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○
天野委員長 これより会議を開きます。
この際、
理事の
補欠選任の件についてお諮りいたします。
委員の異動に伴い、
理事が四名欠員となっております。この際、その
補欠選任を行うのでありますが、先例により、
委員長において指名することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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○
天野委員長 昭和六十年度一般会計予算、昭和六十年度特別会計予算、昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。
この際、各分科会主査より、それぞれの分科会における審査の報告を求めます。
第一分科会主査
伊藤宗一郎君。
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○
伊藤(宗)
委員 第一分科会における審査の経過を御報告いたします。
本分科会の審査は、去る七日及び昨八日の二日間にわたり行いました。
質疑応答の詳細は会議録に譲ることとし、ここでは質疑のうち主なものについて御報告いたします。
まず、国会関係では、開会式の慣行と衆議院議長の
辞任との関係、国会職員の勤務時間と女子職員の処遇等について、
皇室、裁判所、会計検査院の関係では、内廷費と祭祀等皇室の伝統継承の必要性、裁判のスピード化、琵琶湖総合開発事業の補償のあり方について、
防衛庁関係では、与野党幹事長・書記長会談における金丸自民党幹事長の防衛費一%発言の受けとめ方、F1後継機の機種選定問題、三宅島等の米艦載機の訓練場確保問題、三沢基地の管理問題及びF16の配備予定、美保基地のC1ジェット輸送機の増強配備問題、岩国基地の沖合移転問題等であります。
警察、科学技術庁、沖縄開発庁関係では、代用監獄の運用と捜査のあり方、交通事故に対する救命体制のあり方、放射性廃棄物の貯蔵及び海洋投棄の問題、原子力船「むつ」の定係港の縮小計画と安全性、科学万博終了後の展示物の利用方法、沖縄における空港整備等の離島対策について、
総理府本府及び総務庁関係では、行政改革と地方事務官のあり方を初め、金鵄勲章受勲者等旧勲章叙勲者の名誉回復、戦後処理懇の報告の当否、シベリア抑留者の補償問題、元日本兵台湾人、同遺族への補償問題、強制連行韓国人の遺骨収集問題、旧硫黄島住民の帰島問題等の戦後処理問題で、また、同和対策では、部落差別の実態、予算措置、同和対策基本法の制定問題、人種差別撤廃条約の批准促進問題等について質疑が行われました。
以上御報告申し上げます。
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○相沢
委員 第二分科会における審査の経過を御報告いたします。
本分科会においても同様に二日間審査を行いました。
質疑応答の詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは質疑事項のうち主なものを申し上げます。
まず、大蔵省関係では、決算の予算への反映、国債及び地方債の地方証券取引所への上場、国民金融公庫の貸し出しと債権管理のあり方、国民年金の支払い金融機関の拡大、投資顧問業問題に対する大蔵省の取り組み、自賠責保険の運用益の収支改善への充当、所得税及び贈与税の基礎控除と配偶者控除の引上げ、単身赴任減税及び教育減税の実施、同族会社の留保金課税制度の見直し、しょうちゅうの酒税引き上げと成分表示、日本自動車輸入組合に対する通関証明書の発給業務委託問題等であり、
次に、外務省関係では、対ソ関係の改善とソ連外相来日の見通し、日仏文化交流の促進、日中青年交流の促進、高度先端技術の中国への輸出、南アフリカのアパルトヘイト政策に対する日本政府の態度、北方領土返還の国際司法裁判所への提訴、青年海外協力隊隊員の帰国後の受け入れ体制、米軍相模補給廠の実態と早期返還、在日外国公館の現地採用職員の雇用問題等であり、
最後に、法務省関係では、在日外国人の指紋押捺義務制度をめぐる諸問題、届け出申請による国籍取得の手続、養子縁組問題についての法制審議会での審議経過、登記のコンピューター化の進め方、自己破産手続費用の国庫からの仮支弁、大阪刑務所の移転、青森流通団地の建設と青森刑務所の土地交換、人名漢字の制限等であります。
以上、御報告申し上げます。
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○葉梨
委員 第三分科会における審査の経過について御報告いたします。
本分科会におきましても二日間審査を行い、昨日終了いたしました。
質疑内容の詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは質疑項目のうち主なものについて申し上げます。
まず、文部省関係では、教育減税と文部省の対応、臨教審の審議と関連して、入試改革など教育行政の諸問題及び創造性豊かな人間教育、幼児教育のあり方、教科書記述と検定問題、障害児教育問題、過大規模校の解消策、教育施設の整備充実、学校統廃合問題、転入学枠の拡大及び転校手続の簡素化、学校給食のあり方、児童生徒の健康問題、同和教育問題、小中学校教員配置の現状と将来の見通し、教職員の週休二日制問題、中国残留孤児のための日本語教員の派遣、外国籍の教員採用問題、地方国立大学の学部等の新増設、放送大学のあり方、専修学校の実態とあり方、埋蔵文化財の保護、山梨国体への文部省の助成等であり、
自治省関係では、地方行革の進め方、地方税源偏在の見直し、地方債の許可制度の簡素化、地域改善対策事業のあり方、特別区のあり方、教育
委員の準公選制と地方自治のあり方、公営交通の現状と赤字対策、地方公営電気企業の売電単価問題、地方団体の工業用地造成事業の現状と未売却地対策、公営競技事業の見直し、車庫証明業務と行政書士業務の関係、衆議院議員の定数是正問題、不在者投票制度運用の見直し、消防体制の強化等であります。
以上、御報告申し上げます。
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○
山下(元)
委員 第四分科会における審査の経過を御報告いたします。
本分科会も同様に二日間審査を行い、昨日終了いたしました。
質疑の主なものは、労働省関係では、ゴールデンウィークの連続休暇の法制化等労働時間の短縮及び週休二日制の拡大、退職手当の保全措置、出稼ぎ労働者、女子パートタイマーの労働条件の改善、職業病認定のあり方、高年齢者、心身障害者の雇用対策などであり、
厚生省関係では、国立病院、療養所の再編成のあり方及び地域医療の充実、国立小児医療センターの機能強化、今後の高齢化社会に対応した施設整備及び在宅福祉の充実等の老人福祉対策、中国残留日本人孤児に対する援護対策、厚生年金基金積立金への非課税措置の見直し、幼保の一元化及び保育行政の充実、はり、きゅう、マッサージの医療保険上の取り扱い、脳死の判定と臓器移植、国連職員等在外邦人の年金加入の実態、歯科診療の不採算の是正及び歯科材料の安全対策、腎関係疾患の予防等難病対策、原爆被爆者の援護対策、同和関係住民の福祉対策、カネミ油症判決と国の対応、福祉電話の開発、有害廃棄物の処理対策などでありましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
以上、御報告申し上げます。
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○大村
委員 第五分科会における審査の経過について御報告いたします。
本分科会も二日間審査を行い、昨日終了いたしました。
質疑の内容の詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは主なるものを申し上げます。
まず、環境庁の関係では、地球的規模の環境問題に対する対応、我が国の酸性雨対策と森林保護、湖沼水質保全特別措置法の全面施行と琵琶湖、児島湖、手賀沼、印旛沼の水質保全対策、二酸化窒素の総量規制による環境基準の達成の見通し、スパイクタイヤの粉じん対策、地下水の汚染の実態とその対策及びPCBの処理問題、国立及び国定公園の保護と整備等であります。
農林水産省の関係では、米国の一九八五年農業法案の動向と成立した場合、我が国に及ぼす影響、日ソサケ・マス漁業交渉に臨む方針とその見通し、農家の経営規模の拡大と近代化、土地改良事業費に係る農家負担の軽減策、肉用牛生産農家の経営改善対策、バイオテクノロジー先端技術の開発促進、米の消費拡大策、国際森林年と国有林野事業の推進、振動障害者の救済策、カネミ油症判決に対する国の対応、果樹農業振興策、宍道湖・中海の淡水化計画実施の是非、韓国等外国漁船の日本領海内の不法操業とその対策、山形県食糧株式会社のやみ米売買による食管法違反の事実、食糧管理制度のあり方、食糧の自給率の強化策、農業者年金制度のあり方、林道の整備と受益者負担の軽減等について質疑が行われました。
以上、御報告申し上げます。
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○小此木
委員 第六分科会における審査の経過について御報告いたします。
本分科会におきましても二日間審査を行い、昨三月八日終了いたしました。
質疑の詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは主な事項を申し上げます。
まず、経済企画庁関係では、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」における発展途上国の累積債務問題、国民の公的負担及び住宅政策等についての考え方、国内経済の現状と内需中心の六十年度経済成長率等達成の見通し、一九八五年度の米国経済の見通しと円の対米ドルレートヘの影響、景気回復下における企業倒産の増加、高失業率の考え方、企業による冷凍魚の市場外取引の現状と消費者価格への影響などでありました。
次に、通商産業省関係では、工業再配置促進事業の現状と今後の進め方、アルミニウム等基礎素材産業政策のあり方、プラント輸出の現状と輸出促進措置の弾力化、原子力発電の必要性と安全性の確保、核燃料サイクル基地建設の進め方、ガソリン等石油製品の輸入問題と石油業法のあり方、揮発油販売業者の経営安定化対策、養殖漁業等事業用電力料金のあり方、中小企業の経営の現状と金融等経営安定化対策の拡充、中小企業向け官公需事業の発注量及び品目の拡大、伝統的工芸品産業の振興対策のあり方、繊維業界の現状と振興対策の進め方、大規模店舗の出店と地元商店街等への影響、中古自動車の販売時における自動車重量税の取り扱い、自動車の対米輸出自主規制の撤廃問題、野生動植物の保護に関するいわゆるワシントン条約の批准経過と関連国内法の早期整備の必要性などでありました。
以上、御報告申し上げます。
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○
小渕(恵)
委員 第七分科会における審査の経過について御報告いたします。
本分科会も各分科会同様二日間審査を行い、昨八日終了いたしました。
質疑応答の詳細につきましては会議録に譲ることとし、ここでは質疑事項のうち主なものを申し上げます。
まず、運輸省所管について、鉄道関係では、国鉄再建計画と民営・分割、余剰人員、長期債務、労使問題、国鉄の基本方策の考え方、特定地方交通線の廃止問題、貨物駅、操車場跡地の有効利用と駅前広場の整備促進、新幹線の騒音公害対策、新幹線における新駅設置、東北新幹線盛岡以北の建設、在来線の複線、電化の促進、車両検査問題、本四連絡橋に接続する鉄道の整備、身障者のための駅舎施設の整備改善、青函トンネルの利用計画と青函連絡船の取り扱い問題、大都市輸送体系の整備対策、地下鉄の整備促進、科学万博の輸送対策、航空関係では、第五次空港整備計画の策定と空港の整備建設問題、大阪国際空港の周辺整備対策、新東京国際空港二期工事の着工見通し、東京国際空港沖合展開の跡地利用の将来見通し、関西国際空港建設に伴う漁業補償、地域整備問題、米軍訓練空域の返還問題など、以上のほか、道路運送法の免許に関する問題、長期予報、異常気象の研究及び対策、地磁気観測所の移転問題、造船不況の現状及び対策、
次に、郵政省所管については、切手発行政策、簡易郵便局の委託事務範囲の拡大、郵便年金に係る贈与税の緩和、電電公社民営化に伴う端末機器販売の公正競争条件の確保、電気通信機器の市場開放問題、米国からの通信衛星の購入問題、新電電会社の資本金、株式の公開方法、電気通信事業法の政省令案などでありました。
以上、御報告申し上げます。
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○住
委員 第八分科会における審査の経過について御報告申し上げます。
本分科会も各分科会同様二日間審査を行い、昨日終了いたしました。
審査内容は広範多岐にわたりますので、その詳細は会議録に譲ることとし、ここでは主な事項について申し上げます。
まず、国土庁所管については、三全総の進捗状況及び四全総策定に当たっての基本的考え方、国土開発における地域格差の是正、筑波研究学園都市の整備充実、関西文化学術研究都市の建設構想などでありました。
次に、建設省所管については、道路関係では、高規格幹線道路の建設構想、地域高速交通体系の整備促進、一般国道及びバイパスの整備改良、首都圏中央連絡道路の建設、東京湾岸道路と東京湾横断道路の建設、高速道路高架下の土地利用、ガードレールの改善など、治水関係では、都市河川及び地方河川の改修、水害防止対策、河川、湖沼の汚染対策など、住宅関係では、コンクリート建築物のアルカリ骨材反応と塩害対策、公団住宅の施設改善、空き家対策、分譲マンションの維持管理に係る諸問題、建設業の寄宿舎の改善、中国残留日本人孤児のための公営住宅の建設促進など、以上のほか、都市再開発事業の推進、下水道の整備、都市公園の建設、高層ビル火災対策、雪害対策などでありました。
以上、御報告申し上げます。
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○
天野委員長 以上をもちまして分科会主査の報告は終了いたしました。
―――――――――――――
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○
天野委員長 これより締めくくり総括質疑を行います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
稲葉誠一君。
-
○
稲葉(誠)
委員 いよいよ締めくくり総括に入ったわけですけれども、総理にお伺いをいたしたいのは、第一議員会館がありますね、入りまして左側の会議室がいっぱいあるところに自民党の憲法調査会の部屋があるわけでしょう。そこに大きなポスターがあるのですが、それは「改憲こそ戦後政治の総決算」というポスターなんです。だからそれについて総理はどういうふうにお考えでしょうか。改憲と戦後政治の総決算の関係について。
-
○中曽根
内閣総理大臣 自由民主党におきましては、立党の際に政策あるいは綱領でございましたか、基本的なそういう政策におきまして憲法改正を期する、そういう自主憲法の発想があるわけであります。自民党としては、その基本的な考え方というものはやはり今後も維持していく。ただその際も、今の憲法が果たしている歴史的役割というものは非常に高く評価しておる。つまり、平和主義あるいは国際主義あるいは基本的人権の尊重あるいは自由、民主主義等々、これらの戦後の偉大な歴史的役割を果たした諸価値についてはこれを堅持していく、そういう基本的立場に立って憲法の見直しを行う。そういう考え方を持っておるわけでありまして、そういう意味のことをポスターにあるいは書いたのかもしれません。
-
○
稲葉(誠)
委員 「改憲こそ戦後政治の総決算」ということについては、そうすると総理はどういうことなんですかな、あなたの考えにマッチしている、こういうふうに理解をしてよろしいでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 私は、憲法につきましては中曽根内閣におきましてはこれを政治日程にのせることはいたしません、そう申し上げておるのでありまして、私が申し上げている戦後政治の総決算ということは、今現実に進行しておる行政改革、財政改革あるいは教育改革あるいは国際国家日本へ前進しよう、こういうことを内閣としては手がけて今真剣に努力しておる、そういうことでございます。
-
○
稲葉(誠)
委員 質問と答えが必ずしも合わないわけですけれども、話をSDIのことに進めたい、こう思うわけですけれども、SDIの話はレーガン大統領からどういう話があったのでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 一月冒頭のロサンゼルス会談におきまして、レーガン大統領からSDIに関する説明を受けました。レーガン大統領は、これは非核兵器であり、防御兵器であり、そして核兵器の絶滅を目的としてそれを研究開発したい、しかしこれは長期的な計画であって、まだ時間がかかることであります、いわばそういうような趣旨の話を受けたわけであります。
-
○
稲葉(誠)
委員 それに対して総理はなぜサポート、支持ですね、というふうには言わなかったわけですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 防御兵器であり、かつ非核兵器であり、かつ核兵器の絶滅を目標とするという考え方については、我々も核兵器の絶滅を目標としておるし、また我々は専守防衛という形で防衛も考えておるわけでございます。しかし、基本的立場においてはいわゆる抑止及び均衡の理論を持っておるわけであります。そういうような諸般の考え方を踏まえまして研究するということについては理解を示したということであります。
-
○
稲葉(誠)
委員 いや、私もお話を聞いたときに、理解を示したというのは一体英語で何と言うのだろうかと思ってすぐ考えたわけですよね。それでいろいろお聞きいたしましたら、それはアンダースタンドという言葉を使った、こういうことですわな。そうすると、アンダースタンドというのは外務大臣、どういう意味なんですか。いやいや、どういう意味という意味は、サポートとアンダースタンドとどう違うかという意味ですよ、そういう意味ですよ。いや、これは違うのだから。
-
○
安倍国務大臣 アンダースタンドというのはまさに理解する、こういうことじゃないかと思います。支持というのはやはり最終的判断といいますか、そういうものが含まれているのじゃないかと思います。とにかく研究の段階で非常に長期的な構想ですから、それに対して、まだこれから先非常に長い構想ですし、結論的にどうなるかというのはまだはっきりしてないわけですから、総理としては研究については理解する、こういうふうに言われたわけです。
-
○
稲葉(誠)
委員 そこで外務大臣、サポートという言葉をこれはサッチャーさんが使ったわけですよね。日本ではどうしてサポートという言葉を使わなかったか。ちょっと私の質問は誤解を招くところがある質問なもので、注意しながらしゃべっているのですけれども、これをどうして使わなかったのでしょうか。アンダースタンドという言葉はアプリシエートともまた違うわけですよね。だから、サポートとアンダースタンドとアプリシエートと三つ違うわけですよ、これ、そうでしょう。アンダースタンドというのは、どっちかというと向こうの一つの提案というか何というかに対して中立的な意味を含んでいる、こういう言葉じゃないですか。どうですか。
-
○
安倍国務大臣 私も英語はもちろん余り詳しくありませんが、しかしアンダースタンドとアプリシエートとサポートともちろん違うわけで、そういう中で慎重に選んでアンダースタンドと、こういうことです。
-
○
稲葉(誠)
委員 だから、総理の言うように防御兵器で非核兵器であれだというなら、慎重に選ぶ必要はないわけでしてね。だから、どうして慎重に選んだのですか、そうすると。
-
○
安倍国務大臣 これはやはり非常に長期的な構想ですから、ですから日本の立場というものがありますから、そういうことも踏まえて恐らく総理としては、アンダースタンドというのが現在大統領の説明を聞いてまさに、まだ研究の初歩の段階ですから、これに対して理解をするというのが日本の態度としては最も適切である、こういうふうに考えられたと思うのです。
-
○
稲葉(誠)
委員 だから、アンダースタンドが適切であると考えだというのは、サポートではどうしていけないかということなんですよ。どうしてサポートしなかったのですかと私聞いているわけです。なかなか難しいですよ、これ、聞き方は逆説的な聞き方だから。そこら辺はなかなか難しいのだけれども、僕もちょっと危ないなあと思いながら聞いているわけですが、それを聞いているわけですよ。(「微妙だな」と呼ぶ者あり)微妙には違いないのだけれども、それはやはり虎穴に入らなければ本当のことを聞けないからしようがないんだ。どうですか、外務大臣、遠慮しないでよ。いやいや、総理は後でいいから、フランクにお話しくださいよ。
-
○
安倍国務大臣 一番率直な日本の立場が理解、こういうことでこれは一番
稲葉さんも理解できやすいのじゃないかと思いますね。
-
○
稲葉(誠)
委員 そんなこと聞いてない。なぜサポートと言わなかったのかと聞いているのですよ。そうでしょう、サッチャーさんはサポートと言っているわけですから。じゃ、サポートとアンダースタンドとどう違うのですか。いや、英語ができないとかできるとかの話じゃなくて、失礼な話ですよ。外務大臣なんだからあなたは、それはどうなんですか。
-
○
安倍国務大臣 これはサポートとか理解とかそういうものを比較して日本は言ったわけじゃないんですから、日本の立場としてはまず、サポートあるいは理解とかそういうものをいろいろと検討した結果どうしたということじゃなくて、理解ということで一本にこれを日本の立場を表明したわけですから、何かサッチャーさんの後を追わなければならぬということじゃ私はないと思うのですね。
-
○
稲葉(誠)
委員 いや、サッチャーさんがどうであろうとそれは別のことですけれども、私の聞きたいのは、だから日本としてはそのSDIの構想というものに対して、一定のディスタンスを置いて、そして眺めたいということからアンダースタンドといういわば中立的な言葉を使ったんじゃないんですか。それならそう答えてくださいよ。
-
○
安倍国務大臣 これは全くSDIは大統領の説明にもありましたように、研究のいわば始まった段階ですから、非常に長期的な構想で。ですからこれはいろいろの段階があるわけですね、最終的に実用化されるまでには。その中において日本にも情報を提供するとか、日本と協議するとか、そういう段階もあって、最終的な判断ということになるとそれはそれなりに日本が日本の立場で判断をしなければならぬわけですけれども、支持ということになりますと、むしろそうした最終的判断までにも及ぶというふうな印象を与えるんじゃないかと私は思います。まあこれは後で考えたことですけれども。
-
○
稲葉(誠)
委員 今の外務大臣の答弁でよろしいんでしょうか、総理は。
-
○中曽根
内閣総理大臣 いいと思います。
私は、支持という言葉の中には、理解した上でむしろ奨励するとか支持するとか、そういう奨励的なにおいが出てきますね。しかし理解するという言葉は、よく話はわかる、しかし推移を見守る、そういうようなニュアンスの言葉で留保が非常に強いわけで、現にこれは非常に長期計画のものでどういうふうに展開していくかわかりません。そういう将来の点については厳重に留保だけはしておこう、そういう態度が示されておるわけであります。
-
○
稲葉(誠)
委員 このSDIの進捗状況についてや具体的内容をアメリカ側に照会する、こういうことの方針を固めだということが伝えられておるのですけれども、その点はどういうふうになっているのですか。これは外務大臣にお尋ねをしたいのです。
それから、指向性エネルギー兵器の一種であるエックス線レーザーや粒子ビームをつくり出すのに小型の原爆や水爆がエネルギー源として使われるのではないか、こういうことが考えられるわけですね。それとの関連でどういうふうに理解をして、どこまで一体日本の政府として協力できるということになるわけですか。これは総理でも外務大臣、どちらでも……。
-
○
安倍国務大臣 レーガン大統領から、私もシュルツ国務
長官からSDIについては承ったわけですが、全くこれは国会で総理大臣が明らかにしましたように、このSDIというのが防御兵器であるし非核兵器であるし、あるいはまた弾道ミサイルの無力化、そして最終的には核兵器の絶滅につながる戦略構想である、こういう概略的な理念の説明を受けたわけで、内容はこれから研究していくわけでしょうから、それに対して理解を示したわけですね。具体的にこれがどういう方向へ進んでいくかということはこれからの研究によって決まるんだろう、その研究する基本的な理念というものが大統領によって明らかにされた、こういうことであります。
-
○
稲葉(誠)
委員 これはまたいろんな機会に、今後の推移を見守りながら各
委員会その他で質問が出てくるというふうに思うのですが、今度はちょっと内政の問題で、総理の一番お得意な税金の問題についてお尋ねをいたしたい、こう思うわけです。
総理は、公平、公正、簡素、選択ですかね、チョイスですね、この四原則を示されておられるわけですけれども、公平と言うならば不公平があるから公平という言葉が出てくるわけですね、これは論理的に。そうすると、総理自身は今日本の税制の中で一体どういう点が不公平である、こういうふうにお考えなんでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 私は、シャウプ税制以来三十数年、三十五年たっていろいろなひずみやゆがみやそういう不合理性が出てきた、そういう意味で今の四つの原則に立ってこれを見直そう、そういう意図を申し上げたわけでありますが、やはり税金というものが所得の再配分とか資源の再配分について公正な役目を果たしているかどうか、そういう点についていろいろな議論があります。あるいは所得の捕捉の問題もございます。新聞紙上でいろいろ脱税の問題なんかがよく出てきておりますが、所得の捕捉の問題もございます。そのほか、いわゆる不公平税制で常に皆様方からここで言われる問題等もございます。そういう諸般の問題から見まして、相当これは点検すべき内容がある、そう考えておるわけであります。
-
○
稲葉(誠)
委員 私が聞いているのは、具体的に総理が不公平税制と考えておられるものは何ですかと、こう聞いているわけですよ。抽象論を聞いているわけじゃないのですね。だって、政府税調でもはっきり指摘しているでしょう、いろいろ。だから何をもって不公平税制と総理はお考えなのかということ。これは大蔵大臣には後でもちろん聞くわけですけれども、総理は何をお考えになるのか、こういうことをお聞きしているわけです。
-
○中曽根
内閣総理大臣 不公平という概念に当たるか、あるいは不公正という概念に当たるか、いろいろな問題点が指摘されておりますが、例えば皆様方からもこの議論でよく言われるのは、サラリーマンの税金について、特に子供を抱えてローンとかあるいは塾の費用等で非常に困っておる方々に対する税金というようなものをこの際もう一回考え直したらどうか。例えば二百万から六百万ないし八百万ぐらいの層のカーブの問題、あるいは日本の高額所得者に対する七〇%とは今実効八八%になるというようなものは、果たしてこれが適正であるかとかなんとかいろいろ言われますね。そういうような点もやはり一つの問題点ではないか。もう少しなだらかな線で直してあげて、重税感を直してあげる、そして減税を断行する。あるいは法人税につきましても、諸外国との例と比べてみて日本の法人税は高いのではないかとしばしば論戦が行われておる、これらの問題についてもやはり点検する必要があり、もしそういうゆがみがあれば直す必要があるのではないか、等々考えるわけであります。
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-
○中曽根
内閣総理大臣 今突然の御質問ですから、思いつくままに申し上げたので、あとは大蔵大臣に御答弁願うことにいたします。
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○
稲葉(誠)
委員 だから、あなたが公平と言われているから――公平が一番いいのですよ、当たり前の話でね。だから、不公平があって初めて公平という概念が出てくるわけですから、じゃ不公平が何かということを自分なりにあなた理解されておられなければこれはいけませんよ。政府税調で不公平税制のティピカルなものとして何を言っているかということぐらい、それはもうおわかりなんじゃないですか、これ。
これは大蔵大臣、あなたはっきりした日本語で言ってくださいよ。お願いしますよ。
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○竹下国務大臣 不公平税制という言葉は人によってさまざまな意味を持って使われております。ですから政府としては、現行税制における種々の措置はそれぞれ必要性があって設けられたものでありますから、不公平税制が存在しておりますとは言えない、まずこれが前提にございます。
しかし、今
稲葉さんおっしゃったとおり、税調答申等にはいろいろな指摘がございますが、不公平税制という言葉の指摘ではございません。それのやはり具体的なものといたしましては、政策税制としての意義はあっても、いわゆる租税特別措置は税負担の公平をある程度犠牲にして講じられたものでございますから、そういう意味では不公平税制の代表的なものとして例示されている場合がございます。これらは、一つ一つ読み上げることは別といたしますが、まず私どもが絶えず念頭に置かなければならないと思うところであります。
それで、それから今度は検討課題として税調で指摘されておるものを読み上げてみますと、所得再分配機能の問題、それからこれは今総理がまさにおっしゃった「中堅所得階層の負担の緩和にも配慮しつつ、」というものであります。
それから二番目は、総理からおっしゃいました所得の捕捉、この問題。その中には、いわば所得税と法人税と両方あります、所得の捕捉の問題は。その法人税については五〇%が赤字申告を行っておるが、いわゆる応益的負担を求めるかどうかという議論もしてみなさいというのも入っております。
それから三番目は、やはりいわゆる課税ベースの浸食ということでございましょう。これは、主として租税特別措置ということが、絶えず政策目的との間で吟味しなさいよ、こう言われております。それから、随分議論いただきました非課税貯蓄残高、これからいたしますところのいわゆる非課税貯蓄制度のあり方、こういう問題。
それから、四番目の大きなくくりといたしまして、間接税の課税ベースと税率構造、こういうものが今まで指摘されておるものの代表的なものではなかろうかというふうに理解をいたすべきものと思っております。
-
○
稲葉(誠)
委員 そうすると、大蔵大臣はそれらに対してどういうふうに今後対処をしていかれるわけですか、今言われたことについて。それが全部で一つですよ。
それから、政府税調の中でいろいろな議論があるけれども、指摘された一番大きな問題は、この非課税貯蓄の存在自体が不公平だということを言われているのじゃないですか。そういう指摘が非常に大きいので、それは全部の人がそう言ったという意味ではありませんけれども、「現行の非課税貯蓄制度の存在自体が不公平なものと言える。」「現行の非課税貯蓄制度は、所得水準の高い階層ほど利用割合も高く、高額所得階層を優遇する結果となっており、不公平を助長している。」等の問題点を包蔵しているとの指摘があったということが政府税調でもはっきり書いてあるわけですよ。だから、これをどうするかということが問題で、殊に金融なり金利というものが国際化をしていく、自由化をしていく、こういう中で日本だけがそう特別なやり方をとっておるわけにはいかないでしょう。イギリスだって、フランスはちょっと違いますけれども、ドイツだって、アメリカだって、みんなこれは総合課税をしているわけでしょう。だから、大蔵省の主税
局長をやった人に言わせると、今二百五十兆ある、それで六%の金利として十五兆だ、一〇%取れば一兆五千億取れるじゃないか、それを再配分機能として低所得者や何かに回せばいいんだ、こういうふうに主税
局長をやった人も議論しているわけですよ。そういうことについてはどういうふうにお考えでしょうか。
-
○竹下国務大臣 これは、そういう意見があったという表現に、いつも税調も言葉を注意しておられますから、だから不公平税制が存在しておるという言い方はなすっておりません。しかし、そういうことを言ってみたところで、お互いわかりながら議論をしておる、こういうことになるでありましょう。
今申しました非課税貯蓄の問題は、先ほど私が分類いたしました三分類の課税ベースの浸食の中の二番目の分で、まさにおっしゃるとおりでありまして、この非課税貯蓄残高の総額は「個人貯蓄残高のほぼ六割を占めるに至っている状況を考慮すると、今後の利子配当課税のあり方を検討するに当たっては、郵便貯金を含む非課税貯蓄制度の取扱いが極めて大きな比重を占める問題であることは論をまたない。」ということが土台になりまして、それでいろいろ議論をしてきたわけです。今度の場合は、今
稲葉さんのお読みになりました税調の議論の背景の一つは、要するに非課税貯蓄制度そのものが存在することが不公平だという議論でございます。貯蓄奨励という意味は別といたしましてですね。
そこで、それよりも公平にするためにはどうしたらいいかというので、やはり低率分離課税があってもいい、こういう議論もあったわけでございますが、今回は、それぞれそれを総合的に判断をいたしまして、いわゆる限度管理を厳格にするということで法律を提案して、昨晩
委員会を通していただいたという現状にありますが、しかしその附帯決議にも、なお税調答申の問題もこれは引き続き検討すべき問題だよと、幾ら零細であろうと利子所得というのは所得には違いないわけでございますから、それが除外されておるという政策目的は別として、なお引き続き検討しなさいよというのは、これは答申にも書かれてありますし、また附帯決議にもそのような御決議をいただいたところであります。
-
○
稲葉(誠)
委員 私の言っているのは、今言った二百五十兆、約二百四十五兆、まあ二百五十兆ありますわな。それで、具体的に私は一つ提案しているわけですよ。それについてお答えを願いたいことが一つ。
それから、大蔵大臣が大蔵
委員会で、いわゆる一般消費税について、国民の理解が得られれば検討の対象にしてもいいというようなことを言われた、こう報ぜられているわけですね。どうやって国民の理解を得ようとされるのかということが第一ですね、問題は。それから、そこで問題になってくるのは、いわゆる一般消費税というものが国民の理解が得られれば検討の対象になるということであるとして、じゃEC型付加価値税は、国民の理解が得られようと得られまいとそれはもう既に検討の段階になっている、入るのだ、それでそれは実施のときにまたいろいろな条件が出てくるのだ、こういうふうに、一般消費税の場合とEC型付加価値税の場合とは分けて考えるという考え方をしているのですか。どういうことなんでしょうか。
-
○竹下国務大臣 まず第一の問題の、いわゆる利子配当課税の問題につきましては、これは具体的に今後とも、もとより本院におきましても、また税調においても、具体的に議論は継続されるというふうに思います。どういう手法がということは、私から申すことはあるいは適当でなかろうかと思います。
それから次の問題は、いわゆる新聞報道で、私が、一般消費税は国民の理解が得られなかったから、得られるようになればやってもいいと、こういう趣旨の示唆をしたという記事がございまして、きのうも大蔵
委員会で質問を受けまして、私よく読んでみましたら、まず
稲葉さん、あなたに私が正確に、いわゆる国会決議の中身については国会自身でお決めになるべき問題で、政府が国会決議に、勝手に決めたりしたらこれはいけませんというのを、昨年答弁しております。(
稲葉(誠)
委員「当たり前のことだもの」と呼ぶ)当たり前のことですから、これの答弁をしておるわけです。
