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1985-02-20 第102回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 天野 光晴君    理事 大西 正男君 理事 小泉純一郎君    理事 橋本龍太郎君 理事 原田昇左右君    理事 三原 朝雄君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 仲明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    石原慎太郎君       宇野、宗佑君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       大島 理森君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       小杉  隆君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       葉梨 信行君    原田  憲君       村山 達雄君    山岡 謙蔵君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    上田  哲君       大出  俊君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    堀  昌雄君       松浦 利尚君    矢山 有作君       池田 克也君    神崎 武法君       矢追 秀彦君    大内 啓伍君       岡田 正勝君    木下敬之助君       小平  忠君    瀬崎 博義君       正森 成二君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 増岡 博之君         通商産業大臣  村田敬次郎君         運 輸 大 臣 山下 徳夫君         郵 政 大 臣 左藤  恵君         労 働 大 臣 山口 敏夫君         建 設 大 臣 木部 佳昭君         自 治 大 臣         国家公安委員会 古屋  亨君         委員長         国 務 大 臣         (総務庁長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      金子 一平君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 石本  茂君         国 務 大 臣         (沖縄開発庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局長官 茂串  俊君         総務庁長官官房         審議官     佐々木晴夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活局長    及川 昭伍君         経済企画庁物価         局長      斎藤 成雄君         経済企画庁総合         計画局長    大竹 宏繁君         経済企画庁調査         局長      横溝 雅夫君         環境庁企画調整         局環境保健部長 長谷川慧重君         環境庁水質保全         局長      佐竹 五六君         外務大臣官房領         事移住部長   谷田 正躬君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 矢澤富太郎君         大蔵省理財局長 宮本 保孝君         大蔵省理財局次         長       中田 一男君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁税部長         兼国税庁次長心         得       冨尾 一郎君         国税庁調査査察         部長      村本 久夫君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省高等教育         局長      宮地 貫一君         文部省高等教育         局私学部長   國分 正明君         文部省体育局長 古村 澄一君         厚生大臣官房総         務審議官    長門 保明君         厚生省健康政策         局長      吉崎 正義君         厚生省生活衛生         局長      竹中 浩治君         厚生省社会局長 正木  馨君         厚生省児童家庭         局長      小島 弘仲君         厚生省年金局長 吉原 健二君         社会保険庁医療         保険部長    坂本 龍彦君         社会保険庁年金         保険部長    長尾 立子君         兼内閣審議官         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         食糧庁長官   石川  弘君         食糧庁次長   山田 岸雄君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君         中小企業庁長官 石井 賢吾君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省国際運運         輸・観光局長  仲田豊一郎君         郵政省電気通信         局長      澤田 茂生君         労働大臣官房長 小粥 義朗君         労働省婦人局長 赤松 良子君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房総         務審議官    松原 青美君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省建設経済         局長      高橋  進君         建設省都市局長 梶原  拓君         建設省河川局長 井上 章平君         建設省住宅局長 吉沢 奎介君         自治大臣官房長 津田  正君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    中島 忠能君         自治省財政局長 花岡 圭三君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     大島 理森君   武藤 嘉文君     山岡 謙蔵君   近江巳記夫君     矢追 秀彦君   小平  忠君     岡田 正勝君   正森 成二君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     伊藤宗一郎君   山岡 謙蔵君     武藤 嘉文君   矢追 秀彦君     近江巳記夫君   岡田 正勝君     小平  忠君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計予算  昭和六十年度特別会計予算  昭和六十年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度一般会計予算昭和六十年度特別会計予算昭和六十年度政府関係機関予算、以上三案を一括し議題といたします。  本日は、財政・経済問題について集中審議を行います。  これより税制調査会長小倉参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 本日は、この集中審議税制調査会長小倉さんに御出席をいただきまして、今から三十七分という大変短い時間でございますけれども、先般、二月四日にこの総括審議の中でいろいろと問題を提起いたした問題について、小倉参考人の御意見伺いながら、また政府にも問題を伺いながら、審議を進めさせていただきたいと思います。  まず最初に、二月十六日から所得税確定申告が始まっておりまして、現在各税務署では多くの国民申告中でございます。また、私ども日本社会党は昨日、昭和六十年度予算の中で一兆一千五百億円の所得減税を行うべきであるという党の政策を実は発表いたしておるわけでありまして、まさにこの時期に税に関する集中審議が行われておるということは大変時宜に適した問題だ、こう考えておるわけであります。  そこで小倉参考人に、この前私がどういうことをこの委員会で話をしたかというのを簡単にちょっと申し上げますと、まず最初に、国鉄共済組合に異常な赤字が出るという事態に触れまして、昭和六十五年度から七十年にその赤字が年三千億を超える、これは到底共済組合で処理できる問題ではないので、財政が処理をしてもらいたいということが財政調整委員会から公式に発表されておるという問題を申し上げ、さらに年金の問題についても、これから将来について非常に問題があると同時に、あわせて、現在の給与所得者であります厚生年金共済年金加入者とその他の国民年金加入者の中には、実は給付に著しい差があるという問題に触れ、憲法十四条がいうところの法のもとに国民は平等であるという立場に立ては、この国民年金加入者に対してやはりより公平、平等な年金が支給されるような道を開くべきではないか、こういう問題提起をいたしまして、そのためにはやはり私どもの党は先般の大会で、これからふえていく年金に対してどれだけそれがカバーできるかということになりますと、これは保険料のカバーとしては極めて不十分でありますから、賦課方式一つの形であるところの税をもって一人五万円の基礎年金を支給できるように考えたらどうか。その税としては、私はやはり課税ベースの広い、そうしてサービスにも課税されるような税、そして広く国民がすべて六十五歳で年金を受け取るわけでありますから、そのすべての国民が受け取る年金であるならば、すべての国民負担をするようなそういう税のが式が望ましいのではないのか、実はこういう問題を提起をしながら、党の方針でありますところの年金その他の対策として社会保障目的税という問題を考えたらどうか。  さらには、現在の所得税制というものが、今申し上げました私どもが一兆一千五百億円の所得減税を要求しておりますのは、税率ブラケットが大変多いものでありますから、名目所得の増加に伴うところの予期せざる税の負担というものが給与所得者中心に大変多いわけでありますので、何とかひとつその負担を軽減するためには、どうしてもそういう調整減税というものが必要だというので今私ども政策として発表しておる、こういう問題に実は触れながら、所得税についても、総理も公正、公平、簡素、選択というのを重要な柱にしておられるので、現在の最高税率七〇%、十五段階というのを、ひとつ五段階、一〇%、二〇%、三〇、四〇、五〇という五段階所得税に変えれば、それだけ簡素であるし、同時に、最も中心的な二百万から六百万ぐらいの所得者のところでこのブラケットをうんと伸ばしておけば、そういう予期せざる増税から解放される、こういう問題を含めて実は先回論議をいたしてまいったわけでございます。  そこで、ひとつ税制調査会長にお伺いをしたいのは、現在日本で行われております所得税、この所得税というのは、実は私も税の中心的なものだ、こう考えておりますけれども、しかし御承知のようにトーゴーサン、クロヨンとかという水平的な不公平の問題もありますし、さらには、総合課税が貫徹をされておりませんので、後からお話を申し上げますけれども、要するに利子配当に対しても大きな抜け穴があるとか、実はいろいろな公平を欠く問題が現在、所得税制にはあると思うのであります。ですから、この現在の所得税制について、その所得税というものの特性と、長所短所についてまず小倉参考人からお伺いをいたしたいと思います。
  4. 小倉武一

    小倉参考人 所得税長所短所についてのお尋ねですが、堀先生も既に御承知のことばかりでちょっとお答えしにくいのですけれども、何しろ所得税はやはり税収の中の根幹でございますので、たしか四〇%ぐらい占めるわけです。したがって、税収根幹であるということと、それから、所得税を納めてもらえる人、国民の非常にたくさんの方にも及んでいる。そういう意味で、課税ベースが広いということに、言いかえれば言いかえることができると思います。それからもう一つは、所得の多い人、少ない人、それぞれ能力に応じて税金を納めてもらう。さらに、所得税を財源にしていろいろ財政支出をする場合を考えますと、所得の再配分という機能もあるということで、そういう点がいわば長所だというふうに理由が言われていることかと思います。  短所でございますが、これはやはり何と申しましても、所得というのは多種多様にわたる。所得の源も多種多様でありますし、所得税を納める人も多種多様な人たちに及んでいるということで、なかなか的確な所得の把握が難しい、これが短所と言えば、一番大きな短所ではないか。したがって、そういう点から、税の仕組みとしては公正であっても、実際上の納税という点から見ると、不公正になっておるのじゃないかという疑いが持たれるというようなことも短所じゃないか、そういったところであります。
  5. 堀昌雄

    堀委員 国税庁入っていますね。――実は国税庁で毎年、営庶業所得者について調査が行われておりまして、その調査の結果について、ひとつ報告をしてもらいたいと思います。
  6. 梅澤節男

    梅澤政府委員 国税庁政府委員がおっつけ参ると思いますけれども国税庁資料、便宜私から最近時点の調査事績を御説明申し上げますと、五十七年度の調査件数が十五万四千件でございますが、調査の結果、申告漏れのあった件数がおよそれ四%程度でございます。  それかう所得の額で言いますと、申告された額に対して、申告漏れ調査の結果判明した割合がおよそ二二%。ちなみに、納税者に対する調査割合は四%でございます。
  7. 堀昌雄

    堀委員 今、主税局長がかわって答弁していただきましたこの営庶業調査を見ますと、要するに四%しか調査をしてない。この調査は恐らくやや疑わしいものに比重がかかっておると思いますけれども、しかし、その中の九四%が実は公正な申告が行われていない。ですから、公正な申告は、この中で見れば六%が公正な申告あとはいずれも所得が公正に申告されていない。そうして、じゃどのぐらいの量で公正を欠いたかということについては、二二%が実は公正を欠いておるということがこの国税庁データで明らかなのであります。このトーゴーサン、クロヨン問題というのは、私どももそうあるであろうと思いますけれども、実は政府の方から正式にそういう答弁はないのでありますが、こういう数々のデータを考えてみますと、やはりこの問題について私どもは、さっき小倉参考人お話しになったように、いかにして所得を公正にするかということが極めて重大だ、こう考えているわけであります。  そこで総理一つ伺いをしたいのは、この前からのいろいろな税制問題の論議の中で、日本は流通が非常に多い形になっておって、そういう問題があるので取り扱いを慎重にしたいというお話がございましたけれども、要するに、私どもが税の公正のための一つ税法を導入しようというときに、それに反対をする方たちというのは、実は今ここにありますところの営庶業所得で二二%、税金を払わないで済まそうとした人たち反対をする、これが私は反対中心部隊だと思うのです。  要するに、給与所得者は皆源泉徴収でありますから、逃げも隠れもできない。これが三千七百万からの今の昭和六十年度の納税者になるというふうに大蔵省資料を出しているのでありますから、これに比べて、要するにごく一部の人たちが税を合うまく免れておる。四%でこれでありますから、じゃ全部がそうかというと、私はそうではないだろうと思います。思いますけれども、少なくともあとの九六%の中にもかなりそういう漏れがあるのではないかと推測をされるのは、これのベースが十五万人を対象としておりますから、それなりにあると思うのでありますけれども、そうすると、税の公正というものを図ろうとするときには必ず反対する人たちがいる。その反対する人たちは、現在自分たちはそういう公正な税になって負担がふえるから反対をする、こういうことだと思うのでありますね。しかし、もし今のままでこれが放置をされていれば、三千七百万の給与所得者は、片一方の水準にそれならおれたちの方も合わせろ、それが公正ではないのか、こういう議論になったら、私は日本税制には大変大きな影響が起こる、こう思います。  ですから、やはり私は最初にこの委員会で申し上げたように、民主主義政治というのは、多数の国民の意思が貫徹するのが民主主義政治なのでありますから、そういう意味で、今の不公正税制を是正するための一つの提案について、多少の反対があったらそれはもう考えないというのでは、私は日本税制公正化は期待できないと思います。総理は、日本税制の公正、公平、簡素、選択ということをおっしゃっておるわけでありますが、これについてのお考えをちょっと承りたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税制というものは国民の非常に多くの皆様方が最も関心を持っておる問題であります。また、憲法には納税の義務も明示されておるところでございます。民主社会を構成していくためには、みんながお金を出し合って公共の仕事をやり、また自分の利便を得るという形で民主社会が成立しているわけでございますから、税を負担するということは市民としてのある意味においては責任であり、また誇りでもあると思うのです。そういう観念に立脚した税制というものがいわゆる民主的税制というものであると思います。そういうような形で税の体系を構築し、税の執行を行うというのが望ましいと思います。現在のいろいろな税のあり方につきましては、シャウプ税制以来の長い間のひずみや何かがありますから、そういう公正観念ということも含めまして根本的にひとつ検討していただいて、そして成案を得るようにしたい。  ただ、大事なことは、税の場合はできるだけ強権的なやり方は避ける。コルベールが言った言葉で、学生のころ教わったのを覚えていますが、うまいやり方というものは、羊が鳴かないようにしてもをむしることだ、それが税の極意である、そういうことを言っていますが、鳴かして毛をむしるのは下手なむしり人である、鳴かないようにしながら毛をむしるのが名人である、そういうふうにコルベールが言ったと記憶していますが、そういうような仕組みをいかに考えていくかということがやはりまた専門家仕事ではないかと思います。
  9. 堀昌雄

    堀委員 今の総理の御答弁は、私は大変示唆に富んだ御答弁だと思うのであります。要するに、課税をするときに羊が鳴くようにしてはいけないんでありまして、制度をつくるときにはいろいろな意見がありましょう。賛成もあるでしょうし、反対もありましょう。しかし、それが制度として機能するときには、国民がそのことについて非常に重税感負担を感じて、羊が鳴くようなことにならないようなシステムを導入するということが私は、総理の今の御答弁から私が受けとめた実は感じでございます。  そこで、税制調査会長にお伺いをいたしますけれども、そうすると、私は今の間接税問題というので気に入らない言葉一つあります。それは何かといいますと、直間比率見直しという言葉がいろいろなところで使われているのです。私は、直間比率見直しなんといういいかげんな言葉を使うべきでないと思うのです。なぜかといいますと、さっき、所得税については大変な長所があります。しかし、現行の日本所得税法には短所もあるわけです。今度はひとつ小倉参考人間接税、それもちょっとさっき私が申し上げましたような課税ベースが広い間接税についての特性と、長所短所をお述べをいただきたい、こう思います。
  10. 小倉武一

    小倉参考人 幅の広い間接税といいますか、一般的な消費税といいますか、そういう消費税長所短所お尋ねかと思いますが、まず長所といたしましては、やはり何と申しましても、相当の税収が確保できそうだ。今簡素というお話もございましたけれども、今の間接税というのは非常に個々に分かれておりまして、必ずしも簡素という趣旨にはなっていないと思います。そこで、一般的な消費税課税ベースの広い消費税ということになれば、税制としては簡素という趣旨にひとつかなうだろう。  もう一つは、今所得税中心ですけれども、一番理想的なあるいは税制としての中身においても根幹になっている税ですけれども先ほどお話しのように、実際はなかなかそう公正にはなっていない、あるいは公平にはなっていないんじゃないかという疑いが持たれておるというようなこともありまして、余り所得税中心主義では結果としては若干不公正な結果になっておることでもある。したがいまして、そこに一般的な消費税というものを加味しまして、両々相まって税の公正を期するということができるというのが非常に大きな長所であろうと思います。  もう一つ、今度は逆に欠点ということを申しますというと、とにかく納税者が、これは仕組みによりますけれども、やはり非常に大勢になるわけです。そこで、その中には立派な大企業もあるでしょうけれども、中には小さな零細企業もあるということで、納税事務等について若干難点のあるところが起こりやしないか、こういう点が一つでございます。  もう一つは、間接税ですから、当然転嫁が予想されるわけです。しかも、一般的な消費税でございますれば、転嫁国民大衆に及ぶ。その際に、いわゆる逆進性所得の少ない人に割と多くかかるというようなことになりはしないかというのが難点だというように思いますが、この難点等についてはそれぞれいろいろ対策、工夫があるかと思いますが、世の中に一般に言われているところはそんなようなところではないかと思います。
  11. 堀昌雄

    堀委員 今間接税について小倉参考人から伺いましたけれども、私は、ちょっと最初にさっき申し上げましたように、直接税は税の体系の中では依然として中心的課題であると思いますが、しかしさっきの欠点で、同時に、それは今参考人がお述べになったような間接税の利点でもあるのでありますから、それが上手に組み合わさった調整点というところに直接税と間接税が並んだときに初めて私は公正、公平を、一〇〇%はもちろんだめなんですけれども、それに一番近い形の日本税制全体というものが実は構築できるのではないだろうか。  ですから、ややこれまでのこの当委員会における議論を伺っておりますと、何か間接税は悪であってやるべきではないという御主張が非常に多いのでありますけれども、私、長年税制をやっております立場からいたしますと、いかにして税は公正にするかということが私どもの願いでありまして、その点については、もうおやめになりましたかつての坊さんとか、今は少しお体の調子が十分でないのでありますけれども、現職でわられる山中貞則さんとか、自民党の古い税の専門家の皆さんと私の間にはほとんどそういう問題については意見の違いがない。これは税をやっておる者にとっては、何しろ公正、公平な課税でなければ国民に我々の責任が果たせない、こういう感じを強く持っているわけでありますので、私だけがちょっとそういう意味では、ここの論議の中の流れとは違うのでありますけれども、私もひとつ国民にとっての公正、公平の課税というものを何とか推し進めたいと思うのであります。  ただ問題は、税の取る方ばかりを課題にしておりましたのでは、私はこれまた一つ税として重要な問題があろうか、こう思いますので、ちょっと厚生大臣にひとつお願いをいたしたいのでありますけれども、私どもは今、さっき申し上げたように六十五歳でひとつ国民のすべてに基礎年金五万円というのを差し上げたい。これはしかし、今はまだ老齢者の数がそんなに多くないのでありますが、これからまだ急速にふえてまいります。ひとつこの老齢年金について、もし仮に今の六十五歳の人口が今後こういうふうに推移するという前提に立って五万円の年金を支払う場合、その費用は、六十一年それから六十五年、七十年、七十五年と、西暦二〇〇〇年になります八十五年までの間の試算結果についてひとつお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  12. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 もし仮にそういうことになりました場合の数字は、各年度ごとに政府委員から御説明させます。
  13. 吉原健二

    ○吉原政府委員 仮に六十一年度以降、六十五歳以上の方全員に月額五万円の基礎年金を支給するとした場合の所要額でございますけれども、五十九年度価格で申し上げまして、初年度の六十一年度は七兆五千億円、六十五年度は八兆六千億円、七十年度は十兆二千億円、七十五年度は十二兆、昭和八十年度は十三兆三千億円、八十五年度までのお尋ねでございますが、八十五年度は十四兆七千億円、いずれも五十九年度現在価格の金額でございます。
  14. 堀昌雄

    堀委員 それではちょっと政府委員にもう一つ伺いますけれども、皆さんの改正案の基礎年金給付で、もしこれがこういう形の処理がされると仮にいたしましたら、これもちょっとあわせてひとつお答えをいただいておきたいのです。
  15. 吉原健二

    ○吉原政府委員 私どもの現在国会で御審議をいただいております改正案によります基礎年金給付でございますが、これも五十九年度価格で申し上げますと、六十一年度は五兆九千億円、六十五年度は七兆四千億円、七十年度は九兆三千億円、七十五年度は十兆九千億円、八十年度は十二兆一千億円、八十五年度は十三兆二千億円ということでございます。
  16. 堀昌雄

    堀委員 私ども社会保障の特に年金に着目をして、社会保障特別会計といいますか特別基金といいますか、そういうものを設定して新しい間接税をここヘセットしたいというのは、間接税というのは御承知のように、非常に低率でたくさんの資金が集まるわけでありますから、これが安易に税率が動けば国民にとっては大変負担になるわけであります。御承知のように現在、日本財政法は、財政法第四条で国債の発行について制限を加えております。それは、それに見合う何かのものが公共投資あるいは出資その他のものであるならばこれが歯どめになるというのが、財政法が出てきた経緯だと私は思うのでありますけれども、このような非常に課税ベースの広い、そして税率をどんどん上げれば幾らでも税収がふえるようなものも、やはりそこにおのずからシステムとしての歯どめのかかるような仕組みが必要ではないか。  そういたしますと、今お聞きいただいたように、当初はやや差があるのでありますけれども、私どものすべての方に賦課方式税金で払うという格好でやりましても八十五年に十四兆七千億円、政府の方針でやりましても十三兆二千億円、その差は一兆五千億円であります。二十一世紀初頭では幾らも差がないわけであります。ですからそうなりますと、これを一遍に、六十一年七兆五千億というのは、年金をすぐにがくっとやるわけにいきませんから、この中で徐々に徐々に、要するに、今の資金の導入をしながら何年かの後にこういう形に持っていくというのが年金の対応でありますから、そういう意味では私は、六十五歳以上すべての国民が給付を受けるようなそういう年金であるならば、すべての国民が、所得が低い高いにかかわらず負担をしてもいいのではないだろうか、こういう考えで社会保障目的税というものの提案をしておるのでありますが、小倉会長はどのようにお考えでしょうか。
  17. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまの御質問については、深くまた私ども検討はいたしておりませんから、従来の経緯を踏まえてのお答えだけにとどまりますけれども、国会で決議になりました一般消費税の導入を政府に御答申申し上げましたときに、やはり社会保障といいますか、社会福祉に充てるという目的税的なものにしたらどうかという議論が随分ございました。結果としては、名前もそういう名前をとらず、目的税にするということにはならなかったわけですが、しかし、議論の中にはそういう御主張も相当ございました。  ただ、福祉あるいは社会保障の財源にするという点についての難点と申しますというと、一つは、相当の税収が予想されると仮にいたしますと、それを特別の年金なりその他の社会保障に充てるということになりますと、税収いかんにもよりますけれども、いわば資源の配分上ひずみが生ずるおそれがありはしないか。要するに、ほかに使えないということになるわけですから、そういう税目が多くなるということは、また財政を硬直化させるという結果にもなりかねないというようなことから、福祉税的な考え方はとらなかったわけですが、しかし、今後の検討の中には、恐らく今お話にもございましたようなことも、もし一般的な消費税といいますか、課税ベースの広い間接税を考える、検討するという際にはまた論議の的になる、また、なるべきものではないかというふうに思います。
  18. 堀昌雄

    堀委員 そこで、実は先般の委員会でも大蔵省答弁を求めたのですが、なかなか大蔵省からはっきりした答弁が出ないものですから、ちょうど私が質問をいたしました二月四日の日本経済新聞の朝刊に、日本経済新聞が小倉参考人との間でやりとりをしておられる記事が出ておりまして、その中で、「いまとなれば(すべての取引段階で付加価値に課税する)」、これは恐らく新聞社の方で注釈をつけたと思うのですが、「EC型付加価値税がいいのではないか。物だけでなくサービスにもかけられるし、税の理屈の上では一番いいだろう」、こういうふうにお答えになったと日本経済新聞に出ておるのでありますが、こういうふうにお話しになったのかどうか、ちょっと最初にお答えいただきたいと思います。
  19. 小倉武一

    小倉参考人 それに間違いございませんが、それには、どういう言葉だったかはっきりしませんが、大型間接税と言いましたか、大型間接税を導入すればどういうものが考えられるかということで、そういうことに対する答えとしまして、一般税制関係の学者の先生方がどちらかといえば付加価値税、EC型の付加価値税というのがそういう税目としては、新税としてはよろしいんではないかというようなことを踏まえて申し上げた次第です。
  20. 堀昌雄

    堀委員 私は、実はかつて一般消費税が導入されるときに強く反対をいたしました。なぜあの一般消費税に強く反対をしたかといいますと、あれでは実は税金を取るだけの消費税ということになってしまうからであります。やはりそういう意味では、制度としてはこの現在行われておるEC型付加価値税、いろいろなパターンがありますからこの例外部分のもたくさんあるのでありますけれども、共通しておるところは仕送り状をつけて処理する、向こうの言葉で言えばインボイスをつけて処理をするということによって全体の取引段階の流れが正確に客観的に把握できる、そのことが税の公正化に大きく役立つのではないか。同じシステムを導入するのならば、それが増税のための手段ではなくて、税の公正化のため、そうして将来にわたって国民所得を保障できるシステムに最もかなったものである方が望ましいのではないかというのが私の個人的な見解でございます。  そこで、今の問題について、欧州型付加価値税というものの一つ消費税の中における長所は、インボイス、仕送り状をつけて処理をするということによって、結果としてすべての税が公正に処理されるということに道を開くという点を私は大変重視をいたしておるのでありますが、その点についての小倉参考人のお答えを伺いたいと思います。
  21. 小倉武一

    小倉参考人 お話のように、EC型の付加価値税と申しますというと、インボイスを売り手の方が出さなければいかぬ。買い手の方はまたそれを保存しておかなくちゃならないという義務がついておるという関係で、売り手と買い手の間に、何といいますか、相互牽制作用が働いて、この間の、ごまかしと言ってはちょっと悪いのですけれども、ごまかしがないように、公正に売上高、仕入れ高がわかるようになるという意味におきましては、一般消費税ということでかつて政府に答申を上げましたものにはそれがないものですから、ほかの税金との関係はなくても一般的な消費税のあり方としても少しふぐあいであったというふうに感じておりますし、また当時からそういうことは指摘されておったわけです。したがいまして、特に税制間接税を検討するということでありますれば、そういうインボイスを伴ったEC型の付加価値税制度がよろしいんではないかというのがどうも大方の学者、先生方の御意見ではないかと思います。しかし、それがほかの徴税上の公正にまでどの程度役に立つのか、あるいは役に立てたがいいのか、これはちょっと私はお答えしにくいと思います。
  22. 堀昌雄

    堀委員 この問題は、これからひとつ国会の中でも十分論議を尽くして国民のコンセンサスが得られるようにしない限り、一方的に一つのモデルがいいからそれをやればいいという簡単なものだとは私も思っておりません。ただしかし、今私どもが置かれておる位置というのは、どうしても税の公正、公平を図らなければいかぬ。そうして、今の多段階所得税を改めなければいけない。年金問題については、今から十年、二十年ほっておけば、これはもう手も何も出ないような状態になるのでありまして、今この時点で年金の将来像を考え、あるいは所得税、そういう間接税を含めて、包括的にシステムとして最も国民に有効な制度を考えるというのが今私どもに課せられておる最大の任務だ、こう思うのであります。  最後に、この問題についての、今まで私が小倉参考人との間で論議をさしていただきました件について、先に大蔵大臣から答弁をいただきましょうか。大蔵大臣のお考えを承り、総理のお考えを承って、私のこの午前の質問を終わりたいと思います。
  23. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まさに六十年度税制に関する税制調査会の、異例のことではあるがという前提においての御答申というものも、今おっしゃったような問題が背景にあって出てきたのではないか。したがって、そういう考え方を背景にして、国会の論議等を正確に伝え、そして税制調査会で御審議をいただけるということが、現状においては一番現実的な問題ではなかろうかというふうに私は考えております。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 堀さんの御見解は、公平性あるいは普遍性ということに非常に重点を置いた御見解のように思いますし、それは現在のひずみを是正するという点について非常に一石を投ずるというお考えではないかと思います。さりながら、政府といたしましては、来るべき税制の根本的、抜本的改革についてはまだ白紙の状態にありまして、今の御議論等も税調におきまして有力な意見としてお取り上げ願って、あらゆる角度から検討願うように期待しております。
  25. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと一点だけ、時間がなかったので抜けておりますので、問題だけ小倉参考人に申し上げて終わりますが、実はグリーンカードの問題をやろうと思ったのですが、時間がございません。今度の税制改正の中で、総合課税の問題は横へどけて限度管理だけが行われる。これは今の所得税制の中の大変大きな問題なものですから、私は、今五段階税制というのを申し上げましたが、最高税率五〇%になっておりますから、現在の三五%の源泉分離というのを五〇%の源泉分離に上げれば、制度として実は総合課税をしたと同じ形になる。それ以下の人は確定申告をしていただいて金を返してもらえばいい、こういうことで、今の五段階税制というものの一つの側面を、さらに有効に課税ベースの抜け穴をふさぐということのためにも意味がある、こう考えておるのでありますが、時間が参りましたので御答弁は結構でございます。そういう考えがあることを税制調査会でもひとつ御検討いただきたいと申し上げて、私の質問を終わります。
  26. 天野光晴

    天野委員長 次に、矢追秀彦君。
  27. 矢追秀彦

    矢追委員 税制調査会長にお伺いをいたしますが、今回の総括質疑の中におきまして、総理、また大蔵大臣の答弁一つはっきりしておりますことは、税制改正については簡素、公平、公正、選択、これが一つの大きな基本方針、それから多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方はしない、こういうことが基本になっておりますが、今後の税制調査会の議論にこの基本方針を踏まえた上での議論をされるのかどうか、その点まずお伺いしたい。
  28. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお尋ねでございます国会における総理、大蔵大臣その他各所管の大臣方の御意見あるいは御答弁というのは、予算審議が終わりますれば、しかるべき機会に税制調査会が開催されまして、その際にいろいろ国会の各議員の方の御意見とともに当局の方の所見もあるいは御回答ぶりもお聞きする、そういうことを重要な参考指針としまして審議を進めるということに相なるかと思います。
  29. 矢追秀彦

    矢追委員 今、この基本方針は守るという線と私は理解をいたします。  そこで、その次にお伺いをしたいのは、具体的な問題になりますが、租税負担率の問題でございます。これは臨調の最終答申においては、租税負担率というものは上げない、上げるような新たな税制措置はとらない、こういうことを言っておるわけでございますが、現実に昭和五十九年度から六十年度にかけては、租税負担率は〇・四%の上昇をしておるわけでございます。この租税負担率が上がる原因について、税調会長はどう認識をされておりますか。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  30. 小倉武一

    小倉参考人 租税負担率を上げてはいけないとか上がってはいけないというようなふうには私どもは考えておりませんです。税制仕組み上おのずから租税負担率は上がるというのは、一番典型的なのは所得税でございましょうか、累進になっているせいもございますけれども、どうしてもこれは上がっていくのです。したがって、毎年というわけにはまいりませんが、何年か置きには所得税全体にレビューを加えまして、しかるべき必要な減税をするというようなことが必要であろうということは念頭に置いておりますけれども、毎年毎年の租税負担率が上がるということについて、さほど神経をとがらすということはいかがなものかとむしろ思っております。
  31. 矢追秀彦

    矢追委員 今のお話ですと、毎年毎年で神経をとがらすことはいかがなものかと、こう言われたわけでございますが、それでは、臨調を流れる租税負担率を上げてはいけない、また、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」では、ヨーロッパよりかなり低い水準に公的負担率を抑える、もちろんその公的負担率の中に占めるのは租税負担率が多いわけですから、こういうことも言われております。そうしますと、今のお話だと、じゃ、どれくらいの租税負担率の上昇までは許容範囲といいますか、今言われたレビューをするための範囲なのか、どれぐらい以上租税負担率が上がれば、これは減税というふうな見直しをしていかなきゃいけないのか、大体の目安はどの辺とお考えですか。
  32. 小倉武一

    小倉参考人 税制調査会で租税負担率がどの程度が限度であるかということは、明示的にお示しするような答申は、たしか従来してなかったと思います。ただ、租税負担率ということでありますれば、ただいま御質問の中にもございましたように、日本はヨーロッパなどと比べますというと租税負担率は低い方でございます。アメリカは日本より低いらしいですけれども、ヨーロッパと比べると日本は相当低い。片や、先ほども意見のございましたような社会保障の充実ということであれば、それだけ税収を何とかしなきゃならぬというようなことにもなりますので、その辺をにらみ合わせて、ヨーロッパ水準まで上げるということはいかがなものか、これは困るだろう。しかし、現在のままで据え置くということは、またこれ考えにくいんじゃないかというような感触がございますけれども、それを税制調査会として明文化したことはたしかないかと思います。  ただ、別な言い方になりますが、財政支出のうちどれくらいを税負担で賄うべきであろうか、賄ったらよろしいかというようなことは議論をしたことがございます。ある程度やはり、財政支出のうち相当部分は税収で賄うということが必要だろうというようなことで、そういうことについての検討もしたことがございまするし、どの程度がよろしかろうかというようなことも答申等に書いたようなこともあるかと思いますが、今それがきちっとした姿でこうだというふうなことにはなっておりません。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  33. 矢追秀彦

    矢追委員 今の御答弁を聞いておりますと、最終的にどれくらいの負担がいいのかというふうなお話答弁でございますが、私がお聞きしたのは、去年からことしは〇・四%ですから、それぐらいだと見直す必要はないというふうな、一年一年に神経質になる必要はない、こう言われたわけですから、〇・四ならばまあ許容範囲だ、租税負担率が上がったというふうな解釈にはならぬというふうに私は伺ったわけですから、どれくらいの租税負担率が上がれば、じゃ減税へというふうなこと、いわゆる年度といいますか、三年なら三年あるいは五年なら五年、どれぐらい上がれば見直さなければいけないかというこの質問、これもひとつお答えいただきたいと思います。  それからもう一つは、今、税調ではそういった議論はしてこなかったと言われましたが、それでは今回の国会の議論でも、租税負担率を上げないあるいは上げてもどの辺までという議論がかなり出ましたし、政府からは租税負担率の仮定計算の資料まで出されたような状況でございますので、やはり税調において議論される可能性というのはあるし、またやるべきである。特に臨調の上げないという方針です。新たな税制措置はとらぬという、こういう方針が答申として出ているわけですから、そういった意味において今後検討はされるおつもりがあるのかどうか、二点お伺いしたいと思うのです。
  34. 小倉武一

    小倉参考人 租税負担率ということからは申し上げてはおりませんけれども所得税について減税という要求といいますか、そういう御主張もございまして、その点についてはそれなりの答申で、今年、すなわち六十年度においては所得税減税は無理であろうというようなことを申しておりますが、しかし、少し中長期的に見ますれば、いろいろの理由でもって税負担、特に所得税負担は上がっていくという傾向がございまするから、何年間とこれははっきり申せませんが、そのときの経済あるいは経済成長の状況等によりますけれども、何年か後といいますか、何年か後にはやはり所得税の税負担について見直しをして、しかるべき減税措置を講ずることの必要があるかどうか検討をする必要があるということは申しております。  それから今後のことでございますが、今後税負担率をどうするかということについて、これは税制全体の見直しということの必要性をうたっておりまするし、また政府お話、御意見などお聞きしましても、税制全体についての見直しをするという必要があるということを申されておるようでございまするから、そういう見直しをする際には、一つの目安として税負担はどの程度が限度であるか、どの程度がやむを得ないところであるかというようなことは論議してしかるべきでありますし、多分論議されるんだろうと思います。
  35. 矢追秀彦

    矢追委員 次に、先ほども出ておりましたが、直間比率の問題でございますが、これは五十八年十一月の「今後の税制のあり方についての答申」、この中にも、「直間比率について特定の目標を設定し、専らその観点からのみ税体系を論ずることは適当でないと考える。」これは私も賛成でございまして、直間比率を見直すんだ、直間比率はどうあるべきなんだという議論、特に政府の方から直間比率見直しということが言われておるわけですけれども、これは結果論でございまして、先ほども会長、少しそういった面にはお触れになっておりますので重ねての質問になりますが、やはり直間比率をどうするかということの論議はすべきではない。  そして、特にこの直間比率を見直す見直さないの前にやらなければならないことは、やはり直接税の中のまだまだ不公平と言われているものがいっぱいある、こう私たちは考えているわけでございますので、直間比率見直しの目標を設定をして、じゃ今直接税が高過ぎるから、だから間接税をふやすべきなんだ、こういうふうな議論は適当でない。政府はしばしば、大蔵大臣もそういうことを言われてきたように思いますし、総理もしばしば言われております。この点については私は反対でございますし、また、直間比率を決めてやったところが、次に所得税は、弾性値が政府は一・一と言っておりますが、私は政府の十年平均をとるのは反対でございまして、五年平均をとりたいと思っておりますが、そうすると弾性値はもう少し上がる可能性がございます。そういう意味から、また後で間接税は増税しなければならぬ、直間比率を決めてしまいますと。必ずそういうことになるわけでございますから、この税調の方針に私は賛成でございます。  そこで、この直間比率を、こういう目標を決めてやることについては、今後ともそういうことはしないという方針は貫いていかれるのかどうか、それが一つ。もう一つは、この直間比率は結果論であるということをお認めになるかどうか。それから、この直間比率見直し云々の前に直接税の不公平の是正に全力を挙げるべきである、こう私は申し上げたいのですが、その三点について御意見をお伺いしたい。
  36. 小倉武一

    小倉参考人 直間比率見直しということは近年あちらこちらで言われておりますので、何といいますか、そういう見直しをする必要があるとおっしゃっている方があることは、これは否定できないわけです。どういう趣旨であるか、必ずしもはっきりしない点がございますけれども、たしか今の直間比率を眺めますと、日本はヨーロッパなどに比べるというと、まあアメリカは連邦の方を見ればまたそうですが、間接税のウエートが非常に低いという事実は、これは否定できないわけです。これはやはり直接税に余り多目にかかってい過ぎる結果ではないかというようなことから、あるいはまた日本の過去と比べてみましても、随分と直接税のウエートがこの十年、二十年の間に高まってきたという事実もございまするので、この直接税と間接税負担割合というものを見直すべきではないかという議論が出るのは、これはやむを得ない、あるいは当然のことかと思います。  ただ、しからばといって、税制改正に当たりまして直接税、間接税の比率をどの辺が妥当であるかということを決めて、その上でこうするああするというわけには、これはなかなかいかないと思います。そういう意味で、直間比率というのは結果的に出てくるものであるというようなことが、あるいは税制改正の立場から立つとそういうことになるかと思います。  それから、今後の話でありますが、やはり税制全体の見直しをするということでありますから、直接税だけを見直しをするという趣旨ではなかろうかと思います。したがいまして、間接税消費税を含めての見直しということになりますでしょう。無論、所得税、法人税等についての見直しということも重要でありまするし、それも避けては通れないと思いますが、間接税についてもやはり見直しをするということが必要かと思います。しかし、いずれにしましても、今国会におきまする諸先生方の御議論なり政府の所見なりというようなことを踏まえて、先行きのことになりますので、今ここでどういう方針であるかということは申し上げにくいと思います。
  37. 矢追秀彦

