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1985-04-10 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年四月十日(水曜日)     午前九時四十一分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       仲村 正治君    野呂田芳成君       羽田  孜君    保利 耕輔君       松田 九郎君    三池  信君       山崎平八郎君    若林 正俊君       渡辺 省一君    上西 和郎君       串原 義直君    島田 琢郎君       新村 源雄君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    松沢 俊昭君       山下洲夫君    駒谷  明君       斎藤  実君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    稲富 稜人君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         農林水産省食品         流通局長    塚田  実君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         参議院議員   谷川 寛三君         警察庁警備局公         安第二課長   菅沼 清高君         水産庁漁政部協         同組合課長   上野 博史君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十日  辞任         補欠選任   鈴木 宗男君     仲村 正治君   串原 義直君     山下洲夫君 同日  辞任         補欠選任   仲村 正治君     鈴木 宗男君   山下洲夫君     串原 義直君     ――――――――――――― 四月四日  土地改良事業等に関する請願梅田勝紹介)  (第二七〇一号) 同月十日  土地改良事業等に関する請願佐藤祐弘紹介  )(第二七七一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置時  別会計法の一部を改正する法律案内閣提出第  三九号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四五号)  農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成  法の一部を改正する法律案内閣提出第四七号  )  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五二号)(参議院送付)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四八号)      ――――◇―――――
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  3. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、今回の三法の改正に当たりまして、農業者漁業者あるいはまたいろいろな団体の方々学識経験者、そうしたいろいろな方々の御意見を聞いてまいりまして、そういったものを総体的に見ながら政府考え方をただしてまいりたいと思います。  まず、具体的な第一線漁業の問題から質問をさせていただきたいと思います。  今回の改正に対する漁業者あるいは漁業組合意見を要約しますと、三法の改正というものはそれなりに、金利改正あるいはまた資金枠拡大等があってありがたい面もある、しかし、問題は、漁業者として金融問題を一点に絞って言うならば、何といっても貸し付け償還期限延長してもらいたい、例えば五年のものであれば十年、十年のものであれば十五年、二十年、こういうふうに償還期限を延ばしてもらうことが何よりだというのが漁業者の共通した意見なんです。これは貸し付け限度額を倍にしたりするよりも、一回の償還額を低く抑えてもらう、こういうことが漁業者の生活安定、漁業安定にとって何よりも大事なことだということを言っておられるわけです。  我々が一般サラリーマンの家庭のことを考えてみましても、例えばローンを十五年で返すよりは二十年、二十年よりは三十年というふうに、返済期限が長いほどサラリーマンにとってもやはり安定した生活設計の中でローンを返していける。それから、ローンのために自殺者なんかが出てくる場合もあるわけでありますから、これはサラリーマン漁業者もまさに同じであって、まして漁業者のように船を建造したり、いろいろな設備をしたり、多額の投資をするということになりますと、償還期限を大幅に延長してもらうということが最大の願望だということはよくわかるわけであります。こういうようなことこそ政策の基本に据えていくという考え方があっていいのではないか、こういうふうに思うのですが、まずこの点について水産庁の方からひとつ見解を承りたいと思います。
  4. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  小川先生指摘のような事情は私どももよく承知をしておりまして、政令のレベルでは漁業近代化資金漁船資金償還期限を十二年から十五年に延長いたしまして、そのうち据置期間現行二年のものを三年に延長することにいたしておりまして、先生の御指摘のような御趣旨に沿っておるつもりでおります。
  5. 小川国彦

    小川(国)委員 その御努力のほどはわかるのでございますけれども第一線漁業者方々意見を聞きますと、要は貸付枠あるいは金利よりも延長だということなんで、今回はこういう案でありますが、この点もさらに工夫し、もっと要望にこたえられるような御努力をお考えいただきたいと思います。  続いて、漁業近代化資金の方は、機械の場合とか網の場合とか、それぞれ貸付期限が異なるようでございますが、この機械の場合とか網の場合とかはどのくらいになっておりますか。ちょっと細かい点で恐縮ですが……。
  6. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  近代化資金償還条件でございますが、漁船漁具保管修理施設等、これは二号資金と呼んでおるものでございますが、これの償還期限は、貸し付け相手方漁業者であります場合に十二年、それから漁協であります場合が十五年ということにしております。それから漁場改良造成用機具等というのが、漁業者相手方とする場合に償還期限七年、それから漁協等貸し付け相手方とする場合に十年、それから、四号資金と申しております漁具等、これはいずれも五年ということにしてございます。先生お尋ね機械というお話でございますが、恐らくこの三つのカテゴリーのどれかに入るものと思っております。
  7. 小川国彦

    小川(国)委員 これと同様なものは公庫資金でもあるのでございましょうか、例えば機械とか網とかそういうものに対するものは。
  8. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  いろいろな資金をお使いいただくことが考えられるわけでございますが、例えば沿岸漁業構造改善事業推進資金をお使いいただくといたしますれば、漁業者相手方として貸し付ける場合が十五年、共同利用施設の場合が二十年ということでございます。この十五年、二十年というのは、例えば主務大臣指定施設資金をお使いいただく場合にもこれは十五年、共同利用施設資金であれば二十年ということにしてございます。
  9. 小川国彦

    小川(国)委員 ここに一つ格差があるわけでありますが、一般的には近代化資金の需要もかなり多い。私ども承っておるところでは、末端漁業者の場合、やはり機械で五年とか網で三年ということになっているのだそうですが、一般貸付期限機械や網を使い終わる人は非常に少ない。やはり十年近く大事に使っているというふうに考えてみると、貸付期間耐用年数に見合うように長くすることができないものかどうか、こういう要望が強いわけでありますが、この点はいかがでございますか。
  10. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私ども償還期限を定めます場合に、一般的に法定耐用年数よりはむしろ長目に決めておるのが実情でございまして、例えば先ほどの漁船資金償還期限も、法定耐用年数は九年でございますが、現行十二年、今度延長して十五年にしょうとしているわけでございます。ただ、現実の問題といたしまして、法定耐用年数は、むしろ漁業者税法上の利害の関係から見ますと、実態的にお使いいただいておる年数よりは短目に決めた方が漁業者のおためになるわけでございますから、逆に使用実態法定耐用年数よりは長目であるという意味では、間々先生指摘のようなケースも起こり得ると思うわけでございます。ただ、私どもとしては、今漁船の場合を例示的に申し上げましたように、少なくとも法定耐用年数よりは余裕を持って定めておるつもりでございますので、現実にはさしたる支障は生じておるというふうには思っておらないわけでございます。  むしろ実際の問題としては、制度上定められております償還期限を目いっぱい使わずに、融資機関の御判断でそれより短目の約定償還期限を決めておるというのが実態でございまして、漁業者皆さん方がさしあたり償還期限が短くてきついなというふうにお感じになっている場合には、制度上の償還期限にぶつかって、限度いっぱい制度上の償還期限をお使いになっていてそれでまだなお償還期限が短過ぎるなというふうにお感じになっている場合よりは、むしろ内側で余裕を見て、多少短目の償還期限融資機関との間でお決めになっておられてそれがきつ過ぎるという、そっちのケースの方が圧倒的に多いように私どもは存じておりまして、現在の制度上の償還期限実態論としてそれほどの障害になっているというふうには思っておらないわけでございます。ただ、もちろん長くした方がいろいろな意味でフレキシブルに対応できるという意味では先生の御指摘のとおりでございますので、例えば今の漁船資金の形について申し上げましたように、やれるところについては延ばすような努力はやっておるわけでございます。
  11. 小川国彦

    小川(国)委員 長官のおっしゃられるような判断一つはあると思うのですが、私ども漁業者実態から伺ってみますと、例えば今漁業も非常に不況の中であえいでいる、こういう状況の中で、借入金返済も容易でないという状態にあるわけです。そういうことで、例えば漁船建造を見ましても、現行までは九年、これが今度十年から十五年に改正をなさろうとしているということなのでありますが、例えば木の船でも今二十年くらいお使いになっている、ましてや鉄鋼の船などの場合にはもっと三十年近く使っていくというくらいに、長官おっしゃられるような税法上の問題はもちろんありましょうけれども、むしろそれよりも、やはり十年のものを二十年に大事に長く使わなければとても償還できないというのが実態のようですね。ですからそういう面で、税法上の問題よりもむしろ償還期限をできるだけ、倍近く見てほしいというのが特に漁船の場合などの切実な声のように思うのです。長官のところに入ってくる短目の償還期限というのは、むしろ公庫なりあるいは近代化資金を扱っている第一線方々がそういうような指導をなすっているのかもしれないのですが、貸し付けをやっている漁協第一線担当者方々は、いろいろ私も関係者と議論したのですが、要約したところは、先ほど冒頭に私が申し上げたように、金利貸付枠もあるけれども、やはり何といっても根本はゆったりとした長期期間で返すということが漁業経営の中で無理のない返済ができていくのだということで、船にせよ機械にせよ網にせよ、できるだけ償還期限を大幅にとっていくということを考えてもらいたいのだ、これが一つですね。  それからもう一つ公庫近代化資金の場合に、据置期間の中で手形決済をしなければならないという事例が非常に多い。そうすると、今までの場合、借入期間が九年、そして据え置き二年でございますか、ところが、ともかく据置期間のうちに手形決済をしなければならぬ、そういうことになると、九年という借入期間が実質的には七年になってしまう、こういう実態もある。そういう面からもやはり貸付期間の大幅な延長ということが、今度の改正案の中では若干手直しはされてきているものの、この点が一番思い切った措置を望んでいるところなんだという意見が強いわけです。  こういう点についてもう一つ長官見解を伺いたい。
  12. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  確かに先生指摘のとおり、船の使用年数がここのところ急激に延長されてきておるというのは事実として私どももさよう認識をしております。かつては漁業者皆さんはできるだけ新船を使いたくて、まだ十分便えそうな船をしかるべく処分なさって、それで新鋭船建造なさる、そういう動きが大変盛んでございまして、どんどん現実耐用年数が短くなっていく傾向があったわけでございますけれども、最近は代船建造をすると申しましてもなかなか金繰りも容易でないということもございまして、どうしても船の耐用年数が延びておるということは現実だと思っております。  私どももそういう認識を踏まえて、先ほど御答弁申し上げましたような漁業近代化資金漁船建造資金償還期限延長ということを行ったわけでございますが、同時にこれは使用期間延長実態に合わせてどんどん延ばしていくものであるか、先ほどもちょっと申し上げましたように、最近の実情を見ますと、漁業者皆さん方はできることならば代船建造をほどほどのしかるべき時期にはやりたいというふうにお考えになっておるのを、金繰り等事情で、意に反して代船建造が延びて、やむを得ず古い船の使用年数が延びておるというふうな実情もあるように見受けられますので、償還期限延長とあわせまして代船建造用資金の円滑な融通を図ることも大事であろうということを考えまして、融資限度引き上げとかあるいは漁業近代化資金漁船建造資金トン数限度引き上げなどを行ったところでございまして、両面合わせて最近の漁業経営の新しい環境の中での動向に即応するように心がけたつもりでございますが、なお先生指摘の点は、今後ともよく勉強させていただきたいと思っております。
  13. 小川国彦

    小川(国)委員 それから、法改正以前の我が国漁業の問題として、漁業者方々は、金融の問題も大きな問題だけれども金融以前の問題としては、今燃油対策資金の問題が非常に強く要望されている。特に沿岸漁業で今一番苦しい一つ事例としては沖合底びき、タイとかヒラメ、ホウボウ、イカ、カレイ、アカジ、こういうものをとっている漁業者が大変な苦境の中にある。  一例を挙げてみますと、沖合底びきで平均七人の乗組員を使っているのですけれども、油を一カ月五十キロ、十カ月操業で五百キロ、キロ当たり六万円としますと大体年間三千万円の燃料費がかかっている。平均七、八千万円の水揚げというふうに見ますと、半額近い三千万が燃料費で消えてしまう。試みに八千万の水揚げ漁船で見ますと、経費が燃料費で三千万、人件費で三千万、修理費で五百万、消耗品費で三百万、市場手数料で二百四十万、一般管理費が五百万、借入返済が二百五十万、こういうふうに見てまいりますと、船主の手元に残る金というのはなくなってしまっているという現状なんですね。結局今一生懸命とっているからいいものの、ともかく八千万の水揚げで食べていけない状況だ。こういう底びきでどのぐらい借金があるかというと、平均五千万円の借入金を持っているというのですね。五千万の借入金というふうに見ると大変なことで、こういう多額に上ってきている借入金返済は非常に容易でないという状況にあるわけですね。こうしたかなり巨額負債になりつつあるものの対策、こういうものを一体どういうふうに考えていったらいいのか。  それからもう一つは、申し上げた燃油の問題ですね。何か伺いますと石油の値上がり状況というものが、オイルショック後にガソリンの方が三倍の値上がりに対して重油は六倍という値上がり方だ。それが漁業者の首を絞めてきている。これに対して、通産当局要望するなり、あるいは燃油対策というものを何とか面倒を見る方法というものがないのか、価格差補償制度というものを推進していくというような体制はつくれないものか。ECではこういうものを政府が面倒を見るというような措置もあるというふうなことを伺うわけなんですが、こういう点についてはどのような対策が考えられておりましょうか。
  14. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先生指摘燃油高騰による経営圧迫に対しましては、漁業用燃油対策特別資金融通を引き続き行っておるわけでございますが、先生指摘のとおり、漁業用燃油対策特別賢金のようなものを融通をいたしましても、これは要するに銭の方の話でございまして、勘定合って銭足らずと申しますが、銭が足りても勘定が合わない、要するに損益面漁業経営をサポートするという効果を元来持たないわけでございます。先生指摘のような燃油高騰による損益面での経営圧迫ということにつきましては、私ども基本的に、漁業省エネルギー化を通じて、このような燃油価格水準に対応した経営が成り立つような漁業生産構造再編整備ということを進めていく以外に手だてはないというふうに思っておるわけであります。  そのために私どもとしては、漁業生産構造再編整備を推進するために減船に対する手当て、共補償資金融資でございますとか各種の減船助成措置を講じておりますし、それから省エネ化という点につきましては、エンジン、機器、漁具漁法等を含めて総合的な省エネルギー、低コストの漁業技術開発普及省エネルギー型漁船の導入の促進等措置を講じているわけでございます。  ただ、そういう対策を講ずるにいたしましても、そういう効果が発現をするまでの過程の過渡的な問題というのは依然として残るわけでございまして、そういう面につきましては、漁業経営維持安定資金融通等によってその過渡期対策というのはそれなりにまた措置をしていくつもりでいるわけでございます。また、そういうことでも対処し切れないという段階に立ち至った漁業者の問題につきましては、中央漁業信用基金の出資をふやす等の措置で対応をするということを考えているわけでございます。
  15. 小川国彦

    小川(国)委員 こうした非常に長期多額負債を抱えている漁業者、これをどうするかという問題は、今いろいろそれについて方策を述べられたわけでありますけれども漁業資金でも言えることは、農業資金と同じように非常に返済の困難なもの、そのしわ寄せというのが末端漁協に及んでいるというふうに見られるわけであります。公庫資金の場合でも近代化資金でも、現状は何か単協に貸すという形をとっておりまして、保証人の問題も結局単協として責任をとらざるを得ない、こういう形になってきている。結局、融資実態を見ますと、新船建造の場合に貸付対象になるのは、例えば二億円の船をつくろうという場合に融資対象は八〇%までだ。そうすると二億の八〇%、一億六千万。それのまた担保の提供を求められて、実質貸付額は船で六〇%しか見てくれない。新しくでき上がった船を担保に出しますから二億貸してください、こういう場合に、船で見てくれるのは一億だけだ。そうすると、結局残った一億というものが非常に金利の高いものになってくる。それは結局、担保を持ってくるように、こういうことになる。ところが漁業者の場合にそうあいている担保はない。こういうことになると、担保に入っているものでいいから今度は公庫が上位で担保に入れるようにせよという形になってくる。そういう形で、公庫の方は安全性のあるところの貸付者になるけれども末端漁協はそういう点で今度は二番抵当、三番抵当抵当権しか持たないという形になって、結局貸し付け不足額しわ寄せというものは単協である漁協のところに及んでいってしまう、こういう実態がある。  それでは、今長官答えられたような中央漁業信用基金というようなものがある、保証制度がある。そういう形で、それでは担保のない者は信用保証機関保証科を払って保証してもらったらどうだということになるのです。では、そういうところの保証をもらって借りたらいいじゃないかというと、金利の問題がある。それから現実に、今度漁業者倒産状況なり苦境に追い込まれて、借りた金が返せないということになって、例えば保証協会保証してほしいと単協申し出をしていっても、現実には担保物件を全部整理してでなければ基金保証金は出ない。こういうことになると、末端漁協が自分の組合員である漁業者に対して、担保に入っているものから不動産を全部ぎりぎり総ざらい処分しろというようなことはなかなかできない。そういうところに追い詰められていくと、それを保証機関に求めていくということもなかなかでき得ないで、結局またそこのところの何らかの融資漁協がせざるを得ないところに追い込められていく。  ですから、こういったことを伺ってまいりますと、公庫資金なり近代化資金にしても、それで貸した、残ったところが、あるいはそれのことで回転がつかなかったところがいわゆるプロパー単協資金にどうもしわ寄せされていく、こういう形が起こってきているわけでありまして、そういう点を何とか末端漁協しわ寄せしない形、私どもは、むしろ公的な制度資金というものは、そういう民間のプロパー資金漁業者に貸してどうしても行き詰まったところを助けるのが制度資金であり、公庫資金近代化資金でないかと思うのですが、どうも貸し付け実態は、公庫資金近代化資金が先行していって、そしてそれでやり切れなくなったしわ寄せ漁協プロパー資金になってきている、こういうふうに思えるわけなんですね。これは農業でも同じなんですが、こういった実態を改めていくということをこういう法改正の中で制度的な問題として考えていく必要があるのじゃないかと思うのですが、そういった私の申し上げた問題点に対して水産庁としてはどういうふうな御見解、御判断をお持ちになるのか、あるいはそういう面の指導を今後どういうふうに取り組んでいただけるか、その点の見解をひとつ承りたいと思います。
  16. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先生が今提起なさいました問題の中には、どうも金融というものについて回る逃れられない宿命のようなものもかなりの部分はあるように私は思うわけでございます。金を貸す、借りるという関係でございますから、そこで何らかのリスクが発生することは避けられないわけでありまして、そのリスクをだれがどういうふうに負担するかという問題について、それはいろいろな工夫のしようがございますけれども、結局リスクをなくしてしまうというわけにはいかないわけでございますから、そういう基本的に逃れられない宿命的制約があるということはまず御理解いただいておかないといけないと思うのです。  その中で私どもが考えておりますことは、一つは、農林漁業金融公庫資金漁協転貸によって貸し付けられるということによって漁協段階で発生するリスクをどうやって回避するかという問題につきましては、信用補完制度は、元来は公庫資金対象外にしておったわけでございますが、漁協転貸で貸す場合にはそこの段階での債務につきましても信用保証協会保証するということにいたしましたので、それが転貸に伴う漁協段階でのリスクを回避する手段として機能するということになっておるはずでございます。  それから、先ほどお話のございました融資率で何割ということになっておって、その裏側の方は系統プロパー資金で面倒を見なければならないという点でございます。この点につきましては、元来は末端漁業者なり最終の借り受けをする人の自己資金で調達するということで、少なくともその分だけは自前の投資が行われることによって貸し出しの健全性を確保すると申しますか、リスクをできるだけ小さくするためということでああいう融資率という縛りをかけておるわけでございますが、実態は、そのうちの相当部分が自己資金ではなくて、今度は系統プロパーからの借金になっておるという現実があることは私どももよく承知をしております。これも貸し付けに伴うリスクを小さくするためにそういう融資率の縛りをかけるということは、私はそれなりに必然性のあることであって、むげにやめられないものと思っております。そういう制約がございますが、漁協段階で転貸に伴うリスクにつきましては、今申し上げました信用補完制度によって対処するということを考えておるわけであります。  それから今度は、信用補完制度で対処するといっても、そこはまた身ぐるみはいだ後でなければ代位弁済をしないではないかというお話がございます。これにつきましてはいろいろな考え方がございますが、すっぱり代位弁済をつべこべ言わずにいたしましても、しょせん求償権は残るわけでございまして、それで求償権が残っております以上は、求償権を行使して弁済能力のある限りとことん弁済をお願いしなければいけなくなるということにはしょせん変わりはないわけであります。これは、先ほど金融というものについて回る宿命で逃れられないというふうに申し上げたのはまさにそこのところでございまして、代位弁済してもらったからといって決して自由になるわけではない。その代位弁済をしてもらえばあとは自由になる制度をつくれと言われても、それは金融の制約上しょせんできないことでございますから、それは代位弁済をする前にできるだけ払ってもらってから代位弁済をするか、それともそこは代位弁済をやってやって、そのかわりあと求償権で苛斂誅求をやるかという違いでございますので、そこはともかく代位弁済をしてくれる機関があるということだけでも、ない場合に比べれば漁業者にとって大変お役に立っておるはずなんで、その点はひとつ、制度に内在的に伴う問題であるというふうに御理解いただきたいと思っておるわけでございます。  ただ、従来ともすれば、恐らく先生御批判のような事態が起こったのではないかと思われますのは、何しろ中央漁業信用基金がまた金繰り自体が大変危機的な状態になっておりましたので、そこで代位弁済の行われ方についていろいろ御批判を招きかねまじきような事態があったのであろうということは私どももよく自覚しておるところでございまして、その点につきましては、五十九年度予算及び五十九年度の補正予算あるいは今年度の予算で中央漁業信用基金の財政面でのてこ入れは私どもとしては相当思い切ってやったつもりでございまして、そういう金融である以上宿命的に逃れられない制約の範囲では、よほど円滑に代位弁済が行われるようになるはずというふうに思っております。
  17. 小川国彦

    小川(国)委員 今までの長官と私の質疑を通しまして、大臣もいろいろな事業をごらんになってきて、今長官の御答弁じゃないが、金融という問題の難しさというものはいろいろお感じになっていらっしゃると思うのですが、特に漁業者金融という場合には、公的制度資金だけでは賄い切れない非常に長期負債の状態、借入額が多額に上っている問題等あるわけですね。こういう面については政治的に、漁業者長期負債、それからそういう金融的な対策についてもっともっと力を入れてもらわなければならぬと思うのですが、大臣としての御所見はいかがですか。
  18. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生にお答えいたします。  先ほどから聞いておりまして、沖合底びき漁業につきまして、先生の計算では七、八千万の売り上げでありましたら赤字になるのじゃないか、私がちょっと計算すると七千七百九十万経費がかかる、そうすると七千万なら約八百万赤字、八千万ではとんとん、こんな数字が出て、大変燃費というのは高いのだなということ、また巨額の負債を抱えて大変だなということを実は感じたわけでございます。  そんなことで、水産庁長官が大体お答えしたわけですが、先生のお話の中で、では農林漁業金融公庫の果たす基本的な役割はどうであるかという問題が一つあるかと思います。とかく一般的によく言われているのは、政府の貸す金が一般金融機関と同じじゃいかぬわけですね。そこら辺をどう考えるかということが一つ基本的にあるかと私は思います。また、例えば船の建造資金につきまして融資額が低いということを先生がおっしゃいましたが、実は船につきましては大体三分の一が自己資金というのが常識でございます。それぐらいの自己資金を持っていないと経営が安定しないというような点もあって、通常三分の一は自己資金、残りは融資その他でやれるというのが常識だと我々は思います。そういうことで、例えば単位漁協等の問題とか漁業金融公庫担保順位の問題はある程度解決できるかと思います。  それからもう一つは、信用保証協会、これなどは率直に言いますとやはり目いっぱい担保をとってあげる、そういう形の中で担保順位等を考えることが大切だと思います。そういうことの中で、特にこういう場合単位漁協の利息もかなり高いのじゃないかと私は思うのですが、こういう意味におきましては単位漁協の利息を安くしてあげる、そんなことで政府も考える、単位漁協も考える。  それから、実は私は油などの買い方をよく知らないのですが、今燃油資金等いろいろあると思いますが、もし何でしたら、油なども全部そういうのがまとめて買って割引をしてもらう、何か買い方の方法もひとつ工夫をする必要があるのじゃないか、そうするとそういうふうに安くなる、そんなことで、経営者もそういう努力をするという形の中で、農林漁業金融公庫の果たす役割を考えた場合に、基本的には一般金融機関と同じではいかぬ、私はこう思っております。そんなことで、先生の意をよく酌みながらこれから長官等と相談し、行政指導してまいりたい、このように考えております。
  19. 小川国彦

    小川(国)委員 今大臣の答弁の中で、漁協の利息を安くしていきたい、こういうことについての今後の取り組み、それから燃油について何とかこれを引き下げていく方法、これはまた今後引き続いて大臣の方でも御検討願って、こういうことで漁業者の期待にこたえられるような御指導をひとつ願っていきたいと思います。  次に、農業関係についての融資の問題でございます。農業に関する融資の中で、最近農家の負債というものが非常に問題化してきているのでございますが、全国の農家の固定負債状況把握というものは、農水省ではどういう機関でこの実態を把握されているのでしょうか。
  20. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 固定化負債というものを調査した全国統一的な統計というようなものにつきましては、農林水産省としていたしているということはございません。固定化負債というものをどういうふうに観念するかということにつきましても、県からいろいろなお話は聞きますけれども、定義をどうするかということがまずございます。どの程度の延滞になっているもの、あるいはきちんとした担保のあるもの、ないものと、いろいろございます。ただ、地域により、また県により団体によりまして、こういった分野、こういった部門に固定化負債がある、あるいはこのぐらいの金額のものがあるというようなお話は私どももいろいろな接触の過程を通じてお聞きはいたしております。
  21. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、農林省の現実の対応としては、農家負債実態というものは正確な形では把握されてないのですね。しかし、それを何か推定する形の中で、農家の負債は全体としておよそこのぐらいあるのじゃないかとか、それからもう一つ、今一番問題になっているのは畜産農家の負債で、乳牛、肥育、養鶏等まで含めましてそういうものの実態把握というのは必要かつ重要なことではないかと思うのですが、その点について、推定的な判断でも結構なんですが、そういう数字をお持ちでしたらひとつ発表していただきたいと思うのです。
  22. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 負債というお話でございますれば、借入金も含みます農家経済全体の動きにつきましては農家経済調査によりまして調査を行っているところでございます。農業あるいは農家全体の負債はどうかということにつきましては、いわゆる社会勘定というふうなことで、マクロで、農家の金融資産が幾らあり借り入れが幾らありというような推計は、一般借入金全体につきましてはございます。  ただ、固定化負債というふうなことになりますと、先ほど申しましたように固定化負債というふうなものをどういう観念でとらえるかという、担保の裏づけとか保証とかいうようなもの、あるいはどの程度の延滞というようなことがございますので、それについての統一的な調査はございません。  ただ、たびたび問題になっております畜産部門の負債の問題につきましては、かねてから五カ年計画での酪農負債整理の資金、またことしの畜産物価格の決定の際に肉用牛の経営合理化資金ということで、肉用牛関係負債整理のための資金の手当でもまた行われたわけでございますが、こういった措置を講じます場合にはそれなり実態を把握ないし調査をいたしまして、それに対する対応策としてそういった制度なり措置を仕組んでいるということでございます。
  23. 小川国彦

    小川(国)委員 およその負債総額の把握というのは数字でお示し願えるのですか。
  24. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 負債総額という点で申しますと、農業及び農家の社会勘定という一種の社会会計的な手法を使いましたマクロの計算がございますが、これで申しますと、五十八年度末におきます農家の負債総額が十四兆四千八百八十二億円、それから預貯金等を含みます金融資産が五十九兆六百六十七億円というふうな資産と負債状況になっております。
  25. 小川国彦

    小川(国)委員 その中で一番大きいのは畜産農家の負債なんですが、十四兆四千億の中で畜産農家の負債はおよそどの程度というふうに把握しておりますか。
  26. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 これは農家経済調査その他の統計調査を駆使いたしまして、社会勘定の手法を使って計算をいたしておりますので、負債なり金融資産の経営部門別内訳というものは残念ながらないわけでございます。
  27. 小川国彦

    小川(国)委員 私ども一般的な金融機関の調査の中から伺いますと、畜産農家の負債総額が大体二兆五、六千億。この中から住宅ローンとか教育費とかそういう生活資金的な負債を除くと、固定化しているものというのは、一年以上借り入れしているものを見ると、大体二千億。流動化しているものは、九〇%が流動化しているものと見ると、一兆八千億。こういう形のものが畜産農家の負債としてあるのではないかという数字を伺っているのですが、この数字については政府としてはどういうような御見解でございましょうか。
  28. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  そういった総額の面からの数字の把握というのは私どもいたしておりません。個々の経営タイプごとに実情がどうなっておるかということは把握をいたしておるわけでございます。
  29. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっともう一遍、個々の農家の実態は把握しているけれども総体的なものは把握されてない、こういうことですか。
  30. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  農林水産省で、形態別に見た農家経済調査というのがございます。酪農とか肉用牛とかそういった部門ごとに、どういう実態にあるかというふうなデータは出ておるわけでございます。
  31. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、総体の把握というのは残念ながらないということでございますか。
  32. 野明宏至

