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1985-05-15 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年五月十五日(水曜日)     午前十時四十分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       菊池福治郎君    鈴木 宗男君       月原 茂皓君    野呂田芳成君       松田 九郎君    山崎平八郎君       若林 正俊君    上西 和郎君       串原 義直君    島田 琢郎君       新村 源雄君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    駒谷  明君       斎藤  実君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君  委員外出席者         厚生年金局企         画課長     渡辺  修君         農林水産委員会         調査室長    門口 良次君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第六一号)      ————◇—————
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業者年金基金法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村源雄君。
  3. 新村源雄

    新村(源)委員 この農業者年金基金法は、国民年金法が制定されまして農林漁業者がこの制度加入することになりましたが、その給付水準厚生年金等被用者年金比較をして非常に低位であり、農林漁業者老後生活保障し得ない、こういうことから農業者年金制度の要請が高まってまいりました。  昭和四十二年の総選挙のときに、当時の総理大臣佐藤榮作さんが、農業者にも恩給を、こういうことで公約をされました。これを受けて、農林省では農民年金問題研究会国民年金審議会では農民年金問題専門部会、こういうものが設立をされまして、昭和四十三年七月には農民年金問題研究会が、農業者年金制度被用者年金制度との均衡に留意して、老後保障構造政策推進に寄与する、こういう方向でこの農業者年金基金法昭和四十五年三月に国会提案をされました。したがってこの農業者年金基金法というのは、厚生年金等とは異なった一面、すなわち農民老後保障を行うと同時に構造政策の一環を担う、こういうことで発足をしていったわけでございます。  これが発足いたしましてから、五年ごと財務計画を見直すということで見直されてまいりましたし、さらにまた今回まで七回の法改正が行われております。私はこの七回の法律改正の全部を見たわけでございませんが、大体目を通しまして、そしてそのたびに附帯決議がつけられております。この附帯決議のどの附帯決議の中にも、大体二番目に、保険料については、農家負担能力実情等にかんがみその軽減を図ること、このため、国庫補助については、本年金政策年金としての性格に照らし、さらに引き上げを図ること、大体こういうような附帯決議がほとんど出されておるわけです。  したがって今日まで、法改正の都度あるいはまた今回提案をされるに至りました経過の中で、特に老後保障構造政策推進、さらにこれに加わりまして農民負担給付状況、こういうものについてどのような検討が行われてまいりましたか、その主な検討経過をお知らせいただきたい。
  4. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 ただいまお話がございましたように、法律改正たびごと国会附帯決議がついているわけでございまして、前回の改正時、昭和五十六年でございますけれども、衆議院の農林水産委員会附帯決議がつけられております。要旨は、制度長期にわたる健全な運用が図られるように、農家負担能力等配意をしながら、年金財政充実のための各種方策検討するとともに、若年末加入者に対する加入促進受託業務体制整備充実に努めること、またこれとあわせまして、農業者老齢年金水準改善農業に専従する主婦等年金への加入及び遺族年金制度創設等についても引き続き検討を進めること、こういうような附帯決議をいただいているわけでございますが、今日までこのような項目につきましていろいろな検討をしたわけでございまして、今回の改正案もそういう検討の結果の一つとして提案をしている次第でございます。  まず、年金財政充実のための方策等検討でございますが、これにつきましては、今回の制度改正におきまして財政再計算を行いまして、保険料年金額の見直しを行い、給付負担適正化によりまして制度の安定を図ることといたしております。  具体的には、経営移譲年金給付水準につきましては、厚生年金給付水準改定準拠いたしまして二十年をかけて調整をいたしますとともに、政策年金であるということに配慮いたしまして、農業者年金の被保険者等農業に常時従事する者に経営移譲する場合とそれ以外の者に経営移譲する場合とで、年金額に差を設けることとした次第でございます。  また、農業者老齢年金につきましても御意見をいただいておりますけれども、これにつきましては従来どおり経営移譲年金の額の四分の一といたしますほか、経営移譲年金受給権者以外の者についての支給要件改正いたしまして、六十歳の前日におきます被保険者要件というのを撤廃いたしまして緩和をいたした次第でございます。  さらに、脱退一時金でありますとか死亡一時金についても所要引き上げを行っております。  保険料につきましては、年金財政長期収支均衡のとれる保険料水準、これを平準保険料と言っておりますが、ここへ一挙に引き上げていくということは農家負担能力等から問題がある、こういうことで段階的に引き上げを行うこととしている次第でございます。  次に加入促進対策でございますが、これにつきましても農業者年金基金の最重点課題として取り組んでいるところでございまして、特に若齢後継者加入を中心にいたしまして加入促進してきたところでございますし、今後ともそういう方向でやってまいりたい、このように思います。若齢後継者に対しまして特定保険料は引き続き維持をすることといたしております。  それから受託業務体制整備でございますが、これにつきましては、昭和六十年度予算では前年をやや上回ります二十四億六千二百万円という予算を確保いたしまして体制整備を行っておりますけれども、さらに、昭和五十八年度から相談サービス事業というのを実施いたしまして、全国に百四十五名の相談員を設置いたしまして業務体制整備を図っているところでございます。  それから、遺族年金制度創設でありますとか農業に専従する主婦加入につきましては、遺族保障につきましては死亡一時金の支給対象を拡大するということの措置をとっておりまして、経営移譲年金受給期間が短期で死亡した者の遺族に対する措置を講ずることとしたわけでございます。ただ、遺族年金制度創設でありますとか婦人の加入につきましては、いずれも制度の基本に係る問題でございまして慎重な検討を要するということで、実現は極めて困難であるという判断でございます。
  5. 新村源雄

    新村(源)委員 この年金性格は、構造政策の一面を担っている、こういうことですから、これはやはり一般厚生年金等性格が違うわけですね。したがって、支給なりあるいは保険料等については、厚生年金等格差のある部分は、政策資金としていわゆる国の財政負担が伴わなければ本法の制定された趣旨に合ってこないわけですね。そういう観点から見て、後ほど具体的に聞いてまいりますが、今回の提案された内容は、そういう構造政策の一面というものを国の財政で賄っていく、こういう機能が十分果たされたと思っておりますか。
  6. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 非常に厳しい財政事情の中でございますので、そういう状況の中で、我々といたしましては、農業者年金制度制度本来の趣旨に即しまして効果的に運用する必要があると考えているわけでございますが、私どもとしましてはできる限りのそういう方向での努力はいたしたつもりでございます。  給付につきましても、従来、厚生年金水準厚生年金並みということでやってきたわけでございますが、今回の改正におきましてもそういう方向を堅持いたしておりますし、また保険料につきましても、平準保険料をかなり下回る水準保険料からスタートをする、こういう配慮もいたした次第でございますし、さらに構造政策的な効果を一層促進するということで、これは経営移譲年金につきましても一定格差をつけるほか、経営移譲後の農地の移動につきましても若干の緩和をいたしまして、農地流動化方向に即して考えていく、このように措置したり、あるいは今後政令等でそういう方向措置する予定でございます。
  7. 新村源雄

    新村(源)委員 それでは順次項目別に御質問を申し上げていきたいと思います。  まず最初に、経営移譲年金給付水準改定についてでございますが、これは昭和六十一年四月からは三千七百十円掛ける保険料納付月、こういうことになっておりますが、これがだんだん逓減をいたしていきまして、二十年後になると二千二百三十三円掛ける納付月、こういうことになるのです。したがって、現行水準で大体三十五年を想定してみますと十二万九千八百五十円の給付が、同じように二十年後で、三十五年かけたものとして計算しますと七万八千百五十五円、こういうように実に六〇・二%にしかならない、こういう低額になっていくわけですね。このような低い額では年金としての魅力というのは一層薄れていくのじゃないか、こう考えるのですが、どういうように考えておられますか。
  8. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 お答えいたします。  農業者年金給付水準といいますのは、先ほども御答弁申し上げましたように、従来から厚生年金程度水準ということでやってきております。今回、公的年金制度改正されることに伴いまして、本農業者年金給付水準につきましても、そういった改正後の厚生年金給付水準準拠をいたしまして給付水準調整を行うということにいたしたわけでございます。  厚生年金法律改正趣旨につきましては、高齢化社会の到来、さらに今後そういった高齢化が進んでいく、こういう状況に備えまして、制度長期に安定的に運営していくというための所要改正と伺っておりますけれども農業者年金につきましても同様の実態が農村社会で進行していることでございます。そういうことで、私どもといたしましても、農業者年金制度の将来の安定を図っていく、そういうことのためには、少なくとも厚生年金並み給付水準調整をしていく必要があるのではないか、こういうことから、確かに御指摘のように、現行水準を約四〇%下るような水準になってまいるわけでございますけれども、やむを得ないものとして、従来からの厚生年金給付水準改定準拠をして農業者年金給付水準改定するというふうにいたした次第でございます。
  9. 新村源雄

    新村(源)委員 局長厚生年金給付水準ということをおっしゃっていますが、今回のこの年金額算定単価に用いた農業所得月額は十三万一千円ですね。しかし、厚生年金給付額モデル算定に用いた月額は二十五万四千円ですね。こういうことでこれは厚生年金並みということが言えるのですか。
  10. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 私どもが従来厚生年金並みと言っておりますのは、農業所得をもって厚生年金加入した場合に受け取るであろう年金額厚生年金並み、その水準給付を行うことが農業者年金厚生年金並み水準給付を行う、こういうふうに申しているわけでございまして、今先生指摘のように、この農業所得と実際の厚生年金加入しております標準報酬月額との間には差があるわけでございますので、その条件の差によります違いというのは出てくるわけでございますが、同じような条件加入をいたしました場合、つまり農業所得相当月額報酬を持っている人が厚生年金加入した場合に受けているであろう水準金額農業者年金制度においても受け取れるようになっている、こういう意味でございます。
  11. 新村源雄

    新村(源)委員 局長さん、それはどう考えたって詭弁としか聞こえないのですよ。農業所得を月十三万一千円、厚生年金は二十五万四千円、五〇%でしょう。こういう状態の中で、先ほど申し上げましたように、さらにこの給付水準というのを引き下げていくということになれば、本当に農民老後を支える、あるいはさらに構造政策の役割も果たしていく、こういう二重の性格はこの中ではどう言ったって見られないですね、所得のとらえ方、給付のあり方、こういうものから見て。これはどうしても納得できないですね。
  12. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金を算定いたします場合に、基礎となりますのは農業所得でございます。その農業所得に比例する部分が非常に大きいわけでございますが、御指摘のような形で年金額を増加するためには農業所得を全体として高めいく措置が必要でございます。私ども制度運用担当者といたしましては、そういうもろもろの施策によりまして一定農業所得が確保される、こういう前提のもとに農業所得を算定しているわけでございまして、その結果そういう条件のもとに算定いたしますと、現在のところ十三万一千円の農業所得と相なる、こういうことでございます。おっしゃるように、これを厚生年金標準報酬月額水準にまで高めていくというのは、農林省だけではなしに政府全体としての各種施策によりましてそのような努力は別途していくべきものであろう、このように考える次第でございます。
  13. 新村源雄

    新村(源)委員 ところが、後で農民負担の問題についてもうちょっと詳しく触れたいのですが、ここで、農民所得が十三万一千円、そしてこれを基準にしてどのくらい農民掛金を掛けていくかといいますと、昭和六十二年で月額八千円ですね。それから、これは農業者年金基金法では当然国民年金加入していなければならない、こういうことで国民年金にさらに六千八百円、夫婦で掛けますと一万三千六百円、さらに付加年金掛金を掛けますと農民負担月額二万二千円になるのですね。しかし、厚生年金の方は二十五万四千円ということにしまして一二・四%、半分は事業主負担ですから、一万五千七百四十八円です。所得は安く設定はしてあるけれども、実際の掛金というのは、農業者厚生年金加入者比較をしますと七千円余の差も出てくるわけですね。これをどういうように理解されるのですか。
  14. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今回の農業者年金保険料改定をいたしますと、先生の今御指摘のような状況になるわけでございますし、またそれを厚生年金加入者保険料比較いたしますと、これも御指摘のとおりでございます。  これは制度仕組みが違いますのでどうしてもこういうことにならざるを得ないのでございますが、要はその保険料農家負担をできるのかどうかということでございます。ただいまの六十二年度で夫婦二人の国民年金保険料と合わせた保険料負担月額二万二千六百円ということでございますが、これを農家所得全体で見ますと、これは年の負担額として見ますと農家所得の中では五・一%を占めるわけでございます。これを農家負担していただくことになるわけでございますけれども、まず農家にとっても受け入れ可能な水準ではなかろうか、このように考えている次第でございます。  なお、保険料水準につきましては、平準保険料年金財政健全化のためには必要でございますけれども農家負担軽減を図る、こういう趣旨から今回の引き上げ平準保険料水準まで引き上げないで八千円から引き上げていく、このような措置をとった次第でございます。
  15. 新村源雄

    新村(源)委員 いや、私の言っているのは、この農業者年金加入している者が月二万二千六百円も払っていく。厚生年金加入している方が一万五千七百円ということですね。しかも、その土台になる所得というのは、農家の場合は十三万一千円、厚生年金の場合は二十五万四千円ということでしょう。こういう設計というのは、農業者年金だけをとらえていけば制度の上からやむを得ないとおっしゃるけれども、対比をした場合、他の年令と比較をした場合に、こういう大きな格差が出ているわけですね。これでいいのかということです。これは本法が成立した当時から、いわゆる厚生年金等被用者保険のこれと均衡してということがずっと貫かれてきているわけでしょう。ところが、ここに来て既に五〇%の差がついてしまっている、こういうことでいいのですか。
  16. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 国民一般老後保障といいますのは国民年金によって行うということでございまして、農業者年金の場合はあくまで国民年金付加年金ということでございまして、この年金は、適期の経営移譲によりまして経営者の若返りでありますとかあるいは農地細分化防止というような政策目的を貫徹をする、そういう目的を追求する、こういう年金であるわけでございます。その手段といたしまして、老後一定年金額支給することにいたしまして経営移譲促進するということでございますが、その場合の給付水準といたしまして、厚生年金並みというのを従来とってきたわけでございます。  ただ、それを賄います保険料につきましては、年金財政の中が違いますので、必ずしも厚生年金と同様にはまいらないわけでございまして、従来、比較厚生年金保険料農業者年金保険料とが近似していたわけでございますが、今回かなりの差が出てくるというふうになるわけでございますが、これも制度仕組み上やむを得ないかと考えている次第でございます。
  17. 新村源雄

    新村(源)委員 制度仕組み上しようがないということで、少なくとも政府はそういう言い方をできないと私は思うのですよ。立法の精神から見てもこれは到底理解できることでないのです。ですから、これはもし純然たる年金ということであればこういう結果は出てこない。いわゆる構造政策というものを余りにも前面に押し出す関係上、他の年金比較をすると非常に格差の多い年金仕組みになってきておる。したがって、構造政策というそういう部分については農民犠牲において行われているということがこの結果として明らかになっているのですが、そう思いませんか。
  18. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金の場合には一定政策目的を持つということは御説明したとおりでございますが、このために、政府といたしましてもかなり高率の補助金を交付をするということもいたしておりますし、また年金額自身につきましても、将来物価が上がりますれば、それに応じまして物価スライドして年金を上げていくというような制度をとっているわけでございまして、確かに厚生年金比較いたしました場合に、保険料については将来違ってくるわけでございますけれども農業者年金自身に即していいますと、農業者保険料を納めて、将来、適正な経営移譲をすれば、それに見合う経営移譲年金が受け取れる、こういう仕組みは堅持しているつもりでございます。
  19. 新村源雄

    新村(源)委員 ですから、私がここで言いたいのは、構造政策部分を適正に国が持ってないということですよ。これは現在の年金会計から見れば五千七百億余の資産がございますが、将来を展望すればこうならざるを得ない。したがって、長期にわたって構造改善部分の国費の負担が不足をしていることが農業者年金に端的にあらわれてきている、こういうように指摘せざるを得ないわけです。ですけれども、時間の関係で次に進めてまいりますが、これはもう重大な指摘として残しておきたいと思います。  次に、特定譲受者以外の者に譲渡した場合、五年で四分の一の格差を設けることになっておりますね。同一保険料を払っておりながらこのような格差をつけるということは、ここでも構造政策にこだわり過ぎて個人の経済的な権利を侵害している、こういうように私は指摘をせざるを得ないというように思うのですが、どうですか。
  20. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今回の改正によりまして、経営移譲をする相手方によりまして経営移譲年金の額に差を設けることといたしておりますけれども、これは農業者年金政策目的に照らしまして、その政策適合度というのを基準にいたしましてこのような格差を設けるようにいたしたわけでございます。具体的には、農業者年金の被保険者等農業に常時従事する者に経営移譲する場合とそれ以外の者に経営移譲する場合とで年金額に差を設ける、こういうことになるわけでございます。  これにつきましてもいろいろ御議論はあろうかと思いますけれども農業者年金政策的な側面を考えますれば、そういったことも御理解いただけるのじゃないかと思うわけでございます。また政策年金であるがゆえにかなり大きな財政負担もしているという状況でございます。あるいは、私ども研究会におきましてこれも議論になったわけでございますが、実態的に見てこのような格差をつけるのもやむを得ないではないか、こういった御意見であったわけでございます。もちろん私どもといたしましては、差のつかない年金額を希望いたします場合には経営移譲者がこれを選択することもできるわけでございます。そういうようなこともあわせ考えましてこのような格差をつけたわけでございます。  なお、格差つけ方にいたしましても、これは一気に四分の一の格差をつけるということではなく、五年間の期間をつけまして徐々に四分の一の差に近づけていく、こういうことで、生活設計を、今やっている人に急激な影響を与えないような措置をとったつもりでございます。
  21. 新村源雄

