○筧
政府委員 橋本
委員十分御
承知のとおり、本件については、昭和五十四年三月の法曹三者
協議会で
協議が調いまして、その結果、日弁連が要望される国選弁護人の
被害補償
制度につきまして、
法務省でその実現方を
検討するという条項が定められたわけでございます。その後、主として日弁連と
法務省との間でその立法について
協議がなされたわけでございます。
相当長年月を要しましたのは、今先生御
指摘のように日弁連側のいろいろな御要望がございまして、それは基本的な問題になるわけでございますが、立法形式の問題。それから、
被害の範囲を人的に、例えば同居しておる弁護人あるいは弁護士会といいますか事務所の従業員等にまで及ぼすべきだというのが日弁連の御主張でございます。それから
内容的には、物損、火をつけられたとかいう場合の財産上の損害、あるいは精神的な損害まで含めるべきであるというような御
意見。さらには弁護士、国選弁護人の地位、性質等から見て、一般の証人とは違った手厚い補償と申し良すか金額的にも多い基準を立てるべきであるというような御主張、これは立法形式にも絡まるわけでございます。もう
一つは、審査の手続の過程で日弁連の意向を何らかの形で反映するような方法、審査の過程に参与するということであろうかと思います。そういうような御要望が当初からあったわけでございます。
それにつきまして、その後最近に至るまで、日弁連との間でいろいろ
協議をしたわけでございまして、基本的な問題と申しますのは今申し上げた四点に尽きようかと思います。
協議の
内容も、その点をめぐりましていろいろな
意見の交換がなされ、最終的には日弁連側も今回御提案申し上げております
内容でやむを得ないということで御
了承を得て提案の運びになったわけでございます。
その過程でいろいろ出たわけでございますが、単に裁判に
協力したのでその立場は同じであるということだけではございません。国選弁護人と証人、参考人との違いというものは十分考えられるわけでございます。同じく刑事司法、刑事訴訟に
協力するといっても、その
協力の度合い、
内容において差があることは、これは何人も疑わないところであろうかと思います。しかし、それでは別に国選弁護人だけを取り上げて今申し上げたような要望を全部入れた手厚い補償をするべきであるか。損害の補償あるいは
被害の補償は、ごく大ざっぱに一般論で申し上げれば、手厚いにこしたことはない。国家財政的な見地は別といたしまして、精神論としてはそういうことになろうかと思います。
しかし、同種といいますか、いろいろな
関係で国家事務に
協力し、あるいはそうでなくても何らかの
被害を受けた者を国が補償するという
制度はいろいろあるわけでございますが、それをどういうふうに位置づけるべきかということが問題であろうかと思います。その点で広く国家補償といいますか賠償といいますか、
被害の補償ということの中にもいろいろな形のものが考えられるわけでございまして、御
承知のように被疑者補償といいますか刑事補償、これも国家の適法な行為により違法な結果が発生した場合に
責任等を問わず国が補償するという
制度でございます。あるいはまた国家賠償法では、国家の違法な行為、これは故意、過失を要するその結果の損害発生に対して賠償をするという
制度。あるいは土地収用等によりまして財産上の
被害を受けた人に対する国の補償というようなもの。その他いろいろ程度がある。
それでは、国選弁護人の
被害補償あるいは証人の
被害補償というのはどういうふうに考えるかということでございますが、これは国家の違法な行為とかいうようなものでの補償ということとは違って、刑事司法の
運用に際して国選弁護人あるいは証人が身内の者等が害を受けることを恐れて
協力しにくいという状況があっては刑事司法の円滑適正な
運用を欠く、現にそういう事象が予想されておるわけでございますから、そういうことを除くために、いわば国の刑事政策の一環として、一定の
被害があった場合にその補償を国が約束するという性質のものであろう。したがいまして、刑事補償あるいは国家賠償などとはその性質も違うのではないか。そうすると、現行法上で刑事訴訟に
協力したという立場も含めまして一番近いといいますか同性質のものは現在御提案申し上げておる証人
被害給付法であろうということに落ちついたわけでございます。
それでは
内容をどうするか、さらに手厚くするかということでございますが、先日申し上げましたように、会社の社長その他収入の多い人から収入のほとんどない人まで当然証人、参考人になり得る、その人たちの
協力を得なければならないということ。その
意味では、弁護人の報酬がどのくらい得られているか正確にはわかりませんけれ
ども、一般社会の水準としては高い水準であろうということは言えるかと思いますが、やはりその中にもいろいろ差があるであろうと思います。それを一律にといいますか、司法に
協力するという同一性質の中で
証人等と区別して特に高くする必要はないのではないか。合理的な
理由は認めがたいのではないか。しかも現行の証人
被害給付法によりますれば、現在では基準が六千百円から最高一万三百円と広い幅を持っていますので、
現実に弁護人の方に
被害が生じました場合には、
現実の収入を考えますればその上限の方をいく場合がほとんどであろうというふうに予想もされるわけでございます。
それやこれや数年に及ぶ両者の
協議の結果、これで双方納得して早期の立法化を図ろうということに
意見が一致して今回の御提案に至った次第でございます。