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1985-03-27 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月二十七日(水曜日)     午前十時十五分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 田名部匡省君    理事 玉沢徳一郎君 理事 小川 国彦君    理事 田中 恒利君 理事 武田 一夫君    理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       保利 耕輔君    松田 九郎君       山崎平八郎君    若林 正俊君       上西 和郎君    島田 琢郎君       新村 源雄君    細谷 昭雄君       松沢 俊昭君    駒谷  明君       斎藤  実君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    津川 武一君       中川利三郎君    中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省農蚕         園芸局次長   畑中 孝晴君         農林水産省食品         流通局長    塚田  実君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      竹内 克伸君         大蔵省銀行局特         別金融課長   藤原 和人君         農林水産大臣官         房審議官    瓜生  瑛君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十七日  辞任         補欠選任   中林 佳子君     中川利三郎君 同日  辞任         補欠選任   中川利三郎君     中林 佳子君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  参考人出頭要求に関する件  農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置時  別会計法の一部を改正する法律案内閣提出第  三九号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四五号)  農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成  法の一部を改正する法律案内閣提出第四七号  )      ――――◇―――――
  2. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のためおくれますので、その指名により、私が委員長の職務を行います。  内閣提出農業改良資金助成法及び自作農創設特別措置特別会計法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  3. 島田琢郎

    島田委員 私は十時から質問に立つべく、ここに十時前から参りました。十五分もおくれたのでありますが、私は実は、今委員長から発言指名がありましたが、結果いかんによっては、態度いかんによっては質問を保留するという立場に立ちたいと思うのです。というのは、たまたま大蔵委員会補助金一括法案が、我が党を初め野党反対にもかかわらず自民党の強行でこれが提案されました。そういう中でこの審議を濃密かつ慎重に行うためには、我が農林水産関係も多数の関係法案を抱えているという実態にかんがみ、連合審査の申し入れをしたいという提案をけさの理事会でいたしましたところ、自民党側からそれについて難色が示された。私は甚だどうも……(「けしからぬ」と呼ぶ者あり)けしからぬという前に理解がいかぬのであります。  なぜなら、早くこの一括法案を上げてくれという姿勢が今まであって、強行して野党反対にもかかわらず国会に提出されてきたといういわくつきのものである。なぜ連合審査にも応じないという姿勢に立っているのか。つまり、結論を言うならば、この一括法案はなるべく今国会では上げてほしくないという気持ちがあるのかしら、こういうふうに考えるから私はどうも疑問に思える、こういうことであります。  この十五分の間、そういう問題で理事会が延びましたけれども、最終的には午前中審議に応じようという我が党の大変思いやりで開かれるに至りましたが、質問者の私は納得しておらぬのであります。この点について、どうも責任ある回答が必要であるというふうに私は今考えて、あえてこの発言をしているのでありますが、委員長がたまたまおくれて来られるということでありますが、玉沢部会長が今委員長代行としてそこに座っていらっしゃるので、あなたがこれに責任を持ってお答えできるかどうかというのが私がこれから質問できるかどうかにかかっているのでありますが、いかがですか。
  4. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長代理 この点に関しましては、現在、十分誠意を持って調整をいたしておるわけでございますので、委員会開会をお願いをいたしたところでございます。
  5. 島田琢郎

    島田委員 理事会でも話になっておりましたけれども、しかし何も農林水産委員会だけの要求ではなくて、既に関係委員会から、大蔵を除きますと七委員会から連合審査提案がなされ、そのうち数委員会は既に委員会の議決を経て連合審査が決まっているのであります。あと大蔵委員会がそれを受け入れるという態勢になっているわけであります。ですから、ここだけが特別という扱いにはならぬと私は思うのです。その点についてはいかがですか。
  6. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長代理 これは理事会等で十分検討していただきまして、しかるべく処置をとるようにいたしたいと思います。
  7. 島田琢郎

    島田委員 こういう発言を私にさせないように今後ひとつきちんとしていただきたい。理事からもおまえ、やれという話でありますから、私はやりますけれども、これはいかぬですよ、こういうやり方というのは私はおかしいと思う。しかし時間は五分延びちゃったから、その分、五分余計にもらわないとあと質問ができない。そして、これはにこにこ笑った話で終わるというのは遺憾でありまして、本当に緊張していただきたいと私は思います。  そこで、質問に入ります前に、佐藤守良農林大臣、あなたにあなたの政治姿勢、とりわけ中曽根内閣閣僚一員として私はあなたを大変信頼しながら、そしてまた農林大臣として、大変大事な閣僚一員として責任を持って農政をお進めになっているという立場で、私はあなたを信頼しながら今までも質問をしてまいりました。これからもそうありたいと思うのです。しかし、一連のあなたの御発言、行動をめぐって、どうも私のあなたに対する信頼がいささか揺らぎ始めております。  それを一つの例で申し上げていきたいと思います。大変問題になっております木材製品の、とりわけ合板関税率の問題でございます。  私はことしの二月二十日に実はこの問題を取り上げました。ちょっとその議事録のくだりを読んでみたいと思います。私のこの関税引き下げ問題の指摘に対しまして、大臣はこうお答えになっております。「一月の日米中曽根レーガン会談でもこの問題は出たようでございます。ただ、木材関係に関しましては大変ありがたいことに、与野党皆さん方の御理解を十分得ております。また、実は政府部内におきましては、中曽根総理河本長官安倍外務大臣竹下大蔵大臣等主要閣僚全部理解しておりますし、関税引き下げにつきましては十分対抗し得ると考えております。」大変明瞭にお答えになって、私は安心をいたしました。  しかし若干不安が残りましたので、重ねて私はこのように尋ねております。「しつこいようですが、大臣中曽根総理はあなたに、この問題については官僚の言うことを聞かないで、あなたの毅然たる姿勢でやれなどと言ったと、私はちらっと小耳に挟んだのでございますが、そういうことはないのですね。」と聞きました。あなたは次のように答えています。「中曽根総理は私を信頼して閣僚に使ったかと思います。したがって、農林水産大臣佐藤守良でございます。」大変胸を張られました。「若干の意見はありましても、私が納得しないことはしたくないと思っています。」これは前段の答弁を受けてあなたはそのようにお答えになっているのです。私はここで大変安心しました。あなたの政治姿勢に対しても一定信頼を置くにやぶさかでないとそのとき思いました。  しかし、その後不思議なことにあなたのこの姿勢が大きく変わってまいりました。先般は、関税引き下げに対して合意したという新聞報道で、私たちは大変心配なので代表数人があなたとお会いをいたしまして、この点の確認をいたしました。あなたはこのときを前にして、前々日記者会見中曽根総理について触れて御発言をされておるようであります。このとき、あなたの気持ちが大変大きく揺らいでいる、つまり中曽根総理佐藤守良農林大臣との間の信頼関係がかなり揺らいでいるのではないかという印象の新聞記事でございました。果たせるかな、私ども会いましたときにも、信頼している関係が大きく損なわれるかのごとき発言がありました。私どもは本当はびっくり仰天したのであります。しかしまた別の席では、佐藤大臣は、中曽根総理歴代にもまれな名宰相であるという発言も行われました。  このように二転、三転、四転、五転と姿勢が変わる、中曽根内閣の一閣僚として、頂点に立つ総理との関係がそんなふうにジグザグしているということは国民にとって大変不幸なことだ、こう私は思うのです。そしてまた、この木材製品関税率の問題は、あれほどあなたが明確に、体を張っても大臣として責任を持って守るとおっしゃったはずなのに、今になってどうしてこう大きくぐらつくのか、大きく変わったのか、私は今、佐藤守良農林水産大臣信頼できないという点に立っております。  だとすれば、こんな不信感根っこに置いてこれからの大事な我が国農政転換とも思える金融三法の審議に入るということは、私としては極めて不本意であります。あなたの私を納得せしめ得るような、私にもう一度信頼感を与えてくれるような明瞭なる姿勢をこの際お伺いをし、その判断に基づいてこの後の審議を進めるか進めないか、私自身が考えてみたい、こう思うのです。いかがですか。
  8. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 島田先生お答えいたしますが、私が、二月二十日でございますか、先生との質疑で申したことについてはそのとおりでございます。  それから、中曽根総理につきまして若干いろいろなことが伝わっておるかと思いますが、私は、中曽根総理は立派ないい総理だと思っております。また、日本の現在の農林水産業、特に木材関係につきましては非常に理解の深い総理大臣、このように理解しております。  実は、私が今言っておりますのは、基本的に今の合板を含めて森林、木材産業をどうするかということでございます。これは、先生御存じのとおりでございますが、大変厳しい不況に見舞われておりまして、回復の兆しもございません。そんなことで、これを一体どうしたらいいかということ、これは皆さん共通の頭にある問題だと思っておりますが、この問題を一体どうしたらいいかということにつきましていろいろな話をしておりますが、関税引き下げにつきましては現段階では極めて厳しくて難しい問題だ、こういう考えてこの問題に取り組んでおるということでございまして、一つ姿勢は変わっておらないことを申しておきます。
  9. 島田琢郎

    島田委員 私はあなたの正体がわからなくなりました。怪人二十一面相みたいな感じであります。正体が全くわからない。今おっしゃったこととは全く裏腹なことをお考えになっているのではないか。だとしたら、農政のトップに立つ人としてはふさわしくないということになる。  木材製品関税率の問題については基本的には変わってないと今おっしゃっているわけでありますけれども、そうすると、これはもう一度明確にお答えをいただきたいのですが、アメリカ側要求に対して断固としてこれに屈しない、現在の関税率を守り抜いてまいる決意なのかどうか。
  10. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 現在においてはそのとおりでございます。
  11. 島田琢郎

    島田委員 間違いありませんな。
  12. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今申したとおりでございます。
  13. 島田琢郎

    島田委員 立ち上がってはみたものの、私はいささか憶するものがありまして、質問を続ける心境になるかどうかわからないので、この後の与えられた時間の中で、私も、あるいは通告しないような問題を提起することもあり得るかもしれぬ。あなたの今の態度で、やや私も心の整理がつきません。きのうまで、この間までは歴代農林大臣でもなかなかいい大臣だと私は思っていたのであります。その信頼が今は根っこから崩れているのです。  しかし、まあ質問を続けてまいります。  それで、まず基本的なことからお聞きをしていきますが、戦後幾つかの農政転換、つまり曲がり角がありました。     〔玉沢委員長代理退席田名部委員長代理着席〕 この曲がり角は、私に勘定させると大体八つぐらいあったように思います。そうすると、同じところを左へ左へと曲がりますと二めぐり目でもとのところへ戻ってくるということであります。つまり、農政は戦後のあの混乱期のところにもう一遍戻っていると見ていいのではないかと思います。この曲がり角を越すたびに農政拡大そしてまた強化されるということであれば、この曲がり角一つの意味があると私は思うのであります。ところが、どうも私はそうは思えない。曲がるたびに農政後退後退を続ける、こういう方向をたどってきたと私は思うのです。  時間を少しロスしておりますから、私の方で問題の提起をいたします。  まず、やはり象徴的なのは、農業基本法に基づきます基本法農政出発点だったと思うのです。もちろんその前にはGHQの強い指示のもとで農地改革が行われました。やや落ちつき始めた昭和三十年代に入りましてから、農業基本法が三十六年に制定されました。これは一つには選択的拡大やあるいは主産地形成、こういう題目にも象徴されるのでありますが、しかし、ここに至る間にも一つ、二つ、三つ曲がり角を経ました。そして次は、第一次構造改善対策、第二次構造改善、新構造改善政策と進んできた。  しかし、ここまでのところを私は振り返ってみますと、先ほど申し上げましたように、前進ではなくてむしろ後退方向をたどったと結論的には言える。選択的拡大と言われながら、現実には選択的拡大に向かって政府の言うとおりにそれを進めた農家は実にひどい目に遣わされた。そしてまた、主産地形成だと言って、牛乳牛乳を、そしてまた野菜野菜を、果樹果樹をといったそういう政府政策施行に対して忠実に従った農家は今一体どういう目に遭っているのか。こうやって例を挙げてまいりますと、この基本法農政の初期においてさえも重大な誤りを幾つか繰り返してきたということが言えると思うのです。そのツケは挙げて農民が今しょっているわけであります。  しかも、第一次から始まりました構造改善政策は、多大の先行投資としょい切れないほどの大きな負債をしょうに至りました。今、それを返すという段階に来て、新しい構造政策のもとでまたぞろ政策転換を迫られるとしたら、いずれも、選択的に拡大した農家も、主産地形成で頑張った農民も、第一次、第二次、新構造改善と自分の手に余るふうな先行投資をしながら、苦しみに苦しみ抜いて何とか経営の体裁を整えながらも、中身はこれからというやさきに、今度は金融政策で、つまり臨調行革路線に沿った新しい政策選択が迫られているとしても、農家はこれを素直に受け入れることができるような状況には今ないというのが実情です。莫大な資金が投入されていますし、成功していない。成功しているというなら次のことにお答え願いたい。  現実負債がふえているでしょう。そのうち、固定化されている、払い切れない、離農もし切れないという負債を大きく背中にしょい込んでいるという農家が実態的に非常に多くなってきている。嫁さんだってそんなに簡単に来てくれない。よければ嫁さんはほいほいと来るはずです。今、農村において嫁さん一人もらうために部落挙げてどんなに難儀しなければならないか、まさに社会的問題のところにまで来ているのであります。離農者は依然として後を絶っていません。特に酪農については連年大変な勢いで減り続けている、この十年間の減り方というのは、かつて我が国農政の中にはなかった状況に相なっているのです。  このように私は指摘してまいりました。農政転換というのが前進だったのか後退だったのかということは、私の今の説明で極めて明瞭であります。政府はどういう御見解をお持ちなのか、この際お聞きをしたい。
  14. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先生からただいま御指摘ありましたように、戦後いろいろな曲がり角を経過してきたわけでございますけれども、国全体も、敗戦の中から立ち上がりまして、国民に安定的に食糧を供給するということで、食糧増産なりあるいは農地改革ということで国民の負託にこたえてやってきたわけでございますけれども、その後、社会全体の高度成長という中で第一次産業が非常に難しい局面に立ったことは事実でございます。  そういう中で我々は構造政策でございますとかいろいろやってきたわけでございますけれども高度成長農業との調和というものが残念ながら十分にはまいりませんで、いろいろな摩擦も国内的にもあったことは事実でございます。しかし、全体的な社会の発展とともに農業につきましてもいろいろな努力を重ねてまいりまして、規模におきましてもいろいろと大きくなってきておりますけれども昭和四十年代の後半の物価狂乱でございますとかああいうことを経過いたしまして、現時点でもそれ以降のいろいろな物価高の中での投資部門が残っていることは事実でございますが、これから国民に安定的に食糧を供給していくという立場に立ちながら農家経営を少しでもよくしていく、残念ながらこういう財政事情でございますので、限られた財政資金をどうやって効率的に使い、あすの農業を切り開いていくかということで苦慮していることは事実でございますけれども、今までの努力をさらに続けて農業の安定には努めていきたいと思っております。
  15. 島田琢郎

    島田委員 私は、今回提案されております金融三法の目指すものは農政転換である、こういう位置づけお話をいたしました。しかし、今官房長お答えは、失敗ではなかったのだ、さらにこれを大きく前進させるために新たな農政への転換を目指すのだ。政府当局としては当然でございましょう、私の言っているとおりでございますと言ったらパンクしてしまうのでありますから。しかし問題の認識はもう少し深めていかないといけない。そうしてまた認識を変えてもらわなければいけない。  まず私は、農政転換である、こういう立場からお話をしてまいりたいのであります。つまり農業基本法の中のどれを見ましても、金融に関するものは一条項も一文句も載っていないのです。つまり金融政策がないのであります。それは事業を進めていく上に必要とするお金を補助金なりあるいは金融で補うというものでありまして、手法でありまして、政策そのものとはなっていないのです。そういう位置づけ農業基本法には全くないのであります。私はそのこと自体を間違いと言っているのではありません。当時の状況からいたしますと、あるいは補助政策を前面に立てて補助によって農政の推進を図るという政策課題をお持ちであったと思うのです。それは全部間違いだと私は申し上げるつもりはありません。一定の役割を果たしたこともそのとおりだと思います。しかし、そこにやはり金融政策としての位置づけが本当はなければいけなかったのではないかという面もあるわけであります。  したがって、この金融政策的な位置づけとしてこれからお考えになろうとしているのだとすれば、いろいろな問題も整理をしていかなくてはなりません。金融政策転換も図らなければならぬでしょう。そうしてまた制度金融を充実させていかなくてはならぬということもあるでしょう。ところが、残念ながらその転換後退の論理に立つものであって、前進とは受け取りがたい内容になっている。確かにこの三法の中にはあめの部分、よい面もある。しかしながら厳しいむちの部分も含まれている。いやむしろむちの部分の方がはるかに今置かれている農民にとっては大変痛いのであります。身を切られるところの話ではない。あるいは命を断たれるかもしれぬほど厳しいむちになりかねないのであります。  そういうふうに考えますと、私はこの金融三法の持つ意義というものは極めて重いと考えておかなくてはいけないと思うのです。軽はずみにこの法律を扱えない理由はそこにあるのです。我が党も大変なエネルギーを費やして、きのう提案されるまでの間に既に相当の勉強を重ねてまいりました。それぞれ全委員質問に立つ、これも異例なことであります。それだけではなくて、ほかにどうしてもこの金融三法の論議に参加したいという者を含めて今十一人質問が予定されておりますから、私はきょうは総論的なことだけしか申し上げません。細かなこの法案中身については、我が党の各議員が入れかわり立ちかわり分析してまいる、こういう予定になっております。  そこでもう一つ、三次にわたる構造政策一つの総仕上げを考えているのではないか、また考えていかなくてはならぬものだろう。だとすれば、そういう面からいえば極めて中途半端な法律である。それから、補助政策転換させるということは極めて明瞭な問題意識としてこの中に含まれております。目的を持っております。ですから、補助政策転換させる、後退させる、そしてまた完全にこれをやめていくというねらいを持っていますのは臨調行革でございますから、その路線に従って、その路線上において今度の金融三法が提案されている。しかし、後藤局長も相当財政当局とは頑張りました。これは評価していい。一遍にそういう方向に持っていくことは農政の大転換だ、それだけではない、第一線の現場に大変な混乱を起こすということをあなたはお考えになって、この点については財政当局ともかつてない大論争をされたと聞いている。その御労苦に対しては歩といたします。しかし、全体的には政府の問題でございます。これは一経済局長が幾ら頑張ってみたってどうにもならぬ問題を含んでいる大きな問題であります。  改めて私は農林大臣に、この金融三法にかけるあなたの意気込み、またお考えになっている目的、そしてまた、農業基本法というものに対して私が提起をいたしました金融政策というものを新たにどのように立案しようとお考えになっているのか、いないのか、その辺のところをお聞きしたい、こう思います。
  16. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の三法全体についての基本的なお尋ねがあったわけでございますが、今回の農林漁業関係制度金融の改正、これは確かに、近年におきます厳しい財政事情といったようなものと全く無関係であるというふうに言えばうそになると思います。  しかし、私どもがそういう中におきまして今度制度金融の見直しをいたしましたのは、まず第一に、農林漁業をめぐります諸情勢の変化に対応しまして足腰の強い農林水産業の育成を図っていく、そのために農林漁業投資を積極的に推進していくにはどういう点を直していったらいいかという基本的な観点、第二に、財政効率的運用等を図りますために効果的な行政手段の確立が要請されている、こういった二点を踏まえまして、各資金制度の特性に応じまして資金種類拡充等内容とした改善合理化を図ったわけでございます。  補助と融資の関係につきましては、今日に始まったことではなくて、戦後の長い農政の中でそれぞれ役割を分担し、補完し合いながら施策の推進に資してきたわけでございますが、農業者の自主性と創意工夫を尊重するという観点から、これまで補助対象にしていたもののうちの一部を無利子融資に切りかえるなどの措置もここに含まれております。  また、基本法におきます金融の問題でございますが、先生御案内のとおり、農業基本法は基本的な政策の目標、そしてまた方向づけということでございます。金融なり補助というのはそれを達成するための手段ということでございますので、基本法が詳細な金融に関する規定を置かなかったものというふうに考えております。
  17. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 島田先生お答えいたします。  今局長の言ったとおりでございますが、単なる財政効率化というのじゃなくして、いい農業をつくるというようなことでこれを考えたわけでございます。
  18. 島田琢郎

    島田委員 今日までの二十年余にわたります基本法農政以後の扱いの中の前半あるいはごく最近までは、補助金といったようなものを、構造政策にしてもあるいは農基法の農政推進の上でも、一つの手だてとして、強力な武器として使ってきたという御説明は私もそれなりに納得ができるのです。  しかし、正直言いまして、先ほども申し上げましたように、農家はそうした農政曲がり角を曲がるたびに大きな負債とも思える大きな先行投資を繰り返してまいりました。しょい切れないものを肩に持っている。だから、負債整理という問題が地元から、対策として組んでほしいという声が上がってくるのであります。しかし、そういうことであればあるだけに、今日的な課題として金融政策的な構えを示さなければならないときに来ているのではないか。つまり、これを単なる政策推進の手だてとして考えるだけではなくて、政策の基本のところに据えていくという考え方が出てこないといけないのではないか。つまり、この二十数年間の一区切りとして、農基法農政一つの区切りとしてやらなければならぬことが物すごくたくさん山積みされているということであります。  ですから、ここで農業金融後退することになったら、林業も水産も同じでありますが、含めて申し上げますならば、これは今大変重要な期待のかかっている政策一つであるということがわかる。そのことを農林省、政府が頭に置かれて今度の金融三法をお出しになったとは私は思えない。あくまでも臨調行革路線、それを何とか体をかわして傷を少なくして済まそう、できるだけ返り血を浴びない方法でここをすり抜けようという安易なお考えでこの金融三法が提案されているとしたら、私の言っていることが大変重大な転機を迎えることになる、こういう指摘を私は繰り返しさっきからしているのです。この点はどうだったのですか。
  19. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の制度金融の見直しに当たりましては、先ほど大臣からも非常に簡明な言葉で述べられたわけでございますが、立派な農林水産業をつくっていく、そのために制度金融としてどういう点に新しい手当てをしていったらいいだろうかという観点で私どもいろいろ見直したつもりでございます。  法律事項につきまして今当委員会で御審議をいただいているわけでございますが、そのほかにも政令事項、そしてまた農林公庫の業務方法書といったような段階の事項まで含めまして、あらゆる制度金融、公庫、近代化資金また改良資金全般にわたりまして点検をし、所要の改正をしたつもりでございます。
  20. 島田琢郎

    島田委員 もう一つは、市場開放への地ならしと考えていかなければならない内容も持っている。かつては国際分業論、これも農政の中に割り込もうといたしました。しかし、これは断固としてはねのけるという態度で、自分の国の国民が食べる食糧あとう限り自国で生産する、これを建前とする国会の決議も行われました。  ですから、こうやっていろいろ外圧もはねのけ、内部的にも何とか目指す方向へと進んできた中で、今この金融三法が目指すものが市場開放への地ならしたということであってほしくない。もう開放できるものはほとんど開放したというのが我々の一般的な認識であります。農林省と我々は表裏一体としてこの認識は持つことができると思うのです。さっき私はそういう意味で木材製品の話をしましたが、大臣からは明瞭なお答えが返ってきたからひとまずほっとしました。しかし、またあしたどうなるかわからぬようじゃ困るのですけれども、場合によってはこの金融三法の目指すものがそうしたものをねらいにしているという含みがあるとしたら、私は重大視せざるを得ません。この点はいかがですか。
  21. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 金融三法が市場開放あるいは農産物貿易の自由化への地ならしたというような意図ないし意味合いを持っているというふうに私ども考えておりません。また、そういうことであってはならないものというふうに考えております。
  22. 島田琢郎

    島田委員 次に、この法案はあめとむちを上手に使った法案であるというふうに私は言いました。つまり、スクラップ・アンド・ビルド。農産物のある品目はあめを受けて、そして一定のまた前進をかち取ることのできる要素もあるが、ある品目についてはスクラップ、安楽死あるいは憤死させられるということもあり得る。  私はそれを少し選別してみました。つまり、ビルドというのは何だ。酪農、畜産、これはまさか外せますまい。野菜も自賄いをできるところまで来たので、これはちょっと不安がありますが、まあしかしこれはよそから買ってくるようなものについてはかなり限定される作目である。しかし片一方、昨日審議が終わりました養蚕、これはまさに安楽死どころか憤死させられていくという品目、業種に入るのではないか。果樹もまた、参議院で先議がされておりますが、果樹振興法はだんだん後退方向に向かっている。こう考えますと、私の認識では、ビルドは先ほど申し上げました施設園芸が入りますけれども、こうした品目、業種、スクラップは今申し上げましたような業種が入る、このようにどうも選別が厳しくなっていくのではないだろうかという懸念を持っていますが、私のこの懸念に対しての御認識はいかがですか。
  23. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今のお尋ねの中の作目別の問題でございます。今回の資金の中で特に作目に関係の深いのは無利子資金の中の生産方式改善資金で、畜産、野菜果樹、養蚕を掲げておるわけでございますが、私ども考え方としては、この資金制度の中で、御指摘のございましたような一方がビルドで一方がスクラップ、こういう考え方はしていないわけでございまして、例えば養蚕を例に挙げますと、こういう需要の減退する中で、あるいは内外価格差の大きい中で大変厳しい低コスト養蚕というものが迫られておるわけでございますが、今回の資金制度で申しますと、養蚕の総合的な技術の改善のために養蚕それ自体を合理化するあるいは能率を高めるということで、意欲のある農家にこの無利子資金を使って養蚕の技術改善、生産方式の改善をやってもらいたいということで無利子資金を新たにつくり出した、こういうことでございます。  果樹につきましても同様でございまして、これは御承知のような品種の転換とか園地の合理化、大変これも厳しい生産性向上を求められているわけでございますので、そういう果樹農家がこれを使って生産をさらに合理化していただく、こういうような意味合いで設けられたものでございますので、この資金制度自体がいわゆるスクラップ、例えば養蚕なり果樹部門をスクラップする、こういうことで設けられたわけではないわけでございます。
  24. 島田琢郎

    島田委員 ところで、あめとむちということを言いました。今、関谷局長からもお話がありましたが、改良資金に新たな手法を取り込む、これは確かにあめの部分考えていいでしょう。ただ、法律の目指すものがそうでないとしても、実態的には私の言ったような方向に進むのではないかという懸念は、あなたの御説明を幾ら聞いても私はにわかに納得しがたいのです。それは後ほどまた申し上げてまいりたいと思います。  ついでですから、水産も言ってみればビルドの部分が厳しく区分けされていくでしょう。現に鯨は今瀕死の状態に立ち至ろうとしています。しかし、鯨だけではない。外国二百海里からの総締め出しは間近に迫っている。その先達的役割を果たそうとするのがアメリカであります。日ソ漁業も大変難航に難航を重ね、結果的には御苦労のかいもなき結果に終わっているのは極めて遺憾、こういうことであります。林業を考えてみてもそうであります。国有林は大変な事態に追い込まれている。こうやって考えますと、農林水、すべてスクラップ・アンド・ビルドの方向を今目指そうとするのではないかと思えるのも仕方がないでしょう。そこをどうやって運用で私の言うようなことにならぬようにするかが大変大事な政策課題だと思うのです。  ですから、もう一遍前に戻りますが、農林水産金融は、単なる金融政策推進の手だてとするだけではなくて、それを政策として構えるという大変大事な時期に今到達しているのではないか。そういう認識で言うならば、その認識をお持ちになるならば、おのずから金融三法の基本的な考え方が違ってくるのではないかということを私は指摘をしてきたのであります。  しかし、時間がどんどん迫ってまいりましたから前へ進みますが、つまり無利子融資あるいは償還条件の緩和など、幾つかのあめの部分を含めていることを私は否定しません。そして、これをどのように有効に活用するかは、かかって農民の選択にあると思うのです。しかし、この金融の有利な選択あるいは不利な排除やらを農民自身がやるというのにはかなり問題があります。今出発点に立ったのではないのです、長い農基法農政の歴史の中で、その歴史の積み上げの中で先行投資もし、経営の維持にそれこそ日夜を分かたず努力を続けてきたという事実と実態がある限り、簡単に新しい金融の中で選択できるかというと、選択の幅は極めて狭い、こうならざるを得ないのです。  つまり、今農民に競争か妥協かが迫られていると言ってもいい。そしてそれはやがてビルドをどう成功させるかに農民の知恵とあれがかかっているのではあるけれども、しかし政策は必ずしもそれを誘導してくれるような立場には立っていないのではないかという懸念は依然消えません。うんとわかりやすく言えば、農家の大方の気持ちは、これ以上とても借金するのは嫌だ、どっちみちもらう金ではない、返さなければならぬ金なんだから、これ以上借金することについては憶病にならざるを得ない、これが私は今の農家の置かれている率直な心情だと思うのです。かつてのようにだぶつく財政、そういう中からだぶだぶと恩恵を受けられた時代ではないということを第一線の農家もみんなよく知っています。そしてまた、そのためにしょい切れないほどの借金をしょって、それが返せなくて固定化していくことに、いら立ちと、時には絶望感をさえ覚えている農家が少なくないのであります。  ですから私は、その辺のところの一線の状態と政策を構えておられる政府の間とが直につながっていって、そしてあなた方の気持ちがストレートに通じていくということでなければ、この金融三法の目指す意義は半減するばかりか、ほとんどその目的を達し得ないであろうと思うのです。大臣、その自信がありますか。
  25. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 補助と融資は、政策を推進いたします場合におのずからそれぞれ担当分野がございまして、お互いに補完し合いながらやっているわけでございますが、ここで今先生のお尋ねの中にございました負債の問題というのが、確かに、特に一部の畜産農家にありますことは私どもも承知をいたしておりますけれども、全体として見ました場合に、農家全体としてもうこれ以上制度融資の借り入れもしたくないという状態であるというふうには私ども見ておるわけではございません。できるだけ、特に緊急を要するものにつきましては、例えば肥育牛の購入育成資金の償還期限の延長を含めまして条件緩和の努力もいたしたつもりでございますし、政策的な緊要度に応じて制度の内容の改善充実を図ったつもりでございます。
  26. 島田琢郎