    ○野明政府委員 ございません。
  33. 小川国彦

    小川(国)委員 私はこれは大変残念なことで、やはり今農家の経営が、畜産から果樹から耕種ですね、米作、畑作、いろいろな面で負債のない農家はないわけで、皆いろいろな苦しみの中にあるわけですが、その中で最大のものが畜産農家の負債問題と言われているわけですから、少なくも政府として推定的にでも負債総額がどのくらいあるのか、特にその中の固定化している部分がどのくらいあるのかということは、やはり実態把握が必要なのではないかと思うのです。この点いかがですか。大臣あるいは局長さんでも、積極的にこういう問題に取り組む、実態を把握しようというお考えはないのですか。
  34. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  例えば先ほどの農家の形態別に見た農家経済調査によりまして、酪農については資産、負債状況がどうなっておるかということは私ども把握をいたしておるわけでございます。それによりますと、例えば酪農について申し上げますと、負債総額は五十八年度で約一千万あるわけでございます。これに対して資産は約四千三百万ということになっておりまして、規模拡大というものが少しずつ進んでまいっておりますので、一頭当たりにいたしますと、負債の額というのは五十八年度につきまして前年より四%程度減っておるというふうな状況でございます。それからもう一つ、新しい臨時特別な措置をとろうという場合に、例えば今般の肉用牛についての措置でございますが、各県から実情を報告してもらうというふうな形で把握をいたしておるわけでございます。
  35. 小川国彦

    小川(国)委員 私が伺っているのは、畜産負債の中で酪農農家では総額どのくらいの負債額があって、そのうち長期固定化しているものはどのくらいあるか。その私が言っている長期固定化は、大体一年以上の借り入れになっているものをとらえて一割なら一割ぐらいあるのか。そういう酪農なりあるいは養豚なり肥育なり養鶏なりと分けてもいいですし、畜産農家の負債総額というのは総枠でどのくらいになっているのか。それから、一年以上の延滞になっているものはどのくらいあるのか。そういう総体というものを農水省として把握しておく必要があるのではないかということを申し上げて、それが今ないというのなら把握していこうというお考えはないのかということを伺っておるわけなんです。
  36. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生にお答えいたしますが、結局、農家の借入金を含む農家経営状況については農家経済調査において調査を行っております。先生のおっしゃる固定化負債については、これは先生御存じのとおり、農家は経営と家計が未分離ということで、さらにまた畜産農家においては多額経営資金が必要というようなことでございまして、その資金使用区分が異なってなかなか難しいわけでございますが、実は先般にも、農家の実態が不十分だということで一遍農家の実態調査をするように指示してございます。  そんなことで、今先生指摘のように前向きに取り組んで、一度畜産農家を含めて借金がどのくらいあるのか。そういう形の中に、一年以上の固定負債の分け方はなかなか難しいと思うのです。例えば農家の場合は、経営と家計が大体一緒になっているものでどんぶり勘定でございますから、その辺をどう見るかという問題がございますが、一応前向きに取り組んでみたい、このように考えております。
  37. 小川国彦

    小川(国)委員 先般参考人をお呼びしたときに農業団体の方の発言の中で、四千五百の全国農協の中で、その中の一定の対象農協を選んでアンケート調査をやった、こういうような御報告がなされているのですが、そういうことについては農水省としては検討されていないのですか。
  38. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 その四千五百のアンケート調査で、私ちょっと、参考人の際に他の委員会の答弁で途中中座をいたしておりましたので、直接お伺いできなかったので大変申しわけないのでございますが、系統団体では、農林中央金庫等が系統信用事業の中央機関として時々、全国の農協を十分の一とか二十分の一抽出をいたしまして、いろいろな調査をやっているということはございます。
  39. 小川国彦

    小川(国)委員 私の伺ったのでは、たしか四千五百の全国農協のうち五百の農協に対するアンケート調査で、返済が一年以上滞っているものは大体一〇%から一五%が固定負債となっている、こういうアンケート調査があってというようなお話を伺ったわけです。こういう実態から推測していけば、今畜産農家の抱えている負債というものを総枠で把握し、その中でまた固定化しているものはどれくらいかというようなことを農水省としても把握していく必要があるのじゃないかと思うのです。これはこれからでも私はいいのですが、やはりそういう取り組みをなさるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  40. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいまの点につきましては、私どもそういった全体的な把握というものにつきましても前向きに検討していきたいと思っております。
  41. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、例えば今公庫資金とか自作農維持資金とかいう財政資金があるわけでありますけれども、こういうものを使って農家の固定負債整理のための資金というものを何かつくっていく必要があるのじゃないか。そういう意味で流動化資金といったようなものを一つ考える、こういうような考え方はいかがでございますか。
  42. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 流動化資金という言葉の意味でございますが、要するに固定負債の問題を解消するための資金ということで理解してよろしいわけでございましょうか。
  43. 小川国彦

    小川(国)委員 かつて農水省は畜特資金というものをおつくりになった。その精神をずっと今日まで引き継いで、いろいろな形でそれが拡大をされてきているというふうに私ども理解しているわけですが、そういった精神を生かして、制度資金の中にいわゆる負債整理資金という意味での流動化資金というものをつくっていくべきではないのか。  特に今、長期固定負債というものが畜産農家の一番大きな問題になっている、こういうときに、公庫資金ないしその制度資金の考えていることが枠の拡大であり、金利の引き下げであって、そういう前向きの形で出ていくということも、これは一つ、それはそれなりに評価されるわけですけれども、もう一つ、後ろ向きと言ってはなんですが、一方、前へとても進めない、もうバックして転落寸前、あるいはもう転落、どうにもならぬというような状況の者ですね、今ここで引きとめれば何とかなる、そういう農家に対して手を差し伸べることが、今一番全国の畜産農家の実態から見ると求められていることではないのか。そういう意味では、公庫資金なりこの近代化資金なりの制度資金を使って、そういう中に流動化資金、わかりやすく言えば負債整理資金ですけれども、そういうものを制度資金として考えるところがあってもよいのではないか、こういうふうに思うのですが。
  44. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 そのような意味でございますと、農家の負債整理という意味で、部門が特定してないという意味では、かねてから自作農維持資金という公庫資金がございまして、その役割を果たしておるわけでございます。今、たまたま小川先生後ろ向き資金というふうにおっしゃいましたけれども、近年、この自作農維持資金資金需要も、御質問の中にございましたようにかなりふえておりまして、資金枠等の面でもそれに対して対応してまいってきておるわけでございますが、特にこの自作農維持資金によりまして、経営の再建整備計画を立てて経営の立て直し、合理化に取り組もうという場合に、今の貸付限度額がどうも低いというお話がございましたので、六十年度の制度改正の中におきまして、特認の限度額を八百五十万から千五百万に引き上げるというような措置を講じたいというふうに思っているわけでございます。  またそのほか、これは畜産局長の方からお答えいただいた方がよろしいと思いますけれども、特定の部門につきましては、六十年度でちょうど計画の五年度目に当たります酪農経営負債整理資金、そしてまた本年の価格決定の際に創設が決まりました肉用牛経営合理化資金というような、特定部門につきましての負債整理のための資金がございまして、酪農関係につきましても利子補給の財源の充実を図ったところでございますし、肉用牛につきましては六十年度から三カ年計画というようなことで、いずれも畜産振興事業団のいわば助成を得ながら、融資機関の協力も得て、肉用牛につきましては、利率五%、特認三・五%というような新しい負債整理の資金融通の道も今年度からとられるようになっているわけでございます。  今後とも、先ほど大臣のお話がございましたけれども、私どもなりに実態の把握もいたしまして、こういった制度が十分に適切に運用できますように努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  45. 小川国彦

    小川(国)委員 そういう各部門での努力は私ども多とするわけでありますけれども、ただ現実に農家に対する農業金融現状というものを見ますと、どうも本当に痛いところ、かゆいところに手が届いていないというような感じが非常に強くあるわけです。  そういう点で言えば、例えば六十年度で総合施設資金というものが四百三十億円用意されている。しかし現状を見ると、もう農業がどの部門をやってもとても赤字で、これをやったらいいという農業の部門が今見当たらないという状況の中で、新規に貸付枠が広がった、金利が安くなったといってもすぐ飛びついてくるという状況でもない。これは対象をもっと広げないとむしろ消化し切れないのじゃないかという印象も持つわけなんですね。そういう面では、ですから私どもも、思い切ってこういう資金長期固定負債を抱える農家に借りかえ資金として貸していく、そういう方向があってもいいのじゃないかというふうに考えるわけです。  特に長期化した固定負債を持つ畜産農家などを見ますと、結局いろいろな、建物をつくった、施設をつくった、機械を購入した、そしてそういう代金が、農作物の価格不安定のために、価格の下落のために返せなくなってくる。そうすると、結局農協から借りた飼料代とか素畜代とか、そういうところの資金をもってそういうところに充てていってしまう。ですから、結局そういう借入金の吹きだまりが末端の農協になってしまう、えさ代や素畜代にしわ寄せさせられていってしまうというふうな現象があるわけですね。例えばある農協では、毎月経済連に支払うえさ代を信連から借りて経済連に払うというふうな事態が起きている大きな農協などもありまして、これはまさに農家の苦しみが農協にしわ寄せさせられているという感じを強く持つわけです。  そういう意味では、私は前向き資金というのはむしろ系統や一般で十分に対応できる体制をつくって、そしてむしろ今申し上げた長期化した固定負債農家に対する対策公庫資金等をもって充てていくべきではないのか、今のところ、言葉はどうかわかりませんが、いい資金ですね、資金回転のいい、回収のいい部分を公庫が分担して、回収効率の悪い部分を農協が負担しているというふうに私は思うのですよ。これはもう、ちょっと逆転している感じがするのですが、そういう意味では、私は、さっき申し上げたように、四百三十億の総合施設資金ども系統資金とどんどん競合していくという実態にあり、むしろ公庫本来のところから逸脱してきているという感じがあるわけですから、やはり公庫本来の農業金融の補完的な使命ということから考えれば、私はその辺を変えていくべきではないのかというふうに思うのですが、そういう意味から、こういった一連の状況について農水省としても私はやはり考えていただく必要があるのじゃないかと思うのですが。
  46. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 系統資金公庫資金関係につきましてお尋ねでございますが、私どもも最近の系統原資の充実状況ということからいたしまして、近代化資金で対応できるものはできるだけ近代化資金等の、制度金融の中でも系統原資を使ったものを活用していきたいというふうに考えております。  ただ、いわゆる前向き資金、後ろ向き資金ということで、財政資金制度金融は後ろ向き資金に重点を置いてというふうな御趣旨のお言葉もあったわけでございますが、農林公庫は、もう言うまでもないことでございますが、土地改良、造林その他非常に長期でまた低利の条件を必要とするような特別な融資分野というものを使命に持っておるわけでございまして、組合員の預貯金を預かって、それを原資としてというのにはなじまない前向き資金というものが、やはり業務の大宗を占めておるわけでございます。そういう意味からいたしまして、やはり農林漁業の生産力の維持増進という公庫資金の使命というものは今後とも重視をしてまいらなければならないと思っております。ただ、自作農維持資金資金需要が近年ふえているというようなことも私ども十分理解をしておりますので、そういった面での末端資金需要への対応につきましては今後とも十分留意をしてまいりたいと存じます。  したがいまして、公庫資金と申しますのも、そう回転のいい資金ばかりではございません。農家の負債というものを見てまいりますと、特に畜産経営かなり大きなウエートを占めておるわけですが、こういう場合には、飼料代というような形で耕種農業に比べますと運転資金が非常に大きな金額がかかる。そして、そういう農家が負債に移りますと――運転資金は農協のプロパー資金の本来の分野でございます。幾つか制度資金で手当てをしているところもございますが、そういった結果プロパー資金の延滞というようなものがふえていることが現象として出ておりますけれども制度としてそのような、何か回転、償還のよろしくないものを系統原資に充てているというような考え方はさらさらないわけでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思っております。
  47. 小川国彦

    小川(国)委員 公庫が本来土地改良とか造林とか基盤整備とか、確かに長期低利の部分を担っていく、それは私どももそういうふうに理解をしているわけです。ただ問題は、総合施設資金のような近代化資金でも十分賄えるという分野にどんどんシェアを広げていっている。だから、むしろそれは農業近代化資金に対してもっと思い切った利子補給をして、それが総合資金と見合うようなものにして、そしてこの四百三十億の総合施設資金というものがあるならば、むしろ白剤資金などと合わせてこれをいわゆる流動化資金というものに充てていくという考え方が、やはり農家の苦しんでいる状況に対応するものになるのじゃないのか。ダブったところに力を入れていくのじゃなくて、本当に必要としている部分に向けていくという考え方があっていいのではないか、こういうふうに思うのです。
  48. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 まず公庫融資枠なり貸付計画につきましては、資金需要の実態というものを十分考慮してこれからも対応してまいりたいというふうに思っております。  今、総合施設資金のお話が出ましたが、これは自立経営の育成ということを目指しまして、かなり濃密な経営指導というものと結びつきました、そしてまた資金の種類も、土地の取得なども含めた大型資金でございます。総合施設資金貸付対象の中身を個々に分解いたしまして、農機具だ、あるいは畜舎だということにいたしますればこれは農業近代化資金でも貸せるものということでございますが、そして農業近代化資金におきましても特利の設定というふうなことで、末端農業者個人には五%で貸せるような特利の制度もあるわけでございますから、金利面でそんなに大きな差があるわけではございません。むしろ総合施設資金ということになりますと一件当たりの貸付金額が非常に大きくなります。そういたしますと、農業協同組合の一種の平等主義のような事業運営方針からいたしますと、特定の農家に近代化資金で貸せるものも余り数千万もまとめて貸すというようなことは実際やりにくいということもあるわけでございまして、私ども系統原資の活用につきましては、これからも努力してまいりたいと思いますが、対象施設等で近代化で見られるからといって公庫の方の道を全部ふさいでしまうというのも、これまた農家の方々にかえって御迷惑をかけることになるのではないかということも考えておるわけでございます。
  49. 小川国彦

    小川(国)委員 私はこれをもっと全体的な観点で見ますと、農林漁業金融公庫の貸す制度資金と、それからもう一つ農業改良資金、それから近代化の系統資金というこの流れで見ていきますと、この三つの競合とか分野整理がもうちょっときちんとしていかなければならないのじゃないかというふうに思うわけなんです。  それは、先ほど私が冒頭指摘した農家の負債状況は一体どうなっているのかという実態が、残念ながら農水省でも把握されてない。それはなぜか。公庫公庫貸し付けする、これは農林漁業金融公庫公庫制度資金を貸す、それから農業改良資金は都道府県を通じて農業委員会を含めて貸していく、それから近代化資金は農協系統を通して貸す。三本立てになっているわけですね。それはある部分では農協を窓口にするという形にはなっているけれども現実には公庫資金公庫資金農業改良資金農業改良資金でいっているわけです。ですから、最終的にある一軒の農家がどれだけの負債を抱えているかというのはどこかで把握していなければならぬのですけれども、把握する場所がない。これが末端の農協なら農協を機関として全部通していくという形にすれば、農協は管内の農家一軒一軒の経営実態を一番よくつかんでいるわけですから、そこにどれだけの負債があるかというのは、末端の農協でぴしっと全部、制度資金も改良資金もそこを通っていくようにしていれば把握できるはずなんです。それが把握するようにしてないというのは、農協の手ぬるさもあるかもしれないけれども、農水省のそういう農業金融に対する管理とかコントロールとか指導の面で欠けている面があるのじゃないか。  ですから、そういう分野の競合しているものをもっと整理していく。やはり柱としては、末端の農協がいろいろな貸付資金の吹きだまりになって現実には制度資金のしりぬぐいをしているという実態を改善していくためには、そこのところで農家の借り入れしている資金というものを総合的に把握するように仕組みを変えていかなければいけないのじゃないか。  そういう意味では私は率直に言えば、例えば農業改良資金なんかも、県庁のお役人さんがふなれな金融を取り扱っているのじゃなくて、農協なら農協に任していいのじゃないか。だから農協の資金と農協の組織を使ってできるところは系統農協にきちっとやらすべきだと思うのです。公庫公庫として、先ほどおっしゃったような本当に国の制度として、これは土地改良なり基盤整備なり、長期の展望を持って低利でぴしっと国として基盤整備をやろうというところは、それはいいと思うのです。ただ、今のようにどんどん総合資金というようなことで範囲を広げていって、現実には農協に金がだぶついているのにその分野にどんどん食い込んでいく、しかも、公庫が千人近い職員を持ち、全国に何十カ所の支所を持ち、そしてそこに投入されている人件費、それから政府の補給金、こういうことを考えてみますと、私は、行政改革の中でこれ以上公庫を肥大化させていくということじゃなくて、公庫資金をこそ本当に農民の金融に生かすようにしていくことが農政のあり方じゃないかというふうに思うのですが、その点を大臣あるいは関係局長皆さんが今後のあるべき農業金融のあり方としてどうお考えになっているか、その辺の見解を明らかにしていただきたい。
  50. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 系統金融制度金融、それから制度金融の中でも公庫、系統原資のもの、改良資金、いろいろあるわけでございます。この相互の役割の分担関係につきましては、農林漁業の情勢の推移、系統原資の動向というものを十分踏まえまして、そのときどきの状況に十分マッチした、全体として農林漁業者のためになるような適切な役割分担とその運営を図っていくように、これからも努力をしてまいりたいと存じております。  それから農林公庫につきましては、やはり公庫みずからの合理化、効率化ということについても、今までも努力をしてまいりましたし、こういう厳しい行財政の状況でございますので、これからもそのような合理化、効率化の努力については続けてまいりたいというふうに考えております。
  51. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  今経済局長の申したとおりでございますが、やはり基本的には農林漁業金融公庫の果たすべき役割をどういうふうに考えるかということでございまして、私は、やはり一般金融機関と同じではいかぬのではないだろうかということで、この辺をできた趣旨に沿ってひとつよく考えてみたい、こう思っております。そういう形の中で、今局長も言ったとおりでございますが、基本的には、農家の経営実態調査をいたしまして、今先生のおっしゃったような点は、農家の皆さん方が安心して農業ができるような形にどう持っていくかということについて検討してみたい、こう思っております。
  52. 小川国彦

    小川(国)委員 中曽根内閣が行革行革と言いながら、一方では公庫を肥大化させていく。現在九百五十一名の職員、人件費を推定するとおよそ六、七十億の人件費。それからまた、国の方から毎年一般会計から約千三百億の補給金をつぎ込んでいっている。そして今のようなますます肥大化する傾向を政府が進めている。それならば、それだけの金を農業金利の引き下げに充てていけば、もっと農業金利を引き下げることができるのじゃないか。そういう意味で、今それぞれ御答弁ありましたけれども、今後の農業金融全体を見て、公庫というものは公庫法の第一条に掲げた制度資金に徹し、系統と競合する部分はそれは系統に譲り、そしてできるだけ、国の補給金なりあるいはまた国の予算をつぎ込むのは、末端の農協の金利をいかにして引き下げてやるか、そういうところに力を注いで、本当に農家のつらいところに手が届くような金融に正していくべきじゃないか、私は、こういうことを最後に大臣に申し上げて、終わりたいと思います。
  53. 今井勇

    今井委員長 次に、津川武一君。
  54. 津川武一

    ○津川委員 実は、漁業金融のことで、鰺ケ沢の沖のイカ釣りで、昨年の二月には三十三トン、ことしの二月には二百四十四キロ、こうなってしまったのですが、こういうふうに回遊魚を相手にしている漁船、漁港に対する融資では、こういうことを含めて金利や償還期間などを決定していかなければならない、漁民がどんなに働こうと思ってもイカが来なければどうにもならない、こういうことを質問しようと思って計画を組んでおったところ、それ以上の事件が漁業関係者に起きたので、委員長にお断りしながら、ちょっとそこに触れていきたいと思います。  きのうソ連船が塩釜に三回目の入港をいたしました。これに対して、またしても右翼が暴動を繰り広げております。これでソ連がつむじを曲げると、北洋のソ連領域内における日本の漁業ができなくなるという心配も出ているのでございます。  そこで大臣、今回の事態は、塩釜にソ連船を入れることは、あなたがソ連と漁業協定を結んだ、ここから始まっております。ですから、このことについてあなたの責任がかなり大きいと思いますが、この状態をどう見ておられますか、お答え願います。
  55. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  ソ連漁船の塩釜への寄港は、難航する日ソ漁業委員会における協議の局面打開のためやむを得ざる措置として認めたものでございますが、その際日本側から、昨年の小名浜港における経験にもかんがみまして、補給以外の寄港の目的の充足が一九八四年以上のものであるということを期待されても困る、一九八四年並みだと思っておいてもらいたいということは、ソ連側にはくどく念を押したところでございます。そういうことでございますので、塩釜でいろいろなことが起こっておりますが、関係各省庁とも連絡をとりまして、宮城県警とも協議をいたしました結果、ソ連漁船の安全確保ということに重点を置いて必要な警備体制をとっておられるわけでありますが、そういう中で、私どもとしては、日ソ漁業委員会の席上私どもからソ連側に対して言ったことが言ったとおり実現されていない、そういう事態ではないというふうに認識をいたしております。
  56. 津川武一

    ○津川委員 水産庁長官、どうも認識誤っているね。一度現地を見てほしい。この右翼の暴力の暴れることで、やらなければならないのは、ソ連船員の安全、求めておるいろいろな物の補給、ソ連船員の休憩、これが一つ。もう一つには、市民生活に不安を与えないということ、このことが大事なことなのでございますが、ところが今度の右翼の暴力の、あのやかましい車を百何十台動員してくることによって、市民は眠られない、怖くてどうにもならない、めちゃくちゃな状況です。また、地元の魚市場では仕事ができない、こういう状態になっております。したがって、地元では何とかしなければならないという声が今大きく上がっております。この状態は、この問題のきっかけをつくった水産庁政府は、漁業以外でもやっぱり責任を持たなければならない。  そこで、商工会議所なども、魚市場並びに周辺地域の業務に支障を来さないよう右翼を締め出してくれ、国道四十五号線から新浜町に通じる五カ所の出入りを規制せよと。やろうと思えばできるのです。現に国会の周りが規制されているのです。こういう状態なんです。これが市民、漁民の要求です。もう一つには、仙石線本塩釜駅構内の右翼の車の出入りを規制すること、これについて具体的に措置しなければならないと思いますが、この点、できる、しなければならないと思いますが、警察庁おられましたら、方針をまず明らかにしてください。前二回同様ほったらかすのか。検挙したからということで済むものではこざいません。問題を抜本的に解決しなければならない。警察庁、いかがです。
  57. 菅沼清高

    ○菅沼説明員 お答えいたします。  日ソ漁業交渉の妥結が報じられました二月一日以降昨日の四月九日までの間に、延べで三百五十五団体、約千七百二十人、車両約四百七十台が、宮城県内におきまして寄港反対の街頭宣伝や県当局及び塩釜市当局に対する寄港拒否を求めての要請活動等をやっております。警察といたしましては、一日最大千五百人の警察官を動員いたしまして、違法行為は看過しないという基本方針のもとに厳正に取り締まりを行っておるわけでございまして、その結果これまでに二十件、二十三名の者を検挙いたしておるわけでございます。
  58. 津川武一

    ○津川委員 今までの検挙を私は問題にしているのじゃない。今どうするかということを答えていただかなければならないんだ。この点、もし意見があったらもう一回答えていただく。  大臣には二つのこと、四十五号線を規制することと本塩釜駅の前に暴力団が入らないようにすることを、国務大臣としても、事をここに持ってきた責任者としても、あなたは、警察庁にかけ合うとか外務省に交渉するとか、必要な措置を講じなければならないと思いますが、決意を伺わせていただきます。
  59. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  塩釜の寄港問題につきましては、関係する省庁が多数に上りまして、それぞれつかさつかさで処理をしておるわけでございますが、日ソ漁業委員会との関連もございますし、農林水産省で全体的な見地から関係の各省庁とも御連絡をして、それぞれお願いをすべきところはお願いをしておるわけでございます。私どもといたしましては、警察庁に対しましても、乗り組みソ連漁船員の安全確保等について遺憾のないよう措置していただくようにお願いをしてきておるところでございまして、警察庁にもその点は十分御理解をいただいておるものと承知をしております。
  60. 津川武一

    ○津川委員 大臣、何か。
  61. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 津川先生にお答えいたします。  今長官が答えたようなことでございますが、警察庁が大変よくやっていただいておると思っております。そんなことで、ソ連漁船の寄港に伴う国内問題につきましては、我が省が中心となりまして、所管事項に応じ、関係省庁の間で連絡をとりつつ対応することとしております。寄港については、あらかじめソ連側に対し表明した内容が充足されていないとは考えておりません。そんなことでございまして、今後とも、政府全体として十分連絡調整を図りつつ対処してまいりたいと考えております。
  62. 津川武一

    ○津川委員 ソ連の漁船漁業関係に対して義理を尽くすこと、これはいいですよ、約束だから。しかし、問題はそうじゃなくして、市民の安全、不安、市場業務の停止、混乱、ここのところを何とかせいと私は言っているわけなんです。これは答弁は要りませんから、大臣が責任を持ってこの点を処置していただくよう要求して、次の問題に入ります。  農業金融に入りますけれども、日本の農家、農業者、林業者、漁業家、畜産農家が一年に約十兆円の水揚げを上げておって、この間、中金から聞きますと、この間にそのために二十兆円の借金をしょっている、このために三十七兆円ぐらいの貯金もしている、こう聞かされておりますが、どのくらいの水揚げ農業で上げておるか、これに対して、どのくらいの借金をして、どのくらいの利息を払っておるのか。この預金、政府に聞きますと、何か預金が四十兆円、農業収入からのものは十五兆円、土地が十兆円、農外収入三十四兆円と聞いておりますが、こういう点で、ここで数字を明らかにしていただきたいと思うのです。
  63. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農業及び農家の社会勘定によりまして農家の貯蓄と借入金の総額を見ますと、五十八年度末におきまして農家の負債総額が十四兆四千八百八十二億円、預貯金等を含む金融資産は五十九兆六百六十七億円、そのうち預貯金が四十兆五十九億円という状況になっております。この貯蓄の源泉がどうなっているかというようなことにつきましては、これは農家の農業収入、農外収入、土地等の収入というようなものを全部総合しました結果出てまいってきておりますので、内訳別というのはなかなかわかりにくいということでございます。
  64. 津川武一

    ○津川委員 ちょっと今、水揚げが幾らか聞き漏らしたのですが、話してくれましたか。
  65. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 五十八年におきます農業生産額が、この社会勘定の数字で申しますと、水揚げが生産額ということでございますれば、十二兆八百五十二億円でございます。
  66. 津川武一

    ○津川委員 そこで、十二兆円の水揚げをやるために一兆二千億円の利子を払っている。一割。こんな企業はありはしない。皆さんが一生懸命農家を案じて、農協を案じて、農業を案じて金融制度をつくってくれました。この枠を広げてくれました。利息を下げてくれました。償還期間を長くしてくれました。この努力は、農家の皆さん、農民団体の皆さんとともに高く高く評価するのでございますが、その皆さんの善意の行動が、十二兆円の水揚げをするために一兆二千億円の借金をさせた、これが現実なんです。  そこで、借金しない農家は健全に残っている。農家の皆さん長期低利の資金を求めているが、今どこへ行っても借入金の問題では、もう借金は要らない、国の援助だ、こう言っているわけでございますが、借金をしなくてもいいような、借金なしでやっていけるような農業、ここに農政が大きく大きく配慮しなければならないと思いますが、農水大臣、どうでございます。
  67. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農業政策を実行いたしてまいります際に、補助、融資、価格政策、いろいろな手段がございます。そういった手段を適切に組み合わせながら農政を進めていくということが重要でございますし、経営の近代化なり規模の拡大を行います場合に、現実の問題として、そういった経営の近代化なり規模拡大をやっていく必要というものを借り入れによらざるを得ないという農家の方々が多数あることは事実でございまして、そういう方々のために制度資金の用意をいたしておるわけでございます。問題は、その融資に当たりまして、過大な負債にならないように十分に審査をする、そしてまた、貸し付けましてからも、融資機関であります農協とかあるいは普及指導関係の人たちが、順調な償還ができるように十分事後の指導をやっていくということが大事だというふうに思っております。
  68. 津川武一

    ○津川委員 農水大臣、金融政策も大事だけれども、借金でなくやっていけるような農業というものを指導して確立していただきたいと思うのですが、この点はいかがでございます。
  69. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  今局長が答弁したとおりでございます。
  70. 津川武一

