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1985-03-06 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年三月六日(水曜日)     午後二時二十五分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       大石 千八君    太田 誠一君       鍵田忠三郎君    菊池福治郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    羽田  孜君       保利 耕輔君    松田 九郎君       山崎平八郎君    若林 正俊君       上西 和郎君    島田 琢郎君       新村 源雄君    日野 市朗君       松沢 俊昭君    駒谷  明君       水谷  弘君    吉浦 忠治君       稲富 稜人君    菅原喜重郎君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君  委員外出席者         通商産業省生活         産業局通商課長 新関 勝郎君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      渡辺 光夫君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 二月二十八日  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四五号) 三月一日  農業近代化資金助成法及び漁業近代化資金助成  法の一部を改正する法律案内閣提出第四七号  ) 同月五日  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第四八号)  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五二号)(予) 同月六日  木材産業不況対策に関する請願(不破哲三君  紹介)(第一八〇〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団  法の一部を改正する法律案内閣提出第三〇号  )      ————◇—————
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  3. 小川国彦

    小川(国)委員 繭糸価格安定法それから事業団法改正案提出をされているわけでありますが、この法案の内容がもたらすものは、日本養蚕農業あるいは製糸業あるいは絹織物業消費者、各方面にわたって非常に大きな影響を持つ今回の改正案ではないかと思うわけです。  この法案提出の前提として、日本養蚕農業あるいは養蚕経営、こういうものの現状と今後について大臣としてどういう御見解を持っていらっしゃるか、まず最初にその点をお伺いしたいと思います。
  4. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 小川先生にお答えいたします。  非常に難しい、厳しい質問でございますが、私の所見を申し上げたいと思います。  養蚕業畑作地帯農業経営上の大変重要な作目という認識は御存じのとおりでございます。そんなことで、最近における絹需要の大幅な減退に起因する生糸需給の不均衡あるいはまた蚕糸砂糖類価格安定事業団における約十八万俵くらいの膨大な生糸在庫というようなことがありまして、財政的にもかなり厳しい状況でございます。  そんなことで、今後におきましては需給動向に即した繭の生産をする必要があると考えておりますので、実は現下の厳しい蚕糸状況もとでございますが、基本的に養蚕主産地の形成及び中核的養蚕農家育成等により、足腰の強い低コスト養蚕実現を図っていきたいと思います。  一番問題は販路拡大でございます。  実は私、きょうここに着ておりますが、これはオール絹の洋服でございます。これは新製品でございまして筑波の試験場でつくったわけでございます。絹には三つの欠点がございます。その一つは、伸縮性が弱いということですが、これは実は着てから九日目でございますが、伸縮性があります。もう一つは、かさ高性といいましてボリューム性に欠けておったが、これができました。もう一つは、てかてかします。そのてかてかがなくなりました。こういう新製品等をつくって販路拡大を図る。とにかく売れなくちゃだめなんです。そんなことで、洋服から下着類を含めて売るつもりです。  ただ問題は、価格が非常に高い、いかにして価格を安くするか、こんなことで今私を中心に、局長を含めて努力しています。そのうち皆さん方にもこの洋服をぜひ御着用をお願いしたいと思っておるわけでございますが、そんなことで頑張っております。  販路拡大とともに、どうして低コスト生糸をつくるか、この二つの方向で実は高能率な養蚕の展開が可能な地域をつくるということで今重点的にやっておる、したがって、養蚕業の安定を図ってまいる努力をしているということでございます。
  5. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣が新製品をお召しになってまで一生懸命取り組んでいらっしゃることには敬意を表するわけであります。しかし、日本養蚕業実態を見ますと、なかなかそうした洋装面での新製品の売り出しといったようなことで根本的にこの問題が解決しないというぐらい、私は今度の改正案の背景となっている日本養蚕経営実態あるいは製糸業界実態、非常に大きな問題が控えておるというふうに思うわけです。  そういう中で、第一点の問題点としては、今回の改正案の第一点である異常変動防止措置をなくすということですね。これは、私は、この法が改正によっていい方向へ、改善の方向に導かれるのではなくて、むしろ改悪の方向に持っていかれるおそれを非常に強く感ずるわけです。  まず、異常変動防止措置の廃止問題について伺いたいわけでありますが、繭の生産費基準としてその八・五割を下らない範囲の中に定めるということになっていた最低繭価というものが撤廃されまして、今後は繭の生産条件需給事情経済事情から見て適正な繭価水準実現を図ることを旨として基準糸価を参酌して定める、こういうことになっているわけであります。こうなってまいりますと、繭の値段というのは基準繭価のみになってしまって、最低繭価というものがなくなってしまう。いわば外垣を取っ払ってしまうということは、糸価安定性というものが非常に不安定になってくる、こういう要素を持つものではないかというふうに思うわけであります。  そういう中で、現在のいろいろの糸価状況を見ますと、将来の繭価というものがかなり下位設定されるおそれがある。上位に設定される可能性というものは今の状況では全く考えられないわけでありますから、そういったことになってまいりますと、今回の改正農水省日本養蚕農業というものに見切りをつけたんじゃないかというふうな懸念をすら私ども感ずるわけでありますが、一体この異常変動防止措置をなくして本当の養蚕農民の納得できるような価格維持ができるのかどうか、その点をまず伺いたいと思います。
  6. 関谷俊作

    関谷政府委員 先生よく御承知のように、繭糸価格安定制度もともと異常変動防止措置というものから出発したわけでございますが、もともとその考え方は、非常に異常な高値、異常な低値を抑えるということでございましたところ、昭和四十一年から、むしろ本当に需要者も含めました実際の世界で求められているのはもっと真ん中の方の安定じゃなかろうかということで、四十一年から中間安定措置が設けられまして、それから以後約二十年近くになるわけでございますが、この中間安定で専らやってまいったわけでございます。その実態というものが、結局、むしろこの中間安定措置というもので皆さんがこれを基準にして取引をするということで、大変糸価の安定には寄与してまいりましたが、反面、その従来の中間安定でも価格水準がやや適切を欠きましたせいでございましょうか、大変生糸在庫が買い入れに応じてふえるというような今日の事態に立ち至っているわけでございます。  今回の改正のねらいは、御質問の中にございましたような、決して日本蚕糸業を見切るとかあるいは将来がないというようなことではございませんで、むしろこういう価格安定制度実態から申しますと、現実に機能してまいりましたこの中間安定措置価格安定制度を構築する、むしろ、二重にまたもう一つ低い線がございますとかえってその低い線にいろいろ、その存在がいわば常に意識されまして、何かどうも下に引っ張られがちになるというような心理的なおそれもございます。  そこで、そういう趣旨でございますが、いずれにしましても今回の価格安定措置を中間安定をもとにして仕組み直します際に、いろいろ生産条件とか需給関係とか全体を含めまして、養蚕の継続それから需要の面の配慮需要増進、そういうことまで含めました総合的な観点から安定した価格設定するようにということで、決して日本養蚕業の将来に懸念のないような価格安定帯設定に努めてまいるという考え方でございます。
  7. 小川国彦

    小川(国)委員 そういう御見解をもしお持ちになって進められたとしまして、来年という短期的な見通しだけじゃなくて、三年後、五年後という中期的な見通しも含めて、安定基準価格というもののあるべき姿は、ではどういうふうに考えておられますか。
  8. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは現行制度の中間安定の状態から、いわゆる基準糸価、今回の制度改正もとでの安定基準価格でございますが、この設定につきましては、長期的なある一定期間での実勢価格を基礎にしまして、それに生産費変化率それからさらに需給関係をあらわします需給調整係数を乗じるというようなことで、一口に申しますと豚肉でとられています需給実勢方式というもので基調をやっております。これは長期的というか、やや中長期的な意味での価格安定を意図した制度でございますので、私ども、当面の問題としましては、この今回の改正案が成立しました際には、少なくとも六十生糸年度については、現在の一万二千円という基準糸価をそのまま安定基準価格にも継承するというようなことで、あくまでもやや長い目で見て価格の安定を図りながら需給のバランスをとっていくということでこの価格設定をしてまいりたいというふうに考えておるものでございます。
  9. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、需給実勢方式という形、いわば今までの異常変動防止措置というのを生産費方式と言えば、今度の中間安定帯をとるというやり方は需給実勢方式というか需給安定方式というか、そういう形に変わっていくのだろうというふうに思うのです。  ただ私どもは、従来、異常変動防止措置というものは、その一番中心に繭の生産費というものをきちんと置いてきた。一キロ当たり生産費で言えば、五十八年は一万五千五百二十七円、五十九年で言えば一万五千五百二十九円というこの生産費があって、中間帯があって、その上下に異常変動防止措置というものがある。そこには一つ、繭の生産費というものを中心に据えるという柱が入っていたわけです。  今度はそれを抜いてしまうわけですから、それであくまでも実勢、そのときのいろいろな生産条件需給事情経済事情、こういうものを全部参酌した実態価格というか実勢価格というか、そういうものになってまいりますと、養蚕生産農家生産に要した経費、いわゆる生産費というものの心棒を抜いてしまうと、これは実勢の中で限りなく低落していくおそれというものを懸念するわけなんです。そういう歯どめが異常変動防止措置をなくすことによってなくなってしまうのじゃないか、こういうおそれを非常に強く感ずるわけですが、そういう懸念に対する歯どめはどういうところで今後なさるのでしょうか。
  10. 関谷俊作

    関谷政府委員 従来の制度で、異常変動の場合には生産費基準でございますが、これは先ほど先生の御質問にもございましたように、安定下位価格の方は通常の場合はその生産費の八五%を下らないように、それから特別の場合には六割を下らないように、こういうふうな政令による基準がございまして、これはやはり一つ安定価格帯制度、帯、ベルトの思想をとっておりますから、やはり下の方の価格になりますと、生産費一〇〇%カバーではなくてある部分カバーするというのが最低ラインである、こういう考え方に立っておったわけでございます。  これはもとはと申しますと、いわゆる農産物生産費調査で調べております生産費の中には、いわゆる物財費償却費雇用労賃のような主として現金負担になるものと、それから家族労働費資本利子、地代のような、簡単に言えば課税上所得とみなされるような所得部分、それが両方重なっているわけでございます。したがいまして、生産費基準という場合にも、実態的には農産物生産費全額カバーということでは必ずしもなかった、こういう事情もございます。  そういうようなことでございますが、いずれにしましても、やはりこの制度のねらいは蚕糸業経営の安定である、需要増進という面の配慮とともに、蚕糸業経営の安定でございますから、やはり生産の保続が可能なようなことの配慮というのが常にあるわけでございます。そういう意味で、いろいろ総合的に需給実勢と申しましたときの供給の方の要因として、法律上は生産条件という言葉であらわしておりますが、生産面に対する配慮は十分していくというのがこの制度趣旨であるというふうに考えております。
  11. 小川国彦

    小川(国)委員 私には、異常変動防止措置を廃止するということが、どうもこの改正養蚕農家にとって非常にマイナス要因になっていくものではないか。我々は、生糸にせよ、繊維にせよ、養蚕農業というものの基盤の上に成り立つという長い歴史を考えますと、養蚕農業経営的な基盤というものを重点に考えない生糸なり繊維業界の動きというものを中心実勢に任せてまいりますと、これは日本養蚕農業基盤を失うおそれがあるというふうに懸念をしておるわけです。ですから、その面ではこの撤廃ということについては私は反対でありますし、異常変動防止措置というものは、農民の立場に立ったならばこれはあくまでも安全ベルトとしてこういうものをしっかりつけておく、しかもその中には、先ほど最低繭価というものは実質的に目安にはならないということをおっしゃっておりますが、しかし、これは少なくとも繭の生産費という基準というものをもとに割り出してきているわけでありまして、そこでは繭の生産費というものの一つの筋金を心棒に求めているわけでして、ここのところをなくすということは心棒をなくすことになりはしないかと懸念するのですが、この点はいかがですか。
  12. 関谷俊作

    関谷政府委員 ただいま中間安定措置基準糸価算定方式などでも使っております需給実勢方式の中には、一つ期間をとりましたところでの実勢価格生産費変化率を織り込むというような要因一つ入ってございます。これなんかも、やはり生産条件の推移によりまして生産費変化が見られるというような場合には算定要素としてそこに入ってくるという考え方があらわれているわけでございまして、そういう意味生産費そのものを一〇〇%カバーするというような意味での生産費主義というのは、これは生糸のような場合には非常にとりにくいわけでございますが、価格決定の場合には大変大事な要素である。そういう意味で、いわゆる生産費というものが全く無視されるどころか大変大事な要素である、こういう点は今後とも変わりないというふうに考えておる次第でございます。
  13. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、繭の生産費というものを見てまいりますと、今現在でも生産費カバーされてないという実態があるわけであります。私の試算によりますと、十アール当たりの第一次生産費カバー率というのを見てみますと、平均的な生産農家で十箱、八百キロ、それから多い場合には二十箱の千六百キロ、この辺の生産者において四十九年以降生産費カバーできない状況というのが生じてきている。五十八年度などにおきましてはカバー率は〇・六六%、〇・六六という程度になってしまっているわけです。三十箱以上、二千四百キロ以上の生産者においても四十九年以降は生産費を割っている。こういうことで五十八年のカバー率も〇・七六、こういうふうな、非常に生産費を大きく割った生産農家実態があるわけですが、農水省はこういう実態を認めていらっしゃるのかどうか、認識しているのかどうか。
  14. 関谷俊作

    関谷政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、生産費全体の構成要素物財費雇用労働費償却費のような部分といわゆる所得になる部分もございますので、全体を含めました生産費につきましては、まさに先生のお挙げになりましたような関係にあろうかと思います。  五十八年産平均で見ましても、第二次生産費三千四百二十八円でございますし、コストとしては一番低い三十箱以上の階層でも二千九百七十一円になっているわけでございます。こういう実態にはございますが、ただ、反面、この中でいわゆる所得的な部分を除きました物財雇用労働費という面で見ますと、これが五十八年の場合、平均で千二百三十七円、階層別に見ましても大体千二百円前後ぐらいのところにあるわけでございますが、この一キロ当たり状況で見ますと、現在の基準糸価に見合います基準繭価千七百五十五円によりましても、いわゆる所得というものが一キロ当たり五百円がらみぐらい平均であるわけでございます。  こういうような実態にございますので、経営的に見ました場合には、生産費調査では御承知のように農村の労賃を、六業種ばかりのものを平均しました一つの単価を出して家族労賃を評価しておりますので、こういう家族労賃の評価というような問題を別にいたしますと、所得としてはこれだけの、一キロ五百円がらみのものがある、こういうようなことになるわけでございまして、そういう意味では、いわゆる生産費調査生産費カバーし得てない、カバー率先生のおっしゃったような関係がございますけれども農家所得あるいはよく生産費で使います家族労働報酬とかそういう面では、それなりのものが現在の基準繭価もとでも見込まれ得るというような状況にあるわけでございます。
  15. 小川国彦

    小川(国)委員 私も実際にこうした養蚕農家がどういう状況にあるかということで、この審議に当たって繭生産では一番多い群馬県に調査に行ってみたわけです。  それで、群馬県で、昭和五十九年度の大規模養蚕農家調査表というので第一位を占めておりまして、昭和五十九年度上繭収量で四千四百八十六・一キロという収穫を上げております群馬県の勢多郡新里村武井というところにあります長谷川稀一さんというお宅を訪ねてみたわけです。この方は群馬県で第一位になるだけありまして、作業場も約八百坪、大型作業場を持っておりますし、それが何カ所かに分散してある。それから桑園、桑畑も約四ヘクタール、加えて買い桑も百二十万から百三十万というようなことで、大変大規模養蚕経営のいわば専業農家と言ってもいいような形の農家であったわけです。  ところが、その農家経営実態を伺いますと、例えば昭和五十九年度の売り上げは八百九十万円しかなかった。そこで経費が、買い桑代が百三十万円、肥料代が八十六万四千円、除草代が五万六千円、燃料費が五十九万五千円、人件費一日八千円で百七十五人で百四十万円、種代が百二十箱、四千六百円で五十五万二千円、電気代が二万六千円掛ける六カ月で十五万六千円、ガソリン代が二十五万、回転まぶしが二千三百円掛ける百組で二十三万円、蚕用薬品、石灰十五万円、ホルマリン四十本十五万円、雑費百万、こうして見てまいりますと、六百七十万三千円ということで、八百九十万の総売り上げから六百七十万三千円の経費を引くと二百二十万円しか残らない。これを六カ月で割ると一月約三十六万七千円。ここでは両親と息子夫婦と四人でやっておりますから、四人の人が働いた一人当たり労賃にすると八万円にしかならない。しかもこの三十六万七千円、四ヘクタールの耕地を全部桑畑にして専業で取り組んで、これではとても農家として立ち行かない。群馬県第一位の農家がそういうような実態にあるわけです。  それからまた、私どもの地元の千葉県でもやはり養蚕をやっている農家がかなりございます。こういうところも、私それぞれ現地を回って意見を聞いてみました。もうキロ二千五百円のものが昨年千八百円から千九百円にしかならない。こういう中で生産量が落ち、それから売上代金が落ち、養蚕組合が四十万円の赤字であるということで、組合の運営にも行き詰まっている。それから建物も、昭和四十三年に二千二百万でつくったものが、十七年も経過して老朽化しているということで、組合員が百十五人のところがもう七十五人に減ったというようなことで、いずれの養蚕農家を聞きましても、この群馬県の例に漏れず、とても労賃も出なければ生活費も出てこない。  それから、もう税金が全く納められる状況にはない。十年前は税金を納められる立派な養蚕農家が、今は税金も納めなくていいという状況になってしまった。税金の納められるような農業経営をやりたい、こう言っているわけです。その点では、今局長の答弁された、農家所得としては、あるいは家族労働報酬としては十分カバーしているんじゃないかと言うのですが、この現地実態を見ると、立派な経営農家にしても、あるいは養蚕組合にしても、いずれももう今やこの低繭価の中で立ち往生している。むしろことしは気息えんえん、将来に希望を失った、こういう状況にあるわけでありまして、こういう実態というものを農水省としてはどう把握しておられるか。大臣でもあるいは局長でも、この養蚕農家のこういった実態というものをどう把握しておられるか承りたいと思います。
  16. 関谷俊作

    関谷政府委員 先ほど生産費調査全体の数字で申し上げましたので、ただいま先生から優良農家の例などを挙げて大変詳しい御質問があったわけでございます。私どもも、そういう意味で、非常に平均的な状態の場合、それから比較的規模の大小に差もございますので、そういうような点もいろいろ考えますと、やはり、かなり養蚕に打ち込んでいる優秀な農家の場合の生産費なり所得状況がどうかということは、ほかの一般の場合と大変違うわけでございまして、先生から今伺いました数字、かなり厳しい数字でございますので、私どももそういう点は十分これからも勉強しなければいけないと思います。  ただ、私どもなりに多少持っておる数字を見ますと、これは一番最近私ども承知しております非常に優秀な例でございますが、昨年、五十九年度の農林水産祭天皇杯をおとりになりました栃木県の横島さんの場合には、物財償却費に当たる部分が一キロ九百三十六円、費用全体合計で千三百四十九円ということで、基準繭価が千七百五十五円でございますから、物財償却費の九百三十六円を除きました部分が全部いわゆる所得になるわけでございます。こういうような場合には、一日当たり八時間で見ますと、一日当たり手取り額が七千四十八円になるというのは大変いい状態にもございますし、そのほか、やはり五十八年度の農林水産祭内閣総理大臣賞の山梨の望月さんという方が、これが物財費償却費で一キロ八百十八円、費用合計で千五百三十八円、これはもちろん家族労賃も評価しての話ですが、こういうような関係を見ますと、かなり先進的な農家の場合には、養蚕経営が、現在の非常に厳しい需給なり価格状況もとでもある程度の所得なり労働報酬は得られるような状態にある、こういうような状況も見られております。  ただ、いずれにしましても、こういう地域経営の中で養蚕部門は特に大変厳しい状態にあるということは、私どもこれからも十分留意すべきことであると考えておるわけでございます。
  17. 小川国彦

    小川(国)委員 今の天皇賞等の日本の全国的に最優秀という部に入る農家の場合はそういうこともありましょうけれども、私は、千葉県で見てきた最も新しい共同飼育所をやっている養蚕組合の青年部の皆さんにもいろいろ意見を聞いたわけであります。この人たちも割合新しい施設なので、一齢、二齢までは人工飼料を使うというようなことで、共同飼育所で四十五人が共同経営でやっているというところなんですね。そしてこの人たちは、今までスイカやあるいは野菜、露地野菜、こういうようなものをやっていたわけでありますが、米に次いで養蚕価格安定制度があるというようなことで、ほかの農業からこの養蚕農業に転向してきた。そして、これなら価格安定があるから他の野菜よりもいいんじゃないかということで取り組んだ。  ところが、現実にキロ当たり二千二、三百円のものが二千円を下回る、こういう状況の中で全く採算がとれなくなってしまった。そういうことで、八百箱掃ける施設に今四分の一の二百箱しか入ってこない、こういう状況になってきて、施設が百五十個分も余っちゃっている。一〇〇%稼働すればこの共同飼育所も採算が合うのでありましょうけれども、そういうようなわけで、八百箱のところに二百箱、こういう状況に陥っているんですね。これなどはかなり平地の、いい立地条件のところで、しかも新しい共同飼育所でやっていてもこういう実態なんですね。  ですから私は、やはり農水省が全組織や機能を使って、全国養蚕農家実態というものをもう一度目の当たりに点検してみる必要があるんじゃないかというふうに思いますが、全国的に見て今養蚕農家がどういう状況にあるか、こういう御理解はいかがなんですか。先ほどすぐれた例は聞きましたけれども、全般的に見てどうなのかということをどう判断しておるわけですか。
  18. 関谷俊作