この間私が発言しましたのを振り返ってみますと、確かにあの決議は国民の理解を得るに至らなかったから財政再建の手法としてこれはとってはならないよと、こう書いてあることは、これは御案内のとおりです。そこで、
稲葉さんとの議論が続いておるのを
川崎委員が取り上げて御質問なすったわけです。あの決議をこの
委員会で私も参加さしていただいてつくったことは事実でございます、あの大蔵
委員会の席で。当時も私、大蔵大臣でございました。国民の理解を得ることができなかった、よってこの手法はとらない、いわゆる一般消費税は、こういう決議であるわけでございますから、あれは読み方によっては国民の理解を得られたらやってもいいじゃないかという読み方にもなりますので、したがってその辺は、社会経済情勢において税制というものは、国民のニーズも変化してきますから、随分いろいろなことを考えてあの決議案をつくってちょうだいしたものだなというふうに私自身は当時印象を持っております、と言っておるわけです。しかし、やはり当時であっても大蔵大臣でした。今も大蔵大臣ですから、大蔵大臣が国会決議の有権解釈が国会の中にあるものを、感想として申し述べたとしても不見識であったというので、昨日それを訂正をいたしまして、速記録を取り消そうと思いましたら、あれだけはっきり訂正されりゃそれでいいじゃございませんかというので、先例に倣って、質問者と答弁した私との話し合いで、まあ削除はしなくてもいいだろう、こういうことにいたしたわけであります。これは扱い方でございます。
したがって、一般消費税というのは、総理もたびたびあの手法はとらないとここでおっしゃっておるわけですが、小倉さんの答弁等を聞いておりますと、いわゆるEC型付加価値税というあの類型そのものを議論の対象にしないとはおっしゃっていない。だから、それは議論の対象には広範な角度からやってもらうべきものでございましょう。が、特にこれをやってくださいとかこれをやってくださっては困りますとかいうようなことをこちらから申し上げる考えもございませんが、ただ、国会の論議を正確に伝えるということからスタートが始まるわけでございますから、およそ税の専門家の方々の議論の中にも、その辺は取捨選択をして議論を展開していただけるものではなかろうかというふうに考えております。
-
○
稲葉(誠)
委員 この前EC型付加価値税について、総理は投網をかけるようなものとかけないものとに分けられるような話をしましたね、フィーリングと言われたけれども。私は大蔵大臣に聞いてみたら、大蔵大臣は、
理事会には分けるものを出せないけれども私には出すと言いましたよね。そしたら主税
局長が飛んできて、とてもそんな分けられませんよと言うわけですよ。だから、EC型付加価値税というのは全部が投網をかけるものであって、それを二つに分けるというわけにできないのじゃないですか、総理。だから、総理の方の答弁を直すか、それともあなたが私に対して分けたものを出しますと言ったのを取り消すか、どっちかに、それは私はこだわりませんから。そういう点は、何というか、度量が広いと言うと語弊があるが……。
-
○竹下国務大臣 総理の答弁でフィーリングとか、非常にその点は正確だと思うのです。(
稲葉(誠)
委員「何が正確か」と呼ぶ)フィーリングという言葉は正確だと思うのです。フィーリングで言わなければわからぬことがたくさんございますから。先生もかなりフィーリングでおっしゃいますから。私が
稲葉さんにお答えいたしましたのは、私としては私なりの分析を、同じレベルとすれば失礼ですけれども、同じレベルの国会議員同士として持っていってみようかなと思う気持ちはまだあります。だから、大蔵大臣が
委員会に出すのではなく、ああいう議論をしたから私の考えているものを持っていってみようかなという気持ちで申し上げましたので、それはそのように理解していただきたいと思います。
-
○
稲葉(誠)
委員 総理、フィーリングの話が出ましたけれども、総理はフィーリングが好きな方ですけれども、フィーリングというのはやはり春の宵に愛をささやくときか何かの一つのあれであって、税金にフィーリングはないのじゃないですか。僕はそう思うのですよ、これは。それはそうだよ。フィーリング好きな方ですけれども、僕はそう思うのですよ。このくらいのユーモアがなくちゃいけないですよ、日本の国会というのは。僕はそう思うのです。
そこで私お聞きしたいのは、アメリカのリーガン・レポートがあるでしょう。リーガン・レポートと日本の税の場合、今総理、四つに分けられましたよね。リーガン・レポートは、大きく分けてそれを三つに分けていますね。それはどうして三つになったか、いろいろありますけれども、そして具体的な提案をしているわけですよ。例えば、単純なフラットにするという考え方と、それから三つに分けてフラットにするというのと、それから支出税にするというのと、それから州税は一般売上税でしょう、それを今度は付加価値税を連邦税としてつける、こういう四つの問題を取り上げて、そしてその四つについてどれがどういうメリットがある、どういうデメリットがあると、ちゃんとこうして示しているわけですよ、国民に。そしていわゆる三つの段階に分けた一五%、二五%、三五%の段階を採用したわけでしょう。そこから一体何を我々は学ばなければいけないかということ、この点をはっきりする必要があるのが一つ。
それからあの場合に、簡素、公平のほかに中立というのがあるわけです。中立というのは何かと言えば、その場合は法人税をアメリカの場合は上げる。それで、法人税二四%上げる、個人所得税八・五かな、ダウンする、こういうことでしょう。それでイコールにするということなんですよね。アメリカの法人税の場合は特別措置が物すごく多いわけですね。六兆円ぐらいのが二つぐらいあったりして物すごく多いわけですから、違うのですけれども、単純に二四%上げると、こう言うのでは誤解を招くかもわかりませんけれども、いずれにしてもイコールにするということなんですね。ところが、日本の場合は選択ということなんですわ、第四のあれは。選択というのは、間接税を選択することによって、そして比率をふやすことによって、そこで結果として増税を図っていくことだというふうに私は理解して、この前その点論戦をしたときに大体それに近いお答えが出たわけですけれども、増税を目的としてやっているということは、あなたの方としてはどんなに追い込まれてもそうは言えないわけですよ、これは。増収を目的としてやっているということは言えないでしょう。そんなこと言ったら大変な騒ぎになるから、それは言えないのは私もわかっているわけですよ。それはわかっていますけれども、だから国民の前に、例えば単段階が三つある、それから多段階が三つあると言うならば、それぞれが一体どういうメリットがありどういうデメリットがあるかということをちゃんと示して、そして国民の判断を仰ぐ、こういうふうにしなければ、所得税についてもそうですけれども、それをちゃんと仰ぐようにしなければいけない。それを私はリーガン・レポートから一つの教訓として受け取るわけですけれども、それは大蔵大臣どうでしょうか。
-
○竹下国務大臣 リーガン・レポートに対する受けとめ方は、いささかの部分的な評価の差はありましても、私は、評価というのか非常な興味を持っておられる点についての共通認識はございます。
問題は、私もリーガンさんといつもお会いして感ずることでございますが、アメリカと日本の仕組みの違いは、これは御案内のように歳出権は大統領府が持っておりますから、いわば歳入省でございます、金融等はもちろんございますけれども。そこに、やはり歳入という立場からの角度をとらまえて提案されるという立場は、歳出というものと両方持っておる私と仕組みの上で違うなという印象も一つあることは事実でございますが、全体的な評価といたしましては、租税特別措置はやはりやめるべきだ、やめるべきだという、日本の国会でもそうおっしゃっておる。我々も大体それに近い答弁をしておる。だから、むしろ日本の方を法人税のあの点においては多少まねられた傾向があるのではないかな、まあ自分本位にはそんな感じがします。
それから所得税の問題については、まだ刻みはアメリカも今多いわけでございますが、俗にフラット税制、この問題についても私どもも参考にすべき点はあろうかと思っておりますが、おっしゃいましたように、歳入の角度から物を考えられますから、言ってみれば、いわば増減ゼロという感じで物を議論される環境にあることは事実だと思っております。だから、今度税制改正の議論をしていただこうと思っておるのは、初めに増ありきとか、初めに減ありきではなく、やはり税制そのもので議論していただこう、こういうことを考えておるわけであります。
-
○
稲葉(誠)
委員 総理、時々一橋大学の石先生にお会いになりますね。もう一人明治大学の先生にお会いになるようですけれども、石先生が日本の税制についてなりそれからアメリカのリーガン・レポートなんかについてもいろいろ言われているわけですね。総理自身はこのリーガン・レポートの中から――これは通るわけじゃない。これは通るか通らないかまだわからない問題ですけれども、どういう点をお酌み取りになられますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 アメリカのリーガン・レポートの税制改革については大きな関心を寄せて、これは具体的にどういうふうな提案としてアメリカ議員からアメリカ国会に提出されるか、それが国会においてどういうような仕打ちを受けるか、反応が示されるかという点をよく注目していきたいと思っています。
私が関心を持っておるというゆえんは、まず第一に簡素ということが大きく言えると思います。今まで所得税につきましても十九か十四段階ぐらいあったのを三段階、一五%、二五%、三五%、三つに整理してしまう、これはもう大簡素であるだろうと思います。日本の場合は今十四あるのでございますか。(「十五」と呼ぶ者あり)十五ですか。十五ぐらいになっている。この刻み方というものを検討してみたらどうかなと。それで、特に二百万から八百万ぐらいのサラリーマンの階層の刻み方というものを考えておくべき一つの参考資料になる、そう思っております。
それから法人税につきましても、四十数%ぐらいのものを三五%に下げる、特別措置をほとんど切りたい。しかしそれも最近、国会提出の段階になると少し変わってきたようですね。議会の抵抗があるようです。そういうようないろいろな問題を非常に注意深く見守っていきたいと思っております。
-
○
稲葉(誠)
委員 税制の問題は非常に大きな問題でして、これはきょうは時間の関係もありまして、また別な機会といいますか、やらしていただきたいというふうに思うわけです。
私は、今問題となっておりまする電電公社の民営化に伴いますことなんですけれども、そのことに関連をして総理は去年の七月十九日ですか、「公社と今度の特殊法人と、」を違わせるかという大事な点は、それは一つは予算統制を最小限にとどめるこというようなこと、「一つは労使関係における自主性、当事者能力を」あれするということを言っておられて、当時の奥田大臣は「当事者能力を十分発揮していただいて、経営責任も明確にしていただく、そういった形で、行政介入はできるだけ控えるという形の基本姿勢で臨むことは当然でございます。」こういうふうに言っておられるわけです。そして国会の中で、これは去年の七月十九日に衆議院の逓信
委員会で私どもの
伊藤議員が、三重一区から出ている
伊藤議員ですが、料金認可の範囲について「事業法の三十一条で規定をされているわけですが、郵政大臣認可の範囲については、まず一点目は、基本的なサービスの料金に限定をして認可制にする、この点。二点目は、付加的あるいはオプション的なサービスの料金の認可については、そういう料金は認可を必要としない、こういうふうにひとつ確認をしたいと思うのですが、
局長、どうでございましょう。」こういう質問をいたしまして、これに対して小山という
局長、これは今次官になられた方でございまして、これは非常にこの問題に精通をしておるわけで、いろんな問題についても明確、具体的に答弁をされておられるわけですけれども、その小山さんが詳細に答弁をいたしまして、「第一種電気通信事業者の基本的なサービスの料金は認可を要しますが、付加的、オプション的なサービスの料金は認可を要しないこととしたいと存じます。」こう言っているわけです。その次に「なお、これにつきましてその内容をさらに細かく申し上げますと、」ということでずっと、主要な料金は何かとか付加的料金はこれだというようなことを言っておられて、「なお、その際つけ加えて申し上げますと、端末を売り渡しになる場合におきましては、料金の認可は要しないものでございます。」こういうふうに答えておられるわけです。これは質問は細かく質問しているわけじゃないのです、内容は。しかし、この小山さんは自分の方から内容を細かく説明をずっとされておるわけです、その詳細は省きますけれども。
ところが、今度は郵政省は新しくこの電電株式会社ができるということに関連をして、事業法三十一条の料金認可の範囲について国会答弁と違った形の対処の方針を打ち出しておる。例えば国会で認可不要としたものを認可対象としておる、あるいは国会答弁で認可不要としたデータ端末が認可不要となっていないこととか、こういうようなことで問題が非常に出てきておるわけですね。
そこで、私どもは、この国会の答弁を省政令でわからないような形にして出してしまって、それで知らない間に国会答弁が否定をされてしまう、あるいは矮小化されてしまう、こういうふうなことが起きたのではこれはもう国会の審議権というものを無視したやり方であって、断じてこれは許すことはできない、こういうわけです。これはきのうも
松浦議員が分科会で質問をされておられるのを、私も夜ですけれども拝聴をしたわけですけれども、これは非常に大きな重要な問題になってきておるわけですね。最初総理が言われ、あるいは奥田大臣が言われ、あるいは小山
局長が言われたそういうものとの関連においてもこれは非常に問題でありまして、この国会答弁を尊重をしていく、これを守っていくということをはっきり郵政大臣にお答えを願いたいというように思います。
-
○
左藤国務大臣 御指摘の点につきまして、認可の対象外となります料金を決定いたしますことにつきまして、これまでの国会の御審議を十分尊重していかなければならないことは申すまでもございません。
そこで、ただいま省令の準備をいたしておりまして検討している段階でございますけれども、今お話ございましたことで、国会で既にお答えを申し上げました認可の対象外とすることにつきましての料金の問題は、すべて認可を要しないということで取り進めさしていただきたい、このように考えております。
-
○
稲葉(誠)
委員 そういう御答弁があれば、私どももそれをしっかり見守っていきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
それからもう一つの問題は、第十四条の電気通信設備の軽微な変更の問題で、これは去年の十二月六日の参議院の逓信
委員会で、軽微な変更について片山甚市さんが質問をいたしておるわけです。「軽微な変更とは電気、ガスよりも高い水準、すなわち六〇%程度かどうかということについては、八月七日の参議院逓信
委員会で、私の質問に対して、指摘される方向で考えていきたいという小山
局長の答弁でありましたが、それでよろしいか。」というのに対して、澤田さん、今の
局長ですか、澤田さんが「事業内容の変更を許可にかからしめる趣旨は、国民利用者の利益を保護しようとするものであって、行政が事業活動に過剰介入しようとすることではないので、地域独占とされている他の公益事業との比較において先生御指摘の方向で考えてまいりたいと思います。」こういうことで、軽微な変更というのは六〇%程度だということをはっきり答弁をいたしておるわけです。
ところが「省令案の具体化」の中で、これは(1)、(2)、(3)と分けておるわけですが、「加入者線系伝送路設備」ですか、これが(1)ですが、(2)のところの「中継系伝送路設備」のところで、こういうふうに国会で軽微な変更は六〇%ということを答弁をしておりながら、これについては「電力並みの二〇%とする。」のだと、こういうふうなことを言っているわけですね。これも明らかにこの国会答弁と食い違うわけですね。これはもういかぬですよ。ちゃんとここではっきり答弁しているわけです。二回に分けて、八月七日、十二月六日答弁をしているのですから、この軽微な変更というのは「電気、ガスよりも高い水準、」「六〇%程度かどうか」ということ、それについては「先生御指摘の方向で考えてまいりたいと思います。」とこう言っているのですから、これもちゃんと国会の答弁を守っていかなければいけないですね。これ、郵政大臣、当たり前のことだ。郵政大臣、そんなのは当たり前だよ。そんなものは当然のこと。
-
○
左藤国務大臣 この点につきましても、先生御指摘のように、事業者の経営の自主性を確保する、そして国会の御審議の経過もございましたので、電気通信設備の軽微な変更の範囲は総体として六〇%ということにいたしたい、このように考えております。
-
○
稲葉(誠)
委員 もう一つあるのです。電気通信事業会計規則というのが一つ出ておるわけですけれども、これに対してきのうは
松浦さんから詳細な質問があったわけですけれども、これは新しい株式会社の自主性というものを尊重すると、こういうことを言いながら、いやまあ詳しいいろいろな要求をしているわけですね。これではがんじがらめに郵政省が株式会社を縛っていってしまう、こういうことになるわけで、これも今までの答弁と違うのですよ。総理の答弁、郵政大臣の答弁あるいは小山
局長の答弁、それらと違っていますよ。ですから、電気事業の場合は他の公益事業、例えばKDD、ガス、日本航空などが商法なり証券取引法というものをベースにしておる。それを古い電気事業の場合に準拠してやっていく、これではもう新しい会社が自主性を保てないといいますか行政介入が激しくなってくる、こういうことを考えますから、この点について一体どういうふうに考えるか、はっきりとした答弁をお願いをいたしたい、かように存ずる次第でございます。
-
○
左藤国務大臣 電気通信事業会計規則につきましては、ただいま検討いたしておりまして、まだ最終的な成案は得ておりませんが、先生御指摘のようなことにつきまして、内容につきましていろいろな議論があることも事実でございます。これを話を詰めてまいらなければなりませんが、いずれにいたしましても第一種の電気通信事業者であります。その場合の料金というような問題は、これは非常に国民生活に深くかかわりがありますので、そういった点の公共的な料金の適正な算定に必要な資料というものは、最小限度はどうしてもこれは出していただかなければならないと思います。そういった見地を含め、今また先生の御指摘の点、法を制定していこうという目的とどういう形で競合するか、どういうことで調整するかということについて十分配意をしてつくっていきたい、このように考えておるわけでございます。
-
○
稲葉(誠)
委員 今の電電株式会社の問題についてはもっといろいろ質問をしたかったわけですけれども、一応の答弁がございました。きょうは総括締めくくりですし、
委員長のいろいろ御配慮もあろう、まあいろいろ御心配されておるところもあるかもわかりません、ないかもわかりません。いずれにいたしましてもまたお話しすると思いますけれども、要望としては、郵政省当局と新しくできる電電株式会社と十分な話し合いをして決めていっていただきたい、これを要望をさせていただきたい、こういうふうに考えておりますので、その点について、これはきのう
松浦さんにも最終的なお答えがありましたけれども、もう一遍その点をお答え願いたいと思います。
-
○
左藤国務大臣 今回の法改正ということを円滑に実施に移すために、今お話ございました現在の電電公社、そしてまた国際電信電話株式会社、そうしたところと十分連絡をとって、この法の目的が十分達成できるような形で政省令の制定というものをやらなければならない、準備をしなければならない、このように考えておる次第でございます。
-
○
稲葉(誠)
委員 時間が迫ってまいりましたが、時間の約束は守ります。
そこで、厚生大臣にお尋ねをいたしたいのです。これは総理にも大変御配慮を願いまして、難病対策の問題については特に所信表明にも取り上げていただき、その後特定疾患もふやしていただいて、予算も約十億近くふやしていただきまして、これについては感謝をいたします。それで難病対策の現状と将来の課題といいますか、将来どういうふうに進めていくか、こういうことについて厚生大臣からお答えをお願いいたしたい、こういうふうに考えます。
-
○増岡国務大臣 難病対策につきましては、昭和四十七年から調査研究の推進、医療費負担の軽減、医療機関の整備の三つを柱といたしまして総合的な施策を推進してきたところでありまして、その結果、調査研究によりまして難病患者の実態、難病の診断基準、検査方法、効果的な治療等が次第に明らかにされるなど着実な成果を上げておるところでございます。
昭和六十年度におきましても、厳しい財政の中でありますけれども、特定疾患治療研究事業に一つの疾患を追加することといたしております。こういうことで、一日も早く原因の究明や治療方法が開発されるよう今後も推進に努力をしてまいりたいと思います。特に、総理の施政方針の中にも指摘されておるところでございます。厚生省といたしましても重要課題の一つといたしておりますので、社会的に弱い立場にあられます方々に思いやりの精神でもって今後とも十分推進してまいりたいと思います。
-
○
稲葉(誠)
委員 私はこの前の集中審議のときにも質問を一応ちょっとしたのですけれども、実は建設省が「建設国債の増発の財政への影響」ということで、これは去年の九月に一つの論文といいますか、あれを出しているわけなんです。これは結局、現在の状況ではあるけれども、財政再建のために建設国債の発行も抑制すべしという意見もあるけれども、建設国債は、これによって行われる公共投資の乗数効果によってGNPが増加して、税収、税外収入の増加が得られる。フロー効果がある。また、つくられた資産は長期にわたってその効用を発揮するものであり(ストック効果)、したがって建設国債と赤字国債とは区別さるべきである。こういうようなことをずっと言って、建設国債の増発は財政への影響はいいんだという意味のことを建設省は言われているわけです。これについてひとつ大臣の方から御説明をお願いしたいと思います。
-
○木部国務大臣 おくれております社会資本を整備充実するためにも、また同時に内需の景気の振興を図るというためにも公共事業の財源というものは非常に大事でございまして、御指摘のとおり、この財源の基本は、何といっても特定財源を確保するということと、それからもう一つは一般財源の公共事業への充当の努力をするということ、また御指摘のように建設国債も一つの方策であるわけであります。
GNPを増大させ、また税の増収を図るという意味では、今申し上げますように短期的には財政に大きな損失を与えるというようなことにはならないであろう。しかし、御承知のとおり建設国債の増発につきましては財政運営全般の問題であり、また経済全般の動きの中で十分検討してまいる、こういうことが必要であろうと考えておるわけであります。
-
○
稲葉(誠)
委員 大蔵省、この建設省の出した書類がありますね。すると大蔵省の出したのとは計算の方法が違うようですけれども、今言った「建設国債を増発して公共事業を拡大しても国債残高や国債費の負担は相対的に低下し、十分に財政再建と両立する。」ものである、こういうのが建設省側の言い分ですね。そして、それは特に昭和六十五年には、結局その方が国債費の歳入額に占める割合は低くなるのだというような言い方をしているわけですね。ここら辺のところを一体大蔵省としてはどういうふうに理解をしておるわけですか。これは私自身がよくわからない点なものですから、お聞かせをお願いをいたしたいというふうに思うわけです。今言った建設省の言っているのと大蔵省の考え方とが一体合っているのか合っていないのか、私はちょっとわからないものですからお尋ねをするわけです。
-
○竹下国務大臣 我が国の公債発行の歴史からいいますと、オリンピックの翌年の四十年、このとき、必ずしも建設公債と銘打ってはおりませんが、三千億円を出しまして、これが即効薬のように効いて、そしてそれから十年間、ずっと九兆七千億の建設公債を出している。
大体今おっしゃいます論点を整理しますと、建設国債を一兆円出したならば、単年度で見ますと、それはGNP乗数効果を入れますとGNPでは一兆二千億くらいプラスになるでございましょうか、そうして税が三年間にわたりますが四千億くらい入ってくる、こういう計算になると思います。
建設国債が、当時私はいい政策だったと思っておりますが、ここまで残高が累積してまいりますと、やはり一兆円はあくまでも一兆円でございますから、三兆七千億か八千億後世代へツケを回すことになることは事実でございます。入ってくる税収が四千億といたしますと、直ちにその税収は削減に充てるわけではございませんから、税収は税収として、そして一兆円の効果は後年度へ三兆七千億として残っていく、こういうことになりますので、やはりだんだん土地、いわゆる用地費率が上がるとか、いろいろな面において乗数効果も多少減りつつございますので、私は長期に見ました場合、やはり残高の累増というのは後世代に対して負担を与える結果になるから、短期的に見た問題とはおのずから違ってくるというふうに言わざるを得ないではないかというふうに考えておるところでございます。
数字の点につきましては、ちょうど持ち合わせておりませんが、両省の数字を突き合わせたのを私なりに整理したものがございますので、後刻参考のためにお届けいたします。
-
○
稲葉(誠)
委員 私の疑問は、今の建設省のは短期的に見ておる、長期的に見たときに大蔵省側のあれになるという言い方ですけれども、どうも考え方として二つあるというふうに考えられるわけですね。本当ならば
河本さんの御意見もお聞きしたかったわけですけれども、また別の機会になるかもわかりませんけれども、そういう二つの流れがある中で公債を何とかして減らそう、そのことだけに大蔵省側はしがみついているというか、そういう形の行き方をとっておる。その財政政策については、考え直す点は考え直さなければいけないのではないかというのが私の疑問なんですけれども、これは恐らくアメリカのブキャナンの学説から出ているのじゃないかと思います。そういうふうに考えるわけですけれども、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。どうも大変失礼いたしました。
-
○
天野委員長 これにて
稲葉君の質疑は終了いたしました。
次に、
松浦利尚君の質疑に入るのでありますが、この際、去る六日の
松浦君の質疑に関し、運輸大臣及び国鉄総裁から発言を求められておりますので、これを許します。
山下運輸大臣。
-
○
山下国務大臣 先般御指摘のあったイワオ工業問題の調査結果について、次のとおり御報告申し上げます。
まず、仁杉総裁とイワオ工業株式会社との関係につきましては、仁杉氏は五十二年六月に同社の代者取締役を
辞任して以来、同社の役員その他の役職についておりません。
次に、イワオ工業株式会社と国鉄との関係につきましては、同社は国鉄の請負業者としての資格登録はなく、国鉄との間に直接の取引関係はありません。また、同社が下請により行った国鉄関係工事の金額は五十八年度で三千万円であり、会社全体における比率は一八%であります。したがいまして、同社は国鉄と密接な取引関係にはないものと考えられます。
本件について詳細調査を行った結果は以上のとおりでありまして、特段、法違反の問題は生じないものと判断いたしております。
しかしながら、国鉄事業の再建が国家的課題となっている今日、仁杉氏には国鉄総裁としての重責をよく自覚し、今後、いやしくも今回のような指摘を受けることのないよう十分自戒するとともに、全力を傾注して職務を遂行するよう厳重に注意をいたしたところであります。
-
-
○仁杉説明員 先般御指摘のございましたイワオ工業問題につきまして一言申し上げます。
事実関係につきましてはただいまの運輸大臣の御発言のとおりでございます。また、これに関しまして運輸大臣からは厳重な御注意をいただいたところであります。
国鉄事業の再建が国家的課題となっている今日、このような御注意をいただいたことは私の身の不徳のいたすところであり、深く反省しております。
今後、いやしくも今回のような指摘を受けることのないよう十分自戒するとともに、全力を傾注して国鉄総裁としての重責を果たしていく所存でありますので、何とぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。
-
-
○
松浦委員 今の調査結果等については非常に不満がありますし、違法ではないという考え方についても私は疑問があります。しかし、ここで討論をしておりますと
委員長がまたお困りでございますし、流れにさおを差しますといろいろ支障がありますから、私は事実は事実として今一部申し上げておきたいと思うのです。
御承知のように、イワオ工業というのはユニオン土木の下請的な関係にあるんですが、実はこのユニオン土木というのは、かつて太平洋興発という一部上場会社がありまして、この太平洋興発の子会社だったわけです。国鉄の軌道工事を行って年商二十五億の会社だったわけです。実は五十年に経営が悪化をいたしまして、五十年七月に全部西武建設に買収されたわけであります。今日このユニオン土木の株は全部一〇〇%西武建設であります。そのときの西武建設の社長は、ほかならぬ仁杉総裁その人が社長であります。しかも年商二十五億円でありましたユニオン土木が、今日会社要覧等を見ますと実は九十億近くの年商を上げるようになってきております。しかもこのユニオン土木の十二名の役員のうち、実は七名は国鉄OBが占めておるわけであります。ですからユニオン土木というのは、端的に言いますと仁杉さんがオーナー的な役割を果たしておったという客観的事実があるわけですね。しかも、それではどれくらい仁杉さんが総裁になられて鉄建公団からユニオン土木に発注があったかといいますと、仁杉さんが鉄建公団の総裁になられて四十六件、二十一億九千万であります。だっとふえたのであります、ユニオン土木が。五十八年のユニオン土木の受注関係を見ますと、九十億の年商のうち鉄建公団が二億三千万、国鉄関係が七十億であります。ですから、逆に言うと、仁杉総裁がユニオン土木のオーナーであり、そのユニオン土木と関連のあるイワオ工業というものがどういう位置づけにあるかというのはもう御承知のとおり。ですから、言われたように今役員でないことだけは事実であります。しかもこのイワオ工業というのは、奥様とかお嬢様のお婿様とかそういった皆さん方が同族会社として役員をしておられます。しかも会社は四人しか従業員がおられません。土木関係の工作機械、そういうものは一切ありません。俗な言葉で言えばトンネル会社、こういうことになるわけであります。ペーパーカンパニー、こういうことであることも事実です。しかし、こういう事実はあるということだけは申し上げておきたいと思うのであります。
ですから、運輸大臣も調査結果についてはもう少し慎重に調査をしていただきたい。この問題についてはまだ後刻いろいろな問題について議論する場所があると思います。しかし、少なくとも今国鉄再建途上ですから、総裁がここに国民に約束されたように、誠心誠意国鉄再建のために努力されるとお誓いでありますから、そのことを期待しながら、この問題については先送りさせてもらうことについては大変不満でありますけれども、私の質問は今後に保留をして終わらせていただきたいと思います。
-
○
天野委員長 これにて
松浦君の質疑は終了いたしました。
次に、
岡田利春君の質疑に入るのでありますが、この際、去る二月二十五日の
岡田君の質疑に関し、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣。
-
○竹下国務大臣 去る二月二十五日、
岡田利春委員からお尋ねのあった生活保護費に係る補助率引き下げと臨調答申等との関連についてお答え申し上げます。
一つ、臨調第一次答申で提言された補助金等の金額のいわゆる一割削減措置の対象から生活保護費等が除かれていることは、岡用
委員御指摘のとおりであり、したがって、五十六年八月二十五日閣議決定「行財政改革に関する当面の基本方針」においては、この答申どおり、金額の一割削減措置の対象からは、個別検討とされたもの及び生活保護費等を除外したものであります。
二つ、しかしながら、その後、臨調第五次答申等において、生活保護費等についても具体的な整理合理化方策が指摘されているように、生活保護費を一般的に整理合理化の対象から除外する趣旨のものでないことも御案内のとおりであります。
三つ、したがって、臨調第五次答申及び行革審意見に従い、五十九年七月三十一日閣議了解「昭和六十年度の概算要求について」において著しく高率の補助の見直しを行うこととした際においても、生活保護費をその対象から除外することはしなかったのであります。
四つ、以上申し上げましたように、今回の生活保護費を含む補助率引き下げの措置が、累次の臨調答申や閣議決定等に反するものではないことを御理解賜りたいと存ずる次第であります。
-
-
○
岡田(利)
委員 今の大蔵大臣の答弁の内容は、残念ながら了承するわけにはまいらぬのであります。と言いますのは、第五次答申というのは、これは最終答申であります。そして、答申の性格からいって、第一次に答申をされたものは、これは後の答申で否定することはないのであります。これはあくまでも受け継いでくるわけですね。そして、これを補完し、またその周辺を拡充して答申をする、これが答申の一貫した精神であることは極めて常識的なことであります。
ですから、この二項で言っている、今大蔵大臣から述べられた趣旨というものは、これは確かに答申の中に書かれておるのは、補助金の対象除外の問題ではなくして、例えばこの生活保護費の不正受給をなくするように、あるいはまた医療扶助についてはこの対策を一体どう進めるのか、あるいはまた基準とかいろいろな点については今後合理的に検討を続けるべきである、こういう趣旨のことを述べられているわけです。しかしながら、一次答申の除外をしておるものは、これを変更したと解するのは行き過ぎであることは間違いのない事実であります。したがって、そのことを受けて、いわば五十九年の七月三十一日の閣議了解の場合にも、別紙「五十六年八月二十五日閣議決定」として明記しておるのは、第一の一の(2)のイ、これは有効であるということが明らかだと思うのですね。そのように解釈するのが当然ではないですか。
そうしますと、これはやはり答申と閣議決定に違反しているし、我が国の憲法の精神にも違反している。やはり、憲法の定めがあるから、この答申をする場合にも、行革の場合に非常に配慮を払ったところである、こう解すべきなんですよ。そうしますと、今の大臣の答弁は残念ながら了解するわけにはまいらぬのであります。
一問だけ、もう一度今私が指摘をした点について御判断をお聞きしておきたいと思います。
-
○吉野政府
委員 ただいまお話がございましたように、臨調の第一次答申は間違いなく今日も生きているわけでございます。それからまた、その一次答申を受けました閣議決定ももちろん生きているわけでございます。したがいまして、六十年度の予算編成におきましても、いわゆる金額の一割削減でございますので、各省庁別に特殊のものを除いて、金額でそれぞれ各省庁単位で一割を減らしていただきたいということは、六十年度予算におきましても概算要求以来のお願いをし、そしてまた実現をいたしているわけでございます。
そのこととは別に、臨調のその後の答申あるいは行革審の御意見で、いわゆる補助率の高いものにつきましては、その補助率の高いという点に着目をして、いわば横断的に補助率カットというような整理合理化を進めていくべきではないかというのが、また別の角度から御提案があったわけでございます。で、この御提案に沿いながら、六十年度予算におきましては、これまた概算要求以来努力をいたしまして、各省庁にもお願いをしてきたというわけでございまして、両方それぞれ両立をさせながら実現に努力をしているということでございます。
-
○竹下国務大臣 今、
岡田委員の御指摘になりましたいわゆる生活保護費そのものに対する指摘につきましては、不正受給者の排除とか、それから基準の設定等について主として言及されておることは事実でございます。したがって、
岡田委員は、補助率の一割カットということになると、いわゆる金額の一割カットから除外したものであるだけに、それは自分なりに理解するところは、憲法の精神もあり、これは除外されてしかるべきものだという御持論であろうかと思います。