    ○津川委員 そこで、質問を続けていきますが、こういうふうな格好で借金から抜け出していく、そういう農業が求められているときに、農水省は融資農政の本格化だとか補助から融資が本格的段階に入ったなどというように、今回の金融制度の大幅な見直しでも、補助から融資へという流れを踏んでいる。農業実態に合わないのです。農民の要求にも合っていないのです。  そこでお尋ねしますが、農水省の予算の中で補助金の総額は臨調下ではっさり削られております。五十七年当時、六百件、二兆七千三十億円あったものが、六十年には五百十八件へと件数が減り、補助額も一兆八千四百三十一億円に減っております。こういう補助金の大幅カットはこれからも続けていくつもりでございますか。カットした分を融資に頼らせてまた借金農業をつくるつもりでございますか。この点、明らかにしていただきたいと思います。
  71. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 補助と融資と申しますのは、それぞれ特質に応じまして、補助は土地改良等の公共性の非常に高い分野を中心にしまして、制度融資はどちらかといいますと個別経営の資本装備あるいは私的な資本の形成と申しますか、そういう分野で主たる役割を担うということが基本でございます。補助から融資へというふうに言われておりますけれども、やはり本来補助で対応すべき分野というものは、どのような時代の流れになっても、農林水産業の実態から見ますと補助が全くなくなるというようなことはあり得ないことではなかろうかというふうに私ども思っております。  近年、補助から融資へという農政の助成手段の切りかえというものは、補助と融資との境界線をどこに引くかというところでございまして、機械、施設等の個別経営になじむものにつきまして、融資の方が農業者等の創意工夫なり自主性を尊重しながら財政資金の効率的な使用という点にもかなうということでやってきておるわけでございまして、すべての補助金を融資に切りかえるというようなことは私ども考えておるわけではございません。今後とも補助、融資、車の両輪ということで、両々相まってやっていくべきものだというふうに考えております。
  72. 津川武一

    ○津川委員 やはり借金農政を続けていきそうですが、何としても速やかな転換を求めてやみません。  もう一つ今度のことで心配なのは、三・五%の利息のものを五%にしたということです。安い利息ということが農民の要求の中に圧倒的にあるのに、高い利息に転換していく。しかもその三・五%は条件のいい規模の大きな者に、五%の利息は条件の悪い人にというように、そこで農民を選別、差別していく。小さな者たちにいいようにしていかない。参考人の意見聴取の中で農協中央会の人たちが言うように、この五%にされた人たちに何らかの要求があるのに、これに対して何らかの手当てがあるのか、してもらわなければならない。もう一つは、全体として小さな人たち、農業をやっていく善意のある人たちへの補助も融資もだんだん狭められてきている。これも選別、差別なんです。まじめな農家、小さな農家というものを育てなければならないと思うのです。この二点について方針を伺わせていただきます。
  73. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 三分五厘資金の重点化の問題でございますが、今回、構造政策の方向等に即して重点化を図るということにいたしたわけでございますが、今までの三分五厘資金のおよそれ割程度のものは従来どおり三分五厘資金を適用することにいたしております。この三分五厘資金融資対象から外れるのは、例えば農地等取得資金にございましては農地移動適正化あっせん基準に準ずる等の要件を満たさない者が借りる場合、あるいは農業構造改善事業推進資金の場合におきましては事業規模が百万円に満たない場合ということでございまして、政策遂行上、この三分五厘資金から外れる者につきましても五分という比較的低利の金利を適用するということにいたしておるものでございます。  なお、この農地取得資金につきましてこういった金利の適用の面で重点化を行うということにいたしておりますが、農地取得資金そのものの借入資格につきましては従来と何ら変更するものではございません。農地取得資金そのものを今まで借りられた人が今度借りられなくなるということではございませんので、これによって資金借り入れの道が断たれるというようなことはないわけでございます。  また、何らかの手当てをすることを考えているのかどうかということでございますが、例えば構造改善事業推進資金でございますと、構造改善事業に伴って投資が一時に集中的に行われる。それで集中的、計画的に行うためにということで三分五厘資金制度ができたというふうに承知しておりますが、事業規模百万未満のものであればそれほど大きな集中的な投資というふうにも考えられませんので、五分に移したということでございます。この五分というのも一般制度金融の中ではかなり低い金利でございますので、これ以外に手当てするということは私ども今のところ考えておりません。
  74. 津川武一

    ○津川委員 事業規模百万以下というのは小さなものであり、小さな人たちだからそれだけに切実な要求なんです。これを無残にも情け容赦もなく切るというところに非常に大きな残酷な問題がありますので、ここらにも農政の光が当たるように対策を考えてくれるよう強く強く要求して、質問を進めていきます。  次はサラ金でございます。  農業はなかなか思うようにいかない、行き詰まる、そこで農協に相談して借金する、友人から借金する、親戚から借金する、そして信用金庫がある、国民金融公庫がある、普通銀行がある、これらをみんな行く、それぞれ何らかの手当てをしてくれる。こうして二千万、三千万と借金が重なって、最後にどうにもならなくなってサラ金に走る。これが今の農家のかなりの部分の現状でございます。  私の事務所と日本農民組合の人たちが共同でこの相談を受けておりますが、最近五百件のサラ金の相談を受けました。そのうち農家が百件なんです。ここに今の日本の農政の姿がございます。農林中金が昨年一月に調べた結果では、サラ金のトラブルで組合員から相談を受けたことのない農協は一九・九%、残りの八〇%は何らかの形でサラ金のトラブルで相談を受けている。頻繁に受けているところもありますし、ときどき受けているところもあります。  このサラ金に走っている人たちは、いろいろ事情はあるようですが、農業をやっての上でなんです。ここに何らかの救済の措置はないのか。例えばサラ金に走る前に農協に行くなり地方自治体に行けば自創資金を適用してくれるとか、農協の窓口に駆け込み融資制度をつくるように農協を指導するとか、こういうことがないのかということが一つです。  二つ目の質問は、こうして相談を受けた、その農地を見ると、二百万で買ったリンゴ畑が四十万に落ちてしまって担保能力がなくなってしまった。売るにも買い手がない。売って借財を始末したいけれども、売れないから借財を重ねていく。こうしてこういう土地が荒らされたまま放置されておって、今度この土地をだれも受け取ってくれない、したがってこの土地を有効的に利用する方法はないのかという、非常に困った状態においてこの土地の問題とサラ金の問題、二つ出てきたわけであります。この二つに答えていただきたいと思います。
  75. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 サラ金業者の農村部への進出の問題ですが、今御質問の中でも引用がございましたように、農林中央金庫がアンケート調査をいたしましたところによりますと、この一年間にサラ金とのトラブルに関して組合員から農協に相談があったかどうか。頻繁にあったが一%、ときどきあったが四五%、ほとんどなかったが三三%、全くなかったが一九・九%という状況になっております。  サラ金の問題全体は、こういった個人金融全体の問題として農家、非農家を問わずある問題でございますけれども、農協組合員なり農家がいわゆるサラ金トラブルに巻き込まれることを防止するという観点から、農協の系統金融機関がいろいろ内部で指導方針を決めまして、サラ金の実態についての啓蒙なり、農協による相談活動の強化、それから統一ローンというような農協自身によります簡便な小口資金の貸し出しの普及、こういったことに取り組んでおるわけでございます。  一つは農家のそういう資金需要にこたえられるような簡便なローンを十分に用意して組合員要望にこたえられるようにしておくということと、もう一つは農協が組合員経営なり家計というものをよく把握して、日ごろから目の行き届いた相談機能と申しますか、そういうものを強化していくということが基本であろうというふうに思っております。
  76. 津川武一

    ○津川委員 一番手っ取り早いのは自創資金適用だと私は思うのですが、サラ金に対してこの点は適用できますか。  農協の相談の場合、七千万から八千万の借金で私も一緒に行って金融課長と非常によくやって再建させた例も覚えておりますけれども、農協へ行くとしかられるのだよ、おまえらだらしないからと言って。その辺もあるかもわからない。したがって、嫌なんです。サラ金に走る。ここいらあたり具体的な指導体制を確立しなければならないので、自創資金を全面適用することができればよろしいのですが、その点をもう一回明確に答えていただきます。
  77. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 いわゆるサラ金によります融資や債務を借りかえるための制度金融というものは、私どもとしてはちょっと考えにくいところでございます。  サラ金の問題というのは農業者、非農業者を問わずの問題でございますし、たまたまサラ金のトラブルに巻き込まれたということで農業関係制度金融で何か対応しなければいけないということにはなりにくいと考えております。
  78. 津川武一

    ○津川委員 サラ金で農地を投げ出してしまわないように特別の指導を強く強く要求します。この要求はこれからも続けていきたいと思っております。  木材に移ろうと思います。  木材を生産するため借金をすると、据置期間二十年です。杉が育って売れるまでには四十年、六十年かかる。据置期間二十年で間に合うものではない。そこで、ここいらあたりに特別な制度をと思っておったときに、それどころでない大きな事件がきのう起きてしまったわけです。  それは、アメリカの圧力に屈して三年目から合板の関税を引き下げる、そのために五年間は特別に措置するというわけでございますが、日本の林業と森林に責任を持っておる農水大臣の所感を聞きたいのです。きのうあなたたちが発表した林業白書にはこう書いてあります。「林業及び木材産業を取り巻く状況は、国内の木材需要の減退に伴う価格の低迷、林業経営費の増加等」の要因により非常に苦しくなっている、こういうことです。そして、今問題の入ってくる木材に対しても、合板に対しても、非常に深刻な不況にある、何とかしなければならぬ、こう言っておるときに、その日の夕方に合板の関税を引き下げるという方針を決めたわけでございます。大臣、これでいいのか、ここいらの心境はどうなのか、国民に向かって明らかにしてください。
  79. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 これは文書をお読みいただいたと思いますけれども、「対外経済対策」の中の第二章「当面の措置と政策プログラム」の中の第二項でございます。お読みになっておるから重ねて読む必要はないと思いますが、これで最後に「財政、金融その他所要の措置を当面五か年にわたり特に講ずることとし、その進捗状況を見つつ、おおむね三年目から針葉樹及び広葉樹を通ずる合板等の関税の引下げを行うべく前向きに取り組む。」こういう文章でございます。  そんなことでございまして、基本的には今回の措置は、林業、木材産業の深刻な不振の中で「森林・林業及び木材産業の活力を回復させるため、」これはいつも私言っているところでございますが、第一に「木材需要の拡大」第二に「木材産業の体質強化」第三に「間伐・保育等森林・林業の活性化等を中心に、財政、金融その他所要の措置を当面五か年にわたり特に講ずること」としょうとするものでございます。したがいまして、関税問題の取り扱いにつきましては、これまでも申し上げたとおりでございまして、以上の国内対策の進捗状況を見つつ、おおむね三年目から取り組むこととしているところでございます。
  80. 津川武一

    ○津川委員 今農水大臣の話を聞いていると、オレンジ、牛肉の輸入枠拡大、自由化を迫られたときと同じことをここで繰り返して聞いているわけですが、そこで問題は、白書も言っているように需要の減退と外国材が入ってくることで日本の林業が非常に苦しい状況になっている。これに、今度いろいろなことがあろうが結局入ってくるとなるとどうするのか。これが入ってくると、もう間伐だとかいろいろなことをやっても役に立たない。しかも、アメリカは御自分では二〇%の関税をかけている。中曽根総理はアメリカと日本の林業を競争させると言っているけれども、競争できるも何も、あちらは自然林なのだ、こちらは人工林なのだ。ここいらを全然無視して何とかかんとか言って国民をだまして、また木材の輸入に大きく道を開こうとしているわけなのです。  国際競争、貿易の自由化というものは、相手をよく理解すること、相手の事情を十分に調べること、そこで納得を得ていくこと。無理して押しつけてもだめだ。今度アメリカの針葉樹の合板を押しつけてくる。あれは使わないですよ。こんな無理をしてもだめなのだ。そういう無理なこと、むちゃなことをアメリカがやってくる。これに対して佐藤農水大臣も中曽根総理も黙っているんだな。これは民族の自決権の放棄です。国の独立問題に関係していることなのです。言うべきことは言う、そうして事情を話し合ってお互いに残すものは残す、そうでないと貿易の自由化も国際協力もできるものではない。今は明らかにアメリカのファシズム的な圧力なのだ。この圧力に屈しないようにと強く強く要求し、大臣の所見を求める次第でございます。
  81. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今度のことにつきましては、政府におきましては中曽根総理以下全閣僚、また党幹部、皆大変御理解と御協力をいただいております。そんなことでございまして、先ほどから言っておりますとおりでございまして、この取り組みは、林業及び木材産業の活力回復のための対策の進捗状況を見ながら関税問題を考えるということでございます。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕
  82. 津川武一

    ○津川委員 もう一つ不思議に思うのは、だれがこの計画をしたのか。幹事長が三千億円出すとか、中曽根総理大臣がアメリカに行って決めてきたとか言っていて、佐藤農林水産大臣がつんぼ桟敷に置かれたみたいな感じがないわけではないです。  そこで、最後の質問ですが、事の起こりは、アメリカのこういう合板を入れることではなくして、日本のむちゃくちゃな企業の――自動車と機械産業というものを、もう少し下請を優遇して労働者に報いることによって公平な競争をする。そうすると圧力がぐんと下がる。ここのところを抜きにして総理も佐藤農水相も議論しているところに、問題が永久に解決しない、こんがらかって、これからあなたが相当苦労しなければならぬ状態ができていますが、ここいらの国の経済の見方に対して、国務大臣として本当に頑張っていただきたいと思うのです。御所見がありましたら伺って、質問を終わります。
  83. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えをいたします。  今度の場合は、基本的に我が日本の置かれた立場を認識し、友好国との関係を配慮しながら、いかにして農林水産業を生かし、健全な発展を図るかという、この調和をどう図るかというふうな観点から、私は、我が国の森林業、実は先生御存じのことでありまして、非常に厳しい状況に置かれてございますが、それを単に合板業界の体質改善のみならず、中長期の視点に立って木材産業及び林業を通じた対策を進める必要がある、こんなことから、この考えに踏み切った次第でございます。
  84. 津川武一

    ○津川委員 時間が来たかと思ったら、五分前だそうでありまして、あともう一つだけ。  リンゴ、果物の品種更新をやるときに今度無利子のお金が出ます。一つの果物から他の果物にかえるときに、同じ果物で他の品種にかえるときに、国がそこで無利子のお金を出すというのですが、この要綱の中に、例えばリンゴで言うとスターキングからほかのものにかえるときに、かえていく品種を知事が指定するとありますが、これだとまたいろいろな問題が起きてきて、農家が自分で決めたものに品種更新させるべきだと思うのですが、いかがでございます。
  85. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今回、農業改良資金の生産方式改善資金の中に設ける予定の果樹栽培合理化資金についてのお尋ねでございますが、この中の樹種転換と品種向上と二つございますが、樹種転換の方につきましては、大体転換すべき果樹については国が指定するということでございまして、お尋ねの点は主として品種更新の方になろうかと思います。  これにつきましては、お尋ねございましたように対象品種を知事が指定するということの予定にしております。これは、資金が県の貸し付けであるということによるわけでございます。これはもう当然のことでございますが、それぞれの産地の実態をよく知っている知事でございますし、また、生産者団体とも十分な協議をした上でこの指定をするように十分指導する所存でございまして、御質問にございましたような、現地のあるいは果樹農家の方々要望にあるいは希望にこたえるような形でこの品種転換を進めていきたいと考えております。
  86. 津川武一

    ○津川委員 果樹の品種指定と同時に、地域指定ということはどうなります。
  87. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 地域についても、これは知事が指定するわけでございますが、これは大体、対象品種が主として存在する、品種更新が必要である地域ということでございますので、これも、実態的に生産者の御希望また産地あるいは生産者団体の状況を見て適切な指定がなされるように、十分指導してまいる所存でございます。
  88. 津川武一

    ○津川委員 もう一つ、今スターキングからの品種更新が北斗に集中しているのです。長野県では大量に北斗の苗を買い入れて農家に配っている。青森県でも、遅くなったから北斗、北斗と雪崩を打っているわけです。こうなりますと、北斗の過剰生産ということが目前に、目に見えてくるわけです。そこで地域指定というものを論議したわけですが、このときは長野と青森の知事が協議するように農水省が指導する、こんなことになるわけですか。
  89. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 お尋ねのような、リンゴの中でも品種によりまして、一部の品種からの転換でまた行った先が過剰になる、こういうことは決して、今回の資金として期待というか、そんなことがあってならないわけでございます。したがいまして、指定に際しましては、知事の指定については地方農政局長と協議することになっておりますが、仮に今の長野県、青森県というようなことになりますと地方局も違いますので、その点は両局を本省において指導しまして、例えば北斗なら北斗というような品種に、行った先でまた次の過剰問題が出てくる、こういうことのないように十分指導いたしたいと思います。
  90. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  91. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 菅原喜重郎君。
  92. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 まず大臣に、今回の金融法改正のねらいとその背景、私からもお伺いしたいと思います。
  93. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 菅原先生にお答えいたします。  今回の農業関係制度資金改正については、二つの大きなねらいがあると思うのです。  その一つは、農林漁業をめぐる諸情勢の変化に対応しまして、足腰の強い農林水産業の育成を図る。さらに農林漁業投資を積極的に推進していくことが一つ。それからもう一つは、財政の効率的運用等を図るために効果的な助成手段の確立が要請された。この二つを満たすために、実は各資金制度の特性に応じまして、資金種目の拡充等を内容とした改善合理化を図ったものでございます。  そんなことで、これは大きく分けて三つございますが、その一つは、農業改良資金につきまして、補助と制度金融の中間的な分野を担うという役割を踏まえつつ、緊急な課題、例えば農業生産再編成とか経営規模の拡大等々の緊急な課題に対応し得るような資金種目の再編拡充を行うほか、資金の全国的調整を行う仕組みを導入するのが一つでございます。  その次には、農林公庫資金につきまして、農林漁業経営の育成強化及び構造改善等を促進しつつ、資金の効率的利用と制度の簡素化を図るとの観点に立って制度の改善充実を図ったわけでございます。  また、農業近代化資金につきましては、最近における資金需要の大型化に即応して貸し付けの最高限度引き上げを行うことにしたものでございます。
  94. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いろいろその目標とするところをお聞きしたわけでございますが、何といいましても、現在財政当局から、他の一般補助金の一律削減と同様に、公庫資金金利の利率逆ざやから生ずる補給金の抑制が指摘されている中にあって、また、農林漁業金融制度の厳しい見直しの中で、三・五%資金が今後もますます重要なものとして理解され、農林水産構造政策の重点策として積極的に維持されたことにつきましては、大きな成果であると認めるものです。しかし、一部を除きこの全体枠が総額として六十年度計画では削減されております。ゼロシーリングの予算抑制を受けているとはいえ、補助から融資へと政策転換が図られる中で、また、日本農業の早急な近代化への改革、改善が迫られている中で、この点が全く不満であります。このため、総枠をふやすことができないのか、内容説明と一緒にお伺いする次第でございます。
  95. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 公庫貸付枠の問題でございますが、貸付計画額に比べまして、近年、貸し付けの実績がそれを下回るという傾向が続いております。もちろん公庫融資枠と申しますのはいろいろな年々の事情によりまして、例えば災害関係資金需要が非常にふえるということもございますので、ある程度のゆとりは持っておる必要があろうかと思いますけれども、現在のような財政投融資の全体の枠が非常に厳しくなっているというような状況のもとで、貸し付けの総枠としましては一定のゆとりを見ながら実態に近い方に合わせていく、ただ、貸し付け資金種類ごとの貸付枠につきましては、資金需要の強いものにつきましてはその需要にこたえられるような資金額の確保を図るというふうな方針で本年度の貸付計画枠の作業を進めまして、その結果、七千五十億から六千八百五十億というように若干の総枠としての減少になったものでございます。
  96. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今の御説明で、との各科目の中で重点的に需要の多い分野に枠の組みかえができるのかどうかもお伺いしたいと思います。
  97. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 貸付計画と申しますのは、資金の種類ごとに計画の枠をつくっておりまして、これがまた、例えば公庫に対します補給金の金額の算定の基礎にもなっておるということでございますから、一応、できるだけ需要を正確に見込みまして、資金種類ごとの計画の枠をつくるということが建前でございます。一時流用できるということになりますれば、これは資金種類ごとの計画をつくる意味がないということになるわけでございますが、しかし、年度の途中で資金の需要にどうしても対応する必要があるというときには、貸付計画額の手直しを年度の途中でやることはございます。五十九年度に農地取得資金につきまして資金需要が非常に強いということから、年度の途中に改定をして増枠をしたというふうな例が最近にもあるわけでございます。
  98. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 制度資金で実際の貸付額と貸付枠との差が残っている分野があるわけでございますが、この点に関して貸付手続の簡素化、運用面での改善等という問題はないのか、お伺いしたいと思います。
  99. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 借入手続と貸付計画の実行状況というものとの関係は、非常に密接な関係があるというふうには私ども考えておりません。ただ、やはり公庫資金を借ります場合に、借入手続が非常に煩瑣で時間もかかる、書類もたくさんつくらなければいけないということになりますと、それは資金需要に抑制的に働くということが考えられますので、これは従来から何年かに一度ずつそういった検討も行い、借入手続の書類の整理でございますとか、あるいはいろいろな審査の迅速化というようなことについての努力をやってまいっておるところでございます。
  100. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 農業基本法のもとに農産物需給の長期的展望、殊に酪畜製品の需要伸び予想のもとに、生産性の向上、土地拡大、機械化等々の農政指導で規模拡張した畜産農家の負債整理を国はどのように考えているのか、お伺いするわけでございます。  この点について、価格の引き上げだけに頼らないで済む体質づくりへの思い切った配慮、自給率は酪農で六〇%台、肥育牛ではわずか一五、六%という、高い購入飼料偏重の平均経営を改めさせない限り、こういう農家の再建は不可能と思うのでありますが、今回の改正でこういう面の融資はどうなっているか、お伺いしたいと思います。
  101. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  畜産関係、特に酪農、肉用牛の体質を強化していくという場合に、飼料の自給度を高めていくということは非常に重要な点であるわけでございます。そういう意味で、国の補助政策においても畜産総合対策を初め各般の対策をとっておるわけでございますが、金融上の問題といたしましても、今度の改正の中で、例えば従来酪農・肉用牛経営改善資金というのがあったわけでございますが、これを総合施設資金の中に統合いたしまして、自立経営に至る過程の者というふうなことで金利とか償還期限とか、あるいは貸付限度額というふうなものについで改善が図られておるわけでございます。また、五十九年度に畜産振興資金という従来補助でやっておりましたものを無利子の融資に切りかえまして、酪農につきましては草地を中心にいたしました無利子融資というものを創設いたしたわけでございますが、これにつきましても融資枠を拡大いたしますとともに、制度的な整備を図るということで今般の改良資金の中に組み込む形の改正をお願いいたしておるわけでございます。
  102. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この畜産農家の問題でございますが、何といいましても再建整備資金、自作農維持資金の中で大きく畜産農家が期待している資金でございます。この点五年以内に再建見込みのある農家に対しまして、農業委員会から知事に書類が提出され、審査されて、知事の認可でこの資金が借りられるというわけでございますが、現在岩手県でこの資金要望している農家の声が随分私のところにも強くはね返ってきているわけでございます。  全国的に農家の固定負債解消が急務になっている中ではありますが、岩手県において営農資金利用対象農家のうち六〇%近くが一千万円以上の負債を抱えていることが明らかとなっているわけでございます。これは農協中央会で営農資金融資した三百八十戸の経営再建計画書を最近分析した結果わかったものであります。この中には二千万円以上の負債を抱えた酪農家が二十七戸も数えられまして、酪農経営実態を浮き彫りにしています。また、肥育牛、繁殖牛で三十三戸、大体その規模は十一頭から三十三頭規模で件数が多いわけでございまして、酪農の方では二十一頭から三十頭規模が多いわけでございます。このため、県でも単独でこれら農家救済の利子補給等努力している現況で、この実態は全国共通のものであると思いますが、今申し上げましたように、こういう関係からも再建整備資金の枠拡大は国としても重点的に取り組んでいただきたいし、取り組むべきであると思うわけでございます。こういう点で、一応現状のこういう農家に対応するのに今回の計画額で十分なのか、その内容の説明まであわせて御所見をお伺いしたいと思います。
  103. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  農家の負債につきまして、その対策として自作農維持資金の中に再建整備資金というのが設けられておるわけでございます。これらにつきましては畜産農家、肉用牛経営農家あるいは酪農家も毎年利用しておるわけでございまして、この資金については資金需要が非常に強いことは事実でございますが、先ほど経済局長からもお答えがありましたように、年度途中において資金の上積みをする、あるいは六十年度においても資金枠を拡大している、それからまた貸付限度額につきましても六十年度から特認といたしましてその引き上げを図る予定になっておるというふうなことでございまして、畜産経営においても一定の要件のもとにこれを有効に活用してその経営安定が図られるようにしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  104. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 再建整備資金の手続の簡素化も実は要望されているわけでございます。手続の簡素化というよりも、できるだけ認可をしていただきやすいようにしてほしいというわけなんでございますが、この点に関しては政府の方で何か考えはございませんか。
  105. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 公庫資金の借入手続につきましては、先ほど申し上げましたように従来から簡素化を図り、また時間的にもできるだけ短縮をするようにということで努力を続けてまいってきているところでございます。  実は、今度の制度改正とも関連をいたしまして各方面から御意見を伺いましたときも、借入手続の一層の簡素化はできないかというような声もちょうだいをいたしましたので、現在また農林公庫の中で検討を始めているという状況でございますが、自作農維持資金そのものについて特にというような考えなり検討は今までのところ持っておりません。いずれにしましても、こういう制度資金でございますので、一定年間、五年なら五年の間に経営の再建整備、合理化ができるめどづけをいたす必要があるわけでございまして、そのための審査はどうしても必要な面があるわけでございます。
  106. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、林業経営育成資金の問題でございますが、今日本の林業界は需要低滞、木価の低迷で悩んでおりますし、このままでは林業経営は衰微しそうであります。あまつさえ民有林、保安林の一部で木材価格低迷による手入れ不足から保全機能低下で荒廃が進み、土砂崩壊の危険が増大しておりまして、岩手県では約四百町歩の地域で土砂流出が始まりそうだと調査報告されているわけでございます。このような国土保全につながる緑の資源を守り、造成するための育成資金として貸付限度額引き上げ等の改正がなされたことは前向きの対応と評価されますが、一定の要件を満たした者とそれ以外の者について金利が三・五%と五%の二本立てとなした理由はどうなのか、お伺いするわけでございます。
  107. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 お答えいたします。  この三・五%、五%の両様ございます点につきましては、森林施業計画の認定を受けて仕事をしておる者につきましては、その計画に従って、場合によっては、市況が軟化しておりましても伐採をするとかそういう制約もございますので、その点を考えて三・五%、そのほかが五%ということでございます。
  108. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 施業計画に基づいての認定でこの差ができたというわけでございますか。
  109. 田中恒利

