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1985-04-18 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十八日(木曜日)    午前十時五分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       北川 正恭君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    保利 耕輔君       松田 九郎君    山崎平八郎君       上西 和郎君    島田 琢郎君       細谷 昭雄君    松沢 俊昭君       渡部 行雄君    駒谷  明君       斎藤  実君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    稲富 稜人君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 元次君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産省農蚕         園芸局次長   畑中 孝晴君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         林野庁次長   甕   滋君         水産庁長官   佐野 宏哉君         水産庁次長   斉藤 達夫君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      木幡 昭七君         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦訳         長       野村 一成君         農林水産大臣官         房審議官    瓜生  瑛君         農林水産省経済         局国際部長   塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局次長   須藤良太郎君         運輸省海上技術         安全局検査測度         課長      戸田 邦司君         海上保安庁警備         救難部航行安全 玉置 佑介君         課長         高等海難審判庁         海難審判書記官 平林 悟郎君         建設省河川局防         災課長     帆足 建八君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 委員の異動 四月十八日  辞任         補欠選任   若林 正俊君     北川 正恭君   新村 源雄君     渡部 行雄君 同日  辞任         補欠選任   北川 正恭君     若林 正俊君   渡部 行雄君     新村 源雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部行雄君。
  3. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最初に、林野庁長官にお伺いいたします。  ことしは国際森林年に当たる最も記念すべき年であるわけですが、それにもってきて内閣総理大臣は、花と緑の一大キャンペーンを張って国民にその重要性を説いておられるわけでございます。さらに世界的にも、緑と人間のかかわり合いについては今日ほど関心を持たれているときはないと思うわけでございます。こういう一つの非常に有利なというか、林野庁としては願ってもない環境にあるわけですが、このよい条件を生かした林政というものが当然考えられてしかるべきだと思います。  そこで、林野庁長官林政全般にわたる充実を図っていくための具体的な施策について御説明を願いたいと思います。
  4. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 先生ただいまお話がございましたように、本年は、広く国民各層皆さん森林林業の問題につきまして大変深い関心を寄せていただいているところでございます。  そういう中にございますのに、林業林産業現状を見ますと、今日、戦後営々として続けてまいりました関係者造林努力などによりまして、一千万ヘクタールのこれから伸び盛り人工造林地管理しておるわけでございますけれども、現在それが間伐の時期を迎えておるという時期でございます。そういう時期でございますのに、木材需要が極めて低迷をいたしておりまして、木造住宅の着工の低下、市況の低迷等によりまして非常に林業経営の意欲が阻害されておる。これがひいては森林全体の管理のおろそかさを招きまして、保安上にまで影響が及ぶということすら懸念される状態にある。非常に関心が高まっておる中に、産業としての林業が非常に苦しい状態にあるというのが今日の事情であろうと思います。  したがいまして、これからの林政推進、展開に当たりましては、やはり需要拡大を基礎に据えまして、木材の復権と申しますか、木の持つ何物にもかえがたいよさを広く啓発普及する、そのような需給拡大の中に林業経営基盤整備する、造林林道等基盤整備、それから間伐推進する、これは目下の急務でございます。さらには、高齢化、担い手の減少が進んでおります林業労働力対策充実するという各般の手段を総合的に講じまして、林業林産業を通じた施策を本年を契機に、一年で終わることではございませんので、本年からひとつさらに推進努力をしてまいりたいと思っております。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、白書と同時に出された「昭和六十年度において講じようとする林業施策」というパンフレットを読んでみますと、その一部を読み上げますが、  我が国の林業生産活動についてみると、五十八年の丸太生産量は前年と同水準の三千百九十九万立方メートルで、十年前の約八割の水準にあり、また、五十八年度の人工造林面積は前年度比八%減の十三万六千ヘクタールで、十年前の約五割の水準にまで低下している。このような林業生産活動低迷は、林業に依存する度合いの高い山村経済社会にも大きな打撃を与えており、山村地域における住民高齢化等と相まって、その活力は著しく停滞している。云々とあって、そして、これは将来重大な影響を及ぼすことが懸念されると書かれております。  この現状認識については私も全く同感でございます。しかし、この現状認識に立ってどのように対応しておるかということを見てまいりますと、これは全く現状認識とやろうとする姿勢というものが正反対になっているのではないか、こういうふうに考えられて仕方がありません。  と申しますのは、例えば農林予算を見て、この林業振興対策費一つとってみても、これが前年度より削減されておるし、また今、営林局統廃合、ことしは一局が廃止され、そしてさらに今度は六十年度で九つの営林署廃止されることになっておるようでございますが、しかも今後十九の営林署を整理すると言われておるわけです。そういうことを考えると、ますます山が荒れていくのは避けられないのではないか。しかも今、国有林野というのは最も人手を必要とする状況にあると思います。これは長官がみずから実態調査をして、民有林国有林のあり方というものを把握されるならば、そのことが手にとるようにわかっていただけると思います。そういう点がおろそかにされながら、ますます人減らし、そして手抜き、そういうもので今の財政難を何とかしていこうという考え方は、これは主客転倒じゃないかと私は思います。  林業というものは、必要な場合は幾ら人手がかかってもやらなければならないし、またそういう性格のものであり、工業と違って、今ちょっともうからないからすぐに操業を短縮しようとか、あるいは今必要だからすぐ生産し、拡大しよう、こういうようなことのできないのが林業の特質でございます。これは十年、二十年どころか五十年、六十年を必要とした、そういう気の長い仕事であり産業であるわけですから、そういう点についてどのようにお考えになっておられるのか、その辺をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  6. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 予算全般につきましては、国全体の置かれております情勢からいたしまして、林業振興関係の諸費もほとんど昨年と同額というところにとどまらざるを得なかったわけでございますけれども、その中におきまして、例えば国産材主産地の形成でございますとか、間伐の促進でありますとか、その地域牽引車となるような事業につきましては重点を置きまして、めり張りをつけ、有効な施行に努めたいと考えておるところでございます。  なお、国有林関係組織統廃合につきましては、国有林野管理経営事業充実させるということは先生指摘のとおりでございまして、これをさらに推し進めたいと考えておるところでございますが、そういう業務管理いたします組織機構人員等につきましては、極力効率的な合理性のあるものにしてまいりたい。今日の交通事情あるいは通信手段、いろいろな事務管理経営管理手法等も大変な進歩がございますので、そういう新しい経営管理手法交通通信手段等を活用いたしまして、やはり組織機構は極力簡素化する、人員につきましても、簡素な人員によりまして山そのものへの仕事は極力これを充実させるのが筋道であろうと考えて進めたいと思っておるところでございます。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その簡素化して効率がよくなることにはだれも反対しないわけです。問題は、そういう言葉の陰で労働者人員が削減され、そして地域住民の同意を得ないで営林署統廃合が強行されていくという、ここに私は問題があると思うのです。しかもこのパンフレットの中には、広く国民理解協力が必要となっておるということを言われておるわけです。しかし、今までに、営林局廃止にしてもあるいはこれからなされようとする営林署廃止にしても、これは住民と十分協議して、そして理解納得を得た上で進めておられるのか。全然関係住民にはその理解納得を得ていないと思います。そういう点では、言っていることとやっていることがちぐはぐではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  8. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 過去に十六営林署統廃合を実施したわけでございますが、いずれの場合におきましても地域社会皆さんの御理解を得るために私ども最大限努力最後まで傾注いたしまして、必要な説明等の場は極力設けまして、最大限努力を尽くしたと考えておるところでございます。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それは最大限努力をしたと言わざるを得ないでしょうが、しかし住民の側から見れば、営林署都合のいいときには住民協力が必要だと言うけれども都合の悪いときには全然住民の意思なんかお構いなしに、一方的に押しつけてやってくる、こういうふうに感じておるわけでございます。  そこで、今度具体的にお伺いいたしますが、前の百一回国会において、いわゆる不成績造林地昭和五十八年度で解消したという趣旨の答弁がありましたが、これは、約二百四十三万ヘクタールの人工造林地の中には不成績造林地は一切ないというふうに理解してよいのかどうか。実際は不成績造林地天然林転換ということで、年間七千ヘクタール、約六十億円を台帳上資産除却をしておるようでございますが、これは一体どういうことなのか、この辺についてひとつ御説明を願いたいと思います。  しかも、我が党が青森営林局中新田営林署事業区を現地調査した際明もかになったのは、五十三年度現在で人工造林地の一六%、そのうちの一五%が四十八年以降の不成績造林地であったこと、そしてまたその不成績造林地の約五〇%が立木がない、無立木のササ地化しておって、最も古い更新年度昭和二十二年であって、もはや天然林として更新する可能性など全くない状態にあるということが判明したわけでございます。そこで、約二百四十三万ヘクタールのうちの不成績造林地、これについては実態調査をすべきだと思います。そういう点についてお考えを明らかにしていただきたいと存じます。
  10. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 昭和五十四年当時国会で御議論をいただきましたいわゆる不成績造林地問題につきましては、その後国会論議を踏まえましての再調査を行いまして、約八万ヘクタール近い不成績造林地につきましての解消計画を五十八年までにほぼ終えたところでございます。現在残っておりますところは、カモシカ、ウサギ等の害によりましてこれ以上手だてを尽くすことが難しいというようなところにつきまして数百ヘクタールが残っておるところでございます。  このような不成績造林地につきましては、先生ただいま昭和二十二年当時の造林地というお話もございましたが、やはり一番発生原因の多い年度区分は、昭和三十年代に行いました拡大造林の中には、いわゆる亜高山地帯に近いあるいは立地条件が必ずしも適切でなかったということから不成績となったところが多い。しかも、それが造林直後に発見されますということではなく、五年、十年、例えば雪に保護されているうちは生々と生育いたしまして、雪から頭が出た後に寒風害あるいはその他の被害でやられるとか、したがいまして、途中からそのような被害に遭うというようなところも多いわけでございます。あるいは外国樹種等につきましては、その後病気が出るというようなこともございます。  そのような被害発生状況につきましては、私ども、五年ごと施業計画を樹立をいたすために山の調査をいたしておりますので、その調査の際に、そういうふうな造林地につきまして、改植で立ち直るものかあるいは手入れでもって立ち直るものか、それともその天然木の入りぐあいからいたしましてむしろ天然木の方を成長させる、そして既往造林木とまぜまして合わせて生育させる、あるいはその既往造林木がすっかり被圧されまして消滅しているような場合もございますが、その場合は完全な天然林になるわけでございますが、どっちの方向にこれから持っていくかということを五年ごと調査で判断をする。その結果、造林地の戸籍を人工造林地から天然林に切りかえる、これを除却と申しておりまして、経理上の扱いから申しますと、それまでかかりました造林費の合計をそこで落とすというような処理をいたしておるわけでございます。それがやはり三十年代の拡大造林地につきましては相当見受けられる。  現在までのところ、そういうふうな調査によりまして処理をしたものは、先ほど申し上げましたように八万ヘクタールに上ると私考えておりますが、その後、やはり二百五十万に近い造林地でございますので、いろいろな危被害も出ますし、いろいろな問題も出るわけでございます。例年と申してはあれでございますが、そういう毎年のことにつきましては、現地営林署が常時山の調査巡視等によりましてその現状を把握する、それを毎年の業務予定に組み込みましてそれを消化していくということをいたしておりますので、この際全体的な一斉の調査をするまでのことはなく、現地営林署担当区の調査事業実行活動でもってこれに対応し得るというふうに考えております。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この国有林はそもそも国有林野経営規程に基づいて、全国で今八十の地域施業計画区によって森林資源整備造成等が行われているわけでございますが、林野庁はこの計画と違った仕事をする際に、この計画変更手続をしないまま通達や指導によって次のようなことをやっておられるわけです。それはヘクタール当たり五十万円以下の低質林分、雑木ですね、低質林分林相改良繰り延べ、こういうことをしたり、この林相改良繰り延べをするということは、言いかえると何もしないで放置しておくということなんです。それからまた、皆伐新植計画材分天然更新への変更、さらに不成績造林地天然林編入等を行っているようでございますが、これはいかなる理由に基づくのか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  12. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 現在国有林野事業造林林道等投資活動はほとんど全額財政投融資財投資金に頼っているわけでございます。したがいまして、今後造林地化しながら財投資金の利子を軽減するためには、自己資金もそれにまぜまして、総体としての金利負担を軽減するように私ども運用しておるわけでございます。造林をこれから行います際に、地上立木を切ってその造林費用に充てるわけでございますけれども、その地上立木がほとんど収入がないというふうな場合には、必然的に全額財投資金になってしまう。そうなりますと、その後の資産経理が非常に高いものにつくと申しますか、そのような状態になりますので、それを薄め得るだけの収入が相当ある場合にまず投資順序としては考えていこうというやり方を現在業務運営の方法としてやっております。  一応財政事情によりまして五十万とか百万とか、土地によって線の引き方がございますけれども、ある程度の収入で借入金を薄め得るようなものから優先順位をつけまして造林活動をしていこう、その収入がない場合に後送りするというようなことでございます。したがいまして、これは計画順序整序でございますので、業務運営弾力性の範囲で行えることだと思います。  なお、更新種と申しますが、造林する計画のものを天然更新に変えるというふうなことにつきましては、これは施業計画上の変更手続をしなければなりませんので、そういうことにつきましては、局署の間でその理由等十分お互いに検討し合いまして、必要な手続を踏んだ上なされているものと考えております。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今の計画変更手続の件については議論したいところでございますが、時間がありませんので先に進みます。そういう手続がなされないで実際にはやっておられる箇所が幾つかあるようですから、一応ここで表明しておきます。  そこで、結局私が言いたいのは、第一にこの森林施業計画というものを着実に実行して、そして必要なそれに対する財政措置を講ずべきではないかということでございます。  第二番目には、この不成績造林地というものを安易に天然林に編入するようなことをしないで、もっと実態調査というものを十分した上で抜本的な対処方針というものを確立すべきではないか。     〔委員長退席島村委員長代理着席〕  第三には、特に社会党が調査指摘をした中新田山口の両営林署実態については、早期に実態調査をしてほしい。先ほど営林署職員を通して全国的にはやっておるからというお話でしたが、こういう具体的な問題が持ち上がっておるところは、やはりそれにすぐ機動的に対応するという意味でこの実態調査をお願いしたいと思いますが、それはいかがなものでしょうか、
  14. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 財政措置全般につきましては、現在国有林野事業が新しい経営改善に取り組んでおるわけでございますが、その中におきまして、五十一年来財政の逼迫のゆえをもって必要な保安林造林でありますとか林道投資でありますとかがおろそかになってはならないということから、いろいろと拡充をしていただいているところでございます。これらにつきましては、なお私どもも自主的な努力も傾注する、財政措置につきましてもこの充実をお願いするということで進めてまいりたいと思っているところでございます。  不成績造林地全般につきましては、先ほどお答えしたところに加えまして、最近の造林地取り扱いにつきましては、かつて、大変潔癖な一斉人工造林が立派な山であるというふうなことから、非常にそういう山を目指したわけでございますけれども、やはりむしろその投入する経済効果等から考えますと、あるいはでき上がるものの将来性から考えまして、具体的に申しますと広葉樹など、これはよく造林地に侵入してくるわけでございますが、侵入という言葉も適当かどうかあれでございますが、そういう広葉樹資源の効用というものを考えよう、混交させた方が、カツラとかナラとかホオとかケヤキとかいろいろございますが、林分自体健全性を増すというふうな考え方もございます。将来の木材利用から考えますと、針葉樹の需要をどう見るべきか、むしろ広葉樹の方が有望というふうな考えもございます。したがいまして、その山自体仕立て方がかつてのような潔癖な一斉林ではない、広葉樹が入ったから不成績であるというふうな見方でだけ見ずに、やはり最少の経費で全体として健全な、豊かな山と申しますか複雑な山と申しますか、いろいろな機能にもこたえ得る山をつくっていくというふうに私ども林業に携わる人間の目も切りかえてまいらなければならない。  やはり営林署というのは大変大きい組織でございますので、命令を下しますと一斉に行動する。例えば除伐でございますと、杉、ヒノキ以外の木は全部切るのが従来の除伐であります。そうしますと残すべき広葉樹までが全部切られる。今考えれば行き過ぎというようなことも大きい組織の中ではあったわけであります。したがいまして、これからは一番現地に通暁した営林署担当区の職員がその山の取り扱いを、本当にどういうふうにすれば一番健全な山になるか、これをよく考えてみてほしい。施業計画営林局でつくりますので責任営林局にありますようなものの、五年に一遍でございますので、その観察の密度、精度につきましては、むしろ現場の営林署担当区の方が常時接触しているわけでございます。したがいまして、もちろん局も責任がありますけれども局署一体となったそういう目的への調査活動によりまして、施業計画ですと五年に一遍でございますので、やはり毎年の業務予定の中にそういう調査の結果をどう組み込んでいくか、それをひとつ真剣にやらせたいと思います。  お話のございました中新田山口につきましても、さらに十分、そういう考え方でよく見て今後の業務計画を組ませるようにいたしたいと思います。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 長官はこれから参議院の方に行かなければならないそうですので、最後あと一つお伺いいたします。  その前に、この間の期末手当なんかは、営林署職員は遊んでいるわけじゃないでしょう。一生懸命やっているのにああいう差別をつけられて黙っている手はないと私は思いますよ。これは長官が一番先頭に立ってけつをまくればいいと思うのです。やはりそのくらいの覚悟を持って政府に当たってください。  それから、最後長官の決意についてお尋ねしますが、現在林業の置かれておる実情認識は、先ほども言ったとおり私も全く同感でございます。問題はその対応でありますが、特に最近貿易摩擦によってアメリカから木材製品関税引き下げ木材輸入拡大など強力な圧力がかかっておるわけです。こういう国際的な情勢変化について、まあ変化は今までもあったでしょうが、なおさらそういう事態が急迫してきておる、こういう問題について一体どのように今後対処していくおつもりなのか、そしてこのようになったいきさつ、それから具体的には今後どう進めるのか、その辺の見通しについて明らかにしていただきたいと思います。  なお、外交問題に関してもし補足する点があれば外務省の方からもお願いしたいと思います。
  16. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 今回木材製品の関税問題が大きく取り上げられましたのは、やはりアメリカ北西部林業地帯がカナダ産木材製品にいろいろ押される、あるいは国内的には南部の自国林業の発展に押されるということで、非常に日本に対する輸出圧力を強めざるを得ないような背景があったとは思います。しかし、日本林業は既に完全に木材自由化の中でいろいろ苦しい経営をしておるわけでございます。この製品につきましても、将来はだんだんとそういうふうな開放経済下での経営改善を強いられると申しますか、覚悟した体質改善を進めてまいらなければならないというふうに考えまして、私どもとしましては、そういう体質改善林業林産業の活性化が十分なされた後にそういう関税等の問題は処理したいと考えておりますが、ある程度計画的にこれも進めなければならないということから、そのような政策をとりながら、しかる後に関税につきましても考えたいというふうに思っているところでございます。要するに、林業林産業の体力を活性化する、そのための施策をぜひとも先行させたいと考えているところでございます。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 新聞では大体三年目からやって五年間で救済策の実効を上げると書いてありますが、これはどうなのでしょうか。
  18. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 当面五カ年につきましてそういう施策推進してまいりたい、その実施状況を見ながら、おおむね三年目から関税についての引き下げの措置について対処してまいりたいという、一応そのような目標を立てまして進めてまいりたいということでございます。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうもありがとうございました。あと結構です。  では次に、農林水産政務次官にお伺いいたします。  今度アメリカから貿易摩擦解消のためということで、アメリカの穀物一千万トンを日本が輸入して、これを海外食糧援助に回したらどうかという要請があったと報じられておりますが、これに対して、どうも今までのアメリカ政府と議会の動きを見ておりますと、これはなれ合いじゃないかというふうに映ってくるわけであります。アメリカ政府の方では対日関係を大変憂慮しているようなそぶりをし、貿易の自由を守らなければならないと言っておりますが、議会の方では日本に対して制裁措置を講ずる、こういうような一つの決議をしたり、またその報復の動きを示したりしておるというのは、つまり、一方でおどして一方で何とかしてくれ、日本の方から何とかしないとどうしようもない、議会を抑えることはできない、こういう一つのポーズをとりながら、実は日本アメリカ考えておるものを強硬に押しつけてきているのではないか、こんなふうに考えられるのですが、その辺についてのひとつ考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  20. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 先生指摘の一千万トンの穀物の輸入の問題は、アメリカ政府、議会がなれ合いでないかというようなお尋ねもございましたけれども、そのことは、なれ合いであるかどうかということは、私が推測の域を脱し得ない今の時点で御答弁を申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますし、なおかつそのようなことを——また時間がたてばなお明らかになるかもしれませんけれども、今のところ米国政府の提案は、一千万トンの米国産の穀物を我が国が援助用として買い付けてはどうかという趣旨で発言があったと聞いておるわけであります。  食糧援助については外務省の所管ではございますけれども、一千万トンの米国産の穀物を我が国が食糧援助に使用するということを仮に考えた場合に、我が国が現在食糧援助をしておる主体はKR食糧援助で、国際小麦協定の食糧援助規約により我が国の拠出義務量が、実は、年間小麦換算で三十万トンでございます。今回の米国の提案の一千万トンを四年間で実施するとしても、年間二百五十万トンという、御案内のような膨大な量に達するわけであります。もちろん、実施するに当たりましては極めて巨額の財政負担を要することでもございますし、KR援助、食糧援助に当たっては、規約上、開発途上国から相当な部分を買い入れることが一般的な目標とされているので、多量の米国産の穀物を援助用として使用する場合には、開発途上国の穀物輸出国に対する配慮が当然のことながら必要となってまいりますので、極めて困難なことであろう、こう考えております。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 こういう要請になったいきさつについて、外務省はその経過等に詳しいと思いますので、そちらの方からひとつこのいきさつと、今後どういうふうにこれに対して考えておるのか、お答え願いたいと思います。
  22. 木幡昭七

    ○木幡説明員 まず、いきさつの点についてお答え申し上げます。  本年の三月の十三、十四日の両日開かれました日米高級事務レベル会合におきまして、先方、アメリカ側のアムスタッツ農務次官から、先ほど御質問がございましたような、四年間で一千万トンの米国産穀物を買って援助用に回してはどうかというようなお話がございました。その後、四月の上旬、五日でございますが、手島外務審議官が訪米されまして先方といろいろ話をした際に、もう一度先方からこの話がされたわけでございます。先方で言及されたのはウォリス国務次官及びアムスタッツ農務次官であったと伺っております。さらにまた、最近におきまして、四月十三日に安倍外務大臣が訪米されまして、外務大臣会談が行われたわけですが、その訪米の期間中の会談の際に、コーヒーブレーク、お茶の時間に、先方から再びブロック農務長官よりこの話があったということでございます。安倍大臣は、そのお話に対しましては、我が国の食糧援助のスキームで対応することにはなかなか困難がある、一つのアイデアとして、お考えとして承っておく、そういう答弁をされたと私どもは伺っております。  これに対すう政府としての対応ぶりでございますが、これは先ほど農水省の政務次官からもお話いただいたとおりでございます。私ども、食糧援助ということで対応するということでございますれば、小麦換算で三十万トンの食糧援助の約束を食糧援助規約上負っているわけでございますけれども、そういう形で対応するには余りにも大きな額でございます。さらにまた、食糧援助規約上、先ほどもお話しございましたとおり、穀物を使用する場合には開発途上国産の穀物を使用するということが一般的目標とされておるわけでございます。そういうことでございまして、開発途上国からもいろいろ御注文があるということは当然予想しなければいけないわけでございます。さらにまた、食糧援助予算の規模も、これに対応するにはとても十分な額じゃございません。そういう諸制約がございますので、我が方として対応することはなかなか難しい、こういう感じでございます。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は、この貿易摩擦問題はそう簡単に解消するとは思われません。それは、基本的に日本の外交のスタンスというか、そういうものが違うと思います。社会党が以前から主張しておるように、日本のような国は自主、中立の立場で外交をしないと、どうしても強力な西側諸国のペースに巻き込まれてしまう、こういうふうに私は考えております。この西側同盟の外交が展開されて以来というものは、アメリカの強力な圧力がいつも加わって、日本が独立国家としてその威厳さえ保持できないのではないか。軍備にしてもしかりでございますが、どうも日本の立場というのは余りにもひ弱な感じがしてなりません。もっと節度と秩序ある貿易というものを打ち立てなければこういう問題は解消しないのではないか、こんなふうに考えられるわけですが、そういう点についてひとつお答え願いたいと思います。  時間がありませんからもう一つ申し上げますが、今度の六十年度予算で食糧管理費が一千百七十八億五千四百万円も減らされているのです。これはどういう理由によってこのようないまだかつてない大削減がされたのか。  それから、ことしの米の需給関係についてですが、去年は韓国米の輸入等で大分国内が騒然としたわけでございますが、ことしはそのような事態は一切ない、そういうふうに考えてよいのか。また、五十九年の豊作というものも手伝っておるわけですが、そういう点で米の需給関係についての見通しを明らかにしていただきたいと思います。  そういうことで、ひとつ御答弁をお願いします。
  24. 木幡昭七

