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1985-02-25 第102回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十五日(月曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原慎太郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       倉成  正君    小杉  隆君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 秀征君    田中 龍夫君       野中 広務君    葉梨 信行君       原田  憲君    平沼 赳夫君       松田 九郎君    村山 達雄君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    上田  哲君       大出  俊君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    関  晴正君       中西 績介君    堀  昌雄君       松浦 利尚君    矢山 有作君       池田 克也君    神崎 武法君       伏屋 修治君    大内 啓伍君       滝沢 幸助君    三浦  隆君       梅田  勝君    柴田 睦夫君       瀬崎 博義君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 嶋崎  均君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         農林水産大臣  佐藤 守良君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     古屋  亨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)藤波 孝生君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 河本嘉久蔵君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      吉居 時哉君         内閣審議官   海野 恒男君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 宏樹君         警察庁警備局長 柴田 善憲君         総務庁人事局長 藤井 良二君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         北海道開発庁計         画監理官    滝沢  浩君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      横溝 雅夫君         国土庁長官官房         水資源部長   和気 三郎君         国土庁地方振興         局長      田中  暁君         国土庁防災局長 杉岡  浩君         法務大臣官房司         法法制調査部長 菊池 信男君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 筧  榮一君         法務省保護局長 俵谷 利幸君         法務省訟務局長 藤井 俊彦君         法務省人権擁護         局長      野崎 幸雄君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 栗山 尚一君         外務省中南米局         長       堂ノ脇光朗君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局次         次長      恩田  宗君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山田 中正君         大蔵大臣官房審         議官      角谷 正彦君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房総         務審議官    長門 保明君         厚生大臣官房会         計課長     黒木 武弘君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省社会局長 正木  馨君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         食糧庁長官   石川  弘君         水産庁長官   佐野 宏哉君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省機械         情報産業局長  木下 博生君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         郵政省通信政策         局長      奥山 雄材君         労働省労政局長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      寺園 成章君         労働省職業安定          局長      加藤  孝君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省建設経済          局長      高橋  進君         建設省都市局長 梶原  拓君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省道路局長 田中淳七郎君         建設省住宅局長 吉沢 奎介君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省財政局長 花岡 圭三君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       仁杉  巌君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         日本国有鉄道常         務理事     太田 知行君         予算委員会調査          室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     松田 九郎君   石原慎太郎君     平沼 赳夫君   田中 龍夫君     田中 秀征君   武藤 嘉文君     野中 広務君   井上 一成君     中西 績介君   矢山 有作君     関  晴正君   近江巳記夫君     伏屋 修治君   木下敬之助君     滝沢 幸助君   小平  忠君     三浦  隆君   中川利三郎君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   田中 秀征君     田中 龍夫君   野中 広務君     武藤 嘉文君   平沼 赳夫君     石原慎太郎君   松田 九郎君     伊藤宗一郎君   関  晴正君     矢山 有作君   中西 績介君     井上 一成君   伏屋 修治君     近江巳記夫君   滝沢 幸助君     木下敬之助君   三浦  隆君     小平  忠君   柴田 睦夫君     梅田  勝岩     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神崎武法君。
  3. 神崎武法

    神崎委員 公明党の神崎武法でございます。  初めに、経済摩擦問題からお尋ねをいたします。  日米貿易摩擦の問題は、我が国外交の基本であります日米関係の基盤にかかわる問題でございますから、貿易摩擦解消のために我が国としても真摯な努力を図らなければならないと考えるものでございます。しかしながら、その過程でやはり我が国として米国に対して言うべきことは言わなくちゃいけないだろうし、米国内において最近見られます保護主義的傾向に対しましては、やはり自由貿易を堅持する観点から、米国に対してやはり言うべきことは言わなくちゃいけないだろうと思うわけでございます。そういう観点からこの問題につきまして何点かお尋ねをいたしたいと思います。  初めに、昨年十月三十日にレーガン大統領が署名し、発効いたしました一九八四年米国貿易関税法いわゆるオムニバス法につきましてお尋ねをいたします。この法律は、国際貿易投資法、対イスラエル貿易特恵関税制度貿易関連法改正鉄鋼輸入安定法ワイン平衡輸出拡大法等から成っておりますけれども運用いかんでは保護主義的な色彩の強いものであります。この法律は今後の米国貿易投資政策を遂行する上で重要な役割を果たすだろうと思われるわけでございますけれども我が国としてはこの法律をどのように位置づけておられるのか、伺います。
  4. 恩田宗

    恩田政府委員 米国政府貿易投資政策を追求する上においてその法律的根拠となるような重要な法案というのは幾つかございます。一九七四年の米国通商法、それから七九年の米国通商協定法がございますが、昨年十月三十日に成立いたしましたいわゆるオムニバス法案、一九八四年の貿易関税法は、これらの二つの法律と並びまして米国政府政策遂行上の基本的な枠組み及び手段を提供するものでございまして、極めて重要な法律だと私ども考えております。  先生指摘のとおりこの法律内容はいろいろな内容がございまして、まさにオムニバス、雑多な内容が入っておりますが、貿易機会拡大をするような積極的な面もございますれば、またその運用いかんによっては保護主義的な色彩を有するようなものもございます。したがいまして、私どもとしては米国政府がこの法律をいかなる形で運用していくかということを十分注意して見守っていく必要がある、かように考えております。
  5. 神崎武法

    神崎委員 このオムニバス法の中で特に国際貿易投資法につきましては、外国の不公正な貿易慣行くの対抗措置を規定いたします通商法の三百一条、この適用対象範囲拡大するという内容になっているのであります。従来、この適用対象商品貿易及び貿易関連サービスに限っていたのでありますけれども、今回の改正商品貿易のほかサービス分野一般、直接投資拡大しておりますし、半導体など特定のハイテク品目に関しまして大統領関税撤廃交渉権限が与えられている点が注目されるのであります。そのねらいをどう理解するか、特に米国がここで問題にしている点は一体何なのか、今後どのような影響が生ずると考えられるか、この点についてお願いします。
  6. 恩田宗

    恩田政府委員 先生指摘のとおり、この法律によりまして米国政府外国の不公正な貿易慣行に対して対抗措置をとるその対象拡大されております。従来の法律でございますと、商品貿易及び商品貿易にかかわるサービスでございましたが、さらにこれを一般サービス分野及び直接投資拡大しております。確かに、これによりますと対抗措置拡大する、対象拡大されたわけでございますから、保護貿易主義的な方向に走るのではないかというおそれもあるわけでございますが、私どもとしては、米国政府としてこのような規定を設けた主な趣旨は、今後サービス分野において外国政府との間で自由な貿易を推進していくための交渉の武器というふうにとっているのではないか、したがいましてこれが必ず保護貿易主義的な形で運用されるというふうなことに考えていると直ちに理解しなくてもいいのではないかというふうに考えております。
  7. 神崎武法

    神崎委員 国際貿易投資法で規定いたします対抗措置サービス投資分野でとられますと、ガットとの関係でどうなるかという問題があるわけですが、これは直接の問題とならないだろうと思うわけでありますが、商品貿易分野米国大統領対抗措置を一方的に発動するということになりますと、これはガットの二十三条の紛争処理手続に違反すると考えられますが、いかがでしょうか。
  8. 恩田宗

    恩田政府委員 八四年の貿易関税法は、大統領に対して議会の権限に属するような事柄、関税の引き上げであるとかその他対抗措置大統領がとることができるように権限を与えるわけでございますが、大統領はこの権限を行使するに当たりましては、手続附にはこの法律によりましてまず相手国との協議を行うということにされておりますし、また通商協定があるような場合には、その協定に従って相手国と満足な形での協議をする、特にガットを含む通商協定に規定された正式な紛争解決手続をとることになっておりますので、このような手続に従って米国政府が行動をとる限りはガット条項に違反するというふうには言えないのではないか、かように考えております。
  9. 神崎武法

    神崎委員 サービス分野につきましても、昨年六月のロンドン・サミット経済宣言におきましてサービス国際貿易自由化拡大化のための努力がうたわれているところでございます。ガットの新ラウンド交渉の中でもこのサービスの問題というものが中心的な問題だろうと思われるわけであります。サービス取引自由化に強い熱意を示していると言われます米国が、国内では運用いかんで保護主義的な性格を持ち得るという対抗措置範囲拡大しているという点は、私としては矛盾をしているのではないかと考えますけれども政府としてはどのようにお考えになっておりますか。
  10. 恩田宗

    恩田政府委員 米国我が国と同様に新ラウンドの推進につきましては極めて熱心でございます。自由貿易発展強化のためには全力を挙げて推進するというのが現在の米国政権考え方であろうかと思います。  先生指摘のとおり、この八四年の貿易関税法サービス分野においても対抗措置をとることができるようになっておりますが、これは先ほど御説明いたしましたとおり、第一義的にはサービス分野における貿易について諸外国市場を開放するために米国としては対抗手段というてこを持つという趣旨で制定されたものではないかというふうに私どもとしては考えたいと思っております。  もちろん、この可能性の問題としては、この条項により極めて保護主義的な措置をとり得るということはあり得るわけでございますが、私どもとしてはかかる市場閉鎖的な方向でのこの条項適用ということについては米国政府が慎重な態度をとるように、かように期待しているわけでございます。
  11. 神崎武法

    神崎委員 我が国の対米輸出の中で半導体通信機器、コンピューターの輸出が急増しているわけでございますが、日米間の貿易摩擦ハイテク摩擦という形で再発する危険性が高いと思われるわけであります。その意味におきまして、日米ハイテク摩擦一つの象徴として昨年十一月に発生いたしましたモトローラ社によります日本製自動車電話及び部品についてのダンピング提訴事件の今後の取り扱いが注目されるのであります。このダンピング事件概要提訴された企業名、今後の見通し及びこの事件が与える影響についてお尋ねをいたします。
  12. 木下博生

    木下政府委員 日米先端技術の問題につきましては、先端技術作業部会というのを設けまして、私どもアメリカ政府との間で常時協議を行っております。  今、御質問のモトローラ自動車電話に関するダンピング提訴概要でございますが、昨年十一月に日本企業の九社が公正価格以下で自動車電話米国輸出しており、これによりアメリカ自動車電話産業が実質的な被害を受けているといたしまして、七九年通商協定法第七百三十二条に基づいて商務省及び国際貿易委員会に対しアンチダンピング提訴を行ったものでございます。提訴された日本企業は、日本電気、富士通、沖電気、日立製作所、三菱電機、東芝、松下通信工業、国際電気、日本無線の九社でございます。  現在、アメリカ政府機関におきまして調査が進行中でございますので、その先行きについてはコメントは差し控えたいと思いますが、今後の展開については十分に注視してまいりたいというふうに考えております。
  13. 神崎武法

    神崎委員 最近の動きを見てまいりますと、この日米間の通信機器をめぐる摩擦という問題が大きな問題となってまいっております。この問題につきまして、アメリカのFCC、連邦通信委員会ファウラー委員長日本製品などを対象通信機器輸入規制につながる新しい認定制度検討を始めだということを明らかにしているのであります。  まず、この通信機器をめぐる貿易実情という問題でございますけれども、どうもこれは日本アメリカ通関区分が異なるために統計のとり方が違っておりまして、数字日米間の統計で一定していないのであります。  アメリカITC国際貿易委員会の昨年六月のレポートによりますと、一九八三年の電気通信機器及び部品米国への輸入額総額で十九億九千万ドル、うち日本は七億一千六百万ドル、米国輸出の方は総額で十三億四千二百万ドル、うち日本は四千三百万ドルになっているのであります。差し引きでも米国のこの分野貿易収支は六億四千九百万ドルの赤字ということになっているわけでございまして、我が国の対米輸出輸入の割に多いということは事実であります。  しかしながら、より子細に検討をいたしますと、一九八二年までは米国はこの分野黒字であったわけでありますが、一九八三年に赤字になったのであります。その理由をこのITCレポートから数字を拾ってみますと、香港からの輸入が三四〇%増、二億七千二百万ドル、台湾からの輸入が一八二%増、三億七千七百万ドル、シンガポールからの輸入が一二六%増、四千二百万ドルというようになっておりますし、我が国からの輸入は六七%増の七億一千六百万ドルということであります。それから米国からの輸出数字を見ましても、韓国への輸出が一四%減、一億八千六百万ドル、香港の場合も七%減、二千百万ドル、台湾に対しても一七%減で二千四百万ドル、我が国の場合は三一%増で四千三百万ドルとなっているのであります。  要するに、我が国のこの分野でのアメリカへの輸出というものは、他の東南アジア諸国と比較いたしますとそれらの諸国よりも急増しているという実情にはないわけでありますし、我が国市場開放措置も、問題はあろうかと思いますけれども進みつつある現状であります。これに比べまして、韓国台湾香港等東南アジアのこの分野輸入が減少して対米輸出が急増した、この点で一九八三年に米国のこの分野貿易赤字が生じた原因があるように思われるわけであります。昨年の統計はわかりませんけれども、同じ傾向が続いていると思われますが、いかがでしょうか。     〔委員長退席大西委員長代理着席
  14. 恩田宗

    恩田政府委員 最近の米国通信機器輸出入状況が激変しているというのは先生の御指摘のとおりでございまして、我が国及びアジアNICS諸国からの輸出が急増している、他方アメリカ輸出が停滞しているというのは事実でございます。それによりまして、米国がこのような状況に大変な関心を持っているというのは事実でございますが、問題は、先生の御指摘日本以外のアジア諸国米国に対する輸出が極めて伸びている、それが問題ではないかという御指摘でございますが、まだ何といっても米国輸入に対する日本の占めるシェアが非常に大きいものでございますから、やはり米国としては日本との通信機器貿易のバランスというものを最も大きな問題としているのではないか、この傾向が本年まで続くということについて大変心配している、そうではないかというように解釈するわけでございます。
  15. 神崎武法

    神崎委員 日米間のこの通信機器をめぐる摩擦が急に問題化いたしましたのは、この分野米国貿易収支が一九八二年まで黒字だったのが一九八三年に赤字になったことによろうかと思いますけれども、そのほかに一つはこの問題を日本市場閉鎖性シンボル化にしているんじゃないか、対日交渉のタクティックスの面があるんではないかと思われるわけでございます。もう一つは、現在優位にありますこのハイテク分野でも仮に米国日本におくれをとるようであるならば、世界における米国政治軍事面のリーダーシップに陰りが出てくる、そういった危機感政治論議というものもこの背景にある、このように考えるわけでございますけれども、この問題についてどのようにお考えになっておりますか。これは郵政省の方にお伺いいたしましょう。
  16. 奥山雄材

    奥山政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたように、確かにアメリカの対通信機貿易赤字というものは一九八三年から全世界的には赤字基調になっておりますけれども、対日本との関係でいいますと、在来から日本の方が黒字でございました。ただ、最近の赤字の幅が輸出入比で次第に拡大する傾向があることから、アメリカにおきましては特に危機感を持っているものだというふうに認識しております。  そこで、そのような背景のもとに、通信機につきまして特に対外経済摩擦一つのシンボリックな現象として取り扱われておる原因は、幾つかあろうかと思いますけれども、必ずしも私ども我が国市場閉鎖性に起因するものとは思っておりません。このインバランスの背景には、一つにはアメリカ側の我が国市場に対する研究不足、あるいは米国側の企業日本における営業活動の積極さの欠如といったようなものもあると考えております。いずれにいたしましても、日本側といたしましては、アメリカ側の積極的な営業努力と相まちまして、内外無差別、簡素、透明にして市場開放を行うという基本的な精神に基づきまして、特に本年の四月一日からは新しい電気通信事業法が施行されますので、それに向かって、内外を問わず、良質で低廉な電気通信の機器なりサービス日本国内において供給されることを念願しているわけでございます。  なお、通信機器独特の問題といたしまして一つ挙げられますのは、昨年の一月一日にアメリカの電信電話株式会社、いわゆるATTが七つの地方電話会社に分割されたことに伴いまして、それまでATTの系列会社でありましたウェスタン・エレクトリック社から購入しておりました機器の一手購入の制度が崩れまして、安くてよい電話機が市場のどこからでも調達できるようになったという背景が、日本通信機輸入の特に大きな増大につながったという原因指摘されようかと思います。
  17. 神崎武法

    神崎委員 郵政大臣にお尋ねをいたしますけれども、先週郵政省の事務次官がこの通信機器問題で訪米されたというふうに伺っておりますけれども、この通信機器問題の米国における実情等、その訪米の結果はいかがでしょうか。
  18. 左藤恵

    左藤国務大臣 小山郵政事務次官が二月の十八日から二十二日まで訪米いたしまして、ワシントンで米国政府・議会筋要人と個別的に会見をいたしました。会見の相手は、ボルドリッジ商務長官、それからオルマー同次官、ブロック通商代表、スミス同次席代表、ダンフォース上院議員、ワース下院議員等であり産して、米国国内では、我が国の今回の電気通信改革によって日本市場がさらに閉鎖的になるのではないかという疑念が非常に生じておるわけであります。そういうことから、そういった疑念を解消するために小山次官が今回の改革の趣旨の説明をいたしまして、今局長からお答え申し上げましたように、郵政省といたしましても、内外無差別、簡素、透明、それから市場開放、この四つの原則にのっとって、利用者たる国民が希望しております良質で高度で低廉なサービス、機器が供給されるというようにしなければならない、こういうことを向こうに話をいたしまして、米国側の疑念の解消に努力いたしましたが、なかなかたくさんの方の全部に御理解いただけるというところまでいっておりませんけれども、そういったことについて努力をしてきた、こういうことでございます。
  19. 神崎武法

    神崎委員 連邦通信委員会ファウラー委員長の発言、新たな認定制度検討を始めた、こういう発言は、自由貿易主義に逆行し、貿易の縮小均衡につながるものであると考えますけれども政府としてどのような対処というのを考えていらっしゃいますか。
  20. 恩田宗

    恩田政府委員 先生指摘のファウラーFCC委員長の談話というのは、多分十日付でのワシントン・ポストでの報道の内容かと思いますが、私どもとしては、FCCは従来から米国における電気通信分野の規制緩和には非常に努力してきており、この方向に逆行するような輸入制限的な措置は従来はとってこなかったというふうに思っておりますし、努力をしてきたというふうに思っておりますし、輸入制限的な措置をとらないように期待しているわけでございますが、この報道の内容の具体的内容自体については、実はまだ内部作業をやっているという報道でございまして、十分私どもとしては内容を承知しておりません。したがいまして、コメントは差し控えたいわけでございますが、我が国としては、この分野において自由貿易に反するような保護主義的な動き、特に分野別な相互主義というような考え方を米国政府がとらないように、ぜひ米国側に対して今後とも働きかけてまいりたい、かように考えております。
  21. 神崎武法

    神崎委員 昨年十一月一日米国上院外交委員会、パーシー委員長の方で、我が国がこれまで過去四年間にわたってとってまいりました一連の対外経済措置に関する報告書が公表されたわけであります。そのポイントは、一つは、たばこ、電気通信市場、金融・資本市場に関する我が国のコミットメントは一年以内に出されたので、市場開放の効果は今後の実施いかんによる、それからスタンダード、関税、農産物、通関手続、電電公社の調達、直接投資、エネルギーについては市場開放の効果が部分的効果にとどまっている、政府調達・サービス輸入促進については我が国のコミットメントが明確でなかったり実行されていない、それから衛星購入の問題とソフトウエア保護問題については、米国にとって重要性を有する、こういう指摘があるのであります。我が国としては、このパーシー委員会の公表されている報告書の指摘につきましてどのように評価をされているのか。この報告書におきます事実の認識は正確であるかどうか。
  22. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 本報告書は、米国政府作成にかかるものでありまして、その記述におきまして正確を期そうという意向は見られるわけでありまして、我が国のこれまでの努力には相当の評価を与えていることは一面あります。他方、米国の立場から書かれたものであるだけに、一面的であるということは否めないわけでありまして、米国製品の対日輸出が思ったほど伸びないことについて、みずからの輸出努力等に言及することなく我が国市場の開放がまだ十分でないことを述べているのは、問題がないとは言えないと思います。これらにつきましては、米国に対しまして我が国としても申し入れを行った次第でございます。
  23. 神崎武法

    神崎委員 日米サービス分野におきます摩擦一つとして、米国人弁護士活躍の開放、要するに外国弁護士に我が国における事務所の開設を認めるか否か、こういう問題が米国側から挙げられているわけでありますけれども、この問題について米国側の主張と我が国の対応はどうかという点であります。弁護士の相互常駐を含みます国際交流、自由化の問題は、避けて通れないものであります。しかしながらこの問題は、貿易摩擦やニーズ論といった次元で論ずる問題ではなく、広く司法制度、弁護士制度の変革という観点、さらに、戦後ようやく我が国で育ってまいりました我が国の渉外弁護士の今後の発展と両立できる方向で、そういう配慮をしつつ解決さるべき問題であると考えますが、この点についていかがでしょうか。
  24. 菊池信男

    ○菊池(信)政府委員 先生指摘の、アメリカを含みます外国弁護士の日本での事務所開設による活動の問題につきましては、先生指摘のように、この問題をアメリカ側としてはサービス業の自由化あるいは非関税障壁の一部ということで問題を提起してまいっておりますわけでございますが、弁護士制度そのものはその国の司法制度あるいは国民の法律生活と深いかかわりを持っておりますので、経済的な側面のあることはもちろんだとは存じますけれども、おっしゃいますとおり司法制度の問題として対処すべきだというふうに考えておりまして、従前からその点についてはアメリカ側に十分主張してまいっております。その点の基本的な私どもの態度のあり方については、アメリカ側も十分理解をしておるというふうに考えております。
  25. 神崎武法

    神崎委員 昨年の十二月四日に、対外経済問題の処理のために従来からあります経済対策閣僚会議河本国務大臣を主宰者といたします対外経済問題関係閣僚会議を設置したわけであります。さらに、会議の諮問機関として学識経験者を中心に対外経済問題諮問委員会というものを開催することにいたしているわけでございますが、この諮問委員会では本年三月下旬を目途に報告書取りまとめを予定して審議が行われている。このように聞いておりますけれども、現在の審議状況といいましょうか、一体何を中心に審議されておられるのか、この点について。
  26. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 諮問委員会は昨年の十二月にスタートいたしまして、現在まで五回開かれております。なお、そのほかにアメリカで第一線の産業界の人からヒアリングを行っております。  なお、あと三月までに数回の会合を開く予定でございますが、議論をしていただいておりますのは、過去六回の我が国市場開放が一体どのような成果があったのか、評価されない部分があるとすればそれは一体どういう理由に基づいて評価されないのか、過去のフォローアップが一つでございます。それからもう一つは、中期的な我が国の対外経済政策をどう進めるべきか。もっとも、中期的な将来の展望を開くためには現状を分析しなければなりませんので、現在の上に立って将来の中期的な展望、こういうことについて今議論をしていただいておりまして、三月下旬を目標にしておりますが、若干ずれることがあろうかと思いますが、おおむねそのころに答申をいただくことになっております。
  27. 神崎武法

    神崎委員 昨年十二月十四日に政府は発展途上国向けの市場開放策を決定しております。これは東京ラウンド関税率引き下げを繰り上げ実施するものでありまして、特に発展途上国に向けまして、農産物三十九品目につきまして関税率の引き下げを二年繰り上げて実施する内容になっております。しかしながら、具体的品目につきましては発展途上国側の評価が大変厳しいということが言われているのであります。まず、この市場開放策に対します東南アジアの主要各国の評価というものはどういうものであるかということ。
  28. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答えを申し上げます。  昨年の十二月の対外経済対策におきましては、農林水産物部門におきまして、東京ラウンド関税引き下げにつきまして、今お話がございましたように、開発途上国関連品目については二年、その他の品目については一年ということで前倒しを決定をいたしました。この措置は、アメリカなりあるいはECに比べまして一歩も二歩も前進をした措置でございますので、その点につきましては感謝なり評価を受けているわけでございますが、同時にASEAN諸国からは、かねて関税引き下げの要望のございました、例えば骨なし鶏肉でございますとか広葉樹合板の中で厚さが六ミリ未満のもの、こういったものが対象になってないという点につきまして引き続き我が国努力を要請をされている、こういう実情でございます。
  29. 神崎武法

    神崎委員 各国の評価の中で、ただいま骨なし鶏肉の問題あるいは広葉樹合板の問題が指摘されているという点が出たわけでございますが、さらに、最近二次にわたりましてASEAN諸国を訪問いたしました経団連の代表団が、間もなく政府にASEAN諸国との新たな協力関係のあり方についての見解を提出するということが言われておりますけれども、その骨子の中でも、骨なし鶏肉、合板など米国向けよりも途上国向けが高い関税の是正という問題が取り上げられているということが伝えられているのであります。したがいまして、この問題について我が国はどう対応されるのか、どう考えているのかという点につきまして、初めに農水省にお尋ねをいたします。
  30. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神崎先生にお答えをいたします。  経団連ミッションのASEAN訪問の結果については、実は事務当局が口頭で概要報告を受けておりますが、現時点で経団連が帰国報告書を出すかどうかについては承知しておりません。  経団連ミッションが訪問先のASEAN諸国から各分野にわたりさまざまな要請を受けたと聞いておりますが、三つの柱がある。その一つは、輸出型産業への投資、技術協力、二番目が基礎産業部門や高付加価値産業への投資、それからもう一つは、農林水産物については合板、骨なし鶏肉等の関税引き下げなどの要請がなされたと聞いております。  そんなことで、合板とか骨なし鶏肉の関税引き下げ要求に対しては、我が国は、御存じと思いますが、五十六、五十七、五十八年で大体百七十億ドルぐらい農産物を輸入しているというようなことでございまして、世界最大の農林水産物純輸入国だということ、そんなことでこれ以上の農林水産物輸入貿易インバランスの是正を図ることは困難である。それからもう一つは、合板、鶏肉の関税差は、実は国産品との競合度などの違いによるものでありまして、国別に差別を行っているものではない。こんなことをASEAN側に説明して理解を求めたわけでございます。  我が国の農林水産物につきましては、国内農林水産物の需給動向を踏まえ、日本農林水産業を生かすとの観点に立って、その健全な発展と調和のとれた形で行われるよう対処してまいる所存でございます。  そんなことで、実はASEAN諸国等開発途上国の貿易不均衡の問題につきましては、特に改善につきましては、むしろ国内農林水産業の厳しい諸事情を踏まえて対応する必要があり、また基本的には我が国全体として各般にわたる総合的な検討が必要であると考えております。
  31. 神崎武法