    矢追委員 次に、今申し上げた直接税の不公平の是正という面でございますが、六十年度の税制調査会の答申から見まして、今回の税制改正で幾つか実現していない、また実現――私たちの考えとしては答申が実現されなくてよかったというものもありますし、また、された方がよかったという面もございますが、この税制調査会の答申でいろいろ言われたものがとられた場合、見送られた場合といろいろございますけれども、これはもちろん最終的に政府のお決めになることでございますから、調査会はあくまでも答申でありますけれども、この六十年度の税制改正について言うならば、税調の答申から会長として、正直言ってこの点だけはもう少しやってほしかったというふうなものがあるのかどうか、あるいは今度の税制改正は十分満足である、こういうふうなことなのか、その点はいかがですか。
  38. 小倉武一

    小倉参考人 ちょっとお答えしにくいのです。と申しますのは、まだ政府提案の税制関係の法律、これから審議というような段階でありますから、私が何を言っても余り影響はないかと思いますけれども、それにしましてもちょっと御遠慮を申し上げた方がよろしいと思います。
  39. 矢追秀彦

    矢追委員 それでは最後に、締めくくりとして総理と大蔵大臣にお伺いをいたしますが、先ほど冒頭に申し上げましたように、再三総理並びに大蔵大臣が当委員会において発言をされました基本原則、こういったものは税調にきちんと伝えて、しかも正確にお伝えをしていただいて、いささかの変化も加えないで、総理答弁はしばしば変わってきておる点を非常に憂えておるわけですから、先ほど一番最初に言われたことをきちんと申し上げたわけでございますけれども、まずその基本原則をきちんと税調に伝えて、そして答申をしていただく。その出た答申もその基本原則に従って今後の税制改正の中に生かしていく。その点をまず第一番目に総理、大蔵、両方からお伺いしたいと思います。  もう一つは、具体的な問題で、先ほど申し上げました基本原則の上に沿って、いわゆる臨調答申にある租税負担率を上げるような新たな税制措置はとらないという、この方針もきちんと堅持されるのかどうか。  それから、直間比率については、これは目標を決めてやるべきものではないという、これはもう既に答申が出ておるわけですから、先ほど会長も言われたとおりでございます。その三点についてお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  40. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず三番目から申し上げますと、直間比率というのは今御指摘のとおりだと思っております。私も直間比率見直しというのは、過日の答申を見ますと一つだけ使われておるところがございます。それは観念的には私もわからないわけじゃございませんが、あくまでも直間比率というのは結果として生ずるものであって、一定のアプリオリな目標を設定しておいて議論を誘導すべきものではないというのは私もかねがね申しておるところであります。  それから、二番目のいわゆる租税負担率の問題につきましては、私も小倉税調会長のお答えを聞いておりました。そこまで踏み込んだ議論もあるいはしなければならぬだろう、こういうことをおっしゃっておりましたので、私も、そういう租税負担率問題等も御議論をいただけるのだなということを、今事実認識をさせていただいたわけでございます。  ただその問題が、いわゆる臨調で言われておる新たなる措置による変化というのは、今度は、出た上のいわば比率をどうするかということで決定する問題でございますので、やはり税制全般についてのあるべき姿についての御答申がいただけることを期待をしておるというのが、言ってみれば税調に対する我々の姿勢ではなかろうかというふうに思います。  それから、基本的にはあくまでも俗に言われる不公平税制の是正、すなわち総理から申しております公平、公正、簡素、選択というような基礎に立って国会の議論等を正確に伝えて、それをもとにして御議論がいただけるものであろうというふうに期待をいたしております。
  41. 矢追秀彦

    矢追委員 後の方は。多段階の方は。二つ言ったでしょう。矢野委員に対する答弁の基本方針、いわゆる大型間接税
  42. 竹下登

    ○竹下国務大臣 それは総理からお答えがあるとおりでございます。
  43. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣の御答弁のとおりでございます。
  44. 矢追秀彦

    矢追委員 いや、最後のところ、一番大事なところ。
  45. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野書記長に対する御答弁は、ここで申し上げたとおりに守っていきたいと思っております。
  46. 矢追秀彦

    矢追委員 その守るというのは、税制調査会にもきちんとその趣旨を伝え、その方針でやっていただくということで理解してよろしいですか。
  47. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ここでも今小倉さん申されましたように、国会における論議等も十分税制調査会で検討の対象にするとおっしゃっておりました。また、大蔵大臣も正確に税制調査会にお伝えするとおっしゃっておりました。そういうような措置をとるようにいたしますと。結果がどういうふうに出てくるかということは、税制調査会が独自に御判定なさることであります。
  48. 天野光晴

    天野委員長 次に、岡田正勝君。
  49. 岡田正勝

    岡田(正)委員 質問に入ります前に、税金といえばお金ですね。物ではありませんね。そこで、お金といえば、つい最近新札が出ましたね、千円、五千円、一万円と。これは大蔵大臣としては大変御苦心の作であったと思うのでありますが、しかしながら、どうも国民の一部の中では余り評判もよろしくないのであります。  実は、先般、大阪の漫才がやっておられたその一節の中で、ははあ、おもしろいことを言うなと思って感心して聞きましたら、後で大拍手が出ました。これは余り気分のいい話じゃありませんが、漫才ですから、そのつもりで聞いていただきたいと思います。一人の相手の方が、今度のお札になってからお金がたまらぬみたいだなあ、こう言ったんです。もう一人の方が、そうよ、何しろ聖徳太子とは違ってな、ちょくちょく外遊なさった福沢諭吉先生のことだからな、一つところにとまっちゃいねえや、こう言ったら、満場の拍手でした。だから、私は庶民の偽らぬその気持ちがその聴衆の中に出ておったのじゃないかなと思うのでありますが、発行された大蔵大臣に御感想いかがですかと聞くのは大変失礼でありますので、総理の御感想を聞きたいのでありますが、いかがですか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 徳川時代から、かわら版というものは世相を反映しているものでありまして、特に今の漫才がごときは非常に庶民感情をあらわしているものだろうと思います。
  51. 岡田正勝

    岡田(正)委員 思わず私が拍手しました。全くそうだと思います。何事もやって一〇〇%いいということはありませんので、失敗の繰り返しがまた成功へ、つながるわけですから、大蔵大臣、気落ちをしないでしっかり頑張ってください。  それから、先ほど質問者に対するお答えの中で、中曽根総理はまたきょう実にいいことを言いましたね。外国のある人の言われたことを発表になりましたが、税金というものは、毛を抜かれても羊が鳴かぬ程度に取る、これが一番よろしいんだ、こういうことをおっしゃいました。今度は同じ外国でも中国のことわざにこういうことわざが昔からあるんですよ。これはどういう言葉がといいますと、税金はトラより怖いという言葉があるんです。税金はトラより怖い。  これはどこから出てきたのかといいますと、これは孔子さんの時代でありますが、その孔子様が諸国を行脚しておりましたときに、ある地方に行ったら道端で小さな石ころを前にして大変年をとったおばあさんがさめざめと泣いておる場面に出くわしたわけです。そこで、あの孔子さんのことでありますから、泣いておるものを黙って見過ごすわけにいきませんので、おばあさん、どうしましたと、何であなたは泣くんですかと言って聞きましたら、そのおばあさんいわく、実はここで私のせがれがトラに食い殺されたのでありますと、で、ここへ息子を埋めて、ここに墓石を置いて拝んで、情けなくて泣いておるんです、こう言ったそうです。そこで孔子さんは親切に、諸国を歩いていらっしゃいますから、ああ、おばあさん、それは気の毒なことであった、この地方はトラが出るようであるから、トラの出ないところを私が知っておるから、連れていってあげるから、そこまで行きませんかと、転居しないかと、こう実は言ったんであります。そうしたら、そのおばあさんいわく、いや、あそこは私はよく知っている、あそこには死んでも行きたくないと。どうしてですかと言ったら、あそこの国は税金が高いと、こう言ったのです。それで、税金が高いだけで、何ですか、トラに食い殺されてもいいからこっちへおった方がいいんですかと、こう聞きましたら、おばあさんいわく、トラというのは、用心さえすれば食い殺されることはないと、こう言うのです。用心さえすれば、ガードをすれば。ところが、税金というのはなんぼガードしてもガードしてもむしり取られると言うのですね。だから、そういう税金というのはトラより怖いから行きたくありませんと、こう言った。  いわゆる税金はトラより怖い、こう縮めてあるわけでありますが、まことに玩味すべき言葉ではないかと思うのでありますが、大蔵大臣、いかがですか。
  52. 竹下登

    ○竹下国務大臣 最初、税の淵源にさかのぼってみますと、ある集落ができる、トラとかあるいは外敵とか、そういうものから守らなきゃならぬ。夜警国家の出発とでも申しましょうか、したがって、分に応じて負担をして、そういうトラが来ないように大事にしようじゃないかというんだから、やはりトラを防ぐためにタックスというものがそこに生じてきたという論理もまた成り立つではなかろうかと思います。
  53. 岡田正勝

    岡田(正)委員 いや、さすが大蔵大臣で、こういうところで防衛論争になると思いませんでした。なかなか御立派な答弁であります。  こうなってくると、有名な総理大臣のお言葉もちょっと承っておきたいと思います。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 さればこそキリストも、税金取りが天国へ入るはラクダが針のめどを通るよりも難しい、やはりそう言っておるので、苛斂誅求ということは厳に慎まなけりゃ天国へ行けない、こう思うわけであります。
  55. 岡田正勝

    岡田(正)委員 いやあ、まことに気に入りました。実に御立派です。  さて、本論に入らしていただきますが、先般来総理がしきりに言っておられます、なるほど今の税というものはいろいろなひずみがある、やはり公平、公正、そして簡素、選択、このモットーでいかなければならぬと私は思っておる、こういうことで抜本的な税制の改正をやらなければならぬと私は思っておるのでありますと、こういうことを何回も何回も、繰り返し繰り返しおっしゃっておるわけでありますが、小倉さん、そこで、小倉さんの方は総理大臣の方から抜本的な税制改正という問題について御指示をいただいておるんでありましょうか。
  56. 小倉武一

    小倉参考人 格別改まって御指示というものはなかったと思いますけれども、国会でのいろいろ御意見の御開陳などを新聞等で拝聴していますと、おのずからわかるところがありますので、指示は全くなかったとはちょっと言えないと思いますけれども
  57. 岡田正勝

    岡田(正)委員 ということになりますと、国会は、税制の抜本改正という問題の中で、特に不公平の権化と言われるような給与者のサラリーマン所得税の減税問題とか、あるいは今国民が非常に不安に思っております大型間接税は一体どっちへ向いて走るんだろうというような問題なんかについて汗を流して論議をしておるのでありますが、根本的な、抜本的な税制改正、これを中曽根総理大臣が言うと非常に響きがいいんですね。もう既にできたかというような感じがするのでありますが、それは新聞で見たりテレビで見たりしただけでございますか。それは本当ですね。
  58. 小倉武一

    小倉参考人 先ほど申し上げたとおりでございますが、無論これはまだ長い国会でございまするから、やはり一応しかるべき節があるかと思います。そういう節には直接総理からかあるいは大蔵大臣を通じてか、国会での政府当局の所見はこうであったということは当然お聞きすることがあるかと思います。
  59. 岡田正勝

    岡田(正)委員 それでは、今、国会の中で総理大臣がしきりに繰り返しておっしゃっておられる言葉が、これがまた実にわかりやすい言葉でありまして、大型間接税と申しましても、普遍的な包括的な、いろいろな言葉を並べまして、投網をかけるような、そんなことはおれはやらぬのだ、したくないのだ、やらないのだということをしきりに繰り返しておっしゃっておられます。  そこで、小倉さんは税制の大家、これはまさに日本一と私は信じておりますが、その税制の大家から考えられまして、大型間接税総理が国会で御答弁に、あるいは委員会で御答弁になったような投網をかけるような、そういう間接税はやらないのです、こういって言ったら、残るのは間接税的なものはどんなものがあると会長は思われますか。
  60. 小倉武一

    小倉参考人 なかなかちょっと難しい御質問でございます。と申しますのは、今の大型間接税という言葉は、どうも余り格好がよくないといいますか、大型というのは何かたくさん税金が取られるのじゃないかというような感じがいたしましてね。あるいはだれがつくった言葉か知りませんけれども税制調査会では大型間接税という言葉は使ったことがたしかないと思います。課税ベースの広い間接税という表現でもって、簡単に言えば一般的な消費税ということを表現しておるわけであります。そういう一般的な消費税にはいろいろな類型があります。考えようによっては幾つにも分けることができる。政府のお答えなどによりますと、五つとか六つとかいうようなことになりますけれども、そのほかにもいろいろバラエティーを考えれば考えることができるわけでありまして、総理のおっしゃっているようなことがどれに当たるのか、どれとどれが総理の御趣旨に沿わないのかどうかというのは、もう少し具体的に、そういう税制の中に種類としましてどういうものがあるのか、そういうことを検討してみなければ、どれとどれが総理の御趣旨に沿わないのだというようなことがなかなか今の段階ではお答えができません。と申しますのは、そういう総理の御発言に沿って税制調査会がまだ審議を始めたことがないわけです。それから、私ども個人といたしましても、一般消費税と言われたあるいは言ったものがだめになったといいますか、以後余り検討したことがないのです。したがいまして、ここでどういうものが生き残るのか、どういうものが望ましいかということをお答えするのはちょっと無理だと思います。
  61. 岡田正勝

    岡田(正)委員 それでは、総理大臣にもう一度お尋ねをするのでありますが、ちょうど防衛論争が激しいものですから、だんだんミサイルのような言葉税金の論争の中でもこのごろはよく出てきまして、多段階だ、単段階だなんというんで、テレビを聞いておる国民が、あれ、ミサイルの話が出たのかなというようなことをある人の質問のときに言ったそうであります。私直接聞いたのでありますが、多段階でも対応によってはEC型もあり得るのでというようなことがちょろっちょろっと言葉の端々に漏れてくるのですがね、総理大臣の御答弁の中で。私どもよく聞いておってわからぬのですよ。それで、そういうのはどういうものを指さしておるのか、わかりやすい答弁で有名な総理ですから、あんまりわかりにくくならぬようにすとっと答えていただけませんか。どういうものですか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 岡田さんが最初小倉さんに御質問のあった中で一つお答えいたしますが、私は今回施政方針演説におきまして、税制の抜本的な根本的な改革をすべき課題を持つに至った、そういう表現をしておるわけです。ですから、今回の与野党の御議論等も踏まえて、適当な将来にやはり大蔵大臣と相談して、私がここで申し上げましたような趣旨に沿って税制の抜本的な改革を政府税調に諮問いたしたい、正式にやりたい、そう思っておるのです。しかし、その時期がいつであるかということは、まだ今のところ申し上げる段階ではありません。しかし、将来適切なときにと、そういうことを申し上げておきたいと思います。  それから第二に、大型消費税の問題ですが、私は矢野書記長に対する御答弁の中で、最後に急所はここのところですと、こう申し上げたのは、いわゆるEC型付加価値税にもいろいろなものがあります。しかし、いわゆる投網をかけるようなものはやりたくない、そういうことを申し上げておるので、そういう投網をかけるようなものでないEC型付加価値税というものは、少なくとも税調の検討の対象にはなるであろう、そういうことが反対解釈で成立すると思います。そういうことでございます。
  63. 岡田正勝

    岡田(正)委員 時間がなくなってきましたので、小倉会長さんにもう一つお尋ねをしますが、今言うように、総理の方では、この国会が済みましたならば、適当な時期に税調に諮問をいたしたいということを言っております。この諮問をされましたら、大体今論議中心というのは、俗称大型間接税という問題でありますが、それの答申が出せるまでにはおよそどのくらいの期間を必要とお感じになりますか。
  64. 小倉武一

    小倉参考人 これはなかなかやはり難しい御質問でございまして、とにかく税調は春に始まるとしましても、春になってといいますか、四月以降のことかと思います。したがいまして、問題がしかもお話のような間接税だけの問題じゃありませんで、直接税にも無論関係があります。あるいは不可分の関係をもって論ずる方もおられますから、全体を見直すということになりますと、相当の時間がかかるということもございます。  そこで、例えば例年でございますれば、四月から始めましても秋ないし十一月、十二月になるというのが例でございまするけれども、しかし、今のお話のようないろいろな問題もございまするので、果たして翌年度、六十一年度の税制改正は別にしましても、それよりもきちんと中期的な税制のあり方については、一体翌年度の税制改正と同じころに出せるものかどうか、これはまだ始まってもいませんので、なかなか予断を持つということはできませんです。  ただし、こういうことは申せるかと思います。先ほど総理税制についての基本原則の中に、選択ということがございましたが、あの選択という意味は、仮に国民選択ということでありますれば、国民選択をするには、やはり相当の時間がかかる、日にちがかかる。選択していただくにはある程度の税制改正の方向はこういうふうに考えられておるのだということを国民に周知をして、わかった上で議論していただくということになりますから、これはそんなにゆっくり構えておるわけにもまいらぬということになりますので、その辺、なお政府の御意向もございましょうが、四月以後税制調査会が再開されますれば、その際に段取りも相談になるかと思いますが、なかなかその段取りもこういうふうにいこうというふうには一遍には決まりかねるかと思います。
  65. 岡田正勝

    岡田(正)委員 時間が切れましたので、要望だけ申し上げておきます。  小倉会長さん、諮問を受けられまして答申をお出しになる際におきましても、この国会、委員会の意向というものを、大蔵大臣の方から十分お伝えがあると思いますけれども、その意思をよく踏まえていただきまして、総理がおっしゃるように、公正で公平で簡素でそして国民選択ができるような答申、そういうやり方をしていただきますように、公正な運営を心から期待をさしていただきまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  66. 天野光晴

    天野委員長 これにて小倉参考人に対する質疑は終了いたしました。  小倉参考人には、御多用中のところどうもありがとうございました。
  67. 天野光晴

    天野委員長 引き続き、政府に対する質疑を行います。原田昇左右君。
  68. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私は自民党を代表して質疑を行います。  まず、去る一月初めに中曽根総理大臣がレーガン大統領と会談されまして、日米間の友好、信頼のきずなを一層強固にされたことを高く評価するものでございます。  さて、アメリカはいわゆるレーガノミックスと言われる経済政策によって経済が活力を回復し、再び国民の間に強いアメリカへの自信を取り戻しつつあると言われております。こうした点について総理の率直な御印象を伺わしていただければ幸いでございます。
  69. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 レーガノミックスというものは成功したと私は思います。もっとも私は、レーガンさんに、個人的に二人で立ち話したときに、レーガノミックスは大変成功してきましたね、そう言いましたら、いや、そう言っていただいてありがとう、初めのうちはあれは失敗する失敗するというんでレーガノミックスという言葉を野党が使ったんだ、自分はそういうことは言わなかった、ところが最近成功しかけてずっとよくなってきた、それを見てジャーナリズムが今度はレーガノミックスということを言い出したんで、自分はそういうことを初めから言ったのではありません、そう言っておりました。  アメリカ経済がこれだけ活力を回復して世界経済を潤してきたということは非常な大成功で、世界が安定状態に入ったのもレーガノミックスの成功が大きく影響しておると思います。ただ、副作用はやはりありまして、それは高金利であるとかあるいは強いアメリカのドルとかあるいは財政赤字とか、そういうような面がやはりあることは、これは間違いないことでありまして、今度はそういう問題の克服という問題が残されておると思います。
  70. 原田昇左右

    原田(昇)委員 我が国経済もアメリカの景気拡大に引っ張られてようやく景気回復をすることができました。最近の状況は非常に順調にいっているわけでございますが、しかしながら、依然として内需の盛り上がりについては迫力の欠ける面があります。そして同時に、貿易経常収支が三百五十億ドルにも上る大幅黒字を累積し、そしてさらに八四年にはこれを上回る約五百億ドルの資本流出超を記録しておるわけでありまして、これが結局円安の原因になって、さらに輸出を加速し貿易摩擦の原因になっておるのではないかと思われます。言いかえれば、日本国民の貯蓄を我が国経済の発展のために使わずに、外国経済の活性化に役立たせているような結果になっておるわけでありまして、大変残念だと思うわけであります。果たしてこうした状態のままでいいのかという問題でございますが、これについて率直に総理大臣の御見解を伺いたいと思います。
  71. 金子一平

    ○金子国務大臣 アメリカの高金利問題でございまするけれども、これは御承知のとおり、向こうの投資過大、財政赤字等による資金の不足ということで高金利がなかなか是正されない状況でございまするが、総理もアメリカ首脳とお会いになるたびに、この高金利問題については言及をされておりますし、また近く開かれるボン・サミットでもこれが一つの問題になろうかと考えておるわけでございまして、この問題につきましては政治的に今後も極力努力いたしてまいりたいと考えておるわけでございます。  ただ、幸いとアメリカへの輸出は漸減いたしておりまするけれども、かわりに大幅ではございませんけれども、内需が着実に伸びつつある現況であることは、最近の消費の状況等から見てみましてもあるいは設備投資の状況から見ましてもはっきりとこれがわかるわけでございまして、私どもはこの点に着目いたしまして、民間活力が大いに発揮できるような環境づくりをしっかりやってまいりたい。  一つには、昨年から投資減税を行っておりまするが、さらに中小企業あるいはハイテク等の基盤整備につきましての投資減税をやりましたり、あるいはわずかではございまするけれども一般公共事業の事業費について、五十九年度以上にふやすようなことでやりましたり、いろいろな努力をしておりますが、特に一番大事なことは、デレギュレーションと申しますか、今まで政府がいろいろ民間に課した不必要な規制を思い切って緩和することだろうと思うのであります。電電公社の問題一つごらんになりましても、民営化によってすぐ第二電電の問題が起こるとかいうようなことになっておりまするし、あるいはまた関西の国際空港に見られるような経営主体の問題もございますし、あるいはまた都市の再開発、線引きの問題、国公有地の開放の問題等、今後そういう面につきましても私どもは大いに努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  72. 原田昇左右

    原田(昇)委員 そこで、今、金子大臣から民間活力の発揮の問題あるいはデレギュレーションの問題等について伺ったわけでございますが、これについてはまだ触れさせていただきますが、私は今この委員会に出されております大蔵省の「財政の中期展望」の試算例について触れてみたいと思います。  この試算例は見ようによっては、現在のような歳出抑制を続けていくのか、それとも増税を実施するのか、いずれかしない限り六十五年の財政再建の目標は達成されないとして国民選択を迫っているように見えるわけであります。しかし、この計算例には一番肝心かなめの論点が欠落しているのではないかと思うわけであります。つまり成長率、六十一年以降について実質四%、名目六・五%とするということになっており、これが「展望と指針」からとられたということになっておるわけでありますけれども、この点についてはもう少し議論をする必要があるのではないか。つまり五十九年度は既に五・三%成長ということになっておるわけですし、恐らく年度末になってみないとわかりませんが、五・三どころじゃない、五・五ぐらいまでいくかもしらぬという説さえあるわけであります。しかも、労働力需給は、より「展望と指針」の水準よりは緩んできておって大変厳しい状況にあります。しかも、貯蓄の方は余って余剰ができて海外に大幅に流れ出しておるという状況であります。つまり、このことは日本経済の潜在成長力が、政府の「展望と指針」で示されたものよりはかなり高目なところにある、つまり潜在成長力がかなり強いんだということを実証しておるのではないかと思うわけであります。そこで、先ほど金子大臣の言われるように、いろんな施策をやることによって「展望と指針」の四%の成長よりも高いところを目標にして、日本の持てる成長力をフルに発揮させるということによってパイを大きくして増収を図っていくということが、何といっても、この試算例で見ましても財政再建に大幅に役に立つわけでありますし、同時に、資本流出とか貿易黒字型の対外不均衡というものについての改善策にもなるのではないかと思います。  私は、この際、数字の議論をするよりはむしろ政策手段について、成長目標をもっと高く掲げて、そして政策手段をはっきり国民に示して、日本もやればやれる、そしてみんなが確信を持って、自信を取り戻して頑張っていくということが非常に大事ではないかと思うわけであります。例えば、そういうことによって仮に実質成長率が五%あるいは名目で七、八%というように上がってくるとすれば、ことしと六十年度、六十一年度、六十二年度ぐらいまでゼロベースの抑制を続ければかなり収支の好転ができるというように試算できます。まあ数字の面よりは、私はむしろ我が国の持てる成長力をフルに発揮させようということに主眼を置いて政策展開をこの際すべきではないかと思うわけであります。その点について企画庁長官並びに総理大臣の御見解を承りたいと思います。
  73. 金子一平

    ○金子国務大臣 総理のお答えになる前に私から一言申し上げておきたいと思うのでございますが、あなたのおっしゃる日本の持てる潜在成長力をフルに発揮することにつきましては、私も全く同感でございます。  ただ、現状といたしましては、日本の目下置かれている状況から申しますると、その潜在力をうんと発揮する手段に、財政力の限界がございますから財政的なてこ入れがなかなかできない、そこに大きな悩みがあるわけでございまして、例えば減税の問題にいたしましても公共投資の問題にいたしましても、思い切った手が打てないところに悩みがあるわけであります。  で、先ほど来申しましたような種々の、政府主導型でなくて今民間主導型の方に極力与えられた環境を利用しまして、大きく伸びるような手を講じながら今後の政策を考えてまいりたいと思っておる次第でございまして、特に私どもとして必要なのは、今やるべきことは財政再建をしっかりやる、やはり政府のぜい肉落としをしっかりやって、そして民間の力をもりもりと発揮できるような環境づくりをやることが先決問題だと考えておる次第でございます。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 金子長官が申されたようなことだと私も思います。
  75. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私は何も金を出せということを言っておるわけではないのでありまして、今の財政の状況を見ますと、とてもそれは公共投資をふやしたり個人消費に対する減税をしたりするような余裕がないということは十分理解できるわけであります。しかしながら、金のないときは知恵を出せという言葉がございますが、そういう面で大いに知恵を出す必要があるのではないかと思うわけであります。  既に、今度の予算を見ましても、技術革新の大きなうねりの中で設備投資が伸びておる。そこへもってきてリスクマネーを供給する、基盤技術の研究促進をやるという予算が新しく新規事業として計上されておりますし、また研究開発投資とかに対する投資減税、税額控除が実現するということは、私は画期的なことだと思うのですね。この厳しい中でそういう配慮がされたということを高く評価する次第である。同時に、ハイテク減税等も行われておるわけでありますので、私は極めて施策として適切ではないかと思っている。こういう施策を続けて、さらに状況によっては強化していくことが大事ではないかと思うわけであります。  さらに、住宅投資等につきましても停滞の域を出ないわけでございますが、結局やはり土地問題だと思うのですね。土地をたくさん供給して適正な値段で手に入るということになれば、国民はもっともっと住宅に対する希望があるわけですから、家を建てられるわけだと思うのです。そういう意味で、土地に対する規制の緩和ということは非常に大事じゃないか。それから、再開発等についても、建築規制、これが一番問題ではないかと思うわけであります。  民活ということはこれからの政策の目玉であるというかけ声がかけられて、どうも私は、かけ声はよくわかるわけですが、実際に一体どういうふうに動いてきておるのかはっきりつかめませんので、ひとつぜひその点についてお話を承りたいと思います。河本大臣。
  76. 河本敏夫

    ○河本(敏)国務大臣 民活問題といいますと、やはり大きな背景は税制問題だと思いますが、狭い範囲に限定をいたしますと、規制の緩和ということになると思います。そこで、今行革審でも規制緩和についていろいろ作業をしておられまして先般総論が出ましたが、近く各論についての結論が出ると思います。  政府部内でも、特命事項担当室が中心になりましてこの問題と取り組んでおります。基本的な考え方は、経済上の規制は全廃するという方向で考えたらどうだろう、社会的な規制は、これはその都度、時勢に合わせて合理化していかなければなりませんが、経済上の規制には随分古いものもございまして経済活動を阻害しておるものもありますので、今そういう方向で検討を進めております。自由民主党の中にもやはりこの問題を取り扱う部門がございますので、党と行革審と連絡をとりながら、できるだけ早く方向が出るようにいたしたい、このように考えております。  なお、土地の有効利用という問題につきましても、この問題の一環としていろいろ今作業をしておるところでございます。
  77. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今のお話の経済規制の撤廃の問題ですが、私は規制緩和についての基本的な方向としまして、経済的規制と社会的規制、二つに分けて考えますと、まず経済的規制緩和についての考え方として、昨年民間の団体から提案された考え方、大変私は結構じゃないかと思うんです。  御参考までにここで御披露いたしますと、三つの原則を考えたらどうか。経済規制はその必要なときから、立案されて立法化されたときから相当時間がたった場合、もう役割を終えたというものについてはサンセット原則ということでやめてもらう、もう撤廃する。そして、しかし一挙に撤廃できないものはタイムテーブルをつくって、一定の期間内にやめる、つまりタイムテーブル原則。それから第三に、どうしても撤廃できない、これは依然として残さなければならぬというものは国民に対しその理由を公表する、ディスクロージャーの原則。つまりサンセット原則、タイムテーブル原則、ディスクロージャー原則、この三つの原則で考えていったらどうかという考え方であります。  それから、社会的規制の合理化については、これも三つの原則で考えたらどうだろうか。定期的な見直しを必ずやる、つまりレビューの原則、社会的規制が、あるいは公害問題で非常に起こったけれども、もう公害は解決されたというようなものについてはレビューをして、もう必要でなくなったらこれは即座にやめるということが必要ではないか。それから、規制の内容が、規制を受ける側に柔軟な選択の余地が残されていることが必要ではないかと思うんです。そういうような合理的なものでなければならぬ。つまりナショナリティーという原則を考えてみたらどうか。それから、最後に、社会的規制について、中央政府から規制される、あるいは地方の地域の公共団体から規制されるというように、方々から同じことについての規制が違った原則でやられてくるというようなことがあります。これはやはり、一定の表示が関係当局によって合理的に、整合性を持って行われなければならぬと思うので、これはコンシステンシーの原則と言ってもいいんではないかと思うのです。そういう意味で、レビューの原則、ラショナリティーの原則、コンシステンシーの原則といったようなことを考えて、社会的規制の合理化を図っていったらどうかという提案でございますが、私は極めて傾聴に値する案ではないかと思います。いかがでございましょうか。
  78. 河本敏夫

    ○河本(敏)国務大臣 今御紹介になりました民間の経済機関からの提言は、私も非常に有力な意見だと思います。これからの作業に参考にしていきたいと思います。
  79. 原田昇左右

    原田(昇)委員 さらに、この民活について私は具体的に二、三の点について申し上げたいと思うのですが、特に土地問題ですね、これは今までの線引きというもの、これをぜひ見直してもらいたい。中小都市に果たして線引きが要るだろうかと思うくらいであります。この点はどうでしょうか。
  80. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 中小都市の線引きの問題につきましては、従来からこの適切な運用を図っておるわけでありますけれども、非常に利害が、いろいろ問題があったりなんかしますので、実態に即して弾力的に運用されるように指導してまいりたい、こう考えております。
  81. 原田昇左右

    原田(昇)委員 建設大臣は非常に斬新な考え方をお持ちだと思うのですが、ぜひこれは事務当局を督励して、ひとつ思い切った土地規制についての流動化政策を進めていただきたいと思うのです。今のようにがんじがらめに判こばかりたくさん要るということじゃ、なかなか土地は供給できませんよ。土俵を縮めておいて、需要があるわけですから、結局土地は上がるということになってしまう。土俵を広くするということをぜひやってもらいたい。  それから、大都市の都市開発、これについても建築規制が非常に厳しいですね。これはもう先ほどの原則に照らしてぜひ見直してもらって、不必要なものをどんどんやめていくということを、もう建設大臣、期待いたしております。ぜひよろしくお願いいたします。  それから、そのほか公有水面埋め立てについて民間に参加させるとか、信託方式を活用してどんどん開発を推進するとか、容積率等について移動をするということを認めるとか、いろいろな問題があると思うのです。一々申し上げませんけれども、ぜひともこれは勇断を持って御推進をいただきたいと思います。  それから、国の所有地あるいは公有地、これの払い下げの問題です。これを活用してぜひその地域の実情に合った、ニーズに合った活用をしていただきたい。これについてはたびたび指摘され、総理もお声がかりでおやりになっておると言われるわけでございますが、どうも見るべき成果が上がってないんじゃないかと思うわけであります。この点、率直に言ってどうなっておるんでしょうかね。
  82. 河本敏夫

    ○河本(敏)国務大臣 昨年来この払い下げの予定候補地としまして約二百カ所ばかり出てきております。もうそのうち若干競争入札等で払い下げになったものもございますが、大部分がまだ残っておりますので、今個々の地域について具体的に検討中でございます。
  83. 原田昇左右

    原田(昇)委員 この点については総理の指導力が非常に大事だと思うのです。総理大臣からひとつ所信を……。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民活を第一とし、それから税外収入を確保する、そういう緊急の必要がありまして国有地等の払い下げについては熱心に取りかかっておるところですが、実際始めてみますというといろいろな問題があります。一番大きい問題は区とか市町村との調整の問題があります。そういう問題で、いろいろな今までの都市計画法とか法体系との整合性との問題等もございまして突っかかったりしておりますが、ともかく一生懸命努力して所期の目的を達するように今後ともやっていくつもりでおります。
  85. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私は、六十年度の予算について財政再建の努力を非常に評価するわけであります。三年続けて歳出をゼロに抑えたということについて大蔵大臣が大変御努力したことを高く評価するものでございますけれども、何といっても歳出の削減ということが財政改革の一番の要請であることは間違いありません。先ほども申し上げましたが、パイを大きくして増収を図るといってとも大事でありますし、税制の改革を通じて増収を図るということもあるでしょう。しかし、何といっても歳出の削減だということが基本ではないかと思うのです。  六十年度予算でもかなり歳出削減が行われております。既に制度に立ち入って、制度の改革を伴って削減が行われておるというところを高く評価するものでありますが、これに対して、つじつま合わせの予算であるとか地方へのツケ回したとかいう、甚だけしからぬ、実情に合わない、実態に合わないような批判が聞かれるわけであります。この点について、私はぜひ大蔵大臣から国民に対して、歳出削減について実際に御苦労なさった点、またツケ回しとかつじつま合わせでないという点をはっきりここで御説明いただきたいと思うわけであります。
  86. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かにいわゆるチープガバメントと申しましょうか、そうした形の中に私ども財政改革というものを一方にらみながら、そして国民の理解と協力を求めていきますためには、まずは歳出削減に対してぎりぎりの努力を行ったということを国民に評価していただかなければとても先に進むものではありません。  したがって、振り返ってみますと、五十五年度予算のときに財政再建元年とかいう言葉が使われておりましたが、当時はまたいわゆる予算の概算要求基準というものは昨年度に比して一〇%増しを限度とするということでありました。そして、五十六年、これが七・五%になりまして、それから八、九、六十といわゆるゼロ、マイナス、経常部門、投資部門それぞれ一〇%、五%のマイナスということで今日に至ったわけであります。その概算要求基準というものがあったからこそ、私は、いわゆる各省におかれて内なる改革、すなわち制度、施策の根本にさかのぼっての改革がなされてきたというふうに思うわけであります。  したがって、六十年度予算を編成し終わった段階で、もうこれ以上搾っても一滴も出ないというような感じを率直に私も瞬間的に持ったわけでありますが、しかし私自身がそのような気持ちを持ったときに既にいわゆる歳出削減への気力はまるっきりそがれてしまう。今一度我と我が身に言い聞かせながら、さらに制度、施策の根本にさかのぼってこれからも進めていかなければならぬという感を深くいたしたわけであります。  そこで、今度問題になっております一つは補助率の問題であります。この問題は、私は結論から申しまして、公財政の車の両輪であります地方と国との負担区分の問題であって、それが最終的のサービスを受ける人にとっての施策としての低下をもたらしたものではなく、負担区分というものを、役割分担と負担区分というものを考えて出てきたものがよくツケ回しと言われ、あるいはつじつま合わせと言われますが、もっともつじつまが合わぬことには予算というのはできないわけでございますけれども、私は、役割分担と負担区分の問題というふうに御理解をしていただいて、公経済の車の両輪たるものがこれからも将来に向かって進んでいかなければならぬのではなかろうかという意味において、国民皆様方とあるいはまた地方自治体当局の皆様方との理解を一層深めていかなければならぬ課題であるというふうに考えておるところであります。
  87. 原田昇左右

    原田(昇)委員 まさに大蔵大臣の言われるように、国と地方の問題は、共通の行政目的の実現に向けての車の両輪のようなものであるということではないかと思いますし、国の財政事情の展望を踏まえますと、こうした車の両輪のそれぞれの役割を見直して、費用負担のあり方についてこの際根本にさかのぼって考え直すべきではないかと思うわけであります。  例えば義務教育の問題でございますが、私は、義務教育は地方の責任でやるというのが本来のあり方であると思うわけでありますが、もちろん地方の財政がこれを許さない場合には国が適切な援助をしなければならないことは言うまでもありません。そういう意味で、今回義務教育の負担について若干地方で持つ制度ができたということ、一歩前進したのではないかと思います。もう少しこの点についても根本にさかのぼって費用負担のあり方等について検討すべき問題ではないかと思います。文部大臣の御見解を承りたいと思います。
  88. 松永光

    ○松永国務大臣 義務教育につきましては大きな原則が幾つかありまして、その一つは、次代を担う青少年を健全に育成するという国家的な事業でもありますし、また日本国の国民であるならば、どこに生まれても、普通教育に関する限りは同じ水準の教育が受けられるという仕組みをやっていかなければなりません。  そういうことで、義務教育費の中で基幹的な部分は少なくとも国がその二分の一を持って、そして全国的な水準を平準化していく、そういう責務があります。したがって、義務教育費の国庫負担の中で学校の先生あるいは栄養職員あるいは事務職員等の給与費等は国で二分の一を見ないと、全国的な平準化がなされないという面があるわけでして、そこはきちんと守っていかなければならぬと思いますが、その他の経費については一般財源化するのもよかろうということで今回の措置がなされたものと私は思っております。
  89. 原田昇左右