    島田委員 局長は相当開き直りをしているようであります。総論で今言っておりますから、細かなことは後ほど我が党議員がそれぞれお話をすると思いますが、一つだけ。  小作料の一括前払いという制度を新しく取り込みました。私は、これは問題の視点が逆立ちをしているというふうに思えてならないのであります。何となれば、土地の収益性というものを貸す側だって持っているわけであります。ですから、一括前払いというのは、言ってみれば何年か先、一体どれぐらいまでを目指すのかわかりませんが、相当の先までこれは一括するわけですね。一括前払いですから単年度の前払いということじゃないと思うのです。そうしますと小作料というものは、一つの基準として積算されていきますのは、当たり前のことですけれども面積掛ける標準小作料掛ける期間、こういうことになります。ところが、標準小作料も期間も動くと動くのですね。これはどこの所管ですか。井上さんのところですか。しかも、一番困っている、例えば貸して困っている、貸してといいますか小作に出していく階層で一番困っているのは、二ヘクタールから四ヘクタールの階層だと言われています。もちろん大きいところは貸したりしません、むしろ借りる側ですからね。ですからそういう意味で、大変親切そうに見えますけれども、小作料一括前払いというのは、私が今まで申し上げてまいりました農政の目指す方向からいえば、かなり逆立ちをした論理ということになると私は思うのです。井上局長、どうですか、これは。
  27. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、日本の農業では、いわゆる施設型、施設利用型といいますか、施設型の農業の場合には規模拡大が割合と順調に進んでいるわけでございます。これに対しまして、稲作に代表されますように土地利用型の農業の場合は規模拡大が容易に進まないという実態にございます。私どもといたしましては、そういう土地利用型の農業の規模拡大を進めるためにいろいろな対策もとっているわけでございます。  今御指摘になりました小作料の一括前払いの制度、これは農業改良資金の中に経営規模拡大資金として入れるものでございますけれども、これにつきましても、私ども県の担当者等と十分意見を交換いたしましてこういう制度をつくったわけでございますけれども、借り手、貸し手、両方の条件を見ました場合に、貸し手の方といたしましては、ある程度お金がまとまって入れば貸したい。借り手の方から見ますと、一時にそういった金を調達するのは難しいというような条件のところがあるわけでございまして、こういう資金を創設することによりまして経営規模の拡大に資するんじゃないか、こういうふうに考えたわけでございます。全体的な傾向といたしましては、借りる方は経営規模の概して大きい階層でございますし、貸し手の方はやはり経営規模の小さい農家が多いわけでございます。こういったことで、この資金につきましてもそういった傾向が出てくるものと考えているわけでございます。
  28. 島田琢郎

    島田委員 確かにそういう期待の人たちのおることも事実であります。ただ私は、実態というよりは論理が逆立ちしているという点を指摘をしたいわけであります。  さて、むちの部分でいいますと、公庫資金、これは財投資金とはかなり逆ざやになっているという実態がございますので、これの解消を目指すという考えがあるかもしれません。しかし、それにしても、四・五%という中間金利を廃止して三・五%と五%にするというお考えのようですが、五%、つまり金利のかさ上げを行うという部分は三・五%一本になぜ絞れなかったのか、そういう点で非常に親切心に欠ける制度の改正ではないか。実態を十分認識しない考え方ではないか。臨調行革から押しつけられて苦しかったということはわかるけれども、しかしここは頑張ってほしかった、こう思うのです。  それから三番目には、選別融資にならないか。私をして言わしめれば峻烈なる選別である、こう思います。農家をふるいにかけるやり方になっては困る。  ここで私の体験を申し上げますが、私は十五年ほど農業委員会長をやってまいりました。農地問題に現場で大変苦労しました。今ここで苦労話をするつもりはありませんが。ですから、現場の農地の移動について農業委員会が負っております苦悩、これは私は身をもって体験してまいりました。確かにおっしゃるように、農業委員会の言うことを聞いた農家、聞かない農家、一律平板に扱ってやるのは憎たらしいというときもありました。農業委員会の土地あっせんに素直に応じてくださる農家、何としても応じてくれない農家、いろいろあります。しかし、それを土地配分に当たって選別をする、いわんや金融のところで、農地取得資金を貸し付けするところでふるいにかけるというような選別をするというやり方は、まさに峻烈なる選別だと私は思う。そういうやり方は断じてとるべきではない、我慢しなければいけない、こう私は思って、十五年の体験を今振り返っているのです。  ところが、今度の法律はそれが出てきたのですね。気持ちとしてはわかるのです。私もよくわかる。だが、それはやってはいけない、こう思っているのですが、この点が明瞭に出てきたので私は大変心配を持つ一人であります。  それから、そうした経験からいいまして、土地のいわゆる取得を含め近代化施設の設置あるいは農機具等、また経営の合理化等を含めまして、残念ながら進んだところほど負債が多いという実態もある。こういうことを考えますと、むちの部分というのが今のところまさに手厳し過ぎるのではないか、こう思うのです。この辺についての当局のお考えは那辺にあったのでしょうか。
  29. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  農地取得等の資金につきましては、これまで三・五%の金利でありましたものを、三・五%を原則として、一部五%の金利を適用する、こういうぐあいに相なったわけでございますけれども、私どもといたしましては、やはり三・五%という低利金利につきましては一つ政策目的を持つ金融である、そういう性格を明確にすべきでないか、こういうことを考えておりまして、それの判断の基準といたしまして、ただいま農業委員会でやっております農地のあっせん基準というようなものに大体準じました基準をつくりまして、その要件に合致いたしますものにつきましては三・五%の金利を適用していく、こういう考え方でございます。  これは、御指摘のような農業委員会のあっせんを必ず受けろ、こういう意味ではございませんで、現在農業委員会のあっせんで使っております基準を要件といたすということでございまして、こういう要件に合います場合には、農業委員会のあっせんを経なくても融資の対象にいたすわけでございます。現に相対取引でもよろしいわけですし、あるいは一般的に広く普及してまいりました農用地利用増進事業でもいいわけでございまして、そういう特定の機関だけを通しまして選別をしていく、こういう性格のものではないというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
  30. 島田琢郎

    島田委員 そこで、この法案の目指す政策課題幾つかございます。つまり、明らかになっているのは補助から融資、こういう路線を歩もうとしていることは間違いありますまい。そう見ますと、今回の改正というのは農林漁業制度金融において大変後退したという印象を受ける。高い生産性を求めてと先ほど局長はおっしゃいました。足腰の強い農林水産業をつくり上げていくためにもとも説明されました。政策金融というのはそういう意味で大変重要ないわゆる金融制度でございます。ですから金融の大事な柱であります。  とりわけそういう重要な課題に取り組んでいるさなかでございますから、今、井上局長からお話がありましたが、五%資金への移行ということはあなたの所管している構造改善対策の上でも後退を余儀なくされるのではないか。たくさんのお金を借りようとしたって――借りる人がまだいると後藤局長はおっしゃるけれども、確かにそういう人も全くいないということではないと思います。しかし、大方の農民はもうかなり目いっぱいだ。これ以上借りたら大変だ。土地改良もやりたい、あれもやりたいが、しかしこれ以上高い金利のかかる金まで借りてやるのには大変消極的にならざるを得ない、こういう農家が多いわけでありますから、そういう意味で言えば、制度金融というものをもっと充実させ前進させるという方向でなければ私はいけないと思うのです。たった一部ですからとおっしゃったって、一部にせよ、アリの穴にせよ、そこに後退の穴があいたということについては私たちは大変危険視するのであります。大丈夫ですか。
  31. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 最近の財政事情等にかんがみまして、資金の効率化を図る、重点化を図る、こういうことで、農地取得等資金につきましては一部に五%資金を入れてくるわけでございますけれども、私どもは原則的には、こういう資金の重要性にかんがみまして三・五%が原則である、このように考えておるわけでございます。
  32. 島田琢郎

    島田委員 ところで、もう一つ新たな政策課題への対応、今申し上げました公庫資金はもとより拡充するという立場に立たなければならないと私は重ねて主張しておきますが、しかし系統資金の有効な使い方というのは大変大事であります。ところが先ほどから私が申し上げておりますように、借りたい人が限定される、資金はだぶつく。それは流れ流れて市場へ、そして国内で消化し切れず高いアメリカのドルに走る。金利でもうかるからそっちへ走って、農民が知らず知らずのうちにしてアメリカの軍事戦略のもとに協力をさせられているという結果になるなどといったら、これは余りにも不本意ではありませんか。不本意で済まされない話だ。ですから、ここのところの金の使い方というのは大変大事だ。流し方というのは大変大事です。近代化資金、これが一番真っ当なやり方でありますけれども、これにもう少しボリュームをつけて、ここに大方ゆだねるという考え方も検討していくべき課題ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  33. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり、近年農協系統の資金がかつてに比べまして量的にも非常に潤沢になってまいりまして、いわゆる余裕金の運用が増大をいたしておりますことは御指摘のとおりでございます。私ども昭和三十七年でございましたか、農業近代化資金という制度をつくりまして、利子補給なり債務保証を加えながら、できるだけ農協の資金農業の近代化のための農家の積極的な資金需要にこたえて還流しやすくするということをやっておるわけでございます。  今回の制度見直しに当たりましても、公庫資金の対象になっておりました分野でありましても、近代化資金で対応できるものはできるだけ近代化資金の対応を考えていくという考え方でまいってきております。今後ともそういった努力は続けてまいりたいというふうに考えております。
  34. 島田琢郎

    島田委員 ところで、林業もそうでありますが、将来の国産材時代を想定しておかなくてはいけません。そのための木材供給体制を確立することは今から万々怠りなく進めていかなければならない大事な仕事であります。こういう点についてももう少し現行の融資制度を強化し、さらに充実させる必要があると私は思っている。緑づくりが近年国民的な課題と言われております。普通の金利よりもうんと低く貸すぐらいのお考えがないと、ことしつくって秋に収穫できるという代物でないだけに、ますます山から大事な人たちが後退をする、山をおりてしまうことになりかねない。山はまさに荒れなんとす、いや、荒れているのであります。これを活性化させていくための融資制度を何よりも先行して充実強化さるべきではないかと私は思います。  それから、魚についても同じことが言えます。先ほどちょっと申し上げましたが、考えてみますと、我が国の漁業政策はあってなきに等しい。後ほど時間があれば触れることにして、今は金融のところだけ触れますが、ましてや漁業金融の制度的なものといったら本当にこれは厳しい。ですから、改めて積極的な金融政策をここに持ち込むべきではないか。もちろん融資の枠とか融資率の拡充とかあるいは金利なんかでも特別な配慮を加えることが必要だと私は思うのです。  そういう面で言いますと、今我が国は鯨が大変な問題になっておりまして、それによって北洋、遠洋の漁業が非常事態を迎えるという、予測してはおったものの、これほどひどい状況に相なるとは我々も実は本当に考えておりませんでしただけに重大な問題でありますけれども考えてみますと、アメリカの方が漁業政策に関しては大変充実しているという面もある。例えば、今我々が問題にしているパックウッド・マグナソン法にいたしましてもあるいはまたペリー法にいたしましても、それぞれの自国におきます漁業の管理計画をきちっと持っていて、減船補債に対しても国がちゃんと計画を立ててやるといったことが行われるようにできている。また、漁民自体に補償することのできる漁民保護法がこのペリー法であります。  ところが我が国はどうでしょうか。農業基本法のことは申し上げました。残念ながら漁業基本法がないでしょう。それぐらい漁業の後進国なのであります。世界一魚をとっておりながら、国内的な措置はまさに世界の後進国なんですね。せめて金融面で充実させることぐらいはやったっていいのではないでしょうか。どうですか。
  35. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 漁業金融の充実を図るべきことは先生御指摘のとおりでございまして、今般御審議を賜っております漁業近代化資金助成法の一部改正も、そういう必要性に迫られて提出をして御審議をいただいておるところでございます。殊に、私ども認識によりますと、現在漁業金融の分野で差し迫って重要な問題になっておりますのは、漁協の信用事業が非常に不振をきわめておりまして、それが各種制度金融の円滑な融通という見地から眺めましても障害になっておると考えておりまして、昭和六十年度から取りかかります不振漁協対策がこういう障害を取り除いていく効果を持つものと期待しておるところでございます。
  36. 島田琢郎

    島田委員 ついでだから申し上げておきますが、六十年度からいろいろ具体的なことをおやりになるということが今言われましたけれども、しかしどうも私は、漁業政策全体を見てみまして、他との比較で言えば先ほど申し上げたような考えを持っております。  今度の鯨の問題だってそうじゃないですか。ですから、何とかそのほんの一つである法律をつくりたい、つくるべきだと私は二月二十日にあなたに言いました。ガットその他でなかなかつくれないので、できればおまえさんの方でつくってくれやという話でしたから、私が一生懸命つくりました。まだ全体には賛成してくれないのです。にわかに賛成するにはいろいろな問題があるということは私もよく承知しております。しかし、せめて私は、国内的に立法府が責任を持ってこれくらいのことは考えているよということについて、水産庁、農林大臣、積極的に推進するくらいのアドバイスがあってもいいと思うのですが、つくりかけたら、いいことだなとは多少不規則発言みたいな感じで私は聞きましたけれども、積極的にこれはぜひ欲しいという声は聞こえてこない。だから国内的にも盛り上がってこないのであります。  今、鯨の問題がどうなるかこれはわかりません。大変な事態に立ち至っているという点で私はいらいらが募っていますけれども、しかし、今ここで鯨の問題がある一定の解決が図られたとしても、それと絡めて北洋、遠洋漁業が完全に保障されるという保証がないでしょう。それは一つクリアしたが、また次に障害が出てくる。また向こうは何らかの武器を持ち出して我が方に二百海里締め出しを迫ってくるに違いない。我が方では減船補償の計画もなければその制度も政府は持っていない。これでは弱過ぎないでしょうか。事ほどさように、漁業の問題は、検討しますと、幾つかあるいはたくさんのやらなければならない政策課題を持っていると思うのです。  そういう中でたまたまこの金融三法が出てきたのですから、これを有力なる漁業政策の武器に据えるくらいの考えで運用してほしい寸また制度をつくってほしい、こう期待をかけておりました。これは農林、水産横並びでなければなかなか問題があるということは、それは行政の立場で言えばそのとおりでしょう。また、立法府におる僕らも個別に差をつけるなんということについてはなかなか問題があることもよくわかっております。しかし、おくれている部分を是正していくくらいのところは合意が得られるはずであります。その気構えがこの法律の中には見られない。どうですか。
  37. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の諸外国との関係におきます我が国の漁業の窮状というのは、いろいろな人為的な要素もございますけれども、基本的に二百海里体制というのは沿岸国優先という制度でございますから、その沿岸国優先という仕組みの中で沿岸国の漁業が発達をしていくに伴いまして、外国の漁船にとらして差し支えない余剰資源が減少する、それに伴って外国の入漁が縮小をしていくということは、これは二百海里制度に内在的に備わっている特徴でございまして、これは交渉とか駆け引きとかということによってその傾向を阻止することが元来できにくい問題でございますので、その点は、むしろ二百海里時代のそういう冷厳な現実を直視した上で、我が国の主権下の水域における漁業をいかに振興していくか、そういう方向考えるべきものであろうというふうに存じております。  それから、現在の金融制度が、先生御指摘のような最近の漁業の窮状に照らしてどうであるかという問題について申し上げますれば、漁業金融の現状を率直に眺めてみますと、公庫資金でございますとか近代化資金でございますとか、そういう法律に根拠を有する制度金融だけをごらんになりますと確かにそういう感じがなくはないのかもしれませんが、そのほかに、各種系統資金に対して利子補給を行いまして、燃油対策でございますとか各般の公庫、近代化以外の分野での金融制度を最近の漁業の窮状に応じていろいろつくっておるわけでございまして、そういうものの全体像をごらんいただけば、最近の漁業の実態にそれなりに対応しているということは御理解いただけるのではないかというふうに存じております。  ただ、そういう公庫、近代化以外に最近の緊急事態に対応するためにつくりましたものは、どちらかと言えばアドホック的にそれぞれつくってございますので、若干未整備という印象をぬぐい得ないところがあるのであろうというふうに存じておりますが、それなりに実態には対応しておるというふうに思っております。
  38. 島田琢郎

    島田委員 ところで、最後になりましたが、農家は連年の価格の据え置き、政府がお決めになる各作物の価格の据え置きがされておることで大変経営上の困難を強いられている。かつてのような所得率を保障してくれというのは無理があるとしても、一定の所得が得られなければ、先ほど申し上げましたように、せっかく先行投資した近代化施設の償還金、あるいは農地を買い込んだ返還金を払えないのであります。ですから、構造政策だけおやりいただいても、その後始末のための償還計画が農家段階で成り立たないとすれば、私はこれは絵にならぬと思うのです。つまり経営が維持できないということです。  ですから、言ってみれば価格が後退すればするほどそれを何らかの面でカバーしなければならぬ。その期待の一つ農業金融があります。林業金融があります。あるいは漁業金融があります。こうした点をしっかり踏まえて金融は運用されていかなくてはいけないというのも、また農業の面におきます大事な政策課題一つであります。  あすは畜産最後の審議会が開かれて乳価の諮問がなされます。きょうは肉が諮問されます。恐らく大臣はこの週末にかけまして価格を決定されるでありましょう。これは昭和六十年度の政府がお決めになる農畜産物価格の第一弾でございまして、ことし一年周の農家個々の経営にとって大変重要である、そういう認識が強くありますので、この乳価や畜産物の価格決定は、ひとり酪農家や畜産家のみの期待ではなくて、全農家の期待であります。またぞろことしも据え置かれるという事態になりますれば、一年間また血みどろの努力を強いられる。そしてまた、大臣がお考えになっている構造改善対策をスムーズに進めていこうとする上で大変重大な支障を来すことになる。  金が返されていないと言うと、そんなことはないというお話が返ってきますが、しかし現実には、農家個々の中では、北海道をとって言えば、組合員勘定制度というものがあってそこで約定が組まれ、一定の返還期日、例えば物によっては十一月二十日、十二月二十日とありますが、この時期に返還金が自動的に払われる仕組みになっているものですから、その後年度末を控えて帳じりが真っ赤っかになっても、途中でちゃんと返すものは返されるということになるのです。しかし、残ったものは次に利子に利子を生んで固定化され返せなくなるという方向に行ってしまう。ですから、それを払い切るだけのいわゆる価格保障がなかったら構造政策も成功しないというのが私の強い主張であります。ところが、大臣とこの春私いろいろお話をしましたら、何といっても構造政策だと譲らなかった。価格政策はその次の次くらいにしか考えていないようでございますが、それでは農家はどうにもならぬのであります。  重ねて申し上げますが、負債整理についても、金融制度の改善というものとあわせて二本立ての形でいきませんと、つまり車の両輪のような形でいきませんとうまくいかないのであります。負債そのものが生まれるということは経営が変則であるからであります。変則な状態を生み出したのは何か、構造改善事業だけが、構造改善政策だけぎりぎり押しつけられてきた、価格がそれに伴っていかないので単年度で払い切れない。ですから、構造政策と価格政策は言ってみれば車の両輪であります。我々のつくったものは国民の要請に基づく部面が多うございますから、たまにはたくさんつくり過ぎたものについて一定のブレーキがかけられるということもあり得る、それは私は納得ができないやり方でありますけれども、そういう面も今まではありました。しかし、明らかに構造政策と価格政策は車の両輪です。そして、補完し得ない部分の生じた価格政策のところでは、有利な金融を持ち込んできてこれでカバーをするということがなかったらこれはできないのであります。  ところが今度のこの三法は、私の指摘している点がカバーし切れるかというと、カバーし切れる部分と仕切れない部分がある、こういう点を私は最後に強調して、経営の再建については、農業金融というものを最後のとりでにして頑張りたいという気持ち農家の中に強くあることをぜひ認識願いたい。  そういう前提と基本に立って、与えられた時間、精いっぱい金融三法の論議に私たちは挑んでまいりたい、こう思っておりますが、最後に大臣のお考えを明瞭に、私が冒頭で申し上げました島田琢郎佐藤守良信頼関係が復活するような、そういうお答えがいただけないと私はどうも納得できませんね。
  39. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 島田先生お答えいたします。いろいろ御教示ありがとうございました。  先ほどの酪農等の負債の問題でございますけれども、これはもう先生御存じのことですが、特に五年前から負債対策を講じておりまして、最初三千数百戸ございましたが、今大体千八百戸で、これもことし大分減るということでございまして、残った分につきましては特段またいろいろな配慮をいたしたい、このように考えております。また、その場合には、当然経営者としての自覚と努力も必要だということを考えてできることをしたい、こう思っております。  今、先生がおっしゃった価格政策でございますが、これは価格政策の持つ機能が各農産物ごとの事情に照らして適正に発揮されるよう努力しておるわけでございますが、先生御存じのことでございますが、近年、食糧消費支出の伸びの鈍化とか、あるいは農産物需給の緩和、さらには消費者の価格意識が高まるといった状況で、一般に農産物価格の上昇による農業所得の確保を期待することは難しくなってきております。そんなことで、今後は農地の流動化とか農業生産の組織化を通ずる規模拡大や生産政策の積極的な推進により、生産性の向上に努め、所得の確保を図っていくことが大切だと考えております。価格政策についてもこれらの政策との関連に十分配慮しつつ適切な運用を図っていきたいと考えております。
  40. 島田琢郎

    島田委員 限られた時間での質疑ですから、十分意が尽くせないところがあって、また大臣がお考えになっていることの片りんにも触れることができなかったのでありますが、私が冒頭指摘をいたしました点は、今私は私個人の名前を挙げて言いましたが、農家農林大臣の間がしっかりした信頼関係で結ばれなければ、我が国農業の正常なる発展と前進を図ることはできないのじゃないか。(発言する者あり)おまえさん、さっきのことを聞いてないで、今ごろ出てきて何を言っているんだ。――そういう点で、私はぜひやってもらいたい。(発言する者あり)  これをもって私の質問を終わります。
  41. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 答弁いいですか。答弁必要ですか。
  42. 島田琢郎

    島田委員 一言だけ……。
  43. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 ちょっと最後がよく聞こえなかったので、大変申しわけありません。
  44. 島田琢郎

    島田委員 あなたのお考えになっているさっきのお考えは、まだ私にとっては不十分な面はあるけれども、この審議を通して明らかにしていくが、ひとつその決意を聞きたい。
  45. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えします。  そのとおりでございます。(発言する者あり)
  46. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 御静粛に願います。(発言する者あり)御静粛に願います。ちょっと委員席でのやりとりは自粛してください、審議に入れませんから。どうぞ田中委員、ひとつ質疑をお願いします。  田中恒利君。
  47. 田中恒利

    田中(恒)委員 金融三法と称されます本法の提案に当たりましては、これまでの農林漁業金融政策の運用を通して関係諸機関あるいは行政当局において問題にされておったような諸問題、あるいは最近の我が国の内外の金融情勢の非常に激しい変化、特に農林漁業そのものの大きな変動の中でこの金融関係法案の改正がなされた、そういうふうにお聞きをしておるわけでありますが、この金融関係法案、正直言いまして、金融の問題は、世の中が資本主義、金の社会でありますから、金にまつわっておるだけに農林漁業経営、地域、さまざまな形で関係しておりますから、非常に広範であり、複雑であり、多様であります。そういう金融の中心になる法案でありますが、これを出されるに当たって、農林水産大臣農林漁業金融政策に対する基本的な考え方をまず冒頭にお尋ねをして質問を展開していきたいと思っております。
  48. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えいたしますが、率直に言いますと、厳しい財政下でございますが、財政の効率化を図り、よい農林水産業をつくるというようなことで、このたび改正に踏み切ったわけでございます。  それで、農林漁業金融関係の制度資金の改正は、農林漁業をめぐる諸情勢の変化に対応し、足腰の強い農林水産業の育成のため、さらに農林漁業投資を積極的に推進していく必要があること、二番目には、財政効率的運用等を図るため、効果的助成手段の確立が要請されていること等を踏まえまして、各種資金制度の特性に応じ、資金種類拡充等内容とした改善合理化を図るものでございます。  すなわち農業改良資金につきましては、補助制度金融の中間的な分野を担うという役割を踏まえつつ、農業生産の再編成とか経営規模の拡大等の緊急な課題に対応し得るよう資金種目の再編拡充を行うほか、資金の全国的調整を行う仕組みを導入するものでございます。  また、農林公庫資金につきましては、農林漁業経営の育成強化及び構造改善等を促進しつつ、資金の効率的利用と制度の簡素化を図るとの観点に立って制度の改善充実を行うものでございます。  また、農業近代化資金及び漁業近代化資金につきましては、最近における資金需要の大型化に即応して貸し付けの最高限度の引き上げを行うものでございます。
  49. 田中恒利

    田中(恒)委員 内部の問題にまで大臣の方からもお答えをいただきました。私は具体的な事項についてはいろいろ個別に御質問いたしますが、先ほど島田委員の指摘の中にもありましたが、この金融法案提案に至った経過の前提は、中曽根内閣が今進めようとしておる行革路線、臨調路線、これがやはり根底にある。これは行政の効率化ということが表看板になっておりますが、具体的に言えば、余り金を使わない、金を使わない形で効率化をやるというのですから、なかなか難しいわけでありますけれども、そういうところがねらいであります。  この農林関係については、臨調、行革の審議会の中で、ともかく農林水産業つまり第一次産業は生産性が低い、そこで金がかかり過ぎる、こういう議論がしばしばなされておる。金融についてもコストが高い、こういう議論がなされておる。具体的に補給金が毎年高くなってきておる、こういうことが前提になってこの法案の提出がなされた、こういう経過を全部知っておるわけであります。皆さん、御承知であります。そういう意味では、この臨調行革路線の中で投げかけられてくる本法の改正がこれまでの金融政策後退になるんじゃないか、こういう心配を率直に言って皆さん持っておるわけであります。後退はあり得ない、こういうふうに大臣は御答弁いただくだろうか、重ねて念を押しておきたいと思います。
  50. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  今私が御説明したとおりでございまして、例えば無利子資金である農業改良資金の再編拡充とかあるいは近代化資金の貸付限度額の引き上げ、あるいは公庫資金の貸付対象の拡大等各種の内容の充実を行うとともに、構造政策等の推進の方向に即した重点化を図っております。そして特に大切なことは、真剣に農林漁業の振興に取り組む者への円滑な資金の供給に配慮しており、全体として補助から融資への方向及び農林水産政策の推進の方向に即した内容となっておると考えております。
  51. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、特に制度金融農林漁業には金融面の大きなよりどころになっておるわけでありますが、この制度金融の柱になっておるものはやはり利子補給制度だと思うのですね。この利子補給制度の昨年度の総額は幾らでしたか。
  52. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林公庫の補給金でございますが、五十九年度が千三百四十九億、ラウンドいたしまして千三百五十でございます。六十年度予算は千四百億近くになっております。
  53. 田中恒利

    田中(恒)委員 問題は、今千三百五十億程度、来年の予算も少し上がる。再来年も上がると思います。これは今までの貸し付けがあるわけでありますから、貸付枠が上がった分だけ利子補給が上がるわけですから当然でありますけれども、今後どういうふうになっていくのか、これがやはり一つの重要なポイントだと私は思うのです。各種資金の貸付限度額がふえますと恐らく需要もそれに伴ってふえると思うわけでありますが、この資金需要量のこれからの見通し、これに伴う利子補給金の動向、何か細かい数字が出ればいいですが、出なければ、一つの傾向線は出てくるはずでありますが、どういうふうにお考えになっておりますか。
  54. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まず農林公庫資金の今後の資金需要の問題でございます。これは近代化資金どもそうでございますが、四十年代非常に伸びまして、五十年代の前半期くらいにちょっとピークを打っているような形に、これは制度金融全般的にそういう傾向があるわけでございますが、御案内のとおり主要農産物の需給緩和基調のもとでの価格の伸び悩み、あるいは五十九年は大豊作でございましたが、その前、冷害を初めとしまして連年災害が多発をしましたし、それに機械、施設等設備投資も一巡をした。それから農林公庫につきましては基盤整備関係補助残融資がやはりかなり大きなウエートを占めております。こういったことから近年全体として伸び悩んでおるわけでございます。  今後の融資の動向がどういうふうになるかという点は、いろいろなファクターが入りますので見通しはなかなか難しいわけでございますけれども、四十年代のような大きな伸びというのは期待できないにいたしましても、やはり農林水産業の生産性向上のための投資等に対しましては依然相当の需要があり、今後とも公庫資金需要についてはなお底がたい需要はあるものというふうに考えております。  公庫補給金が将来どうなるかという点でございますが、この点は今の資金需要の見通しとも関連をいたしまして、将来貸付規模なり資金の貸し出しの構成がどういうふうになっていくか、また、資金源でございます財投金利の動向がどうかという不確定な要因が多くございまして、正確な推計はなかなか難しいわけでございます。  仮に貸付計画額を六十年度予算の六千八百五十億、そしてまた財投借入金利を七・一%というふうな、いわば六十年度予算ベースを前提に推計をいたしますと、六十年度見込みの約千四百億から十年後、昭和六十九年度には千六百七十億円程度に増加をするのではないか。これは、農林公庫の貸付金利は長期のものが多うございますし、貸付残高がなお増加をしていく傾向がございますし、これにかかる利子の差の補給金が増加をするということから、今申し上げましたようなことが推計されるわけでございます。
  55. 田中恒利

    田中(恒)委員 この千六百七十億が大体一番高い時期ですか。償還金があるわけだから、大体それからずっと停滞、ないし下がってくる……。
  56. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 ただいま申し上げましたように、試算といたしましては六千八百五十億という融資枠をずっと続けていくということを前提にいたし、全部六十年度予算ベースを前提に計算をいたしますれば、あるところで利子補給額もピークに達してほぼ横ばいになっていくという傾向が当然出るわけでございます。正確に年次別の数字を持っておりませんけれども、十年後の今申し上げたあたりが一つのピーク、ないしピークに非常に近いところというふうに御理解をいただいてよろしいと思っております。
  57. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは局長さん、こういう法案を出すときには、資金需要がどういうふうになっていって、それから金利補給金がどうなるかということをあなたのところでやはり調べておかなければいけないと私は思うのだ。私は余りやかましい人間ではないから、おとなしいからあれだけれども、ないこともないような気がするのだ。恐らくこれは臨調で大分譲諭して、あなたのところは大分数字を出しているはずなんだ。大体今のケースで行って十年後に千六百七十億ということですが、需要がふえるのですから、こういう制度の改正があって枠は近代化は二倍にする、いろいろやっておるわけだから、Aの場合はどう、Bの場合はどう、こういうものができておるはずなんですよ。そういうものを出していただかないと見通しが立たないと思うし、また私は持っておるように思うのだが、ただ資金需要ですから確かに不確定要素が余りにも多いから、こういう場できちんと言明するだけの自信がないと言えばそれはよくわかります。しかし、いずれにせよ大臣、今のままで行って十年間までは、まだ利子補給はだんだんふえていかざるを得ません。  しかし、片一方、私ども心配するのは、やはり農業に対する利子補給制度が高い、これを何とかせいという力はますます強くなってくると思う。後でいろいろ御質問申し上げたいが、金融の自由化という問題も日程に上がっておる。そういう中でこれまで培ってきた制度金融のこの体系を、少なくとも最小限守っていく。これは今のままで行けば、法律条項になっているわけですから出すものは出さなければいけないわけですが、そういうことを十年先のことまで言ったって、先ほどの話じゃないが、きょう、あすで信頼感がどうだこうだというようなことを言われる世の中だから難しい世の中ですけれども佐藤大臣はひとつここのところをぴしっと、本法改正の前段に当たって、やはりこの利子補給制度の現状の枠、さらにこれに対しての将来考えられるいろいろな力に対しては守っていくということをおっしゃっていただきたいと思いますが、どうです。
  58. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今おっしゃるとおりで、必要な利子補給につきましてはこの制度を堅持してまいります。
  59. 田中恒利

    田中(恒)委員 制度を堅持すると同時に、問題はやはり制度に伴う金ですよ。制度はあるが出す金は引っ込む、こういうことのないようにしてもらいたい。どうですか。
  60. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 おっしゃるとおりでございます。そのつもりで頑張ります。
  61. 田中恒利