    関谷政府委員 これはもと大臣のお答えでもございましたとおり、全体の絹需要が非常に減退していく中で全体の需給規模がいわば縮小してきますものですから、どうしても価格面での厳しさあるいは需要面での厳しさが生産体制にもしわ寄せになってまいるというような事態があることを私ども十分承知をしているつもりでございますが、まさにその地域で見ますと、ただいまお話のありました共同飼育所の規模の問題、利用度の問題にもあらわれましたように、全体としては確かに養蚕規模は縮小しつつあるということで、そこに地域農業として大変な問題があるというふうに承知しております。  これは現在の状況ですと、桑園面積で十一万ヘクタール程度、養蚕農家が十万戸少し超えるというような状況でございますが、現実には年率二、三%くらいの減少が面積、戸数とも見られているような状況でございますので、こういうようなところから、やはり全体の需給状況に応じたいわば生産の縮小、それに伴います他作物への転換等がどうしても進まざるを得ないという状況にあるというふうに承知しております。  ただその中で、やはり先ほど挙げました例にも見られますような本当に養蚕を主業として今後ともやっていきたい、そういう中核的な意欲のある農家の方々には安心して養蚕をやっていっていただけるような、そういう意味でのしっかりした価格安定制度というものは今後とも続けていこう。それには従来の安定制度の運用等の経験も考えまして、この際制度の見直しをし、同時にこれをそれなりに充実するという形で養蚕農家日本養蚕業経営の安定にも大いに寄与していくということで、これからの地域産業として大事な養蚕業の発展、安定を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  19. 小川国彦

    小川(国)委員 そこでもう一つ生産費の問題でちょっと突っ込んで伺いたいのですが、農水省の統計情報部が発表している繭生産費と、この価格安定法に基づいて農林大臣が定めた最低繭価との差があり過ぎるんじゃないかというふうに私ども思うわけです。農林水産省の統計情報部の五十八年繭生産費調査によれば、上繭一キログラム当たりの第一次生産費の全国平均は三千百三十四円となっておるわけであります。ところが、価格安定法に基づく五十八年度の農林水産大臣が定めた最低繭価は千九百三十三円、これは余りにも差があり過ぎるんではないか。この点はどういうふうにこの食い違いが出てきているのか、御説明を願いたい。
  20. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは従来の価格決定の際に、政令で決まっているわけでございますが、生産費に所要の調整を行うということで、毎年の行政価格の基礎とする生産費の標準性を確保するための調整を行っているわけでございます。  したがいまして、今先生のお挙げになりましたような金額上の差異がございますが、それらのいわば俗に組みかえと申しますか、その幾つかの点を申し上げますと、例えば蚕期の災害農家でもって一定割合以上の被害農家を除去するとか、それから減価償却費生糸製造販売費が定率法をとっておりますので、繭生産費の方の定額法を定率法に組みかえるとか、それから租税課金を費用として加算する、その他資本利子の組みかえということで、統計情報部の利子率は一様に年四%を採用しておりますので、これを実勢利子率に組みかえていくということ、それから労働生産性の見方ということで繭一キログラム当たりの労働時間、これを過去の実績値をもとにしましてそれを趨勢値に組みかえていく、それから最後に、物価修正もございます。物価修正は、調査期間の物価動向に最近三カ月の物価動向を反映させて修正をする、こういうような修正、調整を行いまして、いわゆる組みかえをしました結果として、今先生の御引用になりました、従来の異常変動防止の方の価格算定の基礎になります基準生産費になっておるわけでございます。
  21. 小川国彦

    小川(国)委員 こういうふうに現在ですら価格調整が行われる、所要の調整を行っているという形で、三千百三十四円のものが千九百三十三円になってしまうということで、私はここにもやはり最低繭価の見方というものがきちんとした生産費調査に基づいてないという点に不満を感ずるわけなので、こういうことが今後異常変動措置がなくなった中においてはさらに進んでくるおそれがあるんじゃないかということを懸念するわけで、この点はひとつ指摘にとどめておきたいというふうに思います。  それから次に、改正後における事業団の大きな問題として、在庫十七万俵余りあるわけですが、これを放出するに当たってどの程度の期間を予定しているわけですか。
  22. 関谷俊作

    関谷政府委員 事業団のいわゆる現在の在庫糸、これは改正法によりますと、特別勘定に移しましてそこで経理をするわけでございますが、その売り渡しの全体の期間について、今私ども、何年で全部完了するというような、そういう考え方は全くございません。  ただ、考え方としましては、やはりもう少し需給実勢を見きわめながら、余り変動的な数量で売り渡しますよりは、ある程度定時定量的な売り渡しを原則として、ただ、もしも価格が著しく落ちていく、需給関係が崩れるというようなことがございましたら、もちろんそういうときは売り渡しをとめなければならないと思いますが、原則的には、むしろ需給関係の中に余り悪影響を及ぼさない形で織り込まれるような状態で平準的に売り渡していくという方法がいいのではないかなと思っております。ただ、そうかと申しまして、単純に全体を何年だからそれで割って毎月幾らやるというような、そういう機械的な方針をとる考えは全くございません。
  23. 小川国彦

    小川(国)委員 需給計画に悪影響を及ぼさない方法というのは、どういう方法を考えていらっしゃるのですか。
  24. 関谷俊作

    関谷政府委員 法文上の表現は「時価に悪影響を及ぼさない方法」と、こういうふうにございまして、そこに挙げられています例としては、一般競争入札契約でございます。これは文字どおり一般競争でございますけれども一つは、今ちょっと申し上げましたように、むしろ需給状態に余り混乱を与えないような形で織り込まれていくようにするためには、定時定量的に売り渡しをしていく。例えば毎月幾らをめどにしていくというようなことが適当であろうということが一つと、それからもちろんやはり事業団の状況から見ますと、需給全体の情勢から見まして予定価格設定しまして、その予定価格を超える価格での要するに応札がありましたときに売り渡すというような競争入札契約でやっていく、こういうような方向が、この法文の表現に即しますと一番実際的ではなかろうかと思っております。
  25. 小川国彦

    小川(国)委員 この事業団の放出によって価格が引き下がるということは、いずれにしても明らかだろうと私は思うのです。この場合、生産者への対策というものはどういうふうにお考えになっていますか。
  26. 関谷俊作

    関谷政府委員 これはちょっと理屈っぽくなりますが、「時価に悪影響を及ぼさない方法」で売り渡すということは、その売り渡しの結果として、生産者に何か特別の迷惑をかけて、お尋ねがありましたような生産者に何か対策が必要となるような状態というものはないようなことが、本来この法文上の表現から予定されているというふうに思いますので、やはり先ほどから申し上げましたような需給状況の中で自然にというか、無理なく消化されていくような売り渡しの仕方、これを考えて、その結果として生産の方に悪影響を及ぼさない、こういうことが期待されるような売り方、これでなければいけないというふうに思います。
  27. 小川国彦

    小川(国)委員 少なくも法案にこの事業団の放出というものを二つの柱の中の一つとして織り込んでいるわけですから、やはりそれの年次計画なり事業計画なりというものを当然お立てになっていらっしゃってしかるべきじゃないかと思うのですが、その辺を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  28. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは先ほども申し上げたのでございますけれども、いわゆる年次計画あるいは全体計画で、例えば十七万俵を何カ月に割ってと、こういうようなことは決して考えておりませんし、また、法律趣旨から言っても考えるべきことではないというふうに思っております。  ただ、やはり事業団として見てだけではなくて、日本養蚕なり製糸あるいはさらに絹業も含めまして全体の生糸関係業界から見ますと、やはりこれだけの在庫があるということは、常に何か糸価の足を引っ張るような心理的な要因になっていることは事実でございますので、そういう意味では長いといってもそんなに長くなくということが気持ちとしてはございますけれども、その反面、その気持ちにとらわれ過ぎまして、何か機械的に、全体的に何カ月あるいは何年でやっていくというようなことを頭から想定して仕事に当たるというのはよくないというふうに考えておる次第でございます。
  29. 小川国彦

    小川(国)委員 これはほぼ一年分の在庫を放出していくということになるわけで、これが時価に悪影響を及ぼさない方法ということを述べられても、先ほど大臣の御答弁にもありましたように、需要が落ち込んでいる、落ち込んでいるところへ一定の数量が輸入で入ってくる、国内生産も出てくる、そこにまた払い下げということになれば、どう考えたってこれは値下げされていく要因以外の何物でもないわけですね。  ですから、その出していく数量、年次計画、そしてそれによって価格の歯どめはどこに置いて、それ以上は下げないということの保証がなければ放出はしていかないとか、そういう一つの安全装置があっていいんじゃないかと思いますが、その価格なら価格については、ではこれ以下には下がらないような範囲でやっていく、そのめどはお持ちなんですか。
  30. 関谷俊作

    関谷政府委員 これはやはり価格安定帯制度でございますから、例えば新しい制度もとでの安定基準価格がいわば守れなくなるような状態、そういうような状態が出てくるということは、やはり制度全体としては非常に望ましくないことでございます。そういう意味で言えば、その辺がこの放出については一つのチェック要因になるというふうに考えております。  ただ、事業団糸で在庫の長くなりましたものについては、御承知のようにある程度物が古くなりますと品質上の格差もございますし、それからそれに伴います。途上の制約なりや特別の用途もございますので、そういうようなことをいろいろ考えますと、ただ機械的に基準糸価というか、安定基準価格を割り込むことだけを心配するというわけにもまいりませんけれども制度全体として見ればやはり安定制度の健全な運営と矛盾するような形で、つまり需給実勢状況に構わずにどんどん売っていくということではなくて、ぎりぎり低いところに行くようなことがあればやはり売り方は少し抑えるなり、とめるなり、こういう配慮は必要であろうというふうに思います。
  31. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、流通の問題について取り上げてみたいと思うのですが、いわゆる絹織物、養蚕農家が繭、繭から生糸になる、それから生糸から製品になり、それが着物その他になって消費者に渡っていく、こういう一連の流通の状況を見ると、流通の改善という問題が全く放置されているんじゃないかというふうに思うのです。  ある調査によりますと、機屋の原糸購入費が一〇〇に対して専門呉服店の小売価格が六五三にもなっているわけです。また、そのほかの調査によりますと、流通マージンというのが大体六〇%から七〇%を占めているという例がいろいろな新聞の調査でも指摘されているわけです。  私は先般京都に参りまして、西陣の帯の産地をちょっと回ってみたわけです。先般も成人式で、若いお嬢さん方が大変高い着物を買わなければならないという実態、そして、生産農家に行ってみれば、自生地が一反二、三万円のものが何で五十万も百万もする着物になったり帯になるのか、一反二、三万円のものが何でそんな高値になってしまうのか、もっと安いものであれば、着物としても、和服としてももっと流通するはずではないか、流通機構の過程に問題があるのじゃないか。私が訪ねたその西陣の、これは帯屋さんでしたけれども、その人も、帯が消費者の手に渡る値段はメーカーの値段の大体三倍くらいになっていますということを率直に言っておられるのです。それはやはり流通機構が複雑であって、メーカーのところから産地の問屋へ行って、産地の問屋から集散地の問屋へ行って、集散地の問屋から小売へ行く。ところが、その間にまた幾つもの段階がありまして、本当に複雑な流通機構になっている。そういうことが今申し上げた一〇〇のものが六倍、六倍半もの値段になっているという実態があるので、この流通機構の改善ということについても、先ほど大臣、着用のことはいいんですけれども、流通機構で大変な問題がある。この改善もやはり考えていただかなければならぬと思うのですが、いかがでございますか。
  32. 関谷俊作

    関谷政府委員 絹製品、特に和装の高級物になりますと、今先生のお話しになりましたような流通段階で、最終の生地、織物になります過程での段階も多様でございますし、大変複雑な機能が複合しているわけでございまして、まさに、最初の自生地の段階では一反二万円かそこらのものが、染められて反物になりましてからそれが問屋さんあるいは最終小売店に至るまで段階を経ますと、大変大きく経費が膨らんで、一反数十万円の値段のものになっていくということでございます。  これは、別にこれ自身を擁護するわけではございませんが、非常に高級和装の場合には、一つ一つの織物、反物に個性がございまして、一つ一つ図柄を考えて染めるところから、そういう一つの問屋機能というか、消費者需要の動向をにらみながら問屋の段階でもって織物のつくり方、織り方を考えまして、産地へいろいろ注文を出して、それを集めて、またそれを売っていく、こういういわば目に見えない形で機能します流通機能の位置づけが非常に高くなるわけでございます。  そんなことがございますので、着物として見た場合、原料になっている生糸と最終製品の比率とは大変大きな開きがございます。これは私どもとしましても、確かに例えば背広のようなものとは全然違う複雑な流通段階になっておりますので、実態的に単純化するというのは非常に難しいと思いますが、最近、私ども素人的に見ますと、大量販売的なあるいは新しい柄を中心にした呉服屋さんというか、そういうものが大分出てこられましたり、そういう面で、和装の世界でもかなり新しい動きが出てきているようにも思います。  こういうことで、もちろんこの辺のところは、本当の専門の所管は通産省になるわけでございますけれども、私ども生糸に至るまで所管しております農林水産省としましても大変関心のあるところでございますので、通産省にもよく、問題を投げかけるとともに、私どもとしても、生糸需要増進の面から、こういう問題を何とかもっと合理化できないかということについて十分関心を持ちまして、こういうことがより合理化に向かいますように、私どもとしてもできる限りの努力をしてまいりたいと考えております。
  33. 小川国彦

    小川(国)委員 通産省の方お見えになっておりますか。——今の点も含めて御答弁願いたいと思うのですが、流通問題に対する対策が一つ。  それから、ウールマークじゃありませんけれども、シルクマークというようなものも考えて、もう少し宣伝や需要喚起の工夫もあるのじゃないかというふうにも思うのですが、そういう点にもし所見があったら。  それからもう一つ生糸の輸入の問題ですけれども、これは二国間協議あるいは事業団の一元輸入ということで、そういう仕組みの中でやっておられて、生糸などは輸入が減少している点は認められるわけですが、しかし国内の現状が、需要の減退あるいは事業団の在庫の膨張、価格の低迷、こういう状況にあることを考えますと、今のままの輸入を続けていっていいのかどうかということも私どもは非常に疑問として感ずるわけです。それから、在庫過剰という事態も、事業団の輸入に対する非常に安易な姿勢というものがあったのではないかというふうにも思われるわけであります。  そういう中で、特に通産省所管の絹糸、絹織物、二次製品、この輸入が全体の輸入量の八八%を占めているわけですが、そういう輸入数量はさっぱり減ってないわけであります。自由化品目ということは我々も承知をしているわけでありますが、国内の状況がこうした異常な低迷、下落の状況を呈している中でこうした輸入が続いているということは、やはり通産省としても、これは単に養蚕農業の問題ではなくて、機屋さんの国内産業の育成という観点から見ても相当大きな打撃を受けているという現状をどのように認識してそれに対する対策に取り組んでおられるのか、この点をひとつ御答弁願いたい。
  34. 新関勝郎

    ○新関説明員 お答えいたします。  まず流通の問題でございますが、私、通産省で生活産業局の通商課長という輸出入の問題を扱っているところでございますので、先生の御議論は関係課の方にお伝え申し上げますということにしたいと思います。  それで、後段の輸入の問題につきましてお答え申し上げたいと思います。  絹製品の輸入につきましては、日本の置かれている国際的な立場を踏まえまして今の時点でとり得る最善の方策というようなことで、従来から主要の供給国ないし地域であります中国、韓国あるいは台湾との話し合いのもとに、極力その輸入数量の削減に努めてきたところでございます。それでまた、これら二国間の協定等を補完する観点から、その他の国とか地域からの輸入に対しましても、その協定の脱法行為となります第三国を経由した輸入あるいは第三国で加工を加えた輸入、こういったものを防止いたしますために、輸入貿易管理令上のきめ細かい措置をとっているところでございます。  この結果といたしまして、例えば絹織物の輸入数量をとりますと、二国間協定、韓国、中国との間で開始しましたその直前の昭和五十年度と比較いたしまして、現在は約半分の水準にまで減少しておりまして、これは私ども、実はこの間の絹織物の生産の減少率を大幅に上回った減少率ということで、相当厳しいカットをしてきている、そういう厳しい削減をかけてきている、こういうことで努力をしているわけでございます。  今後につきましても、今先生いろいろ厳しい状況をおっしゃいましたが、蚕糸絹業の厳しい現状にかんがみまして、主要供給国との話し合いを軸にいたしまして絹製品の輸入数量の抑制に最善の努力を私どもやっていきたい、かように思っております。ただ、相手国におきましても、実は毎年削減に次ぐ削減を繰り返してまいりまして、そういう削減、調整の余地は次第に狭まってきているというのが実感ではございますが、しかしながら、なお輸入数量の削減に努力してまいりたい、かように思う次第でございます。
  35. 小川国彦

    小川(国)委員 皆さんの方では面積承認のみで重量が規制されてないという話があるのですが、例えば生地を、大きさでは規制しているけれども厚さで規制してない、だからこっちへ来てほぐしてその数量が倍や三倍になってしまう、こういう点の規制はどうなっているのですか。
  36. 新関勝郎

    ○新関説明員 お答え申し上げます。  現在、先ほど申しました中国、韓国あるいは台湾ということで二国間の協定を結んで輸入数量の削減を図っているわけですが、それは確かに輸入の総量を毎年面積単位で決めているわけでございます。このため、輸出国といたしましては、たび重なる協定数量の削減に対応いたしまして、比較的付加価値の低い軽目の織物の数量を削減分に充てている、こういうのが実態で、その結果として全体の数量は先ほど申しましたように相当減っているわけですが、その中で重目のもののウエートが、これも絶対量では重目のものも減っているわけですが、ウエートとしては増加してきているというのが実態だと思います。  それで、これに対しましては、従来、私ども二国間の協議を通じまして、毎年そういう重目のウエートが増加しているということで、これは産地との関係で非常に問題になるということで注意を喚起しておりまして、そうしたものの抑制ということに協力してほしいということで最善を尽くしてきたわけでございまして、今後もこうした努力を引き続き私どもはやってまいりたい、相手に注意を喚起してまいりたい、かように思うわけでございます。  ただ、重量規制を今ここで面積規制とあわせて行うことによりまして現在の規制方法をさらに、面積ベースで取り決めているわけでございますが、それを強化する、こういうことの問題につきましては、従来、こうした国々は削減について御理解いただいて相当の協力をしていただいている、こういう状況でもございますので、相手国との関係で、何と申しますか、その協力ということで、相手国の反発を招いてその結果として協定が結べなくなっちゃったりして元も子もなくなってしまうということでは、これは私どもは注意しなければいかぬと思っております。したがいまして、従来どおりの面積ベースの削減ということを言いながら、それで協定を結びながら、かつ重目のものの増加というようなことが起こらないようにということの注意を喚起してまいることによって対処してまいりたい、かように思っております。
  37. 小川国彦

    小川(国)委員 時間が参りましたので、今後通産省も農林水産省と十分協議を願って、日本養蚕農業が立つか立たないか、非常に重大な岐路に立っているという状況にありますので、輸入抑制の問題については、日本の国内産業保護の立場、養蚕農業を守る、こういう観点からお取り組みをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  38. 今井勇

    今井委員長 次に、田邉國男君。
  39. 田邉國男

    ○田邉(國)委員 私は自由民主党を代表して、三十分という限られた時間の中で、改正案の運用面における基本的事項に問題を絞って質問をいたしますので、簡潔かつ明確に答弁を願いたい。  ただ、残念ながら、大臣が予算委員会に出席をされる、そういうことで、事務当局への質問ということになりまして、私としては大変残念でございますので、その点、大臣が万一時間の都合で帰られるならば補足説明をしていただきたい、こう考える次第であります。  まず第一に、農業における養蚕業の位置づけ及び繭糸価格安定制度蚕糸業の発展に及ぼした効果についてでありますが、我が国の養蚕というものは中山間地域における農業作物としての基幹でございまして、農業経営上極めて重要な地位を占めておるわけであります。しかし、近年繭の生産量は年々減少をしておる、そして養蚕農家も今や十一万台、昭和四十年には五十一万戸、それが現在は十一万戸に減少をしております。そしてなおかつ十万ヘクタールに減少をしてしまった。したがって、若い後継者は魅力を失って他産業に移行をしておるというのが現状であります。  そこで、我が国の農業における養蚕業の位置づけと将来展望について当局の見解を伺いたい。また、繭糸価格安定制度が我が国の蚕糸業の発展にどのような作用を及ぼしてきたか、これもあわせて伺いたい、かように考える次第であります。  なお、この繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案についての資料として、三十一ページに生産及び需給の動向、そこに養蚕業の動向について、ただいま私が申し上げたような順序で養蚕業の位置づけが書いてあります。しかし、今度は三十二ページには、養蚕業経営というものは一戸当たり規模がだんだん拡大をしつつある、したがって、政府はこの養蚕業を取り巻く厳しい事態に備えて繭の計画生産を推進して、いわば主産地形成というものをやっていこう、そして中核養蚕農家を育成していこう、そして高能率の養蚕地帯を対象として総合的な対策を推進していきたい、こういう言葉で結んであります。  私はこれを見ますと、当初の、中山間地域における作物の基幹をなしているものだ、いわば零細養蚕農家というものが非常に多いんだ、その養蚕農家への対応というものがここに明確に指示されていない、こういうことを考えたときに、私は、今の農政の中で養蚕業の位置づけというものを明確にこの中に出しておらないように思うわけであります。したがって、この問題について当局の御意見を伺いたい。
  40. 関谷俊作

