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1985-04-17 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十七日(水曜日)    午前十時開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    羽田  孜君       保利 耕輔君    松田 九郎君       山崎平八郎君    若林 正俊君       渡辺 省一君    奥野 一雄君       上西 和郎君    串原 義直君       島田 琢郎君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    松沢 俊昭君       水谷  弘君    宮崎 角治君       吉浦 忠治君    安倍 基雄君       稲富 稜人君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁長官   石川  弘君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 委員の異動 四月十二日 辞任          補欠選任   日野 市朗君     富塚 三夫君   細谷 昭雄君     野口 幸一君 同日 辞任          補欠選任   富塚 三夫君     日野 市朗君   野口 幸一君     細谷 昭雄君 同月十六日 辞任          補欠選任   日野 市朗君     村山 喜一君 同日 辞任          補欠選任   村山 喜一君     日野 市朗君 同月十七日 辞任          補欠選任   新村 源雄君     奥野 一雄君   駒谷  明君     宮崎 角治君   菅原喜重郎君     安倍 基雄君 同日 辞任       補欠選任   奥野 一雄君     新村 源雄君   宮崎 角治君     駒谷  明君   安倍 基雄君     菅原喜重郎君     ————————————— 四月十二日  土地改良事業等に関する請願不破哲三紹介  )(第三〇四七号)  同(山原健二郎紹介)(第三〇四八号)  畜産物輸入抑制等に関する請願玉沢徳一郎  君紹介)(第三〇六八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五二号)(参議院送付)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四八号)      ————◇—————
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  3. 串原義直

    串原委員 時間がまことに限られておりますから、私、端的に伺います。したがって、明快にお答えを願いたいと思うわけでございます。  果樹振興特別措置法は、昭和三十六年制定以来、選択的拡大の名のもとに政府農林省生産振興を図ってきたところでありますけれども、その結果は、今日ほとんどの主要な果実生産過剰ぎみとなりまして、作目によりましては農家による自主的な生産調整が行われる、こういう事態になっているわけであります。これは原因要因はあるわけでありますけれども、この状況になった要因というのはどこにあると農林省はお考えでありますか。
  4. 関谷俊作

    関谷政府委員 果樹農業につきましては、御承知のように、農業基本法制定当時から、選択的拡大ということで需要増大に応じて生産を伸ばしていくということが基調になっておったわけでございます。  今日、この果振法改正案を含めまして、主としていわゆる需給調整措置に重点を置いた改正案を御提出して御審議いただいている趣旨は、やはり全体として需要減少ぎみである、またその中で品質の多様なものを求める傾向が非常に強まってきた。この辺のところが、やはりこれからの果樹農業政策について基本的な対応を迫られる問題であろうというふうに考えております。
  5. 串原義直

    串原委員 需要減少ぎみ等々の要因であるという御答弁でございましたけれども需要減少ぎみということもあるけれども、実はこの過剰傾向となってきたその原因は、年とともに増加してまいりました輸入に大きな要因がある、私はこう考えている者の一人なのであります。  時間がかかりますから、時間をかけないように、私この資料に基づいて若干の意見を述べて、さらに御答弁を願いたいわけでありますけれども、この「果実消費量推移」というあなた方の提出をいたしました資料を見ますと、十五年前、昭和四十五年と五十八年の消費動向を比較いたしてみますと、温州ミカンなどは二三・五%が二三・二%と、ほとんど十五年前と横ばいである。リンゴは、四十五年が九・七%、五十八年には八・七%、一%の減。その他の果実につきましては、昭和四十五年、四二・三%、それが五十八年度、四五・六%、三・三%の消費増、プラスである、こういう実態になっているわけでございます。したがって私は、消費というものは若干増加傾向というふうにこの数字をとらえて考えているわけです。  そこで、生産状況でありますが、私は長野県でありますから、長野県に関係の深いリンゴナシに例をとりまして申し上げるわけでありますが、今申し上げましたように、十五年前、昭和四十五年のリンゴ生産は全国で百二万トンであった。それが、五十九年は若干生産量が落ちまして八十万八千トンである。それからナシにおきましては、昭和四十五年、四十六万三千トン、それが昭和五十九年はほとんど横ばいの四十七万九千トン、こういうことであります。しかし、消費は若干増加をしているという傾向である。特に私、リンゴナシに例をとりましたが、国内果実生産はほとんど横ばいと言っていい状態である。にもかかわらず需給状況というものが大変過剰傾向になってきたということは、その要因輸入にあるのではないか、私はこう考えておりますが、いかがですか。
  6. 関谷俊作

    関谷政府委員 果実全体としてはかなり横ばい状態になっておるわけでございます。その中で特に御指摘のございましたリンゴでございますけれども、これが、今お挙げになりました資料の中で五十九年の生産量が非常に落ちていますのは、気象の要因等によります一つ異常現象でございまして、全体として見ますと、リンゴにつきましては非常に新植が進みまして、収量水準の向上とあわせまして、いわば生産能力がかなり高まったということで、我々の見方としては、この五十八年の欄にございます百万トン台、これが大体かたい状態になってきまして、このままいきますとむしろもう少しふえるおそれもあるということで、リンゴの場合について申しますと、需要対応する生産が非常に伸びた、こういうことが原因ではなかろうかと思っております。  なお、輸入につきましては、このところ総体としては大体横ばい、百二十万トン前後でございますが、これはバナナ輸入減少の一方でかんきつ類関係増加しております。したがいまして、品目別に見ますと、御指摘にございましたように、確かに輸入増加が多少原因となって少し需給緩和ということになっているものもありますが、これが輸入増大が主要因であるというところまでは、全体として見ますとなっておらないのではないかと考えております。
  7. 串原義直

    串原委員 局長、これは大事なところですから、私あえていま一度伺うわけでございまするけれども輸入がそんなに大きな要因でないと思うという意味答弁をされたけれども、私はそうではない、こう思っているのであります。繰り返すようでありますけれども、あなた方の提出をされた私の持っている資料の中では、消費は若干増加傾向、微増ですけれども増加傾向である。あえてリンゴナシに例をとりましたが、リンゴナシ生産状況昭和四十七、四十八、四十九年等々、押しなべてほとんど横ばいと言っていい状態である。にもかかわらず需給のバランスが崩れつつある、こういうことになってきた要因輸入に大きな原因があるのではないかということを私は言ったわけであります。  あえてここでもう一度、今度は輸入立場輸入量立場から数字を挙げて申し上げてみたいと思う。農林省から提出をされました「果実及び果実製品輸入量推移」という一覧表がございます。果実果物輸入量を、先ほど申し上げました十五年前の四十五年と今日を比較してみましょう。果実の総輸入量は、昭和四十五年、九十四万一千トンであった、五十九年はこれが百二十万トンになっております。ふえております。果実調製品は、十五年前に五万二千トンであったものが十一万トンになっている。倍にふえている。それから果汁、総輸入量は十五年前の昭和四十五年、千九百十二キロリットル、今日では何と九倍になると思われますところの一万六千九百十一キロリットルにふえているわけであります。  つまり、私の計算によりますというと、我が国リンゴナシを合わせた生産総量と同量以上のものが今外国から果物輸入されているという実態なのであります。これは間違いないでしょう。確認をいたしましょう、ここで。
  8. 関谷俊作

    関谷政府委員 ただいま御指摘がございました、これは参考資料に上がっております輸入量推移でございます。この中で今お話しのような状況にあるわけでございますが、ただ、若干、生果実につきましては、総体がふえる中で特に増加の著しいものがここに上がっております。パイナップル、グレープフルーツ、レモン・ライム、オレンジ、こういう熱帯産果実またはかんきつ類系統のもの、これが増加をしております。それから、調製品あるいは果汁につきましては、やはりここにございますようなオレンジその他の非常に嗜好性の強い製品が非常に輸入量増大している。  こういうことで、これは一つ国内消費嗜好多様化対応する輸入面での伸びがそこに出てきたということで、これはもちろん輸入量増大という意味での問題が大きいわけでございますが、同時に、こういう嗜好多様化なり高級化なり、これに対応する国内生産面での対応、これが必要になってくる、こういう事態を示しているというふうに私どもは受け取っておる次第でございます。
  9. 串原義直

    串原委員 したがって、局長、私の申し上げるように、十五年ほど前から比較すると輸入量が順次ふえてきて、現在の果実の総輸入量は、我が国リンゴナシ合わせた総生産量と同等以上の果物輸入されている、この現実は認められるわけでしょう。
  10. 関谷俊作

    関谷政府委員 数量的にはそのとおりでございます。ただ、繰り返しになりますが、やはりその中の品種別なり嗜好別内容構成という面があわせて我々の検討しなければならない問題だというふうに考えております。
  11. 串原義直

    串原委員 これは時間があれば少し議論を深めたいと思いますが、時間がありませんからこれ以上申し上げませんけれども、つまり嗜好によります、こういうことは私もよくわかる。わかるが、大ざっぱに言って、外国から入ってくる果物というのは、今日国内リンゴナシを合わせた量の百二、三十万トンのものが輸入されてきているという現実だけはあるということになるわけですね。その中身に嗜好ということは考慮されなければならぬ、このこともよくわかりまするけれども、この現実は私たちは認めなければならぬ。  私たちはこの法案を審議するに当たって、過去の歩んできた果樹政策、ここにある意味では強い反省と、いま一つは今後に対する対策というものが講じられていかないというと、我が国果樹生産指導方針、今後の長期計画も立てられない、こういうことになるのではないか、私はこう思うのです。いかがですか。
  12. 関谷俊作

    関谷政府委員 全体として、輸入数量増大、その中での品目構成、これを見ますと、まさに先生の御指摘のとおり、我々のこれからの果樹政策において、数量的な問題もございますが、同時にその品質多様化、少量多品目化、こういうことに対応する生産誘導が必要である、これについては全く御趣旨のとおりでございます。
  13. 串原義直

    串原委員 そこで私、大臣に伺いたい。  政府アメリカの圧力を受けまして、今日貿易摩擦解消対策に大わらわでございます。総理大臣みずからが、外国製品を買いましょうというので、テレビ放送をやりまして国民に呼びかけられたわけであります。あのテレビを見ておりましてある農民は、総理大臣は一体だれに向かってあの放送をやろうと考えているんだというような意味の嘆きすら私どもに訴えました。自動車などの大量輸出農産物輸入増加となりまして、今日の日本農業の停滞をもたらしたことは、これはどういうふうに言おうとも間違いない事実なんですね。これ以上、政府が推進をしていこうとする貿易摩擦解消市場開放策犠牲が農村、農畜産物に来ては大変だと私は思う。  食糧自給率をより高めていく、これは日本農業生産にとって至上命題でなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。私ども驚きますことに、アメリカアメリカ立場があるでしょうけれども、ともかく貿易摩擦解消のために穀物を一千万トンほど買ってくれないか、これが実現するなら貿易摩擦解消策には大変いい影響をもたらすでしょうという意味の発言もアメリカ側にあったと聞くわけですね。一千万トンの穀物ということになりますと、ともかく日本生産する米の総量と匹敵するのですね。これはよろしゅうございますなんという返事はどんなにしてもできないはずだと私は思っているところでございます。  外国製品輸入増加を図りますために市場開放をしなければならないといたしましても、農畜産物食糧自給上からこれ以上不可能ですという姿勢と方針を、この際改めて農林水産大臣は明らかにしなければならぬ。この法改正に当たりまして、特にこのことを決意してもらいたい、すべきだ、こう思うのです。決意のほどを伺いましょう。
  14. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 串原先生お答えいたします。  農産物については、先生御存じのことでございますが、これまで可能な限り市場開放を行ってきております。そんなことで、今我が国は既に世界における農産物輸入国、昨年で大体二百七十八億ドル買っているというようなことでございます。  そんなことで、農産物の対外経済問題については、我が国の置かれておる立場を認識し、友好国との関係に留意しつつ、国内農産物需給動向等を踏まえ、我が国農業を生かし、その健全な発展を図るということとの調和をどうするかということで対応することが大切だと思っております。  そんなことで、先ほど先生おっしゃいました工業製品については、今回の対外経済政策においても製品輸入の促進を図るとともに、節度ある輸出の確保を図ることとされております。
  15. 串原義直

    串原委員 したがいまして大臣市場開放策の少なくとも、犠牲という表現はどうかと思うけれども犠牲日本農業農畜産物はしてはならない、しない、こういうふうに大臣決意をしておる、今後その方針で進める、こういうことでよろしゅうございますか。
  16. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  先ほどちょっと申し上げたことでございますが、私は日本農業を守るという立場で、先ほど言ったようなことで、基本的にはやはり我が日本の置かれておる立場を認識し、友好国との関係に留意しつつ、我が国農業を生かし、その健全な発展を図るという立場でこれら問題に処しておりますということでございます。
  17. 串原義直

    串原委員 では次に進むことにいたしますけれども、今回の法改正に当たりまして、提案理由の説明の中で、「果樹農業振興基本方針及び果樹農業振興計画につきましては、果実需要動向に即応した果樹農業誘導を一層適切に行うため、栽培面積目標を定めることとする等その内容を整備する」、こういうふうに言われておるのでございますが、この基本方針を作成するに当たりまして、果物輸入につきましての見通しをどのようにし、輸入枠というものをどのように今後考えていこうとしておるのか、お答えを願います。
  18. 関谷俊作

    関谷政府委員 基本方針を立てる際には、御質問にございましたように、輸入につきましても需要の一部として織り込む、こういうことをする必要があるわけでございます。その場合に、私ども果実の物の分類に応じまして考えるわけでございますが、基本的な考え方としましては、バナナなどのように輸入が自由化されているものがございます。これは従来のそれらの輸入果実消費動向を見ながら見通していくという考え方でございまして、バナナ等を例にとりますと、最近大体七十万トン程度で、少しは減少するかもしれないけれども、大体これ程度ないしそれよりもう少し下がる程度であろうか、こういうようなことの見通しの仕方をしてまいりたい。簡単に言えば、これまでの動向から将来を見通すということでございます。  一方、大変難しいのがいわゆるIQ品目オレンジ等でございます。これにつきましては、現段階日米間等におきまして約束されております輸入枠最終年度、この水準にいわば仮置きしていくというか、その水準で続くという見通し、こういう見通しの仕方をしなければいけないのではないか。これはそれよりふえると見通すのもおかしいわけでございますし、現在、実際の約束されておる輸入枠最終年度をいわばそのまま延ばしていく、そのままの水準で置いていく、こういう見方でなかろうかと思います。
  19. 串原義直

    串原委員 大事な点ですからもう一度伺いましょう。つまり、今話し合いをしている最終年度というのは六十二年度のことですね。どうですか。
  20. 関谷俊作

    関谷政府委員 六十二年度でございますので、今申し上げましたのは六十二年度の最終輸入枠水準をそのまま固定して将来もそういう水準に置いていく、こういうことで見通しに含めるということでございます。
  21. 串原義直

    串原委員 つまり、現状以上そんなに輸入量は枠をふやさない。オレンジの話がありましたけれども現実話し合いをして協定ができている昭和六十二年度の水準横ばい推移させていきたいと考えておる、このことにつきましてはきちっとこの方針を堅持していきたい、こういうことでありますかどうか、確認をしておきたいと思います。
  22. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは国際的な交渉のことでございますので、将来の水準がどういうふうに決まるかというのは我々の努力の問題でございまして、かねて申し上げておりますように、輸入量増大については極力抑制する方向最大限努力をすることで対応してまいるわけでございますが、基本方針見通しの中では、簡単に申しますと、これを減らすこともふやすこともいずれの方向もなかなか今とりにくいので、六十二年度の最終年度をそのまま延ばしていくという、見通しの中ではそういう整理をするということが一番いいのではないかというように考えておる次第でございます。
  23. 串原義直

    串原委員 六十二年度最終年度の枠というものを横ばいで続けていきたい、大変に苦労なさるときもあるだろうけれども、あなたの答弁方向最大限力いっぱい頑張っていただきますように、特に要請をしておきたいと思います。  そこで、今回の法改正によりまして果樹園経営計画を定めるということになりますが、対象者自立経営農家の育成に置いておる。これはどの程度経営規模農家を考えていらっしゃるのですか。
  24. 関谷俊作

    関谷政府委員 果樹園経営計画目標につきましては、従来の公庫法で申しますと自立経営目標でございます。今回御審議いただいておりますいわゆる金融三法の一つとしての農林漁業金融公庫法改正案の中では、育成して自立経営になる程度、こういう経営も含めるということでございますので、したがいまして、今回の改正によって含める方の経営対象にして考えますと、我々としては、大体自立経営下限農業所得の大体七割くらいを実現する経営、こういうふうに考えてはどうかということでございます。  その場合に、果樹の場合にどういう規模になるかということでございますが、これは御承知のように、こういう自立経営なりそれの一歩手前の今回改正により拡大する分の経営目標については、知事が規模を決めるわけでございますので、なかなか私どもが今の段階でどういう規模になるか想定しがたいわけでございますが、仮にリンゴ経営稲作の両方組み合わさっている経営で申しますと、自立経営目標所得が大体五百万円ちょっとぐらい、こういうふうな十年後見通しといたしますと、その七割、三百五十万円でございますが、これを目標所得と仮に置きますと、リンゴ稲作では、大体リンゴが一ヘクタールぐらい、稲が〇・五ヘクタールぐらい、このくらいの規模を持っておりますと大体三百五十万円ぐらいの目標所得が実現されるというふうな試算になるわけでございまして、こういうことも考えながら各県におきまして果樹経営につきましても目標規模を設定をする、こういうふうな方向指導してまいりたいと考えております。
  25. 串原義直

    串原委員 ただいま、こうありたいという立場での経営規模についてお答えをいただいたのでございますが、私そこでちょっと懸念をいたしますことは、農業に熱心であるけれども小さな農家複合経営のために果樹部門がまことに少ない農家というのは、本制度によりまして除外されるということになりはしないか。これも農林省資料でございまするけれども、つまり、〇・五ヘクタール以下の農家というのが実は七五%、果樹経営農家の中で占めているわけですね。この法改正によりまして、制度の取り扱いによりましてはこの七五%の農家に大変大きな影響が出てくるのではないか、こういうふうに私は懸念するのですけれども、いかがでございましょうか。
  26. 関谷俊作

    関谷政府委員 総合施設資金融資対象を選定する場合には、私のただいま申し上げましたようなあくまでも五ないし十年後目標規模でございますので、現状がある程度規模が小さい場合にも、経営総合改善計画によりましてその目標に達するということが見込まれる、そういう意欲的な農業者についてはこの資金融資対象にするわけでございます。  ただ、現実になかなか規模拡大ができないという場合にはこの対象として登場しないわけでございますので、そういう場合には農業近代化資金その他の融資措置により対応するということになるわけでございます。やはり総合施設資金趣旨が、自立経営ないしそれの一歩手前経営を育成するというために年利五%というような大変低い金利水準の特別の資金をつくっておりますので、その融資対象については、ある一定の経営目標を達成するという場合に融資対象にするということで対応せざるを得ないわけでございます。
  27. 串原義直

    串原委員 ここで時間をとってはちょっと困るのでございますが、つまり、複合経営のために果樹部門規模は若干少ないけれども、しかし熱心に農業を続けていこうという人たちに対しては、従来と同じ立場で、より以上援助をするという立場指導をするという立場果樹振興に力を入れてやってもらわなければいけないと思いますから、これは強く要請をして、次に移ることにいたしましょう。  そこで、農業者集団から個別農家経営を主眼にした果樹園経営計画を定めるというのでございますけれども、従来農林省が推進してまいりました団地化、集団化への指導方針との関連というのは、今回の法改正によってどうなっていくのでございましょう。
  28. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回の改正で、いわゆる共同して経営計画を立てるという要件を外したわけでございますが、これはやはり資金実態が、個別経営になじむような改植等の資金、個別経営対応資金が中心であるという実態対応したわけでございまして、お尋ねの集団化あるいは団地化という方針につきましては、我々としては従来と何ら変わりない指導をしてまいる考え方でございます。  具体的には、県の定めます振興計画の中で広域濃密生産団地の形成に関する方針を明らかにする、あるいは作業の集団化につきましては、補助事業でございます果樹産地総合整備事業の補助対象者、これは集団としておりまして、そこに大規模な機械、施設等の利用の共同化を進めるための助成事業を行う、こういうようなことで、この集団化、団地化の方針については従来と変わりないわけでございますし、これからも案出荷の効率化、生産効率化の上ではますます必要になってまいる、こういうふうに考えております。
  29. 串原義直

    串原委員 法律に基づきました対象果樹というのは十二種類ございますね。そこで、ミカンもさることながら、とりわけ落葉果樹生産振興に今後我が国の場合力を入れていくべきだと考えるのでございますが、いかがですか。
  30. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは、最近の日米交渉等の過程でかんきつ類が大変問題になりましたので、あるいは果樹農業の重点がそこにあるようにいささか受け取られがちでございますが、御指摘のございましたように、落葉果樹につきましては、果樹の大変大事な部門として従来よりも一層力を入れる、そういう考え方をとっております。
  31. 串原義直

    串原委員 次に、果実生産及び出荷の安定に関する措置について伺うわけでございますが、農林水産大臣が定めることとなっております生産出荷安定指針は、いつ定めるわけですか。そして、これはどのような効果を持つものであるのか、お答えを願います。
  32. 関谷俊作

    関谷政府委員 この生産出荷安定指針につきましては、その前提として特定果実を決めまして、それで生産出荷安定指針を決めるわけでございます。これにつきまして、我々としましては、関係団体との協議も進めながら、それから特定果実の指定の手続等もございますので、現状にかんがみますと、いつというふうに決めてはおりませんけれども、できるだけ早く改正法によります生産出荷安定指針の策定、公表を行いたいと考えております。  それで、その場合の内容、効果でございますが、これは法律にもございますような計画生産出荷のいわば目標等を示すものでございます。これは、従来から申しますと、農林水産大臣がこういう一種の需給問題にまで入っていくという姿勢がなかったわけでございます。この姿勢を具体的に示すという意味で、需給が問題になる特定果実につきましては生産者等の計画生産出荷の誘導をする、こういう意味で決めるわけでございます。  さらに、それを実現する意味で指定法人の諸事業も行われるわけでございますし、最終的には、今回改正内容に盛り込んでおります農林水産大臣及び知事の勧告、こういうことによりまして需給安定のために行政庁が一層関与していくというか強い指導の姿勢を示していく、こういう意味で指針ということを今回改正に含めた次第でございます。
  33. 串原義直

    串原委員 そういたしますと、政令で定めることになっておりますが、特定果実は今のところどのようなものを考えていらっしゃるのですか。
  34. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは法律にも特定果実の要件がございますが、需給のいわば不均衡がありまして、その改善のための措置にある程度の期間がかかる、こういうものでございまして、我々現状で判断いたしますと、当面は温州みかんを指定することが適当であり、かつ必要である、かように考えております。その他の品目につきましても、我々は基本的な考え方としまして、こういう法律に定めますような事態に至りましたならば指定する考えはもちろん持っておるわけでありますが、現状におきましては温州みかんの指定が必要である、こういうふうに考えております。
  35. 串原義直

    串原委員 そういたしますと、従来は生産者団体が集まった生産出荷安定協議会という立場で計画をされてきたようでございますけれども、今お話しのように、今回の法改正によって農林省が関与をするという立場もありますから、この実効を上げるために生産出荷安定指針を具体的に進める場合の機関、あるいは協議会と言ってもよいし対策会議と言ってもよろしいのですが、農林省も関与した機関等を設置する考えはございますか。
  36. 関谷俊作

    関谷政府委員 従来から生産出荷安定協議会というのが全国段階にもございますし、各県段階にも同じようなものがございまして、我々としては、今回法律改正されましたことに伴いまして新しくつくるというよりは、従来の計画生産出荷協議会、これは関係生産者団体に、さらに今後の問題としていわゆる民間の出荷業者の方とかあるいは加工業者の方も参加を求めるというようなことが必要かと思いますが、これをむしろ拡充というか強化をしていく、一方、農林水産大臣が決めます指針に基づきます行政庁の誘導、これが両々相まっていくという考え方で進むのが適当ではなかろうかと考えております。
  37. 串原義直

    串原委員 時間が参りましたので、局長、最後に一言。  今回の法改正に当たって考えなければならないのは、一番大事なのは需給問題であるということですね。その立場から考えますと、輸入だけに神経を使っていくだけでなくて、輸出対策に対しても、特にナシリンゴなど我が国果物は評判がよろしいというふうに聞いておりますから、この際輸出対策にも力を入れていくという姿勢を強化すべきである。これに対して、あなたの考え方、今後の対策を伺いたい。  それからいま一つ大臣、最後に伺いますが、先ほどから申し上げておりますように、アメリカを初めとする諸外国からの外圧、大変に強いものでございます。時間がありませんので議論を深めることはできなかったけれども質疑をすればするほど心配になりますことは、国内需給だけ考えておりましても、外国輸入増大をするということで日本果樹産業の後退ということがとても心配になってくる。先ほど大臣答弁になりましたが、さらに、私は外国果物輸入日本果樹産業を後退させる道を歩いてはならぬという立場に立って、輸入に対しては改めてこれ以上ふやさないという決意を持つべきだ、こういうことを痛感した次第であります。いま一度最後にあなたの御答弁を求めまして、質問を終わることにいたします。
  38. 関谷俊作

    関谷政府委員 輸出の促進につきましては、今回指定法人となります中央果実基金の重要な仕事として、御指摘にございましたようなナシ等も含めました日本果実輸出につきまして、例えば、市場調査だけではなくて積極的に試験的な輸出もしてみる、こういう市場開拓的なところまで含めまして、これから大事な仕事として取り上げてまいりたいと考えております。
  39. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えします。  販売につきましては、これはいろいろ工夫を要すると思います。この間私テレビを見ておりましたら、子供が何を選ぶかという中に、果物は五番目でした。チョコレートばかりで、果物が五番目ということで、そこら辺に問題がある。また、日本国民もぜいたくになりまして、少量多品目でおいしいものを少し食べるという、この辺に問題が一つあると思う。そんなことですから、やはり生産者の皆さん方も大変御努力を願っていますが、いいものをたくさんつくるということで御努力を願う。  そういう形で、私は子供がなぜそういうものを選ぶかというと、おまけのようですね。チョコレートをおまけで買うんですね。その辺につきまして、やはり何らか販売の努力ということが必要じゃないか、こんな感じがして今先生のお話を聞いておったわけです。  今の輸入につきましては、先生の御指摘のように最大限努力をしたい、こう考えております。
  40. 串原義直

    串原委員 終わります。
  41. 今井勇

    今井委員長 次に、田中恒利君。
  42. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣に御質問いたします。  私は、去年の十二月十八日、果樹対策研究会が報告を出した直後、当委員会で報告内容の幾つかの問題点につきまして質疑を交わしたものでありますが、その際特に国境調整措置について論議の中心を費やしました。この問題は、提案を受けますと、参議院におきまして第五条として修正追加をされて本院に送付されたことを大変多とするものでありまして、私は、農林大臣も、非常に微妙な問題でありますが、この五条の趣旨を体して、厳格に、しかも適正に法の運営に当たっていただくように、この際冒頭にこれは御要請を申し上げておきます。  そこで、本法の内容の幾つかについて御質疑をいたしますが、先ほども串原さんからも質疑をいたしましたが、三十六年の農基法体制の重要な選択的拡大の問題は果樹と畜産で、この果樹果樹振興法は、生産拡大、そこに焦点を置いてつくられた。この法律が、今改めて需給調整法的な法の内容を追加してここに提案をされてきたわけであります。この点について、重なる点もありましょうが、大臣はどういうふうにこの法の内容の変化を御認識していらっしゃるか、この点まずお尋ねをしておきます。
  43. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えいたします。  現行の果振法というのは、これは先生が私よりずっとお詳しいわけですが、非常に果実需要の大幅な増大を見込まれるという情勢のときにできたものでございます。そんなことで、果実生産の安定的な拡大を図ることを目的としてこの果振法を制定したということでございます。  しかしながら、最近における果樹農業をめぐる情勢は、二つの点においてかなり厳しいものがございます。その一つは、果実需要が総じて減少、停滞傾向にあるとともに、先ほどちょっと言いましたが、少量で多品目化あるいは良質志向の傾向が強まったり、温州ミカンを初めとして多くの果実生産過剰基調に陥っているということでございます。それから二つ目は、諸外国からは、果実及び果実加工品の輸入拡大の要請が強まっておるということでございます。  そんなことで、今回の果振法の改正におきましては、これらの情勢の変化を踏まえ、生産需給の安定を図ることが重要と考えて、現行制度につき所要の改善を行ったわけでございます。
  44. 田中恒利

    田中(恒)委員 今大臣が言われたことを私も肯定をいたすものでありますが、問題は、需要の変化、消費動向の変化を、果振法に基づく基本計画その他を通して政府が見抜けなかったという責任は私はあると思います。あるいは、今もお話がありました外国競合果実の急激な輸入拡大という、この農政の路線がやはり一番大きな原因であったと思います。こういう点についても、私は、本法の提案に当たって政府は厳粛に反省すべきことは反省すべきだ、こういうふうに思います。  この議論はいつまでも申し上げませんが、ただ、この際、私は農業政策の基本に関する問題でありますからあえて申し上げておきますが、本法の各条項あるいは提案の御説明をお聞きいたしましても、需要対応するという言葉があります。これは農基法のある意味では基本でありますから、私どもは若干見解を異にする面もありますけれども、それはそれとして、現実問題、需要対応するいろいろな施策というのは必要でしょう。しかし、問題の根本はやはり農業生産力をどう高めていくか、この生産力の問題を無視して農政は語れないと思うのです。  今日特に問題になっております、私はミカン産地でありますが、ミカンの産地は既に昭和四十七、八年ごろからいわゆる需給基調が変わってきておるわけでありまして、政府自体も五十四年から一次、二次と実質的な減反、生産調整をやってきたわけでありますから、これによって相当ミカン産地の力は弱ってきております。いわゆる果樹園の手抜きであるとか老廃園であるとか放棄であるとか、こういう傾向が非常に出ておるのでありまして、ことしはたしか二百二万トンと言われておりますが、ことしは特別であったと思いますけれども政府が考えておる以上に果樹園の生産力は後退をしておる。  この認識の上に立って、これからの我が国果樹農業、特に労働力ですが、非常に荒廃しておる、老齢化しております。これは一般的でありますけれども、例えば果樹の場合は比較的専門技術が必要でありますから、この労働力の問題、土地の問題、資本装備の問題、こういう生産力の基本的な問題について、単なる消費動向果実生産状況、そんなものじゃなくて、より根本的な生産力を強化していくという視点に立ってやはり果樹農業の振興を図ってもらわなければいけない、こういうことを私は特に考えておるものでありますが、大臣はこの点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  45. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたしますが、先生と全く同じでございまして、今度の改正法案というのは、基本的な果樹農業の振興の基本方針を引き続き存置しながら追加した措置でございます。そんなことでございまして、私は長期的観点から、基本的に、やはり先ほどおっしゃったような果樹の育成と輸入果実に負けないような足腰の強い果樹産業の育成を図りたい、こう考えておるわけでございます。  そんなことで、これからのやりたいことは二つございまして、一つは、新たな果樹農業振興基本方針を早急に作成し、これに基づき果実需要動向に即した生産の振興を図ること。二番目に、適地適産の原則を踏まえつつ、引き続き果樹園の整備とか案出荷施設の近代化等の産地整備対策を推進するとともに、新たな果樹園経営計画の活用により、果樹産地の中核となる技術力と経営力を持った果樹農家の育成を図ること、こういうふうに考えておるわけでございます。
  46. 田中恒利

    田中(恒)委員 以下、法案の具体的な内容について若干御質問しておきます。  その第一は、農林大臣果樹農業振興基本方針を定められますね。それから県知事が果樹農業振興計画を定めますね。この基本方針と県段階で定める振興計画との間の整合性をどういうふうに確立していくかということが前提にないと、需給調整の機能は効果を発揮しないと思うのです。これまでの果振法の中では、国がつくった基本方針と県がつくった振興計画の総量を合わせてみたら、県の振興計画の方がよほど量が多くなった、残念ながらこういう現実がしばしば見られたわけですね。この点を今回の改正の中でより強化をしていくということになっておるわけでしょうか。これは局長でしょうね。御答弁いただきたい。
  47. 関谷俊作