    新村(源)委員 局長、ここでも政策年金というそういう部門を個人犠牲において行うことでしょう。政策部分というのは国の財政負担によって行うものであって、このように個人が同等に掛けてきたものに格差をつけるということはその者に対する経済的な侵害であるということは明らかでしょう。そうでないですか。現実の問題としてそうなりませんか。  制度としてはそうかもしれない。しかし政策というもので被保険者、いわゆるこの場合では受益者ということになりますか、そういう者に犠牲を強いている。そういうことでございますから、私はこの問題については、特定譲受人に譲り渡した場合にはこれは別途な会計からこれを報償すべきといいますか付加すべきであって、その以外の者に譲り渡した者であっても正規な年金が受給できるように組みかえるべきだ、私はそういうように主張します。
  22. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 ただいまの御意見は御意見として承っておきたいわけでございますが、確かに今まで同じ保険料を払いまして、それから年金も、経営移譲いたしました場合には同じような年金を受け取ってきた、こういう経緯はあろうかと思うわけでございますが、先ほどもお答えいたしましたように、農業者年金というのは、他の公的年金と違いまして適正な経営移譲によりまして一定政策目的を追求いたします政策年金でございます。したがいまして、そういう中身に照らしまして一定格差をつけるのもやむを得ないのではないかというふうに申し上げたわけでございますし、さらに経営移譲の場合は、経営移譲者の意思でもって後継者移譲をいたしますとかあるいは第三者移譲にする、そういう余地も残されているわけでございます。四分の一の格差がつきましても、その金額につきましては、老後保障ということも考えまして我々としては決定をしたといいますか、こういう制度にしたわけでございます。  それらの点を総合的に勘案いたしましてこの程度格差がつくのはやむを得ないではないかというふうにした次第でございます。
  23. 新村源雄

    新村(源)委員 人の痛みはいつまでも我慢できますよ、局長。実際に今の農業情勢はどうですか。本当に、好むと好まざるとにかかわらず兼業農家にならなければ生活が維持できないというのが今の日本の農業の実態ではないですか。しかも経営移譲ということは即農民の唯一の資産である農地、これを、そういうことだからほかの人に売るんだということはできますか。そういうこと、実際としてできますか。ですから私は、どうあってもこの問題は今の農業の実態から見ても承服することはできません。したがって、この問題につきましては、私どもの方で修正案でもってさらに対決をしていきたい、こういうように存じます。  次に、農業者老齢年金給付でございますが、これは支給要件は一部改善されました。しかし、経営移譲ができなかった場合、農業者老齢年金、これより支給されないわけですね。前の問題と同じような関連を持つわけですが、残念ながら、土地は唯一の財産であるために、本当にそうしたいけれども適当な特定譲受人というものを探すことができなかった、こういう場合には六十五歳以降経営移譲年金の四分の一より支給されないわけですね。こういうような不利益がこの中にさらにあるわけですね。一体これはどうお考えになりますか。
  24. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金制度には、経営移譲年金、それから老齢年金支給というのがございますが、経営移譲をしなかった人に対しましては老齢年金だけが支給されるわけでございます。制度仕組みといたしましてそのような仕組みになっているわけであります。これもやはり、経営移譲促進するという立場から、一定老後保障をするという老後保障と裏腹の関係でこの制度を仕組んでいるわけでございまして、その結果が老齢者年金年金額をかなり低目に抑えた、こういう経緯があるわけでございます。  今御指摘のように農業者老齢年金がかなり増加をするというようになりますと、これは生涯支給する年金でございますので、相当の保険料引き上げる必要がございます。そういった問題があるわけでございまして、私どもといたしましては、制度仕組みの基本を今回の改正においても変えなかった次第でございます。
  25. 新村源雄

    新村(源)委員 非常に答弁不満でございますけれども、先に進みます。  今回は、脱退一時金及び死亡一時金の額を昭和六十二年一月から四%引き上げる、さらにまた死亡一時金の支給対象の拡大が図られました。しかし、農業者年金関係者の長年の要望であった遺族年金制度というのは今回も見送られているわけですね。これは非常に残念だと思います。したがって、この点につきましても後ほど私どもの修正案でもって私は要求をしてまいりたいと思います。  次に、保険料改定でございますが、農業者年金の被保険者国民年金加入者であるわけですね。一体農民負担というのはどういうようになっているのだろうということを私はずっと計算をしてみたのですよ。  六十二年一月の八千円を起点にいたしまして、六十六年の一月に一万一千二百円。この一万一千二百円を固定をしまして、そしてこれを年六分の複利計算でやってみました。そうしましたら、二十五年で七百四十二万六千八百八十三円、三十年では一千七十三万二千五百円、三十五年では実に一千五百十六万五千円という膨大な額になるわけです。しかも、これは私がさっき言ったように、六十六年一月以降の掛金はずっと据え置いたものとして計算をしてそのような膨大な額になるのですね。そしてこのほかに、農業者夫婦二人で一カ月に一万三千六百円も払っていかなければならぬ。これは一万一千二百円というものを固定して言っている。このほかに一万三千六百円の国民年金を払っていかなければいかぬ。そうすると、農家が三十五年払うものとすれば、少なくともこの期間に三千数百万の掛金及びこれに対する利子というものが持ち分としてあるわけです。  そこでちょっと見ますと、さっき言いました七万八千百五十五円、これが大体三十五年たった後で支払われるということですね。そしてそれは、たった五年間より払われないわけです。五年間で幾ら支払われるかといいますと、四百六十八万九千円です。そして、一千五百万の金利は八十五万八千円です。これは一体どうなっているのですか、この年金会計は。こういうように計数的に追ってみますと、これは余りにも構造政策だけ追求をして、農民老後負担などというのは全然考えてない、この数字から見ますと。この点についてどうお考えになりますか。
  26. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 ただいまの計算でございますが、幾つかの前提を置かれて計算されたと思いますが、年金の場合には物価のスライドの問題もございますし、それから金利の動向あるいは給付状況、そういうことによってこれは将来的に保険料にも影響を与えるわけでございますので、そういう全体を見て保険料給付関係を見ていく必要があろうかと思います。  私どもは原則的に、年金の場合には、例えば保険料につきましては社会保険料の控除の制度がございまして一定の優遇措置をとられておりますし、それから物価スライドによりまして年金額が上がっていくというようなこともございます。さらには補助金等もあるわけでございますので、全体として見れば、具体的に金額でどうこう計算したわけではございませんけれども、やはり農業者年金の方が有利ではなかろうか、このように考えるわけでございます。
  27. 新村源雄

    新村(源)委員 物価スライドとかあるいは給付金のスライドというのは、掛金をそのままにしておいて給付金だけ上がることありますか。必ず掛金が上がってくるでしょう。そうしたら今の局長の答弁なんというのは、一方のことを押さえておいて一方の条件だけを言っておるわけですね。しかし、少なくとも年金会計というものを計算するときにはこういう方式で計算して、そして将来展望どうなっていくかということで掛金なり給付率というものは決まってくる、そうでないですか。当初から物価スライドを予想されるのであれば、それは当然掛金の中に織り込んでおくわけでしょう。どうなんですか。
  28. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 確かに、年金財政を支えるものとしまして収入と支出があるわけでございますけれども、いろいろな要素によってこれが成り立つわけでございます。例えば加入者にいたしましても順次変化をしていくものでございますし、受給にいたしましても受給権者の数あるいはその中身というのは必ずしも一律でないわけでございます。こういった点を全体として考える必要があろうかと思います。したがいまして、何か一つの条件だけを設定をして、その場合にしかじかのことになるから全体がそうであるというぐあいに必ずしも決めつけるわけにはまいらないのではないか、このように考える次第でございます。
  29. 新村源雄

    新村(源)委員 これは非常に重要な基本的な問題ですし、もっと別な機会にゆっくり詰めてみたいと思います。今の局長の答弁ではどうしても納得できません。  次に、基本的な問題として大きな問題がありますのは、昭和六十七年度では被保険者が六十二万人、それから受給権者が六十三万人です。加入している者よりも年金をもらう方の人が多くなっているわけです。それから、去年の三月末のいわゆる年齢階層別の保険加入者の数を調べてみますと、五十歳以上、もう十年たったら年金を受けられる方が加入者全体の五六・四%、さらに四十五歳以上を拾ってみますと、実に七三・二%にも達するわけです。これは今の農業者年金基金法の健全な運営ができないという根拠になっているのじゃないですか。今の矛盾した、掛金が高くなる、そして給付金が安くなっていくというのはこういうことに根差しているのではないですか。農業者年金への加入という構造政策をこの中で余りにも強く押し出すためにこういう半端な逆ピラミッド型の構成になっている、こういう点についてどういうようにお考えになりますか。
  30. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 加入者とそれから受給権者の数の推移でございますが、これは当分の間は加入者が若干減ってまいりまして受給権者の方が増加をしていく。これがある時点で逆転するわけでございます。さらにその先を見ますとまた加入者の方が増加をいたしまして受給権者の方が減少してバランスを回復する時期があるわけでございますが、ただいま御指摘のとおり、ここ当面の問題といたしましては加入者が減少して受給権者の数が多くなってくる、これは非常に大きな問題だと考えております。  ただ、当面の対応といたしましては、六十年度末には約六千億円ぐらいの年金の資産が残るわけでございます。しかし、その後については問題が出てくるわけでございますので、私どもといたしましては早急にその後の対応について検討いたしたいと考えておる次第でございます。
  31. 新村源雄

    新村(源)委員 このように、本年金制度は非常に重大な決意を持って取り組まなければならない時期が遠からず来る。しかし、農民の将来を保障するという重大な使命は絶対に動かしてはならない。こういう形で、大臣、これからの取り組みについての御決意をひとつお伺いしたい。
  32. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 新村先生にお答えいたします。  私、今まで聞いておりまして、二つの大切な問題があると思います。その一つは、農業者年金制度というのは長期的に安定した制度として維持すること。それからもう一つは、政策年金という役割をどう高めるか。この二つの点があると思います。したがって、この二つの大切なことをどのように満足させるか、これが一番大切だと思います。  そのことで一番大きな問題は、給付負担のあり方の問題、それから経営移譲年金支給開始年齢の問題等で、そんなことで先生先ほどから御指摘ございました制度の基本的枠組みに係る問題等については、部内に設けております研究会等の場において十分検討いたしたい、このように考えております。
  33. 新村源雄

    新村(源)委員 最後に、これはまた大臣にお伺いしたいのです。  去る三月、これは各界の名士が五百名近く集まっている席上でございましたが、全国の農業団体の極めて指導的な立場の方が、このままの農政が続けば日本の農業は崩壊する、こういうことをあいさつの中で明らかに申されました。私もそれと全く同じ感じを持って、私みずからが農民ですから、いつも農業の行方を案じております。  殊に、最近は貿易摩擦がこのように高まってまいりまして、アメリカからまさに無法とも言うべき、貿易自由化ところか市場開放ということを迫られてきておるわけです。そして、これに便乗するがごとく、経済界、学者の方々が、日本の農業は過保護だ、過保護であるから進歩性がないということを盛んにキャンペーンしておるわけです。  ところが大臣、日本の農業は一体どういう役割を果たしてきましたか。戦後において日本の経済が高度成長、どんどん伸びていくときには農村から若い優秀な労働力をこの産業の中にどんどん吸収していって、そして今日の日本の経済社会を建設したのじゃないですか。そして、そのために農村は過疎化に陥っていった。しかし、過疎化に陥ったけれども、財界や学者が指摘しているように日本の農業は停滞していません。米につきましてもあるいは麦につきましても、さらには牛乳や肉、卵、野菜、果樹、どれ一つをとってみましても、その技術的な水準は極めて高いものがあるでしょう。そして、少ない農民でもってそういう高い生産を上げる。しかし、貿易の自由化によって、そういう高い生産が上がっているものを、政府は輸出するとかということで市場調整を全然しなかったでしょう。全部、生産調整だあるいは減反だと農民にばかり向かって押しつけてきたでしょう。そういう中で、一体農民というのは希望の持てる芽がありますか。  現在だって、北海道には中国、韓国あるいは東南アジアから多くの研修生が日本の技術を学ぼうとして来ています。ですから私は、今日の財界や学者のあられもないことを言っている言論に対して、歴史的な経過を責任を持って、そういうことは違う、日本の農業はこういう役割を果たして現在なお健全だ、そのように農林水産省は反論すべきであると思うのですが、どうですか。
  34. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  日本の農業に対する認識は、私は先生と全く同じでございます。我が国の限られた国土資源や国土の固有の自然条件のもとで、食糧の安定供給を初めとし、健全な地域社会の形成、国土、自然環境の保全等、農業の持つ多面的な役割を発揮させていくためには、一定の助成、保護措置が必要だと考えております。欧米におきましても農業に対し一定の保護措置が講じられているところであり、ちなみに我が国の農業関係予算を欧米諸国と比べた場合、農業総生産額に占める割合や農家一戸当たりの金額で見れば、一概に高いとはいえないと思っております。  しかしながら、内外の厳しい状況のもとで我が国の農業の健全な発展を図るためには、生産性の向上を通じまして農業の体質強化を進めることが重要であるので、今後とも全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
  35. 新村源雄

    新村(源)委員 最後に、今の市場開放という問題で、自由化にさらされようとしておる農民あるいは農業団体はまさに戦々恐々としております。今、農産物の関税の問題や、あるいは自由化がもし進められたら、我々はもうどうにもならないという考え方でいっぱいでございます。したがって、今回中曽根総理が先頭に立って市場開放問題に取り組んでおられるようですが、事農畜産物に限っては農林大臣が体を張ってもらって、そういう市場開放の波からひとつ守ってもらいたい。そういう決意を、大変恐縮でございますが、もう一回お聞かせいただきたいと思います。
  36. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  農業というのは、生命産業として、国民生活にとりまして最も基礎的な物資である食糧の供給を初め、先ほど申したようなことでございまして、また、地域社会におきましても就業機会の提供など、地域経済社会の健全な発展を図る上でも非常に大切だと思っております。  このような農業の重要性、特殊性にかんがみまして、実は総理も、先生御存じのことでございますが、去る九日の本会議におきまして、アクションプログラムにおける農業の取り扱いについては、国際的に説明できるものでなければならないが、国民生活あるいは国民経済における役目等々も十分考えて、その特殊性に留意しつつ行うべきものであると考えている旨、答弁されたところでございます。  そんなことでございまして、私としても、農業の重要性については今後とも各方面の理解を得るよう努めてまいることとしておりますし、また、アクションプログラムの策定に当たりましては、我が国農業を生かし、その健全な発展を図ることを基本にして、関係国との友好関係にも留意しながら慎重に対処してまいる考えでございます。
  37. 新村源雄

