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渡部(一)
委員 私はGNP一%の問題を論ずるときにいつも思うのですけれども、GNP一%で済むかどうかの前に、
日米関係の安定というのがなければならぬ。そのときに非常に感じますのは、今
総理のお打ちになった手、私はそれに何かつけ加えて言っているわけではないのですけれども、少なくとももう少し目立つ対策、
アメリカ人の心情にこたえる対策があっていいんではないかなという気がするわけなんですね。それは、金額よりもむしろ心の問題であり、そして
アメリカ人の感情に生に働きかけるアクションというものをもっと
考えなければいけないのではないかな。だから、対応としては事務次官
会議をやっておられ、調整を続けられ、両方の担当者がじっくり打ち合わせをされていくにこしたことはないとは思いますけれども、私はその
意味で幾つか感じる点があるわけなんです。
例えば
アメリカの農民が今非常に困っております。この農民、農業の困り方というのは、明らかに、干ばつもありましたし、農業価格が
世界的な需給緩和を目途として少し下がり始めたことがあるし、一番大きく効いているのはドル価格のそれこそ非常な上がり方というのだろうと思いますが、その
アメリカ農民の主力になって今まで稼いでいた
人たちが、採算がとれなくて暴動を起こさんばかりの雰囲気で各地で騒いでいる。テレビで放送される、ネットされていく。その放送の中にどういうものが出てくるかというと、こういうふうにひどい目に遭っているのは結局は我が国に対する輸出が非常に激しいので全部こういうことになっておるんだという短絡した話しか出てこない。少なくとも、
日本の商売人が穀物を少し高目に買ってあげたとか農業技術の援助をしたとか、あるいは農業立て直しのために何か手伝ったとか、それから農業技術とはいかなくても、その
地域に一緒に行って労働奉仕をしたとかというハートに迫るものが向こうの農民にないようなんですね。私は、これは放置していい問題だとは思いません。
日本国内でも農業がそういう形になったときは我々はみんな必死になって対応したし、それだからこそ
日本のある種の安定というものがあったと思うからなんですね。そうすると、この
アメリカ農業再建のために、出しゃばるようだけれども何らかのアクションが、
日本の農協とかそうした形でできないものか。
と申しますのは、先日ロサンゼルスを通過いたしましたときに、あの
地域で
一つ妙な話が起こったのです。それは、
日本人の企業家であるけれども、資金として百億円の資金を用意した、
アメリカの中小企業のどこでも助ける、言ってくださいというニュースがあそこに広がったのです。これは本物ではありませんでした。うそだったのです。ところが、その話がどういう響き方をしたかというと、カリフォルニア州全体に、また
アメリカの中西部あたりまで広がりまして、さすが
日本人だ、円を担いで救済にやってきてくれた、好ましいやつじゃ、前々からいいところあると思ったけれども、いよいよ来てくれたか、いいぞ、
日本人というのは気に入ったぞと僕まで言われたのです。私はショックを受けました。しかし、私がもう
一つショックを受けたのは、そのときの金額がたった百億円だったことです。百億円がこんなにショックを与えるとは、私は
アメリカというのはもっと大きな国だと思っていたので、その
アメリカの中小企業
者たちを選んで百億円を投入しようとしたその人のアイデアですね。アイデアというか、単なる思いつきか何か全然存じませんけれども、そんなショックを与えた。私は、これはむしろ誤報から出た話ではありますけれども、
考えていいのではないかなと思うわけなんです。
それからもう
一つ。実際の監督をなさる方が打ち合わせをすれば、こちらに言い分があります。
日本のお役人は、我が国の国益を守ることを優先しなければなりませんから頑張るのは当然ですけれども、この場合は
アメリカ国民をある
意味で安堵させない限りは、論議も進まなければ結論に対する不満はなおかつ爆発するだろうということであります。したがって、交渉担当者にかなりの授権をしなければならない、権限を与えなければならぬ。予算措置もつけなければならない。交渉は手ぶらでやるのではなくて、その渡すものを渡してから交渉させない限りは無理なのではないか。その
意味で、今回の対米交渉というのはまさにダウントップからトップダウンの両方の方式が利用されなければならぬと言われておりますが、私に言わせるとトップダウン・ウィズ・マネーと言わなければならぬだろうと思う。そうでないと、このトップダウンが、単なるお
言葉が両方で応酬するだけであって、悪い感情が残り過ぎて逆効果、マイナスになるのではないか。
総理は人の心をつかむことにかけてはかなりの名人とお見受けするので、
アメリカ人のハートもまたたなごころにしていただきたいと私は思っておるわけでありますが、いかがですか。