    関谷政府委員 従来の基本方針と県の振興計画の関係でございますが、従来、基本方針の本来の内容を占めておりました新植面積につきましては、基本方針と県計画との間のずれは極めて少ない、こういう状況でございました。ただ、いわゆる全体の栽培面積については本来基本方針内容にはしておらないのでございますが、裏にある数字としては県計画との間にかなりずれがあるものもございました。  今回の改正では、特にこの点につきましては法律改正内容として両者の整合性をとる手段を盛り込んではおらないのでございますが、今回は、従来ずれのありました栽培面積関係を本来の基本方針の規定事項としまして、これに即して県に対して十分指導するということで、整合性を保つよう一層努力をしてまいりたいと考えております。
  48. 田中恒利

    田中(恒)委員 法律的には前回と変わっていないということでありますが、植栽面積から栽培面積に変えていく、こういうことで指導をより強化をしていくということです。  確かに変わってないのであれですが、果振法第二条の三の五項は、「都道府県知事は、果樹農業振興計画を定めたときは、遅滞なく、これを農林水産大臣提出するとともに、その概要を公表しなければならない。」こういうことになっておるのですね。  基本方針と振興計画との整合性が保たれないと需給調整が本当に機能しないということであれば、都道府県知事が定めた振興計画を農林大臣が認定をしていく。法律的には、調整をする手法として認定行為をなぜ今度改正しなかったのか、実はちょっと私は疑問に思っておるわけであります。出たものを指導の中で調整をするということでしょうが、法律的には、各県から出たものを農林大臣最終的に認定をして、多いとか少ないとか調整をしていくというのがあってしかるべきじゃないかと思っておるわけですが、それができなかった理由はどういうことでございましょうか。
  49. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは国と自治体の長との間の制度上の問題が一つございまして、国の関与と申しますか、そういうものをだんだん制限していくという傾向にございます。もともと法律の条文には、基本方針に即して計画を定めるということ、それから今お挙げになりました届け出の規定がある、こういう規定をもって実際上は整合性の指導が十分できるという前提に立っておるわけでございまして、これよりさらに法律上、認定とか承認とかという権限として具体的なチェックを盛り込むというのは、今、国と地方とのいわゆる権限、制度上の問題としてはなかなか難しいということで、そういう措置を盛り込まず、専ら実際上の指導対応するということにしたいと考えておる次第でございます。
  50. 田中恒利

    田中(恒)委員 県の計画を立てるときに、国の基本方針に基づいて事前に相当綿密しかも周到に指導してもらいたい。この失敗をしないように最初に申し上げておきます。  それから、その次に基本方針の、問題は輸入ですけれども、いろいろ言ったって輸入動向というのは大きいポイントなんですよ。いろいろ難しい情勢があるから、あなたのところは表現は非常にお上手にやっていらっしゃるが、輸入果実をどう取り扱っていくかということは、生産目標の設定、需要見通しの中の重要なポイントだと思うのです。  そこで、これまでも基本方針は次から次と相当修正をやってきたわけですけれども輸入数字というのは、今言われたのですけれども、例えば五十五年十一月に変えた六十五年見通し、これを見ても、六十五年度の生産目標がその他かんきつが百七万九千トン、栽培面積が四万九千九百ヘクタールに対して、需要見通しが百六十万四千トン、したがって、その差の五十二万五千トンというのが輸入量、こういうことになっておるわけですね。五十二万五千トン、これがその他のかんきつのところで一括して入っておるわけですよ。  輸入のかんきつというのは幾らだというふうに、これから基本方針の中で明示しませんか。それから、その他のかんきつといいましても、少量多品目の方向に向いておると言っておるわけだから、かんきつといったってたくさんある。この果振法の対象だって十二品目あるわけでしょう。もっとふやすという方向でしょう。たくさんあるわけですが、オレンジは幾らとか、いろいろかんきつの種別ごとに出す、そういうところまでは考えていないでしょうか。
  51. 関谷俊作

    関谷政府委員 基本方針なり長期見通しの場合の扱いでございますが、全体の考え方としては、自由化品目については従来の傾向から推定する、それからIQ品目については現在決められている輸入取り決めの最終年度の数値をそのまま仮置きすみ、こういうふうな考え方をとりたいと思っております。  その場合に、お尋ねのような非常に細かいところまでということでございますが、我々としましては、輸入も、これは国内生産も同じでございますが、ある程度の分類をもって見通すわけでございますが、その過程の作業としては、もちろんできるだけ細かい分類をつくりまして、その分類に応じて見通しをしていく、こういうことになるわけでございますが、それを明示で、こういうものは幾ら、こういうものは幾らというふうな扱いとして基本方針の中に盛り込む、あるいは長期見通しの中に盛り込む、そこまでは現在考えておらない次第でございます。
  52. 田中恒利

    田中(恒)委員 輸入果実が幾らになるということが明確にわかるように、その程度は公表しますか。
  53. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは発表の形式の問題もありますけれども、長期見通しの場合も基本方針の場合も、やはり総体生産目標を——基本方針の場合は、生産目標を決めるわけでございますので、その数字を算定するプロセスとして出てくるわけでございます。長期見通しの場合には需要量と生産量のずれとして出てまいりますが、基本方針の場合には国内生産の問題でございますので、必ずしも明示で輸入が幾ら、こういうふうには出てまいらない。しかし、その推定の過程というものは果樹農業振興審議会等でも御議論いただくわけでございますから、輸入がどのくらい見込まれているかということはおのずから明らかになろうかと考えております。
  54. 田中恒利

    田中(恒)委員 果樹園経営計画制度についてはどのような農家を考えておるのか、あるいは従来の二戸以上を個別農家にした理由は何か、こういう点は今串原さんの御質問にお答えいただきましたが、私はこの際申し上げておきたいのは、果樹園経営計画というものが国の基本方針、県の振興計画に基づいて果樹振興のためにつくられていくということでありますが、これは公庫の総合施設資金を貸すということになっておりますから、この公庫の金を借りるためにこれが動いていくということのないように、やはり全体の計画の中の位置づけの一環として進めていくように、これも要望ですから、もう時間がないから、特に聞いておいていただきたいと思います。  そこで、次に生産と出荷の安定措置、つまり需給調整、これが本法改正の目玉というか焦点であります。特定果実は今のところ温州ミカンを想定しているということですが、温州ミカンは特に需要が減ったということで、一次二次と減反が、自主的にも、農林省の方も積極的に応援をしながら今日まで進められてきたわけでありまして、十五、六万あったものが現在たしか十一万六千四百ヘクタール程度にまで下がっております。これはもっと下がるような傾向にあるわけでありますが、大体現段階で適正な温州ミカン生産量なり栽培面積をどの程度と農林水産省は考えていらっしゃいますか。
  55. 関谷俊作

    関谷政府委員 この点は、果樹農業振興基本方針の改定作業を、これは改正法に則しまして行うわけでございまして、果樹農業振興審議会において検討のいわば本格的な段階にこれから入るわけでございます。したがいまして、具体的な数字については検討の場の中で明らかにされていくと考えておりまして、今なかなか水準としては見通しを申し上げられる段階ではございませんけれども、この数年来の平均的な生産水準、大体二百八十万トン台という水準から見ますと、生産総量としてはもう少しこれを下回るようなきつい見通しをせざるを得ないのじゃないかと考えております。
  56. 田中恒利

    田中(恒)委員 特定果実生産出荷安定指針というものがつくられるわけでありますが、現在、果実生産出荷安定協議会が、団体が中心になってやっておるわけであります。これを活用していくということのようですが、新しく法的な裏づけの中で考えられるこの指針の中で、現在行われておる府県別の計画数量、それから三十一市場別の月別、旬別の出荷計画、こういうものまで細かく踏み込んでいく、こういうふうに理解してよろしいかどうか。これが一つ。  それからいま一つは、指定法人は現在協同組合系統ですね、これが中心になっておるわけでありますが、今回アウトサイダー、つまり業者団体も含めてこの計画の中で需給調整を図っていくということでありますが、これは言うはやすく現実問題としてはなかなか難しい面が私はたくさんあろうかと思います。これについては、どういう手順で全出荷団体の意向を方針の中へくるめて、しかも実行させていくということを考えていらっしゃるのか、もう少し手順を細かく御説明していただきたいと思います。
  57. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回の生産出荷安定指針に盛り込む事項としては、その年の生産予想量なり生産加工目別の需要量の見通し、こういうものは盛り込むわけでございます。ただ、その場合に、これはやはり全国ベースで農林水産大臣が決めるということでございますので、お尋ねのような都道府県別あるいは対象出荷先の市場別の数量、こういうことになりますと、これは従来からございます生産出荷安定協議会、こういう場で関係生産者団体等の協議により具体化をしていく、またその過程に生産出荷安定指針を決めました農林水産省としても積極的に参加をしていく、こういうあり方になろうかと思います。  それから、その場合に、特に指定法人等の関係で、その手続、手順の問題でございますが、我々としましては生産出荷安定協議会、これは従来から生産者団体系統のみで構成されておりますので、我々は指導といたしまして、この中にいわゆる出荷業者団体も含める、こういう方向で参加を求めて、一緒に生産出荷安定協議会の協議を進めていただきたいと思っております。  指定法人につきましては、今回の仕事が全体としての生産出荷の安定でございますので、対象に指定出荷業者も含めるということになりますので、いわば農林大臣の決める指針のもとで、この指定法人の業務それから安定協議会の業務が両々並行して動く、こういうような体制を予想しているわけでございまして、指定法人につきましても、商系の出荷事業者も業務対象に加えられておりますので、この関係の団体等につきましても指定法人への、これは財団法人でございますのでいわゆる参加ということはないわけでございますけれども、指定法人との関係、つながりというものも今回我々の指導によりまして持つ、こういう方向に持っていく方がいいのではないかと考えております。
  58. 田中恒利

    田中(恒)委員 局長、これは話し合いで理解を得て参加をしてもらうということですが、あなたのところはよっぽど腹を決めて、それぞれの両関係系統、農協系と業者、よっぽどあなたのところは力強く話し合いをしないと、法律はできたけれども中身は伴わない、そういうことになる心配がなきにしもあらず。私は関連業界の内容をある程度知っておる者として、そんな甘いものじゃないと思うのです。だから腹を決めてかかってもらわないといけませんよ。法律はできるわけだから、格好ばかり法律をつくって中身が伴わないということは困りますから、大臣、よっぽど腹を決めてやってくださいよ。  勧告という制度がありますけれども、勧告というのは法律的には制裁措置があるわけでもないし、野菜の出荷安定の基金の中にもあるのだけれども、聞いてみると一遍も発動したことがまだないという状況なんです。ですから、勧告制度というものを発動する条件は一体どうなのか、こういう問題もあるわけですけれども、勧告制度などというもの、これは名前だけ変えたということでなくて、つくったわけですから、それの裏打ちになるような、いろいろな面で業界の皆さんの意向も聞かないといけない面もあるでしょうけれども、よっぽど腹を決めてかかっていただきたい、このことをこの問題について特に強く指摘しておきたいと思います。  それから、民法三十四条に基づく指定法人と目される現在の中央果実基金でやっていくということですね。しかしこの中央果実基金の現状は、理事長は斎藤誠さん、前の農林省次官ですね、あと役職員九名ですね。悪口を言うわけではないが、日園連の会長さんと全農の役員さんを除いたら全部農林省の天下りの皆さんだ。県には事務局長と女子職員一人、こういう体制で、温州ミカンだけで二百七、八十万トン、市場という阿修羅場ですよ、果たしてやれるのかどうか。今までのように安定基金で補助金を分配していくということだけでは済まないわけですね。ですから、この中央果実基金の強化をどうしていくのか、組織的、機構的、財政的にどうしていくか、この問題があると思うのです。これをやらないと、もちろんここが中心になって各出荷団体の皆さんの御協力をいただくわけでありますけれども、やはり中心の果実基金協会の組織や機構や要員や財政までどうしていくかということは将来当然問題になってくると思う。この点について何かお考えがありましょうか。
  59. 関谷俊作

    関谷政府委員 中央果実基金のような大変難しい仕事を行う場合、特にこれから計画生産出荷の安定なりそれから需要増進なりの面でいわば開拓していくような仕事が多いわけでございます。そういう意味で、我々としましては、機構、組織の拡充が先というよりは、むしろ事業の充実を先行させて、それに対応して必要最小限度の人をそこに置く、また、できるだけ機構の膨大化を避けて、むしろ関係諸団体との協力連携のもとでかなり効率的な運営をしていく、そういう意味で、簡単に言いますと少数精鋭主義というような立場で臨むのが一番いいのではないかと思います。  そういう意味では、もちろん組織、機構の整備も大事でございますが、やはり事業体制に応じてできるだけ少数の優秀な人で、また関係団体との連携も保ちながら、この指定法人の機能が十分発揮されるように我々としても十分指導してまいりたいと考えております。
  60. 田中恒利

    田中(恒)委員 歯切れがよくないんだが、この財政は、ことしの予算で出てきておるようなもので当面は乗り切れるというふうにお考えになっていらっしゃるわけですか。
  61. 関谷俊作

    関谷政府委員 いわゆる管理運営費という意味では、今年度程度のもので十分処理できると思っております。
  62. 田中恒利

    田中(恒)委員 もう少し前向きで考えていただかないと、これは、今までのようなものだけでというのでは私ちょっと不安なんだな。  大臣どうですか。あなたもミカン地帯だから、果樹地帯だから、どうですか、もう少しこれは強化の方向で考えてもらわないといけない。
  63. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  今先生から聞いたお話、実は私正直よくわかりませんが、御指摘内容が、新体制を遂行するための果実基金の組織、定員等の実施体制にありとすれば、現体制を再検討し、不十分の場合には対処するよう配慮してまいりたいと思います。  また、先ほどの財政上の問題につきましては、体制が円滑に運営されるよう対処したい、こう思っております。
  64. 田中恒利

    田中(恒)委員 次に移ります。  第四条の四の一号、つまり、「特定果実に係る果実製品の保管に関する事業」の法文を見ましてはっきりさしておきたいことは、ジュースですね、果汁をこれまで調整保管という機能にとどまっておったわけですが、これは法律的には明確になっていないわけですが、「保管」という表現しか出てきていないわけですけれども、私は十二月の質問でこの点は意見も申し上げたし、局長からも一定の前向きの御答弁をいただいておるわけですが、ジュースの買い入れを必要な場合に行う、この指定法人で全国的に行う、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  65. 関谷俊作

    関谷政府委員 そこの「保管に関する事業」と法律に書いてあることの意味は二つございまして、一つは従来からやっておりますような他の主体が行う保管に対する助成と、それからもう一つは、お尋ねにございましたような果実製品果汁をこの指定法人が買い入れでみずからの危険負担において保管をする、この仕事もこの法人の能力として含まれておる、こういう解釈でございます。
  66. 田中恒利

    田中(恒)委員 今の局長の御答弁のようなことになるんだろうと思いますが、その際、買い入れを発動する場合の基準というか、どういう状態のときに買い入れを発動するというふうに考えていらっしゃいますか。
  67. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは、当然のことでございますが、従来の保管に対する助成という方式では十分でないような、大変需給の不均衡な異常事態に近いような事態が出現した場合ということが想定されるわけでございます。その辺で、買い入れの基準なり要件については大変慎重な検討が必要だと考えておりまして、これは今回の改正ではそういう能力を法人が持つというところでありますが、これから、その買い入れの仕方、どういう場合にどういうことでやるか、それから買い入れましたものの保管ないし放出の条件、こういう点については、関係諸団体とも協議をしながら十分慎重な詰めが必要であるというふうに考えております。
  68. 田中恒利

    田中(恒)委員 十分にひとつ検討していただきたい。  それからなお、買い入れの価格ですが、これは研究会でも加工果実の今の補給金の制度をめぐっていろいろ議論があったようでありますが、これも検討ということのようですけれども、ともかくこのジュースの価格というのは安いんですよ。この十数年来、例えばミカンに例をとれば、私どものところでは、農家にすれば手取り百円ぐらい欲しいというのが、この十年来七、八十円、悪いときには六十円ぐらいしか取れなかった。ジュースというのは二十円台、三十円台になるかならぬか、こういう状態なんですけれども、これはもう少し周年需要という観点からも考えてみなければいけないんじゃないかと思うのです。  しかし一方、加工業者の立場もありましょう。いろいろありますけれども、やはり買い入れ価格というものに対して国の政策アップというものが相当出てこないとこの矛盾は解決できないわけでありますので、買い入れ価格について恐らく検討するということなんでしょうが、ひとつ前向きに検討していただきたいということを要望しておいて、局長から御意見ございましたらお述べいただきたいと思いますが、同時に、この買い入れ、保管に必要な経費の負担などについて、もし方向が出ておりましたらお示しをいただきたいと思います。
  69. 関谷俊作

    関谷政府委員 ジュースの買い入れ価格、もちろんいわゆる市場価格との関係で決まるわけでございまして、価格自身がほかの飲料との競争関係等もあるので、なかなか難しい状態であろうかと思います。  指定法人の買い入れということになりますと、これはまさに先ほど申し上げましたような慎重な検討を要すると思っておりまして、まあ価格は高い方が望ましいという御意見もありましょうが、反面、指定法人に物が非常にたまる一方、こういうふうなことになってもかえって事業の目的を達しないわけでございます。その買い入れの価格それから保管経費の扱い方、こういうものについては、先ほど申し上げましたようなこの事業のいわば道の開き方、取り組み方としまして、十分慎重に検討させていただきたいと思います。
  70. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま一つ保管関係で御質問しておきますが、買い入れたものを今度売り渡すでしょう。売り渡すときの問題は、これもまた検討ですか。
  71. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは買い入れ、保管、売り渡し全体、価格、その基準、条件も含めまして、一連の仕事として検討をする必要があるということで、まだこれからその具体化をすることを前提にしまして検討を進めてまいりたいと思っております。
  72. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間があと三、四分になったようでありますが、大臣、この際大臣と一、二意見を交換してみたいと思います。  結局、この需給調整機能というものを日本果樹産業というものを発展させるという視点に立って考えた場合に、やはり私が一番怖いのは開放体制、特に果実についてはアメリカでありますが、アメリカの今日の状況から見ると、中曽根総理が先頭に立って舶来品を買いましょう、こういう時代でありますし、しかも、今休戦しておるとはいえ、農産物貿易交渉というものはこの一、二年のうちに再燃をしていく、こういう状況でありますから、やはり外国のものがどんどん入って、逆に日本果樹農業は縮小していくという道をたどらしては、本法のねらいというか、本来の姿ではないはずでありますから、需要対応するということも必要だが、需要をどう創造していくか、つまり消費拡大でありますが、この需要をいかに創造していくかということも、政策の最大の、これは果樹だけではありませんが、畜産を含めて我が国の農政にとっては大きな問題だと思うのです。  そのために、例えば学校給食といったようなものも日本型食生活の一環として形成をされ、進められておるわけでありますが、やはり政策需要をできるだけふやしたい。しかしそれには銭が要る。銭は臨調行革でなかなか難しい。こういうことなんで、あなたも大臣としてなかなか難しいことはよくわかりますよ。わかりますが、これはじりじりと今のままにとばしておったのでは、果樹だけではありません、畜産も、少なくとも日本農業の新しい分野と目されるところに大きなしわが寄らざるを得ない。そういう意味で、やはり腹を据えてこの需要創造政策というものに力を入れてもらいたい。当面学校給食を軸にして福祉なり、あるいは酪農の場合はこの間の畜産の価格決定の際に、牛乳を幼稚園、保育園までもというのも入りましたけれども果汁だって同じでありますから、ぜひ保育園、幼稚園までも果汁を飲めるところはどんどん飲んでもらう、こういう方面に給食制度の枠も広げてもらいたいと思う。  先ほども御意見があったように、私は果樹の問題については輸出の問題をもっと真剣に考える必要があると思うのです。輸出の問題を考える場合に、現状残念ながら輸出をしていくこちら側の体制が整っていないように思う。ともかくばらばらになっておる。できれば輸出についての窓口というものを相談をしていくようなことも必要じゃないかと思うし、その他政策的にはいろいろありましょう。ECまではいかないけれども日本政府の厳しい財政事情の中で新しい政策路線として考えてみれば考えられる節が幾つかあるような気もするのです。  そういう問題を将来十分検討していただいて、ひとつこの消費の拡大、需要の創造という点に焦点を置いた、特にこの果樹問題の対応というものをこの機会に強く求めておきたいと思いますので、大臣のこれについての御所見を承りたいと思います。
  73. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えします。  先生御存じのとおりでありますが、果汁は学校給食に千トンぐらいで、年間大体三千万個ということで、一個当たり四円の助成をしておるわけですが、仰せのように最大限努力してみたい、こう思っております。  それと実は、先生の御指摘のとおりでございまして、国内での消費拡大をどうするかという問題、それとともに、もう一つ輸出の振興を図っていく必要がある、こう思っております。そんなことで、今回の果振法改正によりまして指定法人として位置づけられました財団法人中央果実生産出荷安定基金協会、ここに果樹緊急特別対策基金でございますが、五十九年が大体三十五億、六十年度は十億円、約四十五億でございますが、これを使いまして、内外における消費宣伝とか果実果実加工品の品質向上対策や海外市場への試験輸出等、広範な対策を実施し、この基金を活用して積極的な需要の拡大を図っていきたい、こういうように考えております。
  74. 田中恒利

    田中(恒)委員 本法の具体的な取り進め方については、まだ十分に省内、お役所の方でも煮詰まっていない点もあるようでありますけれども、私の気づきました二、三の点につきまして、与えられた時間が四十五分でありますから、その範囲で申し上げたつもりであります。  ぜひ十分検討していただいて、関係諸団体、関係機関と十分に御相談をいただいて、この法律を通して当面の果樹農業の危機を脱出をしていくような、そういう前向きの、しかも生産力を高めていくような、そういう方向に向かって取り組んでいただきますように要請をいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  75. 今井勇

    今井委員長 次に、吉浦忠治君。
  76. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回提案されました果樹農業振興特別措置法改正案につきましては、おおむね賛成でありますけれども、基本的な点を若干伺っておきたいと思うわけであります。  果樹農業の振興についてでありますけれども、現行法は農基法に基づく選択的拡大を受けて果実生産の拡大を図ることを目的とした法律でありますけれども現状果樹農業振興基本方針及びその計画、それと独禁法除外規定、これが機能しているだけで、その中心となる果樹園経営計画昭和五十一年の三月三十一日に失効しているわけでありまして、いわばこれはもう死に体でございます。それをよみがえらせて新たな観点から振興策を盛られるということは、それ相当の抜本策がなければならないというふうに考えるわけであります。  この改正案を見ますと、一つは、栽培面積目標を定めて減反できるようにしたという点、二番目には、果樹園の経営計画の対象者を集団からいわゆる農業者に改めるという点、三番目には、需給計画を担う指定法人の法定化、勧告制度の導入など、お世辞にも抜本策とは言えないじゃないか、こう思うわけであります。  また、さきの日米合意によりましてオレンジ輸入枠の拡大がなされましたが、これは果樹農家に深刻な影響を与えているわけでありまして、この際大臣から、いわゆる果樹農業振興策についての基本的な考え方をお尋ねいたしたい。
  77. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉浦先生お答えいたします。  先生御存じのように、果樹をめぐる情勢は大変厳しいわけでございまして、果樹農業の健全な発展を図ることが基本でございます。そのためにどうするかといいますと、結局我が国のすぐれた生産技術を活用して、消費者の嗜好に合致した良質果実生産を推進する。また諸外国から輸入拡大圧力が非常に高まっております。そんなことで、規模の大きい、効率性の高い果樹農業経営の育成と、輸入果実に負けないような足腰の強い果樹産地の育成を図る。こんなことで今回の果振法の改正に踏み切ったというわけでございます。そんなことでございまして、果振法の適切な運用あるいは各種の補助、融資制度の実施により健全な果樹農家の振興を図ってまいりたいと考えております。  そんなことでございまして、現在御審議いただいております農業改良資金制度改正により導入される果樹栽培合理化資金、これは無利子資金でございますが、これらの活用によりまして果実需給の安定化と良質果実生産を推進いたしたいと考えておるわけでございます。
  78. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 果樹農業の位置づけについて伺っておきたいのですが、我が国民の食糧の自給を確保するという、いわゆる食糧の安全保障の見地から見てまいりますならば、果樹もやはり国民の食糧の大事な一部を形成するもの、こういうふうに考えなければならぬと思うわけであります。行政当局はまだこれは嗜好品としか扱っていないわけでありまして、例えば畜産と対比しても相当低くその価値を見ているんじゃないかというふうに思うわけであります。当局の見解をお伺いしておきたい。
  79. 関谷俊作

    関谷政府委員 果樹農業は、生産の側から見ますと、耕地面積、農業生産額が約七%でございます。また、果樹栽培農家は八十万戸を数えているわけでございまして、我が国農業の上で大変重要な地位を占めているわけでございます。  今御指摘の中にございましたいわゆる消費面なり食生活面から見た評価につきましては、一口に嗜好品というような言葉で言われてはおりますけれども、全体として見ますならば、日本の国民の食生活が従来米と魚と野菜、この辺を中心にしたような食生活から、それに畜産物が加わり、果実が加わり、こういう新しいものが豊富に加わりました大変豊かな食生活を維持しているわけでございまして、そこに必要なビタミン等の供給なり植物繊維の供給とか、あるいは食生活の豊かさの内容をなすということで、我々としまして食生活という面から見て、果実及びその加工品というものの占める位置、これは大変大事なものだ、こういうふうに考えておりまして、日本型食生活と言われるものの普及、定着の努力の中でも、果実を含めまして、今のバランスある豊かな食生活の普及を図っていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  80. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、果樹園経営計画対象者が、このたびの改正によりまして集団からいわゆる農業者に改めるということになっておるわけでありますけれども、中核的農家の育成を図るということを目途としての措置であるというふうに説明はされておりますが、一方では弱小農家の切り捨てではないかというふうに心配をされている向きも確かにあるわけであります。  そこで、経営改善に意欲のある農家であるならば、規模の大小にかかわらず本法を適用すべきであるというふうに——農水省は今回の果樹園経営計画ではどのような規模並びに経営状況農家対象として考えておられるのか、どのような効果が上がるというふうにもまた考えておられるのか、この点を伺っておきたい。
  81. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回、果樹園経営計画、これは先ほど先生のお尋ねにございましたように、五十一年三月三十一日まででいわば切れておりましたのを、復活というか、新たな仕組みとして動かすわけでございます。その場合の考え方としましては、今回の農林漁業金融公庫法改正の方で、総合施設資金一つ拡充をされます。これとちょうど時期を一にしておりますので、その総合施設資金の貸付対象が、御承知のように従来の自立経営目標だけではなくて、育成して自立経営になる程度経営ということで、我々としては自立経営目標、所得、規模の大体七割ぐらいを目標にして経営改善をする、そういう農業者対象に加えていく、こういうことで公庫法改正と同一の時期に御提案をしたような次第でございます。これは、現状規模が多少小さくても、主として若い意欲のある農業者がそういうような経営目標にする場合には対応していくということでございまして、意欲のある農業者については、自立経営目標の七割というとかなり現実的に手の届くような目標である場合も多いわけでございますので、そういうことを積極的に取り上げていくという方向改正をお願いしておるわけでございます。  なお、本当にそういう規模に到達しないという農家につきましては、これは私どもが実施しております果樹の産地の総合的な整備とか、それから、共同部な集団の一員として産地の育成の中で一緒に果樹農業をやっていただくような方向対応していく、あるいは農業近代化資金等の融資対象として考えていく、こういうようなことで小規模農業者についてもいわゆる切り捨て、こういうような考え方対応することは考えておりません。
  82. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 改正案では、農水大臣は特定果実について生産出荷安定指針を定めることができる、こうなるわけでありますが、温州ミカンが該当するというふうに思われますけれども大臣はこの指針をどのような基準で定めて、どのような効果を期待されているのか、これを伺っておきたいわけであります。また、これによって農家経営の安定が図られるというふうに断言できるのかどうか、大臣からお答えをいただきたい。
  83. 関谷俊作

    関谷政府委員 生産出荷安定指針につきましては、こういう温州ミカンというような需給上非常に問題がある、相当期間をかけて需給状態の改善に取り組む必要があるものを取り上げるわけでございまして、従来からしますと、農林水産省が一歩踏み込んでその生産出荷の目標を決めていく、こういうことでございます。  したがいまして、これはあくまでも、指針の効果ということになりますと一つの政策誘導効果、問題のある果実についての方向を示すということにとどまるわけでございますけれども、この具体的な措置としましては、指定法人の行います諸事業でございますとか、これが十分うまくいかない場合にはその協力を求めるような勧告とか、こういう一種の事業措置、誘導措置、そういうものも含めまして、お尋ねのございましたような関係農家経営安定に寄与する、こういう方向で運用してまいりたいと考えております。
  84. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 農家によっては独特の農法を持って、あるいは独自の販売ルートを開発して営農している場合があります。こうした方々は概して清新の気概を持って、情熱を傾けて農業にいそしんでいるものがあるわけであります。今回の大臣の指針はすべての農家に網をかぶせて、そして指針に反する生産出荷をする農家に対しては指針に従って経営するようにその勧告をできるようになっておるわけであります。指針の定め方、その運用いかんによってはこうした進んだ、気概に燃えた方々の熱意をそぐのではないかという懸念をするわけでありますけれども、この際、大臣の勧告の運用をどのように考えておられるか、大事な点でございます、お答えをいただきたい。
  85. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは安定指針も勧告も同様でございますが、あくまでも計画的な安定的な生産出荷のためにやるわけでございまして、いわゆる農家経営あるいはどういうものをつくるかという経営活動を拘束するというものではございません。あくまでもできます生産物の重なり仕向け光なり、そういうものを需給に差し支えないように安定をさしていく、こういうための誘導措置でございます。したがいまして、御懸念のような農家経営を拘束するようなことはないというふうに考えておりますけれども、いずれにしましても需給動向に応じた生産出荷の誘導、こういう面ではやはり全関係の、例えばミカンならミカンの生産農家としては皆さん御協力して、ある意味では一致協力した需給安定活動をしていただきたいわけで、農林水産大臣の決めます指針なりあるいは行います勧告というのは、やはりそういう皆さん方の共同部な活動をいわば援助しまたそれを誘導する、こういうような趣旨で運用していく、こういうことを考えている次第でございます。
  86. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、消費拡大と輸出振興について伺っておきたいのですが、果実需要は、特に温州ミカンを例にとってみても著しく減少しているわけでございますが、この点については果樹対策研究会で、少量多品目化あるいは良質志向が進む、それで「新たな対応が求められている。」こういうふうに指摘をされております。確かにオイルショックを境にいたしまして我が国民の生活観が相当変化をしており、これとあわせてミカン園も成園面積が増大し、生産量が急増したこと等がいわゆる変化としてあらわれているわけでありまして、それが果実消費にあらわれたのではないかというふうに思うわけでありますけれども、これらの施策としては、こうした側面も十分に考慮して対応していかなければならないというふうに、現実には消費の拡大が重要なテーマで、少なくともオイルショック時の需要の喚起をしていく必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。  私は温州ミカン生産県の出身じゃないのですけれども、米の消費拡大については超党派の議員連盟というのはあるわけでありまして、果樹にもその必要性があるのではないかというふうに思うぐらいその必要性を感じているものでありますけれども、現在農水省は消費拡大をどのような形で取り組もうというふうになさっておられるのか、伺っておきたい。
  87. 関谷俊作

