるのです。そんなことまで研究しながら米飯拡大に努めたい。そして、できれば、少なくとも横ばいへ上げていきたいというのが私の基本の考えでございます。
  163. 横手文雄

    横手分科員 決意のほどはわかりました。ただ、大臣、先ほど来くどく申し上げておりますように、今日までもいろいろな方策がとられてきた。しかし、結果としてこのグラフは下がっておるという事実を厳粛に見ながら、今おっしゃるように、グラフを横ばいじゃなくて上へ向かすのだということの決意の実現のためには、かなり思い切った政策も同時に進めなければ、期待をいたしますと言うだけではだめじゃないかと思うのであります。  そこで、先ほど長官あるいは大臣お話の中にもございましたように、米消費拡大一つの目玉として、子供たちに御飯を食べさせようじゃないか、こういうことで学校給食についていろいろと努力がなされておるわけでございます。この数字を見ますと、週六回ということは完全だと思いますが、これがコンマ八%。そして、これをすそ野にいたしましてどういうカーブが描かれておるかというと、週二回というのがそのピークになっておる。こういう形で、多少でこぼこはございますけれども、こういうカーブになっておりますが、この山を、週六回とまではなかなかいかぬにしても、週二回を三回に、あるいは四回に、上の方に移していく必要があると思いますけれども、具体的にどういう形で進めていかれましょうか。
  164. 石川弘

    ○石川政府委員 実は学校給食につきましては、御承知のように、食糧政策的に申しますと、米の消費拡大に役立つという重要な意味もございますが、一方におきまして、これがある程度定着化をしました場合にいつまでも助成をするのはどうかとか、いろいろな御意見があったわけでございます。私ども、文部省が考えておりました実施計画というのを着実にまず実施することが先決ではないかということで、今回六十年度予算におきまして助成の率に対して若干のカット措置をやる場合にも、文部省が定めております基準の回数をそれ以上超えて実施していただく場合には、従来どおり六〇という非常に高額な助成をそのまま継続する。したがって、そういう目的達成のために御努力しているところにはそれだけ負担が少ないようにというようなことを政策的にも組み込みまして、何とかそういう回数を多くするという方向にまず誘導したいと思っております。  実際の姿を見ますと、比較的生産地域あるいは大都市を除く市町村等においては回数が多いわけでございますが、残念ながら大都市地域におきまして回数が少ないわけでございます。これにつきましては、炊飯施設の問題等いろいろあるわけでございますが、今回文部省等も炊飯に対しまして、例えば外注というような方法も含めてもう少し入りやすいようにというような努力もするという話も聞いておりますし、私ども、今先生がおっしゃいましたように、少なくとも文部省が計画的にやりたいと言っている回数を超えるような形でこれが定着していくようにという努力を進めていきたいと思っております。
  165. 横手文雄

    横手分科員 ぜひそういう形で、大臣もおっしゃいましたように、子供たちのころから米になじませよう、しかも、アメリカあたりではそういうPRまでしてヨーロッパに売り込んでおるということでございますから、まさに日本人の遠い祖先が築いてきた大きな食糧文化だ、こう思うし、私たちは今その文化を享受しておるわけでございますから、おっしゃるように、今、週二回の山を、週三回が山になるようにあるいは週四回が山になるようにというようなことで、ぜひ積極的に進める必要がありはしないか、こういうぐあいに思っておりますし、文部省の関係もあるのでしょうけれども、食糧庁としても、文部省に、どうぞおやりください、それでふえたら補助金を出しましょうというような待ちの姿勢でなくして、やはり売りに行く、こういう姿勢を出していただく、そして文部省としても、食糧庁の熱意に負けました、一緒に頑張りましょうというようなところまで積極的にやっていただかなければ、この問題はなかなか伸びないのではないか、こう思いますので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  それと、子供の中で米飯給食が大変好評でございますし、私の子供もまだ義務教育に行っておりますが、米の御飯はおいしいよ、こういうことで、朝出るときにうれしい、きょうの給食は御飯だというようなことで楽しみながら学校へ出ていくような風潮もあるわけですが、たまに、アルファ化米というのでしょうか、そういった形の、献立によっては何か満足しないような顔をして帰ってくるようなときもあるわけでございますから、やはり子供らが受けやすいように献立面でもこれから配慮していく必要がありはしないか、こういうぐあいに思っておりますが、その点についての食糧庁の御見解いかがでございますか。
  166. 石川弘

    ○石川政府委員 これも米の消費拡大対策の中で、献立のコンクールをやりますとか、いろいろ調査もいたしております。それから、特にすぐれた、何と申しますか、例えば米だけではございませんで麦も若干まぜまして牛乳で炊きました御飯、通称タケちゃんマンライスというものでございますが、そういうものが非常に好評を博するというようなこともございまして、学校給食等を通じながら、そういう新しい形での米食というのが定着しているということもございます。私ども、今おっしゃいましたように、せっかく米飯給食に対する児童生徒の評判がいいわけでございますので、献立面でもさらに新しい努力をしていきたいと思っておりますし、必要な助成は今の各種の助成の中でも考えておるわけでございます。
  167. 横手文雄

    横手分科員 ぜひ期待を申し上げ、私の子供もきょうの給食はおいしかったと言って帰ってくるようにお願いを申し上げる次第であります。  今、特に政府の中でも力が入れられておるのは学校給食ということでございます。これをもう少し下げていくといいましょうか、学校の前にも及ぼしていく、こういったようなことが必要ではないかと思うのでございます。つまり幼稚園や保育所——幼稚園は昼で帰るところが多いわけでございますけれども、保育園というのは夕方まで預かって、昼は保育園で食事をするわけでございます。この保育園の現行の米飯の給食率といったようなものはございますか。
  168. 石川弘

    ○石川政府委員 私どもそういうまとまった形で数字でとっておりませんが、実は学校給食の場合は、義務教育というものを背後に持ちまして、御承知のような学校給食法という法体系の中でやっておるわけでございます。幼稚園、保育所につきましては、これはいわば任意的な形でそもそも保育所に行くとか幼稚園に通園するわけでございますし、これを助成対象にするという論議もかなり前からあるわけでございますが、そうなりますと、例えば保育所とか幼稚園に行ってない人とのバランスをどうするという問題がすぐ出てまいりまして、なかなか義務教育と同じ姿での接近が難しいというのが今までの検討の経緯でございます。むしろ、今先生指摘のように、幼児の時代から米食になじませるという観点から言いますと、今の学校給食のような米自身を割引で供給するというような手法になじむのかどうか、むしろそういう幼児の食生活の中に米飯が入るようなこと、日本的食生活の一番最初のところと申しますか、そういうことを別のいわば指導とか普及とかいうことで接近できないかということは考えておりますが、過去のいろいろな論議の経緯から見ますと、今学校給食について行っておりますと同じ手法ではなかなか入りにくいというのが、従来の論議の結論でございます。
  169. 横手文雄

    横手分科員 とりあえず私は一遍調査をしてもらったらどうだろうかと思うのでございます。これはおっしゃるように義務教育でもございませんし、保育園の場合は圧倒的に私立が多うございますから、国の調査権がどこまで入るか、そういうこともあると思いますけれども、しかし、いずれにしても私立といえども地方自治体とはきちっと結びついておるわけでございまして、毎月措置費も入っていくわけでございますし、いろいろな調査も行くわけでございますから、自治省あたりと相談してもらって、各自治体に毎年報告をされる、そのときに一枚紙をつけてあげて、あなたの園では給食に米飯がありますか、どの程度ありましょうか、今後伸ばす用意がありますか、何かこれに対する御意見をと、半ペラの紙で結構間に合うと思いますから、そう手間もかからぬし、食糧庁が全国のあれを調べにかかるとこれは大変なことでございますけれども、自治体では毎月きちっと私立保育園といえども連絡はとり合っておるわけですから、何かのときにそういう調査をぜひしていただきたい。そして、その実態調査の中からおのずから道が開けてくるのではないか。やってくれればいいがなということでただ待つということではなくて、先ほど来申し上げておりますように、一歩進めていく、セールスをしていくという姿勢が必要ではなかろうかと思うのであります。  おっしゃるように、保育園の設備の関係、その他措置費の関係等もいろいろございます。かつて私も、子供が保育園におるころに福井の保育園の保護者会長をさせてもらいました。そのころは国会議員に出る、そんなこともまだ全然なかったころでございますけれども、ただ、私も一年間のうちに何をやったかというと、いろいろな行事の改革もやりましたけれども、子供らに飯食わせ、こういうことで、この園で給食に米飯を出したらどうだ、こういうことをやりました。しかしいろいろ問題がございましたけれども、それも大体順調に進んできたわけでございますから、やれば必ずやれる。何かを子供らに食べさせるわけですから、それを御飯にすればいいだけのことでございます。あとはその設備費をどうするか、こういうことはありますけれども、やるんだということが前提にあれば、問題はおのずから解決してくるのではないか、私はこういう気がいたします。つたない経験でございましたけれども、そんなことをやった覚えもございますし、それがうまくいったような覚えもございますから、ぜひ進めていただきたいと思うわけであります。  それからいま一つは、この米消費拡大のために、議員連盟等でもよく話に出る目玉の一つに純米酒の問題がございます。純米酒をつくってそして米の消費の拡大を図ろう、こういうことは、かけ声としては私は前から聞いておるような気がするのですが、これとてまた実際はどうなっておるかというと、そのグラフは下降線でございます。この点について、これを横ばい、大臣の言葉をかりればこれを上向きにしていく、そういうようなことに対しての基本的な考え方はいかがですか。
  170. 石川弘

    ○石川政府委員 酒につきましては、御承知のように、原材料の米の価格の問題のほかに酒税その他の税体系の問題等がございまして、いろいろ御論議のあるところでございます。私たち原材料の方を担当いたしておるわけでございますが、昨年からことしにかけての現象は、一つは、御承知のように昨年の醸造量が少したまっておりまして、ことしは石数自身を下げるということで原料用米も少し落としたわけでございますが、酒の世界の原材料は、従来は、一番最初から申しますと、お酒は主食と同じもので、しかも新米でということでございましたので、政府がコストも全部償っていただいて、要するに逆ざやなんか持たないでお売りをしていた経緯がございますが、そういう経緯の中から一番いいものをということで、自主流通制度にはめ込んだわけでございます。そして、自主流通につきましても必要な助成措置はしたわけでございますが、その後、御承知のように、五十一年からアルコール添加を減少させるに応じて、なるべくコストの安い米をということで、政府米も若干ずつ量をふやしてきた経緯がございます。私ども、そういう面で、原料用アルコールの添加を少なくしてなるべく米を使っていただくということにつきましては、必要に応じて、これは量的には一挙に大きく拡大することはなかなか生産者との関係でも困難でございますので、生産組織あるいは酒造業界とよく話し合いをしながら、そういうアルコール添加を減らしていただくということの割合に応じて若干ずつ、いわば政府米、政府米ということは財政負担をしている米を差し上げるということをやってきたわけでございます。今後におきましてもそういう方法はとらしていただくつもりでございますが、これはやはり自主流通制度との絡みがございますので、今後の方向としても、これは米の価格自身がなるべく上がらないような形をやることがまず第一でございますが、そういうことを前提とした上で、自主流通米と政府が直接管理しております米のバランスをよくしていく、そういうことで原料面の手当てはしてまいりたいと思っております。
  171. 横手文雄

    横手分科員 御指摘のとおり、酒米につきましては、酒造元で使ってもらわなければならない。米飯給食とはちょっと趣を異にしますから、これの拡大については学校給食をふやすようなわけにはなかなかいかぬ問題もあると思うのですね。酒を飲む人の嗜好の問題もあろうと思いますし、あるいはお酒そのもののはやり廃りもございますから、一概にはいかぬと思いますが、一つの大きなネックは、財政負担の問題、アルコール添加を減らせば、その分だけお米を使えばやはりお酒が高くなってくる、高くなってくると消費者が離れてしまうということで、よかれと思ってやったことが逆に減ってしまう、こういう結果を招いて、やぶをつついて蛇を出すようなことをしたのではいかぬと思います。  そこで、この財政負担の問題について、政府の方でやりますという姿勢が出されると、これはやはり酒造元の方でも、それでは政府の方針に協力しようか、こういう形になってくるものだと思います。したがって、財政負担の問題について政府としての姿勢をぜひ積極的に打ち出していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  172. 石川弘

    ○石川政府委員 その負担の問題になりますと、例えば、政府が管理をしております米には若干の財政負担がございますから、その割合を高くすることは、いわば政府が負担する金目がふえてくるということでございますが、先ほど申し上げましたように、酒造問題については、片一方でつくられたお酒の方から税金を取るという意味での負担があるわけでございます。私どもの方とすれば、今まで実はそういう食糧管理の中での負担は少しずつふやしながらきたわけでございますけれども、なるべくそういう形でやるという姿勢のもとで、一方税金が大変高くなってきたというような問題がございますので、これはあくまでも、私どもの方だけではなくて、国税当局ともよくお話し合いをしながら、酒造業としては健全にやっていける、私どもの米を管理する立場からいいましても、主食に対して管理しているもの以上に極端に多く財政負担をするような手法というものはなかなかとりにくいわけでございます。やはり主食の高さのところで一番財政負担があるというのがごく普通だと思っておりますので、そのあたりのことも、今後国税の方ともよく相談しながら、酒造業界が発展できるような素地はつくっていきたいと思っております。
  173. 横手文雄

    横手分科員 まだ二、三質問がございますけれども、残り時間がわずかになってまいりましたのでまとめて申し上げますので、ひとつお答えいただきたいと思います。  一つは、米の消費拡大のために、先ほど来大臣の方からもいろいろなPR活動も進めていきたい、こういうようなことが言われたわけですし、それぞれの地方では婦人会等で、公民館が主催して生涯教育というようなことで、このごろ公民館も大変充実をしてまいりまして、そこで料理講習等も頻繁に開かれておりますし、あるいはメーカー等が出てきてサービスでやっておるというようなのもございます。そういったところにもやはり積極的に米を使ったといったようなものをひとつ研究してつくり上げて、全国のお母さん方にそれを家庭に持って帰ってもらう、こういうことが大変大事じゃないかと思いますし、また、御飯だけではなくして、新しい用途開発ということも米消費拡大一つの道ではなかろうか、こう思います。それに対する政府のお考えをお聞きいたしたいと存じます。  いま一つは、米の食味向上のために生産面及び流通面で対策を考えていかなければならないのではないか。おいしい米を、こういうことを目標にしてやるべきではないか。これは単なるうわさだと思いますし、現実にはそんなことはないと思うのですけれども、例えば米屋さんで混合のときにブレンド差益が出る、こんなことが言われておるわけでございます。主婦の皆さん方にしてみれば、お米を見ただけではわかりません。これはよほど玄人でないとわかりません。だけれども、そういう話が出ると、お米に対する不信感みたいなものが出てまいりまして、何か妙なお米を食べさせられているんじゃないか、こういうことで不信感が出てくるというのは、米消費にとって大変マイナス要因だと思いますから、そういった面についてもきちっとした対策を立てるべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  174. 石川弘

    ○石川政府委員 最初の、米の献立等でございますが、これは消費拡大対策の中の大事な柱といたしまして、例えば米穀協会を通じます料理講習会その他いろんな形でやっておりますし、その場合の新しい献立等につきましても、単につくって雑誌等にするだけではなくて、テレビ活動等につきましても毎週、これは食糧庁も後援をいたしまして、米を使った料理番組をやっております。大変好評でございます。それから新製品につきましても、御承知のように新製品を開発してくださる企業のために無償で交付しますというような手法も持っておりまして、今までライスヌードルといったものだとか、それから玄米に対する需要があるわけですが、簡易炊飯がしにくうございますので、簡易炊飯が可能な玄米を開発していくとか、いろんなものをここ数年間やっておりまして、かなりのものが実用化の段階に入っております。新商品としていろいろ出ておるようでございます。そういう面でお米の新規用途ということも今後頑張ってやっていくつもりでございます。  それから、もう一つの食味でございますが、これは、一つは良質米志向というのがございまして良質米生産があるわけでございますが、これとてやはり地域的に限られておりますので、良質米の単品というのは量的にはおのずと限界がございます。食味をよくしますために必要なブレンドというようなことは、いわば格上げ的なものは論外でございますが、それはある意味でおいしい米をつくっていくためにも必要でございますけれども、あくまで、今先生指摘のように不信感ができるようなものじゃ困りますので、主として大型搗精工場によって、中にどういうものを組み合わせてつくったかということを明らかに表示をしまして、しかもそれをいわば検定するというような形で、中身を信用していただくようなものでやっていく。今後の問題としては、さらにそれが適正に競争できるように、競争にさらしませんといわばにせものが通用するということもあるわけでございますので、そういう競争原理が働くようにしていくとか、もっと根本的に申しますと、米の場合どうしても新古問題、新米古米という問題が出てまいりますのは、端境期を乗り越えてある程度のものを備蓄しなければいかぬわけでございますが、そういうものを低温で保管をして、どういう場合でも食味のいいものを供給するという基本も振り返りまして、今御指摘のような食味についての根っこのところからやりますと同時に、流通段階でもそれが信用できるような仕組みをとっていきたいと思っております。
  175. 横手文雄

    横手分科員 時間が参りましたので、以上で終わります。  私も、米消費拡大議員連盟の一人としてこれからも頑張ってまいりますし、政府の御健闘も御期待を申し上げまして、終わります。  ありがとうございました。
  176. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて横手文雄君の質疑は終了いたしました。     〔田名部主査代理退席、主査着席〕
  177. 大村襄治

    大村主査 次に、和田貞夫君。
  178. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 昨日の全国紙で、全糧連の会長系の会社のやみ米大量売買という記事、食糧管理という立場に立ち、あるいは米に対するところの国民の意識というのは、ややもすると自由販売というように受けとめられておる中で、しかも米に対する不信感を募ったということは、私は非常に残念に思うわけです。  そこで、私は、食糧管理という立場に立って、この不正規流通、やみ米の撲滅ということをこの機会にぜひとも農林省挙げて取り組んでいただきたいということを要望しながら、若干の質問をしたいと思うわけであります。  まず、昨日新聞紙上で私も拝見したわけでございますが、山形県食糧株式会社の大量不正規米の売買事件の全貌をひとつこの機会に明らかにしてもらいたいと思います。しかも、正規の政府管理米の政府米や自主流通米がやみからやみに流れていくということ、それがあるために末端の小売やみ業者がなかなか後を絶たない。そのために、正規の業者が非常に苦労し、収入も少なくなり、非常に問題を各地で起こしておるわけです。そういうことでございますので、ぜひともその全貌をこの機会に簡単にひとつ明らかにしてもらいたいと思います。また、そのような不正規流通米を購入した側の業者あるいは販売した業者、これらにつきまして、告発の措置等を含めてこれらの善後措置というものを考えておるのかどうか、あわせてお聞きしたいと思います。
  179. 石川弘

    ○石川政府委員 この案件につきましては、現在、私どもの山形食糧事務所におきまして、三月の二十日に、いわば不利益処分をやるわけでございますので公開の聴聞をするという手続中でございます。したがいまして、聴聞が終了いたしますまではいわばペンディングの事案でございますので、すべてのことをお話しするのは差し控えさせていただきますが、事柄の端緒等につきましてお話しいたしますと、昨年末来東京都のスーパー等にかなり恒常的なやみ米が置かれているというような事実等もございまして、それがどのような姿で流れているかということにつきまして、東京周辺等について調査をいたしておりましたところ、昨年末埼玉におきましてかなり継続的な供給をしていると思われる業者がございました。それにつきまして、私どもその出てまいりますもとというものを調査を続けておりましたところ、山形県下の二つの業者がかなり恒常的な米の供給をしているのではないかという事案に出くわしたわけでございまして、いろいろ調査をしました結果、かなりその確度も高いということがわかりましたので、現在二つの業者につきまして三月二十日に事情を聴取するということを公にしているわけでございます。事柄の性質といたしましては、農家等から検査をいたしておりません米穀につきまして集荷をいたしておるというのが内容でございます。
  180. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 あなたがかつて管理部長当時に食糧管理法を改正して今の新しい食管法ができたわけですが、あなたはこの新食管法をつくるに当たって、今後は守られる食管法にするんだ、過不足両面に対応する食管制度のために新法をつくるんだ、こういうことをうたい文句にして業者の方にも話をしていった。小売業者に対しましてはそれなりの対応をしていた。ところが、卸売業者に対しましては極めて優遇しておるというか、やみ流通について、不正規流通について非常に目こぼしがあったことが、たまたま今回こういうような事件が出てきたというように言わなくてはならないと思いますし、また、これはこの問題一つだけではございません。非常に臭いにおいがどこにもするわけです。例えば、日経新聞の食品業界のベスト業者百位の中に十五の米の卸売業者が入っているというようなことを見ましても、何と米というのはぼろいんやな、こういうように国民は意識するのですよ。そうしてまた、食管法の業務運営基準には、卸売業者が小売業者に対して指導する立場にある。売ったらいいんだ、もうけたらいいんだというような考え方では困るわけです。したがいまして、食糧事務所なりあるいは県の方が改善命令を出したり、勧告をしたりしておりますけれども、改善命令を出したら、何とかひとつその改善命令を撤回してやってほしいとか、あるいは改善命令を出さなければいかぬという立場に置かれておる不正規流通米を販売する小売業者の肩を持って、改善命令を出さないようにしてやってくれとか、そういうように卸売業者が県の方に働きかけていく。あるいは県の方が枠の削減を処分の内容としてやれば、ひとつ枠の削減を解除してやってほしい、こういうようなことをやっておる限りは、いわゆる大阪におけるところの中間卸的なことを決してとどめることはできないのではないかと思うのです。  したがいまして、私は、この事件をきっかけに、食管制度というのを守っていくんだということで、強い態度をもって卸売業者に対してひとつ対処をしてもらいたいというように思うわけですが、どうですか。
  181. 石川弘

    ○石川政府委員 御指摘のように、五十六年改正の際に、例えば典型的に申しますと、配給通帳制度のような有名無実と当時言われているものだけではございませんで、例えば小売等につきましても、先生今御指摘のような大阪の事案一つ見ましても、小売で三千を超えるような無許可の業者、卸売的な行為でも二十数個の卸売業者等がございまして、私ども制度改正を機にこれがきちっとしたものになるようにということを大阪府と一緒に何度もやってまいりました。幸いいろいろな形で進んでまいりまして、卸売的なものにつきましては既にすべて中止をしているというように聞いておりますけれども、小売等について若干のものが残っているのは事実でございます。  それから、卸売業者に対する我々の指導態度でございますが、卸売業者としましてはやはり現状ではまだまだ十分ではないものがございますので、今回の六月の許可更新の機会を目前にいたしまして、私どもとしては今卸売業者の指導をいたしておりますと同時に、前回の改正の際には、卸と小売の結びつき問題についてもう少し競争原理が働くようにということを私ども提案をしていたわけでございますが、なかなか関係者の御了解を得られなかったわけでございます。やはり卸についての競争原理の導入をもう少し進めるべきではないかということで、今回の改正を機会に卸の方がもっと競争していただく。卸は、御承知のように全糧連系だけではございませんで、商系も農協系もあるわけでございます。そういうものの中でもう少し競争原理が働くようにという手法でやっていくということを考えております。
  182. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 卸売業の約七〇%近いシェアを占めておるのが全糧連に固まっているわけですから、なかなか競争原理が導入されてない。やはり今長官申されたように、この機会にぜひとも卸売業者に競争原理を導入するように、ひとつ強く指導してもらいたいと思うわけであります。  そこで、小売に対しましては、五十七年の六月には新法によって小売販売店の一斉許可更新というのを各県でやりまして、そして、今後不正規業者をなくすのだということで、今まで不正規業者であったものも含めて人口千五百人に一軒、こういう基準でブランチ制度を認めさせた。業者の方はさせられたわけです。罰則規定をつくっておるのですけれども、罰則規定というものは、勧告だとかあるいは改善命令、あるいは警告だとか指導、要請だとかということはなされておりますけれども、告発というのはいまだかつてないわけなんですね。そういうようなことである限りは、いわゆるやみ米屋さん、不正規業者というのは絶対に解消することはできない、こういうように私は思っておるわけです。食糧事務所がそれぞれ食糧庁の方に実態報告するに当たりましても、これは現地の方におきましては、立入調査だとか業務監査等行ったりしておりますけれども、それにしても、食糧事務所長の公印のないような警告書を配りに歩いているというような格好での警告の仕方、まことに手ぬるいというように私は思いますし、また、現実の問題といたしまして、各県の食糧事務所が調査をしたところが、いわゆる確信犯、どうしてもやめないというような業者が現実におります。幾ら食糧事務所がやってきても、やめまへんと。どうやらそういうものだけを報告しているような様子でございまして、悪うおました、やめますというように言ったやみ米屋の数というのは、本省の方には数としては届いておらない。そういう実態の中では決して不正規業者の撲滅というのはできないと思うのでございますが、これらの問題につきまして、一体どうするかということのお答えを願いたいと思います。
  183. 石川弘

    ○石川政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、新法施行当時、大変多くの数の不正規があったわけでございます。これの是正の仕方につきましては、私どもいろいろな形を考えたわけでございますが、一つは、例えば今先生おっしゃいましたように、買い入れ者側の利便という観点から、新設をしなければなかなか根絶ができないというような場合に、新設というような手法をとりながらやった場合もございますが、御承知のように、一応私どもはブランチその他でもって、消費者のサイドに御不便をかけるというような意味での新設はもう必要がないというようなところが大半になってきたわけでございます。そこで、そういうことに至る間に我々行政サイドとしてできるだけの努力をするということで、府とかあるいは私どもがやっております口頭指導だとか、それによらない者はさらに警告をする、警告書の交付というような様式行為までやるわけでございますが、それと同時に、今回の事案になりましたように、親元と申しますか、そこに流れているもとの米を断つというような努力をしたわけでございます。  そこの中で、例えば具体的な例といたしまして、例えば警告と同時に卸から流れる米の量をカットするというようなことでやったものもございます。先ほど申し上げましたような、先生が確信犯と言われたような、要するに行政的な諸手続をもってしてはなかなかやめないという者にだんだん絞り込まれてきているわけでございます。私ども、司法の当局ともこういう者の扱いについて今までもいろいろ相談をしてきております。そういうお話し合いの中では、行政的にできるだけのことをしていただいた上で、どうしても司法の手続によらなければいけないものについては、これをそういう手続の上でやる。これらにつきましては、継続的にかつ大量に、あるいは先生のおっしゃったような確信犯的にやっている者について、そういう手続をとるというような方にだんだんまいっておりまして、これは私ども、ある程度大きな都市を中心にして絞り込みをしておるわけでございますので、先ほど申しました外部から流れ込む米を断つというようなことと同時に、最終的にはそういう司法的な手段をとらざるを得ないものがあると考えております。
  184. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 これは大臣、末端の不正規業者というのは、やみ米屋ということで食糧管理法違反をしているだけじゃないのですね。消費者に対して非常に迷惑をかけている、いわゆる不当表示の問題になってくるのです。ササニシキだとかコシヒカリだとか、とにかく同じ米をササニシキの袋に入れたりコシヒカリの袋に入れて、消費者は中身よりも袋で買うんやということをおめおめと言っているのです。実際問題として価格についてもそれだけじゃできないのですね。大阪でササニシキ、コシヒカリ十キログラム入り市価五千三百円を四千六百八十円で売るんだということで大量にまいている。それは売れっこない。大阪で正規の業者は五千八百円から六千円です。特に大阪におきましてはマンヨウというやみ米屋があるのですが、トラックに積んで、あちらの軒先、こちらのスーパーの前ということで販売の日にちまでわざわざこうやって書いて、これを売りに歩く。そんなものをよう取り締まらぬのか。白昼公然と不正規業者がおるにもかかわらずこれを取り締まることができない。  これはどうですか。これは酒屋さんの米の領収証です。酒屋さんが米を売っているということです。これは消費者からもらったものですよ。これは牛乳屋さんです。牛乳屋さんが米を売っておる。公然と領収証を出しておるのです。  こういう現実で、食糧事務所の職員にしても、県の職員にしても、証拠としてからっとあるわけですが、それでもなかなか告発しない。こういうやり方をやっている限りは、まじめに正規の手続をやって許可をいただいて商売をやっている者がたまったものじゃない。そういうささやかなところから手をつけていかないから、きのう新聞に出たようなああいう大きな事件が出てくるわけです。また、大きな事件をほおかぶりするからこういうところに手をつけられない。私はこういう農林省、食糧庁の姿勢がうかがえてしようがないわけです。  ことしは、ちょうどこれまた時期が正規業者の更新の時期であります。こういうようなやみ米屋さんを撲滅すると同時に、正規の米屋さんが量販店と称してやみ米屋さんに回していくというような中間卸的なことをやっているような業者、従来から勧告を出したりあるいは指導、要請をやったり警告をしたり改善命令を出しても、いまだに直っておらないというような業者があるとするならば、この更新時期に許可を取り消すというようなことをやれというように食糧庁が各県に指示をするというようなことを含めて対処をしていただけるかどうか、ひとつお答え願いたい。
  185. 石川弘

    ○石川政府委員 今おっしゃいましたいろいろな事案につきましては、私どもも絞り込みをしているわけでございまして、そういう最終的な告発とかいうことにいたしますために必要な調査をするとか、あるいはそういうものの流れている場所がどこであるかということをだんだん絞り込んできているわけでございます。先ほど申しましたように、五十七年一月にたしか大阪府内では三千人を超えます。そういう関係業者がいたわけでございますが、現在の報告で二百数十というような形、二百前後に絞り込んできているようでございます。そういうものの中で、真に今おっしゃいましたように明らかに承知をしながらも絶対やめぬと言っているような者については、法的な手続にいずれ推移するかと思っております。  それから、そういう米が正規の業者から流れているという場合も十分考えられるわけでございまして、そういう場合につきましては、今後の更新の際に、法令を遵守していないということになりますと、当然許可の更新に対していろいろ制限規定がございますから、そういう規定に照らして事が処断されることになろうかと思います。
  186. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 あなたの方は、昨年は久方ぶりの豊作であって、四年続きの凶作の中で本当に綱渡りの需給操作をやられてやれやれとしておられると私は思うのです。しかし、末端の食糧管理法の重要な担い手として各県の知事の許可を受けてまじめに正規の業者として商売をなさっている方々は大変である。現実に米の価格が非常に混乱しているのです。特にすそ物、安い価格の米の供給が末端では本当に不均衡になっておる。例えば、ビールの原料用の米はキロ八十円が二百三十円に値上げしておる。くず米と称されるものは二百円のものが三百五十円に暴騰しておる。そういうような中で、卸売業者の直販制度を認められたわけでございますので、直販業者には政府米の安い米ばかりが供給されていく、そうして正規の小売業者にはそのあおりを受けて自主流通米が強制的に抱き合わせされて売られていくというようなことでございますので、末端の業者は本当に経営が悪化をしておるわけでございます。あなた自身が、先ほども申し上げましたように、新食管法をつくられた当面の責任者である。それが今長官として日本の食糧行政の頂点に座っておられるわけです。  農林大臣もおられるわけでございますが、この際、そのような不正規流通というものをきちっとけじめをつけるとともに、今日小売販売業者が置かれておる非常に苦しい実情というものを十分考慮するならば、認識をしてもらうならば、この機会に小売業者の健全な育成を図っていくために、例えば協業化の指導をやっていくとかあるいはその他の国の助成を考えるとかいうようなことで、流通形態を消費者の新しいニーズに合わせて業界全体が健全化したものに持っていくように、そういう指導をしてもらえる好適な時期じゃなかろうかというように私は思うわけでございますが、この点につきまして食糧庁長官並びに農林大臣、全国のまじめに頑張っておる、食糧管理法の末端の担い手として頑張っておられる正規の米穀小売販売業者を通じて消費者に届くように、ひとつこの機会に決意のほどを述べてもらいたいと思います。
  187. 石川弘