    原田(昇)委員 地方の財政を見る場合に、私は、最近新聞等でも非常に強く報道され、臨調や行革審でも取り上げられております地方公務員の国を上回る給与水準や高額の退職金の問題について、これを適正化することについてどうしても触れなければならないと思うわけであります。  そこで、私は、今地方の自治体で国の給与を上回る、平均が大体六%ということを聞いておりますが、大都市の周辺では二〇%ぐらい上回っておるわけですね。そういうことを見ますと、私はむしろ本当に困っておるところに交付税なんかは回して、たくさん給与を払っても余裕のある自治体に同じ交付税を同じ基準で回すというのは大変どうかと思うわけです。困っている自治体にどんどん回したらいいんじゃないか。そういうように考えてみますと、自治体の給与費というのが大体今十五兆円くらいに上るわけですね。仮に六%国より上回っておるとすれば九千億程度、仮に国並みになればそのくらいの額が節減可能だということになるわけですもちろん直ちにこれが浮いてくるというわけではございませんけれども、この給与の問題は非常に大きな行革の対象の問題であるということを改めて認識をしなければならないと思うわけであります。  そこで、臨調や行革審が指摘している例えば通し号俸、これは長くいれば職務に関係なしに給料が多くなるということでありまして、例えば調理のおばさんあるいは掃除をやっているおばさんの給料が部長クラスになるということはざらにあるというのがこの大都市周辺の自治体の実情であるというように報道されておるわけであります。それから、いわゆるわたり制度というのもある。そしてまた、昇給期間を一年以内に昇給させるというような制度になっておるということになります。また、制度趣旨に反する不合理な特殊勤務手当という制度がある。こういうものを改めていかなければ、給与の水準を国並みにすると言ってもお念仏にすぎないのではないかと思います。  また同時に、国の水準をはるかに上回る退職金の支給でございますが、国の支給月数というのは六十三カ月が最高支給月数ですが、百カ月を上回る自治体がかなりあるわけです。したがって、長年勤続したおばさんが掃除婦であっても退職金は三千万円以上もらえるというようなことになっておるわけでありまして、一般職員で四千万円を超えるような退職金は到底考えられないわけでございますが、現実にそういうものが支払われておるという実態であります。  これらの実態を果たして正確に把握しておられるかどうか、そしてそれに対して是正の方策をとられておるかどうか、ぜひとも自治大臣に伺いたいわけでございますが、自治省はこの前閣議で方針を決められたように伺っておりますが、私は通達だけではどうにもうまく機能しないのじゃないかと思うのですね。こういうことは、指摘されてもう既にかなり長い。もっと徹底した具体的な方策をとらなければこれは改まらないのじゃないかと思います。自治大臣から御所見を伺いたいと思います。
  90. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 原田先生の御質問の趣旨は、五十八年の四月現在のラスパイレス指数というのが出ておりまして、一〇五・九というところまで一応来ているのでございます。ただ、一二〇以上、つまり二割以上国家公務員より高いのが二十三市一町、大阪付近と若干関東地域というような状況にあるわけであります。  地方公務員法の二十四条で大体標準的なものを示しておるのでございますが、非常に高い、常識的にも非常に高い、こういうようなところに対しましては一般的指導によりましてぜひこれを是正するように努めておりますし、また、これを強化してまいらなければならぬのでありますが、また、個別特別指導というようなものも考えまして、十分そういう対象の市町村と話し合いをするというような気持ちでおるわけでございます。今後、そういうような点につきましては、この指導方法等につきましては、御案内のように地方債の問題だとかあるいは特別交付税というような問題について、余裕あるところについてはどうしてもそういう点をもって考えていかなければならぬではないか、また、私もそうすることが必要だろうと考えておりますので、今の先生の御意見は、地方も非常に厳しい財政状況にあるということを考えまして、一部の市町村にそういうような状況がありますことはまことに遺憾でありますから、これはこれから個別指導を強化いたしまして、ぜひ是正をしていきたいと考えております。  退職金についても同様でございます。
  91. 原田昇左右

    原田(昇)委員 自治大臣から特別交付税を通じて措置をしたいという大変積極的な、前向きな御答弁をいただきまして、ぜひそのとおり厳しく指導をしていただきたいと思います。  ところで、退職金のことでございますが、この間のある新聞によりますと、これは八王子市の例ですが、国の基準をはるかに上回る定年制に伴う退職手当の条例改正案を市長が出してきた、そこで議会で、これは行革に逆行するということで否決されてしまったという例があります。こういうように自治体の議会のチェックということも非常に大事だと思うのです。これは、自民党の党の組織を挙げてこういう点について大いに運動をしていかなければならぬと思うわけでありますけれども、今まで少なくとも市長が職員組合と密約をしてやったのをどんどん認めてくるという形で行われておるのに対して、この八王子市の例というのは非常に勇気のある、初めてのケースではないかと私は思うのです。ぜひともこういった点を御認識いただき、御指導をいただきたいと思います。  同時に、民間との比較の問題についても御留意いただきたいと思います。  人事委員会の公民較差ということについての民間の調査、どうも各都道府県あるいは地域によって非常にまちまちであります。これは竹下大臣の御出身のところの例でございますけれども、島根県の職員の例をとりますと、職員の平均給与は月額二十四万四千六百円。これに対して、県内民間企業の平均給与は諸手当込みで十九万二千二百円にすぎないわけであります。それでも同県の人事委員会は、従業員百人以上の企業百社を対象に実施した調査で県職員の方が九千三百円安いとして、五十九年のベアを六・四%を勧告しておるという例が出ております。これなんかも、人事委員会調査の仕方、つまり民間との比較の仕方に問題があるのではないか。これについての自治省の指導をぜひ強化していただきたい。そして同時に、自治体の給与についての公表の仕方についても、あるいは退職金の公表の仕方についても一つの基準をつくっていただくことが大事ではないかと思います。この点について、御答弁は要りませんが、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  さてもう一つ、行政の守備範囲を見直して民間にやらせた方がコストが安いし仕事の能率も上がる分野が多いということで、行革審の指摘しておる事項があります。例えば学校給食、公立病院、あるいはごみとかし尿の収集、運搬等清掃業務、こういったものについては民間の活力を利用する意味からも従来の考え方を抜本的に変えて、徹底した民間委託の方向を目指すべきではないかと思うわけであります。  例えば学校給食は、全国で総計いたしますと一兆円に上る経費が支払われることになりますが、これを人件費だけでも民間委託にすれば、ここから千五百億ぐらいの捻出は十分できるということであります。もちろんすぐ民間委託はできませんから、十年ぐらいかかってそういうことをやっていく必要があるのじゃないか。同時に、公立病院につきましても、公立病院全体の費用、経費というのは一兆六千七百六十六億というのに上っております。これなんかも、給食とかあるいは清掃とか、そういう業務については民間委託が可能であります。例えば、これは静岡県の県立病院の例でございますが、非常に能率を上げておるのは洗濯、給食、警備、設備保守、電話交換あるいはレセプト関係の業務、こういったのを全部民間委託にいたしました。そうしたら年間二億一千万円節減ができるということになったわけでありますが、これなんかについてもかなりの節減ができるのではないか。  それからごみ処理、し尿の収集、運搬等には全国で九千二百億かかっております。民間委託にすれば半分でできる、四千五百億ぐらいの節減が可能ではないかと思うわけであります。こういうように徹底した民間委託の方向を目指して努力をしていけば、まだまだ相当節減の余地が出てくるのではないか。  また、保育所につきましても、全体で三千億ということも言われております。これがどの程度節約できるかでございますが、いずれにしてもかなり大きな財源を生むことができるのではないかと思うわけでありますので、ぜひともこういう点について具体的にひとつ御指導を願いたいと思います。  次に、時間もありませんので、もう一つ、私、歳出の面で制度を見直すべきだというところの一つの例を申し上げたいと思いますが、公害健康被害補償制度というのがあります。これは、公害病にかかった人に対して一〇〇%国が面倒を見てあげる、こういう制度でありまして、今合計九百四十五億という予算が計上されておるわけであります。ところが、私は大変不思議だと思うのは、まず第一に、最近みんなの努力で大気が非常にきれいになりました。そして、五年以上も前から大気の環境基準を上回るいわゆるきれいな空気になっておる地域がほとんど大部分だということになっておるにもかかわらず、公害患者と認定される公害病の患者がどんどんふえているのです。きれいな空気になったら患者はなくなるのが普通なのに、どうしてふえるのですか。着実にふえ続けてきておる。  例えば、五十二年末六万四千人いたのが六年後の五十八年度末には八万九千人、四割もふえておる。おかしいじゃないですか。この間に硫黄酸化物以外の汚染物質というのは、NOxを起こすであろう窒素酸化物とか浮遊粉じん、これについてはほとんど増減ありません。お金を出す基準というのは、全部硫黄酸化物で公害補償の制度は成り立っておるわけですから、これは早速この点を実情を明らかにしていただいて、制度の改定をしなければならぬのじゃないかと思います。  それからさらにおかしいのは、地域によって非常な格差がある。これは公害病になるのは汚染地域なら同じ条件でなるのだろうと思うのですが、大阪の人は公害病になりやすくて東京の人はなりにくい体質を持っているのかどうかわかりませんけれども、大阪のなる率、大阪西淀川区の例ですが、住民の三・四%が患者数。それで東京の最高の足立区は〇・八%。大阪が四倍の高さになっておる。これは一体どういうことですか。  それから支払い費の問題。これは親方日の丸ですから、幾らでもツケ増しができるということで、医療費のみで最も大きい支払いは、月患者一人について実に六百万円。これもおかしいじゃないですかね。こんなにかかるのでしょうか。これは結局、認定のやり方とか医療費の支払いに問題があるといっても仕方がないんじゃないかと思うのです。  制度そのものについても、指定地域は一たん指定されたら、いかに空気がきれいになっても指定の解除をしてない。確かに、悪くなったとき指定するのはわかりますよ。しかし、きれいになったら指定を解除しなければならぬはずなのが、何にもしてない。こういったことは、一体どういうことになっているのですかね。  私はきょうは時間がありませんから、ぜひひとつこの点を御検討いただいて、抜本的な改正をやっていただきたい。自民党としてもぜひお手伝いをさせていただきたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。
  92. 石本茂

    ○石本国務大臣 ただいま先生御指摘くださいましたように、大気の態様が変わりました。それで、こうしたことを調査をしてまいっておりますので、五十八年の十一月にこの問題を、審議会ですね、中央公害対策審議会に報告いたしまして、そしてただいま専門委員会を設置いたしまして、我が国の大気汚染と健康被害との関係評価などについて科学的な立場に立って一生懸命検討している最中でございます。  先生のお説ごもっともでございますので、そうしたことを踏まえて、今後一日も早く結果を出したいということで頑張っておりますので、よろしくお願いいたします。
  93. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大臣の非常に前向きな御答弁をいただきまして、大いにひとつ頑張っていただきたいと思います。  私は、公害でぜんそく等に苦しまれる人を救済することについては、まことにお気の毒だと思いますし、ぜひやらなければならぬことだと思いますけれども制度の運用状況を見まして、どうもちょっと腑に落ちない点が余りにも多いものですから、どうしてもこれは一回見直す必要があると思って御指摘した次第でございます。  総理、この点についてぜひ内閣としても御研究いただきたいと思いますが、ぜひひとつ。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはりけじめをつけて、そして、大事な、必要なものはどんどんやるが、もうそういう意味がなくなったものはどんどん解除をしていく、そういう弾力的措置が必要であると思います。
  95. 原田昇左右

    原田(昇)委員 最後に税制の問題についてお伺いしたかったのですが、時間もございませんので一言だけお伺いさせていただきます。  税制全般についてもう見直す時期になっておるという総理の御見解、私は全く同感でございます。しかも、その原則として公平、公正、簡素、選択という原則に立ってやろうという点もまことにごもっともだと思うわけであります。全面的に賛成いたします。  そこで、最近アメリカの財務省から、まさに簡素といいますか、所得税について十四段階を三段階にするという極めて明快な案が提案されておると聞いておりますし、また、法人税についても思い切った特例措置をやめて一本にする税制の提案があると聞いておるわけでありますが、この点についてどのように評価しておられるのか。また、これからの日本税制改正についても、私は、日本の場合、必ずしもここまで一挙にいかないかもしれませんけれども、こういう精神を我々政治家として十分取り入れて、思い切った、しかもあの四原則に立ったやり方でこれからの税制改正について期待していかなければならぬのじゃないかと思います。  総理の御見解をぜひ伺わしていただきたいと思います。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカのリーガンさんが提案して、大統領が言及しているあの考え方、趣旨については私も同感の点が非常にございます。そういう意味において、あの趣旨を踏まえて我々の方も大いに参考にいたしたいと思っております。
  97. 原田昇左右

    原田(昇)委員 どうもありがとうございました。
  98. 天野光晴

    天野委員長 これにて原田君の質疑は終了いたしました。  午後一時十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時十五分開議
  99. 天野光晴

    天野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  100. 堀昌雄

    堀委員 午前に引き続いて午後は財政の問題を先にやらせていただいて、ちょっと中途半端になりましたグリーンカード関係の問題を最後に取り上げるようにいたしたいと思います。  まず最初に、現在、日本財政全体を考えます場合には、単に大蔵省が所管をしておりますところの国の会計だけの問題では実は全体として正確な把握はできません。そこで、約半分を占める地方財政について、私どもは十分その全体を見た上で論議を進めることが相当である、こう考えておりまして、実は昨年、「地方財政参考試算」というものが地方行政委員会に提出されておりましたので、それをいただいて、ことしもやはり政府大蔵省の方は財政収支試算を出しておりますから、それと並べてひとつ日本財政のあり方について勉強したい、こう思って自治省の方にその資料の提出を求めたのでありますが、今日に至るまで実は提出がされておりません。自治大臣、なぜこれが提出をされないのか、お答えをいただきたいと思います。
  101. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 堀先生お話の地方財政の参考試算の問題でございますが、昭和五十九年度の「地方財政参考試算」は、地方財政の中長期的な視点に立って地方交付税の制度改正を行いましたので、その法案審議の際に、衆議院の地方行政委員会におきまして地方財政の中期的な展望を示す資料の提出を求められ、作成されたものであります。  一方、この参考試算の作成の方法につきましては、第一に、地方財政のあるべき姿を示さずに機械的に算定していること、第二に、結果的に地方財政に余裕があるような誤解を与えることなどに御批判がございました。昭和六十一年度以降の地方財政の収支につきましては、昭和五十九年度にお示しした参考試算の方法により「地方財政参考試算」を作成することは問題が多々ありますので、慎重に検討させていただきたいと考えております。
  102. 堀昌雄

    堀委員 昨年既に試算が出されて、その試算についての御議論がいろいろあることは、それは私は当然あってしかるべきものだと思うのであります。しかし、そうすると、その試算というのは、そういう御批判があったら御批判にたえられないような試算を自治省は出したのですか、そういう権威のない試算を出したのですか、お答えください。――大臣答弁、大臣答弁政治的な問題だもの、官僚の答弁なんか求めない。
  103. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 数字の問題が出ましたので、財政局長から申し上げまして、後から私が答弁いたします。
  104. 堀昌雄

    堀委員 数字の問題は言っていない。今私は、地方行政委員会で御批判があったと言われたから、その御批判にたえられないような権威のないものを出したのかどうかということをあなたに聞いているのであって、計数を聞いているのではないのだから、自治大臣が政治的責任において答えてもらいたい。
  105. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 ただいま申し上げましたように、地方財政のあるべき姿を示さずに機械的に算定をしていることということが一番の批判の中心でございました。そういうわけで、今度は国庫補助の一律カットというものがなければ地方財政は均衡するというようなことを私ども考えておりましたので、特にそういう資料は本年度はつくらなかったことでございます。
  106. 堀昌雄

    堀委員 この試算というのは、大蔵省でも自治省でもそうだと思いますけれども、これは一定の前提において機械的に計算したものであって、あるべき姿を出そうなんていうのじゃ試算でも何でもない。だから、本来のこの収支試算というものはそういう約束事の上に立って試算がされておるのであって、それをあなたは、その約束事の上に立って機械的に出した試算がどうも地方行政のあるべき姿と乖離しているからそれで出さないなんと言うのだったら、初めから出したのがおかしいんじゃないですか。  だから、去年出して、少なくともそれは大蔵省もやっているようなローリングシステムで前提を置いて機械的に計算して出したもので、それでいいのであって、そんなにあなた方が考えるようなあるべき姿を盛り込んだようなものが試算になるはずがない、初めから。どうですか、それは試算と言えるのですか、そんなあるべき姿をつくったものが。初めからできるはずがない、そんなものは。
  107. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 大分おしかりをいただきましたけれども、私どもも誠心誠意やらしていただいておりますが、こういうような試算につきましては慎重に検討してやらなければならぬと思いますので、私は、今申し上げましたように、しばらく慎重に検討さしていただきたいということを申し上げたわけでございます。
  108. 堀昌雄

    堀委員 総理にちょっとお伺いをいたします。  自治大臣が今ずっとここまでお話しになったことは、私も何も特別に変わった試算を求めておるのではなくて、昨年恐らく大蔵省がやっているような前提を置いて試算をした。その試算を出してみたところが、委員会において、試算の傾向が委員の皆さんが考えておったのとは違った形で出てきた。しかし、これはあくまで試算であって、そうなるかどうかはなってみなければわからないものなんでありますが、そういう試算を機械的計算でやったら御批判があったから、ことしは出さないでおく。しかし、大蔵省が国に関する部分で試算を出しておるということであるならば、国の半分のウエートを占めておる地方行政も同じようなルールで同じように機械的に計算した試算が出て、そしてそれを全体値として突き合わせるときに初めて地方財政と国の財政とがどういう格好で調和し、調整できるかということがよくわかる。これが私は当予算委員会としては当然行われなければならない審議の課題だと考えますが、総理の御見解を承りたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 堀さんのおっしゃることは理解できますけれども、一方、行政の立場から見まして、昨年お出ししたいわゆる試算なるものがいろいろな御批判を受けた。特に、地方公共団体等からも批判を受けて、政府としても反省して、慎重にやり直すとかあるいは検討し直すとかということをやらなければならぬ、そういう状況になりました。そこで、自治大臣も非常に今回は慎重な態度をとっているのだろうと思います。  もちろん、大蔵省において考え方とかあるいは仮定計算というものを出しておりますので、自治省からそういうものが出ることは望ましいと思いますが、しかし、自治省の場合は、昨年そういう大きな批判を受けたという特別の事態でもございますので、その上に約三千に及ぶ地方の市町村やあるいは都道府県、各公共団体が非常に重大な関心を持って見ておることでもありますので、非常に慎重になってきているとかそういうことは御理解願いたいと思うのであります。
  110. 堀昌雄

    堀委員 まあ慎重にということで資料が出ませんから、委員長、昨年つくられた資料をひとつ配付をして、皆さんに見ていただきながら論議を進めたいと思います。お願いいたします。  それでは、自治大臣にお尋ねをいたします。  今お配りしたのは、五十九年度、昨年のものであります。その昨年のもので見ると、要するに六十年度の公債費は九・六%の伸びで五兆六千六百億、そうして一般歳出が伸び率五・二で四十五兆三千七百億、計Aとして五・七%の伸びで五十一兆三百億、こうなっておりますね。これは、予算をお出しになっていますから、それでは六十年の予算ではここの部分はどうなったのか、お答えをいただきたいと思います。答弁は、自治大臣が無理ならば事務方で結構です。
  111. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 六十年度の計画におきます公債費でございますが、(堀委員一般歳出」と呼ぶ)一般歳出は四十四兆八千五百九十四億円でございます。
  112. 堀昌雄

    堀委員 それから今の公債費。
  113. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 公債費は五兆六千六百七十七億円でございます。
  114. 堀昌雄

    堀委員 合計。
  115. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 五十兆五千二百七十一億円でございます。
  116. 堀昌雄

    堀委員 そうしたら、下へ行って、一般財源のところをずっとひとつ、やはり六十年度のを教えてください。
  117. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 地方税が二十二兆五千百八十五億円、譲与税が四千六百二十億円、交付税が九兆四千四百九十九億円でございます。
  118. 堀昌雄

    堀委員 ずっと下まで言ってください。
  119. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 地方債は三兆九千五百億円、それから、その他が十四兆一千四百六十七億円、計は歳出と同じ五十兆五千二百七十一億円でございます。
  120. 堀昌雄

    堀委員 今ので聞いてみますと、実は歳出の方は大分減っていますね。これで見ると、まず、一般歳出四十五兆三千七百億円を予想していたのが四十四兆八千五百九十四億円ということで一般歳出が減って、結果的にはこの歳出の姿というのは、私は、大変自治体の努力によって改善されることを期待した実は計数になっておる、こんなふうに思うわけであります。  さらに、今の歳入の関係をずっと見ていきますと、当初には要調整額というのが一兆五千百億になっていますね。これは結果的には幾らになる予想ですか、六十年は。
  121. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 今回の補助率の引き下げがない前提では、ちょうどゼロでございます。
  122. 堀昌雄

    堀委員 引き下げはやるんでしょう。これから引き下げをやるというような法案をかけている以上、引き下げをやったらどうなるかということをここで説明しなければ困るじゃないですか。
  123. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 五千八百億円でございます。
  124. 堀昌雄

    堀委員 その五千八百億円というのはどういう形で調整が処理されるのかも答えてください。
  125. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 一千億円につきましては地方交付税の特例加算によりまして、四千八百億円につきましては地方債の増発によりまして措置をいたします。
  126. 堀昌雄

    堀委員 まず六十年度、ことしのベースになりますものでは、当初一兆五千百億円の実は要調整額を見込んでいたのでありますけれども、地方自治体の努力を計算し、さらには今度の補助率の問題等も含めて、結果的には要調整額は五千八百億円、一兆円弱要調整額が実は処理をされておる、こういう事実があるわけですね。そうしてその中身は、交付税が千億と地方債四千八百億、こういうことになっておる。こういうふうに自治体が努力をして改善されていくというような資料をどうしてこの委員会に配付ができないのですか。私はどうも納得ができないんですよ。地方財政の客観的な事実を明らかにすることが私は国の財政の極めて重要な課題だ、こう考えるのでありますが、自治大臣どうですか。今の、ずっと計数を調べてみたら約一兆円弱、要調整費は努力によって処理がされておる、こういう実態を公表しては困るのですか、自治省というところは。
  127. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 私が申し上げましたのは、実は地方行政委員会の方で、私もいろいろ関係しておりますけれども、こういうようなずさんな資料では困るというようなお話でございましたので、それで去年つくりましたのは、御承知のように地方交付税の貸し借りをやめた、そういう転機でありましたのでこれをつくらせたということでございまして、今度は交付税関係の貸し代りはなくなりまして、一方、一割負担ということがありまして、ですから、急にこの資料をつくることは適切ではない、もっと検討してやるべきだと私は考えておって、別に他意はないのでございます。
  128. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、他意がないのなら、今すぐというわけにはいかないが、予算委員会終了までには慎重な検討が行われるでしょうから、予算委員会終了までに慎重な検討の結果御提出いただけますか。予算委員会というのは衆議院だけじゃないのです。参議院もまたこれからあるのですから、参議院における審議に資するためにも、この衆議院の予算委員会中にひとつ慎重に御検討をいただいて、他意がなければ当予算委員会に御提出をいただきたい、こう思いますが、自治大臣いかがですか。――それは自治大臣の答弁ですな。役人の答弁ではない。
  129. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 期限の問題でございますが、ひとつ慎重に、前向きに検討させていただきますということをはっきり申し上げたいと思います。
  130. 堀昌雄

    堀委員 自治大臣、あなたをいじめるようであなたには大変お気の溝ですけれども、問題は実は極めて重要なんですよ。それはなぜかというと、私どもがここで予算審議をするときに、国は大体こうなるのだろうという一つの試算が出ている、じゃ自治体はどうなるのだろうかということを知りたいというのは、私は予算審議をする者の立場として当然だと思っているんですよ。そうして実はこの今出された資料、六十年度の計数を今入れましたね、六十一年、六十二年までは一応機械的計算で出ているわけですよ。この機械的計算によると六十一年度の要調整額は七千億、よろしゅうございますね、自治大臣、六十二年度は実は要調整額はなくなるのです。ところが、このベースになってきた六十年度が一兆円弱減るわけですから、そうすると当然六十一年、六十二年は要調整額はなくなるのではないか。これだけでもそういうふうに理解できる資料なんですね。計算だから事実どうなるかはやってみなければわかりませんよ。しかし、そういう一つの前提を置いた機械的計算ではこういうふうになるのだということも、この五十九年に発表したものですら予測ができる。六十年の現実の今の計数を入れてみれば、さらにその傾向が顕著になるということは地方財政としてはいいことじゃないんですか。赤字がどんどん出て要調整額がふえるということは地方財政にとっては非常に心配なことだけれども、要調整額がなくなるということは地方財政にとっては大変望ましいことだと私は認識をしているのですけれども、自治大臣の御認識はどういうことでしょうか。
  131. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 堀先生お話は私もよくわかります。だから慎重に検討さしていただきまして、実は今まで出したものが大分おしかりを受けておるような状況でございますので、ひとつ慎重に検討さしてもらうということで、逃げることは私もいたしませんので、ひとつ…。
  132. 堀昌雄

    堀委員 自治大臣に余り御迷惑をかけてもいけませんから、ここはここまでにいたしておきますけれども、まあひとつ真剣な御検討をいただきたい。与党の皆さんも今私が言っていること、筋が違っているとは思われないでしょうね。――結構です。これは国会の意思はそういうことだという御認識をいただければ結構です。  そこで、ちょっと大蔵省に聞きますが、事務当局からでも結構なんですけれども、最近における対米貿易の黒字の問題と、それからアメリカへの日本からの資金の流入の問題、これについてちょっと答えてもらいたいのです。事務当局で結構です。
  133. 行天豊雄

    行天政府委員 お答えいたします。  最近の我が国の経常収支、大幅な黒字を続けておりますが、それと表裏いたしまして、これはやはり長期資本が中心でございますが、これを上回るような大幅な流出傾向が続いておるわけでございます。
  134. 堀昌雄

    堀委員 金額をちょっと言ってください。
  135. 行天豊雄

    行天政府委員 何年度ぐらいまでお入り用でございましょうか。
  136. 堀昌雄

    堀委員 今、年度の途中ですから暦年でいいです。
  137. 行天豊雄

    行天政府委員 ちょっとお待ちください。――どうも失礼いたしました。  五十九暦年について申し上げます。経常収支の黒字が暦年十二カ月間で三百五十億ドルの黒字でございます。一方、長期資本の純流出が四百九十八億ドルでございました。
  138. 堀昌雄

    堀委員 総理総理はロン・ヤスとおっしゃる仲で、大変アメリカの首脳と仲よくやっていただいておるわけですが、私この数字を見ますと、今日本という国はアメリカに物を売って三百五十億ドルアメリカから金を持って帰っている。そうして今度は四百九十八億ドル、アメリカに長期資金を貸し付けてこれに見合う金利をまた持って帰ってくる。要するに物を売って日本に持って帰る、金を貸して金利を持って帰る。ともかくこれでは、我々がもし逆の立場であったら、うんと売り込まれて日本の市場があっぷあっぷいっていて物がどんどんどこかの国から入ってくる、おまけにそういうことでこっちも金が足らない、そうしたら金も貸してやろう、そのかわり金利はがっぽり持って帰るぞ、こうやってダブルパンチを食うような状態はやはり何とか改善しなければ、これは何も相手がアメリカであるとかないとかということでなくて、相互の立場に立って考えれば、やはり私は緊急に考えなければいかぬ重要な問題だと思うのですが、総理はどうお考えですか。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 確かに必ずしも好ましいような情勢ではないと思います。経常収支においてもあるいは資本収支におきましても、ある程度のバランスと節度というものは長期的な安定繁栄のためには望ましい、こう私は思います。もっとも今おっしゃった四百九十八億ドルというのは、世界じゅうに対する日本の資本流出でありまして、アメリカはその何割かである、私はそういうように承知しております。アメリカ一国にどれくらい出たかというのはなかなか調べにくい要素もあるそうです。だから七割であるか八割であるか、必ずしも四百九十八億ドル全部ではないというふうに承っております。  しかし、また一面におきましては、経済というのは一つの構造的な、有機的な組み合わせで運営されて生きているものでありますから、アメリカの繁栄というもの自体が、日本からの資金が行って、それで事業を大いに起こして、そして雇用をさらに大いに伸ばして、そして経済的成長力を高めておる、要するに燃料が日本からも相当行っている、そういう効果もまた実はあるわけなので、一概に全部が悪というよりも、アメリカの繁栄や、あるいは世界に恩沢をもたらしているこれだけの景気繁栄というものの一つの貢献をしておるという面も、また日本の資本というものはあるわけであります。それが金利をいただいているということは、これは経済原則であって当然のことでありますが、機能的な判定ということを見ますと、循環相互依存関係に経済は流れているものですから、あながち金利をもらっていること自体が悪いということだけではない。しかし、現在の状態におけるこの構造的組み合わせと機能的な相互依存関係というものは、このまま持続していいものかどうかということは、また検討すべき問題であると思います。
  140. 堀昌雄

    堀委員 今の御答弁一つの見解と思いますけれども、実は今度四つの部門についてアメリカ側は日本と協議をしたい、新聞の伝えるところによると、百億ドルくらいひとつ何とかならないか。私は長年の経済の経験から見て、百億ドルはおろか、あの四つのパートで二十億ドルを稼ぎ出すのもなかなか難しいんじゃないか、こういう感じがするくらいなんですが、やはり私は基本はこういうところにあるんじゃないかと思うのですね。  日本は社会資本が完全に充実しておる国であるならば、これはまた別の話なんですが、日本の社会資本というのは、物によっては多少前に進んでいるものもありますが、著しく先進諸国に比べて劣っておる。ちょっと資料を皆さんにお配りしてください。  今ここにお配りをしたのは、上の方が「各国の下水道普及率」大体一九八三年がベースになっていますけれども、これで見ると、ともかくアメリカは公共下水の普及率、国が広いからでありますが七二%、あとスイス八五、スウェーデン八六、オランダ九〇、イギリス九七、西ドイツ九一、フランス六五、オーストラリア五九と、こういうことで日本の三三%というのは断トツに低いわけですね。  その下にちょっとまたおもしろいあれが出ているのですが、電話の普及率とか医療ベッドとかというようなものは、欧米四カ国、イギリス、西ドイツ、フランス、アメリカの算術平均で見ると、それなりのものでありますけれども、またGNPもかなりでありますけれども、一番ここで劣っておるのは、実は下水道の普及率だ、こういうことになるわけですね。  私は、この前の予算委員会で水の問題を提起をいたしているのでありますけれども、水をきれいにしようということになりますと、どうしてもこの下水道を早急に整備をしなければ、これはなかなか水はきれいにならないというのが現状でございます。  建設大臣にお伺いをいたしますけれども、建設省では昭和五十九年の三月――建設省じゃないな、これは国土庁か。じゃ、ちょっとこっちで言います。国土庁が調べた「将来の地域像に関する全国市区町村の意向調査」というのがあるのでありますが、その中で、「今後、長期的振興を図るうえで重要と考えられる社会資本は何ですか。それぞれ五つまで選んでください。」こういうふうな要請で調査をしたところ、そのトップが下水道で五一・五というのが一番大きな比重で出ておるということであります。そうして二番目に三三・七で文化施設、こういうのが全国市町村の調査結果だと国土庁は五十九年三月に発表しておるわけですね。  実は、私も阪神間におりまして、特に私の町はゼロメートル地帯といいまして、戦争中に鉄鋼業が大変な地下水をくみ上げてやったものですから地盤が沈下をいたしておりまして、日本の自治体の中で唯一海水面下の自治体ということで、実は川の水は全部ポンプで外へ出さなければ自然に海には流れないというような地域でありますから、一生懸命令努力をして公共下水の整備に努めておるわけでありますけれども、いずれもなかなか公共下水道が十分にいっていない、こういうことであります。  建設大臣にお伺いをいたしますけれども、第五次下水道五カ年計画というのは今年度をもって終わる予定でありますが、現状の予算ではどのくらいの達成率になっておりますでしょうか。
  141. 木部佳昭

    ○木部国務大臣 昭和五十七年から三カ年ぐらいの間、事業費が先生御指摘のように減少いたしておるわけであります。そういうことで、この五カ年計画の達成率は七〇に行かないんじゃないか、六八から九ぐらいの線だろう、そういうふうに思っております。
  142. 堀昌雄

    堀委員 お聞きになったように、七割に達しないという現状のようであります。確かに今、予算を圧縮をしていますから、これはなかなか難しい問題だと思うのですが、私は今度の高率補助の足を切った問題については、いろいろこれを一括法案として提案をしようというようなことは、これは大変大きな問題でありますから、こういうやり方については反対でありますけれども、例えば公共事業だけをとってみると、補助率を下げた分だけは、しかし事業費の方へ回っている。事業費の方に回っているとすれば、自治体がそれだけ負担をするものが、例えば交付税なりその他で面倒が見られておれば、結果的には公共事業の事業量は自治体にとってはふえることになるという点では、私はそれなりの補助率を引き下げだということは、自治体にとっては事業がそれだけ進捗したということになってプラス、日本全体でもそれだけ事業がふえたということは、やはり内需のためには役立つことではないだろうか、こう考えておるわけですね。  ですから、今、私が最初に計算を求めておるのは、そういう一つの問題に対して、方向としては私は最初総理に伺ったように、できるだけ内需を喚起をして、貿易面においても、さらには長期資金の面においても対応する方がいい、その方向に沿ってやっていることだから、私はそれなりに評価をしていいんじゃないかというのが私の認識で、それには自治体の状態がどうなっているかというようなことを十分我々も把握しておかなければ、一方的に自治体にしわを寄せるようなことは、これは我々も自治体に住んでおる者として認めるわけにはいかないのでありますけれども、そういう点で資料も出してもらいたいと言うけれども、あなた方は一向に資料も出そうとしない。一体自治大臣、これについての手当てはどうなっていますか。事務当局でもいいけれども、高率補助を切り下げて、その負担がふえているわけですね。その負担を自治体が自分の中から持ち出すのではどうにもならぬけれども、何らかの自治省としての手当てがあるのならば、それは事業量が拡大できただけ自治体にとってはプラスではないか、こう思うのですが、どうですか。
  143. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 投資的経費と申しますか、そういう公共事業につきましては、補助率カットの分は建設地方債で対処しまして、それを交付税で補っていくという格好をとっております。
  144. 堀昌雄

    堀委員 だから自治体そのものが無理をして、その穴埋めをする必要はないということですね、そういうふうに了解をいたします。  ただしかし、それには限度があるのでありますから、大蔵大臣、ひとつ公共事業いずれも者やらなければならぬものでありますけれども、私は非常に重要なのは、一つはこの間問題提起をさせていただいた水の問題ということになると、例えば諏訪湖については、実は流域下水道が完備をするのにつれて水質が大変よくなっているのであります。もう時間がありませんからちょっと私の方で申し上げますけれども、「諏訪湖では、湖をとりまく岡谷市、諏訪市、茅野市及び下諏訪町の三市一町を一体とした諏訪湖流域下水道による整備が行われています。昭和五十四年十月に供用を開始して以来、下水道整備の進捗とともに水質の改善がみられ、最近はアオコの発生も少なくなっており、流域下水道の効果を住民が大いに評価するようになっています。」こういうような報道が実はなされておるわけでありますね。  ですから、私は、この前も申し上げたように、日本の水をきれいにするというためには、どうしても早急に下水道を整備し、特に瀬戸内のように水が全部あそこへたまるような格好のところは、下水道を整備して処理場できれいな水を瀬戸内に流していけば、やがて瀬戸内の水もきれいになっていくということになるんじゃないかというふうに考えるわけでありまして、大蔵大臣、そういう意味では少なくとも今後の下水道五カ年計画を含めて下水道予算というものは、前にも大蔵委員会であなたに伺ったわけですけれども、我々にとって生きていく上にどうしても必要なものは何か。第一は空気だとお答えになりました。二番目は何ですかと尋ねたら、水だとお答えになりました。そのとおりなんです。我々生物は水がなければ、一週間ぐらいは生きていられますけれども、それで大体だめです。だから、きれいな水にするということは極めて重要な問題だと思うのですね。  環境庁長官からそのことについて一言お答えをいただきたいのです、きれいな水という問題で。
  145. 石本茂

    ○石本国務大臣 今先生申されましたとおりでございまして、先ほど建設大臣も申しておられましたが、周辺の下水道整備が非常に大切な条件だと思っております。もちろん排水規制問題もございます。
  146. 堀昌雄

    堀委員 そこで、厚生大臣にお伺いしたいのですけれども、上水道は、私は日本では大変整備をされておる、こう思うのであります。恐らく先進国並みに上水道の方は整備されておると思うのでありますけれども、上水道で水を持っていって、それが後どうなるのか。そこらの小川やなんかに垂れ流して行ってしまうというようなことは、私は近代的な処理ではない、こう思うのですが、上水道の普及率というのは日本の場合はどんな調子でしょうか。場合によっては政府委員でも結構ですが。
  147. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 上水道につきましては、五十八年度末におきまして水道普及率は九二・六%でございます。ヨーロッパがおおむね九五%であり、アメリカは約九〇%でございますので、ほぼ欧米先進諸国の普及率と同じ程度と考えております。
  148. 堀昌雄

    堀委員 今お聞きのようで、上水道は普及しているけれども、下水道の方は三三%でほったらかしということは、これは何としても国民の健康を守る立場からひとつ根本的に考え直してもらいたいと思いますが、大蔵大臣いかがでしょうか。予算上の処理でありますから。
  149. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに下水道事業の比率は、六十年度予算では一〇・九%へと著しく増加しておるわけであります。これも国民のニーズということに幾らかでもこたえたというつもりでございます。  確かにこれは堀さんに一度お答えしたことがありますが、自民党の政調会長の藤尾さんが、ダムというものは水がたまらなければ単なる穴である、下水道というものは水が流れなければ単なる溝である、こう言われた。そういうことで、今度建設省の方でいろいろお考えいただいて、今まで、どちらかといいますと処理場が一番もめます。したがって処理場重点にやってきた。そうしたら、処理場の比率は比較的いいところへいったが、今度はそれにつながる管渠の方が後回しになったというようなことで、何か早期供用を開始するという形で建設省の方も工夫なすっておるというふうに私も承っておりますが、私は、いま一つ、下水道にはいわば用地費率というものが低いという点もございますので、景気政策等から考えても結構なことだ、これからも重点施行しなければならない課題だという認識を持っております。
  150. 堀昌雄