    ○木幡説明員 最初に先生お話になられましたのは自主独立の外交という大変大きな課題でございまして、これは外務大臣からでも御答弁いただかないと、私どもとても御答弁できかねる点でございますが、日ごろ私ども感じている点を一点申し上げて答弁にかえさせていただきます。  例えばアフリカの食糧危機に対する対応ぶり、これなどは私どもかなり早い段階で察知いたしまして、例えば昨年のOECD閣僚理事会でいち早く、一億ドル以上の援助を日本はやりますということを打ち出したわけでございます。さらにまた、アメリカとの関係におきましても、援助政策の協議などにおきましては、私ども決して向こうの注文だけを聞いているわけじゃございませんで、日本の援助政策、援助の仕組み、それに従って日本としては開発途上国に対する援助をやっていくのだということを常々先方には説明し、かつ主張もしているところでございます。
  25. 石川弘

    ○石川政府委員 最初に食管予算でございます。  御承知のように、米の管理、麦の管理のための財政負担でございますが、内容は三つございまして、一つは売買逆ざやのような形で負担しているもの、それから米と麦を管理しますための管理経費、それからもう一つが過去に起きました過剰米の損失を補てんしますための経費でございます。  売買逆ざやにつきましては、御承知のように順次解消いたしまして、ことしの予算を組みます際には、二月二十五日からの米価の引き上げを内容といたしておりましたので、したがいまして、それに要します売買逆ざやが縮減をする、それによりまして約五百億を超えますものが縮減されるわけでございますが、そういう縮減要素がございました。  管理経費につきましては、むしろ、今まで持っておりました米の数量が大変少のうございましたから、ある程度の米を持つために金利なり倉敷なり若干ふえる要素もございますが、逆にいろいろな合理化によりまして管理経費を減らすという要素もございまして、これについてもある程度の縮減が可能なわけでございます。  それからもう一つの過去の過剰米処理の損失補てんでございますが、これは、ピークのときは千六百億程度の損失補てんをしておりましたが、ことしは一千億程度のもので済んでおります。  したがいまして、減額幅が比較的大きゅうございましたけれども、私ども、これらの経費を使いまして十分に食糧管理がやれる経費を確保した次第でございます。  それから御心配をかけておりました米の需給の問題でございますが、幸いに一〇八の豊作で千百八十八万トンの米があるわけでございますが、二十万トンが加工原料用に回されまして、さらに五十九米穀年度における早食いを五十万トンいたしておりますので、これを差し引きましても千百十八万トンが供給量でございます。それにつきまして、需要が大体千四十ないし千五十五万トン程度と考えられますので、六十ないし七十万トンの奥行きを持って六十一米穀年度に移れるということでございますので、ことしの端境期は、端境期のときはむしろ端境期前から米が出てきますのでもっと量は多うございますが、御心配をかけることのないような管理ができると思っております。
  26. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。
  27. 島村宜伸

    島村委員長代理 松沢俊昭君。
  28. 松沢俊昭

    ○松沢委員 きょうは、参議院の関係で佐藤大臣は来ておられませんが、近藤政務次官が来ておられますので、近藤も佐藤もそう違いはないと思いますので、御質問を申し上げたいと思います。  最近、市場開放ということがずっと話題になってまいりましたが、今の中曽根内閣の対外経済政策といいますか、その要するに大綱というものはどこにあるんだか、非常に理解しにくいところの面がございますが、近藤次官はどのような受けとめ方で農政を担当しておられるのか、お伺いを申し上げたいと思います。
  29. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 まさに、アメリカを中心とする諸外国からの市場開放の要求は極めて強いものがあり、かつまた、協力友好関係にあるアメリカからのここ数カ月来の市場開放というのは、まさに驚異的な感がするほど急速な要求に変化をしてきております。ただ、それの対象になるものの大部分が農産物、我が国でも極めて活力を失いつつあり、これからいかにして農政を展開していこうかという一つの転換期といえば転換期にある、そういう農林水産物の市場開放ということで、我が農林水産省としてはこれをいかに受けとめていくかですが、佐藤農林水産大臣就任以来、活力のある農村を、足腰の強い農業をということをスローガンにして農政を推進しておる、その過程で市場開放の要求が強くなってきておるわけであります。こういう要求を一つの引き金にして、我が国の新しい、いわゆる足腰の強い活力のある農村、またハイテク等の新しい先端技術の導入をして一日も早く競争力を持たせていかなければならぬということは私ども基本的に考えておるわけであります。一方で市場開放を要求されながらも、我が国の農産物については現実問題既に百八十億ドルという大輸入国になっておるわけであります。これ以上開放することについては国内対策を十二分にやらなければ応じていかれないというのが現在の我が国の農業の実態でなかろうかと思うわけであります。  それら厳しい事情ではありますけれども、今後の対策については、市場開放が強まればこれを引き金にしてなお一層国内の体質を強めていくことに努力をしていきたい、こう考えておる次第であります。
  30. 松沢俊昭

    ○松沢委員 先ほど渡部委員の方からアメリカの穀物一千万トンの輸入要請のようなものがあったということについて、いろいろ経過の説明もございました。千九百八十年の食糧援助規約という条約がございますが、私はアメリカ政府がこの条約を知らないでいろいろなことを言っているわけではないと思います。この中では、日本は年間の最小拠出量三十万トンと決まっておるわけでありますし、食糧の足りない国々に対します援助の穀類は開発途上国の食糧をできるだけ使ってやるということにも決まっておるわけでございます。そういう一つの条約がちゃんとあることくらいは、アメリカ政府はわからないわけではないのです。そのわからぬでないところのアメリカ政府が、日本に対して一千万トンも買い付けをやって対外援助に振り向けるという無理難題を持ち出してくるには、日本政府の今までのアメリカに対する態度にあいまいさがあるからこういう無理難題が、押しつけられたわけではないが話題となって出てきているのではないかと私は考えざるを得ないわけであります。  政務次官、そういう点は一体どうお考えになるのか、あるいは今までの経過から推して外務省ではどうお考えになっているか。外務省の方から先に答えてもらって、それから政務次官から答えてもらった方がいいでしょう。御答弁願いたいと思います。
  31. 木幡昭七

    ○木幡説明員 アメリカ側も食糧援助規約の中身は知っているであろうということは私どももそのとおりだと存じます。したがいまして、先方からお話がございましたときには私どもの方からもこの点をもう一度先方によく説明して、食糧援助の関係でそういう大変大きな額の米国産穀物の使用を言われても、対応には大変な困難があるということを御説明しているわけでございます。先方もその点について、規約上のそういう仕組み、問題点等は理解を深めていると存じております。先方はその過程で、一年でなくてもいい、四年間で、一応のめどとしてそこまでというようなことも説明した経緯もございます。したがいまして、先方として食糧援助規約上の仕組み等について全然無理解できているのではないだろうということだけはおっしゃるとおりかと思いますが、私どもその過程で十分もう一度説明もしているということでございます。
  32. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 今外務省からお答えしたとおり、窓口も権限も外務省に所属することでありますけれども、いずれにしても、食糧という立場から考えれば、当然規約は規約として承知しながら、アメリカの農業事情もそういうことを言わざるを得ないほどかなり深刻なものになっておるのだろうと思います。  ただ、今の外務省の答弁にもございましたけれども、この規約のことについては、規約上の問題としてきちんとノーという返事を我が国の政府としてはとらなければならないのではないだろうかと思っております。
  33. 松沢俊昭

    ○松沢委員 今も次官の方からお話がございましたように、アメリカの農業は大変深刻な局面を迎えているということを私は承っているわけでございますが、その状況というのはどの程度深刻になっているのか、おわかりの方がございましたら御答弁をいただきたいと思います。
  34. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 お答え申し上げます。  アメリカと特に日本との対外経済摩擦の問題は大変深刻になっているわけでございますが、私ども理解といたしましては、先ほど政務次官からもお答え申し上げましたように、最近のアメリカからの日本の農産物の輸入額だけでも既に七十億ドルに達しております。また、全世界からの輸入はアメリカの分を含めまして既に百八十億ドル強という非常に大きな規模に達しておるわけでございます。対外経済摩擦は大変厳しいわけでございますけれども、事農林水産物に関しては、日本は、国の単位で見ましてただいま申し上げましたような非常に巨額の輸入額になっておりまして、農林水産物の分野では世界で最も高い輸入量を維持しておるわけでございまして、基本的には非常に開放された状況であるという考え方をとっているわけでございます。  また、とかく日本の市場の閉鎖性ということが問題になるわけでございますけれども、農産物あるいは林産物、水産物につきましても、関税の面でもあるいは輸入制限の面でも、日本の農産物の重要性あるいは地域の維持発展の見地から極めて重要な産物に限定をいたしまして、最小限度の措置を講じておるという状況でございます。私どもは、大変厳しい状況でございますけれども、このような農林水産物の輸入の状況あるいは輸入措置につきまして、従来もそうでございますが、今後将来にわたりまして関係国に十分説明をして御理解を得てまいりたい、そういう基本的な考え方で対処をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  35. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私も当然そういう態度で臨まなければならぬのじゃないか、こう思っているわけでありますが、聞くところによるとアメリカの農業経営体が相当倒産をしているということであります。もう一つは、レーガン政権が農業に対するところの保護政策の打ち切りをやっている、そういうことからして、例えば小麦なんかの場合はアルゼンチンなどとは競争にもならぬというような状態になっている、そういうことで結局倒産が増大をする。今回このような問題の提起をアメリカの方がやったということは、日本アメリカの倒産会社の管財人か何かになってくれと言わんばかりのやり方だと思うのです。言ってみますならば、今まで日本の対アメリカの態度というのが余りにも腰が弱過ぎたのじゃないか。もっと申し上げまするならば、日本の財界の得手勝手なやり方というものが今日このようなアメリカの態度になってきているのじゃないか。  私ははっきり申し上げまするけれどもアメリカ貿易摩擦が起きているというのは、何も農業で問題が起きているわけじゃないのでありまして、自動車とかそういう工業製品アメリカに対する大量の輸出が日本の黒字になりアメリカの赤字になる、そういうことが結局摩擦という言葉で表現されているのじゃないでしょうか。日本政府が財界一辺倒であるから問題が起きてくるのじゃないですか。そして弱いところの農林水産業に対してツケが回ってくる。あげくの果てには、途方もない一千万トンもの穀類の始末をつけてくれないかという注文をつけられる。これはやはり、日本アメリカに対するところの政策の過ちがこのようにして出てきているのじゃないか、こういうぐあいに判断をいたしておるわけであります。そういう点からいくと、私は、冒頭に申し上げましたように、中曽根内閣の対アメリカ経済対策というものは理解に苦しむ、どういうふうに理解しているのかということを次官に聞いたわけでございます。そういう点、もう一度はっきりさせてもらいたいと思います。
  36. 吉國隆

    吉國政府委員 アメリカの農業事情先生の御指摘がありましたように非常に厳しい状況にある、国際競争力の面でもまた農業経営の面でも非常に苦しい状況にあることは事実でございます。また、アメリカ経済全体からいたしましても、失業率が非常に高い、またお話のございましたような貿易不均衡があるというようなことから圧力が高まっておる状況であろうというふうに考えておるわけでございます。そういった背景と同時に、アメリカ国民性と申しますか、貿易制限措置に対して本来自由な競争の機会を与えるべきであるというような感情が非常に強いといった、もろもろの要素があるというふうに思っておるわけでございます。  先ほど国際部長の方から御答弁しましたように、日本の農産物の輸入は相当ふえてまいっておりますし、国内の食糧自給力を維持していくという農政の基本に立って私どもとしては考えていく必要があるわけでございまして、貿易収支の問題につきましても、基本的には、アメリカ経済の安定の回復あるいはアメリカの高金利を背景にしたドル高の是正なりそういった形で、また日本側では節度ある輸出の実現あるいは内需拡大を中心とした経済政策の運営といったようなもので解決をされるべきであろうというふうに考えておるわけでございます。
  37. 松沢俊昭

    ○松沢委員 農林省側のこれに対するところの方針といいますか、そういうのは一応わかりました。河本長官はこの問題につきましては受け入れてもいいような発言をしておられますが、そういう点は閣内不統一といいますか、閣内の方針というのはきちんと決まっているのかどうか、これは政務次官、はっきりしてもらいたいと思います。河本さん、これは受け入れてもいいようなことを言っているのですよ。
  38. 塩飽二郎

    ○塩飽説明員 先生おっしゃられましたように、河本対外問題担当大臣の方からは今御発言がございましたような趣旨の御発言があったというふうに私どもお聞きしているわけでございます。したがいまして、若干政府内部での発言にニュアンスの差があろうかと思います。問題はアメリカに対して最終的にこの問題について日本政府としてのきちっとした態度を言っているかどうかということにかかってくるだろうと思いますけれども、日米間の貿易問題は依然として今進行中といいますか、その対応ぶりについては引き続き四月九日の対策を実施していくのだという基本的な立場で今処理を進めている段階でございます。その過程で出てまいりましたこの一千万トンの穀物の援助振り向けの問題につきましても、先ほど来御答弁申し上げておりますような基本的な考え方でございますけれども、なお若干の検討を要するのではないかというふうに考えております。
  39. 松沢俊昭

    ○松沢委員 農林省の官僚の皆さん、確かに日本の農業を守るためにいろいろ配慮しておられることは十分承知をいたしました。でありますが、今も話が出ておりまするように、農林省のお役人さんは大体まだそういう方針でなければだめじゃないかという考え方はあるわけだけれども、河本大臣などという高い政治レベルの段階では、アメリカが投げたところのボールをまだ投げ返していないわけなんでありまするから、どのような政治的な変化が来るかわからぬという危惧の念を私は持っておるわけでございまして、そういう点、政治家としての近藤政務次官の方から、大臣にかわってきょうは御出席をしておられるわけでありますから、御答弁をお願いしたいし、それからまた、ここで今まで皆さんずっと答弁してこられた、アメリカに対して歯どめがかけられる自信があるのかどうか、そういう点もあわせてお聞かせ願いたいと思います。
  40. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 大変大きな質問でございまして、政務次官が答えるには問題が大き過ぎるわけでありますけれども、役人のベースを超えている問題でございますから、私からかわって、ごく事務的なお答えになるかもわかりませんけれども……。  閣議で政府が決定をしておるかということに対しては、閣議の段階ではまだ議題になっておりませんし、当然閣議で決定いたしていないようであります。かつ、農林省としては極めて困難な問題であるということには今も変わりがございません。ただ、この問題は援助ということでありますので、先生御案内のとおり、外務省の権限に属することでございますので、その段階での御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  41. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これ以上お伺いしてもその先の結論は出ないと思いますのでやめますけれども、政務次官、これは確かに外務省の問題ではありますけれども、大きな政治問題でございますので、きょうこのような議論があったということを農林大臣にもお伝えを願いたいと思います。また、外務省の方からも審議官がおいでになっているのですが、外務大臣にも、我々は非常に大きな関心を持って見守っているのだ、だからアメリカのそういう無理難題というのははね返すべきであるという強い主張があったということをお伝え願いたいと思いますが、どうですか。
  42. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 先生おっしゃるとおり、私ども、極めて困難な問題であると思っておりますので、農林水産大臣には先生の御発言ともども私の考え方もお伝えをしておきたいと思います。
  43. 木幡昭七

    ○木幡説明員 本件につきましては、安倍外務大臣は問題の所在も十分御存じでいらっしゃいますし、松沢先生の今の御要望は私から大臣に十分御説明申し上げたいと存じます。
  44. 松沢俊昭

    ○松沢委員 では、次に移りたいと思います。  貿易問題で最近いろいろな問題が起きてまいりました。まず最初に、合板の関税引き下げ問題がございまして、政府の方といたしましては三カ年間後に関税の引き下げをやる。しかし、それをやるには前提として、今材木の需要が伸び悩んでおりますからその需要拡大を図る、あるいはまた木材産業界が不況であるからこれの振興を図る、一面また間伐だとかそういう山に対する手当てをやる、これは五年間でやっていく、こういうことでございます。  この前も私、大臣にお伺いしたわけでございますが、社会党の方といたしましては林業対策特別委員会というのがございまして、たびたび申し入れをやって、特にことしは国際森林年という意義ある年でもあるし、林業政策を強化すべきであるという主張を、予算編成のときにおきましても竹下大蔵大臣等に申し入れをやってきているところでございます。教育林を、社会党としてはその主張をやったわけでありますけれども、とうとうそれは政府としては取り上げられませんでしたね。そして、アメリカの方で今度は合板の関税引き下げという問題が起きてきたら、しかも中曽根さんは、日本で別荘のあたりで休んでおられればいいのに、正月早々出かけていって要らないことまで約束して帰ってこられた、と私は受け取っているわけなんでありますが、そういう問題が起きてくると、五カ年間で相当頑張るよ、こういう前提で引き下げをやるのだという話があるわけですね。  じゃ、五カ年間の計画は一体どういうことなのかということをこの前ただしましたところ、まだそれはないのだ、こういう話なんです。今度はできていると思いますが、林野庁次長、山問題あるいはまた木材需要拡大問題、業界の振興問題に一体どういう方法で手当てをしていかれるのか、それをまずお答え願いたいと思います。
  45. 甕滋

    ○甕政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたように、現在の森林林業あるいは木材産業が置かれた状況は非常に厳しいものがございまして、そういった中でアメリカその他諸国からの要請にこたえまして市場開放措置についても対応を迫られたという経過でございます。  私どもといたしましては、そういった林業から木材産業を通ずる厳しい環境の中におきまして、まず、単に問題となりました合板業界の体質改善だけではなくて、中長期の視点から木材産業あるいは林業を通じたその活力を回復させるための対策が必要である、こういう基本的な考え方がございます。このために、木材産業から森林林業に至る活力回復に特にこの際緊急に要請されると考えられます木材需要拡大あるいは木材産業の体質強化、間伐、保育を中心といたしました森林林業の活性化を中心にいたしました対策として、財政、金融その他の措置を五カ年間にわたって特に講ずることにしておりまして、その内容につきましては現在鋭意検討中ということになっておるわけでございます。  関税問題も、そういった森林林業あるいは木材産業をめぐる状況を一日も早く克服いたしまして明るい見通しがつけられるように対策を鋭意講じてまいりまして、その進捗状況を見ながらおおむね三年目から引き下げを行う、こういう対処をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  46. 松沢俊昭

    ○松沢委員 国有林もそうですが、民有林はなおさらということだと思いますけれども日本森林をどのようにして守っていくかということは今の時点では大変難しい状態に入っていると思うのです。ということは、とにかく手入れをすることによってその代償が得られるという状態であればそれなりに何とかする方法もございますけれども、今の場合におきましては手入れをやっても手間賃にもつかぬという状態が続いているわけでありますから、したがって非常に難しい、私はこう思っております。  それからもう一つは、森林状況というものをお聞きしたわけでありますが、国有林にいたしましても民有林にいたしましても、林野庁からいただいたところの資料でございますが、植えてから三十年以下というのは、国有林が八三%、民有林が八四%、こういう状態になっているのですね。その残りが伐期到来ということでございまして、そういう意味からするならば、今まさに危機的な状況になっている。しかし、今はこういう時期であるから、例えば国有林特別会計なんかにしましては相当苦しい状況に入るわけですね。金はかけなければならない、金にはならない。しかし、これが二十年、三十年しますと物になってくる。ですから、山、森、緑という問題につきましては、やはり長いサイクル、時間で問題を見詰めていかなければだめなんじゃないか。  例えば野菜だとか米だとかいうものは一年に一回ないし二回はとれるわけでありますから、サイクルは非常に短いわけであります。森林の場合は非常に長いわけでありますから、そういう観点に立って物を見ていくということになりますと、さっき渡部委員の方からも指摘がございましたが、国有林の場合におきましては営林局統廃合問題というのがございましたね。それから、ことしは閣議決定に基づいて九つの営林署廃止という目標に向かって今動いておられるようでありまするが、さっきも話がありましたように、天然更新なんというのは、私たち素人から見ますと、何にも手入れしないで自然のままに任せる、そのうちに木が生えてくるだろうというのが天然更新なんでありまして、もっと手入れをして植えてやっていけば森ができ上がっていくわけでしょう。  そういういろいろな問題があると私は思いますが、そういう時期において、民有林の手入れも今申し上げましたようになかなかできないという状態の中で、国有林の手入れも怠るということになったら、将来の日本の山は一体どうなるんだ、そういう心配を私はするわけなんです。そういう点からすると、今回このような合板の関税引き下げの問題というものが打ち出されてきておりますが、しかし、五年間の対策の中でという、五年間というのは非常に短いと思いますが、もっと長期的にこれは見ていかなければならないと私は思っております。  それからもう一つは、閣議決定はあったけれども状況はそのように変わってきたということになれば、山の手入れをやるというのは山に人がいなければできないわけなんでありまするから、したがってこの閣議決定というものは過去の話なのだから一度洗い直して、もう一回山をどうするのかというところの立場に立っていくべきなのじゃないか、状況が変わったわけだから。だから、閣議決定は閣議決定であったけれども、それは古い制度の話なのでありますから、新しい時代に立って再検討の必要というものが出てきておるのじゃないかと思いますが、この二点どうお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  47. 甕滋

    ○甕政府委員 森林政策、特に林業生産に関します政策が非常に長期を要する、非常に長い目でこれは考えていかなければならないという御指摘は、全くそのとおりだと思います。  お話の中にもございましたように、現在の森林資源の構成も、戦後に造林の人工林が大部分でございまして、三十年生以下で八割を超え、三十五年生以下をとりましても九割とか、こういう状態にありまして、今の森林が一番必要といたしますのはその保育、間伐、手入れが一番必要な時期の森林を抱えているという現状でございます。したがいまして、林野庁といたしましても、これまでも間伐につきましては間伐の実施から流通加工に至る総合対策を講じますとか、あるいは森林総合整備事業といった中で、市町村の指導のもとに造林、保育を中心に組織的にこれを推進するといったことも図っておりますし、また今後の施策の展開の上でも、これは施策の重点の一つということで、こういったことを通じて活力のある森林の維持造成に努めていくつもりでおるわけでございます。  また、国有林につきましても、おっしゃいましたように資源的ないわば端境期に当たるという現状の中で経営改善に取り組んでおるわけでございますが、これも健全な経営を確保いたしまして、その上に立って適切な森林施業も実施していくという必要がございますので、経営改善計画で定められました現在の考え方を一層庁内で努力いたしまして、健全な森林の維持造成には、民有林国有林を通じまして努力していく必要がある。また、そのようなつもりで年々の予算あるいはまた今回五年間特に講ずるという対策の検討等に取り組んでまいるつもりでございます。
  48. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私は次長に、これはぜひ長官そしてまた大臣に、こういう時期であります。ですから、したがって閣議決定の署の統廃合問題というものは再検討の時期に来ている、検討すべきであるという意見があったということをひとつ伝えていただきたいと思います。  それからもう一つの問題でありますが、五年間やるといってもどのくらいな金を使ってやるつもりなのか。ただ文章上だけに、そういう「間伐・保育等森林林業の活性化等を中心に、」なんて言っていて、それは「財政、金融」こういうふうにして出ていますが、財政の面では大体このくらいは必要だろう、金融の方ではこういう金をこの程度投入する必要があるのじゃないかというような、おおよそのめどはあると思いますのですが、お聞かせ願いたいと思います。
  49. 甕滋