    ○石川政府委員 最初に事実関係をちょっと申し上げておきますが、今先生お話の中で、すそ物の米がない、特に直売等をやっておる卸には潤沢に行っているのではないかということでございますが、ことしは何と申しましても大豊作でございまして、もう三等の米というのが例年になく非常に少ないわけでございます。したがいまして、米全体が上位等級にいっているということがございます。したがいまして、よくいうすそ物というものに対して、若干そういう不足ぎみにやっていることは事実でございますが、これも私ども、全体を均衡に流す、特に大都市等の業務用卸というようなものにつきましては、これはそもそも値段の安い米をということもございますので、比較的単価の安い北海道五類といったようなものを流すというようなことはやっておりますけれども、特定の業務用卸だけに何かそういうものが行くということではございませんで、全体として米の品位が高くなっていることから起こる問題がございます。これは、そういうことしの米作の特徴でございますので、そういう中で各卸、小売に御努力をいただいているのが実情でございます。  それから小売全体の振興策でございますが、今先生おっしゃいましたように、小売につきましてはいろいろな形の競争、これはスーパーもあるわけでございます、生協もある、あるいは一般小売という形でいろいろな競争がかなり行われているわけでございます。したがいまして、そういう中で協業その他の姿で米だけで専門的に大きくやられるとか、あるいは米とその他の食品を組み合わせてやるとか、そういうことにつきましては、全国組織でございます日米連ともよく相談をしまして、その地域地域の小売が今後ともお米を流していただく中の一番消費者とつながる大事なところでございますから、そういう方々の経営が安定するという意味でいろいろな形での指導助言は今後とも続けていくつもりでございます。
  188. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 和田先生にお答えいたします。  先ほどから食糧庁長官が話しているようなことで、不正規流通を放置しておけば食糧管理制度に大きな障害を及ぼすということがございます。そんなことで、実は私は食糧庁の肩を持つわけではありませんが、恐らく今度の場合も、米を運び込んだ事実を確認し、その現場を押さえて事件が発覚したというようなわけです。そんなことで、恐らく人員、予算の面で御苦労なすったのじゃないかと思います。そんなことでございますが、今後無許可業者に対しては強力に中止の指導を行い、それに従わないときは、特に悪質な者については都道府県とも十分な連絡をとりまして、断固たる処置をする考えでございます。
  189. 和田貞夫

    和田(貞)分科員 時間が来ましたのでやめますが、一つなおつけ加えておきますが、従来各県の知事なりあるいは食糧事務所がいろいろと警告をやったり、業務命令を出したり、勧告したりしていますね。出しっ放しで、後の追跡調査がないんですよ。だから、ぜひともその追跡調査をやるということ。  それから、大阪では、東京がやってくれたら大阪の知事は告発すると言っているんですよ。そういう意味で、おひざ元の東京から、関東からそういうことをやってもらうように督励の意味で申し上げておくと同時に、念のために沖縄を一回調査してください。沖縄の業者が困っておるのです。それは大阪からやみ米が沖縄へ届いておって、沖縄の正規の業者が非常に困っておるということをこの機会に申し添えまして、質問を終わりたいと思います。
  190. 大村襄治

    大村主査 これにて和田貞夫君の質疑は終了いたしました。  次に、宮崎角治君。
  191. 宮崎角治

    宮崎(角)分科員 質問させていただく機会を得させていただきました公明党の宮崎でございます。  前半は外国漁船の違法操業について、そしてまた未利用資源の開発と、さらには、つくる、育てる漁業へのいわば海洋牧場の創設等々を含めまして、後半は林野庁関係についての質問をいたしたいと思っております。  今、一衣帯水という言葉があるわけでありますが、これは日本に隣接するお隣の中国あるいは韓国、北朝鮮、そしてソ連と、そういう一つの帯を長く引き延ばした、いわば小さな海や川をあらわす言葉だと思いますが、これがよきにつけ、あしきにつけて大変な、漁民の悲哀といいますか悲劇といいますか、あるいは憤怒の念を持たしているという極めて憂慮すべき侵犯、いわゆる漁船の違法侵犯ということに対しまして、一体日本政府は何をしているのか、あるいは何をしていたのか、あるいは何をしようとしているのか、気がかりになるのでございます。いわば外交ルートで、それぞれの力は力の関係の中でこの問題に対する対応策はあろうかと思うわけでありますが、こういった漁船の違法侵犯あるいは違法操業についての実態がどのように把握されているのか、ひとつ定かに答弁を求めたいのでございます。
  192. 神谷拓雄

    ○神谷説明員 御質問は長崎、対馬周辺におきます違法操業の実態であろうかと思いますが、長崎、対馬周辺海域におきます外国漁船の不法操業は、従来から、先生指摘のとおりかなりな規模で行われておりまして、当海上保安庁では、虞犯海域につきまして常時巡視船を配備いたしますとともに、状況に応じて航空機を哨戒させてその違反防止に努めております。  長崎と佐世保の両保安部で四隻の巡視船を持っておりますが、そのうち常時一隻をこの外国漁船取り締まり用に配備させております。また、違反外国船を見つけました際にはすぐ検挙するという方針で臨んでおります。  この結果、韓国漁船に関しましては、昭和五十二年にいわゆる海洋二法が施行されましたが、それ以来ことしの二月末までの約七年半の間に、領海内操業で五十九隻、それからまた対馬周辺には漁業専管水域というものが設けられておりますが、その漁業専管水域内操業で百十六隻を検挙しております。一方、台湾漁船につきましては、男女群島、それから五島列島周辺海域でございますが、ここらあたりへ昭和五十四年ごろからいわゆる台湾のサンゴ漁船が進出してきておりまして、本年二月末までの約六年間でございますけれども、領海内操業で四十九隻を検挙しております。  それで、このように非常に違反操業は多いわけでございますが、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、大型の巡視船四隻のうち一隻を常時外国漁船取り締まり専用ということで配備しておりまして、さらに違反船が多く来るという場合、必要といたします場合には三十メートル型の巡視艇、これは高速巡視艇でございますが、これが対馬ないしは九州の北方海域に配備してありますので、それを応援派遣させるというような形で取り締まりに当たらせることといたしておりまして、今後とも違反操業に対しましては厳しい方針で臨み、取り締まりに万全を期するよう努力してまいりたいと思っております。
  193. 宮崎角治

    宮崎(角)分科員 非常にトータル的に、数年間のうちに百六十五隻検挙という事例を挙げられたわけでありますが、確かに、私も我が県のいわゆる対馬の島外れに行きますとお隣の国が見えるような、そういうところにあるわけです。きょう私ここに持ってまいりましたが、主査の許可を得まして……。これはウナギの剥製であります。メクラウナギといいまして、これの中を切って入る。これは相当タコつぼ的にアナゴ的にやっておられる漁法でありますけれども、いわゆるこれの漁具を切られてしまう。御承知のように、これはとったら一キロ三百円でそのまま韓国の方へ輸出する。韓国で加工しましてそれがまた日本に返ってくるわけです。まことに不思議な、どんな相撲取りが切っても切れないようなすばらしい強靱さを持っている。こういったものを初めとしまして、また国際海域であります対馬の三海里の問題あるいは長崎県の西彼杵郡の中に織り込んであります海区、いわゆるライン、ここでシイラという魚のシイラ漬けの漁具が切られる。そうしますと、ここで問題になるのは、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定なんでございます。この協定が、どれだけ実効あらしめているのか、効き目があるのか。これはいわば旗国主義と言われるその是正については、旗国主義でありますから自分の国は自分でというような状況でございますので、この点非常になまぬるいのじゃないか、これについて見直すという方向になってないのかどうなのか。また、適正操業についての実態というものが、今お話にあったようなたくさんの検挙という事例を出しているわけであります。この辺についての国として、水産庁として、また海上保安庁としての対応についてもう少し定かにひとつ説明を求めたいのであります。
  194. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  確かに、現在の制度が旗国主義を前提にしたあれになっておりますので、韓国側の十分な対応がなければきちんといかないということは御指摘のとおりでございます。従来からこの問題につきましては韓国側に適切な措置をとるよう繰り返し要請をしてきたところでございますが、昨年に入りましても山陰沖あるいは先生の方の長崎県では野母崎沖で大挙韓国漁船の違反操業が行われるというようなことがございましたために、昨年三月末の第十八回日韓漁業共同委員会及び七月の日韓の部長レベルの協議におきまして、韓国側に対して指導取り締まりの強化を強く申し入れたところでございます。  それで、その効果もございまして、確かに昨年五月から八月までの間は違反操業は減少をしたと私どもは認識をしておりました。しかるところ、九月以降再びまた違反操業が増加をしてまいりました。外交ルートを通じまして韓国側に対しても違反船防止措置の確立を要請するとともに、ちょうど昨年十二月韓国の姜水産庁長が日本へお見えになりましたので、その際、私からも同様の要請を行ったところでございますが、ことしの一月二十八日から三十日まで第十九回の日韓漁業共同委員会が開かれました。その席上でも強く韓国側での取り締まりを要請したところでございます。その際韓国側が、違反船の防止措置として次のような事項を実施するということを十九回日韓漁業共同委員会の席上回答をいたしております。  一つは、違反船に対する罰則の強化、これは従来は協定違反の罰金の最高限度額が三十万ウォンでございましたがこれを百万ウォンに改正する。それから、船長、漁労長等への協定遵守の指導徹底、それから監視船の継続的派遣及び違反の特に多い時期、一月から三月への集中配備、それから監視船の増隻を検討する。それから底びき漁船の減船、さらに韓国の底びき漁船関係の漁協の組合職員を乗船させて指導に当たらせる、そういうことを先方は回答いたしました。これらの違反船の防止措置が実行されるように、今後とも韓国に対して随時適切に申し入れを行ってまいりたいというふうに考えております。  それで、ただいま先生が提起されました、そもそも現在の旗国主義という仕組み自体を考え直すべきではないかという点でございますが、この点につきましては、確かに現在の協定では実効ある取り締まりは確保しがたい、旗国主義そのものの再検討が必要であるという御意見が関係漁業者の間にあるということは私どももよく承知をしておりますが、この問題につきましては日韓の漁業関係実態あるいは韓国周辺水域へ出漁している日本漁船に与える影響等、関係する種々の問題がございますので、総合的な判断を要するというふうに認識をいたしておりまして、関係省庁とも十分協議をしながら慎重に対処する必要があるものというふうに認識をいたしております。
  195. 宮崎角治

    宮崎(角)分科員 方向については鋭意努力されておるようでございますが、日韓漁業協定の六条の五項にありますように何回でも開いてよろしいわけでございますから、日本は底びきをしてはいけない、そこに向こうは勝手に入ってきている、そういうところで非常にトラブルが起こるということでございますから、今後ともひとつ十分御配慮願いたいと思います。  なお、これは水産庁の方からデータが出たんじゃないでしょうか、東シナ海の方ではもう四分の一がたんぱく資源が枯渇してきている、そういう憂うべき事態の中で、韓国漁船のそういう違反操業等々がございます中で、私はこういった漁民の生活を潤すためにも、この辺で五島列島の西海域の開発事業のように、壱岐や対馬、こういった目の前に外国があって操業で大変なトラブルがあろうとしている中の地域においては、いわゆるもっと育てるあるいはつくるという漁業の海洋牧場的な、そういった開発事業をぜひ国としてすべきじゃないかと思いますが、これについてちょっと簡単に答弁を願えないでしょうか。
  196. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 長崎県におかれましても、壱岐、対馬及び五島列島の海域で漁礁の設置あるいは増養殖場の造成、マダイ、ヒラメ、アワビ、ウニ、クルマエビ等の種苗の放流等を実施しておられますが、さらに、五島列島西部海域では、漁場の整備、種苗の放流等を総合的に行う海域総合開発調査を五十四年度以降実施しておられまして、六十年度から事業に着手をする予定になっておりまして、こういう形でこのあたりの水域でつくり育てる漁業を積極的に推進をしているところでございまして、私どもといたしましても、今後とも長崎県とも十分協議をしつつ、これらの水域について先生指摘の方向で努力をしてまいりたいと思っております。
  197. 宮崎角治

    宮崎(角)分科員 それでは視点を変えまして、今度は林野庁の方にお願いしたいと思うわけでございますが、日本の山崩れといいますか、崩壊といいますか、三大崩壊地点ほどこなんですか。富士山の大沢崩れ、あるいは日光の男体山の山崩れ、あるいは長崎県の眉山、これを三大崩壊地点というふうに私は認識しているのですが、間違いありませんか。
  198. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 三大と言われますと、ほかにもある場合もございますけれども、今の眉山が大変ひどい状態でありまして、その中にも数えられるものであるということは承知をいたしております。
  199. 宮崎角治

    宮崎(角)分科員 もうそのひどさといったら大変なことなんですね。あれは一七九二年でしたか、一万五百人が死んだというのは。そしてまた八百メートルのマウンテンからおりる岩石あるいは土砂は、毎年数万立米と言われておりまして、下に居住します五万人の市民は、市の背後にあるこの眉山を見るたびに、保安体制や治山体制についてどうすればいいのかと、県は高田知事を初め、あるいはまた地元は鏡ケ江管一市長あるいは市議会筋、あるいはまた住民のそういった対策委員会等々がありまして、まことに大変な悩みをしているわけでございます。こういう中で、私は日本でも最大の崩壊地点じゃないかと思いますがゆえに、長官に今日までのプロセス、工事のいろいろな経過あるいはまた今後のいろいろな問題につきまして、どのように国は考えていらっしゃるのか、ひとつ明快に答弁を求めたいのでございます。
  200. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 眉山の特殊な地質と申しますか、石英安山岩あるいは凝灰角礫岩が主でございまして、大変脆弱な地質だと伺っておりまして、本来ならば崩壊の源に直接工事ができれば大変効果的でございますけれども、大変急傾斜であるためにそこへ直接の治山工事を施工することができない。どうしてもその下の方で抑えなければならない。そういうことで、やはり治水事業、治山事業と連携をとりながら工事をしなければならないわけでありますが、その工法にいたしましても、これは本当にいろいろ学識経験者の意見あるいは研究機関等の意見も聞きまして、いろいろきめの細かい工法を採用しているわけでございます。  例えて申しますと、雨水がなるべく一定の箇所を流れるように工夫をいたしました、誘導する導水堤もございますし、あるいは逆に雨水が集中しないように拡散させるための霞堤でございますとか、これ以上洗掘されては困るところの沢に対しましては床固め工で河床を固定する、そういう工法をいろいろと組み合わせまして、これは大変長い期間、これまでに二百数十基以上の堰堤が構築されていると思っておりますけれども、御案内のように島原市を守る重要な場所であるという認識のもとに、計画的、重点的にこの工事を進めてまいりたい。今後も進めていくつもりでおるわけであります。
  201. 宮崎角治

    宮崎(角)分科員 山は国のもの、そしてこの保安というのは地元が中心になって頑張っておる。財政は逼迫している。今の長官の御説のように、今後こういった対策委員会に対する国としてのバックアップというものについては積極的になされる御意思ですか。やるかやらないかだけ聞かしてください。
  202. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 市議会にも特別対策委員会がございましていろいろ積極的に取り組まれていることを承知しておるところでございます。現地国有林担当官もここにいろいろ連絡等をするためにお伺いをしておるわけでございますが、現地の本当の必要性を十分把握いたしまして、厳しい財政事情にはございますけれども、効果的な事業を進めるべく最大の努力をいたしたいと思っております。
  203. 宮崎角治

    宮崎(角)分科員 冒頭に、大変日本的にもうナンバーワン的なこういった崩壊という事例をお認めになって御発表になったようでございますが、実は、大正五年から国の直轄事業として治山工事あるいは谷どめ工ですかね、をやっている。大正五年から四十一年までの間に国が出した費用は一億五千万ですよ。そしてその後八年間がわずか三億五千万しか出てない。そして今日まで毎年五千万から、あるいは五十七年は一億一千四百万出ておりますけれども、トータル十一億九千三百十万円しか出てない。これではイタチごっこも甚だしい。もう目の前で音をなして崩れているのです。私は、公用車は使わないで、自分の、マイカーでいつも帰ったとき見ているのですが、私が原爆を受けた、その原爆の音よりもひどく、安山岩が転がって落ちてきている。こういった中で、私は、もう少し長官何とか、二月十八日には総理大臣予算委員会の我が党の池田克也議員の質問に対して、教育問題でありましたか、非常に国民的な関心の高いものについては、これは財政的な配慮もしていかねばならぬということはきちっと総理の言質の中に出ておりますわけでございますので、先ほどの御決意、方向をお示しになったように、この眉山に対しては、どうかひとつ、最後に農林大臣の御決意をお聞きしておきたいと思っておるわけです。
  204. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 現在の国の財政事情につきましては先生も御案内のことと存じますけれども、必要なものにつきましてはこの予算の中で十分いろいろ検討いたしまして措置をするように、検討を深めてまいりたいと思います。
  205. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 宮崎先生にお答えいたしますが、実は私は、申しわけありませんが初めて聞く話です。そんなことで、今聞きまして、大変ひどいなと。大正五年から十二億弱ということでございますが、一遍よく現地で調べまして、林野庁長官対応策を練らしたい、こう思っておりますから、よろしくお願いいたします。
  206. 宮崎角治

    宮崎(角)分科員 今の大臣の、また長官のありがたい前向きの姿勢、まことに感謝したいと思いますが、長崎県の地域は水の難があってみたりあるいは火の難があってみたりして、大変な難しい問題があるわけでございますけれども、今言われましたように、どうか実態調査をされた上で、前半の水産庁の問題とも相まって、いろいろと今後また、私はシリーズでこの委員会に出さしていただきまして、長官大臣の決意をひとつお願いしたいと思います。さらにさらにこの安全の問題をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  207. 大村襄治

    大村主査 これにて宮崎角治君の質疑は終了いたしました。  次に、西田八郎君。
  208. 西田八郎

    西田(八)分科員 私は農業に関しましては全く素人ではございますけれども、今日の日本の農業を見ておりますと、どうも先行き不安でならないというふうに思いますので、政府の基本的な農業政策等について二、三お伺いをしたいと存じます。  第一に、昨年、米が余っておる、こう言われておったのですが、その米がなぜか足りなくなってきて、韓国から緊急輸入をするというような事態が起こってまいりました。さきの農林大臣の山村さんともそのことについていろいろ話し合い、たまたま、備蓄米といいますか倉庫の米の薫蒸の中で臭素が異常に浸透しておったということらしいのです。ところが、幸か不幸かことしは大変な豊作だ、こういうことでございますが、しかし、天候に左右される農業のことでありますから、生産を一元化するわけにもまいらないでありましょうし、いろいろな問題があると思いますけれども、今やハイテク時代と言われますように、製造工業におきましては相当技術革新等が行われて、高い生産性の製造が行われておるわけであります。  しかし、おくれておるのは農業、林業、漁業ではないか。漁業は二百海里経済水域の設定というような状況の中で、とる漁業からつくる漁業へと転換をしてきておるようでありますが、農業だけは、私、素人の目で見ておっても、牛や馬が田んぼにおらなくなった、そのかわりに農機具、機械が入ってきたというだけであって、農家の人たちの作業を見ておっても昔とほとんど変わらぬのではないだろうか。そして、毎年、六月、七月になると、米価闘争という、農業団体の方が何万人と東京へ上がってきて、米価上げろのシュプレヒコールが行われる。こんなことで日本の農業は果たしていいのだろうか、私は非常に心配をするわけであります。  たしか四年ほど前でございましたか、本会議におきましても、そうした状況の中で、アメリカからの強要と言ってもいいのではないかと思いますけれども、そういう空気の中で政府が農産物を輸入しようとされたときに、我々は、輸入については慎重に扱うと同時に自給率を高めろということの決議をいたしました。しかしながら、そうした決議にもかかわらず、今日、食糧の自給率は四〇%を切っておるというふうに言われておるわけであります。  私は大正十一年の生まれでありまして、昭和十七年の一月に兵隊に入ったわけでありますが、その戦争の前後の日本の食糧事情というものを考えてみますと、国民は大変な苦労をいたしました。食糧供給を安定的に確保するということは、国の安全保障の上からも極めて重要な問題ではないか。特に、国民生活の安定ということについては、極めて重視しなければならぬ施策一つだと私は思います。  そういう意味で、この農業政策、農業施策についてはかなりの補助金等も出されまして、今は圃場整備であるとか土地改良であるとかが行われておるわけでありますけれども、幾ら圃場を整備しても土地を改良しても、収穫が多少ふえたとしても、今の経営規模で果たして農家が成り立っていくのだろうかと私は考えるわけであります。そうした農家経営の苦しさから、出稼ぎに出る、あるいは若い人たちがどんどんと都会に働きに出る。したがって、農業は、今は余り言わなくなりましたけれども、やはり三ちゃん農業だと私は思うのですね。このような状態で日本の食糧、国民の食糧を安定的に供給することが果たしてできるのかどうか、将来農業をやっていこうという若者に意欲があるのだろうかと考えますと、極めて憂慮せざるを得ない状況にあると私は思うのであります。  そこで、一体、これから農業を大農方式という形で抜本的に構造改善を進めていかれるのか、あるいは日本の国土あるいは部落の形成その他から考えて中農方式をとろうとしておられるのか、それとも今の小規模農業をそのまま兼業という形において継承していこうと思われるのか、その辺、水田再編対策等、いろいろと出されておりますけれども、抜本的に改善しようという構造改善の取り組みというものが少しなまぬるいのじゃないかと私は思うわけであります。  そこで、ひとつ大臣にお伺いしたいのですけれども、一体、これからの日本の農業をどういう方向へ持っていかれようとするのか。私見を先に申し上げますならば、製造工業等におきましては、技術革新の中で高生産性の生産ということを考えておられる。やはり農業におきましても同様のことが言えるのではないだろうかと思うのですね。そういう点につきまして一体どういうふうにお考えになっておるのか。私は、農業もやはり食糧を生産する生産産業だと思うのです。したがって、農業あるいは百姓というようなことのイメージダウンから、食糧生産産業としての位置づけをして、そうした産業に働く労働者、すなわち農民の意欲というものを、生きがいというものを、働きがいというものをつくっていかなければならぬと思うのですが、そういう点について大臣からまずひとつお答えをいただきたいと思います。
  209. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 西田先生にお答えいたします。  先生から今、大変見識ある農業に関するお話を聞かせていただいたわけですが、実は私も同感の点全く多いと思っております。  そんなことで、まず第一番に、農業が果たす役割につきまして、これは先生の御指摘どおり、一億二千万の国民に食糧を安定的に供給する、そういう形の中に実は健全な地域社会を形成する、あるいは国土の保全など、我が国経済社会の発展や国民生活の安定にとって重要な役割を果たしておることは先生御存じのとおりと思うのです。  そんなことですが、しかし、現下の農業を取り巻く情勢は内外ともに非常に厳しい。第一番には、米と一部農産物需給の不均衡、第二番目は、先生今御指摘の規模拡大の停滞、諸外国からの市場開放要求あるいは行財政改革推進などがあり、極めて厳しい状況でございます。  そんなことで、私は特に次の三点を中心にこれからの農業を進めてみたい。第一は、生産性の高い、土台のしっかりした農業の実現、第二番目には、二十一世紀に向けてのバイオテクノロジー等先端技術の開発、第三番目には、活力のある村づくり、こんな三つの点に力点を置きまして、農業に携わる方々が明るい希望の持てるような農業をやりたい、こんなことでこれからの施策を進めてみたい、こう考えております。
  210. 西田八郎

    西田(八)分科員 生産性の向上ということは、これは当然のことでありまして、農林省もそういう点では一時は増産品種の奨励、そして少し米がとれて余剰米が出るというふうになってくると、今度はおいしい米、水晶米というような言葉を使っておられますが、おいしい米をというふうに転換をしてこられました。しかし、私は、アメリカのハイブリッドは非常に増産品種だと言われておりますけれども、それでも反当たりの収量というものは三倍にも四倍にもならないと思うのですね。今、バイオテクノロジーの時代に入って、いろいろ品種改良もやっておられるようでありますけれども、しかし、それは幾らやってみても十倍も二十倍もということにはならないと思うのですね。また、それだけのものを収穫するだけの地力というものは全くなくなっていくのじゃないかなと思うわけです。そういう点から考えまして、やはり規模というものをもう少し拡大しなければならない。  これは私ごとでまことに恐縮ですけれども、実は私の秘書をしておりますのが田舎で少し田んぼをやっております。少しと言いましても一町歩近くやっておるわけですけれども、私から支払う年間の給料が約四百万円ほどです。そして、おやじ二人と夫婦、子供三人、七人の家庭で、おやじさんも働きに行っている。それで一町歩の田んぼをやっておって、大体三年に一遍ぐらい機械の買いかえをしなければならぬということになりますと、私から払う給料の半分は農業の肥料代、機械代に使われてしまう。結局農業収益というものは、家計の中では何かあるのかないのかわからぬような存在になっておる。それでもやはり米をつくらなければならぬというような心配をしておるわけであります。だから、そこの部落で、私どもの方では在所というのですけれども、約四十軒ほどです。総面積を合わせますと約五十町歩ぐらいの田んぼがある。その部落の中で専業農家が何軒あるかというと、わずか二軒しかない。したがって、その二軒にもう二、三軒農業をやりたいという人を集めて共同で四十町歩の田んぼを経営すれば、もっと収益の高い農業になるのではないかと私は思うのですね。  したがって、現在の小規模農業をそういう形で採算性のとれる農業にするために、生産法人方式であるとか協業方式とかいろいろやっておられるわけでありますけれども、もう一歩突っ込んで集落農業というものを考えてみたらどうだろうかと思うわけですが、これは大臣からでなくて関係局長から、構造改善局長かどなたかお見えになっていると思うので、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  211. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 今御指摘になりましたように、滋賀県におきましてはほかの地域と違いまして兼業率が非常に高うございます。しかも、在宅兼業ということで、通勤をしながら農業をしているということでございますし、また機械投資についても非常な過剰投資になっているようでございます。そういうことで滋賀県庁におきましても、集落ぐるみで生産性の高い農業を実現していくということで独自の事業をやっておられるように聞くわけでございます。  やはりおっしゃるように、今土地を買い求めまして規模を拡大していくということは地価の状況からいいまして事実上不可能でございます。したがいまして、利用権を設定していきますとか、あるいは村ぐるみで特定の数人の人にそういう農作業を委託していくようなやり方で規模拡大を図っていくというのが現実的だと思います。最近の状況を見ますと、確かにもう農家の後継者がいないような家庭も出てきておりますし、それからまた、新しく機械を買うにしましても多額の金がかかるということで、できればだれかに任せたいというような農家も出てきております。片や農業を専業的にやっていきたいというような方もおられますので、そういったところをうまく組み合わせまして、やはり地域地域実態に即しまして、先生がおっしゃるような形で生産性の高い、規模の大きい農業が実現できますようにこれから努力をしていくべきだろう、そういう方向だと考えております。
  212. 西田八郎

    西田(八)分科員 そこで、大臣、今局長もお答えになるように、そういう方向というものは奨励していきたいということなんですが、今滋賀県ではそうした集落農業を成功させてみようということで、地域を指定して県単事業で県が奨励しておるわけなんです。しかしながら、いろいろな隘路があるわけなんですね。そういう隘路打開のために強力な指導、言うなれば、補助金カットカットと言っている中で補助金を出せというのはおかしな話ですけれども、そうした意欲を持っているところに対してはある程度の指導、援助というものが必要ではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  213. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 確かにおっしゃるとおりでございまして、私どもといたしましても、そういう地域の活動といいますか、集落、部落を基礎にいたしまして大規模な農業を実現していく、そういう活動を促進していく必要がございます。  この点につきましては、本年度までは地域農業集団ということで、大体一ないし二集落ぐらいを単位にいたしました集団に対して補助金を交付したわけでございますけれども、若干金の使途等につきまして不適切なところがあったものでございますので、来年度からは市町村に対しましてこういう地域農業集団の活動を促進するための予算を計上いたしております。したがいまして、これからは市町村あるいは県を通じましてそういう地域農業集団の活動をさらに助長していくようなことを考えていきたいと思います。なお、そういう活動を土台にいたしまして、具体的に利用権の設定なりあるいはいろいろな施設をつくる、さらにひいては基盤整備まで行う、そういう地域につきましては、それぞれの事業もございますのでそういった事業対応していきたい、このように考えております。
  214. 西田八郎

    西田(八)分科員 そこで問題になってくるのは、二、三点あるので固めて質問しますから、ひとつお答えいただきたいと思うのです。  まず農機具が余ってくるわけですね。集落でやりますと大きなトラクターになりますから、今個別に使っておる農機具は余ってくる。この農機具をどうするかというのは農家の大きな悩みの一つなんです。私は繊維工場の関係でいろいろと繊維産業対策をやってきたわけですが、織屋さんとか紡績屋さんが余った機械を残存者が買う、それに対して政府が後で援助をして、買い上げ方式というのをとっておりますね。ですから農機具もひとつ買い上げ方式をとって、東南アジア方面の、日本の農業を、水田をやっておるところはたくさんあるわけですから、これから間に合うと思いますが、そういうところへ少し経済援助という形でやられたらどうか、そうすれば東南アジアの農業ももっとよくなるし、民生も安定する方向へ行くでしょうが、そのようなことをひとつ考えたらどうかということ。  それから、そこへ行くまでの過程で今一番問題になるのが、先ほど局長が言われたように嫁の来手がないのですよ。この間も農協の婦人部の有志の方々と話をしておったら、もう嫁さんの来手がのうて困っておるのだ、それだったらあなたのところに娘さんおったらどうすると言ったら、やはり農家に嫁にやりたくないという話が出まして、そんなことで嫁さんもらおうという方が厚かましいでという話をしておったのです。本当にこれは北海道から東北、九州に至るまで農家の嫁の来手がないというので困っておられる。それと同時に、やはり三十になっても、三十過ぎても、友達はどんどんと、勤めに行っておる者はいい新家庭を持っておるのに自分に嫁さんの来手がない、こんな百姓いつまでもやっておられるかというので、やはり後継者問題というのが出てくるわけですね。したがって、こうしたいろいろな問題が派生的に出てくるわけですが、そうしたことについてどういうふうに対処されているのか。今そういうことを市町村を挙げてやっておるところもあるわけですけれども、農水省として一体どういう指導なり対策をしてこられたのか、簡単にお伺いしておきたいと思います。
  215. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 第一の機械の問題でございますが、先生からは余った機械を東南アジアへ援助で出したらというお話もございましたが、現在のところはまだそこまでの対策を仕組むのはなかなか難しい状況にございまして、私どもやっておりますのは、農村の現実に即して機械の有効利用を図るということで、農家の間では、先ほど来お話が出ておりますような共同利用や生産組織で有効に活用する、それから米だけではなくて麦その他非常に広くいろいろな作物に使うということ、それから非常に大事に長く使う、そういうことで有効利用すると同時に、中古のものについては、多少中古の農業機械の市場と申しますか流通の一つのシステムをつくるということで、できるだけそういうものを促進するような助成をしております。  次に、嫁不足の問題については、お話の中にも出ましたが、農家御自身の意識がなかなか、自分のところの娘さんは余り農家にやりたくないというような非常に矛盾したものを持っておられまして、非常に簡単にはいかないと思うのです。私どももプライバシーの問題だとか意識の問題が絡みますので、非常に行政権というか行政の立ち入りにくい分野だと思っております。ただ、後継者育成という意味では大変大事なことでございますので、従来からもいろいろな農村の青年の交流促進とかあるいは相談活動とか、こういう面でお嫁さんの問題も含めて若い人たちの問題を取り上げていく、そういうような面で留意をしようと思っております。それからお話にも出ましたような市町村や何かの段階でかなり実際に工夫していろいろ取り組んでおられる例も承知しておりますので、そういうところで効果が上がっている例なんかもこれからいろいろ参考にさせていただきたいと思っております。
  216. 西田八郎

