○矢山
委員 自衛隊が一般の隊務の通信だとか家族の利用だとか、そういったものに電電公社の公衆電話回線を使うことを私はいいとも悪いとも、そんなことを言っているんじゃないですよ。硫黄島にさくら二号を使って通信回線を確保した、そのことの中身を私は指摘しながら、これはまさに高度の軍事利用じゃないかということを言っているんですよ。かみ合わないのですよ。一般的な利用で、自衛隊だってそれは家族の交信も要るだろうし、一般平常の隊務を連絡することもあるでしょう。この世の中で電話回線を全部使っちゃいかぬなんて、そんなばかなことは言いませんよ。ところが、硫黄島でさくら二号aを利用するのは、まさに純軍事利用じゃないか。だから、方式にしてもSSMA方式という純軍事的な利用目的に開発されてきて、今まで軍事利用以外には使われていないものをわざわざ使う。しかも、使う場合に、硫黄島から本土に向けて送信する場合だけに使う。これをもって純軍事利用だと言わずして何ですか、これは。それを私は言っているのですよ。
そこで、国会決議との関連が出ましたから、私はもう一つ申し上げておきます。
国会決議がある。それは、宇宙の利用は平和目的に限る。平和目的とは、非核、非軍事である。これがあるのに、これを無視してさくら二号が硫黄島の通信に使われる。これを皮切りにしてこれから本格的に宇宙を軍事利用するという道をたどっていくんじゃないのですか。私はそれを恐れるのです。
いいですか。今行われようとしておるのは、この間公明党の
矢野書記長が御指摘になったように、海上自衛隊の護衛艦五隻に米軍の通信衛星を利用して受信装置をつける、これは予算化されておる。自衛隊の方では、受信装置だけでは困る、送信装置も要る。やがて受信、送信両装置をつけようという、そういう計画が進んでおるのでしょう。アメリカは今民間通信衛星のリーサットの利用に切りかえておりますわな。自衛隊もやはりそれに切りかえて双方向通信ができるようにしよう、こういう
考え方が一つあるんじゃないですか。
それから、もう一つは、先ほど言いましたアメリカの地球観測衛星のランドサットの画像情報の解析を始めた。これは、やかで自衛隊が自前の偵察衛星を持って情報収集解析業務をやる、そのノーハウを蓄積しようという
考え方で手始めにまずやるわけでしょう。こういったくらみが進んでおる。
さらに、自衛隊の中では、六十三
年度に打ち上げを予定しておる大型実用通信衛星のCS3、つまりさくら三号、これに自衛隊専用の衛星通信回線を確保しようとしているんじゃありませんか。さらに、六十五
年度打ち上げ予定の地球資源探査衛星の利用を
考えておるんじゃありませんか。これはもう既にたびたびマスコミにのせられておる問題です。さらに、偵察衛星の保有を
考えておるということも、この動きも出ておるんじゃありませんか。先般の
総理の国会
答弁を聞いておりましても、偵察衛星利用への道が徐々に開かれるような方向になるんじゃないのですか。特に、自民党の宇宙開発特別
委員会、これは八二年六月に
政府に提言をしております、偵察衛星の利用、この問題で。さらに、中西特命相の私的な危機管理問題懇談会、この報告の中にも同じようなことを言っております。さらに、
総理の私的諮問機関だと言われる平和問題懇談会の報告書の中にも偵察衛星の利用に触れております。こういうように、国会決議を無視して硫黄島で衛星を利用した通信を始めるということは、こういう方向に今流れつつあるのでしょう。このままで行ったら、自衛隊は宇宙利用は何でもできるということになりますよ。
例えば、この宇宙利用の問題についての今までの変遷をたどってみましょうか。
昭和四十四年、宇宙開発事業団法の
審議の際の発言を参考のために、これはなかなかいい発言、
質疑でありますから読み上げます。
「軍事目的の衛星がふえてきた場合、現在の日本の防衛に対する
考え方も将来変わる可能性が出てくるのじゃないか。そういった場合、平和に限ると言っておっても、それを軍事目的に変えなければならぬような、もし環境になった場合、それでもなおかつ平和利用とされるか。それは、宇宙事業団はそれでいって、防衛庁としては別に軍事面のほうを