そこで、ただいま主計
局長が御説明申し上げましたのは、さはさりながら、別にいわゆる高率補助率を総合的に見直すということに対して、私どもの判断で、生活保護費もその高率補助率の一つとしてこれを含ませていただいたというところに、恐らく考え方の相違が存在しておるという認識は私もいたします。
-
○
岡田(利)
委員 生活保護費の高率補助というのは当然であるといったてまえを行革審はとっておるのであります。残念ながら、重ねて御答弁をいただきましたけれども、これは了解するわけにはまいりません。もちろん、行革答申でありますから、当時の担当者を参考人に呼んでさらにまた議論を詰めるということも私は必要かと思います。時間がありませんので、本件については、いずれ補助金カットの法案の審議がありますから、これを留保して、その場合に本件についてさらに議論をすることを明確にして、次に移っていきたいと思います。
次に、私は、先般行われました六日の幹事長・書記長会談の問題についてお伺いいたしたいと思います。
この会談の結果は、もちろん総裁である総理大臣に報告があったものと思いますけれども、いかがでしょうか。
-
-
○
岡田(利)
委員 与野党の幹事長・書記長会談で確認された三点の事項について、総理は御理解されておると思うし、感想をこの機会に述べていただきたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 与野党の幹事長、書記長の皆様方が、国民経済、国民生活等をお考えいただきまして、深夜に至るまでいろいろ樽俎折衝されまして、一つの成案を得ることができましたことを非常に高く評価をし、感謝いたしておる次第でございます。
これらの与野党の折衝の結果につきましては、それぞれの項目に従いまして、政府としてはその樽俎折衝の結果を待って、そしてその結論を尊重して適切に実行していきたい、そのように考えております。
-
○
岡田(利)
委員 特にこの三点の中で、いわゆる政策減税に関しては、教育減税問題、寝たきり老人問題、単身赴任問題と列挙をされておりまして、幹事長・書記長会談の責任で本年中に結論を得て実施をする、こういう了解事項が実は存在をいたしておるのであります。この点についても総理は御承知と思いますが、いかがですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 このお話し合いがなされました、いわゆる時間短縮並びに連休等の問題でございますね。これらの問題につきましても、それぞれ所定の手続を経まして出てきました結論については尊重いたしたいと思っております。(
岡田(利)
委員「政策減税は」と呼ぶ)
政策減税の問題につきましても、党の政策担当者、政調会長あるいは政審会長等の会議の結論を待ちまして、そしてそれを尊重してまいりたいと考えておるところでございます。
-
○
岡田(利)
委員 質問しない点についても触れられて答弁いただいたわけですが、時間短縮、連休の問題は、今は総理は熱心に貿易摩擦問題に取り組んでおられるわけです。いわゆる貿易摩擦の中の労働の摩擦、失業の輸出、これも非常に大きな問題なのであります。ここまで経済の発展を遂げた我が国として、いわば労働関係の貿易摩擦をできるだけ早く解除する、こういう姿勢がなければ、ECやあるいはまたアメリカから本当に信頼される立場にはならないと思うのであります。今この点についても述べられましたけれども、特にこの点について総理としても今後の政策課題としてしっかり受けとめてほしいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 時代の趨勢あるいは内外の動向等を踏まえまして、政府のやるべき分野あるいは民間で団体交渉等を通じてやるべき分野等も踏まえまして、適切に処理してまいりたいと思いますが、一般論といたしましては、御指摘のように日本の勤労者の労働時間というものは西欧等に比べて長いということは事実でもございますので、これをできるだけ短縮するように、我々も御協力申し上げていきたいと思っております。
-
○
岡田(利)
委員 社会党、公明党、社民連の三党に対して、幹事長はその発言として、防衛費のGNP一%枠を守ることに最善を尽くします、こう述べられておられるのであります。本
委員会では総理は、GNP一%の枠は守りたいと思います、こう明確に答弁されています。守りたいと言う以上、最善の努力をすることは当然ではないかと思うのですね。
そういう意味で、幹事長が述べられている最善を尽くしますという点について、議院内閣制であり、しかも政党政治であり、政党間において職を賭しての決意を込めた幹事長の発言でありますから、このまま了承できるものと思いますけれども、総理の感想はいかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 いわゆる防衛費GNP一%の問題につきましては、本
委員会におきまして私が累次御答弁申し上げたとおりであります。そして、守りたいということは、一貫して申し上げておるとおりでございます。
幹事長の発言は、私が申し上げました中で、特に守りたいという点に注目いたしまして、幹事長としての立場から、それについて最善を尽くしてまいりたいという所信の表明であると思いまして、自民党の幹事長の発言として私も尊重してまいりたいと思う次第でございます。
-
○
岡田(利)
委員 今度の予算要求の四党提案の中に、一つだけ環境の問題について予算要求した内容があるのであります。これは、いわゆる我が国の森林・林業の問題について触れておるのであります。しばしば本
委員会でもこの問題は提起をされてまいりました。いわば我が国の一千万ヘクタールのうち五百万ヘクタールはこれはもう人工林でありますから、今そのうちの大体百九十万ヘクタールは間伐を要する、こういう意味で、この資源の確保あるいはまた水資源の確保、こういう観点から、この問題について我々は重大関心を持っておるのであります。
だが、今我が国の森林・林業の現状はまさしく危機的な状況にある、このことは同友会においても明確に指摘をされておるのでありまして、そういう意味で、経済同友会は専門的
委員会を設けて、先般問題の提起が行われました。そして、この同友会の問題提起は、単に国有林あるいはまた地方自治体の所有する林地、さらにまた民間、この枠を超えて、いわば二十一世紀に向けて我が国の森林・林業のあり方、こういうものを基本的に検討し、その政策を展開しなければ我が国の森林に非常に悔いを千載に残す結果が出てくるのではないか、こういう非常に危機感に満ちた提言が行われておるのであります。
今年はいわば国際森林年の初年度であります。そういう意味からいっても、この経済同友会の提案に素直に耳を傾けて、いわば官民を超えて、森林・林業をどうするかという行動的な面を含めた
委員会をつくる、そういうものを出発させるにふさわしいし、また今日の我が国の森林・林業の現状はそういうものを求めている、こう私は思うのでありますけれども、この点について総理のお考え方をお聞きいたしたいと思います。
-
○
佐藤国務大臣
岡田先生にお答えさせていただきます。
今先生の御指摘のとおりでございますが、経済同友会の提言も承知しております。そんなことで、実は、森林・林業問題については、現在、林政審議会に専門
委員会を設けまして、これは各界の学識経験者を交えまして、林政の基本方向及び森林資源の基本計画について検討を行ってまいっております。
今後とも、広く各界各層の意見を十分に伺い、国民の理解を得ながら、森林・林業施策を推進していきたいと考えております。
-
○
岡田(利)
委員 森林・林業というのはいわばアップストリームでありまして、ダウンストリームの関係は水資源ということになるわけであります。今は平地においても地下水の水位が下がっておるという現状があります。台風が来れば被害が起きる、台風が日本列島に来なければ水が不足をするという現状であります。そういう意味で、六割近くを占める山地、特に森林資源をどうするか、このことは日本列島にとってかけがえもないことですね。我々の生活や文化、こういう面からいっても、この問題は軽んじることは到底できないのであります。私は、そういう意味で、アップストリームをダウンストリームが支えるというような手法、こういうものも考えながら、ぜひ国連のスタートの年にふさわしいそういう検討をいたしてほしい、こう思うのですが、総理はいかがでしょうか。
-
-
○
岡田(利)
委員 先般の一般質問で御質問申し上げたのでありますが、もう一度念を押してこれは承っておかなければなりません。
今回の六十年度予算の中で、戦後処理の予算としてしばしば述べられておりますように、一億五千万有余の予算が計上されて、しかも、実情調査費として一億円が計上されたのであります。この予算をめぐって、ここにはがきのコピーがあるのですね。「昭和六十年度国家予算のお知らせ」ということで、自由民主党の議員の方々が、名前はきょう言いませんけれども、いわば、今回のこの実情調査費の中には個人補償のための含みを持ったものである、こういう含みを持った実情調査費なんだと書いてお知らせをしておるわけです。これはこれで事実ならば結構なわけであります。したがって、そういう含みを持っている実情調査なのかそうでないのか、一億円は。もう一度
官房長官から、これははっきり答えてもらわぬといかぬと思うのですね。いかがでしょう。
-
○藤波国務大臣 戦後処理問題懇談会で時間をかけていろいろ御検討いただいてまいりまして、その結果といたしまして、これ以上政府として措置すべきものはないとしつつ、一方、関係の方々の心情を思うときに、ぜひその趣旨を生かした基金を創設すること、このことを御提案をいただいておるところでございます。
政府といたしましては、この懇談会の意見を受けて、新しく一億五千七百万の予算を計上して、基金の創設を中心にいたしまして検討及び調査をしていく、こういうことで予算計上をお願いしてきたところでございます。予算が成立をいたしましたならば、総理府を中心にいたしまして関係省庁集まりまして協議をして、この基金の創設を中心としていろいろな検討を進めていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
-
○
岡田(利)
委員 官房長官は非常に頭脳明晰でありまして、前に質問したときと全く寸分変わらない答弁ですね。御立派です。ただ、今私が聞いておりますのは、予算が確定して検討する中に、個人補償の面にわたって実情調査もするのかどうかということも含めて検討するのだ、こう解してよろしゅうございますか。
-
○藤波国務大臣 この予算の使途につきましては、今次予算
委員会でも再三御質問がございまして、今申し上げたようにお答えをしてきておるところでございます。あくまでも懇談会の意見であります、提案であります基金の創設ということを中心といたしましてこの問題にこたえていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
調査費という名目がございますので、それではその調査はどういうことを調査していくのかという御質疑があろうかと思うのでございますが、この点につきましては、どのような基金を創設をするか、あるいはこの基金をどのくらいのスケールのものにするか、そしてこの基金をどのように活用していくか、活用していくについては、長い間時間をかけてこの問題に期待を持ってこられました大勢の方々がいらっしゃるわけでございますから、それらの方々のお気持ちも思い、またいろいろな御意見も伺って、そしてこの基金の活用の方途についていろいろ検討していく必要がある、このように考えておりまして、どのような実態になっておるかということを調査をしないと、その基金の活用といいましても、なかなかどのように活用したらいいかということが方途が出てこないわけでございますから、したがいまして、基金をどのように構えていくかということを検討し調査をする、こういうことで予算の計上をお願いをしてきておるところでございます。
いずれにいたしましても、予算が成立いたしました後にこれらについて検討を進めていくようにいたしておりまして、今回の国会の中でのいろいろな御論議、御質疑等も踏まえて慎重に検討を進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
-
○
岡田(利)
委員 では、この予算の成立の経過、決定の経過からいって、いわば実態調査、それが実情調査になったのでありますが、その中には個人補償の問題の検討は含まれていない、こう答弁を聞いて思ったのですよ。こういう私の受けとめ方は健康的ですか。いかがでしょう。
-
○藤波国務大臣 御明晰な先生の御質問に何回もくどいことを申し上げて恐縮でございますけれども、政府としては、懇談会の意見を受けてこの予算を計上して検討を進める、こういうことになっておりますので、その懇談会は、基金の創設を提案をしこれを活用して関係者の心情に対して十分報いていくように、こういうことになっておりますことをどうか御理解をいただきたいと思います。
-
○
岡田(利)
委員 何か大蔵大臣を後
藤田官房長官が、あなたは言語明瞭にして意図不明とかなんとか言いましたが、あなたも非常に言語明瞭なれど意図若干不明ですね。私の兄も三年間抑留された経験があるのでありますけれども、こういう予算を決める場合には、そういう点をきちっと根拠を、性格というものを決めて予算を計上し我々に提案をする、こうでなければいかぬと思うのですね。余り政治的にものを扱ってはいかぬと思うのです。そういう意味で、この問題については、やはり残っている問題は残っているのですよ、裁判でも今やっているのでありますから。そういう意味を込めて、きちっと対応されることを特に強く期待をして、次に移りたいと思います。
次は、これも本
委員会で問題になりました整備新幹線の問題についてであります。
政府は、与党と政府の間で合意をして、そして整備新幹線の着工を決めて予算を計上された。一方において、さきに国鉄再建監理
委員会は計画の見合わせについて答申があり、これを尊重した。そしてまた、国鉄監理
委員会は御承知のように七月中には答申が行われる。政府は一体、与党と政府の合意を優先的に尊重するのか、それとも法律で定めた国鉄監理
委員会の答申を優先的に尊重するのか、整備新幹線についての政府の態度をこの機会に明確にしてほしいと思うのです。これはどうですか、総理じゃないですか。
-
○
山下国務大臣 整備新幹線の計画につきましては、昭和六十年度予算でとりあえず事業費を計上しておりますけれども、着手に当たっては、国及び地域負担等事業実施方式のあり方、国鉄再建監理
委員会の答申との関連等について調整を進め、その結論を待って、本年八月を目途にこれを行うこととされているところでございます。したがって、国鉄再建監理
委員会の答申が出た後で所要の調整が行われ、適切な結論が得られるものと期待をいたしております。
-
○
岡田(利)
委員 これも今までの答弁より一歩も出ていないのであります。非常に残念であります。こういう点がやはり政治に対する信頼感、国民の信頼というものを損なうことになるわけですね。やはり政治というものは、事前に約束し尊重すると言ったら、その結論が出るまで見合わせる、何か調査をする必要があるならば一応調査をするのもいいでしょうけれども、それを麗々しく着工だと、こう踏み切るところに、何を一体考えているんだろうか、こう思うのが当たり前じゃないでしょうかね。そういう点について、最近の本音と建前の使い分けの予算の編成や自民党の政治のあり方について、私は、国民の立場に立って重大な警告を発しておきたい、こう思います。
次に、私は、外交問題を二、三点お伺いいたしたいと思うのであります。
今、米ソ関係がいよいよ近くに包括的な核軍縮交渉に入るわけであります。この米ソの関係は、いわば緊張から緩和、対立から協力ではないと思うのですね。私の認識は米ソの関係は対立から競争的協力の段階に入りつつある、そういうのが米ソの関係の私自身の理解であります。そうしますと、日ソ関係も、従来の関係から、ある程度緊張しておった状況が緩和の方向に向かう、これは間違いがないのでありますけれども、こういう米ソ関係を軸にする東西関係の状況下において、日ソ関係は私の前段の表現で言えばどういう関係が描かれるか、この点についてどうお思いになるか、お聞きしておきたいと思います。
-
○
安倍国務大臣 日ソ関係の推移は、今言われるように、やはり国際情勢、米ソの関係あるいは東西関係、これもやはり背景として微妙な影響を与えることは事実だろうと思います。
しかし、そういう中で、やはり日ソは日ソなりに、例えば問題として領土問題を持っておりますし、こうした基本的な問題、対立というものはなかなかこれは解決が困難である。また、日本の領土を回復して平和条約を結ぼうという姿勢も、これはもう一貫をいたしておる。そういう状況でありますけれども、しかし、去年以来、国際情勢の微妙な変化等もあり、また日ソ間の努力もありまして、日ソの対話がずっと前進をしてきております。ことしに入りましてから、また、文化大臣の訪日とかあるいはまた民間、政府その他のいろいろの交流関係も予定をされておりますので、ことしに入りましてからの対話も進んでおりますから、日ソ関係は、昨年に比べ、またことしはさらにそうした対話、協調、そういう方向が進んでいくものと私は考えております。
-
○
岡田(利)
委員 総理は、施設方針にも対ソ関係についての見解を述べられ、また、インドのガンジー首相の葬儀にも参加をしてチーホノフ会談が行われておるわけであります。いわばそういう意味で今年の秋を展望しますと、私は、国連の四十周年記念というのは、あらゆる意味において、今日の国際情勢から判断しても東西関係から判断をしても、一つの新しい出発点になるのではないのか、こういう感じがするのであります。そういう意味で、この四十周年記念の総会をめぐってまた東西外交も展開されるのではないか、こういう判断が当然常識的に成り立つのであります。
したがって、こう考えますと、ソ連首脳と会談の経験もある総理が、この総会に参加をされて、積極的にそういう面についての国連外交を展開されるということは極めて当を得ているし、国民も期待しておるのではないか、こう思うのでありますけれども、この機会に、対ソ関係の問題を含めて総理の見解を承りたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 政府といたしましては、平和及び軍縮の問題につきましては、積極的に今後とも二国間、あるいは多数国間、あるいは国連等を通じまして努力してまいりたいと思っております。
三月十二日から米ソ間のジュネーブ軍縮会談が開始されますが、これらが実りある成果を生むように私たちは祈念してやまないところでございます。
また、日ソ双方ともおのおのが誠意を尽くして、そして事態を一歩一歩ずつ改善するように努力すべきものであり、日本もそういう誠意を尽くしてできる限り努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
-
○
岡田(利)
委員 最近、EC諸国の対朝鮮政策というものが一歩前進していると私は見ておるのであります。いわば、フランスのパリにおける通商部が今度は通商代表部に昇格をする。国交関係を持っている国と同じような待遇をいたしておるのであります。また、ECの中ではスウェーデンのように既に国交を持っておる国もあるし、来年はギリシャがECに加盟いたしますと、ギリシャもまた同様朝鮮とは国交の関係を持っておるのであります。いわば全体的にECの関係は、経済関係、文化関係を軸にして朝鮮との交流は前進していく、こう見るのが当然ではなかろうか、こう思うのです。
そうしますと、我が国の朝鮮政策もそういう意味で今さらに一歩前進をしなければならないのではないのか。特に日本の立場というものは、むしろそれに先駆けて新しい朝鮮政策を展開しなければならぬのではないかと思うのです。今までもしばしば問題になっておりますように、朝鮮と日本の関係では、クロス承認という問題についてはこれは現実性がないし、また南北朝鮮がこれに対して同意を与えていないのでありますから、そうしますとクロス承認という考えではなくしてクロスコンタクト、こういう面をきちっと政策的な基本に据えて朝鮮問題を考えたい、こういう時期に来ておるのではないかと私は思うのであります。そういう私の意見に対して、総理の朝鮮問題に対するいま一歩政策の前進ということについて、そういう意欲をお持ちかどうか承っておきたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 政府は朝鮮半島の平和と安定を強く望んでおりまして、この問題については大きな関心を持っており、協力してまいりたいと思っておるところでございます。
北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国との関係につきましては、我々としては、南北会談がどういうふうに推移するかということを非常に大きな関心を持って見守っておるところであり、南北の直接の会談の積極的推進によりまして朝鮮半島の緊張が緩和され、南北融合が次第に実現していくことを期待しているものでございます。それらの情勢の推移等を見つつ、我々も北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国に対する対策というものも考慮してまいりたいと考えております。
-
○
岡田(利)
委員 今総理からそういう答弁もありましたけれども、来年は極東オリンピックもあるわけですね。そして八八年にはソウル・オリンピックがある。こういう一つの前提状況を考えながらやはり朝鮮半島政策については前進をさせていかなければならぬのではないか、こういう私の積極的な気持ちをきょう述べたのであります。
ただ、ここでお聞きいたしたいのは、もちろん二国間の南北の対話、この前進が重要でありますけれども、しかし、何といってもこれは国連軍が板門店にいて、板門店の会談では韓国側は発言権がないわけですね。あるいはまた軍の統括についても、やはり国連軍が統括をしているという事態が続いておるということは間違いがないのでありますから、だからこの事態の解決には朝鮮とアメリカの対話が必要である、このことは何人も否定できないと思うのですね。いつ、どういう条件で行われるかという問題だけてあります。そういう意味で、三者会談というものは当然支持されなければならないと思うのであります。総理が言うように南北の対話が優先されていかなければならぬけれども、同時に、ある段階に来れば並行的に三者会談が持たれるのが最も望ましいと思うのであります。三者会談に対するアメリカの、あるいはまた朝鮮半島に対するアメリカの政策については我が国は重大な関心を持たなければならぬのでありますが、どういう御理解を持っておりますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 朝鮮半島の問題につきましては、やはり当事者の御意見がまず尊重されなければならぬと思っております。南北の動乱のあの大きな不幸を経験した当事者でございますから、その当事者の立場を無視し、あるいは御意見を無視しては一歩も前進し得ないと我々は考えております。そういう意味におきまして、当事者の御意見、意思疎通がどういうふうに進むかということを我々はまず尊重すべきものであると考えております。
なお、来年のソウルのアジア・オリンピック、あるいは八八年の世界オリンピックが成功裏に終わるということを我々も祈念し、それに協力すべきであると思います。そういう面からも、そういう国際スポーツ等も通じて朝鮮半島に南北融合あるいは平和、和解の兆しが訪れるように我々は希望もしておりますし、そういう面からの御協力すべきことがあれば御協力申し上げたいと考えております。
-
○
岡田(利)
委員 非常に、朝鮮問題になると総理の答弁は相変わらず慎重であるということがよく確認できました。
もう一つこの機会に承っておきたいのは、今、ヘイドン・オーストラリア外相はハノイを訪問して、何か談話も出ているのですが、ポル・ポト派を含めての政治会談というものの実現は不可能であろうということを述べられておるわけであります。今カンボジアの情勢というものは我々自身も無関心でおられないのであります。日本はベトナムとも親密な関係を維持いたしております、昨年は外務大臣が日本を訪れておるのでありますから。ASEANとはさらに、拡大外相会議にも日本は積極的に参加をいたしておるのであります。また、カンボジア問題については、
安倍外務大臣が三条件というものを提示をして今日まで努力をしてまいったのであります。
しかし、今日のカンボジア情勢を考えると、手をこまねいておるという状況じゃないわけですね。何か外務省は外務省として、今日タイの領土を侵犯したベトナム軍の撤収、こういう面についてコメントしたというようなことも言われておりますけれども、こういうカンボジアの情勢に対して、日本の外交として、積極的な外交政策としてどう対処されていくのか。今までの政策の総決算が私は迫られてくるのではないか、こう思うのであります。
それと同時にもう一つの問題は、この四月にインドネシアのバンドンにおいて、第一回のアジア・アフリカ会議の三十周年記念式典が行われるのであります。ここにはシアヌーク殿下も招いている。だが一方において、シアヌーク殿下が大統領として出席するならばベトナムは出席をしないとかいうやりとりもありますけれども、いずれにしても中国を初めここに集まると思うのであります。元外務大臣の木村俊夫先生の遺志をも体して、ここには外務大臣みずから出かけるのか、あるいは閣僚級の我が国の代表を派遣する、そういうことも軸にしながらこのカンボジア問題に対する外交政策の展開を合すべきだと思うのですが、この対応について承っておきたいと思います。
-
○
安倍国務大臣 今、カンボジアの乾季に当たりまして、ベトナム軍の三派拠点に対する攻撃が続いておりますが、我が国としましては、御承知のようにカンボジアからベトナム軍が一日も早く撤兵をして、カンボジアに自主中立の政権が生まれることを念願をし、そのためにASEAN諸国の外交政策を支持してきておるわけでございます。
そういう立場から、現在の激しいベトナム軍の攻撃ということに対しましては我々は危惧の念を持っておりまして、憂慮いたしておりまして、ベトナムに対しましても外交ルートを通じまして慎重な対応、日本の基本的な主張であるカンボジアからのベトナム軍の一日も早い撤兵をさらに重ねて要請をいたしておるわけでございます。このカンボジア問題がどういうふうに解決するかということは、なかなかこれまでも一進一退を続けてきて困難でございますし、オーストラリアも大変な関心を持っております。ヘイドン外相は毎年ハノイを訪問いたしておるわけでございますが、これから雨季に入れば外交を舞台にしたいろいろの動きが出てくると思います。その動きの一つとして、今度のバンドン会議、三十周年のバンドン会議というものが非常に注目を浴びておるわけであります。私もバンドン会議に集まる顔ぶれ等を見ておりますと、あるいはまたインドネシアのいろいろの意図等を考えてみますと、相当ここでカンボジア問題を中心にした問題がロビー外交の中で展開をされるのではないかということを想像しております。また、それがいい方向へ行けば大変すばらしいことであるというふうに期待もいたしておるわけであります。
日本に対しましても、日本は三十年前に当時の高碕達之助国務大臣を派遣したという経緯から、インドネシアの外務大臣から私に対しまして正式な招待状が来ておるわけでございます。日本としてどういうふうに対応するか、最終的には決めておりません。しかし、いずれにいたしましても、三十周年を記念する、またカンボジア問題等も論議されるであろう重要な会議であるから、私が出席できない場合においても有力な人、政治家に出ていただかなければならない、その点についても総理大臣とも相談したい、こういうふうに思っております。
-
○
岡田(利)
委員 今オーストラリアのヘイドン外相がハノイを訪れて、確かにオーストラリアもカンボジア問題の仲介国の一つの国でありますけれども、しかし私は、やはりこれからのカンボジア問題の政治解決の仲介国はASEANに所属するインドネシアであろう、こう思うのであります。そういう意味でバンドンの会議というものはなおさら重要である、情勢的にも重要であるという認識について今大臣からも述べられましたので、ぜひ積極的な対応を期待を申し上げておきたいと思います。
カンボジア問題を考えるときにもう一つ問題点は、今日の中国の政策の展開の問題であります。もちろん中国は近代化政策を最優先させる、経済を最優先させるという政策を今日とっていることは当然であります。だが、そのためにはやはりデタントの環境がどうしても必要である。私は、中国の今日の外交政策はいわば全方位デタントである、こういう認識を実は持っておるのであります。特に昨年はそういう点の政策展開が非常に多くて、七月にはモンゴル共和国との間にあれだけ問題になっておった国境の問題について画定をし、関係を改善した。また、インドとの間には経済の交流についての協定が合意をされて、そしてその後、あれだけかつては戦争までした領土問題についての解決を図り、合意が図られた。ソ連との間にも、既に領土問題についてもある程度解決をし、国家関係から党と党の関係の交流、こういう方向に発展をしておりますし、そのソ連を通していわば東欧諸国との関係改善を図る、単に国家間だけではなくして党と党の関係も図る、こういう展開が行われている。そうすると残るのはベトナム、ラオスとの国境、これをいかに安定させるかということに尽きてくるのであります。
そういう意味で中越の関係は、中ソとの関係、ソ連とベトナムとの関係をめぐって確かに大きく変わりつつある。いわば第二の挑発戦争ということも起こるであろうという見解の人もおりましたけれども、ついに起こらなかったのであります。いわばそういう状況の中でカンボジア問題が一体どう政治解決がされるのか、我々はアジアの一員として重大な関心を持たなければなりません。同時にまたインドシナ関係諸国との関係を、そういう問題を解決しながら、いい関係の方向に持ってまいらなければならない、こう思うのであります。私はそういう意味で、これからの中国の関係においても、もちろん双方原則を持ちながらも、中越関係の関係改善に、カンボジア問題の解決と同じ方向で前進していく、こういう理解をすることが極めて常識的じゃないか、常識的というよりも健康的ではないかと思うのですけれども、この見解についてはいかがでしょうか。
-
○
安倍国務大臣 御承知のように、ベトナムの後ろにはソ連がおると言われておりますし、また三派のポル・ポト派の後ろ盾は中国であります。さらに三派全体に対しましてはASEANがこれを強力に支持しておる、こういうことでありまして、今のカンボジア問題は相当複雑な国際的な背景を持ってここで展開をされているということではないかと思います。そういう状況の中でベトナムと中国が非常に厳しく対立しておりまして、今おっしゃいましたように、ベトナムがカンボジアに侵入して、そして三派の拠点に攻撃をかけるたびに中越国境は大変緊張して、そしてそこでいわば衝突が繰り返されてきたわけであります。今回の場合は、今お話しのように、ベトナムの攻撃が相当激しかったので、またそれに対して中国も懲罰を与えるというようなことも言っておりましたので、中越で相当大がかりな戦闘が始まるのではないかというふうな心配もあったわけでございますが、どうも今の状況では大がかりな衝突はない。その辺に中越双方といいますか、中国自体に一つの変化が起こったのかもしれません。これは我々ちょっと想像の外でございますが、しかし今までとは違ったということは言えるのではないか、こういうふうに思っております。
ですから、いろいろとこうした複雑な背景を持ったカンボジア問題ですから、国際会議等も提唱されておるわけでございまして、そうした国際会議で解決されることが筋であろうと思うわけですが、なかなかだれを、メンバーシップの問題でいろいろと議論も出ておるということでもありますし、今のまだ攻撃が続いておるうちにストレートに解決するということにもなかなか機が熟さない。そういう意味では、先ほどからお話しされました今度のバンドンの会議は相当重要じゃないか。そしてこれは相当インドネシアがイニシアチブをとろうという積極的な姿勢があるわけですから、やはりこのバンドン会議というものを一つの起点にして、そろそろ雨季に入るわけですから、そこら辺から国際的なカンボジア問題解決への道が開かれてくれば、アジアの安定のためにも大変喜ばしいことである、こういうふうに見ております。
-
○
岡田(利)
委員 次に、本
委員会で大変各党が質問されております戦略防衛構想、SDIの問題についてお聞きいたしたいと思うのです。
総理の答弁をいろいろずっと聞いて、議事録などもずっと読んでみますと、総理は、理解を示した、そしてちゃんと憲法や我が国の国是とか国会決議、そういう留保条項をつけた、こう述べられてもおりますけれども、文脈的にいろいろな質問に対する発言をずっと聞いておりますと、調べてみますと、これはもはや協力ではなくして支持である、積極的協力ではないか、そういう意図ではないか、そういうお考えではないか、このように素直に読みますと、素直にそう感ずるのが当然ではないかという気が私はしてならないのであります。こういう私の感じについて総理の所見をまず聞いておきたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 SDIにつきましては、ロサンゼルス会談におきましてレーガン大統領自身から直接説明を受けたわけであります。それは、前にも申し上げましたように、非核兵器であり防御兵器であり、かつ核兵器全廃を目指してやるものでありますというそういう基本的な構えを説明を受けたわけでありまして、そういうような考えについては十分理解できる、日本としては核兵器を地上から追放したい、そう考えておるものであります。そういうような考えに立ちまして、それはよく理解できるという立場を明らかにいたしました。しかし、これは今後どういうふうに発展していくかわかりませんし、かなり長期間にわたるものであるということもわかります。研究の段階であるということでもあります。そういうような諸般の情勢も踏まえまして将来に対する留保もしておかなければならない、そういう意味で情報の供給及び随時協議ということを要望いたしまして先方も承知した、こういう立場にあるわけであります。
-
○
岡田(利)
委員 この構想に協力する場合、私の質問に対して対米武器技術供与の枠内で行う、こういう答弁があるわけですね。そうしますと理解を示した、もし技術を供与する場合にはこの枠内で行う、技術供与を行う場合にはもう協力でしょう、その場合には。ですからそういう場合があったとしても、この枠内ではあるけれども、このSDIの技術協力については慎重の上にも慎重を期するという点がぴちっと確立されなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 もちろんそのとおりであります。慎重の上にも慎重を期して行いたいと思います。
-
○
岡田(利)
委員 当面、いろいろ報道関係が伝えるけれども、向こうから技術協力の申し入れはない、こう理解しておいてよろしいでしょうか。
-
○栗山政府
委員 アメリカ政府から技術の供与につきまして目下のところ要請はございません。
-
○
岡田(利)
委員 そうしますと、総理は慎重の上にも慎重を期して対処する、今、北米
局長が、そういう申し入れがないとすれば、この予算が執行されている六十年度内に少なくともそういう具体的に技術協力することがない、私はそう理解して極めて当然ではないか、こう思うのですけれども、この私の理解の仕方についていかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 どういうふうに今研究が進んでいるか我々は正確に把握しておらないものでございます。したがいまして、将来の予測は今のところ慎んでおきたいと思います。
-
○
岡田(利)
委員 歯切れのいい総理が慎むと言うのですから、相当何か言外に意味があるんではないかと、またどうも勘ぐりたくなるのであります。カナダあるいはニュージーランド、オーストラリア、EC、NATOにおいても、フランス、これには支持、協力を与えない、こう明確に述べておるのであります。そういう立場を踏まえて私は対処されるべきだということを特に申し上げておきたいと思います。