    西田(八)分科員 やはり問題の根本的な解決というのは農家の生活改善と農業近代化ということに尽きると私は思うのです。農業そのものに魅力があれば嫁さんの来手もあるわけだし、後継者もどんどん出てくるのだろうと思うけれども、朝から晩まで、朝は朝星、夜は夜星と言われるくらい働いても一向に収穫が上がらぬ、生活も余り楽ではない、結局共働きをしながらお米をつくらなければならぬという、こういう農業実態というものがやはり若者をして魅力を失わしめておると思うんですね。したがって、経営規模を拡大するなり、あるいは適地適産、いろいろな農産物を指導よろしきを得て配分をされて、そういう中で、米作だけじゃなしにほかの収穫の中から収益が上がるというような多角的の中規模の農業といいますか、まあ大規模まではいかぬでしょうけれども、中規模農業指導していくということが極めて大事ではないかというふうに思います。その点については農林省の頭が痛いところで、いろいろと指導しておられるのでしょうけれども、やはり農業従事者の意識革命という問題もありましょうし、また、農協の方々の指導というものも必要でありましょうが、そういう点についてひとつ一層の努力をしていただきたいと思います。  滋賀県は近畿の水がめと言われる琵琶湖を抱えておるわけですが、そこで、土地改良、圃場整備をされますと、用水と排水が別になっておって、昔は、上の田んぼから下の田んぼへだんだんと水が流れてきて、そこに含まれておる肥料を下の田んぼが吸い込むという形になっておったのですが、今、土地改良なり圃場整備されますと、ほとんど平面的にやられてしまって、そしてU字溝で用水は用水、排水は排水と、その排水がコンクリートの溝を流れてダイレクトに河川に流れ込む、あるいは湖沼に流入する。そして、今はほとんど有機肥料ではありませんから、通常、化学肥料を使われる。やはり人情の常として、一握りでも余計やればと思ってやる。それだけ燐でも窒素でも余計になって、それが水と一緒に流れ込んで汚濁の原因になっておる。  そこで、琵琶湖総合開発で水をきれいにしようという。我が滋賀県におきましては、ひとつこれの循環利用を考えたらどうかということを、今盛んに、農林省の方でも奨励をしていただいてやっておるわけですが、この対策というのはどの程度進んでおるのか。そしてまた、その効果というものは、実際の河川、湖沼等の水質保全、汚濁防止に役立っておるのかどうか、その辺のところをひとつ見解を聞かしてください。
  217. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 今御指摘のようなお話につきまして、私ども検討しているわけでございますけれども、やはりこういった計画につきましては地域地域実態に応じまして計画を立てていくべきものだと思います。したがいまして、今、滋賀県の実態がどのようになっているかは私、十分承知をいたしませんけれども、そういうような可能なところにつきましては、恐らくそういうことも計画の中に入れまして実施をしているのじゃないかと思います。  なお、土地改良事業といいますか、構造改善局といたしましては、滋賀県のようなところでは特に琵琶湖の水質を保全をする必要が高いということで、集落排水事業等についても積極的に実施をしておりますので、それにも合わせまして、琵琶湖の水質についてはそれなりの注意を払っているつもりでございます。
  218. 西田八郎

    西田(八)分科員 これは琵琶湖に特別に、五十七年ですか、第二期計画のときに特別の事業の三つの中の一つにお認めいただいて県でやっておるようですけれども、しかし、これは琵琶湖だけの問題ではないと思うんですね。これは肥料のむだをなくするという意味からも、また水を大切に使うという意味からも非常に意味があるのじゃないかと私は思うので、こういう点につきましては、ひとつさらに努力をし、力を入れていただきたいというふうに思います。  まだいろいろとあるわけですが、最後に林業対策について二、三お伺いしておきたいのです。  この間、私の知り合いの人が林野庁関係をしておられまして、大変心配をしておられました。このまま日本の山をほうっておくと、もう百年先には水の保全能力さえなくなってくるのじゃないだろうかという話が出ておりました。事実、今度異常渇水で琵琶湖の水位が九十六センチから下がりました。今復元しつつあるというものの、これは大阪へ送る水を制限しておるから幾らか貯水できておるわけですけれども、私は、直接湖なり沼なりで水をためる以前に、やはりもう少し地下水として保全できるような方法、すなわち森林の涵養というのは極めて重要な問題ではないだろうかというふうに思います。しかし、今日の森林は、戦後の非常な乱伐がたたりまして現在非常に荒廃してきておると言われておるし、ですから、せっかく植林をいたしましても、要するに手間がないために間伐ができない、あるいは間伐材の利用先がないということで、山を持っている人、森林業者は非常に困っておるわけですね。最近、いろいろな地域でそれを利用した家具であるとかあるいは合成した材料だとかをおつくりになっているようですけれども、やはり基本的に燃料に使わなくなってかなり間伐材というものの用途がないということと、やっても採算が合わないというようなことで、森林育成の非常に大きな阻害になっていると思うのです。  それだからといって、今ほうっておけないと思うんですね。したがって、各県におきましても林業対策をいろいろ進めておられるわけですし、私どももこの林野の対策のために、政府予算になかった二百億円というものを今度修正要求で出したのですが、見事故府・自民党から断られました。しかし、やはり国土保全の意味からも、しかも日本の農業が、欠くことのできない水田農業、平地にしなければならぬ、そして水を使わなければならぬという農業である限りは、もう少し山というものを大切にし、水というものを大切に保全していく方法というものを考えていかなければならぬと私は思うのですが、これに対して林野庁長官、どうお考えになっておるか、ひとつお伺いいたしたいと思います。
  219. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 森林は緑のダムとも言われておりまして、大変大きな保水力を持っておるわけでございますけれども、やはり健全な森林と申しますと、土壌とも一体となって森林である。戦後、私ども、いろいろな努力で大変な造林地もつくりましたけれども先生御案内のように人工林でございますので、間伐をいたしませんと林内が非常に暗くなる。地表の植物も消えてしまう。そうなりますと、雨水などによりまして地表に雨裂が生ずるというような大変憂うべき現象も出るわけでございます。お話がございましたように、本当に間伐は急務でございます。関係者の努力によりまして合板的に使う、板に使う、あるいはこれを飼料あるいは家畜の敷きわら材料あるいは畳の床、各方面の利用法を研究しておるわけでございますけれども、まだもう一つはかばかしいものが、これというものまでは残念ながらありませんが、さらにこれには研究費をつけまして精力的にやることといたしておりますことと、間伐の推進につきましても、これはまとまりませんと、道をつけるにいたしましても何をするにしましても効率がよくありませんので、集団的にやるような新しい間伐のやり方、売れる先まで見届けるようなやり方を、この苦しい予算でございますが、間伐だけは大分伸びまして、ことしは重点としてやろうとしているところでございます。
  220. 西田八郎

    西田(八)分科員 これで質問を終わりますが、最後に大臣にお願いをしておきたいと思います。  先ほど来申し上げますように、日本の農業というものを守っていくためには、私はやはり思い切った施策が必要だ、農業過保護なんという言葉も出ますけれども、イギリス、フランス、アメリカ等の各政府が農業に出しておる補助金から計算をしましても、日本の農業はそんなに高いところにないと思うのです。問題は、ばらばらにいろいろな形で出されるから、まとまったお金が入ってこないというところにやはり問題があると思うのです。しかし、先ほどから申し上げますとおり、食糧の自給率を高め、安全を確保する意味におきましては、やはり抜本的な対策が必要だし、それに必要であるならば、私どもはそうした点について思い切った施策をされることを強く望んでおきたいと思います。  最後にそのことを申し上げまして私の質問を終わるのですが、大臣ひとつよろしく頼みます。
  221. 大村襄治

    大村主査 これにて西田八郎君の質疑は終了いたしました。  次に、松浦利尚君。
  222. 松浦利尚

    松浦分科員 大臣にまずお願いをしておくのですが、実は昨年の予算分科会で山村農林大臣議論をしたのです。そのときに山村農林大臣は、アメリカとの農畜産物の輸入問題ですが、この問題で、もし輸入枠を拡大するようなことがあったら席をけって帰ってきます、会議録を見ていただければわかります、去年の分科会ですから、そう約束をされたのですが、輸入枠拡大を押しつけられたけれども、その前に席をけっては帰ってこなかったのですね。それからまた、あのときにはハイブリッドライスだったのですけれども、韓国からそういったものが上陸してきたときにあなたどうするんですかと聞いたら、いやそんなことは絶対にない、そういうことはまたできません、こう言って断言をしたのですが、御承知のように韓国からお米が入ってきた。  一体、国会議論というのは何のために議論をするのか。そのたびごとに、輸入枠を拡大されるたびごとに、宮崎県のような畜産を中心とした農業県の農家は苦しみ続ける。農家を守るべき農林省が、国会議論した約束も守れずに、ただ通産省等の貿易摩擦、黒字減らしの対象として、唯々諾々と妥結をして帰ってきた。しかし、農畜産物を完全自由化してみたところで、三百四十億ドルとも言われておる黒字幅のほんのわずかの部分にしか当たらない、そういう状況なのです。  ですから、まず私は今から質問をする前に、大臣の決意、ここで私たちと議論をしたことは必ず守り通す、日本の農家を守るためにやり抜くのだ。もう御承知のように、山村農林大臣はあの「よど号」事件のときに、男山村新治郎と言われたのでしょう。そういう言葉もあのとき出たんですよ、私との議論のときに。しかし、男山村新治郎じゃなかったわけですね。いろいろ政治的なあれがあったのでしょう。この際、大臣の決意を冒頭お聞かせをいただいておきたいと思うのです。
  223. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松浦先生にお答えします。  実は私はこの話は初めて聞いたわけです。恐らく山村前大臣もその決意を持っておやりになったと思いますが、総合的に日本の置かれている立場とか国内事情を勘案しながら、やむなくのまれたというようなことであったと思います。  私は、日本農業を守るという立場を堅持しております。昨年十一月就任以来その方向で頑張っておるわけでございまして、私はここで大きなことは余り言いたくありませんが、私の信ずるままに、私の見識のままに、きょう議論を交えたことは必ず守りたい、こういうふうに考えております。
  224. 松浦利尚

    松浦分科員 それでは、少し事前のレクチャーと逆になりますけれども、御承知のように、アメリカで議会に一九八五年の農業調整法、新農業法というのが出されております。レーガンは非常に強硬に、従来の農政の保護政策を転換して——アメリカの農業政策というのは価格支持政策、補助金をたくさん出して、そして増産をして農家の所得を維持しながら外国にまたどんどん輸出をする、逆に言うと、国内における農家の所得を高めるために実はそういう政策をとってきた。しかし、財政が赤字のために思い切って農家の補助政策というのを削減してしまった。ですから、今アメリカの農業というものは転換期に来ておるために、大変な混乱が起こっておると報道されておるのですね。政治的には、レーガンは強硬に主張いたしておりますが、これからの議会の成り行きでどういう方向に進むかは定かではありませんけれども、レーガン大統領は強硬な主張を続けておる。  結果的に、今アメリカの農家の生きる道というのは、価格政策を失っておるから、逆に言うと農畜産物価格が下がるということでありますから、農家の所得を維持するためには強烈な輸出ドライブがアメリカ国内で起こってくる。当然のように、その行き着く先というのは日本である。御承知のように四年間で二万七千トン、年平均六千九百トンの輸入を山村農林大臣が約束をしてきておるわけでありますが、これに倍増した圧力というのが、またぞろアメリカからかかってこないという保証はないですね。御承知のように、アメリカの畜産価格と我が国の価格を比べた場合に、我が国の国内市場における価格は約二倍、安いから買えという強力な圧力がかかってくることは間違いないと思うのです。  そのときに農林大臣はどのように対応されるのか。一方では、御承知のように三百四十億ドルの黒字に対する貿易摩擦が起こってきておる。電電の民営化に伴う通信機器の輸入問題を含めて、四つの問題が今盛んに議論されていますね。しかし、必ず農産物に振りかかってくるわけですね、間違いなく。自動車の自主規制も我が国にそのげたを預けられている。おまえの方でやれ、うちの方はもう規制枠を外してよろしい。また標的にされる農家を守るという意味で、どういう手だて、どういう政策をお持ちになるのか。もう本当に今危機に来ておる、農家は農林大臣にすがる以外に生きる道はないのですよ、対抗していくには。この際、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  225. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松浦先生にお答えしますが、実は新農業法の問題というものは、先生も御存じと思いますけれども、私は飼料穀物、穀物中心、こんな理解をしておるわけでございます。  実は、日本はアメリカから五十六、五十七、五十八の三カ年平均で九十三億ドル輸入してございます。輸出が四億ドルで、実際は八十九億ドル輸入超過、こういう形でございます。  そんなことでございまして、先生が御指摘のとおり、昨年日米間の牛肉交渉は決着を見、そしてその誠実な履行を今やっておる現状でございまして、私は、ここ当分はそういう牛肉に関する摩擦はない、こう確信しております。  ただ問題は、アメリカは今先生指摘のとおり多くの牛肉を輸出したいと考えていることは事実だと思います。これに対しまして、私は、牛肉の輸入については、需要のうち合理的な国内生産で不足する部分についてグローバルベースで行うこと、第二番目には、輸入が国内農業の健全な発達と調和のとれた形で行われることを基本として、今後とも重大なる決意を持って対処します。
  226. 松浦利尚

    松浦分科員 決意はよろしいですよ。しかし、今までだまされ続けてきたわけです、こんなことを言っては悪いですけれども大臣の責任ではありませんよ。これは今までの農林省の意思でもない。やはり国の大きな政策の中で門戸を開放せざるを得なかったという状況なんですね。しかし、結果的に泣かされるんです。  御承知のように、アメリカでは何か健康食ということで、昔は肥えておるのがよかったのですが、どうも肥えておるのは牛肉を食い過ぎたんだということで、これは私の調べた範囲内ですが、年間十五ポンド減、今八十九ポンド程度しか食べなくなった。ところが、アメリカの生産量というのは下がらない。国内の市場は冷えておる。結局、その生産余剰畜産物というのは近く必ず日本に向かってくる、価格政策がなくなってきておるわけですから。今は四カ年という約束がありますからね。しかし、恐らくこれに対してもっとやれ、もっとやれという完全門戸開放、あるいは二十二品目の輸入制限品目について開放せよという要求が出てくるかもしれない。  これはもう農林省の役人じゃだめなんですよ。政治的にどうするかということなんですよ。もう一遍大臣お聞かせいただきたい。
  227. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松浦先生にお答えします。  役人ではだめじゃないかというのは少しあれだと思うのです。私一人じゃなくて、農林水産省の役人は強く頑張っております。  そんなことでございまして、私は日米関係を実は総合的に配慮しておりまして、アメリカも日本をぜひ必要だと思っていますゆえ、総合的な問題で、例えば四品目について、四分野についていろいろと議論されているわけですが、私はその場合には、多分いろいろな状況が出てくるかと思いますが、先生の御期待にこたえるよう頑張る、役所と一緒に頑張るということをお誓いいたします。
  228. 松浦利尚

    松浦分科員 ありがとうございました。  私が役人ではだめだと言ったのは、農林省の役人の人たちが一生懸命頑張っても、最終的には政治的にぽんとやられるという意味なんです。そういう意味ですから、決して役人の人たちがだめだと言っておらぬです。農家を守るため一生懸命しておることは認めます。ただ、最終的に農林水産省の皆さんの意に反して開放せざるを得ない方向に引きずられてしまう、それは政治の力だ。その政治の力を持っておるのは大臣じゃないか。だから、大臣が決意して、場合によっては辞表を出す、こんなことをしたらおれは辞表を出すぞというくらいの腹構えでやってもらわなければ困るということを私は強く申し上げておる。私たちは野党の立場ですけれども、そのためなら一生懸命大臣を支援することにやぶさかでありません。農林大臣頑張れというエールを送りたいと思います。  また同時に、日本の国家統制であるお米、小麦、こういうものについても恐らくアメリカから、それはおかしい、ある意味では保護政策ではないか、何で門戸を開放しないか、自由化しないかという要求が出てくると思いますよ。その点についても、私は今大臣が言われたことで信じたいと思います。ぜひ頑張っていただきたいと思います。
  229. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松浦先生にお答えします。  実は昨年十一月に合板の問題が出てまいりました。あれは役所が一緒になって守ったのです。よく頑張ってくれました。そんなことでございますので、私は役人は信頼に足りる役人だと思っていますので、一緒に頑張りますからよろしく御後援のほどをお願いいたします。
  230. 松浦利尚

    松浦分科員 そういう防波堤があって、初めて国内の農業政策というのが生きるのです。  これから国内の問題についてお尋ねをいたしますが、御承知のように南九州、宮崎県などは非常に畜産の盛んな県であります。農林省等の御指導あるいは助成策をいただいて、大規模肥育がずっと進んできたわけです。ところが、大規模になればなるほど経営が苦しいのです。農業に倒産という言葉はないのですけれども、結局離農せざるを得ない、たくさんの借金を抱えて離農せざるを得ないという人が宮崎県にも多く出てきておるのです。  当面、具体的に酪農、肥育、養豚、ブロイラー、採卵等の固定負債と言われているものがどれぐらいあるのか、その点お聞かせいただきたいと思います。
  231. 野明宏至

    ○野明政府委員 負債の額につきましては、これはいろいろな要因があるわけでございますが、数字について申し上げますと、酪農経営でございますが、全国平均で一戸当たりを見てみますと、負債は約一千三十九万円、これに対しまして資産の方は約四千三百万円というふうな状況になっております。それから肥育牛につきましては、負債が約一千五百万円、資産の方は四千六百万円、それから養豚でございますが、負債が約七百万円でございまして、資産が四千万円、それからブロイラーにつきましては、負債が五百七十万円に対して資産が二千八百九十万円、採卵鶏につきましては、負債が四百二十万円に対して資産が四千九百万円、こういったような状況になっております。
  232. 松浦利尚

    松浦分科員 大臣、今お聞きになったように、肥育農家で、これは全国平均一戸当たりでですよ、一千五百六十万の負債を抱えておるのです。これはもう大変な額ですよ。大規模になればなるほど負債がふえる。今具体的にこれだけの負債を抱えて倒産をするところがある。弱肉強食だから、倒産してしまえば、あとは健全なところ、強い者が残るということであれば、これはもう自然淘汰という形になりますけれども、しかし、少なくとも今まで国内において、農林省の指導に従って規模拡大をしてきた、そして今価格が低迷しておるために倒産をしかかっている、こういう農家について——確かにいろいろな救済制度というのがあることも事実です。農業信用保険協会等の信用保証、保険金の関係等もあることは事実でございますけれども、いずれにしましても、こうしたこれからまだまだふえていくであろう、離農しなければならないように追い込まれてきておる農家に対して、具体的にどういう措置をお考えになっておるのか、そのことをひとつお聞かせいただきたい。
  233. 野明宏至

    ○野明政府委員 確かに負債も大きいわけでございますが、全般的な動向といたしましては、それを上回る資産の増加も見られておるわけでございます。畜産経営状況について見ますと、やはり急速に規模を拡大いたしていきます過程の中で、特に肉用牛生産農家の一部につきましては、生産資材価格や畜産物価格の変動、そういった問題に加えまして、生産性の向上のおくれといったようなことで負債が累積、固定化する、そういうことで借入金の償還が難しいという農家も、一部についてでございますけれども出てまいっております。  これに対しましては、先生御案内のように、五十七年に、地元の金融機関で償還期間の延長とかそういったような自助努力をするということと相まちまして、肉畜経営改善資金の貸し付けを行ったわけでございます。同時に、農家みずからの経営、家計全般にわたる合理化努力、それから関係団体一体となった指導というふうなことで経営改善を図ってまいっておるわけであります。  その後の状況につきましては、繁殖経営につきましても、子牛価格が回復してまいるというふうなことで、また例の補てんの制度、子牛価格安定制度といったようなことで経営の安定に努めますとともに、肥育経営につきましても、最近枝肉価格なりえさ価格が安定をしております。それから、素畜につきましても低下といったようなこともありまして、一般的には経営は改善されてまいっておるわけでございます。  ただ、先ほどもお話しいたしましたように、先般肉畜経営改善資金を貸し付けました農家の中にも、素畜費やえさ代につきまして借入金に依存している度合いが非常に大きいといったような農家、それから、過去素畜が高いときに経営に導入した、そういった個別経営の中には、なお借入金の金利負担とそれから償還ということで経営改善いまだというものが一部あるわけでございます。こういった個別経営につきましては自創資金の再建整備資金の融通を行っておるわけでございまして、これについては貸付枠も前年を上回るものを要求いたしておるわけでございますし、それからその他の制度金融、これは、近代化資金についても限度額拡大するとか、それから素畜の購入育成資金、これも償還期間とか据置期間を延ばす、それから畜産振興資金につきましても貸付枠を広げまして、また制度的にも整備するというふうな措置をとることにいたしておるわけでございます。  これからも農家自身の経営改善努力と、それから農協とか地方公共団体とかそういった関係団体の一体となった経営指導と相まちまして、経営改善に努めていきたいというふうに考えております。同時にまた、枝肉価格とか飼料価格とか素畜価格なんかの動向にも留意しながら、先ほどのような指導と相まって、実態の把握に努めつつ対処していきたい、こう考えております。
  234. 松浦利尚

    松浦分科員 今局長さんのお話を聞いておると、農政というのはまことにきれいですよね。ところが、実際にはそういう姿ではないのですよ。それは、農家の方の経営のまずさもあると思うのです。しかし、こういう言葉があるのですよ。肥育農家の人たちは、素牛、生産子牛ですね、これの価格が低迷したときの方が赤字が減るからいいと。逆に今度は生産子牛価格が上がってきますと、それはみんな放棄するから、生産の素牛まで全部売ってしまって、個数が減りますと、子牛価格が上がる。上がってくると今度は肥育農家の方が困るという、うまいぐあいに農家自体のところでバランスしているのですよ。そういう現象がずっと続いてきているのです。どこかに犠牲が転嫁されておるのですよ。だから、非常に言葉ではきれいだけれども、あらわれている現象というのはそういう状況で、常に農家が苦しむということになるのですね。  ですから、もうこれ以上、一生懸命しておられる農林省にこっちはお願いする側ですから余りやかましく言うつもりはありませんけれども、また、やかましく言っておるととってもらっては困りますが、いずれにしましても、現に農家の人たちがまじめに農林省あるいは地方自治体の指導に従って規模拡大をして、鋭意努力しておるにもかかわらず、結果が悪かった、それはおまえの経営が悪かったから仕方ないじゃないかという形で葬り去られることのないようにしてもらいたい、ぜひもっと温かい手を講じていただきたい、これが私のお願いしている基本である。言葉で言われることはよくわかっております。そのことをぜひ御理解いただきたいと思います。ぜひお願いします。
  235. 野明宏至

    ○野明政府委員 御趣旨に沿って指導に努めてまいりたいと考えております。
  236. 松浦利尚

    松浦分科員 また私がこんなことを言うと東京の消費者の人たちから怒られるかもしれませんが、やはり一番問題になるのは、最終的には価格だと思うのですよ。ところが、十年間ほったらかされておるのですよね、すべての価格が十年間。やはり価格というのは生産費と所得を償うものでなければいかぬですよ。安ければいいというものじゃないですよ、農家が壊滅して生産はないわけですから。だから、やはり農家が生産を維持できるためには生産費と所得を償うだけの価格政策というものが必要じゃないですか。日本の農業が必要ならですよ。そう言うと、よく、いやそれは消費が減りますよ、価格が上がるから消費が減りますよと。しかし、消費が減るという現象は、これは今日の市場原理であって、むやみやたらに上がったときには下がるのは当たり前だ、成り行きで。ですから、その兼ね合いが非常に難しいということはわかりますよ。べらぼうに高くして消費が落ち込んでしまったら何にもならぬわけですからね。  ですからそういうバランスを考えてみても、やはりずっと物価は上がってきておるわけでしょう、生産費は上がってきておるわけでしょう、そういう中で、農家の人たちだけに十年間据え置きというのはどんなものでしょう。大臣、それはやはりいろいろ抵抗もあると思いますよ。しかし、やはり日本の農業が必要なら、日本の農家の生きる道というのは考えてあげなければいけない。その点についてお答えいただきたい。
  237. 野明宏至

    ○野明政府委員 畜産物価格につきましては、畜産物の価格安定等に関する法律に基づきまして、安定上位価格と基準価格を決めましてその価格を安定させる、幅の中で安定させていくということでやっておるわけでございます。例えば、肉専なんかにつきましては中心価格水準と上位水準の中間ぐらいのところへ大体安定してまいっておるわけであります。したがいまして、これからもそういうことで畜安法に基づきまして価格安定に努めてまいりたいと考えておるわけであります。  ただ、今お話しの安定価格自体をどうするかという問題につきましては、それぞれの生産条件あるいは需給事情の変化、経営状況といったような各種の要素を総合的に考慮いたしまして、畜産振興審議会の意見を聞いて適正に決めてまいりたいと考えております。  牛肉の問題につきましては、いずれにいたしましても、先ほどからお話ございますように海外から根強い市場開放要求というものがあるわけでございまして、そういう中で、国民に対しまして牛肉を安定的に供給していくという観点から、合理的な国内生産振興を図っていかなければいかぬということで、先般法律を改正いたしまして、さらにそれに基づきまして近代化方針をつくり、そういうことを踏まえて経営体質の強化と生産性の向上というものに重点を置いた施策を進めておるわけでございますが、この点に関してはさらにこれからも努力をしてまいりたいと考えております。
  238. 松浦利尚

    松浦分科員 もう時間がなくなりましたから具体的に言いますと、要請書が政府にも出ておると思います。全国中央会からのこの要請、どうするのですか。無視、据え置きですか。もう具体的にお聞きいたします。抽象的じゃありません。
  239. 野明宏至

    ○野明政府委員 全国農協中央会からことしの三月末を控えた要求が出ておりますが、価格の問題とともに各種の政策要求が出されております。私ども、そういった問題も承知いたしておりまして、今月末の畜産振興審議会の意見を聞いて適正に決定してまいりたいと考えております。
  240. 松浦利尚

    松浦分科員 時間が来ましたが、最後に一問だけ。  大臣、新聞に据え置き諮問する、こう出ておったんですよ。これについて据え置き諮問する、こう各社に出ておるんです。新聞で見ましたよ。絶対そういうことはありませんね。そのことだけはひとつ大臣からお聞かせください。
  241. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松浦さんにお答えいたします。  実はまだ何も決めてないのです。今聞いたら新聞の観測記事だそうでございます。そんなことで、今局長が言ったとおりだと思います。  それから先生、私は、先ほどの農家の負債の問題で、資産と負債のバランスを見ておりまして、実は貯金があり過ぎると思うのです、世帯貯金が。なぜ借金を返さぬだろうかと思います。したがって、ここは、例えば農協等の信用事業で逆に高い金利で借りているのじゃないか、それを含めて農家の経営改善をすべきじゃないか、このように実は思っておるわけです。
  242. 松浦利尚

    松浦分科員 大臣、それは私にまた議論を吹っかけたようなもので、あなた、質問時間が終了したときにそんなこと言ったらいかぬですよ。それは全く誤解ですよ。それは大臣誤解ですよ。大臣がそういう発想でおったら、全国の農家の方は怒りますよ。  後でまた議論する機会があるでしょうから、それは大臣改めてください。もう一遍検討してみてください。今の発言は大臣の発言ですから取り消せなんということは申し上げませんが、今の発言についての中身ももう一遍検討していただきたい。どうでしょう、いいですね。
  243. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいまの大臣お話は、要するに個別経営のいろいろな部面にわたってよく指導していかなければいかぬという御趣旨であろうと思います。よろしくお願いいたします。
  244. 松浦利尚

    松浦分科員 大変御迷惑をかけました。終わります。
  245. 大村襄治

    大村主査 これにて松浦利尚君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井光照君。
  246. 吉井光照

    吉井分科員 まず、水産関係についてお尋ねを申し上げます。  まず、外務省にお尋ねをいたしたいと思いますが、山陰沖といいますか、日本海に竹島という小さな島がございますが、この竹島は日本の固有の領土であるかどうか、まずこの点からお伺いいたします。
  247. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 竹島は、日本の固有の領土でございます。
  248. 吉井光照

    吉井分科員 では、水産庁にお尋ねしますが、固有の領土でございますので、当然日本の領海法に基づいて十二海里の水域が設定されていますね。
  249. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 仰せのとおりでございます。
  250. 吉井光照

    吉井分科員 では、日本の漁船のこの海域内での操業は当然できるわけですね。
  251. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 法律上何ら差し支えないものでございます。
  252. 吉井光照

    吉井分科員 今水産庁の方から御答弁いただいたわけでございますが、ここでちょっと外務省の御見解を承りたいのです。  聞くところによりますと、韓国は勝手に五十三年四月に十二海里を設定後、この竹島に二十名から三十名の駐留軍を常駐させておる。しかも、山頂のヘリポートには砲台も設置している、このように聞くわけでございますが、日本の領土においてこのようなことがあっていいのかどうか、この点いかがですか。
  253. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 お答え申し上げます。  まことに遺憾なことでございまして、そのような各種施設が我が国の領土に構築されているということ、不法占拠を韓国が続けているということがあるわけでございます。
  254. 吉井光照

    吉井分科員 では、今日まで日本政府は韓国政府に対してこうした事態に対してどのような態度をとってきたのですか。
  255. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 お答え申し上げます。  従来から、竹島にあります各種施設の即時撤去及び韓国官憲の即時退去を、繰り返し口上書を提出すること等をもちまして要求している次第でございます。
  256. 吉井光照

    吉井分科員 今外務省から御答弁をいただきましたが、こうした事態というのは、日本側から見れば、だれが考えても、また常識的に非常に変な話ですね。しかしながら、いまだもって解決してないということはどういうところにネックがあるのですか。
  257. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 お答え申し上げます。  韓国がこのように不法占拠を続けているわけでございますけれども、政府といたしましては、この竹島の領有権に関する日韓の間の紛争はあくまで平和的手段によって解決を図るとの基本方針に立っておりまして、外交経路を通じて韓国政府に対して韓国の竹島に対する領土権の主張は認められないのだということを厳重に申し入れますとともに、先ほどお話しいたしましたように、各種の施設が竹島に設けられていることについて繰り返し抗議、申し入れを行うなどの外交努力を続けているということでございます。  政府といたしましては、竹島問題は日韓国交正常化の際に取り交わしました紛争の平和的解決に関する交換公文にのっとりまして、外交上の経路を通じて今後とも粘り強く話し合いを続けていきたい、こう考えているわけでございます。
  258. 吉井光照

    吉井分科員 御承知のように、昨年初めて韓国の全斗煥大統領が訪日をされたわけですが、そのときも双方の担当大臣の間でこの問題について話し合いが行われた、このように聞いておりますが、どういう内容のことだったのか、また、その後においてこの問題が一体解決の方向に向かいつつあるのかどうか、その点をあわせてお尋ねしたいと思います。
  259. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 お答え申し上げます。  昨年の秋、全斗煥大統領が来られました際、安倍外務大臣と李源京外務部長官との間での会談におきましてこの竹島問題が取り上げられまして、日本側からは、先ほど申し上げました日本側の立場を述べたわけでございますけれども、韓国側は、これら諸島は自分たちのものであるという従来の立場を繰り返すということであったわけでございます。今後とも大変忍耐強く話し合いを続けていくということではないかと思っておりますし、その信念で努力しているわけでございます。  その後、昨年の十二月に李源京長官が東京に来られました際もこの話が取り上げられていることがございます。
  260. 吉井光照

