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上谷最高裁判所長官代理者 お答えいたします前に、一言お断り申し上げておきたいのでございますが、新聞紙等に既に被疑者として逮捕されたという報道もございましたし、それから振出人とぐるになりまして、いわゆる
裁判所をだますような虚偽の報告書を書いて、保全処分の命令をだましてとった、このような報道がなされておるわけでございますけれ
ども、これは確かにこういうふうな仮処分の申請を悪用するという悪い当事者といいますかそれがいるかもしれませんといいますか、されかねないという
可能性はあるわけでございますが、私
ども、実は本案等が起こされて最終的な結論が出たとかいうわけではございませんし、
裁判所といたしましては、本当にこういうふうな必要があって仮処分をもらったのか、それとも虚偽の報告書をつくって、この種仮処分を申請して
裁判所をだますというふうな形で処分をとったのか、この辺のところ、ちょっと真偽のほどは確認するすべがございません。
そういうことは別といたしまして、一般論として私
どもの考えでいるところを申し上げさせていただきたいと思います。
これはもう申し上げるまでもなく、
委員十分御
承知のとおりでござい孝すが、この種の仮処分、本当に手形の騙取を受けた、あるいは割り引きをしてやると言って預けたのをそのまま持ち逃げされたというふうな債権者があります場合に、この種の仮処分の申請があるわけでございまして、そういうふうな本当の被害者である債権者の
権利保護に欠けるところがあってはいけないわけでございますし、この種の保全処分の通例といたしまして、発令に緊急を要する
事件でございます。そういう意味で、
裁判所としては当事者から、特に債権者の方から提出されました報告書その他の疎明書類を審理いたしまして、当該申請理由について疎明があると認めれば、こういう趣旨の仮処分を出すということになるわけでございまして、そういう点で今の御
指摘あるいはまた新聞報道等では、地方の
裁判所のふなれであるとか、あるいは
人員配備の手薄さにつけ込んでなされた仮処分の申請であるというふうに書かれておることがございますが、私
どもといたしましては、それは必ずしも当たっていないのではないかと思います。これは私
どもも一つ一つの
事件でどの
程度の審理をしたかということは、私
どもの立場でそう調べるというわけにもまいりませんので、詳しい審理経過等を把握しているわけではございませんが、外形的に見まして、例えば面接等をして出しているというふうなところもあるというふうに報告を受けておるわけでございまして、それぞれの事例で例えば
裁判官が
配置されていないから、あるいはまた
職員が足りないから審理がずさんになったということは決してないというふうに報告を受けておりますし、それに、
裁判所といたしましても、この種の仮処分が出てきた場合に、今のお話でございますと、例えば債務者を審尋するとかそういうようなことをしてはどうかというお話もございましたが、実際問題、こういうようなのは債務者を審尋いたしますと現実には手形を処分されてしまうということも非常に多うございまして、なかなか審尋は難しいだろうと存じます。
これは具体的にどの
程度の
手続で仮処分を出すか、これは具体的には当該
事件を担当なさいます
裁判官の
訴訟指揮上の御判断でございますので、私
どもがとやかく申し上げるわけにはいきませんが、一般論として申し上げれば、やはり緊急性を要する仮処分でございますので、疎明等の資料がそろっておって特に不審がないということであれば、真実に保護されるべき債権者の救済に欠けるところがあってはならないということで、一応、仮処分命令を出して、後は
異議にまつというふうなお
取り扱いをなさる
裁判所が多いように私は思っております。
そうは申しましても、現実に小さな
裁判所がねらわれているではないかというふうなお話があるかもわかりませんが、これは、私
どもとしてはこういうふうに申し上げたらおわかりいただけるのではないかと思います。つまり、例えば東京あるいは大阪のような大
裁判所で専門部を置いておるところでございますと、実は大都会でございますので生き馬の目を抜くと申しますか、かなり悪質な債権者が申請に出てくるという事例も珍しくない、間々あるわけでございます。そういうふうなことになりますので、担当
裁判官としても、どちらかというとふだんからかなり用心をしておる、
事件の審理に非常に神経をとがらせているというふうに申し上げていいかと思います。それに引きかえまして、比較的地方の都市になりますと、一般的に債権者としてもそう悪質な債権者が出てくるということが多いわけではございません。そういう悪質な事例に出会うという経験が比較的少ないために、
裁判所側も大都市ほど神経をとがらせないというふうな
傾向があるいはあるかと思われます。そういうふうな点を
裁判所を利用しようとする悪い債権者がいたとすれば、そういう
裁判所をむしろねらうといいますか、そういう
裁判所に持っていった方が保全処分をとりやすいという考え方から比較的地方の
裁判所に出したということはあるいはあったかもしれないと思います。ただ、新聞等で報道されているところを見ましても、確かに地方の
支部等が数は多うございますが、比較的東京近辺の
裁判所にも出されておりますので、特別地方の審理が手薄であったからというわけではないと私
ども考えております。ただ、こういうふうな事例で仮処分が悪用される例があるということは、確かに大都市の
裁判所は比較的よく経験いたしますが、地方の
裁判所ですとそういう経験が少ないかと思いますので、そういうふうな情報が不足していたというのが間接的な
原因がというふうに言われれば、あるいはそういう面もあったかもしれない、そのように考えております。