    神崎委員 各国の方は、骨なし鶏肉、広葉樹合板についてこれをシンボル化して閉鎖性を言っている。我が国の農水省の方は、これはこれ以上の輸入というものは困難である、こういう認識を示しているわけでございますけれども、外務省としてはどういうふうに対応されるお考えでしょうか。
  32. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この問題はなかなか頭の痛い問題でして、日本としましては、東南アジア諸国に対しまして、先ほどから答弁もありましたように、東京ラウンドの前倒しとかいろいろな面で、特恵関税の枠の拡大とかいろいろなことをやってきておるわけですが、インバランスが拡大をしているということもありますし、特に今おっしゃるような骨抜き鶏肉とか合板等が象徴的な存在として、ASEAN諸国から日本に対して相当厳しい注文が出ております。これは経団連の稲山会長を初め代表者にも出ておるわけでございまして、日本実情は今農水大臣の言われたとおりでございますが、しかし、同時にこれはやはりこれからのASEANと日本との関係を友好状況に維持発展をさせていかなければならぬということでもございますし、日本日本なりにやはり市場開放をこれからも進めていくという基本的な姿勢で進まなければ自由貿易体制というものが堅持できないということでございますから、この点につきましても、日本、ASEANの経済閣僚会議等も控えておりますが、日本としてどれだけASEANの要求に応じられるか、できないものはできないわけですから、どれだけ応じられるかということについて日本なりにまた努力はしなければならない、私はこういうふうに思っております。そういう点で、関係各省でいろいろと調整をしながら、やはりASEANとの関係を維持するために努力を進めてまいらなければならぬ、こういうふうに思います。
  33. 神崎武法

    神崎委員 河本大臣にお伺いいたしたいのでありますけれども、この三月にまとめる予定である、延びるかもしれませんということでありますけれども、この対外経済問題諮問委員会の報告書、その中で当然発展途上国に対する対応というものも盛り込まれるのではないかと思われるわけであります。そういった場合に、その段階で第二弾の発展途上国向けの市場開放策というものが出てくるのかどうか、その点いかがでしょうか。
  34. 河本敏夫

    河本(敏)国務大臣 諮問委員会には特別参考人といたしましてASEANの代表も入っていただいておりまして、直接いろんな意見を聞いておりますし、また今御指摘の経団連ミッションからの正式報告も出てくるようでございますし、それからまだ実現しておりませんけれども、自民党の方からもASEANへ調査のために人を派遣する、こういう話等もございますので、そういう諸般の動き等を見ながら総合的に判断をしていきたい、このように思います。
  35. 神崎武法

    神崎委員 次に、ソフトウエアの保護の問題についてお尋ねをいたしますけれども、さきの米国政府の評価の中でも、アメリカにとって重要性を有する二つの分野、その一つとしてソフトウエアの保護の問題を取り上げているのであります。その中で、どうも日本政府というものは、コンピューターソフトウエアに対する新しい立法措置は昨年の通常国会には提出しないと約束しているけれども、その後これを断絶する、もう立法措置はしないということは言っていないということを指摘して、その点について不満の意を表明しているわけでありますけれども、ソフトウェア保護をめぐります日米問題の現状はどういう点か、特に何が問題になっているか、こういう点につきましてお尋ねをいたします。
  36. 木下博生

    木下政府委員 コンピューターのプログラムを適切に保護いたしますことは、情報化社会の基盤を整備する意味で極めて重要なものでございます。そういうことで通産省といたしましては、その適切な保護の方式が、いかなる方式が一番妥当かということでいろいろ検討してまいりまして、昨年の春ごろまでに、プログラム権法という独自の立法でやる方法がないかということを検討をしてきたわけでございます。  それに対しまして、国内におきましても文部省の方で著作権法でどうかという御意見もございましたし、またアメリカの方から独自の法律でやるよりもむしろ著作権法でどうかというような意見等もございまして、昨年四月の経済対策閣僚会議におきましては、「コンピュータプログラムに係る権利保護の問題については、」「より良い権利保護の在り方につき、国際的調和にも留意しつつ更に調整を進める」旨の決定がなされたわけでございます。  その後、通産省といたしましては、この決定に基づきまして文部省あるいは米国政府等と鋭意意見交換を行ってきているところでございますが、現在のところ関係方面との間で意見の一致を見るに至っておりません。通産省といたしましては、プログラムに関する権利のよりよき保護を図るべく、引き続き関係方面と調整を続けていきたいというふうに考えております。
  37. 神崎武法

    神崎委員 ただいまの答弁の中でもお話が出ましたけれども、現行法制度上ソフトウェアの保護の方法といたしましては、著作権法による保護あるいは特許法による保護、契約による保護、不法行為法等による保護、不正競争防止法等による保護、刑事法による保護、さまざまな保護のあり方があると思われるのであります。それぞれの分野検討がなされていると思いますけれども、それぞれの関係性をどう考えるか、いろいろな角度から検討を要しようと思うのであります。特に昨年、文化庁は著作権法の改正による保護、通産省はプログラム権法の新立法による措置という形で二省庁案がまとまった。ところが、その後調整がなかなか困難で今日まで国会に提出されるに至っていない、このように聞いておりますけれども、文化庁、通産省それぞれどういうお考えを持っておられるのか、これまでの検討経過というものをお伺いいたしたいと思います。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  38. 加戸守行

    ○加戸政府委員 お答えいたします。  ソフトウエア保護問題につきましては、文化庁といたしましても、著作権法による保護を視点といたしました見地から、著作権審議会におきまして御検討いただき、昨年の一月に、コンピュータープログラムにつきましては、著作権法による保護という観点からそのプログラムの特性に見合った措置を講すべきであるという御報告をいただきまして、昨年二月に文化庁試案といたしまして、著作権法の一部改正案を準備したわけでございます。しかしながら、先ほどお答えありました通産省の方のプログラム権法構想がございまして、その間の調整を進めてまいったわけでございますが、いまだ十分に見解の一致を見るに至っていない。  ただ、文化庁といたしましては、国際的な趨勢が既に、英米先進諸国の体制が著作権法改正あるいは著作権法による保護等が判例において認められている、こういった国際状況あるいは国際機関における検討方向も、著作権法による保護の方向に向かっているという状況を踏まえまして、なお、国内におきます判例も既に幾つか著作権法による保護を認めておるわけでございますので、今の諸般の状況の中におきましては、通産省と十分調整を進めながら、調整つき次第、著作権法による保護の考え方を前提といたしまして、国会に法提案をしたいと考えている次第でございます。
  39. 神崎武法

    神崎委員 通産省、先ほどもお伺いいたしたわけですが、この点、改めていかがでしょうか。
  40. 木下博生

    木下政府委員 通産省といたしましては、産業構造審議会にソフトウエア基盤整備小委員会を設けまして、コンピュータープログラムの適切な保護のあり方について検討を願ったところでございます。この小委員会は、五十八年の十二月に、プログラムの権利保護を図るためには工業所有権的な観点に立った新たな立法が妥当であるとの中間答申をまとめております。  それに基づきまして、通産省としては、先ほど申し上げましたように、プログラム権法というような名前の新しい立法を提出すべくいろいろ検討をしてきたわけでございますが、先ほども申しました経過によりまして、文部省との調整あるいは米国の意見との調整ということもありまして、今のところ調整を続けておる状況でございます。
  41. 神崎武法

    神崎委員 この問題につきましては、米国から我が国はどう対応するのかという問題があるわけでありますけれども、国内で通産省と文化庁、意見調整ができていない、これでは大変困ったものだと思うわけであります。確かに個人的人格権の延長としての著作権と考えるのか、そして法人著作というものをそういう例外的なものとして位置づけるのか。通産省のおっしゃるように、産業政策の立場から、法人著作というものを当然の前提にして、このソフトウエアの保護を考えるのか。その両方の領域で必ずしも含まれ切れないものがあるわけでありますから、なかなか難しい問題ではございますけれども、やはりこれも早急に調整をしていただいて、政府としての考え方というものをまとめていただきたい、強くこの点を要望するものであります。  それから、ただいま文化庁の方からも御答弁ございましたけれども、コンピューターのソフトウエアプログラムが著作権法で保護される著作物に当たることにつきましては、これまで地裁レベルの判決が出されているわけであります。  ところで、企業の従業員が多数関与してプログラムを作成した場合に、そのプログラムの著作権がだれに帰属するのか、こういう問題につきまして、最近この二月十三日に、大手重機メーカーであります新潟鉄工所からコンピュータープログラムの資料などを持ち出した元幹部技師に対します業務上横領事件で、一審判決は、このプログラムの著作権は会社に帰属するという判断を示したのであります。これは著作権法十五条の「自己の著作の名義の下に公表するもの」という法人著作になるための要件につきましての解釈でありますけれども、この点については著作権審議会の中間報告でも、「法律上の取扱いを明確にするため法人著作の規定を整備する必要がある」という指摘がなされているのであります。  この判決について文化庁として、いわゆるこの中間報告の方向に沿ったものというふうに理解されているのか、あるいは現行法の解釈でともかくそういうものについても法人著作は認められるということであるから、むしろ立法の必要はないという方向に受け取られているのか、その点いかがでしょうか。
  42. 加戸守行

    ○加戸政府委員 既に昭和五十七年十二月東京地裁、五十八年三月横浜地裁、五十九年一月大阪地裁ということで、民事事件に関しましては著作権による保護を認めた判例があるわけでございますが、このたびの新潟鉄工所事件は刑事事件でございまして、業務上横領罪の適用の前提といたしまして著作権の帰属が争われたケースでございます。  これにつきましては、先生今御指摘なさいましたように、著作権法十五条の適用の有無に関しまして、著作権法十五条では法人等の名義で公表されるものの著作者は法人等とするということでございまして、この新潟鉄工所事件の場合にはまだ未公表のものでございまして、仮に公表されるとするならば法人等の名義で公表されるはずであるということを前提として、解釈上十五条の適用を認めたわけでございます。  ただ、先ほどの著作権審議会の報告におきましては、いずれの名義で公表するかということが判然としないものもあり得るということで、法体系の整備を図ったらどうかという御指摘もございまして、昨年二月に公表しました文化庁試案としての著作権法一部改正案におきましては、その原則をひっくり返しまして、職務に従事する者の名義で公表されるものを除きという形で、原則と例外とをちょうど逆にしようという案を準備しているわけでございます。そういう意味では、特にプログラムに関しましては、一般的に会社のプログラムとして利用される実態があるわけでございますので、そういった原則、例外の関係につきましては、やはり十五条を改正いたしまして、その点を明確にした方がより判決の趣旨にも沿うのではないかと考えておる段階でございます。
  43. 神崎武法

    神崎委員 次に、累積債務問題につきまして、時間の関係上簡単に何点かお尋ねをいたします。  発展途上国の累積債務問題は、全世界規模で国際金融不安の火種になっているのでありますけれども、この発展途上国の対外債務の総額が一体どのくらいあるかというのが必ずしも明瞭でないのであります。  OECDの資料によりますと、これは中長期の借り入れでありますが、一九八二年末で五千五百二十億ドル、一九八六年末で六千六十億ドル、それから世界経済白書では、これは世銀の統計、公的及び公的保証債務を挙げておりますけれども、一九八二年で五千百七十八億ドル、一九八三年についてはこの額が挙げられておりませんが、外交青書を見ますと、一九八三年末の世銀統計として短期債務を含めて八千百億ドルという数字が挙がっております。このほかにIMFの資料によりますと、一九八二年七千二百四十億ドル、一九八三年七千六百四十六億ドル、一九八四年は推定で八千百二十四億ドル、こういう数字が挙がっております。このうち民間資金が約七割を占めているというのが特徴として指摘をされているのであります。  統計のとり方がOECD、世銀、IMF等で異なっておりますけれども、昨年末でこの発展途上国の累積債務の総額、長期資金、短期資金の別、それから公的資金、民間資金の割合、デット・サービスの比率は大体どのくらいであるか。  それから、この累積債務問題につきまして現状をどう認識するかという点でありますが、債務返済が先送りされまして小康状態を得ておりますけれども、抜本的対策なり問題解決は手つかずのままであると私は認識しておりますが、政府としてどういう状態にあると認識されているのか。
  44. 行天豊雄

    行天政府委員 御指摘のように、この累積債務額についてはいろいろな推計がございますが、御質問の昨年末の数字といたしましては、IMFのものだけが現在あると思います。それによりますと、昨年末の開発途上国の累積債務総額は八千二百六十七億ドルということになっておりまして、これを短期、それから中長期に分けてみますと、短期が九百八十九億ドル、それから中長期が七千二百七十八億ドルということでございます。それから、公的資金と民間資金の割合でございますが、このIMFの統計では中長期の債務についてだけ仕分けがしてございます。それによりますと、公的資金が二千六百七十九億ドル、それから民間資金が四千五百九十九億ドルということになっております。それから、同じIMFの資料によりますと、昨年末におきます開発途上国の累積債務のいわゆるデット・サービス・レシオでございますが、これを平均いたしまして二一・五%ということになっております。  こういう状況を我々としてどう見ておるかという御質問でございました。確かに国によって相当状況が違いますし、御指摘のように根本的な問題は非常に根深く、かつ長期間の対策を必要とするものだと思います。ただ、少なくとも一九八二、三年、昭和五十七、八年の状況に比べますと、私、全体といたしましては好転しておる要素もあるのじゃないかと思っておるわけでございます。  と申しますのは、一つは、御承知のとおり米国が非常に堅調な景気回復をここ数年続けておりますので、こういった途上国からの輸出がかなり伸びておる。それから、一方途上国側でも引き締め政策を行いまして輸入抑制を図っておるというようなことから、いわゆる貿易収支、経常収支の点では、昨年、ことしあたりかなり改善しておるのじゃないかということが一つでございます。  それからもう一つは、これも御承知のとおり、IMFが中心になりまして、いろいろこういった累積債務国の経済政策についていわゆるコンディショナリティーというものを課して政策調整を促進しておるというようなことが効果をあらわしておる面もございまして、国によりましてはインフレ率が下がってきておるとか、先ほども申しましたように経常収支が改善しておるというようないい傾向が出ておるようでございます。  それから三番目には、これも御承知のとおり、大きな債務累積国につきまして、このところ、主として民間の債権銀行との間で債務の処理につきましていろいろ話し合いが行われて、調整政策がうまくいっている国につきましては、例えば多年度にわたってのリスケジュール交渉が妥結したというようなことも最近起こっておるわけでございます。ですから、そういった状況を踏まえまして、全体といたしましては好転しておると考えてよろしいのじゃないかと思います。  ただ、繰り返しになりますが、御指摘のとおりこれはなかなか根の深い問題でございますし、抜本的解決には今後、関係者の非常に緊密な協力と長期にわたる努力が必要であろうと考えておる次第でございます。
  45. 神崎武法

    神崎委員 ただいまの御答弁でございましたように、IMFがこの問題で果たした役割というものは大変大きいわけであります。その意味におきまして最近、IMFの役割を強化すべきである、こういった強い主張がなされているのであります。そのために、融資力を強化するとともに、融資相手国に対する融資条件の再検討、各国経済政策の整合性を監視する機能の強化、加盟国の対外債務状況の公表が重要であると考えますが、この点どうお考えになっているか。特に民間金融機関の立場からいたしますと、IMFの対外債務状態に関する情報サービスの民間金融機関への提供ということが大変切実な問題となっているわけでございますが、この点についていかがお考えですか。
  46. 行天豊雄

    行天政府委員 御指摘のとおり、IMFは、この累積債務問題につきましては非常に大きな役割を果たしておるわけでございます。御承知のとおり、IMFあるいは暫定委員会であるとか開発委員会であるとか、いろいろな会合におきまして、この問題についての世界的ないわば世論形成に対して非常に大きな努力をして貢献をしておりますし、御指摘のように世界経済全体につきまして、あるいはまた個々の国の経済情勢につきまして、いわゆるサーベーランス、国際的な監視と申しますか、その意見調整の努力も果たしておるわけでございます。それから、これは一番大事なことだと思いますけれども、IMFは、金額はそう多くございませんが、主として短期の融資をこういった累積債務途上国に与えておるわけでございますけれども、それに関連いたしまして、先ほどもちょっと触れましたけれども、コンディショナリティーということで、その国の経済調整を促進しておる。こういった形でIMFの融資ができますと、これがいわば民間金融機関の当該国に対する一つの信頼度を高めるということにも貢献いたしますし、言うなれば民間資金活用の触媒といったような役割を果たしておるわけでございます。  御指摘のとおり、こういったIMFの活動というのは今後とも大いに強化されていかなければならないと思っております。その意味で、IMFが持っておりますこういった諸国についての情報等につきましても、従来いろいろな形で広報されておるのでございますが、最近は大きな債務国に対します民間金融機関の交渉の場等にIMFが積極的に参加をいたしまして、IMFの方から当該国についての説明を行うというような格好で情報の正しい伝播に努力しておるという面もございます。私どもも、日本の銀行も非常にこういった問題に深くかかわっておることでもございますので、今後ともそういったIMFの努力に対しましてはできる限り貢献をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  47. 神崎武法

    神崎委員 発展途上国への直接投資というものは、戦争、政策変更などの非商業的リスクによる損失が起こることがあるわけでございます。要するに、カントリーリスクを回避し、途上国への投資を促進する目的で国際投資保証機構、MIGAというんですか、これが先進国と発展途上国の共同出資で設立される見通しであるということが報道されているわけでありますが、この国際投資保証機構の設立について我が国考え方、一体どういう考え方をお持ちになっているのか、そしてまた、この機構の規模、保証基準、出資額などの内容はどのように考えられているのか。それで、これは問題になるとするならば、債務国の中でこの保証機構に加盟しない国があった場合に、その国に対する債務の保証が十分になされないということで、その未加盟国に対して投資が減っていくおそれはないかという点であります。この点について未加盟国の途上国から不満が出てきた場合に、我が国としてどういうふうに対処するのか、その点も含めてお答えをいただきたい。
  48. 行天豊雄

    行天政府委員 御指摘のとおり現在、世界銀行におきまして、開発途上国に対します民間直接投資の促進を通じてこういった途上国経済の活性化を図るというようなことを目的といたしまして、民間直接投資におきますいわゆる非商業的なリスクを保証するための新たな国際機関、これが御指摘のMIGAと呼ばれております国際投資保証機構でございますが、この設立が検討されておるわけでございます。今検討が始まったばかりの段階でございますが、我が国といたしましても、このMIGAの設立が累積債務問題解消に有意義ではないかというような観点に立ちまして、世界銀行であるとかあるいは主要投資国であるとかあるいは開発途上国と共同いたしまして、積極的にこの検討に参加してまいりたいと思っております。  御質問のこの具体的な規模とか内容につきましては、まことに申しわけないのでございますけれども、まだ検討段階でございますので、成案ができておりませんのでちょっと御報告申し上げられないわけでございますけれども我が国といたしましても、こういった検討が進んで具体的な構想がまとまってきますれば、我が国としてどういうふうに対応するかということも考えてまいりたいというふうに思っております。  それから、最後に御質問ございました、こういう機関ができると加盟してない途上国のリスクがかえって高まるんじゃないかという御質問、これは確かにそういうことがあろうかと思います。政治的なリスクを対象としたこういう保証機構でございますので、そういった保証機構に加盟してないということになると、投資する側から見ますと多少そのリスクがほかの国と比べて大きいんじゃないかというような考え方をする向きも出てくるおそれはあろうかと思います。それなればこそ私どもといたしましては、仮にこういう機関ができました場合には、できるだけ多くの被投資国が参加してほしいというふうに考えておりますので、こういった点につきましても、今後検討の段階で私ども考え方を十分述べていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  49. 神崎武法

    神崎委員 次に、SDIにつきまして、非核三原則との関係で何点かお尋ねいたしたいと思います。  先日の私に対する政府の答弁あるいは木下委員に対する答弁の中で、外務当局として今の段階においてはこのSDI、レーザー兵器について核を使っているというふうには理解していない、こういう御答弁がなされているのでありますけれども、その点、私はちょっと納得がいかないのであります。  一つは、レーガン大統領が高エネルギービーム技術によりますこのSDI開発というものを決定するに際しまして、大変影響力を行使したといわれますフュージョン・エネルギー財団が昨年発行いたしました「ビームディフェンス」という本によりますと、衝撃波によりましてミサイルを破壊するエックス線レーザービーム兵器について、武器として応用できるほど強力なエックス線ビームをつくり出すためには核起動、核で動きを起こすのですね、核起動レーザーが必要であるということを明確に言っているのであります。要するに、レーザーを働かせるエネルギー源としては核爆発を利用するのだということを指摘しているのであります。  さらに、現実にアメリカのこれまでの実験というものを見てみますと、一九八〇年十一月に、ローレンス・リバモア国立研究所の科学者たちの実験でありますけれども、これはアメリカで最初のエックス線レーザー実験をしたわけでありますが、これも地下核実験場で小型の核分裂爆弾、これは原爆でありますが、これを炸裂させた、こういうことが明確に書かれているのであります。  さらに、一九八三年の十二月一日、アメリカ在郷軍人会記者クラブでこのビーム兵器防衛に関する会合が開かれたときに、ローレンス・リバモア国立研究所でビーム兵器開発に当たっております特別研究チームのリーダー、ローウェル・ウッド博士、この物理学者も参加しているわけでありますが、記者のビーム防御システムは核融合エネルギーに頼るという話は本当か、こういう質問に対しましてウッド博士は、全部がそうだというわけではない、ビーム兵器を用いる戦略的防御システムの一部に熱核エネルギーを使うものが含まれているということだ、それも核融合発電炉というようなものではない、いわゆる水爆だ、こういうことを述べているのであります。  さらに、昨年の四月に公刊されました米議会技術評価局報告書、これはマサチューセッツ工科大学におりましたカーター博士による報告書でございますが、それによりましても、エックス線レーザー兵器は一メガトン級の水爆を爆発させ、その放射エネルギーでエックス線レーザーのパルスを発生させる、これは第三世代の核兵器として注目されるということも伝えられているのであります。こういった点、これはソ連においても、このレーザー兵器については核爆発を利用するという方向で実験が行われているということが伝えられているのであります。  こういったことからいたしますと、むしろこのSDIというもの、このレーザー兵器というものは、原爆にしろ水爆にしろ核爆発を利用してビームをつくり出す、こういう方向検討をされている。ところが、それに対して外務当局はこれまで核が使われているというのは理解していない、こういうふうに御答弁されておりますが、いかがですか。
  50. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはSDIについては、総理も何回もここで答弁しておりますが、アメリカにおきましても全くの研究段階にありまして、これから長期的な構想でやるわけであります。特に日米首脳会談におきまして、アメリカレーガン大統領、さらにシュルツ国務長官から、SDIは非核兵器であるということを明快に述べられております。これはいわば公式の場における大統領の発言でございますし、我が国としてもそれを信用をいたしておる、こういうことであります。
  51. 神崎武法

    神崎委員 そうしますと、米国において核を使ったレーザー兵器の開発ということが現在進められている、あるいはこういう実験も繰り返されてきた、こういう事実はお認めになりますか。
  52. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 種々の実験等がSDIとどういうふうに関連づけられておるのかということについては、私どもまだ現段階においては承知しておりません。他方、いろいろの文献によりますると、先ほど神崎委員指摘のように、アメリカがSDIのために研究をしようとしている種々の兵器体系の中に指向性エネルギー兵器というものがございまして、その中には、御指摘のような性格のものもあるということは種々の文献に出ておりますので、その限りにおいて私どもも承知をしております。  ただ他方、もう一点だけ申し上げますと、かかるこの種の指向性エネルギー兵器というものが、核エネルギーというものを直接殺傷、破壊力に利用するものとしての核兵器というものに該当するかどうかということにつきましては、必ずしも定かでございません。そういう点につきましては、今後研究が進むに従いまして、より正確に判断すべきものであろうというふうに考えておる次第でございます。
  53. 神崎武法

    神崎委員 ただいまの御答弁の中で、レーザーを働かせるエネルギー源として核爆発を利用した場合に、このものが核兵器になるかどうかという点でありますけれども、これは二つの場合があると思うわけであります。直接核爆発によって生ずるビームというもの、これをミサイルを破壊、衛星を破壊するために利用した、この場合はいかがですか。
  54. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 指向性エネルギー兵器の中でのエックス線レーザー兵器の技術的な詳細につきましては、私どもまだ承知しておりません。  先ほどの繰り返しになりまするが、エックス線レーザーを発生するためのエネルギー源として核爆発を利用するという可能性一つのシステムとして今後の研究課題であるということは、先ほどの繰り返しになりますが、アメリカのいろいろな文献に出ておりますので、そういう研究がこれから進められるであろうということは承知しておりますが、それがいわゆる核兵器であるかどうかということにつきましては、現段階においては私ども、断定的に申し上げる材料は持ち合わせておりません。
  55. 神崎武法

    神崎委員 一般論としてお尋ねしているわけであります。前回、核兵器についての定義をおっしゃられましたけれども、要するに核爆発というもの、それから生ずるビームというもの、それを直接衛星破壊、いわゆる破壊力として使用した場合に当たるかどうか、要するに定義上核兵器に当たるかどうかという点をお尋ねしているわけです。
  56. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 仮定の議論になりまするので、余り断定的なことを申し上げるのは差し控えた方がよろしいかと思いますが、あくまでも一般論をお尋ねでございますので、一般論としてお聞き取りいただきたいわけでございますが、従来から政府が核兵器の定義で申し上げておりますことは、核エネルギーというものを直接殺傷、破壊力として利用するということでございますので、その核エネルギーというものをエックス線レーザーを発生させるためのいわばエネルギー源として使うという場合に、一般論として申し上げれば、それは核兵器の定義に該当しないのではないかというふうには考えられますが、先ほどの繰り返しになって恐縮でございますが、技術的な詳細等まだ研究段階ということで、私どもわかりかねますので、最終的な判断は差し控えさせていただきたいと思います。
  57. 神崎武法

    神崎委員 どうも私が聞いている方は、要するに幾つかの類型があります。そのまず第一に、核爆発を起こして直接それから生ずるエネルギー、ビーム、これで衛星やミサイルを破壊する場合は核兵器に当たるのかどうか。その次に今、北米局長がお答えをした問題についても聞く予定なんで、その前の段階を今聞いているわけです。
  58. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私も科学の方、専門でございませんので、必ずしも的確にお答えできるかどうか定かでございませんが、核爆発から生じます放射性エネルギーそのものを、例えばSDIの関連でミサイルを破壊するために使うというシステムは、現在のアメリカのSDI構想の中では考えられていないのではないか、少なくとも表に出ておりますアメリカの文献その他アメリカの公式文書等から見ます限り、そういう兵器体系というもりは考えられていないのではないかというふうに理解をしております。
  59. 神崎武法