    田中(恒)委員 いま一つ、農林金融公庫ですね、私はやはりこの公庫資金の原点というか、中心は三分五厘だと思うのですね。これがその他の政府機関の制度金融と比べて農林金融公庫らしい姿を維持しているものであります。  今回、この三分五厘について多少いじりました。しかし、農林行政当局も大分頑張った、よくわかります。わかりますが、この三分五厘制度というものは、我が国の零細な農業経営の実態からすると、三分五厘の金利は一体どこに根拠を置いておるのか、私はいろいろ難しいと思う。かつて学者の中では三分五厘以下でなければ農業の採算は成り立たない、こういう論議がなされた。しかし、それ以降日本の農業経営拡大してきておるわけでありますから、三分五厘でなくてもやれるという人も出てきておる。しかし、この三分五厘というものが我が国のこれほど零細な農業経営者にとっては少なくとも非常に大きなよりどころになっていることは事実であります。したがって、この三分五厘制度というものを今後とも堅持し、今この三分五厘というものが公庫資金の中の約三五%を占めておりますね、これが一番多い、この割合も後退させない、こういうふうに大臣に迫りたいと私は思いますが、いかがですか。
  62. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 今先生の御指摘でございますが、実は私も三・五%の根拠についてはよく知りませんが、これからの農業を進める場合に非常に大切なことは、安い金利で長期の資金が必要だ、そうでなければいい農業はできないと考えております。そんなことで、この貸付利率三・五%は、これは御存じのとおり長期的な投資の誘導助成策として大変大事でございます。そんなことでございますゆえ、どんなことをしてもこれを堅持してまいりたい、こう考えております。
  63. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣国会の御答弁ですからなかなか慎重で、先ほども制度を堅持するとおっしゃるわけですが、同時に、私たちはこの三分五厘が今日公庫金融制度の中で占めておる割合を後退させてはならないと最小限思っておるわけです。もう答弁はいいですが、そのつもりで、この三分五厘の問題については農林漁業金融公庫制度の骨であるという立場で取り組んでいただきたいと思います。  次に、この数年来の農林漁業金融をめぐる情勢は非常に大きく変わってきております。特に資金の調達、資金の運用をめぐっては従来とは違った情勢がありますが、これらの点について農林省の方に、情勢の特徴点などを、特に代表的なもので結構ですからお尋ねをしておきたいと思います。
  64. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 最近特に金融自由化というような言葉で一口に言いあらわされますようないろいろな動きが出ております。一言で申しますと、金融の自由化というのは、大きく分けまして金利の自由化と金融業務の自由化の二つに分けられるわけでございますが、従来からこういった傾向が漸進的に進行しておりまして、系統事業への影響なりその対応策というようなことについても、系統組織とも一緒になりながら今検討をいたしておるわけでございます。  一例を挙げて申しますと、例えば金利の自由化とそしてまた競争の激化というようなことに伴いまして資金調達コストが上がってくるということになってまいりますと、今の農業協同組合の経営が信用事業なり共済事業というようなものの収益にかなり依存しているというような実態にございますので、そういったところにもいろいろ影響が出てくる可能性があるというふうに考えております。
  65. 田中恒利

    田中(恒)委員 局長の答弁はちょっとぴんとこぬのだがな。金融の自由化の問題は大問題ですけれども、この数年来の我が国農林漁業金融をめぐる情勢ですよ、それをお聞きしたいのですよ。金融の自由化の問題はまた後で御質問しますが、私の質問を取り違えているんじゃないの。私の方から言おうか。こういうことと違いますか。  あなたさっきもいろいろお答えになっておったけれども、今金がだぶついてき始めたでしょう、これが一番大きな問題じゃないですか。この数年来、農業に活力が失われて資金の需要がとまってしまっている、これをどうするかという問題が今回の法改正の、私は意図したか意図しないかは知らないけれども、客観的には金融機関に金がだぶついておる、単協、県連、全国、中金の系統金融――財政金融は厳しくなっておりますよ、逆ですけれども、しかし日本の農林漁業金融全体は金が余ってきておる、と言ったらいけないけれども、それがいろいろな運用面にさまざまな変化を起こしてきておるのじゃないですか。  例えば従来から言われておった三十三兆円の金、系統金融の場合は農民が貯金として出しておる、それが今約十一兆、三分の一ぐらいですね。貯貸率が三十何%にだんだん低下をして、貸し付けと貯金の割合が三〇%を切るのじゃないかと心配をしておる。そういうことに伴って余裕金、運用金の使い方がだんだん変わってきておる。証券投資にいったり関連産業投資をやらなければいけなかったり、従来でも、農村の金は農村に使えと問題になっておった。なかなか今の金融情勢の中では厳しくなってきておるわけですね。そういう情勢の中でいわゆる制度金融が果たさなければいけない課題がますます大きくなっておる。ところが、一方の財政は厳しくなって、さっきの話じゃないが、利子補給金の現状を守るのに精いっぱい、こういう状況になっておる。そういう中で効率的な金融政策をどうやっていくのかというところが問題です。  個別には私はあなた方がおっしゃることと考え方が一緒の面がありますよ。しかし、大きく客観的、マクロ的に見た場合非常に難しい。口ではきれいなことを言ったって、実際にそういう情勢の中でどれだけ効率性が発揮されるのか。やはり結論的には後退ということを考えざるを得ぬのじゃないか、不安を持たざるを得ぬのじゃないか、こういうことが言えると私は思っておるのですよ。違いましょうか。
  66. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 近年、農協系統金融資金量が非常に豊富になりまして、系統内の貸し出しを行ってもなお資金がいわば余裕金として生じまして上部の金融機関への預金がふえる、そしてまた有価証券運用がふえるという傾向があるのは御指摘のとおりでございます。  私ども、先ほども島田先生にもお答えを申し上げましたけれども農業近代化資金制度というようなものを通じましてできるだけ農業者に農協系統の資金を還元いたしたい。また、各種の制度金融の中でも系統原資を活用できるものはできるだけそちらでやるような方向考えていきたい。そしてまた投資の大型化ということもございますので、御提案申し上げておりますように、貸付限度額につきましてもこれを二倍に引き上げるというようなことで、系統資金の活用についてはできるだけ努力をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  67. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは非常に難しい金融情勢に入ってきた。特に、後で時間があったら議論をさせていただきたいと思いますが、金融業務、利子の自由化という問題が既に日程に上ってきた。どうもこの法律提案の前提には金融の自由化というものはまだ考えられていないということですから、場合によればこの問題を考えた法制度のあり方が問われる時期に来ておるような気がするのですが、これはさておいて、今言われたように、いろいろ個別には難しいと思いますが、やはり大きく考えてみると、制度資金の役割も大きくなったということであるし、今までいろいろ貸し付けの枠をふやしてくれとかあるいは償還期間を長くせよとか据え置きをどうせよとか、金利はできるだけ安く、こんないろいろな要望があった。確かに内容は、そういうものを取り入れて、そういう要素も相当入ってつくられておる。  その中で、特に近代化資金を中心に枠の二倍拡大論というものが出てきておる。今までの枠の二倍近代化資金を貸すことができることになる。そうなりますと、確かに農業は変わっておるわけですから大型の資金が求められておるという需要には対応できるけれども、逆にまかり間違えば、たくさん金を貸すことができるということが従来から言われている過剰投資、負債問題の倍加、負債をふやしていく。私どもはこの心配があるから、特にこの委員会の議論の中でも各委員の皆さん一番心配しておると思うのです。むしろ負債をだんだんふやしていくことになりはせぬかということになるので、負債を起こさせない、過剰設備や過剰投資にならないような対策を本法の改正の中でどういうふうな点で考えられているのか、これが私は気になっていけないわけであります。  私は、この間の農林水産大臣の所信表明に対して、改めて我が国金融の中に指導金融というものの性格づけや位置づけや具体的な内容をお考えいただきたい旨を申し上げた。大臣も同感だと言われた。局長考えてみましょうということであったわけであります。こういう問題を含めて、改めて、負債問題がやかましくなっておるだけに、この融資枠、限度額の拡大問題がそれにつながりはしないかという心配があるわけでありますが、これについてはどういうお考えでしょうか。
  68. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 制度なり予算という形で私どもが直接にできることと申しますのは、資金の借り手の農林漁業者の方々のいろいろなニーズにこたえた制度金融を利用していただけるような仕組みをつくる、借りられるようにするということでございます。それが過剰投資になりはしないか、さらに負債問題を発生させるようなことになりはしないかということでございますが、これは直接には、融資機関が行います融資に当たっての審査あるいは貸し付け後の指導といったことにかかっているわけでございます。  近代化資金につきましても、貸し付けに当たりまして都道府県なり農協等の融資機関が地域の実情に応じまして、農業者が導入しようと思っている施設なり機具なりが経営規模、経営内容にうまくマッチしているかといったことについて十分審査を行って適正な貸し付けをしてほしいということを、私ども機会あるごとに、そしてまた制度をつくったときの通達などでも申しているところでございます。限度額が引き上げられますと、一般論としては今までよりもずっと大きな金額を一人の個人が借りられる、あるいは一つの法人が借りられることになるわけでございますので、従来にも増してこういった事前の審査なり事後の経営指導あるいは資金の管理といったことについて気を配りながらやっていくことが必要だと思いますし、そういうことが行われれば、貸付限度額の引き上げが直ちに負債の増加、負債問題の深刻化というようなことを招くとは考えておらないわけでございます。
  69. 田中恒利

    田中(恒)委員 負債というのは、一口に負債と言うけれども、金を借りれば全部負債になるので、問題は、金を借りて逆に負債がますます多くなっていく、つまり焦げつき、固定化債権、返済不能資金、こういうものが問題だと私は思うわけであります。  いろいろな統計を見る限りにおいては、畜産が非常に大きい。それから果樹、養蚕、蔬菜、そういう大型のものが多いわけですけれども、一体負債の実態を農林省は握っているのですか。我が国農家や漁家や林家に一体どのくらいの借金があって、その中で回収不能が幾らで、これはこうすれば何とかなる、こういうようなものが把握されているのですか。
  70. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農家経済調査なり各種の金融機関の業務統計等によりまして、農業なり農家にどの程度の貸し付けが行われているか、農家の側から見れば負債がどのくらいあるかというようなことについては統計的にもある程度わかるわけでございますが、今先生御指摘の例えば融資機関にとっての不良債権がどのくらいあるかということになりますと、そういう不良債権、あるいは借り入れ側から見ますと固定化債務というものをどういう定義のもとにつかまえるかという問題もございます。単に元利の支払いがおくれているということでつかまえるのか、それもどの程度でつかまえるか、そういう場合にも担保がちゃんとあって債権が保全されているかどうかということもございますので、一本の数字としてそういうものを把握しているわけではございません。
  71. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは大臣の方に、事務当局はなかなか答えにくいと思うのです。  私もこの負債問題がやかましくなってきてから資料をいろいろ集めているのですけれども、例えば長期の負債資金制度をつくれ、こういうかけ声は言うのだが、しかし、その対象になるべき対象農家、対象経営部門は一体何だということについて、漠と畜産が一番大きいということは言えるのですけれども、正直言って的確に計数的に握ったものが全国的にはない。それぞれの県、私などの県にも一定の機関があって調査をして持っておる。私の聞くところでは、北海道の酪農が相当綿密に数年前にやられておるようであります。そのほか部分的に、制度資金の枠の中へ入って対象になっておるところで、指導の段階で、これはこういうふうにしなければならないということでつなぎ融資をやったり、借りかえをやったり、あるいは新しいものと切りかえたり、いろいろやっておる。そんなものはわかるのですけれども、全国的に数的に量的に我が国農林漁業がどれだけ焦げつきを持っているかということについての数字やデータがどうもない。新しい制度をつくれとかなんとか言ったらあなたのところも嫌がるだろうけれども、農林水産省の責任で全国的に的確な責任のある調査を一遍して、固定化債権、焦げつき、返済不能資金、こういったものを掘らないと、農家経済調査も正確にやっておるのですが、あれは平均ですから、しかも地域的な拠点ですから参考になりません。農協などが少なくとも地域では窓口になっているのだから、やる気になればそんなに難しいことではないと思うのです。何を基準に置くかといった問題もいろいろ難しいとおっしゃるけれども、そんなに難しいことではない。一定の基準も引けると思うのです。  これを一遍調査せられて、そしてどういうふうな政策をとったらいいのか、現行の制度の中でこういう分野はこういう方向の処理がよろしい、こういうことをやらないと――確かに高度経済成長段階、特に昭和四十年後半から五十年代にかけて我が国農家経済の中には負債問題、借金問題が非常に大きな問題でありました。そしてまた、これは農林水産省に責任がないとは言えない。例えば畜産に例をとれば、公社牧場制度というものが全国に出されてきた。これは畜産の資金を通しでなされてきた。当時私などもこれだと思った。思ったけれども、あのときの情勢と今日の情勢は違ってきた。確かにあのときはえさも安かったし、こういう程度という基準があった。逆に今見てみると、あの制度は設備投資が多過ぎて、四苦八苦しておるという現実が余りにも多い。ですから一遍この辺をこの時期に精査してみて、それこそ知恵を絞って対応策を考える必要があると私は思っておるのですが、この点についての大臣のお考えをお聞きしておきたいのです。
  72. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 調査というようなお話でございますので、若干私から答えさせていただきたいと思います。  農家の貯蓄と借入金の状況を見ますと、先生御存じと思いますが、五十八年度末で全農家一戸当たり平均では、借入金が百八十八万円、貯蓄が千三百二十八万円ということで、貯蓄が大きく上回っておるわけでございます。また、果樹経営につきましても、借入金が二百十六万、貯蓄が千三百二十二万ということで、全農家平均と余り変わっておりません。さらに、他部門と比較してみると、やはりどうしても大型の資本装備を必要とします畜産経営について見ますと、かなり借入金は多くなっておりまして、酪農経営で平均九百六十六万ということでございます。ただ、酪農経営の貯蓄の平均も千三百五十一万ということで、なお借入金を上回っておるという状況でございます。  もちろん地域、階層によりまして負債の問題があることは私どもも承知をいたしております。そのために災害等の場合の償還猶予でありますとか自作農維持資金の活用でありますとか、それから特に問題があると思われますのは主として畜産関係でございますが、畜産の分野におきましては酪農の経営負債整理資金あるいはかつて肉畜の負債整理資金というような措置もとられたわけでございます。  全体を一度調査してみたらということでございますが、先ほど申し上げましたように、個別の農家なりあるいは経営実態にいろいろ差がございますので、何をもって不良債権、固定化負債というふうにとらえるかという問題もございます。主として畜産関係に問題があるわけでございますが、酪農などの負債対策を講じます場合には、実態を把握した上で、その実態に応じた対策をこれまで講じてきているというふうに私ども考え、また承知しておるわけでございます。  なお、法律事項ではございませんが、そういった声も私ども非常に耳にいたしますので、六十年度の制度金融の見直しの中で自作農維持資金の再建整備資金につきまして、これまで貸付限度額の特認が八百五十万でございましたが、これを千五百万まで引き上げる措置を講じまして、この点でも農家の方々にお役に立てるようにしたいということで限度の引き上げを予定しておるということでございます。
  73. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  今局長の言ったようなことですが、例えば企業などを見ますと、決算表とか資産表を見ると企業の営業姿勢が大体わかって、売り上げが減っておるか、どこをどうしたらこの会社はよくなるかわかるわけです。そういう意味におきましては農業関係の指標にはそういうものが乏しいと思います。今局長の言った資料については恐らく兼業農家も入っておるのじゃないかというような感じがします。  畜産関係につきましては、先生御存じのことでございますが、五十六年でございましたか大型化について、三千数百戸でございますか、特に取り組んで、ことしはたしか最終年度で千八百戸だったと思いますが、これはかなり減ると思うのです。酪農、畜産関係にはかなりそういう負債対策をとっておるということでございますが、私考えてみまして、そういう資料は必要じゃないか、そういうことによって、本当に農家の実態がどうなっておるか、例えば兼業農家の場合、今収入がたしか六百四十万ぐらいで農業収入が約百万前後、一五%ということで、率直に言いましてなかなか価格政策までいかない、そういう形の中でどうしたらいいだろうか。こういうことで、資料はないよりあった方がいいような気がします。しかもこんな資料は、新しいものをつくらなくても、農協とか各県、自治体に言えばできてくる。そういうものを分析する。そういうものがあった方が今後一体どうしたら本当に日本の農業はよくなるかということに役立つと思うので、そういう資料をつくらせてみたいと思います。
  74. 田中恒利

    田中(恒)委員 ぜひ検討していただきたいと思います。  一つの資料をつくることが次の政策展開につながっていくということですが、今のこういう情勢の中では、事務当局御心配の面もあろうかと思います。今局長さんが言われた、制度の中でいろいろあるということは私もよくわかっておるのですよ。その中でも一遍、実際にどうなっておるのか、いつも農家の貯金がこれだけあります、貸し出しはこれだけです、北海道が比較的あれですというような数字しか説明されないのでは、我々ぴんとこない。我々は村に入って見ておるのです。平均はそういうことでしょうけれども、日本農業の先端的な経営を担当しなければいけない諸君で今倒れるところもある。まだ残っておるところもありますけれども。そういう連中はそんな実態心やないのですよ、負債問題というのは。特に畜産だけではありませんよ、果樹だって土地改良の問題だっていろいろありますよ。だからやはり議論の根拠になる、前提になる数字がないと、負債対策で長期低利の資金制度でやったってそれは極めて部分的なものしかつかまえていない。しかし、現実にそれぞれの県で、大臣が言われたように、物すごく正確とは言わぬが、ある程度実態に近いものをつかんでおりますよ。そんなものを参考にしながら、そしておたくの知恵も少し加えて、大臣も今ああいう答弁をせられたわけでありますから、ぜひこの点はやっていただきたいと思います。  それから、今局長さんの方からお話もあったわけですけれども、貸し付けの事前の審査、事後の指導をもう少しきめ細かく、しかも徹底して力を入れてもらいたいと思うのです。私なども貸し付けのいろいろな基準や仕組みや何かの資料ももらっておるのですけれども、これを見ただけでは、なるほどそうですかということで、国会の議論はそれで済むかもしれぬけれども、現場へ行ってみると、貸し付けの事前の審査という形で効果的に動いてない。事後の指導などもそんなに丁寧にされていない。事後指導がなされておるのは、畜産の負債資金でやらなければいけないというのがありますね、そういうものとか、畜産のこれだけの大型経営がぶっ倒れたら農協だってぶっ倒れるというので慌てて農協が立ち上がって、技術費を導入したり普及員の手助けもかりる、役場の手助けもかりるということで負債処理に躍起になっておる、そういうケースが各層に一つや二つあるのですよ。  そういうものはあるのですけれども、それは事が起きた役なんですよ。事が起きる前に農家に対する技術指導から経営指導から、金の借り方、使い方、こういう面の指導まで丁寧にやってもらわなければいけないと思う。これは基本的には貸付機関である農協、漁協、特に農協の比重は大きいと思いますが、そういうところがやらなければいけない問題であるけれども、同時に制度資金を流す場合に、そういうものにもう少し力を入れてやらなければいけないというような通達なり示唆なりをどんどん送り込んでもらわなければいけない。あるいは改良普及員もおるわけでありますから、こういうものの機能をもっと大胆にやらなければいけない。  問題は現場ですよ。金を借り入れる農家と、その農家の周辺の参画をしていく貸付機関である農協であるとか、あるいは保健所であるとかあるいは普及員であるとかいろいろな技術者、町村、こういうもの、しかもそれが、例えば総合施設資金なんかいろいろたくさんあるんだな。だから確かに地元で貸付審査なり、いろいろ相談事があるようですけれども、これが多いところは九つとか十とか十一ぐらいの団体が入ってくるのだから、ともかくいろいろな意見の交換に終わる、まあ極端ですけれどもね。そういう場もあって、焦点は、私は、やはり農家じゃないかと思うのですよ。農協の技術指導で相当進んできましたから、やはり一番農家は接近しているから、ああいうところにもっと中心になってやらせていくような方策、これを制度とまでは言わないけれども、行政指導の中で最大限できる方策をひとつ考えてもらいたい。  あえて言えば、特に今負債整理で躍起になって再建のために努力をしておる地区については、何かこの三月の末にも畜産のいろいろな対策、資金なんかが考えられておるようだが、一遍考えてみる必要があるのじゃないかと思うんですよ。これは皆相当力を入れて立て直しに躍起になっておる。私などもそのケースを幾つか知っておる。私自体も中へ入り込んでいろいろな注文を言っておるのですが、そういうところに対しては特別にそういう事後指導についての何か差し水でも、まあ予算化とまでは言わないけれども、何かそんなものを一遍考えてみませんか。そういうことをやればまた力づくと思うのですよ。そういうことを私は、指導金融のあり方として、現場を歩いてみて一番強く感じるのですよ。  これは具体的に言えばたくさんありますけれども、一遍検討していただいて、実態に合った今の事前の審査と事後の指導の徹底を期していくように、特に技術経営陣営を強力に参加をさせていく。そうでないと、やはり本当に内容は充実せぬと思いますから、その点を一つ、お願いというか要求をしておきたいと思いますが、いかがですか。
  75. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 大変現実実態にお詳しい田中先生から、事前の審査なり事後の指導についてのお話がございました。御意見に私自身も共感するところが多うございますが、反面また、制度金融で、特に公庫資金などで低利のものになりますと、いろいろ貸し付けの審査に非常に時間がかかって、申し込みをしてから何カ月も待たされる、これは困るから早く貸してくれというような話もございました。そういうことと慎重な事前の貸し付けの審査をするというようなことを両方兼ね合わせるということがまたなかなか難しいというふうな面もあることも、これも田中先生も恐らく御理解いただいていることだと思いますが、御指摘のような事前の審査なり事後の指導につきましては、これまでも農業改良普及事業だとかあるいはまた行政の関係者との連携というようなことも含めまして、制度なり仕組みとしてはいろいろ通達なども出ておるわけでございますが、これを活性化をするようなことにつきまして改めて検討いたしてみたいと思っております。
  76. 田中恒利

    田中(恒)委員 私、細かいことを言えと言ったら、申し上げたいことがいっぱいあるのです。確かにこの借り入れの手続なども簡素になりましたね。おたくのところに届くまでの書類は大分簡素になった。しかし、また反面、いろいろな関係団体が相談をするものだから、いろいろな意見があって、いわゆる裏づけのデータなんかというのは逆に厚くなってきておる。そういう傾向も強まってきておる。  それから、やはり金を借りるというのは農家が借りるわけですから、普及所や農協の指導部が設計して計画したものは魂にならぬのですよ。やはり借りる農民の意思が出てくるものでないと、これは返さなければいかぬのですから、そこで大体失敗しているのです。そういう意味では、やはりあくまでも自主的に、主体的に、いわゆる金を借りる人の意向というものを中心にしてこの制度の運用が図られていく、そういうものにしないと、制度金融全体はきちんとした仕組みの中で組み立てられているものだから、下へ行けば行くほど、なかなかえらいですよ。あなた方が何か一声言うたり、一つ文書を出したら、もう何もかもそれでやらなければいけないということになってしまっておるのですよ。そういうところにもこの制度金融一つの盲点があるのですが、その点も含めて、十分御意見もお聞きのようでありますから、再検討して適正な方法をお考えをいただきたいと思います。  それから償還方法の問題でありますが、今公庫の資金もいわゆる元利均等方式ですね。元本と利子が均等に毎年、据え置き期間が終わったら何年がやっておるわけですね。これは借りた方から言えば、大体農協の口座などから引き落としていくものだから、自分が幾ら借金して、幾ら後に残っているのかようわからぬというのが多いのですよ。多いのですが、わかってみると、毎年五万なり六万なり引き落とされているということで、まあ精がないというわけだな。やはり努力をして、実が実ってくれば償還金もだんだん少なくなっていく、こういう方式がいいなあと言う人もおる。そういう意味では、住宅金融公庫などのように、初めは大きいけれども、年数がたつに従って少なくなって、やがてなくなった、働けば効果が上がるぞ、こういう励ましになるという意見もあるのですね。これは元利不均等方式。だからこの二つの方式をいわゆる借入者の農家の選択に任していく、こういうことを考えてもいいのではないかと私は思うのですがね。この償還方式のあり方について、私は、現在の均等方式を不均等方式にして、返るものは返っていくのですから、二十年なら二十年の土壇場には。それでもいいのじゃないかと思っておるのですが、これも一遍御検討いただきたいと思いますが、いかがですか。
  77. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 制度金融の償還方法につきましては、公庫資金と近代化資金で若干違っております。公庫資金におきましては年賦償還または半年賦償還が原則で、事業効果の発現とか借入申込者の希望等を勘案して元利均等償還、元金均等償還または元金不均等償還のいずれか最も適当と認められる方法によるということになっておりますが、農業の場合は元利金の返済を均等にするということで元利均等償還方式が多くとられております。なお、元金不均等償還と申しますのは、災害等特殊な場合に適用されるものでございますが、公庫の貸し付けの実績はごくわずかなものでございます。  近代化資金の場合には、各年元金均等償還というふうにいたしております。また、契約上の分割償還期日はできるだけ借入者の便宜を図るということで、生産物代金の受領期を選ぶように指導いたしております。この元金均等償還になっておりますのは、借り受け者の金利負担の総額ということを考えますと元本均等で返していただいた方が全期間を通じての借少受け者の支払う金利の額が少ない。それともう一つは利子補給制度をとっておりますので、元金均等で計算をした方が利子補給額の計算もしやすうございますし、またその利子補給に必要な財政負担も安定化するというふうなことから、こういう方式になっておるわけでございます。  不均等償還方式というお尋ねがございましたが、将来経営が伸びていくに従ってだんだん返していく額が少なくなるようなということでございますが、これは裏返しますと借りてすぐ余計返していただくということにもなるわけでございまして、私ども今まで承知しております限りでは、そういう御希望が非常に強いというふうには実は思ってなかったわけなんでございますが、先生の御質問の中に出てまいりましたので、どの程度そういう希望があるかということを含めて一度検討させていただきたいというふうに思っております。
  78. 田中恒利

    田中(恒)委員 これはいろいろ実際実務をやっておる専門家がおるわけですから、そういう皆さんの意見を聞いてみてください。  ただ、私などは果樹地帯におりますが、果樹というのは植えつけてから何年かというのは収量はないわけで、確かに据え置きもあるわけですけれども、しかしでき始めてから少しずつですからね。そして七年とか八年とか、木が十年とかが最盛期ということになるわけです。だからそういう時期には実入りが出てくるわけですから償還もできるという理屈にはなる。老木になればだんだん収量も逆に落ちるということがあるから、そういう面では、所得、収入に応じて償還金も上がったり下がったりというわけじゃありませんけれども、そういう方式だって常識的には考えられるじゃないか、こういうことも考えておるわけでありますけれども、これは実際の実務者がおるわけですからよく検討していただきたいと思います。  それからこれは実はまだ十分私自身のあれは煮詰まっていない面もあるのですけれども、信用基金協会ですね。これは債務保証をやるわけですから非常に重要な機関でありますので、何といっても強化をしなければいけないのですが、これは各県でやっておるものだから各県の味のあるものがあると言えばそれまでだが、やはり何か全国的に一つの基準というか、基準をつくることがいいか悪いかということもあるのでしょうけれども、何か一つの目安のようなものを持って、特に全国的に需要の高いものは対象にしていくとか、あるいはこれは員外で、組合員でない者は入れないということにもなっておりますね。そういうものの枠もふやしてほしいというような要望もあるわけでありますが、そういう点、共通の問題は一遍全国的に対応をさせるようなことを考えられないかどうか、これもちょっと御意見をお聞きしておきたいと思うのです。
  79. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農業信用基金協会におきましては、この農業近代化資金のほか、農業者等の事業または生活に必要な資金の融通の円滑化のための債務保証業務を行っておりますが、近代化資金等の制度融資につきましては、確かに制度金融でございますので一定の基準で指導を行っておりまして、統一的な運用になっております。これ以外のいわゆる一般資金につきましては、やはり地域の実情に応じて融資機関等の保証ニーズによって実施することが適当であるというふうに思っておりますので、対象資金なり保証料率等は県のそれぞれの農業信用基金協会の取り扱いにゆだねられておるところでございます。  こちらの方のいわゆる一般資金につきまして、国がこういうふうにやった方がいいというふうなことを統一した指導をするのがよろしいかどうかという点につきましては、先生ちょっと言われましたように、地域の実情なりそれぞれの融資機関ごとの保証ニーズというものをむしろ優先して考えた方がよろしいのではないかなと実は思っておりますが、ただ、それで何か弊害が出る場合には何か統一的な指導もしなければいかぬかというような気持ちでございます。  いずれにしましても基金協会の業務はなかなか大事な仕事でございますので、関係農家の保証需要に一番マッチするのはどういうやり方かという観点から考えてみたいというふうに考えております。
  80. 田中恒利

    田中(恒)委員 次に、自作農創設特別会計が農業経営基盤強化措置特別会計へ移行するわけでありますが、この財源の見込みはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  81. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えをいたします。  いわゆる自創特会がこのたび農業経営基盤強化措置特別会計になるわけでございますが、事業内容を大別いたしますと三つございます。一つは従来自創特会で経理をいたしておりました政府が行っております農地等の買収、売り渡し等の事業でございます。二番目が農地保有合理化促進事業関係でございます。この事業に対する助成、これが新しく加わる事業でございます。三番目が、これも新しく加わるものでありますけれども農業改良資金関係政府の貸し付けでございます。  それで一、二につきまして、つまり旧来の自創特会とそれから農地保有合理化促進事業関係でございますが、この事業の財源につきましては、現在国が持っております国有農地等の売り払い収入でもって原則的に賄っていくという考えでございますが、なおこの財源でも不足するような場合には、昭和五十九年度末の剰余金の合計といいますか、積立金はまだ確定的な数字ではございませんが約三百二十億円ぐらいになる予定でございますが、この積立金を崩していく、こういうように考えておりまして、少なくとも今後当分の間は一般会計の負担を求めないでやっていける、こういう見通してございます。三の農業改良資金の財源につきましては、これは農業改良資金の償還金でありますとか一般会計からの繰り入れでもって賄う、こういうことに相なるわけでございます。
  82. 田中恒利

    田中(恒)委員 そうしますと、これは国有地の売り渡し、農地等の売り渡しの収入で大体建前としてはやっていく。それで足らない場合には三百二十億かの剰余金、これを崩すということ、その後になお足らない場合は一般会計ということですか。ことしは一般会計百億ほどありますね。来年はこれはもうないのですか。
  83. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 お尋ねのございました百億円は農業改良資金関係でございまして、これは金額にしまして今度の生産方式改善資金の中の新しく設ける資金の新規貸付額の三分の二を国から貸し付けるわけでございます。今後につきましては、一方で農業改良資金関係の償還金がこの特別会計に入ってまいりますが、その財源、それから六十一年度以降の貸付計画、そういうものをにらみ合わせまして、国の一般会計から今度の経営基盤強化措置特別会計への繰り入れについては、予算の問題として毎年収入を見通しながら必要なものは計上していくという考え方でございます。
  84. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは私が心配せぬでもいいかもしれませんけれども、この会計ができて農地の売り渡しの業務が相当進んで、そして剰余金ができてだんだん会計が豊かになっていくというふうに考えられておるのか、積立金を崩さなければ、積立金も足らなくなって、一般会計に頼まなければいけないというようなことになるのか。一般会計は建前としては使わないということのようですが、これも臨調行革のあれでしょうが、大臣、やり方によってはこれは大変なものになるような気もするし、やはり一般会計からの繰り入れということを前提に置いてないと、なかなか特会の経営基盤の強化というものが、本格的に動き出したらなかなかやれないのじゃないかというような気もするわけです。そういう面では両方に的を置いておかないといけないと思うのですけれども大臣の方は、一般会計の繰り入れというものを十分想定をし得ることなのか、これは全然だめなのか、そこのところをお聞きしたいし、局長の方は、見通し、これはあるのですか、今の農地の売買のあれで。今まで例があるのだから、おおよその見当は立っておるわけでしょう。
  85. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 現在国有農地は約千四百ヘクタールぐらいございまして、これを各年次計画的に売却してくるわけでございますけれども、将来的には確かにこの農地の売却収入がだんだん減ってくるわけでございまして、これは各年度の予算でどのような中身の予算を組むかということと関連いたしますけれども、一般的に申し上げますとだんだんと積立金の取り崩しが行われてくるということでございます。最終的には積立金の取り崩しをしてもなお財源が不足するような事態も予想されるかと思いますが、そういう場合には一般会計から繰り入れる、こういう規定がございますので、この規定の趣旨を踏まえてやっていく、こういうことに相なるかと思います。
  86. 田中恒利