    田中(恒)政府委員 そのとおりでございます。
  110. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は、林業育成は大規模、小規模また施業計画の問題いかんにかかわらず、どんな小面積でも、現在の木材の価格から推定しまして、林業そのものはほとんど採算が立たないような状態でございます。しかし、国土保全、緑の資源確保というのは一日もおろそかにできないわけでございますので、できたら、どういう小さな林業育成の施業に対しても三・五%の対応ができないものか、これは一応要望としておく次第でございます。  次に、今回の融資三法は、補助事業の後退を融資制度で補てんしている改正でもあると思えるのでありますが、資金の運用は営農指導と一体となってやっていくべきであると思っております。特に改良資金、自作農資金は普及貝の方々指導を待たなければ実施できないところの資金でもございますので、こういう点、普及貝の育成また普及員自体の、有効にこの資金を運用できるような指導体制の強化というものも考えなければならないと思っております。  今岩手県で、主業型農家と副主業型農家それから自給型農家というふうに、聞いてみましたら普及所の方で大体三つに農家を分けまして、そして各農家に対応できる普及員の指導体制を強化していこうというふうに準備し、またそのように対策しているようでございます。このことを聞いて、実は今主業型農家は常に先進的に新しい勉強あるいは技術を取り入れる意欲が旺盛であり、また近代化あるいは経営拡大化に対するところの熱意も盛んだそうでございまして、こういう農家に対応していくためには、普及員がぼやぼやすると農家の方から教えられるような、そういう状態にもなりかねない、こういうわけでございます。しかし、自給型あるいは兼業型の農家の指導となりますと、これは基本的な農業指導を毎年繰り返してやっていかなければならぬ要素が多分にあり、またそういう基本的なことをいつも当てにされているというわけでございます。  しかし、今や普及員の体制も、こういう資金を本当に活用、運営していくためには質の向上が求められるし、同時に技術の指導ばかりでなくして、つくったものを市場に売って換金化さすことのできるそういう指導も、普及貝にとって欠かすことのできない要素になってきているというわけでございます。こういう点、今回の金融三法の改正の中で、こういう普及員への対応ということに対してはどう考えられているのか、金融関係の中からは全然こういう対応ができないのか、このことをお伺いしたいと思うわけでございます。
  111. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 お尋ねの金融措置と、特に普及事業等営農指導体制との関連の問題でございます。  この中で特に農業改良資金制度につきましては、従来から貸し付けの決定は普及所長等の意見、普及活動上の意見を聞いて行うとか、貸し付け後は普及員が密着して営農指導を行う、こういうようなことで特別のリンクをしておりますし、その他総合施設資金等々、公庫資金の面におきましても、その貸し付けの審査なり貸し付け後の営農指導については、普及員が市町村や農協等と連携をとりながら指導を行うように、こういうことで対応しております。  今回の改正におきましては、全体的に金融という手法によります面をさらに十分活用しよう、特にその中で新しい生産方式の導入とか総合施設資金の活用による自立経営志向農家の育成、こういうような農家対策の面で非常に拡充される面もあるわけでございます。こういうことでございますので、普及事業全体につきましては、今御質問の中で御指摘になりました幾つかの点については、私ども、基本的にこれからの普及事業の改善充実の面で心得べき点をいろいろ御指摘があったと考えます。ただ、普及事業につきましては、御承知のような定員管理の実情でございますので、全体の定員、組織の拡充ということは望み得ない、むしろ現体制を維持することが基本であるというようなことになるわけでございまして、それだけに普及員の質の向上なり有効に活動するような組織、こういうことが非常に大事になるわけでございます。  私ども、今、これは金融三法を機にということと同時に、普及事業それ自体の改善としまして、幾つかの点を心がけておるわけでございますが、第一は、今岩手県の新岩手農業確立計画の中の主業型農家等の問題を御引用になりましたが、普及指導におきましても、これから生産性向上、農業経営の改善が非常に期待できる、従来の言葉で申しますと中核的農家層ということになりましょうか、そういう農家層、それからその農家を中心にした農業集団、こういうところに重点を置くという方向を出しております。  それから二番目に、質の向上につきましては、これまでも研修の充実をしておりますが、五十九年度からは普及貝の資格試験の受験資格の引き上げ等も実施しまして、質の向上を図っていく。その場合に、従来の技術という面だけではなくて、御指摘の中にございましたような流通、販売面の指導ができるような研修ということも心がけております。これは全体的に重要でございますが、特に青果物のような市場に対応する面で質なり出荷形態なりということが大変大事なものについて、今後の研修の中でも重点的に取り上げてまいりたいと考えております。  その他、定員の全体の中では組織形態、活動形態が非常に大事な問題もございますので、御承知のように普及所が四十年代に広域化いたしましたので、これに伴って地域の実態によく対応した指導が行われるよう、五十五年から我々の言葉で地域分担方式というものを採用し、普及所の中をまた幾つかの地域に分けまして、その地域の中で普及員のチームをつくって密着した指導を行っていく、こういう点にも心がけております。  いずれにしましても、金融措置の活用も含めた営農指導体制の充実改善にこれからも十分に努力してまいりたいと考えております。
  112. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 全体的な投資需要の落ち込みということは、日本の農業近代化を図る上で考慮しなければならない重要な問題ではないかと思っているわけでございます。また、現在専業農家が非常に意欲的な反面、兼業農家には資産維持のみの考えも定着してきまして、土地基盤整備その他に非常に消極的な空気も出ているところがあるわけでございます。しかし、ここ十年以内には第二種兼業農家の老齢化による耕作地の移動が急激に起こってくることが予想されるわけでございます。こういう点で、今回のこの土地改良資金その他の改正で、こういう事態に対応してどのくらいまで基盤整備が促進できるのか、その辺のところをお知らせいただきたいと思うわけでございます。
  113. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  土地基盤整備事業は構造政策を進める中で最も中心的な事業でございまして、これまでも重要でございましたが、今後とも非常に重要な事業であると考えているわけでございます。したがいまして、今回の金利関係につきましては、土地改良資金については原則的に従前どおりの金利といたしておるわけでございます。一部、三・五%資金あるいは四・五%資金についてそれを五%資金にするとか三・五%資金にするというような調整は行っておりますけれども、基本的に従前の金利体系を維持いたしまして、農業基盤整備事業の推進に遺憾のないようにいたしたつもりでございます。
  114. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 四月三日の委員会の参考人の中で、五十年償還、利率二分の農業資金を設定していただきたいほど、農家は規模拡大、機械化、肥料、機材その他の値上がり等で苦しんでいることが陳述されているわけでございます。  私は、幾度も質問するわけでございますが、農地は国土保全と食糧を確保する安全保障の場所ですから、他の個人、団体の所有する土地と区別し、その近代化経営のための適正規模集約まで国家が面倒を見てしかるべきと思っているわけであります。また、農地の分散錯圃が修復され、農地の効率的利用増進が図られるよう耕地の集約が果たされていかなければなりません。この点、デンマークは、農地の均分相続の禁止と農家外相続人に金で支払いできるような農業後継者に対する五十年償還、二分台の低利土地保有資金を実施していたとも聞いているわけでございますので、日本でも、作付や価格あるいは生産面の補助、助成より、このような基盤面への政策対応が必要なのでありますから、農地適正規模へ集約させられる施策と一緒に、五十年償還、二分金利の低利資金をこういう農地取得に限って創設してもよいのではないかとも考えるわけでございます。また私は、この農地の基盤整備と水の確保だけは、政府の責任で強制執行をかけても全額負担で実現すべきだとも主張しているわけでございます。  三日の須佐参考人からも、新潟県入広瀬村の、農業再建と若者定住のためにとられた村の基盤整備促進条例による補助交付によって、十数年で全村の圃場整備が完了するところに至っていることを知らされ、感動したわけでございます。県と国と市町村がこのように力を合わせるなら、日本全国の農地、圃場も急速に改良されるものと思えるのでございますし、農業近代化と国際化への対応も促進され、あまつさえ国土大改造として後世へ国家の永久資産形成にもなるのでございますから、こういうことに対して政府がぜひ真剣に取り組んでいただきたい。ついては、こういう政策に対して今後金融面でも何らかの対応が考えられないのか、その所見をお伺いしたいと思うわけでございます。
  115. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 何点か御質問があったわけでございますけれども、順次お答えいたしたいと思います。  まず、農地の取得資金につきまして、例えば二%で五十年償還というような長期低利の融資の道が開けないかという御質問でございます。  農地につきましては、最近かなり高い水準の価格でございまして、これを取得いたします場合に農民にかなりの負担になっていることは事実でございますけれども、現在におきましても農地の取得資金につきましては三・五%、償還期間二十五年という最も有利な償還条件が設定されているわけでございまして、また現実貸し付け状況を見ましても、平均の償還期間というのは十七年ぐらいになっております。そういったことあるいは最近の財政状況を勘案いたしますと、農地等の取得資金につきましては現行制度を原則的に維持していくべきではないか、このように考えている次第でございます。  それから、基盤整備事業が非常に重要な事業であるという認識は、先生と同じようなものを私どもは持っているわけでございまして、この委員会におきましても何回か、そういう重要な事業につきましては全額国費負担で実施をすべきであるという御所見を伺ったわけでございます。私どもといたしましては、そういう基盤整備事業が持っております公共性に着目いたしましてかなり高率の補助をやっておりますけれども、同時に農業基盤整備事業につきましては、農民の私的な所有といいますか、私有財産制に絡むところもあるわけでございまして、こういった事業費につきまして全額国で負担をしていくというのはいかがなものであるかというふうに考えているわけでございます。したがいまして、現行のような補助率を原則的に維持しながら、補助残につきましては低利の融資をしていく、こういうことで極力農民の負担を軽減していくべきではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  基盤整備事業が実施されました後の農地につきまして、極力集団化を図っていきますとかあるいは特定の農業者に対しましてその規模拡大を図っていくということを実施しているわけでございます。ヨーロッパ大陸等におきます各種のそういった施策もございますが、日本におきましても、日本の状況に合いましたような幾つかの制度をとっているわけでございます。御承知のとおり、現行の民法は均分相続制度でございますけれども現実状況を見てみますと、やはり一括相続というのが大部分を占めているわけでございます。そういうことで、民法の均分相続制度が農地の細分化の方向に働いているという状況とは我々は必ずしも見ていないわけでございますけれども先生の御指摘のように、これがさらに規模が大きい農家に集中していく、そういったことは当然のこととして望ましいわけでございますので、そういった方向に沿いまして融資制度、例えば自作農維持資金の相続資金の設定でございますとか、あるいは農業者年金の制度、また農地等の生前一括贈与の場合の贈与税の納税の猶予措置等を講じまして御指摘のような方向に誘導をしているところでございまして、今後ともこういった点に留意しながらさらに施策の充実を図ってまいりたい、このように考えるわけでございます。  なお最後に、新潟県入広瀬村の事例の言及がございましたが、土地改良事業は御案内のように申請事業でございまして、関係農家の大多数の同意のもとに事業が進められるわけでございます。また、その事業につきましては、事業計画というものを作成いたしましてそれに基づきまして実施をいたすものでございまして、私どもとしては全体として投資効率を確保しながら事業が進められているというふうに考えるわけでございますけれども、原則的といいますか、国の高率補助のほかに地元の負担分がございますが、この現実の負担状況を見ますと、県でありますとか市町村でありますとかが応分の負担をしているというような状況でございます。土地改良事業を実施しました後の営農が円滑に行えますように、関係の地方公共団体におきましてもそういった適正な負担が行われるように私どもといたしましてはお願いをしているところでございまして、今後ともそういった方向で考えていきたい、このように考える次第でございます。
  116. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この入広瀬村の促進条例は一つの例ではございますが、基盤整備を国と市町村とが責任を持って実施していくという線から見ますならば、これはやはり特筆してよい条例ではないかと思うわけでございます。こういう町村があることに対して国の方で今後どういう指導をしていかれる考えなのか、これは近代化を図る金融三法の改正と同様に非常に意義のある問題ではないかと思いますので、御所見を伺いたいと思うわけでございます。
  117. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  新潟県入広瀬村の場合は、私ども詳細な内容は承知していないのでございますが、聞くところによりますと、圃場整備事業を実施いたしまして、平均事業費を上回る農家に対しまして村の方が所要の財政措置をしているというふうに伺っているわけでございます。  それで、農業基盤整備事業に対する市町村の援助の仕方でございますが、これは市町村によりまして非常に状況が違っております。例えば道路等をつくります場合には、それが農業者以外にも使われるというような実態を考慮して市町村がある程度の負担をするというような状況もございますし、入広瀬村のような状況もあるわけでございます。私どもといたしましては、適正な負担が農家で行われるような形で全体の調整が行われるということが望ましいと考えているわけでございまして、一律にどういった方式でどの程度負担するのがいいかと言うのはいかがなものかと思うわけでございまして、受益農民、関係市町村が十分相談をいたしまして適正な負担額がそれぞれに決まるのが望ましいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  118. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今度の金融三法の改正で日本の農業の近代化がどのくらい促進されると推定しているのか。昭和五十七年八月農政審議会は「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」を報告しているわけでございますが、一応この審議会の報告内容の線を目標にした近代化を今回の金融三法で促進されるものと考えているのか、この点をお聞きしたいと思うわけでございます。
  119. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農林水産省のやっております現在の施策は、農政審の答申等によって形づくられております「八〇年代の農政の基本方向」というものに沿うようにいろいろな施策の方向なり手段というものを編成をいたしておるわけでございます。大変難しい御質問で、農業の近代化なり構造改善がこの金融三法でどのくらい進むのか、これは定量的に申し上げることは非常に難しいわけでございますが、例えば「八〇年代の農政の基本方向」の中には、食糧の安定供給でありますとか活力のある地域社会の形成、所得と就業の場の提供、国土、自然環境の保全等々の、農業、農村の役割というものを踏まえながら今後の農政を進めていくということでございますし、その方向に沿って、農業改良資金の中で農業生産の再編の問題でございますとか、あるいはまた公庫資金の中で需要の拡大の問題、そしてまた構造改善政策の強化といった問題も取り扱っておるわけでございまして、全体的に「八〇年代の農政の基本方向」を一層促進する機能を果たすものと考えております。
  120. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回一応補助金をやめて融資にした資金に対しましては、県の今までの補助金に対しては新年度から融資分の引き戻しをするのですか、それとも、何か前に補助で出している分についても幾らかの戻しをするようなことも聞くわけでございますが、この点はいかがでございますか。     〔田名部委員長代理退席、玉沢委員長代理着席〕
  121. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 お尋ねは農業改良資金の問題であろうと思いますが、従来農業改良資金については原資の三分の二を国が補助金で交付し、県が一般会計から三分の一を出しまして融資をしておったわけでございます。今回、それが国から県に対します部分が貸付金にかわるわけでございます。そうしました場合に従来分はどうなるかという問題でございまして、これは普通の状態では、県が従来国の補助金を受けまして造成した資金による融資が継続されるわけでございますので、今回の改正で考えておりますことは、従来分の中で剰余金、県が原資は造成してあるけれども余っている分がございます。その余っているお金のうちの国庫補助金相当分、大体三分の二になるわけでございますが、これについては法律上、強制的に納付する道はございませんので自主納付という道を開きまして、県が自主的に納付をしていただいて、これを国の農業経営基盤強化措置特別会計という今回改組されます特別会計に受け入れまして、それを新たな原資として今度は新法による貸し付けを行っていく、こういうことで、言ってみれば従来の造成資金余裕のある県からは全体の資金調整に御協力をいただく、また、その県自身も需要に応じて新たな貸付金を国から供給される、こういうような仕組みを予定しているわけでございます。
  122. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来たので終わりますが、日本農業の近代化、国際化のために今回の融資が十分に活用できるように、農林省の特段の御指導と配慮とをお願い申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  123. 今井勇

    今井委員長 武田一夫君。
  124. 武田一夫

    ○武田委員 私は、農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案並びに農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案、以上いわゆる農林金融三法の問題につきまして、これまでるる質問等もございましたが、締めくくりの意味も兼ねまして、時間を一時間いただきまして重点的に質問をさせていただきます。  私は、制度金融は補助事業と並んで日本の農林水産業施策の展開には非常に重要なものだと考えております。我が国の農業あるいは農村、そういう地域の発展、特に構造政策の推進の面におきまして大きな役割を果たしておりまして、将来への意欲のある農林漁業者には非常に期待も寄せられているわけでございますから、この際、農林水産省としましても最大の努力を払いましてそうした方々の期待にこたえて、活力のある農林水産業の展開を期していただきたい、まずこういうふうにお願い申し上げる次第であります。  これまで八人の方に参考人としておいでいただきまして、るる御意見もちょうだいいたしました。さらに、三十時間近い審議も重ねてまいりました。それから、たくさんの質問も出ましたので、おしまいの方になりますと大方出払っておりまして、ダブるところもあるので恐縮でありますが、ダブらないような問題をと思って一生懸命努力したのでありますが、ダブったら労を惜しまずに丁寧にしかも簡潔に適切に答えていただきたいとお願い申し上げます。  そこで、まず最初に、この金融を論ずる前に大事なのは、私は大臣にお尋ねしたいのですが、農林水産業の振興という問題につきましては、国が、今後どういうふうに進んでいくのかという問題、特に将来展望、ビジョンをしっかりと示さなくてはいけない。六十五年見通しは本当は変えなくてはいけないわけですが、恐らく変えるための努力をしているのでしょう、その作業もしている最中だろうと思うのでありますが、大臣はそういうこれからの農業の様相をどういうふうにお考えになるか。特に借金のない農業、健全経営という問題は大事だと思う。農業といえども経営が大事であります。そこで、農業で食べられる、安定した経営のできる農林水産業というものをしっかとつくっていかぬと、後に続く者がその姿を見て、今度の白書でもおわかりのように新規就農者が千八百人も前年度よりも減っているというような、希望を失わせることになりかねないということを考えますと、この問題は金融三法を論ずる場合にも重要な課題だと思うわけで、まずこの点を大臣にお尋ねして、それから質問に入りたいと思います。
  125. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生御存じのように、我が国農林水産業を取り巻く内外の情勢は非常に厳しいわけでありますが、そういう形の中に、農林水産業に携わる人々が意欲と生きがいを持てるようにすることが大切だと思います。そんなことで、私は農林水産行政を推進するに当たりましては、農林水産業の体質強化と農山漁村社会の活性化を進めるようなことをやってみたい。  具体的には大きな施策が三つございまして、その一つは需要の動向に応じた農業生産の再編成、また技術、経営能力にすぐれた中核農家や生産組織の育成確保、また農業生産基盤の整備と技術の開発普及、四番目には活力ある村づくりの推進等の施策を中心にこれから進めたい、こう思っております。
  126. 武田一夫

    ○武田委員 金融三法に入る前におのおの議員は現地に飛びまして、農林漁業者あるいは農業委員会、農協の皆さんあるいは県、市町村の関係者に声を聞きました。特に広島県、宮城県の場合は数人のグループでもってじっくりとその声を聞いてきました。あと参考人のここでの声もいろいろ聞きました。  そういう皆さん方の声から言えることは、私が先ほど申し上げました、これからの将来展望はどうなるんだということに非常な不安と心配を持っているのだという声が圧倒的でありました。ですから、その国の対応が金融を生かしも殺しもするんだということも出てまいりました。その中でまた、国だけに頼るわけにもいかぬ、我々も一生懸命努力するよ、そういう努力をこれからするための対応、もう真剣に取り組んでいる農協あるいはまた漁協あるいは町も結構ございました。この委員会でもそういうことを強調されている参考人の方もおりました。そういう声も貴重な声だと思います。  さらに、こういう声があって私もこれは深刻だなと思ったのは、要するに国の方針をまじめに実践した者ほど今負債を大きく抱えて経営に苦労している。国の言うことを本当にばかまじめにやった我が地域の人間、私たちも含めてとその町長さん、農協の組合長さんが言っておりましたが、そういう人が一番苦労しているような農政というのはまずい。これから我々が期待するのは、まじめにやれば、一生懸命努力をすればしっかりとしたものができるのだ、そういうものが必要であろう。そのためにやはり国はそういう面の責任を持ってほしい。そういう意味での農政の最大の政策課題は、一生懸命国の指針に従って頑張ったら必ずよき方向に向かって希望が出てくるのだという、そういうものを示すのが大事なんだ、当然のことでございます。そういう声がございました。いずれにしましても、そういう意味で、私は、最初に質問いたしました今後の農林水産業に取り組む当局の格段の御配慮と努力をひとつしていただきたい、こういうふうにお願い申し上げます。  今回のこの改正に当たりましては、構造政策路線に沿った融資という方針に従ったものだ、これは農林水産省の中核農家の育成そして規模拡大の推進という一つの方向性だろう、こういうふうに思うのでございます。そこで、現地の皆さん方の心配がそのときはこういうことでありました。もしそうだとすれば、対象農家の選別が行われるという心配がないのか。中核農家という、あるいは自立経営農家というものをふやしていく、こういう一つの方向によって、例えば二兼農家の中で、条件さえ整えば私は農業で生きていきたいのだ、しかし今の状況ではとても苦労でやれないが、農業をする意欲は私も息子もあるのだけれどもというような周辺の方がたくさんいるわけです。そういう方々が中核農家あるいは自立経営農家の周辺にいて農業というのがしっかりした発展をしていくのではないか、こういうふうに思うわけでありまして、そういう方々が間違いなく生きていけるという金融の内容なのかどうかという心配を、これは当然の心配だと思うわけでありますが、そうした選別農政というものの台頭に対する心配を私は最初に払拭しなければならぬと思うのでございますが、大臣いかがでしょうか。
  127. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  農林漁業金融公庫資金というのは、先生御存じのことでございますが、農業構造改善等の政策を推進するための政策金融という性格を持っております。そんなことで、一般に見られない低利の金融が行われているわけでございます。したがって、公庫資金貸し付けに当たっては構造政策との融合性に留意する必要があると考えております。そんなことで、今回の改正におきましては、三・五%資金の重点化を図る見地から、構造政策との関連をも考慮しつつ一部を五%資金に移行させることにしましたが、これらの低利資金の借入資格要件を厳しくして零細農家を貸し付け対象から外すようなことはしておりません。
  128. 武田一夫

    ○武田委員 資金、要するに低利な資金ほどそういう、零細と言うと語弊もありますが、大変零細な農家の皆さんが切実に要望しているのは事実であります。ですからそういう意味で、こういう方々の中で一生懸命頑張って農業をやっていくという人たちには十分に御配慮をして守ってほしいなと思います。  そこで、これは我々が宮城県に行ってずっと歩いたとき、どの方からも出たの――金融公庫皆さん方も来てくれましたね。そのときに、三・五%資金というのは保護し過ぎる、こういう声があるけれども、これは臨調あるいはそういうところであるのでしょうね。だから、それが今回の一部切り捨てというふうになったのでしょう。しかしながら、農家の現状から考えたときこれは絶対必要だ、今のそういう危機的、大変な状況の中で経営をしっかりやっていこうとして努力する方々には、これは一%も〇・一%も上げることはいかぬ、これは一歩でも後退したら、とてもじゃないけれども農林水産業のさらなる発展や希望はないというのが、これは農業をやっているあるいは漁業をやっている方でなくて、金融の仕事をやっている皆さん方からのそういう声だったわけです。  ですから、そういう意味で、今回三・五%資金資金の重点化のもとに一部が五%の方にというふうに二本立てになったということを考えますとき、これが構造政策の推進の後退にならないかという問題、また運用面での厳し過ぎる要件を定めることにならないかという心配、この問題を聞いておきたいなと思うのですが、いかがでしょうか。
  129. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回の三・五%資金の重点化につきましては、二本立てというお話でございましたけれども、前にも申し上げましたように、今までの三・五%資金の貸し出しの一割程度のものを構造政策の方向に沿って重点化をするということでございますので、二本立てと申しますよりは一・一本立てというくらいの感じでございます。これは、今申しましたように構造政策の方向に沿って重点化をいたすものでございますので、これで構造政策が後退をするというふうには私ども考えておりませんし、また一部五%の金利を適用することにいたすわけでございますが、借入資格者について、農地取得資金にしても構造改善事業推進資金にしても、この際特に要件を厳しくするということはやっておらないわけでございます。むしろ林地等取得資金等につきましては借入資格を緩めるということでございますので、そういった点でも御心配をいただくようなことはないものと考えております。
  130. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、先ほども申し上げた農政の基本的枠組みである農地流動化、規模拡大、そしてそれは当然コスト低減という方向に、そういう道筋を通っていくということになるわけです。  しかし、五十八年度の農業白書を見ても今度出た白書においても、さっき私が現地の声を通して申し上げました、農業に一生懸命力を入れてやっている人たちほど生活的には恵まれていないという事実は、これはとても耐えられない事実ですね。白書でも、去年もそう、ことしもそうですね。このところにやはり農政に対する頼りなさというものが出てくるわけでございます。ですから、お金を幾ら使ったとしてもあるいは借りたとしてもどうなんだという、そういう気持ちがあるということは、これは非常にマイナスでございますね。  ですから私は、この日本農業の柱ともいうべき農家らしい農家はどういう人たちなんだ、これはどういう人たちを指すのか、あるいは農業収入だけで食べられる農家というのはどういうものかと聞いたら、農業で食っていける農家というのは特にデータがないというような話もありました。私はそれではいかぬと思うのです。白書なんかでも、白書についてのいろいろな論評が社説等で最近出ていますね。その中でも、恐らく日本農業の柱となるべき中核農家というのはそうなんだろうかというようなことを言っているのですが、自立経営農家、中核農家、基幹男子農業専従者のいる農家とかいろいろありますが、その自立経営農家、中核農家、それから基幹男子農業専従者のいる農家の昭和五十八年度の農業所得はどのくらいになっているのですか。
  131. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今お尋ねの中の自立経営農家につきましては、大体五十七年度の下限農業所得が四百四十二万円でございます。  なお、いわゆる中核農家の定義なり基幹男子農業専従者のいる農家の定義、それに基づきました農業所得につきましては今ちょっと手元にございませんので、また追って御報告を申し上げたいと思います。
  132. 武田一夫

    ○武田委員 局長、これは基本なんだね。皆さん方が出されている一番の、これは農業のイロハだと思うのですよ。やはりもっと関心を持っていないとおかしいと思うのだ。頭の中にこの程度のことは、去年はこうだった、ことしはこうだというのが入っていないとまずいと私は思うのだな。やはり、どのくらい平均農業所得があって、下限がどのくらい、上限がどのくらい、その程度は当然――まあいいですが、昭和五十五年から五十八年をちょっと調べて、五十八年の基幹男子農業専従者のいる農家で三百十九万六千円と出ているわけです。そして自立経営農家が六百七十七万七千円、これは平均だと思うのですね。そうでしょう。これはいいでしょう。どうですか。
  133. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 ただいまお話しのありましたとおりでございます。
  134. 武田一夫

    ○武田委員 そうすると、自立経営農家の五十八年の下限の農業所得が四百四十六万円だというのです。これもそうですね。
  135. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 そのとおりでございます。
  136. 武田一夫

    ○武田委員 そうすると、先ほど申し上げた三百十九万六千円、約三百二十万の農業所得、この方々がいわゆる中核農家と言われる人ではないのかということをちょっと聞いたのですが、これもどうですか、そのとおりですか。
  137. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 基幹的な男子農業専従者のおります農家を中核的農家と言っておると承知しております。
  138. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、今度は、自立経営農家に持っていく途中、七割程度の規模の方々にも資金の手当てをしてやろうということですが、この三百二十万の農業所得を持っているいわゆる中核農家の中から引き上げていくと、そこから成長して自立経営農家になっていくというわけですが、これは、どのくらいの人間を、単年度当たりあるいは何年でどのくらい引き上げていくというような、一つの計画と言うとおかしいですが、そういう見通しみたいなのはお持ちですか。そのためにお金はこのくらい必要な措置をするのだという、こういう一つのものをやはり我々は知りたいと思うし、一般の人も知りたいと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  139. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今回の改正によりまして拡大します部分の、育成して自立経営になる農家を目標とするもの、これは、お尋ねがございましたように所得なり経営規模で自立経営農家の七割、こういうふうに設定する予定でございますが、これにつきましては、この農家になり得るというのは経営改善計画によりましてそこに達成することが可能な農家でございますから、お尋ねのように、いわゆる基幹男子農業専従者のいる現在の中核の農家、この中からだけ出るわけではございませんで、現在それよりももっと低いあるいは規模の小さい状態にありましても、そういう農家からも出てくるわけでございます。  したがいまして、これからの資金運用上の状況によりましてどれぐらい出てくるか、こういうことが決まってくるわけでございますので、一概に今現状で、現在の中核農家からどれだけ出てくる、あるいはそれから下の方でどれだけ出てくるということが予測できないわけでございます。ただ、六十年度につきましては、改正後の初年度でもございますので、大体この拡大される部分につきましては、貸付件数として大体予定としては千件程度ではなかろうか、こういうことでスタートをしております。これによりまして融資をするわけでございまして、もちろんこの制度の発足しました状況で、その状況を見てまだ貸付対象件数なり金額につきましてはさらに調整をしてまいりたいと考えております。
  140. 武田一夫

    ○武田委員 これからまた六十五年度の見通しのようなものをつくっていく過程の中において、やはりそういう一つ一つの具体的な方向性というものは示していく、その中でやはりいろいろな予算の取りつけや、またその予算の使い方を考えていかなくてはいけないわけですから、今後の課題としては、日本の農業の抱えている一番の問題点としての足腰の強い農家、農業者を育てるという観点から、そういうこれから上がってくる努力をしている方々努力しようとして頑張っている方々に私は特段の御配慮を重ねてお願いをしておきたいと思います。  次にお尋ねしますが、経営規模拡大資金の新設の問題です。  最近の農業を取り巻く厳しい環境のもとで、特に土地利用型農業については、農地の流動化の促進、そして経営規模の拡大を図る、さらにそのことによって生産性の高い農業を実現する、これはもう農政の最大の課題で、一生懸命努力しているわけであります。農業改良資金に新設される経営規模拡大資金は、私は、こういう課題にてたえようとする意図を持っているものだ、こう思っております。  そこで、十分この点についての御配慮をいただきたいと思うのですが、農地取得、利用権設定の状況、五十五年から五十九年までどういうふうになっているか、その間の資金の利用状況はどうなっているのかひとつ聞かせていただきたい、こう思います。
  141. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  近年の農地の流動化の状況でございますが、流動化の場合には売買形式によるものと賃貸借契約によるものがございますが、合計いたしまして、五十五年には七万八千ヘクタール、五十六年七万七千ヘクタール、五十七年八万九千ヘクタール、五十八年が八万五千ヘクタール、こういうことでございます。  この内訳でございますが、所有権の移転によるものは五十五年が四万一千ヘクタールでございますが、これが若干ずつ減少してまいりまして、五十八年には三万ヘクタールという状況になっております。他方、農用地利用増進法によります利用権の設定を中心といたしました賃借権の設定なりあるいは経営委託等につきましては、五十五年が三万八千ヘクタールから五十八年には四万七千ヘクタールと漸次増加をしてまいっております。  地域的な特徴もございまして、比較的地価の安い北海道でありますとか東北地方におきましては所有権の移転による農地流動化がかなりのウエートを占めますが、その他の地域では賃貸借によります流動化が主流でございます。  最近までの農用地利用増進事業によります利用権の設定の状況でございますけれども、五十九年十二月末現在で見ますと十五万八千ヘクタール、十六万ヘクタール弱の段階にまで来ているわけでございます。  なお、流動化の一つの形態と考えられますものに農作業の全面受委託がございますが、水稲作業の受委託を見てまいりますと大体毎年六万八千ヘクタールぐらいが行われているということでございますので、これを加えますとかなりの程度の農地の流動化が進んでいるというふうに思います。  なお、その流動化の中身でございますけれども、これも先日お答えいたしたところでございますが、農地の貸し手の場合は一ヘクタール未満が六四%、それから借り手の方が一ヘクタール以上層が六九%というふうになっておりますし、これは北海道におきましては十ヘクタールというのが一つの階層区分になるかと思いますが、同様の状況でございます。所有権の移転の場合におきましても同じような傾向が見られるわけでございます。  そこで、農地の取得資金状況でございますが、これを五十五年から見てまいりますと、五十五年が五百四十六億円でございます。漸次増額いたしまして、五十九年度はまだ実績が出ておりませんが、おおむね七百五十億程度にまでなるのではないかというふうに考えているわけでございます。  これによる面積は、五十五年が一万八百四十五ヘクタール、五十九年はまだ出ておりませんが、五十八年で一万二千百六十二ヘクタールということで、約一万二千ヘクタールになっておりまして、有償の所有権移転面積が五十八年で三万三千七百八十一ヘクタールでございますので、約三六%程度のウエートを占めるわけでございまして、これをさらに利用権も含めました全体の中で見てまいりますと、八万ヘクタール前後の中の一万二千ヘクタールでございますので、一五%前後のウエートを占めている、こういう状況でございます。
  142. 武田一夫