    神崎委員 どうも私の質問にお答えになっていないのですね。要するに一般論として私も聞いているのですから、その場合にどうなんでしょうか、いわゆる核兵器の定義上どうなんでしょうか、この点もう一度いかがでしょうか。
  60. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核兵器の定義は、あくまでも核融合または核分裂から生じます放射性エネルギーというものを直接殺傷、破壊目的に使うということでございますので、そういうものであればそれは核兵器になるということで、そうでなければ核兵器ではない。それ以上のことは若干、今の段階で私から申し上げることはできません。
  61. 神崎武法

    神崎委員 直接この核爆発による放射線等でミサイルを破壊、衛星を破壊する場合は、これは核兵器に当たるということですけれども、次の質問は、先取りをして御答弁になっているわけでございますけれども、核の周りを多数のエックス線レーザー発生器で取り囲んだ、そういう装置の中でこの原爆あるいは水爆を爆発させて、その放射エネルギーでエックス線レーザーのパルスを瞬間的に発生させる、そして超高出力レーザーというものをつくり出す、そして、それをもってミサイルを破壊、衛星を破壊という場合に、これは核兵器に当たるかどうか。
  62. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほどちょっと私、委員の御質問を先取りした形になってお答えいたした次第でございますが、今、委員御質問のような兵器システムの具体的な技術の内容を私どもまだつまびらかにしておりません。いずれにしても、まだアメリカは研究段階であるというふうに承知をしております。したがいまして、そういうものが核兵器というものに該当するかどうかということについては、現段階では最終的に判断ができないと思います。ただ、一般論としましては、先ほど申し上げましたようなことから申し上げまして、必ずしも従来申し上げております核兵器というものには該当しないのではないかというふうに考えられますが、最終的な結論は今の段階で判断できないということだろうと思います。
  63. 神崎武法

    神崎委員 さきにSDIと非核三原則の問題につきまして総理は、SDIはたとえ核兵器であっても、これは外国でやることだから今のところ非核三原則とは関係がないんだという発言をされておりますし、外務当局も、このSDIの技術協力について、それ自体は非核三原則そのものから出てくるわけではない、こういう御答弁をされているわけでございます。  ところで、我が党の草川昭三議員が質問主意書で「米国その他外国に対して、核兵器に関連する我が国先端技術部品の提供は、非核三原則を堅持する我が国の立場上認められるのか。」こういう質問に対しまして、五十七年一月二十二日付で「非核三原則を堅持している我が国が、核兵器の部品又は核兵器の製造のための技術を輸出することは考えられない。」こういう答弁をされているのであります。この意味からいたしますと、これは仮定論でありますけれども、SDIが核兵器であれば、非核三原則の立場からこの製造の部品あるいは核兵器そのものの製造のための技術輸出いわゆる技術協力というものは認められない、このように考えますが、いかがですか。
  64. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御指摘の、昭和五十七年一月と理解しておりますが、草川議員に対します答弁書は、ここに書いてございますように、我が国といたしましては、非核三原則を堅持しておりますので、当然核兵器につきましては持たず、つくらずということでございますから、そのような核兵器の部品あるいは核兵器自体を製造するための技術というのは我が国としては持っているはずがない、したがって、そのような技術をアメリカを含めまして海外に輸出するということは考えられない、こういう実態認識を述べたものでございます。
  65. 神崎武法

    神崎委員 その点はわかりますけれども、要するにSDIとの関係で、SDIが核兵器であった場合に、この趣旨からしますと技術協力は認められない、技術輸出もできない、こういうことになるのじゃないかという点をお尋ねしているのです。
  66. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核兵器そのものをつくる技術は我が国として持ち合わせておりませんので、アメリカから現在具体的に要請はございませんが、仮に要請がありましても、我が国は持っていないのでありますから、そのような要請にこたえられるはずはないということをまず第一点として申し上げられるだろうと思います。  もしSDI関連での技術につきまして将来、アメリカから要請がありました場合には、それが武器技術であれば、対米武器技術供与取り決めの枠内でケース・バイ・ケースに対応する、対処するということは従来から御答弁申し上げておる次第でございます。  それで、もしそういうものがSDI関連のことで核兵器に、核兵器というものが仮にそのSDIシステムの中で存在をし、それに関連をして使われる技術として日本から供与ができるかという御質問だというふうに理解させていただきますが、そういう前提でございますれば、その時点で——そういう技術があるかどうかということは、これは全く将来のことでございますので、余り仮定の議論でお答えするのは適当でないのだろうと思いますが、一般論として申し上げれば、そういうものを技術供与するということ自体が非核三原則に反するというふうには考えておりません。(発言する者あり)
  67. 神崎武法

    神崎委員 そうしますと、そういうSDIの一部に核兵器が使われている、その技術、もう一度確認しますけれども、その技術に技術協力をするということは、要するに非核三原則に違反しないと言うのですか、もう一度ちょっとお答えください。
  68. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 非核三原則につきましては、この前総理からも御答弁がありましたし、また別途政府委員からも御答弁申し上げましたように、あくまでもこれは我が国の主体的意思として、我が国の中に核兵器を置かない、そういう意味で、つくらず、持たず、持ち込ませず、こういうものでございますので、核兵器に利用されるかもしれない技術を米国に供与するというお話は、直接非核三原則で律せられる問題ではないというふうに理解をしております。私が先ほど御答弁申し上げましたことはそういうことでございます。
  69. 神崎武法

    神崎委員 じゃ、直接非核三原則には違反しない。要するにそれで認められる、こういうことでしょうか。
  70. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 従来から申し上げておりますように、対米武器技術供与を行います場合には、安保条約の効果的運用という立場からケース・バイ・ケースに判断をするということでございまして、他方、一般的にはもちろん、我が国の平和国家としての非核三原則の精神を含めまして、我が国の平和国家としての基本的立場というものを踏まえる必要があろうかと思います。他方におきまして、安保条約の効果的運用という観点から、具体的事案が出てきた場合に、それに即して判断をするということでございますので、別に、出てくれば全部やるとかあるいは一切やらないとか、そういうことではございませんので、具体的事案が出てきました場合にケース・バイ・ケースに判断をして日本の国益を総合的に踏まえて対応する、こういうことだろうと思います。
  71. 神崎武法

    神崎委員 どうもよくわからないのですけれども、要するにこの非核三原則に違反しないから、核兵器製造の技術協力があっても、日本国内でやらない限り、政府の職員を派遣して協力をさせる、そういうことも可能だ。要するに非核三原則に違反しない、こういうふうに理解してよろしいですか。(発言する者あり)
  72. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど北米局長から御答弁申し上げましたことを若干補足して申し上げますが。北米局長が最初にはっきり申し上げましたように、我が国は非核三原則を堅持しており、それから核兵器の不拡散の条約の当事国でもございます。したがいまして、我が国には核兵器に関する技術というものはそもそもないわけでございます。したがって、そういうものを出すことはあり得ない、こういう前提でお考えいただきたいと思います。  そういう中で一般論として、我が国が技術の援助を行うということが認められるのか認められないのか、非核三原則との関係において認められるのか認められないのかという御質問でございますが、アメリカにおいて仮に核兵器と関連するような研究が行われておって、その関連で我が国から非核の、核の製造に関する技術は我が国にはないわけでございますから、そういうものとは関係のない技術がアメリカに出ていくということがどういうことになるのかというお尋ねというふうに理解をいたしましたので、北米局長からは、それはさきにアメリカとの間で締結をした武器技術の供与に関する取り決めによって律せられることになる、その場合には、イエスの場合もあり、ノーの場合もある、こういうことを申し上げたわけでございます。
  73. 神崎武法

    神崎委員 要するにこのSDIにつきまして、一つのシステムと考えるか、あるいはこれはもう全く切り離されたいろいろなシステムが総合されたもので別のシステムと考えるかという点が大きな問題になろうかと思うわけでありますけれども、例えばこの問題については……(発言する者あり)
  74. 天野光晴

    天野委員長 北米局長。すっきり答弁しなさいよ。
  75. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど私の答弁申し上げましたところが、若干意が足りないところがございましたかもしれませんので、改めて御答弁させていただきますが、我が国といたしましては、御承知のとおり非核三原則がございます。それから、さらに申し上げれば、核不拡散条約の当事国でもございます。したがいまして、そういう意味におきまして、直接核兵器を製造する技術というものは持ち合わせておりませんで、したがいまして、そういうものをアメリカであろうとどこの国であろうと、供与することはできない、こういうことははっきりしておると思います。
  76. 神崎武法

    神崎委員 そうしますと、このSDIの一部に核兵器が使われていた場合、その核兵器関連技術、その分野我が国としてまず技術協力はしない、この点はよろしいですね。
  77. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核兵器である場合にはそのように御理解いただいて結構だろうと思います。
  78. 神崎武法

    神崎委員 問題はこのSDIシステム全体の問題でありますけれども、ICBMだけじゃなくて、中距離核についてもこのSDIをやるということを言われているわけでありますが、このSLBMですと、発射されて、目標に到達するまでに時間的に数分、現在のアメリカの能力で、これが本格的な核攻撃であると認識するのに九十秒ということであります。要するに、システムとしてこのSDIが機能するのにわずか一分前後、その前後でこのシステムは全部勝敗が決するわけでありますが、その一部分に要するに核兵器が使われていた場合に、全体としてこのSDIというものは核兵器になるんじゃないか、したがって我が国としては技術協力はできないんじゃないか、私はこのように思いますけれども、いかがでしょう。
  79. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 いかんせん非常に現段階ではいろいろ不明確な要素が多々ございます。率直に申し上げて、アメリカ自身も現在研究段階でございますので、今後研究が進んだ段階で具体的にどういう兵器体系あるいは全体としてのシステムになるかということは、アメリカ自身ですら必ずしもはっきりわかっておらないのではないかというふうに考える次第でございます。したがいまして、現在の段階で非常に断定的なことを申し上げることは、やはり差し控えさせていただいた方がよろしいかと思います。  ただ、いずれにしても一点だけ申し上げておきたいわけでございますが、そういういろいろな兵器体系その他の要素を組み合わせた大きなシステムでございますので、そのシステムの一部に、先ほど委員御質問のような核兵器というものが含まれておるからといって、全体のシステムのいかなる部分についても協力できないかということになりますると、これは必ずしもそういうことではないのではないかというふうに私ども考えております。
  80. 神崎武法

    神崎委員 この点については、時間が参りましたので終わらせていただきますが、また今後引き続き取り上げさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  81. 天野光晴

    天野委員長 これにて神崎君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦隆君。
  82. 三浦隆

    三浦(隆)委員 初めに官房長官お尋ねいたします。  きょうは大変お忙しいところをおいでいただきましてありがとうございました。一応順番を決めておりましたけれども、官房長官優先ということで、一応の予定を少しずらさせていただきたいと思います。  初めに、小樽市におきます北教組小樽支部の偏向、違法活動について関連してお尋ねしたいと思います。  実はこれには前にもここで触れたことがございまして、長い経過というものがございますので、少し時間をとりますが、簡単にこれまでの大ざっぱな概略を述べさせていただきます。  初めに、今回の質問に関係いたしまして、二月十五日から十七日にかけまして、私は小樽の教育長、問題の校長先生、そして父兄の代表の方とお会いいたしました。また、札幌市に行きまして北海道の道教育長ともお話いたしまして、私に寄せられた資料を確認をとってございます。実は昨年の末に小樽支部の先生と思われる方から匿名でいろいろと資料を送られてまいりました。またその後、教育の正常化を願う父兄の方からも同じく資料をいただいております。  さて、昭和四十九年でございますが、大分前なんですが、北教組小樽支部によります小樽市小中学校教育課程、通称白カリというものがつくられまして、ここで教育編成権が事実上学校の手を離れまして教員組合のものとなりました。言うならば学習指導要領は無視されることになりました。  そして昭和四十八年、この白カリに先立ちまして小樽市教育委員会と北教組小樽支部との間で六月十日付で覚書が交わされまして、学校長の存在を無視しまして教育の主要問題は市教委と小樽支部との交渉事項となっております。  次いで、昭和五十一年には、学校で正規の教科書を使用しないで小樽支部独自の補助教材中心の授業が行われるようになりました。このため、小樽市内の学習塾では「教科書教えます」の生徒募集の張り紙が目につくようになったと現地の新聞は報じております。  そして、昭和四十九年ごろから、こうした教育では困るということで教育正常化の動きが高まりまして、昭和五十三年に偏向教育是正のため、小樽市民による教育正常化促進委員会が結成されております。そして、この教育正常化の動きに対しまして、北教組小樽支部では次のように述べております。独占資本と政府・自民党が、資本主義体制の構造的矛盾と経済危機を軍事大国化、軍国主義強化によって切り抜けるために教育を支配するという戦略的攻撃でありますと年次大会で述べているわけであります。これは全く筋違いな、左翼偏向的な意見だろう、こう思います。  その後も昭和五十五年七月の北教組の大会議案書に、道徳教育や必修クラブ活動が行われないという、そうした小樽市教員組合による運動の成果を誇りまして、具体的にその調査結果として各小学校ごとのパーセンテージ的なものが示されております。  そこで、これらの推移を受けまして昭和五十六年四月、民社党は小樽教育実情調査団を現地に派遣することになりまして、私もここに加わりました。この調査をもとにしまして私は、昭和五十六年四月十日、同年十月三日の二回に分けて文教委員会あるいは予算委員会などで発言して、小樽市教育の正常化を訴え、文部省よりも正常化へ向けての強い意見表明もあり、一応の決着を見たというふうに思っていたわけであります。  しかるに、昨年末におきまして小樽市内の教員から匿名で再び、小樽市における教育の異常事態を是正してほしい旨の文書が私あてに送られてまいりました。また、同趣旨のことが小樽市学校教育正常化促進連合会からも会長名で私あてに文書が寄せられております。この文書の中に、小樽市の教育が北教組小樽支部の暴挙により不正常な状態にあります、無法、違法を繰り返す教師集団の良心と良識に訴え、正常な教育が行われることを願いますという旨の文章が書かれております。  そこで、現在におきます北教組小樽支部の違法、不当な状況について簡単に述べさせていただきます。  第一番目には、小樽支部長名によります本年一月二十四日付の各分会長、闘争委員長あての対抗戦術の徹底というふうな文書が配られております。これがそうでありますが、これ全部読むわけにいきませんが、その中を幾つか挙げておきますと、道教委、市教委主催になる研修会、講習会を拒否せよ、指導主事の学校訪問を拒否せよ、児童生徒からの金銭徴収、集計業務を返上せよ、月末統計の報告業務を拒否せよ、小中図工美術展など事業拒否せよ、予防接種、給食報告、風邪罹患調査などを拒否せよ、本務外労働を拒否せよ、休日出勤、時間外労働拒否など、その一部を挙げてみましても、教育法令に違反していることはもはや明瞭だろうというふうに思います。  第二に、教頭選考に際しまして、昨年十月から十一月にかけての作成だろうというふうに思われますが、教頭候補者不適格基準というふうな文章がここにございます。それによりますと、教頭になっていけないのは、未組織者及び組織離脱表明者、ストライキ不参加者、秘密裏に官製研修に参加した者、学習指導要領に固執する者、主任手当を返還しない者などが記載されておりまして、教頭にはストライキ参加あるいは主任手当返還など法令違反を促すことが列挙されているわけであります。  第三番目に、昨年十一月に朝里中学の増改築完成記念式典におきまして教員による国旗及び小樽市旗の引きおろし事件というのがございました。ここには、校長による職務命令に従わない教員の過ちと、校長の力の弱さを指摘することができると思います。  また、昨年の十二月、小樽支部の動員指令に従った教員による四日間にわたる市役所の不法占拠事件が起こっております。  また、昨年三月、勤務時間内に集団で教員が職場放棄しての小樽支部定期大会を開催し、これに出席しておりまして、これに対して市教育長は賃金カットしない旨、大衆団交により確認書に署名捺印するというふうになっております。  そしてまた、六番目に、現在組合専従ではないにもかかわらず、小樽支部長は慣行と称して職場である小学校に満足に出校しないでおります。しかも、この学校は昨年まで出席簿も置いてない。当然現在も勤務評定は行えない状況にございます。  以上のような常軌を逸した北教組小樽支部が現に存在していることは、心ある教員にとっても悲しむべきことであり、小樽市民にとっては子供を安心して学校に預けていることができないということだろうと思います。  一方、このような異常な教育を本来是正する立場にある小樽市教育長が、昭和五十八年五月九日付確認書で法令違反の労働慣行を尊重するという旨の、これまたここにございますような署名捺印をするような、こういう事態も起こっております。その後、同年七月十六日付覚書でこれを訂正したとこの教育長は言うのですが、この訂正内容は極めて不十分でありまして、これだけでは済む問題ではございません。言うなら、一日も早く小樽市教育の正常化を望みたいところでございます。  そこで、官房長官お尋ねしたいわけであります。  首相の教育改革にかける熱情と、これを受けた臨教審において今教育改革に向けて熱心な討議が連日のごとく行われております。しかし、どのように教育理念が語られ、教育制度を改めましょうと、教員が悪ければどうにもならないことだと思うのです。特に北教組小樽支部のような左翼偏向集団と、その指令に従う教員及びこれを正すことのできない教育委員会や校長であってはとても正常な教育は望めません。国の法令に違反し、校長の服務命令にも従わない教員がいるときには、それなりの断固とした処置が必要だろう、こう考えます。  一方、昭和五十八年度でございますが、日教組の予算は総額二百八億二千八十五万九千九百三十七円でありまして、このうち救援資金特別会計は百六十四億七千百六十三万八千九百四十八円と総額の七九・一%という異常な高さを示しております。このような突出した救援資金特別予算の組み方はまさにほかに類例を見ないところだ、こう思うのです。  政府は、臨教審の審議及び文部省による文教行政を通じ、どのような教員であってほしいと期待しているのか、理想的な教員像について政府の御見解を承りたい、こう考えます。
  83. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 文部省の所管にかかわることでございますが、私への御質問でございますので、政府としてお答えを申し上げたいと存じます。  今るる小樽市におきます教育界の実情につきましていろいろな御指導をいただいたわけでございます。前々から小樽市の教育界が非常に混乱をしているという問題につきましては文部省当局も非常に心配をしてきておりまして、その間に、市民の皆様方も非常に御心配になって教育正常化へのいろいろな運動もお進めになるというような経緯もございまして、私も若干文教委員会に所属をしておりましたころに、求められて小樽市の教育界の実情を見に来るようにということで現地にお伺いをしたこともございました。いろいろと経緯を経て、その後、今も先生から御指摘がありましたように大体是正をされて解決をしたというふうに見られた時期もあったやに承っておりまして、非常によかったな、そう思っておったのでございますが、今また先生からいろいろ御指摘をいただきまして、その事態というのが改善をされていないということを伺って、非常に残念に思っているところでございます。  これは、どういう教育者像かという御質問にお答えする前に、文部行政として的確な指導をすべき事柄でありまして、いろいろと教育委員会で御相談を願って、その町の、市の教育方針を進めていこうということがなかなか浸透していかないとか、校長や教頭を任命しても赴任できないとかいったような任命権者の力も発揮できないというようなこととか、あるいはいろいろな問題について累次にわたっていろいろな覚書が交わされて、それが教育界に非常に大きないろいろな影響を与えているというような事態につきましては、さらに文部省当局が強く北海道教育委員会を通じて指導していくべきもの、このように考える次第でございます。今後、その点につきましては十分文部省にきょうの御質問の御趣旨を伝えまして、実情調査なり、あるいは的確な指導が進められるように進めてまいらなければならぬ、こう思う次第でございます。  それから、臨教審におきましていろいろな御審議をいただいておりますが、教育理念あるいは教育者像、教育の制度、内容等につきまして幅広く御検討をいただくということで、大変熱心な御審議をお進めをいただいているところでございます。  どのような教育者像かということにつきまして今ここで政府考え方を申し上げますよりも、こんなふうにあってほしいというふうに文部省がいろいろ考えてまいりました教育者像とか、あるいは特に今般の臨教審の中で望ましい教育者像、これは言い方がいいかどうかわかりませんけれども先生というのはこんなふうな方にこんなふうな気持ちで教育に当たっていただきたい、教育の専門職でございますから、教育に対する使命感も持ち、子供たちに対する愛情も持ち、みんなで力を合わせて一人一人の児童生徒、学生の個性を伸ばし、能力を十二分に伸長させるといったような、そういう愛情を持って教育を進めていただきたいというふうに思っておるわけでございますが、さらに審議会でいろいろな角度からの御論議も出ましょうし、また臨教審の御審議だけでなく広く国民各界各層からのいろいろな御意見なども集まってこようか、こんなふうに思いますので、臨教審におきましてさらにあるべき教育者の姿につきましていろいろな御論議が深められると大変ありがたい、こういうふうに思っておる次第でございまして、むしろ審議会のそういった御論議に御期待を申し上げて進んでいく、そうして国会の場などにおきましてもいろいろな御意見が寄せられておりますことを中心にいたしましてさらに文部行政を前進をさせていくようにしなければならぬ、こんなふうに考えております。  大変抽象的でございますけれども、気持ちの一端を申し上げましてお答えにいたしたいと思います。     〔委員長退席大西委員長代理着席
  84. 三浦隆

    三浦(隆)委員 文部大臣にお尋ねいたします。  今、官房長官からもお答えがあったわけですが、実はさきの臨教審法案が審議されますときに、あわせて教員養成法案が提出されようとしたことがございます。そのときに、私たち民社党はとりあえず反対いたしました。というのは、臨教審で教員のあり方を踏まえて十分に検討した後で教員養成法案が出るべきだ、言うなら臨教審が発足するのに審議検討しないうちに教員だけ別枠で出るということは順序的におかしいんじゃないかと述べたことがあります。そこでの趣旨は、教育を預かるに教員というのは実に大切な役割を発揮するという認識があったからでございます。  さて、文部大臣にお尋ねしたいのですが、これまでお話ししましたように、法令違反の労働慣行を尊重するなどということをいやしくも市の教育委員長名で署名捺印したという事実、あるいはまた小樽支部長名によって各分会長あてなどに違法活動を教唆する指令文書などが流されているんだという事実、こうしたような教育法令違反の教育が公然とまかり通っている小樽の教育状況について文部大臣はどのように考えているのか、今後どのように対処するのかお尋ねしたい、こう思うのです。  この質問の趣旨は、前にも私述べましたように、文部省に言うと、道の教育委員会から報告が上がらない、道教委に言うと、市教委から報告が上がらない、市教委に言うと、校長から報告が上がらない、では、その校長はというと、父兄方はうその報告をしておるじゃないか、実態と違うじゃないかというふうなことで——これは父兄だけじゃなくて現地の新聞も大々的に書いてあることでありますから、調べればすぐにもわかることなんです。この場合に、現地の校長先生が教育委員会に、お会いしたところ、大変不信感を持っておりました。関連して国鉄問題がちょっと頭によぎったことがございます。ひとしきり駅の助役さんたちが自殺するような記事がございました。これは国鉄の本社なりで正常化の動きが出てくる、一生懸命やっているうちに国鉄の労使の間、トップと組合の方で協定が結ばれてしまう。正常化に努力していた駅長や助役の頭越しにやられるものですから、下から突き上げられる、助けてくれるはずの上はそっぽを向いてしまって行きどころがないということであります。  この小樽市におきましても、この国会質問を契機としながら正常化への強い動きがあって、校長さんもそれなりに対応しようとしているわけです。そのそばから校長さんの頭越しに教育長が組合と勝手にかつての誤ったような労働慣行を尊重すると言われたんでは、校長さんはどっちを向いていいかわからなくなっちゃうじゃないかということですので、ひとつ文部大臣のはっきりとした答弁を願いたいと思います。
  85. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどから先生の御指摘の事実は、教育界にあってはならぬ極めて遺憾なことなんでありまして、今までも北海道教育委員会を通じて適切な指導をしてきたつもりでありますが、今後ともなお一層その指導を的確にやってまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。  学校の先生が授業以外の校務は一切しないなどということがあってはならぬことであります。あるいは教員組合が教育委員会及び校長の持っておる人事権に介入するなどということもあってはならぬことであります。あるいは掲揚されておる国旗を引きずりおろすなどということはまことに遺憾千万なことなんであります。また、教育の現場におきましては、教育委員会で採択をされた教科書を基準とし、学習指導要領に基づいて教育はなさるべきものなんでありまして、それを全く無視するような教育がなされてはならぬことなんであります。したがいまして、今後とも法令に基づいたあるいは教育の現場にふさわしい、そういう環境になるように、北海道教育委員会を通じて適切な指導をやっていきたい、こういうふうに考えております。
  86. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今、あってはならないことが行われている、ただそれだけでは困るのでありまして、あってはならないことなら本当になくなるような厳然とした処置をおとりいただきたいのだということです。旧来、理想的に言えば、先生方とそして校長先生、皆さんで仲よくいろいろと決めるべきものだろうと思うのですが、ところが、小樽市だけは異常なのでありまして、校長先生なりあるいは教育委員会が一歩後退する、二歩後退するというか、不穏当な意見を出すとすぐつけ上がって伸びてきてしまう、そういうこともありますので、そういうふうな組合に対してはっきりとした姿勢がもしとれないような道教育長その他であるならば、それに対しても毅然とした態度、処置をとっていただきたい、こうあうふうに考えております。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕  次は、「帝銀事件」と書いてありますが、ここではその個別の事件に触れることを避けまして、恩赦について実は官房長から御意見を賜りたいと思います。  といいますのは、明治以来、恩赦はこれまで二十四回行われておりまして、そのほとんどは皇室の御慶弔にかかわる事由で行われたものでございます。例外として、憲法にかかわる恩赦が、一つには明治二十二年憲法発布、一つには昭和十三年憲法発布五十周年、一つには昭和二十一年新憲法公布が行われたときに恩赦があるわけです。もう一つには、区切りのよい年として昭和十五年に紀元二千六百年式典、そして昭和四十三年に明治百年記念恩赦というのが行われております。  このような恩赦先例の趣旨によるものでしたならば、ことしは天皇陛下御在位六十年、昭和六十年というまことに記念すべき年でございまして、先例としての皇室へのかかわり、区切りのよい年の二つの恩赦事由の構成要件を満たしていると私は思います。特に戦後の恩赦を見ますと、二十年代五件、三十年代二件、四十年代二件、五十年代以降ゼロであることを考えますと、時期的にも恩赦があってもよいころだろう、こう考えます。さらに、戦後四十年を経過しまして、我が国は奇跡的な復興を遂げ、今日の世界で最も平和で自由な豊かな生活を営むことのできる国の一つになっているわけで、そしてこれもひとえに陛下の御仁慈あるいは御仁徳のしからしめるところだと思いますし、日本国民こぞって感謝してやまないところでもございます。  これらの事由を謹んで勘案しながら陛下の一層の御長寿を祈念するという意味で、天皇御在位六十年御長寿奉祝記念恩赦、そうしたものを行ってほしいと願うものであります。政府としてどのように考えますか。閣議にかけて検討してみるお考えはございませんか。  また、関連して、現憲法施行五十周年を記念しての恩赦、将来のことでありますが、どうなるものか、官房長官の御見解を賜りたいと思います。
  87. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 戦後だけとりましても、政令で恩赦を行った例といたしまして九回ございます。また、戦前の例なども先生からいろいろ御指摘をいただいたところでございます。戦後で申しますと、日本国憲法公布、平和条約発効、国連加盟、皇太子殿下の立太子礼及び御結婚記念など、また明治百年あるいは沖縄復帰を記念して恩赦を行ったといったようなことを合わせて九回になっておるところでございます。  ことしが昭和六十年でございますので、民間ではことし御在位六十年ということでお祝いをしようといった機運もあるやに伺っておりますが、政府といたしましては、来年を天皇陛下御在位六十年というふうに考えて、いろいろお祝いのことをしなければならぬなという気持ちは持っておりますが、まだ来年ということを頭に置いておりますので、具体的にどういうふうな形でお祝いをするかということを検討に入っているという段階にもまだ入っておらないわけでございます。今恩赦の問題につきまして御指摘がございましたけれども、したがいまして御指摘の御在位六十年記念恩赦につきましても、現在考えていないというふうにお答えを申し上げなければならぬかと思います。  なお、さらにお話のございました憲法の五十年、将来のことにわたりますので、どういう機会に恩赦をするかということにつきましてきちっと決まった何か法定したものがあるわけでもございませんので、やはりその時期が参りましたときの判断ということになろうかと思いますので、今から予測をして意見を申し上げることは控えさせていただきたい、このように考える次第でございます。
  88. 三浦隆