    堀委員 ひとつその方向で、本年度は予算が決まっておりますけれども、今後の五カ年計画を含めて、特に公共事業の中では自治体住民の希望も一番トップにあるということでもありますので、ひとつ下水道予算を積極的に広げてもらいたいということを要望いたしておきます。(「賛成」と呼ぶ者あり)ありがとうございました。  そこで、次は財政問題でありますけれども、この間、時間がないので駆け足で通りました。  大蔵省にお伺いをいたしますけれども、私、ずっと各国の予算を調べてみますと、日本予算だけが実は財政均衡予算という形になっております。ドイツも形の上ではそうなっておりますが、私が調べた限りでは、ドイツの予算財政上の国債の発行については日本に比べてかなり弾力的になっておる。アメリカ、イギリス、フランスは、歳出予算はからんと決めなきゃいけませんが、歳入予算は見込みですから拘束がありません。国債を発行しようとどうしようと、それはファイナンスは自由というのが英米仏の予算制度であります。  ですから、私はそういう意味では、日本予算制度ももう少し弾力化することが必要ではないのか。この間質問で答弁をいただいたように、国債の発行の高いときは八・八、低いときは六・一ぐらいになるというような状態から見て、二・五%ぐらい、高いときと低いときの金利差がある。これを上手に、金利の高いときは短期債で泳いでいて、金利が安くなったときに長期債に切りかえるというような積極的な処理が行われれば、この年度末百三十三兆の国債を減少させることができる、こう考えるのであります。  そこで、大蔵省にお伺いをいたしますが、そういうことをするための方途として、現状でネックになっておるものがあるとすればこれは改めなきゃいかぬ、こう思うのですが、ひとつ大蔵省側で、事務当局でも大臣でも結構ですから、お答えをいただきたいと思います。
  151. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 御指摘のように、日本財政法は健全財政主義が極めて重要な原則になっております。そこで、今日のように国債を大量に発行し、また、その借りかえも大量になるという時代になってまいりますと、現在の財政法あるいは国債整理基金特別会計法の仕組みの中ではなかなかこういう事態に対処し切れないという面もございます。  そこで、今お話しのように、借換債につきまして年度内に短期の証券を発行ができるとかあるいは一部分前倒し的に発行ができるというような方途をぜひお願いしたいということで、国債整理基金特別会計法の改正も実はお願いをしているわけでございます。当面、そういった対処によりまして何とか国債の大量償還、発行という事態には対処していけるのではないか、こういうふうに考えております。
  152. 堀昌雄

    堀委員 実は、私、いろいろとこの問題勉強しておりますと、現在は国債発行の種類を予算総則に書かなきゃならぬということになっているようであります。ですから、何年債を幾ら、何年債を幾らということで全部書いてある。  そうしますと、これは国債をシンジケートで売るわけでありますけれども、この人たちはプロでありますから、大体この時期にこのくらいの国債が出てくるとわかれば、それは多少市場でも操作をして金利をつり上げることも必ずしも不可能ではない、こういうことなのでありまして、手の内を全部買う人たちの方にさらけ出しておいて物を売るというのは、私は競争原理論者でありますが、常に競争原理というのはイコールフッティングで、両方が対等で売ったり買ったりするのでなければ、これは足元を見られていれば、国民の貴重な税を使って処理をしなければならぬ国債費をいたずらにふやすというようなことになることは望ましくない。だからそういう問題を含め、私はこの前も申し上げたと思うのですが、五十六年二月、渡辺大蔵大臣のときに、国債特別会計という一つの会計を設置をして、ここで全部ファイナンス、国債の借りかえも発行も全部ここでやりましょう、一般会計がその国債特別会計に、来年度は例えば十兆の資金を繰り入れるべしということを一般会計が求めれば、その特別会計は十兆の金を、どういう方法で算段してもいいからそれだけの金を一般会計に、一般会計の求める時期に入れていくというような処理をすれば、これは非常に弾力的に対応できる、手のうちは見せないで、ともかく臨機応変に市場に対応して国民の利益は守られるのではないか、こういう実は問題提起をしておるわけであります。  ですから、今度その問題提起の中の半分が実はどうやら国債整理基金特別会計法の改正案ということで当国会に出るようでありますが、肝心の方の発行が一般会計に義務づけられておるというところに私は非常に大きな問題がある、こう思っておるのでありまして、大蔵大臣、私はやはり国債費をいかにして減らすかということ、国債残高は百三十三兆からまだまだ当分ふえるわけでありますから、そういう際に、少しでも国債費を減らす努力ができる可能性がそこにあるにもかかわらずその可能性に目をつぶって手をつけないというのは、私は国民が求めておる、少しでも負担を軽くしてほしいというこの気持ちに必ずしもなじまないのではないのか、こう感じますが、大蔵大臣、これについての考え方をお伺いしたいと思います。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 おっしゃいます国債管理特別会計構想、これは確かに今までも議論をしたところでございます。やはり問題は財政法第四条、すなわち非募債主義を原則として、建設公債を発行する際も償還計画の提出等の歯どめを設けておるというようなことでございますが、私はこれを堀先生からお聞かせいただいて私なりに考えてみますと、アメリカの場合、先ほどもおっしゃいましたように歳出は大統領府の予算管理局が持っておって、それでその財源は、財務省、おまえよきに計らえとは言いませんけれども、これに合わしてこい。その歳入歳出両方をきちんと持っておるということが日本財政節度というものに今日まではよかった制度とも言えるかもしれません。したがって、これにつきましての結論を出すということは容易でございません。が、今半分とおっしゃいましたが、今度、国債整理基金特別会計法の改正をお願いして、弾力的発行をいま少し広げていく。  ただ、基本的に私思いますのは、かつての財政法というのはいわばまさに健全財政主義で、昭和三十九年までは戦前の国債の償還の国債費が多少は残っておりましても、まあ言ってみれば国債残高を持たない財政であった。それで四十九年までは、いっても九兆七千しか持たない財政であった。今は国債百三十三兆、もっとふえてまいりますが、それを抱えた財政ということになって、財政体質そのものが変わってきたということは私も感じるわけでございますので、これは早急に結論を出すことは難しい問題であろうと思いますが、私どもは、絶えずあれだけの社会保障費を上回る利子負担に耐えていかなければならぬわけでございます。諸外国の人から言うと、いや、おまえのところは国民に対して利子を払っているからまだいいじゃないか、我々はいわば外債の利子を払っているんだ、こういう議論もありますけれども、そういう財政体質が膨大な残高を抱えた体質であるという前提の上に立った場合、おっしゃったような意見を参考にしながらいろいろこれは検討していかなければならぬ課題だ、早急に結論は出ないまでも、そういう事実認識はしておくべきだという考え方であります。
  154. 堀昌雄

    堀委員 ひとつそういう方向で御検討いただきたいし、私は、そういう問題も、この前御提案をした財政改革小委員会の中で各党の皆さんと一緒に勉強することも大変重要な手続上の問題ではないか、こう思っておるわけです。  その次に、実は財政投融資の問題でも、これもお答えをいただかないで来ましたが、この間から厚生年金や何かの目減り問題、その他自主運用の問題がありましたけれども厚生年金とか国民年金は資金運用部に預託をしておりますが、できるだけ預託利子が高いことを望むわけですね。これは当然であります。これは郵便貯金、簡保といえどもそうだと思うのであります。ところが、この資金を受け取って使う側は、国の各金融機関その他を含めて金利が低いほど望ましい、こういうことになって、住宅金融公庫においては利子補給すらもしておるというような段階なんですね。要するに、この制度は基本的に矛盾があるわけです。要するに高い金が欲しい者の資金を安い金利で使いたい者が使おう、こういうわけでありますから非常に一つの矛盾がある。その上へもってきて今や金利が自由化して、長期金利と短期金利の差が幾らもないというような状態で、私がこの間ここで申し上げたような逆ざやの事例が生まれてきておる。これは財政投融資というものを根本的に考え直さなければならぬところへ来ているのじゃないか。  確かに、日本が高度成長をやっているときには資金が十分に市中にありませんでした。要するに大変な資金需要であったものですから、その資金需要の主たるものは大企業が持っていく、そうすると中小企業が資金がない。これに対して財政投融資が果たした役割は私は大変大きいものがあったと思うのです。しかし、今やこれだけ金融が緩慢になっておるときには、これはやはり財政投融資のあり方というものも抜本的にひとつ見直さなければならぬところへ来ておる、こういうふうに感じますが、これについての大臣の御見解を承りたいと思います。
  155. 竹下登

    ○竹下国務大臣 おっしゃるとおり預けている方は高いほどよろしゅうございますし、住宅金融公庫は財政が出動して利子補給までしておるわけでございますから、その他国民金融公庫とか各種中小企業関係の公庫も、この利ざやを出資とかいろいろな形で補てんしておるという状態でございます。この間、ある銀行家が、これは冗談でございましょうけれども、今のところちょっと資金運用部で扱ってもらえませんか、こう言ったというお話もあるぐらいであります。したがって、この問題につきまして、どこでやるかということでいろいろ考えました。そこで、今、理財局の局長の私的諮問機関もございますが、幸いに総理府にあります資金運用審議会というものが、今までは毎年毎年の運用をどうするか、こういう諮問をしておった、今度はそこであり方についてひとつ議論をしてもらおうじゃないか、こんなことを折々部内で話をしておるというのが現状でございます。
  156. 堀昌雄

    堀委員 最後にちょっと、さっきも時間がなくて問題提起だけにとどめたのでありますけれども、グリーンカードの処理について、今度は限度管理だけで、実は総合課税に関する問題が全然触れられていないということは、私はやはり所得税法の今日の状況では大変問題がある、こう感じておるわけであります。ですから問題提起だけをしたのでありますが、仮に五段階税制というものが導入されるようになれば、利子配当等の源泉分離課税、今の三五%を五〇%にしても、七〇から五〇に下がる高額所得者にとっては大変なフェーバーでありますから、そういうような処置をして、さらに税率の低い方は確定申告申告をされれば当然それは戻ってくるわけでありますから、そういう意味で、税制最高税率である五〇%で源泉選択分離課税を行えば総合課税を行ったと同じ効果が生じてくるのではないか、こういう実は感じで物を申し上げたわけでありますけれども、そういうことについての大蔵大臣としての、またこれは問題提起でありますから、感想だけを伺って私の質問を終わりたいと思います。
  157. 竹下登

    ○竹下国務大臣 所得税は本来担税力に応じた公平な負担を求めるものであり、利子配当所得についても包括的な総合累進課税の対象とすることが望ましいとの考え方は基本的に今後とも維持されてよい、その意見が税調でも多かったわけです。しかし、御承知のような状態で、今度は限度管理でやらしておる、法律の御審議をお願いしておるところでございます。したがって、利子配当所得の持つ特異性と、それから金融の国際化があります。そうしていま一つは、自由化の進展といった新たな状況もできてくるわけでございますので、所得税制全体の見直しとの関連の中でさらに検討をされていくべき課題だ、こういうことは税調の先生方も私どもも大体一致しておるのではないかというふうに考えております。
  158. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  159. 天野光晴

    天野委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。  次に、稲葉誠一君。
  160. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 きょうは財政、経済、税制についての集中審議でございますので、その趣旨に沿って御質問を申し上げたいというふうに思います。  最初にお聞きいたしたいのは、総理にお聞きしたいわけですが、この前、岡田利春さんの質問に対しまして、取引高税で惨敗をした、これはいいのですけれども、その後の問題で「大平さんが一般消費税をお唱えになったときも、私はそういう経験があるから、これはあかんぞ、そう思って大平さんにはやめた方がいいと申し上げて、反対の意思を表明したこともあります。果たせるかなそういう結果が出ました。」そういうふうなことを言われておられるわけですね。そこで私がお聞きをいたしたいのは、どういう点で「これはあかんぞ、」というふうに総理が思われたのか。その当時は総理じゃなかったわけでしょうけれども。あかんぞというのはこれは関西で使うので、関東の人はあかんぞという言葉は普通使わないでしょう。僕も使わないですよ。それはどっちでもいいですけれども、どういうふうにしてそういうふうに思われたのか、そこのところをお聞かせ願いたい、こう思うわけです。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 取引高税の経験から大平さんにもそういうふうに申し上げたのです。じゃ、どういう点がいけないかといいますと、一つは面倒くさい、それからもう一つは、中小企業者等にしてみれば自分の経常内容がよくわかってしまう、実際問題としてそういうような恐れを抱くという可能性がなきにしもあらずである等々の理由で取引高税というものは惨敗をした、一般消費税の場合も似たようなことになりはしないかな、そういうことで大平さんに、注意した方がいい、私は反対だ、そういうことを言ったことがあるのです。
  162. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私が聞いているのは一般消費税のことについて聞いているわけなんです。そうすると、一般消費税についても今おっしゃったような同じようなことが問題となる、こういうことなんですか。実際に一般消費税の問題で惨敗をしたといいますか、その理由というのは、一般消費税の持つどういうところに問題があると総理はお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうような誤解、あるいはそういうような恐怖心というものを与える危険性がありはしないか。これはよほど念入りに事情を説明してあげないとなかなか理解しにくい。税制の問題というものは、制度の合理性という問題よりもやはり心理的な問題が多いと前から申し上げているとおりです。それはよく注意する必要があると考えておるのです。
  164. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、一般消費税について自民党があのときに負けだということは、国民の誤解なり税に対する恐怖心ということが大きな原因だった、十分な説明なりが足りなかったからだ、こういうふうなことも大きな原因になっている、こう理解してよろしいのでございましょうか。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あのときは天気が悪かったとか、ほかの要素もあったと思うのです。たしか雨が降ったり何かしたことがあるのです。だけれども、やはりあの問題について十分御理解を得られなかった、そういう点はあるんじゃないかと思います。
  166. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私がお聞きいたしたいのは、そうすると、戦後政治の総決算ということと税制改革ということとはどういうふうな関係があるのかということが第一点です。第二点は、税制改革というけれども、それはどういう目的でやられるのか、こういうことが第二点でございます。
  167. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 シャウプ税制以来の税のゆがみとかひずみとか、そういうものを思い切ってこの際直して、国民の皆さんにもっとすっきりした、そして喜ばれるような構造に直そう、ある意味においては戦後政治の総決算の一つの大きな要素でもある、そう思いますし、それからもう一つはどういうことでしたか。
  168. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それでいいです。そうすると、財政改革ということは総理に言わせると、言わせるとと言うとおかしいけれども総理が言われるところでは、税収をふやすということとは関係ないということですか。何かそういうような説明をされているように感じるのですけれども
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは税の増収を目的として主としてやるものではありません。税の増収を目的として主としてやるものではない、あるいは税の増収を目的として、それのみでやるものではありません、そういうようなお話をしておるのです。
  170. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今のお言葉の中に、主としてというのとそれのみでという言葉が出てまいりましたが、その点については後からお聞きをしたいというふうに思っております。  午前中の質問を聞いておりまして、質問というよりもむしろ答えを聞いておりまして、総理がEC型付加価値税についていろいろある、それで、投網を張るようなものと投網を張るのでないものとがあるということをおっしゃいましたね、一番最後に。僕は、ああ余計なことを言ったなと思って聞いていたのです。そうすると、EC型付加価値税についてはどういう態様のものがあって、そして投網を張るようなものというのはどういうものであって、投網を張らないものというものはどういうものであるかということについて、総理としてはお答えになる責任があるというふうに私は思うのです。これは当たり前のこと、ちゃんと答えてください。ちょっと難しいですよ。あなたが答えちゃったのだからしようがないんだよ。そんなこと答えるから悪いので、しようがないです。これはちゃんと答えてください。
  171. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 EC型付加価値税というのはいろいろな態様のものがある。それはいわゆる大型間接税との関連で言うわけですから、これは大体どの程度に横を広げるのか、じゃ、どういうものを対象に入れないのかとか税率構造はどうするのだとか、いろいろなそういうようなものがあり得ると思うのです。そういういろいろさまざまな態様の中で、投網をかけるようなものはやりたくない、そういうふうに申し上げたので、課税ベースの幅広い云々と税の専門家は言っておりますが、我々は素人ですから、稲葉さんほど勉強もしていませんし、ですから、つまり投網ということは感じで申し上げたわけです。そういう意味で感じを申し上げたわけなんです。  具体的な税制上からの解釈は主税局長答弁させます。
  172. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 感じで申し上げたというのは、それはそうかもしれませんけれども、あなたがはっきり言われたでしょう。投網を張るというか投げるというのか、どういうふうに言うのですか、投網は投げるというのかな、あれは。僕のところは海がありませんから。群馬県も海がないわ、そう言えば。だから、投網を張るようなというか、投網を投げてすくうようなものとそうでないものとがあると言うから、それではそっちの入るものと入らないものというのはどういうものがあるのですかと聞くのは当然私の義務だし、それを答えるのはあなたの義務ですよ。ただ抽象的にああでもない、こうでもないと言ってごまかしたんじゃだめなんです。ごまかしでもないのかもしれませんけれども、それはだめですよ。はっきりしてくださいよ。だから、EC型付加価値税の中にいろいろあるといったって、各国によって違うなら、各国によってこういうふうにこういうふうに違うのだ、そのうちで総理が言う投網を張るというのはどれなんだ、投網を張らないのはどれなんだとちゃんと分けて表にして出してくださいよ、これは当たり前の話なんだから。いやいや、なかなか難しいのはわかるけれども、それははっきり答えてくださいよ。
  173. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、前から申し上げているように税の専門家でもないし、素人でありますから、ただ政治家としての感じを申し上げた。その感じがどこから出てきたかというと、取引高税で惨敗した。ああいうものはやはり身にしみるものです。そういう意味で、ああ、こういうようなものはよくないな、それは取引高税というものが頭にあったからです。それでそういうものはどういうものかというと、感じで申し上げるとさっき申し上げたような投網という形で出てくる。したがって、じゃEC型の税の中にどういうものがあるか、フランスではどうやっているか、イギリスではどうやっているか、アメリカではどうやっているか、そういうのは税の専門家がいますから、時間を下されば勉強して、可能な範囲内においてお出しさしても結構でございます。
  174. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 アメリカに付加価値税なんかないですよ。今EC型付加価値税の中の問題を総理が言われたから私は聞くので、言われなければ聞かないのですよ。言われたから聞くので、本当はここでそれが出るまではその問題で投網を投げるものでないものについて何かということをはっきりさせて、そしてこれがどうだということを質問するのが筋なんですよ。本当はいろいろなことがあるかもわかりませんけれども、それはあなたの方で出されるなら、きょうすぐというわけじゃないならきょうすぐというわけじゃないかもわからぬけれども、今答えられるのならはっきりとした答えをしてほしいのですよ。ただああでもない、こうでもないという答えじゃなくて、歯切れのいい答えを竹下さんしてくださいよ。歯切れがよくなくてはだめですよ。あなたのは歯切れが余り、この前も自分で言われていたからあれですが、歯切れのいい答弁をしてくださいよ。これは入るのだ、これは入らないのだと、今総理が言われたことを受けてはっきりしてください。
  175. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はどうも政治家で、しかも余り勉強の足らぬ者でありますから、ですから感じを申し上げておるのです。毎回毎回感じ感じと言って自分の感じ、フィーリングですね、それを申し上げているので、EC型にどういうものがあるか、外国でどういうことをやっているかというようなことは税務当局が勉強しているでしょうから、必要な範囲内において、また可能な限りにおいて調査して実例をお示ししてもいいですが、じゃ、どれがおまえの欲するものであり、欲せざるものであるかという判定になると、私自体も感じで言っているものですから、的確にここまでとかこれまでとかという限界を決めることはちょっと難しいと思うのです。
  176. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 総理はこう言われたのですが、それを受けて大蔵大臣、大蔵省の中で、ここからここは投網の中に入るのだ、ここからここは投網の中に入らないのだというはっきりした分類をして出してください。委員長、命じてください。きょうすぐというわけにはいかないかもわからぬけれども、ちゃんと出さしてください。
  177. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいまの委員の御要請でございますけれども、でれば毎回総理が非常に注意深くお答えになっておりますように、いわゆる税制上の厳密な定義ではないということを繰り返しおっしゃっているわけでございますが、けさほど小倉税調会長もここで御答弁されたように、今後そういうものを具体的に検討する過程の中において具体的なものが出てきた場合に、総理がおっしゃっているような趣旨に合致するのかどうかということをいろいろ議論する。しかし最終的には、そういう具体的なものが出てきた場合に政府の責任者として総理が御判断になる、こういう手順で恐らく総理も頭を整理されておられると思いますので、今の御要請のような、総理のおっしゃっているようなものについてこの税目のこの範囲までは投網的であり、この範囲からは投網的でないということを税制当局が事前に出すのは、私、ちょっと性格上なじまないのじゃないかと思います。
  178. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、総理の言うことを受けて、それをよく理解をして、そしてその範囲に合うか合わないかということは、これはあなた、部下である大蔵大臣、大蔵省が決めるべき筋合いのものですよ。だから出しなさいと言っているのだ。当たり前のことじゃないですか。こんなおとなしい私が言うことなんですから決して無理はないのですよ、それは。
  179. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今主税局長から整理した答弁を申し上げましたが、確かに稲葉先生と私とが仮に議論しますならば、じゃ投網をかけるとは何ぞや、こう言えば、一網打尽と仮に言ったとします。そうすると、一網打尽とは何ぞやということになると、包括的、網羅的とか言ったといたします。包括的、網羅的とは何ぞや、こう言うと、例外がない、こういうことになりますと、また一方、エブリ ルール ハズ エクセプションズ、すべてのルールには例外がある、あるいはゼアイズ ノー ルール ウィズアウト サム エクセプションズ、例外のないルールはない、こういうことになりますから、フィーリングで言ったものをきちんとした定型的なもので出すということは、これは実際問題非常に難しいだろうと思うのであります。ただ、稲葉さんも政治家、私も政治家でございますから、政治家の理解のできる議論の糧になるものを、これは税制当局に勉強させながらも私の責任であなたに提出するというのが限界じゃないかな、こんな感じですね。
  180. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 じゃ、あなたの責任で私に提出してくださっても結構です。  そこで、では別な問題に移りましょう。きょうの問題はまず財政の問題でしょう。だから歳出の問題、歳入の問題、そのギャップの問題、そのギャップをどうやって埋めるか、こういう問題ですね、きょうの主眼は。私はそういうふうに考えているわけです、当たり前の話ですが。  そうすると、私はある雑誌を非常に愛読しているんですよ。それは「自由民主」という雑誌なんですよ。これを非常に愛読しているんですね。内容は余りないかもわかりませんけれども、反面教師として非常にいいわけです。そこで去年の十一月号に、村山調査会が「財政再建に向けて」というのを書いている。「財政悪化の要因及び再建期間における財政の軌跡の分析を中心として 昭和五十九年九月二十八日」「村山調査会 衆議院議員」――名前を読んでもいいですか。「村山達雄加藤六月 山下元利 林義郎 小泉純一郎 野田毅 三塚博 池田行彦 参議院議員嶋崎均 降矢敬義」こういうふうに書いて、そしてずっとこうされておられるわけですね。私、この本を拝見いたしました。これを受けましてことしの二月号の「自由民主」に、村山さんが「昭和六十年度予算案と財政改革のプラン」というのを書いておられるわけですね。  私はおかしいと思いますのは、財政悪化の原因を一口で言うなら「歳入の実力以上に歳出を伸ばしたことである。」というふうに書いてある。それには違いないけれども、それではそのときの大蔵大臣はだれだろうかということをずっと調べてみた。それはここでは名前は言いませんけれども、いや、だれだとも言いませんよ、それは調べればすぐわかるので、調べたのがありますけれども、失礼だから言いませんけれども、その中で、歳出の問題で一つの問題はこういうことでしょう。「臨調答申を受けた五十七年度から本格的な歳出カットが行われた」そのとおりですね。五十七年度は「厚生年金など被用者年金の国庫負担四分の一繰り延べであった。」五十八年は「国民年金への国庫負担金の平準化」、五十九年は「医療の根本的改正を行った。これは正真正銘の改正で、」 「最終的には六千二百億の国庫負担を減らすことになった。」「六十年度に入ると歳出カットに非常に窮するため、削減の柱を国庫負担率が二分の一を超える高率補助を一律にカットすることに置いた。」こういうふうになっているわけですね、四年間ずっと。これはそのとおりですけれども、そこで結論として言っておられるのは、いろいろ言っておられまして、「歳出カットの努力はなおも続けなければならないが、しかしそれもある程度限度に来たという印象を持たざるをえない。」ということが結論として出ているわけです。この村山調査会の報告を受けてことしの二月号でまとめたものと見てよろしいでしょう。内容は大体同じで、ちょっと違うところはありますけれども、そう見てよろしいと思うのですが、そうすると、まずここで、歳出については「ある程度限度に来たという印象を持たざるをえない。」ということについては、大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。
  181. 竹下登

    ○竹下国務大臣 五十九年度予算におきましては、今歴史的な経過をおっしゃいましたが、やっぱり健保法の改正、これが内なる改革として出たな、こう思って、それから今度は六十年度ということになりますと、確かに高率補助の問題に手をつけたわけですね。そこで、制度、施策の根本にさかのぼって内なる改革を行う選択の幅は大変狭まった、これは間違いないと思うのです。だからもう一滴も出ないかという気に若干なりますときに、しかしそれではいかぬぞといま一度我と我が身に言い聞かしておるということでございます。
  182. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで歳出の中で、私調べてみると、例えば防衛関係費がこういうふうにふえてきておるわけですね。五十七年度が二兆五千八百幾らか、五十八年度が二兆七千五百、五十九年度が二兆九千、六十年度が三兆一千ですか。伸び率が五十七年度からは七・八、六・五、六・五五、六・九、それから一般会計予算の伸び率が、五十七年度が六・二、五十八年が一・四、五十九年が〇・五、六十年が三・七ですか、こういうふうになっているわけですね。  そこで、私がお聞きをいたしたいことは、これは総理にお聞きをいたしたいのですけれども、防衛庁並びに防衛費、これについては行政改革の対象にはならないのですか、どうなんですか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行政改革には聖域は置かない、そういうことを申して、そういう心組みでやっておるのです。  ただ、予算編成の場合には、たしか五つぐらいの項目については特別に重点的に考慮するという考慮をしております。それは、国際関係の問題、それから防衛とかODAが入ってまいります。それからエネルギー対策、それから科学技術であるとか年金あるいは給与も入りましたか。そういうような義務的経費に関する部分、こういうものの膨張についてはそういう特例的な重点政策を考えてきた、そういうことであります。
  184. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 聞いている人にはわかったようにもわからないようにも聞こえるのですけれども、結論としては防衛庁なり防衛費については行政改革は及ばない、こういうふうに一般的な理解をしてよろしいのですか。現実に及んでいるならば及んでいる例を示していただきたいわけです。
  185. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 役所一般としては、やはり同じように努力させて経費の節減とか人員の一般の縮減、そういうものはやらせておるわけです。ただし自衛官は別に扱っておるわけであります。
  186. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ほかのことに入りたいと思うのですが、私はこの統計、数字を見ていきますと、防衛関係費というものは歳出とは別枠みたいになっていて、だから行政改革の対象にはなっていない、数字から見ればこういうふうに思わざるを得ないのです。これは私の意見ですし、恐らくたくさんの人はそういうふうに聞いているに違いない、こういうふうに思います。そうすると問題は、今度は歳入の方ですね。歳出の方はそれで一応終わったとしましょう、まだほかにあるんですけれども。  そうすると、歳入の方はどうするかというと、ことし「三千百六十億円の増収をはかったが、中身をみるともはや増収の余地がない租税体系になってしまっている。」と村山さんは言われて、そして所得税も五十九年度で六千八百億減税を行った経緯があるからここでやるわけにはいかない。法人税もあれだ、それから消費税も酒税はどうだとか、物品税もOA機器がどうとか、いろいろ言っておられるのですね。「このように、日本予算は均衡予算制度だから、」これは今、堀先生も言われたところですね、均衡予算制度ですね。「予算を組むにはある程度の増収措置をとらなければならないが、その余地は非常に乏しい。」こういうふうに言われているわけですね。そうするとこの最終結論、「予算を組むにはある程度の増収措置をとらなければならないが、その余地は非常に乏しい。」というこの歳入の理解の仕方、このことについてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  187. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる村山調査会のこの御提言というものは、私は今政府側と位置づけをいたしましても、政府側としても十分その御提言等は熟読玩味させていただいて、今年度予算編成に当たったということでございます。
  188. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 問題はこの次なんですよ。今私が歳出の話をし、歳入の話をし、そうするとギャップが出てくるわけですね。大蔵省の仮定計算例や何かでも私は問題があると思うのですよ。例えば法人税は時限立法でしょう。それは四三・三でずっといっているわけですね。弾性値にしても一・一でいっているわけでしょう。ところが、五十九年と六十年度の予算を比べてみると、税収は一一・何%ですか、だから補正予算と比べてみると七・何%になるのですか、そうなってくると、弾性値を一・二だという見方も出てくるわけですね。いろいろ見方はあるわけです。けれども、それは抜きにして、それではその要調整額というものをどうやって埋めていくかという問題になってくるわけですね。  そこで、考えられてまいりますのは、「ファイナンス」これは大蔵省の広報誌でしょう。ここで、去年の十月号で、あなたが木元教子さん、立教大学の社会学部を社会人になってから入られて卒業したなかなか才女ですが、その人や牛尾さんたちと座談会をやっている。そこで私がお聞きいたしたいのは、その中でこういうことをあなた言われているのですよ。建設国債ね。「一兆円投資して、三年くらいで四千億円程度の税収があがるかもしれません。しかしその一兆円のために将来、三兆七千億円を返していかねばならないということはまちがいないわけです」こう言っているわけです。まずここのところの数字的な経過。それは村山調査会ではいろいろな前置きはありますけれども最初の年度二千二十億かな、ふえて、それから後ふえて、三年目あたりからずっと減っていってマイナスになるという数字がここに出ておりますね。これは最初が二千二十億、その次は四百七十億ですか、三年目からマイナス百七十億、後四年目からマイナス九百億、こういう数字も出ているわけですけれども、このところは一体どういうことなのか、よく説明をしていただきたい。数字を挙げて説明していただきたいし、後でこれは当委員会に正式な資料として出していただきたいのが一つ。  それからわからないのは、今五十九年末で公債残高が百二十二兆円だ、こう言っておられるけれども、それは六十年間にわたっていろいろ計算すると三百九十兆円のツケだとかなんとか言っておられますね。その計算もよくわからないものですから、これも資料として説明していただいて出していただきたい。出すことについては、今の二つの資料については委員長から大蔵省の方に、大蔵大臣の方へ御指示を願いたい、こういうふうに思います。  まず説明をしてください。
  189. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、いわゆる乗数は経済企画庁の世界経済モデルというものによったわけでございますが、建設公債を一兆円追加をいたしますと、初年度のみでございますが、用地費率を二〇%に見まして、それで四年から六年度にかけての乗数はゼロと置いて計算しますと、名目GNP増というものが公共事業投資額掛ける〇・八、すなわち二〇%の用地費率、それに掛ける乗数、こういうことで計算してまいりますと、大体一兆円の公共投資をしますと四千億程度が増収になります。法人税、所得税等々で返ってきます。が、それを見込んだものを直ちに国債整理基金に入れるわけではございませんから、したがって一兆円はそのまま残っていくと、それに七%の金利を掛けて、十年間に六分の一の計算をして、六十年で計算すれば、大体七・三%の場合が三兆八千億、七・〇%が三兆七千億ぐらいでございましょう。それで百二十二兆は、これは今まで借りたものの分は計算ができて、もういわば時期の迫ったものなんかもございますが、それは幾らか積み上げながらやってまいりまして、大ざっぱに言って三・七倍ぐらいになりますから、百二十二兆は三百九十兆、七%です。それで、大ざっぱに言って六十五年百六十五兆、百兆が建設、六十五兆が赤字国債という計算をすれば、大体五百十兆、まあ七%という前提がございますが、大体そんなことである。したがって、仮に一兆円国債を発行して、四千億上がって、その四千億というものを、直ちに国債整理基金に入れればという考え方なしに、それそのものを後世の納税者にツケ回しの金額としては明らかに三兆七千億、あるいは七・三%ですか、その金利の差によって若干違いますが、そうなるという計算をした。そういうことを、常日ごろ財政再建の説明会で歩いておりますので、覚えております。
  190. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だからどうだということなんですか。建設公債を一兆円出して、そしてやったところで、最初のうちはいいかもわからぬけれども、後はどんどん悪くなってきて、逆になっちゃうんだから、だから大蔵省としてはそういう政策はとらないというのですか、どうなんですか。そこがはっきりしてなきゃ意味ないでしょう。
  191. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大体、ちゃんと財政法第四条で建設公債はそれなりに許されてはおりますわね。したがって、いわば景気の状況等々を見ながら弾力的な対応力が持ちたい。しかし、持ちたいが、現在は対応力が欠けておる。したがって、それの要求に直ちにこたえたとしても、結果としては後世の納税者にこれだけツケを回すことになりはしないか。だから、景気の刺激に対して財政そのものの出動する余力が大変少なくなっておるという説明に使っておるわけであります。
  192. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だからどうだというんですか。だからそれはやりたくないというんですか、やらないというんですか、どうなんですか。場合によってはやるというんですか、どうなんですか。結論をはっきりしなさいよ。
  193. 竹下登

    ○竹下国務大臣 毎年、まだやっております。建設国債は出しておりますが、可能な限り減額したいという気持ちは持っております。
  194. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、あなたの言われることは、結局、建設国債で公共事業をやって一兆円投資したって、初めはいいけれども後はだめだと言うんでしょう。それはその方のマイナスが大きいということなんでしょう。そういうふうに聞いていいんでしょう。
  195. 竹下登

    ○竹下国務大臣 インフレ率の掛け方なんかもあると思いますけれども、私はマイナスだという説明に使っております。
  196. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、説明に使っているじゃなくて、あなたはマイナスだと思っているのかどうかと聞いているんですよ。説明に使っていることはわかっているんだから、そんなことは。こっちの言うことにもう一遍ぴしっと答えてくださいよ。
  197. 竹下登

    ○竹下国務大臣 思っていなきゃそういう説明いたしません。
  198. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あなたの人柄のせいですけれども、これ以上のことはと思いますけれどもね。  ところが、建設省は五十九年の九月に「建設国債の増発の財政への影響」というのを出していますね。建設国債の増発による公共投資の拡大によってGNPは増加し、これに伴って国の税収、税外その他収入を含むは増加すると言って、ずっと試算しているわけですよ。中期試算から長期試算やっているわけでしょう。これをまず御説明願いますけれども、この理由として挙げておるところは、今読んだような形でフロー効果があらわれる。「また、つくられた資産は長期にわたってその効果を発揮するものであり(ストック効果)、したがって建設国債と赤字国債とは区別しなければならない。」「赤字国債を計画通り減額すること、毎年の発行額の伸び率を名目GNP成長率を超えない程度の適切なものにとどめること、の二条件を満たせば、建設国債を増発して公共事業を拡大しても国債残高や国債費の負担は相対的に低下し、十分に財政再建と両立する。」こう言っているんですがね。そして中期試算と長期試算を出しているのですよ。これは、建設省の説明も聞きますけれども、今の竹下さんの言うことと一体合っているんですか、合っていないんですか、どうなんですか。
  199. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いろいろなモデルのとり方はあろうかと思っておりますが、今の論理はいわば赤字公債と四条公債との実効の相違というものを詳しく説明をされたことではないか。ただ、問題になりますのは、いろいろなモデルを前提に置くわけでございますけれども、言ってみれば、毎年名目成長率の伸び率と同じだけ仮に発行すれば対GNP比に対しては落ちてこない。対GNP比どれくらいの公債残高を持つことが適当かという議論が、これだけ大量の国債を抱えた今日、これからしていかなければならぬ議論じゃないか。その議論が欠如しておるというふうに考えなければならぬと思います。
  200. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私は素人でよくわからないのですが、今建設省の言っていることと大蔵省の、あなたが今説明されましたそのこととは一体違うのですか、違わないのですかと聞いているのですよ。もちろん前提はいろいろあるかもわかりませんけれどもね。違うのですか違わないのですかと聞いているのです、私は。だから、違うなら違う、違わないなら違わない、どっちかだと思いますがね、それは。どうなんですか。
  201. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは建設省のものを読んだわけではございませんが、それは前提とモデルのとり方の違いはございましょうが、違っております。
  202. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは委員長に聞いた方が早いかもわからないですね。いや、聞かないけれども、聞いた方が早いかもわからないんだ。  じゃ、建設省の考え方を説明してください。片方だけ聞いて、あなたの方の考え方を聞かないのも悪いですから。それで、あなたの方が出した中期試算と長期試算というのを出してください、建設省。これは委員長から命じてください。
  203. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 お答え申し上げます。  私どもが昨年の夏ごろに一つの試算を行った資料のことを御質問であろうかと思いますが、その際、例えば赤字国債を計画どおりに減額していって昭和六十五年度までには発行をゼロにする、あるいはまた毎年度の建設国債の発行額につきまして、名目GNPの成長率以内、より厳密に申しますと、税収の伸び以内におさめるというような条件を置きました場合に、建設国債をある程度増発いたしましても、その国債によりまして公共投資を行うことによって、GNPあるいは国の財政の中でそれほど悪影響を与えないのではないかという議論をいたしたことは事実でございまして、先生の御指摘の点はそういったことを一つの側面として私たち説明したことがございます。
  204. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だけれども大蔵省の考え方が万能だと言うんじゃないのですよ。何でも大蔵が支配しているという考え方は間違いなんですから、私はそういうことを言っているわけじゃありませんけれども、大臣は今建設省の考え方とは違うということを言ったわけでしょう。今の中期試算というのを建設省が出しているのですよ。中期試算と長期試算があるわけです、これについての。出させてくださいよ、大臣から建設省に。今すぐでなくてもいいですよ。理事会に出させてくださいよ。
  205. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 私どもが作成いたしました資料につきましては、後日提出させていただきます。
  206. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、話はもとへ戻るわけですね。歳出の話をし、歳入の話をし、そのギャップがある、ギャップの調達をどうするかということについて、公債のやり方とそれから税のやり方があるという話をしたわけです。今、学界で問題になっているのは、いわゆる等価定理という問題が問題になっておりますね。財源調達手段として租税と公債には基本的な差異がないとする考え方もあるわけです。私もこの書物を読みましたけれども、なかなか難しくてよくわかりません。しかしそれはそれとして、今大蔵省の言うのには、公債の発行ということではやらないというような考え方のようですね。  そこで、税の問題に返ってくるわけです。そうすると問題は、税の問題が残ってくるわけです。そうすると、「国民の消費支出に対する」――これは村山さんの論文ですね。だから今言ったように、最初段階で、歳出カットについては「ある程度限度に来たという印象を持たざるをえない。」歳入については「増収措置をとらなければならないが、その余地は非常に乏しい。」いいですか、「そこで」とくるわけですよ。これからが本論になるわけでしょう。「そこで国民の消費支出に対する税金割合――つまり間接税見直してはどうかという視点が出てくる。」このことについてはどうですか、間違いがありますか、間違いはないですか。そのプロセス、これが大事なんですよ。これは総理の言うことが、前にしゃべっていることが本当なのかうそなのか、あるいはよくわからないでしゃべったのかというところにひっかかってくる問題ですから、大蔵省としても、ちゃんとと言うとおかしいけれども、いつもちゃんと答えているのでしょうけれども、お答えを願いたいと思いますね。
  207. 竹下登

