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1985-02-21 第102回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年二月二十一日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 今井  勇君    理事 衛藤征士郎君 理事 島村 宜伸君    理事 田名部匡省君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       鍵田忠三郎君    佐藤  隆君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       野呂田芳成君    保利 耕輔君       松田 九郎君    三池  信君       山崎平八郎君    若林 正俊君       上西 和郎君    島田 琢郎君       新村 源雄君    日野 市朗君       細谷 昭雄君    松沢 俊昭君       駒谷  明君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    稲富 稜人君       菅原喜重郎君    中川利三郎君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤 守良君  出席政府委員         農林水産政務次         官       近藤 元次君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    井上 喜一君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      野明 宏至君         農林水産省食品         流通局長    塚田  実君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      木幡 昭七君         文部省体育局学         校給食課長   小西  亘君         農林水産委員会         調査室長    矢崎 市朗君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   中川利三郎君     津川 武一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団  法の一部を改正する法律案内閣提出第三〇号  )  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 今井勇

    今井委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松沢俊昭君。
  3. 松沢俊昭

    松沢委員 大臣所信表明がございましたので、それに対しまするところの質問をこれからやりたいと思います。  もう既に昨日も多くの委員皆さんから質問がございましたので、ダブる面もあるかもしれませんが、ありましたらひとつ御了承いただきたい、こう思うわけであります。  最初に、今アフリカ飢餓問題が大変大きな世界的な政治問題に実はなっているわけであります。その飢餓原因等につきましてはいろいろと報道されておりますし、またその見方等におきましてもそれぞれやはり違っているようであります。私は、これは率直に申し上げますが、今までアフリカは全体的に植民地支配が長く続けられてまいりましたので、その後遺症というものが今あらわれているんじゃないか、こういうふうに見ているわけなんであります。  人類の住んでいるところには必ずそれなりの食べるものがあったわけでありますが、人為的な支配によってそれがなくなって、そして換金作物等、つまり支配する側に都合のいいような、そういう経済構造生産構造というのがつくられ、そこから今度は独立したものでありまするから、したがって、なかなか対応ができないで今日のような大変な事態に入っている、こんなぐあいに私は考えております。それにつきまして大臣はどうお考えになっているか、これが一つであります。  それから、もう一つの問題といたしましては、そういう状況の中で、去年とまたことしては気候の状況等も違ってくるわけでありまするから、したがって最もひどい状況にあるところの国の数というのが、二十四になってみたり二十一になってみたりしておりますけれども外務省からの御説明によりますと、今は二十一カ国というふうに承っているわけでございます。その二十一カ国に対しまして、日本政府それなりに今まで対応してきておられまして、昨年一カ年間に既に一億ドル以上の援助というのが行われてきている、こういうことも聞いております。  しかし、新聞等を見ますると、この援助仕方等につきましても、朝日新聞なんかに載っておりましたところのアフリカ新聞記者皆さんだとかそういう方々の意見を聞きますと、やはり問題があるようであります。例えば、この農業開発のための援助という場合においては、我々は大きなトラクター、そんなものは余り必要ないんだ、だから、要するに一台の自動車よりも百台の自転車の方がよっぽど気のきいたところの援助ということになるのだ。あるいはまた、トラクターなんかよりは手で使われるところのくわだとか、そういうものがむしろありがたいんだ、こういうような意見なんかも新聞に出ているわけであります。それがなぜできないのかということになりますと、結局援助する側の農機具メーカーなどが、資金の還流ができないから、つまり簡単に申しまするならば余りもうけがない、だから大きなものをどんどんつくって、そして援助だということで出していく、こういうことになるんじゃないか、こういうことにアフリカ側の方では見ているわけであります。  そこで、今まで農業関連援助並びに食糧援助等がございましたのですが、その中身につきまして一体どうなっているのであるか。また、農林大臣自身に、私が指摘いたしましたようなことにつきましてはどういう配慮が今まで行われてきているのか、そういう点につきましてまずお答えを願いたい、かように考えております。
  4. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生お答えします。  二つの問題ということになると思いますが、一つアフリカに対する認識、どう思うかという問題、それから援助内容等どうかということだと思います。  そのアフリカ認識につきましては、先生のおっしゃるとおりで、私はやはり基本的には政情の不安定とか農政の欠如、そういうことがこういうものの大きな理由になっている、このように思っております。  また、アフリカに対する援助、国については私も定かでないが、二十一カ国と承知しておりますが、今いろんなお話がございましたが、基本的に、実は日本ではアフリカ農業等について、知識限界があります。また、砂漠化農業について十分知識を持っておりません。そんなことで今までは、当面は食糧援助ということで、たしか一億五千万ドルぐらい外務省を通じて援助しておると思いますが、そのような食糧援助をしておりますが、将来にわたりましては、当然、自助努力というものに対してはどのように日本がお手助けをするかということだと思います。  そんなことで、実はアフリカに対しては限界がある、まあ十分ではないといいましょうか、ということがございますが、たしか四月に、元農林水産省の事務次官をやりました中野さんを団長に一遍アフリカへ出そう、そういう形の中にハイレベルで農業問題を話し合い、そして向こう自助努力に対して日本がどのように応援できるか、こんなことを含めて検討したい、このように考えておるわけでございます。
  5. 松沢俊昭

    松沢委員 外務省来ておられますが、外務省、その細かな援助中身についておわかりだと思いますので、お答え願いたいと思います。
  6. 木幡昭七

    木幡説明員 アフリカに対する援助について、大型の機械等よりは、むしろ小さいくわとかそういうものを援助してはというお話がございましたので、その点についてお答え申し上げながら、外務省あるいは日本政府としてこれまでアフリカ援助しました中身に触れさせていただきたいと思います。  先生おっしゃいましたすき、くわ等の小型のもの、これは私ども調査団を送りまして先方とよくお話ししました結果、先方の要請がございます場合にはそういう形の援助をする用意がございます。アフリカにつきましてはこれまでのところまだ実例はございませんが、アジアにつきまして、例えばブータンでそういうすき、くわのようなものを含めた小型の、手で使う農機具を供与した例がございます。  それから、アフリカに対しまして私ども関係省の御協力を得まして援助しております食糧及び食糧関連援助は、食糧そのもののほかに、食糧関連援助の場合に肥料あるいは農機具等を供与しているわけでございます。その農機具の中に、先生念頭に置いておられるような小型のものも一部、すき、くわというカテゴリーには入りませんが、手で動かせる空気噴霧器であるとかあるいは手で動かせる散粉器というようなものとか、そういうものは最近は入ってきております。さらにまた、車を供与いたします場合にも、修理工具でございますね、そういうものも含めて、できるだけきめ細かく対処をするようにしておるところでございます。  私どもアフリカ、特に後発国の多いアフリカに対して援助する場合には、やはり相手国の需要というものをきめ細かく把握して対処しなければいけないということで、毎年幾つかのチームを派遣して先方とよく話し合いをさせておるところでございます。したがいまして、あくまで先方側が希望するのであれば、私どもはそういうものを喜んで供与するということで検討させていただきます。
  7. 松沢俊昭

    松沢委員 今まで、日本円に直しますと二百六十三億円、こういう去年一年間の援助があったということを聞いているわけであります。そのうち百二十八億ですか、これは食糧だということですね。そして、その食糧というのは何か、こう聞きますと、タイの米だとかあるいはビルマ、パキスタンの米、あるいはまたアメリカの小麦、こういうことになっておりますので、日本のものは余りここには入っておらぬわけなんであります。今、日本生産が過剰だということで米の減反政策が行われているわけでありますが、しかしこういうようなアフリカ飢餓というものを救うために、それなりに、休耕田なんかを利用して米をつくって、そして援助の手を差し伸べるということがあってもいいじゃないかというふうに考えるわけなんでありまするが、この点は一体どうお考えになっているか。  私が責任者をやっているところの団体では、この前大会で決議をいたしまして、休耕田に救援の米をつくろうじゃないか、そして、つくったところの米をひとつアフリカに送ろう、その場合、政府の方としてはそれなりにやはり対処してもらいたい、これはちょうど大臣お忙しかったわけでありますから官房長にそういう申し入れを実はやっているわけであります。ことし具体的に我々がそういう運動をやったという場合におきましては、政府の方としては快く受けとめて、そしてそこへ運賃などもかかるわけでありまするから、そういうものはそれなり政府の方で出して、そしてアフリカに届けるという用意があるのかどうか。  それからもう一つは、それは我々の一つボランティア活動のようなものでありますけれども、もう一つの問題といたしましては、六十万ヘクタールに及ぶところの減反面積というものがあるのでありまするが、そこへやはり稲作をやって、そしてそれをアフリカに送る、そういう運動政府自身おやりになったらいいんじゃないかと私は考えるわけでありますが、そういう点は一体どうお考えになっておるのか。  それから、今外務省の方から、そういう点をいろいろ配慮しながら実はやっておる、こう言っておられまするけれども、しかし余り具体的な——九十一億円でございますからね、この増産援助というのが。だから相当の金なんですよね。それを、どんなものになってその援助がなされているかということは、余り詳細に説明もないわけであります。これはまだその援助をする予定の金が残っているということになれば、その金の使い方、これからまた援助をおやりになると思いますが、その場合、もちろん現地状況に合わせてやるという大臣お話でございますが、それにしても、もう既に大体はっきりしてきておるのですから、そういう点についての配慮をどうなさるのか、もう一回お答えをいただきたい、こう思うわけです。
  8. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生お答えします。  援助中身等については後で外務省当局からまた御説明願うことといたしますが、私に対する主なる質問二つだと思います。その一つは、先生の御提案官房長からお聞きして私は大変感謝しておるわけですが、休耕田アフリカ支援米をつくる場合どうだろうかということと、それからもう一つは、率直に言いますと、減反をやめて生産した米を政府が買い入れ、援助に充てたらどうか、この二点が主な点だ、こう思っております。  実は、御提案の件につきましては、人道上の観点から大変理解できるものでございますけれども、ただ、具体的な点においてまだ必ずしも十分明らかでない点がございます。だから、現時点でははっきりと申し上げられませんけれども、例えば、集荷に際して他の米とどのように区別するかとか、あるいは市町村職員による確認をどのようにするのかとか、あるいはその輸送費などを含めて実質面でいろいろな問題が多いわけですが、今後さらに慎重な検討をしてみたい、こう思っております。  それからもう一つ減反をやめて生産した米を政府が買い入れ、援助に回したらどうかということでございますが、実はこれは基本的に、先生御承知のとおり、国内産米援助輸出はあくまでも過剰米処理の一環として実施してきたということでございます。そんなことで、現在過剰米はございません。そういうことでございますゆえ、現在新たに国内援助用の米を生産し、これを政府で買い入れ、輸出するのには三つの大きな問題点があると思っております。その一つは、実は国際的にも補助金つき輸出であるとして伝統的米輸出国から批判を受けるということでございます。それから第二番目には、援助効率が低いということ、それから第二番目には、米の国際価格国内価格に大きな格差があり、膨大な財政負担を余儀なくされるという点がございます。そんなことで、極めて困難であると考えております。  そんなことで、我が省としては、食糧不足の解決のためには、先ほどもちょっと申し上げましたように、あくまでもそれぞれの国自身における自助努力による食糧増産とか農業振興が重要でありますので、そのような自助努力に対しまして大いに援助協力を進めたい、こう考えておるわけでございます。
  9. 木幡昭七

    木幡説明員 お答え申し上げます。  今後のアフリカに対する援助において、今先生がおっしゃられたような点を踏まえて十分対処せいというお話でございますが、私ども先ほどお話ございました中野調査団もまたアフリカを回っていただきますし、そのほかにもいろいろな政府機関人たちが参りますので、先ほど申し上げましたとおり、現地においてよく相手国機関ともお話をして、それで先方要望としてそれが確認されましたときにはもちろん今のようなお話十分念頭に置いて対処してまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、冒頭におっしゃられましたボランティア活動等関連で、輸送料等含めていろいろと配慮せいという点につきましても、既に私どもそういう御要望をちょうだいいたしまして、例えばアフリカに毛布を送る運動等につきましても、輸送費のうちの二億円程度、いろいろ考えてそれに充てるような手も考えて既に手を打っているところでございますし、さらにまた、先生お聞き及びかと存じますが、地方公共団体の乾パンでございますね、あれを送るに際しましても、外務省予算輸送料等を負担しているわけでございます。  そのほか、もう一つ具体例を挙げますと、例えば日本国際ボランティアセンターというのがございまして、そこで、アフリカに対するボランティア活動をするに際して機材等を含めて協力してくれぬかというお話がございまして、それに対しても小型機械を供与するということを今鋭意検討している、こんなことで、それは送料を含めてやるというふうに今勉強しているところでございます。
  10. 松沢俊昭

    松沢委員 大臣減反田に稲をつくって米にしてやるということについては大変経費もかかるというお話でございますが、しかし前段の、私たち善意でつくって、そしてアフリカに送り届けたいというその運動につきましては、いろいろ検討してもらっているようでありますが、ぜひこれは前向きに実現のできるように御協力をいただきたい、かようにお願いを申し上げておきます。  それから、アフリカ飢餓という問題につきましては、現在アフリカでありまするけれども、しかしこれはよく二十一カ国の状況を調べてみますと、日本よりは深刻ではないのですね。要するに、全体の二億数千万の人たちの食べるところの用の三分の一が足りないというのですね。日本では三分の二が足りないのですからね、自給率三三%ですから。ですから、そういう立場に立ちますと、食糧問題が深刻なのはむしろ我が国である、こう言っても過言ではないんじゃないか、こう思われるわけであります。  そういう点で、これは内閣調査室ですか、で出したところのカロリーが載っております。日本人全体の平均の一日当たりのカロリーというのが二千五百九十一カロリーである、しかし、国内生産食糧のものだけのカロリーということになりますと千三百八十一カロリーであります。これは厚生省の健康増進栄養課に聞いてみましたところが、大体その程度カロリーというのは、中程度活動エネルギーで見れば二歳から三歳程度の子供が動く程度のものであって、要するに全然これは成人として仕事のできるところのカロリーではないんだ、こういうことなんですね。  そうすると、確かに一見飽食の生活を我々はやっておりまするけれども、しかし、これはなかなか深刻な問題だ。日本はこのような状況でおりながら金に物を言わせて外国から物を買っている、だから飽食が続いているのであって、それが逆に言うならば、金のない国には食糧は行かないという点からするならば、アフリカ飢餓というものはやはり日本にも、日本農政にも、日本政治にも、一かどの責任というものがあるのじゃないか、こんなぐあいに私は考えるのであります。  それともう一つは、これは「日本アフリカ」という外務省から出されたものをいただきましたのですけれども、それによりますと、安倍外務大臣あいさつが載っておりまして、それを見ますと、「アフリカは豊富な天然資源に恵まれ、「二十一世紀の大陸」として今後の発展が期待される」、こうなっています。それから、経団連アフリカ委員会委員長金森さんのごあいさつが載っております。それによると、「アフリカは五億の人口と天然資源に恵まれた世界経済・貿易上の重要な地域である」、こういうふうに書かれているわけであります。  そうすると、今、日本政府援助をやっているということは、将来その資源を物にせんがためにやっているというふうに受け取られる、あるいは誤解をされる、そういうような感じがするわけでありまして、私たちといたしましては、そうではなしに、あくまでもやはり人道的な立場に立って援助をやっておられる、こういうふうに思っているわけでありまするが、今、日本農政を担当しておられるところの佐藤大臣、前段申し上げましたようなことについてはどうお考えになっているか。それから後段の「「アフリカ月間」によせて」というところの外務大臣並びに経団連アフリカ委員会金森さんのこのごあいさつ、どう承りますか、お伺いしたいと思います。
  11. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生お答えします。  ちょっと先生と私とは見解を異にするのです。私は、日本アフリカ実情でいろいろおっしゃいましたけれども日本が今日あるのは、終戦後、敗戦という大変なショックにありながら、その間、日本人は勤勉な努力をした、そういう形の中に、外国から資源を買い、資源を高い付加価値のものにして輸出して、そういう形で実は外貨を稼ぐ、そういう形で食糧を稼いできた、これは率直に言いますと、基本的には政治が安定しておった、それは与党も野党もよかった、そういう形の中に今日の日本ができた、こう思っているわけでございまして、アフリカとは全然実情が違うと思います。その点は特に御理解願いたい。  アフリカにつきましては、私も行ったことがないから実はよくはわかりませんが、とにかく、少なくとも国民というものを忘れた権力闘争が絶えず繰り返されておるというふうな、こういう姿の中に全く国民不在なんですね。そういう形の中の農政ということでございまして、また、アフリカ国民につきましては日本人ほど勤勉でないような話も聞いております。よく知りません。そんなこともございますゆえ、その点につきましては先生と私、認識が非常に違う、こう思っています。  それからもう一つは、私は、今の日本食糧援助は純粋だと思っております。ただ問題は、アフリカにはやはり未利用の資源がまだたくさんございます。それをいかに活用するかということにつきまして、日本人の持っているノーハウを提供し、そしてむしろ向こうに行って、そういう形の中に相手国の幸せを願う、そういう形の中に日本協力するという姿についてはちっともおかしくないんじゃないか、このように考えておるわけでございます。
  12. 松沢俊昭

    松沢委員 要するに、そう悪い気持ちで載せられたあいさつではないと思いますけれども、私たち見ますと、逆にせっかくの善意が誤解されるように相手に受け取られては困るじゃないか、こういう意味で大臣の所見を伺ったわけでございますから、そのつもりで御理解をいただきたいと思います。  アフリカの問題はその程度にいたしまして、次には食糧政策の問題でございます。  所信表明でも、生産のできるものはできるだけ国の中で生産をやって、そして力をつけていくんだ、こういうお話を承ったわけでございますが、そのとき、食糧自給力強化に関するところの衆議院の決議、これは五十五年四月八日の決議でありますが、そういうのを尊重して、こういう話なんでありますけれども、去年私たちいろいろと苦労しましてつくり上げたところの決議というのは、米の安全性と需給安定に関するところの決議でございまして、これと五十五年決議というものは文言によっては相当違っているわけでございます。  私たちが去年やりましたところの決議というのは、つまり、米の問題というものが大変緊迫してまいりまして韓国米加工用に充当するなんていうことはまことに遺憾である、よってこのような事態を再び繰り返すことのないように政府はやるべきだと念を押しているわけであります。そして、備蓄というものを相当考える必要があるのじゃないか、ゆとりのある需給計画を立てなさい、その他いろいろありますけれども、こういう趣旨だと思います。  ところが自給力強化に関するところの決議に対しましては、この委員会でもときどき取り上げられました、自給力というのと自給率というのは違うんだと政府は一貫して言うわけであります。ですけれどもたちは、去年の決議というのは、要するに、そういうことが今後ないように、できるだけ米に関しては外国から入れるなんてことはやめなさい、ゆとりある需給計画をつくりなさい、こう言っているわけでありますから、やはりこれは自給率を引き上げるべきであるという趣旨であると思うのであります。  ところが大臣所信表明では、去年の決議なんというものを尊重するということでなしに、五十五年決議などを尊重する、こういうふうに言われております。そこには相当の意味深長なものがあるのじゃないかと私思いますが、どうですか。
  13. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  農政の展開に当たりましては、国民生活にとり最も基礎的な物資であります食糧を安定的に供給するため、総合的な食糧自給力の維持強化を図ることを基本としているのは先生御高承のとおりでございます。そんなことで各般の施策を進めているわけでございますが、食糧自給力強化に関する決議をそれて引用させていただいたわけでございます。  そんなことで、国民の主食でございます米につきましては、この決議と同時にもちろん昨年の米の需給安定に関する決議をも踏まえ、国内生産による自給の方針を堅持し、食糧行政に万全を期したい、このように実は考えておるわけでございます。
  14. 松沢俊昭

    松沢委員 そうすると、昨年の決議というものも尊重するんだというのが文言の意味の中には入っているんだ、こういうことでございますね。  そこで、この前も食糧庁長官といろいろお話ししたのですけれども、ことしの需給計画にはそれならば一体ゆとりというのがあるのか、備蓄はどうなるのか、そういう点につきましてお答えを願いたいと思います。
  15. 石川弘

