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1985-04-23 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月二十三日(火曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    鍵田忠三郎君       菊池福治郎君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    保利 耕輔君       松田 九郎君    山崎平八郎君       若林 正俊君    上西 和郎君       串原 義直君    島田 琢郎君       新村 源雄君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    松沢 俊昭君       駒谷  明君    斎藤  実君       水谷  弘君    吉浦 忠治君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣        農林水産大臣   佐藤 守良君  出席政府委員        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産大臣官        房審議官     吉國  隆君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君  委員外出席者        参  考  人        (全国農業共済  須藤 隆平君        協会常務理事)        参  考  人        (芽室町農業共  平林 利夫君        済組合組合長)        参  考  人        (日本園芸農業        協同組合連合会  遠藤  肇君        専務理事)        参  考  人        (全国肉用牛協  内藤  進君        会専務理事)        農林水産委員会        調査室長     矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     八木  昇君 同日  辞任         補欠選任   八木  昇君     日野 市朗君     ――――――――――――― 四月十九日  流通食品への毒物の混入等防止等に関する特  別措置法案宮崎茂一君外四名提出衆法第一  八号) 同月二十三日  地域林業振興法案島田琢郎君外八名提出、衆  法第二〇号) 同月十九日  農業者年金制度拡充強化に関する請願天野光  晴君紹介)(第三四六〇号)  農業振興食糧自給力向上等に関する請願  (北口博紹介)(第三四六一号) 同月二十日  農林年金等改悪反対に関する請願(林百郎君  紹介)(第三七〇四号)  農産物輸入自由化反対等に関する請願(林百郎  君紹介)(第三七〇五号) 同月二十二日  農産物輸入自由化反対等に関する請願伊藤忠  治君紹介)(第四一三九号) 同月二十三日  畜産・養蚕経営の安定に関する請願井出一太  郎君紹介)(第四四五五号)  同(小沢貞孝紹介)(第四四五六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第四四五七号)  同(串原義直紹介)(第四四五八号)  同(塩島大君紹介)(第四四五九号)  同(清水勇紹介)(第四四六〇号)  同(田中秀征紹介)(第四四六一号)  同(中島衛紹介)(第四四六二号)  同(中村茂紹介)(第四四六三号)  同(羽田孜紹介)(第四四六四号)  同(宮下創平紹介)(第四四六五号)  同(若林正俊紹介)(第四四六六号)  治山事業拡充に関する請願井出一太郎君紹  介)(第四四六七号)  同(小沢貞孝紹介)(第四四六八号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第四四六九号)  同(串原義直紹介)(第四四七〇号)  同(塩島大君紹介)(第四四七一号)  同(清水勇紹介)(第四四七二号)  同(田中秀征紹介)(第四四七三号)  同(中島衛紹介)(第四四七四号)  同(中村茂紹介)(第四四七五号)  同(羽田孜紹介)(第四四七六号)  同(宮下創平紹介)(第四四七七号)  同(若林正俊紹介)(第四四七八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月十九日  野菜の生産振興に関する陳情書  (第三一三号)  農業制度金融に関する陳情書  (第三一四号)  農業共済制度に関する陳情書  (第三一五号)  農業者年金制度充実強化に関する陳情書外二  件(第  三一六号)  林業振興対策強化に関する陳情書  (第三一七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四八号)      ――――◇―――――
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  3. 串原義直

    串原委員 本日は農業災害補償法についての質疑でございまするけれども農災法日本農業をいかに守るかというものにほかならないわけでございます。その立場から、法案質疑に入る前に、この際、佐藤農林水産大臣に伺いたいのであります。  中曽根総理大臣がみずから政府与党対外経済対策推進本部長に就任し、去る十九日に推進本部の初会合で、貿易摩擦解消のためには「農業例外とせず、全面的な貿易措置の見直し」を指示し、それを受けて「農林水産省は今週から角道事務次官を長とする「行動計画策定委員会」を省内に設置し、農林水産品の総点検作業に着手する。この作業政府方針通り関税率、二十二品目残存輸入制限基準認証通関手続簡素化迅速化などすべての分野にわたる。」昨日の日本農業新聞はこう報道しているわけであります。  大臣は、どのような委員会をつくって作業をお進めになろうとするわけでございますか。行動計画策定作業、総点検作業に着手するというのは、具体的にはどのような作業をなさろうとするのか、この際、内容についてお示しを願いたい。
  4. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 串原先生お答えいたします。  市場アクセス改善のためのアクションプログラム策定につきましては、去る四月十九日に設置されました政府与党対外経済対策推進本部におきましてこのための策定要領決定され、これに基づきまして全省庁において事務次官を長とする策定委員会を設置することとされたところでございます。実は、農林省におきましても同要領に基づきまして昨日策定委員会を設置し、アクションプログラム策定作業に着手することとしたところでございますが、その内容等につきましては、同委員会において今後検討してまいる考えでございます。  我が国農業は、食糧安全保障国土保全等の面におきまして重要な役割を果たしております。また総理も、農業生命産業といつも言っておる、こんなこともございまして、私としては、このような重要な役割を果たしておる分野については、「原則自由、例外制限」の「例外」に該当するものとして理解を求めていく考えでございます。今後ともその考えに基づき頑張りますとともに、今後の具体的な取り扱いについては、個別に検討してまいる考えでございます。
  5. 串原義直

    串原委員 再度伺いたいわけでありますが、今大臣から行動計画策定についてお答えをいただきました。そして、大臣考え方に若干触れてくれたわけでございますが、非常に重要なところですから、私はいま一度大臣に伺いたいわけです。  今お話しのように、行動計画策定をなさるわけでありますが、問題は基本原則です。「推進本部決定では「国際化の意義を十分認識し、『原則自由、例外制限』という基本的視点に立って対応する」となっており、この場合、例外として取り扱われる制限分野に属するものは、国家の安全、環境保全国民生活維持・安全、国際的に十分説明しうるもの」の四項目というふうに報ぜられているわけでございますが、国家の安全、環境保全という立場から、今大臣も若干触れてくれたけれども農業は当然この「例外」に含まれるものである、こういうふうに私は理解をしておりますし、大臣もきちっとその立場で今後対応するというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  6. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今先生の御指摘のとおり、環境保全国民生活維持にとりまして農業は非常に大切である、重要である、そんなことから、「原則自由、例外制限」の「例外」に該当すると理解し、その理解を求めて私も頑張りたい、こう思っております。ただ、アクションプログラム策定に当たりましては、我が国農業を生かし、その健全な発展を図ることを基本にして、関係国との友好関係に留意しながら対処してまいりたい考えでございます。
  7. 串原義直

    串原委員 私が申し上げるまでもありませんけれども農業食糧国家の命であります。  実は私は、去る三月末、衆議院より派遣されまして、一行とともにアフリカのトーゴ、ロメで開催の第七十三回列国議会同盟会議出席をいたしました。続いて、飢餓に悩むエチオピアを訪問、それぞれの大臣と会見、日本より持参をいたしました援助物資等を手渡しまして激励を申し上げると同時に、あの国からの要請も聞いてまいりました。  なお、アジスアベバよりおよそ五百キロ離れましたメケレ難民キャンプを訪れまして、その惨状をこの目で確認をいたしました。安倍外務大臣訪問したキャンプ場でありまして、我が国国会議員としては初めての訪問でございました。乾き切った大地に生と死の境を生きる数万人の群衆、私は戦慄を覚えたところです。彼らに私たちは手を出しました。すると、一度に何百人のやせた子供たちが競って握手を求めて集まってきたわけです。この国との友好援助指導の緊急かつ重要性を痛感した次第であります。  そのことは別の機会に触れることにいたしますけれども、改めて確認したことは、国家にとって農業食糧がいかに重要か、さらに水は大切なものである、緑の山、森林は国の命であるということを確認した次第です。アフリカ飢餓農業の現状を、あれは他人事であるというふうに理解してはならないと私は思う。農業を軽視いたしますとき、食糧不足はいつの日にか必ず間違いなく訪れてくるであろうと私は思うのです。日本農業を守る、日本農業をこれ以上後退させないということは日本の国益です。  大臣、どこからいかなる圧力があろうとも、市場開放のいけにえに農産物を提供してはならない、この立場対策本部の中でもきちっと対処してもらいたい。改めて大臣の決意を伺います。
  8. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今、先生からアフリカの生々しい御報告を聞きまして、私も全く同感でございます。私も先生と同じ趣旨で、日本農業を守る立場で頑張りたいと思っておりますので、これから御理解と御後援を心からお願いいたします。
  9. 串原義直

    串原委員 関連して、具体的な問題でありますけれどもタイなどが求めておりますところの骨なし鶏肉関税引き下げにつきましては、諸種の都合から一部に急いで結論を出そうという動きがあるやに聞いておるのでありますが、このことについてどう考えていらっしゃいますか。
  10. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 関税問題につきましては、四月九日の対外経済対策におきまして、本年前半中に個別品目関税引き下げに係る決定を行うということになっております。したがいまして、六月末をめどにこれから検討いたすということでございます。  ただいまお話の出ました骨なし鶏肉につきましては、タイからの要請のある品目でございますが、六月の末にたまたま日・ASEANの経済閣僚会議が開かれるということにもなっておりますので、経済対策の本年前半ということとも重なり合いまして、その辺をめどにこれから検討をやっていく、こういう段階でございます。
  11. 串原義直

    串原委員 つまり、六月末をめどにイエスかノーか結論を出す、こういうことですか。
  12. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 そういうことでございます。鶏肉をめぐります国内需給事情等非常に厳しいものがございますので、実は昨年の年末にもいろいろ議論のあったところでございまして、六十年度の税制改正にはこれは含めないということで年を越したわけでございますが、引き続き強い要望があるというふうなことで、これと国内の厳しい需給事情とをどういうふうに勘案をし調和をさせていくかということをこれから検討してまいらなければいけない、こういう状況にあるわけでございます。
  13. 串原義直

    串原委員 慎重かつ日本農業を守るという立場で御検討願うことを強く要請申し上げておきたいと思います。  それでは、時間が限られておりますから、農業災害補償法改正問題について質疑をすることにいたします。  法改正によりまして農家ごと被害状況に応じた共済掛金率設定できるようにするというのでありますが、合併等によって共済組合地域が広くなっておることもございまして、具体的にこのことはどう取り扱うのでございましょうか。例えば個々農家ごと考えていくのか、あるいは集落ごとにもこれを取り扱っていくのか、合併前の地域掛金率を決めてもよいということなのか等々、設定方式はいろいろと考えられます。この点についてまず伺いたいのであります。
  14. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 危険段階別掛金率設定につきましては、私ども固定的、画一的な指導をいたすということは考えておりませんで、地域の実情に応じたいろいろな弾力的な対応が可能な道を開きたいということで御提案申し上げているわけでございます。  掛金率設定単位というようなことにつきまして法律上は特段定めを置いてないわけでございますが、私ども運用上は、まず資料のとり方としまして、組合員等ごとの過去の一定年間金額被害率と申しますか、共済金額で過去の支払い共済金を割ったものでございますが、この被害率平均を使用して危険段階を決めて区分をしていく、それから地域なり集落等ごとの過去一定年間金額被害率平均を使う、そしてまた組合員等ごとの過去の一定年間共済金支払い頻度と申しますか、裏返せば無事故年数というようなものを手がかりにしてグループ分けをしていく、農家グループごとまたは集落グループごとに行うことを考えているわけでございます。必要がありますれば、旧組合地域あるいは旧地域料率地域ごと危険段階別掛金率定めることもできるようにしたいというふうに考えております。
  15. 串原義直

    串原委員 つまり、言うならばその組合考え方によってどちらをとってもよろしい。今いろいろな方法を御説山いただきましたが、従来の方法に加えて今お答えになったようなことを加えでもよろしい、つまり組合ごと考え方によって共済掛金率設定することができる、組合考え方である、こういう理解でいいわけですね。
  16. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私ども一定基準はお示ししたいと思っております。例えば実際の被害率格差以上に掛金率の差を非常に大きくつけるというようなことはやはり好ましくないわけでございますから、過去の被害率なり無事故年数に応じた適切な幅で例えば刻みをつけてください、そしてまた、過去の金額被害率なり無事故年数というものを手がかり設定するのが望ましいというような指導は申し上げますけれども、それを個人単位グループでやるか集落単位でやるかあるいは地域単位でやるか、そしてこの刻み方などについてもできるだけ組合等自主性を尊重して運用をしていきたいと思っております。
  17. 串原義直

    串原委員 危険段階別共済掛金率設定される場合、農家ごと国庫負担率というのは従来と変わらないのでしょう。
  18. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 共済掛金国庫負担につきましては、危険段階ごと基準共済掛金率に対しまして組合等に適用されます国庫負担割合、すなわち組合等基準共済掛金率に対応する組合等に適用されます国庫負担割合を適用して行うことにしたいと思っております。したがいまして、個々農家に適用する国庫負担割合は従来と変わらない、そういうふうにいたしたいと思っております。  個別に国庫負担を変えるということは、隣近所を見回して国庫負担率が違うというのはいいかどうかという議論もございますし、事務的にも非常に煩瑣になります。それから、過去の地域料率などにつきましてもこういった扱いをしているということもございますので、組合単位国庫負担率で適用をいたしたいと思っております。
  19. 串原義直

    串原委員 今お答えの中にもありましたが、共済掛金率設定区分、これは組合自主性という話もありましたけれども農林省士してはどの程度段階考えていらっしゃいますか。
  20. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 組合員等間の被害率格差程度でございますとか、その組合等の中におきます農家間あるいは地域間の不公平感がどの程度かというようなこと、あるいはまた組合等の区域の広い狭い、共済事業種類あるいはまた共済目的種類等によりまして実態はさまざまでございますので、危険段階設定区分の数を一律に今定めるということは私ども考えておりませんで、できるだけ組合等が今申し上げましたような要素を十分勘案して、要は不公平感のないように、また同時に、余り細かく分けますと相互扶助共済ということからしていかがかというようなことも出てまいるわけでございますので、実態に即して定めるようにする考えでございます。  私どもそういう意味で、一概には申し上げにくいと思いますが、個人に着目しましてグループ分けするということを考えました場合には、最小限は二段階ということでございますが、多くても五段階ぐらい、二ないし五段階ぐらいが常識的ではなかろうかと一応考えておりますが、画一的な指導ということを考えているわけではないということは重ねて申し上げたいと思います。
  21. 串原義直

    串原委員 農林省考え方はわかりましたが、これは大事なところだから伺っておきますけれども、仮に五段階にした場合に、新規加入者掛金率というのはどの辺を適用することが理想とお考えですか。
  22. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この点は、私どももいろいろ中でも議論したわけでございますが、法律上は特段定めは置いていないわけでございますが、ケースとしては二つあるのではなかろうかと思っております。  一つは、農家ごとにグルーピングをいたしまして農家ごと平均被害率とか無事故年数危険段階を分けるという場合については、新規加入の方の場合は特別の危険段階を設けまして、組合等基準共済掛金率つまり組合平均の率のところを適用する、そして共済事業実績を見た上でしかるべきグループに後ほど位置づけていく、そういうやり方が適当ではないかと思っております。  ただ、集落等地域単位にグルーピングいたしまして地域ごと平均被害率によります場合は、その農家の所在します集落なり地域に適用されている危険段階掛金率を適用いたしますことが、集落ごと掛金率設定をしておる場合には適当ではないかということで、集落ごとあるいは地域ごと設定をする場合と個人で分けてグループ分けする場合で扱いを違えた方がよろしいのではないかと考えております。
  23. 串原義直

    串原委員 そこで、農業共済相互扶助であることは論をまたないところでありますけれどもお話し掛金率設定方式を導入した場合に、農家個々の間で微妙な対立や集落組織の分断ということにならないのかどうか、お考えを伺います。
  24. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私ども、この制度を御提案申し上げます場合にいろいろ中で検討いたしまして、先ほど来申し上げているような考え方で運営してまいりたいと思っておりますので、そのような御心配はないと考えております。  もう一度申しますと、この方式を導入するか否か、あるいはまた危険段階の数を幾らにするか、それから、どの程度掛金率刻みをつけるかということ等々、一定基準なり枠の中で組合員等の意思を十分に反映した形で組合等に自主的に決めていただくということで、私どもの方から強制的な実施なり画一的な実施考えていないという点がまず第一でございます。  それから第二には、危険段階区分も、農家グループごとだけではなくて、集落グループごとあるいは地域ごとということでもやれるとなっておりますので、同一集落の中では全農家が同じ掛金率になるような危険段階設定の仕方ということもできるといたしておりますし、また、こういう危険段階別掛金率設定するに当たりましては都道府県知事認可にかかわらしめるということで、地域実態をよく御存じの知事認可の過程で行き過ぎなども起きないように適切な指導もしていただくというような仕組みも取り込んでおりますので、そのような御心配はないと思いますし、また、ただいま御質問の中にありましたような御心配が実際のものにならないように私どもも気をつけてまいりたいと思っております。
  25. 串原義直

    串原委員 無事戻し方式の方が農家に歓迎されるのではないか、こういう意見も強くあるわけでございますが、今回の法改正に当たってこの点についても検討されたと思うが、その辺の経緯、考え方をお示し願いたい。
  26. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 危険段階別料率設定というのは、過去の被害率実績に応じまして掛金率について差をつけるということでございまして、無事戻しと申しますのは共済事業の運営の結果生じました剰余金、これはいわば過去の実際に保険を設計いたしました場合に見込みました被害率に比べまして実際に生じた被害が少なかったということによって生じました剰余を、いわば掛け捨てというようなことに対します不満に対応するために、事故の少なかった、あるいは掛金を納めてごくわずかな組合からの給付しかもらわなかったというような農家にお払いをするということでございまして、掛金の問題と自後の剰余の処分としての無事戻しというのは一応仕組みとしては別のものと考えております。そういう意味で、無事戻しにつきまして、今度危険段階別料率設定の道を開くために無事戻しの仕組みそのものを変えるというようなことを今私ども考えているわけではございません。両々相まってよろしいのではないかと思っております。
  27. 串原義直

    串原委員 そういたしますと、この制度への移行が可能な組合は今のところどの程度あるのか、その辺御答弁を願いたいじ、制度改正に沿ってこの制度実施しようとする組合に対して農林水産省はどのような指導をする考えでございますか。
  28. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 危険段階別掛金設定の道を開いた場合にどの程度組合等で導入されるかということは、私ども県ごとにあるいは組合ごとに希望をとるというような作業をやっておりませんので数字として把握はいたしておりませんけれども組合合併によりましてかなり広域化いたしました組合が出ておりますし、そういう中で事務機械化も進んでこういった段階別掛金率の導入のための事務体制も整ってきているというようなこともございますし、また、農業事情の変化の著しい地域気象条件が悪いと農家間の収量の差が目立ってきているというような地域もございますので、そういったところを中心に導入されるであろうと思っております。  また、地域料率とか果樹共済無事故割引というようなものもこの仕組みに導入いたすことになっておりますが、地域料率設定している組合というのはかなりの数、半分近くの数に上っておりますし、それから果樹共済無事故割引制度も六%ぐらい導入しておりますので、こういったものは今度のこの危険段階別掛金設定方式の中に包摂されてまいる、その上に新規のものが先ほど申しましたような地域でどの程度上乗せになってくるかということではなかろうかと思っております。  それからまた、指導につきましては、先ほど申し上げましたように一つ基準なり考え方をお示しはいたしますが、画一的な指導はいたさないつもりにいたしております。
  29. 串原義直

    串原委員 では次に、農作物共済国庫負担について伺いますが、現行制度では水稲平均五九%を改正後は五四%、つまり五%減らして、また、陸稲平均七〇%を六〇%に、つまり一〇%減らす、それから、泰平均六八%を六〇%に減額するというのでありますが、これによって農家負担は相当額ふえることになるだろうと思う。どの程度ふえることになるのか、作物別に示してもらいたい。
  30. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 共済掛金国庫負担改正に伴います農家負担の増加額は、米麦合わせまして約五十七億円というふうに見込んでおります。その内訳は、水稲が四十二億円、陸稲が約一億円、麦が約十四億円という内訳でございます。  なお、料率の改定が水稲、陸稲につきましては六十年度に、それから麦につきましては六十一年度に行われるわけでございますが、全体としては掛金が低下をいたしますので、今回の料率改定によりまして水稲では十八億円の減、麦では五億円の減が見込まれますので、掛金率の改定を勘案をいたしますと、農家負担のいわばネットの増は水稲で二十四億円、陸稲で約一億円、麦で約九億円と、合わせて差し引き約三十四億円の農家負担増になるという見込みを試算をいたしておるところでございます。
  31. 串原義直

    串原委員 そういたしますと、これは極論かもしれませんよ、極論かもしれませんけれども、農林予算を五十七億円減額をする、結論農家負担三十数億円増加ということになるわけでございますが、つまり農林予算五十七億円捻出のためにこの国庫負担の削減をやった、こういうことですか。
  32. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この掛金国庫負担の問題につきましてはいろいろな議論、検討を行ったわけでございます。もちろん現在の厳しい財政状況、その中で共済掛金国庫負担金額につきましては共済金額そのものが上昇するに伴いまして当然増的に増加をしてくるということで、近年の厳しい財政状況の中で農林水産省の各種の施策をその一定の財源の中で施策別にどう割り振っていくかというようなことについての議論があったということは、これは事実でございます。それと全く関係がないと申せばこれはうそになると思います。  しかし、同時にこの掛金国庫負担につきましては、適地適産の推進という農業政策との整合性という点から見てもいかがかという議論一つあったわけでございます。かつてのように、米の需給が非常に逼迫をしている、そういう中で、限界地でもぜひ米の生産をいろいろな形でてこ入れをしていかなければいけないというような時代に比べますと、現在は五十七万ヘクタールもの生産の調整を行い、そして適地適産を進めている。適地適産と申します場合に、掛金国庫負担が高いところの高掛金率地域、これは被害を頻度なり深さにおいてかなり多く受けている地域でございますが、そういうところが果たして適地がどうか、少なくともそういった適地適産の観点からすれば、超過累進負担ということではなくて、共済制度国庫負担としては一律に、例えば五〇なら五〇ということで国庫負担をするのが、適地適産の推進という点からいって、共済制度が中立性を保つためにはその方が適当ではないかというような議論があったわけでございます。  これにつきましては、私ども農業災害発生の特殊性ということもございますし、適地適産という場合に被害の率だけということでいいかどうか、米の品質の問題もありあるいはまた米の生産コストというようなことも考えなければいけないというようなことから、超過累進制は何とか守りたいということで対応をしてまいりました。ただ、他の各種の公的な保険とか共済制度、これは三十数%から四十数%、一番高いものでも五〇%が大体限度でございます。そういった他の公的な保険制度と比較して農業災害補償制度の場合は国庫負担水準が非常に高いということもございまして、最終結論として、御提案申し上げておりますように、超過累進制は残すけれどもその最高の率を一〇%圧縮をするという結論に落ちついたわけでございます。
  33. 串原義直

    串原委員 今、局長から経緯をお話しがあり、考え方を述べられたわけでありますが、ここでその議論を深くしようと思いませんけれども、しかし、私はどう判断しても、いろいろな考え方はあるであろうけれども、結局のところ財政主導型、財政軽減、これが主導になってこの国庫負担軽減になっていった、こう考えざるを得ないわけです。  そこで、従来超過累進制の区分は一%刻みであったものを今回二%刻みといたしました。この農林省の方針は逆ではないかとすら私は思っているわけです。ある人に言わせると、これは改悪であるという意見でもございました。超過累進制の区分の圧縮も、結局のところ国庫負担の縮減ということがねらいなのではないか、どうしてこういうことにしたのか、その理由を教えてください。
  34. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 刻みのつけ方につきましては、従来の制度というものを下敷きにいたしまして、その段階刻み平均的に割っていくという考え方で、これはある程度地域間の公平ということも考えまして設定をいたしたわけでございます。  財政主導ではないかということでございますが、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますけれども、今日の厳しい財政状況と全く無縁に検討し結論を出したと言えばうそになると思いますけれども、私どもそういったことだけではなくて、農業災害補償制度農林水産省の各種の施策の中で適切に位置づけ、そしてまた、これを着実に発展をさせていくという基本を踏まえて超過累進制も残すということで対応をいたしたつもりでございますし、半面におきまして、今回御提案を申し上げておりますような肉牛の生産共済でございますとか各種の改善によりまして、改善充実の面で約十億円程度の新しい財政負担を要する改善もあわせて決定を財政当局との間で行いまして、実施を予定をしているわけでございます。何が何でもとにかく財政負担を減らすという観点のみに立った検討なり結論を出したということではないということにつきまして御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  35. 串原義直

    串原委員 私ここで大臣考え方を伺いたいわけですが、今局長から御答弁がありました。この経緯についての状況、お話がありました。しかし、今局長さんは十億円ほどの新しい事業をやりますというような説明があった、これは当然のことでしょう。いいことはやらなければいかぬ、当然のことでしょう。したがって、大臣基本的な考え方として伺いたいわけでありますけれども、どうも聞いていて、わずかという表現はどうかと思うけれども、私に言わせるならばわずか五十七億円の財政負担軽減のためにこの方法をとった、こういうことが関係者から不評を買って、ひいてはこの共済制度改正が、農作物共済だけではなくて農業共済制度全体に及ぼす好ましくない影響、農民の信頼感の喪失ということにつながらないのかどうか、大臣はどうお考えですか。
  36. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  先ほど局長の言ったとおりでございまして、率直に言いますと、財政の厳しさが影響を与えないかどうかというとなかなか難しいものだと思いますが、農作物共済共済掛金国庫負担は、先生御存じのことでございますが、超過累進方式をとっておる、そんなことがございまして、今度の国庫負担の合理化というのは、適地適産の推進等最近における農業事情を考慮し、また財政負担の効率化を図りつつ、制度の健全な運営を確保する見地から、国庫負担の上限をそれぞれ一〇%引き下げる等の措置を講ずることとしたわけでございます。  そんなことでございまして、今回の改正によりましては農家負担掛金がその分だけ上昇することは事実でございますが、掛金国庫負担については超過累進制という考え方維持しているところであり、本制度の揺るぎない運営を確保できる、こんなように実は考えているわけでございます。
  37. 串原義直

    串原委員 時間の関係もありますから次に進みますが、家畜共済についてであります。  肉牛の子牛共済の新設につきましては私は評価申し上げたいと思いますけれども、乳牛の子牛制度というのは必要ないのかどうか、どう考えていらっしゃいますか。
  38. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 乳牛の子牛につきましては、子牛の事故に際して農家のこうむります損害の程度も、搾乳収入が得られることもありまして肉牛の場合ほど決定的でないということなどから、乳牛の子牛に係る事故につきましては、従来保険需要も比較的少なかったということがございまして、今回の制度検討の対象とはいたしておりません。  例えば、畜産物生産費の調査を農林水産省でやっておりますが、これで繁殖雌和牛の経営と搾乳牛の経営で一頭当たりの粗収益を見ますと、繁殖雌和牛の場合は一頭当たりの粗収益が三十一万円で、そのうち子牛の収入が二十六万円。搾乳牛の場合は一頭当たりの粗収益が六十二万四千円で、子牛の収入は三万七千円、牛乳の収入が五十六万四千円ということでございますので、この辺が、やはり要望の強さということが、和牛の場合、肉用牛の場合と違っておるというふうに私ども認識をしております。  また、乳牛の子牛につきまして共済制度化するということを考えました場合に、乳牛の子牛の場合は、出生後間もなく出荷をされるものとか、そのまま一定期間哺育育成されるもの、いろいろ飼養形態が区々でございまして、これを反映しまして被害率格差も非常に大きいというようなことから、肉牛の子牛の場合と実態がかなり違っておりますので、制度として仕組みます難しさもまたいろいろあるということでございます。今後におきましても、この乳牛の子牛共済制度化の是非につきましては、やはり農家の保険需要なり被害実態等を見きわめながら判断をする必要があるというふうに考えております。
  39. 串原義直

