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三浦(久)
委員 厚生省は、やらなくてもいいというよりも、やってはならない病院の廃止というようなことに血道を上げて、本当に実現しなければならない二・八体制の問題については、判定が出てから、国会決議が出てから三十五年間もかかるような、そんなぶざまな状態じゃありませんか。そのために看護婦さんたちがどれほど苦労しているのか、看護の第一線で働いている人たちがどんな苦労をしているのか、私調べてみましたからちょっと
紹介してみましょう。
〔宮下
委員長代理退席、
委員長着席〕
例えば九州がんセンター、これはもう
皆さん方がいわゆる高度医療とか先駆的医療とか言っている分野の病院です。ここで私は、看護婦さんが書いてくれた手記をいただいております。これは九州がんセンターの大人、子供の混合病棟の看護婦さんの手記ですけれ
ども、ここでは四十八床あるそうです。子供が二十一人、小児がんの患者さん、そして大人が二十七人いるのだそうです。細かく言うと切りがありませんから、担送とか護送ですね、いわゆる介護が必要な人々、自分で起きられない、自分で歩けない、そういうような人たちが四十八人のうち三十三名いるというのですよね。これはもう大変だそうです。
そして、例えば手術したばかりの人たちは無菌室に入れるのですね。無菌室に入れますと、看護婦さんは一々、無菌室に入るのに今まで着ていたものはみんな脱いで入らなければならぬというようなこと、付きっ切りになるというようなこと、それで看護が二重に手間がかかるというのですね。こういう無菌室もあかないというのです。大体一例について二カ月半ぐらい入っているというのです。ですから大変な看護をやっているわけであります。
そしてまた大人病棟、混合病棟ですから大人がおります。大人の場合ですと高齢者が多い。そうすると
一つ一つの
措置について大変時間がかかるのだそうです、検温
一つするのでも何でも。それからまた、例えば御飯を食べさせる場合でも、おしっこをさせる場合でも、これはみんな手が要るというのです。ですから、それはそれは大変忙しい。
では、子供の場合は手がかからないかというと、子供の場合も、二十七人のうちの半分、十三人が二十四時間点滴の患者さんだというのです。二十四時間点滴していますと、これは子供だから静かにしていない。目を離すと、もうポッと取ってしまう、外れてしまう。そうすると今度は、おとなしくさせてこれをまた入れて固定させるというのに、二人がかりで一時間ぐらいかかるというのです。もう我々ではちょっと考えられないような忙しさなんですね。
ここの混合病棟の看護婦さんはこう言っています。私たちの職場では、まず日勤で昼休みは十五分しかとれないのだそうです。準夜で五分間とれるときはいい方で、まずゼロだというのです。それから、深夜勤務の看護婦さんは全くとれないのだそうです。あの二・八判定の中でも、ちゃんと休憩時間を明示して、とらせなければいかぬと書いてありますね。休憩室があったって、そんなものはとれないというのです。食事もできないことがある。自分がトイレに行きたくっても行かれないときがあるというのですから、まさにこれは殺人的な忙しさだと私は思います。
ですから、彼女たちは、言葉をかけたい、例えば検温に行ったときにでも一人一人の病状を詳しく聞いてあげたいと思うそうですね。そして慰めてあげたい。そういう気持ちはあるけれ
ども、一人で二十人も検温していたのでは、一々患者さんの病状とかそんなものを聞いて、親身になって看護に当たるような
状況にはならない。だからなるべく話はすまい、それで、追われている仕事をやろうという気持ちにしかならないというのです。そして患者さんの方も、いや、忙しそうですねと話しかけたいでしょう、自分の病状が不安ですから。それでも遠慮してしない。ですから看護婦さんたちは、本当にこの人たちの身になって看護したい、自分たちは一生懸命やっているのだけれ
ども、しかし、本当に自分の心が満足いくような仕事ができない、それが悔しいと言われているのですよ。そういう現場の第一線で働いている良心的な看護婦さんたちの気持ちというものも、あなたたち、よく