    ○竹下国務大臣 論理の進め方としてはそういう論理の進め方はあり得る。
  208. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いや、あり得ると言ったってあなた、あり得る、それでいいですか、よく考えてください。それでいいかな、おかしいよそれは。  いいですか、こうなってくるのですよ。「つまり間接税見直してはどうかという視点が出てくる。」論理のあり方としてこういうのがある。「法人税は国際並みだが、間接税は実は欧米の約二・五分の一なのである。」これも間違いないかどうか。間違いないでしょう。「直間比率の関係でみれば所得税が約四割、法人税が三割、間接税が三割だが、その間接税のうち三割は揮発油税などで特定財源に組み込まれている。したがってその残りしか一般会計では自由にならない。そして実際、最小限必要な増収のために各税目を見渡しても、」有価証券取引税はああだとか印紙税はとか、いろいろ出てくるわけでしょう。そうなってくると、いろいろ考えてみると有価証券取引税もだめ、印紙税もあれだ、結局「租税体系を見直さなければならないのではないかという考え方が生まれてくる。今の租税体系では増徴する余地が非常に少ないので、歳出カットの努力と合わせ、」歳出カットの努力とあわせるけれども、歳出カットの努力はもう限度に来たという印象を持っているということを大蔵大臣認めたわけですから、そういう中で歳出カットの努力とあわせるとか言うけれども、文章は「合わせ、直間比率見直しということが大きな問題となってこよう。」ここで初めて直間比率見直しというのが浮かんでくるのですよ。いいですか、総理の言うように、戦後四十年たってシャウプ税制がどうとかかんとかで、そこで直間比率見直しが生まれてくるというのではない。歳出を考え、歳入を考え、財源と調達手段をどういうふうにしようかということを考えて、税以外にないじゃないか、今の段階では。それじゃ税の中でどうするかということで間接税をそこでとろう、こういうことが浮かんでくるんだということに、これはもう当然論理の帰結としてなってくるわけでしょうが。それの証拠にあなた、これは当たり前の話で、こんなことを私の口から言わなきゃならないというのは悲しいことだ。当たり前のことなんですけれどもね、これは。  自民党税調の人おられるかな。――ああいるいる、まだおられますね。自民党税調の人おられるでしょう。自民党税調が昭和六十年度の税制改正大綱をつくっているでしょう、去年の十二月十九日。何と言っていますか。「基本的な考え方」でいろいろ進められてきて、こういうふうに言っているのですよ。「なお、当面する厳しい財政事情に顧みれば、課税の公平性、中立性を維持しつつ必要な税収を安定的に確保することは喫緊の課題である。しかしながら、直接税、間接税を通じ、現行税制の枠内での部分的手直しのみでは、このような要請に応えることは次第に困難となってきている。したがって、社会経済情勢の推移に対応する税体系のあり方の問題について、直間比率その他の問題を含め、抜本的な見直しを早急に進める必要がある。」こういうふうに言っているわけですね。これは自民党税調ね。政府税調とは違うのですよ。政府税調は慎重にその点はぼかしていますよ。ぼかしておるけれども、自民党税調はそこのところをはっきり言っているわけです。  まず、政府税調のその部分の言い方と自民党税調の言い方がどういうふうに違うかということが第一点。第二点は、これは明らかに税収を安定的に確保することが喫緊の問題なんだ、だから部分的手直しじゃだめなんだ、そこで「直間比率その他の問題を含め、」と言って直間比率を一番最初に出して、そして「抜本的な見直しを早急に進める必要がある。」こういうふうに言っているわけですよ。だから、ここに直間比率見直しという問題の出てきたプロセス、そこから見てこの問題のウエートがあるわけで、それはここに言っているように税収を安定的に上げるためにこの問題は出てきたわけですよ。それを今までそういうことを言わないで、ああでもない、こうでもないと言って、そこのところは、ごまかしてと言っては悪いけれども、あるいは質問が足らなかったのかもわからぬけれども、そこのところをはっきりしないでぼかしている。なぜぼかしているかというと、理由は後で説明します、私が。そういうことでしょう。どうですか大蔵大臣、説明してくださいよ。
  209. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは政府税調といわず党税調といわず、税収を安定的に上げるというのは必要なことでございます。増税とか減税とかそれは別として、税収を安定的に上げるというのは必要なことです、アップという意味の上げるじゃなくして。これは大変必要なことであります。  そこで、考え方の違いを一つ申し上げますと、いわゆる政府税調というのは最初から、国税、地方税のあり方についていわば税論理でやってください、こういうことですよね。党ということになれば、おたくの党もそうでございますが、いろいろなのができております。おたくの党もそうでございますが、我が党にしても今政権を担当しておるという立場、やがて政権を担当せんとする意欲というものがあらわれるわけですから、そこにはいわば国税、地方税のあり方についてという税理論だけからの論議ではなくそういう論議がなされるというのは、これまた必然性があるんじゃないか、こう思います。
  210. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、税理論だけでなくて実際の問題に直面して出てくるということが当たり前だというならば、その方が言っていることのより真実味があるわけですよ。より緊急性があるということですよ。そういうことになるでしょう、当たり前の話でしょう、これ。政党である以上、党高政低なんですから、政党政治は政党がリードするのですから、当たり前の話ですよ。そこではっきり言っているじゃないですか、「税収を安定的に確保すること」なんだ。そのためにこういうふうに「直間比率その他の問題を含め、抜本的な見直し」をするんだ、こういうことを言っている。  それじゃ、税収の安定的な確保ということはどういうことかということになれば、こういうことでしょう。いいですか、高度経済成長のときには所得税なり法人税というものは、税の弾性値というか何というか、それは非常に高かったわけですね。だけれども、安定成長になってきて成長が低くなってくれば、所得税なり法人税、特に法人税の場合は揺れが大きいわけでしょう。だから、安定的な問題としては間接税というものをどうしても中心にせざるを得ない、こういうふうになってくるのは筋なんで、これは私自民党の税制大綱というのは非常に正直だと思いますよ。これは直間比率見直して、それによって、それを中心として要調整額を埋めていこう、こういう考え方ですよ。それは当たり前の話ですよ。いい、悪いは別ですよ。いい、悪いは別だけれども、そういう考え方でできているわけですよ。だから村山さんの報告もそういう考え方でちゃんと貫かれているわけですよ、そうでしょうが。それでなければ、政党としての責任にならないですもの。これは政府税調ならば学者の議論でいいですよ。こんなこと言っちゃ悪いかもわからぬけれども、けさ小倉さんの話を聞いていたけれども、声が低くてよくわからなかった、よく聞こえなかった。それは後で議事録を読んであれしますけれどもね。これは責任ある政党としては、現実にどうするかということになればこの結論どおりになってくるわけですよ。だから、直間比率を抜本的に改正する、いや、抜本的な改正は直間比率その他になってくるけれども直間比率を一番最初に挙げているわけですよ。その他の改正ということをして、そして増収を図っていこうということじゃないですか。それ以外に道はないでしょうが、あなた。だから財政改革というのは、結局税収を上げるということが目的なんだというふうにならざるを得ないのじゃないですか。  余りしゃべっちゃうと、ちょっと質問があれになるからここら辺で切っていかないといけませんね。切ってあれしたいと思いますけれども、だから、結論的には、この自民党の大綱なり村山論文なり調査会の報告なりのように直間比率の是正とは言うけれども、それは増収を目的とするものである。責任ある政党としては当然のことである、当たり前の話じゃないですか。
  211. 竹下登

    ○竹下国務大臣 村山調査会の論理の進め方、それからその論文、それからさらに自民党税調の答申、これは当たり前のこととおっしゃればそのとおりです。政権を担当する政党として、広範な立場から考えた問題である。  ただ、私がここで答弁しなければならないのは、あくまでも政府税調の上に立ったお答えをしなければいけませんね。その意味において、私のお答えの中にはいささか、主観を入れないように、いかにして主観を抜いていくかということを常日ごろ考えておるわけですね。稲葉さんも日本社会党という政党の基盤の上に立った御議論をなさいますが、中に私どもに対してそういう立場からいろいろな御意見を交えた御質疑をいただくわけですから、私はそれに一つの限度を守りながら、節度を守りながら正確なお答えをしていくというのが私の務めであろうというふうに思っております。
  212. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 委員長、楽しそうに笑っているけれども、なかなかよくわからないですな。わかったようなわからないような、しかし、わかりました。なるほどね。  そこで、問題は、大蔵大臣の財政演説の中で今の政府税調、今おっしゃったようにあなたとしては政府を代表する立場だから政府税調だが、それから自民党の税調と二つある。となれば、これはニュアンスは違いますね。今の税制大綱のあれでニュアンスが違うことをお認めになるでしょう。どうですか。
  213. 竹下登

    ○竹下国務大臣 二つあれば二つあるということで、ニュアンスといいますか、ニュアンスとだけでは片づけられないかもしれませんが、違っておる点もままあります。
  214. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 どの程度違っているかと言えば、目白と創政会ほど違っているかどうかは僕は知らないですよ。それはわからないですよ、僕は。今のはまずければ取り消しますがね。いずれにしても違っているわけですよ。政府税調は、今のようなことは言ってないですね。ニュアンスが大分違いますな。  だから、結局税収を上げるためにやるということになってくると、そこでまた前に戻ってきて、一番最初のあかんなに戻ってくるわけなんですよ。そうでしょう。一般消費税で失敗した理由というのは一体なんだということは、私はこの前もくどく言いましたね。それは当時の主税局の審議官であった福田さんが言っているわけです。それは、税収を目的とすることを前に出しちゃいけないんだ、そうすると失敗するんだ、十分な準備期間を置かなければだめなんだ。そういうことを福田さんは言っているでしょう。だから、今あなたの方としても、それは直間比率見直しその他は言っているけれども税収の確保だ、税収を上げるんだということを言ったならば、これはあかんなになっちゃうのですよ。そうでしょう。あなた、選挙に不利になるでしょう。今、総理いみじくも言ったでしょう。取引高税その他一般消費税のときでも、中小企業とか、小売商まで言わなかったかもわかりませんけれども、そういうところに影響があると誤解を招くとか、あるいは恐怖心を起こさせるとかなんとかということがありましたね。だから、そういうようなことをあからさまに出すと不利になるからということでそこのところをぼかしておるだけなんだ、こういうふうに私は考えるのですけれども、それは考え方は同じだと思いますけれどもね。  そこで、前に戻ってくると、今後は直間比率見直しその他を含めた税制の「本格的な改革を検討すべき時期にきている」こういうふうに政府税調で言われて、そして大蔵大臣はこれを、異例な御指摘をいただいたというふうに財政演説で使っておる。そうすると、なぜこういうふうに「本格的な改革を検討すべき時期」に来たのか、その理由は一体何なのか、「本格的な改革」とは何を意味するのかというのは今まで出てきましたけれども、それをまとめてお答え願いたいと思います。
  215. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の本格的改正の問題につきましての意味ということになりますと、私はやはり税制調査会の答申のあの部分で一番正確にあらわれておるんじゃないかというふうに考えております。  今、ちょっと探してみますが…(稲葉(誠)委員「どっちの税制調査会」と呼ぶ)政府税制調査会の、これは少し長うございますが、要するに政府税調の「昭和六十年代をむかえるに当たり、今後我が国の経済社会の活力を維持し、国民生活の安定と充実等を図るために、速やかに国、地方を通ずる財政の健全化を図り、財政の対応力を回復させることが必要不可欠であることを改めて認識すべきである。」とされて、そして「したがって、既存税制の部分的な手直しにとどまらず、今こそ国民各層における広範な論議を踏まえつつ、幅広い視野に立って、直接税、間接税を通じた税制全般にわたる本格的な改革を検討すべき時期にきていると考える。」これをそのまま読み上げるのが私は正当な理由であろうというふうに思っております。
  216. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 党の税調は、そこのところは文章はちょっと違いますね。  それは、話はまた同じところに打っちゃいますから進めますけれども、だから歳出の話をし、歳入の話をし、そしてギャップをどうやって埋めるかという話をし、ギャップの中では、仮定計算例でも何でも一兆円から二兆円から三兆円、ずっとあるわけですね。それをどうやって埋めるかというときに、公債によってやるのか税によるのかというときに、結論は結局公債ではだめだ、公債についてはくみしないということにあなたの方の考え方はなってきているわけでしょう。それでは税による以外にない。それじゃ税によるなら何にするかといったら、所得税はもうやれない、法人税はあなたの方ではやれない、結局直間比率見直しということ以外にない、そうすれば間接税をうんとふやしていく以外にない、こういう結論になってこざるを得ないのじゃないですか。どうでしょうか。
  217. 竹下登

    ○竹下国務大臣 だんだん話が詰まってまいりますが、私どもが今日まで言い続けておるときには、仮定計算ではありますが、とにかく要調整額がこれほどございます、その中で三つの手法、あるいは四つかもしれません。一つは、公債を発行するのか、あるいは国民負担増をお願いするのか、あるいは歳出削減、歳出削減を一番先に言わなければなりませんね。この三つ、そしてその組み合わせでやるのか。こういうことを、国会の論議等を通じておのずから国民のコンセンサスがいずれにあるかを見出していきましょうということで、問答しましょう、問答しましょうと。だから毎度問答しておっても、やはり同じような要調整額を含めた仮定計算しか出さぬじゃないか、もう少し色のにじんだものを出してこい、こういう昨今でございます。  それに対して私どもは、いろいろな国会の論議等を通じて、その紙の裏にいろいろな問題が議論されておりますけれども、またそれを定量的に数字としてそこへ何が何ぼというふうな状態には立ち至っておりません。したがって、もう一年引き続き議論をいたしましょう。その一方で、税制調査会等で国民意見を聞きながら広範な議論をしていただきましょうというのが、半歩進んだ現状の対国会に対するアプローチの仕方ではないかな、こういうふうに考えております。  だから、何で断定的に――稲葉委員のおっしゃる意味はわかります。おれは歳出削減はもう難しいと思う、とはいえおまえは公債発行は、全くしないわけじゃございません、それは弾力的にしなければいかぬこともあるでございましょうが、少なくともそれに対しては非常に否定的だ、されば、歳出削減がそれこそもうあかんとしたら、そうなればいわゆる増収措置を講ずるしかないじゃないか、だからそれにはおのずと直間比率、すなわち間接税に行くんじゃないか。この稲葉理論というのも一つの理論として我々として聞かしていただいて、なるほどと思って検討の材料にしていただく、この問答の大変いい素材を提供してもらっておるという謙虚な対応の仕方でいつも勉強していかなければならぬ、それが私の今日の務めである、このように思っております。
  218. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 では、ひとまず問題を変えましょう。  あなたは、政府税調、政府税調と非常に言われるのですが、政府税調の答申の中の一番の目玉は一体何なんですか。いろいろありますね。不公平税制の是正ということをまず目玉にしているわけでしょう。そして、それをやって初めて後で増税というか増収というか、その方向に入るのが普通の筋ですね。では、その中で一体何が言われておるのか。こういうふうに言われておるのじゃないですか。すなわち、現行非課税貯蓄制度のことを政府税調は言っているわけですね。この前のときには、全体の六割で二百二十五兆か六兆だったのが、今二百四十五兆非課税貯蓄がありますね。これは去年の三月の発表でしょう。ことしの三月の発表はどうなるかちょっとわかりませんけれども、二百四十五兆ありますね。それがある。それについて、こういうふうに政府税調は言っています。「厳しい財政事情下、税負担の公平・適正化の要請が強まっている折、巨額の利子所得に対する非課税措置を存置したままで、他の所得に対しては厳正な税負担を求めていることは権衡を失しており、その意味では、現行の非課税貯蓄制度の存在自体が不公平なものと言える。」「(ロ)現行の非課税貯蓄制度は、所得水準の高い階層ほど利用割合も高く、高額所得階層を優遇する結果となっており、不公平を助長している。」こういうふうに言っていますね。これに対して、一体どうしてあなた方は手をつけることができなかったのですか。政府税調がここまで言っているじゃないですか。不公平税制の典型的なものだと言って、存在自体が不公平だ、こう言っているじゃないですか。場所わかりますか。場所は「二 国税 1所得税 (1)」です。わかりましたか。存在自体が不公平だ、こう言っているのですよ、政府税調が。それで、所得水準の高い階層ほど利用度合いも高くて、結局このままにしておくのは「高額所得階層を優遇する結果となっており、不公平を助長している。」こう言っているのですよ。これはあなた、どうして手をつけなかったのですか。その理由をよく御説明願いたい。これは限度管理とは別ですよ。これは非課税貯蓄か限度管理がという問題じゃないのですよ。全然取り違えているのですよ。限度管理というのは、どんな場合だってやらなければならないことなんですから、法律で決まっていることなんですから。それを問題を取り違えてはいけませんけれども、どうしてこれに手をつけなかったのですか。それからまた、将来どうするのですか。
  219. 竹下登

    ○竹下国務大臣 このいわゆる利子配当課税につきましても、いかに粒々辛苦、貯蓄意欲に基づいて貯蓄した零細貯蓄でありましょうとも、利子は所得であることには間違いない、こういう論理が一応の下敷きにございます。しかし、我が国のいわゆる貯蓄奨励があったからこそ、公債の発行も許容できたでございましょうし、今日の企業の発展もあったでございましょう。他の先進国のおおむね三倍の貯蓄率ということでありますが、そういう貯蓄奨励の政策税制として今日まで意義を果たしてきた。しかし、これの運用においていろいろな不公正が生じてきておる、それに対してメスを入れよう、こういうことであったわけであります。しかし、今日の時点からするならば、さればということで、まずは限度管理そのものを厳重にするということで当面そういう措置を行うことにして、いわゆる利子配当課税のあり方につきましては引き続き検討すべき課題であるという事実認識で、今度も、きょうお経読みをさせていただきましたが、大蔵委員会等で法律をお願いする、こういうことになっているわけであります。
  220. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは話が違いませんか。利子配当課税の問題と限度管理とは関係はない――関係はないとは言わぬけれども、これかこれかの問題じゃないのですよ。それを、あなた方の方ではごまかしてしまっているのですよ。  それではこういうことを聞きましょうか。最初政府税調では何と言っていますか。「適正」という言葉を使っていますね。わかっているでしょう。自民党税調では「厳正」という言葉を使っていますね。管理すると言っていますね。閣議決定でまた「適正」に戻ってしまったのじゃないですか。あるいは順序がちょっと違うかもわからぬけれども、まずそれがどうなっていますか、それが一つ。  それから、税調の委員主税局長をやった泉さんは、座談会で何と言っているかあなた知っていますか。私はお示ししたと思うのですけれども、「限度管理というのは初めからできもしないことをやれということなので、それでいまの非課税貯蓄の濫用がなくなるとは思えない。」こう言っているのですよ。今度は多少厳しくやったので、マル優はちょっと減ったようですけれども。だから「適正」か「厳正」かは、「厳正」がまた「適正」に戻ったのか、あるいは「適正」が二つあって「厳正」になったのか、ちょっと知りませんけれども、それはどっちですか、ちょっと教えてあげなさいよ。  問題は、だから限度管理というのは具体的にどうやってやるのですか。泉さんは、そんなものはだめだって言っているのですよ。やれっこないと言っているのですから、そんなものは。意味ないと言っているんだから、そんなものは。だって、あの人は主税局長をやって国税庁長官をやった人ですものね。それで公平な人ですよ。はっきり言っているのですよ。これは税経通信二月号です。  それから、「濫用があることが税の公平さに対する国民の信頼を失わしめているのではないか。したがって、非課税貯蓄について何らかの改善策を講ぜざるを得ない、」こう言っているのですね。これは外国では、アメリカでもイギリスでもドイツでも、みんな総合所得でしょう。そうじゃないですか。フランスはちょっと違いますけれども、そうでしょう。――主税局長はいいよ、竹下さんの範囲で。
  221. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、稲葉さんのお名前を使って失礼ですが、稲葉登という貯金があったり竹下誠一という貯金があったりするのは、いろいろな知恵でそういうものが現存しておるというふうに言われ、そうして、より限度管理を厳正――厳正も適正も私は一緒だと思うのでございます。大体、網羅と包括ぐらいな感じじゃないかと思うのでございますけれども、厳正、適正はどちらでありましょうとも、まさに厳正、適正に行うことにより、よりいわゆる税の公正の確保に努力していく、こういうことであろうかと思います。
  222. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だから、将来どうするのですか、これは。限度管理というのはできないと言っているのですよ、これは主税局長をやった人が。  現在の法律はどういうふうになっていますか。税法がありますね。税法の中にあって、それから政令も何かありますね。どうなっていて、今後どうするのですか、答えてくださいよ、それを。
  223. 梅澤節男

    梅澤政府委員 非課税貯蓄の限度額は所得税本法、それから郵便貯金につきましては郵便貯金法を引用いたしまして所得税本法に規定されておるわけでございます。  この限度管理の問題につきましては、あるいは非課税貯蓄のいわば乱用の問題につきましては、従来から議論がございまして、五十五年のあのグリーンカードの制度改正もあったわけでございますが、六十年度の税制改正におきましては、その後の経緯等を踏まえまして、税制調査会でも非課税貯蓄のみに限定したいわゆる精緻なカード制度についてはコスト・ベネフィット等の点から問題があるということで、仮にそういう枠を設定するとすれば、しかし現状よりは厳正なものにしなければならないだろう、適正なものにしなければならないだろうということで、六十年度の税制改正でただいまお願いしておりますけれども、本人確認をより厳しくし、郵便貯金につきましても、限度額を超えたものにつきましては課税とし、一定の手続で通知をいただくというふうに、入り口、出口で現状よりも適正化を図るという内容になっておるわけでございます。  泉委員のその座談会でございますか、その文章を私は読んでおりませんけれども、それは極めて常識的な議論として従来あるわけでございます。つまり、パーフェクトな限度管理を考える場合には相当大仕掛けな技術的なシステムが要る、これはもう常識の問題になっているわけでございます。ただ、ただいまも申し上げましたように、これはコスト・ベネフィットの面でも非常に問題がある、ただし現状は放置できないということでございますので、一歩前進ということでただいま提案を申し上げておるわけでございますけれども、将来これを一体どうするのかということでございますが、限度管理の問題自体に限定して言いますと、六十年度の予算国税庁それから郵政省の方に、この技術システムの研究開発をする費用を計上いたしておりまして、これはいつごろ検討結果が出るか、かなり時間がかかるかもわかりませんけれども政府としては、やはりそういうものはしょせん無理だということではなくて、やはり引き続き勉強していかなければならないというふうに考えているわけでございます。
  224. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 せっかく自治大臣や厚生大臣やなんかにおいで願って、御質問しないのは悪いですからあれですけれども国民生活の問題で私がお聞きいたしたいのはこういうことなんですよ。  今、私ども減税要求をずっとしているわけですけれども、近く出ると思うのですけれども、私のお聞きいたしたいのは、サラリーマンの来年度、六十年度の税負担で、五%のベアがあったときに、例えば独身で年収二百五十万円、夫婦と子供二人で年収三百万円、五百万円、八百万円、一千万円、まあ千五百万円も入れますけれども、そうしたときに、所得税なり住民税なり社会保険料なりにどういうような影響があるか。こういうことは非常に重要なので、例えば年収五百万円の世帯だって、五%のベアならば大体負担増五万円で一三・六%ぐらいのアップだとか、大体数字が出てくるわけですけれども、階層別に分けでそのことを御報告願いたいのと、その説明を願いたい。  そして資料は、委員長、各説明は説明願って、大蔵、自治それから厚生へ、今言ったものの表を当委員会に出すように御指示を願いたいと思います。
  225. 天野光晴

    天野委員長 質問が終わってから…
  226. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 質問が終わってからですね。ただ、これは前提が非常に違いますから、一概に全部集めるということはなかなかちょっとできにくいのですけれども、いずれにしてもそういうことが一つです。  それからもう一つ、これはどなたにお聞きしたらいいのか、企画庁にお聞きをしたらいいのかと思うのですが、私の尊敬するある人がおるわけですが、その人が「非常識の日本経済論」というのを書いておられるわけです。題は「非常識」という題ですけれども、中は常識的な本ですよ。そこで、こういうのがあるんですよ。クイズがありまして、「統一春闘の最大の受益者はだれか」という問いが出てきます。「答え 大蔵省」、「理由賃上げ率が一%高まれば所得税は」云々、これはちょっと統計が古いですから、新しい統計にして、殊に五十九年度で減税がありましたから状況は変わってきますから。賃上げ率が一%高まったときに所得税がどうなるのか、そういうようなことですね。勤労所得税がどうなるとかいろいろありますけれども、そういうふうなものの御説明とそれからその答えをお願いをいたしたい、こういうふうに考える次第です。
  227. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいま委員がおっしゃいました年収区分で、仮に賃金が五%上がった場合の所得税、住民税控除後のいわゆる可処分所得の計算をした表が手元にございますが、社会保険料を加味したものにつきましては、後ほど整備いたしまして御提出申し上げます。
  228. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 住民税、社会保険料はわからないですか。
  229. 古屋亨

    ○古屋国務大臣 住民税の分はひとつ資料として提出いたします。
  230. 坂本龍彦

    ○坂本政府委員 社会保険料についてお答えを申し上げます。  社会保険料と申しましても、前提の置き方によっていろいろ金額が違ってまいりますが、私ども一応標準的な場合というような前提で幾つかの前提を置きまして計算をいたしてみますと、例えば五十九年の年収二百五十万円の人につきましては、政府管掌健康保険と厚生年金保険料額合わせまして十八万四千三百円でございますが、仮に五%年収が上がったといたしまして、六十年の保険料を同じように計算しますと十九万八千六百円、差し引き一万四千三百円の増、こういうことになるわけでございます。例えばそのほかに五百万円のクラスで申しますと、同様に三十六万八千七百円から三十九万七千三百円で二万八千六百円の増、それから一千万円のクラスで試算いたしますと、五十二万二百円から六十二万五千四百円、差し引き十万五千二百円、こういうような例が試算上出てまいります。
  231. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 企画庁から後でお答え願います。  今言ったのは、所得税と住民税と社会保険料ですね。これは五万円ぐらいじゃなくてもっと上がるんですね、全部加えますと。そのほかに、いわゆる公共料金が上がるわけですね、公共料金が。これはどなたにお聞きしたらいいのかな。じゃ、ことし六十年度で、公共料金で下がるものは何と何ですか。上がるものじゃないですよ、下がるものですよ。
  232. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 ただいまのところは、そういう下がる見通しのものは出ておりません。
  233. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それじゃ上がったもの、上がる見込みのもの、ずっと言ってごらんなさい。
  234. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 大きいもので申しますと消費者米価、国鉄の運賃、それから診療報酬、これが主なものでございます。
  235. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 もっといっぱいあるでしょう。教育費もどんどん上がるんじゃないですか。
  236. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 授業料は、六十年度は国立大学については上げることを予定いたしておりません。  大きいものは以上でございます。
  237. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それが一体どのくらい上がって、国民生活のどの層にどういう影響があるんですか。そういうふうなことは、企画庁として当然ある程度計算ができているのじゃないですか。
  238. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 全体といたしまして、消費者物価を〇・二%ぐらい押し上げる結果になっておりますが、階層別の数字は今用意いたしておりません。
  239. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、今言ったように所得税が五%上がる、住民税が上がる、社会保険料が上がる、公共料金の主なものがみんな上がる、下がるものはないというんですから。今までは下がったものがあったんですよ。電話料金が下がったでしょう。それから診察料が下がった。下がったものが二つだけあったわけだ。それが今度はなくなっちゃうわけだ、みんな上がるわけですからね。そういう状況の中に置かれておる。これはまた減税の要求が出ますから、そのときに詳しくどなたかが説明されるのだと思いますけれども、そういう状況になっているわけですね。だから大変なことなんですね。殊に、それを所得の階層別に出さなければ意味がないわけなんです。  総理、この前、総理が言われたのでわからないことがあるんですよ。  一つは、あなたが何か、二百万円から六百万円の人のところが負担が大きいとかなんとかいうことを盛んに言われていましたよね。意味がよくわからないんですよ。二百万円から六百万円、一体それが収入なのか、所得なのか。それから、二百万円とか六百万円という分け方がないんですよ、統計上。これはよくわからないんですがね。ですから、それもあなたのフィーリングで言われたのなら、フィーリングを大事にされる方ですから、それはそれですけれども、どうなんですかね、それはどういうふうなことで言われたんですか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのレベルの所得を持っておられる方々は、ローンの支払いとかあるいは教育費、塾の費用とかそういう面で一番課税の重圧感を受けている、そういう層です、そういうふうに申し上げたわけです。
  241. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、今の教育費は一体どのぐらいに上がっているわけですか。殊に消費者物価との関係で教育費はどうなっているのか、ローンはどういうふうになっているのか。それから、アメリカの場合は、ローンは経費として落ちるわけですね。  竹下さん、これは沿革があるわけですから、これは一九一八年ですか、一八年からずっと続いているもので、今度リーガンの報告の中に何か変えるような、全面的に変えるのではなくて一部変えるような報告も入ってはいるらしいですね。全部を変えるのじゃないようですけれども、いずれにいたしましても、そういう沿革があるにしても、アメリカの場合はローンは、アメリカの社会はローン社会ですから、日本とは違うかもわかりませんけれども、それは経費として落ちるわけですね。ところが日本の場合は落ちないわけでしょう。落ちるものもあるのかな。いずれにしても、今総理が言った教育費の問題、ローンの問題がどういうふうに上がっておるのか。教育関係費と消費者物価との関係は、これは企画庁でしょう。それから、それ全体がどういうふうになっているかということについては、これはどこの官庁か知りせんけれども、今すぐここでないとするならば、いずれの日か階層別にしっかりとした統計というものを用意していただきたいと思うのです。これは当然減税の問題に絡んでくることですから、そういうあれをいただきたい、こういうふうに思っております。  それから、一%上がった場合にどういうふうになるかという企画庁のあれ、新しい数字を出してください。
  242. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 私どもからお出しできますのは、総務庁統計局が調査をしております家計調査の勤労者世帯の数字につきまして計算ができますので、その点はお出しいたしたいと思います。
  243. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 教育関係費の伸びとそれから消費者物価指数の伸びの関係でございますが、五十七年度消費者物価は二・四%の上昇、五十八年度は一・九%の上昇、これに対しまして教育関係費は、五十七年度が五・〇%、五十八年度が三・九%の上昇でございます。(稲葉(誠)委員「どの層が一番大きいですかね、年代的に言うと」と呼ぶ)これは一番新しい時点で昭和五十八年の統計がございますけれども、家計費のうちで教育関係費の負担の高いのは四十五歳から四十九歳、これが一一・七%ということになっております。
  244. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 今言ったようなことで、減税をしなければならないという状況のバックグラウンドというか、そういうふうなものは出てきたというふうに思うわけです。時間が参りましたのできょうはこれで終わりますけれども、私としては最初申し上げましたように、歳出と歳入との比較で、くどいですけれどもギャップが生まれている。そのギャップをどうするかということで公債と税の問題が上がるということになれば、今の政府やり方では税という方に行かざるを得ないような方向になってきておる。その方向の最たるものが直間比率見直しである、こういうふうなことに結論はなるというふうに考えております。  実は、時間の関係で質問できなくなりましたけれども、私は、この前工藤さんがやられた外国税額控除の問題の中で、あの当時知ったときからこういうことを考えている。三菱商事なり三井物産というのは日本では法人税を一銭も納めていないのです。そう古い新聞で報ぜられているのです。これが事実かどうかだけお答え願って、私の質問はきょう終わらせていただきたいというふうに思います。
  245. 村本久夫

    ○村本政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘のような新聞報道がなされたことは承知いたしておりまして、あえて否定するものではございませんが、個別の法人にわたります事柄につきまして答弁をいたしますことは、差し控えさせていただきたいと思う次第でございます。
  246. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そんなものは有価証券報告書なんかを見ればわかるんじゃないですか。そんなもの遠慮することないでしょう。新聞にちゃんと報ぜられているのですからね、これは。三菱商事はゼロですよ。三井物産もゼロ。それから伊藤忠もゼロ、丸紅もゼロ、日商岩井もゼロ、トーメンもゼロ、兼松江商もゼロ。払っているのは住友だけ。住友は海外進出がおくれたからでしょう。現実に海外で税金を払っているのなら私も理解しますけれども、払っているんじゃない。みなしで税額控除されていることまで内国法人が税金払わなくていいなんて、こんな制度はおかしい、こういうふうに考えるわけです。これは時間が来ましたからやめますけれども、とにかく三井や三菱が一銭も払ってないなんて、そんなばかな話ないですよ。そんなの国民感情が許さぬでしょう。私はそれだけ申し上げて、別の機会にまたやらせていただきたいと思います。  時間が参りましたので、終わらせていただきたいと思います。
  247. 天野光晴

    天野委員長 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次に、矢追秀彦君。
  248. 矢追秀彦

    矢追委員 午前中も税制調査会長にいろいろ質問を申し上げました問題を、また重ねてになりますが、政府に御質問をしたいと思います。  その際、冒頭に総理にも確認をいたしましたが、どうも総理のいろいろなここにおける問答を聞いておりますと、絶対に大型間接税は導入しないと確認をしておられるわけですけれども、どうも何かやりたいなという疑いを持たざるを得ないいろいろなアドリブといいますか、そういうものを感じざるを得ないわけです。やはり総理は何か考えているんじゃないか。例えばEC型の付加価値税の変形、そして前回のつぶれましたが一般消費税みたいなもの、あれだっていわゆるEC型ではないわけでして、売上高二千万以下あるいは生鮮食料品は除く、インボイスはやらない、そういうふうないろいろなものがございますから、ある意味では何か抜け道としてそんなことがあるんじゃないか。名前は一般消費税というのは使わない、しかし付加価値税という名前のもとにそういう変形型を何か考えておられるのじゃないか、こういう疑いを残念ながら持つわけですが、そういった点はいかがですか。本音を聞かせてください。
  249. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は所得税、法人税の減税をやりたい、これはもうはっきり申し上げている。ただ、その際に赤字国債に頼るというようなことはよろしくない。そうなると財源を持ってこなければならない。そういう場合にどうするか。そのやり方等についてはまだ自分は考えておらない。というのは、税制調査会でいろいろ御論議も願い、またお考えも聞いて、その上で総合的に最終的に自分は判定したい、そう思っておるからです。  それでは税制調査会がどういう項目について検討するかという問題については、できるだけフリーハンドを税制調査会に与えるのがしかるべきである。ただ、今までの経験から見て国民に誤解を与えては困るというポイント、すなわちこれこれのもの、矢野先生に申し上げたこういう型のもの、あれは困るんだ、そういうことははっきりしておる。それ以外のものについてはともかく税制調査会で自由に御論議を願って、どういう結果が出てくるか自分は見たい。だといって、EC型の付加価値税をやろうということを積極的に自分が決めているわけでも何でもない。そういう問題点については自分は白紙です、そういうふうに申し上げておる。  そしてもう一つ申し上げているのは、リーガン財務長官が提示したあの案というものについては非常に大きな関心を持っておるし、あれについては議会でどういうような対応がとられていくか、そういう点についてもよく検討して見守っていきたい、そういうことも申し上げておる。  以上が今までの総括であると申し上げます。
  250. 矢追秀彦

    矢追委員 白紙であるということですから、今言われた原則はそのまま守られる、こう確信をしておきたいと思います。  次に、これは午前中も触れました租税負担率の問題でございますが、この租税負担率は昨年よりことしも上がっておりますし、先日吉田委員にお示しの資料によりましても二七・五まで租税負担率は上がるわけでございますので、この租税負担率を上げないというあの臨調答申を考えた場合、どの辺がいわゆる許容される租税負担率の上昇幅なのか、この問題を議論したいと思うのですが、その前に大蔵大臣、租税負担率を上げる要因というのは何と何と何ですか。
  251. 竹下登

    ○竹下国務大臣 租税負担率は所得に対して十年間の平均で言えば一・一ということになっておりますが、やはり所得の向上というものがありますならば、なかんずく大きく作用しますのは、刻みが多いから上の刻みへ行った場合というようなことが具体的な問題としてはあり得ます。
  252. 矢追秀彦

    矢追委員 さっきの吉田委員にお示しの資料、ちょっと私間違えまして、二五・七でございますので訂正をしておきます。  私は、合租税負担率を上げるのは三つと言いましたのは、一つは自然増収によって租税負担率が上がる、その次は税率のアップと課税品目の拡大、三番目に新たなるいわゆる新税、こういったものによって租税負担率が上がってくると思うのですが、いわゆる臨調で言われておるものは、この三つのうちどれが含まれてどれが除かれるのか、あるいは三つとも含まれておるのか、その点はいかがですか。
  253. 竹下登

    ○竹下国務大臣 臨調でおっしゃっておりますのは、「租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」こうおっしゃっておるわけでございますから、自然増収、それからいわゆるでこぼこ調整、そういうものはこれには明確に入らない、こういうことであります。
  254. 矢追秀彦