そうして、総理の非核三原則の問題に関する発言がありまして、非核三原則という問題は我が国の主体的な意思だ、こう述べておるわけですね。しかしながら、これは外には及ばないんだ。ですから、例えば前に、アメリカの艦艇を護衛するということについてもこれは合法である、同時に行動しているアメリカ艦艇が核ミサイルを、もちろんいろいろ条件はつけていますよ、つけておりますけれども核ミサイルを発射することについても、これはそういうことはあり得るという見解を述べられているわけです。もちろん理論的、そしてそのときの状況、そういう慎重な面を付加されてはおりますけれども、この発言は非常にショッキングな形で国民が受けとめたのではないか、私はこう思うのであります。確かに非核三原則を我が国の主体的な意思で決めた、これは間違いがないです。我が国が主体的な意思で決めた以上、その主体的な意思に基づいて対外政策についてもこの非核三原則の精神を尊重しながら政策の展開を図るということは極めて当然ではないか、これが国民の意思であると思うのですが、こういう考え方についての総理の見解をお聞きいたしたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 平和に対する願望あるいは核軍縮、核の廃絶に関する願望というものは、日本は世界に比べてほかの国に負けるものではない、最も強い国家の一つであると考えておりますし、政府もその国民の願望を体していろいろ努力すべきものであると考えております。
ただ、日本の防衛という具体的問題になってまいりますと、安保条約との枠組みにおきまして日本の防衛というものが考えられておるわけでございまして、今まで御答弁申し上げました憲法及び安保条約の解釈、あるいは実際の運用等を踏まえまして我々は今後もしていかなければならない、そう考えておるわけであります。
-
○
岡田(利)
委員 佐藤内閣時代における核四原則があるとしても、総理がああいう仮定を置いてでも発言されるということは私は非常に慎重に、慎まれるべきではないか、こう思うのであります。
もし総理が、そういうことがなぜ出るかということをまた勘ぐって考えてみますと、ああ総理は日米共同作戦計画を報告を受けてお読みになった、それが頭にあっていわば一つのシナリオの中のものとしてぽろっと述べられたのかなと感ずる方が健康的な感じ方だと私は思うのです。非常に素直な考え方だと思うのです。日米共同作戦にはこういうシナリオというものはあるのでしょうか、ないのでしょうか、いかがですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 共産党の議員さんから質問がありましたから私はお答えしたので、質問がなければお答えしなかったと思うのであります。
それから、日米の共同作戦研究につきましては、これはガイドラインに基づきましてその研究は存在いたしております。
-
○
岡田(利)
委員 時間がありませんので、我が党の
矢山委員がさくら二号、フリートサット、いわゆる通信衛星の問題について触れられておるわけです。またそれと関連して他の衛星の問題についても触れられておるわけですが、まず初めに、第一点として、偵察衛星というものが一般化されるということが今日この短い期間の中で想定されるかどうか。想定されるとすれば、その一般化という解釈は非常に重要な問題、重大な解釈であると私は思うのです。そういう点についてまず政府の見解を承っておきたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 この点はいわゆる汎用性の理論をもちましてお答えを申し上げているとおりでございまして、先般もお答え申し上げたとおりでございます。偵察衛星の機能というものは一般に汎用性を持って、普通行われるような状態になってくるという場合には自衛隊においても理論的に考えられる。しかし、この問題につきましてはあくまでこれは理論上の問題でありまして、現実問題にどう対応するかということは、その状況のもとに国民世論やあるいは科学の発達の状況等も勘案して慎重に行わるべきものであると考えております。
-
○
岡田(利)
委員 現在、偵察衛星を持っているのは米ソ両大国であって、NATOの諸国も持っていないのであります。いわばそういう意味で、我が国が偵察衛星について、汎用の理論とはいえごく近い間に持てるようなそういう一般的な状況というものは出現しないと申し上げておかざるを得ないと思うのです。そして自衛隊と米軍が存在する硫黄島からの通信衛星に使うというさくら二号の問題、またフリートサットの問題、米海軍の通信衛星、これを我が国の艦隊が受信をする、これはいわゆる宇宙の平和利用の平和という文字、軍事利用しないということに相反するではないかという厳しい指摘をいたしたのであります。政府の答弁はそれぞれいただいておるわけでありますけれども、残念ながら私どもを納得させるような御説明でもないのであります。この機会にもう一度政府の確たる見解を承っておきたいと思います。
-
○
加藤国務大臣 国会決議がされました昭和四十四年当時というのは、我が国としても宇宙開発をまさに始めようとした段階でございました。それから十五年の間に、その科学技術の進歩というのは全く目覚ましいものがあったと思います。この衛星利用をめぐります十五年の変化は、大変大きなものだったと思っております。したがいまして、今日のように衛星の利用が極めて一般化した段階におきましては、自衛隊が極めて一般化した衛星を利用することは、これまでの国会論議等を踏まえて慎重に検討したわけでございますが、政府としては、お許し、御理解いただけるのではないかなということで、先般政府見解を私たちお示し申し上げたところではございます。
しかし、政府といたしましては、自衛隊の衛星利用につきまして、国会決議の重みをよく認識し、その趣旨を十分に体し、個別具体的な事例に即して慎重に判断してまいる所存であります。最終的には国会の御判断になろうかと思いますので、よろしく御理解を願えればと思っております。
-
○
岡田(利)
委員 そうしますと、防衛庁は、自衛隊の宇宙利用の歯どめといいますか、そういうものについて明確な歯どめを持っておるのか。もし、そういう点が防衛庁内部で一つの歯どめ策として見解がまとまっておるとするならば、その点について明確にひとつお答え願いたいと思うのであります。
-
○
加藤国務大臣 国会決議の趣旨の解釈でございますので、最終的には国会の御判断になろうかと思いますけれども、私たちは衛星というものがどの程度一般化されているのか、そういったこと、世の中の科学技術の進歩とそれから国民の御議論、そういうこと等を踏まえながら慎重に判断してまいりたい、こう考えております。
-
○
岡田(利)
委員 さくら二号の場合には、五十八年の予算
委員会で質問がありまして、この国会決議の有権解釈は議運において検討してもらうということもあったのであります。もちろん、国会の有権解釈をどこでするか、これ自体が大変な問題でありますけれども、そういう結論もまだ出ていないのであります。そういう状況の中で工事が継続されておる。同時にまたフリートサットの場合には、アメリカ海軍の通信衛星そのこと自体が軍事利用である、こう我々は断定せざるを得ないのであります。いわばそういう意味で、本件の予算は凍結すべきであるという見解を我々は変えることができないのであります。したがって、この軍事衛星の問題については、残念ながら我々は了解するわけにはまいりません。我々はそういう立場に立って、今後の政府の施策について重大な関心を払ってまいらなければならないと思うのであります。また同時に、それぞれの関係
委員会において、あらゆる角度からこの問題について我々は今後とも討議を続けていく、こういう見解を明確に表明をしておきたい、かように思います。
そこで、今までの関連する中で出てまいりました日米共同作戦計画の問題について、もう一度、二、三の問題について確かめておきたいと思います。
もちろん、この作戦計画にはそれぞれのシナリオがあるのでありますけれども、私は、まず想定されるシナリオについてどういうことが決まっていますかということを質問しましたら、こうこうこういう内容を検討していますとは答弁しないわけでしょう。差し控えさせてください、こう言うのでしょう。それを聞いてもむだですから、私の方から聞きますから、答弁できるところは答弁してください。
という意味は、想定されるシナリオ、もちろん安保第五条の日本有事の場合、これに関するシナリオがあると思うのですね。安保六条に関するシナリオ、これは朝鮮半島有事、そういう極東有事、こういう場合の幾つか想定したシナリオがつくられておると思うのです。そして第三番目には、例えば欧州有事あるいはまた中東有事、これはもちろん関係はないわけですけれども、そういう有事下の極東情勢に対応するアメリカと日本の協力関係、そういう情勢下における極東情勢に対応するアメリカと日本の協力関係、こういう、少なくとも私が挙げた三つのシナリオはこの中にあるのでしょう。いかがでしょうか。
-
○
加藤国務大臣 日米共同作戦計画の研究でどういうシナリオを設定しているかということは、
委員御指摘のとおり差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、日本が武力で攻撃された場合、つまり日本の有事の場合ということに限定されているということは事実だと思います。
-
○
岡田(利)
委員 どうも何かコンニャクでも食べているような感じですね。味もないしうまみもないというような感じですね。まあ、これは群馬県のコンニャクじゃないかもしれませんけれども。
そこでもう一つお聞きしますけれども、日本有事の場合のアメリカのこの日本有事に対する対処兵力という問題についてお聞きいたしたいのであります。
これは欧州とか中東の場合には、米政府の国防報告ではそれぞれ有事への支援規模が大胆に報告されておるのであります。欧州の場合には陸軍が十日以内、そしてこれは六個師団だ。あるいは、戦術空軍の場合には二十個航空団だ。こういう形で出ているし、中東は三個師団、空母が三個群、そして戦術空軍が七個航空団だ。こういうスイングする兵力の規模が報告されておるのであります。
そうしますと、日米安保条約に基づく第五条のいわば日本有事に対処する米軍の支援規模についても明らかにすることが抑止力だ、抑止の効果を持つ、こう言うのですね。だから、日本有事の場合にもそういうスイングできる、いわば米軍の規模というものを明らかにすることは抑止の効果があるのじゃないですか。だから、当然そういうことについては作戦計画の中では研究されておるのでありますから、この点を明らかにしても差し支えないと思うのですが、いかがでしょうか。どうでしょう。
-
○矢崎政府
委員 お答え申し上げます。
御指摘のようにアメリカの国防報告におきまして、有事におきます欧州に対する増援兵力規模の目標でありますとか、あるいは中東について中央軍の利用可能兵力というものが記述されていることは、私どもも承知はいたしております。ただ、こういったものが実際に有事の際に、米軍の具体的な作戦計画と直接どういう関係にあるかということは、明らかではないわけでございます。
私どもが一番考えなければいけませんことは、有事におきます派遣兵力の具体的な規模というものをどういうふうに考えているかといったようなことを明らかにするということになりますと、それはまさに手のうちを明かすというふうなことになるわけでございますから、そういう意味におきまして、私どもはそれは差し控えさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
ただ、いずれにいたしましてもアメリカは、日本への武力攻撃があった場合には日本を防衛するということを確言をいたしております。例えば五十年の八月六日の三木・フォード会談におきましても、大統領は総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引き続き守るという旨を確言したというふうになっております。したがいまして、こういった日米安保体制に基づくアメリカの力による抑止力、日本に対する支援というものについては、私どもは確信を持っている次第でございます。
-
○
岡田(利)
委員 ある情報によれば、もちろんこの部隊は朝鮮その他との二重任務を持っている、こうされておるけれども、日本有事の場合、戦術航空部隊は七個航空団、大体週単位である。空母部隊は三個群。アメリカ第七艦隊の規模ですね。そして陸上部隊は大体一ないし二個師団、一カ月以上。こういう日本有事の場合、もちろんこれは日本有事そしてまた朝鮮有事の場合にはダブるわけでありますけれども、二重の任務を持つわけでありますけれども、単独日本有事の場合には、このような部隊の逗留がアメリカから研究の中で提示をされたとも言われておるのであります。この点についてはいかがでしょうか。
-
○矢崎政府
委員 お答え申し上げます。
日米共同作戦計画の研究は、御承知のとおり我が国有事の場合におきまして、我が国防衛のために日米で共同対処をする場合を中心にしまして作戦構想等の研究をしておるわけでございますから、そういう意味では、米軍の来援の問題というものがその内容に含まれていることは当然でございますけれども、しかしながら、具体的にどういったものであるかということにつきましては、これは先ほど申し上げました問題がございまして、差し控えさせていただきたいというふうに存じておるわけでございます。
-
○
岡田(利)
委員 本
委員会で
矢山委員が要求しました資料、計画案の文書形式、名称、作成部数、決裁手続、この程度のことは明らかにできるでしょう、こう言っているのですね。資料要求をいたしているのでありますけれども、この点について明らかにしていただきたいと思うわけです。
-
○矢崎政府
委員 お答え申し上げます。
矢山委員から御指摘のございました項目が幾つかございますので、それを多少取りまとめまして御報告申し上げたいと思います。
まず一つは、研究文書でございますが、これは日本文と英文の双方により作成をいたしております。これはあくまでも研究という性格上、条約のような正文というものはございませんで、また、寄託というような行為も行ってはおりませんが、日本文と英文を日米双方で保管をしております。
それから二番目に、研究文書の正式名称、構成、別紙その他の附属文書の名称につきましては、これは秘密に指定されておりますので公表を差し控えさせていただきたいと思います。
それから三番目に、研究文書は必要な部数を作成いたしまして、日米双方の所要の部局におきまして、それぞれの内部手続に従いまして保管をいたしておりますが、秘密文書として登録をしておりますので、作成部数、登録番号、登録年月日等については公表を差し控えさせていただきたいと思います。
四番目に、「日米防衛協力のための指針」に基づく共同作戦計画の研究は、
防衛庁長官の責任のもとに実施することが五十三年十一月二十八日の国防会議及び閣議において了承されているものでございまして、本研究の内容につきましては五十九年十一月十二日
防衛庁長官が承認を行いました。また、同年十一月二十一日に最高指揮官でございます
内閣総理大臣にも御報告し、御了承を得たところでございます。その後、同年十二月二十六日に作業担当者間、すなわち日本側の統合幕僚会議議長と在日米軍司令官の間で研究内容の確認のためのサインを行ったものでございます。
それからなお、米側のことにつきましては細部までは承知をいたしておりませんが、在日米軍から太平洋軍を通じまして国防省まで報告されていると聞いている次第でございます。
以上、御報告申し上げます。
-
○
岡田(利)
委員 結局は、何も出せないということですね。随分いろいろ述べられたけれども、そうでしょう。
総理、どうですか。今述べられたような点、このくらいは示した方がいいのではないのか。国会としてのシビリアンコントロールといっても、これではどうしようもないわけですね。公表できるものはできるだけ公表するという面で、これはもう一度再検討願いたい。その結果どうかということも報告してもらいたいと思うのですが、そのくらいの、もう各
委員から要求されているのでありますから、総理は報告を受けているのでありますから、総理がそういう指示を出して、もう一度我々にできるだけ示すという気持ちを込めて、そういう検討を願えないでしょうか。いかがですか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 内閣あるいは国会におかれまして関心をお持ちになることは当然であると思います。しかし、我々といたしましては、防衛の基本方針等につきましてそれぞれのつかさつかさに指示をいたしまして、その細目、具体的な運用等になりますと、これは非常に高度の機密性を持ったものにもなります。したがいまして、日米両国間でそういう具体的な協力関係に及ぶようなものは、一般に公表して差し支えない抽象的な範囲のものならいいのですけれども、それが具体性を持ったものになりますと、これはやはり高度の秘密性を持ったこととして扱わなければならないのは、御理解いただきたいと思うのでございます。
そこで、今矢崎防衛
局長がお答えしましたところは、ぎりぎりの可能な範囲内の表明であると私は聞いておりまして、そういう意味におきまして御理解を賜りたいと思う次第でございます。
-
○
岡田(利)
委員 私は、この日米共同作戦計画、これが双方でいわば署名捺印をされた、この意味は、六〇年安保条約の実質上の改定である、このように受けとめざるを得ないと思うのですね。そう生易しいものではないと思うのです。いわば日米安保関係がこの日米共同作戦計画を軸にして新しい段階に入ってきた、残念ながらこう思わざるを得ないのであります。だから、先般来問題になってまいりました指揮通信体系の統合化についても、特に通信関係の指揮統合化ということは一番先に重要な課題でありますから、したがって、そういう体系がアメリカにすべて組み込まれていく。今の貿易摩擦の場合の通信機器の問題についても、非常に戦略的にアメリカは開放、開国を要求していると思うのです。金融と通信関係の開国を日本に迫る、これができれば日本はアメリカの内国化する、そういう大きな戦略の中で貿易摩擦の問題も位置づけられている、私は残念ながらそういう理解をせざるを得ないのであります。
我々は、そういう意味で日米共同作戦計画については、これは核戦争、核使用も含むそういう事態に対処する共同作戦計画が細目として決められておる、こう断定せざるを得ないし、そう受けとめざるを得ないのであります。そういう意味で、この関係の資料のできるだけの公表については最後まで強く要求してまいりたいと思いますし、我々は、そういう角度からこの日米共同作戦計画に対して、重大な関心とそういう姿勢で対処していくことをこの機会に明確に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
以上です。
-
○
天野委員長 これにて
岡田君の質疑は終了いたしました。
午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時十八分休憩
――――◇―――――
午後零時五十一分
開議
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-
○
二見委員 長かった予算審議ももうまさに終わらんとしておりまして、順調に進めばきょう終わるわけであります。しかし、着地に失敗いたしますと、きょう採決できずに月曜日ということになりますので、着地に失敗しないようによろしくお願いをしたいと思います。
最初に、総理大臣にお尋ねいたしますけれども、三月の十二日から米ソ軍縮会議がいよいよオープンであります。私は、戦後の米ソ関係というか国際関係を見てまいりまして、米ソの占めてきた比重の大きさを改めて思い知るわけでありますが、大ざっぱに言いまして、米ソの関係が緊張した時期と、それからその反動というか反省というか、緩やかになった時期、デタントという言葉もありましたけれども、そういうのがある程度何か周期的にやってきたのが戦後四十年間ではなかったかなというふうに思います。
米ソ関係というのは、おととしのINF交渉の決裂以来、去年かなり極度な緊張状態にあったと思いますけれども、いろいろな背景があるにしろ、いよいよジュネーブで米ソの間で軍縮会議が開かれるようになったということは、私は、国際関係緊張状態というのは依然として続いているけれども、また将来決して楽観できるものではないけれども、こうした話し合いが始まったということに、将来一筋の光明が見出せるのではないか。やはり昨年までとは、国際環境というのは若干なりとも今後緩やかな方向へと変化する、そうした周期に入ったのではないかなという感じを持っているわけですけれども、総理大臣としてはいかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 薄日が差し始めた感なきにしもあらずでありますが、願わくは、雲が晴れて陽光がさん然と輝くように念願しておる次第であります。
-
○
二見委員 私も同じように、陽光がさんさんと輝く時代が一日も早いことを期待しているわけであります。
ところで、外務大臣にお尋ねいたしますけれども、この米ソの軍縮合議は、いわゆるSDIの問題だとか戦略核の問題だとか、いろいろ三点セットで議論が行われるわけでありますが、今までINF交渉にしても、我が国としては、例えばソ連のSS20の極東配備、この問題にもグローバルな立場でもって削減をしてもらいたいという主張をずっと続けてまいりました。ヨーロッパにあるSS20がウラルを越えてこっちに来れば、向こうが削減されても意味ありませんし、また移動可能ですから、そういう削減交渉、グローバルな形での削減交渉というのは今後ともお続けになっていくのかどうか。当然お続けになっていくのでしょうけれども、この米ソの会議でもってそうしたこともかなり大きな比重を占めてくるのかどうか、そこら辺の見通しなどありましたらお答え願いたい。
-
○
安倍国務大臣 これからの核軍縮交渉が、御承知のようにいわば三部門に分けて行われるわけで、INF、戦略核の問題、あるいはまた宇宙軍縮の問題、そういう中で、INFについては、極東におけるSS20の展開等も含めて、我が国としては大変な関心を持っておるわけであります。今のところソ連は、ヨーロッパに限定してINF交渉を行うべきであるというのがソ連の主張である、こういうふうに承知をしております。これに対してアメリカは、やはりアジアの安全保障も世界の安全保障と不可分でないということから、グローバルな交渉を求めておりまして、これは日本が強く要請してきたところであります。最近では、NATOも、やはりINFについてグローバルな立場から交渉すべきである、こういう方向を決めておりますから、したがって、今のソ連のヨーロッパに限ってという考え方と、いわば西側のグローバルな立場で解決すべきであるというのがぶつかり合っている形ですが、まさにそういう問題がこれからのINF交渉における重大なポイントであろうと思いますし、我が国としてはぜひとも、このSS20という問題を考えるときに、やはりINF交渉はグローバルという形で行われるべきであるというふうに考えております。
-
○
二見委員 私も、日本の安全を考えた場合でも、やはりグローバルな形での削減が行われるべきであるというふうに考えております。
ところで、私は、こうした米ソ間の軍縮会議、いろいろなレベルでの米ソの間の話し合いというのは、成果よりも何よりも、話し合うこと自体に一つの意味合いがあるだろう。お互いに背中を向けているのじゃなくて、いろいろな対立感情があるとしても、話し合うことによってお互いの意思というものが疎通される。ある場面では、こういうところが情報交換の場でもある。したがって、私は、こういう会議というのは非常に短兵急に結果が出る出ないということだけではなくて、そのこと自体が非常に大事なことだと思います。
と同時に、私は、今度は日本の立場から、日ソ関係を考えてみた場合に、この間には北方領土という重大な問題がありまして、我我もソ連が北方領土を占拠していることに対しては、はなはだ遺憾であり、一日も早く北方領土は日本に返還されるべきであるという立場は崩すものでもありませんし、そのことはこれからも言い続けていかなければならない日ソ関係の根っこの問題だと私は承知をいたしております。ところが、それだけでもって日ソの間の首脳の交流、意思の疎通というのが円満に行われないということになれば、それはまだある面では非常に不幸なことではないか。いろいろな障害があるにしろ、日ソ両国の首脳が、あらゆる機会をとらえて意見の交換をし、対立するものは対立しても結構だけれども、話し合いをしていくということが、日本の周辺の安全のためにもいいし、それがひいてはジュネーブの軍縮交渉にもいい影響をもたらしてくるのではないかなという感じを持っております。
総理は、就任以来、アメリカあるいは中国、韓国、ASEAN、あるいは大洋州等々歴訪されてこられましたけれども、これからは、ソ連を訪問して率直に話し合いをしてもいいんじゃないか。ヨーロッパの首脳はモスクワヘ飛んでいっていろいろの交渉を自由にやってまいりますけれども、やはり総理も、ソ連へ行って、向こうの首脳と隔意のない意見、対立するかもしれないけれども、意見を述べ合ってくることは、決して悪いことではない。その結果、成果が出るとか出ないとかということではなくて、そうした話し合いをすること自体が、日本の平和と安全にとって非常に大事なのではないかなというふうに考えております。
と同時に、向こうのグロムイコ外務大臣が日本に来られるような、来やすいような環境をつくってやることも、私はやはり大事なことではないかなというふうに思います。その会談でもって何か新しいものが生まれたという、そういうショートレンジの見方じゃなくて、そういう話し合いをしていくこと自体が、緊張したこの国際関係の中で大事な作用を持っていくのじゃないかなというふうに考えておりますけれども、総理としてはそうしたお考えはいかがでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 私も、日ソ両国間の関係が改善されることを熱望しておるものであり、そのためにも努力してまいりたい、ここでもしばしば申し上げておるとおりです。しかし、これは両国の双方の努力で改善が行われなければできるものではありません。今までの経緯を見ますと、実は今度はグロムイコさんが来る番になっておりまして、そのためにも我々はいろいろ努力もしておるところであります。また、日本国民もグロムイコさんが来れば歓迎してくれるだろうと思っております。今までと若干、空気は非常に変わってきている、国内の情勢もそうであろうと私は思っております。
それで、今までの経緯を見ますと、日本の総理大臣はモスコーに三回行っているんですね。向こうからは一回も来てないんですね。それで、日本の外務大臣はモスコーに七回行っておるんですね。向こうからはそのクラスの人は三回しか来ていない。そういうようなものを見ますと、ちょっとバランスが失しているんではないか、この際はグロムイコさんがこちらへおいでになるのが先である、そういうふうに思っておるわけであります。
-
○
二見委員 どうでしょう、グロムイコ外務大臣が日本に来る環境というのはかなり整いつつあるというふうに考えてよろしいでしょうか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 私は、日本国民の善意及び日本政府のソ連と対話をやっていきたい、基本的問題あるいはいろいろな具体的問題について隔意なき懇談をしたい、そういう考えを持っておるものですから、潮どきはもう来ているんじゃないかと思っております。
-
○
二見委員 それから、やはりこの
委員会で議論になりました防衛大綱の水準について一、二点お尋ねをしたいと思います。
防衛大綱、いわゆる五九中業は昭和六十五年を目標として今策定作業が始まっているわけでありまして、政府としては、この五九中業でもって大綱の水準を達成したいという基本方針は、それはそれでよろしいわけですか。どうでしょう。
-
○
加藤国務大臣 累次申し上げておりますように、昨年五月栗原
防衛庁長官が指示を出しまして、五九中業で大綱の水準の達成を期するということで作業をせよと命じまして、現在作業中であることは事実でございます。
-
○
二見委員 先日の
委員会で、私この問題で議論いたしましたときに、やはり一%を絡めて議論したときに、総理は
矢野書記長への答弁を踏まえてというような御答弁がございましたけれども、私はこの際、大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、大綱水準の達成を防衛庁としてはかなり大きなウエートでもって考えているわけですけれども、これはお金のかかる話ですからね。六十五年に大綱の水準を達成したいと防衛庁は考え、政府が考えたとしても、先立つものがなければこれはできないわけであります。というよりも、むしろこれは、意図はそうあったとしても、財政事情が大きく左右する。大蔵大臣としては財政事情を最優先に考えていかれますか。それとも、財政事情の方は二の次にして、大綱の水準を最優先とした財政運営、予算編成をされますか。要するに、これからの財政事情も不確定な要素がたくさんありますので、御答弁しにくいかもしれませんけれども、財政事情を十分に考慮するということになれば、六十五年の達成が六十七年になる、七十年になることも私はあってしかるべきだというふうに思います。そこら辺の大蔵大臣の御決意というか、御判断を伺いたいと思います。
-
○竹下国務大臣 防衛力の整備ということになりますと、「防衛計画の大綱」の水準に可能な限り早期に到達するということ、これは大事なことであると私も思います。
が、その際、そのときどきにおける経済、財政事情を勘案して、国の他の諸施策との調和を図りつつこれを行っていく、こういうことになっておるわけでございます。したがって、この問題については、今後の各年度の予算編成に当たって、財政当局としてはやはりぎりぎりの検討、努力の中で調和をしていく、こういうことがお答えする大体限界ではないかな、こんな感じでございます。
-
○
二見委員 したがって、そのぎりぎりのところで考えていけば、たとえ防衛庁が六十五年度を目標にしているといっても、ぎりぎりのことを考えていけばそうならない場合だってありますよというふうに受けとめてよろしいですか。
-
○竹下国務大臣 そうなりますと、大綱の達成時期の問題になるわけでございますので、その点は年度ごとのぎりぎりの調和のための努力の結果として出るわけでございますので、私の方から達成時期というものについてのお答えをすることは差し控えさしていただきたいと思います。
-
○
二見委員 どうもこの問答は押し問答になりそうですので、別の観点からまたもう一点お尋ねしたいと思います。
防衛庁長官、大綱水準達成、別表を達成して、問題はその後、大綱の基本的な考え方を見直すかどうかという問題がやはりここで議論になりました。今防衛庁としては、大綱の水準を達成することなので、それから先のことは考えてないという御答弁でしたけれども、要するに、平和研から今の大綱の基本的考え方とは違った立場での提言が出されておりますね。御存じだと思いますね。私は、大綱そのものを認めるわけではないけれども、さらにそれをより有事即応型のものに方針を変えるということは非常に危険だという判断をいたしております。
と同時に、今米ソで軍縮会議が始まり、国際情勢に今後とも大きな――まあ政治の世界も国際情勢も一寸先はやみと言えばそれまでの話なんですけれども、大きな極端な変化でもない限り、私は、基盤的防衛力というのですか、この基本方針は今後ともずっと守られていくべきものだというふうに考えております。その点はどうでしょうか。
-
○
加藤国務大臣 現在私たちが持っております「防衛計画の大綱」、これに基づいて防衛力整備を行っておりますけれども、この「防衛計画の大綱」というものは、いわゆる私たちが申し上げております節度ある防衛力のあり方、それから今後防衛力の整備がどこまでいくかということに対する国民の不安にこたえる形にもなっておりますので、私たちとしては、現在の国際情勢の中では、この計画の大綱に従って整備していくことが最も適当であろうと思って、現在これの達成に努力し、これを現在変えるつもりはございません。
将来どうするかということは、その時点で考えなければならないことではございますが、その時点におきましては、そのときにおける国際情勢それから国内の諸事情等を見ながら考えていくべきものであろうと思いますが、私たちは現在のところ大綱の変更ということを考えてはおりません。
-
○
二見委員 それから、もう一点お尋ねいたしますが、いわゆるフリートサットの問題、
岡田委員からも先ほど御指摘がございまして、私も政府のこれに対する取り組みというか、考え方には賛成いたしかねます。しかし、この問題について一点確認さしていただきますけれども、このフリートサットの問題が、日米訓練のための受信だけと言っておりますけれども、これを契機に米国追随、集団的自衛権の行使への道をたどっていくのではないか、その道へずっと際限もなく行ってしまうんじゃないかというおそれというものを我々持っているわけであります。この点について、集団的自衛権の行使への道は絶対たどらないということが確約できるのかどうか、その点をこの点については御答弁を求めたいと思います。
-
○
加藤国務大臣 今度の演習のときに、より的確な情報が得られるようにということで、フリートサット衛星の利用をお願い申し上げているわけでございますが、これは私たち、集団的自衛権に及ぶようなものではありませんし、また、そういうことになりましては、もともと憲法に違反することにもなりますし、自衛隊の運営上の基本方針にも入りますので、将来ともそういう心配のないようにいたします。
-
○
二見委員 大蔵大臣、一点お尋ねいたします。
いわゆる高率補助一律カット法案についてお尋ねしますけれども、この一割カット法案は一年限りの時限立法ですね。これに関して大蔵大臣は、「国と地方の間の役割分担、費用負担の見直し等とともに、政府部内において検討を進め、今後一年以内に結論を得る」ということでもって、一年限りの法案だというふうに御説明になりましたですね。役割分担、費用負担というのは、考えてみればこれは形はお金の問題ですね。そうすると、一方政府税調では、国税、地方税のあり方についてという漢とした答申をしておりまして、その中身は、シャウプ税制以来の税のあり方を見直し、抜本的な改正を検討しているわけですね。これは早ければことしの秋にも出てくるかもしれないけれども、六十一年の秋までにこの答申をいただくことになっておりますね。どういう形が出るか予断を許しませんし、予見を持つべきではありませんけれども、どういう形かわからぬけれども、もし税制の抜本改正が答申されたとします。時間的な点からいって、恐らく私はことしの暮れは無理で、任期ぎりぎりの来年の暮れになると思います。六十一年の暮れ。ところが、役割分担、費用負担の見直しというこれは来年の三月までですね。そうですね。これは税と密接に関係があるんでしょう。国税はこう、地方税はこう、こういうふうにしてこうというきちんとしたものができないで、費用負担の見直したとか役割分担なんというのはできないんでしょう、これは。それだけ先行するというのはおかしなことじゃありませんか。どうなんですか。
-
○竹下国務大臣 恐らく
二見さんおっしゃいますのは、六十年度中に国と地方の役割分担、費用負担、これを見直す、しかし、そうなれば、一方、税制で国税と地方税の抜本的改正があって、その費用負担のあり方が違ってきた場合は、これは今最初のものだけが先行しておったのでは問題が残るじゃないか、あり過ぎるんじゃないか、こういう御意見であろうと思います。
それで、まず高率補助の問題につきましては、臨調答申とか行革審等で今日までいろいろ議論をしてまいりましたが、とにかくこのいわゆる高率補助というものは現在の仕組みの中でもこれを引き下げを行うということを車の両輪としての考え方で合意しようじゃないか、こういうので、現状の税制、現状の財源状態の中でそれを合意したわけです。しかし、さはさりながら、やはりこれは一年限りの暫定措置ということにして、その間にいわば本当のあり方についてもう一度検討しよう、引き続き検討しよう。そうして、一方、ことしの財政措置につきましてはそれなりの措置を行った。だから、あくまでも財政面から見てまいりますと、これからの措置の議論をして、結論が出て、また財政上手当てをしないものがあったら、それはやっていかなければならぬ場合もあり得るかもしれません。しかし、一方、税の問題は、いわば戦後のいろいろなひずみ、ゆがみの出た税体系そのものについての議論をしてください。国と地方との費用分担の議論をやってやろうとおっしゃっているわけじゃございません。しかし、今のような意見が出ますと、そういう議論も当然議論としては、正確に報告しますと出てくるわけでございましょうから、一応これは別の問題としてお話しいただいて、そういういわば車の両輪たる両者に大変な税源分配の変化が出た場合はこれはまた新しい問題として考えなきゃいかぬことではないかというふうに理解していただければ幸いです。
