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1985-06-19 第102回国会 衆議院 逓信委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十年六月十九日(水曜日)     午前十時十四分開議 出席委員   委員長 渡辺 紘三君    理事 加藤常太郎君 理事 関谷 勝嗣君    理事 野中 広務君 理事 吹田  愰君    理事 鈴木  強君 理事 武部  文君    理事 竹内 勝彦君 理事 西村 章三君       足立 篤郎君    亀岡 高夫君       近藤 鉄雄君    志賀  節君       谷垣 禎一君    額賀福志郎君       長谷川四郎君    原 健三郎君       保利 耕輔君    森  美秀君       森  喜朗君    阿部未喜男君       伊藤 忠治君    中村 正男君       松前  仰君    森中 守義君       貝沼 次郎君    山田 英介君       木下敬之助君    永江 一仁君       佐藤 祐弘君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 左藤  恵君  出席政府委員         科学技術政務次         官       内藤  健君         大蔵政務次官  中村正三郎君         郵政大臣官房長 二木  實君         郵政省通信政策         局長      奥山 雄材君         郵政省放送行政         局長      徳田 修造君  委員外出席者         科学技術庁長官         官房審議官   三浦  信君         科学技術庁研究         調整局宇宙開発         課長      鍵本  潔君         大蔵省主計局主         計官      日高 壮平君         会計検査院事務         総局第五局長  秋本 勝彦君         会計検査院事務         総局第五局郵政         検査課長    天野  進君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     川原 正人君         参  考  人         (日本放送協会         技師長専務理         事)      矢橋 幸一君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   渡辺 伸一君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   川口 幹夫君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     横井  昭君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     林  乙也君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     松本 幸夫君         参  考  人         (日本放送協会         経理局長)   松村  勇君         参  考  人         (宇宙開発事業         団副理事長)  園山 重道君         参  考  人         (宇宙開発事業         団理事)    岩崎  隆君         参  考  人         (宇宙開発事業         団理事)    船川 謙司君         参  考  人         (通信放送衛         星機構理事)  大竹 利男君         逓信委員会調査         室長      長崎  寛君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   松前  仰君     川崎 寛治君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     松前  仰君 五月十七日  辞任         補欠選任   谷垣 禎一君     玉置 和郎君   中井  洽君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   玉置 和郎君     谷垣 禎一君   塚本 三郎君     中井  洽君 同月二十一日  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚田 延充君 同日  辞任         補欠選任   塚田 延充君     中井  洽君 同月二十二日  辞任         補欠選任   中井  洽君     滝沢 幸助君 同日  辞任         補欠選任   滝沢 幸助君     中井  洽君 同月三十日  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚田 延充君 同日  辞任         補欠選任   塚田 延充君     中井  洽君 六月七日  辞任         補欠選任   中井  洽君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     中井  洽君 同月十二日  辞任         補欠選任   中井  洽君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 英成君     中井  洽君 同月十八日  辞任         補欠選任   永江 一仁君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     永江 一仁君 同月十九日  辞任         補欠選任   森  喜朗君     保利 耕輔君   中川 嘉美君     貝沼 次郎君   中井  洽君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   保利 耕輔君     森  喜朗君   貝沼 次郎君     中川 嘉美君   木下敬之助君     中井  洽君     ――――――――――――― 五月二十日  電気通信基礎技術研究推進に関する陳情書(第四一四号) 六月十四日  通話料金遠近格差是正に関する陳情書(第四九〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書  日本放送協会昭和五十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書      ――――◇―――――
  2. 渡辺紘三

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並び日本放送協会昭和五十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書の両件を議題とし、審査に入ります。  この際、参考人出頭要求に関する件につきましてお諮りいたします。  両件審査のため、本日、参考人として日本放送協会通信放送衛星機構及び宇宙開発事業団当局出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡辺紘三

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 渡辺紘三

  5. 左藤恵

    左藤国務大臣 ただいま議題となりました日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書国会提出につきまして、概略説明申し上げます。  これらの書類は、放送法第四十条第三項の規定により、会計検査院検査を経まして国会に提出するものであります。  日本放送協会から提出された昭和五十六年度貸借対照表等によりますと、昭和五十七年三月三十一日現在における資産総額は、二千三百四十二億九千八百万円で、前年度に比し、二百十八億七千八百万円の増加となっております。  これに対しまして、負債総額は、九百三十八億一千五百万円で、前年度に比し、六十六億七千百万円の増加となっております。  資本総額は、一千四百四億八千三百万円で、前年度に比し、百五十二億七百万円の増加となっております。  資産内容を見ますと、流動資産六百六十九億三千七百万円、固定資産一千五百九十二億七千八百万円、特定資産七十七億四千五百万円、繰り延べ勘定三億三千八百万円であり、固定資産内容は、建物五百六十三億一千三百万円、土地二百三億二千八百万円、機械四百十八億三千百万円、その他の固定資産四百八億六百万円となっております。  また、負債内容は、流動負債三百八十五億八千九百万円、固定負債五百五十二億二千六百万円であり、固定負債内容は、放送債券三百二十七億六千万円、長期借入金九十三億六千六百万円、退職手当引当金百三十一億円となっております。  資本内容につきましては、資本七百五十億円、積立金五百二億七千六百万円、当期事業収支差金百五十二億七百万円となっております。  次に、損益について御説明申し上げます。  経常事業収入は、二千八百十五億七千六百万円で、前年度に比し、百一億四千五百万円の増加となっております。  これに対しまして、経常事業支出は、二千六百六十七億九千九百万円で、前年度に比し、百五十八億九千八百万円の増加となっております。  この結果、経常事業収支差金は、百四十七億七千七百万円となっております。  これに、特別収入八億三百万円及び特別支出三億七千三百万円を含めまして、事業収入は二千八百二十三億七千九百万円、事業支出は二千六百七十一億七千二百万円で、事業収支差金は百五十二億七百万円となっております。  引き続きまして、昭和五十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書国会提出につきまして、概略説明申し上げます。  これらの書類は、放送法第四十条第三項の規定により、会計検査院検査を経まして国会に提出するものであります。  日本放送協会から提出された昭和五十七年度貸借対照表等によりますと、昭和五十八年三月三十一日現在における資産総額は、二千五百二十四億一千五百万円で、前年度に比し、百八十一億一千七百万円の増加となっております。  これに対しまして、負債総額は、一千四十八億一千六百万円で、前年度に比し、百十億百万円の増加となっております。  資本総額は、一千四百七十五億九千九百万円で、前年度に比し、七十一億一千六百万円の増加となっております。  資産内容を見ますと、流動資産七百二億三千八百万円、固定資産一千七百七億一千万円、特定資産百十億七千四百万円、繰り延べ勘定三億九千三百万円であり、固定資産内容は、建物五百九十二億八千百万円、機械四百二十六億八千百万円、土地二百五億一千九百万円、その他の固定資産四百八十二億二千九百万円となっております。  また、負債内容は、流動負債四百十億六千三百万円、固定負債六百三十七億五千三百万円であり、固定負債内容は、放送債券四百九億九千万円、長期借入金八十四億一千三百万円、退職手当引当金百四十三億五千万円となっております。  資本内容につきましては、資本七百五十億円、積立金六百五十四億八千三百万円、当期事業収支差金七十一億一千六百万円となっております。  次に、損益について御説明申し上げます。  経常事業収入は、二千八百七十七億四千六百万円で、前年度に比し、六十一億七千万円の増加となっております。  これに対しまして、経常事業支出は、二千八百六億二千八百万円で、前年度に比し、百三十八億二千九百万円の増加となっております。  この結果、経常事業収支差金は、七十一億一千八百万円となっております。  これに、特別収入五億二千万円及び特別支出五億二千二百万円を含めまして、事業収入は二千八百八十二億六千六百万円、事業支出は二千八百十一億五千万円で、事業収支差金は七十一億一千六百万円となっております。  以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  6. 渡辺紘三

    渡辺委員長 次に、日本放送協会会長川原正人君から補足説明を求めます。川原君。
  7. 川原正人

    川原参考人 まず、ただいま議題となっております日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書概要につきまして御説明申し上げます。  まず、財産目録貸借対照表当年度末現在の資産総額は、二千三百四十二億九千八百万円で、この内訳は、流動資産六百六十九億三千七百万円、固定資産一千五百九十二億七千八百万円、特定資産七十七億四千五百万円、繰り延べ勘定三億三千八百万円で、このうち固定資産内容は、建物五官六十三億一千三百万円、土地二百三億二千八百万円、機械四百十八億三千百万円、出資五億七千四百万円、その他の固定資産四百二億三千二百万円でございます。  当年度資産総額を前年度末と比較しますと、二百十八億七千八百万円の増加となっておりますが、これは主として、事業収支剰余金七十五億三千万円と、受信料前受け金の増加十三億五千四百万円などにより流動資産が百二億三千八百万円増加し、また、当年度建設計画に基づくテレビジョン放送網建設放送設備整備等実施、及び通信放送衛星機構に対する出資により固定資産が九十億七千万円増加したためでございます。  一方、これに対する負債総額は、九百三十八億一千五百万円で、この内訳は、流動負債三百八十五億八千九百万円、固定負債五百五十二億二千六百万円で、このうち固定負債内容は、放送債券三百二十七億六千万円、長期借入金九十三億六千六百万円、退職手当引当金百三十一億円でございます。  当年度負債総額を前年度末と比較しますと、六十六億七千百万円の増加となっておりますが、これは放送債券増加等により固定負債が五十二億三千三百万円増加し、また、受信料前受け金の増加等により流動負債が十四億三千八百万円増加したためでございます。  また、資本総額は、一千四百四億八千三百万円で、この内訳は、資本七百五十億円、積立金五百二億七千六百万円及び当期事業収支差金百五十二億七百万円でございます。この資本総額は前年度末と比較し、百五十二億七百万円の増加となっております。  次に、損益計算書により経常事業収支について見ますと、まず、受信料等経常事業収入は、二千八百十五億七千六百万円で、前年度と比較し、百一億四千五百万円の増加となりました。  これは主として、受信料増加によるもので、極力受信契約維持増加に努めた結果でございます。  なお、有料受信契約者数は、五十二万件増加し、当年度末には二千九百七万件となりました。  次に、経常事業支出は、二千六百六十七億九千九百万円で、この内訳は、給与九百二十五億八千万円、国内放送費七百十三億一千万円、国際放送費十七億二千百万円、営業費三百九十三億二千四百万円、調査研究費二十九億七千百万円、管理費三百八十一億二千二百万円、減価償却費百七十六億八千七百万円、財務費三十億八千四百万円となっております。  これは前年度と比較し、百五十八億九千八百万円の増加となりましたが、主として、放送番組内容充実刷新受信契約維持増加対策推進及びこれらの事業遂行に伴う維持運用費等増加に係よるものでございます。  以上の結果、経常事業収支差金は百四十七億七千七百万円となり、これに、特別収入八億三百万円を加え、特別支出三億七千三百万円を差し引いた当理事業収支差金は百五十二億七百万円となりました。  このうち、債務償還等に充てた資本支出充当は七十六億七千七百万円であり、事業収支剰余金は七十五億三千万円であります。  なお、この事業収支剰余金は、翌年度以降の財政安定のための財源に充てるものであります。  これをもちまして、協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書につきましての概要説明を終わらせていただきますが、今後の事業運営に当たりましても、公共放送としての使命責務を銘記し、一層放送事業発展に努力してまいる所存でございます。  何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第でございます。  さらに、同じくただいま議題となっております日本放送協会昭和五十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書概要につきまして御説明申し上げます。  まず、財産目録貸借対照表当年度末現在の資産総額は、二千五百二十四億一千五百万円で、この内訳は、流動資産七百二億三千八百万円、固定資産一千七百七億一千万円、特定資産百十億七千四百万円、繰り延べ勘定三億九千三百万円で、このうち固定資産内容は、建物五百九十二億八千百万円、土地二百五億一千九百万円、機械四百二十六億八千百万円、出資九億一千百万円、その他の固定資産四百七十三億一千八百万円でございます。  当年度資産総額を前年度末と比較しますと、百八十一億一千七百万円の増加となっておりますが、これは主として、当年度建設計画に基づくテレビジョン放送網建設放送設備整備等実施、及び通信放送衛星機構に対する出資により固定資産が百十四億三千二百万円増加し、また、事業収支剰余金七十一億一千六百万円と、受信料前受け金の増加十五億六千二百万円、及び前年度からの繰越金の一部を当年度において、債務償還に使用したことによる減少七十六億一千八百万円などにより流動資産が三十三億百万円増加したためでございます。  一方、これに対する負債総額は、一千四十八億一千六百万円で、この内訳は、流動負債四百十億六千三百万円、固定負債六百三十七億五千三百万円で、このうち固定負債内容は、放送債券四百九億九千万円、長期借入金八十四億一千三百万円、退職手当引当金百四十三億五千万円でございます。  当年度負債総額を前年度末と比較しますと、百十億百万円の増加となっておりますが、これは放送債券増加等により固定負債が八十五億二千七百万円増加し、また、受信料前受け金の増加等により流動負債が二十四億七千四百万円増加したためでございます。  また、資本総額は、一千四百七十五億九千九百万円で、この内訳は、資本七百五十億円、積立金六百五十四億八千三百万円及び当期事業収支差金七十一億一千六百万円でございます。この資本総額は前年度末と比較し、七十一億一千六百万円の増加となっております。  次に、損益計算書により経常事業収支について見ますと、まず、受信料等経常事業収入は、二千八百七十七億四千六百万円で、前年度と比較し、六十一億七千万円の増加となりました。  これは主として、受信料増加によるもので、極力受信契約維持増加に努めた結果でございます。  なお、有料受信契約者数は、四十八万件増加し、当年度末には二千九百五十五万件となりました。  次に、経常事業支出は、二千八百六億二千八百万円で、この内訳は、給与九百七十八億九千五百万円、国内放送費七百四十億八千百万円、国際放送費十八億三千二百万円、営業費四百十六億八千七百万円、調査研究費三十億八千二百万円、管理費四百二億五千万円、減価償却費百八十三億八千万円、財務費三十四億二千百万円となっております。  これは前年度と比較し、百三十八億二千九百万円の増加となりましたが、主として、放送番組内容充実刷新受信契約維持増加対策推進及びこれらの事業遂行に伴う維持運用費等増加によるものでございます。  以上の結果、経常事業収支差金は七十一億一千八百万円となり、これに、特別収入五億二千万円を加え、特別支出五億二千二百万円を差し引いた当期事業収支差金は七十一億一千六百万円となりました。  なお、この当期事業収支差金七十一億一千六百万円は、翌年度の財政安定のための財源に充てるものであります。  これをもちまして、協会昭和五十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書につきましての概要説明を終わらせていただきますが、今後の事業運営に当たりましても、公共放送としての使命責務を銘記し、一層放送事業発展に努力してまいる所存でございます。  何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第でございます。
  8. 渡辺紘三

    渡辺委員長 次に、会計検査院当局から検査結果について説明を求めます。会計検査院秋本第五局長
  9. 秋本勝彦

    秋本会計検査院説明員 日本放送協会昭和五十六年度及び五十七年度の決算につきまして検査いたしました結果を説明いたします。  日本放送協会昭和五十六年度及び五十七年度財産目録貸借対照表、及び損益計算書並びにこれに関する説明書は、五十六年度については、五十七年十月二十二日、五十七年度については、五十八年八月十九日それぞれ内閣から送付を受けましたが、その検査を終えて、それぞれ五十七年十二月一日、五十八年十二月六日内閣に回付いたしました。  同協会の会計につきまして検査いたしました結果、特に違法または不当と認めた事項はございません。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  10. 渡辺紘三

    渡辺委員長 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 渡辺紘三

    渡辺委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷垣禎一君。
  12. 谷垣禎一

    谷垣委員 最初に、予定外の質問を一つさせていただきたいと思います。  それは昨日、豊田商事の永野会長が暴漢によって殺害されるという事件が起きました。いろいろ世間をにぎわせていた事件でございましたけれども、そうだとはいっても、ああいう形で殺害をするというようなことはまことに憎むべき事件であると言わなければならないと思います。そしてまたこの事件特殊性は、報道陣が見守っている中で行われたということでございます。したがいまして、テレビ等もしっかりとその現場をとらえることができたという特殊性がございました。実は私自身は昨日、このニュースを見る機会を失しましたので、的確な判断がまだできておらないわけでございますが、報道等を見た方々の御意見を伺いますと、いずれも大変大きな衝撃を受けておられるということが一般のようでございます。  こういう事件の場合には、やはり真実報道するという立場と、それから、テレビというメディアは家庭の団らんの場に生々しい映像が飛び込んでくるということもございます。報道現場ではどこまで報道すべきかという点でいつも大変判断にお苦しみになる、日々判断が試されていると言っても差し支えないのではないかと思いますが、今回は報道現場で、報道の面前で事件が行われたというだけにまことに特殊な問題もあったろうかと思います。  そこで、今回の報道に際しましてあえて報道に踏み切られたというに当たりましては、どのようなことを御判断の基準になさったのか、その点をまず、会長に伺いたいと存じます。
  13. 川原正人

    川原参考人 詳細につきましては後ほど、放送局長からまた答弁させたいと思いますけれども、この種の事件報道につきましては、私ども常に反省の上に反省を繰り返すといいますか、やはり真実はあくまで冷厳に報道しなければいけない、そこで真実を覆い隠すようなことはすべきではない、しかし、余りに残虐な場面等につきましてはおのずと節度もあるであろう、あるいは、そのような関係者に対していわゆる話を聞く取材等につきましても、よほど慎重であらねばならないと繰り返しておりますけれども、昨日の場合、事が事でございますし、やはりこれはある範囲では残虐というか無法といいますか、その事実は視聴者に率直にお伝えすべきだろうという判断のもとに、報道責任者判断であのようにしております。  しかしながら、一つだけ私自身反省といいますか、現実に殺人事件が目の前で行われる、ある程度その予測も可能だったような感じもいたします。録音の中には、おれは殺しに来たというようなことも言っております。ただ、現場にいたカメラマンのリポートもゆうべ出しましたけれども、凶器等は見えなかったし、まさかという、一種のおどかしであろうという判断取材陣、NHKだけでなくてあったようでございます。  非常に乱暴な者だとは思いつつも、やはり取材というものはあくまで冷厳に客観的に事実をとらえていかなければという、日ごろの訓練のもとに取材を続けていたのですが、結果としまして、あのような残虐な殺人事件が行われるのを大勢の取材陣がとめ得なかったといいますか、何らかの方法、どういうことが可能であったか、それはその場にならないと何とも言えませんが、何らかの方法があり得たのではないか、その種の反省はやはりジャーナリストの一人として私は持っております。
  14. 川口幹夫

    ○川口参考人 放送責任者としてお答えいたします。  ゆうべのあの事件は非常にショッキングでございまして、報道としてどのような形で放送するのか、これは関係者としては非常に問題のあったところでございます。ですからまず一つは、茶の間に入る映像ということで、できるだけショッキングなところは出さない、相当配慮をしてございます。それからそのことについて、例えば「ニュースセンター九時」などでは木村キャスターが、お子様についてはこれをお見せにならないようにしていただきたいということを前に振りまして、そして全体の説明をするというふうなこともいたしました。  ただ、けさ八時までに大体四百件ぐらいの視聴者からの電話が来ておりますけれども、そのほとんどが、あの場合報道陣は何も手を出せなかったのか、とめられなかったのかという非難が一つございます。それからもう一つは、ショッキングな映像をそのまま出していいのかというおしかりでございました。  前者につきましては今、会長が申し上げましたように、私どもも反省をしております。それから、けさのニュースワイドの中ではキャスターの曽我君が、このことについて報道人としてまことに遺憾な事件であった、後悔の残る事件ですというふうなことを申し上げております。今後の問題としては、さらに私ども検討していきたいし、それからああいう場合の対処の仕方というものについても、一層の覚悟を決めていきたいと思っております。  二番目の、報道としてどの程度のものを出せるかということにつきましては、今申し上げましたように、あの事件が現在の非常に大きな社会的な関心の中にある事件で、しかも大変ショッキングでございました。それを事実としてお見せすることはある程度やむを得なかろう、ただしそれはどこかで限度があるべきだということで、大阪と東京とで十分打ち合わせをした上で、しかるべきところはカットをして出した、私は一応の配慮をして出したと思っております。  以上でございます。
  15. 谷垣禎一

    谷垣委員 報道陣としてああいう事件が目前で行わわれるのに何らかそれを抑止といいますか打つ手はなかったか、こういう御反省をいただいているということは、私はジャーナリストの良心として大変貴重なことだろうと思います。そういう御反省を積み重ねていただく、これはもう大変よいことでございますが、一方、ジャーナリストにあれば何かとめられなかったかということを余り強く要求するのも、それぞれの任務というものがございますから過酷過ぎる面もあるだろう、これは一般論でございますけれども、私はそのように考えております。  それから、どこまで報道するかという問題につきましては、今御答弁をいただきましたように、やはり家庭の中に、団らんの場に飛び込んでくるということでございますから、いろいろ慎重に御判断をいただいて、特に「NC9」なんかでは、子供に見せないようにというような御発言をキャスターからいただいたということは、慎重な御配慮をいただいたものだと思っております。  いずれにせよ、こういう事件は、これは起こってはならないものでございますけれども、またいつ突発しないとも限らない。ですから、今回の教訓というものをまた十分内部で御議論をいただいて、起こってはならないことですが、また突発事件が起きましたときには誤りのない御対応をいただきたいと存じております。  それから次に移りますが、これも昨日、日本経済新聞の朝刊に「放送衛星BS-3a 打ち上げ一年半延期へ」という記事が出ておりました。まあBS2aが故障して、BS2bの打ち上げも延期であるということで、3aも延期ということは予想されていたことでございますが、たまたま昨日、こういう報道がございましたので、この点について一、二お伺いをしたいと存じます。  きょうは宇宙開発事業団においでいただいているわけですね、こういう延期ということに至る経緯について御説明をいただきたいと存じます。
  16. 園山重道

    ○園山参考人 お答えいたします。  ただいま御指摘ございましたように、昨年のBS2aの故障、それから2bの打ち上げ延期、さらにこのこの計画維持が困難というようなことで、大変御心配と御迷惑をおかけいたしまして、まことに申しわけないと思っております。  新聞に出ておりますBS3のスケジュールの点でございますけれども、ただいま御指摘ございましたように、BS2との関係もございまして、私どもこれをどうすべきかということを大変一生懸命検討したわけでございますけれども、2aのああいった故障がございましたので、基本的には、やはり今度失敗をしないためには、十分開発試験等の時間が得られるような期間が必要であるという技術的な基本認識がございます。また具体的には、2aのトラブル、2bへの対策等を鋭意やっておりましたので、この3の開発に取りかかること自体がおくれを来しておりますので、その辺を考えますと、やはりどうしても当初の予定でございました六十三年度末、暦年では六十四年初めの打ち上げというのは、延期せざるを得ないのではないかというように考えておるところでございます。  新聞にはある程度決定的なような表現がございましたけれども、私どもは、こういった認識を踏まえまして、しかしその影響も大変大きいところでございますので、今こういった状況を監督官庁初めユーザーの方々等に御説明をいたしまして、御検討をお願いいたしておる段階でございます。
  17. 谷垣禎一

    谷垣委員 そこでNHKに伺いたいのですが、こういう放送衛星の打ち上げが計画どおりいかない、延期するということになりますと、ニューメディア放送に対していろいろNHKが考えておられましたことがおくれてくるということになろうかと思います。また、むしろこれはBS2bの問題かもしれませんが、難視聴地域の解消といった問題についてもおくれが出てくるだろうと思うのです。  それでこのあたりの、ニューメディア放送というものを本格化していくということは、これからの時代への対応を考えた場合にはぜひやらなければならないということは、これは論をまたないところでございますので、NHKとしてどのようにこの開発計画のおくれに対していろいろ問題点を御整理いただいているのか、現段階での御認識を伺いたいと存じます。
  18. 林乙也

    ○林参考人 お答え申し上げます。  ただいま事業団の方からもお話がございましたように現在、事業団の延期についての御意向を承った段階でございます。私どもといたしましては今後、関係機関と十分協議を重ねまして、その必要性あるいはその内容等々についても十分お互いに意見を交換した上で、最終的に総合的な判断をしてまいりたいというように考えておるところでございます。  仮にBS3の打ち上げが延期ということになりましたならば、確かにBS2aの寿命が尽きましてBS3が打ち上がるまでの間は、BS2b一機だけの体制ということになるわけでございまして、予備機を一体的に持った中で衛星放送を運用していくという考え方からいたしますならば、いろいろ問題の出てくる点があろうことは否めないところであろうかというふうには思います。  ただ、衛星につきましては、その特質におきまして、全国を一挙にカバーできる、また効率的にカバーできるという特質、さらには、今後の高度情報社会の中において、多様化してまいっております視聴者のニーズにこたえ得る可能性を十分秘めたメディアであるということを基本に踏まえながら、やはり従来の基本線に沿って、個々のケースに対して適切に対処していきたいというふうに考えておるところでございます。
  19. 谷垣禎一

    谷垣委員 いずれにせよ、ニューメディア放送の開発ということは、NHKとしても力を入れていただかなければならないことでございますので、十分なお取り組みをお願いしておきたいと存じます。  それから、決算の内容に入りまして、ちょっと御質問させていただきます。  昭和五十六年度、五十七年度、この二年度はどちらも、事業収入は当初予算に比べて減収となっているわけなんですが、支出の面で支出抑制をしていただきまして、そして、その五十五年度から五十七年度の経営計画による見通しよりも、収支の実績の方はかなり良好な形で三年間の期間を過ごしていただいた、そのおかげで五十八年度受信料の値上げをしないで済んだ、こういう形になっているわけでございまして、これは大変結構なことだと思うのですが、なぜこういう形の結果を招くことができたのか。いろいろ努力をしていただいたのだと思うのですが、その辺の分析、どう見ておられるか、伺いたいと存じます。
  20. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  五十五年から五十七年までの三年計画は、五十五年度に値上げをしていただくときのベースになった三年計画でございまして、収支は三年間で相償うということになっておったわけでございます。今、先生おっしゃいますように、三年間実行いたしましたら、繰越金を残して終わるということになったわけでございますが、その理由を申し上げます。  まず、収入でございます。収入につきましては残念ながら、三年間予定しました受信契約者の増加は、予定に達しませんでした。それからもう一つ、これは五十五年度に計画しましたのですが、五十五年度の四月からの値上げというわけにはまいりませんでして、暫定予算を一カ月組んだということでございますので、四月分は旧料金で過ごさざるを得なかったということがございました。それらがございまして、受信料収入は当初予定した三年間に比べますと、百七十八億予定に達しなかったということがございました。  これに対しまして副次収入等につきましては、かなり各事項について努力をいたしまして、当初二十七億でありましたのを、十八億も上乗せをすることが結果的にできました。そのほかに、不用の社宅を売却する等の努力をいたしまして、収入全体としましては九十八億円の減収にとどめたわけでございます。これは三年間の予定に対しまして一・一%の比率になるわけでございます。  一方、支出でございますけれども、まず物価でございますが、三年間の消費者物価を六%と見ておったのですが、幸いに結果的には、五%を割るという状況でございましたので、NHKの各事業計画の実施に当たりましては、かなり経費の節減が可能になってまいりました。そのほかに、各事項を実施いたしますについて積極的に効率化を徹底してまいりました。三年間では七十億の節減を見込んだわけでございますが、これに四十六億上乗せをして実績として節減の効果を上げてまいりました。  それから予備費でございますけれども、これは幸いにこの期間中、大きな災害がございませんでしたものですから、六十四億ばかりの予備費を三年間で残し得たということがございます。さらには、金利低下傾向等がございまして、財務費、金利の方の節約もできたというようなことで、事業支出全般としましては二百億円上回るものを、比率としますと二・五%ですけれども、三年間で残し得たわけでございます。  それからもう一つは、五十五年からの三年計画でありますけれども、五十四年度までの繰り越しの赤字につきましては、この期間中に解消することにしていったわけでございますが、五十四年度の決算結果、これを約四十億ほど赤字を詰め得たというような状況がございまして、三年間で収支とんとんであるものが、最終的には百四十五億ほど五十八年度に繰り越す財源をつくったわけでございます。  これを要しますのに、受信契約者の伸びは思うに任せなかったわけでございますが、幸いに物価が安定しておった、それから私どもも一生懸命節減努力をいたしまして、さらには天災地変という予備費の支出が抑えられたというような幸いにも助けられまして、これだけの金額を繰り越すことができたわけでございまして、今、先生おっしゃいますように、三年間の期間を超えて五十八年度受信料の値上げを抑制できた、こういうことでございます。  以上でございます。
  21. 谷垣禎一

