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井上(喜)
政府委員 幾つか提起されました問題につきまして、順次お答えしてまいります。
まず、遺族
年金の創設
関係でございますが、これは既に御
指摘のように、
農業者年金といいますのは構造改善に資するという見地から
国民年金の付加
年金として仕組まれているものでございます。そういうことで、
農業者の配偶者の
老後保障は
国民年金によって行うということでございまして、
農業者年金に遺族
年金をさらに仕組んでいくということは非常に難しいわけでございます。
こういうことで今回の改正にもそういうような仕組みはしなかったわけでございますが、ただ、
農業団体等の強い要請を受けまして、死亡一時金の支給
対象を拡大いたしまして、
経営移譲年金を受給した後に死亡したような場合におきましても、死亡時までの受給総額が保険料納付期間に応じて定められました
一定の額未満であるような場合には、その差額を遺族に支給するというような措置を講じた次第でございます。
次に、
農業に専従します主婦等の
年金への加入でございますが、これも、
政策年金として仕組まれておりまして、特に
経営主たる地権者と
後継者が
対象になっておるということでございまして、事実上働いております主婦でございましても、地権者でない主婦が加入するということにつきましては、この
制度の基本にかかわる問題でございまして困難でございます。
ただ、妻が、御婦人が夫から使用収益権の設定を受けまして
農業者年金に加入する道がただいま開かれておりまして、これも御案内のとおりだと思いますが、婦人の加入者数は五十九年三月末で三万六千九百五十三名となっておりまして、
土地につきまして
一定の権利を持って
経営しております御婦人については、こういった加入の道が開かれておるということでございます。
それから、
農業者が被
保険者期間中に死亡いたしました場合における当該被
保険者期間の配偶者への承継の問題でございますが、これにつきましても、先ほど
竹内委員にお答えいたしましたように、保険料納付といいますのはその者の一身専属的な性格を有するものでございますので、夫婦といえ
ども譲り渡すことはできないというものでございます。そういうことでございますので、
農業者年金制度におきましても新しい
経営主となります配偶者が前
経営主の加入期間を承継するというのは困難でございますが、ただ、その被
保険者の死亡一時金につきましてはその遺族に支給されるという措置がとられるわけでございます。
それから、配偶者、
後継者の嫁、娘婿を
後継者移譲の直系卑属と同様に扱うということでございますけれ
ども、これにつきましては、そのように直系卑属というような扱いをすることができないわけでございます。特に
経営移譲者の配偶者につきましては、
農業経営者の
若返りという
政策目的からいいましても問題があろうかと思います。娘婿、嫁といった直系卑属の配偶者につきましては、これは
農村の実態から見ますと、直系卑属の親から
経営を受け継ぐというようなそういう蓋然性といいますか可能性が低いわけでございまして、現行
制度とおり、こういった人
たちを
経営移譲者の直系卑属並みに扱うことはできないといいますか、その必要性はないと考えております。
それから、
後継者の
農業従事要件の緩和でありますが、
後継者移譲の相手方は、近代的な
農業経営を引き続き行う意思と能力を備えているということを判断する必要がございますけれ
ども、その判断の
一つといたしまして、引き続き三年以上
農業経営に従事しているということを要件にしたわけでございます。これは
制度的には租税特別措置法におきます生前一括贈与の場合の納税猶予の特例措置が認められる場合の要件と整合しているわけでございます。
もっとも、この三年といいましても、
大学あるいは高等学校の
農業に
関係する学科を学んでいる場合にはそうした期間も通算できますし、また、生徒とか給与所得者が農繁期、休祭日だけに
農業に従事しているといった場合におきましてもこの全期間を含めて差し支えない、こういうような運用をしているわけでございまして、こういう実態からいいますれば、
かなり弾力的な運用をしていると考えられるわけでございます。
何分、
農業の場合は
土地条件とか気象条件等の自然条件によって左右されるところが非常に多いわけでございます。引き続き
農業経営をやっていくためには、やはり最低三年くらいのそういった経験といいますか、引き続き
農業をやっている経験が必要ではないかということでございまして、今回の改正につきましても従来どおりの扱いにして改正をいたさなかったわけでございます。
また、自留地等につきましても、現在
第三者移譲の場合に自留地十アールを残すことができるようになっておりますけれ
ども、
制度の運用を見ますと、自留地を残す
経営は大ざっぱに言いまして半分ぐらいのようでございますし、またその
面積も平均いたしまして十アールを切っているというような
状況でございます。また、
後継者移譲の場合には、
移譲いたしましたその
土地について作業、手伝い等が事実上できるわけでございますので、この自留地については現行
制度のままでよろしいのではないか、このように考えている次第でございます。