-
○
二見委員 それから、今度は環境問題、緑の問題について伺いたいと思いますが、私は総理に申し上げたいのは、実は昨年二月二十一日のこの
委員会で、私は総理に、「もし、今国会にアセス法案が提出されないということになると、大平内閣、
鈴木内閣の環境に対する考え方と中曽根内閣の考え方が違うことになるのじゃないか。」こういう質問をいたしました。それに対して総理は、「環境行政は非常に大事であると思います。とにかく党内の調整を急いでやりたいと思っております。」こうお答えになりました。しかし、私はその答弁では不満だというので何度か繰り返しました。その結果、総理は、「もちろん、提出する方向に向けて努力してみたいと思います。」と御答弁になりました。一歩積極的な姿勢だというふうに私は受けとめたわけであります。
ところが、実際にはどうだったのかというと、このときの国会は、延長して去年、五十九年八月八日まで国会がありました。それから二十日後の八月二十八日に、アセスメント法案は提出をしない、そしていわゆる指導要綱という形でもって行政指導、それでもってこの問題は決着をしてしまった。
私は、総理にお考えいただきたいのは、もちろん、やろうと思ってできない場合もあるから、できなかったことを責めるわけじゃないけれども、総理答弁というのはそのようにいいかげんなものであっていいんだろうか。「もちろん、提出する方向に向けて努力してみたいと思います。」それが、私の質問からわずか半年後、国会閉会後二十日間でもってそれがなくなってしまった。これでは国会での総理の答弁というのを本気になって信用していいのかどうかわからなくなる。これは御釈明いただきたい。
-
○中曽根
内閣総理大臣 提出しようと思いまして、党内調整、
官房長官等に指示していろいろ努力をしたのであります。しかし、事ほどさように非常に難しい。各部会等の意見の対立がありまして、このままでは、また提出できない状態が続くと次の議会もまた同じような状態になる危険性がある、そういうふうに判断いたしまして、これはなるたけ早くやった方がいいから、法律に準ずるような行政措置をまずやろう、そういうことで、各省庁集めまして、そして考えている方向を行政措置で実現する、そういうことでやりまして、法律にかわる措置としてこれを急いで実行したという次第でございます。法律を提出することができなかったのは甚だ遺憾でございますが、急いでやる必要がある、そういう考えに立ちまして、法律に準ずるような措置を実は実行した、こういうことであります。
-
○
二見委員 法律と要綱とは全然違う。私も、この問題で自民党内にいろいろ異論があり、閣内にも異論があるし、非常に難しい問題だということはわからないわけじゃありません。十分承知しておるつもりであります。だから、私は総理のリーダーシップに大変期待したわけでありますけれども、非常に遺憾だという気持ちを率直に申し上げておきたいと思います。
環境庁長官、要するに、実施要綱、これは法律と比べると拘束力という面では一段と劣るものでありますね。どうなんでしょう。
長官としては、実施要綱で今後満足されていくのか、むしろ実施要綱の状況を見で、やはりもう一歩踏み込んだものにしなければならないというお考えになれば法案の提出ということもこれからさらに考えていくのか。これは環境行政の基本にかかわる問題ですので、しっかりとお答えをいただきたいと思います。
-
○石本国務大臣 当面は、今総理も申されましたように、閣議決定の線に沿いまして円滑な実施に努めていきたいということで努力をしている最中でございますが、環境庁といたしましては、この法制化については断念したわけではございません。この閣議決定の実施状況を見ながら引き続きこれは検討してまいりますことを申し上げます。
-
○
二見委員 総理も今の
長官の御答弁はそのとおりというお考えでございますか。
-
○中曽根
内閣総理大臣 行政措置でこの間決めた要綱にのっとりまして厳格にこれを実行する、そういうことで成果を上げていきたいと思っております。
-
○
二見委員 成果を上げていく、それはわかります。これからやっていくわけですけれども、私は、実施状況を見て法案の検討もさらに続けていく必要があるのじゃないか。やりもしないうちから結果はわからないじゃないかと言えばそれまでなんだけれども、結果というものはいろいろな場合を想定しなければなりません。さらに法案の作成、提出、そうしたこともこれから引き続き検討していただきたいと思いますが、改めてお願いいたします。
-
○中曽根
内閣総理大臣 すべては実施状況を見た上でのことでありまして、今、法案の提出ということをお約束することはできません。しかし、ともかく行政措置によりまして成果を上げるように全力を尽くしてみたいと思います。
-
○
二見委員 私は、環境問題をこれからお尋ねするわけでありますけれども、環境アセスメントに対する現内閣の姿勢を見でおりまして、環境問題というのは非常に厳しいんじゃないかなという率直な感じを持っております。私は環境問題について二つの問題を総理並びに関係大臣にお尋ねするわけですけれども、一つは、地球のグローバルな問題、もう一つは、私たちの住んでいる都市の緑の問題、二つに分けて、限られた時間ですけれども議論をしたいと思います。
総理、御存じのように、地球的規模での環境汚染というのが、森林の消失だとか砂漠化などによってかなり広がりつつあることは総理も御認識なさっていると思います。森林の消失というのは年間千二百万ヘクタール、これがなくなっていく。現在、陸地の五分の一が森林に覆われておりますけれども、十五年後の二〇〇〇年には六分の一に減ってしまうのじゃないかという調査もございます。国連環境計画地球環境監視組織の報告によりますと、アジア・太平洋の熱帯雨林地帯では一日五千ヘクタールの森林がなくなっていく。年間にいたしますと百八十万ヘクタール、東京二十三区の三十倍の面積の森林が一年間に破壊されております。一方、砂漠化の進行というのは一年間に六百万ヘクタール、四国と九州の全面積に匹敵するものが砂漢になっております。十五年後には陸地の三五%が砂漠になってしまうのじゃないかという推計もございます。こうした地球規模に広がっている森林の消失、砂漠化というのは、日本の国が緑に覆われているから関係ないんだと言ってはいられない問題だろう。インダス文明にしろメソポタミア文明にしろ、それが滅びた背景には森林の破壊があった、砂漠化があった。地球的規模での森林の消失、砂漠化が進められていくということは、現在の文明が何年後か何十年後かには滅びなければならないという運命すら考えるわけであります。私は、今ここで日本が先進国として世界にこの面で貢献をしなければならないと思っています。
この森林の問題、砂漠化の問題、私はまたさらに二つに分けます。
一つは、先進国の問題、これは酸性雨の問題であります。日本でも酸性雨の被害というのがありました。一九七三年、昭和四十八年に、六月二十八日から六月二十九日にかけて五百四十人の人が酸性雨の被害に遭っている。四十九年には、七月三日から七月四日にかけて三万二千五百四十六人の人が酸性雨による被害の届け出をしている。昭和五十年には、六月二十五日に百四十三人の人が届け出をしている。それ以後ずっと減ってきております。これは、我が国の公害防除技術あるいは体制が整備されてきたことだからだろうと私は思います。しかし、ヨーロッパはまさに現在酸性雨で大変な問題であります。しかも、この酸性雨というのは大気汚染となって国境を越えていきますからね、ヨーロッパでは。非常に深刻な問題で、これは一九八二年六月に開催された環境の酸性化に関する国際会議に対してスウェーデンが出した資料のコピーであります。おれのところはイギリスや西ドイツ、フランスからこのように酸性雨の被害を受けているんだ、こういう訴えをしております。アメリカの議会技術評価局は、一九八〇年の一年間でアメリカ国内で酸性雨による大気汚染が原因で五万人以上が呼吸器系統の疾患にかかって死亡したという報告も出ておりますし、ノルウェー南部では数千もの湖が酸性になり、三万キロ平米の地域で魚が減少した、こういう報告もあります。したがって、国際会議でもヨーロッパでも非常にこれを重要視しております。
今は日本はいわば環境先進国であり、公害技術の先進国であります。ことしサミットはボンで行われます。西ドイツはこの酸性雨対策に非常に熱心な国でありますし、ヨーロッパ各国が非常に関心を持っておるということを考えれば、ボン・サミットで平和の問題あるいは経済の問題が重要課題になるのはわかっておりますけれども、それと同じように、この酸性雨対策というものに日本は積極的な発言をし、日本の持っているそうした技術や法律や制度やあるいはノーハウをヨーロッパに提供して、この面でもって日本が世界に貢献していくという姿勢を高く掲げてもよろしいのじゃないかと思いますけれども、総理の御認識と基本的な見解をお願いしたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 酸性雨の問題は、地球的規模の今や大問題でありまして、先般のロンドン・サミットにおきましてもこの問題が提起されて、各国で協力するということになっております。日本の場合は、早目に気がつきまして、窒素酸化物あるいは硫黄酸化物等の防除について非常に厳しい厳格な基準をつくって、それを励行した。そのために割合早目にこの対策が講ぜられたと思うのですが、ヨーロッパの場合はまだ日本ほど厳しい基準がない、そういう点がかなりあるように見受けられました。そういう意味において、ヨーロッパも最近日本に見学に参りまして、日本の鉄鋼産業やらあるいは電機産業やらそのほかの措置を大分見に来ております。我々といたしましても、技術その他を十分提供もいたしまして協力してまいりたいと思っております。
しかし、森林資源の問題についてはまだわからない部分もありまして、そういう点については生態学その他を兼ねて国際協力で解決していきたいと思っております。
-
○
二見委員 酸性雨というのはどの程度の酸性度かというと、レモネードとかオレンジジュース程度の酸性雨だというんだから、それが空から降ってくれば、もういろんなところに影響が出てくるのは当然だと思いますし、日本がその面で先進国対してかなり大きな貢献ができる立場にあるんじゃないかというふうに考えております。
同時にもう一点。森林資源は、アフリカとか東南アジアとか、この森林がなくなっていくのですね。原因はいろいろあります。原住民がまきにして燃料として使ってしまうというのがかなり大きなウエートです。焼き畑農業というのもあります。それからもう一つは、向こうが木材を輸出する。日本が最大の輸入国だそうですけれども、それを日本が買ってくる。それによって東南アジアなんかの熱帯雨林がどんどんなくなっていく、これはそのまま放置しておくわけにいかないと思います。
今アフリカの飢餓というのが大きな問題になっておりますけれども、あそこに食糧を送る、毛布を送るのは、それはそれなりに意味があることだけれども、その背景にあるのは私は環境破壊だと思うのです。人口増によって森がなくなり、家畜をたくさん飼ったために草が食いつぶされ砂漠化していく、そうした環境の変化、環境破壊が、結局はあの飢餓の大きな原因じゃないかと私は思います。また、木材を先進国が買ってくる、それも大きな原因だと思う。
ということになれば、熱帯雨林が消滅していく、あるいはアフリカの飢餓の問題は、先進国が本気になって考えて、物を送るというだけじゃなくて、環境を守ろう、土地を守ろうというところまで踏み込んで先進国が知恵を出し、協力しなければ、私は解決しない問題だと思うし、これをこのまま放置しておけば、アフリカの次に今度は東南アジアだ、アマゾンだということにもなってしまうのじゃないか。そうなったときにはもうそれこそ取り返しのつかない事態になると思います。その点についても総理のお考えを承りたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 おっしゃるとおり、飢餓の原因の一つには、森林が後退したり、砂漠が増大してきたという原因があります。エチオピアなんかはそういう状態であるということを
安倍外務大臣から報告を受けました。したがいまして、根本的な、そういう環境政策から踏み込んだ政策を国際的にとるように努力していく必要があると思いまして、サミットの際等におきましてはそういう努力をしてまいりたいと思います。
-
○
二見委員 ぜひともお願いをしたいと思います。
と同時に、私は海外援助のあり方についても、これはいろいろ議論がありましたけれども、開発を主体とした援助だけではなくて、伐採された森をもとに復元するような、そういう形での海外援助というものもあってしかるべきじゃないかなと思うし、むしろそれが、開発主体のプロジェクトを組むのもいいけれども、それ以上にもっと住民にとっては大事なのではないかなというふうに思いますが、その点についてはどうでしょう。
-
○中曽根
内閣総理大臣 もうそれは当然のことでありまして、伐採したら植えるというのは、今まで我々が祖先から教えられてきたことであります。しかし、発展途上国におきましては、そこまで手が回らないで、ともかく伐採して資金を得たいという焦りがあると思います。そういう点は、十分理解と同情を持ちまして対策を講じていくように協力していきたいと思います。
-
○
二見委員 私は緑というのが非常に、総理も花と緑とおっしゃっておりまして大変好きなんですが、私も緑が大変好きなんです。これは社会党の
川俣健二郎先輩から私は言われたのですけれども、「イに木と書いて休むと読む。」それほど木は大事なんだと。私も、なるほど川俣先輩は、我が早稲田の先輩は偉いことを言うと尊敬しているわけでありますけれども、褒めても、いないというのは残念でありますが……。
今の山を守っていくのももちろん当然大事です。と同時に、住んでいる我が町の中の緑をふやしていくのも大事です。木を植えましょう、花を植えましょう、これも大事。だけれども、今町の中にある緑を、開発の波にさらすのじゃなくて、その緑を守っていこうという、もっと言えば、町の中にある小さな雑木林も守っていこう、それを開発という目から見るのじゃなくて、ここに緑があるというだけで、それは大きな安らぎを与える公共性だ、そういう立場から、今ある緑の小さな山だけれども、あるいは雑木林だけれども、それを守っていこう、私は、こうした政治の姿勢が必要なのではないかなというふうに思います。
そうした大ざっぱな考え方なんですけれども、いろいろこれをやり出すと、もう税の問題がどうだとか、いろいろな問題が出てくるのだけれども、土地の利用規制の問題だとか、いろいろ複雑な問題が出てくるから、余り細かい議論をしませんけれども、町の中の緑を守る、今ある雑木林を守ろう、こうした発想は、総理、いかがでしょう。
-
○中曽根
内閣総理大臣 大賛成であります。みんなで大事にしていかなければいけないと思います。
-
○
二見委員 建設省は緑の確保について、市街化区域の面積の三〇%以上緑をつくりたいというマスタープランを持っておりますし、さらに昨年の暮れに、樹木三倍増プラン、今の木の二倍、三倍の木を植えようというプランを持たれております。私はそうしたプランを否定するわけではなくて、ぜひやってもらいたいと思っておりますけれども、今申し上げたように、都市における緑をどうやって守っていくか。一方でふやし、一方でつぶしたのでは何にもならない、今ある緑をできるだけ守っていきたい、そうした考え方について、建設大臣のお考えはいかがでしょう。
-
○梶原政府
委員 建設省におきましては、都市の緑の総合的な整備保全計画ともいうべき緑のマスタープランを各市町村で策定するように指導しております。これが都市の緑の整備保存の基本でございまして、これに基づきまして、今先生おっしゃいましたような貴重な都市の中の緑、これをいかに保全するかということでございますが、具体的には、都市計画法による公園あるいは緑地等の施設にする、あるいは風致地区とかあるいは緑地保全地区、そういうものに指定して、利用規制をしながら緑を保全していく、そういう方針で逐次進めているわけでございます。
-
○
二見委員 町の中にある雑木林が消えていく原因というのはいろいろあります。雑木林にしておくよりも切り売りして宅地にしてしまった方がもうかるとか、そうした観点からなくなっていくのが非常に多いのですけれども、しかし、それでもやはりいろいろな角度から守れないかなと私は思います。
一つは、これは自治大臣にお考えいただきたいのですが、例えば、市街化区域内の生産緑地に対しては農地並み課税になっておりますね、宅地並み課税は課されておりません。もちろんいろいろな条件がある。宅地介在樹林、いわゆる町の中にある雑木林、これは今は、固定資産税、都市計画税はいわゆる宅地並み課税ですね。しかし、もしそれが、今後二十年、三十年、長期にわたってこの緑を保全していくんだという地主の側の意向があれば、生産緑地としての扱いをしてもいいのじゃないか。そうした税制上の考慮というのはしてもらえるのかどうか、お考えいただけるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
と同時に、今度は大蔵大臣、こういうことがあるのですね。これは新聞切り抜きの例で申しわけないのだけれども、横浜で地主さんがみんな自分の持っている雑木林を提供して憩いの森をつくった、市民の森を。それに対して市が、奨励金というか助成金を出したわけですね。そうすると、これはどういうことになるかというと、税法上は、その助成金をもらうでしょう、地主さんは、それを固定資産税を幾ら払って、管理費で幾ら払ってと引いて、残ったものは不動産所得として届けなければなりませんね。そうすると、税金の対象になる。せっかく我々が市民のために緑、自分の山を提供しているのに、税金を取るんじゃおれはやめたというのでやめてしまったという例もあるのです。これは、そういういわば公益というか、公共に資するために自分の緑を提供している、それに対する助成金というのは税制上の配慮があってもよろしいんじゃないかと思うのですが、この点については大蔵大臣にお答えをいただきたいと思います。
税法の純理論からいけばいろいろ難しい問題があるのは私は承知しておりますけれども、そうした配慮についてはどうお考えになるか、自治大臣と大蔵大臣、よろしくお願いします。
-
○古屋国務大臣 先生の御質問の趣旨は、介在山林につきまして宅地並みの課税が行われているが、緑地を守る観点からこれを軽減できないかという御趣旨と思っております。
現在、都市緑地保全法に基づきます緑地保全地区内の土地の評価に当たりましては、山林については通常価格の二分の一とする等の特別措置を自治省の通牒で通達しております。それから、市町村の実情に応じ、適宜同地区内の土地にかかる固定資産税の額を軽減する旨指導しております。これはあくまでも緑を守るということでございます。
それから、それ以外の市町村の問題になりますが、これらの市町村独自の政策としてやっているところもありますけれども、緑を守るために、制度的に緑地保全のための施策の制度化ということを私どもは期待をしておりまして、これによりまして固定資産税の軽減ということも考えてまいりたい、さように考えております。
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○竹下国務大臣 この問題につきましては、これは
二見さん百も御承知のとおりでございますが、固定資産税、そしてまた都市計画税、そういう経費は控除されますが、奨励金として受け取るものは、これは不動産所得の収入金額として課税対象になる。恐らく、かなりの所得をお持ちの人に上乗せになるということは、税法上はなかなか難しい問題じゃないかなと、御理解いただかなければならぬ、別の面から議論をしていかなければならぬ問題ではなかろうかと思います。
-
-
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○
池田(克)
委員 最初に、教育減税の問題についてお尋ねをしたいと思います。
先ごろ、予算修正をめぐる与野党合意がございまして、その中で、教育減税の六十年中実施について、書記長・幹事長会談の責任において与野党間で検討し、実施するとの合意がなされました。先ほど来、総理の御答弁を伺っておりまして、不公平税制の問題等に関して、年収二百万から八百万程度の方々の暮らし、住宅ローンとか塾の費用とか、非常に大変であるという趣旨の話が出まして、そうした実情にかんがみて、この教育費というのは大変家計を苦しめている、こういう実情でございますので、私たちはぜひともこれを実現させたいと強い願いを持って予算の修正に盛り込んだ、こういう経過があるわけでございます。
最初に、先ほど来のお話と関連いたしまして、この問題は、総理、御承知であろうと思いますし、この問題の具体化についての御所見を伺いたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 先般の書記長・幹事長会談の結果、いわゆる政策減税についてある合意が成立いたしましたが、これにつきましては、今後の協議の結果を踏まえまして、その結果をいただいた上は誠実にこれを尊重いたしまして、趣旨を生かすように努力してみたいと思います。
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○
池田(克)
委員 大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、私が伺いました範囲では、この教育減税というのはかなり長い議論が続いた経過があるようでございます。文部省は昭和三十九年から五十二年まで十四年間教育減税を予算要求をしてきた、こういう経過があるわけでございますが、その議論の中で幾つかの理由が挙げられまして、ついに実現を見なかった、こういう経過があるわけで、改めてそういう大変な議論の中で再びこの教育減税が登場してきたわけでございます。
最初に、大蔵大臣としてこの教育減税をどのように見ていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
-
○竹下国務大臣 これは与野党の最高の御判断でございますから、この結論は尊重しなければなりませんし、そしてその間、恐らく、お手伝いする、いろいろな素材の提供とかあるでございましょう。それに対しては忠実にこれに参加していくという姿勢は総理からおっしゃったとおりであります。
恐らく今お尋ねの問題は、これまで議論した難しかった理由とでも申しましょうか、そうしたものは、簡単に申し上げてみますと、結局年々議論して、一番近いところで五十九年十二月十九日の政府税調の答申でございますけれども、教育費負担に配意して教育費控除を設けるべきである等、そういう特別控除の創設についての要望があるが、そもそもさまざまな国民の生活態様の中から特定の条件や特定の家計支出を抜き出して、税制上しんしゃくすることは限界がある。しんしゃくする場合の客観的基準を定めることは困難である等を考慮すれば、特別控除等を創設することは適当でないという一応の答申があるわけでございます。
それをさらに整理しまして、私どもがいつも与党の皆さん方等々と議論をしております点の難しい問題として議論しておりますところは、今申しました、いわゆる特定の家計支出を抜き出しての税制上のしんしゃくの限界という問題と、二番目には、税金を納めていない、すなわち課税最低限以下の家庭の父兄には恩典が及ばないという問題、三番目には、五%程度とはいえ、義務教育のみで社会に出て働いていらっしゃる方、この若年労働者の方が九十六万七千円でございますかからですと税金がかかるという問題に対するバランスがどうなるかという点、私も国会で答弁したり、あるいはいろいろな場合の問題点として指摘されておるのは、ネガティブな方向から指摘されておるのは、今言ったような問題でございます。
-
○
池田(克)
委員 今御指摘がありましたような議論は私も伺ったわけでございますが、以前の十四年間にわたる教育減税の議論のときには、たしか文部省からの要求は、義務教育を除いて幼稚園と短大も含んだ大学まで、つまり幼稚園、高校、大学までの教育費の負担を減税で面倒を見る、こんなふうな要求だというふうに私は聞いているわけでございますが、そのとおりでしょうか。
-
○西崎政府
委員 ただいま先生からお話のございました三十九年から五十二年度までの文部省要求の内容でございますが、御指摘のとおり、内容といたしましては、幼稚園、高等学校、高等専門学校、短期大学、大学につきまして、授業料等の学校納付金についてという形で修学費控除の要求をしておったわけでございます。
ただ、その年度まではそういう形でいたしておりましたが、私どもはいろいろな税制上の観点の問題があるということにかんがみまして、主として歳出面について、その後、私学助成あるいは育英奨学等についての充実の努力をするという形で今日まで努力をしてきておる、こういう実情でございます。
-
○
池田(克)
委員 大蔵大臣、今お話が出ましたように、従来は幼稚園、それから高校、大学、短大と、かなり幅広い。ですから、大学に行かない家庭もある、あるいは先ほどお話しのように中学卒業で働いている方々もいる。確かにそういう点はあると思うのですが、今日私どもが予算修正の中で出ましたものは、高校ということに限って教育減税できないか、こういう問題点の指摘であるわけです。もう九四%というくらいに大変に進学率も進みまして、もはや選択の余地がない、つまり高校卒、最低高校は出さなければというふうな状況にまでなってきている。こんなような状況を考えますと、従来とは若干趣が違ってくるのではないか。
そうした点で、ぜひとも今回のこの検討には大蔵省としても積極的に応じていただきたい、こういう気持ちでおりますので、最後に御所見を伺って、この問題を終えたいと思うわけでございます。
-
○竹下国務大臣 これは総理からも申しましたように、各党の合意でございます。したがって、政策担当者の皆さん方が協議された結論につきましては、またその間の協議に対する我々のお手伝いもございましょうが、最大限の努力をして、お手伝いもしなければならぬし、もとより結論は尊重しなければならぬ問題だというふうに考えております。
-
○
池田(克)
委員 別の問題に入りますが、国有地の有効利用と大学の自治、こういう問題でございます。
実は、総理が本
部長をしていらっしゃる国有地等有効活用推進本部、このお話を先日、たしか二月六日のこの
委員会ですが、塚本書記長の質問の中で総理はかなり詳しく現状について説明をされておられました。私聞いておりまして、率直に言って総理の非常な熱意に私は感心した、敬服をしたような次第なんですけれども、そのときのお話によりますと、大蔵省がいろいろと拾い集めた有効に使える余地のある箇所というのがたしか四千カ所あるというふうにお話がありました。その中で、それぞれの役所の事情をいろいろ聞いてみて、最終的には「大蔵省の検討で可能と見られるのは約五百件ぐらいあった。」さらにそれが「いよいよやる段取りになりますと、移転先がないとか、具体的な、公務員宿舎や何かについては移転先を見つけてやらなければいかぬ、」といったような問題がありまして、四十カ所ぐらいに減ってしまった、こういうふうな問題の指摘がありまして、大変厳しいなと私は思いました。
そうしておりますうちに、これは二月十七日の東京新聞でございますが、要するに難色を示す部分が国立大学のいわゆる自治と申しましょうか、大学は大学の考えがある、こういう問題がネックになっているんだという話を聞きまして、これはなかなか難しい問題がなというふうに思いまして、きょうここでお伺いをする気になったわけでございます。
この総理のお話のときに、たしか「総務
長官に頼みまして、総務庁の監察の方でこのリストを渡すから調べてみてくれ、そのとおりかどうか、大蔵省から言ってきたとおりかどうか調べてみてくれ、そういうわけで、今行政の監察の方で実際に当たってみてもらっている、」こういうふうなお話がございました。
総務
長官にお尋ねしたいのですが、総理がこういうふうな指示をなさって活動していらっしゃると伺いましたが、大蔵省で言ってきたとおりかを改めて調べ直すというと、これはなかなか大変なことだな。要するにどこか隠しているのがあるんじゃないかとか、またこの評価について大蔵省の評価と総務庁の方の評価が違って、ある意味では、改めてさらに粘り強く拾い出そう、こういうことかなとも思うのですが、そこのところの趣旨をお聞かせいただきたいと思うのです。
-
○後
藤田国務大臣 国有土地の有効活用推進本
部長としての総理からお話がございまして、そこで私の方としては今監察局の方で調査をさせてもらっております。調査の対象は、かねて大蔵省が御調査の上、大蔵省としての立場で非効率とお考えになっているものは六百カ所ばかりあるのです。ところが、それぞれの行政財産所管の各省庁はまたそれぞれの御意見がございますから、改めて私の方の立場で調査をさせていただいて、そして客観的というか合理的な理由があるのかどうか、事情をお聞きした上で、それを検討の資料として行革審の方に提出をしよう。行革審がそれをさらに御判断をなさって、その上で一定の結論が出ればこれはまた活用推進本部の方に申し上げる、こういう考え方でございます。
-
○
池田(克)
委員 重ねてお伺いしますが、大蔵省と総務庁の目のつけどころというのはどこが違うのでしょうか。
-
○後
藤田国務大臣 大蔵省は国有財産全体の管理庁としての立場で各省の行政財産についてお調べになったと思うんですね。私の方は、やはり行政監察という立場で見させていただくということで、そこに若干の考え方の開きはあるかもしれない、私はかように考えております。
-
○
池田(克)
委員 そういたしますと、ちょっと大げさに言えば大学の自治というのはそばへ置いておいて、国家が権力で大学の土地利用とか活動内容について調べよう、こういうことになるんじゃないかと思うわけでございます。
そこで大学の自治ということが問題になってくるわけですが――総務
長官うなずいていらっしゃいましたのでそういう方向だろうと思うのですが、今度文部大臣にお伺いしたいのですが、文部大臣のお立場から、大学の土地利用というのは社会情勢から見てゆとりがある、こんなふうにお思いになっていらっしゃるでしょうか。
-
○松永国務大臣 大学の敷地の利用問題でありますが、大学の敷地というのは教育、研究上良好な環境が保全されなければなりませんし、適正な規模が実は必要なんであります。しかし一方、今日の社会情勢のもとにおいては国土の有効利用という点も大事な点であろうかと思います。
そこで問題は、教育、研究上大学の必要な敷地の確保、一方は国土の有効利用、それをいかに調整するかという問題であろうかと思うのでありまして、文部省としては、両方の要望が円満に調和されるように努力をしていかなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、文部大臣の立場からすればやはり教育、研究というものが立派になされるようにしていかなければならぬという考え方に立つわけであります。
-
○
池田(克)
委員 これは再度大蔵省の関係の
局長さんからでもお答えいただきたいのですが、私が説明を受けたところによりますと、国立大学関係の土地利用は非効率の数が多い。建てかえ、集約化、立体化できるものの数も多いし、比較的ゆったり使っていて、老朽化したり隅の方に建物があって広い空地を残していたり、大蔵省から見て非効率であると考えられるものが多い、こういう話を私承ったのですが、大蔵省のこの面を担当していらっしゃる
局長からでも御答弁いただければと思います。
-
○中田政府
委員 お答えいたします。
先ほど
委員が四千カ所云々ということから質問を始められましたけれども、実は昭和五十九年度におきましては全国の県庁所在都市、それから政令指定都市なんかに所在します行政財産、学校ですとかあるいは庁舎ですとか宿舎ですとか現に使っておる行政財産千平米以上のものを対象に、その利用状況が周囲の土地の利用状況等から見て十分であるかどうか、こんな観点から実態調査をいたしたわけでございます。そして、私どもの目から見た周囲の利用状況よりも随分ゆったりと使われておる、あるいは利用状況がまだ十分でないというふうなところを六百内外選んで、さらに関係省庁の御意見を聞いてみたというのが現状でございます。まだ作業が続いておる途中でございますから、中身、どこの省庁が何件というふうなことはちょっとまだ申し上げかねる状況でございますけれども、大学は御案内のとおり昔から施設を持っておりますので、比較的ゆったりしたところに周囲がだんだんと開発されてまいりますと、周囲の土地利用に比べて比較的余裕があるというふうに見られるところも多いというのは現状でございまして、そういうことからも文部省なんかとどうしていったらいいかということをいろいろ話し合っておるところでございます。
-
○
池田(克)
委員 今の答弁ではっきりとはおっしゃらないようですが、文部省、国立大学の土地はまだそうしたゆとりがあるというふうな認識をお持ちのようでございます。
これは、今の御答弁で総務
長官にお伺いしたいのですが、調査していらっしゃる途中で恐縮でございますが、国立大学といえども今のような土地の有効活用ということから見れば協力を求めて資料も出し、判断もし、そしてそれを活用の面に向けていく、こういうかなりな権力と申しましょうか国家の意思が働かざるを得ない状況にあるんじゃないか。そこで、大学の自治というような問題とすり合わせていかなければならない問題になるんじゃないかと思うのです。
私は、本来大学というもののあり方からすれば、行政監察のような形で内容を調べて、そしてその評価をするというのは余りなじまないんじゃないか。むしろ大学が自発的にそういう状況に応じてそれを出してくる、それが十分でなければ再度調べるというふうな形が本来の姿であって、今やっていらっしゃるのは一つの行き方かもしれませんが、大学の自治という観点から立つと、ちょっと踏み込んだような感じを私は持つのですが、いかがでしょうか。
-
○後
藤田国務大臣 大学の自治とか学問の自由これは尊重しなければならぬことは当然のことでございます。ただ、私は、大学が持っておる土地そのものが大学の自治、学問の自由そのものではない、大学の自治とか学問の自由を守るための周辺の事柄である、かような認識でございます。したがって、やはり私の方は監察局がやりますが、調査でございます。その際にはやはり大学当局の御意思というもの、お考え、これは尊重しなければならぬ、かように考えているのです。
しかし、同時にやはり周辺の住民といいますか、国民全体といいますか、これがどのように考えておるであろうか。本当に納得をしておるのかどうか。ここらもあわせ考えて適切な結論を出したい、かように考えております。
-
○
池田(克)
委員 文部大臣、今の総務
長官の発言ですけれども、先ほど来学問の自治あるいは教育環境の整備が非常に重要なことである――私は、大学というもののこれからの行き方につきましても、いろいろ御意見があり、今臨時教育審議会でも議論されていると思うのです。
率直に言って、大学はある意味では開かれたものとして、国立大学ですが、新しい時代の要請にこたえて、もっと活用できるものはその方向へ持っていく、こういうふうな判断を持ってよろしいでしょうか。ぜひその辺について、これは新しい時代の要請です。従来であればやはり、中教審の指摘も私はここへ持っているのですが、割拠主義と申しましょうか、長い歴史と伝統の中で学問の自由を保障する一つのとりでとして、象牙の塔と申しましょうか、頑張っていたわけですが、時代の変化に即応してそうした面も必要だと私は思うのですが、改めて大臣の御所見を伺いたいと思うのです。
-
○松永国務大臣 大学の自治と大学の敷地の有効利用の問題についての基本的な考え方は、先ほど後
藤田長官が答弁されたことと私も同じ考え方でございます。
-
○
池田(克)