    谷垣委員 いろいろ今この間の経営実績について分析をいただいたわけでございますが、基本となる受信契約は予定に達しなかった、こういうことでございますが、問題となっている五十六年、五十七年を含めまして現在に至るまでの受信契約増加目標、それから達成状況というものを、もう少し詳しくお話しいただけないでしょうか。
  22. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えいたします。  ただいま議題になっております五十六年度、五十七年度を含めまして、最近の受信契約の総数の増加状況という御質問でございます。  五十六年度につきましては、総数の増加目標を五十五万と置きましたけれども、実績数は五十一万五千ということで、九三・六%にとどまりました。五十七年度は、五十万という増加目標を置きましたが、それに対して四十八万三千、九六・七%ということでございます。五十八年度は、四十五万の総数増加目標に対して、実績数が三十八万五千、八五・四%でございました。  また、先般郵政省に提出いたしました五十九年度の結果でございますが、当初の目標数四十三万に対して二十五万二千、五八・六%でございまして、私どもとしては、五十九年度料金改定をお願いしたわけでございますけれども、こうした不成績に終わってしまったということについては厳しく反省もいたしておりまして、六十年度に向けてこのおくれを取り戻すべく、努力をしている最中でございます。
  23. 谷垣禎一

    谷垣委員 今数字を伺いますと、なかなか受信契約増加していくのは難しい、なかなか思うようにいっていないということが明らかになったわけでございますが、一体どの辺にその原因があるのか、あるいは、そもそも目標そのものに頑張り過ぎのところがあったのかどうか、そういう目標が達成できていないとすれば対策はどうなっているのか、その辺について御説明をいただきたいと存じます。     〔委員長退席、野中委員長代理着席〕
  24. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えいたします。  受信契約増加目標が達成できていない理由ということで申しますと、もちろん私、営業関係の担当責任者といたしまして、私の業務指揮の問題ということも当然、反省しなければならないところがあろうかと思いますけれども、私どもとしてできるだけ今の時代に即した契約収納体制を整備していきたいということで、幾つかの工夫も凝らし、また対策も講じておるわけでございますが、何としましても客観情勢といいますか、社会的な状況というものも大きな前提条件として考えてまいらなければならないというふうに考えます。  私どもの契約増加目標を立てるに当たりまして、どういった考え方で立てているのかということを御説明申し上げますと、これはやはりベースとしては、国勢調査の結果というものをベースとして考えて、どの程度の世帯数の増加があるのかという目標を立てるわけでございますが、それに対しまして、テレビを所有なさる世帯がどういった割合になっていくのかということも一つの指標として考えてまいります。これは当然のことといたしまして、各種の政府関係の調査、あるいは私ども自身で調査しておりますものを含めまして推定いたしますが、最近、全体の世帯の増加の中で単身世帯の増加というのが大変多うございまして、我々の推定では、単身世帯が全体の世帯の伸び率の四五%程度を占めているのではなかろうかというふうに考えます。この単身世帯のテレビの所有率というのは大変低くて、経済企画庁等の調査を参考にいたしますと、五〇%程度の所有率しかないのじゃなかろうかというような数字も出ております。  そういったようなものをベースにして世帯数については一応、三十五万程度のテレビの所有世帯の伸びというふうに考えます。そして、全体の今の契約率等々も考え合わせまして、努力値としてそれに三万を加えていくということで一応、三十八万というのが世帯契約の増というふうに五十九年度の場合は考えているわけでございますが、それに非世帯の契約をどうしても推進してまいらなければならぬというふうにも考えまして、それを加えまして五十九年度の場合、四十三万という契約増の目標を立てているわけでございます。  しかしながら先ほども申しましたように、今の社会状況というのが単身世帯が非常に多い、あるいは共働きの世帯が大変多くなってきている。これも総務庁等の調べによりますと、恐らく八百万世帯ぐらいが有配偶者が働いておられるというような数字も出ておりまして、そういった単身世帯の増、共働き世帯の増というようなことが起こってまいりまして、どうしても私どもが昼間訪問いたしましても、なかなか面接ができないというような状況も起きてまいります。それから、そういった世帯の方々の移動率が大変多いというのも、一つの最近の現象かというふうにも思います。それが世帯の集中しております都市部において、非常に高い移動率になっているということもございまして、そういった各種の社会状況というようなことから契約目標になかなか到達し得ない。  しかし、公平負担ということが受信料制度のベースになっているということも一方でございますので、私どもが置いております四十三万という目標値は、我々としては決して高い数字ではない、これはどうしても到達しなければならない数字であるというふうには考えておりますけれども、結果として先ほど御説明申し上げました成績になっているということは、我々として強く反省もしてまいらなければならぬというふうに思っております。  具体的に対策という点で申し上げますと、面接の困難な不在世帯というものに対して、できるだけお目にかかれる時間に訪問するようにしたいというふうにも考えまして、勤務体制の変更ということを含めて仕事のやり方も変えておりますし、それから、放送等を通じましての受信契約の促進についてのPRといいますか、周知というようなこともやっておりますし、あるいは、転居時の通知の依頼というようなことについても、できるだけ努力してまいりたいというふうに思っております。それからもう一つは、こういった社会状況の中で、口座の利用ということが収納を安定していく一つの方法であろうというふうにも考えまして、昨年、五十九年度から口座料金の設定もさせていただいて、収納の安定に寄与してまいりたい。この口座の点につきましては、私どもの計画に近い形の成績を上げておりますので、そういった新しい口座時代に対応したこれからの仕事のやり方ということに工夫を凝らしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  25. 谷垣禎一

    谷垣委員 現在の社会情勢の中で受信契約増加がなかなか難しくなっているということはよくわかるわけですが、これは今いろいろおっしゃったような対策をさらに推し進めていただきたいと思います。  今収納率のことにもちょっと触れられましたけれども、この数年の収納率は大体どういうふうになっておりますでしょうか。
  26. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えいたします。  収納率を私ども、契約していただいている方からどれだけ収納ができているかということで計算してまいっておりますけれども、それによりますと、五十六年度がおよそ九七%、九六・九七という数字でございます。五十七年度がわずかに九七%を上回っている。五十八年度が同じく九七・二%程度。それから五十九年度、前年度でございますけれども、これも九七・一%程度の収納率が得られているというふうに考えております。
  27. 谷垣禎一

    谷垣委員 大変高い収納率を確保していただいていると思うんですね。受信料という性格からしまして公平負担ということが大事ですから、隣の者がごねて払っていないというようなことになると、払っているのがおもしろくないということになってしまう。ですから、収納率を上げていただくことは大変重要で、御努力をいただいていることは結構だと思うのです。  ところが、NHKでやっていただいている東京都視聴者会議ですか、昭和六十年度視聴者会議というようなものの報告を拝見いたしますと、いろいろ議論があって、「受信料を集めるための営業関係経費が約六百億、これをもっと引き下げ安いコストを維持すれば、経営安定につながると思う。不払いの人もいると聞くが、その解決のためにあまり高い経費をかけるのはどうかと思う。」こういう意見も出されているようでございます。  ここで言っている六百億というのは、契約をしたものの収納の費用と、先ほど夜遅くできるだけ会える時間に行くとかというようなお話がございましたけれども、そういうことも含めてでございますね。     〔野中委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 松本幸夫

    ○松本参考人 契約の増ということと収納ということ、さらに、受信料制度の理解というようなことも当然していただかなければなりませんので、これにはそういった意味での広報費も含まれております。
  29. 谷垣禎一

    谷垣委員 今の視聴者会議意見のように、もっとコストパフォーマンスを重視せよという考え方もあろうかと思います。しかし受信料というものを重く考えれば公平負担をしなければいかぬ。この辺NHKとしては、コストパフォーマンスでも、これ以上やってもコストがかかるからやらないんだということはおっしゃれないだろうと思いますが、一方、金を幾らかけてもともかく率を上げればいいというわけにもなかなかいかない話だろうと思うのです。その辺、なかなか難しい判断があろうかと思いますが、どのようにお考えか、伺いたいと存じます。
  30. 松本幸夫

    ○松本参考人 大変難しい御質問で、お答えしにくいあれもあるのでございますけれども、確かに私どもとしては、滞納対策にも力を入れなければなりませんし、契約の増ということに関しましても、できるだけ御理解を賜って契約をふやしていかなければならないということで、コストをどれだけ使えばいいのかということは、できるだけ生産性を高めていかねばならぬという考え方から、受託者の事務費の改定ということにつきましても、その年度の状況等も十分考え合わせまして、力点をどこに置くのかというようなことも常に考えてまいっておりますし、それから仕事を進めていきます体制につきましても、できるだけ新しい時代に即した形の体制でやっていきたい。  ひところ特別営業対策員という形で、特別の方を委嘱して滞納対策に当たったという時期もございましたけれども、これも昨年からやめまして、職員と受託者によってできるだけ契約をふやし、それから滞納、そういった支払いのおくれというようなことについての対応もやってまいりたいということでやっているわけでございますが、なかなか厳しい状況が続いているということでございます。  このための経費はどの程度が限度なのかという御質問でございますが、過去の私どもの受信料改定の時期等を考えてみますと、五十一年度受信料の改定をしていただいておりますけれども、その前年度の五十年度受信料収入に占める営業関係の対策費の割合が一九%という数字がございます。それから五十八年度には一九・七%という数字がございます。それで、六十年度の営業関係費の収入に占める割合を申しますと、これは一八・四%という数字になっております。  そういった点で考えますと、私どもとしては、現在の一八・四%という数字がかなり限界に近い数字に来ているのではなかろうか、この辺で仕事のやり方を含めまして、できるだけ効率的な仕事のやり方、生産性を上げる仕事のやり方を抜本的に考えてまいらなければならぬ時期に来ているというふうにも考えております。
  31. 谷垣禎一

    谷垣委員 その辺のバランスのとり方はなかなか難しいと思いますが、適切な道を探っていただきたいと思うのです。  次に、質問を変えますが、ことしはNHKが放送を開始されてから六十年目に当たる記念すべき年でございますが、放送文化というのもこの六十年で随分蓄積されてきた。社会の中で放送、映像あるいは音声といったものが文化面で占める意味も飛躍的に大きくなってきたと思うのです。ところが先般来、何の報道で知ったのか忘れましたけれども、テレビなりあるいはラジオなりで放送されたものの番組の収集、保存というようなものは必ずしも十分ではなくて、昔の非常によい番組などが今、見ようとしてももう見られなくなっているんだ、こういうのをたしか新聞などで拝見した記憶がございます。  書籍の場合には、いろいろ図書館の制度というようなものが充実をしてきているわけですけれども、放送文化がこれだけ確立してまいりますと、やはりこういった過去の番組の収集、保存ということも系統的に行っていく必要が生じているのではないか。NHKでも資料室などをつくっていただいてお取り組みをいただいていると思うのですが、どういう展望といいますか構想でこの問題に当たられているのか、基本的なお考えを伺いたいと思います。
  32. 川口幹夫

    ○川口参考人 放送というものが、ラジオが始まってから六十年、テレビももう既に三十二年を経過しております。この中で、いわゆる放送文化をどうやって維持していくのか、あるいは発展さしていくのかという問題は非常に大きなことでございまして、先生御指摘のとおりだと思います。  ところが、番組がなかなか保存されていなかったという事実がございます。理由はいろいろありますけれども、まず一つは、生放送でスタートして、ビデオ等の開発がそれにずっとおくれてついてきた。したがって、技術の開発の進んでくる中ではそれが考えられたんだけれども、当初はなかなかそういうふうにまいらなかったということがございます。  それからもう一つは、法律の点で、著作権法というのは著作者の著作権を保護します。したがって放送の場合は、VTRは一時間定物ということで、一定の期間を終えたら消去しなければいけないというふうなことが決められております。この問題がございます。  それからもう一つは、NHKもそうですが、民放、NHKを通じて、いわゆる経済的な問題というものもあります。場所の問題とか、それから、それを保存し、整理し、利用していく際の人間の問題とか、いろいろな問題がありまして、なかなかうまいぐあいに保存されてないという現状がこれまでございました。  私どもも、昭和五十年代に入りましてから、この問題については急速に認識を変えまして、これまでは放送して出ていくだけというふうな感じでありましたものを、もっと価値のあるものをとっておいて、それを再放送するあるいはまとめて放送することによって新たな価値を生み出すというふうなことを考えまして、具体的な保存のための施策を今までやってまいりました。  昭和五十六年の四月にNHK放送番組ライブラリーというのを設立しております。これが現在のところは二万四千五百七十九本というテレビ番組を保存しておりまして、このライブラリーの中には、社会教育学習グループなどの研究教育用途等を対象にしたものとか、あるいは放送博物館、そのほか各地のNHK放送局で公開をしております。  このほかにもう一つ、NHKだけではできない、あるいは放送文化というのはNHKだけでつくったものではないというふうな観点から、民間放送連盟と一緒になりまして、この四月から放送番組センターで、今年度の事業の中に新しく番組の保存についてということを入れまして、将来の発展に向かってただいま鋭意準備を進めているところでございます。このことの重大なことについては、十分に自覚をしているつもりでございます。
  33. 谷垣禎一

    谷垣委員 近年、こういった番組の保存というような観点から大変お取り組みをいただいている、結構なことだと思います。  それで、そういう番組を収集、保存していただいた場合に、基本的な視点は、広く国民に映像文化あるいは音声の文化というものを再利用してもらう、やはり広く国民に開放して使ってもらうということが基本的な考え方、前提になければならないと私は思います。  ところが、今も御答弁の中にございましたけれども、著作権法の問題もあると思いますし、また、今CATVなんかで再放映ですか、する場合のいろいろな問題も御検討いただかなければならぬという機運になってきたと伺っておりますが、収集していただいたライブラリーを利用するに当たっては、法制面での検討もいろいろやっていただかなければならない問題が多いと思うのです。その辺の検討は今、内部でどの程度お取り組みをいただいているのか、御返答いただきたいと思います。
  34. 川口幹夫

    ○川口参考人 現在、公開につきましては、例えばNHKの放送番組ライブラリーがやっている仕事を申し上げますと、先ほども申し上げましたが、研究教育用途等に博物館とかNHKの放送局で公開するやり方。それからNHKに展示プラザという場所がございます。ここで見学者を対象に番組を公開する、こういうのがありまして、五十九年度で申し上げますと、公開した延べ本数が七百七十六本になっております。  それから、このことのために実は考えなければいけない問題が多いのでありますけれども、一番考えなければいけないのは、出演者を初めとするいわゆる著作権問題というものをクリアする、このことは先生おっしゃるとおりでございます。このクリアをしないと、保存している番組をすべて公開できるというふうには限りませんので、先ほど申し上げました保存番組二万四千五百七十九本の中で、公開できる番組というものは八百三十五本という形になっております。あとは、そのときそのときに応じて著作者の了解をとらなければいけないというふうな仕組みになっております。  著作権者の保護というものは必要であり、かつ重要なことだというふうに認識しておりますけれども、放送文化というものがもっと国民的な財産として一般に公開できるように、我々としてもいろんな形でこの問題を解決していきたい。まずは著作権の問題をどう解釈するのか、あるいは民放、NHKを通じて一つの解決の方途を見出すというふうな努力を続けていくところでございまして、部内的にもあるいは民放連との間にも、そういう解決をする委員会のようなものをこさえております。非常に重大なこととして今後取り組んでいこうという姿勢を持っております。
  35. 谷垣禎一

    谷垣委員 先ほどおっしゃった施設等どうするか、そのほかの財政面、あるいは今言った法律的な問題点、いろいろあると思いますが、これはぜひ日本の放送文化をより確固としたものにするために、お取り組みをいただきたい課題だと思います。  それから、次の質問に移りますが、NHKはテレビ、それから中波、FM、そのほかにも衛星放送などがあるわけですが、いろんなメディアを使って放送をしておられる。それぞれのメディアによって恐らく、番組編成の方針というものがあると思うのですが、その基本的な方針というものはどうなっているのか、伺いたいと存じます。
  36. 川口幹夫

    ○川口参考人 現在、NHKが五波に対してどのような性格づけをしているかということを御説明申し上げます。  まず総合テレビは、一般向けの総合波ということで、多様性のある番組ということで、情報あるいは報道、教養、娯楽という面についての番組を調和ある編成でやりたいということでございます。  それから教育テレビは、学校教育あるいは生涯教育に役立つ教育教養波という形でもって、体系的な教育番組を中心としまして青少年及び一般社会人を対象とする放送、これは教育番組は七五%以上、それから教養番組は一五%、それに若干の報道番組ということで、娯楽番組は含まれておりません。  ラジオ第一放送は、生活情報波という位置づけをしております。ラジオの機動性を生かしたニュース・インフォメーション番組、それに教養、娯楽番組というものを中心にし、あわせて県域、広域のローカル番組を編成するということでございます。  それからラジオの第二放送は、専門性の高い教育教養波という位置づけで、教育番組を中心としまして、あわせて報道及び教養番組を編成する。全国で同一内容によって特定の対象に向かって放送する。これも教育と報道と教養の番組がすべてでございまして、娯楽番組は含まれておりません。  それからFMは、音楽を主とした文化情報波という位置づけをしております。FMの特性を生かした音楽番組を中心として、あわせて県域のローカル番組を編成するということで、これは報道、教育教養、それに娯楽というふうなことで、それぞれの波の性格づけをきちんと行いまして、五波を持っている意味を生かしたいと考えておるところでございます。  このほかに衛星放送がありますけれども、衛星放送は、地上波の同時放送を中心とするほかに、いろいろなスペシャル番組等を編成して、衛星の魅力を楽しんでいただきたいというふうな番組を考えております。
  37. 谷垣禎一

    谷垣委員 いろいろそれぞれのメディアの特性に応じた番組編成をしていくという基本方針がおありのように伺いましたが、FMについては音楽を主として番組をつくっていくということでございます。     〔委員長退席、野中委員長代理着席〕  今回のFMの番組改定に当たりまして、大変クラシック音楽が少なくなったじゃないか、ポピュラーばかりふえてきたじゃないかというような論争が新聞等でもかなり行われました。私も選挙区に帰りまして何人かの方から、今までNHKのFMでクラシック放送を楽しんでいたのに、少なくなってしまって残念だというようなことをおっしゃる方の御意見を伺ったわけでございます。  これはどういう番組を組むかということはNHKの編集権といいますか、そういうものの内容にも入ってまいると思いますので、そういう声があったということをお伝えしておきたいと思うのでございますが、こういう番組改定、クラシック番組を若干少なくする、それでポピュラー音楽をふやしていく、こういう番組改定をされるに当たってはNHK内部では、どういう番組を編成していくか、あるいは視聴者の好みとかというようなものをいろいろ勘案されて立てられるのだと思いますね。今回のFMの番組改定に当たって、どういうようなことをお考えになって、判断要素となさってこうなさったのか、その点をひとつお伺いしたいと存じます。
  38. 川口幹夫

    ○川口参考人 この四月からのFMの改定に当たりましては、私どもはいろいろな形でもって視聴者の意向の吸収ということをやりました。一つは、世論調査、意向調査というのがございます。それから、各地の視聴者懇談会あるいは視聴者会議とか、それに番組審議会でのいろいろな御意見とかを参照いたしまして、一つ考えましたのは、聴取者の皆さんの音楽の好みというのが非常に多様化しているという現状がございます。  音楽というのにはFMは一番向いているチャンネルである。したがって例えば歌謡曲のファンは、これまでほとんどFMにはいい番組はなかったわけですね、こういうのをぜひ聞かしてほしい。歌謡曲ファンもFMを楽しみたいというふうな御希望があり、それから若い方々は、クラッシックばかりじゃなくてもっとポピュラーをやってくれというふうな好み、そのポピュラーの中にも、例えばジャズでありますとかいろいろな好みの変化が多様にあらわれているということがはっきりいたしました。  それからもう一つは、受信機が非常に発達してまいりましたので、家庭の中に備えつけてある応接間型の受信機からカーラジオとかあるいはウォークマンとかいうふうな、音楽を楽しむ環境というものが大分変わってきている。その変化に応じてNHKは、やはり視聴者の生活態様に応ずるような編成をしなければいけないのじゃないか。  それから、そういう多様な好みに合わせて、できるだけ番組の時間枠を帯を設けて、その時間になるとこういうものが聞けるというふうにしなければいけないのじゃないか。それから、若い層が今までほとんどNHKFMについてはそっぽを向いているというふうな現状がありました。将来の国を担う若者たちの好みにも相当対応しなければいけないのじゃないか。そういういろいろな考え方の中で、ことしのFMの改定をやったわけです。  結果としましては、非常に多くの方々から批判をいただきました。新聞に載ったのはその代表でございますけれども、一番大きなのは、やはりこれまでのクラシックファンが大事にしていた時間帯を相当削られた、それから中身がこま切れになった、あるいは解説が多過ぎる、うるさいというふうな御批判でございます。これは私ども率直に受けとめます。その理由は、朝の時間帯、今バロック音楽そのほかなじんできた時間枠があって、それをじっくり聞いていた方々に、「マイ・クラシック」という番組にかえまして、そして解説を入れて放送するようにしたわけです。これは私どもとしては、クラシックのファンが一部の人じゃなくて、もっと若い人にも、あるいは、これまでクラシックファンじゃなかった人にもファンになってもらおう、それには多少の解説を入れることが必要じゃないかというふうに考えたわけですけれども、それが従来のクラシックファンにとっては非常に大きなショックであったように思います。  それからもう一つ申し上げておきたいのは、これによって例えばお昼にやっております「FMワイド歌謡曲」、これは現在、月-金のお昼に帯でやっております。これは二九・五%の方々が意向調査では、非常に満足した、こういう時間をくれてありがたいというふうなことを言っておられます。それからクラシックファンも、夜の七時二十分から九時までつくりました「クラシック・コンサート」というのは、非常に高い評価をしております。結局、朝の時間帯に「マイ・クラシック」という番組を入れてもうちょっと広げようというふうに考えたことが裏目に出たのじゃないかという反省をしております。  私どもは当然のことながら、非常にたくさんの視聴者の方をお客様にしております。ですから、例えばクラシックの方はクラシックファンとして満足のできる放送をしなければいけないというふうに考えておりますので、現在、「マイ・クラシック」については相当な手直しをして、少なくともやはりクラシックファンはクラシックファンとして満足のできる放送をというふうに心がけていこうと思っております。
  39. 谷垣禎一

    谷垣委員 今回、大分改定が議論になりました背景には、今御答弁いただきましたように、時間帯が変わったというようなこともあるいは非常に大きかったのかもしれません。私自身も朝起きたときに、「バロック音楽のたのしみ」というのを今までときどき聞いておりましたけれども、聞けなくなってしまった、そういう感じがいたします。それから、新聞にNHKが反論された中に、三%ぐらい減っただけなんだというお話もあって、あるいは時間帯全体から見れば、それくらいの変化にすぎないのかもしれないなという気がいたします。それからまた、新しい番組にはまた新しいファンがついてくるかもしれない、これはいろいろあろうかと思います。  ただ、私どもが今までFM放送を聞いておりますときに、NHKのFMというのは大変クラシック番組が主体である。そのほかに常磐津とか漢詩の詩吟というようなものもございましたし、こういうのは余り民間のFMではやっておられなかった。民間のFMはどちらかというと、ポピュラー音楽を主体にしてやっておられる。NHKと民間、それぞれの個性というものは非常にはっきりしていたように思うのです。今回の改定になりましてから後、私まだ十分に聞いておりませんので、どの程度になってきたのか断言する自信はないのですが、もしかして多様な視聴者の趣味に合わせていくということになりますと恐らく、クラシックの番組はこんなに要らぬ、ポピュラーなんかもっとふやせという話になるだろうと思うのです。  どっちがいいという話じゃなくて、NHKというものが、いろいろなほかの民放もありながら、これがNHKなんだというものをどれだけ出していくのが一体いいのかどうか、そういった判断がないと、視聴者の多様な好みに応ずるということだけになると、何か意味のわからない、ほかの民間放送と同じようなものになってしまう危険性があるのではないか。危険と申していいかどうかわかりませんが、これはNHKの放送のあり方ということにかかわってくる問題でございますので、内部で数字が、視聴者の調査何%だというような数字だけじゃなしに、NHKの放送の体制にかかわるものだという観点から御議論をお願いしたいと思うわけでございます。  時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  40. 野中広務

    ○野中委員長代理 阿部未喜男君。
  41. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 郵政大臣、実は私は、この委員会に経営委員長出席をしていただくようにお願いをしておったわけです。関係の皆さんのお骨折りをいただいたようですけれども、残念ながら経営委員長は御出席になっていないようでございます。また、放送法の定むるところによって経営委員長の代行の方もおいでになるわけですから、どうしても都合の悪い場合には代行の方の御出席をということもお願いしてあったのですけれども、いずれの御出席もいただいていないようでございます。  御承知のとおりNHK経営委員会は、NHKの意思決定の最高の機関でございます。したがって、その経営委員の任命も、国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命をするという重い手続がとられております。  私が経営委員長出席を求めた理由は、二つございます。その一つは、今回の決算に当たって経営委員会がどのような議論をなさったのか、そのことをお伺いしたい。もう一つは、NHK経営の最高の意思決定の機関の責任者は当然、NHKの問題が議論をさるる国会、逓信委員会視聴者の声の反映をする場ですから、出席をされて、その意見に耳を傾けるべきだ、そういう主張を私は持っております。  かねて経営委員長にそのことをお話をして、前経営委員長でございましたけれども、出席を義務づけられると困るけれども、極力出席をするようにいたしましょう、この委員会でそういう約束もいただきました。しかしその後、一度は私、要請をしましたが、御都合で出られませんでした。要請をしない委員会もあったようでございますけれども、いずれにしても、この席に経営委員長の姿を見ることがありません。  これで一体NHK経営の最高の意思決定の機関が本当に国民の負託にこたえて運営されておるのであろうか、疑問を持たざるを得ません。監督官庁の責任者として、これでいいのかどうか、大臣の確たる答弁を求めます。
  42. 左藤恵

    左藤国務大臣 大変難しい御質問でございますが、法的に絶対に出席しなければいかぬとかなんとかいうことにつきましては、いろいろとまた議論のところがあるだろうと思いますが、今阿部先生のお話にございましたように、NHKの経営の最高意思決定機関、その中でどんな議論がされたとかいうふうな具体的な問題とは別に、委員長なりあるいは委員長の代行なりが、まとめられた一つの意思というようなものを国会である程度御説明になるとか、あるいはまた、この国会におきます審議の結果というものをまた経営の方に反映していただくという意味で、御都合が許す限り御出席していただくのが妥当であろう、そうしたことによって一層NHKの経営の実態を、国民のNHKと申しますか、国民のためのNHKというものに近づけていく努力ができるのじゃなかろうか、このように考えます。
  43. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣がそうお考えならば今後、この委員会出席の要求があったような場合には当然出席をしていただくように、監督官庁としての配慮をお願いしたいと思いますが、ようございますか。
  44. 左藤恵

    左藤国務大臣 そうした国会の御要請があるときには郵政省としては、経営委員長にそういったことの事情をよくお願いをいたしたい、このように思います。
  45. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 この経営委員会の決定するところに従って執行、運営の最高の責任を負っておる会長はどうお考えになりますか。
  46. 川原正人

    川原参考人 本日の委員会にどうしても委員長も代行も出席できないということにつきましては、私も昨日来いろいろ事情を聞いております。まことに申しわけなかったと思っております。私はそこで、とやかく言える者ではないのですけれども、今の阿部委員の御発言の趣旨、それから大臣の答弁の趣旨、そのとおり私は正確に委員長並びに代行に伝えて、できるだけ事情の許す限り出席できるように今後していただくよう、お願いをしておきます。
  47. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 では、格段のお骨折りをお願いをして、その問題は終わります。  次に、国際放送の関係について若干質問をさせてもらいますが、どうも予算項目上、国際放送の予算というものは非常にわかりにくくなっておりまして、例えば、先ほど会長からの御説明によりますと、十八億何千万かが国際放送費という名目になっております。しかし、実際に国際放送費用というのを別に見ますと、昭和五十七年度ですか、約四十億ぐらいかかっていますね。一体国際放送費が何でそんなに違うのか、簡単に説明してください。
  48. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  NHKの予算につきましては、科目で整理しておりますけれども、まず、国際放送を行いますのには、国際放送番組をつくって、放送機を運転する経費が国際放送費に入っているわけでございますが、それにかかわる人間は給与に入っておりまして、それからその施設を減価償却する等は減価償却費に入っておるわけでございまして、それをまとめて四十億と申し上げておるわけでございますが、直接の経費で分解いたしますと、国際放送というのは番組をつくり、送信所から送り出す経費ということでございますので、科目構成上、こういうふうな区分をしているわけでございます。
  49. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それで趣旨はわかりました。ただ、国内放送、国際放送と呼びますと、国際放送は十八億でできておるというふうに一般が考えやすいのですけれども、実質的には人件費を含め、昭和五十七年度では四十億というものが国際放送のために使われたお金であると理解をいたしまして、次の質問に移りますが、私はかねてからこの国際放送放送法によって郵政大臣が国際放送を命令をする、その場合の費用の負担は国がする、こうなっておるのですけれども、NHKが自主的に行う国際放送と国が命令した分を毅然と区別することができない、ここにずっと悩みがありまして、国からの交付金について意見がいろいろ出てきた経緯がございます。  そこで私、考えまして、かねてから負担の割合を国が何割、NHKの自主放送が何割というふうに区別しておけば、国際放送全体の予算が組めた段階で国の負担する部分、NHKが自主的に行う部分がはっきりするではないか、そういうことをぜひ検討してもらいたいということをずっとお願いしてきておるのですが、これはできない相談だったのでしょうか。歴代大臣、会長にもお願いしてきたことなんですが、どうなっておりますでしょうか、それぞれ御答弁をお願いいたします。
  50. 左藤恵