    田中(恒)委員 あと時間がわずかですから、一括して二、三質問してお答えいただきたいと思いますが、公庫資金については農地取得資金というものの需要が非常に大きいのですね。だから、末端では必要なときに資金の手当てができない、こういう声を大分あちこちで私などは聞くわけであります。特に、私の地帯は果樹地帯でございますが、果樹もこの数年来、去年は御承知のようなことで少し価格がよかったわけでありますが、もう十何年ほとんどミカンの値段は変わりませんでした。ですから、耕作をしない農家がだんだんふえてきておるし、農地の流動化促進の要因を形成しております。一方では、非常に熱心な、農林省の言う中核農家というのか、そういう諸君もおるわけで、土地を広げたい、こういう声が、動きが高まっておる。そういう意味では構造改善一つの時期にあるような気もする。ところが、資金の手当てがないということをよく我々も聞くのですね。団体の方からもこの声はよく聞くし、全国的に統計を見ても農地取得資金に対する需要は非常に大きい。  そこで、これは予算としては毎年相当力を入れておるということもわかるわけでありますが、なおそれでもということもあるし、それから申し込みをするときと取得をするときとのタイミングがうまく合わない。片一方、放す人がいないと買うことができないわけですから。初め年度できちんと計画を決めて、年度の計画にのせて枠を町村ごとに割り当てて貸すということになっておるものだから、そのときにはわからない。不確定要素なんですね。ところが、途中で、あそこの家がもうじいさん亡くなって跡取りがいない、土地が何とかできるぞ、やりたいと思っても、そのときは間に合わない、こういうことがあるのですよ。そういうケースが非常に多いのですね。そういうものを何とかつないでいくものを考えたらどうだろうかというふうに私などは思いますけれども、いずれにせよ、土地取得資金の取得の計画とそれから実施との間に妙なちぐはぐがありますから、ここのところを行政的にそういうことのないような処置を一遍お考えをいただきたい、これが一つ。  それから、総合施設資金、地域農業再編整備資金、これはいわゆる公庫資金のほかに近代化資金と、プロパーと、この三つを合わして総合的な資全体系の中でということなんですね。しかもこの趣旨は、決してこの三つの資全体系だけじゃなくて、やはり個別の金融から総合的あるいは農家立場からいえば農業経営という大きな視点に立った近代化資金その他を含めて考えていかなければいけないと思うのですね。だから、趣旨とするところは非常にいいんですよ。ところが、現実にこの総合施設資金なんかの内容を見てみると、相変わらず公庫資金、片一方は近代化資金あとのプロパーや近代化資金というものはほとんど使われていない。五十八年の数字を見たって、公庫資金は三百十八億、近代化は一億三千万、プロパーはわずかに五千三百万、こういう組み合わせになっておるのですね。これでは全然効果を発揮していないということなんでありますが、これは一体どういうところに問題があるのか、これは将来どういうふうにしていくのか、この点を明らかにしておかないと、これは全体のこれからの資金のあり方の基本に関する問題でありますから、私は特にこの点についてはお尋ねをしておきたいと思うのです。
  87. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 農地等取得資金に対する資金需要でございますけれども、近年かなりふえてきております。規模拡大を希望する農家でありますとかあるいは農家経済の状況等によりまして、こういった資金需要がふえてきているものと考えておりますけれども、五十九年度におきましても、当初枠、これは七百億円を計上したわけでありますけれどもあと年度途中で五十億円を追加する、こういうことでございまして、資金需要に対しましておおむね対応できるようなことになってきていると思います。  それから御指摘の、貸し付けの認定と具体的に貸し付けをする時期との調整の問題でございますけれども、これにつきましては、各地域若干の特徴がございまして、一部の地域につきましてはその貸し付けの決定とそれから貸し付けが実際に実行される時期とのずれが見られるような地域もあるようでございます。この点につきましては、仰せのような、貸し付け決定と貸し付けの実行まで余り期間が置かれないような、ちょうどタイミングよく貸し付けがされるような、そういうことにつきましてはよく工夫を凝らしていかなくちゃいけない、このように考えているわけでございます。  なお、つなぎ資金の話が出ましたけれども、これはなかなか制度資金で対応するというのは難しい点があるのじゃなかろうかというふうに考えております。
  88. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 総合資金が実態上は総合施設資金中心になって、農業近代化資金やプロパー資金の貸付実績が非常に少ない、まさに御指摘のとおりでございまして、金額でも、お述べになりましたが、件数比でも五%にも達しないような低い件数比率で農業近代化資金あるいはプロパー資金が貸し付けられているような実態でございます。これは総合資金という制度のねらいからしますと、大変予定されていない、また建前上は問題になる事項でございますが、こういう事態を解消してできるだけ総合資金という名前にふさわしい、公庫の資金とそれから近代化資金あるいはプロパー資金、いわゆる運転資金、これらが総合的に貸し付けられるようにしたいわけでございます。しかし、実態的には、御承知のように総合資金ということでこれら資金が一緒に貸し付けられる場合もございましょうが、同時に、農業近代化資金やプロパー資金、運転資金の方は、農協とのいわば経常的な――組合員との間の融資関係の中で経常的に貸し付けられている。総合資金の方は、総合改善計画をつくりまして一回限りというか、回数が少ないわけでございますので、そういう関係から、本来ならば総合資金で一体的に貸し付けられるべき近代化資金あるいはプロパー資金が経常的な融資の方に移っていっている。こういうことはちょっと言いわけでございますが、そういうことが原因ではなかろうかと思っております。  この総合資金の本来のねらいは諸資金の総合的な融資でございます。これからこういうような制度の目的が達成されますよう、有効な、すぐ効果の上がる手段というのはなかなか難しいわけでございますが、関係機関に対しましてそういう制度のねらいに即した運用に一層努めるように指導してまいりたいと考えております。
  89. 田中恒利

    田中(恒)委員 ちょっと私、いろいろ意見を申し上げたいことがあるのだが、時間があと五分という連絡がありましたので、いずれこの問題は少し時間をとって私の問題意識をこの委員会でも明らかにさせてもらう機会を得たいと思っております。  本法の改正の前提には考えていないという前の委員会の御答弁をいただいておりますが、金融の自由化という問題であります。これは既に本年の三月からMMC、つまり市場金利の連動型預金というものが農協を含めて各金融機関から発足をしている。これは超大型、五千万以上、一カ月五・七五%というのだから大変な高金利ですね。しかし、幸か不幸か農林漁業者で五千万からの金を預金する人はいませんけれども。しかし、このMMCは恐らく五千万から二千万、一千万、その辺まで下げていくだろうと言われておりますし、これが第一弾と言われておりますが、これに引き続いて小口の金利の変動性、これも日程に上ってき始めておる。  現に私ども、この間静岡へ調査に参りましたが、新幹線のあの付近の農協などでは既に利用高に基づく預金金利のランクが実施をされておる。貸し出しについても考えなければいけないのじゃないか、これは協同組合の一人一票、平等の原則に反するということで、恐らく協同組合内部でも大変な意見の対立というか、あれが出てくると思うのですね。そういう問題が現実問題として地域においては既に行われ始めておるし、都市型と農村型とで大きく見解も違ってきておる。そしてこの金利自由化が、今日預金がだぶついて貸し出しが冷えておるという状態の中で、特に預金者、しかも先ほどもお話があったように農業所得よりも兼業所得が大きい、こういう中になっていけば、貸し出しの体系などについてもいろいろ厄介な問題も出てくると私は思います。  いずれにせよ、この金融自由化という問題は大変な影響を農村、農業には与えてくると思うのです。そういうことが今しかれておる農林漁業金融制度の中に非常に大きな影響を与えると思いますから、早くこれに対する考え方や対応の方針を制度の基幹としても打ち立ててもらわなければいけないし、いろいろ関係団体と研究会などはつくられておるようでありますが、早く対応して、特に関係農家あるいは末端の機関に対してこれに対応するだけの体質をつくらせなければいけません。  しかし一方、このことは機械化の進行などでコストを高めていきますから、一面非常に難しい問題をたくさん持っております。そこで、この問題で一番今私の頭にあるのは、やはり団体のあり方という問題が大きな問題になるような気がしてならない。金融ですから金融の問題を取り上げてみても、公庫はいわゆる長期低利の、他の金融機関がやれないというところに特色を出して、だから私はあえて大臣にも三分五厘というのを死守しなさい、こう申し上げ、利子補給制度というものも断じて後退してはいけない、こう申し上げたわけであります。公庫がある。その公庫は東京に本店があるが、支店は相当なところにある。そこで県庁所在地へ行くと信連がある、中金がある、そしてさらに単協が相当大型化しておる。こういう団体問題にまで影響していく要素を持っておると思うのです。しかし団体問題は、これは特に政治家は余り口を出しにくい要素が非常に強い。私も団体の出身ですから、河野さんの団体再編成以来よく経過を知っているわけでありますが、この金融自由化がもたらす団体の組織のあり方の問題は、金融を取り扱っておる機関にとどまらず全体的に影響を与えるような気がしてなりません。  同時に、本来の団体の機能なりあるいは何をやっていくか、地域密着型の金融体制をつくらなければいけないなんということも盛んに今言い始めてきておるわけですね。あるいは総合的な信用、販売、購買。確かに借金の問題一つとってみたって、単協の中で金を貸すところと、そして指導するところと、それから売るところと、そこのところがばらばらになっておるところもある、だから農家にしてみれば、金を借りて、金利を出して、えさ代で、購買未収金で、これは金利も高い、物すごく金利がかさんできておるという認識が非常に強い。そういう問題を含めて対応しなければいけない段階に今日立ち至っている。これは非常に重要な問題だと思っているわけであります。  この問題について改めて大臣なりの御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  90. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まさに、金融自由化なりこれからの農業系統金融の問題点の主なところを全部田中先生の御質問の中で出されたような気がいたしております。私どももこの金融の自由化等に対応しましてこれから系統信用事業がどうやって健全な事業展開を図っていくかにつきまして、今行政と関係団体の実務者レベルの検討会というようなことで種々検討もいたしておりますし、六十年度予算の中でこの金融自由化が農協信用事業なりあるいは農協経営全体にどういう影響を与えるかというような分析検討等を行う予算なども計上いたしまして、今その検討に取り組んでいるわけでございますが、お話の中にもちょっとございましたように、これは団体の側の自治の分野に属する事柄についての一つのコンセンサスづくりが必要な要素も非常にございます。  たまたまことしが三年に一度の全国農協大会ということで、今後の三年間の農協運動あるいは農協の事業運営につきまして基本的な方向づけを下部討議にかけながら集約をして、ことしの秋に固める。その中で金融自由化なり、あるいはもっと大きく申しますと、通信の機械化というようなことも含めました新しい情勢変化に対応して、農協信用事業あるいは農業協同組合の事業全体、その執行体制も含めましてどうしていくかということのコンセンサスづくりが行われることになっておりますので、そういった系統内部のいろいろな議論と並行して、できるだけ話を詰めてまいりたいと考えております。
  91. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えします。  今、局長が答弁したようなことは、実は私の選挙区で、ある人が農協から金を借りておりました。ところが、ある相互銀行で金を借りたら二%金利が安かったのです。これが現実の姿。したがって、今の農協等を含めて信用事業が約五割の収益を上げていますが、大変なことの一つです。そんなことで、いわゆる金融自由化を迎えまして、いろいろな諸問題がございます。そういう形の中で一体どうしたらいいかということで実は我が省もよく勉強し、そういう形の中に団体、系統農協をよく指導し、そしてそういう形の中で金利自由化に向かって今の団体を強くして、本当に農林水産業の役に立つような指導をいたしたいと考えております。
  92. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 午後一時半から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十四分開議
  93. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上西和郎君。
  94. 上西和郎

    ○上西委員 私は、今回提案をされております農林漁業金融三法に関し、基本的な批判を抱きながら、まず総体的に順次質問を申し上げ、大臣以下関係各位の見解あるいは所信、現実の姿等について御説明をいただきたいと思うのであります。  まず、基本的な政策課題から申し上げます。  最近の中曽根内閣のとってきている基本的な政策から見て、農林漁業に対する従来の補助から融資へと、どう見てもこういうふうに形が変わってきているように見受けられてならないのでありますが、融資へ切りかえていこうとする本音は一体何なのか。と同時に、今農業の中で最も大事だと言われております構造政策関連の三・五%資金が、一部とはいいながら五%へ切りかわっていくというのは、だれが何と言っても後退ではないか。こうしたことについて、まず大臣、基本的な本音をざっくばらんにおっしゃっていただきたいと思うのであります。
  95. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  今回の農林漁業関係の制度資金の改正には、二つ大きなねらいがあると思います。その一つは、現在の諸情勢の変化に対応しまして、足腰の強い農林水産業の育成のためさらに農林漁業投資を積極的に推進していく必要があること、それからもう一つは、財政効率的運用等を図るため効果的な助成手段の確立が必要である、この二点を中心にいたしまして、各資金制度の特性に応じ、資金種目の拡充等内容とした改善を図るものでございます。  すなわち、先生御存じのことと思いますが、無利子資金である農業改良資金の再編拡充、あるいは近代化資金の貸付限度額の引き上げ、公庫資金の貸付対象の拡大等、各種の内容の充実を行うとともに、御指摘の三分五厘資金について構造政策等の推進の方向に即した重点化を図っているところでございます。  そんなことで、一番大切なことは、真剣に農林漁業の振興に取り組む者への円滑な資金の供給に配慮しており、全体としては補助から融資への方向及び農林水産政策の推進方向に即した内容となっていると考えております。率直に言えば、非常に厳しい財政状況のもとでございますが、財政の効率化を図るとともによい農林水産業をつくるというふうな形でこの改正をいたした、このように御理解願いたいと思うわけでございます。
  96. 上西和郎

    ○上西委員 ただいまの大臣の御見解については後で総体的に改めてお尋ねをしたい、若干反論も試みたい、こう考えております。  それは後に譲るといたしまして、次にお尋ねをしたいのは、今回の金利の若干の変更といいましょうかアップ、あるいは新しい資金制度の制定、そうしたものを見ていきますと、従来農林水産省が、言うならば日本政府が、公庫資金、さらには近代化資金、それに加えて系統プロパー資金、これらの三つについては一定の区分といいましょうか、運用面についてきちっとしたものがあったようでありますけれども、どうも今度見ておりますと、よく言えば混然一体となっての活用といいましょうか、ずばり言えば何か適当に都合のいいところにごちゃごちゃつけてしまおうという感じがしてならないのであります。私も当選してまだ日が浅うございますから言葉が過ぎるかもしれませんが、この三つの資金の任務分担、役割の調整といいますか果たすべき分野、こうしたことについてはいかような御見解をお持ちか、お示しいただきたいと思います。
  97. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  農林漁業関係金融制度として、お尋ねの中にございましたように、農林公庫資金農業近代化資金、プロパー資金、大きく三つ代表的なものとしてあるわけでございますが、これは私どもとしましては相互に役割分担があるというふうに考えております。  もちろん灰色分野という部分もございますけれども、大きく申しますれば、農林漁業金融公庫資金は、農林漁業の生産力の維持増進に必要な生産基盤の整備でありますとか経営構造の改善等に要する資金でございまして、財政資金を原資にしておりますので、貸付期間としても長期、また公庫という政府関係金融機関から融資をするということで、政策性がかなり強くて低利のものを貸し付けるというのが公庫資金でございます。  近代化資金につきましては、農業者等の資本装備の高度化なり経営の近代化を図りますために、系統の原資を活用いたしまして、これに利子補給なり債務保証をつけまして、系統金融機関等の自主性をも尊重しながら、一定政策性の範囲内で中長期の設備資金等を供給をするものというふうに考えております。  それから、プロパー資金につきましては、系統金融の中で要綱融資というふうなことで特別の系統独自の仕組みをつくっているというようなところもございますけれども、大きく申しますれば、組合員等の預貯金を原資にいたしまして、農業者等の必要とします飼料代でございますとか肥料代等の営農資金、それからまた住宅ローンでありますとか自動車ローン等々の生活資金を一般的に融資をする、こういうふうな概念的な区分けをいたしておるところでございます。
  98. 上西和郎

    ○上西委員 ただいま局長からお答えがありましたが、そうした従来とり行ってきているその分担の果たしている実態、これは今度の三法の改正によっても原則的には変更がない、こう確認しても構いませんか。
  99. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 そのとおりでございます。
  100. 上西和郎

    ○上西委員 では、質問を進めさしていただきます。  次は、一転して林業の問題であります。  昨年私は国有林野三法の質問のときに、時の山村大臣さらには秋山長官に、森林の持つ公的機能を無視して赤字の林野と言うなという意味の質問をした記憶があるのでありますが、今回この提案を見てみますと、林業生産活動の活性化並びに森林の持つ公的機能の高度発揮と極めて立派な表現がとられておりますが、こうしたことを具体的に発揮させる施策があるのかどうか、金融制度が幾らあってもそれに並行してそうした行政面での的確な措置がとられなければ、文字どおり仏つくって魂入れず、こういう結果に終わるのではないかと思いますが、この辺についての具体策がおありならばお示しいただきたいと思います。
  101. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 今回のこの融資制度の改善によります内容を活用することも大事な柱ではございますけれども、林政の現在の苦境を打開する道は、基本的には木材のよさをさらに啓発、普及して需要を拡大していく、相当失われてまいりました木材の失地を回復するということで、この需要拡大に取り組むことが最大である。  次には、目下の急務は間伐でございます。間伐につきましては、生産、販売、加工に至るまでの一貫した流れを活性化するための予算、このマイナスシーリングの中で間伐につきましては昨年よりふえております。そういうふうなこと、それから造林、林道等の基盤整備等々ございます。  担い手対策もございますが、まずは需要拡大と間伐、これを大きい柱と考えております。そういう施策と今回のこの金融制度の改善とが相まって効果を発揮すると考えております。
  102. 上西和郎

    ○上西委員 お答えはそれなりに理解いたします。特に、今おっしゃった間伐問題等につきましては、我が党の農林水産関係議員が大蔵大臣のところに押しかけまして話をしましたら、竹下大蔵大臣は、私も出身地の関係で除間伐の必要性は痛感しておる、こういったことがありまして予算がとれた、役割を果たしたと思っておりますので、それを御活用いただきまして、ぜひ今おっしゃったことをよりきめ細かに実行していただくようにお願いしておきたいと思います。  四点目は、これは私もまだつまびらかにしないのでありますが、選挙区などを回ってみますと、公庫資金においては漁業関係がどうも冷遇されておる、金利が高いのではないかということをちらちら耳にするのでありますが、実態はどうなのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  103. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 水産庁、どうしました。
  104. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私、かわってお答えをさせていただきたいと思います。  公庫資金の五十八年度の貸付決定額ベースで申しますと、水産関係資金の平均金利五・九%ということでございまして、農林漁業全体の農林公庫の平均金利が約五%ということでございますから、水産関係資金押しなべて平均をいたしますと、〇・九%ぐらい高いという数字的な結果になっております。これは農林漁業関係資金におきましては、農業関係あるいは林業関係につきましては、農地取得でございますとか林地取得でございますとか、あるいはまた土地改良資金でございますとか、こういう非常に長期に回収を必要とし、そして同時に一番基盤的なものの融資がかなり高い比率を占めておりますので、先ほど申しましたように、平均の金利がやや低くなっているわけでございますが、漁業関係はそういった、例えば農地等取得資金でございますとか林地取得資金のようなものがございません関係で、漁業関係につきましても沿岸漁業構造改善事業の三分五厘資金というようなものはございますけれども資金の種類の関係でそういう結果になっておりまして、必ずしも漁業だけが特に冷遇されているというふうには私ども考えておらないわけでございます。  なお、午前中の長官の御答弁にもありましたように、漁業経営が非常に厳しい状況に置かれておりますので、予算上のいろいろな緊急融資制度というようなものも水産関係ではいろいろとられているということを申し添えたいと思っております。
  105. 上西和郎

    ○上西委員 私、ちょっと質問から外れますけれども、初年兵ですから、昨年の初質問から今日まで、俗に言う質問取りを受けるときには、諸先輩の体験等をいただきながら私なりに答えてきて、質問の順番その他を、あらかじめ申し上げたことについて私は狂わしたことはないと思っているのであります。  なぜ答弁する方がいないのですか。あなたが左右前後を見てから手を挙げられたでしょう。どなたかほかにおられたのでしょう。そういうことであるなら、僕は質問をやめますよ。ちゃんと言って、事前にわかっていて、答弁者が決まっていて、その方がなぜ座ってないのですか。いかに何でもひど過ぎますよ。僕は委員の方々の出欠まで言わぬ。しかし政府の方々が、あらかじめ予定された答弁者がいないとは何事ですか。そのことについて明確にお答えください。
  106. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 大変先生のお怒りはごもっともと思いますが、実は率直に言いますと、これは私がよくなかったのでありまして、鯨の問題を控えておりまして、どうするかということで今私が指示をしてちょっと外さしているわけでございまして、すぐ参りますから、申しわけございません、よろしくお願いしたいと思います。  そんなことでございますが、私がよくないということで、お許し願いたいと思います。
  107. 上西和郎

    ○上西委員 私は大臣におわびをいただこうとは思わない。ちゃんと、正直言って、どなたが夕べ見えたかもわかっていますよ。僕はけさでもいいと言ったら、いや、ぜひ今夜のうちにとおっしゃるから、国家公務員の方が、いつも言うように日本のために、国民のために頑張っていることはよく承知しているから、私は夜九時までかかって私なりに申し上げた。それなのに、質問したときに答弁する方がいないとは何事か。確かに大臣は今、それはやはりあなたのお立場ではそう言わざるを得ぬでしょう。しかし、私に答弁する人がここにいて、それで捕鯨の問題に資料が、答案ができないようであれば、それではちょっとお粗末ではありませんか。農林水産省、水産庁、どこがどうかわからぬ、私はどなただったか知らぬけれども、今、非常に不愉快な思いをしました。――あとはいいのですね。質問をやっていっても答弁される方がおるのですね。そのことをまず確認してから質問さしていただきます。
  108. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 全部そろっております。大変申しわけありません。
  109. 上西和郎

    ○上西委員 では、引き続き質問させていただきます。  次は、改正の内容についてややきめ細かにお尋ねをいたしますが、現在、総合施設資金の利用者は大体どの程度おられて、その方たちの農業経営の実態は一体どうなっているのか、その辺についてお答えいただきたいと思うのです。
  110. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 総合施設資金でございますが、四十三年発足以降、五十八年度末までで見ますと、貸付状況は、個人約三万一千件、法人約一千件でございまして、金額では合計約五千三百億円となっております。  戻しの利用者の状況でございますが、作目別で申し上げますと、酪農を中心としまして畜産関係が全体の六六・三%を占めております。このほか多いものを申し上げますと、稲作が一一・五%、施設園芸が九・九%、こういうような状況でございます。  さらにつけ加えまして、こういう経営改善の状況を二つの指標によって見ますと、借り入れましてから五年経過時点で農業所得目標が決まっておりますが、その達成率で見ますと、八割以上のものが約六五%、また、規模拡大目標が決まっておりますが、これもこちらの方の達成率で見ますと八四%、こういうような状況でございます。  これらの指標によって見ますと、こういう借入農家の方々が、それぞれの地域でそれぞれの部門の農業のかなり中核的な担い手として活躍しておられる、こういうふうに考えております。
  111. 上西和郎

    ○上西委員 ただいまのお答えでいきますと、農水省当局の実情把握によれば、この総合施設資金は十二分に活用されその効果を発揮している、こう受けとめても構わないと言われているが、反面、未達の方々はどうなっているのか、中にはこれの借り入れのために逆に負債にあえいでいるような実態はないのか、完全に行き詰まり、失敗して、むしろ離農しているようなことはないのか、そうしたことについて、実情があるならばお示しをいただきたい、こう思うのでございます。
  112. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 現在、先ほど申し上げましたような経営規模あるいは所得目標で、特に規模拡大の方は八四%というような達成状況になっておりまして、お尋ねのような負債等、農業経営の破綻のような状態の問題については、私ども今までのところは調査をしておりません。これはもちろん負債でございますから、公庫資金の未償還分も含めまして負債がないわけではございませんし、その償還状況についてもよくチェックすべきものと考えておりますが、現在のところでは、御質問ございましたような点につきましてはまだ調査はしておらない状況でございます。
  113. 上西和郎

    ○上西委員 では要望しておきます。  極端に言うと、計画に沿ってよくなっているところをお調べになる、これはだれでもできると思うのです。嫌なことを調べて、なぜそういったのがレアケースであっても出てきたか、それを原因を追求し、実態を確認し、そしてこういう法改正のときにそうしたことを取り入れていくところに行政の責任があるのじゃないでしょうか。そうした意味合いで、固定貸しの実態、中には流用者のはないのか、そうしたことを含めて調査をしていただきたい、このことを率直にお願いをしておきたいと思います。よろしく御配慮ください。  次に第二点は、今回融資条件を一定程度緩和して利用者の範囲を拡大しよう、こういうような意図が出ておりますが、この本当のねらいは何なのか、また、従来ありました段階的融資制度とはどこが一体違うのか、明確にお答えいただきたいと思います。
  114. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 従来、総合施設資金いわゆる総合資金につきましては、お尋ねのございました段階的融資という制度がございまして、これとの関係で今回の改正の問題も私ども検討してまいったわけでございます。  段階的融資につきましては、御承知のように二段階に分けて貸し付けるというようなことにしておりますので、やはり最終の目的法律に規定いたしますいわゆる自立経営、こういうことになるわけでございます。そういうことで、段階融資の要件、その適用については、借り受け例あるいは貸し付け側において、計画の確認等の点、あるいは二回融資という点についてなかなか難しい点があることが原因になっておろうかと思いますが、従来、五十一年制度発足、五十二年以降の貸し付けで段階的融資が百四十一件ということで、割合少のうございます。  今回の改正は、こういう状況も踏まえまして、法律に規定しておりますような「育成することにより自立経営になると見込まれる程度の農業経営」、こういうことで、若干そういう意味では、いわゆる自立経営志向農家というような範囲にまで対象を広げていくということでこの資金の活用を図っていきたいという考え方でございます。
  115. 上西和郎

    ○上西委員 わかりました。  それでは重ねてお尋ねしますが、私の乏しい調査結果では、五十二年度後半以降、従来の貸し付け実態を見ますと、貸付件数、金額ともやや減少傾向をずっと見せている。今回の改正によってこうしたことに歯どめをかけて本当に生きた資金活用ができるのかということと同時に、私、若干の生産農家ども回ってみましたが、借入手続が難しい、いろいろ書いてくるけれどもなかなか理解が届かぬ、こういうことで、せっかくのあなた方の英知を絞ったすばらしい制度が必ずしも農村末端では活用されてない向きがあるのではなかろうか、こういう点に私はやや懸念を持っているのであります。これらを含めて歯どめがかけられるかどうか、こうしたことについて御見解を承りたいと思います。
  116. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 総合施設資金の貸付状況でございますが、御質問にございましたように、確かにこのところ、件数、金額とも減っております。金額で申しますと、五十一、二年ごろ、発足して間もないころは年間五百億円を超える融資額があったのでございますが、五十八年度は四百億ぐらい、件数で申しますと、五十一年は四千件を超えるときがございましたが、五十八年は二千四百件余り、こういうような状況でございます。  これは、当初の発足後この制度がある程度利用されたこともございましょうけれども、この辺の問題については、せっかくある農林公庫資金の中のかなりかなめとなる資金でございますし、今後の農業経営の改善、規模拡大等の上でも大事な資金でございます。今回の改正によりまして若干貸付対象農家を改めます関係で、その措置も含めましてこういうような貸付対象の減少傾向に少し歯どめをかけて、大いに利用が促進されるようなことを我々も期待をしております。  それに関係しましても、お尋ねのございました利用の手続等が複雑である、こういうような御批判はかねてから私ども承っておりまして、いるいろ事務的な改善、例えば書類をできるだけ簡単にしたり、部数、種類を減らすというようなこともやってまいっておりますが、この資金全体が、経営の改善ということで、関係機関を構成員とする融資協議会で審査する、こんなような関係から、若干審査がやかましいということがあろうかと思います。  この点は、本来この資金を必要とする方に、今後の経営の展望も十分確認した上で、さらに今後の事後指導も含めて十分な貸付対象の適格者を選定するということから、ある程度はやむを得ないことでございますけれども、これからは御指摘のございましたような点に十分留意しまして、改良普及所も参加し、市町村、農協とも協力しまして、本当にこの資金を必要とする方に円滑な貸し付けがされますよう、それから前の方の貸付件数の減少傾向についても、この際もっと利用が促進されるような方向で一層努力してまいりたいと考えております。
  117. 上西和郎

    ○上西委員 大変結構なお答えをいただきました。  農林水産省の威力を十分に発揮されて、都道府県、市町村、末端でこのことが生き生きと活用されることを、今のお言葉が生かされていくことを私は心から御期待を申し上げたいと思うのであります。  次は、林業経営改善資金について二点お尋ねをしたいのです。  第一点は、林地取得資金、三・五%の一部が五%になりますが、一体これはどのようにどこで区分けをされていくのかということであります。  第二点は、育林資金は現在低利の造林資金があるので余り活用されてない、こういう傾向があるのでありますが、この育林資金はどのような程度の活用があるのか、そういう見通しをどのようにお持ちなのか、また、林業の実態から見て若干利子が高過ぎるのではないかという懸念があるのでございますが、この二点についてお答えいただきたいと思います。
  118. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 林地取得資金の方でございますけれども、この金利につきましては、主務大臣が定める一定の要件に適合する者に係るもののみを三・五%、その他は五%資金としているところでございますが、具体的には、現に森林地葉計画の認定を受けている者に対しまして三・五%資金の対象とする予定でございます。  それから、育林資金につきましては、我が国の森林構成が二十五年までの本当に若い造林地が多いというようなことから、そちらへの造林資金は大変活用されているわけでございますが、お話しございました育林資金の方は、それ以上の林齢に該当しておったということと、これまでは多少適用の範囲なども例えば林家の規模を四十ヘクタールまでというふうな制限がございましたので、実は余り使われておりませんでした。このたびこれを三百ヘクタールまで拡大いたしましたので、これからは造林地自体もだんだん成熟もいたしますし、このように規模を広げましたので、資金需要も出てくるのではないか。本年はいろいろ合わせまして全体六十億の中から数億程度になりましょうか、初めて使われるような形でございますので、ある程度予定をしておるところでございます。  金利の水準につきましては、いろいろ御判断もあろうかと思いますけれども、これはまたそのときどきの林業情勢を反映した補助事業とかいろいろな林政施策によりまして苦しいときは助ける、また、相当高齢級の齢級でございますので、本来の間伐ができるようになりますれば十分またそれだけでもやれるような状態にもなり得る、今はなかなかそうではございませんので、一般林政施策によりまして大いにこれを側面から助けていくということで進めていきたいと考えております。
  119. 上西和郎