    ○甕政府委員 営林署統廃合の問題につきましては、経営改善計画で定めまして、本年度は九営林署を実施するという方針でございます。これは経営改善計画そのものを非常に苦しい状況の中で実行する、経営改善を実施していくということが、ひいては国有林に対します財政あるいは一般国民の期待にこたえる道である、こういうことからそれに取り組んでおる次第でございますが、先生の御論議は上司にもお伝えをするつもりでございます。  それから、五カ年特に講ずるという対策につきましては、先ほど申し上げましたように現在鋭意取り組んでいるところでございまして、そういった中で、どういった内容で、またどういった規模の事業を実行していくか明らかにしてまいりたいと思っております。
  50. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それから関税の問題でありますけれども、これは外務省にお伺いしたいと思いますが、合板の問題で、アメリカの方の要求は今一五%の関税を安くせいという話でしょう。ところが、同じ両表面針葉樹が日本では一五%、アメリカでは二〇%になっているのですね。自分の国では二〇%にしておいて日本の国にだけ一五%が高いから引き下げをやれというのは一体どういうことなんだ。そういうことについて政府の方としては一体どういう対応をされたのか、お伺いしたいと思うのです。
  51. 甕滋

    ○甕政府委員 アメリカの合板関係の関税でございますが、ただいまお話がございましたように、合板の表面が何でできているか、その材の樹種によって異なっておりますけれども、米国が今回言ってきております針葉樹合板につきましては、日本が一五%であるのに対してアメリカが二〇%という状況でございます。また、その他の合板につきましては、アメリカの場合は四・一%から一一%というようなものもございます。  アメリカの針葉樹合板のこの二〇%でございますが、東京ラウンドの際にはこれを最終八%まで譲許をするという方針になっておりますが、カナダとの間に共通規格の問題につきまして進展が認められた場合にこの引き下げを始めるのだということになっておるわけでございます。関税の性格上、ある国の間で単品で全く同じでおければいけないとか、どっちが高くなければいけない、安くなければいけないということもございませんわけですが、日本アメリカと比べましてどうかということになりますと、先ほど申し上げましたように樹種によりましてかなり違っておりますので、一概には高い安いが論じられない事情もございます。
  52. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そういう答弁もあるでしょうけれども、これはやはり理屈に合わぬと思うのです。自分の国で二〇%取っておって日本にだけ一五%は高いからもっと安くせいなんて、そんな条理に合わぬ要求がアメリカ側から持ち出されてくるところに日本の対米外交の軟弱さがあるのじゃないかと私は思うのです。そういう点で、もっとしっかり外交はやってもらわなければならない、かように考えるわけであります。そして、アメリカの要求にこたえますと、今度東南アジアの方からまた関税引き下げ問題が必ず出てくると私は思います。そういう点でこれは慎重に構えてもらいたい、こう要望申し上げておきます。  それから次には、時間がだんだんなくなってまいりましたが、骨なし鶏肉の関税引き下げの問題がこれまた話題になっているわけでございます。これに対しますところの政府の対応はこれからどうされるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  53. 瓜生瑛

    ○瓜生説明員 今、鶏肉の関税引き下げ考え方についての御質問でございますけれども、骨なし鶏肉の関税を引き下げることにつきましては、我が国の鶏肉需給が近年やや過剰ぎみに推移しておりまして、鶏肉の価格が長期にわたって低迷いたしております。したがって、国内の生産を需要に見合ったものに合わせるという見地から生産者が自主的に計画生産に努力している、今そういう状況で、非常に厳しい環境の中にございます。しかも、鶏肉産業地域の雇用確保の場としても非常に大きな位置づけを持っております。このような中で、鶏肉の輸入は最近急にふえてきております。特にタイからの輸入の伸びは著しいものがございます。また、輸入の中で占めますタイのシェアも着実に伸びておりまして、タイがこの関税の引き下げを特に強く要求しているわけでございますけれども、今の関税がタイからの輸入の障害になっているとは私ども考えていないところでございます。したがいまして、骨なし鶏肉の関税の引き下げにつきましては極めて困難な状況の中にありますので、慎重に対処していきたい、こういうふうに考えております。
  54. 松沢俊昭

    ○松沢委員 新聞にも載っておりましたのですが、現在タイの国に日系の企業が約四百社進出している。そして、その工業関係の大部分の企業の合弁契約の中に輸出制限条項というのがあるのですね。それによりますと、日本から部分品を持っていって製品にして、その製品にしたものは日本に売ってはならない、こういう契約になっているわけですね。そういうところにタイの国は最近大変困ってきているわけでありまして、したがって企業に対してこういう契約はやめてもらいたいという強い要求があると聞いておるわけです。だけれども日本の企業はそれをなかなか認めようとしない。そういう状況の中で今度鶏肉の問題を引っ張り出してきた。  今お話がございましたように、タイからの鶏肉というものは順調に日本に陸揚げされて、日本の輸入量というものはふえてきているわけでありますから、直接的にタイの人たちが困っていてこの問題を出したわけじゃないのじゃないか。つまり日本のそういう契約を結んでいるところの連中が突き上げられて、そしてその代役を鶏の肉にさせようという、こういう政治的な裏というものがあるのじゃないか、こんなぐあいに私は考えているわけでありまするが、そういう点はどうお考えになっていますか。
  55. 瓜生瑛

    ○瓜生説明員 今の鶏肉につきましては、鶏を飼う段階、そしてその食鳥を処理する段階、それから日本に出してくる段階、いろいろ段階があるかと思います。ビジネスの世界でございますので内容を必ずしもつまびらかにしない部分がございますけれども、私どもとしては、それぞれの段階で収入を得る一つ産業活動として営まれているものだというふうに考えております。ただそれが、どこがどういうふうな状況になっているかというその内容については必ずしもつまびらかにしておりません。
  56. 松沢俊昭

    ○松沢委員 政務次官、これどうですか、そういう傾向というものはあるのじゃないですか。タイの方のお話を聞きますと、鶏肉関係で七社あるのですね。そのうち日系合弁というものが二社あってということで、そういう話を聞くと、タイの鶏肉を日本に輸出しているところの会社はそれなりに順調にいっているわけだし、また、やはりそれなりに女性の職場というものも確保されているということで、大変これはタイではありがたがられているということは聞いています。伸びてもいるわけだし、関税を引き下げなければ日本に入れるわけにいかぬという状況でもないのだから。ところが工業関係の企業は入れるわけにいかぬわけですね。だから結局突き上げられるわけですね、タイ側から。今度日本にも輸出させろということになるわけでしょう。突き上げられたところの連中は、要するに手前の責任逃れのためにそっちの鶏の方に目を向けさせるという方向で動いているのじゃないかという、これは新聞に出ておりますが、やはりそういう傾向というものはあるのじゃないかと私は思っているわけであります。そういう点もひとつ政治のレベルで始末をつけてもらって、日本の養鶏も御承知のような非常に大変な危機に入っておりまして、我が党の方でも法案を準備している、こういう段階でございますが、養鶏振興のためにもこれは軽々しくオーケーを出すべき筋合いのものじゃないのじゃないか、こう思っておりますが、どうでしょうか。
  57. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 関税問題の中ではこの問題が実は一番長期にわたって、私が政務次官に就任する前から関心品目の代表的なものの一つとされているわけでありますが、先ほど審議官から御答弁をいたしましたように、極めて困難だという状況でございますし、また、特にここのところ養鶏業界は日本の中でも不振の状態を続けておる現況でございます。私どもタイから要人が来訪するたびに、また日本からタイを訪れる要人、それぞれに、この問題は実は強く訴えられておるというのも現実の状況でございます。先生御発言がございましたように、背景がいろいろな角度からあるというようなことはつまびらかにしておりませんけれども、御発言をいただいたので若干調べてみたい、こう思いますが、今まで私ども接触しておる段階では、純粋に日タイ関係の貿易の不均衡等から、特にタイが日本向けに出せる品目の最大のものが鶏肉であるというふうなタイの立場から主張を強めておるということ、それからアメリカとの関税の差の問題があるということ、ここらあたりがタイとしての日本側に訴えておる要点のように私ども承知をいたしておるわけでありますし、若干の政治問題があるような御発言がございましたので、また私どもなりに調べてみたい、こう思っております。
  58. 松沢俊昭

    ○松沢委員 時間が参りましたのでここで終わりますけれども、市場開放、もちろん私は、日本だけが市場の開放をやらないというわけにはいかないところの時勢であることも十分承知しております。しかし、何といたしましても農業というものがまだ盤石な態勢ではないわけでありますから、それがやはり盤石の態勢ができ上がってから順次窓をあけるということでないと大変な事態に入りますので、その点ひとつ十分御理解の上、対外経済政策を進めていただきたいということを希望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  59. 島村宜伸

    島村委員長代理 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  60. 今井勇

    今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島田琢郎君。
  61. 島田琢郎

    ○島田委員 前段は鯨問題で質疑をいたしたいと思います。  まず捕鯨問題ですが、マスコミなんかではもう既に決着がついたかのような印象を持ちます報道が続いておりまして、一般的にも鯨にはもう勝負あったなどというようなあきらめムードも漂ったりしておりますが、この問題はなかなか重要であるだけに、そういう一般的な見方に対しても、経過を振り返ってみて問題は一体どこにあったのか、そしてまた一般的にそういう受けとめ方をされているような状況に本当に今あるのか。まだ外交努力の余地があると私は思っておるのでありますが、この点をまず第一にお伺いしたい。  それから、政府が大変御苦労された、また苦心されている、苦悩の色も濃い、こういうことは私自身もよく理解をするところでありますが、国際捕鯨取締条約という国際法とパックウッド・マグナソン修正法、こういうアメリカの国内法という関係で見ますと、米国の理不尽な要求を簡単にのむ、そんなわけにはいかぬ、そういう面を強く盛り込んで先般本委員会が決議を行った、こういう経緯もございますので、この捕鯨問題について、政府は今日的な取り組みとしてなお努力を続けるという御意思を持っておられるのかどうか。そうだとすれば、この危機的な事態を打開して日本捕鯨の伝統を継続し守っていくためのあらゆる努力を今後とも行うべきだと私は思っているのです。その意思をこの際明確にお聞きしたい、こう思います。
  62. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 四月五日の閣議の際、アメリカの控訴審におきまして行政府が勝訴した暁には、商業捕鯨モラトリアムに対する異議申し立てを撤回する方針であるということを外務大臣からお話があったということは御承知のとおりであります。  我が国政府といたしましては、そういうことでございますが、今後とも商業捕鯨モラトリアムの決定が撤回されるよう引き続き努力をしてまいる所存でありまして、特に、今後ともIWCの資源調査協力をして、六十五年までに行われることになっております資源の見直しを通じまして商業捕鯨の再開に努めてまいりたいと考えております。また、商業捕鯨以外の形での捕鯨の存続につきましても、昨年の捕鯨問題検討会報告をも参考としながら、関係各国とも十分協議の上その実現に努力してまいりたいと考えております。  本日も農林水産大臣が、たまたま来日中のオランダの総理にお会いになりまして、捕鯨問題についての我が国の立場をるる御説明になり、オランダの総理からも、帰国の上国内でよく検討をする、日本の言い分はよくわかったというような反応がございました。  パックウッド・マグナソン修正法と、それから国際捕鯨取締条約において締約国政府に認められております正当な権利であります異議申し立てとの関係につきましては、これは我々は従来からアメリカ側に対して強く主張し続けておる論点でございまして、アメリカの訴訟におきましても、捕鯨協会及び大日本水産会が介入をいたしまして、ただいま先生が提起されました論点を中心にして争ってきたところでございます。残念ながら第一審においては日本側の主張は退けられたという経緯がございますけれども、我が国といたしましてそういう認識でおるということは、今後とも変わらないところであります。
  63. 島田琢郎

    ○島田委員 上告審の見通しとしてはどうなんですか。それはいつごろ出されるように見込んでいますか。
  64. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 判決がいつ出るかということは、私ちょっと正確には予言をいたしかねますが、最終の弁論は五月中に行われる予定と承知しております。
  65. 島田琢郎

    ○島田委員 現段階では、そうした高裁の判決がどのように下されるかということによってそれは状況が変わることになるわけですけれども、しかし、先ほど御説明にあったように、四月五日の閣議で外務大臣発言があり、また同書簡が出され、そしてまたそれを追認する農林大臣発言がなされている、こういうことで、おぜん立ては政府側勝訴ということを前提にして進められてきている、こういう経過にあると私は思うのです。  そこで、それはちょっと置いておきまして、そもそもアメリカとの合弁形式で輸入されている魚がありますが、これは主として何ですか。
  66. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 俗称合弁と申しておりますが、実態的には洋上買魚ということで、これで主として買い付けておりますのはスケトウダラでございます。
  67. 島田琢郎

    ○島田委員 これはIQ品目でありまして、当然輸入の規制品目でありますが、このスケトウダラが一体どれぐらい入っているのか、かなり大量に入っていると思われますが、その関税の扱いの実態というのがどうなっているのか、この辺についてもあわせてお聞きをしておきたいと思います。
  68. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  通関統計上はスケトウダラだけを取り出した通関統計がございません。タラという分類の中に含まれておりますが、昭和五十九年の通関統計で見ますと、世界じゅうから輸入いたしました数量が九万三千七百三十トン、うちアメリカが七万九千五百三トンということでございます。  関税のお尋ねでございますが、スケトウダラの原点につきましては一〇%の関税が賦課されております。
  69. 島田琢郎

    ○島田委員 我が国がIWCに対する異議の申し立てを撤回して捕鯨を中止しなければ、アメリカ二百海里水域内に出漁する日本漁船の漁獲割り当てを五〇%に減らす、さらに一年後には完全に締め出す、こういうことをPM法でも言っているわけでありまして、このことの関連で言いますと捕鯨はまさに危機にさられている、こういうことで、先ほどのような四月五日に至っての措置がとられる、こういうことになるわけでありますが、そもそもアメリカ二百海里水域内に出漁している日本漁船の実態というのが今のところどういうふうになっているのだろうか、あるいは魚種とか漁獲量とか、金額で言いますとどれくらいになっておるのか、この辺をちょっとお尋ねしておきます。  さらに、アメリカの漁業というのは、今日のアメリカ国内の状況としてはどうなっているのか、そして、その需要なんかは一体どういう傾向になっているのか、この辺を次にお尋ねし、また、アメリカ水域に出漁している日本漁船、やはりパックウッド・マグナソン修正法によって相互主義の原則というのがあって、合弁方式、つまり洋上買い付けによりますアメリカ水産物の輸入をかなり強制的に義務づけられているという印象を私は強く持っておりますが、そういう認識でいいのかどうか。それから、輸入の魚種あるいは割り当て数量とその実績、このことによってもうかっているのか、損しているのか、その収支状況がどうなっているか、以上の点についてお聞かせをいただきたい。
  70. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  アメリカ水域におきます日本向けの漁獲割り当ては、一九八一年におきましては百四十二万四千百八十五トンでございまして、アメリカの国内漁獲量の増加につれまして漸減をいたしまして、一九八四年におきましては百十五万八千トンになっております。本年につきましては、ついせんだって四月の割り当てが行われましたが、四月までの割り当てで五十二万七千六百トンでございまして、これは昨年同期が七十一万トンでございますから、十八万トン程度の減少になっておるわけでございます。  アメリカ水域におきまして操業しております我が国の漁船は、昨年で二百三十隻でございますが、本年につきましては、そのうち北転船につきまして、従来七十隻操業しておりましたが、それを二十七隻に減船をすることにいたしております。  それで、このようなアメリカ水域におきます日本漁船の操業と洋上買魚との関係でございますが、漁獲割り当ての国別配分に当たりましては、アメリカ側は、米国の国内の水産業振興に対してそれぞれの入漁国がどの程度の協力をしておるかということを極めて重要な考慮要素として国別配分を行っておりますので、国別配分を有利に獲得をしようとすれば、どうしても洋上買魚の数量をふやさざるを得ないという関係がございます。そういう意味では、漁獲割り当て量というえさにつられて洋上買魚が膨らんでいくという関係でございます。  それで、アメリカの太平洋岸の漁業、殊にアラスカの周辺水域の漁業につきましては、このような形での入漁国からの洋上買魚というのがアメリカの国内水産業振興の重要なてこになっておるということは、これは争いのない事実であろうというふうに認識をいたしております。
  71. 島田琢郎

    ○島田委員 つまり、今長官お話しになっているのを聞いて総合いたしますと、まさにこれは二百海里からやがて日本漁船の締め出しを図る、こういう方町に今や雪崩を打ちつつあると認識してもいいと思うのですね。船にしたって七十隻が二十七隻に減らされちゃう。そして割り当て量だって、昨年同期七十一万トンがことしは五十二万トン、もう十八、九万トンも減らされる。そのかわりに洋上買い付けがふえていく。そういうパターンは、決してもとに戻るのではなくて、だんだんそういう傾向が高まってくる。そこに鯨が一つ犠牲にされようとしているわけですから、大変問題を持っていると私は思うのです。  ついでに、これは政務次官、日本社会党や日朝友好促進議員連盟、日朝漁業協議会などの民間協力によって漁業協定が存在していることは御承知だと思います。しかし、いつもこれが問題になりますのは、朝鮮側からスケトウダラを買ってもらいたいという希望があっても、政府が盾にしておりますのは、IQ品目だからだめだ、これの一点張りなんですね。アメリカの方のスケトウダラはIQ品目でないのか、IQ品目なんです。アメリカの方のは、今のような無法な買い付けあるいはまるで押しつけですから、私は、義務を強いているというふうにも言い切ってもいいと思って先ほどそういう言葉を使いましたけれどもアメリカからはそうやって鯨まで絡めて、ぎりぎりIQ品目を義務的に買わされておる。しかし一方では、朝鮮民主主義人民共和国との同じスケトウダラの買い付けに当たっては、IQ品目であることを盾にとってこれを認めようとしない。  こういう不公平なやり方というのは私はいかがなものかと思うのです。これは民間でやっているのですから、そういうやり方に対しては私は納得ができないのであります。しかし、きょうは今これだけを問題にしていけない時間帯がございますから、この問題はこういう現状下にあるということを認識してもらいたい、私はこう思っておるのでありますが、さらにつけ加えて言えば、アメリカに出ているのは我が国のかなり大資本の大型な漁船が出漁しておる、朝鮮水域に出漁を希望しているのは極めて零細な漁業者なんですね。私はこの際、政府の反省を促しておきたいと思うのです。  政務次官を名指しいたしましたから、政務次官の御見解をこの際一言承っておきたいと思います。
  72. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 日米の漁業関係あるいは捕鯨問題で先生から御指摘をいただきましたけれども、私ども趣旨そのものには同じような感じを抱き、そして水産庁長官を中心にして長期にわたって日本側の強力な主張を続けているところは先生理解のいただけるところであろうかと思います。  なお、今北鮮との関係につきましては、スケソウダラの輸入割り当ては九十八カ国産の魚介類、加工用スケソウダラ等の枠で行っており、加工用のスケソウダラの対象地域は全世界ということで、そこの中に北朝鮮も含まれておるということでございます。  なお、北朝鮮のみならず、九十八カ国の魚介類の対象品目は我が国の沿岸、沖合漁業の主要魚種であるということが一つであります。タラ、ブリ、サバ、イワシ、アジ、サンマ等であり、我が国沿岸、沖合漁業と特に競合するから北朝鮮を対象地域としていないところでもあります。  そういうようなことでございますので、先生からもまたひとつ御理解をいただきたいと思うわけであります。
  73. 島田琢郎

    ○島田委員 今の御見解は私は納得ができません。アメリカからは不法不当なこういう理不尽な要求を受けてそれに屈し、片っ方は、国内の零細漁民が本当に求めてやまない、期待してやまない、その領域からは締め出していく、これじゃ大資本漁業優先の政策だと言われたって仕方がないのじゃないでしょうか。漁業政策を基本から改めるという考え方を持っていただかなければいかぬと私は思うのです。  今の全体の質問を総括いたしますと、アメリカの理不尽な圧力、これに屈するということは何としても許されない。これからもしつこくアメリカに捕鯨の存続を迫っていくという長官のお考えが冒頭に示されておりますから、ぜひそういう方向で頑張ってほしいと私は激励をいたしますが、しかし、今ここで鯨がこういうことで幕引きになるような事態になった、こうなっても、アメリカはそれで全面納得してアメリカ専管水域内における日本漁船の操業を保証してくれるかといえば、その保証もまさに風前のともしび、ないと同然なのであります。  そういう点からいいますと、二月二十日のことでありますが、長官とここでやりとりをいたしましたときに、こんな理不尽なやり方に屈するなどという手はない、PM修正法にしたってペリー修正法にしたって向こうの国内法じゃないか、我が国のこれに対する対抗法がないなどというのは、そういうこと自体がなめられている原因ではないかと言ったら、あなたは大変同感の意を表され、しかしながら政府にこの法律をつくれと言われても困る、それは立法府がやってくれるとありがたいという趣旨の答弁をなさいました。私もそのつもりで法案を準備いたしましたが、与党の自民党の方はなかなか内部事情が複雑のようでございまして、いまだにこの法律を全会一致で提出するまでに至っていないのはまことに残念であります。改めてここに対抗法の必要の是非を問いたいと思うのですが、いかがですか。
  74. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 対抗立法なるものの内容いかんでございますが、漁獲割り当てとリンクをして輸入制限を行う、しかもある特定の国に対して差別的に輸入制限を行うということになりますと、ガットとの関係でこれに抵触するおそれがあるように存じますし、また、日米関係の全体に及ぼす影響というのも懸念されるところでございまして、私どもとしては慎重にならざるを得ないところでございます。
  75. 島田琢郎

    ○島田委員 じゃ、PM法はガットに抵触しない、こういう認識ですか。
  76. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 PM法の場合には、IWCの効果を減ずるような貿易を行った国に対して漁獲割り当ての面で制裁を科することになっております。それで、漁獲割り当ての面で制裁を科すること自体は恐らくガット上の問題はないだろうと思います。  ガットの規定は漁獲割り当てに言及をしたものはございませんので恐らくそういうことはないだろうと存じますが、制裁を恐れて鯨製品の輸入を制限した国が、果たしてガットの規定に抵触せずに鯨製品の輸入を制限し得るかどうかということについては疑問があるように私は思っております。
  77. 島田琢郎

    ○島田委員 ただ、あなたはこう答えているのですよ。先ほどのお話の続きでございますが、「アメリカのパックウッド・マグナソン修正法に対する対抗措置の問題でございますが、大体この種の対抗措置に関する立法というのは、言うなればけんかをするための法律でございますから、えてして現在存在する国際的な秩序とは矛盾撞着することを内容とするものである場合が多いわけですね。これはパックウッド・マグナソン修正法自体がそうでございます。」と言っているのですね。  国際秩序とは何か。それはいろいろ解釈がありましょう。しかし、ガットそれ自体も国際協調をもとにする一つの法律の基本ではないのでしょうか。だとすると、そんなことを頭に置いていたのでは、国内法はけんか法だからできないのです。アメリカのPM法はまさにそんなことを無視してつくられているけんか法です、こうあなたは言い切っているのですよ。あなたの今のお話とは随分矛盾があるのですよ。しかし、時間がありませんから、ここは指摘だけにしておきます。  さて、政務次官、母船式捕鯨業とは法律的にはどのような漁業なのか、その法律上の位置づけについてまずお聞かせください。
  78. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  捕鯨業は、漁業法第五十二条及び指定漁業を定める政令によりまして、指定漁業ということになっております。
  79. 島田琢郎

    ○島田委員 そうですね。漁業法第五十二条以下に規定されておる指定漁業でございます。当然大臣の許可を受けなければ操業できないわけであります。  この母船式を含めて捕鯨業の許可の要件は何なのですか。
  80. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  これは指定漁業を営む者の数、経営その他の事情を勘案して、許可すべき船舶の隻数、総トン数、操業区域、操業期間等を定めてこれを公示することになっておりますので、それに合致することが要件であると申せます。
  81. 島田琢郎