    ○石川政府委員 六十米穀年度の需給見通してございますが、御承知のように、昨年産米は五年ぶりの豊作でございまして、現在のところ生産自体は千百八十八万トンということになっております。そのうち二十万トンは加工原料用の他用途米に向けるわけでございますので、この分を差し引きました千百六十八万トンが主食対応と思っております。  これに対しまして、御承知のように昨年の端境期におきましてかなりの新米早食いと称するものをやっているわけでございます。これは先生御承知のとおり、端境期、当然新米に対する需要が相当ございますから、このこと自身がいわばある程度の数量は通常あるわけでございますが、その通常のペースまでどの程度戻すか、例えばそれを五十万トン程度にまで戻すと考えましても、六十米穀年度の実質的な供給可能量というのは千百二十万トン前後のものがあるわけでございます。現段階での需要見通し、これは詰めてまいらなければいかぬと思いますが、総量としますれば千五十万トンに前後して動くのではないか。そうしてまいりますと、全体のゆとりとしまして、米穀年度末には六十から七十万トンのものが全体のゆとりとして出てくるというのが今の推計でございます。  ただ、これはあくまでも現段階の推計でございますので、これは作柄を見ながらやっていくわけでございますが、そういう意味で、当初三期の計画で四十五万トン前後のものを頭に置いたものより若干ゆとりがあるという状況でございます。
  16. 松沢俊昭

    松沢委員 このゆとりの数字につきましては私はいろいろ異議があるわけでありますけれども、それはそれで長官の言葉を受けとめまして、大臣、六十万トンから七十万トン程度の備蓄ではこれはもうゆとりのある備蓄とは言えないのじゃないか。大体一カ月の消費者の消費量というのは五十万トンから若干上回る程度というのが今まで平均になっているわけでありますから、したがって二カ月分もないのですね。これはゆとりあるものではないと思います。  それからもう一つは、それでも昨年までは五十三年以前の米が八十万トンありましたから、それを何とか利用する。五十九年の場合におきましても、棚上げしたところの古米処理の決定済みの米を使って何とか食いつなぎをやってきた、そういう経過なんでありますが、今度は本当にないのですね。まるっきりないんだ。だからこれは大変な状態でありまして、万が一にもことし不作になったということになりますと、一遍にお手上げという状態になるわけでございます。そういう点からいたしまして、減反という問題につきましてはもう少し考えなければならない時期に来ているのではないか、こう思います。  それからもう一つは、食糧庁の計算等にいたしましても、米の消費の動向と食糧庁の需給量の推移というものはちょっと違っているんじゃないかというような気がするのです。例えば、主食用は五十九年見通しといたしましては六百八十万トンから六百八十五万トン。それが六十年計画では下がっているわけですね。十万トンから十五万トン下がりまして六百七十万トンぐらいと見ているわけですね。それから酒米にいたしましても、純米酒というものを我々はいろいろ宣伝をやって拡大しようじゃないかと言っているのに、これは五十万トンが四十五万トンになっている。こういう状態でありますから、仮に生産が下がったとしても、供給量というものを相対的に減らしておけばつじつまだけは合うというような計算で行われているような気がするわけであります。そういうことが、いよいよ不作ということになると一層深刻な問題を引き起こす、こういうことになるわけでありますから、そういう点はやはりそう作為的なことでなしに、もっと実態に合ったそういう需給計画というものを立てる。しかも、これではゆとりのあるところの需給計画ではない、もっと備蓄というものを考えていかなければならぬじゃないか、こんなぐあいに考えるわけであります。  ところで、ことしの予算を見ますと総体的な農林水産予算というものは削られてきておりまして、全体の予算の中に占めるところの農林水産予算というのは、実はウエートが戦後最低になってきているわけですね。そこで、食糧管理等におきましても、結局、これは一般会計からの繰り入れが五十五年と六十年を比較いたしますと七〇%、三割減ですね。それから、国民生産はどうなっているのかということになりますと、一三三%でありますから三割以上伸びているわけですね。農林省全体の予算から見ますと、九二%ですから八%減っているのですよね。  こういうような状態でありますから、農林大臣が——佐藤農林大臣というのは私は大変まじめな誠実な大臣だというふうに評価いたしております。そういう農林大臣が仮にいろいろなことを言われたとしても、このような食管の経費が大幅に削られる、そしてまた農林予算が大幅に削られる。一方、防衛費の伸びなんというのは大変なものでありまして、五十五年と六十年では一四一%ということでありますから、四割以上もふえているわけなんであります。  私はここでそんな議論をする必要はないわけでありますけれども、飛行機や大砲や軍艦やそんなものは幾らあったとしても、それは食えるものではありませんから、人間やはり生きるためには食わなければならぬわけだ、食うところの食糧予算というのは大幅に削って、そして軍備だけは増強して、これで二十一世紀は大丈夫だなんという物の考え方は本末転倒だと言わざるを得ないのであります。  そういう点からいたしまして、ゆとりのあるところの需給計画を立てなければならないということは、中曽根総理大臣も去年の深刻な米不足の状況の中で本委員会においでになりまして約束をされたわけであります。だけれども予算を見ますとこのとおり、それから需給計画を今聞きますとそのとおり、これでは食糧政策は万全であるということは言えないのじゃないか、こんなぐあいに考えますのですが、大臣どうお考えになりますか。
  17. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生お答えいたします。  先ほどの備蓄についての御意見でございますけれども、長官がお答えしましたように、第三期水田利用再編対策では、ゆとりのある備蓄を確保するとともに、三度の過剰を招かないということを基本方針としておりますが、実は昨年が作況指数一〇八という豊作でございまして、六十から七十万トンの備蓄が実はあるということでございますが、でき得れば三年で、毎年四十五万トンぐらいで大体百四、五十万トンの備蓄にしたい、こんな計画でございます。  実は、これは先生御存じと思いますが、もちろん備蓄をたくさんするにこしたことはございません。ただ問題は、かつてのような過剰備蓄で約一兆九千五百億円という財政負担を生じた、これも御存じのことでございます。それから、もう一つは消費者のニーズが、古米は嫌なんですね。より新しい米を求められるということで、我が省としても備蓄に今までと違って低温倉庫を使うとか、そんなことを考えたい、こういうことで考えておるわけでございます。そういうことで、財政負担の問題がございます。そういうことで私は、いろいろな点がありますけれども、これからの作況指数につきましては、農業は天候に非常に左右されるということで、実はよくわかりませんが、普通の作況であるならば大体百四、五十万トンの備蓄ができるのではないだろうか、こんなことで政策を進めているということでございます。  また、予算の点に関してでございますが、実は先生の御指摘のとおりのようなことは非常にあるわけでございます。  実は、今度の食糧管理費というのは、先生おっしゃったことで、それぞれ例えば前年度の一〇六・九%だとか八五・五%になっているわけですが、その減少の大きな理由は四つあると思うのです。一つは、実は米の売買逆ざやが縮小してきたということです。それから第二番目には、五十年から五十三年産米に係る過剰米処理が計画的に進展したことに伴い、これに要する金利とか保管料等が実は順次減少していった。三番目には、事務人件費等の管理経費の節減合理化に努めたこと。四番目には、水田利用再編対策の転作奨励金の単価の見直しを行った。それからもう一つは、五十五年度から五十八年度に米が不作であったがために買い入れが減少した。こんなことで実は食管経費が減ったということで、特に農林水産関係予算全体の編成のために食管会計が減ったということはございません。  こんなことでございまして、今後とも予算編成をめぐる環境は大変厳しいと思いますけれども食糧管理を含め農林水産行政の円滑な進捗に必要な予算につきましては、これを確保してまいる所存でございます。
  18. 松沢俊昭

    松沢委員 いや、大臣の誠心誠意頑張っておられることにつきましては別に異存はないわけでありますが、いずれにいたしましても、さっき私申し上げましたのは、一般会計からの繰り入れの食糧管理費ですね、これが七〇%になったけれども、水田再編の問題につきましてはこれは別でございまして、七九%に減っているわけでございます。でありますから、さっきの答弁の中には水田の再編も入っていますけれども、それは除いての議論を私やっているわけであります。  それからもう一つは、農林省の方で昭和三十六年から基本法農政を推進してこられました。私たちの地域におきましても農業経営者協議会なんというものができまして、やはり中核農家ですか、規模拡大を志向しながら努力していらっしゃる方々がおられるわけであります。ところが、最近私のところへ遊びに来られまして、もうこれ以上どうにもなりませんと言う。十八町五反までふやせと言うが、米の値段がもう少し上がってくれれば何とかなるけれども。今、私はまだ条件がいい方だと思う。それで、大体反当五万五千円払わなければなりません、借り賃を。ですから、米どころと言われるところの新潟県西蒲原郡あたりなど、四俵半ということになるから、これは限界だと言うのです。どうしても規模を拡大するというところの考え方があるとするならば、生産者米価を上げてもらわなければだめですよ、これ以上どうにもならぬじゃないですか、こう言っているのですね。  それはそう言うわけですね。小作料は本当に高くなってくるわけだから、その小作料を補てんするところの米の値段にしてもらわなければならない、こういうことで、私も仕事柄あっちこっち回りますけれども、そういう農家にあっちこっちで会いますけれども、やはりみんな同じような意見を吐いておられるわけであります。  したがって、生産者米価というものはここずっと抑えられてきているわけでありますが、やはりこれはある程度考えなければならぬところの時期に来ているのじゃないか。さっきお話がございましたように、逆ざやというものを解消するということをやってきた、なるべく赤字はない方がいいというのが農林省の考え方だと思いますけれども、しかし、本当に米生産というものを考えた場合、これでいいのかどうかということは大変問題があるのじゃないか。そういう点で安くなったんだ、いわゆる削減の原因の一つになったんだ、原因の一つはそういうものがあるんだということを言われることにつきましては、私は余り納得がいかぬわけなんであります。  結局、食糧管理費というものをもう少しやはり、防衛費がふえているのだから、防衛費は三兆円を超したのですね、三兆一千三百七十一億円ということになっているわけです。一般会計からの食糧管理費の繰り入れというのは四千五百六十一億円しかないのですから、幾ら何でもこれでいいのだということにはならないのじゃないか、私はこう思います。だから、去年も米審を開きまして消費者米価の引き上げなんかをやっておられるわけでありまして、そういうことが逆ざや解消ということにつながっているわけで、あれから言うならば、生産者米価は二・二しか上がりませんでしたから、だから実際上はちっとも全体的に見るならばあれがないわけでありますから、その辺は一体どうお考えになりますか。
  19. 石川弘

    ○石川政府委員 食管の財政全般のお話でございますが、食管のいわゆる赤字と言われているものは、大きく申しまして売買逆ざやのような性質のお金と、それから食糧を管理をいたしますための経費と、それからもう一つ、過去におきまして大変な赤字をいたしました、それを処理をいたしました損失を毎年補てんをしております、この三つの経費から成っております。それから広義の食糧管理費は、もう一つそれに御指摘の水田利用が入っているわけでございます。  売買逆ざやにつきましては、政府が買います値段と売ります値段の間に差がありますこと自体が、物の流通ということから考えましていささか問題があるということでございまして、御承知のように、末端逆ざや解消以来、鋭意売買逆ざやを何とが解消できないかということで来たわけでございます。  その場合、ただその両者の差をなくするということでは、これは食管法上は問題がございますので、生産者米価については再生産確保という観点から毎年定めてまいりました。それから消費者米価につきましても、これは家計の安定を旨とするという法律の明文に従いましたものをやりまして、その結果として、御承知のように、今回、一−五類、一−二等平均で売買逆ざやがマイナス一・九ということで大変少ない差になったわけでございます。御承知のように、例えば一等一類とかは既に順ざやでございますので、売買逆ざやの解消につきましてはかなりの程度進んだと思っております。したがいまして、その結果として起こります財政負担の軽減というのは、総量として減っておりましても、そのこと自身はむしろ前進ではなかろうか。  それから、食糧管理費につきましては、大臣からお答えいたしましたように、結果といたしまして持っております米の量が減りますれば管理経費はおのずと減ってまいります。したがいまして、今回の場合の管理費の減というのは、そういういろいろな要因、ゆとりが少ない中でどちらかといいますと管理費が減ってきたという経緯もございますので、これから備蓄をしながらある程度ゆとりを持って管理をしていくということになりますと、その総量に応じまして保管経費なり金利等はやはり増高する頃向を持とうかと思います。特に、管理費等の中で、私ども良質の米をいつでも供給できるように管理いたしますためには、低温倉庫の活用等を考えますので、そういう場合、そういう増高要因もあるわけでございます。  ただ、管理費の中でも、例えば包装なり保管なり輸送の経費等につきましては、大型の流通諸施設を入れていくようなことによる合理化は当然必要でございましょうし、また事務人件費等につきましても、極力要員規模その他につきましても節減あるいはいろんな形での合理化をいたしまして、管理経費を少なくするということそのこと自身は、やはり食管を健全に運用しまして、いわばやみ流通と申しますか、その他の流通に対応するためにも合理化が必要であると考えております。  したがいまして、私ども先生御指摘の防衛費との対比云々というようなところでお答えしているわけではございませんけれども、管理費自身はある程度合理化しながら、しかし真に必要なものはこれは当然のこととして要求をしていくという基本的態度で今後もやっていくつもりでございます。
  20. 松沢俊昭

    松沢委員 いろいろのそれなり説明はわかりますけれども、ただ、何といっても生産者米価を上げるには、食糧管理費が不足であれば上げるわけにもいかぬわけです。それから、今までの農林省のやりくりというのは非常に苦労してこられたと思うのですよ。公共事業をやるためにどこを節約してやってくのかということで、順々に食管経費というものを削りながらやってきたわけです。これは既に限界なんです。だからこの辺で一奮発して、取るところは取っていかないと農林省も成り立たないことになってしまうのじゃないか、そういう意味で申し上げたのでありますから、その趣旨大臣十分おわかりだと思いますが、どうでしょうか。
  21. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えいたします。  おっしゃる趣旨はよく理解できます。
  22. 松沢俊昭

    松沢委員 それから次は、学校給食の問題と負債対策の問題と二つあるわけでございますが、もう時間がありませんので、まず負債対策の方を先にやりまして、時間があったら学校給食問題をやりたい、こう思うわけでございます。  そこで、今国会におきまして実はいわゆる金融三法が提出、審議されることになっておるわけでございます。その中には、無利子の資金制度などいろいろ工夫して農業発展のために努力しておられる、そういう点は私も認めるわけでございます。ただ問題は、金をこういうふうにして貸してやるぞという前に、今までの借金を一体どうしてもらえるのですか、そういう声というのをひとつ聞いてもらわなければならない。  これは農林省の方から、どんな状態になっているかということをひとつ教えてくれということで資料をもらったわけでございますが、単一経営の場合におきましては、借入金が一番ひどいのは肥育牛が千二百七十二万円、それから養豚が六百三十九万円ということで、稲作が一番少ないということになっているわけであります。  それで、私の地元の農協の組合員が、経済連の預託養豚ですか、これを農協の方で勧められまして、やったわけです。全く何にも悪いことしないで、農協の指導のもとに、農協からえさを買って食べさせながら飼育をやってきたわけですが、十年たちましたところが四千万以上の借金になってしまったわけです。それで、もうここまで来れば始末をつけてもらわなければならない、こうなりました。そこで農協に対して、何を言っているのだ、おれは別に悪いことした覚えがないじゃないか、あなた方の指導のもとに養豚経営をやったら結果的にこうなったんだということで、大騒ぎになりまして、結局田畑、山林、家屋敷、全部処理をしまして、経済連と農協も四百万円くらい負担いたしまして、そして何とか始末をつける、こういう状態になった農家があるわけです。  これは一人ではありませんで、あっちこっちにそれがずっと点在しているわけでありまして、こういう農家に対するところの負債対策というものは真剣にやっていかなければならぬところの時期に来ているのじゃないか、こう思います。  それからもう一つの問題といたしましては、土地改良の償還金の問題であります。これも実は大変な事態に入っております。これも私の選挙区でありますけれども、いろいろ争いがありまして、そして当時の鈴木農林大臣が中に入って解決をつけられたという、そういう歴史的な事件のあったところの干拓地でございます。これが立派な田んぼになったわけでありますが、百六十九ヘクタール干拓をやったわけであります。  ところが、そこに米をつくってはならないということでけんかになったわけであります。米をつくるためにつくったものを、米をつくってはならぬということで、その結果騒ぎになって、三分の一は米をつくってもいいということになりましたが、現在四十三町六反五畝が、つまり土地改良に届けられたところの農地で、とても維持するわけにいかぬというわけで人に売ってしまった。それから、隠れているのが三十町歩、合わせますと七十三町歩、百六十九町歩のうちの七十三町歩というのが、売らなければ始末がつかぬという農家になってしまっているわけですね。  償還金の話はどうなっているのかということになりますと、今二万四千七百六十三円、事務費、維持管理費を含めますと約四万円ということになっているわけであります。この四万円を出すことができなくなっているのを一体どうするか。これを救わなければ全部田んぼを売っ払ってしまわなければならない。何のために増反干拓をやったのか意味がわからなくなってしまうじゃないか。  それから、これは新潟県の入広瀬村でありますが、山間地帯であります。これも土地改良をやりまして今償還に入っているわけです。ところが、金がないわけでありますから、どうしても償還せいということになると村から農民が逃げてしまうのですね。これはどういうことかといいますと、買い手がつかぬわけですよ。農地の買い手がつきませんで、借金の催促をされるから逃げてしまう。仕方がないから、村の方といたしましては、一反当たり二万三千円以上の償還をやる者に対しましては残高は払ってやるということで過疎の防止をやっているわけです。これで年間四千五百万円くらいかけているわけであります。  こういうふうに考えてみますと、農業基本法が制定された当時におきましては、畜産三倍、果樹二倍というキャッチフレーズがあったわけであります。その畜産がこのような状態になってしまっている。  それからもう一つは、汎用田をつくらなければならぬということで一生懸命に土地改良事業が行われた。基盤整備は大変結構な話でありますが、しかし、それに伴うところの収入がふえなかった。こういうようなことからいたしまして、結局、土地改良の償還金返還に当たってはこのような結果になってしまっている。これは私の県だけではないと思います。もっとひどい県もあると思うのであります。  そうなると、確かに金融対策につきましては農林省の方でもそれなりにいろいろとお考えになっておられますが、しかし、その金融対策とは別に、この負債対策は当然農政の日程に上らせなければならない時代に来ているのじゃないかと思います。この点につきましては、私は農林大臣に、政府機関において調査をされまして、負債の整理組合というのが戦前ありましたね、あれに類するものをぜひ何とか御検討いただきたい。  それから、これは委員長にもお願い申し上げますが、やはり委員会におきましても、負債対策をどうするかという調査委員会のようなものをできましたらひとつ設置していただきたい、これは御提案申し上げます。理事会でぜひ諮っていただきたい、こう思うわけであります。どうでしょうか。
  23. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  土地改良事業につきましては、御案内のとおりのかなり高率の補助金を交付しております。これは農家負担を軽減いたしますのが目的でございます。また、負担金の償還につきましても、国営事業の場合、国営事業が完了いたしまして後、延べ払いで負担金の返還をしてもらうようになっておりますけれども、これにつきましても長期低利の延べ払いということになっております。また、県営、団体営事業等につきましては、地元負担につきましては公庫の低利長期の融資でカバーする、こういう状況でございます。  また、御案内のように、最近整備水準が上がってきておりますし、かつまた工事が中山間地帯の方に移行しております関係もございまして、かなり工事費が増嵩してきているという事実もございます。  こういう状況でございますので、私どもといたしましても、極力農家負担を軽減いたしますために、補助率のかさ上げでございますとか償還条件の緩和というようなことをやってまいったわけでございますし、また、新規事業の採択につきましても、事業計画全体を、なるべく事業費を抑えるというような形で今採択をしてきているわけでございます。また、地区によりましては、あるいはその工事の中身によりましては地方公共団体の方にさらにプラスの負担をお願いをしているというようなところもございます。  そういうようなことで、確かに農家の負担の方は増高してきております傾向にはございますが、ただいまのところ償還金の返還につきましてはまあまあ予定どおり行われてきている、こういう実情でございます。
  24. 野明宏至