    関谷政府委員 お答え申し上げます。  養蚕業につきましては、ただいま先生の御引用になりました資料にもございますが、戦前に比べましては言うに及ばず、最近の傾向でも農業全体の中でウエートは非常に低下してきております。ただ、これはいつも私ども申し上げていることでございますが、農山村等の畑作地帯で、そういう地域として見ますと農業生産経営上非常に大事な作物でございますし、地域産業としても極めて重要な地位を持っているものであるというふうに認識しております。  こういうような養蚕業の位置づけということから見ますと、これからの養蚕業の展望については、私どもこれを何とかして日本の農業の大事な部門として、また地域産業の一つの部門として位置づけていきたいということで考えるわけでございます。ただ、先生も御案内のとおり、全体として見ますと絹需要の減退のテンポが非常に激しいものですから、そういうことからどうも需給の不均衡、具体的には蚕糸砂糖類価格安定事業団に大変大きな在庫ができるというようなことで、このために事業団財政が極度に悪化する、こういうような養蚕業の将来にとっては大変ゆゆしい事態が出ているわけでございます。  そういうことから考えますと、ここで私どもとして考えるべきことは、何といってもそういう需要と供給両面をよくにらんだ養蚕経営の安定あるいは地域産業としての育成ということを考えていかなければならないというふうに思うわけでございまして、そういう意味で考えますと、どうしても養蚕の面につきましては山間地あるいは農山村、そういうところを中心にしました主産地を形成していく、これまでもやっておりましたが、そういう非常に能率の高い養蚕地域をつくっていく、また、その中で中心となるような中核的な養蚕農家を育成していくということで、足腰の強い、割合コストの低い養蚕実現を図るということが日本養蚕業のこれからの展望を持つためにはどうしても通らなければならない道であるというふうに考えるわけでございます。  この間、繭糸価格安定制度のいわば効果、機能でございますが、そういう養蚕業をこれから安定させ、育成していくという面から見ますと、もともと生糸は、先生もよく御承知のとおり、絹製品は奢侈品でございますので非常に需要面で不安定な面が強い、それから一方、供給の面では、養蚕については永年性作物を基盤とする農作物を原料としておりますので、比較的に生産の面で固定性が強い、また、製糸業の方は中小企業が多くて在庫調整能力というか、そういう市場に対する対応能力が非常に乏しい、こういうことで、放置しますと非常に価格の乱高下を生じやすいわけでございます。  そういう中で、繭糸価格安定制度のこれまでの効果としましては、発足当初以来の安定価格帯制度というものによりまして一定の価格安定の幅に生糸価格をおさめる。非常に不幸にして、この一定の幅というのが最近のところでは下の方に非常に張りつきあるいは時には下に割り込むということで、事業団の買い入れ数量の累積による在庫増ということになったわけでございますが、そういう安定帯制度というものを通じて、本来ならば非常に変動する生糸価格を安定させ、それによって関係の産業、具体的には養蚕業製糸業、さらに言えば需要者である絹業、そういう関係の方々の経営安定に大きく寄与してきた、また、こういう機能は今後とも大事にせねばいかぬということで、今回の制度改正を御提案したような次第でございます。  なお、その場合のいわば経営の今後のイメージと申しますか、中心的な担い手というのはどういうものだろうかということでございますが、ここの資料にもございますように、確かに現在の養蚕農家規模別から見ますと、戸数で見ますと、例えば十箱未満のものが六割近くを占めるというようなことで比較的小規模のものが多いわけでございます。また、そういう状況がかなり固定的でございますが、私どもどうしても、こういう養蚕業のいわば最初に申し上げましたようなコストの低下なり合理化というものを図っていくためには、やはりある程度の規模を持った中心的な農家、例えば繭の生産量で申しますと年間一トンぐらいはとるような農家、ある程度の規模を持った農家を育成していくということと、それから同時にもう一つは、地域の特作物などとかみ合わせた複合経営の態様でもって経営を安定させていく、こういう二つの方法を考えながら養蚕農家の安定を図っていかなければいけないのじゃないか、こういうふうに考えているわけでございまして、いずれにしましても、ここにもございますようなコストの引き下げという面での養蚕業の合理化には、個別農家としてのある程度の規模を持つ、あるいはほかの作物との複合化による所得の安定を図る、同時に地域として見た主産地を形成しまして、そこで例えば稚蚕共同飼育とか生産物の販売とか、いろいろな面で共同部な活動を助長していただくというようなことで、この養蚕農業をめぐります大変厳しい情勢に対処していく、そういうようなことで、役所としましてもますます対策を充実強化しなければいけないというふうに考えております。
  41. 田邉國男

    ○田邉(國)委員 何か少し説明が長過ぎるような感じがいたします。  次に、養蚕農家経営維持を図るための歯どめの措置の必要性についてお尋ねをしてみたいと思います。  近年、生活様式の変化によりまして着物離れの現象が顕在化し、国内の絹需要が大幅に減退をした、そのために事業団の生糸在庫が膨大化した、それが長期的に糸価が低迷をしておる最大の要因だ、これはそうだと私も思っております。このような状況の中で糸価の回復を図るために、農水省は繭の生産計画、それから製糸業における機械設備の破棄等、また事業団による新規用途向けの生糸の売り渡し等の対策を行われてきたところであります。今回の改正案は、十七万俵台にも及ぶ事業団の在庫の糸の処理を図って、そして商糸価格安定制度を堅持することが主眼であるということであります。しかし、当分の間絹需要の大幅な増加が期待できない状況の中で事業団の在庫の糸の解消を図るためには、当然私は輸入量の抑制を初め繭の計画生産を実施していくことが極めて重要だと思うわけであります。  一方、無計画な繭の生産調整を実施するということは、やはり農家生産意欲を減退させるばかりでなく、養蚕経営の崩壊を招来するものではないか、こう思うのであります。例えば、昨年の二割掃き立て削減については何らかの補償をすべきではないであろうか。しかし、この補償は何もなかったわけであります。米の生産割り当て等については、必ずその対象として、例えば休耕田、そういうものに対しては政府は何らかの措置を講じてきた。しかも、養蚕は米の主要転作物の中の一つに数えられておるものであります。しかし、政府の言う繭の生産調整というもので掃き立ての二割を削減するということ、これは即減反にもつながる意味のものだと私は思うのです。それには何らの補償をしない、これは繭生産をやっておる養蚕農家にとっては極めて残念、しかも政府の施策に対する不信を抱いておるのではないか、私はこう思っております。  そこで、養蚕農家経営維持を図る歯どめの措置として、繭から絹織物に至るまでの単年度の需給計画というものを作成して、これに基づく繭生産を実施する必要があると思うのであります。また、同時に、中期展望をも立てて、これを明確にして養蚕農家の不安を除去する必要がある、こう考えるわけであります。  さらに、改正案に基づく事業団在庫の糸の売り渡しは、事業団の保有する生糸一定期間を超えた場合に「時価に悪影響を及ぼさない方法によって、売り渡すことができる。」という規定になっておる。そこで、一定期間とは一体どの程度の期間を言うのか、また「時価に悪影響を及ぼさない方法」とはいかなる方法であるか、具体的に説明をしていただきたい。
  42. 関谷俊作

    関谷政府委員 主として生糸需給全体の問題に係るお尋ねでございますが、昨年のいわゆる二割減産の問題につきましては、これは私ども全養連を中心とします養蚕団体との相談により進めたわけでございますが、これにつきましては、昨年の予算措置によりまして自作農維持資金並みの年利五分の一種の転換というか関係対策に使えるような資金を準備したわけでございます。実績はそれほど出ていないようでございますが、ただ繭の場合には、米のような、食管法のような売り渡し義務あるいは買い入れ数量の制限というものとリンクしたものと違いまして、一応生糸につきましては自由流通を前提にしまして、自由流通、自由生産の中で価格安定帯の中に価格を安定させていくというようなことでございますので、いわゆる計画生産に伴います対応というのがいわゆる補償というような考え方になかなかなりにくいわけでございます。そういう意味で、昨年はこういう年利五分の融資措置を準備したような次第でございます。  今後の問題として考えますと、まさに先生からお尋ねのありましたような少し先を見た需給計画、需給見通しを考えていくべきじゃないか、こういうようなことでございまして、そういう意味では、我々としましても、今回の制度改正に至ります過程で学識経験者の方にいろいろ御検討いただいたり、また民間機関にも需要予測をしてもらったりしておりますが、まだ確定的にどういうような需給規模を内需について想定したらいいのか、こういうようなことについてはなかなか決定的なものが見出せない状況でございます。  ただ、全体として見ますと、和装需要についてはどうしても減退をしていく。和装需要が全体の九割を占めておりますので、それが響きましてかなり需給規模は今よりも縮小せざるを得ない。その過程で、事業団としてはいつまでもこの十七万俵の大量在庫を持っているわけにはまいりませんので、需給状況にあくまでも影響を与えないような状態で、無理のない状態で少しずつ在庫を減らしていくというようなことも考えなければいかぬだろうということでございます。したがいまして、今後昨年のように機械的に二割というような方針を出すかどうかは、必ずしもそういうことは適当でないというふうに思っておりますけれども、やはり国としては、昨年のような規模、少なくともこういうことのないような状態で、全体の繭生産についてはやはり抑えていくというか、そういう方針であるということは打ち出さざるを得ませんし、そういうことで県に対しても指導いたしたい、こう考えているわけでございます。  なお、お尋ねの中の最後の点の、今回の在庫糸の売り渡しにおきます一定期間と申しますのは、これは農林水産省令で決めるわけでございますが、私どもとしてはこれは一年という予定をしております。もちろん、これは一年を超えたら売り渡しをすることができるという意味でございまして、一年を超えたらすぐにその明くる日から売っていくというようなそういう意味ではございません。  それからもう一つ、「時価に悪影響を及ぼさない方法」でというその「方法」については、法律上は例示が一般競争入札契約によるということが書いてございますが、需給状況を見て、できれば定時、定量ということで、全体の需給に悪影響を及ぼさないような形で安定的に売り渡しをしていく。ただ、その間非常に需給のバランスが崩れまして、非常に相場というか価格が下がるようなことがあれば、売り渡しにはブレーキをかけるなりストップしなければいけませんけれども、そういうことのない限りは、定時、定量というようなことで売り渡しをしていく。その場合には、競争入札ではやはり一定の売り渡し予定価格を最低限として設定をいたしまして、それによりまして入札をしていく、こういうような方法がいいのではなかろうかと考えております。
  43. 田邉國男

    ○田邉(國)委員 今御答弁の中で、一定期間の話はわかりましたけれども、「時価に悪影響を及ぼさない方法」とは安定的に云々という言葉がありましたけれども、何か大変苦しい答弁のように私は承る。この点については、さらにひとつ当局で十分な対応をしていただくことが養蚕農家の不安を除去することであろうと思います。  次は、新安定価格帯に基づく来年度の価格決定についてのお尋ねでありますが、今回の改正に伴いまして、安定価格帯の価格算定方式を、従来の生糸生産費基準とした算定方式から、生糸生産条件需給事情その他の経済事情要素としてこれを総合勘案して定める方式に改めることになった、こう言っております。安定価格帯の決定は養蚕農家経営に直接結びついておるものでございまして、繭の計画生産を実施している中にあっては、まさに私は生命であろうと思います。したがって、今養蚕農家は、政府がより実勢に近い価格で決めたい、このより実勢に近い価格というのは、すなわち低い価格で決めたいねらいがあるのではないかという疑心暗鬼があるわけでありますので、この点やはり十分な配慮をしていただきたい。  そこで、新価格帯の運用については、政府はこれに対してどう考えているか、また来年度の価格決定についてはどのようにするつもりか、この点を伺いたいと思います。  時間もありませんので、続けて今後の生産対策のあり方についてもお願いをしたいと思うのです。  昨年の基準糸価引き下げによりまして、しかも期中において基準糸価が一万四千円から一万二千円に引き下げられた、養蚕農家経営というものは一段と厳しさを増してまいりました。このために、低コスト生産等の生産改善に対する農家投資というものはますます鈍化することが予想をされておるわけであります。政府の言う生産対策とは、現在私どもの見ておるところでは具体性が全く欠けておるのではないだろうか。例えば、掃き立て制限を指示した後、先ほども答弁がありましたけれども、複合経営による合理化経営、こういうことを言っております。一体この複合経営による合理化経営とは何を指すのか。私どもはこれは言葉のみで何らの指針がない、こう考えるのであります。  また一方、繭糸価格安定制度に関する研究会報告によりますと、今後の生産対策は、中核農家中心とした主産地形成を図って、低コスト実現のために生産構造を確立すべきであるという報告がなされております。先ほども申しましたように、中山間地域の基幹作目となっている現状を考えたときに、私は中核農家中心とした主産地形成は、やはり現実問題として山間地の養蚕農家にとってはこの不安は非常に大きいものがある、こう考えるのであります。  そこで、どのような生産規模を対象として考えておるのか、それからどのような生産対策を考えておるのか、この点については私は大臣見解も伺いたいのですが、予算委員会に行っておられるというので、まことに残念でございます。ひとつ事務当局から誠意ある答弁をお願いしたい。  以上であります。
  44. 関谷俊作

    関谷政府委員 第一点の価格帯の問題でございますが、今回の制度改正によりまして、異常変動防止措置を廃止して、中間安定措置もとにした価格安定帯制度に改める、こういうことになっておるわけでございまして、生産費基準ということが用いられておりました異常変動防止措置につきましては、これは新制度もとではなくなるわけでございますが、新制度の安定上位価格安定基準価格、これは従来の中間安定帯価格、現在で申します一万二千円の基準糸価、これを決めております価格算定方式を我々としては原則的に継承していったらどうであろうかということでございまして、法文上の表現としましても、従来のいわゆる中間安定帯基準糸価を決める場合の条文構成が、ほぼそのまま新しい安定上位価格及び安定基準価格設定基準として条文上用いられております。  それが先生のお尋ねの中にございました総合的な勘案、こういうことになるわけでございまして、具体的な算定方式としましては、現在の中間安定の場合の基準糸価算定の基礎として用いておりますような需給実勢方式ということで、その中にやや一定期間における現実の生糸価格の動向、それから生産費の動向、それから需給見通し関係、こういうふうな要素を織り込みましたそういう算定方式を従来使っておりましたものを今後とも使う、こういうことがいいのではなかろうかと思っておるわけでございます。  それから、その場合の、六十生糸年度につきましては、これは本法、今度の改正案が成立しまして早急に決定をするわけでございますが、その考え方としましては、実はこれは先生もよく御承知のとおり、昨年大変需給関係価格関係から期中改定ということがございまして、その場合に、我々としても十一月の期中改定の際、ここで期中改定をして、例えば法律ができましたときに新生糸年度でもう一度価格改定で価格が下がるというようなことでは価格安定は難しいということで、方針として、現在の基準糸価を新価格安定帯もとでも維持をする、水準についてはそういうことで、六十生糸年度は現在の基準糸価一万二千円が簡単に言えば安定基準価格になる、こういうような設定をしてはどうかというふうに考えておるわけでございます。  それから生産対策については、先ほどいろいろ申し上げましたが、全体としまして私どもの基本になっております考え方は、繭生産農家としましては、家族労力を中心にしました一定の労働時間、一定の所得規模、これを想定しますと、繭の生産規模で申し上げますと、大体年間一トン程度の規模を有するものが、やはり中心的な養蚕農家として、地域農業、地域養蚕を担っていくいわば中核になる担い手ではなかろうか。ただ、そういう農家だけで地域養蚕が全部営まれるというわけではございませんので、複合的な経営と申しますのはいその地域の特作物あるいは野菜その他の作物を組み合わせた、そういう形での複合的な農家も相当程度ある、こういう一つ養蚕地域というものを設定して、そういう地域単位で養蚕がかなり集約的に行われていく。そのために、我々の事業としましても、桑園の基盤整備とか共同利用をいたします機械や施設の導入、あるいは稚蚕共同飼育所などの広域的な生産流通施設を充実する、こういうことを実施してまいりたい、こういう考え方が基本になっております。  なお、農業改良資金制度におきましても、今度のこういう価格安定制度一つの新しい展開に際しまして、養蚕技術の総合改善資金、こういう無利子資金を創設しまして、そこで桑の新品種の導入とか省力機械の導入、土壌改良というような総合的な技術の導入を図ります場合の資金の有効な活用を図っていく、こういうことも新制度の改良資金制度の中に組み込んでいこう、こういうような考え方でございます。
  45. 田邉國男

    ○田邉(國)委員 今、農林大臣がこちらにお見えになっておる途中だそうですから、私の今質問をした重要な点だけはお答えをいただきたいと思っております。
  46. 今井勇

    今井委員長 ちょっと待って。田邉國男君。
  47. 田邉國男

    ○田邉(國)委員 今まで事務当局からそれぞれ答弁がございましたけれども、私は大臣から要点だけ最後に伺って、この質問を終わらせていただきたいと思います。  先ほど事務当局から答弁をいただいたのですが、農水大臣は、今の農業における養蚕農家の位置づけ、一体養蚕農家をどう考えておられるのか。いわば中山間地域において農作物の基幹として農業をやっておる農家に対する対策というものを本当に考えておられるのか。いや、養蚕農家は、零細農家はつぶれてもいいんだ、それで大きな反別を持ったいわば中核農家を、養蚕農家を育成していくんだ、したがって零細農家養蚕農家はこの際整理をしてもいいんだという考え方があるのか。この点について私は大臣考え方を伺いたい。  もう一つは、価格の決定について。養蚕農家にこれは重大な関係があるわけであります。したがって、安定価格帯の決定というのは、養蚕農家がこの価格の決定によって実は繭の生産を多くするか少なくするか、こういうことにつながるわけでありますから、いわば現在の法改正によって、従来の生産費基準とした算定方式から、生糸生産条件需給事情、その他の経済事情要素として、これを総合的に勘案して価格を決めるんだ、こういうことになって、変えてあります。農家はこの問題に対して大変な不安を持っておりますから、私は大臣からこの点についてひとつ明確にお答えをいただきたい。  もう一つは、今局長から答弁があったのですが、私は十分納得をしておらないのです。今後の生産対策についてどういう対応をされているのか。中核農家中心とした主産地形成をやっていくということですが、それで日本養蚕家が、主産地形成でやっていかれる農家は一体何%になるのか、あとの八〇%から九〇%の農家は一体今後どう対応していけばいいか、一体政府はそういうことを本当に考えているのかということであります。したがって、どのような生産規模を対象として、どのような生産対策を考えているか、ここを、私は大臣のいわば養蚕農家に対する温かい思いやり、配慮の対策というものを開陳していただきたい、かように考えます。  以上であります。
  48. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田邉先生にお答えします。  実は田邉先生は私より養蚕業に詳しいわけでございます。そんなことで、素人がお答えするのはとても申しわけありませんが、私の所見を述べたいと思います。  実は養蚕業の位置づけということにつきましては、これは先ほどちょっと申しましたが、農山村地帯の畑作地帯における経営上重要な作目である、こういうように考えております。ただ問題は、先ほど先生もおっしゃったように、最近の蚕糸業をめぐる情勢は非常に厳しいわけでございます。それは、一つ絹需要の大幅な減退、もう一つは事業団に大幅な生糸在庫がある、大変な財政赤字があるということで厳しい状況でありますが、局長からお答えしたと思いますが、需要動向に即した繭の生産をする必要がある。  先ほどもちょっと言いましたが、一番大切なことはどうして絹を売るかということでございます。これはもう御案内のことで、かつては和装等が多かった。今は和装が減退しておる。それからもう一つは、率直に言いまして価格も高い。例えば、下着類等を見ておりましても、私、デパートを回ってみましても、ワイシャツで最低九千八百円ぐらい、いいのは三万円。下着類が非常に絹はいいといいます。もちろん、汗を取るとか非常に長所がございますが、下着も一点一万円ぐらいで、なかなか買えない。それをいかにして、販路拡大とともに価格をどう下げるか。そんなことで、実は私も毎日絹をよく着て歩いておるというのが現状でございます。  そんなことでございますから、とにかく先ほど先生がおっしゃったようなことで、養蚕生産地の形成及び中核的養蚕農家をつくって、そして足腰の強い低コスト養蚕実現を図っていく、そういうことでございまして、私は先ほど言った認識のもとに実は養蚕業の安定を図ってまいりたい、このように考えておるわけでございます。  そういうことで、価格の問題でございますが、実は今度は行政価格を決めたということでございます。これは先生御存じのところでございますが、私は、やはり前と同じで生産費中心に考えていきたい、実はこう考えております。そういう形の中に、じゃそういう場合に先ほど養蚕主産地をどのようにつくるか。その場合に、例えば経営合理化をした場合他の養蚕農家はどうするかという問題ですが、非常に難しい問題です。実は私はこの養蚕問題を見ておりまして、一番基本的な問題としては販路拡大をどうするかということです。それとともに、いかにして低コスト養蚕農家をつくるか、この二つを中心に考えねばいかぬ。それと、やはり輸入をどう扱うか、これを考えないと養蚕農家の将来は厳しいと思っております。  そういうことで、今のようなことでちょっと私も先生質問にすぐ答えにくいと思いますが、先生方の御意見を聞きながら、一緒になりまして養蚕農家経営の安定を図る、そういう形の中に中核的養蚕農家をつくって、コストの安い生糸をつくる、こんなことで努力をしたい、こう考えております。
  49. 田邉國男