    ○島田委員 その際、捕獲頭数は許可の要件となるのかならぬのか。
  82. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  捕獲頭数につきましては、農林水産大臣が捕獲限度を指定した場合に、当該頭数を超えて鯨を捕獲してはならないという制限条件を付することにいたしております。
  83. 島田琢郎

    ○島田委員 六十鯨年度の捕鯨に当たっては、南氷洋のミンククジラについて大臣としては頭数をどのように把握されたのですか。
  84. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  御指摘の漁期につきましては、捕獲限度を指定いたしませんでした。
  85. 島田琢郎

    ○島田委員 つまり、捕獲頭数は許可の要件にはなっていない。漁業法上は期間とか鯨の種類、船の大きさとかいろいろありますけれども、頭数は許可の要件になっていない、ほかの要件を満たしておれば大臣は許可する。だから南氷洋に捕鯨に出かけたわけであります。  そういたしますと、IWCの捕獲頭数というお話がありましたが、しかし、それを無視して何頭とっても問題にならない、そしてこの場合IWCが決めた捕獲頭数を超えたとしてもそれは密猟ということには相ならぬ、私はこのように判断をするのですが、この判断でよろしゅうございますか。
  86. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  そもそもIWCが決定いたしました捕獲頭数に対しては、政府は異議申し立てを行っておりますから、IWCの決定に拘束される立場ではございませんで、先生指摘のとおりでございます。
  87. 島田琢郎

    ○島田委員 今お話がありましたように、IWCが決定をした捕獲枠に対して政府は、十二月十三日の次官会議あるいは十二月十四日の閣議、これらを経て異議申し立てを決定いたしました。それはまさにIWCが決めた枠に不服ありとして異議を申し立てたわけであります。  ところが、この間南氷洋からミンク捕鯨が引き揚げてまいりました。そのときの頭数は何頭だったですか。
  88. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 千九百四十一頭でございます。
  89. 島田琢郎

    ○島田委員 そうすると、引き揚げてくるに当たって一つの判断があったと思うのです。IWCに対して頭数に不服ありとして異議申し立てをしているのですから、正直な話、幾らとったって密猟にならぬとさっきおっしゃいました。千九百四十一を二千とっていたっていいわけですね。そうすると、千九百四十一頭で引き揚げてくるに当たって、それはだれがどのような判断をし、あるいは農林大臣がその種のもうここでやめるようにという指示を出されて——法律を精細に読んでみますと、その日その日にとった鯨の大きさとか頭数等については逐次農林大臣に報告する義務を課せられておりますね。千九百四十一頭で引き揚げたその命令、指示は農林大臣がお出しになったのでしょうか。
  90. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 千九百四十一頭で切り上げることにいたしましたのは、日本共同捕鯨株式会社の決定であります。
  91. 島田琢郎

    ○島田委員 しかし、それは無責任じゃないですか。法律ではちゃんと農林大臣が指示するとなっているのです。しかも異議申し立てをしているのです。三七%も減らされて四千二百二十四頭に決められたIWCの決定頭数への不服は、足りないから不服だったのでしょう、多いから不服じゃないのでしょう。何頭ぐらい不服だったのですか。
  92. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず最初に申し上げておきますが、異議申し立てをいたしましたのは日本政府でございます。それから、千九百四十一頭で操業をストップいたしましたのは日本共同捕鯨株式会社でございます。  それで、日本政府といたしましては、今漁期について前漁期と比べて何ら減らすべき理由がないと考えておりましたので、ソ連政府との間では昨年どおりの捕獲頭数をとるということで配分するということにいたした次第でございます。ただ、アメリカのパックウッド・マグナソン修正法との関係で、パックウッド・マグナソン修正法の発動を回避するための妥協が可能であるのであれば、何も前年とぴったり同じ頭数ではなくても、千九百四十一を超えるある頭数で妥協する用意がございました。そういうつもりでアメリカ側とずっと折衝を続けたわけでございますが、アメリカ側は問答無用であるという態度をとり続けておった、そういう実態にございます。
  93. 島田琢郎

    ○島田委員 それはそういう事情があって、そういうもろもろの判断があってという釈明がありますけれども、しかし、ここにその閣議決定の内容があるのです。  第三番目に、「今回の異議申立ての理由は、基本的には、今次IWCの決定が科学的根拠を欠き、また、我が国の捕鯨業及び消費者の利益等に及ぼす影響が大きいためである。」という理由を述べ、第四番目には、「なお、現実に我が国が捕獲する頭数については、本年一九八四年の科学小委員会における討議の経緯、関係国との協議及び前漁期における我が国の捕獲頭数を考慮の上、今後適切な水準に決定する考えである。」と述べています。これは決めたのですか。それは昨年並みというお話が先ほどありましたが、そういう昨年並みの頭数を決めて、どこにこれを通報し、この扱いをどういうふうにしたのですか。
  94. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 ソ連との間では昨年並みということに決めまして、それはもちろん当業者である日本共同捕鯨株式会社にも通知をしてございます。  ただ、関係国の中にはパックウッド・マグナソン修正法を抱えておりますアメリカももちろん入っておるわけでございまして、アメリカとは協議を引き続きやっておった途中でございまして、日本共同捕鯨株式会社が千九百四十一頭で断念して引き揚げることに決定された時点におきましては、我々はアメリカと引き続き協議をすべく努力を継続中という状態でございました。そういうアメリカとの協議をすべく引き続き努力中という事態でございましたので、その決定は行っておらないわけであります。
  95. 島田琢郎

    ○島田委員 しかし、私は二月二十日の質問で、母船式捕鯨業の場合は最低限二千五百頭の捕獲頭数がないと採算ベースがとれませんねと聞いたところ、これを否定しませんでした。そういう認識のもとで言えば、そしてまた先ほどの第三項で、異議申し立て理由の中の重大な要件として「我が国の捕鯨業及び消費者の利益等に及ぼす影響が大きい」から異議申し立てをするのだと言ってあるわけでありますので、その点で言えば、千九百四十一頭、それはパックウッド・マグナソン法とかペリー法の圧力とか、アメリカの鯨をめぐる情勢が厳しさを加えてきた等もろもろの環境的な面を考慮して引き揚げてきたのであろう。  政府が決めたのではない、それは業界が勝手に決めて帰ってきたのだという言い方でありますが、私は納得できない。このように法律的な、あるいはまた昨年以来おとりになっているIWCに対する異議申し立ての手順とか内容とかその後の経過などを見ておりますと、政府はかなり無責任ではなかったのかというふうに感じられてなりません。こうやって一つ一つ手順を追って見てまいりますと、無責任と言ったら怒るかもしれませんが、私に言わせればかなり矛盾を感じざるを得ない。つまり、最初から鯨はもうだめだという敗北主義に立って物をお考えになり、取り組んでおられたのではないだろうかという疑いが濃くなってくるのです。  もちろん佐野長官には二月二十日のときにも、あなたは東奔西走本当によくおやりになっている、頑張っておられるという点で私は最大の評価と激励を送りました。その気持ちが全くなかったというふうに思っておるわけではありません。しかし問題の認識としては、そういうところから今度の捕鯨問題にお入りになったのではないかというふうに感じられてならぬのです。これでは勝負になりません。頭から負け腰ですからこれでは勝負になりません。それが今日の結果を招いたのではないのでしょうか。  いずれにいたしましても、日本の捕鯨船団は、IWCの決定に拘束されない条件をせっかく政府に与えられておりながら、IWCの捕獲枠を守って帰国してきた。これは農林大臣の指示ではない、自前の判断によるものだ、業界の判断によってこういう措置をとったんだ、こういうふうにおっしゃるけれども、それでは捕鯨業そのものはどこを頼りにしてやればいいのか。また、せっかくIWCにこれだけの異議申し立てをしておきながら、その結果は余りにも見え透いていたとしたら、全く不可解きわまりない、私はそういう思いが強く残るのであります。  今後仮にも今のような状態で不幸な事態を招くということになった場合には、これは大変大きな問題を残すと思います。とりわけ、長い伝統に支えられ、そしてまた一定の我が国の食文化を形成してきた鯨が消えてなくなるという命運をたどるわけでありますから、これは大変社会的に大きな影響を持つわけであります。まだ二年あるからその二年の間に最大限努力をしたい、こうおっしゃっていますから、そのことはぜひそうお願いしたいと思います。しかし、不幸な事態に立ち至った場合には、これはそのままでは済まされぬということに相なります。そのときに対応するお考えも十分持ってもらわなければなりません。この点はよろしゅうございますな。
  96. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私どもといたしましては、モラトリアム発効後二シーズン後の状況をよく見きわめて、関係業界などとも十分御相談した上で適切に対処してまいる所存でございます。
  97. 島田琢郎

    ○島田委員 捕鯨問題は以上のような経過を今たどりつつあるわけでありますが、まだ努力を続けるという長官の御意思でございますから、私はそこに強い期待をかけておきたいと思います。  そして、我が国捕鯨をこのような状況に追い込んだグリーンピース財団などと言われている国際自然保護団体は、昨年六月に行われました国連食糧農業機関FAOの世界漁業管理開発会議において、ポスト鯨の攻撃対象として、サケ・マス流し網とかイカ流し網漁業に照準を絞ってまいりまして、規制を要求する動きが活発になっております。これもまた、鯨の問題と同様にアメリカからの圧力が加えられてくる可能性も強くあるわけであります。  そうなりますと、今度は鯨にかわってサケ・マスの流し網とかイカの流し網が対象になって、またぞろそれをやめなければ二百海里から締め出すよ、こういう嫌がらせが続いてくるということは十分予想される。絶対に負けてほしくないが、対抗措置なしで完全にこれらの問題解決ができるという自信がおありでしょうか。
  98. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  アメリカは最近、FAOその他の国際会議で流し網漁業によりますイルカなどの混獲問題を提起いたしております。我が国といたしましては、この問題は無視することはできない問題でございますが、これは冷静かつ科学的に検討することが肝要であるというふうに考えておりまして、政治的な圧力のもとでこの種の問題が処理されるようなことがあってはならないというふうに考えております。  それで、ただいま対抗措置云々というお話がございましたが、これはアメリカ側の政治的圧力をはね返すためにはというお話であろうと存じますけれども政府といたしましては、この問題については政治問題化することを回避するということに最大限努力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、政治問題化してしまったらどうするかという仮定の議論については、今軽々に議論をすることは差し控えさせていただきたいというふうに存じておる次第でございます。
  99. 島田琢郎

    ○島田委員 そこはおっしゃるとおりでしょうな。私も深追いはいたしますまい。あなたの努力に全面的に期待をかけたい。ただ、マイナスという場合もあるものですから、念をおしておきます。  もちろんこれは法律だってちゃんとあるわけでありまして、仮に国内的な補償などというような問題になれば、漁業法の第六十三条に規定されていることは自明のことでございますし、あるいは今のお話の点から言えば水産資源保護法第十二条の準用規定だってあるわけであります。これで今までもやってきたわけでありますから、私がこういう発言をしたということを念頭に置いて、また私にここからあのときはどうだったのかなとと言われないように、長官頑張ってもらいたいと思います。  さて、今度は日ソ漁業の関係に入りたいと思います。  サケ・マスの日ソ漁業協力協定はまだ入り口のところで何とも先の見えない攻防戦が展開されている。これが切れてからもう一年になんなんといたします。しかし、先般日ソ相互に新しい提案をされたと聞きました。その内容について聞かしていただきたい。
  100. 野村一成

    ○野村説明員 ただいま先生指摘の案でございますけれども、十五日に私どもの鹿取大使、それから急遽モスクワに行かれました西山欧亜局長からビストロフ・ソ連漁業次官にこの難航している漁業交渉を何とか打開することができないかということで案を出した次第でございます。  何分この交渉は、先生も御承知のように、去年の五月から引き続いて行われておりまして、この間お互いに提案を出し合って何とかまとめようとしておるわけでございますが、交渉中ということでございますので、この案の内容そのものにつきましてはひとつ御勘弁いただきたいというふうに思っております。
  101. 島田琢郎

    ○島田委員 そういうこともあるかもしれませんから、私は、内容を明らかにせいとそれを迫るのは場合によりけりであることもよくわかりますが、ただここは聞いておきたい。我が方がどういう提案をしたかというのはなかなか言えない。しかしソビエト側からも提案があった、その内容から見て妥結の可能性ありとお感じになっているか、あるいはかなり悲観的なのか。
  102. 野村一成

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  今までの交渉の回数からしましても、非常に難航いたしておりまして、私どもとしましては何としてもこれは一日も早くまとめないといけないということで、今代表団は全力を尽くしておる次第です。  それで、ここまで漁期も近づいてまいりますと、単に漁業関係者の利害の問題を超えまして、やはり日ソ関係全体にとっても非常に重要な点だということに……
  103. 島田琢郎

    ○島田委員 わかった。それ以上は課長としては答えられまい。  あとは政務次官にお聞きします。政府としてはどういう感触をお持ちですか。
  104. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 本件交渉については、先ほど外務省から御説明をさせていただいたとおり、まことに長期にわたり双方とも粘り強く交渉を続け、今やや最終段階に来たかという感じは実はいたしておるところでございます。しかし、何しろ長期にわたる問題だけに、予断を許さない状況にもございます。本年の漁期ももう既に間近に迫って、まさしく出漁との微妙な段階にまで立ち至っておりますこと、先生御心配のとおりだと思います。  我が国の北洋サケ・マス漁業については、零細で多数の漁業従事者が、そしてまた流通加工業者等も、まさに多くの関係者がこれに依存をして生計を立てているところでもございますので、地域経済を支える重要な柱となっておりますことも考え合わせたときに、政府といたしましては、最終段階、さらに粘り強く、でき得る限り、そして早期に妥結をするべく、水産庁を中心にし、外務省はまた局長を追加派遣をするというようなことで、精力的に努力をいたしておるところでもございます。  なお、先生からの御趣旨もございましたし、また各方面から大変激励もいただいておりますので、一生懸命努力をしていきたい、こう思っております。
  105. 島田琢郎

    ○島田委員 外務省からお話がありましたのは、もう私どもの技術論を超えて、お互いの国の利益をどう最低限守っていくかというぎりぎりの政治判断の段階に来ているのではないかという趣旨の発言であったから、私は、一課長にそれ以上答えるというのは無理がある、本当は外務大臣もここへ来てもらってお話ししなければいけないわけであります。一課長のいわゆる頑張りの領域を超えている。  それに対して、農林省側としては今のような政務次官のお話がありました。おっしゃるように、魚はいつまでもその辺にうろうろしていないのであります。時期が来ればどんどん北上していってしまう。これはもう一日延びれば何万尾のサケ・マスがその漁場から消えてなくなっていくのです。今さら言うまでもありません。ですから、漁民の皆さん方のいらいらはもう目に見えるようであります。みすみす目の前にいて、この協力協定が成立しない。  協力協定が成立したって、その後、今度は実務段階における交渉があるわけでありますから、そこでクォータ幾ら、漁期はどうするか、漁業区域もどういうふうに決めるかなど、山積するいわゆる事務レベルの交渉が待ち受けているわけでありますが、まだ依然として入り口なのですから、この入り口論がもう一年にもなんなんとする、これなら、だれが考えたっていら立つのは当たり前であります。その皆さんの気持ちをそんたくして早急に決定できるように頑張りたいという御趣旨の政務次官からのお話でございましたから、強く期待をかけておきたいと思います。  次に、昨年十二月に成立いたしました日ソ漁業協定、その後の漁業交渉がなかなか厳しくて、これも佐野長官は大変御苦労された。しかし残念ながら、オホーツク海沿岸におきます主なる漁家や水産加工者が大変強い期待をかけておりますズワイガニやツブ、エビなどの交渉の先の見通しがなかなか立ちません。この点について御説明をいただきたい。
  106. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  十二日にカニ、ツブ、エビの交渉の業界の代表団が出発する予定でございましたが、出発直前になりましてソ連側から、ソ連側の責任者でございますソブルイブフロートの総裁がニュージーランドへ出張するために延期をしてほしいということで延期になっておるわけでございますが、私どもも、関係漁業者の皆さんが大変いら立っておられるということは重々承知をいたしておりますので、外務省にお願いいたしまして、在モスクワ大使館からソ連側に可急的速やかに交渉を始めるよう強く申し入れているところでございまして、日ソ漁業協力協定交渉の業界顧問団の中に入っておられます大日本水産会の佐々木副会長も現地でソブルイブフロート側といろいろ折衝して、早期交渉開始に向けて努力をしておられる、そういう状況でございます。
  107. 島田琢郎

    ○島田委員 そうすると、見通しは全く立たずですか。長官としてはどういう見通しを持っておられますか。
  108. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 ただいまのところ、正直に申し上げまして、一日も早く交渉が開始されることを念じておるという以上にはお答えをいたしかねる事態でございます。
  109. 島田琢郎

    ○島田委員 きょうは、鯨の問題と日ソ漁業協定等についていろいろお話を聞かしてもらいました。日本の漁業をめぐる、あるいは水産も含めてその環境は大変厳しくなる一方であります。  私は、漁業の問題を取り上げますと必ず触れるのは、ここで一遍漁業の基本的な見直しを図っていかなければならぬのではないか。二百海里時代を迎えて随分慌てふためいた苦い経験を私たちは持っている。しかしその後、あの苦い経験が生かされていない。もうこの辺で漁業基本法をしっかりつくって、そうして外国にも対抗できる整備された国内法をつくり、安心して我が国の漁業者が、あるいは水産加工に携わる皆さん仕事ができるようにしてあげるということが必要な時期に来ているのではないか。せめて、農業基本法はあるのでありますから、漁業基本法くらいはつくるという気持ちに立って作業を始めてはいかがでしょうか。  これでもう四度ほど私はこの点に触れておりますが、そしてまた、この間は本会議で漁業白書に触れて細谷議員からも同じような趣旨の質問をいたしましたが、色よい返事は返ってきません。なぜそんなに漁業の基本をしっかり見直すということにためらいがあるのでしょうか。あるいはまた、私をして言わしめれば怠慢とも思えるようなそういう態度に終始しているのか、不可解千万でございます。政務次官、これはもう一生懸命検討するぐらいのことはおっしゃってもいい時期に来ているのではないでしょうか。そこを最後にお尋ねして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  110. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 漁業を取り巻く情勢について先生から約一時間にわたってお尋ね、御意見等をちょうだいをしてまいりました。一次産業全体、農林水産省がお預かりをしている仕事全般にわたって大変厳しい情勢でありますけれども、水産関係は特に、大型化、近代化をし、借入金が多くなっている漁業者に二百海里問題が起き、オイルショック問題が起き、二重三重に、いわば漁業者みずからでどうすることもできないような状況変化が出てまいって、まさしく漁業そのものは負債を抱えながらなお引き続いて努力をいたしておる。また、引き続いて長期にわたってこのような漁業交渉が常に制限を加えられておる現況を考えたときに、先生の御指摘のような基本的にもう一度改めて検討してみる必要があるではないかという御意見に対しては、私も同感であります。  ただ、漁業法そのものがいかがなものかというお尋ねに対しては、なお検討してみたいと思いますけれども、趣旨については全く同感でございます。
  111. 島田琢郎

    ○島田委員 終わります。
  112. 今井勇

    今井委員長 次に、武田一夫君。
  113. 武田一夫

    ○武田委員 私は、水産問題について大きく二点についてお尋ねをいたします。  まず最初に、水産庁にお尋ねしますが、最近非常に漁業が不振に陥っている。こういう中にあって、そういう漁業不振を何とか乗り切りたい、その苦境を脱出したいという思いが高じまして、ある程度の危険を冒していろいろな事故を覚悟の上で船が出ていったり、あるいはまた密漁をしてみたり、あるいは漁場の奪い合いとか、そういういろいろなトラブルがある。その中で、燃油の節約のため、効率的な漁獲を考えての漁船の違法改造が非常に横行しているという話を聞くのでございます。  そこで、こういう事実について水産庁としてはその実態をどういうふうにとらえているのか、まず最初にお尋ねをしたいのですが、いかがでしょうか。
  114. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 これまでも一部の漁船につきまして、漁獲の増大を図るというために船体の一部改造あるいはエンジンの換装等、違法改造が行われたという事例が時々あったということは承知しております。  これは、先生指摘のように、最近の非常に厳しくなりました国際情勢あるいは国際的な漁業規制、他方では魚価の低迷、それからさらに燃費のコスト高あるいは資材等のコスト高、いわゆる三重苦の中にあります経営の苦しさから、一部に乱暴な操業をする、あるいは違法な改造をするという例があるのかとも思われるわけでございますが、水産庁といたしましては、まず漁業生産力の安定した発展、秩序を維持する、それからまた漁船の船員の生命を守るという立場から、そのようなことがないようにこれまでも厳しく指導してきたところでございますが、今後ともさらに努力を重ねてまいりたいと思います。  それからまた、より基本的には、漁業経営全体の問題といたしまして、今厳しい国際情勢にありますが、粘り強い折衝を繰り返すことによって何とか今までの実績を守っていく努力を重ねる。他方また、経営の厳しい状況にあります漁業者に対しましては、適宜、経営維持安定等のための資金を融資するというような手段を通じまして対応してまいりたいと考えておる次第でございます。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 運輸省にお尋ねしますが、ここ三カ年、五十七年から五十九年までの漁船の海難事故の実態、行方不明、死傷者等々を含めどのくらいの件数か、それから、その事故の原因をお尋ねしたいのです。
  116. 玉置佑介

    ○玉置説明員 お答えいたします。  海上保安庁が取り扱いました海難で、救助を必要とする海難に遭遇いたしました船舶のうち、漁船につきましては五十七年が千十四隻でございます。死亡、行方不明者の全体が百七十六名でございます。五十八年は漁船の隻数が九百九十六隻、死亡、行方不明者数は百二十六名でございます。五十九年について申し上げますと八百七十六隻、死亡、行方不明者数は百五十七人というふうになっております。
  117. 武田一夫

    ○武田委員 それを漁船のトン数別に見た場合、どういうふうになっておりますか。
  118. 玉置佑介

    ○玉置説明員 トン数別でございますが、五十九年について申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり漁船につきます要救助船舶は八百七十六隻でございますが、そのトン数別内訳を申し上げますと、五トン未満が四百十二隻、五トン以上二十トン未満が二百三十九隻、二十トン以上五十トン未満が四十隻、五十トン以上百トン未満が九十六隻、百トン以上が八十九隻というふうになっております。
  119. 武田一夫

    ○武田委員 それから、漁船の海難の裁決件数について、五十七年から五十九年までをお聞かせ願いたいのですが、今と同じような内容でひとつ聞かせてもらいたい。
  120. 平林悟郎

    ○平林説明員 お答えをいたします。  昭和五十七年から五十九年の間に裁決された漁船の海難の件数は、昭和五十七年が四百三十九件、昭和五十八年が四百二件、昭和五十九年が四百七十三件であります。  また、各年ごとの主要な海難原因は、昭和五十七年に裁決された四百三十九件中主なものについて申し上げますと、見張り不十分によるものが百二十原因、海上衝突予防法の航法不遵守によるものが七十八原因、補機等の整備、点検、取り扱い不良によるものが五十三原因、主機の整備、点検、取り扱い不良によるものが五十二原因、船体、機関、設備の構造、材質、修理等不良によるものが三十八原因。  次に、昭和五十八年に裁決された四百二件中主なものについて申し上げますと、海上衝突予防法の航法不遵守によるもの百十原因、見張り不十分によるもの百七原因、主機の整備、点検、取り扱い不良によるもの四十六原因、当直等服務に関する指導監督の不適切によるもの三十一原因、漁労作業の不適切によるもの二十八原因。  また、昭和五十九年に裁決された四百七十三件中主なものについて申し上げますと、見張り不十分によるもの百七十六原因、海上衝突予防法の航法不遵守によるもの百五十六原因、主機の整備、点検、取り扱い不良によるもの五十九原因、補機等の整備、点検、取り扱い不良によるもの五十七原因、燃料油、潤滑油等の点検、取り扱い不良によるもの四十一原因でございます。  以上でございます。
  121. 武田一夫