    ○野明政府委員 畜産経営の負債問題につきましては、これまで、例えば五十七年には養豚とか肉用年等につきまして肉畜経営改善資金の貸し付けを行う、あるいは酪農につきましては五十六年度から五年間の予定で酪農負債整理資金の貸し付けを行うというふうな特別な措置をとってまいっておるわけでございます。  最近の状況を申しますと、養豚につきましては、価格も安定しておりますし、えさ価格も安定しておるということで、一般的には経営内容はよくなってきております。全体で見まして、負債も減ってまいっておりますし、それから所得もふえてまいっております。  ただ、一部にはいろいろな要因によりまして借入金の償還が困難となったものが見られるわけでございます。こういった農家につきましては、自創資金の再建整備資金というふうなものを活用いたしましてその再建整備を図るとかいうふうな措置をとりまして、その経営の改善に努めておるわけでございます。もちろん、地元の農協等の金融機関における努力、それから農家のいわば経営、家計全般にわたる合理化努力、あるいは関係機関の指導というふうなものも必要でございまして、そういうものも同時に行いつつ、その経営改善に努めておるところでございます。
  25. 今井勇

    今井委員長 先ほど松沢委員から委員長に対しての御提案がありましたが、内容等をよく理事会で諮ってみたいと思います。御了解いただきたいと思います。
  26. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 松沢先生お答えいたします。  もう既に両局長から御答弁したわけでございますが、私、就任早々各地を現地視察したいということで、養豚工場の中へ行って見てまいりました。そのときに実はわかったのですが、ある会社が倒産したのを引き取ったわけです。つい最近、若干採算が、価格が上がったと言っていました。したがって、恐らく価格が安かったからだと思います。そんなことで、そういう地域の実情に合わせていろいろなことを我が省でやっております。  それから、私の手元に実は農家の世帯貯金総額平均千二百万とか負債が百八十八万と出ていますが、これは兼業農家も入っているということで、専業農家はございません。そんなことで、先生の御趣旨のように一遍検討して、もし事実なら対策を練ってみたい、こう思っています。
  27. 松沢俊昭

    松沢委員 大臣からいいところの御答弁を賜りまして、ありがとうございました。ぜひひとつ調査をしてもらいまして、大体こういう表というものは平均ですから実態というのはなかなか把握しにくいという面がございますので、調査をしていただきまして、今も畜産局長それから構造改善局長の方からもいろいろと御答弁ございましたが、これはばらばらでなしに、やはり農林省として一つの、農家の負債対策はどの分野はどうなっているか、どの分野はどうなっているかということを総合的にひとつ検討をして、そしてこれに対するところの対応をやってもらう、こういうふうにしていただきたい、こういうことを御希望申し上げておきます。  あと、学校給食の問題等について、文部省の方からもおいで願っておりましたのですが、もう既に時間が参りました。よって、これはいずれかの機会に譲りたいと思います。  ただ、申し上げておきたいことは、子供の健康というものをやはり前提にしながら給食問題というものを考えてもらいたいということと、もう一つは、農林省が提唱しておりまするところの日本型食生活というものが伸びるための学校給食、こういう方向で行ってもらわなきゃならないと思いますが、今日は逆に経費が節減されまして、子供の健康などというものは顧みられないような傾向が出ているような気がいたします。そこで質問したいと思っておりましたのですが、時間がございませんので、これで終わりたいと思います。  以上であります。
  28. 今井勇

    今井委員長 次に、田中恒利君。
  29. 田中恒利

    田中(恒)委員 きのうから大臣所信表明に対する質疑が行われておるわけでありますが、佐藤農林水産大臣、非常に積極的に御答弁に立っていただきまして、我々も、まあお役人の御答弁もそれなりに大変深い味わいがあるわけでありますが、やはりお互い政治家としてこの厳しい農林漁業をめぐる情勢の中で生に大衆というか国民に接しておる者の立場では、立場は違っても共感するところがまたあろうかと思いますので、今後ともひとつ大臣の率直な御意見を当委員会に吐露していただきますようにお願いをしておきたいと思います。  昨日来の質問を通して大方の問題点は出ておると思うのでありますが、やはり政治の顔は予算であります。予算は数字で示されるわけでありますから全く客観的であるし、うそ偽りがないわけでありまして、言葉の表現や文章ではどうでもとれるけれども、数字は動かしがたい事実であります。そういう意味で、農林予算の今年度の総枠が大きく下がったということをめぐって各委員の、これからの農林水産業は一体どうなるんだ、こういう不安が率直に投げかけられたと私は思うわけであります。  これに対して、私は大臣も大変内心はしんどいんだと思いますが、立場がございます。昨日私のところの島田委員質問に対して大臣は、この状況はやむを得ないと考える、こういう意味もそれに含まれていると思いますが、同時に、生産性の向上とか活力ある村づくり等で質的な充実が図られると確信する、こういうふうに明言せられたわけでありますが、私はこの質的な充実というものは具体的に一体どういうものを意味させようとしておるのか、もう少し詰めていかなければいけないように思いましたので、まず冒頭にこの点について、大臣がこの予算を通して、今日の我が国の農林水産業をめぐる極めて困難な情勢の中で、質的にこういう点がこれから強くなる、前進していく、そういう内容のものを具体的にひとつお示しをいただきたいと思うわけであります。
  30. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えさしていただきます。  今年度予算につきましては、本当に御指摘のとおり非常に厳しい予算でございまして、皆様方の御支援を賜りながら、私自身も大蔵大臣等と会いまして、最善の努力をいたしたわけでございます。そんなことで、御質問の質的充実ということでございますが、これを幾つかの点でお話ししたいと思います。  第一番に、生産性の高い、土台のしっかりした農林水産業を実現していくためということでございますが、これに実は二つございます。その一つは、地域農業整備総合対策を発足させるということでございまして、これは六十年度の予算案で六十八億九千百万円ついてございます。二番目には、農業改良資金制度を再編拡充するということでございまして、六十年度の貸付枠を四百六十億にいたしております。  それから二番目に、二十一世紀に向けて先端技術の開発普及による魅力ある農林水産業を築くため、こういうことでございまして、これは二つございまして、大きく項目を分けまして、一つは、バイオテクノロジー先端技術の開発関係予算を大幅に拡充するということでございまして、六十年度予算額は十九億六千万円でございます。これは対前年比五三%増、こうなっております。それから二番目には、ニューメディアを活用した情報システムの開発整備関係予算を拡充するということでございまして、六十年度予算額は三十一億七百万円でございます。  大きく分けまして三番目には、農林水産業に携わる人々の意欲と生きがいを進めるための、農村、山村、漁村のそれぞれにおいて農林水産業に基盤を置いた活性化を図るための対策、すなわち村づくり予算でございますが、これは三つございまして、一つは、地域農業整備総合対策、先ほどお話しした六十八億九千百万円、国産材主産地形成対策事業、これは二十億三千百万でございます。もう一つは、漁業関係で沿岸地域活性化緊急対策事業、約十億、これを中心にやっております。  もちろん一方において減額した経費もございますが、それぞれ効率的かつ的確な執行に努めることにより、我が省の果たすべき役割の円滑な推進に支障がないものと考えております。
  31. 田中恒利

    田中(恒)委員 今お示しになった諸点をめぐって、私も若干、それぞれの各論ごとに私の意見を申し上げながら議論を展開してまいりたいと思いますが、その前に、同じようにきのうの質問お答えになったわけでありますが、今度の予算を見ますと、今まで行革、財政厳しい、こういう情勢で、特に農林水産省に対しては、他省に比べて私どもには厳しい査定というか予算の縮減が出てきた。しかしそれは、毎年毎年苦労しながら補助金を整理統合したり各省の予算を一括に削ったり、こういうことでやってきたけれども、ことしの場合は実際問題としてそれでやれなくなった。そういう壁にぶつかって制度、政策、仕組みに対する切り込みが行われ始めた。これが蚕糸の安定法の改正であり年金法の改正であり農業災害補償法の改正である、その他幾つかありますが。つまりこれまでの我が国の農政の路線とは違ったものを何かつくろうとしている、いいか悪いかは別にして、それは感じます。  その際に重大な問題は、これまで日本農政のある意味で柱であったのは何といっても食管制度を中心とした価格支持政策であります。この価格支持の問題については昨日来からいろいろ議論がありましたが、大臣所信表明を見ましてもこの価格政策という表現はことしの場合ほとんどない。去年、おととしごろから大分薄らいできております。きのうの、これもやはり島田さんの質疑に対する御答弁でも、価格政策は限界に来た、こういうお示しを大臣はせられておるわけであります。  私は、これは自分の意見を申し上げますが、価格政策というものはまだ限界に来ていないとも思うし、価格政策というものを後退させてはならない、そういう立場に立っております。現実に与野党を通して政治家は、米価のときあるいはいろいろな畜産物の価格のとき、上げ上げと言って攻めていっているのは事実のとおりであります。それがいい悪いは別にしまして、私は日本の零細な今日の農業の実態を見て、価格政策というもので、私は前から言っておるのですけれども、一定の農家の自己資本蓄積というものをやらないと新しい農業への展開のばねにならない。融資でやっていくという政策に今度切りかえようとしておるわけですが、融資でやっていくという政策の背後には、必ず借金雪だるま式の経営に転落させるという危険性があるわけであります。  私は諸外国の構造改善政策の歴史を見ましても、価格政策と構造政策は均衡的に整備をされていく、ヨーロッパを中心とする、我が国農業基本法の前身であるフランスその他の基本法農政をとってきたところの道筋としても、そういう流れをしておると思うのです。そういう意味で価格政策について大臣はどういうふうにお考えになっておるのか、構造政策と価格政策の関係をどういうふうにお考えになっておるのか、この点を各論に入る前にお尋ねしておきたいと思います。
  32. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えいたします。  実は私も基本的に価格政策を後退させるつもりは毛頭ございません。ただ、私が島田先生の御質問に対して答弁したその真意を簡単に申しますと、御存じのように近年、食糧消費支出の伸びの鈍化がございます。それから農産物需給の緩和、さらには消費者の価格意識の高まり、こういったようなことで、一般に農産物価格の上昇による農業所得の確保を期待することは難しくなってきておるということでございます。したがって、今後は農地の流動化とか農業生産の組織化を通ずる規模拡大や生産政策の積極的な推進により生産性の向上に努め、所得の確保を図っていくことが大切であるということでございまして、価格政策についてもこれらの政策との関連に十分配慮しつつ適切な運用を図りたい、こういうことでございます。
  33. 田中恒利

    田中(恒)委員 この価格政策のあり方の問題をめぐって、統一的なものになっていない節があるのですね。それぞれの作物別にどういう価格の支持水準を持っていくかということについては、生産費所得補償方式ということを我々は強力に主張しておりますけれども、現実の政策の中は必ずしも生産費所得補償方式だけではない、さまざまなものになっている。そういうものを一本というか、何かきちんとしなければいけないという研究会なり、そういう議論をしようという動きがあった時期も承知いたしておりますけれども、今日余りそういうことは言われなくなってしまって、何か構造改善、大規模経営というかけ声が強まっていますね。そうすると勢い専業でやれるところの農家ということに実際問題としてはなっていくのですよ。  ですから、そういう議論を実はしたいのですけれども、きょうは時間がありません。結論的にこの際極めて端的にお尋ねをしておかなければいけないのは、もうこの三月の末には畜産物の価格の決定が参ります。恐らく蚕糸も、法案が新しく出ておりますから、この新しい法案に基づく蚕糸の決定、引き続いて最大の問題である米価の決定、こういう価格決定のシーズンに入ってくるわけであります。この価格決定をめぐっては、これまでの方式どおりやっていくということでございましょうか、何か変化があるということでありましょうか。
  34. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 価格政策の整合性なり総合的な見方ということで過去省内で若干検討会も開いたことがございますけれども、それぞれの価格政策対象物資の流通なり価格形成のあり方、それがそれぞれによりまして事情も異なっておるわけでございまして、全体について一律的な考え方というものはなかなか難しいわけでございます。  当面、三月に畜産物価格でございますとかそれから繭糸価格、こういうものがあるわけでございますけれども、それぞれの法律に基づきまして関係審議会に御意見を聞き、何とか適正に決めていきたいというふうには全体的には考えておるわけでございます。
  35. 田中恒利

    田中(恒)委員 何とか適正では困るので、現実の経済事情を見て、従来の経過もございますけれども、我々は、やはり生産費所得補償に基づいてやってもらわなければいかぬ。価格政策が後退してしまって、ことしは据え置きだあるいは後退だ、こういうことでとられては大変なんですが、そこのところはきちんと経済状況、食管法の規定に基づく米価の決定、あるいは畜産物の価格安定法に基づく決定、これは狂いなく行うということですね。
  36. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 それぞれの根拠法に基づきまして適正に決めてまいりたいと思っております。
  37. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、先ほど大臣の方からお話がありました幾つかの問題について、私の問題意識を含めながら御質問させていただきます。  一つは、やはりことしの予算の大きな特徴は、先ほど大臣の方からも農業改良資金制度などを中心とした金融問題が出てまいりましたが、あるいは先ほど所信表明、政務次官のお話の中にも明確になっておりますように、補助金から融資へ、こういう視点が非常に大きく出てきておると思います。金融を中心とした農業政策の展開というものが非常に強まっていくだろう、こんな見通しを私は持っております。生産性の高い、基盤のしっかりした農業をつくっていくその手法の中に、従来の補助金というものもありますが、融資というものが出てくるのですね。  そこで、この融資というものをこれから進めるに当たって、これまでの、もうやってきておるわけでありますが、そういうものの反省の上に立って特にどういう点を留意というか問題意識として持っておらなければいけないというふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  38. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 先ほど来補助から融資へという政策手法の転換と農家負債の問題、御議論が出ておるわけでございますが、農家負債につきましては先ほど大臣からもお答えをいたしましたように、平均的に見ますと貯蓄が借入金をかなり大きく上回っているという状況にございますけれども、地域によりあるいは作目によりまして相当厳しい状況にあるところもあるというふうに考えられます。またそういう事例も私どもも耳にいたすこともあるわけでございまして、このため農家等の実情に応じまして、例えば災害の場合に公庫資金あるいは近代化資金の償還条件の緩和でございますとか、あるいは自作農維持資金、そしてまた酪農経営負債整理資金等々によって対応をいたしておるわけでございます。  補助から融資への切りかえに当たりまして、やはり御指摘のような農家の負担能力というようなことが問題になるわけでございまして、そういう観点から無利子資金の導入等そういった点にも配慮をして、助成方法の切りかえということをやってまいるようにいたしております。例を申しますと、五十九年度予算におきまして、畜産振興資金供給事業ということで、それまで畜産総合対策事業という補助事業の中にございました畜舎、サイロ、機械等につきまして、補助から融資への合理化の観点から、この五十億円を補助金から回転資金というような形にいたしまして、仕組みとしては改良資金に似た仕組みでございますが、国が財政資金を出し、都道府県の財政資金とこれをまぜ合わせまして、畜産振興資金供給事業ということで無利子の融資の制度をつくったわけでございます。  また、六十年度予算におきましては、農業改良資金制度の再編拡充ということで、新地域農業生産総合振興対策事業という補助事業の中の一定の機械、施設に対します補助につきまして、農業改良資金制度に基づく融資にこれを切りかえるということで、畜産振興資金もこの改良資金の中に位置づけていく、こういった形で無利子資金の拡充という手法を重視をしながら対応してまいっているわけでございます。
  39. 田中恒利

    田中(恒)委員 細かい問題はそれぞれの法律が出ておりますからそこで細かく詰めさせていただきたいと思っておりますが、大臣、この農業基本法農政が展開されて以降、日本農業の生産部門の中で、よく言われる生産性の高い農業、国際対応力を持つ農業は一体どういうものができたんだろうかと見ますと、やはり鶏ですね。鶏卵、養鶏、これは今日日本は世界一じゃないかと私は思うのですね。恐らくその飼育羽数などについてもアメリカを抜いておるのじゃないかと思います。  しかし、この鶏をやっておる農家は非常に規模拡大、規模拡大で淘汰をされて、小さいのは全部倒れてしまいました。そして、今残っておるのは、いわゆる飼料資本と結びついた養鶏というものが一番強いようですね。系統の共販もそれほど強くない。そして、非常に大きな借金をかぶって動いておる。私たちは、こういう視点に立って、養鶏に対しての党の法案の準備を今しておるところでありますが、これが一つあると思うのです。  それから今一つは酪農であります。いわゆる土地に基づく農業というのはまだそれほど十分じゃありませんが、畜産は大分進んできた。酪農、特に北海道酪農は、今日農林水産省が言っておるヨーロッパ並みの水準に達してきたと思っております。  しかし、私どもが北海道の方々からいろいろ資料をいただき、分析をしてみると、この北海道の生産コスト、つまり生産性というものはヨーロッパ並みでありますが、ただ一つ違っておるのは資金のコスト、いわゆる借金の返済であります。借金が非常に大きい、これも御承知のとおり。その資金コストがヨーロッパに比べて高い、これが、残念ながら今北海道がEC諸国の酪農に比べて少しまだ足らない点のようであります。つまり、日本農業のある意味では生産性の高い農業経営の部門というのは、やはり資金面の重圧というもの、これは養鶏を含めて、酪農を見ても出てきておると私は思うのです。  それは一体どこに原因があったのかということ。私も実は農業団体に長い間おった人間でありますが、金を貸すということはやるのですよ。しかも、今から金はだぶついてくるわけですから、金は相当出てくると思いますね。金は貸すけれども、その貸した金をどういうふうに有効に使わせて、そして農業所得をふやしていくという方面について、これは農家が一番考えなければいけない問題ですよ。しかし、現実に、農業団体を含めて行政もそういう面が非常におくれておると私は思うわけですよ。だから、指導金融とよく言われるわけですけれども、指導金融の部面というものが強力に並行していないと、金融政策を補助から金融へ切りかえるといったって、極端に言ったら、借金はますます拡大する政策の方向に突っ走る危険性が非常に強いわけです。  きのうからの議論の中で、このいわゆる借金問題、負債整理問題が今も出てきたわけでありますけれども、その背景には、金を貸したらそれでとまっておる、貸し方や貸付条件や金利、いろいろ問題はありますけれども、私は、その事後の金融指導というものが我が国は決定的に立ちおくれていると思うのです。まあ信用保証協会のようなものをつくって、困ったときにはこれがあるという程度のものはありますけれども、本格的に生きた、一つの営農集団なり農家に対して五千万なら五千万の金を貸して、その五千万の金を自己資本と結びつけてこういうふうに拡大させていくという事後の金融指導というのは非常に欠けておったように思えてならない。そういう面をこの際大胆に横につけないと、これは正直言って、借金をつくるだけの政策になりかねない不安があります。  こういう点について具体的にあなたのところで検討して、何か新しい芽をつくらせていただくかどうか、私の意見に対してそんなに反対はないと思うが、ひとつ大臣の御意見をお聞かせいただきたい。
  40. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 実は私も、今、田中先生がおっしゃった視点はよくわからないわけですが、一遍検討しまして、確かに、これからの日本の農業につきまして大切なことは、単なる技術指導ではなくして経営指導が大切ということはどなたかの質問にもあったわけで、そんなことを含めて実は検討し、その方向へ持っていきたいと思います。
  41. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは担当局長、どうですか。あなたの意見も聞いておこう。
  42. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 幸いにしてお呼び出しがありましたので、お答えを申し上げさせていただきます。  田中先生おっしゃいましたように、これから融資というものが重要になってまいりますと、やはり融資に際しての、また融資をした後の経営指導というものが非常に重要になってまいると思います。今までも公庫資金なり近代化資金につきまして、特に公庫資金につきましては政策的な面が特に強いということで、指導金融ということでやってまいっておるわけでございますが、御指摘のとおり、今後ますますそういった面での努力を強化していく必要があろうと思っております。  それからまた、融資機関といたしましても、例えば農協も、これを個々に見てみますと、非常によくいっている農協というのは、本当に農家の経営と生活と両方に十分目を配った、まあ農家のトータルな相談役というような形でやっているところというのは非常にうまくいっております。その反面、逆に、ちょうど購買事業とか販売事業と同じように、何か数字が伸びればいい、貸し付けの金額が伸びればそこで事業が伸びたんだというような観念でやってまいりますといろいろ問題を起こし、また、先ほど来御議論になっているような負債問題というようなこともそういったところから出てきているということも一つあるわけでございます。  特に、金融機関としましても、これから金融自由化というような非常に環境が厳しくなる中で、どうやってそれに耐え、また生き残っていくかということになりますと、やはり一般の銀行と違いまして、個人金融機関として、そしてまた、協同組合という組織を持っております特に農協におきましては、そういった経営、家計画面にわたって、本当に組合員農家に密着をした相談役になり、また指導の機能を発揮していくということが金融自由化の中で生き残っていくためにも必要じゃないか、私はそんなふうに考えておるところでございます。
  43. 田中恒利