    ○田邉(國)委員 以上で終わります。
  50. 今井勇

    今井委員長 松沢俊昭君。
  51. 松沢俊昭

    ○松沢委員 五十五年に農家の長期見通しを政府の方では策定されましたが、それによりますと繭は十万トン、六十五年見通しでこうなっているわけでありますが、これが現在では五万トン、半分になってしまっている。私は、この長期見通しというものは閣議決定だと思いますので、これはやはりその見通しがちゃんと実行できるように政府の方としてはそれなりの手当てをしていく責任というのがあるのじゃないか、実はこんなぐあいに考えるわけでございます。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕  ところが、今回の繭糸価格安定法改正法律案の背景といたしましては、いわゆる研究会ですか、繭糸価格安定制度に関する研究会報告、これをやはり前提にして、そしてこの提案がなされているようでございますが、これにはやはり現在の状況は、さっきからいろいろと議論されておりますように非常に厳しいというふうになっている。だから、やはり予算上については、主産地の形成、中核的養蚕農家育成等を強化して、そしてやはり縮小合理化という方向で進む以外にないじゃないかという文章が研究会の報告書に出ているわけでありまして、そういう点から考えまして、日本のこの養蚕業というのは、それじゃ一体この先どうなっていくのだ。  私はきょう、日本農業新聞でございますけれども新潟版を持ってきております。私の県の東頸城郡という山村地帯でございますけれども、大分うまく養蚕経営をやっておりまして、板山養蚕組合というものがございましたが、やはりどうにもならぬということで十八年の歴史の幕を閉じる、ことしから繭生産はもうやらぬ、そして組合は解散をするのだというようなことで、でかでかと書かれているわけでございます。国の方に帰りましていろいろお話を聞きましたところが、新潟県なんかの場合におきましてはもう検定所は要らぬじゃないか、ひとつ群馬県の方にお願いした方がいいのじゃないかというようなことで、これまた養蚕農家はそれは大変だということで今騒いでいるというところの現況でございます。  こういうようなことを考えてみますと、先ほども田邉先生の方からもございましたように、五十一万戸の農家が現在では十一万戸になっている。そこへもってきてこういうような発想方法でこういう法案が提案されてくるということになれば、日本養蚕の将来はないじゃないか、こう思いますが、大臣、どうお考えになっていますか。
  52. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生にお答えします。  非常に厳しい、難しい問題の御質問でございます。先ほどもちょっとお答えしましたが、私は、養蚕業の位置づけは畑作地帯の重要な作目である、こういう認識をしております。そんなことで、先生御存じのことでございますが、結局消費の大幅減退、そんなことと、また事業団の在庫が大幅にふえておるということで財政負担も多くなっておる、どうしたらいいかというようなことで皆さんに御心配をかけたわけです。そんなことで、今度また新しい行政価格を決めた。これは御存じと思いますが、実は昨年そのときに、いろいろな条件からかなり実は先物価格が下がった、こんなことじゃいけないというようなことで新価格を決めたという経緯があるわけでございます。  そういうことの中に、私どもとすれば、そういう養蚕業実態を認識しながらどうして生産コストを低くするか、中核的養蚕農家をつくるか、そういう形の中に主産地を形成するか、こんなことで努力をしながら養蚕業の安定を図りたい、こんなような努力を今続けておるというところでございます。
  53. 松沢俊昭

    ○松沢委員 確かに、それじゃどうすればいいかということについては、お互いさまなかなか名案も見つけにくいと思いますけれども、今までの政策というか行政というか、そういうものが養蚕農家の育成のために果たして機能してきたのかどうか、こういうことであります。  私は、地元の養蚕なんかの場合を見ましても、養蚕の指導員というのがございます。そういうのは片っ端から切り捨てられてきているわけでありまして、そういうことでこれはもう斜陽産業だというふうな感覚に農家自体を陥れたというところの行政の責任というのはやはり厳しく反省しなければならないのではないか。その反省の上に立ってこれからどうするかということをやはり考えていきませんと、これは、国際的な情勢あるいはまた絹の需要の動向、こういうものが変化してきたのだからやむを得ないというふうなことでは根本的な解決にはならぬと思いますが、今までの行政の責任というのをどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  54. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生にお答えします。  私は、行政の責任ということについては若干異論がございます。私は役所に入って四カ月ですが、非常に努力しております。努力しておりますが、なかなか絹が売れない、どうして売ったらいいかということの中で、価格等の問題があるということで大変努力しておるということでございます。実は、五十五年のときの十万トンという計画が半分になったわけでございますが、そのときは、何でだろう、例えば和装の需要が減退した、また特に和装が高いということもございまして、今日この姿になった。そんなことで、現在農蚕園芸局長中心に一体どうしたらいいか、我が省を挙げて頑張っておるというのが今の姿でございます。
  55. 松沢俊昭

    ○松沢委員 この改正される法律というのは——十七万俵に上ると思うのですね、膨大な事業団の在庫、これはやはり始末をつけなければどうにもならぬじゃないかというお考えのようでありまして、これは何とかしなければならぬと思います。だけれども、さっきから質問が続いているわけなんでありまするが、時価に悪い影響を与えないようにして始末をつけるのだ、こういうことですが、そういう手品みたいなことが果たしてできるのだろうかなという危惧を抱くわけであります。  同時に、今回はいわゆる異常変動防止制度というのを撤廃してしまうわけでありますから、無定見な放出が行われるということになったらそれこそ生糸は大変な暴落ということになる可能性が十分考えられるのじゃないか、こう思います。そういう点につきまして、さっきから話を聞いていますけれども、なかなか理解ができないわけなんでありますが、これは局長の方で心配がないという答えをひとつ出してもらいたい。
  56. 関谷俊作

    関谷政府委員 生糸の全体の需給の問題がすべて基本にあるわけでございまして、最初にお尋ねございました長期見通しで、生糸で六十五年四十万俵という見通しをしたわけでございますが、ちょうどその見通した時点、五十三年時点、実はこの辺が、振り返ってみますと日本生糸の総需要の急速な減少に向かう転回点であったような時期になっております。いわゆる着物離れの現象とかが非常に進行したということでございまして、そこに確かに見通しとして見た場合の食い違いがあったわけでございます。そういう過程の中で需要がどうしても減少していく。一方では、生産の方との乖離が価格関係に出まして、価格の低落もしながら同時に物が余るということで、事業団に大変な在庫が生じたわけでございます。  今後の問題として見ますと、これは過去の在庫でございますので、これも生糸の世界の中で何とかしてこの重荷を処理していかなければいけないというのが、言ってみればこれまでの間のそれだけの借金と申しますか、大変大きな宿題を負っておるわけでございます。  そのやり方でございますが、法律上は「時価に悪影響を及ぼさない方法」でというふうに書いてございますが、基本的には、やはり何とかして現在の需給関係を壊さないように、ある程度、少量ずつでも定時、定量に需給の中にはめ込んでいくというような努力をせねばならぬ。大丈夫かということでございますが、逆に言えば、何とか大丈夫のように、少なくとも悪影響はないようにやっていかなければならぬというのが現在の我々蚕糸行政関係者の大変つらいところであろうというふうに思うわけでございます。  実態的には、やはり余り無理のない数量で、割合定時、定量としてやっていくということ。よほど激しい事態が起きまして価格が大変下がるようなことがあればブレーキなりストップをかけるということでありましょうが、こういうことで何とか過去の需給関係のギャップから出ましたこの在庫というものをはめ込んでいきませんと、日本蚕糸業の未来がなかなかうまく描けない、こういうような状況ではなかろうかと思いまして、その辺は運用上大変難しいわけでございますが、繭糸価格安定制度趣旨、安定価格帯を守るということと両立させながらこの在庫を適切に処理していきたいというのが今回の法律のねらいでございます。
  57. 松沢俊昭

    ○松沢委員 何とかしてやっていきたいという願望、それはよくわかりますけれども、今までもその在庫問題では皆心配して、この前も議員立法で法律改正をやったわけでしょう。それでも始末がつかないで十七万俵になってしまっておるのですから。今までは、農家の立場からするならば、それでも異常変動防止制度というものがあって上限、下限があるわけですから、やはり一定の安心感を持っておったわけですが、これを外してしまって、その上に今度十七万俵の在庫の処理を時価に悪影響を及ぼさないようにしてやっていくのだ。今までもやはり及ぼさないようにいろいろ努力してこられたと思いますけれども、努力はされたけれどもなかなか思うようにはいかなかったという結果になっておるわけであります。  ですから、今度この上限、下限をとって中間安定帯にしてやっていこうというのだから、私たちが考えるのは、下限の方が相当下がるのじゃないか。この価格決定の問題につきましても、率直に申し上げますと、私も米価の方をやってまいりましたけれども、確かに法律にはちゃんとりっぱなそういう文言が書かれてはおりますが、実際はいろいろ統計、数字のいじくりをやって、そして決めてきているというのが現状であるわけであります。したがって、この法律改正をやって、そしてこの異常変動防止制度というものを取っ払って十七万俵を始末つけるということになれば、十七万俵は始末ついたけれども養蚕農家日本国じゅうから消えてしまったというところの結果が、極端に申し上げますならばそういう状況になる可能性というものはあるんじゃないですか。  だから、これはどうしようもない。こうなれば、まあもったいない話だけれども、焼き捨てるとか、あるいはまたアフリカあたりの非常に寒さと飢えに困っているところの人たちのためにそれを放出してやるとか、何か新たな手を打たない限りにおきましてはなかなかこの問題というものは解決つかぬと私は思うのですよ。そういう点、極端なことをやらなければ解決がつかない、こういう考え方大臣はなられませんか、どうですか。
  58. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生にお答えいたします。  今先生の御心配の点、よくわかります。それで、局長はあれが最大限の答弁でありまして、価格は何とか維持したいということは限度があると思います。実は、今の一つの問題は、価格がどうなるかという場合、例えば払い下げの場合に、仮に払い下げて価格に影響を与えるならば払い下げなければいいわけです。それで今度は国が財政負担を考えればいい。そうしなくちゃ価格なんて図れぬと思います。  そんなことでございまして、価格の推移を見ながらこの問題をどうするかを私としては考えたい、こう思っております。
  59. 松沢俊昭

    ○松沢委員 なかなか理解しにくいのですが、今までも在庫をあれしてきて名案というものがなかった。今度はこれでこうやっていく。そうすると、縮小、合理化の方向に向かっていくということなんですから、ですから、結局値段が下がっても耐え得られるところのものは生きる残るだろう、耐え得ることのできないものはやはり脱落していくであろう、これはやむを得ないんだ、こういう養蚕政策ということになりはしないかということを私は心配しているんであります。いや、がっぽり金を使って、それは価格価格でやっていくんですよ、こっちはこっちで始末つけていくんだ。今の行革だとか財政再建だとかいうそういう厳しい状況の中で、果たしてそういうことが可能なのかどうかということになると、これまた大変不安に実は私も受けとめているわけなんであります。  そういう中でやっていくということになれば、何かやはり思い切った処理の方法、これをやらぬと無理なんじゃないか。これはだから大臣、私が大臣になったらこういうふうにするという方法を私も持っておりませんから、大臣にしたところで、全くこれはどうしようかというところで大変悩みというものを私は持っておられると思うのです。ですから、思い切ってこの部分というものを焼却してしまうとか援助へ回してしまうとか、何か新たな手を打って、それで、養蚕農家も心配しないで日本養蚕農業発展のためにひとつ頑張ってくれという激励ぐらいやっていくというのが今の日本養蚕状況なんじゃないか、こう思いますが、どうでしょうか。
  60. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生にお答えしますが、養蚕農家につきましては、局長以下どう生かすかで全力を挙げているということでございます。  それから、今の事業団の在庫約十八万俵、このことが価格に影響するというのはもうおっしゃるとおりですが、ただ、今先生いろいろ述べておられますけれども、これからの価格の推移を見ながらどうするかを考えたい、こう私は思っておるわけでございます。  そんなことで、実は今度は行政価格を変えた。約四十数億の損失が出ましたが、これは特別勘定にして一般会計から繰り入れる、これは初めてのことで、こんな措置をとっておるということを御理解願いまして御賢察を願いたい、こう思うわけでございます。
  61. 松沢俊昭

    ○松沢委員 まあ賢察はしていまするけれども、なかなか大変な事態に入っているということを、これは農林関係に携わっている者は、私たちもそうでありますけれども、やはり抜本的な手を打つ時期に来ている、こういうぐあいに大臣も御認識をいただいて今後の対策を立てていただきたい、これは強く要望いたしておきます。  それから三番目は、これも小川さんの方から質問がございましたが、流通価格の問題でございます。  ここで私も調べてもらったのですけれども、五十七年調査か何かやりまして、その後、生糸価格なんかも下がっておるわけでありまするから今と若干違っていると思いますけれども生糸価格が一万四千円。それから織って練るわけです。そして初めて自生地ができ上がるわけであります。そしてそれを現地問屋から、私の町も機屋の町でありますが、京都なら京都の方に送る、こういうことになるわけでありますが、生糸生産して、精練をやって問屋へ渡して、そして問屋から染め屋の方へ回すまでの間というのは余り金がかかっていないのですね。これは一万円しかかかっていません。そうすると、その後、今度は染めをやって整理をやって縫製して、そして問屋が売るというときになると、これは二十万円かかっていることになるのですね。それから、その問屋からまた別の問屋のところへ行くわけでありますが、その場合においては十万一千円。その十万一千円で買ったところの問屋が今度は小売に売るわけでありますが、小売のマージンというのが二十七万五千円。結局、一万四千円の生糸が着物になって消費者の手に渡るときにおきましては六十万円、こういうことになるわけでありますが、こういうのをやはり改善しない限りにおきましては、消費の拡大と言ったところでこれはできないのじゃないか、こう思っております。  現に、私の友達で絹織物を取り扱っている人がおりますが、最近こういうような状況だから絹織物の商売なんというのはなかなか難しいだろうと聞きましたら、いや私の方は景気がいいと言うんですよ。どういうことなんだと聞いたら、すそ物を取り扱っている業者というのは景気が悪いんだ、不景気だから。しかし、私のところのように一枚三百万だとか五百万だとかというところのそういうものを売っているところは、要するに有名デパートで展示会なんか開いてやっていれば結構いい商売になるんだ、こう言うんですよ。だから問題は、成人式に参加する娘さんに買ってくれるにしてもなかなか高い、そういう感じを持っているところの一般の消費者大衆が、やはりこれは欲しいな、一枚ぐらいは買いたいな、そういう気持ちはあるわけですから、それが買われるような値段になれば消費の拡大というものはできるのじゃないか、こんなぐあいに実は考えております。  そういう点で、生糸生産から小売価格に至るまでのこの間について、いろいろ研究会なんかをつくって研究させたりなんかしておられますが、つまり、着物の値段の研究というものを農林水産省の方ではしてもらったことがありますかどうか、お伺いいたします。
  62. 関谷俊作

    関谷政府委員 和装というか、特に着物の値段の問題につきましてはまさに御指摘のとおりでございまして、家計調査などで見ましても、いろんなものを比較しますと、家計調査別でとらえられましたものでも、五十八年、婦人の絹着物は一枚十三万二千百円というようなことになっておりまして、この世界では背広が五万二千五百円でございまして、普通の婦人コートが三万円ちょっと、着物でも、絹以外の普通のほかの婦人着物というのが家計調査では一万二千三百円ということでございますから、こういう割合平均的なものでもかなり高い数字が出ております。  内容構成については、今先生の御質問の中でるる出ましたので重複になろうかと思いますが、全体として見ますと、二万五千円から三万円の自生地になるまでの状態では、原料生糸の比率というのは比較的高いわけでございますが、その後になりますと、もとの自生地の値段というのは全体としてはごくわずかになって、染色、加工、問屋さん、最終段階の百貨店あるいは呉服専門店、こういうところの俗に言うマージンが大変大きいわけであります。  こういう状況について、これを見てどう動かすということは、実は農林水産省の所管を離れますのでなかなか難しいわけでございますが、やや素人的な感覚も入れまして見ますと、こういう形であることは、日本の着物が極端に言えば一枚一枚個性が非常に強いということで、有名人の方なんかでは一枚一枚柄を注文なさる方もおられるほどでございますから、そういうようなこと、あるいは成人式もございますけれども、一般に社交的な面での需要が非常に強い、こういうことにもよりまして、どういう図柄で染めるかというようなことと、その販売面での中間にある、一番中心になります問屋さんの機能は非常に大きい、またその指図を受けます染め、織りの関係の方の工賃なども非常に高くつく、こういうようなことでございまして、ある意味では、まさに奢侈品なるがゆえの宿命というような面もあろうかと思います。  ただ、こういうことについて、我々一番原料の生糸を扱います所管省的な立場としますと、確かにもう少し何とかならぬか、こういうような気持ちになるわけでございますが、これは全体として見ますと、和装で、例えばやや大量販売的にチェーン店内に自分の店をおつくりになりまして、少し新しい図柄のものを売っておられるお店などがあるようでございますが、こういうことに見られますように、比較的新しい、簡単に言えば薄利多売的な業態の流通関係企業が育つということが一番いい道であろう。  これは恐らく和装生地だけじゃなくて、洋装面におきましても同じようなことがあるわけでございますが、洋装の面ですと、そういう業態が新しいということもありまして割合流通段階が短縮していく、こういうことがあるようでございますので、そういう流通機構として、むしろ中間にあります、今までで言えば問屋ですが、そういう需要をつかまえて、それを注文を出して、染めたり織ったりしてという産地を使いまして着物に仕立てる、こういうところに新しい機能を持った業界が育っていくような、そういうことが必要であろう。これから和装の、日本では今まだわずかでありますけれども、広幅物など古い丹後の産地などもかなり新しく手がけようとしておられますけれども、そういうところの動きなどを聞きますにつけても、そういう問屋機能というか流通機能の新しいものというものを育てる。  これはなかなか直接的に我々の持っている手段でできることではございませんけれども、例えば蚕糸砂糖類価格安定事業団需要増進にも使います蚕糸業振興資金の運用の面でも、何かそういう新しい流通機能の開発ということを念頭に置いてやっていくとか、こんなようなことを考えてはどうかというふうに思っております。  実は、これは蚕糸業振興審議会にも需要増進部会というのがございまして、関係の方も入っていただいておりますので、そういうようなところなどでももう少し御検討いただいた上で、生産をつかさどる農林水産省としても、もっとこの辺に、とても生糸のことは座して待っていられないと申しますか、そんな気持ちでいろいろな提言をしていくとか、事業団の蚕糸業振興資金の活用面でも配慮していくとか、こんなことをこれからも考えていったらどうかと思っております。
  63. 松沢俊昭

    ○松沢委員 食べ物の問題につきましては、世界は飢餓と飽食というのが共存している。絹の場合、日本は余って大変困っていますけれども、絹の生産ができないところの国々というのも相当たくさんあるはずでございます。そこで、いろいろお聞かせを願ったわけなんでありますが、生糸の一番大きな生産量を持っているのはお隣の中国であります。その次に生産をやっているのが日本だと、お隣が四十万俵、こちらが二十万俵、あとのそれぞれ、ソ連もございますが、そういうのを含めて二十万俵というようなことで、合計して八十万俵ぐらいな生産ということになっているようでありますが、これはどうですか。
  64. 関谷俊作

    関谷政府委員 世界的に見ました場合に、これは五十七年の数字でございますが、生産の方では、五十七年では繭生産では四十六万七千トン、それから生糸生産は八十六万七千俵でございます。で、第一位はいずれも生産面では中国でございまして、繭生産で二十四万二千トン、五二%、生糸生産では三十九万三千俵、四五%。第二位が日本で、繭が六万三千トン、生糸が二十一万七千俵、こういうふうになっております。以下、生糸ベースで、生糸の段階で申し上げますと、第三位がインド七万五千俵、世界の約九%、第四位ソ連、七万四千俵、約九%、それから韓国、これは四万俵、韓国はこの後もう少し減り方が激しくてもっと減っておりますけれども、五十七年時点は四万俵、五%、それからブラジルが二万二千俵、約二%であります。  ついでに申し上げますと、この世界的な動向といたしましては、韓国が、これは多少日本と似たような生産事情によるせいかもしれませんけれども生産の減退ペースがかなり早くなって相当減っておる。近い時点で、年率にしてみますと恐らく二万俵ぐらいにまでなっているのではないかと思われますが、反面、今世界的に非常に注目されておりますのは、新しい輸出国としてはやはりブラジルでございまして、日本でも昨年、保税生糸なんかを中心にブラジル糸がかなり入っておりまして、大げさに言いますと、中国という第一の生産国であり生糸輸出国にブラジルが挑戦をしまして、中国の方がブラジルにかなり脅威を感じている、価格面でも相当太刀打ちするような状態になっているようであります。  なお、今のは生産面でございますが、消費の面では日本は世界第一位でございまして、五十七年では三十二万三千俵になっておりますが、中国はこの場合にはむしろ二位というようなことで、こういう意味では、日本という絹の消費の需要が非常に強い、しかも、先ほどのお話にも出ましたが、かなり高い価格でも耐え得るような消費水準を持っている国に向けて、外からの俗に言う輸入圧力、輸出圧力と申しますかがかなり強く働いている、こんな需給関係ではなかろうかと思います。
  65. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これは私が計算したのでありますが、人類全体で四十七億ぐらいいるとすると、八十万俵で勘定していきますと、公平に分けるということになりますと、一年間に大体二千五百人に着物が一枚しか渡らないという状態になるのではないですか。そうすると、養蚕だとか絹の産業というのは、地球的規模に見ますと決して斜陽ではない、もっと発展をさせなければ、二千五百人に一枚しかいかないわけでありますから、地球の今の人間に一枚ずつ絹を着せるということになると、二千五百年かかるわけなんであります。  そういう観点に立って考えた場合においては、さっき私が申し上げましたように、価格の面におきましては繭は安い、生糸生産している機屋も困っている。ここのところまでが困っているわけなんでありまして、その先はそれほど困っていないわけなんであります。でありますから、今、蚕をつくって困っている、織物をつくって困っているというこの人たちのために、もっと地球的規模に立って考えた場合、対策というものはおのずとできてくるのじゃないか、こう思っております。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕  それには、コストを下げるという問題もあるでしょう。でありますけれども、もう少しやっていかなければならぬのは、もっと技術の面に力を入れてもらって——今はどうかわかりませんけれども、国交回復以前におきましても、生糸が足りなくて日本の機屋さんが中国の生糸を欲しがった時代がありました。しかし、入ってくるところの生糸というのは縦糸には使えないという問題がありました。そこで、日本の糸を縦糸にして横糸に使っていくという、これはやはり日本生糸というのが非常に優秀だということの一つの証拠だと私は思うのであります。でありますから、国際価格と比較いたしまして日本価格が高いということには必ずしもならないじゃないか。一級品から二級品、こういうふうにしてランクをつけていった場合に、いいものは高いのでありまして悪いものは安くなるわけでありますから、必ずしも日本価格というものが高いということにはならぬわけなんでありまするから、そういう点もやはり十分理解をしながら国際的な市場開発というものも図っていくべきなのじゃないかと思うのです。  戦前は日本は世界一の生糸の大輸出国であったわけなんです。それが今は大輸入国になってしまったのだから、今ここまで来ると、価格面において勝負がつかないんだ、こういうお話をよく聞きますけれども、もっと技術的な面において金をかけて、予算をつけて、そして日本生糸のよさというものを国際的に宣伝して市場の開発を図る、こういうことが必要だと私は思います。  それからもう一つの問題でありまするけれども、製糸工業の場合でございますが、昔、私たちの町の機屋さんというのは十四デニールの糸を使っておったわけであります。その後、二十一になって、今は二十七ということになっておりまして、製糸工業の方としては、それは繭から糸が三本当るということで、それを糸によるわけですから、だから早目に糸にするには二十七ぐらいにした方が一番効率的だということになるわけです。  だけれども、絹の需要というのはその二十七の太さだけではないと思うのであります。二十一も欲しいだろう、あるいは十二ぐらいのものも欲しいだろう、そういうものがあるわけでありまして、それを全然無視して、そして需要拡大を図ると言われてもなかなか難しいのじゃないか。私は、着物だけじゃないと思うのであります。もっと部屋の装飾だとかいろいろなところにこの開発する分野というものはたくさんあると思うのです。そうすれば、二十七の太さだけの糸でやっていくなんということは非常にやぼったらしい話なんじゃないか。そういう細心の配慮もやりながら消費の拡大というものに努めていく、こういうことになれば国内におきましてもまだまだ伸びるのじゃないか。  国際的に見ましても、私の計算からすると、人口二千五百人に一人ぐらいしか一年間に絹の着物は買えないという状態で、みんなに着せるには二千五百年かかるわけでありますから、そんなに余っているわけではないんだ。問題は、やはり飽食と飢餓が共存しているのと同じように、生糸の面におきましても、国際的規模から見ますと余っているところと足りないところと、この二つが共存していると私は思います。そういう点につきまして、一体農林省はどう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  66. 関谷俊作