    左藤国務大臣 命令放送と自主放送との割合を定めておくべきじゃないか、こういう先生の御指摘だと思います。これにつきましては、国際放送の充実という観点からずっと検討を続けてきたわけでありますけれども、国際放送全体の中での命令放送のあり方なりあるいは国の財政事情というふうな問題があって、一年一年の状況で客観情勢もいろいろ変わってくるということでもございますので、具体的にどう決めるかということにつきましては、そういったことを一つのルールという形で決めるというふうな問題はなかなか難しいことでございまして、いまだに結論を得ていないわけでございます。  そういうことで今後とも、いろいろな角度から研究してまいりたいと思っておりますが、特に国の財政事情という問題から先生の御指摘におこたえできないで今まで来ている、こういうのが実情でございます。
  51. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大蔵省の方の御答弁をお願いいたします。
  52. 中村正三郎

    中村(正三郎)政府委員 国際放送につきましては従来から、その重要性にかんがみまして大蔵省としても充実に努めてきたところでございますが、五十九年度予算では国際放送充実対策費を二億五千万設けたというようなこともございまして、その重要性は先生御指摘のとおりに心得ておるわけでございます。  今御質問のございました、命令放送分につきましてある一定の割合を決めて支出を決めていったらどうかというようなことでございますが、これは委員の従来からの御提言と伺っております。今、大臣の方から御答弁のあったことと重複するかもしれませんが、厳しい財政事情のもとで、一般会計予算二百四十四億くらいでございますか、その中で郵政省としてどのようなところに重点を置いて予算配分をしていくかという、政策上の問題にかかわってくることだと思いますので、国際放送の交付金についてあらかじめ比率を定めて予算策定をするというのは、先生の御提言でございますが、なかなか難しいのではないか。やはり年年の予算編成の過程で検討してお決め願っていく、どうしてもそういう考えにならなければならないのではないかというふうに考えております。
  53. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私は、交付金に対する考え方が基本的に誤っておると思うのです。今の郵政、大蔵両責任者の御答弁によりますと、国の予算が非常に厳しい場合には、極端に言うならば、わずかの金を交付しておっても、それでNHKは国際放送をやるべきなんだ、そういう理屈になってくるのです。しかし、立法の趣旨からいうならば本来、国が命令した分は国が負担するんだ。国会の議決を得られない場合にはそれに拘束されませんという規定はありますけれども、しかし基本的には、命令をした分については国が負担する、それが原則だ。その原則を明確にした上で、国の財政上どうしてもその負担割合を変更しなければならない問題が生じたときにはそこで話し合いをすべきであって、最初から国の財政が優先して、幾らやれるかわからないけれども、おまえのところでこれだけの国際放送をしなさい、こういうふうに命令をするということは越権行為だと思います。  だから、命令をした以上はそれに必要な金を出すという法の精神にのっとって出さなければならない。しかしただし書きがありますから、次の条項がありますから、どうしてもそれができないような予算事情が生じたときにはそこで話し合いをする。そこでどういう割合で負担するかということを先に決めておくべきだ。  余談になりますが、今回の放送衛星だってそうでしょう。六割と四割とちゃんと決めておるじゃないですか。だから割合を決められないという理屈はどこにもないはずなんだ。ただ、決めた中で予算上どうしても無理が生じた場合には話し合う、そのことは私は否定はしません。しかし、原則として国の予算が優先して、NHKに幾ら交付できるかわからないのに命令だけはどんどんやってNHKに放送させる、主客転倒じゃないですか。この点会長、どうお考えになりますか。
  54. 川原正人

    川原参考人 これは私も前からこの委員会で阿部委員の御指摘、よく承っております。ある時期に、一つの例であったと思うのですけれども、例えば五〇%、五〇%だって一つのやり方ではないかということを今でも覚えております。そしてあの後、私どもも部内でそのことを何度か議論いたしました。  ただ、なぜ五〇%なのかというその理論的な裏づけというところへいきますと、どうもこれというのが私どもの研究の中で出てこないので、おっしゃるとおり確かに命令放送という性格もございます、かつまた私どもの本来の仕事として、国際的には日本の実情を正確に公正な立場でNHKの責任において伝えなければならぬ、こういう面も持っておりますので、その間におきまして願わくは交付金が今の水準よりはもっとふえることが望ましい、これは毎年お願いしておりますし、確かにもし理論的な裏づけができるならば、一定の割合で運営されることがいろいろな意味で毎年の仕事も円滑にいくだろうとは思っておりますけれども、正直言って私ども、理論的にこれだというのを自分自身で見つけかねているというのが実情でございます。そういうことのために毎年毎年同じようなことを政府側にお願いをしている、こういうことでございます。
  55. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこなんですよ。確かに私どもも、国が何割負担するのが正しいのかわかりません。しかしそう言えば、放送衛星でNHKが六〇%負担した根拠は一体どこだったのですか。話し合いの結果、これはできたのですよ。ならば、話し合いをしてその負担の割合が決められないという理屈はどこにも成り立たない。それが成り立つのならば、放送衛星の六〇%の根拠を明確にしてもらわなければならない。これは話し合いでできるはずなんです。  だから、基本的に国の負担する部分が何割かを決めておけば、NHKの予算も組みやすいし、放送に対する諸手続もスムーズにいくはずなんです。それで財政上どうしても困る事情が国の方に生じた、そのときには次の条項があるわけですから、そこで協議をして是正をすればいいんだ。この努力をやってもらえるか、もらえないか、これを責任者の方から答弁をいただきたい。
  56. 中村正三郎

    中村(正三郎)政府委員 先ほどの御答弁とまた重複してしまうかもしれませんが、これは郵政省の一般会計予算をどういうふうに配分していくかという問題にかかわっていると私ども財政当局としては考えるわけでございまして、その中で予算で対応していかれる問題ではないかと考えるわけでございます。
  57. 左藤恵

    左藤国務大臣 国の財政が最近非常に厳しいのは、御高承のとおりでございます。特にシーリングとかそういうふうなことで、例えば、前年に比べて何%減とかいうふうな問題との絡みが出てきますと、郵政省の一般会計の予算というのは非常に枠が小さいわけでありまして、そうした問題で、国際放送の重要性というものはあるわけでありますけれども、これに十分こたえるだけの年々の予算の枠組みといいますか、これに我々としても非常に苦慮しておるというふうな実情にあります。     〔野中委員長代理退席、委員長着席〕 そうした問題について、予算の組み方にもう少し弾力性ができるというふうなことになった場合には、ある程度御期待にこたえられるのではなかろうかと思いますが、そうした緊縮財政の中でやっていかなければならないということについて、我々も先生の御趣旨のようなことを何とか具体化したいと思っておりますけれども、今の段階では難しいわけでございます。もう少し弾力性が出てきた段階でそうしたことを実現していきたい、このように考えております。
  58. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大臣、お聞きのようにNHKの責任者の方でも、できるならばそうしてもらいたいという期待があるわけです。  それから郵政省、大蔵省の意見で私は少し違いがあると思うのですが、これはもともと、郵政省に交付をされる全体の一般財政の中からどれだけをNHKに交付するかというものではないのです。初めからNHKに幾ら交付するのかは項目で決まっているわけなんですから、それをふやすかふやさないかということになるわけなんですから、したがって、郵政全体の一般財政の予算が少ない多いということは、NHKの交付金に直接の影響があるということにはならないはずなんですから、そこのところはNHKの命令放送について幾らするということは、実は政務次官、大平さんが総理大臣のときに約束しているのですよ。要るものは出します、要るものは出しますからちゃんとしてくださいと約束しているのですよ。  大臣がかわるとすぐこの方針が変わってくるもので困るのですが、そういう経過もありますので、今申し上げたように、命令をしてそれに必要な経費は払うと、こうなっている以上、それを明確にしてその負担割合を決めて、財政上どうしても困難な問題が起こったときには改めて大蔵、郵政、それにNHKを含めての三者で協議をする、そういう体制について検討を重ねてもらうことを重ねて要望しておきます。いいですか。
  59. 中村正三郎

    中村(正三郎)政府委員 昔そういうお約束があったというようなお話もございましたが、委員御案内のとおり、それから財政事情もいろいろな変化をいたしまして、今極めて厳しい財政状況の中に置かれているわけでございます。そういう中で今、委員のいろいろな御主張をよく頭に入れまして、国際放送の重要性にかんがみましてよく勉強をさせていただきたいと思います。
  60. 左藤恵

    左藤国務大臣 先生がおっしゃることをどういう形で実現したらいいかということについて、さらに検討させていただきたい、このように思います。
  61. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それが残念ながら、私の主張が直ちには取り入れられなかったわけですから、これで問題が解決したわけではございません。  そこで、五十六年度以降、この逓信委員会では、国際放送の充実強化を図るべきである、したがって政府の、国の交付金についても増額をしなさいということが、三年間にわたって附帯決議として政府に提出をされておるはずでございます。したがって政府はそれを受けて、三年も続いておるわけですから、国際放送の充実強化、交付金のいわゆる各年度における増額についてどういう措置をおとりになったのか。  私が数字を見る限り、特にふえておるとは認められませんし、いやしくも国会の決議ですから、行政府の方で財政上告しいとか言ってみても、国会の決議をそれほど軽々に扱われたのでは、我々は国会で何のために議論しておるのか、全く意味がありません。これは与野党を問わず満場一致、政府に強く要請してある附帯決議が一向に実行されていないという点について、ぜひ見解を各責任者に承りたいと思います。
  62. 日高壮平

    ○日高説明員 この問題につきましては国会におきまして、特に当委員会において、毎年のように種々御意見が出されているということは、私どもも重々承知をいたしております。  先ほど政務次官が御答弁いたしましたように、厳しい財政事情のもとにおいて、なおかつこの国会における御議論を踏まえながら、何とかその充実の方向に向けて私どもなりに努力しなければいかぬ、そういう気持ちでいることは当然でございますし、そのあらわれが五十九年度予算において。二億五千万の充実対策強化ということで、前年に比べて大幅にふやしたという状況にあるわけでございます。六十年度におきましては、若干前年に比べてマイナスになっておりますけれども、これはいろいろな形での節減合理化をやっていただいた上で、私どもとしては要求にございました水準よりか、最終的な予算の段階ではそれを千五百万ほどではございますが、増額さしていただいている、その辺の御事情も御理解いただきたいと思います。  なお五十六年以降ということでございますが、郵政省の一般会計予算、これは総額で二百四十億程度ということで小規模ではございますが、その大半を占めます人件費を除いた残りの物件費に占めるその国際放送経費、この割合を見てまいりますと、五十六年度ではほぼ一二・八%ぐらいでございましたが、六十年度予算ではそれが二〇%弱にまで高まっている。したがって、私どもなりに努力はしているんだということをぜひ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  63. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 今の数字は私の持っている数字とはちょっと違うのですが、政府交付金を見ますと、五十六年度は九億九千八百万、五十七年度十億四百万、五十八年度十億六百万、それから五十九年度予算ですけれども、同じく十億六百万、六十年度予算では九億七千五百万と、こういう数字になっております。今二億五千万ふやしたというお話がございましたけれども、あれは恐らくあなた、経過を知っていると思うのですが、当時与野党を問わず、国際放送の強化を行うべきであるし、特にKDDの送信所をもう少し強化しなければ外国におる皆さんの受信が非常に困難だ。実は内々ですけれども、臨時国会でも百億程度の補正予算を要求しよう、そこまで話がいっておったのですよ。  ところが、国の財政が厳しいというので、大蔵省が二億五千万円で抑えつけたのだ、本当のことを言うと。だからあれが二億五千万ふえただけであって、何も命令しておる国際放送についてふやしたものじゃないのですよ。その数字で見ていきますと一向にふえていないのです。そうでしょう、あの二億五千万円はそういう性格なんです。百億を二億五千万にあなたのところが値切って、送信装置を少し改善したにすぎないのです。あれだってNHKは随分持ち出しになっておるはずなんですよ、内容は。だから、数字をちょっと挙げてごまかそうという、そうはいかない。二億五千万はそういう性格のものであった。  とするならば、本来の命令に対する費用の負担は一体どうなっておるのか。減っておるとは言いませんよ。減っておるとは言いませんが、我々が期待するようにふえていない。そこで例年こうして議論をしなければならないから、私が申し上げたように、割合を最初から決めてしまう。五、五とか六、四とか、それに私はこだわりませんよ、よくお話し合いをしながらそれを決めてもらっておく方が、例年こんな議論をしなくていいし、NHKの財政運営もスムーズにやれるのじゃないか。これはあなた、ちょっと考えてみてくださいよ。どうせほかの人はかわっていくんですからね。あなた、しばらくおるだろうから、あなたのところで考えていただかぬと話が進まないよ。  そういう意味で、済んだことですからことしとやかく言う気はありませんけれども、とにかく国会の特に逓信委員会において、国際放送の充実強化、交付金の増額というものは例年、附帯決議として、いわゆる視聴者の意思として国に要請されておるということについて、十分意にとめてもらいたいと思いますし、何かまたお話があれば政務次官、お答えいただいて、お帰りになっていただいて結構です。
  64. 中村正三郎

    中村(正三郎)政府委員 今主計官からお答えさしていただいたわけでございますが、その二億五千万円のことも申し上げようと思っておりましたが、先生からあらかじめおしかりを受けたようなわけでございますが、シネスの中継放送とか、アフリカのモヤビの中継放送とか、また八俣の四年計画の設備の着手とか、いろいろ伺っているわけでございまして、六十年度においても、財政事情が極めて厳しい中でございましたが、国際放送充実対策費等の増額等をやらしていただいたわけでございます。  総予算で減っているのではないかという御指摘もまたあろうかと思いますが、これは放送設備の改善ということで放送が非常に効率的にできるようになったという結果、こういうふうになったわけでございまして、実際に放送内容の方は充実されているのではないかと、これは私どもは郵政省ではございませんので、御拝察を申し上げているわけでございます。先生の御指摘等もよく頭に入れてこれから勉強さしていただきたいと思います。
  65. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大蔵は結構です。御苦労さまでした。  次の質問ですけれども、先般来BS2の問題について、前の予算の際にもいろいろ御質問をさしてもらいましたが、BS2のaが故障していることは今さら申し上げませんが、bの打ち上げも八月の末から九月に予定しておったのを延期をする、その理由についてもお伺いしました。どうも送波管の検査が、順調だけれども、もっと慎重に検査をしたいから延ばす、こういうような趣旨であったようでございますが、一体どのくらい打ち上げを延ばすおつもりなのか、これは専門的な方で結構ですから。
  66. 船川謙司

    ○船川参考人 お答えいたします。  BS2bの打ち上げが延期されました経過を含めまして、お答えさせていただきたいと思います。  御承知のとおり、現在宇宙におりますBS2aの故障の推定原因というのが、多分温度が真空管の中で異常に上昇しているんだろうということが推定されまして、それに対する対策をBS2bの中継器に施しましていろんな試験をしておったわけでございますが、その一月からの試験の中で若干問題点が出てきまして、真空管を一つ取りかえざるを得なかったということで若干、試験がおくれたわけでございます。しかしその当時はまだ、試験を能率的にやったら何とか八、九月の打ち上げに間に合うんじゃないかと考えておったわけでございますが、その真空管を交換した後、いろいろ今後のスケジュールにつきまして検討しました結果、やはり我々としましては中継器全体の品質確認を一層確実にいたしまして、そのために長期の熱真空試験を行わなくちゃいかぬという結論に達したわけでございまして、この試験を約五十日にわたっていたしましたので、試験の終了が五月二十三日になったというようなことでございます。  その後、六月に入りましてから、衛星全体のシステム試験と申しますが、そういう試験に入っておりまして、こういう現在の進行状況から見ますと、夏季の打ち上げは延期せざるを得ないと判断いたしまして、関係方面といろいろ御相談いたしましてそういうふうにさせていただくということになったわけでございますが、この後、事業団としましては、六十年の冬季にはぜひ打ち上げたいということで、今作業に全力を注いでいるところでございます。
  67. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 川原会長、何といっても放送衛星の打ち上げの一番大きい目的は難視の解消にあった。今一波でも出ていますから、その意味ではある程度難視の解消にはなっておるのではないか、そう私は理解しておりますけれども、残念ながら実用放送ではない。したがって、受信料をいただくことができないのではないかと思うのですが、この一年間でNHKが難視解消によって得られる予定であった受信料がどのくらい落ち込むのか。
  68. 渡辺伸一

    渡辺参考人 今おっしゃいますように、この放送衛星をもって初めて受信がされる方々から取り得ると考えておりました年額は、約千二百万円でございます。その金額が今取れなくているということでございます。
  69. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 またこの一年間、恐らく来年の二月ごろになればもう一年延びるということになりますね。私の計算によるともっと額が多いのですけれども、どれだけ契約ができるかという把握の仕方でも違いましょうから、そのことには触れませんけれども、とにかく今NHKが受信料収入に相当な落ち込みを来したということ、これは間違いがないわけです。  さてそこで、BS3についてもさっきお話がありましたように、また延期をしなければならぬということのようですが、BS3についての経費の負担はどういう割合になっておるのですか。これは郵政省ですね。
  70. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 BS3の負担につきましては、さらに実用性が高まるということで、BS2の六〇、四〇でございましたのを、ユーザー側のNHKが六五、国の負担が三五ということになっております。
  71. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 予定される予算の総額は。
  72. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 開発総額七百九十億円の予定でございます。
  73. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 これは予定どおりにいけば大体昭和六十三年度ですか、六十四年の春までに上がるという予定であったわけですが、これは延びるようでございます。そうすると、今までの契約状況から見ますと、お金はずっとNHKは毎期予算に組んで払っていくわけですか、どうですか。
  74. 渡辺伸一

    渡辺参考人 BS3の工事工程に合わせまして、金は年度別に予算を計上いたしまして、御承認いただきましたときに実行に合わせて払っていくことになります。
  75. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そうすると今回のように、早く言うならばBS2aについては使えなかった、実用的に使えなかったから収入は何にもない。にもかかわらず、次のBS3についてもどうなるかわからない。打ち上げは延期しなければならぬかもわからない。そういう状況の中で、各年度ごとにどんどん今までのようにいわゆる前渡金といいますか、契約金を渡していくということになるのですか。
  76. 渡辺伸一

    渡辺参考人 BS3は五十九年度に四億八千万円ほどの建設費を用意したわけでございますけれども、BS2aの故障に伴うBS2bの経過も考えまして慎重に検討いたしまして、結局、五十九年度中には契約に至らなかったわけでございますので、これから慎重に検討して予算の実行上の支出になるということになっているわけでございます。
  77. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 早く言えばせっかく、これで難視を解消して、幾らかでも受信料をいただいてNHKの財政の負担を軽くしようというねらいもあったはずですけれども、しかしその方は少なくとも二年間、難視解消による受信料の収入は見込めないということになっておる。しかしもし計画どおりにいくならば、若干延びたようですけれども、次の衛星を打ち上げなければならぬ。NHKはBS2で三百六十億、BS3になれば、これは七百九十億の六五%ですからもっと膨大な負担をしていかなければならない。しかも、おおむね衛星の寿命は五年と言われておる。そんなに大きな負担に耐えていける体質がNHKにあるのですか。私はこのごろ非常に危険に感じておるのですが、これはどうなんでしょう。
  78. 川原正人

    川原参考人 確かに衛星の負担というのは決して少額ではございません。今御指摘のような計算でまいりますが、一点だけちょっと。先ほど七百九十億の六五%をNHKと、たしか言いました。これはユーザーとしてで、ですから民間放送が入れば、NHKは二チャンネル使えばそのまた三分の二という計算になるはずでございます。しかし、それにしても決して少ない金額ではございません。ただ、寿命の方も徐々に延びてまいりまして、仮に今の二号が五年とすれば、もう少し寿命が延びるかもしれない。そうすると恐らく、年間の負担としましては今の二号と大体同じくらいの負担が続くだろうと思います。  しかし、これは御指摘のとおり決して安いものではございませんし、それから、難視聴を解消することを主な目的として今までずっと計画を進め、衛星を打ち上げておりますけれども、この難視聴を解消することによって入るであろう受信料というものは、先ほどの五十九年度でいえば千二百万くらい、全体の予算の中ではそんな大きな額ではないのですけれども、将来ともそれではこの衛星を打ち上げた経費を十分にペイするだけのものが難視聴の解消で入るか、それは恐らくそこまではいかないと思います。とてもそれに見合うような収入にならぬと思います。  ただ私どもは、衛星の持つ将来の非常に多面的な能力というものに大きな期待を持っているわけでございます。もちろん今それを、では具体的にどれとどういう能力があって、それによってどういうことが期待できるのかということを数字をもって説明する段階には至っておりませんけれども、私どもとしては将来例えば、高品位テレビというようなものがこの衛星をもって放送できるようになれば、これは地上の電波ではとても今の周波数の幅で放送できませんが、衛星の波を使えばこの高品位テレビ「ハイビジョン」というのは、一チャンネルでもって放送することが可能でございますし、これによって新たなテレビジョンの世界が開けるとすれば当然、その時期にはこれはNHKにとっても新たな財政収入のもとにはなるはずだ、こういう期待を持っております。  ただそれが、では何年に、いつどう幾ら入るのだと今詰められますと、そこまで申し上げられません、今数字は出ておりませんけれども、そういう期待を込めて今この衛星に対する負担をしばらく、つらいですけれども我慢してやっていきたいと考えておるわけでございます。
  79. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 ニューメディアに対する期待というのは、それは私どもも同じように持っております。それはバラ色の夢になるかもわからない。しかし一方、現実に視聴者が負担しなければならない受信料は限界に達してきておる。しかも片方は、現実にお金を出さなければならない。片方はバラ色の夢に――夢と言ったらしかられるかもわかりませんが、期待はあったとしても、今こうなるということが確実じゃない。民間の投資から言うならば、極めてはかげた投資であると言わざるを得ないのです。  私はNHKだから、あるいは国が一緒にやっておることだから、ばかげておるとそこまでは言いませんけれども、民間の経済判断からいくならば、これは明らかに危険な投資であると言わなければならぬし、しかもその投資が結果的には、視聴者の大きい負担にはね返ってくるということについて、特にこれを急いでやらなければならぬのだろうかという点について、何とも言いかねますが、疑問を持っておるということだけは申し上げておきたいと思います。慎重に扱ってもらいたい。  それから、これは機構の方にお伺いしたいのですけれども、委託契約の十三条に経費の負担を定めてあるのですけれども、国が負担する額というのがあるのですが、放送衛星の打ち上げ、運営に国が金を負担するのですか。――機構は来てませんか。
  80. 大竹利男

    ○大竹参考人 機構でございます。  経費の中の国の負担とユーザーの負担というのは、先ほどお話がありましたように、四対六の関係でございますが、これは国の方は宇宙開発事業団の方に四割という形で出しておられますので、私どもの方は直接その四割にかかわっておりません。
  81. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 事業団に伺いますが、事業団はそれは国のお金であると思っておるのですか、事業団のお金であると思っておるのですか。
  82. 岩崎隆

    ○岩崎参考人 事業団のお金として支出するわけでございますけれども、その財源といたしましては国から出資をちょうだいする、そういう関係になっております。
  83. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 ここにも大きな認識の違いがあるのです。機構は国が放送衛星の打ち上げその他に金を出すと思っているのです。だから国から出す金、その引いた残り、しかも六割の範囲と委託契約で決めておるようでございますけれども、今お話がありましたけれども、事業団に対して国が出すのは出資金でしょう。放送衛星でなくて出資金として事業団に国が金を出すのでしょう。だから事業団は、それに対して出資証券を国にお返ししておるはずです。だからこれは事業団の金になっておるはずですが、どうですか。
  84. 岩崎隆

    ○岩崎参考人 今先生がおっしゃったとおりでございます。
  85. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そこで、科学技術庁の長官のかわりに見えていただいておりますけれども、今私が申し上げましたように、国は事業団に出資金としてお金を出すのであって、放送衛星を打ち上げるその放送衛星そのものに金を出すのじゃないはずです。そうすると、国は事業団に出資をして出資証券をもらう。これはまた経済の一般の概念からするならば極めておかしな話で、なくなるものに国はどんどん出資しておるのです。そういうことになるでしょう。そういう考えでいっておるわけですか。
  86. 三浦信

    ○三浦説明員 お答え申し上げます。  科学技術庁が宇宙開発事業団に出資金としてお金を出しているということは事実でございますが、この趣旨でございますけれども、宇宙開発というのは最先端の研究開発でございまして、その成果が有形無形の資産として将来国民がその利益を享受し得るということで、国が宇宙開発事業団に出資しているわけでございます。  なお、出資に当たりましては、そのお金がどういうふうに使われるかということは、予算の中で細目を決めまして出資しているわけでございます。
  87. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 大体事業団法を見ますと、設立のときに国が五億円出す、出資するということになっているのですよ。その後例えば、今の開発に使うお金は、確かに有形、無形のという――地上の設備等については幾らか残るかもわからない。しかし衛星そのものは、五年間の寿命でなくなっていくものなんです。なくなっていくものに出資する、そういうばかな方法はないだろうと思うのです。これは本来交付金の性格だと思うのです。それが出資という形をとるから、片方の機構の方では、国が衛星に金を出してくれるんだという誤解を持ってしまうのです。  だから科学技術庁としては、明確に事業団にこれは開発の交付金として必要な金を予算で与える、そこで交付を受けた事業団がこれを開発に使う、それなら理屈はわかるのです。出資金などというものだから、なくなっていくものに投資するという――出資というのは普通の概念からするならば投資ですよ。そんなばかなことは私は国の財政上からも考えられないのですが、どうなんですか。
  88. 三浦信

    ○三浦説明員 お答え申し上げます。  ただいま御説明申し上げましたように出資に当たりましては、どういう研究開発に使われるかということを予算として積算をいたしまして、研究開発に対する必要な経費を出資という形で出しているわけでございます。  なぜ交付金という形で出さないかということについて、いろいろ考えはあるかもしれませんが、宇宙開発のような研究開発というのは、非常に大規模な研究開発でございまして、長期的展望に立って目標を追求していくというようなことでございまして、このような資金の投入方式が適切であるということでございます。  あわせて、出資ということでやっておりますのは、宇宙開発事業団だけではございませんで、科学技術研究開発関係の事業団すべてそういうやり方でやっておるわけでございますが、民間の資金や人材を導入しやすいというようなこともございまして、このような形で国の資金を投入しているということでございます。
  89. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 私が要請したわけではありませんが、たまたま会計検査院がお見えになっていただいておりますけれども、今私が申し上げましたように、この種の金は本来、交付金あるいは補助金として国が支出すべき性格のものであって、出資をして出資証券だけが大蔵省の金庫の中に積み上がっている、そういうばかな出資というものはあり得ぬと私は思うのですが、検査院として見解はどうですか。
  90. 天野進

    ○天野会計検査院説明員 お答えいたします。  突然の御質問で、十分私の方も検討いたしていないのでございますが、先ほど科学技術庁の方からお答えになりましたように、我々会計検査院といたしましても、科学技術庁関係の各団体については出資金という形で出てきておりまして、この科学技術の最先端の技術開発というような特殊なものについて、こういうような出資が行われているのだろうと理解しております。ただ一般論といたしましては、確かに先生のおっしゃるようなのが一般的な考え方になろうかと思います。
  91. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 政務次官、せっかくお見えになっていただいたのですが、今私が申し上げましたように、出資という形で出すものだから機構あたりの方では、国の金だというふうに誤解をするわけです。開発のための金ならば開発のための金として、交付金あるいは補助金として事業団に明確に交付して開発に使わせるべきであって、戻ってもこない金を出資金だ、利益も上がらない金を出資金だといって年々積み上げていく、こういう国の財政の運営があるだろうかと疑問に思っておるのですが、そうやってきたからといってこだわることなく、直すべきものは直していくべきだ。今、会計検査院の見解もございましたが、政務次官、骨を折ってみてくれませんか。
  92. 内藤健

    ○内藤政府委員 私も突然なお尋ねでございますので、先生のおっしゃることもよく勉強もし、検討もいたしてまいりたいと思います。
  93. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 まだまだたくさん聞きたいことがあるのですが、もう一つ緊急を要しますから、放送衛星に対する保険契約について先般来、私も質問してきたところですが、どうもうまく進んでいないという新聞報道のようですが、保険契約関係はその後どうなっておるか、簡単に説明をいただきたい。
  94. 渡辺伸一