    田中(恒)委員 具体的に一遍検討していただいて、何かその動きを示していただきたいと思います。  次に、先ほど大臣の御答弁の中にもありましたが、先端技術、バイオテクノロジー、まあニューメディアもありますが、そういうものの開発普及ということも確かにこれからの日本農業の発展のためには、技術革新はその前提でありますから、私は、この予算の中で、佐藤農政の目玉として大きく評価をする一人であります。  ただ、これからどういうふうにしてやっていくのか。この大臣所信表明か後の予算説明か、そこのところの文章の中にも書いてありますが、この開発は産学官の提携という方式で進める、こういうことになっておるわけであります。特にバイオテクノロジーの技術開発をめぐって、役所と民間、最近は民間のこの面に対する進出も非常に進んでおるようでありますから、むしろ官の方がおくれておる分野も相当ある、基礎理論については我が国の学界の水準は非常に高い、こういうふうにも聞いておるわけでありますが、産業界と学界といわゆる役所、この三つの提携というのだが、この主体は、特に農業の技術開発をめぐる主体はどこに置く考えなのか。  今の行政推進の基本は行革だ、天の声だ神の声だとまで総理はおっしゃるわけでありますから、これが今月の政権政党の一つの路線でしょう。これは裏を返せば民間活力ということですね。つまり、民間中心でこういう農業の技術開発というものをこれから進めていくという方向なのか、それとも全く三者が仲よくやっていくということなのか。私たちはこれこそ、農業の自主性というものを考えた場合に、官という言葉は我々は余り好きな言葉じゃないけれども、やはり農林省でいえば技術会議を中心にしたものが必要ではないかと思っております。これは一緒にやるということはわかるのですけれども、どこが中心になっていくのか。この問題の取り扱い方によっては、人事の交流の問題、特許権の問題、予算の使い方の問題、全部かかわってくると思うのです。そういう意味において、基本的なあり方について大臣からお伺いしておかなければいけないと思います。
  44. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えいたします。  バイオテクノロジー等の重要性は先生が御理解のとおりでございますが、この点、我が省としては、農業生物資源研究所を初めとする各研究機関を中心として、そして民間、大学等の研究勢力の協力を得ながら技術開発の推進に努めたい、こういうことでございます。
  45. 田中恒利

    田中(恒)委員 ちょっと、その文章だけじゃなくて、どうですか、民間を使って我が方が独自でやっていくということですか。
  46. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 率直に言いますと、農業生物資源研究所を初めとする我が省に研究機関がございますが、これを中心としまして、それから民間、大学等の研究勢力の協力を得ながらやっていく、こういうことでございます。
  47. 田中恒利

    田中(恒)委員 主体的に農林水産省責任を持ってやっていくということですね。わかりました。  次に、村づくりの問題があるのですが、これは漁業の関係と重なりますから、そこで一緒に質問させていただきます。ただ、地域農政をどういうふうに進めていくかということは、私ども前々から主張し続けてきたことでありますし、農林水産省のこの二、三年来の予算の中にだんだんそれがちりばめられてきた、こう評価いたしております。しかし、この地域農政は、地域にゆだねる、地域に主体性を持たせていくという言葉と裏腹に、中央の責任を放棄していくという面がひっついていやせぬか、こういう心配が常時あるわけでありますから、その点は、これからも私どもとして十分に、具体的な問題を通して見詰めさせていただきたいと思っております。  そこで、少し生っちょい話になりますが、行政改革であります。この行政改革は、昭和六十年度の農林水産省関係の行革の方針は閣議でもう既に決まっておるようでありまして、機構の統廃合が中心だと思いますが、食糧事務所、試験場、普及所、営林署ですね。具体的に大体どこがいつごろというふうにもう決まっておりますか。行革についての本年度の取り組みの内容をこの際お示しをいただきたいと思います。
  48. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 今年度の行革につきましては、既定の大方針に従いまして着実に実行しているわけでございますけれども、組織関係で申しますと、営林局の統合、これは名古屋と長野を統合するということで、具体的な場所を既に予算編成の段階において決めております。営林署につきましては九カ所の整理統合を行う。統計情報事務所につきましては十カ所の出張所の統廃合を行う。食糧事務所の支所につきましては九カ所ということで、それぞれ整理統合の数は決めておりますけれども、具体的にどこでするかということは、これからの現地との折衝なりということを重ねて具体的にそれぞれ決まっていくというふうに見ております。
  49. 田中恒利

    田中(恒)委員 この実施に当たっては、政府の方は閣議で決めておるのですから強引に出ていくのでしょうが、また関係地区は、営林局の統合の問題でも御承知のような状況が出てきたわけでありまして、各廃止をされるという食糧事務所にしても統計事務所にしても試験場にしても、これはある意味では地域の振興というか地域のいろいろなものと結びついておるわけでありますから、十分に現地の意向も聞くし、特に関係労働組合を初めいろいろな関係団体がつながっておるわけでありますが、そういうものの意見を聞いて慎重に決めていく、我々もまたその段階で必要な意見を申し上げたいと思っておりますから、その点はひとつここで確認をしていただいて結構ですね。
  50. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 十分に関係地元の御理解を得ながら進めてまいりたいと思っております。
  51. 田中恒利

    田中(恒)委員 次に、漁業問題について若干御質問いたします。  水産予算は三千四十億円、農林省予算のちょうど九・二%であります。これが少ないじゃないかということはいつも言われるわけでありますが、この水産予算の中で約六五%近いものは公共事業です。しかも、全体の予算の半分以上、公共事業の大半は漁港の建設です。こういうことに公共事業はなって、あとが非公共ということでありまして、農林省の予算の公共と非公共の割合から見ても、水産の場合は公共予算が非常に多い、しかも漁港が圧倒的に多い。  これは昔から漁港というものに対する地域の非常に強い要請もあったし、現実に漁港の持っておった漁業発展の大きな意味があったと思うのです。そういうものがずっと長い間続けられておるわけでありますからそういうことになったのでしょうが、しかし、今日の漁業情勢というものは非常に厳しくなって、極端に言えば、漁港はあるけれども船はない、人はいない、こういう状態になっておるわけです。そういう傾向をだんだん強めておることは御承知のとおりであります。だから、そういう情勢に対応する施策というものをだんだん大きくしていかなければ、漁業振興というものが的確に情勢に対応し得ないと思うのです。ことしもそういう意味ではそんなに大きな変化はないと思います。多少苦心の跡はありますけれどもね。  しかし、将来の方向としては、水産庁予算といえば漁港予算の分捕り合いみたいなことで終わってはいかぬと思うので、思い切ってやはり非公共の一般政策というものを強めてもらいたい。同時に公共予算も強化しなければいかぬわけでありますが、単に漁港だけじゃなくて、もう少し幅広く水産政策として公共性を持つものとして、例えば地域の漁業の再編整備事業といったようなものがある、こういうものに基づいて、場合によれば減船しなければいけない、そういうものに対する減船の補償をどうするかといったような問題も出るわけですね。こういったような問題まで含めて、公共性に立つ場合には公共予算として仕組んでいく、こういうような新しい着想も持った水産庁の水産予算というものを編成してもらわなければいけぬのじゃないかというふうに私は考えますが、大臣の御見解をお聞きしておきたいと思うのです。
  52. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えいたします。  水産業の振興を図っていく上においては、先生御指摘のとおり、漁港等の整備を行うとともに生産振興等の施策が必要だということは御指摘のとおりでございます。そんなことで、我が省とすれば二百海里体制の定着に伴いまして、我が国周辺水域のより有効な活用を図る観点から、栽培漁業の振興とか沿岸漁業等の構造改善等を推進するとともに、漁業経営対策の充実等、各般の施策を実施しているところでございます。
  53. 田中恒利

    田中(恒)委員 予算の問題については大臣今答弁されましたが、私はもう少し先へ入ったものが欲しいなと思いますが、これはまたいずれ別途にさせていただきます。  日ソ間の問題で昨日来もいろいろお話があったわけであります。特に公海上の権益の主張をめぐって海洋法の解釈などで非常に大きな曲がり角に来ておるわけでありますが、当面日ソの漁業協力協定、いわゆるサケ・マス協定でありますが、これは時期的に迫ってきておるわけでありますが、これの見通しはどういうふうになるか、水産庁、これは長官でしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  54. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  日ソ漁業協力協定につきまして、御案内のようにこの前東京で行われました交渉は一たん中断をいたしたわけでございますが、その段階での双方のポジションについて簡潔に申し上げますと、ソ連側としては、まず母川国に第一義的な利益と責任があるということで、母川国の第一義的利益と責任ということに重点を置いて新協定をつくろうというふうに考えております。それに対して日本側は、母川国の第一義的利益と責任ということは認めるわけでございますが、それをできるだけ公海漁業自由の原則と調和がとれるような形で規定をしていきたいということが対立点であります。  今後の交渉日程については、現在外交ルートを通じて調整をすることにいたしておりますが、サケ・マスの漁期も接近をしてきておりますので、可及的速やかに協議を再開して、間に合うように妥結するということに努めたいと思っております。
  55. 田中恒利

    田中(恒)委員 なかなか難しい問題ですから、当該交渉の折衝に当たられる大臣、長官も、微妙な状況だと思いますから私はこれ以上問題指摘いたしませんが、従来の実績もあることですし、漁期ももう迫ってきたわけでありますから、いろいろな問題はありましょうが、ぜひ実績を守っていくというような立場に立って粘り強い交渉をしていただきたいと思います。  そこで一、二遠洋漁業の問題について申し上げたいわけでありますが、日米、日ソいずれもそうでありますが、漁業の交渉というものは非常に難しくなってきた。そして長期化をしております。これは二百海里というものが国際的な常識になってきたということでありまして、こういう中で粘り強く交渉をするということで進められておるわけでありますが、それだけでもなかなかやれないような局面に立っているのではなかろうか。そういうものと絡んで日本の漁業問題に対する政策の体系なり考え方というものを根っこから改めていかなければいけない事態になっておるんじゃなかろうか、こんなふうに私などは思います。  特に遠洋漁業、沖合漁業、沿岸漁業、この三者に有機的な連関を持たせなければいけない、こういう事態になっておる。しかし現実には遠洋漁業は大臣認可漁業を通じて魚種ごとの形態からまだ一歩も出ていない。しかし実際問題はもうそんな小さな漁業経営なりあるいは漁業交渉の段階を外れて、漁業界、水産業界あるいは加工業界を含めた全体がかかっていかなければいけないような、その中で遠洋の持つ役割りあるいは沿海と沿岸の組み合わせ、こういうものを考えていかなければいけないような状況になっておると思います。  そういう意味で私は改めてこの段階で、日ソの問題も非常に難しいわけでありますが、日ソ、日米あるいは朝鮮問題、これらを含めて全体的な我が国の漁業政策の再検討をしていただいて、業界などと十分話し合ってそういう方向の道筋をつくっていただくようにこの際特に御要望しておきたいと思います。この点について御見解があればお答えをいただきたいと思います。  同時に、日米漁業交渉を通してジョイントベンチャー方式、つまり合弁事業方式というものがだんだん強まってきております。御承知のスケソウダラについては本年十万トンふやして四十三万トンを民間の協定という形でのまされておるわけでありますが、このスケソウダラはIQ製品でありますから割り当てをしておるわけでありますね。ですが、これはアメリカ側の実態があるし要求があるわけでありますが、実質的にだんだんのまされていくと、名実ともにIQ制度が崩れて輸入の魚がふえていく、こういうふうになっていくのじゃないかと思いますので、このジョイントベンチャー方式というものについて水産庁はどういうふうにお考えでしょうか。
  56. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  大変広範かつ深刻な問題を提起されたわけでございますが、まず私どもとしては、これだけ諸外国との漁業交渉のやり方が難しくなっているという現実に直面をいたしまして、二百海里時代と申しましても、二百海里が設定をされた当初の段階に比べますと、最近は二百海里時代の中でもまた新しい段階を画す時期に来ておるように思っておるわけであります。  というのは、沿岸国側から見ますと、二百海里設定当初言われておりましたような資源の最適利用でありますとか伝統的漁獲実績の尊重であるとか、そういう美辞麗句は今や全く捨て去られて、非常に赤裸々な形で沿岸国の国益が前面に出てきておるわけであります。そういう中で我が国の水産政策が全体としてその方向が見直されなければならないという段階に来ておるということは先生御指摘のとおりであろうと思います。  その際の見直しの基本的な方向というのは、こういう客観的な情勢でございますから、当然日本も我が国の主権下にある水域内での漁業資源をもっと大事にして、我が国の主権下で漁業を振興していくということを基調に据えた水産政策を展開していくべきである、そういう考え方が基本であるということはまず間違いのないところであろうと思います。  それから、先生ただいま御指摘ございましたように、沿岸、沖合、遠洋全体を通じたトータルな形での対応が必要であるという点につきましても、私は全く先生の御指摘のとおりであろうと思いまして、ただいま先生が例示的に提起されましたアメリカ水域におけるスケトウダラの洋上買魚の問題もまさにその格好の例でございまして、従来でございますれば、アメリカと漁業問題について協議をするときには、トロールと北転船とはえなわの人たちが相談をして、それでそれを踏まえてどういう対処方針で協議をするかということでよかったわけでございますが、これだけスケトウダラの洋上買魚というような話が大きくなってまいりますると、それが陸上すり身業界に対してどういうインパクトを与えるか、あるいは陸上すり身業界に対して原点を提供しております沖合底びき漁業あるいは底刺し、そういう沿岸漁業、沖合漁業の人たちに対してまたどういうインパクトがあるか、そういうことをトータルの形で考えなければ日本側としても対処方針が決めかねるという事態になっておるわけでありまして、その点におきましても先生御指摘のとおりであろうと思います。  それで、具体的なアメリカ水域における洋上買魚のスケトウダラについての各論的なお尋ねについて申し上げますると、これは先ほど申し上げましたように、もはやこういう二百海里の現実でございますから、沿岸国であるアメリカ側にある程度の利益を与えながらでなければ日本漁船の操業が維持し得ないという事態であることは、これは否定しがたい冷厳なる現実でございます。そういう中で、アメリカの漁民がとったスケトウダラを洋上買魚という形態で日本へ持ってくるということは、これは我が国の漁船の漁場を確保するために相当な措置であるというふうに私どもも思っております。  ただ、数量といたしまして、国内のすり身の需給関係から見て、あるいはただいま先生御指摘の、輸入割り当て制度下に置かれている物資であるという状況にふさわしい規模でおさまるようにするにはどうすればいいかということについてはさらに慎重な考究が必要であろうというふうに存じますが、洋上買魚という形で協力をしながら操業を続けていくということは避けがたい現実であろうというふうに認識をいたしております。
  57. 田中恒利

    田中(恒)委員 次に、先ほど御答弁いただいた村づくりというか、大臣予算の折衝でも非常に力を入れられたようであります。活力ある漁村づくりあるいは農村、山村、それぞれ三者三様あるようでありますが、活力ある漁村の形成というものは具体的にどういう内容でやられるのか、ちょっと大要で結構ですから御説明いただきたい。
  58. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 六十年度におきまして、次のようなことを実施していきたいと思っております。  一つは、沿岸域計画営為推進事業という事業を実施したいと思っております。これは地域の漁業者集団の話し合いによりまして、地域に応じた営為計画づくりを進めて、これに基づく計画的な営為を推進するということがねらいでございます。このために現在の予算案に計上されております金額の中に一億三百万含まれております。  その次に、沿岸地域活性化緊急対策事業、これはハードの事業でございますが、自主的な資源、漁場の合理的な管理を推進し、沿岸地域における案出荷体制の確立、水産加工等による漁獲物の付加価値の向上、こういう目的に資する施設の整備を行うということで十億の金目が含まれております。  それから、これにあわせまして地域漁業総合整備資金制度、融資枠五十億、この中の漁業近代化資金につきましては〇・五%でございますが、特利で通常の金利よりも引き下げた金利を用意してございます。  こういう事業を六十年度から実施をすることにいたしております。
  59. 田中恒利

    田中(恒)委員 最初に、漁村の場合は漁業振興の計画づくりの段階から入っていくようでありますが、この計画づくりでどこがその中心になっていくんだろうか。まあ町村があるし漁協があるし、それから漁業の普及員がおるし、あるいは試験場があるし、所によっては栽培センターもある、こういうさまざまな漁業関係の機関団体が一緒になって協議をして計画をつくっていく、そういう場がやっぱり必要なように思うわけでありますが、そういう計画づくりというものを地域全体の機関団体が総意をまとめてやるような場を設定をしていく、こういう考えがあってしかるべきだと思いますが、これについてどういうふうにお考えになりますか。
  60. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 計画営為の推進といいますのは、私どもがねらいとしておりますのは、沿岸域の資源水準に見合った適正な操業の実現ということを軸にいたしまして、地場販売加工による地域漁業者の就業機会の拡大等を含めた沿岸漁業の緊急な課題について、漁協の区域を単位にして、そのエリアで漁業者集団の自主的な話し合いによって営為計画をつくる、そういう仕事をやろうとするものでございまして、したがいまして私どもとしては、この営為計画の策定、実施に当たっては、漁協が主体になっていただくというふうに考えておるわけであります。  ただ、その営為計画を策定するに当たりましては、当然のことながら、都道府県の改良普及員あるいは水産試験場とか漁業調整関係の仕事を担当しておられる県の職員の方とか、そういう方々にも積極的な助言、指導をしていただいて、合理的に推進をしていくべきものであるというふうに思っております。
  61. 田中恒利

    田中(恒)委員 ぜひ漁協がしっかりしなければ、私もこれはちょっと済まぬと思います。ですから担当の主体はやはり漁協に置いて、そして具体的な作業は関係機関団体からそれぞれのエキスパートが出てきてまとめていくというような形で出発をさせていただきたい、大体そういうことのようです。  漁協の問題は、これは農協と比べて御承知のように規模も小さいし、恐らく全国平均の職員の数は十人内外、こういう状態でありまして、金融事業等についてはいろいろ問題もある。ことしの予算の中にも、そういう意味で特別な対策事業といったようなものが信用事業を中心になされておるようでありますが、いずれにせよ、この漁村の実態は、高齢化が非常に進んでおりますし、後継者問題なども漁村、山村というのは一番厳しい。農村も後継者は同じでありますけれども、それだけにその主体になる漁業協同組合をもう少ししっかりさせなければいけぬ。我々は、漁協の合併といったようなことでも大きな期待を持っておったが、この漁協の合併もなかなか思うように進まない。それは農業と違って漁業権という特別な権利が設定されておるものだから、これに基づいて漁協がつくられておりますから、この漁業権問題にメスを入れないと合併がなかなか進まぬ、こういう問題もあるようであります。  いずれにせよ、いろんな問題を持っておりますが、漁業協同組合の経営あるいは事業、組織、こういうものについて、この際、やはり水産行政としては相当目を向けて、細かいことはもう申し上げませんが、十分にひとつこの育成指導に力を入れていただくようにこの機会に特に要望しておきたいと思います。  そこで、漁業関係で最後ですけれども、私ちょっとお尋ねをしておかなければいけないのは、実はこの二、三日来の新聞で、これは毎日新聞だけのようですけれども、魚転がしとかいう形で、何か冷凍水産物輸入商社、日本共同貿易というのですけれども、これがサケを中心に千二百億からの転がしをやったということで、連日のように書かれておるわけですね。大臣も心配して、水産庁、調査してみいということでありますが、これは大体事実なのかどうか、どういうことでこれが出てきておるのか、わかっておる範囲で御報告をしていただきたいと思うわけです。
  62. 佐野宏哉