    新村(源)委員 終わります。
  38. 今井勇

    今井委員長 次に、細谷昭雄君。
  39. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 このたびの農業者年金基金法の一部改正は、局部的に見ますと、これまで要望されてまいりました制度改善の要望というものを一部聞き入れ、しかし、大筋では臨調行革、特に財政当局の言うままの、言うなれば後ろ向きの改正と言わざるを得ない、こういうふうに思うわけであります。私は、例えば前の委員会で審議しました金融三法、そして今参議院で審議中であります補助金の一括削減合理化法案、この一連の法案と軌を一にするものではないか、こういうふうに考えまして、基本的には反対せざるを得ない、こういう立場から幾つかの質問をしたい、こういうふうに思います。  評価できる点から最初に申し上げたいと思いますが、その第一は、年金受給資格期間の取得措置改善であります。  その中の一つに農業団体役員の救済措置が含まれておりますが、これは昨年の七月五日、当委員会で農林年金法の一部改正に関連いたしまして私が問題提起をし、当局が実態調査と検討を約されたものであります。昨年秋には早速実態調査をやられ、その上で今回の改正というものに踏み切られた。私は、この果断な対応に対しまして敬意を表するとともに、この改正によって救済される該当者の皆さん方にかわりまして厚く謝意を申し上げたい、こんなふうに思います。  そこで、この対象者は一体どういう法人にされるのか。これは「政令で定める」となっておりますが、この法人指定の予想をお知らせ願いたいと思います。
  40. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 空期間の通算措置の対象になります団体役職の具体的な範囲につきましては、現在検討中でございますけれども、今のところ私どもが考えておりますことを申し上げますと、まず農林年金の適用団体でありまして、農業協同組合それから土地改良区、森林組合、漁業組合等でございます。これらの団体に共通した指標といたしましては、農林漁業者が自主的に組織した団体である、それから農林漁業者の社会的、経済的地位の向上、あるいは農林漁業の振興を図るための業務を行うものであること、それから非営利法人であること、それから最後が、その大部分の役員がその構成員であります農業者の中から選挙、選任される、そういう団体の常勤の役員、こういうのを予定しているわけでございます。
  41. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 次に、一般の六十歳から六十五歳までの年数の不足者、これの救済措置が今回改正の対象になっておるわけであります。これも前々から言われておりますことで喜ばしいことだと思いますが、この対象者数と、そして財政的な影響はどうか、この点お伺いしたいと思います。
  42. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 六十歳から六十五歳までの者の任意加入の問題でございますが、この措置の対象となりますのは約一千名程度ではないか、このように考えております。したがいまして、年金財政にはほとんど影響はないというふうに考えております。
  43. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 三つ目は、厚生年金の適用事業所の範囲拡大に伴う資格喪失者の救済措置が今回農業法人に行われておるわけであります。「一定の要件」というふうに法案にありますが、この「一定の要件」という中身は何でしょうか。
  44. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 厚生年金の適用事業所の範囲の拡大に伴いまして、農業者年金の被保険者資格をなくした人につきましても、一定の要件に適合する期間を空期間として通算をする、こういうことでございますが、今考えておりますのは、農業を継続をしていることというようなことを考えているわけでございます。
  45. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それはちょっと違うんじゃないですかね。今、後ろの方からあれがありますから……。
  46. 今井勇

    今井委員長 しっかり答弁せいよ。
  47. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 空期間の通算措置をとります場合の要件でございますけれども、一つは、ただいま申し上げましたように、この資格をなくしまして、後の期間農業を継続していることというのが条件になるわけでございます。これが主たる条件でありますが、そのほかの条件といたしましては、そういうことを申し出るというようなことがあるかと思いますが、中心になりますのは、今申し上げました、農業を継続して行っているということが中心でございます。
  48. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、この適用事業所の範囲拡大に伴うところの資格喪失者の救済措置に関連いたしまして、もしそうだったならば、もう一歩踏み込んで、例えば法律的に規制されております農村工業導入法、こういったもので就業した者、農村工業導入法による工場誘致、そこに就職した者が倒産その他何らかの形で離職をする、そういうことも現実に行われておるわけでありますが、そういう人力の期間も空期間として算入するという道を講ずべきじゃないか、こんなふうに思うのですが、その点の検討はいたしませんでしたか。
  49. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今の農業者年金の場合は、国民年金加入しているというのが当然の前提になるわけでございまして、農村工業導入の場合のように、その導入企業に就職いたしますと当然のこととして被用者年金に入るわけでございますので、その場合には農業者年金加入者ではなくなるわけでございます。
  50. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この問題については我が党としましても修正案等で皆さん方に御提示いたしたい、こういうように思いますので、政府としてもこれは前向きで検討すべきではないか、こんなふうに思うわけでございます。  次の、評価できる第二の点でありますが、農業者老齢年金支給要件改正された点であります。この対象人員と財政上の影響についてお伺いしたいと思います。
  51. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今回の老齢者年金支給要件緩和の対象となります者は、年間約四十名程度を見込んでおります。したがいまして、年金財政に与える影響につきましても極めて軽微なものであろうと考えております。
  52. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この農業者老齢年金支給要件改正されたことによって救済される人数が年間たった四十名ですか、それは本当ですか。
  53. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 私どもが手元に持っております資料ではその程度と見込むわけでございます。
  54. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これは全くそういう点では評価できるという人数ではないわけであります。四十名であっても救われるという点は喜ばしいと思うのですが、財政への影響がないということだけでちょいちょいと直したということになりかねないわけで、これは大変まゆつばものではないか、こんなふうに思うわけでございます。  第三は、死亡一時金の支給対象の拡大でありますけれども遺族へのせめてもの配慮があったという点で、これも大変喜ばしいことだと思うのです。  お伺いしますが、問題は遺族年金制度がなぜ今回も採用にならなかったのか。極めて遺憾だと思うのですが、その理由をお知らせ願いたいと思います。
  55. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 死亡一時金の支給対象の範囲を拡大したわけでございますけれども、従来から言われております遺族年金につきましては、農業者年金国民年金付加年金として、しかも農業構造改善目的とする政策年金である、こういうことで制度ができ上がっているわけでございます。したがいまして、農業者の配偶者の老後保障というのは国民年金で行うというのが制度の基本的な考えであるわけでございまして、そのような意味から、農業者年金遺族年金をさらに仕組むことは困難な状況にございます。
  56. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これは後の対策の方でもまた触れたいと思いますが、やはりこの政策年金の不備というのがございますので、この不備を補完するということがどうしても必要な部面ですので、我が党としても修正案の中でこの問題についてはさらに詰めていきたい、こんなふうに思っているわけてあります。  以上、評価すべき点は三点でありますが、次に私は、改正をする点でマイナスといいますか後ろ向きといいますか、極めて問題があるという点について質問したいと思います。  その第一は、給付水準の引き下げの問題であります。  経営移譲年金農業者老齢年金の両面で大幅な引き下げが提案されておるわけでありますが、制度自体としてはこれは全く後退と言わざるを得ないと思うわけであります。農業所得のとり方などについては新村委員の質疑がありましたので省きたいと思います。サラリーマンの後継者へ移譲した場合の減額、二五%を減額するということでございますが、これは極めて不当なものとして反対せざるを得ないと私は思うのですが、その対象人員はどのように推定されておりますか。
  57. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 この対象になります数につきましてはいろいろな条件によって変わってくるかと思いますが、今、経営移譲いたしました五〇%程度がいわゆるサラリーマン後継者でございます。最近の傾向といたしましてはこのサラリーマン後継者の数がふえてきているわけでございますが、私どもといたしましては、この最近時点の五〇%、その程度にはとどまっていくのではないかと考えておるわけでございます。
  58. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 人数は。
  59. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 五〇%というのは経営移譲した人の五〇%ということでございますので、具体的な数字を申し上げますと、五十八年が四万三千九百三十件のうち二万四千五百九十六件、五十七年が四万二千八百六十三件のうち二万二千五百九十一、五十六年が五万一千九百六十一件のうち二万七千百九十四件、このようになってございます。
  60. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 今回、厚生年金加入対象者の拡大が図られるわけです。五人未満の事業所につきましても今度は厚生年金の対象になる。こういうことからしますと、この五〇%はそれも含んではおると思うのですが、大幅に農業者年金加入者が減ってくるということは必至だと思うわけです。このサラリーマン後継者の移譲年金が大幅にダウンするということは、これに拍車をかけることにならないのか、私はそのように非常に心配しているわけでありますが、その点どうでしょう。減少につながらないかどうか。
  61. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 厚生年金の適用事業所の範囲が拡大していくわけでございますけれども、これにつきましては、従来五人以上の規模の事業所につきましては既に厚生年金が適用されているわけでございます。今回、こういう従来の方針から、全体に適用していく、五人未満の規模の事業所についても適用されていくわけでございます。ただ、その場合も、この適用対象になる事業所は、定期的に今報酬をもらっている人、こういうことに相なります。農業生産法人の実態からいいますと三〇%ぐらいの人がそのような形態にあるようでございまして、厚生年金の適用事業所の範囲が拡大いたしましても相当部分の人はなお農業者年金に残っていくのではないか、このように考えるわけでございます。
  62. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 今、農村集落は混住化時代といいますか、二種兼業がどんどんふえているという現実でございます。農林水産省もひところのように中核農家、中核農家ということはかり言っていられないということで、中核農家と二兼、この人方といかに共同作業をしていくのか、共回生活をしていくのかという方向に現在は政策が定着しつつある。  しかし、このようにサラリーマン後継者に対する移譲年金をダウンさせるということからしますと、やはり政策に極めて疑問があると私は言わざるを得ないのです。この点で皆さん方にぜひとも私は反対をしたいというふうに思いますので、皆さん方としましても、このような、職業によって、年金をかけておる人方が片一方は満額もらう、片一方は七五%しかもらわない、こういう差別をつけるべきじゃない、こんなふうに思っておるわけであります。この点は反対を表明したいと思うのです。  現行の老齢年金でも、月額にしますと一万八千五百六十円にしかなりません、現在の老齢年金だけからしますと。それが今の給付の引き下げによりまして二十年後には月額一万一千百六十円になる。これはもうとにかくあめ玉にもならないと思うのですよ。四〇%引き下げということになるわけです。これは私は大変むごい話でありまして、むしろ我が党としましては、この現行の老齢年金は少なくとも倍額にした方がいいじゃないか、こんなふうにも修正案としても提案し、御審議願いたい、こんなふうに思っておるものでございます。  私は、極めてこの改正点で問題なのが、この給付水準の引き下げ、ますますこの点では農業者年金に魅力を失っていくということになりかねないという点で心配であります。  第二に、「特定譲受者」という規定がございますが、この特定譲受者とそれ以外の者の区分基準というものは、政令でどういうふうに決めるおつもりでしょうか。この点をお伺いしたいと思います。
  63. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 まず、前段の給付水準の引き下げでございますけれども、このたび厚生年金等公的年金制度改正があったわけでございます。農業者年金におきましても、これを取り巻く環境といいますのは厚生年金の場合と同様の状況もあるわけでございまして、高齢化が全体としてやはり進んでおりますということでありますとか、あるいは私どもが当初予想しました以上に経営移譲をする農業者が多い、こういうような状況も出てきているわけでございます。そういうことで、年金財政についてもいろいろな問題が出てきております。そういったもろもろの点を勘案いたしまして、かつまた従来からの厚生年金水準という給付水準の考え方もございますので、そういうような考え方も踏まえまして今回の改正をしたわけでございます。給付水準改定につきましても、厚生年金並みに、二十年間をかけまして漸次給付水準適正化を図っていくということにしたわけでございまして、この点、御了解を賜りたいと思うわけでございます。  次に、譲受者の場合に特定譲受者特定譲受者以外の者というふうに区分をいたしまして、経営移譲をいたしました場合に移譲年金格差をつけるわけでございますが、その具体的な要件といいますのは政令で定めますが、ただいま検討しておりますことを申し上げたいと思うわけでございます。  まず、第三者移譲の場合でございますが、一つは、農業者年金の被保険者は特定の譲受者の範囲に入ります。それから次には、農業に常時従事する者でありまして次の条件のすべてを満たす者ということで、四つぐらいの要件を考えておりますが、その一つに農業者年金加入者と同等規模以上の農業経営を行っていること、それから二番目が被用者年金加入していないこと、三番目が農業者年金加入資格がないこと、例えば被保険者期間が不足をするような者でございます。それから四番目が六十歳未満であること、こういった要件を満たします農業に常時従事する人というのが二番目。それから三番目が農業者年金基金に移譲をする、それから農地保有合理化法人、農業生産法人、農業協同組合、地方公共団体等、そういう第三者に移譲するのが、特定の譲受者の範囲ということでございます。  それから後継者移譲の場合について申し上げますと、その特定譲受者の範囲でございますけれども、これは経営移譲時までに農業者年金の被保険者となっている後継者、それから二番目に、農業に常時従事する農業者でありまして次の要件のすべてを満たす者ということで、これは一つは被用者年金加入していないこと、それに農業者年金の被保険者資格がない、後継者の場合は、御案内のとおり、親の面積が五十アール以上の者、こういうふうになっておりますので、親の面積が三十から五十アールの者でありますとか、あるいは被保険者期間が不足する者、こういう後継者を、こういう要件を満たす常時従事する者を特定の譲受者の範囲として考えておるわけでございます。
  64. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この改定を改悪と私が感ずる第二の点は、保険料の大幅引き上げの問題であります。六十二年の一月からこの保険料は八千円になるわけでありまして、六十六年の一月になりますと一万一千二百円、このように極めて大幅に保険料引き上げられる。平準保険料が一万三千二百三十八円であるので、その六〇%というのは他の年金に比べましてこれは格安の保険料じゃないか、こんなふうに一応財政当局では言っておるようでありますが、これは政策年金という性格からしますと、私は極めて問題があるというふうに思いますし、これは政策年金性格を変えていくという第一歩になるというふうに考えるわけでありまして、反対であります。  そこでお伺いする一つは、現在の非加入者の数とその非加入率は一体どのくらいであるのか、そしてその理由は主にどんな理由なのか、この点を明らかにしていただきたいと思うわけです。
  65. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 昭和五十八年十月一日現在の未加入者数は、当然加入資格のあります者で未加入者が七万四千人、それから任意加入資格のあります者で未加入の者が十七万人、総数が二十四万四千人でございます。したがいまして、加入対象者としましては百十七万人ということでございますので、それに対する割合が二一%という状況になっております。  その理由につきましては、これは農業者年金基金が調査をしました結果でございますけれども、まだ加入には早いというのが六一%、それから農業経営の将来が不安というのが一二%、それから保険料が高いというのが九%、その他が一八%、こういうふうになっております。
  66. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 次に、私は農家経済の実態をどう把握しておるかという点をお伺いしたいと思うわけであります。  五十アール以上の月収というのは、平均月収は十三万一千円であるというふうに農業所得を規定しておるわけでありますけれども、私は、一ヘクタール、この一ヘクタールというのは全国の平均の反別でございます。一ヘクタールの農家農業収入、二ヘクタールと五ヘクタール、この三段階の農業所得についてお知らせ願いたい、こういうように思います。
  67. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 これは昭和五十八年度の農家経済調査でございますけれども農業所得の場合は全農家平均で九十五万一千五百円、農家所得が五百十五万七千円。それから二ヘクタール以上が、農業所得が三百二十二万一千三百円、農家所得が五百四十七万二千五百円でございまして、ちょっと手元にはそれ以上の区分の資料は持ってございません。
  68. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これはきのう私が要求しておる質問の内容でありまして、極めて遺憾だと思うわけです。一ヘクタール、二ヘクタール、五ヘクタールの月収、月額に直した農業収入を調べていただきたいというふうにちゃんと言っておったのですから、これはわからないわけはないのですよ。これは多分わかると思うのです。
  69. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 先生からそのようなことはお聞きしていたわけでございますが、農家経済調査で公表されたものといたしましては五ヘクタール以上はないということでございますので、その点御了承いただきたいと思います。
  70. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 それでは、例えば五十アール、つまり五反歩以上の全国平均月収が十三万一千円ということでありますので、一応これをもとにして話を進めるしかないと思うのですよ。昭和六十五年の改定保険料負担の実際を私は算定してみました。すると、このようになるわけであります。  農業者年金一般保険料夫婦単位の場合は一万四百円、それに国民年金の本人分が七千七百円、それから妻の分が七千七百円、それに付加金が四百円、合計すると夫婦単位で月額二万六千二百円になります。  ところが、先ほど私二ヘクタール、五ヘクタールと言いましたが、私どもの周囲は農家の場合二組の夫婦が普通であります。しかも、兼業しておらない専業農家の場合は、当然いわば保険料がそれに加わってくるわけであります。その分は、息子さんの分が、言うなれば農業者年金特定保険料が七千四百二十円、それから国民年金がお嫁さんの分と本人の分を合わせまして一万五千四百円、それに付加金が四百円、合計しますと息子さん夫婦の分が二万三千二百二十円であります。本人分と息子さん夫婦分を合わせますと、保険料が実に月額四万九千四百二十円になります。すると、先ほど言いましたように月額農業収入、農家平均十三万一千円、これから四万九千四百二十円、五万円を取られるということは、大変な負担になると言わざるを得ないわけであります。  この実態からしますと、私が恐れるのは、現在は二一%の未加入率でありますが、これがむしろどんどんふえるのじゃないか、急増するのじゃないか、そして無年金者というものがふえていく。これは必ずしも農業者年金に限りません。国民年金部分も同様にこういうふうにして保険料を高くする、給付金を引き下げるということによって、ふえるということが今から危惧されるわけであります。この点について農林省当局はどのようにお考えなのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  71. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業所得十三万一千円というのを今回の改正案のもろもろの改正事項の基礎にしているわけでございますが、これはあくまで加入資格がございます五十アール以上の平均所得としてとらまえたものでございまして、専業農家あるいは中核農家等についてはそれぞれ別途の所得があるものと思います。したがって、個々の経営ごとにはただいま御指摘のような農業者年金のほかに国民年金等に加入していることでかなりの保険料負担をする、そういう方もあろうかと思いますが、私ども平均的に見てみますと、国民年金農業者年金双方の保険料負担をしております。その負担状況を試算いたしますと、農業者年金保険料農業所得の中でどの程度を占めるかという割合でございますが、これは六十二年度で四・七%、五%弱になるわけでございます。それに国民年金夫婦二人に付加金を加えたその保険料をプラスいたしまして農家所得全体で見ますと、六十二年度では五・一%というぐあいになるわけでございまして、保険料負担というのは農家にとって大変なことではございますが、まずまず負担可能な保険料ではないかというふうに考えるわけでございます。  今回この保険料引き上げということで保険料を納付できない、そういう農家が出てくるのではないかという御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、年金財政均衡を図る観点から申しますと、本来でありますなれば平均保険料を徴収をしていくのが原則でございますけれども農家負担能力ということを勘案いたしまして、この保険料については段階的に引き上げていくという措置をとったわけでございまして、この点十分説明もいたし保険料の徴収に当たりたいと思うわけでございます。そういうことを通して、まず農家には保険料負担していただけるものと考えているわけでございます。
  72. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 かなり苦しい弁解というふうに聞こえるわけであります。実態として、これだけ高くする、要するに一カ月に五万円近い金額を、例えば私の方の大潟のような十五町歩の人も、そしてたった一町歩の人も同じように取られるのですよ。したがって私は、数字の上で五・一%と言いましても、実際の金額からしますと大変な負担だと言わざるを得ません。このことは農林水産当局も率直に認めざるを得ないと思うのですよ。私たちは本当は好まないのだけれども大蔵省が余り言うものだからというふうに、すっかり素直に言った方がむしろいいのじゃないか、こんなふうにも思うわけであります。  問題の第三は、国庫補助金の削減の問題であります。これは多くの方々から言われたので、私自身はこれは答弁は必要ないと思うくらい大変に腹立たしいと思うわけであります。  拠出時の補助金を廃止する、そして経営移譲年金給付の費用の国庫補助率を三分の一から二分の一に若干引き上げる、しかし総体的には金額を減らすということですから、年金財政の見通しが非常に悪いことは私はわかるのですが、政策年金性格を変えるのではないかという心配と、保険料がますます高騰していくという傾向が必至だと思うわけであります。この二つの点から、はっきりこの際に、補助金の削減については我が党としても反対であるし、これは復活させるという修正案を出したい、こんなふうに思っておるわけであります。  次に大きい第三の、農業者年金制度の将来とその対策についてお伺いをしたいと思うわけであります。  まず最初にお聞きしたいと思いますのは、この法律を出す場合、農業者年金改正研究会を持たれたわけであります。この研究会の主な論点、これは時間がありませんので余り詳しくは不要でございますが、主要な点。  それから次に、六十年二月二十二日、国民年金審議会意見書が出されました。この意見書は主に三つに要約されると私は思います。一つは、根本対策になり得なくて、これは当面の対策でしかない。第二は、制度の将来については関係者に趣旨を徹底させることが必要だということ。第三にはいある程度の積立金を保有している間に抜本的な見直しのめどを立てるべきだ。この三点に尽きると思います。そこで農林水産省と厚生省にその考え方をお聞きしたいと思うのですが、この意見書を踏まえて将来どうあるべきだ、どう対策をとるべきだとお考えなのか、これが第二点でございます。  第三点は、六十年三月一日に同じくこの法律案に対しまして社会保障制度審議会が答申をしております。これも三つに分かれておると思うのですが、一つは、社会保障制度としてのあり方からの疑念を繰り返し表明してきたにもかかわらず何ら改善をしておらなかった。第二には、昭和五十六年の答申では、年金財政上ゆゆしき事態必至と、制度の抜本的検討を要請してきたが全く対策がとられておらなかった。第三は、早急に本制度趣旨目的にまでさかのぼって根本的な検討を求める。こういうふうに非常に強い調子の三点に尽きると思うわけであります。これは、社会保障制度審議会なんかの考え方からしますと、農業者年金なんかやめてしまえ、こう言わんばかりだと私は思うわけであります。この審議会の答申に対しましても、同じく農林水産省、厚生省当局はどう受けとめ、どのような対策を立てるおつもりなのか。  この三つの点について端的に、余り時間がありませんので短い時間でお答え願いたいと思うわけであります。
  73. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 まず、農業者年金制度研究会におきましてどのような検討がなされたかということでございますが、当面の制度改正を前提ということで五十九年の十月から五回にわたって検討がされたわけでございます。  検討の中身といたしましては、今回提案いたしておりますように給付水準保険料の問題、それから格差の問題等でございます。全く、現在出しております。そういう事項につきまして議論がなされたわけでございます。結論的に申しますと、私どものこの改正案につきまして、それを骨子ということで基本的な了解が得られたわけでございます。  その中で特に問題になりましたことを申し上げますと、やはり年金財政健全化を図ることが非常に重要であるということ、それから農業者年金は他の年金と違いまして政策年金である、したがってその政策年金としての性格を一層明確にすべきである、要するに構造政策推進と密接に関連をさすべきであるというような意見が強く出されたわけでございます。また、経営移譲年金格差の問題についても議論がございましたが、これにつきましては、やはり格差を設けることはやむを得ないのではないか、また、農村の中におきましても実際後継者が農業者年金に入っている場合と入らない場合はやはり違う、農業者年金というのはずっと世代を通して支えていくべきものである、こういう観点からしても格差はつけるべきじゃなかろうかという意見があったわけでございます。  我が省といたしましては、先ほども御説明いたしましたように、この研究会の検討結果を踏まえましてこの法律案提案したわけでございますが、やはりこの研究会の最後で、今後の問題といたしまして、農業者年金制度長期に安定した制度として維持していくための基本問題については引き続き検討をするべきである、こういう意見がついております。  それから、国民年金審議会なりあるいは社会保障制度審議会につきましては、非常に厳しい指摘があるわけでございます。私どもの設置しております農業者年金制度研究会の問題提起とおおむね、表現は違いますけれども、基本的には同じような性格の問題提起があったものと考えているわけでございまして、農業者年金の重要性にかんがみましてこの制度長期に安定したものとしていく努力が必要でございますし、そのための検討を当然行わなくてはいけないわけでございまして、私どもといたしましては、こういう検討を含めまして、今後の年金のあり方、年金長期安定の方策につきまして検討を進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  74. 渡辺修