    渡辺参考人 衛星に対する保険につきましては、BS2aそのものに対する寿命保険がまだ済んでいないわけでございますけれども、しかしこの寿命保険につきましては今、一系統しか生きていないという現実からしますと、世界的に一系統しかない保険については事実上、掛けた例がないということでございますので、BS2aの寿命保険については非常に難しい状況に今なっているわけでございます。  それから、先生がおっしゃるのは恐らく、BS3のことも含めてと思いますけれども、今BS3に限らず、衛星に関する保険につきましては、世界の保険会社が共同して負担するというスケールの大きなものでございますので、世界的な規模での保険の状況というのが大変私どもとして気になるところでございますけれども、世界の人工衛星は決して成功してないということでございますので、この収支は大変苦しいと聞いております。  したがいまして、少しでもBS3の契約が円滑に進むようということを思いまして、この三月でございますけれども、宇宙開発事業団とそれから保険会社の幹事会社とそれから私どもと共同いたしまして、三月にはニューヨーク、ロンドンで、そしてまた四月には東京で、事前説明会を実施いたしまして、欧米のブローカーでありますとかアンダーライターでありますとか、説明をいたしました。その結果、我が国における放送衛星の技術のレベルあるいは取り組み方ということに関しましては、かなり事前に知っておったとは違った状況でございまして、前向きに検討しようという感触を持ったのではなかろうかというふうに思っております。  しかし、現実に交渉を進めるに当たりましては、BS2aの故障原因究明とBS2a、bにどういうふうにやっていくのかということを、技術的データーもそろえて検討いたさないことには、具体的な折衝に入れないということでございますので、しばらくこの技術データを提供して検討し、さらには打ち上げの具体的スケジュールが確定したところで、具体的な折衝を進めるということになろうかと思っております。
  95. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 保険については二つ問題があるんです。一つは、今言うように、せっかくこっちが保険契約をしたくても、保険会社の方で契約を結んでくれない。それは言うとおりに金を出せば結ぶでしょうけれども、非常に高い保険料を出さなければ保険契約を結べない、こういう事実が今現にある。  もう一つ、この保険金の支払い方ですよ。打ち上げ保険については六、四の割合でNHKと事業団が保険料を負担する、ところが寿命保険についてはこれはNHKだけが負担する、大体こうなっているはずですが、間違いありますか、ありませんか。
  96. 渡辺伸一

    渡辺参考人 寿命保険につきましてはおっしゃるように、NHKだけで今交渉をしておるわけでございます。
  97. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 まだ入ってないから保証はされておらぬわけですけれども、そういう契約になっておるようですが、これはおかしいんじゃないですか。打ち上げ保険についてもNHKと事業団が六、四の割合で負担をする、そういうことになる。ならば、打ち上げた後の所有権は、同じようにNHKと事業団は六、四の割合で所有権を持つはずなんですよ。そうなっているんです、契約は。それなのに、寿命保険をNHKだけが掛けるというのはどういうわけですか。
  98. 渡辺伸一

    渡辺参考人 打ち上げ保険は、打ち上げの事故に備えての保険でございますけれども、打ち上がった後の、まあ生命保険につきましては、国はその生命保険については掛けないと言っているわけでございまして、NHKは独自の判断で、うちの持ち分に関して寿命保険を掛けようということでございますので、打ち上げ保険については国も共同で掛けよう、しかし寿命保険については国は掛けない、こういうことでございますから、NHKだけが寿命保険の交渉をしておるということになるわけでございます。
  99. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それなら、打ち上げ保険についてはNHKは掛けぬでよかったのに、なぜ掛けたんですか。なぜ六割負担したんですか。相手が掛けぬでそれで済むものなら、それで終わるものなら、何もあんた、交渉する必要はないでしょう。打ち上げ保険についても六、四で国――国じゃないです、事業団。あなた方、国と思っているから間違うんです。事業団です。事業団は六、四で負担しておるわけです。ならば、所有権が六、四でずっと残っていくわけですから、所有権が残っていく寿命保険については当然、NHKと事業団が六、四の割合で負担をするのが世の中の常識じゃないですか。相手がせぬと言うから私のところだけでやりますなんていうばかな話がありますか。それで終わったんですか、交渉は。これは監督官庁、郵政省はどう考えていますか。
  100. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 寿命保険と申しますものは、今さら申し上げるまでもないことですが、利用段階における担保でございます。利用は、BS2におきましては専ら、ユーザーであるNHKが専用的にこれを使うものでございますので、利用者としてのNHKが保険を掛けるというのが適当であろうというふうに考えております。
  101. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 それでは、委託をして打ち上げてもらう、したがって打ち上げるまでの責任は事業団にある。なぜNHKはそこに保険を掛けておるのですか。
  102. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 NHKは機構を通じまして、衛星の設計、製作並びに打ち上げを事業団に委託いたします。事業団は自己の業務として打ち上げの仕事があるわけでございますので、それに国の分担分といたしまして四割分を付加して、NHKの六割分と合わせて打ち上げをして、一つの衛星といいますか、完結した衛星にするということでございますので、打ち上げの段階では事業団、つまり国と言ってもいいかと思いますが、国としてもそれ相応の打ち上げについての責任があるわけでございますので、国の所有部分について保険を掛けるということでございます。  ただし、利用段階に至りますと、利用するのは専らNHKでございますので、ユーザーとしてのNHKが保険を掛けるという仕組みになっております。
  103. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 NHKと事業団がプロジェクトを組んで共同開発しておるんではないのですよ、これは。いいですか。NHKは機構に全部委託しておるんですよ。機構に委託したのです。プロジェクトを組んだのは、機構と事業団の間でプロジェクトを組んでおるわけですよ。したがって、委託を受けたところが打ち上げまでの責任を持つのは当然ですから、その間事故があればその保険について、それは機構が持つか事業団が持つか、これはわかりませんよ、しかし、NHKが持たんならぬ理屈はどこにもない、委託してしまっておるんですから。しかしそれにもかかわらず、持ち分が六、四だからNHKが六割、保険を負担しましたというならば、今後打ち上げた衛星についても、持ち分は六、四ですから、NHKと事業団が六、四で負担するのが当たり前じゃないですか。それがわかりませんか、どうですか。
  104. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 あくまでも国の関与いたします衛星の打ち上げといいますのは、その利用とそれから技術開発の両側面を持っておりますので、そういう意味から打ち上げに当たっては、NHKの委託に係るものとそれから国が自己の責任において開発をすべき部分と合わせまして、一つの完結した衛星として打ち上げるわけでございますので、その段階では国としてもやはり保険を掛ける責任があると思っております。ただし、安定状態に至りました暁におきましては、それを利用するのがNHKのみでございますので、NHKの方が掛けるというのが社会通念上、合致しておるというふうに考えております。
  105. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 そういう社会通念があっては困るのですよ。そんな社会通念はありませんよ。  まず一つ大きな誤解は、どうも局長、あなたは国が、国がと言うのですよ。だから僕は冒頭、これは国ではない、国が出資をして、本来交付と呼ぶべきものだけれども出資をして、事業団の仕事の範疇に入ったんだ。そう理解をすれば、事業団と機構との間で結ばなければならない契約であって、あなたの頭の中にはNHKと国、こういう概念があるのです。NHKと国だ、だから国がくれると言った、国がくれぬと言った、こういうことになるのです。  しかし、NHKも特殊法人なら宇宙開発事業団だって特殊法人ですよ。特殊法人と特殊法人の間の契約を中に機構が入ってやっておる、こういう形になっておるわけでしょう。ですから今私が申し上げたように、事業団の持ち分が四割あるなら、これはなくなるまで四割あるのですよ。これは未来永劫にわたって、何とか言いましたね、有形無形の財産として持っておるわけですよ、ちゃんと。有形無形の財産なら、有形の方の財産に入るのですから、その保険を掛けるのは当然でしょう。なぜそれを事業団が掛けてはいけないのですか。四割負担してはいけないのですか。NHKが全額負担しなければならない理由はどこにあるのですか。  打ち上げの段階では六、四で、上がってしまってからは、おまえのとこるだけ使うんだからおまえのところで保険掛けろ、そんなばかなことない。そんなら委託して打ち上げをする段階までは向こうで掛けてもらうのが至当じゃないですか。
  106. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 利用段階に入った衛星がもし故障いたしまして、その利用に支障を生じ、損害をこうむるのは、あくまでもNHKでございますので、NHKが自己の、人間で言えば生命でございますが、この場合は自己の財産の保全のために掛ける保険として、寿命保険はNHKが負担する仕組みになっておることを御理解賜りたいと思います。
  107. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 ではNHKは、同じ特殊法人の間で、機構を通じてはおるけれども、打ち上げについては事業団に委託したのですよ。だから、打ち上げまでの責任は事業団にあるのであって、打ち上げた後引き渡すという行為が行われているはずです。引き渡すまでは事業団に打ち上げの責任があったのですから、それでは打ち上げ段階における打ち上げ保険は事業団が全部負担をした、それなら後、NHKが使うのだからNHKが保険を負担する、それならそれでわかるのですよ。  打ち上げ段階においては六、四で負担をさせておきながら、しかも所有権はこの後も六、四で続く、こうなっている、はっきり契約で結んであるはずです。それに保険だけは掛けない。あなたの概念では国だから、国がくれぬと言うから仕方がないという役人的な発想があるけれども、特殊法人同士の間の契約ならそれはおかしいですよ。どうですか。
  108. 岩崎隆

    ○岩崎参考人 通信政策局長からお答えになったとおりに私どもも考えておりますが、打ち上げ保険につきましては、衛星の製作段階から基本的には、私ども直接に契約いたしておりますのは機構、通信放送衛星機構と私どもでございますけれども、その一方における実用という目的、それからもう一方における開発という目的をいわば共同に持ったプロジェクトとして推進をしておるわけでございます。したがいまして打ち上げにおきましても、打ち上げの時点においてこれがうまくいきません場合には、一方における実用の問題、それから他方における開発の両面がうまくいきませんので、これについては共同で付保しておる。片や寿命の方は、局長からお話がございましたように、私ども確かに所有権は四割ございますけれども、これは無償でお貸しをいたしておりまして、利用の問題としてこれはユーザーの方でお掛けをいただく、そういう考え方でやっているわけでございます。
  109. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 僕は本当は決算の内容について、数字を挙げてたくさん質問したい内容があったのですけれども、時間が来たようで、約束ですから……。  そこで、科学技術庁の方にお願いしたいのですが、今お話があったように、出資、交付、いろいろ金の出し方はあるとしても、国の政策として有形無形の未来に向けての財産をつくっていくために国が出資金なり交付金を出しているわけです。そういうものである限りこれはリスクが伴うのです。宇宙開発というものは必ずリスクが伴ってくる。したがって国は、この開発に当たっては少なくとも、放送衛星が十分使えるところまで国の政策としてやってしまう。でき上がったらそれを今度は、ユーザーとしてNHKなり民間の放送会社に使ってもらう。その場合には当然料金を取っていいです。  NHKだって、一回に三百何十億も出すよりも、年々利用料を出して衛星を使わせてもらった方がはるかにいいのです。そうすると、一番先に事業団に出した金が出資金であってもおかしくなくなるのです。出資金は、そのリスクを考えながら放送衛星あるいは通信衛星を打ち上げる、それをユーザーに貸す、利用させる、そこから料金を取る、そういうシステムに変えていけば、簡単に物事は解決するのです。ところが国が、NHKからも金を取ろう、民間からも金を取って、やれ共同開発という名前を使おうとか、これは中曽根さん流の民活か何か知らぬけれども、そういう発想だから、内容がこんなにこんがらかってきて、保険一つ例にとってもおかしなことになってくる。  私が科学技術庁にお願いしたいのは、郵政大臣も含めてです。こういうリスクのある宇宙開発、有形無形の将来の財産をつくるのですから、それは国の責任でやってしまう、でき上がったものについて利用者、NHKなり民間放送なり、放送衛星の場合はそこがユーザーとして料金を出してそれを利用させてもらう、そういうシステムに変えてしまえば、こういう問題は起こらなくて済むはずなんです。私はそのことをぜひ政府に検討してもらいたい。そういう発想がいいか悪いか、NHKにも意見があるかもわかりませんから、それぞれの意見を聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  110. 三浦信

    ○三浦説明員 放送衛星のようなものを開発するに当たりまして、どういう分担の仕方をしていくかというようなことについて、いろいろな方策があろうかと存じますけれども、現在まで我が国が進めてきました方法につきましては、先ほどから御指摘のように、国とユーザーとが両方とも相まって協力して資金の負担をいたしまして、計画を実施していくという考え方でございます。  このことの考え方といたしましては、ユーザーが開発の段階から積極的に関与することによりまして、ユーザーにも使いやすい衛星をつくることができる、また、国としても開発経費を負担していくことができるということでやっているわけでございます。こういうような考え方から、現在の方法が我々としては望ましいとは考えております。
  111. 奥山雄材

    ○奥山政府委員 我が国の宇宙開発政策そのものが、国産の技術の開発促進を基本にしていることは申すまでもございません。そうした見地から、まず新しい技術の開発段階における純粋に実験的、試験的な衛星につきましては、これまでも国が一〇〇%経費を負担して打ち上げているところでございます。例えば実験用の中容量通信衛星並びに実験用中型放送衛星、いわゆるCS及びBSがその具体的な例でございます。  しかしながら、先ほど科技庁からも御答弁がございましたように、実利用に係る衛星につきましては、実際のユーザーである側の意向も最初の段階から十分踏まえた上で開発をした方がいいであろうということで、ユーザー側の出資も仰ぎながら衛星の開発を進めていくというのが、現時点では私どもも適当ではないかと考えております。
  112. 渡辺伸一

    渡辺参考人 先ほど寿命保険のNHK負担について私、不正確に申し上げたので、あるいは誤解をなさっているといけないと思って訂正いたしますが、NHKの寿命保険は、NHKの持ち分に関して掛けておるわけでございますので、念のため申し添えておきます。つまり、六割についてNHKは寿命保険を掛けているわけでございます。全部であるかのごとく私申し上げたかもしれませんが、そこは訂正させていただきたいと思います。
  113. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 終わろうと思ったけれども、今のような答弁では、これは終わるわけにはいかないですよ。そうでしょう。私は今そういうやり方になっておることは百も承知しておる。しかし、それに問題があるのではないか。だからあなたではなくて責任者に来てもらっているのは、大臣なり政務次官が私が申し上げた提言、なるほどそれは一考に値するというふうにお考えになるのか、いや、今こうやっているのだからこれを変える必要はない、こうお考えになるのか、そこをひとつ聞きたいのです。  それから、あなたにせっかく答弁してもらいましたが、それでは、NHKはNHKの持ち分だけとさっきからそうおっしゃっている。しかし衛星が使えなくなるときは、六割だけ使えなくならないのですよ。これは全部使えなくなるのですよ。そうすると補償してもらうのは、六割補償しか受けられない契約ですということしかならぬですよ、言い方は。そうでしょう。六割しか掛けませんというのは、あたかもNHKは、よその分までは知りませんよということになるけれども、使えなくなったときは、返ってくるお金が六割しか返ってこないということであって、そのことは手柄にも何もならないのです。一割だって構いませんよ、返ってくるのは少ない。しかし、保険というものの性格から言えば、大体それを償い得るとか、それに近い金額がなければ保険の意味がないことだけは、あなた保険を扱うならよく考えてください。  そこで政務次官、私の提案はどうですか。
  114. 内藤健

    ○内藤政府委員 先ほども政府委員から答弁いたしましたが、開発の段階からユーザーの参加ができるように、開発した衛星をユーザーが積極的に利用していく、こういうためには今の方法がいいんではなかろうか、また、大規模かつ長期的展望の上に立っての目標を追求していく、求めていく、こういうふうな意味でも、こうした資金投入方式が一番いいのではないかと思っております。
  115. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 あなた恐らく聞いて答えたのだろうけれども、現にそういう方法をとったから問題が起きている。しかも局長は、実用だからユーザーも加盟すべきだと言う。ところが実用にならないのです。今のNHKの放送は試験なんです。では、試験放送しかできなかった、実用にできなかったという場合に、どこに責任があるのかというのが問題になってくるのですよ。だからさっきの趣旨から言うならば、実用に供し得なかったから、では、NHKの負担分については国が全部負担をしましょう、実験段階でございました、こうなるならば今の御趣旨で私は了解します。ならないでしょう。NHKに三百六十億、科学技術庁なり事業団は恐らくお返しにならぬでしょう。  だから、実用にはならなかった、そういうリスクが伴う。だから私は、同じなら出資をして立派なものを国がつくる、開発する、開発したものにそれぞれのユーザーが料金を払って加盟をすれば資金の回収はできていく、それならば出資という趣旨からも開発という趣旨からも極めて妥当である、そう考えるので、それについて検討なさる御意思がありますか、ありませんか、こう科学技術庁にお伺いしておるわけです。どうですか。
  116. 内藤健

    ○内藤政府委員 今回のBS2aの故障につきましては、極めて厳粛に受けとめておるところでございまして、先ほど来も御質問にもございましたように、まことに重要な問題でございます。したがいまして、先生の御指摘のことも踏まえまして今後、関係者意見もよく聞きまして、そして、宇宙開発委員会でも十分に、そして慎重に検討がなされる必要があろうか、こういうふうに考えておりますので、そのような方向で行ってみたいと思います。
  117. 阿部未喜男

    ○阿部(未)委員 終わります。
  118. 渡辺紘三

    渡辺委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  119. 渡辺紘三

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書並び日本放送協会昭和五十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書の両件について質疑を続行いたします。松前仰君。
  120. 松前仰

    松前委員 私は、五十五年から五十八年の決算につきまして、まず最初に、受信契約の点についてお伺いをさせていただきたいと思います。  五十六年からちょっと計算してみたのでありますけれども、五十六年から五十八年、この間の受信契約者の増加というのが八十六万八千件、こういう状況であるわけでございます。年々ずっと経過を見てまいりますと、もう既に頭打ちというような傾向がはっきりとここであらわれておるということがわかるわけでございますけれども、そこで私は一つ疑問に思った点がございますので、その辺についてお伺いをさせていただきたいと思います。  日本の総世帯数というものが大体三千八百万ぐらいあるにもかかわらず、この契約総数というのはかなりそれを下回っておる、三千万ぐらいになっておるということでありますけれども、この間の差についてちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  121. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、全国の世帯約三千八百余万ということでございまして、私どもの受信契約が三千万という数字でございますけれども、この差がどこから出てくるのかという御指摘であろうかというふうに思います。  私ども契約数を考えます上で、まずベースに考えますのが国勢調査の結果でございます。国勢調査の結果を例えば、五十年、五十五年の国勢調査を比べまして、それに基づいてどの程度世帯数がふえていくのかということも計算しているわけでございますが、国勢調査の結果から、我々としましては無料契約の世帯を持っておりますので、それを差し引きます。そして、そのあと残りました有料契約母体というものをどういうふうに考えるのかということになるわけでございますが、これは国勢調査の結果等で、二人以上の普通世帯というものとそれから単身世帯ということで分けて考えますと、単身世帯がおよそ七百六十万世帯くらいあるだろうという推定を持っております。それから、二人以上の世帯が二千九百万少しだろうかというふうに思います。  この二人以上の世帯の方のテレビの所有台数というのはどのくらいかというふうに考えますと、これは経済企画庁の調査でございますけれども、およそ九八%の方がもう既にテレビを持っておられるという推定でございます。ただ、単身世帯の方のテレビの所有傾向といいますのが、これも同じく経済企画庁の独身勤労者消費動向調査というようなものをベースに考えますと、五十数%ではなかろうかという数字もございます。  そういったようなものもベースにしながら、また私ども独自の世論調査等も通じまして推計いたしますと、大体今のところ、テレビの所有世帯数が三千二百三十九万程度でなかろうかというふうに思います。それから契約世帯数を引きますと、三百三十万くらいの方々がまだ未契約で残っているという数字になろうかと思います。ただ、この三百三十万という数がかなり大きな数でございますので、私どもとしては、やはり毎年の契約総数の増加計画を立てますときに、努力目標値として幾ばくかを世帯数の増に積み上げまして、そして計画を立てている次第でございます。  この三百三十万という数字が、同時にまた、全体としての移動率というものもひとつ考えていただきたいというふうに思うわけでございますが、と申しますのは、今全国的に約一〇%程度の移動率があろうかというふうに、これも国勢調査の結果から出てまいります。そして私どもの今の契約の仕方が、二カ月を一期と考えまして、それを一つの単位に考えているわけでございますが、そういった今の仕事の進め方からまいりますと、移動された方と契約していただく、その期間のタイムラグがどうしても出てまいってしまいます。  そういった移動の状況が非常に傘として高いという状況と、先ほど申しました全体のテレビの所有状況というようなものを勘案して考えますと、私どもとしては、今この三百三十万という一つの対象に向かって努力はしてまいっておりますけれども、先ほど先生の御指摘になりました八百万というような数字にはならないというふうに考えておる次第でございます。
  122. 松前仰

    松前委員 まだ八百万ぐらいの収入を契約できるというような感じに受け取ったわけでありますけれども、今のお話であと三百万ぐらいということであります。いずれにしろ、これは三千万というところと比べれば、もう既にかなり少ない数字である、年間四十万ぐらい契約しても八年ぐらいで終わってしまう、こういう非常に厳しい状況になっているような感じがしてならないのであります。  そこでもう一つ、受信料値上げというのは去年実施したのですけれども、それはさておいて、五十五年から五十八年までの経常事業収入、これがどれぐらいふえているか、ちょっと計算したら大体二百十一億ですか、二百十二億ぐらい、そして経常事業支出というのが四百九十一億、こういうぐあいになっている。これは収入に対して支出の分が大体倍ぐらい、倍以上になっているという状況になっています。  ですから、受信料契約は一生懸命努力していただくのも当然でございますし、また、それを努力していただかないとどうしようもない状況になるのは明らかでありますが、それよりもさらにまだまだ普通の支出という部分がふえていくという状況にあるように思います。  そこで、NHKとしてはこういう事態において、ただ受信料の契約をふやすというだけではなくて、何か別のことをやっていかないとだめなんじゃないか。NHK自体がつぶれるということになれば、これは大変な社会的問題になりますので、それを何とか存続していくということで何かしら方策が必要ではないか、そんなように考えます。  ラジオで過ごしてきた時代、これは恐らくテレビが出ないでずっとラジオでいったら、今NHKはどうなっていたか、これはわからないと思うのであります。恐らくかなりNHKの存在も危ぶまれたのじゃないのだろうか、そう思いますけれども、テレビが出てきたから幸いにしてそれがよくなった。それならば、今ちょうどテレビが、ラジオからテレビに移る状況と等しいように思うのですね。これから先、ですから、もう何年もないと思いますけれども、何とかして新しいものをやっていかなきゃならぬ、そういうふうに思いますけれども、この辺についてNHKの方のお考えはどうでしょうか、お聞きいたしたいと思います。
  123. 林乙也

    ○林参考人 お答えいたします。  現在のNHKの財政状況につきましては、ただいま御指摘がございましたように、収入の大宗をなします受信料収入につきましては、年間約一%少々程度の伸びにとどまらざるを得ないような状況でございますし、また、経費の支出につきましては、最大限の効率化努力を重ねるといたしましても、やはり今後のニューメディアの進展等に伴います新しい業務に対応することの必要を考えますと、少なくとも年間四%ないし五%程度の経費の増加というのは避けられないというようなところでございます。  そうした状況の中におきまして私どもといたしましては、一つには、収入の大宗をなす受信料の収納確保を増加していくということではございますけれども、それだけでは今後長期的に見て、経営の展開にとても耐えられないであろうというふうなことを考えております。  そのようなことを考えますと、収入の点におきましては、ただいままことに残念ではございますけれども、一チャンネルによる放送しかできておりませんけれども、衛星を利用してのいわば番組の充実あるいは視聴者の多様な要望にこたえる番組を提供する中で、いわゆる現在の受信料体系のもとにおける新たな、例えば衛星放送受信料といいますか、そういうようなことなども今後の問題としては考えていく必要があるのではないか。また、受信料の収入のみならず、例えば番組の二次利用とかあるいは著作権料の収入だとかあるいは特許権料の収入というような、いわば受信料に限らない経営財源の多様化ということも図る中で、総体として国民の、受信者の方々にお願いせざるを得ない負担というのを極力軽減していくということの中で今後、経営を展開していかなければならないのではなかろうかと考えておる次第でございます。
  124. 松前仰

    松前委員 NHKの存在が非常に危ぶまれて、そして将来、その評価が非常に低くなるということは、これは日本のためにとっても大変な問題になるわけでありますから、何とかNHKが存在して、そして国民のためになっていくという方向をとっていかなきゃならぬ。それにはやはり経営という問題は重要な問題でございます。今のこの状況を踏まえて、どうか新しいものを創造していただくという努力をお願い申し上げたいと思う次第です。  そこで、今お話がありました放送衛星なんですけれども、そういう意味で放送衛星も先ほど会長の方から、大変に未来に期待を持っているというお話がありました。その放送衛星について若干質問させていただきたいと思います。  放送衛星についてさっき話がありましたように、来年の一月期に延ばすというようなことが決められたようでありますけれども、その延ばすに当たって、現在の技術的状況というのをちょっと説明をお願いしたいと思います。
  125. 船川謙司

    ○船川参考人 お答えいたします。  BS2aで起きましたふぐあいにつきまして、BS2bの中継器に対しましていろいろな対策を講じまして、これを本年一月から五月にかけまして熱真空試験を行いました。この中継器全体としての最終的な熱真空試験の結果も良好でございましたので、中継器を衛星本体に組み込みまして、六月初めから衛星システム試験を行っている現況でございます。
  126. 松前仰

    松前委員 そのシステム試験が終わってから後、日本で一月までの間はどういうふうにされますでしょうか。
  127. 船川謙司

    ○船川参考人 衛星全体のシステム試験が順調に進めば、十一月ごろに衛星を種子島の射場に輸送いたしまして射場整備作業に入るということで、現在のところ、一、二月期に打ち上げるべくいろいろ準備を進めているというところでございます。
  128. 松前仰

    松前委員 私、聞くところによりますと、このシステム試験を終わりますと一月までは、ほとんど何もシステム試験をやらないというように聞いております。これではやはり大変心配であるわけでありまして、私としてはとにかく、さっき話がありましたように、保険の問題がうまくいっていないという状況になれば、確実に、完全に成功していかなければならぬという状況に追い込まれているわけですから、そこのところをやはり十分頭の中に入れていただいて、一月までの間に、その前にちょっとでも問題点があればまた再度検討し直すというような態度を持っていただきたい。  今度はシステム試験がオーケーであればもう最後まで大丈夫だ、こういうのであれば、私はちょっとまた信用できなくなってしまうのでありますが、事業団の一月期における成功の見通しといいますか自信というか、その辺ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  129. 船川謙司

    ○船川参考人 お答えいたします。  六月初めからシステム試験を開始しておるわけで、まだそう日が進んでおるわけでございませんが、現在までのところ順調に進んでおります。  もちろん、我々これで安心しているわけでございませんで、中継器につきましても、まだその一次原因が若干はっきりしないところがありますので、そういう試験も続けておりますし、また、中継器以外の面で抜けたところがないかどうか、そういう点につきましても十分慎重に検討を進めて、今度の一、二月期の打ち上げに全力を尽くしたいと考えております。
  130. 松前仰

    松前委員 いずれにしろ、一月期にはもう絶対成功してもらわなきゃ困るということでありますから、もし一月期にどうもちょっと不安が残るなということであれば、また延ばすというようなことも考えなきゃいけないと思うのです。保険の問題その他についてもさっきのような状況でございますから、とにかく日本でやりますこれについては、一〇〇%成功せざるを得ない状況に追い込まれています。その辺をよく考えてこれから仕事をやっていただきたい、そういうふうに思います。  ところで、郵政省にお聞きしますが、アンテナ、コンバーターの普及状況はどうなっていますでしょうか。
  131. 徳田修造

    ○徳田政府委員 お答え申し上げます。  衛星放送の受信の世帯数でございますが、現在約四万六千世帯ということになってございます。  その内訳でございますが、各家庭で個別にこのアンテナ、コンバーターをつけて受信しておられる方が約五千世帯、それから共同受信という形で受信しておられる方々、施設数としては四百三十施設ございますが、世帯数で申し上げますと約三万九千世帯ということになっております。それから、大東島あるいは小笠原等で再送信で受信しておられる方、これが約千五百世帯という数字になっております。
  132. 松前仰

    松前委員 四十万世帯と言われていた難視の部分はどのくらいあるのでしょう。難視地帯に普及しているコンバーター。
  133. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 今の四万六千世帯のうちの二千世帯が難視解消地域であります。
  134. 松前仰

    松前委員 衛星放送が難視解消という目的でやられ始めたのでありますが、これがなかなか普及していかない。一チャンネルが故障しているという点もあろうと思うのですけれども、何とか普及をしていかなければならぬということであります。衛星放送普及推進会議というのがありますね、ここで衛星放送番組強化というのを働きかけるということで、たしか郵政省に話が来ているのではないか、そういうふうに思いますが、その点について郵政省として今後どのように対処されますでしょうか。
  135. 徳田修造