    ○武田委員 その中で補機等の整備、点検、取り扱い不良とか、主機の整備、点検、取り扱い不良、あるいは船体、機関、設備の構造、材質、修理等不良というのが、見ていますと毎年かなり多いわけですね。  それで、先ほど水産庁も認めているように違法改造漁船があるという中で、エンジンのすげかえとかそれから魚倉の拡大、それから燃油タンクの拡張とか、それから今度は船体それ自体の拡大、半分に割って継ぎ足してサンドイッチみたいにする、あるいは船べりのかさ上げとかという、こういう形の違法構造がある。それが結局過重になりまして沈没をしたりあるいはまたその他の事故で遭難して人命を失っているというようなことを聞くわけでありますが、そういうようなケースは、この中で、運輸省が調べた中では今まで確認されているのはどのくらいあるわけですか。
  122. 平林悟郎

    ○平林説明員 お答えいたします。  海難原因につきましては違法というような摘示の仕方はいたしておりませんが、ただいま申し上げました船体構造の不良によるものであって、しかも転覆海難のうち違法改造と思われる事例は一件でございます。
  123. 武田一夫

    ○武田委員 一件ということでありますが、いろいろと聞くところによるとそんなものではないんじゃないか。その実態がなかなかつかめないということもあるようですが、しかしながら私は、いろいろなところからの話を総合的に考えますと、どうも業界自体にそうした動きが深く静かに潜行しているんじゃないかというような気がするのです。  そこで、検査体制ですが、船を新しくつくるあるいは改造するときの検査体制というのはどういうふうになっているものか、また、船が出航していった場合、何年置きくらいに点検をしているのか、その点ひとつ説明をしてもらいたい。
  124. 戸田邦司

    ○戸田説明員 御説明申し上げます。  国際航海に従事しないような漁船でありますと、通常は二年に一度の定期的検査を実施しております。最初に検査を行いましてから次の検査までの間、つまり検査と検査の間の安全性の維持につきましては、船舶所有者が最初に検査を受けた状態あるいは船舶安全法に定める基準に合致するように維持する義務がかかっております。  そういった定期的な検査の間での検査官のチェックにつきましては、立入検査というような方法がございますが、人員その他でそういった検査が十分に行われているとは思っておりませんが、いずれにしましても、一度出航してしまってからの検査官による安全性の維持についてのチェックというのは非常に困難な状況にあります。
  125. 武田一夫

    ○武田委員 それで、例えば定期検査は二十トン以上だと四年に一回ということですね。それから中間に二年目に検査する、その間の二年間が一つの盲点じゃないか、こういうことで、今出航してからの検査に対する対応が非常に大変だというのですが、しかしながら先ほど話があったように、毎年二百人近くがそれで死んだりしているわけでしょう。これからそういう方々が毎年どんどんふえていくことによって、私の地元は宮城県ですが、宮城県のある浜には後家部落というものまであるわけですね。要するにだんなが海に沈み亡くなる。未亡人ばかり。子供さん方は大変悩んで、陸の交通事故、自動車事故以上に大変な家庭もふえているわけです。こういうことを考えると、人手不足とかなんとかいうようなことを乗り越えて、しっかり点検をするということを前提に対応してもらわぬと不幸は続くのじゃないかというふうに思うわけです。  そこで、私はこの点については運輸省の方だけでなく水産庁も——聞くところによると、水産庁は船の大きさがどうこうとかいうような寸法ですか、そういうところは検査のときに立ち会うけれども、安全性とか云々というのは全部運輸省にお任せしているという話をちらっと聞くのです。その点は、例えば抜き打ち検査等は水産庁の方でやって、指導監督しながらそういうものを未然に防ぐという努力をしておかぬと、これからますますこういうものがふえてくるという心配があると思うのです。この点についていかがお考えか、ひとつ御見解を聞かしてもらいたいと思います。
  126. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 御指摘のとおり、私ども最大限努力を払いたいと思っております。それにつきましては、特に漁船の改造あるいは建造工事完成後の認定をいたします。それからまた、毎年登録されております漁船の登録票、これを三年に一度検認いたします。そういった制度を適正に運用することによりまして違法改造等の排除を図っていきたいと思っております。
  127. 武田一夫

    ○武田委員 今後ひとつ監視監督の中で海難事故、漁船の悲劇を未然に防ぐという努力を十分にやってほしい、こういうふうに思います。  それから次に質問しますのは、塩釜に寄港されるソ連漁船の問題でございます。私、二月二十二日でしたか、予算委員会の一般質問のときも大臣、長官等には、くれぐれも迷惑のかからぬように万全の体制で臨んでほしいということを要望しながら質問いたしました。しかしながら、最近市や県や私の方にも大変多くの方から陳情がございまして、これは予想以上に大変であるということを我々は改めて心配をしているわけであります。今後も続くわけでありますから、その問題についてひとつ当局の対応をお聞かせいただきたい、こう思います。  まず最初に、これまでソ連漁船が何回寄港されまして、その日にちは合計すると何日くらいあったか、今後の予定はどうかという問題、その点についてひとつ実態を聞かせていただきたい。
  128. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 お答えいたします。  ソ連漁船の塩釜港への寄港は、第一船が三月の十三日に入りまして、現在四月十七日までに六隻が入港し、かつ出港しております。いずれも二日間ずつでございますから、延べ十二隻日ということになっております。  それから、今後の寄港予定につきましては、日ソ漁業委員会の際、日本側の佐野団長から口頭表明をいたしまして、寄港回数は年間延べ五十隻以内ということとなっております。ソ連側が寄港を希望する場合は、入港希望日の二週間以上前に寄港許可申請を行うということになっておりますが、今後その五十隻の枠内で何回、何隻入ってくるかは未定でございます。
  129. 武田一夫

    ○武田委員 五十隻のうち、何隻と言いましたか、今まで入ってきたのは六隻ですか。
  130. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 今まで入りましたのが六隻でございます。
  131. 武田一夫

    ○武田委員 そうすると、あと、五十隻だから四十四隻、二隻ずつ入ってきたとして二十二日、だから四十四日間というものはこれからも塩釜の皆さんは大変御苦労なさるわけです。ところがやはり抗議団体が、これはその当日だけではないのだ、前と後ろ、前後四日くらいは大変な状況で、それに対する警備体制もあって町の中が騒然としている。そこで一番今問題になってきたのはどういうことかといいますと、商店街の皆さん方が大変な売り上げの減少で悩んでいる。飲食店街の皆さんがその中でも特にひどい。こういうことで生活に非常に影響が出てきた。  そのために、市役所にも三月には塩釜市の貞山通町内会の要望書が出され、さらにまた三月十八日ですが、この貞山通の中の飲食店業をやっている五人の方々が、特にその周辺がもう四日間くらいは全然商売にならぬ、この調子でやられれば、従業員に払う給料もだめ、自分たちも生活が奪われるということで、切々たる陳情書を市長に持ってまいりまして、生活保障をしてもらいたい、こういうふうに言ってきたわけであります。私のところにもこの方の代表が来まして、状況をつぶさにお話しされまして、この調子であと四十数隻が入ってこられれば我々はもうお手上げだ、こういうことでございます。  水産庁は、県、市の責任者と六項目の口頭による対応をするということで、水産庁長官が宮城県に来たわけでありますが、あの六項目の提示条件を見ても、そういう方々に対する配慮というのは一言もない。これはまことにもって問題でありますが、これからでも遅くない。七項目に、そうした一般市民、特に商業、工業、仕事をなさっている方々へのそういう迷惑、生活権を侵すようなそういうものに対するしっかりした責任を一項目加えてほしい、また加えるべきだと思うのです。水産庁のお考えをひとつ聞かせていただきたい。
  132. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 初めに数字のことを申し上げておきますが、本年は五十隻以内ということでございますが、ちなみに昨年、小名浜港につきましては七十隻以内ということで、実際に入りましたのは二十二隻でございました。これは日本近海の海況、漁況等によりましてソ連船がどの程度操業するかということによって左右されるかと思いますので、そういう意味で、五十隻満杯になるかどうかということは必ずしも確たる見通しが持てないということでございます。あるいは下回るかもしれないわけでございます。  それから、御指摘の抗議団体の行動や警備のために地元商店街が損失をこうむっているということでございますが、この塩釜の寄港問題といいますのは、申すまでもないことでございますけれども、難航する日ソ漁業委員会におきまして協議の局面を打開するためにやむを得ない措置として認めたものでございます。ソ連漁船の寄港に際しまして国内の一部団体の反対行動が予想されましたので、関係各省庁及び宮城県当局とも協議した結果、ソ連漁船の乗組員の安全確保ということに重点を置きまして必要な警備体制をとっているところでございます。  地元の御要望につきましては、これまでも先ほど御指摘の六項目を中心に誠心誠意対応してきたところでありますが、さらによくその内容を聞きまして、制度及び予算の範囲内で、できる限り善処するという考えで対処してまいりたいと思います。ただ、いわゆる地元商店街の迷惑料あるいは営業補償という問題になりますと、これは因果関係の確定やその額の算定等非常に難しい問題がありまして、困難ではないかと思っております。
  133. 武田一夫

    ○武田委員 それはおかしいでしょう。現実にもう何年もそこで生活をやって、この時期にはどのくらいの船乗りが上がってきてどうなるかなんというのは、ちゃんとみんな知っているわけです。ですから、そういう人たちには全然関係なく、責任はそういうのは全然とれないというのではこれは大変なことですよ。しかも、何そうが入ってくるとかなんとかということはそんなもの関係ない。入ってくるたびごとに四日間仕事ができないのですよ。お客さんが来るならいいよ、一人でも二人でも。  できないで、生活がそれでやれないというのに、それは全然関係ありませんというのでは、これから宮城県は一年限り塩釜だというのですが、来年はほかの地域に行くでしょう。こんな答弁をされたら、それは日ソ漁業の一つの重要な問題として受け入れるという大義名分があったって、そんな迷惑なものをどこが受け入れますか、どうしますか。おかしいじゃないですか。来年はほかに、またどこかの地域へ行くのでしょう。しかもそれは今のところ限られているのだ。とにかく表、要するに太平洋側のいわきか塩釜か、そして気仙沼があるいは八戸か釜石。北海道は絶対入れない、東京もだめ、横浜もだめだ。これは戦略上だめだ。そうすると必ずまたもとに戻ってやるのじゃないですか、今回のように抜き打ちに。その点どうですか。  それに対するしっかりした責任をとってもらわぬことには、協力しようと思っている市長、知事、地元の中にもいると思いますよ、そういう人たちは今後は絶対入れないという運動になるのじゃないかと私は思うのです。そうしたらどうします。
  134. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 明年入れるか入れないか、ソ連船を入れるという体制で交渉に臨むかどうかというようなことにつきましては、現在の段階では発言を差し控えさせていただきたいと思います。  地元の県あるいは市あるいは市民の方々にいろいろな迷惑が及んでいるということは十分承知しておるつもりでございます。  そこで、御承知のことと思いますが、二月に長官現地に参りまして地元対策として六項目の事項をお話ししたわけでございます。それらによりまして地元から要望のありました対策のかなりのものはカバーされているというふうに考えてございますが、なお今後とも地元、県あるいは市当局と十分話し合ってまいりたいと思います。
  135. 武田一夫

    ○武田委員 その六項目だって、地元の方でその後いろいろ検討したら、例えば第三項目に、沿岸漁場整備開発事業については前年度事業費の倍額程度まで対応可能である云々、それから四項目には、塩釜漁港の整備についても同様の対応が可能である、こういうのを口頭で言ってきたのだけれども、だからといって地元がそれに金を出さないで済むわけでもない。そうでしょう。国が七〇%だとすれば県が二〇、市が一〇。それが今度は一括法案によって七〇が六五に減る、五%ダウンするというような問題もありますと、金を倍額程度その方につけてもらったとしても、県や市が出す会もそれに応じて出せるかというと出せない。結局は、これは口ではこういうふうに言っても、できないことを言ってきたんだと今改めてこの当事者たちは深刻に思っている。  だから、こういうものを実効あらしめるためには、例えば漁港整備が非常におくれているけれども、それをあと十年かかるのを四年か五年ぐらいでちゃんとしてあげますよ、それで勘弁してください、御協力いただきたい、そういう地元に負担をかぶせないでの対応でなければ対応措置とは言えないのです。金は大丈夫、出してくれますか。国が出したものに応じた事業量を進めるだけの金をどこからか持ってきて、漁港整備、沿岸整備をやっていけるような対応をしていただけるか、どうですか。これを聞かぬことには引き下がれない。御回答いただきたい。
  136. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 地元の沿岸漁業の振興あるいはその関連産業振興につきましては、地元の具体的な要望を聞いた上でできるだけ前向きに対応する、水産庁の持っている施策を総動員いたしまして誠意を持って対応したいと考えておる次第でございます。
  137. 武田一夫

    ○武田委員 では重ねて聞きます。地元がこのためにいろいろと苦労している、その苦労に報いるために、地元の要望、いろいろなお願いについては十分納得いくような対応をしてくれるということですね。この点、間違いないか確認しておきますが、どうですか。
  138. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 水産施策に関する限り、そのとおり最大限努力をいたしたいと思います。
  139. 武田一夫

    ○武田委員 それでは二番目に、水産施策だけではだめなんです。そういう商売をやっている方々に対する対応で、もし塩釜で独自にそういう方々を救済するための措置をした場合、それにいろいろとかかった経費、費用は国が責任を持って支払うという約束をしてもらわぬことには、市としても、今度は、皆さん方の方に来るのではなくて市の方に来る、県に行くわけですから、ストレートに。皆さん方がそれでは地元に出ていってそういう方々の苦情や相談をちゃんと受ける。どっちかきちんと約束をしてもらわぬと、これは市や県、特に担当の市は大変な苦労です。私はその心情を思うときに、何としてもこの問題はしっかりした方向を出してもらわぬと困る。  それは、あなたは来年は入れるか入れないかわからぬ、寄港させるかどうかわからぬと言ったけれども、やらないということの保証もないしやるという保証もないとすれば、やった場合の方に重点を置いて対策を立てるのは当たり前のことです。そのことを考えたら、ほかに対する影響力を考えて、この塩釜ではっきりした方向を示さないことにはスムーズな対応はできないと私は思う。そのことを心配して私は質問するのです。どうでしょうか。
  140. 斉藤達夫

    ○斉藤(達)政府委員 特に水産施策だけでなく、市民対策を講ずべきだという点に力点を置かれた御質問だったと理解いたしますが、その市民対策の具体的な使途等につき具体的な要望がなされました段階で、各省とも協議の上、既存予算の活用を含めまして今後検討してまいりたいと思います。
  141. 武田一夫

    ○武田委員 政務次官、私は大臣に前に一回話しておいたんだけれども、今改めて、次長がいろいろと相談に乗りながら対応することを考えると言ったのだけれども、確実にしかも早い時期にやってもらいたい。終わっちゃってからの話ではだめなんです。  聞くところによると、いわき市では一億かかったか二億かかったかわからぬけれども、丸々払ってもらえなかったといって、我々の仲間の市会議員が、大変だぞ、だまされるなよ、こう言っているのです。経験者はちゃんといろいろ情報を持ってきてくれます。だから今のうちにきちっとしておいて、はっきりした方向を示してもらわぬと、これが終わりました、一年たって行きました、さあ、なんていったって、信用されていないのです、今。ですから政務次官、次長が今話されたことをさらにしかと約束してもらうために、ひとつ御答弁をお願いしたい。
  142. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 今、水産庁次長から御答弁申し上げたことで尽きるわけでございますけれども、水産施策にかかわることは私どもの権限において十二分に対処してまいりたい、こう思っております。  あわせて、周辺関連対策が当然出てくるわけであります。一塩釜だけにその負担を負わせるというようなことがあってはならぬ部分が多々あろうかと思います。その種の問題が一番住民から吸収できるのは地元関係市並びに県ではなかろうかと思いますので、県が吸収していただいたものに対して、また、他省庁といえども、農林水産省も窓口として他省庁に協力要請の働きかけをして、可能な限り最善を尽くして地元対策に努力をいたしたい、こう思います。
  143. 武田一夫

    ○武田委員 私はこれで質問を終わりますが、その対応でも水産庁だけじゃだめなのね。今言ったように、各省庁との相談、協力がなくてはならない。だから窓口をどこかにしてそこで集約的にいろいろなものを持ち寄って判断をしながら対応する、これはこれからは絶対必要です。  ですから、それを塩釜のこの期間にきちっと方向性を明示してほしい。そして安心して、いろいろな苦労はあるにしてもお互いの友好関係を一層進展させるために受け入れる方も安心して受け入れられるというような方向に持っていかないと、ソ連の漁船の皆さんだってえらい迷惑でしょう。かえって、入ってきて自由に何もできないで追い返されるようにして出ていったら、ソ連の方の国民感情を逆なでしますよ。日ソ関係の上にも不利な、デメリットなものをかえって生んじゃう。これは非常にまずいでしょう。  そういうことを考えたら、それでなくても漁業交渉がいまだにまとまっていない。一日に船が出ていきたいといってもいつも一日はだめ。これが結局は、漁船、魚種、そういうことで漁業関係者にまた迷惑をかけるというようなことまで全部ひっくるめて波及してくるわけですから、その影響の大きさを考えたときに、しっかりとそういうことのないような対応をしてほしい。私はこれは答弁を求めませんが、そのことを十分に大臣にもお話しいただいて対応をやっていただきたい、このことを強く要望して終わります。  あと二十分ほどあるのですが、それをちゃんとやることを条件に早目にやめます。
  144. 今井勇

    今井委員長 次に、稲富稜人君
  145. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は本日は、国営の干拓事業で今日償還状態にあるのが六十四カ所ありますが、そういうような全般の国営干拓事業の運営その他に対して広範に質問するつもりでございましたけれども、私に与えられた時間がわずか三十分でございますので、広範にわたって質問する時間がありませんので、その六十四カ所の中のただ一つでございます福岡県山門郡におきまする大和干拓地の問題について特に御質問申し上げたいと思うのであります。これに対しましては、幸い次官がおいでになっております。局長が差し支えがあるそうでありますが、できるだけ責任ある御答弁を願いまして、もしも答弁が不十分な場合はまたいつか機会を与えてもらってさらに御質問申し上げたい、かように考えておりますので、あらかじめそのことを御了承願いたいと思います。  まず、私がお尋ね申し上げたいと思いますことは、ただいま申し上げました福岡県の大和干拓でございますが、この大和干拓は、御承知のとおり昭和三十三年に農林省の国営干拓事業として着手されまして、四十五年にこれが完成をされております。干拓面積は三百三十町歩でございます。農地面積というのは二百七十町歩。しかも、これに対しまする事業費は二十九億四千三百万円以上かかっているという膨大な干拓事業であります。これに対しましては、経営といたしましても整備事業等に二億数千万円の金を突っ込んでおるというような非常に膨大な干拓事業でございます。そういうことで、政府といたしましても、昭和四十五年、営農のできるということを条件にして入植者を入れたわけでございます。  ところが、四十五年に入植いたしましたのが、わずか二年して四十七年ごろからこの土地が沈下をいたしまして、もう農耕のできないような土地さえ生じたのであります。四十七年から沈下いたしまして今日まで十何年かかっております。この間、これに対して政府は何ら手を打たないでこれを放任されておる。何がために放任されておるのか。国営干拓事業として政府は行い、しかも営農ができると責任を持って入植させて、それが沈下して営農ができないようになっているものを十数年の間放任しておる。余りにも政府のやり方は無責任じゃないかと思いますが、この原因はどこにあるのか、この点をまず承りたいと思うのであります。
  146. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 御指摘でございますが、今先生おっしゃいましたように、大和干拓地は国営干拓事業といたしまして昭和三十三年から四十六年までかかりまして造成されたわけでありますが、昭和五十一年ごろから地盤沈下現象が発生し、入植農家等の営農にも支障が生じておることは承知しております。  この原因につきましては、石炭採掘によるものかあるいはその他の原因によるものか等が明らかでありませんので、昭和五十六年九月に福岡通産局、福岡鉱山保安監督局、九州農政局及び福岡県から成ります四者連絡会が設置されました。また、昭和五十七年十一月には学識経験者六名によります専門委員会を発足させまして原因究明を行っているところでありますが、しかし、現段階では専門委員会の結論が出るまでに至っておりません。農林水産省といたしましては専門委員会による結論が早急に出されるよう要望してきているところでございます。
  147. 稲富稜人

    ○稲富委員 その原因究明が十数年かかっている事実を私は知っておりますが、いかにもこれの対策を延期するために専門委員会をつくってやっているのじゃないかという偏見さえ持たれるわけなんでございます。  特に私がここで承りたいと思いますことは、干拓事業をおやりになるときに、この土地の下というものは炭鉱が採掘権を持っている。採掘権を持っておる上を干拓するのだから、いつ沈下するかわからないということも予期されなければいけないと思う。この干拓事業を行われる場合に、この土地の下というものは鉱業権者が採掘権を持っているということを存じておられたのであるか。存じておられたとするならば、その鉱業権者どこの干拓事業をなされる政府との間にどういうような契約がなされたか。さらに、土地の所有権というものは土地の下の方はどこまであるのであるか、これに対してどういう解釈をされておるか、その点も承りたいと思うのでございます。
  148. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 大和地区におきます鉱業権につきましては、大分さかのぼりますが、昭和二十九年に四鉱区、これは日鉄鉱業一鉱区、三井鉱山三鉱区、それから昭和三十四年に二鉱区、三井鉱山でございますが、これが設定されております。  本事業の着手に当たりまして昭和三十二年五月に協議をしておりまして、日鉄鉱業株式会社及び福岡通産局より、地下石炭採炭量の確保を図るため干拓堤防線を後退するよう要請されております。その結果、工事費等から適正規模を検討いたしまして、干拓面積を当初計画の四百七ヘクタールから三百三十ヘクタールに縮小することにしたわけでございます。  なお、昭和四十八年三月に有明炭鉱株式会社、これは日鉄鉱業から所有権移転をした会社でございますが、この会社が採掘着手のための施業案、鉱業法六十三条に基づきます許可を得るに当たりまして、福岡通商産業局長から、干拓堤防より沖合三百メートル以内を採掘禁止制限範囲とすること並びに採掘深は四紀層、底面直下五十メートル以深とすることの条件がつけられておると聞いております。  なお、地下幾らまでという問題は、すぐ調べてまたお答えいたしたいと思います。
  149. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうしますと、この沈下の原因を調査されておる、委員会等もつくって検討されておる、それがまた原因が不明である。いつまでも不明であるならば、これをそのまま放任しておくつもりでございますか。その間農民というものは耕作ができないで困るのですよ。この干拓事業をやられたのは農林省なんですよ。農林省が入植をさせた農民が耕作もできないような状態になるのを、原因が不明だと称してこのままいりまでも放任するつもりであるかどうか、この点はどうなんですか。
  150. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 これまで農林水産省としてどのように対処してきたかということでございますが、この大和干拓地におきます地盤沈下等による湛水の排除につきましては、昭和五十年度から干拓地及び背後地、農地約四百八十ヘクタールを対象といたしまして国の補助事業による湛水防除事業をまず実施しているところでございます。  この事業は、当初排水機場二カ所、排水ポンプ四台、排水路工事約千三百七十メートルでスタートしたわけでございますが、その後の沈下の進行を考慮いたしまして、五十九年度には事業計画の一部を変更して、さらに排水機場一カ所、排水ポンプ二台、排水路も六百メートルを追加いたしました。さらに排水ポンプのサクションレベルでございますが、この吸水位を今までのマイナス〇・九メートルから九十センチ下げまして一メートル八十として排水の徹底を図っておるわけでございまして、この総額は十億七千七百万、現在九三・四%の進捗でありまして、六十一年度完了を予定しております。  また、昭和五十四年度から昭和五十六年度の間には小規模排水対策事業、三億五千万ほどでございますが、これを実施いたしまして、内部の小規模な排水路の改修あるいは暗渠排水を行っているわけでございます。  こうした事業によりまして、いわゆる湛水による被害はおおむね解消されるものと考えておる次第でございます。
  151. 稲富稜人