委員 時間がございませんので、私ここに中教審の四六答申を持ってまいりました。これは文部大臣ももうとっくに御承知のことだと思いますが、これは大学紛争のあった当時の四十四年の答申でございます。「当面する大学教育の課題に対応するための方策について」こういう答申なんですが、
多くの大学では、事の軽重や種類を問わず教授会の議を経るため、時間と労力が浪費されたり学部教授会の拒否などにより、大学の総意がまとまらなかったりすることがある。また、取り扱う問題の性格に関係なく、意思決定に参加する者の範囲を広げることにより、妥当な結論が得られなくなる場合もある。
このような不合理を改めるには、各大学の実情に応じ、意思決定に関する事案をその性格に応じて区分し、それぞれにふさわしい異なった意思決定の手続きをとることが望ましい。
これは総理にもぜひ御答弁いただきたい部分なんです。この教授会の意思決定、これは重要だと思いますが、先ほど総務
長官からもお話がありましたように、学問の自由は内容の問題、いろいろ整備すべき、立ち入ってはいけないという必ずしも全面的な学問の自治の無限界なものではない、こんなようなお話もありました。
また、別の箇所では、
何が大学の自主的判断の範囲であり、何が政府の役割かを具体的に明らかにし、両者の正しい協力関係を確立しなければならない。
こうも指摘しているわけです。
大学の内部管理に関する法制はじゅうぶんには整備されず、多くは各大学の慣行に任されてきた。その結果、割拠的な学部自治の考え方が大学全体の管理運営の立場と衝突したり、学外に対する閉鎖的な自治意識が一般社会の意見を謙虚に受け入れることを妨げたりすることが多
これらの指摘は、私がなり当たっているんじゃないか。したがって、大学の問題につきまして総理、大変御熱心に今日まで臨教審の設置以来やってこられたわけですが、この土地の問題をめぐって、自治とぶつかる、ここは何らかのひとつ線を引いて、そして進めていくべきではないか、ここに今こういう答申もあり、十四年も経てそう大きな変化は見られでないような気が私はするのですが、総理の御所見をお伺いして終わりたいと思うわけでございます。
-
○中曽根
内閣総理大臣 元来、政治にとりましては大学と教会というのは鬼門でありまして、どこでも手を焼いているものであります。しかし、今おっしゃいますように、こういう時代でこれだけの国民の協力を得てみんな汗をかいておるときでありますから、大学側におかれてもよくこの事態を認識していただいて、積極的、自発的に協力体制をつくっていただくようにお願いいたしたいと思っておる次第です。
-
-
-
○
吉田委員 民社党を代表して、締めくくり総括質問をさせていただきます。
質問を始めます前に、この
委員会が設置されてから二十九日間にわたりまして、終始、
委員会の運営に懸命の努力を払われました
天野委員長に対しまして、深く敬意を表します。
さて御承知のとおり、我々は四野党の共同修正案を提示いたしまして、今日まで与党並びに政府にその要求を続けてきた次第でございますが、その要求のすべては、切なる国民の願望の諸点でございました。いろいろの経過を経て、結果的に一部採用されました。その受け入れられた分の当面の処理、受け入れられなかった大部分の今後の政府の対応などについてただしながら、若干の質問を行いたいと思います。
まず、時間短縮と連休等休日の増加の問題についてであります。
これは、与野党幹事長・書記長会談で、各会派責任者で予算成立までに、したがってここ一カ月の間に協議機関を設置し、今国会中にその実現を図るということになっております。そうなりますと、そろそろ総理のこの問題に対する決断を確かめる時期に来ていると思います。この段階における総理のお考えをただしたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 与野党の書記長、幹事長、皆さんの合意を得られた問題につきましては、それぞれの手続に従いまして、得られた成果については、政府としては誠実に尊重してその趣旨を生かすように努力したいと思います。
今の時短の問題あるいは連休の問題等につきましても、おっしゃるような手続はございます。そしてその手続の中でも、今国会中の実現に努める、そういう言葉であったと思います。その結果につきまして、我々としても尊重してまいりたいと思います。
-
○
吉田委員 この問題につきましては、総理も既に御賢察いただいていることと思いますけれども、極めて広範な労働者の要求であり、同時にそれは国民の願いの根底から発する問題であるというふうに私どもは認識いたしております。単にヨーロッパ並みの休みをふやしてほしいという、そういうものではなくて、もっと深い願いがこもっていると思うのです。
それは、今日の日本の社会がますます分極化し専門化いたしてまいりました。したがって、人間関係が次第に希薄になってまいります。いわば家族関係が乾いてきている状態であると思います。何とか親子そろって、時には、せめて一泊、二泊の時間をともにすることはできないだろうか、たまには友人家族の友情を確かめ合う機会を持てないだろうか、こういう国民の願いに対しまして、山口労働大臣も大いに理解と誠意を示してこられました。各労働団体も敬意と期待を高めております。それはそのまま中曽根内閣への期待となってきていると思うわけでございます。
また、私はこの機会に、この休日、連休等を広範な国民の文化活動あるいはスポーツあるいは社会的なボランティア活動に生かそうとする新しい要求があると思います。したがって、この問題こそはまさに新しい日本人としての一つの人間宣言のようにも思えるわけでございます。総理は、その辺を十分体せられまして、的確なる措置を急いでいただきたいと思う次第でございます。
次に、私は、思いやり予算と、そして自衛隊の宿舎、隊舎の問題について御質問をいたしたいと思います。
五十三年に当時の金丸
防衛庁長官が、米軍の施設の老朽していることに大変配慮されまして、思いやり予算というものをつくられたわけであります。しかし、私は言葉として余り、思いやりという言葉が好かないわけでありまして、何か恩恵的な、何か一種の自分自身の思い上がり的な意味がなければいいと思うわけでございますが……。
で、私は、この米軍の基地の宿舎や隊舎に対しましてとられた措置、それは的確なことであると思います。しかし、これに反比例するかのごとく、我が国の自衛隊の宿舎、設備等がその予算の面においても年々低下の一途をたどっております。ちなみに五十五年では六百十四億円、五十九年では三百九十三億円に下がり、そして、ことし、六十年度予算では四百四十二億円と少し上昇を見ておりますけれども、決してこの数値は、改善されて隊舎がよくなったからもうその必要がなくなってきたという意味でこのような数字になってあらわれているとは思えないわけであります。
現に自衛隊では、三十年前自衛隊が発足いたしましたときに急造した木造の住宅、ほとんど九・五坪の住宅だそうでありますけれども、それが北海道帯広や青森市など寒冷地でまだ百十数戸も残っておるという現状でございます。窓という窓は全部ビニールで目張りをしなければならない。隊員の子供が、誕生日の会を開きたいけれども友達を招くのが恥ずかしいと言って泣いたという事実も聞いております。我々は、安全保障特別
委員会などで各地を視察いたしましたときにも、早く二段ベッドから一段ベッドにかえてほしいという切なる隊員の声を聞いております。昔の軍隊ならばいざ知らず、今日がくも時代が変わった住宅事情の中で、国を守るべきこれらの集団に屈辱的な条件を強いでいいのかどうか。
国を守る任につく者は限りなく国家を愛し、そして名誉を重んずる集団でなければなりません。そういう意味からも、士気の阻喪を来さないように、いかに防衛費の枠が差し迫っておる時期とは申せ、いろいろ配慮をして、まず隊員の生活環境をもう少し人間並みのものに統一すべきではないかと思うわけでございますが、総理並びに防衛
長官の御意見を承りたいと思います。
-
○
加藤国務大臣 自衛隊の隊員の処遇それから住宅事情等につきまして大変御理解のある御質疑をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。
在日米軍の住宅事情と我が自衛隊員の事情とで若干のアンバランスが出てこないかという御指摘でございますが、在日米軍につきましては、日米安全保障体制の運用という観点から提供施設整備を行っているわけですけれども、その一環として、米側の基準を尊重しつつ在日米軍の住宅及び隊舎の整備を図っておるところでございます。
一方、自衛隊の宿舎の方でございますが、隊員の処遇の改善という観点からできるだけ努力いたしておりますけれども、厳しい財政事情のもとでぎりぎりの抑制を図ってきたということは事実でございます。
委員御指摘のとおりでございまして、先ほど御指摘ありましたビニールで目張りをしてやっと寒さをしのいでいるような住宅もございますし。ちょっとひどいところになりますと、それぞれの地域コミュニティーから、その住宅群がちょっと汚過ぎるので、地域の美観を損ねるので少し早目に直してくれぬか、ちょっと出ていってほしいみたいな発言をされたところもあったことも過去にございます。
そういう意味で、現在隊員の士気はそれによってくじけてはいないのでございますけれども、今後一層の士気の向上のためには私たち格段の努力をしなければならないのではないかな、そしてその意味で、九・五坪住宅の木造を廃止するためとか、曹クラスの二段ベッドをなくするようにするために段階的にそういうことをやろうと思って、六十年度予算で現在提出しております中で、防衛庁としてはできる限りの伸びを示されるように配慮したつもりでございますので、よろしく御配慮、御審議をお願いしたい、こう思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 御指摘のように、古い施設になりますと、自衛官、自衛隊の施設、宿舎、あるいは米軍のものもそうでありますけれども、非常に見るにたえないぐらいの老朽化しているものが多うございます。これらのものは一日も速やかに改善するように努力していきたいと思います。
-
○
吉田委員 三十年の歳月というのは一つの時代の更新を意味していると思います。特に木造住宅の場合、そして時代がまだ完全に成熟していない時代でありましただけに、この点につきましては総理初め関係閣僚の皆さん方が鋭意最善の努力をされまして、いやしくも自衛隊が地域社会から尊敬を失するような事態を今後招かないように、これは強くお願いを申し上げる次第でございます。
次に、各
委員から、各党からも触れられましたけれども、直間比率の見直しの問題。どうもその陰に増税のにおいがするではないか、衣のすそからよろいが見え、そのよろいの見え方がだんだん大きくなってきているというふうな感じを、この二十九日間で私たちはひしひしと感じた次第でございます。
まず、ちなみに、一月二十九日に衆議院の本会議の代表質問におきまして我が党の佐々木
委員長が総理に尋ねておりますことに対する御答弁では、税制はいよいよ抜本的改革の時期に到達した、増収を図るとか財政再建とかでなく、現行税制のゆがみ、不合理を解消するという考えで進めていきたいと、明確にこうおっしゃいました。
ところが、この
委員会が始まりまして、さきにも質問されました社会党の
稲葉さんが、税収をふやすことと関係はないのか、このシャウプ勧告以来のひずみを直そうとする総理のお気持ちに対してこのような質問をなさったときに、総理は、増収の目的を主としてやるのではない、増収のみの目的ではない、こうおっしゃっております。それは言外に、副次的に増収も考え目配りしないではないとおっしゃっているように察知できます。
それから、先日、三月六日、大蔵
委員会におきまして、社会党の
川崎寛治氏の質問に答えて竹下大蔵大臣は、国会決議に触れて、決議も読み方によっては、国民の理解が得られるならば、今後の税制改革の過程で導入検討をやってもいいのではないかと、仮定を置いた上のものであるとは言いながら、国民が理解してくれるならば一般消費税も一つの検討の対象になるのではないかというような表現をなさっております。仮定の論議を私たちは否定いたしませんけれども、しかし、あれほど強烈に国民が反対した一般消費税、それがなお生活の厳しい今日の現状の中で急速に国民の理解が得られるなどということは、とてもとても想像だにできないことであると思うわけでありまして、にもかかわらずなぜ大蔵大臣がこのような御答弁をなさったのか。また、その御答弁それ自身は、総理が一般消費税は断じて排除すると言い切っておられるその姿勢に背馳しないものなのかどうか。その辺を伺いたいと思います。
-
○竹下国務大臣 まず私から御答弁を申し上げます。
去る六日の大蔵
委員会におきましての私の発言が、新聞に、いわゆる一般消費税も検討対象とするような示唆をしたということで掲載された事実に基づきまして、八日、衆議院大蔵
委員会で今
吉田先生おっしゃったと同じ趣旨の御質問を各党からちょうだいをいたしました。したがって、これに対して私がお答えをいたしましたことを整理して正確に申しあげたいと思います。
確かに私が申しましたのは、昭和五十四年当時我が党の
山中税制調査会長を中心としてここで、大蔵
委員会という意味でございますが、いろいろ決議をおつくりになりましたとき私も顔を出させていただいておりました。国民の理解を得ることができなかった、よってこの手法は財政再建のためにとらないというふうに決議されたわけでございます。そのとき私は、読み方によっては国民の理解が得られたらやってもいいじゃないかという読み方にもなりますので、したがってこの辺は社会経済情勢の推移において、税制というものが、国民のニーズも変化してきますから、随分いろいろなことをお考えになって決議をおつくりになったんだなということを私自身が当時の印象を持っておりました、ということを申し上げたわけでございます。
しかしこのことは、やはり私がその後反省してみますと、いかに当時の印象を申し述べたとはいえ、当時私は大蔵大臣でございます、今日また大蔵大臣でございますので、別の場所でいつも国会決議の有権解釈は国会にあると、こう言っている私が、たとえ印象であろうと、そして五十四年のときの印象であろうと、こういう感想を述べること自体もやはり竹下登らしくない、こう思いましたので、したがってこの点につきましては質問者の了解を得て取り消したいと思うという趣旨のお答えをしましたら、それだけはっきり言えば取り消しの必要はないだろう、こういうことになったわけであります。それがいま一つでございます。したがいまして、これと、いわゆる税調論議に対して初めに増税ありきという考え方とは関係ございません。
それから、総理の御答弁も私なりに精査をいたしてみますと、ただ、いつも税論議をいたしますときには、税体系のその前にいわゆる安定した税収の確保という論理はついておりますので、したがって増とか減とかということでなく、安定した税収の確保というのは税論議をする前には必ずその前提に所在しておるという意味で御発言なさったというふうに整理をしております。
-
○中曽根
内閣総理大臣 改めて確認してはっきり申し上げたいと思いますが、我々が政治の課題として受けとめておる税制の根本的、抜本的改革は、増税、増収を目的として行うものではありません。
-
○
吉田委員 総理からも明確に答弁の原点に戻った御発言がありましたし、また、竹下大蔵大臣からいろいろと過去形で語ったけれども、この際誤解を招かない意味でも取り消したい。私は今まで大臣のお話を何回となく答弁を聞いてまいりましたけれども、きょうの答弁が一番よくわかりましたので、改めてそのことをしかと承っておきます。
次に、行政改革の問題について質問いたしたいと思います。
この行政改革というのは大変大事なことでございますけれども、非常につらい問題でございます。しかし、絶えずくどいほど言い続けやり続けてちょうどいいところに落ちつくのではないかというふうな気がしてならないわけでありまして、そういう点では、あの百国会で行政改革特別
委員会などが開かれて、かなり思い切ったメスを振るわれたように思いますけれども、それから二年たって、今日、何か行革が次第に色あせてきておるのではないだろうか。この心配が杞憂であれば結構でございますけれども。
私は、特に特殊法人等の民間法人化について若干質問をいたしたいと思います。
政府は臨調の最終答申にこたえる形で、五十九年十二月二十九日、行政改革の推進に関する閣議決定において次のような方針を明らかにしております。すなわち、特殊法人の民間法人化に当たっては、農林中央金庫、東京中小企業投資育成株式会社を初め計十二の会社や協会については速やかに民間法人化するための条件整備を図り、昭和六十年度末までに所要の法律改正を行うと決めておられるはずでございます。もちろんしかし、まだ今のところ一本の法案も出されておりません。必ずこの一年の間にこの法律改正を行うのでありますか、その辺のところを確と聞いておきたいと思います。
-
○後
藤田国務大臣 御質問の点は昨年のこの
委員会で各大臣個別に回答を求められた件でございますが、今おっしゃったように十二法人、これは六十年度末までに法改正を行う、こうなっておりますから、今、鋭意各省庁で御検討を願っております。
なお、それ以外人法人の御指定もございますから、あわせてしかるべき時期に法改正をして国会の御審議を仰ぎたい、かように考えております。
-
○
吉田委員 御承知のとおり、特殊法人はその数において九十九ございます。しかも、その職員数は八十九万人でありまして、これは自衛官を除く国家公務員より多い数になります。もちろん、この八十九万のうち三公社を除いた職員数は十五万でありますけれども、これとても大変膨大な組織であり、そして人員であると思います。この特殊法人に対して国の出資金は約十二兆円であります。補助金等は年額二兆円を超えております。財投計画額中の十七兆円を占めているということを指摘するだけでこの膨大さを知るに十分であると思います。
しかし、我が国がこれから真剣に行政改革をしていくとするならば、この特殊法人も次第にぜい肉を落としていかなければならないはずでございます。我が党は特殊法人の最低二割を整理すべきであるということを長年申し続けておるわけでございますが、政府の御決断を伺いたいと思います。
-
○後
藤田国務大臣 特殊法人は四十年代から整理に入ってだんだん減らしております。現在、たしか九十八に整理になっております。
おっしゃるように、やはり民間活力という場合には、こういった特殊法人で自立の経営のできるもの、こういったようなものは民間法人化していく、この基本方針は決まっております。それと同時に、やはり特殊法人それ自身の経営能率を上げる、つまり民間企業のやり方を取り入れて活性化していく、こういうことは必要だろうと思いますので、そういう線に沿って、整理すべきものは整理をするし活性化すべきものは活性化していく、こういう方針でやっていきたい、かように考えております。
-
○
吉田委員 おっしゃることはわかりますけれども、この種のことは、かなり強力に政府自身が指導して一定の目標を定めてやりませんと、なかなかに自発的にはできにくいことだと思います。
そこで、これらの組織を民間法人化するためには、国またはこれに準ずるものの出資が制度上も実態上もないこと、役員の選任が自主的に行われること、事業の経常的運営に関する経費が、その事業による収入で賄われ、国などからの補助金等に依存はしないことなどの原則が確認されておりますけれども、このとおりの改正案を出されようとするのかどうか、くどいようでございますが、お聞きします。
-
○後
藤田国務大臣 第五次の答申で、今お読みになったような三つのタイフ、そして三番目のタイプについては三つの原則、これをお示しになっておりますから、この第二臨調の答申の趣旨に沿って、政府としてはこれを尊重してやっていきたい、かように考えております。
-
○
吉田委員 次に、近年、民間活力の導入ということに藉口いたしまして、公益法人の設立や運営に関して民間企業からの資金集めがしきりに行われているものもあります。民間企業も負担がかなり増大しておる事例が各所に見られるわけでございます。政府は、このような傾向をどうごらんになっておりますか。
-
○後
藤田国務大臣 御質問は、公益法人の御質問だと思いますがこれはだんだんふえまして、今、国、地方が合わせて二万弱になっております。大変なふえ方でございます。
そこで、これはやはり公益目的が果たしてうまく達成できておるのかどうかという観点で、これはそれぞれの行政庁が許可をしておりますから、許可の申請の審査の際に十分見てもらわなければならぬ、こう思います。そして同時に、その運営についても十分なる指導監督をしていただきたい。
私は、本当は数は問題ではないのじゃないか、こう思っているのですよ。問題は、公益法人がその設立の目的に従ってうまく運営せられておるのかどうか。これが余り活動していない、休眠なんかになりますと、これも問題にならない。これはかつて民法を改正して整理したと思いますけれども。だから、そういう見直しは必要だと思いますけれども、やはりこれが本当に活動しているのかどうか。それから同時に、こういったものに国が補助金を出したり、あるいは業務委託しておりますから、勢い役人の天下りというものがございますから、ここらのよくないところはこれは是正をする。しかし、民間活力というのは、公共の仕事に、民間自身の力があるわけですから、こういう面にもどんどん出てきてもらった方がいいのじゃないか、こういう意見もございますから、そこらを兼ね合わせてそれぞれの監督官庁でよく指導をしていくべきものであろう、かように考えます。
-
○
吉田委員 今、
長官は、数は問題でないとおっしゃいました。しかし私は、これが全然政府と無関係で政府の指導監督の外にあるものであるならば、どんなに数があったってそれは問題ではありませんけれども、一万九千と私どもは知っておりますけれども、あるいは
長官おっしゃるとおり二万を超えているかもしれません。しかし、この傾向はほうっておけばだんだんふえると思うのです。二万になり二万になるということは、行政のコントロール能力を超えるのではないかというふうな懸念があります。しかも各役所がそれぞれ認可しておる。したがって、指導監督も勢いばらばらになります。私は、こういう公益法人の総合調整官庁というものをそろそろ定める時期に来ているのではないかというふうに思うわけでございます。税制の恩恵も受けておりますし、あるいは補助金ももらっておりますし、今、
長官みずからがおっしゃいましたとおり、多数の役人の天下りが行われているわけでございます。これはほうっておけば当然ますます役人の老後の安住の地となる、そういう一面のニーズを持っておると思うわけでございまして、行政改革の面から見れば看過できない問題であると思うわけでございます。
この辺につきまして、何かそういう改めて統括的な総合的な調整を行う官庁を定めようとお考えにならないか、この際、総理のお考え方を承りたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 内閣及び総理大臣の調整機能につきましては、前の行革の時代からいろいろな御論議がありまして、答申等もございますが、今回におきましても、行革審におきまして調整機能について最後の詰めを今やっておりまして、その答申を見守ってまいりたいと思っております。
-
○
吉田委員 次に、建設大臣にお伺いいたします。
昭和五十九年五月に建設省の許可で設立された不動産適正取引推進機構の果たす役割について説明されたい。
理事長、専務
理事は建設省のOBであり、民間企業からの出資と社員の出向で事業のほとんどが行われているのではないかというふうに私どもは思います。また、不動産取引をめぐるトラブルが多発いたしておりまして、これも全国で三万件余あるようでありますけれども、それぞれ専門の弁護士などが対応してできることも多分にあるわけでございまして、あえてこういう機構をつくらなければならないのか、その辺の御説明をお願いいたします。
-
○木部国務大臣 不動産適正取引推進機構の御質問でございますが、先生も御承知のとおり、昭和五十五年に宅地建物の取引業法の改正がありましたが、その際に国会の附帯決議があるわけでございます。
今、先生、三万件とおっしゃいましたが、各都道府県に大体一年間に二万件ぐらいの紛争とか苦情とかそういうようなものがあるわけでございまして、私どもはいかにして国民の立場に立ってそういう紛争の解決や苦情の処理というものをしなければならないか、そういう意味で五十九年に御承知のとおりこの機構が発足いたしたわけであります。
したがって、紛争の事前の調査であるとかいうようなことで業務を進めてきたわけでございますが、ことしの三月ぐらいから具体的な紛争解決のための体制を整備して負託にこたえていこう、そういう考え方で今進んでおるわけでございます。
-
○
吉田委員 林野庁長官、お見えでございますか。――五十九年八月に退職した林野庁の前橋営林局の今市営林署長が、在職中の三カ年間に計約四億五千五百万円の工事を発注した地元大手の土木建設会社に幹部として天下った事実と経過について御説明をいただきたいと思います。
-
○
田中(恒)政府
委員 お答えします。
元前橋営林局今市営林署長が昨年の八月一日に退職をしたわけでございますが、その後、国家公務員法第百三条の承認を得ないままに、五十九年、昨年の十月から、問題となっておりました企業の顧問として就職をいたしまして同社の営業に従事いたしましたことは事実でございまして、これは国家公務員法第百三条の規定に違反しているところでございます。このことはまことに遺憾に存ずる次第でございます。
その後の経過を申し上げますと、本件につきましてはこの二月の十六日に事実関係を承知をいたしまして、直ちに前橋営林局を通じまして指導をいたしたわけでございます。その結果、二日後の二月十八日に本人に同社を退職させまして、現在、十分反省いたしますとともに、二度とこのようなことを繰り返さないということを誓って謹慎をしておるというふうな次第でございます。まことに遺憾に存ずる次第でございます。
-
○
吉田委員 御本人が大変反省、謹慎しておられるようでございますけれども、問題はそのことよりも、このことがなぜ許されたのか、そのとき所管庁の長である
林野庁長官は、この人をそこへ天下りさせることについて人事院に承認の申請を行ったのかどうか、行わなかったとするならば極めて怠慢でありますし、業者との関係を知らなかったというのならば、役所はそれほどいいかげんなものかと言われますし、知りながら目をつぶっていたとするならば
長官も同罪だと思います。
この種の例がほかにもないかどうか、今後あったらどうするか、また、人事院の対応もいろいろ注意してもらわなければなりませんけれども、この種の民間企業への天下りについて改めて閣議決定でいろいろとその措置を検討されるべきではないかというふうに思うわけでございますが、この点、総理がどなたかからお答えいただければありがたいと思います。
-
○
田中(恒)政府
委員 前段の事実関係のことにつきましてお答えを申し上げたいと思います。
本人の問題の企業への就職につきましては、営林署長の退職後の営利企業への就職につきましては、人事院規則によりまして
林野庁長官に委任されておりますので、この件につきましては、前橋営林局を通じまして内々ここへの就職の可否についての照会がございましたが、在職中の関連も深いということから、これはするべきでないということを伝えたわけでございますが、その辺につきまして、本人への周知等が徹底しなかったために徹底を欠いたということでございます。この点は私どもまことに反省をいたしておるところでございます。
-
○
吉田委員 まあお聞きのとおり、いろいろ弁解はなさっておりますけれども、これは人間の情において、本人が行きたいのかあるいはお世話になったというので会社の方から迎える要素もあると思うのです。いろいろ生活のことを考えれば、仲間としてそっと目をつぶってやろうというような気持ちもわからないではありませんけれども、それでは示しがつかない。それでは何のために法律をつくったのかわからない。この辺のところを総理、よく御指導をいただかなければならないと思うのでございますが……。
-
○中曽根
内閣総理大臣 示しをつけることは本当に大事であると思いまして、ますます綱紀を刷新してまいりたいと思います。
-
○
吉田委員 時間が迫ってまいりましたので、民間活力の点を省略いたしまして、住宅減税の問題について申し上げたいと思います。
実はこの住宅減税につきましても、野党の修正要求の中で篤と申し上げた点でございますけれども、現段階では残念ながら受け入れられませんでした。
しかし、最近国民は何としても高いローンの支払いに明け暮れておる、生活費の二〇%、三〇%がローンの支払いの経費になっておる。住宅ローンにあえぐというような記事が随所に見られますけれども、まさにそのとおりだと思います。そこで、この若い世代の人たちに、しかし努力をすれば住宅が手に入る、こういう環境づくりを政治がしなければなりません。そのためには、いろいろ私どもが提案いたしましたけれども、今後アメリカの例に倣って、住宅ローンの利息分を所得控除する方式で住宅取得に際しての優遇制度の創設を検討する意思はないかどうか。今後の問題としてお聞きいたしたいと思います。
-
○竹下国務大臣 これは税制の問題からの御質問でございますが、いわゆる住宅対策の点から設けられた措置として、今日まで住宅ローン償還金の一定割合を三年間にわたって税額控除する住宅取得控除制度というものがございます。その中身は省略をいたします。現在いろいろ議論されておりますが、厳しい財政事情のもとで最大限の配慮をしたものであるから、今これ以上の措置を講じていくということは非常に困難であるというのが今までいろいろ議論されてきたところの中身であります。
ただ、私の方からお話し申し上げます以前に、あるいは住宅政策からの議論の点もあろうかと思いますが、それらにつきましては今後の検討の対象とさせていただきます。
-
○
吉田委員 次に、森林を守る問題、あるいは林業を育成する問題、この問題につきまして私からも重ねて申し上げたいと思います。
この国会の予算
委員会の審議の一つの特徴は、各党が何回となくこの森林を守れという問題に触れられたことであろうと思います。それは一つの静かなるうねりのような感じがいたします。
労働団体は緑と太陽の週を求めております。また、自民党の方では花と緑の運動を展開なさっております。しかし、もっと基本的に、自然の一番大宗を占める山林をどう守っていくべきであるか、この点を日本人自身が改めて見直そうとしているのではないか。いかに日本人が自然を愛しているか、自然との調和の中で日本人は生きてきた、そういうことが再確認されようとしていると思います。高度工業社会になっても、だからといって外需で日本の経済を支え、そして農産物や資源を外国からただ買えばいいんだというようなことではないということを私たちは知り始めてきていると思うわけであります。
いろいろ述べられましたとおり、間伐が行われなければならない大事な時期に、間伐を行う運搬賃も出ないというような現状では山は守られるはずはありません。「国破れて山河あり」と申しますけれども、国破れて山河もなくなる状態にあるいはなるのではないか。したがって、この種の要求に対しまして、農林水産省や林野庁の方では懸命の努力を全く同じように続けていらっしゃるようでございますけれども、いろいろな方面から聞いてまいりますと、結局大蔵大臣が渋くてどうにもならぬ、このことは
農林水産大臣に言うよりも大蔵大臣に言ってくれというのが業界や国民の声のようでございます。
同時に、私は総理に申し上げたいのでございますが、山林を守りながら、同時に国民の健康を保全するために、最近森林浴なども大変多くの人たちの中に広がってきております。あるいは山や森林をレジャーやレクリエーションの場にすること、あるいはある種の新しい観光開発として展開していくこと、あるいは都会に住む労働者が休日や連休の中で山に入って、一つのボランティア活動として山のいろいろな手入れなどにも協力できる面では協力すること、そういう国民的な展開の中で山を真剣に守っていく努力がこれからなされなければならないのではないかというふうに思うわけでございますが、これは大蔵大臣と総理大臣の御答弁をお伺いいたしたいと思います。
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○竹下国務大臣 私も森林県出身でございます。いろいろ国有林サイドあるいは民有林サイド、それぞれの予算要求がございますし、最近は、今
吉田さんがおっしゃいましたように、森林の中にある種のロマンを求めたような政策もこの予算要求で出てまいります。その典型的なものが触れ合いの森ではなかったか、これは五十九年度予算でございますけれども、随分の競争があった上でそれが消化されたようなことを聞いておりまして、大変いいことだと思っております。これからもそういうロマンを求めていきたいと思っております。
-
○中曽根
内閣総理大臣 森林政策は重要視して推進してまいります。
-
○
吉田委員 ありがとうございました。
次に、外務大臣にお尋ねいたします。
ODA五カ年倍増計画は今年度をもって終了いたしますけれども、新たなる計画が当然つくられるだろうと思います。私どももこの計画に大変注目を寄せておるわけでございますけれども、現段階における外務大臣のお考えをお示しいただきたいと思います。
-
○
安倍国務大臣 ODAにつきましては、六十年度もおかげさまで一〇%という予算を伸ばしていただきました。大体予算としては倍増を達成いたしたわけでございますが、実質的にはこれから努力をしていかなければならぬと思います。
我が国の貿易の黒字等が非常にふえている中でいろいろと国際的な批判も出ておりますが、そういう中で、これは日本の国際的な貢献ということで高く評価をされております。特にアフリカ等のああした問題が起こるたびに、日本の貢献というものは非常に大きな意味を持つわけであります。私は、財政が非常に厳しいわけでございますが、こうした国際的な非常な評価をいただいておるし、また日本の国際的な責任でもあるので、やはり開発途上国に対するODAは確実に伸ばしていかなければならない、こういうふうに思っております。
目標を一応達成したわけでございますが、今回、四月にOECDの閣僚
理事会もありまして、日本がどうするかということを注目をしております。私としましては、大体その辺までに何とか関係各省と相談をいたしまして、これからの一つの目標といったようなものを打ち出せないかということで、今検討を進めておる段階であります。
-
○
吉田委員 最後に、
河本特命相あるいは経企庁
長官、その辺からお答えをいただければと思うわけでございますが、今度の修正問題でも、いろいろ減税と景気浮揚の問題が論議されました。そこで、増税とデフレ効果の関連について簡単にお答えをいただきたいと思うのです。
一兆円の個人増税と一兆円の間接税増税が実施された場合に、六十年度ベースでどのようなデフレ効果が起こるであろうかということでございます。
-
○金子国務大臣 大変難しい問題でございまして、個人増税、所得税の増税一兆円と間接税の増税一兆円、中身をどういうものにするかというようなことにつきましては、減税の場合は研究所のシミュレーションの結果が出ておりますけれども、こういうテストを、幾つかの前提を置かなければいかぬものですから仮定計算としてなかなかやりにくいということで、まだやった例もございませんし、間接税ならどうだ、直接税ならどうだというのは、これはちょっと簡単に、こうでございますと自信を持って言えるような研究をやったことはまだございません。
-
○
吉田委員 減税を私どもは要求いたしまして、減税をした場合に、あるいは公共投資を広げた場合に景気はこのように浮揚しますよということをいろいろ検討し、また要求しているわけでございます。逆に政府は、今後増税をするとするならば、私どもが恐れておりますデフレ効果、それはこのような形で起こるとか、これ以上は起こらないとか、その辺をやはりそろそろ精密な数字を検討して用意されないといかぬと思うわけでありまして、盾の両面でありまして、その辺のことを特に申し上げて、時間が参りましたので、私の質問を終わらしていただきます。
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-
○
佐藤(祐)
委員 最初に、総理に核の問題でお聞きをしたいと思います。