    矢追委員 私はその二番目もちょっと納得できないのですけれども、一番目はこれはある程度やむを得ないと思います。しかし、今の二番目のでこぼこ調整は、大蔵大臣は臨調の言うところの「新たな措置」には入らぬ、こうおっしゃるわけですが、これだって現実に相当上がってきておるわけですね。例えば所得税減税をずっとやらなければ弾性値の関係で随分上がるわけですから、これはもう相当租税負担率が上がってくる。そういった面で、先日も矢野委員がこれに対して統一見解をと言われておるわけですが、それはまだ出てきておりませんし、これも今の大蔵大臣の話によるとでこぼこ調整であるから二は除く。私は二は入る、こう言いたいわけです。だから、この問題で臨調自身も数字は出しておりませんし、それを受けて今大蔵大臣の言われておるこの租税負担率の上げ幅というのはどの辺が限界なのか。さらに「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中にも、要するに欧州のいわゆる公的負担率をかなり下回る負担にとめる、こういうことを言っておるわけですね。全然その具体的な面は出てないわけですよ。かつての経済計画というのにはきちんと租税負担率の目標も出ておりました。最近はもう全然出ない。わけがわからないというか、本当に言葉だけしかないわけです。まあ中曽根総理が非常に言葉がお好きですから、言葉ばかりしか出てこないような経済展望になっておるのかどうか私は存じませんけれども、この辺はやはりある程度決める必要がある。それが一%狂った、二%狂ったからその経済計画けしからぬ、そこまでは言いません。もちろん経済は生き物ですからある程度の変化はやむを得ないと思いますが、要するにどちらも数字がはっきりしていない。それで、租税負担率が少々上がってもいいということであれば、どんどんこれは上がっていく。現にもうこの試算結果だって上がっておるわけです。まあ〇・五%だ。しかし、これは仮定が非常に下に低いわけでして、もう少し経済も成長しますし、所得も上がります。たとえ直間比率をいじったところでこれはまた上がってくるわけですから、私はこの際はっきりとしたものを示しておく必要があるのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  255. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる公的負担とおっしゃいました社会保障負担と租税負担との合計の負担率、これは対国民所得比でございますから、その合計の負担率は中長期的に言えば現状よりは上昇することにならざるを得ないが、しかしヨーロッパよりもかなり下、こう言われておるわけです。この国民負担というのは、結局は資源を公的部門にどれだけ配分するのかという、いわばサービスをどこまでやるかということにおいて結果として決まるものでございますから、歳入歳出両面にわたってこれから厳しく対応していく場合、結局はここまでは最低限必要の国民の享受すべきサービスだ、さようしからばそれに対してはこれだけの負担が要るというこの両者の兼ね合いで決まるわけでございますから、私はこれをあらかじめ定量的に示すということは、経済が生き物であります限りにおきましてなかなか難しい問題だというふうに考えます。  ただ、私、まだ部内で詳しい検討をしたわけじゃございませんが、当時言っておりましたときにヨーロッパは五〇%でした。それが今約五五%に上がってきております、やはり時間がかかりましたから。そういうことを考えるとやはりある程度の上昇というのは現実的にもあり得るのだなと、こういう感じがいたしますので、その間の国民の受けるサービスのあり方ということについては、今いろんな制度を改正したり、年金でございますとかいろいろございますが、そういう中で、一方その受けるサービスに対する対価としての負担というものがおのずから決まって、それが国民所得に対してどれだけの率になるかということが逐次議論される段階で今後出ていく問題ではないか。あらかじめアプリオリに決めるというのは、実際問題、これは矢追さん、あの七カ年計画のときに公共事業二百四十兆といいまして、それから二十何%ですから百九十兆に下方修正したのです。それはこれほどのものになるとは実に夢想だにしなかった。そういうことになると、なお経済が流動的であるときに、あのときの反省からしても、定量的なものをきちんとお示しするというのはなかなか難しい問題だということで、これもこれからの問答の中で逐次明らかになっていかなければならぬ問題だなと、こういうふうに考えております。
  256. 矢追秀彦

    矢追委員 私はそれは難しいことは承知しておりますが、国民の側から見ると、一体これはどこまで負担しなければならぬのか、そういう不安も起こってくるのです、逆に言いますと。今国民だって、まじめな人は財政が大変厳しいということを認識しています。それなりの負担もある程度はやむを得ないと思っている人も、まじめな方はおるでしょう。だから余計にそういった意味では、この負担率というものをある程度かつては示してきた。確かに経済がさま変わりしたのでしょうが、ほかのものは財政収支試算も出る、中期展望も出る、いろんな仮定計算は山ほど出てくるのですけれども政府はこれを目指してこうやります――要するに行き当たりばったり。後で財政の問題はちょっと触れますけれども、これではかじ取りのない、羅針盤のない船と同じになるわけでして、私はある程度の目標は出すべきだと思いますよ。しかもこの仮定計算を見ますと、租税負担率なんというのは〇・一%ずつの伸びですよね。オイルショックのときは別といたしまして、租税負担率が〇・一%のときというのはないのですよ。マイナスのときは一つあります。それ以外は全部最低でも〇・三%ぐらい伸びています。多いときは一%も租税負担率が前年度と比べまして上昇している、そんなときもあるわけですよ。だからこれはやはり私はやらなければならぬと思うのですが、総理はどうですか。
  257. 竹下登

    ○竹下国務大臣 だから租税負担率につきましても仮定の前提を置いたもので、今はまさに参考のために要求に応じて出したというにとどまっておるわけでございます。したがって、租税負担率というものは、やはりそのもとになります租税そのもののあり方というのがこれから議論されていくわけでございますから、あらかじめそれを定量的に出すことはやはり難しいというふうに御理解をいただきたい。  前回の七カ年計画で二十六カ二分の一というのがございましたから、それが念頭にあっての御質問だと思います。私もその二十六カ二分の一の過程を若干知っておりますが、やはり今日は財政改革を進めるに当たってのその手法に対しての問答をしておるわけでございますから、要求されるある種の前提を置いたものに対する資料の提示という形なら幾らでも応じますが、あらかじめこの辺が妥当だということに対する結論は、さらにこれからの問答の中と単年度主義である毎年毎年の予算編成の中で決めていかなければならぬ課題だというふうに認識をいたしております。
  258. 矢追秀彦

    矢追委員 それでは不満ですね。  もう一つ伺いますけれども、ヨーロッパよりかなり低い水準というのはどのくらいなのですか。一〇%ですか、五%ですか。六十五年度二五・七にした場合、大体四〇%近くなるわけでしょう、公的負担率は。六十四年度で二五・二が三六・○と言われていますね、三五・一とかいろいろおりますけれども。そうするとヨーロッパよりかなり低い水準、現在五〇%突破されているわけですから、じゃ四〇ならいいのかとか一五くらいの差はつけるべきなのか。かなりと言ったって、かなりというのはこれはまたいいかげんなものなのですよ。何も九・九九とかあるいは一一・一とかそんな細かいことは私は言いませんが、少なくとも一〇%以下、一〇%以上の差はつくのがかなりなのか。これまた英語に翻訳したらどうなるか。ア・フューとかセベラルとかいろいろあるわけでしょう。少しとかあるいはかなりとか。その点いかがですか。
  259. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これが難しいところでございまして、この臨調の御審議段階でも、あるいは四〇とか、あるいは中には四五とかということを念頭に置いた議論はあったかもしらぬ。しかし定量的なものを念頭に置いた議論はなかった。が、いずれにしても今日のヨーロッパの国民負担率を見た場合に、それがいろいろな問題を派生してきておる。特に日本に比べたりした場合に、ヨーロッパ病とかいろいろな問題が派生しておる。したがって、それよりはかなりということで、日本語でも英語でもかなりの範囲とはということは大変難しい問題だと思います。やはりこうして問答を積み重ねていくうちにかなりというものの範囲が出てくるのじゃないかな、こんな感じでございます。
  260. 矢追秀彦

    矢追委員 どうも大蔵大臣、煮え切らぬのですがね。それは社会主義経済と違って、自由主義経済の場合は予測が立たぬこともよくわかりますけれども、例えば六十一年度予算編成時期の前に五年後の租税負担率は幾らを目指す、あるいは公的負担率は幾らを目指す、これくらいは御勘弁いただきたいとか、こういうふうなことを仮に出されないとしても、じゃ、さっきの議論を聞いていますと、現在の税制改正、いろいろな財政再建の手法、ある程度こういったものが軌道に乗り出した時点ではやるということですか。これは私は来年度より前に出すべきだと思います。今大蔵大臣はできない、できないとおっしゃっていますが、五カ年計画がやはり挫折をした。七カ年計画にしてもまただめになった。わかります、私も。あれも議論したこともございますけれども、しかしやはり国民から見ればただ何にもわからぬじゃ。そうでなくてもこれから高齢化社会ですし、次の世代の人にこれからのことも言わなければならぬ時代ですよ。それはいかがですか。
  261. 竹下登

    ○竹下国務大臣 かなりヨーロッパを下回る、こう言われても、それはだんだん物が詰まってまいりますと、いわゆるナショナルミニマムというような点がいろいろはっきりしてくると、それに応じてかなりというものが、かなりじゃなしに、ややシビアなものになっていくだろうという感じは私自身もいたしております。  ただ、きょうちょっと聞いて、私も速記録を見なければわかりませんが、租税負担率というような問題も税調で議論する、声が小さかったからよくわかりませんでしたけれども、ちょっとそんな御意見があったような気がしましたので、どういう角度からなされるものか。これは我々にとっても大変参考になることだなと思って聞いておりました。矢追さん、六十一年は出せなくとも、もう三年ぐらい議論すれば出せるようになりますとか、そこまで私も先を見て言うわけにもいきませんが、矢追さんのおっしゃっている気持ちは私よくわかります。(矢追委員「気持ちがわかったって」と呼ぶ)それで気持ちはわかっても実態が伴わないじゃないか。その傾向は確かにございます。しかし、そういう問題を議論する中に詰まっていく問題でありますから、きょうの小倉さんの御発言なんかも、はっきり速記録を見て、私もこれは勉強させていただける課題だな、こんな感じで聞いておりましたので、きょうお答えするには今程度が私の限界じゃないかな、こういう感じでございます。
  262. 矢追秀彦

    矢追委員 ただ一つだけ皮肉めいたことを申し上げますが、そういうのを出さないでずるずるしていく間に租税負担率はどんどん上がって、また公的負担も上がって、それこそヨーロッパにだんだん近づいていく。今大臣おっしゃった詰まっていく、詰まっていく、私はヨーロッパにだんだん詰まっていくのじゃないか。その時点でこれくらいでどうですかなんと政府は言いかねないのじゃないかということを非常に心配しておりますので、その点はひとつ先を待った上というのじゃなくて、できるものは今から――公明党はもう既に昭和五十二年にちゃんと公的負担のあるべき姿は計算で出しているのです。ただ、その後の経済状況で一部修正はしました。まだもう一回修正しなければいかぬと思っていますけれども、野党の一小さな政党でも計算できるのですから、これはきちんと決められてもいいのじゃないですか。これはひとつ強く要望しておきます。  それから、時間でございますから、せっかく労働大臣お見えなんで、これは大蔵大臣、感想を聞いてこれから国会で詰められる問題ですが、実は御承知のように減税要求を各野党も出しまして、我が党も出したわけでございます。その中の一つで、昨年はやっていただいたわけでございますが、パート減税の問題でございます。これについては税調の答申でも、要するにパート、内職、こういったものについてはやはり労働法制上の方をきちんと解決しなければいけないという意味のことを言われておりますね。詳しくは読めばいいのですけれども、時間がないので省略いたします。しかし、それなくしても一応パート減税は去年はああいう形でできた。しかし内職の方から見るとちょっと不満もある。この辺を一緒にしたいというのが我々の主張でございます。それはそれとして大蔵省も考えていただきたいのですが、それとともに労働省としてはどういうふうな対応をされていくか。この税制調査会の答申にある部分ですね。
  263. 山口敏夫

    ○山口国務大臣 御承知のとおり、パート労働者は大変ふえておる現状でございまして、特に全体が四百数十万おるわけでございますけれども、その中で女子パートの人が三百三十万強、こういうことで、どうしても女子労働者の場合は家庭とか家族に対するロイヤリティーの方が優先する傾向もございますが、そういう中で非常にパート労働の必然性がふえておる。そういう中で労働省としては昨年こういったパート労働者の労働条件の改善、雇用の安定等の見地から「パートタイム労働対策要綱」というのを策定して、今行政指導を進めておる。公明党の方のパート労働法の御提案を矢追さんの方でもしていただいておるわけでございますが、今労働省で進めておる案との一部の違いは、矢追さんの方の公明党の案は、短時間労働者であってもいわゆる通常の勤労者と同じような労働条件を確保せよ、こういう御指摘の部分があるわけですけれども、どうしても使用者側のパートを雇用する一つのニーズと、それからまたパート労働者側も余り義務規定を通常の勤労者と同じような形にするとパートのメリットが損なわれるという点もございまして、その点は少し行政指導を進める中で調整していこうというふうに考えているわけです。  いずれにしましても、国会の与野党のお話し合いの中で、昨年、給与所得あるいは基礎控除の中で引き上げが行われまして、パート労働者の労働条件といいますか、家計の問題の中にも非常に効果的にこれが引き上げられたということで、労働省としても引き続き、パート労働者の控除額といいますか、税制面における優遇措置を大蔵省初め各省と協議をして対処していきたいというふうに今考えておるところであります。
  264. 矢追秀彦

    矢追委員 大蔵大臣、今の問題は別といたしまして、去年はパートだけやっていただいた。内職の方がちょっとぐあい悪いので今回は内職減税ということで、「内職者に対しては必要経費の拡大などによって課税最低限をパートタイマーと同水準に引き上げる」、こういうことを主張しておるわけでございますが、この問題についての御意見。さらに単身赴任とかその他いろいろな減税要求をしておりますが、今回新たに、これは総理も非常に緑がお好きなものですから、ぜひやっていただけるという期待も込めましてグリーン減税というようなことも提唱しておるわけでございますが、こういう新たなテーマ。さらにもう一つ大事なことは、在宅寝たきり老人の介護減税、こういったことも、これは地方税も含めてやっておりますが、この点に対しての大蔵大臣の御意見をお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、大西委員長代理着席〕
  265. 竹下登

    ○竹下国務大臣 原則的に申しますと、厳しい財政事情のもとで今御提案申し上げております税制改正はぎりぎりいっぱいのものでございますので、何とぞその御事情を御勘案の上御賛同を賜りたいということが、あくまでもこれは私どものお願いでございます。  そこで、昨年行われましたいわゆる俗称パート減税でございますが、これはいわば給与所得控除五十五万と基礎控除三十三万とを足した八十八万というものを税制調査会の御答申を土台にしてまずお示ししておったわけです。それに対して与野党合意でもって二万円の上積み、すなわち給与所得控除を五十七万にして、そのことについて各党の合意が見られたということであったわけであります。したがって、いわば論理構成の土台というものが存在しておったわけであります。その二万円のまた合理性ということにつきましても、所得税法上の控除対象配偶者、健康保険法上の被扶養者、国家公務員等共済組合法上の被扶養者、給与法上の扶養親族等々におきまして二万円を上乗せした九十万もまた御議論の結果、いわゆる合意を得るに至る経過においてその合理性を見出していただいたということでできたわけであります。  ただ、そのときにも各党とも、なるほど、いわば内職とはいささか片手落ちだな、こういう感じがあったと思います。したがって、それについては引き続き勉強しよう、政府も勉強せいよ、こういうことになっておるわけであります。したがいまして、これは労働法上の問題もございますので政府においても検討しておりますが、いわゆる必要経費の認め方等について実効上それらが何かバランスがとれるようにということを従来からも考えてきたということでございますので、確実な理論構成を背景にした論理的な諦め方は、残念ながら、国会においてもまた政府においてもまだ完全にはなっていないということが実態でございます。  それから、その他の問題につきましては、よく言われます教育控除あるいは単身赴任控除等は、前のパート減税との違いが極端にありますのは、税制調査会で、すなわち個別の事情をしんしゃくしてやることにはおのずから限界があって、その基準をつくることは難しい、だから適当でないという答申をいただいておるという、そこのところがパート減税と大きな差があるわけでございます。教育も同じでございます。いわゆる自分で働きながら学校へ行っている者と、そして税金を納める親を持つ人のおやじさんの税が優遇されるということになりますといろんな矛盾もあるとか、あるいは教育そのものはそもそもが助成政策でやるものだとか、そういう議論がなお残っておりますので、私どもといたしましてここで正確に申し上げますならば、御審議いただいておる原案というものが現状において最良であるものとして御審議いただいておるわけでございますから、各党でいろいろ御議論なさる点について私どもはそれにとやかく言う立場にはもとよりございませんものの、政府として申し上げるのは、提案しておるものに対して何とぞ全会一致と、まあ、何とぞこの原案が通過するように御協力を賜りたいというのが答弁の限界ではないか、こういうふうに思います。長くなりまして、おわびします。
  266. 矢追秀彦

    矢追委員 ぜひ、財源もきちんと提示をして各党とも出しておるわけでございますので、減税の方をひとつよろしくお願いしたいと思います。  税問題はこれで終わりまして、次に財政の問題に入りますが、財政の運営が大変厳しい状況でございますが、私は今回時間が余りございませんのですべてはできませんが、指摘をしておきたいのは、余りにもつじつま合わせ、あるいはまた余りにもいいかげんな財源あさりといいますか、そういう嫌いが非常に強く出た傾向が最近見られる。特に中曽根内閣以降、非常にこれが顕著に見られておると私は指摘せざるを得ないわけでございます。その一つに、いろんな国庫負担の削減、これをまた次の年度に送るとかそういうのがございますが、その一つの典型的なものをまず最初にちょっと取り上げさせていただきたいのですが、これは行革特例法の延長問題、特に厚生年金勘定から一般会計への繰り入れに関しまして、この過去の経緯そして現在の状況、また今年度どうなのか、その点をまず御報告いただきたいと思います。
  267. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えを申し上げます。  厚生年金保険の国庫負担の繰り延べでございますが、昭和五十七年度から実施をいたしております。この内容は、厚生年金保険法で定められました国庫負担のうちの四分の一に相当いたしますものを予算上繰り延べるというものでございますが、五十七年度に実施いたしました繰り延べ額は、当初予算の金額で申しまして千八百三十億でございます。五十八年度は二千百七十億、五十九年度は二千四百二十億でございまして、現在までのところ、五十七年から五十九年の合計で六千四百二十億円の繰り延べを実施をいたしております。六十年度におきましては、この措置を一年間延長いたしまして、三千五十億の金額を繰り延べるということになっております。
  268. 矢追秀彦

    矢追委員 これは厚生年金の減額分だけでございまして、これに運用収入相当額、いわゆる利息をつけますと、今九千四百七十億と言われましたが一兆七百七十五億になります。さらに、厚生年金だけではなくて船員保険あるいは国家公務員共済あるいは地方公務員共済あるいは私学共済、農林共済等合わせますと、六十年度を入れまして一兆一千九百十三億円ということになるわけでございまして、これが一体来年度とうなってくるのか、これは大きな問題であると思います。  まず最初に申し上げたいのは、昭和五十六年十月二十八日に行革特別委員会で渡辺大蔵大臣は、この点はきちんと後の手当てをするということにもなっております。さらに五十八年九月の行革特別委員会において、これは竹下大蔵大臣と林厚生大臣が同意の上の統一見解が出ておりますが、この二点の趣旨をまず伺いたいと思います。
  269. 竹下登

    ○竹下国務大臣 渡辺前大蔵大臣、それから私と林厚生大臣との間の統一見解、それはおっしゃるとおりでございます。何分にもあの行革特例法というものを御協力をいただきまして成立さしていただいたそのときの物の考え方というのは、あくまでもいわゆる五十九年に赤字公債依存体質から脱却するという当時の財政再建の第一義的目標に合わした特例措置であったわけであります。したがいまして、これに対しては、私は考えようによると一番苦労しましたのは、昨年の暮れお答えするときに、どうしても延長をお願いしなきゃならぬじゃないかなという気持ちを持ちながらも、やはりそれの方針が確定するまでの間は今までの考え方が継続しておるわけでございますから、苦しい答弁をいたしたことを私も今でも思っておるところでございます。したがって、五十九年というものの努力目標というものに対して、第二次石油ショックに伴いますいわば世界同時不況という予期せざる事態から租税収入、なかんずく五十六年、五十七年、大変な歳入欠陥というようなこともございました。したがって、特例公債を五十九年に脱却するということは困難となって、いわばギブアップをいたしたわけであります。したがって、新たに六十五年度というものを設定いたしました今日におきまして、やはり今の状況では、財政収支の改善を図る見地からは、行革特例法によりますところの特例措置について、昭和六十年度における所要の継続措置をお願いせざるを得なかったということで、ひたすら御理解をお願いするしかないということでございます。
  270. 矢追秀彦

    矢追委員 六十年度は今言われたようなことでいったわけですね。  私はこれから聞きたいのは、六十一年度以降厚生年金についてどうされるのか。というのは、年金法が変わりますね。変わった場合、この辺が変わってくると思うのですが、いかがですか。
  271. 竹下登

    ○竹下国務大臣 六十一年度より返済をすべきであるという、基本的にはそういうお考えであろうかとも思うわけでございますが、年金法の未確定な分も、確かに今おっしゃいますように六十一年度から実施されるという問題もございますので、従来から、積立金運用収入の減額分を含めまして、将来の年金財政の安定が損なわれることのないよう、特例適用期間経過後においては、国の財政状況を勘案しながら、できる限り速やかに繰り入れに着手するという方針は変わっていないわけであります、一年延ばした後におきましても。したがいまして、今もその考えは基本に持っておるわけでございます。  特例適用期間経過後の繰り入れという問題になりますと、現時点では明確に申し上げられないところでございますが、今後の財政状況を勘案しながら、可能な限り速やかに繰り入れに着手したいという考え方はそのまま維持しておるわけであります。
  272. 矢追秀彦

    矢追委員 それじゃちょっと困るのですよ。要するに、行革関連特例法は、特例適用期間中の特例措置を定めるものであり、その特例適用期間経過後は本則に戻る、こうなるわけですね。これはもう変わりませんね。それで、仮にまた来年延長されたとした場合、それでも先ほど申し上げたこれだけの、厚生年金だけで六十年度末利息つき一兆七百七十五億、利息を引いたとしても九千四百七十億、これだけたまっておるわけですね。これはどうするのですか。できる限りなんて、そういうことで済むような金額じゃないわけですね。しかも、年金法が変わればこれだけの巨額のものはまた取っていくわけにもいかない。その辺はいかがですか。
  273. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわば、まさに昭和六十一年度の取り扱いにつきましては、現段階で確たることを申し上げられませんが、財政状況は引き続いて厳しいものと予想されます一方、今おっしゃっておりました年金制度改革の実施が予定されておりまして、厚生年金に対する国庫負担仕組みも基本的に変わることになっておる。したがって、六十一年度においで現行の行革関連特例法により繰り述べ措置をさらに延長することは、これは私も問題があるなどいう事実認識はございます。だが、これは要するに一挙に必要な場合に対しては迷惑をかけない、いわば財源の調整措置という考え方で今日までお願いしておりますが、いわゆる法律そのものが変わっていくわけでございますから、その辺に関しましては現行の行革関連法による繰り述べ措置をさらに延長することには私も問題があると思っておりますが、法律の行方については、所管でない私から申し上げるのは必ずしも適当でないかもしれません。
  274. 矢追秀彦

    矢追委員 そうしますと、延長はしない。できないんですよ、現実にもう。やはりここに書いてあるとおり、きちんともとへ戻さなきゃいけないわけです。そうすると、これだけのお金をどうやって返すのか、こういうことになるわけです。今言われたようなことではちょっとこれは、来年のことをと言ったら予想できないとおっしゃいますが、現に来年に相当、ことしが景気が猛烈な成長でもして税収があればいいですけれども、そんなことも望めないわけですから、幾らいい楽観論をとりましても、これは相当のお金なんですよ。要するに、返すと約束して返さないわけですから、これは相当大変な、ほかの官庁の問題ではなしに大蔵省の問題なんですから、しかも総理が一番御熱心にやってこられた行政改革の関連の問題として出てきているわけですから、これはどうしても返してもらわねば困るわけですよ。元金の返済のみならず、これは利息もついておるわけですね。だから、今のような答弁では困るんですね、きちっとした手だてを示してもらわなきゃ。仮に六十年度を乗り切ったって、もう絶対来年度には問題になるんですから。  私はあとまだいっぱいあるんですよ、こういう種類のものが。本当に借りてきて返さぬというのがいっぱいあるのですよ。だから極端に言うと、大蔵省は金借りて返さぬということをどんどん奨励しているんじゃないか。こんな財政では困るわけですよ。だから、この問題をまずきちんと明確にやっていただきたい。総理、大分お疲れでさっきからお休みになっておりますけれども、これはちょっと大変な問題ですから、ひとつよく聞いていただきたいと思います。まず大蔵大臣、総理、お二人から。
  275. 竹下登

    ○竹下国務大臣 六十一年度の取り扱いをどうするか。これは現段階においては確たることを申し上げられませんが、財政状況が、今矢追さんおっしゃいましたように、大変変化があるとも思えない。すなわち、引き続き厳しいものとならざるを得ないというふうに一方予想される。そして一方、六十一年度より年金制度改革の実施が予定されております。厚生年金に対する国庫負担仕組みも、基本的に仕組みそのものが変わることとなっております。したがって、六十一年度において、お答えできることは、現行の行革関連特例法による繰り延べ措置をさらに延長するということは、私もこれは問題があると思います。そうなると、恐らく矢追さんは、さようしからば別の特例措置をまた検討するんじゃないかとか、こういう疑問も出るかもしれません。だが現段階において言えることは、まずは今の特例措置を延長するということは問題があると思います、法律自身の実施が六十一年から行われるわけでありますから。したがって、それまでの間にこちらとしては十分検討していかなければならぬ課題だ。特例法の延長の中で同じ仕組みをそのままやるんじゃなくて、いわば法律が変わっていくということが前提になっておりますだけに、その問題が重大な認識であるということは、私も承知しております。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 年金の問題につきましては、この法律をつくりまして延ばしたときにも、できるだけ年金会計の安定を損なわないように、将来、財政状態を勘案しつつ、できるだけ早く繰り入れをやる、そういうふうにたしか約束したことでございまして、これは今日も守らなければならぬと思っております。六十一年度予算編成に際しては、そのときの財政状況やらすべての状態を勘案しまして、この約束を実行できればできるだけ早く実行できるように努力してまいりたいと思います。
  277. 矢追秀彦

    矢追委員 答弁は不満でございますので、ひとつこれはペンディングにしておきまして、また大蔵委員会等でじっくり勉強させていただきたいと思います。  とにかく今、総理、簡単に財政事情を勘案してなんておっしゃいますが、そんなことはできない状況なんです。できない代物なんです、これは。ほかの何かちょっと借りてきたのを返すというのじゃないわけですから。しかも、非常に巨額のお金であるし、しかも年金法が変わるという新たな事態の中で起こるわけですから。ただ何とかなるわいというものでは絶対ないわけですから、その点はひとつよく覚悟しておいていただきたいと思います。  次に、こういうふうな種類のものといたしまして、昭和六十年度予算で政管健保が黒字を出したということで九百四十億円を差し引いて国庫補助を行う、こういうふうにしたわけですね。これは私はけしからぬと思うのです。というのは、政管健保はたまたま黒字になった。しかし、これはいつ赤字になるかわからないようなものですね。しかも、これは一割負担の導入によって患者さんもお医者さんに行くのが非常に減った、そういったこともいろいろ影響しまして黒になってきたと思いますが、とにかく一時しのぎの措置としてこの九百四十億を借りてきた、これも一つの大きな問題があります。  その次には、揮発油税の収入の一部千百十億円を一般会計を通さないでバイパスを使って直接道路特会に繰り入れをいたしました。このやり方も大変問題であると思います。要するに、こういったやり方をされておる。  そのほか、行革関連特例法による歳出削減の効果ということでいきまして、要するに繰り延べをされたもので、先ほどの厚生年金等の国庫負担も申し上げましたが、それ以外に住宅金融公庫補給金の一部繰り延べ、これは昭和六十年度で千三十四億円、さらに国民年金の平準化措置ということで二千五百五十六億円、さらに外航船舶建造融資利子補給金の一部繰り延べ、これは五十八億円、これだけ足しましても六千九百六十三億円、これがこの六十年度で歳出削減をやって繰り延べをしておるわけですね。そういうふうなことをしたのは何かというと、予算、要するに一般歳出というものをゼロにしなければならぬ、こういう大きな目標がある。これはやらなければいけません。だからと言って、何でもかでもこういうふうなことをしていいのかどうか。私は先ほど冒頭に申し上げたように、行き当たりばったりというか、財源あさりというか、とにかく穴があいたのを何とか埋めなければいかぬということで血眼になってやられた、その努力は私は非常に多とします。一生懸命この大変な財政を何とかしなければいかぬということでされている点は多としますが、やっていいのと悪いのと、それからそれが後年度にツケとなって大変なことになるということを承知の上でおやりになったのかどうか。とにかくその場しのぎの六十年度予算編成であった、こう指摘せざるを得ないわけでございますが、今申し上げた、まず最初の政管健保から九百四十億円、これはどういう根拠で正当と認められて出されたのですか。私はこれは非常にまずいと思いますが、いかがですか。
  278. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かにおっしゃいましたように、揮発油税の道路特会直入、政管健保の繰り入れ調整、厚生年金の先ほど御質問がありました国庫負担の繰り延べ、あるいは登記特会の創設、住宅金融公庫、これも御指摘がありました補給金の繰り延べ、さらには定率繰り入れの停止、それから高率補助率の引き下げ、こういうのが今度、今言われました苦心の成果とでも申しましょうか、苦心をしたところでございます。  お尋ねの政管健保の繰り入れは、一般会計は政管健保に対し給付の一六・四%の補助等を行っておりますが、単年度収支の黒字が発生している政管健保財政財政状況に着目しまして、政管健保の運営には支障が生じない範囲内において特例的にその繰り入れの調整措置を講ずるものであります。本措置は、このように財政資金全体としての効率的使用をねらった一般会計と特別会計との間のいわゆる財政調整措置ということになるわけであります。
  279. 矢追秀彦

    矢追委員 次の揮発油税の問題はどうですか。これも大変な問題と思いますが、問題とまず大蔵大臣は認識されておるのかどうか。こういうことはなぜやられたのか。公共事業費を減らさなければいかぬ、こういう命題がある。それをやるためにこういう苦肉の策をやられて、公共事業はこれだけ削減しましたよ、千五百五十一億ですか、それを正当化するためにやみでこれを流しておけば一応減ったままでいくわけですから、これを入れたら差が約五百五十億ですか五百四十億ですかぐらいのマイナスで、それはまた補正予算でちゃんと前にやっているわけですから、実質は公共事業は合ふえているわけですよね。そういうごまかしをやられては困ると私は思うのですが、いかがですか。
  280. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、いわゆる公共事業についての、このなかんずく地域ばらつきのあります地方等からその要請が強かったということは事実でございます。しかし、私どもといたしましては、道路について、その整備のおくれから交通困難とかいろんな迷惑をかけて、第九次道路整備五カ年計画の達成に努めていく必要がございますけれども、その道路整備を進めていく上で特に整備のおくれが苦しい地方道の整備を図るということで、地方の道路財源対策として道路特会からこの地方公共団体に対して地方道路整備臨時交付金というものを交付するということにしたわけでございます。この交付金は優先的に整備される道路の財源でありますところから、一般会計の財政事情に左右されることなく安定した金額が確保される必要があるということで、その直入という措置をとって法律改正をお願いをしておるということになるわけであります。
  281. 矢追秀彦

    矢追委員 あと十二分しかございませんので、残念ながらまだまだこの問題がたくさんあるんですが、一応整理をいたしましてまとめてお伺いをしたいと思いますが、これだけではまだないわけでして、先ほど大蔵大臣、定率繰り入れの問題もおっしゃいましたけれども、そのほか最近のこのいわゆる財政運営、私は財源あさりと言いたいわけですが、昭和五十年度以降、この十年間を見てみますと、赤字国債の発行時のいわゆる特例債を出すためのいわゆる財特法と言われてきたものですね。昭和五十年度から始まっておりますね、公債の発行の特例に関する法律。これは五十一年、五十二年ずっと続いてまいりましたが、五十六年度以降は随分変わってきたと思うのですね。というのは、まず五十六年度から財特法が財確法に変わりましたね、財源確保法に。そうして中央競馬会、電電公社納付金、開銀、輸銀の利益金、産投会計からの繰り入れ等、そういうのを組んでまいりました。五十八年度の財確法は定率繰り入れの停止、自賠責特会、あへん特会、造幣特会、そして電電公社、中央競馬会の納付金、こういったものを組み込んでまいりました。五十九年はついに借換債、赤字国債を十年で現金償還すると言いながらついにこの借換債に踏み切ったわけでして、この五十九年度は特に等というのがついておりますね、財源確保等という、今までとまたこれは変わりました。  こういうふうな、要するにこの過去十年を見てもこれほどぶれてきている。しかも先ほども申し上げましたように、特に中曽根内閣になってから大変こういった財源あさりのやり方が、とにかく血眼になって財源を探してきて何でもかでも突っ込んでいく。さっき言ったように、ちょっと政管健保が黒字になったらそれ貸してくれ、そして借りたものは返さぬ、これはさっき御指摘をしたとおりでございまして、こういうふうな財政運営はもう私は六十年度が限界ではないか。まずその前に過去を反省してもらいたいです。こういうことはよくなかったということをぜひはっきり表明してもらいたいと思います。こういったことでいきますと、まず来年度を展望したら国債整理基金の繰り入れもこれは復活しなければいかぬですね。定率繰り入れはもうちょっとこれ以上やるとあと残りがなくなってしまう。これも復活せざるを得ない。それにもお金は大分かかります。一兆八千六百億かかる予定ですね。  さらに、公共事業費の削減といいましても、これも限界に来ている。先ほど言ったようなバイパスまでつくってごまかして同じぐらいにするというぐらいですから、これもなかなか削減ができない。これを二つ足しただけでも二兆円たしか要るのですね、歳出増。しかも歳出は、一般会計の中における実際の使えるお金というのは年々減ってきていますね、これはもう御承知のとおり。昭和五十年には一般会計予算総額に対する一般歳出の構成比は七四・四あったのが昭和六十年度では六二・一に減っておる。この調子でいきますと、五%という伸びを仮定計算しても昭和六十五年には五八・四、ゼロ%としたら五二・四、もう半分しか使えない。こんな財政はもう大変な危機状況も破綻状況。しかし、そういうのを今までずるずるずるずると歴代政府財政再建を怠り、今日まで追い込まれてしまった。しかもなおかつ、その大変な財政ということに対する、総理も大蔵大臣もそれは大変だと思っていらっしゃると思いますが、まだまだ認識は甘いと私は指摘をせざるを得ない。とにかくこういう予算編成で繕っておいて、その場しのぎをやったら何とかなるだろう、いよいよなくなったらあとはもう税金取ればいいんだ、これでは私は国民は納得しない。こういういいかげんな財政運営ではなくて、きちんとした展望を持って、これから五カ年計画でも七カ年計画でも結構です、あるいは十年後でも結構です、やはり国民に納得のできる、行政改革を含めた、財政再建はこうやります、そして税については不公平をこうやります、その上に立って国民負担はこれぐらいはやむを得ないからお願いしたい、こういう筋だと思うのですが、その一番大事な、しかも総理が前内閣以来行管庁長官としても頑張られたこの行革、これも軌道に乗っていないし、総理就任以後のこの財政運営を見ておりますと問題が余りにも多過ぎる。まだまだ私は言いたいことは山ほどあるのですが、時間の関係でこの程度にとどめますが、まずこの財政運営が特に中曽根内閣になってから大変問題であるということはお認めになりますかどうか。  さらに財政再建。その前に、今のこの財政危機というのは大変な状況だということ。ただ、国民が果たしてそこまで感じているかどうか。アメリカも大変な財政赤字、しかし経済は伸びているからいいんだ、いいんだということで、ドルは高くなっている。日本財政赤字の方は何とかするんだから、国は倒産することはないんだからほっておけ、目先は、経済がよきゃいいんだ、こうなったら私は困ると思うのです、そのツケは必ず我々の子孫に行くわけですから。その点で総理は戦後の総決算を言われ、もし今後名宰相としての歴史に名をとどめたいなら、この本当の財政危機を本気になって乗り切らなきゃならぬと思います。それに対する総理、大蔵大臣の具体的な、今まで申し上げた私の考え方をお認めになるかどうか、さらに今後の決意、また具体的な方途を出されるなら今後どういうスケジュールでやられるのか、お伺いをして質問を終わりたいと思います。
  282. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まずこの財政の厳しさ、そしてまた日本は貯蓄率も高うございますから、いわばこれだけの公債に依存しておりましても、言ってみれば大変に金利が上昇してという状態にはありません。したがって、先般のレーガン大統領とモンデール候補とのアメリカの放送討論会で両者ともが言っておられたのは、アメリカにおいても税が高い、安い、物価が上がる、上がらないはよく理解できるが、財政赤字というのは自分自身が金を借りておるわけではないので非常にわかりにくいという表現があっておりましたが、日本はアメリカよりもなお金利は安うございますし、したがって民間企業に資金の圧迫を与えておるというようなこともございませんだけに、財政赤字というのは非常に国民皆様方にはある意味においてはわかりにくいことであろうと思うわけであります。したがって、折に触れ、我々としては子孫に対する、今矢追さんおっしゃいました孫子の時代にツケを回す結果になるということに力点を置いてPRをいたしておるところでございます。  それで、確かにお話のありましたように、昭和五十五年、当時の状態の中で財政再建元年ということを期そうとしてやりましたときには、またいわゆる予算要求限度枠が一〇%プラスでございました。五十六年が七・五%プラスでございまして、五十七年でやっとゼロにして五十八、五十九、六十とマイナスの限度要求枠を設けて今日に至っておった。したがって、国民の皆さん方にもある意味においてはその痛みも感じながら、財政というものの実態も徐々に御理解をいただいて、いろいろな角度からの御声援をいただいておるわけであります。  ただ、いつでも申しますように、直ちに、さればといって、例えばきょう御指摘のあった租税負担率はおよそこの辺、あらゆるサービスのナショナルミニマムはおよそこの辺という、メニューを全部そろえて国民皆様方に理解と協力を求めるだけの準備はまだ整っていない。言ってみれば、その前段階において、このようにして矢追さんと問答をしながら、国民皆様方の理解も得ながら、青写真を少しでもつくる、その色彩を生み出すことに努力をしておるというのが現段階ではなかろうかというふうに考えるわけであります。(矢追委員財政運営に対する反省は」と呼ぶ)  財政運営に対する反省というのは、私も中曽根内閣ができましてからずっと大蔵大臣をしておりますので、財政運営の責任者として、国民皆様方の協力を得ながら、国会の協力を得ながら、厳しい選択の幅の中を一生懸命やっておる。しかし、至らぬことがあれば絶えず御叱正を賜りたい、このようにお願いをいたします。
  283. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、政権担当以来の厳しい財政状況の中にありまして、国民の皆さんや野党の皆さんの御協力をいただきまして、全力を尽くして努力してきたつもりでございます。大まかに言って、財政を立て直すという大局的な方向に対しては的確な道を歩みつつあると思います。ただいまのゼロシーリング、マイナスシーリング、あるいはそのほかの考え方や、あるいは電電公社そのほか公社の株式の処分とか、そういうような方向を突破するというようなことは、実際は今までの常識では非常に厳しい道でもあったわけです。しかしこれができたということは、行革臨調発足以来の皆さんの御苦労や国民の皆さんの御理解で辛うじてこういう道をとることができたと思います。  しかし、その間におきまして、そういう御指摘するようなつじつま合わせ的なことが絶無かといえば絶無じゃない。それは確かにおっしゃるような点があったと思います。しかし、これも救済できないような悪質な措置をしているとは思いません。我々が今後の努力によりまして、総合的に、長期的に一歩一歩解決できる問題でありまして、今後も国民の皆さんの御理解をいただき、また野党の御叱正もいただきまして、一歩一歩改善してまいりたいと思っておる次第でございます。
  284. 大西正男