    ○佐野政府委員 お答えいたします。  この件につきましては、関係者から現在事情聴取しつつある段階でございまして、今の段階でまだちょっとコメントするのは早過ぎると存じますので、お許しをいただきたいと存じます。
  63. 田中恒利

    田中(恒)委員 大臣、これは私らも正直のところ新聞でしかわからないのですが、仮にこういうことがあったとすると、やはりこれは大変な問題だと思うのです。それで、北海道の問題があって以降特に気をつけてきたと思うのですけれども、冷凍施設というものが整備をされてまいりますと、そういうものをある面では逆にうまく使って、新聞で見る限り株の操作にこの資金を使うというようなことをやったというふうに載せておるわけですけれども、そういうやり方が農林水産物、国民食糧供給というものにまで目を向けられていくということになっていくと、これは黙過しがたい点だと思うのですね。  これは必ずしも水産庁だけの問題じゃなくて、農林省の中にも流通局もありますし、恐らくこれは通産なり大蔵なり、いろいろなところに関係しておるわけでありますから、これは政府内部で、もし事実であるとすればこの原因、実態を明らかにしていただいて、こういうことができないような必要な処置を、例えば中央卸売市場内ではこういうことはできないはずでありますが、市場外流通というところでどうもなされておる。それをそのまま放任すべきなのかどうか、いろいろ問題ありましょうが、十分に検討して必要な対策を立てていただくように政府内部で調整を図っていただきたいと思いますが、大臣のこの問題に対する御見解もあわせてお聞かせをいただきたい。
  64. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 田中先生お答えいたします。  今水産庁長官が申したとおりでございます。実は私も水産庁から報告を受けまして、今実態調査をするようにしている段階でございますが、この事実がどうなるかによって対処方針が決まるわけですが、仮に新聞報道が事実であるならば、先生の御指摘のように十分相談しまして、消費者物価に影響を与えないような形で厳しく対処したい、こう考えております。
  65. 田中恒利

    田中(恒)委員 最後に、政府は三月末に市場開放の施策を取りまとめ中である、こういうふうに聞いておりますが、きょうの日本農業新聞などを見ると、経団連がこの間ASEANを回ってきて、現地政府要望を聞いて、強く政府に要請していく、こういうことも大きく載っておるわけであります。相変わらずこの中には、これまでも大きく問題になりましたタイの骨なし鶏肉の問題から、合板、エビ、バナナ、パーム油ですね、さらに韓国からは、この間の日韓の協議で、クリですね、これは皮をむいたむきグリ、あのクリの問題、あるいはでん粉あるいはパイン缶詰、こういうものの輸入枠の拡大なり関税率の引き下げという問題が、対外的に大変強く政府に迫ってきておる、こういう報道やそういう話を聞いておるわけであります。  昨日大臣の方からは、木材、合板などについてこれはできない、こういう意味の御答弁があったわけであります。全体的に八品目とか言われておるわけでありますが、こういう、三月末に政府が立てるというものの中に、農林水産省の主張を貫き通し得るのか、これらについての大臣の御決意のほどを重ねてお尋ねをしておきたいと思います。
  66. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先生お答えします。  市場開放要求につきましてはもう先生御存じのとおりでございまして、私は、合板、骨なし鶏肉につきましては再々委員会で答弁したとおりでございまして、日本の現状を十分理解して御期待に沿うように頑張りたい、このように思っております。
  67. 田中恒利

    田中(恒)委員 この問題はなおまた機会が与えられると思いますから、十分に細かく議論をさしていただくということにいたしまして、私の質問を以上で終わります。
  68. 今井勇

    今井委員長 次に、吉浦忠治君。
  69. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣所信表明に対する質疑でございますので、大臣にずっといてもらいたいのですけれども、何か用があるようでございますから、なるべくまとめまして先にお尋ねをいたしますので、お答えをいただきたいと思うわけでございます。  まず最初に、大臣にお尋ねをいたしますが、本年度の農林水産省予算でございますけれども、地盤沈下をいたしておるわけでございます。本年度の予算案において異常とも言える防衛予算の突出ぶりを見て、私は農水省の予算と比べながら実はびっくりしているわけであります。平和国家の一つの指標であります対GNP一%枠は絶対に守らなければならないというふうに私ども考えているわけでありますけれども、これに対して農林水産省予算の落ち込みというものは、これはまた見逃すことはできない、こう思うわけでございます。  国のいわゆる政策経費とも言われる一般歳出の予算が三年連続してマイナス、こうなっているわけであります。その中で、農林水産予算は前年対比で四・六%減額でございます。予算に大きな比重を占めております補助金の削減、これは省庁別予算では最高の千五百億、とりわけ食糧管理費の減額は大きくて一四・五%、こうなっているわけでございます。消費者米価の値上げなりあるいは過剰米処理経費の漸減あるいは水田利用再編対策における転作緩和等によるものではありますけれども、昨年のようないわゆる綱渡り的な食糧管理はもはや絶対に許すことはできないことでございまして、これからはゆとりある需給の確保は至上の命題であろうと思うわけであります。また、これ以上の消費者への負担転嫁はこれまた許されないというふうに考えるわけでありますが、こうした点を勘案してみるならば、農林水産省予算の地盤沈下は重大事である、このように私は決意をいたしているわけであります。  農林水産省は、安定した国民の食生活を保障する、国の安全を支える、これが原点であろうと思うわけでありまして、こういう点で積極的な農政に転換すべきではないかというふうに考えるわけであります。大臣の所見をまずお伺いをいたしたいと思います。
  70. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉浦先生お答えいたします。  実は、農林水産関係予算につきましては御指摘のとおりでございます。最善の努力をいたしたわけでございますが、非常に厳しい財政下でやむを得ない予算考えております。  そんなことでございますが、内容面におきましては、農林水産業をめぐる諸情勢に対処しまして、生産性が高く、土台のしっかりした農林水産業の実現、活力ある村づくりの推進等を図るため、限られた財源の中でございますが、予算の重点的かつ効率的な配分により、各種施策の質的充実を図りながら、我が省の役目としております、国民生活にとりまして最も基礎的な物資である食糧の安定供給に支障ないような予算配分をしているわけでございます。
  71. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 同僚議員から総括的な質疑をいたしておりますので、私は、二、三の点に絞りまして御質問いたしたいと思いますので、なるべく簡潔にお答えをいただきたいと思います。  林野行政についてでありますが、本年は国際森林年というふうに言われているわけでございます。言われているというよりも、国際森林年でございますので、この国際森林年に対する取り組みをまずお伺いしたいわけでございますけれども予算並びにこの予算で具体的に何をなさろうというふうになさっておられるのか、まずこの点をお伺いいたしたい、大臣からお願いしたいと思います。
  72. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉浦先生お答えいたします。  実は、ことしは国際森林年でございますが、これを契機に、基本的には、森林木材産業は大変不況でございますので、まず不況を吹き飛ばす起点にいたしたい、こんなことでいろいろな行事を考えておるわけでございますが、その行事は三つございます。  その一つは、国際森林年記念の森を造成すること。第二番目には、国際的な記念シンポジウムや森林・林業展等の行事を総合的に実施すること。三番目には、次代を担う中学生を対象として、森林・林業の役割を解説したビデオとか副読本等を作成、配布するようなことを計画しております。現在、関係省庁、関係団体等と検討を進めているところでございます。  また国際的には、現在、設立の準備を進めておられます国際熱帯木材機関に拠出し、熱帯における木材造成等に関する事前調査を行うこととしております。そのほか、国際協力事業団等を通じまして、造林とか森林保全等の林業分野における経済協力を一層推進してまいりたいと考えております。
  73. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 予算はどういうふうになっておりますか、長官。
  74. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 予算関係について御説明申し上げたいと思います。  昨年の末に早急に決まったということもございますけれども、大変重要な行事でございますので、我が国といたしましてもこれを効果あらしめるために積極的な取り組みを行うことといたしまして、ただいま大臣からお話し申し上げましたような各種の記念行事を準備しておるところでございます。  この予算関係につきましては、記念の行事費に三千三百万円を予定してございますけれども、これまで森林・林業、緑化関係につきましては、広範な植樹祭、森の記念行事等の既往の行事もございます。そういう関係事業費あるいは関係行事を有効に活用いたしまして、幅広く効果的な取り組みが行われますように、現在、協力をいただいております関係省庁、関係団体と検討を深めているところでございますが、これらの関係事業費を正確には集計できないわけでございますけれども、かなりな額になるものと考えております。  特に、国際森林年記念の森の造成などは、本年着手をいたしまして数年はかけたいと思っておりますし、これらにつきましては、国有林野事業の中で行うというようなこともありまして、その組織、力を活用するというところでもございますし、正確な金額につきましては申し上げかねるところでございます。  また、国際熱帯木材機関への拠出についてもお話し申し上げましたが、これも我が国が熱帯木材の相当量を輸入している国でもありますので、これに五千万の拠出を計画いたしておりまして、特に熱帯森林の造成等が大変な急務になっておりますので、まずはそれの造成に必要な事前調査を重点にこの機関の名のもとに行いたい、そういうふうなことを考えているところでございます。
  75. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣にもう一点だけ伺っておきますが、先ほど同僚議員からも質問がございましたが、日米貿易摩擦解消で、アメリカからのいわゆる木材製品の関税の引き下げ、輸入拡大ということが強く求められておるわけでありまして、また、東南アジア等からの同じく合板製品の輸入拡大の強い要求が出ているわけであります。  我が国の林業経営は、打ち続く木材価格の低迷から現在危機的状況にあるわけでありまして、この上安易な妥協がなされれば、いわゆる川上から川下まで崩壊しかねない重大な問題であるわけでございます。私もこの二月に大臣の選挙区に調査に行ってまいりました。大臣の関係していらっしゃる支持団体の方の木材等もつぶさに調べてまいりました。そういう点で、私はこの重大なときを迎えているときに、大臣、どのようにこの問題に対処なさるのか、決意のほどをお伺いしたいと思います。
  76. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 吉浦先生お答えいたします。  現在の木材産業の状況等につきましては先生御指摘のとおりでございます。  大きく見て三つあると思いますが、一つは木造住宅建設停滞、これは五十五年に比べまして約二割ぐらい下がっております。木材は大体五十五年は一億一千万立方メーターぐらい使っておりますが、現在約九千万立方メーターというようなことでございまして、大変住宅建設が停滞しているということでございます。  第二番目には、価格が非常に低落している。五十五年に比べまして約三割ぐらい価格が下がっていると思います。そういう形の中に、経費は、例えば造林費など、五十五年に比べまして約三割から五割上がっている。そういう形の中で実は倒産ですが、毎年千件から千百件ぐらいございまして、一番多い五十七年などは負債総額三千六百億前後で、大体二千百億前後で推移しておる、こういう状況でございまして、我が国の森林・林業には大変深刻な影響を与えています。  そういう形の中に、森林の持つ公益的機能、例えば国土の保全とか水資源の涵養あるいは森林浴等に見られる教育等に対する公益的機能にも悪影響を及ぼしているような、そんな現状でございます。  また、実は特に合板等の事業についていろいろ言われておりますが、合板の会社が日本で多分百四十社ぐらいあると思いますけれども、一社も黒字の会社はございません。これは、一つは木材価格が高い、たしか一立方メーター三万円前後で今使っているようですが、これに対してかなり赤字、こんなことがございまして、こういう現状を踏まえ、諸外国からいろいろな木材製品に対する関税引き下げの要求がございますが、私はこういう現状を十分話しまして、極めて困難であることを主張し、理解を求めながら、関税引き下げには断固反対で頑張りたい、このように考えております。
  77. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣、お忙しいようですから御退席なさって結構でございます。  続きまして、行革の問題で名古屋の営林局が一局削減ということになるわけでありますけれども、こうなりますと、いわゆる職員の配置転換の問題とか、また地元市町村へのサービスが低下するのではないか、あるいは関連業者内のいわゆる弱小業者が切り捨てられるのではないかというふうないろいろな心配があるわけでありますけれども、これらに対する対策はどのようになさろうとされるのか、お答えをいただきたい。
  78. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 名古屋営林局が今回の統合によりまして名古屋支局となるわけでございますが、これに関連いたしましての各般の業務処理の問題、職員に関する問題でございます。  私ども、基本的には、対外的に関係のある業務は従来と変わりなく処理をしてまいりたい、そういう統合によります影響というものを極力緩和をいたしたいということでございまして、まず、経常業務の処理につきましては従来どおり営林署担当区事業所を通じて行うこととしておりますほかに、特に木材関連業界あるいは市町村と関連の深い国有林の活用等の問題、こういうことにつきましては従来どおりの処理方法で営林局支局、営林署において対応をしてまいりたいと思っております。それからまた、名古屋市は御案内のように大消費地であり、また大木材都市でもございますので、そういうところに立地しておる名古屋支局の任務にかんがみまして、新たに需要開発センターというものを新設して地域の振興対策にも配慮してまいりたいと考えております。  したがいまして、このようにいたしますと、支局化によります地元関係者に対するサービスの低下につきましては、これはほとんどないのではないかと考えておりますことと、職員につきましても、統合に伴いまして職員の配置がえがございます場合には、業務の必要性の判断もありますけれども、職員の意向を勘案いたしまして適切かつ円滑な実施を期してまいりたいと考えておる次第でございます。
  79. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 委員長のところも関係がございましたが、今回の四国のいわゆる林野火災を教訓として、林野庁は今後林野火災の予防対策というものにどういうふうに取り組んでいかれるのか。これは難しい問題でございますが、森林の諸機能を保持するために、林野火災跡地の復旧もまた大切だというふうに思うわけであります。今回の四国の林野火災跡地の復旧対策等も含めて、予防対策、この二点をお尋ねしたい、簡潔で結構でございます。
  80. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 火災はまだ年に約四千件近くもございますので、予防体制を推進することはまことに重要なことと思っております。  従来からいろいろ消防庁等と連絡をとりまして、これからすぐございます全国山火事予防運動などの推進に努めておるわけでございますが、森林保全巡視員による巡視でありますとか防火管理道の整備、それから防火資機材、携行に便利なようないろいろな機材もございますので、その配備。それから、森林施業といたしましては、施業計画の中で広葉樹を残した株分をなるべく配置するようにする、これは火に非常に強いわけでございますので、そういう施業面での指導もいたしたいと思っております。  六十年度におきましては、地域の住民などによります林野火災予防活動を推進するための事業、こういうものを新たに実施することといたしておりまして、今回の林野火災を貴重な教訓といたしまして、以上の施策をさらに推進してまいりたいと考えております。
  81. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 五十九年のいわゆる松くい虫の被害調査でございますけれども、これは昨年の異常気象ということで大変な増加の傾向にあったわけでありますが、六十年度の被害対策をどのようにとられるのか。私は、この異常気象というのは毎年来ると考えなければならぬくらい、今そういう時代に入っているのじゃないかというふうに思うわけでありますから、当初予算で対応できるのかどうか、あるいは、被害が増加した場合にはどのような措置をとられるのか。  また、私、全国的には見ておりませんが、一部見てまいりましたけれども、松くい虫に食われた跡の国土保全上の樹種転換など、あるいは、緊急に復旧すべきというふうに考える全滅をしているところなどは、今後十年もそのまま放置しておいたならば国土の崩壊につながるのじゃないか、一たん天災等が起こったときには大打撃を受けるようなことになりやしないか。こういうことを林野庁はどういうふうにお考えなのか。大事な点でございますのでお答えをいただきたい。
  82. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 松くい虫の被害につきましては、いろいろ防除対策をいたしておりましたので漸減の方向にあるということで私どもも喜んでおりましたところが、昨年はまた、全国的にはそうでないにいたしましても、山陰地方等に非常に急増がございまして、非常に心配をしておるところでございます。ただ、防除方法もいろいろ推進をしてまいりまして、昨年からは、空中から被害木を探査したりあるいは感染源を除去するための松の伐倒整理を実施するなど、総合的な対策もやっておるところでございます。  六十年度も各県から防除実施の要望が非常に強いわけでございますが、本年の財政事情のもとでの概算要求基準に伴います閣議了解等もありまして、予算額といたしましては九五%ぐらいにとどまったわけでございますが、事業量といたしましては昨年並みを確保することができたわけでございます。  今後この事業量を、今までの被害の状況等を勘案いたしまして、適切な配分によりまして遺漏ない計画をつくり上げたいと思っておりますが、発生もどういう状態で発生するかはなかなか予断のできない点もあろうかと思います。本年度におきましても、年度途中におきまして緊急に対応するという予算の追加措置も講じたわけでありますけれども、今後におきましても、被害の発生状況がどうあるかということを十分常に把握をいたしまして、これまでの例にもかんがみまして適切な手を打てるように十分配慮をしてまいりたいと考えております。
  83. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長官、結構でございますので……。  続きまして、畜産関係で少しばかり質問をいたしたいと思いますが、異常低卵価の問題を少し。これは毎年やらないと——毎年やっても大変な問題でございまして、昨年の八月に私は質問をいたしましたが、ちっとも実効が上がっておりませんので、お尋ねをいたしたい。  現在の養鶏農家は、特に四年目に入りました慢性的な低卵価の中で大変な苦しみをしているわけであります。全国の卵価の基準になるところの全農の東京相場のMサイズの基準値、いわゆる年間平均で五十七年が二百七十二円、五十八年が二百五十円、五十九年が二百六十円、三年連続生産コストを割るような水準で推移をしているわけであります。今年も恐らく卵価の予測は、ある商社で出したものを見ますと二百六十二円ぐらいじゃないかと言われておりまして、昨年並みと見ていいのじゃないかと思います。これはかつて、こういう低卵価は幾ら長く続いても大体二年ぐらい、二年周期ぐらいで大体また上向くというふうなものでありましたけれども、四年目に入っても卵価が上がらない、全くこれは異常な状態だというふうに感じざるを得ないと思うのです。  いろいろ申し上げたいのですけれども、時間的な余裕がございませんから早速質問に入らせてもらいますが、こういう養鶏農家の実態を見てまいりますと、ことしもこういう状態が続きますというとどうなるか。倒産やあるいは廃業、夜逃げ、身売り、残ったのは飼料メーカーだけで、まじめな養鶏農家は莫大な借金を抱えて倒産してしまう。業界の事情に大変詳しい人の話によりますと、飼料メーカー全体で養鶏農家に対し抱えている不良債権が一千億にも上る、こういうふうに言われている。  私の千葉県においても優秀な養鶏団地が数多くございますが、そういう団地の中でも、家屋敷まで取られないうちに飼料特約店に早く養鶏場を売ってしまおうかという話も何件も聞いているわけであります。あるいは群馬県のある町では、需給調整協議会が調査したところによりますと、今まで十二戸あった養鶏農家が、二、三年の間に全部廃業して、去年は一軒も残っていない、こういう報告もあるわけであります。  また、昨年は鹿児島で、あるいは埼玉で自殺者が出ておりました。鹿児島の場合は九千羽の鶏を飼っている人が借金が四千三百万。ほかの脱税やなんかしている方々に比べますと、農家の方は本当にまじめだな、こう思う。四千三百万ぐらいの借金で、いわゆる資金繰りができないといって、昨年の十二月三十一日に倉庫で首つりをする。また、埼玉県の場合は、一万五千羽の鶏を飼っている人が、資産は全部取引先の商社、飼料代理店に担保として押さえられている。そして、昨年の夏に鶏舎から除草剤を持ち出して、それを飲んで自殺をしている。こういう悲劇が繰り返されていて、やがては養鶏農家はつぶれてしまうという、そういう危機感を私は持っているものでございます。  農水省は、このような深刻な養鶏農家の状況をどういうふうにとらえていらっしゃるのか、まずこの点からお尋ねをいたしたい。
  84. 野明宏至