    吉井分科員 では、もう一度念を押しておきますけれども、この問題についてはただいままでは平行線である、このように理解してよろしいですね。
  261. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 はい、さようでございます。
  262. 吉井光照

    吉井分科員 竹島海域は、御承知のように日本でも絶好なイカ釣りの漁場であるというようにも言われておりますし、現在、日本漁船が操業を自粛しているというようにも聞いておるわけですが、漁民の皆さん方の間からは、一日も早くこの海域において安全操業ができるようにしてもらいたい、このような強い要望があることは関係の皆さん方も御承知だと思います。  したがって、一日も早くこの安全操業に向けての解決を切にお願いをしたいわけでございますが、この問題について、最後に大臣の御決意のほどを伺いたいと思います。
  263. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉井先生にお答えいたします。  既に外務省審議官あるいは水産庁長官が述べたとおりでございまして、現今日韓漁業協定では、領海及び十二海里の漁業専管水域の外側の取り締まりについてはいわゆる旗国主義によるとされております。そんなことで、韓国側にこれを遵守するよう厳しく善処方を申し入れてきたところでございますが、実はこのような違反操業を防止するため、関係漁業者の間には現行協定を見直すべきなどの声のあることも承知しております。  この問題は、日韓漁業関係実態とか韓国周辺水域へ出漁している日本漁船に与える影響等、関連する種々の問題について総合的な判断を要する問題でございますので、関係省庁とも十分協議してまいりたい、このように考えております。
  264. 吉井光照

    吉井分科員 次に、韓国漁船の日本海域内での不法操業、これが相変わらず後を絶たないわけですが、その実態は現在までのところどうなっていますか。
  265. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 先生指摘のとおり、我が国の領海及び十二海里漁業専管水域内の操業、あるいは我が国の沖合底ひきの禁止水域での操業、そういう事件が残念ながら相当起こっておるのが実態でございます。昨年に入りましてからも、山陰沖あるいは長崎県の野母崎沖で大挙違反操業が行われましたため、昨年三月末の第十八回日韓漁業共同委員会あるいは七月の日韓の部長協議におきまして、韓国側の指導取り締まりの強化を強く申し入れまして、一たん五月から八月にかけて事態は好転をいたしておりましたが、九月以降再び違反操業がひどくなってきておるという実態でございます。私ども事態を憂慮いたしまして、外交ルート等を通じて韓国側に違反船の防止措置を要請するとともに、昨年十二月、ちょうど日本に立ち寄りました水産庁の姜庁長と私も直接お話をいたしまして、韓国側の取り締まりを強く要請したところでございます。ことしに入りまして、一月二十八日から三十日までの第十九回日韓漁業共同委員会におきましても、再度強く要請を行ったところでございます。  韓国側も、日本側のこのような繰り返して行いました要請に対して真剣に反応をしておりまして、最近ではまた違反操業が減少傾向でございますが、今なお予断を許さない状況でございますので、今後とも引き続き韓国側に違反操業の根絶について強く申し入れていきたいと考えております。
  266. 吉井光照

    吉井分科員 次に、日韓漁業協定違反が年々増加しているわけですが、五十九年度でも二千件から三千件、このように聞いております。これはどこに原因があるのですか。  また、私はたしか五十五年の予算委員会分科会でもこの問題を取り上げたわけでございます。その折、政府の方からは、韓国とはいろいろと自主規制を中心にして協議、交渉をしている、また同時に、取り締まりも強化している、このような御答弁をいただいたわけですが、その後今日まで既に五年を経過しているわけです。どう考えてみても、この解決に向けて新たな進展が見られないような気もするわけでございますが、一体どういう対策を講じられてきたのか。違反が全然減らないということはこちらの対策の中に何か手落ちがあるのか、また非常になまぬるいものがあるのかと思うわけですが、この点についてはいかがですか。
  267. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  まず、私どもの認識しておりますところでは、一九八〇年代初めのころに比べますと、違反操業はかなり減少はしてきておるというふうに認識をいたしております。例えば領海及び漁業に関する水域内操業について見ますと、最高時、一九八二年には延べ九百八十四隻の違反操業隻数が認められたわけでございますが、一九八四年におきましては百五十隻。それから沖合底びき網漁業の周年禁止水域内での操業を見ますと、最高の年は一九八一年の三千四百九十二でございますが、それに対して一九八四年は千百三十七ということで、現状は決して満足すべき状態ではございませんが、違反件数が減少しておることは減少しておるというふうに認識をいたしております。  ただ、私どもから見まして問題があると存じますのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、例えば、全斗煥大統領がお見えになる前は取り締まりが厳重になってよくなるけれども、それが済んでしまって、ちょっと取り締まりが緩むとまたもとへ戻る。きつく申し入れるとまたよくなるというふうに、安定的に違反操業が減少する傾向にあるというふうに言えない、どうも一進一退の状況にあるというのが私ども一つ遺憾とするところでございます。  それからもう一つは、従来主として問題になっておりました沖合底びき等の関係のほかに、シイラ漬けとかアナゴかごとか、別の漁業種類についての紛争が最近新しく問題になってきておるということが見られます。  関係漁業者の皆さん方の間で、このようななかなか違反操業が根絶できないという状態についての御不満が非常に強いということは重々承知をしておりますし、現在の違反操業に対する取り締まりが、十二海里の外側では韓国側の手によって行われているというところが靴の上からかゆいところをかくような感じ関係者から眺められておる、そういう事態は私どもとしてはよく認識はいたしておるつもりでございます。
  268. 吉井光照

    吉井分科員 さらに、これも五十五年の分科会での水産庁の答弁でございますが、この問題の解決としては二つの基本的な方法がある旨の御答弁をいただいたわけでございます。その一つに、日韓漁業協定を基本的に見直して新しい漁業秩序というものを考えていく、こういう答弁をいただいたわけでございますが、これが具体的に何を意味するのかをお尋ねしたいと思います。
  269. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 恐らく、先ほど来御議論を賜っておりますような問題意識の延長線上でそういうことを考えてみるということになりますると、現行の取り締まりのレジーム、すなわち旗国主義を再検討するということを合意しているのであろうというふうに考えられます。ただ、私どもとして現実にそういう方向に向かって検討を進め得るかということになりますと、この問題は、日韓の漁業関係全般に及ぼします、あるいは特殊的には韓国周辺水域に出漁しております我が国漁船に与える影響というようなこともございまして、総合的な判断を要する問題であるというふうに考えられますので、検討はおのずと慎重にならざるを得ないというふうに考えております。
  270. 吉井光照

    吉井分科員 この辺でそろそろこの問題について何らかの突破口を開く必要があるんじゃないか、このようにも思いますし、そのためには、一度外交ルートを通じて正式に日韓漁業協定の見直しというものを打診してみたらどうだ、このように思うのですが、いかがですか。
  271. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもとしてはなお慎重に考えてみるべき問題点がいろいろあるように存じております。
  272. 吉井光照

    吉井分科員 冒頭申し上げました竹島の問題、そうしたものもいまだもって全然解決の糸口さえも見られない、こういう状況でございますが、どうかひとつ外務省も水産庁もこの問題の早期解決に向けて頑張っていただきたい、このことを心からお願いを申し上げておきたいと思います。  外務省、結構です。ありがとうございました。  次に、農業問題に若干触れておきたいと思います。  農水省はこのほど「農業・農村の長期展望−二十一世紀に向けてのビジョンこと題するところの長期展望をまとめられたわけでございますが、それによりますと、二十一世紀は世界的に食糧が不足するんだ、このように予想をされておるわけでございます。昨年、御承知のように韓国米の輸入、そういったものをめぐって、我が国に食糧不足が到来したのではないか、このような米騒動にも似たような事態が発生をしたわけでございますが、このように、国民は食糧問題については大きな不安を抱くとともに、また国民の大きい関心事だ、このように思うわけでございます。  したがって、将来ビジョンを含めたところの我が国の農業政策のあり方と、そして食糧自給の問題について、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  273. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉井先生にお答えいたします。  国政の基本は、御存じのことでございますが、食糧の安定供給と安全保障の確保、これが国政の基本だと思います。そんなことでございますが、我が国の農業をめぐる内外の情勢は非常に厳しい状況であるのは先生も御指摘のとおりでございます。今後の世界の食糧需給等を見た場合、中長期的に見ると楽観を許さないのではないか、こう考えております。今後の我が国の農政の展開に当たりましては、やはり基本的に生産性の向上を図りつつ、国内で生産できるものは国内で生産する、これを基本に食糧自給力の維持強化に努めてまいりたい、こう考えております。  そういうことで、私は特に次の三点を中心に今後の農業を進めたい、そして明るい未来を築きたい、このように考えております。  その一つは、生産性の高い、土台のしっかりした農業の実現でございます。その次には、二十一世紀に向けてのバイオテクノロジー等先端技術の開発でございます。三番目には活力ある村づくり、こういう点を中心に今後農業の新たな展望を開くべく施策を進めてまいりたい、このように考えております。
  274. 吉井光照

    吉井分科員 大臣から将来展望についてのビジョンをお伺いしたいわけでございますが、その中で生産性の向上をぜひとも図っていかなければならない、このような御答弁もいただきたいわけでございます。  こういったところから、昨年の八月に我が党は山口県におきまして、農家の方五千三百人から回答をいただいたところの農家の経営に関するアンケート調査を実施をいたしました。  その中で、現在の国の農業政策に希望が持てるか、こういった設問に対しまして、もっと農業者の意見を取り入れてほしい、こうした回答が四二・一%を占めております。そして、将来が不安でこのままでは日本の農業はだめになるのじゃないか、このように答えた人が三八・五%、この両者が圧倒的に高い数値を示しております。次に、将来は農業をどのようにされますか、こういった問いに対して、今のところわからないとおっしゃった方が四八・八%と約半数、そして、子供に農業を継がせたいと答えられた方が二六・二%でございます。また、自分の代限りで後は農業をやめたい、こうおっしゃった方が一八・六%、こういったところが非常に高い数値を示したわけでございます。  こうした数値を見ましても、我が国の農政に対して農家の人がいかに大きな不安を抱いておるかということがうかがわれるわけでございます。今も申し上げましたように、大臣生産性の向上を図っていくんだ、このように非常に前向きの答弁でございますが、農家の皆さん方が、こうした農業を続けていこう、生産性の向上を図っていこうという意欲がそこになかったならば、いかに立派な政策を並べてもそれはだめじゃないか、このような気もするわけでございますが、もう一度大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  275. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉井先生にお答えいたします。  実は大変難しい問題を御指摘されたわけでございます。農業に対しまして一番魅力がないのは、例えば兼業農家の収入を見ておりましても平均六百四十万、そのうち農業収入百万、約一割五分、ここに一つの問題があるということだと思います。  そんなことで、大変難しい問題でありますが、経営規模を拡大する、そういう形の中にハイテク等を十分活用しまして採算の合う農業にする、こういう形に持っていきたい、そういうことによりまして魅力ある農業が生まれてくるのじゃないか、このような感じがしておるわけでございます。
  276. 吉井光照

    吉井分科員 今バイテクのお話がございましたが、御承知のように、近年早急にバイオテクノロジーが研究開発されまして、しかも著しい進歩を遂げているわけでございます。この分野はあらゆる面において難しい問題が多く含まれていることは私も承知をいたしておりますが、私の方からお尋ねしたいのは、農産物についてこの分野が導入されることによって、新品種の、しかも良質のものができる反面、人体に及ぼす影響はないのか、この点を伺っておきたいと思います。
  277. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 バイテクの作物の育種などに対する活用の問題でございますが、これまでも長い間作物の品種改良につきましては、いろいろな方法で技術の発展があったわけでございます。バイオテクノロジーのこれまでの技術から、さらに新しい観点からの育種の新技術、そういうふうに私ども理解して研究の開発を進めているわけでございます。したがいまして、こういった技術を利用して新しい品種をつくるに当たりましても、これまでもそうですけれども、新しいものを実用化する段階では、研究者がそういう育成の過程で我々にとっていろいろ有用な特性を確認すると同時に、いろいろと有害な特性についても十分な検討をした上で実用化に向けている、そういう考え方でございまして、御指摘のような問題は作物の育種の観点におきましては御心配はないと考えております。
  278. 吉井光照

    吉井分科員 最後に、今年は国際森林年ということでございますが、これに対する我が国の積極的な取り組み方があると思いますが、その計画をお尋ねしたいと思います。
  279. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ことしは国際森林年でございまして、それに向けて現在省内でもプロジェクトを組みまして検討を進めておるわけでございます。  一つは、森林年の記念の森をつくるということで、東京の近郊で都市住民や何かに森林の持つ有用性なりあるいは森林の持つ緑、こういうものに親しんでいただくということ、それから全国の児童生徒に森林の大切さ、機能というものを十分知ってもらう必要がございますので、各学校にビデオテープでございますとかパンフレットでございますとか、こういうものを配付したいと思っておるわけでございます。予算的には具体的にそう組んでおりませんけれども、全体的な造林経費でございますとかたくさんの林野予算がございますので、こういうものを総体的に森林年を記念いたしまして重点的に使ってまいりたいと考えております。それから、そういう国内関係だけじゃなくて、世界の砂漠化でございますとかいろいろな問題も出ておりますので、国際協力といった意味で、熱帯林業の研究開発のために約五千万ほどの新規の基金出資を予定しておるわけでございます。
  280. 吉井光照

    吉井分科員 終わります。  ありがとうございました。
  281. 大村襄治

    大村主査 これにて吉井光照君の質疑は終了いたしました。     〔主査退席、田名部主査代理着席〕
  282. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 次に、田中美智子君。
  283. 田中美智子

    田中(美)分科員 つい先日、二月二十六日の予算委員会で共産党の中川議員の質問があったわけですが、そのときに、アフリカのエチオピアの穀物の年間一人当たりの量が百七十三キロ、にもかかわらず日本は百十八キロというふうに、飢餓、飢餓と言われているアフリカよりも日本の穀物生産量が少ないということを中川さんが言われたのに対しまして、田中房長が、「穀物の自給率が三二%ということでございますので、実質日本人が一日に食べておる量というものはこれの三倍という形に相なっておるわけでございます。」というふうに答えておられます。これに対して佐藤大臣も、「官房長の答えたとおりでございます。」というふうに答えておられますが、そのとおりですね。
  284. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 計数的にはそういうことになろうかと思います。
  285. 田中美智子

    田中(美)分科員 そうしますと、この穀物の自給率三二%というのは、穀物というのは何ですか。
  286. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 人間が主食用で食べているもののほかに、飼料穀物として牛なり豚なりあるいは鶏、そういうものを通じて人間が摂取しているもののトータルでございます。
  287. 田中美智子

    田中(美)分科員 そうすると、この三二%ということは豚のえさなども入っているわけですね。そうしますと、「日本人が一日に食べておる量」、この日本人という中に豚も入るわけですか。大臣、お答えください。大臣は豚の中に入るのかどうかということです。
  288. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 人間が食べている摂取量なりカロリーということで、三倍に相当するものを食べていると言ったわけでございまして、豚であるとか鶏を経由して人間の口の中へ入っている栄養でございますので、トータルとしては人間が食べているということであります。
  289. 田中美智子

    田中(美)分科員 間接に豚を通して人間に入っているもの、こういうことですね。議事録を見る国民にとっては、「日本人が一日に食べておる量」、こういうふうに書きますと、大臣は豚も人間の中に入れているのではないか。そして、だから日本人は三倍も食っていて大変豊かであるというふうに言われたととられますので、こういう言葉の使い方は非常によくないのではないか。やはりきちっと豚を通して人間が食べるんだ、こういうふうならわかるわけですが、言葉遣いに気をつけていただきたいと思います。  もう一つは、中川さんが質問なさったのは、日本人がいかに自給率が少なくて外国人がつくっている食糧をたくさん食べなければならないではないかということに対して、まさに私たちは満腹しておりますから、おまえたちは満腹しておるんだから幸せではないかというふうにお答えになったようで、非常にこれはちんぷんかんぷんのお答えだと私は感じたわけです。それで、この自給率の問題でもう一度大臣のはっきりとしたお考えや方針をお聞きしたいと思ってきょうの質問に立ちました。  まず、人間の食べる穀物の主食は何%でしょうか。
  290. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 主食での自給率は五十八年度で六九%に相なっております。
  291. 田中美智子

    田中(美)分科員 六九%といいますと、そうすると、主食では日本人は三一%を外国人のつくった食糧に依存しているということですね。  そうしますと、日本国民一人当たりのカロリーは幾らでしょうか。
  292. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 二千五百九十三カロリーと承知しております。
  293. 田中美智子

    田中(美)分科員 カロリーで計算しますと、大体そのうちの何%が日本の国産品でしょうか。
  294. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 五二%程度でございます。
  295. 田中美智子

    田中(美)分科員 そうしますと、大臣よく聞いていてくださいね、主食は三一%外国のものを食べている、それからカロリーでいけば我々の食べているすべてのものの大体半分は外国人のつくっていただいたものを食べているということです。  五、六年前だったかと思います。これは共産党の宮本顕治さんが宣伝カーで街頭演説をしておられるのを私は聞いていたのです。そのときにこういうことを宮本さんは言っていました。てんぷらそばというのは日本人の大好きな本当に日本食と思っているものだ。このそばはどこから来ているかというと、中国とかアメリカとかカナダから来ているものが主である。それから小麦粉、そばは小麦粉をまぜるわけですから、これもカナダやアメリカから来ている。それから汁のしょうゆ、これはアメリカなどから来る大豆なんだ。それからエビてんを揚げる油、これもアメリカなどから来ている。てんぷらの衣も外国から来ている。それからエビもインドとかインドネシアとかというところから主に来ているというふうに考えていくと、国産品は水だけじゃないか。せいぜい刻みネギが入っている程度なんだ。日常我々庶民が食べている、大臣はてんぷらそばなどは召し上がらなくてもっといいものを召し上がっているかもしれませんけれども、庶民はてんぷらそばを大変食べるわけですね。これは一例を挙げたにすぎませんけれども、そうしたものをいろいろ見てみますと、本当に純国産というのは大変少ないというふうに思うわけです。  それで、私は大臣にお聞きしたいのですけれども、今アフリカの飢餓問題というのが非常に深刻になっていますし、これが改善の方向には向いていない。むしろ、ただ食べるものだけでなく、そこから来る病気やいろんなことでさらに深刻度が進んでいるということが、いろいろな報道で日本人に徹底して知られているときに来ています。ですから、小さな子供までがお正月にもらったお年玉をアフリカに送ってあげたいとか、それぞれお弁当は節約してその分をどうかしたいとか、たばこをのむのをやめて送ってあげたいとか、こうした心温まる国民の行動というものが連日のように新聞に報道をされているわけです。何も知らないでいれば、私たちはきょうも満腹食べたと満足感でいるかもしれませんけれども、こういう話を聞きますと、多くの日本人が罪の意識を持つわけです。私たちは悪いことをしているわけではありませんけれども、全人類的に見た場合には、世界の食糧というものを日本人は食っているではないか、自分でつくったものは少なくて、世界の人類のつくった食糧を言葉は悪いけれども食い荒らしているじゃないか。金持ちだから幾ら高くたってじゃんじゃん買っていつも満腹だ。こういうことでは、やはり日本に生まれて幸せだというふうに思う方も、大臣などは思われるかもわかりません、先ほど中川さんへの答弁にはそういうニュアンスを非常に感じたものですから、そういう面もあるかもしれませんけれども、やはり経済大国第二位と言われる日本が、せめて食糧ぐらいは援助ができてこそ、世界の食糧を減らすというようなことはできるだけしないように努力する、こんなことでは恥ずかしいではないか、こういうふうに思うのですけれども大臣は恥ずかしいというふうにはお思いにならないのでしょうか。お答えください。
  296. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生にお答えします。  実は私はてんぷらそばは大好きでして、下の中央食堂で四百八十円、いつも食べています。あんなうまいものはございませんということでございますから、御理解願いたい。  それから、自給力の問題ですが、日本の自給力政策は、基本的には生産性を高めて全部国内で賄うということを中心に、足らない分につきましては安定的輸入を図る、それからまた、輸入等不測の事態が生じた場合を考慮して備蓄しておる、これが基本でございまして、その点特に御理解願いたいと思うわけでございます。  先生のおっしゃったアフリカ諸国の問題でございますが、私、先ほどの日本国民が質量ともに満ち足りた食生活を送っている一方、アフリカで多くの人々が飢餓で苦しんでいるという、食糧が過不足である、これは事実だと思います。ただ、私は今日の日本を見ておりまして、終戦後約四十年たっておりますが、私も軍隊へ行って帰ってまいりましたけれども、敗戦後一体どうしようかということで本当に日本人が懸命に働きました。外国から資源を買ってきて付加価値を高めて輸出する、そういう形の中に懸命の努力をして今日日本を築き上げた、それから日本人の優秀さ、勤勉さ、努力、これが今日の日本を築いたと思います。そんな形の中でどうやら今飯が食えておるというのが姿でございます。  そんなことで、私は人道的な見地からは深い関心と同情を寄せております。実はきょうのサンケイ新聞に、私ちょっと見たのですが、「飢餓救済募金で満足する日本人 良心の免罪符」ということで、ただちょっと寄附するだけじゃだめなんだということが書いてある。そこで、これからのアフリカの問題の解決は、当面は食糧が必要だと思いますが、最終的には、アフリカの特に食糧問題に悩んでいる国の政治家がよく理解し、意識し、そして本当に国民のための政治をやりながら自助努力をする、そういう形の中で本当の農業を自助努力でつくる、そういう形の中に食糧問題を解決をするというのが正しい方向ではないか。そういう意味において我が農林水産省も応援したい、このように考えております。
  297. 田中美智子

    田中(美)分科員 大臣は中川さんのときもそうですが、私のときにもちょっとピントが外れていると思うのです。私は今アフリカ飢餓問題の質問をしているのじゃないのです。飢餓問題をどうしようか、こういう質問は私外務でやろうと今準備をしております。それを聞いているわけではないのです。そういうことが一方で起こっているのだから、世界の食糧を経済大国の日本が食い荒らすことはいけないから、日本の自給率をもっと高めることに努力しないといけないじゃないか、そういう努力が足らないということは恥ずかしくないかと聞いているのであって、農業の基本が付加価値を高めていくのが基本である、基本は理念としてはいいですよ、しかし現実にそういっても高まってないわけですから、細かく言えばいろいろありますけれども、全体のカロリーとしては上がってないわけですから、結局は、アフリカをどう援助するかということではなくて、何しろ人類のつくった食糧を減らしているではないか、だから日本の自給率をもっと上げるということを、基本だけでなくて現実に上げていくということをもっと努力しないと、満腹していることに満足だけでは恥ずかしいという気持ちを持ってもらいたい、こう言っているわけです。  先ほど五二%というふうに言われましたので計算してみますと、日本人一人当たり大体千三百から千四百キロカロリーなんです。今、日本の国産の食糧を日本人全体に公平に分けたときに千三百か千四百キロカロリーぐらいになるわけです。これは厚生省に聞いてみましたら、四十歳の男性と十三歳の女性が寝ているだけでこれだけのカロリー、まあちょっと多い程度だということを言っているわけです。  ところが、こういうことがあっては大変なんですけれども、もし日本に外国から食糧が入ってこないという状態があった場合に、大臣、石油ショックのときのことを御存じだと思いますが、大きな企業や金のあるところがトイレットペーパーや洗剤などを隠して、実際にあるにもかかわらず国民が大変に困ったという事件は生々しく記憶にまだ残っていると思うのです。ですから、食糧が足らないぞというと、先ほど質問なさっていた方も、多少オーバーかもしれませんけれども、米騒動的なことと一部分ではそういう感じがあったかと思うのですけれども、そういうふうになったときには、まさにアフリカの飢餓のような状態が、食糧をどこかに隠されれば一部に出る。公平に分けてみんな寝たきりなわけですから、それが偏った場合には、アフリカの飢餓問題は他国の問題として単なる同情、援助というだけで物事を見てはならないんじゃないか。日本だってそういう危険性は想定できる。政治というものはやはり来年、再来年くらいまでを見通すだけではなくて、もうちょっと、それは本当は百年の計と言いますけれども、少なくとももうちょっと長期で見ていった場合に、食糧戦争という言葉があるように、いろいろよその国のことを、どこの国とは申しませんが、何を売ってやらないとか、何がないのにこれはやらないとかという形で食糧でもっておどかしている。こういう状態を俗に食糧戦争などという言葉で言われています。そういうことがあった場合に、実際に来なくなる場合、またそういう食糧戦争をやられる場合、それは日本で飢饉になるということでなくてもそういうふうになったときに、みずからの自給率が低いということは、これはどんなに基本はこういうふうに付加価値を高めてなどと幾ら言っていても間に合わないのではないか。そういう意味では自給率をうんと高める必要があるのではないかということを言っているわけです。その点はいかがでしょうか。
  298. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生にお答えいたしますが、おっしゃるとおりでございまして、ただ問題は、コストとの問題がございます。また、日本の地理的条件、例えば約七割が山と高地である、そんなこともございまして、経営規模の拡大を図ることが大切ですが、それがなかなか難しい。そんなこともございまして、自給率を高めながら、その間やはり外国から安定的輸入を図らざるを得ない、こう考えておるわけでございます。
  299. 田中美智子

    田中(美)分科員 大臣、それが間違っているのですよ。だって、今まではずっともっと自給率が高かったのにどんどん下がっているわけでしょう。そんな考えでは、言いたくないけれども、何のために農林大臣になられたのですか。これは昭和五十五年に国会決議をしているじゃありませんか。この国会決議は御存じのはずですけれども、食糧自給力強化に関する決議ですよ。これは全会一致でやっておるのですね。その後この強化というのはどういうふうになっていますか。
  300. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 食糧自給力の強化に関する決議、五十五年に全会一致でいただいているわけでございますけれども、今御指摘のとおり、その後具体的な率という点で推しているわけでございますが、この国会決議の趣旨というものは、我々、自給力という形で土地なり人なり技術なり、そういう総合的な食糧の生産能力、こういうことをまさかの場合に備えて強化していくということと理解しておりまして、その後いろいろな施策をそういう方向に沿いましてやってきておるわけでございます。例えば農業生産の再編成でございますとか、中核農家の育成、あるいは生産組織の形成でございますとか、あるいは優良農地のできるだけの確保、それから新技術の開発等、こういうものを通じまして全体的な自給力というものを常に守っていきたいと考えております。
  301. 田中美智子

    田中(美)分科員 大臣、今守っていきたい、いろいろいいことを言われました。それは、農林省は何にもやらないで居眠りしているとは言いません、部分的には何かやっている、やっていきたい。しかし、実際には率は下がっているじゃないですか。善意に解釈して横ばい、やや下がっておるじゃないですか。おたくでいただいたこの資料です。ですから、去年のような問題が起きれば、ちょっと日本の天候がどうかして米が足らないというようになれば、返してもらったのか買ったのか知りませんけれども韓国米が来るとか、それが臭素米だったとか、やれ虫があったとか、あるいは韓国も米がないんだから実際にはアメリカから韓国を通して来たんだとか、これはうわさの話です。だから、先ほどの方が米騒動のような状態だったのだなんて言っていますけれども、率としては下がっているじゃないですか。大幅に下がったら大変ですけれども、率は善意に言っても横ばい、下がっているのですよ。  だから、幾らやりたいと思っておりますと言っても、きのう決議してきょうやりたいと思っていますと言うのならいいですよ。五十五年の四月八日に決議しているのですから、これはちょっと、幾らなんでも農水省の努力というのは——日本の農業というのはどこの圧力でそうなるのかは申しませんが、もうちょっとしっかりしていただきたい。日本は独立国なんですから、やはり日本の農林大臣は日本人の口を預かっているという立場で、ただ大臣になってとても気分がいいということでは困るのですよ、国民は頼りにしているわけですから。最近はだんだん頼りにならなくなってきているのですよ、自民党政府では。だからちょっと共産党にやってくれなんという人たちもふえてきつつある。(佐藤国務大臣「それは聞いてません」と呼ぶ)これは余分なおしゃべりですけれども、いずれにしても、やはり農林大臣にしっかりしていただかないことには、自給率を上げろ、これは自民党も含めて言っているのですから、あなたも自民党員なんですから、それが率として下がるということで、幾らここで効率を上げるためにこうやった、ああやった、それはどこかで何かをやっていますけれども、全体では下がっているということはやはり許せないことだというふうに思うのです。  その中で、では外国は一体どれくらい自給率を上げているか。少なくとも先進国と言われている国、サミットに出席しているような国ですね、アメリカ、フランス、イギリス、西ドイツ、ここら辺の国ですね。この国はこの十年間に食糧の自給率をどれぐらい上げていますか、それとも下げていますか。
  302. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 自給率をはじく場合いろいろなものがあるかと思いますけれども、今先生特に議論なさっておりました穀物の自給率という点では、アメリカ、西ドイツそれからイギリスともにここ十年間でかなり上がっているわけでございます。例えば米国で申しますと、一九七五年−七六年期、昭和五十年でございますけれども、このときは一五八、これが五十六年、六年間で一八一、西ドイツが八〇から九二、それからイギリスで申し上げますと六五から一〇五というふうに、いずれも数字的には上がってきております。
  303. 田中美智子

    田中(美)分科員 今のはパーセンテージですか。——そうしますと、これはおたくでいただいた資料と同じ資料ですけれども、大きい数字で言うと、大臣にわかりやすく言いますと、アメリカはこの十年間に一八%自分の食いぶちをふやしているわけです。フランスは二一%ふやしているわけです。イギリスは一一%、西独は九%ふやしています。イギリスなどは自給率が一九七〇年に四九%でした。それを努力して六〇%に上げているわけです。ですから、自給率の少ない国でも、やはり外国の食糧を食べてはいるわけですけれども、少ないなりにも自給率を上げて、イギリスのようなところでも六〇%になっていますし、西独でも六六%だったものを七五%というふうに上げているわけです、まだ一〇〇%にならなくても。ところが、日本の方はこの十年間で何%減っていますか。
  304. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいま御提示ありましたカロリーベースでの自給率ということになりますと、十年前は我が国は五八%でございまして、それから五十八年度は五二%になっておりますので、六%の減ということになっております。
  305. 田中美智子

    田中(美)分科員 そうでしょう。そうしますと、いわゆる発展途上国や最貧国とか飢餓国、こういう国とは違って世界の大国と言われている国が、それは食糧輸出国はもっとたくさん上げてそれを売ろうという考えもあるでしょうし、イギリスやドイツのように非常に低かった国ができるだけ自給率を上げている努力をみんなしているのですよ。それが日本だけがなぜ六%も下がっているのですか。なぜなんですか。
  306. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 この自給率の変動の背景には、畜産物消費の伸び、これに伴いましてトウモロコシでありますとかコウリャン、こういう飼料穀物の輸入というものがふえてきておることによるわけでございます。特にこういうトウモロコシ、コウリャンというような土地利用型の最たる作物にありましては、どうしても国土資源に制約のございます日本のような国におきましては、こういうような傾向というものはある程度やむを得ないんじゃないかというふうに考えているわけでございます。しかし、できるだけ自給力向上を図るということは国政の基本でもございますので、自給力向上の必要性の高い麦であるとか大豆、あるいは飼料作物、こういうものにつきましても、水田利用再編対策等によりまして生産を増強しておりまして、ここ数年間着実に生産の増加が見られておるわけでございますけれども、残念ながら、一方で畜産物需要のふえということによりまして輸入飼料がふえてきておるという形があるわけでございます。
  307. 田中美智子