    ○上西委員 長官のお答えはわかるし、またそれによって現在よりか若干は進みますが、せっかくおやりになるなら、極端に言えば五百ヘクタールまで拡大するといったようなことは庁内では全然御検討なさらなかったのですか。ちょっとお答えいただきたいと思うのです。
  120. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 途中の検討ではいろいろございましたけれども、今回はひとつ検討をさらに進めさせていただきたいと思います。
  121. 上西和郎

    ○上西委員 今、長官からお話がありましたが、四十ヘクタールでははっきり言って利用が少なかった、三百ヘクタールならば伸びるでしょうとおっしゃるならば、もうちょっときめ細かに林業の経営実態を押さえて、皆さん方は統計はお得意中のお得意なんですから、そうした中で四百とか五百とかにしていって利用の幅を広げていく、そしてせっかく出したお金が有効適切に全国津々浦々で活用される、こういうことについて一層の御努力をお願いしておきたいと思います。  次に、新規用途事業資金について、今度加工利用の拡充をということでこれが出されておりますが、具体的な加工対象になる農林水産物についてはどのようなものをお考えなのか、その品目といいますか範囲といいますか、そうしたことをまずお示しいただきたいと思います。
  122. 塚田実

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  今回御提案申し上げております新規用途事業等資金でございますが、御案内のように、近年では我々の食糧は多くのものは加工された形で消費されているという実態がございまして、他方、国内の農産物の幾つかを見ますと過剰基調にある、なかなかよく利用されない、そういうことの矛盾を何かひとつ工夫して対応することができないか、こういうような観点から、私どもこのような資金を御提案して国産の農林水産物の消費拡大を図っていきたいと考えているわけであります。  そこで、このような観点からいいますと、御指摘のありました対象の農林水産物につきましては、まず、過剰基調にあることなど需給上の問題があって、かつ農林漁業の生産あるいは地域の農林漁業の振興上重要であるもの。そこで具体的な例を申し上げますと、現在検討中のものもありますが、例えば米、ミカン、それから生乳など、農産物で言えばそういうものを考えております。
  123. 上西和郎

    ○上西委員 それでは少し具体的にお尋ねしましょう。  大分県を皮切りに、今一村一品運動ということが非常に広く提唱されまして、全国各地で新しい国産原料を利用した製品の開発が広がってきておりますね。私なども鹿児島におりまして、大分はすばらしいとよく聞くのです。これは各階層の方から出ます。消費者からも生産者からも出ます。これは大いにいいことだ。だから北海道あたりまでずんずん広がっていく、こういうことなんですが、こうした新しい一村一品運動の中で始まっていく製品開発、それはあなた方の目から見れば極めて地域的にスケールの小さいものかもしれませんけれども、そうしたものがその地域で、あるいは県、自治体単位ででも一定程度になったときには、この新しい資金の対象にされる意図ありや否や、局長の御見解を承りたいと思います。
  124. 塚田実

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  本資金のねらいは、先ほど申し上げましたように、過剰基調にあることなどから需給上の問題がある農林水産物を対象とするわけでございます。そこで一村一品運動があるわけでございますが、一村一品運動は多種多様な農林畜産物を地域の実情に即して運動の形で推進しようということでございます。それは農林水産業の振興にとっても非常に結構なことだと私は思っております。  したがいまして、私どもの対象農林水産物という角度から見ますと、どこの村のどの品物もすべてが対象になるというふうにはちょっとここでは申しにくいのですけれども、しかしながら、その対象農林水産物についての新規用途等の開発ということでございますれば、当然そういう意味の一村一品運動も対象になるし、そういうものが出てくることを私ども非常に期待しているところでございます。
  125. 上西和郎

    ○上西委員 今、局長お答えを聞いて安心したのです。私のように長いこと野にあった者から見ますと、お上、言うならば政府が一枚かんだものについては実にスムーズに流れていくけれども、地域でやったものについてはとかく何か枠をはめちゃってということが往々にしてありがちだと聞いております、実態はわかりませんが。そうした意味からすると、今の局長お答えは大変すばらしいものでありまして、ぜひそうしたことが流布されまして、一村一品運動がもっともっと活力あるものになっていくように適切な指導と御助言をお願いしておきたいと思います。  ここで金利札ついてお尋ねしたいのですが、私は冒頭、いわゆる公庫資金から近代化資金、系統資金と申し上げたのでありますが、この新規用途事業資金の金利を見ますと、七・一とか七・三五とか、まさに財投の運用利回り。赤字の林野と、私は大嫌いなんですけれども、世上言われておりますが、林野庁が、諸般の事情これあり、借り入れたときも七・一%。私は去年あえてサラ金ではないかと申し上げたのですが、こうした高い金利をお使いになる、随分高いのではないかという素朴な疑問が出てきます。と同時に、こんな高い金利にするなら系統資金でいいんじゃないか、あえて公庫資金をお使いになるなら、ずばり言って金利を下げたらどうですか、こうお尋ねしたいのですが、その辺、なぜ公庫資金をお使いになりながらあえてこのような高い金利をおとりになるのか、真意のほどをお尋ねしたいのであります。
  126. 塚田実

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  先ほどから申し上げております新規用途の開発の資金でございますが、新規用途であるからには、こういう事業をやっていく場合に、先生御案内のようにリスクもあります、イニシアルコストも大きい、こういう意味で、私ども国産の農林水産物の消費の拡大、こういう政策性があるという角度で公庫資金ということでお願いしておるわけでございます。  さあそこで、公庫資金でやるならば金利は高過ぎるではないかという御質問になってくるわけでございますけれども、これは一種の企業活動に対する政策的な資金であります。そこで、一般に系統資金も含めまして民間金融による場合は、貸付対象の企業の大きさ、信用能力、それから貸付条件等々いろいろございます。しかしながら、中小企業という一般的な言い方で恐縮なんですが、そういう場合ですと通例八%前後の金利がかかる、そういうことでございますから、私どもは七・一%でございますので、そういう意味では私どもはかなり低いものというふうに考えておるわけでございます。ただし、やはり系統資金の活用ということも大事だと思っておりますから、この資金に伴います運転資金などにつきましては系統資金等を活用していただく、協調してこの事業を進めていっていただければ一番いいのではないか、このように考えている次第でございます。
  127. 上西和郎

    ○上西委員 局長お答えはそれなりに正しいと思うのです。ただ問題は、今のお言葉を黙って素直に聞いていますと、農家を大事にするのか金融機関を守るのかという素朴な疑問が出てこざるを得ないわけです。新規用途事業資金としておつくりになった。そして、はっきり言ってリスクもあるから公庫資金だ。リスクがあるから公庫資金なら、やる方だってリスクがあるわけなんだから、金利をできるだけ抑えてそのリスクを軽くしていく、そしてそれが本当に定着をして伸びていくように配慮をするところに公庫資金のよさがあるのじゃないでしょうか。それじゃどっかの銀行と一緒ですよ、裏を返せば。私はそうとらざるを得なくなってくる。  本当に農林水産省の皆さん方が日本の農林漁業をよくしようと思うならば、やはりその辺、公庫資金的な金利という水準をお考えいただいて、これなら借りやすい、これくらいなら何とか、一年と言わぬが二、三年頑張って新しいことをやってみょう、こういう農家の方々、借りる方々が意欲に燃えて利用できるようにするためには、公庫資金をせっかくお使いになりながら金利が高過ぎるんじゃありませんか、こう私は率直に申し上げたいのです。  その点については改めてまた、一回出された法律を変えるのはなかなかでしょうから、部内で十二分に御検討いただいて、運用の中で御配慮をいただきたい、こういうふうに要望を出しておきたいと思います。  さて、以上若干の改正問題についてお尋ねしたのでありますが、ここで総体的に、今いろいろ出ておりましたが、金融三法が仮にこのとおり施行されたと仮定しました場合に、平均金利の水準は大体どの程度に落ちつくのか。それから、現在利子補給がいろいろありますが、補助から融資へと変わっていく過程の中で、現実にある利子補給というものはどの程度軽減されていくのか、そういう見通しがあるならば御見解を承りたいと思います。
  128. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 公庫資金の平均貸付金利につきましては、これまで五%前後で推移をしてまいっております。今回の制度改正後における新規の貸付分につきましての平均貸付金利、これは全体として見ますと六十年度におきまして〇・二%程度上昇しまして五・二%くらいになるというふうに見込んでおります。  それから、公庫補給金の長期的な見通してございますが、この点は今後の全体の貸付規模、その中でまたどういう資金が伸び、どういう資金が伸びないというような資金の構成、もう一つは、償還金などを除きますと、原資を現在は借入金で財投から調達をいたしておりまして、この財投金利がどう動くか、こういった不確定な要素がいろいろございますので非常に難しいわけでございますが、六十年度予算ベースを前提に貸付計画も枠も六千八百五十億というようなことで一応横ばいにしまして、財投の金利も今の七・一%というようなことを前提に置きますと、六十年度見込みで補給金が約千四百億でございますが、十年後には千六百七十億程度になるというふうに推計をいたしております。
  129. 上西和郎

    ○上西委員 現在だとどうしても推定でいかざるを得ないでしょうから、それはそれで承っておきます。ただ、わずか〇・二であってもアップすることはどうしたって利用する方々にはしわが寄るわけでありまして、そういった実情だけは十二分に御配慮をいただいて、私、以下、現在抱えている負債の問題について要望をかねてお尋ねをしたいのであります。  というのは、今度も生産農家の方々と意見交換をしてみました。そうしますと、いろいろありましたけれども順不同で申し上げますと、はっきり言って、農協や農業改良普及所の方々、担当の職員の方々から、ああそういうことならこういう制度がありますよ、こういう書類をつくれば大体いいでしょうといろいろ御助言その他をいただいて出しても、だめだと言うのですね。非常にそれがショックになっています。それは農協や農政の方々の責任とかなんとかじゃなくで、出てくる結論は、これじゃ本当に完済できるのか、例えば、計画があるが完全に返せるのか、黒字になるのか、剰余は出るのかと突っ込んでいかれたらやはり困るわけですね。今の農家の実情、畜産を含め林業しかりでしょう。後を追ってまた漁業の方は集中的にお尋ねしますが、いずこもやはり険しい、厳しい情勢の中にある。そうすると、突っ込んでいかれたら、それは今五年で返す予定だが本当言えば八年かかるかもしらぬ、こうなると、それじゃぽしゃっちゃうというのが随所に見られているわけです。  それは事務の簡素化とか手続の簡略じゃなくて、基本の問題なんです。極端に言えば、銀行が優良企業なら貸そう、危険なところには貸さないというのと同じような仕組みがとられているのじゃないかと私は現場での懸念を抱かざるを得ないのであります。こうしたことについて、実情をおわかりであれば実情を、また農水省側としてはどういう行政指導の考えがあるのかということについてもお答えをいただきたい。  また、ざっくばらんに言って、いろいろと資金がありますが、やはり返済が厳しゅうございます。そうすると、例えば据置何年、償還開始、そのとき大変きついものだから、やむを得ず系統資金、プロパーをつなぎで借りる。そうするとそれはどうしたって金利が高くなる、そしてこれがまた悪循環になっている、こういうことが現実にある。  あるいは、借り入れを希望した方々から私は正直に言われたのですが、例えば農業用機械機具の購入などで借りるときに保証人が要るなんというのは、それはわかります。ところが極端なことを言って、田畑を全部提供して根抵当を踏んで担保に出しているのに、土地は逃げていかぬ、田畑は値打ちが下がらぬ、にもかかわらずやはり保証人をとるなんということはどうしても合点がいかぬ。せめて永遠に動かないものを、極端に言うと価格も下がらないものをちゃんと抵当に入れているときは保証人なんというのは免除したらどうなんだ。私だって子供のころに、保証倒れであそこがつぶれたというのをよく聞きましたよ。善意で印鑑を貸して保証倒れになった。それがあるから、保証人を出すのは、都市部であろうと農村地帯であろうとみんな、頼みに行く方もたまらない、押す方もためらいがある。そういうときに、せめて土地、明確な不動産をぴしゃっと入れるものについてはという素朴な要望がありました。  さらに突っ込んだことを申し上げます。大臣以下皆さん方、少なくとも与野党を含めてここにお座りの方々は、例えば簿記がわかるでしょう。貸借対照表はわかるでしょう。借入申込書はわかるでしょう。損益計算書だって読めばわかる。金利がどの程度のものになるか計算すればわかる。ところが、おれは牛豚の飼育なら一人前だ、田畑つくらせたら絶対人に負けない、魚を釣らせたら村で一番だというような方々が、若いときからそういうふうに一生懸命やってきて、そうしていろいろやっていったら、今の諸般の情勢これあり、どうしても大量の資金が要るようになってきた、借りなければならぬ。そうすると書類が、完備したものがいく。見たって、これは悪いけれども猫に小判でしょう、馬の耳に念仏じゃありませんか。金利が八%、それが一年間で幾らになるか、ぱっと計算できませんよ。悪いけれども、あなた方の中にだって約束手形実際切った方が何人おられますか、自分が支払うための手形を。支払い手形しかりだ。  そうなっていきますと、ああありがたやありがたやでお金を受け取る。受け取った金に、これはあなたに対する貸付金と印刷してありませんよ。一万円札に変わりはないわけであります。あなたの預貯金の払い戻しですよとも、借入金ですよ、これは利子分ですよとも、どこにも印刷していないわけでしょう。紙幣に変わりはない。お金に変わりがなければ、結局借りた方々はああありがたやということで受け取り、使ってしまい、後から、極端なことを言うと、忘れたころ、利子を含めてがんとくる。こういうことの現実が農山漁村の中では随所に起きているのではなかろうか。ところが、行政側あるいは融資する側は、書類は間違っておりません、あなたはこう印鑑をついております、こういう計画書ですということをやっていくから、全く予想以上の負債が絡んで、相乗して悪循環を繰り返していく。そして、それが結局、先ほど田中委員からもありましたけれども、農協その他に圧迫の要因になっている。  こういうことについて、やはり基本をもうちょっと深く突っ込んで現実を御理解いただいて、私がお尋ねしたいのは、この改正によって現在多額の負債を抱えている方々は現実に救われるのですかどうですかということが基本的なお尋ねなんです。そうした負債を抱える要因というか原因を、具体的に二、三例を挙げたんでありますが、これらの御判断を含めて、現実に多額の負債を抱えている農家の方々、漁家の方々に対してこれがどうなっていくのか。漁業は後を追ってまたお尋ねしますけれども、そうしたことについての見解なり見通しなり、明確なものがおありならばお示しをいただきたいと思うのです。
  130. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の法改正も含めまして、制度金融の見直しによって負債の問題についてどうなのか、救われるのか、こういうお尋ねでございます。  負債で非常に経営が苦しい状態に陥っているという方々の原因というのはいろいろあろうかと思います。率直に申しまして、幾つかの事例調査でございますけれども、非常に経営規模拡大をした。まさにその時点で、例えば素畜価格が非常に上がったのにえさ価格も上がってしまって、販売の方の価格は下がってしまったというような経営環境によるものもございますし、経営のやり方なりあるいはまた生活費等々の方でいろいろ原因が出た、これは非常に多様でございます。一言で申しますと、やはり融資の際の貸し付けの審査なり事後指導という問題になってまいると思うわけでございます。  先ほど、申し込みをしてもはねられるというお話がいろいろございましたが、これもいろいろなケースがあろうと思いますけれども、その中には、借入申込者の方が計画をされたものがやはり投資としてちょっと過大ではないか、こういうことではかえって後で負債に苦しむことにならないかというようなケースも当然入っておるのではないか。したがいまして、申し込んだけれどもすぐに受理されなかったというような場合にも、いろいろな原因があるのではないかというふうに考えております。  今回の改正で直接に負債に関連いたします部分は、一つは、先ほど来のいろいろな御議論もありますので、自作農維持資金につきまして、経営の再建整備のための貸付限度額は今まで特認で八百五十万で頭打ちでございましたが、これを千五百万まで引き上げまして、この資金をもっと利用していただけるように限度額をアップした。  それから、直接負債ということではございませんけれども、いろいろお話を伺っておりますと、畜産関係で、特に肉用牛の農家の中に急速な規模拡大の際にいろいろな事情から負債が累積する結果になったというような、中には制度資金をとにかく返さなきゃいけないということで返して、プロパー資金で借りたらそれの金利がうずたかく積み上がった、こんなお話も聞くわけでございまして、これは関係者、関係団体からも強い御要望がございましたので、農業近代化資金の中の肥育牛購入育成資金、これは規模拡大をやる農家に貸すわけでございますが、これの償還期限は今まで五年ということになっておりましたが、経営の規模を急激に拡大をする時期にはいろいろリスクも伴うということで、償還期限を延ばすことがよろしいのではないかということで、七年に延長するというような措置をとったわけでございます。  それから、お尋ねの中にございました債権担保の問題でございますが、これは資金の種類等によりましてもさまざまでございます。ただ、農業近代化資金などにつきましては、例の債務保証、そしてまたそれを中央の段階で保険をするという保証保険の組織がございますので、できるだけこういうものを活用するように私どもも指導をいたしておりますし、金融機関としての常識を超したような厳しい債権担保の方法というのは望ましくないと思っておりますので、その辺は個別に何かございましたら私どもとしても適切な対応を考えていきたいと思っております。
  131. 上西和郎

    ○上西委員 私が念を押しておきたいのは、例えば肥育牛購入育成資金の五年を七年にする、今これが提案されているわけですが、例えば今五年で借りている方々が、四年目だ、それを今度これが仮に成立したときに素直に七年に切りかえられるのですか、ストレートにといいましょうか、そういうことなんです。例えば八百五十万借りた。一千五百万になる。今七百万くらいまでは何とか返してきてやっている。ところが、ここであと三百万ぐらい欲しいから、一千五百万円の範囲内の一千万くらい借りて、何とか三百万は一息ついていくというようなことが、どうも改正後の適用だけがあって、現に利用している方々にはこの改正でよくなった点の恩典が及ばないのではないか、こういう気がしてならないのですが、誤解であれば御訂正をいただきたいし、いや、心配要りませんということであれば明確にお答えいただきたいと思うのです。
  132. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 これは制度改正の常でございますけれども、制度が改められた以後に適用されるということでございます。ただ、災害等が起きました場合に償還猶予措置というようなことが公庫についても近代化資金についても行われておりますが、近代化資金の場合には、制度上の条件に合ったものでございませんと近代化資金の定義から外れてしまいますので、利子補給の対象にならないというようなことが出てまいります。それは、今度制度上そこのところが延びますれば、そういう災害などに襲われた場合の条件緩和の条件にはまるような場合については、これは個々の金融機関と借入者の間のお話し合いということになろうかと思いますけれども、制度的な制約はそういう意味で緩くなるということはあろうというふうに思っております。
  133. 上西和郎

    ○上西委員 法治国家日本の政府がすることですからやむを得ないと思いますけれども、基本的には累積負債の解消なくして農林漁業の活性化はあり得ないと私は理解をし認識をしておりますので、法の建前上は不可能であっても、今申し上げたような実態があるということを十二分にお考えいただいて、運用上できることについてはぜひ弾力的な運用ということを行政面で御配慮いただきたい、こうお願いを申し上げておきます。  あと簡単に二、三お尋ねをしておきます。改良資金で二つ。  大規模農家への集積度、これは六十五年度までに八〇%集積したいという計画であるのですが、現状ではまだ五〇%を切っているでしょう。これを高めるための具体的施策はどうあるのか、これが一つ。  もう一点は、小作料の一括前払い、これの是非論はいろいろあると思いますけれども現実にはわずかに十億円しか予算がない。現在の日本の小作用の農地の広さから見ると、まさに九牛の一毛に等しいのではないか。果たしてこれだけで効果があるのかどうか、こういう疑問が素朴に出てまいりますので、この二点、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  134. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  農地の利用集積度は私どもが期待しておりますところまではまだ上がってきていないわけでございますが、しかし最近の利用権の集積の状況を見ますと、量的にはかなりのテンポで多くなってきておりますし、また借り手の方を見ますと、やはり経営面積の大きい方に徐々に土地が集まってきておる、こういう状況でございます。確かに土地の貸し借りというのは、それぞれの地域によりまして具体的な話し合いの上にできてくるものでございます。私どもといたしましては、農政審の答申等にもございますように、大規模の農家に集積いたしますように今後とも努力をしていきたいと思います。  その手段といたしましては、農用地利用増進事業に基づきます利用権の設定なり、あるいは合理化法人を通じます集積等がございます。こういった制度を活用いたしまして漸次努力をしてまいりたいと思います。何といいましても、具体的には各地域における借り手、貸し手の話し合いが基礎になるわけでございます。地域農業集団の中での話し合いと言っておりますけれども、こういう話し合いを土台にいたしまして、さらに大規模農家に集まりますように努力をしてまいりたい、このように考えております。  なお、こういう措置の一つといたしまして今回経営規模の拡大資金をお願いしておるわけでございまして、六十年度は十億円の資金の設定をいたす考えでございます。私どもこの制度を検討いたします場合に、省内はもちろんでございますが、県等とも十分相談をいたしたわけでございまして、おおむね六十億程度の資金需要があるのではないかということでございますが、昭和六十年度は制度の発足の初年度でもございますので十億円を要求いたしまして、あとそういう公庫の資金の活用状況等を見まして今後予算要求を行ってまいりたい、このように考えるわけでございます。
  135. 上西和郎

    ○上西委員 わかりました。  農業の方の最後に、近代化資金で私ちょっと気になりますのは、今度の改正によって、今までお答えがあったように枠が広がったとか償還期間が延びるとかいろいろ出てきますね。そうしますと、利にさといと言うとちょっと表現が悪いのですが、まあいろいろな商社その他がありまして、巧みにいろいろなものを勧めたり購入させたりということがありまして、農家皆さん方が、本当に純朴な方であればあるほどそうした巧みな勧誘に乗せられやすくて、結局、せっかくつくられたこの金融三法の改正の結果がむしろ借金貧乏になっていく、こういったことの懸念なきにしもあらずなんで、その辺については農水省側としてどのような指導をなさろうとお考えなのか、これが一点。  もう一点は、ざっくばらんに言って、私は桜島の降灰の地域に住んでいるものですから、昨年災特の方でいろいろやりまして、トンネルハウスに補助金をつけることにしたのです。ところが、その後ずっと関係の自治体あたりに当たってみますと、選挙区外もありますが、ある自治体は全然需要がないんですね。どうなんだろうかと突っ込んでそこの自治体の三役とか農協の方々といろいろ話してみたら、せっかく融資をもらってトンネルハウスをつくったって、何をつくったらいいのか、作目をどうしたらいいのか、農家の方々からこういう質問といいますか、ずばり言えば反撃ですね、そういうことがあって、そこではどうしてもその借り入れが軌道に乗らないということがありました。  この融資制度をよくするのは結構でしょう。しかし、幾ら融資制度をつくったって、活力ある農林漁業ということが絶対必要なんで、とりわけ、例えば営農面などにおいて、この融資制度をこれだけ改正するなら、逆に今度は、農林水産省の本来の業務であるそうしたことについての適切な指導体制、方針、それはいかに確立されようとしているのか、このことについて、できれば大臣から御見解いただければ私も安心をするし、そのことを通じて関係の方々も納得されるんじゃないでしょうか。
  136. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 上西先生お答えいたします。  実は、今おっしゃった第一の負債農家がふえないようにということは、恐らく先生のおっしゃる意味は、例えば先物とか商品取引とか、ああいうことだと思います。私の選挙区でも幾つかございますが、各村で三百万から五百万の被害者がかなりございます。そんなことの意味だと思うのですが、これは実はいろいろな指導を続けておりますが、なかなか難しいわけです。今後とも地方自治体ともよく相談し、農協等と話をして、そういううまい話はないんだという指導をますます続けてみたい、こう思っておるわけでございます。  それからもう一つの点につきましては、これは制度金融の特徴を生かして制度の目的を達成するためには、どうしても経営者としての経営及び技術能力の向上が大切だと思います。そういう形の中に農林漁業者が必要とする資金が的確な審査で適時適切に融資される、また、資金の融通後においても制度の目的に即したような適切な指導を行う、こんなことをもちまして、実は今先生の御心配がないように融資を行いたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  137. 上西和郎

    ○上西委員 就任以来極めて精力的に御活躍をいただいております佐藤大臣の今のお言葉が、本当に農水省の隅々で実行に移されることを心から御期待申し上げ、その大臣お答えをもって子としたいと思います。  次は、一転して漁業の近代化資金、そちらについて順次お尋ねをしたいと思うのであります。  私、昨年機会があって隣県宮崎の南郷漁協あたりにも行ってみたのでありますが、想像に絶する悲惨な状況がありました。ここで具体的にお尋ねしたいのでありますが、近海カツオのことでありますけれども、業界は昨年暮れ臨時総会を開きまして、二〇%の減船計画を立てた。計画でいきますとことし百二十九隻、来年度五十一隻、計百八十隻をスクラップ廃船、減船、こうなっているのでありますが、この減船に対する国の費用、私の素人の計算でもざっと九十億ぐらいかかりそうですが、この予算でいきますと三十億円しか組まれていない。そうなりますと、日本政府はそうした減船計画等について極めて厳しい態度で臨みながら、片一方、裏づけについては逆に極めて冷たいのじゃなかろうか、こういう感なきにしもあらずであります。  こうした業界独自の減船計画について、一体どのような、まあ裏づけと言えば表現がなんでございますが、対応をなさろうとするのか、まず最初お尋ねしたいと思います。
  138. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 まず最初に、先ほど先生の御質問のときには御無礼をいたしまして申しわけございません。おわびをしておきます。  ただいまの近海カツオ・マグロ漁業の減船の問題でありますが、確かに先生御指摘のように、近海カツオ・マグロ漁業は二百海里による漁場の制約、燃費、あるいはカツオを初めとする低魚価ということで、大変経営が悪化しているという認識を私どもも持っております。構造再編の問題につきましては、ただいま先生言及なさいましたように全国近海かつお・まぐろ漁業者協会が検討を進めて、昨年末、そういう二割ということで減船をやろうという方針を決定なさったと伺っております。私どもといたしましては、この実施計画が樹立される段階に至りますまでには、業界として資金の造成とか減船参加者をどうやって決めていくか、そういう問題がいろいろございますので、現実に金目として幾ら要るかが確定をする段階はもう少し先になるのだろうと思いますが、先生御指摘のように確かに予算は三十億ということでございますけれども、そこは業界の減船計画の決まり方に応じまして適切に対処していくつもりでおります。
  139. 上西和郎

    ○上西委員 そうした弾力的な運用の幅が十二分にあるならば安心でございます。  次にお尋ねしたいのは、極端に言いまして、貸付限度額が拡大されたからこれでいいのじゃないかとあるのですが、どうも新船の建造費、これが二十トン未満、十九トン以下であれば一億一千万程度かかる。ところが、見ていきますと六千万でございますね。二十トン以上ですと二億七千万ぐらいかかるのに、二億四千万である。こうしたところで、またまた改正はしたけれども、実際借りようとすれば明らかにもう建造時点でその融資の枠が足りない。ここもまた高いプロパー系統資金を使えとおっしゃるのか。そうしたところをちょっと、とりわけ今打撃を受けている近海カツオ・マグロの方々あるいは沿岸漁業の方々を含めてお尋ねしたいと思うのです。
  140. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  漁業近代化資金の貸付限度額はおおむね平均的な資金需要を基準として計算をしてございますので、御指摘のように、漁業種類によりましては、漁船の中には引き上げ後の限度額も足りないというものが出てくることは当然予想されるわけでございます。  御高承のとおり、漁業近代化資金の中には大臣特認で法定限度額を超えて貸し付ける仕組みがございまして、この仕組みは元来、先生御指摘のような事態に対処するために設けられているものでございますので、御指摘のようなケースについては、大臣特認の制度を適切に運用することによりまして対処してまいりたいと思っております。     〔田名部委員長代理退席、衛藤委員長代     理着席〕
  141. 上西和郎

    ○上西委員 次にお尋ねしますが、不振漁協対策、これが私はひっかかってしようがないのです。ざっくばらんに言って、農協だって森林組合だってばらつきはありますよ。しかし、漁協ほどひどくないと思います。私の選挙区の漁協を回っても実際にピンからキリまであります。そうしますと、せっかくのこの融資制度が円滑に利用されるためには漁協がしっかりしているということが不可欠の条件だと思うのです。ところが、そうしたことから見ますと、余りにもばらつきがひど過ぎる。極端なことを言うと、固定化し、長期負債を抱えて、もうにっちもさっちもいかぬ。悪い言葉で言えば破産一歩手前のような経営状態に置かれている漁協も結構あるのじゃないか。  こうしたことについては、農水省、とりわけ水産庁、しかも佐野長官は国際的な方でありまして、非常に幅広い視野と見識をお持ちでありますが、日本の漁協対策等にはいかなる所存で対処されようとするか、少しく御見解を承りたいと思います。
  142. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  漁協の信用事業の実情につきましては、私どもも、ただいま先生言及なさいましたのと全く同様の認識を持っております。私どもといたしましては、そういう漁協の実態を踏まえて、現実に漁協が不振な状態になっておりますと近代化資金制度を幾ら整備してみても実際には動かないことになってしまうわけでありまして、そういう漁協を何とかして立て直したい、そういうことで不振漁協対策に六十年度から取り組むことにしたわけでございます。  私どもが不振漁協対策で考えておりますのは、これは何と申しましても漁協なり漁協の組合員なりの自助努力というのが基本でございますが、その上に、系統上部団体なり地方公共団体が打って一丸となって漁協の再建にてこ入れをしていくということで取り組んでいただけるのであれば、政府としてもそれに対しててこ入れをしていきたいというのが考え方の基調でございまして、てこ入れをする現実的な手法といたしましては、不振漁協の欠損金見合い債務について利子補給つきの資金を提供することによって、そういう事態を解決していきたいということを考えているわけであります。
  143. 上西和郎