    ○武田委員 今伺いましたように、今後の経営土地規模拡大の手段の主流は、一つの傾向は借地ですね。そこで、借地農業者育成のための対策としまして、借地農業者が新たな投資のための資金が必要な場合、担保がないという事例があるということも時々ぶつかって聞くわけでありますが、私現地に行って聞いた場合、そういう農業者がいても、経営者自体の能力を重視して経営の総合判断の上から融資するという、いわゆる経営担保という話が出てきました。要するに、体、経営に自分自身で担保をかける、担保にする。それはやはりその人間のいろいろな状況判断しましてやってもらえば、確かにその人間は判断された以上の働きをするのじゃないか。また頑張るのじゃないか。  私もこの経営担保の話を聞きまして、そういうことがあるものかなと思って、本をいろいろ見ておりましたら、このことを二、三年前に農林水産省か農協があるいはその周辺の金融関係のどなたかが本で書いているのをちらと見ましたが、経営担保という問題について前向きに検討すべきであるというふうにその方も論文を書いているのにぶつかりました。地元で経営担保の話が出たときに、そういう担保がないという事例にぶつかった場合に、一つの対応策としていかがなものかな、聞いておくことも必要でなかろうかというのでひとつお聞きをしたいと思いますが、いかがでしょう。  それからあわせて、白書で見ますと、最近の傾向というのは非農家出身の新規参入者の事例がふえているということですね。農家ではないのだけれども農業をやっていきたいという若者が出ているということは非常に喜ばしい、これは農村に一つの活力を与えるよすがとして大いに奨励すべきではないか、こういうふうに思うのでありますが、こういう若者に対する要するに制度金融としての手厚い対応というものも考えてあげなければならないのじゃないかというふうに思います。  この二点をあわせてお尋ねしたいと思います。
  143. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 経営担保というお話でございますが、公庫資金にいたしましても近代化資金にいたしましても、融通に当たりまして借り受け者の経営能力、生産管理能力等を十分審査をいたしました上で貸付額の設定を行っているところでございますが、借り受け予定者が十分な経営能力等を備え償還に支障がないと見込まれるにかかわらず、物的な担保を用意し得ないというような場合には、農業信用保証保険制度の活用でありますとか担保徴求の弾力化などを図ることによりまして、できるだけこの予定者が必要とします資金の供給の実現に努めるように指導を行ってきているところでございまして、今後ともできるだけ円滑な融資が行われるように努めてまいりたいというふうに考えております。  経営能力そのものを担保としてということを経営担保というふうにおっしゃっておられるといたしますと、これは担保の前に、まず貸し付けに当たりまして当然のことながら経営能力というものを審査するわけでございまして、それがすなわちすべての担保であるというふうにはなかなかなりにくい。一般の非農業の企業でございますとか非常に急成長を遂げるようなベンチャービジネスみたいな企業でございますとか、そういうところで物的な担保以上に企業が収益を上げる可能性がある、そういう物的な担保以上に存在をする収益力というものをいわば見込んで、その上に立って融資をするというようなことはあろうかと思いますけれども一般農業経営の場合には、そういった形での一般的な経営担保という仕組みは、特に我が国の農業現状ではなかなか難しいのではないかというふうに今のところは考えております。  それから、新規参入の問題でございますが、営農経験が仮に過去なくても、これから農業経営をやろう、そしてそのための意欲なりそれから能力も備えておられる、そして経営計画なり資金計画が適切であるという場合には、ほかの既存の農業者の方と何ら差別することなく原則として貸付対象にいたしておるところでございます。  ただ、非農家が農業に新規参入をいたします場合におきましては、特に土地利用型の農業の場合には農地の権利を新たに取得する場合が多うございますが、そのためには農地法上の三条の要件というようなものがございますので、その辺との関係で、土地利用型農業について新規参入するための資金の借り入れがうまくいかないというような場合が生じ得るということは考えられるわけでございますが、これはむしろ農地政策上の問題でございまして、金融制度上はそういった制限はいたしておりません。現に、今手元に数字を持っておりませんが、公庫の貸付実績、例えば総合施設資金などにおきましては、施設型農業ではかなり新しく農業に参入した方の借り入れの実績がございます。
  144. 武田一夫

    ○武田委員 それから次に、これは農業委員会皆さん方とお会いしたとき、農地の流動化の促進に当たりまして非常に頑張っている、我々がやる方が現実的で現場にマッチした非常にいいムードでやれている、そういう話がありましたときに、農用地利用増進事業取得資金農業委員会のあっせん資金と二百万の差がありましたね。農地取得資金について二百万差があったでしょう。農業委員会のあっせんによる取得と農用地利用増進計画に基づく取得の二百万の差というのは何で同一にしないのだ。我々の方は、例えばあっせんによるものが二万ヘクタールだ、利用増進の場合一万ヘクタール、しかしそのうちの七〇%は北海道なんだよ、我々の力をここに十分発揮できているんだから、差なんかつけないで同じ水準にすべきだという強烈なる申し入れと要望がございました。この点についてはどうでしょうか。
  145. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農地の流動化につきまして、農業委員会のあっせんによりましてかなりの流動化が行われるという事実はございます。私どももこういう農業委員会努力を多とするものでありますけれども、この農用地利用増進事業によります流動化というのは、私どもといたしましては、流動化の中心になる施策である、こういうふうに考えまして、農地の取得資金につきまして、その限度枠を五百万円の差をつけているわけでございます。  農業委員会の側からいろいろな御意見があろうかと思いますけれども、やはり農地の流動化を推進していくのは、農用地の利用増進法に基づく手法で村ぐるみで農地の流動化を進めていくというのが基本になるべきではないか、こういう意味を込めまして現行のような制度にしたわけでございまして、農業委員会のあっせんとあわせまして流動化を推進していくべきだろう、こんなふうに考える次第でございます。
  146. 武田一夫

    ○武田委員 次に、この間ここで参考人を呼んで話を聞いたときに、酪農対策として五十年償還の二%利率の資金が欲しいという要望がありました。それで、これは亡くなられた竹本平一さんが、あの方の長い経験からやはりそのことを言われているわけですね。超長期、超低利の資金が絶対必要だ、償還期限五十年、利率一ないし二%の資金が農地取得対策として必要である。書いている本のまま読みますと、「これは、一般的にみると常識はずれの超低利という見方もあるが、年一回という稲作や、数年に一回という畜産には、資金の回転率のよい他産業とは、本質的に金融体系が異るべき」であるということを残されているわけです。もちろん、その中で竹本さんは、そのための条件として親子連帯の借り入れをやるとか財務管理を行うとかというようなことを言っておりますが、この五十年、二%利率の話が、ここでもぜひ必要だという要望があるわけです。立派な日本の代表的な農業者のそういう主張、意見として、私も確かにこれはそうだな、こう思っているわけであります。  また、山の問題につきましても同じように、親子三代と山は言われるわけでありますから、しかも森林の持つ公益的な役割というか機能を考えたときに、これは国民総意の力でやるということを考えたときに、それくらいの手当ては必要でないか。  ですから、酪農とか基盤整備とかそういう森林の確保とかいう問題の、こういう一つの提案と要望をひとつ十分に検討しながら取り組み、その中でそういう方々の農林水産業に取り組む意欲とまた力を発揮させてやるというものが必要だな、こう私は痛感しているわけですが、この問題については、大臣いかがですか。
  147. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えしますが、二つの問題でお答えします。  私は、農林大臣になりましたときに、内輪をお話ししますと、農業資金というのは長期低利がいいのだという話をし、そんなことで経済局長に、もっと安くて長期資金は借りられぬものだろうか、こんな話をしたわけです。と申しますのは、補助は大切でございますが、でき得れば自立農家は借入金で成り立つ農業ができれば理想的である、こんなことで話したわけでございますが、率直に言いますと、こういう気持ちはみんな持っておりますが、今の財政当局の壁が厚くて何ともならないというのが現状でございます。  それからもう一つ、先ほどの経営能力という問題でございますが、これは非常に大切なことだと思います。日本の金融界というのは二つのやり方がございまして、その一つは英国式、一つはドイツ式、これは率直に言いますと、英国式というのは、お客様から預かったお金を大切に貸して安定的に利息をもらって返済してもらうという形をとっているわけですが、その場合に、もちろん資産とともに人が大切です。ドイツ式というのは、むしろ人に金を貸すわけです。ここに実はドイツが伸びてきた大きな理由があると思うのです。  そんなことで、今の農業を見ている場合に、先生の御指摘にもございましたけれども、例えば中核農家をつくる、そうした場合に、小さな経営規模を持っている人が大きくなる場合にどこで金をつくるかというと、その場合に担保はございません。その場合には人に金を貸すかどうか。そういう形でないとなかなか経営規模の拡大は図れない、こんなことで、その意味において思い切った政策転換を図る必要がある、私はこのように考えております。
  148. 武田一夫

    ○武田委員 時間も少なくなったので、この問題はこのくらいにしまして、この問題もずっと言われてきているわけでありますが、漁協、農協が負債の肩がわりをしているというケースがありますね。要するに、農家が借金を背負っていても倒産しないのは農協が支えているのである。その農協も支え切れなくなってくる心配が出てきている。漁協にもそういうケースがある。  そこで、漁業について申し上げますと、私ども宮城県は塩釜、石巻、気仙沼、そのほかにもありますが、漁業県でございます。先ほどお話があったように、今ソ連の船が来てえらく騒がれている塩釜の皆さん方から、こういう要望がございました。連鎖倒産を防ぐための低利の長期融資制度を考えてほしいのだ。といいますのは、漁業用燃油対策特別資金制度によっていろいろとお世話になったけれども、その償還も始まっている。さらに漁船建造のための漁業近代化資金経営再建を図る漁業経営維持安定資金などいろいろな資金を借りる際に、漁業者同士で連帯保証している、一つ漁業会社が倒産すれば連鎖倒産を招きかねないという深刻な状況なのだ。そういう意味で、連鎖倒産を防ぐための債務保証分について低利の長期融資制度などを考えて特段の御配慮をお願いしたいという切なる訴えがございましたが、この問題について当局の御見解をお聞きしたいと思います。
  149. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 連鎖倒産という問題が御質問の中で出たわけでございますが、借り入れ農家の償還困難になるような事態を避けるということがまず一番基本でございまして、そのためには、農家に対します融資に当たりまして、事業計画の実現可能性あるいは無理なく返済できる適正な資金計画、そういったものについて的確な審査なりあるいは融資後の指導の充実が大事であると考えております。それから、農業につきましても漁業につきましても保証保険制度がございます。こういったものの適切な活用が図られますことも、これまた連鎖倒産というような悲しい事態を防止するために必要と考えております。  それでも農家が予期できないような経営困難に遭いまして償還が困難になるという場合につきましては、その実情に応じまして、公庫資金近代化資金等いろいろな制度金融を通じまして、災害を受けました農家に対する貸付金の償還猶予等の貸付条件の緩和の措置を大きな災害の際はとっておりますし、自作農維持資金の活用、さらにはまた畜産関係の各種の負債整理資金の活用というようなことでできるだけの対応をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  150. 武田一夫

    ○武田委員 次に、補助から融資という方向で、融資の役割が大きくなるという、その裏づけとして信用保証制度の拡充を図るべきではないか、そういう意見が聞かれました。昔は保証人がいなくても金を貸してくれたんだ、今は全然だめだ、冷たいという話も出まして、この問題についても地元では、現地では相当深刻な問題のようでございましたので、この保証制度に何らかの対応を、手をつけていかなければならないのじゃないかということだけれども、今回それがなされていない、それはなぜなんだ、やはりこの問題についてしっかりしたものをしてほしいという声がございますので、この点について御見解をお伺いしたいと思います。
  151. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 信用保証制度の問題でございますが、農、林、水、それぞれ信用保証制度があるわけでございますが、実はこの問題につきましては、臨時行政調査会から、信用三法人につきまして、いろいろ財政基盤なり組織形態が違うわけでございますが、統合を考えたらどうかという御指摘をいただいておるという状況でございまして、そういった問題の検討とあわせて、目下いろいろ検討、勉強をしておるという状況でございます。  農業関係資金につきましては農業信用保証制度がございまして、県段階の協会と中央にも信用保険協会があるわけでございますが、近年、畜産関係などで代位弁済も増加をしてきているという傾向がございます。そこで、保証機能の一層の充実強化を図らなければいけないということで、農業信用基金協会、県段階基金造成のために都道府県が出資をいたします場合に必要な助成を国がやる、また畜産振興事業団からの助成金といった措置を講じておりますほか、農業信用基金協会が保証債務の履行を行いますために必要になります資金を全国の協会が融資をする、そのための原資を国が交付金として交付をするというような措置を講じておるところでございます。  六十年度にも所要の予算の手当て、充実を図っておるところでございますが、私どもも御質問の趣旨は感じておるところでございますので、今後とも信用保証制度の基盤強化には努めてまいりたいというふうに考えております。
  152. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃ最後に、農林漁業金融公庫資金の整理統合、貸付条件の見直し等につきましては、農林水産業をめぐる諸情勢が厳しさを増しているだけに、今後とも農林漁業者の負担がふえないような配慮をしてほしい、そういう要望がございました。さらに、制度面につきましても、資金の円滑な融通担保する信用保証保険制度が拡充強化されるような御配慮をお願いしたいという声がございましたが、この問題についてひとつ御見解をいただきまして、質問を終わります。
  153. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 行財政改革というなかなか厳しい状況にございますけれども、私ども、今の御要請につきましてはできるだけの努力をしてまいりたいと思っております。
  154. 武田一夫

    ○武田委員 大臣に聞きたいのですが、今のことに関しまして私予算委員会一般質問のときに話したのだけれども、要するに世間的に、安上がり農政とか、こういう批判があるわけです。それで農業予算がばんばん切られてきている、金融の面にもそういう締めつけがある、そういう感じが非常に深刻な影響というか、精神的にも現場の人にとっては耐えられないことなんです。  ですから、今いろいろと答弁いただきながら頑張るという決意もいただいたのですが、やはり農業というものの重要性を考えたときに、金融三法におきましても、そういう向こうから切り込まれてそれでやったのだというような、農林省の主体性がないような、わきからやられてしようがなくてやったのだ、そういうような感じを受ける取り組みはまずいと思うのです。ですから、大臣におかれましては、我が農林水産省として厳然と、しかじかかくかくである、これをやれば農業も林業も漁業もこれからよくなるのだ、そういう総体的な、全体的な観点からこういう問題に手をかけたのだというものを、しかと確信あるものを、答弁の中あるいはそういういろいろな話し合いの中で出してもらわぬと非常に困ると思うのです。  その点、この金融につきましても、農林水産省が、そういう財政的な云々とかという以前に、やはりよりよき方向へ、農林水産業を足腰の強いものに持っていくという、大臣の、農林水産省の考えが今回の金融の中では間違いなくその筋道を通っていっているのだということをはっきりここで表明していただいて、安心してついていらっしゃいと農林漁業者に言ってほしいと私は思うのです。最後に、ひとつ決意を聞かせていただきたいと思います。
  155. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  今度の改正というのは、いい農業をつくるためということでございます。  そんなことで、実は先ほどの信用保証協会の問題でございますが、率直に言って局長の言ったとおりですが、あと簡単に言いますれば、一番その中で問題なのが担保不足である。だから、信用保証協会保証を求めるときには、担保が足らないから保証を求める、そんなことでございますから、やはり担保を十分見てやるということにすればかなり解決する。  それからもう一つは、農林漁業金融公庫は、先ほどちょっと言いましたけれども、実は私も接触して、いろいろな相談があって一番困るのは、一般金融機関と同じように考えて処しているところに問題がある。したがって、やはり農林漁業金融公庫の設立の趣旨を踏まえて、農林漁業者、特に真剣に取り組んでおる農林漁業者資金の不足のないように持っていく、そういう形の中に明るい農業をつくる、そんな形で大いに指導して頑張りたい、こう私は思っております。
  156. 武田一夫

    ○武田委員 それでは、まだ五分時間が余っておりますが、一生懸命頑張ったということで五分早目に終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  157. 今井勇

    今井委員長 午後三時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後三時開議
  158. 今井勇

    今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質議を続行いたします。日野市朗君。
  159. 日野市朗

    ○日野委員 非常に長い審議になっておりますが、御苦労さまでございます。  どうも私の出番ぐらいになりますと、大体聞くことは皆さんお聞きになってしまっているのではあるまいかというふうに思いますが、あえていろいろ私の感じたところを質問させていただきたいというふうに思います。  この委員会で聞いておりまして、いろいろ気になることは幾つかあるのですが、何かそのうちでも最も気になるのは、皆さん、補助から融資だ、こう言っておられるのですね。何かこの委員会の中でも、まさに補助から融資という言葉が政策的にも定着でもしたかのように言っておられる。与党の人が言うのならまだわからぬことはないのですが、野党の人までしきりに補助から融資、こういうふうに言われるわけです。私、現在の農林水産業を見ていて、今、国の役割というのは非常に大切なんでありまして、財政、金融、税制、そういったことが一体となって農林水産業を本当は盛り上げていかなければならない、こういう時期だと思うので、これはかりそめにといいますか、余り不用意に補助から融資だというようなったい文句をうたいとげるべきではないのだろうと実は思っております。この点についてお考えはいかがでしょう。
  160. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 補助から融資へという言葉の意味するところであると思いますけれども、私どもは、補助と融資というのはそれぞれ分担分野がございまして、両々相まって農林漁業政策の推進に当たるという姿であろうというふうに思っております。  ただ、一つは、資金の効率的な利用というふうなことがございますし、それからもう一つは、補助で進めるべきか融資で進めるべきかという境界線にある分野というのがかなり幅広くございます。そういうものを見直しながら、その中で、基本的には補助と申しますのは土地改良その他公共性の非常に高いもので、そしてまた共同部な性格のものが中心であり、融資はどちらかと申しますと、個人の農業者の施設、私的資本の形成と申しますかそういう分野ということでございますが、その中間に、いろいろ新しい技術を普及をする、あるいはリスクを伴うような新しい事業というようなものを補助でやるか融資でやるかという問題があるわけでございます。  考え方としては、やはり補助よりは金融の方が農業者の自主性なり創意工夫を生かせる余地が大きい、そういう特徴を持っておりますので、そういった性格をよりよく生かしてまいった方がよろしいという分野につきまして、補助から融資へという切りかえを図っているということでございます。  今回の金融三法の中におきましても、例えば、農業改良資金助成法の一部改正におきまして、従来、補助金による共同利用としての奨励的な段階というのはほぼ終了したと考えられるようなものでありますとか、あるいは先駆性、リスク性というものはある程度あるけれども個別経営になじみやすいもの、こういったものは補助から無利子の融資に切りかえていくというような措置をとっているわけでございまして、補助から融資へ、こういう政策方向というものが、補助金という政策手段を将来なくしていくのだということを意味するものではないというふうに私ども考えております。
  161. 日野市朗

    ○日野委員 今、後藤局長の言われることは、非常に教科書的なお答えだと思うのですね。私、農政それから水産業、林業こういうふうにずっと見させていただいて、事はそのぐらいで済むのだろうかという感じが非常に強くいたしております。何か最近、非常に臨調の考え方、自立自助の精神とか創意工夫とか言いながら、もっと国の補助をカットをしていくべきだ、もっと自由な競争原理を取り入れる、それからもっと創意工夫を発揮させる、こういう一つの政策方向が喧伝されております。私は、実際それができるところはそれでいいだろうと思っています。それができるならいいだろう。しかし、現在の農業を見てみる、漁業を見てみる、林業を見てみる、そうすると、第一次産業分野というものは果たしてそれで済むのだろうかというふうな感じがするわけでございます。  やはり国の一番大事な政策目標というのは、国民に食わせることでありまして、何かあっても間違いなく食わしていけるという食糧における国民全体の安心感、それからその産業に従事する者の安心感、そういったものが必要だろうと思うのですが、現在は、今局長が言われたような状況に農水省の各産業の部門がそれぞれあり得るのか、現在そういうような状態になっているのかどうかという基本的な認識をちゃんと据えた上でここのとろは議論しなければならないだろう、こういうふうに思っているわけでございます。  ここについては大臣なんかの認識もひとつ伺っておきたいというふうに思うのでございますが、いかがでございますか。
  162. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 日野先生にお答えいたします。  農林水産業というのは、先生御存じのことでございますが、一般に自然条件に左右されやすく、また経済合理性のみで割り切れない面がございます。日本の農業の特質というのは、規模が小さいということ、それから収益性が低い、作目は多様性という特質を持っている、そんな形でございまして、これを踏まえて、なお農林水産行政をどう円滑に推進するかということ、そのためにはどうしても必要な農林水産予算を確保することが大切だ、こう思っていますが、そういうことの中で、中でも補助金等は、全国的視野から地域的な均衡を確保しつつ、生産基盤の整備とかあるいは生産性の向上等を推進し、農林水産業を一定の方向へ誘導していく上に極めて重要な役割を果たしていると考えており、今後とも有効かつ必要な政策手段であると考えています。  そんなことでございますゆえ、今後とも、厳しい財政事情のもとでございますが、所要の整理合理化を図りつつ、農林水産行政を円滑に推進するために必要な補助金等につきましては、これを確保してまいりたいと考えております。
  163. 日野市朗

    ○日野委員 この委員会でずっと喧伝され続けましたように、補助から融資だといううたい文句があるわけですが、基本的な政策の変更、農水省が今までずっと踏襲してきた基本的な政策の方向がございますね、やはり補助は補助としてきちんと当てはめ、それから金融金融としてそれが十分機能するようにという配慮のもとにやってこられたと私は思いますし、非常に基盤の脆弱な農林水産業、これは本来は脆弱でも何でもないはずなんでございますけれども、現在はもう国際環境から国内の環境から、いろいろな経済的な変動の要因等をあわせ考えて非常に脆弱だと思われ、そして、これは補助の果たす役割というのが政策誘導の一つの手段としてもっと強力に位置づけられなければならないと私は思っておるのですが、農水省の考え方として、今までと大きな政策変更があったのかどうか、これを教えてください。
  164. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 農業の耕種作物の補助金行政としては、私どもの局がかなり補助金行政というのをやっておるわけでございますが、従来、補助から融資へというのは、経済局長もお答えしましたように、補助になじむもの、融資になじむものという考え方と、それからもう一つは、段階的に一つの技術なりあるいは機械、施設なりが、初めは補助段階になじんだけれども、あるところまでいくとむしろ融資対象を広げた方がいい、こういうふうな意向も一方にあるわけでございます。  例えば、稲作に例をとりましても、現在、将来とも補助というようなことで進められなければならないものとしては、例えばカントリーエレベーターとか、ああいうような非常に地域的な施設であり、新しい稲作の生産組織というような取り組み、こういう非常に先駆的、モデル的また地域的な影響範囲の広いもの、これは補助でございますけれども、例えば初めは、ある程度新しい段階では補助なりあるいは私どもで言えば農業改良資金のような無利子資金でやるけれども、だんだん一般化していくと、むしろ融資でやった方が利用する農家の範囲も広うございますし、それから、同じ一の財政資金を使った場合に十なり二十なりにもそのお金が使える、こういうことになりますので、こういう意味で、俗に言う普及段階に入った技術なり機械、施設については融資の方がどうも向いているということもございます。  それから一方、補助に伴うマイナスというのは、私が言うのもおかしいのでございますけれども、やはり補助になりますと、補助につられて、例えば機械、施設などでもそうですけれども、現地の利用体制が十分熟していないところで先に入ってしまいますと、その機械なり施設がどうもうまく使われない、こういうことがあったりいたします。  それからもう一つは、補助金の場合には、御承知のように、生産者団体あるいは共同利用、こういうことになります。そうしますと、例えば果樹園のスピードスプレーヤーのようなものになりますと、本当は個別利用でやった方がうまくいくのだけれども、補助金をもらうためにやや無理に共同利用という体裁をとりまして、後で、これは実質的に個人利用になっているのじゃないか、こういうような指摘を受けたりいたす例もございます。  いろいろ考えますと、補助と融資の組み合わせということと、補助段階になじむもの、それからむしろ融資でだんだん一般化してやった方がいいもの、こういう面もございますので、一般的に、補助から融資へという流れが、農政の推進上ただマイナス面ばかりであるというふうには私ども考えていないわけでございまして、それに伴うメリットというものもやはり融資なら融資なりに認められるのではないかということでございますので、補助金のなじむ固有の領域というのは私どもこれからもかたく守っていくつもりでございますけれども、一方、それからやや融資へ移した方がいいというものについては融資の方へ持っていく、こういう仕事の進め方をする方がいいのではないかと考えている次第でございます。
  165. 日野市朗

    ○日野委員 補助でいった方がいいのか融資でいった方がいいのか、それはそれぞれいろいろな局面において言えることなんです。これは何も今さら始まったことではないのですが、私が聞いているのは、これらの農林水産業を政策誘導をやっていく、その場合、農林水産業というような産業について、融資というものに全面的にと言うとちょっとおかしいですが、融資ということを強調して、自分たちの創意工夫でやりなさい、それからシステム的にも融資でおやりなさいという、いわば突き放したといいましょうか、少し抽象的な表現で恐縮ですが、突き放したような形でこれらの産業を扱ってよろしかろうか。  今必要なのは、農林水産業については、後でまたお話もしますけれども、まだまだ政策的にこれを強化をしていく、そういう方向が今とられなければならない時期であろう、こういうふうに私は思っているわけなんでございまして、それは、どの部分は融資でやった方がいい、どの部分は補助でやった方がいいというような局部的な議論をするのではなく、農林水産省としてはもっとちゃんとしたこれらの産業についての政策誘導をやってもらいたいという希望の表明なんであります。いかがでございましょうか。
  166. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 補助か金融かと申しますのは、いずれもある政策目的にどういう手段で誘導していったらいいかというための一つの手段であると私ども思っております。午前中にもお話が出ておりましたように、農政の基本方向を目指してある一定の方向に誘導をし、望ましい姿の農林漁業をつくっていきたいという場合に、それをどのような手段でやるかということでございまして、私ども、補助、融資それぞれ固有の分野がございますし、財政金融面で望ましい農業をつくるためにできるだけのものを投入をしていくという基本姿勢は何ら変わるものではないと思っております。  なお、補助から融資へと申しますと、それが直ちに国の財政負担を減らすということのためではないかと思われがちなんでございますが、例えば、農林公庫で三分五厘で二十年というような資金融資するといたしますと、百万円の融資をいたしますと、償還までの間に国は補給金という形で五十七万円というものを負担するということになるわけでございますし、それからまた、系統原資の八分五厘というようなものを基準にいたしまして仮に五%で二十年の融資をいたしますと、利子補給という形で農林漁業者の負担が二四%軽減されるということなんでございます。融資も決してお金がかからないということではないわけでございまして、また反面、補助には必ず自己負担というものがございます。  補助か融資かということを考えます場合に、もちろん財政資金の効率的利用ということもございますけれども、私ども、お金を安く上げるということではなくて、政策誘導の手段としてどちらが適当か、補助のメリット、デメリット、融資のメリット、デメリットがございます、そういうものを具体的に個々の事例に検証しながら選択をしていくということだと思います。
  167. 日野市朗