    ○大西委員長代理 これにて矢追君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田正勝君。
  285. 岡田正勝

    岡田(正)委員 この委員会集中審議でありまして、財政、経済に関する集中審議委員会でございますが、特にお許しをいただきたいと思いますのは、けさほどの新聞に報じられておりました、まことに悲惨な、あのペルシャ湾内における日本人船員が初めてロケット攻撃を直撃弾を受けて死亡する、しかも一人は負傷するというような不祥事が発生をいたしました。このことにつきましては、実は皆さんももうとっくに御承知のとおり、経済大国の日本と威張っておりましても、そのエネルギーのほとんどをペルシャ湾に頼っておる我が日本におきまして、今、外国船籍百隻、日本船籍で五十七隻、百五十七隻の船に全日本海員組合の組合員の諸君が、日本人ばかりが三千九百人乗って船を運転して油を運んでおるのであります。もしこのシーレーンが万が一というようなことになれば、とまるというようなことがあれば、我が日本経済の行方はどうなるか、これはもう論ずるまでもありません。  こういう重大な日本経済の行方にもかかわる問題でございますので、本日は関係組合の責任者の皆さんも実はこの傍聴席にお越しになっております。大変心配をしておるのでありまして、緊急なことで恐縮でありますが、以下五点ほど質問を申し上げ、要望を申し上げたいと思いますので、真剣なる対処をお願いをしたいと思うのであります。専門的にわたります点は、大臣でなくても事務当局で結構でありますから、どうぞひとつ一番最後に総理の御決意を伺いたいと思います。  まず第一の問題は、マスコミでも大きく取り上げられていますように、去る二月の十八日、ペルシャ湾において日本人の船員が全部乗り込んでおります貨物船アルマナク号がイラン軍とみなされる戦闘機に攻撃をされまして、乗組員に死傷者を出すという重大事件が発生をいたしましたが、本件について政府はどのように対処していただきましたか、御回答をお願いをいたします。  なお、総理大臣には一番最後に答弁をいただくのでありますが、亡くなった方の顔もわからぬじゃいけませんから、ここに遺影がありますので、これをよく見て真剣な答弁をしていただきたい。
  286. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  今回の攻撃によりまして日本人に犠牲者が出たということは非常に遺憾でございまして、実はきょうの午前中イランのガバヒ大使を私が招致いたしまして、現在の段階では、一部新聞報道、情報でございますけれども、イランがやったという蓋然性が強いという報道に基づきまして、まず真相究明につきまして徹底的に協力してもらいたいということを私は申し上げたわけでございまして、ガバヒ大使も、本件の重要性にかんがみまして至急本国政府に照会すると。同時に、昨日でございますが、イラン、イラク双方に対しまして、照会、まず事実確認をいたしたいということでやったわけでございます。また、ガバヒ大使に対しましても、イラク、両方に対しましても、この種の攻撃というものに対してかねてから自粛を要請してまいったわけでございますが、再び日本政府立場を繰り返し申し上げたということでございまして、現在、事実確認のために大使館、特にドバイにちょうど船が入港しておるものでございますので、野見山大使を通じまして、早急に船長その他にコンタクトさせながら、実情を現在確認しつつあるという状況でございます。
  287. 岡田正勝

    岡田(正)委員 紛争地帯とはいえ公海において民間の船を攻撃するということは、もうまことに許しがたい暴挙であります。政府は今回のこの事件を速やかに究明をし、関係各国に厳重な抗議をするとともに、犠牲者への補償を求めるべきだと思っておりますが、いかがでありますか。
  288. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  まず、先ほど申しましたように、私たちとしましては、事実確認、どこの国の飛行機が本当にやったのかということをまず確認する必要がございます。その上でなければその国に対して十分なアクションがとれない。また、その状況を十分に把握した上で、その上でしかるべきいかなる措置が一番適当であるかということを考えたいと思っておりまして、まず事実確認ということを現在急いでいる状況でございます。
  289. 岡田正勝

    岡田(正)委員 どうもそういうところが紋切り型の答弁というのでありまして、事実の確認を急がなければならぬ、今事実の確認がまだできておりませんというところまではわかります。私が言っておるのは、事実の確認ができて、例えばイランの空軍機が空爆したのであるということが明確になった場合、これに対する補償要求というのは当然やるべきじゃないんですか。政府はそれぐらいの意思は表明できぬのですか、この席で。
  290. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えいたします。  まず仮定論でございますが、一般論といたしまして特定国がこのような問題を起こした場合にいかなる措置をとり得るかという御質問と了解いたしますが、その場合に、ある国の国際法上の違法行為によりまして我が国国民が被害を受けたという場合に、我が国は当該国の国際法上の国家責任を追及するという立場にあるわけでございます。したがいまして、国際法上、例えば追及の態様といたしましては、陳謝とか責任者の処罰、損害賠償、再発の防止などの請求がございます。また、別途民事の要求といたしましては、当事者が第一次的にまず民事の問題を起こして、その後政府がどうするかということでございまして、国家責任としてはまずこの種の対応が考えられますが、それをどういう形でどういうぐあいに組み合わせるかは、もうちょっと事実を調査した上で最大の配慮をいたしたい、こう考えております。
  291. 岡田正勝

    岡田(正)委員 私は大変不満であります。今、法律や規則の解説をしてもらいに私はここに立っておるのではありません。現実に一人の日本人の船員が死んだのです。そしてけが人も一人出ておるのです。そういうことが――どこの飛行機がということがはっきり事実確認ができた場合、相手国が認定された場合、そんな解説書を並べるようなことを言っているのですか。日本は補償を要求しないのですか。今私の要求大臣の中に、経済、財政問題でありましたから外務大臣がお見えにならぬのがまことに残念でありますけれども、少なくとも外務省の主要官僚であるものが補償を求めるかどうかということが言えないのですか。もう一回、はっきりしてください。
  292. 三宅和助

    ○三宅政府委員 仮定論でございまして、事実を調査した段階で仮にあることが違法責任ということでありますと、賠償責任の問題というものが出てくると申し上げましたが、まだ事実の調査中の段階でございますので…
  293. 岡田正勝

    岡田(正)委員 もういい、もう要らぬ。そんな答弁欲しくない。  総理大臣どう思われますか。
  294. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 事実調査を急ぎまして、もし不法行為によるものであり、相手国がわかれば早速抗議をやり、あるいは損害賠償以下必要な措置をとるようにいたします。
  295. 岡田正勝

    岡田(正)委員 了解。さすがは総理です。ありがとうございました。  次に、ペルシャ湾は我が国石油輸入の重要ルートでありますが、こうした危険によって船舶の航行がストップするようにでもなれば我が国経済は麻痺をしてしまいます。この海域における安全確保体制はどのようになっていますか。
  296. 三宅和助

    ○三宅政府委員 この問題につきましては、まずペルシャ湾の安全確保のためにはイラン、イラク双方に対しましてこの種の攻撃のないことを、自粛を要請するということでございまして、これにつきましてはありとあらゆるレベルで、私自身もイラク、イランを訪問しまして強く訴えてまいってきておりますし、また事件が起きるたびにもこの種の自制を要求してまいっておりますが、基本的にはやはり紛争がこの地域にあるということでございまして、それゆえにこそイラン・イラク紛争の和平のための環境づくりに日本が一生懸命努力しておりますし、現実に安倍外務大臣が昨年の国連総会におきまして、ペルシャ湾の安全航行と港の修復を含む、また化学兵器の使用禁止を含む一つのパッケージ案を出して、これに努力することによってこの地域の安全航行を何とか確保するということのために努力してまいったわけでありますが、引き続きこの種の努力をすると同時に、この種の事件が起きましたときには、情報収集の最大限の努力をしてまいりたい、こう思っております。
  297. 岡田正勝

    岡田(正)委員 民間におきましてはこういう危険な水域でありますから、自衛手段といたしまして衛星を利用いたしましたインマルサットという直通電話を敷設などいたしまして、全船舶が早く情報が収集できるようにというような対策まで講じておっても、警報も何にも発することなく、いきなり直撃をされたというような事件でございます。政府といたしましてもより以上海上安全が確保されますように御配慮いただきますようお願いしておきます。  次に、現在この方面に就航しております日本船及び日本人船員の乗船をしている外国船は、どのくらいいるのでありましょうか。外国船籍を含め日本人乗り組み船舶への緊急時の連絡及び保護体制というものは、一体どうなっているのでありましょうか。
  298. 仲田豊一郎

    ○仲田政府委員 お答えいたします。  二月二十日現在でペルシャ湾に在湾しております日本商船隊は三十七隻でございますが、このうち日本籍船は十六隻、また日本人船員の乗り組んだ外国籍船が八隻、したがいまして、残りの十三隻は純粋の外国籍船ということになっております。  ペルシャ湾における安全体制として、運輸省もまた船主協会、海員組合一体となりまして緊急時の連絡体制を考えて、現在までとっているわけでございますが、東京におきましてはペルシャ湾在湾船社連絡会というのを設けまして、ここで情報を一元的に処理する。つまり民間から上がってくる情報もここに全部集中し、かつ、外務省その他の国際的な場で得られた情報もここに入れるということで、またこの情報を直ちに、現在申し上げましたほぼ三十隻ぐらいペルシャ湾に日本関係の船がございますが、ここにも連絡する、お互いの動静をお互いに把握している、こういうような形で、かつ、先ほど先生から御指摘がありましたようなインマルサット電話ですか、それを備えている船を優先的に配船する。この電話がございますと緊急時にはすぐ、その辺の電話と同じような連絡がとれますので、そういうような体制をとってやってきたわけでございますが、今回の事件にこれが必ずしもぴったりと動いたかということにつきましては、まだまだ反省、再検討、それからこれからの対策に反映させていかなくちゃいけない面がたくさんあるかと思います。
  299. 岡田正勝

    岡田(正)委員 なかなか大変なことだと思いますが、後顧の憂いがありませんように、ひとつ対策をよろしくお願いをいたします。  次に、これまで海外、とりわけ中東、ペルシャ湾方面における安全情報の把握は、専ら民間に依存しているとされております。国としての情報把握とその周知は、極めて不十分だと言われておりますが、一体その実情はいかがでございますか。ペルシャ湾における安全航行は国民生活にとっても極めて重要なことでありまして、この海域を航行する日本人船員の保護のためにも、もっともっと国が正確な情報を迅速に周知すべきであると思っておりますが、いかがでありますか。
  300. 三宅和助

    ○三宅政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、このペルシャ湾というのは日本全体にとりまして非常に重要な地域でございまして、私たちといたしましてもいろいろなソースを通じまして情報収集に努めております。例えば、各任地における武官あるいは相手国政府その他、関係機関との間には特に情報収集に力を入れておりまして、例えば立入禁止区域、危険区域その他につきましては、たちどころにこれを収集いたしまして関係方面に伝えるということをしておりますし、また、外務大臣なりあるいは関係局長が訪問した場合に、常にこの問題を取り上げまして、情報収集するとともに、先ほど申しました自制の努力その他、和平の環境づくりのための努力をしてまいっておりまして、確かにまだまだ十分でない面があるかと思いまして、今後一層、情報の収集につきましては全力を尽くしてやっていきたい、こう考えております。
  301. 岡田正勝

    岡田(正)委員 この種の事件の再発を防止しといっても、相手のあることでありますからなかなか難しい問題でありますが、今回の場合は、危険水域をはるかにはるかに離れた安全海域の中にあって、民間の船が船行しておるところへもっていって、警告も警報も何にも発しないで、いきなりミサイルをぶち込んできて、しかも居住区をねらってぶち込んできて、居住区内の通路におった船員が直撃弾を浴びて死亡するというような、こういう事件はなかなか再発の防止というのは難しいと思うのでありますが、日本人船員の安全確保のための具体的な対策としては、当面、政府はどのようなことが考えられますか。
  302. 仲田豊一郎

    ○仲田政府委員 対策といたしましては、いろいろ基本的なこともあるかと思うのでございますが、ある意味では対症療法的なことにもなるかと思います。  今まで日本船は、少なくとも日本国籍の船、日の丸を掲げた船は攻撃されたということはないわけでございます。今度の場合には、日本人の乗組員の方が乗っておられたけれども、それは外国籍の船であり、かつ、オペレーターも外国人であったという、つまり日本人の乗組員が乗っているということの標示がどこにもないという、極めて特殊な例であったと思います。  それからもう一つは、危険水域、今までこれは、船会社の方も海員組合の方も両方で、この辺までは危険だろうということで一つの線を引きまして、ここで安全を確認し、そこから先は夜間航行するとかフルスピードで走るというような、そういう細かい、いろいろ生活の知恵のような対策を講じていたわけでございますが、この危険水域の線よりも外、つまり安全と思われていたところで今度の事件が起きたということに、我々は非常に強いショックを受けているわけでございます。  したがいまして、まずこれの線引きのし直しということが必要でございますが、当事者、専門家同士が協議いたしまして、とりあえず東経五十四度以西には入らない、そこより中に入る船についてはなるべく早く出るようにする、夜間航行によって出るようにするという措置を当面とっております。これが恒久的であるかどうかはさらにこれから検討をしなくてはならないかと思いますが、こういう非常に不幸な事件を起こしました経緯にかんがみまして、とりあえず、それ以外にもいろいろございますが、そういうような対症療法的な措置をとっているということでございます。
  303. 岡田正勝

    岡田(正)委員 最後になりますが、総理、これをごらんください。  船主協会や海員組合やその他で打ち合わせまして、ここまでは危ない、ここは準危険地帯というか、水色のところも危ない、そういうところを避けて通るようにしようというので打ち合わせて、そこへ、今黒点を打ってあるところで実は攻撃をされたというわけでございまして、日本のエネルギーを支えるために非常に活躍をしてくださっておる日本人船員というのは、大変な危険を冒しながら三千九百名の諸君が頑張ってくれておるわけでございます。  こういう人たちに対して、今いろいろと政府の御見解も承りました、また協力も要請をいたしましたが、何となく、大変失礼な言い分でありますが、何となくこうふわっとした感じで、大丈夫かいな、これでええのかいなというような感じがしてならぬのであります。今の補償の問題でも、総理大臣にみずから御回答をいただかなくては納得できるようなものが出てこないという、本当に何とも言えないいら立たしさを覚えるのでありまして、今の問答をお聞きになりまして、総理がどういうふうに感じを持っていらっしゃるか、総理の決意と申し上げては大げさでございますが、お考えを承って、この質問は終わらしていただきたいと思います。
  304. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず第一に、真相調査を至急急ぐということでございまして、今ドバイにおるのでございましょうか、ともかく現地と連絡をとって、そのときの状況を速やかに調査する、飛行機の型とかあらゆる方面について聞いてみる、それから一方においては、イランあるいはイラク両方の政府に対しまして、こういう事故があったので今後は絶対にこういうことが起こらないように我々としても強く要請をする、そういうことが必要であると思います。また、一面において、船舶の安全航行に関する技術的な問題について、やはり運輸省あるいは外務省あるいは海員組合そのほか、皆さん方等関係の向きでよく協議していただいて、そして運航につきましても、例えば沿岸航行するとか夜間航行に切りかえるとか、いろいろな面が考えられると思いますし、また、インマルサットを利用できるように早く装備するということもまた考える必要があると思います。  そういうようなあらゆる面について全力を注ぎまして、速やかにこの事態を解消し、また解決するように努力したいと思います。
  305. 岡田正勝

    岡田(正)委員 ありがとうございました。今の総理の決意を承りましてはっといたしました。総理はかつて、勇ましく、我が国の力でシーレーンを防衛するのだというようなことまで決意を表明されたほどの人でございます。ペルシャ湾におけるこの民間の船を守ってやるというぐらいのことについてはそう困難な問題ではない。しかもそんなに財政を使う問題でもない。航空母艦が要ることでもありません。十分な御手配をお願いをしたいと思います。ありがとうございました。  それでは次に、財政、経済の本論に入らしていただきますが、いかがでございますかね、今まで予算委員会論議を通じ、また本日の集中審議論議を通じまして、私はこう感じておるのでありますよ。  赤字公債の減額はままならず、定率の繰り込みはやめるわ、国債の整理基金は枯渇寸前に陥るわ、赤字国債の返済は借りかえでごまかすわ、増税はやりませんと言いながら、五十五年、六年、七年、八年が飛んで九年というふうに実質三兆七千億円の増税はするわで、財政再建なき増税となり果てておりまして、総理の後ろでは、党の方も、増税なしはそりゃ無理やでと大角で叫ぶありさまであります。大型間接税を口にしなくてはおれなくなったのではないでしょうか。もはや「増税なき財政再建」の旗はこの際おろさなければならなくなったというのが現状じゃないのでしょうか。総理大臣は、さすがに軍人の出身だけありましてなかなか勇ましい、断固として国を守るのだ、胸を張って勇ましい、勇ましいその中曽根総理も、さすがに財政と経済だけはこの際白旗をお上げになりますか。行革の旗はもうこの際捨てますか。いかがでございますか。
  306. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 旗は捨てません。臨調答申の線に沿いまして、全力を尽くして行革を推進し、かつ、最近の言葉で申し上げるように財政改革を断行してまいります。
  307. 岡田正勝

    岡田(正)委員 大変結構な決意を承りました。旗はおろさぬ、そして行政改革も断行する、臨調の線に沿って全力を尽くす、本当にほれぼれするようなお答えであります。私も本当にうれしいのでありますが、さて現実は厳しゅうございます。  先般来、中期展望の仮定計算例というのが出ました。それに対しまして我が党の吉田之久議員の方から資料要求がございまして、一般歳出の五%成長をずっと続けたら六十五年度には一体どのくらいの租税負担率になるのでございましょうかという資料を出していただきましたら、それは二八%、ことし二五・二%のものが二八%になるということが明確になりました。ということは、租税負担率が上がるということは増税なのであります。だけれども「増税なき財政再建」の旗印はおろさないとおっしゃるのでありますから、負担率を上げない、租税負担率は上げないというふうに総理は考えていらっしゃいますか。
  308. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申によりますと、次のような言葉があったと思います。当面の財政再建に当たっては、国民所得に対する租税負担率は上げないようにする、そして、新たなる租税措置は行わないということを基本として対処する、そういう言葉がありました。それともう一つは、これは別の局面でございますけれども、中長期的には直間比率の問題等々についても考慮して検討すべきである、こういう部分もございます。  当面の問題と中長期の問題と分かれておりますけれども、ともかく、今までここでお約束しました事々を実行いたしまして、そして歳出歳入の見直し、それと同時に、今の臨調答申の認めている範囲内における調整措置等も講じつつ、財政再建に向かって一歩一歩進んでまいりたいと思います。
  309. 岡田正勝

    岡田(正)委員 総理、しつこいようでございますが、臨調答申のこの趣旨というものは、当両国民の租税負担率を上げないようにする、そして新たなる租税措置はとらないようにするということが書いてある。中長期的には直間比率の改善、見直し等はあるというふうにお書きになっておるということでありますが、総理がおっしゃる当面というのは、防衛費の一%、あれと同じように、あれはもう十年続いたのですか、当面がですね。総理のおっしゃる、臨調答申は全力を挙げて守っていきます、こういって言うのはやはり十年ぐらいの単位でございますか、当面というのは。
  310. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 何年というふうな、数字で明示する問題ではないと思います。  ただ、租税負担率云々といいましても、臨調が許容している範囲内というのは、自然増収による租税負担率が上がっていくというようなこと、あるいは若干の調整措置、例えば不公平税制の是正とか、これも認めておったと私は思いますが、そういうような若干の調整措置というものによって租税負担率が上がっていくということは認められていると思います。
  311. 岡田正勝

    岡田(正)委員 ますますはっきりした御回答でありまして、私も非常に気持ちがいいと思います。  ただそこで、そうなると、租税負担率は当面上げない、新しい租税措置はとらない、そして自然増収はまあこれはいいでしょう、自然増収はいいですよ、不公平税制の是正もまあいいでしょう、こういうことを包括をいたしまして考えてみると、そうすると、五%ずつの一般歳出の伸びで昭和六十五年に七兆七千四百億円の要調整額が出てまいりますが、それは自然増収で出てくるという意味なんですか、総理のおっしゃるのは。増税ではなくて自然増収で七兆七千四百億ぐらいは賄えるんだよ、こういうお気持ちでございますか。
  312. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、総理から基本的な考え方が申し述べられました。  正確を期すためにいま二度申し上げますならば、「「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」これは、租税負担率を上昇させない、新たな措置をとらないという二つではなく、租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たなる措置はとらない、こういうことが言われておるわけであります。  したがって、今日まで行われてきましたのは、あくまでもこれは自然増収と、言ってみれば、表現はおかしゅうございますが、でこぼこ調整と申しましょうか、俗に言う不公平税制等の感覚からくるでこぼこ調整、それともう一つ所得税減税見合いの法人税アップ、これもその場合の調整という範疇に入れさせていただいております。  そこで、租税負担率の問題、今おっしゃいましたように、一般歳出の伸び率五%、こういう前提におきまして、吉田理事からの御要請に基づきまして、租税負担率の仮定試算例、まことに非礼な言葉でございましたが、それを出させていただいたわけであります。したがいまして、それによりますならばまさに二八・〇%、あるいは若干のプラスアルファもあるかもしれません。そういうふうに資料を提出をさせていただいたところでございます。  そこで、その要調整額の解消のためには、やはり歳出歳入種々の施策の組み合わせが必要であります。それがどのような政策手段を選ぶかということになりますと、これこそ、幾たびも申し上げるようでございますが、きょうのような国会の問答等を通じながら、国民のコンセンサスはどこにあるか、そういう究極的には国民の合意と選択によるべきものでございますので、こういう議論をまだまだ重ねながらそのコンセンサスの行方を模索していかなければならぬというふうに思っております。  租税負担率がいかにあるべきかという問題につきましては、このような選択の過程において、最終的には公共サービスの水準との見合いでこれは決まっていくわけでございますので、あらかじめ、今お示し申し上げました二八%程度といった数字を政策的な立場から念頭に置いておるわけではございません。しかし、このような仮定計算例としての数字があるといってとは私どもは頭に入れておるところであります。したがって、あくまでもきょうのような問答を通じながら、国民の意思というものをそんたくしながら決めるべきものでありまして、いわばそれをすべて自然増収によって賄えるものであるという考え方はもとより持っておりません。
  313. 岡田正勝

    岡田(正)委員 大蔵大臣の御説明でありますが、どっちにいたしましても、総理の説明は分離してお話しになったようでありますが、大蔵大臣は、そうではない、それは全体として租税負担率を上げないようにというのが臨調の答申のたてまえであります、こういうことですから、なおさらのこと、なおさらのこと、この七兆七千四百億円という要調整額というのはどうやって生み出すおつもりでございますか。わざわざこの仮定計算例をお出しになっておるわけですから、我々予想で言っているのじゃないのでありまして、政府の出された資料に基づいてその要調整額、すなわち歳入不足はどうやってそれを補うのでありますかということを聞いておるわけであります。
  314. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私どもも、いわゆる財政の仮定計算というものをお出ししておりますが、それを租税負担率の形において、丸々を税金で要調整額を見た場合を前提とした資料要求に基づいて、これはこういう御議論をいただく土台になることでございますからお出しさせていただいたわけであります。したがって、五%がいいのか三%がいいのかゼロ%がいいのかという議論ももちろんまだしなければならぬ議論でございましょう。が、その前提は別としても、要調整額をいかにして埋めていくかということになりますならば、それこそ、先ほど来申し上げておりますように、ここで岡田委員と私とが問答を繰り返す中で、これはサービスというもののナショナルミニマムというものをもっと刻み込んでいくか、あるいは諸制度の中で根源にさかのぼって、これは個人の負担に属すべきものである、これは地方に属すべきものである、これは国に帰属すべきものであるという分野調整をやるなどして、やはり歳出削減というものもまた心がけていかなければならぬ課題であると思います。  それから今度、自然増収というものは、一応あの仮定計算で見ますと六・五%に一・一%の弾性値を掛けたもので出ておるわけでございますが、それを読んでなおこの要調整額というものがあるわけでございますから、それに対しては、それこそこれは、負担増というようなものでどの程度補っていけるものか、歳出削減でどの程度補っていけるものかというような問題が、まさにこれからの問答の中で徐々に徐々に詰まっていく問題ではなかろうか、このように御理解をいただきたいと思います。
  315. 岡田正勝

    岡田(正)委員 どうもらちが明かぬようでありますから、時間がありませんので次に進ませていただきます。  総理大臣、先ほどの問答の中で、所得税並びに法人税の減税は私としてはやりたいと考えております、こういうふうに言われましたが、そこまで言われたのなら、いつやるつもりでありますとここまで言わぬと勇ましい総理にはならぬと思いますが、お答え願います。
  316. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 願望を表明したのであります。いずれ適当なときに税制調査会に税の根本的な改革案を練っていただきたいと思いますが、そのときに、その一環としてでき得べくんばそういうことができればいい、そういう期待を持っておるわけです。
  317. 岡田正勝

    岡田(正)委員 大蔵大臣、小倉税調会長に午前中伺いましたね。あのときに小倉会長さん、たしかこう言われたと思うのですよ。諮問を例えば四月に受けたといたしましたならば、大体十一月か十二月には答申ができるでしょう、こういう見込みをおっしゃったのでありまして、私、これで小倉さんに対する質問はほとんどの意味を果たしたのでありますけれども、さて大蔵省といたしましては、その答申を受けてから大蔵省としてのリードタイムは一体どのくらいでございますか、はっきりしてください。
  318. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今のは重要なことで、私も、実は声が小さかったので少し、後から正確に速記録を読んでみようかと思ったのでありますが、大事なことは、総理からお答えがありましたのは、いずれ税調に諮問をしたい。元来、この税調に対する諮問は三年に一遍、国税、地方税のあり方についてという漠然とした諮問をしておる、以心伝心のうちにそういう問題をやってきておりますのを、わざわざ総理から諮問するという御発言があって、しかもそれを税調会長が受けてということでございますので、それは私は大変な、何といいますか環境というものはそれでできたというふうに思うわけであります。  ただ、私が定かに聞きませんでしたのは、仮に諮問があって作業をやられます。すると、一つの考え方としては、六十一年度税制のあり方についてというのが年末に出ますので、その中に入っていくことも考えられます。が、元来税調に対しては、諮問方式で期限を付すということは私どもの方からはしないわけであります。だから、そういう形になったといたしますならば、これはそれを可能な限り政府部内で整理いたしまして、さてどう取り上げていくか、こういうことも、税調の答申の趣旨に沿いながら、可能な限り短い間で国会等に御相談できるような構えで対応しなければならぬではないかなと思っております。
  319. 岡田正勝

    岡田(正)委員 それでは、時間がありませんので、減税問題で中小企業に関することだけ、一つ御質問を申し上げて終わりたいと思うのであります。  御承知のように、今資料を御配付いたしましたが、これは何のために配付したかといいますと、これは設備の耐用年数を大幅に短縮すべきであるということの意味で、アメリカとの例を対比したものをお配りしたのであります。  御承知のとおり、我が国におきましては、法人税でも五十六年に二%上げる、そして五十九年に一・三%上げるというようなことで、日本の法人税というのは非常に高いということを言われておりますが、そこへもっていって退職金の積立金もまた五%削減するなどというような話が出てくるほど、民間の活力を利用するなんというような状態ではございません。私どもは三千億円の投資減税の要求をしておるのでありますが、イギリスのサッチャーさんでも、日本円にいたしましたら三兆五千億円の減税を打ち出しました。レーガンに至りましては、日本円にして十六兆円であります。ところが、我が日本におきましては、中曽根さんのやる中小企業の投資減税は二百三十億円でありまして、サッチャーさんの百五十分の一、レーガンの七百分の一でありまして、これは探すのが大変であります。どこに減税があるのかと思って探さなければいかぬ。これは大変なことでありまして、私が非情に憂えるのは、この投資減税を本当に真剣にやれば景気の回復には一番いい方策ではないかというふうに考えておるから、あえて申し上げておるのであります。この実態、百五十分の一、イギリスは日本より経済力はうんと低いですよ。そして、日本の倍ぐらいの力のあるアメリカは七百分の一、いいだろうかという反省はございませんでしょうか。  さらに、今お配りした表でありますが、耐用年数の縮減、なぜ私がこれを言うか。かつて日本は設備投資がどんどん進みまして、アメリカの設備が老朽化しました。そのために顕著にあらわれたのは、自動車工業あるいは鉄鋼薬、こういうものに顕著にあらわれておることは御承知のとおりです。それがもう、今やその設備年齢が一年しかないところまで迫りました。そこへもっていって、今度いよいよアメリカは、今お手元にお配りいたしましたような、日本に比べたら半分以下の耐用年数に全部切りかえております。これは恐ろしいことです。これを日本がほっておいたら、日本は恐らくや、五年か六年の間にどんでん返しを食う時代がやってくると私は思います。なるがために、私は中小企業のためのみ申し上げておるのではありません、日本産業全体の活性化のためにも、ぜひともこの投資減税とそして設備の耐用年数の削減、これを真剣にひとつ考えていただきたいと思うのでありますが、通産大臣、大蔵大臣、総理の御決意を承って終わりたいと思います。     〔大西委員長代理退席、委員長着席〕
  320. 村田敬次郎

    ○村田国務大臣 お答え申し上げます。  今お示しをいただきました先生の「法定耐用年数の日米比較」というのを拝見いたしました。確かに、アメリカと日本とは税法上の資産の償却制度についての考え方が違うのでございまして、これは先生が御指摘になりましたように、アメリカの場合、早期投下資本回収制度、ACRS、減価償却制度にかえて、この新しい制度を一九八一年から導入しております。回収率は回収年数を四クラスに分けて決められておるのでございまして、これはアメリカでは自動車三年、試験研究用機械三年、一般の製造用設備五年、エレベーター、鉄道用タンク車十年等となっておりまして、自動車については日本は三年または四年であります。それから試験研究用機械は四年でございますから一年の差がございますが、御指摘の一番大きな問題点の一つ一般の製造用設備でありまして、これは製鋼設備が十四年とか自動車製造設備十年とか、大体三年ないし十六年という広い期間をとっておるわけでございますが、これがアメリカは五年でございます。  そういったことを比較してまいりますれば、まさに先生の御指摘のような問題があることはよく承知をいたしております。しかし日本には制度上特別償却制度等があり、いろいろ単一に比較して、アメリカに比べて償却制度が劣っておるというふうな断定もできないところでございます。もちろん投資減税の問題は極めて重要でございまして、これはことしの非常に厳しい財政事情のもとにおきましても、総理、大蔵大臣の大変な御理解によって、ハイテクその他投資減税は行っておるところでございまして、先生御指摘の点は、制度の差等もよく考え合わせながら今後大蔵省と折衝してまいります。
  321. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず投資減税の問題でございますが、いつも申し上げるようでございますけれども、言ってみれば、俗称投資減税と言われるものは、費用と効果というのが非常につかみにくいという税制上の問題がございます。これは自己判断で投資したものであるのか、あるいは税制上の措置があったから初めてやったものであるのかという判断が非常に難しいという点はございます。それと、今日の時点におきましては、中小企業を含めまして設備投資が大幅に拡大しております。そういうところでございますので、今日税制上の措置によってさらに普遍的な投資減税を行うという考え方は残念ながらとっておりません。しかし、本年度税制改正におきましても、基盤技術の研究開発の促進、中小企業の技術基盤の強化に資するための減税措置、これは先ほど数字で、けちなというお話がございましたが、しかしイギリスと比べましても、一人当たり国民所得、消費者物価、失業率、全部日本がはるかに今は上位にある。かつて七つの海を支配した大英帝国も恐らく一人当たり所得日本の八五%ぐらいでございましょう。そういうことからいたしますと、日本の勤勉さというものに追いつこうと思っての相手の施策ではないかなという感じもいたすわけでございます。  それからいま一つ、アメリカの問題も今、村田通産大臣から詳しくお話がございましたので重複は避けますが、最近のリーガン税制等を見ますと、企業というものにいわゆる租税特別措置をやっておったのはむしろ間違いだった、だから日本の私が平素考えておるようなところへ法人税全体を引き下げることによって、そういう特別措置はむしろ排除していこう、これは実現するかどうかは別でございますけれども、そういう考え方に変わったのじゃないか、こういう感じもしないわけでもございませんので、絶えず中小企業専門であります岡田先生等の御意見を聞きながら私どももこれに対応していかなければならぬ課題だと思っております。
  322. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 減税につきましては、例えば英国の場合は、租税負担率、社会保障費簿を入れますとたしか五五%ぐらいです。日本は三五、六%ですから、英国から比べれば日本はまだ非常に軽い負担国民の皆様はいらっしゃるのであります。その上物価も安定しております、まあ牛肉は高いですけれども。そういういろいろな面を見ますと、イギリスが減税をやったからといって、そういう重税、重圧感というようなものは日本の方がイギリスよりはまだ軽いのではないかと私は思います。全般的な計数でよく見てみないと、その場その場だけでは判定できないものがあると思います、アメリカとは大体とんとんぐらいですけれども。  レーガンさんのレーガノミックスの減税というのは思い切ってよくやったと思います。しかし、それが今非常に財政負担になってきておる。インデクセーションというのが相当な負担になってくると思います。そういうわけで、アメリカも財政赤字克服で四苦八苦してきているという状態でもあります。みんなどの国も実は減税を心がけて、政治家ともなれば減税したいのですよ。けれども、国の財政の健全性とか将来性も考えてみて、いろいろ苦労しておるわけであります。  私たちも、今そういうふうに全般を総観いたしまして、今先生のおっしゃる減価償却の問題も含めて、世界の大勢におくれてはいけませんから常によく見直しをやる必要があると思うのです。そして、ある程度インセンティブを与えるという政策も必要ですね。フラットで、のっぺらぼうでやるのが必ずしもいいとは限らぬ。インセンティブを与えるということも大事だと思います。そういうことも含めまして税の根本的改革のときに見直していただきたい、そう思っております。
  323. 岡田正勝

    岡田(正)委員 ありがとうございました。  最後に申し上げておきますが、非常に懇切な御答弁でありましたけれども、私にとりましては大変、不満であります。例えば耐用年数の短縮なんというのは政府のお金は一銭も要らぬのであります。全然金なしでできることであります。しかも、今いろいろな企業がありますけれども、例えば十年に評価されておるものだって二年でやりかえなければならぬというような機械がもうほとんどという時代でありますよ。それが五年だ、七年だ、十年だというようなことは私は非常に残念なのでありまして、どうぞひとつ現地もよくお調べをいただきたいと思うのであります。  それから、総理が最後に引っかかるようなことを言うものですから、お礼を言ってやめようと思ったのですが、ちょっと一言だけ言っておかなければいかぬのです。  外国に比べると、租税負担率は日本の方が低いのでございますよ、よその方は高いのですよ、ヨーロッパは高いのですよとおっしゃいますが、何ということをおっしゃいますか。我が日本は、道路を通れば金を取られる、橋を渡れば金を取られる。まさに随所に徳川時代の関所があるようなものでございます。こんな国は恐らく指折り数えるほどもないのであります。そして、今大型間接税をおやりになるような雰囲気でありますが、もしそんなことをおやりになるのだったら、源泉徴収で取っておるサラリーマンの諸君の所得税は全廃するくらいの覚悟を持っておやりにならぬと、えらいことになりますぞということを警告をしておきます。  ありがとうございました。
  324. 天野光晴

    天野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  325. 正森成二

    ○正森委員 日本共産党・革新共同を代表して、これから総理以下関係大臣に質問をさせていただきたいと思います。  総理伺いたいと思います。  一昨日の予算委員会で、昭和六十年度の租税負担率は二五・二%である、六十五年度に、現行税制のままで二五・七%、もし要調整額を全部税収で賄うと仮定すると二八%になるという資料が提出されました。この資料を拝見いたしますと、地方税は九・三%のまま推移するということになっております。これは今までの経緯から見て、非常に納得できない数字であります。  総理に伺う前に、自治大臣に、昭和六十五年度を見通して、地方税の租税負担率がどれくらいになると見ておるのか、まずお答え願いたいと思います。
  326. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 地方税の租税負担率九・三%ということでお示しをしておりますが、地方税の租税負担率につきましては、国と地方との役割分担、財源の配分のあり方、こういったことと密接に関連をするので、現時点で将来のことを具体的に計算するということは困難でございますが、六十年度の地方税収の対国民所得比と同率とすれば、地方税負担率は毎年度九・三%で推移するということでございます。これはあくまでも一つの仮定計算例でございまして、具体的に昭和六十五年度において地方税の所要額がどうなるかというようなことは、今申し上げましたような行政事務の配分、あるいは公共支出の水準その他とのいろいろ関係もございますので、具体的な租税負担率を今将来の念頭に置くということは、これは困難と考えるところでございます。
  327. 正森成二