    ○上西委員 四番目に、負債の実態について少しくお尋ねしたいのです。  私もあちこち回ってみましたが、漁家の方々、漁協の幹部の方々にお尋ねしますと、異口同音におっしゃるのは、第一次オイルショックのときに燃費がべらぼうに上がった。だから私たちとしては、政府に対してこの燃費の価格差の補償ということを一生懸命要求した。そうしたらお金が出た。言えば補助金だとみんな思っていた。ところが何のことはない、金利がついた貸付金だった。しかもそれが系統資金だったということで、それが今請求をされて大変重くなってきている。  一方、先ほど長官からあったように二百海里がある、そうしたことでだんだん漁場が狭められる。片一方では、家庭ではまないたと包丁がなくなっていくということが現実にあるものですから魚離れが起こっている。刺身なんてパックで買うものではない。臨教審で何もがたがたやるよりか、まず花嫁修業で刺身をつくらせるということを農林水産省や水産庁は推奨してほしいのですよ。だからダブルショックでますますひどくなっていく。  そうした意味合いで、先ほど自助努力とおっしゃったけれども、漁家の方々が、自分たちが手をこまねいていて負債を膨らましているんじゃないでしょう。オイルショックはだれの責任でもないわけだ。国際的な経済情勢の結果でありましょう。こうしたことが現実にあって、トータルで言えば、日本の国全体の漁獲高、いわゆる生産額に匹敵するような負債総額があるわけでしょう。そうでございますね。大体三兆円前後。そうした現実負債について総体的にどうするのか。それは、個々の問題、漁協の問題等いろいろあるでしょうけれども、日本の水産行政を預かる立場として、漁家が抱えている膨大な、年間の水揚げ高に匹敵するような負債についてどのような基本的な対策をお持ちなのか、お考えをお持ちなのか。このことなくしては、幾らこの金融三法を改正されてもしょせん絵にかいたもちに終わるのではなかろうか、こう考えるのですが、その辺ぜひ御見解をいただきたいと思います。
  144. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  確かに先生御指摘のように、現在の漁業経営が多額の負債を抱えており、それがまた、御指摘のような燃油価格高騰の時期の事情によってその相当部分が説明し得るような、あのときああなったからこうなったのであるという、そういう事態であるということは私どもも同様の認識を持っております。  ただ、基本的に、漁業者の負債問題と申しますのは、徳政令というわけにもまいりませんので、先生御指摘のような、従来に比べますと相当高い燃油価格の水準に適応し得るような省エネルギー化された新しい漁業経営に切りかえていくとか、言うなれば構造的調整によってそういう新しい環境に適応し得るような漁業経営に切りかえていく、そういうことによって償還能力の余裕が生じていくというのが基本で、そうなりますまでの間現実に膨大な債務を抱えておるわけでありますから、過渡的な対策として、途中でパンクしないようにしてどうつないでいくか、そういう性格の位置づけをすべきものであろうと思っておるわけです。  それで私どもとしては、先生が言及なさいました燃油対策特別資金というものも元来はそういう性格のものとして仕組まれたわけでございますけれども、そういうものだけでつなぎ切れる性質のものではないということは私どももよく承知をしておりまして、漁業経営維持安定資金でございますとか、さらに、国際規制の関連で制約条件が加わっております漁業経営については、国際規制関連経営安定資金とか、そういうものを用意してまた手当てをしていく。一方、そういう構造的な再編成の過程におきましては、当然減船とかの問題が起こってくるわけでございますから、そういう側面につきましては漁業構造再編整備資金で手当てをする、そういうことで対処をしていくという心組みでおるわけであります。
  145. 上西和郎

    ○上西委員 今の長官のお答えでいきますと、実情に即し、新しい環境に適応し得るようなとおっしゃいますが、先ほど私、農業四法でお尋ねしたように、この改正をされたものが法施行後しか適用されなければ、やはり同じことになるのですね。だからその辺のことについて、とりわけ今苦しい状況に追い込まれている日本の水産業、漁業者の実情を見るときに、あと一歩突っ込んだ弾力的な運用を率直にお願いしたいと同時に、最後に私このことを少し申し上げて、賢明なる大臣から総括的な御見解をいただきたいと思うのです。  それは、今回捕鯨問題で、私なども小さいときから鯨を食べてきている方ですからいろいろ関心があって見ていますと、パックウッド・マグナソン法、修正法というのですか、そういった法律があって云々と、悪いけれども日本政府の姿を見ていますと、私は大臣とか水産庁長官がそうだと言いませんけれども、アメリカに向いては弱くなり、ソビエトに行くとだんだん強くなるなんということを漏れ承りますので――政府全体ですよ。大臣はそんなことはないです。佐野長官は非常に立派な方だとかたく信頼しておりますが、とかくそういったことで捕鯨でも痛めつけられておる。  そこで、私が見ていきましたら、この法律の中でアメリカでは漁業管理計画を国の責任で法制化しているのです。例えば減船計画も国の責任でやって、減船補償料を徴求したら、国が集中管理をし、ちゃんと補償していくと明確にある。遺憾ながら、農業基本法はあるが、漁業基本法といいましょうか長期にわたる漁業のそうした見通し、計画というのは私は寡聞にしてまだ知らないのであります。片一方では魚価が一向に上がらない、減船はさせられる、補助金だと思って喜んでいたら利子をつけて返せと言われる、お先真っ暗だ。やれやれうれしや新しい制度ができたと思って行こうとすると、あなたはとてもじゃないが返済能力はないからだめだ、こういうことで、今私は日本の漁業の方々は大変苦しい立場に追い込まれていると思うのです。農業しかり、畜産農家、酪農家を含めて一切一緒でしょう。  そうしたときに、やはり佐藤大臣が、まさにいいときにあなたのように御熱心に問題に取り組まれる大臣が誕生なさったと私は心から歓迎している一人でありますが、どうか今申し上げたようなことを踏まえて、この金融三法が日本の農林漁業のすべてにプラスする方向に、これを文字どおり生かすための農林水産省の施策全般についての大臣としての責任ある御見解、御所存というものを承りたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  146. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 大臣の御答弁に先立ちまして、先生言及なさいましたアメリカの漁業の資源管理計画について若干お答えをさせていただきたいと存じます。  先生御指摘のように、アメリカの二百海里法、通称マグナソン法でございますが、これによりましてアメリカの国内を八つの水域に区分いたしまして、それぞれの水域ごとに地域漁業管理理事会がございまして漁業管理計画を策定しておる、今先生御指摘のとおりでございます。  ただ、アメリカがなぜこういう整然としたシステムをつくれたかということの根底にございますのは、要するにアメリカの場合には漁業資源が極めて豊富で、それに比べますとアメリカの国内漁業が大変未熟でございますから、漁業管理計画をつくって許容漁獲量をきちんと決めてということにいたしまして、その中で、当然二百海里制度の枠内のことでございますから沿岸漁業者が優先的にとるということで、漁業管理計画によって現実に操業が規制をされるのは外国の漁業者の方なので、要するに沿岸漁業者は今までとっていたとおりとって構わないし、これからも自国の二百海里の資源は優先的に利用できるということでございますから、そういう中でこういう計画が成り立つわけです。  それに比べますと、我が国のように現に沿岸水域での漁業資源が十二分に活用されているという状況のもとでは、漁業管理計画をつくりますとまず我と我が身を練らなければいけないということになるわけでございまして、そこのところの難しさの違いによってアメリカ流の仕掛けはなかなかなじみにくいということがあるわけでございまして、そういう事情をちょっと御理解をいただいておきたいと思う次第でございます。
  147. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 上西先生お答えいたしますが、鯨の問題は今長官が言ったとおりでございます。  アメリカにもソ連にも、粘り強く力強い交渉を展開したい、こういうふうに御理解願いたいと思うわけでございます。  それから、きょうは何かと御教示を本当にありがとうございました。私、大臣になりましてから一番困っておるのは、現地が歩けないということでございます。そんなことで、きょうは現地の生の席を聞かしてもらってありがとうございました。私は最初に申し上げたように、非常に財政の厳しい状況でございますが、この財政の効率化を図りますとともに、やはりいい農林水産業をどうしてつくるかという観点でこの運用をしたい。きょう御教示賜りましたことを参考にしまして、その効果が上がるような十分な運用をいたしたい、こう思っておりますが、よろしくお願いいたします。
  148. 上西和郎

    ○上西委員 大変ありがとうございました。終わらせていただきます。
  149. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 斎藤実君。
  150. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 まず、農林漁業金融一般についてお尋ねをいたします。  最近の金融の自由化、国際化の進展は目覚ましいものがあるわけでございますが、金融の自由化は一般的に預貯金金利の上昇を招くと言われておりまして、この制度金融、公的金融の貸出金利においてもある程度上昇するおそれがあると私は思うわけでございます。この金融の自由化の中で、公的資金位置づけ、特に支払い力や担保力、信用力の弱い農業者に対する長期低利の資金については、これをきちっと確立をすべきだろうというふうに私は思うわけでございます。  昭和四十年代に入りまして農協系統金融が次第に整備拡充されまして、資金量が増大をしていく一方で、農林漁業金融公庫資金も時々の農林水産施策の展開の方向に即してその業務範囲の拡大が進められているわけでございますが、あわせて、農協系統資金の活用も必要だろうと思うわけでございます。したがいまして、今回の農林金融制度の見直し改正に当たりましてまずお尋ねをしたいことは、農林金融では農協を中心とする系統金融とそれから財政資金によります農林金融公庫資金の二つの柱があるわけですが、この二つの金融が農林金融においてそれぞれどのような役割分担をして機能しているのかということです。  また、農林漁業金融公庫資金と農協系統資金両制度の本来の目的なり役割について一度見直して、その間の分野調整について適切なる行政指導が必要だろうというふうに考えているわけでございますが、この点について御見解を伺いたいと思います。
  151. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  農林金融におきまして、系統金融財政資金によります制度融資の代表といたしましての公庫資金と、大きな二つの柱といいますか流れがあるわけでございます。  系統金融農業者等の預貯金を原資にいたしまして、農業者等の必要といたします営農資金なり生活資金なりを一般的に融資するというのが基本的な役割でございますが、そのままではなかなか農家にスムーズに還元されにくいというようなコストその他の事情がございます。そのために利子補給なり債務保証というような制度的な手当てをいたしまして、農業近代化資金という制度を通じて中長期の機械なり施設に対する制度金融も系統資金の原資を使いながらやっておるわけでございます。  公庫資金の方は、土地改良でございますとか造林あるいは漁港といった経営基盤に係る投資で、したがいまして、投資の効果も非常に長期にならないと発現しないようなものでありますとか、あるいは構造改善のために集中町な投資が必要だといった特別な分野で、ほかの金融機関が融通することがなかなか難しい分野を担当しているわけでございます。  近年、資金量としては系統金融の充実が非常に著しいということがございまして、これのより一層の活用を考えるべきではないかというお話があったわけでございますが、今回の農業近代化資金の限度額をアップするというのもその一つの手だてだと考えておりますし、あと、公庫の業務方法書なども含めて制度の手直しを六十年度に考えております。その中で、農業近代化資金で対応ができるものはできるだけ近代化資金の方で対応していただくようにするということで、公庫の個人施設用の資金、これを一般に主務大臣施設資金と言っておりますが、これの一般施設資金につきまして、一部、もうこういうものは近代化資金に全面的にお任せしてもいいのではないかというものについては、貸付対象者に公庫資金制度の方から近代化の方に引っ越していただくという見直しもやってまいろうと考えておるところでございます。
  152. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 最近の農林漁業を取り巻く厳しい状況のもとで、農林漁業金融の果たすべき役割は極めて大きいと思うのですね。しかしながら、農林漁業金融の現状を見ますと、農林漁業の生産性の向上が強く求められておるにもかかわらず、先行き不安から前向きな投資は非常に停滞しておるわけです。しかも、制度金融の貸し付けも非常に低迷をしておりまして、農林漁業の振興から見て極めて憂慮する状況にあるわけでございますが、前向きな投資が停滞をして貸し付けも停滞しているというこの現状について農林水産省はどういうふうに考えているのか、お伺いしたいと思います。
  153. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 近年、農林漁業制度金融関係で貸し付けが停滞をしていることにつきましては、非常に多様な要因があろうかと思いますけれども、主なものとしましては、農林水産物の需給が全体として緩和基調にあるということで価格が伸び悩んでおりますので、一般的に農林漁家の方々の投資態度が慎重になっているということがあろうかと思います。また、冷害を初めといたします災害の多発、さらにいろいろな設備投資が大体一巡してきたということもあろうかと思いますし、それから、農林漁業金融公庫については土地改良資金関係補助残融資ということになりますと公共事業の抑制の影響というのが公庫の貸し付けの方にも直に響いてくる、こういったいろいろな要因があろうかと思います。その中にまた、制度金融面で最近の農林漁業の動向なり農林漁家の資金のニーズに十分うまくマッチしていない面あるいはもっと拡充すべき点があるにもかかわらず、それの手当てがなされていないという面も見受けられるということから、今回各般にわたりまして見直しをやりまして、借入対象者を追加するとか償還条件を緩和する、あるいは資金の貸付対象の施設なり経費についての拡充をやるというような見直しもやったところでございます。
  154. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今経済局長も答弁されましたように、いろいろ計画があっても、金利が高いとか自己資金がないとか金融状況が厳しいということで、リスクも伴うということで意気消沈している向きもあると私は思うのです。そこで、今回の農林漁業金融公庫法の改正につきまして、補給金が年々増大していくという財政事情のために行うのではないかと一般的に理解されているわけですが、もしそうであればこれは極めて問題だろうと私は思うのです。  我が国農林水産業を取り巻く経済情勢は極めて厳しいわけでございまして、食糧消費の伸び悩みとか農林水産物の価格の低迷あるいは経営規模拡大も停滞しておる、労働力の高齢化、外国からの市場開放要求が非常に強まっている、こういう今の状況の中で、生産性の高い、農民あるいは漁民の方々がこれで生活できるのだという、端的に言えばこれで食えるのだという農政、子供にしても後継者にしても実際は親の仕事を見ているわけですから、とてもこれじゃ親の仕事はやれないということでは後継者の問題も解決しませんし、これで生きがいを見出してやっていこうという産業にしなければならぬと思うのです。したがって、農林水産業の振興については、大胆な積極的な施策が必要だろうと私は思うのです。  したがいまして、私が今申し上げた農政位置づけに対して、どういう農政位置づけで今回の改正が行われたのか、大臣の基本的な考えを伺いたいと思うのです。
  155. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 斎藤先生お答えいたしますが、今先生御指摘のとおり、農林水産業をめぐる環境は非常に厳しい状況がございます。そんなことで、私は大臣になったときにも申し上げましたけれども、三つの点を中心にやりたいと思っております。その一つは、生産性の高い足腰の強い農業をつくる。二つ目には、ハイテクとかニューメディアを駆使した新しい農業を構築する。そういう形の中に豊かな農村づくりをやりたい、こんなことを基本にやりたいということで、今度の制度資金の改正につきましては、二つの点を考えて改正しようと考えました。  その第一点は、今農林水産業をめぐる諸情勢は非常に厳しい、しかも変化が非常に激しいわけで、それに対応し足腰の強い農林水産業の育成のために農林漁業投資をさらに積極的に推進していく必要があるということ。第二点は、財政効率的運用等を図るため効果的助成手段の確立が要請されておった。この二点に基づきまして、各資金制度の特性に応じ、資金種類拡充等内容とした改善合理化を図ろうとしたものでございます。この中で特に農林公庫資金制度につきましては、農林漁業経営の育成強化及び農林漁業構造改善等を促進しつつ、資金の効率的利用と制度の簡素化を図りたいと考えているわけでございます。  端的に言いますと、先生がおっしゃったように非常に厳しい状況でございますが、財政が特に厳しい状況の中に財政の効率化を図る、そういう形で本当にいい農林水産業をつくりたい、こんなことで制度の改正に踏み切ったわけでございます。
  156. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 細かいことは後段にまた御質問いたします。  総合施設資金は、昭和六十年度予算で四百三十億円の融資枠が設定されておるわけでございますが、この制度のねらいは、自立経営を志向して、経営規模の拡大、資本装備の高度化等を総合的かつ計画的に行って、農家経営の改善を行うという農業者に対して必要な資金を総合的に融通しようとするものでございます。この制度は昭和五十二年度後半以降、貸付件数、貸付金額とも減少傾向を見せておりまして、現在三万数千人の利用者がいるわけでございますが、これらの農業経営実態はどういうふうになっているのか明らかにしていただきたいし、また今回の改善で本制度の活性化に大きな期待が持てるものになるかどうか、私は心配をいたしておるわけでございますが、その見通しについて伺いたいと思います。
  157. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 総合施設資金でございますが、御質問の中にございましたように、五十八年度まで個人三万一千件、法人一千件、金額にして五千三百億円程度の貸し付けがございます。  その経営の実態という点が第一でございますが、これは内容的には酪農、肉用牛、養豚、採卵鶏、ブロイラーというようないわゆる畜産部門がやはりウエートが高こうございまして、これら全体を合わせますと件数、金額とも三分の二くらいを畜産関係で占めております。次に稲作の関係が一一・五%、これは金額でございます。施設園芸が九・九%、果樹は三・〇%、こういうようなところが作目別に見ました貸付実績の、経営のいわば工作目でございます。こういう経営状況のもう一つの点としまして、農業所得目標を決めまして融資をしているわけでございますが、その達成率ということになりますと、借り入れてから五年経過後の時点で見ますと、農業所得の方では六五%くらいの方が目標所得の八割以上を達成しておられる、一方経営規模の面から見ますと、経営規模拡大目標の八割を超える達成率の農家が大体八四%、こういうような状況になっております。  そこで、今後の問題でございます。お尋ねの中にございましたように、貸付件数、金額は確かにこのところ伸び悩んでおりまして、これにはやはり、先ほど経済局長お答えにもございましたように、金融全般としましてかなり意欲のある方については相当早い時期に充足をされてきた、こういう事情もございましょうが、これからの農業の非常に厳しい状況から見ますと、本制度の活性化あるいは本資金の十分な活用が必要でございます。今回公庫法の改正におきましては、従来の自立経営農家目標だけではなくて、育成することにより自立経営になるというような農家まで含めまして融資対象にしていくというようなことでございます。その他貸し付け関係の手続の円滑化等も含めまして、本資金制度の活性化というか効率的な利用が十分進みますよう、今後とも一層努力してまいりたいと考えております。
  158. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 この総合施設資金農業経営総合改善計画の作成だとか、借り入れの所要の手続が非常に煩雑で、農家にとってはちょっとこなせないのではないかというふうに心配な向きも今聞いておるわけでございます。せっかくの制度が十分活用されないということになればこれはまた困ったことでございまして、運用面で適切な指導をすべきではないかと思うのですが、これが一点。それから、この総合施設資金は将来どの程度の資金枠を設定されているのか伺いたいと思います。
  159. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 借入手続が非常に煩雑である、こういうような御批判については私どもも常に耳にしておりまして、この点についてはできるだけ改善を図ってまいっております。御承知のように、経営総合改善計画を必要とする、あるいは総合資金という性格から、普及所その他関係機関を含めました融資協議会等におきまして貸付者の適格、経営改善の可能性、そういうことについてかなり慎重な検討をしまして、本当に適格な方、本当にこの資金を必要とする方に貸し付けをしよう、こういうことでございまして、そういう関係からいろいろな手続面での要請があるわけでございます。この関係につきましては、従来から数次にわたりまして、書類面で様式の簡素化なり書類の種類を減らす、こういうようなことをかなり進めてまいりまして、最近の例で見ますと、日数だけでございますけれども、五十二年度当時から見ますと四割くらいは短縮が見られている、こういうような改善状況も見られております。いずれにしましても、大事な資金であるだけにこの辺の十分な審査をできるだけ円滑に行う、こういう立場に立ちまして、できる限り今後の手続円滑化を進めてまいりたいと考えております。  次に、資金枠の問題につきましては、お尋ねの中にもございましたように、六十年度、この制度改正後初めての年としましては四百三十億円を計上しております。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、新たに対象農家のいわば拡大ということもございまして、どういうような貸し付けの動向になるか、これは今年度内の動向も見きわめ、またさらにその動向を見て六十一年度以降につきましても本当に必要な資金については貸し付けに応ずる、こういうような立場に立ちまして十分慎重に計画を立ててまいりたいと考えております。
  160. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 今回の農林漁業金融制度の見直しの中で、公庫の三・五%の適用資金農業構造改善事業推進資金、土地改良資金、造林資金等あるわけです。これらの今申し上げた制度は、構造政策の基本にかかわる長期的な投資等の誘導助長策として位置づけられているわけでございますが、今日の農政上の重要課題であります構造政策を進めていくに当たりまして、今後この資金の果たす役割は極めて大きいわけでございます。現在三・五%資金の対象となっているもののおおむね一割については五%の金利を適用した理由を説明していただきたい点と、また三・五%と五%との二本立てになった、これは政策後退ではないかというように私は思うわけですが、この二点について伺いたい。
  161. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の制度金融の見直し、前にも申し上げましたとおり、一つ農林漁業経営の育成強化なりあるいは構造改善を促進をするという視点と、それから第二に資金の効率的な利用と制度の簡素化を図る、こういった二つの観点に立って見直しをやったわけでございます。三・五%資金につきましては、近年の補給金の増大というようなこともございましていろいろ議論があったところではございますけれども、何と申しましてもこれは農林漁業金融公庫資金のいわば一番の性格を代表するような資金でございますし、構造政策等の基本に係る長期的な投資の誘導助長策として非常に重要だということで、構造政策等の方向に即した重要なものにつきましては現在の三・五%を維持をするということにいたしたわけでございます。  ただそういう中で、例えば農地等取得資金にありましては、農地移動適正化あっせん基準に準ずるというような要件を満たす方、いわゆる平たい言葉で申せば農家らしい農家には三分五厘の金利を適用いたしますけれども、それ以外のケースにつきましては五分を適用する。あるいはまた構造改善事業推進資金につきましては、事業規模が百万円に満たない者が借りる場合におきまして五%の金利を適用するというふうなことで重点化を図ったということでございまして、農林漁業構造改善の推進なり体質強化ということを頭におきまして真剣に農林漁業の振興に取り組むという方々については三分五厘の資金を堅持をするということでやっておりますので、私どもといたしましては現在の行財政全般の効率的な推進ということが強く求められております中で、こういう重点化を行ったということによって構造改善政策全般が後退をするというようなことではないというふうに考えておる次第でございます。
  162. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 三・五%を今後とも堅持していくという御答弁がございましたので、ぜひ積極的にひとつ運用していただきたいとお願いしておきます。  次に、農業近代化資金についてでございますが、アメリカが現在非常に農業が危機に陥っているというふうに言われておりますが、それはその年の経営資金の金繰りがつかなくて離農せざるを得ないような状況になっている、こういうふうに理解をいたしております。我が国は幸いにいたしまして系統金融が円滑に機能して農家資金繰りを助けておりまして、非常にすぐれた制度だというふうに私は理解をいたしております。しかし農業金融のうち主な地位の系統金融は最近金融の自由化によって厳しい局面に立たされているというふうに言われておるわけでございますが、そうなりますと組合員が自由に他の金融機関を選べるということになる。したがって農協の経営がそこで非常に苦しくなってくる、こういうことになってくるわけでございまして、このような金融の自由化に対応して農協経営の合理化についてどのような手段を講じようといたしておるのか、お尋ねをいたしたい。
  163. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 金融自由化が進んでまいります中でどういう対応をしようと考えているのかというお尋ねでございます。  農業協同組合は加入脱退自由でございますので、従来から組合員はどこからお金を借りるかということにつきまして、あるいは組合に入る入らないということにつきまして自由でございます。選択できるわけでございますが、資金コストが上昇してくるあるいはまた貸し付けその他の資金運用の面で競争が非常に激しくなってくるといったような状況が厳しさを加えていくことは予想されるわけでございまして、従来から農業協同組合が、組合員農家のために効率的に事業を運営するためにさまざまな事業基盤の強化あるいは合併の促進といったようなことも進めてきておるわけでございますが、一層そういった経営の効率化のための努力というものが農業協同組合にも求められるようになってまいるというふうに考えております。  新しい状況に対しましてどう対応していくかということにつきましては、系統機関の関係者と私どもの行政と一緒になりまして今いろいろ検討いたしておりますし、この秋十月に予定されております全国農協大会へ向けて系統の内部でもいろいろ御議論がこれから深められると聞いております。そういった中で、今後の厳しい状況の中で系統組織がどう対応していくか、そしてまた行政としてそれについてどういうお手伝いができるか、また指導すべきかということを並行して私ども検討をし、考えていかなければいけないと思っております。
  164. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 この系統資金資金コストを見ますと、北海道のような農業地域に行けば行くほどコストが高くなっている実情にあるわけでございまして、この高いコストの金を使うことを余儀なくされているわけでございまして、そこで結局経営が圧迫されるということにつながるわけでございます。こうした実態を、系統金融全体として協力し合って農業地域の資金コストを下げる方策はないのかどうか。利ざやが非常に高い、これは農業経営者にとっては重大な問題でございまして、この点についてどうお考えですか。
  165. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農協の貸出金利につきましては、個々の農協が理事会あるいはまた農協によりましては総会の議決手続を経て、総合的な事業を営む経営体として決定をしているということでございまして、今お話のございましたように、農協の経営事情なりあるいはまた地域の金融情勢によりまして農協別、地域別に金利水準に差がある程度出ております。お話のございましたように、どちらかと申しますと近畿だとか東海、関東といったようなところの方が、いろいろな調査によりますと若干金利水準が低い。この辺は他の金融機関との競争の濃い、薄いというようなことも多少影響をしているのではなかろうかと思われますが、農家への貸出金利を極力引き下げますために資金コストをできるだけ下げる、そしてまた、借入者のニーズに応じた適正な貸出金利の設定をするということにつきましては従来から一般的な指導は行っておりますけれども、預貯金金利等の資金コストとの関係なり、あるいは総合農協でございますので経営体として全体としての農協の財務の安定化を図らなければいけないというような課題もございますので、画一的、機械的な指導にはなかなかなじみにくい分野だと思っております。やはり基本は、一つ農業協同組合の経営基盤なり体質の強化ということと、組合員農家に対するニーズに真剣にこたえていくという、この二点が何といっても原点だろうと思っております。そういう点で、私ども今後とも適切な指導をしてまいりたいと思っております。  なお、この金利水準の比較につきましては、都市銀行などに比べて農協のプロパー資金の金利が高いということがございますが、農協の場合は個人が相手で割合小口の融資で、しかも長期資金が多い。都市銀行なんかでございますと、やはり法人が相手で短期資金で一件当たりの貸付額も大口だといったようなことがございますので、直ちには直接の比較がしにくいということも公平のために申し上げておきたいと存じます。
  166. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 畜産経営農家は非常に今借入金がふえておりまして、これは畜産という事業そのものの性格からいきまして、飼育期間が長い、十八カ月から二十何カ月まで飼育しなければならぬ、えさ代もかかるし相場が変動するということで経営の実態が大変苦しくなっておるわけでございます。これに対して、農協が農家経営実態に即した貸し出しをすべきではないか、実際はなかなか実態に即した貸し出しをしていないという向きを随分我々も聞いておるわけでございますが、農協の営農指導体制と貸出体制はどういうふうになっているのか、どういうふうに指導されているのか伺いたいと思うのです。
  167. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり畜産関係農家というのは借入金の額がいろいろな統計で見ましてもかなり多うございます。それだけ経営資産というものも多いわけでございますけれども、それだけの大きな融資を受けて事業を営んでいくという場合には、他の経営形態と申しますか、作目をやっております場合に比べて、やはり営農設計それからまた生活設計といったようなものがちゃんとできておりませんと後で悔いを残すことになるわけでございます。そのためには、やはりきちんとした計画を立てて、それに見合った貸付条件の設定なり貸し付け後の営農指導が必要だと考えております。  この点につきまして我々は従来から、特に畜産関係はそういうことに十分気をつける必要があるということをいろいろな機会に、通達なり会議の際に指導をいたしておるところでございますが、個別のケースに当たってみますと、そういう点で、農協の営農指導員と改良普及事業というものが非常にうまく連携をしまして、ただ資金を貸しただけではなくて、貸し付け後にも経営診断をやる、あるいはまたここは少し心配だというようなところは農協の指導員がかなり綿密に指導するというようなことをやっておりますところと、残念ながらそういう体制がまだ弱いところとあることは事実でございます。やはりそういった一般的な貸し付け前のあるいは貸し付け後の指導というようなことを強化をしていくことが何よりも大事であろうと考えている次第でございます。
  168. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 農業金融の円滑な運営を図るためには農業信用保証事業は極めて大きな役割を果たしているわけでございます。しかし最近、畜産、酪農などで大きな負債を抱えた農家資金の弁済ができないために、基金協会の代弁がふえてきているわけでございます。基金協会の経営内容が悪くなっているというふうに聞いているわけですが、この保証機能をどういうふうに向上させ、またこの基金協会に対する指導というか対策についてどういうふうにお考えですか。
  169. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり農業信用基金協会の代位弁済額はこの数年来増加傾向にございまして、五十八年度は七十三億二千万円ということで、前年度に比べてかなり大幅な増加になっております。ただ、代位弁済額が増加をしたということが直ちに基金協会の経営内容が悪化するということでは必ずしもございませんで、協会の経営内容あるいは経営収支ということになりますと、保証料の収入でございますとか中央の農業信用保険協会からの保険金の受領額、またその他のいろいろな要因を含めて総合的に判断する必要があると考えております。  いずれにいたしましても、代位弁済額が増加をしているという状況でございますので、協会の保証機能の一層の充実強化を図りますために、六十年度予算におきまして、各県の農業信用基金協会の基金造成のための都道府県の出資助成に必要な出資補助金、それから信用基金協会が保証債務の履行を行うために必要となる融資資金を中央の信用保険協会から融資をいたします場合の交付金について、必要な予算の手当てをいたしておるところでございます。
  170. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 以上で質問を終わります。
  171. 衛藤征士郎

    ○衛藤委員長代理 午後四時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後三時三十八分休憩      ――――◇―――――     午後四時二分開議
  172. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。水谷弘君。
  173. 水谷弘

    ○水谷委員 公明党の水谷弘でございます。  農林漁業制度金融の三法の改正について、順次御質問をいたします。斎藤委員の方から総括的な質疑がございましたので、具体的な問題について何点か御質問をいたします。  最初に、無利子無担保による貸付資金制度として昭和三十一年に創設されました、補助金と他の制度金融との中間的性格を有する農業改良資金について御質問をいたします。  技術導入資金を改組拡充されて、新たに生産方式改善資金、これを新設することになっております。六十年度予算における貸付枠については、資金種目別に貸付枠を設けて、畜産が九十億、果樹が三十億、野菜が十五億、養蚕が十五億、合計百五十億、このように枠が定められておりまして、都道府県に対しても、国の貸付枠、この範囲内において行われるとされているようでありますが、まず、この百五十億を予定しておるわけでありますが、今後の問題として、この貸付枠の設定をどのようにとらえていかれるか、最初にそれをお伺いをしたいと思います。  と同時に、それぞれの枠組みがあるわけですけれども、この百五十億総体を枠として運用されていくのか、それとも資金種類別の枠としてこれを固定化されていくのか、このことについてお伺いをしたい。  それから三番目に、この資金目的を達成するためには、農家段階での円滑な導入が図られなければならないわけでありますが、どのような地域、どのような農家に対して貸し付けをしていくのか。この三点について最初にお伺いをいたします。
  174. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 第一点のお尋ねでございますが、農業改良資金昭和三十一年にできまして、今全体で約一千億ほどがあるわけでありますが、年々二百五十億から三百億ぐらいの貸付枠で運用をしてきたわけでございます。先生のおっしゃいましたように、六十年度はそれにさらに畜産とか果樹とか、いろいろなものがつけ加わってまいりますので、そういうものを含めますと、総額で四百六十億、そのうちの生産方式改善資金としては三百十億円ということになるわけでございます。これは、それぞれの分野といいますか、畜産、果樹、それぞれいろいろな資金需要にこたえられるような形で、農業の情勢とかあるいは都道府県の意向、そういうものを踏まえて積算をいたしておりますので、これで十分に対応できるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  今後これをどうするかということでございますけれども、まだ全体としてはことし、六十年度に出発をするばかりでございますので、そういったこれからの資金の運用といいますか、貸付枠がどのように借りられていくかというようなことも十分見きわめながら、資金需要に対応した適正な貸付枠を将来は設定をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それを全体を一つで運営をするのか、あるいはそれぞれ個別にやるのかというお尋ねでございますけれども、それぞれいろいろな事情を考えまして枠を設定をいたしておりますので、こういうことを基準として県におろしてそれぞれ実行をしてまいりたいというふうに考えておりますけれども、やはりこういったものはそうかたくばかり考えておりましてもうまく全体が回りませんので、種類ごとに積算をしているので十分私どもとしてはこれでやれるとは思っておりますけれども、ある資金について貸付枠が大幅に下回るとかある資金が大変に需要があるとか、そういう事態になりますれば弾力的に運用をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから第三点の、どういう人、どういう地域というお尋ねでございましたけれども、これは無利子ということで、そういう性格上、先駆的、モデル的な分野というようなものにできるだけつぎ込んでいこうということを意図しておりますので、借り受け者につきましても、各作物ごとの生産方式の改善の能力といいますか、能力と意欲があって、かつ、将来中核的なその農業の担い手になるような方、そういう方にできるだけ貸していきたい。それから、地域としても余り狭く限定するつもりはございませんけれども、やはり果樹なら果樹の樹種転換を積極的にやっていかなければいけない地域とか、それぞれの、こういう資金をつくりました目的に沿うような形で地域を選んでまいるというようなことにしたいと存じますが、具体的な要件につきましては各資金によってそれぞれつくっていくということにして、全体が適切に使われますように基準をつくってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  175. 水谷弘

