○佐藤観樹君 私は、
日本社会党・
護憲共同を
代表して、
自由民主党・新
自由国民連合提出による二人区創設を含みます公職
選挙法改正案、いわゆる六増・六
減案に反対、
日本社会党・
護憲共同、公明党・
国民会議、民社党・
国民連合、
社会民主連合四党による公選法
改正案、
野党統一案に賛成の立場から、
議員定数是正問題につき、
基本的な重要
課題につき五点に絞って
質問をいたします。
議会制民主主義が代議制を
基本とする限り、この議場の
構成は民意を正確に映し出した鏡でなければなりません。しかし、現在、
兵庫五区と
千葉四区の
格差が四・五四倍を筆頭に、
格差二倍以上が全国百三十
選挙区のうちの約半分五十六
選挙区に及び、前回の五十八年総
選挙に対する
定数訴訟が二十一
選挙区二十三件に至っては、
議会制民主主義の
基盤を揺るがせる異常事態であり、ひいては
政治不信を呼ぶことは必定であります。近代
民主主義社会では、個人一人一人が尊重されることが
基本であり、ある
地域の人は一回の投票で他の地区の人より三票も四票も投じたのと同じ効果を持つのでは、
憲法第十四条の法のもとでの平等を引き出すまでもなく、極めて不平等であります。
一昨年秋の最高裁の
判決は、いわば執行猶予つきの
違憲判決であり、できるだけ速やかに
改正が望まれると異例の要望をつけているのであります。現在係争中の訴訟に対する最高裁の
判決も、来月の七月があるいは九月かと言われておりますけれども、その
内容はさらに厳しく、
選挙無効まで踏み込むのではないかというのが司法関係者の大方の見方であります。我々議会人として、
国権の
最高機関を
構成するものとして、言われるとおり司法の
指摘、督促を待つまでもなく、
議会制民主主義の健全な発展のために真剣に取り組むべき最重要
課題であります。
民主主義の先進国イギリス、西ドイツ、アメリカ等におきましても、
選挙制度が
政党本位という違いはありますものの、厳しく
人口に比例するよう
法律を設けたり、あるいは区画委員会を設置したりいたしまして、
定数と境界線
変更に取り組んでいるわけであります。
そこで、
質問の第一は、一票の
価値、重さをどう考えていらっしゃるのでしょうか、この問題の重要性をどれほど深刻に受けとめていらっしゃるのでしょうか。
この問題について総理が主導的な役割を果たした場面にお目にかかったことは残念ながらございませんでした。
一体提案者は、あるいは総理は、
憲法がどれくらいの不
均衡まで許容してくれていると考えているのか、この答弁次第では、本当に抜本
改正を考えているのかどうかのリトマス試験紙ともなるからであります。
第二の
質問は、いわゆる六増・六
減案の欠陥二つについてであります。
一点は、
格差の
是正を三倍以下にしかしない
是正、いわゆる三倍案であること、もう一つは、二人区を創設したことであります。
一体六・六案の基礎である三倍
是正は何を
根拠に置いたのでしょうか。確かに五十八年の
最高裁判決は、五十年の
定数是正状況、
格差が二・九二倍でございましたけれども、これを是認しているようでございますが、しかし、その中身をつぶさに見てまいりますと、三倍まで
是正すれば平等が保たれるとか、何ゆえ三倍以内なら合憲ということを真正面から言い切っているわけではございません。少数意見ながら一対二を超えてはならないという最高裁判事の意見もありますし、五十九年九月の広島高裁の
判決でも、
最大格差は一対二
程度とすべきであるということを
判決の中で言っております。同じ有権者でありながら、ある人は一票、ある人は三票一回に投票できるというのでは、
国民の常識からかけ離れております。これからの
判決もますます一対二に近づいていくことが考えられるわけでありますが、
提案者は何をもって一対三の
根拠とされ、いつまでこの非常識が認められるとお考えになっているのかお伺いをしたいと思います。