    串原委員 家畜共済国庫負担率は、乳牛、肉牛は五〇%、豚は四〇%になっております。どうして豚だけ四〇%なのか。この国庫負担率改正の経過も若干あったようでありますが、この経過を含めてこの際お答えを願います。
  40. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 家畜共済掛金国庫負担につきましては、制度発足以来いろいろ改善が重ねられているわけでございますが、牛馬につきましては、当初、死亡、廃用のみを掛金国庫負担の対象としておりましたけれども、その後、疾病、傷害に係る掛金につきましても国庫負担の対象にするということにいたしまして、掛金国庫負担割合につきましても五十一年には現行の二分の一になったということでございますが、豚につきましては、種豚が四十六年から、肉豚が五十一年から掛金国庫負担の対象になりまして、掛金国庫負担割合につきましても、種豚につきましては五十一年から、肉豚につきましては五十五年に、三分の一から五分の二ということで改善をしてまいってきているということでございます。  豚につきましては、大家畜に比べまして国庫負担がおくれてスタートしたというような経過が一つ背景にございますが、どういう算定基礎で国庫負担割合を四割にしたのか、それよりも上でもなく下でもないというふうな算出根拠を示せということをもしお尋ねでございますと、正直申しましてなかなかお答えに窮する面もあるわけでございますけれども、保険需要の強さなり、そしてまた個体としての資産価値といった点での違いがあるというようなこともございまして、過去の経過から、五年ほど前に現在のように四割に引き上げたということで今日に至っているという経緯でございます。
  41. 串原義直

    串原委員 今経過等についても御説明をいただきましたが、確かに豚の共済制度のスタートがおくれていたことも私も承知をいたしております。と同時に、牛も大切な家畜でありますが、豚も大衆肉として非常に重要な役割を果たしていることは御承知のとおりです。庶民は豚肉の消費が最も多い、こう私は思っています。  その立場で申し上げますならば、今日家畜共済という立場考える場合に、その養豚だけを共済制度で一〇%の格差国庫負担の場合いつまでもつけておる、これはいかがかというふうに私は思うわけでございます。直ちに乳牛、肉牛と同じように国庫負担率を五〇%にすべきだ、私はそう思う。法改正の機会でありますから、今回の法改正の際になぜこの点を加えなかったのか。いいチャンスじゃなかったのじゃないですか。  先ほど申し上げましたように、片方では国庫負担を減らす。減らすことには熱心だけれども、こういう国庫負担率を牛と同じように並べていくという善政ですね、いい方向についてはちょっと目をつぶるという方向、まことに承知できない。どうなんですか。
  42. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この豚の掛金国庫負担の割合につきましては、先ほど申し上げましたように、肉豚につきまして五十五年に引き上げが行われて四〇%になっているということでございますが、確かにこの割合をさらに引き上げて五割にしてほしいという要望があるということは私どもも承知をいたしておりますけれども、今次の制度の見直し、改正におきましては、やはり他の改善要望事項との優先度というようなこともいろいろ検討いたしまして、厳しい財政事情のもとでのいろいろな検討をいたしました結果、見送りということにならざるを得なかったということでございます。
  43. 串原義直

    串原委員 農林大臣、それでは大臣からひとつお答えを願います。  今、局長から話がありましたが、今度の法改正の中で、優先度等も考え、それから財政的な面もこれあり、豚の国庫負担率をというところまでいかなかった、こういう話であります。その経過を踏まえて大臣に改めて伺うわけでありますけれども、私は、これはよろしくない、牛と豚の差をいつまでも設けておくことはよくない。極論をするならば、共済制度の充実ということよりも、今回の法改正がやはり財政の立場から改正重点になっていった、こう言われても言いわけはできないと受け取れるわけですね。したがいまして、今回の法改正で間に合わなかったわけですから、今回はうまくいかなかったという局長の答弁に裏づけするように、できるだけ早くこれは牛と横並び国庫負担率改正すべきだ。ひとつ大臣の所信を伺っておきたい。
  44. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたしますが、実は局長が正直な話を先生にしておるわけでございます。というのは、先ほど、厳しい財政事情のもとでは、困難が大きく、また他の改善要望事項との優先度についても種々検討した結果見送らざるを得なかった次第であります、こう言っているのはそのとおりでございまして、したがって、この問題につきましては将来の検討課題として承らせていただきたいと思っております。
  45. 串原義直

    串原委員 いや、検討課題としてはやるべきです。これは当然のことですよ、大臣。将来の検討といったって、五年も将来、十年も将来、これはできるだけ早くやるべきである。可及的速やかにやるべきである。これは二年も三年も向こうへほってはいけない、こう思う。どうですか、大臣
  46. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  御趣旨を体して将来の検討課題にいたしたい、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  47. 串原義直

    串原委員 それでは、少なくとも一年ほどの間に結論を出していくという方向で汗を出してもらいたい。強く要請をしておきたいと思います。  それでは次に、水稲共済の当然加入基準の引き上げについて伺います。  米は日本農業の基幹作目であり国民の主食でありますことから、一定規模以上の水稲耕作者は当然加入となっておりまして、具体的には都道府県知事定めることになっておるのでありますが、今回、十アールから三十アールになっておりますものを二十アールから四十アールに引き上げるということになりました。二十アール以下に該当する面積、農家戸数はどのくらいあるわけですか。
  48. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 昭和五十九年産の水稲の都道府県の——北海道は基準が別でございますので、都府県につきまして引き受けの実態を見てみますと、引受面積が二十アール未満である農家戸数というのは七十万八千戸、全引受戸数の二一%でございます。引受面積では九万四千ヘクタール、引受面積全体の約五%ということになっております。  ただ、これらの農家のうち約九割は現在既に任意加入として加入をしている農家でございまして、今回の当然加入基準の引き上げによりまして、すなわち二十アールに引き上げることによりまして新たに任意加入になるのは、戸数では六万三千戸、全引受戸数の一・九%、引受面積で申しますと一万一千ヘクタール、引受面積全体の〇・六%というふうに見込まれるわけでございます。
  49. 串原義直

    串原委員 二十アール以下を任意加入にしようとしましたその理由は何ですか。
  50. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 これは、近年の兼業化の進展等農業事情の変化の中におきまして、農業収入に依存するところが少なく、また自家消費米の生産が主体であるというふうに見られます二十アール未満程度の規模の農家につきましては、生産性の高い農業経営を育成するという農政の基本方向にもかんがみまして、こうした農家についてまで当然加入の対象とするという政策上の意義は乏しくなっているというふうに考えられますことから、当然加入基準の緩和を図ることにいたしたものでございます。
  51. 串原義直

    串原委員 この任意加入となった場合に私とても心配することは、恐らく二十アール以下の耕作者は加入しないのじゃないかと思うのです。その場合に、規模の小さな農家の多い山村地帯の農業共済組合共済制度の存立にかかわるということも憂慮しなければならぬ、この辺はどう考えておりますか。
  52. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 当然加入基準の引き上げに伴いまして、当然加入から任意加入に制度として移行をした農家が加入しなくなるのではないかということでございますが、過去に十ないし三十アールという政令の規定のもとで、例えば十アールから十五アールにある組合の当然加入基準が引き上げられたという場合に、任意加入として残った農家がどのくらいあったか、そしてまた脱落した農家がどれだけあったかというようなことにつきましては、全体的な統計をとっているわけではございませんけれども、ごくわずかの減少にとどまった例から、大きいところでございますと一〇ないし一五%程度脱落したという例、いろいろございますけれども、大部分はやはり任意加入農家として残られるということが今までの大体の結果ではなかったかと私ども思っております。  加入基準の引き上げによりまして任意加入となる農家が相当数増加すると、作付規模の小さい農家が多いという地域におきましては、まず組合等の加入推進努力が必要であると考えております。これだけの国庫負担もやっておるわけでございますので、必ず加入をしていただいた方が農家のためには役に立つ制度仕組みになっているというふうに私ども考えておりますし、そういう努力を組合等にもお願いをしたいと思っておりますが、それでもなお加入者が減少することが懸念されるような地域につきましては、これは当然加入基準の引き上げのあるなしにかかわらず、やはり組織基盤がいろいろな意味で弱いというようなところが多いと思いますので、そういうところにおきましては組織整備等を強力に推進をして、事業基盤の整備強化を図るということを通じて共済事業の円滑かつ効率的な運営を図ることにいたしたいと考えているわけでございます。
  53. 串原義直

    串原委員 これは大臣からお答え願いたい。  今回の改正の中でも当然加入農家と任意加入農家との共済掛金国庫負担に差は設けないということでありますが、これは将来ともに差をつけてはいけないと私は思っている。どうですか、大臣
  54. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  今回の当然加入基準の引き上げの趣旨は、先生御存じのことでございますが、農業収入に依存するところが少なく、また自家消費米の生産が主体であると見られる二十アール未満程度の規模の農家について当然加入基準の緩和を図ったものでございます。  そんなことで、当然加入農家と任意加入農家とで共済掛金国庫負担に差をつけることについては、農家相互扶助に立脚する農業災害補償制度になじまないこと、また、加入農家戸数の大幅な減少により危険分散や集落組織を基礎とする共済事業の運営が困難となるおそれがあること等、種々問題が多いので、現在のところ差をつける考えはございません。
  55. 串原義直

    串原委員 時間が来ましたので、果樹問題について三点伺いますからお答えください。  果樹共済でありますけれども、今回の特定危険方式の補償水準の引き上げは共済金額の引き上げとなるのでございましょうけれども、その結果、掛金額の増額をもたらすものと考えます。どの程度ふえることになるでございましょうか。これが一点。  第二点は、今、果樹共済の加入率はとても低いわけです。とりわけリンゴ、ナシなどの加入率は低い。今回の補償水準の引き上げで果樹農家の加入促進をどの程度図ることができるとお考えですか。  第三点は、リンゴ、ナシ等の果樹は、永年作物であることは当然でありますけれども、それだけに果樹専業農家共済にはできるだけ全加入が望ましいと私は思っています。そのための今後の施策、加入促進を図ってまいりますための今後の方針について伺いたいのでございます。
  56. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 三点お尋ねがございました。  一つは、補償水準の上限の引き上げによりまして掛金負担が上昇するのではないかということでございますが、今回の改正に伴いまして、最高の付保割合を選択いたしました農家については、共済掛金率一定といたしました場合には掛金が増加することになるのは当然でございまして、その増加率は七分の一程度、一四%程度でございます。ただ、今回付保割合を引き上げますのは、掛金率がかなり低い特定危険方式に限定をいたしております。例えばリンゴを例にとりますと、全相殺方式で、今、共済掛金率が六・八%でございまして、半相殺の減収総合方式で六・八四四%でございます。特定危険方式は二・四二四%ということで、もとの掛金率がかなり低い特定危険方式に限定をいたしておりますので、増加額もそれほど大きいものにはならないと考えております。  また、これは付保限度を引き上げましても、農家の選択の幅を広げるということでございまして、付保割合の引き上げを農家に強制するということではございません。したがいまして、農家負担掛金についても農家の意思に反して引き上げることにはならないわけでございます。掛金率を見ながら選択をしていただくことになるわけでございます。  それから、加入促進効果ということでございますが、確かに現在、加入率が低迷をしておるわけでございますが、今回の共済責任期間の短縮でございますとかあるいはまた危険段階別掛金設定方式というようなことも含めました果樹関係につきましての改正によりまして、専業的果樹農家を中心にしましてかなりの程度の加入促進効果はあるのではないかと考えております。現在二〇%台でございますので、一挙にこれが飛躍的に高まるのはなかなか難しいと思いますが、私ども一方で、第三番目のお尋ねにございました加入促進につきましていろいろ努力をいたしております。そういった努力とあわせまして、お話しのように果樹農家が災害補償制度のもとでできるだけ安定した経営が営めるように努力をしてまいりたいと思っております。
  57. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたから、これで終わります。
  58. 今井勇