    関谷政府委員 お尋ねの中にございましたように、果実に対する消費の形態が、従来の選択的拡大ということでどちらかといいますと量的拡大に重点があった時代から、これはオイルショックなり一つの国民経済の安定成長への移行というようなことで、所得の伸びがいわば比較的緩やかなテンポになったことと、やはり国民の生活意識の変化、向上に伴いまして、非常にいいものを求める、それからある程度多様なものを求める、こういうようなことが果実需要にもあらわれてきているというように考えております。  こういうことに対する対応というのは非常に難しいわけでございまして、従来からも行われてまいりましたような新しい嗜好性を持ったような新品種の開発、これも実際に成果を上げて、かなり普及されてまいったものもあるわけでございます。そういうことなり、それから需要の増進、拡大という面では、今回指定法人になります中央果実基金の事業として、従来もやってまいりましたが、これからも必要なこととして、一部果汁の学校給食への助成その他国内での消費増進、それからさらに、輸出需要も含めた開拓、開発、こういうことについてはこれから積極的に取り組まなければならないと思っておりまして、その場合にあくまでも、お菓子とか、ほかの種類の飲料とか、いろいろな競合商品があるわけでございますし、それから、このごろの若い層を中心にした消費動向もよくその状況を見定める必要もありますので、そういう状況推移に十分対応するような、かなりきめの細かい需要増進活動が必要になってまいると考えておりまして、この辺は指定法人の仕事として十分これから私ども指導し、また指定法人自体においても積極的な需要増進活動に取り組むように期待をしておる次第でございます。
  88. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、輸出振興でありますけれども、この輸出振興の上でネックになっているものは、植物防疫の点では潰瘍病の発生の危険性が高いということに、また価格的には運送のコストの点にあるというふうに聞いているわけでありますが、現在、力のある単協が独自に大変な努力を払って輸出をしているものもあるわけであります。この際、潰瘍病の克服はもとよりでありますが、輸出振興の上から、輸出窓口を設置して、輸出しやすい状況をつくるべきではないかというふうに考えるわけであります。また、輸出の振興を図っていくために、試験的な輸出を積極的に行い、市場開拓を図るという必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。こうした業務は本改正案の指定法人にやらせてはどうかというふうに考えるわけでありますが、この点あわせてお答えをいただきたい。
  89. 関谷俊作

    関谷政府委員 輸出振興の上で窓口の一元化ということは一つの方法として考えられるわけでございますが、本当の一元化ということになりますと、独占禁止法の問題、それからそれの体制、それを支えます生産調整の問題、こういうことになりまして、現在では、御承知のようにミカン缶詰につきましては、ミカン缶詰工業組合の組織を基礎にしまして一元的な輸出がミカン缶詰の一つの共販という形で行われております。そのほか生ミカンにつきましては、輸出組合ということで、カナダ向け輸出については農産物輸出組合による数量等の調整が行われて、一種の協調的な体制が行われているわけでございます。こういう手法につきましては、一つのあり方として、いろいろ法律上の制約もございますが、その中で今後とも必要なものについては取り組みたいというふうに考えておりますが、なかなか、そのベースになります生産の体制なり何なりという問題がございますので、ある程度限度はあろうかと思いますが、一つの課題としてはある、こういうふうに考えております。  さらに、輸出への取り組みでございまして、これは従来から中央果実基金協会の事業による助成によりまして、いわゆる市場宣伝というかPR活動から、さらにもっと踏み込んで実験的な輸出までする、こういうところまで取り組むべきだろうというように考えておりまして、これまでの例でありますと、カナダ向け温州ミカンの広範なPR活動をやっておりますが、試験輸送等の例としましては、五十九年度に北欧市場向けにミカンのスエズ運河経由の輸送試験、こういうようなものも実施して、それに助成をしておるような次第でございます。やはりこれは生産者団体の御努力によりまして実施をすることに対して中央果実基金、指定法人の仕事として積極的な助成をし、さらに基金自体としてもこういう仕事の開拓ということに取り組むべきだと考えております。  このほかに、御指摘のございましたようなアメリカのかんきつ潰瘍病、この関係対策についても、中央果実基金の仕事の中で今いろいろ研究措置についても助成をしていくというようなことで対応しておる次第でございます。
  90. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最近までですけれども、ミカンやリンゴを生かじりをしていた。大臣もその経験はおありだろうと思うのですが、最近は皮のまま食べるなんということはほとんどできない。これは、例えばリンゴなどの産地に行ってみますと農薬でもってリンゴが真っ白くなっているという状態を見ますと、やはり農薬の散布の仕方等も考えなければいかぬのじゃないか。回数も減せるものなら減してもらいたいし、そういう強い品種もつくってもらいたいというようなことで、私は研究所、試験場等で進められているとは思いますけれども、そういう樹種の開発も進めなければならぬし、またそういう農薬の回数等も減してもらえるような研究がどの程度進んでおるのか、希望も含めてお答えをいただきたい。
  91. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 お話しのように、果樹生産におきまして農薬の適正な使用と相まちまして病害虫の的確な防除、こういうことは大変重要だと考えておりまして、このために、まず第一としては、先生お話しのような病害虫に強い抵抗性の品種を育成すること、第二には、天敵等を利用しまして農薬によらない生物的な防除技術を確立していくこと、第三点として、病害虫に対する的確な発生予察、この方法を確立する、こういったことが非常に重要であると考えております。このために、国立の果樹試験場を中心にいたしまして関係各都道府県の試験研究機関の協力を得ながらいろいろな研究開発を行っているところでございます。  具体的に申し上げますと、病害虫に対する抵抗性の品種の育成でございますけれども、まずは各種の病害虫に対する抵抗性の育種素材、遺伝資源、こういったものを諸外国等から収集をいたしておりまして、これを利用しました交配によりましていろいろな抵抗性品種が生まれつつございます。例えばかんきつ類におきましては、潰瘍病の抵抗性品種といたしまして最近非常に評判のよろしい清見、これを昭和五十四年に育成しておりますし、ナシにおきましては、黒斑病の抵抗性品種で、しかも味等についても大変好評な新水あるいは豊水、こういったものを育成しております。さらにまたリンゴにつきましては、斑点落葉病等の病害につきましてその抵抗性品種の育成に現在努力しておるところでございます。  また、天敵あるいは性フェロモン、こういったものを利用いたしまして、いわゆる生物的な防除法でございますけれども、これにつきましても既に、モモシンタイガというリンゴの主要害虫がおりますが、これに対する性フェロモンの成分構成を明らかにいたしましてこれを合成しまして、これを利用した防除の実用化試験が現在進められており、大変好結果を得ておるところでございます。また、天敵の利用でございますけれども、これにつきましては、ミカンの主要害虫でございますヤノネカイガラムシというのがございますが、これに対する天敵のヤノネキイロコバチ、こういったものによってヤノネカイガラムシを防除する研究開発を現在進めておるところでございます。  さらに、一層効果的な防除対策を講ずるために、事前に病害虫の発生消長を的確に予察する技術が進んでおりまして、これにつきましても、リンゴのモニリア病でありますとか、かんきつのミカンハダニというような主要な病害虫に対しまする的確な発生予察法、こういったものが既に確立しておりまして、普及に移されておる次第でございます。  こういったことでございまして、今後ともこうした果樹の病害虫抵抗性の品種の育成、あるいは的確な生物的防除を含めた総合的な防除、こういった防除法の開発に一層力を入れてまいりたいと考えておる次第でございます。
  92. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次は、防疫体制について伺いたいのですが、日本の場合は相当厳しく行われておりまして、貿易では、諸外国から我が国へ入ってくる果実からの病害虫の発生は、その抽出検査の実施で皆無の状態であると言われておりますが、先年、オーストラリアからの旅行者がクイーンズランドミバエの幼虫が入った果実を携帯して、全量検査であるべき我が国に入国の際に大騒ぎになったことがあるわけであります。アメリカではチチュウカイミバエが発生して大防除作戦を展開した例もありますが、これも旅行者が最近急増して持ち込まれるということが多いわけでありまして、こうした病害虫の侵入は、我が国果樹産地に壊滅的な打撃を与えるもので、何としても防がなければならないわけであります。現在、この状態をどのような取り組みで、旅行者の持ち込み品の検査の強化あるいはその対策というものを考えておられるのかどうか、お尋ねいたしたいわけです。
  93. 関谷俊作

    関谷政府委員 外国農産物輸入につきましては、植物防疫法による検査を行っておりまして、これは貨物輸入物のみならず、携帯品も含まれるわけでございます。特に携帯品について、お尋ねもございましたような極めてよろしくない事態が発生をいたしておるわけでございまして、この辺の活動に対しては、私ども十分力を入れる必要があると思っております。  現状では、全国に植物防疫官数四百二十名ございまして、そのうちでこういう携帯品検査関係に従事している防疫官の数が七十三名、こういうことになっておりまして、それなりの体制はあるわけでございますが、大変たくさんの人たちの検査を確実に実施するという面では、これから私ども十分努力すべき面があると思っております。同時に、これは特に国民の協力というか、理解を得る、そういう必要があるわけでございまして、一種の植物検疫のPR用のリーフレットを作成しまして、外務省、都道府県、旅行業者、空港ロビー等に約三十五万枚の配布を行ったりしております。  いずれにしましても、この辺の体制の強化、それから国民の方々の御理解、特に最近、チチュウカイミバエ等のミバエ類については、かなり国民の関心も高まっておりますので、こういう面で国民の理解を得ながら、検査体制の強化、それから適正な検査についてはこれからも一層努力をするべきことであるというふうに存じております。
  94. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、業界から、現行の果実生産出荷安定基金協会及び果実生産出荷安定協議会の機能等を法制化して、単年度需給計画の策定並びに需給上問題のある果実やあるいは果樹について効果的な需給調整の実施をし得るように、その仕組みと制度を整備するという強い要望が出されたわけであります。事業団の設立の強い要望でもあったわけでありますけれども、畜産には畜産振興事業団というのがあります。それが一元輸入を行って、需給調整等行っているわけでありますが、果樹にはそれがないわけでありまして、それが今回強い要望として出されたわけであります。  今回の改正案では、全国に一に限って指定した民法法人にその役割を担わせるというふうになったわけであります。法的位置づけがされたことは評価いたしますが、事業団の設立と比較すると余りにも格差があるわけでありまして、事業団構想の法制化ができなかった理由は何なのか。  また、果樹農家の振興を図っていく上で国の助成措置は必須条件であります。改正案では国の助成措置の法文化がなされなかったのはなぜなのか、今後の助成をどのように進めていかれるか、この点をお尋ねして終わりたいと思います。
  95. 関谷俊作

    関谷政府委員 果樹対策研究会での検討、それから関係の特に生産者団体の方々の御要請の中に、今お尋ねのございましたような事業団の設置、一元輸入等の御要望が大変大事な事項として含まれておったわけでございます。そういう問題につきまして十分検討してまいったわけでございますが、特に事業団設置という問題につきまして申し上げますと、事業団というのはやはり一つの特殊法人でございまして、最近の行政改革の流れの中で、いわゆる特殊法人を新設する、あるいは既存の法人の業務拡大でも同様でありますが、特殊法人という国に準ずる機関がそういう業務を行う、こういうふうな体制については行政改革の方向にまさに逆行するということがございまして、なかなかこれが実現の可能性がなかった、こういうことでございます。  また、特に一元輸入というような問題になりますと、これは一つの事業団の設置を前提にしておると同時に、非常に強力な国境調整措置ということになりまして、これにつきましても、国境調整措置自体として、そこまでのものを今新設することについての、ガット等との関係なりあるいは実際上の輸出国との関係、そういう点で大変問題があったわけでございます。  そういうような理由で指定法人という体制に踏み切ったわけでございますが、これも考えてみますと、確かに指定法人の性格それ自体は、いわゆる民間の民法上の法人を国が指定をするわけでございますが、その指定の性格というものが、こうこうこういう需給調整安定関係の業務が非常に大事であるから指定法人にやらせるというか、非常に通俗的に言いますと、一種の、国の大事だと思う業務を国にかわって代行するような、そういうような色彩もあるわけでございます。そういう意味で、特殊法人の新設なり、それを前提にした一元輸入なりが難しい、そういう前提のもとでは、むしろ現在においてとり得る手段として指定法人という形をとることの方が、実際にすぐ動き始められる、従来からある財団法人中央果実基金というものをそれに移行できも、こういうメリットもあるわけでございますので、こういう対応にならざるを得なかったわけでございます。  それからもう一つ、指定法人に対する国の助成関係につきましては、これは助成のことを直接書くということが最近の立法例ではなかなかございませんで、予算措置による国庫補助を法律に規定をする、こういうことは今の法律立法の中ではなかなかとり得ないわけでございます。しかし、反面、これは民法の公益法人であり、また指定法人であればなおさらでございますが、実際の国の助成の面につきましては、特別基金の造成なりあるいは管理運営費の手当てなり、そういう面も含めまして実際の予算措置の中で十分に、この指定法人の業務の運営に支障のないように対応してまいる考えでございます。
  96. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣に要望だけいたします。  私、きのうも本会議で質問のときに、攻めの農政ということで大臣に申し上げておきましたが、オレンジ等輸入、海外からばかりの輸入国内生産者が悩まされないように、日本の方も諸外国輸出をできるようなそういう積極的な政策もしなければいかぬのじゃないか、こういうように思いますので、ひとつ頑張っていただきたい。ありがとうございました。
  97. 今井勇

    今井委員長 次に、稲富稜人君
  98. 稲富稜人

    ○稲富委員 関連質問として余り時間を五分間ばかりいただきました。実は、私は白内障で目が見えませんので字が読めませんから、非常に質問が乱雑になるかもわかりませんけれども、お許し願いたいと思います。  ただ、一問だけお尋ねいたしたいと思いますことは、果樹生産に対しまして、優良なる果樹生産するのに必要なのは果樹苗木でございます。ところが、果樹苗木で最近非常にウイルス病が発生いたしまして、これがために苗木の生産に困っているという状態でございます。このウイルスの発生の状況等に対しまして、農林省としてどのぐらいの調査ができておるか、まずその点を承りたいと思うのでございます。
  99. 関谷俊作

    関谷政府委員 果樹のウイルスの病気等の調査につきましては、なかなかそのウイルス病の確認というのが難しいこともございまして、ウイルス病ということでの発生状況の調査は、私どもとしては残念ながら状況を把握していないようなことでございます。
  100. 稲富稜人

    ○稲富委員 これのウイルスの困りますのは、苗木のときにウイルスはわからない。これが果樹になりましてウイルス病が発生しておるということになります。それで、このウイルスの病気に対してはやはりもっと積極的に研究をして、いかにしてウイルスを排除するかというようなことが、国としての研究が必要ではないかということが一つ。  さらに、例えばその地方で苗木を生産いたしまして、その苗木が大きくなって実がなって初めてウイルス病の発生だということがわかります。すると、その地方の苗木は全部焼却をしなければいけないということになってくる。その損害が非常に大きいのです。こういうこともあわせまして、農林省としてはどうするかということをやはり今後研究してもらう必要があると思いますが、これに対してはどういうような取り組み方をしようとしていらっしゃるか、この点承りたいと思います。
  101. 関谷俊作

    関谷政府委員 ウイルス病対策、御質問のとおり大変大事でございます。まずお尋ねの試験研究の面につきましては、これは国の果樹試験場等が中心になりまして、ウイルス抵抗性台木の育成、それから無毒化技術を開発する。それから、最近の新しい研究の流れとしまして弱毒ウイルス、ウイルスでも毒の弱いウイルスをいわばまきまして、実際に強い本物のウイルスが来たときには一種の拮抗現象が起きまして強い方のウイルスにかからない、そういう弱毒ウイルス利用技術、こういうようなものの開発研究に取り組んでおります。  具体的な事業の面におきましては、指導の問題としましては、苗木、穂木、こういうものの流通に伴いますウイルス病の蔓延防止対策についての生産技術、流通上そういうような指導も行っておりますが、具体的な事業としましては、昭和五十三年度から果樹品種等更新事業、補助率二分の一の事業を実施しておりまして、この中でウイルス無毒化施設設置事業、これは御承知のような無毒化するための恒温施設、検定施設等を設置する事業であります。それから、ウイルスの汚染防止管理施設設置事業ということで、これは具体的には、ウイルスフリーの母樹園を設置管理をするに必要な設備に対する助成を行っております。いずれにしましても、御指摘のように、特に苗木の段階で非常に大事なことでございますので、こういう研究面、それから事業面、これからも十分私ども努力してまいりたいと思っております。
  102. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは苗木の場合に、母樹はやはりウイルスを発生しないような母樹をひとつつくる必要があるので、こういうことに対しては母樹園その他で——やはりこれはどうも非常に困った病気で、苗木のときわからないから困るんですよ。実がなってから初めてそういうものがわかる、こういうような状態でありますので、よほどこれは研究をしなくてはいけないと思う。それがためにはいい穂木を生産するという、この点をやはり国として積極的に取り組んでいただかなければ、なかなか個人個人でやれない問題だと思いますので、今局長からおっしゃったように、長い間検討はされておるだろうけれども、まだ万全を期しておりません。今後いわゆる母樹園といいますか、その穂木を生産するというものに対しても十分検討してもらう。これが将来優良なる果樹生産に非常に影響することでありますので、今後政府としてのウイルスに対する取り組み方を積極的にやっていただきたいということを、特に私はこの機会に政府に要望いたしたい、こう思ってお尋ねしておるわけでございます。これに対してひとつ大臣からも責任を持って、これは非常に重大な問題でございますので、本当にこれが苗木のときにわかれば非常に簡単でございますけれども、何年かして実がなって初めてわかる。そうすると、その地方からもしも苗木を仕入れた、あすこの地方から買ってきたものの中にウイルス病が発生したというと、その地方の苗木は全部だめだということになる。その苗木は全部焼却しなければいけないという問題が起こって、苗木生産者は非常に被害をこうむる、こういう重大な問題でございますので、特にこの問題は将来考えていただきたい。こういうことを特に私はこの機会に申し上げたいと思いますが、これに対する政府の取り組み方、これに対して特にひとつお考えをいただきたい、こういうことをお願い申し上げたいと思いますが、大臣から承りたいと思います。
  103. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えします。  今局長答弁したとおりでございますが、やはり聞きますと、苗木のときにわかれば一番いいわけで、私も実は技術的によくわかりません。けれども、農林水産省では優秀な試験場がたくさんあるわけで、そんなこともございまして、あるいは民間とも協力して、苗木のときにわかる何か方法があるかないかということを含めて、前向きに最大限努力したい、こう思っております。
  104. 稲富稜人

    ○稲富委員 ウイルスの方はそのくらいにして、いま一点だけ。  これはこの間私、局長にもお願いしたのでございますが、実は果樹園等から運びます道路が非常に悪くなりますと、果実が傷つくという問題があります。これは今から十数年前、果樹園への道路の悪いところを舗装いたしまして、最初は試験的にやりましたが、非常に成果をおさめた。道路が悪いと、果実を運びますときに果実が傷つきます。市場価値がなくなってくる。こういう問題がありますので、果樹園の道路の問題といたしましても、これに対して舗装するとかそういう対策をやってもらいたい。これはこの間私は局長にも話したのでございますが、この際、優秀な果実を市場で価値あるものにするためにも一つの方法だと思いますので、この取り組み方に対しましても、特にこの機会に意を注いでいただきたいということを希望申し上げたいと思いますが、これに対する政府考え方を承りたいと思います。
  105. 関谷俊作

    関谷政府委員 樹園地の農道の舗装の問題でございまして、御指摘のように品質保持なり、これはもちろん労力節減、両面から大変大事でございますので、従来、私の局では生産総合対策事業の産地対策の中の一環として舗装の問題も対象にしておりますが、また、もう少し大きなものになりますと、いわゆる農道事業の一環にもなりますので、大変仕事が大事でございますので、これら事業の中で積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  106. 稲富稜人

    ○稲富委員 今の二点について特にお願いしまして、私の質問を終わります。
  107. 今井勇

    今井委員長 次に、神田厚君。
  108. 神田厚

    ○神田委員 果樹農業振興特別措置法の質問をいたします。  最初に大臣にお伺いをいたします。各党から同じような質問があったかと思うのでありますが、果樹農業の農政上の位置づけに対する大臣の御見解をひとつ御答弁いただきたいと思います。
  109. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えいたします。  果樹農業は、先生御存じのことなんですが、農業生産額の面においてもあるいは土地利用面においても我が国農業の重要な地位を占めており、地域農業振興の上からも大きな役割を果たしております。また、国民の豊かな食生活を保障する上でその安定的供給は非常に大切であると考えております。  そんなことでございますが、最近における果樹をめぐる情勢は非常に厳しいものがございまして、今後の果樹農業の健全な発展を図るために大切なことは、まず第一番に、量面において需要動向に即応した生産を図ること、そして効率の高い農業経営の育成と足腰の強い果樹産地の育成を図ることが大切であると考えております。今後の果樹農業の振興に当たっては、このような基本的考え方に立ちまして、果振法の適切な運用を図るとともに、各種の補助、融資制度を活用し、健全な果樹農業の振興を図ってまいりたいと考えております。
  110. 神田厚

    ○神田委員 新基本方針と長期見通し関係でありますが、ことしからということになりますと、七十年あたりを目標とする長期見通しになをわけでありますが、どのように整合性をとるのか。
  111. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回の改正後の法律を前提としまして果樹農業振興基本方針の策定、いわゆる見直し改定に取り組むわけでございます。これと農産物の長期見通しとの改定の関係で考えますと、基本方針の策定の方を先に行いませんと新法の施行のいわばかなめになるものが決まらない、こういう状況になりますので、我々としましては、十年先の見通し昭和七十年見通しをつくるということに基本方針の中でなるわけでございます。したがいまして、農産物の長期見通しの方は、作業が進められるといたしますと結果的にはそちらの方が後になるわけでございまして、この目標年次等についてはまだ決まっておらないわけでございますが、基本方針を先に決めまして、それの内容と整合性を保ちながら長期見通しの方を決めていく、こういうようなことにしたらいかがかと考えております。
  112. 神田厚

    ○神田委員 基本方針の作成に当たりまして、輸入見通し等の問題を含めてどのように考えておりますか。
  113. 関谷俊作

    関谷政府委員 輸入見通しは、基本方針の中では生産目標を決めるわけでございますが、その前提として、需要がどうであるか、その一部として輸入がどのくらい見込まれるかというふうな輸入見通しが前提になるわけでございます。その場合の考え方につきましては、輸入が自由化されておりますバナナなどにつきましては従来の輸入動向を見ていくということで見込むわけでございまして、例えばバナナを例にとりますと、最近七十万トン程度でございますが、もう少し減少するのではないかというふうに見込まれます。その他パイナップル、レモンいろいろあるわけでございますが、それぞれのものに即しまして全体の輸入動向を今後どういうふうに見るかということで見通しをしてまいりたいと考えております。  大変難しいのはオレンジなどのいわゆるIQ品目でございますが、これは相手国との交渉関係等を考慮しますと、現在決まっております最終年度の六十二年度の規模横ばいという仮置きをする、これは増加するという見込みにしましても減らすという見込みにしましても、いずれも難しいわけでございますので、そういう見込み方をするということで対応してまいりたいと考えております。
  114. 神田厚

    ○神田委員 果樹園経営計画対象者の範囲はどのように考えているのか。零細農家の切り捨てということになっては非常に困ると思うのでありますが、その点も含めましてどういうふうになさいますか。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
  115. 関谷俊作

    関谷政府委員 果樹園経営計画対象者につきましては、今回、農林漁業金融公庫の総合施設資金との関係で、その融資対象者の範囲が広がるという改正案を今御審議いただいておるわけでございます。そこで、目標とする経営が従来は自立経営でございましたが、今度は育成して自立経営になる程度というのが目標ということで、所得なり規模自立経営目標の大体七割程度目標を達成する、こういうふうなことで計画を立てていただくことにするわけでございますが、一方、この対象になるスタート台の方から申しますと、現状規模とかそういうもので画一的に一定規模に達していないとこの対象にしない、こういう考え方をとることは考えておりません。むしろ、果樹経営の担い手としてそういう目標に達するような経営改善をする意欲、能力があるかどうか、そういう状況を見て判断をすべきものと考えておりまして、いわゆる零細農家を頭から対象外にするというよりは、むしろこの資金趣旨に沿った経営改善の意欲、能力があるかどうか、この点の判断に重点を置きたいと考えております。
  116. 神田厚

    ○神田委員 次に、大臣が定めます生産出荷安定指針の具体的な内容と、これが需給調整に果たす効果についてどういうふうに考えておられますか。果樹農家経営安定という問題でもございまして、その辺のところの御見解をお示しいただきたいと思います。
  117. 関谷俊作

    関谷政府委員 生産出荷安定指針におきましては、この需給安定を図ることが大変難しい特定果実の比較的短期的な生産出荷の目標誘導方向を決めるわけでございますので、やはり全国的に見た生産予定数量、出荷予定数量、こういうものを決めて目標として示すということが重点になろうかと思います。  ただ、この効果につきましては、生産出荷安定指針の意味が、こういう需給の均衡を特に図る必要がある特定果実について、いわば生産出荷の誘導方向を示すということでございますので、直接これによって何かの規制をするわけではございませんけれども、実際の効果としては指定法人の各種の事業による対応、それから、どうしてもそのことがうまくいかない場合には農林大臣または知事からの勧告、こういうことも含められているわけでございまして、こういう一種の誘導措置あるいは事業、こういう面を通じましてこの特定果実生産農家経営安定に寄与する方向で運用してまいりたいと考えております。
  118. 神田厚

    ○神田委員 需給調整のために行う指定法人の具体的な業務内容、これに必要な国の助成はどのように手当てをされるのか。現在法律上の助成はないわけでありますが、毎年度予算措置として、六十年度三十億円ついておりますけれども、この点についてどういうふうにお考えでありますか。
  119. 関谷俊作

    関谷政府委員 指定法人の行う需給調整措置でございますが、これは幾つかのタイプが考えられるわけであります。具体的には、安定的な計画生産出荷の促進の面では、需要を大幅に上回る生産が見込まれる場合には、従来もやっておりました摘果に対する指導あるいは摘果に必要な経費等に対する助成等によりまして安定的な生産を促進する、こういうようなこと、それからかなり生産が過剰に行われました場合には、その出荷時期の調整等のために行う一時的な貯蔵でありますとか、大消費地への出荷促進とか出荷先の分担、それから原料果実の運搬費の助成、こういうようなことを通じまして安定的な計画生産出荷を促進する業務、こういうようなことがございます。それから果実製品の保管という面では、いわゆる生果の低落の場合には調整保管を行います経費の助成、さらに今後の問題としまして、指定法人自身が場合によりましては果実製品を買い入れる、一定期間保管する、こういうような業務、これらのことを通じまして、計画生産出荷に寄与する各種の事業を行うわけでございます。  その助成措置につきましては、最近の立法例としまして法律にこうこうこういうものに補助するという補助規定を直接規定するという例がございませんで、そういうことからしますと、法律上に補助を規定することはできなかったわけでございますが、基金の造成なり管理運営費面も含めまして、指定法人の今申し上げましたような業務が円滑に行われますよう、またこの制度の目的を達しますよう、国の助成の面では十分なことが行われますように努力してまいりたいと考えております。
  120. 神田厚

    ○神田委員 次に、生産者団体の行う需給調整のための計画生産目標や摘果目標等があるわけでありますが、これはどこが定める形になるのか。国の方の関与のあり方の問題でありますが、国の方も責任を持ってそれに関与し、助成を強化すべきであると考えておりますが、その点はいかがでありますか。
  121. 関谷俊作

    関谷政府委員 生産出荷団体の行う需給調整につきましては、従来からございます生産出荷協議会の場を活用して、その場でもって、生産者団体、さらに将来商系の出荷業者等も参加を求める必要があると考えておりますが、この協議会の場でもって生産出荷安定を図っていただく。我々としましては、その協議会について、国が生産出荷安定指針を決めておりますので、これに即しまして積極的に指導をし、両方一致協力をして生産出荷の安定を図ってまいりたいと考えております。なお、これに伴います、計画生産出荷に行います必要な関係の援助の業務については、先ほども申し上げましたように指定法人が行うわけでございまして、関係の必要な事業に対する経費についての助成は指定法人から行う、こういうことを考えております。
  122. 神田厚

    ○神田委員 指定法人の問題でありますが、指定法人が行う需給調整業務の円滑化を図るために勧告制度が導入をされて、法制化されているわけであります。勧告制度の具体的な運用はどのように考えているのか。特にアウトサイダーの規制等の問題について、これをどういうふうに取り扱うのか。
  123. 関谷俊作

    関谷政府委員 勧告制度趣旨でございますが、いわゆるアウトサイダーという方たちだけではなくて、生産出荷団体あるいは生産出荷者の業務そのものに対する勧告がございまして、そういう意味ではインサイダー、アウトサイダーにかかわらず、こういう勧告になるわけでございます。具体的な発動ということになりますと、やはり指定法人の業務として先ほど申し上げましたような事業が行われているわけでございます。摘果にいたしましても、あるいは一時的な出荷調整のための貯蔵とか、そういう各種の事業がございまして、その事業が生産者、出荷者あるいは生産出荷団体の仕事として適正に行われない場合、あるいはその生産出荷団体に入っておられない方がそういう事業をむしろ撹乱するというか、協力しないで、そのために全体の事業がうまく行かない、こういうような場合に、そういう行為をしておられる方たちに対して、指定法人の業務に協力するように、こういうようなことを勧告する、そういう趣旨で運用してまいりたいと考えております。勧告の主体としては農林水産大臣だけではなくて知事も勧告を行い得ることになっておりますので、これは全国的な問題、それから各県内部の問題、これは大臣、知事両方が十分調整、協力をいたしまして、現地に即した勧告については知事にやっていただく、こういうようなことでこの制度が目的を達しますよう運用してまいりたいと思っております。
  124. 神田厚

    ○神田委員 次に、温州ミカンの問題でありますが、現在生産調整が実施されているわけであります。この国内消費拡大の対策輸出の振興を同時に図るべきであると考えておりますが、これらについてはどういうふうに考えておられますか。輸出等の問題につきましては窓口の一本化等の問題もあると思うのでありますが、その点の御見解をお示しいただきたいと思います。
  125. 関谷俊作

    関谷政府委員 果実消費拡大あるいは輸出振興の問題についてのお尋ねでございます。  これらの仕事については、今回指定法人となります財団法人中央果実生産出荷安定基金協会の仕事として位置づけておるわけでございまして、五十九年度に三十五億円、それから六十年度予算で十億円、合わせまして四十五億円の果樹緊急特別対策基金を設けておりますが、その中で消費拡大、輸出振興両面の対策を積極的に推進したいと考えております。  消費拡大という面では、消費者を対象にした啓発活動とか、それから品種更新、これはいわゆる少量多種、そういう傾向対応しました優良品種への更新、それから品質を高めるためのハウス導入への利子補給あるいは果汁製品品質向上施設の導入、新製品の開発への助成、これらの仕事を実施するということで基金を活用してまいりたいと考えております。  輸出につきましては、いわゆる輸出窓口の一元化ということはなかなか法律的な制約がございまして、現在カナダ向けの生ミカンのいわゆる輸出組合による活動による調整、それから輸出ミカン缶詰についてはいわゆる工業組合の共同販売活動としての会社による一元輸出が行われておりますが、そういうような範囲のことで、法律的な制度として仕組める場合には、運用できる場合にはそういうことでやってまいるわけでございますが、一般的に輸出振興としては、指定法人の仕事としてはいわゆるPR活動ということで、例えば五十九年度にはカナダ東都市場向けのミカンのPR活動をやっております。その他北欧市場向けミカンのスエズ運河経由の輸送試験、いわゆる実験輸送的な面も含めまして、市場開拓には取り組んでまいりたいと考えております。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 神田厚

    ○神田委員 最後に、国境措置の問題でありますが、生産者団体から要望が強くありました国境措置問題につきまして改正案ではどのような形で盛り込まれておるのか、またその運用はどういうふうにするつもりか。この問題については参議院での修正の過程での議論があったわけでありますが、この点について御見解をお示しいただきたいと思います。
  127. 関谷俊作

    関谷政府委員 国境調整措置の問題については、立案までの過程で研究会の場でも随分議論されたわけでございますが、結論的には、現在の国際的な体制、関係の中で、あるいはガット等との関係で、新しい輸入制限措置を新設する、そういうことはなかなかできない、またいろいろ相手国との関係等もございまして、政府の案としましてこれを盛り込むことができないという結論に達したわけでございます。  一方、参議院での修正につきましては、私ども、この修正の条文に則しますと、やはり一定の大変な事態が生じた場合には、これを克服するための措置を講ずべきという政府への義務づけという形をとっておりますので、こういう要件に則しまして、そもそもこういうことが必要にならない事態、必要にならないような努力をすべきことが第一でございますけれども、その趣旨に則しまして、その規定の適正な運用に努めてまいりたいと考えております。
  128. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  129. 今井勇