    ○野明政府委員 卵の価格につきましては、ただいまのお話にございましたように五十五年から五十六年は高卵価で推移したわけでございますが、そういった高卵価を反映いたしまして生産がふえる、他方また、消費も思うように伸びないということで過剰基調になりまして、五十七年以降低水準で推移しておるわけでございます。  こういったような状況を反映しまして、養鶏経営の収益性、これは五十五年から五十六年は高水準で推移したわけでございますが、五十八年には低下しておりまして、生産調査で見てみますと、採卵鶏百羽当たりの所得について見ましても大変厳しい状況になっております。それから、農家経済調査によります採卵鶏経営の状況を見てみますと、採卵鶏の百羽当たりの資産額、これは前年に比べてやはりふえておるわけでございますが、負債額がかなりふえておる。ただ、養鶏経営全体について見ますと、資産に対する負債の割合というのは九%程度でございまして、他の畜種に比べると低い、こういうふうな状況にございます。  こういったような低卵価の状況対処しまして、養鶏経営への影響を緩和していくということで、もちろん計画的な生産の指導というものを一方で進めつつ、卵価安定基金から五十八年度には八十七億円、五十九年度には約百七億円のお金を交付いたす、あるいは液卵公社による買い上げを行うというふうなことで経営の安定に努めているところでございます。
  85. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 農水省は再三鶏卵の需給調整はうまくいっていると言って、昨年の八月の私の質問に対してもそういう答弁を繰り返しているのです。やみ増羽者もかつてに比較すれば大幅に減っている、こういうふうにおっしゃっている。その答えは楽観的ではございますけれども、結果は全く逆でありまして、卵価は回復するどころか、低卵価は相変わらず続いている。このような状況のもとで、行政指導による生産調整はうまくいっている、こういうふうな解釈をとっていらっしゃる。ところが、逆な立場のこういう現状を見て、やみ増羽は本当に減っているというふうにお考えなのかどうか。私は現実はその逆ではないかというふうに考えるけれども、長官どうですか。
  86. 野明宏至

    ○野明政府委員 いわゆるやみ増羽者、これは台帳記載羽数を超過している養鶏家でございますが、これらにつきましては、従来から県あるいは市町村段階に設けられております鶏卵需給調整協議会を通じましてその是正指導をする、それから卵価安定基金とかあるいは配合飼料価格安定基金への加入を認めない、それからまた制度融資や補助事業の対象にもしない、さらには飼料メーカーに対しましても秩序ある供給をするように要請するというふうなことで、その是正に努めてまいっておるわけでございます。  その結果、五十五年ごろは百一経営体あったわけでございますが、最近では三十ないし四十経営体というふうなことになっておりまして、これからも、いわゆる記載羽数を超過している養鶏家に対しましては、指導の一層の徹底を図って無断増羽の解消に努めていきたいというふうに思っているわけでございます。
  87. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 養鶏農家は、低卵価の原因というものはいわゆる商社養鶏の大規模やみ増羽が原因だ、こういうふうに指摘をしておりますし、恐らく局長もその点は同感だろうと思うのですが、商社は飼料原料の輸入でもうかるのですから、幾ら低卵価であろうともそのえささえ売ればいいということで、やみ増羽者に対する資金援助をして、それで規模をどんどん拡大している、増産に踏み切っているわけですね。  ここを押さえるのが需給調整を円滑に推進する決め手だというふうに私は思うのですけれども、農水省は、商社、飼料メーカーに対してはどのような指導を今日までしてこられたのですか。
  88. 野明宏至

    ○野明政府委員 御指摘のように、商社や飼料メーカーを通じましてこれが助長されるというふうなことは、これはやはり避けていかなくちゃいかぬというふうに考えておりまして、飼料メーカー等に対しまして、無断増羽者に対して配合飼料を供給しているメーカーに対しましては、これを控えるように指導する。それからまた、そのメーカーが供給をやめましてもほかの飼料メーカーが供給をいたすということになりますと何にもならぬわけでございますから、関連すると思われる飼料メーカーに対しましても、そういうことはしないようにというふうなことで指導をいたしてまいっておるわけでございます。  その結果いろいろ問題が起こってまいるわけでございますが、そういうものについて逐次是正が図られてまいっておるというふうに考えておるわけでございます。まだまだこれからそういった手だても含めて指導していかなければならぬものも残っておるわけでございますが、逐次是正が図られてまいっておるというふうに考えておるわけでございます。
  89. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 どうも答弁がだんだん弱くなって、まともな行政指導じゃないように私は受け取らざるを得ないわけでありますけれども、今無秩序状態じゃないかな、こう思うのです。  私は、きょう新しい提案を申し上げたい。これほど計画生産ができない、幾ら守ってもこれは低卵価で倒産の危機を迎えている、何らか手を打つべきときが来ているのじゃないか。  そこで私は、この今やみ増羽等の支援をしている飼料メーカーに対して、飼料原料を無税で輸入できる特権であるいわゆる承認工場の権利を取り消したらどうか、こう考えるわけです。また、商社養鶏に対抗するため、承認工場制度を撤廃して、いわゆる養鶏農家も無税の飼料原料を直接輸入できるような方法をとったらどうか。計画生産で来て、需給調整を自主的にやっていてももうできない段階ならば、特定なものだけを飼料で守っているなら、それを全廃して、一般の農家の方々も、もうアメリカから直接に飼料を買ってください、買ってください、こう来ているわけですから、そうすれば今の養鶏農家の方々も、どんなに卵価が下がろうとも飼料が安く入ってくるわけですから太刀打ちできるのです。そういうことは絶対にしないでおいて、低卵価の原因は一つも責めませんで、無法状態のように放置しておくならば、まじめな方々はこれはもう見捨ててしまう。  そこで、今社会党さんの方で法案を、まだ俎上に上っておりませんけれども、検討されているわけでございます。これは、業者の方も生産者の方ももうやむを得ないじゃないか、何らか時限立法でもいいからつくらなければならぬじゃないかという声が高まっているときであります。  私が今提案している問題、飼料の無税工場等の特権を特別のものだけに与えるのではなくて、計画生産を全部やめてしまって、自由競争の原理でどんどんアメリカから飼料をだれでも買える、そしてそれを無税で買える、こういうような方法で、自由競争の競争原理に立つならば平等な立場に立たせたらいいじゃありませんか。そういうことをやらないで、商社の方にも何にも指導できない、飼料メーカーにもできない、そのまま放置していたら、養鶏農家は全くつぶれてしまう。  畜産局があって、私は前から皮肉みたいなことを言っておりますけれども、食肉鶏卵課といったって何をやってきたか、何にも今やらない鶏卵課じゃありませんか、お手上げじゃありませんか。こういうことで、守る守ると言ったってもう守れない段階まで来ているから、私はこういう提案をして、そういう方法をとらなければならぬじゃないか、こう言っているわけです。重大な決意で申し上げている。御答弁いただきたい。
  90. 野明宏至

    ○野明政府委員 ただいまの配合飼料工場を承認工場としているという点につきましては、実はこれはトウモロコシに例えて申しますと、スターチと競合するということでございます、したがいまして、関税率というものが定められておるわけでございますが、しかし、他方、畜産農家に対してはできるだけコストの安い原料を供給しなくちゃいかぬということで、これを無税にいたしているわけでございます。ただその場合に、やはり横流れを防止するという措置をとりながら原料を安定的に供給していかなくちゃならぬ、飼料を安定的に供給していかなくちゃならぬということで、関税定率法に基づきまして、税関の監視のもとに、承認工場で使用される配合飼料原料に限って関税を免除いたしているわけでございます。したがいまして、そういった他の分野との関係ということもございますので、承認工場というシステムはやはり続けていかなくちゃいかぬじゃないかと思っておるわけでございます。  ただ、今先生御指摘の自家配合用という点が一つございます。この点についても横流れという問題を頭に置いて考えなくちゃいかぬわけでございますが、これを直接農家に供給していくということにつきましては、やはり税関の監視の目が届かないということで認められないわけでございます。したがいまして、この点につきましては、別途そういった畜産農家の自家配合飼料についてのニーズにこたえるために、自家配合原料用の飼料工場制度というものを設けまして、自家配合にいたします場合の主な原料でありますトウモロコシにつきまして、横流れ防止の観点から魚粉といったようなものを必要最小限混合いたしました上で、これを関税を無税として畜産農家に供給するというふうな道を開いております。  今後もそういった道を活用いたしまして、自家配合飼料原料の安定供給ということをやってまいりたいと考えております。
  91. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたので終わらざるを得ませんけれども、きょうは水産庁長官にどうしても二、三問お尋ねをしたい。特にサバのたもすくい漁業について地元で大変な窮状に追い込まれている事態でありまして、これは解決方法があるわけですので、ぜひとも手を打っていただきたいということで質問を申し上げたかったわけでございますけれども、時間になりましたので、これで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  92. 今井勇

    今井委員長 午後一時四十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  93. 今井勇

    今井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。水谷弘君。
  94. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣の所信を伺っておりますと、大変力強い決意のほどを述べられておりまして、私もその意気込みに対して、ぜひ大臣御就任の間所信を貫き通していただきまして、大変な問題を抱えております我が国の農林水産業の発展のために、より一層の御尽力をお願いしたいと思っております。  所信の端々にその決意のほどがうかがわれるわけでありますが、各委員からも指摘をされておりますとおり、六十年度の農林水産関係の予算中身につきましては、数字が示すとおり三年連続の超圧縮予算、このようになってきているわけであります。このようになってきた背景については、私から申し上げるまでもなく、数々の要因があることはよく知っております。  しかしながら、二十一世紀に向けて、人口の増加さらには天然の異常気象等、現実にもアフリカにおける大変な飢餓が問題になっている、食糧に対しては、世界的に将来に対して非常に危機感が漂っている。こういう状況の中で、我が国の農業、また林業、水産業、これはどれ一つとっても大切に取り組んでいかなければならない、いわゆる我々人類生存の基盤とも言いますか、最も重要なものである、このように考えているわけであります。  そこで、私が第一番目に大臣にお伺いをしていきたいことは、農林水産省日本農林水産業の発展のために責任を持ち、そして生産者、それから消費者、いわゆる国民全体に対してその使命を果たして今日まで来られた。大変な御努力があった。その中で、数々の施策が実質的には大きな発展の要因にもなってきた。しかし、マクロ的にとらえてみますと、このまま行ったら日本農林水産業はどうなるんだ、こういう大変な状況に今なっていることは、大臣もよく御存じのとおりであります。  そこで、今一番必要なのは、生産者、そして消費者、さらにまた、もっと大きく広げれば農山村、それから都市、そこに住むすべての人たちの、いわゆる将来の日本農林水産業をどう育て、伸ばし、また、もっと厳しく言えばどう再建をして日本食糧安全保障を確立するかという、この幅広い議論といいますか、問題点を明確にすると同時に、それぞれの役割を明らかにしながら、どうしたら二十一世紀に向けて日本農林水産業の、足腰、土台のしっかりした産業として立派に立ち上がれる体制を築いていけるかという、このことが私は今一番求められていると思うのであります。  やはり、農林水産関係者だけでどんなに議論をしても外へ飛び出していけない部分がたくさんあります。それからまた、大多数の方が消費者であり国民であります。そういう皆さん方の国民的合意形成をどうつくり上げていくか、私は今それが一番大切であろう、このように考えるわけであります。その時代時代、限られた国家予算の中で選択をして、重点的にそれを伸ばしていかなければならない時代環境というのはもちろんあります。しかし、事食糧に関するこの農林水産業については、時代がどう変わろうと、これはしっかり取り組んでいかなければならない問題だと私は考えております。  一つの例を申し上げますと、総理府が昨年の九月に行いました「食料及び農業、農村に関する世論調査」の結果が発表になっております。標本数五千人、広く都市も農村も、また若い人もお年寄りも全部対象として、無作為抽出法によってその調査が行われたわけであります。  いろいろ申し上げたいことはございますが、特にこの中で「我が国の食料事情について」の国民皆さん認識がどういう形で出てきたか。日本食糧自給率、これについて「日本の食料自給率が欧米諸国に比べて低いということを知っていたか」という問いに対して「「知っていた者」は五六・七%で、「知らなかった者」は四三・三%」、こういうデータが出ているわけであります。さらに、こういう数の一つのベースの上に、「将来の食料事情について」の不安の度合いに対する設問に対して、「日本の将来の食料事情についてどう思うかを聞いたところ、不安を持っている者が六四・一%(「非常に不安を持っている」一六・六%+「ある程度不安を持っている」四七・四%)」このように数字が出てきております。  日本食糧自給率が欧米諸国に比べて低いということは、これはいわゆる農業に関心を持ち、我々携わっている者はだれでも知っている事実であります。しかしながら、国民の約半数に近い四三・三%は「知らなかった」、こういう答えが返ってくる。知らないでいながら、なおかつ日本食糧事情について将来不安を持っているという人が六四・一%もいる、これを知ったらもっとこの数は多くなるに決まっているわけであります。今一例を挙げましたが、私は、いわゆる日本農林水産業がどういう実態なのか、食糧はどうなっているのか、こういう問題に対する我が国国民全体の御認識、これは非常に乏しいものだなということをこれがあらわしていると思うのであります。  これが一つの例でありますが、また、いわゆる消費者の側に立ちますと、もっとコストを下げられないのか、コストを下げられなければ安いものを輸入すればいいじゃないか、農業は過保護だ、こういう議論が私どもが歩いておっても一斉に上がってくるわけであります。生産者のどこへ行っても、このまま行ったら後継ぎは当然できない、また我々の住むこの地域社会も大変なことになる、高齢化がますます進むし、兼業化がますます進む中で、本当の農業の担い手はなくなってくる、それぞれみんなこういういろいろな議論が起きてくる。  そういう中で、農水省として、これは一省でできる問題ではないと私も考えておりますけれども、いわゆる日本農林水産業の将来の発展のために、国民合意の形成を図っていくために、どのようにして取り組んでおられるのか、具体的にそういう取り組みをどこでどのようにやっておられるのか、初めにお伺いをしたいと思います。
  95. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生お答えいたします。  実は御指摘のとおりでございまして、先ほど先生お話にございましたが、最近の農林水産業を取り巻く情勢は内外ともに厳しい状況にあるのは御承知のとおりでございます。今先生がおっしゃったようなことで、直接の関係者のみならず、生産者も消費者も含めて各界各層の方々の意見を十分に伺い、広く国民全体の意見を得ながら、我が国農林水産業に新たな展望を切り開いていきたいと考えております。  そんなことで、私は就任以来、こういう考え方に基づいて積極的に消費者団体や経済界とも懇談の場を設けたほか、農林水産省に消費者の部屋を設け、消費者に対する情報提供、啓発を行うとともに、我が省の行政に対する消費者の方の意見を承ることに努めてまいっております。またさらに、地方における生の声を直接伺うことも重要であると考えておりまして、実は早い時期に各地におきまして、各地といってもそうたくさんできないかと思いますが、「一日農林水産省」を開いて各地の生の意見を聞いてみたい。また、我が省というのは、非常に国民に身近にあり過ぎて、逆に、これは我が省の責任もございますが、農林水産省に関してのことを知らない人が多い。特に食糧に関してそうだ、そんなことがございまして、これは構想の一つでございますが、できれば「食料博覧会」などを考えてひとつやってみたらどうだろうか、こう考えております。  それから、先ほど先生御指摘の自給率の問題でございますが、これは我が省のPR、政府のPRが不足しておることだと思います。これは先生御高承と思いますが、主食の米は一〇〇%自給しておる、あと野菜、果物等は八〇から九〇%。ただ問題は、飼料用穀物が非常に不足して輸入しておるということがございますが、これもむしろ率直に言いますと、中身を十分に説明すれば国民皆さんの理解を得られるんじゃないか、そういうことも一つ国民の合意の行政ということで、これはこれから十分反省しましてそのPRに努めたい、このように考えるわけでございます。
  96. 水谷弘

    ○水谷委員 「食料博覧会」の開催も考えている等々の積極的な御答弁をいただいたわけでありますが、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。  そういうイベントとか行事とか、こういうものも確かに必要だと思いますが、もう少し日本の社会全体にアピールをするような本格的な国民合意を形成していく手順といいますか、そういうものをやはりつくり上げていかなければならぬだろう。今の時代は、どんなに立派な政策であれ、かなりこれは必要だと思っても、そこに国民的な立場からの世論の形成といいますか、合意——多少時間がかかるかもしれませんけれども日本農業をこれからどう持っていくかということは、今のこの状況の中で、手を打ったからあしたよくなるという特効薬、そんなものはないはずであります。今までいろいろ繰り返されている議論をもう一度整理して、やはり国民の前でわかりやすい形で本音の議論が行われていきませんと、国民が知らないうちに食糧の大変な危機が来た、振り返ってみたらいわゆる農業、農村からは働き手がいなくなってしまっていたんだぞ、こんなことは起きないに決まっておりますが、そういうことになっては大変なのであります。  ですから、私どもの竹入委員長が本会議の代表質問において中曽根総理に御質問をいたしました。大臣も御存じだと思いますけれども、これからの農林水産業全体を再建し発展させていくために、いわゆる農業者の自助努力、それに期待すべきものは一体何なんだ。この部分については、農業者がみずからの力で立ち上がってしっかり取り組んでいくべきだ。それからまた、農業者の自助努力限界を超えて、社会全体の問題として解決しなければならないものは一体何なんだ。さらに、国を初めとする各行政の責任において対処すべきものは一体何なんだ。そのような責任の分担というのですか役割分担、こういうものを明確にして、それが実現の可能性を持った今度は総合的な政策体系の確立、こういうことを急ぐべきではないかという提案を我が党の竹入委員長が本会議において行われたわけであります。  ばらばら見ておりますと、全部こういうものに関することは確かに行われているはずなんです。しかし、やはり合意を形成していく上において大切なことは、問題点を明確にし、役割分担を明らかにして、そして、どこをどういうふうに取り組むかということをわかりやすい形で国民の皆様に明確に提示をする、そういうことがこれからますます——いわゆる通商摩擦による市場開放要求が強く起きてくる、それからまたコスト高の問題が出てくる、そういう現在抱えている数々の問題をどこまで農業者が責任を持っていくのか、こういうことが非常に大切だろうと私は思っておるのであります。  農家へ行った場合に必ず出てくる話は、おれたち農家は日本の農業の見通しをどういうふうに立てて進んだらいいんだ、そのしっかりした見通しは国の責任において明確にしなければいかぬじゃないか、そのような声がちょくちょく、どこからも強い怒りを込めたぐらいな声で伝わってくるわけであります。  そういうことで、いわゆるハードのいろいろな政策もあるかもしれませんが、ソフト面を入れた、その中にはいろいろな問題があると思います。教育の中でいわゆる農業に対してどういう教育が行われているか、食糧に対する理解、それからまた、将来の食糧安全保障ということについて国民はどういう立場に立たなければならないかということが教えられているか、いないか、こういうことに私はぜひお取り組みをいただきたい。  また、いわゆる触れ合いの森とか、都市と農山村との交流とか、こういう問題もございます。これとても手を挙げているところだけがいくのでありまして、国がもっと豊富な情報を持っているわけであります。林野庁、自治省と力を合わせながら、やはり都市と農村の交流をもう少し本格的に、どうせ言葉を出して、また予算もつけてやろうとしているわけですから、総合的に、大臣ひとつリーダーシップをおとりいただいておやりいただきたい、このように思うわけです。  まあ例はぴったりじゃありませんけれども、いわゆる現在の山積している教育問題、これをどう解決し、乗り越えていくかということで臨教審が設置されております。私は、そんな方向とかそういうものについては確たるものを持っておりませんけれども、各界各層の多くの代表、そういう方を入れた仮称「国民食糧会議」、こういうようなものも検討し、本格的にやはり日本農林水産業の発展がそのまま日本食糧安全保障につながっていくのだという観点からお取り組みをいただきたい、このように思うわけでありますが、もう一度大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  97. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生お答えいたします。  実は、農林水産業というのは非常に地道なものでございまして、今先生おっしゃるように、すぐきょうあしたできるものではございませんが、皆さんの御理解を得ながら長い時間をかけて頑張りたい、こう思っております。  私は、農業というのは国の基本であると思っております。そういう形の中に日本農業をどうして守るか、そういう形の中に食糧の安全保障的意味を加味し一体どうするかということでございまして、実は国民の中に生産者と消費者両方あるわけですが、私は、将来の新しい農業の展望を築くためには、消費者にも不満はあります、生産者にも不満はありますが、できれば僕は、消費者の不満を抑えつつ、まず生産者の不満をどうして解決するか、そして本当に農業のやりやすいような足腰の強い農業をどうしてつくるか、こんな形のもとにまず前進しながら、日本農業の行く末を新しいバイオテクノロジー、ニューメディアを駆使して構築してみたい、そして本当の農家の方にとって夢のある農業をつくってみたい、このように前進したいと思っておりますが、何分の御理解と御指導をお願いする次第でございます。
  98. 水谷弘