    ○徳田政府委員 衛星による難視聴解消のためには、やはり受信機の普及を図る必要があるわけでございますけれども、その普及を図るためには、受信者の負担を軽減するということが一つあろうかと思うわけでございます。政府といたしましては、放送衛星用のコンバーターのうち、チューナーと呼んでおりますけれども、これに対する物品税の減免措置を講じたところでございます。またあわせまして、衛星放送の受信機のリースを行う者に対しまして、財政融資措置も講じておるところでございます。  しかしながら先生御指摘のとおり、現在行われております放送が一チャンネルしかないということで、なかなか普及を見ていない面があろうかと思うわけでございます。今後BS2bが打ち上げられまして、予定どおり二チャンネルによる本格的な放送実施されるようになれば、需要が増大し、それによってまた受信機の量産効果に基づく価格の低廉化が図られ、普及が進むであろうと考えるわけでございます。  あわせまして、番組の面の配慮も必要かと思うわけでございますが、放送衛星二号は難視聴解消を主たる目的とするものでございます。したがって基本的には、地上放送と同一番組が放送されるものではあるわけでございますが、一方、衛星放送の普及発展を図る見地から、ある程度番組編成上の工夫を行うことも必要ではないか、そのように考えております。
  136. 松前仰

    松前委員 難視への普及が悪いという点も、番組の内容がよくなっていかなければならぬということも含めてどうも普及が悪いという状況ではないだろうか、そういうふうに思います。それからまた、さっきちょっと話をしましたけれども、NHKの財政状況を長期的に見ると、新しいものを考えていかなければならぬ状況にあるわけであります。放送衛星の利用が難視解消ということでびしっと決まってやってまいりましたけれども、そこに何か新しいものをやっていく努力も必要ではないだろうかと思うのですけれども、BS3の時点において方式が、現行方式とさっきお話がありました高品位という新しい方式と二つ出てきてしまう、この辺についてどう調整をとって、新しいメディアとして普及させ、そしてまた難視をうまく解消させていくか、この辺について考え方をちょっと聞かせてもらいたい。
  137. 徳田修造

    ○徳田政府委員 BS3は、NHKのテレビジョン放送の難視聴解消を主目的としたBS2の後継機でございます。したがいまして、BS2によります放送サービスを引き継ぐということが一つの目的であるわけでございますが、それとともに、今後の増大かつ多用化する放送需要に対処することも目的になってございます。このためにBS3におきましては、NHKの二チャンネルのほかに一般放送事業者のチャンネルも一つ加えて、三チャンネルで放送するということになっておりますし、文字多重放送であるとかそういうような放送もいろいろ行われることになるだろうと思っております。  それから、高精細度テレビジョン放送等の新しい放送サービスの導入の問題でございますけれども、これは今後の技術開発動向等を踏まえまして、導入時期等について検討していくことになろうかと思うわけでございますが、NHKがこのような新しい放送サービスを実施することにつきましては、NHKのあり方といいますか、そういうようなことにかかわる重要な問題でございます。  したがいまして今年度郵政省に、こういうニューメディア時代において将来の放送政策はどうあるべきかという問題について御検討いただくために、ニューメディア時代における放送に関する懇談会を設置いたしまして、有識者の方々にNHKの将来のあり方も含めていろいろ御意見を賜る、放送政策懇談会と略称いたしておりますけれども、そういう懇談会を設置して今御審議をお願いしておるところでございます。そういうところの御意見も十分参考にいたしまして検討してまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
  138. 松前仰

    松前委員 郵政省も大分考え方が変わったので、安心しておるわけでございます。前は放送衛星と言えば、新しい番組を実験しようとすると、これは難視だから新しい番組はやらせないというような話もあったわけでありまして、その点から見ますと、大分前進だと思っております。私も大変安心いたしました。ぜひともNHKの将来というものを、国民の放送というものを守っていけるような方向で、経営も含めて、それから難視も解決していけるような方策を真剣に考えていただきたいと思います。  ところで、一つ気になるのですが、衛星放送で難視を解消するということで非常に高いお金を払っているということでありますけれども、地上放送でやった場合と衛星でやった場合、どっちがどれだけ高くてどうなるのか、その辺、ちょっと教えていただきたいと思います。
  139. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 お答えいたします。  これは試算でございますけれども、難視解消を地上施策で行います経費は、償却費それから運用費を含めて年間約百九十億という試算をしております。さらにそれ以外に、施設の維持管理に要員を必要とすることはもちろんでございます。これを放送衛星で行うといたしますと、償却費、運用費等を含めて年間約百十億円というふうに試算しております。難視解消といたしましては、衛星の方が経済的であり、かつ効率的であると考えております。
  140. 松前仰

    松前委員 ちょっと聞き漏らしましたが、余り差がないようなお話でしたか。今の最初の方は百何億と言いましたか。
  141. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 百九十億と百十億、八十億の差でございます。     〔委員長退席、吹田委員長代理着席〕
  142. 松前仰

    松前委員 百九十億と百十億ということになれば、放送衛星の方が難視解消にははるかにいいというように思います。難視解消を地上放送でやったらどうかという声がいろいろありますけれども、私もそれで納得いたしました。ぜひとも衛星放送が難視解消にも大いに役立つような格好で技術的にもきちっとやっていただきたい、そういうふうに思います。  ただ心配なのは、人工衛星の信頼度ですね。世界で完全に成功した人工衛星は、全体のうち六〇%しかないというようなデータが出ております。ですから我が国においては、それよりもっとぐっと上回る九〇%以上の成功というような形に持っていけるように、アメリカのまねをしないでやっていただきたい、そういうふうに思います。  話を変えますが、緊急警報放送の話です。これはこの間、公開でちょっと見せていただきました。静岡に同報無線というのが今あるのですけれども、地震のときに予知をしたら、それをぱっと放送みたいな形で電波で各要所要所に流して、それをスピーカーでわっと出すようなシステムがあるのです。そこで視察をちょっといたしました。これはいろいろ問題がございまして、同報無線だけでは市民に周知をすることができないというのがはっきりわかったわけです。  というのは、スピーカーで屋外から出す、それも公民館とかそういうような公共施設のところに置いてあるのでありますけれども、雨が降ったり台風だったり夜だったりすると、各家庭みんな窓を閉めてしまう、そうすると聞こえないんですね。聞きにくいということなんです。そうしたらどうするかと私、質問しましたら、こういう緊急警報放送というのができるから、それを設置するんだよというお話であったのでありますけれども、それについていろいろと実用化に向けて準備を進めておられるということを聞いておりますが、この辺について郵政省の方からどういう状況か、現状お聞かせいただきたいと思います。
  143. 徳田修造

    ○徳田政府委員 緊急警報放送システムは、広域災害等におきまして情報伝達の面で極めて有効な手段である、そのように考えておる次第でございます。しかしながら、これが深夜などに緊急を要する災害放送を送って、それで自動的に受信できるというシステムでございますので、誤用されますと非常に混乱を招くおそれもありますので、適正な運用を行う必要がある、そのように考えておる次第でございます。  それで、郵政省におきましては、防災関係機関、国土庁、気象庁、消防庁、警察庁でございますが、これらの防災関係機関とそれから放送事業者との間で、運用のあり方を中心にいたしましてずっと検討を進めてまいったところでございますけれども、今般、この実用化を図るために郵政省令の改正をいたしまして、去る六月一日に公布、施行いたしたところでございます。したがいまして、近くそういうシステムの実用化がなされるのではないかと考えておる次第でございます。
  144. 松前仰

    松前委員 現地は秋にはもうこれが実用化されるということで大変な期待を持っておりますので、どうかその現地の人にこたえるような形でやっていただきたいと思うのですけれども、ちょっと心配なのは、こういうものができたのはいいんだけれども、受信機、これが今もうみんな家庭にはラジオもある、テレビもあるという状況であります。これが一体そういう新しい緊急警報装置のついた受信機というものを買ってくれるかという問題があるんです。買ってもらうことを期待しているのか、それとも、ある程度要所要所には郵政省の方で何らかの手当てをするということを考えておられるのか、その辺ちょっと。
  145. 徳田修造

    ○徳田政府委員 先生御指摘のとおり、この緊急警報放送システムの効用が十分発揮されるためには、広く国民に周知されまして、受信機が最大限に普及されるということが必要なわけでございます。このために郵政省、防災関係機関、それから放送事業者、電子機械工業会、こういう団体から成ります。知普及のための関係機関連絡会というものを設置いたしてございます。具体的にこの普及対策を検討いたしまして逐次、PRだとかそういうことを進めつつあるところでございます。
  146. 松前仰

    松前委員 そうすると、やはり買ってもらうことが前提だということですね。買ってもらわなければこれはいかぬ。買ってもらうためにいろいろPRをしているというのが、今の状況だろうと思うのですけれども、恐らく私はそんなに買ってくれないと思うのですよ。今あるものにまたプラスアルファして緊急のためのものを買う。地震もなかなか起こらないからまあいいやなんという調子になってきてしまう。そこのところをどうしたらいいか。今、古い受信機があるなら、それを交換するとか、多少下取りとか、そんな形のこともあろうと思いますけれども、そんなようなことも考えてやっていかないと、本当にみんな静岡あたりでは買ってくれるような様子はないように思います。そういうところも十分考えていっていただきたい。  それから、そういう受信機が入ったにしても、停電したらどうしようもない。停電のときにはどうするかということも、受信機側で考えるとか、電池を入れておくとかいろいろありますけれども、そういうことも考えていろいろな場面を想定して、本当にこれは機能できるという格好に郵政省の方で指導してやっていっていただきたい、そういうふうに思いますがよろしくお願いします。  それから次に、ローカル放送の拡充についてです。これも逓信委員会の附帯決議が五十五年度には出ておりまして、その後ローカル放送の拡充についていろいろと進めておられることは私もよく知っておるわけでありますが、地方管担局の会館の建てかえというものが今数カ所で計画されようとしておるようでございますが、その辺について、ローカル放送拡充の線に沿って進められているかどうか、内容をちょっとお聞かせいただきたいと思います。簡単で結構でございます。
  147. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 地方の放送会館につきましては、地域放送機能を果たしつつ地域の情報文化の中心として、その位置づけはますます重要となってきております。非常に老朽したとかあるいは狭隘化が著しくなりまして、業務の拡大あるいは業務の質的な変化に対して十分機能が発揮できないという状況になっております地方の会館も出てきておりますので、老朽度とか狭隘化の状況、あるいは地方自治体の地域開発計画の進展状況、そういった点を考慮いたしまして現在、管轄局級につきましては、名古屋、大阪、福岡の管轄局の放送会館の建てかえについて検討している状況でございます。
  148. 松前仰

    松前委員 ちょっと地元の話で恐縮ですが、名古屋の方については、ローカル放送の充実の線で動いておりますでしょうか、名古屋放送局というのか管担局というのか。
  149. 川原正人

    川原参考人 ローカル放送はいずれにしても私ども、一層充実していかなければならないと考えております。ただ、今御指摘の管轄放送局と言われるものについては、昔の中央放送局という考え方では、今の新しい時代といいますか、地域的な文化の発展なりあるいは全国的な規模での放送の中における位置づけからいって、もう一度再検討しなければいけないというふうにも思っております。もちろん方向としては、充実が単に量的にローカルの時間をふやすだけというのではなくて、もっと本来地元との関係、NHK全体の組織の中でのそれぞれの放送局のあり方をもう一度根本的に再検討して、その中から新しいそういう放送局のあり方を固めていきたいと今考えているところでございます。
  150. 松前仰

    松前委員 ローカル放送については大変な市民の要望があるわけでございまして、その再検討の中において、量的な問題だけではないというお話ございました。質的にも向上できるような会館等の建てかえというものについてぜひとも考えていっていただきたい、そのように思います。この問題はこのくらいにいたしまして、最後に国際放送でございます。  簡単に申し上げますと、五十八年度から五十九年度くらいにおいてはNHKの経費負担分、これが七・一億円から七・二億円くらいという状況でありましたけれども、海外に中継所を持った、それから国内の方は増力というような格好になってくると、四十億近くの経費が、NHK負担分が将来はかかってくるだろう、そういう状況にならざるを得ない。こういうことについて郵政省としてはどういうふうにお考えになりますでしょうか、どういうふうに対処しようとされておりますでしょうか。
  151. 徳田修造

    ○徳田政府委員 国際放送につきましては、この近年におきます経済摩擦の激化等も激しくなってきておる時代において、ますます重要性を帯びてくるであろうと考えておりますので、この辺、郵政省といたしましては、さらに充実を図ってまいりたい、そのように考えておるところでございます。しかしながら、何分にもこの財政事情、非常に厳しい状況下にございますので、今後とも最大限の努力を払っていくつもりでございますけれども、この充実につきましてはあらゆる角度から検討を進めてまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
  152. 松前仰

    松前委員 先ほど阿部議員の方から話がありましたので、このぐらいにとどめておきたいと思いますが、いずれにしろ、国際放送というのは非常に重要な位置を占めてくるわけでありまして、今貿易摩擦とかそういう問題も、お互いの国の内情をよく理解できないというところから発しているような感じであります。そういうこともやはり国際放送というものがもっと拡充して外国で聞かれるという格好になれば、こういう問題も少しずつ解消してくるはずなんでありまして、ますます国際放送の充実に努めなければいかぬ。  それにはやはりさっき話がありましたように、国からの予算というもの、国からのお金というものをかなり投入してやらないと、NHKだけではなかなかこれはできるものじゃありませんので、どうかその辺を、今度の予算の編成もあろうと思いますので、よろしくお願いしたい。郵政大臣、ちょっとその辺、最後にお答えいただきたいと思います。
  153. 左藤恵

    左藤国務大臣 国際放送の重要性、御指摘のとおりだと思います。  当面の問題といたしまして、まず第一に、現在の機械、非常に性能が古くて悪いわけでございますが、まずよく聞いていただくような施設にしなければならないわけであります。そしてまた、設備の問題だけではなくて内容の点につきましても、今お話がございましたような非常に重要なものでありますから、このことについて力を入れなければなりません。国の財政、非常に厳しい中でありますけれども、我々としては最大限の努力をいたしまして、何とか国際放送の実を上げていくように努力していかなければならない、このように考えておるところでございます。
  154. 松前仰

    松前委員 じゃ、終わります。
  155. 吹田愰

    ○吹田委員長代理 山田英介君。
  156. 山田英介

    ○山田委員 私は、NHKの関連団体に関しまして冒頭、若干の質問をさせていただきたいと思います。  資料によりますと、NHK関連の団体にありましては、出資をされている団体が株式会社日本放送出版協会を初め七つございます。財団法人NHK交響楽団を初め公益法人が六つございます。その他の法人が株式会社NHKプロモートサービスを初めとして四つ、合計で十七団体、もっとも共済会とそれから健康保険組合は除いてございます。  それでまず、簡単に御答弁いただければと思いますが、NHKが関連団体を設立をなさる理由といいますかその意義といいますか、その辺につきましてお答えをいただきたいと思います。
  157. 横井昭

    ○横井参考人 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、健保組合と共済会を除いて十七の関連団体が現在ございます。  私どもは何と申しましても、効率的な経営を行うことが協会の経営の最大の重要課題である、こういうふうに考えておるわけで、その効率的な経営をやっていくにつきましては、協会が行っている業務の中身を分析して、中身の中で、関連団体で行われるものは関連団体に有機的な機能分担をしていただく、そういう形で協会が行っている総体の業務を見直しながら、関連団体で行えるものは関連団体の方で行って、総体としてNHKが行わなければならぬ仕事を続けていきたい、こういうふうに考えております。そういう意味では関連団体は、協会が効率的な業務運営をしていくために必要であり、これを伸ばしていかなければならぬ、こう考えております。  それから二点目には、協会としては直接の放送だけではなくて、やはり視聴者にいろんな意味での協会が持っているノーハゥをサービスをしていく必要があろうと思います。そういう意味で、関連団体が協会にかわってそういうサービスを実施している。それから第三点目には、関連団体が例えて申しますと、テキストを出すことによって著作権料をNHKに入れる、NHKの番組を売ることによって二次使用料をNHKに入れる、NHKの持っている特許料を売ることによってNHKに特許料の収入が入る、こういう意味で副次収入を協会にもたらす。以上三点の意味において私どもは、協会の持っている今の関連団体を有意義に成長させて育てていきたい、こういうふうに考えております。
  158. 山田英介

    ○山田委員 この団体の設立の年月日等を見てまいりますと、これはさまざまでございます。特に近年設立をされました関連団体を見てまいりますと、例えば株式会社NHK放送情報サービス、従業員数が十五名、あるいは株式会社NHKテクニカルサービス、これが従業員数四名、株式会社NHKエンタープライズが五名、本年一月に設立をされました株式会社NHKコンピューターサービスが十三名。かつて設立をされました日本放送出版協会とかNHKの美術センターとか、それぞれ二百五十二名とか三百八十二名とか、大変従業員数が多いわけでございます。  この最近に設立された株式会社が非常に従業員数から見ても規模が小さいわけでございますが、大体関連団体というのは当初はこういうことでスタートをされてきておるのか、あるいは、昭和五十八年の八月に設立をされた、今申し上げましたような規模の小さな会社でございますが、何か特別な背景なり事情なりがおありになるのか、その辺につきましてはいかがでしょうか。
  159. 横井昭

    ○横井参考人 お答え申し上げます。  既に御案内と思いますけれども、五十八年に放送法の改正がございまして、その改正放送法の九条の中で、協会の業務に密接に関連があって、政令で定める事業については出資をすることができるというのが初めて、出資条項の緩和として五十八年にできたわけでございます。そのことと関連して、御指摘にありました放送情報サービスなり、それからNHKエンタープライズ、それからテクニカルサービス、それからコンピューターサービスという会社ができたわけです。  これは私、先ほど申し上げましたように、協会が関連団体と有機的な機能分担をしながら、協会の本来業務を行っていくというための受け皿を、五十八年から極端に言いますとつくり出したという状況下でございまして、御指摘のようにエンタープライズはことしの一月でございます。それからテクニカルサービスは去年の十月にできた。それからコンピューターサービスもことしの一月にできた。六十年度以降、本格的に事業をやりながら、協会の番組制作なり制作技術なりコンピューター処理なりをこれから受けていこう、それと関連して協会の効率的業務運営も一歩一歩進めていこう、こういう状況下でございますので、当初は非常に少ないのでございますけれども、六十年度以降、人間の数もふえ、それから実際の扱う業務量もふえ、相対的において協会の職員もまた減っていく、こういう関係になろうかと思います。
  160. 山田英介

    ○山田委員 ことしじゅうにといいますか本年、日本文字放送、これを東京と近畿にそれぞれ設立される御予定と伺っておりますが、この概要を簡単にお知らせをいただきたいと思います。
  161. 横井昭

    ○横井参考人 先ほど申し上げました出資条項の緩和で、政令の第一条に六項目がございまして、その第六号に、NHKの放送設備を利用して文字多重放送を行う事業に出資ができる、こういうふうになっています。通常、文字多重第三者法人というふうに言っておりますけれども、協会協会で現在、文字多重放送実施しておりますけれども、協会の設備を利用した第三者の放送事業者を設立することができ、協会がそれに出資をすることができるようになっております。  そういう意味で協会としては、郵政省の免許方針の指導のもとに、六十年度中に東京と大阪にNHKの設備を利用した文字放送の第三者法人を設立しようということで、東京には日本文字放送、大阪には近畿文字放送資本金を大体東京で二億、大阪で一億、NHKは免許の方針に従いまして一〇%の出資率でございます。発起人は、東京の場合はNHKと東京都と共同通信、銀行等を発起人に置き、大阪では大阪府、大阪市、それから関西電力、そういった公共的な方々の発起人を募って、今鋭意中身の検討をやっている、こういうところでございます。
  162. 山田英介

    ○山田委員 もう一つでございますが、現在ある放送研修所というのでしょうか、この研修所を将来財団化をする方向であると伺っておるわけでありますが、その意味と見通しにつきまして、あわせて御説明をいただきたいと思います。
  163. 横井昭

    ○横井参考人 六十年度協会の事業計画、収支予算の中で、研修財団の設立についての出捐についての御審議もいただいております。  私どもとしましては現在、放送事業者として放送人の育成、研修を中央研修所で行っております。あわせて、民放速の職員の研修も受託研修をしております。またあわせて、海外協力事業団からの要請で発展途上国の放送機関の放送人の研修も行っております。そういう意味で、協会が持っている放送事業者としてのノーハウがかなりたくさんのものがある。こういったものを財団化することによってもっと間口を広げて、あるいはCATV事業関係者にもできるようにしていきたい。さらに、協会放送事業者として蓄積しております知識、技能、ノーハウ、具体的に言いますと、美しい日本語というのはやはりNHKがかなり伝統的に培って持っているノーハウです。それから、映像によるコミュニケーションということもかなりNHKは持っている。そういったものを一般の社会人にも還元していきたい。そういう意味で、六十年度中に公益法人として郵政省の方に許可申請を出していきたいということで、準備をしておる最中でございます。
  164. 山田英介

    ○山田委員 伺いますと、大変有意義なといいますか、大事な事業だと思いますので、頑張っていただきたいと思います。  これは郵政大臣にも後ほど伺いたいのですが、今年度郵政省の事業の目玉の一つにテレトピア構想というのがございまして、既にその指定等も終わりまして、具体的に事業開始に向けて作業が進められておると思うわけでございます。  先ほど五十八年の放送法の改正、出資のお話が出ましたけれども、私は、NHKは有線を主体とした事業には出資できないということを承知しておるわけでございますが、このテレトピア構想を実際に各地域で進めていくための第三セクター方式で事業主体といいますか、それができてくるわけですけれども、そことの関連で、NHKも何らかの形でこのテレトピア構想に参加をするといいますかかかわりを持ち、貢献をしていくべきではないのか、協力をしていくべきではないのか、こういうふうに私は考えております。  したがいましてまず、NHK側のテレトピア構想への参加、協力という問題についての御所見を伺い、その後、大臣から御所見を伺いたいと思います。
  165. 林乙也

    ○林参考人 ただいまも御指摘がございましたように、郵政省当局におかれまして、各地にいわゆるテレトピア構想という、今後の情報化社会の進展に対応するいわば有線による新たな情報システムといいますか、そういったものについて鋭意御検討、推進しておられることを承っております。  NHKといたしましても、これらのテレトピア構想のもとにおきまして、ただ単に放送というものを通じて地域社会に貢献していくのみならず、有線のこういったいわばより地域に密着したメディアに、NHKが現在まで培ってまいりましたソフトの面あるいはハードの面についてのノーハウを積極的に提供し協力をいたしてまいることが、NHKの使命に照らしても、また地域社会に奉仕するという趣旨に照らしても、望ましいのではなかろうかというように考えておるところでございます。  この場合に、NHKがただ単なるいわゆる情報提供者あるいはいわばアドバイザーというふうな形でとどまるのか、あるいは出資等も考えて積極的に経営の中に協力してまいるのが必要なのかということにつきましては、これは出資ということになりますならば、あくまでも郵政省の認可にかかわる事項でもございますし、私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような積極的に協力を申し上げていくという基本的な考え方のもとに、鋭意郵政当局と今後いろいろ意見を交換してまいりたいというように考えておるところでございます。
  166. 徳田修造

    ○徳田政府委員 地方におきますテレトピア構想の推進でございますが、それぞれの地域におきます電気通信の高度化を図るという趣旨のものでございまして、電気通信の分野はこれから次第に放送と融合していく、あるいは競合していくという状態になっていくのではないか、そのように考える次第でございます。したがいましてNHKとしても、これに応分の協力を果たしていくということは適当ではなかろうかと私どもは考えておる次第でございます。そのための道を開くために検討を進めてまいりたいと考えております。
  167. 山田英介

    ○山田委員 NHKが出資をされている団体、公益法人は申し上げましたとおりでございますが、その他の法人というのが四つあるわけでございます。これにつきまして、簡潔にお願いしたいのですが、おのおのの事業目的につきまして御報告をいただきたいと思います。
  168. 横井昭

    ○横井参考人 先ほどの御指摘にございましたように、十一の株式会社がございまして、七つの株式会社には出資をいたしております。これは先ほど申し上げました放送法の改正と政令に基づく条項に基づきまして、出資が可能なわけでございますが、今御指摘の四社については出資が可能な状況では必ずしもない。と申しますのは、放送に関係はしておるけれども、直接の関係ではなくて間接的な関係をしておる業務が主たる業務でございます。  簡単に申し上げますと、NHKブロモートサービスと申しますのは、NHKがこれまで培ったいろいろなノーハウというものがあるわけで、催し物の企画、構成、演出を行うとか、放送番組の制作を行う、これがNHKプロモートサービスの事業でございます。それから文化センターは、教養、趣味、実用、健康その他各種の講座を開設いたしまして、視聴者にNHKのこれまで培ってきたノーハウを、これは有料でございますけれども、講座開設によって還元していこう、こういうことでございます。それからNHKビルメンテナンスは、NHKの建物の清掃管理、それから環境衛生管理、保安警備、こういったものをやる会社でございます。それからプリントセンターは、NHKの放送台本だとか番組表の作成だとか印刷でございますね、それから音楽の楽譜の、写譜と申しまして楽譜を写していく、そういう仕事をやっているのがこの四つの会社の事業目的でございます。
  169. 山田英介

    ○山田委員 関連をいたしまして、NHKにおけるいわゆる定年制といいますか、職員の方々の定年につきましては、五十七歳から六十歳というふうに伺っているわけでございますが、それぞれの関連団体には定年あるいは定年制というものはあるのでございましょうか。
  170. 横井昭

    ○横井参考人 十七の関連団体があるわけでございますけれども。歴史のまだ若い会社も多うございまして、五十五歳、五十七歳の定年の会社が大多数でございます。その中でNHK本体は昭和六十年度、今年度から六十五年度に向かって六十歳の定年延長を方向として実施に移していっている。今言った十七の中でも二、三社は、六十歳定年を目指して進んでおる段階でございます。そういう状況でございます。
  171. 山田英介

    ○山田委員 立ち入ったような質問になってあるいは失礼かと思いますが、せっかくの機会でございますので……。  今申しました十七団体のそれぞれの役員、特に常勤の役員数を調べてみますと、例えばNHKが出資をなさっているとつの株式会社、出資団体では、常勤役員数四十八名の中で四十一名までがNHKの御出身者であります。公益法人六つにつきましては、常勤役員数三十二名のところ二十九名までがNHKの御出身者で、その他の法人のところは、二十二名の役員数のところ十七名がNHKの御出身者、全体では、私の計算に間違いかなければ、十七団体百二名の常勤役員数のところ八十七名までがNHKの御出身者で占められておるという実態があると思います。事業の性格からいきまして、常勤役員の中でNHKの御出身の方が多いというような事情でありましょうか。
  172. 横井昭

    ○横井参考人 御指摘のとおり十七団体の常勤役員の内訳は、NHK出身者が八十七、その団体の出身者が十五という数字になっております。  私、先ほど申し上げましたけれども、協会の業務を見直しながら、協会の本来業務を協会と関連団体との間に有機的な機能分担をして、相ともに協会の目標を達成していこう、こういう趣旨でございます。問題は、我々がそういう機能分担をしていくときに、私どもとしては、NHKが公共放送としてみずからの主体性が常になければならない、それが一つ。それからもう一つは、相手の団体にかなり高度な技術、専門能力が備わっていなければ協業ができなくなる。それから第三点目には、そのことによる経済効率性がなければならない。問題は、NHKの仕事を協業する場合に何といっても、意思の疎通が第一になければならない。第二に専門的技能習熟がなければならぬ。そういう意味で、どうしても結果としてはこういう形にならざるを得ないだろう。  もう一つは、関連団体がまだ歴史が浅うございますから、その関連団体で育って適当な年齢に達し、能力のある方は理事者として、経営者として参画してもらうということがなければ、その関連団体自体が活性化しない。それらのことを十分勘案しながら、今後の経営に私どもとしても支援をし、アドバイスもしていきたい、こういうふうに思っております。
  173. 山田英介

    ○山田委員 NHKの経営の効率化計画というふうにおっしゃっているそうでございますが、六十五年までに千五百人の人員を減らしていきたい、経営体質をスリムにさせたいという計画があるわけでございますが、まずその進行状況といいますか、進捗状況という言い方は失礼かもしれませんが、その点につきましてお伺いいたします。  あわせまして、今十七の団体名が出てきているわけですが、今常勤役員のことで御質問いたしましたが、役員ではない従業員といいますか、職員として社員として、この千五百名、六十五年までの効率化計画との関係で、場合によっては関連企業の数が、十七が今後また二十にも三十にもふえていくのだろうと思いますが、そこにNHKの御出身の方がどんどん入っていかれるのか、その辺の関係はどういうことになっておるのでしょうか。
  174. 横井昭

    ○横井参考人 最初に効率化の進捗状況でございますけれども、私どもは昭和五十五年度から要員削減の効率化計画を立てまして、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年で五百十名の職員の純減を行いました。それから、五十九年度を初年度として新たにそこから千五百人削減いたしまして、総要員を一万五千人に抑えようという新しい効率化計画を立てました。  そのポイントは、管理、間接部門を見直すこと、それから先ほど来申し上げておりますように、協会のあらゆる分野の業務を徹底的に見直すこと、それから地方局体制の見直しをやること、それから外部に委託できるものは委託していく、関連団体と協業できるものは協業していく、こういう形の見直しを徹底的に今やっている最中でございまして、五十九年度を初年度とする千五百人の純減につきまして、五十九年度は二百名の純減を確実に遂行いたしました。六十年度以降もその線に沿って鋭意努力を重ねていきたい、こういうふうに考えております。  それから御指摘の、その効率化計画の中で関連団体の数がどうなるか、そこに対する出向がどうなるかということでございますが、現在十七の関連団体に約百三十人の出向者がおります。そういう意味で、関連団体がどこまでふえるのかということは、今ここで一概に申し上げかねますけれども、今より数はふえていくことは間違いないであろうと思います。いずれにしましても、協会としてはスリムな形で、協会が命じられている公共放送使命を効率的にやっていくということに全力を注いでまいりたい、こういうふうに思っております。
  175. 山田英介