    三浦(隆)委員 今の御答弁で、民間がことしであるけれども政府関係としては来年を考えておるということでありますので、十分御検討いただきたいと思います。また、特に関連しての憲法でありますが、この国会でも、政府は憲法を守るのか守らないのかとかいろいろと論議がなされているときでもございますし、明治憲法下では少なくともお祝いをしたのでありますから、現憲法もやはりお祝いをしていただくということでの恩赦をぜひ御検討いただきたいと思います。  では次に、北海道旧土人保護法、旭川市旧土人保護地処分法についてお尋ねしたいと思います。  実はこの質問に先立ちましても、私は北海道に、現地に行きまして、旭川市などを訪ねてまいりました。そしてウタリ協会あるいはアイヌ協議会の代表の方あるいは人権擁護委員会の方ともお話ししてきたところでございます。  さて、五年前の昭和五十五年三月七日の予算委員会第一分科会で、私はこの北海道旧土人保護法と旭川市旧土人保護地処分法の問題を取り上げております。私はその質問の中で、「旧土人」という表現は憲法違反の表現と言ってもよいほど不適当であるので、法律の中身の審議はいずれにしても、「旧土人」という表現だけは直ちに削除すべきだというふうに申し上げました。これに対して厚生省及び北海道開発庁よりは、検討する旨あるいは現地の旧アイヌの人々の意見を聴取して対処したい旨の答弁があったわけです。  それから五年の歳月が流れております。しかるに、私がこの二月に北海道を訪ね、現地のアイヌ協議会あるいはウタリ協会の人々と話し合ったところ、「旧土人」という表現が適切であるかどうかという話し合いがそうした関係者からほとんどされたことがないんだということでございます。実はこの問題についての細かい文書は、人権擁護委員会の資料その他もありますし、現地の人々が例えば、おまえは土人の子だといじめられて学校に行くのは嫌だ、あるいは学校でアイヌと張り紙されて女の子が泣いて帰るというふうな、まことに痛ましいような記録も幾つかあるわけでして、これは法務委員会で人権差別の問題として取り上げさせていただこうと思います。  さて、そこで政府お尋ねしたいのですが、旧アイヌの人々を「旧土人」と呼ぶこの表現について、まずどうお考えでしょうか。これは第一点です。  第二点、「旧土人」という表現はふさわしくないので、現行法上直ちに「旧土人」という表現を改めるか法そのものを廃止すべきものと考えますけれども、どうでしょうか。  第三番目に、早急に各関係省庁と協議し、法改正ないし法廃止後の処置を考えてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。この三つであります。  特に三番目に言いましためは、この旧土人法という名称をなくせ、旧土人二法をなくせというのは全員の意見と言ってもいいと思うのです。ただ、その後二つに大きく分かれまして、保護を含めて全くなくしっ放しにしてしまうのか、法の名称を変えて存続してほしいのかということについては意見が分かれているところであります。これについては時間をかけて検討する必要があると思いますが、ここでの質問は「旧土人」という表現そのものは許し得ないことだという趣旨でございます。
  89. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 北海道旧土人保護法につきましては、この「旧土人」という表現がいかがなものかという先生の御指摘は私も全く同感でございまして、いかがなものかというふうに考える次第でございます。  ただ、国会でもたびたび御論議もございましたが、何しろこの法律が明治三十二年に制定をされて、その後、法の中身もいろいろ変わってきているというような経緯もございますし、また地元の北海道におきましても、この法律をめぐっていろいろな御検討をいただいているというふうにも伺ってきておるところでございます。したがいまして、とにかく「旧土人」という名称だけでも先に廃止をしてはどうかという御指摘でございますが、法律そのものについていろいろな御検討も地元でもいただいておるように聞いてきておりますので、それらにつきましてさらに地元の北海道庁や関係各省と緊密な連絡をとりまして、きょうの御質問の御指摘に対応させていただいて、早急に結論を導くように努力をいたしたい、このように考える次第でございます。
  90. 三浦隆

    三浦(隆)委員 官房長官にお願いしたいのですが、実は余り検討されてないわけであります。というよりも、現地の人は検討しづらい問題だと言ってもいいと思うのです。もともとはアイヌの人々の土地であったものが、それが今いる現地の人々によってむしろ奪われてしまったわけです。いわゆるアイヌの人々は少数なのであって、奪った人の方が圧倒的に多いのでありまして、そうした圧倒的にむしろ潤っている人々がこの問題に積極的にかかわり合いを持てるわけがないじゃないかということであります。ですから、現地の旭川人権擁護委員連合会が発行になります「コタンの痕跡」という本がございますが、そういう中におけるさまざまの大勢の皆さんの御意見をぜひとも検討していただきたいと思います。  とにかく全員一致して、会えば会うほど「旧土人」という表現は嫌だ、中には「保護」という言葉すら嫌っているわけであります。国民として対等の立場で我々の人権を考えてほしいという要望が切なるものでございますので、ぜひともお聞きいただきたいと思います。  次に、指紋押捺問題をめぐってお尋ねをしたいと思います。  これもまた詳しくは法務委員会でさせていただきたいと思っておりますが、一つは、ことしは在日外国人約八十万人のうち約三十七万人が、外国人登録法に規定いたします登録切りかえの時期に当たっております。このための確認申請は、七月に四万三千七百件、八月に七万二千六百件、九月に九万一千九百件と、七月から九月にかけて集中しております。この登録切りかえのときに伴う指紋押捺をめぐりまして、ことしは在日韓国、朝鮮人を中心に拒否運動が高まろうとしております。そしてまた、指紋押捺をめぐるトラブルが現に起きていますし、さらに広がるのではないかと懸念されております。この予想されるトラブルに対しまして、国際的な配慮に重きを置く外務省と、法の安定性と秩序維持に重きを置く法務省及び警察との間で外登法改正に対する対応策が異にされて、考え方が異なっているようでございます。さらに、新しく川崎市が、法規に定める指紋押捺拒否者を一切告発せずとの内部決定を今回いたしました。そこで、拒否者の告発励行を指導する法務省と川崎市はこれから真っ向から対決するようになるかもしれない事態になっているわけです。  このように、指紋押捺の是非をめぐりまして国の機関相互間で、また国対地方自治体間で対応策を異にするため、さらにこれに在日居留民団の役員改選の影響ども重なりまして、指紋押捺をめぐる波紋は一層広がるものと思われるわけです。事態の円満解決に向けましての政府の対策はどうなんでしょうか。できれば今国会中にも解決への具体的方策を立てていただきたいと思うのですが、御見解を賜りたいと思います。
  91. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 外国人登録法の問題は昭和五十七年に改正をしたわけでありますが、まあ普通からいきますと五十七年に改正したばかり、こういう言い方になるかと思うのでございますが、その後もこの制度につきましていろいろな議論が出てきておるところでございまして、政府部内におきましても、制度上、運用上いろいろな問題点について、昨年の特に日韓共同声明の趣旨どもございまして、総理大臣もこの問題については非常に深い関心を持っておるところでございます。したがいまして、関係省庁間で鋭意検討を進めてきておるところでございます。  それぞれの行政官庁はそれぞれ責任を持って仕事をいたしておりますので、それぞれの立場から見ますると、それぞれの意見がある。これはもう責任を負う者として当然のことかと思うのですが、それらを政府部内でやはりよく調整をして意見を取りまとめていく必要があるというふうに考えておりまして、ただ、まあ早くこういうふうな方針でということを打ち出すよりも、従来それぞれの立場で責任を持って行政を進めてきておる方々がさらに検討を深めて、一つの一致点を見出していくことにすると一番いいが、こんなふうに考えておりますので、少し時間がかかってきておる嫌いはございますが、さらに先生の御指摘の点に十分頭を置いて検討を深めていくようにいたしたい、このように考える次第でございます。
  92. 三浦隆

    三浦(隆)委員 官房長官結構でございます。  北海道旧土人保護法、旭川市旧土人保護地処分法に関連しまして、関係大臣より御答弁をいただきたいと思います。  初めに文部大臣に三点にわたってお尋ねをいたします。  先ほど官房長官の質問に述べましたように、今学校教育におきまして陰湿ないじめの現象が憂えられておりますときに、北海道の学校教育においても、一部であれ旧アイヌの人が学校で泣かされているあるいは親も子供のころに泣かされたことを思いながら怒っている、こういうことに関して学校教育の責任者としてどうお考えでしょうか。  また第二点は、文教予算の上で学校教育の補助費が大変少ない。ここにもございます。そしてまた、社会教育の予算ではほとんどないに等しい。そして実際にこの現地での旧アイヌの人々は一般国民に対して進学率が低い状態に置かれております。進学が低いということが就職によくない、就職によくないから生活によくない、そして最後に平均寿命も低いというふうなことで、悪循環をたどっているわけです。文教予算としての文部大臣の見解をお尋ねします。  第三番目に、同じ国民でありながら旧アイヌの人々を「旧土人」と呼ぶようなこと自体教育上はよくないことだと私は思います。文部大臣は「旧土人」という表現を法律上、削除した方がよいと思いますかどうか、御意見をあわせてお尋ねしたいと思います。
  93. 松永光

    ○松永国務大臣 一番おしまいの方からお答えいたしますが、「旧土人」という呼び方は極めて不適当な呼び方であると思いますので、改正されるのが相当であると考えております。  次に、先生指摘のように、学校教育の場でいじめということがあるとするならば極めて遺憾なことなんでございまして、そういったことが行われないように適切な指導をしていきたい、こう考えております。学校教育の場で人権尊重、人間は平等であるという、そういう思想が子供たちの心の中に涵養されるように今までも努力をしてきたつもりでありますが、なお一層そういう点については力を入れていきたい、こういうふうに考えます。  次に、ウタリ子弟の進学の問題でございますが、御承知のように進学奨励事業をやっておるわけでありまして、高校、大学で九百八十九人進学奨励費を受け取られまして進学をしておられるわけでありますが、これも今後とも充実をしていきたい、こう考えております。  社会教育の問題でございますが、これはなぜそうなるのかわかりませんが、現場の方から具体的な要望が来てないそうでありまして、したがって、一般の社会教育の問題として対処しておるわけでありますけれども、北海道庁の方から具体的な要望がありますれば、それをお聞きして適切な対処をしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  94. 三浦隆

    三浦(隆)委員 差別に泣いている子供たちのことでありますので、教育の場から適切な御配慮を願いたいと思います。  次に、厚生大臣に二点にわたってお尋ねいたします。  一つは、旧アイヌの人々の中には、生活の貧しさに泣き、地域の衛生環境整備の立ちおくれから疾病に悩む者が多いということです。厚生大臣として、こういう人々をこのような状況に追いやっている厚生省所管の北海道旧土人保護法について、どう考えますか。  それから第二点に、五年前の三月七日の予算委員会第一分科会で、私が、「旧土人」という憲法違反の言葉は早急に廃止すべきである、このように述べたのに対して、これに対して厚生省は、関係者の意見などを聴取して検討すると答弁しております。この五年間、「旧土人」の用語の廃止を含め、どのように関係者と検討されてきたのか、どのような施策を強化してきたのか、厚生大臣の意見を賜りたいと思います。特に所管のことですし、「旧土人」という表現を踏まえて、はっきりとした意見表明をお願いいたします。
  95. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 名称の問題につきましては、現在の社会常識から申しましても、まことに不適切なものだと思っております。  なお、生活環境並びに福祉の問題でありますけれども、従来からの生活館に生活指導職員を配置して逐年ふやしておるわけでありますけれども、私はこの程度ではなかなか十分でない。なお、本法は古い法律でありますから、その後できました生活保護法その他によって分野を侵されておるといいますか、そちらの法律に任した部分もございますから、全面的な改正が必要な時期に参っておるというふうに考えております。
  96. 三浦隆

    三浦(隆)委員 厚生大臣にお願いしたのは、この法律が厚生省の所管になるということなのであります。そうした保護的な施策の一つ一つを言うよりも、現地の皆さんが一丸として願っているのは、「旧土人」というふうな、そういうべっ視したような法律名を即座になくしてほしいんだということでして、厚生省でむしろ中心となって問題提起していただかなければどうにもならないわけであります。単に答弁として不適切だだけでは済まないのでありまして、もっとしっかりとした主導権をとって行っていただきたい、こう考えます。  次に、北海道開発庁長官お尋ねをいたします。  五年前の予算委員会第一分科会での私の質問に答えまして、北海道開発庁の野々山計画官がこういうふうに答弁しております。私が「旧土人」という表現は使用すべきではないんだと言うのに対しまして、「これはウタリさんの仲間の間にもいろいろ御議論がございますので、ウタリさんの御意見の統一を待って考えるべきものではないかというふうには存じます。」と言っているわけであります。大変御丁重のような言葉に見えて、実に実意がないというか、現地の人々の心をつかんでいない答えだと言ってもよいと思います。  私がこの二月に旭川アイヌ協議会、北海道ウタリ協会、旭川地区人権擁護委員委員長の方々の御意見を伺ったわけですが、この二法とも廃止せよということでは、もうほとんど一致していると思うのであります。ただ、二団体で意見を異にしますのは、旧土人法の二法を廃止した後の国の施策のあり方及び新法の制定の是非をめぐってのことでございますから、「旧土人」という表現を持つ現行法の廃止に向けましては、現地を管轄する北海道開発庁長官として明確な答弁をお求めしたいと思います。
  97. 河本嘉久蔵

    河本(嘉)国務大臣 官房長官及び厚生大臣の御発言のとおり、土人という名称は、私も不適当であるというように考えております。  当庁の所管ではございませんが、道民と比較してのあらゆる格差ということの是正のために、北海道がウタリ福祉対策を進めておるのでございますが、北海道開発庁といたしましても、厚生省並びに北海道庁の線に沿って努力してまいりたいという考えでございます。
  98. 三浦隆

    三浦(隆)委員 本当に北海道固有の法律でございますから、北海道開発庁としてもいろいろなデータをお調べのようでございますけれども、本当に現地の人々の心を酌んだ温かみのある対応処置をぜひともおとりいただきたいというふうに思います。今日なお旭川市旧土人保護地処分法というのは、旭川市というふうな個別市名を持った法律でもございますし、自治大臣にお尋ねしたかったと思いました。  それから農水大臣にも、この法第四条では、貧しい人々に対する農政の立場からの農具及び種を給するとか、その他農業の保護政策を持っていたのに、その後この規定を削除してしまいました。あるいはまた、本来ならば一戸当たり一万五千坪いくはずであったものを、アイヌの人々を保護するということで、名義変えをさせないで、そしてそのために戦後、農地解放で不在地主の名において、ほとんどみんな土地を持っていかれてしまった。保護法がかえってアイヌの人々にあだをなしてしまったというふうなことなどもございますので、これはまた法務委員会におきまして、差別問題と絡んで、自治大臣あるいは農水大臣というか関係者の御意見をお尋ねしたいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  99. 天野光晴

    天野委員長 この際、滝沢幸助君より関連質疑の申し出があります。三浦君の持ち時間の範囲内でこれを許します。滝沢幸助君。
  100. 滝沢幸助

    滝沢委員 予算委員長、毎日御苦労さまです。  さて、各大臣、御苦労さまですが、私の質問の前に、一言要望を申し上げておきます。  実は、国民の皆さんがこの議場を通じて知りたいとおっしゃっていることは、きょうの会議をどのように答弁をして逃れるかというような答弁のテクニックではなくして、いやしくも我が国を責任を負って運用していられる政府のそれぞれの省庁の責任者として、歴史に責任を持ち、国民に責任を持つ本音の議論を求めているわけです。つきましては、私の時間も少ないことではありまするし、法令の冗漫な解釈等ではなくて、各大臣の本当の腹を、イエスかノーか、簡単、明瞭、率直に御答弁を賜りたい、このように要望しまして、まず、教育のことからお伺いをさせていただきます。  今、総理大臣の異常な熱意のもとに教育改革が議論されております。しかし、文部大臣、今新しい制度が変わろうとしておるときに、今の制度の中で勉強している子供さん、そして父兄の皆さん、また教師の諸君、いわば改革のはざまの中で動揺、不安を余儀なくされている、これについて、この不安を鎮静化するような指導はされているかどうか、一言簡単で結構です。
  101. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  学校の現場で動揺、不安が起こっているとは私は思っていないのであります。しかし、現在の学校教育の現場、先ほどからいろいろな問題の指摘がございました。いじめの問題、あるいは前々からこの委員会で指摘があった非行の問題等々を含めまして、今の学校教育はこれでいいんだろうか、改革をすべきであるというのは、政治家、役所の側だけではなくて、むしろ父兄の側にその要望は強いんじゃなかろうか。そういった要望を酌み取って法律に基づいて設置されました臨時教育審議会で今活発な御論議がなされているところでありますが、その御論議の煮詰まるのを待ちまして、答申としてその意見が総理大臣に出されましたならば、文部省としてはそれを最大限に尊重して具体的な改革に取り組む、こういう姿勢でおるわけでありまして、今後ともそういう姿勢で文部行政を担当していきたい、こう考えておるわけであります。
  102. 滝沢幸助

    滝沢委員 不安、動揺がないとおっしゃっているのは認識不足というものでありまして、臨教審が答申を出しましたら、それに基づいていろいろな施策をすることはそれは当然でありますが、それに至りまする間、例えば再来年から九月入学になるのかな、あるいはまた自由化というのはどういう形で来るのかなというようなことなんですよ。どうかひとつ認識を新たにされて、教育の現場、また父兄の間に不安、動揺のないように御指導を願いたいと思います。  ところで大蔵大臣、実はこの臨教審が二年半の後ですか答申を出しましたならば、これは私は大きな財政負担が要求されるような改革案になってくるのではないかな、こういうふうに思うのですよ。今、国家財政大変なときに御苦労されているわけでありまするけれども、これにつきまして財政の面で不安がないのか、臨教審の答申を待ってどのような御準備なのか、承りたいのであります。ところが、御存じのように今日、教育界にはたくさんの課題があるわけですよ。いわく入学試験制度の改善、いわく生涯教育の問題、四十人学級——四十人学級と言えば、大臣の今度の勉強会、四十人学級なそうでありまして、せんだって祝意を表して激励をしたところでありまするけれども、どうかひとつ財政担当者として、この臨時教育審議会の答申を待つ姿勢はいかがなものであるか、一言披瀝を願いたい。
  103. 竹下登

    ○竹下国務大臣 教育改革、そして臨教審、どういうお話が出ますやら、にわかに私ども素人が判断するところではございませんが、教育予算というのは今四十人学級のお話もございましたが、本当にいろいろ衆知を集めて苦労して、財政事情厳しい折でもございますが、必要な予算はそれなりに確保して今日に至っておる。教育改革で、内容いかんによりましては、それはもとより財政負担を伴うものもありましょう。と同時にまた、教育とて例外でないとすれば、それこそ効率化、合理化の対象になるものもございましょう。だから一概に、いわば教育改革は金次第という考え方には私はくみするわけにはいきませんが、必要なものは必要なものとして、当然のこととして文部省で念査をされるでありましょう。それに基づいて対応すべきものであるというふうに考えております。
  104. 滝沢幸助

    滝沢委員 教育改革、よき教育を築くためには、いわば金の御心配は要りませんというふうに承っておいていいですね。  そのように理解しながら進ましていただきまするけれども、話は百八十度変わりますが、外務大臣、きょうは将来の総理大臣お二人そろって見えておいでですから、心強く将来のことを語りたいと思うのでありますが、実は外国日本との両国の総理、首相というような方々がいろいろと外交交渉をなさるときに、その速記録のようなものは一つの声明のようなものが出まする過程におきまして作成されますか。
  105. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん作成されます。
  106. 滝沢幸助

    滝沢委員 そうであるならば、昭和四十七年九月二十九日に日中の共同声明なるものが、時の田中総理大臣、中国の周恩来首相のもとに締結されました。これが実りまする過程におきます速記録を資料としてちょうだいできまするよう、委員長、御配慮願いたいと存じます。  そうして質問を進めさせていただきまするけれども、実はこの共同声明が出まして十年、教科書の記載をめぐりまして中国からいろいろと注文が参りまして、そして五十七年の十一月二十四日に教科書検定の基準というものに十五というものが加わりまして、これによりまして、実はいわば近隣諸国との協調関係というような小項が加わるわけであります。ところが、そのとき、当時の小川文部大臣の談話の中に、いわゆる四十七年九月の田中・周日中共同声明というものを尊重してこの改正を行うんだ、こういうふうにおっしゃっているわけだけれども、ところが、この田中・国会談の中では、伝えるところによりますれば、日本は中国を侵略をしたと明記すべきだとおっしゃったと言われる周首相と、いやしかし、それは日本の国民感情にはなじまぬ、過去のことではなくて将来のことを語りましょうや、ついては、日本は不幸なる戦争はしたけれども侵略の意図はなかったと主張される田中総理大臣との間に随分とエキサイトした議論も交わされまして、締結の前夜遅くまでそのようなことがなされたと伝えられております。ところで、その結果、侵略という文字は使われずにあの声明ができたわけであります。  そうなれば、十年たちまして中国から注文が来まして、しかもその注文たるや、これは報道の手続関係か何か知りませんが、そのミスをもととしてあの議論が展開されたと言われております。そうした結果、みずから侵略ということを認めるようなふうにその後教科書の検定が進められてきている。侵入は侵略と書き改められるように指導がされている。このことについては、後で分科会、委員会でいろいろとお伺いさしていただきまするけれども、本日は原則的なことを承らしていただきたい。この二つのことは矛盾するのじゃありませんか。この間の事情を両大臣よりどうぞ。
  107. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん首脳間の会議録は作成をされるわけでありますが、その会議のやりとり等につきましては公表はしておりません。両国で首脳間で合意に達した例えば共同声明、そういうものは天下に対してこれを両国の合意文書として明らかにしておるわけでありまして、これをもとに議論が行われておるわけであります。
  108. 滝沢幸助

    滝沢委員 文部大臣から……。
  109. 松永光

    ○松永国務大臣 一国の国民教育の中で使用される教科書につきましては、その国が自主的に判断をして教科書の内容は決められるべきものだ、こういうふうに原則として考えます。しかし、歴史的な客観的な事実、あるいは国際協調、こういった面も当然参考にしながら日本独自の判断で教科書の内容は定められるべきものだというふうに考えております。
  110. 滝沢幸助

    滝沢委員 委員会等で詳しくお伺いしまするけれども、新文部大臣、ただ一言だけあなたに聞いておきたい。日本は中国を侵略しましたか。どうお考えです。
  111. 松永光

    ○松永国務大臣 当時の政府の主観的な意図は別といたしまして、客観的には侵略と見られるべき事実もあったのじゃないかというふうに私は考えます。
  112. 滝沢幸助

