○嶋崎国務大臣 ただいま三浦議員からのお話でございます。
五月十四日に、従来
指紋制度を含む
外国人の地位及び待遇の問題についていろいろ論議をしてきた経過を踏まえまして、回転
指紋を平面
指紋に直し、特殊の印刷用紙を使って余り手を汚すことなく
指紋をとれるという意味で心理的な負担を軽減をし、かつまた全国で三千五百余ある市区町村の皆さん方にこの問題の整理をやっていただくということで考えまして、十四日ぎりぎりというような考え方で問題を整理をして、その
運用のやり方等につきまして入管
局長名の
通達を出したわけでございます。我々としましては、それなりに精いっぱいの努力をしてこの問題の解決に努めてきたという気持ちを持っておるわけでございます。
そういうところに今二人の神奈川県の
関係の皆さん方の御発言がありましたけれ
ども、私たちはこの
指紋問題を考える場合に人権侵害であるとかいう感覚は全く持っておりません。残留
指紋をとる証拠というのを考えてみましても、回転
指紋を今度平面
指紋に直す、一対一で対応してもらうというような考え方から見ますと、それが犯罪捜査その他に関連するものであるというふうには思っておりません。かつまた、諸
外国の例等におきましても、全くこういう
制度をやってないというのはごく特殊な例のところでございまして、やはり必要なときにはそれをとっておるという実情もあるわけでございます。そういうことを考えてこの
制度の改正をやったわけでございますから、このお三人の物の考え方についても非常に異論があるところでございます。人権侵害であろうと初めから決めてかかられたり、過去もそうでありましたけれ
ども制度の改正をやっているから
指紋をやらなくてもいいというような諭理が高唱されたり、今後も確かにその地域にずっとお住まいである皆さん方、十分そういう気持ちを受けて我々も過去、地位、待遇の問題について努力をしいろいろ工夫をしてきた経過もあるわけでございまして、そういう発言については必ずしも賛成できない、私
どもとは考え方が違うなという感じを持っておるわけでございます。
いろいろな意味で問題を取り上げられそうでございますけれ
ども、当時からも申し上げておりましたが、この問題につきましては五十七年の改正があり、その改正の内容もどちらかというとある程度緩和的な措置を講じたという経緯もあるわけでございます。そういう中で法案が通過をしまして、その後から実は
指紋問題が大きく取り上げられてきたというのは私たちも大変遺憾なことであると思っておるわけでございます。
いずれにしましても、そういう経過の中で今日に及んだわけでございますので、在留の
外国人の皆さん方に今度の改正の趣旨というものをよく理解していただきましてぜひとも御協力を賜りたいと思いますし、また
関係の市区町村の皆さん方にも、我々の気持ちを受けまして
通達の趣旨にのっとった整理をぜひ協力をしてやっていただきたいと心から思っておる次第でございます。
次に、この抗議文の問題でございます。
私はこの抗議文の中を読みまして、我々の感覚と随分違うなということが非常に多うございます。少し時間をかけて御
説明させていただきたいと思います。
まず、抗議文の一番初めにあります「現行法より更に後退した改悪であり、外登法の本質に何等触れることもなく、世論の批判を無視し、欺瞞に満ちたものである。」この点は我々の感覚とは全く違います。私はこういう意識でもって
指紋問題を全く考えていないということをここで断言してはばからない者の一人であるわけでございます。
二番目に、「外登法改善の決議をした地方議会や、
押捺拒否者を告発しないとした地方自治体の良識に対する強権の濫用は、」云々と書いてあります。地方議会の中でもそういう決議をして上がっておるのが相当数あることを私は認めます。認めますけれ
ども、五十七年の改正をした趣旨というものを本当にどこまで御理解していただいておられるのかということについて、私はある程度疑問を持っております。しかし、そういう論議は別にいたしましても、そういうことについて強権の乱用をしたというような気持ちは全然持っておりません。
三番目に、「拒否者に対する
登録済証明書発給の曖昧さとその内容の無意味さは、
生活権に対する著しい侵害であり、且つ差別に基づく民族的弾圧であると認められる。」と書いてありますが、この点についても私は全く意見が違います。
次に、「
指紋押捺は、回転であろうが平面であろうが、或いは黒インクが薬品に代ろうが、更には一回だけ捺印するんだという画策を含めて
指紋が強制的に採られる事自体が屈辱であり人権侵害なのである。」我々は、この
制度をできるだけ解決したいというつもりで、本当に五月十四日ぎりぎりまでいろいろな努力をやってきたつもりでございます。そういう中でこういう論議があることは、少なくとも私たちの意図は全く理解されないし、そもそも
指紋押捺そのものを全廃しなければあらゆることについて反対でありそれが人権侵害であるということならば、我が国の
法律に対するこれらの皆さん方のお気持ちはどこにあるのかというのは私は理解できないところであるというふうに思っておるわけでございます。したがって、これは「何らの抜本的改正になっていないと断言する」という感覚とは全く違う感覚を持っております。
次に、「我々は
在日外国人の基本的人権と
生活権を守るために強く抗議するものである。」という感覚ですが、そういう問題として
指紋問題を考えられるべきではないというふうに私たちは思っておるわけでございまして、そのことはまた逆に、「
指紋押捺制度撤廃は、国際人権宣言や憲法の精神に則る人間尊重と
生活権擁護」には反するものであるということを書いてありますけれ
ども、私は日本の憲法についてこれを守っていかなければならぬという気持ちの非常に強い人間の一人であると思っておるわけでございます。かつまた、国際人権宣言や憲法の精神に反するという物の考え方につきましては、既に裁判等においても議論されておりますし、国際人権宣言に反するものであるというふうには思っておらないわけでございます。
最後に、「われわれは、總力をあげて
指紋押捺制度完全撤廃を獲ち取るまで總「拒否」も含めてあらゆる手段と
方法を駆使し、徹底的に闘い抜くことを大会の名において宣言しこと書いてあるわけでございます。私は非常に残念なことであると思います。それぞれの国には長い歴史というものがあるわけでございます。
指紋制度を含めて在留の
外国人の皆さん方の地位及び待遇の問題については我々もそれなりに真剣に考え、過去の歴史というものがあるわけだと思います。そういう中でいろいろな制約もあろうと思いますけれ
ども、努力の結果、ともかく世界に類例のない話だと思うのですけれ
ども、特殊の用紙に工夫をしてそれの上に平面の
指紋を押していただくというようなことをやりました。七月一日からの大幅な切りかえを前にぎりぎりこの対策を打ち出した私たちの気持ちというものも在留の
外国人の皆さん方によく御理解を願うとともに、ぜひ自治体の皆さん方もそういう気持ちを受けて仕事をやっていただきたいということを思うこと切なものがあるというのが私の現在の気持ちでございます。