○内閣
総理大臣(中曽根康弘君) 上田
議員にお答えを申し上げます。
まず、
大型間接税の問題でございます。
私は、
衆議院予算委員会におきまして、矢野書記長に対する御
答弁の中で、「
多段階、包括的、網羅的、普遍的で大
規模な
消費税を
投網をかけるようなやり方でやることはしないこそういうことも申しておりまして、いわゆる
EC型付加価値税との
関係について御質問いただきましたが、
EC型付加価値税というのもいろいろな態様があります、しかし、その中でも今のようなものに該当するものがあれば自分はやりたくない、そういうことを申し上げたのでございます。私は
昭和二十二年以来
国会へ出まして、
取引高税とかあるいはいわゆる
一般消費税(
仮称)というものは
日本国民の体質に合わないで
国民から非常に大きな拒否反応を受けておる事実を知っておりまして、そういうような経験にかんがみまして今のような発言をいたしたのでございます。矢野書記長に対する御
答弁で御了承いただきたいと思っております。(「さっぱりわからぬじゃないか」と呼ぶ者あり)
次に、
税制改革の問題でございます。
税制改革の問題に関しましては……(「やり直せ」と呼び、その他発言する者あり)矢野書記長に対する御
答弁というのは、先ほど申し上げたような内容のものであります。すなわち、
多段階、網羅的、一般的、普遍的、そして
投網をかけるような形で各
流通段階に税金をかける、そういうようなもので、いわゆる
EC型付加価値税というものでもいろいろな態様のものがあります。したがって、
EC型付加価値税のようなものでも今のものに該当するものはやりたくない、そういうことを申し上げておるわけであります。
次に、
財政再建の問題でございますが、「
増税なき
財政再建」の理念はあくまで堅持してまいりたいと思っております。そのためには、歳出歳入構造の
見直しとかあるいは機動的な経済運営あるいは
民間活力の活用、それらのいろんな方策を組み合わせまして、いわゆる新しい成長への道ということを模索しつつ、これを実行してまいりたいと思っておるのであります。この理念をもし外すというようなことになりますと、歳出要求の圧力が一遍に噴出してきまして、行政改革や
財政改革というものが崩れる危険があると心配しておるからでもあるのであります。
次に、租税改革につきましては、
昭和二十七年でございましたか、地田内閣のころでありましたか、
シャウプ税制改革というのがございました。自来三十五年になります。しかし、それ以来、
日本の税体系には非常なひずみやあるいは
ゆがみが出てきておる。したがいまして、今後、
税制のあり方について、公平、公正、簡素、
選択、こういう観点に立ちまして、幅広く根本的に税体系を見直すことを課題とするときに至った、そう申し上げておるのであります。これは、しかし、単なる増収や
財政再建を
目的とするものではありません。要するに、今の租税につきまして、
国民の間にかなりの
ゆがみや、そういう問題について不満が出てきております。この不満を我々は十分酌み取って、
国民の納得のいくような公平感、公正感、簡素、こういうものに満ちた、そして
国民の自由意思による
選択というものを考えた
国民の満足する税体系に近づけたい、それが我々の念願であります。
この内容等につきましては、しかるべきときに
税制調査会等において十分御議論
願いたいと思っておりますが、私は率直に申し上げて、
法人税や
所得税の減税を実行いたしたいと思っておるのであります。これは、
国民の間にもかなりのそういう御要望がありますし、
野党の皆様方にも強い御要望がございます。しかし、ことしは残念ながらできません。これは今まで申し上げたとおりです。この大きな抜本的な
税制改革を機に、この問題もよく勉強していただきたいと思いますが、赤字公債を出すことによってこれを行うということは、
財政再建の理念に反します。したがって、赤字公債によらざる方法でいかに
所得税や
法人税の減税を実行していくかというようなやり方について、十分御
論議も
願い、
国民の皆様方の御議論も承りたい、そのように考えておる次第でございます。(
拍手)
次に、この公平、公正云々というものはどういうことを意味するかということでございますが、例えば公平感という問題については、
所得課税の
所得分配機能のあり方はどうであるか、例えば今二百万から六百万ぐらいの間がかなりきついという重圧感がございます。これをどういうふうにするか、不満があることは事実であります。このような
ゆがみと申しますか重圧感をどうするか。あるいは
所得の
捕捉の問題がございます。あるいはさらに、
間接税と直接税とのバランスの問題も学者が議論しておるところでございます。こういうような諸般の問題について、公平感あるいは公正感あるいはもっと簡単でわかりやすい
税制に変えたらどうか、あるいは
国民の自由意思による
選択制を認めたらどうか、こういうような点を我々は問題にいたしたい、そう思っておるわけでございます。
シャウプ税制に対する評価は、三十五
年間の経過を見まして、あの当時は戦後の荒廃した中で新しい
財政民主主義を
導入いたしまして、
シャウプ税制は
日本の
財政史上かなり
功績があった税体系であると評価しております。しかし、その後、余りにも直接税の比重が多くなり過ぎはしないかとか、さまざまな問題が起こり、あるいはさらに最近におきましては、
不公平税制であるとか優遇
税制であるとか、いろいろなそういう新しい
措置が講ぜられたりいたしまして、
シャウプ税制のいわゆる
財政民主主義の理想が曇ってきたという感なきにしもあらずであります。そういう意味におきまして、
シャウプ税制は非常にこれを評価いたしますが、現
段階において今までの体系を見直すべきときに来た、そう考えておるものなのであります。
次に、
不公平税制に関する御質問がございましたが、これは優遇
税制あるいは
利子配当課税とか引当金
制度であるとか、そのほかの問題について累次改革をいたしております。今後もその面に向かって努力をいたすつもりであります。
法人税の
負担水準につきましては、
我が国の
企業の
法人税負担を主要諸外国と比較した場合に、アメリカ、イギリス、フランスよりは高いが、西ドイツよりは低くなっているというのが報告でございます。
所得税減税については、先ほど申し上げたとおりでございます。
それから、単身赴任の減税とか教育減税とかいろいろ御質問がございましたが、さまざまな
国民生活の態様の中から
特定の条件や
特定の家計支出を抜き出して
税制上しんしゃくするということは限界があると考えられております。すなわち、それは公平とか公正
原則というものからも考える必要があると思うのであります。ローン減税につきましても、住宅取得控除
制度等によりまして、ある程度の
負担軽減も既にやっておるところでございます。
日本経済の見通しにつきましては、後で企画庁長官から御
説明がありますが、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、
昭和五十八年八月閣議決定、この線をかなり順調に歩んでいると私は思っております。今後も、
民間活力あるいは技術開発そのほかの諸般の
政策等によりまして、五十八年から六十五年の年平均実質四%程度の成長を達成いたしたい、このように考えております。
最後に、積極
財政運営の問題でございますが、
我が国の
財政構造が今非常に厳しい状況にあるということは御承知のとおりでございます。行政改革を進めながら、しかも
財政改革を着実に軌道に乗せつつ物価の安定を期していくというのがまず基本的な態度でございます。しかし、新しいハイテク時代に備えまして、いろいろなそれらに対する新しい
措置等も今回の予算については講じており、公共投資につきましても、事業量においては昨年を上回る事業量を確保するように努力しておるところでございます。今後とも、
財政体質を改革すると同時に、機動的な経済運営によりまして所期の
目的を達するようにいたしたいと思っております。
残余の
答弁は
関係大臣からいたします。(
拍手)
〔
国務大臣竹下登君
登壇〕