    ○山田委員 お話が少し飛びますけれども、「ハイビジョン」に対しましては、この実用化が大変大きな関心を呼んでいるわけでございます。当委員会でも参議院の委員会でも取り上げられまして議論がなされたところでございますが、私ここで伺いたいのは、「ハイビジョン」が実用化されたときには当然、NHKの極めて主要な業務といいますか、お仕事になるのだろうと思いますが、それと関連企業、関連団体とのかかわり、これにつきまして御説明をいただきたいと思います。
  176. 横井昭

    ○横井参考人 先ほど申し上げました関連団体の中で、番組制作にかかわる関連団体としてはNHKエンタープライズという会社がことしの一月にできたわけでございます。  御指摘のように高品位「ハイビジョン」というものがこれからの衛星、ニューメディアにおける目玉であり花形であろう。それは単に放送ではなくて、工業用にも産業用にも医学用にも、あらゆる角度で進んでいくであろう。そういう意味で私どもとしては、ハード、ソフトの両面で鋭意その技術の開発に努力している。  問題は、これをNHKが放送に出す場合に、NHKの中でどこまでやってどの部分を関連団体に出していくか。NHKの直接の放送でない一般的なものは、NHKが直接つくるわけにいきませんでしょうから、それは初めから一般に行くかもわからない。そこら辺は総合的に、今の「ハイビジョン」の技術、ソフトの開発の研究途上の中で十分に検討して対処してまいりたい、こう考えております。
  177. 山田英介

    ○山田委員 午前中、それから私の前の松前委員からもるる御質問があっただろうと思うわけでございますが、次期放送衛星BS3の打ち上げの延期につきまして、私の方からも何点か確認をさせていただきたいと思います。  まず、BS2bの打ち上げ延期に続きまして、BS3の打ち上げを一年半ほど延期する方針を宇宙開発事業団では固められた、こういう報道に接しておるわけでございますが、それが事実とすれば、その主要な原因、理由というものについて御説明をいただきたいと思います。
  178. 船川謙司

    ○船川参考人 お答えいたします。  BS3につきましては、現在の宇宙開発計画に沿いまして開発するよう事業団といたしましては、スケジュール確保についていろいろ検討してまいったわけでございますが、今回のBS2aの故障の経験を踏まえまして、やはり技術的に一層信頼性を確保した開発を行わなければならぬというふうなことを、身にしみて感じたわけでございまして、このために、BS2bに対して行いましたような十分な熱真空試験を、必要な各段階において十分行うというようなことが必要であろうと現在、考えておるわけでございます。  また、そういう技術的な問題もございますけれども、このBS2aの故障がございましたので、BS3計画の全体の進展が若干おくれておるというようなこともございまして、BS3の打ち上げの時期は延期せざるを得ないというふうに今、事業団内部として検討しておるところでございますが、こういう事業団の考えにつきまして今、関係機関の方々に御説明して、検討していただいているところでございます。
  179. 山田英介

    ○山田委員 ただいまの御答弁は、一年半延期する方針を固めたということでございますが、技術的に、それからもう一つは、BS2aの故障あるいはその原因の究明の進行速度というような点を特に挙げられたわけでございます。  報道によりますと、この次期放送衛星BS3の受注に名のりを上げている東芝と日本電気という二つの企業が、契約の条件をめぐりまして宇宙開発事業団の提案を拒否されたというような報道に接しておりますが、この点はいかがでございましょうか。
  180. 岩崎隆

    ○岩崎参考人 新聞に載っておりましたのは、いわゆる契約額調整条項のことであったかと思うわけでございます。それらしいものにつきまして私ども、ただいまお話がございましたプロポーザルを事業団に出しております二社との間で交渉をしておることは、事実でございます。  ついでながら申しますと、この契約額調整条項というのは、アメリカやヨーロッパ等におきまして、打ち上げ後の衛星の状況と申しますか、あるいは成績に応じまして、外国の場合には大体において利益の範囲でございますけれども、その利益の額を調整して支払うといういわゆるインセンティブ契約でございますけれども、私どももBS3につきましては、特にユーザーの方と御相談を申し上げまして、やはり打ち上げ後の衛星の軌道上の成績に応じて契約の額をある幅において調整をする、減額もございますし、非常に成績がよい場合には若干の増額もある、そういうことをぜひ導入したいということでメーカーと現在、交渉をしているという状況でございます。  その幅につきまして、まだ私どもの考えとメーカーの考えとに現在のところ相当程度の開きがございますので、新聞等に何かそういう感じのことが書かれたわけでございますけれども、前向きにメーカーとの間で交渉をしているというのが現状でございます。
  181. 山田英介

    ○山田委員 打ち上げを一年半延期するということにつきましては、既に宇宙開発委員会の方に正式に御報告といいますか、お伝えはされておるのでございましょうか。あわせまして、仮に打ち上げの延期をいたしたいと事業団の方から連絡なり伝達があった場合に、宇宙開発委員会におかれてはどのような対応を考えておられるのでしょうか。
  182. 船川謙司

    ○船川参考人 先ほど申し上げましたように、現在のところ事業団としましては、事業団のこういう考え方を関係各方面、監督官庁の科学技術庁初め郵政省に御説明いたしまして、御検討を願いたいと申し入れたところでございまして、これから御審議していただけるのじゃないかと思いますが、事業団といたしましては、実用サイドといいますか・ユーザーの方の要請もあると思いますので、宇宙開発委員会の方で十分御議論していただきまして、その決定に従いたいというふうに考えております。
  183. 鍵本潔

    ○鍵本説明員 お答えいたします。  BS3につきましては現在、ただいま御答弁のありましたように、宇宙開発事業団においてスケジュールの見直し等、関係機関と調整中と聞いております。結論が得られ次第、宇宙委員会に対して報告がなされることになろうかと思いますけれども、委員会におきましては、慎重に検討する運びになろうかと思います。
  184. 山田英介

    ○山田委員 もし延期ということになりますと、これは今後の宇宙開発計画に与える影響というのは極めて大きい、こう見られるわけでございますが、そうなりますと、科学技術庁あるいは宇宙開発委員会では、六十一年のHⅠロケットの打ち上げなど、これから六十五年までロケット、衛星の打ち上げが非常にびっしりとスケジュールが詰まっておる、このように承知をいたしておりますが、BS2bの打ち上げ延期、それからBS3が仮に一年、一年半という形で打ち上げが延期されるということになりますと、開発計画に与える影響は、この見直しということにつながってくるわけでしょうか。
  185. 鍵本潔

    ○鍵本説明員 お答えいたします。  我が国の宇宙開発計画につきましては、宇宙開発委員会において関係機関と調整を図りながら、慎重に検討し、策定されるものでございます。例年でございますと、宇宙開発計画は七、八月ごろ、関係機関の要望等も伺いまして策定、見直しをすることになっております。
  186. 山田英介

    ○山田委員 これは一年半延期することが決まったわけでも何でもないわけでございますが、仮に打ち上げが延期をされるということになりますと、ユーザーの一つであるNHKにおかれては、NHKの独自の事業展開というものを展望いたしまして、どういう影響を受けると予想なさっておられますか。
  187. 林乙也

    ○林参考人 ただいまもお答えがございましたように、NHKといたしましても現在、宇宙開発事業団からその御意向を承った段階でございます。したがいまして今後、関係機関と周到かつ入念な打ち合わせの中で総合的に決定されるものと考え、私どももそれに対して十分お話をさせていただきたいと考えておるわけでございます。  仮にBS3の打ち上げが延期になったといたしますと、基本的には放送衛星は、本機と予備機とが対になって、お互いにバックアップしながら信頼性を確保していくという計画のもとに成り立っておるわけでございまして、BS2aが既に寿命が尽き、まだBS3aが打ち上がらない間は、BS2b一機だけでの運用ということになるわけでございます。そういうことになりますと、NHKの考えております今後の放送計画にいろいろな影響があることは当然でございます。  しかし、と同時に、もともと放送衛星計画と申しますのは、衛星の放送によって全国を一挙にかつ効率的にカバーできるという特質のもとに、難視聴対策を主たる目的として現在に至っておりますし、また、今後の展開といたしましては、衛星の「ハイビジョン」その他の新しい放送方式への展開の可能性というものを十分期待しながらまいっておる、そういった私どもの放送衛星計画の基本的な考え方については今後ともそれを引き継ぎながら、今回出てまいりましたような事態に対しまして、その時点時点で適切に対応していく必要があるのではなかろうかと考えておる次第であります。
  188. 山田英介

    ○山田委員 これは報道の確認ということでございますが、六月十四日の日本経済新聞に掲載をされた記事でございます。「衛星メーカーにも責任分担」、「BS-3開発契約で新条項」、先ほど御答弁ございました宇宙開発事業団が提案をなされた契約額調整条項という点でございます。  中身についてかなり詳しく報道がなされておりますが、「打ち上げ後衛星が正常に機能しなければ契約額の一部を徴収し、完全に働けば褒賞金を払う」という条項の中身であります。「衛星の中継器の働きぶりに応じて段階的にペナルティーの額やボーナスの額を決める」、「ペナルティー類は契約額の二七%、ボーナス類は同五・六%をそれぞれ上限とする」、これはさらに具体的に「三本の中継器が設計寿命の七年間無事働いた時はボーナスがそっくりもらえるが、打ち上げ後九十日以内に三本とも故障した場合は二七%に相当する約百八億円を返さなければならない仕組み」、こういうことが報道されておるわけでございます。  契約にかかわる部分でどうかと思いますけれども、宇宙開発事業団が東芝、日本電気二社に提示された新しい条項の中身について、おおよそこういうことでございますか。
  189. 岩崎隆

    ○岩崎参考人 お答え申し上げます。  内容的に申しますと、当たっているところあり、当たっていないところあり、こういうことでございます。例えば金額でございますとか、先ほどお答えを申し上げましたように、具体的にはまだ事業団にプロポーザルを提出いたしました二社と交渉をしている段階でございますので、現在はそのような数字ではないことで交渉をいたしております。  具体的な内容は交渉中でございますので御勘弁いただきたいと思いますが、例えば基本的な考え方は、中継器だけではございませんけれども、端的に申しますと、BS3が予定をいたしております三チャンネルの放送がきちんとできるかどうか、しかもそれが打ち上げ後一年、二年、三年、あるいは寿命が七年ということになっておりますが、そういう段階においてもどうか、そういうことに応じてメーカーからペナルティーを出してもらう、あるいは、ある意味では予想以上に非常に良好な状態が出れば、ボーナスを差し上げるというような考え方でやっていることは事実でございます。  ただいま先生からお話のございました新聞に載っている金額等は、私どもの考えとはかなり違っておりまして、実際に打ち上げる衛星、フライトモデルと称しておりますけれども、その衛星について、ただいま申し上げたようなペナルティーあるいはボーナス、事前に定めておきます一定の率というものを乗じて、そういう形で契約額の調整をしていこうということでございますから、そこに挙げられた金額は非常に過大な形で出ているように私どもは思います。ともかくも交渉中でございますので、まだ具体的な数字まで申し上げることはできないのが残念でございますけれども、あらましそういうことでございます。
  190. 山田英介

    ○山田委員 同新聞の記事によれば東芝、日本電気は、そういう契約額調整条項を提示されまして、それに対する反応として、拒否した理由として、「①衛星の開発でリスクは避けられない②衛星故障の損害補てんは保険ですべきだ③こんな厳しいペナルティーを課す契約は世界に例をみない――などを理由に受け入れを拒否した。」こういうことになっております。  衛星の開発で確かにリスクは避けられないだろうと思いますが、そのリスクの負担を国民の税金、そしてまたNHKの視聴料のみで負担をさせるのかということになれば、これまた合点のいかないところになってまいります。     〔吹田委員長代理退席、関谷委員長代理着席〕 したがって、アメリカにもこういう契約額調整条項というやり方があるという御答弁でございますので、そうしますと結局は、このペナルティー、ボーナスと二つありますが、ペナルティーの率を引き下げていく、条項の中身をメーカー側にとって緩和していくという形でこの問題決着を図らざるを得ないのではないかと私は考えますが、その点はいかがでしょうか。
  191. 岩崎隆

    ○岩崎参考人 先ほどお答え申し上げましたように、こういう調整条項を導入することにつきましては、二社のメーカーの方も前向きに考えていただいております。その幅をどの程度にするかということで現在、交渉をしているという状況でございます。  なお、一言つけ加えさせていただきますと、現在メーカーとの間で交渉中でございますが、もう一つ、予算制度の問題というのがあるわけでございますので、その点につきましてはまた、関係省庁と御相談を開始しておるという段階でございます。
  192. 山田英介

    ○山田委員 大いにひとつ頑張ってください。  時間でありますので、これで終わります。ありがとうございました。
  193. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 永江一仁君。
  194. 永江一仁

    永江委員 質問させていただきます。  NHKの受信料不払いのことでございますが、よく世間では、私のところはまじめに払っているけれども、あの人はNHKに料金を払ってないらしいということで、非常に不公平じゃないかということをちょいちょい聞くのでございます。  そこで現在、いわゆる未契約者あるいは不払い者はどういうような状況になっておるのか、お答えいただきたいと思います。
  195. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えいたします。  不払い者がかなりいるんじゃないかというお話でございますけれども、私ども受信料の徴収あるいは契約を進めてまいります上で、契約を結んでいただいていてお支払いいただけないという方がいらっしゃるわけですが、この方々を一応滞納者と呼んでおるわけでございますけれども、その滞納者の数がこのところほぼ九十九万台というところで、昭和五十四年から五十九年度まで大体九十九万程度でございます。  もう一つ、支払い拒否という形で、もともと契約をしていただけない方、支払い拒否というよりむしろ契約を拒否されていらっしゃる方が、十三万程度ということでございます。
  196. 永江一仁

    永江委員 滞納者九十九万台ということですけれども、それは生活が苦しくて払えない、こういうケースなんですか、それとも幾ら行っても留守が多いとか、いろいろなケースがあるらしいのですけれども、大体それはどういうことなんでしょうか。
  197. 松本幸夫

    ○松本参考人 理由は、滞納なさっていらっしゃる方々を私どもの職員が訪問いたしまして、説得させていただくわけでございますけれども、そういった場合にその都度、おっしゃる言い方も多少違ってまいりますので、何がどういう理由でどうということで申しますと、なかなか分類もしにくいのでございますが、一応制度、番組について非常に強い批判を持っておられて、そして滞納をなさるという方の数が大体三十四、五万と思います。それからその他、何度お訪ねいたしましてもなかなかお目にかかれないということのために、それが滞納になってしまうというケースが大変多うございまして、これを私ども長期未面接、こう申し上げておるのでありますけれども、そういった方々が五十数万いらっしゃるというのが、大体の内訳でございます。
  198. 永江一仁

    永江委員 今お答えになった中で、三十四、五万が放送内容その他が気に入らぬということだとおっしゃいましたけれども、そうすると先ほど前段でお答えになった、契約拒否が十三万あるとおっしゃいましたが、これと今のとは同じような意味に聞こえますけれども、それはどうして区別しておるのですか。
  199. 松本幸夫

    ○松本参考人 契約をしていただけない十三万余りの方々というのは初めから、制度的な意味での御批判ももちろんございますし、番組についての御批判も当然理由としておありになろうかと思いますけれども、契約そのものを結んでいただけないわけでございますので、これは債権として確定し得ない数であるということで、現象として申しますと、今申しました制度、番組について御批判がおありになって滞納という形になっておられる方の三十四、五万という方々と、性格的には同じだと私は思います。しかし、私どもの方の管理の仕方といいますか区分の仕方としては、債権として確定している契約をしていただいていて滞っておられる方と、それから契約の拒否ということで区別しているわけでございます。
  200. 永江一仁

    永江委員 ということは、確認させていただきますと、三十四、五万の方は一度くらいは払ったことがある、しかしその後払わないというのと、未契約者は全く払ったことがない、こういう区別でいいんですね、ちょっとくどいようですが。
  201. 松本幸夫

    ○松本参考人 これは大変、そう詰めて御質問いただきますと非常に答えにくいのですけれども、いろいろな形がございます。滞納の方で、契約はしたけれども一度も払わなかった、あるいは数回お払いになられてから滞納にかわってしまわれた、あるいは途中でお支払いいただいていたのにまた滞納になってしまったという場合もございます。ただ、契約拒否の方はもちろん、一度もお支払いいただいていないということでございます。
  202. 永江一仁

    永江委員 そこで、両方合わせますと百万を超える人々が料金を払ってないということが、これは現実の姿でございますね。そういうことから、全国でいえばその数が多い、少ない、これはいろいろ見方があると思いますけれども、やはりいろいろ不公平感というものが国民の間にあることは事実でございます。  そこで、そういった契約拒否、あるいは先ほどおっしゃった滞納者のうちの三十四、五万の方に、面接できなければこれはやむを得ないんですが、面接できた方に対しては、どういう人がどういうふうな説得を具体的にはしておるのでございますか。
  203. 松本幸夫

    ○松本参考人 現在は収納契約に当たる体制を二重布陣といいますか、契約取り次きあるいは収納を主としてやっていただく方々、これを受託者と申しておりますけれども、委託契約を結びまして、そういった方々に契約の取り次きあるいは収納という仕事をやっていただいております。そういった方々から、滞納という状態が生じますとそれを職員の方に、こういう形で、こういう理由で滞納が発生してしまったという報告が参ります。それに対しましては職員が中心になって、この滞納の説得に当たるという体制をとっております。
  204. 永江一仁

    永江委員 そこで、いささか強硬な意見になるんですが、そういった滞納者に対しまして、訴訟というような法的な手段に訴えるというようなことを考えたことはあるか、あるいは、それにしても法的な裏づけがあるかどうかということがこれまた問題になると思いますけれども、先般、放送政策懇談会というようなものも設置されたようでございますが、こういったことに対する法改正というようなこともそれで目的にしておるかどうか、お尋ねいたします。
  205. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えいたします。  かつて昭和五十五年でございましたか、放送法の改正の改正案が提案されまして、審議未了、廃案となったという経緯もございます。そのときに、支払い義務を明確化しようという表現になっていたという経緯がございまして、私どももそのときに、その趣旨には御賛成申し上げたわけでございますけれども、その当時の新聞論調その他世論の動向等も考えますと、やはりNHKが強権的な形で受信料を取るというのが果たしていいかどうかという大変強い意見がございました。それは必ずしも支払い義務にしたから強権的になるということではないのでございますけれども、印象としてはどうしてもそういう形にならざるを得ないんじゃなかろうかというような御意見であったかと思います。  そういった当時の世論の反応というようなものも、これから先、法律の改正の問題について意見を求められます場合に、十分に考えていかなければならないことだというふうに思いますし、同時に私どもは、今の受信料制度のベースになるものが、やはりNHKの存在というものに対して御理解を賜って、そして御支持いただくというのが建前であろうというふうに思います。  今の法律の建前から申しましても、契約義務という形になっておりますけれども、郵政大臣の認可なさっておられます受信契約によっては、これは受信料の免除は勝手にできないという形になっておりますので、ある意味では、これは支払いも義務づけられているというふうに考えられますので、私どもとしては今の時点では、今の法体系の中で十分御理解を賜りながら説得を続けてまいりたいというふうに考えております。  訴訟というお話もございましたけれども、訴訟という形も今の時点で私どもとしては、そういったような強い措置をとるのがいいのか、さらに我我の努力を続けるのがいいのかという点で申しますと、今滞納の数も少ない数ではございませんけれども、先ほど申しました九十九万というところで一応歯どめがかかっているというふうにも考えますので、私どもとしては、さらに説得という形で御理解を深めていただくという努力を続けてまいりたいと思っております。
  206. 徳田修造

    ○徳田政府委員 受信料の不払いが増加するということは、NHKの財政基盤にかかわる問題でございます。また、受信料負担の公平を図るという観点からも極めて重大な問題でございますので、受信料の確実な収納につきましては従来から、NHKの予算に付する郵政大臣意見の中でも指摘いたしてまいったところでございます。  NHKの受信料の収納につきましては、受信者の理解と信頼を得る、そのためのNHKの努力というものは何よりも大切であるわけでございますので、今後ともNHKの努力を期待いたしたいわけでございますけれども、これまでのところは一応、滞納、契約拒否数、百万ぐらいの数ではあるわけですが、余り大きな変動がございませんので、NHKの経営努力に期待してきたところなわけでございますけれども、今後ともこのままでよろしいのかという問題につきましては、支払い義務制の問題も含めまして、ニューメディア時代における放送に関する懇談会というのを今年度から設置いたしまして、いろいろNHKのそういう経営問題等につきましても御検討いただくことになっておりますので、その中で御意見をいろいろ承りながら検討してまいりたい、そのように考えております。
  207. 永江一仁

    永江委員 今の局長のお答えですが、この放送政策懇談会の設置、法改正ということもやはりその中に含まれておると理解できるわけですか。
  208. 徳田修造

    ○徳田政府委員 懇談会で御検討いただきましたその内容によりまして、法改正を必要とするものであれば、郵政省として検討いたしまして、改正に必要な手続をとるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  209. 永江一仁

    永江委員 次に、こういう未収といいますか滞納を解決することが、今局長もおっしゃったように、NHKの収支をよくしていくという非常に大きな一つのポイントだと思いますが、もう一点は、昨年ですか、受信料の改定を行ったわけでございますが、その後の収支状況はどのようになっておりますでしょうか。
  210. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  五十九年度受信料の改定をしていただいたわけでございます。五十九年度の前の年、五十八年度につきましては、午前中にも申し上げましたように、五十五年からの三年計画の繰り越しの財源をもって受信料を据え置くことができましたけれども、既にかなりの赤字構造でございました。五十九年からの三年間の経営計画では、三年間で収支相償うようにということになっておりまして、各年度別で申しますと、値上げをしました初年度は百億からの繰越金を持ち、六十年度、真ん中の年では七億円の繰り越しを持って、六十一年度の最後の年の赤字を埋める、こういう構造になっておるわけでございます。  初年度の五十九年度実施してまいりまして、先日決算を終えたわけでございますけれども、この財政的な確保すべき財源百六億につきましては、確実にそれを手元に確保いたしまして、すべての業務は一応滞りなく実施したということでございますので、値上げの財政的な効果というのは確実に手元にあるということでございます。
  211. 永江一仁

    永江委員 五十九年は百億、それが大体百六億ですか、ことしになるとこれが七億ぐらいに減ってしまう。そして来年は赤字。これは最初から三年計画ということでございますが、大体三年に一度ずつ値上げということでございますが、もうこれは一年でも余分に、四年はもたせるとか、そういう努力はぜひしてもらわなければ困ると思うのですね。もう三年だから、三年目には赤字になって当たり前ということでは、これはなかなか国民全体納得しがたいわけでございますけれども、今のお話では、去年に関してはそういうことですけれども、どうですか、やはり見通しどおり三年目に赤字で、六十二年にはまた値上げをせい、こういうことになるのでしょうか。
  212. 渡辺伸一

    渡辺参考人 五十九年からの三カ年計画を立てます場合には、かなり支出につきましては抑制をしてございます。必要やむを得ない経費に限って経費の増額を認めておりますけれども、いわゆる経常的業務につきましては、物価は上がってもそれはもう経費の上では増加を見ないという、厳しい線で三カ年計画ができ上がっているわけでございます。したがいまして、五十五年からの値上げは、値上げ傘としましては二四%ぐらいでありましたが、五十九年度は一五%台にとどめたという経緯がございます。  五十五年からの三年計画も、午前中に御説明しましたように、物価の状況でありますとか金利の状況でありますとか、いろいろな我々に幸いした状況があって、もちろん我々の努力もありましたが、結果的には四年もたせたわけでございます。もとより、三年間でいいとは思っておりません。なるべく長い期間受信料を安定させようと思っております。  先ほど、五十九年度の結果につきましては、予定された百六億を確保したと申しましたが、実はそれ以上に、いろいろな事情がありましたが、七十億ほど上乗せして持っているわけでございます。これからもできるだけ努力をいたしまして、三年に限らず、延ばせるものであれば延ばすように努力をいたしたいというふうに思っております。
  213. 永江一仁

    永江委員 そこで、NHKとしても経営の合理化、効率化には努力をしておるということは認めるわけでございますが、先ほど山田委員の質問でも、この効率化ということで質問あるいは御答弁がございましたが、私のこの調査室の資料を見ますと、大体五十五年から五十八年まで純減ですか、それなりに職員数も減ってきておる。しかしながら、五十五年から五十八年までは、一万六千七百四十三名いたのが一万六千二百八十三名に減っておるのですが、五十九年度は、要員措置数というものとの差の中で一万六千三百十名とふえるようになっておりますけれども、これはどういうことでございましょうか。
  214. 横井昭

    ○横井参考人 先ほどもお答えしましたように、合理化につきましては毎年度、予定どおり着実に遂行しております。五十九年度の決算におきましては、二百の純減のところ、具体的には二百二名の純減を達成いたしております。  それから、数字として一万六千三百十並びに六十年度の一万六千百十という数字は、予算的な人員数になりますので、勢い、前年度の半分と当年度の半分の人数という形で、実質的にはその数は必ず減少しております。そういう状況でございます。だから減ってきている、こういうことでございます。
  215. 永江一仁

    永江委員 この逓信委員会の調査室の「要員効率化の推移」という表によれば、五十八年の一万六千二百八十三名に対して、「(予算)」とはなっておりますが、五十九年は一万六千三百十名となっておりますが、そうすると、NHKのきょう時点の職員数は何人ですか。
  216. 横井昭

    ○横井参考人 年度末の要員数は、大変申しわけございませんが、私ちょっと持ってまいりませんでしたけれども、予算人員とさほど大きな狂いはないはずです。だから、年度末、年度末でいきますと、例えば五十九年度二百減ということは、五十八年度の三月三十一日と五十九年度の三月三十一日はやはり二百になっているはずです。だから、年度末人員と予算人員を比べると数字にアンバランスが出てきます。予算人員は予算人員、年度末人員は年度末人員で御比較いただけるならば、確実に二百減っている、これは間違いございません。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕
  217. 永江一仁

    永江委員 まあそういうことで、ただ人減らしだけがいいというつもりはございませんけれども、やはり人員の効率化、それで私といたしましては、NHKの職員の方とお話ししておっても、どうも給料が安い、もう民営化してもらいたいなんておっしゃる方もいるぐらいでございまして、やはりこの人数を効率的に減らしてそのかわり給料は上げていくということでないと、給料は安くして人を大勢集める、これがいわゆる官営といいますか、そういったお役所仕事の最大の問題として今日まで指摘されておるわけですね。  そういう意味で、NHKの方々がそれなりに効率化に努力しておることは認めるわけでございますが、今若干、数字的にはそういうことで二百名は減るということでございますから了解いたしますが、今後の問題として、昨年この料金改定のときにもお約束いただきましたように、あと千五百名縮減という、このことは必ずおやりになるという決意であるかどうか、もう一度確認させていただきたいと思います。
  218. 横井昭

    ○横井参考人 先ほども申し上げましたけれども、五十九年度を新たな効率化の初年度として、千五百純減の効率化計画を立てたわけでございます。  昨年度は御案内のとおり、思い切って組織改正もいたしました。部局数にして、二十五局のうち五局を削減いたしましたし、部の数にしても、百六の部のうち十五部を削減する、それから専門管理職制度にしましても、制度自体を見直したかなり厳しい改善を行って、組織改正による人の削減、それから管理、間接部門の人の削減、業務の再編、集約、それから地方放送局体制の見直し、関連団体、外部への委託、こういう項目で着実に各年度ごとに合理化の具体化計画を立てて遂行しておりますし、私どもとしては、何が何でもこれをやり遂げながら、職員の処遇も片一方で適正な規模を保ちながら、活性化されたエネルギーをもって、公共放送使命であるより豊かでより公正な番組を国民の皆様に提供していきたい、こういう決意でおります。
  219. 永江一仁

    永江委員 今の理事の御答弁で十分ではありますが、ひとつ会長がいらっしゃいますので、昨年の料金改定でも私はこの点を強く指摘した者の一人といたしまして、会長の御意見を伺っておきたいと思います。
  220. 川原正人