    ○渡辺説明員 国民年金審議会それから社会保障制度審議会から、御指摘のように大変厳しい意見ないしは答申が出ているわけでございます。私どもはいずれも、この農業者年金制度財政健全化をどうしたら図っていけるか、この点、制度のあり方について基本的な突っ込んだ検討をすべきである、こういう御趣旨意見ないし答申と受けとめております。  農林水産省の方から今御答弁ございましたように、私ども厚生省といたしましても、給付負担長期的な均衡をどう確保していくか、また経営移譲年金支給開始年齢の問題の取り扱いをどうするか、こういった制度の基本的なあり方につきまして今後引き続き検討を進めていかなければならない、こう受けとめております。
  75. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 農林水産省、厚生省とも、ちょっと漠然としたあれで、中身の議論というのをもっとすべきだと思うのです。それでも一応厚生省としては、一つは給付負担のバランスをどうしていくのかという問題、それから財政健全化という点でどういうふうに前向きでこれからやったらいいのかという問題等がありますが、私は農林水産省にお聞きしたいと思いますのは、この制度政策年金としてあくまでも存続をしていくべきであるというようにお考えなのかどうか、その点ははっきりしていただきたいと思うのです。
  76. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金構造政策推進の上からも一定の役割を果たしておりますし、現在多くの農業者加入しているという実態にもございます。私どもとしては、この制度長期に安定していくというのがどうしても必要かと思います。したがいまして、今後の検討におきましてもそういうような視点に立ちまして真剣な検討を続けてまいる、そういう考えでございます。
  77. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 具体的には本当はかなり突っ込んだ意見書なり答申をしているわけですね。例えば国民年金審議会なんかは、ある程度の積立金を保有しておる現在、現在は積立金が幾らか残っておる、その間に抜本的な見直しのめどを立てるべきだ、こういう具体的な指摘までしているわけですね。これに対して農林水産省としてはどう対処するつもりなのか。やる気があるのかないのか。とてもやれません、国庫負担金をふやしてもらわないとだめです、こんな具体的な中身が本当はあるべきなんです、こういう委員会の中で。ただ漠然と、この年金制度が永続的に、長期的にわたって発展するように検討しますというだけでは、極めてこういう意見書に対する太刀打ちができない、こう思うのです。したがって、例えば今積立金を保有している間に抜本的な見直しのめどを立てるべきだという一つの具体的な問題に対してはどうなんでしょう。
  78. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 これまでの農業者年金法の改正といいますのは、財政再計算の都度改正をしてきた、こういう経緯があるわけでございます。国民年金審議会なり社会保障制度審議会の御指摘は、現在の農業者年金制度が持つ問題というのはかなり深刻な問題である、こういう認識のもとに、次の財政再計算のときにまた当面の改正をするということではなしに、十分に時間的な余裕を持って検討すべきである、こういう趣旨かと思うのですが、特にある程度の資産を持っております間に検討することは、検討の幅が広がるといいますか、選択手段がより多くなるというようなこともあろうかと思いますが、そういうことも含めまして、ある程度の資産を持っている間に早く検討した方がよろしいのではないかという趣旨の御提言かと思います。
  79. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、財政当局に振り回されるような年金改革じゃなくて、国民年金の補完ないしは政策年金として存続させるという観点で、やはり本気で考えていくべきじゃないか、こんなふうに思うわけなんですよ。  そこで、大臣を含めまして私お伺いしたいと思うのですが、国民年金厚生年金制度改正に伴って農業者老齢年金制度給付開始年齢が当然問題になってくると思うのです。今までは六十歳だったので六十歳から六十五歳まで老齢年金支給もしておったわけですが、今度全部六十五歳になるわけですね。したがって、こういうふうな他の年金制度が変わったことによりまして、当然、給付開始年齢の改定というのが早急に行われなければならないというふうになっていくわけですが、この点はどうなのか。  それから第二は、経営移譲年金制度、これを政策年金として存続させるつもりならば、今回のような国庫負担を減らしていくという方向ではなしに、むしろ国庫負担を今まで以上に多くしていかないと、必然的に加入者が少なくなっていきますから、これはもう存続できないことになるんですよ。この点、一体どういうふうにお考えなのか、これが第二点です。  第三点は、国民年金、基礎年金部分の上乗せ部分として発展的に制度改正をする必要が当然出てくるのじゃないか、私はそう思うわけです。国民年金はあのとおり基礎年金であります。厚生年金その他の部分所得比例方式といいますか、これは所得によっていわば保険料を出す、そして上乗せをするという二階建て部分になるわけです。この農業者年金は、国民年金のいわば上乗せ部分、二階建て部分としては、現在経営移譲年金だとかそれから老齢年金というふうな形になりますが、これは六十五歳までの部分なんですね。六十五歳以上は途端に少なくなってしまう。たった一万幾ら。私は、今後本当に長い風雪に耐えていくための農業者年金だとすれば、国庫負担金をふやしていく、そうして今のような二階建て部分として存続をしていく、こういう方向性というのは当然とらなければならない、こんなふうに思うわけでありますが、これに対する事務当局のお考えと、特に国庫負担、こういうものに対する財政の圧力が非常に強いという中で、大臣の御決意を承りたいと思うわけであります。
  80. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 まず最初に、厚生年金の方は本則では六十五歳から支給というふうになっているわけでございますが、農業者年金支給開始年齢をどう考えるのかということでございます。  農業者年金の場合は、確かに老後保障を月内の一つとしておりますけれども、あわせまして、たびたび申し上げるようでございますけれども構造政策推進という目的を持ちます政策年金でございます。したがって、この支給開始年齢につきましてもこういった配慮の上に決定されたものでございまして、制度発足当初の経営移譲年齢の考え方を見ますと、農業経営の能力といいますか、近代的な農業経営をする能力を経営者は常に持つ必要があるということと、それからもう一つは、後継者が十分な農業経営力を身につけている、そういう年齢、両方がうまくかみ合う、そういう時期が経営移譲年齢としては適当であろうというようなことで六十歳というのが一番適当であろう、こういうような結論が出されたようでございます。六十ぐらいになれば、経営者の方もかなり経営能力が落ちてくる、また後継者の方は大体二十五年から三十年くらいの年齢の間隔があるわけでございますので、そういう後継者が農業経営力を身につけるにおおむね適当な年齢である、年齢としては三十から三十五歳くらい、こういうことで六十歳が経営移譲の年齢として定められた経緯があるようでございます。  そこで、今後どういうぐあいに考えるかということでございますが、原則的には厚生年金の場合は老後保障というのを目的にしておりますので、これは、農業者年金のこの制度目的からいいまして、直ちにこれと同様の開始年齢にする、年金支給開始年齢を同様にするということはいかがかと考えるわけでございます。農業者年金農業者年金制度から別の考えがあってしかるべきであろうと思います。ただ、最近の農業労働力の高齢化というような点あるいは年金財政の動向も絡むかと思いますけれども経営移譲年齢につきまして今後検討する必要があると考えておりまして、こういった問題は何分基本的な問題でございます、制度の基本に係る問題でありますので、慎重に検討していくべきものと考えている次第でございます。  それから、あと農業者年金加入者と受給者の関係でございますが、確かに農業者年金の発足当初、すぐに受給権者となる加入者がふえてきたわけでございまして、その影響が今に及んでおりまして、加入者が減少する中で受給権者となる人が増加をしてきている傾向があるわけでございますが、これも将来の農業経営者の動向にもよりますけれども、若干長期に見ますと、加入者それから受給者というのはバランスしていくものと考えるわけでございまして、直ちにその加入者受給権者の数がますます開いていくと言うのはいかがなものであろうかというふうに考えるわけでございます。ただ、そうは申しましても、中期的に見ますと年金財政については非常に大きな問題がございまして、それはそれとして厳しく受けとめる必要があるというふうに考えているわけでございます。  それから、最後の御指摘の点は、もしそういう農業者年金財政がうまくいかない、そういうことであれば、いっそ今の厚生年金と同じような形でといいますか、厚生年金の中に入るような形で制度改正検討してはどうだろうか、こういう御提言だと思いますけれども、これは、両年金制度目的からいいまして違っているわけでございます。共通する部分老後保障という面がございますけれども、やはり主たる目的としているものが違っているわけでございまして、我々としては、やはり農業者年金農業者年金といたしまして長期的に安定した制度として維持していく必要があるし、また、その方向で今後そのための方策を十分検討していく必要があるだろう、このように考える次第でございます。
  81. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 細谷先生にお答えいたします。  農業者年金制度というものは、先生御存じのように二つ大きな目的がございます。その一つは、農業者老後生活の安定、もう一つは政策年金としまして農業経営の近代化及び農地保有の合理化等を目的とした政策年金でございます。そんなことで、この農業者年金国民年金等の他の公的年金に比べまして高率の補助が行われておるところでございます。一方、現下の農政におきましては農業構造の改善促進することが極めて重要であることにかんがみ、今後農業者年金制度政策年金としての役割を一層高めつつ、政策効果に応じた国庫補助が行われるよう努力してまいりたいと考えております。
  82. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 終わります。
  83. 今井勇

    今井委員長 午後一時四十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十分開議
  84. 今井勇

    今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中恒利君。
  85. 田中恒利

    田中(恒)委員 引き続いて農業者年金について質問をさせていただきます。同僚議員の方から幾つかの問題につきまして御指摘がありましたのでできるだけ重複を避けたいと思いますが、若干触れる部分もあろうかと思いますので、お許しをいただきたいと思います。  まず劈頭に、農業者年金制度は足かけ十五年になるわけですが、この制度政策効果というものを大臣はどういうふうに受けとめていらっしゃるか、お尋ねをしておきたいと思います。
  86. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生にお答えいたします。  農業者年金制度につきましては、先生指摘のとおり、昭和四十六年の制度発足以来約十四年間を経過し、経営移譲促進を通じまして四つの大きな役割を果たしてきた、私はこう思っています。まず農業経営の細分化防止、中核農家の規模拡大、農業経営主の若返りを進めること、また農業者老後保障、この四つの大きな役割を果たしてきたと思います。  具体的な数字につきましては局長から答弁させたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  87. 田中恒利