総理は、核廃絶について「新しい保守の論理」でいろいろ書いておるということをよくおっしゃいます。改めて読ましていただきました。この中で、核廃絶あるいは軍縮について述べられました後、いかにして戦争を抑止し回避するか、それが最優先の課題である、そうしまして、米ソ交渉に触れながら二つの方策を挙げておられます。一つは「B47の焼却、核弾頭破棄、」そういった削減的な方法である。もう一つ、「相手の攻撃を誘発しにくくする積極的な方法」ということで、「核実験禁止、第一撃禁止、ABMの配備限定」などなどを挙げられまして、「われわれもまた、それを促進するようできるだけの努力をしなければならない。」こうおっしゃっておられるわけであります。
第一撃の禁止といいますのは、つまり先制使用の禁止ということであります。ところが総理は二月十九日の本
委員会での
岡崎委員に対します答弁で、日本有事という想定に立って、自衛艦と共同行動中の米艦船、これが核兵器を使うということまで日本側が排除する立場にはない、こうおっしゃった。これは明らかに核兵器先制使用の容認だと思うわけであります。核兵器が二度と使われてはならないというのはもちろん日本国民の悲願であります。これを真っ向から踏みにじる、そういうことで非常に不安が広がっております。しかも、総理がここで書いておられる第一撃の禁止、これともまるで違っておる。
そこで、お聞きしたいわけでありますが、この「新しい保守の論理」で述べられた立場、これはもうおやめになったのか、変えられたのかどうか、その点をお聞きしたい。
-
○中曽根
内閣総理大臣 我々はあくまでも平和と軍縮を追求し、核兵器を地上から追放するということについて今後も積極的に努力していきたいと思っております。
それから、今御指摘になりました「新しい保守の論理」のそのところは、軍縮というのはこういうふうに具体的に両方で行われていき、また将来もそういう方向で進めらるべきであるという例示てたしか出している部分である、戦争防止のための例示の努力としてそれを出している部分であると私は記憶しております。
いずれにせよ、抑止力と均衡の理論によって戦争の誘発を防いでいるということは前から申し上げたとおりであり、それは十分検証を伴った、安心のできる措置を伴っているのでなければ政治の課題としては非常に力の弱いものになる、これも前から申し上げているとおりであります。そういう保証を伴った安心のできる体制をともに一緒につけてこなければだめなことであるというふうに申し上げる次第であります。
先般来の発言につきましては、日本が侵略されて、あるいは本土に敵が侵略してくるとか、あるいは日本の領域、領空、領海等においてこれが侵されている、そういうような状態を想定した場合の限定した発言である、そういうふうにお考え願いたいと思います。
-
○
佐藤(祐)
委員 抑止と均衡、よくおっしゃいます。また、検証の問題。検証の問題で一言申し上げておきますと、これは私、目新しい問題ではない、当然のことだというふうに考えております。事実、これまでの戦後の軍縮交渉史を見ましても検証は常にありまして、ABM条約など、検証条項も入っておるわけです。むしろ問題は、一国の総理としては検証の問題、そういう技術的な問題といいますよりは、ことしは被爆四十周年である、核兵器の廃絶の世界的な合意をかち取っていく、そういう方向でこそ本当に努力をされるべきだ、こう思うわけであります。検証の問題などは、いろいろな専門家がおられます。そこで十分やるようにということでこれはいいんじゃないかと思うわけであります。今のお答えでありますが、問題は、抑止と均衡の一般論ではございません。先日の答弁は、具体的な想定に基づいて、そういう場合には核使用を排除しないんだということであります。ですから、これは大問題だと思います。
で、八二年の二月二日、やはり当
委員会での
鈴木前総理の答弁でございます。我が党の不破
委員長に対する答弁でありますが、
鈴木前総理はこういうふうにお答えになっておられます。「一たび核を使うということになりますれば、これは人類の破滅につながるような惨禍をもたらすわけでございまして、私は絶対に核兵器を使用するというようなことがあってはならない、こう思います。」こうおっしゃっておられる。この絶対に核兵器が使われるようなことがあってはならないということと、総理が先日おっしゃったアメリカが核を使うと言うなら排除できない、これは明らかに違う。百八十度違う。私はそう思うわけであります。あなたはこの点で日本政府の方針を転換する、そういうことであるのかどうか、再度お答えをいただきたい。
-
○中曽根
内閣総理大臣 別に転換ではありません。日米安保条約の取り決め、それから日本の防衛の基本方針等々にのっとったその線上の発言であります。別に新しいことではない。すなわち、それはまず第一に、日本が侵略されているという状態のもとにおいて、しかも公海上における問題であって、しかも外国の軍隊が行おうとしていることであって、日本の自衛隊が核を使うという話でもなければ、日本の領域、領空、領海の内部において米軍がやろうとする話でもない。そういう前提で、当然これは安保条約や我が国の自衛権、あらゆる問題を考えてみて、個別的自衛権をもって行っておる我が国の防衛上からは、それは私の発言が認められると考えておるのであります。
〔大西
委員長代理退席、
委員長着席〕
-
○
佐藤(祐)
委員 総理は本当に被爆国の日本、非核三原則、そういうことを一体どう考えておられるのか。核兵器が二度と世界で使われるようなことがあってはならない。これは一番大事なことなんですよ。第一撃、核兵器が一たん使われれば、それは核戦争であります。それが世界核戦争に拡大しないとは限らない。そういうことがないと断言できますか、総理。いろいろなことをおっしゃったが、問題は、使うか使わないか、先制使用かどうか、これは最大のポイントなんであります。
言葉をかえて言えば、じゃあなたは、広島、長崎、昨年、一昨年も行かれておりますが、そういう場でもし尋ねられたら、今後何かありましたらアメリカの核兵器が守ってくれます、どうぞ御安心ください、そういうふうに言われるのですか。本質的にはそういうことなんです。これまでと変わってないということは断じて言えません、それは。本当に被爆国日本の立場に立つなら、外国が使うからいいんだというようなことではなくて、アメリカに対してもソ連に対しても、核兵器を使用するな、そういうことを強く要求していく、それでこそ私は総理だ、それが被爆国日本の総理の責務だ、そう思います。もう一度お願いします。
-
○中曽根
内閣総理大臣 安保条約及び我が国の防衛方針等の今までの文脈等を考えてみれば、個別的自衛権の範囲内で私が申し上げたその答弁は間違いではありません。間違いだと言う方が間違いであります。
第二番目に、核兵器につきましてはその宣言をしても力がないものなのであります。演説あるいは宣言というようなものは、それはそれなりの影響はあるいはあるかもしれませんが、現実の政治の場合にはそれは力のないものであって、やはり科学的な、そして検証の伴うお互いが安心できる措置を講じておかなければ実効性はないものである、そういうことを申し上げたいのであります。
-
○
佐藤(祐)
委員 とんでもない発言であります。核兵器をなくす、平和を守る、この前提がやはりしっかりしてないと私は言わざるを得ないのです。検証をまた再度持ち出されておりますけれども、まず合意が必要なんです。廃絶していこう、その上に立って検証条項も当然協定では決められるでしょう。それを最初に検証は難しい難しいというようなことを言って妨害するというようなことであってはならぬわけであります。まずはっきりとその立場に立って政策を進めるということでなきゃならぬということを強く指摘をしたいと思います。
で、総理の核問題に対する政治姿勢についてもう一つの面からお伺いをしたいと思います。
それは被爆者の問題であります。核兵器の全面禁止というのも、ああいう惨禍を二度と起こしてはいけないということであります。つまり、核兵器廃絶の原点であります。この被爆者に対してどういう対策をとるか、その熱意がまさに問われていると思います。総理は、参議院での我が党の立木議員の質問に対しまして、被爆者対策については「今後も誠意を持って努力していくつもりでございます。」こういうようにお答えになっておられます。どういうように努力をされるのか、お聞きしたいと思います。
-
○中曽根
内閣総理大臣 今まで申し上げたとおり、主として厚生省をしていろいろな面で努力させたいと思っております。
-
○
佐藤(祐)
委員 ちょうど今被爆者の方、日本被団協の方が全国行脚をしておられます。非常に切実な要求を掲げておられます。被爆当時二十だった青年もことしは還暦です。で、早く被爆者援護法が制定されなければ、早く償ってもらわなければ我々の命の方が先になくなる、そう訴えておられます。総理は、ことし被爆四十周年の冒頭の施政方針演説で、被爆四十周年のことも被爆者のことも全く触れなかった。私は本当に遺憾に思った。被爆者のことをもっと真剣に考えるべきです。被爆者の声にもっと真剣に耳を傾けるべきであります。
もう一つ被爆者の方の強い要望は、戦後四十年たってまだ一番基本であります死没者が明らかになっていない。死没者の数が明らかになっていないという問題です。これは、歴代の政府が力を入れてこなかった、その結果こうなっておるのです。ようやくことし厚生省が十年ぶりに被爆者調査というのを行うわけでありますが、日本被団協などの要求を受けて死没者調査をどう組めるか、検討を始めたと聞いております。これはどう進めようとしておられるのか、厚生大臣。
-
○増岡国務大臣 死没者の調査につきましては、従来から技術的に非常に困難であるということが言われでおるわけでございます。しかし、四十年ということにかんがみまして、今度の調査におきましてはできるだけ広範な調査をしてもらいたい、そういう意味合いから、今回の調査
委員会で可能な限りの御検討をしていただきたいということで現在検討していただいておる最中でございます。
-
○
佐藤(祐)
委員 厚生省では、広島市と長崎が被爆者調査、死没者を含めてやっておりまして、それに国の予算で補助を出しているということでありますが、六十年度の予算案では幾らになっておりましょうか。
-
○大池政府
委員 国は、昭和五十四年度以来、この調査に要する費用の二分の一を補助しておりまして、六十年度の予算案におきましても、このための経費として二百三十八万円余を計上しているところでございます。
-
○
佐藤(祐)
委員 二百三十八万円、一人分の人件費にも満たない。これだけの補助しかしていない。この問題でも、実態は非常に、誠意を持ってというのはとんでもない、そう言わざるを得ないわけであります。
もう一つ、総理は昨年八月、広島の平和祈念式典で、広島の悲惨な体験を全人類の未来への警鐘として広く世界に訴える、こういうことを言われました。この点も極めて不十分になっております。外務省に確かめましたところ、国際的に訴える手段としては、例えば国連本部の展示であるとか、あるいは在外公館に被爆の貸し出しフィルム、こういうものを置いてあるということでありました。さらに確かめますと、百六十六ある在外公館のうち、フィルムが置いてあるのはわずか十カ所なのです。英語版だけしかない。そういう状態です。また、外国から被爆の事情を知りたいと来られた方に、日本政府として、これが被爆の実相ですといって手渡せるまとまった出版物もない。これが実情なのです。総理、こういう状態は抜本的に変えていただきたいと私は思います。そして、ことしこそ核兵器廃絶のために、被爆の実相を世界に訴える大きなキャンペーンを日本政府としてやるべきではありませんか。そういう具体的な計画はありますか、どうですか、お答えいただきたい。全体の問題ですから、総理。
-
○増岡国務大臣 先ほど調査費のことに言及なさいましたけれども、先ほど申し上げましたのは市町村が単独でやっておる分であります。今回私どもがやります予算は八千百五十万円でございます。
なお、今のお尋ねでございますけれども、広島にございます資料館のことは御存じだろうと思います。そういうものが国連その他にいろいろ資料として展示をされましたり、各種団体の力によってそういうことが行われていることはよく承知いたしておりますから、これからもあらゆる方法を通じてその実態はお伝えをいたしたいと思います。
-
○
佐藤(祐)
委員 つまり、具体的なキャンペーンの計画はない、こういうことですね。
それから、今調査の八千百万円ということをおっしゃいましたが、これは四十年、五十年とやってきました。それは現存する、被爆者手帳を持っておられる方の調査で、死没者調査ではないのです。その延長上の予算にしかすぎないのです。ですから、今問題の死没者調査とはこれは関係ございません。
次に、被爆の実相を明らかにする、こういう問題でもう一つ新しい問題がございます。これについてお尋ねをしてまいりたい。
それは、あの原爆が投下されましたときの全体の放射線量ですね。これが、あれだけの大被害をもたらしたのでありますが、いまだに定かになっていない、こういう問題があります。この放射線量が確定するということは、放射線量と人体への影響の関係、こういうことが明らかにできるわけです。そういう意味で、被爆の実相を解明する上で非常に大事なわけであります。同時にこの問題は、今がんの治療などでも放射線医療というのが行われております。あるいは原子力発電所、そういうところでも放射線を扱っている。そういう放射線を扱うすべての活動にこれはかかわってくる、そういう問題なのです。
実は、来週の火曜日、十二日から三日間、ロサンゼルスで広島、長崎に投下された原爆の放射線量の再評価に関する第三回日米合同ワークショップというのが開かれます。
委員長、ここで資料をお願いいたします。
このワークショップには、日本からは田島原子力安全
委員会
委員長代理を団長に、九名の研究者の方が参加されると聞いております。そして、なぜ今ごろ放射線量の見直しが行われるようになったか、詳細は省きますが、アメリカが線量確定の必要に迫られまして、一九五六年から「ICHIBAN」という名前のプロジェクトチームをつくって研究を始めたわけです。これは極秘のうちに進められたということであります。このあたりはNHKの報道でも一部ございました。そして、十年後の一九六五年にその結果が発表されました。T65Dというわけですが、一九六五年暫定放射線量と言われております。暫定とは名がついておりますけれども、非常に権威のあるものとしてこれが日本の被爆者にも適用されたわけです。つまり、あなたの場合は爆心から一・五キロだからこれだけの放射線量を浴びたことになりますよ、二キロの場合はこうというふうにですね。また、国際的に国際放射線防護
委員会というのがあります。ここは原子炉などの放射線防護基準、安全基準と言ってもいいかもわかりません、そういうものを決めまして、各国に勧告する、そういう機関なのです。その機関の基礎資料にこのT65Dというのが使われているわけです。つまり、現在全世界がその基準を目安にして放射線を扱っている。
ところが、そのT65Dという数値、これは間違っているという指摘が一九七八年にアメリカの学者から提起されました。間違っていれば、これは非常に人ごとなわけであります。そういうわけで、その間の経過もあるのですが、省略しまして、一九八三年、おととしから日米合同での研究と見直しの作業、それが進められております。そして、この十二日から三回目の合同会議が開かれる、こういう運びになっているわけであります。
厚生省さん、経過の大筋は、こういうことで間違いございませんね。
-
○大池政府
委員 ただいまお話しになりましたことは、私どもの承知していることと大筋で一致しております。
-
○
佐藤(祐)
委員 さて、これからが総理への御質問です。
この研究ですね、これは今申し上げましたように非常に大事な研究であります。これはぜひ成功させなければならぬと思っているわけであります。日本の科学者は、実は被爆の直後からそういう問題意識を持って仁科博士などが現地に入られたわけです。ところが、あの戦後の経過の中で米軍が日本人科学者の研究を抑える、あるいは資料を没収するというふうなこともありました。そのために長い空白ができてしまったわけです。現在、日本の科学者はどういう研究の進め方をなさっているかといいますと、被爆地に残っております石とかかわら、こういうものにある残留放射能、これを調べて、被爆当時の放射線量を逆算して出していく、そういうことをやっておられます。これは非常に苦労も多いと聞いております。そこで総理、この日本人科学者の研究が十分進められるように万全の措置をとっていただきたい、これが第一点であります。
その際、一つの大きな問題がございます。それは、日米合同ワークショップということでやられておりますが、日米の研究が対等になっていないということなのです。アメリカ側は、原爆そのもののデータを含みまして、放射能に関するさまざまな実験データ、そういうものを持って、さらに、日本側のデータはほとんど向こうが取って、データの提供を受けて、そして研究を進めておるわけです。ところが、日本の側にはアメリカ側の資料がなかなか提供されない、こういう状況があります。一部提供されているものもあるということでありますが、提供されていないものが多いわけであります。そのために日本人科学者が、アメリカ側が発表してきますいろいろな数値、これを、総理、それこそ検証のしようもない、計算結果だけが知らされて、計算経過だとかコンピューターに入れるコードなども知らされない。そういうことから検証のしようもない、そういう状態が起きているわけです。日米で研究を進める、それで合同会議を開いていく、そういうふうに進めているわけですから、肝心なデータが提供されないというのは非常に不都合だと私は思うわけであります。
そこで、総理に、日本の科学者の研究が十分進むように、アメリカに対して、原爆や放射線に関する必要なデータ、これを提供するようにぜひ要望してもらいたい。
この二点についてまずお伺いをしたい。
-
○増岡国務大臣 これはもともと日米対等な立場で研究をしようということでございますので、研究者同士が常時密接な連絡をとりながら、協議の場面も日本あるいは米国というふうなことでやっておるわけでございます。線量再評価に対する必要な資料の提供はもちろん、先ほど申し上げましたような緊密な連携のもとに行われておると考えておるところでございます。
-
○
佐藤(祐)
委員 私は、大臣の認識が全然現状に合ってないということを率直に言わなければなりません。私も何人かの科学者の方にも実際にお会いもしました。聞いたのです。アメリカの資料が全面的に対等に出てきているなんと言えますか。
大体、戦後の経過で言えば、広島のABCCが本当に日本人を、被爆者を強引に検査したのですよ。モルモット扱いするなと非常に怒りが噴き上がった、そういうこともある。とにかく日本にある資料は一切持っていく。そのうちかなりのものは返されてきております。しかし、今問題になっている放射線量の見直し、これは新しい実験データその他いろいろあるわけです。特に言うならば、一番の一つの大きなポイントは原爆そのものの構造、これが問題なんです。広島原爆というのはリトルボーイと、こう言われます。あれは、ウランを使ったああいうタイプの原爆としてはただ一つなわけです。それ以降は皆プルトニウムになっている。そういうわけで、広島型原爆についてはもうそういう意味では古くなった原爆だというふうにも言われておるわけですが、この仕組みによって放射線の散らばり方が違うわけですね。そういった資料はアメリカしか持っていないのです。それをもとにしたいろんな計算の仕方だとか、そういうものも日本人科学者には提供されていないのが事実なんです。そういういいかげんな答弁では私は全く困ると思う。
で、私は、国民的な感情から言えば、日本人にあれだけの被害をもたらしたわけでありますから、アメリカ政府にはそういうあの被爆の実相を解明するような資料の提供、これは私は義務があると思う、日本国民には要求できる権利があると思う。しかも、放射線量の確定は、冒頭に申し上げましたように被爆の実相を明らかにするというだけではなくて、医療とか原子炉、そういうこれから人類がいろいろ放射線を扱っていく、そういう上で今度の線量見直しが直接影響するわけです。間違った数字のままでやったら大変なことになるということで、今科学者の方が一生懸命やっておられるわけですから、そういう大きな問題でありますから、私はぜひ総理にそういう大きな立場でアメリカに要望を出していただきたい、そういうことを重ねて総理にお答えを求めます。
-
○増岡国務大臣 私としては必要な資料を全部いただいておるつもりでございますけれども、なおその要があれば、私から先方の当事者に尋ねてみたいと思います。
-
○
佐藤(祐)
委員 厚生大臣のああいう認識とお答えでは、私は納得できないと思います。総理大臣、どうなんですか。この問題をどう考えますか、大体そういう状態にあること自体。本当に被爆の実相を解明するということは必要なわけです。これから二度とそういう災害を起こさないという意味でも、放射線量と人体への影響とか、そういうものの解明はもう絶対に必要なわけですね。そのために重大な資料の欠損があるわけです、日本人科学者にとっては。もちろん、日本人科学者の方は、私、聞いておりますところでは、アメリカがスーパーコンピューターを使おうと何しようと、日本人の科学者は被爆地のかわら、石、そういうものの分析をもとに被曝線量総量をはじき出してみせる、そういうプライドを持っておられます。しかし、これは何しろ四十年もたっておりますから、放射線量、残留放射能を調べますにしてもいろいろな困難は当然あるわけです。
ですから、アメリカ側が持っておる資料、これを日本人科学者も使えることによって、日本側で自主的に総合的な判断が出せるわけです。厚生大臣、そういう性質のものじゃありませんか。その点、どう思っておられますか。
-
○増岡国務大臣 当時の資料につきましては、広島にございます放影研がかなりのものを持っておるわけでございますから、放影研に保存されてありますものは現在日米共同で管理、研究を行っておるわけでございまして、当時の必要な資料は全部そこで見れるものと思っておる。私自身も放影研に何度も参りました。で、そのことを確認いたしております。
-
○
佐藤(祐)
委員 大臣は広島の御出身だし、被爆者問題、関心がお強いというふうに聞いておりましたのですが、甚だ残念であります。かつてのABCC、今の放影研、この資料が共同で使われているというようなことはもう天下周知のことなんです。そうじゃなくて、いろいろそれ以後、例えばT65Dをはじき出す場合のアメリカのやり方でありますけれども、ネバダの核実験場に日本の家屋をそっくり持っていって、向こうで何月か組み立てて実験する、そういうことで放射線の量を測定するというような研究をやっているわけですよ。そういう資料、そういうことを繰り返し繰り返しやっているわけです。その中には日本人科学者にとっても必要な、提供されれば有益なものがあるわけです。そういう点、もっと本当に真剣に考えてもらいたい。総理はそういう点、どうしても御見解を言われませんか。
-
○増岡国務大臣 そのような事実の中身については、私の方から改めて真実であるかどうか、問い合わせをしてみたいと思います。
-
○
佐藤(祐)
委員 総理がどうしても立たないようですから、じゃ厚生大臣に確認をしたいと思います。
そういう提供されていない大事な資料、私はあると言うわけですが、あれば提供を要請すると、そういうお約束をいただきたい。
-
○増岡国務大臣 ただいままでのところは、日米両研究者の間で共同にやっておりまして、日本側からそういう資料が手に入らないということは報告は受けておりませんので、なお念のためその点を確かめて検討したいと思います。
-
○
佐藤(祐)
委員 どうも答えになりませんね。やむを得ません。もう時間が迫ってまいりました。
最後に、ことしは国際青年年である、国際青年年に関連してお尋ねをしたいと思います。
我が国でも、総理が責任者となった推進会議がつくられ、総務庁が中心になって計画を立てておられます。しかし、現在の計画を見てみますと、障害者年と比べましても、各省庁の取り組みが非常にまだ弱いと率直に感じるわけです。そういう点も含めまして、
総務庁長官に具体的にいろいろお聞きをしたいと思っておりましたが、時間がなくなってまいりましたので、一点に絞ってお伺いしたいと思います。それは選挙権の問題であります。これは総理にお聞きしたいと思っております。
青年年のテーマの第一も参加であります。「参加、開発、平和」というのがテーマでありますが、第一が参加であります。つまり、社会への参加、これを広げるという場合に非常に基本的なのは選挙権である、これは常識だろうと思う。私は、日本も早く十八歳選挙権に踏み切るべきだということを申し上げたいわけです。今資料をお配りしたのをごらんになっていただくとわかるわけでありますが、世界の大勢はもう十八歳なんですね。十六歳とか十七歳のところもあります。圧倒的多数の国、こういうわけですが、百一カ国がもう十八歳に踏み切っているという状態です。で、サミットの参加国で言いますと、まだなってないのは日本だけという状態になっているわけです。
十八歳といいますと高校卒業です。中卒から働いておられる方もありますが、高卒の進学、大学とか短大、専門学校への進学を見ますと四九・四%ということですから、かなりの人が働いておる。つまり、所得税を納税しておるわけですね。ところが選挙権はない、そういう状態であります。ちなみに、総理が総裁をしておられる自民党、これも私たちの日本共産党も、入党条件は十八歳以上です。そしてYMCA、日本青年団協議会、それから中央青少年団体連絡協議会などで構成されております国際青年の年推進協議会、ここでも十八歳選挙権の実現を行動計画の一つに挙げております。
国際青年年のことしこそ、具体的に十八歳選挙権への検討を始めるべきだと私は思うわけですが、総理、お考えをお聞きしたいのです。
-
○後
藤田国務大臣 おたくさんからの申し入れ事項は読ませてもらいました。その中に十八歳選挙権、これも承知をいたしておりますが、世界の傾向から見ますと六割前後そうなっておりますね。だから一つの傾向かな、こういうようには思いますが、この問題は選挙権だけの問題ではない。やはり民法の成年とは何歳だ、あるいは刑事法令における大人と少年の区別とか、こういった問題もございますし、それからまた国民の世論であるとか、あるいは青年、十八歳の人たちの政治意識、それからまた今日の教育の制度、いろいろなことを各方面にわたって勉強しなければなりませんから、今直ちに、国際青年年がことしだから、この問題について選挙権十八歳を検討してまいるというのは、私はお答えができない、もう少しこれは勉強する課題であろう、かように考えます。
-
○
佐藤(祐)
委員 これは一部の傾向ではなくて世界の大勢であります。ぜひそういう方向で早急に検討していただくようにお願いをして、時間が参りましたので終わります。
-
○
天野委員長 これにて
佐藤君の質疑は終了いたしました。
―――――――――――――
-
-
○
大出委員 大変短い時間でございますから、簡単にまず御答弁をいただきたいのですが、防衛庁、大韓機〇〇七便、これが皆さんの出されました交信記録によりますと、交信テープによりますと、目標は方向を変えた、当方の左八十度、三時九分でございます。これ以外に、大韓機〇〇七が方向を変えた交信テープがございますか。私はこれ一カ所だと思っておりますが、一カ所であればそうでございますとお答えいただきたいのですが。
-
○矢崎政府
委員 ちょっと、お尋ねでございますので今ここに資料を見ながら……(
大出委員「三時九分」と呼ぶ)三時九分ですね。三時九分で目標は方向を変えた、目標は当方の左方八十度というのはございます。あとちょっと見ておりませんが……(
大出委員「それだけでいい、あとはありません」と呼ぶ)とりあえずそれだけお答えさせていただきます。
-
○
大出委員 あとはございません。
そこで、この間ここで私がお約束をいただきまして、聞こえるのを出してくれと言って交信テープをいただきました。これは細かく書いてありますが、九月六日の安保
理事会に出したもの、そしてその後、各国の代表で欲しいという方に上げたもの、こう書いてあります。防衛庁が書いたのですから間違いない。九月六日であります。中身はたくさん問題がございまして、時間があれば申し上げたいと思います。
もう一つはビデオテープでございますが、これも同じように国連安保
理事会に出したものでございます。中身は、私は別に制約を受けませんけれども、皆さんの御依頼がありますから、いまだにほかに出しておりません。私だけ持っております。予算の
理事会の方々は見ております。
さてそこで、二つ要求をいたします。
一つは、このテープを克明にかけて何回か解析をしてみました。どうなっているかといいますと、
理事しか見ていないですからマスコミの方は見ていないのですけれども、まずこのナレーションが出まして、RC135が八の字をかいている航跡が出てくる。そこをKALの航跡が、いわゆるシュルツ氏の発表、シュルツ航跡、これがゆっくり伸びてくる。カムチャツカ半島の手前で一遍とまる。カムチャツカに入っていく。ついにカムチャツカを抜ける。オホーツク海をずっと抜けていきまして、サハリンの手前でとまる。そしてサハリンを抜けて入っていって、おおむね自衛隊の方の出している三時十二分の航跡に乗って二十七分に撃墜されていく。ゆっくりしておりますから。片一方この交信テープを読みながら、片一方この航跡を追って解析をいたしてまいりますと、こういうことになります。
コースの変更は一遍しかありませんから、真っすぐカムチャツカを越えてオホーツク海を越えてサハリンに入る手前、三時九分でございますが、ここで目標は方向を変えた、当方の左八十度。これは図をかいてみますと八〇五便とKALの距離がございますから、KALから見るとおおむね九十度方向を変えたことになります。そうするとシュルツ航跡はそこから先、三時九分からどこへ行くかというと根室の沖に来てしまいます、根室の沖。いみじくも大韓機事件のありました九月一日、その後十九日に私がここで質問しましたが、谷川
防衛庁長官は九月一日の朝五時、根室沖に五隻の自衛隊の護衛艦が出動していたことをお認めになった。ここに行くことになる。ところが、実はシュルツ航跡はそこに行ってない。サハリンに入っていって、三時十二分の自衛隊航跡に乗って二十七分に撃墜された。どうしてだろうか。物理的にこれは成り立たない。こんなことはない。根室沖に来ることになる、このテープでいけば一遍しか方向を変えないんだから。
そこで、このなぞ解きは、どこかで右に九十度先に曲がっていなければ、後から左に九十度曲がれば根室の沖に来ちゃうんだから、真っすぐ行かないんだから、そうすると先に九十度どこかで曲がっていなければならない。
さて調べてみれば、オガルコフ氏の説明がございます。これによると三時二分ごろ、大韓機は右におおむね九十度方向を変えた。我が方のミサイル基地を避けた、こう説明をしている。さて、これを図をかいて追っていきますと、確かに三時二分ごろでないと、もしそこにミサイル基地があるとすれば射程に入ってしまいます。七十キロか百二十キロかそれはわかりません、ソビエトのは知りませんから。だが日本流に言えばそういうことになる。そうすると、この右に曲がったところ、このテープにない。そこで、このビデオテープの解析を日本語でしていただいた、こんな厚い七十ページのものがある。
これを見てまいりますと、何と三時二分ごろ、三時二分十一秒というところに交信が一つある。そこから三時五分十四秒まで交信がない。三時二分十一秒に交信があって、三時五分十四秒に交信があって、その間がすっぽり何もない。これは一枚ずつあけてもない。三分三秒交信なし。ところが、この後を見ますと、パイロットは一分間に三回ないし四回必ず地上基地と交信をしております。だから十数回の交信がなければならぬところに、三分三秒何もない。ちょうどここがオガルコフ氏の言う右に九十度曲がったところ。成り立たないんだから、両方いただいて、両方合わせてやってみて一遍しか曲がっていないんだから、この交信記録は。根室の沖に来ちゃうんだから、こんなもの信用できませんよ。これは懸案です。私がほとんどの時間をこれに使いましたが、最後でございますから、その三分三秒切れたところの交信テープをお出しいただきたい。これが一つ。
もう一点、申し上げます。
実は、成田の国際対空通信局、運輸省でございます。ここで最後の交信が千機長と思われる〇〇七のコックピットから入っています。大変にこれは重大な問題がございます。皆さんは御存じの方も多いと思いますけれども、アメリカにデービッド・ピアソンという科学者がおいでになる。この方が大韓機はスパイだという論文をお書きになった。国際的に大変大きな話題を呼んでおります。これは「朝日ジャーナル」でございますが、二回、対談をし連載をしました。「世界」あるいは「世界週報」などもたしか転載をしているはずであります。
そこで、私も実はピアソンさんも同じ見解なんです。ここにピアソンさんから手紙が来ております。長い手紙を和訳したものを私持っております。ここに最後の通信〇一〇あるいは〇一〇一デルタという言葉が入っている。絶叫的にこれを述べている。これは何だ。最後の、気圧が穴があいて入ってくる、気圧が減っていく中で絶叫している最後の交信、ガーガーガーとわからない。解析したら出てきたわけであります。ここに大変な問題があります。
そこで、御了解をいただきましたし、また公刊の書物にお書きになったことでございますから読み上げさしていただきたいのでありますが、たまたま私この間、後ろにおいでになります
石原慎太郎さんと話しておりましたら、ばかり翌日毎日の方の写真に載りまして「呉越同舟」――呉越同舟じゃございませんで、同憂の士相寄るということでございます。この問題を話していたところでございました。御了解いただきましたから申し上げますが、出典を明らかにいたします。公のものでございます。「流砂の世紀に」、「情報の虚構」というのが副題になっておりまして、五十九年八月号の新潮社が出しております月刊「新潮」でございます。文学誌でございます。ここに石原さんお書きになっておりますのを、一緒におりますから御了解いただきましたが、三百六十一ページ、
被弾後の三時二十七分、KAL機は成田の管制塔を呼び出し、一方的な交信報告を行った。
その録音は防衛庁と運輸省によって、日本の警察科学研究所、並びにその系列の研究所に分析が依頼され、雑音をブラッシュオフしたレコードは、パイロットが、〝コンピューター〟、〝オールエンジンズ〟、〝スピードディプレッション〟、そして〝010デルタ〟といった言葉を絶叫していることを確認した。
これが石原さんのまず確認であります。そして次に、
ただ、「010デルタ」については全く意味が不明である。
しかし後に、それはある筋によって、韓国民間機のコクピット機長のいるところであります。コクピットと、アメリカのある機関の間にとり交わされた暗号であることだけが判明した。アメリカはその正確な意味については発表していない。というなぞを解くかぎは、つまりサハリン沖で爆発し四散して消えたKAL機が、何故、新型ICBMの実験が予定された未明、コースを誤ってペトロパヴロフスクの頭上を飛越しオホーツク海を横切ったか、という謎をとく鍵は、実は、この「010デルタ」という言葉が最後に発せられていたというところにある。いや、そこにしか解明の鍵はない。
一体どこの国の民間機が、他国の特殊な機関(それが諜報に関わるものであることは想像を待つまい)と独自の暗号を契約することがあるだろうか。
しかも、同じ国の民間機が五年前にも007便同様、ベテランの元空軍将校によって操縦されながら、同じように不可解なコー
スミスで、ソヴィエトの西側の最大重要戦略基地ムルマンズクの上空にまぎれこんで飛んでいる。この二つの出来事が偶然によったものであるという確率は、計算しようはあるまいが、兆の上の上の桁分の一もあるまい。そうでしょうね。
CIAも認めた、アメリカのある機関とKALが交わした「010デルタ」なる暗号の存在が証すものは、防衛上、アメリカに負うところ多大な韓国はアメリカ側のある種の要請を受けざるを得なかったということである。
長い、実は非常に御勉強いただいているこんなに長い文章でございますが、お許しをいただいて出典を明らかにして、公刊の書でございますから読み上げさしていただきました。私も同じところにぶつかっております。そしてデービッド・ピアソンなる人も同じところにぶつかっています。アメリカで得た情報によって〇一〇デルタを明らかにしている。ここにかぎがあると言っておられる。