    今井委員長 次に、津川武一君。
  130. 津川武一

    ○津川委員 今度参議院で、外国産の果実または果実製品輸入によって政府の行う措置が効果を発揮することができない事態も予想されますという意味趣旨で修正案を出しましたけれども、国境措置がとれなかったことは、今局長の神田さんに対する答弁でよくわかりましたが、しかし、状況はその後がなり険しくなっている。  参議院でこの修正が終わって、木材の、合板の関税率の引き下げが強要されてきておる。それから今度は穀物の一千万トン購入、ここまで圧力が加わってきておりますので、今まで法律としてためらった、まあそれはいいとして、今後一層この国境措置に対しては気をつけていただく、その気持ち、決意をまず聞かしていただきます。
  131. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回の改正に至ります経過、政府案として国境調整措置が盛り込み得なかった事情は先ほど申し上げたわけでございますが、これに伴いまして、参議院修正により今御審議いただいておりますこの第五条の問題につきましては、基本的にはこういうことが必要になるような事態を回避するということがまず第一で、そのための生産出荷面での安定を図ってまいることでございまして、こういう事態が生じた場合には、この規定の趣旨に従いまして、この規定の期待しているような、事態を克服するために必要な措置ということで、相当と認められる適正な措置を講ずるよう私ともその運用に努めてまいりたいと思っております。
  132. 津川武一

    ○津川委員 この点、一層気をつけるように要求して、次に進めていきます。  今度の法改正で「現行の生産の拡大に着目した植栽の目標にかえて、栽培面積目標を定めることとし、果実生産総量を適切に誘導していくこととしております。」こういう説明を聞いたわけでございますが、今の状況で、消費が思うようにいかないときにこういう生産制限といいますか、時によると生産縮小にもつながりかねない。こういうことも必要であると思います、そういう意味もありますが、これでは余りに消極的でないかと思うわけです。やはりもっと積極的に果樹生産を拡大していく、このためには国民の消費をふやしていくということがぜひ必要になってまいりました。  この間オーストラリアの大使館に電話したら、オーストラリアでは一人平均、一年三十三キロから食べておる。これはリンゴです。日本は八キロぐらいしが食べていない。そこで、外国はどのくらい食べているのか、少し外国状況をお知らせしていただいてから、質問をまた続けていきます。
  133. 関谷俊作

    関谷政府委員 外国果実消費量、特にリンゴ消費量でございます。  果実全体では日本が一九七五年から一九七七年平均で約七十キロでございまして、一番多いところも、今お挙げになりましたオーストラリアも百キロ程度で、ちょっとランクが落ちておりますが、そう少ないということではございません。  ただ、リンゴということになりますと、オーストラリアがお尋ねございました三十三キロでございますが、そのほかの多いところから申し上げますと、西ドイツが三十キロ、スイスが二十一・六キロ、それからフランスとアメリカがそれに次ぎまして大体十四キロ前後、イギリスが十キロ、こういうような数字を私ども把握しております。
  134. 津川武一

    ○津川委員 日本は七、八キロ、オーストラリアが三十三キロ、そして西ドイツが三十キロ。発達した資本主義国として日本の私たちと同じような生活をしていると思われる西ドイツが三十キロで、日本が七、八キロ、ここに私は、我々のやり方を考えてみる必要があると思うのです。  そこで、オーストラリアの大使館に聞いてみました。そうしたら、こう言うんです。よくリンゴを食べる人は、小学校の子供なんか昼飯を持っていかないで、リンゴを二つぐらい食べる。だから多くなっているのだ。主食になっているのだ。もう一つには、料理にうんと使う。ジュースに使う。こういうのがオーストラリアでございました。ニュージーランドでは、アップルパイなど料理に広く使われている。「広く」という言葉、広く使われているという。フランスでは三百万トンあるリンゴ生産量の中の百万トンが加工に、ジュースに、しかも百万トン、サイダーというのでびっくりしているわけであります。ドイツの大使館に電話を入れてみました。そうしたら、よくわからない、ドイツの農協の東京出張所みたいなものがあるから、そこへ行って聞いてみてくれと言う。行ってみました。やっぱり料理です。  先ほど局長は、日本型の食生活を進める、導入すると言っておりますが、そこで日本果物が主食にならないのか。何かおやつみたいになっていやしないか、そこのところが非常に心配なわけでありまして、これを思い切って主食並みにやっていくならば、消費は三倍も四倍もふえる。こんなふうな消極的な法律案を出さなくても事が済む。  そこで私、東京の本屋をあさってみましたが、かなりいい婦人の本が出ている、雑誌が出ているが、リンゴの料理がほとんど入ってない。たまに入っているとアップルパイ一つなんです。NHKがこんなのを出している。「きょうの料理」四月号。毎月出しています。これも見てみました。公的機関です、NHKは。ここに果物の料理がないんです。リンゴの料理がないんです。  日本テレビが四、五月分の放送分として「三分クッキング」というのを出している。いい本です。きれいな本です。これを見ると私は、ごちそうを食べたくなる。だが、ここにも果物の料理がない。リンゴがない。  農水省に一生懸命頼んで探してもらった、リンゴのものはないかと思って。そうしたら、ありました。これが中央果実基金が出した「ジャッフル」というやつです。ここでかなり出しております。もう一つ、さすがは長野県、信州リンゴ「メルシークックブック」、ここにもこんなパンフが出ております。青森県のりんご協会も負けないで出しておりますが、ちっぽけなんですね。少ないんですね。長野県のは一料理学校の校長先生が出している。来るお弟子さんたちにそれを見せているという程度なんです。  そこで私は、どうしても果物消費を拡大する、今国政で考えなければならない問題は料理に取り入れるということ。私も医者でありますので栄養分を分析してみました。果物と野菜では何の変わりもありません、繊維もミネラルもカルシウムもナトリウムも。ただ、ミカンにはうんとCがありますが、リンゴにはビタミンCがない、そのくらい。リンゴのもう一つの特徴は、野菜に見られないエネルギーが三倍も四倍も多いということで、したがって、日本人の主食の中に果物を取り入れるということは可能だと思うのです。  そこで、端的に政府に伺いますが、まず、こういう料理学校に果物の料理を講習するように、NHKなんという公的機関でもう少しやるように、もっと言うならば行政が中心になってこれに負けないようなものをつくって国民の中に置くならば、消費がふえて、このような消極的な法改正にならないで済んだのじゃないかと思うわけであります。この点、政府の見解を聞かしていただきます。
  135. 関谷俊作

    関谷政府委員 リンゴ消費水準につきましては、先ほどヨーロッパの例を少し申し上げたわけでございますが、これはいわゆる加工向けもかなり多いようでございます。しかし、いわゆる家庭で買いまして料理に使う、こういう面について御指摘のようにもっと力を入れるべきではないかという点については私どもも全く同感でございまして、この辺の取り組み方については、実際問題なかなか難しいわけでございますが、今御引用になりました中央果実基金の「ジャッフル」、これは新しい品種とか果実を使った料理の紹介等を中心にしまして十三万部づくりまして、女子大学とか家庭科を設置しておる高校、こういうところに配布したような次第でございます。この辺の努力、さらに特に料理面に重点を置いてやるべきことだというふうに考えておりまして、確かに私どもの家庭の中で、リンゴが料理に多少使われていると何か生野菜サラダに少しまぜるくらいがせいぜいでございますので、もう少し、これはややお菓子的な面も含めましてもっともっとリンゴの使い方については努力すべきだと思っております。  私ども、具体的には今度指定法人になります中央果実基金協会の仕事が需要の増進ということを特に大事な仕事としてうたっておりますので、その一環としましてこういう問題についても積極的に取り組むように指導してまいりたいと思っております。
  136. 津川武一

    ○津川委員 そこでぜひ進めてほしい、約束していただきたいと思うこと、要求なんですが、消費拡大の点で、百一国会で私はここである中央紙の新聞の全ページを繰り広げて、どんな他の商品が宣伝をされているか、PRされているか、その中で果物一つもないということを指摘して、果物の宣伝をやれということを言ったら、政府は予算措置もしてくれたようでございます。よかったと思っております。お願いするものだと痛切に思っているわけです。  そこでNHKです。公的機関で、これは政府から頼んでいいと思うのです。一つの計画をつくって、放送の中で、こんな本の中で、こういう点でのあれもう一つは、この十何万部ある「ジャッフル」もいいですが、行政が、政府が、この際なので、こんな法律まで出す政府なので、典型的な料理の解説から料理の仕方というものを出していただければありがたいと思うわけであります。大臣に質問するつもりじゃなかったのですが、大臣にも所見があったらお答え願います。
  137. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 津川先生お答えします。  消費拡大は私も大賛成で、NHKなどもぜひお願いしてみたいと思います。と申しますのは、実は骨なし鶏肉で、NHKに骨なし鶏肉の料理が出ますと売れ行きがいいのだそうです。そんなこともございまして、今おっしゃった点を加味しましてよく考えて消費拡大に努力したい、こう思っております。
  138. 津川武一

    ○津川委員 果実生産農家と一緒に期待を持って待っております。ひとつよろしくお願いいたします。  次に、今度の法律で特定果実として指定するもの、特に何を考えておりますか。
  139. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは法律にもございますような、需給が均衡を失っていて、それに対する対策が相当期間を要するというような基準で政令で定めるわけでございまして、当面は温州ミカンの指定を考えております。もちろん法律上の道として、これ以外の果実についても指定の要件が整えば、それに該当する事態になりますれば指定をするわけでございまして、当面のところは、こういう状況から見ますと温州ミカンということで早急に指定をすることが必要と考えております。
  140. 津川武一

    ○津川委員 私たち第二の指定を受ける特定果物がないように全国の果物生産農家とともに頑張りますが、五十八年のリンゴ、あれは最後になりましたが、なかなか売れない。スターキングが売れない。アンコが出て捨てなければならなくなる状態、売れても対生産費がとれない、農家がスターキングをやめる、こんな状態が出ました。そのときに私も政府におねだりしたりお願いして二万トン、加工、ジュースに回した。そのことによって十五年前みたいに山や川に捨てないで済んだこと、私、非常によかったと思っております。五十八年産のリンゴみたいだったらリンゴも指定しなければなりませんか。
  141. 関谷俊作

    関谷政府委員 リンゴ状況を見ますと、ここのところ割合新植面積は少なくなってきたわけでございますが、今お挙げになりました五十八年というのは百万トン台に達し、かつ栽培面積五万三千ヘクタールでございまして、御承知のように六十五年の見通しも大体そこにほぼ近づくような水準になっております。そういうことから見ますと、総体としてはかなり我々としては注意をすべき段階に来ているということは全く先生と同じ認識を持っております。ただ、積極的に減らすというようなことよりは、むしろ当面講ずべきことは新植を注意して余り多くならないようにするということと、それから内容構成について、これからの需要動向も見ながら品種の更新とかそういう面について努力をすべき段階、ただ、リンゴが非常に注意をすべき段階に来ているということは私ども十分考えております。
  142. 津川武一

    ○津川委員 私たちリンゴを第二の特定果物に指定させないで頑張りますけれどもリンゴがその点では皆さんの法律に沿うような方向に進んでいるのは、生産が思うように上がらない。今生産を一番阻害しているのは腐乱病、こんな大きな胴木が倒れてしまう。木がすっかり荒れてしまう。そして果樹園では窓ができている。窓というのは、果樹がのっそり繁茂していると太陽の光が地上に当たらない。そうでなければリンゴはいい生産じゃない。ところが、腐乱病でみんなやられてしまうものだから、そこの分だけが半分枝がなかったり三分の二枝がなかったり欠本になって太陽が当たっている、窓、これが青森県のリンゴ生産を、そして単収を、生産性を落としている主なる原因なんです。長野や岩手のリンゴに比べて日本一のしにせであった青森県のリンゴの単収がかなり落ちるのは腐乱病なんです。腐乱病がたくさん出てリンゴがふえなければ法律上はやりやすいだろうけれども、そんなことではなくて、やはり安くリンゴ消費者に届けようとすれば腐乱病対策が当面がなり必要になっております。  かつて九十二、三回国会でしたか、この場で頼んだら政府が腐乱病対策に、研究に一億円の予算を出してくれた。しかし、この研究は成功しなかった。しかし、これに懲りないで腐乱病対策のために国の試験場や各県の果樹試験場に腐乱病対策の措置を一緒にやる必要があると思うのですが、腐乱病対策に対してお答えをいただきます。
  143. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 リンゴの腐乱病につきましては、寒冷地で特に重要な病害である、そういうふうに考えておりまして、特にリンゴの安定生産という観点から、この腐乱病の効果的な防除法を何とか開発しようということで、国の果樹試験場の盛岡支場を中心にしまして、青森県のりんご試験場を初め、関係の県の果樹試験場と協力しながらいろいろと研究開発を進めているわけでございます。  これまでの研究を通じまして、この腐乱病の発生が糸状菌によって起こるというようなこととか、あるいはこの腐乱病に対して防除する効果のある薬剤、またその薬剤を使った効果的な防除法、こういったものにつきましてはいろいろと開発をしてまいったわけですけれども、やはり問題といたしまして、防除適期が、萌芽期までに薬剤の散布をするというような時期の制約があります。雪解けが遅いような年にはどうしてもその防除期になかなか樹園に入りにくいようなことで、そういう作業上の問題等から防除しにくい、ここをどうしたらいいかという問題がございますし、また病斑部分を削り取るような胴腐乱の対策につきましては作業労働が大変だということで、やはり基本的には、非常に省力的であって、さらに効果的な防除技術というものを開発しなければならない、そういうふうに考えていろいろと最近の研究を進めておるわけです。  昭和五十五年から、プロジェクト研究といたしまして、薬剤に依存しない生物学的な防除法ということで、新しい腐乱病防除対策、これはそれ以外の病害に関しても一連のこういった生物的な防除技術の開発というプロジェクト研究を進めておるのですけれども、特にリンゴの腐乱病の関係でございますと、やはり果樹試験場を中心にやっておるわけですが、その中で、最近の成果といたしまして、トリコゲルマというある種の微生物、こういったものが腐乱病の菌と拮抗的な作用がございまして、そういうことが発見されまして、そういった微生物をリンゴの樹体に剪定の後接種あるいは散布いたしますと、その後に腐乱病の感染あるいは発病が抑えられる、そういう効果がはっきりつかまえられたものですから、今後微生物の方のより力の強いものもさらに探索すると同時に、こういった拮抗微生物による腐乱病防除対策技術というものを実用化する方向で現在鋭意努力を続けておるところでございます。そういうことで、今後とも国の研究機関と県の研究機関が力を合わせて研究を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  144. 津川武一

    ○津川委員 五十五年のあの寒いときに、あの後、寒さのために腐乱病がふえていったんです。ことしの寒冷期、これからまたふえる。あの五十五年以来少しずつ落ちついた。それは皆さんが、削った、泥巻きをやった、トップジンをかけた、それから枝腐乱に薬をかけた、休眠期防除をやった。懸命な努力。それがことしの寒さだからまた出てくる、このことが心配だから私は繰り返し言っているわけなんですが、皆さんが予算措置した休眠期薬剤散布、あれで枝腐乱がなくなったんです。やればできるんです。  そこで、リンゴづくり農家の皆さんは懸命に頑張りますが、トリコゲルマが腐乱病と拮抗するからそれて抑えられる。しかしこれは拮抗で抑えるわけで、根本的な撲滅にならない。今農民が求めているのは根本的な撲滅薬なんだ。結核はストレプトマイシンでなくなっているし、いろんなことがあるんですから、そういう選択的を特効的な薬剤の開発が最終的には忘れてはならない目標なんだ。ここのところを今皆さんが考えているかどうかを伺わしていただきます。
  145. 関谷俊作

    関谷政府委員 御指摘のように、五十九年度、全国で一万ヘクタール、青森で五千ヘクタール、大変発生を見ました。御指摘のような新しい農薬については、かつて五十八年までに新しいグアザチンというものも開発したわけでございますが、これからもそういう新農薬開発という面については、私ども植物防疫の観点から特にこの病気については対応してまいりたいと思いますが、こういう面は業界の努力にもまつべき点もございますので、試験研究機関とも連絡をとりながら、これからも努力をしてまいりたいと思います。
  146. 津川武一

    ○津川委員 最後に今度の法律についてですが、共同して果樹の栽培を行おうとする農業者集団をつくること、これに助成することは今まで皆さんやってきた。去年スターキングが思うようにいかないで、品種更新ですが、何とかこれを救済する道がないかと果樹課長におねだりした。そうしたら農水省は、共同で皆さんがやる、三ないし四ヘクタールやるならば国が援助の道があるという返事でした。農家は喜んで帰っていった。さて、共同で三、四ヘクタールやるといったらとてもできる相談ではない。今度この共同を廃止して、個別農家がやれるようになったことは非常によかった、前進だと思うわけであります。  そこで、スターキングからの品種更新が始まっておりますが、スターキングからの品種更新をやる農家も今度の法の対象になるのかどうか、これをひとつ答えていただきたい。その際、品種更新する耕作面積に一定の制限があるのか、制限がなくてやる気になったら何ぼでも出してやるべきだと思うのですが、この二点を答えていただきます。
  147. 関谷俊作

    関谷政府委員 第一の点の、スターキングからの品種転換につきましては、今回の果樹園経営計画よりも、よりこれに適しますのは、農業改良資金果樹栽培合理化資金の中に品種転換の資金がございまして、これは知事の方が、スターキングの転換が必要である、こういうふうに指定をいたしますれば対象になるということでございます。  それから第二の、果樹園経営計画の方につきましては、目標経営規模を想定いたしますけれども、これは自立経営目標規模や所得の大体七割程度、これに達するものを今回対象とするということに公庫法改正もされましたので、現状のスタート台において小さい規模の方を機械的に排除するということではなくて、そういう目標を達成するための経営計画をつくって、それでやっていける、こういう方は融資の対象にしていく、こういう考え方をとってまいります。
  148. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  149. 今井勇

    今井委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  150. 今井勇

    今井委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  151. 今井勇

    今井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  152. 今井勇

    今井委員長 この際、本案に対し、玉沢徳一郎君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。玉沢徳一郎君。
  153. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同を代表して、果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   わが国の果樹農業をめぐる最近の情勢は、需要の停滞に伴う生産過剰傾向や諸外国からの果実及び果実加工品の輸入増大等の厳しい事態に直面している。   よって政府は、本法の施行に当たり左記事項の実現に努め、わが国果樹農業の健全な発展に万全を期すべきである。      記  一 果樹農業施策の基本である果樹農業振興基本方針の策定に当たっては、国内果実及び果実加工品の需要増進を考慮しつつ需要動向を適正に反映させ、果樹農家経営安定をはかること。  二 果樹農業振興基本方針を実効あるものとするため、果樹農業振興計画については、基本方針との整合性が確保されるよう都道府県を指導すること。    なお、第二条第二項の政令で定める果樹については、その需要動向に即して逐次その種類の拡大をはかること。  三 果樹園経営計画の認定基準については、経営改善に意欲的に取り組もうとする果樹農家が幅広く活用できるものとなるように定めること。  四 指定法人が行う果汁の保管等果実生産、出荷の安定に関する業務が円滑に実施できるよう必要な予算の確保及び業務体制の整備に努めること。  五 特定果実生産及び出荷の安定をはかるため、実効ある生産出荷安定指針の作成を行い、その実行に当たっては、勧告制度を活用する等生産者、出荷者等に対する指導に遺憾なきを期すること。  六 第五条の規定の運用に関し、特定果実生産、出荷に重大な支障を生ずる事態を防止するよう努力するとともにガット等の国際協約との調和の確保をはかること。  七 国内果実生産過剰基調に対処し、果実及び果実加工品の消費拡大、秩序ある輸出の振興対策を一層強化すること。   右決議する。 以上でありますが、決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  154. 今井勇

    今井委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  玉沢徳一郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  155. 今井勇

    今井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤農林水産大臣
  156. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     —————————————
  157. 今井勇

    今井委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 今井勇

    今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  159. 今井勇

    今井委員長 次に、内閣提出農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  160. 島田琢郎

    ○島田委員 農災法の審議に先立ちまして、先ほど果樹振興法が成立をいたしました。御同慶でありますが、ただ一つ大臣、この際私、念を押しておきたい。  さっき御決意が述べられましたが、附帯決議中、私が最も懸念をしております条項が一項加わってまいりました。これは、ガット問題は、国際協約上一つの大変重みを持っておるわけでありましょうが、果樹振興に当たって、大臣がこの国内振興について一生懸命おやりになろうとする姿勢があっても、なかなか、今日的な状況の中では、外圧が加わってまいり、内圧が加わってくる等のいろいろの問題がございます。この法案に我が党も賛成をいたしましたのは、今日置かれている果樹農家実態を憂慮せざるを得ない状況にあることを十分認識しての上のことでございました。したがって、重ねてひとつ、この運用に当たりましては大臣の強い決意で臨んでいただきますよう、国内果樹農家を守るという、そういう一言を重ねて私は伺って、それから農災法の質問に入ってまいりたい、こう思います。     〔委員長退席、衛藤委員長代理着席〕
  161. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 島田先生お答えします。  先ほどの附帯決議の第七項についてだと思いますが、いつも言っておりますことは、私はやはり我が国の置かれている立場を認識し、そして友好国との関係に配慮しつつ、我が国農林水産業を生かし、その健全な発展を図るという、この調和をどうとるかということで、基本的な日本農業を守るという立場で慎重に対処したい、こう考えております。
  162. 島田琢郎

    ○島田委員 さて、農業災害補償法改正は、先ほど成立をいたしました金融三法とのかかわりから言いましても、我が国農政の大変重要な一つの柱を担っている制度でございます。今さら言うまでもありません。そこで、この制度の充実強化は大変重要な政策課題の一つであるということの認識は私も持っております。しかし、今度の改正案の中身を精細に分析してみますと、必ずしもこの制度の強化充実というふうに評価できるかどうかに大変疑問を持たざるを得ないものが中身にございます。  そこで、制度的に、農業災害補償制度そのものの本旨、その目的とするもの、政府はこれをどのように位置づけて今度の改正にお臨みになったのか、そこをお聞きしたいと思います。
  163. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  農業災害補償制度というのは農業経営の安定に不可欠のものだと思っております。我が国は、特に農業というのは地理的条件や気象条件から自然災害の発生が多いというのが特徴でございます。そんなことの中に、特に近年冷害等の異常災害が多発する中で、本当に本制度農業経営の安定に重要な役割を果たしておる、このように考えております。そんなことで、今後ともその効率的かつ健全な運営に努めますとともに、制度の機能を十分に発揮することにより、農家経営安定のための制度として真に定着するよう努めてまいる考えでございます。  なお、事業実施基盤の強化を図るために農業共済団体の組織整備についても力を入れていきたいと考えております。
  164. 島田琢郎

    ○島田委員 今の大臣のお話では、私はわからないところが多くて、余りすとんと胸に落ちませんでした。つまり、我が国の、置かれている農業の位置づけというものがやはり弱いから、今大臣のおっしゃるような、必ずしも私が聞いたことに明快にお答えになっているとは思えないような御答弁が返ってきたのではないでしょうか。その議論をやりますと、これはとても時間がかかり過ぎちゃって、きょうの五十分などという短い時間では手に負えない話でございますから、そこはまた機会を別にいたしたいと思います。ただ、日本農業の特性というものについてはやはりしっかり踏まえておいていただきませんと、その特性のもとに日本農業災害補償制度というものが成り立っている、またそれが施行されている、こうなっていなければいけないと思うのであります。  特に、これは農林省がお考えになっている資料を引用させていただけば、「農業は、自然に支配されることの最も大きい産業です。」ごもっともでございます。「特に、我が国は、気象変化の最も激しいアジア・モンスーン地帯に位置しており、このため我が国農業は、風水害、冷害等の種々の災害がしばしば発生することにより広い地域にわたり甚大な被害を受けやすいという宿命を有しています。」こう位置づけておりますね。ですから、こういう宿命をフォローアップするために災害補償制度というものがいかにあるべきか、こうなるわけであります。本当はもっと高邁な高い次元の農政論から出発しなければいけませんが、これは先ほど言ったように時間がないからそういう議論を今展開することはできませんが、ここのところはきちっと踏まえていただいているのでないと困ると私は思うのです。どうですか。
  165. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えしますが、先ほど私が申したとおりでございます。我が国におきましては、先生指摘のように、地理的条件とか気象条件から自然災害の発生が多い、また特に近年は冷害等の異常災害が多発する中で、本制度は大変不可欠の制度であり、また農家経営の安定に大切な役割を果たしている、このように理解しているわけでございます。
  166. 島田琢郎

    ○島田委員 そして、国の重要な政策課題、そこから農業災害補償制度というものは出発している、こう考えているのでありますが、よろしゅうございますね。  さてまた、そのためにいろいろ制度というものがそういう中から検討されているにもかかわらず、最近は現象的に見ますと農業共済制度そのものはかなり大きく広域化をするという傾向の中にあるようであります。そうすると、その広域化と本来の農業災害補償制度とのかかわり合いといいますか、制度上の責任の分担といいますか、これを広域化の方向の中でどのように位置づけていこうとお考えになっているのでしょうか。ただこれが傾向としてそうなっているからそれを追認していくという形にしようとしているのか、積極的に広域化を図っていこうとしているのか、この辺のところが大変ポイントであります。まずそのことをお答えいただいて、その上でもう少しお尋ねをしてみたい、こう思います。
  167. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農業共済組合等の広域合併の動向なりそれに対する行政としての考え方というお尋ねでございますが、今お話にもございましたように、近年広域合併が急速に進展をしておりまして、かつては、組合等ということで市町村営のものも含めてでございますが、一万以上ありましたものが、数としても全体として千八百くらいに減少してまいっておりますし、町村をまたがりますいわゆる広域組合等が五十九年の四月には三百三十七組合というようなことになっておりまして、市町村の数で申しますと五五%近くをカバーするというような状況になってきております。  実はこの問題につきましては、国といたしましても四十年代の半ばごろから、事業運営を能率的に行う、そして役職員の設置なり専門分化も規模が大きくなれば進められる、そうしてまたその中で一人当たりあるいは単位当たりの事業経費の効率化ということも可能になりますし、また研修なり職員の雇用条件も改善し得るというようなことで、行政としても広域合併の推進をいたしておるわけでございます。もちろん、地域の連帯感というようなものを一つの支えにいたしました制度でございますから、無限に大きくするという考えではございませんけれども、一郡一組合ぐらいの規模を一応のめどにいたしまして、地域の実情に応じてということで広域合併を推進をいたしております。
  168. 島田琢郎

    ○島田委員 その際、広域合併はいわゆるメリットがあるのか、あるいはデメリットなのか、これは大変大事な目標でなければいけないと思う。ただし、それは行政の側から見たメリットであり、行政の側から見たデメリットで論じられるべきものではない。これは当たり前ですね。私は、本来の共済制度のあり方というものを無視してそれを広域化するということには大きな問題を持っているし、また残す、こういうふうな認識でおります。したがって、四十年ごろから積極的に行政側、政府は、この広域、さらには合併を進めてきた。しかし、今お話をお聞きする限りにおいては一郡一組合。しかし、一郡と言いましたって、その中には町村の数がいろいろありますね。多いのは恐らく十以上もあるところもあるでありましょう。北海道のような一郡に一組合と言えば、もうとてつもないでかいものになってしまいます。そうなりますと、そういうしゃくし定規で物を進めていくことのデメリットは、メリットをかなり帳消しにして、なお大きな共済制度の後退につながっていくのではないか、また運営の上でも大きな支障を来すことになるのではないだろうか、実態的なものを見ながらこういうふうに私なりの批判を持っているのであります。  ですから、大きいことはいいことだ、そういうふうに感じられるようなやり方というのには一定の節度があってしかるべきだと私は思うのです。一郡一組合というのは一つの目安であって、それをしゃくし定規に進めるつもりでいるんだと局長おっしゃっているのではないと僕は思うけれども、しかし、どうやら大きいことはいいことだみたいな感じでどんどん大きくしていく、そうすると農家のところ、庭からは、どんどん大事な行政や組合や組織が離れていってしまう、こういうことになりかねませんから、私は広域合併論には手放しで賛成するわけにはいかないと思っているのです。いかがですか。
  169. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 私ども、広域合併によりまして事業基盤が拡大をされることによりまして、役職員の登用なり専門分化が行われ、また執行体制が整備をされる、特に任意共済あるいは任意加入の共済につきましての推進というようなことになりますと、やはり事業執行体制が整備されているということが共済事業を推進してまいります上でも非常に重要でございますし、職員の研修なり雇用条件という点からいたしましても、そのための経営基盤を整えるためには、やはり一定規模の地域の基盤というものは持っている必要があるというふうに考えております。  ただ、先生おっしゃいますとおり、仮に一郡といいましても、さまざまなところがございますし、実は私も調べてみましたところ、昭和四十六年に初めに広域合併の要綱の通達を出しましたときは、そういった一郡一組合というようなことも書かれておったようでございますが、機械的に、地域の実情を無視してしゃくし定規に当てはめるというのはよろしくなかろうということもございまして、五十六年に要綱の全面改正をいたしましたときは、そういった具体的な尺度というふうなことで具体的に通達の中に書くのはその際やめたというような経過もございます。したがいまして、やはり地域の実情というものを踏まえてやっていくべきだと思っておりますが、一定のスケールメリットは組合運営の基盤を整えるという意味で必要ではないか、こういう考えで進めております。
  170. 島田琢郎

    ○島田委員 今、余り一郡一組合押しつけというようなことはしていないというようなお話でありますが、それはそれとしまして、やはりこれからも広域合併を推進するという立場は持っておられるわけですね。そうだとすると、一定の目安というものあるいは一つのサンプルといいますか、こういうものをお持ちにならないと、行政の側から旗を振るわけにはいかないわけであります。今これを強制している状況にはないとおっしゃいましたが、一郡一組合をお考えになったときのいわゆる規模とかいうもの、規模とか範囲ですね、範囲といえばいろいろありますから、距離的に聞くのはちょっと無理があるかもしれませんが、要はどういう組合を絵にかいてそれを推進しようとされたのですか。
  171. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 これは、私ども機械的に一つの尺度というものを当てはめるということではないということを申し上げましたように、例えば何市町村でありますとか、あるいは組合員農家が何千戸とか、こういった数値でそれを持っておるというわけではございません。やはり一方において事業運営の効率化なり事業基盤の強化を図るという観点、また他方、先ほどからもちょっとお話がございましたように、組合活動の前提条件になります地域住民の連帯意識というものが失われない範囲というような両面から考えまして、一郡一組合というのが一つの目安かなということを考えておったわけでございますし、今も考えておるわけでございますが、具体的にはこの広域合併につきまして、都道府県の知事さんが一つの計画をつくっていただくというような仕組みをとりまして、私どもが上から割りつけるということではなくて、地域の実態をより詳細に御存じの知事さんにその辺のところを考えていただくというような仕組みで広域合併も進めてまいってきているわけでございます。
  172. 島田琢郎