    田中(恒)委員 この制度仕組みをめぐっての問題について午前中各委員指摘した点は、大分共通した面があったように私も実は聞きながら思っておったわけですが、特にこの年金制度は、年金法第一条を見ると、「農業者老後の生活の安定及び福祉の向上に資するとともに、農業経営の近代化及び農地保有の合理化に寄与することを目的とする。」こういうように書いておりまして、いろいろな解説書を見ましても、一つは農民老後の生活保障、つまり年金制度の側面、いま一つは政策年金としての構造政策経営移譲農地流動化、専業農家への集中、こういう二つの側面がいつも言われておるわけですね。  ところが、きょう午前中の質疑を聞きながら、私自身もそう思っておるのですが、この仕組みが、構造改善方向の比重が非常に多過ぎて、老後の生活保障、つまり社会保障年金制度という側面が非常に薄い、この指摘が一つあったように思うのです。金額など細かいことは申し上げませんが、経営移譲年金と老齢年金の間に非常に差があるじゃないかという指摘が非常に強かったと思うのです。私ども、地方へ行っていろいろ聞きましても、担当者の諸君も非常にその点は言うのです。  これは、経営移譲年金が高いということではなくて、老齢年金が余りにも低い。そこで、老齢年金だけの農家から見ると余り魅力がないという傾向が強い。そこへもってきて、ここで押さえておかなければいけないのは、特に都市近郊、周辺地帯の農業者ですね。これは正直言って、地価がこういう状態ですから土地をさばいて——後継者もいない、おっても帰ってこない、それならば農地の所有権を移したり使用収益権を移動したりするよりも、財産として持って、最後の土壇場にはこれを売って銀行にでも預金した方がよっぽどよろしい、こういう側面が非常に強いのですね。だから加入促進をやろうとしてもなかなか思うように伸びないという現状があるのですよ。  この制度をきちんとするということになっていくと、やはり老後の生活保障の側面をもう少し強うしてやらないと、これは今度の改正でできていないわけですけれども、今すぐこれをやってもう少しバランスをとらないと、この法律で見る限りでは、老後の生活保障とともに、経営の合理化、農地の集団化、つまり構造政策、こういうことになっておるのです。説明を聞いたって大体構造政策がいつも先行しておるわけですね。ここのところをもう少しバランスをとってもいいのではないですか。私はきょうの質疑を聞きながらそんなことを感じたわけですが、これはどういうふうにお考えですか。
  88. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 構造政策老後保障について適切なバランスがとれていなければならないということは御指摘のとおりだと思います。  この農業者年金制度の中に経営移譲という目的を入れているわけでございますけれども、この手段といたしまして老後年金支給するということでありますので、ある意味で構造政策推進老後保障ということは裏腹の関係になっているわけでございます。  そういう意味におきまして、私ども農業者年金政策的な側面だけを強調しているわけではないわけでございますけれども制度運用面につきましては政策的な面からする配慮というのをかなりやっておりますために、ややもすれば構造政策だけの観点から議論をしているように受け取られがちかと思いますが、基本的にはそういう構造政策推進というのも老後年金支給という手段によってやられているという事実は私どもとしては十分考えているわけでございます。
  89. 田中恒利

    田中(恒)委員 あなたはお役人だからそういうふうにうまくするっと逃げるわけだけれども、私はそういうふうには思わないのです。  それと、この年金制度の前提には厚生年金並みということを終始一貫して言っておるわけですね。そこで、国民年金に上乗せをするということでしょう。だから、六十五歳になれば国民年金の基礎年金分が入るから、そこで四分の一であっても国民年金にちょっと上へ出るほどのものになる、こういうことで四分の一というのが出てきておるのでしょうけれども厚生年金と比べたらまだ相当差があるわけなんですよ。それは、所得率がどうだこうだおっしゃるけれども、やはりあるわけなんですよ。  それから考えると、やはり老齢年金という部面の比重をもっと大きくしないと、後でいろいろお聞きしますけれども、この年金財政の分野の割合を見ても経営移譲年金部分が圧倒的に多いのではないですか。その比重の圧力が加わってきておる。だから、国民年金審議会経営移譲年金の開始時期を少し検討せよと言えば、きょうは検討してみるげに言っておられるが、方向づけとしてはあなたのところは大分魅力を持っておるのではないですか。六十五歳からに引き上げていく、こういう方向へ持っていくのではないですか。それをやれば財政関係は少しゆったりになる、そういう面がどうもあると思うのですけれども、私はやはり老齢年金部分というのをもっと厚くしてやるということをこの年金の体系上もひとつ考えてほしい、こういう要望を強く持っておるわけです。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕  それから、構造政策というものを中心にやったと言うのだが、そうしたら構造政策というのはうまくいってきたのかというと、どうもそんなふうにも思わない。言葉の上ではいろいろおっしゃるけれども構造政策自体非常に混迷から脱し切れない、むしろ我々から言わせれば失敗をしてきている、こういうふうに考えざるを得ないのですよ。ですから、どうもこの年金制度というものについては、当初からいろいろ問題があったわけですけれども仕組みからも内容からも非常に疑問を持っているわけであります。  特に、年金であるからこれを構成する加入者が一番の問題でありますが、この加入者がともかくどんどん減少してきておる。午前中にもいろいろ議論がなされたわけですけれども、特にあなた方がおっしゃる当然加入、つまり専業農家というか、そういう農家層はもうぐっと落ち込んできておる、そして任意の連中もぐっと落ち込んでおる。後継者を最近いろいろ加入促進をやって、多少これは上向きになってきておる、そういう傾向になってきておりますが、この加入者のこれからの見通し、これはどういうふうに計算していらっしゃるわけですか。
  90. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 まず最初の、農業者年金構造政策的な面の方ばかりを向き過ぎている、こういうことで老後保障の方について若干手抜かりがあるのじゃないかということでございますけれども農業者年金は、給付につきましては厚生年金並みということでこれまでやってきたわけでございます。具体的には、経営移譲をしました後の六十から六十四歳までの期間につきましては厚生年金並み給付をしてきたわけでございますし、六十五歳以後につきましては、これは国民年金給付と相まちまして厚生年金並み給付をしてきているということでございます。  確かに、年金額の絶対額で比較いたしますと、農業者年金の場合の農業所得といいますのと厚生年金の場合の標準報酬月額というような違いもございますし、あるいは加入期間の違い等もございまして差はあるわけでございますけれども農業所得を前提にいたしまして、農業者年金制度加入した場合、あるいは厚生年金の方に加入した場合を比較いたしました場合に同様の水準にする、こういうことで従来運営してきたわけでございますし、今回もそういう方法をとっているということでございます。  あと、構造政策につきまして、これはこの年金制度構造政策の一翼を担うものでありますけれども、いろいろな意味でまだまだ問題があるのは事実でございまして、特に土地利用型の農業におきましては、その規模拡大というのが思うように進んでいないというような問題もございまして、これらの点につきましては、単に農業者年金制度ばかりでなしに、その他のいろいろな制度あるいは予算措置等によりまして進めていくべきものと考えておるわけでございます。  それから、農業者年金の被保険者数と受給者数の見通しの問題でございますけれども、これは、新規加入でありますとか再加入によりまして増加もございますが、中途に脱退いたします場合、あるいは死亡の場合、それから六十歳に到達いたしますとこれは加入資格をなくするわけでございまして、その者の減少、こういうようなことを従来の傾向から検討をいたしますと、昭和六十五年にはおおむね六十七万人ということで、その先も若干加入者数が減少していくというような見込みでございます。  また、受給権者数の動向でございますけれども、これも、現在の被保険者の年齢階層別分布をもとにいたしまして従来の傾向から推定いたしますと、昭和六十五年には経営移譲年金受給者数が約六十万人くらい、それから老齢年金受給者数が約四十三万人程度になるということで、こういう増加の傾向もその後何年間かは続く、こういうような状況でございます。
  91. 田中恒利

    田中(恒)委員 ここのところで年金がこれからどうなるのか一番心配するのですけれども、午前中局長は、長期的に見れば——確かに今は五十歳代が非常に多いわけで、半分以上あるのですね、下がずっと少ないのですが、これがそのうちなくなって、小さいのが上に行けば理想的な、今はこういう逆ピラミッドになっているが、これがこうなる。しかし、その間には恐らく三、四、五十年かかるわけですね。それまで持ちこたえられるかどうか、この年金財政が今のままで。  それが問題なんで、私どもが今問題にしなければいけないわけですが、この農業者年金制度の理想的な年金設計をする場合の組合員規模というものは、一体どのくらいに見ておるのか。これは厚生年金でも国民年金でも、農林省の場合は農林漁業団体職員年金ですね、たしか農林年金の場合は四十八万五千人というものを想定して、四十八万五千人の組合員というものを置いて、そしてこの設計がなされておるはずですが、農業者年金の場合はそういうものはあるのですか、ないのですか。そんなものを持って、例えば加入についても進めてきておるのか、その辺はどうなのですか。大体この農業者年金年金制度設計はこういう形のものが好ましい、こういうものでやっていきたいというようなものがあるのですか。
  92. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農林団体年金がどのようなモデルをつくりましてそれに合わせるような形で年金運営をやっているかよく承知いたしませんが、農業者年金の場合は、農業者年金加入資格のある農家数というのを前提にいたしまして、我々としてはこの年金財政長期的に運営できるような、そういうことを検討してきたわけでございますし、今後におきましてもそういう方向検討すべきだろうと思います。そういう意味におきまして、何かモデル的な基礎というようなものは持ち合わせていないわけでございます。
  93. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは農林年金だけじゃなくて、国民年金にしても厚生年金にしても、皆大体適正規模の一つの型というようなものを持っておるのじゃないですか。農業者年金の場合にはなかなかそれが持ちにくい今の農業の現状で、頭の中に描かれても実態はそれについていけない実態があるわけですね。だからやれないわけですよ。だから、財政再計算の時期ごとに、大体こうなる、こうなる、こうなるということで、五年間ごとの、二年、三年、四年、五年ぐらいまでの見込みしか立っていないということなんじゃないですか。そこにこの年金の体系や仕組み上の致命的な一つの問題点がある。そこのところを社会保障制度審議会なり国民年金審議会が、相当厳しい形でこの年金に対して声を放っておるというふうに私には思えてならないわけです。  事実、今局長が言われたように、六十五年には六十七万人体制になる、受給者と全く一対一のような割合になるわけですね。五十八年度には農業者年金をやめていく人が、私のこの資料では七万九千二百十四人、つまり六十歳以上ですね、これはその他いろいろありますが。それから新しく農業者年金に入ってくる人が三万八千三百五十一人ですから、差し引くとちょうど四万八百六十三人、年間約四万人減っていく。これはしばらく続いていくということですから、十年続けば四十万人減るということになる。今九十万人体制ですから、これは、昭和六十五年には六十七万と言ったけれども、今後もっと減ってくるわけですね。逆に受給者はぐっとふえていく。だから被保険者一人に対して二人ぐらいの受給者、二倍ぐらいの受給者になるということすら考えられるのですね。  こういう状況の中でこの年金をどうしていくかということになっていくと、私はこれはなかなか頭の痛いところだと思うのですよ。私も実はこの農業者年金制度が四十六年ですか、初めて出たときに審議に加わった一人ですけれども、どうもこの年金はそれから以降何回かごの委員会でも修正などの議論がなされておるのですけれども、これはどうなるのかなという心配を持ち続けておる一人であります。補助をふやしていけばいいわけですが、今のこの状況の中で、国の補助なんかというようなものも一律にカットされておるのだから、一定の限界があるわけですね。これは一体どういうふうにしてやっていくのか。結局掛金をふやして保険料徴収を大きくして、給付をぐっと落とす以外にないでしょう。  だから今度の改正案はそういう方向の第一弾として出てきておるのだと思いますけれども先ほど言われたように、保険料農民の今の実態から見て持ちこたえられるかどうかといったような問題がどんどん出てくるのですね。こういう中であなた方が取り組むというわけなんだけれども、これで立派に日本の農業方向に沿っていると言えるのか、こんな心配をしておるのですが、どうですか。
  94. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 財政再計算の都度その前提になりました加入者数なり受給者数というのは変わってきているのではないか、こういうことが指摘されたわけでございますけれども、事実としてそういうことがあると思うわけでございます。  将来にわたりまして確定的な数字を申し上げるということはなかなか難しいわけでございますが、ただ年間に、加入者とそれから脱退者を差し引きいたしまして四万人ずつ減っていく、こういうことで、これが今後十年続けば四十万人も減るんだ、こういうことを申されたわけでございますけれども、これにつきましては、その時点で確かにそうでありましても、長期的にそういうことが続くかどうかというのはこれはまた一概にそのようには言えないわけでございます。  農業後継者として残る者もおりますし、それから、一たんは就職いたしましてもまた帰ってきて農業に従事をするという人もかなりいるわけでございまして、そういう新規の加入者、それから現在未加入になっております者の加入促進していくというような努力を加えていけば、将来ずっとその加入者が減りまして、それが受給者との関係におきまして今のような、今のようなといいますか、受給者が常に多くなるような状況が続くというわけには、そういうようなことを断定的に言うということもあながちできないのではないかというふうに思うわけでございます。ただ、御指摘のように、当分の間は加入者数が減りまして、受給権者数がふえていく、こういう傾向でございます。  財政的にもなかなか難しい問題があるわけでございまして、当面の措置としては今回提案いたしましたような内容のことを一応実施の予定でございますけれども、やはり長期的に農業者年金制度を安定さしていくためにはさらに根本的な検討が必要であろう、このように考えておる次第でございます。
  95. 田中恒利

    田中(恒)委員 私も今局長がおっしゃったような方向でこの年金制度が充実強化されることを望んでおりますけれども、今の農業をめぐる情勢はそんなに甘いものじゃなくて、年金制度があるから、価格保障制度があるからといった程度のもので今の状態が直ちに息を吹き返すような問題じゃないと思います。これはいろいろ複雑な要因のもとで、農業の将来についてある意味では非常に混乱をして自信を失いかけておる様相が強まっておると思うのですよ。  そういう中ですから、そんなに簡単に立ち直るといったようなことは考えられない。じりじり行って、行き着くところから強いのがずっと出てくるということしか道がないような気もしておるわけですが、ただ、いずれにしても加入者がふえなければ今のような状態にならないので、その加入者をふやす手法としては、後継者とかいろいろな方法が、法律的にも所有権か使用収益権の移動でよろしいとか、いろいろなことがあったわけですけれども、前々から言われておる婦人の年金権というものを農業者年金の中になぜ確立しないのかという問題があるんですよ。  私ども、今農政の根本を考えた場合に、いろいろ言っても、農業をやっておる人は大半婦人なんですよ、残念ながら日本農業は。これは間違いない。そのやっておる婦人が農業者年金加入することができないという実態がこの年金の中にあるわけですが、これこそいわゆる日本の農政の基本問題として考えてみる必要があると思うのです。今度の法改正は、厚生年金国民年金を通して婦人に年金権を与えるというのが一本の大きな柱になっておったわけですね。農業者年金の場合、婦人の年金権というものが今度の改正の中に反映されていないわけですが、これは一体どういうことなのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  96. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 これから農業者年金への加入促進をしていく必要があるわけでございます。そういうことで、未加入者加入促進ということに特に重点を置きまして今後とも進めてまいりたい、このように考えるわけでございます。最近の加入状況を見ますと、かなり若い人も入ってきているという状況でございますので、こういうことをさらに徹底していきますれば、相当の成果も上がるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  次に、婦人の農業者年金への加入の問題でございます。  農業者年金制度は、適切な経営移譲促進いたしまして農業経営者の若返り等の政策効果を促進していく、こういう目的を持っておりますので、加入資格といたしましては農業経営主であるということでございます。つまり、所有権なり使用収益権等の地権を持っておりまして、現に農業を経営しておるというのがどうしても要件にならざるを得ないのでございます。  そういうことで、御婦人の方がこのような地権者であり、農業経営をやっておられる場合につきましては婦人が農業者年金加入をできるわけでございます。現に農業者年金加入者を見ましても、五十九年の三月末で婦人の加入者は、全体九十二万六千百七十六名中三万六千九百五十三名ということで、四%のシェアを占めておるわけでございまして、経営主であるということでありますれば、男女とも同じような扱いをしているわけでございます。
  97. 田中恒利

    田中(恒)委員 加入者九十二万のうち、男子約八十八万九千人、そして女子約三万七千人、四%ですね。この四%は、主として兼業農家のいわゆる御主人がサラリーマンで奥さんが農業をやっておる、その奥さんに土地の所有権ないし使用収益権を移転する、そこでなっておるというケースが多いのじゃないですか。  そこで問題は、専業農家の主人と奥さんとある、その場合主人はもちろん入っておりますが、奥さんははいれないでしょう。入ってない。これは何ではいれない。専業農家の奥さんはなぜはいれない。
  98. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 専業農家の場合は夫婦ともども働いているという実態があるわけでございますけれども農業経営主といいますのは、農業経営を主宰する者でございまして、したがいましてその経営の損益というのが実質的に帰属をするという人でございます。一般的にはといいますか、社会通念上は一農家世帯の場合には一人であるということになっているわけでございます。そういうことにおいて、通常の場合には男の方が経営主として農業者年金加入をしている、このようになっていることと思います。
  99. 田中恒利