    今井委員長 次に、細谷昭雄君。
  59. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、主として水稲共済の部面について当局のお考えをお伺いしたいと思っております。  第一に、水稲共済料率改定についてでございますが、水稲の料率改定によって大変私たち心配しておりますのは、特に北海道、東北の場合、去年まで四年連続の冷害による不作が続いたわけでございます。農家負担であります掛金が当然上昇するのではないかと思いますが、どの程度アップするのかをまずお伺いしたいと思います。
  60. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農作物共済料率につきましては、組合等ごとの過去二十年間の被害実績によりまして三年ごとに計算をするというルールになっておりまして、最近年次に被害の多発いたしました地帯、特に五十六年から五十八年産の水稲についての被害が甚大で多額の共済金が支払われました北海道それから東北の一部の県、特に青森、岩手、宮城でございますが、そういうところにおきましては被害実績料率算定の基礎に今度新しく入ってまいりますので、改定料率が旧料率に比べて上昇いたすことになるわけでございます。十アール当たりで申しますと、北海道の場合、旧料率三千三百五十円が改定料率では三千八百六十円というような数字になっておりますし、岩手県を例にとりますと、十アール当たりで二千十円が二千四百五十円というような料率の変化になるわけでございます。  農業災害補償制度が、農業者がこうむります経済上の損失を合理的に補てんをするということで保険の手法をとっております以上は、被害実績料率改定の際に算入されて農家負担掛金が上昇する組合等が出ましても、これは保険の手法をとっております以上はやむを得ないものと考えておるわけでございます。  例えば北海道を例にとりますと、二月当たりで見ますと旧料率が十一万二千円ほどでございますが、改定料率で十二万九千円というようなことに増加をいたしますけれども、過去、昭和五十六年産から五十八年産の平均で申しますと、被害農家二戸当たりの三年平均共済金の支払い額は六十九万五千円程度になっているわけでございまして、掛金負担が増加いたしますことにつきましては農家の方々にそれだけの負担をお願いするわけでございますが、過去のそういった共済金支払いの実績ということもございますので御理解を願いたいと思っておるわけでございます。
  61. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 今、局長からお話がありましたとおり、特に北海道なんかは甚大な被害を受けたわけであります。したがって、改定料率は旧料率から大体一五・二%の増、そして制度改正後は二二・五%も上がることになるわけであります。同様に、青森、岩手、宮城、これがいずれも一〇%から一八・四%というふうに改定後の料率が上がることになるわけでありますので、非常に農家負担がふえるのではないかと心配をしているわけであります。  そこでお尋ねするのですが、過去の歴史からしましてもなかったという連続四年間という冷害でございます。したがいまして、このような異常中の異常気象というものを平年度化することに対しては、やはり農業共済、こういう農業災害という点からしましても大変論理的にも矛盾があるのじゃないか。そして現実的にはこのように料率が二〇%以上高くなる、それを平年度化するということになりますから、これは私はどうしても問題があると考えるのですが、そこら辺の考え方、そして対策、こういったものをお伺いしたいと思うのです。
  62. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 これは、農業災害補償制度農業者がこうむります不慮の事故を保険の手法で補てんしようというものでございますので、保険の理論からいたしますれば、過去の組合等ごとの被害率を反映いたしまして組合等ごとの掛金率を算定せざるを得ないわけでございます。したがいまして、保険設計の基礎になっております被害率の算定対象年次から特定の年次の災害を除外して料率を算定するということはできないわけでございます。  もし災害の年のそういう被害率を除くというようなことになりますと、それでは今度は算定基礎のところから豊作の年も除くべきだというふうな議論にも相なってまいりますし、今回は新しく五十六、七、八の三年間の実績が入ってまいるわけでございますけれども、次の改定時期には今度は五十九年産の大豊作の影響も入ってくる。いずれにしましても、過去二十年間というかなり長期の平均的な被害率というのをとるんだということでございまして、そのときどきの直近年に新しく入ってまいります年の豊凶ということに応じましてそれを除く、除かないということを議論するのではなくて、二十年間の長期の平均をとる、それによって保険を設計するということにならざるを得ないわけでございます。
  63. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、今局長のそういう豊作の場合もあるんだという考え方はある程度理解できるわけですけれども、ただ、火災共済なんかと違う点は、どうしてもこれは自然災害だという点でございます。火災の頻発する地域、これはあくまでも人災が多いわけでありまして、その個人、その地域が消防体制なり何なりという点でこれは十分注意する、その人為的に注意するということないしは予防ということで大分いいわけですけれども、冷害というものはなかなかそういうふうな割り切り方で済まぬのじゃないか。もちろん豊作もあるんだから平年度化するということなんですが、二十年間という大変長期にわたるところのこれは問題でありますので、その点、緩和措置というのを当然考えていいんじゃないかというふうに私は考えるわけであります。  その点で、御答弁要りませんけれども、大変に負担が高くなる、しかもそれは自分たちの最大の防御をしてもなおかつ災害を受けるという問題でありますので、この点、今後の料率改定をする場合には十分考慮をしていただきたい、こういうふうに要望しておきたいと思うわけであります。  第二の点は、共済掛金国庫負担方式の合理化の問題でございます。今回の措置によって、具体的には農家の負担の掛金というのはどの程度負担増になるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  64. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農作物共済掛金国庫負担改正に伴います農家負担の増加額は、水稲についてのお尋ねということのようでございますので水稲について申しますと、約四十二億円というふうに見込まれるわけでございます。料率の改定が水稲につきまして六十年度に行われるわけでございますが、この料率の改定で全体としては掛金率が低下をいたしますことから、全体としては十八億円の農家負担の減が見込まれますので、六十年度に掛金率の改定が行われるということも勘案をいたしますと、差し引きでは農家負担増は二十四億円ということになるわけでございます。  これを水稲につきまして農家二戸当たり全国平均して試算してみますと、料率改定で五百三十円の低下になりますが、制度改正によりまして千二百五十円増加をするということに相なります。十アール当たりの水稲の全国平均では料率改定で九十円の低下になりますが、制度改正によって二百円ほど増加をするということになるというふうに見ております。
  65. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この国庫負担金の合理化というものは一体どういう背景で出てきたのか、これをひとつお伺いしたいと思うのですが、どうも共済組合そのものの財政が云々ということよりも、全体としてはいわゆる財政当局なりないしは臨調方面からの要求が具体的にあったというふうに聞いておるわけであります。この農業共済に対する財政当局の要求というものは一体どういうものであったのか、そしてその対応というものを多少具体的に説明願えないかというふうに思うわけであります。
  66. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 予算編成でございますとかいろいろな制度改正の行政府内部の検討なり折衝の経緯をどこまでお話し申し上げるべきかという問題はあろうかと思いますけれども、いろいろ新聞などにも出ておりますので、お尋ねでございますから申し上げてみたいと思います。  もちろん、財政当局あるいはまた一般的に臨時行政調査会の答申の中でも高率補助の見直しというようなことが言われているわけでございますが、共済掛金国庫負担率につきましては、そういった一般的な問題のほかに、共済制度のあり方というふうな点から見まして、適地適産という観点からいたしますと、被害率の高い地域により手厚く国庫負担する方式というのは問題ではないか、共済制度というのは、そういう適地適産というような観点からすればもっと中立的に、超過累進ではなくて一律の国庫負担にすべきではないか、また、各種の公的な保険制度国庫負担割合に比べまして農作物共済国庫負担割合というのは飛び抜けて高い負担水準になっているのは問題ではないか、また、確かに災害対策としての公的救済の側面は持っているけれども農業用施設でございますとかいろいろな公共土木的な災害復旧の場合の国庫負担と違いまして、個人掛金率に対して五〇%以上の補助を続けているのは、他のいろいろな制度と比較してもバランスを失するのではないかというようなことで、五〇%程度の、超過累進制をなくした一律の国庫負担という考え方に改めるべきではないかというような議論があったわけでございます。     〔委員長退席、衛藤委員長代理着席〕  しかしながら、私ども農林水産省といたしましては、米麦は農業経営の何と申しましても基幹でございますし国民の基本的な食糧である、そしてまた、農業災害発生のいろいろな特殊性というようなことも十分考慮に入れてこの災害対策の基本であります農業災害補償制度考えていかなければいけない、そういう見地に立ちまして、超過累進制という考え方はあくまでも維持する、その中で国庫負担割合につきまして超過累進の最高の国庫負担割合を一律に一〇%引き下げるということで最終的な結論を得たというのが経過でございます。
  67. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 財政当局は、この共済掛金国庫負担割合の改定というものを少なくとも一律五〇%ということの要求をしてきた。現在平均五九%、この法律が通ったと仮定すると結局五四%ということになりますので、財政当局の五〇%に対して農林当局は五四%のところまで押し返した、こういうことでありますので、これは大変努力をしたということを多とするわけであります。しかし問題は、共済組合の独自的な理由からこのように国庫負担を減らしたのではなくて、全体としての国家財政という見地から減らされた、そこを私たちは非常に残念に思うわけであります。今局長が、財政当局のいろいろな要求に対して、米麦というのは国民食糧の基幹産業であるという観点を主張してここまで押し返した、こういうことでありますので、今言いましたように、予算要求の過程ないしは査定の過程で大変な努力をしたということは、当局の労を多と評価はいたします。  しかし残念ながら、共済制度そのもののあり方ないしは共済制度の対象になっております米麦を初め、果樹でも畜産でも、ないしは養蚕にしても、極めて大事な人間の基本的な生活を支える基幹産業であるという観点、これはあくまでも堅持していかなければならない。今回の改正がそういうふうな国家財政の赤字という点のとばっちりを受けたという点で、私は極めて遺憾であるということをまずはっきり申し上げておきたいというふうに思うわけであります。今後このような国家財政のしわ寄せが一律にこういう形で来るということには、我々はどうしても納得ができない。当局がいよいよしっかりと腰を据えてこういう問題について財政当局に立ち向かうことを希望したいと思うわけであります。  第三に、水稲共済の当然加入基準の引き上げについてでありますが、先ほど串原委員からもちょっと触れられておりました。私は、水稲部門という観点でさらに若干突っ込んでこの問題をお尋ねしたいと思うわけであります。  まず第一に、今回当然加入基準を引き上げた理由は、これも財政当局の強い要求なのかどうか、共済自体の必要から引き上げたのか、この点をお伺いしたいと思うわけです。
  68. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 当然加入基準を引き上げましても任意加入の道は開かれておるわけでございますし、当然加入農家も任意加入農家掛金国庫負担割合に差をつげるということはいたしておりませんので、これは直接に財政負担に影響してくるというものではないというふうに私ども考えております。今度引き上げることにいたしましたのは、生産性の高い農業経営を育成するという農政の基本方向にかんがみまして、農業収入に依存するところ少なく、また、自家消費米の生産が主体であるような小規模農家についてまでも当然加入の対象とする政策上の意義は乏しくなってきているという考え方に基づいて行ったものでございまして、この当然加入制につきましては、昭和二十二年に農業共済が発足をいたしまして以来、発足当初はおよそ組合員資格を持っている者はこの農作物共済につきまして当然加入というところから、漸次この規制を緩和をしてきた、その延長上に立っ考え方でございまして、そういう趣旨の制度改正であるというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  69. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これはやっぱり問題がありますね。まず第一に、財政に関係がないと言うのですが、私は大いにあると思うのです。例えば首都圏とか京阪神ないしは瀬戸内海の沿岸、山間部、こういったところは非常に小規模農家が多いわけであります。統計を見ましても、十アールを当然加入にしておる都道府県はございません。十五アールが十八都府県、二十アールが三十七、二十五アールが十五、こういうふうに、大体二十アールというのが当然加入が多いという実情であります。しかし、十五アールを当然加入にしておるのが十八都府県ということもあるわけでありまして、私は、当然加入をしておりますとそれだけ国庫負担がふえるわけですから、その点はしたがって全然国の財政と関係ないということは言えないのじゃないかというふうに思うわけであります。  もう一つは、当然加入を減らすということは、あくまでやはり財政的な負担を軽くするという面が強くなっておるのではないか。今局長が言われましたように、当然加入は最初は十アールも多かったわけです、だんだん引き上げられまして現在に至っているわけですが、これは財政当局の意向もあるし、そしてまた、農業政策というものを、中核農家の形成というふうに農政の流れを変えていくという中で今言ったように指導をされてだんだんに少なくなったのではないか、こういうように思うのですよ。したがって、農政当局の農政の重点が中核農家に移ったということもありますが、今回の引き上げは、さらに財政当局の意向ということもかなりあったのではないか、私はこういうように思うのですが、どうですか。
  70. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 当然加入基準を引き上げまして任意加入になった農家につきまして国庫負担割合に差をつけるということになりますれば、それはまさに財政的な立場から申しますと大変節約になるということに相なろうと思いますが、制度としてはこの当然加入基準は引き上げますけれども国庫負担の割合には差をつけないということでございますから、あとそれは、そういった水稲につきまして、全国平均で国庫が掛金の五四%というような負担をしているような制度の受益をしたくないという農家がおられます場合に、要するに、したくないけれども受益しろということで強制して入れるかどうか、端的に言えばそういう問題であろうかというふうに思っております。  また、従来この当然加入基準を引き上げました組合等実績を見ましても、確かに十数%減ったというようなところもございますけれども、今までの当然加入農家で今度当然加入基準未満になった農家がほとんどそのまま任意加入しているというところも非常に多いわけでございまして、加入促進のためのいろいろな努力をしていただくことによりまして、組合等の組織基盤がそれで弱くなるというようなことにならないような御努力もやはり組合等でもやっていただければ、これによって直接大きな共済事業の運営の支障ということも出てくることはないというふうに私ども考えているわけでございます。
  71. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この改定は、例えばこの基準の引き上げについては今後も見直すつもりがありますか。
  72. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私ども、当然加入基準につきましては、今までの制度のもとにおきましても、十アールというようなところの組合につきましては引き上げるようにという指導はいたしてまいっておりますけれども、今回この制度の見直しを機会に、政令上も二十ないし四十ということで、制度の上でも手当てをしよう、こういうことでございまして、これをさらに引き上げるというようなことは当面私ども考えておらないところでございます。
  73. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 私は、当然加入基準の引き上げということは二つの点で問題がありはしないかというふうに思っているわけです。  その第一は、今局長もちょっと言及されたようですけれども、この当然加入というのは共済組合の基盤になっているわけです。これを引き上げるということは、それだけ任意加入部分がふえるということになりまして、組合基盤について弱体化するということになっていくわけなんですよ。その面が一つあるということ。  したがって、地元のいろいろな共済組合の皆さん方は、今の改正で何が一番困るないしは大変だと予想しているのかというと、これによって共済離れがふえるということ、これをまず一番心配している。共済離れがふえるということは、それだけ基盤が弱くなるということなんです。基盤が弱くなるということによって、今盛んに言われていることは、自助努力せよと言われているのです。共済の自助努力というのは後から大臣にお伺いしますけれども、自助努力といいましても建物共済ぐらいなんですよ。建物共済は、御案内のとおり一般の農業協同組合でももちろんやっておりますし競合する、協定はしているのだけれども、限界があるわけです。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕  したがって、どうしても自助努力といいますと、とどのつまりは賦課金である掛金を上げざるを得ないということに落ちついていく。国庫負担はいわば定額化していく。自助努力をしなさい、それは限界がある。どうしても今までの事業というものを維持するとすれば農家の負担に頼らざるを得ないという方向になる。そうすると、これは共済離れがますます進んでくるということで非常に心配しておるということが第一なんですよ。  第二の問題は、農業政策の上で中核農家の育成ということが現在の政府で進めておる農政の基本なんだ。しかし、この基準の引き上げということは、十五アールなり二十アール以下の農家というのは任意加入にしますよ、あなた方は入っても入らなくてもいいですよということなんですから、いわばそういう零細農家、二種兼業もいいところなんですけれども、こういう方々が統計上かなりたくさんおるわけなんですよ、農村には。集落にはその人力が存在するわけです。結局はそういう人力は田んぼが少ないから共済に入っても入らなくてもいい。当然危険率の少ないところは入らないわけですよ。  ところが現在の日本の農政では、最近、中核農家を中心にしながら二種兼業の皆さん方も含めて新しい農村社会の集落形成をしていこう、これが現在の現実に合わせたいわば農政の流れになっているわけですよ。局長もこれは御案内のとおりだと思うのです。そういう点からしますと、いわゆる零細農家、二種兼業のうちでも特に田んぼの少ない部分を切り捨てていくという形、この形というの位、今言ったように現在の農政の中でつまずくことになるのではないか、そういう協業化、農村の集落の形成の上で共同部な考え方を打ち壊すことになりはしないか、この二つの点で私は非常に危惧するわけであります。  その点について、これは御見解がありましたらお答え願いたいと思います。
  74. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今まで当然加入基準を引き上げました組合等実績を見ましても、当然加入基準未満になりました農家の大部分が、任意加入ということで引き続き組合にとどまっているということが多いわけでございます。当然加入基準の引き上げを行うことになる組合等のうち、多くの組合等は引き上げ後も現状を余り下らない程度の加入農家数は維持できるものと思いますし、そのためのまた加入推進の努力ということもやっていただきたいというふうに私ども考えているわけでございます。  小規模農家を除外をする、切り捨てるということではないかということでございますが、小規模な農家あるいは飯米農家被害率が低くて、当然加入から任意加入に移った途端に急にみんなやめてしまうというふうには必ずしも私ども考えておりません。むしろ中核的な農家に比べますと、気象条件が悪いような場合に収量変動が多いというのは、いわば片手間で、言葉は悪いかもしれませんけれども農業をあるいは水稲をやっておられますようなところの方が被害程度も大きいというような調査もあるわけでございまして、飯米的な農家が直ちにすべて被害率が低く、当然加入をしない限りは組合から脱落するというふうには私ども考えてないわけでございます。  もちろん、一部の地域におきまして、当然加入基準に達しない農家数がかなり増加するというような場合も考えられますけれども、そのようなところにつきましては、制度の健全な運営を確保するというような観点から、新種共済も含めた加入の推進なりあるいは防除体制の充実というような経営努力はもちろんでございますが、事業運営の効率化なり事業基盤整備の観点から、組織的整備を一層推進するというようなことで対処する必要があるものと考えられますので、その方向で今後とも十分に指導してまいりたいと思いますし、六十年度予算におきましても、そういった共済組合の組織整備の推進でありますとか事業基盤の整備強化のための予算も充実を図っておるところでございます。
  75. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 いずれ、この問題については後から大臣にもお伺いしたいと思いますので、次に移っていきたいと思います。  四番目は、水稲共済危険段階別共済掛金率設定方式を導入したわけでありますが、これについてお伺いしたいと思うわけです。  これは一つの大きな制度改正というふうに私は受け取っておるわけですが、これは非常に影響が大きいと思います。新たにつくらなくても、水稲共済においては現行の地域料率制度というもので対応できたのではないか、こういうふうに思うのですが、どうでしょう。
  76. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 現行の農作物共済におきましても、地域料率という制度が、道が開かれておるわけでございますけれども組合等の内部におきます被害の発生状況でございますとか共済金の支払い状況はさまざまでございます。これに対しまして、いわばより幅広くかつ弾力的に対応する必要があるのではないかということで、今回、危険段階別共済掛金率設定方式というものを御提案申し上げておるわけでございまして、この仕組みを取り入れるかどうか、そしてまた、どういうふうな危険段階別掛金率設定を行うかということにつきましては、組合等の選択によって採用することができるという仕組みにいたしておるものでございます。
  77. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 なぜこの制度改正に踏み込まなければならなかったかという極めて緊急な理由というのが、どうもよくわからないわけですよ。  もう一つは、それを取り入れるかどうか、これは組合自主性に任しておるのだ、そう言っておるのですが、では、具体的には農林水産当局はその指導をどうしていくのか。この二つの点について。
  78. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回このような制度改正を御提案申し上げておりますのは、近年におきます農業事情の変化等を背景としているものでございます。特に、昭和五十六年から五十八年にかけまして連年の災害が生じたわけでございますが、そういった中で、高水準の技術力を持ちます専業的な経営が育成されつつあります一方、兼業化でございますとか担い手の高齢化というようなものが進んできておりますので、地域によりましては、栽培管理の優良な農家と片手間的な農家とでは被害の発生状況に大きな差異のある地域が出ておるわけでございます。農業白書などでも言っておりますけれども気象条件に恵まれた年には収量差が余り目立たないけれども、一たん、気象条件が悪い、災害が起きるというようなことになりますと、そういった農家間の収量の差が大きくあらわれてくるということがいろいろな地域で出ておるわけでございます。  これに加えまして、もう一つは、組合運営の観点から申しますと、広域化によりましてかなり広い地域を対象地域にする組合というものもできてきておりまして、組合員等の間で、原則一律の掛金率というようなものに不満を持つ農家の方あるいは不満を持つ集落というようなものも出てきているわけでございます。他方、組合等におきまして、コンピューターの導入等によりましていわゆる事務機械化ということで大量の事務処理も可能になってきている、こういったことを背景にいたしまして、今回のような危険段階別掛金率設定の道を開くということを御提案申し上げておるわけでございます。  どのように指導をするつもりかということでございますが、一定設定要領基準のようなものは私どもの方でお示しをしたいと思っておりますが、具体的な運用につきましては、できるだけ組合員の方々の意思を十分反映させた形で、また組合等自主性が尊重できるような形で実施されることを私どもとしては期待をいたしておりますし、また、この危険段階別掛金率設定は、都道府県知事認可にもかかわらしめておりますので、知事を通じまして十分適切な運営が行われるように指導に努めてまいりたいと思っております。
  79. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 今の制度化をしなければならなかったいろいろな理由、これはある程度理解はできるわけでありますけれども、この制度化を導入することによりまして、私が心配するのは、当然加入基準を引き上げたことと相まって、同一地域掛金率が違うところが出てくるわけであります。そういう場合、農家間の対立といいますか、先ほど申し上げましたように、集落の中でいろいろな対立が起きないのかどうか、ないしは集落間で起きないのかどうか、そこら辺の心配が非常にあるわけでありまして、こういういわば農政といいますか経済といいますか、農家を取り巻く条件なり情勢が変わったことによって二兼農家がふえていった。ふえていったよしあしは別としまして、そのために、いわゆる技術的な面ないしは農家の経営面で非常に格差が出てきた。おまえは怠けているからという形、そんなものをこういう制度的に勝手にレッテルを張ってやっていくということが今の農政の中で果たしてプラスになるのかマイナスになるのか、その点、私は非常に心配しているわけなんです。その点も含めまして、具体的な指導をする場合、いろいろな基準設定するに当たって十分配慮していただきたい、このことを要望申し上げたいと思うわけです。  第五に、今度は畜産の問題なんですが、今回は肉牛子牛を新たに共済の対象にするということになったわけでありまして、私はこれは評価できるあめの部分だと思うのです。どうも政府提出する法案は、むちとあめがありまして、最近出てくる農業問題は、ほとんど主流はむち、その中にちょいちょいとハチみつみたいなのを添えてくるという格好になっているのですが、今回も、肉牛の子牛共済についてはあめの部分だと思うのです。私は評価はするわけであります。  そこで第一は、このあめの部分が、子牛で肉牛というふうに限定されているわけです。その理由はわかりました。その理由はわかりましたが、これは思い切って、肉用だけでなくて乳用、乳牛の子牛に対しても対象にするような、そういう検討はできないのか。今回の改正では肉牛子牛だけだけれども、将来は乳牛の子牛も対象にしてはどうか、これについてどうお考えなのか。  第二は、子牛、胎児の価額設定はどういうふうになるのか、胎児の価額を母牛の価額のどれくらいにするのか、実際の流通の段階で妊娠牛の取引はどのようになる見通しなのか。おわかりですか。質問の趣旨がおわかりにならなければもう一度繰り返しますけれども、その点でひとつ御見解を承りたいと思います。
  80. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 乳用の雄子牛につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、搾乳収入が得られるというようなこともございまして、子牛の事故が肉牛の場合ほど決定的でないというようなことから、従来から保険需要も比較的少ないということで、今回も検討の対象にいたさなかったわけでございます。今後におきまして、乳牛の子牛共済制度化の是非につきましては、やはり農家の保険需要なり被害実態等を見きわめながら判断する必要があるというふうに考えております。  それから、子牛、胎児価額設定をどうするかということでございますが、母牛の共済価額を基礎として算定をすることにいたしております。これは、胎児は通常売買されませんので市場価格が形成されませんので、これに頼るわけにはいかないということでございまして、子牛の資質については種雄牛の方の影響もあるではないかということがございますけれども、母牛の血統に応じた雄牛が使用される傾向ということもございますので、母牛の価額に対応して考えたらどうだろうか。  なお、家畜伝染病予防法の五十八条によりまして、予防注射などの結果事故が起きて死亡したというような場合の手当金の交付に際しまして、胎児価額の評価は母畜価額を基礎とするというように指導をされておりますし、昭和四十年代の初めに廃止をされました旧生産共済においても、母畜の価額を基礎にして胎児の価額を定めておったというようなことから、一応私ども、今の検討の結論といたしましては、母牛価額の五分の一程度ということで考えております。  また、出産後の子牛が導入をされたという場合には、最寄りの家畜市場で取引されます最低月齢牛の価格を基礎に月齢に応じた評価基準定めて行うということにいたしたいと思いますし、妊娠中の母牛を導入したという場合も、それはその胎児も含めてその母牛が評価をされておるということだろうと思いますので、その場合にはその取引価格というものが基準になってしかるべきではないかと思っておるわけでございます。
  81. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この制度に慎重に今後検討を加えなければいけないというふうになっておりますが、乳用子牛についてもぜひ前進した検討を要望しておきたいと思います。  次に、団体事務費についてお伺いしたいと思うのです。  今回、農業共済団体の事務費負担金というものを定額化へ移行することになったわけでありますが、一体どういう趣旨なのか、今後どんな場合にこれが改定になるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  82. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 六十年度予算から、これは農業委員会等の事務費の国庫負担などとの横並びということでもあったわけでございますが、共済団体等の事務費の国庫負担金を定額化いたしたわけでございます。これは予算額の安定的な確保を図るという観点から行ったものでございまして、従来の個別経費の積み上げでございますと、補助対象職員につきまして定員削減がかかってまいりますとか、あるいはまた組織整備、広域合併事務費の節約効果などが出ますと、この節約された部分は財政支出の縮減の方に働いてくるわけでございますが、これを定額化することによりまして安定的な金額を確保してまいるという考え方でございます。  どういうときに改定するのかというお尋ねでございますが、これは、定額化ということそのものの意味からいたしまして、物価水準とか公務員給与水準等の上昇によりまして毎年当然に改定されるというような性質のものではございません。そういう積み上げ計算をやらないということで定額化をいたしたわけでございます。ただ、非常に大きな、大幅な経済事情の変動が見られましたような場合等、必要な場合には、事業運営に支障を来すことのないよう、予算折衝を通じまして適切に対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  83. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 これは極めて苦しい答弁ではないかと思うのです。本当は積み上げ方式農林水産省にとっては一番いい方式じゃないかというふうに思うのですが、恐らくこれも一連の財政当局の強い圧力によって、このように一応昨年よりもちょっと上げたという形で定額化されたのですけれども、これは決して喜ぶべき現象じゃないと思うのですよ。むしろこれは、固定化することによりまして大変ないろいろな問題が出てくるのではないかと思うのです。しかも、この改定はいつやるともはっきりしない、大きな経済的な変動と言うのですが、大きな経済的な変動がなくても当然増がすぐ予想されるわけです。そういう幾つかの問題について具体的にお尋ねしたいと思うのです。  二番目の点は、定額化されるのは団体事務費ですから、この団体事務費が定額化されることに伴い、現在審議中の補助金合理化法案、特例法ですね、これにより農災法改正する必要が出てくるのではないかというふうに危惧するわけですが、いかがでしょう。
  84. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  農業共済組合あるいは共済事業を行います市町村及び農業共済組合連合会の事務費につきましては、農業災害補償法の十四条に、「国庫は、政令の定めるところにより、毎会計年度予算の範囲内において、組合等及び農業共済組合連合会の事務費を負担する。」こういう規定になっております。  今回のこの定額化措置は、予算の積算方法を従来の個別経費の積み上げによる定率の負担から定額の負担に改めるというものでございまして、現行の法十四条は国の負担割合とか積算方法を特に限定をいたしておりませんで、単に「予算の範囲内」と定めているにすぎないことから、この条文についての改正の必要はないというふうに考えております。  法制局の方にも念のためお伺いをいたしておりましたが、法改正の必要はないということで、私ども一括法の中にはこれは含めないということにいたしたわけでございます。
  85. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 この点は私は言質としてお伺いしておきたいというふうに思っております。  次に、当然地方団体職員の給与改定が行われるわけでありますが、このベースアップ財源が、このように定額化されますと極めて窮屈になってくるということを我々は心配しているわけであります。一体そういう財源をどう考えておるのか。  そしてまた、団体事務費の定額化に伴いまして組合運営に大きな支障が出てくるのじゃないか。今のベースアップばかりじゃありません。例えば組合費等事務費負担金、ここで行われておりますのは、昨年と比べまして、ことしは定額化に伴ってゼロになっているわけです。損害評価員の手当ないしはそれぞれの単位共済地域の連絡員の手当、こういったものが一体どういうふうになっていくのか、恐らく各組合が非常に心配している点はこういうことでありますけれども、一体どういうふうに財源を求めて、どこをどういう対応をするつもりなのか、この点をお伺いしたいと思います。
  86. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほども申し上げましたように、個別経費の積み上げということではなくて定額化をするということでございますので、その事務費の中でどういう割り振りにしてまいるかというようなことにつきましては、組合等の中で自主的にいろいろお考えをいただく。評価員等につきましても、今まで過去の実績に照らしますと逐次改善が図られてまいってきているわけでございます。  先ほども申し上げましたが、定額化いたしましたので、今後補助対象職員の数、定員削減というようなこと、あるいはまた組織整備によります事務費節減効果が国庫に吸収されるということがなくなりまして、国庫負担の額の安定的な確保が図れるということになってまいりますので、職員給与の上昇等につきましても、事業運営の合理化なり効率化といったようなことで対応をしていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  87. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 時間がなくて申しわけございませんが、もう一つ、家畜共済損害防止事業交付金、これが一億三千六百万ぐらい減額されておりまして、獣医師手当が今回は一三・何%ですかアップになったそうでありますが、中身を見ますと、九千五百円が九千八百円になる、三百円だけ増になっているわけです。私は、出稼ぎの関係でしょっちゅう出稼ぎの現場を回って歩くのですが、九千五百円などというのは一般土工の単純労務者の一日の賃金ですよ。獣医師手当が三百円アップして九千八百円。獣医師の皆さんが共済でこういういろいろないわゆる技術料それから往診、これを含めまして九千八百円というのは一体全体実態に合っているのかどうか、これはまことに不思議なわけであります。  私、実態を調べてみましたら、大体技術料は三万円から二万円ですよ、それからそのほかに往診がつくわけです。日中で四キロ三千円、夜間であれば四キロで九千円、後はキロ数で換算する。ですから、大体上限が四万円、下限が二万円ということになろうかと思うのです。それに比べて九千八百円というのは余りにも低いのじゃないが、こんなふうに思えてなりません。  まして獣医師が今度六年制に変わりました。普通の人間のお医者さんと同じ待遇にするのは当然ですが、北海道、静岡、千葉、兵庫の四道県はある程度この基準よりは上げておるわけです。これは法定化しているわけであります。そういう先進県もございますし、何といっても家畜共済の一番の縁の下の力持ちということでありますので、獣医師のこういう待遇についてはもっと力を入れていただきたいと思います。これもお考えはあわせて後からお聞きしたいと思います。  次に、農業共済のあり方の問題ですが、時間がございませんので、局長に二つの点をお聞きしたいと思います、  広域合併指導なり方向というのは、私はこれ以上広域合併を進めることはいろいろな点でマイナスが出るのではないかと思いますので、これ以上の広域合併はやめてもらいたい。  第二は、今回の法改正で財政負担の節減をするという側から見まして、これは大変な問題を含んでいると思うわけです、こういう事務費が定額化される、負担金というか掛金は上がる、そして自助努力をしなさい、その自助努力にも限界がある。こういう中で非常に心配される点は、どんどん共済離れが進んでくる。秋田なんかは、水田の場合、山形と並んで全国でも被害率が非常に低いところなんです。したがって、掛金を掛けるのはばからしいということで共済離れが進んでいくのではないかという点を非常に懸念しているわけであります。こういう点でいわゆるあり方論を含めまして、さっきの獣医師の手当の問題とあわせてお伺いしたい。  さらに大臣にお伺いしたいと思うのですが、これも時間がないのでまとめてお伺いしたいのです。  私は、この前、農林漁業白書でも御質問いたしましたが、この四年間の行革予算の中で農林予算はマイナス一〇・八%なんです。四年前と比べて一〇・八%も減っている。防衛費は二一・三%アップしている。全体増が五・七%なんですよ。しかもせんだって、十九日の夕刊を見ましたら、中曽根さんは農産物の難点検をさらに強調しているわけです。その中で、佐藤農水相は、「原則自由、例外制限だが、食糧安全保障の問題もあり、農林物資は例外に当たると理解している。生命産業でもあり、そう簡単ではない。よろしくお願いする。」こう言っているのですね。それに対して中曽根さんはどう言っているかというと、「すべてについて「原則自由」だ。聖域はない。農林物資について各国とも特別扱いしているが、既得権を守る、という意識では困る。」ここまで言っているのですよ。これ以上切り込まれると大変になる。日本の農水行政の最高責任者である農水相は、これ以上の農林水産予算の切り込みに対してどう対処するのか、その決意もあわせてお願いしたいと思うのです。  以上です、
  88. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 共済事業の中で獣医師の方々の役割あるいは御協力というものが非常に大事だと私ども思っておりまして、手当のアップについても毎年努力をしてきておるところでございます。先ほどお話しございましたように九千五百円から九千八百円ということでございますけれども、そのほかに診療技術料はまたこれとは別に出ることになっているわけでございます。いずれにいたしましても、従来から一般職員と異なります獣医師の勤務の特性を考慮いたしまして、家畜診療所の獣医師職員につきましては適正な給与になるように指導いたしておりますし、今後とも基本的には適正な診療報酬の確保、雇い上げ手当の引き上げという措置をとりまして、この待遇改善には引き続いて努力してまいりたいと思っております。  それから、広域合併につきましては、何と申しましても事業規模が零細でございますと、制度の普及という点で、特に任意共済を推進していくということになりますと、どうしてもある程度以上の規模がございませんと職員の専門分担ということもできかねるということがございますので、この制度の普及なり事業の効率的な運営を図る上でこの広域合併を推進していくことは、私どもは今後ともぜひ推進していかなければいけないと考えております。  組合員の共済離れ、農家共済離れというお話がございましたが、そういう意味でも共済組合の事業基盤をしっかりして、そして職員が組合員とも十分接触しながら、何と申しましてもこれは災害対策の基幹になるものでございますので、今後とも制度が着実に発展していくように私どもといたしましても各般の努力を払ってまいりたいと思っております。
  89. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 細谷先生お答えいたしますが、御指摘のとおりでございます。  厳しい財政事情のもとで残念ながら減額となっておりますが、私は、農林水産予算というのは、生命産業であり、また環境保全国民生活にとって非常に大切な予算という考えを持っておるわけでございます。そんなことで、大変厳しい情勢ではございますけれども、生産性が高く、土台のしっかりした農林水産業の実現と活力ある村づくりを図るため、限られた財源の中でございますが、予算の重点的かつ効率的な配分により各施策の質的な充実を図っていきたいと思っております。  そんなことで、農林水産施策の推進にとって支障が生ずることがないように予算の確保に努めたいと考えております。
  90. 細谷昭雄

    ○細谷(昭)委員 どうか大臣、大変に難しいところに来ているのですから、もっと自信を持ってかかってもらいたいと思うのです。  最後に、この法律改正で私たちが非常に心配しておるのは、連合会の皆さんを初め末端の組合の職員の皆さん方、それから役員の皆さん方が、これによって大変な不安を持っているということであります。こういう身分的な問題、給与の問題に対して不安を与えないような万全の対策をとっていただきたいということを強く申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  91. 今井勇

    今井委員長 次に、松沢俊昭君。
  92. 松沢俊昭

    ○松沢委員 まず最初に、私は去る十八日、ちょうど大臣は参議院の方に行っておられて不在でありましたけれども、材木の関税の問題、タイの方からの鶏肉関税引き下げの問題、それから、アメリカの方で一千万トンの穀類を買ってもらいたいという注文があったということにつきまして御質問申し上げましたが、何しろ大臣がおられませんので、政治的な結論めいた答えはなかったようであります。  その後、きのうの新聞なんかでは、日米欧の委員会農業報告がまとめられましてそれに対する提言があった、それには、米価の引き下げをやった方がいいのではないかという提言があったということを聞いているわけです。それから、対外経済対策推進本部ですか、今度そういうものができて、総理市場開放に聖域はないんだと主張されたということが新聞にも出ております。総理の方はお構いなしにどんどん市場開放を進めていく、農業にも例外はないんだ、こういう方針を出しておられるようであります。きょうの新聞などを見ますと、農水省でもアクションプログラム策定委員会というものが二十二日に設置されたということでありますが、一体日本農業をどうするつもりなのか。  私たちもこの委員会で今回提案されておりますところの法案審議をやってまいりましたけれども、蚕の問題一つ見ましても、異常変動の安定帯というものを外されてしまっているわけであります。また、金融三法の面におきましても、何か若干畜産の方には手入れがなされるようでありますけれども、米麦などはてんで相手にしていないという改正案であったわけであります。今回の農業共済の面におきましても、財政事情が大変厳しいのだからなるべく予算を使わないように削減していくんだという前提でこの法案が提案されているわけでございます。  そうなると、佐藤農林大臣はとにかく頑張る頑張ると言っておられますけれども、金は片っ端から切り落とされていくわけでありますから頑張りようがないと思うのであります。こういう時期でありますから、こういう法案の審議をやる場合においては、本当はその前提として内閣総理大臣にこの席へ来てもらって、一体どう考えていなさるんだということの質問をやってから審議に入るべきだと私は考えるわけでございますが、この点ひとつ委員長、今後この委員会を開くに当たっては、理事会の方でも取り上げていただいて善処してもらいたいと思います。  さしずめ以上申し上げましたような非常に厳しい状況下にありますので、そういう中で一体どのように農林行政を進めていかれるのか、大臣が頑張ると言われるのはよくわかりますけれども、頑張りようがないんじゃないか、開き直りでやる以外ないのではないかと私は思っているのですが、その点、お答え願いたいと思います。
  93. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生に、お答えいたします。  我が国に対しまして、先進国、発展途上国を問わず諸外国から農産物市場開放について種々要請がなされていることは先生御指摘のとおりでございます。いつも申しておりますが、我が国は、農産物についてはこれまで累次市場開放を行ってきており、既に世界における農産物の大輸入国であります。農産物の対外経済問題につきましては、関係国との友好関係にも留意しつつ、国内農産物の需給動向等を踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図って対応することが大切であると考えております。  そんなことでございまして、十九日の対外経済対策推進本部の件でございますが、実はこれは各省庁全部つくるということでございます。全省庁に事務次官を長とする策定委員会を設置するということで、我が省もつくったわけでございます。  それからもう一つ我が国農業の問題でございますが、これは四月十九日のときに私は発言いたしたわけです。農林水産業というのは生命産業である、環境保全国民生活維持に非常に大切である、そんなことで、「原則自由、例外制限」の「例外」に該当するものとして最後まで頑張りたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  94. 松沢俊昭

    ○松沢委員 決意のほどはわかりましたけれども、きょうの新聞に載っております生産者米価引き下げ提唱という農業貿易と日米欧三地域農業政策という報告というものは今後の米価にどういうような影響が出てくるのですか。
  95. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 日米欧委員会の報告書でございますが、これは日米欧三地域を中心に活動を行っております民間組織が取りまとめたものでございます。私どもが承知をいたしておりますところでは、日米は学者、ヨーロッパはオランダの元農林大臣、こういった三人の方が議論をしてまとめられたということでございますけれども内容的には、食糧等の安定供給でございますとか地域社会の維持でありますとか国土の保全といった我が国農業が持っておりますいろいろな役割に対する配慮が乏しい、かなり比較優位原則というようなことで経済効率の観点から割り切っている点で問題が多いというふうに考えております。  新聞などにも一部、米価の引き下げというようなことが大きく報道されましたけれども、米価の問題は食糧庁長官からお答えをすべき筋合いのものでございますが、このような民間の御意見というものは今までも随分いろいろ出ておりますし、これからもまた出てまいると思いますけれども、当然のことながら、米麦価につきましては、食糧管理法の規定に基づきまして米価審議会の議を経て適正に決定するという方針に何ら変わるところはないというふうに私といたしましては推察をいたしておるわけでございます。
  96. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これは大臣にお聞きした方がいいと思いますが、確かに民間の団体であることははっきりしております。しかし、このメンバーの中には米価審議委員も入っておられるのじゃないですか。元ですか。そういう意味では、この先生の意見などが回り回って影響力が出てきて、そういう中で一つ環境がつくられていく、こういう危険性というのがあると私は思うわけであります。  そういうことで、ことしの米価を決める時期がもう目前に迫ってきているわけであります。一切の賃金もことしは引き上げが行われているわけでありますが、こういう一つの動きを参考にしながら、まさか賃金が上がっているのに生産者米価だけは引き下げをするなどということはあり得ないと私は思います。そういう点で、大臣、この新聞記事と米価の関係はどうなんですか。
  97. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  お米の問題につきましては食糧管理制度が厳然としてあるわけです。一億二千万国民に食糧を安定的に供給する大きな役目を持っておるということでございまして、その方針を堅持するつもりでございます。  また、先ほど逸見さんという方ですか、私も実は知らなくてけさ聞いたのですが、元米審委員ということで、何か米審委員のときもそんな意見を時々吐いておられたようですね。今度米審委員をやめられたので大っぴらにやったということでございます。そんなことでございまして、いろいろな学者の中には若干そういう人もおるのじゃないでしょうか、こう私は理解しております。
  98. 松沢俊昭