さらに、八月の末には、ことしの三月に行いました住民
基本台帳の結果が公表され、三倍案ですら、新潟四区、北海道一区が追加をされることが予想されております。住民
基本台帳と公選法でいいますところの数字的基礎でございます
国勢調査とはその
内容が若干違うことは私も
承知をしているわけでございますけれども、
人口の増減の傾向を推定することはできます。さらに、本年十月一日に行われます六十年の
国勢調査の結果が、要計票による概数
人口ながら十二月の末には公表されると言われ、三倍案を超える
選挙区は、減員区に和歌山二区、大分二区、新潟二区、増員区に大阪三区、神奈川四区、
千葉四区がさらに追加をされて該当すると予想されております。法案
審議中に既に実態からかけ離れた数字が出たのでは、
国民を到底納得させることはできません。いかにもその場しのぎ、拙速のそしりを免れることはできません。
一体、六十年
国勢調査が出たとき、三倍案を超えている
選挙区の
定数是正はどう対処するのでしょうか。まさか、合理的期間が過ぎ再び訴訟になって
判決が出るまで放置しておくわけにはまいらぬと思います。とても
世論は納得しないと思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
三番目の
質問は、六増・六
減案の
最大の欠陥であります二人区の新設問題についてであります。このことが、自民党内ですらついに一致できなかった
最大の原因であり、
野党がこぞって反対をしております欠陥であります。
ことしは
普通選挙法施行六十年、
大正十四年から今日まで、戦後一回の大
選挙区制を除きまして二十一回の総
選挙、五十九年間は中
選挙区制を堅持してきたわけであります。
大正十四年、先ほど田邊
提案者からもお話がございましたように、時の若槻礼次郎国務大臣は
提案理由の
説明の中で、「
二名以下又ハ
六名以上
ト云フガ如キ例外ノ
選挙区ヲ
設ケナカッタノハ、中
選挙区ノ
主義ヲ
徹底センガ為デ
アリマス」と述べておりますけれども、
普通選挙法以前の大
選挙区、小
選挙区の弊害を除去する
制度として
定数三ないし五の中
選挙区制で出発をした。もちろんこのときの
政治情勢から、憲政会、革新倶楽部、政友会の
政治的妥協の産物であったことは私も否定をいたしませんが、以来、日本の
民主主義はこの中
選挙区制の中で発展してきたこともまた事実でございます。三十九年あるいは五十年の
定数是正も増員によりましたけれども、
六名区以上になるところにつきましては最低三名を基準といたしまして分区をしたのでありまして、
二名ではなかったのであります。
このように、
普通選挙法六十年の歴史は、
定数三名ないし
五名の中
選挙区制の歴史であり、既に慣熟をした
制度として
国民に深く定着していると言っても決してこれは過言ではないわけであります。
提案者は、この歴史的な
重みというものを無視して二人区を新設することは
国民に著しい違和感を与えると思いますけれども、その点についてはいかがお考えでございましょうか。
これに対しまして
野党の統一案は、二人区となる
選挙区は隣接
選挙区と合区することによって中
選挙区制を維持する案でございますが、
提案者は何ゆえこの
方法を採用しなかったのでしょうか。これに対しまして
提案者は、先ほども
質問の中にも言っておられましたけれども、合区によって
選挙区の
地域的な
一体感がなくなるんだ、こういうことを盛んに言っております。しかし、この答弁は私はうなずけません。私たちも、
選挙区が
地域的
一体感を持つこと、このことについては決して否定をしているわけではないわけであります。しかし、現在の
選挙区の境界線というのは、
昭和二十一年、日本が焦土と化した、そしてまた疎開をした人々があちらこちらにいた、その状況の中の
国勢調査でできた