    関谷政府委員 まず最初に価格の問題、これと関連して品質の問題がございますが、これは現在、御承知のように世界的な生糸価格ということになりますとリヨンの取引相場というのが大体標準になっておりまして、最近、少し動きますけれども、大体七千四、五百円程度のところで推移しているわけでございまして、恐らくこれが世界的な生糸取引の目安になっているわけでございます。  それを支配しているのは、大体中国の糸と、最近はさっき申し上げましたようにブラジルの糸が大分ふえてきている、こういうことのようでして、これは何としても、日本の国内価格と比べますと現在の基準糸価一万二千円との開きが非常に大きいわけで、これは品質問題がもちろんあるとは思いますけれども、これだけの大きな開きというのは、日本の糸を外へ持っていって売るなりあるいは処分するなり、こういう問題を考えました場合に、いわゆる財政負担とかあるいは補助金輸出とか、こういう問題まで考えますと非常に難しい。  それからまた、ほかのもので似た例があるかどうかわかりませんけれども、さっきもちょっとお話に出ておりましたが、生糸の場合には、焼く、いわゆる廃棄は別でございますけれども、用途として何かと競合するということにどうしてもなってしまいますので、処分ということになりますとなかなか難しいわけであります。  次に、消費水準として潜在的な需要があるじゃないかということでございますが、やはりこれも価格との関係ではなかろうかと思います。それで、日本の国内で見ますとよくわかるわけですが、生糸の相場は現在一キロ一万二千五、六百円でありますけれども、同じ新聞の欄で見ますと、毛糸が大体一キロ二千数百円、綿が五百円ぐらいでしょうか、それから化繊類になると二、三百円ぐらいでしょうか、そういうことで大変安いものですから、毎日着るようなものになりますと、やはりそういうものとの価格関係でもって、生糸が欲しいけれども値段の関係でどうしても手が出ないということで、量的な問題だけではそこがなかなか律し切れないと思うのです。  いろいろ話が前後いたしますが、そこで日本の糸の品質ということになりますと、これは非常に比較が難しいようでございますが、前からある議論としましては、日本の糸は本当に世界的にいいのかということになりますと、もちろんいいということになるわけでありますが、例えば女性のブラウスでありますとかネクタイ類とか、こういうものに中国の糸が使われております。これが日本の糸で同じものができるかということになると、できるという説もありますが、糸の関係でできないという話もあったり、それからやはり加工技術はヨーロッパの方がうまいんだという説があったりしましてなかなかはっきりしないわけでございます。そういう関係で、先ほどの七千四百円と一万二千円の価格差の相当部分カバーするほどに日本の糸が絶対的にいいものができるということまでなかなか断定できないような感じを私どもは持っております。  それから、最後にいわゆる繊度、太さの問題でございますが、これは、私ども役所に入りましたころは二十一中というのが基準になっておりましたが、最近は二十七が大体五〇%から五五%以上がそういうものになっておりまして、統計等で見ますと、二十一とかあるいは三十一とかもちろんいろいろなものがございまして、その辺はそれぞれの需要に応じて生産はされておるし、それなりの流通はしておるわけでございますが、こういう製糸の糸を引く関係から申しますと、中心的な需要の動きに全体が引きずられて今は割合二十七に集中しているということでございますので、なかなかこれを人為的に動かすわけにもまいりませんけれども、去年の私どもの研究会の場でもいろいろお話がありましたけれども、そういうきめの細かい需要に応じた生糸生産という面での品質改善というのは非常に大事である、余り大量生産的な面のことばかり考えていてはいけない、こういうような議論が相当出ておったような次第でございます。  そういうことで、日本養蚕業製糸業の今後の活路というか存在意義としては、やはりおっしゃいましたような品質という問題が大変大事である、こういうふうに存じております。  なお、つけ加えますと技術開発の面では、最近そういう品質面では余り新しい品種あるいは交配様式が出るというようなことはございませんで、そういう意味では、日本の蚕糸の品種改良という面ではちょっと今のところは停滞状態に来ているというようなことがございまして、私も前に技術会議におりましたときに聞きましたことは、やはりちょっと米と似たような状態で、これからもう少し新しい生糸なり絹製品を求めるとすると、俗に新しい血を入れる、中国あたりの繭の新しいものを入れるとか、それから繭の中でも柞蚕とか野蚕とかその他のいわゆる普通のお蚕じゃない糸を使ってませるとか、こういういろいろな工夫というのは必要であろう、こういう議論などもなされております。そういう意味で、品質問題については、需給情勢、厳しい情勢でございますので、これからますます研究部門とも一緒になって努力をしていきたいと思っております。
  67. 松沢俊昭

    ○松沢委員 時間がなくなってまいりましたので前に進めますが、改正法では、今まで三月までのうちに価格を決めるということになっているのを今度は五月までということになりましたね。これはどういう意味なんでしょうか。むしろ早目に決めて、そして農民に張り合いが出るような価格を出してやることが親切なやり方だと思いますが、これは一体どうお考えになるのか。  それから最後に、養蚕の振興のためには主産地形成、中核農家の育成、こういう話でございますけれども、子供のころ私の家でも養蚕をやっておりましたが、大体田植えを終わって、それから蚕を飼って、要するに米の現金収入というのは秋になるわけでありますから、中間に養蚕の金が入ってくる、そして秋蚕をとったり何かやる、こういうサイクルがあったわけですね。ところが、農業基本法が昭和三十六年にできたわけでありますが、その農業基本法は選択的規模拡大という命題が出てきたわけですね。  しかし、日本には百姓という言葉がありますが、よその国に、農業生産者だとか農民だとか農業経営者だとかという言葉はあるかもしれませんけれども、百姓という言葉というのはないのじゃないか。それは日本の農業の伝統的な一つの農法から私は出た言葉だと思います。つまり、アメリカやヨーロッパのような規模拡大というのは、どだい競争するぐらいに拡大はできないわけなんでありますから、したがって小規模の中で複合経営をやっていく、そうすれば生産コストも下がるわけなんであります。  今、関谷さんの方で価格の面においてなかなか国際競争できないのじゃないかという御心配をしておられるようでありまするけれどもコストが上がったというのは、単品生産、政策経営、こういう農業基本法農政というものが価格を引き上げざるを得ない。これは養蚕だけじゃありませんですよ。あらゆるものがそういう状態になってきた。それをもう一回複合の方向に戻して、我々の先祖が工夫してつくり上げてきたところの日本農業経営、いわゆる小規模のところで複合経営をやっていく、そういう中で安定した農業生産基盤というものをつくっていく、その中に養蚕というのも入れば、私は必ずしもそんなにコストが高くなるとは思わないわけなんであります。コストを高くしたというのは基本法農政がそうさせたのじゃないか、こう思います。この時期に参りますと、農政見直しの時期だと思います。  中曽根総理は、戦後政治の総決算、こう言われております。農林大臣も、中曽根さんのまねをする必要はございませんが、基本法農政がずっと続いてきた、そしてその結果、食糧の面におきましても、穀類の場合におきましては三分の一ぐらいしか生産ができない。養蚕の場合におきましても、農家戸数が減って、六十五年見通しては十万トンの見通しであったのが五万トンになった。そして国際競争というものはコストが高くてなかなかできない。そういうようなことをもう一回見直して、養蚕でも何でもちゃんとできるそういう農政にしていかなければならない。ことしをそういう年にしてもらうことが戦後四十年の総括ということになるんじゃないかと思いますが、どうお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  68. 関谷俊作

    関谷政府委員 まず最初の価格決定時期の問題でございますが、これにつきまして私の方からお答え申し上げます。  従来は原則として三月に決める、事情があれば五月までに定めることができるということになっておったわけでございまして、今回はそれの最終期限を決めたということでございますので、実質的な変更をするという気持ちではございません。  具体的に、本法案の場合には、成立しましたら本来六月一日までに定めるということでございますので、むしろそれに近い方がいいのではないかというふうに思っておりますが、この辺につきましては、いずれにしても最終期限を決めたものでございますので、先生のおっしゃいますように、全体をにらみながら、運用上早く決めた方が安心するのではないか、こういうようなことであろうかと思います。  ただ、実際上五月に決めましても、基準繭価も同時決定するわけでございますが、いろいろ取引の関係から見ますと、繭の生産、取引に与える影響は割合少ないというふうに考えております。いずれにしても、全体の状況を見ながら適切な時期に決定をいたしたい、かように考えております。  なお、もう一つの問題は、大臣からもお答えがあろうかと思いますが、養蚕だけについて申し上げますと、生産費調査の中では、規模別に見ますと、やはり具体的に掃き立て箱数であらわされております規模の大きくなるものほど生産当たりコストが下がっていくというような結果が出ておるわけでございますが、それと具体的な農家のあり方、単作でいくか複合作でいくか、これはちょっと違うと思います。  そういう意味で、私どもの考えでおりますことは、例えば家族労力の規模からいうと、繭の生産で一トン以上ぐらいが中心になるのではないかな。ただ、もちろん地域としては、それだけではなくてほかの作目と合わせた複合経営として、農家として、所得として安定していくということもあわせ考えて地域養蚕を考えていく、こういう考え方をとっていったらどうかと私ども思っておる次第でございます。
  69. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生にお答えします。  実は、さっきの質問でちょっと一、二お答えしたいと思います。  私も、どうしたら和装が売れるだろうかということで、自分でお店に行きました。京都にもお伺いしました。二つの点がポイントであると思います。先生のおっしゃった中に入っておるのですが、女性というのは図柄が同じでは嫌なんですね。図柄の違ったものが欲しいのです。そうすると、非常な手作業であるということでコストが非常に高くなる。もう一つは、小売店に聞きますと、いつ売れるかわからぬと言うのです。季節を外すと価格が三割になるそうです。したがって、その売れない分をコストに入れて高く売らなくちゃならぬ、これが答えでした。私はうなって、確かにそうだなと。今、先生と私の議論の中にはつくれば売れるという前提があるのですが、売れないものもたくさんある。それと、季節を外すと三割に下がる、こんなことを言っておったということです。  それからもう一つは、先生も御理解のように、地球的発想、これはもっともだと思うのですが、実は先進国というのは十億弱、途上国、例えばタイなんかは、骨なし鶏肉で揺れておりますが、日当が一日六十七バーツ、六百七十円です。それではこんな高いものは買えません。したがって、価格をどうするか。  例えば、技術面におきましては、先生は横糸をおっしゃいましたが、横糸ができたので下着ができて洗濯ができるようになったのですね。縦糸だけでは洗濯したら崩れるのですが、横糸ができて洗濯ができるようになった。こんなことで実は下着が非常に普及したということです。  この洋服ですが、これは筑波の試験場でつくった二着のうちの一着てす。今私が日本で初めて着ておるわけですが、これも実は既に専売特許を取っているのですが、活用されていなかった。聞いてみますと、これをつくるのに、仕立て賃を入れて大体七万円から十万円の間だそうです。ところがデパートに行きますと、私も歩きましたが、五万円でいい洋服がありますね。安売りは二万円であります。これを考えたら、やはりどうしてコストを安くするか考えなければいかぬ、こう思ったわけです。  そんなことで、一番大きいことはコストをどう安くするか。そのために輸入の問題も考える、あるいは在庫も考える、あるいはそういう形の中で農家皆さん方にもコストをもっと安くしてもらいたい、これが一番の解決の道だ、こんなように考えておるわけでございます。  それから複合経営の問題、これは局長の答弁したとおりでございまして、基本的に養蚕の中核農家を育成しながら他の作目との複合を考える、これはぜひ必要なことだ、このように考えております。
  70. 松沢俊昭

    ○松沢委員 これから参考人を呼んで御意見をお聞きする機会もまだありますから終わりますが、いずれにせよ、この法案が決着をつける前に、在庫の問題は、もう少し具体的に、捨てるなら捨てる、焼くなら焼くというような抜本的な政府の対策というものをこの審議期間中にひとつぜひ出していただきたいということを要望いたしまして、終わります。
  71. 今井勇

    今井委員長 次に、上西和郎君。
  72. 上西和郎

    ○上西委員 私はまず私ごとを少し申し上げまして、大変御勉強なさり、かつ農水省の高官の皆さんが舌を巻くほど数字に強いと言われる大臣に、養蚕ということに関し基本的な見解を承り、その上で具体的な質問に入らせていただきたい、このように考える次第です。  と申し上げますのは、私は父親の勤務の関係で、北海道で生をうけ、小学校を三つ転々とし、旧制の北海道庁立旭川中学校に入学し、一週間後、おじ二人相次いで戦死、三番目のおじが負傷した、こういう急報が相次いで入りまして、一家を挙げて郷里鹿児島は大隅半島の一角鹿屋市に帰りました。当時ですから、まさに北海道から九州の果てまでというのは外国に行くような感じであります。帰り着いたらやはり大歓迎を受けました。今の中国孤児的な待遇であったろうと思うのでありますが、帰り着いて、そうして歓迎を受けたその晩、純然たる農家でありました祖父母の家で一晩を明かしたのであります。  ところが、夜通しかさっかさっと音がする。何だろうか。さっぱりわからない。母親に、お母さん、あれは何の音だろう。それはお母さんもわからぬ。こういうことで、朝目が覚めてから祖父に、おじいさん、あの音は何と言ったら、和郎来いと言って奥を一部屋あけて、行ったら、そこに蚕の棚がぎっしりあったわけであります。  私の祖父は明治十五年生まれ、孫の私が言うのはおかしいのでありますが、絵にかいたような篤農家でありました。手広くやっておりましたが、祖父母二人で蚕を見ている手つき、桑の葉を与えるやり方を見ておりますと、孫の僕たちよりかあっちの方がかわいいのじゃないかというようなしぐさで見ているわけです。そして、そのときに私が祖父から言われた言葉が今でも印象に残っているのでありますが、このお蚕さんのおかげで明治維新後の日本は発展をし、日露戦争にも勝ったんだ、こうきたのです。私の祖父は、日露戦争には陸軍衛生上等兵で従軍をしておりました。私はそのことがいまだに鮮烈に印象に残っております。私たちの周辺に犬、猫、牛、馬たくさんおりますが、お蚕さん、お蚕ぐるみと、おの字をつけて、言うならば尊敬をされている立場にあるのは生き物の中で少なくとも蚕だけではないでしょうか。  そうした日本の国の経済を支え抜いてきた養蚕、この養蚕業に関して、新しく農林水産大臣になり懸命に勉学をされ、大変幅広い経綸をお持ちの佐藤大臣、いかがお考えなのか、基本的見解をまず承った上で後の質問をさせていただきたい、このように考えます。
  73. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 上西先生にお答えします。  大変難しい質問でございます。実は私も小さいとき、私の母が農家の出でございましてよく行きましたら、隣に別棟がございましてそこで養蚕をやっておりました。小さいころに、あの紫の桑イチゴが大変おいしくて食べて過ごした経験がございます。そんなことで、先生と認識が同じだ、こう思うわけでございます。  そういうことで、私は大臣になって四カ月ちょっとでございますが、非常に厳しい、難しい問題だと認識をしております。私は第一番に、農山村におきまする畑作地帯の重要作目であるという認識は、これは深く頭に入れております。そういう形の中で、先ほどから話がございましたように、まず需要が落ちている、蚕糸砂糖事業団に在庫が十八万俵ある、財政負担が重くなっている、どうしたらいいかということで、先ほど局長が答弁したようなことでございますが、一番大切なことは、主産地をどうして形成するか、養蚕中核農家をつくるか、そういう形でどのように養蚕が安定するかということですが、口で言えばやさしいが非常に難しい問題です、ずばり言いますと。そんなことで私は、何とかしてとにかく売りたい、売るためには価格が高い、どうして価格を安くするか、こんなことで今全力を挙げている。そういう形の中に中核養蚕農家の育成、そして主産地をつくる、それには当然農家皆さん方の協力が必要、こんな立場で養蚕業の安定に努力したい、こう考えておるわけでございます。
  74. 上西和郎

    ○上西委員 今大臣からいろいろお答えがありましたが、少なくとも養蚕業を守っていこうというお気持ちに変わりない、こう受けとめても構いませんね。——では、そうした大臣の基本的な姿勢を高く評価しながら順次質問を進めさせていただきます。  まず、今度の法改正で私が非常に気になりましたのは、価格を決めるについて生産費基準から外したのではないか、これで果たして養蚕農家は守られていくのか、このことについて大臣、いかがお考えになりますか。なぜ生産費を外されたのか、このことについて明確にお答えいただきたいと思います。
  75. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回の制度改正におきまして、生産費基準の問題につきましては、従来の異常変動防止措置生産費基準とするということで、具体的な内容としましては、政令におきまして生産費算定の仕方、それから、一般的には安定下位価格の場合には原則が八五%を下らない価格で決める、特例政令がございまして、特別の場合には六割を下らない価格とすることができる、こういうふうなことになっておったわけでございます。今回異常変動防止措置を廃止するに伴いまして、これが全部廃止されまして中間安定措置だけになるわけでございますが、中間安定措置の場合には、これは従来と全く同じような表現をしているわけでございますが、生産条件その他の事情を総合的に勘案して生糸価格を適正な水準に安定させるように決める、こういう書き方でございまして、この中には生産費は明示はされておりませんけれども生産条件という言葉で、生産に用いられます諸要素、いわゆる生産要素あるいはコストも含めました生産状態が考慮されることはもちろんでございますが、直接生産費基準とするという表現は従来ともとられておりません。  これはどういうことによるかと申しますと、中間安定措置というものにあらわれますこの約二十年来実施してまいりました価格安定制度の基本的な考え方が、需給の実際の状態において安定をさせていくという考え方でございますので、ある一定期間実勢価格基準にして、それに生産費変化率とか需給の緩和している状況であるかどうかという需給調整係数を乗じまして決めるという従来の中間安定の考え方をとる方が、こういういわば安定をねらいとした価格安定制度には適当であるということで、いわばこの中間安定の部分だけが今後の制度に継承をされるということで、結果的に何か生産費基準がなくなったというふうになるわけでございますけれども、実際的な効果においては、この約二十年来実施しておりました中間安定措置もとにした安定制度に移行するということで、実質的な変更はその部分についてはないというふうにむしろ考えているわけでございます。
  76. 上西和郎

