○市川
委員 全く要らないとは思ってないですよ。これは卵の黄身の例え話でよく出てくるのですけれ
ども、対上陸を突破してしまえば中は空っぽじゃないか、黄身がない。卵殻を破ってしまえば中は空っぽだ。だからもう、とにかく向こうは上陸にすべてをかけてくる。だから、上がった後も一定のものがあるんだということになれば、またそれだけの準備をしなければならないという
意味において抑止力の効果は果たす。それはわかるのですよ。わかるのですけれ
ども、
予算という前提があるのでしょうと言うのです。
予算を前提に効率化というものをもっと考えるべきじゃないですかね。ですから、水際、沿岸上陸阻止、最近そういう考え方が芽生えていることはわかるのです。それは最近ですよ。本来、それがどしんとなければいけないものだったと私は思うのですよ。まず洋上、水際、沿岸、こういう考え方をこれからは防衛構想の基本に置くのですか。五九中業をつくるというけれ
ども、まず何が基本になるのか。本来はそういうポリシーがなければいけないのですよ。
日本列島をどう守るのか。どこでどういうふうに守るのか。憲法というものがあり、専守防衛という方針があり、専守防衛という一つの大方針をもうちょっと具体化すると、
日本の国土条件を考えた場合は、洋上、水際、沿岸で対上陸阻止にかける。そのポリシーをまずはっきりと決めて、それにふさわしい装備とは一体何なのだ、しかもそれにふさわしい組織、編成というのはどうあるべきなのか、こういう
議論がもっと行われなければいけないと思うのですね。
それが最初に、陸上
自衛隊は戦車ありき、
海上自衛隊は護衛艦ありき、
航空自衛隊はF15ありきというので、どうも正面装備をずらっと持ちたがるという体質が抜けがたい。防衛研修所や
海上自衛隊の幹部学校で、各党の安全保障政策を聞くというのでときどき御招待いただいて行くのですけれ
ども、若い方々と話してみると、そういう点はもっと柔軟ですね。何か幹部の方が、隣の方にいて渋い顔をして私の話を聞いているのだけれ
ども、若い人たちはもっと敏感に反応していますよ。あなた方は、旧陸軍や海軍の古い固まりみたいな人たちと違って
昭和の生まれなのだからもっと合理的に考えなさい、戦車なんてもっと極端に減らしていいじゃないですかと。沿岸というものにもっと力を入れれば、これは今すぐトーチカを振れというのじゃないのですよ、優秀な機械があるのですから、それを持っていればいいのです。あるいは対戦車砲。これは向うに行って戦うのじゃなくて
日本の本土で戦うのですよ。その場合、こっちには地の利があるのです。向こうは、どこに地雷があるのかわからない、またいろいろなところに隠れ場所があって撃つわけですから。だから、制空権で優勢をとられたら、戦車はめためたにやられちゃいますよ。そういう
意味から考えても、本土防衛力というものを考えたときには、沿岸ですべてをかけるぐらいの基本をまず定めて、もっと効率化というものを真剣に考えてもらいたい。これは
国民の税金ですから。
さらに言いますと、例えば
航空自衛隊にしても防空ミサイルとかレーダーというのは軽視されているのですね、今回パトリオットとかいうものが言われておりますけれ
ども。レーダーが二十八カ所ほとんどが、バッジシステムが旧世代化してしまっている。ところが、買う
要撃戦闘機は非常に最新鋭のものを買う。レーダーが古い。つり合いがとれませんね。あるいは大湊の地方隊とか舞鶴とかああいうところに行きますと、大した船は置いてないですね。その辺の輸送船みたいなものがぽこんと寂しそうに港にいるだけです。それで四個護衛艦隊群なんて、七つの海を支配するみたいな発想で大きい船をつくって外洋、シーレーンに行く。海軍というか
海上自衛隊の方は、大きな船で外洋に出かけていく、艦長としての栄光に浸る、どうもこういう傾向がある。したがって、小さいミサイルボートなんというものは持ちたがらない。