    滝沢委員 このことについては、後で委員会等で承らしていただきます。  ところで大蔵大臣、実は先般もサンケイ新聞でありますかに出ておりましたけれども、ことしも私立大学の入学その他の料金、これは値上がりをいたしまして、ことしの計算でありますと、授業料、施設設備資金、そして入学金というものを合わせますれば九十一万六千八十六円というような数字が出ているわけであります。数字のとり方はいろいろあるのでありましょうけれども、昨年は八十七万六千八十一円というようなことで、大変な値上がりをしているわけであります。理学部なんというのは百万円、また医学部におきましては一千万円から一千五百万円、歯学はもっと高いというようなことが言われているわけであります。しかし一面、国立の方に行きますと、今度も改正の議案が見えておりますけれども、二十八万三千円という数字であります。無慮七十万円ほどの差があるわけであります。国立につきましては、税をもってこれを賄って、あの国立大学に学ぶ学生諸君にそれだけのお金を分けてさしあげていると同じことなのでありますから、せめて格差の分だけでも所得からの控除を認めて、必要経費としての控除を認めて、いわゆる教育減税というものを実行されてよろしい時期ではないのかな、私は昨年もこのことを申し上げましたけれども実りません。ことしもまた再び強くこのことを要望して、将来の日本を開こうとしての旗上げ、また今後を期していらっしゃる大蔵大臣でありますから、ひとつ将来のことを語りながら、このことについての決意を承りたいと思います。
  113. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昨年、滝沢さんからの御議論ございまして、それを正確に税制調査会へ報告しました。かなり議論をされましたが、今日の現段階におきます「昭和六十年度の税制改正に関する答申」というものでは、「教育費負担に配慮して教育費控除を設けるべきである等新規の特別控除等の創設についての要望があるが、そもそも様々な国民の生活態様の中から特定の条件や特定の家計支出を抜き出して、税制上しん酌するには限界があり、また、しん酌する場合の客観的基準を定めることは困難であること等を考慮すれば、新規の特別控除等を創設することは適当でないと考える。」これが答申の内容であります。  簡単に申し上げますが、いつでも議論になりますのはどこかと申しますと、税制上教育費控除等を創設する、そうしますと、これまではいろいろ税金をいただきまして歳出面からの助成、これが教育に対するあり方であろう、それに、いわゆる歳出主義であるところへ税制面において親に対する助成の道を、払うべき税金を控除されるわけですから、租税歳出という言葉も近ごろは使われておりますが、親に対する助成の道を開くことに結果としてはなる。したがって、現行の教育助成方式を基本的に変更するということになるので、軽々に結論を出し得ない問題である。この議論がまずあります。  それから次には、今度は税制固有の問題、税だけの問題として考えますと、税金を納めていない貧しい家庭の父兄には恩典が及ばない、それがございます。それから、義務教育のみで社会に出て働かざるを得ない若年勤労者の税負担とのバランス、すなわち義務教育だけでお出になりますと九十六万七千円までが税金がかからないわけでございますが、近ごろ年額百万円ということになれば、その方々はささやかながら所得税をお払いになっておるということに対するバランスの問題というのがいつでも出てくる問題であります。  したがって、結論から申しますならば、ちょうど教育費のかかりそうなところの層に減税の恩典が行くような所得税本来の姿で対応することに工夫を凝らすというのが限界かな、こんな感じを持っております。
  114. 滝沢幸助

    滝沢委員 一応承っておきまして、今後の課題としてなおいろいろと検討をしていきたい。どうぞひとつ大臣も、このことについては、これは大きなる国民的要求であるというふうに理解いたしまして検討されんことを望みたいと思います。  ところで文部大臣、文芸春秋の新年号に元東大教授の市原先生という方が「国語審議会委員への公開状」という論文を出しております。ごらんになっていただいていると思います。この論文でございますけれども、私が申し上げたいことは、昭和二十一年に占領軍とローマ字学者など、そしてそれに文部官僚の三者が一体となりまして、いわゆる国語審議会の名において漢字を制限されたのであります。これはいわゆる二十一年、一千八百五十字という漢字を決められて、新仮名遣いという摩訶不思議なる仮名遣いを発表された。その後でいろいろと要望もありまして少しふやしまして、五十六年に千八百五十字を千九百六十五字に上げている。このときは、これは制限ではなくして目安だなんてうまいことをおっしゃっておりますけれども、官庁の用語、新聞、雑誌は、これでいわば統制をされているわけであります。  内容を見ますと、自衛隊はおいでになりませんな、駐とん部隊なんて屯という字を仮名で書いたって、これはとどまっていることなのか豚なのかわからぬですわ。そうして私の演説もそうかもしれませんけれども、竜頭だ尾という蛇尾の蛇という字を仮名で書いて、これが何のことかわかりますか。こういうことでは文章は書けない。そして私もいささか文章を書いておりますけれども、こう書きまして説明のために注と書く。その注は今は、さんずいなんです、言葉で説明することをさんずいで説明する、注いでいるんです。そして先ごろ田中幹事長がお亡くなりになりましたけれども、今お亡くなりなさったときの没は水没、水の中へ淡々と入ると同じ字なんです。これじゃとてもいわゆる浮かばれないというものであります。また連合軍、連合艦隊なんて言いますけれども、この連という字も今は大連の連ですわな。あれはぱらぱらとつながる列車の連です。連合の聯というのは相互に組み合っているものですから、耳へんに糸糸というふうにして足をつけるわけであります。これでは全然文章は書けません。そして、私はいささかお習字では、大家ではありませんが小家くらいにはなっているつもりであります、唱歌は音楽でありますけれども。略字が正字になってきております。広島県の広という字を、これは中を黄色の黄と書くところに文字が芸術になるのだけれども、ムを書いてはどうにもならぬ。そしてまた仏のことで恐縮でございますけれども、仏という字も、にんべんに片仮名のム、何でこれが仏ですか。これはほどくというところに語源があるわけでありますから、全くこれは国民すべてをして無学たらしめ、古典から遠ざからしめ、歴史を中断させようというものでございます。  新仮名遣いにつきましては、これは市原博士も、まことに非理論的な非歴史的なことであるとおっしゃっております。俳句や短歌その他の文学が新仮名遣いで書けようはずはありません。これについて私は極論させていただきますよ。国語審議会なるものは、臨調ということでやるならば一番先にやめるべき機関である。国語審議会がいたしましたところの数次にわたるこの国語のいわゆる改革案、でれば百害あって一利なし、まことに亡国の挙と言っても過言ではございますまい。そしてこのごろも何か仮名遣いを「ぢ」と「づ」がどうかおっしゃいましたけれども、あんなふうに年がら年じゅう基準が変わったのでは新聞記者の皆さんも困るでしょう、一々新しい文部省の字引を引いてやらなくちゃならぬ、というようなことですわな。こういうのはどうなんですか。いわゆる文化国家を目指すというこの日本が、変な外来語はどんどん使いますわ、しかしそれこそ万葉集も読めなければ論語も読めない、外史も読めないというようなことでいいのかどうか。どうかひとつ文部大臣の御意見を承りたいと思います。
  115. 松永光

    ○松永国務大臣 先生の御指摘の事柄は高度の専門的な学問的な事柄でございますので、私はまだそれを的確に答える学問を持っておりません。幸いにその方の専門家、文化庁の次長が来ておりますので、そちらの方から正確に答えさせます。
  116. 加戸守行

    ○加戸政府委員 国語審議会におきましては各種の御建議、答申等をいただいておるわけでございます。既に漢字の問題につきましては、当用漢字から、五十六年でございますが常用漢字、仮名遣いあるいはいろいろな形のものもいただいておるわけでございますが、基本的には国民を国語で統制するという考え方でございませんで、漢字の場合あるいは今回の現代仮名遣いにいたしましても、法令、官公文書あるいは新聞報道等国民生活一般に用いられます場合のよりどころを示したものでございます。もちろん専門分野における領域あるいは個人の分野につきましては触れていないわけでございまして、そういう意味では一般的な指針として漢字の制限あるいは仮名遣い等を示していただいているわけでございまして、このことによりまして一般的な国民の日常生活におきます漢字あるいは仮名遣いというものにつきましてのおおよその目安としてそれが一般的に国民の間に普及していくということでございまして、基本的には国語問題について統制するという考え方は全くございません。しかも、今回の現代仮名遣いの答申にいたしましても、歴史的仮名遣いにつきましては十分これを尊重して、学校教育においても配慮するのが望ましい等の御意見もいただいておるわけでございまして、そういった点では国語審議会は定員五十名の学識経験者でございまして、非常に専門的な見地から御意見をちょうだいしているということでございます。
  117. 滝沢幸助

    滝沢委員 さっき申し上げたとおり、法令の解釈は要らぬですよ、わかっているのです。そこで憂えているわけでありますから。それは国語審議会がやったことが国民の生活を利しましたか、教育を前進させましたか。かえって学生諸君をして二つの仮名遣いを勉強しなければ生きていけないのです。新しい字も古い字も知らなければ社会人として生きでいけないのです。かえって複雑にしたのじゃありませんか。かえって学生の負担を重くしたのじゃありませんか。いやしくも国字、国語というものは時とともに所とともに、方言なんてのも立派なものです、変わってくる。それが歴史ですから、それが文化ですから。それを役人が統制するべきものではないのです。それは統制したのじゃないとおっしゃいますけれども、現実は統制じゃありませんか。それを学校で教えているわけでしょう。これはまた教科書問題になりますから省略します。  ところで、このようなことを強制しないとおっしゃいまするけれども、法務大臣おいででしょう、戸籍に、夫婦が赤ちゃんのために十カ月間相談して、お父さんの意見、学校の先生の意見を聞いて名前を持っていきますと、市役所の戸籍係が、この字はだめです、わずか三ページぐらいのこの字のうちから選んでちょうだいというようなことで、そこであわてて変更したら思いがけない名前がついたということでしょう。規制してないと言うが規制しているじゃありませんか。法務大臣、これは戸籍法五十条、平易な文字を使いなさいと言っている。何が平易な文字を使う必要があるのです。人様の名前です。何も大臣が一々書くわけじゃありません。そして、施行規則六十条ということで現実に法的に規制しているのだけれども、これはどうですか。これを早くやめてほしいというのが私の申し上げたいこと。せめて戸籍ぐらいは、愛する子供のために一生の幸せを願ってつける名前です、自由につけさせていいじゃありませんか。お答え願いたい。
  118. 嶋崎均

    ○嶋崎国務大臣 お答えいたします。  子供の名前に用いる漢字の問題というのは民事行政との結びつきが非常に強いということで法務省にゆだねられておるというのが過去の経緯でございます。そこで、民事行政審議会に答申を求めまして、子供の利益のために子を悩ませるような書きがたい漢字による命名は避けることが望ましいのみならず、日常の社会生活上の支障を生じさせないために、他人に誤りなく容易に読み書きができ、広く社会に通用する名の用いられることが必要であるという理由で漢字の制限が必要だ、こういう経緯があるわけでございます。  いろいろな問題があるわけでございますし、実は私の名前自身も横に山がついているのかついていないのかというような、兄弟でも字を変えて書いておる、あるいは新聞報道はわざわざ落として書いてあるようなことでございまして、なかなか難しい問題があると思いますが、そういう経緯で、特に名前につきましては別表(二)に掲げるようなものも追加できるというようなことで整理をしたというのが過去の経緯であります。
  119. 滝沢幸助

    滝沢委員 表現の自由ということを憲法は保障している。活字があるのに、昔から使われておるのに法務省がこれを統制することはけしからぬことであります。一日も早くこれを撤廃していただきたい。今承ったのは今までの経過でしかございません。これも後で分科会で申し上げさせていただきます。  今度は雪であります。三十七年に豪雪地帯対策特別措置法なる法律を制定していただいたわけでありますが、それ以来の業績を歩といたすわけであります。ところが、私は半年の間五メートル、七メートルという雪の中に生きておるわけです。降雪量といったら二十メートルにも達するでしょう。そこの中で、五月になってもなお地面が見えないという年は多々あるわけであります。先ごろ新潟県で五人の方が土砂崩れでお亡くなりになりました。福島県でも八人一緒にブロックが落ちて亡くなったことがあります。私の会津におきましては少なくとも五人から十人雪のために亡くならない年はないのであります。こういう雪の重圧の中で私たちの祖先は生きてきました。どうかひとつこれに対して政府のもっと温かい理解をいただきたい。  申し上げたいことは、雪は、これは建設大臣、国土庁長官、大蔵大臣、聞いていていただきたいのですが、私たちの理解から言えば、雪国の理解から言えば、雪が降って構造物が壊れて、それが建設省の査定をいただいて雪害ということになるのではないのです。雪は降ることそのものが雪害であります。これは一つの認識の違い。そしてもう一つは、雪は、大変金のかかる嫌な地方だ、足手まといだという理解では間違っております。雪は天与の資源であります。今九つの電力会社が出しております電力は総じて一億一千八百三万キロワットというのであります。しかし、そこの中で水力は、最近火力が多くなってきましたけれども、それでも一九%、二千三百四十一万キロワットを出している。しかも、その水力の半分以上は雪国で生産されるわけであります。さらには飲用水、農耕かんがいの水、そして緑化、保健、観光というようなことを考えますれば、雪の降らない地方の方々が一生懸命今もスキーに行って楽しんでいらっしゃる。してみますと、昔、黒いダイヤは石炭ですか、赤いダイヤは小豆。最近は緑のダイヤというものがあるそうでありまして、マスカットとか言うのでありますが、まさに雪こそは白いダイヤであります。大きなる国家資源であります。これを提供している我々の立場におきまして、提供を拒否できないところに中近東とは違う立場があるけれども、雪は消えますからそれは拒否できませんけれども、これは大変な国家資源として理解をしていただきたい。  そこでお伺いしますけれども、大蔵大臣、雑損控除というものがありますね。雪おろし作業の費用を認めてくれている。ところが、雪国は太い柱、高い床、高い屋根、そして二重の窓、いわばぜいたくな普請をしなくてはならない。しかし、これは心がぜいたくじゃなくて、そうでなくちゃ生きていけないのです。家がつぶれるのです。ですからこれをしているわけでありますから、これらにつきまして自治大臣、固定資産税の面で高いランクに評価されることは困る。そして、所得の控除にもこのようないわゆる、衣類も履物も車も全部大変な出費をする、これらのことを認めていただきたい、こう思うわけです。  時間がないから質問を続けさせていただきますけれども、国県道の除雪の機械、機材をもってどうして苗代が、そして学校のグラウンドが除雪できないのか。これは補助目的が違うと言うけれども、所有者は国民であります。どうかひとつ多目的にこれを利用する道を開いていただきたい、こう思います。  あと道路構造等についてもいろいろと御質問がありますが、省略さしていただきます。ここまででひとつ……。
  120. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 いわゆる寒冷地帯に存在します木造家屋につきましては、もう内容は説明いたしません、先生御承知のとおりでありまりますから。最高二五%の減価を行う措置を講じておる、非木造家屋につきましては五%の措置を講じておる、それが現状でございます。なお、将来の問題につきましてはいろいろまた検討してまいりたいと思います。
  121. 高橋進

    ○高橋(進)政府委員 除雪機械をほかにいろいろ転用すべきであるということでございますが、公益上必要である場合にはそういうこともできることになっております。ただ、最近の道路用の除雪機械はタイヤ式のためにグラウンドや田畑のような軟弱面での使用は一般的には困難かと思われますが、可能なものについてはそういうこともあり得ると思います。
  122. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今御指摘なさいました問題も、実は税制調査会では寒冷地控除等々の問題も、いわば特定の生活状態の中で行うことであるので、その基準を定めるのは困難だということになっております。が、豪雪に対する税制上の配慮としましては例の、今おっしゃいましたとおりの雑損控除、これは厳しい財政事情のもとではございますが、特に雪おろし費用あるいは災害関連支出ということを考慮いたしまして、その足切り限度を五万円まで下げたわけであります。この問題につきましては、豪雪のときとそうでない年との多少の違いもございますが、大変この問題につきましてはそれなりに評価いただいておるというふうに理解しております。
  123. 滝沢幸助

    滝沢委員 最後に一言。まことにこれは素朴な質問を農林大臣そして外務大臣に。  実は農家の立場は、今世界には五億とも十億とも言われる人々が飢えに苦しんでいるわけであります。飢餓の人々であります。こういう方が片や地球の向こう側にいらっしゃるのに、どうして日本が良質の米がこんなにとれるのに減反をしていくのか、これはわからぬのであります。どうかひとつ、役所の立場はいろいろとあるのでありましょうけれども、農家の方々にわかりやすく簡単な言葉で説明していただきたい。何か外交上の隘路があるのならば、それもひとつわかるように説明していただきたいと思います。
  124. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 滝沢先生にお答えします。  私に対する質問は二つだと思いますが、第一につきましては、実は米については生産力が依然として需要を上回っておる、そんなことでございまして、生産調整を行わなければ需給の均衡を図れない……(滝沢委員「そんなことはわかっている」と呼ぶ)こんなことで実は水田利用再編対策を進めております。  今なぜ世界が困っているかということでございますが、実は今まで国内産米の援助輸出はあくまで過剰米処理の一環として実施してきたものでございまして、今過剰米はなくなりました。実は、今先生がおっしゃるようなことで、新たに国内で援助用の米を生産し、これを政府が買い入れて輸出したらどうかということですが、三つの問題点がございます。その第一番目につきましは、国際的にも補助金つき輸出であるとして伝統的な米輸出国に批判を受けるおそれがございます。第二番目には、援助効率が非常に低いこと、第三番目には、米の国際価格と国内価格に非常に大きな格差がありまして、膨大な財政負担を実は余儀なくされる、こんなことで極めて困難であると考えております。したがって、今先生がおっしゃる食糧の問題につきましては、実は食糧不足の解決のためには、それぞれの国自身による自助努力による食糧増産、農業振興が重要でありますので、そういうような自助努力に対する協力を進めていきたい、こう考えております。
  125. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今農林大臣の言っていることで尽きておりますが、日本の場合も食糧は援助しなければならない、積極的にやらなければならぬと思っておりますし、米が余っておるときはこれをやってきておるわけですが、今お話がありましたように、何といいましても日本の食糧は諸外国と比較して非常に高いものですから、やはり膨大な財政的な負担を伴って援助しなければならぬわけであります。同時にまた、伝統的な輸出国等もあるわけでございますので、日本の場合はむしろ外国から買って、それを積極的に輸出する、それを援助するということの方が諸外国に対して非常に効率的な援助ということにつながっておるわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  126. 滝沢幸助

    滝沢委員 いろいろと私も言葉足らず、答弁の方も不十分でありまするけれども、各委員会また分科会等に譲らしていただきます。  委員長、御配慮ありがとうございました。各大臣御苦労さまでした。
  127. 天野光晴

    天野委員長 これにて三浦君、滝沢君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時六分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  128. 大西正男

    大西委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田利春君。
  129. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は率直に質問いたしますので、簡潔に素直にひとつお答えをいただきたい、かように存じます。  初めに、補助金の一割カットと、また、これに関連する若干の問題についてお伺いをいたしたいと思うわけであります。  税制調査会の会長さんが参考人として本委員会に出席をされました。そして、いずれ税調に対する政府の諮問があるのではないか、このように考えて注意深く国会の審議の動向を見守っている、かように小倉さんは答弁されておるわけであります。この委員会でも随分税制改革の問題では各党からそれぞれ意見が述べられておるわけでありますけれども、この抜本的な税制改革に対する諮問は、この論議を踏まえていつごろをお考えになっておるのか、まずこの点についてお聞かせ願いたいと思います。  同時にまた、この税調に諮問した抜本的な税制の改革の答申は、もちろん六十一年度予算編成の答申もあるでしょうし、しかし、これだけの議論がある抜本的な改革はやはり別途に答申されるものと私は常識的に判断をするのでありますけれども、この点はいかがか、御見解を承りたいと思います。
  130. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も聞いておりまして、そのうち諮問があるだろうと。今までは三年目ごとに国税、地方税のあり方というような諮問をしておりまして、あとは以心伝心でやっていただいていたわけですね。ところが、税調会長からああいう言葉も出たし、そうなれば、やはり税調自身からこの際、異例のことであるが、抜本的な検討をすべきだ、こういう答申をいただいておるわけですから、そうなれば、きちんとした答申をやっちゃいかぬという法律も規則もありませんから、以心伝心ばかりでなくしてきちんとやってもいいのではないかな、こう判断をして総理が答えられたと思います。それで、私は後から、それで結構でしょうと申しておきました。  それで、今の場合、できるだけ早く、こういうことに尽きるわけでございますが、やはり本委員会、参議院も含め、それから税の歳入委員会大蔵委員会、参議院も含め、そういうものの整理を大体きちんとして、それが小倉会長さん初め税調の方々の資料としては、国民の世論が那辺にあるかということを判断されるためにも一番必要じゃないか。だから、今の場合は、まあできるだけ早くというのがお答えとしては限界かな、私も考えてみて、税の関係は、それは三月いっぱいが山とはいえ、実際問題そうはいきませんですね、まだ後もいろいろ議論は残るでしょうし。そうすると、今、四月にやりますとかあるいは五月にやりますとかというところまではまだ判断できぬな、こんな感じです。  それからもう一つ、今おっしゃいましたように、従来、三年の任期が終わります一番近い年末に出してもらうのです。ただ、今度は例のグリーンカードの後始末の問題がありましたので、半年間延長したわけですから、それだから、その延長したタイミングはちょっとぐあいが悪いなという感じはしますけれども、それにしても、三年間おれたちはやった、大体こういうものを中間答申とかを残していかれるというのが先例にあることはあります。  それからもう一つは、年度ごとにやっていく何年度税制のあり方について、これもきちんとそういうことがあります。したがって、その判断は税調の審議の進みぐあいにやはりお任せすべきかな、方法としては、岡田さんも私も古うございますから、あるいはその年度答申と別に、抜本改正における中間答申というようなのがあり得るのかなとか、想像はできないことはありませんけれども、やはりこの問題は、政府もまた税調も構えて受け取ろうという感じですから、その審議のスピードとかあるいは答申のあり方ということはもう少しお任せをしておるべきじゃないかな、こんな感じがしております。
  131. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 やはり税制のシャウプ勧告以来の抜本的な改正ということになりますと、相当な慎重な時間も必要でありますし、また、国民の理解を得る時間も必要であります。そういう意味で、やはり毅然としてこれらの問題については対処される方が最も適切である、こう判断をいたしますので、この点申し添えておきたいと思います。  次に、大蔵大臣は先般の大蔵委員会においても意見を述べておるわけでありますが、六十一年度予算の編成に当たっては、引き続き歳出の抑制、緊縮型の予算を組む、こういう考え方を述べられたようでありますけれども、来年度、六十一年度の予算編成についてはこの方針は変わりがないかどうか、明確に御答弁いただきたいと思います。
  132. 竹下登

    ○竹下国務大臣 六十一年度予算編成方針、それがもちろん決まったわけでもございませんし、その前に概算要求基準の問題等があろうかと思います。したがって、それこそ予見を持ってこうしますとは言える段階にはなかろうかと思うのでございますが、私が素直な感じとして申し上げましたのは、十二月二十九日に予算概算閣議が終わりましたときに、やれやれという感じがしまして、一体もう歳出削減の対象というのはどこにあるだろうかというような、素直にそんな気持ちに瞬間的になりまして、なったと同時に、待て待て、これではいかぬぞよ、やはりまだまだ制度、施策の根本にさかのぼって対応をしなければいかぬ問題があるという意識だけは忘れてはいかぬぞよというので、我と我が身に言い聞かせたという感じのことをあえて申し上げたわけでありまして、六十一年度予算編成方針はかくやりたいという大上段に振りかぶったような気持ちで申し上げた言葉では必ずしもございません。しかし、いずれにしても、やはりまだまだ厳しい対応の仕方というのを我々は心がけていなければいかぬなという気持ちだけは持っております。
  133. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大蔵省の出した仮定計算によっても、一般歳出をゼロとすると要調整額は一兆六千六百億円である、こういう試算も出されておるわけであります。  いずれにしても、やはり緊縮型の予算を組むとすれば、今本委員会に提案されている予算の中の補助金のカットの問題についてでありますけれども、この補助金のカットは、同様緊縮型の予算を組む場合には、この歳出削減総額は一応見込んで試算をされて一兆六千六百億になっておると思いますから、その場合には、財政当局としてはこの措置は続けていきたいという気持ちがあるのかどうか。  例えば、公共事業費関係の一割カットを三年間合意をしたわけですね。しかし、社会保障関係については一年間で、この一年間また協議を続けていこう、こうなっておるわけであります。そうしますと、一応前段の方はもう既に来年度の場合にもカットをするという前提が定まっておるわけでありますから、総体のこの補助金カットについては今年度の措置を引き継ぐという前提に立たなければなかなか予算が組めないということになるのではないか、こういう感じがするのでありますけれども、この点について大蔵大臣の考え方を承っておきたいと思います。
  134. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ことしの場合、要するに、やはり基本的にはいわゆる地方と国との役割分担、費用負担のあり方ということで一応一割カットの、多少の違いは、八〇を七〇とか三分の二を六〇とか、いろいろな率の相違はございますが、そういうことで地方と国との費用負担のあり方というところからこのような措置をとらせていただいたわけであります。  ただし、この問題については、一年かかってとにかくあるべき姿とでも申しましょうか、特に社会保障関係、生活保護関係等、昭和二十一年あるいは二年それから二十六年以来の物すごい議論をされた歴史というものがありますものですから、やはりそうした議論をしようじゃないか、こういうことになっておるわけであります。したがいまして、この仮定計算の場合は、現行の施策、制度をそのままということを前提に置いておりますから、だから、もとの補助率に返った計算になっておることは事実であります。
  135. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大蔵大臣は、大蔵委員会に行くと何かこう気持ちがゆったりとして、いろいろ質問に答弁ができて、予算委員会になるとちょっとかたいのではないかなという感じが私はするのですが、三十日の大蔵委員会における質問に対して、これは民社党の米沢委員の質問でありますけれども、大蔵大臣は、地方の高率補助金の補助率引き下げについては、自治、厚生両省と議論した上で恒久化したいという考え方を述べているわけです。これは一月三十日の大蔵委員会なんですね。ですから、大蔵大臣はそういう希望を持っているということは、そういう意思表示が大蔵委員会でなされているのですから、そうではないかなと思って私は質問したわけです。この事実はお認めになるのでしょう。
  136. 竹下登