    ○日野委員 そうはおっしゃいますけれども現実に農林予算がどんどん削られていって、その補助の部分が削られているという現実は厳しいものでございますよ。私としては、ここらのところは、財政当局の厳しさということもございますけれども、やはり農水省は日本の農林水産業をリードしていくという立場にあるわけでございますから、そこは頑張ってもらわないといかぬ。何かこの委員会の雰囲気なんかを聞いていると、融資融資というようなことで融資にずっとのめり込んでいきそうな危機感をちょっと感ずるものですから、そこを言わせていただきました。  確かに補助金についてもいろいろな欠陥がございます。局長がお挙げになったようなことのほかに、与党のえさではないかというようなことまで言われて、我々もそれが全然当たらないわけでもないのではないかなどと思ったりもしているわけでございますが、とにかく補助と融資、こう言われるときに、常に臨調の言う自助の精神だとか自立自助だとか、こういうことを言われておりますけれども漁業なんかごらんになってみてください。自分たちで何とかしようとさまざまな努力を積み重ねながら、厳しい国際環境という一つの本当に重い事実がのしかかる、そういう中で自分たちで努力をしろと言ったってどうなりましょう。農業だってそうですね、いろいろな努力を積み重ねながら、なおかつ外国からの輸入圧力というようなものがどんどんかかってくる、これでは農民たちの自主的な努力というものももう限界があります。そこらは私は、日本の食糧を守っていくという観点からするならば、国の財政の果たす役割というのは大きく評価しなければならないのではないか、こういうふうに思っているのですが、大臣いかがです、同感いただけませんか。
  168. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  農は国の基本でございますし、また、農林水産省というのは約一億二千万の国民に食糧を安定供給する大きな役割を持っておる。またそれ以外に、公益的機能を水資源を含めて持っておるわけでございます。そんなことで、農林水産予算に必要な最小限の予算は確保いたし、そういう形の中で、厳しい財政状況でございますが、それを重点的に効率よく運営しながら御期待に沿いたい、このように考えております。
  169. 日野市朗

    ○日野委員 最小限の予算を獲得じゃなくて、もっと頑張ってくださいな。  それから、もう一つ私がこの委員会の審議で心配していることは、農協に金が余っているではないかということを皆さんずっとおっしゃっているのですね。そのことを皆さん問題にして、農協の努力不足みたいなことも随分言われていたようであります。農協そのもの、そういった系統金融そのものもこれから努力はしていかなければなりません。しかしそれと同時に、それを取り巻くいろいろな問題点が非常に山積をしているように私には思われるのでありますが、どうでしょう。この農協金融漁協も同じでございますが、やはり系統金融は、皆さん問題にされるように非常に危機的な状況と言っていいのではないかというふうに思うわけです。  例えば貸し出しなんかを見てみますと、現在はゼロ成長と言っていいのではないかと思いますし、それから預金の内容をちょっと見てみますと、個人が圧倒的に多い、大体七〇%ぐらいは個人の預金になっておりませんか。しかも定期性の高い預金であって、当座的なものは少ない。そうすると勢い金利は高くなるわけで、コストを引き上げてしまうというような状況になっている。私見ておりまして、系統の預金がもっと生きるような方法を考えてやらなければならないのではなかろうか、こういう感想を持っております。こういう系統金融そのものについてどんなふうに見通しておられますか。
  170. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 系統金融の最近の動向につきましては、ただいまお話がございましたように、貸し出しが伸び悩む、そういった中で金融の自由化というようなものが進行していくということで、これから先、系統組織を支えております信用事業をどうやってこういった状況に対応させていくかということにつきまして、系統団体の内部、また系統団体と私どもと一緒になりまして今検討会というようなものをつくりまして、その中でいろいろ検討をいたしております。  いずれにいたしましても、これは制度金融もあわせてでございますけれども、近年、農業投資等が非常に慎重になってきておりますので、貸し出しの伸びが非常に鈍っているということから系統の余裕金も増加をしているということで、昭和三十年代にできました農業近代化資金が代表しております系統原資の制度金融、こういったものがいわば組合員に対する資金の還元の大きなてこになっておるわけでございますが、こういった形での資金の還元もできるだけ図っていかなければいけないということで、今回の近代化資金の貸付限度額を二倍に引き上げるというような措置もそういった考え方の一環でございますし、また、六十年度に公庫制度改正の中で近代化資金に移せるものは移していくということも考えているわけでございます。  将来の系統金融の見通しは非常に厳しいわけでございますけれども、農協の経営基盤の確立あるいは金融自由化の流れに即した金融業務の強化といったことを図りながら、体質改善を図っていく必要があるというふうに考えております。
  171. 日野市朗

    ○日野委員 検討会をやっておられることは我々も承知をいたしているのでございますけれども金融の自由化の進むテンポが早いですね。我々が想像していたよりもずっと早いと言っていいのではないか。系統金融側でも随分いろいろの努力はしているようであります。新しい貸し付けのシステムをいろいろつくってみたりいろいろな商品を適宜売り出したりもしているようでありますが、かなり立ちおくれが目立つと言ってもいいのではないか。例えば、現在こういう金融をやる際は、コンピューター化というものが必須でございますね。しかも、かなり系統金融と張り合っている郵便貯金なんかもずっとオンライン化されて、今度は土曜、日曜も機械を動かすということでございましょう。  コンピューター化されていない農協はまだ非常に多いはずだ。これはどのくらいありましょうか。そしてまた、その普及はどんな見通しになっているのでございましょうね。
  172. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 これからの金融自由化の中で生き残ってまいります上で、やはり他の機関に負けないだけの金融機能、特に機械化の面ということが重要になってまいります。  農協店舗のオンライン化の状況につきましては、全国四十七県すべてオンラインシステムが既に稼働をいたしております。それからCD、現金の支払い機あるいは受け払い機というような店頭での機械化につきましては、五十九年の九月末で、都市銀行でございますともう九九・八%の設置傘でございますが、信用金庫あたりで八六・七%、農業協同組合の場合は十六・三%、郵便局が八・五%、こういったCDの設置状況でございます。
  173. 日野市朗

    ○日野委員 それから、農協に、土曜、日曜も出て郵便貯金に負けないぐらいその部分の仕事をやれというのは無理でございましょうけれども、こういう機械、特にCD関係機械設置は急がなければならない、こんなふうに思うのですが、いかがでしょう。
  174. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 比較的大都市に集中しております銀行などに比べますと、農業協同組合は地方に存在しまして、その店舗にCDを置いた場合の採算性というような問題もいろいろあるわけでございますが、系統ではCD等の設置率の向上に今いろいろ努力をいたしております。先ほど申しました一六%というのは昨年の九月現在で、他機関と並べるという意味でとったわけでございますが、昨年の十二月末現在で農林中央金庫が調査したものによりますと、二二%ぐらいに上がってきております。これは地域によりましてさまざまでございますが、他の金融機関との競争上設置をしなければならないというような機運もかなり高まってまいりまして、なお、ことしに入りましてからもこれが伸びる方向で現在動いているというふうに承知いたしております。
  175. 日野市朗

    ○日野委員 もう一つ重大な要因として考えなければならないのは、農村自体の構造変化ということを挙げなければならないのだと思いますね。混住化を進めるというのは農水省も積極的に進めてきたことですが、そのことが系統金融一つの危機をもたらしていると言っていいのだろうと思うのですね。  混住化が進んでくる、それから、どんどん車をみんな使いますから、ちょっと車を運転して都市にも出かけていける、そして兼業化が進んでくると、給料なんかは農協に振り込むといったってなかなかそうはいかないで、どこか別の金融機関、信用金庫なり町の銀行なりに振り込まれるというようなことが進んできて、村の金融機関は農協ということではなくなってきてしまった。こういう状態はまさに農水省あたりが進めてきた政策の影響をもろに受けているとも言えないことはないわけですが、これはどんなふうにお考えになりますか。
  176. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 だんだん話が大変基本的なところに入ってきているような気がいたしますけれども、系統金融の将来ということを考えます場合に、やはり先ほど来お話が出ておりますような機械化等によりまして、他の機関に劣らない金融機関としての機能を備える。今振り込みの話がございましたけれども、昨年の八月に農協系統が全国銀行内国為替制度に加入をいたしまして、現在は虎ノ門の某銀行から某県の何々農協まで振り込みができるという状態になってまいっております。  アメリカの金融自由化の動きなんかを見ましても、金融機関、銀行がだんだん利ざやで稼ぐということよりも、そういった振り込み、決済機能みたいなものから手数料の収入に依存していっているというような傾向がございますけれども、いずれにしましても、金融機能を十分に、商品開発というようなことも含めて備えていくことを、まず基本的な条件として推進していく必要があるんじゃないかと私は思います。  ただ、その先が実は問題だと思っております。金融機関それぞれ、銀行は銀行、先ほどもお話がございましたように、都市銀行でございますと法人が主として相手で貸し付けも大口である、農協の場合には個人が相手で小口の融資というようなことでございます。金融機能を備え、また他の金融機関とも十分機能の面で太刀打ちできるようになることが第一でございますが、同時に、農業協同組合というものの特色なり機能を生かした対応ということが必要なのではないか。あらゆる点で例えば銀行の後追いをすることが果たしていいかどうかということは私自身も思っております。  やはり地域に根差す総合経営の農協、そしてまた、これはいろいろ議論のあるところでございますが、全国の系統組織を持っている、そういった特色を生かした組合員あるいは準組合員に対しますいろいろな相談機能とか指導機能を強化をしていくとか、あるいはまた総合経営というようなものと結びついた総合的な商品開発をやっていくとか、何かそういった、個人金融機関として、また協同組合組織としての特色を生かしたこれからの金融情勢への対応ということを模索をしていかなければいけないのじゃないか、そういったことも考えながら、今系統ともいろいろ検討会などをやりながら研究、御相談をいたしておるということでございます。
  177. 日野市朗

    ○日野委員 金融一般から言えば、これは企業を相手にした方がいいわけでございますね。個人なんというのはいわば余剰部門でございますから、企業との取引をしたい。しかし、系統の場合はそれは縛られているわけでございますから、なかなかそれも正面からはできにくい、こういう制度的な枠をはめられた中で金融機関が農村において機能をしていかなければならないわけでございまして、これは他の金融機関と同じ土俵で競争しろということが本来無理であるかもしれないというふうに考えるのですがね。だからといって、では員外貨し出し、これも全部をオープンにしろというわけにはまいりません。員外貨し出し二〇%というような一つの枠を持ちながら今やっている。  こういう系統に対して、同じような土俵で競争のできる体制ということは非常に難しいけれども、それができるような努力、これはもちろん系統そのものもしなければならないわけでありますけれども、国としてこういうところはきちんと助けるべきは助ける、こういう姿勢が必要なんじゃないでしょうか、いかがでしょう。
  178. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農協の系統信用事業と申しますのは、組合員農家の自主的な共同組織という基本的な性格がございますので、その組織、機能等について他の金融機関とは異なった性格を持っているわけでございます。しかし、先ほど来お話がございますように、系統金融を取り巻きます情勢、一般金融情勢ということでも非常に厳しくなってきておりますし、また、都市化とか混住化とか組合員農家の兼業化が進むといったことで、系統組織の経営環境はますます厳しくなってきておるのが実情でございます。  その中で、金融自由化が系統の信用事業あるいは農協経営の収支というものにも相当な影響を与えるのではないかというふうなことが懸念されているわけでございますので、系統信用事業の本来の使命を妨げない範囲内におきまして他の金融機関におくれをとらないようにということで、例を申しますと、先ほどちょっと為替の話が出ましたけれども、農協の内国為替取引に係る員外利用制限の撤廃を五十七年八月にいたしましたし、また、譲渡性預金の農林中金、信連、農協への導入というような措置もとりましたし、さらに、先般の農協法の改正では、指定信連ということで、特定の要件に合致をいたします信連につきましては員外貨し出しの規制を一定の範囲内で緩和をするというような措置もとったわけでございます。  私どもといたしましては、やはり貝内優先という原則の範囲内におきまして、この系統信用事業の経営基盤の強化なりあるいは他の金融機関との競争条件の確保という点については、これまでも配慮をいたしてきたつもりでございます。将来ともまた系統組織とよく連絡を密にいたしながら、今後の対応も考えてまいりたいというふうに思っております。
  179. 日野市朗

    ○日野委員 系統の関係者から、自由化を見きわめつつもっとテンポを緩めてくれないかという提言もなされておるわけで、私はこれは悲鳴みたいに聞こえるわけですな。そういうことも十分考慮をいただきたいと思うわけであります。  特に私が心配するのは、漁協の方の能力の低下、もちろんそれは競争力の低下ということにもなります。これは漁業を取り巻く情勢が農業以上に厳しいものがあるというところで、私はこれは非常に気になるのですよ。何か具体的にとられる施策というようなものを考えておられるのかどうか、いかがでございます。
  180. 上野博史

    ○上野説明員 恐縮でございますが、私からお答えをさせていただきたいと思います。  先生今お話しございましたように、漁協の場合には農協に比べてまだ一段と規模が小さいというような問題がございまして、金融の自由化の問題に対応するためにもできるだけそういう状態を解消しなければならない、キャッチアップをしていかなければならない、かように思っておるわけでございまして、この委員会室でも何回か御質問ございました、漁協経営状況の改善を図るための不振漁協対策を今年度から講じてまいりますとか、あるいは今の非常に零細な漁協信用事業をできるだけ効率化をしてまいりますために、機械を導入するというようなことによりまして事務作業の共同化を図ってまいるというようなこともことしから始めてまいりたい、かように思っております。  いずれにいたしましても、できるだけ効率化を図るように漁協経営指導していくということで、指導を一段と強め、漁協系統組織もそういう方向で努力を続けていく、かような状態になっておるわけでございます。
  181. 日野市朗

    ○日野委員 私が懸念しますのは、特に漁協についてですね。漁協をそれぞれタイプに従って分類をしてしまって、信用事業から撤退をさせるところは撤退させる、そしてこれは漁信連の直轄にするとか、そういうことまで構想の中に思い描いてあるのですか。
  182. 上野博史

    ○上野説明員 実は漁協の営みます金融事業のあり方につきまして、去年まで有識者の方々にいろいろ御研究をいただきまして、その結果の中には、先生今お話しございましたような、ある程度漁協の規模なり能率なり内容なりによって指導のあり方を変えていくというような考え方はもう示されているわけでございますけれども、この点につきましては、現在、どういうような指導体制をとるか検討を内部でいたしておるわけでございます。  漁協金融機能をどうするかというのは、やはり第一には漁協個々の考え方、もちろん組合員の総意を踏まえまして、その漁協が営んでおります事業との関係等を考えに入れながら、今後どういうような対応をしていくかというお考えをおまとめいただきまして、それを私どもとしてはできるだけ助長をしてまいる、その方向としては、当然金融自由化や何かにも耐えられるような方向での対応が考えられなければならない、かように考えております。
  183. 日野市朗

    ○日野委員 ここで私の意見を一言述べておきたいのですが、協同組合というのは、ちゃんと指導をするという業務が非常に大きな業務でなければならないわけですね。信用事業での苦しさから、経営指導ということができなくなってしまうというようなことがないように、これは、できるだけ金を一カ所に集中して信用事業を繁盛させていくというのと、その指導というのは、必ずしも同じ方向に向いているようで向いていない一面がありますから、そういうところは非常に留意をしながらやってもらいたいというふうに思うわけですが、これは意見として私の方から述べておきたい、こう思います。  それで、私が気になるのは、何度も何度もこの委員会で恐らく問題になったでありましょうが、公庫資金とそれから系統資金との分野調整の問題であります。やはり系統に任せていいものは系統に任せるべきだと私は思います。これは、系統に金がだぶついているといいながら公庫資金がどんどん出てきてしまうということがないようにしなければならないと思うのです。実は私ちょっといろいろ調べてみましたら、これは分野調整ということを系統の方でうるさく言うのもよくわかるような感じがいたします。随分私はこれを洗ってみたのです。そうしたら――一例を言いましょう。資金の用途として、農業用施設設備とか農機具等の購入、これなんかを見てみますと、公庫資金が随分入っておりますね。農業構造改善事業推進資金、総合施設資金、振興山村・過疎地域経営改善資金、北海道、南九州、これはまあいいとして、果樹植栽資金だとか主務大臣指定施設資金だとか、これは随分近代化資金があるにもかかわらず、こういう資金が大分出張ってきているわけですね。  私は今ここで一つ例を、これは農業関係で挙げましたが、漁業関係で挙げてみますと、これもまたいろいろ理屈のつけようがあるようなものでございますけれども漁具だとか漁船用機器等の導入という資金用途、これで見ますと、沿岸漁業構造改善事業推進資金漁業経営再建整備資金、こういったものがどんどん出てきているわけですね。それから、漁船資金だとか、これがどんどん系統の分野にまで入り込んできているということは、やはりこれはかなり考えなくてはいかぬことなのではないでしょうか。  私がここに資料として持ってきているものの中には、農業関係近代化資金公庫資金が競り合っているものが二十項目ぐらいある、用途に従って分けてみてですよ。漁業関係でもやはり同じくらい競り合っているものがあるわけですね。これじゃちょっと公庫資金は出過ぎじゃあるまいかというふうな感じがするのですが、いかがでございますか。
  184. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 公庫と系統原資の制度金融との分野調整と申しますかの問題でございますけれども、基本的には、農林公庫資金と申しますのは、土地改良、造林等々の経営基盤に当たる投資で、投資効果の発現に非常に長期を要するもので、一般金融機関ではなかなか融通が困難なものというものが貸し付けの実績から申しましても主体でございます。  ただ、そのほかに、今お話しのございましたような機械とか施設のたぐいでございましても、構造改善事業推進資金のように、一定の計画で特定の地域にかなりまとまった金額を集中的に投資をするというような場合に、その事業が円滑に進められるように公庫の財政資金による制度金融で手当てをする、あるいはまた自立経営の育成というようなことで、極めて政策性なり指導性が強いものを公庫がやっておるということでございます。  個別経営の施設資金の分野では、やはり系統原資の近代化資金を利用できるところはできるだけそちらでやっていただくということが私どもといたしましても基本的な方向でございます。構造改善事業推進資金とか総合施設資金のようなものを除きますと、公庫の施設資金的なものにつきましてはむしろ系統資金の補完的な役割を果たしているというふうに考えられるわけでございまして、その金利をとりましても、山村、過疎といった特定の場合を除きますと、公庫主務大臣指定施設資金は七・一%でございます。近代化資金の場合は五・五%ということで、公庫の方が有利というふうな形にはなっておらないわけでございます。今回の制度改正でも、従来農林公庫対象としてまいりましたもののうち、近代化資金等でも対応が可能なものについては近代化資金に移行させるということにいたしております。  ただ、運営の実態を別にいたしまして、制度上見ますと、例えば農機具を購入する場合にいろいろな制度の道が開かれておる、これを一本にしたらどうかということはよくあるわけでございますが、系統原資のものでございますと、かつては単協によって資金量が十分でないというようなこともございましたけれども、それが今はほとんどなくなっております。  ただ、やはり組合員間のある程度の平等と申しますか、特定の方にまとまったお金を一時に貸し付けるというふうなことがなかなかやりにくいというようなこともございますし、地域の実情によりましては、地元の農協と当該農業者との間の関係からなかなか系統原資の資金が借りにくくて、公庫資金の借り入れの道もあけておいてほしいというようなものもあるわけでございまして、すべてを論理的に非常にきちっと整理をして一本化するということが、農林漁業者の置かれているいろいろ多様な条件の中で果たしていいかどうかというふうなこともあるわけであります。ただ、基本的な考え方は、先生おっしゃいますように、やはり系統原資で賄えるものはできるだけそちらでやっていただくという基本方向はこれからもとってまいりたいというふうに私ども思っております。
  185. 日野市朗

    ○日野委員 時間もだんだん迫ってきまして、現在金融政策を考える場合、結局我々が今考えなければならないのは、農林水産業についてそれをもっと活性化させなければならない、活力を失っているということを私は指摘せざるを得ないと思うのです。これだけお金がありますよ、どうぞ使ってくださいなと言いながら、さっぱり資金需要が伸びてこない、これはもう活性化している農林水産業の状態ではないと思うのですね。なぜこうなってきているのか。私ちょっと厳しいことを言いますが、農水省にとってそれは恥だと思いますよ。本当は日本の経済の中で農林水産業がもっと活発な産業であっていいはずなんです。ところが、これだけ金をあてがっておいても使い手がないというような状態、私はこれは日本の民族にとって非常にゆゆしい問題であろうと思うのです。  これを解決するのは、金をどうぞ使ってください、金をあてがいますだけではだめなんであって、日本の農林水産業が活性化する道を開かなければならない、そのためのビジョンをしっかり描いて、その産業に従事する農民なり山を持っている人なり漁民なりにこれを示さなければならないと思うのです。そういう絵を描き切っていない。私あえて申します。八〇年代の農業見通しですか、あれなんかがあるけれども、それによって日本の農村は活性化しているだろうか、このことを考えてみると活性化していない、もう一考を要するのではないかと私は思います。  それから、山の問題だって同じですね。今度のMOSSの中に、木材製品なんて、質の悪いベニヤを買えなんて言われて全く迷惑な話なんでありますけれども、そういう圧力も加わってくる。漁業だって、鯨やめぬなら北洋に入れないぞと言われると一遍で脅えてしまって、じゃ鯨やめましょうということになってしまったりしているわけですね。  こういったそれぞれの事柄について、全体が活性化してないのです。これを活性化させる道を探らなければならない。そして、活性化する道は、やってみなければわからないことでありますけれども皆さんもっと大胆に絵をかけということを私は言いたいと思うのです。どうですか。  時間もないし、非常に抽象的な質問になって答える方も気の毒な話ですが、私は私なりに今までいろいろなことをこの委員会でも言ってきましたし、私なりに思い描いている絵はあるが、要は農水省もっと根性出せやということを言いたいのです。大臣、日本の農林水産業を活性化させるために、よし引っ張っていくぞという根性を見せてもらいたい、こんなふうに思っているのですが、いかがですか。
  186. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  先ほどから金利自由化という問題を聞いておりまして、私は大変な問題だと思っております。系統農協金融につきましていろいろ指導しておりますが、一番問題は、いかにコストを安くするか、そして貸出金利をどのように安くするかということでございます。実はある農協で金を八%で借りておるのがおりまして、私はある市中銀行に話したら、六・数%の長期金利で貸しました。これが今の姿。そんなことで、私は、系統資金がだぶついた中でなぜ落ちているかという中に、金利が高い点もあるかと思います。  私は、これからの農林水産業につきましては明るい展望を持っている、それは、いつも言っておりますけれども長期ビジョンを推進しますとともに、そういう形の中に三つの施策、生産性の高い、土台のしっかりした農林水産業の実現、二点目には、二十一世紀に向けてのバイオテクノロジー等先端技術の開発、活力ある村づくりの三点に力点を置いて、農林水産業に携わる方々に意欲と生きがいを持っていただけるような明るい展望を築きたいと考えているわけでございます。
  187. 日野市朗

    ○日野委員 まだ三十秒ほどあるようですから、そうおっしゃるなら、何で先端技術を取り入れてやろうという農民に対する資金手当てをなさらないのかという意地の悪い話も出てくるわけですが、とにかく現在の農林水産業の活性化ということのためには懸命の努力をしてもらいたい。そしてそのためには、臨調みたいなところに頭を押さえられて、はあ、そうですかと言っているばかりじゃだめなのでありまして、これはもう各界から広く意見を聞く、そして常に自分たちの軌道、これをきちんと自主性を持って進んでいく、これが必要だと私思います。何か、私みたいな若僧が少しお説教めいたことを言いまして申しわけありません。  これで終わります。
  188. 今井勇