    田中(恒)委員 経営主とは何だ、それから一農家一人だ、これは法律に基づいて法を執行する行政官としては、そういう通俗的な表現では私は全く納得できぬですよ。経営主とは農業経営を営む人であって、農地法上だって一戸一人の経営主といったような規定は全然してないはずですね、これは憲法の規定と関連してくるわけですから。そこで、特に婦人の関係者の皆さんが、農業農民がやっておるのに農民農業者年金に入れない、何ということだということで、この委員会以外の方々からの声が殺到した時期がありましたね。私はやはり確かにそうだと思うのですよ。  そして、特に最近の農業の状態というのを細かくあなた方精査をしてみたらわかりますけれども、奥さんがもう専門的にやって、一切責任を持ってやっておるというケースはあちこち出ておるのですよ。それから、やはりこれからの農業経営は、家単位といったような形から分解しておりますから、例えば一町歩の田んぼ、土地を持っておる。そのうちの五反なら五反、六反なら六反は御主人が水稲をやっておる。しかし奥さんは野菜とかイチゴとかそんなものを施設で専門的にやっていらっしゃるところもあるわけですよ。こういうのは奥さんが完全な経営主なんですよ。そういう者は農業者年金にはいれるのですか、どうですか。
  100. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業経営主といいますのは、その人が責任を持って経営をやりまして、損益の帰属というのはその人になるという人だと思うわけでございます。したがいまして、現にそこで常時働いている人が経営主になる場合もあろうかと思いますし、それが一般的だと思いますが、必ずしもそうでない農業者も経営主となるということがあると思うわけでございます。  今の事例として挙げられましたそういう形態の農家におきましては、これはそういう具体的な事実に基づいて判断する必要があろうかと思いますけれども、原則的には一農家の世帯の中では一人が経営主であるとは思いますけれども、あるいは場合によりまして、実質的に経営が分かれておりまして、それぞれの分担分野が違い、それぞれの事業の損益というのはそれぞれがかぶる、あるいは肥料なり農薬の購入とか使用の実態から見ても分かれている、全体として見てどうも経営が別ではないかというような場合もないことはないと思いますけれども、これにつきましては、いずれにしましても十分実態を見ましてそれに即した判断をすることが重要ではないかというふうに考えるわけでございます。
  101. 田中恒利

    田中(恒)委員 もう少しはっきり確認しておきますが、原則論でよろしいです。  そうしたら、たとえ専業農家であろうとも、主婦一定の部門を責任を持ってやっておるということで——収支計算も含め、作業労働力、それからいろいろな必要資材の購入、そういうものは普通兼業農家の主人と奥さんとの間の状況でやりますね、それは認めますね。これはぼつぼつ出ておりますね。それと同じような状況が認められれば、専業農家主婦といえども農業者年金加入者になることはできるということはここではっきりしておいて構いませんね。あと具体的なものはそれぞれの農業委員会などが実態をよく精査して決めることですけれども、いけないということはないでしょう。
  102. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金加入できる人は農業経営主でございますので、農業経営主というのをわかりやすく解説すれば、一つは所有権なり使用収益権を農地に対しまして持っているということ、それからもう一つは、実態として農業をやっているということでありまして、その農業経営の形態からして経営が二つに分かれているというような指標が、総合的に考えて、あると判断できれば、一つの農家の中で二つの経営があるというように言えると思います。
  103. 田中恒利

    田中(恒)委員 それから、私、もう一つ被保険者の問題で、ここですぐどうせよこうせよとは言いませんけれども指摘をしておかなければいけないのは、この加入資格というのは、五十アール以上、それから任意は三十アール以上ということになっておりますけれども、土地の所有面積で区切っているわけです。  これは恐らく今の土地の流動化というか構造政策というか、そういうところに焦点を置いたという面もありましょうが、最近の農業の経営というのは土地所有にかかわらないですね。特に、これから農林省が示唆していく新しい技術体系の中では、必ずしも土地なんかそうたくさんなくたって、現実に施設園芸などは一町歩の土地を持っておるよりも、昔の言葉で一反か二反もあれば収益がよっぽど高いというような農業経営がどんどん出始めてきているわけでしょう。農家として三反しかない、しかし所得は米の一町、二町よりもよっぽど多い、こういう農家が今たくさん出ておるのでしょう。そういうようなものが加入者の資格としては任意加入だというようなことになっているところだってあると私は思うのですね。何か土地に絞っておるというところにも一つの問題点があるような気がしてならないわけですよ。  そういう点などは、この制度は恐らくもう一度、これは前向きならいいが、私は非常に心配しておるのは後ろ向きの改革をやってくるのじゃないかと思っておるが、これはいろいろな面からもう一遍精査をして、どういうものが農業経営者なのかというのをぴしっと押さえてかかっていただきたいと思いますが、これはどうでしょうか。
  104. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 現行法によりますと、加入資格を持ちます者は、原則的に五十アール以上の農地を所有している農業経営主でございます。その他に任意加入がございますが、この加入資格の要件を決めます場合にはいろいろな議論があったかと思いますけれども農業従事者一人がおおむね年間を通して農業経営に従事できる、そういう規模というようなことが基準になってこの要件が定まってきたというふうに理解しているわけでございます。  現行法に基づく限りそういうことを加入要件としていくわけでございますが、今後の問題といたしまして、その加入の資格についてもっと検討してみてはどうかということでございますれば、それについては十分検討させていただきたいと考えております。
  105. 田中恒利

    田中(恒)委員 あと、年金財政問題でちょっとお尋ねしますが、基金の収支の現状はどういうふうになっておるのか。それからついでに、将来の見通しはどういうふうになっておるのか。  収支は収入と支出、つまり収入は掛金と利息と補助金ですね、支出は給付ということになるのでしょうが、この関係をお示しをいただきたいし、これが将来、今度財政再計算をやられた範囲でしょうが、大体どういうふうな見通しになっていくのか、概略で結構ですからお知らせをいただきたいと思います。
  106. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 これからの財政見通しでございますが、仮にこの法律改正を前提にいたしますと、昭和六十二年度末には単年度収支が赤字となるわけでございます。この結果、積立金についても漸次減少をしていく、こういうことに相なるわけでございます。これからの収支の見通しにつきましては、これは一定の前提を置く必要がございますけれども、七十四年度ごろには年金資産が払底するというようなことが見込まれるわけでございます。その後、被保険者数と年金受給権者数とのバランスが回復をしてくることが予想されますので、さらにその後、八十年度には単年度収支がまた回復をしてくる、こういうような状況が想定されるわけでございます。  それで、単年度の収支の状況がどうなっているかということでございますが、六十年度について申し上げますと、収入の合計を千九百七十一億円と予定しております。そのうち保険料収入が七百十七億円、国庫が八百三十六億円、それから運用収入が四百十八億円でございます。それから支出の方でございますが、これが千七百六十四億円ということで、単年度収支は二百六億円のプラスでございまして、年度末の資産が五千九百七十三億円となるわけでございます。約六千億円ということでございます。
  107. 田中恒利

    田中(恒)委員 六十二年度末から赤字に入っていくということですが、大体今積立金というのは約六千億ですね。しかし、これは財政再計算をやってみれば大体わかると思うのですけれども、積立金がどれだけあればいいという計算になっているのですか。
  108. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 五十八年度末現在でございますが、責任準備金といたしまして約一兆二千二百七十八億円でございます。そのうち不足いたしますのが六千六百四億円と相なっております。
  109. 田中恒利

    田中(恒)委員 今からこの年金のスライド分の問題もありますね。それから平準保険料は何か一万三千幾らとかでしょう。しばらくそれを八千円でいくというわけでしょう。その分の問題ですね。そういうものがずっと出てくるので、この体系でこれをやっていけるのですか。保険会計のあれは難しいが、どうも一万三千円のを八千円にまけたんだ、それでもたまらぬということに今なっているわけでしょう。そしてこれからスライド分が加わっていくわけでしょう。そんなものでいくと、いわゆる年金の過去勤務債務というのですか、それがだんだん膨らんできてどうにもならないようなことになっていく状態に、農業者年金会計というのは、財政というのはなっておるのじゃないですか。それは七十四年ごろから方向転換するというのですが、それまで持ちこたえるように計算はできておりますか。     〔田名部委員長代理退席、島村委員長代理着席〕
  110. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 ただいま申し上げましたが、六十年度末で約六千億の資産が残るわけでございまして、単年度収支が六十二年から赤字になるといいましても、なお六千億円という資産がございますので、当面の運営には事欠かないといいますか、特に支障が出るとは考えていないわけでございます。  ただ、将来の問題といたしましては非常に大きな問題が出てくることは事実でございますし、社会保障制度審議会なりあるいは国民年金審議会、それから構造改善局に設けました農業者年金制度研究会におきましてもその点が指摘をされておりまして、なるべく早い時期にそういった対策を検討すべきであるというふうに提言を受けているわけでございます。私どもといたしましても、こうした提言なり御意見なりを真剣に受けとめまして、今後の農業者年金のあり方につきまして検討していきたいと考えているわけでございます。
  111. 田中恒利

    田中(恒)委員 掛金が六十二年の一月から八千円になって、それから毎年八百円ずつ、つまり一〇%ずつ六十六年まで上がるわけですね。そうすると、六十七年以降はこれはどういうふうになるのですか。
  112. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今回の財政再計算で平準保険料が一万三千二百三十八円ということでございまして、現行保険料から見ますと、現行保険料が六千六百八十円でございますので、約二倍近い水準になるわけでございます。この引き上げ農家負担のかなりの増高を招くことになる、こういうことで、八千円からスタートいたしまして、毎年八百円ずつの保険料引き上げを定めまして、六十六年まで定めたわけでございます。  そこで、六十七年の一月以降はどうするのかということでございますが、私どもといたしましては、六十七年一月以降も引き続き段階的な引き上げを図っていく必要があるというふうには考えておりますけれども、その具体的な保険料につきましては、次の財政再計算の結果を待ちまして決定をするものと考えている次第でございます。
  113. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、先ほど来いろいろ保険料の問題で、国民年金と合わせて二万二千円、これはどう見たって大変な保険料で、農家負担にたえられぬじゃないか、こういう意見があったわけですが、確かに厚生年金と同一水準にということで出発したのですけれども、どうも給付の方は厚生年金に比べるとぐっと落ち込んでくるし、負担の方は、割合からいうと非常に高い。  私もちょっと計算をしたわけですが、厚生年金保険料率は千分の百二十四ですね、これははっきりしております。農業者年金の場合は、私の計算が間違っておるかもしれぬが、極めて大ざっぱな計算ですけれども、八千円と国民年金の一万三千六百円に四百円の国民年金の付加を加えて二万二千円、これを十三万一千円ですか農業所得のこれでやってみると、約千分の百六十八になっておりますね。  厚生年金は労使折半ですから、こっちは補助が多少あるわけですけれども、そうすると、これはなかなか大変な額、恐らくこれからこれにまた加えなければいけぬということになるだろうと思うので、こういう状態で加入者が飛びついてくるかな、こういう心配があるわけなんですよ。加入者はこの一、二年多少ふえておるけれども、これはまことに微増でしょう。そんなに先行きが明るくなったという状況のふえ方ではないのじゃないですか。実際の数字を見た範囲ではわずかなもので、これで乗り切れるような状況ではないと思うのですね。  だから、この財政問題は相当大きな問題なんで、政策年金ならば思い切って政策年金らしい国の補助体制というものをとらなければだめだ、やれぬと思うのですよ。やっていく自信がありますか、大臣。今のことしの予算から来年の予算にかけて、あるいはこれから数年の間、財政事情がそのうちよくなるということになれば別ですけれども、なかなかこの年金財政の補助体制というのは甘いものじゃないと思いますが、しかしそれがなければ、この年金制度というのは正直言って、あなた方が言われるように、財政的に見てもどうも難しくなっていくという気がしてならないのですけれども、単なる杞憂ですか。
  114. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生にお答えいたします。  先生の御指摘のとおりでございますが、農業者年金制度農業者老後生活の安定のみならず、農業経営の近代化及び農地保有の合理化を目的とした政策年金であることから、国民年金等の他の公的年金と比べ高率の補助が行われているところでございます。  一方、現下の農政におきまして農業構造の改善推進することが極めて重要であることにかんがみ、今後、農業者年金制度政策年金としての役割を一層高めつつ、政策個々に応じた国庫補助が行われるよう最善の努力をしてまいりたいと考えております。
  115. 田中恒利

    田中(恒)委員 今度の改正で拠出時の補助をやめて給付時の補助に切りかえる、経営移譲年金については従来の三分の一を二分の一、ただし附則で、六分の一ですか、当分の間それをやる、こういうことになっていもわけですが、これは、本則で切りかえなくて附則で変えたということ、そして「当分の間」、こういうことになっておるわけですが、「当分の間」とは大体いつごろなんですか。
  116. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 この改正後の「当分の間」といいますのは、経営移譲年金給付に六分の一を加算するというその期間でございますが、これは国庫補助水準の急激な変更を避けるために今のような措置をとったわけでございます。  したがいまして、「当分の間」ということにしたわけでございますが、これはあくまで農業者年金制度の運営が円滑にいくように、その運営に支障がないように、こういうことで「当分の間」として六分の一の補助をするということになったわけでございます。この「当分の間」の解釈、運用につきましては、農業者年金制度が円滑に運営される、こういう趣旨を十分考えまして、今後とも制度の運営に支障を来さないような形で対応していきたい、このように考えております。
  117. 田中恒利

    田中(恒)委員 当分の間は円滑に行われるということ、その中にいろいろ意味があるのでしょうからこれ以上申し上げませんが、最後にちょっと一つだけ、非常に具体的な問題ですが、私、見解を承りたいと思います。  支給停止ですが、経営移譲をやった場合、その土地の取り扱いをめぐって移譲年金をストップをかける場合がありますね。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕 この支給停止の条件といったようなものは、これは政令ですか、規則ですか、何か出ておりますが、この中に、例えば農業用施設といったようなものを農地の中に建築する場合には支給停止の条件にならないということになっているわけですね。ところが、後継者などが別居をしていくということで住宅を建てる、そうすると支給停止になるのですよ。  これはどうもよくわからないので、昔から農家の家というのは、半分は農業経営、単なる都会の住宅と違って、農業経営と全く表裏一体、こういう認識に我々は立っておるものだから、しかも、最近は母屋に若夫婦がおるのじゃなくて、若夫婦が結婚したり、多少蓄えができればすぐ家を建てるのですよ。家を建てた土地が経営移譲で使用収益権をもらったところであった。そこに家を建てた。そうすると支給停止になるというのは、これはちょっとひど過ぎると思うんだな。これはちょっと考えて、農業用施設とみなして、そんなに豪壮な邸宅でも建てるのなら別だけれども、十坪か十五坪か二十坪ぐらいの土地に、農家だから多少、四、五十坪ぐらいの敷地、そこに家を建てればそれでストップをかけるというようなやり方はちょっと酷だと思うのだが、これは直す気はありませんか。
  118. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者が後継者に経営移譲をいたします際に、農地につきまして所有権を移転するという方法と使用収益権を設定して行うというこの二つの方法があるわけでございます。  今の問題は、所有権を移転するということで後継者に農地を譲り経営移譲をしております場合は問題ないわけでございますが、使用収益権を設定いたしまして経営移譲を行っております場合に問題が出てくるわけでございます。これは、後継者にその農家が使用収益権を設定するということについてはいろいろ脱法的なことが予想されるということで、支給停止要件を幾つかかけているわけでございまして、ただいまのような場合にも経営移譲年金支給停止になるわけでございます。  一般論としてはそのようになるわけでございまして、どうもこの制度改正をするということについてはなかなか問題が多いと思うわけでございまして、現行制度では、土地収用法等で収用されるような場合は経営移譲年金支給停止要件にしていないわけでございますが、任意に住宅などを建てるためにそれを転用するという場合には、これは支給停止要件に該当すると思います。  原則的にはそうだと思いますけれども現行法では所有権の移転という方法でやりますとそういった煩わしいことはなくなるわけでございますので、もう少し現行法の中でそういった場合の対応方法を検討してみる必要があるかと考えております。
  119. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは農業委員会の末端の実務者の間では大分問題になっておるのですよ。こうまでしなければいけないのかというのがあるので、これはしばしば全国農業会議所などからもおたくの方へ要望が来ておると思うんだが、なかなか実現できぬ、こう言っておるわけですけれども、私、大して大きな問題でないように思うのです。  小さな家をちょっと建てると、せっかく年金をもらえていたのを全部ストップかけるなんというような、そんなむごいことをしなくたって、それこそ農業施設とみなしてやれば、農業施設は構わないというんだから、納屋を建てるのは構わぬで家を建てたらいけぬというんだから、納屋と家と、農業をやる人にとってはそんなに関係ないんで、母屋の中の半分ぐらいは納屋になっておるんですよ。そういう感じが一般的に多いものだから、そこらはひとつこれから運用で十分考えていただきたい、このことを特に要望しておきたいと思います。  時間が参りましたので、大臣、農業者年金の問題は、一面、農民の既得権として確立をしておる節はあります。確かに経営移譲年金などについては、納付に対して年金額が出てくるわけだから、出したものよりもたくさんあるじゃないか、こういう意見もある。しかし、細かく言っていくと、非常に不備な点がまだたくさん残っておるような気がしてなりません。  それから、やはり一番問題は、農業の情勢がこういう情勢ですから、先行き不安をみんな持っておるから、農地というものをこれまで同様に農用地として使うということよりも、何か財産として処分をして、もう老後はそれで生活した方がよろしい、こういう形で農業に対しての自信喪失という客観情勢の中で農業者年金の基盤というのは一面では崩れつつある、そういう面があると思うのですね。それらを踏まえて、これからこの法律に基づく制度の内容の充実に努めていただきたいということを特に強く御要望しておきまして、大臣の御所見を承って、終わりたいと思います。
  120. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  先ほどからいろいろ聞きまして、局長の答弁、なかなかきちんとかたいわけですが、やや実情に即していないようだ、例えば農業経営主等の問題につきましても、お話を聞きまして、もっと実態に即したらどうかという感じもせぬことはないです。ただし、この問題につきましては、今我が省の中に研究会を設けて検討するということでございます。  また、今の住宅の問題等も、私は聞いておりまして、これはそう大きい件数じゃないと思いますけれども、若い後継者、特に結婚などをした場合に新婚夫婦に家を建てる、自動車を与える、これぐらいしないとなかなか後継者にならぬわけです。そういうことを含めて、もっと実態に即してこの運営が図れるように今後とも検討してみたい、こう思っております。
  121. 今井勇