    ○松沢委員 とにかく、農業が大変な時期に入っておるにもかかわらず、大変な状態にさらに追い打ちをかけるようなこういう議論がはやってきてはなおさら大変なことになるわけであります。そういう点で私は、どうも総理大臣はそういう認識が薄いのじゃないか、こう思っておりますので、大臣の方からも今の状況というものを十分総理大臣理解させるように努力をしてもらいたいし、また、米価の時期に入るわけでありますから、こういう意見とはかかわりなしに適切な対策を立ててもらいたい、こういうことを希望申し上げておきます。  それで、本論に入りますが、災害補償法の問題につきましては、もう既に我が党の各委員の方からいろいろと御質問がございましたが、一つは、今回の特徴といたしましては肉牛の子牛共済、これが目玉商品と言えば目玉商品ということなんじゃないですかね。しかし、さっきから議論がございましたように、乳牛の子供は仲間に入れない、経済局長のお話からしますと、そう高いものでないから、こういうことなんでありますが、高いから安いからということでなしに、入れておいた方が農家にとっては都合がいいという希望があればこれから入れるという考え方を持ってのお話なのであるかどうか、まずその辺から承りたいと思います。
  99. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 先ほども申し上げましたように、肉用牛に比べますと乳用の雄子牛につきましては保険需要という面でもそれほど強い要望がこれまでなかったということと、経営的に見ましても、搾乳牛の経営の場合には子牛の事故というものが肉用牛の繁殖経営に比べますと牛乳の販売収入が入りますから決定的な打撃にならないというようなことで、今回の制度改正の見直しの際は対象としては除外をしたといいますか考えなかったわけでございます。  なお、今後の問題といたしましては、保険需要がどうかというような点も含めまして、また搾乳牛経営、乳用子牛の持っております経営の被害状況というようなものを踏まえまして、将来そういった推移を踏まえて考えていくべき問題だと思います。これはもう未来永劫全く保険になじまないのだというところまで私ども決めつけているわけではございませんので、これからも検討はしてまいりたいというふうに思っております。
  100. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それから、これは新潟県の佐渡島の牛の話なんでありますけれども、もう四百年も続いておる佐渡牛なんであります。よその牧場の場合におきましては、牧場の管理人がおりましてそれで牛の監視をやっておるわけでありますけれども、佐渡の牛の場合には、大体四月の終わりごろ山へ連れていきまして十月の末ごろ連れてくるということでありまして、林間放牧といっても、よその林間放牧と違いまして、杉だとかそういうものが生えるところでありませんで灌木なんであります。ほったらかしておくわけです。そして、秋になると皆で行って連れてくる、こういう放牧の仕方なんであります。  そうすると、例えば上げるとき、五カ月なら五カ月の妊娠をしているところの牛である、これは確認できるわけですね。だけれども、上げっ放しなんでありますから、山の中で子供を産むわけであります。その場合、流産する場合もありますし、産まれてから死ぬ場合もありますし、これはなかなか確認ができないという問題がありますので、そういう場合、この子牛共済というものはその対象に入るのかどうか、入れてもらいたいというのがまた県の共済連合会の言い分でもあるわけなんです。そういうようなことについて、この際、こういう問題は一体どう取り扱いが行われるのかお伺いしたいと思います。
  101. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農業災害補償法におきましては、共済事故に該当するか否かというのは、まず事故の確認が行えるということが前提条件でございまして、一般に確認が不可能ということであれば共済事故として取り扱いをすることが難しいということになってまいるわけでございます。肉牛生産事故の子牛共済実施するか否か、今度制度改正をいたしまして実施をいたします場合に、これは組合等の選択によりまして決定することができるわけでございますが、組合なり連合会がぜひ実施をしたいということでございますれば、事故の確認をどうやってやるかということがまず問題になるわけでございます。  一般論としまして、肉牛につきまして通常行われている集団放牧によりまず繁殖方式では、入牧をしましてからマキ牛による自然交配を行いまして、下へおりてきましてから分娩期を迎えるというのが普通の姿でございます。したがって、仮に出産に係る事故の発生がありました場合でも、獣医師等が現場において死亡胎児を確認をいたしまして、自然交配でございますから種つけの証明ということはないわけでございますが、体長でありますとか体重、あるいは発育程度から月齢の判定を行うということができますので、こういう放牧形式のもとにおいては特段の支障がないのではないかと思っておるわけでございます。  しかし、今のお話を伺いますと、入牧前に授精を行って妊娠牛が入牧をするというような放牧形式の場合でございますと、授精の時期によりまして牧野に上がった状態で出産期を迎えるという可能性がかなりあるわけでございます。こういった場合に事故確認をどうするかという問題でございますが、現地の実態に詳しい新潟県や新潟県の農業共済団体ともよく協議をいたしまして、もし、ぜひやりたいということであれば、何とか現実的な方法を検討し見出していきたいと思っております。  実は昨日、この問題について先生御関心を持っておられるということを伺いましたので、新潟県の共済組合連合会の方とも連絡をとってみましたが、県の連合会の専門家としましては、一つは、授精時期の調整、それから第二には、分娩期の迫った牛を牧野からおろす、あるいは特定の場所に移動させるというようなやり方、あるいはまた放牧場の監視体制を強化して、事故が起きたときに見つけられるような体制をつくるという方法考えられるのじゃないかというふうなことを、とりあえずの反応として向こうは言っておりましたけれども、これらの点について今後さらに可能性を詰めまして、できるだけ共済としてやれる道を開くための事故確認の方法を見出すように、県ともよく相談してまいりたいと思っております。
  102. 松沢俊昭

    ○松沢委員 ちょっと変わった放牧の仕方なのでございますが、しかしせっかくできた新しい制度を適用してもらいたいという希望もありますので、ぜひ詰めて、その希望にこたえるように御努力をいただきたいとお願い申し上げておきます。  それから、果物の共済共済責任期間の短縮という問題でありますが、これは私もよくわかりませんでしたが、開花期から実る時期までというのがいいのじゃないかと思っておりましたところが、果物農家に聞きましたら、それでは不十分なんだ、それは、その前の年に発芽期というものがある、だから、そこから実を結ぶまでの間の共済でなかったら実際上果物共済としては問題にならぬじゃないか、こういう御意見を聞いたわけでございます。  ところが、今回の改正ではそれを短縮してやっていくということになりますが、そうなりますと、その間における事故に対しては結局救われない、共済事業はできなくなってしまうわけですね。救済の道はなくなってしまうわけですが、こういう点は一体どうお考えになっているのですか。
  103. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 現在の果樹共済共済責任期間については、今まさにお話がございましたとおり、果樹が永年性作物であるということで、被害を受けました場合に果実の収穫量に影響を及ぼし得る期間を十分考慮しまして、花芽の形成期、常緑果樹については春枝の伸長停止期から果実の収穫をするときまでの期間ということでやっておるわけでございます。このため共済責任期間が一年半から二年と長期にわたる。  果樹共済の場合、ほかの面でも仕組みが若干複雑だということもございますけれども、一年半から二年ということになりますと、共済に加入する、掛金を支払うということと、災害を受け事故が生じた場合の共済金の支払いとの期間がかなり長くなりますために、なかなか農家理解が得られにくい。特に組合等立場から申しますと、これが加入推進の障害になっている。一言で申せば、保険として非常に売りにくい、わかりにくい保険だ、こういうふうなことがかなり強く言われておるわけでございまして、共済団体からもこの点は要望されてきた問題でございます。  特に、落葉果樹につきましては発芽期以前の被害が少ない地域もあるということを考量いたしまして、このような地域につきましては発芽期以前の被害を一律に共済の対象とする必要が少ないということから、今回の改正におきまして、組合等の選択によりまして半相殺減収総合方式共済責任期間の始まる時期を、地域実態に応じまして、発芽期、常緑果樹につきましては開花期からとする道を開く、組合の選択によってそういうことができる道を開くという制度改正をいたしたいということであるわけでございます。  したがいまして、一律にこれで短縮してしまうということではございません。組合の選択ということが一つ入ります。そしてまた、共済責任期間を短縮することができる地域というのは大臣が指定をするという仕組みを予定いたしておりまして、この指定手続を通じまして発芽期前の共済事故の発生が比較的少ない場合にのみ短縮が行われるようにしたい、そしてまた組合等の選択によってこういう短縮ができるようにしたい、こういったことで、実態に応じて短縮が可能になる道を開くということで考えておりますし、またそのように運用したいと思っております。
  104. 松沢俊昭

    ○松沢委員 わかりました。  それから、米麦の問題だけでもありませんけれども、今回のこの改正の一番大きな問題点というのは、超過累進制を変えることによって財政負担を軽くするのが一番大きな目標のようにも考えられるわけでございます。  そこで、私考えるわけでありますが、負担増というのは先ほど串原委員の質問にお答えになっていますからわかりましたけれども、そのことによって共済組合制度そのものに対する批判というのが起きてくる可能性はございませんか。これはずっと以前に新潟あたりでも解散運動というのがあったことがございますけれども、それがようやくおさまったという経過があるわけです。まだ後遺症が残っていますが、こういうぐあいにしてこの負担を余計にすることによって、それは面倒くさい、共済組合なんて要らぬよという運動に連動する可能性というのはございませんか。
  105. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回、国庫負担方式改正を行うことによりまして超過累進の国庫負担率の上限を一〇%圧縮するという措置をとりましたので、その限りにおきましては農家の方々の負担が増加するということになるわけでございますけれども、この改正をいたしましても、水稲について申しますと、これまで五九%国庫が負担をしておったものが五四%の負担になるということでございまして、この制度改正をやりました後におきましても五割を超える国の掛金負担を行うことにいたしております。  また、これは超過累進の上限の率を圧縮いたしますので、掛金率の高いところにより多く影響が出てまいります。先生のところの新潟県というのは比較的影響の少ないところでございまして、この影響の大きいところにつきましては、被害率が大きいということはそれだけ過去の災害のときにかなり大きな額の共済金の支払いが行われているところでもあるわけでございます。  現在のいろいろな厳しい状況の中で、国庫負担の今度の改正につきまして私ども共済団体といろいろお話し合いをしながら御理解を願うように努力をいたしておりますが、現在の農業共済制度の災害対策の中に占めている基幹的な役割、そしてまた、制度改正後におきましても国は相当の負担を行ってこの制度を着実に発展をさせていく気持ちを持っているということを、団体を通じて十分御理解をいただく努力をやりながら事を進めてまいりますれば、これが農業共済制度基本を揺るがすということにはならないであろうというふうに私ども考えておるわけでございます。
  106. 松沢俊昭

    ○松沢委員 確かに被害率の高いところに負担というのがかかっていく率が余計になってくる、こういうことでございますが、しかし全国的に見まするならば、一つのパイなんでありますから、それが要するに小さくなるわけでありますから、一概にそのようにもならないんじゃないかというような感じがいたします。  それからもう一つ、これは農業委員会、それから農業共済も皆そうでありますけれども、補助金の一割カットが行われたわけでありまするが、それでも農業委員会の場合は大体そこの職員というのは市町村の職員ですから、補助金が回ってこなくとも市町村でその農業委員会の職員だけ差をつけるというわけにいきませんから、それはそれで何とかなるわけですね。ところが共済組合の場合におきましては、これも市町村でやっているところはございますけれども、私たちの方では組合でやっているところがたくさんございます。そういう点を考えた場合、ちょっとこれは農業委員会の補助金のカットとは違ったものが出てくるんじゃないか、そういう点は一体どうお考えになりますか。  それと今のものと二つ足していった場合、大変農家の負担というものが余計になってくる、そういう可能性というのは出てくるんじゃないですか。
  107. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 団体事務費につきましては、六十年度予算編成の過程におきまして、今ちょっとお話がございましたような一割カットとかというような話も全くなかったわけではないわけでございますけれども、最終的には定額化ということにはなりましたが、金額としては前年をごくわずかでございますけれども上回る金額を確保できたわけでございます。  お話しのとおり、確かに農業委員会農業共済団体では一律に論じられない面があろうかと思います。ただ、逆に申せば、農業委員会の仕事に比べますと農業共済組合の場合にはいろいろ任意共済も含めまして多様な事業をやっておりますし、また法律上も賦課金徴収の規定もあるというような面もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、六十年度予算におきまして一律的な一割カットでありますとか何%カットというようなことは防止をいたしまして、そして定額化についてもいろいろ意見はあろうと思いますけれども、これまでの積み上げ計算でございますと、補助対象職員の定員削減でございますとかあるいは広域合併等で効率化が図られますと、その分が積み上げでは、一種の生産性向上の利益は財政当局が吸い上げるというような算式になるわけでありますけれども、これからも財政事情、来年以降も厳しい状態が続くと思いますが、その中で少なくとも安定的な額は確保できるということになったわけでございますし、組合等の職員の処遇改善等の問題は当然あるわけでございますけれども、やはり組織基盤の強化、またいろいろな事業運営の効率化というものを通じまして、組合等に対応をしていただくことをお願いをしたいと思っておるわけでございます。
  108. 松沢俊昭

    ○松沢委員 その定額化のはしりといたしましては、改良普及員が最初定額化になったわけですね。そのときも農林省の方では、定率化が定額化になったとしても、行革路線というのは大分厳しいから肩透かしを食わせたような話でありましたが、しかしやってみますと、やはり改良普及所の統廃合問題なんかが出まして、新潟県なんかは騒ぎになったわけですね。  今回の場合も、確かに局長が言っておられるように、金の面においてはそう違いはないよ、こういうお話でありますけれども、それはことしは違いはないかもしれませんけれども、だんだんと年を経るにつれまして、定額化と言えばつかみ金のようなものですから、定率とこうなれば一定のあれがあるわけでありますが、そういう定額化になると、ことしは大丈夫だとしても来年、再来年と財政再建が続いていくわけでありますから、大変な問題になる可能性というのは十分あるのじゃないかと思っております。  それから、これも通告には出しておきましたけれども、今お話が出ましたから申し上げますけれども合併問題というのが進められておるわけであります。小さいところの市町村は町村が肩がわりをした形をとっておりますけれども合併したところの私たちの地元あたりを見ますと、市町村の共済組合というのは大体三千から三千五百、四千ぐらいの規模が一単位組合ということになっているわけです。それを、今、共済組合長なんかから聞きますと、組合長なんかは反対でありますけれども、何か上の方からは、昔の一郡、それを一単位ぐらいでやるというような動きといいますか指示といいますか、指導といいますか、そういうのが出てきているということを聞いているわけであります。  そうすると、私の郡なんかの場合におきましては、米の面で新潟県の一割生産する、そういうところなんでありますが、それを全部一まとめにしたところを共済組合なんていうことになったら、確かに局長が言われるように、人件費なんかもそういう点からすると生産性向上で合理化されていくから安上がりになっていくのじゃないかという一面もあるかもしれませんけれども、今度はサービスがうんと低下してくるという面も出てくるわけでございまして、そういう点からまた組合運営というものをなかなか難しいものにしていく、そういう危険性があるのじゃないか、こんなぐあいに実は考えるわけであります。  そういう点で、確かに定額化したけれども予算には変わりないと言うが、将来的なことを考えると大変危険であるということと、それからもう一つは、その賞いとして合併を図っていくのだということになりますと、サービス低下で今度は組合員の方から不満が出てくる、こういう問題も出てくると思いますので、その辺はどうお考えになっていますか。
  109. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 定額化と申しますのは、細かい積算をして積み上げて補助率を掛けるという方式ではございませんので、したがいまして、毎年安定的にということでございますから、例えばベースアップがあった、給与が上がったと言っても、それで直ちに額がふえるということではございません。しかし反面、安定化するということでございますから、定額化いたしました以上、またそれに何%カットとか一割カットとかを来年、再来年かけていくというのもこれはちょっと約束違反ということに相なりますので、削られるようなことはないというふうに考えております。  なお、これはほかの定額化された交付金なり補助金共通でございますけれども、定額化という約束である以上は、毎年のきめ細かな変更、額の変化ということはないわけでございますが、大きな経済事情の変動があったというような場合におきましては、やはり事業運営に支障を来さないように、予算折衝上適切な対処をしていくべきだろうというふうに思っております。  それから、組合等の組織整備の問題でございますが、私ども、確かに一郡一組合というものを一つの目安として考えておりますけれども、これは通達等において固定的に一郡一組合というようなことは決して言っておりませんで、やはり一郡と申しましても広いところ、小さいところがございますし、そこに農家がどのくらい含まれているかというようなことも違ってまいりますので、地方の、地域実態に即した規模で適切かつ円滑に行われるように進めたいと思っておるわけでございます。  広域化いたしますと、組合農家とのつながりが薄くなるのじゃないかということもよく御指摘があるわけでございますが、その辺は、広報活動なり、あるいは損害防止事業だとか共済連絡員の活用等、積極的な事業運営が期待できる面もあるわけでございまして、広域化して事業基盤を整備をしながら能率的な運営を考えていただければ、私ども、広域合併というものは適切に行われれば決して弊害を生むものではないというふうに考えておるわけでございます。
  110. 松沢俊昭

    ○松沢委員 もう予鈴が鳴っておりますのでやめますけれども、もう一つだけ聞きたいと思います。  これは掛金率の問題でありますけれども、二十年を単位にして計算して、平均して出しておられるわけですね。ところが、これも私の地元で起きた事件でございますけれども、おととしですかな、にわかに大きなひょうがぼんと降ってきまして、その一帯は収穫皆無になったわけです。それで今度、ことしの掛金率を見ますと、その次だけぼんと上がってしまうのですね。普通そんなことはないのですからね。そのとき共済金をもらった金額というのは、これは非常に災害のない地帯ですから、したがって金額も割合と不足であったわけですが、今度は掛金率がずっと引き上げられて当分続くのですね。だから、二十年に一遍ぐらいな途方もないところの超異常災害があった場合、そういうものは除いて掛金率というものを考えていってもらいたいというところの希望が非常に強いわけなんですが、そういうことはできないものですか。
  111. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 大変お気持ちはわかるのでございますけれども、やはり保険の手法をとっておりまして、二十年に一遍出た、それで全損に近い被害だったというお話でございますが、全損に近いということでございますれば、ふだん被害が少なくて掛金率が安いところでございましても、共済金額の足切りの部分はございますけれども、全損相当のものが支払われるわけでございますので、やはり共済金もかなり支払われたのではないかと思われますし、それから、そういったことがございますので二十年という非常に長い期間をとっておりますので、二十年のうち一年かなり高い被害で出ましても、二十分の一で影響してまいるということでございます。やはり、まれにしか起きない被害であるからということで除くということになりますと、では二十年に一遍の豊作もやはり除けということにもなりかねませんし、それから、ひょう害につきましては地域差もございますので、保険の仕組みをとっております限りはなかなか難しいというふうにお答えをせざるを得ませんので、申しわけございませんが御理解いただきたいと思います。
  112. 松沢俊昭

    ○松沢委員 じゃ、これで終わります。
  113. 今井勇

    今井委員長 午後二時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十六分休憩      ————◇—————     午後二時四分開議
  114. 今井勇

    今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出農業災害補償法の一部を改正する法律案に対する審査を続行いたします。  本日は、本案審査のため、参考人として全国農業共済協会常務理事須藤隆平君、芽室町農業共済組合組合長平林利夫君、日本園芸農業協同組合連合会専務理事遠藤肇君及び全国肉用牛協会専務理事内藤進君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、須藤参考人、平林参考人、遠藤参考人、内藤参考人の順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、須藤参考人にお願いいたします。
  115. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいま御指名をいただきました全国農業共済協会で常務理事をやっております須藤隆平でございます。よろしくお願い申し上げます。  本日は、当農林水産委員会におきます農災法の一部を改正する法律案の御審議に当たりまして、参考人としてお招きをいただきまして、この法律案に対します意見を申し述べる機会をお与えいただきまして、大変恐縮に存じます。あわせまして、この機会に心から御礼を申し上げる次第でございます。  しかしながら、農業共済の組織といたしましては、実は全国都道府県農業共済組合連合会長会議決定がございまして、先生方のお求めに十分おこたえできるような明確なお答えを述べることができないのじゃないか、かように心配するわけでございまして、このことをまず申し上げて御理解をいただきたいのであります。  この全国会長会議決定と申しますのは、案につきましては全面的には賛成できないが、法律案についての積極的反対運動はしないというものであります。このような決定に至りますにはそれなりの経過と理由があるのであります。  昭和五十九年度に入りまして間もなく、ちょうど昭和六十年度予算の概算要求作業の当初段階でありますが、農林水産省から、制度の見直し問題につきましての情勢といたしまして、かねて財政当局から問題とされておりました水稲の当然加入基準農作物共済掛金国庫負担方式について、昭和六十年度から何らかの措置をとらざるを得ない事態になってきているということが伝えられたのでございます。しかもその具体的な内容といたしまして、財政当局からは、現行の十アールないし三十アールという当然加入基準を三十アールないし五十アールに引き上げること、農作物共済掛金国庫負担方式は現在の超過累進によります負担を廃止いたしまして二分の一の負担に改めること、また任意加入農家には当然加入農家国庫負担に差を設けることなどを強く求められておりますことなどがわかってまいったのでございます。  このような事態になってまいりましたので、私ども全国農業共済協会では、全国都道府県農業共済組合連合会長会議を開催いたしまして、このような情勢への対応策をお諮りいたしました。その結果、協会の役員のブロック代表によりまして制度対策委員会を設置いたしまして必要な対策を進めることになったのでございます。  このころ農林省でも、これらの問題につきまして、制度改正するとして、その機会にどのような事項をさらに取り上げまして改正したらよいかの部内検討が進められておりまして、その要点も私どもの方にいろいろと知らされてまいったのでございます。そのような次第で、全国の各県連合会では、制度改正全体の問題といたしまして、いろいろ部内検討をし、さらにブロックに持ち上げまして、ブロックの会長会議で協議をいたしまして、その結果を制度対策委員会の方々が持ち寄って委員会で検討したのであります。  その検討の際強い意見が出されましたのが、当然加入基準の引き上げ問題と農作物共済掛金国庫負担を二分の一に改める問題についてであります。  当然加入基準を三十アールないし五十アールに引き上げる問題に関しましては、まず経営規模の小さい農家が多い地域。これは特に西日本地方や大都市近郊、山間部で顕著でありますが、このような地域では加入の減少や逆選択加入等によりまして事業運営が困難になるなど、共済事業の存続にまでかかわる問題になるということ。言いかえれば、保険の手法をとっておりまする農業共済制度では、小規模農家も含めまして加入を広げ、より安い掛金で安定的に事業を運営する必要があるのに、これが困難になるということでございます。  また、加入基準の引き上げによりまして未加入農家が散在状態になってまいりますと、相互扶助精神の強い農村社会を分断してしまうことになり、農業共済団体が取り組んでおります病害虫の防除など損害防止事業の効果的な実施が極めて困難になってしまうとともに、ひいては共済不要論の火種ともなりかねないということ。さらに、現在共済事業の円滑な実施制度の普及推進等のために御協力をいただいておりまする損害評価員や連絡員の体制が崩れまして、共済事業全体の運営が立ち行かなくなるのではないかということ等の強い意見が出されまして、加入基準引き上げにつきましては、これは是認できないといってとであったのであります。  また、農作物共済掛金国庫負担を改めまする問題につきましても、任意加入農家と当然加入農家とで差を設けることは論外といたしまして、これを二分の一に改める問題につきましても、掛金国庫負担割合が高率だから見直さなければならないと言われているけれども、災害復旧事業など他の災害対策の諸施策の国庫補助は、補助率五〇%から被害の深度に応じまして高くなっているのであるから、農業共済制度農業災害対策の根幹であるという視点があるのでありますならば、現行の国庫負担は決して高い国庫負担補助率ではないではないかということ。また、時に異常な大被害をもたらすことのございます自然災害を対象としておりまする農業共済制度にありましては、掛金国庫負担は、災害対策の観点から、異常な災害に係る部分につきましては、極力、これを災害を受けたところの農家の負担にしないように国が特別に措置すべきではないかという意見などが強く出されたわけであります。  以上のような意見でありましたので、これをもとに、先ほど申しました制度対策委員会といたしましては、制度改正問題についての考え方を取りまとめ、全国の会長会議に付したのでございます。  それは、当然加入基準の引き上げは制度の根幹にかかわる重要問題であり、このことは水稲共済だけでなく他の共済事業に及ぼす影響も大きく、制度並びに組織の崩壊につながるおそれがあるので反対であり、現行政令基準は堅持すること。  もう一つは、農作物共済掛金国庫負担についても現行方式を堅持することとし、これを二分の一にすること、つまり超過累進制を廃止することでございますが、これにつきましては反対である。  最後に、果樹共済、園芸施設共済の事業責任分担の改善、果樹共済収入方式等の実現につきましても農林水産省に実現方の御配慮を願うというものでありまして、全国会長会議ではこのとおりの決定をいたしたのでございます。  これより先の段階で、今回の改正案では落ちておりますけれども農林水産省考え方の中には、豚の共済掛金国庫負担を改善する考えが入っておりましたので、これは当然実現さるべきものとしておりました。また今回の改正案の中の農作物共済掛金国庫負担方式の合理化以外の事項、すなわち農業災害補償法の一部を改正する法律案要綱第一の危険段階別共済掛金率設定方式の導入、第三の家畜共済共済目的の追加、いわゆる肉牛の子牛及び胎児を新たに制度の対象とする事項、第四の果樹共済共済金額の上限の引き上げ並びに収穫共済共済責任期間の特例、第五の園芸施設共済の施設内農作物についての病虫害事故除外制の導入等は、それぞれの組合が選択実施できる道を開くというものでございますし、かねて全国会長会議の審議で実現方を要請した経緯のあることでもございますので、これは結構なことであるということであったことを申し添えておきます。  この決定に基づきまして関係者挙げての要請運動が進められ、また十二月五日の全国農業共済大会では、決議の第一項目で、農作物共済掛金国庫負担、当然加入制度等の根幹については現行を堅持することが採択されたのであります。その決定を受けまして、全参会者によりますこの決議実行運動も幅広く展開されたのでございます。このようなことで、国会議員の諸先生方の御理解ある御協力と農林水産省の格別の御努力をいただいたのであります。  その結果、昭和六十年度予算案の決定段階で、制度改正に係る基本的事項が取りまとめられました。それによりますと、豚の掛金国庫負担の改善は見送られ、当然加入基準農作物共済掛金国庫負担の問題は財務当局の当初の要求よりは緩和されまして政府案の骨子として取りまとめられたのでございます。すなわち、当然加入の基準掛金国庫負担につきましては、強く団体が反発しておりました当初の案よりは、幾分現実的な内容となったのであります。私たちは、これを農業共済団体の要望も幾らか組み入れられたものとして理解している次第でございます。  農業共済団体において責任ある立場にございます都道府県農業共済組合連合会長の皆さん方も、現下の財政事情等は十分承知されておるのでございますが、そうだからといいまして、大会決議のこともございますし、決してゆとりのあるとは言えない組合農家の負担が重くなる事項を含む今回の改正案については、全面的に賛成というわけにもまいりません。  以上のような事情で、一月二十九日開催の全国会長会議において慎重に協議の結果、今回の農業災害補償法の一部を改正する法律案につきましては、初めに申し上げましたような、案については全面的には賛成できないが、法律案についての積極的反対運動はしないという態度をとることになったものであります。  なお、農業共済団体では、制度、事業をめぐる情勢がだんだん厳しくなってくる中で、六年前から、確かな補償実践運動という農業共済団体挙げての事業推進等の運動を進めてまいっております。運動の基本は、農業共済事業の確実な実施と完全補償の実現、組合等運営基盤の再編整備、農業の変化に即応した制度等の実現という三つでございまして、具体的な事項といたしまして、昭和六十年度は、このたびの制度改正の動きなども考えながら、組合等運営組織体制を一層充実強化すること、損害防止活動、農家サービス活動を積極化し、損害補償との有機的結合を図ること、農業共済団体役職員の自助機能を高め、職場を活性化することの三つの事柄を取り上げ、これを実践して制度の機能を総合的に発揮することとしております。このようにして、農家から一層信頼される制度、事業の運営を実現するよう努力することを申し合わせ、新年度に入って全組織を挙げての運動を展開中でありまして、事態の変化に対応してまいるつもりでいるわけであります。  しかしながら、これら事態の変化、地域農業の特性などに対応しながら成果を期するためには、事業全般にわたってそうでありますが、特に、当然加入基準の緩和によって増大する任意加入対象農家制度に進んで参加できるようにすることも重要でありますので、運動でも取り上げておりまする病害虫の防除等損害防止活動等によりまして農家へのサービスの拡充に努めるのはもちろんでありますが、各種農業関係施策、特に制度金融等の融資制度農業共済制度との関連づけが重要になってまいるわけでございます。  また、団体事務国庫負担金が昭和六十年度から定額交付金化されました。このことにも関連いたしまして、事業の一層の拡充のためには、団体としてのその地域その地域の特性に合った、創意とそれによる闊達な活動ができるように、規制の多い現在の行政指導を再検討していただくことが重要になってまいります。これらの問題は、共済団体としてこの機会にぜひ措置していただきたい事柄であります。  以上のような次第でございまするので、何とぞ私どもの気持ちをお酌み取りくださいますよう特にお願い申し上げまして、この法律案に対しまする意見にかえさせていただきます。終わります。(拍手)
  116. 今井勇