    ○水谷委員 御決意のほどよくわかります。国民合意の形成についてより一層の御努力をお願いしまして、次の質問に移りたいと思います。  各委員からもいろいろな御指摘が既にあったと思いますけれども、水田利用再編ポスト第三期のことについて、私の方から若干御質問をしてみたいと思います。  いよいよ六十一年で予定の第三期が終わるわけでありますけれども、この第三期の中でいわゆる利用再編の各施策が講じられてきた。で、新たな対策を立てるに当たって、やはりここで一番大切なのは、このいわゆる水田利用再編対策なるものが、現実にどのように日本農林水産業の中で農家もまた生産基盤もより一層向上させるために役立ってきたのか、このことを明確にして次へ進むべきである。問題点はどこにあったか、どこをどう解決すべきであるかというこの十年間の実績、これを明確にしていかなければならない。これは大臣も同じお考えに立たれていると思いますけれども、今日までのこの水田利用再編対策がどのように評価されるべきか、そのことについて最初にお伺いをしたいと思います。
  99. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 水田利用再編対策、六十一年度までが現在の第三期も含めまして最終期間になるわけでございますが、その実績評価につきましては、まさに六十年、六十一年という最後のところがまだ残っておりますけれども、全体的には、この対策の評価という点では、非常に関係者、これは農業団体、それから大変第一線で御苦労いただいた都道府県、市町村、そういう行政機関、この一致協力により大変難しい仕事をやってまいったわけでございますし、その実績としましても、御承知のように常に毎年目標を達成するというような効果を上げてまいったわけでございます。  その評価ということになりますと、幾つかの観点から見なければならないわけでございますが、まず第一には、何と申しましても米の需給均衡の回復という面では大変大きく寄与をしたわけでございます。また、それに関連をいたしまして、このままこの対策なかりせば大変な過剰米をさらに発生する、これを未然に防止しまして、国全体の財政負担の軽減には大変寄与をしたということでございます。それから、生産面につきましては、需要の動向に応じました農業生産の再編成ということで、特にこれから重点的な作物として伸ばしていかなければならない麦、大豆、飼料作物、こういうような作物の生産の面で転作が大変大事な役割を果たしたということでございます。  総じましてみますと、こういう一つの対策の推進によりまして、需要の動向に応じて生産を再編成するという過程で、集落あるいは市町村あるいは農業団体、こういう地域団体協力によって地域の実態に即した営農方式の展開という方向が徐々に定着をしているのではないか、こういうふうに考えております。  ただ、何もかも全部目的を達成したということには必ずしもならないということでございまして、一番主眼になります転作の定着化については、これは第三期対策の評価もしながら、さらにその後の問題としていろいろ対策のあり方を検討すべきことがあろう、こういうふうに考えております。
  100. 水谷弘

    ○水谷委員 今お答えがございましたけれども、確かに各年度ごとに目標を達成してきております。しかし、その達成の中身をいろいろ見てみますと、片方では、農家の犠牲といいますか、大変な努力の上にやはりそういうふうに押しつけていかざるを得ないという、そういうことが非常に多くあるわけです。私も農業団体皆さん方といろいろお話をしているときは、確かに転作の方向性というものについては御理解をしていらっしゃいます。しかし、実際の生産農家へ参りますと、これは非常に不安を持ちながら、また大変な無理をしながらそういう問題に対応しておられる。それからまた、実際に転作をしたけれども、現在その転作作物の価格の低迷等によって非常に御苦労をされておられる。畜産、果樹または養蚕、こういういろいろな転作作物が、形は転作が定着をしているように見えますけれども、その内容は大変な問題が多く横たわっている、こういうことでございます。  これはよく御存じのことですから改めてここで指摘はいたしませんけれども、積極的な政府の指導によってその転作政策がとられていく、それに対してはやはり責任を持ち対応していく、こういう政府の姿勢が私は大切であろうと思っております。そういう意味で、今後の転作の定着、このことについてはより一層の御努力をお願いをしておきたいと思います。  そこで、時間がございませんから先へ参りますので、お願いをしたいと思います。  六十二年からと私は考えておりますけれども、ポスト第三期、この新たな次期対策、これが目前に迫っているわけでありますけれども、これの基本的な方向についてお伺いをしておきたいと思います。
  101. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 六十二年産米以降のいわゆるポスト三期の問題については、これは私どもとしても、今回の水田利用再編対策の実績のただいま申し上げましたような評価、それから米の需給事情の推移、さらに御質問の中にもございました転作作物の定着化の状況、こういう点を非常に慎重に考えまして、総合的な判断のもとに対策をつくらなければいけないというふうに考えております。  ただ、全体としましては、御承知のように昭和六十五年度を目標年次とします「農産物の需要と生産の長期見通し」におきましては、米の需給関係から見ますと、大体七十六万ヘクタールぐらい、水田の面積にして三割くらいはいわゆる需給ギャップが出てくる。これはもちろん米の単収なりあるいは需要のこれからの動向なり、こういうことによるわけでございますが、こういうかなり大きな需給ギャップがあるという前提については恐らく大きな狂いはないということでございます。  ただ、これにどういうふうに取り組むか、これはまさに今後の、これから第三期対策の経験も生かしながら、対策の組み立て方、それからいわゆる対象としますものの規模、転作対策の内容、こういう点について十分な検討をすべきことと考えておりますが、基本的な問題としまして、何らかの意味でのかなり総合的な米需給の均衡化対策の必要性、これについては今後とも変わらない、こういうふうに考えております。
  102. 水谷弘

    ○水谷委員 その六十五年を目標年次とした「農産物の需要と生産の長期見通し」については、この辺で本格的に見直しといいますか、ポスト第三期対策と一体的にこれを見直していかなければならない、七十年を目標にしたような長期ビジョン、こういうものを早急に策定していかなければならないと思います。その必要性は今さら論ずるまでもございませんが、この長期ビジョンの策定について、現在どのように取り組みをしておられるか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  103. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生お答えいたします。  現行の昭和六十五年度を目標年次とする「農産物の需要と生産の長期見通し」につきましては、ミカンとか生糸等の一部を除きまして、大体長期見通しの方向に沿ったものとなっております。そしてまた「八〇年代の農政の基本方向」につきましても、その基本的課題は現在も変わっていないことから、現時点においてはこれを改定する必要はないと考えております。  今後、こういう問題につきましては、農産物の需給動向、産業構造や農村社会の変化などを十分見きわめるとともに、現在国土庁でやっております四全総についての検討状況等にも配慮しながら、慎重に判断していきたいと考えております。
  104. 水谷弘

    ○水谷委員 その次に、百一国会において農振法の改正が行われたわけでありますが、その目的は、農業及びこれをめぐる諸情勢の推移にかんがみ、農業構造の改善の促進に特に留意して農業振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進をしていこう、このような目的で行われ、さらに本委員会において本法の改正に当たって附帯決議が六項目付されております。その中で「農用地の効率的かつ総合的な利用の促進に当たっては、市町村、農業委員会、農業協同組合等の協力体制のもとに、中核農家と兼業農家等との連携を醸成し、地域農業集団を育成強化して、農地の集積、農作業の効率化、作付地の集団化、耕種農業と畜産との連携強化を図る等農業構造の改善施策を総合的に推進すること。」という附帯決議が付されている。  この改正に伴って、六十年度において農水省として本格的に講じようとしておられる措置についてお伺いをいたしたいと思います。
  105. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  改正農振法は今御指摘のような附帯決議をもちまして成立したわけでございまして、私どもといたしましてはその趣旨を十分勘案いたしまして、これを昨年の十二月五日から施行をいたしたわけでございます。  これからどのような計画、中身でこの施行を行っていくかということを若干御説明いたしますが、まず農振地域の整備基本方針と農振地域の整備計画の変更を行う必要がございます。  まず、基本方針につきましては、農振法の施行の日以降遅滞なく変更をするということになっておりまして、現在のところ昭和六十年の六月三十日までに基本方針の変更の承認手続をとるように、このように指導をしておるところでございます。整備計画の策定、変更につきましては、基本方針の変更されました都道府県におきまして、各市町村ごとに実情に応じましてなるべく早くつくっていくということでございますが、これも画一的なものでなく、その地域の実態、市町村の実態に即したものとなるように指導しておるところでございます。  それから、改正農振法の中で新しく制度化されております協定制度がございます。施設の配置あるいは施設の維持運営についての協定でございますが、これの指導、それから啓蒙普及に当たりましても国会でいろいろな議論がございましたが、そういう議論の趣旨を踏まえまして指導をいたしております。例えば、地域ごとに具体的な課題ごとに協定を締結するとか、あるいはその場合には農家、非農家を含む地域住民の自主的な話し合いを基礎として協定をつくっていく、あるいは協定も各地域ごとに特色を持たせる、画一的なものでなく地域ごとの具体的な問題に対応するようにする、こういったことになるように指導しておるところでございます。  また、交換分合制度が改正農振法で拡充をされております。林地等の交換分合等でございますが、これの積極的な推進を図るということで、これにつきましても、土地の関係権利者の意向を十分考えまして、農地の集団化なり経営規模の拡大に資するように運用していきたい、このように考えております。  なお、農振法改正に伴います六十年度の予算と税制につきまして申し上げますと、まず、都道府県の基本方針の変更に要する経費につきまして補助を考えております。また、市町村の整備計画の管理経費につきましても引き続き助成をしていきます。税制につきましては、農振法の改正で新しく設けられることになりました林地等の交換分合、それから協定関連交換分合による土地の取得等につきましては、所得税、法人税、それから登録免許税、不動産取得税につきまして特別の措置を講ずることになっております。  それからなお、国会の議論の過程で、この農振法の趣旨を十分徹底するように、こういうような御意見もあったわけでございまして、これらの点につきましても、パンフレット、映画等によりまして啓蒙普及活動を積極的に展開しているところでございます。
  106. 水谷弘

    ○水谷委員 時間が迫っておりますので、何点か申し上げたかったのでありますが、一つお願いでございますけれども、農振法の改正に伴って総合的、計画的に整備を推進していくという観点から、細かい問題でありますけれども、六十年六月三十日までに変更の承認手続をする、これは明確なものでないかもしれませんけれども、せっかくの総合的、計画的な見直しをしていこうというときでありますから、地域農業集団、生産者、農協、農業委員会、市町村、こういう一番最先端の現場のいろいろな議論、意見考え方、合意、そういうものがしっかり煮詰まっていくような方向で、いわゆる施業の進め方、これをひとつしっかりお願いしておきたい、このように考えます。  最後に、何点がまだ残してしまいましたが、大臣に一戸とお伺いをしたいわけであります。  蚕糸業対策、これは今国会に繭糸価格安定法等の法改正も出されているわけですけれども、今大変な危機に瀕しているわけです。  養蚕農家を守るために、大臣の所信の中には軽くちょこっとしか触れてありませんので私は不満足でありますが、触れてあるないではなくて、真剣にお取り組みいただけるものと私は考えておりますけれども、細かいことについては時間がございませんので割愛をいたします。どうか、少しでも早く養蚕農家が経営に希望を持てるような、また、伝統産業でもあり日本古来の守り育てていかなければならないこの蚕糸業の今後の危機突破といいますか、そのための大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  107. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 水谷先生お答えいたします。  養蚕業は我が国の農山村等の畑作地帯における農業経営上の重要な作目と認識しております。  最近における我が国の蚕糸業をめぐる情勢は先生のおっしゃったように大変厳しいわけでございますが、このような事態を打開するために、昨年十一月に基準糸価の引き下げとこれに伴う関連対策を実施するとともに、昭和六十年度予算においては、事業団に損失補てん交付金として四十四億八千八百万円を繰り入れる予定としているころでございます。  今後におきましては、実は一番大切なことは、絹のよさをもっとPRして、いかにして絹を売るか、これを最重点に置きまして、今農蚕園芸局でいろいろ案を練っております。実は総理からも特にそういうお話もございまして、そういうことで絹のよさを大々的にPRするとともに、四つの項目を中心にやりたいと思っております。  その一つは、法律改正による新たな繭糸価格安定制度のもとで繭及び生糸の価格の安定を図る。二番目には、事業団在庫処理の円滑化を図る。三番目には、需要の増進対策の推進、輸入の抑制等により需給の改善を進める。四番目には、主産地の形成、中核的農家の育成等により養蚕業の生産性の向上を図る等の施策を進め、厳しい状況のもとではありますが、養蚕業の安定を図ってまいりたいと考えております。
  108. 水谷弘

    ○水谷委員 中曽根総理からも大臣に、政府が金を出してもいいからしっかり需要の拡大をというお話、応援があったようでございます。どうかひとつ需要の拡大にも全力でお取り組みをいただきたい。お願いをしておきます。  もう一つ大臣の所信の中でも、いわゆるバイオテクノロジー初め先端技術を駆使して希望のある農業を確立したいという旨のお話がございました。家畜の改良増殖の技術は大きくスピードアップしてきているわけでありますが、その中でも、優秀な系統牛を飛躍的に増殖できる牛の受精卵移植技術は、実験段階から、まだちょっと早いかもしれませんけれども、その技術の普及段階に入りつつあるわけです。  そこに数々の問題が指摘されております。バイオテクノロジーの取り扱いについては、安全性や生命の尊厳の問題、また基礎的研究の立ちおくれ、研究員の不足、また技術者の養成、それらがあるわけでありますけれども、この一つ一つについて触れている時間がございませんので割愛させていただきますが、本日は、優良受精卵の確保ということについて御質問をしたいと思うのであります。  国内的にその確保を積極的に推進することはもちろんでありますけれども、国外からも優良な受精卵を求めるべきである、こういう考え方が当然ある。さきに、昨年の十月、家畜の凍結精液の輸入が自由化されたわけです。しかし、その際厳しい条件が与えられているわけです。そこで、今後の輸入受精卵の国内利用に向けての見通しと、それから条件整備についてお伺いをしておきたいと思います。
  109. 野明宏至

    ○野明政府委員 家畜改良増殖のための海外からの育種素材につきましては、従来から時時種畜検査というふうなことをやりまして輸入された雄の家畜、そういうものを活用してやってまいったわけでございます。その後、先ほど先生お話ありましたような、今後やはり一層家畜の改良増殖を促進していくという観点から、一昨年家畜改良増殖法を改正いたしまして、海外から精液とかあるいは家畜受精卵が国内に入り、それが国内で利用可能なような道を開いたわけでございます。  その場合に、そういった精液とか受精卵につきまして、やはり我が国の家畜改良の推進上、必要な事項を記載した、外国政府機関またはそれに準ずる、私どもの方の農林水産大臣が指定した法人が発行する証明書が添付されるものについて、国内利用が可能な道を開いたわけでございます。同時に、秩序ある精液の輸入を確保するということで、国内的な体制も整備いたしてまいっておるわけでございます。  そういうふうな措置に基づきまして、精液につきましては、既にアメリカ及びカナダにつきまして輸入精液の証明書を発行する機関をそれぞれ指定いたしまして、また輸入に際して必要となる検疫条件についても取り決めがなされまして、既に昨年の末以降第一回の発注分に係るものが漸次入ってまいっております。受精卵につきましては、現在、証明書の発行体制について、技術開発が最も進んでおりますアメリカにおいてその整備が進められておりまして、また輸入の際に必要となる検疫条件についても検討を進めておるわけでございます。  そういうことで、受精卵についても現在準備中ということでございますが、精液について既にそういうことで先ほど申し上げましたように入ってまいっておりますように、受精卵についてもそういった準備が整いますれば逐次国内にも秩序ある形で入ってまいるのではないかというふうに思っております。
  110. 水谷弘

    ○水谷委員 大変神田先生に御協力いただきまして、時間が延びてしまいました。今後とも大臣並びに農水省の皆様の農林水産業の発展のための積極的なお取り組みをお願いをしておきまして、これで質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  111. 今井勇

    今井委員長 神田厚君。
  112. 神田厚

    ○神田委員 農林水産大臣所信表明を承りまして御質問をさせていただきます。  大臣には農政環境極めて厳しい折の御就任、まことに御苦労さまでございます。以下、所信に沿った形での質問をさせていただきます。  まず最初に、農林予算関係の問題でございますが、佐藤農林水産大臣は昨年暮れの当農林水産委員会におきますところの質疑を通じまして、近年著しく縮減傾向を示している農林水産予算に対しましては、昭和六十年度の予算編成では縮減を食いとめて、そのための最大限の努力をする、こういうふうに明言をしているわけであります。しかるに、昭和六十年度の予算は前年比四・六%減と、昨年の四%減を上回る縮減がなされたわけでありまして、各省庁予算の中で最大のマイナス、ダウンを示しているわけであります。こういう、EC諸国並みの近代農業をつくり上げていこうという、そういう中での農林省予算の大幅縮減というのは極めて問題があるというふうに考えざるを得ないわけでありますが、予算獲得に向けて農林省当局及び大臣といたしましてどういう努力をなされたのか、御説明をいただきたいと思います。
  113. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えいたします。  実は、農林水産省予算というのは我が国の大変重要な役割を果たす予算、こんなことでございまして、そういう認識のもとに私の省を挙げて最善の努力をし、また私自身も大蔵大臣と直接折衝するなど、あらゆる機会をとらえて強力に主張してまいったわけでございますが、私としまして、前年に比べ減額となったことはまことに残念と存じておりますが、最善を尽くした結果でありますので、このような厳しい財政事情のもとではやむを得ないと考えております。  しかしながら、この内容面におきましては、農林水産業をめぐる諸状況が大変厳しい中でございますが、生産性が高く、土台のしっかりした農林水産業の実現あるいは活力ある村づくり等を図るため、限られた財源の中でございますが、予算の重点的かつ効率的な配分により、各種施策の質的充実を図っているところでございます。
  114. 神田厚

    ○神田委員 関係者はこの予算に大変不満を持っているようでありまして、財界主導型の予算であるとか、あるいは臨調路線の予算であるとかということで批判をしておりますが、大臣としての御感想はいかがでありますか。
  115. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 先ほど言ったようなことでございますが、いろいろな見方があると思います。実は率直に言いますと、ある農林水産業の専門家の中にはまあまあこういう厳しい予算の中では枝ぶりの割合整った予算ではないか、こういう見方もあるようでございます。また、先ほど言ったことでございますが、質的な充実を図り、効率的な予算を組んだ、そういう形の中に、実は我が省の一番重要な役割であります主食たる食糧の供給その他、いろいろな環境面、国土の保全あるいは水資源の涵養等につきましても十分対応し得るような予算を獲得した、こういうふうに実は考えているわけでございます。
  116. 神田厚

