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小林(進)
委員 この基本的な
権利については、いま少し本質的に賢明な大臣も研究してもらいたいと思うのだが、人のつくった財産をいわゆるホームテーピングなんかすることは空気を吸うのと同じことだという非常に安易な考えがあるんだ。おい、空気を吸ってだれか一体金をよこせなんて言う者がいるか、空気はいつも無料で吸っているんだ、同じように、こんな著作品や音楽や映画なんというものは、個人の家庭や一人ぼっちでぼつぼつ
利用するにおいては、空気を吸うのと同じで金なんか払うばかなことをやる
性質のものじゃないという、こういうずうずうしい思い上がった考えがいわゆるメーカーを
中心とした
企業家の中に流れているんだ。人のとうとい財産を無料で使用するなんということは大変に悪いことだという良心の苛責が
一つもないんだ。こういう速記録を見ていてもそういう論争が出てこないのは、私は残念でたまらない。松永文部大臣は法律家ですから私は言いますよ。この問題に関連いたしまして、
権利者があるのです。その
権利者が今被害者になっている。加害者があるんです。その加害者は二組あるんですよ。一組は
利用者です。一組は
利用する機器、機材を製造をしているメーカーなんです。これをよく考えてみますと、
利用者は法律で言えば直接加害者だ。直接正犯というやつだ。メーカーの方は法律で言えば間接加害者なんだ。犯罪で言えば間接正犯なんだ。同じ犯罪を構成する正犯であるにおいては間違いない。しかし、今のレコードなんかに関する限りは間接正犯だ。これが一番紛争している根源ですよ。けれ
どもこの諸君は、いや私
どもは何もテーピングしたわけじゃないし私はそれを
利用したわけじゃない、ただ機械やテープをつくっているだけなんだから、我々の商売に影響するようなそういう規制、法律はごめんこうむりますという姿勢なんだ。これが問題の根源ですから、この点をひとつ大臣からきちっと理論づけをしていって問題の解決の方向へ進んでもらたい。余り極端ですけれ
ども、メーカーは間接正犯だ。私はこれは明確に言っておきます。その
観点に立って事に処していかなければだめです。
時間がありませんから次の
観点に移りますが、この三十条に対しましては先ほ
ども言うように附帯決議がかかっている。その附帯決議は、七一年の抜本的
改正の際に附帯決議として、「今回
改正される
著作権制度についても、時宜を失することなく、
著作権審議会における
検討を経て、このような
課題に対処しうる措置をさらに講ずるよう配慮すべきである。」これが立法府の附帯決議なんです。それに対して一体文部省は何をやったか。七一年の抜本的
改正の附帯決議に対して、その
審議会を設けたのは、驚くなかれ七年間もほっぽらかしておいて、ようやく七七年に文部省は、
権利者、
利用者、学者などを集めて
審議会をつくった。この七年も空白にした、これ自体でも、これは立法府に対する重大な違反行為だ。附帯決議無視の態度です。いやしくも立法府がここで決議を付したということは、単なる文書や
言葉のやりとりじゃないのです。立法府の権威において行政府に、時宜を失することなくこれを直ちにやりなさいと。やるならば次の日からでもモーションを起こすのが行政府の崇高なる責任、務めです。なぜ七年間もこれをすっぽかしておいたか。このこと自体を私は言うんだ。文部省はけしからぬと言うのはこれが理由だ。しかも、七七年に至ってようやく
審議会を設けたはいいけれ
ども、今度はまた八一年まで四年間もじんぜん日を過ごした。だから、立法府の決議は七一年から八一年まで、これだけでも十年もすっぽかされてきている。すっぽかされたと言っては悪いあれだけれ
ども、まあまあ言いわけだけつくってそのままにしてきた。そして八一年になってこの
審議会が出した答申は一体何ですか。私が言わなくたってわかっているだろう。その答申の内容は何だ。その中には立法府の中でつくったこの附帯決議に対しては一言も触れていない。この附帯決議を全部無視しているじゃないですか。全部無視した答申が行われている。
時間がないから駆け足で言いますけれ
ども、第一には、ホームテーピングは現在のところ関係者の間で合意ができていない。第二番目は、国民の理解もまだ十分でない。第三番目には、国際的なコンセンサスを見定める必要がある、これもまた見定めていない。だから結論としては、特定の対応策を採用することは困難であります。こういう答申を受けて、文部省はそれをそのままにしておくのだ。これなら立法府が何ぼ附帯決議をつけても、決議をしても何にもならない。けれ
ども、さすがに
委員会も若干良心がとがめたのかどうか、その後で、将来
制度面で対応することが
課題となる、その場合、関係者の基本的合意が重要であると考えるから、そのような合意の形成に向かって関係者の話し合いが進められることを期待し、また
文化庁においてもこの話し合いが円滑に進められるよう配慮するとともに、この
課題について
検討を進める必要があると言っている。この
審議会の答申の中に関係者という
言葉が一体何遍出てくるんだ。その関係者の合意がなければだめだということを言っているのだ。この関係者とは何だ。だから、さっきから、
著作権に対する基本の態度を決めていかなければだめだ。関係者というのは言わなくたっていいだろう。私の言ったいわゆる