    ○竹下国務大臣 あれは若干舌足らずだったかなと思いますのは、要するに、一年ばったしのものにしないで、今の御審議をお願いしておる率で恒久化するということではなく、恒久的なものに可能なことならしたいな、毎年毎年変えていくということでなしに、ある程度恒久的なものにしたいな、こういう希望を述べたわけであります。
  137. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今回の補助金の一括カットに当たって、随分重大な問題が含まれておると我々は判断をいたすのであります。それは、補助金カットの中における生活保護費に関する問題であります。  この生活保護の問題については、行政改革の答申を見ましても、あるいはまた一連の閣議決定を見ても、いわゆる生活保護費については別途に、含まれていないという点が明確になっておるのであります。しかしながら、こういう閣議決定をしながら生活保護も他の関係と一緒に一律一割カットをしたということは、明らかに閣議決定違反であると同時に、行政改革の答申の趣旨にも沿っていない問題だ、こう言わざるを得ないのであります。その点、特に原局である厚生大臣はどのように判断をされたのか、承りたいと思います。
  138. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 臨調におきましても、昭和五十六年の第一次答申以来、生活保護費等について例外的な措置をとるよう指示されておるわけでございますけれども、なおその後の第五次答申におきまして、その際には従来からの整理とは別に、著しく高率の補助を総合的に見直しをしようという御意見もございましたので、そのようなことから閣議におきましてもそういうふうに決定されたと承っております。
  139. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、それぞれの答申あるいはまた閣議決定の時期と内容については、既に質問に先立って文書を渡してあるわけであります。時間の節約上そういたしておるのであります。  御承知のように、昭和五十六年七月十日の第一次答申では、第2の2の(2)の「補助金」という項目の中では「個別に明らかにしたもの及び生活保護費等を除き、」と明確に書かれておるわけです。そして、それぞれこれを受けて閣議決定をされておるわけでありますけれども、最も新しい閣議決定は昭和五十九年十二月二十二日の閣議決定であります。これは「昭和六十年度予算編成方針」5の(3)に書かれておるのであります。したがって、この内容を見ましても、五十六年七月一日の第一次答申、そしてこれを受けた閣議決定、これを受けて措置をするという予算編成の方針が閣議決定されておるわけでしょう。ところが、生活保護の一割カットについては、他の補助率カットと一緒に自動的に機械的に一割カットをされておるのであります。これほど明確なことはないと思うのですよ。だから、閣議決定と違ったことをやったんじゃないですか。言い方を変えると、明らかに閣議決定違反ではありませんか。いかがですか。
  140. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私ども議論したところでございますが、五十七年度から実施しておりますのは、いわゆる生活保護とか義務教育国庫負担とか、そういういわば法律に基づく大物は除いて、とにかく補助金の一割削減ということをあのときやったわけでございまして、いわゆる補助率の削減のことではないわけであります。だから、もろもろの補助金があるのを、法律補助もあれば予算補助もございますが、その補助金を一割カットを五十七年からやってみようじゃないかということでやりましたので、したがって、その場合は、いわゆる大物であります「生活保護費等を除き、」として、率でなく補助金で一割削減をやったわけでございます。したがって、ことしの場合の書き方は、ちょっと今手元にありませんが、その後出ました、先ほど厚生大臣からもお答えがあっておりました、いわゆる高率補助というものを対象にして、今度は率の方でこれを対象としてやらせていただいたというわけでございます。
  141. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今大蔵大臣からの答弁がありましたけれども、もちろん本格答申の中にも、特に補助金の中で生活保護の問題については詳しく述べられておるわけであります。この内容は確かに今大蔵大臣の言われた趣旨が合致をするのであります。しかし、第一次答申に示されておる面については、明らかに生活保護費等については除くということは、一割カットと同様な扱いをするという措置の仕方については除かれていない、この面で違いが明瞭であると思うわけであります。ですから、昭和六十年度の概算要求を決める閣議了解、これは昭和五十九年七月三十一日に閣議了解がありますけれども、この場合も(別紙)「補助金等の整理合理化について」というものが立てられていて、この中にも「その他の補助金等については、昭和五十六年八月二十五日閣議決定「行財政改革に関する当面の基本方針」第1・1・(2)・イに準じ、」こうなっておるわけです。このことは明確に昭和五十六年七月十日の答申、そしてこれを受けて決定した閣議決定の内容を意味いたしておるわけでありますから、今の大蔵大臣の答弁は無理があるのではないか、こう私は思うのであります。したがって、生活保護費等の一割カットが他の補助金と一緒に同列に扱われたという点については、閣議の趣旨に反しているということは明確であると思うのです。
  142. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 今、五十九年七月の閣議了解について御言及がございました。この閣議了解はいろいろなことが書いてございます。  委員指摘の、いわゆる生活保護費等を除き一割カットというくだり、これは御指摘のように「生活保護費等を除き、」と書いてあるわけでございます。このくだりは、先生が先ほど御引用になりました臨調答申もそうでございますが、ちょっと御説明をさせていただきますと、補助金が総額で現在でもざっと十四兆ほどございます。そのうち、臨調も行革審も個別に一々その制度の中身に踏み込んで改善方策を示されているものがたくさんございます。例えば国鉄でございますとか、義務教育の国庫負担でございますとか、あるいは私学の問題でございますとか、いろいろございます。それで、そういうふうに臨調が個別に取り上げて改善方策を示し得るもの、これはまず機械的に省庁別にあなたのところの補助金総額の一割をカットしていらっしゃいよという、その機械的な一割削減の対象からは外しましょう、こういう趣旨でございます。その場合に、生活保護費、これも御存じのように約一兆ございます。こういうふうに金額の非常に大きいものは省庁別に金額として一割削るのはいかがなものかということで、臨調答申も「除き、」というふうにおっしゃっておられる。  こういった特別のものを除いてまいりますと、結局機械的に各省庁別にあなたのところの補助金の一割を削っていらっしゃいよというものの対象になりますのは約一兆でございます。この一兆については、一々議論をするのもいかがなものかということで、これは各省庁別にそれぞれの省庁の判断で、その一兆については、機械的にいわば省庁別にノルマと心得ていただいてその中で補助金の整理をしていただきたい、こういう趣旨があるわけでございます。  七月の閣議了解もその線を踏まえまして、そういう一割、機械的な各省庁にノルマをいわば与えてやっていただくことは、それはそれとしてやっていただきたいということが一つ書いてあるわけでございます。  補助率問題の方は、これとはまた別の角度から、これも臨調答申あるいは行革審の意見で、著しく高い補助率のものはいろいろ問題があるからこれは見直しをすべきであるという御指摘もいただいておりまして、したがいまして、昨年夏の閣議了解におきましても、同じ閣議了解で高率補助を総合的に見直しをして、そうして補助金整理をやっていただきたいということが書いてあるわけでございます。  観点の違う二つのことが同じ閣議了解に書いてあるということでございます。
  143. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今の説明は無理があるわけですね。もちろん臨調は、特に生活保護に関しては非常に詳しく述べられておるわけであります。しかも、本格答申の中でも、真に生活に困窮する者に対しては必要な保護を確保するということを基本にするということが前提になって、今述べられている生活扶助基準の設定の方式あるいは加算の制度、生活保護制度のあり方、これは見直していこうという点はつけ加えられておるわけですよ。ですから、制度の問題は制度の問題で明確に詳しく述べられているわけです。本格答申に書かれてあるわけであります。  しかしながら、今前段の第一次答申における「生活保護費等を除き、」ということは、特に他のものと一律に扱うものではない。そして、本格答申の中にはその制度のあり方その他について検討するということが非常に詳しく述べられておるわけです。そして先ほど指摘をしましたように、予算を決定する段階において、別紙に基づいて補助金等の整理合理化をする、こう定められて六十年度予算の概算要求についての閣議了解が決められたわけであります。そしてその概算要求の別紙の中で、ここに明確に「昭和五十六年八月二十五日閣議決定「行財政改革に関する当面の基本方針」第1・1・(2)・イに準じ、」という意味は、今私が一番先に述べた点を素直にこの了解は受け取っておるのであります。だから、一割カット、生活保護費を含めて単純に一割カットをするということについては、答申の趣旨からいっても無理があるし、閣議決定についても趣旨と反するのではないか、この点が見解が違うのであります。  これは、後藤田さん、いかがですか。
  144. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 この問題、岡田さんのような御議論もそれはあるのかもしれませんが、実はこれは第二臨調の中でもいろいろな経緯があったようでございます。  といいますのは、昭和五十六年に五十七年度の予算編成に関連をして、異常な歳入欠陥ということが背景にありまして、そこで補助金をどうするかといったような議論があり、その際に生活保護費のような、場合によれば受給者に非常な大きな影響を与えるものですから、その諮問をしたのが実質審議期間がわずか二カ月ぐらいだったようです。その際に、こういう問題を結論を出すということはいかがなものだ、こういうことで、岡田さんがおっしゃるような「生活保護費等を除き、」というのが五十六年のあれになった、こう私は承知しておるのです。ところが、その後——これは第一次答申ですね。そこで、今度は第五次の答申の中で、五十八年の三月ですか、第五次は最終答申です、その中で補助金の「整理合理化の一般的方策」というものの中で「全額補助や著しく高率の補助の引下げ、特例的補助率かさ上げの見直しを含め、補助率の総合的見直しを行う。」こういうことを書き、そして「個別補助金等の整理合理化方策」という中で、生活保護費の補助金について、例えば不正受給者の排除であるとかあるいは「長期入院患者の社会復帰の促進、」であるとか、あるいは「生活扶助基準の設定方式、加算制度等生活保護制度の在り方を見直す。」こういったような答申になって、そして今度は五十九年の行革審から補助金の高率補助は全部のものを対象にして——第一次は対象から外した、対象にして、そしてこれを見直しを行うべし、こういう御答申があり、政府としてはそれをやったのですね。そこで、さっき吉野君が言ったように、補助率の問題と総枠の問題というのは、どうも聞いてみると最初から別であったように私は承知しているのです。  そこで問題は、受給者に影響したら困るわけですから、だから今度の補助率の問題は国と地方との間の補助率の問題であって、受給者には影響しない、こういうような措置をとってある、私はかように理解をしておるわけでございます。
  145. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この問題は政府部内でも、憲法十四条、この問題を中心にして、いわば政治哲学が議論されている内容でもあるわけですよ。他の問題と違うわけです。ですから、今長官が答弁されてもやはり無理があるのだと私は思うのですよ。もちろん本格答申もここにあります。補助金は、生活保護については詳しく述べています。しかし、以前の五十六年の第一次答申をそのまま受けているのですから、問題なんですね。  私はこの点で時間をとりたくないのですけれども、これはぜひ、今答弁のやりとりで委員長もおわかりのとおりなわけです。政府のやはり明確な考え方を整理をして、総括質問の前までに私は理事会で協議をしてひとつ検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  146. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 もう一遍御説明をさせていただきたいと思います。  いわゆる一割削減でございますが、御指摘のように、昨年の夏の閣議了解におきましても、臨調答申を踏まえて各省庁ごとに総枠を設定するということが書いてございます。これは、ここに書いてございますように、各省庁ごとに各省庁の補助金の総額の一割を削りなさいという手法で整理をする場合のことが書いてあるわけでございます。そういう手法で補助金を整理する場合には、臨調その他で個別に具体的な改善方策が示されているものや生活保護費のように金額的に非常に大きいもの、これを機械的な金額で一割削っていらっしゃいという手法で整理合理化を進めるのは適当ではなかろうということで、それはそれでそういう手法からは外してあるわけでございます。同時にこの閣議了解におきましては、臨調答申あるいは行革審で御指摘をいただいた著しく高率の補助率その他補助率を総合的に見直すべしという御意見を踏まえまして、高率の補助率の見直しはこれはこれとしてやってきていただきたいというふうに同じ閣議了解に書いてあるわけでございます。したがいまして、補助金整理のいわばいろいろな手法があるわけでございますが、機械的に省庁ごとに金額で一割削ってきていただきたいという手法による整理合理化、その対象からは外れている。しかし同時に、別途補助率の高いものについてはその高いという点に着目をして整理をするという場合に、あえて生活保護費を対象の外にするということにはなっていない、こういうふうにぜひ御理解をいただきたいと思います。
  147. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がどんどんたっていくのですけれども、これは大蔵省、自治省の間でも最後までもめた内容で、しかもお互いに覚書を交わして、分担の割合とか基本的な方向も含めてひとつ今後一年間かかって議論しよう、こうなっておるわけですよ。ですから、こういう基本の問題を簡単に今の答弁でそうなんだと言われても、私は納得ができないのであります。それはやはり当初の第一次答申の趣旨とそれに基づいての閣議決定の方針はそのまま受け継がれておるわけですよ、ずっと見ても。だから手法は手法でわかるわけであります。そう解釈されるのが私は極めて当然だと思うのであります。でなければ、やはり当初の除かれている生活保護費については、特にこういう趣旨に基づいてこういう措置をするといういわば閣議の決定の趣旨の変更が伴うような内容がその後の閣議の決定の中になければならない、私はこう思うわけであります。私はこう思うのですがね。委員長、どうですか、これ。(発言する者あり)
  148. 大西正男

    大西委員長代理 ただいまの岡田君の質疑に関する点につきましては、追って、この予算審議中に、政府の方から答弁を整理をして提出をさせるようにいたしたいと存じます。  したがいまして、その場を追ってつくりますので、その余の問題について御質疑を続行願いたいと思います。
  149. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 きょう、四党で予算の修正案も実は理事会で提出をいたしたわけであります。こういう問題もやはり特に予算の修正の問題と非常に微妙な関係を持つもの、こう判断をいたしておるのであります。したがって、ぜひこの点がきちっと整理をされて、見解が明確になりますようにお願いをいたしておきたいと思います。  そこで、もう一点これに関連して承っておきたいと思うのですが、そうしますと、大蔵省、自治省の覚書が交わされて、今年は一括一年限りの法案がこの国会に提出をされようといたしておるわけであります。しかし、一方において公業事業については三年間という合意がある。大蔵大臣は、できれば話し合いがついて、これをさらに来年度も継続の方向を期待しているという趣旨の答弁を大蔵委員会でもなされておるわけであります。そうしますと、ここで考えられることは、国と地方の分担割合を基本的に議論をするということにつながっていくのではないか、こう思うわけであります。そういう国と地方の分担割合を基本的に議論していくという意味は、いわば財源の国と地方の分け方についても分担についても基本的にこれは検討しなければならない。もちろん、抜本的な税制改革が諮問されれば、そこまで含んでやはり議論されることは間違いがないと思うのですね。そういう一つの文脈の中に今の問題がある、私は残念ながらそういう理解しかできないのですね、素直に考えて。そう考えるのは、大蔵大臣、私の考えに無理がありますか、極めて健康的な考え方とお思いになりますか、いかがですか。
  150. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる国と地方との行政が総合的、効率的に行われますためには、それぞれの機能と責任を分かち合いながら相互に協力をしていくことが必要であって、国と地方との財政は税源配分、それから交付税交付金、補助金等によって密接な関係を有しておるわけであります。私が重ねて申し上げますのは、このようなものは、公共事業の方も過程において三年ということを私の方もそんな議論をいたしましたが、結果としては全部一年限りという法律構成にはなっておるわけでありますが、結局、今の税源配分とかいう問題は、やはりそれは基本的には国と地方の役割分担の見直しとか、国と地方の財政状況等を踏まえながら幅広い検討がこれからも行われなければならぬ課題だという考え方は基本的には持っております。現下の国、地方を通ずる厳しい財政状況というものは、地方においてもまず歳出の徹底した節減合理化、行財政の減量化を推進してくださいとか言いながら徐々に詰めてきた結果を今御審議をいただいておるものでございますから、基本的に私も、岡田委員のおっしゃいました国と地方との役割分担の見直し、国と地方の財政状況等を踏まえて、幅広い見地から検討は引き続きしていかなければならぬ課題だという基本認識は持っております。  それからもう一つだけ、誤解があるといけませんので。私が大蔵委員会で答えましたのは、可能な限り恒久的な、今の率をそのまま恒久化するということではなく、可能な限り恒久的な結論が出ることが期待されるというふうに申したわけであります。
  151. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この際、自治大臣のお考えをお聞きいたしておきたいと思います。
  152. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 自治省といたしましては、御承知のように予算編成の直前までは、私どもは、補助金の見直しは必要でありますが、一律カットということはかえって地方の事務の合理化、そういうことには反することになるから、一律カットということは思わしくないという考え方でおりました。結局、そういう問題については予算編成も迫っておりますし、それから国の非常に厳しい財政事情下におきまして、その金額、つまり二千六百億が経常的経費、それから三千二百億が投資的経費でございます。これをとにかく見てください、そして、これは一年限りということで、特に経常的経費の問題、今お話にありましたような厚生省関係の問題につきましては、一年内において三者で十分話し合って今後の方針を決めていこうという意味で、一年限りということで私の方は了承せざるを得なかったということでございます。
  153. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この問題は、さらにまた締めくくり総括質問に譲っておきたいと思います。  せっかく外務大臣がおいででありますから、予定時間を超えているのでありますが、お聞きいたしておきたいと思います。  その第一点は、米ソの軍縮交渉の進展、東西緊張緩和に当たって日本外交は積極的な貢献をしたい、こういう決意のほども安倍外務大臣は述べられておるわけであります。ただしかし、先般の日米首脳会談においては、アメリカ側から日本側に対して、米ソの関係改善が進展をしていく、その中で日本の対ソ政策についても当然いろいろ展開が考えられるだろう、だが、いずれにしても日本が対ソ外交の新展開というか新しい提案をする場合には必ずアメリカに相談してほしいということがくぎを刺されておるわけですね。これはちょうど対外協力と同じなんですよ。こう我々は受け取っておるのであります。きのう、おとといのタス通信ですか、これなんかにもそれらしいことを暗に指摘しながら声明が載っておるということもあるのであります。この指摘について大臣はどう思われるかというのが第一点であります。  第二点は、当面の日ソの関係改善をする場合に、我々が漏れ承っておるところによれば、日本側としても日ソ間には既に映画祭を行うとかあるいはまた文化使節を交流するとかそういう段階が進んでいる、したがって日ソの文化協定を結ぶ用意がある、こういう点で恐らくはデミチェフ文化大臣の招請もしているのではないのか、こう私は思うのであります。同時にまた、最近シベリア鉄道、バム鉄道関係のコンテナ輸送の問題とか、あるいはまた中型でありますけれども新しいプロジェクトの協力についても具体化しつつあるのであります。我が国は長期経済協力協定を北方領土の関係もあって結ばないという立場をとりながらも、今日的緊張緩和の状況の中ではやはり経済的にも民間なら民間の主導を援助しながら進展をさせていく、そういう若干幅を広げた方向の中で日ソ間の関係を改善をしつつグロムイコ外相の訪日を実現する、その中でそういう実績の上に新しい政策の展開を図る、こういう考え方が私は大事ではなかろうかと思うのでありますけれども、この機会に外務大臣の見解を承っておきたいと思います。
  154. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日米間には、首脳会談はもちろんでありますが、外相会談におきましても、国際情勢、そしてまた特に米ソ関係、東西関係については率直に意見の交換をするわけですが、しかしアメリカから日ソ関係にくぎを刺されるということはないわけでありまして、アメリカアメリカなりの考え方を述べ、日本日本なりに日ソ関係にどういうふうに対処するかという考え方は説明といいますか、情勢は説明するわけでありますが、向こうから注文がつけられるということはありませんでした。  そういう中で、とにかく米ソの関係が進む、軍縮会談が再開されるということはこれは世界情勢に大変いい影響が出てくるし、特に日ソにも、こういう機会をとらえて日ソの関係をさらに前進させたい、私はそういうふうに思っておるわけでありまして、そういう中で、実は去年以来からずっと高級事務レベル会談とか経済貿易会議だとかいろいろなものを民間、それからまた政府レベルにおいて進めてまいりました。そういう中で相当お互いの理解というのが進んでまいりました。もっとも領土問題という基本問題がありますけれども、そういう理解が進んでおりましたので、ことしはさらにそれを一歩前進をさせなければならぬと思っております。  それには、今おっしゃるように幅を持たせなければならぬと思っております。文化協定を締結するというふうなことを今ここで申し上げる段階でありませんが、しかし、少なくとも文化大臣を政府の公賓としてお呼びするということも今回思い切ったわけであります。恐らく文化相も日本にお見えになるだろうと思います。あるいはまた、科学万博を機にさらにソ連の有力な要人が来られるというようなことになればこの間でいろいろの面で対話が進むだろうし、さらにまた経済の面も、おっしゃるようにソ連も関心を持っておりますし、日本でも相当関心も出てまいりましたから、この間についてもいろいろと話し合いが進む可能性があるのではないか。全体的にいろいろな問題を経済、文化、あるいはまた政治、そういう面で徐々に進めながら、グロムイコ外相が訪日する番ですから、何とかグロムイコ外相の訪日を求めたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  155. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もう一点、対外経済援助は、各委員からもいろいろ質問がございました。私は端的にお伺いいたしたいと思うのですが、第三次政府援助の中期計画、これから検討されるのだと思います。そして六十一年度からスタートいたすわけでありますけれども、この場合、もちろんOECDなんかはさらに倍増を要望されているという面もございますけれども、なかなかそう簡単にはいかぬのではないかと思います。だがしかし、一つには、総額倍額はできなくても、例えば贈与分とかあるいは技術協力、この面は今度の中期計画で二倍にする、こういう目標は立てられるのではないか、また立てるべきではないかというのが私の意見であります。  同時に、第二の問題は、どうも日本の援助は無償もあれば有償も抱き合わせになる。そうすると、そこに日本企業の協力が入り、すべてひもつきになるという評判がよくない面があるのであります。これは恐らく外務大臣の今度設定される私的諮問機関、この中でもこういう問題は基本的に議論されるのだと思うのです。  だが、私は、もう一つ大きく中期計画の中で考えなければならぬのは、ハードの面も大事ですけれども、ソフトの面を相当重要視しなければならぬのではないか。アフリカに例えば施設をつくってもそれを動かす人がいないとか、あるいはまた知的な面が欠けるとか、あるいは教育の問題ももちろんあるでしょう。病院が建ってもお医者や看護婦がいなければだめなのであります。農業でもそうですね。もう単にダムをつくって預けるというだけではやはりだめなんであって、もう少しソフトな面を重要視しなければならない。そのためにはスタッフが必要なんですね。これはやはり各省を超えて、特殊法人の公団、公社を超えてそういうスタッフをつくる、こうでなければ、一兆円に及ぶ国民の税金というものについて国民は大変な心配を残すのだと思うのです。  この三点について、外務大臣の見解をひとつ承っておきたいと思います。
  156. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるように、日本が世界に貢献をし、さらに世界の信頼を得るためにも、経済協力をさらに進めていかなければならぬと思います。  そこで、一応の倍増計画が終わりましたが、これからどうするかということにつきましては、これは国会でもしばしば御質問もいただいておりますし、政府としても今後について何らの計画を持たないというのもやはり日本の国際的役割を果たす上において問題があると私は思います。したがって、この点について今いろいろと検討を進めておりまして、何とか近く方向を出したい、こういうふうに考えておるわけですが、同時にまた、今の経済協力のあり方につきましてもいろいろと批判のあることも承知しておりますし、やはり経済協力のフォローアップといいますか、そういうものがしっかりしなければならぬという点についても、これは今後とも十分気をつけていかなければならぬ、そのためのいろいろの対策も講じたいと思います。  特に、今御指摘がありました経済協力の内容につきましてソフトの面を充実しろ、これは私も全く同感であります。特に技術であるとか文化であるとか医療であるとか、そしてプロジェクト中心の経済協力はそれなりにまた成果もあるわけですが、今、世界の、アフリカの状況とかこれからの将来のことを考えますと、確かに日本の持っておるソフト関係のノーハウというのがやはり世界の経済協力には大きな貢献ができるのではないかと私は思います。したがって、この点については御意見を十分踏まえて、私自身もそうした基本的な考え方を持っておりますから、そういう方向でこれともこれからひとつ積極的に取り組んでいきたい、こういうふうに思います。
  157. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もう一つは、端的に聞きますけれども、北朝鮮との問題の中で、もうそろそろ日本の外交官が北朝鮮の高官と、政府役人と、いわばコミュニケーションを持つという点についてはひとつ認められていいのではないか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  158. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国交はないわけですけれども、しかし、海外で外交官同士が会話、あいさつを交わすということについて日本としてこれを厳しく規制しているとかそういう状況でもありませんし、特に南北の対話等も始まりましたし、そういう点は、やはり日本外交の良識においていろいろと現地の外交官等が判断をして、節度の中にも節度を持ちながら行動してもらえばいいのじゃないか、こういうふうに思っております。
  159. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうすると、外務大臣としては、日本の外交官が向こうの外交官あるいは政府高官とコミュニケーションを持つということは認めておる、こう確認してよろしいですか。
  160. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国交のある国同士のそうした話し合いとか、内容を持った対話とか、そういうことはないとしても、これはやはりお互いに会って知らぬ顔をしているというような状況ではもうないと私は思っておりますし、韓国のオリンピック等もこれから成功させようという状況ですし、南北対話も進むという状況で、とにかく朝鮮半島の緊張緩和というものを踏まえて、日本外交もまた日本の外交官も行動したらいいのじゃないか、そういうふうに思います。
  161. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 二回の質問で、この問題それぞれお話があって、どう受けとめるかということは非常に微妙なんですけれども、そのときの状況に応じてそういうことは柔軟に対応できるものだ、こういう意味ですか、そう受け取っていいですか、二回の答弁を聞いてそういう感じがするのですが。
  162. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは日本の外交官もそれぞれ現地で良識を持って働いておるわけですから、そう政府として縛ってどうだこうだと言う筋合いのものじゃなくて、やはり外交官の良識で日本と今の北朝鮮との関係あるいはまた朝鮮半島の情勢というものを相判断をして、良識を持った節度のある行動を望みたい、こういうふうに思います。
  163. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 安倍積極外交というのがそういう点ではちょっと歯切れが悪いなという感じがしますけれども考え方はよく理解できると思います。そういう点で期待をいたしたいと思います。どうもありがとうございました。  あと残りの時間、ちょっとも色の変わったところで酪農問題について質問いたしたいと思うのです。  中央酪農会議が先般、今年度下期の見通しをずっと立てられておるわけです。大体当初の計画生産目標は達成される、こういう見通しを述べておるのですが、落ちつく見込みはそういう理解でよろしゅうございましょうか。
  164. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答え申し上げます。  中央酪農会議が五十九年度の見通しを立てております。おおむね当初の見通しのラインになっておるというふうに見ておるわけでございます。
  165. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先般の全酪協の関係でありますけれども、これは五十九年の九月に全国一円調査が行われておるのであります。これは昭和六十八年まである程度見通した、抽出的な調査でありますけれども、ちょっと注目されるのではないかな、こう思うのです。これによりますと、乳牛の飼育戸数は二〇%減る、だから七万戸ぐらい減るという意味であります。飼育頭数については七%増加をして一戸当たりは全国平均三十三頭になる。一頭の乳量については大体一五%増しになる。こういうところから始まって、それぞれ酪農の従事者あるいはまた酪農の収入等についての一応の見通しを発表いたしておるわけです。私は、この調査というものをどのように評価をするかということは非常に大事な問題だと思うのですが、この点は農林省としてはどのような評価を下していますか。
  166. 野明宏至