そういうように、各
自衛隊がみんなばらばらに考えているわけです。同じ防衛構想をもっとしっかりつくって、本当に血のにじむような
議論をしていただいて、防衛のポリシーの基本をもっとしっかり定めて、それにふさわしい装備、編成のあり方——極論すれば、三つの
自衛隊は要らないと思うのですね。一つでいいですよ。こんな狭い
日本の国を守るのに、何で三つなければいけないのですか。ナイキとホークは別々にやっているわけでしょう。何でナイキとホークは別々でなければいけないのです。大体、陸は戦車のパイロット出身が偉くなっていく。
海上自衛隊は船の艦長さんが上になっていく。空は
戦闘機のパイロットが偉くなっていく。だから何となく、ナイキとかホークの
部隊というのは意気が上がらないわけです。そういうことを思うのです。
しかも人件・糧食費が
予算の五〇%を占めておる。何か労働集約型の
自衛隊という感じですね。人民解放軍みたいな感じです。要するに、テクノロジーとか先端技術とか精密誘導兵器とか騒がれているのに、旧態依然とした発想で、ただ
予算をふやしてくれ、ふやしてくれもっと血のにじむような
議論と、自分のぜい肉を落とす努力を本気でやるべきだと思うのです。そういうものが目に見える形で出てくれば、GNP一%の
議論も私は変わってくると思うのですよ。
だから、みんな言っておりますよ。
防衛庁にいる間は言わないのだけれ
ども、統幕議長とか幕僚長とかが
防衛庁をおやめになると、OBになるとおっしゃり出すわけです。すごいタカ派になる方とハト派になる方と極端なんですね。聞いてみると、北海道あたりでも、ソ連の戦車が上陸が終わったという前提でやってみたら、一週間持たせようと思ったら二、三日でだめだったとかと得々と話していらしたのだけれ
ども、何で揚げちゃうのだ、何で揚げた後に戦うということでいつも
議論しているのだ、揚げないようにするにはどうしたらいいのかと言う。そうすると、戦車を転がしたいと言うのです。土木作業はいやだと言うのです。ここなんですよ。だけれ
ども、本当に
現実というのはそういうものなんです。実際は戦車なんかよりもがっちりしたトーチカの方が、上陸阻止ということを考えれば、
飛行機からも守れるし、よほど威力を発揮するわけです。戦車はガソリンがないと動かないのですよ。しかも戦車というのは
訓練された要員がきちっとそろっておりませんと動けませんよ。対戦車砲なんというのはそんなに
訓練は要らないです。割と操作が簡単だし。そういう点で長官、五九中業をもっと——私はいつも暴走族の論理、こう言っておるのですよ。余り悪態ついて申しわけないのですけれ
ども、人がいい車を持っておりますと自分の車がみすぼらしくてしようがないのですよ。あの車が買いたい、こうなる。買うわけですよ。パイロットというのはそういう心理が働くと思うのです。この
飛行機はもう旧型だ、今度はあの
飛行機がいい、おれの命をかけているのだ。だから内局を突きあげる。内局もだだっ子をなだめるように、しようがないから買ってあげるなんという。もう少しその辺について、効率的な防衛力をどうつくるかという本当に
防衛庁の中での
議論がもっと闘わされて、そしてぜい肉をもっと落としていく、それを一回やるべきだと思うのです。GNP一%が外れちゃいますと、またそういう
議論をしなくなっちゃう。どんどんどんどんふやしていけばいいのだという発想だけ。創意、工夫、節約という体質がない。ですから、GNP一%で縛られているからこそ知恵がわいてくるのですよ。考えるわけでしょう。その辺のところどうですか、長官。これから、若い長官と言うのは失礼ですけれ
ども、
昭和の
防衛庁長官、柔軟なしかも新しい時代の息吹を持った長官に、そういうメスを大胆に入れていかれることを期待しておるわけですが、どうですか。