人口をもとにしたものでございまして、それから四十年、交通の便やあるいは通信の発達状況を考えましたときに、距離感は著しく縮まっております。行政の効率化のために、ごみの焼却なりあるいはし尿処理なり上下水道なり、私たちの
衆議院の
選挙区の境界線を越えて広域行政をやっていることはたくさん例があるわけであります。少し性格は違いますけれども、分区によりましてもこの
地域的な
一体感を二つに分けたことがあるわけでありまして、そういった
意味から言いますと、
地域的な
一体感がそれによって損なわれるというのは極めて私は
根拠が薄いと思うのであります。
国会議員は、
憲法四十三条を挙げるまでもなく、
地域代表の性格ではなく全
国民の
代表であります。
国民の
代表として郷土や
地域の発展に尽くすことは当然でございますけれども、全
国民に関係をいたします
国政全般から、宇宙船地球号の生存から、SDIに関する宇宙まで
国会議員は担当いたします。こう考えてみれば、
地域的
一体感が合区によって薄くなるという反対
理由は、極めて
根拠薄弱、積極的
理由に乏しいと言わざるを得ません。むしろ、合区される
選挙区にも同じ党の
議員がおり、
選挙地盤の競合から反対と抵抗が強くて合区ができないとはっきり
国民の前に表明すべきだと考えますけれども、合区できない
理由につきまして、ひとつその
理由をお伺いしたいと思います。
四番目の
質問は、今度の六・六案と今後の抜本
改正の
あり方、
二名区新設と小
選挙区制導入との関連についてであります。
六・六案の
趣旨説明の中には、「
定数是正を行うにあたっては、
衆議院の
あり方、
選挙区の
あり方等の
根本論議を踏まえ、幅広い見地から見直しを行うことが望ましい」と述べていて、
選挙制度の
改正まで踏み込んで
定数是正問題を解決しようとしているように解されます。加えて、二人区を新設し、三ないし
五名の中
選挙区制の一角を崩そうとしていると私たちは見ております。私は、二人区が小
選挙区制そのものとは言いませんけれども、一歩近づいたと理解をするのが常識だと思います。もし、二人区新設による
是正を二倍までやれば、十二
選挙区、つまり全国百三十
選挙区の約一割が
二名区となり、自民党の
二名独占も夢ではなくなってまいります。ダブル
選挙以外、最近の
選挙では過半数をとれなくなった自民党にとりましては、まことに都合のいいことであります。しかし、このような党利党略は
世論が許しません。
一体、暫定
措置でない抜本
改正とは、小
選挙区制の導入のことではないのですか。六十年
国勢調査の結果をどう
定数是正に結びつけていくか、このこととも関連をいたしまして、抜本
改正とは
一体いつから、どんな
方法でやるおつもりなのか、お答えをいただきたいと思います。
国民が望んでいるのは、
制度改正ではなく
定数是正であります。
一定の枠組みを決定をし、
定数と
選挙区割りを
協議することに限った
選挙制度審議会を設置をする考えはないのか、あわせてお伺いをしたいと思います。
最後に、総理に
定数是正の
実現と解散権との関連についてお伺いをしておきたいと思います。
法律面につきましては、
憲法には解散権を制約する条文は見当たらないから、
定数是正をしなくても
憲法に規定する首相の解散権は制約されないんだ、こういう見解のようであります。
法律面のことはとりあえずおいたといたしましても、
違憲状態の
定数で再び
選挙をすることになれば、今度は
選挙差しとめ、
選挙無効、損害賠償の訴訟が次から次へと提起をされ、大混乱になるばかりか、一
選挙区でも
違憲判決が出れば全
選挙区が違憲になるというのが今多数意見でございますから、
選挙自体をやり直さなければならない。そのとき、
一体公選法の別表の
定数はだれが改定をするのかなと、こういった起こってくる
政治的な混乱を考えましたら、たとえ法理論上解散権があるといたしましても、
違憲状態が解消された
定数是正が
実現されない限り
政治的には解散できない、こう考えるのが常識だと思うわけであります。