権利者と直接の加害者と間接の加害者、ところが、時間がないから急いで言うけれ
ども、直接の加害者である
利用者の方は、その後の調査統計に基づいて、私
どももただで使っているのは悪い、ただでコピーしているのは悪い、テープをとっているのは悪いから応分の賦課金を払うのは至当であると思います、お払いいたします、これはみんなが言っている。むしろ消費者の方はかくのごとく素直に言っている。資料をみんな読み上げてもいいけれ
ども時間がないからやめるが、それに対して、断じて使用料も払わなければ、空気のようにただでこれを使用する、作品をつくるのはメーカーなんです。だから、ここで言う関係者というのはメーカーなんです。この
権利を侵されている
著作権者あるいは隣接権者とメーカー、この二つの関係者が話し合いをして、話し合いをするように一生懸命
文化庁はやりなさい、その話し合いができなければ永久にだめですよ、いつまで
権利を
侵害されたままにしておくのですよ、これが答申の内容なんです。こんなことがまともな人間として一体考えられますか。これが今までの文部行政の実態ですよ。
まあ時間ですから、参考までに申し上げますけれ
ども、いわゆる
権利者の
権利を
侵害している
利用者に対するアンケートで、直接これを使っている諸君はアンケートに答えて、何らかの救済措置が必要であるとなす、これが録音経験者だ。みずからテープをとった諸君の七三・二%がお金を取ってくださいと言っている。それから録画の機器
ユーザーの六八・二%も、私
どもただでこれは録音していますけれ
ども、取ってくださるのが至当です、こう言って答えている。だから、取ってはいけない、断じてただでおけというのが今はもうメーカーだけなんです。しかし、このメーカーはなかなか力が強い。東芝だ、あるいは松下だ、あるいはソニーだ。まさか文部省はそんなもののしっぽ持ちをしているとは私は考えないけれ
ども、こういうようなことでは問題の本質が何にも解決できないということを繰り返し私は申し上げておきたい。
そこで、この問題に関連いたしまして、
参考人に承る一これは
参考人はいないのだからしようがない。こういうような問題に対する文部省の答弁もちゃんとここにある。加戸君、君の答弁書も私は持ってきている。君は一体、何と言っている、これは文部省を代表する姿勢だろう。この速記録の中にちゃんとあるのだから、これはうそはない。「
文化庁の姿勢といたしましては、メーカーサイドのある
程度の」ーメーカーですよ、「メーカーサイドのある
程度の御理解が得られるのであるならば、こういった
制度の抜本的な
制度的対応へ向けての方向性ということは、——もっとはっきり言うものだよ、わかったようなわからないようなことをぐだぐだ言わないで、「方向性ということは、
審議会報告もございますし、
文化庁としてもその方向へ向けての努力を今積み重ねていっているという段階でございます。」あなた、どうです。この答弁は一にメーカーの鼻息をうかがっているだけの答弁ではないか。そんなことで一体、行政の妥当性、公正が保たれますか。しかし、私はあなたを攻撃をするのではない。
文化庁の中ではあなたは一番
著作権に理解を持っている。だから、私はこの
程度にしておく。その点は認めているから、この
程度にしておくが、こういうメーカーの了解を得なければ、話し合いがつかねばというような姿勢を、ここできちっと方向転換してもらわなければだめですよ。これをやってもらうために、私は先ほどから本質論を言った。この所有権と創作権、持っているのはいわゆる
著作権者なんだから、彼らは例外的にそれを使用することを許されている
程度のものなんだから、しかもそれを
利用する範囲は決められているのだから、こういう過去の関係が明確になれば、これは対等だ。メーカーも
権利者も対等、五分と五分の形において何か商業取引でもやるような話し合いをして、あなたが軍配を入れるようなそんなばかげた答弁がこの中から出てくるわけはないのだ。それを私はひとつはっきり申し上げる。
この問題について懇談会が設けられた。この懇談会はしかし民間ですから、これは文部省の諮問機関でも何でもないのでありまするけれ
ども、一体その懇談会の中で今どういう審議が行われておるのか。これは文部省に聞いてもだめだな。あなた方の諮問機関じゃないのだから、
参考人がいなければだめだ。
参考人がいれば私は聞きたかった。そしてメーカー側の本当の主張も、ここで速記録をつけて明確に言ってもらいたかった。しかし、怠慢で
参考人を呼べなかったことはやむを得ません。
そこで、加戸君にお伺いするが、質問は別として、まず第一番目には、文部大臣に正しく事態の
重要性を進言して、さっき私が繰り返しているように、
著作物のいわゆるホームテーピングは
著作権者の基本の
権利を
侵害する例外的な便宜的な処置である、こういうことを三十条の中に明確に打ち込む、規制する。そして、この
著作物のコピーなどが安易に行われることを阻止したい、
文化国家育成の面で措置したい、こういうことをひとつ明確にこれから行動してもらいたい。これが基本問題ですから、明確にひとつ措置してもらいたい。これを明確にして、その上でこの問題の処置をする方向に進んでもらいたいと思うが、どうですか。これはひとつイエスかノーかでよろしい。余分なことを言う必要はない。