    今井委員長 ありがとうございました。  次に、平林参考人にお願いいたします。
  117. 平林利夫

    ○平林参考人 ただいま御指名をいただきました平林利夫でございます。私は、現在、北海道農業共済組合連合会の理事とあわせまして芽室町農業共済組合組合長を務め、みずからも三十六ヘクタールの畑作専業経営者の一員でもあります。  このたび本委員会におかれましては、農災法の一部改正に伴いまして広く意見をお聞き取りされるに当たり、私にも発言の機会を与えていただきましたことにつきまして、まことに光栄に存じ、委員各位に心より感謝を申し上げる次第でございます。  私どもの芽室町は、約一千戸の農家平均二十ヘクタールの耕地面積を有しながら、小麦につきましては全体で四千ヘクタール、畑作につきましては一万ヘクタール、さらに家畜七千頭のすべてがこの共済制度に依存をしているわけでございまして、今回の改正の影響の大きさを非常に強く感じている地区でもございます。ここで、同じ形態であり、さらに大きな規模を持っております北海道全体を眺めながら意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  第一に、農業共済事業につきまして気象条件は非常にかかわり合いの深い大きな条件でございますけれども、本州に比べますと恵まれた条件というものは一つもございません。そのあらわれといたしましては、昭和五十五年から五十八年に至ります連続災害におきましても、本州各地と比較いたしますと非常に深い災害を受けているわけでございますが、こうした大災害を避けて通ることのできない宿命も背負っているのが北海道農業の特色であります。したがいまして、少しでもこうした災害を逃れるために、北海道は北海道なりの、主産地を中心といたしました適地適作、あるいは適経営に至りますまで、十分に備えているつもりではございましたけれども、連続の災害はそれらも覆しまして、農家負債の増圧を招き、農家経済の逼迫の度を強めているわけであります。  このような基調を背景にいたしまして、共済事業も、北海道全体といたしましては、水稲、麦を擁しております農作物共済、加えまして畑作物あるいは家畜共済等三つの柱のほかに、果樹、施設園芸等を含めますと、その補償金額も五千億を超えるに至っております。こうした多くの補償額を数多くの農家に約束をいたしましての共済事業でありますが、昭和五十五年度には全道で八百六十三億円の損害額に対しまして三百九十五億円を補てんし、引き続きまして五十六年にも、千三百十五億円の損害額に対しまして三百九十四億円を補てんいたしているわけでございます。  ここで、従来から農業災害の対策として農業共済とともにありました融資の問題を取り上げてみたいと思います。十九年前にさかのぼりまして昭和四十一年でございますが、この年も北海道では五百八十億円の非常に大きな損害を出したわけでございますけれども、当時その損害額に対しまして、一六%に該当いたします九十三億円を共済金で補てんしたにすぎなかったのでございます。その反面、融資の方を見ますと、二九%に当たります百六十六億円でございましたものが、その後の制度の条件整備の結果といたしまして、昭和五十八年には千五百三十一億円の北海道始まって以来の損害が発生したわけでございますけれども、このときに至りまして、損害額の四二%に当たります六百三十七億円を共済金で補てんしたのであります。それに対しまして融資の総額が一五%の二百三十六億円にとどまりまして、以前と比べますとその立場を逆転したわけでございます。さらに、家畜につきましても、例年死廃事故は七十億円弱の補てんをいたしておりますが、そのほかに目に見えない病傷事故に対しましても五十億円強の、合わせまして百二十億円の恩恵を受けているわけでございます。  これによりまして被災農家の再生産を確保し、結果といたしましては各地の農業協同組合にも実質的な支援を送ってまいったのでありますけれども、ひとり農業者だけがこの恩恵を享受していたということはないわけでございまして、災害の非常に深く発生いたしました昭和五十八年度におきましては、北海道民の生活の活性化を開発し、その効果ははかり知れなかったのでありまして、当時、北海道の経済の危急を救ったとまで高い評価をいただいたわけであります。  このように、北海道の経済面でも農業共済は不可欠のものであり、さらに、農業も補助から融資政策への転換を迫られております中、多くの作物も行政価格で律せられております現在、農業共済は災害による減収の補完的な役割を担い、農政の安全装置を担当しております現実から、既に十分の担保能力を付与するにふさわしい条件を備えているのではないかと感じているわけでございます。したがいまして、このたびの改正案に対しましては、これまでの改正と異なり、大変困るものと期待するものがあるわけでございますが、特に、制度の後退が改善を大きく上回ったというところに私どもは困惑をいたしているわけでございます。  その中心となるものが農作物共済掛金国庫負担別表改定であります。連続災害の後を受けまして、従来から三年ごとに設定をされておりました水稲、麦につきましては、北海道は一七%、これは水稲でございますが、麦につきましても七%上昇するわけでございますけれども、このたびの国庫負担の別表改定でさらに二〇%、麦は二一・七%の影響を受けるわけでございまして、合算いたしますと、水稲で現行の四〇・四%、麦につきましては三〇・五%の上昇につながりまして、北海道全体といたしましては、実額で約二十八億円の農家負担の増高につながるわけでございます。  ここで、もう少し具体的に私どもの芽室町の実態を申し上げますと、現在、十アール当たり農家負担掛金が四千百円でございますが、今回の料率改定の分が十アール当たり二百八十八円、別表改定によりますものが実に千三百七十七円に達するわけでございまして、改定後の十アール当たりの掛金は五千七百六十五円に達するわけでございます。したがいまして、四千ヘクタールの規模で申し上げますと、現行一億六千万円程度のものが二億三千万にまではね上がるのでございますが、この大幅増高につきましては、私どもは、現実に困るの一語に尽きるのであります。今後、これ以上後退することは絶対にないようにお願いを申し上げる次第であります。しかしながら、検討の過程中、一律五〇%と言われました最悪の事態だけは回避されました御努力に対しましては敬意を表したいと存じますし、畑作共済が無傷で終わりましたことに対しましても、全国の大部分を占めております北海道の十四万ヘクタールの引受実績から考えましても高い評価をいたしている次第でございます。  次に、改正案に期待する事項といたしましては、肉牛の生産共済でありますが、肉牛農家長年の期待にこたえたものとして評価をいたすところでありますけれども、今回、料率設定の基礎の調査がなされていないということで見送りになりました乳用牛から生産されます雄子牛、いわゆるホル牡犢でございますが、北海道で近年生産されます肉用子牛に振り向けられますものが年間二十二万頭生産されるわけでございますけれども、そのうち乳用牛から出てまいりますホル牡犢が七〇%を占めている実態を十分御認識いただきまして、早期に調査、実現に向けて御努力をお願い申し上げるわけでございます。  なお、果樹、園芸施設及び畑作物共済の高級インゲンの対象品目導入につきましては、特定する事項はございませんけれども、道連合会の理事立場といたしましては歓迎をいたしたいと存じます。  私は、総合的に今回の改正案につきましては、全国的に意見を集約され、長い間検討を続けていただきました農業共済制度対策委員会結論どおり、農家負担の増高につながるものに対しましては賛成いたしがたいわけでございますけれども、改善策もあるので積極的な反対は避けてまいりたいと存じます。しかしながら、今後のことにつきましては、もし後退があるということになりますと、私ども立場から全く好ましいことでないということで、完全に歯どめをかけていただきます。さらに、今回改善されました家畜共済分野で、豚に対する掛金国庫負担改善も期待していたところでありますが、実現を見ず、まことに残念であります。さらに、無傷ではありましたけれども、畑作物共済の関連事項といたしまして、かねてから要請申し上げておりましたてん菜等の足切り問題を中心に給付の改善の強力な推進方もあわせて特段の御配慮を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。  以上で意見の供述を終わりますが、最後までお聞き取りいただきましたことに心から感謝申し上げ、終わりたいと存じます。(拍手)
  118. 今井勇

    今井委員長 ありがとうございました。  次に、遠藤参考人にお願いいたします。
  119. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 ただいま委員長より御指名を賜りました日本園芸農業協同組合連合会、日園連の専務理事をいたしております遠藤でございます。  農災法の今次改正法案につきましての国会審議に当たりまして、本日参考人として意見を申し述べる機会を与えてくださいまして、大変ありがたく思っております。  冒頭、本題に入ります前に、私は諸先生方に対して、全国八十万果樹生産者の共通した気持ちといたしまして、ぜひともお礼を申し上げたいことがございます。  昨年四月、牛肉と並んでオレンジをめぐります日米農産物交渉が御案内のような結果で終結いたしました。四年後の再協議まで合意されたこともございまして、果樹産地で果物づくりに励んでおります生産者たち、なかんずく大幅な減反を強いられておりますかんきつ農業者の受けた衝撃は極めて大きく、動揺も非常に大きかったのでございます。  そうした事態に対処いたしまして、諸先生方におかれましては、いち早く総額四十五億円の緊急対策特別基金の造成を決めていただきまして、また、ただいま参議院で御審議賜っております農業改良賢金制度の中に新たに組み入れられます無利子の果樹栽培合理化資金の創設、さらには、先日の衆議院本会議におきまして可決成立させていただきました果振法の実態に即しました改正など、こうした一連の充実した内容の事後対策を、しかも極めて短期間内に講じていただいたわけでございます。財政再建あるいは行革、市場開放対策の推進と、農政運営をめぐります環境がかつてないほど厳しさを加えてきておる今日の情勢に思いをいたせばいたすほど、生産者を励まし勇気づけていただきました果樹対策の強化につきまして、諸先生方の御配慮に本当に感謝せずにはおれないわけでございます。ありがとうございました。  ところで、本題の農業共済制度の今次改正案について、私は果樹共済関係の事項に限定いたしまして生産者の立場から意見を述べさせていただきます。  諸先生方篤と御承知のように、農業生産の選択的拡大がかつてうたわれました当時、成長作物のエースといたしまして事実生産量が倍増した果樹農業ではございますが、昭和四十七、八年を境にいたしまして需給の基調がすっかりさま変わりいたしまして、自来今月まで、まことに苦渋に満ちた長い過剰時代を経験してまいりました。ピーク時の栽培面積のちょうど三分の一にも相当するミカンの大幅減反を初め、新植の抑制措置がとられております中晩かん、さらにリンゴ、ブドウ、オウトウと、果実総生産量の約八〇%を占める果実が、現在、減反ないし新植抑制の対象になっている現状であります。  胃袋満杯のこの飽食の時代の中で、一人当たりの果実消費量は依然減少傾向が続き、私どもどうしてもこれに歯どめをかけることができないでおる今日でございます。果物に対する消費者のニーズが確実に少量多品目型に変わりまして、しかも味や鮮度に対する選別が大変厳しくなっている昨今でございます。国産果実の生産量の二割にも相当します輸入果実も交えまして、品質と価格をめぐる文字どおり激しい競争の時代が続いているのであります。果樹栽培に取り組んでおります生産農家がこうした競争時代に生き抜いていく道は、ともかく味のよい高品質の果実をつくり上げること、しかも単位当たり収量を目いっぱい上げること、そして果樹特有の隔年結果をできるだけ防いで高い単収をコンスタントに維持すること、つまり高品質、多収、安定生産に徹すること以外に手がないのでございます。  しかし、そうは申しましても、農業の宿命といたしまして、気象条件の変化に伴う作柄の変動を個人の技術をもって克服するには限度がございます。とりわけ、年間を通じて気候の変化が大きいこの日本の国土で栽培する作物の中で、植えてから二十年あるいは三十年、それ以上に及びます寿命の長い永年性作物でありますゆえに、一年に一回勝負の稲や麦などのように、品種や栽培方法を変えて台風や雨の多い時期を避けるような器用さは持ち合わせないのであります。野菜のようにもう一度種をまき直して短期間に収穫を上げるわけにもまいりません。被害の発生頻度が、例えば水稲あたりに比べましてずっと高くなる宿命を背負っておりまして、しかも、一度被害を受けますと、その後遺症が次年度生産以降にまで残り、回復までに時間がかかるというケースも決して珍しくないのでございます。永年性作物でございますゆえ、気象災害の影響を受ける頻度の高い果樹のこうした特性を考えますとき、栽培農家の経営の安定を図ります上におきまして農業共済制度に期待される役割は、本来、一年性作物にも増して大きいものがあると考えます。この点を私は第一に強調しておきたいと思います。  しかし、それにもかかわらず、果樹共済事業実態は、昭和四十八年の本格実施以来、既に十二年を経過しております。しかも、この間、五十五年に半相殺方式の導入や無事故農家に対する掛金割引制の導入を初め、果樹生産者が受け入れやすいような制度仕組みに改めるべく大幅な改正が行われましたものの、生産者の加入状況が依然として低い水準にとどまっております。任意加入とは申しますものの、昭和五十八年の実績で見ますと、引受面積率が収穫共済で二六・三%、樹体共済に至りましてはわずかに五・五%にすぎず、五十五年の制度改正が果樹栽培農家の加入意欲の喚起にどれほどつながったものか、その効果を必ずしも確認できかねるような思いがいたすわけでございます。まことに残念なことでございます。  こうして、五十五年に大幅な改善措置がとられましたにもかかわらず、この制度が依然として果樹生産者から高い支持を得ていないこと、特に大方の見方といたしまして、果樹農業に生活をかけます意欲のある専業的農業たちの間で魅力のある制度として受け取られていないことは事実だと思います。果樹共済に関する今回の制度改正に当たっては、このような現実についての厳しい認識を前提に置かなければならないと思います。そして、その実態についての克明な分析、そしてきめ細かな原因の追求をしっかりなされることを基本に据えなければならない、そういうふうに私は考えます。  ここらあたりを十分に踏まえました上で用意されたものと思います今回の制度改正内容について、意見を申し上げます。  改正の第一点は、従来、組合ごとに一律に定められておりました共済掛金率を改めまして、農家ごと被害状況グループ分けして掛金率設定できるようにしたことであります。料率を細分化することによって被害の少ない農家に対して掛金率を低くする道を開こうとするものである、そういうふうに受け取っております。  もともと技術集約的な果樹作の場合、稲作あたりと違いまして農家間の技術の平準化には限度がございます。特に価格の長期低迷に伴う採算難が恒常化いたしておりますミカンの場合、同じ産地でも、私が先ほど申し上げました高品質、多収、安定生産を忠実に実行して生き抜こうとする農家と、片や、栽培管理の手抜きが目立つ農家と、この二極分化の傾向が、最近とりわけ目立ってきておるわけでございまして、それが収量と品質の面にはっきり出てくるようになっております。こうした果樹経営の実態に即した改善措置として歓迎いたすものでございます。  改正の第二点は、暴風雨またはひょう害のみを対象といたしました半相殺特定危険方式について、省令改正をもって新たに凍霜害を追加し、これらをセットで加入できる方式を新設したこと。さらにそれとあわせまして補償水準を現在の七割から八割に引き上げることにしたことでございます。  栽培管理に熱心に取り組み、病虫害の発生が少ない優良農家の保険需要にこたえます上におきまして、自然災害のみを対象とした、しかも料金の安いこの特定危険方式拡充強化が一番得策だと考えます。特に落葉果樹やナツミカンの栽培農家にとって危険意識の高い凍霜害を共済事故に加えていただいたこと、また、各果樹とも生産費が近年上昇傾向にありまして所得率が低下するなど、果樹経営の収益性の実態に対応いたしました補償水準の引き上げなど、特定危険方式についての今回の拡充措置は、掛金率へのはね返りを考慮に入れましてもまことに結構なことだと思います。  第三の改善措置として、果樹共済事業の引受面積の七割近くを占めます半相殺減収総合方式につきまして、共済責任期間の始期を発芽期あるいは常緑果樹の場合は開花期からにするようにいたしまして、短縮できる道を開くことにしたことでございます。  現行制度では、共済責任期間が花芽の形成期から収穫まで一年半から二年にも及ぶほど長いために、当年産の収穫が終わります前に次の年の収穫される分の掛金を支払わなければならないということになりまして、農家にいたずらに負担感を与え、そのことが加入推進の上で障害になっている面もあると承っております。発芽期以前の被害が少ない落葉果樹の生産者から特に強く出されてきた要望であり、適切な措置と考えます。  以上を総括して申し上げますと、果樹共済制度のシステムについて政府が用意されました今回の改善措置は、いずれも果樹生産者がかねて要望してまいりました事項でありまして、これにこたえていただいたものとして、全面的に賛成するものであります。  私は、今回の制度改正の全体についてここで口を挟むことは差し控えさせていただきますが、少なくとも、果樹共済に関する改正は、果樹経営の実態に即して生産者の保険需要にできるだけこたえようとした前向きの改善措置として受け取っております。したがいまして、ぜひとも早期に実現していただくよう、諸先生方の御協力をお願い申し上げる次第でございます。  その上で私は、改正後の制度運営について改めて注文したいことがございます。  と申しますのは、果樹共済制度を組み立てるシステムが、このようにきめ細かく改善いたしましても、それが産地の生産者、特に肥培管理に熱心で産地の中核となっている専業的農家層に受け入れられ、その加入率を高め、ひいては保険収支の改善につなぎ得るものかどうか、率直に申しまして若干の疑問を持たざるを得ないのであります。  果樹産地で共済制度への加入状況が思わしくない原因はどこにあるのか、被保険者としての生産者の間から出てきております意見を若干紹介いたしますと、まず一つは、掛金が年々上がり水準が高いという負担感がつきまとっておるようでございます。もう一つは、制度仕組みが難解でなかなか理解されにくいということであります。それから三つ目は、以前に比べても共済金の支払い額が少ないということ、そしてそれにつながることではございますが、基準収穫量の査定が平年収量とはいいましても低過ぎるというような不満が特に精農家の間で強いようでございます。制度仕組み農家の損害感のずれがどうも大きく感じて仕方がないのでございます。もう一つ、特に肥培管理に熱心な農家たちの間で、病虫害の被害まで面倒を見るこの制度は惰農奨励ではないかと受け取る向きも強いということを指摘せざるを得ないわけでございます。  五十五年に次ぐ今回の改正は、こうした農家側の不満に対しまして保険設計上支障を生じない範囲で対応していただいた措置と理解しています。  それにいたしましても、果樹共済の加入状況について少し立ち入ってみますと、例えば樹種別に比較しました場合、五十八年の実績で、ナシや伊予カンないしネーブル等の指定かんきつの引受率は四〇%前後に達しているのに対しまして、ナツミカン、桃、ビワ等はいずれも一〇%台と低く、必ずしも被害の発生頻度に比例していないということであります。また同じミカンでも、名前を挙げて恐縮でございますけれども、例えば古い大産地として肩を並べる和歌山県と静岡県を比較しました場合、片や六割台に対しまして片や一割にも満たないという差があります。それぞれの県の農業の中での果樹作のウエートの差あたりが大きく関係しているとは思いますが、開きが余りにも大き過ぎるようでございます。さらに、同じ県内でも市町村の間で、また同一の市町村内でも地区によりまして加入状況にかなり差があるのも事実のようであります。  同じ制度仕組みの中で加入状況に以上のような差が出てきているのはなぜか。いろいろな原因がございましょうが、想定される一つの大きな要因といたしまして、共済事業の第一線を受け持つ組合の事業に取り組む意欲なり事務処理能力などの差が多分に影響しているのではないでしょうか。組合段階における果樹共済の引き受け及び損害評価に係る事務処理が複雑煩瑣であることから、現場職員の事業推進意欲が低調にならざるを得ない面があるのではないかと推察いたしております。もしそれが事実でございますならば、制度自体のシステムがせっかく改善されましても現場でうまく対応できず、したがって農家の加入促進になかなかつながらない、つまり、せっかくの制度改正が現場で十分に生かされないことがあり得るのではないでしょうか。  今回の改正による料率の細分化にいたしましても、それを実施するかどうかは組合の判断に任されています。したがいまして、きめ細かく適正な料金改定がきちんとやれるものかどうか心配しているものでございます。  制度運用面の事務手続についての合理化あるいは簡素化に中央におきましてもっと知恵を出していただくということと、あわせて、組合果樹共済の業務を担当する専任職員を配置して、産地の実態に応じたきめ細かな、しかも適正な事務処理ができますよう、合併等による体制整備をともかく急いでいただきたいとお願いするわけでございます。  こうした組合の積極的な事業推進体制づくりに関連いたしまして、私は農協に所属する立場からぜひとも申し上げなければならないことがございます。  それは、農業共済組合果樹共済に関する事業運営に対して、地元の農協が役員を初めとして積極的に支援をする、協力を惜しんではならないということであります。果樹栽培農家共済制度に加入することは、農協にとって組合員の所得の安定につながることでございまして、ひいては農協自体の事業展開にも直接寄与するものだと考えます。組合の引き受け及び損害評価の事務処理の上で、農協の販売事業あるいは営農指導事業が所管する資料の提供が必要とされております。損害評価員としての協力あるいは推進協議会の設置やその活動への支援も当然であります。いずれにいたしましても、果樹共済の事業推進に積極的に取り組んでいる組合は、総じて農協との協調体制がうまくできていると見て間違いないようでございます。  最後に、果樹共済制度の将来のあり方といたしまして、制度自体の基本にかかわります事項について希望意見をつけ加えさせていただきます。  申すまでもなく、果実は、米のように流通チャンネルが国によって統制され、作況のいかんにかかわらず生産者価格が一定しているものとは違いまして、完全競争の商品であります。したがいまして、豊凶変動がストレートに価格の騰落を引き起こします。気象災害で収量が減りました場合、価格の高騰によって手取り収入額がかえってふえているのに共済金が支払われるというような、矛盾した現象も起こり得るわけでございます。  考えてみますと、災害に対する農家の損害感というのは、生産量の減少より収入額が減ったことによる経済的損失であると見て間違いありません。そうだといたしますならば、農業共済事業が究極的には経営の安定を目指す制度であります以上、収量の減少よりは価格変動を媒介とする収入額の減少を基礎に置きました損失補てんの方法、すなわち収入共済方式の方が農家の損害感にマッチしたものだと言わざるを得ません。もちろん、こうした考え方に対しまして、作物保険として、災害とは全然関係なく価格変動によって生じた豊作貧乏の面倒まで見なければならないのではないかという反論もあることは承知いたしております。  ここで理論的な問題の追求はやめるといたしまして、ともかく五十五年の改正によりまして収入方式を最大限に生かした手法として災害収入共済方式が試験的に実施に移されております。この試験事業の経験を十分に踏まえまして、将来に向かって作物保険に収入方式を取り入れていただく方向で、その可能性について前向きに研究を急がれるよう強く要望する次第であります。  以上、参考人としての意見開陳を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  120. 今井勇