    ○上西委員 お答えをずっと聞いておりますと、実際変わらないのです、御心配御無用というふうに聞こえてならないのです。ところが、実際に養蚕に携わっている農家皆さん方は、生産費が消えていったことについて非常な不安を持っているわけです。  私は、常々申し上げますように、国家公務員の皆さん方日本のために国民のためにお仕事をなさっている、本当に昼夜を分かたず御精励なさっている、このことは高く評価をしているのです。よく理解しているつもりです。しかし、それが極端なことを言うと政府のためや与党のためとか国会のいろいろなためということでやられて、そうして養蚕農家の本当に第一線でやっている方々の気持ちとか感情とかを抜きにして、いや変わらないのですからこれでやりましょう、こういうごろ合わせみたいな形でおやりになっているとすれば大変なことになるわけです。だかう、私は、基本的に養蚕農家の方々にいや何も変わらないんですよということを自信を持って御説明なさるのなら、何も変える必要はないじゃありませんかと、こう重ねてお尋ねしたいのですが、その辺どうしても変えなければならないのですか。どうもその辺整合性というのですか、納得いかぬものですから、重ねてお尋ねしたいと思うのです。
  77. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回異常変動防止措置を廃止するわけでございますが、これを簡単に申し上げますと、基本的には制度の簡素化ということをねらいとしていることになるわけでございまして、結局繭糸価格安定制度全体として見ますと、当初は異常変動防止措置ということでかなり幅の広い異常変動防止帯から制度を発足したわけでございます。その後、これではとてもいかぬ、余り間が広過ぎては当業者、これは需要者にとっても生産者にとっても非常に困るということで、四十一年の改正で現在の中間安定というのが設定されまして、その後はむしろこれがまさに生糸取引のいわばめどとして現実に機能してまいったわけでございますし、今まで事業団の買い入れというものも専ら中間安定措置でやりましたので、二十年近くの間、中間安定だけが働いていたということです。  異常変動は、そういうものならば、使わないならあってもいいじゃないかという御意見もあろうかと思いますが、全体としては制度実態に合わせて簡素化するということでございますし、そういうことを考えた方がよかろうということと、それから、これははっきりした形があるかどうかは別としましても、中間安定が実際に機能しているのに、もう一つ下に従来の異常変動価格がございますと、現在でございますと一万四百円でありますが、その低い価格が何かいつも意識の上に出てくる。そうすると、基準糸価一万二千円の下にもう一つ何か支持価格があるのだぞ、これは安心のようでもありますけれども、何かもう一つ底があって、そこに引きずり込まれるというか、何かそういう心理もないわけではないと私ども思っておりまして、これは必ずしもそれが証明されるわけではないのですが、それならば実際に影響のない形で中間安定だけにしよう、こういうのが今回の改正であります。  なお、御質問にございましたように、何か生産費基準がなくなるということで産地の方で大変不安をお持ちであるとすれば、これは私ども趣旨を御理解いただくという努力が非常に不十分であったと思いますので、まだ法案の御審議、きょう始まったばかりでございますので、これからその辺の誤解はないように十分留意してまいりたいと思います。
  78. 上西和郎

    ○上西委員 一応局長のそういったお答えで、これはやむを得ぬと思います。  私は先月末、この法案の審議の担当になりましたので、私の選挙区、結構養蚕農家がおりますから、一ダース程度の養蚕農家の方々にお集まりいただいて、そこへ訪ねていって約一時間半懇談をしたのです。そのときに出された強い意見が、なぜ五月に決定をするのか、これでした。私は出されておる法案を正直に説明したのです。現在は三月だ、今度は五月だ。五月に決定されたら、今、我々春繭をやっているのだが、一生懸命つくって出したときには値段は一体どうなっているかわからぬ、そんなばかなことがありますかという養蚕農家の実に素朴な声があったわけです。  先ほど来それぞれの方々の質問に対してお答えがあったようでありますが、法の表現を五月にしなければならない、現状とお変えにならぬというのはちょっとお答えがあったようでありますが、それなら現状のままで三月、やむを得ない場合は四月または五月、この現在の法律の表現で何が悪いのか、変えなければならない必然性がないとすれば、いたずらな不安、動揺を招くような法律改正を引っ込めてもいいのじゃありませんか、その辺を明確にお答えいただきたいと思います。
  79. 関谷俊作

    関谷政府委員 決定時期の問題について、現在のことは先ほどもお答えしまして、今お話のあったとおりでありますが、これは反面、六月一日の開始時点までに定めれば十分である、また近い方がいいではないかというメリットもないわけではないわけでございまして、それはどういうことかと申しますと、余り早く決めますと、例えば価格が変わらない場合はよろしいのですけれども価格が変わるような場合に新価格体系に非常に早期に移ってしまう。行政価格実勢価格に影響するというような非常に好ましくない事態も考えられる、こういうこともあるわけでございます。  もう一つは、五月に決める、こういうようになった場合に、繭の値段の方はもちろん法律で同時に基準繭価も決定するわけですが、これはどうかということでございますが、従来の場合と時間的な違いはそう大きくないわけでございまして、今までは基準繭価、四月上旬に決めておりますけれども、このときまでに養蚕農家では春繭生産の準備は完了しているわけでございまして、養蚕経営的に見ると実質的に影響は少ない、また反面、繭の取引の面から見ますと、大体繭の出回りが始まりますのは六月一日からでございまして、出回りの最終期から通常一カ月程度経過してから取引価格が決定されて精算が行われる、こういうようなことでございますので、仮に五月というようなことになりましても、繭の生産、取引に与える影響は少ない、こう考えております。  いろいろ申し上げましたが、この辺については今先生も御指摘になりましたような懸念もあることでございます。いずれにしても生糸価格の動向や繭の生産、取引に与える影響、これらを十分に考慮しまして、法律上に書いてありますのは最終期限でございますので、適切な時期に決めるように努力してまいる考えでございます。
  80. 上西和郎

    ○上西委員 そうしますと、最終的に五月だ、そうおっしゃるのなら、今の法律表現で何も変わらぬわけでしょう。三月に決定をする、やむを得ない場合は四月、五月で、こういう今の表現でも運営上実質何ら支障ないわけでしょう。なぜ変えなければならないのか。そこなのですよ。  私は素人ですから相場のことはよくわかりませんが、相場師の暗躍とかなんとかいろいろな話も聞かぬでもありません。ちらほら耳に入るのでありますが、それはさておいて、要するに養蚕農家は三月に決められてきた——局長、あわせてお尋ねしますが、過去四月、五月に決めたのは何回くらいあるのでございますか。ほとんど圧倒的に三月に決めているのでしょう。それを現状と変えないとおっしゃるのなら、わざわざここに五月と明記して、しかも三月も四月も全然出てこないわけですね、法律の表現上。日本は世界に冠たる法治国家、法律で決まればそれが最優先する、そうなるわけですよ。ここで幾らやってもそれは国会の議事録に載るだけ。法律の表じゃ五月決定、こうなってしまったらいろいろな悪影響が私は想像できるのです、予測されます。それを防止する意味ではこの表現は現状でどうなのですか。
  81. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは繭の取引なり生産の方に何か影響を与えるというような特別の意図を持ってやったわけではございませんで、全体的に申しますと普通の価格安定制度の場合には大体、繭生産のように確かに切れ目はございますけれども、繭が年間ずっと生産されるという場合には年度を設けるわけですが、その年度のできるだけ近い時期に決める。例えば豚肉、畜産物等につきましては四月一日からのものを三月末に決める、こういうふうに比較的その年度開始時期の近い時点に決めるというのが通例でございますので、そういう例に倣ったわけでございます。  ただ、反面私どもとしては、今おっしゃいましたような繭の生産、取引に非常に不安を与える、こういうことはそう予想をしておらなかったと申しますとちょっとうかつなようでございますけれども、こういう問題の御意見が出るとは必ずしも考えておらなかったし、いわんやそういう何か影響を与える意図でやったわけではございません。  いずれにしましても、法律的な時期がそうなったわけでございますが、私どもは仮に従来の三月、四月初めまでに決めています例が五月ごろにずれたとしましても、これが何か影響を与えるというふうには考えておらないのでございますが、なおその点は十分慎重に見きわめたい、かように考えております。
  82. 上西和郎

    ○上西委員 私は優秀な局長さんの言葉じりをとらえるわけでありませんけれども、予測もしなかったとおっしゃれば——私は現に養蚕農家に会っているわけです。その二人はそれぞれ郡の、町の会長さんですよ。そうした方々が口をそろえてなぜ五月にするのですかと言われたら、何も変わらないのです、ただ法律の表現を変えただけです、それじゃ養蚕農家は納得できませんよ。何も変わらないのなら現状維持、それは大臣、あなたのツルの一声で、やりましょうぐらいおっしゃってください。何も変わらないのなら現在のように三月、やむを得ない場合は四月または五月という格好で。何も変わらないのでしょう。それじゃ、全国十一万四千の養蚕農家にいたずらなる不安と動揺を与えるこういう改正については、農業を思う農林水産省なら潔く撤回し、これは現状のとおりの表現でいきます、そうやっていいのじゃないですか。  私はこのことについては重ねて、今の言葉じりをとらえるわけじゃありませんが、優秀な局長さん、びしっとわかったらすぱっと裁断を下す、それが正しい国家公務員のあるべき姿ではないでしょうか。
  83. 関谷俊作

    関谷政府委員 この点につきましては、御質問趣旨を私どももこれからよく検討しまして御懸念のないように処理したい、かように考えます。
  84. 上西和郎

    ○上西委員 では、そうした前向きのお答えを具体的に実現なさることを御期待を申し上げ、次に移らしていただきます。  私、実は一ダース近い養蚕農家皆さんとお会いしたときに非常に気になりましたのは、二つの町でことし一割程度の方が養蚕をやめる、こういうことが具体的に報告されたのです。やはりショックでした。私の選挙区大隅半島では桑というのは主要作目でありますから大変なショックを受けたのですが、その上ダブルで私ショックを受けたのは、やめたら何をしたらいいのかということについて実に基本的な不安を持っているわけです。  こんなことを言っちゃ大変失礼かもしれませんが、往時ここ十数年、農林水産省の言ったとおりしない方が得をするというのが随分と聞こえました。農林水産省の言ったとおりやったら大変な苦しみに遭ったというのは私は自分の選挙区で随分聞いているのです。これは何も責めるわけじゃありません。結果としてそうなったんですから。ところが、今度は養蚕が大分危ない。じゃ一体何をしたらいいか。先ほど大臣以下それぞれのお答えの中で、何か中核農家とか主産地形成とかいろいろなお言葉が出てきます。日本語はある意味では便利ですから、それはそれでお答えと受けとめますが、じゃやめていく方々に何をつくらせるのか、どういうふうに指導していくのか、このことについては確たる自信を持ってどのような基準をお示しになっているのか、あるいはなさろうとするのか、このことについてお答えいただきたいと思います。
  85. 関谷俊作

    関谷政府委員 養蚕の縮小というか、そういう場合の対応の問題でございまして、これは私ども従来から、昨年のような減産指導の場合には関係の低利資金を準備するとか、それから今回は無利子資金の中に養蚕部門のほかにもいろいろ関係部門について合理化資金を準備するとかいうことがございますが、全体としましては繭の計画生産なりあるいは状況に応じて養蚕農家の方が養蚕規模を縮小する場合にこういうものをというふうな、作目を具体的に特定をして御指導するということは大変難しいわけでございます。  ただ、現実に私ども従来の経緯なども見ながら、養蚕農家地域条件に応じてどういう作目が適当か、あるいはどういう作目に転換するのが一番その辺の移行が円滑にいくのだろうかということについては大変頭を悩ましております。御承知のように養蚕農家の場合には、もちろんかなり専業的な経営もございますけれども、多くは複合的な経営であったり地域の特作をつくっておられますが、今までの状況から見ますと、地域によって差がございますが、全体的には畑作物でございますので、一番転換先としてとられることの多いのは野菜でございます。それから果樹、そういうものが多くなっております。そのほか非常に地域特産物的なものもございますが、こういうような転換の状況を見ますと、その地域にある程度従来からございます作目についてあるいは御自分の経営でやっておられる作目について、そういうものに移っていくということでございますので、地域の普及事業なりあるいは農業協同組合のような地域の農業団体なり、そういう機関との協議あるいは連絡、あるいは計画の中でその地域実態に即して作目の選定がされていくということが一番いいのではなかろうか、こういうふうに考えております。  なお、そういう関係の転換等の資金については、今その作目ごとにいろいろ無利子資金の拡充も今度いたしておりますけれども、このほか農業近代化資金の活用、こういうようなものも含めまして資金面での手当てについては十分配慮していきたい、かように考えております。
  86. 上西和郎

    ○上西委員 それなりの答えはわかるのです。しかしざっくばらんに言って、農水省として自信を持って出す施策はいわゆる金融制度といいますか、融資制度くらいのことで、本当に主産地を形成し中核農家中心にやるんだ、こうなるなら、そうしたために極端に言うと犠牲になっていく養蚕農家により適切な、自信を持って指導できる体制ということを、大変でしょうがぜひ御確立をいただきたい。これは御要望申し上げておきたいと思います。  さて、角度を変えて、先ほど来出ております需要の問題に関連をして、ざっくばらんに言って輸入はストップできないのかという素朴な声です。片一方、事業団にはだぶついている。そうして二国間協議その他で入ってくる。輸入をとめてほしい、輸入をとめればすべてがうまくいく、こういう声が随分と出てまいりました。この辺について、ストップはどうしてもだめなのか、それが不可能ならばせめて現状よりか厳しく抑制をするようなことはできないのか、こういうことについて御回答をいただきたいと思うのです。
  87. 関谷俊作

    関谷政府委員 輸入関係については、恐らく生糸、絹織物等も含めての御質問だと思いますが、このうち生糸については御承知のような一元輸入でございますので、これは事業団の発注によります一元輸入ということから、輸入の調整はそのルートを通じてできるわけでございます。  具体的には昨年、これは価格関係のこともございましたので、昨年の相当の期間は事業団の一元輸入は全く行わない状態でございましたが、その後、中国、韓国との二国間協議による協議をして、既に決めました数量がこの両三年のものが未履行でとまっておりましたので、これはどうも両国との友好関係等から申しましても国際的な信義から申しましてもということで、今年からそれこそ需給に影響のないような形で輸入を再開をいたしておるわけでございます。  こういうことで、生糸につきましてはとにかく一元輸入という制度がございますので、しかもまだ事業団の段階で国内の数量それから国内の価格との調整が可能なわけでございます。こういうことを通じて輸入の抑制ないし調整は十分可能であり、また私どもの責任において対処していきたい、かように考えております。  次に、絹織物その他でございますが、これは通産省所管になるわけでございますが、全体的にはこれは自由化物資でございまして、一部輸入承認、輸入確認等の手続をとっておりますが、これはいずれも大体中国と韓国との間の二国間協議のいわば履行を確保する、こういうふうな形で行われているものであります。この二国間協議の性格は、いわゆる一番使われる言葉で申しますと、輸出国の自主規制生言った方がいいようなものでございまして、輸出国の自主規制をするということで輸入国側が相談をして、ではこのぐらいにしてくれという数量を絹織物と絹糸については両国について決めておる、それで輸入制度の運用を通じてこの二国間協議の脱法的な輸出を防止することをやっておるというのが制度の内容でございます。  こういうことでございますので、これは昨年通産省で設けられました絹問題の研究会の報告の中にも盛られているわけでございますが、例えば輸入制限なり緊急関税とかいろいろな方法がその研究会の中でも検討されているわけでございますが、どうも結論的には輸入をさらに一層制限の方向に持っていくことは非常に難しい、こういうことになっておるわけでございます。これはガットその他の国際的な貿易の関係から難しいわけである、こういうふうな報告がなされております。  ただ、私どもも、これは相手国が同じでございますので、通産省と一緒に中国、韓国との二国間協議の場には常時一緒に出ておるわけでございますが、日本の国内がこういう状況でございますので、日本の絹業としても大変苦しい状態でもありますので、ずっと二国間協議の数量を見ますと、従来よりは協議数量をかなり絞る方向で、わずかでありますけれども少しずつ、数量としては枠が抑制されておる。それだけ日本の中の需給が厳しくなってくるのに、両国についても協力を求めて、そういうことで抑制を図っているところでございます。
  88. 上西和郎

    ○上西委員 そうした方向での努力、大変結構だと思いますが、さらに、やはり現状はこれだけ厳しいというのはわかっておるわけですから、より一層そのことを、極端に言えば絞り込む方向で御努力をいただきたい。  今私、輸入の方を申し上げましたが、やはり需要増が一番大事なんですね、いろいろな意味で、それで私、今度の質問に当たって改めて去年の、当選直後の農林水産委員会の議事録を見たのでありますが、去年の三月二十九日、農林水産委員会で「蚕糸業の安定的発展に関する件」の決議第三項に「絹需要の一層の拡大を図るため、新規用途の開発、普及を積極的に推進するとともに、絹製品に至るまでの流通改善に努めること。」こうありますが、この決議の具体的実行に当たって、特に前半、「新規用途の開発、普及を積極的に推進する」この辺にどういうことをおやりになったのか、まず最初にお尋ねしたいと思う。
  89. 関谷俊作

    関谷政府委員 新規用途の開発関係につきましては、直接的な手段としましては、これは昭和五十七年の事業団法改正の際設けられました、事業団からの新規用途売り渡しというのがございます。これは若干時価よりも低い値段で売り渡しを認めているわけでございまして、法律案の参考資料にもその実績が一部掲げられておりますが、五十七年十一月から五十九年十二月まで約二年ちょっとの間の売り渡しの総数量が二万七百三十八俵でございます。  この主体を占めますのが洋装でありまして、これは背広、ブラウス、ワンピース、海外見本市展示会、こういうものに一万八百五十二俵。それからインテリア、これは内容的には額でありますとか壁がけ、カーテン、テーブルクロス等で、これが五千四百二十三俵。それから和装系統で、ひとりだち着物、教材用が四千三百四十三俵というものがございます。このほかに、研究用で高速製織法の開発とか、複合素材の開発ということで、これはいろいろな研究機関なり、あるいはそれを試作する段階で使うものが百二十俵ということでございまして、これは要約でございますけれども、せっかく開かれたこの新規用途売り渡しの道を使いまして、新規用途の開発に大いに力を入れておるわけでございます。  もちろん、重点としますと、これはここにもありますような背広、ブラウス類、こういうもの、あるいはインテリア類、この辺が大事でございますが、同時に、先ほど大臣がお答えになっておりますような、大臣の今お召しになっておりますような新しい洋装、いわゆる伸縮性ある、より着物の素材として優秀な生糸を開発するというようなことについては、国の蚕糸試験場が大変精力的に取り組んでおりまして、その実用化等の面につきましてもかなり新規用途の道を使う、こういうようなことで努力しておる次第でございます。
  90. 上西和郎

    ○上西委員 御努力の実情は理解できます。ただ、ここで私、少し突っ込んでお尋ねしたいのですが、政府を挙げて絹の需要拡大、増加ということについてはもうちょっときめ細かにやってもいいんじゃないか。  私、まだ当選して日が浅いので十二分に熟知はしておりませんけれども、例えば自衛隊の儀仗隊ですね、第三〇二保安中隊というのですか、ここが各元首その他がお見えになりますとささげ銃をやりますね。ああいうのも、ぴかぴかの、日本で一番きれいな服を着せるわけでしょう、格好よく。ああ、ねえ、ジャパンすばらしいと、こうやるわけで、ああいった方々の着るものに絹をどれだけお使いになっているんだろうか。あるいは、陸海空の音楽隊、これはあちこち私も見ます。私の選挙区には海上自衛隊鹿屋教育群がありますからね。自衛隊の皆さんよくやる。そういうときにはすばらしい服装でおいでになる。第一種礼装というのですか、そうしたものに一体どれだけ絹が使われるように——僕はここで自衛隊のことを、賛否とかそういうことは抜きにして、現実に国の税金を使って、官費で被服を支給しているのですから、その中に絹を使わせることくらいは、何といったって由緒ある農林水産省が後発庁である防衛庁に厳命を下す、佐藤大臣の命令で使わせる、こういうことくらいの英断があっていいのじゃないか。警察学校の卒業式だって、私に言わせれば昔の警部クラスの肩章をつけて卒業式に出るでしょう、高校を出て一年たったときに。それはすばらしい格好です。あれにあこがれて優秀な警察官が怪人二十一面相を追っかけているわけだから。  そういった意味合いで、そうした目立つところ、そういうところに絹が使われている、やはりすばらしい、日本生糸は。こうなったときに、やはり大きな意味で伸びていくのじゃないでしょうか。そうした意味合いで、今後政府を挙げて需要増を図る具体策についてはどのようなお考えをお持ちなのか。
  91. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 上西先生にお答えしますが、実は、今おっしゃった点はもっともで、今我が省を挙げてやっております。ただ問題は、先ほど話したこの洋服ですが、オールシルク、日本で今、たった一着なんです。これが現状。そんなことで、実は今、約六百四十キロ事業団の生糸を出しまして、大体一着一キロですから、約六百四十着つくる、そういう形の中で一遍皆さんに着てもらおうということで、しかもこれは、価格も実ははっきり知らないのです。私は七、八万かと言うと、ちょっと待ってください、十万くらいかかるかもしれぬ、仕立て賃が四万から六万です、あと七、八万から十万、これがこの洋服。したがって、実は昨年絹の洋服をつくった人が、私がオール絹の話をすると、佐藤君、もうやめてくれと言うのです。去年つくったら、しわが寄って着れぬとこう言う。いや違うのだ、これは一週間目でこうだと言うたら、はあ、新しいのができたのか。それで、これが今、日本で一着ですから。まあ、そういう話をした。  そんなことがございまして、今ございますが、例えば各政府機関に入れる場合も、きちんとした洋服でなければいけません。絹のよさとともに、絹の欠点をどうしてカバーするか。したがって、先ほど言ったようにこれは伸縮性が非常にいいのです。かさ高性ボリューム性はできた。それとともにもう一つは、この絹について、絹はてかてかしますが、てかてかが少なくなった、これが特許なんです。したがって、こういういいものをつくって、しかも、政府も予算がございます。例えば自衛隊で一着十五万という洋服なら、国民はだれも賛成しないと思います。そんなことで、いい洋服をつくって、価格を安くする、そうしなければ政府にお願いできぬ。こんなことで考えておるわけでございまして、先生のお話よくわかるのですが、幾らお願いに行きましても価格が高いと予算がございますから買わない。そんなことで、今いい品質のものをつくってどうして予算を安くするか、こんな努力をしているというのが現状でございます。
  92. 上西和郎

    ○上西委員 大臣の御努力はよく理解できますので、私は絹の背広とか儀仗兵の皆さんに全部絹をと、そこまで言いません。しかし、少なくとも一定程度絹をまぜるとか、そうしてそのことによって、同本国内至るところで国民に数多く接触する例えば陸海空自衛隊の音楽隊とか、都道府県警は皆音楽隊を持っていますよ、そうした方が着ている、あれはいいじゃないか、あれは絹を使っているからあんなにきれいなんだよということで、じわっと広がっていく。そのことと大臣の御努力とが縦横ミックスしたときに絹の需要は爆発的に伸びるのではないか、こう考えますので、一層の御努力をお願い申し上げたい。  ここで少し話題を変えまして、今度、一定の条件があれば事業団は生糸の売り渡しをやるということ、この法改正による特別売り渡しの実施に伴って、これは養蚕農家に打撃を与えるのじゃないかという不安があるのでございますが、この辺はいかがなんでしょうか。
  93. 関谷俊作

