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伊藤(昌)
委員 NHK科学映画「核戦争後の地球」の非科学性その他について
質問をいたします。
質問通告は詳細に文書で出してありますから、国民にわからせる心でお答えをいただきたいのです。時間が少ないので、
答弁は最後に一括お願いしたい。また朗読になりますが、ひとつお許しをいただきたいのであります。
この番組に政治的意図があったならば別ですが、ないなら良心上「核の冬」の番組などはつくれないはず。「核の冬」の言葉をつくったセーガン氏は、私の論文は必然的に不正確だ、あくまでも仮説としてと前置きした「核の冬」説と、これを否定する説があります。しかし、地球と海を凍らせる学説はないのです。それを科学上一〇〇%絶対に起きるのだと言って、砂漠のサボテンまで凍らせてしまいました。湿度のないところに雪は降りません。一体凍るのでしょうか。文化庁はこれに芸術賞まで与えてしまいました。これが
質問第一点。
全米科学アカデミーその他が「核の冬」は予測できないと言っているものを、大気物理、化学、気象学と核爆発、核戦略の専門家のいないNHKがセーガン氏らの仮説をつまみ食いし、こんな間違った番組をだれの指示で、何の目的でつくったのか、会長、お調べいただきたい。公正な科学番組をつくるなら、左翼系学者のこの仮説と他の学説とを同時間放送するならまだしも、一方だけの話を聞いて日本を氷づけにしてしまいました。地球の凍結は一体だれの説が、会長に
お尋ねの第二問。
核戦略専門家、大気物理学にも関心の深い筑波大学中川助教授は、NHK会長に公開
質問状を、また文芸春秋十月号にある「反核の欺瞞」「荒唐無稽」とまで罵倒され、反論の紙面提供までされながらやらない。堂々と反論をするか、間違っていたら視聴者に謝罪をするかしなければいけません。これが
質問三点。
公共放送が片方の意見しか出さないとは一党独裁共産国の放送と同じではありませんか。放送法は、一つ、政治的に公平、二つ、報道は事実を曲げないこと、三つ、意見対立問題は多くの角度から論点を明らかにすること。まさに全部に
違反しているではありませんか。会長、郵政大臣のお考えをいただきたいのであります。
今、皆様方にお配りいたしましたが、八月一日、対日謀略モスクワ放送のすべてが八月五日、六日NHK番組のナレーションとはまさにうり二つ。ツーツーか偶然の一致か知りませんが、双方の目的が一致していることは否定できません。日本公共放送とモスクワ放送の連関を
調査せねば危険であります。郵政大臣にただしたいのであります。これが
質問第五。
こんな映画を振り回されて反核、反米を公共放送でやられたら、ソ連の思うつぼ。我々西側陣営は核廃絶運動はするが、反米親ソの反核運動は断固拒否をいたします。
ひとつパネルをごらんいただきたい。NHKの被害想定だけ何ゆえこのように超極端なのか。NHKは八五%死亡。WHOは二五%死亡。バーナビ・グループは一五%死亡。セーガン、アーリック・グループいずれも被害はNHKと比較をすると何分の一であります。よろしいですか、かてて加えてバーナビ博士の計算もインド、パキスタンの人口密集地に米ソが全力核投下したことにしてあり、かつ双方の核は敵に落とされないという非現実想定である。限りある爆弾を戦争目的に関係のないインドに投下するばかはないのです。そのように被害を極端に高くした、今述べたWHOやバーナビ博士らが赤面するくらい、その何倍もの被害をつくったのがNHKであります。NHKはみずからの一万発五千メガトンシナリオに基づく想定被害の計算根拠を国民に示すべきであります。これは文書で後日
回答願いたいのです。
質問第六。
日本が全面核戦争に巻き込まれると八割は死亡、二割は放射障害で死ぬ云々と、これもまことにおかしいです。およそソ連は米ソ核戦争中に日本にだけ大量の核を投下する余裕もなく、百歩譲って、この日本攻撃分の弾頭数、威力、対象都市を明らかにしてほしい。これも後日文書で。
質問第七。
海が凍り、氷の上に魚が死んでいる。ぞおっとしました。海は表面から凍る。魚は水の中にいるから南極、北極でも魚は生きています。一体魚は氷の上で死ぬものでありましょうか。これが八番目。
海まで凍る学術論文を文書で提出をしていただきたい。これが
質問第九。
「地球が凍結する」の絶叫が数回あったが、セーガン氏ら仮説には、地球の温度は二十八度Cから三十八度C下がるとあります。アフリカの熱帯のジャングルが凍りついている。アフリカは四十度Cですから最大の三十八度Cを引いても氷点下にはなりません。しかもセーガン氏らは、みずからの計算結果を不正確と断っているのであります。万一正しいとしてもNHKのシナリオは七月の昼であり、夏です。海洋沿岸の日本では十八度Cぐらいになるとセーガン氏は言っています。これは春です。春は凍りません。これもNHKはうそをついておるのじゃありませんか。
質問第十。
生き残るのはゴキブリ。氷づけの中で寒さに弱いゴキブリが生き残るのでしょうか。ゴキブリは軍人と民間人の区別ができないのに、シェルター内の軍人の死骸を食って生き残るなど、この番組は反シェルター、反軍人の番組であり、核対策も国防も考えさせないようにする外国の謀略番組と思いたくなるのであります。ゴキブリは民間人と軍人の区別が一体づくのでありましょうか。これが第十一番目。