    ○稲富委員 その排水事業等をおやりになっているのはわかっていますよ。ところが、実際その沈下した土地というものは一つも触れられていない。これは農民みずからがこの土地を地上げしたりなんかしているのですよ。これに対しては政府一つも触れられていない。これはどういうわけなんですか。排水その他はおやりになっても、肝心かなめの耕作する土地というものは沈下したままであって、政府一つも触れられていない。なぜ触れられないか。要するに原因がわからないから触れられないのだ。困るのは農民なんですよ。  これに対して農林省はどういうような事情を御存じであるか。これを放任している、土地に対しては沈下してもやむを得ない、こういう考えであるかどうか、この点をひとつ念のために承りたいと思うのです。
  152. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 確かに先生おっしゃいますように、いわゆる沈下した地盤に対しまして客土をして地上げするというような工事は今までいたしておりません。これは、いわゆる排水をきかすことによりまして現在の地盤が標高的には下がる、しかし営農にはそう支障がない形でできるのではないか、こういう考えを持っておったわけですけれども、今後の成り行きを見まして考えたいというふうに現在考えておる次第でございます。
  153. 稲富稜人

    ○稲富委員 農林省は農業を御存じなんですか。排水路だけつくりましても、このつくる土地が沈下したら何もならないのですよ。それでも農作物はできるという考えなんですか。もっと実情というものを御存じになって、耕地ですよ、耕す土地に対するいかなる方法をとるかということをまず考えてやることが最も必要じゃないですか。排水だけつくったってしようがないでしょう、陥没しているんだから。これでいいという考えなんですか、その点、承りたいと思うのです。
  154. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 決していいというふうには考えておりませんで、まずしかし排水をきかすことによりまして相当程度の営農が可能ではないか、こう考えておるわけでございます。
  155. 稲富稜人

    ○稲富委員 それは非常に事実を御存じないので、その沈下した土地は農民みずからがよそから土を持ってきてこれに対して復旧をやっているのですよ。あなた御存じないのですか。これに対しまして各農民の負担というものは非常に大きいのであって、入植者が全部自分の沈下した土地は自分の費用で復旧しております。一番多い人は千八百万円も出しているのですよ。一千万円以上負担して自分みずから復旧しているのはたくさんあるのだ。  こういうように農民は苦しみながら復旧をやっているのに対して、この干拓事業をやった農林省は黙って見ているという、こういうようなことが許されるかどうかという問題なんです。やむを得ないと見ていらっしゃるのではないか。これはひとつ農林省に率直に承りたい。責めるわけではございませんよ。気持ちだけ承ればいいのです。
  156. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 これはおっしゃいますように、そういう客土をしなければいかぬところがあってそういうことがなされたということに対しては、まことに遺憾だというふうに思っております。
  157. 稲富稜人

    ○稲富委員 遺憾だと思われても、出しているのは、農民が負担しておりますからね。特に申し上げたいと思いますのは、入植されたときの入植条件、二十五カ年間で年賦償還でしょう。この入植するときの入植者と政府との入植契約はどうなっておるか、ひとつ承りたい。
  158. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 入植者との契約につきましては、今おっしゃいましたように、農家の負担分を二十五年、三年据え置きの形で償還するという形になっております。
  159. 稲富稜人

    ○稲富委員 三年据え置きの二十五カ年間の年賦償還、これはわかっております。ところがこの償還というものは、土地改良区が責任を持って土地改良区として償還するということになっているのじゃないですか、個人じゃなくして。その点どうなんですか。
  160. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 現在、土地改良区があります場合は県が土地改良区から一括して徴収する、国はまた県から徴収、こういう形になっております。
  161. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうしますと、この償還は土地改良区が責任を持っている。そうすると、甲という耕作者が沈下したために収穫不能になる、ところが土地改良区がその返還負担をしなければいけないから、自分だけ払わないというわけにいかないのですよ。その耕作者は自分の田に一つも収穫がないから、借金をしてこれに対する償還をしなければいけない。しかも、今さっき言ったように、借金をして償還するばかりじゃなくして、復旧する費用を自分が出さなければいけないのです。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕 あなたの方は償還金を取りさえすればいいのです。それは土地改良区に責任を持たし、土地改良区がまとめて取れば国は一番安心ですよ。  ところがこれを納めるこの耕作者というものは、収穫がない場合でも借金しても払わなければいけない。しかも、収穫がないばかりじゃなくて、自分の土地が沈下した場合はそれを復旧する費用も自分で出さなければいけない。こういうものを国がやらせていいのですか。恐らくかつての封建時代の悪代官でもこんなやり方はやっておりませんよ。この今の世の中にそういうことが許されますか。収穫はないのに納めなければいけない、しかもそれは土地改良区が責任を持っておるから、私が納めないと土地改良区で問題になるからやはり借金をしてでも納めなければいけない、その上自分の復旧をやらなければいけない、こういうような事情を農林省が黙って見ておる。その事情を御存じであるかないかということと、これでもやむを得ない、これでいいんだ、こういうように農林省は考えていらっしゃるか、この点を承りたいと思うのです。
  162. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 先生御承知のように、国営干拓事業の地元負担につきましては、高率の国庫負担に加えまして先ほど申しました非常に長期の償還条件を設定しておりまして、農家の負担能力には相当配慮したものとなっておるわけでありますが、御指摘のような点がありましていろいろ問題があるのだと思います。決してこれはいいことだというふうには思っておりませんけれども、やはり全国一律のものとして政令で定めておりまして、個別事情に即した対応としては国としては非常に困難な状態にあるという点を御理解いただきたいと思うわけでございます。
  163. 稲富稜人

    ○稲富委員 私が全国的なこの国営干拓事業の全体の問題をお尋ねしたのはそこなんですよ。全体的にそういうことになっておるから、特殊事情があるからといってそこだけするわけにいかないというあなた方の解釈。それがために犠牲者がおる。  かつてこの大和干拓におきましても、五十一年に塩害がありまして収穫皆無になった。ところがそのときは、その年は免除されたが、その翌年は返還金を二年分一緒に取られているのですよ。前の年は収穫皆無であったからといって翌年二カ年分一緒に取るなんて、こういうようなあくどい地主は昔はなかったのです。それを政府みずからがおやりになっているのですよ。全国的にはそういう規則になっているからやむを得ないんだということじゃ済ませないと私は思う。  こういうような特殊事情に対しては特殊の考え方をするというのがすなわち政治じゃないのですか。あなた方はこの点を考えて今後おやりにならなければ、せっかく希望を持って入植した農民が農業経営ができないで借金を負うてそこを去らなければいけない、こういう状態が生ずることをやむを得ないと思われるのであるか。私が政府によくただしたいというのはここなんです。この点をどう考えていらっしゃるか。これは、次官もいらっしゃるが、全国的にそういうことになっておるからその特殊事情だけ見るわけにいきませんというわけにはまいらない。しかもこれは地盤沈下による災害でございますよ。ほかのところには例のないような状態なんです。こういう特殊な事情のところは特殊な対策をやるということが政治なんですよ。  あなた方は、その土地に合うたような食糧をつくれ、適地適作だと言っていらっしゃる。適地適作だと言うならば、特に悪いところにはそういう特殊な対策をやってやるということが政治なんですよ。これをただ一律に、不作であっても、どんなに自分たちが金を払っても、それを放任しながら、約束どおり支払いをしろ、こういうようなことでこれを律されるということは私は実際の政治にはかなっていないと思うのだが、これに対してはどうであるか。これはひとつ次官から責任ある答弁をお願いしたいと思うのです。
  164. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 今、先生からお話をお聞きをしながら、まさに農林省の対応は少しおくれておるのではないかなという感じを抱いております。国営の事業が完成をして、入植をして間もなく地盤沈下をして、そして十数年たって、今日なおかつ営農が十二分に果たせない、こういう現況であること自体が、今お話を聞きながら、どこに原因があったのかなという感じがいたしておるわけであります。  原因究明をするのは当然のことで、原因が明らかにならなければなかなか対応できないというのがまた原因究明の一つの役割でもありますけれども、しかし、長期にわたる場合には、営農しなければ入植した人たちの生活ができない面があるわけでございますから、あわせて、地盤沈下をすれば湛水をする、それを排除する、排除した後にまた不陸直しをする、客土をする、このように今日まで大体並行して国と関係者仕事は進めておるわけでありますけれども、その仕事がまだ十二分に立ち至ってないというのが今日先生から厳しく御指摘をいただいておるところであろうと思います。湛水防除だけでなしに、営農ができるためには、今まで個人でやられてきた客土、不陸直しというようなものを、今の農政の中で可能な限り、国が干拓をした事業でもありますから、国の責任において今の施策の中で十二分に営農ができるための全力投球をしていかなければならない。  若干遅きに失した感じがありますけれども、きょうの御答弁としては、関係県も大変御苦労されておることだろうと思いますので、先生の御指摘の点につきましては、なおまた県とも相談をして、趣旨に沿うようにこれから相談をさせていただきたい、そう思っております。
  165. 稲富稜人

    ○稲富委員 今、次官も言われましたように、原因が究明できないからといって放任されるということは困るわけなんです。それで、たとえ原因が不明でありましても、原因究明は後に残してあっても、営農ができるように、しかもこれは国がやった干拓事業なんですよ。国営干拓事業なんですから、これは国の手においてまず復旧はやるのだ、その負担をどうするかということは原因究明された後に国が考えればいいのであって、今日の営農をどうするかということに携わってやることが必要だと私は思う。  去年でございましたが、私は局長に、こういう問題を農林省は何で放任するのですかと聞いた。原因究明をしなければ復旧ができないというならば、その間農民は営農ができないではないですか、しかも、これをやったのは農林省が責任を持って国営干拓事業としてやったのであるから、農林省が責任を持って入植をさせたのだから、原因究明をすることと同時に、それがわからないならわからないままで、これの復旧だけは農林省でやるべきじゃないかと、こういうことを申し上げたのです。昨年は現地調査に行かれました。次長も行かれたと思います。最近はボーリングもやられております。ボーリングをどんなにやったところで、一つも原因がわからないでほうっておかれたのではしようがないのですよ。  既に農林省も調査に行かれておる。ボーリングもやられておる。その結果はどうなったか、農林省としての調査された結果がわかるならば、ひとつ承りたいと思うのです。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  166. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 おっしゃいますように、昨年九月にうちの計画部長を団長といたしまして調査に行っております。今その調査を整理中でございまして、営農状況なり沈下の状況等を整理しておる段階でございます。
  167. 稲富稜人

    ○稲富委員 あの調査に来られた時期が悪いのですよ。調査に来られるなら、何も植わってないときなら沈下したのはわかります。調査に来られたときは青々と米が植わっておるときなんです。どこが沈下しておるかわからないですよ、青々としておるから。せっかく調査に来られるなら沈下の事実がわかるときに調査に来られなければ、米が植わってしまって青々としているときに来れば、どこが沈下かわかりゃせぬ。こうときに調査に来られること自体が余りにも実情に合わない調査だと私は思う。問題は、沈下の事実を調べるのだから、沈下の事実を調べるのならその下の土地がわかるときに来なければいけない。こういうときに来てやれ調査したといったって、恐らくあれを見られたって、どこが沈下しているだろうか、ああここは沈下している沈下していると口に言うけれども、本当に沈下しているだろうかと、疑問を持って帰られたぐらいじゃなかろうかと私は思うのですよ。  こういう点、やはり事実を調査されるならばもっと時期を配慮しながら調査されることがいいのじゃないかと私は思うのですが、これは実際おいでになっているのだから、どうお考えになったか。あの青々としたところのどこが沈下だか、みんなわかりはしませんよ。これじゃ、沈下しておる沈下しておると言うけれども、いかにも我々が大げさに言っておるように思われて、実際上はそういうことはないじゃないかと思って帰られたかもわからないと思うのですが、これは実際ごらんになってどうなんですか、そのときの感じは。
  168. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 実は私でなくて計画部長が行っておりますので、申しわけございませんが私はまだ現地を見ておりません。  ただ、先生おっしゃるようなことがあると思いますので、ひとつ馬力をかけて対応をいたしたいと思います。
  169. 稲富稜人

    ○稲富委員 それならば、原因究明は究明するとして、それはそうしておいて、この沈下に対する復旧、これは別個に直ちに農林省でおやりになる、こういうようなお考えがあるかどうか、この点をひとつ承っておきたいと思うのでございます。
  170. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 先生指摘のように、原因究明がまだ時間帯が明確になりませんので、入植者が可能な限り営農ができるように、県と相談をして全力を挙げて農林省は実施をしていきたい、こう思っております。
  171. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、今次官から御答弁がありましたので、原因究明は原因究明をすると同時に、これが復旧に対しては、できるだけ速やかにひとつこの沈下の復旧工事をやっていただきたい、こういうことを特に私はここでお願い申し上げたい。  さらに、その次には償還金の問題です。本当に収穫ができ得ないとするならば、償還期限を延期するとか、こういうようなことはやられないのか。先刻次長の話によりますと、全国的な画一的な一つの規則があるから、そういう特殊な事情考えられない、こうおっしゃるけれども、そういう特殊事情は考慮してもいいのじゃないかと私は思う。  それで、地盤沈下によって耕作不能でありあるいは耕作が非常に不足である、こういうような場合は、それはもちろん二十五カ年間の返済期間になっておるでしょうけれども、償還期限を延期することもあり得るということも考えていいのじゃないかと私は思うのですが、この点はどういうようなお考えを持っていらっしゃるか、承りたい。
  172. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 農林省も初めて抱える問題でございますので、先生の御指摘をされる気持ちは私どもも十二分に受けとめておるわけでありますけれども、なお、趣旨について検討させていただきたい、そう思います。
  173. 稲富稜人

    ○稲富委員 今、趣旨においてはわかるとおっしゃるけれども、収穫がないのに借金を払っているのですよ。借金が非常にかさばりまして、この土地を逃げ出したいという入植者さえもあるのですよ。しかも、償還はしなくちゃいけない、自分たちで自費を投じてその土地というものは地上げしなくちゃいけない、両方の負担があるのですよ。  そういうような事情だから、これはもちろん研究してもらわなくてはいけませんけれども、そういうような特殊な困った問題に対しては——しかも、これは土地改良区が持っているものですから、一人が抜けるというと土地改良区の顔にかかわるというものだから、借金をしても払わなくちゃいけない。そうせぬと、土地改良区の中であいつが払わぬから土地改良区全体が義務が果たせないじゃないかということで、それは村外しになつちゃうのですよ。こういうような取り立て方は国としては一番安心ですよ、土地改良区に任せて、個人個人じゃないのだから。土地改良区に一括して責任を持たせるということは国としては非常に安心な方法がしらぬけれども、農民からいえば非常に過酷な徴収方法だと言わなくちゃいけない。  こういう問題に対して、何とか考えられる方法はないのか。その土地改良区の中において何人か特別に悪い者があるというならば、このやり方でもってその償還延期をするとか、何とかそういうような方法を講ずることが必要じゃないかと私は思うのです。これは、あなた方の本当に農民を思う一つ考え方から処してもらわなくてはいけない問題である、こう思います。あなた方が農民のためを考える農政をやろうとするならば、このくらいの考え方があってしかるべきじゃないかと私は思いますが、どうお考えになっているか、承りたいと思うのです。
  174. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 国営の中で原因不明で長期にわたるというものはまさに初めてのケースのようでございますし、地盤沈下そのもので、過去の基盤整備その他事業に地盤沈下が加わってなお負担をしておるところも、国営ではございませんけれども、県営その他にも全国的には幾つかあるようで、過去特別な配慮をしないで御協力をいただいておるという経緯等もございますので、そういう点も勘案しながら、先生のお気持ち、実情は十二分に御理解ができるのですけれども、検討させていただきたいということで御了承願いたいと思います。
  175. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから、さっきも申し上げましたように、一つ申し上げたいと思いますのは、沈下した土地に対する復旧、これはみんな個人で支出しております。これは入植者が全部出しているのですよ。多い人は千八百万円も出しておる人がある。これは五十八年までです。五十八年まで、入植者が全部、多い、少ないの金を出しております。一千万円以上出しているのは相当あるのですよ。これは、今も言うように、償還金を払いながら、自費で復旧をやっておる。  これは当然国がやらなければいけないものですよ。国が干拓事業をやって、国が入植させたのだから、当然国が負担して復旧しなければいけないものを農民が負担している。これに対して、当然国が責任を持って返済すべきだと思うのだが、これはどうなんですか。
  176. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 既に支出したものにつきまして国がこれから補償する、金を出すということは現実に非常に難しい問題だと思います。我々としましては、県とも十分相談しまして、何かいい方法があるか考えてみたいと思います。
  177. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは何かの方法をもって返済してやらなければ、農民は余りにも気の毒ですよ。かたくなな気持ちを持たないでやってもらいたいと思う。  かつて、こういうことがあります。この大和干拓の隣に三池干拓というのがあります。三池干拓が数年前堤防が決壊いたしました。そのときに、復旧を農林省からやってもらったのです。復旧をやってもらったときに、私はその堤防の問題を、亀岡農林大臣のときでしたが、その復旧に対しては当然——これも国営干拓事業ですよ。しかも、その堤防というものは本当の堤防じゃないのです。海底の砂をサンドポンプで積み上げただけの堤防なんです。これを本当にあなたは堤防とみなすか、こう言ったところが、何も言わぬで、復旧やるんだ、復旧されました。  しかも、その災害があったときに、その復旧をするのに堤防の上を多かれないのですよ。それで船で行って、そこに土俵を積むと横がずるっと壊れてしまう。それがために非常に費用がかかりまして、その当時五百万円かかったのです。私、そのときに政府に対して、この五百万円、この堤防が非常に困難なるがために、またまずいがためにこういうような費用がかかったのだから、この費用は当然国が出すべきじゃないかと言ったところが、亀岡農林大臣のとき、それは出しましょうということだった。  いよいよ出すということになったところが、農政局が出しちゃいかぬと言うのです。なぜか。稲富がそれを出させたと言うと、選挙のときに稲富に票が行くからできぬ、こう言われるのですよ。我々はこういうことによって選挙票を取ろうなんて考えておりませんよ。ところが、そういうことをすればだれさんに差し支えがあるからそれは出しちゃいかぬと言われる。それで、出さぬと言ったから、県が、それなら県から何とかしようということになって、五百万円がちょっと値切られまして三百万円ばかり金が出ました。そういうようなことまでお役所というものが干渉して、しかも、農林省が出そうと言ったものを地方農政局が出さないようにする。そういうようなことでは本当に農民のためにやっておるとは言えない。それは隣です。  そのとき、私が質問したときに、この堤防は今のような堤防ではいかないから、これは赤土で堤防を築きなさい、上を自動車が通るようにしなさい、三面コンクリートにしなさいと言ったところが、政府はそうしようと言っておった。一面コンクリートをつくられた。そのときあなたの方は念書を書かせたのですよ、大牟田の市長と高田の町長と土地改良区の理事長に。どういう念書であるか。今回の災害に対しては、御省では特に御協力願いまして、我々一同農林省に非常に感謝をいたしております、とりあえず一面コンクリートにしましたが、二面はいずれこの結果を見てやります、ただし、そのときには一切御省には御迷惑かけません、私たちの方が自費によって二面はコンクリートにいたしますという念書を書かせたのです。  だれがこの念書を書かせたか。そのときの福岡県の農政局長は農林省に来ておりますから、聞けばわかるのですよ。本省から呼ばれまして、本省の指令によってこの念書は書かせました、こう言う。早速局長に言ったところが、局長は書かせておらぬと言う。防災課長も私に、書かせておらぬ、こう言う。それで県の農政部長に、農林省は書かせておらぬと言っておるじゃないかと言ったところが、先生、あれはなかったことにしてくださいと言う。なかったことにしてくださいというのは何ですか、あれは返しますからと言って、その資料はまた返したのですよ。念書を書かせておりましたよ。農林省あてに念書を書かせておったものを返したのですからね。こういうふしだらなことで——これも国営干拓事業なんです。この際なんですよ。それは、そのときの局長は今農林省に来られておるから、名前を出してもいいのですが、事情はわかりますよ。そして、そのままになっています。  こういうようなことまで農政局が干渉するようなことでは本当に農民の満足するような干拓事業はできませんよ。もっと中央からの強い指導によって、入植した農民がその入植したことによって本当に喜びを持ち、農業経営に情熱を傾けるような対策をやってやることが国営干拓事業である、かように私は考える。国がやった干拓事業によって入った農民が恨みを持つような、こういうところに入らなければよかった、逃げ出したいというような干拓事業ならもうおやりにならない方がいいのですよ。この点を十分考えてもらいたい。  今回のこの問題に対しても、農民が負担してやっている、借金を負担しているのですよ。であるなら、事実を調査されてもいいから何かの形によって国が負担してやる、こういうことは国としてやってしかるべき問題じゃないか。現に隣の三池干拓も、わずかでありましたけれどもその費用は政府で負担いたしました。その点もこの問題では当然考えてやっていいではないかと思いますが、これに対してはどう考えていらっしゃるか。本当に農民が苦しい中から、しかも沈下してとれない、その中から自分たちの費用を使って復旧をやっているのですよ。当然国がやらなければいけないものを農民が負担してやっているのですよ。  であるならば、これに対する負担くらいは政府が見るのは当たり前じゃないか、かように考える。原因不明だからほっておく、これでは余りにひどいじゃないかと思いますが、これは事務的な問題ではないだろうと思うから、次官から責任ある御答弁をお願い申し上げたいと思うのです。
  178. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 本来、自発的にやった仕事に対して後でお金を出すのは、役所の建前からすればなかなか苦労の多いことは先生おわかりの上での御指摘だと思っておりますので、私どもも、自発的といえども入植者が営農ができなくてやむを得ず営農のためにやったことであれば、農政局、県それぞれ調査等をして、お互いが知恵を絞って趣旨に沿うように検討させていただきたいと思います。
  179. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは最後に締めくくりとしてお願い申し上げたいと思うことは、今申しましたように、これが今まで十数年間沈下しても放任されておる。これに対しては原因究明が今進行中であるとするならば、原因がどこにあろうとも復旧工事は国において速やかにやっていただくということを強く要望することが一つ。  さらに、沈下等によって不作というような事実が生じた場合、特にこの問題は特別の干拓地で沈下という特殊な事情にあるわけなんですから、こういうことを十分に考えながら償還に対してももっと人情のある償還方法を考えていただきたい。全国的に一律にこれだからだめだではなくて、ここの問題はほかのところの災害、風水害と違いますので、こういうような原因、沈下による不作であるという特殊事情考えながらこれの返済等に対しても考えていただきたい。  さらに第三の問題は、最後に申し上げましたが、これがために農民は相当に巨費を投じております。今日では破産して夜逃げしようじゃないかという農民さえできております。ここに入植したことを後悔している人間もあります。こういう者に対しては、何かの形で、あるいは今次官が言われたように出した金を払うということがなかなか困難であるとするならば、将来これに対する対策方法としての助成法を考えてやる、こういうようなことをひとつ考えていただきたい。  そして、ここに入植した者が本当に希望を持って、この国営干拓地に入植したことに対する誇りと喜びを持って営農に徹することができるような農民をつくり上げていただきたいということを特に私はお願いして、これに対して締めくくりに御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  180. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 先生から総括的に三点に取りまとめて農林省の見解を求められたわけでありますけれども先生も特殊地帯の特殊事情ということの御理解の上でございますが、予期し得ない状態が発生して、そして専門家に調査の委託をし、かつそれが長期にわたっておるということで、なお入植者が営農できない実態で今日推移いたしております。  農林水産省としては、特殊な状況であっても責任の自覚を持ち、しかしながらなお県との相談の部分も多々ございますので、農林省の責任の上に県と相談して、先生の今の三点の趣旨に沿うように全力を挙げて対処していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  181. 稲富稜人

