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白杉参考人 私は、
生糸を
消費する
国内の
機屋を代表いたしまして、
絹織物業界の現況を御説明申し上げたいと思っております。
ただいま
参考人として
養蚕の
専務なり
製糸の
会長がるるお述べになりました。私
たち絹業と
蚕糸は
一体でなければならないということでございまして、
常々連携を保ち、いろいろな形で
業界の
振興に努力をいたしておるわけでございますけれ
ども、いろいろの面で、各論に入ってまいりますと利害が対立する面がたくさん出てきておるのが
実情でございます。今、私の傘下におります絹の織機は、
昭和五十二年には約十三万台設置をされておって稼働しておったわけでございますけれ
ども、五十二年に第一回
廃棄をいたしまして、その後五十七年に第二回の
廃棄をいたしまして、現在八万台の織機が動いておるというふうに御
理解いただきたいと思っております。今年度また
廃棄をいたしたいというふうに考えまして、今アンケートをとっておりますが、一万六千台ほど希望が出ております。いよいよ本申し込みになりますともう少しふえるのではないかというような
状況でございまして、最盛期からいきますと五〇%近くまで織機が落ち込んだという
状況でございます。
これの原因はいろいろあると思っておりますけれ
ども、私
たちが考えております最大の原因は、
生糸の
価格にあるというふうに一点考えておりますし、その
生糸の
価格を利用いたしまして
国内の合繊メーカーが絹の分野に非常に侵食してまいっております。この二点が最大の原因だというふうに考えておるわけでございます。
今、
生糸は御承知のように一万四千円から一万二千円に下げられたわけでございまして、四カ月ほど推移をいたしましたけれ
ども、
絹織物業界は何らの
活性化も見出すことができ得ない。今の
状況は、六十年度のこの
価格が
維持されるということについての
不安感が若干ございまして、安定的なものはございますけれ
ども、決してそれは
活性化につながっておらないという
状況でございます。すなわち、
輸入織物をとめるだけの力がないということが一つ言えますし、それから化繊であります。これは会社の名前は、大メーカー、東レであるとか帝人であるとかいろいろとございますけれ
ども、そうしたところで
生糸に匹敵するようないろいろな織物が開発されまして、そうしたものが裏地から入ってまいりましたけれ
ども、最近は表地にまでどんどん入ってきておるわけでございまして、これが最大の原因だというふうに私は感じております。
繭は農産物でありまして、しかし、
生糸になりますとやはり工業化して織物にしなければ出ていかないという
状況でございます。
絹織物を織っておる産地は本当に過疎地の
日本海に面したところがほとんどでございまして、今、一反織ります標準が、着物一枚ということになりますと、一反織りましてA反が出て千五百円から辛うじて二千円の織り工費という
状況でございます。一万二千円に下がりましたけれ
ども、
生糸の
価格差五千円近いものからやってまいりますと一反に四千四、五百円
価格差が出るわけでございます。私
たちは海外の織物を技術の上で負かさざるを得ないと考えましていろいろ新商品の開発をするわけでございますけれ
ども、新商品の開発をいたしますと二カ月とたたないうちに今度は海外でその織物がつくられて出てくるというような
状況でございまして、役所の関係で
輸入織物にも随分御努力をいただくわけでございますけれ
ども、現在の
輸入関係、もうそれ以上大きなものを期待しても無理でないかというところまで私
たちは考える段階になってまいったわけでございます。
特に、当初は韓国、台湾、中国でございましたけれ
ども、今はシンガポールであるとか二十数カ国で
国内の和装の
生産ができるという
状況になってまいりまして、今デパートなり
市中で取引されておる
絹織物は少なくとも五〇%は
輸入織物を含んでおるという
状況でございます。いかに
国内の
絹織物業者が努力をいたしましても、この
生糸の
価格差を埋めることは到底でき得ないというのが
実情で、先ほど申しましたように、絹産地は年々大きな落ち込みをしておるのが現状でございます。私
たちも国会の
先生方にも陳情を申し上げ、役所にも陳情いたしまして、何とか、
日本の
養蚕の方々の庇護は別途の道を講じていただきたい、
絹織物業者を全部つぶしてしまうような
政策は何とか変えていただきたいというようなことでいろいろ
お願いをいたしたわけでございまして、年度の途中に一万四千円から一万二千円に下げていただいたことにつきましては、私
たちも
先生方を初め役所の大変な御努力に対しまして感謝を申し上げるわけでございます。
第一歩をこうしたことで我々の希望に近づけていただきましたけれ
ども、私
たち産地の者は、海外と闘う要素のためには、国際
価格まで近づかなくても、少なくとも一万円まで下げていただきたいというのが私
たちの考え方でございまして、これは、一万円に下げられますと私
たちも大きな被害をこうむりますし倒産も続出するようなことがあるかもわかりませんが、その時点からでいきますと海外の七千円の織物とも闘えるという自信を持って努力したわけでございますけれ
ども、結果的には一万二千円ということでございまして、せめてこれが一万一千円になっておったら織物
業界にはかなりの活性が望めるのではないかというようなことを考えておるわけでございます。
しかし、
先生方の御
配慮なり役所の御努力によりまして一万二千円という
価格が決まった以上、この
価格の安定に私
たちも努力いたしますと同時に、いろいろ出ております
輸入織物を少しでもとめていただくことも
お願いしたいと思っておりますし、また
国内の
生糸を
消費する一つの消化材料と申しますか、そうした
輸入織物と闘う一つの手段として実割り
生糸の
定時定量を
お願いいたしたいと思っておりますし、また
事業団の糸の
放出につきましても、市場の
混乱のないように、本当に糸を使う者を
配慮した糸の出し方をぜひ
お願いしたいと考えておるわけでございます。
和装
業界の売れ行きは非常に厳しいものがございますが、その厳しさ以上に一番大きな
影響を受けておりますのは、前段にも申しましたように
輸入織物と化合繊の分野から入ってきておるものでございまして、これは何といたしましても、私
たちがいろいろの新商品の開発をいたしまして、そして少しでもこれを食いとめていくということにいたしたいと思っておりますし、
流通過程をできるだけ短絡化して
消費者に安い織物を与えて買っていただくという道にも努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
どうか今後とも、
蚕糸絹業が
一体となって、
日本の
絹業が一緒になって進んでいけるような方策をぜひ進めていただくことをこの機会に
お願いいたしたいと考えます。
これで私の陳述を終わります。(
拍手)