    ○野明政府委員 この調査は、社団法人酪農協会が酪農経営の現状なりあるいは将来の方向などを把握するために、昨年九月、酪農協同組合とかあるいは指定生乳生産者団体等を通じて行ったアンケート調査でございます。この調査は全体の約二割強を対象にしておりますが、必ずしも全国をカバーしておりませんし、また地域的にも偏りがございます。したがいまして、直ちにこれが全体の姿をあらわしているかどうかという点はございますが、今後の酪農施策を推進していく上での参考にはなるものと考えておるわけでございます。
  167. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近の乳製品の市場の動向でありますけれども、既に脱粉が非常に不足ぎみになりまして、久しぶりで、八年ぶりで事業団は八千トンの脱粉を緊急輸入をするという措置をとったわけです。大体現在の在庫状況はバターが一万八千トン、約三カ月ぐらい、脱粉は三万トンで二・七カ月、いずれも正常在庫内にある、こういう状況にあるのではないかと思うのであります。という意味は、バターの場合には代替するものとしてマーガリンなどがありますから、バターの伸びが横ばいであって、脱脂粉乳の需要はどんどん伸びているという状況にあることがここ一年の間の需給関係の推移から明確に受け取れると思うのです。この傾向は残念ながら続いていくと私は思うのです。この傾向が続いていくということは、牛乳の成分評価を再検討しなければならぬという側面を持っておる、私はこう思います。  大体、ECやあるいはまたアメリカの場合でも、一九七〇年当時はアメリカの場合にはバターが脱粉の二・五倍、ECの場合には四倍、こういう評価の置き方になっておるのですが、最近は、アメリカの場合は一・六倍、それからECの場合は大体二倍内、一倍台という形で評価の内容が変わってきておるわけであります。日本の場合には一九七〇年当初は大体一・六倍ですね。そうして最近の状況はバターの方が二・四倍という数字になっておるのであります。いわば我が国の牛乳の成分評価は、そういう意味で国際的な傾向から判断し、また日本の需給動向から判断しても、七〇年当初、いわばこれは十五年前、その当時の一・六倍前後ぐらいの方向に牛乳の成分の評価については見直しをするのが妥当性を持っている、このように私は思うのでありますけれども、この点についての農林省の分析と考え方について承っておきたいと思います。
  168. 野明宏至

    ○野明政府委員 確かに諸外国におきまして最近バターと脱脂粉乳の価格評価が変化してまいっておる。例えばECあたりでは、最近では脱粉に対するバターのお値段は一・九三というふうなことになっております。これに対しまして日本の場合には、昔はこれよりかなり低かったわけでありますが、現在は二・五程度になっておるわけであります。  こういうふうな状況の中でその評価をどう考えるかという点でございますが、これは安定指標価格をどういうふうにこれから考えていくかということとつながってくる問題であろうと思っております。安定指標価格については、乳製品の生産条件とかあるいは需給事情、その他の経済事情を考慮して決めていくということになっておるわけであります。  ただいま御指摘ありましたように、最近の乳製品の需給は、脱粉の需要は伸びていく傾向にございます。逆にバターの需要は停滞をいたしておるというふうな、いわば跛行的な状況にあると言ってよかろうかと思います。それはまた、脂肪分と無脂固形分に対する価値評価の変化、そういったような乳製品をめぐる状況にいろいろな変化が出てきているのではないかということは考えられます。こういった要素も含めて考えていかなければならないわけでございますが、同時に、消費者と申しますか、需要者との関連での消費の安定というものにも配慮しなければいけませんので、それらを含めて総合的にこれからよく検討してまいりたいと思っております。
  169. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは三月の畜産審議会に諮問されますか、こういうものの内容を含めて。
  170. 野明宏至

    ○野明政府委員 三月の価格とか量の問題につきましては、現在検討中でございます。  いずれにしましても、法律に基づく諸般の事情を踏まえてやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  171. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、当面の酪農政策の中で次の諸点が極めて重要かと思います。  もちろん、市乳の乳価の傾向については大分改善されましたけれども、依然問題を残しております。また、加工乳の場合も、大体四〇%から六〇%の生乳をまぜて、あとは脱粉、バターを溶かして加工乳をつくるということでありますから、この点もまだ問題が残っておる、私はこう思います。そういう面から考えて、原料乳の限度数量を過去二年連続引き上げてまいりましたけれども、適正な限度数量、やはり量を引き上げていくという努力が当然必要ではないか、こう思います。同時にまた、過去二年間は基準取引価格は上がったけれども保証乳価は上がっていないのであります。もちろん予算の関係もあるでしょう。しかしながら、いわば今までの政府の持ち分というものは下がっておるのであります。三円六十八銭下がっておるのであります。  こういう点から見ますと、これからの酪農政策を考える場合には、今申し上げました牛乳の成分の評価、そして市乳と加工乳をよく注目しながら限度数量を決めていく、そして基準乳価と保証乳価の関係、加えてもう一つは、今年は負債整理の第五年目になって、ラストの年になるわけであります。しかし、現在の北海道の酪農なんかを考えてみますと、もうEC以上です。ECを超えておるのであります。そうしますと、後継者のない者は落ちていっても、意欲のある者を一体どうまとめて安定帯に乗せるかということが私は大事だと思うのですね。そういう点でコストの軽減等についての指導や配慮が大事ではないか、こう思うのであります。  そういう一連の問題が今度の三月の審議会でも当然審議されなければならぬと思うのでありますけれども、私の今指摘をした点についての見解を伺っておきたいと思います。
  172. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいま多岐にわたるお話があったわけでございますが、確かに市乳の値段はひところに比べますと大分改善されてまいっております。ただ、需要に見合った安定的な生産ということが行われておるわけでございますが、ややもすれば再び過剰を招きかねないというふうな基本的な構造を持っております。したがいまして、全体として再び過剰をもたちさないということが、やはり酪農の安定的な発展の一つの基本ではなかろうかと思っております。したがいまして、先ほどお話のありました基準取引価格の問題、安定指標価格の問題、あるいは限度数量の問題、そういった点に十分配慮しながら考えていかなければならないのではなかろうかと思っておるわけでございます。  それから、確かに日本の酪農はECに匹敵し得るような規模になってまいっております。したがいまして、これからはやはり経営の体質を強化していく、生産性を上げていくというところが非常に大事な点になってまいるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  173. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もう一問で終わりますけれども、この点、今までの私の質問を含めて、大臣のお考え方を承っておきたいと思うのです。  北海道のような場合は、もう既に四十五頭、五十頭という段階に入ろうといたしておるわけであります。こうなってまいりますと、いわばゴールなき拡大の場合には、ハードの側面を非常に強化しながらとにかく拡大生産をひた走りに走ってきた、それが生産制限の段階になってきた。そして、この状況の中でどう安定させていくかということになれば、ハードの面ももちろん大事でありますけれども、ソフト面が非常に大事になってきた、私はこう思うのであります。  スーパーカウなどと言って一万キロも出ると言ったって、飼い方によっては六千か七千しか出ないかもしれない。普通の牛だって、一万キロ以上搾乳できる牛はあるのであります。そうしますと、牛乳の成分なども再評価されるということになれば、えさのプログラムというものをつくって対応しなければならぬ面がある。後継者についても、当然人材を養成しないでもはや酪農はできる状況にはないのであります。いわばそういうソフト面というものをこれから重要視することが特に注目されなければならないのではないか、私はこういう感じがするのであります。だからこういう面では、農業者年金なんかの場合も、新しい人材に早くバトンタッチをするという意味では、水準を下げるということはもう少し待ったらどうかという意見等も私は持っておるのでありますけれども、ぜひそういう方向を向いた政策の展開や指導が行われるべきではないか、こう思うのであります。  そういう意味において、今までの私の質問の総括をも含めて、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  174. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 岡田先生にお答えいたします。  我が国の酪農経営は、需要の高い伸びを背景として、先生おっしゃるように規模拡大を中心に著しい成長を遂げて、今や飼養規模とかあるいは一頭当たりの搾乳量は既にECと比肩するに至っていることは先生指摘のとおりでございます。一方、牛乳、乳製品の需要は今後とも伸びが見込まれますが、従来のような高い伸びは期待できない、これも事実だと思います。そんなことで、酪農経営においては、量的拡大よりむしろ質的充実による経営の体質強化と低コスト生産がこれまで以上に強く求められておると思います。  そんなことで、今、先生がおっしゃるような経営の体質強化と低コスト生産を図る具体的方策として、七つ考えております。  その一つは、簡単に言いますと、「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」に基づく計画的な生産の拡大、二番目には土地条件、経営条件の整った地域において乳用子牛の哺育育成とか老廃牛の肥育等を行う乳肉複合経営の育成、三番目には国内飼料基盤の充実拡大を図るための農地流動化や草地開発の実施、四番目には配合飼料価格の安定、五番目には低能力牛の選抜とか淘汰等により一頭当たり搾乳量の向上を図るための乳用牛改良の促進、それから六番目には労働時間の短縮、搾乳牛供用年数の延長、良質粗飼料の給与、あるいは飼料生産の単収の増加等、経営技術改善を図るための経営診断や技術指導の充実、最後に牛肉及び肉用子牛価格の安定等を積極的に講じてまいりたいと考えております。
  175. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんが、ことしは十二年に一遍のうし年なんですね。私も年男なわけであります。今述べられましたけれども、ここまで育ててきた日本の酪農、去年は牛肉輸入で大分揺れましたけれども、もう一歩というところで安定化の展望が出ると思うのですね。そういう点でひとつ具体的に私の提起した問題について御検討いただきたいと思います。  次に、きょうは官房長官が来ておるのですが、どんぴしゃり聞きますので、どんぴしゃり答えてほしいと思うのです。いろいろ今までも各委員が質問しておりますが、戦後処理問題の予算についてどうもはっきりしないのですね。特別基金の創設の検討費は五千六百九十八万だ、実情調査費は一億だ、台湾関係調査費が五百万だ。私はこの問題は鈴木内閣のときに本会議の代表質問で取り上げて、こういう懇談会をつくることによってすべてが終わりだということを再確認させることになるのではないのか、こういう質問を本会議でしておるのです。これに対して答弁もございましたけれども、二年間かかつて答申が出てきたが、私が予想したとおりの、終わりだという再確認の答申の内容であります。だがしかし、ことしの予算の最終決定に当たって、実情調査でなくして実態調査費、このことは自由民主党から要求をされて、政府と党の間で最終的に折衝事項に残ったという問題であります。その結果が今年度の予算原案に示されている実情調査、こうして一億の金額がつけられておるわけですね。この経過に間違いないかどうかということが一つ。  といたしますと、少なくとも新たな観点に立って実情調査をするという意味ではないか、こう言わざるを得ないのであります。これから考えるなどという答弁では納得できないですね。そんな予算を、金をつけて、これから考えるなんというべらぼうな予算をつける状況には我が国の財政状況はないと思うのですね。この点について明確にひとつお答え願いたいと思います。
  176. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 戦後処理問題につきましては、今お話がございましたように、懇談会の会合が重ねられてまいりまして、懇談会からは、一応意見の取りまとめが行われて政府に対して意見が寄せられたところでございます。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕 その中身は、これ以上国において措置すべきものはないとすると同時に、関係者の心情に深く心をいたす、こういう趣旨から、特別の基金を創設するということを懇談会としては提唱をしておるわけでございます。それを受けて、政府としましていろいろ検討してきたところでございます。その間には与党とのいろいろなお話し合いをするという機会もあったわけでございますが、結果といたしましては一億五千七百万、検討調査の費用ということで予算を計上いたしておるところでございます。  はっきりしろというお話がございましたが、これをどのように検討していくかということにつきましては、予算成立後、どのように検討を進めるか、どのように調査を進めるかということについて検討を始める、こういう段取りでおりますので、今日の時点におきまして明確にお答えすることができませんことを大変申しわけなく思います。  ただ、いろいろな方々のこの問題に寄せる御期待とか御心情を考えますときに、懇談会もいろいろ気持ちがよくわかる、そのことにこたえて基金を創設すべきだ、こういうふうなお話もあってきておりますので、関係者の方々の心情などについてもいろいろ深いものがあって、関係方面は大きな御期待をいただいておると思うのですけれども、基金を創設するということを中心にいたしまして、それではどのようにこの基金を設定するのか、どのように活用をしていくのかというようなこと等を中心として検討が加えられていくことになる。ただ、各方面からお話がありましたのは、それにしてもどのような実情になっておるのかということを調査する必要があるではないかというようなお話等もございましたので、こういう形で検討調査をするという形で予算案をまとめた次第でございます。予算成立後検討を進めてまいりたい、このように考える次第でございます。  なお、台湾における元日本兵の問題はまた別個の項目で検討するということで、五百万の調査費を持っておりますが、これは戦後処理の問題とは切り離して別途検討してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  177. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これはやはりごまかしたと思うのですよ、今の答弁は。基金をつくる予算案をつくって、実情調査費というのが一億あるのですから。基金をつくる実情調査をするなんというものなら、何もそんなことで予算をつける必要はないわけでしょう、一本でいいわけでしょう。それはちょっと納得できないですね。予算が成立してから考えるなんというのは、随分のんびりしていますね。  だから、私ははっきり言っておきますけれども長官が本当に基金をつくるための実情調査費だと言い切れるかどうか。言い切れれば言い切って結構なんですが、これはまとめの質問まで宿題に残しておきますから、はっきり言い切れますかどうか。そういう点で問題は保留しておきます。  関連質問がありますので、終わります。
  178. 天野光晴

    天野委員長 この際、中西績介君より関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中西績介君。
  179. 中西績介

    中西(績)委員 私は、カネミ油症事件にかかわる政府措置について時間の許す限り質問を申し上げたいと存じます。  御存じのように、昨年の三月十日に私は分科会で質問をいたしましたが、一月十七日にカネミ油症第一陣の控訴審に対して福岡高裁の和解勧告がされたわけであります。しかし、残念ながらこのときの答弁は、判決が出てからとか、あるいは一審の判決はすべて国の責任でないということを理由にいたしまして、最終的にはこの勧告を政府は拒絶をいたしました。さらに三月十六日、福岡高裁の判決が出たわけでありますけれども、これに対してもまた、ただ一回だけの判決だということで、これを退けるという形で上告をいたしました。ところが、さきに福団地裁小倉支部判決が二月十三日に第三陣の訴訟に対して出たわけでありますが、これも前回の福岡高裁第一陣判決と全く同じ中身を踏襲した内容になっています。国の責任は、こうした点から考えますと、もはや不動のものになってきたのではないか、こう考えます。  特に現在一都二府十九県、被害者数は一万四千、そして認定患者は千八百を超える数になっています。しかも死亡者は百二十人。十七年のこの歳月というもの完全に放置されてきたこうした被害者の状況というのは筆舌に尽くしがたい。精神的な苦悩と生活の悲惨さ、こういうものを考えますと、国は人道上の問題として一核も早く被害者の全面救済を図るべきではないか。ということになりますと、いち早く同一テーブルに着いて、損害賠償の問題から治療法あるいは救済方法などを含めまして、恒久対策を練るべきではないかと思いますけれども、残念ながら、先ほども申し上げましたように二月二十二日、国は再度この問題についても控訴を決定するという事態になりました。  私は、こうした国の裁判待ちの態度、このことが大変問題ではないかと思います。いたずらに訴訟による解決を待てば待つほど、時間的な空費、遅延にしかつながらないわけであります。したがって、被害者の被害はますます、精神的なものから、生活的なものから、すべて拡大するのみであると思います。このことは、私は、政府関係各大臣すべて本当にわかっておるだろうかということを考えるわけです。こうした態度に対して私は大変な怒りを抑えることができないし、人道上許せない、こう考えるわけであります。  したがって、私はぜひ、こうした犠牲者が大変多数に出ておるわけでありますから、こうした教訓を生かしていち早く控訴を取り下げるべきである、控訴すべきでない。これはただ単に私が主張するだけでなしに、これを知っておる多くの、世論を支えておる皆さん、そして、さらにまた各報道機関の論調などにおきましても、すべてこうしたことを主張しておるわけであります。  この点について、なぜ控訴をしたのか、この点をひとつはっきりしていただきたいと思います。農水大臣が中心ですから一応……。
  180. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中西先生にお答えさせていただきます。  カネミ油症事件の被害者の方々の長年の御労苦に対して、心から同情とお見舞いを申し上げる次第でございます。  先般のカネミ油症事件第三陣一審判決につきましては、関係各省と慎重に協議し、法務、厚生と私の三大臣会合を開いて検討しました結果、国の法的責任を認めた判断、事実認定及び法令解釈適用上承服しがたいものがあるので、さらに上級審の判断を求めて控訴することとしたものでございます。
  181. 中西績介

    中西(績)委員 そうなりますと、この十三日の国の法的責任を認めた判断に事実認定及び法令解釈適用上承服しがたいと言いますが、その中身は何ですか。
  182. 野明宏至

    ○野明政府委員 中身といたしましては、これは法務省、厚生省とも十分相談いたした結果でございますが、国の関係職員の職務権限なりあるいは有害物質に対する当時の知見といったような状況、それから国家賠償法等の解釈適用といったような点で、控訴をすることにいたしたわけでございます。
  183. 中西績介

    中西(績)委員 全然わかりません。事実認定が何であるのか、あるいは法令解釈適用上承服しがたいと言いますが、その法令解釈、何を基礎にしてやったのか、その点を明快にしてください。今のような答弁では時間がむだです。
  184. 藤井俊彦

    藤井(俊)政府委員 お答えいたします。  このたびの判決は、先ほど御指摘がありましたように、国に国家賠償法一条一項の責任があるとされたものであります。この判決につきましては、先ほど畜産局長から答弁がありましたように、関係省庁におきまして慎重に検討したところであります。そして、その検討の結果、事実認定に承服しがたい点があるというふうに申しました点はいろいろございます。  主なものを申し上げますと、第一には、食用油による被害発生の予見可能性についての事実認定であります。判決によりますと、福岡肥飼検の係官は食用油の安全性について当然抱くべき疑念を抱かなかったという事実設定をしておられます。この事実認定がまず第一に承服しがたいというのであります。  第二に、判決は、家畜衛試の公務員はなおざりな鑑定をしたという認定をしておられます。この事実認定も承服しがたいところであります。  第三に、判決は、農林本省の公務員、すなわち局内各課、担当参事官、畜産局長、次官、ひいては農林大臣らは、食用油による被害発生の危険を具体的に知り得べき状況にあったという認定をしておられます。この事実認定も承服しがたいところであります。  さらに、以上は被害発生の予見可能性についての事実認定の問題でございますが、そのほかにいわゆる相当因果関係、すなわち違法行為と結果の発生に関する事実認定についても承服しがたいところであります。  さらに、判決は、国の寄与した割合は三割程度と認めるのが相当であるという認定をしておられますが、その三割程度とせられる事実認定についても承服しがたいものがあるのであります。  そのほかにも幾つか事実認定について承服しがたい点がございますが、さらに法令の解釈適用について申し上げます。  その主なるものは、申すまでもなく国家賠償法一条一項の解釈適用に関するものであります。少し詳しく申し上げますと……(中西(績)委員「時間ないね」と呼ぶ)
  185. 天野光晴

    天野委員長 簡単に、わかりやすく。
  186. 中西績介

    中西(績)委員 委員長、もういい、もうわかった。  今言っていることを聞きますと、これは前回、昨年の三月段階での判断ですね、こうしたものとのかかわりの中で、もう何回となく裁判所で指摘をした問題ですね。ですから、このような予見しがたいとかあるいは家畜衛生試験場の関係だとか本省の関係、いろいろずっと挙げておりますけれども、大臣方に差し上げていますけれども、この米ぬか油の製造工程図というのがありますからこれを見ていただければわかりますけれども、そんなに難しい中身じゃなしに、これは簡単に想像できる中身でしかないわけですよ。今こうしてやっていくこのやり方というのは、まさに時間的な延引を図るだけしかないんではないかとしか私は言いようがありません。なぜなら、今言いましたように、被害の可能性の予見ができなかったとかなんとか言いますけれども、同一企業、同一工場、同一原料で、同じところで全部できたこのダーク油の場合と、ここに出ておる食用油の場合が何で予見ができないのかですよ。そんな常識で考えても我々が当然出てくるであろうと考えられるものがなぜできなかったかというのが問題なんです。  ところが、これをずっと追及しますと必ず出てくるのが、今だからわかったとか、当時は考えも及ばなかったとかあるいはだから責任がないとか、こういうことの繰り返しですよ、今までは。このことがどれだけ多くの被害者を生活苦あるいは精神的な負担、大変な状況に追いやっているかということをまず考えた上でこうした問題については論議をしていかないと、ただけちをつけられればいいということで、ただ時間を延ばせばいい、そうすれば何とかこれは逃れることができるなどというこうした考え方はもう到底やめなければいかぬと思いますね。特に、加害者の際限のない責任のなすり合いでは、これはもう大変なことになるということなんです。ですから、本来はきょう私は時間がもう少し欲しかったのだけれども、時間が来たのですが、総理大臣が、それぞれの所轄官庁、縦割り行政の中でどうしてもその壁を盾にとってお互いになすり合うというこうした状況があるわけでありますから、このことをなくすためには、やはりこうした国家行政組織法なり何なりを根本的に見直すという態度がなければ、今のような体制の中で、これが法律的にどうだこうだというようなことをやっていったのでは到底どうすることもできないと思うのです。ですから私は、この面について、きょうは総理いませんから官房長官、この点十分お聞き願っておいて、これから後、また各省庁に具体的に委員会なりあるいは分科会で追及はいたしますけれども、いずれにしても、こうした問題について十分今後取り上げていく。でなければ、同種のものが発生したときにはこれからどうするのですか、このままでいけば。そういうことを考えたときに、もう一度再検討し直すぐらいのお考えを私は持っていただきたいと思うのだけれども、官房長官、どうですか。
  187. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 被害者の方々の長い間の御労苦に対しましては、先ほど農林水産大臣からも申し上げましたように、心から御同情申し上げ、御見舞いを申し上げたいと思う次第でございます。ただ、裁判にかかった事件でございますので、やはり政府政府としての立場で態度を決めていかざるを得ないということで、先ほどそれぞれ申し上げましたように、各省庁相談をいたしまして控訴に持ち込むことに、二十二日決定をした次第でございます。控訴審での御判断を仰いでいくようにいたしたい、こう考える次第でございますが、だから関係者に対して何もしなくてもいいということではありませんで、別途、行政当局として施策の上でやっていけることにつきましては、それぞれ省庁連絡をとり合って対策を講じていくようにしなければ、そういう思いを深くし、その姿勢で進めていきたいと考えておる次第でございます。  それぞれの省庁でそれぞれ責任のなすり合いとか、あるいはこの問題に対する対処の仕方がそれぞれの省庁本位になり過ぎていないかという御指摘が今ございましたが、そういった点につきましては、各省庁とも十分連絡をとり合ってきておるところでございますけれども、さらに、御指摘の御趣旨につきましては一層留意するように努力をいたしたい、こう考えますけれども、あくまでも控訴審の御判断を待っていくようにいたしたい、こう考えますので、御理解をいただきたいと存じます。
  188. 中西績介

    中西(績)委員 終わりますが、とにかくその態度は、最高裁に持っていって決着をつければいいなどという、こうした安易な考え方がその中に働いておるのではないか。なぜなら、これが出てきた問題は、あくまでも各省庁の連絡が十分でなかったという結果がこうした事態を生んだという結果になっているわけですね。そこをどう私たちが解明し、そしてこの点について反省をするかという態度にならない限り、こうした事態というのは永久になくならないわけですよ。ですからこの点だけは私は指摘をして、官房長官なり、あるいは各省大臣でそういう点について今までの経過をもう一度総括し直してやるべきではないか、この点だけ申し添えておきます。  以上です。
  189. 天野光晴

    天野委員長 これにて岡田君、中西君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  190. 井上普方

    井上(普)委員 国鉄問題につきまして質問をいたしたいと存じます。  土曜日に亀井再建監理委員長のお話を承りまして、あの人なりの筋の通ったお話をして、私も、なるほどこういう考え方で行くんだなということが了解ができたのであります。それに比べまして、今までの国鉄の再建案それ自体というものはあいまいもこであり、我々十分に納得できない点々がたくさんありますので、この点につきましてひとつお伺いいたしたいのであります。  まず第一番に、私はこの質問をするに先立ちまして、ひとついろいろ数字を示してくれということを申しましたら、各国鉄の出先によって数字が違ってきておるのであります。国鉄の管理職というのは五十五年以降現在まで一体どういう推移をたどってきておるのか、あるいはまた指定職というものは当然管理職に含まれると思っておったのでありますが、国鉄では含まれていないらしい。こういうようなのは一体月給はどれぐらいあるのかということをお伺いしたいのでありますが、これは国鉄の関係者に聞きましても、いや、そんな俸給表を今まで公表したことがないなどということが間々出てきておるのであります。それほどまでに秘密、秘密でやってきておる問題は、国鉄再建につきましては大きな問題でございますので、私はその問題につきましてお伺いいたしたいと思うのでございますが、前半お伺いいたしました問題につきまして御答弁を願います。
  191. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 国鉄で管理者という場合と管理職という場合とございます。で、管理者という場合には指定職員並びに管理職が含まれるわけでございますけれども、管理職と指定職、この二つは区別をして使用をいたしておるわけでございます。
  192. 井上普方

    井上(普)委員 私がお伺いしておるのは、五十五年以降、管理者あるいは管理職がどういうふうな推移をたどって今日に至っておるか、その数字をひとつ示していいただきたい。
  193. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 五十五年当時、いわゆる指定職、管理職を含めまして五万人を超えておった時期がございます。しかし、その後国鉄全体としての要員規模の縮減を図っておりまして、これは一般職員のみならず、当然指定職員あるいは管理職の数につきましても、全体としてのバランスから考えまして縮減を図るべきであるということで、現在、当時から見ますと約二〇%減少しておりまして、五十九年度ではおおよそ四万三千人程度ではないかというふうに考えております。
  194. 井上普方