    ○島田委員 私はなぜそんなことをしつこく聞くかといいますと、共済組合といいましても、酪農、畜産地帯を主にするところの共済組合、あるいは水田稲作を中心にするところの共済組合、畑作とかあるいは果樹とか、その業態別にまとまっているところの地帯における共済組合のあり方というものは、みんなそれぞれ違うわけですね。  ですから、私が今一番心配しますのは、例えば家畜共済を中心にしているような地帯で考えてまいりますと、私のところなんかはいい例になるわけです。一郡といいましても、その中に実に十町村以上入っているわけですね。距離にいたしますと何十キロに及びます。ですから、そこにはまた、共済組合はただ事務所に座りきりで仕事をしていればいいというものではなくて、いろいろな事業をやっていますから、獣医さんを置いたりあるいは人工授精師を置いたり、いろいろそういう技術者も置きながらやっているところがあるわけでありますから、連帯感という面で見ましても、守備範囲がこんなに広くなっているところで組合員の連帯感を求めることなんかはもう到底がなえられない話でありまして、無理な話である。つまり機械的に事務をやる、機械的に獣医さんの仕事をやるということにならざるを得ない。  そうすると、私は、本当は制度趣旨がそこのところから崩れていってしまうのではないかという心配を一つ持っているものですから、広域というものにも限度があります、せいぜい私のところなんかの実態で言えば、三町村か四町村ぐらいが精いっぱいではないのだろうかというふうにも考えるものですから、一郡といえば、北海道の一郡は大きいですからね。そういう単位で物をお考えになっては制度そのものが後退していくのではないか。そういう考えを頭に置きながら今度の制度改正を打ち出してきたとすれば、私は、この法律は改善ではなくて改悪である、こういうふうに断ぜざるを得ないということになるわけであります。つまり、大きな組合を想定しながら、そうしてそこで運営されることを一つ目標に置きながら制度の中身を変えていくということになるわけであります。ですから、広域合併の持つ意味というのは制度に直に結びついていく大変大きな意味を持つのです。そういう前提に立って、今度の改正というものに対する批判を私は持っている、こういうことであります。しかし、時間がどんどん過ぎていきますので、このことにまたこだわってもおれなくなりました。  さて、特に今度の制度の中で、私は、これは言葉としては少しきつい言葉の使い方かもしれませんが、制度そのものは、弱いところ、まあ弱いところという表現もいかがかと思いますけれども、適当な表現をちょっと考えつかぬものですから、弱いところ、こういう表現で話しますが、農家の個々の経営のいわゆる実態は必ずしもみんな一緒じゃありませんね。非常に努力して、幾ら土地改良をやって、そうしてどんなに朝から晩まで汗水垂らして働いても一定の収穫量に達しない、先祖代々一生懸命やってきたけれどもどうにもならぬ。  私の農場なんかはその一つの例であります。ただ私は、高台の重粘土の地帯とそれから平地の割合に収量の上がるところとちょうど半々ぐらい経営していますから、経営全体で言えばフォローされて、かなり平準化されるのでありますが、中には、そういういいところを持たないで、山の傾斜地ばかり持って苦労している人もおるわけであります。それから寒冷地帯、常に三年に一遍とか四年に一遍とか、冷害や湿害を頭に置いて経営しなければならぬ地帯、年がら年じゅういい天気に恵まれて、黙っていても——黙っていてもというのはちょっと語弊がありますけれども、そこと比較して余りそれほどの努力をしなくても一定の経営は維持できるところ、いろいろあるわけですね。ですから、それをお互いにフォローし合う、そこにこの共済制度の重要な意味もあるのだと私は思うのです。断固としてここは損ねていただきたくないと思っているのです。  そういう意味で言いますと、確かに気持ちとしては、農家の側から言う期待もありますし、行政の側も、この制度を運用していく上での最低ぎりぎりのところの平準化を図らなければならぬという意味で言えば、いつも被害を受けない地帯といつも被害を受けるところと掛金を同じくするというのは、制度の運営上いささか公平を欠くという気持ちがあることも私はよく理解できるのでございます。しかしながら、制度はそこがちゃんとフォローしてくれるということに期待をかけて成り立っているものでありますから、ここのところに格差をつける、私は全くつけるなというのはちょっと言い過ぎと思うから、全くつけるなとは言いませんが、余り差がつくということになると、この制度は本来の趣旨を見失ってしまうのじゃないか。  ところがどうも今度の法案の改正は、言ってみれば被害の少ない農家には負担を低くして、被害が常に大きいところについては負担を重くする、それが公平だといえば公平なのかもしれませんけれども、この制度で言うところの公平化というのは、そこに中心を置いて、スタンダードを置いてこの制度を運用されたり改正されてはたまらないという気持ちが私にはあります。どうですか。
  173. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 御提案申し上げております改正案の中で、危険段階別の掛金率の設定方式を導入するということにつきまして、共済の本旨という点から問題ではないか、こういうお尋ねであろうかと思いますが、農業災害補償制度は、農家の相互扶助を基礎としながら、これに国も相当な財政負担をいたしまして、不慮の災害によりまして農業者のこうむる経済上の損失を保険の手法で合理的に補てんしようとするものでございます。  現在の制度では、御案内のとおり掛金率は共済目的の種類なり組合等の区域ごとに原則として一律に定められておるわけでございますが、近年におきます農業事情の変化等から、この制度におきましてもいろんな情勢の変化が生じております。  大きく申しまして三つほどあると思います。一つは、高水準の技術力を持ちます専業的な経営が一方で育成されつつあります反面、兼業化でありますとか高齢化という中で、近年相次ぎました異常気象のもとで、地域によりましては、栽培管理の非常に優良な農家と、言葉は悪いかもしれませんけれども、片手間的な農家との間で被害の発生状況に大きな差異のある地域が出てきているということが一つございます。  それから第二に、やはり、この組合等の広域化が進んでまいりますと、同じ組合の中の地域間あるいは組合員間で一律の共済掛金率ではちょっと不満だというような声が出てきているところもかなりあるわけでございます。  他方、この組合等におきます事務運営におきましては、コンピューターの導入というふうなことで大量の事務処理が可能になってきた、こういったようなことから、危険段階に応じました掛金率の設定方式の導入ということを考えたわけでございます。  ただ、あくまでもこれは私どもが上から押しつけるというふうなことは考えておるわけではございませんで、組合で組合員の総意を踏まえてそういう方式をとろうということになりました場合にそのような掛金率の設定ができるような道を開くということでございますし、危険段階別と申しましても、数グループに分けるという程度のもの、あるいはまた個人で分けるということではなくて集落のグループ分けで対応するというような多様な形もあろうかと思いますし、実施に当たりましては都道府県知事の認可にかからしめるというような仕組みもとっておりますので、今お話のございましたような御心配が生ずることがないように運営が可能ではないかというふうに私ども思っているわけでございます。
  174. 島田琢郎

    ○島田委員 先祖が国取りでいいところをばあっと取っておいてくれたら助かるのだが、後から国策的に山も削り、林を切り開いて入ったという農家もあるわけですから、これは言ってみれば宿命的な部分も随分あるわけですね。だから、そんなところでやらなければいいじゃないかと言って済まされない実態日本列島の中にはずっと点在しているわけであります。そこのところを公平に扱うという最低のぎりぎりのところは私は譲ってほしくない、この制度で守ってもらいたい、こう思っているのです。  ところで、予算の中で行革絡みの予算もこの農災運営の中ではなされておりますが、ことしから定額化されている部分がございます。定額化でありますから、来年度以降はこれはふえないというのが原則なんでしょう。しかし、五百四十億絡みの予算の大半は人件費でありますから、人件費をまさか来年も再来年もその次の年も据え置いて抑えておくわけにはまいりません。そうなりますと定額では人件費に対処できない部分が出てまいります。これはどのように解決しようとお考えになっていますか。
  175. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農業共済団体の事務費の定額化は、農業委員会等の他の諸団体との横並びもございまして六十年度予算から定額化したわけでございます。私ども従来、個別経費を積み上げるという形で予算を、例えば補助職員の数を等級号俸別に積算をしていくというふうな方式から、定額化による負担方式に国が今回改めたわけでございますが、従来積み上げ方式の場合にも定員削減というようなものが毎年かかっておったというのが実情でございます。定員削減等によります国庫負担の額の縮減の不安ということはなくなりまして、安定した国庫負担が望めるということはございますし、また、従来の積み上げ方式でございますと、組織整備なり広域合併で組合数などが減少いたしまして事務費の節減効果があらわれるという場合には、それだけ能率化されたからそれは国庫に吸収さしていただきますというようなことで国庫助成の減になるような要素になっておったわけでございますが、この辺も、事務費の節減効果というのは今度は団体に帰属するということになりますので、職員給与の上昇等に対しましては、やはり事務運営の合理化なり効率化によって対応をしてまいるという考えでございます。
  176. 島田琢郎

    ○島田委員 合理化だって限度がありますし、物価だってとまるところを知らないのであります。し、まさかベースアップを抑えていくわけにはいかないので、局長がおっしゃるようなことにならぬと私は思うのですよ。これは厳しさを要求される。あなたも内部の合理化で切り抜けてもらいたい、これはつまり骨身を削れということを意味するわけでありまして、その覚悟がそれぞれの組合にあるかどうかは、覚悟だけしっかりしていても実態的にはやり切れなくなるときがあるのではないかという点で、定額化の問題は必ずしも功罪半ばするものでないばかりか、私に言わせれば定額化は多くの問題を将来残していくだろう。それはもちろん行革の中から出てきているものでありますから、我が方にとってプラスになるような行政改革が中曽根内閣の中で行われるわけもないのだからそれはわかり切った話であります。しかしそれは単共としてはつらいですよ。ですから広域化してどんどん必要最小限の人間に切り詰めていかざるを得ない。そうすると制度は後退する、また加入率も減ってきてといったようなことで、だんだんこれが細まっていくのではないかという点で心配を一つ持っています。  それから、当然加入、任意加入とございますけれども、その基準の持ち方が、今までは十アール以上であったのが今度は二十アール以上、内地府県では十アール切り下げられたというりか切り上げたというのか、そういうことになりましたね。しかし、従来実態を見てみますと、実際には十アール以下の人は当然加入にはほとんど入っていないわけですね。しかし任意加入の道はあるのだから任意にお入りください、こういう方式をとっているようであります。しかし、実態をもっとよく調べてみたら、実は十アールではなくて十五アール以上が今は当然加入の形をとっている。そうなりますと、二十アールにしたら、内部で行政指導の中でまた五アール積み増しして二十五アール以下は任意加入、それから上だけしか当然加入としては扱わないよというふうな運営になりがちですね。私はそういう心配を持っているのです。  だって、今十アールと言いながら実際には行政指導で十五アール以上を当然加入としろということを何かの通達ででも出したというお話も聞いたわけであります。そうしたら、二十アールにしたけれども今度は二十五アールにしますよということを内部規定でできるのだ、こういうことになりますと、そういうことになってどんどん弱い者が切り捨てられていく。任意で加入の道を開いておりますと言ったって、この種の共済制度というものはやはりある意味では、連帯感連帯感と局長がおっしゃるように、連帯感を持ち得る一つの条件としては、これには当然加入があるというところで初めて連帯感が生まれてくる場合だって多いのです。そういう意味では私はちょっと制度の後退でないかと思いますが、いかがですか。
  177. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回水稲共済の当然加入基準を引き上げることにいたしましたのは、農政の基本方向といたしましても生産性の高い農業経営を育成するという方向をとっておりますし、二十アール未満の規模というふうなことになりますと、農業収入に依存するところも小さく、また生産の主体も自家消費米ということでございますので、そういった小規模農家についてまで当然加入の対象とする政策上の意義は乏しくなっていると考えられましたので、この際、当然加入基準の緩和を図ることにいたしたわけでございます。  経過的に申しますと、昭和二十二年に農災法が制定されましたころは組合員資格を持つ者はすべて当然加入というようなところから出発をいたしまして、その後画一的な強制加入に対する農家の不満が高まりましたために三十二年に条件の緩和をいたしまして、その後三十八年の法律改正のときにさらに緩和をいたしまして、水稲、陸稲及び麦ごとに十ないし三十アールということにいたしたわけでございまして、こういった戦後の一種の保険なり共済の契約につきまして強制を加えていたものをずっと緩和をしてきているという延長線にあるものでございます。  今お尋ねの中で、十アールを下限にしていたときにそれを引き上げる指導をしていたではないか、これが二十アールに引き上げられたら二十五という指導をするのではないかというお尋ねがございましたが、実は確かに従来指導で引き上げておりましたけれども、今回法律改正をいたします機会にこれを政令改正という形で制度化をしようということでございまして、この政令改正の後にまた新しく実態上の当然加入基準の引き上げを県に指導するというようなことは現在のところ私ども考えておりません。
  178. 島田琢郎

    ○島田委員 まさか考えているとは言えないわな。しかし、戸数から言いましても、今五十八年度の統計数字を見ますと、引受戸数で、今度引き上げられる二十アールということになりますと約七十五万戸ほど当然加入から任意加入に落ちていくわけです。それから面積にしたって十万ヘクタール落ちるわけですね。全体の比率からいえば五%か六%の話だと言うかもしれないが、しかし共済制度は、私が言うまでもない、やはりたくさん入ってもらって、いい人も悪い人もみんなに入ってもらってこの制度を支えていかなければ、いい者だけ、悪い者だけに偏ってしまったらこの制度は破綻してしまうのです。そうでしょう。三者で成り立っているのです。個人の農家と連合会と国と、こういうことで制度はもっているわけであります。私はそんなことはしませんと言うけれども、仮に二十アールに引き上げでまた二十五アールを行政指導で任意加入にしようとしていったら、これは百万戸になるんですね。  ですから、こういう人たちを大事に考えるということを制度の中で忘れてほしくない。任意加入だということは大変重要のようでありますけれども、実際には、おまえさんら大したことないから勝手にしろや、こういう話とイコールに考えてもいいということではないですか。私どもはそういう弱い人たちをどうやって救っていくか、そしてまた単年度の経営を維持してもらうか、やはりそこにスタンスを置いて物を考える、そういうものに制度がきちっとフォローアップしてくれる、そこに期待をかけるものですから、私は問題の指摘をしておきたいと思うのです。時間がないから御答弁は要りません。  あと、国庫負担だってポイント切り下げで大分切り下がってまいります。つまりこれは国の負担をできるだけ切り詰めたいというところから改正案が出されているのでありますから、それは当たり前といえば当たり前かもしれません。しかし、全体的には農畜産物の価格は、行政がかかわっている価格はほとんど据え置き、自由のところだってそれほど上がっていませんね。そして逆に今度は負担のところがどんどん重くなっていく、これでは農家経済はたまったものでない。こういう点を考えますと、私はこれには賛成できかねます。  次に、家畜共済についてちょっとお尋ねします。家畜共済は必須事業になっておりますし、また共済そのものは包括共済でございますから、牛と名のつくものはべこも含めましてこの対象にする、これは考え方としては一つの前進でありましょうね。しかし、今度はお母さんのおなかの中にいる子牛も対象にするわけですね。まさか牛から馬は生まれませんからそれはまあ心配はないのでありますけれども、ただ一体おなかの中にいる子供の評価、共済価額をどの水準で見るのか、これが一つですね。  それからもう一つは借り腹、近ごろ、はやっているんですよ、ひとのおなかを借りるのは。けさの新聞でごらんになったと思いますが、雪印が実験に成功いたしまして、卵を二つに割って双子の子供を生ませることに、ついおとといかさきおととい成功しましたというのが新聞報道に載っております。国立の畜産試験場でもこれが成功しております。そうすると双子が雌か確かわかりません。一つの子供だって雌か確かまではわからない。雌が生まれればあるいはその家の跡取りにする、こういうことだから当然共済金としては生きてまいります。ところが雄牛になりますと今度は肉の方だ、今度の改正は乳牛ではございません、肉牛ですから、そのおなかの中にいる牛をまだ表に出ないうちから肉にするか素牛にするかという判断はなかなか難しいのであります。これが第二点目。それから、よその牛に借り腹でできた牛の評価はどうするんだとか等々、今度の改正案には大変はっきりしない点が幾つかございます。これははっきりしていただかないとなかなか制度に取り組めませんね。お考えがまとまっているとすればお聞かせください。
  179. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 肉用牛の子牛の生産共済を今度御提案申し上げているわけでございますが、お話にございましたように、胎児の共済価額をどう適正に算定するかというのは、なかなか頭の痛い問題でございますが、私どもこの母牛の共済価額を基礎としてこれを算定することにいたしたいと思っております。これは、胎児は通常売買されませんので、市場価格が形成されておりませんので、市場価格を使うことができないわけでございます。それから、子牛の資質ということになりますと、母牛の影響のほかに、種雄牛の方の影響ということもございますけれども、種雄牛につきましても、母牛の血統に応じた雄牛が使用される傾向というのがございますので、子牛の価額を母牛の価額に一定の割合で対応させて考えたい。そしてまた、家畜伝染病予防法の第五十八条によります手当金、予防接種などをやりまして、そのせいで家畜が死んだというようなときに、胎児が死亡したというような場合に、手当金の支払いが行われるわけでございますが、そのときも胎児価額の評価というのは、母畜の価額を基礎とするように指導されている。それから、かつて、昭和四十一年ごろまでの旧生産共済というのは、これは包括共済じゃない姿でございまして、制度がうまくいかないで廃止をいたしたわけでございます。その当時も、胎児の価額は母畜の価額を基礎として決めていたというようなことがございますので、母牛の価額の、今いろいろ検討いたしておりますが、大体五分の一と申しますか、二割程度ということで評価をいたしたらどうか。  これは子牛の出荷月数と、それから子牛の価格というようなものをとりまして回帰直線を当てはめるとか、あるいはまた出荷子牛の体重の分布と子牛の市場価格等のデータをとりまして、それを出産前の月数まで延ばした場合に幾らになるか、あるいはまた子牛が出産するとき大体三十キロでございますので、体重別の価格をずっと延ばしまして、三十キロのところへ引き延ばしたら幾らになるか、こういうことをやりますと、大体二割ぐらいのところに参るわけでございます。  それから二番目のお尋ねの借り腹というお話でございますが、これは今申しましたようなことで、母牛等の価額を基礎として評価をする、そしてそういうふうに共済を仕組むということでございますので、その借り腹の場合も、当然母牛の方の共済関係の中に胎児が入ってまいる、こういう仕組みで考えておるわけでございます。
  180. 島田琢郎

    ○島田委員 私の質問はやや細かに過ぎるかもしれません。牛だって、というよりは、牛には大変優性遺伝と劣性遺伝とございまして、母親にまさる子供が生まれる。もっともそこをねらって我々は品種改良をやっているわけでありますから、この親からこんないい子がという、だから五分の一ぐらいじゃどうにもならぬという場合もありましょうし、こんな見てくれのいい母親、美人の母親にみっともない子供が生まれてみたりしますから、それは一概には言えないのだろうから、五分の一がいいかどうかというのは、私としては今にわかに批判をするわけにはまいりませんが、一般的にはもう少し高く評価しておく方がいいのではないか。  特に、リバイバルでもう一遍これは復活して、今度は包括共済に入れてやろうというお考えであるならば、二度失敗は許されぬと私は思うのです。失敗した原因一つにそれがあったのです。現に私も、そのときには、もうそんな共済ではだめだよと言って入りませんでした。ですから、ここは十分お考えをいただいて、五分の一を基準にして云々というお話がございましたが、実態的にそれが皆さんに受け入れられるような、そういう制度で、これが見事に成功をするように期待をしておきたいと思います。  時間がなくなりましたが、せっかく試験の関係を担当しておられる事務局長がおいででございます。この新しい、まさに驚異的なことが、今後は優秀牛の生産にスピードアップされてこれが一般化される、実用化されるという時代を迎えるだろう、こういうふうに言われております。国のこの種の試験の進みぐあいはどの辺まで行っているのでしょうか。この際、お聞かせをいただきたい。  これで質問は終わりにしたいと思います。
  181. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先生今御質問の、特に牛を中心にしました優良牛の高生産技術、この関係でも、御案内のように人工授精技術でありますとかあるいは受精卵移植技術でありますとか、こういう技術はもう既に実用化の段階に達しておるわけでございます。さらに先に進んだ技術開発といたしまして、先ほどお話の受精卵分割技術によります双子生産、これにつきましては、現在国の畜産試験場を中心にしまして、全国の種畜牧場等と、あるいは公立の畜産試験場等と協力しながらいろいろ進めておりますが、具体的な事例といたしましては、大変急に始まったわけではございませんので、最初はヤギで五十八年にその双子生産、一頭から双子を生ませる技術、これは成功しておるわけでございます。牛に関して言いますと、昨年の暮れに畜産試験場と岩手の種畜牧場が共同してやりまして、分割した卵を借り腹で別々の牛に入れたのが両方とも丈夫に生まれ育っているわけですけれども、次に一頭に分割卵を両方入れたものにつきをしては、実はことしの二月に生まれたのですが、双子のうちの一頭が生まれて間もなく死亡してしまった、そういうことがございます。  現在、この種の実用化を目指してどんどん実験を進めておりまして、福島の種畜牧場ではこの夏に分娩の予定でありますし、日高の種畜牧場では秋に分娩予定、そういう実験段階でございます。技術的な問題としては、実用化に向けてはまだ幾つかの問題がありますので、より確実に、しかも簡易にうまくこの技術を進められるように、今いろいろな角度から研究を進めております。  さらに体外受精技術も同時に研究を進めておりまして、ヤギや羊では既に成功しておりまして、牛についてもその体外受精児はこの八月に分娩の予定というような状況でございます。     〔衛藤委員長代理退席、玉沢委員長代理着席〕
  182. 島田琢郎

    ○島田委員 終わります。
  183. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 上西和郎君。
  184. 上西和郎

    ○上西委員 私は、今回提案をされております農業災害補償法について、内容を若干きめ細かく、順次お尋ねをしたいと思います。  まず最初は、今回保険料の段階制、グループ制をとろう、こういう考え方のようでありますが、なぜそれをお考えになっておるのか、基本的に御説明をいただきたいと思います。
  185. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 現在は、御案内のとおり共済目的の種類なり、組合等の区域ごとに原則として一律に掛金率を定めておるわけでございますが、近年農業事情の変化等からこの設定の仕方につきましていろいろな変化が生じております。  一つは、農家の兼業化でありますとか高齢化が進みます中で、また五十九年は豊作でございましたけれども、その前四年ほど大きな異常災害が連続をいたしまして、その中で、一方でかなり技術力の高い、栽培管理の優良な農家と、それからそうではない農家との間で被害の発生状況に大きな差異のある地域が出てきている。これは農業白書などにも若干そういった現象が記述されておりますけれども、気象条件がいいときは農家間の収量の格差というのが余り出ない、それが気象条件が悪いときになると格差が非常に出てくるという変化が最近起きているということが一つございます。  もう一つは、組合等の広域合併が進んでまいりますと、対象地域も広がってまいります。そういたしますと、組合員等間で原則一律の共済掛金率では不満だという声が出てくる。現在でも、一定の条件が備わった場合は地域料率というようなものを知事が認めるという例外的な取り扱いが可能なような法律の仕組みになっておりますけれども、これをもう少し幅広くやれるような形にしたらどうかということがあるわけでございます。  他方、料率を危険段階で分けますと事務量が増大いたしてまいるわけでございますが、事務機械化というようなことで組合等におきますコンピューターの導入が進んできておりますので、大量の事務処理も可能になってきたということから、組合等の選択によりまして農家を被害率等の被害状況に応じましてグループ分けして、危険段階別の掛金率を設定することができるという制度上の道を開く、こういうことにいたしたいと考えているわけでございます。
  186. 上西和郎

    ○上西委員 それなりに農家の方の御要望もあるでしょうし、あなた方の目から全国をごらんになればそうした考え方が出てくるのもある意味では妥当かと思うのです。  ただ、問題なのは、現在の日本の社会構造の根幹をなしているのは、言葉が適当かどうかは別にして郷土愛ではございませんか。私みたいに農村地帯に育ってきておる者は、極端なことを言うと冠婚葬祭すべて同じ町内会の部落うちでやる、こういうのが慣例化しているわけですね。農作業は特にそれが顕著でございましょう。田植え、稲刈りあるいは最近行う空中防除一つにしても、すべてがそうした長い間のいい意味での良風美俗が我が国を支えてさている。そうした意味で、今御説明になったような形で差をつけている、余りにもドライにお金で割り切り過ぎることが、これは話が飛ぶようでありますが、今の日本の非行少年なんということにも直接間接影響があるのではないかとまで私は思うのですよ。ですから、そうした声があり、お考えもあるかもしれませんが、そうしたことについて、とりわけ農林水産省が長年直接接している農村地帯の現状、そうした麗しい伝統などとの関連はどうなるのか、このことについて御見解をいただきたいと思うのです。
  187. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 私どもも、先生がおっしゃいましたような集落の中の連帯意識と申しますか、そういうものについては私どもなりにその重要性は認識しておるわけでございます。農業共済そのものの制度も、普通の火災保険とか生命保険と違いましていわば作物の保険でございますので、そういった集落の中でのお互いの公平感というようなものが損害評価を適正にやる場合にも一つの支えになっているということは争えない事実だと思っております。ただ、御心配のように集落組織の崩壊を招くようなことになるのではないかという点については、私どもはそういった心配はないものと考えております。  それは、まず第一に、この方式を導入するか否かはもちろんでございますが、危険段階の数とか危険段階ごとに危険度の差に対応して共済掛金の率の差といいますか刻みをどういうふうに決めるかということは、二足の枠の中で組合員等の意思を十分に反映した形で組合等が自主的に定めるということになっておりまして、私ども決して強制的な実施とか画一的な実施を考えているわけではございません。  それから、危険段階の区分は農家のグループごとにやることができるわけでございますが、集落のグループごとに行うことも可能というふうに考えておりまして、同一集落内では同じ掛金率という形で危険段階別の掛金設定をやるということもこの制度の中で可能にいたしておるわけでございます。  最後に、こういった危険段階別の共済掛金率を設定するに当たりましては、知事の認可にかからしめておりますし、そういったこと全体を通じまして、この農業共済の基礎になっております集落というものがおかしくならないように私どもなりに気をつけてまいりたいというふうに思っております。
  188. 上西和郎

    ○上西委員 今のお答えでやや安堵する面もあるのですが、もう一点、優良農家といいましょうか、頑張って災害を減らせば減らしただけ、無事故割引が現在ありますね、これが今度ランク制の中で吸収されてしまう。あれは魅力だったのです。頑張れば保険料も安くなる、いい意味の報奨制度だった、これが吸収されてしまう、そのことが今後どういう影響を及ぼすか、このことについてはどのような考えでいかれるのか、念を押しておきたいと思います。
  189. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 危険段階別の掛金率の設定方式につきましては、組合等の選択によりましてできるだけ幅広い対応ができるように弾力的な仕組みにしたいと考えております。その手法の一つとしまして、今お話しのありましたような現行の果樹共済におきます無事故割引制とほぼ同じような仕組みと申しますか、すなわち加入農家の無事故年数というようなものを基礎にしまして危険段階をつくる、そしてそれに応じて掛金率を定めるという方式も採用することができるようにしたいと考えておりまして、一言で言えば果樹共済の無事故割引制というようなものもこの仕組みの中で吸収をして実施できるようにいたしたいと考えております。
  190. 上西和郎

    ○上西委員 先ほど局長から強制する考えはさらさらないという意味の御答弁がありましたので、私はそのことをかたく信じて、絶対に強制だけはやらないでほしい。お上というのは強うございまして、あなた方の想像を絶する力が津々浦々へ行きますとお上の声で行きますので、そのことは十二分に御配慮をいただいておきたいと思います。  第二点は、農作物共済の国の負担率を、超過累進制を残しながらがくっと落とすでしょう。これは、本当に日本政府はこの農業共済制度を守っていこうという気持ちがあるのだろうか、私は、はっきり言って共済制度を根幹から揺さぶる暴挙だ、こうまで言いたいのでありますが、大臣、この点についてはいかがお考えなのか、まず所信を承りたいと思います。
  191. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 上西先生お答えいたします。  農作物共済の共済掛金の国庫負担は、現在、共済掛金率が高くなるほど国家負担が高くなる超過累進方式、水稲は五〇から七〇%、陸稲、麦で五〇から八〇%となっております。今回の農作物共済掛金国庫負担の合理化は二つの点から、農業事情と制度の健全な運営から考えまして、適地適産の推進と最近における農業事情を考慮し、また財政負担の効率化を図りつつ制度の健全な運営を確保する見地から、国庫負担の上限をそれぞれ一〇%ずつ引き下げる等の措置を講ずることとしておるわけでございます。これによりまして農家負担、掛金がその分だけ上昇することは事実でありますが、掛金国庫負担についての超過累進制という考え方は維持しているところであり、関係者の御理解を得まして本制度の揺るぎない運営を確保できるものと考えているわけでございます。
  192. 上西和郎

    ○上西委員 大臣、私正直申し上げてどうも物足りないのです。きのうの本会議の席上であれだけ熱心にお答えいただいた大臣が、今の答弁は実にそっけないな、それでは農家の皆さん納得しませんよ。ざっくばらんに言って、大臣のことじゃありませんけれども、私きのうの本会議でショックを受けたのです。補助金の一括法案を出す、大蔵常任委員長は、その報告の中で故意か偶然が、連合審査のところで我が農林水産委員会だけ名前を読み違えたのです。お気づきでしょう。だから私は、おりてきたときに、私は初年兵だから前の方なので、委員長になぜ間違えたかと言ったら、憮然たる面持ちで行かれましたけれども、私はあのときに大蔵省は農林水産省を軽視しているとショックを受けたのであります。閣議の中でそういうことはおっしゃっていただいて守っていただかないと、あんな程度にやっても農水省は何も言わぬ、大臣も何も言わぬじゃいかぬと思うのです。そういうことがあるからとは言いませんけれども、こんなに国庫負担を削られて今みたいなお答えが出てくるのじゃありませんか。大臣努力をしたけれども現在の財政状況から見て万々やむを得ない、御勘弁をぐらいはおっしゃっていただかないと、何か、至極当たり前です、制度は残るのです、これで負担は高まるがやむを得ぬでしょうぐらいの、まるで人ごとみたいな今のお答えは私納得できませんので、もう一遍真情あふれる大臣の御見解をいただきたいと思うのです。
  193. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 大臣から真情あふれるお答えを申し上げます前に、若干補足して説明させていただきたいと思います。  農作物共済の掛金国庫負担額につきましては、御案内のとおり、共済の金額全体が増加してくるに従いまして年々財政負担も非常にふえてまいってきております。率直に申しまして、非常に厳しい財政状況のもとで、農林水産省の予算の中で政策ごとにどういう予算をどういうふうに配分するかというようなことが農林水産省の中でもいろいろ議論されなければいけないというような状況の中に今あるわけでございます。また、今回御提案申し上げておりますような、共済制度の内部におきましても拡充改善を行うという場合には、それなりにまたお金もかかってまいるというような事情もあるわけでございます。  そういうことに加えまして、実は被害率が高いところほど高率の国庫負担になるという仕組みそのものにつきまして各方面からいろいろまた御議論のあったところでございまして、かつてのように、米の需給が非常に逼迫しておりまして限界地というようなところでも米の再生産はぜひ確保してもらわなければいけないという時代であれば、やはり被害率の高いところほど国庫負担も高くするということをしなければいけないだろうけれども、現在は五十七万ヘクタールも毎年生産調整を実施しておって、そして農業全体として適地適産ということを推進しておるとすれば、被害率の高いところというのは必ずしも適地とは言えないところがかなりあるのではないか。共済制度としてはそういうふうに超過累進ということではなくて、国庫負担については、そういった被害率にはむしろ中立的に一律の助成にすべきではないかというような議論もあったわけでございます。  しかし反面、では適地適産というのが災害の被害率だけではかれるものかどうかという問題もございますし、きょうの質疑の冒頭にございましたように、我が国が地理的、自然的な条件からいたしますと非常に災害を受けやすい、そういうところから農業災害の特殊性ということで超過累進制はぜひ残したい、そういった議論がいろいろございました。さらに申せば、各種の公的な保険なり共済というものの中で、五割以上に国庫負担をしております例はこの農業災害補償制度以外にございません。そういったものの横並びというようなものも総合勘案いたしまして、超過累進制を圧縮しながら維持をするということでこのような改正を提案申し上げているということでございまして、その辺の各般の事情につきまして御理解を賜りたいというふうに思っておるわけでございます。
  194. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  今局長答弁したとおりでございますが、先ほどの、大蔵委員長の間違ったのは、大蔵委員長はよく知っておりますが、だれよりも農林水産には御理解ある人で、それは何かの間違いだったと御了解を得たいと思います。  それから、私は、やはり農というのは国の基本でございまして、一億二千万の国民に食糧を安定的に供給するという大きな役目を持っておるということをもちまして、日本農業を守るという立場で頑張っておりますので、御理解と御後援をお願いする次第でございます。
  195. 上西和郎