    田中(美)分科員 これ弁解に努める以外に答弁はなしという感じですね。私は、その言葉の中で一つけしからぬと思いますのは、「ある程度やむを得ない」、六%も減っているのに「やむを得ない」なんという言葉を官房長が言うなんということは許せないのですよ。国民がどんなに食糧について今心配しているか。それは週刊誌に書いてあるような、週刊誌すべてがあれじゃありませんけれども、扇動的な記事もありますから、それを全部私、信ずるわけではありませんけれども、今に食べられなくなるぞ、今に食べられなくなるんじゃないかと国民がこれだけ心配しているときに、こういう努力をしているのだが「ある程度やむを得ない」のだなんという言葉を使うなんということは、これはけしからぬことですよ。ただ弁解、弁解、弁解いちずならばまだしも、「やむを得ない」なんという言葉を中に入れるということはけしからぬことだと私は思います。  大臣にもう一度、今後の日本の自給率を高めるということについては、これは決議もあり、大臣もそれでやっていきたいと言っているのですから、どうやって自給率を上げていくのか。そして、日本の国民に責任を持ち、世界の人類に対しても、経済大国の日本が、単なるエコノミックアニマルとかまた文化の低い成金国などと言われるようなことのないようにしていくには、まず農業をどうしていくのか、自給率をどうしていくのか。時間がありませんから、具体的な決意、どういうつもりで自給率を上げるかというお答えをしていただきたい。
  308. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生にお答えいたしますが、我が省挙げて自給力向上に全力を尽くしております。  もう一つ、私が御理解をお願いしたいのは、日本の置かれた地理と面積、平地が三割、高地、山が七割。それから人口ですね。日本は人口一億二千万、西独その他四千万から五千万、しかも平地ですね。そういうようなこともございまして、最善の努力をしています。  それからもう一つは、財政の問題がございます。自給力向上、もちろんお金さえあったら幾らでもできますが、限度があります。その辺がございまして、とにかく頑張っておる、そのように御理解願いたいと思います。
  309. 田中美智子

    田中(美)分科員 それぞれの国にはそれぞれの困難がいろいろあると思うのです。それを乗り越えて自給率を上げようと、国会決議を全会一致でやっているのです。それが事実上は下がっているということでは、国会決議は守られていないということで、せっかく農林大臣になられたのなら、必ずあなたのいる間に自給率が上がるという結果を出していただきたい、それをお願いして質問を終わります。
  310. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて田中美智子君の質疑は終了いたしました。  次に、渡部行雄君。
  311. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 まず、農業者年金制度の改定問題についてお伺いいたしますが、まずその第一点といたしましては、本改正の基本的考え方として、本制度がその使命をよりよく達成できるよう給付と負担の適正化を図る旨述べておりますが、具体的にその内容検討してまいりますと、これは明らかに表現と内容が異なっておる、実質は改悪であるというふうに考えざるを得ないのですが、大臣はこれをどのようにお考えでしょうか。
  312. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農業者年金制度は、御案内のとおり、経営の移譲の促進ということを通じまして、農業経営の細分化防止、ひいては経営規模の拡大、それから農業経営者の若返り等に寄与いたしますとともに、本制度は付加年金でございますので、国民年金の給付と相まちまして農業者の老後保障ということを目的にしているわけでございます。そういう意味で、農業者年金につきましては今後とも長期にわたりまして制度が安定的に運営されていく必要がございます。  このたびの改正におきましては、農村社会も都市部と同様でございまして、非常に高齢化が進んでおります。こういった事情等、農業者年金を取り巻く情勢が変化をしておりまして、私どもといたしましては、この農業者年金の本来の制度使命をよりよく達成できますように、国民年金等公的年金制度の改正案が現在国会で審議されておりますが、そういう趣旨を踏まえまして、農業者年金の給付と負担の適正化を図りまして制度の安定を図るということを考えております。あわせまして農業構造の改善を促進するための措置を強化していく必要があるということで、所要の改正案を今国会に提出いたすことにしているわけでございます。
  313. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 私は大臣に聞いたのですが、大臣のお答えがないわけですね。これほどの改正法案として出てくるわけですから、その適正化という言葉自体、これは議論すれば相当の時間を必要としますけれども、何をもって適正なのか。現実に給付の方と積み立ての方とどういう関係になって、本当に農民がこれで喜んでおるのかどうかということを考えた際に、本当にこれは改善なのか改悪なのか、その辺に対する大臣の考え方をお願いいたします。
  314. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 渡部先生にお答えいたしますが、実は今局長が答弁したとおりでございますが、結局給付とのバランスを考えまして本当にやむを得ない処置だ、こう考えております。
  315. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それでは、具体的にその内容についてこれから質問を展開してみたいと思います。  まず第一に、給付水準の改定についてでありますが、厚生年金の改定に準じて給付水準を改定するということは、現実には現行の六〇%に給付を下げるということになるわけでございます。そうだとすれば、現行では三十五年掛けると月十三万二千七百五十五円給付されるものが、改正案では二十年後に月七万八千百三十八円しかもらえなくなるという計算になるわけです。これは一体適正なんでしょうか。これから物価もどんどん上がっていく中でこのように給付額が減額されるということは、私は決して適正ではないと思います。その点はいかがでしょうか。
  316. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農業者年金の経営移譲年金の給付水準についての御質問でございますけれども、これは制度発足以来、厚生年金並みといいますか、厚生年金程度の水準にするということになっておりまして、そういった運営をしてきているわけでございます。したがいまして、農業者年金の当然加入者となります農業経営主の農業所得を基礎にいたしまして、厚生年金の保険の算式を使いまして年金額を算出しているわけでございます。今回の改正におきましても従来の考え方を踏襲しておりまして、厚生年金程度の水準の給付をいたしたいということでございます。厚生年金保険につきましては、今回国会で審議されております案によりますと、二十年間をかけまして給付水準の適正化を図っていくということにしておりますので、農業者年金につきましてもそれに準じてその水準を決定していきたい、このように考えておるわけでございます。
  317. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 さらに、保険料の改定では、現在の農家の掛金は農業者年金が六千六百八十円、国民年金は、夫婦二人加入ということを想定した場合ですが、一万二千四百四十円、それに付加部分一人当たり四百円を加えると、総額で一万九千五百二十円になるわけです。ところが、これでも現在の農家は大変苦労して納入しておるわけでございます。しかるに、改定になれば、昭和六十二年一月時点で掛金は、国民年金被保険者二人の場合は月二万二千円ずつかけることになります。なお、昭和六十六年一月時点では二万七千六百円ずつかけなければならなくなるわけでございます。  こうなりますと、農産物価格が今日のように低迷しておる状況の中で、農家は一体これだけの負担能力があるだろうか、先行き非常に厳しいと思います。しかも、この農家経済の実態というものを見てまいりますと、今農協から莫大な借金をしておる、もう利息払いに追われておるというのが現実であります。こういう実態を見た上でこの問題を考えないと、私は大変な事態になるのではないかと思うのでございますが、その点はいかがお考えでしょうか。
  318. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農業者年金の保険料水準につきましては、年金財政を均衡させるという点からは、給付額に見合った保険料、平準保険料と言っておりますけれども、それを設定する必要がございますが、農家の負担能力等を勘案いたしまして、従来から急激な増加を緩和させるために段階的に保険料を引き上げてきている経過がございます。今回の改正におきましても、年金財政の動向はむろん考える必要がございますが、あわせまして農家の負担能力の方も考えまして新しい保険料水準を設定いたしたい考えでございます。確かに農業者年金の保険料の額は引き上げられることになりますが、農家の所得全体から見ますと、これは年次によって若干違いますけれども、五%から七%ぐらいの範囲内に入るわけでございまして、農業所得等を基準にしてみますと、大体五%からやはり同じような範囲に入るわけでございまして、私どもといたしましては、一応農家の負担能力の範囲内に入るものと考えておる次第でございます。
  319. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 昭和六十六年一月ごろまでには農業所得は現在よりどのくらい上がるように見当をつけておりますか。
  320. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農業者年金保険の設定につきましては、今回の改正で考えておりますのは、昭和六十六年までは農業所得を一定と考えましてただいま申し上げました数字を申し上げた次第でございます。現実の農業所得の動きはまたこれとは若干違った動きになろうかと思います。
  321. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 農業所得の今日までの推移はどうなっていますか。
  322. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農業所得につきましては、昭和五十六年、七年、八年と不作の年がございまして、対前年若干落ち込む、農業所得の水準が低下するというのがございましたが、昨年は、まだ全体として集計はされておりませんが、前年をやや上回るような状況になるのではないかと考えております。しかし、総じて申し上げますと、昭和五十五年以降農業所得は停滞をしてきているということが言えるかと思います。
  323. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 停滞をしておるものはそこでストップさせて、実に都合よく考え過ぎていると思うのですよ。これは、農外所得と相対的に考えた場合は、ますます農業所得の占める率合いというものは低下してくるのではないですか。こういうふうになると、この農業者年金の掛金というのはとても農民は掛け切れなくなるのではないか。そういう事態になった場合はどういうお考えでしょうか。
  324. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 私どもが前提にいたします農業所得は、過去の農業所得の趨勢をとりまして具体的な所得を出しているわけでございます。将来のことは必ずしも的確に予想はされないわけでございますけれども、私どもとしては、そういう過去の趨勢値から求める農業所得というのを農業所得として前提とすることは、そう大きな間違いではないといいますか、おおむね現実的なものと理解されるのではないかと思っております。
  325. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この問題はこのくらいにして次に移りますが、拠出時の国庫補助金をなくしたのはなぜでしょうか。それからさらに、サラリーマン後継者に経営移譲をした場合、年金額に四分の一の差を設けたということは一体どういう理由によるものか。同じように掛けてきて、移譲する相手が違うというだけで差がつけられるということはとても考えられないことなんですが、どういう理由でしょうか。
  326. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 二つのお尋ねがあったわけでございます。農業者年金に対します国庫の助成のうちで、保険料の拠出時と年金の給付時に補助があるわけでございますが、この拠出時補助をどうして廃止したのかということが第一点でございます。これにつきましては、公的年金制度におきまして保険料の拠出時と年金の給付時の二重の補助が行われているという例はないわけでございます。また、今回の公的年金制度の改正案におきましては、国庫補助は基礎年金に集中をいたしまして、基礎年金の上乗せ部分には補助がない、こういうことに相なるわけでございます。そういったことで、私どもといたしましては補助は給付時の方に一本化をしたわけでございます。ただし、それによりまして急激な影響を年金加入者に与えてはいけない、こういうことで、給付時の国庫補助の現行の三分の一を二分の一にしたわけでございます。  それからもう一つ、第二の御質問でございますけれども農業経営主が経営移譲をいたしました場合に、いわゆる農家らしい農家といいますかそれに移譲した場合と、いわゆるサラリーマン後継者に移譲した場合に、年金額に格差をつけることといたしております。これにつきましては、この年金制度が、本来経営移譲によります経営主の若返りでありますとか、農地の細分化防止経営規模の拡大というような政策目的を持ちました年金でございます。そういう趣旨に沿いまして、そういった格差をつけまして、農業者年金制度によりまして構造政策を推進していく、こういうねらいがございます。また、このことにつきましては、年金加入者の中におきましてもこういう意見を持つ人がかなりいるわけでございます。そういう人たちの意見も勘案いたしまして、格差をつけることにいたしたわけでございますが、格差につきましては、関係者の意見あるいは老後の生活費等を勘案いたしまして、四分の一の格差をつけることにしたわけでございます。
  327. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この年金を受ける人がサラリーマンのために四分の一格差をつけられたというなら話はわかりますよ。同じ掛けておって、これを後継者にしようとして掛けていったときに、たまたま、とても農業はこれ以上なかなか大変だ、農業政策はこのとおり貧弱でございますから、農業に希望を失って今度サラリーマンになっていった。しかし、自分が今まで掛けてきて今度は年金受給者になるために移譲する。そのときに、今までみんな隣の人と一緒に同じ金を掛けてきて、たまたま今度自分の息子はサラリーマンになって、隣の息子は農業後継者だ、こういう場合に、今度受け取る金が違うというのは、私は何を一体目的にした年金なのかと言いたいですね。これはどんな保険だって掛金に対して給付されるのが普通ですよ。こんな保険世界じゅう探したってないでしょう。こういう感覚自体が今日の農業の衰退を導いていると私は思うのですよ。これがまずどうしても私は納得できない。  時間がありませんから前に進みますが、さらに重要なことは、農業というのは世帯主一人でできるものではないのです。これは夫婦が一体になったりあるいは家族が一体になって経営をやっていくというのが今農家の実態であるわけです。しかも、世帯主は男であっても、現実のくわ頭はだれかというと、ほとんど主婦です。農家を皆歩いてみなさいよ。大臣、それはわかるでしょう。ほとんど主婦なんですよ、本当のくわ頭は。それなのに、この農業者年金制度では遺族年金が全然考えられていない。そればかりか、主婦の加入すらもできないようになっておる。これは一体農民に対する差別でなくて何でありましょうか。また、これは女性差別と言うこともできると私は思うのです。この点は一体どういうふうに考えられておりますか、大臣の御所見をお伺いいたします。
  328. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農業者年金は、たびたび申し上げておりますように、経営移譲を通じまして経営者の若返りを図っていく、あるいは農地の細分化防止をし、ひいては経営規模の拡大をしていくという、そういう政策目的を持ちました年金でございます。そのためにこの年金は、経営主であります地権者、これは農地の所有権なり使用収益権を持った人でございますが、それ及びその後継者を対象にしているわけでございます。したがいまして、男を対象にするあるいは女を対象にしないということではございませんで、地権者でありますれば男女を問わずに加入できるわけでございます。現に婦人の加入者数も、これは五十九年の三月末現在で申し上げますと、三万七千人という状況でございまして、かなりの加入者があるわけでございます。地権者でない主婦を加入させるということは、こういう経営移譲という目的を持ちましたこの農業者年金制度の中では困難かと考えるわけでございます。  なお、遺族年金等につきましては、農業者の妻の老後保障といいますのは、これも先ほどお話が出ましたけれども、妻自身の国民年金の給付によって行えるわけでございます。したがいまして、遺族保障につきましても、そういう国民年金から行われるというふうになっているわけでございまして、これに加えまして農業者年金でさらに遺族年金を創設するということは困難な状況でございます。
  329. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そういう考え方だから、この国会の附帯決議なんかどこかに吹っ飛んでしまって、全然忘れているんですよ。先ほどの質問者も、自給率の向上国会決議に対して何をやっているんだという質問をしておりましたが、この主婦とそれから遺族年金制度については、昭和五十六年四月二十二日の衆議院農林水産委員会で附帯決議が出ているのです。その中には、「農業に専従する主婦等の年金への加入及び遺族年金制度の創設等についても引き続き検討を進めること。」こういうことになっているんですよ。全然やっていないじゃないですか。検討していないじゃないですか。しかも、そんなものはなくていいというような趣旨の答弁じゃないですか。そういう国会決議を無視した、軽視した話はありませんよ。大臣、これをどう思いますか。
  330. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 私どもも五十六年度の農業者年金法の改正のときの国会の附帯決議は十分承知しております。今お話しのとおり、引き続き検討をするということになっております。我々としても十分検討したわけでございますが、ただいま申し上げましたような理由によりなかなかそれが難しい、困難であるということを申し上げた次第でございます。
  331. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 大臣、一言、どういう心境なのか。
  332. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 渡部先生にお答えします。  今局長がお答えしたとおりでございまして、今度の年金の改定というのは、農地の細分化防止とか経営規模の拡大とか、農政上の目的を持って設けられたもので、したがって、経営主たる地権者及び後継者を対象としている、そんなことでございまして、農政上の観点から設けられている本制度の性格上困難であると考えております。
  333. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 農民は、農林水産大臣というのは農民の味方だと思っているのですよ。そんな、役人の答えるままにそのとおりですと言うようでは、それこそ、あなたは何のために農林大臣をしたのか、農民は非常に迷うと思いますね。非常に残念ですな。  次に移ります。  去る五十九年十月三十一日、午前十一時から石川町で挙行された千五沢ダムの落成式の主催者はだれですか。
  334. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 この千五沢ダムの竣工式でございますが、地元の改良区等促進協議会が構成いたします千五沢ダム竣工式の協賛会が実質的な主体であるというふうに聞いておるわけでございますが……(渡部(行)分科員「実質的じゃないよ、はっきりした文書上のことを言うんだ」と呼ぶ)竣工式は竣工修祓式と竣工式とそれから祝賀会とこの三部で構成されているわけでございます。竣工修祓式と祝賀会はただいま申し上げました千五沢ダム竣工式協賛会の会長が主催者になっております。竣工式については母畑の農林省の開拓建設事業所長が主催者となっております。
  335. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 もっと簡単明瞭に答えてください、時間がないのだから。大体私は、竣工式は十一時からとわざわざ限定して言っているのですよ。これは農林省の主催でしょう。そのときの最高責任者はだれですか。
  336. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 ただいま申し上げましたように、母畑開拓建設事業所長でございます。
  337. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そのときに来賓として出席した国会議員の名前を言ってください。
  338. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 竣工式の出席国会議員としましては渡部行雄先生、それから当時の村田秀三先生でございます。
  339. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そのときに国会議員代表のあいさつはどなたがされたのですか。
  340. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 その当時の式典次第を見ますと、国会議員代表は衆議院議員伊東正義ということになっております。
  341. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 あなた、そういうごまかしを言いなさんなよ。私はちゃんと通告して話し合っているのだよ。でたらめ言うなよ。秘書だろう、代表させたのは。そういうでたらめをやるからどうにもならぬのだ。秘書が国会議員を代表できるか。あなたがそういう姿勢だから部下も皆そういうふうに倣っているんじゃないか。どうなんだ、そこは。
  342. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 式次第によりますと私が申し上げたとおりでございますが、そのとき実際その祝辞を代読いたしましたのは伊東正義先生の秘書と聞いております。
  343. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ここに高級官僚もおりながら、東北農政局長もおりながら、その目の前で秘書が国会議員を代表するのをのうのうとして見ておって何一つ言わぬということはどういうことだ。国会議員は憲法で身分が保障されているのだよ。冗談言うな。そういうばかなことをやるから農林省の綱紀が乱れているんだよ。こんなばかな話がどこにある。この責任はどうするんだよ。
  344. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 通常こういうような式典におきましては、国会議員の代表者をどなたにするかというのは関係者が相談いたしまして決められることだと思います。私どもが伺っている限りでは、伊東正義先生が出られる予定であったようでございますが、急遽所用がありまして出席できなかったというふうに聞いているわけでございます。
  345. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 その印刷物を見てみなさいよ。代表というのは、集まった国会議員の中から、あなた代表でやってくださいよというときに初めて代表権ができるんだよ。最初から農林省に代表なんて指定される覚えはないんだ、国会議員の集団の中で。既に印刷されているじゃないか。そういうでたらめを擁護するようでどうなるんだ。こういう問題が実際にあるのですよ、大臣。こんなのは一つであって、ほかの民間団体の主催するときなんかは我慢できないものがある。ここに同じ滝沢幸助代議士もおられるが、よくわかっておるんだ。農林省の場合はほとんどそうなんだよ。これは、大臣としてこういう綱紀の乱れに対して今後どうするおつもりですか。今聞いておってもおわかりのとおりです。
  346. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 渡部先生にお答えします。  実は私も選挙区でよくこういうことがございますが、大概国会議員内で話し合って了解のもとにするということで、多分当選回数とかあるいは年齢とかその場所に応じてしているのが慣例でございます。そんなことでございまして、よくわかりませんが、今初めて聞いたような次第でございます。恐らく善意で、不備等はあったと思いますが、ひとつあしからず御理解願いたいと思っております。
  347. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ひとつ大臣に今後こういうことは厳しく指導していただいて、二度とこういうことのないようにお願いして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  348. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて渡部行雄君の質疑は終了いたしました。  次に、滝沢幸助君。
  349. 滝沢幸助

    滝沢分科員 委員長、どうも御苦労さま。大臣、御苦労さまです。以下皆さん、御苦労さまです。  初めに、先ほど渡部行雄君が何か来賓祝辞のことをいろいろと申し上げておりましたけれども、それは役人の皆さんが農林省の先輩の伊東正義氏、元の農林事務次官のお立場をお考えのことはよくわかるけれども、しかし、それは大臣が今おっしゃったように、そこに来たところの代議士同士で話し合ってしておるのが通例なんだ。だから、農林省関係だから御本人でなくとも、秘書でも伊東正義先生をというふうに役所の方で指名するのはいかぬわな。それは決して伊東先生を助けるためにも、評価を高めるためにもならぬ。逆なんだ。私は大きい声を出さぬけれども、ひとつそこら辺はうまくやったらいいのじゃないか、こう思うのですよ。  そこで、質問は極めて素朴なんだけれども、二十五日の一般質問のときにも申し上げた素朴なる質問、しかし、あのときお答えいただいたけれども、やはり頭の悪い農家出身の私にはわからぬ。出身じゃなくて、私は毎年今も田を植えている。毎年今も稲を刈っておるのだけれども、いわゆる農家にはわからぬ。  そこで、世界に五億とも十億とも言われるところの飢餓民族がいる。同じ地球上の裏側にそういう方がいらっしゃる。その方々に日本の米を差し上げることができないで、日本はとれようはずの米をとれないように調整をして減反をしましょうと、しかもそれに少なからざる国費を払っているという愚かな政策、と農家は見ておるのです。この辺ちょっとわからぬ。大臣、もう一回。
  350. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 滝沢先生にお答えします。  質問の要旨というものは、国内産米を援助用に回したらどうかということでございますか。
  351. 滝沢幸助

    滝沢分科員 援助であろうが売買であろうが、とにかく片一方は飢え死にしているんだ。
  352. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 国内産米の援助用輸出は、あくまでも過剰米処理、前回のあの二回はその一環として実施してきたものでございまして、現在過剰米処理はもう既に完了したわけです。これが第一点でございます。  それで、今度新たに国内で援助用に米を生産し、これを政府で買い入れて輸出するということは、実は国際的にも補助金輸出であるとして伝統的な米輸出国の批判を受けるおそれがある。第二番目には、援助効率が低い。第三番目には、米の国際価格と国内価格で大きな格差がある。先生御存じのように膨大な財政負担を余儀なくされる。こんなことで極めて困難である。実はこのように考えておるわけであります。
  353. 滝沢幸助

    滝沢分科員 ですからわからぬのですよ。日本語はわかりますよ。だけれども、過剰米だけを輸出するのだと言ったって、それもわからぬ。どうして過剰米だけが輸出されるか。世界にああして飢え死にしている人があるならば、世界じゅうの人々、つまり日本人をも含めて、それぞれできようはずの食糧をあそこに、有料、無償は別、とにかく食べて生き延びてください、そうしてあなたの国々もひとつ再建、繁栄してくださいということにならなくてはいかぬじゃありませんか。それが国際的に云々ということは、外交の弱さじゃありませんか。国連の場を通じて、この地球上に今も飢えている人が五億、十億といらっしゃるならば、その方々に、世界じゅうの生産できるすべての国々は生産をふやして、そして食べさせようじゃありませんかという国連決議がどうしてできないのです。これは、日本の外交も弱いし、大体これらのことは道徳的な、人類的な課題でしょう。もっと大所高所から物をおっしゃっていただかなくてはわかりません。価格などということは問題ありません。それはいろいろの方便が考えられなければならぬことです。そういうことをおっしゃるから、日本語はわかるけれども、それは農家にとっては全然わからぬ話だ。私は農家だけではないと思うよ。毛布まで送ろうとしているのでしょう。そういうときに日本でできる米をつくらない、そのことに金を使いながら、しかも飢え死にしている人々をテレビでああ死んでいるわねということなのか、そこがわからぬと言っているわけですよ。
  354. 石川弘

    ○石川政府委員 大臣からも申し上げましたように、日本が米につきましてある種の転作と申しますか、作付制限をいたしておりますのは、単につくらないということに意味があるのではございませんで、国内においてさらに供給力を上げるような転作作物、これは例えば麦ということでございますと、国内では現在のところ需要量の一〇%程度でございまして、こういうもの、要するに需要のあるものにつくりかえるという政策をやっておるわけでございます。したがいまして、米の生産自体は抑えておりますけれども、それにかわるものとして飼料作物なり麦なり大豆なりというものをつくらせておるわけでございまして、そういう意味で、国内の需要のあるものについての自給力を上げるという意味の転作でございます。  先生指摘のようにつくりましたものを援助として出しますときに、これが、先生指摘のように道義的な問題あるいは人類愛というような形で円満に出されますればいいわけでございますが、現実の問題といたしましては、現在におきましても各種の穀物が国外に輸出される状況でございまして、それを日本が非常に高額の財政負担をして出しますと、伝統的に米を出せる国のいわば販路を妨害するということで、国際社会の上ではきつくいわば問題視されるというのが現実の問題でございます。したがいまして、私どもも、そういう国内のつくられました米を無償援助というような形で農民が集めて出す試みとか、現にお米屋さんもそういうことを若干やっておりますが、それとか乾パンを送るとか、そういうような形として送られることを私どもは決して悪いとは申しておりませんけれども、やはり国が施策としてそう打ち出すことにつきましては、過去におきましても大変問題があったわけでございます。
  355. 滝沢幸助

    滝沢分科員 この議論は幾らやっても尽きません。しかし私は、米の減反という政策は全く間違っておる、これは国家百年の後に必ず悔いるときがある、こう思うのです。さっきかつての農林省の大黒柱の伊東先生お話も出ましたけれども、食糧増産食糧増産というふうに指令を出しなさった方々が、今度は減反の命令の文書を書きなさるんだ。農林省のビルの中に閉じこもっていらっしゃる官僚の方々が、米をつくれ米をつくれ、供出をしろ供出をしろと言った方々が、今度は同じインクで、同じペンで、昔は毛筆今はボールペン、違いはありましても、今度は減反を厳命しているわけですね。そして大豆とおっしゃいました。大豆の生産は戦中から見て上がっておりますか。幾ら減反をしても他の作物の生産なんかふえやしません。私もニラを二年間夫婦でつくりました。結局残ったのは借金ですわな。ニラを奨励しているというのでニラをつくったんです。残ったのは借金だけです。およそ政府が奨励する作物なんかに転換して飯になったためしはない。あったらお目にかかる。農家がそのように苦労していても農林官僚の月給は一銭も減りやせぬ、幸せな身分と言わなくちゃならぬ。今農家はこういう気持ちでいるわけです。  そこでお伺いしますけれども、米の需要の最近の推移、そして将来に対する食糧需給の見通し、計画はどうですか。
  356. 石川弘

    ○石川政府委員 米の最近の需給事情でございますが、一人当たりの消費量の減退のスピードは若干下がっているように思います。特に最近の景気動向等の中で、一人当たりの減退、これはかつて二%を超える一人当たりの減退率でございましたが、ちょっと下がってきております。ただ、人口の増加の伸びが、当初六十五年見通しをしましたよりもちょっと低くなっているということで、全体としてはやはり、年率で言いますと一%前後の落ちというような形ではなかろうかと思います。ただ、幸いなことに、御承知のように米で申しますと一人当たり大体七十五キロ前後、それから麦類が大体三十一、二キロでございまして、その辺はとまっておりますので、かつてのように米が減って麦がふえるというのではなくて、麦はもうほぼ横ばい、米が減り方が少なくなってきている。ふえておりますものがやはり副食というような形でございます。  それから、私ども、米に関しましては国内において十分自給ができるものでございますから、これにつきましては、将来におきましても加工原材料用も含めて国内産で充当する、そういう前提で需給計画も立てますし、それから端境期等のための必要な備蓄も今後も積み増しをしていくという考え方でございます。
  357. 滝沢幸助

    滝沢分科員 これもなかなか賛成していただけませんけれども、私は、米の保管をもみでしてほしいと、こう思っているのです。このごろ勝海舟のことをいろいろと勉強しましたら、勝海舟が経験した中に、六十年前の米を放出したら赤くなっていたというのです。私も四十年、五十年という米を見ましたけれども、もみを落としてみると米が赤くなっています。だけれども食べられます。そのような意味で、玄米にして保管しているものですからお金の高い低温大倉庫に入れて保管料を高いこと払っているわけです。私は、もみで保管しなさい、そして保管は農家にさせなさい、農家は今だったならば倉庫がありますよ、それが古くているならばこの修理のために貸し付け等の対策をしたらどうか、これから倉庫をつくる者に対してこれを助けたらどうかと。そして、いやしくも倉庫業者のための米の保管という姿勢を脱却して農家にそれぞれ持たせなさい。二万俵、十万俵というところが火事か何かで吹っ飛べば大変だけれども、農家ならば五世帯、十世帯焼けてもそれは数百俵であるというふうに理解するけれども、このことについて検討される用意がありませんか。
  358. 石川弘

    ○石川政府委員 先生から、かねがねもみ貯蔵、その場合も農家段階の貯蔵はどうかというお話、私も承っております。御承知のように、我が国の貯蔵の場合は、今御指摘の玄米貯蔵、特に良質保管のためには低温貯蔵という方向に向いているわけでございますが、御承知のカントリーエレベーターはいわばもみ貯蔵のシステムでございます。約七十数万トンがそういう能力を持っております。これも先生御承知のとおりでございますが、もみの場合に、例えば隣国の韓国等はもみ貯蔵の伝統があるわけでございますが、日本の場合は農業倉庫、これは何も営業という意味じゃございません、産地の農業倉庫も含めて従来から玄米貯蔵の前提での倉庫のシステムができております。これを現段階におきましてもみ貯蔵の方向に変えますことにつきましては、あらゆる荷さばき、能力、大きさ、いろいろな面がございまして、なかなか困難ではなかろうかと私は思っております。もみ貯蔵の利点等につきましては、カントリーエレベーターの操作等も含めて今後も考えていきたいと思いますけれども、主力としてはやはり玄米による貯蔵、それから、今後は特に良質なものを確保するために低温で貯蔵していくということが基本的方向ではなかろうかと思っております。
  359. 滝沢幸助

    滝沢分科員 時間がないですから先に進みますが、食糧備蓄基本法というものを私たちは考えているわけです。これはいろいろと長いこと言うことを省略しまするけれども、省としてはこのようなことについてのお考えがありますか。
  360. 石川弘

    ○石川政府委員 先生は食糧全体のお話だと思いますが、私は、今、米、麦のことでお答えをいたします。  米の備蓄問題につきましては、御承知のように、食糧管理制度の中で国が必要なものを管理をするという建前になっておるわけでございますが、五十六年の食管法改正の中で、特にそういうものの考え方を明示するという意味から基本計画というものを立てることにいたしております。実は、現在は基本計画の中で、第三期中は四十五万トンずつ積み増していくということのみを書いてございますが、もう少し内容充実させまして、積み増しの仕方だけではなくて、積み増したものをどのように使うかというようなことも含めて、今先生のおっしゃいましたような備蓄のあり方というようなものも明示するのがいいのではなかろうかということで現在検討中でございます。したがいまして、今の食管法の体系そのものが米の備蓄のことを考えた法制度で、十分ではなかろうかという考え方をいたしております。
  361. 滝沢幸助