    関谷政府委員 これにつきましては、法律上は時価に悪影響を及ぼさないような方法で売り渡すということになっておるわけでございますが、全体の趣旨は、結局今までの繭糸価格安定制度の運用を通じまして、やはり需給関係価格関係からこれだけ過去につくられたもので、過去の安定帯価格でもって買い入れられたものが中心となってこの在庫ができたわけでございますので、なかなか廃棄ということもできませんので、やはりこれからこれを処分していく。損失は今回の四十四億円を手始めにして国庫が補てんをする、こういうことに道を開いたわけでございますが、そういうことで、どうしても今度の価格安定制度との、一口で言えば折り合いをつけながら売っていかなければいけない、こういう状態にあるわけでございます。  その折り合いのつけ方がまさに時価に悪影響を及ぼさない方法ということになるわけでございますが、私ども考え方としては、やはりこれが大量にどっと出る、あるいは短期間に急いで出すというようなことで時価を引き下げる、また買い入れになっていく、こんなことになっては元も子もないわけでありますから、考え方としては全体の需給価格状況を慎重に見ながらある程度の、定時定量的にうまく需給の中にはまるような状態で少しずつ、むしろコンスタントに売っていって全体の中に溶け込んでいくというような、抽象的な表現でございますが、そんな感じでやっていったらどうか。  こういうことで、大げさに言えば売り急がない、そうかといっていつまでも持っていることの弊害も反面あるわけでございますから、簡単に言えば上手に売るということになるわけでございますけれども、それはむしろある程度の量は継続的に処分していくというようなやり方の方がいいのではないか。よほど状況が狂いまして価格が著しく下がるというような場合には、しばらく見合わせるというようなことにもなろうかと思います。そんな考え方でこの運用をしていったらどうかと思っております。
  94. 上西和郎

    ○上西委員 今のお答えでやや安心するのでありますが、少なくともこの特別売り渡しによって生産農家に対する打撃を与えない、生糸相場にいたずらなる混乱を起こさない、そういう十二分の配慮をしながら、いわゆるじわっと溶け込むという形でおやりになる、こう確認してよろしゅうございますね。——わかりました。  それではここで大臣、ずばりお聞きしたいのですが、ことしの行政価格はどうなさるのですか。ずばりそのお考えをお示しいただきたいと思います。
  95. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 上西先生にお答えいたします。  これはこの法律が通ったら速やかに決定したいと思っておりますが、その新しい繭糸価格安定法もとで——生糸の行政価格につきましては昨年十一月に繭糸価格について生糸年度途中の改定を行ったところであります。そんなことで、現行の中間安定措置における価格水準を尊重して適切に決定したい、こう思っております。
  96. 上西和郎

    ○上西委員 その適正というのが、これぐらい都合のいい言葉はございまぜんので非常に気になるのです。昨年は据え置かれたわけでしょう。だから、ことしも例えば昨年の価格を据え置いていくとか、そういうことはここでは明確にできないのですか。
  97. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 上西先生にお答えいたします。  今の気持ちとすれば、率直に言えば一万二千円、据え置きしたい、こう考えております。
  98. 上西和郎

    ○上西委員 さすがは名大臣と省内に評価が高い佐藤大臣、その据え置きというお言葉を私は大事にいただいて、選挙区にも十二分に伝えますので、ぜひそのことが実現されるように重ねてこのことはお願いしておきたいと思います。  さて、ここで少し私は選挙区の関係でお尋ねをして、またかつお願いもしたいのであります。それは具体的に言うと二つあるのです。  一つは、先ほど需要増の問題に絡んで、全国のことはわかりませんから私は選挙区のことを申し上げるのですが、養蚕農家皆さん方と会ったり、そのことを含めて私はあっちこっち電話をかけたり調べた結果、例えばことしの成人式に文部省の厳しい通達により和服を着てきた女性を入れてはならぬ、こういうことが非常に厳しくやられているところがあるのです。同じ通達が行ったが守ったところがあるわけですね。その成人式の会場の入り口に地方自治体の職員等が座っていて、着物を着てきた女性は入ってはならぬ、出席お断りとやった。それは生活の簡素化でいいでしょう。  しかし、私あっちこっち知っている方々に聞いてみた。そうしたらみんなこう言うのです。いや上西さん、着物もつくったのですよ、役場の通達だから着せなかっただけで、かえってもう一つ洋服、ツーピースをつくったお金が余計かかりました、これが御両親から返ってきた言葉なんです。だから私は、私の選挙区の実態ですから、このことについて農水省が直接やっているのじゃないけれども、いわゆる形だけ、名前だけ生活簡素化という形でそういうことが行われていて、御両親、御本人の経済的負担が実質ダブっていくようなやり方は、まさに仏つくって魂入れずじゃないか。このことについて、御見解とかなんとかじゃないですが、もしそういう事実があるとするならば、農水省からは、絹の需要増ということを含めて文部省にやんわりと牽制球の一つ二つをお投げをいただきたいと思いますが、この点どうでしょう。
  99. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 上西先生にお答えします。  実は今の問題は、私も農林水産大臣になるとは思ってなかったので、かつては生活改善、簡素化で、和服をつくるなどいう運動を中心にやっておりました。これは今、なりまして急に方向転換しておるわけでございますが、やはり各地の教育委員会等でそういう事実はございました。御存じのごとく昭和三十年から四十年にかけて「ディスカバー・ジャパン」という中にそういう運動もかなりあったと思いますが、今お聞きしまして、私も大臣として文部省にお願いしたいと思っております。
  100. 上西和郎

    ○上西委員 私もむだな経費といいますか、見えを張るとかいうような形のものについては厳しいものを持っておりますが、やはり娘を持った両親が、お嬢さんがせっかく二十になった記念だといって、言うならばひな祭りに人形を買ってやる、男の子だったらこいのぼりを買ってやるといったことで、営々として貯金をし準備をしてやったものまで、着てはいかぬ、着てきたら入れないなんということを余り厳しくやると、何かファシズムのような感じがせぬでもありません。  したがって、大臣のようにかつてはそうした運動を中心におやりになった豊富な体験も持ち、かつ今の置かれている養蚕農家の現状、生糸の置かれている実情を御確認いただいた方は最適任と思いますから、文部大臣には今度は剛速球でストライクを投げ込んでいただくようにお願いしたいと思うのであります。  ついでに選挙区に関してもう一つお尋ねしておきたいのは、実は私、今度養蚕農家の方々とお会いしたときに、胸痛む思いで聞かされた言葉があるのです。  それは企業名を挙げてなんですが、片倉製糸というのが大隅半島に工場を持っています。もう随分長い伝統を持っています。そこに繭を持っていく。そうすると、県下のあちこちから来ている繭と比べると、だれが見てもおれたちのつくった繭の方が落ちる、なぜか、桜島降灰なんです。桜島降灰は防ぎようがない。どんなに洗っても桑の葉にその溶岩の一片一片が残っていくわけですね。桜島の灰というのは、灰といっても木灰その他と違って一つ一つが溶岩の一片一片でございますから、これがどうしても桑の葉からきれいにとれないのです、刺さったまま。それを蚕が食べる。言わすと知れていますね、内臓障害を起こしてしまう。そのためにどうしても繭が落ちる、糸の品質が低下をする。  収量は鹿児島県の場合全国でも高位の方にあるのです、これも御承知と思いますが。ところが品質はどうしても落ちてくる。そうすると、今まで農業共済その他で補償はあります。しかしこれでは追っつかないわけですね、がたっと落ちるものだから。しかも農家の方々は、何もサボっているわけではないのですね。全国の他の養蚕農家と同様に営々として額に汗して頑張っている、働いているにもかかわらず、いわゆる天災と言ってよい桜島の降灰によってくる打撃がある。このことについて、何も屋上屋を重ねるようにたくさんの補償とかなんとか言わぬが、せめて理にかなった補償はできないのだろうか。単なる農業共済の補償だけではなくて、そうした打撃にあえぐ、降灰のためにあえいでいる養蚕農家に対して、あと一歩の補償なり救済というのはとれないだろうか、こういう悲痛な叫びが寄せられました。私も思わず胸を打たれたのでありますが、この辺について、どのようなお考えがおありなのか、お尋ねをしたいと思います。
  101. 関谷俊作

    関谷政府委員 桜島の灰による被害の問題でございますが、蚕繭共済の場合には、これは桑の葉っぱの被害がございまして、それによる減収がありますと、御承知のように基準収繭量の二割を超える減収がありました場合には共済金が出るわけでありますが、今の先生のお尋ねを聞いてみますと、このシステムではなかなかカバーし切れないというような問題が含まれているように思います。  これは仕組みとなったものは、制度的なものは今すぐにはなかなか難しゅうございますが、御承知のように、昭和四十八年来実施しております活動火山対策特別措置法に基づきます防災営農施設整備計画をつくりまして、農林水産省ではこれは構造改善局でございますが、活動火山周辺地域防災営農対策事業というのを実施しています。これは四十八年から五年単位で、大体五年、三年いろいろございますが、一次、二次、三次、四次、現在は五十九年から六十一年度までの四次計画で実施をしておりまして、対象施設はいろいろなものがございますけれども、初めのころでは桑園洗浄施設、桑の葉っぱを洗ったりするそういう施設の補助をしておりますが、このところでは、中壮蚕飼育施設整備というようなことで飼育施設の整備をする、その少し前には桑の収穫貯蔵施設あるいは稚蚕人工飼料用施設の整備、こういうようなことで、この活動火山の事業の中で一応法律に基づく防災営農施設整備を進めておるようなわけでございます。  これは予算上、年次計画をつくりまして予算をとりまして実行します関係で、完全に御要望に応じ切れているかどうか多少疑問もございますけれども、ただ、県知事がこの防災営農施設整備計画をつくるにつきまして農林水産大臣の承認を受けるわけでございますが、鹿児島県におかれても、大変この関係については、この活動火山の事業を使って養蚕も含めました防災営農対策について被害の軽減と被害の回避、そういう面で地域の大事な作目でございます養蚕経営の安定の面にも努力してまいるということでございますので、私どもその関係につきまして十分鹿児島県と協議をしながら対策を進めてまいりたいと思います。
  102. 上西和郎

    ○上西委員 今の御説明、わかるのです。ただ、大正三年一月十二日の大隅半島と桜島がくっついたあの大爆発のときは、桜島の噴煙は遠く長野県まで行ったのです。今あれだけの頻々たる爆発の結果、宮崎県まで連日灰が流れているわけです。周辺というのは鹿児島、垂水、あるいは桜島、福山、輝北といった二市三町にとかく限定されがちなんです、あなた方の頭の中でも。先ほど来申し上げますように、極めて優秀な国家公務員の皆さん方法律をおつくりになると逆にその法律を極めて厳しく守る、こういうことにおなりになる。ところが灰は、法律があるからじゃここまででやめるということはないので、どんどん広がっていくわけですから、そのために養蚕農家は、いわゆる今おっしゃったようなことでもとても追っつかない、目に見えない打撃を受けている。それで、農業共済の補償というのは、御承知のように過去の実績に伴っていきますから、年々落ちていく。ダブルパンチですね。ですから、先ほど申し上げたようにことしも二つの町では一割以上の方は養蚕断念、こうなっていくわけです。  ですから、今おっしゃったように、確かにいろいろな措置がある、桑の葉の洗浄設備を含めていろいろなことをやられるでしょう。しかし、それでは追いつかない養蚕農家の大きな減収といいますか、そういったことについての基本的な補償、このことについてあと一言御見解をお示しいただけませんか。
  103. 関谷俊作

    関谷政府委員 蚕繭共済という面がいわゆる補償という言葉では一番それに関係するわけでございますが、この蚕繭共済自身が大体桑葉の減収ということによっておりますので、いわゆる減収的な面の被害が蚕繭共済でカバーされるということでございますので、御指摘の中にございましたような品質的な面については、まだまだこれから蚕繭共済として見ますると検討課題になろうかと思います。いずれにしましても今お話しのございましたようなそういう問題につきましては、我々もいわゆる制度問題として十分検討してまいりたいと思います。
  104. 上西和郎

    ○上西委員 局長のそうしたお答え、それはわかりますが、やはり本当の生の声を大事にされて、養蚕農家、とりわけ桜島降灰によって直撃されている養蚕農家実態を確認をいただき、そのことに基づき国としてできること、そのことについてより具体的にきめ細かに対策をお立ていただきたい、このことを重ねてお願い申し上げておきたいと思います。  最後に、これはお願いであります。  実は養蚕農家皆さんといろいろと長時間議論をしたときに、最後に特に若い方々から出たのは、この繭糸価格安定法が改定されたときに、マスコミなどを見ますと、過去の実績ですね、私はずっと長いこと野にありましたから過去のことはよく理解できないのでありますが、極端に言うと三行、五行で片づけられる、マスコミ報道は。内容がわからない。どう変わったのかわからない。そしてそのわからない内容のまま、一定の時間がたったときにずっと来るが、その内容について理解がなかなか届かない。だから、これは私に対しての要望だったのでありますが、国会でこうした法律が議論の上、仮に改定をされたとするならば、遅滞なく生産農家皆さん方にその内容が正確に伝わる、そうしてそれが間違いなく適用される、こういうことについてとりわけ農林水産省が中心になって格段の御配慮をいただきたい、こういう強い要望が最終的に私に寄せられました。  過去、皆様方大変御熱心にそうしたことについても御努力いただいていると確信はいたしますが、そうした具体的な要望が出されましたので、そうしたことについて、今後の審議の結果一定の結論が出た時点で、農林水産省の持てる機構をフルに生かされて、十一万四千の養蚕農家にこのことが遅滞なく伝えられ、混乱が起きないように、その法律もとに生き生きとして養蚕農家がその業務に精励できるように、特に重ねて御配慮をお願い申し上げ、私の質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  105. 今井勇

    今井委員長 次に、水谷弘君。
  106. 水谷弘

    ○水谷委員 私が最後になるようでございますので、最後までひとつ頑張っていただきたいと思います。  公明党・国民会議を代表いたしまして、繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案について、農林大臣並びに政府委員の皆様に対して順次御質問をいたします。  もう種々議論がなされてきたと思いますけれども、今回の法律改正そのものについては、現在の蚕糸業を取り巻く非常に厳しい環境の中で、いわば緊急措置のような形で至急に講じなければならないという観点から、私どもも多くの蚕糸業皆さん方にお会いしておりますが、一日も早い成立をということで皆さんの御要望を受けているわけであります。  その中で、この法改正は、本法の目的でもあります「蚕糸業経営の安定に資するとともに、生糸需要増進に寄与すること」、このようになっていかなければ改正の本旨にはそぐわないわけであります。そこで、今回の法改正蚕糸砂糖類価格安定事業団在庫処理と赤字解消対策のみに終わることなく、現在の蚕糸業界の危機をどのように打破していくか、また、将来ともに産業として成り立つ、また大いに発展できる展望をどのように切り開いていけるのか、このことが蚕糸業に携わる方々の最も強い御要望でもあり、一番重要なポイントであろうと考えるわけであります。  言うまでもありませんが、我が国の蚕糸業は、いろいろな文書によって明らかになっているだけでも千三百年近い歴史を持っている伝統産業です。今まで国民経済社会の中では大変大きな役割を果たしてきたわけであります。特に戦前においては、外貨獲得という大変大きな貢献をしてまいりました。また現在では、特に農山村地域の経済の振興やまた畑作の基幹作物、このようなことで農家経済を支えているのは申すまでもありません。もう一つ、我が国は非常に資源の乏しい国であります。そういう観点からすれば、我が国で生産できる数少ない資源の一つ、このように位置づけられるかと思うわけであります。そこで、この蚕糸業こそ、産業として後代につないでいかなければならない、我々の時代でこれの息の根をとめるような、またどんどん後退に次ぐ後退をし、担い手がいなくなるようなことだけは断じて避けていかなければならないわけであります。  そこで、概括的なお尋ねでありますが、農林水産大臣にお伺いをいたしますが、そのような蚕糸業界の皆さんの注目の中で今本法案の審議が進んでいるわけであります。今後の展望を開く上から、蚕糸業界が希望を持って対処できるよう、中短期の繭また生糸需給見通し、こういうものを明らかにした上で、今後の振興策について具体的にどのような措置を講じようとされているのか、そのことを冒頭大臣にお尋ねいたしたいと思います。
  107. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生にお答えいたします。  実は今先生養蚕業のことについてるるお話しされましたが、私は認識は全く同じでございます。実は養蚕業というのは、戦前と比べまして農業生産全体の中のシェアは非常に低くなっておりますが、農山村等における畑作地帯のいわゆる農業経営上の重要な作目と認識して対策を講じたい、こう思っております。実は先生が御指摘のようなことで、最近の蚕糸業をめぐる情勢は非常に厳しく、絹需要の大幅な減退、あるいはまたそのためによる蚕糸砂糖類価格安定事業団における膨大な在庫、こんなことで極端に財政赤字になっておる、そんなことでございまして、今後におきましては需給動向に即した繭の生産をする必要があると考えております。  一番大切なことは、どうして生糸、いわゆる絹を売るかということ。そういう形の中で、現在絹の販路拡大につきましては、技術的な問題、生産単価の問題、あるいは輸入等の問題もございますが、いかにして養蚕主産地の形成をし、そして中核養蚕農家をつくるか、そして、本当に足腰の強い、低いコストでやれる養蚕実現を図っていく、こんなことで今いろいろな施策を練っております。したがって、基本的にはそういう形で養蚕業の安定を図っていくためにはどのようにしたらいいかということで今努力している状態でございます。
  108. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣にはまた後から具体的な問題についてお答えをいただきますが、最初に養蚕についてでございます。  現在の状況、特に規模別とか山間地と平場との割合とか、それから特に五十三年からの転作永年性作物として、桑を五十三年から五十五年まで奨励品種、いわゆる奨励金を出していたわけでありますが、五十九年末、これは明確にわからないかもしれませんが、水田利用再編対策の中でどの程度桑畑に転作をされてきたか、この三点について具体的にお知らせをいただきたいと思います。
  109. 関谷俊作

    関谷政府委員 養蚕業の現状についてのお尋ねでございますが、養蚕農家数が五十九年現在十一万四千戸でございまして、五十年対比で見ますと四六%というふうに大変大きく減っておるわけでございます。また桑園面積は十万五千ヘクタールで、五十年対比七〇%という水準になっております。繭の生産量は五万トンでございまして、これも五十年対比で見ますと五五%というような数字になっております。こういうようなことで、大体生産規模需要の動向に応じましてかなり激しく急テンポに縮小してまいったわけでございます。  現在のいわゆる立地別に見た養蚕状況でございますが、これはなかなか生産量では難しいものですから、養蚕のある市町村の経済地帯別分類で見ますと、全体を一〇〇といたしますと、農山村が町村数で申しまして四二%、山村が二三%でございますから、農山村、山村合わせますと町村数では六五%ということで、大体三分の二ぐらいが農山村、山村に立地しておるわけでございます。なお、収繭量の地域別のシェアとして見ますと、近年非常に東北、関東地域への地域特化が進んでおりまして、五十九年で見ますと東北が二二%前後、関東が四六・二%、東山地域が十三・六%、こういうことで、この辺のところでほとんど大部分を占めている。この地域への地域的な特化が進んでおります。  こういうような状況の中で、農家状況から見ますと、経営規模階層としましては、テンポは非常に緩やかではございますけれども養蚕規模の割合大きい農家のウエートが次第に高まっておりまして、規模別収繭量で見ますと、昭和五十八年の数字で三十箱以上が二〇・九%になっておりますが、四十五年にはこの階層は五・八%であったわけでございます。その前の段階の二十ないし三十箱のところは五十八年、一九・六%ですが、四十五年は一七・五%ということで、この辺がほぼ横ばい程度。二十箱以下になりますと、この数年の間に、四十五年以降一貫してウエートが減ってきている、こういうような状況でございます。  最後に水田利用再編対策との関係でございますが、かつては米の生産調整の一環としまして水田から案への転換を進めてまいりましたけれども、五十七年度以降は、最近の生糸需要の動向にかんがみまして転作非対象作物としております。この水田利用再編対策によります桑園の転換実面積でありますが、大体二千ヘクタールぐらいというふうに推定いたしております。
  110. 水谷弘

    ○水谷委員 ただいまお知らせをいただきましたが、もう一度二十箱以上の収繭量のパーセントをちょっと五十八年で教えてください。
  111. 関谷俊作

    関谷政府委員 二十から三十箱のところが昭和四十五年が一七・五%、昭和五十八年は一九・六%でございます。二十箱以下は、これはまた階層別に分かれておりますので、五十八年のところで見ますと、一九・六と二〇・九を二つ足しますので二十箱以上が四〇・五%になるわけでございます。したがいまして、それから下は五九・五%ということになります。
  112. 水谷弘