理解しなければならないと思うのです。
それで、小児がんの場合ですと、小児がんの子供が末期になってくると、母親は泣き叫ぶそうです。ああ、私が本当に早く発見しなかったから悪いとか、それはもう大変だそうです。そうすると、そういう意味での家族ケアというものもまた必要になるわけでしょう。だから手が幾らあっても足りないと言うのです。そういう
状況の中で働いているということを厚生省の責任者はちゃんと自覚すべきです。
また、これも九州がんセンターの話です。ここでは消化器病棟、循環器病棟ですが、毎日一、二例の食道がんとか肝臓がん、膵臓がんの手術が必ずあるそうであります。そうすると、手術があると、その日は、看護婦さんはまくら元に一人ずつと立ちっ放しで立っていなければいけないそうですね。頭床看護というのですか、ちょっと私、言葉を忘れましたけれ
ども。そういう
状況なんですね。その看護婦さん一人で、手術が終わった人だけじゃなくて、術後一日ないし七日間の一週間以内の患者さんたちを五人ないし六人を見るのだそうです。これはなかなか大変だと言っていますね。
ですから、大部屋で
比較的症状の安定した人たちがナースコールを鳴らしますね、しかし行かれないんだそうですね。ですから、何か事故でも起きたらという心配がいつもいつも看護婦さんの心から離れないのです。
それからまた、こういうがんというのは主に高齢者が多いのですね。こういう高齢者ですと尿、便が失禁状態になりますね。これは全部やってやらなきゃいけませんでしょう。それから、便器の交換、着物を着かえさせる、みんな一人一人やらなきゃならない。ちょっと体を動かす、みんな看護婦さんがやらなきゃならない。そういう
状況で、この看護婦さんはもう本当に文字どおり走り回っているという感じだ、こう言っておられますね。
それで、日勤者でもナースと口をきくことがないというのですいお互いに忙しくて。顔を合わせることもないというような感想をこの人は漏らしておられますね。笑う余裕もないと言ってます。それで、患者さんの状態がぼっとおかしくなって急変するというようなときには、業務が完全に麻痺してしまうというのです。だから、おっかなくておっかなくて、いつもそういう過誤と隣り合わせだ、不安で不安でたまらない、自分の親ならこんなところには預けられない、こういうことまで書いておりますよ。
そして、さっきも言いましたように、やはり精神的にゆっくり話をしてやろうと思っても、次から次に仕事に追われる、その仕事もやらなきゃしようがないというので全く十分な看護はできぬ、本当に自分たちの気持ちを厚生省はわかってほしいということを心から述べておられるのですね。
そして、食道がんの手術があったときには二人夜勤から三人夜勤になるそうです、手がかかるから。このときの
状況をこの看護婦さんはこう言っています。この三人夜勤が許可されることがある。どんなに助けられたかわからない。夜勤がふえてもきつくても、ハードスケジュールになっても、仕事の安全性が保障されるなら三人夜勤でも構わない、こういうふうに言われていますね。毎日毎日何にも事故が起きないように、それだけを願って頑張っておる。だから、本当に自分たちが安心して働けるだけの人員を確保してほしい、こういうふうに言っておられるわけであります。
問題は、看護婦さんの問題だけじゃないでしょう。患者さんの問題でしょう。両方の問題に
関係しておりますよ。ですから、私は、こういう現場の看護婦さんたちの実情というものに本当に心を痛めて、こういう二・八体制というものを一日も早く実現をさせなきゃいかぬというふうに思っているのです。
厚生省は今まで
努力してきたと言うけれ
ども、では
人事院判定についてどういう
見解を持っているんですか。あれはやってもやらなくてもいいんだ、そう思っているんですか。私
どもは、
国家公務員法上、ちゃんと
人事院判定というものはその実現のために
最大限の
努力をしなければならない義務を負っているというふうに思っているのですが、厚生省はどう思っていますか。