    ○水谷委員 それではその次に、実際に一番重要な立場におられる農業改良普及所の問題でございますけれども、新たに生産方式改善資金の中に畜産振興資金が新設されて入ってくるわけであります。そういう点から、改良普及所の経営指導体制、そういうことについてより一層の強化が必要になってくるであろうと私は考えるわけでありますが、この点について政府はどのように対応されるか、お伺いをいたします。
  176. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 農業改良資金は、出発のときから、いわばいろいろな農業技術の普及の武器といいますか、そういった意味でも使われてまいりまして、普及事業と密接不可分の関係でずっと歩んできた資金でございます。ですから、全体的に見ますと、今度この資金を再編整備するということにいたしましても、制度を円滑に運用するという意味からいいますと適切な指導体制が必要でございますし、従来と同じようにやはり普及所を大いに活用してやっていこうということにしておるわけでございます。ただ、畜産とかあるいは経営規模の拡大資金といった新しい種類の資金も入ってまいりますので、そうなりますと、普及所だけというよりは、例えば農業委員会とかその道の専門的な機関というのがございますので、そういう機関とも十分に連携をしながら普及所を中心として指導体制を組んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。私ども、具体的な、各作物別にどういう形で資金を貸すかというようなことが決まってまいりました時点で、普及所に対しても十分な指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  177. 水谷弘

    ○水谷委員 今御答弁ございましたけれども、従来の制度運営の図式の中には、この改良資金については農業委員会等が直接的に携わるその図式がなかったわけでありますが、そういうことも積極的に取り入れるという御答弁と受け取ってよろしいわけでありますか。
  178. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 従来ですといわゆる農業技術という側面だけを考えてやってきたということがございましたけれども資金の幅がかなり広がってまいっておりますので、そういうものをそれぞれ御指導になる立場、公的な機関がいろいろなところにございますので、そういう機関との連携を従来以上に保っていかなければいけないというふうに考えております。
  179. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、経営規模拡大資金についてでございますが、今回新たに創設されるわけですが、六十年度予算の貸付枠としては十億円が計上されております。これは平均的な数値で計算をしますと、流動化面積は約五百ヘクタール程度、このように想定されるわけであります。農地の流動化の必要性が叫ばれている中で一歩前進の施策であるということは評価いたしますけれども、この程度でどうなるのかということを非常に心配するわけであります。そこで、本資金制度を農地流動化施策の中でどのように今後位置づけをしていこうとされるのか、これが第一点であります。  それから具体的な貸付計画、またどのような貸付基準を持っていらっしゃるか。  それから、この資金の貸付限度額の算定には標準小作科を用いるというふうになっているわけであります。我が栃木県の標準小作料と実勢小作料を調査をいたしまして比較をいたしてみました。その中にはかなりの格差が見られているわけであります。この貸付限度額の積算があくまでも標準小作料によって行われていく場合には、いろいろな問題が起きてくる。果たしてこれが、標準小作料を採用することが妥当な措置なのか、非常に問題があるわけでありますが、この標準小作料と実勢小作料の格差、これを是正するためにどのような指導方策をお考えになっていらっしゃるか、その点をお伺いをしておきたいと思います。
  180. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 ただいまお話がございましたように、経営規模拡大資金につきましては、昭和六十年度は十億円の資金枠を予定いたしております。県の意向等をお聞きいたしますと、今のところ大体六十億円ぐらいの資金需要があるのではないかと我々考えておりますが、初年度でもございますので十億円の資金枠を設定いたしたわけでございまして、これから昭和六十年度の貸付状況等、毎年度の貸付状況を見ながら適切な資金枠を設定をしてまいりたい、このように考えているわけでございます。この経営規模拡大資金は、私どもがやっております各種の構造政策、特に中核農家経営規模の拡大政策の中では農地保有合理化促進事業等と同じようなウエートを持ちまして私ども考えておりまして、でき得ればこういうような方法によりまして規模拡大の推進を図っていきたい、このように考えるわけでございます。  それから貸付基準でございますが、これはただいま申し上げました農地保有合理化促進事業等、既存の奨励事業なりあるいは融資の施策がございます。そういった施策と整合をとりながら規模拡大を図っていくということでございますので、貸付対象となる農業者につきましては、その地域におきます農業生産の中心になる農家を想定しておりまして、少なくとも経営面積につきましては平均規模以上の経営を行っている者を予定をいたしております。また、貸付対象となります賃貸借の期間でございますが、五年以上十年以内のものとするようなことを主な内容といいますか貸付基準といたしたい、このように考えております。  それから、経営規模拡大資金の場合は標準小作料を基本にいたしまして貸付額を定めていくわけでございますが、地域によりまして実勢小作料との間にかなりの格差があるところがございます。制度上は、小作料は農家当事者間の自由契約でございますけれども、円滑な契約を促進する、こういうような観点に立ちまして、農業委員会が地域の実態に即しまして標準小作料を定めまして賃貸借の円滑化等を図っている、こういうことでございますので、私どもといたしましては、やはりこの標準小作料ないしはそれに近いようなところに具体の小作料が設定されるというのが一番望ましいのではないか、このように考えているわけでございまして、現在、余りに実勢小作料が標準小作料を上回るような場合には農業委員会によりまして減額勧告というようなこともやっておりますけれども、こういう制度の活用も含めまして、標準小作料を基準といたしまして適正な実勢の小作料が形成されますように指導してまいりたい、このように考えております。
  181. 水谷弘

    ○水谷委員 今の実勢小作料と標準小作料の御答弁でありますけれども、この兼をひとつ、厳しいようなところについて指導することはもちろんですけれども、貸付枠の限度額でありますから、それほど厳しい運用をなさらないで、できるだけ実勢の方に寄せていくぐらいな、そういう御努力をしていただきたい、このことを要望しておきます。  それから、農林漁業金融公席法の改正についての具体的な問題といたしまして、今回の農林漁業金融制度の見直しの中で、公庫の三・五%の金利が財政当局から指摘されて、金利水準また貸付対象の全面洗い直し、これが求められた。この三・五%の資金構造政策の基本に係る長期的な投資等の誘導助長策として位置づけられているわけでありまして、農政上非常に重要な位置づけを持っているわけであります。今回の改正で、このような低利資金が、我が国農林漁業を取り巻く諸情勢や、また補助から融資へと政策転換を図る、そういう中で重要なものとして理解され、基本的にこれが維持されたということについては、大変御苦労があった、評価をするものでありますが、運用面で厳し過ぎる要件を定めるということになるのではないか、こういうことを当事者の皆さん方は大変御心配をしていらっしゃるわけであります。  そこで、極めて具体的な問題になりますが、三・五%の資金資金種類別の枠の融通は弾力的に行えるのか、またもう一点は、三・五%の枠が総体として足りなくなったときに五%の資金から一部融通することは可能なのか、この二点についてお伺いをしておきたいと思います。
  182. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まず三分五厘資金資金種類ごとの貸付枠の融通が弾力的に行えるかどうかということでございますが、全体の六千八百五十億円という貸付額の中の資金ごとの資金枠につきましては、特に資金需要の旺盛な農地等取得資金につきまして前年度より増額するといったようなことを初めといたしまして、できるだけ農林漁業者の資金需要に対応できるように配慮して資金枠をつくっておるつもりでございます。当然のことながら、その枠内で資金需要の動向を踏まえながらやっていくという建前でございますし、それで資金需要にも十分対応できるものというふうに考えております。  資金枠との関係で申しますと、今回の制度改正で資金種類の統合ということをやっておりまして、例えば農業と林業と沿岸漁業の構造改善事業の推進資金の統合でありますとか、あるいは総合施設資金と酪農・肉用牛経営改善資金及び果樹経営改善資金の統合、この資金を統合いたしますと資金枠としても一本になります。そういうところからまいりますと、制度の簡素化ということだけではなくて貸付資金枠の弾力的な運用も可能になり得る、かように考えておるわけでございます。  もし三分五厘が不足をしたらどうするかということでございますが、それは年度の途中で貸付枠の実行状況その他を総合勘案しまして、真に必要だという場合にはやはり適正に措置することを検討したいというふうに考えております。現に五十九年度におきましても、非常に厳しい財政事情のもとで、三分五厘資金というのはかなり補給金の幅も大きいわけでございますが、資金需要が非常に旺盛であるというふうなことで、年度の途中で全体の資金枠の調整を大蔵省と協議をいたしまして調整をいたしまして、五十億円を増額したというようなこともことしの例としてあるわけでございます。実態を見ながら適切な処理に努めていきたいというふうに考えております。
  183. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、総合施設資金についてお伺いをいたします。  今回、一気に自立経営は達成できないが、段階的に自立経営の目標規模のおおむね七割程度の規模を目標として規模拡大を行う若手農業者等を貸付対象者として加える、こういうふうになってくるわけであります。この七割程度の規模という目標設定については、これは一歩前進であろうと思いますけれども、そもそも農林水産省が言ういわゆる自立経営農家の指標、これが今日の農業実態の中で果たして客観性を持っているか、自立経営農家の指標というものを一体どういうふうにとらえていくべきなのか。この辺、各県によっても違うわけでありますけれども、その基本的なものについてもう一度これは再考を要するのではないかという議論が起きているわけであります。  そこで、現在総合施設資金農家三万数千あるわけでありますけれども、それの土地利用型部分経営規模を見てみますと、稲作では八・六ヘクタール、北海道では八・七、酪農では、北海道では三十六・九頭、内地では三十二・一頭、肉用牛では両方平均が百二十・九頭という数字が出ておるわけであります。  六十五年に七十万戸の中核農家をつくっていこうという政府方向でありますけれども、この六十五年七十万戸中核農家が現在の自立経営農家のようなものであるとすると、現在自立経営農家は二十万戸ほどある。七十万戸を目指すと、あと五十万戸近い自立経営農家を育成していかなければならない。そういう場合に、現状の耕地面積別を見てみても、五十八年の一月一日現在で三ヘクタール以上の農家戸数は内地で十一万戸、北海道では経営規模面積が十ヘクタール以上が三万一千戸、こういうふうな数字しか出ていないわけであります。この自立経営のいわゆる目標規模をもう一度検討すべきではないか。もとになっているものを検討せずに七割にだけ改正をしても、それほど効果があらわれて本格的な中核農家、自立経営農家を育成する目的を達する資金にはならないのではないかという危惧を持たざるを得ないわけでありますが、その点についての農水省のお考えをひとつお伺いをしておきたいと思います。
  184. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 今の自立経営農家でございますけれども、現在、自立経営農家という形で、基本法で定められておる定義に従ってそういうものをできるだけつくっていこうということでこの総合施設資金がスタートしたわけでございまして、それはそれなりに、私どもがそういう農家が多くなってほしいと一番願っている農家、そういったものをできるだけこういう資金を使ってつくっていこう、そういう農家を育てていこうという理想といいますか、そういうものは一応そのままに進めていく必要があるのだろうと思います。  ただ、それを一挙にやっていくというような状況に今なかなかないわけでございますので、そこで今回のような段階的なというような形でこういう資金の制度を仕組んだわけでございまして、その最終的な到達点は、従来から考えているようなものをやはり我々の一つの理想形として追い求めていきたいというふうに考えているわけでございます。  ただ、一挙にいきませんので、今七割というお話がございましたけれども、やはりこういう相当低利の大型の融資をやるわけでございますので、特にエリート農家だけを選び出すということではありませんけれども、やはりある程度の資質を持ってある程度の規模を持った方たち、そういう方に援助をして、そして究極的には自立経営に育っていただきたい、そういうことで今回の段階的なものを考えたわけでございまして、先々の究極の目的は、従来基本法で言っておる自立経営農家を目指しているという点には変わりはないというふうに考えております。
  185. 水谷弘

    ○水谷委員 どうか、いわゆる数値だけで限定するのではなくて、その地域の中心的な意欲のある農家に対しては弾力的な運用を図っていただきたい、このようにお願いをしておきます。  まだたくさん質疑をしたいところがありますが、時間の関係がございますので大臣にお伺いをいたします。  農林水産業の技術面での各種の施策については我が国においては非常な前進が見られているわけでありますけれども、いわゆる農林水産業、これが一つ産業として、各事業者が一個の経営体としてその経営計画や営業方針、金融計画、農家経営の基本的ないわゆる農業経営という問題に対する技術向上という面については非常におくれているという指摘があるわけであります。農業政策があっても農家経済政策はない、そういうことまで言われているほどであります。  そこで、農家経営の確立のために今後取り組まなければならないいろいろな問題があると思いますけれども農業高校におけるカリキュラムを調べてみますと、これは私の地元の小山園芸高校の一つの例かもしれませんが、農業科と園芸科、これは農業経営をなさる方でありますけれども、この方は二年生で二単位、三年生で三単位、一年間は三十単位あるわけですけれども、このような比率でいわゆる農業経営の学習をしていらっしゃいます。さらにまた、国にも農業者大学校がありますが、その国の農業者大学校の中におけるいわゆる経済、経営に関する時間数、全体の授業時間数とその比率を見ますと、前期、中期合計して二千三百五十四時間あるところ、そういう経営に関する学習の時間が百七十四時間、七・三%、こういうカリキュラムの中における時間帯になっているようであります。専門的な技術者を養成するにふさわしい学校教育、また職業教育という観点から、これらの経営に関するカリキュラムをより一層充実すべきであろう、このようにも考えます。  もう一つは、先ほど来も議論をいたしてまいりましたけれども、農地三法関係の農地に関する問題だけではない、具体的なその地域の農家を育成し指導していく、そういう実務的な専門家が農業委員会の中にもしっかりいていただかなければならないだろう。当然農協においては現在の系統金融のより一層の活発化、これからの金利の自由化、いろいろな問題に対応するために、この間も伺いましたけれども、ある農協では、うちの農協には二人ほど専門家がおります、経営コンサルトももう全部できるメンバーがおりますという話もございましたけれども、農協においてもそういう専門家の配置が必要であろうし、また農業改良普及所等においてもより一層の高度な経営技術、アフターケア、またいろいろなアドバイスのできるような専門家の配置が急務であろうと思っております。  そういうことで、今回の改正に当たって政府として、借り受ける側である農林水産業皆さん方が適切な経営を営んでいけるための事前事後のきめ細かな対応策、これをどのように図っていかれようとしているか、私は現状のままでは決して十分ではないという認識に立って積極的な取り組みをいただきたいと思っておりますので、お答えいただきたいと思います。
  186. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生お答えいたします。  制度金融は、先生がおっしゃったようなことで自主性や創意工夫を生かすという特徴を持っておりますが、この目的を達するためには経営者の経営及び技術能力の向上が一番大切だと思っております。そういうことの中に、農林漁業者が必要とする資金が融資機関の的確な審査のもとに適時適切に融通され、そして資金融通後において制度の目的に即した適切な指導が行われることが大切、このように思っております。そういうことで、従来もそうですが、融資機関における審査能力等の向上とか、あるいは普及組織、農協等による営農指導の強化に今まで努めてまいったわけでございますが、今後ともこの制度金融の適正な運営について指導してまいりたいと思います。  また、農業高校のカリキュラムの点ですが、非常にいいことを聞かせていただきました。というようなことで、もう一遍よく調べまして、これはできれば文部省に申し入れをいたしたい、そして今先生御指摘のような経営感覚の養成につきまして最大限の努力をいたしたい、このように考えます。
  187. 水谷弘

    ○水谷委員 ぜひ真剣なお取り組みをお願いしたいと思います。特にいわゆる補助事業がどんどん減退してきている中で、農業委員会または県の農業会議、これらの予算においてもだんだん非常に厳しくなっていく、人員の配置が難しくなっていく、そういう中で、今回の新しい融資制度が出てきても立派にそれに対応するだけのスタッフをそろえることは非常に難しいという問題があります。ですから農業委員会や県の農業会議等の努力だけを期待するのではなくて、国も応分の対応をしていっていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  最後になりますけれども、今回の制度金融の三法改正も、しょせんは農林水産業の発展と農山漁村の地域社会の発展のために寄与するものでなければならぬことは当然であります。そこで、今回の改正が補助から融資へという、現在の農業政策の中で融資農政への大きな転換出発点になるのではないか。いわゆる融資元年だというような言葉をおっしゃっている方もいらっしゃいます。  そこで、私はこれは大臣質問というよりも申し上げておきたいのでありますけれども、財界だとか財政当局農林水産業部外の方々からの補助金悪玉論みたいな、極端な経済合理性追求のための現在の農政に対するいろいろな批判を受けて行動を起こすのではなくて、天候、気象、こういう自然の厳しい状況の中で農業という産業は営まれていかなければならない、また作物も一年一回しかとれないという、他の産業とは全く違う農業という産業の持っている特殊性というものを考えて、さらにまた森林だとか水田が果たしている公益的機能も考え合わせて、農林水産業、そしてまた農山漁村のいろいろな環境整備の問題において、どこまでが補助金でやるべき対象なのか、さらにこの部分は公共投資を行ってやるべきものなのか、そういう基盤をはっきりした上で、農家の自主的な経営上の選択の上で金融制度をどういうふうに位置づけていくのか、こういうそれぞれの分野ごとのあるべき姿を明確にした上でみずからの、我々農政に携わっている者の立場から本格的な補助金、公共投資、制度金融というものの明確な方向性というものを、ぜひ三法改正のこの時期をとらえて農水省、大臣を初めとして皆様方にお取り組みをいただきたいと思うのであります。  補助金が悪玉であるなんということはとんでもないことでありまして、我が国農業が抱えている歴史的な構造的な問題を考えれば、技術的な問題だけで補える部分というものは限られできます。そういうことを考えれば、これからのいわゆる制度融資についても本格的な組み立てといいますか、そういうものをしていただかなければならないだろうと考えるわけでありますので、より一層のお取り組みを最後にお願いしておきたいと思います。大臣、一言。
  188. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  いろいろ御教示、大変ありがとうございます。恐らく局長が答弁したと思いますが、このたびの制度金融の改革というのは、基本は、厳しい財政下で財政の効率化を図りながらどうしたらよい農林水産業ができるかという観点で改正をお願いしたというわけでございます。  それからいろいろなことにつきましての取り組みにつきましては、実は私が自分で言うのはおかしいですが、我が省の役人は極めて優秀ですが、ただ、地味で、PRが非常に下手ですね。そんなことがございまして、今おっしゃることで、農業というもの特性等につきましても大変PRが下手、やることはきちんとやっておる、そんなことがございます。新時代に対応して、そういう点も含めまして大いに努力したいと思っておりまして、これからの御指導、御鞭撻を心からお願いいたします。
  189. 水谷弘

    ○水谷委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  190. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 中川利三郎君。
  191. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 我が国農政の持っているいろいろな問題の一つの典型例として、木材の輸入関税引き下げにつきまして、前段お聞きしたいと思います。  合板など木材関税引き下げの問題で、あなたはきのうの記者会見で、この問題で来月初め対応策をまとめる、こうおっしゃっているわけでありますが、おとといの政府・与党首脳会議中曽根総理は、関税引き下げに備えて三年をめどに国内調整をするということを言っていらっしゃいますね。アメリカがこれまでも市場開放を強く求めてきた四つの分野がございますが、木材分野はその中でも特に困難だ、あるいは絶対反対だ。私の記憶では総理さえも、木材のこの点についてはもう嫌なものは嫌だとはっきりと言う。また、この前の一般質問であなたは私に、日米諮問委員会でこの問題などを取り上げた際、意見を異にする、こうおっしゃっているわけです。  ですから、今回の百八十度の転換につきましては、アメリカの強引な圧力に屈した、これ以外に考える余地はないと私は思うのですけれども、ほかに態度変更の納得できる理由がありましたら、御説明いただきたいと思います。
  192. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 中川先生お答えいたします。  先生御存じと思いますが、我が国の林産業界というのは長期にわたる深刻な不況下にあり、まだ回復の兆しは見えておりません。こうした林産業界の不振が我が国の林業に深刻な影響を与え、また森林の公益的な機能等を非常に阻害をしているのは先生御存じのとおりでございます。  そんなことで、木材製品の対外問題につきましては、関係国との友好関係にも留意しつつ、我が国の林業を生かしていく観点に立ち、その健全な発展との調和を図って対応することが基本的に大切であるという認識は以前と変わっておりません。そういうことで、この関税引き下げについては従来から申し上げているとおり極めて困難であると考えております。そんなことで慎重に対処したいと考えております。
  193. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 困難だ、絶対反対だ、そういう立場から、いつの間にやらそれを受け入れることを前提にして、国内調整をどうするか、いわば条件闘争ですね、こういうことは今の大臣の御説明によっても私は納得できないわけであります。  同時に、二十五日の政府・与党首脳会議、そういう会議を開いていながらあなたは仲間に入れてもらえてないんだな。つまり、この問題の最高責任者を抜きにして国内林業対策ができるかということですね。きのうの記者会見で、三年間で段階的にこれを解消するのだ、条件闘争の中身を国内の調整でやっていくのだ、こういう総理の指示に対して、真意を聞いてみないとよくわからない、このようなおぼつかないあなたの発言が新聞に載っているわけでありますが、そんな無責任なことで大臣が務まるのか、私はこう指摘したいわけであります。そういうことから見ますならば、いつから木材関税問題はあなたの所管を離れて総理大臣が直轄するようになったのか、こう直言いたくなるぐらいであります。  あなたはこれについて、慎重にと今御発言がありましたけれども、慎重でなく、枠をもう取り払ってそれを受け入れるということですから、これまでのあなたの言明からいっても大きく食い違っているのじゃないか。こういう点について、政治生命というか、あなたの政治的な責任というものは一体どうなるのか、私は非常に危惧するものでありますが、御回答いただければありがたいと思います。
  194. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 きのう私はいろいろな方から、何か十二時のニュースで佐藤農林水産大臣総理と見解を異にするというニュースが流れた、こういうように聞いております。  実は、現在の森林、林業、木材産業が置かれた厳しい現状を見ると、関税問題の対応に先立って、単に合板業界の体質改善のみならず、中長期の視点に立って林業及び木材産業を通じた総合的な活性化対策を進める必要があると考えております。関税問題は林業、木材産業が活力を取り戻した後に対処すべき問題である、このように考えておりまして、先ほどの総理の御発言である中長期対策を考えるべきだというのは、私と同様な考え方だと思っております。
  195. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 中長期対策云々と言うけれども、長い目で見ればどうなんて言うけれども、実態が変わるわけでありますから、これまでの言明とは全く違うわけですね。そういう言い逃れでこれを合理化しようといったって、大体国内の木材産業の業界というのは全部がこれに反対している。現に、せんだって私が秋田に帰りましたら、業者は、これだけはやらないでくれ、我々の死活問題だ、こう言っているわけであります。  あなたはかねがね、こういうやり方とは意見を異にするということをはっきり私におっしゃっているわけですから、そうなったら、そういう言い方の中であいまいにするのじゃなしに、総理自身でさえも約束違反ですから、やはり抗議するとか、今のところこれはできないんだということで、はっきり言うべきものははっきり言うという今までの言明どおり、これは撤回すべきだ、そういう立場で奮闘するのが我が国木材産業を守る大臣の唯一の任務だと思うのですが、この点についてはいかがですか。一言で結構です。
  196. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先ほどから言っておるとおりですが、私の考えと行動は以前と少しも変わっておりません。
  197. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そういうやり方で、農民を守る守ると言いながら、実際にはずっとやられてきた。農業金融もその一環なんですよね。何も変わっていないと言うけれども、これほどの大変わりはないですよ。これはまさに詭弁としか言いようがないと私は思うのです。そういう立場で本題に入らせていただきます。  先ほどの論議にもありましたとおり、今度の法改正で最大の問題は、三・五%の金利を五%に引き上げたということだと思うのです。  そこで聞くわけでありますが、農地取得資金だとか構造改善だとか、あるいは土地改良資金だとか、これは従来なぜ三・五%という低金利をとってきたのか、この経緯について簡単に御説明いただきたいと思います。
  198. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えをいたします。  まず、農地等取得資金でございますけれども、この取得資金昭和三十年制定の自作農維持創設資金融通法に始まるわけでございまして、この制度では経営安定のための農地の取得ということで五%金利になっております。その後、昭和三十八年の公庫法の改正によりまして、このときに貸付条件の改定が行われまして四・五%というぐあいに下げられております。農業構造改善資金におきましては四%になっております。さらに、昭和三十九年に貸出金利の改定が行われまして、これが四段階金利ということになりまして、このときに三・五%に引き下げられております。農業構造改善推進資金につきましては、昭和三十八年に三・五%の金利の設定がございます。  土地改良資金につきましては、昭和三十三年に制度が発足いたしまして、これが三・五%、こういうような経緯になってございます。
  199. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私はここで歴史的経過を聞いてはいないのです。聞いたことに答えてください。なぜ三・五%資金立場をとってきたのかということを聞いているのです。これはそれなりの必要があってやってきたわけでしょう。そこのところを聞いているわけであります。  例えば、今回法改正で五%引き上げについては、農地取得資金の例で言えば、引き上げ対象となる農地移動適正化あっせん基準に適合しない人、こういう人は五%金利で十分やっていけるということになるのですか、そういうお立場で今度あなた方は五%に引き上げるのですか。あるいは構造改善事業で百万円以上の基準を設けて、百万円以上は三・五%、百万円以下は五%でももっと高い金利でも経営が成り立つ、こういうことをまともにお考えになってあなた方はこういうふうに変えたわけですか。聞いたことに答えてください。
  200. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 昨今のように非常に厳しい財政事情でございますので、資金の効率化を図っていくということはやむを得ないものと考えておるわけでございまして、そういたしました場合に、従来の三・五%の金利については、私どもが進めております構造政策方向に合致するものについてはこれを基本としていくという方針で三・五%とし、一部のものについて五%ということを定めようとしているわけでございます。  それで、この五%金利そのものについても、他の制度金融の金利をお考えいただきますとおわかりのように、これもかなり低利の金融になっているわけでございまして、私どもとしては、農業に意欲のある者がそういう意欲をそがれないように十分配慮しつつ、こういった金利を設定したものでございます。
  201. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 同じ農民をつかまえて、おまえさんの方は意欲がない、だから五%だ、おまえさんの方は意欲があると認めた、だから三・五%だと、農民を分断し階層に仕分けする、あなた方に何の権限があってそういうことができるかと私は言いたいわけでありますが、財政上やむを得ないとおっしゃる。しかし、この公庫法の設立の趣旨、公庫法の第一条、これは何と書いてあるかということですね。そういう趣旨から見まして、これはとんでもないことだと私は思うのです。  ここに資料を引き合いに出すまでもありませんが、かつて農林政務次官であった丹羽兵助さん、昭和三十九年の国会会議録を見ますと、そういう農民を、零細な大方を、ほかの金融機関が貸してくれないから、そこでカバーするのだということを答えていらっしゃるわけですね。そういう趣旨から見ましても、財政上、臨調行革立場だけから農業の問題を取り上げるということはゆゆしい大問題だと私は思っておるわけであります。  それではお聞きしますが、あなた方は、構造政策方向に即して重点化、こう言いながら一定の基準を設定したわけですね。その基準に合わないものを金利を引き上げるのだ、こういうことになるわけですね。そうしますと、今後その基準を一層厳しくする、三・五%の適用範囲をますます狭くしていく、そうならない歯どめというものはないと私は思うのです。  その基準について、例えば農地取得資金だとか農業構造改善事業推進資金だとか、そういうものにせよ、法律では主務大臣が定めることになっているのですね。つまり、当面百万円の基準がありますが、今後重点化ということで、同じ論理で今度は二百万円だ、そういうことは大臣の腹一つでどうにでも勝手にできるということになりませんか。法律上そういうことがどうにでもなるということが可能になるわけじゃありませんか。この点、可能になるのかならないのか、一つだけ。
  202. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 それぞれの資金ごとの金利につきましては法律全体から御判断をいただきたいと思うのでございますが、農地等取得資金にしましてもあるいは農業構造改善資金にいたしましても、原則の金利は三・五%ということに相なっているわけでございます。確かに農林大臣が定める一定のものにつきましては一部五%の金利が適用されますけれども、こういう法律の中に定めてあります定め方、あるいは低い金利が定められている、そういう立法趣旨を体しまして農林大臣が今後要件を定めていくことになるわけでございますので、私どもといたしましては、自由にそういった要件が変えられてくる、そのようには考えないわけでございます。
  203. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、今の答弁ではそのことを認めつつも結局は歯どめがないことを自白したようなものだし、大臣の腹一つでどうにでもなるという、情勢が厳しくなればこれからますますそういう選別的な立場、重点化、こういうものが当然出てくると思うのです。ですから、そういう流れにあることが法の趣旨、第一条にもそぐわないということを私は再三申し上げているわけであります。  それで、農水省は今回の改正で三・五から五にしましたね。その中で五になるのはわずか一割に満たない、こういうお立場もあるようでありますけれども、だから基本を維持したのか、こういう問題になりますと、私は必ずしもそうじゃないと思う。  なぜそうなるかといいますと、三・五%資金というのは公庫資金の中で最も低い金利水準にあるわけでありまして、貸付残高を見ますと三六・九%、四〇%近いものが農林漁業者にとって最も重要な資金になっているわけであります。これの金利を引き上げると今後の金利引き上げの突破口になるおそれがあるから私は申し上げているわけでありまして、事実上一割に満たないと言いながらも、その人々が差別を受けるということともあわせまして重大な問題だと思うのです。  しかも、なぜこうなったかというと、臨調答申ですね。あなたの方の文書にはっきり書いてありますね。つまり、利子補給金の抑制の見地から、貸出利率を含む貸付条件の見直し、こういう臨調のお立場が発端になっているわけであります。ですから、先に金利引き上げありき、構造政策に即した重点化は後でくっつけた理屈だと私は思うのです。  農林漁業金融制度そのものは、御承知のように、自然の生産力に依拠せざるを得ないという農林水産業者やその経営が零細だという経営実態から見まして、低金利体系は当然だ、それが生命線だ、こういうことなのですね。それを無視して、農業生産振興、農家経営安定と無縁の立場、つまり財政上の立場、軍事費はどんどんぶち上げていながら、そういう立場で金利引き上げの突破口をつくっていく。私は、今回の法改正が全部悪いとは言っていないのですよ。改良された部分があることは認めますよ。認めつつも、原則的には大きく後退している、一番肝心な金利問題でこうなっているということですね。  私は、この問題の最後に農林大臣に再びお聞きしたいのでありますが、今回の金利引き上げ部分について、農業生産の維持発展、農家経営の安定につながると思うのかどうかということです。あなたお得意の、長期的に見ればなどということでごまかさないで、実際問題としてどうなのかということです。言えないならば、この金利の部分だけでも撤回すべきだと私は思うのです。この点について大臣から御所見を承りたいと思います。
  204. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  結局、貸付利率三・五%資金につきましては、融資対象を重点化することとし、長期的な投資等の誘導助長策としての重要性にかんがみ、構造政策等の方向に即したものは現行どおりその貸付利率を三・五%としておるということでございます。したがって今回の制度改正は、農林漁業の近代化と体質強化に留意しつつ、構造政策の推進に十分配慮した内容となっていると考えております。  そういうことで、私はこの趣旨の一番基本は、特に先生理解願いたいと思うのですが、大変厳しい財政下でどのように財政を効率的に運用するか、そして本当にいい農林水産業をつくるためにこの制度を改正した、こういうように御理解願いたいと思うわけでございます。
  205. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 十分配慮したと言うが、何を配慮したのか、中身のない言い方であると同時に、長期的に云々ということで、再びそこのところへ逃げたとは言いませんが、楯にした。同時に、徐々にそれはよくしていかなければならないのだという皆さんの善意はわかるにいたしましても、徐々に悪くなっているというのが実態なんだということですね。財政がこれから展望が開けるという見通しはなかなかありませんから、当然そういうことにならざるを得ないということを指摘しておいて、次の問題に入らせていただきたいと思います。  次の問題は、公庫の資金調達のあり方についてお聞きしたいと思うのです。  公庫資金のほとんどは財投からの借り入れで賄っていらっしゃるわけですが、この調達コストと農民への貸し出しで得られる運用利回り、この差がいわゆる逆ざやでありまして、これを公庫補給金という形で埋めておるのが実態だろうと思うのです。この補給金が年々増大する、我慢ならないということが臨調の指摘なわけであります。  それでお聞きしたいことは、この補給金は一九六五年前はゼロであったと聞くわけでありますが、なぜ補給金を出さなくて済んだのか。これは歴史的なことで結構ですから、簡単にお答えいただきたいと思います。
  206. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林公庫が発足いたしましたのが、特別会計からかわりまして昭和二十八年度でございますが、三十九年度までは政府からの出資金資金運用部からの借入金を貸付原資にいたしまして、いわば無利子資金とまぜて低利資金の融資が可能なように予算措置を講じてまいったわけでございます。
  207. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうですね。政府のそれまで出資金があったのですよ。では六五年から出資金方式をやめて補給金方式になぜ変えたのか、簡単に答えてください。
  208. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 昭和四十年度に至りまして、国の財政事情もなかなか厳しくなってくるという中で、やはり貸付業務量は農林水産行政の必要上拡大をしていかなければいけないということで、これを政府からの出資に全面的に仰ぐということが難しくなりまして、住宅公庫なども同様でございましたけれども、農林公庫につきまして不足する貸付原資について借入金で賄うことにいたしました。公庫に生ずる損益の不均衡につきまして、その差額を補てんする補給金が交付されることに相なったわけでございます。
  209. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 別に住宅金融公庫のことを聞いているのじゃないのですよ。私が聞いたのは財政なんです。お金をそっちに出すのが惜しい、臨調もこう言っている。そういうことでだんだん出し惜しみしてこういう状況になってきたという結果が今証明されたと思うのです。  そこで、現在の補給金が毎年増加しているわけでありますが、六五年以降政府出資をやめたことのツケが、回り回って今日の実態になっているんじゃないかということです。少なくとも、毎年出資金を入れておれば現在のような補給金増加はなかったのじゃないだろうか、こういうことを考えるわけでありますが、この点はいかがでしょうか。簡単にお答えください。
  210. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 確かに財政事情ということでございますが、物の評価は必ず両面あるわけでございまして、厳しい財政状況の中でもこういう補給金がきちんきちんと交付されてまいったことによりまして、農林漁業者等に対する長期低利の資金の安定的な供給が図られてきたというふうにも見ることができるのではないかと考えております。  ちなみに、例えば昭和六十年度におきまして、補給金をゼロとして、これにかわって追加出資で損益を均衡を図るというようなことになりますと二兆円の金額が必要になってまいるということでございまして、やはり現在の農林公庫の貸し付けの規模、これだけのものを安定的に資金供給をやってまいるということと、私どもも年々努力をいたしますけれども財政現実可能性というものの調和を図るといたしますと、こういった形が必要であったというふうに考えております。
  211. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、本来補給金というのはマイナスシーリングだとかいうものと性質が同じものじゃないわけですね。ですからそれは二兆円かかるかもわかりませんが、いずれ財政財政でやられてきているということにはなると思うわけであります。  きょうは大蔵省おいでになっていらっしゃると思いますが、ついでにお伺いいたします。  他の政府金融機関、例えば日本開発銀行、日本輸出入銀行、こういうところの資金調達コスト、これは今何%になっていますか、お答えいただきたいと思います。
  212. 藤原和人