気象学は、学者が百年以上蓄積されたデータをもってしても難しい。それをわずか二年前から始まった「核の冬」説は科学の域にも達していないことは明瞭であります。気象庁は「核の冬」を研究しているのか、国際的にはこの問題はどうなっているのか、
気象庁長官に
お尋ねをしたいのであります。十二番目。
次に、露骨な政治色について。第一に、この映画は、核戦争、地球凍結、生きる努力もむだ、そして核シェルター普及の芽までつぶす。映画の中で婦人の声は、子供の寝顔を見ながら涙でいっぱい、女子高校生は、勉強する意味がなくなったと。絶望感を国民に与えているのであります。
さて、今流行の反米、反核運動の源をモスクワ放送から探ってみようではありませんか。
私はモスクワ放送のテープをここに持ち合わせております。モスクワ放送は世界の反米、反戦団体に反核運動の指示を出しています。五十九年八月九日のモスクワ放送は、「ソ連の平和擁護
委員会は、広島原爆投下四十周年に当たる来年八月六日までに、核兵器実験を停止させるための国際運動を始めようというアメリカその他の国の反戦団体のイニシアチブを指示しました。これについての電報はアメリカの反核運動者に送られました」と。案の定、その一カ月後、九月十二日モスクワ放送は、「日本の総評は広島原爆投下四十年を迎えるに当たり、反戦運動をすることを決めました」云々と。その次、十一月八日モスクワ放送は、赤旗が、日本原水協が「被爆四十周年向け提唱」「署名運動」という見出しで日本原水協は反核平和組織の賛同を得て云々と。偶然の一致かどうか知りませんが、モスクワ放送とのつながりを考え合わせると、今流行の反核運動はモスクワからの指示ととられてもいたし力なく、それではソ連の核に反対する反核運動にはなり得ない。専らアメリカの核、特にトマホーク反対に照準が合わされることは確実であります。日本の脅威はトマホークではなくSS20であります。ソ連のSS20を棚上げして、反米、日米安保破棄への大衆運動が展開される、これはモスクワのもくろみより明らかであります。
案の定、五十九年九月二日のラジオ日本「マスコミを斬る」によると、八月九日、長崎市長の宣言の中のSS20とトマホーク非難の一文において、NHK七時のニュースは、ソ連SS20をカットして、アメリカ・トマホークだけを非難しました。何でこんな操作をするのでしょうか。十三番目。
なお、シェルター内でも人は死ぬ。西ドイツでの放射能測定や救助訓練を指して、むだと
説明している。核戦争後、飢餓のあらし、生き延びられるのは病原菌だけ、六億年前の地球に返る、こういうふざけた言い方であります。広島原爆投下のとき、内外の科学者は、百
年間草木は一本も生えないとか、生まれる子は奇形児とか。しかし、爆心地の草の芽は三週間ごろで開き、奇形児は聞かない。英国チャーチルは、予言が禁物であることは私が多くの経験を通じて知った教訓であると。NHKは日
本人に生きる努力と国防の意思を阻喪させているのであります。外国の謀略にかかってはなりません。NHKは反省をせねばならぬと思うのであります。
次に、某教授がNHK教育テレビ講座で、わずかマルクス批判に触れたが、NHKはこの箇所を無断カット。何でそんなことをするのでしょうか。これが
質問第十四。
五十九年八月のNHKは反戦、反核番組の洪水、反戦、反核放送局に商売がえしたかのように。それは今皆様方にお配りをいたしております。
NHKの左翼偏向の仕組みは、一、番組の中に反戦、反核を入れる。例えば、「おしん」の中に戦時中でもなかった作り話。反戦アジ、憲兵の脱走兵射殺、息子に脱走の勧めほか。「山河燃ゆ」、日本軍の虐殺、山崎豊子著と似ても似つかぬ反米、反日のドラマに変更。「炎熱商人」、日本軍の虐殺。二、完全な反戦、反核番組。それは「核の冬」。また、今皆様方に差し上げているプリントを見ていただきとう存じます。三、建国記念日ニュースでの論旨明快な中曽根
総理の話は、わかりにくく編集し直したのじゃありませんか。一方、飛鳥田氏、左翼の人の論は、中曽根出席は軍国主義復活と鮮明に印象づける編集をいたしておるではありませんか。新聞の偏向は活字だからすぐわかります。しかし一方、電波はぱっぱっと消えてしまうから偏向を
指摘しにくいのであります。しかし、洗脳や謀略操作する側としてはすぐれた武器であると思います。
会長、郵政大臣、監督不十分として今後お気をつけいただき、このことについての大臣の所感を
お尋ねしたいのです。これが十五。
文部大臣、今やこの「核の冬」のビデオを教師が子供たちに見せているのです。間違った反戦、反核を洗脳しているのであります。これからの子供の新しい教科書に「核の冬」が恐らく入れられるに相違ない。これからの子供の新しい教科書には「核の冬」を絶対に記載してはなりません。文部大臣の所見を伺いたいのであります。
最後に、NHKの「海外ウイークリー」は、マニラの運転手がチャーハンにコーヒーをかけているのを紹介をしました。それを見たフィリピン人たちが、そんな食べ方はまれである、だれが報道したのかと調べてみると、NHKのバンコクの特派員がマニラに出張していることがわかりました。今フィリピンには特派員は置いてないようですね。アメリカ上院レポートは、アキノ氏暗殺事件以後、フィリピンは特に政情、経済不安となり、共産ゲリラも活発化し、今後予断を許さないと言っております。大事件が発生したときにもマニラ発アメリカ経由の映像を日本がもらうのではいけません。専従特派員を置くべきであると考える次第であります。
以上、国民にわかるように、はぐらかすことなく簡明に御
答弁をいただきたいのであります。