    今井委員長 次に、神田厚君。
  122. 神田厚

    ○神田委員 農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。  まず全体的な問題でありますが、今回の改正公的年金制度改定に準ずるものとして説明をされているわけであります。改正案の具体的内容を検討してみますと、年金給付水準の引き下げ、サラリーマン後継者等に経営移譲した場合の年金支給額に格差を設けたこと、保険料の大幅な引き上げ、さらには国庫補助体系の改定など、非常に厳しいものとなっております。  そういう意味におきまして関係者からは強い不満が出ているわけでありますが、政府改正案の作成に当たりまして、農業者年金制度研究会を開催し、改正内容あるいは本制度のあり方などにつきまして各種の問題を検討されたと聞いておりますが、各委員から述べられました意見、特に農業関係委員からどのような意見が出されたのか、御説明をいただきたいと思います。
  123. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 ただいまお話がございました農業者年金制度研究会におきまして昨年の十月から検討いたしまして、今回の制度改正の骨子案について議論が行われまして、その基本的了解が得られたということでございます。  この研究会におきましては、年金財政健全化を図ることが非常に大切であるということ、それから、農業者年金政策年金でありますので、そういった性格を一層明確化する必要があるというようなことは、もう各委員共通して指摘されたわけでございます。それから、被用者年金加入しました後継者等への経営移譲の場合の年金額につきましては通常の場合と差を設けることにつきましても、各般の議論があったわけでございます。  そのうち特に農業団体関係委員からの御意見でございますけれども、まず、経営移譲年金の額に差を設けることにつきましては、これは政策年金性格上やむを得ないのではないかということでございました。現に農村の内部におきましても後継者が農業者年金に入っている場合と入っていない場合を同じにすることは、やはり問題があるのではないかというような意見もあったわけでございます。ただ、加入者への急激な変動を緩和する必要があるということで、経過措置を設ける必要があるということを主張しておられたわけでございます。  それからもう一つは、今回の改正農業者に与える影響を考えまして、改正趣旨の徹底を十分図る必要があるということ、それから、年金業務につきましては農業委員会なり農協に非常に御協力をいただいているわけでございますが、ただ、事務量が多いとか予算が少ないというようないろいろな御意見があるわけでございます。こういうことも踏まえまして、事務の簡素化をさらに進めて、制度の円滑な運営ができるように努力をすべきだろう、こういった意見があったわけでございます。  さらに、今回の改正案というのは当面の改正案でございまして、基本的にやはり問題がありますので、今後そういった問題についてはなるべく早い時期に検討すべきであるというような御意見が、これは農業関係委員を含めまして全体の研究会の委員の方から出されていたわけでございます。
  124. 神田厚

    ○神田委員 次に、本改正国会提出に際しまして国民年金審議会並びに社会保障制度審議会でも審議をされたわけでありますが、ここでは年金財政問題あるいは制度の抜本的見直しなどについての指摘が行われた、こういうふうに聞いておりますが、これら意見の集約と政府の対処方針について御説明いただきたいと思います。
  125. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 国民年金審議会、社会保障制度審議会ともども農業者年金の現状につきまして検討をいただきました結果、非常に厳しい御意見をいただくことになったわけであります。農業者年金の果たしてきました役割についてはそれ相応の評価をいただくわけでございますけれども、特に年金財政を健全に維持していくために制度のあり方についての根本的な検討を行う必要があるという趣旨の答申をいただいたものと考えております。  私どもといたしましても、今後この農業者年金長期的に安定していく制度として維持するとともに、政策年金としての役割を高めていく必要もあろうかと思います。こういうような観点に立ちまして、負担給付のあり方でありますとか経営移譲年金支給開始年齢等の制度の基本的枠組みに係る問題等について真剣に検討してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  126. 神田厚

    ○神田委員 本年金制度が発足以来十五年を迎えているわけでありますが、既に経営移譲年金及び農業者老齢年金の受給者が数多く発生しているわけてあります。政府は本年金制度の果たした政策効果についてどのような評価をしているのか、特に構造政策に果たしている役割を具体的に説明をされたいと思います。
  127. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 まず後継者に移譲する場合の効果でございますけれども、最近のような、地価がかなり上がってきておりますし、兼業化が進んできましたり、あるいは非農家の宅地がかなり増加をしてきている、こういう混住化社会の進展の中でございますので、後継者に一括移譲するというのはかなりの細分化防止の効果を果たしているものと考えているわけでございまして、これは制度の実施前と実施後を比較いたしましても相当程度の効果が出てきているものと考えるわけでございます。  それから、経営者の若返りでございますが、三十五歳未満の経営者に今経営移譲がされてくるのが大体の一般的な形態でございますけれども、これも制度の実施前に比べましてかなり進んできております。その結果、そういった新しい近代経営に適応する能力のある経営者が出てきている、このように考えておりまして、そういう意味におきまして、後継者の確保にもこれは貢献しているものと考えているわけでございます。  第三者移譲につきましては、これはまさに第三者に移譲するものでございまして、第三者の経営規模の拡大に直接つながっていく、そういう意味があるわけでございます。これを都府県と道南、それから道北と二つに分けて考えてみましても、第三者移譲を受けましたものの経営面積は、譲り受け前の一・八五ヘクタールが、譲り受け後は平均でございますけれども二・四五ヘクタールになっておる。道北につきましては、それぞれ十七・三〇ヘクタールが二十一・二五ヘクタールになる、こういうふうにかなりの効果が出てきておりますし、第三者移譲によります移譲面積のトータルも三万ヘクタールを超すというような状況になってきているわけでございまして、それ相応の効果が出てきているというふうに、考えております。
  128. 神田厚

    ○神田委員 今回の改正内容は、従来の本制度改正あるいはほかの公的年金制度の抜本的改正に比べて非常に厳しいものとなっているわけであります。なぜこのような厳しい内容になったのか、その具体的事情並びに年金財政事情について説明をしていただきたいと思います。
  129. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今回の改正につきましては、給付の方につきましては公的年金制度の改革の方向に即して適正化を図っていく、それから、保険料の方につきましては現行保険料をかなり引き上げ負担をしていただくというような内容になっているわけでございますが、これは第一には、高齢化社会の進展ということで、農村におきましても例外ではございません、むしろ一般の社会よりも高齢化が先行して進んできているわけでございます。そういうことが年金財政にも反映をしておりまして、年金財政の安定を図ることがどうしても必要になってきているわけでございます。  それから第二番目には、兼業化が進んでまいりまして、経営移譲の相手方に占めます被用者年金加入後継者、いわゆるサラリーマン農家と言われておりますが、そういう人の割合が増加をいたしまして、構造政策の効果の面から問題が出てきているということ。  それから第三番目には、国の財政支出の問題でございますけれども、昨今財政状況が非常に悪いという状況でございます。他の公的年金につきましても、拠出時、給付時双方の高率の補助というのはもう既になくなっているわけでございまして、また、その補助対象につきましても政策性を問われてきている、こういった状況にございますので、そういう財政状況の変化と申しますか、そういったことにも配慮せざるを得なかったわけでございまして、こういうことがあわせ重なりまして今回の改正をいたすようになった次第でございます。
  130. 神田厚

    ○神田委員 年金財政事情が厳しくなっている最大の理由が、年金保険者の減少と年金受給者の大幅な増加、こういうことにその原因があると思うわけでありますが、両者の動向について数字を挙げて現状と今後の見通しをお聞きしたいと思うのであります。  また同時に、本制度長期にわたり安定的に運営するためには若年後継者の加入促進が必要であるわけでありますが、その実態はどのようになっているのか、今回の改正加入促進が一体図られるのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  131. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金の被保険者数でございますが、五十九年十二月末で九十万人でございます。今後の動向につきましては、新規加入等の増加する要因、それから中途脱退でありますとか六十歳に到達するという減少する要因、それぞれを最近の傾向から推計いたしますと、六十五年にはおおむね六十七万人程度になるというふうに考えております。  また、受給権者数につきましては、これは毎年四、五万人程度増加するわけでございまして、五十九年の十二月末には経営移譲年金受給権者数が三十五万九千人、農業者老齢年金受給権者数が十五万九千人、こういうぐあいになっているわけであります。これの今後の動向でございますが、現在の被保険者の年齢階層分布をもとにいたしまして推計するわけでございますが、昭和六十五年に経営移譲年金受給権者数がおおむね六十万人、老齢年金受給権者数がおおむね四十三万人、こういうふうに見込んでいるわけでございます。  これからの年金財政健全化の方策にはいろいろなことが考えられるかと思いますが、やはり加入促進というのは非常に重要でございます。その中でも若齢の後継者の加入促進というのが極めて重要だと考えているわけでございまして、従来からパンフレット等によります加入促進をPRをしてきたわけでございますが、特に重点といたしまして、経営移譲を受けました後継者でありまして未加入の者でありますとか、あるいは年金受給資格を得る関係では早く加入手続をとる必要がある者がありますが、相対的に若齢者といいますか若い経営者といいますか、そういう人たちに重点を置きまして加入促進してまいりたい、このように考えております。  現在の加入者の年齢階層別の分布を見ますと、四十歳以上の階層に属する加入者が圧倒的に多いわけでございますけれども、最近の加入促進努力によりまして、かなり若い人、つまり四十歳未満の人の加入者がふえてきているわけでございますし、また全体の加入者数につきましても、五十七年が二万六千人、それが五十九年には三万人というふうに徐々に増加をしてきているわけでございます。さらに努力を傾注いたしまして加入者をふやしていきたい、このように考えているわけでございます。  ただその場合、今回の改正保険料引き上げることになるわけでございますけれども、この点につきましては、我が農業者年金におきましても、高齢化社会へ移行していく中でどうしてもそれに対応していく必要があるということでございます。その後についての負担がふえてくるわけでございます。そういう状況をよく説明いたしますこととか、あるいは農業者年金制度は世代間の順送りの相互扶助を前提として、相互援助でもって成り立っているということも十分説明をしてまいりたいと考えているわけでございます。  なお、これは申すまでもないことでございますけれども農業者年金には国庫補助もございますし、物価の上昇をスライドさせました年金額のアップということもあるわけでございますので、そういった点もあわせて説明をいたしまして、若齢後継者加入促進に努めてまいりたい、このように考える次第でございます。
  132. 神田厚

    ○神田委員 それでは年金水準改定につきまして二、三御質問を申し上げます。  今回の改正では年金水準を二十年かけて引き下げることにしておりますが、年金額現行水準と比べてどのようになるのか、数字を示していただきたいと思います。
  133. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金経営移譲年金給付水準につきましては、従来から厚生年金給付水準並みということにしておりまして、今回においても同様の考え方に立っております。厚生年金は二十年かけて給付水準を変えていくわけでございますが、農業者年金も同様でございまして、二十年たちました給付水準は、現行に比べまして約四割引き下げて、具体的には六〇・二%になる予定でございます。
  134. 神田厚

    ○神田委員 経営移譲年金の算定に当たりましては、厚生年金の算定方式に農業所得を当てはめて算出する、こういう方式が採用されているわけでありますが、今回の算定に用いた農業所得は一体幾らなのか、また、この場合の農業所得はどのように算出をしたのか、お伺いしたいと思います。
  135. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 年金単価の算出に用いました農業所得は、今回は十三万一千円でございます。これは五十九年度単価でございます。  この算出方法でございますが、農家経済調査によりまして昭和四十六年から五十八年度までの平均農業所得を基礎にいたしたわけでございますが、その中で昭和五十五年から五十八年については米等について作況指数一〇〇を割る状況が続いたわけでございますので、それらについては平年作、作況一〇〇ということで補正を行っておりまして、その農業所得をベースにして計算したわけでございますが、計算方法はこれまでと同様でございまして、四十六年から五十八年の期間について、直線回帰あるいは片対数回帰、三次曲線回帰、それから農業所得の平均、こういった四つの方法を用いて計算をいたしまして、その中で最高の農業所得をとったということでございます。  ちなみに申しますと、最低が十二万円ということになります。十二万円から十三万一千円の中で、高い方の十三万一千円をとりまして農業所得といたした、こういうことでございます。
  136. 神田厚

    ○神田委員 農業所得十三万一千円ということでありますが、自立経営農家あるいは中核農家農業所得と比べた場合にはこれは非常に低いという指摘もあるわけであります。そういう意味におきまして、今後農業所得の算出方法を改善する用意があるのかどうか、低過ぎるという指摘についてはどういうふうにお考えになりますか。
  137. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金加入者農業所得でございますので、この加入者所得の平均をとるというのが一番妥当かと思うわけでございますけれども、そういうことが実際問題としてできないわけでございますので、農家経済調査を基礎にいたしまして、この中から当然加入規模であります五十アール以上の農家農業所得年金加入農家の階層別構成比でウエートいたしまして平均の農業所得を算出しまして、これを給付水準の算定基礎にした、農業所得にした、こういうことでございます。  確かにこの水準は自立経営農家なり中核農家農業所得に比べますと低いとは思いまいすけれども、この年金の算定基礎といたしましては平均的なものをとっていくことが一番妥当ではなかろうか、こういうことでただいまのような方法を用いて算定をしている次第でございます。
  138. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、この農業所得の問題については今後改善するという考え方はお持ちになりますか。
  139. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業所得につきましてはいろいろな考え方があろうかと思います。加入農家個々に所得が違いますので個々に農業所得を設定していくという考えもありましょうし、ただいま御指摘のように比較的経営規模が大きい、したがって農業所得の多い農家を算定の基礎にしていくという方法もあろうかと思うわけでございますけれども給付に対しましては、保険料負担ということもございますし、かつまたこれは国の助成もあるわけでございますので、そういった点を考えますと、年金加入しております農家の平均所得というもの、それが把握できない場合、それに最も近いものを基礎にしていくのが一番妥当な方法じゃないかと考えるわけでございます。  現在は、農家経済調査を基礎にいたしまして、当然加入規模の五十アール以上の農家農業所得年金加入者の経営規模別の構成比でウエートをつけまして算定しているわけでございますけれども、それ以上にもう少し平均的な所得を算定するいい方法がありましたら我々としては検討してみたいと思いますけれども、どうも物の考え方としては、そういった年金加入農家の平均所得をいかにして客観的に正しく把握してなるべくその実態に近いような所得にしていくか、これが課題だと考えておるわけでございます。
  140. 神田厚

    ○神田委員 次に、サラリーマンの後継者等への経営移譲の場合に、経営移譲年金の額に四分の一の格差を設ける、こういうことになっておりますが、なぜそのような措置を講じたのか。  また、本措置により年金額格差を設けられる者は何%ぐらいになるのか、その見通しを御説明いただきたい。
  141. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 たびたび申し上げておりますように、農業者年金制度老後保障とともに適期の経営移譲をする、そういった政策目的を持っているわけでございます。  現在の経営移譲状況を見ておりますと、当初考えましたようなそういう目的に照らしまして必ずしも円滑にいっているようには考えられないわけでございまして、この際、農業者年金法の趣旨に照らしまして、よりその政策に適合している農家に対しましては一定の加算をしていく、優遇していくといいますか、そういう措置をとる必要があるのではないかと考えまして、いわゆるサラリーマン後継者とは四分の一の格差をつけたわけでございまして、その基準といたしましては、農業者年金の被保険者等農業に常時専従する者に対しまして経営移譲します場合には、従来のような考え方の経営移譲年金支給するというふうに考えている次第でございます。  また、こういった措置につきましては、長期的に見まして年金財政の安定にも寄与していきますし、将来の保険料負担軽減にも結びついていくと考えるわけでございます。  これにつきましては私ども内部でも十分検討をいたしたわけでございますし、先ほど申し上げました農業者年金制度研究会におきましても関係者の御意見を伺ったわけでございますが、やむを得ない措置ではないかということであったと思うわけでございます。  ただ、格差を設けるといいましても、格差を設けられた経営移譲者につきましては老後の生活というのがございますので、老後の生活の基礎的な生活費が保障される、そういう水準を保つ必要があるということで、その点を配慮いたしました格差となっているわけでございます。そういう点で農業者老後保障にも配慮したつもりでございます。  それから、どの程度の人が格差のつきました年金を受給するのかということでございますけれども、現在経営移譲をいたします場合の被用者年金加入後継者は約五〇%というぐあいになっております。これもずっと傾向的には増加をしてきているわけでございまして、現時点でそういうふうになっているわけでございますけれども、この程度にとどまるものというふうに考えているわけでございます。
  142. 神田厚