    滝沢分科員 時間がありませんが、私たちの考えておるのは、食管会計の中で備蓄を考えていくとどうしてもやはり食糧庁だけが国費を食うという批判は免れない、そこで、特別会計にして別途にこれを一本立てに考えていこうということなので、その点、発想の相違がありまするけれども、これは各党の強い要求であり、各党がいろいろと議論を詰めていきますので、省の方でもひとつ考えておいていただきたい。大蔵省からはもちろん大変な厳しいおきゅうが据えられるのでしょうけれども、どうかひとつ。  そこで、学校給食のことでありますが、文部省から見えていただいておりまして、あわせて防衛庁からもお越しいただいております。御苦労さまですが、要するに、戦後日本人は、アメリカにたぶらかされてと言うとちょっとなんでありますけれども、とにかくアメリカナイズされまして、米を食わぬようになった。実は、これが非行にもつながれば、家庭のいろいろなトラブルにもつながるというふうにおっしゃっている学者さんもたくさんいらっしゃるわけです。日本人はもっと米を食べるべきだ、特に、朝御飯をきちんと食べるべきだということを言っているわけです。私は、教育論的立場からいうと、学校給食は既にその任務を果たしたりと。これは、お母さんと子供のお手紙というような意味で、弁当をお母さんが子供のために持たせるべきである。そして成長の過程、そしてまた、きのうのお行儀はよかった、きのうのテストがよかった悪かったということをも含めて、お母さんが愛情込めて弁当を持たせ、そして子供は、弁当を開いたときは、あっ、お母さん、こういうふうに思うことがよろしい。そして帰ってきて、弁当をお母さんがあけますと、このごろどうも残すようだ、このごろは甘いものを好むようだというようなことで、これは健康状態もわかるというものであります。  しかし、現実、なかなか文部省は学校給食をやめるというような姿勢にはならぬでありますから、続けるならば、私は、一〇〇%米を食べさせろ、こう言っているわけですよ。しかし、これはそのようにいきませんで、今、何か一・八とか一・五とか言っているようでありますけれども、せめてこれは、五日間食べさせるならば三日間は米を食べさせろ、こんなふうに思うのです。そこへいくと防衛庁は米を大変たくさん食べていらっしゃるようでありますが、しかし、今なお米以外のものを食べなさる日もあるようでありまして、これは御国のために、とにかく憲法違反と言われながら頑張っていらっしゃるわけでありますから、ひとつ米消費の方でも頑張っていただきたい。ついでにお呼びしようと思ったが、法務省の監獄の方は、これは私は、法律を犯して悪いことをしたんだから米ぐらいみっちり食べさせろと思ったけれども、一〇〇%米だそうでありまして、さすがに法務省はきちんとしておると思いまして、これはお呼びをしませんでした。どうかひとつ文部、防衛両省から、今後ともいかにして米の消費を拡大するかという観点に立ってお話しを願いたい。
  362. 小西亘

    ○小西説明員 先生御存じのように、学校給食におきましては昭和五十一年から米飯を導入いたしまして、年々その増大に努めてきたところでございます。今先生指摘のように、現在、一週間に平均一・八回ということになっておりまして、今後ともさらにこの回数につきましては増大すべく私たちも努めなければいけない、かように考えている次第でございます。
  363. 草津辰夫

    ○草津説明員 先生指摘のように、自衛隊員の場合の食事の献立のシステムの方からちょっと御説明をいたしたいと思うのでございますが、バランスのとれたカロリーと栄養を隊員に持たすために、国民栄養協会に頼みまして、一日に必要なカロリー、それからたんぱくその他何グラムというものを割り出しまして、それに必要な食べ物の組み合わせ、穀類、肉類あるいは卵類、そういうものを一日にどのくらいの量を食べさすのがいいかということを定められて、それに準じてやっております。全体では千九百四十グラム一日に摂取するのでございますが、そのうち穀類は五百八十グラムでございます。うち米が占めますのが五百グラムでございまして、現在もう既に三食米を食べさせているような状態でございます。若い隊員の中にはやはりパン食を好む者もございますが、やはり米を食べさすということで、現在、防衛庁としては最大限の量を食べさせているという状態でございます。
  364. 滝沢幸助

    滝沢分科員 そういうことでありますから、文部省も防衛庁から見ればこれは大変努力が少ない。どうか両省とも、日本の将来のために、ある者は国を守り、ある者は子供を育てるわけですから目的は一緒、農林省も苦労しているけれども、皆さんも苦労をわかって、これ以上に米食を促進するように御協力を願いたい。どうも御苦労さまでした。  そこで、これはちょっと話が変わりまするけれども大臣、減反の代替作物に、いろいろとつくってもらっているんだけれども、そこの中で酒米をひとつ代替作物に指定してほしい。酒業界も最近、大変需要が落ち込んで、しょうちゅうとか洋酒とかいうようなことで苦労しているんだけれども、それによって酒の生産コストも下げることができよう、そして農家も大変助かろう。つくって一番上手な、そして当てになる米をもって減反の代替作物にすることができればよろしいというふうに思っているんだけれども、この点はどうでしょうか。
  365. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のように、酒米は主食と全く同じ、しかも新米を使ってやっておるのが長い歴史でございます。食管の世界でも、最初は一番高い価格に耐えられるということで、いわば食管のコストすべてをかけた金で実はお売りしていたわけでございます。その後非常に良質なものをお使いになるということで自主流通米を全面的にお使いになる、この場合も政府は必要な援助をしてきたわけでございます。しかし、酒の世界でも原料価格をなるべく安くしたいという御要望がございまして、自主流通米のほかに、政策的な意味を持たせまして政府管理、逆ざや等について政府が負担しております米を少しずつ量をふやしてきているというのが現況でございます。  今先生指摘のように、例えば全然別の種類のものということでございますと、かわりに使うことになるわけでございますが、まさしく酒米というのは主食の米そのものでございますので、私ども今までやっております自主流通米の世界とか、政府米の世界を少しずつ導入することによってコストをなるべく上げないようにやっていくというのが今までの施策でもございますし、酒造組合の方ともそういう面では協力しながらやっていきたいと思っております。
  366. 滝沢幸助

    滝沢分科員 とにかくそういうことについても工夫を凝らしていただきたいと思います。  これはまたちょっと話が別ですが、実は昨年の予算委員会等でも基盤整備事業のことをいろいろと申し上げさせていただきました。昨年は同意書の問題などを申し上げたのでありますが、とにかく基盤整備事業ができました後で減反をそこの中から、あれは何割ですか、義務的にせよ、あるいはまたそれ以上にもせよというようなことになっているのです。しかし、これはまことに摩訶不思議なことでありまして、国費を使い、農家が負担をしまして三反歩の基盤整備のできた新しい立派な田んぼができます。そのできたものをそのときから使いなさんな、やめなさい、そしてこれにかかった費用は負担しなさいということでありますから、これはまことにわからぬ。減反があと五年で終わります、六年で終わります、それまでですから我慢してちょうだいというならばわかる。前途の見通しはほど遠し、そういう中で、ならば、この田んぼ全部を四角にしていればいいのだけれども減反の必要があるのでこれだけはひとつ手をつけないで丸い田んぼにしておきましょう、しかし作物を休んでくださいよ、そして減反を終わったときにこの分は別に事業を起こしますから、そのときは四角にしましょうね、この四角になった方はひとつどうか近代的な農法でつくって生産を上げてくださいというならわかるんだ。ここら辺のことはどうなっているのですか。
  367. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ただいま御質問になりました基盤整備事業の中で、圃場整備その他、いわゆる転換率の条件をつけて実施しているものがあるわけでございます。この趣旨は、先生のお尋ねの中にもございましたが、そもそも事業を実施する意味合いが、排水条件等整備しましてあるいは区画も整理しまして水田を汎用化しまして、米以外のものもつくれる、そういう総合的に使えるような水田にする内容事業でございますので、その事業の実施の前提として転換率をあらかじめ決めてある、こういうような、言ってみれば事業の仕組み、ねらいと転作ということが結びついているようなものでございますので、これは全体として、先ほどのお尋ねにもございましたが、現在の水田利用再編対策、米をつくらないということだけではなくて米以外のものもつくっていくということになりますと、基盤整備の面でも、米でもその他のものでもつくれる条件を整備していく、こういうことでございます。
  368. 滝沢幸助

    滝沢分科員 皆さんのおっしゃっているのはとにかく机上論なんですね。農家をあなたもやってみなさい。減反して、そしてこの部分は減反だ、基盤整備は全部終わった、しかし、ここに何をつくれと言ったって、米以上に生産できるものがありますか。これは農家の立場に立ては、ここにバレイショをつくったりニラをつくったりして、そしてしかも米の方と同じ負担金を出せ、借金を返せと言ったって、これはできない相談です。皆さんも、農林省にお勤めの人は定年前にやめろというのは酷でありますが、定年になりましたらどうかひとつ恩給を返上して農家を五年、十年やってください。天下って関係機関にまた高給で居座るということではなくて、御自身でくわをとってみていただけませんか。そうしたら農家の苦しみがわかります。  最後に一つお尋ねやらお訴えをいたしますけれども、ある町の農協は貸し付けの最高限度額が四千万でございます。ところがこの四千万をもう借りちゃった、そして農家の倒産が非常に多くなっております。この最高限度額まで借りた農家が夜逃げをしないでも済む何か救済方法はありますか。なかったらお答えは要りません。
  369. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 この御指摘が事例としてどういう現況であるか定かではございませんけれども、農家の場合には各種の信用保険制度でございますとかこういう仕組みもございますので、そういうものとの兼ね合いでどうなっておりますか、具体的案件として後ほど聞かせていただきたいと思います。
  370. 滝沢幸助

    滝沢分科員 とにかくお聞きのようなことでありまして議論になりません。しかし、農林省のビルの中で安住していては農家の苦しみはわかりません。それが日本の将来に悔いにならないならば結構ですけれども、必ず歴史の中で昭和五十年代のこのことが悔いられるときがありましょう。どうかひとつ今から政策の転換に向けて御勉強いただきたいと思います。  委員長、御苦労さまでした。大臣以下皆さん、どうも御苦労さまでした。
  371. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて滝沢幸助君の質疑は終了いたしました。  次に、浦井洋君。
  372. 浦井洋

    浦井分科員 まず構造改善局にお尋ねしたいのですが、土地改良事業の第三次長期計画、昭和五十八年から六十七年までだからことしが第三年目になるのですか、事業費ベースで三年間の進捗率というのは大体どれくらいなのかということと、それから来年度、六十年度の新規採択というのはどれくらいの地区があるのか、その二つ。
  373. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 長期計画は五十八年から六十七年まで三十二兆八千億ということでございまして、六十年度予算案で要求しております予算を入れて計算いたしますと、事業費を基準にいたしまして約一六%の進捗率でございます。  それから新規採択につきましては、私どもは総事業費で抑制をするということになっておりまして、地区数は直には決めておりません。事業費の中で新規に採択いたします事業費総枠を抑えておりまして、その中におさまるように地区数を選定していく、こういうことでございます。
  374. 浦井洋

    浦井分科員 事業費の総枠の中で抑えたいということで、それはそれであれなんですが、要するに三年目で六十年度予算も入れて一六%ですね。だから十カ年計画ということであれば、このテンポで行きますと、十年後は大体計画の五〇%ぐらいしかできぬわけですね。こういうことでよいのかどうか。今も御質問されたようでありますが、日本の農業をもっと充実発展させるために、予算を獲得してどんどん事業を進めなければいかぬのと違うのですかね。私はそう思うのです。  そこで、ちょっとついでに聞いておきたいのですけれども、神戸にも大きな農村地帯があって農協があるのですけれども、神戸の西区の櫨谷の栃木地区の圃場整備事業、それから二番目は西区の押部谷町の養田地区の団体営の土地改良組合整備事業ですか、この二つが今度新規に申請をしておるわけでありますけれども、少し細かい問題でありますが、見通しは一体どうなのでしょうか。
  375. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 第三次の土地改良長期計画の進捗状況がかなりおくれているわけでございます。これは土地改良長期計画だけじゃなしに一般の公共事業の方も大体同じような状況でおくれておるわけでございまして、昨今の財政事情からこういうことになっているわけでございますけれども、やはり我々といたしましてはこの長期計画に沿いまして事業をやっていくということがどうしても必要だと考えておりますので、今後できるだけ予算の獲得、事業費の獲得に努力をしていきたいと考えております。  それから、お尋ねの神戸の二地区の団体圃場整備事業でございますけれども、これについては近畿農政局の方にそういう申請書が提出されているのじゃないかと思います。この団体事業については農政局の方で審査をして決定するということになっておりますので、今そちらの方で内容等について検討されていると思います。
  376. 浦井洋

    浦井分科員 もう一つの栃木の方は。
  377. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 両地区ともそうだと思います。
  378. 浦井洋

    浦井分科員 そうすると、構造改善局長の方から見て特にネックがあるということでもないといいますか、手続的にはほぼ順調にいっているというふうに見ていいわけですね。
  379. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 私どもの方としてはその計画の細かい中身まで承知いたしておりませんので、最終的にどうするかというところについてはまだ承知をしていないわけでございます。近畿農政局の方についても同様だと思います。神戸の今の両地区を含めまして、近畿地方全体の新規地区の検討をしていると理解をしております。
  380. 浦井洋

    浦井分科員 これ以上言っても答えが返ってこないだろうと思うのです。  そこで、大臣も帰ってこられたので本題に入りたいと思うのです。場外馬券売り場の問題なのです。  そもそも論からいきますと、確かに競馬をピクニック気分で一家で弁当でも持って祭日なり休日に見に行く、そしてそこで馬券を買うというようなことは健全娯楽だろうと私は思うのです。私は見に行ったことも馬券を買ったこともないのですが、今、中央競馬会などに聞きましても、もうかなりの部分というよりも大部分が場外馬券売り場で売りさばかれておる、馬券を買っておる。こうなってきますと、もう競技を楽しむというよりも、健全娯楽というよりも、専らギャンブル性が強くなってくるのではないかという感じがして仕方がない。現に各地で場外馬券売り場の問題でいろいろな弊害や悪影響が出ているように私は思うのですが、そもそも論のところで大臣、どう思われますか。例えば大臣、今、農林水産大臣ですから馬券を買うことはいけない、買えないわけですね。しかし、議員になられたとき、あるいは昔、別に悪いことじゃないのですよ、そんな御経験おありですか。
  381. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 浦井先生にお答えします。  実は私は競馬は嫌いでして、かけごとが嫌いで一回も行ったことはございません。大臣になりまして、ぜひ一遍見てもらいたい、一遍行こうと思っている。したがって、今先生お話された場外馬券というのを買ったこともないし、知らないわけです。そんなことで、私より局長の方が答弁の方は適任だと思いますが、よろしくお願いいたします。
  382. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいまの問題についてお答えさせていただきますが、もちろん競馬を楽しんでいただくに当たりましては、競馬場に行っていただきまして、競馬のレースそのものを楽しみながらまた馬券も買っていただくということをぜひお願いしたいと思います。ただ、近ごろのようにレジャーが大変多様化してまいりますと、ファンといたしましても常に競馬場まで行くというわけにはいかない、一日じゅう競馬場に行っているわけにもいかないということで、他のレジャーもあわせて楽しみながらというファンもふえているのもまた事実でございます。そういう意味で場外施設も必要な施設だと考えておるわけでございます。
  383. 浦井洋

    浦井分科員 局長としてはそう言わざるを得ぬでしょうけれども、現実にはいろいろな弊害だとか悪影響があるわけなので、その点では私、大臣と一緒ですね。一遍も行ったことがないし、買ったことがない。それは大臣も恐らく御推測されるだろうと思うのですが、町の中で交通混雑が——この間広島にできましたね。広島市にできたそうです、私、見たことがないのですが。それで、マイカーは来る、タクシーは不法駐車する、交通渋滞は起こる。神戸市なんかでは、そんなことでバス路線の変更までしなくてはいかぬというようなことがある。それから、警備上もぐあいが悪い、青少年の教育に対する影響というような面でぐあいが悪い。それから衛生上も、当たらなんだ券をほかす、券だけでなしに予想新聞をみんな持っているからそれをほかしていく、道は汚れる、ひどいときには小便するというようなことで、商店街なんかでも静かでしかも清潔を旨としておるのに、それに反することはかり起こるわけですよ。神戸なんか、特に今新聞をにぎわしておる山口組や一和会本部がありますから、この場外馬券売り場の近所にのみ屋がばっこするのですよ。喫茶店を占領してしまいまして、そこでのみ行為が派生するという状態。のみ行為というのは、大臣御存じですね。
  384. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 名前は聞いたことはあります。
  385. 浦井洋

    浦井分科員 だから、御婦人なんか買い物にもそばへ寄れないというような状況であるわけですよ。  そこで、具体的にお聞きしますけれども、今私の住んでおります神戸の中央区元町三丁目にもう既に場外売り場があるのですよ。これを地元の人が閉じてほしいということを前からお願いしておるわけなのですが、これを閉鎖するつもりはないですか。私は閉鎖してもよいと思うのですがね。
  386. 野明宏至

    ○野明政府委員 場外施設につきましては、その地域の環境との関連という問題がございます。したがいまして、ただいまお話があったわけでございますが、馬券が散乱しないような、周辺を掃除するといったような対策、それからファンが集まることに伴います交通整理などについての問題とかガードマンによるファンの整理といったような、今事例的に申し上げましたが、いろいろな環境対策をとってまいっておるわけであります。  現在元町三丁目に場外馬券売り場があるわけでございまして、大変手狭ではあるわけでございますけれども、そういった環境対策についてもできるだけの意を用いているという状況でございます。
  387. 浦井洋

    浦井分科員 閉鎖をする気は全くないわけですか。
  388. 野明宏至

    ○野明政府委員 場外施設につきましては、一つは大衆娯楽として定着しております競馬につきまして、なかなか競馬場に行けないというファンにとっては大変必要な機会を与えるものでございますし、それから先ほどもお話ございましたが、のみ行為を防ぐというふうな面からも有効なものでございますし、さらにそういう施設を通じまして売り上げを増加するということが国の財政にも貢献しておるわけでございます。したがいまして、現在設けられておる元町の場外施設についても、そういう役割を果たしておるわけでございますので、閉鎖をするということではなくて、地元に迷惑が及ばないような形で十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  389. 浦井洋

    浦井分科員 閉鎖をする気はないということですね。  そこで、大臣は御出身は備後でしたか。いわゆる西国に入るのですか、西国までいかぬですかね。西の方の方は神戸や大阪なんかをある一定のイメージで見ておられるだろうと思うのですね、東の方を向いて。それで、神戸とかあるいは神戸の元町というようなことを聞かれたら佐藤大臣、どんなイメージを連想されますか。
  390. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 ちょっとその前に一つ訂正しておきます。というのは、私、競馬場へ行ったことは一遍あります。というのは、大臣になりまして、福山に地方競馬があるので視察してくれというので休みのときにのぞいたから、ちょっと訂正しておきます。一遍ものぞいたことがないと言ったので間違っています。  それから今の元町というのは、私はここ当分行っておりません。かつて二十年ほど前に私の友人が住んでおりまして、行って、非常にいい感じの町だなという感じがしました。私はその場合は昼間歩いて、そしてホテルがありましたね。非常にパンがおいしかったのを記憶していますが、あそこのパンは非常にうまいです。あれは何とかホテルといいましたね、有名な……(浦井分科員「オリエンタル」と呼ぶ)オリエンタル、あれは岡山もその系列で、僕は時々あそこでパンを買うことがあるのです。そんなことで、非常に料理もおいしくて、いい感じを持って、でも二十年ほど前の話ですからね、いい感じを持ちましたということでございます。
  391. 浦井洋

    浦井分科員 神戸の町を非常に褒めていただいて、いい感じを持っていただいてありがたいと思うのですけれども、そのいい感じの、パンのおいしい神戸の町の中心に、さっきの元町三丁目の場外馬券売り場はそのままにしておいて、阪神電車は御存じでしょう、阪神電鉄、あの元町駅の、地上何階でしたか、九階ですか、阪神電車の一〇〇%出資の子会社が大きなビルを建てまして、それを全部場外馬券売り場にしよう、駅ビルというのが全部が場外馬券売り場というのは日本では例がないと思うのですよ。世界でもないのじゃないかと思うのですが、何か農林省の方で、そんな駅ビル全体が、地下は別ですよ、八階か九階建てのビル全体が場外馬券売り場になっているような例はありますか。
  392. 野明宏至

    ○野明政府委員 駅ビル自体としてはないかと存じますが、場外施設というのは、それぞれのつくられます場所の状況に応じましていろいろな形でつくられておるのが実情であろうと思っております。
  393. 浦井洋

    浦井分科員 駅ビルとしてはないわけでしょう。私は世界も言いましたから、農林省によれば世界的にないらしいですね。やはり、阪神電車は私鉄ではありますけれども、私鉄であっても公共性が第一ですよね。そういうようなところ、そういう性格を持った私鉄が建てるビルですよ。そういうものが馬券売り場になるというのは大臣、果たしてこれはふさわしい利用方法だと思われますか、どうでしょう。——大臣に一遍答えてほしいのです。
  394. 野明宏至

    ○野明政府委員 ちょっとその前に私に答えさせていただきたいと存じます。  私ども聞いておりますところでは、元町の、地下鉄があそこにあるのだそうでございまして、それを地下駅にされる、その地下駅にされることと関連して駅ビルができるというふうに承知しておるわけでございます。まだ私どもの方に申請が上がってきているわけでもございませんので具体的なことは申し上げられないわけでございますが、現在の場外施設、これは先ほどお話がございましたように、規模が大変小さくてファンの要望に十分こたえられないような状況にある、そういうようなことで、近隣地域で施設をつくりましてファンの分散を図って、そういうことを通じて周辺の混雑も緩和してファンサービスの向上も図るというねらいで検討されておるというふうに聞いておるわけであります。
  395. 浦井洋

    浦井分科員 農林省として中央競馬会の代弁をされているみたいな格好であるわけなんですが、大臣、本当はどうですか。申請が出る出ないにかかわらず、本来公共的なエリアであるべきものが全部場外馬券売り場になる。地上にあるのを地下に移すことではないのですよ。もともと阪神電車は地下を通っておるのですよ、改良するだけなんです。  関西の人はよく御承知だと思うのですけれども、甲子園でもうすぐ選抜野球があるでしょう、夏になると高校野球がありますね。小学生や中学生や高校生がみんな、西から行く人はそこを通っていくわけです。その上が全部馬券売り場、これで公共性を保っていると言えますか、あるいはこんなのが適切だと言えますか。この辺を大臣に一般論として聞きたいのです。
  396. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 浦井先生にお答えします。  私も、例えばそのビルの坪数が何坪くらいなのか、あるいはそのビルが本当に全部使われるかどうかを含めて詳しく聞かないとよくわかりません。それからもう一つは、そういう点についてはむしろ運輸省がどう判断するかという問題もあるかと思います。そういうことで、今私には何とも答えられませんね。もっと詳しく話を聞かないとよくわからぬ、こう思っております。
  397. 浦井洋

    浦井分科員 何とも答えられないという、今はそういうお話でありますが、大体農林省の公式的な態度としては、場外馬券売り場の新設、新しく設置する場合の基本的な態度というのは、これは公営競技の何の答申ですか、「場外売り場の設置については、ノミ行為の防止にも効果があると思われるので、弾力的に検討してよいが、地域社会との調整を十分に行うこと。」こういう一項があるわけですね。いつでもどこでもこれが問題になるわけですが、今局長も言われたように、まだ元町の阪神馬券売り場の設置について中央競馬会からは、もう一遍尋ねますけれども承認申請書は出されておらないわけですね。
  398. 野明宏至

    ○野明政府委員 まだ出されておりません。
  399. 浦井洋

    浦井分科員 もし出されてきた場合には、どういう点を重視をしてあなた方は判断をするのかということを聞きたい。
  400. 野明宏至

    ○野明政府委員 まだ出されておらないわけでございますが、場外施設を新設いたしますときは、競馬法施行令第二条によりまして、設置場所、設備の概要、当該競馬場との連絡方法、設置の理由を記載いたしました申請書を農林水産大臣に提出して承認を受けなければならないということになっております。したがいまして、こういった点について審査いたしますとともに、その場外施設の設置が当該地域社会に及ぼす影響にかんがみまして、当該地域社会との調整の状況あるいは建築上の法的手続とか交通問題についての関係機関との協議といったようなものを勘案して判断いたすということにしております。
  401. 浦井洋

    浦井分科員 お役人としてはそういう答えになるのでしょうけれども、去年の十二月八日に大臣は元町の馬券売場設置反対期成同盟の方々に会っていただいた……(佐藤国務大臣「会いました。賛成、反対両方会いました」と呼ぶ)いや、ただその実態を私は大臣にお知らせしておこうと思って……。  要するに、私は客観的に見て阪神元町駅前に馬券売場をつくるのは不適当だと思うのですよ。実態は、御承知のように、あそこの山手は文教地区になっているわけですよ、高架線の上ね。もし置かれたら環境が悪化してしまってしようがない。それから神戸の元町は、いい町のイメージとさっき大臣が言われたのですけれども、あれがあると文化と伝統のイメージが壊れてしまうのですね。私もこの間、馬券を買うのでなしに馬券売場をのぞいてきたのですが、それは予測以上ですね。だから、もし申請書が出されてきた場合に、地域社会との調整とかいろいろなことが言われていますけれども、そういう点は絶対に重視してほしいと私は大臣にお願いしておきたいと思うわけです。  そこで、両方から受けましたと言われますけれども、反対の方は元町商店連合会全部、大丸前中央商店会、あのハイカラなトーアロード、三宮センター街、元栄会、あそこらのほとんどすべての商店街が皆反対しておるわけです。それから小学校、中学校、幼稚園のPTAも反対しておる。それから、官製の団体ですけれども神戸市婦人団体連絡協議会、こういう婦人団体も反対している、四十団体以上。賛成しておるのはほとんどないわけなんですよ。何か一説によれば、無理やりに賛成の団体をでっち上げたような実態もあるわけなんです。そこのところを大臣によくかみ分けていただきたいと思うのです。労働組合を見ましても、市立高校の労働組合とか高等学校の労働組合とか、いろいろな労働組合やらあるいは市民団体、民主団体、こういうものがみんな反対の側を支持しておるわけですね。  もう一つぜひ大臣に知っていただきたいのは、「神戸元町の文化と伝統を守る会」というのができまして、私はここにその宣言文を持ってきておるのですが、「元町は、神戸を愛する内外の人々の共有財産であります。その中心ともいえる阪神元町駅に、元町で二つ目の巨大な馬券ビルが出来ることに対し、よりよい街づくりの観点から絶対反対するものであります。問題の場所は、県庁へ至る、北への教育文化軸、メリケンパークに至る、南への海の文化軸及び東西にのびる百十年の歴史を持つ商業軸の中心であります。私達は、馬券ビルを排除し、トバク公害の汚染から地域を守り、文化と伝統に根ざした新しい街づくりを提言したいと思います。」こういうことを言っております。そこには、関響のコンダクターの朝比奈隆さん、それから陳舜臣という作家がおられるでしょう、その方とか、それから社会事業学者ですけれども、服部正さんとか、著名な人が皆名前を並べております。だから、地元ではもう圧倒的に反対が多いわけなんです。数でも反対署名が三万ぐらい、賛成の方は無理やり集めて三千ぐらいですからね。  そこで最後に大臣にお願いしたいのは、阪神電鉄はこんなことを強行したら阪神タイガースのイメージダウンになるだろうと思うのですけれども、阪神電鉄の子会社が地下二階、地上九階の場外馬券売り場ビルの建設を強行しようとしています。局長が今言われたように、地域社会との調整を図るということであるならば、承認申請書が出てからどうこう言って判断をするのではなしに、本当に地域との調整がつくまで、馬券売り場ビルの一方的な建設を強行しないように大臣から強力に指導をしていただきたい、私はこのことをお願いしたいわけであります。大臣のお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  402. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 浦井先生にお答えします。  たしか十二月八日とおっしゃいましたね、私はある親しい人の紹介でお目にかかりましてお話を聞いたわけです。そのときに同席して聞いてもらったわけですが、基本的には局長が言ったと同じことをお話ししたということでございます。  それから、今先生がおっしゃっている点につきましては、阪神電鉄がビルをつくるということでございますが、これが馬券の場外施設に使えるということで、私は事前に介入する、行政指導するのはどうかと思います。というのは、まだ何に使うかわからぬと私は思うのです。だから、この問題につきましては局長の言ったとおりでございまして、地域社会との調整を図るということを中心に、それから、中央競馬会から申請が出てこない限り私の方は判断しない、こういう方針を持っておるわけで、その点は特に御理解願いたい思うわけでございます。
  403. 浦井洋

    浦井分科員 もう終わりますが、とにかく大臣、政治家として、その点では反対のために頑張っていただきたいと思います。  終わります。
  404. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて浦井洋君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  405. 木下敬之助

    ○木下分科員 それでは、林業に関する問題で質問いたします。  今日、日本の林業を取り巻く情勢は極めて厳しく、我が国林業は早急な対策を必要としています。木材需要昭和四十八年をピークとして減退傾向にあります。それに対して、木材価格は低迷を続け、労賃などの生産原価は上昇し、さらに、輸入は木材供給の三分の二を占めており、一層増加の傾向にあります。このような情勢の中で、林業家は多大な負債を抱え、下刈り等もおろそかになり、森林は荒廃する傾向にあります。森林は単に木材の供給源であるだけでなく、日本の持つ貴重な資源と言える水資源を涵養するものであり、また治山治水のための重要な役割を果たすものであります。  政府は、このような重要な役割を果たしている森林を保全する役目を果たしている林業が経営困難な状態に置かれていることをどう考えておられるのか、林業の現状に対する認識とその原因をどうとらえておられるのかお伺いいたします。
  406. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 木下先生にお答えいたします。  今、林業をめぐる環境は先生指摘のとおりでございます。それは第一番に木造住宅建設の停滞、例えば木造が五十五年に比べて約二割減っています、あるいは価格も五十五年に比べて三割安くなった、また造林手等の労賃は五割上がっておる、そんなことで大変厳しい状況を抱えている、そういう形の中に、森林関係が公益的機能を持っている、すなわち水資源の涵養とかあるいは国土保全とかを持っておる、そういう認識も改めて今されているという状況でございます。  この一番大きな原因は、木材が売れないということだと思います。実は、木材に五つの誤解があると思っております。これは日本住宅・木材技術センターの上村理事長が言っておりますが、地震に弱いとか火災に弱いとか、長もちしないとか居住性が悪いとか建築費が高くつく、こんなことで大変誤解を受けて、しかもそのことがかなり行政にも反映しておる。例えば、高層ビルを建てる場合に木造ではいけないとか、そんなことで、そういう誤解を解きながら、まず木材需要拡大努力する、そういう形の中にいろんな施策をやっていきたい、こう考えているわけでございます。
  407. 木下敬之助

    ○木下分科員 お話よくわかりました。  もう少し細かい点を確認させていただきますが、価格が低迷している、五十五年に比較して三割ほど安い、こういうことを言われましたが、この十年間で比較すると、卸売物価等と比較してどういう状況になっているか、お伺いいたします。
  408. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 五十五年の比較につきましては大臣からも申し上げたところでございますが、十年前を見ますと、四十九年を一〇〇といたしまして物価の総平均は一三六となってございます。製材・木製品の方しか実はございませんで恐縮でございますが、これが一二一ということで、総平均より相当下回った伸びであるということが申し上げられると思います。
  409. 木下敬之助

    ○木下分科員 木製品の比率でお伺いしましたが、山元の手取り率というのもずっと下がってきていると思うのですね。その山元の単価はどんなふうな状況になっておりますか。
  410. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 山元の立木価格につきましては調査がございますが、これも四十九年の価格で申し上げますと、これは一番平均的な杉で申し上げますと、四十九年に一万九千六百二十五円であったものが五十九年には一万六千三百四十七円、これは八三%にまで山元価格は落ちておるという大変な落ち込みでございます。
  411. 木下敬之助

