○
関谷政府委員 まず最初に
価格の問題、これと関連して品質の問題がございますが、これは現在、御
承知のように世界的な
生糸の
価格ということになりますとリヨンの取引相場というのが大体標準になっておりまして、最近、少し動きますけれ
ども、大体七千四、五百円程度のところで推移しているわけでございまして、恐らくこれが世界的な
生糸取引の目安になっているわけでございます。
それを支配しているのは、大体中国の糸と、最近はさっき申し上げましたようにブラジルの糸が大分ふえてきている、こういうことのようでして、これは何としても、
日本の国内
価格と比べますと現在の
基準糸価一万二千円との開きが非常に大きいわけで、これは品
質問題がもちろんあるとは思いますけれ
ども、これだけの大きな開きというのは、
日本の糸を外へ持っていって売るなりあるいは処分するなり、こういう問題を考えました場合に、いわゆる財政負担とかあるいは補助金輸出とか、こういう問題まで考えますと非常に難しい。
それからまた、ほかのもので似た例があるかどうかわかりませんけれ
ども、さっきもちょっとお話に出ておりましたが、
生糸の場合には、焼く、いわゆる廃棄は別でございますけれ
ども、用途として何かと競合するということにどうしてもなってしまいますので、処分ということになりますとなかなか難しいわけであります。
次に、消費水準として潜在的な
需要があるじゃないかということでございますが、やはりこれも
価格との
関係ではなかろうかと思います。それで、
日本の国内で見ますとよくわかるわけですが、
生糸の相場は現在一キロ一万二千五、六百円でありますけれ
ども、同じ新聞の欄で見ますと、毛糸が大体一キロ二千数百円、綿が五百円ぐらいでしょうか、それから化繊類になると二、三百円ぐらいでしょうか、そういうことで大変安いものですから、毎日着るようなものになりますと、やはりそういうものとの
価格関係でもって、
生糸が欲しいけれ
ども値段の
関係でどうしても手が出ないということで、量的な問題だけではそこがなかなか律し切れないと思うのです。
いろいろ話が前後いたしますが、そこで
日本の糸の品質ということになりますと、これは非常に比較が難しいようでございますが、前からある議論としましては、
日本の糸は本当に世界的にいいのかということになりますと、もちろんいいということになるわけでありますが、例えば女性のブラウスでありますとかネクタイ類とか、こういうものに中国の糸が使われております。これが
日本の糸で同じものができるかということになると、できるという説もありますが、糸の
関係でできないという話もあったり、それからやはり加工技術はヨーロッパの方がうまいんだという説があったりしましてなかなかはっきりしないわけでございます。そういう
関係で、
先ほどの七千四百円と一万二千円の
価格差の相当
部分を
カバーするほどに
日本の糸が絶対的にいいものができるということまでなかなか断定できないような感じを私
どもは持っております。
それから、最後にいわゆる繊度、太さの問題でございますが、これは、私
ども役所に入りましたころは二十一中というのが
基準になっておりましたが、最近は二十七が大体五〇%から五五%以上がそういうものになっておりまして、統計等で見ますと、二十一とかあるいは三十一とかもちろんいろいろなものがございまして、その辺はそれぞれの
需要に応じて
生産はされておるし、それなりの流通はしておるわけでございますが、こういう製糸の糸を引く
関係から申しますと、
中心的な
需要の動きに全体が引きずられて今は割合二十七に集中しているということでございますので、なかなかこれを人為的に動かすわけにもまいりませんけれ
ども、去年の私
どもの研究会の場でもいろいろお話がありましたけれ
ども、そういうきめの細かい
需要に応じた
生糸生産という面での品質改善というのは非常に大事である、余り大量
生産的な面のことばかり考えていてはいけない、こういうような議論が相当出ておったような次第でございます。
そういうことで、
日本の
養蚕業、
製糸業の今後の活路というか存在意義としては、やはりおっしゃいましたような品質という問題が大変大事である、こういうふうに存じております。
なお、つけ加えますと技術開発の面では、最近そういう品質面では余り新しい品種あるいは交配様式が出るというようなことはございませんで、そういう
意味では、
日本の蚕糸の品種改良という面ではちょっと今のところは停滞
状態に来ているというようなことがございまして、私も前に技術
会議におりましたときに聞きましたことは、やはりちょっと米と似たような
状態で、これからもう少し新しい
生糸なり絹
製品を求めるとすると、俗に新しい血を入れる、中国あたりの繭の新しいものを入れるとか、それから繭の中でも柞蚕とか野蚕とかその他のいわゆる普通のお蚕じゃない糸を使ってませるとか、こういういろいろな工夫というのは必要であろう、こういう議論な
どもなされております。そういう
意味で、品
質問題については、
需給情勢、厳しい情勢でございますので、これからますます研究部門とも一緒になって努力をしていきたいと思っております。