    今井委員長 次に、松沢俊昭君。
  189. 松沢俊昭

    ○松沢委員 金融三法に入る前に、きのう「対外経済対策」というものが発表されましたが、その中で木材問題が取り上げられまして、「関税の引下げ等」、これを見ますと、「森林・林業及び木材産業の活力を回復させるため、(i)木材需要の拡大、(ii)木材産業の体質強化、(iii)間伐・保育等森林・林業の活性化等を中心に、財政、金融その他所要の措置を当面五か年にわたり特に講ずることとし、その進捗状況を見つつ、おおむね三年目から針葉樹及び広葉樹を通ずる合板等の関税の引下げを行うべく前向きに取り組む。」こういう文章になっているわけでございます。  この問題は、この委員会におきましても、中曽根総理が正月にアメリカを訪問した際、材木の問題も入っているということで、これは大変な話じゃないか、もう国内の森林をどういうふうにして守っていくかというのが精いっぱいのところへもってきてその材木問題なんというものを俎上にのせられるなんということは、これはとんでもない話だという意見が出ておりまして、農林大臣もこの点につきましては、いや、私は全力を挙げて頑張ります、こういう御答弁もあったはずでございます。  ところがきのうの発表を見ますと、こういうふうにして発表されておるわけでありますが、これはあれですか、農林大臣の腹にもないことを総理大臣が上から押しつけてやってきているのか、あるいはまた、農林大臣に十分相談されてこの結果というものが出たのであるか。仮に十分相談されたということでありまするならば、一体これで日本のいわゆる森林・林業、材木産業、こういうものが健全な発展を遂げる、そういう自信というものがあるのかどうか。  新聞等によりますと、まあ三千億ぐらいの手当てをするようなことも出ておりますが、要するに、そういう所要の財源、それがどのくらい予定されているのか、そしてまたどのような計画というものがあるのか、そういう具体的なものがあったならばこの際示していただきたい、このように考えるわけです。
  190. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生にお答えいたします。  実は、私はこの問題に関しては、いつも申しておりますけれども、我が国の置かれている立場を認識し、友好国との関係に配慮しつつ、我が国農林水産業を生かし健全な発展を図る、この調和をどう図るかということが大切なことだと思っております。そんな観点で、この問題を私どもの決断でこうしたわけでございます。  そんなことでございまして、今、林産、木材業界は大変なことだというのは先生も御存じのとおりでございます。実は、私は、一番基本的問題は木材が高過ぎると思っております。これをいかに安くするか。御存じと思いますけれども、現在合板事業は、丸太を約十億か十一億アメリカから輸入しておりますけれども、無税で輸入している、それで合板事業は赤字です。仮に国産材を使ったらもっと赤字になります。そんなことでございまして、私は、少なくとも海外の輸入材に対抗し得るような安い木材をつくりたい、一つこんな夢を持っている。したがって、かなり時間もかかると思います。そこにハイテク等を使いたい。例えば、杉は五十年ですが、できればハイテクで二十五年の促成はできないだろうか、こんなことを含めて研究しながらやりたい。  そういうことで、とりあえずは今先生が言いました「木材需要の拡大、木材産業の体質強化、間伐・保育等森林・林業の活性化等を中心に、財政、金融その他所要の措置を当面五か年にわたり特に講ずることとする」ということでございます。そんなことでございまして、私いつも申しておりますが、関税問題の取り扱いの前に国内対策をどうするか、総合対策をどうするかというようなことでこれを考えたわけです。そんなことで、今先生が文章をお読みになったようなことでございまして、国内対策の進捗状況を見つつ、おおむね三年目から取り組むこととしているということでございます。  それからまた、金のことにつきましては一切話は出てございません。今鋭意検討中でございます。
  191. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私はその辺がおかしいと思うのでありまして、やはりきちんと計画を立てて、これで大丈夫だというときに初めて友好国であるところのアメリカとも調和をとるということが望ましいのでありまして、まだそういう具体的な計画もなければ自信もない。これははっきり申し上げますけれども金融三法に入ればまた質問をいたしますけれども、去年は去年で、東京ラウンドで私たちやはり枠拡大に反対してまいりましたですね。本当は牛肉なんというのは、アメリカから年に六千九百トンも毎年毎年かさ上げして買う必要なんて何にもないんですよね。言ってみますれば、それは押しつけられたわけでしょう。あるいはオレンジにいたしましても、一万一千トンですか積み上げしていかなければならないという理由なんてないわけですよ。こういうのを押しつけてきているわけです。  それで中曽根さんは、アメリカには顔をよくして、そして日本の農業だとか畜産だとか果樹だとかいうものを痛めつけるというやり方というものは、さっきもどなたか言いましたけれども、民族の自決、それを傷つけることなんじゃないかと私も考えるわけなんであります。恐らく今の大臣のお話からいたしますと、大臣は相当これに対しましては苦慮されたけれども、しかしいかんともしがたかったんだということなんじゃないかと私は思っておるわけなんでありますが、その辺どうですか。
  192. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  実は中曽根総理を含む関係閣僚、自民党の党幹部を含めて、この木材産業については大変御理解いただいたことを最初に申し上げておきます。  それからもう一つは、私が先ほど言ったようなことでございますが、我が国の置かれている立場を認識し、友好国との関係に配慮しつつ、そして我が国の林産業をどう生かすか、そしてその健全な発展をどう図るか、その調和をどう図るかというようなことで総合的に判断いたした、決断いたしたということでございます。
  193. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これ以上申し上げてもしようがないわけなんでありますけれども、しかし中曽根総理に対しましては、私、野党の社会党でありますけれども、社会党だけではなしに、恐らく与党の中におきましても、こういうことを繰り返し繰り返しやられるということになればおさまらないという問題がやはり起きてくるのではないか、私はこんなぐあいに考えますので、所管の大臣といたしましては、これからもやはり我々の意のあるところを十分酌みながら対応していただきたいということを御要望申し上げておきます。  そこで、本論の金融三法につきまして御質問申し上げたいと思います。  きのう連合審査がございまして、私も四十分ほど時間をいただきまして質問をいたしたわけでございます。そのときも申し上げておきましたが、五十九本の法律を一まとめにして、しかも、全然所管外の大蔵委員会が全部取り扱っているなんというのは遺憾千万な話だということを指摘しておきました。そして、農林水産省関係におきましても十四本、行革関連の年金を含めますと十五本ということになるわけですが、それを、社会党の場合にはたった二時間しか農林水産関係では質問時間をもらっていないわけでありますから、しかも、提案理由の説明がなされていないところで質問をやれということなんですから、全く国会の審議権を無視するも甚だしいと私は腹を立てているわけなんであります。  しかし、これはいかんともしがたいわけなんでございましてしようがございませんが、そのとき申し上げておいたのですけれども、補助金を切り捨てる、これは、農林省の方からいただきました資料によりましても、おかしなことには、法律関係の補助の削減というもの、これがトータルで二百二十九億三千万、政令、予算関係で四百四十二億一千万ということでありますから、考えてみますと、水面上にあるものは国会の審議ということになりますといろいろ議論をやるわけでありますけれども、政令だとか予算だとかということになりますとちょっとわからぬわけなんです。そういう水面下にあるものが倍なんですね。  そして、きのうも話しておきましたけれども、臨時行政調査会の五十八年三月十四日、これは最終答申なんでございますが、この中では食管に手をかけるということを言っているわけですよ。そうすると、米の価格を決める時期というのは六月から七月にわたって、時期はいつになるか、米価審議会の議を経て、こうなりますから、そのころになるわけですね。良質米奨励金だとかそういうものに手をかけると書かれているわけです。それから、食管の逆ざやを解消せいと書かれているわけですよ。  そういうようなことを考えてみますと、政令、予算、それに法律関連のもの全体を含めますと六百七十一億四千万円となるわけでありますが、そこへあの答申どおりに農林水産省が対応するということになりますと、さらにそれがふえるということになるわけなんです。そういうことがあってはならないということをきのう指摘しておきましたけれども、そういうことになるわけであります。  そこで、さっき関谷局長もいろいろ説明をしておりましたし後藤局長もいろいろお話をしておられました補助から金融、こういうのがここにちゃんと書かれているのですね。そして、これに基づいて政府が去年の一月の閣議決定で、「融資の重点化による貸付計画枠の圧縮、滞貨償却引当金の繰入率の引下げ等により利子補給金を抑制する。また、農林漁業を取り巻く環境、「補助から融資へ」の方向等を踏まえ、貸付資金の統合整理、貸出利率を含む貸付条件の見直し等について、早急に検討する。」ということを実は決定したわけです。その決定を受けて今回の金融三法の提案ということになったのではないかと私は思うわけなんであります。  そうなりますと、皆さんいろいろ答弁されておりまするけれども、その答弁というのは当たらないのじゃないか、やはり臨調の答申によって補助から金融の方向に流れとしては向かっているんだ、私はこういうふうに受けとめる以外にないわけでございます。そういう点で、これは大臣、どう受けとめておられるのか、まずもってお伺いを申し上げておきたいと思います。
  194. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたしますが、結局、農林水産業の振興等におきます補助と融資の役割につきましては、それぞれ特質がございます。補助は、土地改良等、公共性の強い分野を中心とし、制度金融は、個別経営の資本装備等の分野で主たる役割を担ってきております。  そんなことで、その役割分担につきまして今まで随時見直しを行ってきておりますが、近年においては、従来補助の対象としてきたものであっても融資による対応が可能なものにつきましては、むしろ農家の自主性と創意工夫を発揮させながら財政資金の効率的な使用を図るという見地から、融資への切りかえを図ってきております。  今後とも両者が役割を適切に分担しつつ補完し合い、そして農林水産施策の推進上十分効果を発揮されるよう措置してまいりたいと考えております。
  195. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私は、商工業関係と農林水産業というものとの違いというものは非常にはっきりしていると思いますね。例えば商工業の場合においては、自己資金一〇〇%でやっているなんていう人はおられないわけなんでありまして、やはり金融機関から金を借りて、その金を回転させながら利益をふやしていく、こういうやり方でございますね。もっと極端に言いますならば、金融業なんてものは人のふんどしで相撲をとっているようなものでしょう、人の金を適当に回して、そして利益を上げているわけなんでありまするから。そういうものと一次産業というのはやはり違っているのです。  要するに、この観点が臨時行政調査会にはないのではないかと私は思うのですよ。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕 この中で、土光さんを中心にしましたところの物の考え方というのは、佐藤農林水産大臣考え方とは根本的に違うのではないか、私たちとは違っているのではないか、こんなぐあいに私は思うのです。  やはり一次産業というのは、きのう申し上げましたけれども、工業化することのできない分野だと思うのです。例えば、牛乳工場ということになりますと工業化されますから、あれは実際問題農業ではないのですね、工業化なんです。それはそれなりに、やりようによっては商売ができることになるわけです。けれども農業だとか林業、水産業なんというものはなかなかそういうわけにはいかない。しかし、この産業がなかったならば二次産業の発展はないのだし、また人間生存の条件というものも出てこないわけだから、したがって、この産業は効率は悪いけれども守っていかなければならない。守るにはどうするかということになれば、社会的に守っていくことになるわけでありますから、国の立場からするならば、二次産業、三次産業の方から利益が上がった分を一次産業の方に穴埋めをしてやって一次産業を守っていく、こういうのが農林水産業に対する補助の基本的な考え方だという私なりの哲学を持っているわけでございます。  ところが、金はみんな同じだ、融資にしろ補助にしろ金じゃないか、だから補助などは切ってしまって貸してやればいいじゃないか、そうしないと過保護でありわがままが出るんだ、こういうのはつまり財界の物の考え方だと思うのですよ。  そこのところ、農林省と財界は違っているんだということを明確にしてもらわないと、これからの農林水産行政をやるには大変な問題が起きてくるのじゃないか。ここのところはきちっと対外的に声明、宣言をやってかかっていかなければ、衰退の一途をたどっている日本の農林水産業を守っていくわけにはまいらぬと私は思うのですが、その点、大臣の決意をお伺いしたいと思うのです。
  196. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えしますが、私も基本的認識は同じでございまして、日本の農業は国の基本である、一億二千万の国民全部で守るべきである、こんな観点で農政を進めておるわけでございます。  そんなことで、先生御存じのことでございますが、日本の特に農林水産業というのは自然条件に左右される。そういう形で日本の農業は特異性がございまして、例えば経営規模が小さい、収益性が低い、作目が多様である。そういう形の中で、私は、非常に厳しい財政でございますけれども、農政を推進する上におきまして補助は絶対必要だ、むしろこれは政策誘導が必要だ、こんな考えを持っております。しかも、これは地域的な均衡を確保しつつ、例えば生産基盤の整備とか生産性の向上等を推進し、農林水産業を一定の方向へ誘導していく上で極めて重要な役割を果たしている、このように認識し、したがって今後とも有効かつ必要な政策手段であると考えております。  そんなことで、この厳しい財政事情のもとでございますが、所要の整理合理化を図りつつ、農林水産施策、なかんずく農林水産行政を円滑に推進するために必要な補助金等につきましては、今後ともこれを確保してまいりたいと考えております。
  197. 松沢俊昭

    ○松沢委員 大臣の御努力に対しましては敬意を表しますけれども、しかし、さっき私が御指摘を申し上げましたように、現実は我々の考え方とは違った方向に流されていく、これはお認めになるわけでしょう。どうですか。
  198. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先ほど申したようなことでございまして、基本的には、農林水産行政の重要性を認識しながら、農業は国の基本であるということで国民全部で日本の農業を守ってもらいたい、そんな形の中に今後の農林水産業の発展を図っていきたいと私は考えておる次第でございます。
  199. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そういう点で、党派を超越しまして、農林省もそうだと思うのですが、今、私は金融関係の審議のためにいろいろお話を聞いたりなんかしておりますけれども一つには資金需要量がふえないのです。はっきり言うと、これはやる気を失ってしまっているということが言えると思うのです。それともう一つは、農林水産省のお役人さんたちが生気を失っているのです。今まではいろいろなアイデアを考えながら、とにかく金をどう分捕ってくるかということで目の色が輝いておったわけでありますが、最近はどうもそうではない。そうなりますと、肝心かなめの心臓部の農林水産省がそんな状態になってしまってはどうにもならないということじゃないかと思うのです。  そういう意味で、認識はお互いに一致させながら、それじゃどういうふうに手だてを立てるかということで進んでいかなければならないと考えておりますが、大臣、これならばそのとおりだとお答えできるでしょう。
  200. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えいたします。  私はちょっと認識が違うのです。私は入って今五カ月ぐらいでございますが、役人は極めて優秀だ。ただ、地味ですね。PRが下手です。そういうことの中に、この非常に厳しい予算の中で何とかして日本の農業をよくしたいと目の色を変えて頑張っております。  そんなことで、これから一日農林水産省もやります。というのは、例えば農業というのは遠くへは行けません。後進県と言うとしかられるけれども、特に開発途上県へ行って一日農林水産省をやります。それから、財界とも会合を全部やっております。二、三日前も経団連と会合いたしました。そういう形の中に、将来の食というものについて認識を改めるということで、食の博覧会、世界的な規模でやろうという構想を持って頑張っておりますから、先生、それはひとつ我が省の認識を改めていただきたい、このようにお願いするわけでございます。
  201. 松沢俊昭

    ○松沢委員 しかし、見よう見方のもので、大臣はそういうふうにお考えになっているけれども、私は、例えばこの金融三法の問題にしましても、農林省は今ごろこんなものをどうしても出さなければならないというわけでもないのだけれども、要するに余り財界の方でぎゃあぎゃあ言っておるものだから、肩透かし食わせなければならないとやむを得ず出したのだ、こういうような気持ちの方が強いのではないかと思っているわけでございますが、しかし、これはここでそれ以上議論してもしようがございませんからやめます。  それで、最近、固定負債が大変大きな問題になっておりますが、金を貸す場合、借りる人がちゃんと計画を立てて、そしてこの金を借りていけばこの先こういう結果が出て、生産が発展して経営がよくなって暮らしがよくなるという借り方、またそういうものに貸すというのがいわゆる貸し借りだと私は思います。ところが、そういうつもりで借りたはずなのが計画どおりにいかなかったということで、負債がだんだんと固定化されてくる、こういうことになるとするならば、その原因は一体どこにあると農林省の方ではお考えになっているのか、お伺い申し上げます。
  202. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 負債の問題でございますけれども、今お話がございましたように、特に制度金融につきましては事前に事業計画をお出しいただきまして、作目なり事業に必要な投資額というのがそれに見合う収益を生み出すかどうかというようなことを含めて審査をいたしまして、それから貸し付ける、そしてまた事後指導もきちんとやるというのが一番望ましいわけでございまして、そういうことを私どももたび重ねて指導いたしておるわけでございます。  事志と違って計画どおりにいかなかったという場合に一体どこに責任があるのかということでございますが、これはやはりケース・バイ・ケース判断をしなければいけない問題ではないかと思っております。事業計画の立て方そのものが甘かった場合もございましょうし、それからまた、農産物の場合には要するに資材の価格と生産物の価格の動向ということによって収益性がかなり支配をされますので、事業計画で予定をしておりました投資なり収益の見通しというものは価格の大きな変動というようなものを通常見込んでおりませんから、事業に着手した途端に、例えば石油ショックなどのようなときに資材が非常に上がるとか、また逆に生産物の価格がいろいろな需給事情関係から低下をする、そういうものの挟み打ちに遭ったというような場合もあろうかと思います。  ケース・バイ・ケースということでそれは判断しなければいけませんが、そういった価格動向というようなことにつきましては、我が国の市場全体で一つの価格の動きが起きるわけでございまして、そういった外部の条件によって発生しましたようなものにつきましては、いろいろ、自創資金もございますし、それからまた畜産関係の酪農なり肉用牛の負債整理対策というようなもので対応しておるわけでございます。  一番判定が難しい点は、農家は経営と家計というのが一緒でございますので、どこまでが農業経営上で、しかもいわば外部条件によってそういうふうになったのか、あるいは生活資金の面がむしろ主になってそういう固定化負債が生じたのか、その辺の判定はケース・バイ・ケースでもなかなか難しい場合が出てこようかと思っております。
  203. 松沢俊昭

    ○松沢委員 今、局長が御答弁されたように、やはり農業資材が安定していなければならぬと思いますし、畜産なんかの場合におきましてはえさ価格という問題も大変大きな問題であろうと思います。その他価格問題、これもそうだと思います。それから、土地の価格なんかの問題も耕種部門等におきましてはやはり大きな問題なんじゃないだろうか。そういうものが安定しないと、せっかく計画を立てても計画どおりに進まない、それが結果として思わぬところで負債の固定化というものにつながってきた、こういうぐあいに私は判断しておるのです。  価格の問題につきましては、西ドイツの農業関係皆さんがおいでになりまして、日本の農業関係法律を教えてくれ、こういう話なんです。法律はたくさんあると思うのですが、とにかく目的だけ、かかっているものを出してくれればいいんだと。そこで目的だけのものを出しましたところ、こんなに手厚く保護されていれば日本の農業は言うことなしですね、こういう話なんですが、どうですかね。その目的どおりに、法律どおりに日本の政府は今までやってきたのかどうかということになりますと、ちっともやってきていなかったわけですよ。  例えば、私、米価などもやっていますけれども、米価にいたしましても、去年初めて二・二%上がったのです。だけれどもずっと据え置きが続いてきているわけなんでしょう。あの法律からすると、生産費及び所得を補償するために、再生産を確保するために価格を決める、こうなっているんだけれども、確保するようには決まってこなかったのです。  何でもそのとおりで、保証価格なんかにいたしましても、ことしは牛乳の場合においては前年と同じわけなんでございまして、生産費及び所得補償方式によって価格というものを考えてもらいたいということ。これは米だけではなしに、牛乳にいたしましても畜産にいたしましても、あらゆるものについて農業団体、農民団体は主張しているわけなんです。しかし、それに対するところの政府の対応ができていなかった。そのために、計画を立てても計画どおりいかないわけなんです。だから、今ここに負債の問題が大きくなってきたということは、そういう価格政策に重大な責任があるんじゃないか。  一方、資材の面はどうであるか。まあ名前は言えませんけれども、今、日本の何人メーカーというところの農機具資本を見ますと、これは何の苦もないですね。戦後小さい会社であったわけですよ。それが今は大変大きな会社になっているわけであります。  農機具会社は大きくなったけれども、農家は兼業化されてしまいました。専業農家なんというのはほとんどいませんし、いるとするならば畜産関係だとか果樹だとか、そういうところにいるということです。だけれども、それも、畜産は今度三倍にしなければならぬとか果樹は二倍にしなければならぬとか、昭和三十六年の農業基本法のときに農林省は太鼓たたきながら、笛吹きながら農民をあおり立てたわけなんです。それで日本の農業というものはめちゃめちゃにされてしまったのですよ。だから、複合経営であったのがばらばらにされてしまって、そして、とにかく規模さえ拡大すればいいということで、政策単品生産化という方向を選んできたわけなんです。だから豚は豚団地、鶏は鶏団地、野菜は野菜団地というふうになってきたのですよ。  こういうふうにばらばらにするということは、農業の正常な発展にはつながらないわけなんです。そういうことが結果としては、畜産をやれ、果樹をやれという政府の言うとおりに動いた人たちは、計画どおりにいかなくて、そして固定負債に首が回らないというような状態になっている、こういうことになるのじゃないですか。  ですから、そういう点から申しますならば、まさに農業構造政策というものを根本的に見直して、そしてその上に立って金融対策というものを立てるべきなんじゃないか、私はそう思います。それをやらないでこのままやっていっても、特殊な農家は生き延びるかもしれませんけれども一般の総体的な農家とかあるいはまた山だとか海に働いているところの人たちというのは決して生き延びられないということになるんじゃないかと思うのです。そういう点は一体どうお考えになっていますか。
  204. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 非常に難しい問題でございまして、従来からの農政の基本なり現在抱えておりますいろいろな問題に深くかかわっている御指摘なわけでございます。  基本法農政、その後いろいろな変遷をいたしまして、少しでも日本農業を発展させるということで我々なりにいろいろな苦労の積み重ねをしてきているわけでございますけれども、最近のいろいろな社会情勢なり経済情勢の動き、その中で我々が意図してきました効果というものが十二分に発揮できてないという点は御指摘のとおりでございます。  そういう中で、先ほど来大臣からもお答えしておりますように、一億数千万人の国民に食糧を安定的に供給するということからいいまして、何とか足腰の強い農業経営というものをつくりたい。その場合には画一的に一つの方向ではなかなかまいりませんで、経営によっては、あるいは場所によっては規模拡大という道もございましょうし、それから、ただいま先生から御指摘がありました単品、単営化の矛盾というものも地域的に出てき、あるいは経営の面なり地方の面という点でも出てきておりますので、ここのところは、単に個別の経営じゃなくて集団なりあるいは地域、そういう全体の広がりでの経営の安定なり取り組みということが兼業農家も含めまして必要になってくるということで、従来の路線以上に地域的な広がりを持っての複合化なり組織化、そういうことを通じまして一歩一歩前進したいと考えているわけでございます。
  205. 松沢俊昭

    ○松沢委員 こういう基本的な問題をやっていると切りがございませんで、金融三法の問題、それぞれの先生方が者やってまいられましたから、もうやるところはないようでございますけれども一つ一つ聞いていきたいと思います。  金融ということになりますと、私たちは一番ぴんとくるのは公庫の三分五厘資金、これは皆欲しがっているのですね。それから近代化資金の五・五%資金、今まで六%でしたね、そういう金は、農機具などを買う場合、借りるわけです。その点では農民も非常に喜んでそういうものを使わせてもらってきた、これは言えるわけです。これは農民だけではありませんで、漁家の皆さんも、三分五厘資金なんというのは林業もそれなりに助けられた。非常に感謝していると思うのです。  ところが、今回の法律改正によりまして、三分五厘資金というものを一部、一〇%程度ということを言っておられるのですけれども、五分資金にする、こういうお話ですね。それから近代化資金のところでは据置期間金利四・五%というのも今度なくすることになっているわけです。そして、近代化資金の場合においてはかわりに五%にする、こういうことでありまして、いいようになったようで悪いようになったようで、やってみなければちょっと見当がつかぬということでございます。  ただ、言い得ることは、農地の取得なんかの場合におきましては、これはこれでまた農業委員会のあっせんのものを優先させるということになるわけでありまして、そうするとあっせんでないものは高くなるわけでありますし、選別的な傾向、もちろん全体の制度資金というのは一定の目的に沿ったものでなければ貸さないというのが従来のしきたりなのでありますから、それはそれなりにわからぬわけではございませんけれども、今回の改正によって選別融資がより強化されるのじゃないかという懸念があるわけでありますが、この点は一体どうお考えになっていますか。
  206. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 今回の改正におきまして、改良資金におきましては緊急の政策課題を抱える分野におきます生産方式改善資金の創設というようなことをいたしましたが、農蚕園芸局長からも前にも一度御答弁がございましたように、規模とかということに特定の要件を設けないで、意欲及び経営能力というものから見て適当であるというものには貸し付けをしてまいるということでございますし、三分五厘資金の重点化につきましては、構造政策の方向に沿って重点化を図ったということで、確かに政策の要請との整合性を確保することに努めた面はございますけれども、例えば農地取得資金につきまして借入資格者を特にこの際限定するというようなことはいたしておりませんので、選別融資の強化ということには該当しないものと私ども考えております。
  207. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これはこれ以上追ってみてもしようがないと思いますので、選別融資が強化されないように、取り扱い、運用上十分配慮してもらいたいと思います。  それから総合資金。これは「農林漁業金融公庫現状」というのを去年の五月に公庫の方で出しておりますので、これを見ますと、四十三年から融資が始まりまして、五十三年までの間におきまして三万戸を超える融資をやった、こういうことが書かれているわけなんでございますが、これは、自立経営農家育成のために三万戸が借りたわけでありますが、この借りた農家は全部自立経営農家になったのかどうか、その辺、明らかにしていただきたいと思うわけです。
  208. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 総合施設資金は、自立経営に達するということで目標を決めまして、その達成状況が今調べられておるわけでございます。御指摘ございました五十七年度まで三万一千件の借り受け、そのうち個人約三万件でございますが、その融資を受けましてから五年たった後での目標の達成状況を見ますと、農業所得につきましては目標達成率八割以上のものの割合が全体で約六五%となっております。一方、経営規模拡大の方の目標でございますが、この規模拡大目標達成率八割以上のものの割合が約八四%、こういう状況になっております。
  209. 松沢俊昭

    ○松沢委員 八〇%以上の成績を上げたというのが六五%だということになりますと、三五%の人たちはどうなったのですか。
  210. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 この三五%関係の方はまだ目標まで所得が達成しておらないということでございまして、規模の方は今申し上げましたように八五%達成しておられますので、ほとんど大部分の方は規模の方では達成をした。しかし、所得の方では六五%となっておりますことは、規模面では達成したけれども、所得の面で、価格の問題、資材費の問題いろいろございまして、経営の面での所得としてはそこまでいってないという方がその三五%のうちの大部分の方だ、こう考えております。
  211. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私はそれは当然そういう人だと思いますけれども、今いみじくも関谷局長の方から話がありましたように、畜産だとか酪農の分野なんかを見ますと、大体三分の一程度の人たちがなかなか苦しくなって首が回らないという状態になっているということになっているわけですね。ですから、これに大体当たってくるんじゃないか、こう思います。  そこで、自立経営農家という定義なんでありますが、これは六十五年見通しなんかになりますと中核農家という言葉を使うんです。今は自立経営農家と言うんです。自立経営農家というのは何だといって聞きましたところが、いや、自立経営農家というのは他産業の労働者並みの所得のあるところの農家だと言う。極めてあいまいなんですね。だから、他産業の賃金が上がっても米価もその他の農産物が上がらないとなれば、そうすれば規模を大き目に考えないと自立農家にならないということになるわけですね。  自立経営農家なんというあいまいなものはおやめになって、そうして、大体この程度の農家はこういうふうにしてやればこうなるんだ、こういうだれにもわかるような指標をおつくりになったらどうですか。
  212. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 自立経営農家の概念があいまいであるということでございますが、これは農業基本法の中に、かなり学術的と言ってもいいほど厳格な定義がされておるわけでございまして、要約すると先生のおっしゃいましたことになるわけでございますが、簡単に申しますと、正常な構成を有する大体二人程度の労働力があって、それが正常な能率を発揮しながら完全に就業している、その所得が他産業従事者並み、こういうことになるわけでございます。  これは、農業基本法で自立経営農家が定義されました後、この自立経営農家を実現するためにということで農林漁業金融公庫法におきまして総合施設資金が設けられたわけでございまして、その総合施設資金が設けられまして以来、専らこの自立経営になることを目標にする、こういうことでこの資金を運用してまいったわけでございまして、今回はそれを若干育成して自立経営になる程度の経営ということで、自立経営の一歩手前のところまで行くような経営を目指す場合にも融資対象とすることにしたわけでございます。  概念があいまいといえばあいまいなわけでございますが、もとに返ってみますと、農業基本法に規定されましたような所得なり生産性の面で他産業とのいわば均衡を確保する、そういうことが実現された家族経営だ、こういう意味で、こういう政策目標についてはやはりせっかく公庫法に規定され、また農林漁業金融公庫としても大変基幹的な大事な資金として今後も貸し付けをしていく考え方でございますので、この考え方に即しまして運用をしているわけでございます。  ただ、実際の運用に際しましては、これは県知事が具体的に決めておりますけれども、この自立経営の目標となる経営の所得の目標の額、それから経営規模の目標、これは具体的に各県におきまして目標を決めて、それを目標として経営改善をする場合に融資対象にする、こういう運用をいたしております。
  213. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これも答えは要りませんけれども、結局、価格もそのままになっておって、それで賃金が上がったり物価が上がったりしていけば規模を大きくする以外にない、局長の解釈からしますならばこうなると思いますが、それではちょっと農家の立場からすると困るということになるわけです。だから、もう少しだれでもわかるような指標というものをつくってもらいたいということを希望いたしておきます。  それから、これは畜産局長にお伺いしますけれども、五十六年以来、事業団の差益をもとにしまして酪農負債整理資金をつくってやってこられたわけでありますが、ことしで終わりということでございますけれども、しかし、一面、五十六年のとき対象になったところの農家以外の農家がまた同じような状態になりつつあるじゃないか。それを救済するのにこの資金というものは使わせることができないというお話でありますが、では、どういう資金を使わせるようにしてこの対象外農家というものの救済を考えておられるのか、明らかにしてもらいたいと思います。
  214. 野明宏至

    ○野明政府委員 酪農負債整理資金につきましては、五十六年度から六十年度までの五カ年間ということでやってまいりまして、対象農家につきましては逐次経営改善が図られておる。六十年度が最終年度でございますので、六十年度以降につきましても対象農家の経営安定が図られるようにしてまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、それ以外の農家についてでございますが、これは、制度といたしましては、農林漁業金融公庫資金の中に自作農維持資金ということで再建整備資金というのが設けられております。これにつきましても、年によって違うわけでございますが、例えば五十八年度につきましては六百二十九件の貸し付けがございます。したがいまして、この資金も六十年度におきまして特認の場合の貸付限度引き上げあるいは融資枠の確保というふうなことをいたしておるわけでございますが、こういった資金も活用しながら、それぞれの経営についての指導をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  215. 松沢俊昭

    ○松沢委員 とにかく今回の法案で一番重点的に取り上げられているのが酪農、畜産関係だと私は思っております。そうして、酪農は今お話がございましたような方向で行く。しかし、どうにもならぬものをどうするかということにつきましては、この前も大臣に御注文申し上げておきましたように、もう焼きついてしまってどうしようもないというものはそれなりの固定負債の整理というのを新たに考えていかなければならぬのじゃないか、こう思っておりますけれども、しかし、今のような方法で救済のできるものはどんどん救済してもらわなければならないが、畜産の場合はどうお考えになっておりますか。
  216. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  肉用年等の畜産につきましては、五十七年度に肉畜経営改善資金というものを、これは事業団の助成事業で行ったわけでございます。  肉用牛経営につきましても、最近全般的には経営は改善されてまいっておるわけでございますが、先ほど来お話しのありますような、素畜の高いときに素畜を入れた、あるいは借入金に依存する度合いが高かったというふうなことで、借入金の償還が一部できないというふうな経営も見られるような状況にあるわけでございます。これにつきましても、先ほどの自作農維持資金制度におきます再建整備資金によって対応してまいりますとともに、今般の畜産物価格決定に関連いたしまして、こういった肉用牛経常についての負債対策というものについてやはりこの際きちっとした対策をとるべきではないかというふうな御意見がございまして、そういったものを踏まえつつ、肉用牛の経営対策といたしまして六十年度から三カ年計画で肉用牛経営合理化資金というものを創設いたしまして、これによって対策をとってまいりたい。  具体的には、農協等の融資機関がその自助努力によりまして、関係団体と一体となって既に貸し付けております貸付金の条件緩和などの措置をとるというふうなことと相まちまして、利子の軽減助成をやるというふうなことで、また、これを行うに当たりましては、経営、家計全般にわたりまして経営改善計画を立てていただきまして、毎年見直しながら、関係団体にも十分な指導をしてもらいつつ経営改善を進めていくということで、具体的な細部については現在詰めを行っておるということでございます。
  217. 松沢俊昭

    ○松沢委員 畜産関係では、公庫資金には総合施設資金というものに今度一緒になるわけですね。それから、今申されたところの自作農維持資金、それから近代化資金も使われるようになって、償還期間を五年から七年、据え置きが二年から三年というふうにして改善される、それから改良資金、これもまた畜産振興資金が改良資金に統合される、こういうことで、畜産の金というのはさまざまなところから使われることになるわけでありますが、これはどういうふうにして使わせるのか。私自身ちょっと戸惑うわけでありますが、素人にはこれはわかりません。どうなるのですか。
  218. 野明宏至