    ○正森委員 ただいまの論議でも、他の委員に対する論議の中でもあったのですが、臨調が言っております「増税なき財政再建」というのは、大蔵大臣が正確を期すると言って言い直されましたが、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置は基本的にはとらないというように非常に難しい表現になっているわけです。したがって、これを根拠にして大蔵大臣等は、例えば自然増収であるとかでこぼこ調整という言葉がお好きでありますが、若干の不公平税制の是正とか、そういうことは構わないのである、それによって租税負担率が若干上昇してもこれは臨調の答申の許容範囲であるというのが大蔵大臣の主張でありますし、もちろん総理の主張であろうというように思います。そうしますと、お手元に資料を配付いたしました。そういうように臨調答申に背かないとあなた方が考えておられるほぼ現行税制のままの所得税などは、自然増収があります、それから若干のでこぼこ調整などはいたしました。  それで、どういうぐあいになっているかというのがこの資料でありますが、明らかに国税も地方税も租税負担率は上昇しております。十年の周期で見ると、五十年の国税の負担率一一・八%が昭和六十年は一五・九%であります。約四%上がっております。短目にとりまして、大平内閣が大型間接税の導入をやろうとしてやれなかった五十四年から見ましても、国税は一・九%、約二%上昇であります。地方税はどうかといいますと、五十年は六・六%で、本年度が九・三%であります。これは実に二・七%の上昇です。昭和五十四年から見ましても一・五%の上昇であります。これは私が恣意的に計算したものではなしに、大蔵省の主税局が昭和六十年一月発行の「昭和六十年度税制改正の要綱、租税及び印紙収入予算の説明」という中に全部出てくる数字でありまして、その中に地方税の負担率だけが出ておりませんので、便宜私が計算したものであります。その実際上の負担額は全部大蔵省の数字によっております。  そうしますと、総理、人でも事業でも、あるいは内閣でも、その過去を見れば現在がわかり、現在を見れば未来がわかる、こう言います。そこで、自民党内閣の、あるいは中曽根内閣になりましてからの過去を見ますと、おおむねこういうように国税の負担率は毎年〇・二ないし〇・三ふえております。また地方税も〇・二ないし〇・三ふえております。年に直しますと大体〇・五%ぐらいはふえております。これがいわゆる大型間接税などを導入しない「増税なき財政再建」の国民に対する租税負担率の推移ではありませんか。  そうしますと、昭和六十五年度という単位をもって見ますと、国税が二五・二から二五・七にしかならないというのも、租税弾性値を一・一にしか見ていないという点で過去の推移から見れば問題がありますが、地方税が全く九・三のままで推移するなどというのは、過去の「増税なき財政再建」をやってきた経緯から見ても、冷厳な数字がそれを否定しているということではありませんか。そうしますと、昭和六十五年に赤字国債発行をやめて、ここから脱却すると言っておりますが、そのときの租税負担率の数値は、地方税の上昇が最も低い毎年〇・二をとれば、二五・七ではなしに二六・七になり、平均的な数字である〇・三をとれば、これは二七を突破することになるのではありませんか。それがこの冷厳な数字だと思いますが、いかがですか。
  328. 矢野浩一郎

    ○矢野政府委員 お示しをいたしました数値は、地方税の場合には昭和五十年度以降五十八年度までの弾性値の平均をとりまして、これが一・〇四ぐらいになるかと思いますが、今後の一つの仮定の計算としたものでございます。先ほどお答え申し上げましたように、昭和六十五年度あるいはそれに至るまでの地方税の具体的な所要額は一体どうなるかということは、国、地方の役割分担なり公共支出の水準その他によって決まってくる話でございますので、御了解をいただきたいと思います。
  329. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁しかしないから、私は、人でも内閣でもその過去を見れば現在がわかり、現在を見れば未来がわかると言って、大蔵省が提出したこの冷厳な数字を出しているのです。あるいはまた、自治省の答弁した局長に申しますと、私が調べてみたところでは、地方税、地方税といいますが、その約七五%を占める大きな税目は、道府県民税が全体の一二・五%、事業税が一六・二%、市町村民税が二七・四%、固定資産税が一八・四%でありますが、個人や法人の県民税というのは、原則として前年の所得について所得税法令上の規定で算出する。法人の場合には、法人税割の課税標準は法人税額なんですね。それから事業税の場合は、前年中の個人の事業所得、法人の場合は特別の定めを除いて法人税の課税標準になる所得、こういうようになっておりますし、固定資産税は、御承知のように三年に一回評価額を見直して増収をするというのがこれまでの手法であります。  そうすると、大体七五%というのは国税に連動して上がらざるを得ない仕組みになっているんじゃないですか。だからこそ、過去五年なり十年、毎年毎年双方とも〇・二ないし〇・三ポイントずつ上がっていると言わなければなりません。本来なら経企庁が昭和六十五年度の租税負担率の姿を示すべきであります。それはかつて私も質問しましたし、大内委員も質問しましたし、またきのう松浦委員も質問をされたようであります。それを出さないからやむを得ず、大蔵省の提出している数字に基づいて過去を見て未来はどうなるかと見ざるを得ないわけであります。  総理、そういたしますと、ここに「新経済社会七カ年計画」というのがあります。これは大平内閣のときにつくられたものであります。このときには自民党内閣もまだ正直でありまして、租税負担率がどうなるか、社会保障移転がどうなるか、社会保障負担がどうなるかという数字を細かく出していたのです。これを見ますと、大蔵大臣、もちろん御記憶にあるでしょうが、これは昭和五十五年からいわゆる一般消費税(仮称)を導入するということが明記されておりまして、それで六年たてば、昭和六十年には租税負担率は二六・五%になる、こういうぐあいになっておったのです。ところが、中曽根内閣の「増税なき財政再建」を見ますと、大型間接税はまだ導入していないけれども、結局租税負担率は現在でも既に二五・二%で、私が挙げましたように、大蔵省の過去の数字から見るならば、だれが見たって昭和六十五年に赤字公債発行から脱却する場合には二六・五%、つまり大型間接税導入を当然の前提とした租税負担率を超えるじゃないですか。そういうことになるんじゃないですか、総理総理は外交、防衛には非常にお強いようですが、経済にもお強くなられて、ぜひ率直な答弁をしていただきたいと思います。
  330. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨時行政調査会ができる以前と以後とは状況は非常に違ってきたので、背の「新経済社会七カ年計画」、そういうものを基準にすることは誤りであると思います。我々は「展望と指針」という新しい発想によりまして経済運営を実行いたしております。
  331. 正森成二

    ○正森委員 総理は何か私の質問を勘違いしておられるんじゃないですか。私は何も大平内閣の臨調行革の行われる前の「新経済社会七カ年計画」をもとに質問しているんじゃないのです。臨調行革に基づく「増税なき財政再建」の定義に従ってあなたたちがやってこられたことが、この「新経済社会七カ年計画」を上回る租税負担国民に結局押しつけていることになるんではないか、こう聞いているのです。外交、防衛の問題ではそういう勘違いの答弁はなさらないようですが、経済の答弁では若干お弱いように拝見します。  それでは、大型間接税の問題に移らせていただきたいと思います。  大型間接税について、総理、あなたはこれまで定義のようなものをおっしゃっているのです。定義と言うと語弊があるかもしれませんが、念のためにその文章を読みます。これは矢野委員に対する答弁であります。「私はかねてから、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を」、私は中学、高校では大規模と習ったのですが、総理は大規模と呼んでおられるようですから正確を期する意味でそのとおり読みますが、「大規模な消費税を投網をかけるようなやり方でやることはしない」、これが総理の言う定義なんですね。  そこで大蔵大臣、大蔵大臣は私が聞いておりましたら、包括的、網羅的、普遍的とは例外なくという意味だと大内委員に対して答弁されたようであります。そのとおりですね。
  332. 竹下登

    ○竹下国務大臣 包括的、網羅的、普遍的というのは、確かにこれは国語の辞書を引いてみますと例外なくと書いてあります。ただ、あのとき大内さんが私に時間の余裕を与えていただきましたので、私の頭をよぎったのは、いわゆるエブリルール ハズ エクセプションズ、それからゼアイズ ノー ルール ウィズアウト サム エクセプションズ、あの格言が頭をよぎりまして、例外と言った場合に、もし例外のないルールはないじゃないか、こう言われちゃならぬと思って、エクセプションズの方だけ言って、後から考えて答弁を申したわけであります。だが、概念的に言えば、例外ないというのが網羅、羅列ということであります。
  333. 正森成二

    ○正森委員 総理ももちろん同じ意味でございましょうね。
  334. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣と同じであります。
  335. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、大蔵大臣伺いますが、やはり大内委員に対する当日の答弁で、私はこれは速記録を調べてそのとおり正確に申しますが、こういう答弁をしております。「私が申しました例外とは、例えば五十四年税制で答申をいただいた場合の食料品を除くとかいうようなものを例外という意味」、こう言っております。あるいはその次に、「包括、網羅は、要するに例外なしという意味でございますから、現実採用されておるものの中には、私も詳しくは知りませんが、恐らくないと申し上げます。」こう言っております。  そうすると、どういうことになるのですか。この定義と大蔵大臣の解釈によれば、昭和五十四年に国会で導入しないと決議されたいわゆる一般消費税(仮称)も、食料品は除くとか社会保険診療は除くというようなことがあるからこれは例外があることになる、あるいは現実採用されておるものの中には例外のないものはない、こう言っているのですから、EC型付加価値税はもちろん、大臣は生きとし生けるという言葉がお好きなようですけれども、生きとし生ける大型間接税、付加価値税は全部採用しても構わないということになるじゃないですか。  そうしたら、矢野委員答弁になったようですけれども、矢野委員答弁によるいわゆる大型間接税総理の定義によりますと、昭和五十四年に国会で禁止されたいわゆる一般消費税(仮称)も構わぬ、EC型付加価値税はもちろん、世界じゅうにあるどんな付加価値税、大型間接税も構わない、こういうことを言われているのですね。そんなことで国会が了承できますか。去年の答弁なんかと全然違うじゃないですか。大型間接税は中曽根内閣が存続中はやらない、公約だ、こう言っていたんでしょう。それがことしの国会の論戦になってみると、五十四年に国会で決議したいわゆる一般消費税(仮称)でも導入して構わない、世界じゅうの大型間接税は全部構わない、なぜなら例外があるからだと、こういうことになるのですね。こんなことで国民が納得するでしょうか。もしそういうことになれば、総理…(中曽根内閣総理大臣「それは詭弁だ」と呼ぶ)詭弁じゃないですよ、大蔵大臣がそう言っているのですから。だから、それについて明確な答弁をお願いしたいと思います。もし大蔵大臣と違うというなら、閣内不統一ですな。
  336. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは総理からお答えあると思います。これはフィーリングの問題と、現実国語、漢文の入学試験の定義とはまた違うわけでございますけれども、例外なしというのはそれはまさにフィーリングの問題でありまして、それは例外のないルールはないし、またすべてのルールに例外がある、こういう格言もあるぐらいでございますから、私はどっちが正しいかと思って正確にアメリカ大使館へ聞いてそれで後から申し上げたわけでございますが、実際問題として、それは私は国会の議論としてぎりぎりをお詰めになる議論であるかどうかな、こういうふうにも思わざるを得ません。  ただ、今のような質問に対してわざわざ私どもが釈明の機会を与えてもらったとすれば、これはまた親切なお方だな、こういう感じも率直に持つわけでありますが、例外というものをそう厳密に考えたものでもございませんし、また投網をかけるということになりますと、普通一網打尽という言葉がございますけれども、その網の目によってはまた例外が出てくるというのも当然でございますので、それはやはり国会の議論としてそれをぎりぎり詰めるよりも、それはまさに感じとして申し上げたものであります、ああそうか、こう言っていただくのが一番いいんではないかと思っております。
  337. 正森成二

    ○正森委員 今御親切というようなお言葉がありましたので――私は投網という言葉はなかなか含みがあると思っているのですよ。今私が言おうと思っていたのですが、網の目によっては小さな点もすくうのもあればタイも逃げるというようなのもありますから、投網というのはなかなかおもしろい表現だと思いますが、しかし大蔵大臣、あなたがまさに大型間接税とは何をいうのかということについて各委員が真剣に論議した問題について例外とはこういうことだと言って答えておられるから、親切なのかあるいは意地が悪いのか知らないけれども、私がこうやってある程度詰めなければ、この答弁のまままかり通ってしまえば、昭和五十四年の国会決議もそんなものは無視してもいいんだ、生きとし生ける大型間接税は全部導入できるんだということになるから、それでは困るでしょうと、こう言っているのです。もしあなたが私の質問を親切な質問だというので、前の大内委員に対する答弁のこの部分は舌足らずであったと言って訂正されるなら、それはそれで、私は政治家としてこれ以上ぎりぎり詰めないでやめてもいいですね。
  338. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに厳密な意味においての定義の仕方は難しく、今委員が御理解をいただいたような形であれば私にとっても幸せである。
  339. 正森成二

    ○正森委員 私は、答弁というものは国民全体が真剣に聞いているわけですから、ああ言えばこう言う、こう言われて詰まればまた言いかえるというようなものであってはならないというように思うのですね。普通国民は、舌は一枚と思っておりますが、政治家の場合は何枚あるのかなあということになっても困りますので、この点を申し上げておきたいと思います。  そして、特に大蔵省が出しました、間接税国民に対してどういう影響を与えるかという資料があったはずであります。これをお出しいただきましたが、それを見ますと、酒税やたばこなどを入れました負担率は、第一分位の、一番所得の低い人に対しては大体一・九を超えております。二に近いです。第十分位の方には、あるいは第五分位と言ってもよろしいが、それは大体一ないし一・一以下であります。つまり、間接税所得の低い者に対して、可処分所得に対しては二倍の負担を負わせるということでありますから、こういう点について注意をしていただいて、低所得国民に対して過大な負担にならないようにしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  それとあわせてもう一つ、大蔵大臣と総理は、正式に政府税調に諮問したいというようなことも言われましたが、総理、諮問したいと言われるからには、中曽根内閣存続中ということですから来年の十一月までということですが、できるだけ早くというようなことになれば、ことしじゅうにも諮問される御意思があるのかどうか、そこら辺もあわせて御答弁を願いたいと思います。
  340. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 適切なときにと申し上げておるので、それがいつであるかということは、これからゆっくり検討していきたいと思います。
  341. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣は、記者会見で大分物騒なことを言われておりますが…。
  342. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いや、あのときに、私は記者会見をいたしまして、これこそ舌足らずであったかもしれません。が、いわばどういう場合があり得るかという過去の例を説明をいたしましたが、私の表現力がまずかったのか、向こうのとり方が間違ったのか、後から事務次官懇談で一応正確に私がここで書いたもので整理をいたしましたので、その見出しはいろいろございました。物騒な見出しというのは恐らく食い逃げの分かなと思いますが、そういうことは記者諸君もなるほどわかったと、ただ訂正記事を出してくれないのは間々あり得ることであろうと思います。
  343. 正森成二

    ○正森委員 時間の関係で、次の問題に移らせていただきます。  整備新幹線の閣議決定無視の手続につきましては、矢野委員から御質問がございました。また、国鉄財政との関係が中心でございましたが、工藤委員あるいは佐藤委員等から質問がございました。私は、国の財政との関係を中心にして、若干聞かしていただきたいと思います。  総理は、臨調答申を最大限に尊重するということをかねてからおっしゃっておられますが、なぜ整備新幹線については、当面見合わせると明言されている臨調答申を事実上無視されるのでしょうか。
  344. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申から出てきました、成立しました国鉄再建監理委員会と調整をしてと、そういう一項がかかっておるわけであります。したがって、予算を執行するという場合はその調整後ということで、よく調整してみたいと思っておるのです。
  345. 正森成二

    ○正森委員 前の委員等に対する答弁とは、若干きめ細かく変わってきたようであります。前の委員がお聞きになったときには、これは地域、国民の要望であるということに重点を置いて御答弁になったように思います。しかし、そういうぐあいに調整をしてというところに重点を置かれるなら、それはそれでこれから論を進めたいと思います。  それでは伺いますが、運輸省、整備新幹線については昭和六十年に予算をつけたのが初めてではないんですね。それまでも、事業費ということで相当長くつけては凍結し、凍結しということになったわけです。そのときに、例えば「五十七年度予算編成にあたっての整備新幹線の取扱いについて」とか、五十八年度はこれを再び踏襲したわけですが、それを見ますと、「整備新幹線の取扱いは、臨調第一次答申の趣旨も踏まえ、」とちゃんと書いてあって、その中身の「一」のところを見ますと、「国鉄財政再建の進捗状況、事業採算性等を慎重に検討のうえ、工事実施計画の認可申請を行うものとする。」こういう項目が入っているんですね。この言葉は、臨調第一次答申の中に出てくる言葉と同じであります。ところが、今度の「昭和六十年度予算編成にあたっての整備新幹線の取扱いについて」を見ますと、「国鉄財政再建の進捗状況」もなければ、「事業採算性等を慎重に検討のうえ」というような言葉も全く消えうせているんですね。これは重大な変更ではありませんか。
  346. 山下徳夫

    山下国務大臣 私の答弁で不足の面がありましたら政府委員から申し上げますが、毎々申し上げておりますように、私は、鉄道の持つ特性という面から見まするならば、今日国民は何を求めているか、やはり時間価値ですね。どこまで何時間で着くかというのが最も大切な問題でございます。そういう意味におきましての鉄道の特性ということから見ると、私は、将来にわたって、財政の都合さえつけば在来線は全部廃止して、全部当初の計画にございましたような新幹線が中心となるべきだと、極端に申し上げればそういう論も成り立つのでございますよ。ただ、残念ながら財政が許さないために、今日までできなく来ておるわけでございます。それをそのままやはり臨調においても、あるいは監理委員会においてもそのとおり、財政立場から、これは当面見合わせるというふうにお決めになっている。それを受けて私ども、閣議におきましてもまたそのとおりに決めたわけでございます。したがって、最初に申し上げましたように、本来の鉄道の特性からいえば、これは国民が希求している、何とかしてあげたいなというのが、これが行政を担当する者の立場でございましょう。  そういう意味から、ここ数年、予算は計上してきましたが、ただ、今申し上げましたように国の財政や、あるいはまた国の財政というよりも、むしろ国鉄の財政に悪い面が出てはいけないという配慮から、これはそのまま使用せずに、予算の執行に至らずにきているのでございますが、これも毎々申し上げておりますように、これはもう十年以上たっているのでございますから、地方、地域における住民の渇望ももうその極に達しておる、何とかならないかということで、この在来線着工につきましては、その前提を幾つか設けました。それは、まず立法措置を講ずることによって並行在来線を廃止する、あるいは国と地方の財政負担分等を考慮したところの事業実施方式、あるいはことしの半ばに予定されております監理委員会の結論を待ってそれとの調整を図る、これらの問題を十分考慮した上で着工に踏み切る、こういうことでございますから、どうかひとつ御了解をいただきたいと思います。
  347. 正森成二

    ○正森委員 並行在来線を廃止するなんて気楽なことを言っておりますが、国民の中で並行在来線を廃止してくれというような要望なんというのは、国会にもどこにもありませんよ。新しく新幹線をつくってくださいという要望なら、それはあるかもしれないけれども。しかも、あなたは、当時の新聞を見ますと、国鉄にはびた一文負担させない、こう言ったでしょう。全部新聞に載っておりますよ。そうすると、この取り決めの項目にも載っておりますけれども政府及び党において「国及び地域負担(建設費一〇%)等、事業実施方式のあり方、」こうなっておりますから、九〇%は結局国が主として建設国債等で面倒を見るということになるじゃないですか。国鉄の五十四年度価格でも大体二兆九千億円になるんですよ。その後の物価上昇や利子負担を考えれば、それが十兆円近くになるというのはみんなが言っていることなんです。少なくとも六兆や七兆にはなるでしょう。この財政危機の中で、そんなものを建設国債で出したらどうなるのですか。前の委員答弁やら大蔵委員会での大蔵大臣の答弁を見ましても、一兆円国債を出せば、建設であろうと特例国債であろうと、六十年償還なら三兆七千億円になるというんですよ。そんなことでどうやって財政再建ができますか。そういうことを気楽に決めるなんというようなことは、財政再建からいってもってのほかじゃないですか。
  348. 山下徳夫

    山下国務大臣 整備新幹線の六十年度の予算の編成に当たりましては、公共事業云々ということは一言も言っておりません。とりあえず財投、利用債をもって一応財源に充てておいて、先ほど申し上げました幾つかの条件を満たしたときに初めて着工するのでございますから、その幾つかの条件を審議する過程においてこの問題も煮詰めてまいりたい、このように今申し上げておるのでございます。
  349. 正森成二

    ○正森委員 六十年度の予算が財投や利用債なんというようなことは、こっちは知っていますよ。そうじゃなしに、何兆円というような額について、あなたの方が政府及び党において「国及び地域負担」と、こうなっておって、しかも責任者である運輸大臣が国鉄にはびた一文負担させないというようなことを新聞ででかでかと書いているから、それだったら九〇%は建設国債を中心とする国の負担になるじゃないかということを聞いているので、昭和六十年の予算が財投等で処置されていることはこっちは知っていますよ。それよりももっと大きな何兆というものをどうするのか、それについて軽々にこんなことを決めているというのは、財政再建との関係から見ていかがかということを聞いているのです。
  350. 山下徳夫

    山下国務大臣 先ほども申し上げましたように、公共事業云々という前提にお立ちになるからそういうことになるのであって、決して私どもはそういうことを申し上げておりません。あくまで財投あるいは利用債を一応計上しておいて、そして煮詰まる段階において、煮詰まるというよりも幾つかの条件をこれから検討する段階において煮詰めていくということを先ほどから申し上げておるのです。
  351. 正森成二

    ○正森委員 それじゃ、当時の新聞にも出ました、国鉄にはびた一文負担させないなどというのはうそなんですね。財投にしろ利用債にしろ、その元利は一体だれが払うのですか。まさか国が払うんじゃないでしょうが。国鉄なら国鉄に持たすということになれば国鉄の負担になるし、国が引き受けるということになれば、これは建設国債を出したのと同じじゃないですか。
  352. 山下徳夫

    山下国務大臣 六十年度の予算編成の最終段階における四役折衝におきましても、できれば国鉄の負担にしないでということは、これは条件になっております。そこで、先ほどから申し上げるように、公共事業債ということは一つも申し上げていないのでございまして、どこかそこのところを勘違いされているのじゃないですか。
  353. 正森成二

    ○正森委員 何を言っているのですか。財投だとか利用債になったらそれを主体にして、借りる主体があるわけでしょうが。それが国鉄なり鉄建公団なりあるいは国でなければならぬわけで、国鉄や鉄建公団なら、国鉄の財政が大変なのにそれに負担になるし、国だということになれば、国の財政再建について大変な支障になる。これは俗な言葉で言えば、将棋の王手飛車なんです。国鉄が楽になれば国が困り、国が楽になれば国鉄が困るということでしょう。そういうことをやっておるのですね。それを何かこう言いくるめようとしたってだめなんで、どっちかが王手飛車でひっかかることになるんですよ。  それで、あなた、もう一つ聞いておきますが、「所要の立法措置を講じて並行在来線の廃止を決定する」というのが着手に当たっての条件なんですね、六十年八月までに。それじゃはっきり聞いておきますが、並行在来線の廃止を決定する立法措置が国会で決まらなければもちろん着工しないし、凍結は解除されませんね。それだけはっきり答えてください。
  354. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 並行在来線の取り扱いにつきましては、今後事務的に十分詰めるということに最初からなっておりまして、その在来線の取り扱いも含めまして、先ほど大臣から申し上げておるような諸点について八月までの段階において詰めたい、かように思っております。
  355. 正森成二

    ○正森委員 それは総理、答えにも何にもなってないのですね。だから、そういうようなことだのに、六月とも七月とも言われる国鉄再建監理委員会の答申に対して、既成事実をつくってこれを無理やりつくらせようということにほかならないと思うのですね。私は、その費用負担の問題について、財政再建との絡みで十分にできるというのであれば、国民もそれは新幹線はないよりはあった方がいいだろうから納得すると思いますよ。しかし、それが十分にないのに、望んでもいない並行在来線の廃止を立法措置で講じるよとかなんとかいうようなことを気楽に言って、財政再建と真っ向から逆行するようなことを軽々に決められるというその手法には、断じて賛成できないということを申し上げておきたいと思います。  時間の関係でさらに進みますが、蔵相は電電株、これの売却が財政再建について一定の影響を持っておるというようにお思いであろうと思います。そのことについて、時間がないので申し上げますが、ここに「政界春秋」という雑誌を持ってまいりました。これに表書きは「〝威風堂々〟実力者・藤尾正行」と、こう書いてありまして、その内容を見ると、こう書いてあるのですね。ここにございますが、後でごらんいただいたら結構です。「電々が少なくとも民営になり、その株が出来ると、一兆円の株がいくらになるかわからないが、仮りにこれが八十兆、百兆になるとすれば、その三分の二は数年のうちに入って来るわけで、それを全部、国債償還に当てる。これは私、絶対に妥協しなかったですからね。それで百二十二兆、百三十三兆の国債負担は、少なくとも半分になるでしょう。利息も半分になりますね。それをスプリングボードにして、これをゼロにする単位年度の展開ができるだろう。その跳躍台が出来たという事は非常に意義のあることだと思う。」と、非常に景気のいい話をしているのですね。国債の半分がこれでなくなると言うんだ。  藤尾さんは、去年の十二月に、各党との間の政策担当者の会議があったのです。そのときに私は、我が党の工藤委員と一緒に藤尾さんとお話ししましたが、そのときはこの本よりは少し気が小さかったのかしらぬが、私の見るところでは五十兆にはなるだろうと、こう言っていたのです。わずか一カ月余りの間に、それが八十兆から九十兆というように、六割、八割膨れ上がっているのですね。本当に大蔵大臣、総理、与党の政調会長が言うんだから人は信用するでしょうが、そういうことでいける、またいくつもりでおられるのですか。
  356. 竹下登

    ○竹下国務大臣 電電株の売却の問題でございますが、これは国民共有の貴重な財産であって、その売却に当たってはいささかも国益を損なうことのないように、そして二番目には国民に疑惑を抱かせることのないように、まさに公正かつ適切な売却方法についてこれから民間有識者の意見を聞きながら、本当にこれは慎重に検討してまいりたいと思っております。それは、いろいろな意見が出るのは私も別にこだわる考えはございませんが、大量に売ればもちろん値下がりもいたしますし、そういういろいろな、過去の経験といってもこれだけ大きな体験を持っておるわけじゃございませんので、まさにこれから学識経験者の意見を聞いて公正に慎重に対処しなければならぬ問題だ。  ただ、藤尾政調会長のそれは、私は読んでおりませんが、三分の二をいわば償還財源に充てるべきだという強い主張をしておられたことは事実であります。
  357. 正森成二

    ○正森委員 念のために伺いますが、総理でも郵政大臣でも結構です。電電と深い関係がありましたKDD、国際電電というのがあります。この国際電電は現在五百円が額面株、額面の値段ですが、株価は幾らしているか御存じですか。
  358. 左藤恵

    左藤国務大臣 多分二万六千円見当だろうと思います。
  359. 正森成二

    ○正森委員 郵政大臣も、このKDDなりそういうのの株の変動を御存じないのですね。念のために本日の日経新聞をとってまいりましたが、驚くなかれ終わり値が三万七千二百円ですね。この間まで二万四千円ぐらいだと思っていたのが三万七千二百円になっている。私が二月十三日に見たときには、三万四千円ぐらいだったのです。これは五百円に対して七十四倍なんですね。ですから大蔵大臣、私は何もこの値段が電電の値段になるとは言いませんが、私が調べましたら、KDDの場合には、昭和二十八年と三十一年に大蔵大臣が売却しております。そのときに、値段を調べますと、KDDはそのとき既に資本に対する利益率が二四%から三〇%を突破しているのです。それなのに、一般競争入札ということでやらせたら、一般競争入札なのに証券会社だけしか来ないで、値段が五百円に対して六百二十四円から五百九十六円ぐらいで落札されているのです。それが今、三万七千円なんですね。  ですから私は、売却に当たってはやはり、最初はそれはまだ上場しておりませんけれども、できるだけ早く、最初は二部か一部かわかりませんが上場して、公開の株の値段を国民の前に何人にでもわかるようにして、そしてゆっくり時間をかけてその値段に近い線で売っていくということであれば国民は納得するでしょうけれども一般競争入札だとかあるいは縁故募集だとか、そういうようなことで不明朗なやり方をすれば、現にイギリスのBTでもたちまち値段が倍ぐらいになって、非常に安過ぎたじゃないか、国の財産を安く売り飛ばしたじゃないかという非難が起こっているのですね。  こういう問題について、細かな手法までは現段階ではお答えになれないかもしれませんが、お心構えについて、総理あるいは大蔵大臣から御答弁を願いたいと思います。
  360. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私とまさに今、考え方、正森さんとそう違っていないと思うのであります。国民共有の貴重な財産であるから、いささかも国益を損のうことのないように、また国民に疑惑を抱かせることのないように、公正適切な売却方法をとらなければならぬ。それには、今の御意見も御意見です。やっぱり学識経験者とか、まだ資本金も決まらない今日でございますから、いささか早いかもしれませんが、過去の経験ももとよりでございますが、学識経験者の意見を聞いたりそういうことは非常に大事なことだ、今の正森委員意見も、私どもとして聞かしていただいた意見一つであると受けとめて、やらなければならぬと思っております。
  361. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたので、他の関係大臣をお呼びいたしまして非常に失礼でございますが、一つだけ厚生大臣に、社会保障負担がマクロで見て将来どの程度になるのか、昭和六十五年はどの姿になるのかということだけお答え願いまして、私の質問を終わらせていただきます。
  362. 増岡博之

    ○増岡国務大臣 この問題は、経済情勢等不確定な要素が多うございますので大変予測が困難でありますけれども、一応私ども考えておりますのは、医療その他につきましては、医療費の適正化等で現在約五%程度でありますけれども、同程度にとどめたいという考え方を持っております。  年金につきましては、受給者の増加等で給付費が増大することはほぼ間違いないと思われますし、昭和百年にピークを迎えるわけでありますけれども、そのころには、今の制度改正を行いましても現在の倍ぐらいになるだろうということでございます。仮にそういうことになるといたしますと、現在六%程度でありますから、約一二%ということが言えるのではないかと思いますけれども、六十五年度において確たる予測をすることはまだ困難でございますので、ただ現在より上昇することはほぼ間違いないということでございます。
  363. 正森成二

    ○正森委員 わかりました。  では、終わります。
  364. 天野光晴

    天野委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして財政・経済問題に関する集中審議は終了いたしました。     ―――――――――――――
  365. 天野光晴

    天野委員長 これより理事会協議による質疑を行います。  この際、内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。中曽根内閣総理大臣
  366. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先般の大内委員の御質問に対しまする私の考えを改めて申し上げます。  いわゆる大型間接税については、厳密な税制上の用語ではなくしたがって、学問的定義も必ずしも定かではありませんが、この問題をめぐり私がかねてから申し上げてきたことについては、その内容を整理の上、去る二月六日、矢野委員質疑に対しまして答弁したところであります。  この答弁について、二月十四日に大内委員から改めて御質問があり、お答えしたことにつきまして、この際、その内容を敷衍して申し上げたいと思います。  私は、矢野委員に「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方はとらないという立場でございますので、これに該当すると考えられるようなものは、中曽根内閣としてはとりたくないと考えております。」と申し上げたところでありますが、この点については、単段階、多段階の別に国会で御説明した課税ベースの広い間接税の諸類型のうち、昭和五十四年十二月の国会決議により財政再建の手法としてとらないこととされたいわゆる一般消費税(仮称)、及び戦後一時期我が国で実施された旧取引高税といったものを念頭に置いて申し上げたものであります。  なお、矢野委員に申し上げたとおり、EC型付加価値税は多段階のものでありますが、EC型付加価値税といってもいろいろの態様が考えられますので、多段階という理由だけでこのような消費税をすべて否定する趣旨のものではございません。  あえて字義に即して申し上げれば、「多段階」とは取引の各段階を通じて課税する方式をいい、「包括的」、「網羅的」、「普遍的」あるいは「投網をかけるようなやり方」というのは、いずれも、製造から小売に至る各段階の縦横すべての取引をカバーし尽くすといった意味合いのことを、私の素直な感じとして申し上げたものでありますので、包括といい、大規模といいましても、事前に定量的で厳密な定義があるという性格のものではないことを御理解いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、この問題については、税制調査会において広範な御論議をいだたき、答申をいただいた段階において、全体としてこれらの諸点に該当するものかどうかを、国民世論の動向等をも踏まえて、慎重に判断してまいりたいと考えております。
  367. 天野光晴

  368. 大内啓伍

    大内委員 私は去る十四日、総理が否定されている大型間接税というものがどうしても正確にわからないという意味から、統一見解を再度求めたわけでございます。そして今、その見解を承ったのでございますが、なおよくわからないというのが実感でございます。ただ、一つ明らかになりましたとすれば、それは問題のEC付加価値税につきまして、多段階というだけでこのような消費税をすべて否定する趣旨ではない、言葉をかえて言いますと、EC付加価値税の変形はあり得る、こういうことが明らかになったと思うのです。ただ他方、総理は、大型か、中型か、小型かといったような定義というものは定かではないと言いつつ、片っ方では大規模な消費税はしない、これでは国民は全くわからないと思うのです。  例えば、いわゆる一般消費税についても否定された格好になっておりますが、大平内閣の一般消費税というのは、御存じのとおりEC型付加価値税マイナスインボイス、つまりEC型付加価値税の変形がいわゆる一般消費税と言われたわけなんでございまして、総理として否定されていない付加価値税がこの大平内閣の一般消費税とどういうふうに違うのかといったような点も、ちょっとわからないと思うのですね。  そしてさらに、包括的、網羅的、普遍的あるいは投網をかけるようなやり方とはと、ここに今おっしゃいましたね。これは、製造から小売に至る各段階の縦横すべての取引をカバーし尽くすといった意味合いのことだ、なかなかうまくこれは述べているんですね。しかしこれは、ちょっとした例外のつくりようによっては、幾らでも例外措置ができるということをまた言外に示しているものでございまして、そういう意味では、総理の否定されているいわゆる大型間接税というのは一体どういうものなのか、なおわからない、何かお化けのような印象を受けるわけでございます。そして総理見解の枠内でも、以上の結果ちょっとした手の加え方によって、いわゆる一般消費税がEC付加価値税と実質的にはほとんど変わらないようなものが出てくる可能性というものを留保されたのではないか、私はこう思わざるを得ないのです。  そこで、たった一つだけ質問をいたします。というのは、私は再質問の時間は与えられていないのです。ですから、どうか言語明瞭、意味不明でなくて、ひとつお答えをいただきたいのであります。  そこで、一番の問題は、この間の十八日、これは吉田委員の質問に対して大蔵省は、租税負担率の一つの推計といたしまして六十五年度段階でそれが二八%になり得る、そういうケースがあることを示されたわけです。そこで、総理の見解というものを踏まえて、今まで述べられた見解を踏まえて税制の根本的な見直しを行った場合、先ほど来議論がございました、臨調答申の租税負担率の上昇をもたらすような新たな税制上の措置はとってはならないという点を侵さないという保証がどこにもなくなってきたというところが、私はこれからの一番大きな問題だと思うのです。  そこで、私は、総理にこの際はっきりしていただきたいのは、租税負担率の上昇をもたらすような税制改革は、少なくとも財政期間の第一段階である六十五年度まではとらないということを明言できるのかどうか、この辺が今度示された大型間接税をめぐる総理の見解と、そしてそれがどういう歯どめがかかるかという意味で一番重要なポイントになってきたのではないか。大蔵省当局が二八%という数字を出しただけに、この問題がこれからの増税の歯どめという意味でのキーポイントになったのではないかと思うわけであります。先ほど申し上げましたとおり、私は再質問の時間がございませんので、それらの点についてできるだけはっきりしたお答えを承って、私の質問としたいと思うのであります。
  369. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府といたしましては、臨調答申にありまする「増税なき財政再建」、この理念を最大限守っていくように今後も努力してまいりたいと思います。したがいまして、いわゆる小さい政府というものの理想に向かって、我々としては現実的にも努力してまいりたいということであります。  それの具現化につきまして将来どういう姿になるか、数字等をもって御説明することは今のところ難しいと思うのであります。こういうような問題につきましては、税制調査会のいろいろな御論議あるいはその間におきまする行革審の皆さんの御意見、行革審の皆さんが臨調答申をフォローアップしているわけでございますから、行革審の皆さんの御意見等々もよく承りまして、そして改めて検討してまいりたいと思っております。
  370. 竹下登

    ○竹下国務大臣 吉田理事の御要請に基づいて、もとより仮定計算でございますが、今指摘なさったような数字を出したことは御案内のとおりであります。したがって、要調整額をすべてを増収によって措置したという前提のもとであったわけでありますが、要調整額の解消のためには、歳出歳入両面にわたる種々の施策の組み合わせが必要でありますが、それらの中でどのような政策手段を選ぶかにつきましては、究極的には国民の合意と選択によるべきものであります。したがって、政府として、租税負担率についてあらかじめ特定の数値を念頭に置いておるわけではなく、先日お示しした数値はあくまでも一つの仮定に基づく計算であることを御理解を願いたいと存じます。  臨調答申で「増税なき財政再建」についてということで、「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、」また一方、税制については、税負担の公平確保の観点を踏まえ、申告税制度の適正な運営のための基盤の強化、租税特別措置の見直し等を推進するとともに、所得税制における課税最低限及び税率構造並びに直接税と間接税の比率等について検討すると、同答申では述べられております。したがって、これらの諸点を勘案しますと、税負担の公平化、適正化を推進する観点からの税制見直しは臨調答申にも指摘されておりまして、それによって租税負担率が上昇しても「増税なき財政再建」に反しないと考えられます。臨調答申は、税制見直しには積極的な立場をとっておりまして、税制全般にわたる見直しの結果、全体としての租税負担率の上昇をもたらすことがなければ、「増税なき財政再建」には反しないと考えられます。  このように、「増税なき財政再建」という基本理念のもとにおきまして、租税負担率の上昇が許容されるケースは十分あり得ますので、いかなる場合でも租税負担が上がってはならないとするのは、臨調答申の趣旨には沿わないと考えます。  なお、臨調答申は、中長期的には租税負担社会保障負担の合計の負担率は、現状より上昇することとならざるを得ないことを認めておるところであります。
  371. 大内啓伍

    大内委員 終わります。
  372. 天野光晴

    天野委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日午前十時より開会し、外交・防衛問題について集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十七分散会