    ○神田委員 本措置は、既に年金加入をしている人たちに対しましては、見方からしますれば権利の不当な侵害になるのではないか、こういう指摘もあります。また、本措置経営移譲促進に悪影響を及ぼすのではないか、こういうふうに指摘をされておりますが、この点についてはどういうお考えでありますか。
  143. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 これも先ほど御答弁申し上げたわけでございますけれども農業者年金、とりわけ経営移譲年金といいますのは非常に政策性の強い年金でございます。それだけに国の補助もかなり高率のものがあるということでございまして、私どもといたしましては、構造政策推進という、そういう政策適合度によりまして受け取ります年金額に差がつくというのもやむを得ないことではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  なお、この場合にも差のつかない年金額ということになりますと、これは一概には言えないと思いますけれども、経営を移譲する者が第三者にその経営を移譲するというような場合、これは一定の要件が必要でございますけれども、そういう場合には従来どおりの経営移譲年金が受けられるということであるわけでございます。  なお、これは研究会におきます農業団体等の意見も考慮いたしまして、一気に格差をつけるということではなしに、五年間をかけまして四分の一の格差をつけるというふうに措置をいたしているところでございます。  それから、格差をつけることにより加入促進に対して影響があるのではないかということでありますけれども、これにつきましては、やはり農業者年金制度の全体の趣旨というのを十分説明する必要がありますと同時に、ただいま申し上げましたように、第三者移譲の場合には一定の要件に合致すれば従来のような経営移譲年金が受け取れるというようなことをよく説明し、また、そのような格差がつきましても、経営移譲年金につきましては国庫補助がございますとかあるいは物価のスライド条項が適用されるわけでございますので、それらについても周知徹底を図っていきまして加入促進に遺憾のないようにいたしたい、このはうに考えておる次第でございます。
  144. 神田厚

    ○神田委員 農業者老齢年金水準につきまして、過去の国会審議においてその水準引き上げるようなびたび附帯決議が行われているわけでありますが、今回何らの配慮もされなかったわけでありますが、その理由はどういうことなのか。  また、経営移譲ができずに農業者老齢年金しか受給し得ない人たちにとっては大幅な掛け捨ての事態が予想されるわけでありますが、これについてはどういうような対応をなさるのか、この点お尋ねいたします。
  145. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者老齢年金につきましては、たびたび本委員会におきまして附帯決議をいただいているわけでございますが、この農業者年金制度国民年金付加年金という仕組みになっているわけでございます。したがいまして、老後保障といいますのは国民年金と相まって行うということになるわけでございます。農業者老齢年金は、長年農業に精進をしてきたということに対しまして老齢保障をするために設けられたものでございまして、直接経営移譲年金のような政策目的を持つものとは違うというふうに考えているわけでございまして、これにつきまして、我々といたしましては従来のように経営移譲年金の四分の一とするということを踏襲いたしたわけでございます。  農業者老齢年金金額引き上げるようになりますと、この年金が終身年金であるということからかなり支出額が多くなりまして、その引き上げ保険料へ影響をしてくるわけでございます。農家負担等を考えますとなかなかそういうわけにもまいらないだろうということで、農業者老齢年金給付水準を従来のルール以上に引き上げられなかったわけでございます。
  146. 神田厚

    ○神田委員 掛け捨てが出るのじゃないかというのですが、その点はどうですか。
  147. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 これにつきましては、経営移譲促進ということと農業者老後保障というのは非常に関係が深いわけでございまして、逆に言いますと経営移譲促進を図るということのために、かなりのといいますか一定年金支給していく、こういうことにしたわけでございます。  したがいまして、経営移譲をいたしました場合には一定年金給付することになるわけでございますけれども、それに比べまして老齢年金の場合は年金額が低くなるというふうなことになっておりまして、これは制度仕組みとしてそのようになるわけでございます。この点につきましても従来どおりでやむを得なかったわけでございますし、保険料等のことを考えますとなかなか現行制度を動かす、改正していくということは難しいわけでございます。
  148. 神田厚

    ○神田委員 次に、死亡一時金の支給対象拡大の問題であります。  今回の改正死亡一時金の支給対象を拡大したことは、関係者の要望にこたえるものとしまして高く評価をするものでありますが、本措置によりどの程度の者が支給対象に追加される見通しなのか。  また、今回の改正では遺族年金制度創設が行われなかったのでありますが、その理由を関係者の納得のいくように説明をしていただきたいと思います。
  149. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今回、死亡一時金の支給対象を拡大いたしたわけでございますが、この拡大措置の適用になる者でございますが、これにつきましてはなかなか確定的な数字は申し上げることができないわけでございますが、最近の実績をもとにして申し上げますと、五十七年度でございますれば百十六名、五十八年度でありますと百十一名、こういうことになってきております。したがいまして、これは受給権者の数がずっとふえてまいりますとまたそれに応じましてふえてくるのではないかというふうに考えております。  それから、遺族年金創設ができなかったわけでございますが、これは、農業者の配偶者の老後保障というのは国民年金によって行われる、こういうことになっておりますので、農業者年金自身遺族年金をさらに仕組むということは難しい状況にございます。そういうことで、今回、私どもとしてできることといたしまして死亡一時金の支給対象を拡大をしたということでございまして、この点、御了解いただきたいと思うわけでございます。
  150. 神田厚

    ○神田委員 次に、農業者老齢年金支給要件、これも緩和をされているわけでありますが、これによりどの程度の者が支給対象となるのか御説明をいただきたい。
  151. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 この数字につきましても余り確定的なことは申し上げられないわけでございます。最近、農家の在宅勤務者というのがかなり増加してきておりまして、そういう傾向からいいますと、もう少しふえるのじゃないかというような感じもいたしますが、今のところ年間平均四十名程度を見込んでおります。
  152. 神田厚

    ○神田委員 次に、保険料の問題であります。  今回の保険料改定はかつてない厳しい引き上げになっているわけでありますが、年金額水準の引き下げが行われたにもかかわらず、このような引き上げをしなければならなかった具体的な理由は一体何であったのか。  また、国民年金保険料負担と合わせた保険料の総額はどの程度になるのか。そして、最近の農業所得の停滞状態から見て、これが農家負担能力をはるかに超えはしないかと懸念をされておりますが、政府農家負担の限界等についてどのように考えているのか。  また、今回保険料を大幅に引き上げたにもかかわらず本年金財政は依然として厳しいものであるわけでありますが、将来見通しはどのようになっているのか、今後年金財政健全化のために政府としてはいかなる方策をとろうとしているのか、この点についてお答えをいただきます。
  153. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 経営移譲年金給付水準につきましては、これもたびたびお答えいたしましたように、厚生年金並みということでございます。今回厚生年金給付水準が是正されてまいりますので、それに従いまして農業者年金におきましても給付水準適正化があるわけでございますが、他方、保険料につきましては、これは年金給付に要する費用の予想額、それから予定の運用収入、国庫負担金額等を勘案いたしまして、将来にわたりまして財政均衡していける水準に定める、こういうことが原則でございます。  今回財政再計算をしてみますと、年金財政均衡するに必要な保険料金額は、これは月額でございますが一万三千二百三十八円となるわけでございます。これは現行保険料に比べまして約二倍にもなるという水準でございますので、今回は農家負担を勘案いたしまして、急激に負担が増大することを避けまして、昭和六十二年度の保険料を八千円といたしまして、以降昭和六十六年度まで毎年八百円ずつ段階的に引き上げる、このようにいたしておるものでございます。  それから、農家負担程度の問題でございますが、これは六十二年から農業者年金保険料月額で八千円になるわけでございます。もちろんこれは五十九年度価格で申し上げております。これに夫婦二人の国民年金保険料を合わせました保険料負担は、六十二年度で月額二万二千六百円ということになりまして、農家所得全体から見ますとこれは五・一%の負担になるわけでございます。保険料をかなり高くする、引き上げるということでございますけれども、まず農家にとりましても受け入れ可能な水準ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  それから、保険料を大幅に引き上げるということにいたしたわけでございますが、年金財政長期の見通しというのはなかなか厳しい条件のもとにあるわけでございます。当面の措置といたしましては今回の改正をしたわけでございますし、かつまた当面の財政の収支の見通しにつきましても、六十二年度末から単年度収支が赤字になるといいますものの、なお六十年度末で六千億円という資産があるわけでございます。したがいまして、当面の運営には支障は来さないと考えるわけでございますが、その先を考えますと、年金財政健全化、安定化ということはやはり非常に重要なことでございます。  私どもも、そういうような観点に立ちまして、今後の農業者年金のあり方、負担給付あるいは経営移譲年金支給開始の年齢等、基本的な枠組みに係る問題等につきまして検討を進めていかなければいけない、このように考えている次第でございます。
  154. 神田厚

    ○神田委員 次に、国庫補助改定につきまして二、三御質問を申し上げます。  今回の改正では、国庫補助につきまして、拠出時補助を廃止をし、経営移譲年金に対する給付時補助を従来の三分の一から二分の一に高めることとしているわけでありますが、なぜこのような国庫補助体系の改定を行ったのかをまず御説明をいただきたいと思います。
  155. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 ただいま御指摘のような改正をいたしましたのは、第一には、拠出時と給付時の双方に国庫補助をしている例が他の公的年金にないということでございます。農業者年金独特のものであったわけでございます。  それから第二には、今回の公的年金制度改正では、国庫補助というのは基礎年金部分に集中をするわけでございます。国民年金給付時の三分の一の補助をしておりますけれども、この三分の一に集中をいたしまして、上乗せ年金部分には補助がされない、こういうことになってきているわけでございまして、農業者年金につきましても国庫補助を継続していくということでありますと、やはり政策年金に結びつけた補助でなければならないわけでございまして、そういったことを明確にする必要があったわけでございます。  さらに三番目には、国の財政状況が非常に苦しい、厳しいということでございまして、財政支出の効率化を求められているわけでございます。こういった点も勘案いたしまして今回のような拠出時補助を廃止いたしたわけでございます。  ただ、この措置にかわりまして、当分の間ではございますけれども経営移譲年金給付に要する費用の額の六分の一を補助をするということになっております。したがいまして、経営移譲年金給付につきましては、基本の三分の一の補助がございます。それに六分の一の補助を加えますと二分の一ということに相なるわけでございまして、その経営移譲年金給付の補助を引き続き行うということに相なった次第でございます。
  156. 神田厚

    ○神田委員 今回の国庫補助体系の改定は、年金財政に悪影響を及ぼすおそれがある、このように考えております。  そして、そういうことでありますならば、政策年金として位置づけられている本年金に対しまして国の責任の放棄をも意味することでありまして、年金財政が非常に厳しい折でもありますが、今後国庫補助率を高める用意があるのかどうか、その点はいかがでありますか。
  157. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今回の改正におきまして、保険料の拠出時補助の廃止をいたしまして給付時の補助率のかさ上げをするわけでございますけれども、これを全体で考えてみますと、国庫補助は現状に比べまして約一割弱の減少になるわけでございます。  今回の措置年金財政にどのような影響を及ぼすかということでございますけれども、確かに補助金は減少するわけでございまして、影響があることはあるわけでございますが、大幅な影響を及ぼすことにはならない、そのように考えているわけでございます。  それから、これから農業者年金に対する助成をどのようにしていくのかという趣旨の御質問でございますけれども農業者年金制度政策年金である限り、引き続き補助を行っていくべきものと我々は考えているわけでございます。しかし、現下の国の財政状況は非常に困難な厳しい状況にあるわけでございます。そういう点は我々としても十分に認識するわけでございますけれども、この農業者年金が持ちます構造政策推進ということも極めて重要でございますので、今後とも政策年金としての役割を一層高めるように配慮しながら、政策効果に応じた国庫補助が行われるように我々としても引き続き努力していきたい、このように考えておる次第でございます。
  158. 神田厚

    ○神田委員 大臣が参議院の方に行かれるようでありますので、一つ大臣に御質問を申し上げたいと思うのであります。  いろいろ今この改正案の問題点につきまして質疑をやりとりしているわけでありますが、こういう中で大変厳しい状況が続いているわけであります。今後もそういう形で推移するというふうなことでありまして、こうした事態を放置しますれば、最終的には結局財政面からこの制度が自己崩壊してしまう、こういう危険性も非常にあるわけであります。  こうした事態を避けるためにはいかなる方策を講ずるべきなのか、場合によっては制度の抜本的見直しも必要であるというふうに考えておりますが、政府として本制度の今後のあり方につきましてどういう検討を加えようとしているのか、御答弁をいただきたいと思います。
  159. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生にお答えいたします。  先ほどからの質疑をずっと聞かせていただいておったわけでありますが、今後におきましては、農業者年金制度長期的に安定した制度として維持するとともに、政策年金としての役割を高める観点から、給付負担のあり方あるいは経営移譲年金支給開始年齢等の制度の基本的枠組みに係る問題等について、部内に設けられております研究会等の場において十分検討いたしたいと考えております。
  160. 神田厚

    ○神田委員 それでは、時間がありますので、あと二、三、ちょっと局長さんに御質問を申し上げたいと思っております。  まず、今回の改正におきまして、農協等の常勤の役員に選挙または選任された者については農林年金加入期間農業者年金の受給資格期間に通算する、こういう措置を講ずることとしておりますが、この対象を農林水産業団体の役員のみに限定した理由は何なのか。  また、これによりどの程度の人数が救済される見通しなのか、この点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  161. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 今回の空期間の通算措置の適用の対象になります団体の範囲でございますが、これは趣旨といたしましては、農業協同組合等でその役員が選挙をされまして、御本人は農業経営を引き続きやりたいと思っておりますのに、やむを得ず組合の常勤役員になりまして被用者年金加入せざるを得ないというような状況になることがあるわけでございます。これらの点につきましては、必ずしも自分が望んで就任するのではないということでもあるわけでございますので、これまでの要望にこたえまして空期間として通算をするという措置にしたわけでございます。  私どもといたしましては、その団体の範囲といたしましては、農業協同組合でありますとか土地改良区でありますとかで、農業者が自主的に組織をしておりまして、農林漁業者の社会的、経済的地位の向上を図るということ、非営利法人であるということ、それから大部分の役員が農業者の中から選挙、選任される、こういうような団体の常勤役員を予定しておりまして、言ってみれば自分のやっております農業と非常にかかわりの深い、そういう団体でありまして、ある意味におきます農業経営を若干延長した先にある、そういったポストというふうに考えまして、その空期間の通算措置をとったわけでございますし、そういう団体に限定したのも、農業とのかかわりの中でただいまのようなことで限定をしていったわけでございます。  この措置の対象になります員数でございますが、私ども必ずしも十分把握してないわけでございますが、五十名程度は毎月出てくるのではないか、こういうふうに考えております。
  162. 神田厚

    ○神田委員 最後に、主婦加入の問題でありますが、近年農村の農業労働力の中で主婦の占める比重が非常に高まってきているわけであります。年金への加入資格を与えることが従来から非常に強く要望をされ続けてきたわけでありますが、政府はいかなる検討をしてきたのか、今後この実現の見通しはあるのかどうか、この辺はいかがでありますか。
  163. 井上喜一

    井上(喜)政府委員 農業者年金加入資格は、やはり農業経営主であるということでございまして、具体的には、経営対象の農地につきまして所有権なりあるいは使用収益権を持っているということでございます。そのことと、もう一つは、同時に農業経営を理に行っているということでございまして、主婦につきましてもこういう要件に該当いたします場合は加入できるわけでございます。  ただ、経営主が男でありまして所有権なり使用収益権についてもその男が持っているというような場合につきましては、主婦が常時農作業をしておりましても農業者年金加入要件を満たさないわけでございます。しかし、加入の要件を満たしまして加入しております人も全体の四%に当たります三万七千名弱いるわけでございます。  この主婦年金加入につきましても従来からいろいろな要望がありますことは我々承知をしているわけでございますけれども農業者年金という制度仕組みから、この加入を認めていくということはなかなか難しい問題があるように思うわけでございます。
  164. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  165. 今井勇

    今井委員長 次回は、来る二十一日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十分散会