    井上(普)委員 お伺いするたびに数字が違ってくるのであります。けさほど私が政府委員の方を呼びまして、指定職及び管理職、これは全部管理職と呼びましょう、お伺いいたしますと、その数は二万九千人だとこう言う。そんな少ないのかいなと思って今度は職員局に聞きましたところが、職員局は三万六千人だと言う。今またこれを聞きますというと約四万人だとおっしゃる。一日のうちにこれだけ変わるのです。しかし、五十九年度の定員から類推いたしますならば、すなわち、三十一万二千人の中から各労働組合に加入している人を除いていく、続いては労働組合に入っていない非組合員を除いていくとするならば、四万七千人になるのであります。一体どの数字が正しいのかさっぱりわからない。今も約四万人とおっしゃる。これは一体どうなっておるのです。定員なんというのはないのですか。月給はいかにも管理職俸給表というのもあるし、あるいは指定職俸給表というのもある。ところが、これらにつきまして、一体何人これに適用しておるのかわからないというのでは話になりませんよ。
  195. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 数字的には決してその都度違うというものではないというふうに思います。ただ、御質問の趣旨を十分理解のないままにいろいろな数字を申し上げているということではなかろうかと思いますけれども、根拠としましては、私どもとしてはきちんとした数字を把握いたしておるものでございます。先ほど二万九千人という数字先生おっしゃいましたけれども、これは現在、管理職の中の管理甲という俸給表を適用しておる人の数が約二万九千人であるということでございまして、指定職員その他含めまして、全体といたしましては、私が先ほど申し上げたような数でございます。
  196. 井上普方

    井上(普)委員 約四万とおっしゃる。約がついているのですよ、約が。(「整数で出しなさい」と呼ぶ者あり)整数できちっと出してもらいたい。それから、指定職は八千人だとおっしゃる。これも聞けば、二千人ぐらいだろうというのがどんどんとふえて八千人になってきた。こういう数字では、国鉄の審議をするにも審議に値しないと私は思う。五十九年の三月現在において国鉄職員は一体幾らだと言えば、四十一万三千人おると言う。ところが、それから各組合に入っておる国労であるとか勤労であるとか施設労であるとか、こんなのをずっと引いていく、その数が管理者でなければならない。そうすると四万七千人になる。しかも、その月給表というのは、どうも指定職の月給表というのは私が取ったのが初めてらしい。労働組合がそれを出せと言ったら、嫌と言って今まで全然出さなかったらしい。これはらしいです。  私の親戚に役人の最高峰を勤めた者がおる。これが三十一年。私がどうしてこういうことを言うかといったら、三十一年勤めた者と、同じく身内の者で国鉄の理事をやって二十六年勤めて退職した者とがおる。同じ時期です。ところがこれを比較すると、三十一年の方が千六百万円少ないという。国鉄の給与はえらい豊かだなというのが私らの感想なのであります。しかし、労働組合の諸君に聞いてみるとそんなことはないと言う。いかにも給料表を見ました、あるいは電電公社の給料表と突き合わせてみた。そんなに高くはない。一体どうなっておるんだということを私はさらに研究しなきゃならぬと思いますので、国鉄当局に指定職の月給表及び管理職手当等々についてお伺いいたしておるのであります。これははっきり出せますか、どうでございます。
  197. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 私どもは、給与準則に基づきましてそれぞれの俸給表を定めているものでございます。これにつきましては、その内容を運輸大臣あてに報告もいたしておるわけでございまして、決してどこにも出せないというようなものではございません。
  198. 井上普方

    井上(普)委員 それじゃ、ひとつ出していただきたい。  それから、先ほどの約四万人というのでは、約といったらもう国鉄の経理というのはアバウト中のアバウト、私らの頭よりもアバウトみたいなんでひとつお伺いするんだが、約四万人と言うが、本当は一体数は何人おるのですか。少なくとも二けたまでの、三けたまでの数字はひとつ言っていただきたい。
  199. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 私、先ほど申し上げましたのは、四万三千人、こういうことで申し上げたつもりでございまして、約四万と言ったんではないので、(井上(普)委員「約四万と言ったよ」と呼ぶ)四万三千人と申し上げたつもりでございます。
  200. 井上普方

    井上(普)委員 後ほどきっちりした数字をひとつお示し願いたいと存じます。  それから、過員という言葉を去年から私は耳にし出した。何だこれは、過員とは。恐らくこれは国鉄独特の言葉だったろうと思う。よく聞けば余剰人員のことらしい。これを過員と言っておった。それはともかくといたしまして、その過員というものは現在どうなっておるのか、ひとつお伺いいたしたい。
  201. 太田知行

    ○太田説明員 本年度、五十九年度初で、余剰人員は私ども約二万四千五百名と算定しております。
  202. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、三月の十四日にはダイヤ改正が行われるらしい。(発言する者あり)委員長、私は肝っ玉が小さいので、ほかからがたがた言われますというと胸はときどき、足はがたがたするので、ひとつ静粛にやるようにお願いいたしたい。  そこで、この三月の十四日にはダイヤ改正が行われてまた過員が生ずるわけですな、余剰人員が。そしてまた、六十年の当初には一体どれくらいの余剰人員を出そうとするのか、この点をお伺いいたしたい。
  203. 太田知行

    ○太田説明員 五十九年度の合理化予定人員は約二万五千名でございます。そのうちのかなりな部分を、今お話のございました三月のダイヤ改正に予定をしているわけでございます。ともあれ全部で二万五千名でございます。そして余剰人員がどのくらい変わっていくかという数字は、今国鉄が抱えております現在員、在籍の職員数がどう変動するかということと比較して決まってまいります。それで、現在員の推移は、毎年のいわゆる年度末の特退の数字を見ませんと確定的なことは申し上げかねるのでございますけれども、大体毎年の傾向がございますので、今推定でございますが、数字を申し上げますと、約三万名前後かと考えております。多少の変動が結果として出てくるのはお許しいただきたいと思います。  二万五千名の合理化目標と三万名の現在員の減少ということを比較しますと、その差が約五千名出ていますが、これは退職数が上回っておりますから余剰人員を押し下げる方に働きます。よって、五十九年度初二万四千五百名の余剰人員が、今の推定方式がそのまま実現いたしますれば五千名押し下げになりますので、六十年度初におきましては二万名を割り込むであろう、こういう推定をしている次第でございます。
  204. 井上普方

    井上(普)委員 六十年度の予算が出されておりますが、予算定員は一体どれくらいにしておるのですか。
  205. 太田知行

    ○太田説明員 予算人員は三十一万五千名でございます。
  206. 井上普方

    井上(普)委員 いや、六十年度ですよ。
  207. 太田知行

    ○太田説明員 六十年度でございます。
  208. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、今のお話によりますと押し下げることになる、こう申されますが、私どもが聞いておるのでは、五十九年度当初に約二万五千人の過員がある。それから三月十四日のダイヤ改正で、今あなたのお話でございますと約三万人とおっしゃいますが、三万人といたしますと、五万五千人前後の過員が生ずると私は思う。その中で退職する方、すなわち、お年寄りになって退職する方が二万二千人ということになりますと、約三万人近い方々が過員として、また余剰人員として残ることになるのじゃございませんか。
  209. 太田知行

    ○太田説明員 今おっしゃいました数字で二点違っておりまして、これは推定でございますが、先生は、退職人員の推定を二万二千名の現在員、在籍人員の減少があるであろうとおっしゃいました。私どもは、本当に結果として多少変動はあろうと思いますが、約三万名と見ているわけでございます。  それから、合理化人員を私どもは二万五千名と見ておるのでございますけれども先生の推定ではもう少し多いであろう、こういうふうにおっしゃっておりますので、先生の推定の数字でございますれば余剰人員を押し上げる方向にこれは働くのでございますが、私どもの推定のように、実際に仕事をやる体制を減らすのが合理化でございますから、減らす人員よりも実際にやめていく人員が多いと見ていますので、六十年度初においては余剰人員を減らす方に作用するであろう、こう見るわけでございます。仕事をやる体制は二万五千名減る、実人員は三万名減る、こういう推定を根拠にして申し上げている次第でございます。
  210. 井上普方

    井上(普)委員 そうすると過剰の人は二万人、こういうことになりますか。
  211. 太田知行

    ○太田説明員 そのとおりでございまして、六十年度初の時点で押さえた場合の数字としてそのように推定しております。
  212. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、この二万人のいわゆる過員、余剰人員というのをどういうようにするかということが非常な問題になると私は思う。しかし、一昨日の再建委員長のお話を承っておりますと、二十万人体制には六十二年度にしてもらわなければ困る、こう言って国鉄の当局の甘さを指摘せられました。これから大変なことであると私は思いますし、一面、働いておる労働者につきましては、これは大変なことだ、一体自分たちはどうすればいいだろう、国営企業に奉職しておりながら、労働者にとっては何ら責任ないにもかかわらず、当局の経営のまずさから我々の職はどうなるかということは心配しておると思うのであります。したがって、これらに対する措置というものは、働いておる方々の心配をなくする方策でなければならないと考えるものであります。今後出てくるこの余剰人員につきまして、労働省はいかなる考え方で対処されようとするのか、あるいはまた運輸大臣は監督官庁でございますが、いかなる考え方でやろうとするのか、お伺いいたしたいのであります。  一昨日の亀井委員長のお話によりますと、これは国鉄正職員を路頭に迷わすわけにはまいりません、しかし炭鉱離職法のような法律は雇用保険の関係もこれあり、できませんと、こうおっしゃっている。ただし、国の責任あるいは国鉄の責任においてこれを解決しなければならぬ、まことに明快に言われたのであります。しかし、その方法であります。いかなる方法をもってやられんとするのか、両大臣のお考えを示していただきたいと思います。
  213. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 二十三日の国会の亀井委員長に対する質疑の中におきましても、今井上先生指摘のように、六十二年度をめどに二十万人体制、これが一つ再建への大きな意味をなす、こういうような御意見もあったわけでございますし、いずれにいたしましても、その余剰人員対策というのが国鉄再建の最大のかぎでもあるというふうに私は認識をしております。そして将来とも考えますと、二十万人近い余剰人員というものをどうするかということは一国鉄再建の問題にかかわらず、日本経済全体といいますか、日本の労働市場全体の問題にもなるわけでございまして、これは何としても円満な、円滑な形で、政府全体でこれに取り組んでいかなければならないというふうに考えております。  しかし、それにはまず最初に、今井上先生と当局とのやりとりがございましたが、国鉄自身がこの問題に対してどういう努力、また施策の中で取り組んでいくか、今退職とか転職とかいろいろ労使双方で話し合いもしておるわけでございますが、そういう問題も含めて具体的な一つの案をつくる責任といいますか、役割があろうというふうに私は思いますし、我々としても、七月には国鉄再建委員会の一つの答申が出されるわけでございますけれども、そうした答申も踏まえて、ひとつ政府全体としてこの問題と取り組むというまずは責任と考え方を持って進んでいきたいというふうに考えております。
  214. 山下徳夫

    山下国務大臣 余剰人員問題につきまして、二つの対策が必要かと思います。一つは今年度における緊急対策でございますが、これは国鉄当局からただいま答弁があったとおりでございまして、この問題につきましては、まず国鉄自体で御解決をすべき問題だと心得ておりますし、労使双方でよくお話し合いをいただくように、現在退職制度あるいは休職、さらには派遣というような三つの柱でもって推進しておられますので、さらに同じテーブルでもってますますこの問題を推進していただくように、先般双方をお呼びいたしましてお願いをいたしたところでございます。  さらに、今後の問題といたしましては、民鉄並みの経営ということになりますと、それだけにまたこの余剰人員もふえるわけでございますから、この対策につきましてもまずひとつ国鉄で対策を講じてもらう。そのために国鉄に対して私の方からもいろいろと御指示も申し上げておりますし、また同時に、国鉄再建監理委員会の第二次提言にもこの問題は触れてございますので、その趣旨を踏まえながら、関係方面とよく連絡をとりながら進めてまいりたいと思います。
  215. 井上普方

    井上(普)委員 山口労働大臣は、これは政府全体で取り組むんだ、こうおっしゃる。一体どんな方法で取り組もうとするのか。方向もお示しにならずに取り組むだけでは、私どもは心配でたまりません。  それから山下運輸大臣のお話でございますが、まず第一番は国鉄がやるべきことなんだ、そして国鉄にそのことは指示した、今三本柱について組合と話しておるのだからと、こういうお話でございますけれども、山口労働大臣、政府全体としてどのような具体的な考え方でやっていこうとするのか、この点ひとつお伺いいたしたい。  同時に、国鉄当局には、山下運輸大臣の御答弁によると、当局がたちまちやらなぎゃならない問題として責任持ってやらなきゃならない。そこで具体的にどういうようなことを考えて、それに吸収される人員は一体どれくらいなのか、お伺いいたしたい。同時に、六十年度の定員は、先ほども三十一万五千人余りだ、こうおっしゃいましたが、恐らく六十年度になりますと業務の対比では要員が減ってくると思いますから、それはどれぐらいの余剰員がそれから出てくるのか、この点をお伺いいたしたい。三つお伺いします。
  216. 太田知行

    ○太田説明員 二点、お尋ねがあったかと存じます。  現在の余剰人員に対する対策でございますが、ただいま三本柱と言っておりまして、一つは退職制度の見直し、一つは休職制度の拡大適用、三番目が派遣と言っておりますが、いわゆる出向でございます。そういうルールをつくりまして、あるいは一部労使で協議中でございますが、スタートしておるわけでございます。  そのうちで、五十六歳以上の在籍者が現在約一万人おるのでございますが、現時点で、二月一日現在で、一万名の五十六歳以上の職員のうち本年度末にやめるという意思表示をした者が約七割に当たる七千百名弱でございます。これは、先ほど申し上げました三万名と退職者数を推定している中の一つの要素でございます。それから、今のは五十六でございますが、五十五歳以上の者でこれも年度末にやめると既に意思表示した者が八百名でございます。これももちろんもっともっと五十五歳以上の者がおりますので、これはいつも三月三十一日に数字は確定するわけでございます。それから、もっと若い層で在籍のまま休職をして、本人の希望によるのでございますけれども、学校に行ったりあるいは家事を手伝うという制度を開いたのでございます。これは三百名弱でございます。それからいわゆる派遣、出向の方は二百名弱、こういう状況でございます。  それから二番目の、余剰人員の見通しの方でございますけれども、私ども先般監理委員会に提出いたしました再建のための基本方策で述べている数字で申し上げますと、六十五年度において国鉄の仕事をする体制、すなわち所要人員は十八万八千名と算定しております。その時点での退職者数を除いた在籍人員の想定を二十五万五千名ぐらいと見ておりますので、その差約六万七千名が六十五年度における余剰人員、(井上(普)委員「いや、六十年度の」と呼ぶ)六十年度の余剰人員は、初でもっては二万名弱でございますけれども、六十年度じゅうの合理化をやります、それからちょうど退職者数が減ってまいりますので、六十年度末あるいは六十一年度初と申し上げていいのでございますが、やはり余剰人員は三万名を超すであろう、こういうように推定しております。
  217. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 私が政府全体として取り組むということを申し上げましたのは、先ほど申し上げましたように、やはり国民経済や他の労働市場との問題の中で二十万人の余剰人員という問題がございますと、国鉄の労使双方にゆだねるあるいは当局の努力を待つという建前だけでは、これは実際問題として国民の皆さんに大きな御負担をいただいたり御心配をかけたり、国会でもこれだけ論議している問題でございますから、当然労働省も含めまして長い労使の問題やこうした余剰人員の問題に対して取り組んできた経験や能力をすべて結集して解決していくという努力をいたしませんと、余剰人員の対象者の国鉄の労働者の方々の生活不安ということにもなるわけでございますし、一層国民の皆さん方にも御迷惑や御心配をかける、こういうことにもなるわけでございまして、実際問題として、亀井委員長の御発言の中にも十兆円から十五兆円規模のものは政府に肩がわり云々ということもございましたけれども、これは国民の負担も含めて再建委員会といえども検討せざるを得ないということを考えますと、余剰人員の問題についてはやはり各省庁とも十分連絡をとって、特に労働省としてもそうした経験を踏まえてこの問題に真剣に取り組む、こういう責任の決意を私申し上げさしていただいたような次第でございます。
  218. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、私はもう時間がございませんのでお伺いいたしたいのでありますが、この一時帰休あるいはまた派遣というものにつきましていろいろと団体交渉がやられてきたことは御承知のとおりであります。このことにつきましては昨年の八月に公労委百五十二号という仲裁が出ております。これによりますと、ともかく労使円満に話し合いをすべし、これが基本だという裁定が出ておるのであります。しかし、御存じのとおり、十月十一日には国鉄は全従業員の対象者の七一・三%を占める国鉄労働組合に対しまして一方的に団交を破棄いたしました。同時に雇用安定協定もこれを破棄するという通告を行ったのであります。そのことにつきまして国会におきましても再三論議された。しかし仁杉国鉄総裁は、しばらく様子を見ておってくれ、必ずうまくやりますからと言って一月に及んでおるのであります。この問題についてはなかなか団体交渉をやれない。やらずに推移しておったのでありますけれども、この就業規則を変えるということになりますとこれは労働協約によらなければならないということで、昨年の十二月十八日でございますか、労働省はこの提案を組合から受けまして、国鉄は労働基準法違反である、この就業規則の扱いはずさんであるし違反であるということを申されまして、各地方の労働基準局に対しまして提示を出しておられますが、この内容をひとつお示し願いたいのであります。
  219. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 ただいま御指摘のございました就業規則が整備されていないことについての労働省の方針につきまして、直接の担当は労働基準局長でございますので、詳しく承知をいたしておりませんけれども、いずれにしましてもこの労働条件等に関しまして、国鉄につきましてはかねてからそういう就業規則のない状態が続いておったということがあったことは事実でございまして、これも従来は労働協約でそういう問題が労使合意して決められておりましたので問題なかったわけでございます。そのままかなり長期間経過いたしておりましたけれども、今回そういう問題がございましたので、こういうことを機に就業規則を整備するようにということで、労働基準局の方から国鉄に対して要請をしておるというふうに承知をいたしております。
  220. 井上普方

    井上(普)委員 あなたの方の労働基準局の監督課長は「標記のことについては、」「本省において調査を実施したところ、労働基準法第八十九条に基づく就業規則の変更、届出に関する違反が認められた。」と明確に言われておるのであります。これに対して国鉄当局はいかなる処置をとろうとするのか、お伺いいたしたいのであります。
  221. 太田知行

    ○太田説明員 今御指摘の事柄は、先ほど三本柱の中で申し上げました休職の問題とそして派遣、いわゆる出向の問題に係る事柄かと存じますが、労使間交渉が大変難航いたしまして、ただいま変則的な状況になっております。複数組合のうちの三組合とは妥結をし、二つの組合とは妥結してない、こういう状況でございます。ただいま妥結してない二つの組合との間でも、団体交渉を再開いたしまして鋭意妥結に持っていくべく努力をしているところでございます。  一方、国鉄の置かれた状況からいたしまして、このルールを定めまして募集を開始すべきだと判断いたしましたので、その実務を開始しております。したがって、就業規則の面ではまだ現時点では届け出をやっていないのは事実でございます。これは早急に届け出をし、手続を完備すべくただいま準備しているところでございます。
  222. 井上普方

    井上(普)委員 労働基準法違反をやっておいて、そのままほおかぶりしながら進めようというのですか。あなたの方は、労働基準監督局から違反の指摘があったが、それは民事上の責任はないんだ、だからまだやれと言って通達を出しておるじゃありませんか。およそ国の企業において労働基準法の違反が認められた場合には、その業務は直ちにやめて、労働基準法に沿うような仕事をしなければならぬと私は思う。民間においてはこんなことは許されませんよ。にもかかわらず、このことについては民事上の責任はないからひとつおまえらやれという指令を出しておるじゃありませんか。どうなんです。昭和五十九年十二月二十六日、労働省見解というものをつけて、その中には、刑事責任があるんだということを言いながら、民事上の責任については大したことないから、おまえら今までの労働基準法違反のまま突っ走れということを指示しておるじゃありませんか。国の責任においてこのようなことが行われるということは一体どうなんです。労働大臣、どう思います。
  223. 谷口隆志

    ○谷口(隆)政府委員 就業規則の問題は先ほども御説明しましたように、長い間国鉄労使の中で、労働条件の改変に関しましては労働協約を締結してそれに基づいて実施をされてきておられましたので、従来はこういう問題が組合側からも当局側からも問題にならないまま推移をしてきておったところでございますが、今回こういう事態の中で整備されないまま実施される状況に至りまして、問題が提起されたわけでございます。  そこで労働省といたしましては、労働基準局でございますけれども、就業規則については法律に基づいて整備をするようにということを指示いたしておるところでございます。御案内のように就業規則というものは、国鉄の場合非常に膨大な内容になりますし、法律に基づく定め方も労働安全等を除きましては一本で決めるようにという法制度になっておりますので、その辺の整備に若干手間をとっているという範囲で私どもも承知をいたしております。
  224. 井上普方

    井上(普)委員 法律に違反しているんですよ。刑事責任はあるんですよ。団体交渉なんというのは、この間運輸大臣が言われて、二月七日以降二回開いただけなんだ。それまでほおかぶりしてきたんじゃないですか。どうなんです。運輸大臣、監督官庁にあるあなたはどうするんです。基準法違反のまま業務は進めていいんですか。
  225. 山下徳夫

    山下国務大臣 公社形態における経営の国鉄が労働基準法違反をするなんということは許されないこと、それはよくわかります。ただ、さっきの答弁ではっきり違反したということを言いましたか、あなた。私ちょっと判定を、まあそこのところ私明快にちょっと聞き取れなかったのでございますけれども、もしもそうであるとするならば、それはよくないことだと思いますけれども
  226. 太田知行

    ○太田説明員 今労働省からお答えがありましたとおり、この問題には二つの側面がございまして、私が先ほど申し上げましたのは、当面する三本柱のうちの休職と派遣の問題に関連する事項でございました。今お話がございましたのは、それにさかのぼる国鉄における就業規則のあり方全般のお話でございます。これにつきましては随分長い歴史があるのでございますけれども、不備があったことは確かでございまして、当面、二本柱の問題もこれあり、また全体の関連もこれありということで、今全体の規定、規則を全部洗い直しましてその不備を補うべく努力をしておりまして、年度内には完成すべく鋭意努力をしているところでございます。
  227. 井上普方

    井上(普)委員 これはもうはっきりしているんだ。運輸大臣、これは労働基準局の基盤発第二十八号、五十九年の十二月十八日、都道府県の労働基準局長に「本省において調査を実施したところ、労働基準法第八十九条に基づく就業規則の変更、届出に関する違反が認められた。」はっきり書いてあるのです。はっきり認めているのです。  しかも、片方において労働組合との団交は一方的に当局側が拒否した。話し合いができない。だからやむを得ず、運輸大臣、あなたは一月三十一日に国鉄当局と国労に対して団体交渉を再開しなさいとおっしゃった。言いかえるならば、あなたは一方的に国鉄当局の側に立って、これを救済せんとするがために、これを救わんがためにこのような指示をなされたんではないですか。そうとしか思えない。労働基準法違反をされたという事実をあなたは知っておりましたか。しかもそれは、先ほども申されましたように、一時帰休の問題あるいは退職の問題に関して、出向に関して起こっておる問題なんです。どうなんです。
  228. 山下徳夫

    山下国務大臣 私の方が国鉄に対して違法行為をやっていいなんて言うわけがございません。それは労働問題に限らずすべて遵法精神でもってやるべきは当然のことでございますし、ただ、もしもそういう違反行為が仮にありとするならば、これは労働行政の、やはり労働省の所管でございまして……。
  229. 井上普方

    井上(普)委員 何を言っているんです。あなた方は監督官庁でしょう。しかもそれは許されることだとあなた方はおっしゃっている。だから、労働基準法違反であることは明々白々たる事実です。これが団体交渉で労使の間に十分話し合いができて初めて発効するものでありましたならば、私は何も申しません。しかし、今そういう問題が起こっておるんだ。  しかも、三本柱、三本柱と申されますが、この十二月二十六日に国鉄の職員局労働課の上野何とかという名前でもって地方の機関に対しまして、労基法違反と指摘せられたけれども、それは民事上の責任は免れるんだ、だからいけいけ、さらにやれという指令を出しておるじゃありませんか。これに対してどういうような責任をとるんです。
  230. 太田知行

    ○太田説明員 二本柱の派遣と、いわゆる出向でございますが、休職に関しましては、既に制度を設けスタートをしております。そこで、この問題の理解、解釈について現場で混乱があってはいけないという観点から事の次第を解説をしたのが今御指摘の十二月二十六日の事務連絡でございまして、これは別に価値判断を言っているわけではございません。  そこで、二本柱につきましては大変複数組合の足並みがそろわないというのは、先ほど申し上げましたとおり事実としてございましたが、ただいま団体交渉を再開いたしまして鋭意詰めておるところでございます。連日のように交渉をやっておりまして、私どもといたしましては、なるべく速やかにこの問題についての協約を締結し、各組合とも足並みがそろった形で余剰人員対策が推進されんことを願っている次第でございます。
  231. 井上普方

    井上(普)委員 国営企業が労働基準法違反のまま、しかも今までやってきたことだからこれを認めて、さらに作業を進めいと部下に指令を出しておる。こういうことが認められるわけはない。直ちにこのことはやめさせなければならない。運輸大臣、どうです。
  232. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほどから申し上げるように、監督指導は私の方の責任でございますが、具体的事実があった場合には労働行政の立場からということで申し上げたのでございます。ただいま派遣等の中身について、個々の問題についていろいろ御指摘の点があるとするならば、いま一応私の方からまた国鉄を呼んでいろいろと調査というか聴取等をいたしてみたいと思いますが、基本的には、基準法違反があるとするならば、これはやはり労働省で一元的にひとつ御措置いただくべきだ……。
  233. 井上普方

    井上(普)委員 ここは、国鉄というのは民間じゃないのですよ、民間じゃ。あなたは監督責任があるのですよ。いいですか。しかも、違反の事実ははっきりと書いてある。しかも、その違反のまま今までの作業を推し進めいど、こういう指令まで出しておるのです。そんなばかな話がありますか、世の中に。民間だったら、これは完全にやられている。国鉄ならそのまま通っていいんですか。(「撤回させろ」と呼ぶ者あり)撤回しなさい。それでなかったら、話にならない。こんなはっきりした問題をどうするのですか。
  234. 天野光晴

    天野委員長 早く結論を出しなさい。——太田常務理事
  235. 太田知行

    ○太田説明員 派遣と休職に係る部分につきましては、締結していない労働組合との間でただいま鋭意団体交渉をやっております。早急にまとめることを期待しております。まとめた上で就業規則の届け出をすべく今準備をしているところでございます。なるべく早く届け出をしたい、こういう予定でございます。     〔委員長退席原田(昇)委員長代理着席〕
  236. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  237. 天野光晴

    天野委員長 速記を起こして。  ただいまより二十分間休憩します。五時、再開いたします。     午後四時四十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