    ○藤原説明員 日本輸出入銀行及び日本開発銀行の五十八年度の資金調達コストについてのお尋ねでございますが、六ないし七%程度と承知をいたしております。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕
  213. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今六ないし七%程度だ、こういう話でございますが、正確に私調べたところ、五十八年度輸出入銀行は六・一九%、開銀は六。六五%であるわけでありますから、六ないし七の中に入るわけですね。それは結構でございますけれども農林漁業金融公庫の調達コストはそれよりぐんと高い七・六九%になっているんですね。だから私はこういうことを見ますと、大企業が使う資金の方が、生産性の劣る低利資金をぜひとも必要とする農林漁業の制度資金よりも安く調達されているということですね。例えば公庫が輸銀、開銀並みに資金調達できれば、問題の逆ざやも半分になるだろうと私は思うのです。  それで、なぜそういう差ができたかということでありますが、輸銀の場合は公庫の五倍ほども政府出資の比率が高いんですよ。出資金という無利子の金を原資にできるという立場にあるわけですね。開銀でも、政府出資の比率は公庫と同じ程度でございますが、ほかに準備金を四千三百億も持っているんですね。要するに、もうかっておったり自己資金が大きいために資金コストが下げられるわけですね。逆に言えば、そういう優良企業や銀行にまで国が金をつぎ込んでいる、こういうことも言えると私は思うのです。  輸銀と開銀あるいは公庫とはその性質が違うというかもしれませんが、こういう差があることも事実でありまして、やはり農林漁業金融公庫については、農業に要請されております長期低利の融資だとかそれをやるにふさわしい資金調達、公庫の体質強化はどうしても必要だと思うのです。そのためには政府出資の拡大ということは欠かせないことだと思っておりますけれども、この点は大蔵省に答弁していただくのは適切かどうかわかりませんが、大蔵省、ひとつ簡単にお答えいただきたいと思うのです。
  214. 竹内克伸

    ○竹内説明員 御指摘の点は、確かに公庫の体質という観点から考えますとそういう考え方もあり得るわけでございますが、御案内のような厳しい財政事情のもとで、私どもとしましては、限られた財源を効率的に配分しまして農林水産関係資金需要に対して適切にこたえていくという観点からいたしますと、現在の方式がやむを得ないあるいは適切であるというふうに考えております。
  215. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大蔵省の立場はそう言うに違いないわけでありますが、農水省としてみれば、私の先ほど言ったことに対して一定の見解があり、当然農業を守る立場からするならば、皆さんも努力しなければならない今後の課題も出てくるだろうし、そういう問題意識を持たれると思います。  あわせて農林省に一言聞きますが、今の点と、また今のことを抜きにして、逆ざやが大きいから補給金を削れとか農家の金利をもっと高くしなければならないということは本末転倒した議論になると思うのですが、私はその点について一言農水省から御見解をいただきたいと思います。
  216. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 公庫の補給金の現状なり見通しにつきましては、前にもお答え申し上げましたように、今回の制度融資の見直しの結果を含めまして、六十年度予算の約千四百億の補給金というのは、今後十年ぐらいの将来を六十年度予算ベースをもとにしまして計算をいたしましても増加をいたしてまいるわけでございまして、補給金をカットするというような方針で私どもは物事をやっておるわけではございませんし、先ほど申し上げましたように、これだけの農林漁業の長期低利融資を年々供給いたしていくということと現実財政的な可能性ということを両方にらみ合わせますと、現行の補給金方式を続けていくこともやむを得ないというふうに私ども考えておるところでございます。
  217. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 補給金を続けることがいけないとかいいとか言っているのじゃなくて、そういうことを理由にして、根っこを放置したままで補給金の方を削っていくというやり方、金利を上げていくというやり方は本末転倒したものじゃないかということを私はお聞きしたわけでありますが、ここで議論する時間がございませんので、次の問題に移らせていただきます。  政府は、農業基本法以来、自立経営農家の育成とか中核農家の育成とかを農政の中心スローガンに掲げて、大いにかねや太鼓ではやし立ててきております。つまり、農家経営規模拡大方向に一層駆り立ててきているわけですね。他方では、零細兼業農民や条件の悪い地域を施策の対象から外して切り捨てるという選別政策を強めてきております。農林漁業公庫資金もそうした構造政策に大いに利用されてきたし、今回の制度改正はまさにそうした方向を一層強めるものだと私は思っておるわけであります。  しかし、そうした規模拡大路線だとか構造政策に一層傾斜していった農政というもので、我が国農業農家経営に果たして展望を見出せるものだろうかという点について以下お聞きしたいと思うわけであります。  私はほんの五日ぐらい前に秋田県の、位置的には十和田湖を一望のもとに見おろせる場所にある田代開拓というところにある十和田酪農という組合に行ってまいりました。五日前でありますが、まだ一面の雪で大変難渋したわけでありますが、そこで農民の方々といろいろ懇談しながら、そうした疑惑といいますか疑問を私なりにいろいろ感じてまいったわけであります。  参考までに申しますと、この田代開拓というのは戦後約百戸の入植者で始まったわけでありますが、厳しいいろいろな環境のもとで離農者が相次ぎまして、現在二十三戸しかいないのですね。しかし、今頑張っている酪農家は、そうした次々に仲間が離農していく、そういうあらしをくぐり抜けて、今では技術的にもかなり水準の高いものを持っているわけです。総合施設資金とか農地等取得資金を活用して規模拡大を大きく図ってきた人ばかり残っているような状況がありますけれども、特徴的には若い人がやはりそれなりに残っていて、彼らは非常に、長期の展望からいえば我々は自信があると言っているのです。あの規模でああいうふうに残っている人を見ますならば、私はいわゆる自立経営農家の水準に完全に達していると思うのです。  ところが、言うことを聞いてみると、みんな借金のことなんです、負債のことばかりなんですね。全部経営の将来に対する不安につながる借金の問題で、最初から最後までいろいろ出たわけであります。これは、ここだけではなくて、全国的なそういう場合の酪農の一つの典型だろうと思うのです。  そこでまず、その内容に入る前に、政府の自立経営農家の育成の方針についてお聞きしたいわけであります。それは農基法が掲げた政策目標であったと思いますが、それがどれだけ成果が上がったのか。今おたくからいただいた資料を見ますと、昭和五十年度に自立経営農家は四十六万戸あったのですよ。昭和五十七年になりましたら二十一万戸で半分以下に減っているのですな。あなた方、かねや太鼓ではやしてやってきたにもかかわらず、このわずかの間に四十六万から二十一万に減っているということ、半減しているということ、これを農基法との関係でどう御説明なさいますか。
  218. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先生御指摘のとおり、農業基本法で掲げておりました目標であります自立経営農家のシェアであるとか戸数が、ここ五十年から五十七年にかけて約半分に減っているわけでございます。特に減り方の激しかったのは昭和五十五年でございまして、この五十五年には先生御承知のとおり作況指数が九〇を割るような著しい不作でございまして、そういうものを反映いたしまして五十五年に相当なシェアのダウンを来した。そして五十五年以降も依然として米につきましては九六というような作況が続いておりまして、特にシェアの減りましたのは東北、北陸という米地帯でございます。ここのところ、五十五年以降は大体横ばいに推移している形でございますので、我々といたしましてはこれ以上ダウンしないように今後とも何とか努めたいと考えておるわけでございます。
  219. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 これ以上ダウンしないようにとかなんとかおっしゃいましたけれども、また、それらは不作が要因だという言い方もありましたけれども、少しぐらい不作であってもちゃんとやっていける一定の力をこうすれば持つことができるんだといってあなた方が指導してきたのが、今の農基法上で言うところの自立経営農家、それでこれだけ減っているということは、外因ではなくて内部に根本的な要因があるのではないかと私は申し上げたいわけであります。  それではお聞きしますが、総合施設資金、これは農基法を受けまして、規模が大きく生産性の高い自立経営農家を育成するとの目的で創設されたものでありますけれども政府が毎年報告をとっている総合施設資金借入農家の動向、これは皆さんの資料にありますね、それを見ますと、昭和五十九年度の実績報告の具体的中身、私はこれを知っていますけれどもやはりあなたから一応お答えいただきたいと思うのです。というのは、昭和五十四年に総合施設資金を借り入れた農家昭和五十八年度の実績で、経営規模拡大目標、農業所得目標、家族労働報酬の目標のそれぞれについて、八〇%以上の水準まで到達した農家の全体に占める割合は何ぼですか。簡単に数字で御説明いただきたいと思います。
  220. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 お尋ねの、五十四年度に総合施設資金を借り入れた農家のうち五十八年度実績で目標の八割に達した農家でございますが、報告件数全体が千七百九件ございますうち、計画規模目標で八割を達成したものは九〇%、農業所得目標で八割を達成したものは四八%、家族労働報酬目標につきましては八割を達成したものは四九%となっております。
  221. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 その数字をお聞きしますと、確かに規模拡大はほぼ目標に近くなっていますね。しかし所得や労働報酬は、所得目標が四八でしょう、労働報酬が四九でしょう、そちらの方は半分以下の農家しか達成しておらないという結論が出ているのですね。これでは一体何のための規模拡大なのか、政府はこの原因をどう考えているのかということです。これは、規模拡大の目標を達成すれば農家経営が安定するんだということがうそであったということですね。同時に、今ずっと見ますと、結局政府政策はゴールなき規模拡大農家に押しつけてきたものではないか。行けども行けども到達点がないんだし、そういう中でこういう問題が出てきているということであります。  さきの経営実績報告によりますと、総合施設資金借入農家は、全体の四五%しか経営改善が順調と見ておらないということですね、アンケートというか意識調査を見ますと。これも皆さんの資料です。そして、自分の農業所得を順調と見ている人とだめだと見ている人の比率を見ても、三対五と不振組の方が多くなっています。しかも、不振だ、だめだと答えた農家の原因は、農産物価格が低くて不安定だと答えたものが他の項目をぬきんでているわけであります。こうしたことは、自立経営農家を育てるという点から見ましても、価格政策の改善こそが重要なポイントになっていることを示すものだと私は思うのです。  政府は、臨調や農政審の答申に基づいて、価格引き上げは困難だ、だから規模拡大による生産性向上なんだ、こう強調しておりますけれども、今後ともこの方向で自立経営農家に展望をもたらすと考えているのかということと、価格問題について大臣はどうお考えですか。簡単で結構です。
  222. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  価格政策の機能が農産物ごとの事情に照らして適正に発揮されるよう努めていくことが大事だと思っております。先生御指摘のとおり、最近、食糧消費支出の伸びの鈍化とか、あるいは農産物需給の緩和、さらには消費者の価格意識の高まりといったような状況のもとで、一般に農産物価格の上昇による農業所得の確保を期待することは難しくなってきております。そんなことで、これからは農地の流動化とか農業生産の組織化を通ずる規模拡大や生産政策の積極的な推進により生産性の向上に努め、所得の確保、向上を図っていきたいと考えております。
  223. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今の大臣の御答弁は書いたものを読んだわけでありますけれども、やはり実態とは見合わないということを申し上げたいと思うのです。  今私もそういう格好で議論を展開してきたつもりでありますが、規模拡大だといっていろいろ追い上げてきたけれども、失敗と言うと言い過ぎかもわかりませんが、それが所得だとか労働報酬に見合うものになるかというと、決してそうじゃないということなんですね。そこのところからどんな教訓を引き出して今後の農政位置づけていくかということが重大なので、ここでまた相当論議する時間的余裕もありませんのでやりませんけれども、私は、今の農政のあり方では、そういう人々に展望をもたらすことにはならないということを根本的に考えなければいけないところに来ているんじゃないかと思うのであります。  とりわけ田代開拓の十和田酪農協ですね。先ほども申しましたとおり現在二十三人の組合員がいるわけでありますが、その中で総合施設資金を利用して規模拡大を図った農家は十三人いらっしゃいます。みんな約二十ヘクタールの草地を持っておって、規模だけは町立経営農家の基準に達していると思うわけでありますが、しかし、ここでどうしても聞いていただきたいのは、償還金の返済などで経営は全然よくなっておらない、もう困難ところじゃないということです。この方々が一様に強調したのは、酪農ですからやはり乳価をどうしても引き上げてもらわなければならないというのです。調べればわかりますけれども、石油ショック前にはガソリン一升と牛乳一升が同じ値段であったのですよ。それで皆さんが合い言葉で、ガソリン一升、牛乳一升というのは同じ対価であったということです。ところが、今はガソリンはあのころから二倍に上がっているが、乳代は一・三倍にしか上がっておらないという問題があるわけで、私は、農民というのは本当に土から生きているものだから言うことも端的で、我々がわかるようなことを言ってくれるなと思って感心したわけであります。  そういう状態では酪農家は生きていけないと思うのです。経営安定はできないと私は思うのでありまして、大臣にどうしてもお願いしなければならないことは、こういう田代開拓の人々を含めて、困難な中に営農を拡大してきた人々の努力に報いるために、また、その中の若手が将来の日本農業を背負うわけでありますから、この人たちの経営が成り立つためにも、二十九日決まる加工原料乳保証価格、これを農協が要求しておる九十九円七十八銭がべったり実現するよう、これは大臣の使命だと考えておるわけでありますが、見解をお聞きしたいと思います。
  224. 瓜生瑛

    ○瓜生説明員 お答えいたします。  今、乳価についての御質問がございましたが、来年度の乳価についてちょうど今検討しておるところでございます。  酪農経営状況につきましては、酪農家の方々が大変いろいろ御苦労なさってきておられますけれども、最近の状況を見ますと、例えば一頭当たりの乳量が増加してまいっておりますし、生産性、収益性の点でもその向上が見られるところでございます。それから配合飼料価格も二度にわたって引き下げが行われている、こういう状況にございます。そういうよくなってきている環境もあるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、御承知のように加工原料乳の保証価格につきましては、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づきまして、生乳の生産条件とか需給条件その他のもろもろの事情を総合的に考慮いたしまして、畜産振興審議会の意見を聞いて適正に決定することにいたしております。目下その関係の作業をやっているところでございます。
  225. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 これは強く指摘しておきたいと思うわけであります。  現在開拓地で頑張っている酪農家経営を守る上でもう一つ切実に今求められているのは、離農した農家負債と跡地の処理問題なんですね。十和田酪農協の場合は専門農協の一つですけれども、五十九年度だけでも五戸がもう離農して、負債総額一億二千万円も焦げついたままになっておるわけです。そうして、この離農者の連帯保証人として、残った農家の中で身動きがとれないのが十戸あります。つまり、離農した農家負債の処理をうまく進めないと、現状では何とかかんとかやっている農家もその分に足を引っ張られて、結局は道連れというか脱落しかねない状況に置かれているということです。現在の組合員の皆さんはほとんどこれまで、そういう場合には農地取得資金を借りて離農農家の跡地を買い取ってきたりして間に合わせたのです。  ところが、今のような厳しい環境の中で投資意欲が減退している――そうでしょう。乳代が全然上がらなかったり、だからといってだれにでも売れるわけじゃないのですね。農地ですから農業者以外に売れないけれども、だれも十和田の山奥のてっぺんに行って、今ごろ大変な雪があるところに行く人はいないわけです。そういう問題があるわけですね。そこで農地売却による負債整理という点が、そういう手だてをとれないために、その間どんどん金利がかさんで組合の経営を圧迫するという悪循環を生んでいるわけであります。  加えて、離農者の毎月償還分が約七十万円から八十万円ありまして、わずか二十何人しかいないところですよ、組合はその償還金が入ってこなくても中金や公庫には支払わざるを得ないという関係になっているわけであります。その資金を、払わなければいけないから、一般の金融機関から借りているわけです。二十人そこそこの専門農協だということも資金繰りに余裕のない状態を生み出す大きな要因だと言っていましたが、ここでも離農者負債問題が、すなわち離農跡地の取得者が見つからないことが組合運営を重大な困難に陥れているということなんですね。まあこれはどこの開拓地にもあると思いますけれども。  そこで私はお聞きしたいことは、離農跡地の取得者がなかなか見つからない状態のもとで離農者負債が組合運営を著しく圧迫し、ひいては健全な人の足を引っ張るという事態を避けるために、現在の制度の中で何かやれることはないですか。ここをひとつ教えてください。助けてください。
  226. 瓜生瑛

    ○瓜生説明員 今のそういう場合の対応の仕方というのは、個々の具体的なケースに応じた対応ということになりますし、そういう離農跡地について、残っておられる方々がいろいろな金融を利用して経営規模の拡大に使っていただくというのが通常のケースだと思いますが、今の御質問の中では、それがなかなか難しい場合というお話でございます。そういう場合によく公共的な使い方がないだろうかというような発想がございまして、そういう発想についてたまたま私どもの関連しておりますことで、必ずしもそれが常にいけるというわけではございませんが、ある方法としては、例えば公共育成牧場なんかにそういうものが利用できないかというようなお話がときどきございます。  ただ、この公共育成牧場というのは、御承知のように公共団体や農協などが育成段階の家畜を農家の方々から受け入れて育成して、それをまた農家へお返しするという意味で大家畜畜産経営の補完的な役割を果たしておるわけでございますが、今度、この牧場自身が経営がうまくいくような条件が整っていないとうまくいかない、こういうことで、したがってそういう条件があるかどうか、そういう具体的な検討が必要になるかと思います。
  227. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今のケースは、私は特殊な秋田県の例を挙げたわけですが、ほとんどどこの開拓地の酪農のところでも起こっているケースなんですよ。  それで、今非常にいいことをおっしゃってありがたいと思うのですが、なぜかというと、今、公共育成牧場の問題が出たわけでありますが、田代開拓の皆さんも今現在同じ畜舎の中で搾乳牛と育成牛の二つをやっているのですよ。できれば自分は搾乳牛一本でやりたいという基本的な願いを持っておるわけでありまして、そうすれば生産量の増加とコストダウンを図ることができるわけですね。ところが、もう一つ育成牛も抱えているものですから、この分が、足を引っ張るとは言わないけれども、なかなか大変なことになっているわけですね。  だから、こうした状況を踏まえて国なり公的機関が離農者跡地を買い上げて、そこで子牛の育成なんかをやっていただければ、負債整理と一石二鳥になるだけではなくて、地元の雇用安定にも何ぼか役立つじゃないかというのが皆さんの意見なんですが、この意見に対してどうお考えですか。簡単にお答えいただきたいと思います。
  228. 瓜生瑛

    ○瓜生説明員 先ほど申し上げましたように、それをやる場合には大変いろいろな条件がございます。十分な面積的なまとまりがなければ困りますし、そこで受け入れられるだけの将来とも十分な頭数の見通しがなければなりません。それから、経営が健全に行われるかどうかというその辺の見通しもあります。それから、土地の取得をしなければならないということになりますと、やはりここの場合でも資金手当てがいろいろ難しい場合が出てまいります。それから、地元の運営の意欲、能力があるかどうか等々の問題がございますものですから、実はそういう意味では必ずしもうまく条件が整っているところばかりではないかというふうに感じておりますが、いずれにしても具体的な検討は必要であろうと思います。
  229. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今の問題を私は出したわけですから、そういう条件に適合するかどうかを含めまして、今後の善処方を強く要求しておきます。  今いろいろ話をしてまいりましたが、最後に漁業問題でお聞きするわけであります。  私は五日前に、ずっと回りまして、最後に秋田県の八森町という日本海に面した町の北部漁協というところを訪ねてまいりました。漁協の幹部や漁業者から、何の話かというと、やはりここでも深刻な負債、借金の話なんですね。この北部漁協の水揚げは昭和五十三年度をピークに減少に転じまして、一昨年の例の大地震、それから昨年の冷水被害、そういうことでどんどん水揚げが低下して、わずか十三億円になっているのです。  これは二百海里問題以来、漁場がどんどん狭められて県北部の好漁場に漁船が集中したり、漁船漁具の近代化、大型化に伴って乱獲、資源が減少したことなどが要因になっているわけでありますが、この水揚げ不振に伴って各種制度資金の返済に支障を来す漁業者が相次ぎ、漁協としても毎月の償還に四苦八苦の状況なんです。負債額全体で、この小さい北部漁協だけで十三億円に達し、負債額五百万円以上に達する大口負債者二十九人について調べてみましたら、その負債の合計残高八億八千万円、その返済期限を過ぎて延滞となっているのが二億四千八百万円に達するなど深刻な状況です。  漁協の組合長さんは、毎月資金手当てのために農林中金につなぎ融資を要請しているわけですが、償還金がピークに達する六月には、すぐやってまいりますが、乗り切れるかどうか本当に大変だ、もしできるならおれはこのままどんと海に飛び込んで死んだ方が楽になるということを、私も本当に切実な気持ちで話を聞いてまいりましたが、何とか毎月毎月苦労しなくてもいいように、現在の負債をかなり長期にわたって返済できるような抜本的な方策はないものか。  そこで私は水産庁にお聞きするわけでありますが、六十年度予算で漁協信用事業整備強化対策として漁協の回収不能の負債を処理する対策を打ち出したと聞いておりますが、具体的にその内容はどんなものか、八森の北部漁協のような漁協にも適用になるのかどうか、この点だけひとつ、時間がありませんのでお答えいただきたいと思います。
  230. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  順番からいうとあべこべになるかもしれませんが、まず北部漁協に適用されるかどうかという方からお答えいたします。  北部漁協が非常に難しい事態に立ち至っているという話は私どもも伺っておりますが、今回六十年度から行おうとしております漁協の信用事業整備強化対策におきまして利子補給事業をやるわけでございますが、これは組合自体が最大限の自助努力をしてくださることを前提にして、都道府県なり系統上部団体なりが一致協力して支援をしていこうということになった場合に、それに対して国もおつき合いをするということでこの事業の対象にするものでございますから、したがって、北部漁協につきましてこの事業が当てはまるかどうかということになりますと、北部漁協自体の財務内容なり、組合及び組合員の皆さん方が組合の再建についてどういう心組みで取り組みをなさってどういう自助努力をなさるか、これに対して県なり系統上部団体がどういうふうに対応するか、そういうことをよく伺った上で判断をすべき性質のものでございますので、今ここで適用になるとかならないとかというものではございませんが、秋田県からお話があればよく伺います。
  231. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間がないので最後になりますが、現在でも農林中金や県などが指導に入っておりまして、この北部漁協の再建策に取り組んでいるようでありますが、その中の条件として、今水産庁長官がおっしゃいましたように大口負債者の整理が条件になっていると聞いているのです。漁協の組合員である大口負債者はほとんど他の組合員を連帯保証人にしているわけであります。ですから、大口負債の人が倒れたら、比較的健全な組合員まで足を引っ張られてしまう、そういう構造になっているのですよ。しかも、その人たちを整理したら水揚げも減り、資材購入も減少し、それらの手数料で運営している漁協の経営そのものもだめにしてしまうわけです。結局、この面からも残った組合員の経営困難がますます増すことは明らかだとみんな訴えているのです。  ここの特徴は、御承知かと思いますが、全部漁協が借りて皆さんやっている、こういう格好になっているのですね。皆さんがおっしゃるには、仲間である大口負債者を切り捨てるのじゃなくて、何とかして一緒に再建できる方向をみんな望んでおったわけでありますが、今回の水産庁の対策に乗るためには固定負債を大口に抱えている漁協組合員をすべて整理することが前提になっている、こういうことでは大変なことでありまして、現在、県や農林中金が入って再建計画を進めていますけれども、とにかく大口負債者の整理を先行させよ、こう強硬に指導している実態があるのですよ。画一的な整理を押しつけるのではなくて、漁業者の意向や漁の動向をよく踏まえて、可能な限りそうした漁業者も含めて再建できる方向を追求するよう、水産庁としても指導するようぜひとも望んでおきたいのであります。  最後に、漁協の固定負債問題の根本的解決は、日本の沿岸漁業振興による水揚げの回復だと思うわけでありまして、その水揚げの道を閉ざすようなやり方はいけない、こう思うのでありますが、今の問題を含めて御答弁いただきましたら、私の質問を終わらせていただきます。
  232. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず最初に、私どもが六十年度実施しようとしておる不振漁協対策につきまして、北部漁協に適用されるかどうかということについて私がお答えいたしました際、私は特に大口負債とか大口債権とかということは申し上げなかったつもりでございます。ただ、大口負債漁家を切り捨てるのではないかというお話がございましたので、不振漁協対策との関係において若干お答えをさせていただきますと、不振漁協対策の中で固定化債権見合いの借入金についても利子補給を行いますので、その固定化債権云々ということを処理する場合に、大口負債漁家の問題がどうなるかということが問題になるのであろうと思われます。その際、漁協に対して固定化負債を有する不振漁業者については、その漁業者の現在の財務内容とか今後の経営収支の見通しなどを踏まえまして、組合としてその漁業者を一体どういうふうに扱うかということは当然御判断をなさるということになるはずでございます。  それで、私ども考えておりますのは、その漁業者が八万手を尽くしてみてもどうしても漁業経営の継続は不可能であるというふうに判断をされます場合には、それは整理対象者として扱われるということがあり得ることというふうに考えておりますが、私ども考えておりますのはまさにそういうことでございますので、負債額の金額の多寡のみを指標にして機械的にどうこうするということではないというふうに考えております。これは決して甘いことを申し上げているというつもりではないわけでございまして、要するに、漁業経営の継続が不可能なものは不可能なものとしてそれなりの対応はしていただかなければいけないわけでございまして、どうしても見込みの立ちがたい方をあたかも立つかのごとく粉飾して処理していただくとまたこれは厄介なことになりますので、そういう金額の多寡だけで割り振るということではないというふうに考えておるということでございます。  それから、こういう沿岸漁業の問題を根本的に処理するには、先ほどほかの先生へのお答えでも申し上げましたが、徳政令というわけにいきませんので、やはり沿岸漁業の振興を通じて力をつけていって償還能力が生まれてくるという形で解決策を見出していくべきものというふうに認識をいたしております。
  233. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。     ―――――――――――――
  234. 今井勇

    ○今井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております各案について、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  235. 今井勇

    ○今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 今井勇

    ○今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  237. 今井勇

    ○今井委員長 次に、連合審査開会の申し入れに関する件についてお諮りいたします。  大蔵委員会において審査中の内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について、同委員会連合審査開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  238. 今井勇

    ○今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明二十八日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時から委員会開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会