    ○上西委員 最初からそうおっしゃってくださればいいのにと僕は申し上げたいのです。マスコミの方もお見えですが、農業新聞その他でそういったことが出れば、やはり大臣は心配してくれている、今の内閣はニュースキャスターばかりじゃないんだ、しっかり守っていこうという方もいらっしゃるんだ、こういうことを理解しないと農家の方は安心しないと思いますので、今後特にそのことはお願いしておきたいと思うのです。  さて、三番目に、先ほど島田委員からも御質問がありましたが、家畜共済の中で子牛の問題で、いいことは努力をされてやっているな、とのことについて私は正しく評価をしたいと思うのです。ただ、二、三お尋ねしたいのは、妊娠八カ月以上を対象にするという、この科学的根拠はどうなのかお答えいただきたいと思います。
  196. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 牛の胎児につきましては、満八カ月を経過いたしますと正常に出産をした子牛と同様の生存能力を有するというふうに言われておりまして、和牛の場合を例にとりますと、平均妊娠期間は二百八十五日でございますが、満八カ月を経過すれば生存能力を有するということが認められておりますので、出生後の子牛を制度対象にいたします以上、こういった胎児も、すなわち八カ月を経過した後の胎児も当然に制度対象とする必要があると考えたわけでございます。そういたしませんと、出産のときに、要するに出産した瞬間に生きていたか死んでいたかというふうなことが共済事故の認定のときに非常に難しい問題になってくるというような技術的な問題も含まれておるわけでございます。
  197. 上西和郎

    ○上西委員 私ごとを申し上げて恐縮ですが、私は、共済組合の獣医の中に血を分けたいとこが三十年勤続でおります。また、私のおじは鹿児島県で農政を担当して、とりわけ畜産をやっておりまして、大隅半島に、私の選挙区に種畜管理センター、今統合されて一つになりましたが、従来二つございました。この二つの所長を歴任し、とりわけ品種改良の第一線の前線の部隊指揮官をやっていたのです。ですから、そういうことでよくおじから話を聞いていたのです、とりわけ畜産県でございますから。そうしますと、今ちょっとひっかかるのです。偶然か科学的にかどうかわかりませんが、牛と人間とほぼ一緒ですね、出生までの日数というのは。社会保険、皆さん方国家公務員で言えば共済組合の短期給付、これの家族埋葬料は、それでは妊娠何カ月以上出るのですか、参考までにお尋ねします。人間はどうなっているのですか。優秀な国家公務員の皆さん、ちょっとお答えいただきたいと思うのです。  人間はどうなっているか。これは簡単なんですよ。本省の共済組合に電話すればすぐわかる。家族埋葬料は妊娠何カ月以上の死産、流産から対象か。人間はどうなっているかということですよ。これは対象なんですよ。科学的根拠というのは、実は局長、今言われておりますと言ったから私ひっかかっているのです。八カ月以上なら云々と言われております。我が農林水産省が畜産試験場でそれをぴしっとやってこうだとおっしゃれば、ここをお聞きしなくてもよかったのです。しかし、あなたは言われておりますと言ったから私はひっかかるので、では人間さまはどうなっておりますか。社会保険や生命保険だって、ちゃんと妊娠何カ月以上は埋葬料の対象だ、死亡弔慰金だとなっているはずなんです。では人間さまはどうなっているのですか。それはちょっと調べてみてください。  それと同時に、先ほども島田委員からありましたが、借り腹の問題です。先ほど私のおじのことをちょっと申し上げたのでありますが、大変なんですね。冷凍して優秀な種をちゃんと保管をして、希望する、逐次やっていく。そうすると結構金もかかるし、いろいろやっている。それをいわゆる母牛だけでやっていいのかという素朴な疑問が出てくるのです。とりわけ私のように畜産県の地域のど真ん中に住んでいますと、やや公平を失するのではないか、それだけで果たして算定していいのかと素朴な疑問が出ますので、もう一遍その辺お答えいただきたいと思うのです。
  198. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今私ども考えております考え方の中では、子牛の資質につきまして、確かに母牛の影響のほかに種雄牛の方の、雄の方の影響もあるではないか、トンビがタカを生むことだってあるではないか、こういうお話でございますが、一般的には母牛の血統に応じた雄牛が使用される傾向があるということが一つございますし、あと例外的に今いろいろお話の出ておりますようなこともあろうかと思いますが、保険という形で統一的な事務処理をやるということになりますと、余り複雑なことはやりにくいということが一つございますし、それから家畜共済の場合は、毎年共済期間が更新になりまして、この掛金を払う時期が参るわけでございますから、そのときには出生じた子牛を見てその評価を変えるということも可能なわけでございまして、そういう機会を利用して適正な評価をしていくという道もあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  199. 上西和郎

    ○上西委員 それはそれでわかるのですが、生産農家立場に立ちますと、やはりそういう要望が出ますね。ある意味では欲ですよ。ですから、確かに複雑にし過ぎてもいかぬでしょうけれども、そうしたことについては、もうぴしゃり血統書ができ上がっているわけですから、そしていわゆる地方公共団体が明確にその精液を保存してやっているわけですから、そう複雑にしなくても一定程度の評価はできる、このように考えますので、これは今度新しくできるのですが、今後そうしたことを含めて、評価額の決定について御検討いただきたい。これは要望申し上げておきます。  このことについてもう一点お尋ねしたいのです。それは、包括共済で、個別共済を認めないでしょう。どうしてもだめですか。個別共済認めない、それはなぜか、簡潔に。
  200. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 家畜共済におきましては、農家の多頭飼養という実態にもかんがみまして、いわゆる逆選択を防止をしまして、事業の安定的な運営を確保していくという観点から、種雄の牛馬等特殊なものを除きまして、飼養家畜の全頭数を包括的に引き受ける方針がとられておりまして、異動がありました場合でも、新たに導入されてきた家畜については、その時点で自動的に共済に付されるということになっておるわけでございます。  なお、仮に子牛または胎児のみの個別加入を認めるというようなことにいたしますと、恣意的な一部加入が生じまして、その結果、制度の健全な運営に悪影響を及ぼすことになるおそれがある。それが役人の悪い癖だというふうにおっしゃられるかもしれませんけれども、どうしても制度をつくりますときには、やはり悪いことができないようにということも考えながらつくってまいる必要があるわけでございまして、昭和四十一年まで実施をしておりました旧生産共済は個別加入制をとっていたこともございまして、年々加入が減少する、あるいは掛金が高くなるというふうなことで局地的になって、政策的にも意味が乏しいということで、先細りで廃止になったという歴史を持っておりますので、この歴史を繰り返さないようにしたいということを私ども考えておるわけでございます。
  201. 上西和郎

    ○上西委員 先ほどのことは、ちょっとまたわかってからお答えください。——わかりましたか。
  202. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 ただいま調べましたところ、妊娠四カ月でございます。
  203. 上西和郎

    ○上西委員 そうでしょう。私は知っていましたから、それで八カ月は科学的にどうなんですかとお尋ねしたのです。胎児でいる期間がくしくも人間と一緒なんでしょう。万物の霊長たる人間は四カ月以上、牛馬だから八カ月以上じゃ、これはちょっとなにで、だから私は科学的に根拠をと申し上げたので、それでそのことを一言念を押しておっしゃってください、御見解を。
  204. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 埋葬料の場合の何カ月と申しますのと、生活能力を有しているかどうかということと同じ考え方であるかどうか、その辺はちょっと私ども、埋葬料の方の基本的な考え方につきまして十分今承知をいたしておらないわけでございますが、私、今手元に持っております家畜臨床繁殖学なりそういったものの記述を見ますと、生活能力を有する最低妊娠期間は、馬九カ月、手八カ月、綿羊、ヤギは四カ月半というようなことできちんと書いてございます。
  205. 上西和郎

    ○上西委員 お答えわかります。ただ、私が申し上げたのは、家族埋葬料というのは、健康保険法上の表現が埋葬料だけであって、中身は実質香典なんですから、ちゃんと生物として認められて出しているわけです。そういった意味合いで、せっかく子牛をお認めになるのだから一やはり生産農家の側から見て八カ月以上で妥当なのかどうかということは科学的に解明してほしかったので、例に出しただけでございますので、そのことを念を押しておきます。  さて、次は果樹共済の問題ですが、加入率が非常に低うございますね。この原因は何ですか、端的に。
  206. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 果樹共済の加入率につきましては、樹種ごと、地域ごとにかなり差はございますけれども、御指摘のように一般的に低位にとどまっております。  原因としましては、一つは、近年の被害状況を反映をしまして掛金が上昇傾向にございまして、比較的掛金が高い。それからもう一つは、共済責任期間が花芽の形成期からというようなことになっておりまして、おおむね一年半から二年ということで、共済掛金の支払いの時期と補償してもらえる期間との対応関係というようなことが農家の方々になかなか理解が得られにくくて、推進上もなかなか難しさがあるというようなことが基本でございまして、さらに若干環境条件的なことを申しますと、やはり果実需給事情なども最近かなり厳しくなってきておりまして、栽培面積減少とか、あるいは地域的に加入意欲の減退が生じているというようなこともあろうかと思っております。
  207. 上西和郎

    ○上西委員 わかります。それで今度いわゆる補償期間を若干見直そうと。わかります。  ただ、ここでひっかかるのは、この共済関係の過去の実績を、いわゆる農家なり共済組合、連合会、国と、こう財政状態を見ていきますと、悪いのは、果樹共済が一番ひどいのですね、水稲なんかと比べてみますと。いろいろな分担の割合その他がこれでいいのですか。非常に負担が大きいのではないか。何か特別な理由があるのか、その辺ちょっと御説明いただきたいと思います。
  208. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 この収支の問題につきましては、昭和四十九年産から本格実施をいたしたわけでございますが、五十八年産までの十年間について見ますと、組合等連合会段階で八十六億円、政府の特別会計段階で四百四十七億円の不足ということになっておりますが、収支が赤字になっております最も大きな原因としましては、本格実施以来連年して異常災害に見舞われたということがあると思っております。  なお、近年、保険収支は逐次改善が見られておりまして、特に五十八年産につきましては、台風等の被害が少なかったこともございまして、再保険収支の方は黒字になっております。
  209. 上西和郎

    ○上西委員 わかりました。  では、続いて園芸施設共済についてちょっとお尋ねしたいのですが、病虫害を除外する、いわゆる選択制になっておりますけれども、これは農家の方の御要望があると思います。しかし、共済制度全体から見たら、こういう分化方式といいますか、逆選択というか選択方式というか、こうしたことで果たしていいのかどうか、ちょっと素朴に疑問があるものですから、その辺についてお考えをお示しいただきたいと思います。
  210. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 ハウスを対象にいたします園芸施設共済におきましては、施設内農作物につきましても農家の選択によりまして共済に付すことができることになっておるわけでございますが、施設園芸経営につきましては、やはり農家間の栽培技術格差というものがかなり大きゅうございまして、これによって病虫害の発生率にも差がございますことから、病虫害事故除外方式、すなわち病虫害による事故に対しまして共済金を支払わないけれども、その分掛金が安くなるという方式を新たに設けることにいたしまして、優良農家の加入の推進を図ろうとしているものでございます。  災害補償制度の基本というか、建前から見てどうかというお話かと思いますが、ちょっと数字を挙げさせていただきますと、例えば五十五年から五十八年の平均で申しますと、施設内農作物についての園芸施設共済の共済金の支払い額が六十五億ほどございますが、そのうち病虫害による共済金というのは約三十七億というような額に達しているわけでございまして、この分がやはり掛金の算定に入ってまいるわけでございます。そういうことがございますので、こういう保険の仕組みで農業者のこうむる損失を合理的に補てんしようという制度の性格からいたしまして、病虫害をほとんど発生させない自信があるという農家について、選択制で負担の公平という見地からこの方式を導入するということも、この共済制度趣旨に反するものではないというふうに私ども考えておるわけでございます。
  211. 上西和郎

    ○上西委員 それでは重ねてお尋ねしますが、そういうことをおやりになる、それはそれで今のお答えでわかったとしても、一棟ずつ、言うならば個別加入ですよ。個別共済。包括共済じゃございませんね、この園芸施設共済は。先ほどの家畜共済の方は個別はだめだ、この園芸施設の方になると個別だよと言わんばかり、何か最も古いのれんを誇る優秀な農林水産省の方々が、同じ共済制度の中で片一方は包括、片一方は個別というような感じがしてしようがないのですが、これはどうしても一棟ずつでなければいけないのか、その辺の理由を明らかにしていただきたいと思うのです。
  212. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 御指摘のとおり、家畜共済につきましては、多頭飼養の実態にかんがみまして、逆選択とか、かつて個別共済の時代にございましたようにつけかえ受給というようなものを防止いたしますために包括的な引き受けを行うということにいたしておりまして、また頻繁な家畜の異動によって事務手続が非常に煩瑣になるということを避けるということもございまして、共済関係の成立も包括的にやっているわけでございます。  園芸施設共済につきましても、これは法律上ということではございませんが、逆選択の防となり加入の確保という観点から、指導で、農家ごとにやはりその施設を一括して加入させるという方式をとっておるわけでございますが、家畜共済と違いまして共済責任期間中の異動が割合少ない、それからまた家畜と違いまして足が生えておりませんので動かないということがございます。  これは消極的な方でございますが、積極的な理由といたしましては、ガラス室等の極めて高価なものからごく簡易なビニールハウスというような施設までございまして、損害補てんの観点からはやはり一棟ごとに共済関係を成立させた方がいいということがございますので、一括加入を推進をいたしておりますが、共済関係につきましては一棟単位というふうにしておるわけでございます。
  213. 上西和郎

    ○上西委員 今積極的、消極的両面からおっしゃいましたけれども、全体で包括共済方式をとっておれば、災害が出たときに、異常災害というか、そういうところまで損害価額が出てくる、ところが一棟ずつ見ていくとそうならないというような現実の面は出てこないのですか。その辺はどうでしょう。
  214. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  今のようなお話は実は私どもも何回か伺っていることがございまして、特に制度発足当初、五十四年及び五十五年度に季節外れの異常な台風等ございまして、施設内の農作物の被害も多うございましたし、また施設そのものもやられたということがあるわけでございます。全滅というような場合には、包括ということもそういう場合に処理がしやすい一つのやり方かと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、一つ経営の中で高価な施設それから簡易な施設というものが入りまじっている場合もございますし、今回予定をいたしておりますような制度改正によりまして今後の各段階の収支がどうなっていくかというふうなこともいろいろ見定めながら、私ども、今直ちに責任分担方式を改めるという考えはございませんけれども、今回の制度改正の実施状況も踏まえまして、今後の収支の推移を見ながら危険分担のあり方の問題については慎重に対処してまいりたいというふうに思っております。
  215. 上西和郎

    ○上西委員 大変貴重なお答えをいただきました。そのことを私は本当にうれしく思っておりますので、ぜひ今後そういう姿勢で見守っていっていただきたい、そうして結果がいろいろ出てきたときには、今私が申し上げたようなことを含めて制度の改善、改正についても十二分に御努力もいただきたいと思います。  法律関係をちょっと離れまして、先ほどもちょっとうちの島田委員から出ていたのでありますが、水稲共済の対象の基準ですね、面積基準のランクアップ。これについて、現実に鹿児島だって十五アール以上、二十アール以上、こうやっているのですが、これをまたわざわざこれだけ上げなくちゃならないそれこそ本当のねらいは何なんですか。それをずばりお答えいただきたいと思うのです。
  216. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 これは先ほどもお答え申し上げましたように、生産性の高い農家を育成をしていくという農政の基本方向というものを踏まえまして、要するに昭和二十二年に制度発足いたしましてから二度にわたって緩和をしてまいったわけでございますが、その延長線上において規制を緩和するということでございます。任意加入の道なりあるいは国庫負担のやり方というようなものに変更を加えるというようなことは何らいたしておりません。ただ、当然加入という規制をある一定規模以下のものについては緩めるというのが今度の制度の見直しの内容でございます。
  217. 上西和郎

    ○上西委員 それでは局長現実的にこうしたときにどういう影響が出てくるか、それはどのように予測されておりますか、見解をお示しください。これを施行したときの結果をどう分析判断をされているか。
  218. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回の当然加入基準の引き上げによりまして都府県の全引受戸数に対します当然加入農家の割合は、現在の七八・四%から一・九%、戸数にしまして六万三千戸減少いたしまして七六・五%に、それからまた当然加入面積の割合で申しますと九四・七%から〇・六%、一万一千ヘクタールでございますが減少いたしまして、九四・二%になるというふうに見込んでおります。
  219. 上西和郎

    ○上西委員 それじゃ大臣にお尋ねしたいのですが、大臣、基本的な農政との関連は一体どうなるのですか。少なくとも昨年あれだけここでも議論しましたよ。臭素米に端を発して異常事態が起きた。韓国から十五万トン入れる入れないと約一カ月間この委員会でも議論しました。そのとき私たちのこの委員会は、満場一致、国民に安全な食糧を安定して供給する決議を上げましたね。それを今、農政の根幹だと思っている。そしてその需給計画の中には、言うならば飯米農家といいましょうか、小規模農家の方々の米作も中に組み込まれているわけでしょう。ところが共済の方ではばっさり切って、今のお言葉でいくと生産性の高い農家だけを当然加入にしていきます。こういうことになりますと、大臣、私はどうしても合点がいかぬのですよ。基本的な農政とこの当然加入の面積の基準の引き上げと一体どういう関連があるのですか。明確にしていただきたいと思うのですよ。
  220. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 先ほども申し上げましたように、共済関係の当然成立といいますか、当然加入の規制を緩めたということでございまして、任意加入の道は開かれておりますし、それから国庫負担についても何ら差はないということでございます。要するに、自家飯米の生産を主体としているところまで政策的に強制をする必要があるかどうか、それは制度としておかしいのではないかという観点で政令の改正をやるということでございます。
  221. 上西和郎

    ○上西委員 大臣、基本的な農政との関連で今局長お答えになったけれども、私、大臣にも、これはやはり大事な問題ですよ。米の需給計画の中には、飯米用農家と言ったらなんですけれども、小規模なところまで全部組み込んであなた方おつくりになっている。ところが共済の方は、今のお言葉でいけば、そんなところまでわざわざ強制させなくてもいいだろう、そこは少々台風が来ようが何しようが、任意加入だから、入ってなかったから損したんだ、何か投げやりとまで言いませんけれども、こういうような感じを受けるんですよ、生産している農家から見れば。米は少ないかもしらぬが、畑作を持っている方もいる、畜産もやっている、やはり農業を主としてやっている方々に、おまえのところの米は別だぞ、入らぬでいいんだぞ、冷酷非情な仕打ちとしか受けとめられないものだから、私は、大臣にその基本的な農政とのかかわり合いについてきちっと見解をお示しいただきたい、こうお願いをしているのですよ。
  222. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えします。  今局長答弁したとおりでございますが、今度の場合は、先ほど言ったようなことで、例えば農家収入の少ない人とか、あるいは自家飯米をつくっている人とか、そんなことで考えたわけです。下限を上げたということですが、ただ、掛金については当然加入、任意加入も同じだというようなことでございまして、先生の言われた趣旨にもとるものではないというふうに私は考えております。
  223. 上西和郎

    ○上西委員 わかりました。では次に移りましょう。  事務費の問題、先ほども出ておりましたが、定額化、言葉はそれは微妙ですけれども、極端に言えば、もうこれで抑えつけでしょう。そうしますと、本来、農業共済組合というのは営利事業団体ではございませんね。そうしますと、せっかく国のそうした事務費のことで人件費を確保できる、優秀な方々が農業共済にお勤めいただく。ところがこれからは、悪いけれども世間並みのベースアップも何もこれから先細り、お先真っ暗になるのじゃないか、そうしたことが非常に懸念されるのですが、先ほど大臣は、大蔵委員長農業をよく理解しているとおっしゃるが、本当にひっかかるのですよ、農林水産委員会とおっしゃってくださらなかったから。だから、そういった意味合いで、やはり大蔵側からぐうっと押しつけられて、抑え込まれてこういうことをやらざるを得ないのか、将来的にも、定額をはね返して、ことしはやむを得ぬが来年からまたびしっとやります、そういう御決意なのか、そうしたことについてまず御説明いただきたいと思うのです。
  224. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 年々の予算の中で、事務人件費というものは近年、ここ数年来毎年非常に問題になっていることでございます。それで、従来この農業共済団体等の事務費につきましても、国庫対象になります職員の定員削減というようなことを毎年やってまいってきておりますし、またこういう積み上げ方式でございますと、広域合併などが進みまして効率化が進むという場合に、それは団体に対します補助金から、能率が上がればむしろそのメリットが削られるというようなこともあったわけでございます。そういったようなことを考えますと、今回こういうふうに定額化をいたしまして、しかも五十九年度と遜色のない、むしろごくわずかでございますがプラスになったという形で六十年度の予算を編成をいたしましたので、今後こういった安定的な助成のやり方の中で事務運営をやってまいるということになるわけでございます。  職員の処遇改善のお話がございました。従来から私ども、公務員の給与改定に準じて、人材を確保するために適正な給与改善を行うようにということで指導をしてまいりましたけれども、これは今後ともそういった姿勢と申しますか、方針は私ども続けてまいりたいというふうに思っております。こういった給与の上昇等に対しましては、事務運営の合理化なり効率化によって対応をしていただくということで団体の方にもお願いをしたいと思っているわけでございます。
  225. 上西和郎

    ○上西委員 そういうお答えが出てくると大変私たちは困るわけですよ。処遇は改善するように指導します、しかし、お金は出しませんじゃ、金は出すけれども口は出さないならいいですよ。逆でしょう。金は出すが口は出さぬ、ぴしっとやってくれと。私は町内会の総会の議長を十数年やっているのです。それは私のところは農村地帯だから、例えば共済のいわゆる損害の評価員、こういった方をやはり私の部落では出すのですよ。共済連絡員、もちろん農協もやる、そういったことでいっぱい出すのですね。そうすると話が飛び交うのです。おい、日当上がったかなんて出ると、いやあ、こうやるのですね。日当上がったか、しょうちゅう出せなんて、こうなっちゃうのです、話としては。ところが、聞いてみれば、少なくともここで申し上げるのをはばかるような金額でございましょう。そうしたものが今事務費の中で消化されつつあるわけです。だから、なった人たちはある意味では大変だな、迷惑だなと、金額を聞きますと僕たちは思ったりします。しかし、それはみんなのためだから我慢してやってくれ、済まぬな、こういうことで頼まざるを得ないのがいわゆる地域の実情です。連絡員にしたって、評価員にしたって。これは私も痛いほどわかっている。  ところが、事務費はこれで定額化しますよ、お金はもうこれ以上出しませんよ、口だけはどんどん出しますよ、ベースアップはやりなさい、合理化やりなさい、これでは今の大蔵省よりかもっとひどいですよ。大臣テレビのキャスターになっては困るのですよ。だから、そういった意味合いで、ことしはやむを得ない、しかし、今後何とかして、事情さえ許せば、いわゆる現在の方式に、もとに戻して、共済の方々が、共済組合が、連合会の職員の方々が安心して働ける、安心して共済制度を推進できる、そういう環境づくりに努力するなんということは、ここではお答えいただけませんか。
  226. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 これは六十年度の予算編成に当たりまして非常にいろいろ議論を重ねまして、そしてまた農業委員会等、他の農業関係の諸団体につきましてのいろいろな助成の方式というものとの横並びも含めましてこういう方式をとったということでございまして、私どもこの方式で安定的に農業共済団体に対します助成を将来とも続けてまいりたいというふうに思っております。
  227. 上西和郎

    ○上西委員 それ以上のお答えはどうもいただけそうにありません。  ただ、私なんかみたいに地域で農業共済組合の実情を見ていますと、やはりよく聞くのですよ。もっと職員の研修があってほしい、これは中からも聞こえます。共済制度のPRをもっとしてほしい。わかりませんから、なかなか。そしてまた優秀な人材、とりわけ獣医師なんという方々はいい方にたくさんおいでいただくのは大変でしょう。そういうことになると、事務費と獣医師の賃金とちょっと関係が遠くなるようでありますけれども、補助金と密接な関係にある。そうしますと、しばしば局長さんあたりが横並びとおっしゃるけれども、横並びも時によって必要かもしれませんけれども、これは、この制度はと言って、胸を張ってこの予算はというようなことできちっとしていただきたいと思うのですよ。  結果としてやや削られた、それでもあれだけ農水省頑張ってくれたのなら、おれたちも頑張ってと、こうなるのか、いや、横並びでやむを得ぬのだからこれだと言って、何だと言って反発を受けるようないわゆる予算なりその他の削減あるいは定額化ということになるのか。これは相手が事業団体——事業というのは、やはり、よくするも悪くするも人間ですよ。そうした意味合いで、農業共済の各種団体あるいはそこの役職員の方々が、農水省があれだけ頑張ったけれどもこうならざるを得なかったのならと、こうなるのか、何だ、これだけおれたちが一生懸命やっているのにすぱっと上の方で切られてしまってという不満と反発が残るのか、大変微妙なところでありますので、私、これ以上のお答えをいただこうと思いませんが、今後、大臣以下、この種のことについてもっと積極的に御努力いただくことをお願いを申し上げておきたいと思います。  最後に、その他二、三お尋ねしておきたいのですが、補助金などを利用したそれぞれのものがありますね。そうしたものが必ずしも農業共済に加入をしていないという傾向が間々見受けられるのでありますが、何も私はこの民主主義の世の中、強制加入なんということは言いませんけれども、片一方、やはり農林水産省系列から出ていっている資金が活用されているそれらの事業、施策、そうしたものが農業共済の方といわゆる連動するようなことについてはお考えはおありなのかどうか、ちょっと見解をお示しいただきたいと思います。
  228. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 共済への加入を促進いたしますためには、まず第一義的には、やはり制度それ自体を農家にとって魅力のあるものにいたしまして、自発的な加入を確保するということが肝要であると考えております。  お尋ねにございましたような補助事業なり融資制度の実施に当たって共済加入を条件とすることについてはどうか、これは実は、幾つかの施策については、現にそういう助成策の目的が災害によって達成されなくなっては困るという観点から、共済加入を条件としております施策も若干ございますけれども、これをあらゆる施策について一律に義務づけることにつきましては、関係者の理解が広く得られるかどうか、あるいはまた、結果的に共済未加入農家とか加入率の低い地域で補助事業なり融資制度が行われないというようなことにならないかというような問題もございますので、各種の事業なり融資のそれぞれの性格に応じまして検討していく必要があろうかと思っております。  今までこの辺の議論というのは実は余りなかったわけでございますけれども、補助目的なり制度融資をいたしましたその目的を担保するための一つの手段というようなことで共済の加入促進と関連づけるというようなことは、今後やはり検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  229. 上西和郎

    ○上西委員 ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。  次は、基準収量のとり方、これが果たして妥当なのか。いろいろ共済がございますけれども、例えば大豆しかり、私の選挙区でいえば蚕繭の収量のとり方なんかについても、やはり加入農家生産農家の方々からいろんな意見があるのです。この基準収量のとり方については、現状、完全に固定化してこのままいかれるのか、そういった声なども含めて意見を聞いておるので、今後検討していくというようなお考えはありや否や、そのところを簡潔にお答えいただきたいと思うのです。
  230. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 この基準単収のとり方につきましては過去にもいろいろ御議論がございまして、そういった御議論を全部踏まえまして、考え方としては、その年の天候が通常に経過をし、肥培管理等が通常に行われることを前提として、通常客観的に期待される収穫量、すなわち平年収量として定めるということにいたしておりまして、具体的な水準につきましては、総体として統計的に把握をされました平年収量とおおむね一致をするように、組合等が農家の申告単収でありますとか土地条件等を総合的に勘案して、実態に即した適正な水準に設定するように努めているわけでございます。  問題は、よくございますのは、被害を受けました農家の方々の実感として、豊作のときの単収あるいはまた被害なかりせば単収と申しますか、そういうものをベースとして共済金の支払いを期待するというような傾向がございまして、その点から時として御不満の声が出るということが事実あるわけでございますが、保険の設計ということとも関連をいたすわけでございますが、平年収量をベースとして適正な補てんを行うというのがこの制度の基本的な性格でございますので、今のような考え方で設定を行うことが適当であるというふうに考えておるわけでございます。
  231. 上西和郎

    ○上西委員 それはそれ、長い歴史もあるでしょうから。ただやはり、加入している農家の方々の気持ち、実情、そうしたことから、その辺のことについても十二分の幅広いお考えというのをお持ちをいただいて、時と場合によっては御検討もぜひ、こういう御要望を申し上げておきます。  最後に、もう今や日本じゅうに有名になってきましたけれども、桜島の異常降灰、これの被害というのは連年それはもう目を覆うものがあります。この桜島降灰による損害、被害というものは、家畜共済の疫病発生みたいに全額政府が負担をする、補償する、こういったようなことはお考えにならないのかどうか、検討されたことがあるかどうか、お尋ねしたいと思います。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  232. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 家畜共済におきましては、共済団体による危険分散が難しい法定伝染病でございますとか激甚な天災を異常事故としまして、これらによる損害は国が全額責任分担する、こういう仕組みをとっておるわけでございます。家畜の法定伝染病ということでございますと全国どこでいつ発生するかわからない、それを全国的に国の段階で再保険料をいただきながら危険分散するということでございますが、お尋ねの中にもございましたように、今や全国的に有名になっております桜島、ああいうのは全国ほかに例がございませんものでございますから、家畜の法定伝染病と同日に考えることはちょっと難しいのではないかと思っております。  端的に申せば、いつどこで起きるかわからない異常事故というものを切り離して国の段階で危険分散を図るという方式をとっておるわけでございますが、そういう全国的に危険分散することに応じましたそれなりの再保険料を国が徴収をしているということになるわけでございまして、そういう意味で、特定地域の極めて特定をいたしております被害を異常事故として切り離す、そしてそれを共済制度の中で全額国庫負担というような形で見るというようなことは、保険の仕組みをとっている以上はやはり困難ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  233. 上西和郎

    ○上西委員 保険の制度、システムからいったも今のお答え以上のものは出ないと思います。  ただ、私は率直に農林水産委員会の中で申し上げておきたいのは、桜島はどこにも引っ越していかぬのですね。あそこでしか噴いてくれない。あの灰を一回東京へ持ってきてはらまきたい気持ちがあるのです。そうするともっと首相以下お考えいただけるのじゃないかと思うのですが、やむを得ません。ただ、私としては、この農業共済の枠を越えてでも日本政府全体があの桜島の異常降灰については対処するようなお考えをぜひ持っていただきたい。そのためには、一番被害が出ておるのは何と言ったって農作物でございますので、佐藤大臣以下がそうした声を閣議で他の省庁あたりにもぜひ積極的にお働きかけをいただいて、桜島周辺の住民の皆さん方、農家の皆さん方に温かい行政の光を当てていただく、そのことに対する御努力を心からお願いをし、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  234. 今井勇