    川原参考人 今NHKに課せられた仕事といいますか、世の中にこたえる道としては、もちろん番組の面で、なくてはならない存在というか、国民の精神生活を豊かにする、あるいは必要欠くべからざる情報を的確に出すということがまず第一でございますけれども、同時に、体質を改善してより効率的な仕事をするということが最大の問題だと思っております。  もちろん、人をただむやみやたらと減らせばいいとは思っておりませんけれども、少なくとも私は、六十五年までに千五百人の人間を実質減らすということは、これは社会に対しての公約でございますし、それは必ず実現を図ってまいりたい。しかし同時に片一方で、番組の質を落とすようなことは絶対にしないで、国民の期待にはもちろんこたえてまいりたいというふうに考えております。
  221. 永江一仁

    永江委員 次に、これはコスト合理化との関係でございますが、いわゆる集金のコストがどれぐらいかかっておるかということでございます。東京地方という地域に区切ってでございますけれども、いわゆる料金の集金人は何人ぐらいいらっしゃるのか、あるいは、振替制度ということがどれぐらい浸透されておるのか、振替制度で払っていただいておる方は何%ぐらいあるのか、お答えいただきたいと思います。
  222. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えいたします。  東京都の集金員は何人ぐらいいるかということでございますが、東京都内には九つの営業所がございまして、四百人の委託集全員の方がおいでになります。(永江委員「全部でですか」と呼ぶ)全部で四百名でございます。  それから、振替がどの程度の数かということでございますが、全国平均では六一・四%というのが六十年三月末現在の数字でございます。東京都は六一%という数字になっております。
  223. 永江一仁

    永江委員 ちなみにこれは東京電力の振替制度のパーセントでございますが、これによりますと七四・五%でございまして、NHKさんもそのように頑張っておるようですけれども、まだ一〇%以上の差があるように数字的には見えるのです。  この振替制度を徹底させる、そのことが集金人の数もふやさずに済む、そういうような面も含めまして振替制度というものをふやす、このことについてぜひとも努力をしていただきたいと思います。  次に、前納制度というのが料金にはあるわけですが、昨年料金改定後、先に払っておった、後で料金が改定されて値上げになった、そのためにその差し引き分を徴収したと言われておりますが、そういった人はどれぐらいいらっしゃいますか。
  224. 松本幸夫

    ○松本参考人 前払いをしていただいておりまして、そして精算していただいた金額が五十三億というふうに記憶しております。精算件数としておよそ一千七万ぐらいかというふうに思います。
  225. 永江一仁

    永江委員 それはかなりの数ですね。  そこで、よく聞くのですけれども、例えば国鉄の定期の場合は、先に買っておって、その後値上げになってもその分は取られない、ところがNHKはその差額を徴収するということを聞くわけですが、こういう前納制度普及という観点からも、そういった聴視者に対する不愉快な応対という問題も出てくるので、こういう点については再検討する必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  226. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えする前に一言。先ほど一千七万というふうに申し上げましたが、一千七十万の誤りでございます。訂正させていただきます。  国鉄のように前払いの精算ということをやめてはどうだろうかという御指摘でございますが、これは私ども、五十九年度の料額を改定していただきますときにいろいろな角度から検討したわけでございますが、結論といたしまして前二回、つまり五十一年度の改定、五十五年度の改定のときにも同様の措置をとっているわけでございます。つまり、精算していただくという前提で受信料の改定をいたしたわけでございます。  それから、受信規約というのがございまして、受信規約の十一条には、過払いがあった場合には返戻しなさいという規定があるわけでございます。過払いというのはいろいろな形があるわけでございますけれども、例えば免除の適用、半額免除でございますとか全額免除でございますとか、そういったようなことが起こった場合に、前払いをしている方がおられればその方には返戻するという制度になっておるわけでございます。  そういった物の考え方のバランスという点から考えましても、返戻ということも当然理にかなった措置であると思いますし、それをベースにしますと、不足の場合には御精算いただくという考え方も、一つの考え方のバランスとしてはあるのじゃなかろうかというふうにも思います。  過去において二回精算をしていただいている、それを仮に変更するとすれば、その変更するための合理的な理由が果たして見出し得るだろうかという点から考えましても、先ほど申しました過払いの場合の措置という点とのバランスで考えましても、精算をやめるということが五十九年度の改定ではなかなか難しいということで、従来どおりの形をとらしていただいたわけでございます。今先生、先の問題として精算というものもいろいろ批判もあるだろうから云々という御指摘でございますけれども、三回同じような形をとってまいったわけでございますから、そうなりますと、この問題についての考え方を変更する合理的な理由をどういうふうに見出し得るのか、十分考えてみなければならない問題だと思います。御指摘でもございますので、先の問題としては当然、検討課題の一つとして考えてまいりたいと思う次第でございます。
  227. 永江一仁

    永江委員 その辺がお役所的な発想と言わざるを得ないのでありまして、商売でいえば当然そういうのはまける。あるいは、百万もの人々が何ぼ説得しても払わないのに、この人たちは逆に先に払っておるのですね。こういう人に対して三年か四年に一回の値上げの分を、過払いを返すんだから取る分は取る、これはちょっと私としてはいただけない論理であろうと思います。  過去三回やったから四回目も、そういうことがまさに発想の転回が全然できないということになるわけでありまして、国鉄でさえもと言ったら悪いですけれども、国鉄でさえも先に定期を買った分は値上げになっても使えるんですからね、NHKさんが先ほどのお話のように、法的な強制力もないのに払う、しかも前納で払ってくれる、こういう人に対してその分をまけるということは当然だと思うのですけれども、いかがですかね。
  228. 松本幸夫

    ○松本参考人 大変貴重な御指摘で、私の考え方が少し官僚的じゃないかということでございますけれども、公平負担ということもまた一方でございますので、改定した時点で……(永江委員「公平負担といっても百万人から取ってないじゃないですか」と呼ぶ)いろいろな形の公平負担についての意見が出ているわけでございまして、隣が払ってないからというものも公平負担に対する一つのあれでございますし、それから例えば単身者の場合、単身赴任で、自分の家族のいるところでも、また単身で赴任しているところでも払わなければならないというのもおかしいじゃないかというような意味での公平負担というような問題もあります。  料額改定の時点で二つの料金ができてしまう。つまり、前払いしておられる方が安くなって、そこでまた続けて従来どおり毎期お支払いをいただく方は新しい料金であるということは、二つの料金体系ができてしまうという形にもなるわけで、そういった点も考えますと、我々として考えなければならない点が幾つかあるわけでございまして、先生の大変強い御指摘でもございますので、検討課題の一つとして考えさせていただきたいと思います。
  229. 永江一仁

    永江委員 時間の関係がありますからこれ以上はやめますが、会長、お聞きになってどうですか、何か感想ありませんでしょうか。
  230. 川原正人

    川原参考人 結論的に言いますと、今後もさらに研究いたします。いたしますが、どうしても踏み切れなかった理由は、毎月毎月お払いになっている方がいるわけです。これは国会審議があって、年度の予算ですから、四月から料金を上げたときに、毎月毎月払っている方は四月分から高い料金を払う、ところが前払いしていた方は、前の三月から一年払っていたら、ほぼ一年分の料金を負担しない、前の料金で一年済んでしまうわけですね。そういう問題を公平という観点から一体どう説明できるだろうかということ。もう一つは、同じ前払いの方が、三月から一年やっている方もいらっしゃるし、十二月から一年払っている方もいっぱいいらっしゃるわけです。ある人は四月から値上げになったのをほぼ十一カ月、前の料金である。ある方はもう五月か六月からすぐ高い料金で払う。それからさっき言ったように、毎月毎月払っている方は四月から高い料金で負担していただく。  もちろんそのほかに、永江先生御指摘のように、百万人払ってないのがおるじゃないか、それもよくわかっておるのですけれども、その辺をどうしてもきれいに説明し切れないのと、追徴といいますか、いただくことによってかなりの収入になるわけです。それが、その収入が減ってしまうことは、値上げの幅をまたその分だけ余計しなければならぬ。その辺でもって非常に悩みまして、過去三回はやや形式かもしれませんけれども、同じように四月分からは全部負担していただきたいということで今やってきたわけでございますけれども、冒頭申しましたように、なお研究は続けます。
  231. 永江一仁

    永江委員 それでは、最後にちょっと一点だけ。  このごろよく東京の地下鉄なんかで、NHK特集の「ルーブル美術館」の放送の宣伝ですか、その下に小さく富士通と書いておるのですけれども、これはどっちの宣伝なんですか。NHKの宣伝なんですか、富士通の宣伝なんですか。
  232. 松本幸夫

    ○松本参考人 これは民間とNHKとのタイアップという形で広告ができておるわけでございますが、私どもとしては、どっちの宣伝なのかという意味で申しますと、できるだけ六十年度の看板番組の一つでございます「ルーブル美術館」の番組をぜひ多くの方に見ていただきたいという強い気持ちは持っております。  ただ、私どもの広報予算という点で考えましても、例えばポスターをつくる経費でいいますと、一千万程度の金額でございます。そういった点で考えますと、私どもとしては、できるだけいい番組をより多く宣伝したいという気持ちを持っておりますし、同時に富士通の方は、「ルーブル美術館」というあの番組のイメージを非常に高く評価していただいたわけでございまして、私どもとしては、NHKの番組がよくPRできるということと、それからNHKの企業イメージなり、NHKが番組のために特別の会社にスポンサードされているというような誤解を受けない範囲内であるならば、ああいった形で番組のPRをさせていただくということも私は許されるのではなかろうかというふうにも考えておる次第でございます。  ですから、どこの宣伝なのかという点で申しますと、私どもとしては、ああいった形で番組を広報しているという立場であのタイアップの申し入れを認めたわけでございます。
  233. 永江一仁

    永江委員 これはいろいろ見方はあると思うのですけれども、NHKがNHKの放送を宣伝するのに地下鉄に看板を出さなければいかぬのか、ビラを出さなければいかぬのかということは、なかなかちょっと理解しがたいのですね。  現にNHKさん、このごろ随分放送も変わったなと思うのは、夜でも自分のところのテレビの来週の放送番組、随分よく宣伝をしておられるわけであって、NHKさんの放送は最大の宣伝ですね、それ以上にそういう宣伝が本当に必要なのかどうか、まあ若干奇異な感じがいたしましたので、ちょっと最後に質問さしていただいたわけでございますが、これはこれからもこういうことはお続けになるわけですか。
  234. 松本幸夫

    ○松本参考人 私どもとしては、タイアップ広告について基本的にある基準を持っていなければならぬと当然思っております。先ほど申しましたように、NHKの企業イメージを傷つけるようなことがあってはこれは絶対ならない、番組イメージに傷がつくようなことがあっては絶対ならないというふうに考えております。したがいまして、ああいった形のお申し出がございましたときには、私どもは私どもとしての条件を明らかにつけて、そして、そういった誤解を招かない形での条件を相手側が受け入れるならば、これからもやっていくことはあろうかと考えます。
  235. 永江一仁

    永江委員 もう時間が来ましたから質問は終わりますが、皆さんの料金、皆さんの聴視料、国民の受信料でつくったNHKの放送を、どこかがそれを利用するということもまた若干問題が出てくると思います。  同時に、先ほどおっしゃったように、今NHKは、そういうPR予算ですか、それが一千万円ほどしかないから、こういった富士通なら富士通を使ってNHKの放送の宣伝をしておるんだ、こういうことであれば、私が前回の逓信委員会で、ラジオジャパンにコマーシャルを使ったらどうかと申し上げたら、いやそれはということでお断りになったわけでありますけれども、若干そういう点では矛盾するのじゃないかという気がするわけでございます。  きょうは時間がございませんから御答弁は要求いたしませんが、またの機会にさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  236. 渡辺紘三

    渡辺委員長 中村正男君。
  237. 中村正男

    中村(正男)委員 私の方からはきょうは、一つは財政基盤の問題、それから二つ目は、NHKの持つ公共放送としての役割に関連をした問題、そして三つ目につきましては、これから情報社会がどんどん進展をしていくわけですけれども、そういう中での新たな放送行政といいますか新しい放送秩序、そういったことについてお尋ねをしていきたい、かように考えておりますので、よろしくお願いをしたいと存じます。  最初の財政基盤の問題でございますが、きょう委員会に提起をされておりますこの決算に関連をいたしまして、とりわけ、これからの財政問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。  不払い世帯の問題について今、委員の方からかなり詳しく御質問がございましたので、これについては二、三にとどめて質問したいと思います。  まず、この滞納者が九十九万世帯、また意図的に拒否をされる方が十三万世帯、いろいろな形の不払いの形態になっておるわけですが、これからさらに多元化、多チャンネル化が進んでいくわけでありますし、さらには、CATV等視聴者個々のニーズにこたえる形の放送メディアも進展をしてまいります。それでなくても今日、これだけの不払い者、不払い世帯があるわけでして、私はこの問題、むしろこれからが大きなNHKの課題になっていくと思うのですが、まずそういう基本的な、これからのこのメディアの多元化が進む中での不払い者の問題、どういうふうに受けとめておられるのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  238. 松本幸夫

    ○松本参考人 私ども、これから先のメディアの多元化の中で、NHKの果たすべき役割というものが従来にも増して重要になってくるであろうと思っております。そういった中で、財政基盤をより強固にしていくことは当然求められることでございますので、財政の基盤でございます受信料をどういう形で確保していくのかということには、最大限の努力を傾けてまいらなければならぬというふうにも考えております。  そういった中で今、不払いの問題あるいは滞納の問題があるわけでございますが、これも先ほど申しましたように私どもとしては、NHKに対する理解、信頼を高めていくことによってお支払いいただくことが基本であろうと考えております。同時に、私どもの体制も新しい時代に即応した形で組んでいかなければならぬ、最も効率的かつ効果的な形での収納体制をつくっていかなければならぬだろうと考えております。そういった中で、口座の推進という形によります収納の安定ということも一つの方策でございまして、五十九年度の料額改定のときには、体系の変更ということを含めて実施させていただいたわけでございます。  しかし、口座が進みましても、滞納の問題については当然、その問題とは別に対応してまいらなければならないわけでございますので、全体の収納、取り次ぎの体制というものにつきましても十分に検討いたし、新しい時代に即応した形の取り次ぎ、収納体制を確立してまいりたいと考えております。
  239. 中村正男

    中村(正男)委員 第一回の東京都の視聴者会議の御報告をいただいたのですが、ここに参加をされた方々は、今日の収納率九七%に極めて高い評価を一面ではしておられるわけです。ただ、こういう会議に来られる方々の評価というのは、NHKに対し一番理解のある方々ばかりでございますから、当然だと思うわけです。  今、収納体制の検討といいますか、そういうことについても言われたのですが、先ほどのやりとりでもあったのですが、今までは、滞納者に対してまず集金人が行かれる、それでいろいろ話し合ったけれども納めてもらえない、今度は職員が行かれる、こういう個々の対応にとどまっておられるのじゃないかな。そういう形でお呼びをしてもおいでにならないかもわからないけれども、とりわけ、意図的に拒否をしておられる方々については、本当に率直な話し合いをするためにある程度ブロック、地域的に集まっていただいて、NHKの公共的な役割とか民放との性格の違い、また財政基盤がこうなっているという事情等々、NHKの地域の幹部の方々、できれば中央からも出向いていただいて、そういうディスカッションをやる、あるいは、そこへは学識経験者とかそういった方々にも入ってもらって対話を深める。  単に金を出していただきたい、受信料をいただきたい、このやりとりだけでは一向に問題の根本的な解決にはならないのじゃないか。そういう努力がなされているのかどうか、また、これからさらにそういうことを広げていかれようとするのか、従来の集金人体制をそのまま続けていこうとされるのか、そこらあたりをもう一度お聞きしたいと思うのです。
  240. 松本幸夫

    ○松本参考人 滞納の方々に限らず、私どもとしましては、いろいろな形での対話活動をできるだけ積み上げていきたいということは、基本的な考え方として持っております。先ほど視聴者会議というお話もございましたけれども、視聴者会議のほかに大都市圏につきましては、特別の懇談会をしかるべきところで、また問題のあるところで開催するという形をとりまして対話を重ねるという努力、あるいは総合催し物と私どもは申しておるのでございますけれども、放送とタイアップしまして、放送で各種のイベントをつくるわけでございます。例えば、料理の時間の外への持ち出してありますとか、あるいは文化講演会でありますとか、いろいろな形のイベントを外へ持ち出して、それを一つのきっかけにして話し合いの場をより広げていくというようなこともいたしております。  あるいは、若い方々にそういった受信料に対する理解が十分でないということで、キャンパスに懇談会を持ち込みましてそこで対話を重ねるというような、いろいろな形での対話を試みておりますけれども、支払い拒否者あるいは制度に対する批判という形で滞納なさっていらっしゃる方に、完全に御了解をいただいてお支払いいただくというところまでなかなかいかないものが、先ほど申しましたような数字として残ってきてしまっている。私どもとしては、ただ個別に対応するということだけではなくて、いろいろな形での対話を積み重ねる努力はしているつもりでございます。これからもそういった努力は続けてまいりたいと思っております。
  241. 中村正男

    中村(正男)委員 五十九年に値上げになったのですが、五十八年から五十九年にかけて、値上げ後にどういう傾向になったのか、それだけちょっと数字でお聞きをしておきたいと思います。
  242. 松本幸夫

    ○松本参考人 五十四年からの数字でございますけれども、五十四年の滞納数が九十八万四千でございました。五十五年に料金改定があったわけでございますが、そのときが年度末で九十九万一千という数字になります。そして五十六年に九十八万九千、五十七年が九十九万、五十八年が九十八万二千、昨年度九十九万五千というのが滞納の推移でございます。
  243. 中村正男

    中村(正男)委員 次に、副次収入の問題についてお聞きをしたいと思います。  この副次収入につきましてもふえている、こういう報告でございます。このふえた要因といいますか内容と、今後副次収入をどういう形でどういう方向でふやしていこうとされているのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  244. 渡辺伸一

    渡辺参考人 副次収入の実績につきまして、ごく最近のデータでお話し申し上げます。  五十九年度の実績で申しますと、副次収入が二十二億五千八百万という数字が上がっております。最近になく非常にふえているところでございますが、副次収入とは一体どういうところから生まれているかということでございますけれども、これは、一度私どもが放送いたしましたものを海外の、あるいは国内の放送機関等にもう一回提供する番組の二次使用でございます。それから、放送番組テキストを発行いたしましたときの手数料を収納する。それから今度は、技術系統でございますけれども、NHKで開発いたしました技術協力あるいは技術特許実施許諾による許諾収入というようなものが入ってくるわけでございます。  この番組にいたしましても技術の利用にいたしましても、我が方に利用するだけのものがないとだめであることはもちろんでございますが、引き合いかないともう一つだめでございます。私どもとしましては、できるだけ番組を利用していただく機会をつくろうということで、先ほどから話がありますように関連団体の活躍を通じましてなるべく接触をして、その機会を持っていただくということをやって増加を図っているわけでございます。  五十九年度に伸びましたものは、例えばテキストでございますが、これは最近伸び悩みの傾向にはございますけれども、実際の収支を見て、できるだけ売り上げに対する料率を上げてもらったということをやっておりますが、これもそう長く伸び率を保っておるものではございませんので、あらゆる機会に番組の二次利用というのを中心に、あるいは持っている技術をできるだけ多く使ってもらうというチャンスを生かして、この副次収入を上げるように努力してまいりたいと思っているわけでございます。
  245. 中村正男

    中村(正男)委員 番組の二次使用、そういった点については、これはNHK固有の仕事として伸ばしていかなければいかぬと思うのですが、これからのメディアの多元化の時代の中で当然、新しいメディアに対してNHKが進出をしていくあるいは素材を提供していく、こういう副次収入もふえていくと私は思うのですが、そのことに対して、これはNHKは特殊法人、当然高度情報社会が進むわけですから、こういう分野における私企業、民間の進出というのも大きな期待が今寄せられておるわけです。  そういうことについて一定の何らかの線引きといいますか、あるいは特殊法人としての一定の限界といいますか、私企業を伸ばしていくという面でそういう点について郵政省はどうお考えになっておられるのか。単に副次収入がそういう分野でどんどん伸びていくということは、NHKにとってはこれはいいことですけれども、反面そのことが、いわゆる私企業なりそういったこれから新しい分野が制約をされていくということなれば、果たしてこれはどうなのか、この辺の郵政省の考え方をお聞きをしておきたいと思います。
  246. 徳田修造

    ○徳田政府委員 全国の視聴者に基盤を置いております公共放送としてのNHKが、その収入の大部分を受信料に求めるべきであるということは、当然であろうと思うわけでございますが、受信者の負担増をできるだけ避けるというためにも、また、NHKが事業を行う上で得られる技術情報であるとかあるいは権利等の成果を社会に還元するためにも、放送法に認められた限度におきまして関連事業を活発化し、副次収入をふやしていくということは、十分検討に値することではないかと私ども考えておるところでございます。  しかしながら法改正をいたしまして、営利目的の禁止の規定があるわけでございますけれども、これを緩和するということは、公共放送としてのNHKの基本的な性格にもかかわってまいる問題でございますので、慎重に対処していく必要があるのではないか、そのように考えておるところでございます。
  247. 中村正男

    中村(正男)委員 ぜひそういう点に郵政省としては留意をしていただいて、単にNHKの財政基盤だけの問題としてではなく、新たなそういう民間のいわゆる発展といいますか、そういうことにもぜひひとつ郵政省としての配慮をお願いしておきたいと思います。  次に、方針にかかわる問題でございますが、確認をしておきたいと思います。  BS2aですね、これは今故障しておりますが、これにかかわるNHKの経費の負担の会計年度は、五十九年度でもってすべてが終わったと理解していいのか。それとの関係で、続いて打ち上げられます2bのNHKの負担の会計年度はいつになるのか、そしてその額、それをお聞きをしたい。  それからあわせて、これはちょっと延びたようでありますけれども、BS3は先ほど七百九十億円のうち六五%がユーザーとしての負担だ、そのうち、NHKが二チャンネルですから当然、額は想定されますが、今予想される会計年度はいつの負担になるのか、この三つをお聞きしたいと思います。
  248. 渡辺伸一

    渡辺参考人 順に申し上げますが、BS2aは既に五十八年度で終わっているわけであります。BS2bにつきましては、六十年度が最終でございまして、予算の三十五億をもってBS2bの予算措置は全部終わるわけでございます。それからBS3でございますが、このBS3につきましては、五十九年度に四億八千万の予算を用意いたしたわけでございますけれども、諸般の事情から実際にこれを使うところまで至っておりません。これからさらに六十年度、六十一年度と、これから順次計画が固まっていくに従って年度が決まってくるわけでございますけれども、BS3の最初の支出は一応、五十九年度に予定したものが今繰り越されて、六十年度からというふうに予定をしているということでございます。
  249. 中村正男

    中村(正男)委員 そうしますと、BS3は今の計画では、最終年度は六十一年度で終わるということですか。
  250. 渡辺伸一

    渡辺参考人 今の予定でございますと、六十年度から使い始めて六十五年度まで予算の計上を必要とするかと思っております。
  251. 中村正男

    中村(正男)委員 五十八年度から始まってこれからずっと六十五年度まで、BS3が一応の最終的な形での方針とするならば、それまで巨額な負担が続いていくわけであります。先ほどの質疑でもあったわけでございますが、NHKの機構というものが大変巨大化していく、チャンネルがふえるわけでありますから当然巨大化していくわけでございます。そうなれば、この財政基盤が大変重要になってくるわけでございまして、受信料の契約件数もほぼ限界に来ておるのじゃないか。  三年ごとに一回料金の改定がある、過去の経緯ではそうなっているわけでございますが、そうなれば五十九年、昨年値上げをしたわけでございますが、当然六十二年あたりにはまた値上げを国民の皆さんに理解を求めなければならないと思うわけですけれども、突然直前になって値上げというよりもむしろ、何らかの広報機関を通じて、こういった衛星放送の負担増を含めて受信料に頼らざるを得ないのだという、ある程度改定のめどというようなものも、もう二年目に入っているわけでありますからそろそろ国民の皆さんに理解を求める行動も必要ではないか。端的に言うならば、次の料金改定は六十二年を想定しなければならぬのか、その辺についてお聞きをしておきたいと思います。  それから同時に、こういった衛星放送が中心になってまいりますと、難視地域の解消、さらには新たな高品位テレビの普及等々が出てくるわけでございます。従来の一律料金というこの体系の中で国民がNHKの受信をするということと、相当さま変わりをしてくるんじゃないだろうか。そうした中で、現在の一律料金制度というものをずっとそのまま堅持をしていくのか、ある程度この視聴者の状況によってそういった料金制度を今後改定するような考え方はあるのか、そこも含めてお尋ねをしておきたいと思います。
  252. 林乙也

    ○林参考人 お答え申し上げます。  五十九年度受信料改定をお願いをいたしまして、現在一応、財政の安定を見ておるところでございますが、当時、五十九年度の改定に当たりましては、五十九年度から六十一年度までの三カ年間の収支の均衡を図ることを前提といたしまして、料金の改定をお願いいたした次第でございます。そういう点からいたしますならば、六十二年度の段階になりましたならば、料金改定の問題も検討の俎上に上さざるを得ないということではございますけれども、先ほど御説明もいたしましたように五十九年度の決算におきまして、当初の予定を七十億ほど上回る業績を上げて六十年度に入っておるわけでございます。そういうような五十九年度の実績をさらにできるだけ継続、さらに上積みするように努力する中で、できるだけ長期間国民の方々に新たな負担の増というものをもたらさないように、今後とも努力してまいりたいというふうに考えております。  また、今後のニューメディアの進展の中におきます受信料のあり方でございます。先ほどから御説明も申し上げておりますように、NHKは公共の福祉のために全国あまねく放送のサービスを行うために、公共放送として使命を課せられたところでございます。それは結局、受信料という形で財源を確保していかなければならないところかというように思うわけであります。しかし、この受信料の制度にいたしましても、ラジオ料金からテレビ料金の設定、あるいはテレビ料金におきましてもモノクロ料金からカラー料金の設定というように、放送サービスの大きな流れの中で受益者負担の公平といいますか、負担の公平という観点を取り入れる中でいろいろ多様化、改善を施してまいったわけでございます。  現在の時点で今後を展望いたしました場合に、やはり大きな要素となろうと思われますのは、一つには、衛星放送の今後の動向でございますし、さらには「ハイビジョン」の実用化ということになるわけであります。そこらあたりにつきましては、やはり国民の方々に納得いただける受益感のある認識といいますか、受益感についての国民の方々の認識というものがまず第一の前提になるわけでございますし、さらには、どの程度普及しておるかというようなことも大きな要素であろうかというふうに思われます。また、地上による放送視聴者とそれから衛星放送の受信者との負担の公平がどういうふうにあるべきかというようなことなどが、検討の要素となろうかと思いますが、そこらあたりは今後の放送の進展の中で十分考えながら、鋭意検討してまいりたいというように考えております。  またそれ以外にも、いわゆるメディアミックスと申しますか、現在の放送ではもちろんでございますし、今後ともさらにそうかと思われますのは、放送をただ単なる放送としてではなしに、他のメディアとの融合関係というものがますます進むであろうことを考えました場合に、番組の企画制作の段階あるいは流通、供給の段階、いろいろの面におきまして他のメディアとの融合関係というものは、いよいよいや応なしに進まざるを得ないというふうに思われますが、そういった中で、NHKの経営財源というものをさらに多様化する中で、相対といたしましての受信者の方々の負担というものを極力軽減していくように、努めてまいる必要があろうかというふうに考えておるところでございます。
  253. 中村正男

    中村(正男)委員 ぜひひとつ、その公平の負担という点について徹底した検討を加えていただきたいということで、この問題終わりたいと思います。  次に、NHKの果たすべき公共性という問題と、より国民に理解と支持を得ていくための課題という点について、一、二お尋ねをしたいと思います。  一つは、先ほども申し上げたんですが、第一回の東京都の視聴者会議実施されました。詳しい報告は結構でございます。この視聴者会議の開催というのは大変意義があるんじゃないか、私はこういう受けとめ方でございますが、一つは、そういった視聴者会議内容等について視聴者全体、国民全体にどういう形で報告をしておられるのか、そういった点についてお尋ねをしたいと思います。
  254. 松本幸夫

    ○松本参考人 お答えいたします。  視聴者会議をNHKが設けましたのは、昭和五十二年の十二月からだというふうに考えておりますが、当時、五十一年度の料金改定の際に、国民の声をできるだけ経営に反映させるべきであるという大変強い御指摘もございました。そういった強い御指摘の中で私どもとしましても、全国的な形での視聴者との対話活動をどういう形で進めればいいのかということを考えまして、全国五十三カ所に視聴者会議を設置するということを決めたわけでございます。  国民の皆さん方の声をやはりできるだけ幅広く聞いていくということのために、分野制というものもその中に入れまして、十一分野の方々から御意見を伺おう。そして、この全国的な組織で視聴者会議を設けまして、これを継続的、計画的に行いまして対話活動を続けることが、これが一つ、国民の皆さん方とNHKとのフェース・ツー・フェースの対話を積み重ねる有効な道であろうというふうに考えて、この会議を設置したわけでございます。  その後、およそもう十年たつわけでございまして、この十一分野の方々、ある意味では、その地域のオピニオンリーダーの方々でいらっしゃるわけでございますので、私どもは、視聴者会議の全国の結果を視聴者会議にフィードバックするという形で、全国の皆さん方の声をお伝えするということもいたしておりますし、また経営委員会に対しまして、業務報告という形で折り日折り目に視聴者の方々の御意見として、視聴者会議で出された御意見として御報告を申し上げるという形をとって、経営に反映するという方法をとっております。
  255. 中村正男