    ○木下分科員 そういうことで非常に厳しい状態を、最初のような五十五年と比較して少し上がっていても大したことないという感じ、先ほど言われました四十九年を一〇〇にしたときに、物価一三六、木の方は一二一とどちらも上がっている、こういう感覚でおとらえになると林業者の苦しみはわからない。林業者の方は、山から出したときの値段というのは前よりもずっと下がってきているんだ、このことを十分御理解いただきたいと思います。この十年間で八割に下がっているというのは大変な状態だ、このように思います。  もう一つ確認させていただきますが、労賃の方の上昇はどのように認識されておりますか。これも比較して……。
  412. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 林業労働者は、よく態様の似ております建設の屋外労働者の賃金と比較をされるわけでございますが、全く同じような上昇傾向を示してございまして、四十九年を一〇〇といたしますと、五十八年には林業労働者の場合一八六まで上がっております。ちなみに建設屋外作業労働者も一八七で、同じと申し上げてよろしいかと思います。非常に上がっておるわけでございます。
  413. 木下敬之助

    ○木下分科員 そういう状況でございますので、木材需要の減っているのが最大の原因で、これを何とかしなければならないという大臣の意気込みは十分わかりますから、どうぞひとつ、先ほど言われたような五つの誤解を解くために具体的ないろいろな行動をとっていただきたいと思うのですが、実際にはこの五つの問題の解決のためにどういった具体的方法を考えておられますか。
  414. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 木下先生にお答えしますが、第一番に官公庁に木材をぜひ使ってもらいたい。例えば、木材産地におけるいろいろな公共施設に実は鉄筋を使っているということ、それからまた、建設省とお話ししまして、高層住宅に、たしか今三階以上には木造ではいけない、これをできるようにするとか、そんな形でまず官公庁を含めてお願いしている。  そういう形の中に、やはりコストの問題が一つあるわけです。特に住宅建設する人は、例えばローンで二千万、そうすると木造住宅は一割高いと、そういう場合の二千万プラス二百万というのは大変なお金なんですね。そんなことを含めて、まずコストをどう安くできるだろうか。例えば一つの建物を建てる場合に、その山の産地から輸送すれば、近いところは輸送費が安いわけです。そうすると価格は安くなる。  それから、地震に弱いとか火事に弱いとか、そういう点に対しては特に木材のよさをPRして歩いたり、それからまた、特に木材というのは教育上も大変効果がある、そんなことを含めて、いろいろな角度でお願いして歩くというようなことでございます。
  415. 木下敬之助

    ○木下分科員 そういうことで一生懸命宣伝してやっていただきたいのですが、外に向かって宣伝して、いい木材だから使おう、こういうことになっても、誤解に基づいた法的規制のようなものがあって使えない部分があるのじゃないですか。その辺はどんなふうに考えておられますか。どういったものが規制として考えられており、それに対してどのように対応を考えておられるか、お伺いします。
  416. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えします。  例えば、今、新木場に地下鉄の駅の計画が出てきております。その場合に、高層だということで実は木は使わない。木場で駅が鉄筋だけではおかしいわけです。そんなことでございまして、長官とみんな一緒になりまして、自治省、消防庁あるいは国鉄等へ全部話して、あそこに木材を使えるようにする、こんな努力もしているということでございます。
  417. 木下敬之助

    ○木下分科員 努力をしているというところまではいいのですが、規制しているのも同じ政府で、規制しているところの同じ政府の農林大臣にお伺いしますと、あれは誤解だと、誤解なら当然、同じ政府の中ですから早く解いてもらわなければ、一つの政府の中に二つの矛盾を抱えておることになりますので、努力しているという御答弁までしかないようですが、これは厳密な意味で言うなれば、瞬時もその矛盾は許されないような中身だと思いますので、どうぞそういった認識の上で閣内でよく話をされて、矛盾が存在しないように解決していただきたい、このように思います。  問題をはっきりさせるためにただいま幾つかの点を確認し、対策をお伺いいたしましたが、要するに、今日の我が国林業はまさに経営が成り立たない状況にあり、その対策も十分でなく、林業の存在自体が危機的状況にあると言えると思います。私の信頼する林業家が、このままでいくと、森林は存すれども林業は存せず、こういうことになると言われましたが、まことに重大な事態になっておると思います。  そこで、政府の考えをお伺いいたしますが、林業が存在しなくなるということは、単に林業者が困るといった問題だけでなく、健全な林業者の手が加わっていない放置された山林は、その国家的役割である水資源涵養、国土保全といった森林の重要な役割を十分に果たし得ない、このように考えられるわけですが、政府はこういった考えをどうお思いになられますか。
  418. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 森林の手入れを怠りますと、特に人工林の場合にありましては非常に過密になってまいります。そうしますと、地表の植物が枯れてしまいまして裸になる、裸になった土地は雨にも大変弱い、亀裂ができましてそれがだんだん大きくなるとか、あるいは過密になりますと木が根がよく張らないために弱ってくる、その場合には病虫害も発生しやすい。そうなりますと、大雪がありました場合など倒伏が起きるというふうな非常にゆゆしい問題が起きるわけでございます。  したがいまして、健全な林業が行われることが健全な森を育てることにつながる、直結するわけだと考えております。
  419. 木下敬之助

    ○木下分科員 山林を管理し整備することによって、国民すべてがその恩恵を受けることになっているのだ、こういったことを国民に広く十分に理解をしていただけるようになることが、林業に対する根本的な発想の転換による対策を生むことができるようになる、このように私は確信いたしております。そして、先ほど申し上げましたような現在の林業の置かれている危機的状況は、ほんの少し需要をふやしたくらいでは、この十年間を見て値段が八割に下がり、労賃の方は一八〇、一九〇、こういった数字になっている、しかも全体が落ち込んでいるというこの危機的状況を打開するには、もっと大きな発想の転換が要る、このように思いますので、ぜひとも国民の理解を得るという意味で、もうちょっと踏み込んで質問をいたしたいと思います。  実は大臣、昨年の外務委員会で、私が南洋木材に関する条約の審議に関連して質問して調査をお題いいたしておりました山崩れ災害と放置山林の因果関係については、その後どういった結論を得ておられますでしょうか。  私は、あのとき、雨がたくさん降ったりして山が崩れて木が倒れてしまった、その倒れた木が製材所の方に回っていく、その製材所の人の話を聞いたのですが、そういった木はみんな間伐してない山のものばかりだ、崩れた山から来るのは皆間伐してない、このように私に教えてくれた製材所の方がおります。ですから、こういう事実はもう厳然たる事実なので、全国的にずっと調べていけば相当の数字ではっきりと、これだけ調べたらこんなことになってたぞ、これは大問題だということで国民に向けて発表ができるのではないか、私はこのように考えて御質問いたしたのですが、どうでしょうか、この点どんなふうになりましたか。
  420. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 かつては山の手入れが行き届いておりましたのでそういうケースも少なかったと思われまして、それらの関係につきましての調査研究というのは実は数が少のうございます。ただ、目で見、経験的にそういう例があるというお話がだんだんと最近聞こえてくるようになりまして、一、二研究の事例等も発表されるようになっているわけでございます。  現在、それが災害にまで結びついたかどうかという点についてはまだ因果関係の究明も難しい点がございますが、そういう研究成果を取り寄せまして、調査検討を鋭意進めているところでございます。
  421. 木下敬之助

    ○木下分科員 因果関係がはっきりしてくると事故の責任みたいなものも一緒に発生するのでしょうけれども、しかし、その因果関係がはっきりして責任がはっきりすることによって、国民全部が広く負担してでも森林は手を入れていかなければならぬという考え方が定着するわけですから、どうかその辺は、何とか逃げずに踏み込んで結論を出して国民に発表していただきたい、このように思います。  最後に一応確認させていただきますが、間伐をし下刈りをして手の行き届いた山林の状態と、苗木を多数植えたまま放置された状態の山、この二つを比較するならば、後者の放置した山の方がずっと崩れやすい危うい状態である、このことは言えますね。
  422. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 それは、差が歴然とあるわけでございます。
  423. 木下敬之助

    ○木下分科員 そういったことで、ぜひとも国民への理解を求める動きをしていただきたいと思いますし、私どももそのことは大いに話してまいりたい、このように思っております。  これまでの質疑で明らかになりましたように、林業を守り健全な山林を維持していくということは国民すべてにとって必要なことで、あらゆる困難を乗り越えてその対策が立てられなければならないと思います。  林業の振興に不可欠なものは林道の整備であります。政府も林道の整備には相当に力を入れてきておられますし、これからも計画的に進めていかなければなりませんが、今日の林業の経営の苦しさを考えますとき、林道をつくるときの山林所有者の負担というものはより軽減されるよう見直されるべきではないかと考えますが、政府のお考えをお伺いいたします。
  424. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 先生からお話がございましたように、林道は林業生産の最大の生産基盤でございまして、特に、全国からもこれにつきましては大変要望の強いものがございます。今日、林業経営がますます厳しくなりますと、この重要性はますます増大しておると考えておるわけでございます。  そのために、この林道にも普通林道から広域基幹林道といろいろ種類がございますが、その役割、規模等に応じまして四五%から六五%と大変高い補助率が設定をされているわけでございますし、さらにその上に地域特例、過疎でありますとか振興山村でありますとか、そういう特例による補助率のかさ上げもございます。あるいはまた、間伐林道等の政策目的によりましてさらにかさ上げるというふうな手厚い補助をいたしております。また、実際の実行に当たりましては、都道府県と市町村とによりますいわゆる追加補助も行われておるのが通例でございまして、こういうことを重ね合わせますと、実際の森林所有者の費用負担は相当軽減されておるのではないかと思われます。  また、御案内のように、国の財政事情が大変厳しい折からでございますので、受益者負担をこれ以上軽減するということは大変困難な問題ではないかと思います。
  425. 木下敬之助

    ○木下分科員 国の財政状況はよくわかっておりますし、私どもも何とかアイデアを出して、こういったところも自由にできるように考えておりますが、その財政事情にかかわらず、先ほど申しましたように国土保全という大きな問題、林業がこのままいくとなくなるかもしれない、こういう危機的状況でございます。先ほど申しましたように、十年前と比較したときの今の林業の厳しさを見ますと、こういった補助率がいかに高かろうとも、十年前の、林業がよかった時代の補助率と、今こんなに苦しいときが、財政が悪いからもう変えられないでは済まされない。やはり林業者の今の苦しさに合わせた補助を求めていくようにしないと林業をやる人がいなくなりますよという話を私は申し上げておるのですから、どうぞ深刻に受けとめていただきたいと思います。  もう一つの視点からこの林道と受益者負担という問題を見てみますと、特定森林地域開発林道、いわゆるスーパー林道のような大規模な林道の場合、この道路は、林道と名前はついていますが、その実態は一般道路としての役割を十分に果たしているものがほとんどではないかと考えます。このような一般道としての役割を果たしている林道の場合、山林所有者に負担をさせる必要はないのではないか、このように考えます。  そこで、このスーパー林道の利用状況をお伺いいたしたいと思いますが、一般道路としてどのくらい利用されていますか、それは大体似たようなところの普通の山間部の一般道路の利用状況等と比較してどうであるか、そしてまた林道としてはどのくらい利用されていますか、そしてこの二つの利用法の比率はどんなふうになっているか、こういった点をお聞かせいただきたいと思います。
  426. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 スーパー林道の利用状況でございますが、五十六年度に調査したものがございますが、実は残念ながら山間部の一般道路につきましてのそういう資料がございませんので、スーパーについてのみお答えを申し上げたいと思います。  林道の完成時から五十六年の調査時点までの間でございますが、これは林業目的以外の利用ももちろん奨励しているわけでございますが、その以外の方の利用の伸びは一・六倍でございます。林業目的の利用が五・四倍に増加している、だんだん年を経るとともに林業目的の利用の割合が高くなっておるという結果となっているわけでございます。
  427. 木下敬之助

    ○木下分科員 林業に使えるように今まで道がなかったところに道路ができるのですから、木を切り出すためにその林道を利用するのは当たり前なのですが、林道としていかにたくさん利用されているかという点で林業にどれだけ役立つかという感覚だけでなくて、ほかの山間部の一般道路と比較してどのくらい一般道路として利用しているか、これがはっきりすれば、十分に一般道路としての役目を果たしているのだから、それを何も林業者に負担させなくてもいいではないか、こういう論理が成り立つと私は確信いたしております。ですから、道であるからには一般も利用するので、林業者だけが負担をしなければならぬということはない、このように思いますので、今後とも、林道をつくったときの林業者の負担というものが軽減できるように、ぜひとも何か考えていただきたいと思います。私は、一般道路として十分に活用されているものが林業者に負担を強いているということには納得がいきません。この際何か救済措置は考えられないでしょうか。  奥日田林道の例で申し上げますと、昭和四十九年、当初事業費五十三億円ということで、山林所有者は三・六%の負担を承諾しておりますが、六十年度、最終的に事業費は百二十三億円になると聞いております。公団側は負担率を二・五%に下げると言われているようですが、そうすると、ならして三・一%となり、それでも当初承諾した分の約二倍になります。山元立木価格は当時に比べて半分に下がっている現在、物価上昇率をはるかに超える負担を強いる根拠はないと思いますが、何らかの負担軽減措置は考えられませんか、お伺いいたします。
  428. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 お話しのスーパー林道の受益者負担は、事業費の一二%でございます。先生お話にありましたように、県ごとにいろいろな負担の軽減措置が行われておりますので、奥日田林道の場合は、現在は森林所有者は事業費の二・五%の負担ということになっておりまして、これが二十年から三十年という長期にわたっての償還ということでございますので、これをさらに軽減することは困難と考えております。  しかし、私どもも現在の地域林業がどういう苦しい状態にあるかということは承知をしておりまして、林道は林業経営の最も重要な生産基盤だという御指摘も先ほどいただきましたが、このスーパー林道の性格からいたしまして、これを基軸といたしまして枝葉、毛細管のように地域林業に直接役立つような林道網を形成していくというのが大変重要な任務でありますので、そういうふうな林道網の形成につきまして努力をする、また、それをてこといたしまして地域林業の振興に役立てていくというふうなことで、林業家に喜ばれる措置を考えてまいりたいと思っております。
  429. 木下敬之助

    ○木下分科員 お気持ちはよく伝わりました、ただ、私が申し上げたいのは、財政事情やいろいろで軽減はできないという感覚と、先ほど申しましたように、最初の話よりも、物価上昇率以上に高く二倍にもなって、それを払わなければならぬという理由はないのではないかという筋論を申し上げておるのです。軽減できる状態にあるかないかという以上に、林業者に納得のいく筋論というのは大事にしていただきたいと思います。  せっかく申し上げましたからもうちょっと申しますと、このスーパー林道そのものは、地域において一般道路としての役割を本当に十分に果たしている立派な道路であり、その存在価値は高く評価しておるわけですが、厳密に申し上げますならば、奥日田林道の例だけではないと思いますけれども、最初に、林業者の方々がそのくらいの負担はいいでしょうと承諾してスタートしたころは林業経営に余裕があった。その余裕がある状態で考えれば、その余裕に応じたようないい林道が欲しい、その林道がいい林道になってこのくらいの負担ならいいな、人間当然そう考えると思います。そういう状態であったのが、今この厳しい経営状態の中で考えてみると、林道だけにあんな立派なものは必要なかったかな、もっとぎりぎりのものでもいいから負担の少ない方がよかったかな、こんなふうに考える林業者の方々の考えというのはごく正当なものであると私は思います。  でき上がったスーパー林道を一般の皆さんも利用している。いかに林業者の利用が多かろうと、一般道と同じくらい一般の人が利用しているとしたら、何も林業者が負担しなければならぬことはないじゃないか。だからそういった意味で、本当にぎりぎり自分が払う身になってみたら、二倍にもなった今の負担というのは山林所有者にとって過重な負担である、このように私は思います。  今も申されましたが、どうしても直接軽減するという措置が間に合わないならば、この際過重になっている分は何らかの形で林業者に還元していただきたい。確かに林道というのは、血管で言うなら動脈とか静脈とかいった大きなもの、これがスーパー林道、大規模林道というものに当たるのでしょう。それから細かく毛細血管に至るように作業道のような枝道ができるのが何よりでございますので、私の申しましたような林業者の気持ちをどうぞ御理解いただきまして、今後ともお取り組みいただくことをお願いいたします。何か一言御答弁いただけますか。
  430. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 地域林業の振興につきましていろいろ御配慮をいただきましたことを厚く御礼申し上げたいと思います。  私どもも、一番の苦境にあります地域の林業家の皆さんが士気を高めて経営に取り組めるように、万般の施策を講じてまいりたいと考えております。今後ともよろしくお願いを申し上げます。
  431. 木下敬之助

    ○木下分科員 林業の状態はこんなに大変であるのに、輸入もどんどんふえてきているわけですね。これも大問題だと思います。今関税引き下げの問題を要求されて、大臣もいろいろと考えておられると思いますが、この問題に取り組む大臣の姿勢を最後に明らかにしていただきたいと思います。
  432. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 木下先生にお答えします。  内外ともに厳しい現状はもう御理解のとおりでございます。しかも倒産件数が毎年千件以上で、負債総額は二千二、三百億という現状。したがって、この現状を理解しながら、相手の理解を求めるように努力したい、こう思っております。
  433. 木下敬之助

    ○木下分科員 どうもありがとうございました。
  434. 田名部匡省

    ○田名部主査代理 これにて木下敬之助君の質疑は終了いたしました。     〔田名部主査代理退席、主査着席〕
  435. 大村襄治

    大村主査 次に、吉原米治君。
  436. 吉原米治

    吉原分科員 私は、島根、鳥取両県にまたがって今工事が進められております中海・宍道湖淡水化問題について質問をいたします。  五十九年十二月一日付で提出をしました私の質問主意書に対して、五十九年十二月十八日に答弁書をいただいております。これは極めて紋切り型の答弁書でございまして、あいまいな点が極めて多いわけであります。そういう意味で、この機会に再度御質問をしたいと思うわけでございます。  今、中海・宍道湖淡水化問題は、特に私の地元の島根では、大変な政治的、社会的な問題になっております。関係する十二市町の半数の住民、約三十万人になんなんとする人たちが淡水化試行に反対する署名を行っておるような状況でございまして、島根、鳥取両県関係者は大変心配をしておるわけでございます。  特に、昨年の八月二十日に公表されました中間報告に対して、各界各層から大変な疑問点が出されております。行政サイドからも、島根県では十二項目、鳥取県では八項目出されておるわけでございますが、回答がまだ一向にされてない。国政の場からも、建設省自体も百二十四項目に及ぶ質問を出しておりましたが、そのうちで一番重要な三十一項目については農水省から何らの説明がいまだになされない、答弁がなされない。特に、この三十一項目は中間報告そのものの根本を問うものでございまして、非常に重要な問題点でございます。  農水省から出されましたこの淡水化試行に同意を求められております関係自治体にとってはこの中間報告が唯一の判断材料でございまして、それに対する科学的、学問的な解明がない限りどうしても納得できない、こういう状況であることは農水省自体もよく把握をされておると思います。したがって、そういう状況下でございますので、私は、本日は三十分という時間でございますから、限られた時間の中で主な点を御質問したいと思います。  まず、質問の第一点は、計画は約二十年前に立てられておるわけでございますが、今日に至って、既耕地の農地面積等々もいわゆる減反政策の結果で大幅に減少しております。にもかかわらず、計画された当初は一億トンと言われておったのだけれども、途中で修正をされて八千万トン、こういう用水量を計画なさっていらっしゃいますが、この八千万トンと出された具体的な根拠を示していただきたい。何せこの宍道湖・中海の水量は七億五千万トンとも言われておるわけでございまして、その中の約十分の一の八千万トンを淡水化して農業用水に使おうというのでございますが、私ども、いろいろな学者の論文等を拝見いたしますと、この八千万トンは余りにも多過ぎるのではないか。  また後ほど申し上げますけれども、その八千万トンの具体的な数値算出の基礎、特に干拓地は二千ヘクタールでございますが、畑作を計画されておるようでございまして、畑作と水田とでは水の量も相当違うのではないか。また、これは十年に一回の干ばつ期を想定されておるようでございますが、そのかんがい期間を一体何日ぐらいに見ておるのか。そして、一日当たりの単位用水量をどれほど見て計算をされておるのか。また、干ばつ時と平年時の有効雨量あるいは河川水の流入の度合い、こういうものは干ばつ湖とそうでない年とでは大幅に違うわけでございますが、そういう意味で、八千万トンというのはまんざら大ざっぱな数字ではないとは思いますものの、積算根拠を明らかにしていただきたいそのことがまず第一の質問でございます。  二つずつやりますから、もう一つの問題は、島根大学農学部の永田教授、この人がいろいろ論文を出していらっしゃいます。その論文の中にも、全面淡水化でなくて、地域に応じて、あるいは水系ごとにといいますか、湖中湖をつくるとか、河川の一番末端、出口で取水して利用するとか、いろいろ提言をされておりますが、水系ごとに必要な取水量はそういう意味では可能だという論文の趣旨でございます。後ほどまた文書を紹介いたしますが、この提言を御承知になっておるはずでございますから、農水省はこの提言をどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、この二点をまずお聞きしたい。
  437. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 中海の周辺地域は従来から用水不足の地域でございます。この中海の干拓事業で八千万トンの用水を確保するというか、農業用水の必要量として算出しているわけでございますが、これは中海周辺の既存の農地に対する用水補給、それから干拓により造成いたします農地に対する必要水量を合計したものでございます。この計算自身は非常に専門的な計算でございまして、かなり複雑でございますので、その骨子につきまして私の方から御説明をいたしたいと思います。  この地域の農地かんがいに必要な消費水量というのは、計画基準年におきまして水田の計画用水量の普通期、これはかんがい期以外でございますが、これを十二から十八ミリメートル、それから代かき期に九十から百五ミリメートル、それから畑地かんがいにつきましては一日当たりの計画かん水深が四・〇から六・一ミリメートル、平均間断日数、日数を置くといいますか何日に一回というような意味を持つわけでございますけれども、それが二から五日で算定をいたしておりまして、これらを合計いたしますと一億三千八百万立方メートルとなるわけでございます。  これが総必要量でございますが、これからかんがい期間の作物に有効となります雨量を差し引きます。この差し引く雨量が三千三百万立方メートルでございます。それから、送水をいたしますときにロスが出ます。そのロスを考慮いたしますと、粗用水量というのは一億二千百万立方メートルとなるわけでございます。現況の河川で既に利用しております水量がございますが、それが四千百万立方メートルでございます。これらをただいまの一億三千八百万立方メートルから差し引きますと八千万立方メートルというのが出てまいります。  この八千万立方メートルが不足するということになりまして、この量を、中海を淡水化いたしました場合にその淡水湖に依存するということになるわけでございます。  第二点の、永田先生の提言でございますが、永田先生内容の詳細については我々承知しないわけでございますが、提言そのものにつきましては入手しておりまして、それを検討いたしたわけでございます。  私どもと一番違いますのは、利用可能水量の把握につきまして見解の差がございます。私どもといたしましては、永田先生のこの水量の把握について問題があると考えます。  具体的に申し上げますと斐伊川の右岸地区でございます。宍道湖に流れ込んでおります斐伊川の右岸地区の地区内反復利用体系の確立と斐伊川の現況の可能量の見直しを提言されております。私どもの計画におきましても、斐伊川の右岸地区は、地区内の反復利用を含めまして、現況利用が可能なものについては利用する、そういうぐあいに考えているわけでございます。  第二点は、斐伊川の支川であります平田船川と湯谷川という川がありますが、この川の利用を考えるべきであるという提言でございますが、この河川の水質調査から見まして、農業用水としては必ずしも適当でないことがあること、それからもう一つ、取水の可能地点では宍道湖からの塩分遡上が予想されること、これらの二つのことから、事業計画、私どもの計画では取水をしないということになっているわけでございます。  それから、日野川からの取水量につきまして、私どもの計画よりももっと多くの……
  438. 吉原米治

    吉原分科員 時間が足らぬから、簡単にやってください。
  439. 大村襄治

    大村主査 簡単に願います。
  440. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 多くの可能量が見込まれるのではないかというようなことが提言されておりますけれども、我々は、取水量の実績から見まして、どうも現況の取水可能量というのは必要用水量を大幅に下回っている、こういうことでございまして、利用可能水量につきまして、以上のような、大まかに言いまして違いがあるということでございます。
  441. 吉原米治

    吉原分科員 既耕地の面積は計画当初と変わっていないという御認識ですか。
  442. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 これについては若干変わっておりまして、最近の計画変更時点におきましては、当初計画に比べまして弓浜半島の方の受益面積が約一割くらい減少しております。そういうことで、当初からの……
  443. 吉原米治

    吉原分科員 七千三百で計算しているのでしょう。
  444. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 ちょっと手元に全体の減少面積を持ち合わせませんが……
  445. 吉原米治

    吉原分科員 後でその数字を知らせてください。  三十分で膨大な質問をしようと思いますと、要領よく答えていただかぬと質問をしたい点ができなくなってしまうので。  そこで、今の永田教授の論文に対してまた異論が出ましたけれども、またこの点は後ほど触れますが、続いて質問に移りたいと思います。  農水省は、試行開始しても、異常事態が発生したら直ちにその試行を中止する、原状回復するという意味だろうけれども、この「異常事態」という意味はどういうことなのかという質問に対して、これは「中浦水門しめ切りに反対する会」という会の名でもって質問をしておりますが、それに答えて、「試行開始前に観察されなかったような数値等を観測した場合」、こういう回答をされておりますが、具体的にどういう数値をもって基準にするのか。その基準を上回ったときに初めて異常事態だ、こういうことが言えると思うのですが、感覚的に異常事態なんて言われても、あるいは試行前に観察されなかった数値なんていうお答えだけでは、どういうものが基準になるのか、どういう数値が基準になるのかはわかりません。そういう意味で、ひとつその基準を明確にしていただきたい、こう思います。  それから、異常事態が発生した場合には、直ちに関係機関と相談をする、こういうお答えを今までになさっていらっしゃいますが、その関係機関というのは、一体どういう方々の集まる機関なのか、それをお答え願いたい。  さらに、その関係機関、これはいろいろ、島根、鳥取両県あるいは関係の十二市町、あるいは建設省、環境庁、そういう団体になると思いますが、そのうちで一つでも異常事態だと——全面的にわたって異常事態が発生すれば、それは各団体皆一斉に異常を唱えるのでしょうが、部分的に異常が発生した場合に、この関係機関が、おれのところは大変だ、こういうことを申し出た場合には、直ちに試行は中止していただけるのかどうなのか、この点お答え願いたい。
  446. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 淡水化の試行期間中に、主要な水質指標等につきまして一定水準以上のデータが観測された場合には、異常事態に対する警戒態勢をとるわけでございます。  その具体的な指標でございますが、現在私どもとして考えておりますのは、淡水化試行前に観察されなかった数値が出たような場合ということでございまして、試行前一定期間の間に観察されますCODでありますとかトータル窒素、燐等につきまして、観察されなかったような値が出ましたときには、異常事態ということで警戒態勢をとっていきたいと考えております。  なお、これらの点につきましては、どういう状態を異常事態と言うかにつきましては、今後やはり県等の関係機関とも十分協議して決めていく必要があろうと思っております。今私が申しましたのは、一つの農林省の試案として申し上げたというふうに理解をしていただきたいと思います。  その場合の関係機関でございますが、これも関係機関と御相談する必要がございますが、当面、建設省の出先機関、それから鳥取県、島根県の関係部局というふうに考えておりますが、このほかにも学識経験者の意見も十分聞く必要があるだろう、このように考えております。  それから、具体的にその判断をいたします場合にどのようにするのかということでございますが、ただいま申し上げましたように、学識経験者の御意見も伺うわけでございますので、そういった意見も聞きながら、関係機関全体の総意で決めていくということが必要と考えております。
  447. 吉原米治

    吉原分科員 その場合に、今私が申し上げました島根、鳥取両県と関係の十二の市町があるのですが、それとは相談されますか。
  448. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 現在のところ、私どもといたしましては鳥取、島根の両県と御相談すれば、そういった関係地方公共団体の御意見も酌んで御意見をいただけるものと考えているわけでございます。
  449. 吉原米治

    吉原分科員 そうしますと、農水省としては一定の、今から試行を始めたいという希望を持っていらっしゃるのだろうから、それぞれのCODだとか燐だとかいうものについての観測した数値というものは持っていらっしゃるはずですわな。それを持たずに今お答えになっておるのですか、持っていらっしゃるのですか。その辺をちょっと……
  450. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 一定期間のものは持っております。
  451. 吉原米治

    吉原分科員 それでは、それをこの場で発表していただけますか。できますか。
  452. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 これはかなり詳細に月別に出ておりますので、時間がかかりますが、よろしゅうございますか。
  453. 吉原米治

    吉原分科員 これは、その異常事態が発生するかどうか、したときの一つの物差しになるわけですから、それは資料として後でいただきたい。よろしゅうございますな。
  454. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 後ほど御説明いたしたいと思います。
  455. 吉原米治

    吉原分科員 問題になっております。中間報告、分厚いものでございますが、この中間報告をつくった俗称南委員会と私どもは言っておるのですが、この南委員会の一つの部分を持っていらっしゃる小委員長、これは島大の教授で伊達さんとおっしゃるわけでございますが、この伊達教授が、現況程度の水質を維持できるという中間報告の結論は間違いだ、こういうことをおっしゃっておるのです。自分たちがつくって出したものが、いや、あれは間違っておるんだ、こう言われたのでは、関係住民がますます不安を持つのは当然でございまして、そういう意味で私はお尋ねをするわけでございますが、この点についてはその俗称南委員会でさらに検討をしたい——伊達教授の指摘は中間報告そのものを実質上修正するものでございますから、非常に重要な問題だと思っておるわけです。したがって、過般出されましたこの中間報告の一定部分は修正をして再度提案をすべきものであるというふうにまた思いますし、この南委員会は一体いつごろ開いて、そういった伊達教授の発言は農水省にしてみれば心外なことだろうと思いますから、そういう意味で早急に開いていただかないとだめだと私は思っておりますが、そういう委員会はいつごろ開かれるのでございますか。
  456. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 伊達先生が中間報告が出ました後でコメントをされたということを新聞報道で読んだわけでございますが、そのときに出先の事務所が先生に発言の真意を尋ねましたところ、アオコの発生の程度について補足したもので、中間報告内容を修正するものではないんだというような回答を得ているわけでございます。南委員会につきましては、その後小委員長会議と言いまして、水管理でありますとか、プランクトンでありますとか、水生植物等についての各小委員会、部会といいますか、そういうものがございまして、その小委員長の会議を開いてきておりますが、そこにも伊達先生出席いただいております。いただいておりますが、発言についての経過報告があったようでございますが、特に中間報告内容につきまして修正するような意見は出てないというように報告を受けているわけでございます。  なお、今、研究会あるいはこの小委員長会議におきましてアオコの発生程度等について検討しているわけでございまして、今後引き続きこれらの問題について検討してまいりたいと思います。なお、小委員長会議につきましてはこれまで二回やってございます。
  457. 吉原米治

    吉原分科員 この発言をした後で開かれておるのですか。
  458. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 さようでございます。
  459. 吉原米治

    吉原分科員 それからもう一つ、島大の学者グループがたくさんの問題をこの南委員会に出しておるのですが、なかなかこれが答弁をされていない。したがって、農水省はそういう疑問点を解明しなければならぬのだから、早くきちっとした答弁をしなさい、こういう指導をすべきだと思いますが、指導していただけますか。
  460. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 今御指摘のように、島根大学の研究会から南先生に対しまして質問書が出ているようでございますけれども、学者の間の問題であるというふうに我々承知しておりまして、行政機関が介入していくよりも、むしろ学者同士、当事者間で処理されていく方がよろしいのではないかと私ども考えておるわけでございます。
  461. 吉原米治