    今井委員長 次に、水谷弘君。
  235. 水谷弘

    ○水谷委員 私は、農業災害補償法の一部を改正する法律案について順次御質問をいたすわけでございますが、今回の主な改正点は、第一に共済掛金率の設定方式の改善、それから第二に農作物共済掛金の国庫負担方式の合理化、そして第三に家畜共済の改善、第四に果樹共済の改善、第五に園芸施設共済の改善、この五点に要約されるわけであります。  この改正の中で一歩前進的な面が見られるわけでありますが、特に、農作物共済の共済掛金国庫負担方式の合理化という問題、それからまた、政令事項になるわけでありますが水稲共済における当然加入基準の引き上げ、また、予算に関連した農業共済事業の効率化と農業共済予算における問題、これらを見ますと農業災害補償制度の根幹にかかわる重大な問題が多く織り込まれておりまして、制度及び組織の崩壊につながるおそれがある、私はこういうことを大変憂うるものでありますが、以下、具体的に何点かにわたってそれを指摘し、質問をいたしたいと思っております。  初めに大臣にお伺いをいたします。  五十九年産の稲作は、大変天候に恵まれて作況指数も一〇八、五年ぶりの豊作、農家もめったに豊作とはおっしゃいませんが、正直本当によかったという声が伝わってきております。しかし、農作物というのは最も自然的条件に影響をされるものであります。また、災害が一回発生すると、作物はもちろんでありますけれども、農地、農業用施設、あらゆる生産基盤に大きな被害をもたらすわけであります。幸い昨年はそういう状況でありましたので、共済金の支払いもぐんと抑えられて、来年九月には一般会計に三百億円余も繰り戻すことが可能ではないか、このようにまで言われているわけであります。  そこで、農林水産業被害に対する国の災害対策全体を見てみますと、農作物の被害に対する農業災害補償制度を初め各般の災害対策制度、災害復旧制度、また災害金融制度や天災融資法の制度等がございます。しかし、この中でも特にこの農作物共済というものは農家にとって大変な位置を占めておりまして、今までも、掛金の負担割合も国が六、農家が四ということでずっと維持をしてきた。国庫負担率は、水稲については平均五九%、陸稲は七〇%、麦は六八%、畑作物は六〇%ということで、確かにこれは国民健康保険や雇用保険また公的保険、いろいろな共済制度に比べますと相当国庫負担率が高い。しかし、先ほども申し上げましたような災害に見舞われるような環境の中での対象ということで、今日ここまで政府もそれなりに努力をし取り組んでこられた。そしてまた、このことが農家にとっても大変大きな役割を持って、農家経済また農業の再生産、あらゆるものについて貢献をしてきたわけであります。  つい二、三日前、ある共済組合の参事さんにお会いしまして、そのときにも、日本で有名なものが二つあるんだ、一つは富士山で、もう一つ農業災害補償制度だ。農業災害補償制度というのは我が国にとってそれほど大変なすばらしい制度なんだ。今までそういう中で私は三十年間この仕事に携わってきた、しかし今回の改正は許せませんねということを率直な意見として私におっしゃったわけであります。  確かに農業共済関係予算、これが農林水産関係予算の中で大きな範囲を占めておりまして、ずっと農林水産関係予算が縮減されてきている中で、臨調行革路線、また政府の財政負担の削減方針に沿って今回の見直しが行われたと考えるわけです。先ほども申し上げましたように、我が国の地理的条件、また気象条件、まことに自然災害を受けやすい我が国の特殊な条件の中で、補助金の見直し等の行革審の立場からの制度改正、これ以外に、私はこの制度改正のいわゆる悪い面、前進面は評価をいたしますが、後退面はそういうところからしか出てきていないと考えるわけです。  そこで、将来大きな問題を残すと指摘をしておかなければならないのですが、大臣忌憚なく、この改正によって農家及び農家経済がさらに安定し発展していくんだという御確信がおありになるのかどうか、それを最初にお伺いをしておきたいと思うのであります。
  236. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生お答えいたします。  先生からいろいろ御指摘がありましたことでございますが、農業災害補償制度については、農業事情及び農家の保険需要が変化してきており、これに即応した制度の改善を求めるとともに、厳しい財政事情のもとでより効率的な制度とすることが必要となってきたものである。  そんなことで、これらの状況を考えまして、農業災害補償制度について農業事情等の実態に即応した制度運営の改善合理化を図り、実は六十年度あるいは六十一年度から次の五つの施策を実施するように考えております。  一つは共済掛金率の設定方式の改善、次に、農作物共済の共済掛金国庫負担方式の合理化、家畜共済の改善、果樹共済の改善、園芸施設共済の改善というものを実施することとしたものでございます。
  237. 水谷弘

    ○水谷委員 私が御質問したことに対するお答え一つ漏れております。その内容についてお伺いをしたのではなくて、この改正が、いわゆる農家の再生産を可能にし、さらにまた農家経済を発展させるのに大きく役立つのかどうか、大臣の御確信はいかがか、このように伺ったわけでありますので、その点をお答えいただきたいと思います。
  238. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  農業災害補償制度につきましては、その効率的かつ健全な運営に努めますとともに、制度の機能を十分に発揮することにより、農家経営安定のための制度として真に定着するよう努めてまいりたいと考えております。
  239. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣も内心では国庫負担の負担率の低下等については大変苦慮されているのであろうと私は思います。やはりこれは農政の後退につながる大事な問題として指摘をしておかなければならないと思いますので、申し上げたわけであります。  次に、危険段階別の共済掛金率の設定方式が今回導入をされたわけでありますが、その点について何点か御質問をいたします。  今回の改正では、組合員等の間に、原則一律である共済掛金率について農家の被害実態に応じた共済掛金率を設定できるようにし、事故をほとんど出してない農家については共済掛金率を低くしてくれといういろいろな方面の要望等がありました。そのことに沿った改善という面からすれば一歩前進と考えられます。これは、被害の比較的少ない優良農家が損をしない、こういう面では多くの配慮をしたものと考えられます。  しかし、次に何点が御指摘をいたしますが、この危険段階別共済掛金率の実施には、多くの問題があると私は思っております。  まず第一に、共済事故の発生状況その他危険の程度を区分する要因となっている事項に応じて危険段階の別を定めていくわけでありますけれども農家グループを細分化して、いわゆる稲作に見られる集落組織に亀裂が生ずることがないのかどうか、これが第一番の指摘であります。  次は、小規模農家、兼業農家は、一般的には被害率が高くて、いわゆる料率の細分化によれば高い掛金率となる、こういうことが予測されるわけであります。今回の政令によって定めようとされている当然加入基準の引き上げ、これらと相まって、ここで共済離れをより一層引き起こすのではないか、こういう心配があるわけであります。この点についてどう把握されておられるか、お尋ねをいたします。  第三点として、家畜共済では、農家の飼育技術の差によって被害率の格差がかなり大きく出てまいります。農家個々の過去の被害実績、これで掛金に格差をつけてほしい、こういう要望があるわけですけれども、無事故割引の方が農家にとって理解されやすいのではないか、こういう指摘があります。また、果樹共済についてもかなり技術格差がございます。こういう現況の中で、現在では高い技術を持っている農家が概してこの制度に加入をしていない、こういう現象があるわけでありますが、この料率の細分化で加入促進が図られるかどうか、この点についてお伺いをいたしておきます。  それから、第四点としまして、比較的制度発足が新しい果樹共済、畑作物共済、園芸施設共済、これらについてはまだ発足が新しいので、危険段階基準共済掛金率の設定区分、それを誘導してくるいわゆるデータ、そういうものが果たして明確になっているのかどうか。また、被害実績のない新規加入者の掛金率というのはどういうふうにして適用されていくのか、こういう点についてもお伺いをしておきたいと思います。  それからもう一点、今回の危険段階別の掛金率は、これを実施希望する組合に対して、強制的ではなくて、条件がそろったものに対してそれを移行していく、こういうふうになっておりますけれども、実施希望組合に対して具体的に政府はどのように指導していかれようとしているのか。  以上五点についてお伺いをいたします。
  240. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  料率の細分化が集落組織に亀裂を生じさせるようなことにならないかということでございますが、私どもそのような心配はないというふうに考えております。  一つは、この方式を導入をするかどうかはもちろんのこと、危険段階をどのくらいの数設定をするか、あるいは危険段階ごとの危険度の差に対応する掛金率の刻みをどうするかというようなこと等につきましては、一定の基準と申しますか、枠の中で、組合員等の意思を十分に反映した形で組合等が自主的に定めるということにいたしておりまして、強制的な実施なり画一的な実施というようなことを考えてはおらないわけでございます。  第二に、危険段階の区分は農家のグループごとだけではございませんで、集落のグループごとに行うことも可能とするように考えております。これによりまして、同一集落内では全農家が同一の掛金率になるように集落単位で危険段階を区分をするということも可能にいたしております。  そしてまた第三に、こういった掛金率の新しい設定の仕方を行おうとします場合には、地域の実情をよく御存じの知事さんの認可にかからしめるということにいたしておりますので、そういったことを前提にいたしまして適切に制度を運営すれば、集落組織に亀裂を生じさせるというようなことがないように運営ができるものというふうに考えております。  それから、優良農家は掛金率が料率の細分化によって低くなるかもしれないけれども、掛金率が高いグループに仕分けされた農家というものは、当然加入基準の引き上げと相まって共済離れを起こすのではないかという点の御指摘でございますけれども、今回の料率の細分化は、兼業化とかあるいは担い手の高齢化というものが進みます中で、近年、気象条件がよろしいときには表面化をいたしません農家間の技術格差というようなものが、気象条件が悪くなりますと表面化をしまして、被害率の格差が出てくるということが一つの背景になっておるわけでございます。  ただ、農家間の被害率の格差と申しましても、小規模農家あるいは兼業農家だから一概に被害率が高いというふうにも必ずしも言えないわけでございまして、立地条件等の自然条件もございますので、一概にそういうわけには断定はできないものというふうに考えております。  いずれにいたしましても、危険段階別にグループ分けをして掛金率を設定をするということは、農家間の負担の公平を図ろうとするものでございますので、それぞれの組合におきまして、その負担の公平感というものを組合員の皆さん方に許容されるような姿で設定をするということ、共済組合としても当然そのようにお考えになるだろうと思いますし、これによりまして共済離れを引き起こすというようなことはなかろうというふうに思っております。  なお、技術力の高い農家につきましては、当然料率の細分化が行われれば農家の加入の促進にも資することになるだろうというふうに考えております。無事故割引というようなやり方も、この料率の細分化の一つのやり方として取り込めるような形でこれを運用をいたしたいと思っておるわけでございます。  それから、比較的スタートした時期が新しい果樹なり畑作あるいは園芸といったような分野で細分化に必要なデータなり実績というものが蓄積されているか、また、一体どういうふうに細分化を実際やろうとしておるのかというお尋ねでございます。  私ども今考えておりますのは、過去一定年間の組合員等の平均被害率もしくは共済金の支払い頻度と申しますか、裏から申せば無事故年数ということになりますが、こういったものを基礎にし、あるいはまた集落の平均被害率というようなものを基礎にいたしまして危険段階を設定することを考えておるわけでございますが、その場合に、この危険段階を決める基礎データなりをとる基準年次としましては、過去五、六年間のデータ、余り長くとりますよりも、もともと負担の公平感を持たせるということでございますので、過去五、六年間程度のデータでよろしいのではないか。そういうことからいたしますと、果樹共済は四十七年から、畑作なり園芸は五十三年から実行しておりますし、組合の文書規則ではいろいろな基本的な書類は五年保存ということになっておりますので、大体データは整っているというふうに考えておるわけでございます。  最後に、実施を希望する組合に対して政府はどういう方針指導するのかということでございますが、これは運営の当事者でございます組合等が、個々の共済事業の実態に照らしまして、例えば地域内の農家の被害の発生状況に大きな格差が生じている場合など、共済事業の円滑な運営を図る上から必要がある場合に、組合員等の方々の意思を十分反映させた形で行うことが適当だというふうに考えておりまして、先ほど申しましたようなデータのとり方も含めまして、具体的な設定要領の基準を示す等によりまして都道府県を通じて十分指導してまいりたいと存じております。いろいろな形がとれるようにいたしておりますので、基準は示しますけれども、画一的な強制とか指導にわならないように、弾力的な運営ができるようにしたいと思っております。
  241. 水谷弘

    ○水谷委員 どうか組合員の中に不公平感や共済に対するいろいろな疑問等が起きませんように、きめ細かく運用を進めていかなければならないと思いますので、その点を申し上げておきます。  次に、農作物共済の共済掛金国庫負担方式の合理化、この点について何点か伺いたいと思います。  今回の国庫負担方式の変更は大変な問題であります。制度の根幹にも触れるような大きな問題であるわけであります。今回の負担率の引き下げによって、例えば水稲共済ならば現行の五九から五四、こうなりますと、これはマクロな答えになりますが、農家の負担は一体どのくらいになると推計をされておるか、一戸平均でどのくらいの負担のアップになるのか、お尋ねをいたしたいと思います。地域によっては相当掛金がアップになるようなところも出てくるのではないかと、大変心配するわけであります。  五年ぶりの豊作、しかしながら過去四年間大変な不作が続いてきたわけであります。農家の経済は、去年一年くらいの豊作ではとても取り返しのつかない大変な打撃を受けている、こういうときに多少であっても共済掛金の引き上げを行うのは、時期として非常に悪い、このように大変不満なのでありますけれども、最初に、今の二点についてお伺いしておきたいと思います。
  242. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 共済掛金の国庫負担の方式の変更によりまして、農家負担にどの程度影響が出るかということでございます。  実は、水稲なり陸稲につきましては六十年に料率の改定がございまして、そこで料率が変化し、そしてまた六十一年度に国庫負担の方式を変えることを御提案申し上げておりますので、その辺も関係がございますが、国庫負担方式の変更のみによる影響ということで申し上げますと、全国平均で十アール当たり二百円、水稲の引き受けの平均面積が六十一アールくらいでございますから一戸当たりにいたしますと約千二百五十円程度増加になります。  ただ、これは今お話しがございましたように超過累進の率を圧縮するという形になっておりますので、共済掛金率の高い地域と低い地域では影響が違ってまいります。北海道について申しますと、十アール当たり農家負担の増加額が八百七十円でございます。これが全国で最高でございます。北海道におきましては、水稲の引き受けの面積も三百三十五アールということで規模が非常に大きゅうございますので、一戸当たりにいたしますと二万九千百円の増でございます。他方、福井とか石川県、この辺になりますと二十円とか二十三円というような十アール当たりの増加でございます。一戸当たりで計算をいたしますと石川県の百五十円の増というのが最も低い増加額でございます。
  243. 水谷弘

    ○水谷委員 今のように、地域によって相当の差が出てきているわけであります。特に北海道、東北については、冷害等で過去数年間大変な苦しみをされてきたわけであります。そういう点ではこの改定は非常にまずいと思わざるを得ないわけです。  今回の改正の中で、さらに超過累進制の共済掛金率の区分を、水稲にあっては五段階から三段階、陸稲、麦にあっては七段階から五段階に圧縮されてきたわけです。そして、水稲では一%刻みの段階を二%刻みにされたわけであります。本来ならもっと多くの段階に区分する必要がある、これは当然考えられるわけですが、どうしてこのようにされたのか、お伺いをしておきたいと思います。
  244. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回の農作物共済掛金国庫負担方式の改正につきましては、基準共済掛金率の最高のところ、水稲で申しますと四%、陸稲で申しますと一五%、麦で一二%、この最高のところを変えませんで、そしてまた国庫負担割合の刻みも従来どおり五%刻みといたしまして、これに対応するランクごとの基準共済掛金率の幅がほぼ平等になるように配分をして定めております。  超過累進制は、相対的に高い掛金率に対しましてより手厚く国庫負担をすることによりまして農家負担をある程度平準化しようとするものでございますが、今回仮に基準共済掛金率の刻みを一%とした場合には、農家負担への影響が特に掛金率の高い地域に集中的にあらわれることになりまして、地域間の公平感という点から見て適当ではないのではないかと判断をいたしまして、先ほど申し上げましたような設定の仕方をいたしたわけでございます。
  245. 水谷弘

    ○水谷委員 次に参ります。  共済全般にかかわる問題として私の方から申し上げたいことがあります。それは、災害が起きてからその災害に対して手当てをする、それももちろん共済の事業の中の一番大事な事業でありますけれども、病虫害とか災害に強い農作物、米とか麦とか災害に強い品種を開発し奨励し普及していくことによって災害から農作物を守るということも、また農業災害補償制度の中の大事な役割ではないか、このように私は考えるわけであります。  五十九年産の水稲共済は、全国で約六十六億五千万円の共済金が農家に支払われております。その中で関東地方一都六県、この共済金の支払い額が十七億八千万円、かなりの金額になります。もちろん面積も大きいし、単なる地域比率だけでは申し上げられませんけれども、そのうちでも、私の地元である栃木県の共済金支払い金額は約五億六千万円、隣の茨城では約四億、群馬では三億五千万、このようになっている中で五億六千万というのは非常に多い、こういうことでいろいろ調べてみました。関東に比較的被害が多いその理由は、一部にしま葉枯れ病が発生して被害を受けたためだという原因の調査でありますけれども、栃木県の場合もこれが非常に多かったわけであります。  それで、現在栃木県で水稲の作付を見てみますと、このしま葉枯れ病に非常に対応のできるものと対応の難しいものとありますが、やや弱いものという品種で初星と日本晴というのがあります。それから中程度のものでアキニシキ、やや強いのがコシヒカリ、そしてうんと強いのが星の光、星の光は非常に新しい品種であります。こういうふうになっておりまして、特に私の住む県南方面ではこの星の光が、例年しま葉枯れ病に今までやられてきたコシヒカリ等をおつくりになっていた農家が、非常に病害虫に強い、それから多収穫である、また非常に強稈である、そういうことから、五十八年度の作付が全体の水稲の二・二%でございました。ところが五十九年度には一二・六%までこの作付面積が上がっております。  これは今申し上げましたように病害虫に非常に強い、多収穫品種である、こういうことから我が県、特に県南方面では農家の皆さん方の積極的な取り組みがあるわけであります。そういう意味で、病害虫に強い、そしてまた、私もこの米を何度が食べてみましたが非常においしい、コシヒカリに負けずとも劣らず立派なお米であります。  そこで、きょうは経済局長、ほかに食糧庁長官もおいでいただいておりますので、これは食糧庁にうんと御尽力をいただくようなお願いみたいな質問になるわけでありますけれども、現在この星の光は三類でございまして、星の光の品種を県内に広く普及していくためには何とか二類に格上げをしていかなければならないのではないか。もちろん二類格上げのためのいろいろな条件については私も存じております。過去三年自主流通数量の平均が千トン以上にならなければならないとか、そういういろいろな要件がございます。しかし、今申し上げましたようなことを私はきょうは長官に申し上げて、経済局とお力を合わせていただきながら、いわゆる災害が大き過ぎる、共済金支払い金額が大き過ぎる、その原因一つである病害虫に強い品種を多く普及していくべきであるという観点から、最初にお伺いをしておきたいと思うのであります。
  246. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のように、米につきまして類を分けまして格差をつけております。これは農家の方から買い入れるときに格差をつけるだけではございませんで、売ってまいります場合にもそれだけ格差をつけて高く売っておりますので、そういう形でいわば消費者の方に評価をしていただくということが大事なわけでございます。  先生も今おっしゃいましたように、その評価の仕方としましては、自主流通の市場へ出してみて、そこでそれなりの高い評価を受ける、それが定着をするというときを見ましてこの類を動かすということをやっておりますが、御承知のように、星の光の場合、五十九年に県のいわば仕分け品種にようやくなりまして、トン数は四万数千トンぐらい生産されておりますが、実は残念ながら自主流通にはまだほとんど回ってないという現状でございます。  食味その他につきましてもいろいろな検定をいたしておりますので、今先生お話しになりましたようなことで自主流通の市場の中でそれなりの評価をされ、またそれが定着をいたしますれば、そういういわば格を上げるというようなことも可能でございます。これは比較的厳格にやっておりますので、各県、皆さんそういう御要望があるわけでございますが、私ども今考えております幾つかの要件、先生承知の要件につきまして、それがどういう形で実現されるか、そういう実現の度合いを見て判断をさせていただきたいと思います。
  247. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 私ども、水稲が病虫害の被害にかからないような状態が生まれるということについては一般的には望ましいことだと考えておるわけでございますけれども、米の類別価格と申しますのは、今食糧庁長官からお話がございましたように、品質とか食味とかいうものを含めました需要者側の評価ということを基準にして決めておられる問題でございます。  農業共済のサイドから申しますと、被害が生ずれば共済金が支払われるわけでございますが、それは一つの被害率の実績になりまして、三年ごとの共済掛金率の計算のときに過去二十年間の実績ということでそれが入ってまいるということでございまして、国が大幅な助成はしておりますけれども、共済金の支払いの実績が多ければ掛金率がそれだけ高くなるという形で、災害補償制度の中では一つの保険の仕組みとしては自己完結をいたしておりますので、先生のお気持ちは大変よくわかるのでございますけれども、私ども立場で食糧庁の価格の決定に、耐病性という観点から価格に一つの配慮を加えろということはちょっと申し上げにくいというのが正直なところでございます。
  248. 水谷弘

    ○水谷委員 価格の決定まで経済局長にお願いをするのではなく、総合的に、農水省全体で病害虫に強い品種をより奨励する指導をお願いしたい、こういうことでございます。  同じような観点で、麦についても栃木県は例年他の県に比べて、北関東三県の中でも非常に大きな共済金の支払いが行われております。この中でしま萎縮病、もちろんひょう害もありますけれども、これによる、いわゆるウイルスの病気による被害が相当発生しております。実は私、一昨日、県南方面を調査いたしました。昨日は民社党の神田先生も被害農家のところへ訪れられたりして調査をされておりますけれども、今回のビール麦、二条大麦に対する病気の発生が非常にひどいのです。発生率が六三・六%、地域は栃木市農協の地域でありますけれども、これだけの発生をしておるのです。  この二条大麦、いわゆるビール麦についても、本県では、栃木県が一生懸命努力をいたしまして新たな品種として関東二条二十二号というしま萎縮病に対して非常に強い品種を改良いたしまして、奨励をしていかなければならないという状況に今なってきているわけでありますが、これは契約栽培でございまして、ビール会社がまだ醸造試験、適性検査等が終わってないからということで、ことしも非常に契約数量が少なくて、農家にしてみれば、せっかく県が奨励をしている病害虫に非常に強いこの奨励品種を何とかつくりたいという気持ちがあっても、片方ビール会社が契約を大変渋っておる。こういうようなことで、この問題がちっとも前進をしないところに今来ているわけであります。  このようなことを総合的に御指導をいただいている農蚕園芸局長から、私が今申し上げたことを御認識といいますか御理解をいただきながら、さらに、何でこんなことをここで申し上げているかといえば、冒頭申し上げたいわゆる災害補償制度の中に、やはりひとつこういう病害虫に強い品種というものを、これは何も栃木県に限らず全国的に積極的に推進をしていただきたい、こういう観点で申し上げているわけでございますので、お答えをいただきたいと思います。
  249. 関谷俊作

    関谷政府委員 御指摘のございました関東二条二十二号の問題でございます。これは先生のお話しございましたように、栃木県農試が育成した新品種で、麦のしま萎縮病の抵抗性の面で大変期待の持てる品種でございます。  これのいわば普及の手順なり段階の問題でございますが、通常でございますと、奨励品種決定基本調査を原則として三年、またそれの後に醸造試験通常三年、こういうような過程を経まして、麦としての優良性と、一方、醸造面から適性があるかどうか、ビール会社がうまく使えるかどうか、こういう点を確認の上で普及段階に入るわけでございます。  この二十二号の場合には、お尋ねの中にもございましたような最近のしま萎縮病の激発、そういうような過程に対処しまして、この普及段階を少し早める必要があろう、こういう判断で関係者と協議をしておりまして、現在、五十九年産からその奨励品種決定基本調査を始めたわけでございますが、これは通常三年かかるところを、六十年産、二年目の成績でできるだけ結論を出そう、こういうことで、簡単に言えばこれは一年縮める。それから醸造試験の方でございますが、これも非常に早めたわけでございまして、五十九年産麦で既に小規模の醸造試験を実施しております。その次に大量醸造試験という本格的な醸造試験に入るわけでございますが、これも通常よりは一年繰り上げまして六十年産から着手をしよう、こういうふうなことで、今年産麦から大量醸造試験に取りかかろう、こういうことでございます。  一方、いわゆるビール会社が試作それから本格的につくるという段階につきましては、現在の予定としましては、六十一年産からビール会社としても試作中の品種ということで取り上げまして、六十一年産につきましては大量醸造試験用としまして六十年度よりさらに大きな数量を買い入れる、こういうような手順で、全体少なくとも一年は早めていくということで、御指摘ございましたような、特に最近のしま萎縮病に対応しましては、こういう優秀な品種についてはできるだけ早く普及の方に持っていくということで、関係者と協議しながら進めておりますが、これからも御指摘のような点、十分留意しまして指導してまいりたいと思います。
  250. 水谷弘

    ○水谷委員 真剣にお取り組みをいただいていることがよくわかりました。感謝を申し上げます。どうぞ、より一層お取り組みをお願いを申し上げたいと思います。  さて、時間が迫ってきておりますが、まだ重大な問題がありますので、引き続き何点が御指摘をいたします。  水稲共済の当然加入基準の引き上げ、このことについていろいろな問題がございます。任意加入者となる農家数が六万戸を超えるのではないか、また、規模の小さい農家の多い地域、特に都市近郊とかこういう非常に規模の小さい農家ばかり抱えている共済組合、そういうところがたくさんあるわけであります。広域合併という方向が出ておりますけれども、種々の問題があってなかなかそれができない。私が一昨日訪れた共済組合も、やはり周辺が都市部でございまして、このことを一番心配をいたしておりました。全国的に見れば、これが散らばっているわけですから、マクロに見れば問題は小さいとお考えになるかもしれませんが、局地的に見ると非常に問題がある。これを、いわゆる政令であれこういう形で引き上げをするということは、これは私は重大問題だなとしみじみ感じているところであります。  そういう意味で、現在ですら今度の改正基準に達しない基準で都道府県がその基準を設けている、そういう実情も多くあるわけでありますが、この点について農水省は、いや問題は起こらない、明確にかくかくしかじか心配ないというふうにお考えであれば、その点をお伺いをいたしたいと思います。
  251. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 当然加入基準の引き上げにつきましては、現在十アール以上というふうに政令でなっておりまして、実際上は十五アールが最低の基準になっておるわけでございますが、これを二十アールまで引き上げるということで考えておるわけでございます。  考え方につきましては、やはり生産性の高い農業の担い手をつくっていくという基本的な政策方向にも照らしまして、自家飯米を主体に生産をしている農家まで当然加入というふうに強制をする必要は制度上なかろう、こういうことでございます。  一部の組合におかれまして、そういうことになると、もちろん任意加入の道は開かれているし、それからまた国庫負担の面でも差はないということであるにしても、一部に脱落が起きるのではないかというような御懸念があることも私ども承知はいたしておりますが、制度全体として見まして、今回国庫負担方式の合理化をやることにいたしておりますけれども、その後におきましても、他の制度に類を見ない高率な助成をしているわけでございますし、やはり組合におかれて、従来にも増して任意加入の農家の方々の加入の促進につきまして、制度趣旨なりあるいはまた農家がこれによって受けられる災害に対する補償といったようなものを周知徹底をしていただいて、組合の組織基盤をぜひ整備をしていただきたい。  また、都市近郊などで共済組合の基盤が現在の規模ではもうなかなか成り立ちにくいというようなところもあろうかと思いますが、そういうところにつきましては、やはり広域合併というようなものを通じまして組織基盤の確保充実を図っていただきたい、また、そのように私ども指導なりお手伝いをしたいというふうに思っておるわけでございます。  やはりそういった加入促進というのは、当然加入制度のございます農作物共済とか蚕繭とかいうもの以外は任意加入でございますので、やはり共済制度全体の農家に対する理解を深めるということがまた任意加入の共済の推進に役立つ面もあるわけでございまして、そういうことで、これはまた団体の方も御苦労をいただく面もあろうかと思いますけれども、そういうことを通じて本当に組合員の方々に制度趣旨も徹底され、任意共済も含めた共済事業全体が発展していく基盤ができるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  252. 水谷弘

    ○水谷委員 米の需給計画の中には、自家飯米農家、小規模販売農家すべてが含まれて我が国の基本食糧である米の需給が成立をしているわけでありまして、やはり中核農家育成、規模拡大、こういう方向はもちろん重要でありますけれども、あらゆる面において、こういうすそ野で支えていただいているたくさんの人たちに対しても、今後も同じでありますが、農水省のきめ細かな対応が必要であると私は思うわけです。当然加入から外せば任意加入になり、任意加入になればなかなか加入が促進されない、そういうおそれがあるので当然加入という発想があるわけでありまして、こうしても任意加入もどんどん進むだろう、このお考えは私はちょっといただけないなと思っております。  次に、果樹共済の点で申し上げたいと思うのでありますが、時間が迫っておりますので、具体的な問題についてちょっと御指摘をしたいと思います。  栃木県ではナシ生産農家が非常に多いわけであります。そのナシ生産農家の中で特に今進んでいますのは防ひょう網の設置でございます。これが非常な勢いで、農家の皆さんも災害から守ろうということで御自分で真剣に取り組んでおられる、十アール当たりで約四十万円ぐらいの費用が防ひょう網設置にはかかるわけです。その防ひょう網設置も、例えば宇都宮市なんかを見ますと、全体の栽培面積百七十ヘクタールのうち、四四%に当たる七十五ヘクタールは既に防ひょう網が設置されております。こうなると被害は極端に減少いたします。  その場合に、現在の共済掛金の防災施設割引三〇%、これを十アール当たりに換算しますと約六千円程度、これでは、十アールで四十万もかかる防ひょう網設置が今後どんどん普及してまいりますが、そうなった場合に、果樹共済に対する評価はますます低下をしてまいる。特に栃木県の場合は、暴風雨だとか凍霜害だとかというものには関係ございません。このひょう害に特定される災害が最も多いわけであります。そうなると、防ひょう網ができた、果樹共済に入る必要はない、まして割引率が三〇%じゃもう当然入る必要はないということになるわけです。  ますますこの防ひょう網設置が進んでおります。そうなってきますと、現在、栃木県のこの共済の引受率を見ますと、ナシを見ますと、県全体で四百七十二ヘクタール、六〇・七%が引受率になっておりますが、防ひょう網が進んでまいりますとこれがどんどん落ちていくのではないかという心配があるわけです。  そういうことで、このような施設が設置されているナシ生産農家に対する、その面積に対する共済掛金率の割引率、これをもう少し引き上げるべきではないか、このように私は考えるわけでありますが、御見解をお伺いをしたいと思います。
  253. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 果樹につきましては、ナシにつきましての防ひょう、防鳥ネット、あるいはブドウ、オウトウにつきましての雨よけ施設等の防災施設を設置して栽培をいたしております場合に、特定の被害の発生が減少することから、防災効果に応じて一定の掛金の割引の制度が設けられております。  お話にございましたように、栃木のナシにつきましては、ナシの引き受けに占めます防ひょうネットつきの割合というのは年々非常に高くなってきていることは私ども承知をいたしております。現在の割引率は、この割引制度が発足いたしました五十六年当時まだ防災施設の普及が限られておりましたこと、それからまた防災効果についても十分な資料がなかったというようなことから、全国一律でやっております。しかし最近、防災施設を設置して栽培をする形態が増加をしておりますし、樹種なり防災施設も非常に多様化してきておりますので、制度の一層の改善を図ります見地から、必要があれば、最近におきます防災施設の普及状況、被害の発生状況、あるいは防災施設の防災効果、農家の保険需要等十分調査をいたしまして、この制度の今後のあり方につきまして検討を十分やってまいりたいというふうに思っております。
  254. 水谷弘

    ○水谷委員 それはぜひお進めいただきたいと思います。  時間が参りましたので終わりますが、冒頭から、今回のこの改正について私は何点か指摘をしてまいりました。農業災害補償法の第一条、「農業者が不慮の事故に因って受けることのある損失を補填して農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資することを目的とする。」本法であります。昨年ちょうど豊作であった。例えば水稲はそうであった。しかし、天候がいつどういうふうになっていくかわからない。そういう中で当然農水省としても英知を集めてこの法改正に臨まれたんだとは思いますけれども、今御指摘をしたような各般の問題点がございます。  私は最後に、本法の改正に強く反対することを申し添えて、質問を終わります。
  255. 今井勇

    今井委員長 午後四時五十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後三時五十七分休憩      ————◇—————     午後四時五十六分開議
  256. 今井勇

    今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中林佳子君。
  257. 中林佳子

    ○中林委員 まず最初に大臣にお伺いするわけですが、農業災害補償法は、戦後間もない昭和二十二年に施行されて、その後、幾たびかの大災害を契機に制度の改善とか拡充がなされてきたわけです。  そもそもこの農業災害補償法の持っている最大の目的は何であるのか、これまでの間この制度が果たしてきた役割をどのようにお考えになっているか、お伺いいたします。
  258. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中林先生お答えいたします。  農業災害補償制度は、先生御存じのことと思いますが、農業者が不慮の事故によって受けることのある損失を補てんして農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資することを目的とするものでございます。  そんなことで、昭和二十二年の制度発足以来、地理的条件や気象条件から自然災害の発生の多い我が国におきましては、農業経営の安定に大きな役割を果たしていると思っております。特に、近年冷害等の異常災害が多発する中で、本制度は被災農家の救済に多大の寄与をしておるところでございます。
  259. 中林佳子