    ○神田委員 質的な充実を図るという意味では、順次その内容について御質問を申し上げていきますが、私どもは必ずしもそういうことで十二分に予算確保ができたというふうには思っておりません。なお、これは毎年あるわけでございますから、ひとつ努力をしていただきたいと思っております。  そして、具体的な内容でございますが、従来農林関係予算の削減の主なものは食管予算の縮減及び補助金の削減であるわけであります。しかもこの両方とも、私ども考え方によりますればもうほぼ削減の限界に来ている。これ以上、来年度以降も同じような形で予算削減が続きますれば非常に問題を残すというふうに考えておりまして、今後こうした厳しい事態対処するために農政の抜本的な見直しが要求をされている。食管の縮減あるいは補助金の削減、これはもうほぼ限界に近い形で来ているわけでありますから、今までのような形で農政を推進をしていくということについては矛盾が出てくるわけであります。  そこで農林水産省としては、今後価格対策あるいは生産対策、構造対策、こういうものの組み合わせをどういうふうに考えて、どのような農政を推進しようとしているのか、その点を明らかにしてほしいと思うのです。
  117. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えいたします。  先ほどちょっと申したことでございますが、大変厳しい財政事情のもとで、各施策につきまして優先順位の厳しい選択を行いつつ、我が国農林水産業の新しい展望を開くべく必要な予算を確保したわけでございますが、今後の価格政策、生産政策、構造政策を含めた農政の展開に当たりましては、生産性の向上を通じて農業の体質強化を図るとともに、需要の動向に応じた生産の再編成、あるいはバイオテクノロジー等先端技術の開発とか農山漁村社会の活性化などに重点を置いて、各般の施策を総合的に展開してまいりたいと思っております。
  118. 神田厚

    ○神田委員 答弁が不十分でありますが、次に進みます。  農業の基盤整備事業の見直し問題でありますが、近年の厳しい財政事情のもとで米価を初めとします各種農産物の政策価格が抑制的に推移をしているのは御案内のとおりであります。政府・自民党は農産物価格の決定に際しまして、基盤整備の促進と構造政策を充実し、農業体質の強化を図るとしている。これは臨調なんかの答申もこういう線に沿っているわけでありますが、そういう中で、しかしながら予算の編成時におきますところのそれらの項目を見ましても、決してそういう努力が果たされているというふうには考えにくい問題であります。  さらに、具体的な指摘に移りますれば、特に昭和五十八年度から昭和六十七年度までの第三次土地改良長期計画が三十兆四千億円の事業量計画を立てているわけでありますが、近年基盤整備事業に係る予算は毎年削減されておりまして、計画の進捗率は六十年度予算を含めても三カ年でわずか一六%にすぎない、こういう状況であります。基盤整備の促進は農業生産の再編成、農業生産性の向上、こういう生産対策の面ばかりでなくて、農地の流動化につながる構造政策という、こういう見地からも不可欠のものであるわけでありますが、こういう状況で、この土地計画、土地改良の事業の進捗率が極めて低いというような現状のままでは、幾ら生産対策、構造対策に力点、質的充実の問題を言っても、なかなか説得できる内容を持っていない。そういうことから、今後例えばこの種の予算の獲得における問題についてはどういうふうに努力をするのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  119. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  基盤整備関係の予算が第三次の土地改良長期計画から見てかなりおくれている、進捗率が非常におくれているのではないか、こういう御指摘でございます。確かに、六十年度はこの計画の第三年目に当たるわけでございますが、これで約一六%の進捗率でございます。私どもといたしましては、農業基盤整備事業につきましては先生と全く同じ認識を持っておりまして、生産性の向上とかあるいは農業生産の再編成、主食食糧自給力の維持強化、こういうための最も基礎的な事業であると思っております。したがいまして積極的に推進していかなければならない基本的な事業でございます。  御指摘のように、来年度予算は全体の公共事業費が抑制をされるという中におきまして編成されたわけでございます。私どもといたしましては大臣を初めといたしまして非常な努力をいたしたわけでございますけれども、対前年比マイナス一・五%ということになったわけでございます。  ただ、ここで一点申し上げておきたいのは、そうは言いましても、農業基盤整備費は一般公共事業費に占めるシェアといたしましては、前年をわずかに上回るわけでございます。そういう努力をいたしたということにつきましては、ぜひ御理解をいただきたいと思います。  また、こういうような予算が制約されている状況でございますので、事業の推進に当たりましては、工事の進捗を図るために新規事業を極力抑制をしてまいりまして、継続事業の着実な推進を図りまして、事業効果をなるべく早く発現するように努力をいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、今後とも、農業基盤整備事業は非常に重要な事業でございますので、この長期計画の達成に最大限の努力を払っていきたい、このように考えている次第でございます。
  120. 神田厚

    ○神田委員 現実に三カ年実績が一六%ということでありますから、これから先の見通しについては相当厳しいという見方をしなければなりませんが、どうですか大臣、この計画達成の見通し、どういうふうにお持ちでありますか。
  121. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えいたします。  今局長が話したとおりでございまして、今度の予算案につきましても実は一般公共事業費のシェアにつきましては〇・〇三二とにかくふやしたということで、これはこの予算だけだと思います。そんな状況でございますが、三年で一六%という実施率、これは非常におくれておるわけで、今後の見通しにつきましても、実は最大限の努力をいたしたいわけでございますが、やはり予定どおりはいかないのではないか、このように考えております。
  122. 神田厚

    ○神田委員 臨調答申ですら、やはり構造政策もう少ししっかりやれというふうを形で、例えばいろんな面での補助金なんかの問題に厳しいことを言いながら、構造政策については積極的にこれを整備しろというふうなことを非常に強く言っているわけです。そして日本農業の一番の問題が生産性向上、国際競争力をつけることというようなことであれば、やはり少なくとも基盤整備事業のそういう計画達成というような問題は最大限に努力をされて、最優先の農政の課題として取り組まなければならない。それにもかかわらず、そういう中でもなお見通しが大変暗いということを大臣御自身から御答弁をいただくというのはまことに問題でありまして、そういうことにもう少しやはり積極的に取り組む姿勢を示していただきたいと思うわけでありますが、いかがですか。
  123. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えします。  今先生のおっしゃっていますような認識のもとに、今後引き続いて最善の努力をいたしたいと考えております。
  124. 神田厚

    ○神田委員 また、昭和六十年度の基盤整備事業予算につきましては高率補助の一割カットが適用されているわけでありますが、このような措置によりましてどの程度地方負担がふえるのか、またこれによりどの程度事業量が拡大されるのか、まずその点をお聞きしたいと思います。
  125. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  高率補助につきまして一律におおむね一〇%の補助率の引き下げがあったわけでございますが、基盤整備事業につきましては三百二十六億円の節約額といいますか節減額になっております。ただ、事業費につきましては一〇一%程度に相なっております。
  126. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、これらの問題で地方の負担増の問題はどういうふうになるのか。受益者の負担増につながらないような指導と財政措置が必要だと思うのでありますが、その点はどういうふうに対処いたしますか。
  127. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 補助率、負担金が一律カットされます場合に、我々といたしまして一番配慮いたしましたのは、そのカットが受益者にはね返るということでございます。そういうことで、この節減額が受益者にはね返らないで全額地方公共団体が負担をするような措置がとられるということを強く要望したわけでございまして、今回につきましてもそのための地方財政措置がとられることになっているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、受益者に、受益農民にこの節減額の負担がはね返ることなく地方公共団体が肩がわりをする、こういうことになっておりまして、この旨地方公共団体の方にも十分お願いをいたしているところでございます。  具体的にどういう地方財政対策がとられるかと申し上げますと、これは臨時財政特例債の起債を認めるということでございまして、これの元利償還費に対しまして六十一年度以降地方交付税上の措置を講ずる、あわせまして、その二分の一に相当する額につきましては一般会計から交付税の特別会計に繰り入れる、こういうことに相なっているわけでございます。これが国費の削減相当分についての措置でございます。  なお、事業量の増加に伴う地方公共団体の負担の増加分につきましては建設地方債の起債が認められる、このように相なっております。
  128. 神田厚

    ○神田委員 大臣にお伺いしますが、そういう形になりますと、受益者の負担増という問題については、極力これを避けるような指導なり措置なりをとられる、こういうことでよろしゅうございますか。
  129. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えいたします。  そのとおりでございます。
  130. 神田厚

    ○神田委員 次に、地域農業集団の育成問題につきまして御質問を申し上げます。  政府が昭和五十八年度以降構造政策の推進に当たりまして中心的な役割を果たすべきものとして期待しておりました地域農業集団の育成についてでありますが、私は昨年の十二月十八日の質疑で地域農業集団等に対する会計検査院の指摘事項がありましたことについて御質問を申し上げました。農林水産省は指摘事項を認めるとともに、今後は事業の趣旨を十分関係者に徹底するとともに、経理については遺憾のないような形で行われるよう指導してまいりたい、こういうふうに答弁をしております。この点に関しまして農林水産省はいかなる検討をなされたのか、この点をまず御答弁いただきたいと思います。
  131. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  会計検査の指摘は、主といたしましては経理の仕方が不適正である、あるいはその経費の使い方に問題がある、こういったことが主だったわけでございますが、私ども内部的に検討いたしまして、都道府県とも十分連絡をとりまして、事業趣旨を徹底していく、あるいは補助対象経費の明確化と適正な会計経理を行う、管理記帳を励行していく、それから研修会についてはきちっと行うというようなことにつきまして指導の徹底を図ったところでございます。
  132. 神田厚

    ○神田委員 この問題は非常に大きな問題であります。農林水産省が鳴り物入りと言ってもいいぐらいの力の入れようで地域農業集団の育成の方向を出したわけであります。つまりそういう中で会計検査院の指摘を受けるという不測の事態に至ったわけでありますが、そもそもそういう問題を起こしたことについてはやはり当初からの指導に問題があった。行政指導その他を含めまして、どういう方向で、どういう形でこれをやろうとしたのか、その指導の経過をちょっとお聞きしたいのであります。
  133. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 地域農業集団が構造政策の柱であるということは、これは従来もそういう考え方でございますし、今現在におきましても、構造政策を推進していく地域の一番基礎的な集団は地域農業集団であるという認識にはやはり変わりないわけでございます。  会計検査が問題にしておりますのは、助成方式を中心にいたしたものと私ども理解をしておるわけでございまして、会計検査の状況を見ますとやはりいろいろな問題が出てきているわけでございます。私どもといたしましては、地域農業集団の活動を推進していくために、従来のような助成方式をとっていくという方法も一つの方法ではございましょうけれども、いろいろな問題も出てくるということで、市町村との連携のもとに地域農業集団の活動を強化させていく方がよりベターな方法ではなかろうかと考えておるわけでございます。  したがいまして、六十年度予算におきましては、市町村が地域農業集団の活動を促進していく、そういう経費に対しての助成をするという助成方式に切りかえたわけでございます。その場合におきましても、地域農業集団の重要性につきましてはいささかも従来と変わってないわけでございまして、我々といたしましては、地域におきます構造政策の主体をこの地域農業集団に置いていくという考えには変わりはないわけでございます。
  134. 神田厚

    ○神田委員 地域農業集団が大事だという認識はそれはそれで結構なことでありますが、私がお尋ねをしておりますのは、会計検査院に指摘を受けるような形になったことについてどのような指導をしたのか。つまり、今度は当初考えたような形と形を変えて地域農業集団に対する助成を考えているようでありますけれども、そもそもの始まりの段階で問題があったのではないかということを尋ねているわけであります。その辺についてはどういうお考えでありますか。
  135. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 お答えいたします。  地域農業集団の活動そのものにつきましては、事業の発足当初でございますので若干の手違いなりおくれというものがあったかもわかりませんけれども、ああいう地域農業集団に対しまして直接活動費を交付していくというやり方にやはり問題があるのではないかと我々は考えているわけでございまして、地域農業集団の育成あるいは育成の中身につきましての指導については、我々といたしまして大きな間違いといいますか大きな問題はなかったのではないか、このように考えているわけでございます。
  136. 神田厚

    ○神田委員 局長の答弁にもちょっと触れられておりますが、昭和六十年度の予算からこの地域農業集団そのものに対する予算が削られている、それを市町村を通じて行う形にするという説明でありますが、それで果たして農林水産省が意図していた地域農業集団の育成ができるのかどうか、市町村を煩わせて指導していくということについて、当初の考えていたことといささかも変わりがないのかどうか、その辺はいかがでありますか。
  137. 井上喜一

    ○井上(喜)政府委員 市町村におきまして地域農業集団の活動を促進するいろいろな事業計画を持っているわけでございまして、私どもはそれを通しまして地域農業集団の活動をさらに促進していく考えでございます。その場合の地域農業集団に期待される機能というのは、従来と同様のものを考えているわけでございます。
  138. 神田厚

    ○神田委員 農業補助金などに対する世間の風当たりが非常に強いときにこういう事件を惹起したことは、まことに遺憾であります。そういう意味におきましては、今後少なくともこういう形での会計検査院等の指摘を受けることのないように努力をしていただきたい、このように思いますが、大臣いかがでありますか。
  139. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 神田先生お答えします。  地域農業集団の育成につきまして、私は今のお話よくわかりませんが、恐らく飲食費の問題であったと思います。地域農業集団につきましては、恐らく、各地域の農業家の皆さん方に御理解を得るために、いろいろな話し合いの中に一杯飲んだり食った方がずっと理解が深まるという形で間違って使われたのじゃないかと思いますが、これはよくないことでございます。今後はそういうことのないように厳しく戒めたいと思っております。
  140. 神田厚

    ○神田委員 まだ農業後継者問題、その他幾つか質問通告をしておりますが、あすの予算委員会一般質問時間で大臣をお呼びしておりますので、そこで残余の問題をさせていただきまして、きょうは終わります。      ————◇—————
  141. 今井勇

    今井委員長 内閣提出繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。佐藤農林水産大臣。     —————————————  繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  142. 佐藤守良

    佐藤国務大臣 繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  我が国養蚕業は、農山村畑作地帯において農業経営上重要な作目の一つとして定着しており、製糸業も伝統的な地場産業として地域経済において重要な地位を占めております。  このような中で、蚕糸砂糖類価格安定事業団は、生糸の買い入れ、売り渡し等を行うことにより、菌及び生糸の価格の安定を図り、蚕糸業の経営の安定に資する等の役割を担ってきたところであります。  しかるに、最近の我が国蚕糸業をめぐる情勢を見ますと、生活様式の変化等から絹需要が大幅に減退し、生糸の需給に著しい不均衡が生じております。その結果、事業団においては、その買い入れに係る生糸在庫が大量に累積するとともに、保管経費の増大等により財政が極度に悪化する等極めて厳しい状況に直面しております。  また、このことは、繭糸価格安定制度の先行きに対する不安を生じさせ、蘭及び生糸の価格の安定を妨げる大きな要因の一つともなっており、早急に事態の改善を図ることが必要となっております。  この法律案は、このような状況対処し、需給の均衡にも資するものとなるように、価格安定措置の改善を図るとともに、事業団の在庫生糸の処理の円滑化等を図ろうとするものであります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一は、繭及び生糸の価格安定措置の改善であります。  現行の価格安定措置については、昭和四十一年の中間安定措置の発足以後異常変動防止措置は発動されず、専ら中間安定措置により価格安定機能を発揮してきたという実態に即して制度の簡素化を図るため、異常変動防止措置を廃止し、中間安定措置をもととした安定価格帯を設け、そのもとで事業団が生糸の買い入れ、売り渡し等を行い、繭糸価格の安定を図る仕組みとすることとしております。  第二は、事業団の在庫生糸の処理の円滑化等であります。  現在、事業団は、大量の生糸在庫を抱えているところでありますが、その円滑な処理を図るとともに、かかる事態の再発の防止に資するため、一定の期間を超えて保有する生糸については、生糸の時価に悪影響を及ぼさない方法で生糸を売り渡す道を開くこととしております。  また、これまでの大量の在庫生糸及び借入金の処理につきましては、事業団に特別の勘定を設けてこれを整理し、適切な在庫処理を図ってまいることとしております。  第三は、蚕糸業振興資金の拡充であります。  現行の異常変動防止勘定の廃止に伴い、同勘定における積立金相当額の一部を、蚕糸業の振興等を図るための助成事業を行う財源である蚕糸業振興資金に充てることとしております。  以上がこの法律案提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  143. 今井勇

    今井委員長 次に、補足説明を聴取いたします。関谷農蚕園芸局長
  144. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案提案いたしました理由につきましては、既に提案理由にて申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  第一は、繭及び生糸の価格安定措置の改善についてであります。  この法律案におきましては、異常変動防止措置を廃止し、中間安定措置をもととした安定価格帯を設け、そのもとで事業団が生糸の買い入れ、売り渡し等を行い、繭糸価格の安定を図る仕組みとすることとしております。  すなわち、蚕糸砂糖類価格安定事業団は、生糸の価格が安定基準価格を下って低落し、または安定上位価格を超えて騰貴することを防止するため、出資者である製糸業者から一定の数量の範囲内で生糸を買い入れ、その買い入れに係る生糸を、相手方の請求に応じて売り戻すとともに、生糸の価格が安定上位価格を超えて騰貴しまたは騰貴するおそれがあると認められる場合には売り渡すこととしております。  この場合、標準生糸についての安定基準価格及び安定上位価格は、生糸の生産条件及び需給事情その他の経済事情から見て適正と認められる水準に生糸の価格を安定させることを旨として、農林水産大臣が毎年五月までに定めることとし、標準生糸についての事業団の買い入れの価格は、標準生糸の安定基準価格を基準とし、売り戻しを行う期間に係る保管に要する費用の額を考慮して、農林水産大臣の認可を受けて、事業団が定めることとしております。  また、事業団は、製糸業者が基準繭価に達しない価格で繭を買い入れる等の場合には、生糸の買い入れをしないこととしており、基準繭価は、繭の生産条件及び需給事情その他の経済事情から見て適正と認められる繭価水準の実現を図ることを旨とし、生糸の安定基準価格を参酌して、農林水産大臣が定めることとしております。  第二は、事業団の在庫生糸の処理の円滑化等についてであります。  事業団が在庫生糸を長期間にわたって保有することは、その保管経費の増大等により事業団財政を悪化させるほか、生糸在庫の大量の累積を通じて生糸の市況を圧迫する要因にもなりかねず、かえって生糸価格の安定という制度の目的の達成を困難にするものであります。このため、一定の期間を超えて事業団が保有する生糸につきましては、農林水産大臣の承認を受けて、生糸の時価に悪影響を及ぼさない方法によって売り渡すことができることとしております。  また、これまでの事業団の大量の在庫生糸及び借入金の処理に関する経理につきましては、特別勘定を設けてこれを整理することとしております。  昭和六十年度予算において計上されております蚕糸砂糖類価格安定事業団在庫生糸特別処分損失補てん交付金四十四億八千八百万円は、この特別勘定に繰り入れることとしております。  第三は、蚕糸業振興資金の拡充についてであります。  事業団は、蚕糸業振興資金を財源として、生糸の需要の増進を初め蚕糸業の振興に関する各種助成事業を実施しているところでありますが、異常変動防止措置が廃止され、同措置に係る勘定も廃止されることに伴い、この勘定の積立金相当額の一部二十五億五千二百万円は、蚕糸業振興資金に充てることとしております。  また、臨時行政調査会の答申を踏まえて、事業団の理事及び監事の任期を二年とするほか、事業団の財務諸表を事業団の各事務所に備え置かなければならないものとすることとしております。  以上のほか、繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の目的規定につきまして、最近における生糸の需給事情及び繭糸価格安定措置に関する改正内容を踏まえて所要の改正を行うこととしておりますとともに、施行期日につきまして、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日としております。  以上をもちまして、繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案提案理由の補足説明を終わります。
  145. 今井勇

    今井委員長 以上で本案の趣旨説明は終わりました。  次回は、来る二十七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四分散会      ————◇—————