    中村(正男)委員 経営委員会に報告という形をとっておられるようですが、ということは、経営委員会の方はこの会議には出席はしていないわけですか。簡単にお願いします。
  256. 松本幸夫

    ○松本参考人 折に応じて、それぞれの地域から選出されておられます経営委員会の先生方に陪席という形で、視聴者会議意見を聞いていただくという機会を設けております。
  257. 中村正男

    中村(正男)委員 先ほどから申し上げておりますが、大変メディアの多元化時代に入ってきております。そういう意味合いではNHKの持つ役割というのも、時代の変遷とともに大変変わってきつつございます。当初、経営委員会が設置をされた目的なりその機能、それは極めて重要だ、私はそういう認識に立っておりますが、先ほど来からの不払い者の対策の問題等々、これからのNHKの公共性を維持していくという面からすると、本当に幅広い国民の理解と支持が大変重要になってくるわけでございます。  そういう意味合いで、現在の高い次元の目的と責任を持った経営委員会だけで果たしていいのか、むしろそれを改革していく。むしろいろいろな分野別の小委員会とか分科会を設けるとか、またその委員の人選につきましても、国民の諸階層を代表するような方々に入っていただく。職域の代表も必要でしょうし、地域の市民団体、さらには労働組合の代表も入っていただきたいというふうな意見もあるわけでございます。そういう経営委員会の改革について、郵政省の考え方をお聞きしたいと思います。簡単にお願いします。
  258. 徳田修造

    ○徳田政府委員 NHKの経営委員につきましては御承知のとおり、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、かつ広い経験と知識を有する方々の中から、教育、文化、科学、産業その他の各分野が公平に代表されるように配慮しながら選任いたしまして、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命するというような形で現在、任命されておるところでございます。  経営委員会委員の選出方法につきましては、先生御指摘のようなお考えとか、いろいろな考え方があるところでございます。しかしながら現行制度は、各界各層、それから地域の意見を反映させながら、しかも最高意思決定機関としての経営委員会の機能的な運営といいますか、そういう面も考慮して定めたものであろうというふうに考えておるところでございまして、私ども、今のような体制が一番よろしいのではなかろうかと思っておるところでございます。  なお各層、広い層の方々の御意見を反映させるという意味では、先生先ほどから御指摘ございました視聴者会議というような場もございまして、そういうところで視聴者の要望を十分お伺いし、それを事業運営に反映するという形で会議等開催いたしておりますので、そういう形で補っていくということでよろしいのではなかろうかと考えておる次第でございます。
  259. 中村正男

    中村(正男)委員 視聴者会議と経営委員会との関係というのは、私はそんなにおっしゃるように、密接な形で意見が経営委員会に反映されている、また、それによって経営委員会が適切なアクションを起こしているというふうには、なかなか受けとめられないわけです。それはやはり経営委員会の持つ機能というのですか考え方が、旧来の体質からなかなか脱皮されていない。どんどん情報社会は変わりつつあるわけでありますから、そういう面でもより国民が親しみの持てるNHKにしていくためにも、ぜひひとつ経営委員会が、改革はしないのであればそれにかわり得る実質的な、経営の中身について具体的な提言が行われる、そういう機構について検討をお願いしておきたいと思います。  最後に、これからの放送行政について、今の問題と関連いたしまして指摘をしたいと思います。  いろいろ環境条件の変化、もう今さら申す必要もないと思いますけれども、有線系、無線系、有線、無線の複合系、さまざまなメディアがこれからどんどん開発、実用化が進んでまいります。同時に、従来の放送と相関連して高度情報社会が形成されていくわけでございますが、こういう状況の中でやはり今、新しい放送秩序というものが問われておるのじゃないか。当然、そういうことから郵政省が今度懇談会を発足されたと思うのです。  そこで一、二指摘をいたしますと、まず基本的には、私は何といいましても総合的な電気通信政策の展開、これがもう不可欠だと思います。二つ目は、従来のといいますか、現在の放送制度の中では幾つかの規制というものが存在をしております。それは今までの単純なといいますか、そういうメディアの時代ではそれも必要だったと思うのですが、これからの時代を考えますと、余りこの規制をそのまましていくということは果たしてどうか。そういう観点で、今現在行われてまいりました規制の根拠といいますか、私は五つほどあると思うのです。  一つは混信の排除、これは当然、これからもどんどん多チャンネル化するわけですから、規制を今後とも続けていかなければいかぬと思うのです。周波数の希少性、さらには放送の調和ある発展、また放送の社会的な影響力、この社会的な影響力もかつてはラジオだけであった。それはやはりラジオとしての社会的な極めて大きな影響力があったのですけれども、それがテレビにかわる。もうラジオにはそういう意味合いでの社会的な影響といいますか、そういうものは非常に軽減される、どんどん変わっていくわけですね。さらに、公正な市場競争の確保、これも従来の単なる地上波だけの放送メディアの時代から大変変わってくるわけでありますから、そういう規制の根拠についても再検討が迫られておると思います。  まあ指摘だけにとどめますけれども、ぜひそうしたこれからの新しい放送秩序について、最後にこの見解をお聞きして、終わりたいと思います。
  260. 左藤恵

    左藤国務大臣 これからのニューメディア時代というもので、私は一つの高度情報社会というものを考えて、そして秩序ある体制に持っていかなければならない。それには、放送がどういうふうに加わっていくか。今までは放送放送として発展してきた。ところが、これからの時代はそういったことでなくて、有無線も統合されてくるし、いろんな面で複合化した、そうした形のニューメディア時代というものが形成されていくであろう、私はこのように思います。そういった意味で今、先生御指摘になりましたような、従来からもそうした規制とかいうものが必要な問題もあろうと思います。しかし考え方を変えなければいけない問題もあろうかと思います。  そうしたことで、まずニューメディア時代を考え、それに対する放送の役割というものを、どういうふうにあらなければならないかということについて、今そういった立場での懇談会での御審議もいただいておりますので、そうした御意見を十分踏まえて放送行政をやっていかなければならない、このように考えておるところでございます。
  261. 中村正男

    中村(正男)委員 終わります。
  262. 渡辺紘三

    渡辺委員長 佐藤祐弘君。
  263. 佐藤祐弘

    ○佐藤(祐)委員 川原会長にお尋ねをいたします。  会長は、ことし三月、当委員会での私の質問に対しまして、いわゆる国内番組基準の第一に挙げております「世界平和の理想の実現に寄与し、人類の幸福に貢献する」という基本原則に触れまして、こうお答えになりました。「今戦後四十年あるいは被爆四十年という節目に当たっても、さらにその決意を新たにして、真に人類の幸福に貢献するような、また世界の平和の実現に寄与できるような番組の制作に取り組んでまいりたいというふうに考えております。」という非常に大事な御答弁をいただいたわけであります。  きょうは、やはり重要なもう一つの基本原則、というよりもNHKのよって立つ基盤といいますか、言論、表現の自由、報道の自由の問題についてお伺いをしたいと思います。  最初に、川原会長自身、言論人として言論の自由、報道の自由についてどう考えておられるか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  264. 川原正人

    川原参考人 私としては、報道機関あるいは言論機関、さらに広げて文化的な活動をしている機関においては、一番のベース、基礎になるものはやはり表現の自由、これが確保されなければならないというふうに思いますし、同時に、いわゆる民主主義的な自由な社会においては何よりも、その言論、報道活動の自由ということがなければ、自由で民主主義的な社会は成り立たない、もちろん発展もしないのではないかというふうに考えております。
  265. 佐藤祐弘

    ○佐藤(祐)委員 NHKを含めまして現在の放送の立脚しておるのは、言うまでもなく放送法、そしてまた、平和と民主主義の憲法の理念であると思います。大事な点は、戦前は、日本が中国侵略戦争から太平洋戦争へと十五年戦争をやったわけですね。そして多くの国民を非常に悲惨なふちに投げ込んでいった。その際に放送が果たした役割は非常に重大なわけです。そういうものの反省の上に立って戦後の放送が行われてきた。放送法も整備をされましたし、放送が行われてきたというふうに理解をしているわけでありますけれども、戦前のNHKと戦後のNHKの最大の相違点はどこにあるというふうにお考えでしょう。
  266. 川原正人

    川原参考人 やはり一番の違いは、戦前は報道の事項、内容につきましても、政府のいわゆる監督、統制あるいは検閲等の制度があったと思います。それに対して、少なくとも現在においては、そのような政府からの番組に対する規制とか監督、もちろん検閲なんというものは毫も存在いたしません。そのことが一番の違いかと思います。  つけ加えて言えば、放送協会の例えば重要な役員の大事につきましても、戦前は政府の許可というようなものがあったやに私は勉強しておりますけれども、少なくとも今は、経営委員会という制度のもとで、そういう形の人事は行われておりません。これも重要なことかと思っております。
  267. 佐藤祐弘

    ○佐藤(祐)委員 私も大筋同様の認識でございます。戦前は、今おっしゃったように政府の管理下にあった。特に昭和九年ですか、組織の改革がございまして、それ以降は放送内容が事前に検閲をされるというようなことがあったわけであります。国政に関する報道も政府発表のもの以外はできない。戦後は、そういう統制が一切排除されまして、今おっしゃったように、放送法の第一条の「目的」にありますように、公共の福祉、不偏不党、そして放送の自律性、そういうことをはっきりとうたわれたわけであります。  私も改めて「日本放送史」を読みました。この放送史も何度か出ているのですね、二十五周年のときとか五十年のときとか。これはたしか二十五周年、二十六年目に出されたものだと思います。一九五一年発行で、もちろん日本放送協会の編集のものです。古垣会長さんの時代で、序文を書いておられるわけです。  それで拝見したのですが、それを持ってきたわけでありますけれども、ここには、昭和十二年に軍機保護法が全面強化され、翌十三年には国家総動員法が実施されるというようなことがありまして、そういう流れの中で、昭和十五年に第二次近衛内閣のもとで内閣情報局がつくられる、逓信省の関係部門もそこに統合される。結局、放送番組編成を情報局が全面的に握ることになるわけですね。そして、いわゆる大本営発表、ああいうものがどんどん流れていくという事態になるわけであります。  そういう経過と同時に、当時の模様も大変リアルに書かれておるのですね。例えばニュース原稿ですと、「カーボン紙を入れて、ニュース原稿は二部とる。宮廷ニュースは三部とる。一部はできあがった分から、オートバイで東京逓信局の係にとどける。」逓信局の係から各関係官庁に回す、そこでいろいろチェックを受けまして、誤りがあれば訂正するのは当然ですが、「都合が悪ければ、放送停止の命令が出る。」というふうな時代であったわけですね。  非常に反省的にこういうことも言われております。「真実を伝えるべきニュース、客観的な事実を知らせるべきラジオニュースが「高度国防国家建設」の名のもとに、ゆがめられ、宣伝の道具と化した。聴取者は、ニュースによって目を開くのでなくて、動員されたのである。」こういうことも書かれております。  戦後は、そういうことは二度と繰り返してはならないということでスタートをしたわけであります。昭和二十一年の四月ですか、放送委員会の選考などがあって、高野岩三郎さんが会長に就任された。就任のあいさつの中でこういうことを言っておられるのですね。「太平洋戦争中のように、専ら国家権力に駆使され、所謂国家目的のために利用されることは、厳にこれを慎しみ、権力に屈せず、ひたすら大衆のために奉仕することを確守すべきである。」いろいろ前後長いのですが、こういうふうに言っておられます。  改めてこれを読みまして、まさにこのとおりだというふうに痛感をしておるわけでありますけれども、今もおっしゃったわけでありますけれども、放送が戦前のようにああいうように利用されるようなことがあってはならない、こういうお考えは会長も同じお考えかどうか、その点をお聞きします。
  268. 川原正人

    川原参考人 先ほど申しましたように、やはり放送というものはすぐれて報道、言論という性格を持っておりますし、これはいかなる社会的な権力、政治的な権力からも独立して、みずからの判断で、やはり自主的な立場で報道、言論の姿勢を貫くべきだと思っております。
  269. 佐藤祐弘

    ○佐藤(祐)委員 きょう私が特に言論、報道の自由の問題についてお尋ねをしておりますのは、お察しかと思いますが、実は今月の六日に自民党の議員立法の形で、国家機密法案が国会に出されました、それとの関連であります。  私たちは、この法案は憲法の定める国民の知る権利、言論の自由、報道の自由を侵害し、民主政治の根幹を破壊するものである、そういうことで反対しております。共産党としては撤回を要求しておる、そういうことであります。  放送関係者を含めまして、言論人の間で相当危惧をする声が高まっているわけです。新聞も各紙が次々に社説を出しております。大体反対です。地方の有力新聞も相次いで出しております。それはいろいろあるわけでありますが、そういう中で放送関係者ということで御紹介をいたしますと、元NHKの解説委員長をなさっておりました緒方彰さんはこういうふうにおっしゃっている。「言論や世論や情報を政府のコントロールの下におくということ自体、現実的でないし、できることでもない。また、させるべきことでない。」それから、日経新聞のような新聞も、これではもう取材、報道の自由がなくなってしまう、そういう憂慮をする社説を掲げております。ほかにもいろいろな角度から問題点が指摘されておるわけであります。  そこで会長にお聞きしたいのですが、ラジオ、テレビの取材、報道にも影響や制約が生じる心配があるのじゃないかと私は思うのですが、会長はどういうふうにお考えでしょうか。
  270. 川原正人

    川原参考人 私自身、法律の原案を子細に勉強したわけではございません。また、これは非常に政治的にいろいろな御議論のあるところだろうと思います。したがって、今ここでその法律そのものについての私の意見を述べるのは適当でないと思いますので、それは差し控えさせていただきますが、いずれにしても、何らかのそういう国家機密に関する一つの法律がもし成立するとすれば、今より取材活動があるいは窮屈になるかもしれないということは想像はいたしますけれども、ただ、今なおこれは政治的にいろいろな立場で御議論のある問題でございますので、それによってどのような形でそういう法律が成立し、またそれが運営されるのか、今からそれを予測することは非常に先走って危険だと私は思いますので、各方面の御議論をよく拝見してまいりたいというふうに考えております。
  271. 佐藤祐弘

    ○佐藤(祐)委員 会長の慎重な御発言で、それはそれなりに理解もできます。私も、一般的な法律ではなくて、直接報道にかかわる、表現の自由にかかわる、そういう内容を含んでおりますので、あえてお伺いをしているということであります。  戦前の実態からいいますと、新聞よりもラジオに対する検閲が厳しかった。新聞で一たん報道されたもの、活字になったものをラジオ放送する場合には、事前に原稿の点検が要るというぐらいに、放送というのは思想宣伝とか国民の戦意高揚といいますか、こういう国民総動員、思想的な動員の上で重視されたというような歴史を持っているわけであります。それだけに私はよく考える必要があるということを思います。  会長の今の御発言ではあったわけでありますが、法の内容からいいますと、これまでNHKが非常に意欲的に取り組んでこられたいろいろな取材活動、報道活動、特にNHK特集のようなもの、こういうものが非常に大きな制約を受けるということはいろいろ指摘をされておるわけであります。例えば放送作家の小山内美江子さんという方がいらっしゃいますが、この方は、「昨年NHKが「核戦争後の地球」というすぐれた番組を放送しましたがここの法案がもし仮に成立すれば、「こうした番組は作れなくなってしまいますね。物書きの一人として絶対評せません。」そういう発言もしておられるわけです。  例えば特に、会長はよく御存じだろうと思いますが、自衛隊の装備とか配備その他、別表によりまして防衛は相当広範囲の抽象的な規定があるわけですね。艦船、航空機、いろいろな規定があるわけです。それで何が秘密かという特定がない。ですから、これは行政府の一方的な判断で秘密扱いにすることができるというあたりが、大いに法律的にも議論になっているところでありますが、そういうことで、とりわけ自衛隊の取材なんというのは厳しい制限を受けるということは目に見えておるわけです。例えば去年十月に放映された「米ソ戦略のはざまで 緊急発進は年九百回」という番組がありました。また最近でいいますと、一月に「二十一世紀は警告する」というNHK特集で「兵器の反乱」というふうな、これも大変評判になったものだと思います。  もう一つ例を挙げますと、これは本にもなっているのですが、NHK特集で、一昨々年放映されて大変評判がよかった「シーレーン・海の防衛線」という特集です。これは五十七年の秋に三度にわたって放映されました。なかなか意欲的な取材で、私も大変感心して見た覚えがあります。この本の前書きで、スタッフの方がこの問題を取り上げた問題意識、それをこう書いておられます。  「私たち市民の知らないうちに既成事実だけが着々と進行するとしたら、それこそ、私たち市民にとっては危険なことである。知らないことや知ろうとしないことは、こと防衛問題に関する限り、私たちの安全や幸せにはけっしてつながらない。現実に知ることこそ論以前の問題であり、その現実を伝えることこそ私たちの役割である」、こういうことで、チームを組んで一定期間、四カ月ですか、取材活動を続けられたというものです。なかなか力作であったわけですが、こういうことが後書きでまた書かれておるのです。  「今回の取材でスタッフが最も苦労させられたのは、二つのカベの存在であった。防衛アレルギーと軍事機密。この二つのカベの前で、取材はしばしば、立ち往生させられた。「防衛」に関係している人たちは、当局の顔色をうかがい、取材を拒む。一方、非関係者は、番組が防衛問題につながることを知ったとたん「それでは、いっさい協力できません」と言った態度になる。現実を伝えることが、如何に大切かを訴えても「防の字がつく限り消防でもいや」と言わんばかりの態度」だったというのです。「この二つのカベにはばまれて、ジャーナリズムが何も伝えないうちに現実だけが進行して来たのではないだろうか。こうして国民は、知ることもなく、知ろうとする関心も持てぬまま防衛問題が市民生活とは、かけ離れた遠くの出来事であり続けたのではないだろうか。」反省を込めながら、この壁の問題と一層取材する必要性ということを最後に後書きで書いておられるわけです。  これは私は非常に大事な貴重な意見だというふうに思います。当然国民が知る権利として知っていい事実、これを映像で伝えていったという点が大いに評価を受けた、まさにジャーナリスト精神を発揮したものだというふうに私は思うわけです。ところが、先ほど申しましたように、国家機密法によりますと、これも詳細、法案も解説書も持ってきておりますけれども、こういうものはまさに秘密の対象になる、そして取材活動が探知、収集ということになるわけですね。また報道すれば、それは外国が知り得る状態にしたということで、外国への通報とみなされるというふうなことで、最高死刑、無期懲役という極刑になっているというふうな、全く大変な問題なんであります。  そういう点で、ここでもちろん、NHKを何か追及しているのでは毛頭ないのです。こういう悪法を許さない、憲法の平和と民主主義にしっかり立った国民の世論、大いに盛り上がってきております。国会もまさに正義を発揮して、民主主義の根幹である国民の知る権利、言論、報道の自由を守り抜かなければならない、そういうふうに私は深く決意をしているわけであります。そういう事態になればあるいは窮屈になるかもしれないということをおっしゃいましたが、それどころではない、まさに戦前に逆戻りする危険性があるのだということを私は言いたいわけであります。そしてNHKが、巨大な言論機関、巨大なマスコミとして、戦前のあの苦い経験、教訓を十分に生かして、二度と同じようなことにならないように、そういう立場にぜひしっかり立っていただきたいということを強く希望いたしまして、次の質問に移ります。  次の質問は、余り時間もありませんが、放送衛星の難視解消の関係の問題です。  去年、私は二度この問題で質問いたしました。それで、こういう問題があると思うのです。きょう答弁がありましたけれども、若干整理しますと、こういうことになる面があるのです。  放送衛星が本格的に行われるようになれば、負担の公平などの問題からいって、特別の料金を取ることも必要なのではないかという考え方が一つあります。それから現在、放送衛星は試験段階ということもありまして、二千世帯ですか、ほとんど解決されていない。衛星は上がったけれども、衛星から電波は送られてきているけれども、受信設備が普及していないので解決していないということがあります。受信設備をつければ放送衛星を受けられるのだということですね。  もともとから言いたいわけですが、つまり今、テレビが見たくても見られない難視地域の人たちがいるわけですね。この人たちはお金を出して――三十万円ぐらいですか、非課税措置の検討などもなさっておられるということです。またコンバーターその他が百万台レベルになれば十五万円ぐらいになるのじゃないかというお話も去年ございました。いずれにしても、そういうかなり多額のお金を出して受信設備をつけて、さらに衛星放送特別受信料を取られるということにこれはなっていくわけですね。大変不都合な事態が生まれる、そういうあたりはどう考えておられますか。
  272. 川原正人

    川原参考人 確かに今のところ、パラボラアンテナあるいはコンバーターを含めて二十万円あるいは三十万円近い、これは場所と建物その他の状況によると思いますが、経費がかかるということはそのとおりでございます。私どもは何とかして、これをもっと安くならないものかということは考えております。ただ、そういうことはありますけれども、今一チャンネルしか出ていないのでこれは非常に問題がありますが、今一チャンネルですから試験放送ということで、受信料もちょうだいしていないわけでございますけれども、これが二チャンネルの放送になって、地上の普通の電波を受けておられる方と同じ放送内容、ほぼ同様のものが受けられる場合には、地上の電波を受けてNHKに受信料を払っておられる、それと同額は少なくともちょうだいしたい。  もちろん、山の中だから設備に金がかかるということは大変申しわけないとは思うのですけれども、これは一つの自然的な条件の中で、比較的簡易な設備で電波が受けられるところと、かなり設備費がかかるところと、その差額をまた料金の面で考慮していくということは実際問題として非常に難しい、ほとんど不可能に近いと思いますので、とにかく同じような電波が受けられ享受できる方は、NHKについて言えば、同じような受信料の負担はしていただきたい、こういうふうに考えております。  ただ、これは先の話でございますけれども、衛星のチャンネルの中から、地上の普通の番組とは違った、もっとより魅力のあるというか、大勢の方がごらんになりたい、そういう魅力のある新しい番組が出るようになれば、それはまた別の料金をちょうだいできる一つの理論的な根拠になるのではないかと私どもは考えておりますけれども、それはまだ大分先の話で、今とにかくちゃんとした二チャンネルの放送を出すことの方が大問題になっているわけでございます。ただ理論的には、先の段階ではそういうことは当然、検討に値するであろうというふうには考えております。
  273. 佐藤祐弘

    ○佐藤(祐)委員 先の問題へ行きましたので、もとへ戻します。  難視解消ということで放送衛星を打ち上げた。しかし今、試験放送中ということもありますが、普及していないし、あとの計画がおくれたわけですね。その段階で検討し直す必要があるのではないかということを私はきょうは言いたいわけです。つまり、去年申し上げましたのは、難視解消ということで放送衛星を打ち上げた、しかし放送衛星を受けるにはかなりのお金がかかる、だからこれに対する補助を検討すべきではないかというのを一つの論点として申しました。それについては大臣も、当時は奥田大臣でありましたが、そういうことも考えてみなければならぬというような意味合いの肯定的な答弁をなさったと思います。  しかし、BS2bもBS3もかなりおくれるという見通しになってきているわけですから、その間、これまでやってこられた難視地域対策というのはさらに進まなくなるわけですね、衛星の方にお金を回しましたから。地上での設備増強による難視解消というのはうんとレベルダウンしてしまった。そこはどうするのかということがもう一つあるわけです。  その点で実は去年、衛星の故障がはっきりした後のこの委員会でその問題を私は出しました。そういう故障がはっきりしたわけだから、その点検討し直す必要がある。それに対して当時の奥田大臣が、「地上の難視解消のそういった計画は引き続きNHKの方にも相談をしてまいりますけれども、事業計画の中でも引き続きやっていくということをはっきりさせておるわけですから、そういった意味合いで、双方、星と地上設備の難視解消対策とあわせて努力していきたいと思います。」という言い方で言われた。その後どういうふうにやってこられたか、この点は左藤大臣にお聞きしたいのです。
  274. 左藤恵

    左藤国務大臣 受信者の負担を軽減して、BS2によります難視聴解消を促進するために何かの手を打ったか、こういう御意見であると思います。その後、我々といたしましては、BSのチューナーに対します物品税の問題で、昨年の予算の編成の段階におきましてこの論議をいたしまして、今国会に御提案して減免の措置を講じました。それが一つ。それから、衛星放送の受信機のリースを行う者に対しまして財政融資の措置をするとか、そういった点をいたしております。  現在、受信機の平均価格が大体二十四万円、それから据えつけ費が四万円、約二十八万円かかるわけであります。年間百万台くらい出ないことには十万円台になりませんので、そういった点については、今お話がございましたようなことで、わずかなことではありますけれども、例えばチューナーに対する物品税は六十二年度までは非課税でいくというようなことをいたしておりますし、それから財政融資の問題につきましても七・五%で、先ほど申しました受信機のリース事業者に対しての融資をするとかいうふうなことはいたしております。  それからあと、地上の対策につきまして何か手が打てないかということでございますが、このことにつきましても、前には、地方自治団体に対しましてお金を出してそうしたものに対する助成をしていただくという方針があったわけでありますけれども、現在、財政が非常に厳しいわけでございます。このことにつきましても何とか、例えば山村振興対策とかそういった金の中からそういった対策ができないかということで、いろいろ折衝しておる段階でございます。
  275. 佐藤祐弘

    ○佐藤(祐)委員 両方の対策が私は必要だと思うのです。放送衛星が飛んだ、難視地域の人でも設備をつければ見えるんだといいましても、それだけのお金はとてもかなわない、ほかの地域と同じように地上でやってくれないかという要求が強いと思うのです。その地域の人たちだけが特別な負担を強いられるということではまずいわけです。  それともう一つ、これも当初から私、疑念があるのですけれども、衛星放送は今の二つの地上チャンネルと違う魅力を持たせていくということは当然考えるわけですね、きょうの答弁でもありました。そうしますと、完全には地上を代位するものではないのですね。不公平と言えるかどうかわかりませんが、同じものを受けられないという問題は依然残るのですよ。だから、本当にフリーハンドで放送衛星を多面的、多彩な内容にしていこうとするならば、地上並みの難視は、それはそれとして解決しないと矛盾は残るというふうに考えるのですが、その点はどう考えておられますか。
  276. 川原正人

    川原参考人 それは将来の問題と思いますけれども、確かに放送衛星のチャンネルが二チャンネルあって、しかもその中に新しいものを何か試みていこうとしますと、余った時間のところでやる分には構わないのですけれども、今地上が放送している同じ時間の中で何かを試みようとすると、その分だけはどうしてもサービスの中身が違ってくる、これは避けられないと思います。  ただ、私どもはそのときに、じゃどのような内容でその衛星の番組が編成できるかと申しますと、地上でやっている番組の中で最低といいますか、どうしても必要なもの、それはやはり衛星を通じて出さなければいけない。どうしても必要な報道、ニュースであるとか、あるいは教育番組の中でどうしてもこれはむしろそういう難視地域においてこそ見ていただきたいような番組、それは何らかの形で出さなければならないと思いますけれども、今地上でやっております二つのチャンネルの中には、再放送の時間とか、かなりやっている場所があります。そういうところをうまく編成をし直していけば、ある程度違った番組を衛星の方に入れながら、受信者の方に満足していただけるような編成ができるんじゃないかというふうに考えているわけです。  それは実際に当てはめてみないと、なかなかどうやっても、形が変わる点は出てくると思いますけれども、総体的に言えば、かなりの新しいものが入って、なおかつ難視聴も相当解消できる、満足していただけるような編成ができるはずだ。今それを一生懸命いろんな組み合わせを考えながら、もし放送行政上のそこが、問題が一歩前へ出ていただけるならば、私どもとしてはぜひそういう新しい魅力のある番組サービスをしてみたい、それによってまた衛星の受信者も普及するであろうというように考えているわけでございます。
  277. 佐藤祐弘

    ○佐藤(祐)委員 終わりますが、もともと衛星放送、難視解消という大義名分を膨らましてやったところに私は、本当の無理があるのだろうと思うのですよ。衛星放送というのは、もっと懐の広いものでしょう。それをお金を、名目をつけるために難視解消だということでやったものだから、その矛盾をきっぱりと清算する時期が来ていると思うのですね。  地上難視対策はそれとして進める、そういう方向で検討していただくように主張しまして、終わります。
  278. 渡辺紘三

    渡辺委員長 以上で両件に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  279. 渡辺紘三

    渡辺委員長 これより両件について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、順次採決をいたします。  まず、日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書について採決をいたします。  本件について異議がないと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  280. 渡辺紘三

    渡辺委員長 起立総員。よって、本件は異議がないものと決しました。  次に、日本放送協会昭和五十七年度財産目録貸借対照表及び損益計算書について採決をいたします。  本件について異議がないと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  281. 渡辺紘三

    渡辺委員長 起立総員。よって、本件は異議がないものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 渡辺紘三

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  283. 渡辺紘三

    渡辺委員長 次回は、来る二十五日火曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四分散会      ――――◇―――――