    ○中林委員 大臣がおっしゃったように、最近四年連続の冷害だとか私の地元の山陰大水害だとかということで、共済金が農家の収入減を直接カバーして、農業の再生産にとって欠かせない役割を果たしてきたわけです。  しかし、今回の改正案では超過累進制は残したとおっしゃるのですけれども、掛金の国庫負担を軽減するということで水稲共済の場合は六〇%で頭打ちにするなど、被害の高い地域の農家負担が増大するもので、災害から農業経営を守るという、これまで持ってきた制度の目的、大臣が御答弁なさった趣旨からも反する方向になっているのではないかと思うわけですけれども大臣、その点いかがでしょうか。
  260. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 農作物共済の共済掛金の国庫負担は、現在、共済掛金率が高くなるほど国庫負担が高くなる超過累進方式をとっております。今回、農作物共済掛金国庫負担の合理化は、適地適産の推進と最近における農業事情を考慮し、また財政負担の効率化を図りつつ制度の健全な運営を確保する見地から、国庫負担の上限をそれぞれ一〇%ずつ引き下げる等の措置を講じることとしたのでございます。これによりまして農家負担掛金はその分だけ上昇することは事実でありますが、掛金国庫負担についての超過累進制という考え方は維持しているところでもあり、関係者の御理解を得て本制度の揺るぎない運営を確保できるものと考えております。
  261. 中林佳子

    ○中林委員 削っておいてこの補償制度趣旨は守られているということは非常に相反するものだと私は思いますし、これまで農業災害補償制度の支柱を支えていたものは、強制加入と掛金国庫負担をやるということが制度を維持してきた道だと思うのです。この二つの支柱が崩れればもう制度の崩壊につながると言わざるを得ないと思うわけです。  掛金の国庫負担は、農業災害補償制度発足当時から超異常災害は国が負担するということになってきていたわけです。農業共済制度は国と農家の共同の災害対策制度であって、掛金率が高い地域ほど国庫負担を高くするという超過累進制をとっているのは、災害常襲地帯で掛金が高くなって農家が掛金負担に耐えられなくなるとか、それから、災害を受けて精神的にも非常に打撃を受ける、そういう農家人たちの立ち直りを含める意味があると思うのですね。  今回の改正案で水稲の国庫負担率を六〇%で頭打ちする、幅を五〇%から六〇%の間に今までよりも圧縮していくということ自体が、当初の法の目的であった超過累進制そのもののやはり制度後退だと私は思わざるを得ないわけですけれども、この点いかがでしょうか。
  262. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 掛金の国庫負担の超過累進制は、被害率の高い地域で農家の負担掛金が高くなることをある程度緩和するという趣旨なり内容であることは御指摘のとおりでございますけれども、先ほど大臣からもちょっと申し上げましたように、一つは、今日、かつての米の需給状況と違いまして、五十七万ヘクタール余の生産調整を行い、適地適産を推進をしているという農業政策との整合性の問題、それから、他の公的な保険制度、例えば漁業災害補償制度におきまして国庫負担割合が約四五%、漁船損害等補償制度で二六%、国民健保で医療費の約三九%、給付の五〇%といったようなところと比べましても特別に高い水準にある、また、この制度におきまして掛金の国庫負担の額も累増している、こういった状況等にかんがみまして、国庫負担の最高水準を引き下げることはやむを得ない措置というふうに考えているわけでございます。  なお、今度のいわば超過累進の幅の圧縮をいたしましても、水稲につきまして全体として国庫負担の率を計算いたしますと五四%程度でございまして、なお五割を超えます。かつ、他の制度に比べましても、五割を超えて特に高い負担率になっておるわけでございますし、超過累進制を残して、高被害地域の組合等につきましては他の地域に比べて高い国庫負担になるという仕組みは残しておるわけでございます。
  263. 中林佳子

    ○中林委員 だからこそ大臣に、私はこの災害補償法の持っている目的並びに果たしてきた役割をお伺いしたわけなんですね。そういう意味では、日本が災害常襲地帯であるし、農作物が災害にやられるということは避けられない状況だということは農水省自身がお認めになっているのにもかかわらず、農家の期待を裏切って、このような六〇%で頭打ち、農家負担がふえるというやり方については、私はやはりどうしても納得がいかないわけです。  そこで、具体的にお伺いしたいと思いますけれども、今度の改正案によって試算いたしますと、農家負担は総額とのぐらいふえるのでしょうか。それから、それが一戸当たりに直すとどのぐらいの負担額になるか。それから、今度の改正によって最も影響の大きいと思われる北海道、これの料率が改定されることと今度の制度改正での引き上げで、一戸当たりどのぐらいの負担がふえていくのか、それについて御答弁いただきたいと思います。
  264. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  昭和六十年産から三年に一度の料率改定の新しい料率が適用されるわけでございますが、水稲の改定料率は全国平均では旧料率に比べて低下をいたすことになりますので、それによりまして農家の負担は総額で約十八億円の減少に相なります。また、掛金の国庫負担方式の改正、これが六十一年度に適用をされますと、全国的にこれで影響を与えることになるわけでございますが、農家負担は総額で約四十二億円の増加になります。したがいまして、十八億円減少しまして四十二億円ふえるという形でございます。差し引きいたしますれば二十四億円の増ということになるわけでございます。  これを農家一戸当たりの平均で見ますと、料率の改定で五百三十円の低下になりますが、その後、掛金国庫負担の制度改正によりまして千二百五十円増加をする、こういう形になるわけでございます。  北海道についての特にお尋ねがございましたが、最近連続して北海道におきましては異常災害が発生をいたしましたため多額の共済金が支払われたこともございまして、また、一戸当たりの水稲の作付規模も非常に大きいということから、料率改定で一戸当たり一万七千六十円ほど増加をいたしまして、国庫負担の制度改正でさらに二万九千百円増加をするということになるわけでございます。
  265. 中林佳子

    ○中林委員 その合計の金額はおっしゃらなかったのですが、合わせますと四万円を超えるわけですね、北海道の場合。  農家負担が、平均ですから、規模が大きいところはもっと大きな負担になると思いますけれども、全体として見ればこれによって農家の負担が差し引き二十四億円ぐらいの負担増にしかならないみたいなお話、そのくらいにしかならないのならば、私は、財政的な意味でも初めからカバーすればいいではないかということをかえって申し上げたいというふうに思います。  ですから、今度の制度改正によりまして、いつも被害を受けているところは大変なんですよ。北海道で二戸当たり、私も計算してみましたけれども、料率改定と制度改正と合わせまして、三百三十アールというのが平均の作付面積だと思いますけれども、それで計算すると四万五千五百円も負担がふえるという計算になってしまうことですね。ですから、被害もよく受けるけれども負担も多くなるということでは大変だと思います。  私も農水省の方から今度の改正案に伴って説明を受けて、地元の島根の例もお聞きしました。島根全体では、料率改定でも低くなるし、制度改正後も現在よりは幾らか平均的には少なくなる、こういうお話をいただいたのですが、個々の共済組合を見れば、災害を受けている共済組合はやはりふえているんです。島根の場合でも五十八年の大水害がございました。そこの地域を抱えている浜田地区の共済組合と石西共済組合というのはかなり負担が引き上がってくるわけですね。ですから、そういう意味では踏んだりけったりではないかというふうに思えて仕方がありません。  今回、九割以上が加入している水稲共済に焦点が当たっているということは、災害対策という面をフォローするのではなくして、まさに臨調行革路線で、高額補助をやっているところは、それについては負担を抑えろ、そういうことをそのままこの共済制度にも持ち込んだ、いわば本当に財政主導型の、私どもは改悪だと思うわけですけれども、今度の改正案だと思わざるを得ないのですけれども、その点はいかがですか。
  266. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 北海道あるいはまた島根の中で、過去に災害を受けたところにつきまして、料率も上がる、そしてまた国庫負担が改正になることによりましてさらに農家負担が上がるという御指摘があったわけでございますが、確かに北海道に一番典型的にあらわれております。五十五年の冷害初め近年の災害発生でかなり大きな被害を出しておりますが、この制度によりまして救済が行われておるわけでございまして、過去二十年間の平均の被害率に基づいて三年ごとに掛金の率の再計算をするという保険の手法をとっております以上、この料率が被害の発生状況によりまして変動することはやむを得ないものというふうに考えております。  それから、臨調路線あるいは財政負担ということのみによる改正ではないかというお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、米の生産調整でございますとか水田におきます適地適産というものを推進しております最近の農政の方向というものとの整合性という問題が一つあるわけでございます。これにつきましては先ほど申し上げたところでございます。  臨調なり行革審の答申の中で、一般的に確かに高率補助の見直しということが言われておりますし、また、厳しい財政事情の中で私ども今回の制度改正を検討いたします場合に、農業共済制度の中で改善拡充を図りたいということとあわせまして、農林水産省全体としましても、厳しい財政事情の中で施策別に予算をどういうふうに配分していくかというふうな全体のバランスということも考えて今回のような制度改正の御提案を申し上げておるわけでございまして、臨調なり行革審の個別指摘事項と直接に関係を持ち、それに直接従ったものというふうには私ども考えておらないわけでございます。
  267. 中林佳子

    ○中林委員 適地適産ということを考慮に入れたというようなことになりますと、北海道のように冷害などの災害を受ける地域では米はつくるなとおっしゃっているように聞こえてなりません。ですから私は、適地適産ならばそれなりのしっかりした農水省の指導も必要だと思いますけれども、だからといって災害補償制度での国庫負担を減らして農家負担をふやすということにはならないんだと思うのです。適地適産ならば、それなりの具体的な技術指導だとか予算面での指導だとか、そういうものをしてこそ初めてそれは言えるのではないかと思います。  それから、臨調の方向指摘をそのまま取り入れたものではないとおっしゃいますが、そのまま取り入れれば随分反発も来ますから、それはそのままじゃないと思いますし、若干の改善点はその中で見えるわけですけれども、六十年度の予算編成の過程を見ますと、財政当局は、国庫負担割合を二分の一にするとか、当然加入基準の下限を三十アールに引き上げるとか、それから新たな国庫負担増を伴う制度の拡充は認めないと主張して、六十年度農業共済関係予算を人質にして制度改悪を迫ったということは、当時の新聞論調など見ればすべてそのようになっているわけですから、もうまさに臨調があってそれから今度の改正案が出てきたということを指摘せざるを得ません。このことではもう話がすれ違いになりますので、そのことを指摘して、次に移りたいと思います。  現行制度の共済掛金率は組合一律を原則としているわけです。例外として組合内の地域を区分してそれに応じた設定をしているところもあるわけですが、今回、危険段階別の共済掛金率の設定を導入されたわけですが、農業共済が相互扶助ということをうたっているのになぜこういうものを入れられたのかなという疑問が生ずるのですけれども、こういう危険段階別の共済掛金率の設定を導入されたのはなぜなのか、お答えいただきたいと思います。
  268. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 現在は、原則として組合等の区域ごとに一律に掛金率を定めておるわけでございますが、ただ、従来の制度の中でも、地域に分けて知事の承認を得まして料率を分ける、あるいはまた、優良な技術を持つ農家に無事戻しの制度だとか無事故割引の制度というようなものもあったわけでございますが、今回こういう危険段階別の料率の設定ということを御提案申し上げております背景には、おおむね三つ程度の事柄がございます。  一つは、近年農家の兼業化とか高齢化が進みます中で、栽培管理の優良な農家と必ずしもそうでない農家というものの間で技術力の格差が出てまいってきておりまして、近年の相次いだ異常気象のもとでかなり差異がはっきりあらわれてきた。良好な気象条件のもとでは差があらわれないのが、不良な気象条件のもとではあらわれてくるというような地域が生じておるということが一つございます。それから、加えまして、組合等の広域化によりまして広い範囲を対象とした組合等が増加をしてまいりますと、原則一律の共済掛金率では不満を持つ農業者も生まれてくるということがございます。さらに第三には、段階別に料率を設定するというようなことになりますと事務量がそれだけふえるわけでございますが、コンピューターの導入等によりまして大量の事務処理が可能になってきている。  こういったことを背景にいたしまして、農家間の負担の公平を図るという見地から、必要な場合には組合等の選択によりまして危険段階別の掛金率を設定することができるような道を開くということで、御提案を申し上げているわけでございます。
  269. 中林佳子

    ○中林委員 理由はわかったわけですけれども一つの共済組合全体の基準となる掛金率そのものは変わらないわけですから、技術格差によって差をつけたりあるいは被害の状況に応じて差をつければ、被害が低かったところは低い料率だ、そうすると一方は高くなるわけですね。そうすると、農家間の相互扶助という基本線がなくなっていく、農村生活にとって非常に不幸な事態が生まれないかということをやはり懸念せざるを得ないんですね。だからそういうことにならないようにしなければいけないとおっしゃると思うのですけれども、同じ部落内であるいは同じ共済組合の中でそういう農家間のトラブルが起きないように、何か具体的な施策でもお考えなのでしょうか。
  270. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 先ほど申し上げましたように、これは、組合等の中で組合員の意思を十分に反映した形で危険段階別の料率を決めたいという場合に、それができるような道を開くということでございまして、その方式を導入するか否か、そしてまた、何段階くらいでどういう刻みをつけた掛金率を設定するかというようなことにつきましては、組合等が自主的に定めてまいるわけでございまして、強制的な実施とか画一的な実施を考えているわけではございません。  確かに、不慮の災害に備えて組合員がそれぞれ掛金を出しまして一つの共同準備財産を造成するという意味で相互扶助の性格を持っておりますけれども、同時にこれは、手法としてはやはり保険の手法を使っております。したがいまして、一定の合理的な理由がある場合にむしろ掛金に差をつけた方が全体として組合員相互間の公平感が充足をされるということはあるわけでございまして、例は全く違いますけれども、自動車の損害保険その他につきましても、一本の掛金率ということではなくて、いろいろ差がついている方がむしろ常態なわけでございます。  それからまた、いろいろ危険段階の区分につきましては、農家のグループ分けということだけでございませんで、集落のグループごとに行う、同一集落内では農家が同じ掛金率になるという区分も可能にしておりますし、こういった設定を組合がやろうとします場合には知事の認可にかからしめるというような仕組みもとっておりますので、そういったこと全体を通じまして、適切な掛金率の設定、そしてまた組合員全体が公平感という点から満足のいくような料率の設定になることを期待をしておりますし、また、そういうふうに指導してまいりたいというふうに思っております。
  271. 中林佳子

    ○中林委員 具体的な指導の中身は何も聞けなかったわけで、期待するとか、自主性に任せるというのは聞こえがいいわけですけれども、任せれば、やはり被害が少ない農家人たちの方が発言力が大きいと思いますので、私はそういう農家間のいざこざが起きるんじゃないかという懸念を表明しておきたいと思います。  次に、今回の当然加入基準の引き上げ問題で質問したいと思うわけですけれども、農作物共済で、農家負担の平準化の必要から当然加入制をとっているわけで、現行では都道府県知事が十アールから三十アールの範囲内で定める、北海道の場合は三十アールから百アールですけれども、今度下限を二十アールに、上限を四十アールにしようとなさっているわけですけれども、この下限を二十アールに引き上げられた理由、それを簡単にお答えいただきたいと思います。
  272. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 これにつきましては、兼業化の進展等、近年におきまして農業事情の変化の中で、農業収入に依存するところが少なく、また自家消費米の生産が主体であると見られます二十アール未満程度規模農家につきましては、生産性の高い農業経営を育成するという農政の基本方向にもかんがみまして、こうした農家についてまで当然加入の対象とする、共済関係の成立を強制するということの政策上の意義は乏しくなっているというふうに考えられますことから、当然加入基準の緩和を図ることにしたわけでございます。
  273. 中林佳子

    ○中林委員 先ほどからの論議でも同じようなことをおっしゃっているわけですけれども、私やはり承服できないのは、政府のお立てになる米の需給計画では、自家飯米農家も含めてちゃんと計算をなさる、それから小規模農家ども、第二種兼業農家どもそれなりに重視していらっしゃるのに、今回のように、そういうものに対する手当てとしての強制加入を怠る。任意加入の道を開いているではないかということも、先ほどのいろいろな論議をお聞きしますとおっしゃっているわけですけれども、それならば別に当然加入の下限を引き上げる必要はなくて、みんな同じようにすればいいじゃないかというふうに思わざるを得ないわけです。  それから、一方考えますと、当然加入から二十アール以下を締め出す、任意加入でそれは、被害の大きいところは多少は入ってこられると思いますけれども、そうしますと、掛金率は高くなるわ、それから加入者は少なくなるわということになりますと、今おっしゃった中核農家育成というその目的すらも実はどんどんなくなってくるんじゃないか。つまり、加入者が少なくなったりしますと、共済組合そのものの存立が危うくなってくるような状況を招かないかという懸念を持つわけです。そういう懸念はお持ちではありませんか。
  274. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 誤解のないように申し上げておきたいと思うのでございますけれども、当然加入基準を引き上げることが一定規模以下の作付の農家を締め出すということではないわけでございまして、本来、共済とか保険に加入するかどうかというのは契約自由の原則でございますが、一定の政策的な要請からその自由な意思決定というものに制限を加えている、その制限を加えているのがこの当然加入基準でございます。そういう契約の自由を制限をいたします以上は、それにつきまして当然かなり合理的な政策上のあるいは公益上の理由がなければならないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、今現在の農政の基本方向等から考えましてもそこまで強制することは制度上必要はないだろう、こういうことで、任意の契約の状態に、本来の姿に戻した、こういうことでございます。  それによって組合の組織基盤が弱くなりはしないかということでございますけれども、この点、過去に当然加入基準を引き上げました場合の例などもどもも若干収集をいたしましていろいろ見ておりますが、これはほとんど減らなかったというようなところから、一五%ほど要するに当然加入から任意加入に移った際に減ったというようなところまで、いろいろ正直言ってございます。  これはやはり、組合の組織基盤の確保あるいは保険に必要な保険集団の確保というふうな観点からも、組合が引き続いて任意加入農家の加入の推進に努力をするということが必要でございましょうし、また、都市近郊その他でそもそも基盤としてなかなか成り立ちにくくなってきているというようなところにつきましては、これは当然加入基準の水準をどうするかということの以前に、既に広域合併というようなものによりまして事業基盤の確保なり保険集団の確保が必要になっているところもあるわけでございまして、そういった加入の促進なりあるいは組織の整備ということでこの共済事業の基盤の確保を図ってまいる必要があるというふうに考えております。
  275. 中林佳子

    ○中林委員 影響は極めて少ないし、むしろ本来の姿の任意加入という道を開いたんだというようなことをおっしゃいますけれども、しかし、当然加入にしたという意味合いは、本当にみんなが負担を平等にするようにというような意味合い、相互扶助というような意味合いから行われているもので、これが引き上がることによってやはり締め出されるというふうに言わざるを得ないと私は思うわけです。  今回、全国的に二十アール未満を基準にしている組合、これは十八県の三百五組合で、組合全体から見れば一八%、私はやはりかなり高いと思います。六万三千戸の農家対象になるわけですね。当初財政当局は下限を三十アールに引き上げるようにという話があったはずですけれども、これは農業団体などの強い反対で結局二十アールにとどまったというふうに私は思うわけです。今回のこの改正案をまつまでもなく、農水省は昨年、五十九年一月に「農作物共済(水稲)に係る当然加入基準について」という通達をお出しになって、これによって現在十アールというふうに決められているわけですけれども、それを基準としている県は全くなくなってしまっているわけですよ。私の県でも二十アール以上になっております。  財政当局の圧力に屈して、今後下限を三十アールに引き上げるような指導が通達などでなされたら、私は大変なことになるというふうに思います。全国的に見ましても、下限が二十五アールの組合が一番多いわけですね。だから、三十アールに引き上げるような指導がもしもなされれば、大半の農家がそこから締め出されてまいります。中国地方でちょっと調べてみましたが、私の地元の島根でも、もし下限が三十アールに引き上がるようなことになれば、三三・四%、一万八千八百戸の農家が当然加入からはみ出すことになります。それから、鳥取が三四・一%、岡山が四〇・五%、大臣の地元の広島が四二・四%と、非常に当然加入から締め出される農家が多いということになって、これはもう共済組合の存立そのものにかかわってくる、そういう重要な問題だと思うわけですね。  ですから、昨年の一月に出されたような通達指導で下限を三十アールに引き上げるような指導を今後なさるのかどうかということと、それから、今回は任意加入、当然加入には差はつけないというふうにおっしゃっていますけれども、これについても格差を持ち込むべきだという財政当局からの主張もあると聞いておりますので、これを今後格差を持ち込むようなことをお考えになっているのかどうか、この二点についてお答えいただきたいと思います。
  276. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回の当然加入基準の引き上げの趣旨は、農業収入に依存するところが少なく、また自家消費米の生産が主体であると見られるということで、二十アール未満程度規模農家については基準の緩和を図るという考えでございまして、少なくとも現在の農業事情等を前提にいたしますれば、これをさらに引き上げるというような指導を行うことは現在のところ考えておりません。  また、当然加入農家と任意加入農家で共済掛金の国庫負担に差をつけるという問題につきましては、農家の相互扶助に立脚をする農業災害補償制度だというお話が先ほどございましたけれども、そういった制度趣旨なり、あるいはまた国庫負担に差をつけるということになりますと、任意加入の推進をやりましても国庫負担に差がついているということでなかなか加入が進まない、加入農家が減ってくるというようなことで、地域によりましては危険分散とか集落組織を基礎にする共済事業の運営が難しくなるというようなおそれもございますので、そういう点で、当然加入、任意加入の間に国庫負担に差をつけるということは種々問題があるというふうに私ども考えております。
  277. 中林佳子

    ○中林委員 その点はくれぐれも守っていただきたいと思います。  それから、今回の改正で、これまでの共済団体事務費の助成金の大部分を占める、人件費なわけですけれども、この補助金が定額交付金化されることになるわけですね。当然職員の給与引き上げという問題は考えられるわけですけれども、そうなりますと、職員の給与引き上げの場合は、農家が払う賦課金をふやすか、あとは合理化しかないと思うのです。こんなことになったら、それこそまたまた農家負担がふえざるを得ないという結果になるわけですけれども、それに対するお考えはどうなのかという点が一点。  それから、共済組合の方々からいつも要請があるのは、損害評価実務の体制強化をぜひ図ってほしい、年々業務経費が非常にふえてきていて、ふえるからこそ国からの補助というのが割合が非常に低くなっているという話を聞くわけですね。ですから、こういう定額交付金というようなやり方で、実際職員の給与が引き上がることについても、国は、今度はそれに応じた交付金にはならないという点があるわけですから、何か業務体制の強化をお考えになっているのかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  278. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回予算を、積み上げ計算をいたしまして補助率を掛けて計算をするという方式から定額化という方式に改めたわけでございますが、実は従来の個別経費の積み上げ方式におきましても、団体に対します助成、特に人件費主体のところにつきましては、補助対象職員の数の定員削減等によりますいろいろな査定が行われてきております。むしろ定額化をすることによりまして、定員削減等による縮減の不安がなくなって、先々安定した見通しての国庫負担が望めるということもございます。  それからまた、広域合併等の組織整備によりまして事務費の節減効果が出ますと、今までの積み上げ方式でございますとこのメリットは国の財政負担の減という形になるわけでございますが、これからはそういった節減効果というものは、定額化の中では、職員給与の上昇等内部のいろいろな改善に使えるようになるということでございます。もちろん今までのように、公務員の給与が何%上がったから国からの助成について積算基礎で何%の給与のアップを見込むというようなことは行われなくなるわけでございますけれども、その辺は事務運営の合理化、効率化といったようなことの中で対応をしていただきたいと思っておるわけでございます。  それから、業務の執行あるいはまた損害評価というような面でのお尋ねがございましたけれども、従来の事務費国庫負担のもとで、基本的には損害評価も含めまして事業実施に支障は生じてないものというふうに考えておりますので、今後定額化ということがございましても、そのこと自体で特段の問題が新しく生じるというふうには考えておらないわけでございます。なお、事務費国庫負担とあわせまして、被害の発生量に応じまして損害評価経費を助成する等のために、農業共済事業特別事務費補助というものを別途に計上をする措置も講じておるところでございます。
  279. 中林佳子

    ○中林委員 広域合併などそういうことをやって合理化を図れ、そうすれば費用が出てくるではないかというようなお話は、もう広域合併しているところはたくさんあって、もうこれ以上の合理化はできないというようなところもあるということを、ぜひ、知っていらっしゃるとは思いますけれども、やはり農家負担がふえるということへの道を開くものだというふうに指摘をせざるを得ないと思います。  そこで、次に家畜共済についてお伺いするわけですけれども、家畜共済の中でも豚の加入率というのが依然として非常に低いわけですね。五十八年度で種豚が二〇・六%、肉豚は一〇・八%というように非常に低いことになっているわけです。この一つ原因が、やはり国庫負担割合が豚は四〇%ということで低い、少なくとも牛だとか馬並みに五〇%ぐらいの程度までは早急に引き上げるべきじゃないかと思うのです。これは私の地元の県の共済連の方から強い要望が出ているわけなんです。  島根県に湖陵町という町がありまして、県下一の豚の主産地になっているわけなんですが、この湖陵町では、国の共済制度にだれも入ってないという状況なんですね。お話を聞きますと、国庫負担割合が低いということとあわせて、手続だとか事故処理などが国の制度では実情に合わないのだというようなことで、実はここの湖陵町では農協独自で共済制度をつくっているわけです。肉豚一頭について二百五十円の掛金で一万円の補償、種豚は一頭について二千円の掛金で五万円の補償で、農協はこの制度に年間四百万円の補助をして、実績として損害の七割から八割の補償をやっているわけですね。  ですから、この養豚農家の方々の強い要望であります国庫負担割合五〇%への引き上げ、それから、引受方式などをもう少し農家人たちが利用できやすいように改善することや、それから、やはり加入促進のための宣伝、これなども非常に弱いというふうに聞いているわけですけれども、その点についてのお考えがあったら、お伺いしたいと思います。
  280. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 豚の共済につきましての掛金国庫負担割合につきましては、実は昭和五十五年度におきまして三分の一から五分の二と申しますか、四〇%に引き上げを行ったところでございまして、その後まだそれほど年数もたっておらないという状況でございますし、現時点で引き上げるということにつきましては、最近におきますいろいろな厳しい状況を考えますと、なかなか難しい問題ではないかというふうに考えております。  ただ、今島根県の例で、農協が独自にそういう共済をおやりになっているというお話、あるいはまた、その中でいろいろ事務手続の問題あるいは保険の設計の仕方の問題について国の制度には御不満があるというような御指摘がございましたので、これはちょっと私どもその農協のおやりになっていることなどを調べさせていただきまして、これからのまた参考にさせていただきたいと思っております。  普及活動なり引き受けの推進体制が弱いというふうなこと、これも間々ありがちなことでございますけれども、私どもその辺のところについても、これからも努力はしてまいりたいと思っておりますし、そのためにも、やはり職員が一人二人というような共済組合ではなかなかそういうこともできませんので、広域合併等によります組織基盤の強化ということを図っていくことが、やはり加入促進のためにも必要ではないかというふうに思っているわけでございます。
  281. 中林佳子

    ○中林委員 次にそういう合併のお話をしようと思いましたら、先手を打たれて予防線を張られましたけれども、次に、合併の問題で御質問したいと思いますが、基本的な考えをまず最初にお伺いしたいと思うわけです。  農水省が一郡一組合を目安に共済組合の広域合併を推進していらっしゃって、六十年度予算でも農業共済事業特別事務費補助金を前年度よりも増額して、そのうちの組織整備推進費の対象組合の数を前年度の三十組合から七十組合にふやすということで、合併促進に特段の力を入れていらっしゃることはそれによっても裏づけられると思いますし、私どもも合併そのものに反対しているわけでは決してありません。  ただ、問題なのはそのやり方でありまして、広域合併を進めるには、やはりそれぞれの組合の自主性と納得の上で進められることが一番必要なことではないかと私は思うわけです。合併に応じないからといってペナルティーをかけたり圧力をかけたりというようなことがあってはならないと思うわけですけれども、その点、いかがでしょうか。
  282. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 これは、農業共済組合に限りませず、農業協同組合なども含めてそうでございますが、やはり経営基盤の強化のために合併を進めるということは一般的にあるわけでございます。これは、私も県の部長などをやった経験がございますけれども、いざやろうとしますと、では事務所をどこに置くか、あるいは役員の人数を幾らにして、だれがなるかというようなことも含めまして、実際なかなか難しいものでございます。これはやはり指導を強化しなければいかぬと思っておりますけれども、強制できるような筋合いではないと思っております。
  283. 中林佳子

    ○中林委員 私の地元であります島根県の松江市でも、実は松江市と周辺の八束郡を含む松江地区共済組合、これはもう広域合併をしている組合と、それから松江市本庄町を中心とする本庄共済組合というのがありまして、一市二組合というふうになっているわけです。この本庄組合は長い間地域の農民が力を出し合ってつくり上げてきた伝統を持っておりまして、その方々にお聞きすると、おらが組合だ、こういうふうに誇りに思っていらっしゃるぐらいの歴史を持つ組合であるわけです。農家人たちが誇りを持つ組合ですから、こういう組合こそ存続すべきだと私どもは思いますが、万一合併を進めるに当たっても、組合の自主性というものはやはり尊重しなければならないというふうに思うわけです。  ところが、聞きますと、ここ数年来、この組合に対して事務費交付金の固定費用額を二分の一カットして、従来四百十万円の交付金が三百四十万円と減らされておるわけです。しかも、六十年度からは松江地区共済組合の事業量をもって松江市の共済事業のすべてとみなすという県農政課の連絡が入って、さらに八%の交付金がカットされる、こういうことで、二重のペナルティーがかけられる。これが事実だとしますと、五十五年の当委員会における附帯決議の、合併を進める条件として「制度の円滑な実施に資するため、」という趣旨にも反するし、かえって反感を農家人たちに植えつけるのではないか。本当に合併を促進しようとする立場であるならば、なぜそれが必要なのかということを説く方が先決であって、このようなペナルティーを一方的にかけるというやり方はすべきでないというふうに思います。  ですから、先ほどの御答弁趣旨にも沿って、県に対して適切な指導をするよう御援助をお願いしたいと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  284. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 私ども、四十年代の半ばぐらいから合併の促進のためにいろいろ指導し、努力をしているわけでございます。  今お尋ねのございました事務費の国庫負担金の県別配分の問題でございますが、組合等の事業量の実態に応じて適正に行う必要がございますので、国から都道府県に配分いたします場合には、組合等の固定的経費に対応します固定費用割りも加味することによりまして小規模組合等への配慮をいたしますと同時に、事業量の大小に応じました事業規模割りによります配分とか、あるいは組織整備に関連する配分等を考慮しましてきめ細かくやっておるわけでございます。  一市町村の区域内で複数の組合によって共済事業を行いますことは、事業の運営面から見て非効率であるということは間違いないわけでございまして、また、限られた事務費の国庫負担金の中での配分という相対的な公平性を確保しなければいかぬということからも、現在国におきましては、一市町村の区域内に複数の組合があります場合には、事務費国庫負担金の固定費用割りの配分を一市町村一組合として配分をしておるということでございまして、これは合併がなかなか進まないということに対するペナルティーという趣旨ではないわけでございます。  なお、都道府県から先の県内の配分につきましては、都道府県が、国の配分も参考にしながら、ある程度自主性を持って配分をいたしておるところでございます。
  285. 中林佳子

    ○中林委員 一市町村一組合の割合で配分しているのだからとおっしゃる、そこがやっぱりおかしいじゃないですか。そういう予算を持っていること自体が大変——そうすると、当然、合併しないところには削減するようなお金が来るということになって、結局一番困るのは農家であるわけですからね。こういう強制的なやり方をおとりになるということは極めて遺憾だというふうに思うわけですけれども、ちょっと県の実情も調べていただいて、行き過ぎがあれば適切な指導をしていただくということになりませんか。もう一度言ってください。
  286. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農業共済団体の区域につきましては、法律でも「農業共済組合の区域は、一又は二以上の市町村の区域による。」というのが原則になっておりまして、「ただし、特別の事由があるときは、この区域によらないことができる。」ということで、これは地勢なり何なり、そういうふうなことから非常に客観的に特殊な事由があるという場合をただし書きで言っておるわけでございまして、原則はやはり少なくとも一市町村一組合というのが原則なわけでございます。  私ども、この問題を先生がお取り上げになられましたので、実情は県にもよく聞いてみたいと思っておりますけれども、現在までのところ私ども聞いておりますところで、特に行き過ぎがあったというふうには承知いたしておらないわけでございます。
  287. 中林佳子

    ○中林委員 納得はいきませんけれども、時間が来ましたので、これで終わります。     —————————————
  288. 今井勇

    今井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の本案について、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 今井勇

    今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 今井勇

    今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明十八日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十一分散会