    吉原分科員 大臣、今のやりとり、短い時間でございますがお聞きになっていらっしゃって、この淡水化で水質が大変汚濁されて大変なことになるという心配を関係住民は持っておるわけです。それに拍車をかけるように、各学者グループが全くこの中間報告を否定するというか、そういう問題が起きておるわけです。この島大の永田論文のまとめのところで、私は極めて重要な問題だと思って見ておるのですが、短かい文章ですからこれをちょっと読ませていただきます。前段はありますけれども、  斐伊川下流左岸・右岸地区では水質対策事業と用水の高度反復利用体系への展開が、また弓浜半島では畑かん事業、水利施設の整備と暗渠排水事業の展開が、いま望まれているのである。こうした事業を中軸にすえた上で、改めて淡水化の問題をとらえ直すという視点がことさら重要となっている。絶対的な淡水化の評価から、相対的な評価への視点の転化ともいえよう。その上でなお新たな水源として淡水化が必要となれば、その実現に努力すべきであろう。現時点においては、すでに述べたように、その必然性は乏しいと考えられ、むしろ新たな視点による事業の展開が要請されているように思われる。 こういうまとめの文章になっておるのです。  そこで、大臣、今日まで二十年余りかけて、既に貴重な国の財源をこの五十九年度末までで五百七十七億も実は投資してあるわけですね。だから、一見私どもが、そんなに住民が宍道湖・中海という立派な湖が汚染されてしまう、大変だという不安感を持っておる、その上に多額な投資をこれ以上続けていく、そんなことよりも、もっと農業関係で投資をされる有効な、住民に喜んでもらえるような投資先があるのに、どうも農水省は意地になって、メンツをかけてでも当初計画したものだから一歩も計画変更させぬ、断固やるんだという構えというのは、随分乱暴な考えだと思っておるわけでございまして、大臣、ひとつそういう住民の不安がある淡水化事業というのは、もっと慎重に、そしてまた関係住民を説得するだけの学問的な説得をされて、絶対に強行するようなことはしない、そのくらいの決意をこの場で述べていただきたい。せっかく佐藤農水大臣、有能な大臣でございますので、山陰地方で農水省大変喜ばれない分野に多額の投資を続けるのは愚の骨頂だと私は思いますので、どうぞひとつ大臣の決意を最後に伺いたい。
  462. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉原先生にお答えいたします。  先生の大変貴重な現地の生の声を聞かせていただいてありがとうございました。中海干拓事業の淡水化試行に当たりましては、局長が今申したとおりでございますが、私は水質汚濁を進めたくないという住民の意向については十分にお聞きしたつもりでございます。そんなことで、淡水化の試行に当たっては、このような住民等の意向を十分考慮し、また関係機関の意見を聞いて慎重に対応したいと考えております。
  463. 吉原米治

    吉原分科員 時間が参りましたから終わります。  ありがとうございました。
  464. 大村襄治

    大村主査 これにて吉原米治君の質疑は終了いたしました。  次に、渡辺嘉藏君。
  465. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 土地改良について御質問いたしたいと思います。  土地改良の目的は、農用地の改良、開発、保全、集団化により農業生産の基盤整備等を図り、農業生産向上、増大、農業構造改善その他を目的として、国も多大の補助をして進めていらっしゃるわけですが、その中で、幾多の農業用施設をつくる中で、農業用道路を新設する場合の規格といいますか、基準といいますか、これをお聞かせいただきたいのです。
  466. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 具体的にはその地域実態状況を考えて決定するわけでございますが、一般的に申し上げますと、圃場整備事業におきます農道の幅員というのは、安全な交通が確保されますように、予想されます車両の種類でありますとか大きさを考えまして、車両幅に外側の余裕を持たせる、あるいは路肩の幅員も持たせる、あるいはすれ違いのための間隔もとる、こういうことで幅員を決定しているところでございます。一般的に申しますと、幹線農道の幅員は六から七メートル程度が普通でございます。支線農道の幅員は三・五から五メートル程度というのが一般的でございます。
  467. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 岐阜市合渡土地改良区においては、昭和四十四年八月三十一日に組合を設立して、その後認可をもらい、組合員千百七十人で土地改良事業を行ったわけでございますが、そのときに、幹線道路はのり面を入れまして六・八メートル、こういうことで今のような趣旨をもとに事業認可を受けたわけです。昭和四十六年、当時の土地改良区の理事はこれを説明会で、主要幹線は将来十メートルの幅員にしたい、それがために、延長約四千メートルを超える長さですが、道路沿いの地先人の方々に、それぞれの側面の方は三分の一ずつ両側から出し、残りの三分の一は土地改良区全体の中から賄う、こういうことにして換地計画をしたい、こういう説明をいたしまして、そして、それに基づいて五十四年の二月に、この十メートル道路、かなりの反対があるにもかかわらず工事を進めて、四千万円余の費用をかけてこの道路をつくられたわけです。  この認可道路は、先ほどの話の六メートル、のり面を入れて六・八メートルですが、今申し上げたようなそういう十メートルの道路をつくるために、そういう負担をさせてこの道路ができたわけですが、この点については御承知ですか。また、いいのかどうか。
  468. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えをいたします。  私どもといたしましては、当初六・八メートルで計画されておりまして、それがその後十メーターになったということは聞いておりますけれども、今先生がおっしゃいましたように、その土地の提供方法等詳細なことについては承知はいたしておりません。
  469. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 その後十メーターになったということをお聞きだそうですが、その六・八メートルと十メートルの差額三・二メートル、これにつきましては、ここに岐阜市合渡土地改良区の理事長の名前で文書が配られたわけですが、この文書によりますると、「拡幅道路については今後の大型車輌の通行量等の増大を見込み用地の捻出については共同減歩にて負担すべく」それぞれの権利者の賛同を得て順次拡幅をしてきた、だから十メートル道路等の捻出について再承認を求める、こういう文書が出たわけですが、こういうことについては、この土地改良区の共同減歩と判断されるようなことはよろしいのですか。
  470. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 換地計画におきましては、農道はいわゆる共同減歩の手法を使いましてその用地を捻出するということにはなっております。しかし、換地計画というのは土地改良事業計画の内容に即しましてそれと矛盾なく決める必要がございます。土地改良事業計画で定められた幅員、ただいまの場合は恐らく六・八メートルじゃないかと思いますけれども、それを超えます。地の部分を共同減歩という方式では捻出できないのではないか、こういうふうに考えます。
  471. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 この十メーター道路は農業用の観点から不要であるということで、最初からかなりの方々が反対をしていらっしゃる。ところが、今申し上げたように強行に道路はできてしまった。それがために、これについて公開質問をされたのに対しまして、この拡幅分は任意の申し出によって行ったものなんだ、ただしこれを、道路負担を評価基準に織り込んだので地先地主の土地であるかの、ごとく思われることは錯覚である、今の三・二メートルの拡幅分は、土地改良事業ではないが任意による共同減歩方式で進めておる、こういう文書が後から出てまいりました。そうすると、これは共同減歩と言いながら、任意の共同減歩だ、今度はこういうふうに焦点をすりかえたわけです。そこで今度は、その差額を任意で共同減歩をするとするならば全員の同意が要ります。ところが、反対者が同意をいたしませんので、今度は五十七年にこういう文書を出しまして、そして、その共同減歩に同意書を提出されない方は事業賦課金、経常賦課金等土地改良に要した費用は反当たりについて約五十万ぐらい徴収しますよ、こういう文書を出されたわけですが、こういう文書は適当ですか。
  472. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 その今の先生の御指摘の中に、私十分理解できないわけでございますが、五十万円の中の費目でございますね、それがどういうぐあいになっているのか、そのことによって五十万円というものが適当かどうかということが判断できるのじゃないかと思います。
  473. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 これは後ほどに関連してきますが、もう一つ申し上げます。事業賦課金、経常賦課金を今後のすべての経費として、この共同減歩に同意しないと賦課しますよ、これは後ほど触れますが、特別会計で何十億と金を持っておるのですよ。その分から払っておるから各人から取らないけれども、もしこの道路に同意をしない人は反当たりそういう事業費を全部徴収しますよ、こういう意味のことなんです。
  474. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 通常そういう事業費等賦課いたします場合には、土地改良法に基づきまして土地改良区が所定の手続を踏みまして賦課をしていくわけでございますが、ただいまの先生の御指摘は、そういう賦課をして徴収したというよりも、縄延び部分とか特別に土地改良区が土地を利用いたしましてそれを処分した金を何かプールして持っておりまして、その金を道路用地として提供するのに賛成の人については負担金のかわりに使う、そのかわり、そうでない人にはそれを使わせない、こういうような御趣旨かと思いますが、私どもといたしましては、どうも今の時点で的確にそれが適法であるか適法でないか、あるいは妥当であるか妥当でないかということはちょっと判断しかねますので、もう少し実態をよく聞いた上でないと何とも申せないのじゃないかというふうに考えます。
  475. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 ここに地区特別会計という議案書があるのです。これによりますと、全体の工事を進めるに当たりまして四%の減歩をしたわけです。その四%の減歩と調整地、余剰地等の売却収入等で、残金が約十億三千二百六十万円現在でもあるのです。これは昨年の十二月二十四日の総代会の前の理事会の議案書なんですが、それによりますと、この十億の配分については「議第四号配分金支払方法について」ということで、次のように支払いをするとずっと決めながら、その第四項で、「幹線道路寄附採納願の未提出者については、今後の情勢により調整する必要があるので公平を期するため一応預りとし解決の後の取扱いとする。」すなわち、同意をしない人にはこの配分金は渡しませんよ、こういうことを理事会で決めて、そして文書にも載せたわけです。  そこで、お伺いしますが、こういう配分の仕方、それから、今申し上げた十億の金は千百七十人の組合員の金だと思うのですが、それを恣意的に、三・二メートルの道路用地の無償寄附に同意しない者には返してやらぬぞ、このようなことはできるのですか。
  476. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 土地改良区がかなりの剰余金を持っているということで、その配分についての問題のようでございますけれども、こういう金をつくり管理をするについては土地改良区内部でいろいろな議論がありまして、そういう経過の上で今のような剰余金が出てきているのじゃないかと思います。私どもといたしましては、もう少しその経緯あるいは性格を十分承知をいたした上でないと、何とも的確な御返事は申し上げられないのじゃないかという感じがいたします。
  477. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 そんなことはないのですよ。今申し上げたように十億の金があるのですよ。これは四%の減歩と余剰地等を処分してつくった金なんです。これだけあるということは議案書に載っているのですよ。これは全組合員のものである。だから、それを全員に公平に配分するということは当然じゃありませんか。それぞれの所有地その他の一定の基準に基づいて公平に分けるのは当然だと思うのですが……。
  478. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 土地改良区の金であり、これがまた全組合員のものであるという点についてはそうだと思いますが、いずれにしても、関係者が集まりましてそういった金をつくり管理をしておるわけでございますので、それの処分の方法につきましても、改良区の組合員の全体の意向に従ってそれは処分されるべきではないかと考えるわけでございます。
  479. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 これは全体の金ですから、農水省としては正しく早急にみんなにまず返す、こういう指導は僕は当然だと思うのです。  そこで、今度土地改良区はそこの用地の部分だけ帯のようにすうっと残して、当初は白地にしていったわけですが、白地というわけにいかぬので、その後換地計画書を出し直しまして、それを地先地主の名前にみんな張りつけたのです。すると、今度その部分は、この人には百五十平米、この人には二百平米とずっと名前を張りつけていったのです。ところが、地目はその人の場合にも田んぼと書いてあるのです。地目田と書いてあるのです。ところが現実は道路になっているのです。そういうことはできるのですか。
  480. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 恐らく当初の事業計画でそのようなことを決めまして、その後その六・八メートルの道路を拡幅いたしまして十メートルにしたというような経緯がありまして、そういうぐあいになってきたのじゃないかと思います。要は、当初に決めた計画と、自後にその計画と違った状況をつくり出してきてそういったそごが生じてきているのではないかと考えるわけでございます。
  481. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 事実関係を確認して、今度はその判断を私は求めているわけですね、いいか悪いのか。だから、そういうふうに四十五年に認可を受けた事業計画が六・八、四十六年当時説明会では、十メーターにするからみんな共同減歩で出せよと、こう説明会をずっと進めてやってきたのですよ。そしてその費用も、今のような四%の減歩その他の中でいわゆる特別会計をつくって四千万円の工事費を出した。こんなことは許されるのですか。と同時に、この地目が田んぼだというので換地計画が県に出され、各自のもとへそれが来た。田んぼだと思っておったのが道路になっている。だから各人は、田んぼにして戻してくれと異議の申し立てをした。そうしたら、県の方はそれに対して、それは事業の時期が食い違ったのだからやむを得ないのだということで、その異議の申し立ては却下された。そういうことでよろしいか。
  482. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 今お話を伺っておりますと、正規に区画整理を行いまして、共同減歩で土地を出しまして、農道をつくって、あと換地をしていく、そういう正規の方法に照らしまして、今先生が御指摘のところは、かなり間違ったようなことをやっているというふうに考えるわけでございますが、いずれにしても、もう少し実態をよくつかみませんと、私ども的確なお答えができないわけでございまして、十分その実態をつかんだ上で現地指導するようなことをいたしたいというふうに考えるわけでございます。
  483. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 今承りまして、的確な実態ではない、適正な実情じゃないと私は思うのです。各自のところへ換地細目の通知が来たら、みんな田んぼと書いてあるのです。ところが、実際は道路になってしまっている。こういうことが許されるかどうか。と同時に、この道路になっている部分は、田んぼと書いてあるけれども、みんな無償で寄附しなさい。寄附しない者は、先ほど申し上げたような特別会計を持っていて十億も持っている、これを配分するときには、寄附しない人にはやらないよ、なぜかというとこれは共同減歩だから。土地改良で十メーター道路の共同減歩ができるはずがないのです。これはもうおわかりのとおりなんです。そういうことがまかり通っていきますと、これは何のための土地改良か。土地計画じゃないのですから、区画整理じゃないのですから。ですから、補助金を出してまで農業振興でやっておるものが、将来の十メーター道路をつくるためにそうやって共同減歩で出したというようなことは適当でない。だから、これに対しては、今申し上げた点で、田んぼに戻してほしいという要望があるのですが、そういう要望に対して農水省はどのような御指導をいただけますか。
  484. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、かなり特異なケースのように思うわけでございます。ただ、共同減歩という手法ではございませんけれども、実質的に関係者が話をしまして、そういう幅の広い道路をつくろうじゃないかというようなことで話が進んでいったのじゃないかというふうにも受け取れるわけでございます。  いずれにいたしましても、地目が田んぼでございますけれども、現にそこが道路になっているという、こういう現況があるようでございますが、これを今の時点でどのように解決するか。それは田んぼに戻した方がいいのか、あるいは道路としまして、そういう道路にするということで関係者の調整をしていった方がいいのか、その辺は現地関係者で十分話をしまして、一番いい解決方法を見出していくのが、我々としましては最もいい、妥当な解決の方法ではなかろうか、そういうふうに考えるわけでございます。
  485. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 今申し上げたこの点については、一遍実情をよく調査されまして、そして、土地改良の基本に立って御指導いただきたい。  と同時に、今度はその中で、共同減歩した中で特別会計をつくって四千万円工事費を払ったのですね。この四千万円払うという行為、これはいいのですか。
  486. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 その四千万円の支払いは、土地改良区がその事業者といいますか業者に対して支払ったということでございますか。
  487. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 そうです。
  488. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 それは土地改良区として任意に支払ったということでございまして、その支払いにつきまして土地改良区でどのような調整をしたかわかりませんが、そのこと自身につきまして、私は直ちにこの場でまだどうこうということはちょっと申し上げることはできないわけでございます。いずれにしましても、もう少しやはり実態調査させていただきたいと思います。
  489. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 では、最後にもう一つ聞きますが、この地区特別会計の会計の中には、先ほどから何回も申し上げておりますが、十億三千万円の金があるわけですね。こういうふうな会計のやり方というのはいいのですか。
  490. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 土地改良区といいますのは、これは通常の団体であります会社と違うわけでございまして、大きな剰余金が出てそれを特別会計とかというようなことで経理をするということは余りないかと思うわけでございますけれども、これにつきましてもそれなりの経緯があろうかと思いますので、この点につきましてももう少し実態把握の上で判断をしていきたいと思います。
  491. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 これはもう既にいろいろと、質問を取りにおいでになったときに申し上げてあるから、当然僕は調べていらっしゃると思うのですよ。だから、当然的確なお答えがいただけると思ったが、そういうふうに御答弁いただくとすれば、これは私はちょっと不本意だけれども、しようがないわね、そうおっしゃる以上は。だから、この際はこの十億の金は早急に公平に全組合員に配分して、そして明朗な土地改良区の運営をさせるべきだと私は思うのです。この点について局長に承るとともに、今いろいろ申し上げておりました中で、大臣もいろいろな点でお気づきになったと思うのですが、農業振興のために行われる土地改良区が、いわゆる区画整理まがいのそういうことを意図し、そしてこれが、四十五年に認可を受けながら四十六年からもう行われておるわけですね。こういうことについて、ひとつ大臣としての御所見を最後に承りまして、よき指導をお願いしたい、こう思っておるわけでございます。
  492. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 御意見十分拝聴いたしましたので、必要な調査をいたしまして、また県の方とも相談する必要があろうかと思います。その上で適切な指導をしてまいりたいと思います。
  493. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 渡辺先生にお答えいたします。  先ほど十分聞かしていただきまして、局長からよく十分調べてまだ先生に御返事する、こう思います。  土地改良区というのは、もう先生御存じのことでございますが、公共団体でございまして、土地改良事業を実施するために関係農家により組織される公共団体、これは御存じのとおりでございますが、そんなことでございまして、一番大切なことは、土地改良事業をやる場合に地元関係農家の意向を取りまとめて地域の合意を確立していくことが大切だ、こう思っています。そんなことで、その組織体制の整備や運営の適正化を図るため、土地改良区の換地とか施設管理等の各種業務の適正化のための指導に努めてまいりたい、また御指摘の諸点を踏まえさらに努力したい、こう考えております。
  494. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 それぞれ御答弁いただきまして、一応これで終わらせていただきます。私も円満解決は当然念頭にあるわけですが、それがためにどうかひとつそれぞれの御指導を賜りますようにお願いいたしまして、質問を終わります。
  495. 大村襄治

    大村主査 これにて渡辺嘉藏君の質疑は終了いたしました。  次に、菅原喜重郎君。
  496. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 佐藤大臣には夜遅くまでまことに御苦労さんでございます。  つきましては、まず大臣に御質問申し上げますが、私は、昨年の六月二十日古米が外食に流通されているという件で、昨年の七月二十四日には米の流通機構の問題に関して、これは卸売業者の高利益を得ている問題についても言及しておりますが、さらに二月の二十日には大臣に、卸、小売許可の更新がこの六月行われますのでぜひ競争原理の導入等も考えなければならないのではないかという観点から質問をしているわけでございます。私は、この現状の米の流通機構ではいつか何かが起きてくるのじゃないか、こういう不安からこの質問をしていたところ、この七日の朝日新聞では、全国食糧事業協同組合連合会系の業者がやみ米大量売買ということで摘発されているようでございます。  今までのこの食管法下における米流通機構の歴史を見ますと、五十七年一月施行された改正食管法は、卸の新規参入を認めず、また小売の複数卸結びつきも認めず、さらに、米卸には大型精米の設備更新への助成金とか食管法下国民の税金で補助金をもらいながら、この卸売商が毎年高利を上げているのが事実でございます。こういう、法によってみずからが利益を上げられているその業者が法を破るような行為をしたということは、一体どういうことでしょうか。私は、やはりこういう現象というのは、余りにも法によっていわゆるぼろもうけを得ておりますと、いつの間にか良心が麻痺してきて、民間はこの間低成長の中で倒産件数も多く出たりして、自分たちの経営に対しては体を張って命を縮めながらも自分たちの経営の改善努力をやっているわけでございます。こういうときにこういう現象というのは、これはやはり道義退廃の末期現象である。こういう点で、今回この問題に対して大臣が何らかの処置をしなければならぬわけでございます。このことは国民も見ておりますし、また、これは今後の歴史の上にも大きく大臣の評価が左右されるところでございますから、大臣におきましては断固とした態度で臨んでほしい。しかし、私は、処罰が問題なのじゃなくして、むしろ制度そのものが、今度出たのは氷山の一角でございますから、この制度そのものを変えなければならぬときだ、こう思っているわけでございます。こういう観点から、ひとつ大臣の所信をお伺いしたいと思うわけでございます。
  497. 石川弘

    ○石川政府委員 御指摘の問題は、正規の卸業者が違法行為を直ちにやったということではございませんで、実は、そういう人のいわば系列と申しますか、縁のある方の会社に今不適正な事実があるということで取り調べているわけでございます。したがいまして、私どもは、そういう不適正なことにつきましては、今回聴聞をいたしますが、その結論によって厳正な処置をするつもりでございます。  それから、先生のお尋ねの、卸あるいは小売というものが制度上、許可という形で特定の人にしかやらせないということになっているわけでございますが、まず小売につきましては、御承知のように、前回の改正時点にかなりの新規参入というのをいたしながら競争させたわけでございます。卸につきましては、御承知のように、米の卸全体は約三百数十卸あるわけでございますが、これは事業協同組合系統と、それから商業系統の卸と、もう一つは農協の卸と、三つあるわけでございまして、この三つの系統がそれぞれ競争する形ではございますけれども、今先生指摘のような結びつきというような問題につきましては、前回改正時点で私ども、ある種の競争原理の導入というような形でいろいろとお話をしたわけでございますが、前回の改正時点ではなかなか単一結びつきということを変えるということには至らなかったわけでございます。私ども、その後におきます競争の仕方その他を見ておりまして、やはり結びつきの問題についても競争がされるような方向が望ましいのではないかというようなことで、いろいろと現在、卸、小売間で話し合いをさせておりますけれども、今回の事案というのは、これは卸そのものの違法行為といいますよりも、集荷段階におきますそれに関連する者の行為ではございますけれども、やはり卸についても何らかの競争原理導入というのは適切ではなかろうか。ただ、新規参人ということになりますと、扱っております米の総量自身はふえているわけではございませんで、むしろ現存します卸が系統を異にする者同士で切磋琢磨するのがいいのではないかということで、競争原理の導入につきさらに検討を進め、実行に移していきたいと思っております。
  498. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 菅原先生にお答えいたします。  今長官が言ったとおりでございますが、かねて先生から、米の安定的な供給とそれからまた米の流通についての適正な競争が行われるよう環境をつくっていった方がいいという御指摘を受けているわけでございますが、今度の問題につきましては、実は長官から私報告を聞きました。それで、二十日の日に聴聞会をやって事実を確認するということでございまして、仮にそういう事実があるならば厳しく処断するように長官に申し伝えたところでございます。
  499. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 私は、処分もさることながら、こういうことが生まれてくる現在の機構そのものを何とか考えてほしい、これが私の念願でございます。また、この全国食糧事業協同組合連合会には農水省の元幹部の方々が顧問としても入っているという、こういうことも発表されますと、やはり政治はあくまでも国民の間に潔癖な態度をとって公平に対処しなければならぬと思うわけでございますので、この点については、重ねて特段の厳重な御配慮、また適切な法の運用等をよろしくお願い申し上げる次第でございます。  次に、基盤整備の問題についてお伺いいたします。  私の持論といたしましては、本来、農業も知識集約産業であり先進型産業であるのであるから、やはりそういう産業として伸びるような対応をすべきだと政府に常に要求してきたわけでございます。その中で、どうしてもこの基盤整備と水の確保、これは国家が責任を持ってなすべきだ、これが私の持論でございました。  実は、今全国に行われておりますところの基盤整備、国営かん排等その他の基盤整備の実態を見ますと、私たちの地方のかん排事業におきましても、当初計画からもう既に十年たっておりますと事業費が四倍くらいにアップしているわけでございます。しかし、米の価格は据え置き等もありまして、五十九年度双方調べてみますと、二倍ちょっとぐらいしか上がってない。こうなりますと、当初から見て、償還関係で二・五倍ぐらいの償還、これ以外にインフレ率等もありますから実質はこの数字ではないわけでございますが、いずれにしても、この償還の額というのが増大している。これに対して政府としてどのような対応をなさることができるか、その御所信をお伺いしたいと思うわけでございます。
  500. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 工期が大分長引いてまいりまして、その間の物価の上昇でございますとか、あるいは最近整備水準が大分上がってきておりまして、それに伴います工事費の増加等がございます。こういうことで、全体として農家の負担がふえてきているわけでございます。私どもといたしましては、この補助率等につきまして、現在これをさらに高めていくということについては、財政事情等から考えましてとても難しいわけでございます。したがいまして、農家負担の軽減対策といたしましては、基本的には事業の工期を極力短縮していきまして、それからまた、部分的に効果が出ますところについては極力早く効果を出していくような、そういうことをする必要があると考えております。五十七年度以降におきまして、そういう意味におきまして、新規の着工地区の採択を抑制しております。また、来年度予算につきましても同様の考え方で、新規の着工地区の採択を抑制いたしまして継続事業推進を図っていく、こういうことを行っているわけでございます。  さらに、来年度におきましては、国営地区の一般会計で実施しております地区につきましては、部分的に特別会計制度を導入いたしまして事業の促進を図る、こういうことも考えておりまして、これによる事業効果の早期の発現ということにも努めているところでございます。また、事業計画の策定なりあるいは設計、事業推進等につきましても、現在それぞれの基準というものはございますけれども、その地域地域に合いました状況に応じまして、極力事業費を切り詰めるような設計をしたり、あるいは事業推進等も考えていく必要があろうかと思います。  また、償還条件につきましても、私どもといたしましては、国営のかんがい排水事業につきましては、例えば、償還期間が十七年ということで、利率が一般会計で五%、特別会計七・一%となっておりますけれども、まあ長期低利のものになっているんじゃないか、このように考えております。しかし、この農家負担の問題につきましては、最近の工期の遅延等からかなり広範に出てきている問題でございますので、私どもといたしましても、今後さらに引き続き検討をいたしてまいりたい、このように考えます。
  501. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 基盤整備の件は、第二種兼業農家が既に水田におきましては半数以上がこれを保有しているわけですが、その専従者の年齢というのが高齢化しております。ですから、五年後、十年後にかけまして急激な農地の流動化が起きてくるのではないか。そのとき基盤整備が十分でないと、それに日本の政策もまた日本農業そのものも対応していけないという事態を心配するわけでございますので、大臣におかれましては、ぜひこの基盤整備促進のために渾身の努力を払っていただきたいと思うわけでございます。  次に、林野庁長官の方にお伺いしますが、木材、紙パルプ製品の市場開放をめぐる日米次官級協議会が去る二十五日に開催されましたが、この席上で政府は、木材製品の市場開放は難しいとの見解を示されたことについては、現在の林業を取り巻く情勢から同意できますし、出席の田中林野庁長官にもその苦労、御努力を多とする次第でございます。しかし、新聞のニュースでございますが、この時期に、経団連が市場開放措置に対する提言として、木材製品及び広葉樹合板についての関税についても引き下げ等を求めているわけでございます。これに政府としてどう対処していくのか。  さらに、国有林野事業の改善計画は実質六十年度がスタートの年となるわけでございます。林政審答申あるいは改善計画においても請負事業体の育成強化をうたっております。その現状と対応策について政府の見解をお伺いしたいと思います。
  502. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 年初の大統領と総理のあれを受けましての第一回の日米事務レベルの協議を二月二十五日行いまして、ただいまお話がございましたように、米側といたしましては障壁の最大のものは関税であるというふうな取り上げ方をいたしましたために、論議は平行線をたどらざるを得ず、難航いたしたわけでございまして、お話しの経団連の提言につきましては、自由貿易体制を維持推進するためには、あらゆるものにつきましての関税引き下げ、輸入制限品目の自由化等が必要であるというような提言であるというふうに理解をしているわけでございますが、やはり背後にある国内事情、これは単なる産業を超えまして、国土の保安でありますとか国民の生活慣習でありますとか、いろいろかかわるところが多いわけでございますので、経団連の提言にそのまま私どもも同意をするというわけではございません。  アメリカとの交渉におきましても、やはりそういう広く深くかかわる面につきまして理解を求める努力を傾注してまいりたい。無理解のために亀裂が広がることはよろしくないと考えます。これからも会合が予定されておりますので、例えば向こうは関税の問題と日本の国土の保全は関係がないのではないかというふうな端的な、私どもから考えれば非常に誤解と思われる認識をいまだに持っておりますので、そういう点につきましては十分理解を求めていきたいと思っている次第でございます。  また、最後の国有林経営問題についてでございますが、国有林業務を担うのは、やはり地元にありまして国有林仕事もあるいはまた民有林の仕事につきましても等しく担う事業体が育つことが望ましいということで、一般林政施策においてもそういう方向を志向してございますし、国有林におきましてもそういう事業体が健全に発展することを願った施策を講じているわけでございますが、御案内のように、林業関係全般が不況のどん底にございまして、あらゆる経営活動が縮小せざるを得ないということから、育てたいと思っております民間事業体にも大変な御不自由、御迷惑をおかけしているような実情はあるわけでございます。何とか、いろいろ多角的な経営に転換させる、あるいは国有林以外におきましても業務を行えるような体質を備えてもらうというような施策を講じまして、この苦境を乗り切る体制をとってもらいたい。その方向につきましてはできるだけいろいろのことをいたしたいというふうに考える次第でございます。
  503. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 第二問の質問でございました請負関係につきましては、地域実態に即した計画的発注等を通じて地域にも経営の安定化をもたらすことのできるようなそういうメリットがあるわけでございますので、ひとつこの点の今後の十分な対応をお願いしながら、次の質問に移りたいと思います。  実は、過般、大臣木材使用、消費の件でも質問した際に、大臣においては、やはり地方における木材の使用等も今後考えさせるようにすべきだという御所見を伺っておりました。実は、今回、岩手県で美しい農村景観づくりモデル事業というのに新規の事業費をつけたわけでございます。聞いてみますと、これは、都市のいろいろなモデル化、都市化の形態がそのまま農村に入って、それが農村の近代化のようになってしまっている、これでは農村そのものが、我々がどんなに努力しても、本来的な主体性のある農村として守っていくことはできないのじゃないか、やはりこういう文化指導の面、ソフト的な内容を持った指導を今行わないとだめじゃないかということで、こういう調査費をつけたようでございます。こうなりますと、当然、今までの伝統的な建築問題もこういう分野で大いに問題にされてくるところでございます。つきましては、農水省としても、今後こういう文化指導的な面にも目を向けていただきたい、こう思うわけでございますが、これについての御所見をお伺いしたいと思うわけでございます。
  504. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 菅原先生にお答えいたします。  今先生おっしゃったようなことでございますが、特に景観づくりにつきましては地元の実情に即して行うことが重要である。数ある村づくりの一環として、景観づくりについて地元の合意が形成されておれば、農林水産業振興施策を実施する場合において、事情が許す範囲内でその意向を尊重してまいりたいと考えております。
  505. 菅原喜重郎

    ○菅原分科員 次に、要望をもって質問を終わりたいと思うわけでございますが、地域農地の有効利用、流動化を通じて、中核農家等の経営規模拡大を促進するところの農業改良資金助成法、自作農創設特別措置特会法の改正に対して特段の御努力大臣に求めまして、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  506. 大村襄治

    大村主査 これにて菅原喜重郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力により、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後八時三十二分散会