    今井委員長 ありがとうございました。  次に、内藤参考人にお願いいたします。
  121. 内藤進

    ○内藤参考人 私は、全国肉用牛協会の内藤でございます。  本委員会に御出席させていただき、参考意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことを厚く御礼申し上げます。  私は、本改正案のうちの肉用牛に関係のあります家畜共済の問題につきまして、若干意見を申し述べたいと存じます。  家畜共済に関する本改正案の要点は、従来の制度では生後六カ月以上の牛を共済目的としておりまして、これ以下の子牛は共済の対象に入っていなかったわけでございますが、今回の改正案によりますと、共済目的を拡大する、つまり肉牛の子牛並びに胎児を新たに共済目的に加えることができるようにされたことであると承知いたしております。  御案内のように、肉用牛の生産は一部に繁殖と肥育を同じ経営で行う、いわゆる一貫経営が普及しつつございますけれども、現在の大多数の肉用牛生産では、繁殖を行う農家と肥育を行う農家とに分かれておるのが実情でございます。  そこで、繁殖農家においては、その生計を維持し、経営の拡大を図るための主たる財源が子牛の販売収入であることは申すまでもございません。その収入源であります子牛が事故に遭って売れなくなったり経済的価値を失うような事態になることは、その経営の維持に大きな支障となるものであります。このことは、ちょうど果樹におきまして収穫がなくなった状態とよく似ているように思うのでございます。加えまして、家畜の場合には母牛の飼養管理に相当の経費をかけていますので、農家の感情からいたしますと、それがそっくり報われなかったというような感情を持つのではないかというふうに思います。  現在、肉用牛繁殖農家は約二十四万戸でございまして、肉用牛農家全体の七割以上の比重を持っておるところでございます。その飼養規模は最近少しずつ拡大傾向にはございますけれども、それでも一戸当たりの子取り用雌牛頭数は全国平均で三頭という状況でございます。しかも一、二頭飼い農家が全体の三分の二を占めておるという実情でございます。我が国の肉用牛素牛の供給は、このような零細な繁殖農家によって支えられているというのが実情でございますが、このような農家におきまして一頭でも子牛の損失が生じますと、現在では一頭当たり二十万、三十万というかなり高価なものでございますから、その収入の減少は肉用牛経営にかなり大きな打撃を与えることになるわけでございます。  御承知のように、繁殖農家の中にはお年寄りや御婦人が牛飼いを担当しておられる事例も各地で見られるわけでございまして、このような方々にとりましては子牛を売ったお金はいわば一年一度のボーナスのような意味を持っておると思います。このボーナスを楽しみにしながら日夜牛飼いに励んでおられる方々が少なくないわけでございます。また、農業以外の就業の機会が少なくしかもその農業自体も厳しい環境に置かれております山村におきましては、子牛の収入はボーナスや小遣い以上の意味を持っていると思うわけでございます。  こういう方々にとりまして、売る子牛がなくなってしまう、あるいは病気のために多額の治療費がかかってしまったという事態が起きますと、大きな失望にもつながりますし、以後の牛飼い意欲を喪失させる原因にもなりかねないと考えます。牛飼いを主業的にやっておられる方々にとりましても影響が大きいことは、もちろん言うまでもございません。  このような事情もございまして、近年肉用牛生産者の中から、子牛を共済に加えてほしいという要望が出てきておりまして、一部の地方では、農業団体等が自衛手段として子牛の事故に対する救済事業を講じておられるところもあると聞いておりますが、概して資金的に苦しい状況にございまして、せっかくの事業を廃止せざるを得なくなったところもあるようでございます。こういうものはもっと大きな規模においてやるべきものとして、今回国の制度ができますれば、これに移行したいと考えておられるところも多いようでございます。  子牛の死亡のような事故につきまして、全体から見ればわずかな比率ではあっても、被害を受けましたその農家にとりましては、経済的なダメージが経営全体に影響を及ぼしかねないことは今申したとおりでございます。特に、かつて、昭和四十年代の後半でございますけれども、西日本を中心といたしましてアカバネ病と称する異常出産、つまり死産とか流産、あるいは奇形子牛の出産などが相次ぎまして、繁殖農家に大きな影響を与えたことがございます。この病気はアカバネウイルスの感染によって起こるものでございまして、蚊のような吸血昆虫が媒介すると言われている病気でございます。現在ではワクチン注射などの防疫によりまして、発生頭数はかなり減少はしておりますけれども、全くなくなったという状況ではございませんで、この病気は数年間隔で周期的に発生する病気であるとも言われておりますので、今後、いつ、どこでこのような被害が起きるかもしれない状況にあるわけでございます。  そういう意味におきまして、今回の改正案におきまして、現行の六カ月以上の牛に加えまして、六カ月未満の子牛のみならず、妊娠八カ月以上の胎児まで共済目的に加えていただくことは、大変適切なことであると存じます。  御存じのように肉用牛の飼養は、国の各般にわたります施策と関係者の努力によりまして近年増加しつつございまして、現在、乳用種を含めまして二百五十四万頭になっておりますが、反面、現在の肉用牛生産は大変厳しい環境に置かれている状況でもございます。特に繁殖農家にとりましては、長期にわたります子牛価格の低迷によりまして、経営的にも大変苦しい情勢にあります。昨年の六月ごろには一時二十万円台に下がった子牛価格も、現在では二十五、六万円となってきておりますように、価格の回復が見られるわけでございますが、まだ多くの道府県におきまして県が定めた保証基準価格を下回っておる状況でございまして、子牛価格安定制度によります生産者補給金で支えていただいておる状況でございます。子牛価格の低迷によって増加した雌牛の屠殺も、最近、価格の回復によって鈍化してきたとは言われておりますけれども、土地利用型農業の基軸とされます肉用牛生産の進展と国民への牛肉の安定的供給を図るため、そのもとになります繁殖農家の経営の安定を図りまして、肉用雌牛の維持増大を図ることが当面の大きな課題であると考えておるところでございます。  このような繁殖経営の現状におきまして、生産者は国や県の御指導をいただきながら、経営の改善強化のために日夜努力しておる最中でございます。そのために、飼料基盤に立脚した経営内容の向上や、経済的、効率的な肥育の推進、あるいは家畜改良、生産効率の改善など、重要な課題目標と取り組んでいるところでございます。分娩間隔の短縮の問題とか、子牛の事故率の低下の問題など、こういった努力はまことに大切な問題であると考えておるところでございます。  しかしながら、今の肉用牛生産を取り巻く厳しいもろもろの情勢を考えますと、こういった課題が短時間で達成できるとは思えない状況でございますが、一日も早く肉用牛生産を足腰の強い体質につくり上げ、競争力のある産業となるように努力を傾注しているところでございますので、それまでの間、従来から肉用牛生産に賜りました助成、御援助に加えまして、本改正案に盛られました子牛等の共済制度のような災害補償の強化についても、特段の御配慮とお力添えをいただきたいと存じます。  以上、本改正案の家畜共済の問題につきまして賛成を申し上げまして、私の意見の開陳を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  122. 今井勇

    今井委員長 ありがとうございました。  以上で、参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  123. 今井勇

    今井委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松田九郎君。
  124. 松田九郎

    ○松田委員 参考人には、大変お忙しいところ貴重な時間を割いて、私ども委員会の審議に御理解と御協力をいただいておることについて、まずお礼を申し上げます。ありがとうございます。  本員が質問をいたしますことの内容は、参考人にお尋ねするよりも政府側に尋ねたらどうかということがあるいは多いかもわかりませんから、その点はあらかじめお含みの上お答えになってしかるべきだ、こう思いますからよろしくお願いします。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕  まず最初に須藤参考人にお尋ねをするわけですが、今日の農業共済組合合併問題ですが、全国的にこの趨勢を見てみると必ずしもうまくいってないじゃないか。いわゆる広域の合併、一郡一市などということもその中間的取り扱いとして出てまいっておりますし、まだ合併が緒についていない昔のままの小さい共済組合、言うなればこういう三つのグループに大きく分かれておるのじゃないか、私はそう思うのですが、この合併問題について須藤参考人はどのように対応しようとされておるか、あるいはその指導理念というものはどこにあるのか。  もう一つ、この問題に関連してあえて申し上げますならば、ややもすれば、末端の農業共済組合合併の支障と考えられる中に人事問題がある。平林参考人のように、現場で長く土に親しみ、その経験があり、現にその衝に当たっておるあなたのような立場の人がやるときには必ずしも抵抗を感じないけれども、私の県なんかで言うと、農の字に何の関係もないいっぱしの政治家が、やれ連合会長になるとか末端の支部長をやるとか、そういう者がおるんだが、そういう者を組織の中に入れる体質に問題があるというように私は思う。だからそういうことについて、連合会のいわゆる最高幹部である須藤さんはどのようにお考えになっておるか。  もう一つ農業共済と農協共済。これは私見だから党の意見ではありませんが、私見をあえて言うなら、現在のように国庫負担率が下がってきた等のことも考え合わせれば、私は屋上屋を重ねるような共済よりも、むしろ農協共済を、人件費節約、機構の簡素化からしてもこの際こそやってみたらという気もするわけです。そこら辺についてお考えを聞いておきたい。
  125. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいま御質問ございましたのはたしか三つにわたるのじゃなかろうか、かように存じます。  第一番目のいわゆる組合合併についての問題でございますが、実はこれは大変難しい問題でございます。名前にもございますように農業共済制度でございますから、共済という考え方が通る地域というのは、村とか小さく言えば集落になってしまうのじゃないか、かように存じます。ただ最近は、御案内のように通信、交通等がなり発達してまいりまして、そういった昔の村とか集落とかの中の関係がかなり広く及ぶようになってきているのじゃないか、かように存じます。一方、共済は保険事業ということで言われておるわけでございますが、保険という立場からいたしますと、危険の分散をも含めまして区域が広ければ広いほど事業の効率がよくなるという問題があるわけでございます。あわせまして、経費等につきましても、そういうふうに広くなればなるほど合理化されてまいるという面がございまして、それがある意味では加入者の負担の軽減につながるということに相なるわけでございます。そういう次第でございまして、大変難しいということを申し上げたわけでございます。したがいまして、地図の上に郡境なら郡境を追っていって線を引いてそのとおりになるべきものだという問題ではなかろう、かように存じます。いろいろ現にあります組合等が十分話し合いをされまして、納得のいく範囲で、これは農家負担軽減のためにもまた保険事業の安定化のためにもできるだけ広い区域にまとまっていくということが大切なのではなかろうか、かように思うわけでございます。     〔島村委員長代理退席、衛藤委員長代理     着席〕  それから、第二点の組合の役員と申しますか、その関係でございますが、組合定款等で御案内のように役員の選任規定を持っているわけでございます。選任規定は組合員等組合員からでございますが、組合員から適切な方が理事として選ばれ、理事の互選によりまして組合長等が決まるということになっておりまするので、そういった内部で決めておりまする定めにたがうものは大変いかぬことではなかろうか、かように考えております。  三番目の農協共済と今の農業共済組合と一緒にやったらよりいいのではないかという御指摘でございます。そういう考え方をとられる方もあるように、また過去にもございました。ただ、御案内のように、農業協同組合の方はまさしく自治ということが貫かれていかなければならぬ、組合農家の自主という面が貫かれていかなければならぬ。農業共済の方はいろいろな面で制約がございます。国庫負担に絡みまして、あるいはまたこういった公的な保険事業という意味合いで非常に制約がございます。したがいまして、一緒にするということにつきましては慎重な検討が要るのではなかろうか、かように考えております。  以上でございます。
  126. 松田九郎

    ○松田委員 農業共済の従来の掛金が一律に適用されておるというところに、未加入というか未組織というか、そこら辺の問題がありはせぬかと思うのですが、地域なり費目なりによって少し差を考え掛金にしたならば、加入者はよりふえるし、効果が適正に発揮されるというふうに私は思うのですが、常務理事の方ではどのようにこれを受けとめられておるか。
  127. 須藤隆平

    ○須藤参考人 お答え申し上げます。  実は今の制度でも、これは地域別でございますが、地域を分けて掛金率に差をつけることができるようになっております。今回は農家群なり何なりでそういう差をつけることができるようにしようという考え方になっておるわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、一方では共済は助け合いなんだから差をつけるということはどうなんだという意見もございます。それから、そういうふうにした方が先生お話しのようによりいいのではないかという御意見もございます。そういう意味合いからいたしますと、今回の改正案で組合実態に応じてできるようにしているというところに大変意味があるのではなかろうか、かように思っております。  以上でございます。
  128. 松田九郎

    ○松田委員 常務理事は、私の発言が悪かったと思うのだけれども、ちょっと誤解されていると思うのです。地域ということを今言われましたけれども地域ということよりも、掛けっ放しでほとんど被害がないという地域なり農家、そういう意味ですね。だから、そういうものはデータに出てきておるわけだから、そこら辺を少し勘案をするような方法を検討してみたらどうかということを私は申し上げておるわけです。どうですか、
  129. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいま先生から御指摘のございましたことにつきましては、具体的には掛け捨てが続くような農家、こういうお話でございましたが、そういう農家についてはある程度の無事戻しができるということで一つの対応がございます。  それからもう一つの対応は、今回の法律改正によりましてそういった農家群で掛金を安くしていくということで対応しようということになっておりますので、幾らか問題は解決してくるのじゃなかろうか。また、私ども、もちろんこれから慎重に検討させていただきたいと存じます。  以上でございます。
  130. 松田九郎

    ○松田委員 それでは次に、もう一つ農業共済についてお尋ねをしたいのです。  水稲共済ですが、この国庫負担率が現行よりも今度後退するわけですね。五%ぐらい後退するのじゃないかと思いますが、これが今後の共済事業においては大変支障になってきやせぬかと思うが、この問題については、先ほど連合会としては余り賛成しかねるのだという意味がそこら辺にあると思うのですが、今後の取り組みとして、連合会はここら辺ではどういうふうに対応しようと考えておられるか、その受けとめ方は今どういうふうにお考えになっておるか、そこら辺を聞いておきたいのです。
  131. 須藤隆平

    ○須藤参考人 お答え申し上げます。  冒頭申し上げましたように、私ども立場といたしましては大変お答えしにくい問題でございます。お話がございましたようなことで、農家負担といたしましては全国平均でざっと一割上がるわけでございますから、今の経済事情なり全般から見ますと、これで結構ではないかというわけには決してまいらぬわけでございます。ただ、私どもはいろいろな情勢の中で、今般改善になります事柄等々も一緒でもございますし、この際反対運動はしない、こういう定めにいたしたわけでございまして、なお各連合会、組合等にありましては、これに対しては現場現場の上がりぐあい等に対応いたしましていろいろな工夫を考えておるということだけを申し上げまして、お答えにかえさせていただきたいと存じます。
  132. 松田九郎

    ○松田委員 内藤参考人に牛のことについてお尋ねをします。  さっきお話しのとおりに、出生後ということに引き下げられたということで前進だ。胎児が八カ月ということになっておるわけです。私の承知するところでは、胎児が八カ月になってから流産するなんということはそうないのですね。一番危険度というか流産の可能性のあるのは四カ月前後じゃないかと私は思うのですね。ここら辺について参考人は一体どういうふうに考えておられるのか、今後はこの点についてはどうあるべきだという希望なりそういうものがあればお聞かせ願いたいと思う。
  133. 内藤進

    ○内藤参考人 胎児の流産の可能性が強いのは八カ月状態よりは四カ月前後ではないか、こういう御指摘でございます。この胎児の流産の可能性については御指摘のような事情も確かにあるわけでございますが、必ずしもこれに集中しているわけではございませんで、やはり末期になりましてから流産を起こすケースもかなり生じておると理解しておるわけでございます。したがいまして、八カ月という今度原案としてお決めになりました背景といたしまして、共済において子牛と肩を並べられるような牛、言いかえますと生まれてから死んだ牛と格差をつけないでということで考えますと、八カ月以降になりますと生存の可能性を有しておるということからこの点を原案とされたと承知しておりますので、そういう限りにおいては八カ月程度一つの物の引き方は妥当な線ではないかと考えております。
  134. 松田九郎

    ○松田委員 せっかくの参考人の御意見ですが、妥当な線じゃないかということは本員は受けとめがたいですな。まあいいでしょう、きょうは参考人の立場でいらっしゃっておりますから。これは政府にやかましく言います。  それでは、時間がありませんので最後に遠藤参考人にお尋ねをしたいのですが、従来、果樹共済に加入する関係農家がなぜ非常に少ないかということについてあなたの考えを聞いておきたいと思います。
  135. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 お答えいたします。  先ほど意見開陳のところで申し上げましたように、産地の生産者の率直な意向といたしましてまず第一に上がりますのは、ともかく換金が高いということでございます。何に比べて高いかというような基準一つあるわけでございますけれども、事実最近のミカンなりリンゴ経営の所得の確保の状況あたりから比べまして、掛金と所得とを対比いたしますと、間違いなく相対的に水準が高いということは言えるようでございます。これも、保険の設計上被害率が高ければ掛金も高くなるというような理屈も逆にあるわけでございますけれども農家の率直な気持ちが第一でございますから、その点と、それから共済金をもらう機会が少ない。そしてまた三割以上とか二割以上ありますと、仮に三割といたしますと二割から三割ぐらいの被害の比較的少ないような農家の間でそういうような批判といいますか不満が多いということでございます。  もう一つは、これは前提でございますけれども、そういう果樹の性格からいたしましても、私ども自身といたしましても、制度理解するということが非常に難しゅうございます。この制度をもう少しわかりやすく、例えば基準収穫量が一般に低いという農民の不満に対しまして、その場合に農家被害なかりせばという期待単収、期待収量を頭に置いて基準収穫量が低いというような言い方をいたしますけれども、保険の場合は平年作でございますから一定被害が加味された水準でございます。ここら辺の理解の仕方の問題もあると思います。  それから、先ほども申し上げましたように果樹の最近の傾向といたしまして技術差が非常に激しくなってきております。昨年のあの異例のミカンの凶作のときにおきましても、熊本あたりの産地で四トンぐらいをとっている農家、四トン半ぐらいをとっている農家も出ておるわけであります。そういうような農家からしますと、病虫害の発生に面倒を見る制度ということにはどうもなじまない、やはり自分の力でどうにもならない自然災害というようなこと以上に出るものについては制度自体のあり方に疑問を持つ、そういうことにおきまして特定危険方式というものを今後果樹共済のメーンにして育て上げていく必要があるのじゃないか、こういうふうに考えます。
  136. 松田九郎

    ○松田委員 今の御意見、それもそうでしょう。一番園芸関係に未加入者が多いのは、何といっても単年度で農業共済を整理していっている、そこら辺に問題がある。ほかの農業共済であると長期にわたってやる。これは単年度でやる、掛け捨てでやる。そういうことで、被害のないところの特に園芸農家からすると、しょっちゅう掛けっ放しだ、捨て銭だ、こういうことにもなってくるので、今後この問題については五年なりという式に少なくとも年限を、今の園芸というのは永久農作物だから、そういう永久農作物については少し年限を延ばす、そういうこと等について連合会としては考えておられるかどうか、そこら辺をお聞きしたいと思う。
  137. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいま、言いますならば中長期の共済を仕組んでみたらどうかというお話でございます。私どもの方でも果樹の担当者を集めまして何度も検討しているわけでございますが、そういう声もないわけじゃございませんけれども、うちの農業災害補償は補償制度自体、つくりが短期の考え方になっているものでございますから、よほど慎重な検討をした上でないと農林省へ持ち込めないということになっておりまして、せっかく勉強させていただきたいと存じます。
  138. 松田九郎

    ○松田委員 終わります。
  139. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 新村源雄君。
  140. 新村源雄

    ○新村(源)委員 参考人各位には、御多忙のところ農業災害補償法の一部改正につきまして大変貴重な御意見をいただきましたこと、厚くお礼を申し上げますと同時に、農業災害補償法を通じて農家経済の安定あるいは日本農業の発展のためにそれぞれの立場で日常御努力いただいておりますことに、あわせて心から敬意を表する次第でございます。  今回提案されております農災法改正の骨子は、既に御案内のとおりでございますが、一つ危険段階別掛金率設定一つ新たにする、さらには水稲の当然加入の面積を引き上げる、あるいは農作物共済共済掛金国庫負担率の引き下げをする、さらには家畜共済の目的を追加する、果樹共済共済金額の上限の引き上げ、また園芸施設共済の施設内の農作物についての病虫害事故を除外をした、こういうことになっておるわけでございまして、私ども、今回のこの法律改正を通じまして園芸共済あるいは家畜共済の一部に多少の前進は見られましたけれども、この共済事業の根幹であります当然加入の面積の引き上げ、もう一つ国庫負担率の引き下げ、こういうものは今後の農業共済に非常に大きな影響をもたらすのではないだろうか、こういうことで憂慮をしておるわけでございます。  そこで、第一点は、須藤参考人にお伺いをいたしますが、今度の当然引き受けの面積を二十アールから四十アールにしたということで、一体それだけの階層の農家がどのくらいあるのかなということで調べてみますと、十アール未満の農家が十六万六千戸、それから十アールから十五アールの農家が二十七万戸、十五アールから二十アールの農家が三十万四千戸、合わせまして七十四万戸、さらにこれが全共済受益農家のパーセントから見ますと実に二三・八%に上るわけです。ですから、農家戸数の上からいきますと約四分の一近くが対象外、いわゆる当然加入から外れている、こういうことになるわけでございます。  先ほど参考人の御意見にございましたように、地域が加入農家群とそれから非加入農家群とが点在をしていく、農業の集団的な状態から見ても好ましくない、こういう御意見でございましたが、こういう点について組合員、あるいは今の二十アール以上四十アールという、そういう中で組合地域がどういう影響を受けるか、こういう点についてもし試算か何かなさったものがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  141. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいま当然加入ラインの引き上げ問題に関しまして御質問をいただいたわけでございます。今の耕作規模からすればこうこうこうなるじゃないかという具体的な数字のお示しもいただいたわけでございます。ところが、これは全体の数字としてはそういうことでございますが、実は現在でも十五アールとか二十アールとかという、あるいは三十アールという定めをしている、そういう組合もあるわけでございまして、既にそういうことで当然加入ラインに達してない農家がその三十アールなり二十アール未満でも現にあるということがまずございます。  実はそんなことで、今回の引き上げに伴いましてどのぐらいの影響が出てくるのだろうかということを組織を通じまして調べてみたわけでございます。この数字必ずしも正確かどうか、農林省の方からまた後で御指摘をいただかなければならぬわけでございますが、それによりますと、今現に当然加入ラインを十アールなり十五アールに決めておるというところが、これは県の数にして影響が出ます組合を持ちますのが十八県ほどあるわけであります。十八県ほどございまして、その中で組合の数でございますが、手を加えなければならぬところが二百八十三ぐらいあるのじゃなかろうか、こういう見方でおるわけでございます。その中で任意加入の面積の割合大きいところ、例えば七〇%以上も任意加入があるという組合はどのくらいあるのだろうかというと、十四組合ぐらい出てくるのじゃなかろうか、こういう見方をしておるわけでございます。  そんなようなことで、組合によりましては大きな影響を受ける、極端なことを申し上げますと、二十に上げました場合に当然加入組合員が一人もいないという組合も島嶼部等にありましては出てくるわけでございます。農災法の設立なり何なりといった面、手続等から考えましても、そういったところがあっていいのだろうかという疑問は実は私どもも禁じ得ないわけでございます。  そういうようになって非常に大きな任意加入が出てまいりますと、実は小さい規模の農家は皆被害が高いのかといいますと、現在御案内のようにほとんどが一筆単位共済のところが多いわけです。一筆単位共済の場合ですと、小さい農家の場合、これは割合被害を受けないという農家とそれからよく受けるという農家が分かれる傾向を持っております。そういうことから、任意加入だということになりますと、被害の割合出る農家が加入してきて、被害の出ないような農家は加入しないということが起こり得ますから、そうなりますと、そういう小さい農家が加入者の大部分を占める組合にありましては、水稲経営、水稲の事業が安定的に運営できていかない、こういうことになろうかと思っています。そういう面で、実は事業の面でも大変心配しておるということを申し上げまして、お答えにかえさせていただきたいと思います。
  142. 新村源雄

    ○新村(源)委員 先ほど松田委員の方からも触れておられましたが、組合の広域化というものがこういう当然加入の基準を引き上げることによってさらに促進されるのではないかという気がするのですが、そういう影響についてはどうですか。
  143. 須藤隆平

    ○須藤参考人 お答え申し上げます。  そういうところも実はあろうかと存じます。しかし多くは島嶼部とか何かに問題が出てくるわけでございまして、そうなかなか簡単には合併というわけにはいかないという地域が残る可能性を持っております。  以上でございます。
  144. 新村源雄

    ○新村(源)委員 組合段階では非常に困難な状況に追い込まれることは事実であるというふうに私ども考えております。そこで、今回危険段階別掛金率設定方式が出たわけですが、先ほどから御意見をお伺いしておりますと、果樹等についてはこういうことが非常に歓迎される、こういうようにおっしゃっていましたし、今また須藤参考人の御意見をお伺いしましても、これをうまく運用をやっていけば、かえって危険段階別掛金率設定ということは好ましいというような面もあろうかと思うのです。しかし、これは特に平林参考人の御意見をお伺いしたいわけですが、北海道等のいわゆる共同作業、共回収穫をやっているような作目等についてどういうようにこの方式が適用されるかということについてお伺いしたいと思います。
  145. 平林利夫

    ○平林参考人 ただいま新村先生の方から御質問のありました危険階級ごとに料率設定ということにつきましては、私ども共済事業を担当している者にとりましても理想的な料率設定方法ということで受けとめているわけでございますけれども、ただお話にありましたように、十勝の大型農業の中にありましては、現在小麦の収穫につきましては集団ごとに大型コンバイン一台約百ヘクタールを処理することに始まりまして、乾燥、調製まで一貫して行っているわけでございますけれども、非常にその集団が大きいために、しかも個人ごとには六筆、七筆というような非常に数多くの圃場を持っておりますので、それらの刈り取りの順序に対するいわゆる順位争いが高じてまいりまして、このせっかく昭和三十七年からの第一次構造改善で始まりました麦の共回収穫体制にひびが入るというような危険もはらんでいるわけでございます。その結果心配をされますのが、また個人に大型農具を導入するという多額な投資にもつながってまいりますので、これらを見きわめた上での設定となりますと、かなりの時間を要するのではないかということで考えているわけでございます。  終わります。
  146. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次に、平林参考人と遠藤参考人にお伺いしたいわけですが、一つは、畑作共済が始まりましてから、まだ米麦から比べますと歴史が浅いわけでございまして、基準収穫量の設定が現在の共済制度の中できちっと実態に即応しているかどうか、こういうことをお伺いしたい。  それから遠藤参考人には、先ほどおっしゃいましたように果樹共済の加入率が非常に低いということは、これはやはり先ほど御意見がありましたように基準収穫量の問題もあると思います。それから掛金の問題がある。しかし、結果的には、この果樹共済そのものが農家被害に対して、先ほど収入共済という要望もずっと続けていらっしゃるということをお伺いいたしましたが、果樹共済そのものが農家被害を的確に補償されるような制度にまだまだ足りないものがあるのじゃないか、こういう気がするわけです。もし農家の災害を的確に補償するということであれば、やはり農家が進んで加入してくると思うわけですね。しかし、非常に補償が低い、実態に合ってない、こういうことが加入のブレーキになっているのじゃないかという気がするのですが、そういう点についてざっくばらんな御意見をお伺いしたいと思います。
  147. 平林利夫

    ○平林参考人 畑作物共済の補償の基礎となります基準収量に対しましての御意見かと存じます。  実は私どもも、先ほど申し上げましたように連続災害年を経過した後でございますから、大変申し上げにくいわけでございますけれども、現在の制度の中での基準収量の設定の流れということになりますと、災害が続きますとそれに伴いまして料率が上がり、収量が下がりということで、農家経済を再生産に導いていくだけの補償の役割はゼロになってしまうわけでございますので、私どもは欲があり過ぎるかもしれませんけれども被害なかりせば単収が基準収穫量設定の原点ではないかということを申し上げているわけでございますけれども設定上そういうことにはなかなか難しい面があるようでございますので、残念ながら現在の制度に従っているというのが偽らない気持ちでございます。
  148. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 私、率直な気持ちとして申し上げますれば、やはり基準収穫量の把握あるいはまたその設定の仕方ということがどうしても基本に置かれなければならないのじゃないかと思います。ただ、これにつきましては、やはり作物保険といたしましての設計上の問題もございまして、私、専門家でございませんので、そこら辺からの論理なりは十分自信を持って言い切ることはできませんけれども、何せ最近、御案内のように果樹の高接ぎ更新を含めまして品種更新が非常に激しく進んでおりますし、また、同じ園地の中でも老木なり若い木というものが混植になっておりまして、いかに立派な理論を立てましても、実際に把握の手法というものが、やはり相当人海戦術的にやらないと、科学的にこれをもう少し基準を決めて把握する仕方というものはなおやはり技術的に相当研究が要るのじゃないかと思います。  考え方といたしましては、やはり基準収穫量のきちんとした設定あるいは基準収穫量自体の概念というものが今のままでいいかどうか、そこら辺は問題があると思いますけれども、私、自信を持ってどちらがいいというようなことは申し上げられませんので、ひとつお許しいただきたいと思います。
  149. 新村源雄

    ○新村(源)委員 次は内藤参考人にお伺いしますが、実は私は北海道でございまして、先ほど平林参考人もおっしゃいましたように、北海道で肉牛の素牛として生産されるものは二十二万頭いる。そのうち七〇%はいわゆるホルスタインの牡犢である、こういうことでございます。したがって、ホル牡犢というのは日本の牛肉資源に大きな役割を果たしているわけですが、今回家畜共済改正で、肉用牛については腹にいるうちから保険に認められる。ところがホルスタインの場合は、これは政府側の意見を聞きますと、子が生まれてもし万が一のことがあっても、牛乳が搾れるからそこで所得が補てんされるのだからということで除外した、こう言っているのです。  しかし、今の酪農家の経営も非常に厳しいわけでございまして、そしてホル牡犢も酪農家の収入のもうぎりぎりのところで生産が行われますから、その上、牡犢が幾らに売れるかということが重大な所得になるわけですね。ですからそういう点では、私は政府側の見解とは全く違うものを持っておるわけですが、これをひとつ肉牛協会等を通じて、やはり肉牛と同じように腹の中にいるときから保険にかけるべきだ、対象にすべきだ、こういうように考えているのですが、そういう点についてはどういう御意見をお持ちでございますか。
  150. 内藤進