そこで運輸省でございますが、運輸省は解析をしておりますけれども、何と〇一〇一デルタというところは一二一二デルタとこうなっている。テープがほかにも歩いておりまして、ひとり歩きしておりまして、そちらの方の、ひとり歩きの方の、持っておいでになる方のお名前も私突きとめてありますが、お名前を申し上げるわけにまいりません。そちらの方の分析も〇一〇一デルタでございます。ICAOに一本当ていることをついに運輸省お認めになりました。ICAOは違った分析をしています。私には不可解であります。だから運輸省の分析と石原さんや私どもやピアソンやこちら側の分析とICAOの分析が違う。したがって、成田の対空通信局の原テープのコピー、○〇七便、〇一五便、さらに東京ACCの原テープのコピー。この間資格ある人が来たら見せて差し上げる。見たぐらいでわかる筋合いじゃない。軍事情報じゃありません。お出しいただきたい。
この二つを要求をいたします。これはお出しいただかないと締めくくれませんので、お願いをいたします。
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○矢崎政府
委員 私から、まず第一点の交信記録の点をお答えさせていただきたいと思います。
繰り返しお答え申し上げておりますように、大韓航空機がソ連機に攻撃を受け撃墜された前後の様子を示す交信記録は、以前公表したものがすべてでございます。御指摘の午前三時二分十一秒から三時五分十四秒の間というものには私どもがキャッチした交信記録はございませんので、そのまま公表をした次第でございます。
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○西村政府
委員 ただいま御指摘のように、運輸省から出しましたテープにつきまして解析した結果と、それからICAOの解析結果とはずれております。したがいまして、その点の解明に必要であれば適当な場で解明させていただきたいと思います。
-
○
大出委員 それはお出しになるという意味ですか。適当な場でなんて言って、はっきり言ってよ。
-
-
○西村政府
委員 理事会でお決めいただきたいと思います。(
大出委員「じゃ、それまで待っていますから、やってくださいよ」と呼出)
-
○
天野委員長 大出君の申し出の件につきましては、
理事会において御趣旨に沿うよういたします。検討いたします。
-
○
大出委員 委員長、えらい物わかりがよくて、御趣旨に沿うよういたしますと言うものだから、それではと思ったら、今ちょっとつけ加えたんでしたな、検討いたしますですか。最終日でございまして、五百十一人の皆さんに恨まれるのはいかがかと思います、いかに任侠の血が騒ぎましても限度がございますから。
そこで、提案をしたいんでありますが、この国会決議を読みますと、この国会決議には、真相の究明を速やかにやりなさい、もう一つ、全貌をこれまた速やかに明らかにしなさい、こういうふうになっているのですね。大韓機事件で二百六十九人の方が亡くなられた。日本人の方々が二十八人亡くなられている。昨年の九月で一年たった。だが、速やかな真相究明に政府に御努力をいただいて、経過報告であっても、かくのごときことになったということを御報告いただいた記憶はない。全貌はかくのごときものであるという御報告をいただいたことも記憶がない。したがって、ことしの九月でちょうど九二年になる。恐らく遺族の皆さんはまた北の海に花を持っていき、酒を持っていきということになるのだと私は思います。それだけに放任はできない。きょう二十分しか時間がないというのに、私はお断りしたんですけれども、遺族会の方が会長以下また傍聴にお見えになるというお気持ちがわからぬわけではございませんので、ひとつ何とかことしの九月の一日を目途に皆さんの方でお考えいただいて、国会決議に沿うような真相の究明への途中経過になるにしても国会にお出しをいただく、あるいは全貌をということになっておりますから国会にそれもお出しをいただく、この御努力が必要だと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
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-
-
-
○
大出委員 質問しているんだから答えてくださいよ。
-
○藤波国務大臣 本事件の真相究明につきましては、これまでソ連政府に対して種々の機会に要請するのみならず、中立的な国際機関でありますICAOの調査を積極的に支援をしてきたところでございます。ICAOは、我が国、米国、韓国の全面的協力を得て調査を行い、報告書を作成してまいりました。これがこれまでの経緯でございます。
政府といたしましては、今後とも本事件の真相解明のためのこのような努力をさらに継続をしてまいりたい、このように考える次第でございます。
-
○
大出委員 このICAO報告で論議する気はありませんが、これは皆さんよく御存じのとおり、事務局報告は被害十五カ国から出ている専門
委員の航空
委員会というのがございまして、これが認めがたいという結論を出した。したがって、
理事会もほとんど白紙に近い決定をしているわけでありまして、白紙に戻ったわけであります。したがって、私は日本政府として、日本の国民二十八名亡くなっておられますから、この決議は日本の国会、衆議院の議決ですから、だからこの国会に、政府の努力の結果、真相究明はどうなったか、全貌はどうなったか御報告を願うのが筋だと思っておりますから、そのことを求めているわけでございます。再答弁願います。
-
○藤波国務大臣 この事件は、先生御高承のように、我が国だけでこの真相が究明できるという形のものではなくて、形の上からいきましても国際的な事件、こういうことになっておるかと思うのでございます。
したがいまして、今後どういうふうに努力をしていくかということにつきましては、まず一つは、ICAOにおきます本事件の真相究明のための国際的努力が継続をされていくように求めてまいりたい、これが一つございます。
それから、ソ連政府に対しましても種々の機会をとらえてさらに真相が究明されていくように努力を要請をしてまいりたい、このことを考えておる次第でございます。
三つ目といたしまして、犠牲者の方々の補償につきましては、その円滑な解決のために政府として可能な限り努力をしてまいりたい。これは当然のことでございますけれども、お気の毒な方々のお立場に立って協力をしてまいらなければならぬ、こう思う次第でございます。
さらに、本件のような事件の再発を防止いたしますために、関係国と協力をして、北太平洋航空路の安全性の向上等に努力をいたしてまいりたい、このように考える次第でございますが、今申し上げましたように、事件が国際的な性格を持っておるということにかんがみまして、我が国は我が国として真相究明のためにあらゆる努力をしてきたところでございますし、これからもその努力を継続をしてまいりたい、このように考える次第でございますが、我が国だけで何らかの真相究明というような形がとれるかどうか、そのことを非常に心配をいたしますので、今先生からの御指摘に対しましては、率直にいつまでに、どういうふうに報告をいたしますということを報告をしかねるという内閣の立場をぜひ御理解をいただきたいと思うのでございますが、今申し上げてまいりましたようなあらゆる角度から努力をいたしてまいりまして、その中でその努力の結果こういうふうになっておるということにつきましては、しかるべき機会に御報告を申し上げることにいたしたい、こう考える次第でございます。
-
○
大出委員 くどいようですが、しかるべき機会というのは、いつ、どういうふうにして御報告願えますか。私は今、九月一日がちょうど二周年でございますから、御遺族の気持ちも考えて九月一日を目途にと申し上げたのですが、どういうふうに御報告願えますでしょうか。
-
○藤波国務大臣 当予算
委員会で先生から御指摘があって、御質疑をちょうだいをしてきたところでございますので、しかるべき機会、その取り扱いにつきましては予算
委員長と御相談申し上げるということで、お許しをいただきたいと存じます。
-
○
大出委員 いろいろ皆さんのお話承っておりまして、お気持ちはわかりますので、最後に実は総理に一言承って、最終日最後の時間でございますから締めくくりたいと存じます。
これは昨年の十二月二十九日に、遺族会の会長さんから私がいただいた手紙なんですけれども、ここに途中だけ読ましていただきますが、
この事件の真相究明は私たち遺族の一致した悲願でありますが、私たち遺族は国内各地に散らばり、いまだに悲しみと苦しみに打ちひしがれたままの状態であります。大国の政治の道具にされたまま、理不尽にも生命を奪われていった犠牲者の血の叫び声を広く世界に訴えていく力もありません。
こういうふうに書きまして、レーガン大統領さんに何回も何回もいろいろお願いの手紙やら何かを差し上げた、しかし御返答をいただいていない、こうありまして、最後に、中曽根さんが本年一月二日にアメリカに行ってレーガン大統領さんにお会いになるということだったものですから、
レーガン大統領と会談される中曽根首相には次のとおり電報を打ちました。大韓航空機事件後、衆参両院は一致していち早く真相究明の決議をしましたが、その後真相は少しも解明されることなく今年も暮れようとしています。しかし、アメリカは事件の全容を熟知しているはずでありますので、レーガン大統領と御会談の際には、ぜひアメリカが社会
正義と人道の立場に立って真相の公表をなさるように、日本国の首相としてぜひとも御発言くださいますように切にお願いを申し上げます。
こういうふうに、電報を差し上げたとおっしゃる、書いてある、十二月の末でありますが。私、実はこの手紙に動かされまして、この国会でやりたいことたくさんあったのでございますが、ほとんどの時間をこれに使う気になったのであります。実はそれは、この手紙をいただきましたから、会長さんに電話をかけて聞いてみたところが、中曽根さんから一言も御返事も御連絡もいただいていないとおっしゃるものですから、それで実はその気になったといういきさつがございます。
したがいまして、総理から、きょうは――会長さんのこの手紙は公にする気はなかったのでありますが、二十分しかないというのに会長さん以下皆さんお見えでございますので、一言ひとつこれは総理から、国会決議もございますので、今後とも真相解明の決意をお持ちであることをここでお述べをいただいておきたい、こう思うのでございます。
-
○中曽根
内閣総理大臣 大韓航空機事件によりまして御遭難になりました御遺族のお立場を考えますと、まことに御同情にたえない暗然たる気持ちがする次第でございます。御遺族のお気持ちも察しまして、御指摘のように、今後とも真相究明につきまして努力してまいりたいと思います。
-
○
大出委員 どうもこれは恐縮でございました。終わります。
-
○
天野委員長 これにて
大出君の質疑は終了いたしました。
これにて締めくくり総括質疑は終了いたしました。
以上をもちまして昭和六十年度予算三案に対する質疑はすべて終了いたしました。
―――――――――――――
-
○
天野委員長 この際、日本共産党・革新共同
松本善
明君外二名から、昭和六十年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。
これより、本動議について提出者より趣旨弁明を求めます。
松本善
明君。
―――――――――――――
昭和六十年度一般会計予算、昭和六十年度特別会計予算及び昭和六十年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動機
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
-
○
松本委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、お手元に配付をされております、昭和六十年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、提案理由及び概要を御説明いたします。
まず、撤回、編成替えを求める理由について述べます。
政府提案の六十年度予算は、第一に、レーガン政権のSDI構想など核軍拡戦略を支持し、日米運命共同体路線を推進する軍事費大突出の軍拡最優先予算であります。第二に、いわゆる補助金一律カットに代表されるように、国の負担責任を自治体に転嫁し、地方自治と住民生活破壊を進める予算であります。第三に、臨調行革の四年間に進められた国民生活切り下げをさらに徹底させた上、年金など社会保障制度の抜本改悪を進める予算であります。第四に、国債が十兆円を超えて最大の歳出項目になるという財政破綻の新たな段階のもとで、巨額の利益を上げている大企業を優遇する政策を温存、拡大する予算であります。
このように六十年度予算は、軍事費GNP比一%枠の歯どめすら取り外す際限のない大軍拡と、財政破綻の国民へのツケ回しをねらった大型間接税導入の地ならしを図るものであります。これが国民の平和と生活向上の願いに全く反するものであることは明白であります。予算の抜本的な組み替えを求める理由はここにあります。
次に、編成替えの主な内容について述べます。
第一は、軍事費の大幅削減であります。
F15戦闘機、P3C対潜哨戒機、ミサイル護衛艦など新規装備購入費の全額削除、対米思いやり予算の全額削除などにより、軍事費は一兆四千億円削除すべきであります。
一千海里シーレーン防衛の対米誓約、核抑止論にしがみつき、核軍拡競争を宇宙にまで拡大するSDI構想に協力の意向を示すなど、中曽根内閣の軍拡路線は、国民の安全に役立つものではないばかりか、我が国を核戦場化する危険をもたらすものであります。政府予算の軍事費はついに三兆円を突破し、GNP比率は〇・九九七%と一%の天井ぎりぎりに追っております。今や、政府自身が歯どめと称してきたGNP比一%の年度内突破は必至であります。予算審議の中で、総理は一%を超えないことをめどとする方針を今後とも守りたいと発言し、自民党幹事長は一%枠を守ることに最善を尽くすと発言しております。しかし、具体的な軍事費削減の保証はありません。
軍事費の大幅な削減なくしては、軍拡から軍縮への転換ができないばかりか、今やGNP一%枠すら守れないことは明白であります。
臨調行革四年間で、農業、中小企業対策費は、大幅に削減されました。軍事費をこれと同率で削れば一兆円以上の削減となります。軍事費削減はやる気があるかどうかの問題であり、軍縮の立場に立ては、一兆四千億円の削減はすぐに実現できることは明白であります。
第二は、地方自治と住民生活を守ることであります。補助金カット一括法案を撤回し、六千四百億円を追加し、補助金一律カット、小中学校教材費、旅費負担金の廃止をやめることとしております。
第三は、福祉、教育の危機を打開するため、年金制度抜本改悪の中止、児童、老人、障害者福祉の確保、四十人学級制の実施、私学助成の充実を図るための予算の拡充を行うこととしております。
第四は、財界奉仕をやめ、国民の生活と営業を守る緊急対策であります。
大企業優遇の従来型景気対策をやめ、勤労者、農民の所得向上、中小企業の経営改善に直接働きかける景気対策を図るため、一兆円の所得減税、公共料金の値上げ中止、人事院勧告の完全実施を行い、農業、中小企業対策費の削減をやめることとしております。大企業への新たな助成、減税措置は中止することといたします。
第五は、大型間接税導入は、いかなる名称、いかなる形態であれ行わないこととし、大企業の適正な負担で財政再建を図るということであります。このため大企業、大資産家について、優遇税制の是正、国債利子の軽減措置等を行うこととしております。
以上が動議の概要であります。この方向で予算の優先順位を抜本的に転換して初めて平和と国民生活を守り、地方自治拡充、真の財政再建が図れるものと確信をし、
委員各位の御賛同をお願いするものであります。(拍手)
-
○
天野委員長 これにて動議の趣旨弁明は終わりました。
―――――――――――――
-
○
天野委員長 これより討論に入ります。
昭和六十年度予算三案及び
松本善
明君外二名提出の動議を一括して討論に付します。
討論の通告がありますので、順次これを許します。
小泉純一郎君。
-
○小泉
委員 私は昭和六十年度予算三案について、自由民主党・新自由国民連合を代表して、政府原案に賛成し、日本共産党・革新共同から提出された編成替えを求めるの動議に反対の討論を行います。
六十年度予算においては三年連続して一般歳出を前年度以下に抑制、また、税負担の公平、適正化の推進、さらにこれらの努力の結果として公債発行額一兆円減額をなし遂げることができました。また、従来では例を見ない数々の補助金の廃止合理化が進められ、本予算案に織り込まれた高率補助金の引き下げを契機として、国と地方の役割分担及び費用負担の見直しが始められることとなった等、財政全般にわたる本格的見直しに大きく一歩を踏み込んだものと評価できます。また、日本電信電話株式会社等の株式については、売却可能分を国債整理基金に帰属させ、国債の償還財源の充実に資したことは財政の健全化に大きく寄与したものであります。
一方、厳しい予算の中でも一般公共事業費について前年度を上回る水準の確保、基盤技術の研究促進、国民生活の充実等に対する細かな配慮がなされております。さらに、経済協力費と防衛費については一般歳出項目の中で最も高い伸び率を示したことは、我が国の国際社会の中における役割を自覚し、その責任を果たそうとする強い意欲をあらわしたものであり、評価されてしかるべきであります。
なお、日本共産党・革新共同提出の編成替えを求めるの動議は、防衛費の大幅な削減等を内容とするなど発想の基本が異なり、現実的な提案とは言いがたく反対であります。
以上申し述べ、政府予算三案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
-
-
○
上田(哲)
委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました昭和六十年度政府予算三案及び日本共産党・革新共同提出の同予算三案の組み替え動議のそれぞれに反対する討論を行います。
戦後四十年、一九八五年は一つの時代の分岐点であることをだれもが実感しております。国会は希望に満ちた未来に向けて確かな道筋を開かなければなりません。このとき政府予算案は進歩に逆行し、国民の期待を裏切り、露骨にしかもたけだけしく極めて危険な道へ踏み出すものであります。到底うべない得るものではありません。
以下、反対の主な理由を申し述べます。
反対理由の第一は、まず何よりもこの予算案が我が身知らずの過大な軍拡をもくろみ、このため最後の歯どめであるGNP比一%枠を突き破ろうとする点であります。
これは、中曽根首相が日米軍事同盟体制を運命共同体の基軸として強調する立場から、日本列島を不沈空母と呼び、シーレーン防衛と称する北西太平洋の海域分担をもってアメリカ核戦略の補完軍事力となることを目指して以来、既に避けられない道筋であります。これこそ一%枠撤廃の実質であります。総理のにわかに主張される「防衛計画の大綱」と一%の切り離しなどは、牽強付会も甚だしいのみであります。
もとより一%といえども巨額ではありますが、既に非核三原則、武器輸出三原則などが空洞化されている今日、この最後の歯どめを失うときは、もはやこの後政府の思いのままの膨張の目標を一方的に引き上げるのみとなるのであります。一%枠厳守を支持する八割の国論にこたえ、金丸幹事長の約束された「最善の努力」を、具体的に六十年度予算内で最低二百億円規模の節減を人件費以外で行うよう、しかと求めておきます。
反対理由の第二は、この予算案が財政破綻を決定的にしている点であります。
六十年度末の国債発行残高百三十三兆円、この重圧の中での財政再建は、政府自身の財政収支試算によっても、その公約とする六十五年度までに赤字財政の脱却が不可能なのは明らかであります。五年間も物価の上昇をまるで見込まない試算などがあり得るでありましょうか。しかも、審議の中で明らかになった「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の政府内部試算によって、六十五年度の国民の租税、社会保障費の総負担率は四〇%と見込まれているなど、将来へ向けての財政破綻が一層明らかとなりました。
政府は、ここで国民の切実な要求である所得税、住民税の減税を見送り、あまつさえ野党要求の修正案に真摯にこたえず、かえって逆に大型間接税の導入を進めようとしています。まさに「増税なき財政再建」の土光臨調をさえ裏切るものであり、断固として許容できません。
第三に、以上の結果として、これらのしわ寄せが社会保障費、教育関係費、地方財政へと向けられている点を見逃すことはできません。
厚生年金の国庫負担率の削減、生活保護費補助率の一割削減、児童扶養手当ての新たな制限、義務教育での旅費や教材費まで国庫負担から外してしまうことなど、これらはすべて本来受け持つべき国と地方の役割分担の論議をあいまいにし、憲法に背き、国の責任を放棄して弱者に犠牲を強いるものであります。それはもはや政治の原点を失うものとして極めて不当であります。
以上が反対理由の概要でありますが、最後に、この月余の審議期間を通じて、政府側の姿勢には、資料の提出、答弁の不誠意など目に余るものがありました。議会主義は、一党独裁の横暴によって滅びます。反省を促すところであります。
なお、日本共産党・革新共同提出の組み替え動議につきましては、この種の作業として実現可能な施策を積み上げるべき過程のあり方と、予算の質的転換を目指すための現実的対応策の観点から、多々疑問のあるところであり、賛成できません。
以上をもって私の反対討論を終わります。(拍手)
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-
○
池田(克)
委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和六十年度政府予算三案に対し反対の討論を行うものであります。
昭和六十年度予算案の修正を目指して、共産党を除く四野党が緊急課題に絞って、共同で予算修正を迫ったことは御存じのとおりであります。
今、国民は生活防衛と平和軍縮の推進、そして清潔な政治を心から願っております。私は、この際、確約された政策減税の実施はもちろんのこと、政府・自民党が六十年中における所得税減税の実施を初め、「防衛費の対GNP比一%枠を守ることに最善を尽くす」とした与野党書記長・幹事長会談における自民党の回答を誠意を持って実行されるよう強く要望するものであります。
以下、反対の理由の主なものを申し述べます。
その第一は、税制の抜本改革の名のもとに大型間接税の導入をもくろんでいることであります。中曽根内閣は「増税なき財政再建」を掲げ、その実現のためという理由で今日まで福祉、文教関係予算の伸び率を圧縮し、国民生活に多大の負担と犠牲を強いてきたのであります。こうした経過をも顧みず、直間比率の是正を柱とする税制の抜本的見直しを政府税調、党税調に諮問することは、「増税なき財政再建」の公約破棄であり、大型間接税の導入に道を開くものであることは明らかであります。
我が党の
矢野書記長は本予算
委員会において大型間接税をほのめかす発言を繰り返す総理を糾弾し、大型間接税の導入は中曽根内閣としてはとりたくないとの約束を取りつけております。私は、政府・自民党が大型間接税に関する政府見解を誠実に守り、その導入を断念するよう強く求めるものであります。
反対する第二の理由は、超緊縮予算案の中にあって防衛関係費を大幅にふやし、その伸び率を異常突出させていることであります。
防衛費を六・九%もふやした結果、防衛費のGNP比率は〇・九九七%まで上昇し、六十年度の人事院勧告による公務員給与引き上げによって、政府公約である一%枠が突破されることは必至の状況になっております。私は、昭和六十年度の防衛費は、人事院勧告の完全実施により予想される人件費の増額を含めてもGNP比一%枠内におさまるよう他の経費を削減することを改めて強く求めるものであります。
反対理由の第三は、内需拡大と国民生活の防衛という観点から欠くことのできない所得税、住民税減税を見送っていることであります。
内需の拡大による安定成長の実現は、財政再建の推進の上からも、また著しい対外貿易不均衡を是正するためにも当面の最大課題であります。ところが政府予算案は、一般会計の公共事業費の伸び率をマイナスにしたのみならず、国民の期待する所得税減税、住民税減税を見送ってしまったのであります。サラリーマンを中心に所得が伸び悩み、個人消費も停滞している状況下にあって、六十年度における所得税、住民税減税は最も重要な施策であり、これを見送ることは到底容認できません。
反対理由の第四は、財政再建の名のもとに福祉、文教予算を後退させ、国民生活に負担と犠牲を押しつけていることであります。
特に、国の責務ともいえる生活保護費、義務教育費など地方自治体向け補助金を一律削減し、地方自治体に負担を転嫁し、実質的に福祉、文教施策を後退させていることは見過ごしにできないのであります。また、国鉄運賃の値上げなど安易な公共料金の値上げについても納得できないのであります。
反対する第五の理由は、行政改革への取り組みが一時しのぎであるということであります。
国民が期待している中央省庁、特殊法人の統廃合による行政機構の簡素化、補助金の整理合理化など、本来的な行政改革については見るべき成果が全くありません。また、国家公務員の定員削減も十分とは言えないのであります。しかも、総理が強調される地方行財政改革は、行政事務の再配分、自主財源の拡充など地方自治の確立への取り組みがなされないままに財政負担のみを一方的に地方に転嫁させており、本末転倒と言わざるを得ません。
以上、政府予算案に反対する主な理由を申し述べましたが、最後に、総理に重ねて与野党書記長・幹事長会談での自民党の回答を誠意を持って実行されますよう要求するものであります。
なお、日本共産党提出の組み替え動議については、いささか考えを異にいたしますので、反対を表明するものであります。
これをもって私の反対討論を終わります。(拍手)
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木下委員 私は、民社党・国民連合を代表し、昭和六十年度予算三案に対し、一括して反対の討論を行います。
我が党は、かねてより政府・自民党に対し、既に破綻が立証されたこれまでの縮小均衡型経済運営を早急に転換し、その第一歩として来年度予算を「増税なき財政再建」を目指す拡大均衡型予算とするよう強く主張してまいりました。しかるに、政府・自民党が来年度予算においても大幅な所得減税、投資減税の見送り、公共事業費の抑制など、内需主導による適正成長に反する対応をとり、縮小均衡型経済運営をなおも踏襲していることは極めて遺憾であります。
このような政策運営によっては、「増税なき財政再建」を達成し、福祉社会の基盤となる社会資本を整備し、福祉の計画的向上を実現していくことは望むべくもありません。これが我が党が反対する第一の理由であります。
第二の理由は、政府・自民党がこれまでの「増税なき財政再建」の方針にもかかわらず、来年度予算を起点として直間比率の見直しの名のもとに大型間接税導入の準備を着々と進めていることであります。
我が党は、国民に増税を求める以前になされるべき政府・与党の政策努力、すなわち行財政改革による歳出削減、経済政策の転換による税の大幅自然増収確保、現行税制の不公正是正のいずれもが極めて不十分である現時点において、仕組み自体にも懸念をはらんだ大型間接税を導入することには強く反対することをこの際明らかにしておきたいと思います。
反対する第三の理由は、一律削減によらない政策判断に基づいた補助金の統廃合、公務員定数の大幅純減による総人件費の抑制、地方出先機関の整理、不公正税制の是正などの行財政改革がいずれも不十分なものにとどまっていることであります。
行革の断行は現内閣の生命線とまで言われた中曽根総理が、今後その言に十分値する本格的な行財政改革に速やかに着手されるよう強く求めます。
反対する第四の理由は、臨調答申の指摘にもかかわらず、政府がこれからの財政再建をいかに進めていくかについての具体的計画と対処方針を全く明らかにしていないことであります。
我が党は、政府に対し、当面「財政の中期展望」の主要経費別内訳を明らかにするとともに、早急に今後のあるべき経済、財政指標の目標値や政府の政策選択を具体的に盛り込んだ中期経済財政計画を策定するよう強く求めます。
なお、この点については、藤尾自民党政調会長も前向きの検討を約されていることを政府は特に銘記すべきであります。
第五の理由は、政管健保の国庫補助削減、児童扶養手当制度の改悪などの福祉政策の後退を図るとともに、我が党の要求した単身赴任減税などの政策減税を見送るなど、国民生活の安定、向上に反するものであることであります。
今後、政府が活力ある福祉社会の建設に向けて確たる哲学に立脚した福祉政策を推進するとともに、経済社会情勢の変化に十分対応した政策体系を確立し、もって国民生活の計画的向上を図るよう強く求めます。
反対する第六の理由は、臨調答申の指摘に反して住宅金融公庫の利子補給金の繰り延べ、住宅・都市整備公団補給金の未計上、厚生年金等の国庫負担の一部繰り延べなどの財政技術的操作による表面的な歳出抑制を行っていることであります。
制度の根本的な改革につながらない実質的な赤字国債の発行は今後行わず、既往の措置は早急に解消するよう求めます。
以上が反対の主な理由でありますが、最後に、先日与野党間で協議され、自民党が野党側に約束した単身赴任減税などの政策減税の実施、所得税減税についての検討、時間短縮並びに連休等休日の増加の実現のための協議機関の設置については、誠実にその約束を履行するよう政府・自民党に強く求め、共産党提出の動議にも反対の意を表明し、私の反対討論を終わります。(拍手)
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瀬崎委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の昭和六十年度予算三案に断固反対、我が党提出の予算組み替え動議に賛成の討論を行います。
政府予算案に反対する理由の第一は、本予算案が日本をアメリカの核戦略に一層深く組み入れる大軍拡予算であることです。
軍事費は前年度比六・九%増と五年連続の異常突出を示し、ついに三兆円の大台を突破しました。対GNP比一%以内という枠組みのもとでさえ、二兆三千億円もの後年度負担のからくりによって米核戦略に直結する正面装備費が四年間で実に五七%も急増するという大軍拡を強行しようとしているのであります。軍事費大幅削減を求める国民の世論と我が党の組み替え要求に耳をかさず、軍拡路線に固執する中曽根内閣と自民党の態度を心からの怒りを込めて糾弾するものであります。
反対理由の第二は、本予算案が露骨な財界奉仕、国民犠牲、地方自治破壊の予算であることです。
財政破綻を理由に地方自治体への補助金一律カットの強行を企て、また福祉、教育、中小企業、農林漁業予算をとことん削り込んで国民生活に重圧を加えておきながら、一方大企業に対しては、民間活力活用の名による国有地の民間払い下げや各種規制の緩和を推進し、ハイテク減税や新電電の政府持ち株の配当を利用した無利子融資などの新たな優遇制度を新設してまで大盤振る舞いをする、こんな反国民的な予算を断じて認めることはできません。
第三の理由は、財政破綻をさらに新たな段階に進行させながら、それを口実に大型間接税を導入しようとしていることであります。
本予算案では、国債費がついに十兆円を突破し、社会保障費を抜いて最大の歳出項目となり、予算編成上の決定的な障害となってきているのであります。中曽根内閣は新たに赤字国債の借りかえを強行しようとしていますが、これは財政を破局に導く暴挙であります。今や政府は財政の正常な管理運営能力を喪失しているとしか言いようがありません。しかも、財政破綻を逆手にとって大型間接税の導入を打ち出してきたのは言語道断であり、我が党は、いかなる名目、形態であれ、断固反対であります。
私はここで議会制民主主義の根本にかかわる重大な問題について指摘しておきます。
一つは、予算修正協議に関連してあらわれた予算
委員会の運営問題です。
ことしの予算
委員会の運営は、二月二十七日までは正常に
理事会中心の協議が行われ、昨年までに比べてあるべき姿に是正されつつありました。ところが、自民党は二十七日の
理事会で突然予算修正問題を国会対策
委員会に上げることを提案、予算
委員長も過去の慣例は無視できないとして、裁断の形で予算修正協議を国対
委員会にゆだね、我が党以外の各党もこれに同調したのであります。しかも、我が党がその場合でも国会の運営にかかわる問題は全会派で行うべきだと当然の主張をしたにもかかわらず、特定の政党間の協議で国会運営までが事実上左右される結果となったことは、国権の最高機関である国会の上に特定の政党間協議を置くものであり、絶対に許されないことを改めて強く指摘しておきます。
もう一つは、テレビ放映質問の時間設定の問題です。
予算
委員会総括質問のテレビ中継は、各党と政府の主張を国民が直接見聞することができる数少ない機会であり、特定の政党の質問を視聴することが著しく困難であるような事態は、政党間の公平に反するばかりでなく、国民主権の原則にもかかわる問題であります。特にNHKの国内放送の番組編成については、放送法で政治的に公平であることを定めているのであります。ところが、ここ十数年、特定の党の質問が深夜の録画放映に回される異常な事態が続いており、今回、私は予算
委員長とNHKに対して改善を申し入れ、
理事会ではその必要性が確認され、関係者の間で一定の努力が払われたものの、結局具体的な解決に至らなかったことはまことに遺憾であります。放映の公平を確保するように各党の質問時間を設定することは、第一義的には予算
委員会の責務であり、早急に解決を図るよう、重ねて予算
委員長に要求するものであります。
私は、日本共産党・革新共同提出の予算組み替え動議こそが日本の平和と民主主義、国民生活を守る唯一の道であることを力を込めて強調するとともに、政府提出の予算案には重ねて断固反対の意思を表明して、討論を終わります。(拍手)
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天野委員長 これにて討論は終局いたしました。
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天野委員長 これより採決に入ります。
まず、
松本善
明君外二名提出の昭和六十年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
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天野委員長 起立少数。よって、本動議は否決されました。
次に、昭和六十年度予算三案を一括して採決いたします。
右三案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
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天野委員長 起立多数。よって、昭和六十年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)
お諮りいたします。
ただいま議決いたしました昭和六十年度予算三案に関する
委員会報告書の作成につきましては
委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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天野委員長 これにて昭和六十年度総予算に対する議事はすべて終了いたしました。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
去る一月三十日の審査開始以来、補正予算の審査を含め、長期間にわたる審議を行ってきたのでありますが、その間、若干の審議渋滞を見ましたものの、終始真剣なる論議を重ね、本日ここに審査を終了するに至りましたことは、ひとえに各党
理事並びに
委員各位の御理解と御協力のたまものと考えております。
委員長といたしまして衷心より感謝の意を表す各次第でございます。
ここに、連日審査に精励されました
委員並びに関係各位の御労苦に対し深く敬意を表し、感謝の意を申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手)
本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十五分散会