    ○水谷委員 ただいまの数字が物語っておりますように、やはり地域としては農山村地域に非常に農家戸数も多く、確かに地域特化という傾向が著しく進んでいるわけでありまして、地域特化ということと主産地形成というのが政策導入としては非常にうまく合っていくかもしれません。  しかし、農山村地域というのはかなり点在をしていることが考えられるわけであります。それからもう一つは、収繭量を見ましても、いわゆる二十箱以下の中級以下、そういう生産農家に全体の六割の収繭量が現在ある。こういう現況の中で、これから今後の農水省の方針として、中核農家の育成いわゆる養蚕の主業農家、それから規模拡大、こういうことを重点に行っていこうとなさるわけでありますが、ここにおいては非常に大きな問題点が出てくると考えられるわけであります。  今のように、五十五年に決めました食糧農産物需給見通し等を見ますと、確かに生産農家ががっくりするような六十五年の繭の生産量一つの指標として出ておりますし、そこへもってきて基準糸価生糸年度途中で下げられるとか、また事業団の在庫が十七万九千俵もあるとか、先の見通しが非常に暗い、そういう中で生産意欲が減退して自然的に養蚕業から離れていく。そういうことを考えていけば、それは確かに担い手がいなくなってくる地域において中核的なしっかりした人だけが残っていく、こういう現象が出てくると思います。  養蚕農家は蚕のことをお蚕さんと言う。蚕を育てるのは子供を育てるのと同じだ。数時間の間に病気が発生して、その一戸の養蚕農家の繭がほとんど全滅するような病気が蔓延することもある、この技術というのは非常に修練を要する。それと同時に、常に周辺にいろんなことを相談できる農家、同業者がいないと、おれの繭を見てくれ、こういう話し合いができる人たちがいませんと、一人ではとても地域では養蚕は続けていけませんよ、これが実際にやっておられる方のお声なんであります。  ですから、生産性を上げてコストを下げる、これは我が国の農業全体に対して今課せられている大変な努力目標であり、それはもちろん必要でありますけれども農水省がここでいわゆる主産地形成と中核農家、ここに偏った政策を強力に打ち出していきますと、山村の地域経済社会にも重大な影響を与えていくし、農家経済を片方で支えている中規模養蚕農家に対して大きな影響を及ぼして重大な問題を醸し出してくるということが考えられるわけであります。大筋としてはそういう方向に進むことは一つの流れかと思いますけれども、そういう中にあってどうかひとつきめ細かく農水省の指導を行われるべきである、このように考えるわけであります。  もう一つあわせて伺いたいのは、生産調整の問題です。いわゆる本年の生糸年度で二五%、二〇%からところによっては三〇%という生産調整を、生産農家はみずからの産業を守るために自主的に積極的におやりになりました。私の住んでいるところは栃木県の小山市、ここには桑村と絹村と言われている二つの村が昔ございました。本当に養蚕で生きてきたという歴史のある町が私の住んでいる小山市でありますが、この間も現地へ参りまして、本当にお忙しいのに三十分くらいの間に十数名の中核的な農家の方たちがお集まりいただいて、おまえにしっかり教えるからよく聞けということで、おしかりやら御要望やらたくさんいただいてまいりました。そのときに最も出てきたのは、この生産調整については本当にきめ細かく対応をしてもらわぬと困る、そういう要望が非常に強く出てきておりますし、我々はもうこれ以上生産調整は受けられないぞというのが偽らざるお声でございました。  今申し上げた生産調整と、農水省が推進していこうとする主産地形成、中核農家育成をより強化していく、そういう政策の中で配慮すべき点についてしっかり取り組んでいただきたい、このことについてお伺いをいたします。
  113. 関谷俊作

    関谷政府委員 先ほど大臣のお答えにもございましたとおり、私ども養蚕主産地の形成と養蚕中核農家の育成を基幹にしてまいるわけでございますが、その考え方となりますのは、一つには、養蚕農家を個々の農家として見ますと、規模の大きいもの、例えば三十箱以上というような規模になりますと、やはり生産コストというか物財費償却費等、あるいは投下労働時間全体含めましてかなり省力化されておるし合理化されておりまして、コストが低くなる、こういうことがありますものですから、日本養蚕蚕糸の置かれております厳しい情勢のもとでは、やはり中核農家、例えば繭生産一トン以上というような規模農家中心的な担い手になっていくべきだろうというふうに考えておるわけでございます。  ただ、それが、先生のお尋ねにもございましたが、日本養蚕農家がすべてそういう形に収れんしていく構図を描けるのかあるいは描いているのかということになりますと、地域の中でほかの作目と組み合わせまして養蚕をやっている、いわゆる複合的な経営も含めました地域養蚕の定着というのがそこにあるわけでございますから、そこに一つ養蚕の主産地というか、我々の言葉で高能率養蚕地域などと申しておりますが、ある程度の密度で養蚕農家あるいは養蚕規模が見られるところでは、それはいわゆる本当の主業的な養蚕農家もあるいは複合的な養蚕農家も含めまして地域として養蚕生産を分担していくということになりますと、例えば稚蚕共同飼育所のような広域の施設、こういうものの設置も必要でございますし、共同部な集団的な作業に役立つような機械施設類の導入も必要だ、こういうことで全体を考えていきたいというのが我々の考え方でございます。  それから、生産調整につきましては、今年につきましては御承知のような二割五分というような減産を指導したわけでございますが、これは先生のお尋ねでそういうことをあるいは意味しておられるのかと思いますが、これはほかの生産調整も一般に同じでございますが、どうもこういう方針は、効果をある程度上げ得るというかわりに、ともすると、例えば二割なら二割とか二割五分というような比率が機械的に一律に農家までおりるという懸念は、かなり現実的にもあるのじゃないかと思います。こうなりますと、やはり農家の持てる力あるいは意欲というものの差というものが反映をされませんし、これからの養蚕の合理化を考えますと、そういう一律主義というのは確かに問題であろうか、こういう気もいたします。  そういうことも含めて、私どもこれから六十年以降、特に間際に迫ってまいりました六十年産の養蚕についてどういうこの面の指導をするかということでございますが、率直に申し上げまして、昨年、繭生産量で四万七千五百トンという生産目標でいったわけでございますが、我々としてどのくらいまでかということになりますと、やはり少なくとも昨年よりは少し厳し目の目標ということを頭に持っているということは言わざるを得ないのではないか。ただ、昨年期中改定をしまして一四%以上の価格下げをしました後で、さらにここで、去年の経験も見ると、いわゆる何%減産というようなことをそういう形でやった方がいいかどうかについてはかなり私ども慎重に対処すべきであろうということで、生産上のめどとしてはやはり抑制的である、それで規模、全体の生産量を言われれば、少なくとも去年の四万七千五百トンよりはもっと厳しいものを頭に置いている。ただし、その調整の仕方について、いわゆる一律調整になるような、そういう取り組み方というものは六十年は避けてはどうだろうか、こんな気持ちで、今関係の都道府県それから養蚕団体と鋭意六十年度の生産のあり方について協議、調整をしている次第でございます。
  114. 水谷弘

    ○水谷委員 先ほど冒頭申し上げましたが、六十五年の農産物需給見通し、それを既にもう五十九年度ではみ出しているわけですが、やはりこれのしっかりとした展望といいますか見通しというものが実は今一番必要なんです。確かに、去年とことし、それからことしと来年、これも大切であります。しかし一歩下がった立場から議論をしますと、来年がことしよりも幾らか厳しいかもしれない。しかし五年先、十年先には一体どうなるんだ。  現在養蚕業をやっていらっしゃる方は、大分高齢になられている方が多いわけです。統計にも出ていますとおり、五〇%ぐらい高齢者が実際に携わっていらっしゃる、こういうことであります。そういう方は、中核的にやっていらっしゃる方は、地域社会でもいわゆる農業の分野でのエキスパートでありまして、ある方は農業士という資格を持ちながら養蚕の振興のために一生懸命にやっていらっしゃる、そういう方は今後継ぎが既にもうできているのであります。御長男御夫妻が後を継がれまして、おやじが築いてきたこの養蚕業をしっかり守り立てようということで乗り込んでいらっしゃる、こういう方々が、今非常に不安な状況の中で大変な戸惑いをしていらっしゃる。しかし、もうここまで自分の人生を打ち込んで、これをやるんだということで決められて、今さら方向転換はできない。現場はこういう状況であります。  そういう中で大切なのは、これから議論をさしていただきますけれども、いろいろな問題が噴出しているその根本は、需要の減退であり輸入の問題であります。大きくすればこの二つに絞られてくるわけであります。この需要拡大をどのように具体的に年次計画でどこまで進めていこう、輸入についてはどういう対応をしていこう、そして五年なり十年なりの将来の方向の中で、皆さん方が今汗を流していらっしゃるその養蚕業は間違いなく政府としてはこのようにしっかりと対応してまいりますよ、希望を持って後を継いてくださいと、このようなことが今一番大切なのではないかと私は思うわけであります。  そういう意味で、ただどんどん需要が減っていくなんという、こんな表なんかは出してもらったって意味がないのでありまして、そうではなくて、計画の中に努力をしっかり打ち込んで、どこまでどういうふうに取り組んでこの需要をどう拡大していくかということ。急下降をたどるような需要見通しであれば、こんなものは発表されてもマイナスになるだけであります。どうかそういうことを、政策的な御努力をもそこに入れながら、将来の展望、見通し、こういうものを今こそ提示をして、そしてその振興を図るべきであると私は思うわけでありますが、お考えをお伺いしたいと思います。
  115. 関谷俊作

    関谷政府委員 絹需給というか、生糸需給の中長期的な見通しは、これはぜひはっきりさせて、これに即して生産対策、需要対策をやっていかなければいけないというふうに考えておりますが、ただ、見通しというベースで考えますと、非常に難しい要素が大変多いわけでございます。  現在の六十五年の見通しにつきましても、昭和五十三年という、いわばちょうど需要のかなり曲がり角で、この辺から減っていくという曲り角に近いところであったために、当時需要規模が、基準年の五十三年が三十九万三千俵でありましたが、六十五年は四十万俵というふうに、ほぼ横ばいと見込んだわけであります。その後五十九年の二十二、三万俵に至るまで、大変急激な減少をしたわけでございます。こういう状況を見ますと非常に難しい。  そこで、先生のお話にもございましたように、需要増進の努力も含めました大変意欲的な需給フレームというものを我々も描きたいというふうに思っておりますが、従来のいろいろな見通し作業等の中から見ますと、現在大宗を占めております、九割を占めております和装の中の、割合ふだん着というか、よそ行き着と言っていいのかもしれませんが、カジュアル的な着物の量はかなり多いわけですが、これの減少がさらに続くということになりますと、相当厳しい、やはり二十万俵に相当近づいていくような見通しというようなことになりまして、なかなか責任ある見通しが描きにくいということでございます。  したがいまして、我々としては、あくまでも我々自身の作業としまして、こういう需要見通し、それに応じました国内生産の誘導の方向、輸入の調整の考え方、こういうことについては我々の腹づもりを持っていかなければならないわけですが、これを伸ばす、あるいは需要増進するという面につきましては、あくまでも我々の行政努力として、今度拡充されます事業団の蚕糸業振興資金の活用等も含めまして、これについては精力的に取り組んでいくということで、一つの努力の過程としてこれを考えるというのが一番適当ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  なお、この辺の需要見通しにつきましては、現在まだ確定的な手法も開発されておりませんし、特にこれから、現在ではわずかでございますけれども洋装面需要の伸ばし方、それに向いたような新繊維というか新しい生糸の開発の動向、これについてもかなり期待をかけられる面があると同時に、なかなか見通しが難しい、これはまさに行政的な努力として取り組むべき問題であろうと考えております。
  116. 水谷弘

    ○水谷委員 どうぞ特段の御努力をお願いしたいと思います。  大臣にお伺いいたします。  先般の質問でも私は申し上げたのでありますが、需要拡大に本当に一生懸命熱心に取り組んでいらっしゃる、大臣が率先垂範でその拡大を図っておいでになられることはよく存じておりますが、これから、日本の本当に世界に誇る絹織物を一人でも多くの国民の皆さんに親しみ利用していただくための方策を、具体的にどのように打ち立てられながら推進をしていただけるか、その点についてお尋ねをいたします。
  117. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生にお答えしますが、局長からもうお答えしたわけですが、基本的に、技術的問題をどう解決するかということが一番だと思います。それからもう一つは、価格をどうして安くするか、そういう形の中に輸入をどうして防ぐかということに実はなるかと思います。  それで、そう言ってはなんですが、養蚕業の方が陳情にお見えになりますが、絹の洋服を着た人はほとんど会ったことはありません。混紡でもそうです。この洋服はオール絹ですが、普通は大体三割から五割絹が入った混紡、僕はその洋服を三着つくっておりますが、陳情に来る人がそういう服を一つも着てない、羊ものいい洋服を着ている、この姿から変えたいと思います。したがって、農林水産業は我々の力で、手で守るんだという姿勢で、まず養蚕業の人に絹の洋服を着てもらう。それから、我が農林水産省が七万六千ございますが、私はこの洋服がよければ全部売りつけるつもりです。それから、農林水産業関係者が約二千万ございます。これに絹を売っていこうと思います。そんなことで、みずからが我が農林水産業を守るという姿勢、この気持ちを持たぬ限り私は将来はなかなか厳しいと思っています。  そんな姿で、実は技術的に改良しながら価格を安くする、先ほど局長が言ったようなことで、産地形成とともに中核養蚕農家をつくる、そして低いコスト生糸をつくる、そういう形でこの問題を解決したい、このように考えております。よろしく御協力をお願いいたします。
  118. 水谷弘

    ○水谷委員 需要が激減をしてきた要因に指摘されるのは、例のカジュアル、いわゆるふだん着と言われているこういう着物需要が急激に減ってきているわけでございます。確かに洋装の生活様式に変わってきておりますし、それからまた最近は二十から二十四、五歳ぐらいまでの年齢層の人口構成が減少してきているとかいろんな要因はございますけれども、統計によりますと、京都の女子大生の百七十五人に着物を着るかどうかという間いをしましたところ、六一%は機会があれば積極的にというような答えが出てきております。若い人たち、女性にとって着物というのは大変な魅力なわけです。しかし、それを阻んでいるのは一体何かというと、大臣御指摘になった高価格、値段が非常に高いということであります。  ここで、流通段階、現在の和装を取り扱っております業界、かなり長い歴史がございますから、我々部外者が物知り顔にいろんな指摘ができるわけはありませんけれども、しかしその流通段階でうんと工夫を凝らしていくというそういう努力をなさらないと、大臣が今おっしゃったように、洋装をどんどんふやしていきたいというこの御努力、これをますます続けていっていただかなければなりませんが、九〇%近くを占める和装、これをかつてのようにどこまで持ち上げていくことができるか、そのためにネックになっているものは一体どこにあるのか、それらをやはり政府も真剣にお取り組みをいただいて、改善策といいますか、現在のままではこれではならぬなと指摘されることがいっぱいあります。  いわゆる委託販売の方式だとか、それからまた招待販売だとか、こういうものがそのまま製品のいわゆる値段の中に入れられてしまって製品が高くなってくるとか、そういう流通段階にもひとつアドバイス、これは自由主義経済の中で、政府がああせいこうせいなんということは毛頭言えないのはわかっておりますけれども、適切な行政のアドバイスを通じながらやっていっていただきたいということ。  それからもう一つは、いわゆるカジュアルの、これはいろいろ伺ってみますが、小売店、問屋さんもそうなんですけれども、小売店も余り価格が高くないものですから、お喜びになって品物を豊富にそろえておかれない、消費者としては手ごろなものをぜひいただきたいという気持ちがあるのですけれども、非常に品物が少ない、こういうことも現象的にはあるようであります。そういうことを中心に、どうかひとつ和装の需要拡大、これをもう一度丹念にお願いをしたいと思うのです。  それからもう一つは、今度はまるっきり逆の議論でありますけれども、先端技術産業、いわゆるコンピューターだとかそういう部門に絹製品がどういう形で適していくのか、それがフィットできないのか、さらにまた自動車産業、いわゆる大量消費されるような部門に対して、そういう製品がいわゆるコスト的にもまた製品の素材の特性を生かして非常にいいという、そういうような需要拡大できる分野というものを、大きく視野を広げて対応をなさっていくべきではないか、このように思います。もちろん、きょうは通産省の方おいでになっているかもしれませんが、絹の新製品の開発とか、またニューヨークにおける日本絹織物ニューヨーク展とか、全世界に向かっても、国内においても種々御努力をしていただいていることはよくわかっております。しかし、私みたいな素人でありますけれども、素人が素人なりにいろいろなことを考えますが、また発想を転換していただいて、ぜひ御努力をいただきたいと思います。  二月十四日の農業新聞に「洗濯機OKの絹織物」という記事が載っておりました。私もこれは読んでいたのですが、現場の農家へ行きましたら、この記事をわざわざ切ってきて、こうやっていよいよ新しい製品が開発される、こういう兆しが見えてきているのです、こういうことで非常に期待し、喜んでいる、一歩でも絹の需要拡大されることを最大の喜びとしておられる、そういう蚕糸業界の皆さんに対しても特段の御努力をお願いをしたいと思っております。  この需要の振興対策について、通産省として特に力を入れて取り組んでいただいていること、御報告をいただいていることはわかっておりますから、ポイントだけで結構ですから、お願いしたいと思います。
  119. 渡辺光夫

    ○渡辺説明員 今先生、いろいろお話をいただきました絹関係需要増進策でございますが、幾つか御紹介いただいておりますように、新しい分野での需要をいかに喚起するかということが今後の一つの大きなポイントになるだろうということで、私どもも新製品開発試作事業というものにつきまして、五十六年度以来特に力を入れてやっているところでございます。それで、六十年度につきましても、実際に開発いたします点数を五割程度ふやそうという思い切った予算措置を講じたところでございます。  ただ、新製品でございますので、物をつくりっ放しということでは不十分でございますので、それを現実のマーケットの方につないでいく、こういう努力も非常に大事だろうということで、先生もちょっと御紹介いただきましたような、国内における展示会でございますとか、さらには海外にまで出かけて展示会をする、そういったような努力を今しているところでございます。  ただ、何分にもまだ緒についたばかりの事業が多いものでございますから、今すぐ大きな効果が出るというほどではございませんけれども、私どもの見ておりますところ、反応としてはかなりいい方向に行っているのではないか、こういうふうに了解いたしておりますので、これらの努力をなお一層続けてまいりたいと考えております。
  120. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。どうぞ本格的に展開をお願いしたいと思います。  時間がありませんので、輸入の問題について大臣に、この改正以降具体的にどのように対応されていくか、まずお伺いをしたいと思います。
  121. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生にお答えいたします。  結局、生糸とか絹織物等の輸入については自由化品目になっておる、かつまた内外価格差により流入圧が強いという状況もとで、現在、生糸の一元輸入制度の運営と、中国、韓国との二国間協議を通じて輸入量の縮減を図ってきておるところです。そんなことで、我が省とすれば、蚕糸業の安定のためにも絹織物等の輸入が極力縮減されることが望ましいというのは先生御指摘のとおりでございます。ただ、問題は、絹織物等は自由化されている工業製品であり、現下の国際情勢などから見ますと輸入停止のための法的措置を講ずることは困難であると考えております。  そんなことで、今後とも通産初め関係省庁の協力を得まして、関係国に対しまして我が国の蚕糸絹業の当面する困難な事情について理解と協力を求めながら、現行の諸措置を活用して極力輸入量の縮減に努めてまいりたいと考えております。
  122. 水谷弘

    ○水谷委員 今大臣おっしゃったとおり、我が国は加工貿易国でありますし、自由化に対する規制を、制裁措置を加えるなどということは到底できないことだ。だがしかし、今おっしゃったように現在の十七万九千俵という事業団在庫、さらには養蚕農家が二五%という生産調整、そして五年間にわたって繭価がずっと横ばい、今回急激にまた下げられた、こういう厳しい情勢というものを中国、韓国、いわゆる相手国に対して誠意を持ってお訴えをいただきたい。日本蚕糸業界が本当につぶれてしまったならば、すぐ近くに蚕を飼っている農家がいるからこそ絹のよさとかそういうものがわかっている、国内の蚕糸業界がどんどん先細りをしていくような状況の中でますます日本の国民の絹離れは進んでいくわけであります。そうすれば、結果として相手国の日本に対する輸出は将来においてどんどん落ち込んでいくわけであります。  今、緊急避難的にしばらくの間、少なくとも事業団在庫が、この処理がある程度の見通しが立った、そして生産調整もここまで来た、そういう段階まで、どうかひとつ大臣、本当に全力投球で、また通産省の方にもお願いをせにゃいかぬわけでありますが、この輸入に対するきめ細かな対応というものをしていただきたい。この政府の誠意ある姿が生産農家に対する大変な激励になっていくわけであります。研究会の報告の中にもそのことは明確に出ているわけでありますし、特段の御努力をお願いをしておきたいと思います。  最後になりましたが、先ほど委員質疑に対して大臣から御答弁がありまして、私もそれを伺っておりましてもうそれでよいわけでありますけれども、今回基準糸価生糸年度途中で引き下げになった。それに対していわゆる激変緩和策として、キロ当たり百七十八円の価格補償で千九百三十三円という改定の基準繭価がとられたわけであります。この百七十八円を来年度も上乗せをしてもらいたい、ここまで言いたい。生産農家もみんなそう思っている。が、しかしながら最低ぎりぎりでもこの千七百五十五円、今年度のこの基準繭価、来年度はどうなるんだ。少なくとも六十一年五月三十一日までこれは最大限守っていくぞ、これが今大切な政府としての姿勢ではないかと思いますが、お伺いをいたします。
  123. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生にお答えします。  先ほどもちょっとお答えしたわけでございますが、実は期中改定をいたしたわけでございます。そんなことで、今度は期中改定を変えるとこれは大変なことになるということでございまして、今のところ期中改定一万二千円を変えるつもりは毛頭ございません。
  124. 水谷弘

    ○水谷委員 私が最後になりまして、きょうは延々と遅くまで御苦労さまでございました。どうぞこの改正が単なる法改正に終わらずに、改正そのものよりもこの法改正に伴う運用が一番今重要視されているわけでありますので、蚕糸業の振興のために政府の上り一層の御尽力をお願いをしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。     —————————————
  125. 今井勇

    今井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております本案について、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  126. 今井勇

    今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 今井勇

    今井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る十九日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時八分散会