    ○内藤参考人 ただいま先生から、牛肉に占めますホルスタインのウエートが七割になっているという現状を踏まえまして、乳牛の子牛についてもこの対象にすべきではないか、いかが考えるか、こういう御質問がございました。ホルスタインの肉資源が我が国の牛肉の供給割合の中で七割を占めているというのは先生御指摘のとおりでございまして、今後とも乳用牛の肉資源は国内の牛肉の大きなウエートを占めていくことと存じております。  そういう関係で今の問題につきまして若干御意見を申し上げますと、こういう共済制度のみならず国の政策要望がお役所等に出てまいりますときに、大体私どもの方にもそういう要望についての御意見がかなり入ってくるものでございますが、かねてから肉専用牛につきましてはこの共済に拡大してほしい、入れてほしいという御要望は耳にしておったのですが、乳雄につきましては私どもの方の耳に入る機会が比較的少ない状況であったことは事実でございます。ただいまちょっとお触れになりましたように、私どもとしましても、今乳雄の生産されている実態が酪農経営に伴って産出されるという状況から、いわゆるその経営に与えるダメージが肉専用牛の農家よりは若干軽いからこういう状態になっているのではないのかなというような感じをかねてから持っておったところでございます。  それに加えまして、乳雄の場合には、いわゆるぬれ子というような形で生後間もなく所有者の、子牛が生まれた農家から離れるようなケース、あるいは哺育育成をして次の段階に移るようなケースとか、肉専用牛とは違った流通形態もございまして、そういう点につきまして政府の方でもまだ実態調査が必ずしも十分進んでいないというようなことを伺っておりまして、御指摘のように肉用牛の中に占めます乳雄のウエートは高くなっておるわけでございますから、今後の課題といたしましてこういう問題についても十分御検討いただいて、しかるべき機会にこの共済需要の動向等を見きわめていただきながら御研究いただければと願っておるところでございます。
  151. 新村源雄

    ○新村(源)委員 最後に、農業災害補償法特段のかかわりを持っていらっしゃる皆さんでございますから、今回私ども立場から見れば根幹を揺るがすような後退である、こういう受けとめ方をしておるわけでございます。しかし、それぞれの団体では一応の受けとめ方としては、この法案については反対はしない、こういうことでございますが、実は私も北海道の一単位共済組合長をやっておりまして、これ以上もし後退をしたら農業共済そのものがもう農民からそっぽを向かれて崩壊をするのでないかというような危険性を感じております。したがって、それぞれのお立場において、これ以上絶対後退しない、そしてまた一定の時期が来たならばもとに復元をしていく、こういうようなお立場でこれからもひとつ院外において取り組んでいただきたい、こういうことをお願い申し上げまして、私ども一生懸命やるということをお誓い申し上げまして質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  152. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 日野市朗君。
  153. 日野市朗

    日野委員 参考人の皆さん、きょうはどうもありがとうございました。非常に参考になりました。きょうおいでくださいましたのは本当にすぐれて実務的な皆さんでございますので、そういう観点からいろいろお話を伺いたいと思います。  まず、今度の共済掛金率の見直し、これによって非常に大きく農民負担がふえてくるように思います。さっき平林さんでございましたか、ただただ困るの一語だ、こうおっしゃったわけでありますが、私も全く同じような感想を持つわけでございます。  ただ、そうばかりも言っておられません。こうやって負担がふえてくる、このことについて組合員に説得しなければいかぬ。そうしてさらに、共済に入ってください、こう言わなければならないわけでございましょう。ここのところを皆さんどういうふうになさるおつもりなのか。こういう、システム的には負担が上がるのだが、何とか急激なショックというものを和らげる、そういう方法を私なんかもいろいろ考えなければならないと思っているのですが、どういうことをお考えになっておられるか。余り時間がないものですから、須藤さんと平林さんにこの二点について、それぞれの立場からお述べいただきたいと思います。
  154. 須藤隆平

    ○須藤参考人 お答え申し上げます。  ただいま御指摘ございましたように、ところによりましては大変な上がりになるということは先ほど平林さんの方からもお話があったとおりでございます。しかし、実は逆に、今回の料率改定も絡めて考えまして、そう大きくはないというところもあるわけでございます。したがいまして、その程度程度によりまして、非常に困ったというところもございますし、このくらいならいろいろ工夫をして農家組合員の方々に何とか御理解いただけるのではないかといったことで、いろいろな努力の仕方を研究している、工夫しているところもあるわけでございます。  現場では大変きつい立場にあると思って私ども心配しておるわけでございますが、私どもも実は連合会の参事によりまする検討の場面を持ちましていろいろな知恵の出し合いをしておりまして、そういった面でできるだけ適切な措置がとられるように対応を考えていかなければならぬのじゃないか、かように考えております。  以上でございます。
  155. 平林利夫

    ○平林参考人 二つの御質問でございますけれども、私がその具体的な対策といたしまして、ぜひこうしていただければ一挙に解決ということが一点ございます。  それは、先ほど麦で申し上げましたけれども、私どもの小麦の被害につきましては、料率設定上二十年間の被害をしょい込むわけでございますけれども、その中で昭和四十五年から数年間、実は冬枯れ防止の水銀剤が禁止された時期がございます。昭和五十年代初期に至ります間に適当な防除剤がないということで冬枯れの被害が六〇%あるいは八〇%と相次いで起こりましたものが現在まだ残されているわけです。少なくとも現在は的確な防除の方法が開発されておりますからそういったことは一切ございませんが、それらを改善していただいただけでも、末端の農家の方々の御理解を得られる大きな材料になろうかと思いますので、その一点だけ何とかお願いできればすべて解決というふうに受けとめております。  終わります。
  156. 日野市朗

    日野委員 次に、遠藤さんにお話を伺いたいのですが、よくわかりました。意欲ある専業農家ですね、これがこの共済制度を余り魅力ある制度とは見ていない、そうしてその分析にも触れていただきまして、私も伺っておりまして、これは確かに合理的な指摘であるとも一方で思うのです。そうして、これはなかなか根が深いぞというふうにも思うわけでございます。  特に果樹共済の場合なんかは、非常に大きなネックになっておりますのは加入農家が少ないという現実でございます。これは共済そのものの健全運営、保険設計をちゃんとやっていく、そういう上からも加入促進をいやでも図らなければならないと思いますが、一方ではまた負担がふえる、こういう非常に苦しいお立場であろうというふうに思いますが、この加入促進等を図っていくようにするにはどのようなことを今してもらいたいと思っておられるか、その点をひとつお聞かせいただけませんか。
  157. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 果樹経営の場合に、先生御案内のように、いろいろ樹種によりましても、また最近のように非常に過剰時代になりますと製品の差別化が非常に激しゅうございまして、産地によりましても同じ農家の手取りも非常に違うというようなことでございます。そういうようなことを踏まえまして考えました場合に、ただ一つはっきり言えますことは、病虫害の防除を対象としない、つまり特定危険方式、今度凍霜害も加えていただきましたが、現に五十五年の改正以降はっきりと効果が出てきておりますのは、また伸びておりますのは、この特定危険方式でございますから、私は、今の先生の御質問に対しましては、ともかくこの特定危険方式ということをメーンにして加入の促進を図るという一つの方向だけは、五十五年の改正以降の三年間の経過の中に大体出てきているのじゃないか、こういうふうに考えております。
  158. 日野市朗

    日野委員 次に、内藤さんに伺います。  子牛共済ですね。肉牛ですが、これは一つの成果である、前進であるというふうに指摘できるだろうと思うのですが、要は、共済価額をどのように決めていくのかということによりましては十分な効果を上げ得ないというようなことも考えられるのではなかろうかとも思います。そしてこの子牛の価額をどのように設定していくのかというような話になりますと、これはいろいろな議論がございます。それで内藤さんなんか、じゃあどのくらいに決めてもらいたい、大体どんなところを基準にというような御意見がございますか、あったらお聞かせ願いたいと思います。
  159. 内藤進

    ○内藤参考人 価額の設定問題でございますが、特に今この程度という水準を特別持っているわけではございません。と申しますのは、今拡大されようとしております子牛あるいは胎児の問題につきましては、一般的にまだ流通が行われない状態のものでございますので、幾らぐらいのものが相場かということが私どもの方でも十分わかりにくい状態でございます。  今度の改正案の御検討の中には、いわゆる母牛の二割程度というような一つの含みもあるようにお伺いしておりますけれども、一般的に言って、こういうものの価額というのは、一つは、その子牛の資質といいますか遺伝的な能力の問題と、それから成長の度合いに応じたそういったもののかみ合わせみたいなもので決まっていくのが一般の流通の実例のないものじゃないかというような感じがいたします。そういう立場からいいますと、一つは、母牛の価額をもとにされるように伺っておりますが、そういう点では、少なくとも遺伝は母牛から半分受け取るわけでございますから、まあそんなふうなあれじゃないだろうか。あとはどの程度の水準でお決めいただくかについて、必ずしも今明確に幾らというふうに持っているわけではございませんけれども、今までの一般の売買事例の延長といいますか、逆になるようなことになると思いますが、一つのそういった水準あたりでお決めいただくようなのがとりあえずのスタートではないだろうか。今後そういった問題について何かもう少しいい基準でも出てまいりますれば、そういうときにまた御研究いただければというような感じを持っております。
  160. 日野市朗

    日野委員 今、内藤さんお話しになったように、政令では大体母牛の二割程度ということ、どうやらそっちの方向に進んでいきそうなんですが、こういうときはどうぞもうここで思いのたけを言っていただいた方がよろしいわけでして、今お話ありましたが、これからもどうぞ皆さんも御遠慮なくひとつお話をいただきたいというふうに思います。我々が伺って我々が聞くのですから、政府や何かに余り気兼ねなさらずに、ばりばり言っていただいて結構であろうかというふうに思うのですね。  それから危険段階別という一つ方法は、これは私も合理的なものも含んでいることはよく存じていますけれども、じゃこれを一つ組合の中で現実に行っていくということが実際に可能なのかどうか。このことによってもたらされる障害というのが幾つか指摘をされているわけでございますけれども、これも余り強くは推せないというような現状はございませんでしょうか。いかがでしょう、この点は須藤さんに伺いたいと思います。
  161. 須藤隆平

    ○須藤参考人 お答え申し上げます。  今、先生のお話のとおりでございまして、現に一部のところではわしのところではすぐやりたいと言っておりますし、わしのところではとても共済ということでできないと言っておりまして、これは強く推すことはもちろんでございますが、それは現場現場で合った選択がなされるもの、かように思っております。
  162. 日野市朗

    日野委員 もちろん今度の制度改正自体は画一的に推し進めるというものではございませんけれども、ややともすると農水省あたりのお役人は、こういうふうになったのならこれはみんなでやるべきだというようなことで、そっちからの指導が強まるというようなことも十分考えられるわけですね。そういうときには、私こうやって見ていて、村落共同体といいますか、そういったものの中でこれを画一的に推し進めていって、部落的な相互扶助一つのシステムを崩すというようなことになることを非常に恐れます。どうなんでしょう、これは実際の組合としても画一的にどこまでも強引にということまでは考えないというふうに伺ってよろしゅうございますか。須藤さんにまた重ねて伺います。
  163. 須藤隆平

    ○須藤参考人 今までの選択の道を開かれたときの例を見まして、いろいろ農水省の方で考えてみてはどうかといったような誘いのあるような場合はありますけれども、それ以上に強くやれといったような場面というのは余り聞いておりません。こういった選択の問題につきましてはそういうことでございます。  ただ一つ、ここでちょっと言い過ぎになるかもしれませんが、例えば当然加入基準につきまして、現在十から三十ということに決まっておりますが、これは都道府県知事定めることになっているわけです。組合等が決めるというよりも都道府県知事定める。それを行政ルートで上げるという、そういった行政庁で始末し得るものにつきましてはあり得る場合があるのじゃないか、かように心配をいたしております。  以上です。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 日野市朗

    日野委員 その心配を我々もしっかりと受けとめて、ちゃんとした処置ができるように努力をしたいというふうに思います。  私のところは何しろササニシキ地帯なものですから、水稲のことが非常に気になりますので、水稲共済について伺っておきたいと思います。  また須藤さんにお願いしますが、当然加入基準が引き上げになりますね。引き上げになりまして二十アールということになりますと、これはうちの方でもかなり大きい部類です。そうすると、それだけを相手にしていたのじゃとても間に合いません。もう当然、任意加入を一生懸命促進をしなければいかぬ。ただ、うちの方でも私非常に気になってしようがないのは、今まででも、先生共済、あれはやめられないのでしょうかねという質問がどこへ行っても非常に多いのですよ。私、こうやって見ていて、水稲農家のかなりの部分は、できたら共済をやめたいという気持ち半分の人が大分になっているのですね。そういう中で任意加入を促進する。これはやらないとだめなんです。例えば防除をやるでしょう。あそこからあれは加入してないところの田んぼだ。では、あそこまで行ってずっとまたヘリコプターを回してどこかにやる、こんなことはなかなかできることではありません。それから、坪刈りや何かやるにしても周辺を見なければこれはどうにもなりませんからね。それを、あそこは入ってないところの田んぼだからちょっとアンタッチャブルよ、これもまたできない。どうしても任意加入を促進しなければいけません。どうやったら促進できるか、ひとつ教えてください。
  165. 須藤隆平

    ○須藤参考人 大変難しい御質問でございます。これはいろいろ農家にできるだけのサービスをしまして、今お話がございましたが、損害防止、そういった面と、さらに一層の普及を図るというような面等々、いろいろな面で最大の努力をしていくしかないのじゃないか。どこまで報われるかは熱意次第じゃないかといった気持ちで各組合等が当たろうじゃないかということで、この任意加入農家の対応につきましてはそういうことを言っております。そのことだけお伝え申し上げまして答弁にかえさせていたきだいと思います。
  166. 日野市朗

    日野委員 これは、逆に私が聞かれたりしたってなかなか難しいお答えになろうなというふうに思いながら伺わせていただきました。本当に悩みのほどがよくわかるような感じがいたします。  それからもう一つですが、共済組合をできるだけ合併して体制を整えろ、こういう指導でずっとやってきておりますね。これが今の時点でずっと見ていまして、それはうまくいっているところもあるでしょう、しかし、余りうまくいかないところもかなり見受けられるようです。特に役員の選出についてのいろいろなごたごたがなかなか絶えませんし、それにまた職員が絡んだり、それで内部の統制もなかなかきかない。そして、先ほど遠藤さんの方からも指摘がありましたけれども、非常に煩雑なものに対応できるだけの事務処理能力もなかなか備わっていかないというような状況がありますね。これはそういった組合そのものの組織をも引き締めていく、このことが今大事だというふうに思っているのですが、御意見をひとつ須藤さんにお聞かせいただきましょうか。
  167. 須藤隆平

    ○須藤参考人 先ほど松田先生の御質問でもお答え申し上げましたように、組合の区域というのがどういう程度が一番いいのか、組合の区域の広さの程度というよりも、そういう中の人を含めての話でございますが、大変難しい問題でございます。したがいまして、今先生一つ一つお話がございましたようなことで、簡単にそれがいいということでもないし、また進めてどうだという話でもない。今まで出てまいりましたのが約六〇%近くの市町村を含む組合になっておるわけでございますけれども、これはそれなりにいろいろ努力をしてまとめてきたのだろうと思うのです。  これから、何かそういう計画を持ちながら話し合いをしているところは、先生ただいま御指摘のように役員の問題あり、職員の問題あり、その他いろいろございまして、事業の面にもあることはあるわけでございますが、なかなか難しいのじゃなかろうか。しかし、先ほど来御審議いただいておりますように、仕事自身も大変広がっております。私、先ほど申し上げましたように、農家負担を軽減することを考えていかなければならぬ、いろいろなこと、保険の事業の安定も考えなければならぬということになってまいりますと、今の時代ではもう少し広がっていいのじゃないかということで、関係者の方々の意思の疎通の図れる範囲で広い区域でもって組合がつくられるべきじゃなかろうか、かように考えておるわけでございます。いろいろ関係者、特に行政庁なんかもこれには非常に一生懸命でやっておるわけでございますが、現場では、先ほど申しました地図の上に線を引いたようにはなかなかまいらないという実情でございます。  以上でございます。
  168. 日野市朗

    日野委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  169. 今井勇

    今井委員長 次に、武田一夫君。
  170. 武田一夫

    ○武田委員 きょう四人の参考人の皆さんには、大変貴重な御意見をちょうだいいたしまして、厚く御礼を申し上げます。  いろいろと難しい問題が共済にはある。保険でございますから、相互扶助の精神にのっとって協調してやれればいいのですが、利害が絡むものですから、私の宮城県の地域なんかでは、米の場合には共済に入ったり抜けたりいろいろなケースがございまして、御迷惑をかけ、御心配をかけている地域ではないかと思います。  そこで、今回の改正に当たってそういういろいろな悩みを払拭したいと思うのは、皆さん方も私たちも同様でございます。そういう意味で、中身のよりよきものを目指してこれから煮詰めていかなくちゃいけないと思いますので、今いろいろ聞きました御意見にさらに二、三お尋ねをしたいと思います。  最初に、須藤参考人と平林参考人にお尋ねしたいのですが、国庫補助が高い、だからこれは削るべきだという意見が一つあったわけですね、行革、財政の問題から。しかし災害という不可抗力の問題でございますから、私は、こういう問題についてはほかの補助金の削減と同じように考えては困ると思うのです。そういう意味では、今回のこういう制度改正の中における例えば水稲五九%の国庫負担が五四%、麦の場合は六八が六〇%となるということは、制度それ自体をおかしくするのじゃないか。そしてまた、加入する農家の皆さん方に大変な負担を及ぼす。  特に東北、北海道のような、まだほかにもございますけれども、災害の常襲地帯がございますね。これはどうしても、宿命的と先ほど平林さんがおっしゃいましたけれども、そういうような地域の皆さん方の負担はこれから一段と大きくなってくるのじゃないかと思うときに、特に北海道、東北は食糧の大切な供給基地として日本の中に占める農業の位置づけがなされている、そういうところで共済制度農家の皆さん方に非常に不利になったら大変な問題であるというときに、この制度をこういう地域では特に守っていかなくちゃならないというふうに私は思っているのでございますが、この点についてひとつ御意見をもう一度聞かしていただきたい。御両人にお願いしたいと思います。
  171. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいま掛金国庫負担に係りまする改正についてどうなんだというお話でございます。再々申し上げておりますように、これは賛成できないということでおるわけでございます。掛金国庫負担につきましては、実はいろいろな考え方があると思うのですけれども、やはり異常な災害を持ち込みまする農業災害でございますから、そういう意味を十分頭に置いて対応を考えていくべきじゃないかという認識でございます。  以上でございます。
  172. 平林利夫

    ○平林参考人 私も全く先生のお考えどおりのことでございますけれども、実はその点につきましては先ほど申し上げましたように、私どもの芽室町につきましては小麦の掛金負担が今度の別表改定を加えますと五千七百六十五円になるということを申し上げたわけでございますが、平常年私どもの町の小麦の粗生産額と申しますと約七万五千円程度しかございません。そういった状態からその掛金を御判断していただきますと、そのつらさも御理解いただけるものと考えておりますけれども、いずれにしましても、もう少々の間、先ほど申し上げました現在は既にもう存在することのない冬枯れの無防備状態が済むまで、何とか実績でもって自分の掛金を下げる努力をしていただきたいということで御努力を願い、理解をしていただいているような本当に苦しい状態でございますので、何とか、今回はこういうことでございますけれども、将来に向けては、やはり先生のお考えのような改善策を十分導入していただきたいものだということで考えております。
  173. 武田一夫

    ○武田委員 もう一度平林参考人にお尋ねしますが、これは災害で不可抗力のものもありますが、反面、いろいろな土づくりとか技術の向上によって、そういう中でも収穫が平年並みあるいはちょっといいとかという話も聞くわけでありまして、そういう点から考えると、一つ農業気象の問題とあわせて、そういう技術的な面の努力というものも農業をなさる方々にとっては非常に重要な課題ではないか。私の宮城県では土づくり運動というのを非常に積極的に進めて、かなりの成果が上がっているということでありますが、そういう状況、芽室の場合はいかがでございましょうか。特に、日本農業気象というのは非常にすぐれているのだというのですが、もっときめ細かに気象観測などもすべきじゃないか、そういう対応も十分なされていないような気がするのですが、そういう点も含めて、何か御意見がございましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  174. 平林利夫

    ○平林参考人 幅広い知識はございませんけれども、芽室の状態だけをとらえて申し上げてみたいと存じます。  先ほども申し上げましたように、例えば小麦の収穫につきましては、ほぼ四百ヘクタール単位当たりの共回収穫でございまして、特に経営の中心となります若い方々がコンバインを操作しているわけで、しかもその刈り取り順序を決めるためには全圃場を何回にもわたりまして見回って歩くようなこともございまして、栽培技術の格差につきましては順次解決されているわけでございます。ただお話の中にありましたように、突如として続きます長雨等の穂発芽、それと冬枯れ防除を終了しました後の何回にもわたります冬になりましての雨等で薬剤が流れてしまうというようなこと以外には、技術上の問題での格差はそういった共同作業の効果もあって現在ではないわけでございます。  もう一つ、芽室の大半が湿性火山灰地でございまして、ほぼ半分の耕地につきましては暗渠排水が必要であったわけでございますが、これらにつきましては、国あるいは道を通じまして非常に基盤整備に力を入れていただいたわけでございますけれども、それと同時に開発の方で進めております各河川の改修工事等によりまして、また非常に思ったよりも水位が下がりまして、今度は水不足ということにもなりますので、それらの工場用水等を中心といたしました水が不足いたしますと技術的な格差がいや応なしにやってまいりますので、そこら辺の解決につきましても一つの方向を立てていただきまして、早急にお願いできればというのが我々共済事業側からのそちらの方へのお願いでございます。  以上でございます。
  175. 武田一夫

    ○武田委員 どうもありがとうございました。  次に、遠藤参考人にお願いしますが、果樹共済、これは非常に悩みが多いと思います。三Kプラス一Kで四Kだ、しかもこのKが一番負担が大きくなって苦労するのではないかということでありまして、加入者もまだ二六%くらいでしょうが、大変な御苦労でございます。  先ほど、その理由の中に基準収穫量の査定が低過ぎるという不満がある、こういうことでありますが、どこにそういう不満が出てくる原因があるのか。査定の場合、損害評価する評価員の問題とか、その時期とかいろいろある。例えば米の場合なんかでも大変損害評価の場合いろいろ不満がありまして、県段階でやる、市町村段階でやる、国でやる段階と、時期的に違う、それで最終的には国の方が一番少ない査定で損害評価を出す、何でおれたちの最初にやったのを見てくれないのだというようないろいろな不満があるということもあるのですが、果樹の場合も、そういうことで、不満というのを解消するためにはどういう点を注意して今後取り組まなければいけないか、その点ひとつ聞かしていただきたいと思うのです。
  176. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 先ほども申し上げましたように、果樹の場合ですと、同じ農家の園地でもその地形条件によって収量も違いますし、また同じ条件のところでも技術の差によって非常に収量が違うということでございます。特に果樹共済の場合、被害統計自体の整備も非常に立ちおくれておるのじゃないかというようなことも私は考えます。したがいまして、現在の基準収穫量の設定の手法なり考え方というような前に、やはりこの果樹共済基準収穫量なりをきちんとつかむような、データの集積ということを急いでいく必要があるのじゃないかというふうに思います。  それからもう一つ、これは水稲の場合あたりに比べて、特にこの基準収穫量と農家の受けとめ方というもののずれが非常に大きいようでございますけれども、やはり果樹の場合は先ほども申し上げましたように技術が平準化しておりませんために、この基準収穫量の設定そのものが、同じ地域におきまして、細分化するにいたしましてももう個々農家まで行かなければならないというように、特に最近のようにいろいろな栽培管理の熱の入れ方も二極分化をしているような状況でございますから、やはり現地において地道にデータを集積していくということの時間を少しかけなければならないのじゃないか、こういうふうに思います。
  177. 武田一夫

    ○武田委員 それから遠藤参考人にもう一つ。  先ほど災害収入共済方式の研究をして今後いろいろな対応をしてもらいたいというようなお話をしておられます。この可能性といいますか、遠藤さん自体の個人的に、こういうふうにやればこの方式というのは農家に受け入れられる、あるいはまた非常にいいとかという、何か御意見があったら、もう少しこの方式について聞かせてもらいたいと思うのです。
  178. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 私専門家でございませんので、若干保険設計上の問題にずれておる点があるかもしれませんけれども、現に五十五年改正におきまして、特定危険方式と災害収入方式というものが実施されております。しかし、残念ながらこの実績が伸びていないということも私承知いたしております。また、その中におきまして、愛媛県におきましては完全な収入共済方式というものを県費の協力を得て実験しておるということもございます。したがいまして、やはり作物保険、特に危険分散とかいろいろな理論上、設計上の問題はあると思いますけれども、せっかく試験的に実施してきた事業でございますから、この経験をもう少し活用し、また具体的な運用面でのいろいろなメリット、デメリット、ここらあたりを農林水産省の方でひとつ前向きに掘り下げていただくという、そのことを私は最後に申し上げたわけでございまして、現在のところ私はそういう立場考えております。
  179. 武田一夫

    ○武田委員 内藤参考人にお尋ねします。  先ほど牛の病気の問題が出ましたね。これに対して、その根絶といいますか、国にこういう点をもっとしっかりやってくれということがあったらお話しいただきたい。やはり、保険を掛けて病気になったからといって払ってもらうよりは、健康でいいものを出していた方がいいのは当たり前ですから、病気にならない、元気でちゃんと処分できるということの方に力を入れていくのも大きな問題じゃないかと思うので、その点のお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  180. 内藤進

    ○内藤参考人 お答え申し上げます。  病気の防除の問題はこういう保険制度のいわば基本的問題として重要な問題だと考えておりますが、今度対象になります子牛等の家畜に関しまして、特に多い病気は風邪とか感冒とかというようないわゆる呼吸器病あるいは消化器関係の病気、下痢のような病気が初生段階でかなり多いのが実情でございますし、その他小さい段階ではいろいろ抵抗力もまだ弱いということもございましていろいろの病気がございますが、要は家畜を飼っております農家の技術なりそういう予防の励行の問題だろうと思います。  したがいまして、今そういうものに対しての意見ということで申し上げますれば、国の方に、さらに予防技術の普及それから農家に対するそういった問題の徹底、御指導、こういったものを、今もかなりやっていただいておりますけれども、さらに強化していただければいいのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  181. 武田一夫

    ○武田委員 最後に須藤参考人と平林参考人に聞きたいのですが、共済の予算が少なくなりまして、減らされていますね。ですから、組合の運営上にいろいろと支障を来すのではないかと心配しているわけです。多いのは人件費等々でしょうけれども、働いている以上はベースアップもしてあげなければいけないし、この方々は忙しいのですね、第一線で苦情ばかり受けて御苦労が多いのですよ。だからそれだけに、こういう財政的な切り込みによって組合の運営、組合員に対すると気に相当影響があったのではお気の毒でありますから、こういう点をしっかり守ってあげなければいけないと思うのです。どうもことしなども前年比三十三億の減額などというふうになっておりますが、こういうことで安心して組合の運営ができるものかどうか、努力すれば何とかやっていけるものかどうか、あるいは大変なのか、その現状を聞かしていただいて、この程度のことは何とか国の方で面倒を見るべきだということがあれば、ひとつお二人から御意見をちょうだいしたい、こう思います。
  182. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいま御指摘がございましたように、今回の定額化によりまして団体事務費がかなり減っておるわけでございます。  ただ、ベア後補正が行われまして、その次に当初ということになってくるわけでございますが、ここ何年かは、前年度の補正後よりも次年度の当初の方が事務費関係が少ないという時代が続いてまいっておりました。農業団体ではそういう中で事業推進、特に先ほどちょっと松田先生からお話ございました任意共済などに絡んででございますが、建物共済等の推進によりまして何とか事務費部分を確保するという努力をして対応してまいったわけでございます。  これから後どうなのだというお話でございます。まさに私ども先生と同じように先行きを心配しておるわけでございます。ベアの関係の補正がなくなってまいるわけでございますから、そういう意味で大変心配をしています。やはりベアとか物価の状況等に関連いたしまして、適切な時期に必要なものを埋めていただくということをぜひお願いしていかなければいけないのじゃないか、努力はいたす所存でおります。  以上でございます、
  183. 平林利夫