    ○稲富委員 最後に次官に申し上げたいと思いますが、専門家の委員会ができております。これは大学の先生六人でできておりますが、三人、三人が意見が違うのです。六人のうち、炭鉱被害だと言う方が三人、そうでないと言う方が三人なんです。それだから結論が出ていないのです。このままいけば、いつまでも結論が出ません。六人の委員のうち三人と三人が意見が違うのですから、これ以上はもういつまで待っておっても解決いたしません。  農林省が断を下すより方法ございません。農林省が断を下して、その際、その原因のいかんを問わず早くこれを復旧するということに取り組んでもらわなければ、今の専門の委員の人たちにお任せしておるでは、六人の委員が三人、三人で違うのですから、いつまで待っておっても片づかないということになる。次官、この点はよほど考えていただきたい。これはもう委員会の結論を待たずして最後は農林省が断を下してやるということと、さらに、何と申し上げましても国営でやった干拓事業だから復旧は農林省が原因のいかんを問わずすべきである、こういう頭でこれに処していただきたいということを次官にお願いしたいと思うのです。  農林省がやった干拓事業なんです。農林省がやった干拓事業であり、農林省が責任を持って入植させたのだから、原因のいかんにかかわらず農林省が責任を持って解決する。それは、今申しますようにここは既に炭鉱が下を掘る採掘権を持っておることを知りながら干拓しているのだから、その点は農林省は——私が最初にその鉱業権者と農林省との間にどういうような約束ができておったかということを問うたのはそれなんです。鉱業権者が下の方を採掘する権利を持っておるところと知りながら干拓しておるのだから、農林省に責任があると思わなくちゃいけないと私は思うのです。これは農林省の責任において、委員会の結論を待つとか言わず——委員会の結論は結論でいいのです。しかし、これは農民のために復旧は農林省の責任においてやるということで考えていただきたい。特にこの点について私は政府の意見を聞きたいと思うのです。
  182. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 それぞれ委員が分かれて三対三の実情であるようですけれども、農林省断を下せと言っても、下すことがなかなかできにくいもので専門の委員に御委嘱をしているところでございますので、なかなか下しにくいところでございますが、しかし、いつまでも原因の結論が出ないことも、一番困るのは農林水産省であります。入植者にはそのことで困らないように、御指摘のような営農に対しての協力をなお一層強めていきたいということは先ほど御答弁申し上げたところであります。  ただ、専門家の委員の結論を待たずに農林省が断を下せという点につきましては、若干時間をかしていただいて——結論が出ないという結論もまた一つの結論でございますので、そのこともあわせて、また角度を変えて検討するにしても、今委員先生方に御委嘱を申し上げておる過程の中で農林省が断を下したり、また他の新たな手法を講ずるということもこれまた困難なことでございますので、督励をし結論を急いでいただくことに努力をすることで、若干のお時間をおかしいただくようお願い申し上げたいと思います。
  183. 稲富稜人

    ○稲富委員 私が断を下せと言うのは、原因に断を下せというのではございません。委員会でわからないならば、復旧する部分には農林省が断を下せ、こういうことを申し上げるのであって、決して原因究明に断を下せというのではございません。原因のいかんにかかわらず、復旧することは農林省がやるんだ、これに対する農林省の断を下してもらいたいというのが私の希望でございますので、その点ひとつ履き違えないようにして処していただきたいということを特に申し上げまして、私の質問を終わります。
  184. 今井勇

    今井委員長 次に、神田厚君。
  185. 神田厚

    ○神田委員 私は、一昨年に引き続きまして栃木県、群馬県等々のビール麦産地に発生しておりますところのしま萎縮病の問題につきまして、農林水産省の考え方をお聞かせいただきたいと思うのであります。  既に農林水産省におきましてもある程度の実態把握がされているかと思うのでありますけれども、一昨年に引き続きましてことしもまたビール麦に連作障害のしま萎縮病が大量に発生しまして、生産農家を危機的な状況に陥らせているわけでございます。一昨日私も、被害の一番大きい栃木県栃木市の現地調査いたしてまいりました。県の普及教育課及び蚕農、さらに農政事務所等々の関係機関の皆さん方の御協力もいただき、さらに栃木市農協に大変お世話になりながらその状況を見てきたわけでありますが、この点につきまして、以下何点かの質問をさせていただきたいと思うのであります。  まず最初に、農林水産省はこれらの被害状況をどのように把握しておられますか、お聞かせをいただきたいと思います。
  186. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 大麦のしま萎縮病でございますけれども、昨年は発生が非常に少なかったわけでございますが、ことしは関東、九州を中心として、現在のところ全国では約二万四千ヘクタール、これは発生面積でございまして、程度はまだつかんでおりませんけれども、関東では一万一千ヘクタールということになっているのではないかと承知いたしております。
  187. 神田厚

    ○神田委員 これは地域的なことで非常に恐縮でありますが、私ども調査をいたしました段階におきましては、県内のビール麦生産高の半分を占める栃木市内の被害状況は、六三・六%にしま萎縮病が発生し、被害総額は三億五千万円を上回る予定だというふうに言われております。そういう意味におきましては、農林水産省におきまして早急に被害実態調査して、全国的な被害状況の把握をしていただきたい、まずこのようにお願いをいたしたいと思います。  次に、被害発生の原因をどういうふうに考えておられますか。
  188. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 しま萎縮病は、先生御存じのように土壌伝染性のウイルスでございます。特に関東で広がりましたのは五十五年、これは麦の生産が非常にふえてきたということもございますけれども、五十五年からでございます。最近大麦の栽培が非常に定着してまいりまして、毎年毎年連作をするというようなことから病源ウイルスの密度が高くなってくるというのが一つの原因だろうと考えております。  もう一つは、気象条件にかなり左右されますので、播種時期の後の温度が高い場合、それから雨が多い場合に発生がふえるということがございまして、昨年非常に少なかったのはそういう気象条件ではなかったということだろうと思います。本年は、昨年の秋の天候が影響して現在非常に高い発生率になっているというふうに考えております。
  189. 神田厚

    ○神田委員 当然天候等の問題が一つの要因としてあるわけでございますが、私ども調査によりますと、昨年まで作付をされました主力品種でありますアズマゴールデンが、ビールメーカーから醸造性の問題等々の点を指摘され、全廃されまして、かわって、ビールメーカーの推奨品種でありますあまぎ二条及びはるな二条に切りかえられた、こういうことになっております。この点についてはどういうふうに御認識でありますか。
  190. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 ビール麦の場合には最終的な製品としてはビールができるわけでございますので、醸造適性あるいはそれ以外の、製表に使う場合にも製表としての使いやすさといったものも非常に大事でございますので、アズマゴールデンにつきましてはそういう面で特性が劣るということがございまして、これはビールの会社だけではございませんで、生産者団体と実需者団体双方が相談をいたしまして、昭和五十四年からは要整理品種、だんだんに生産を減らしていく、作付を減らしていく品種というふうにいたしました。五十六年八月に、これも両方で御相談をしまして、五十九年産限りで契約対象品種からは除外するということにしたわけでございます。  このために、今御指摘の栃木市を含む栃木県におきましては、アズマゴールデンからほかのものへ円滑に切りかえを図るということで、従来から奨励品種になっておりましたニューゴールデン、あるいは今お話がございましたあまぎ二条、はるな二条といった品種を契約対象品種に、計画的な更新を指導してきたというのが実情でございます。
  191. 神田厚

    ○神田委員 そこで、このあまぎ二条等々のメーカーの育成品種でございますけれども、それは既にしま萎縮に対する耐性では非常に問題があったというふうに指摘がされております。以前からそういう問題点を知りながら作付をさせたというところに大変問題があるわけでありますが、例えば五十九年十一月の「植防情報」の中でも、「病害虫発生予察予報第六号」、しま萎縮病の問題でございます。そこで、ここにおきましても「昨年の二条大麦での縞萎縮病の発生は平年に比べやや少であったが、二条大麦の連作は場が非常に多いことから、伝染源ウイルスは十分に存在していると考えられる。」二番といたしまして「本年から栽培品種となった関東二条二十一号は縞萎縮病に対してアズマゴールデン、はるな二条と同様に中程度の強さである。また、あまぎ二条は縞萎縮病に対しては罹病性である。」こういう形で「植防情報」の中でもそのあまぎ二条がしま萎縮病に対しまして罹病性があるという警報が出されているわけであります。  そこで、従来から栃木県のこの地域におきましては、しま萎縮の問題につきまして、このしま萎縮の病気に強い耐性品種を、これは栃木分場で開発をしておりますけれども、どうしても導入をさせてくれ、こういうふうに言っておるのでありますけれども、非常な反対を押し切りまして、メーカーのごり押しによりまして、あまぎ二条をつくらざるを得なかった。その結果、ただいま御報告をしましたように、作付面積の四分の三、これが罹病し、収穫皆無を含めて極めて重大な被害を生じさせている、こういう状況になったのでありますが、この点につきまして農林水産省はどういうふうに考えておりますか。
  192. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 しま萎縮はウイルス病でございますので、抵抗性品種でなければ完全に被害を防止するということはなかなか難しいわけでございますが、今、品種転換を行うに当たりまして、常発、多発地域といいますか、ウイルスの密度が非常に濃いというために非常に病気が出やすいところについては小麦等へ作付転換をする、あるいはそういうものを輪作の中に組み込んでいくというような指導をいたしましたり、それから比較的発病程度の低い地域については、耐病性があまぎ二条よりも強いヤシオゴールデンという品種がございます。これも新しい品種でございますけれども、これを六十年でかなりの面積をつくっていただくようにするとか、あるいは播種期を、余り温度の高いうちにまきませんで、少し後におくらせることによって発生を抑えることができるということもございますので、もちろん余り遅くまきますと問題が出てまいりますので、播種適期の幅の中で少し遅くまくとか、あるいは畑を初めのうちは少し乾かしぎみに管理をするとか、そういう耕種的ないろいろな手法も使いまして、できるだけそういうしま萎縮が出ないようなことに配慮をしたわけでございますけれども、現在、先生指摘のような形で、かなり気候条件等も左右したのだろうと思いますが、ふえているのが実態でございますので、私どもとしては、抵抗性品種を早くこういう地帯に普及をしたいというふうに今は考えておるわけでございます。
  193. 神田厚

    ○神田委員 アズマゴールデンについては、生産農家の人は、多収品種でもあるし、そういう意味では非常につくりたかった、こういうことでありました。ところが、メーカーからの要請で切りかえが要求されて、結局、いろいろ問題があることを知りながら、メーカーの強い要請に従わざるを得なかった。つまり、これを断りますといわゆる産地をほかに移されるというような、そういう考えといいますか、受けとめる側ではそういうふうな心配もあったということでメーカーの要請を渋々受け入れる。つまり、それにはメーカーが非常に強い姿勢であまぎ二条、つまりアズマゴールデンの後の自分たちの育成品種の栽培を迫ったというような状況があるわけでありますから、この点につきまして、どういう形でこういうふうな要請がなされたのか、その辺の経過につきましては農林水産省は御認識でありますか。
  194. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 これは、いわゆる加工原料になるビール麦の場合には、そういうものになるものでございますので、生産者側が一方的につくりやすい品種だからということでつくるわけにもまいりませんし、また生産性が非常に低いのに、ビールの、あるいは製表の適性がいいからこれだけをつくってくれというふうに言われてもまた困るわけでございまして、したがって、全体の数量を今四年契約で決めておりますけれども、全体数量を決める場合にも、生産者の中央の団体と実需者側の中央の団体でいろいろ相談をしながら決めていく。各地域においてもそれぞれ両者が相談をしながら決めていく、そういう過程の中で品質のできるだけいいものに切りかえていこうというところからこういった取り決めがなされたわけでございまして、それはすぐにやめてしまうということではなくて、過渡的な期間はある程度置きまして、スムーズにほかの品種に移行ができるようにということで、両方の当事者同士が話し合って決められていったというふうに承知をいたしております。
  195. 神田厚

    ○神田委員 この点につきましては時間もありませんのでこれ以上のお話を申し上げませんが、現地におきましては、会社側がもう少しこの実態を見てほしい、こういう強い要請があります。つまり、私どもも見てまいりましたが、関東二条二十二号とあまぎ二条との並列した農場があるわけでありますけれども、一目瞭然、片方は収穫がほぼ皆無、片方は物すごい、一〇〇%の成功をしている、こういうふうな事情でもあります。そこで、ビールメーカーがこの状況をよく認識をして、今後についてひとついろいろとそれを参考にしてほしいという強い要請がありますが、聞くところによりますと、ビールメーカーはまだ一回ぐらいしか、ちょっとした視察しかしていない、こういうことであります。  そこで、私は農林水産省にお願いをしたいのでありますけれども、農林水産省がこれを指導いたしまして、この時点におきまして現地における関係機関で検討会を開いていただきたい。今一番わかりやすい状況にあります。そういう中で、ひとつ関係機関の声が集まって、そこでいい結論が出るような、一つの参考になるように現地での検討会を農林水産省が指導してひとつ行っていただけないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがでありますか。
  196. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 私どもの方も、関東農政局の担当官を中心に現地に行っておりますし、ビール会社も、私どもがお聞きをしましたところでは、いわゆる酒造組合という全体をまとめている団体、あるいは各会社からそれぞれ二回ほど担当官が出向いて現地を見ているようでありますけれども、一堂に会していろいろ御相談した方がいいのではないかという面もございますので、県とも御相談をしながら相談をしてまいりたいというふうに思います。
  197. 神田厚

    ○神田委員 同時に、国の方といたしましても、農政局等では心配をして見ていただいているようでありますが、本省でも、大臣、次官に行っていただければ一番いいのでありますが、少なくとも担当局長はそれを見ていただきたい。そして、被害がこれ以上どんどん広がるような状況の中であれば、もちろん大臣にも来ていただかなければならない、こういうふうに考えておりますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  198. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 私どもの方も、しま萎縮についてはかなり状況が悪い状態になっているということをいろいろな情報から伺っておりますので、国会も開かれておりますけれども、機会を見て責任のある者が現地に行くというような形にしたいと思います。
  199. 神田厚

    ○神田委員 次に、現地では、あまぎ二条はもうこれ以上つくれない、来年つくっても同じような病気に汚染をされるというふうなことでありまして、農民の間では、これ以上あまぎをつくることはできないという気分であります。  そういう中で、先ほど小麦への切りかえというような話をされましたけれども、既に現地では小麦への切りかえが限度に達している、こういう状況でもあります。これは詳しいデータは申し上げませんけれども、そういうふうな形になっております。そうするならば、一刻も早く現地の生産農家が望んでおりますところのしま萎縮病に耐性のある品種の導入、これが必要になってくるわけでございまして、そういう意味では、次長にも前々より陳情を申し上げておりましたところの関東二条二十二号、これは試験で五十九年、六十年とつくられておりますけれども、いずれも大変よい成績で生育をしております。この関東二条二十二号を早く実際につくれる品種にしていただきたい、こういうことで農林水産省の強力な指導と、それからその開発及び醸造試験等の問題についてひとつ特段の御配慮をお願いをしたいと思っておりますが、その点につきまして御答弁をいただきたいと思います。
  200. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 しま萎縮の場合ですと、やはり抵抗性を持った品種をつくるということが根本的には一番大事なことでございますので、前から神田先生からも御要請がございました関東二条二十二号、これは普通のルールでいきますと、奨励品種の決定試験で大体三年かかります。それから醸造試験というのは、小規模のものも大規模のものもございますけれども、普通の場合には三年かかる、今まで一番短い形でこのぐらいかかってきたわけでございますけれども、今のような状況がございますので、いわゆる奨励品種の決定調査を一年繰り上げて、何とかことし産の麦でいい成績が得られればできるだけことしじゅうに品種にするといいますか、系続から品種への昇格を考えていきたい。まだ収穫をいたしておりませんので、今の状態は非常にいいわけでございますけれども、収穫をいたしましてそういう成績を分析した上で考えていきたいと思っております。  それからまた醸造試験の方も、これもビール各社の方でもしま萎縮の問題というのを相当深刻に考えていただいておりますので、大量醸造試験というのを一年繰り上げまして、六十年産、ことしの麦からやるということで各社用意をしていただいているわけでございまして、小規模なものは既に五十九年産のもので試験をやっております。まだデータが出ておりませんけれども、そういうものも見ながらなるべく早い時期にこういうものが実用品種として表に出せるように努力をしてまいりたいと思います。
  201. 神田厚

    ○神田委員 これは特に栃木県もそうでおりますが、群馬県等におきましても非常に深刻な問題になっておりまして、過日はNHK等でも報道をされているというように非常に問題になっております。一刻も早くこの関東二条二十二号を品種として認定をしていただいて、たくさんつくれるようにしてほしいということでありますが、これはもう待っておっても待てない状況になってきておる。つまり、来年同じくあまぎをつくって同じような被害を受けるのではもうつくらない方がいいというような雰囲気でもあります。  そこで、現在試験栽培という形でされておりますけれども、その中で県の方からもあるいは関係機関からも次長の方にも陳情があったかと思うのでありますけれども、千トンの収穫というようなことではなくて少なくとも一万トンぐらいの単位でのものに話を持っていってもらえないだろうかというようなこともあるわけでありますが、その辺についてはどういうふうに考えておりますか。
  202. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 今、六十年産で大体百二十トンぐらいの規模で醸造試験をやるということになっておりまして、御指摘のように六十一年につきましては、来年度の話でございますけれども千トンを予定をしておりますけれども、ことしの試験成績とかいろいろなものを見ながらもう少し上積みができるものであれば何とか上積みをしていくということで、実需者の団体とも協議をいたしたいと思います。種の問題とかいろいろございますので、一挙に大量なものをつくっていただくというわけにはまいらないかもしれませんが、そういう激甚地といいますか、一番発生の密度の高いようなところを中心にして、ことしの成績を見ながら、成績がよければできるだけつくられるように、実需者の方々とも御相談をしていきたいと思います。
  203. 神田厚

    ○神田委員 時間もありませんので余り詳しい話ができなくて恐縮でありますが、今後の見通し。ことしこれだけこういう被害が出た。来年同じような種をまかせるとなると、これまた同じような被害が出る可能性が出てくる。ですから、関東二条二十二号を激甚地には配分をしてもらうということを考えていただくと同時に、全体的には今後どういうふうな対策をしていかれるおつもりなのか、その辺はどういうふうにお考えでありますか。
  204. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 しま萎縮が問題になりましてからかなり育種に力を入れまして、今の関東二条二十二号の後にも何品種か抵抗性がかなりある品種が続いておりますので、基本的には品種的なものでかなり片づけていくといいますか、品種的なものに頼らざるを得ないだろうと思うのでありますが、それまでの間多少時差があるということはどうしても、種の問題とかいろいろございますので、耕種的ないろいろな防除法というようなものを使っていくとか、いろいろな手だてを考えながらその間をつないで、できるだけ抵抗性のある品種に切りかえていきたいと思っているわけでございます。
  205. 神田厚

    ○神田委員 次長さんは専門家ですから、それなりにいろいろなお考えがあるのでありましょうが、学界の常識でもしま萎縮病に有効な防除の方法というのはなかなかないのですね。でありますから、これは何といっても耐性品種を早く植えさせるということしかないと思うのであります。  そういうことでありますから、先ほど前向きの御答弁をいただきましたけれども、試験栽培ということになりますけれども、関東二条二十二号をできるだけつくらせまして収穫をさせるというような御指導をいただかなければいけないと思うのであります。つまり、醸造の問題がいろいろあるいは言われるかもしれませんが、たとえ一万トン収穫させましても、ビールをつくる中ではわずか一%ぐらいでありますから、ブレンドしていくものについては問題はないというふうな考え方も一方ではあるわけであります。ただ、これは品質の問題がありますから非常に大事に考えていかなければならない問題ですが、そういうことで決め手がないという中で、同じように同じようなものをつくらせて、これは共済の支払いでもばかになりません。それから現地の農協等の被害も相当重なっております。そういうことでありますから、私はできるだけ二十二号をつくるような指導をお願いしたいと思っておりますが、いかがでありますか。
  206. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 私どもも、抵抗性の品種が今続々と登壇をしておりますけれども、二十二号というのが一番早く実用化するということでございますので、できるだけこれが広い面積に使えるように、これは実需の方の関係もございますので前向きに御相談をしていきたいと思います。
  207. 神田厚

    ○神田委員 それから、先ほど現地視察のお話をいただきました。問題は、相当被害が出まして、共済を受けても、それから廃作にして早く田を起こして増収を図るような努力をしても、いずれにしましても被害は相当なものであります。でありますから、ただ単に共済だけにこれをゆだねるということではなくて、いろいろな方法があると思うのでありますが、国として何らかの救済措置をとっていただかなければならないと考えておりますが、その点についてのお考えはいかがでありますか。
  208. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 被害が出て、これは収穫をしてみないとわからないわけでございますが、萎縮病の場合には、先生おっしゃいましたように、今現在見ましても歴然と差がありますので、農家の中には廃作をしてほかのものをつくるというような方もおられると思うのでありますけれども、基本的には共済で対応をしていただく。あと、それぞれ県で何をつくるかとか、あるいは今後そういう地域で来年度はどういうふうにするかということについて技術的ないろいろな指導をする、あるいは相談に乗るというようなことが私どもとして考えられることではないかと思います。
  209. 神田厚

    ○神田委員 私は先ほどのメーカーの責任ということについて、メーカー自身にもう少し自覚を持ってもらいたいと同時に、農林水産省といたしましても、少なくとも見舞い金の支給というようなものについて現地の方の声が高まってきておりますので、そういう問題についてはしっかりと耳を傾けていただきたいと思っております。  最後に、政務次官にお尋ねをしたいといいますか御見解をお聞かせいただきたいのでありますが、今私はビール麦の問題でずっとお話を申し上げました。これは現地におきましては非常に深刻な問題なのであります。畑中次長さんは専門家で、それなりにしっかり取り組んでいただけるということで安心をしているわけでありますが、農林水産大臣にも機会がありましたならばこれはしっかりと約束をして対策をとってもらいたいと思うのであります。ただいま農林水産省といたしましても現地視察をしてその被害実態をつぶさに調査をなされて対策を講ずる、関係機関を指導するというような御答弁をいただきましたが、その点に関しましていかがでございますか。
  210. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 神田先生の御趣旨を大臣にもお伝えをして、国会開会中でございますので、時間帯等の兼ね合いをして、先ほどしかるべき責任ある人間現地調査という御趣旨で御発言がございましたので、その趣旨に沿うようにしていきたい、こう思っております。よろしくお願いします。
  211. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  212. 今井勇

    今井委員長 次に、中林佳子君。
  213. 中林佳子

    ○中林委員 私は、昭和五十八年七月に山陰西部を襲いました豪雨災害について、その災害復旧の問題での質問をいたしたいと思います。  御承知のように、この豪雨災害では、島根県内だけでも三千六百億円を超える被害を受けて、町村の中には村全体の地形が大きく変わるほどの大被害を受けたところもあるわけです。農林漁業関係の被害だけ取り出してみましても、農地、農業用施設被害が約三百四十八億円、農作物等被害が約五十三億円、山林被害が約八百二十億円、そして漁港及び水産被害が約三億五千万円、合計一千二百二十四億五千万円、非常に大きな被害額になっているわけです。  中でも農地、農業用施設被害と山林被害を合わせますと一千億円を超えて一千百六十八億円、こういう巨額に上っております。農水省所管の災害復旧事業のうち、この二分野の事業費及び五十九年度末での進捗状況、そして今後の復旧の見通し、これについてまずお答えいただきたいと思います。
  214. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 昭和五十八年七月の島根県西部における梅雨前線豪雨の農地、農業用施設の被害は全体で二百七十五億三千万、件数にいたしまして一万五千六百四十六カ所となっております。そのうち農地が六千九百五十四カ所で八十九億五千八百万、農業用施設が八千六百九十二件の百八十五億七千二百万でございます。  復旧工事につきましては、五十九年度末で百九十三億三千万を実施しておりまして、その進捗率は約七〇%でございます。昭和六十年度におきましては、他事業との調整を図りながら、完了に必要な予算を確保する所存でございます。
  215. 吉國隆

    吉國政府委員 山林被害についての進捗状況を申し上げます。  総復旧計画額が約百八十六億円となっておりまして、昭和五十九年度までに約百四十億円の復旧事業を実施いたしております。進捗率で申し上げて約七五%でございます。  今後の復旧につきましては、治山林道等のいわゆる施設災害につきましては昭和六十年度中に完了させるという予定になっております。それから、林地荒廃につきましては、今まで事業をやっておりますけれども、さらに治山激甚災害対策特別緊急事業等によりまして引き続き計画的な復旧に努めてまいりたいというふうに考えております。
  216. 中林佳子