    ○野明政府委員 お答えいたします。  公庫資金近代化資金それから改良資金制度資金といたしましては大きく分けて三つあるわけでございますが、畜産経営につきまして、規模の拡大を行いつつ設備投資をしていく、あるいは素畜の導入もしていかなければならぬ、さらにまた、草というものが大変大事でございますから、そういった場合の機械、施設あるいはサイロといったようなものも導入していかなければいかぬ、そういうふうなことでございまして、畜産総合対策ということで、一方で補助金による補助政策というものと相まって金融というものが非常に大きなウエートを占めているわけでございます。  そこで、それぞれの酪農経営あるいは畜産経営につきまして、経営を前向きに改善向上させていくという観点から、公庫資金におきましては、まず総合施設資金ということで基本的な資金が用意されておるわけでございます。同時に、農地等取得資金というふうな、草地をふやしていくという観点から、農地取得資金につきましても今般貸付限度額引き上げというものが行われておるわけでございます。  それから、近代化資金につきましては、例えば肉用牛経営なんかの場合には素畜の導入をしなければいけない、また、その育成をしていくに当たってえさ代も必要であるわけでございます。肉用牛の場合には、やはり素畜を買いましてから肥育が終わって出荷されるまでには相当な期間が要るわけでございます。したがいまして、近代化資金におきましては、その素畜の導入費あるいはそれを育成するためのえさ代というものについて、規模の拡大を行ってやっていこうという場合にはそれに必要な資金貸し付ける。  それから、もう一つの改良資金でございますが、これは五十九年度に、補助から融資へということで無利子の形で、例えば肉用牛の場合には草をふやしていくために必要な機械とかあるいは施設それから畜舎、酪農の場合には草関係ということで無利子資金を用意いたしてはございますが、これは経営の中にも相当に規模の大きい経営もあるわけでございますが、他方、努力をしてこれからそういった方向へ向かっていこうという方もたくさんおられるわけでございます。したがいまして、改良資金におきます生産方式改善資金、その中の畜産振興資金につきましては、そういった方々が無利子でこれを借りて酪農経営あるいは畜産経営の改善のために使っていただくということで、これについても今年度融資枠を拡充するというふうなこととともに、制度的にもその位置づけを明確にしていただくということでお願いをいたしておるわけでございます。
  219. 松沢俊昭

    ○松沢委員 とにかく酪農、畜産、この前の参考人のお話を承りますと大変な状態に入っているということであります。しかし一面、貸す方も借りる方も慎重を欠いた面もあった、そういう反省の声もございましたので、今後資金を貸すことによってさらに農家を窮地に追い込むことのないように慎重を期していただきたい、こういうぐあいに要望申し上げておきます。  時間がだんだん迫ってまいりましたので、漁業関係につきまして水産庁長官にお伺い申し上げます。  私は漁業問題というのは素人でございまするけれども、お話によりますと、漁業関連の融資残高というのが五十八年末で三兆八百七十一億円になっているということを聞いておるわけでございます。しかし、この中に占めている制度資金の割合というのが相当ございまして、一兆四百十四億円で三三・七%、こういうふうな状態でありますので、漁業の総生産金額を上回っているわけですね。これは一体どういうことなんだろうか。  これをさらに突き詰めてみますと、信用基金協会の代位弁済累計は三十億七千二百万円、そして収支保険の残高が二十五億五百万円、回収率が一八・五%、一般資金の累計が四百五十六億ちょっと、それで収支保険残高が三百四十億八千万円、回収率が二五・三%、こういう状態であります。  この一般資金の内訳を見ますと、いわゆる油代が五十億五千万円、それから収支保険残高が四十八億三千万円、回収率はたった三・四%、累計の事故率が一七・三%と非常に高くなっております。  このために中央漁業信用基金保証保険収支は、五十八年におきましては収支の差が五十五億二千六百万円の赤字、累計で百十八億九百万円の赤字になっている。五十九年の見込みでは、累計赤字は百七十二億七千三百万円という状態だということなんですね。  ですから、言ってみますならば保険としての役割を果たすことができないという状態、実は破産した状態になっているわけでございますが、こういう状態を金融という面から今後放置しておくわけにまいりませんから、一体どうしたらいいのかということにつきまして、これは大臣にも答えてもらいたいし、長官からも具体的に答えてもらいたい、こう思うわけなんです。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕
  220. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 ただいま先生いろいろ数字を挙げて、漁業者の債務が大変膨大な金額に達しており、かつその中で、代位弁済なりあるいは中央漁業信用基金の保険収支に見られるように、その漁業者が抱えている債務が、その性質上甚だ問題の多い債務になっておるというのは御指摘のとおりであろうと思っております。  これは、何と申しましても、二回にわたるオイルショック、一方で魚価の低迷というようなこともございまして、漁業経営の採算が急激に悪化した中で、倒産を防止するために、そのような急激な漁業環境の変化に対する緩衝材的な意味を持つものといたしまして、燃油資金でございますとか固定化債務の借りかえ資金、主としてそういう金融的手法によってそのような環境の激変に対処してきたということの結果がこういう形になってあらわれているものと認識をいたしております。  本来、このような漁業を取り巻く環境の変化に対しましては、正統的な手法でございます構造的な再編成を通ずる省エネ、省力化という形で対応できるような経営体質に再編をしていくというのが正しい対処の仕方であるというふうに認識をしておりまして、私どももそういう認識のもとで漁業構造の再編整備に取り組んでおるわけでございますが、何しるこのような構造的な再編というのはかなり期間を要するものでございまして、そういう経過期間をどうやってつないでいくかという意味では、先ほど申し上げましたような緩衝装置的役割を果たす金融的手法による対処というのもそれなりに正当化し得るものであるというふうに思っております。したがいまして、根本的解決は、ただいま申し上げましたような構造的再編成によって対処すべきものでありますが、その過渡期的な事態としてこういう事態が起こっておるというふうに認識をしておるわけであります。  そういう中で、ただいま先生信用補完制度について提起されました問題は、私どもとしてもこれを真剣に受けとめておるわけでございます。ただ、このような事態に純粋に保険の理論に沿った対処の仕方をいたしますということになりますと、保証料率なり保険料率なりの大幅なアップということになってしまうわけでございまして、もちろんある程度はそういう方向も追求しておるわけでございますが、一方、漁業者の置かれております窮状を考えますと、政府としてもこれに対して一定のてこ入れをしなければならないと考えまして、五十九年度予算及び五十九年度補正予算、本年度の予算を通じまして、信用補完制度のために相当思い切った財政的なてこ入れをしたところでございます。
  221. 松沢俊昭

    ○松沢委員 長官、てこ入れをやっておられますけれども、それは出資という形ですか。――だから、結局もう回収不能というものもあるわけでしょう。そういうものは、今度は残った連中が返すような方法を考える、こうなりますと、これまた大変なことになると思いますので、結局もう回収不能なのは切り捨ててしまう、そして残された連中が心配のないような状態というものをつくり上げていくという思い切ったことをやらなければならぬじゃないか、こう考えるわけなんでありますが、その点はどうか。時間がありませんから、それが一つ。  それから、もう一つの問題でありますけれども、今までの漁業とやはり世界情勢というのは大分違ってきておりますし、また、漁労の進歩等によりまして反省させられる面というものもあるわけでございます。したがって、やはり長期的な将来展望というものをきちっと明確にして、そして沿岸、沖合、遠洋を問わず抜本的な生産構造の再編成を行うところの政策展開が今日要求されているんじゃないか、漁民にとりましては。今回のこの金融の問題にしましても、一つの政策展開の上に立っての金融のあり方というものが法改正の内容になっていればよかったのではないか、こう私は思っているわけでございます。  でありますから、これからは、残念ながら今回の法改正にはそういう問題がありませんが、政府は将来展望を明らかにして、そして漁業に内在しているところの基本問題解決のために真剣に取り組むという決意をひとつ聞かせてもらいたい。これは大臣からお聞かせ願って、そして長官の方から具体的にお答えをいただきたい、かように思うわけなんであります。
  222. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 御指摘のまず前段の方の問題でございますが、確かに回収不能な固定化債務に立ち至っているような漁業者がおられるために、いろいろ仲間内のほかの漁業者皆さんにはた迷惑な事態が及ぶ、それをどうするかという問題でございますが、これは私ども残念ながら徳政令というわけにはまいりませんので、債務は債務としてあるわけでございますが、先生指摘のような事態の中で一番ポピュラーなケースは、そのために当該漁協経営不振に陥って、その漁協組合員皆さんに全体として迷惑が及ぶ、そういうことを念頭に置きまして、私どもとしては本年度から不振漁協対策に取り組んでおるわけでございまして、そういう漁協が抱えております固定化債権につきまして、それ見合いの金額について利子補給つきの資金融通するということによりまして、そういう固定化債権の発生による漁協の不振が他の組合員皆さんに累が及ぶという事態を回避するということを考えておるわけでございます。  それから、後段のお話につきましては、確かに先生の御指摘は大変ごもっともな論点であるというふうに拝聴いたしたわけでありますが、私ども長期ビジョンを考える場合に一番困っております点を率直に申し上げてお答えにかえさせていただきたいと思うのでございますが、要するに、外国の二百海里の中の漁業について一体我々はどういう長期ビジョンを持ち得るかということでございます。  例えば、一例でございますが、現在の鯨の問題でもしアメリカの行政府が敗訴いたしますと、日本はアメリカの二百海里水域から漁獲割り当てを剥奪されるわけでございます。したがいまして、外国の二百海里水域の中の漁業まで含めて長期展望を考えるということになりますと、全く私どもの責任の負いかねる、アメリカの裁判官の判断によってひっくり返るというふうなことがございます。  そういう中で長期ビジョンを立てようとすれば、外国の二百海里の中での操業を一切放棄するということで、我が国の主権下の漁業に限って長期ビジョンを立てるという考え方があるわけでございますが、一方、外国の二百海里水域の中で操業しておられる漁業者の利益を最後まで断固擁護せよという御要請も非常に強いわけでございますので、我が国の主権下の水域に限って長期ビジョンを立てるというアプローチをとることについてもなかなか御賛同をいただきがたい、そういう事情で煩悶をしているということでお答えにかえさせていただきたいと思います。
  223. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生にお答えします。  今、長官が答えたとおりでございますが、先ほどからお聞きしていまして、負債総額が三兆一千億弱、たしか千二百万トンの水揚げが二兆九千億だと思うのです。これじゃどうかなという気がしておるわけで、実は今長官もちょっと触れましたけれども、一遍実態を見直しまして、そして本当にまじめに漁業をやる人については一遍見直してみたい。そういう形の中でないと、日本の食糧政策上、たしかたんぱく資源は肉が半分、魚が半分ですが、それをどう確保するかという重大な問題がございますし、一遍見直してみたい、こう思っております。
  224. 松沢俊昭

    ○松沢委員 今回のこの三法の問題でやはり一番大きな問題というのは、さっきの酪農それから畜産、今申し上げました水産、これが大きな問題になっていると思います。今、長官の方からも大臣の方からもお答えがございまして、大変前向きな御答弁を本当にありがとうございました。何といたしましても、日本型食生活と言われますけれども、やはり米とみそ汁と魚というものは日本食につきものなんでありますから、それが今こういう惨たんたる状態になっているということを十分御理解を賜りまして、今長官がお話をされましたように、日本だけでなかなか解決しがたい問題というのもあるわけでございまして、難しいことは難しいことでございますけれども、やはり基本政策というものを明確にして、漁家の皆さんに明るい展望を与えるようにお願いを申し上げます。  最後に、いよいよ金融の自由化の時代が来るわけでございます。これは農業あるいは漁業、林業という農水関係の問題だけは別だということにはならぬと思いますので、この利子が大変安過ぎれば結局高い方へ預金をする、また、そうかといって貸す方としてはやはりなるべくサービスをよくして貸すということになりますから、ある面からいたしますと金利が下がる場合もある、この見通しをつけるにはなかなか困難な状況だと思います。しかし、してからあたふたするということのないように、これはやはりそれなりにきちっとした基本的な対応のできる方針というものを明確に確立しておいてもらいたい、かように考えますが、この点、経済局長、大臣、どちらでも結構でございます。
  225. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 昨年の六月に、系統組織におきまして農林中央金庫と全国信連協会が「金融の自由化、機械化の進展と系統信用事業の課題」というようなものを取りまとめまして、経営基盤の確立でありますとか振替決済業務を中心とした事業運営の転換、あるいは安定収益基盤の確立、金融業務機能の変化に対応できるような事業運営体制の整備といった四本柱で自由化に対応できる体制づくりに努めているところでございますが、さらに、本年十月に農協全国大会も予定をされておりまして、系統の中でもいろいろこの問題についての検討が進められる。私どもといたしましても、系統と一体になりましてこの事態を乗り切れるように十分検討してまいりたいと思います。
  226. 松沢俊昭

    ○松沢委員 以上で終わります。
  227. 今井勇

    今井委員長 これにて各案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  228. 今井勇

    今井委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  この際、本案に対し、玉沢徳一郎君から修正案が提出されております。  修正案について、提出者から趣旨の説明を求めます。玉沢徳一郎君。     ―――――――――――――  農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置時別会計法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  229. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付いたしましたとおりであります。  その内容は、原案において、この法律の施行期日が「昭和六十年四月一日」となっているのを「公布の日」に改めるものであります。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  230. 今井勇

    今井委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  231. 今井勇

    今井委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、玉沢徳一郎提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  232. 今井勇

    今井委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  233. 今井勇

    今井委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  234. 今井勇

    今井委員長 次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中林佳子君。
  235. 中林佳子

    ○中林委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。  改正項目の中には、総合施設資金の拡充とか、林業経営改善資金、新規用途資金貸付対象の拡大など、今日の農林漁業実態に即した幾つかの改善も見られますが、貸付金利引き上げという農林漁業金融制度にとって原則的な後退を意味する措置が盛られており、到底賛成することはできません。  政府は、今回の三・五%資金の一部五%への引き上げについて、構造政策の方向に即して重点化を図ったものであり、影響は約一割にすぎないと説明しています。しかし、そうした論理が許されるのなら、政府の腹一つで今後その基準をさらに厳しくし、三・五%資金の適用範囲を一層縮小することが制度上可能になります。その意味で今回の改正は、金利引き上げの突破口と見ざるを得ません。  そもそも今回の法改正は、「利子補給金の抑制の見地から、」「貸出利率を含む貸付条件の見直し」を指摘した臨調答申を発端としており、まず金利引き上げがあって、構造政策に即した重点化など、後で取ってつけた理屈にすぎません。  農林漁業制度金融は、自然の生産力に依拠せざるを得ず、零細経営がほとんどという農林水産業を対象としていることから、低金利体系は当然であり、いわば生命であります。これを農業振興や経営安定とは無縁の、専ら財政支出削減を優先させる立場から金利引き上げに道を開くことは、制度そのものの自殺行為であり、農林漁業金融公庫法の目的にも反するものです。  今、農林漁業制度金融に何よりも求められているのは、参考人質疑などでも明らかなように、抜本的な負債整理対策であり、長期低利の融資制度の拡充、規模拡大を機械的に押しつける選別政策の転換などです。そして、制度金融が、借金の増加ということではなく、農林漁業経営の安定向上に真に結びつくためには、農林漁業を国の基幹産業と位置づけ、生産対策や価格対策の抜本的な充実が何よりも重要であることを強く主張するものです。  その点を指摘して、私の反対討論を終わります。
  236. 今井勇

    今井委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  237. 今井勇

    今井委員長 これより採決に入ります。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  238. 今井勇

    今井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  239. 今井勇

    今井委員長 次に、農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  240. 今井勇

    今井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  241. 今井勇

    今井委員長 この際、ただいま議決いたしました三法律案に対し、衛藤征士郎君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。松沢俊昭君。
  242. 松沢俊昭

    ○松沢委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同を代表して、農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     「農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案」「農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案」「農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案」に対する附帯決議(案)  最近における農林漁業をめぐる厳しい諸情勢の下で、農林漁業施策の充実、経営の改善が強く求められている中にあって農林漁業金融制度の果たす役割はますます重要となっている。  農林漁業金融制度については、系統資金農林漁業金融公庫資金近代化資金等のそれぞれのもつ特徴を生かし、農林漁業者資金需要に応えてその政策課題に充分対処するため、長期、低利の資金の確保、固定化負債解消など改善充実が要請されているところである。  よって政府は、左記事項の実現に努め、農林漁業金融制度の一層効果的な運用を確保し、制鹿本来の使命が果たせるよう万全の措置を講ずべきである。     記  一、金融の自由化等の急速な進展に対処するため、系統組織・機能のあり方について、本来の役割を踏まえ、幅広く検討を行うとともに、系統信用事業基盤の整備強化、系統信用事業の効率化の指導に努めること。  二、農林漁業金融について、系統金融近代化資金農林漁業金融公庫資金等がそれぞれの役割を分担しつつ、機能が十分発揮されるよう分野調整に努めること。  三、系統資金を農林漁業内部で有効に活用するため、貸付けの適正化に配慮しつつ組合員の事業、生活面の資金需要に積極的に対応するとともに、農林漁業をめぐる諸情勢の変化に応じ、制度資金融資条件の緩和、融資対象の拡大、資金枠の確保等に努め、また運用面での配慮を行うこと。  四、制度資金貸付対象者の範囲については、経営改善に意欲的に取組もうとする農林漁業者が幅広く活用できるよう適切な運用を行うこと。  五、農林水産施策の推進に必要な三・五%資金については、これを維持し必要な予算の確保に努めるとともに、今後の諸情勢の推移を踏まえ貸付条件の改善等の検討を行うこと。  六、総合施設資金については、本資金農業近代化資金及び運転資金との総合資金制度である趣旨に沿い、調和のある運用が図られるよう積極的な指導を行うこと。  七、制度資金等の貸付けに当たっては、適正な運用に努め、融資後においても資金融資の所期の目的が達成されるよう改良普及員、農協営農指導員等の組織を活用し、経営指導の徹底に万全を期すること。  八、制度資金の貸付手続については、農林漁業者の理解を得やすくするためなお一層の簡素化に努めるとともに、農林漁業者資金需要に早期に対応すること。  九、農林漁業者経営上から生じた負債実態把握に努めるとともに、固定化負債を含め負債整理のための金融制度のあり方について十分検討を行い、経営の安定を期す見地から所要の措置を講ずること。  十、融資の円滑化を図るため、融資保証、保険制度の適正な運営と所要の改善に努めること。   右決議する。 以上でありますが、決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  243. 今井勇

    今井委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  衛藤征士郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  244. 今井勇

    今井委員長 起立総員。よって、三法律案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤農林水産大臣
  245. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  246. 今井勇

    今井委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 今井勇

    今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  248. 今井勇

    今井委員長 次に、内閣提出参議院送付果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、参議院で修正議決の上送付されたものでありますので、政府から趣旨の説明を聴取し、引き続き、参議院における修正の趣旨について説明を聴取いたします。まず、佐藤農林水産大臣。     ―――――――――――――  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  249. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  果樹農業振興特別措置法は、昭和三十六年に、当時の果実需要の大幅な増大が見込まれるという情勢のもとで、果実生産の安定的な拡大を図ることを目的として制定されたものであります。  しかしながら、近年の果樹農業をめぐる諸情勢は、現行法制定当時とは大きく変化しております。  すなわち、我が国の果実需要は、総じて減少、停滞傾向にあるとともに、少量多品目化、良質志向の傾向が強まっており、温州ミカンを初めとして多くの果実が生産過剰基調に陥っております。  また、諸外国からは、果実及び果実加工品の輸入拡大の要請が強まっております。  以上のような果樹農業をめぐる情勢の変化を踏まえて、果樹農業の健全な発展を図るため、現行制度を整備強化することとし、この法律案提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、果樹農業振興基本方針及び果樹農業振興計画につきましては、果実の需要の動向に即応した果樹農業の誘導を一層適切に行うため、栽培面積の目標を定めることとする等その内容を整備することとしております。  第二に、果樹園経営計面制度の改善についてであります。  現在の厳しい状況のもとにおいて、我が因果樹農業の体質の一層の強化が求められておりますが、このためには、果樹産地の中核的担い手となり得る自立的な果樹農家を育成することが必要となっております。  このため、果樹園経営計画の作成主体を農業者集団から個別の果樹農業者に改め、その計画について都道府県知事の認定を受けた場合には、農林漁業金融公庫資金等の融通を受けることができることとしております。  第三に、果実の生産及び出荷の安定を図るための措置についてであります。  近年、多くの果実が生産過剰基調にあり、果樹農業の健全な発展を図るためには、果実の生産及び出荷の安定を図ることが必要となっております。  このため、農林水産大臣は、需給が著しく均衡を失している特定の果実について、その生産及び出荷の安定を図るための指針を定めることとしております。  また、農林水産大臣は、果実の生産及び出荷の安定に関する業務を全国的に行う民法法人を一を限って指定し、業務の適正かつ確実な実施を確保するため、所要の監督を行うこととしております。  さらに、農林水産大臣または都道府県知事は、特定の果実の生産者、出荷者等が、その指定された法人等の業務の円滑な実施に著しく支障を及ぼしていると認めるときは、所要の勧告を行うことができることとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  250. 今井勇

    今井委員長 次に、参議院農林水産委員長代理者理事谷川寛三君。     ―――――――――――――  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案の参議院修正     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  251. 谷川寛三

    ○谷川参議院議員 果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案に対する参議院における修正について御説明申し上げます。  その内容は、近年、果実あるいは果実製品の輸入が増加しており、今後もその傾向が強まると考えられているところから、本改正案によって特定果実または特定果実に係る果実製品に関する諸措置が講じられている場合でありましても、外国産の果実または果実製品の輸入によって、その措置効果を発揮することができない事態も予測されますので、このような場合には、当該外国産の果実または果実製品の輸入に関して必要な措置を講ずるなど、事態の克服のために相当と認められる措置を講じ、本改正案の目的である果樹農業の健全な発展に資することとしようというものであります。  なお、この修正は、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、二院クラブ・革新共闘の共同提案によるものであります。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  252. 今井勇

    今井委員長 引き続き、大臣の趣旨説明に補足して説明を求めます。関谷農蚕園芸局長
  253. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提案いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下その内容を若干補足させていただきます。  第一に、果樹農業振興基本方針及び果樹農業振興計画の内容の整備についてであります。  農林水産大臣が定める果樹農業振興基本方針におきましては、果実の需要の動向を踏まえて果樹農業を適切な方向へ誘導するため、新たに果樹農業の振興に関する基本的な事項を定めることとするとともに、現行の生産の拡大に着目した植栽の目標にかえて。栽培面積の目標を定めることとし、果実の生産総量を適切に誘導していくこととしております。  また、都道府県知事が定める果樹農業振興計画におきましても、果樹農業振興基本方針に準じた改正を行うこととしております。  第二に、果樹園経営計画制度の改善についてであります。  現行の果樹園経営計画制度は、共同して果樹の栽培を行おうとする農業者集団が作成することとなっておりますが、果実生産の拡大等の所期の目的を達成したため、都道府県知事に対する計画の認定請求も昭和五十一年三月三十一日をもって終了しております。  この計画制度につきまして、果樹産地の中核的担い手の育成を図る観点から改善を図ることとし、計画の作成主体を個別果樹農業者に改めるとともに、都道府県知事に対する認定請求期限を廃止することとしております。  なお、果樹農業振興計画の内容等に照らし適当である旨の都道府県知事の認定を受けた場合には、農林漁業金融公庫等から計画を実施するために必要な資金融通を受けることができることとしております。  第三に、果実の生産及び出荷の安定を図るための措置についてであります。  農林水産大臣は、需給が著しく均衡を失し、その状態を改善するために相当の期間を必要とすると見込まれる特定の果実について、需要及び生産の動向から見て特に必要な年に、当該果実の生産及び出荷の安定を図るための指針を定めることとしております。  また、農林水産大臣は、特定果実の安定的な生産及び出荷の促進並びにその果実製品の保管に関する事業を行うことその他の果実の生産及び出荷の安定に関する業務を適正かつ確実に実施できると認められる民法法人を、その申請により、全国に一を限り、指定することができることとしております。  この場合、農林水産大臣は、その指定を受けた法人の業務が適正かつ確実に実施されることを確保するため、その指定を受けた法人に対し、業務実施規程及び事業計画の承認、業務の改善命令等必要な行政上の監督を行うことができることとしております。  さらに、農林水産大臣または都道府県知事は、特定果実についての指針が公表されている場合において、当該果実の生産者、出荷者等による生産または出荷が、農林水産大臣の指定を受けた法人等の行う業務の円滑な実施に著しく支障を及ぼしていると認めるときは、その生産者、出荷者等に対し、その業務の実施に協力するよう必要な勧告をすることができることとしております。  このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上をもちまして、果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  254. 今井勇

    今井委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。      ――――◇―――――
  255. 今井勇

    今井委員長 次に、内閣提出農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。佐藤農林水産大臣。     ―――――――――――――  農業災害補償法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  256. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 農業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農業災害補償制度につきましては、制度創設以来既に四十年近くの歳月を経過しておりますが、その間に、この制度が災害対策として農業経営の安定のために多大の寄与をしてまいったことは御承知のとおりであります。  しかしながら、近年、農業事情及び農家の保険需要が変化してきており、これに即応した制度の改善が求められるとともに、厳しい財政事情のもとで制度の一層の合理化を図ることが必要となっております。このような状況にかんがみ、政府におきましては、補償内容の充実と制度の合理化を図ることを旨として農業災害補償制度改正を行うこととし、この法律案提出した次第であります。  次に、法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、共済掛金率の設定方式の改善であります。  現行制度における共済掛金率は、共済目的の種類、農業共済組合等の区域等ごとに原則として一律に定められておりますが、近年における被害の発生態様にかんがみ、農業共済組合等が農家を共済事故の発生状況等により区分して共済掛金率を設定できるようにすることといたしております。  第二に、農作物共済の共済掛金国庫負担方式の合理化であります。  現在の農作物共済の共済掛金に対する国庫負担は、高被害地域が他の地域に比べ著しく高率であり、しかもその水準は、他の公的保険におけるそれと比べ高率となっておりますが、最近における農業事情等を考慮いたしまして、このような国庫負担方式の合理化を図ることといたしております。  第三に、家畜共済の改善であります。  現行の家畜共済は、出生後第六月以降の牛を共済目的としておりますが、肉牛の生産振興の重要性等にかんがみ、農業共済組合等が肉牛の子牛及び胎児を家畜共済の共済目的に加えることができることといたしております。  第四に、果樹共済の改善であります。  最近における農家の保険需要の実情等にかんがみ、加入の促進を図るため、収穫共済について、共済事故のうち一部を除外しているいわゆる特定危険方式の補償水準の上限を引き上げ、補てん内容を充実するとともに、収穫共済の共済責任期間を短縮できる制度を設けることといたしております。  第五に、園芸施設共済の改善であります。  近年における施設園芸経営実態等にかんがみ、農家の選択により、病虫害を共済事故としないことができる制度を導入することといたしております。  以上がこの法律案提出する理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願申し上げます。
  257. 今井勇

    今井委員長 補足説明を聴取いたします。後藤経済局長
  258. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 農業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案提出いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下その内容について若干補足させていただきます。  第一に、共済掛金率の設定方式の改善についてであります。  近年における被害の発生態様を見ますと、農家間における技術格差等により被害の発生に著しい差異が認められる地域がありますので、今回、農家を共済事故の発生状況等により危険段階別に区分して共済掛金率を設定する方式を導入することといたしております。この危険段階別の共済掛金率の設定方式は、農業共済組合等が実態に応じて実施できることといたしております。  第二に、農作物共済の共済掛金国庫負担方式の合理化についてであります。  現行の農作物共済の共済掛金の国庫負担は、いわゆる超過累進方式をとっており、下限を五〇%とし、上限を水稲については七〇%、陸稲及び麦については八〇%とし、その範囲内で共済掛金率が高くなるほど国庫負担率が高くなる方式となっておりますが、今回、この上限をそれぞれ一〇%ずつ引き下げる等の措置を講ずることといたしております。この結果、例えば水稲の場合では、共済掛金率が四%を超える部分の国庫負担率は現行の百分の七十が百分の六十となり、これに応じて国庫負担率の累進の程度は、現行のそれと比較して緩やかなものとなるのであります。  第三に、家畜共済の改善についてであります。  現行の家畜共済は、出生後第六月以降の牛を共済目的としておりますが、食肉資源に占める肉牛の重要性、肉牛の子牛の死亡が繁殖農家に与える影響の大きさ等にかんがみ、今回、農業共済組合等が肉牛の子牛及び一定の生育の程度に達した胎児を家畜共済の共済目的に加えることができることといたしております。この場合において、肉牛の子牛及び胎児については、他の牛と一体として共済関係が成立することといたしております。  第四に、果樹共済の改善についてであります。  その一は、補償水準の引き上げであります。現在、収穫共済の共済金額は、標準収穫金額の七割を限度としておりますが、共済事故のうち一部を除外しているいわゆる特定危険方式については、この限度を八割まで引き上げることとしております。  その二は、収穫共済の共済責任期間の特例の新設であります。現行の収穫共済の共済責任期間は花芽の形成期から果実の収穫までの一年半ないし二年の期間となっておりますが、被害の発生態様等から適当な場合には、これを短縮した期間を共済責任期間とすることができることといたしております。  第五に、園芸施設共済の改善についてであります。  現行の園芸施設共済は、気象上の原因による災害、火災、病虫害等のすべての災害を共済事故とし、加入者が共済事故を選択することは認めないこととなっておりますが、近年における施設園芸経営実態、農家の保険需要の実情等にかんがみ、施設園芸の経営条件が一定基準に適合する農家につきましては、病虫害を共済事故から除外することができることとし、これにより農家の掛金負担の軽減と加入の促進を図ることといたしております。  以上をもちまして、農業災害補償法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  259. 今井勇

    今井委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会      ――――◇―――――