    ○平林参考人 予算が減っての対応策ということでございますが、実は私ども組合におきましては、現在、事業規模点数が十七万点でございます。それを獣医師も含めまして十六人の職員で処理してまいっておりますけれども、ここに鈴木宗男先生あるいは新村先生もおられますけれども、私どもの帯広を中心といたしました一市十九町村に置いてあります組合全体といたしましては現在二百万点でございますから、ほかの府県に比べますと、ほぼ福島県と大阪を合わせたぐらいの陣容規模を持っているのですが、これに対しまして職員が、年ごとに増減はありますけれども、約三百名で処理をしております。今回の、予算が減額されていくような時代にありましては、一人一万点を処理しなければ、楽な安定した、しかも組合員に共済制度の恩恵を受けてもらえる組合の運営はできないということで現在進めているわけでございます。  私が承知している状態としてはその程度でございますので、終わります。
  184. 武田一夫

    ○武田委員 大変ありがとうございました。終わります。
  185. 今井勇

    今井委員長 次に、菅原喜重郎君。
  186. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 参考人の方々には、御意見の陳述並びにお忙しいところ御出席ありがとうございました。  まず須藤参考人にお聞きするわけでございますが、今回の農災法改正は、農家負担として一割の増加が見られるというような試算もありますように、当然加入の引き上げ、国庫負担率の引き下げは、これは国の赤字財政の締めつけによる共済制度の後退ではないかと私は思っているわけでございます。しかし、この制度改正に当たって、組合員の幹部の方と、事前協議か何かあった際に、このことに一応の合意を得たようにも聞いているわけでございますが、この点についてどのような経過であったか、お知らせいただきたいと思います。
  187. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいまの御質問ですが、ちょっと聞き取れないことがありまして御無礼申し上げますが、こういうことでございましょうか、当然加入ラインの引き上げ問題と掛金国庫負担引き下げ問題、これは団体として、どうもはっきりしたことでないけれどもつまり全面的に賛成じゃないけれども反対運動はしない、これはどういう経過でそう決めたかということでございましょうか。
  188. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 そのことと、財政当局、農林水産省考えの突き合わせか何か事前になかったわけですか。そのことをお聞きするわけでございます。
  189. 須藤隆平

    ○須藤参考人 決まる前に、事前に話があったか、それを了解したかという意味合いでございましょうか。——私どもの方ではこれは賛成できないということで、はっきりと組織として申し上げたわけでございます。
  190. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は、私もこの共済制度の後退、この負担がもろに農家にかかってくることに対しましては反対でもあり、また心配しているわけでございますが、協会としてはこういう負担増を、そのまま試算を単純にならして農家負担の方に持っていくのかどうか、あるいはいろいろな経費節減とかなんとかその他で、幾らかでも農家負担を軽減させようとしているのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  191. 須藤隆平

    ○須藤参考人 先ほども申し上げたのでございますけれども平均で一割ということでございますけれども、これは、ところによりましては、ごくわずかというところとかなり大きいところとあるわけでございます。それに加えまして、実は今回、農作物共済につきまして掛金率の改定が行われております。これで、地方によりまして下がりましたところと上がりましたところとございまして、全体としては若干下がるという形になっているわけでございますが、そんな関係が関連いたしまして、その影響が、ちょっとのところを工夫をすれば何とかできるというところと、かなりいろいろ工夫いたしましてもどうともならないといったことで、先々非常に心配されるところと両々あるわけでございます。  ただ、共済団体といたしましては、先ほどもお答え申し上げたわけでございますけれども、そういうふうになった暁には、何とか滑らかに農家の方々が納得できるような努力をやっていかなければならぬじゃないかということで考えていこう、連合会の参事などでも集まりまして、いろいろ工夫をし合っているというところでございます。  以上でございます。
  192. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 もう一つ、今、合理化の一端とでもいいますか、広域合併が促進されているわけでございます。これは、協会もまた国の方でも進めているわけなんです。このことによって幾らかでも事務経費の節減がなされれば当然なわけでございますが、ちょっと事務的な面でお聞きするわけですが、市町村営組合との整合を、合併するときどういう方針で持っていこうとしているのか、お聞きいたしたいと思います。
  193. 須藤隆平

    ○須藤参考人 これは私からお答えするのが実は適切かどうかという点があるわけでございます。(菅原委員「協会としてでよろしゅうございます」と呼ぶ)いや、私どもの方で指導とか何かという立場をとっておりませんので、そういうようなことで、むしろ農林省の方がどうなのかという話になるのじゃなかろうかと思うわけでございますが、私どもの方といたしましては、組合等の事業経営基盤の整備強化という姿勢でいっているわけでございます。したがいまして、農林省はそういったことも受けながら、また、各連合会もそういう立場に立って、例えば市町村営、公営地区の多いところにありましては、一部事務組合という形で対応するとか、それからそういう中にいろいろあります場合にはどちらかの形、つまり、例えば公営のところは公営をやめて組合として大きな組合になるとか、あるいはまた組合の方が一時公営に移して公営の事務組合をつくるとか、いろいろなことをやっておるわけでございます。そういったことで、その地その地でいろいろな工夫がなされておるという状況でございます。  以上でございます。
  194. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に平林参考人にお聞きしますが、平林参考人の組合員の中に当然加入面積以下の農家加入率がどうなっているのか、お聞きしたいと思います。
  195. 平林利夫

    ○平林参考人 先ほど供述の冒頭に申し上げましたように、私どもの町につきましては経営規模が非常に大きい方でございますから、当然加入面積以下の農家は全くございませんので、その点は非常にやりやすい組合だということで考えております。
  196. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 須藤参考人にまたお聞きしますが、二種ほど当然加入面積以下の農家率が多くて、あるいは大半こういう小農家が占める組合もあるように聞いておるわけでございますが、今回の当然加入基準の引き上げになりますと、本当に村落崩壊、相互扶助の農村のよい風習というものも崩壊するおそれがある、これもともに私、心配しているわけでございます。共同防除の際、今こういう未加入農家があるところに対してはどのような実態になっているか、それとも、今、この当然加入面積以下の農家も、共同防除となるとほとんど全額負担金か何か取って一緒にやっているのか、そこら辺の内容を教えていただきたい、こう思うわけでございます。
  197. 須藤隆平

    ○須藤参考人 実は農業共済団体は防除関係を一生懸命やっているわけでございますが、今あります組合全部がそうやっているかというと、そういう面で必ずしも十分な活動をしていないところもあるわけでございます。活動を十分やっておりますところにありましては、今先生のお話にございましたようなことで、皆任意加入で入ってくるということで組合員になっておりますので、実際上の問題は出ておりません。  以上でございます。
  198. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 内藤参考人にお伺いいたします。  家畜共済の方につきましては、今回の改正ではかえって改善の方が大きいことで賛意を表されているようでございますが、ホルス雄の肉用牛と和牛雄の肉用牛との危険率が異なるのに掛金が同じでは、そういう声も聞くわけでございますが、こういう点の実態はどのようなものでしょう。
  199. 内藤進

    ○内藤参考人 お答えいたします。  今お話しの中にホルスの危険率が高いというお話がございましたが、ちょっと私が御返事申し上げるのを理解するために、子牛に関してという意味でございましょうか。(菅原委員「そうです」と呼ぶ)わかりました。  ホルスの子牛につきましては、現在の、今度新しく立案されております改正内容には一応除外されていると理解をしております。したがいまして、今の掛金率の問題等につきましては、私が先ほど今後の課題としていろいろ御研究いただければありがたいと申し上げた中に、この制度仕組みとしていろいろ御検討いただければ幸いであるというふうに考えております。
  200. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それから、胎児の価額は省令の定めるところによるというわけなんですが、内藤参考人は、この胎児の価額はどういうところが適当と思うのか、御意見があったらひとつお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  201. 内藤進

    ○内藤参考人 先ほども申し上げましたように、胎児については流通の実態がございませんので、価額問題についてそのものずばりで判断することは現実には難しいと考えております。そうしますと、どうしてもやはりその胎児のもとになります母牛の評価をもとにして考えていかざるを得ないだろうと思っております。その中でどの程度の価額水準ということになりますと、先ほど申し上げましたように、どの辺がいいかということをなかなか私自身持っているわけではございません。今後政府の方でいろいろ御検討になると聞いておりますが、一つ考え方としては、その資質の問題、それから胎児ですから当然大きさはまあまあございませんので、いわばその後生まれた子牛の流通の実態等から御判断をいただかざるを得ないのじゃないだろうかというふうに考えております。
  202. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、遠藤参考人にお聞きしますが、今回の果樹共済改正の中で、共済責任期間の改正があります。今までは、花芽形成期から収穫までだったのが、発芽期、開花期から収穫までというふうに分けることができてきたというのですが、分けたのと分けないのとで、やはり分けた方が果樹共済に加入させるのにいいのか、それともむしろ分けないで掛金率を下げた方がいいのか、こういう点の判断なんですが、どのようなものなんでしょうか。
  203. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 この共済責任期間の短縮につきましては、私どもも落葉果樹地帯を中心にいたしまして従来から要望してきた点でございます。  先ほども申し上げましたように、特に落葉果樹の場合ですと、従来の災害の発生態様から見ましても、大体発芽期以降に短縮をいたしましてもそこで漏れるというような事態も従来の経験からそう考えられませんので、やはり短縮ということは望ましい方向だ、こういうふうに受け取っております。
  204. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私は、落葉果樹は冬の間の障害も大きいのじゃないかと思っていたのですが、現実にはそうじゃないわけですか。
  205. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 私が申し上げましたように理解をいたしております。
  206. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 まだ時間がありますので、もう一度、今度は須藤参考人にお伺いします。  実は、今、水稲の基準単収それから共済金額の範囲、これは大体国がつくり、県がこれを配分するような仕組みになっているわけですが、宮城県と岩手県でも水稲の基準単収が六十キロくらい違いますし、共済金額の範囲もキロ五、六円の差があるわけでございます。岩手県の方は三百一円でありますし、宮城県の方は三百七円ですから、これは最高の方ですが、六円の差があるわけです。県境は、出作、入り作がどこもあるわけですよ。これは西の方だったらそういう影響はないのですが、北に行くほど、岩手県の場合ですと百五、六十キロ違いますから、宮城県の方は余り差がないけれども、宮城県から以北になってくると大変な差が、気候によって災害度が違ってくるわけですね。しかし県境は、たった一つの境でこういう差があるというのは、何か不合理じゃないか。ダブって両方自由に選択できる幅を持たせてもいいのじゃないかというふうに考えられるのですが、この点、協会としてはどんなように考えておりますか。
  207. 須藤隆平

    ○須藤参考人 御指摘の点は二点あろうかと存じます。  一つ基準単収の方でございますが、これは農林水産省の方から各県の方へ指示ということで単収の指示がございまして、それを県が各町村ごとに割り振る、組合がそれを圃場ごとに割り振るにつきましては、これは申告等を基準にいたしながら、平均が大体指示につながるように決めていくということになっておるわけでございます。その場合、今お話がございましたように、一番問題になりますのは町村境、県境の問題になるわけでございます。農林水産省の方の指導では、できるだけそういう差ができないように十分心してやってくれという注文を出しておるわけでございますが、現場ではなかなかそうもいかないといったことに実際上はいっている。そういうことで御指摘のような問題があるのじゃなかろうかと思っております。ただ、そういうことが起こるのが当たり前だとかそのままでいいのだという認識に立ってはいない。さらに近隣の組合等の努力が必要であるということになるわけでございます。  それからもう一つ共済金額は、品種銘柄によります米価の差がもとになっておりまして、それをもとにいたしまして県、郡等の地域定めまして、そこの米につきましては最高幾ら、今お話がありましたように、宮城県の場合は三百七円でございますか、それから岩手県の場合は三百一円といったように決まっているわけでございまして、これはまさに地域を外れればそのまま差として出る、残るという筋合いになっております。これらにつきましては行政庁としてどう考えるか、また後ほどお確かめいただければありがたい、かように存じます。  以上です。
  208. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来たからこれで質問を終わりますが、よりよい共済制度内容を充実するために今後とも私たちも頑張りたいと思います。どうも本日はありがとうございました。
  209. 今井勇

    今井委員長 次に、津川武一君。
  210. 津川武一

    ○津川委員 参考人の皆さんには、お忙しいところおいでくださいまして、貴重な御意見を、教えをいただきまして本当にありがとうございました。私たち、皆さんの言われたことを大事に守って、少しでも共済組合をよくするために頑張りたいと思っております。ありがとうございます。  そこで、一番最初に、須藤さんと平林さんにお伺いしますが、お二人とも、現在共済組合の責任者として実際の運営に当たられております。今度の法改正を抜きにして、運営に当たって一番苦労されている点、どういうことでありますか、ひとつお聞かせ願えればと思います。
  211. 須藤隆平

    ○須藤参考人 私から申し上げますのは、必ずしも全般にわたり、あるいはまた適切かどうかわかりませんが、この制度につきましていろいろ各組織を通じまして組織から出てまいりまするのは、やはり農業事情が非常に変わってまいってきておりますので、それに対応できるような補償制度をできるだけ早く迅速につくれるように何か方法はないものかというような意見でございます。私も、そういうことが非常に大切になってきているのじゃなかろうか、かように思っておるわけでございます。  ただ、御案内のように、ただいま畑作物共済にありましては、物を指定していけば追加ができるという体制になっておりますので、こういったものはできるだけ活用できればした方がよろしいのじゃないか、かように考えております。ほかのことにありましても、同じように事情が変わってくれば取り上げていける、こういう体制が最も必要だというふうに考えております。  以上です。
  212. 平林利夫

    ○平林参考人 制度が発足いたしまして何度にもわたって条件整備をされました農作物につきましては、当然加入でございましたし、今回の掛金国庫負担の改定の時点まではほぼ条件整備一方ということでございましたから、これは特に問題は抱えておりませんけれども、本格実施になってから六年を経過した畑作物共済につきましては、任意でございますし、先ほど申し上げましたように非常に被害の大きい年をその六年の中に三年間抱えましても、なおかついろいろ農家側からこれ以上の条件整備、しかも早急に出てまいります整備がなされないために、任意共済中心に事業の推進には非常に苦労をしております。さらにまた、いろいろ問題がございますけれども、家畜共済につきましても、一頭ごとの加入から包括共済になりまして以降は、その範囲内で非常に大きなメリットがありますので、これらにつきましても私どもの方ではほぼ安定をしておりまして、やはり最大の悩みは、任意を中心といたします歴史の浅い整備のされていないものについては、明けても暮れても苦労の連続ということでございます。
  213. 津川武一

    ○津川委員 皆さん御親切に答えてくださるので非常にありがたいのですが、時間がなくなりますので、今度は須藤さんにまとめて四つばかりお願いいたします。  その一つは、さすがに共済組合を扱っている大御所だけありまして非常に感心したのは、完全補償を実現する、これが我々の方針だというふうにおっしゃってくださって、忘れたものを思い出させられた感じでございます。そこで、完全補償のあり方、姿ということと現状がどのくらい離れているのか、これに向かっていくとすれば何をすればいいのか、これが一つ。  二つ目の質問は、全面的に賛成できないが積極的に反対はなさらないとおっしゃったわけで、これは反対だと思うのですが、この点はどうでございましょうか。四十八年の法律施行のとき、五十五年改正のときには皆さんの側からこうしろという要求が出た。私あのときも国会におりまして承知しておりましたけれども、今度は皆さんにどのくらい相談なすっているか。聞くところによりますと、全然相談なしに押しつけられたという意味のことは須藤さんの先ほどの報告の中にも若干ありましたけれども、こういう点のことを少し伺いたいのです。  私たちは、農業団体、農民と一緒に農政をしいていかなければならぬ、そこが民主主義の基本だと思っているのですが、今度そういうものが崩れてきた。今度の対外経済政策でも言うとおり、中曽根総理も言うとおり、農業は聖域ではない、ここには除外、例外はないのだということでかなり押しつけできます。木材の合板の関税の引き下げにしても、一千万トンの米国の押しつけにしても、今度ヨーロッパと日本委員たちが生産者米価を引き下げろなんということもかなり強圧な気がするので、どうしても皆さんの意を体した農政、共済制度の実現でなければならないと思っているわけであります。この点、御意見がございましたら伺わしていただきたい。  三つ目の質問は、当然加入基準の引き上げと関連してでございますが、これも民主主義の問題なんです。  私たちは、どんな小さな農家でもまじめに農業をやろうとする人たちは宝なので、これは育てていかなければならない。今度は当然加入の基準を引き上げることによって小さな人たちが切られていく。そうすると、須藤さんは何とおっしゃってくださったかというと、須藤さんは、共済制度そのものの崩壊にもつながりかねない、そこまでいきかねないという心配をされております。さらに、それは散らばった場合にどうなるかというと、共同防除的なものも損なわれると言われている、もっともでございます。そこで、私たちは皆さんの意見を伺って、これを国政で直していかなければならない。政府に何を求めてこの二つの点を直していけばいいか、これが第三点でございます。  四つ目の質問は、事務費の国庫負担の定額化でございます。  私は実際の仕事をなされる人たちが十分に働けるような事務体制がなければならぬ、事務費がなければならぬ、そこでいろいろな手当ても出てこなければならぬ、これは運営の根本的な問題なんでありますが、これに対する御意見を伺わしていただきます。  この四つを須藤さんからまとめて答えていただきます。
  214. 須藤隆平

    ○須藤参考人 ただいま四点の御質問ということで、一番初めに今回の制度改正、今までですと団体の方が要望してという場面があったのだけれども、今回はどうもそれがない、役所、上からの押しつけであったのではないかということでございます。  これにつきましては、私が経過の中でも申し上げましたように、農林省から途中段階でいろいろ話はございました。話はございまして、組織の中でいろいろ検討したわけでございまして、私たちは賛成できないという答えを出し、農林省には賛成できないからということを申し上げてまいったということでございます。  それから第二点は、当然加入ラインの問題でございます。  これは確かに制度基本でございます。特に、ところによりましては非常に大きな影響が出てまいります。共済制度はある意味では全国的な連帯でもあるわけでございますので、一部分でもそういうことで壊れ始めてくるということになりますと制度全体の崩壊になりかねないという点を強く懸念いたしておるわけでございます。  それから第三点は、事務費の定額化の問題でございます。  これも私どもの方では、ほかの団体というか、ほかの機関の事務国庫負担というか事務費補助、負担金等がだんだん定額化されてまいりますので、それらに関連いたしまして、こういった御意見を農林省に申し上げたことがあるわけでございます。定額化されております、今までされてまいりました費目のものは、どちらかといいますと地方自治体に足らず前は持たせるということになっているのではないか。農業共済団体の分はほかのそういった今まで定額化されてまいりましたものとは性質が違って、定額化して足らず前が出てまいりますとそれは全部農家負担になっていく、これはそういう意味でほかのものと同一で定額化ということをしてもらっては困るという意見を強く申し上げておったわけでございます。これは予算の段階で定額化されてしまったわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、なってしまっておるものについては我々はできるだけの対応、努力はしてまいりますけれども、物価なりベアの状況等を見ていただきまして、必要なベアはきちっとしてやらなければならぬし、必要な事務費は確保させていただかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。  それから、一番初めに御質問ございました完全補償の点でございます。  前は、農業共済事業の拡大強化運動とかなんとかということで、団体挙げて事業拡大運動をしてまいったわけでございます。そのうちに、農地がどんどんつぶされていくといった高度成長の場面がございまして、一緒に農業を守っていく運動ということで、その中に位置づけて事業を推進することを考えていったらどうだということであったわけでございます。それも所定の運動期間が終わりまして、農業を守ると今言ったところでどうも農家の方々がぴんとこないような状況にもなってきたので、むしろ農業災害補償制度を担当しているところといたしましては、確かな補償実践運動ということで、わかりやすく、しかもこれは十年間の運動計画でやっていこうじゃないかということで、六年前からそういう運動を始めた。先ほど申し上げましたように柱を三点置きまして、完全補償であるとか、農家へのサービスであるとか、それから農家のそういった運動を推進しながら出てまいります制度に対する要望をくみ上げて、制度改正に結びつけてやっていこうということでやっているものでございます。具体的にはそういうことで事業の推進運動を図っていくということでございます。  しかし、実際そういうことをやって損害補償はどうなっているのだということでございますが、これは制度的に、例えば水稲共済でございますと、選ぶ方式によって違うわけでございますけれども基準収量が適切であったといたしましても、制度仕組みがいわゆる全相殺の場合九割、半相殺の場合農家単位で八割、一筆共済の場合七割ということでございますし、そのほかのものにつきましては大体八割をめどにてん補するようになっております。したがいまして、そういう運動で、最高のところを選びますと、今申しましたようなところまでの補償はできるということでございます。  以上でございます。
  215. 津川武一

    ○津川委員 完全補償まで頑張っていただきたいと思います。  時間が余りなくなりましたので、今度は遠藤さんに、これもまとめて四つぐらい続けて伺います。  一つは、先ほどから議論になりましたが、私は津軽なものでリンゴだけについて申し上げたいと思います。なぜリンゴ共済に加入しないのか、この話は盛んにされましたけれども、根本はどうしたならば加入させるのによろしいか。これが一つ。  二つ目は、台風が来ますと津軽の人たちは、長野にだけあの台風が行けばいい、津軽に来なければいい、そうするとリンゴの値段が上がる、これが正直なところの農民の意識だと思うのです。資本主義の世の中だから、こういう賭博性、ばくち性というものがある、これは私は否定しません。しかし、リンゴは何年に一遍かすばらしい作をとると問題が解決するんだ。去年みたいに四割も去年産のリンゴの値段が上がると、あとそれでいい。それが実際なのです。そこで、先ほど須藤さんも言われましたけれども、はっきりと共済によって果物を守っていくという運動を定着させていかなければなかなか加入しないと思うのです。これが二つ目の問題。  一つ目の問題とも関連しまして、五十五年に法改正をしたのです。途端に加入率が少なくなったのです。法改正をしたら脱退する人が出てきた、これは一体何だろうということなのです。それは損害の実態と入ってくる共済金実態が合わない。農民たちの問題は、それにかてて加えて政府と県の中央会が被害一定のところで一斉に同じ査定にしてしまったのです。九・四%事件というやつです。被害に掛ける傘としてどんなにあっても九・四%でとめてしまったのです。そうしたら、もうやめた、農業共済の職員も理事者も、共済制度をやめたと言うのです。こういう上からの非民主的な圧殺が、問題を国民とともに、農民と一緒に解決することがないからそうなってしまったわけです。  最後の問題は、共済と関係ないかもわかりませんが、なければないでいいのですが、腐乱病についてです。先ほど遠藤さんは、単年度のものを共済の対象にして永年性のものは困ると言っていたが、腐乱病は長く続くのですよ。被害が永年的なものなのです。これを収穫共済にするか、樹体共済にするか。腐乱病をこのままにしておくと、青森県のリンゴは今岩手県のリンゴ、長野県のリンゴより単収二割から三割落ちてきました。それは腐乱病で大きな枝が、胴体がやられて、畑の中に窓ができてきた。いっぱいこんもりしたところには太陽が入らないのです。腐乱病で枝が壊れ幹が壊れて太陽がさんさんと入っておる。それを農民は窓と言っておる。これをなくしなければならないのです。したがって、共済でやると腐乱病を退治する努力が減るのだ、ここのところをどうするかという問題なんです。しかし、腐乱病を退治しないとリンゴは伸びていかない。高品位の単収の多い継続的な安定生産をと遠藤さんはしなくても言ってくれたのだけれども、それにするとすれば、腐乱病をどう共済の対象にしていくかという問題、これが一つ。それを抜きにして、腐乱病をどういうふうにすればなくせるか。この二つのことを答えていただきたいと思うわけであります。
  216. 遠藤肇

    ○遠藤参考人 四つ質問をいただきました。  第一のリンゴの加入の問題と関連いたしまして、どうすれば今後加入を高められるかということでございます。私も先ほど、五十五年の改正以降、全体的に見て改正の効果が加入促進の上でどうもあらわれておらないと申し上げました。その中で、私ども拝見いたしますと、先生の青森県が特にそういう傾向が目立っておりまして、お役所の公表資料でございますけれども、一番高いところが五十四年当時六四%ぐらい引受率がございましたのが、現在承りますところ一七%ぐらいまでに落ちておるということでございます。私は青森県にまたがる固有の事情があるのかどうかということは十分理解できておらないわけでございますけれども、特にここ何年かスターキングを中心にしたリンゴ経営の不況、こういうような問題も非常に関連しておるのじゃないか。特に私ども青森県のりんご協会あたりの御意見を聞いてみますと、損害評価員の査定にバランスを欠くというような点もかなり多くの意見として聞くわけでございます。  その他、一般論になりますけれども結論といたしまして、加入を促進させる方法は、青森県の場合も特定危険方式というものが確実に伸びておりますので、これを中心に今後加入を進めるということが当面考えられる対策なんじゃないかと思います。  それから第二点の、共済によって果物を守る運動という先生の御指摘でございますけれども、私率直に申し上げまして、病虫害の発生というような問題を共済で補償するということにつきまして、現に産地において非常に頑張っておる、産地を支えておる農家の方々がどうしてもここら辺に抵抗を持つというような事実は、私頭でどうというよりも、そういう現実の農家考え方を特にここで強調させていただきたいと思います。  それから第三の、五十五年改正以降加入率の問題でございます。上からの規制措置ということでございますけれども、申しわけございませんけれども、そこら辺の経緯は私十分存じておりませんので回答をお許しいただきたいと思います。  それから四点目の腐乱病でございますけれども、この腐乱病につきましてはリンゴ地帯において非常に問題があるということは承っております。特にこの腐乱病につきましては、若い木よりも古い木に出る。したがいまして、産地別に見ましても、青森県ではかなり問題になりますけれども、長野県においてはこの発生は青森に比べて低いというようなことでございます。技術者あたりの御意見を聞いてみますと、どうも栽培管理の一番根っこにございます病虫害の予防、こういうような点、つまり油断があるというようなことがやはりこの腐乱病に関係するのじゃないか。特に腐乱病が発生いたしましたときに、腐乱病というようなものの被害の選別がなかなかできないということが私ども仲間の技術者の意見でもあるわけでございます。ここら辺を共済事業の中でどう組み入れるかにつきましては、私も専門家でございませんので、ひとつそこら辺は団体側の対応としての宿題としてお受けさせていただきたいと思います。
  217. 津川武一

    ○津川委員 ありがとうございました。終わります。
  218. 今井勇

    今井委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げたいと思います。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  次回は、明二十四日水曜日午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会