    ○中林委員 地元での御要望は非常に早く復旧してほしい、六十年度というのが一応の復旧の目安でございますけれども、どうしても残るのじゃないかという懸念も持っておりますので、全力を挙げていただきたいということを申し添えておきます。  そして、実はこうした大変な被害額なわけですけれども被害額と災害復旧額との間に大きな隔たりがあるわけですね。考えられることは、山林被害のうち荒廃渓流の被害などは自然回復にまつというようなこともあると思うのですけれども、そういうことを差し引いて比べてみましても、県が査定いたしました被災額に対して、農水省が査定した災害復旧額は大体七割から八割のところでとどまっているわけなんです。被災箇所を復旧するには、崩壊土砂の撤去など、平時の工事以上に経費がかかるというようなことを考えますと、こんな厳しい査定で果たして本当に復旧できるのだろうか、こういう疑問を感じざるを得ないわけです。  農水省にお尋ねするわけですけれども、農地、農業用施設について、五十八年七月の山陰水害に関して、農水省所管の災害復旧事業及び予算規模でもう十分に復旧できるのだというふうにお考えなのでしょうか。
  217. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 災害の発生後速やかに被害全体の状況を把握いたしまして基本的な復旧計画を樹立するわけでございますが、まずこのために、現地より極めて概略の被害額の報告が行われております。その後事業主体が災害復旧の基準等にのっとりまして復旧計画概要書を作成いたします。これに基づきまして所要の額が決定するわけでございます。したがいまして、当初の概略のいわば被害想定額と実施額には差異の生ずるのが通例でありまして、うちの場合ですと、復旧計画概要書の大体八六%から九二%ぐらいの額に決定額がなっております。  なお、今までの被災例から見ましても、必要な復旧は確保されておりまして、今回の島根災害におきましても所要の措置が十分なされるものと考えておるわけでございます。
  218. 中林佳子

    ○中林委員 そうおっしゃるわけですけれども、私、現地へ行っていろいろ聞いたり見たりしますと、現在やっているところも完成しているところも、これで本当に復旧になっているのだろうかなと疑いを持つようなところも見受けられるわけですね。しかし、そういうところを含めても災害復旧事業ということで農水省や建設省の査定はパスしているわけなんです。中には、市町村段階では、災害復旧上必要最小限度の工事計画を提出しているのに、国の出先機関の査定官が、予算の都合なのかどうかその辺の事情がわかりませんけれども、これを低く計画変更させるという事例があるわけなんですね。  その一例を挙げてみたいと思いますけれども、これは浜田市後野町の堂道川災害復旧工事の例なんですが、五十八年七月災害でこの川の両岸が至るところで崩壊したため、その復旧工事を進めたまではよかったわけですけれども、工事が完了してみますと、これはとても復旧とは言えない状況になっております。災害復旧は原形復旧かもしくは従来の機能を回復し得るものでなければならない、こういうふうになっているわけなんですけれども、それとは非常にほど遠く、再び豪雨が襲えば五十八年七月災害以上の被害が発生しかねない危険な状況になっております。  私はここに現場の写真を持っているので、委員長、ぜひちょっと見ていただきたいと思うのです。一部しかありませんので、きょうは建設省の方にも来ていただいておりますので、まず建設省の方に見ていただいて、その後農水省の関係の方に回していただきたいと思います。——いきなり見ていただいて、あれで申しわけございませんけれども、写真に番号が振ってありますし、若干の解説をつけておりますので、それを見ていただきたいと思います。  その、川の崩壊した部分、写真で言えば四番、七番、八番、そこが復旧工事が行われているわけですが、従来の護岸の高さと比べると、随分低くなっているわけです。これでは次の洪水時に必ず土羽のところから浸食されて、再び崩壊されるのは目に見えております。聞くところによりますと、この復旧工事の査定は建設省の中国地建がやったことになっております。これではとても復旧とは言えないのではないか。こういうちぐはぐな災害復旧工事を査定した理由は一体どうなんでしょうか。
  219. 帆足建八

    ○帆足説明員 お答えいたします。  先生指摘の箇所の護岸の高さの決定に当たりましては、通常上下流の護岸の高さ、それから対岸、周辺の地形、地質等を総合的に勘案しまして高さを決めるわけでございます。写真はただいま見まして、ちょっと実情を現在調査しているところでございますので、その辺につきましては十分もとの護岸の機能等を考えまして、適切な対応を今後図ってまいりたい、このように考えております。
  220. 中林佳子

    ○中林委員 もしも今後災害を引き起こすような査定がなされていたという、調査の結果がなりますと、原形復旧のようにもう一度やり直しができる状況があるわけですか。
  221. 帆足建八

    ○帆足説明員 それにつきましては実施計画変更という手もあるわけでございまして、私ども、町並びに県にその辺の状況をもう一度よく調べさせてもらって対応してまいりたい。  なお、災害復旧につきましては、島根県の河川災害につきましては改良復旧制度というのがございまして、ただ単に原形復旧するだけではなくて、相当の改良費を入れまして復旧している状況でございます。特に、島根県の場合は大災害がございましたので、災害助成事業だとか災害関連事業等、現在の段階では最も全国的に高い水準で改良業等に取り組んでいるような状況でございます。
  222. 中林佳子

    ○中林委員 そのことは重々承知しておりますので、今お示ししたところをぜひ調査して、もう二度と災害がそれによって引き起こされないようにしていただきたいと思います。  あわせて農水省にお伺いしますけれども、この写真でもおわかりのように、もともとは作道や農道が通っていたところが崩壊したのに、復旧工事では、岩盤が生じたから護岸が不要だ、こう査定されて、通行不可能となってしまった。これは写真の五や六です。さらに、もとの護岸よりも低く復旧したために、その分生羽で農地が狭められたり、そこを通っていた農道が復旧もできなくなってしまうというケース、写真一と三です。こういうケースも出ています。河川の復旧工事は建設省の所管ではありますけれども、農道や農地の復旧は農水省が補助すべき事業であることを考えますと、農水省として、農道や農地がもとに原状復旧できるよう現地を指導すべきではないかと思うわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  223. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 おっしゃいますように、災害復旧におきます工事のあり方につきましては、従来より、従前の効用を極力回復するということで指導に努めてきたところでございます。今後とも、事業主体等に対しまして、現地の実情を十分把握して、特に関係機関との調整を図りまして、効用の回復に努めるよう指導してまいりたいと思います。
  224. 中林佳子

    ○中林委員 護岸を以前よりも低くしたために、その分生羽を大きくしなければならなくなって、その土羽で農地が削り取られて、農民の声としては、災害復旧ということで協力したのだけれども、以前よりも危険がふえたのでは踏んだりけったりだ、こういう憤慨の声が上がっているわけなんです。  この問題は、地元の市議会でも実は三月議会で取り上げられました。浜田市当局は、これは本来建設省の所管になっているのだけれども、市もほうっておくことができないということで、やむなく市の独自予算で作道と護岸の継ぎ足しをやる方針だ、こういうふうに聞いております。ただでさえ補助金カットで地方財政へのしわ寄せが強められる、こういう状況の中で、本来国の予算で施行すべき災害復旧工事の不備を市が補修工事をしていたのでは、市の財政はもたないと思うのです。そうでなくても、この災害で市の財政は大変だという状況を私も知っております。農水省としてすぐに事態を調査していただいて、適切な対策が講じられるようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  225. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 他機関が実施する事業に関連します災害復旧事業につきましては、手戻り等の問題もありますので、関係機関との調整を図りつつ事業を実施しているところでございますが、可能な限り早期に農地等の復旧がなされるよう所要の予算の確保に努めるとともに、県等を十分指導してまいりたいと思います。
  226. 中林佳子

    ○中林委員 それは一例にすぎないわけですから、くれぐれも住民が犠牲にならないように、よろしくお願いしたいと思います。  それから、こういう問題と同時に、実はもう一つ問題が地元から出ております。それは、小規模復旧で対象から外されている問題ですね。被災地を回ってみますと、今なお大きなつめ跡が残っております。特に山間過疎地の農民からは、要件が満たないために災害復旧の対象にならないで今なお生活や営農に不便を来している、こういう訴えが相次いています。  事例を挙げますと、美都町、ここでは、一戸の農業施設復旧、いわゆる一人施設ですね、この災害復旧を望む農家が多いのです。国の法律では共同利用施設でないとその対象にならないということで、町単で六千万円の事業費を見込んで復旧計画をしています。山間地の谷沿いに農家一軒というケースは島根の場合は非常に多いわけです。農業用の水路だとか、こういうものが災害で破壊されますと、田畑へ出る農道がえぐり取られたり、非常に営農そのものに支障を来しているわけですね。益田市では、至るところで農道橋が流されておりまして、これも要件としては道幅が一・二メートル以上なければならない、これに満たないために実は災害復旧の対象にならないで、川幅が二十メートルもあるにもかかわらず、大きな石を置いたり板を渡したりということで、そこをおばあさんが通られる、人命にもかかわるというようなところも出てきております。それから一番被害を受けました三隅町、ここでは、町全体の農道橋について全部復旧をすると町単で二億円新たに予算を計上しなければならない。大変地方の財政が厳しい、こういう訴えが出ているわけです。  国や県からの助成が受けられないで町単で住民の願いを聞き入れている、こういう自治体の努力、これにぜひ農水省としても、国としても何らかこたえる必要があるのじゃないか。要件に満たないとか法で定められている範囲外だということで見捨てることはできないのじゃないかというふうに思いますけれども、この点国としても、大災害であったという事情、そして過疎地が非常に多いという実情を考えていただくならば、何らかの手厚い手を差し伸べていただくことにはならないものでしょうか。
  227. 須藤良太郎

    ○須藤説明員 いろいろの事情を考慮いたしまして、農地、農業施設の小災害、これは一カ所工事費が三十万円以下でございますが、これにつきましては国の補助の対象となっておりません。また、実際にもこれを国の補助対象とすることは非常に難しいと思うわけでございます。しかし、小災害につきましては、市町村が事業主体となって行う復旧事業に対しまして小災害起債制度が設けられておりまして、その内容は、激甚災害にありましては小災害起債並びにそれに係る元利補給措置がありますし、また激甚災害でない場合でも農業施設に起債が認められることになっておりまして、今後ともこの活用を図るよう指導をしてまいりたいというふうに思います。
  228. 中林佳子

    ○中林委員 起債では借金になるわけですから、どうしても払わなければならない。そうでなくても災害を受けた自治体というのはもう財政的には大変なんですよ。そして、ほかの福祉の願いだとか、ほかの生活に必要な願いなども、とにかく災害が復旧できるまでは我慢してくれということで、それらの願いは抑えられているという実情なんですよ。ですから私は、起債ということだけじゃなくて、具体的に自治体の方から要望が出たらやはり親切に相談に乗っていただきたいということを申し添えておきたいと思います。  最後に、きょう大臣いらっしゃらないので政務次官にお願いしたいと思いますけれども、農業の立場から災害復旧を考えるならば、やはり被災した農家の方々が再び農業を意欲を持って続けられるようにするものでなければならないと思うのです。災害列島日本と言われているだけに、毎年金国的にも大きな被害が起こっているわけで、ぜひ農水省としても、被災農民の農業再建の努力に報いられるような、本当に取りこぼしのないような、小さいものが切り捨てられないような、そういう災害復旧に万全を期していただきたいと思うわけですけれども、そのお考えをお伺いしたいと思います。
  229. 近藤元次

    ○近藤(元)政府委員 先生御案内のように、我が国の置かれている自然的、地理的条件からいっても、災害を受けやすい環境が実はございます。特に、狭い農地の中で食糧の生産基盤であるところがとかく被災が多いというのが現況でもございますし、山林においても水源涵養、そして山林の災害というものは一度被災をして崩壊すると何十年か樹木の成長がとまるという状況でもございますので、防災関係についてかねてから努力をいたしておるところでありますが、いかんせん防災上また一定の財源の制約がありますので、せめて被災を受けたところについては、法律上四年でありますが、三年で全部、一〇〇%の復旧をしたいという努力をし、そして言葉は悪いですけれども、被災を受けたその機会に、少なくとも遅々として進まない要望に対しても一気にその復旧にこたえていく。零細であるから切り捨てるというようなことは、農林水産省は、かねてから防災を担当する、災害復旧を担当する職員はそういうことはないだろうと思うのでありますけれども、なお、ことしが最終年度でありますので、御指摘のようなことのないようにきめ細かに復旧作業の完了に向かって努力をいたしたい、こう思っております。
  230. 中林佳子

    ○中林委員 終わります。
  231. 今井勇

    今井委員長 次に、津川武一君。
  232. 津川武一

    ○津川委員 政府がこの九日に決めた対外経済対策の中の木材関税についてでございます。  政府はこう言っております。森林林業木材産業の活力の回復のため「財政、金融その他所要の措置を当面五カ年にわたり特に講ずることとし、その進捗状況を見つつ、おおむね三年目から針葉樹及び広葉樹を通ずる合板等の関税の引下げを行うべく前向きに取り組む。」こう言っております。そのとおりでしょう。  そこでお尋ねします。「進捗状況を見つつ、」とありますが、林業活性化対策の進捗状況によっては三年目からの関税引き下げ実施はできない状態も出ると思いますが、三年目からの関税引き下げは延期できる、そういうことでございましょうか。そんなゆとりがあるのかどうか、これが一つ。  進捗状況がどの段階に来たならば関税引き下げに踏み切ってもよいというふうに考えておられるのか、林野庁長官に具体的に答弁を求めます。
  233. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 当面は林業木材産業の活性化対策、全力を挙げてこれと取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。その関税問題につきましては、その時点、時点で諸般の情勢を総合的に勘案して慎重に考えなければならない問題だと思っておりますが、まずは全力を挙げてその活性化対策を作成、取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。  なお、二番目の御質問でございますけれども、それにつきましても、やはりその時点での、どういう客観情勢になっておりますか、それを慎重に判断いたしまして、総合的な判断の中から方向を決めなければならない問題であるというふうに考えております。
  234. 津川武一

    ○津川委員 五年やってみて、その状況から関税の引き下げを実施する。三年目というのはことしと来年、もう二年しかない。そして、三年目の六十二年の四月に関税の引き下げをできる状況は、私は無理だと思います。引き下げる状況が無理だと思ったときには引き下げを延期することができますか。もう一回明らかにしてください。
  235. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 今回いろいろ具体的な目標と申しますか計画を立てまして、それへ向けて努力をしていこうということで進めるわけでございます。当面はそれに全力を尽くしたい。三年目になった時点にどのような情勢になっておるのか、その時点で十分慎重に考えてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  236. 津川武一

    ○津川委員 答えを逃げるようですが、それ以外に答弁がないのかもわかりません。やってみてできない場合がある、恐らく困難だと思う、そのときに勇気を振るって関税引き下げに待ったをかけることを私は強く強く要求して、また別の機会にこの問題で長官考えを、まだ二年ありますから、これから伺っていきたいと思います。  第二の質問は、九日夕方の記者会見で中曽根総理は、外国に太刀打ちできる林業をつくる、こう述べております。まことに言葉は結構でございます。そこで、本当にできるのかということです。ここで言う外国のほとんどは天然林天然林業施業。我が国は人工林が多い。こうした林業生産の違いにもかかわらず、ある程度まで投資すれば外材に対抗できる、関税を引き下げることができるような状態になる、このように考えているのでしょうか。総理は知らないのです。これを教育するのは林野庁長官じゃなければならないのです。総理があの天然林に人工林が対抗できるような形にさせるなどと言っていることは国政を誤らせる、その責任林野庁長官にもあると思いますが、ひとつ総理を教育していただきたい。本当に対抗できるかどうか、この点、答えていただきます。
  237. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 先生お話にありましたように、輸入される外材は一〇〇%天然林材でございますし、我が国で伐採しております国産材は約半分が人工林材であります。それだけに原価もかかっておるということでございます。  なお、国産材と外材の価格が、これまでは国産材独自の価格体系で動いておりまして、通常の場合相当外材より高いというのが常態でございましたけれども、最近は使う人の好みも外材、国産材の差がなくなってきたというようなこともありまして、非常に価格差が接近してまいりました。国産材の優位性が失われたと言ってよいかと思います。と同時に、外材輸入は完全に自由化されておりますので、特に丸太、チップは関税もゼロでございます。したがいまして、素材に関しましてはつとに同じ土俵で勝負をしておると申しますか、裸で外材と激しい競争をしておりまして、その結果外材の価格に近づけられたということが言えるかと思います。そのために林業経営も大変苦しいわけでございます。  今回は合板についての関税問題でございますが、合板の関税につきましても、これがふえることによりまして製材の市場を食う、製材の市場がまた林業へ波及するということから、私ども林業林産業一貫して通ずる問題としてこれに対抗してまいりたい。ただ、今日の国際情勢でございますとなかなか針が逆に戻らないと申しますか、いろいろ強権的に貿易事情を操作するということが難しい時代と考えなければならない。したがいまして、好むと好まざるとにかかわらず外材との勝負になっていく。やはり王道と申しますか、最も根本は生産性を高める、活力をつける、足腰の強い林業にするということで、大変迂遠な道ではありますけれども林業自体の基盤整備する、林道、作業道等の基盤整備でありますとか、まずは需要が安定してありますようにしっかりした需要の開発に努めるとか、いろいろな施策をこれから講ずるわけでございます。繰り返しになりますけれども、好むと好まざるとにかかわらずそういう勝負をしなければならぬ、それに耐えていかなければやはり日本林業の将来はないということで頑張ってまいらなければならない、そういうふうに感じておるところでございます。
  238. 津川武一

    ○津川委員 丁寧な説明をいただきましたけれども、今でも押されて三五%より自給率がない。競争は厳しいのです。ゆっくり考えていくと言っているというのですが、三年後です、三年目に対抗できるかという問題。したがって、こういう軽々な発言はしないように林業について総理を少し教育していただくことを重ねてお願いして、今話されたその中身なんです。  財政、金融その他の措置を五年間講ずるとあるが、その中身は一体何なのか、林野庁でどんな検討が始まっているのか。二年たてば関税引き下げは起こる。これに対抗できるどんな措置をしているのか、計画しているのか、お答え願います。
  239. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 これからいろいろ講じます対策の中身につきましては、庁を挙げて検討しておるところでございますけれども、まだ御説明できるような段階には実はございませんので、御容赦いただきたいと思います。
  240. 津川武一

    ○津川委員 私たちもこれから、少しでも関税引き下げをしないように、引き下げの時期をおくらせるように皆さんとともに頑張りますが、林野庁としても対応できるように頑張っていただくことを要請して、次の質問に移ります。  三千億円使うと言われている。どのくらい使うのかわからない。このお金はどこから出ます。特別に三千億円積み重ねるのか。だれかが三千億円なんて言っている。それとも農水省の予算の中からどこか削ってそのお金を出していくのか。この点を明らかにしていただきたいのです。林業関係者は、今でも少ない予算の中から削られてそれをやられたのでは大変なことだということを心配しております。林野庁の明確な方針を非常に待っていますので、明らかにしてください。
  241. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 金額に関しますことにつきましては農林省側から実は申し上げたことはないわけでございまして、どういう態様のものになりますか、まさにこれからの検討の結果によるわけでございますが、今回「特に講ずる」というふうになっておりますゆえんは、やはり現在の林業木材産業の不振をきわめる現状からいたしまして、これらの施策に前向きに取り組まなければならないという姿勢をこの「特に講ずる」という言葉の中にあらわしておる。これをどういう中身たらしめるかは、私どものこれからの作業だというふうに考えております。
  242. 津川武一

    ○津川委員 まあ、これからの作業でしょう。  ところが、今度政府が決めた対外経済対策なるものは何かというと、こうなんです。財政、金融その他の措置を五カ年やるという。財政は、これはお金ですよ。予算ですよ。したがってはっきりと、林野庁の予算の中から、農水省の予算の中から削ってそっちに回すのではない、そのために頑張る、それが私の方針だ、これを明言していただかないと日本森林関係者は承知しません。もう一回お答え願います。
  243. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 今回講じます施策は、「特に講ずる」という言葉の意味におきまして、まさにそのようになるべく期さなければならないということを肝に銘じているところでございます。
  244. 津川武一

    ○津川委員 次に、降ってわいたように出てきた穀物の一千万トンの輸入について、外務省にまずお尋ねします。  食糧援助として買い取ってくれというのですが、我が国の食糧援助の現況はどうなっておりますか。政府の方針はどうなのか。食糧が足りなくなって飢餓に陥っている発展途上国から日本に対してどういう食糧援助の要求が出ているか。この点をまず外務省に答えていただきます。
  245. 木幡昭七

    ○木幡説明員 お答え申し上げます。  我が国の食糧援助の基本的な考え方は、人道的な立場に立って、アフリカ等の開発途上国におきまして慢性的な食糧不足に悩んでいる国に対して、被援助国からの要請を踏まえて援助をしていく、こういう考えでございます。  他方、我が国の場合には、先生御案内のとおり、食糧を援助すると申しましても十分に国産のものがあるわけではございませんので、私どもは、食糧援助規約等の建前を尊重しながら、例えば米でございますとタイとかパキスタンとかビルマとか、そういうところから調達して食糧不足の国へ援助する、こういう建前でございます。  さらにまた、食糧をそのまま供与するということのほかにも、食糧増産関連の援助、あるいは貯蔵、輸送等の面でも援助をするというような中期的な観点もあわせて含めているわけでございます。  どういう種類の食糧援助かということでございますが、これは国によっていろいろ髪もございますし嗜好もございますので千差万別でございますけれども、できるだけ被援助国の要請にこたえるという形で援助している、こういうことでございます。
  246. 津川武一

    ○津川委員 新たに被援助国から、こういう援助が欲しいという要求、依頼が日本に来ておりますか。
  247. 木幡昭七

    ○木幡説明員 アフリカの場合には国の数も非常に多うございまして、毎年先方の要請の内容等を、現地大使館を通じたりあるいは調査団を出したりしましていろいろやっているところでございます。  そういう二国間の援助の形で要請が上がってくることのほかに、例えば国際機関等を通じての要請もございますので、援助要請は現にございますが、細かいところは非常に多岐でございますので省略させていただきます。
  248. 津川武一

    ○津川委員 今外務省からの答弁ありましたように、日本は援助したいけれども援助する国内農産物がない。外国援助の基本的な原則の、発展途上国から買ってやるべきものを、アメリカのものを買ってきてそしてやるという、矛盾した、国際的な援助の常識をも逸脱したやり方は、明らかに不当なものであり、相手の国の主権も事情も顧みないむちゃなものであると思うので検討の余地はないと私は思いますが、総理並びに外務省はどんな態度をとっておりますか。もう一度明らかにしてください。
  249. 木幡昭七

    ○木幡説明員 今回のアメリカからの一千万トンの穀物を援助目的に使用してはどうかというお話でございますが、これにつきましては、私ども関係省とも十分御連絡をとりながら検討しているところでございます。食糧援助という観点から申し上げますと、私ども、小麦換算三十万トンの食糧援助をするということで食糧援助規約上お約束しているわけでございまして、現にそれを若干上回るぐらいの援助を毎年行ってきているわけでございます。  その際には、先ほど先生からの御指摘ございました開発途上国産の穀物等も利用しているわけでございますが、小麦につきましては、これまでもアメリカ産の小麦を、被援助国側でそういう援助をしてもらいたいという話がある場合には私ども援助をしてきているわけでございます。五十九年度の例をとりますと、約七万七千トンの米国産の小麦を利用しているわけでございます。一千万トンとの間には大きな隔たりがございますので、これを援助の枠組みの中ですべて対応するということには、援助予算の規模もございますし、その他直接関連する国以外にもいろいろ考えなければいけない国際関係もございますので、なかなか容易じゃないというところでございます。
  250. 津川武一

    ○津川委員 そんな立場から、この際なのでアメリカの要求をきっぱり断っていただきたいと要請するものであります。同時に、経済問題だけでない、国際協力の相手の事情をよく見てお互いに納得していくのが国際協力なんです。今度のアメリカの態度は強者の理論で押してきますので、そういう外交上の原則からもきっぱりと断るよう要請して、質問を終わります。
  251. 今井勇

    今井委員長 次回は、来る二十三日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十五分散会