考えていく、そういうふうになるのか。あくまで、衛星、ロケット、それに関しても、もう宇宙事業団が平和ということで、はっきり線を引いて、いかなる衛星も、たとえば防衛庁でも飛ばさせない、そこまで力があるのかどうか。」という
質疑が行われております。それに対して、時の木内四郎国務
大臣の
答弁。「「平和の目的に限り、」という字句を第一条にお入れになりまして、さらに衆議院の本
会議の決議として、宇宙の開発利用に関する基本方針という決議によりまして、これはあくまで平和目的に限りという合意ができておりますので、それの存しておる限りにおいては、いま御心配のような問題は私は起こってこないと、かように
考えております。」と言い、木内国務
大臣は、「私
どもは、これを防衛庁に使わせるということは全然
考えておりません。」と、これが最初の出だしであります。
それからどうなってきたか。
昭和五十八年の行革特別
委員会の
審議の際に出てきた新
解釈であります。さくら二号を使うのは、公衆電気通信法によって、
防衛庁長官が言っていることですね、公平、平等に役務を提供するという義務があるんだから、したがって、さくら二号を利用して自衛隊が通信をやっても、これは平和目的に反することはありませんと、こう変わってきたわけだ。
今度どう変わったか。驚くなかれ、これはもうびっくりする話だ。今度
政府統一見解なるものができた。これは一体何を言っているのですか。要点を言うと、自衛隊が衛星を直接、殺傷力、破壊力として利用しなければ、衛星の利用は自衛隊にも許されるということでしょう。また、利用が一般化しておる
段階であるから、自衛隊が衛星を利用しても平和目的に反することはないと、こういうことでしょう。そこまで発展してきた。
ところが、もう一つ困ったことには、先日のこの
委員会の
論議の場で
総理が言っておることがあるでしょう。
質問に答えて、自衛隊法では自衛隊が平和を守ることを明記しておる、平和目的であることが確立されておるんだ、だから自衛隊が平和を守るという目的であればこの利用をしたっていいんじゃなかろうか、そういうことをこれから検討しましょうと、こう言っているんだ。なるほど、こうなると、自衛隊法には確かに平和と安全を守る自衛衛の任務があるが、平和を守る自衛隊が平和を守るために宇宙を利用することは構わないんだ、こういうことになっていくと、衛星を直接、破壊力、殺傷力として使うも何もそんなものは吹っ飛んでしまって、自衛隊が平和を守るという目的で宇宙を何に使っても構わぬのだ、こういうことになる。こういうように歯どめのかからぬようになっているのですよ。
たった一度国会の決議を無視したことがついに突破口を開いて、歯どめがかからなくなっておる。宇宙の全面的な軍事利用が容認される方向になっておるのですよ。だから、私は、この国会決議を守らなきゃならぬのだ。この国会決議は最終的にどこが判断するのだ。国会の決議だから国会が
解釈をしてそれに行
政府は従わなければいかぬ。ところが、行
政府の方は国会決議なんかほったらかしにして、
自分たちの勝手な
解釈でこれをどんどんどんどん進めていっておる。(発言する者あり)今やじが出ておるけれ
ども、こういうことで、その国会決議というのは与野党の完全一致でやったのでしょう。その国会決議が行
政府の一片の措置によって突き破られて何の役にも立たぬとするなら、国会の
論議というものを
国民はどう見るのですか。
総理、
国民は国会の
論議を信頼することができるのですか。国会の存在価値があるのですか。国会で何を
論議しようと、どんな
答弁が出ておろうと、そんなものは何の役にも立たぬ。国会でどんな決議をしておろうとそんなことは何の役にも立たぬ。
国民は一体国会を何と見るのですか。国会は存在しても存在しなくても同じことだと思う、国会なんか信頼もくそもできないと思う、そうなるんじゃありませんか。だから、私は、国会決議との
関係を明確にしてもらうまでは、この硫黄島の工事は中止する、護衛艦の受信装置は予算削除して、やらない、これは絶対に守ってもらいたい。
総理、どうですか。